平成14年11月18日宣告平成14年(わ)第268号受託収賄被告事件判決 主文 被告人を懲役1年2か月に処する。 未決勾留日数中180日をその刑に算入する。 被告人から金100万円を追徴する。 理由 (犯罪事実)被告人は,平成10年8月27日から同14年2月27日まで,福岡県警察官として,福岡県a警察署総務課に勤務し,福岡県内における各種犯罪の予防,鎮圧及び捜査,その他公共の安全と秩序の維持等に当たる職務に従事していたものであるが,同11年9月21日,b市c区de丁目f番g号Aホテル1階バー「B」において,b市内所在のいわゆるカジノバー「C」等の経営に関与していた分離前の相被告人Dから,前記「C」等に対する福岡県警察の捜査に関する情報を提供して欲しい旨の請託を受け,これに対する報酬の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら,同日,同所において,前記Dから,現金100万円の供与を受け,もって自己の職務に関し請託を受けて賄賂を収受した。 (証拠)-省略-(法令の適用)罰条刑法197条1項後段未決勾留日数の算入刑法21条追徴刑法197条の5後段(量刑の理由)本件は,警察官として,福岡県a警察署総務課留置管理係に勤務していた被告人が,違法なバカラ賭博等を行うカジノバーを経営する分離前の相被告人Dから,同人の経営するカジノバーに対する捜査情報等を提供して欲しい旨の請託を受けてこれを承諾し,これに対する見返りとして現金100万円をDから収受したという事案である。 被告人は,警察官として,個人の生命,身体及び財産の ノバーに対する捜査情報等を提供して欲しい旨の請託を受けてこれを承諾し,これに対する見返りとして現金100万円をDから収受したという事案である。 被告人は,警察官として,個人の生命,身体及び財産の保護に任じ,犯罪の予防,鎮圧,捜査等公共の安全と秩序維持に当たることを責務とし,違法行為を取り締まり,厳正,公平に職務を遂行すべき立場にあって,職務の廉潔性,公正さが極めて強く要請されるにもかかわらず,県民の期待と信頼を裏切り,捜査対象となる違法な賭博等の営業を行うカジノバー経営者から金員の収受を受けているのであり,警察捜査活動全体の公正さに対する県民の信頼を根底から揺るがし兼ねないものであり,警察全体の名誉,信頼,威信を著しく失墜させた。 被告人が収受した賄賂額は100万円と多額である。本件犯行の動機は,被告人が平成10年8月に福岡県h警察署刑事部捜査第4課(以下「捜査4課」という。)から福岡県a警察署へ異動し,同警察署で総務課留置管理係主任として勤務するようになったところ,異動前は,月々約15万円の超過勤務手当を得てそれを小遣い銭として使えたのが,異動後は月約5万円に減ってしまい,そのため,飲食費等に窮するようになってしまい,その遊興費を得ようとしたことにあり,利欲的,自己中心的な動機に酌量の余地はない。また,被告人は,違法なバカラ賭博等を行うカジノバーの経営者らから,捜査情報を提供する見返りに賄賂を収受しているために羽振りがよいと思われた警察官に対して,被告人をそのカジノバーの経営者に紹介することを求め,しかも,被告人が自分の思惑通りに事が運ぶのではないかと期待した理由は,被告人が捜査4課等で,暴力団捜査を長年にわたって担当してきたことによって培ってきた警察内部の人脈により,a警察署に異動になったとはいえ,b市の歓楽街であるdのカジノ ぶのではないかと期待した理由は,被告人が捜査4課等で,暴力団捜査を長年にわたって担当してきたことによって培ってきた警察内部の人脈により,a警察署に異動になったとはいえ,b市の歓楽街であるdのカジノ賭博に関する捜査情報を十分に取ることができ,それを売り物にしてカジノ賭博業者に捜査情報を流す見返りとして賄賂を要求すれば,その業者から賄賂をもらえるものと目論んだことにある。