平成17(行ウ)27 生活保護変更決定取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成20年12月25日 広島地方裁判所 その他
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判決文本文113,385 文字)

- 1 -平成17年(行ウ)第27号生活保護変更決定取消等請求事件(甲事件)平成20年(行ウ)第10号生活保護変更決定取消等請求参加事件(乙事件)主文 本件訴訟のうち,原告A,原告AF,原告AB,原告AE及び原告Iに関する各部分は,平成18年12月12日原告Aの死亡,平成19年4月12日原告AFの死亡,同年7月6日ころ原告ABの死亡,同年10月15日原告AEの死亡,平成20年10月23日原告Iの死亡により,それぞれ各原告死亡時に当然に終了した。 原告ら(前項の原告らを除く。)及び原告AF承継参加人の下記の訴えのうち,平成20年11月7日から本判決確定に至るまでの支払を求める部分を却下する。 記別紙(2)「給付額一覧表」の「被告地方自治体」欄記載の被告らに対し,同表の同欄に対応する「氏名」欄記載の原告ら及び原告AF承継参加人それぞれにつき,平成18年1月以降本判決確定に至るまで,毎月1日限り,同表の同欄に対応する「(B)」欄記載の各金員の支払を求める訴え 原告ら(第1項の原告らを除く。)及び原告AF承継参加人のその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用(第1項の原告らに生じた費用を除く。)は原告ら(第1項の原告らを除く。)の負担とし,参加費用は原告AF承継参加人の負担とする。 事実 及び理由第1請求 別紙(1)「処分一覧表1」の「処分庁」欄記載の各行政処分庁が,同表の同欄に対応する「氏名」欄記載の各原告に対し,同表の「処分決定(H16)」欄及び「処分決定(H17)」欄記載の各日に行った各生活保護決定は,これ- 2 -らをいずれも取り消す。 別紙(2)「給付額一覧表」の「被告地方自治体」欄記載の被告らは,同表の同欄に対応する「氏名」欄記載の原告ら及び原告AF承継参加人それぞれに対し,同表の同欄に - 2 -らをいずれも取り消す。 別紙(2)「給付額一覧表」の「被告地方自治体」欄記載の被告らは,同表の同欄に対応する「氏名」欄記載の原告ら及び原告AF承継参加人それぞれに対し,同表の同欄に対応する「(A)」欄記載の各金員を支払え。 別紙(2)「給付額一覧表」の「被告地方自治体」欄記載の被告らは,同表の同欄に対応する「氏名」欄記載の原告ら及び原告AF承継参加人それぞれに対し,平成18年1月以降本判決確定に至るまで,毎月1日限り,同表の同欄に対応する「(B)」欄記載の各金員を支払え。 第2事案の概要原告らは,別紙(1)「処分一覧表1」の「処分庁」欄記載の各行政処分庁(以下「本件各処分庁」という。)が行った,前記「第1請求」の1記載の各生活保護決定は,生活保護法(以下「法」という。)8条の保護基準(以下「保護基準」という。)の違法な改定によるものであり,違法であるとして,その取消しを求めた。 また,原告ら(原告S及び原告Qを除く。)及び原告AF承継参加人AG(以下「承継参加人」という。)は,上記各決定が取り消されることを前提とし,又は,同各決定が無効であるとし,行政事件訴訟法4条により,被告らに対し,同各決定前後の生活保護費支給額の差額の支払を求めた。 争いのない事実(1)当事者ア原告らは,原告C及び承継参加人を除き,いずれも現在に至るまでの間,生活保護を受けている者,又は死亡時までこれを受けていた者である。原告Cについては平成20年3月21日付けで,承継参加人については同月31日付けで,いずれも同月1日から保護を廃止するとの保護廃止決定がなされた。 原告A,原告AF,原告AB,原告AE及び原告Iは,本訴訟係属中- 3 -(原告Aは平成18年12月12日,原告AFは平成19年4月12日,原告ABは同年7月6日ころ の保護廃止決定がなされた。 原告A,原告AF,原告AB,原告AE及び原告Iは,本訴訟係属中- 3 -(原告Aは平成18年12月12日,原告AFは平成19年4月12日,原告ABは同年7月6日ころ,原告AEは同年10月15日,原告Iは平成20年10月23日)に死亡した。承継参加人は,原告AFに対する(4)記載の生活保護決定当時,同原告と同一世帯の世帯員であり,その死亡後に同世帯の世帯主となった者である。また,原告Jは,原告Iに対する(4)記載の各生活保護決定当時,同原告と同一世帯の構成員であった者であり,それ以外に同原告と同一世帯の構成員はいなかった。 イ被告らは,地方自治法2条9項1号の法定受託事務として,生活保護に係る決定,支給等の事務を行うものである。 原告Sの生活保護に係る決定,支給等の事務は,広島県が行うべき事務であったが,平成17年11月3日,同原告の居住する広島県佐伯郡甲町は廿日市市と合併した。このため,それ以降,同原告の生活保護に係る決定,支給等の事務は,廿日市市が行うべき事務となった。 (2)直近の保護決定本件各処分庁は,別紙(3)「処分一覧表2」(省略;以下同)の「本件決定処分以前の直近の決定処分」欄の「処分日」欄記載の各日に,同表の「最低生活費」欄記載の各金額を最低生活費とし,同表の「保護支給額」欄記載の各金額を保護支給額とする旨の各保護決定をした。 各原告ごとの決定内容の詳細は,各原告ごとの別紙(4)「個表1」(省略;以下同)の左側の欄記載のとおりである。 (3)保護基準の改定ア生活扶助基準保護基準は,厚生労働大臣が,要保護者の年齢,世帯構成,所在地域等の事情を考慮して,扶助別(8種類)に定める。要保護者に属する世帯における最低生活費や保護費は,保護基準に従って算定される。 保護基準のうち,生活扶助基準 大臣が,要保護者の年齢,世帯構成,所在地域等の事情を考慮して,扶助別(8種類)に定める。要保護者に属する世帯における最低生活費や保護費は,保護基準に従って算定される。 保護基準のうち,生活扶助基準は,衣食などのいわゆる日常生活に必要- 4 -な基本的・経常的経費についての最低生活費を定めたものであるが,この生活扶助基準には,大別して,基準生活費と加算がある。 (ア)基準生活費基準生活費は,個人単位に消費される経費(例えば,飲食費,被服費)に対応する基準として年齢別に定められた第1類の表に定める個人別の額を合算した額(第1類費)と,世帯全体としてまとめて支出される経費(例えば,光熱水費,家具什器費)に対応する基準として世帯人員数別に定められた第2類の表に定める世帯別の額(第2類費)の合計額とされる。 (イ)加算加算は,基準生活費において配慮されていない個別的な特別需要を補填することを目的として設けられている。すなわち,障害があるため最低生活を営むためには健常者に比してより多くの費用を必要とする障害者や,通常以上の栄養補給を必要とする在宅患者,胎児のための栄養補給を必要とする妊婦等のように,特別需要を有する者について,これらの特別需要に対応できるよう,基準生活費に加え,加算制度が設けられている。 老齢加算とは,原則70歳以上の者の最低生活費(生活扶助費)を算定するに当たり計上され,同一世帯内に2人以上の該当者がいる場合には,それぞれの者に計上されるものである。 母子加算とは,父母の一方若しくは両方が欠けているか又はこれに準ずる状態であるため,父母の他方又は父母以外の者が児童を養育しなければならない場合に,その養育する者の最低生活費(生活扶助費)の算定に当たり計上されるものであり,養育する人数によって額が異なる。 イ老齢加算制度 ため,父母の他方又は父母以外の者が児童を養育しなければならない場合に,その養育する者の最低生活費(生活扶助費)の算定に当たり計上されるものであり,養育する人数によって額が異なる。 イ老齢加算制度厚生労働大臣は,平成15年12月16日の社会保障審議会福祉部会生- 5 -活保護制度の在り方に関する専門委員会(以下「在り方専門委員会」という。)による「中間取りまとめ」(以下「本件中間取りまとめ」という。)に基づく提言を受けた後,平成16年3月15日厚生労働省告示第130号(同年4月1日から適用)により同年度の老齢加算額を,平成17年3月31日厚生労働省告示第193号(同年4月1日から適用)により同年度の老齢加算額を,それぞれ減額し,平成18年3月31日厚生労働省告示第315号(同年4月1日から適用)により,老齢加算を廃止する旨の生活保護基準の改定をした。 ウ母子加算制度厚生労働大臣は,本件中間取りまとめ及び在り方専門委員会が作成した平成16年12月15日付けの報告書(以下,これによる報告を「平成16年度報告」という。)による提言を受けた後,15歳に達した日の翌日以後の最初の4月1日から18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者のみを養育しなければならない場合の母子加算額を,平成17年3月31日厚生労働省告示第193号(同年4月1日から適用)及び平成18年3月31日厚生労働省告示第315号(同年4月1日から適用)により段階的に減額し,平成19年3月31日厚生労働省告示第127号(同年4月1日から適用)により廃止する旨の生活保護基準の改定をした。 エ多人数世帯扶助基準額厚生労働大臣は,本件中間取りまとめ及び平成16年度報告による提言を受けた後,平成17年3月31日厚生労働省告示第193号(同年4月1日から適用)により 準の改定をした。 エ多人数世帯扶助基準額厚生労働大臣は,本件中間取りまとめ及び平成16年度報告による提言を受けた後,平成17年3月31日厚生労働省告示第193号(同年4月1日から適用)により,平成17年4月から4人世帯の第1類費の合計から2パーセント,5人以上世帯の第1類費の合計から4パーセントカットするとともに,4人以上世帯の第2類費の基準額を引き下げ,平成18年3月31日厚生労働省告示第315号(同年4月1日から適用)により,- 6 -平成18年4月から4人世帯の第1類費の合計から4パーセント,5人以上世帯の第1類費の合計から7パーセントカットし,平成19年3月31日厚生労働省告示第127号(同年4月1日から適用)により,平成19年4月から4人世帯の第1類費の合計から5パーセント,5人以上世帯第1類費の合計から10パーセントをカットする旨の生活保護基準の改定を行った。 (以下,上記のイないしエの保護基準の改定を併せて「本件保護基準改定」という。)(4)本件生活保護決定本件各処分庁は,本件保護基準改定に伴い,本件各処分庁の管轄内に住所を有する各原告に対し,別紙(1)「処分一覧表1」記載のとおり,各生活保護決定をした(以下「本件各決定」という。)。 本件各決定の内容は,別紙(5)「個表2」(省略;以下同)記載のとおりである。 (5)不服申立て原告らは,本件各決定後,これらを不服として,広島県知事に対し,審査請求を行ったところ,同県知事は同請求を棄却する旨の裁決を行い,同裁決書は原告らに送達された。 そこで,原告らは,厚生労働大臣に対し,再審査請求を行ったところ,同大臣は同請求を棄却する旨の裁決を行い,同裁決書は原告らに送達された。 同審査請求日及び再審査請求日,各裁決日,各決定書の送達日は,別紙(6)「不服申立日等一覧 臣に対し,再審査請求を行ったところ,同大臣は同請求を棄却する旨の裁決を行い,同裁決書は原告らに送達された。 同審査請求日及び再審査請求日,各裁決日,各決定書の送達日は,別紙(6)「不服申立日等一覧表」記載のとおりである。 本案前の争点(1)死亡した原告らにつき,訴訟が当然終了となるか否か(2)当事者訴訟(「第1請求」の2,3)の訴えの利益の有無 本案前の争点(1)(死亡した原告らにつき,訴訟が当然終了となるか否か)- 7 -に関する当事者の主張(1)被告らの主張死亡した原告5名(原告A,原告AF,原告AB,原告AE及び原告I)については,保護受給権が一身専属的であることから,同原告らの死亡と同時に,同原告らの訴訟は当然に終了した(最高裁昭和42年5月24日大法廷判決民集21巻5号1043頁参照)。なお,承継参加人が参加できることについては争わないが,原告AFはいまだ脱退していないから,同原告に関する部分については終了宣言がなされるべきである。 (2)原告らの主張当然終了したとの被告らの主張は争う。 本案前の争点(2)(当事者訴訟(「第1請求」の2,3)の訴えの利益の有無)に関する当事者の主張(1)被告らの主張ア原告ら及び承継参加人(以下,本項,6項,7項,9項,10項及び11項においては,承継参加人も含めて「原告ら」という。また,後記「第3当裁判所の判断」中,上記各項についての判断部分においても,原告らの主張とするものには承継参加人のそれを含むものとする。)は,行政事件訴訟法4条の当事者訴訟として,「第1請求」の2,3のとおり,減額された保護費相当額の支払を求める給付を求めている。しかし,本件各決定が取り消されることを前提にして上記給付を求めているとすれば,同訴えは,以下の理由から訴えの利益を欠き 求」の2,3のとおり,減額された保護費相当額の支払を求める給付を求めている。しかし,本件各決定が取り消されることを前提にして上記給付を求めているとすれば,同訴えは,以下の理由から訴えの利益を欠き,不適法であるから,却下されるべきである。 (ア)訴訟において請求自体の当否につき本案判決を得るためには,①請求が民事訴訟の判決で確定するのに適するものであること(権利保護の資格),②当該請求の当否につき判決を受ける法的利益ないし必要性があること(権利保護の利益ないし必要)等を要する。そして,「権利保- 8 -護の資格」とは,請求が,訴訟制度の目的ないし本質に照らし,訴訟の対象として判決で確定するに適するか否かという見地から判断すべきであり,「権利保護の利益ないし必要」とは,請求の内容自体は権利保護の資格を有するものであっても,相手方の態度や他の救済手段との関連等の観点から,請求の当否につき判決を受けるだけの法的利益ないし必要を有しているか否かという見地から判断すべきである。とすれば,現在の給付の訴えにおいても,訴訟制度の目的ないし本質に照らし,およそ認容される余地のない請求を求めたような場合や,他に適切な法的手段が用意されている場合にあえて給付の訴えを求めた場合には,権利保護の資格,権利保護の利益ないし必要を欠き,ひいては訴えの利益がないとして却下されるべき場合があるというべきである。 そして,権利保護の資格,権利保護の利益ないし必要が欠ける場合に訴えが不適法になるという点は,保護費相当額の支給を求めるような公法上の当事者訴訟においても別異に扱うべき理由はない。 これを本件についてみるに,法は,国民が法に定める要件を満たす限り,保護を受けることができるとしつつ(法2条),具体的な保護は,実施機関(法19条)が保護の種類,程度及び方法を 扱うべき理由はない。 これを本件についてみるに,法は,国民が法に定める要件を満たす限り,保護を受けることができるとしつつ(法2条),具体的な保護は,実施機関(法19条)が保護の種類,程度及び方法を決定したときに開始されるものとし(法24条,25条1項),実施機関は,常に,被保護者の生活状態を調査し,保護の変更を必要とすると認めるときは職権でその決定を行い(法25条2項),保護を必要としなくなったときは保護の停止又は廃止を決定すべきものとしている(法26条)。このように,生活保護の受給権は,実施機関の開始決定によって,初めて金銭給付や現物給付などを求め得る具体的な保護受給権となり,変更決定がされたときには,従前の保護処分の効力は失われ,当該変更決定の範囲内での具体的な保護受給権が認められるにすぎない。以上からすると,保護費相当額の支払請求は,老齢加算等の減額相当額を含めた生活保護- 9 -費の受給権に基づくものであり,原告らが本件訴訟において取消しを求めている本件各決定により老齢加算金等が減額されているから,本件各決定が取り消されなければ,原告らに同受給権が認められることはなく,本件各決定が取り消されることを前提にした上記給付の訴えに係る請求が認容される余地は全くない。 そうである以上,本件各決定が取り消されることを前提にした原告らの給付の訴えは,訴訟制度の目的ないし本質に照らし,およそ認容される余地のない請求を求めたものとして,権利保護の資格の要件を欠くというべきであるばかりか,他に適切な法的手段が用意されている場合にあえて給付の訴えを求めた場合に当たるとして,権利保護の利益ないし必要を欠いているといわざるを得ず,ひいては訴えの利益を欠く不適法な訴えというほかない。 (イ)原告らの上記給付の訴えは,本件各決定の取消しを求める請 求めた場合に当たるとして,権利保護の利益ないし必要を欠いているといわざるを得ず,ひいては訴えの利益を欠く不適法な訴えというほかない。 (イ)原告らの上記給付の訴えは,本件各決定の取消しを求める請求を認容する判決の確定を条件とした将来給付の訴えと解する余地もある。 しかし,将来給付の訴えは,あらかじめその請求をする必要がある場合に限り提起することができるところ,仮に本件各決定の取消しを求める請求を認容する判決がされ,これが確定すれば,被告らとしては,その内容に従った支給をすることになり,即時の任意の履行を行うのである。そうすると,本件各決定の取消しを求める訴えだけで原告らの目的は達せられ,上記給付の訴えにつき,あらかじめその請求をする必要があるとは認められないから,上記給付の訴えが将来給付の訴えであるとしても,不適法な訴えである。 イ原告らが,本件各決定が無効であることを前提として,「第1請求」の2,3のとおりの金員の給付を求めているのだとしても,本件口頭弁論終結日の後から本判決確定の日までの支払請求に係る訴えは,将来給付の訴えであり,「あらかじめその請求をする必要がある場合」に当たらない- 10 -から,不適法な訴えである。 すなわち,継続的不法行為に基づき将来発生すべき損害賠償請求権については,たとえ同一態様の行為が将来も継続されることが予測される場合であっても,それが現在と同様に不法行為を構成するか否か及び賠償すべき損害の範囲いかん等が流動性をもつ今後の複雑な事実関係の展開とそれらに対する法的評価に左右されるなど,損害賠償請求権の成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず,具体的に請求権が成立したとされる時点において初めてこれを認定することができるとともに,その場合における権利の成立要件の具備については 成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず,具体的に請求権が成立したとされる時点において初めてこれを認定することができるとともに,その場合における権利の成立要件の具備については当然に債権者においてこれを立証すべく,事情の変動を専ら債務者の立証すべき新たな権利成立阻却事由の発生ととらえてその負担を債務者に課するのは不当であると考えられるようなものについては,本来例外的にのみ認められる将来の給付の訴えにおける請求権としての適格を有するものとすることはできない(最高裁昭和56年12月16日大法廷判決民集35巻10号1369頁)。 これを法に基づく受給権についてみると,法に基づく保護の受給権の成否及びその額は,保護の開始・変更決定をまって初めて具体化されるものである上,いったん保護決定がなされても,その後様々な事情(世帯の人数の変更,世帯主及び世帯員の入・退院に伴う生活扶助や医療扶助の変更,家賃等の変更に伴う住宅扶助の変更,収入の変更に伴う勤労控除の変更,世帯主及び世帯員の就労の有無,給与や年金,手当等の加・減額,他からの仕送りの有無等)の変動が生じ,その都度保護の変更決定がなされるのであるから,あらかじめ一義的に明確にできるわけではない。また,上記のような事情変動の中には,世帯主及び世帯員の給与の加・減額,他からの仕送り等の有無等のように,専ら被保護者側の事情もあり,実際上,実施機関において速やかに把握し得ないものも含まれているのであるから,- 11 -事情の変動を専ら債務者の立証すべき新たな権利成立阻却事由の発生としてとらえて,その負担を債務者に課するのは不当である。 したがって,無効を前提とした実質的当事者訴訟としての給付の訴えのうち,将来給付の訴えの部分は,不適法な訴えである。 (2)原告らの主張争う。 らえて,その負担を債務者に課するのは不当である。 したがって,無効を前提とした実質的当事者訴訟としての給付の訴えのうち,将来給付の訴えの部分は,不適法な訴えである。 (2)原告らの主張争う。 本案の争点(1)主張立証責任の所在(2)老齢加算廃止の合理性(3)母子加算廃止の合理性(4)多人数世帯扶助基準額変更の合理性(5)本件各決定の無効事由の有無(6)本件各決定が取り消された場合又は無効であった場合の給付額 本案の争点(1)(主張立証責任の所在)に関する当事者の主張(1)被告らの主張ア法56条について法56条は,「被保護者は,正当な理由がなければ,既に決定された保護を不利益に変更されることがない。」と規定している。これは,同条の文言上「決定された」とあるように,被保護者と保護の実施機関との関係を規定したものである。ここでいう「既に決定された保護」とは,法24条1項の規定により保護の決定通知書に記載されたすべての事項,すなわち,保護の種類,程度及び方法のすべてを含むものであり,これらのうちの一つを不利益に変更する場合でも,法56条の「不利益に変更」に該当する。 本件各決定は,老齢加算及び母子加算の減額並びに多人数世帯の第1類費・第2類費の減額を内容とする保護基準の改定に伴い,保護の実施機関- 12 -が,改定後の新基準に基づいて,既に決定された原告らに対する保護費を減額するものであるから,法56条の適用がある。しかし,「本件各決定には法56条の適用がある」とは,法25条2項に基づく職権による変更決定(被保護者に対する個別的な変更決定)について法56条の適用があると主張するものであって,法8条の厚生労働大臣による保護基準の改定について法56条の適用があると主張するものではない。そして,法56条の「正 者に対する個別的な変更決定)について法56条の適用があると主張するものであって,法8条の厚生労働大臣による保護基準の改定について法56条の適用があると主張するものではない。そして,法56条の「正当な理由」とは,法の規定する保護の変更,停止が行われる場合に,法の規定する要件に該当することを意味する。ここでいう「法の規定する保護の変更,停止が行われる場合」とは,法24条5項(申請による変更),25条2項(職権による変更),26条(保護の停止及び廃止),28条4項(立入調査の拒否の場合),62条3項(指示に従わなかった場合)等である。 イ「正当な理由」の主張立証責任保護の実施機関が,法8条に規定する保護基準が改定されたことに伴い,改定された新基準に基づいて保護の程度を職権をもって変更する場合も,法25条2項の規定する職権による保護の変更に該当すると解されている。 そして,被保護者に対する保護の変更決定は,保護基準に基づいてされなければならず(法8条),保護の実施機関は,厚生労働大臣の裁量判断で定められた保護基準に拘束される。 このことからすれば,保護の実施機関である被告らは,保護基準の改定に伴ってなされた保護の変更決定については,保護基準が改定されたこと,及びそれに伴って法25条2項に基づき職権により保護の程度を変更したことを主張立証すべきであり,かつ,それで足りるというべきである。 一方で,「正当な理由」を争う原告らが,保護基準の改定が違法であることを基礎付ける具体的事実について主張立証責任を負う。そして,保護基準の改定が厚生労働大臣の合目的的裁量に委ねられており,そのことは- 13 -保護費の減額を伴う保護基準の改定においても同様であって,裁量権の逸脱・濫用がない限り違法とされることはないことからすれば,ここでいう「保護基準の改定 裁量に委ねられており,そのことは- 13 -保護費の減額を伴う保護基準の改定においても同様であって,裁量権の逸脱・濫用がない限り違法とされることはないことからすれば,ここでいう「保護基準の改定が違法であることを基礎付ける具体的事実」とは,厚生労働大臣の裁量権の逸脱・濫用を基礎付ける具体的事実をいうと解すべきである。 ウ法56条は厚生労働大臣の保護基準の改定には適用されないこと原告らは,保護変更決定に限らず,厚生労働大臣が法8条に基づいて行う保護基準の改定にも,法56条が適用されると主張する。 (ア)原告らは,上記主張の根拠の第一点として,「憲法25条の生存権の保障のための施策は,国の文化経済の発展に伴って絶えず充実拡充すべきものであり,いったんこれが立法,行政によって実現した後にこれを廃止したり削減したりすることは憲法上の侵害に当たり,正当な理由がなければ憲法25条違反である。」旨主張するものと解せられる。 しかし,憲法25条1項は,国民に具体的権利を付与したものではなく,具体的権利は同条の趣旨を実現するために制定された法によって初めて与えられるものである(最高裁昭和23年9月29日大法廷判決刑集2巻10号1235頁)。そして,憲法25条の趣旨を現実の立法として具体化するに当たっては,国の財政事情を無視することはできず,また,多方面にわたる複雑多様な,しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を要するが故に,何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は,厚生労働大臣の合目的的裁量に委ねられている(最高裁昭和42年5月24日大法廷判決民集21巻5号1043頁)。このように,健康で文化的な最低限度の生活の具体的内容がその時々における多数の不確定要素に応じて変化し得ること,一方で,保護基準は,最低限度の生活需要 月24日大法廷判決民集21巻5号1043頁)。このように,健康で文化的な最低限度の生活の具体的内容がその時々における多数の不確定要素に応じて変化し得ること,一方で,保護基準は,最低限度の生活需要を満たしつつ,これをこえないものでなければならないこと(法8条2項)からすれば,いったん定立した保護- 14 -基準であっても,その後の社会経済情勢の変化等によって必要がなくなった基準を廃止,削減することも当然予定されているのであって,厚生労働大臣の合目的的裁量に委ねられていると解される上記理由は,国民経済の成長期であっても後退期であっても変わるところはない。 したがって,原告らの「いったん最低生活費として定めた生活保護の給付水準を切り下げる場合には,法制度後退禁止の原則から,一層限られた覊束裁量になる」旨の主張や,「法56条は,厚生労働大臣が,既存の保護基準をそれまでの被保護者にとって不利益に変更する場合「正当な理由」が必要であることを定めた規定である」旨の主張は,いずれも独自の解釈であって,失当である。 (イ)原告らは,その主張の根拠の第二点として,被保護者には法56条に定める既得権がある旨の主張をするものと解せられる。 しかし,保護の請求権は国民に無差別平等に与えられているところ(法2条),保護の受給資格は,日本国民であって生活に困窮していること,法4条に定める要件を満たすことのみである。法は,保護を受ける資格を特に抜き出して規定しておらず,そのようにしなかったのは,徹底した無差別平等主義をとっていたからである。このように,無差別平等の原理からすれば,健康で文化的な最低限度の生活が保障されているのは,現に保護を受けているかいないかにかかわらず,国民全員であり,その保護水準は,同じ条件の下で等しくしなければならない。 したがって,法5 からすれば,健康で文化的な最低限度の生活が保障されているのは,現に保護を受けているかいないかにかかわらず,国民全員であり,その保護水準は,同じ条件の下で等しくしなければならない。 したがって,法56条は,既に決定した保護を正当な理由なく不利益に変更されることがないという被保護者の権利について定めているが,この権利は,厚生労働大臣がその裁量によって定めた保護基準による保護を受け得ることであると解するのが相当であり,保護の減額を内容とする保護基準の改定がされた場合において,原告らに対し,従前の保護基準による保護を受ける権利を既得権として付与されたものではないと- 15 -いうべきである。 (2)原告らの主張ア法制度後退禁止の原則生存権は,仮に憲法25条のみからは具体的な内容を持たないとしても,別に定められた法律によって具体化され内実を与えられると,憲法と法律が相まって具体的な権利となる。したがって,具体化立法によって給付を受ける地位が創設された以上,立法者といえども,それを正当な理由なく勝手に変更し,その地位を剥奪することは,憲法25条に違反する生存権侵害に当たり,許されないものである。 生活保護受給権に関しては,生活保護法によって具体化された給付を受ける地位が保障されている。したがって,その自由権的効果として,現状の生活保護基準は生存権の最低限度の保障であり,現状の生活保護基準からさらに不利益に変更する場合は,あくまでも正当な理由があって初めて許容されるものと解すべきである。 本件のように,既にいったん最低生活基準として保障されていた生活保護の給付水準を切り下げた場合には,それが最低生活水準を満たすものであるか否かの判断は比較的容易であるし,法制度後退禁止の原則からすれば,厚生労働大臣の認定判断に当たって,裁量の範囲はより一層 活保護の給付水準を切り下げた場合には,それが最低生活水準を満たすものであるか否かの判断は比較的容易であるし,法制度後退禁止の原則からすれば,厚生労働大臣の認定判断に当たって,裁量の範囲はより一層限られた覊束裁量となる。 したがって,これまでの生活保護の給付水準が最低生活水準を満たしていたか否かについて十分な調査検討をし,なお十分な余裕があり,最低生活水準を上回ることが立証されて初めて正当な理由があるものといえ,給付水準を引き下げることも許されるというべきである。 イ法56条が厚生労働大臣の保護基準の改定にも適用されること法56条が,「被保護者は,正当な理由がなければ,既に決定された保護を,不利益に変更されることがない。」という不利益変更禁止の原則を- 16 -定めているのも,生存権の自由権的効果としての法制度後退禁止をその趣旨としたものである。 本件各決定に対して法56条の適用があることは,被告らも認めているところであり,同条の「既に決定された保護を不利益に変更する」とは,本件のような法8条の規定による基準変更に伴う職権による不利益変更の場合,「厚生労働大臣が,既存の保護基準を不利益に変更する」ことを意味すると解するのが相当である。なぜなら,上記法制度後退禁止の原則からすれば,法56条は,厚生労働大臣の保護基準の改定にも適用があると解するのが最も適切な解釈であるし,法56条は,被保護者に,いったん保護の実施機関が被保護者に対して保護を決定したならば,同条に定めるところの事情の変更に被保護者が該当し,かつ,保護実施機関が法の定めるところによって変更の手続を正規にとらないうちは,その決定された内容において保護の実施を受けるという既得権があることを定めた規定といえるからである。 そうであるとすれば,法56条は,単に保護の実施機関に対 によって変更の手続を正規にとらないうちは,その決定された内容において保護の実施を受けるという既得権があることを定めた規定といえるからである。 そうであるとすれば,法56条は,単に保護の実施機関に対する規定ではなく,厚生労働大臣が,既存の保護基準をそれまでの被保護者にとって不利益に変更する場合には「正当な理由」が必要であることを定めた規定であると解すべきである。法56条が,「不利益に変更」する主体を保護実施機関に限定していないこと,法56条のある第8章全体をみても,権利の主張の相手方について,特に国を排除するような規定はないこと,むしろ,同じ第8章中にある法57条は,国税庁その他租税当局を拘束する規定であるし,法58条は,税務当局や執行機関等を拘束する規定であること,法1条は,生活保護制度の実施につき,国が直接の責任を持つことを定めており,1条は「総則」の規定であり,特に適用しない旨の定め等がある場合を除き,その効力は法全体に及ぶのであるから,法56条の制約を国の機関が免れるはずがないことといった法56条の体系上の位置及- 17 -び文言からも,法56条は,厚生労働大臣による保護基準の改定にも適用されるというべきである。 ウ「正当な理由」の主張,立証責任上記法56条の趣旨及び条文の構成からして,「正当な理由」の主張・立証責任は,不利益な基準変更をする厚生労働大臣にあることは明白であり,保護実施機関である被告らも,また,法56条に従って適正な運用をする立場にあることから,厚生労働大臣と同様に「正当な理由」の主張立証責任があることは明らかである。 本案の争点(2)(老齢加算廃止の合理性)に関する当事者の主張(1)被告らの主張ア老齢加算の検証厚生労働省では,平成12年の社会福祉事業法等一部改定法案に対する附帯決議(衆議院・ ある。 本案の争点(2)(老齢加算廃止の合理性)に関する当事者の主張(1)被告らの主張ア老齢加算の検証厚生労働省では,平成12年の社会福祉事業法等一部改定法案に対する附帯決議(衆議院・参議院),平成15年の社会保障審議会意見及び財政制度等審議会建議等において,生活保護制度見直しの必要が指摘されたこと(乙9)などから,平成15年8月,生活保護制度全般について議論するため,厚生労働大臣の諮問に応じて社会保障に関する重要事項を調査審議するために設置される社会保障審議会福祉部会内に,在り方専門委員会が設置された。 在り方専門委員会では,老齢加算について,次のような検証を行った。 (ア)生活扶助相当消費支出額の比較老齢加算は原則70歳以上の者に算定されるものであることから,単身無職の60歳から69歳までの者と70歳以上の者の生活扶助相当消費支出額を比較した。 なお,この生活扶助相当消費支出額とは,消費支出額の全体から,生活保護制度中の生活扶助以外の扶助に該当するもの(家賃や地代=住宅扶助,教育費=教育扶助,医療診療代=医療扶助等),生活保護制度で- 18 -基本的に認められない支出に該当するもの(自動車関連経費等),被保護世帯は免除されているもの(NHK受信料),最低生活費の範疇になじまないもの(家事使用人給料,仕送り金)を除いたものである。また,その数値等のデータは,全国消費実態調査の特別集計(総務省の「家計調査」及び「全国消費実態調査」を入手し,収入・支出を世帯属性別,収入階級別に集計したもの。)によった。 これをみると,全世帯平均で60歳から69歳では11万8209円であるのに対し70歳以上は10万7664円であった。第Ⅰ-5分位(調査対象者を年間収入額順に並べ,対象者数を5等分した場合に,年間収入額の最も低いグループの で60歳から69歳では11万8209円であるのに対し70歳以上は10万7664円であった。第Ⅰ-5分位(調査対象者を年間収入額順に並べ,対象者数を5等分した場合に,年間収入額の最も低いグループのこと。)で60歳から69歳では7万6761円であるのに対し70歳以上は6万5843円,第Ⅰ-10分位(調査対象者を年間収入額順に並べ,対象者数を10等分した場合に,年間収入額の最も低いグループのこと。)で60歳から69歳では7万9817円であるのに対し70歳以上では6万2277円であった。いずれも60歳から69歳までの者より70歳以上の者の生活扶助相当消費支出額が低い状況であった。 また,第Ⅰ-5分位の70歳以上の単身無職者の生活扶助相当消費支出額が6万5843円であるのに対し70歳以上の者の生活扶助基準額(老齢加算を除く。)(平均)は7万1190円と,生活扶助基準額が高い状況であった(乙10)。 (イ)生活扶助基準の変遷昭和20年代後半から30年代前半の保護基準の算定は,最低生活に必要な個々の需要を一つ一つ積み上げて理論計算するマーケットバスケット方式により行われていた。老齢加算は,マーケットバスケット方式による当時の保護基準の低劣さにかんがみ,社会的弱者である高齢者には基準生活費では賄えない特別需要があると認められたことから,導入- 19 -されたものであった。 ところが,同方式では,高度経済成長に伴う一般国民の生活水準の向上に対応して基準の引上げを図っていくことが難しかったため,昭和36年度から,飲食物費のみをマーケットバスケット方式により求め,この飲食物費と同額を消費する世帯のエンゲル係数を実態生計分布から見出し,さらにその飲食物費をエンゲル係数で除して最低生活費とするエンゲル方式が採られるようになった。