本件は,違法行為を取り締まるべき立場にある警察官が,職務上の地位を利用し,違法な賭博を行っているカジノバー経営者に賄賂を要求して収受したという要求型の受託収賄事件であり,被告人のかかる行為には強い非難が加えられる。本件の背景として,被告人は,平成8年ころの捜査4課勤務当時,上司から紹介を受けていた違法なカジノバー関係者であるEから依頼を受け,同10年ころまで同人が関与していたカジノバーに対する福岡県c警察署などの捜査情報を入手した上,それをEに対して伝えたり,Eから求められて捜査情報を提供する人物として警察官Fを紹介するなどして飲食の接待を受けたり現金を受け取るなどカジノバー関係者と癒着していたという事情がある。本件では,被告人は,Fに依頼してDを紹介してもらい,同人と会い犯行に及んでいる。その結果,捜査4課に勤務する別の警察官と会った際,暴力団同士の抗争事件等の捜査でc警察署も捜査4課も忙しい旨の話を聞いたことから,Dから現金100万円を受領した手前,捜査情報を流しておこうと考え,Fを通じて前記の話をDに伝えているのであり,被告人の警察官としての職業倫理は鈍麻しているというほかなく,非常に悪質である。本件において,被告人は賄賂を1回収受したことのみにとどまっているが,これは,DがEと仲がよくない上,同人がDの経営するカジノバーとはライバル店となる店に関係しており,被告 なく,非常に悪質である。本件において,被告人は賄賂を1回収受したことのみにとどまっているが,これは,DがEと仲がよくない上,同人がDの経営するカジノバーとはライバル店となる店に関係しており,被告人とEのかつての関係を知っていたため,Dが被告人とEの関係を疑っており,これを感じたFが,別の警察官を捜査情報提供者としてDに対して紹介するなどしたためにすぎず,被告人としては,Dに賄賂を求める話をした際には,継続的に賄賂を提供してもらうことを目論んでいたものであって,現に,継続的な賄賂の提供を期待して,その後もFに対してDから連絡がないことなどを問いただすなどしており,この点でも犯情は悪い。 本件は,新聞紙上等にも大きく報道され,警察関係者はもとより社会一般に非常に大きな衝撃を与えたのであるから,社会的影響が大きく,この点においても強い非難に値する。 以上によれば,被告人の刑事責任は重いものがある。 他方,本件の被告人の収受金額は,カジノバーに関する一連の警察官の収賄事件の中では相対的にみると少額であること,本件当時被告人が直接担当していた業務自体からカジノバーの摘発情報を入手できる可能性は薄く,その意味で,被告人の直接担当する職務と賄賂との関連性が比較的弱かったこと,被告人の妻が被告人の今後の指導監督を法廷において誓約していること,今後の稼働先として新聞販売店が確保されており,同販売店経営者が被告人の指導監督を誓約していること,被告人は,長年にわたり警察官として主に暴力団関係事件の捜査に携わり,その中でそれなりに実績も上げ貢献してきた面もあること,一貫して罪を認め反省の情を示していること,平成14年2月本件により懲戒免職となり,犯行はマスコミに大きく報道されるなど既に相応の社会的制裁を受けていること,逮捕以来長期間にわたり身柄の拘束 こと,一貫して罪を認め反省の情を示していること,平成14年2月本件により懲戒免職となり,犯行はマスコミに大きく報道されるなど既に相応の社会的制裁を受けていること,逮捕以来長期間にわたり身柄の拘束がなされていること,被告人には前科前歴がなく,扶養すべき家族を抱えていることなど,被告人のために酌むべき事情も認められる。 以上の諸事情を総合して考慮することになるが,本件は刑の執行を猶予するのを相当とする事案ではないから,主文掲記の実刑を科すこととした。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑懲役2年6か月,追徴100万円)平成14年11月18日福岡地方裁判所第2刑事部裁判長裁判官林秀文裁判官一木泰造裁判官永井美奈
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