その後,更なる一般国民 り求め,この飲食物費と同額を消費する世帯のエンゲル係数を実態生計分布から見出し,さらにその飲食物費をエンゲル係数で除して最低生活費とするエンゲル方式が採られるようになった。その後,更なる一般国民の生活水準の向上に伴い,これに合わせて生活保護基準を引き上げ,一般国民の生活水準との格差縮小を図ることが当時の政策方向となったことから,エンゲル方式に代わり,政府経済見通しにおける個人消費の対前年度伸び率に格差縮小分をプラスアルファして翌年度の保護基準改定率を決定するという格差縮小方式が導入された。その後,高度経済成長が終わりを告げ,雇用機会や賃金上昇率の低下などの現象が顕在化する一方で,国家財政がますます窮迫の度を加えており,限られた財源のより効果的な配分を確保するための見直しが要請されていたこと,生活扶助基準の評価については,格差縮小方式により当時の水準と比して相当の改善が図られ,一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達していたことから,政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸びに準拠して改定率を算定する点は格差縮小方式と変わらないが,格差縮小分を上乗せしない水準均衡方式が採用されることとなった。 現在,保護基準によって保障される生活水準を,一般世帯と被保護世帯との消費支出差によって比較すると,水準均衡方式を採用してからはおおむね7割弱で推移しており,平成13年度以降は7割を超えている状況であった(乙19)。 (ウ)社会経済情勢の変化昭和58年意見具申で基準が妥当とされた以降の生活扶助基準改定率,- 20 -消費者物価指数,賃金及び基礎年金改定率の推移を比較すると,昭和59年度を100とすると,平成14年度においては,生活扶助基準は累積で135.5パーセントに上昇しているのに対し,消費者物価指数(暦年)は116.5パーセ び基礎年金改定率の推移を比較すると,昭和59年度を100とすると,平成14年度においては,生活扶助基準は累積で135.5パーセントに上昇しているのに対し,消費者物価指数(暦年)は116.5パーセント,賃金は131.2パーセントとなっており,生活保護基準の改定率がこれらを上回っている。さらに,平成7年度を100とした場合には,平成14年度は生活扶助基準が104. 3パーセントに上昇しているのに対し,消費者物価指数は99.9パーセント,賃金は98.7パーセントと,共に減少していた(乙16の(6)「説明資料」1頁)。 また,昭和55年度と平成12年度の消費支出の構成を費目別に検討すると,一般世帯,一般低所得世帯(第Ⅰ-10分位),被保護世帯ともに,消費支出に占める食料費の割合(エンゲル係数)が低下していた(乙16の(3)「説明資料」)。 (エ)被保護高齢者世帯の消費実態被保護高齢単身世帯の家計消費の実態を,老齢加算されている世帯(主に70歳以上)と,加算されていない世帯(主に60歳ないし69歳)で比較した場合,老齢加算されている世帯の消費実態が,必ずしも老齢加算が想定する需要を満たすために消費されておらず,貯蓄に回っていたことが分かった。すなわち,両世帯の貯蓄純増額(「預貯金」と「保険掛金」の合計から「預貯金引出」と「保険取金」を差し引いたもの。)を比較してみると,加算されていない世帯の貯蓄純増額は9407円,可処分所得(「実収入」から税金,社会保険料などの「非消費支出」を差し引いた額)に占める割合(平均貯蓄率)は8.4パーセントであった。他方,加算されている世帯の貯蓄純増額は1万4926円,可処分所得に占める割合(平均貯蓄率)は12.1パーセントとなっており,加算されていない世帯よりも5519円高かった。また,翌月へ- 21 - 方,加算されている世帯の貯蓄純増額は1万4926円,可処分所得に占める割合(平均貯蓄率)は12.1パーセントとなっており,加算されていない世帯よりも5519円高かった。また,翌月へ- 21 -の繰越金(月末における世帯の手持ち現金残高)をみると,加算されていない世帯が3万6094円,加算されている世帯が4万7071円となっており,費消されずに翌月に繰り越される手持ち現金に,1万円以上の差があった(乙16の(6)「説明資料」)。 このように,被保護高齢者の消費実態を見ると,老齢加算が,加算が想定される需要を満たすために消費されておらず,少なからず貯蓄等に回っていることが分かった。 イ本件中間取りまとめ在り方専門委員会は,上記の検証を踏まえて検討を行い,本件中間取りまとめに基づく提言を行った。 ウ老齢加算に関する本件保護基準改定厚生労働大臣は,上記の検証及び本件中間取りまとめに基づく提言の結果,70歳以上の高齢者に老齢加算に相当するだけの特別な消費需要があるとは認められず,一般の高齢世帯との比較において,老齢加算のない基準生活費の水準で妥当であり,老齢加算は廃止すべきとの結論に至り,本件保護基準改定をしたのである。このような厚生労働大臣の判断に不合理な点はなく,これが適法なものであることは明らかである。 なお,ここにいう「特別需要」とは,基準生活費では賄えない需要であって,当該加算対象者の最低生活に必要なものをいう。言い換えれば,生活保護の加算制度の必要を裏付ける特別需要とは,基準生活費では賄えない需要であって,かつ,健康で文化的な最低限度の生活に必要なものとして認められるものでなければならない。被告らのいう特別需要とは,老齢加算でいえば,高齢になって生じる需要と高齢になって減少する需要とを総合し,なお,基準生活費で賄えない需要 度の生活に必要なものとして認められるものでなければならない。被告らのいう特別需要とは,老齢加算でいえば,高齢になって生じる需要と高齢になって減少する需要とを総合し,なお,基準生活費で賄えない需要という意味であるから(この特別需要の意味は,母子加算についても同様である。),原告らのように加算に伴って生じる需要のみを強調するのは一面的な見方というべきである。 - 22 -エ厚生労働大臣の保護基準定立行為の適法性厚生労働大臣が保護基準を策定するに際して,社会保障審議会福祉部会など第三者の意見を聴くことは法律上の要件とはされていないから,在り方専門委員会を開催せず,その審議を経ていなかったとしても,この点のみから策定された保護基準が違法となるものではない。 証人bは,老齢加算については,後に引き継ぐべき多くの論点を出したというところまでが本件中間取りまとめの到達点であり,在り方専門委員会は結論を出していないと述べるが,仮にそう評価されるとしても,上記の点に照らせば,そのことのみから,直ちに老齢加算の段階的廃止が違法となるわけではない。厚生労働大臣に裁量権の逸脱,濫用があったかどうかは,厚生労働大臣がその判断の根拠とした資料,すなわち,在り方専門委員会で提出された資料及びそれに基づく判断に合理性があるか否かで判断されるべきであるところ,被告らの上記主張に照らせば,老齢加算の段階的廃止の判断に合理性があることは明らかである。 オまとめ以上のとおり,老齢加算の段階的廃止を内容とする保護基準の変更は,一般低所得高齢者世帯の消費実態を検証した結果,70歳以上の高齢者に老齢加算に相当するだけの特別な消費需要がないことなどが認められたことから,厚生労働大臣がその裁量の範囲内において実施したものであり,これが裁量権の濫用に当たらないことは明らかであ 歳以上の高齢者に老齢加算に相当するだけの特別な消費需要がないことなどが認められたことから,厚生労働大臣がその裁量の範囲内において実施したものであり,これが裁量権の濫用に当たらないことは明らかである。 カ原告らの主張に対する反論(ア)消費支出額の比較検討について原告らは,最低限度の生活とは要保護者の需要に基づいて定めなければならないものであり,消費支出額の比較に根拠を求めるのは,必要な高齢者の需要の中身を十分に検討していないと主張する。 しかし,消費とは,生活の必要を満たすために財やサービスを購入し,- 23 -消耗することをいい,生活水準は消費に依存する程度が高いと考えられることからすれば,消費支出額によって需要を測定することには合理性がある。 したがって,在り方専門委員会の検証方法には何ら問題はなく,それに基づく本件中間取りまとめの結論も妥当なものである。 また,原告らは,「変曲点」の概念を用いて,「変曲点」以下の所得分位においては消費支出は急激に下方へ変曲することが認められているのであるから,消費支出額は生活に必要とされる需要のすべてを反映するものではないと主張する。 しかし,在り方専門委員会は,変曲点の概念によって保護基準の水準の妥当性を判断したのではないから,原告らの上記主張は在り方専門委員会の結論を否定する根拠たり得ない。 また,原告らの主張する「最低生活以下の生活を余儀なくされている層」の存在は何ら具体的に立証されていない。そもそも水準均衡方式を採用し,一般国民の消費水準との格差縮小を達成している現在の生活保護基準の下では,保護基準以下の消費支出を示す低所得者層が,最低生活以下の生活を余儀なくされている「変曲点」以下の低所得分位とも限らないのであるから,原告らの主張は失当である。 (イ)高齢者世帯は消費支出が抑制 ,保護基準以下の消費支出を示す低所得者層が,最低生活以下の生活を余儀なくされている「変曲点」以下の低所得分位とも限らないのであるから,原告らの主張は失当である。 (イ)高齢者世帯は消費支出が抑制されているとの主張について原告らは,高齢者世帯の多くは家計収支が赤字であり,貯蓄を取り崩して生活している実態にあることから,消費支出が抑制されており,消費支出額を単純に比較しただけで需要の有無を結論付けることは不合理であると主張する。 しかし,高齢者世帯の多くは無職世帯であり,稼働年齢期の労働で得た所得を引退後の消費を補償するために貯蓄し,それを引退後に取り崩して生活することは高齢者世帯にとって一般的である(甲5)。また,- 24 -消費支出グループ別の世帯類型別の構成比でも,高齢者世帯は,どの消費支出区分にも20パーセント以上の占有率があり,消費支出の抑制はないことは明らかである(乙16の(2)「社会生活に関する調査結果社会保障生計調査結果」の概要報告書37頁)。 したがって,原告らの上記主張もまた失当である。 (ウ)低所得者層に着目したことについて原告らは,現在の生活保護基準の改定方式である水準均衡方式が,一般国民の消費水準に準拠していることを根拠に,生活扶助基準の評価についても,低所得者層との比較ではなく,国民一般すなわち平均値により比較すべきであると主張する。 しかし,基準改定方式である水準均衡方式は,国民生活水準の伸びに準拠して改定率を算定する方式であるのに対し,生活扶助基準の妥当性については,保護基準が最低生活需要を満たしつつこれをこえてはならないとされているものであることから,過去から一貫して,一般低所得世帯の消費実態や生活様式に着目して検証が行われてきたのである(乙8)。 このように基準改定方式と生活扶助基準の妥当性の検 えてはならないとされているものであることから,過去から一貫して,一般低所得世帯の消費実態や生活様式に着目して検証が行われてきたのである(乙8)。 このように基準改定方式と生活扶助基準の妥当性の検証方法は,おのずと異なるものであり,生活扶助基準の改定方式である水準均衡方式がマクロ経済指標である民間最終消費支出の伸びに準拠しているからといって,生活扶助基準の妥当性を検証するに当たって一般国民の平均像で生活水準をとらえなければならないとする原告らの上記主張には,論理の飛躍があり,基準改定方式である水準均衡方式と,基準の妥当性の検証方法を混同したものであり,失当である。 また,原告らは,生活保護の捕捉率は20パーセント程度にすぎず,膨大な漏給層を含む低所得者層の消費動向を参考にすることは,あるべき保護基準を定立する上で極めて危険であり不合理であると主張する。 - 25 -しかし,生活保護の捕捉率については,低所得世帯の定義や前提条件が異なるため,研究者によって結果は様々である。また,捕捉率が低いのは,①所得が低くても最低生活費をこえる資産がある場合や稼働能力を活用しない場合等は保護の受給要件を満たさないこと(乙34),②保護基準が高く設定されているために低所得世帯率が過大に推計され,捕捉率が低くなっているにすぎないこと(乙34)が主な理由であり,膨大な漏給層が存在するためではない。したがって,原告らの主張は根拠が不十分であり,妥当でない。 現在の生活保護基準は,生存に必要な栄養所要量を満たすぎりぎりの絶対貧困水準の時代を脱して,一般国民の生活水準との比較において定める相対的最低生活水準の考え方に立って算定されており,この考え方に立てば,妥当な生活保護基準とは,一般国民の生活水準との均衡が取れた最低限度のものでなければならない。したがって との比較において定める相対的最低生活水準の考え方に立って算定されており,この考え方に立てば,妥当な生活保護基準とは,一般国民の生活水準との均衡が取れた最低限度のものでなければならない。したがって,一般低所得世帯の消費支出との比較において,公平,妥当な基準を設定することが求められており,老齢加算の検証においても,一般低所得高齢者世帯の消費実態を基に検討したことには合理的な理由がある。 (エ)従来の検証方法と異なるとの主張について原告らは,今回の在り方専門委員会における検証方法が昭和55年中間的取りまとめ及び昭和58年意見具申における検証方法とは異なることから,その検証方法は不適切,不十分であったと主張する。 しかし,昭和58年から20年が経過し,右肩上がりの経済成長が終わり,一般国民の賃金や所得についても減少傾向にあり,消費者物価が下落するデフレ状態にあるなど,昭和58年当時とは社会経済情勢が著しく異なる。このような国民生活を取り巻く状況の変化に応じた加算の在り方が求められていたところ,在り方専門委員会は,現在において合理的と考えられる手法により検証を行ったのであって,20年前と同一- 26 -の手法による検証を採用しなかったからといって,その検証結果に合理性がないことにはならない。 (オ)全国消費実態調査の特別集計について原告らは,被告らが今回の検証の根拠としている全国消費実態調査の特別集計が信用し難い旨主張する。 しかし,全国消費実態調査の特別集計は,厚生労働大臣が,統計法15条2項に基づいて,総務大臣の承認を得て(乙20の1),総務省の「家計調査」及び「全国消費実態調査」(乙35)を入手し,収入・支出を世帯属性別,収入階級別に集計したものであり,その信用性に疑問はない。 (カ)原告らの全国消費実態調査の独自集計結果につ 務省の「家計調査」及び「全国消費実態調査」(乙35)を入手し,収入・支出を世帯属性別,収入階級別に集計したものであり,その信用性に疑問はない。 (カ)原告らの全国消費実態調査の独自集計結果について原告らは,平成11年全国消費実態調査結果表第26表(甲5)を独自に集計した結果が,在り方専門委員会の第4回委員会に提出された説明資料(乙10)の結果と異なり,「70歳ないし74歳」の消費支出が「65歳ないし69歳」のそれよりも高いことから,老齢加算廃止の合理的理由は検証できていないと主張する。 しかし,生活扶助基準における60歳以上の第1類費の年齢区分は「60歳ないし69歳」と「70歳以上」の2区分であり,老齢加算も「70歳以上」が対象であるから,「65歳ないし69歳」と「70歳ないし74歳」のみを取り上げて比較することには,合理的理由がない。 また,「70歳ないし74歳」の消費支出が「65歳ないし69歳」よりも高いのは,「65歳ないし69歳」の可処分所得が14万7329円であるのに対し,「70歳ないし74歳」のそれは16万0882円と大きいことが影響していると考えられる。すなわち,可処分所得が大きい者の消費支出が高くなるのは当然であり,「70歳ないし74歳」の消費支出が高くなっているのは,これが原因と考えられる。 - 27 -このため,加齢に伴う消費支出差の分析を行うには,収入階級別に分析する必要があり,在り方専門委員会へは,収入階級別に分析した結果が特別集計として提出されているのである。したがって,そのような処理をしていない原告らの集計が在り方専門委員会へ提出した特別集計の結果と内容が異なることは当然であり,異なっていたからといって,何ら老齢加算廃止の合理的理由が検証できていないことにはならない。 (キ)特別需要の未充足について り方専門委員会へ提出した特別集計の結果と内容が異なることは当然であり,異なっていたからといって,何ら老齢加算廃止の合理的理由が検証できていないことにはならない。 (キ)特別需要の未充足について原告らは,老齢加算として定額(1万7930円)を給付するほどの特別需要が統計上認められないとしても,個別の特別需要を持っている高齢生活保護受給者が存在することは否定できない以上,定額給付としての老齢加算を廃止したとしても,高齢者の特別需要を個別に認定し,給付すべきであると主張する。 しかし,老齢加算を除いた場合でも,生活扶助基準額(7万1190円)が一般低所得世帯の生活扶助相当消費支出額(第Ⅰ-5分位(6万5843円)及び第Ⅰ-10分位(6万2277円))を上回っており,老齢加算に相当する特別需要がないことが検証されたのであり,特別需要があることを前提にした原告らの主張は失当である。 (ク)高齢者に対する第1類費の抑制について原告らは,70歳以上の高齢者については,昭和59年以降,他の年齢層との比較で,第1類費の伸びが著しく抑えられてきており,それが老齢加算の存在によるものであると主張する。 しかし,70歳以上の第1類費の伸びが他の年齢区分と比べて低いのは,平成元年度に第1類費に70歳以上の年齢区分が創設されたことによるものである。すなわち,60歳以上の第1類費の年齢区分は,当時「60歳ないし64歳」「65歳以上」の2区分であったが,70歳以上の一般高齢者世帯の第1類相当の消費支出額が69歳以下のそれと比- 28 -較して低かったこと,また,第1類費基準設定の基礎となっている公衆衛生審議会の年齢別栄養所要量が60歳代より70歳代の方が低いことが認められたことから,この区分を「60歳ないし69歳」「70歳以上」に改め,見直しに当たっては, 類費基準設定の基礎となっている公衆衛生審議会の年齢別栄養所要量が60歳代より70歳代の方が低いことが認められたことから,この区分を「60歳ないし69歳」「70歳以上」に改め,見直しに当たっては,激変緩和のため「70歳以上」の改定率を抑制することによって,徐々に年齢階級別に適正な水準の確保を図ろうとしたのである(乙36)。伸び率に差があるのはこのためであり,老齢加算が存在することによって70歳以上の第1類費の伸びが著しく抑えられてきたとの原告らの主張は失当である。 (ケ)生活保護制度見直し作業の経過について原告らは,社会福祉基礎構造改革法案に対する国会の附帯決議,平成15年の財政制度等審議会等において,生活扶助基準・加算の引下げ,廃止等の検討が必要とされていたことをもって,在り方専門委員会には最初から削減・廃止の結論ありきの経過があったと主張する。 しかし,在り方専門委員会の審議過程においては,客観的な資料に基づき公正な議論が行われており,原告らの主張するような結論ありきの審議過程ではなかった。上記国会附帯決議や財政制度等審議会の指摘等は生活保護制度見直しの検討を行うこととなった背景の一つであるが,それ以上のものではなく,これらのことのみをもって,廃止の結論ありきで審議がなされたとする原告らの主張には根拠がない。 (コ)在り方専門委員会における老齢加算の検討経過について原告らは,在り方専門委員会は,老齢加算の廃止について反対する意見をほとんど黙殺する形で議事が進められ,老齢加算の廃止を明言している委員はいないか,いたとしても極めて少数であったにもかかわらず,本件中間取りまとめは,老齢加算の廃止の方向を原則とする内容になっていると主張する。 しかし,在り方専門委員会では,老齢加算を減額すべきだとする意見- 29 -や,老齢加算に ったにもかかわらず,本件中間取りまとめは,老齢加算の廃止の方向を原則とする内容になっていると主張する。 しかし,在り方専門委員会では,老齢加算を減額すべきだとする意見- 29 -や,老齢加算には批判の声が大きいとの意見,老齢加算の存在意義に疑問を呈する意見などが述べられた。また本件中間取りまとめは,委員全員の合意を得て取りまとめられたものである(甲2)。 本件中間取りまとめには反対意見が集約されていないとする原告らの主張は,一部の委員による反対意見のみを取り上げて,賛成意見があったことを無視したものであり,事実に反するものであるから,失当である。 (サ)本件中間取りまとめにおけるただし書について原告らは,本件中間取りまとめにおけるただし書(「ただし,高齢者世帯の社会生活に必要な費用に配慮して,生活保護基準の体系の中で高齢者世帯の最低生活水準が維持されるよう引き続き検討する必要がある。」)の内容が老齢加算の削減又は廃止に当たっての条件であったのであり,それにもかかわらず,厚生労働大臣は,その検討について何ら責任を果たさないまま,老齢加算の削減・廃止を行ったと主張する。 しかし,本件中間取りまとめは,上記ただし書の内容を廃止の前提条件とするような構成にはなっておらず,上記ただし書の内容は,廃止を前提としつつ,その後に必要と考えられる検討事項について付言したものと解せられる。現に,平成16年度報告(乙1)において,今後の高齢者の単身世帯基準設定の検討等について提言がなされているように,本件中間取りまとめにおける様々な提言については,順次行政庁内部において検討が行われるものであるが,いつどのように実施するかは,厚生労働大臣の合目的的裁量権の範囲内というべきである。 したがって,本件中間取りまとめにおけるただし書の内容が老齢加算廃止の条 内部において検討が行われるものであるが,いつどのように実施するかは,厚生労働大臣の合目的的裁量権の範囲内というべきである。 したがって,本件中間取りまとめにおけるただし書の内容が老齢加算廃止の条件であるとする原告らの上記主張は,解釈を誤ったものであり,失当である。 (シ)告示前の処分であること- 30 -本件各決定のうち,①原告Sに対する平成17年4月1日付け,②原告T及び同Uに対する平成16年3月26日付け及び平成17年4月1日付け,③原告V及び同Wに対する平成17年4月1日付けの各保護変更決定を除いた決定が,告示前になされたものであることは原告らの主張のとおりであるが,これは,以下の事情によるものである。 すなわち,生活保護は,要保護者に対して保護を行い,その最低限度の生活を保障することを目的としていることから,生活扶助のための保護金品は,原則として金銭給付により,1か月分以内を限度として前渡しすることとされている(法31条1項,2項)。このため,保護の実施機関は,おおむね毎月1日ないし5日を保護費の定例支給日と定めており,4月分の保護費の支給を適切に行うためには,前月に支給決定のための準備を行う必要がある。そして,保護の実施機関は,保護の変更を必要とすると認めるときは,速やかに職権により保護の変更決定を行い,これを被保護者に対し書面をもって通知しなければならないとされており(法25条2項,24条2項),告示をまって保護の変更手続を行っていては,支給事務に支障を来たすおそれがある。このため,厚生労働省においては,例年,3月初旬に全国生活保護担当係長会議を開催し,全国の自治体に対して次年度の基準改定告示案を示すとともに,改定の趣旨及び留意点等について周知している。本件各決定は,この厚生労働省が示した告示案に基づいてなされた 国生活保護担当係長会議を開催し,全国の自治体に対して次年度の基準改定告示案を示すとともに,改定の趣旨及び留意点等について周知している。本件各決定は,この厚生労働省が示した告示案に基づいてなされたものである。 とすれば,本件各決定のうち告示前になされた決定についても,適法であることに変わりはない。 (2)原告らの主張老齢加算を削減・廃止した厚生労働大臣の生活保護基準の変更は,以下の理由により,違憲・違法,若しくは不合理な行政措置であるから,これに基づいてなされた原告らに対する本件各決定は,法56条に違反する「正当な- 31 -理由」のない不利益変更処分である。 ア検証手法の不合理性(ア)消費支出額により需要の有無を判断することの不合理性a消費支出額は収入に制約されること被告らは,単身無職の一般低所得世帯の消費支出額について,70歳以上の者と60歳から69歳の者との間で比較すると,前者の消費支出額の方が少ないとの検証により,70歳以上の高齢者に老齢加算に相当するだけの特別な消費需要がないとして,老齢加算の廃止を正当化している。 しかし,単身無職の一般低所得世帯のうちの70歳以上の者と60歳から69歳の者との消費支出額を単純に比較するという手法は,収入が少なくなれば,実際には「需要」があるにもかかわらず,消費「支出」を抑制して生活をせざるを得なくなるという当然の前提を考慮に入れないものであり,高齢者の最低生活を維持するために必要な「需要」の検討方法としては全く不十分なものである。 すなわち,収入階級ごとの消費支出を比較すると,所得の減少に伴って消費支出は緩やかに減少するものであるが,ある所得階層以下になると,それまでの緩やかな低下傾向と離れて,急激に下方へ変曲する所得分位があることが認められる。これを「変曲点」という。社会 少に伴って消費支出は緩やかに減少するものであるが,ある所得階層以下になると,それまでの緩やかな低下傾向と離れて,急激に下方へ変曲する所得分位があることが認められる。これを「変曲点」という。社会的に必要不可欠な消費水準があると仮定すると,所得が減少しても,この消費水準を維持しようとするが,ある水準の所得を超えて低くなると上記消費水準を維持できなくなり,急激に消費水準が低下するため,このような「変曲点」が生じる。この「変曲点」を境として,それ以下の消費水準では最低生活を営むことが難しくなるものと考えられる。このように,一般的に消費支出は収入に制約され,さらに,「変曲点」以下の所得分位においては消費支出は急激に下方へ変曲す- 32 -ることが認められているのであり,消費支出額は生活に必要とされる需要のすべてを反映するものではない。 よって,老齢加算制度の必要性・合理性を検討するには,高齢者に具体的にどのような需要があるのか,その内容はどのようなものであり,その金額をどのように考えるかといった分析が不可欠であり,消費「支出」額を単純に比較しただけで需要の有無を結論付けることは明らかに誤りである。 b高齢者世帯における消費支出の抑制高齢者世帯(65歳以上の者の1人のみの世帯の場合)の主な収入源は,「公的な年金」と答えている世帯が94.7パーセントにのぼり,次いで「預貯金の引出し」としている世帯も16.0パーセントにのぼる。これに対し「就業による収入」と答えている世帯は13. 4パーセントにすぎず,高齢者世帯が年金や預貯金の切り崩しによって生活している実態がある(甲25)。 また,補正実収入(世帯人員による影響を除外して比較分析を行うため,等価スケールにより3人世帯に補正した実収入のこと)の下位の変曲点(17万円)以下の収入しかないグル している実態がある(甲25)。 また,補正実収入(世帯人員による影響を除外して比較分析を行うため,等価スケールにより3人世帯に補正した実収入のこと)の下位の変曲点(17万円)以下の収入しかないグループの約7割が赤字になっており,特に高齢者世帯は76.6パーセントが赤字となっている。高齢者世帯は,補正実収入が17万円未満のグループの43.5パーセントを占めるのに対し,補正消費支出が16万円未満のグループの27.8パーセントにとどまっていることから,貯蓄の取崩し等により生活水準を維持していることがうかがえる(乙16の(2))。 さらに,第Ⅰ-5分位における60歳ないし69歳までの単身世帯のエンゲル係数と70歳以上の単身世帯のエンゲル係数を比較すると,後者のエンゲル係数が前者のそれよりも5.6パーセントも上回っている。同様に,第Ⅰ-10分位においても,後者のエンゲル係数が前- 33 -者のそれより4.2パーセント上回っている(乙16の(4))。エンゲル係数は,家計の消費支出に占める飲食費の割合であり,一般にこの係数が高いほど生活水準は低いとされる。このように70歳以上の高齢者単身世帯のエンゲル係数が60歳ないし69歳のそれより高いということは,70歳以上の高齢者単身世帯は,食費以外の生活費は必要があっても支出できないという余裕のない生活を送っているということを表している。 以上の高齢者の家計の実態を踏まえれば,消費支出額を単純に比較しただけで,需要の有無を結論付けることは,より一層不合理といえる。 (イ)低所得高齢者世帯を比較することの不合理性a水準均衡方式から逸脱していること被告らは,70歳以上の者と60歳ないし69歳の者との消費支出額を比較するに当たり,第Ⅰ-10分位や第Ⅰ-5分位の低所得高齢者世帯との比較を行った検証に基づ 性a水準均衡方式から逸脱していること被告らは,70歳以上の者と60歳ないし69歳の者との消費支出額を比較するに当たり,第Ⅰ-10分位や第Ⅰ-5分位の低所得高齢者世帯との比較を行った検証に基づく老齢加算の廃止が合理的であると主張する。 しかし,現行の生活保護基準の定め方である水準均衡方式は,日本国全体の個人消費が増える見通しならば生活保護基準も上昇させるという仕組みであり,低所得者の消費水準に合わせるとの考えはない。 仮に低所得者との消費水準との間で調整を図ることにするなら,その合理性,問題点等の検討が不可欠であるが,それらの検討は全くなされていない。 したがって,水準均衡方式が,一般国民の消費水準に準拠するものであることからすれば,生活扶助基準の評価についても,低所得者層との比較ではなく,国民一般すなわち平均値により比較すべきであり,低所得高齢者世帯における消費支出を比較することは水準均衡方式か- 34 -ら逸脱するものであり,妥当でない。 b低所得世帯の実態被告らは,第Ⅰ-10分位や第Ⅰ-5分位の階層の消費実態に着目した検証結果に基づく老齢加算廃止の合理性を主張する。 しかし,今日の日本においては貧困世帯の生活保護の捕捉率が低く,生活保護基準より低い収入しかない者の人口は,生活保護を受けている人の5倍から20倍と推定されており,最低限度の生活を下回る収入しかないにもかかわらず生活保護を受けていないという膨大な漏給層が存在する実態がある。上記階層の人々の中にも,このように最低限度の生活を下回る収入しかないにもかかわらず生活保護を受けていない者は多く含まれているのであり,彼らは必要な需要があるにもかかわらず,生活保護を受けていないため,消費支出額が急激に低下しているのである。このような消費支出の低下に合わせて生活保護基準を ていない者は多く含まれているのであり,彼らは必要な需要があるにもかかわらず,生活保護を受けていないため,消費支出額が急激に低下しているのである。このような消費支出の低下に合わせて生活保護基準を決めようとすると,生活保護基準も際限なく下がっていく危険性があるのであるから,低所得世帯の消費実態に着目して老齢加算の廃止を決めることは極めて不合理である。 (ウ)消費支出額全体により特別需要の存否を判断することの不合理性a各種加算の保護基準の中での位置付け各種加算は,保護基準の中において,基準生活費では配慮されていない個別的な特別需要を填補することを目的とするものである。したがって,加算の必要性・合理性の有無は,基準生活費において配慮されている経常的に生じる一般需要とは異なる,あるいは,それを超える特別需要の存否及び程度によって判断されるべきである。そして,それは,加算対象世帯の消費構造その他,加算対象世帯の生活実態を検証することによって初めて判断可能なのであり,加算対象世帯と非対象世帯の消費支出額全体を単純に比較することのみによって直ちに- 35 -判断し得るものではない。 b従来の検証方法と今回の検証方法昭和55年中間的取りまとめ及び昭和58年意見具申に至る検証過程においては,単に老齢加算対象世帯と非対象世帯の消費支出額全体の比較を行うのではなく,高齢者世帯の消費支出について各消費費目の構成比を算出した上で他の年齢層と各消費費目ごとの比較を行うなど,消費構造の比較検討を行っており,その結果に基づき,それぞれ高齢者の特別需要の存否と老齢加算の必要性・合理性について確認を行っている(甲26,27,乙7,8)。すなわち,消費構造の比較検討の結果こそが,老齢加算制度の合理性を基礎付ける事情なのである。 他方,今回の老齢加算廃止措置 齢加算の必要性・合理性について確認を行っている(甲26,27,乙7,8)。すなわち,消費構造の比較検討の結果こそが,老齢加算制度の合理性を基礎付ける事情なのである。 他方,今回の老齢加算廃止措置に至る検証過程においては,消費構造の比較検討が行われた形跡は全く見受けられない。つまり,老齢加算制度の合理性を基礎付けていた事情について全く検証が行われていないのである。 このように,それまで老齢加算制度の合理性を基礎付ける事情であった消費構造の比較検討を行わず,単に老齢加算対象世帯と非対象世帯の消費支出額との比較検討という,それまで行っていなかった検討方法を用い,その検討のみで,老齢加算廃止が国民の所得・生活水準の変化に伴う保護基準の変更であるとする被告らの主張は,全く根拠を欠くものである。 (エ)70歳以上の者と60歳以上69歳以下の者とを比較することの不合理性被告らは,70歳以上の者と60歳以上69歳以下の者とを比較する理由について,「老齢加算は原則70歳以上の者に算定されるものであるから」と主張する。 - 36 -しかし,老齢加算の対象者が70歳以上の者になったのは,老齢加算制度の創設が70歳以上の高齢者を対象とする老齢福祉年金発足を契機としたという歴史的経緯に基づくものにすぎず,昭和51年に老齢福祉年金との関連性が断ち切られて以降は,老齢加算の支給対象者を70歳以上の者に限定しなければならない理由はない。60歳ないし69歳の者の中にも,老齢加算制度本来の趣旨からすれば,支給対象となるべき,あるいは,支給対象として検討されるべき者が含まれているのであるから,高齢者に特有の生活需要について考える際に,その対象を70歳以上の高齢者に限定する必然性はない。 つまり,60歳ないし69歳の者と70歳以上の者との比較は,同じ特性を持った まれているのであるから,高齢者に特有の生活需要について考える際に,その対象を70歳以上の高齢者に限定する必然性はない。 つまり,60歳ないし69歳の者と70歳以上の者との比較は,同じ特性を持った者同士の比較であり,このような両者を比較して高齢者の特別需要の存否・程度と老齢加算の要否を検討する手法には合理性がないというべきである。 実際に行われた従来の検証方法についてみると,昭和55年中間的取りまとめに至る検討過程においては,60歳ないし64歳,65歳ないし69歳,70歳以上の各年齢層の世帯を「老夫婦世帯」と位置付け,これらの各世帯と一般世帯との間で消費構造の比較検討を行っている(甲26の(2))。また,昭和58年意見具申に至る検討過程においても,50歳代,60歳ないし64歳,65歳ないし69歳,70歳ないし74歳,75歳以上の5つの年齢層に分けて比較検討が行われている。 このように,従来の検証方法においては,70歳以上の世帯のみならず,60歳ないし64歳,65歳ないし69歳などの世帯も,高齢者の特別需要の存否及び程度を判断する際の検討対象とされていたのであり,70歳以上と60歳ないし69歳の者とに2分して,この2つの年齢層のみの比較検討により老齢加算の要否を判断するといった粗雑な手法は取られていない。 - 37 -イ検証資料の不合理性(ア)特別集計の不透明性被告らは,老齢加算廃止決定の根拠である検証資料のデータについて,「全国消費実態調査の特別集計」によるとしている。 しかし,その「特別集計」なるものの信憑性・信頼性は何ら担保されていない。まず,「特別集計」の基となったサンプルデータが公表されていないため,その集計の過程が検証できない。また,サンプルデータの数も分からないため,それから有意な集計結果が導かれるか否かも検証で いない。まず,「特別集計」の基となったサンプルデータが公表されていないため,その集計の過程が検証できない。また,サンプルデータの数も分からないため,それから有意な集計結果が導かれるか否かも検証できない。また「特別集計」は「生活扶助相当消費支出額」なるものの比較であるところ,「生活扶助相当消費支出額」とは,「消費支出額の全体から生活保護制度中の生活扶助以外の扶助に該当するもの」,「生活保護制度で基本的に認められない支出に該当するもの」,「被保護世帯は免除されているもの」,「最低生活費の範疇になじまないもの」を除いたものであるとされているが,これら控除された支出が妥当な控除であったかどうかは検証できない。とりわけ「最低生活費の範疇になじまないもの」との概念自体が余りにも曖昧である。 (イ)基礎資料との不整合老齢加算廃止決定の根拠となった検証資料の基礎資料として明示されている「平成11年全国消費実態調査・高齢者世帯結果表」の第26表(甲5)そのものの数字を見てみると,次のような疑問が生じる。 a老齢加算廃止決定の根拠となった検証資料は,「全国,平均」の①60歳ないし69歳までの無職世帯の月額平均消費支出は16万7588円であるのに対し,②70歳以上の無職世帯の月額平均消費支出は14万2714円であり,70歳以上の世帯の方が消費支出が少なくなっている。 ところが,前記全国消費実態調査・高齢者世帯結果表の第26表に- 38 -よると,単身・無職世帯の月額消費支出額は,①65歳ないし69歳の平均が15万6981円,②70歳ないし74歳の平均が16万1600円であり,70歳ないし74歳の世帯は,65歳ないし69歳の世帯よりも月額世帯消費支出が多い結果となっている。 b前記全国消費実態調査・高齢者世帯結果表の第26表のデータを基に,「特 6万1600円であり,70歳ないし74歳の世帯は,65歳ないし69歳の世帯よりも月額世帯消費支出が多い結果となっている。 b前記全国消費実態調査・高齢者世帯結果表の第26表のデータを基に,「特別集計」になるべく近い方法で被告らの主張する「消費支出の比較」を試みると,65歳ないし69歳が13万3151円,70歳ないし74歳が14万5660円であり,後者が前者を上回っている結果となり,被告らが主張するような老齢加算廃止の合理的理由を検証することができなかった。 以上からすれば,老齢加算廃止決定の根拠となった検証資料は,データそれ自体にも信用性に疑問があり,老齢加算廃止の合理的根拠にはなり得ないというべきである。 ウ基準生活費の見直しなき老齢加算廃止の不合理性(ア)特別需要の未充足仮に,老齢加算として定額(1万7930円)を給付するほどの特別需要が統計上認められないとしても,個別に特別需要を持っている高齢生活保護受給者が存在することは否定できない。そうであるならば,定額給付としての老齢加算を廃止したとしても,高齢者の特別需要を個別に認定し,給付すべきである。 ところが,今回の老齢加算廃止措置は,こうした個別の認定,給付の措置を講じることなく行われたものであり,そのために個別の特別需要が充足されない事態が生じている。これは,法8条2項,9条に反する疑いがある。 (イ)最低生活費の未充足a高齢者に対する第1類費の著しい抑制- 39 -老齢加算は,昭和59年以降,基準生活費1類相当の消費者物価指数の伸び率による改定に改められた。他方,70歳以上の高齢者については,昭和59年以降,他の年齢層,とりわけ青壮年層との対比で,次のとおり,第1類費基準額の伸びが著しく低く抑えられてきた(甲20)。 基準額(円)伸び率昭和5 0歳以上の高齢者については,昭和59年以降,他の年齢層,とりわけ青壮年層との対比で,次のとおり,第1類費基準額の伸びが著しく低く抑えられてきた(甲20)。 基準額(円)伸び率昭和59年平成元年平成17年59年比元年比4歳子21,43023,36026,350123%113%29歳女31,13034,64040,270129%116%33歳男32,43034,64040,270124%116%70歳男30,44030,87032,340106%105%70歳女29,26030,87032,340111%105%このように70歳以上の高齢者について第1類費が抑制されていたのは,老齢加算が存在し,これが高齢者の特別需要を含めた生活費に充てられてきたためである。すなわち,老齢加算は特別需要を充足するためのものであるが,この特別需要の中には飲食物費や被服費等の第1類費によって充足されるべき需要と連続性を有するものが含まれていたため,70歳以上の高齢者については,老齢加算が存在する限りにおいて,他の年齢層と比較し,第1類費の増加を抑制することができたのである。言い換えれば,老齢加算は「高齢者の第1類費を補完する役割」を果たしてきたのであり,70歳以上の高齢者の「健康で文化的な最低限度の生活」は,第1類費と老齢加算とが合算された金額によって初めて守られてきたのである。 したがって,老齢加算廃止は,70歳以上の高齢者の最低生活費が充足されていない事態をもたらすものであり,この点で,憲法25条1項,生活保護法3条に反する疑いがある。 - 40 -b単身高齢者世帯に対する第1類費,第2類費基準見直しの必要性本件中間取りまとめでは,単身者の生活扶助基準について,「被保護世帯の 法25条1項,生活保護法3条に反する疑いがある。 - 40 -b単身高齢者世帯に対する第1類費,第2類費基準見直しの必要性本件中間取りまとめでは,単身者の生活扶助基準について,「被保護世帯の約7割が単身世帯であること,単身世帯における第1類費と第2類費については一般世帯の消費実態からみて,これらを区分する実質的意味が乏しいことを踏まえ,単身世帯については,一般低所得者世帯との均衡を踏まえて別途の生活扶助基準を設定することについて検討することが望ましい。」とされ,第1類費と第2類費の基準見直しの必要性が指摘されている(乙2)。このように,単身世帯においては,第1類費と第2類費の基準見直しの必要があるところ,高齢者被保護世帯においては,その約9割が単身世帯であることから,上記見直しの必要性はとりわけ高いといえる。 上記のとおり,第1類費と第2類費の基準の見直しの必要性が指摘されていながら,「老齢加算がなくとも,第1類費と第2類費を合算すれば,最低生活費として十分な額になる。」との論理が果たして正しいか否かについて何ら検証を行うことがないまま,今回の老齢加算廃止は行われたものであり,その不合理性は明らかである。 c在り方専門委員会でも,老齢加算の廃止に対する異論・疑問や,老齢加算を廃止するとしても代替措置が講じられる必要があるとの意見が委員から出されており,上記意見を受け,本件中間取りまとめにおいても,老齢加算そのものについては廃止の方向で見直すべきとされたものの,高齢者世帯の社会生活に必要な費用に配慮して,生活保護基準の体系の中で高齢者世帯の最低生活水準が維持されるよう引き続き検討する必要があるとされた。ところが,このような本件中間取りまとめに反して,生活保護基準体系の中で高齢者世帯の最低生活が維持されるような代替案の検討を何 世帯の最低生活水準が維持されるよう引き続き検討する必要があるとされた。ところが,このような本件中間取りまとめに反して,生活保護基準体系の中で高齢者世帯の最低生活が維持されるような代替案の検討を何ら行うことなく,今回の老齢加算の減額・廃止は強行されたのであり,この点からもその不合理性は明ら- 41 -かである。 エ本件中間取りまとめの問題点(ア)在り方専門委員会設置に至る経緯の問題点財政制度等審議会は,平成15年6月9日,「平成16年度予算編成の基本的考え方について」(甲29)において,社会保障関係費の抑制を図ることが我が国財政上最大の構造問題であるとの見解を示し,平成16年度の予算編成に当たり,制度改革による公的給付の抑制を行うべきであるとした。その上で,生活保護制度のうち老齢加算については廃止に向けた検討が必要であるとの建議を行った。 内閣は,上記建議を受けて,同月27日,「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003(骨太の方針2003)」(甲30)を閣議決定した。「骨太の方針2003」にも,上記建議と同様,社会保障費の抑制を「財政上の最大の問題」と位置付け,生活保護制度についても老齢加算の見直しの方針を示した。 そして,在り方専門委員会の第1回委員会で各委員に配付された資料にも上記建議や「骨太の方針2003」が明記されており,各委員はこれらを意識した上で審議を行わざるを得なかった。 さらに,上記建議や「骨太の方針2003」は,平成16年度予算編成の考え方・方針とされていたため,在り方専門委員会は,平成16年度予算編成に間に合うように,速やかに老齢加算廃止の提言を行うことが求められており,検討のための十分な時間が与えられていなかった。 (イ)十分な議論がなされていなかったこと在り方専門委員会は,平成15年8月6日から うように,速やかに老齢加算廃止の提言を行うことが求められており,検討のための十分な時間が与えられていなかった。 (イ)十分な議論がなされていなかったこと在り方専門委員会は,平成15年8月6日から平成16年12月15日まで合計18回の委員会が開かれたが,老齢加算の廃止について実質的な議論が行われたのは,第4回及び第5回委員会のみであった。そして,第6回委員会では,事務局作成の「中間取りまとめ(案)」が示さ- 42 -れた。 このように,本件中間取りまとめの原案が作成されるまでに,老齢加算の廃止について実質的な議論がなされた会合は2回にすぎないのであり,このような経過を見ても,本件中間取りまとめが在り方専門委員会における十分な議論の結果に基づいて作成されたものでないことは明らかである。 (ウ)本件中間取りまとめの内容は在り方専門委員会の意見集約によるものとはいい難いこと在り方専門委員会の第4,第5及び第6回委員会においては,老齢加算に相当する特別需要について配慮すべきであるとの意見やこれを廃止することに反対する意見が出されており,本件中間取りまとめにある,「現行の老齢加算に相当するだけの特別な需要があるとは認められない」,「廃止の方向で見直すべきである」との提言は,在り方専門委員会の意見を集約したものとはいえない。 (エ)老齢加算廃止方針の既成事実化「中間取りまとめ(案)」に対しては,第6回委員会において,各委員からの批判,反対意見が続出し,修正を余儀なくされた。 ところが,上記修正が施され,これが在り方専門委員会に示される前の平成15年12月5日には,老齢加算の見直しを含む「平成16年度予算編成の基本方針」が閣議決定され(甲31),修正がなされた本件中間取りまとめが在り方専門委員会に示されたのは,上記閣議決定後の平成16年 5年12月5日には,老齢加算の見直しを含む「平成16年度予算編成の基本方針」が閣議決定され(甲31),修正がなされた本件中間取りまとめが在り方専門委員会に示されたのは,上記閣議決定後の平成16年1月27日に開催された第7回委員会においてであった(甲2の7)。 このように,修正された本件中間取りまとめは事後報告の形で各委員に示され,その修正結果の是非について議論される機会が与えられないまま,在り方専門委員会の提言として確立されてしまったのである。 - 43 -(オ)老齢加算の先行的削減・廃止は本件中間取りまとめの提言に反すること第4回及び第5回委員会においては,高齢者に特有な社会生活に必要な費用等の需要があるとの共通認識のもと,高齢者世帯の最低生活基準をどのようにして維持するかということが中心的に議論されていた。この点について,a委員長が,第4回委員会において,「私の考えは,まず加算を廃止して,その後の対応を考えるという議論ではないと思います。(略)仮に加算としてはなくしてもいいという結論に達したとしても,それは代わりにこういう仕組みを設けるということを,セットで出さざるを得ないと思います。」と述べており,仮に老齢加算を廃止するとしてもこれに対する代償措置をセットで採り,決して老齢加算の削減・廃止のみを行わないことが在り方専門委員会の意見であった。 ところが,「中間取りまとめ(案)」では,そのような議論の経過が全く反映されていなかったため,第6回委員会では,「廃止をするならばそれに当たる代替措置をという形で議論が進められたと記憶しております。ですので,そういうふうに表現上変えていただくという形が,この委員会の中では一番適当ではないかと考えます」との発言など,「中間取りまとめ(案)」を批判し,修正を求める意見が続出した。 その結果 ます。ですので,そういうふうに表現上変えていただくという形が,この委員会の中では一番適当ではないかと考えます」との発言など,「中間取りまとめ(案)」を批判し,修正を求める意見が続出した。 その結果,「中間取りまとめ(案)」に対する修正が行われ,本件中間取りまとめが完成したのである。 なお,老齢加算の削減が実施された後の第14回委員会において,a委員長は,「老齢加算の廃止だけがちょっと先行していますが,これは私としては正直言って大変残念でして」と述べ,先行して老齢加算の削減のみを強行したことを批判し,また,b委員も,その論文において,「専門委員会の提言をもとに老齢加算の縮減・廃止を行うというものであるならば,厚生労働省が実際に行ったことは手順を誤ったものといわ- 44 -ざるを得ない」と批判している。 以上のとおり,仮に老齢加算を廃止するとしても,それと同時に代替措置を講じるということが専門委員会でのぎりぎりの一致点・合意点であり,また,本件中間取りまとめの提言でも求められているところであって,代替措置を講じることなく老齢加算を削減・廃止したこの度の措置は,在り方専門委員会の意見にも,本件中間取りまとめの提言内容にも反している。 オ告示前の処分であること都道府県知事,市長及び社会福祉法に規定する福祉に関する事務所を管理する町村長は,法の定めるところにより保護を決定し,かつ実施しなければならない(法19条)。したがって,本件各決定は,法8条に基づく基準の変更(厚生労働大臣の告示)によって初めて可能となる処分である。 ところが,広島県広島地域事務所長を除く本件各処分庁は,基準が正式な厚生労働大臣の告示によって変更されていないにもかかわらず,後に変更の予定されている基準をもって本件各決定を行っており,明らかに法に違反している。原告らに対 務所長を除く本件各処分庁は,基準が正式な厚生労働大臣の告示によって変更されていないにもかかわらず,後に変更の予定されている基準をもって本件各決定を行っており,明らかに法に違反している。原告らに対する本件各決定と,これに関する告示の年月日は,別紙(7)「原告らに対する処分・告示年月日」の「平成16年4月分保護費決定処分」欄及び「平成17年4月分保護費決定処分」欄にそれぞれ記載のとおりである。 カまとめ(ア)老齢加算廃止措置を正当化する根拠の不存在以上見てきたとおり,被告らが老齢加算廃止措置を正当化する根拠としている「一般低所得高齢者世帯の消費実態を検証した結果」なるものに合理性はなく,「老齢加算制度の合理性を基礎付けていた事情が現在ではほぼ失われている」などとする被告らの主張には根拠がないこと,また,老齢加算を「廃止の方向で見直すべきである」とする本件中間取- 45 -りまとめの提言は,在り方専門委員会での意見を正しく集約したものとは到底言い難いことは明らかである。 したがって,老齢加算廃止措置を正当化し得るような合理的な根拠など存在しない。 (イ)代替措置なき老齢加算の廃止の違憲・違法性仮に老齢加算そのものを廃止する場合でも,それと同時に保護基準全体の見直しその他高齢者世帯の最低生活基準の維持のための代替措置を講じることが不可欠である。 そのような代替措置を講じることなく,老齢加算の廃止のみを行うことは,高齢被保護者の特別需要,最低生活費の未充足をもたらす不合理な措置であり,本件中間取りまとめの提言にも違反する。 (ウ)老齢加算廃止の真の目的このように,被告らが掲げる老齢加算廃止の表面的な理由がことごとく合理的な根拠を欠き,あるいは代替措置さえも講じることなく,あえて廃止したということは,今回の老齢加算廃止措置の真の目 廃止の真の目的このように,被告らが掲げる老齢加算廃止の表面的な理由がことごとく合理的な根拠を欠き,あるいは代替措置さえも講じることなく,あえて廃止したということは,今回の老齢加算廃止措置の真の目的が,社会保障費の抑制にあったことを示している。 すなわち,老齢加算廃止の方針は,平成15年において,既に「平成16年度予算編成の基本方針」としてあらかじめ決定されていたのであり,その後に行われた検証や在り方専門委員会における検討は,ためにする「検証」及び「検討」であったにすぎないのである。 (エ)今回の老齢加算廃止措置の違憲・違法性以上の次第であるから,老齢加算制度を廃止した厚生労働大臣の生活保護基準の変更措置が憲法25条に違反し,また,生活保護法3条,8条等に違反し,少なくとも与えられた裁量権を逸脱・濫用する著しく不合理な行政措置であったことは明白である。 したがって,この基準変更を理由として行われた本件各決定はそれだ- 46 -けで既に違憲・違法というべく,少なくとも「正当な理由」のない不利益変更処分として,生活保護法56条に違反する違法な処分といわざるを得ない。 本案の争点(3)(母子加算廃止の合理性)に関する当事者の主張(1)被告らの主張ア母子加算の水準の妥当性の検証在り方専門委員会は,第4回委員会において,平成11年の総務省全国消費実態調査の特別集計結果を基に,母子世帯の消費支出を所得階層別に集計して,一般勤労母子世帯の生活扶助相当消費支出と被保護母子世帯の生活扶助基準とを比較した。なお,生活扶助基準額については,級地別,年齢階級別に異なることから,一般世帯の実際の所在地及び年齢階級分布によってウェイト付けをして加重平均して算出した。 その結果,第Ⅰ-5分位及び第Ⅰ-10分位階級の低所得層だけでなく,収入階級の中位 年齢階級別に異なることから,一般世帯の実際の所在地及び年齢階級分布によってウェイト付けをして加重平均して算出した。 その結果,第Ⅰ-5分位及び第Ⅰ-10分位階級の低所得層だけでなく,収入階級の中位の階層(第Ⅲ-5分位)と比較しても,なお,①母子加算を加えた被保護世帯の生活扶助基準額は一般母子世帯の消費支出額よりも高いこと,②母子加算を除いた生活扶助基準額は,一般勤労母子世帯の生活扶助相当支出額とおおむね均衡していることが認められた(乙16の(4))。 イ本件中間取りまとめ在り方専門委員会は,本件中間取りまとめにおいて,母子加算制度について「一般低所得母子世帯の消費支出額との比較において,母子加算を加えた被保護母子世帯の生活扶助基準額が高いことが認められる。」「しかしながら,母子加算の見直しについては,これがひとり親世帯等における子供の養育への特別需要に対応していることも踏まえ,ひとり親世帯等の生活実態を把握した上で検討することが必要であり,その際には,ひとり親世帯等に対する自立支援の在り方,勤労控除や他の扶助の在り方,他の- 47 -母子福祉施策等との連携の在り方について議論した結果を踏まえることが適当である。」とした(乙2)。 ウ母子世帯の消費実態(消費特性)の検証在り方専門委員会は,第14回委員会において,母子世帯と母子世帯以外の一般世帯の消費特性の違いを明らかにするため,母子世帯の消費支出額と夫婦子供世帯の消費支出額とを支出科目別に比較検討した。さらに,第17回委員会において,勤労世帯と非勤労世帯の消費特性の違いを明らかにするため,勤労者世帯の消費支出額と勤労者以外の世帯(無職世帯の他に世帯主が会社役員の世帯を含む)の消費支出額とを支出科目別に比較検討した。 その結果,一般勤労母子世帯の消費支出額と一般勤労夫婦子供世帯 ため,勤労者世帯の消費支出額と勤労者以外の世帯(無職世帯の他に世帯主が会社役員の世帯を含む)の消費支出額とを支出科目別に比較検討した。 その結果,一般勤労母子世帯の消費支出額と一般勤労夫婦子供世帯の消費支出額の比較においては,①世帯人員が1人少ないにもかかわらず,食料の消費支出額は同等で「外食」は母子世帯の方が多いこと,被服及び履物の支出額は母子世帯の方が多いことが検証され,②ひとり親世帯に関して,勤労者世帯の消費支出額と勤労者以外世帯の消費支出額との比較においては,勤労者世帯の方が全体の消費支出額が少ないにもかかわらず,外食費,婦人用洋服等に関し勤労世帯の消費支出が多いことが検証された(乙38)。「外食費」や「被服及び履物費」等が多いことは,ひとり親世帯には,子を養育しながら勤労しているが故に生じる追加的な需要があることを示唆している。 エ平成16年度報告以上の検証結果を踏まえ,在り方専門委員会は,平成16年12月15日,平成16年度報告において,「母子加算を加えた被保護母子世帯の生活扶助基準額は一般母子世帯の消費支出額よりも高い。また,母子加算を除いた生活扶助基準額は,一般勤労母子世帯の生活扶助相当消費支出額と概ね均衡している」との結果から,「一般母子世帯の消費水準との比較の- 48 -観点からは,現行の母子加算は必ずしも妥当であるとは言えない。」とし,さらに,「母子加算の見直しの方向性としては,現行の一律・機械的な給付を見直し,ひとり親世帯の親の就労に伴う追加的な消費需要に配慮するとともに,世帯の自立に向けた給付に転換することとし,これに沿って支給要件,支給金額,名称・支給名目等を見直すことが考えられる。」「見直しに当たっては,①子供が大きくなるにつれ,養育にかかる手間が減少し,また子供が家事を行うことが可能になること し,これに沿って支給要件,支給金額,名称・支給名目等を見直すことが考えられる。」「見直しに当たっては,①子供が大きくなるにつれ,養育にかかる手間が減少し,また子供が家事を行うことが可能になることから,就労可能性や就労可能時間が拡大するとともに,勤労しつつ子育てをすることに伴う支出(外食費等)も減少し,世帯としての自立の可能性が増すこと,②(略)生活保護制度において高等学校の就学費用への対応を検討することとすることなど,子供の成長に伴って養育に必要な費用が変化すること(略)をも十分勘案して検討する必要がある。」とした(乙1)。 オ高等学校等就学費の創設在り方専門委員会は,上記平成16年度報告において,生活保護を受給する有子世帯の自立を支援する観点から,高等学校への就学費について生活保護制度で対応することを検討すべきであり,母子加算もその要素を十分勘案して検討する必要があるとした。 これを受け,平成17年度から,高等学校等就学費が創設され,実施されることとなった。高等学校等就学費は,生活保護を受給する有子世帯の自立を支援する観点から創設されたものであるが,これにより高等学校等の就学費用を生活保護制度において支給することが可能となった。 具体的な給付内容及び基準額は次のとおりである。 費目主な内容基準額(平成17年度)基本額学用品費,通学用品費等月額5300円学級費学級費,生徒会費,月額1560円以内PTA会費等- 49 -教材代教科書,副読本的図書等実費支給授業料授業料公立高校授業料相当額入学料入学料公立高校入学料相当額入学考査料入学考査料公立高校入学考査料相当額交通費通学のための交通費実費支給入学準備金学生服,カバン,靴等6万1400円以内カ母子加算の見直し厚生労働大臣は,上記報告及 料相当額入学考査料入学考査料公立高校入学考査料相当額交通費通学のための交通費実費支給入学準備金学生服,カバン,靴等6万1400円以内カ母子加算の見直し厚生労働大臣は,上記報告及び一般勤労母子世帯の消費実態を検証した結果を踏まえて,保護において,新たに高等学校等就学費を支給することとした一方,平成17年4月から,15歳に達した日の翌日以後の最初の4月1日から18歳に達する日以後の最初の3月31日までの期間にある者のみを養育しなければならない場合の母子加算を廃止することとし,ただし,廃止に当たっては3年間をかけて段階的にすることとした。 キ厚生労働大臣の保護基準定立行為の適法性証人bは,母子加算については,検討を続けるべきというのが平成16年度報告の趣旨であり,在り方専門委員会は,何ら結論を出していないと述べるが,仮にそう評価されたとしても,上記7(1)エで述べたとおり,そのことのみから,母子加算の段階的廃止が違法となるものではない。 被告らの上記主張に照らせば,母子加算の段階的廃止の判断に合理性があることは明らかである。 クまとめ以上のとおり,母子加算の一部の年齢層における段階的廃止は,一般勤労母子世帯の消費実態を検証した結果,母子加算に相当するだけの特別な消費需要がないことが認められたこと,このような国民の所得・生活水準の変化や保護において新たに高等学校等就学費を支給することとしたこと等の点からなされた保護基準の変更であり,厚生労働大臣がその裁量の範- 50 -囲内において実施したものといえる。 ケ原告L及び原告Rについて原告らのうち母子加算に関係がある者は原告L及び原告Rであるが,両名は,高等学校就学年齢にある児童を養育する場合の母子加算の見直しに伴い,新たに創設された高等学校等就学費の支給を受けており について原告らのうち母子加算に関係がある者は原告L及び原告Rであるが,両名は,高等学校就学年齢にある児童を養育する場合の母子加算の見直しに伴い,新たに創設された高等学校等就学費の支給を受けており,母子加算の減額分と高等学校等就学費のみに着目すれば,原告Lは6550円の増額,同Rは6250円の増額となっている。 コ原告らの主張に対する反論(ア)従来の検証方法と異なるとの主張について原告らは,在り方専門委員会が昭和58年の生活保護専門分科会と同じ検証方法を採っていないことをもって,在り方専門委員会の検証結果の妥当性を否定する。 たしかに,在り方専門委員会は,昭和58年当時の検証方法と同じ方法による検証を行っていない。 しかし,昭和58年から20年が経過しており,右肩上がりの経済成長が終わり,一般国民の賃金や所得も減少傾向にあり,消費者物価も下落するデフレ状態に陥っているなど,昭和58年当時とは社会経済情勢が著しく異なっている。このような国民生活を取り巻く状況の変化に応じた加算の在り方が求められていたところ,在り方専門委員会においては,全国消費実態調査の特別集計を基に,合理的と考えられる手法により検証を行ったのであって,20年前と同一の手法による検証を採用しなかったからといって,その検証方法に合理性がないということにはならない。 (イ)特別需要の存否等の検討が一切なされていないとの主張について原告らは,夫婦子供世帯の消費支出額を母子世帯の消費支出額に引き当て,夫婦子供世帯との比較において,母子世帯の消費構造の割合によ- 51 -る特別需要額の算出を行うべきであるところ,それが一切行われていないと主張する。 しかし,前記のとおり,在り方専門委員会では,夫婦子供世帯の消費支出額と母子世帯の消費支出額とを支出項目ごとに比較し,また, 需要額の算出を行うべきであるところ,それが一切行われていないと主張する。 しかし,前記のとおり,在り方専門委員会では,夫婦子供世帯の消費支出額と母子世帯の消費支出額とを支出項目ごとに比較し,また,勤労世帯と勤労世帯以外の消費支出額を比較して,ひとり親世帯の消費特性の検証を行い,またひとり親の就労に伴う追加的消費需要の検証を行うなどして,特別需要の存否の検討を行ったのである。 したがって,原告らの上記主張は失当である。 (ウ)第Ⅰ-5分位を比較対象とすべきとの主張について原告らは,平成15年度の国民生活基礎調査によれば,母子世帯の約60パーセントが第Ⅰ-5分位であり,第Ⅱ-5分位以下が83.8パーセントである状況において,一般世帯との比較対象を第Ⅲ-5分位とすることは,母子世帯の実態を直視していないと主張し,第Ⅰ-5分位を比較対象とすべきであると主張する。 しかし,①母子世帯は一般に所得が低いこと,②統計調査における一般母子世帯の客体数が少ないことが指摘されていたことから,在り方専門委員会では,この事情を補完するため,母子世帯の第Ⅰ-5分位だけでなく,収入階級の中位である第Ⅲ-5分位まで対象範囲を広げ,その生活扶助支出相当額と生活扶助基準額を比較したのである。その結果,一般勤労母子世帯の消費支出額と一般勤労夫婦子供世帯の消費支出額の比較においては,世帯人員が1人少ないにもかかわらず,食料の消費支出額は同等で「外食」は母子世帯の方が多いこと,被服及び履物の支出額は母子世帯の方が多いことが検証されたのである。 このような検証方法に何ら不適切な要素はない。 (エ)告示前の処分であることについて7(1)カ(シ)と同じ。 - 52 -(2)原告らの主張厚生労働大臣が行った母子加算を削減・廃止する旨の生活保護基準の変更は,以下の理由により はない。 (エ)告示前の処分であることについて7(1)カ(シ)と同じ。 - 52 -(2)原告らの主張厚生労働大臣が行った母子加算を削減・廃止する旨の生活保護基準の変更は,以下の理由により違憲・違法であるから,それに基づいてなされた本件各決定は,法56条に違反する「正当な理由のない不利益変更処分」に当たり,取消しを免れない。 ア母子加算制度廃止の理由の不当性(ア)特別需要の存在母子加算制度は,母子については,配偶者が欠けた状態にある者が児童を養育しなければならないことに対応して,通常以上の労作を伴う増加エネルギーの補填,社会的参加に伴う被服費,片親がいないことにより精神的負担をもつ児童の健全な育成を図るための費用などが余分に必要になると,「夫婦と子」世帯と「母子」世帯との比較において特別需要の存在があることを確認の上で,認められたものである。 (イ)母子加算における特別需要の従来の検証方法昭和55年の生活保護専門分科会は,一般勤労世帯(夫婦と子)と母子世帯との比較,全国勤労世帯中,母子世帯と一般世帯(夫婦子1人,夫婦子2人)との比較をし,いずれもそれぞれの消費構造を算出の上,夫婦のいる世帯の消費支出額を母子世帯の消費支出額に引き当て,母子世帯の消費構造の割合により,特別需要額の検証を行った。 また,昭和57,58年の生活保護専門分科会は,140万円未満夫婦世帯と母子1人世帯とを比較し,100万円ないし139万円夫婦世帯と140万円ないし179万円母子1人世帯とを比較し,いずれもそれぞれの消費構造を計算の上,夫婦のいる世帯の消費支出額を母子世帯の消費支出額に引き当て,母子世帯の消費構造の割合により,特別需要額の検証を行い,昭和58年意見具申を行った。 このように,母子加算の特別需要は,「夫婦の居る世帯」と「ひとり- 支出額を母子世帯の消費支出額に引き当て,母子世帯の消費構造の割合により,特別需要額の検証を行い,昭和58年意見具申を行った。 このように,母子加算の特別需要は,「夫婦の居る世帯」と「ひとり- 53 -親世帯」との比較から認められてきたものであり,被告らも,昭和55年から昭和58年にかけての前記分科会における母子加算における特別需要の存否・程度及び必要性・合理性の検証の結果をもって,従前の母子加算額の適法性を支える根拠にしていたのである。 (ウ)今回の検証方法の不当性(1)(特別需要の存否・程度を検証していない)上記のとおり,母子加算は,昭和55年以降,「夫婦と子」世帯と「ひとり親」世帯との比較において特別需要が認められた結果,設置された制度であるから,母子加算を見直す場合には,まずこの特別需要の存否・程度を検証することが当然であり,この点についての十分な検証をせず母子加算の改廃を行うことは,到底許されるものではない。 ところが,今回の母子加算廃止の根拠となった検証は,全国消費実態調査等による一般母子世帯の消費水準,消費実態との比較に基づいて,母子世帯の所得の構成割合(所得第5分位,第10分位階級)の算出比較をしたにとどまるものであり,「夫婦と子」世帯の消費支出額を「母子世帯」の消費支出額に引き当て,「夫婦と子」世帯との比較において,母子世帯の消費構造の割合による特別需要額の算出を行うなどして母子世帯の消費構造を分析することは一切行っていないものである。 このように,単に母子世帯の所得の構成割合を算出しただけでは,特別需要の存否・程度を検証したことにはならないのである。 (エ)今回の検証方法の不当性(2)(第Ⅲ-5分位を比較対象としたこと)また,今回の母子加算廃止の根拠となった検証では,母子世帯と夫婦子供世帯との消費支出の内容を 証したことにはならないのである。 (エ)今回の検証方法の不当性(2)(第Ⅲ-5分位を比較対象としたこと)また,今回の母子加算廃止の根拠となった検証では,母子世帯と夫婦子供世帯との消費支出の内容を比較しているものの,これは「夫婦子供世帯」の第Ⅰ-5分位と「母子世帯」の第Ⅲ-5分位を単純に比較したにすぎず,母子世帯の消費構造を分析したり,母子世帯の消費支出と夫婦子供世帯の消費支出を比較し,これによって導き出される特別需要の- 54 -存否等の検証を一切していない。 しかも,①平成14年の母子世帯の1世帯当たりの平均所得金額は243万5000円であるのに対し,一般世帯の1世帯当たりの平均所得金額は602万円であり,また,母子世帯の完全失業率は平成15年で8.9パーセントであるのに対し,一般世帯のそれは5.3パーセントであり,3.6パーセント高い水準であること,②母子世帯の所得構成割合は,第Ⅰ-5分位が58.1パーセント,第Ⅱ-5分位が25.7パーセント,第Ⅲ-5分位が13.5パーセント,第Ⅳ-5分位が1. 4パーセント,第Ⅴ-5分位が1.4パーセントであり,第Ⅰ-5分位世帯が約60パーセント,第Ⅱ-5分位以下の世帯が83.8パーセントであることからすれば,一般世帯の第Ⅰ-5分位と母子世帯の第Ⅲ-5分位を比較して,母子加算の必要性を判断するのは,母子世帯の生活実態を直視していないものであって,不合理である。 したがって,一般世帯との対象世帯は,母子世帯の約60パーセントに当たる第Ⅰ-5分位世帯とすべきである。 (オ)今回の検証方法の不当性(3)本件各決定は,以下述べるように,母子世帯の実情を踏まえたものではなかった。 生活保護を受給する母子世帯には,①実家や親族からの援助が得られないことから,代替的サービスを受けるための費用が必要になる 本件各決定は,以下述べるように,母子世帯の実情を踏まえたものではなかった。 生活保護を受給する母子世帯には,①実家や親族からの援助が得られないことから,代替的サービスを受けるための費用が必要になる,②実家,親族のみならず,社会的ネットワークも失われ,生活の細部にわたって貧困が影を落とすこと等により,心身の健康が損なわれるリスクが著しく高いといった特徴がある。 また,生活保護を受給する母子世帯については,①母親の多くが就労してはいるものの,大半が低賃金労働であり,しかも既に就労していることから就労支援が受けられないこと,②就労していない者についても,- 55 -就労意欲は高いが,健康状態,学歴,子供の保育といった課題を抱え,労働条件の過酷さや保育政策の貧弱さから,就労できないこと,③母親の健康管理や社会関係の構築など就労以前の生活支援,社会的支援が必要な母親も多くいること,④母親を支える育児支援が貧弱なため,雇い控えが生じ,就職が困難になるなどの悪循環になっていること,⑤母子世帯や生活保護受給世帯への偏見,年齢制限といった労働市場での差別の問題があり,労働市場で評価され得るキャリアの形成ができていないこと,⑥生活保護受給世帯の母親の資格取得は限られており,生業扶助による資格取得も進まず,条件整備が不十分なことといった現実があることを理解しなければならない。 以上のような生活保護を受給する母子世帯の特徴や,これを取り巻く現実は,生活保護を受給する母子世帯特有の困難性であり,この困難性は,生活保護を受給する母子世帯の特別需要そのものなのである。とすれば,仮に母子加算の見直しを検討しようとする場合には,上記特別需要についての詳細な検討を行い,これが消失していると認められて初めて削減廃止が正当化されるというべきである。被告は,一般勤労母子 とすれば,仮に母子加算の見直しを検討しようとする場合には,上記特別需要についての詳細な検討を行い,これが消失していると認められて初めて削減廃止が正当化されるというべきである。被告は,一般勤労母子世帯の生活扶助相当消費支出額と被保護母子世帯の母子加算を除いた生活扶助基準額を比較したと主張するが,「生活扶助相当消費支出額」なるものを比較の対象とすることが許されるためには,上記の実情を踏まえなければならない。なぜなら,一般勤労母子世帯の「生活扶助相当消費支出額」として消費支出額全体から控除されているものの中には,生活保護を利用する母子世帯の消費構造との対比において,控除すべきでないものが含まれているからである。 在り方専門委員会で示された資料では,上記の点を検討するには不十分なものであり,十分な調査,分析をすることはできなかった。在り方専門委員会においては,更なる調査,分析ないし議論が必要だったはず- 56 -である。 (カ)このような不当な検証方法に基づいて行われた母子加算の削減・廃止は,合理性を欠くものであり,本件各決定は明らかに裁量を逸脱した違憲,違法なものである。 イ高等学校等就学費の創設等が,母子加算の段階的廃止の合理的根拠たり得ないこと被告らは,被保護世帯に新たに高等学校等就学費を支給する制度が創設されたことをもって,あたかも母子加算の段階的廃止の合理的根拠であるかのような主張をする。 しかし,この制度は,生活保護世帯の子が,経済的理由から高等学校等への進学を断念せざるを得ないという事態を解消する目的・趣旨で創設された制度である。すなわち,高校生がいる限り,生活保護世帯全体に適用される制度であって,母子世帯に限るというものではないから,母子世帯の特別需要に対応するという位置付けではない。 このように,高等学校等就学費 ある。すなわち,高校生がいる限り,生活保護世帯全体に適用される制度であって,母子世帯に限るというものではないから,母子世帯の特別需要に対応するという位置付けではない。 このように,高等学校等就学費を支給する制度と母子加算とは,趣旨・目的も異なれば,その対象とする範囲も異なるものであり,例えば,被保護母子世帯であっても,高等学校等へ就学する子がない世帯については,就学費の支給はなく,母子加算の段階的廃止による保護費の低減について,何らの手当もないという事態となっている。 また,高等学校等就学費を受け得る被保護世帯であっても,その給付金額は,基本的には月額1万円を超えない(高等学校等へ就学する子が1名の場合)。これに対し,母子加算が廃止されれば,2万円以上保護費が切り下げられることになる。 ウ平成16年度報告に沿ったものではないこと在り方専門委員会における母子加算に関する本件中間取りまとめまでの議論及び平成16年度報告までの議論は,今後の議論や他の施策との連携- 57 -に関して検討が必要であるとの内容であり,母子加算の廃止云々という内容ではなかった。 すなわち,平成16年度報告の内容は,「母子加算を加えた被保護母子世帯の生活扶助基準額は一般母子世帯の消費支出額よりも高い。また,母子加算を除いた生活扶助基準額は,一般勤労母子世帯の生活扶助相当消費支出額と概ね均衡している。」としながら,「母子世帯は一般的に所得が低いこと」「統計調査における一般母子世帯の客体数の少なさから,一般母子世帯の消費支出額との単純な比較により被保護母子世帯の基準の妥当性を判断することはできないのではないか」と指摘している。また,「一般母子世帯も苦しい生活状況等がある」「被保護母子世帯においては,交際費や子供との外出等の充足が低いなどの特徴がある」とも指摘してお 性を判断することはできないのではないか」と指摘している。また,「一般母子世帯も苦しい生活状況等がある」「被保護母子世帯においては,交際費や子供との外出等の充足が低いなどの特徴がある」とも指摘しており,これらのことからすれば,同報告書は,消費実態から直ちに母子加算の廃止にはつながらないとの趣旨であることは明らかである。また,同報告書は,「母子加算の見直しについては,これがひとり親世帯等における子供の養育への特別需要に対応していることも踏まえ,母子世帯の生活実態を把握した上で検討することが必要であり,その際には,母子世帯に対する自立支援の在り方,勤労控除や他の扶助の在り方,他の母子福祉施策等との連携の在り方について議論した結果を踏まえることが適当である。」としており,これらの内容からは,どこから見ても母子加算の廃止という結論が出てくるものではない。 母子加算の削減・廃止は,在り方専門委員会の報告書の内容に従わず,また消費実態からも削減,廃止を正当化する根拠が見当たらないにもかかわらず行ったものであり,本件各決定は明らかに裁量を逸脱した違憲,違法なものである。 エ告示前の処分であること7(2)オと同じ。 - 58 - 本案の争点(4)(多人数世帯扶助基準額変更の合理性)に関する当事者の主張(1)被告らの主張ア多人数世帯の保護費の検証多人数世帯の保護費について,在り方専門委員会は,次のような検証を行った。 生活扶助基準(標準3人世帯(33歳男,29歳女,4歳子)は,個人的経費である第1類費と世帯共通経費である第2類費の割合が65.9:34.1(平成12年度以降)であるのに対し,一般低所得世帯(勤労者3人(夫婦子1人)世帯)における第1類費相当支出額と第2類費相当支出額の割合をみると,57.7:42.3(平成12年度)となって 34.1(平成12年度以降)であるのに対し,一般低所得世帯(勤労者3人(夫婦子1人)世帯)における第1類費相当支出額と第2類費相当支出額の割合をみると,57.7:42.3(平成12年度)となっており,生活扶助基準における第1類費の割合が一般世帯の消費実態に比べて大きい。この第1類費が世帯人員に応じて積み上げられているため,多人数世帯ほど相対的に割高となっている。 勤労世帯の第Ⅰ-5分位の生活扶助第1類費相当消費支出額を世帯人数ごとにみると,3人世帯で9万5305円,4人世帯で10万4641円,5人世帯で11万0645円であり,3人世帯を100とすると,4人世帯は109.8,5人世帯は116.1となる。一方で,生活扶助基準における世帯人員別の第1類費は,3人世帯を100とした場合,4人世帯で133.3,5人世帯で164.7であった。 また,勤労世帯の第Ⅰ-5分位の生活扶助第2類費相当消費支出額を世帯人数ごとにみると,3人世帯で6万2404円,4人世帯で6万3122円,5人世帯で6万5070円であり,3人世帯を100とすると,4人世帯は101.2,5人世帯は104.3となる。一方で,生活扶助基準における世帯人員別換算率は,第2類費で,3人世帯を100とした場合,4人世帯で108.8,5人世帯で109.6であった。 - 59 -イ在り方専門委員会の検討及び報告在り方専門委員会は,上記の検証結果を踏まえて検討を行い,本件中間取りまとめにおいて,「生活扶助基準額は,個人消費部分(第1類費)と世帯共同消費部分(第2類費)によって構成されているが,この両者の割合は一般低所得世帯の消費実態と比べると第1類費が相対的に大きい。また,このように相対的に大きな第1類費が年齢別に組み合わされるために,多人数世帯ほど基準額が割高になることが指摘されてい の両者の割合は一般低所得世帯の消費実態と比べると第1類費が相対的に大きい。また,このように相対的に大きな第1類費が年齢別に組み合わされるために,多人数世帯ほど基準額が割高になることが指摘されている。」「これを是正するために,3人世帯の生活扶助基準額の第1類費と第2類費の構成割合を一般低所得世帯の消費実態に均衡させるよう第2類費の構成割合を高めることが必要である。」「また,世帯人員別に定めた第2類費の換算率については,一般低所得世帯における世帯人員別第2類費相当支出額の格差を踏まえ,多人数世帯の換算率を小さくする方向で見直しを行うことが必要である。」とした。 さらに,在り方専門委員会は,平成16年度報告において,「生活扶助基準は多人数になるほど割高になるとの指摘がなされているが,これは人数が増すにつれ第1類費の比重が高くなり,スケールメリット効果が薄れるためである。このため,本件中間取りまとめにおいて指摘した第2類費の構成割合及び多人数世帯の換算率に関する見直しのほか,世帯規模の経済性を高めるような設定等について検討する必要がある。」と報告した。 ウ多人数世帯の生活扶助基準の算定方法の見直し厚生労働省においては,上記報告を踏まえ,4人以上で構成される世帯の生活扶助基準の算定方法を見直すこととした。具体的には,平成17年度においては,4人以上の世帯の第1類費を算定する際,逓減率を導入し,4人世帯であれば0.98,5人以上世帯であれば0.96の逓減率を乗じることとし,ただし,3年間をかけて段階的に逓減率を一定の値にすることとした。 - 60 -各年度の逓減率は,次のとおりである。 平成17年度平成18年度平成19年度4人世帯0.980.960.955人世帯0.960.930.90また,第2類費の世帯人員別換算率(マ -各年度の逓減率は,次のとおりである。 平成17年度平成18年度平成19年度4人世帯0.980.960.955人世帯0.960.930.90また,第2類費の世帯人員別換算率(マルチプル)を見直し,第2類費を引き下げることとした。 第2類費の世帯人員別換算率は次のように算出した。 家計調査特別集計(平成8年から平成12年の平均)の勤労者世帯(全国,第Ⅰ-5分位)の2人世帯から5人世帯までの第2類費相当消費支出額をプロットし,最小2乗法推定値による「世帯人員」と「第2類費相当消費支出」の相関関数(第2類費相当消費支出=2144.5×世帯人員+5万4684円)を求め,3人世帯を100としたときの4人世帯の指数を算出した。その結果,4人世帯の世帯人員換算率を108.8から103.5に修正した。 エまとめ以上のとおり,4人以上の世帯の生活扶助費第1類費を算定する際に逓減率を乗じることとしたこと及び第2類費の減額は,一般世帯における消費支出額と比較すると生活保護を受給している多人数世帯の給付額が割高になっていることを踏まえ,4人以上の世帯について,一般世帯の消費支出との間で著しい不公平を生じさせないよう基準額の適正化を図ったことに伴う保護基準の変更であり,厚生労働大臣がその裁量の範囲内において実施したものである。 オ原告らの主張について(ア)在り方専門委員会での検討を経ていないとの主張について原告らは,在り方専門委員会では,多人数世帯の「第1類費・第2類費の構成割合」及び「換算率」を具体的にどのようにするかについて,- 61 -全く検討されていないし,議論もされていないから,4人以上の世帯の基準額減額は正当な根拠に基づかないものであると主張する。 しかし,在り方専門委員会は,多人数世帯の消費実態と当時の生活扶助基準 -全く検討されていないし,議論もされていないから,4人以上の世帯の基準額減額は正当な根拠に基づかないものであると主張する。 しかし,在り方専門委員会は,多人数世帯の消費実態と当時の生活扶助基準との比較から,多人数世帯基準を是正する必要性を指摘し,第2類費の換算率の見直しなどの方向性を示しており,かつそれで足りるというべきであり,それ以上の具体的な換算率の算定は厚生労働大臣の専門的,技術的判断に委ねられているというべきである。 (イ)第1類費の年齢区分の見直しについて原告らは,第1類費の年齢区分の見直しについて,時代錯誤だと指摘された栄養カロリーに依拠する方式を採用したもので,明らかに算定方法としては合理性がなく違法であると主張する。 しかし,本件中間取りまとめにおいては「直近の年齢別栄養所要量及び(略)と比較して検証したところ,概ね妥当であるが,年齢区分の幅についてはもう少し大きく取るべきだという意見もある(略)」とし,年齢別栄養所要量との比較を妥当性の根拠の一つとしている。また,平成17年度の見直し前の若年層の第1類費は,昭和44年の年齢別栄養所要量に基づき設定されたものであるが,12歳ないし17歳における昭和44年当時の栄養所要量は,現行と比べて相対的に高く設定されていたため,現行の栄養所要量との乖離が大きくなっていた。さらに,在り方専門委員会の平成16年度報告においても,年齢区分の幅についてその拡大について見直しが必要であると指摘された。 これらのことから,厚生労働大臣は,若年層の年齢区分を8区分から4区分にすることにより,年齢区分を12区分から8区分にして簡素化を図るとともに,栄養所要量の指数値を参考に年齢別の格差を定めて基準額を設定したのであり,算定方法に合理性がないとはいえない。 (ウ)告示前の処分であることについ 分を12区分から8区分にして簡素化を図るとともに,栄養所要量の指数値を参考に年齢別の格差を定めて基準額を設定したのであり,算定方法に合理性がないとはいえない。 (ウ)告示前の処分であることについて- 62 -7(1)カ(シ)と同じ。 (2)原告らの主張厚生労働大臣が行った多人数世帯の生活扶助基準を切り下げる旨の生活保護基準の変更は,以下の理由により違憲・違法であるから,これに基づいてなされた本件各決定は取り消されるべきである。 ア在り方専門委員会での検討内容の問題多人数世帯が議題とされた第5回在り方専門委員会においても,多人数世帯に関しては,第1類費と第2類費の費目の整理が議論されたにすぎず,多人数世帯の「第1類費・第2類費の構成割合」及び「換算率」を具体的にどのようにするのかについて,全く検討されなかったし,議論もされなかった。 被告らは,在り方専門委員会が多人数世帯の保護費について,「勤労世帯第Ⅰ-5分位の第1類費相当支出額と生活扶助第1類費の換算率を算出して,それらの比較を行う」という検証を行ったと主張する。 しかし,上記検証は,その内容が在り方専門委員会において説明されたにすぎず,在り方専門委員会が上記検証をもとに検討して,第1類費の逓減率の導入を議論したことはなかった。 イ勤労世帯の第Ⅰ-5分位の生活扶助第1類費相当消費支出額と生活扶助基準の第1類費を世帯人数ごとに比較することは不可能であること第1類費は,平成16年度までは12年齢区分があり(ただし,平成17年度以降8年齢区分とされた。),3人世帯の場合96類型の額,4人世帯の場合は288類型の額,5人世帯の場合は864類型の額が算定されるので,ある特定の金額が算定されることはなく,各世帯人員の年齢構成によって額が異なってくる。例えば,平成16年度の保護費をみる 世帯の場合は288類型の額,5人世帯の場合は864類型の額が算定されるので,ある特定の金額が算定されることはなく,各世帯人員の年齢構成によって額が異なってくる。例えば,平成16年度の保護費をみると,3人世帯中,0歳が2名の世帯と15歳から17歳が2名の世帯とを比較すると,少なくとも6万1760円以上の違いが生ずる。 - 63 -このように,世帯人員別の生活扶助基準の第1類費や生活扶助相当支出額は,類型の数だけ異なるから,これを一義的に算定することは不可能であり,したがって,被告らが主張する上記検証における,2人ないし5人世帯の第1類費額や勤労世帯の第1類費相当消費支出額とは,いかなる方法により算出したのか疑問である。 また,そもそも,換算率は,第2類費の基準額を設定するための指数であって,第1類費の基準額の設定とは関係ないものである。 ウ第1類費の年齢区分の幅の拡大の違法性第1類費は,平成16年度までは12年齢区分があったが,平成17年度以降は8年齢区分とされた。 この第1類費の年齢区分の幅の拡大は,平成11年6月28日,公衆衛生審議会答申(甲11)の「表2生活活動強度別エネルギー所要量」の中の「生活活動強度Ⅱ(やや低い)」を「日本人の栄養所要量」と題し,「30歳ないし49歳」を100として,また,平成15年度生活扶助第1類費基準額を「20歳ないし40歳」を100としてそれぞれ指数化し,その指数比較をグラフで行い,1歳から40歳について,基準額の指数を栄養所要量の指数に合致させるように改定したものである。 しかし,これは,栄養カロリーに依拠することが時代錯誤だと指摘された方式を採用したものであり,明らかに算定方法としては合理性がなく違法なものである。 エ告示前の処分であること7(2)オと同じ。 本案の争点(5)(本件各決 拠することが時代錯誤だと指摘された方式を採用したものであり,明らかに算定方法としては合理性がなく違法なものである。 エ告示前の処分であること7(2)オと同じ。 本案の争点(5)(本件各決定の無効事由の有無)に関する当事者の主張(1)原告らの主張上記7ないし9で主張した事実に照らせば,本件各決定の違法性は重大かつ明白であるといえるから,本件各決定は当然無効である。とすれば,原告- 64 -らは,本件各決定前の生活保護費支給額と本件各決定以後の生活保護費支給額との差額を請求できるというべきである。 (2)被告らの主張本件各決定が当然無効であるとの主張は争う。これに対する被告らの主張は,上記7ないし9のとおりである。 本案の争点(6)(本件各決定が取り消された場合又は無効であった場合の給付額)に関する当事者の主張(1)原告らの主張別紙(2)「給付額一覧表」の「被告地方自治体」欄記載の被告らは,同表の同欄に対応する「氏名」欄記載の原告らそれぞれに対し,同表の同欄に対応する「(A)」欄記載の各金員及び平成18年1月以降本判決確定に至るまで,毎月1日限り,同表の同欄に対応する「(B)」欄記載の各金員を支払う義務がある。 (2)被告らの主張原告AF及び承継参加人の平成18年1月以降判決確定までの月1万4380円の支払請求については,同原告の死亡日(平成19年4月12日)の翌日以降の分は,①同原告の死亡により同人の老齢加算相当額が支給されることがなく,②世帯人数が5人から4人になることから,4人以上の世帯の第1類費・第2類費の減額が異なることになるため,給付額は,別紙(2)「給付額一覧表」の「(B)」欄記載の金額とは異なる。 原告C及び承継参加人については,平成20年3月1日から保護を廃止するとの保護廃止決定がなされた 減額が異なることになるため,給付額は,別紙(2)「給付額一覧表」の「(B)」欄記載の金額とは異なる。 原告C及び承継参加人については,平成20年3月1日から保護を廃止するとの保護廃止決定がなされたから,同日以降の金員支払請求は理由がない。 第3当裁判所の判断 本案前の争点(1)(死亡した原告らにつき,訴訟が当然終了となるか否か)について(1)原告A,原告AF,原告AB,原告AE及び原告Iが本件訴訟係属中に- 65 -死亡したことは,当事者間に争いがない。 (2)ところで,生活保護を受ける権利は,被保護者自身の最低限度の生活を維持するために当該個人に付与された一身専属的な権利であって,相続の対象になり得ない。また,仮に被保護者の生存中に本来支払うべき給付が支払われていないとしても,当該給付を求める権利は,当該被保護者の最低限度の生活の需要を満たすことを目的とするものであって,法の予定する目的以外に流用することを許さないものであるから,当該被保護者の死亡によって当然消滅し,相続の対象となり得ないと解すべきである。(最高裁大法廷昭和42年5月24日判決・民集21巻5号1043頁参照)とすれば,本件訴えのうち,原告A,原告AF,原告AB,原告AE及び原告Iに関する各部分は,同原告らの死亡と同時に当然に終了したというべきである。 なお,原告AFについては,本件各決定時に同一世帯の世帯員として承継参加人が存在していた。そして,生活保護の給付は,法律上,世帯単位で行われるものであることからすると,世帯主が生活保護法上の処分に関する訴訟を提起し,その訴訟係属中に死亡したとしても,当該処分当時,同世帯主に同一世帯の世帯員がいた場合は,同世帯主の死亡による当該訴訟の終了するもの宣言がされるまでは,新たに世帯主になった者等,同一世帯の世帯員が その訴訟係属中に死亡したとしても,当該処分当時,同世帯主に同一世帯の世帯員がいた場合は,同世帯主の死亡による当該訴訟の終了するもの宣言がされるまでは,新たに世帯主になった者等,同一世帯の世帯員が当該訴訟に参加し,前の世帯主の訴訟を承継することができると解するのが相当である。 本案前の争点(2)(当事者訴訟の訴えの利益の有無)についていったん保護決定がなされた場合,変更決定等がない限り,法に基づく保護受給権は発生するから,原告の「第1請求」の2,3の給付の訴えのうち口頭弁論終結までに発生した保護費の給付請求の訴えは,適法なものというべきである。しかし,同訴えのうち口頭弁論終結日の翌日から本判決確定の日までに発生するべき保護費の給付請求の訴えは,将来給付の訴えであり,その請求- 66 -権の性質やその債務者が地方自治体であることに照らせば,あらかじめその請求をする必要があるとはいえないから,不適法なものというべきである。 本案の争点(1)(主張立証責任の所在)について(1)法56条にいう「正当な理由」について本件各決定は,既に保護決定を受けていた原告らの保護支給額を減額するものであるから,法56条にいう「既に決定された保護を不利益に変更する」場合に当たるので,本件各決定の減額変更については,同条にいう「正当な理由」があることを要する。 ところで,同条は,保護実施機関と保護受給者との関係を規律し,保護実施機関のした保護が法の定める要件を充足したものでなければならないとの趣旨で設けられた規定であると解されるから,同条にいう「正当な理由」とは,当該保護の変更が法の定める保護の変更や停止又は廃止の要件に該当することをいうと解するのが相当である。そして,保護基準の改定による保護の変更は,当然に,法が定める保護の変更に当たるから,上記 とは,当該保護の変更が法の定める保護の変更や停止又は廃止の要件に該当することをいうと解するのが相当である。そして,保護基準の改定による保護の変更は,当然に,法が定める保護の変更に当たるから,上記の「正当な理由」は保護基準の改定自体についての要件ではないと解せられる。したがって,これに反する原告らの主張は採用できない。 (2)保護基準の改定に当たっての厚生労働大臣の裁量等法8条2項は,厚生労働大臣が保護基準の制定に当たって考慮すべき事情を定めた上,保護基準が,最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,かつ,これを超えないものであることを要する旨規定するが,同規定が定めるところは抽象的で相対的なものであり,その具体的内容は,文化の発達,国民経済の進展に伴って向上するのはもとより,多数の不確定的要素を総合勘案してはじめて決定できるものであり,このような点にかんがみると,保護基準の制定は,その改定も含めて,厚生労働大臣の合目的的な裁量に委ねられているというべきである(最高裁昭和39年(行ツ)第14号昭和42年5月24日大法廷判決参照)。 - 67 -しかし,一般に,保護基準の改定は,その新規の制定とは異なり,既に制定されていた保護基準を変更するものであり,そもそも改定前の保護基準は,厚生労働大臣が法8条2項所定の要件を充足する基準として制定したものである。しかも,後記認定のとおり,本件保護基準改定前の老齢加算,母子加算及び多人数世帯扶助基準額に関する保護基準は,いずれも長年にわたり実施されてきたもので,いわば,厚生労働大臣が法8条2項所定の要件を充足する基準であることを長年にわたり自認してきたものである。加えて,本件保護基準改定は,このような保護基準を保護受給者に不利益に変更するものである。上記の各点及び保護基準の改定が厚生労 定の要件を充足する基準であることを長年にわたり自認してきたものである。加えて,本件保護基準改定は,このような保護基準を保護受給者に不利益に変更するものである。上記の各点及び保護基準の改定が厚生労働大臣の裁量に委ねられている趣旨にかんがみれば,本件保護基準改定についての厚生労働大臣の裁量の幅は,その新規の制定におけるそれよりも狭く,本件保護基準改定における厚生労働大臣の判断過程に看過し難い事実の誤認や事実の評価の誤り等の不合理な点があり,上記判断がこれに依拠してされたと認められる場合には,厚生労働大臣の上記判断に不合理な点があり,同判断に基づく本件保護基準改定は裁量権を濫用又は逸脱したものとして,違法であり,これに基づく本件各決定もまた違法であると解すべきである(最高裁昭和60年(行ツ)第133号平成4年10月29日第一小法廷判決参照)。そして,上記の不合理な点があったことを基礎付ける事実は,厚生労働大臣の裁量権の濫用又は逸脱のあったことの根拠事実であるから,その主張,立証責任は原告らが負うこととなる。 本案の争点(2)(老齢加算廃止の合理性)について(1)本件保護基準改定に至る経過前記争いのない事実,証拠(甲26の(1),(2),(5),27の(1),(2),(4),乙2,7,8,10,16の(4),(6),19)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア生活扶助基準の改定方式の変遷等- 68 -昭和23年度から昭和35年度までは,保護基準の算定は,最低生活に必要な個々の需要を一つ一つ積み上げて理論計算するマーケットバスケット方式により行われていた。その後,昭和36年度から,栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて計算し,別に低所得世帯の実態調査から,この飲食物費を支出している バスケット方式により行われていた。その後,昭和36年度から,栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて計算し,別に低所得世帯の実態調査から,この飲食物費を支出している世帯のエンゲル係数の理論値を求め,これから逆算して総生活費を算出するエンゲル方式が採られるようになった。昭和40年度からは,一般国民の消費水準の伸び率以上に生活扶助基準を引き上げ,結果的に一般国民と被保護世帯との消費水準の格差を縮小させようとする格差縮小方式が導入された。 その後,昭和59年度,当時の生活扶助基準が,一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当であるとの評価を踏まえ,当該年度に想定される国民の消費動向を踏まえると同時に,前年度までの一般国民の消費実態との調整を図るという水準均衡方式が導入され,現在まで,同方式が採用されている。 一般勤労者世帯と被保護勤労者世帯との消費支出の格差は,昭和45年度は54.6パーセント,昭和50年度は55.8パーセント,昭和55年は63.6パーセントとなり,昭和61年から平成9年度までは68パーセント台,平成10年度から平成12年度は69パーセント台を推移し,平成13年度,平成14年度は70パーセントを超える状況であった(乙19)。 イ老齢加算は,昭和35年4月,老齢福祉年金制度の発足に伴い創設された。 ウ昭和55年中間的とりまとめに至る老齢加算の検証方法及び検証結果等(ア)第76回生活保護専門分科会の資料における検証昭和55年5月17日に行われた第76回生活保護専門分科会には,昭和49年全国消費実態調査の統計結果を基にして,老夫婦勤労世帯と- 69 -労務者世帯(夫婦2人)の消費支出の比較を行った「老夫婦世帯の消費支出」との資料(甲26の(1))が提出された。 上記資料は,老夫婦世帯の消費構造の 統計結果を基にして,老夫婦勤労世帯と- 69 -労務者世帯(夫婦2人)の消費支出の比較を行った「老夫婦世帯の消費支出」との資料(甲26の(1))が提出された。 上記資料は,老夫婦世帯の消費構造の分析を行って,消費支出全体に占める各消費費目の割合を「構成比」として算出し,この構成比に従って老夫婦世帯の各消費費目の支出額の修正値をそれぞれ求めた上,この各消費費目の修正値を,労務者世帯の各消費費目の支出額と比較するというものであった。これによれば,主に食料費(特に副食と嗜好品),光熱費,教養娯楽費,交際費の消費支出額は,老夫婦勤労世帯が,労務者世帯を上回っていた。 なお,消費支出の額は,労務者世帯が10万4106円であったのに対し,老夫婦勤労世帯は8万9954円であった。 (イ)第77回生活保護専門分科会の資料における検証昭和55年6月28日に行われた第77回生活保護専門分科会には,昭和49年全国消費実態調査の統計結果を基にして,老夫婦世帯と一般世帯の構成比の比較を行った「老夫婦世帯の収入・支出の内訳」との資料(甲26の(2))が提出された。 上記資料は,世帯主が「60~64歳」,「65~69歳」,「70歳以上」の各年齢層の世帯を「老夫婦世帯」と位置付け,それぞれについて,各消費費目の構成比を算出し,これと一般世帯の各消費費目の構成比を比較するというものであった。これによれば,主に食料費,光熱費,教養娯楽費,交際費の構成比は,各年齢層の老夫婦世帯のいずれもが,一般世帯を上回っていた。 なお,消費支出の額は,一般世帯が12万1282円であったのに対し,60歳以上64歳以下の世帯は10万1857円,65歳以上69歳以下の世帯は9万9760円,70歳以上の世帯は8万9954円であった。 - 70 -(ウ)第82回生活保護専門分科会の資料 対し,60歳以上64歳以下の世帯は10万1857円,65歳以上69歳以下の世帯は9万9760円,70歳以上の世帯は8万9954円であった。 - 70 -(ウ)第82回生活保護専門分科会の資料昭和55年10月25日に行われた第82回生活保護専門分科会には,「加算について」との資料(甲26の(5))が提出された。 上記資料には,「老人・母子・身体障害といったハンディ・キャップに伴う特殊需要は考慮されなければならないものであり,加算のよってたつ需要論的な根拠を常時はっきりつかむべきである。例えば,老人世帯の場合には,食料品の購入に当り消化吸収しやすいものを少量ずつ購入するため割高になること,炊事用具も軽量かつ取扱いやすいものが必要であること,買物に出かける回数が限られるため冷蔵庫が不可欠であること,保温のための光熱費や被服費,さらに,親せきや近隣との交際費も割高になることなど,一般世帯以上に特別需要が認められる。」と記載されていた。 (エ)昭和55年中間的とりまとめ以上の検証を踏まえた昭和55年中間的とりまとめでは,「老齢者は咀嚼力が弱いため,他の年齢層に比し消化吸収がよく良質な食品を必要とするとともに,肉体的条件から暖房費,被服費,保健衛生費等に特別な配慮を必要とし,また,近隣,知人,親せき等への訪問や墓参りなどの社会的費用が他の年齢層に比し余分に必要となる。」との見解が示された(乙7の7頁)。 エ昭和58年意見具申に至る老齢加算の検証方法及び検証結果(ア)昭和57年9月21日の生活保護専門分科会の資料昭和57年9月21日に行われた生活保護専門分科会には,「高齢単身世帯の生活扶助相当経費のうちの特別需要調べ」との資料(甲27の(1))が提出された。 これは,昭和54年全国消費実態生活調査の統計結果を基にして,70歳以上7 た生活保護専門分科会には,「高齢単身世帯の生活扶助相当経費のうちの特別需要調べ」との資料(甲27の(1))が提出された。 これは,昭和54年全国消費実態生活調査の統計結果を基にして,70歳以上74歳以下及び75歳以上の各単身世帯の各消費費目と,51- 71 -歳以上59歳以下,60歳以上64歳以下及び65歳以上69歳以下の各単身世帯のそれとの比較を行うものであった,また,これは,70歳以上74歳以下及び75歳以上の各単身世帯について,消費支出全体に占める各消費費目の割合を「構成比」として算出し,この構成比に従って,各消費費目の支出額の修正値をそれぞれ求めた上,この修正値と,51歳以上59歳以下,60歳以上64歳以下及び65歳以上69歳以下の各単身世帯の各消費費目の支出額と比較するというものであった。 その結果,70歳以上74歳以下の世帯は,51歳以上59歳以下の世帯と比較すると8365円の,60歳以上64歳以下の世帯と比較すると5146円の,65歳以上69歳以下の世帯と比較すると5763円の特別需要額があるとされた。また,75歳以上の世帯は,51歳以上59歳以下の世帯と比較すると1万3591円の,60歳以上64歳以下の世帯と比較すると1万4052円の,65歳以上69歳以下の世帯と比較すると1万3481円の特別需要額があるとされた。 なお,消費支出の額は,51歳以上59歳以下の世帯は7万5032円,60歳以上64歳以下の世帯は7万9023円,65歳以上69歳以下の世帯は8万0805円であったのに対し,70歳以上74歳以下の世帯は7万2250円,75歳以上の世帯は5万3700円であった。 (イ)昭和58年5月24日の生活保護専門分科会の資料昭和58年5月24日に行われた生活保護専門分科会には,「加算対象世帯の特別需要の測定及び加算額 円,75歳以上の世帯は5万3700円であった。 (イ)昭和58年5月24日の生活保護専門分科会の資料昭和58年5月24日に行われた生活保護専門分科会には,「加算対象世帯の特別需要の測定及び加算額との比較」との資料(甲27の(2))が提出された。 これは,以下の点を検討したものであった。 a昭和54年全国消費実態生活調査の統計結果を基にして,70歳以上74歳以下及び75歳以上の各単身女性世帯の各消費費目と,51歳以上59歳以下の単身女性世帯の各消費費目との比較,老夫婦(7- 72 -0歳,180万円未満)及び老夫婦(71歳以上75歳以下,180万円未満)の各世帯の各消費費目と,夫婦(140万円未満)及び夫婦(180万円未満)の世帯の各消費費目との比較をした。 b70歳以上74歳以下及び75歳以上の各単身女性世帯の消費支出全体に占める各消費費目の割合を「構成比」として算出し,この構成比に従って,各消費費目の支出額の修正値をそれぞれ求めた上,この修正値と,51歳以上59歳以下の単身女性世帯の各消費費目の支出額とをそれぞれ比較した。 c老夫婦(70歳,180万円未満)及び老夫婦(71歳以上75歳以下,180万円未満)の各世帯の消費主出全体に占める各消費費目の割合を「構成比」として算出し,この構成比に従って,各消費費目の支出額の修正値をそれぞれ求めた上,老夫婦(70歳,180万円未満)の修正値と夫婦(140万円未満)の世帯の各消費費目の支出額とを,老夫婦(71歳以上75歳以下,180万円未満)の修正値と夫婦(180万円未満)の世帯の各消費費目の支出額とを,それぞれ比較した。 d上記比較の結果,51歳以上59歳以下の単身女性世帯と比較すると,70歳以上74歳以下の単身女性世帯は9977円の,75歳以上の単身女性世帯は1万1178円の の支出額とを,それぞれ比較した。 d上記比較の結果,51歳以上59歳以下の単身女性世帯と比較すると,70歳以上74歳以下の単身女性世帯は9977円の,75歳以上の単身女性世帯は1万1178円の特別需要額があるとされた。また,「夫婦(140万円未満)」の世帯と比較すると,「老夫婦(70歳,180万円未満)」の世帯は1万1472円の特別需要額があるとされ,「夫婦(180万円未満)」の世帯と比較すると,「老夫婦(71歳以上75歳以下,180万円未満)」の世帯は1万6005円の特別需要額があるとされた。 e消費支出の額は,51歳以上59歳以下の単身女性世帯は7万5012円であったのに対し,70歳以上74歳以下の単身女性世帯は7- 73 -万0050円,75歳以上の世帯は5万1405円であった。また,夫婦(140万円未満)の世帯の消費支出額は9万9941円,夫婦(180万円未満)の世帯の消費支出額は12万5340円であったのに対し,老夫婦(70歳,180万円未満)の世帯は9万3271円,老夫婦(71歳以上75歳以下,180万円未満)の世帯は14万2685円であった。 (ウ)昭和58年10月5日の生活保護分科会の資料昭和58年10月5日に行われた生活保護分科会には,「加算の定性的説明について」との資料(甲27の(4))が提出された。 上記資料は,老齢加算に関する特別需要について,「加工食品…老齢化により,そしゃく力や調理能力が低下しているため,調理不要又は簡単で,食べやすいものを買う。栄養的には,非効率であり,かつ割高となる。」「暖房費…身体的に保温能力低下,また,病弱等で,在宅時間も長いため,暖房費が余分にかかる。」「保健医療…健康保持あるいは病弱のため,家庭薬等が必要となる。」「教養娯楽…孤独を免れるため,老人クラブ,旅行,観劇 的に保温能力低下,また,病弱等で,在宅時間も長いため,暖房費が余分にかかる。」「保健医療…健康保持あるいは病弱のため,家庭薬等が必要となる。」「教養娯楽…孤独を免れるため,老人クラブ,旅行,観劇等,テレビ購入等」「交際費…孤独を免れるため,子や孫との相互訪問,近隣の老人とのつき合い,同年輩者の死に伴う葬祭費,子や甥,姪等の冠婚費等のつき合い費が多く必要。」「交通通信費…老人クラブ出席,旅行,子や孫,親せき等とのつき合いに伴う割高な交通費(タクシー使用等),子や孫との通信費(電話代,葉書代等)」旨説明するものであった。 (エ)昭和58年意見具申以上の検証を踏まえた昭和58年意見具申では,「当審議会生活保護専門分科会は,低所得世帯の家計に関する各種の資料を基にして,加算対象世帯一般と一般世帯との消費構造を比較検討した。」「その結果,老齢(中略)の特別需要としては,加齢に伴う精神的又は身体的機能の- 74 -低下(中略)に対応する食費,光熱費,保健衛生費,社会的費用(中略)などの加算対象経費が認められているが,その額はおおむね現行の加算額で充たされている。」との見解が示された(乙8の2頁以下)。 オ在り方専門委員会の開催平成15年6月19日の財政制度等審議会建議において,「生活扶助基準・加算の引下げ・廃止,各種扶助の在り方の見直し,扶助の実施についての定期的な見直し・期限の設定など制度・運営の両面にわたり多角的かつ抜本的な検討が必要である。特に,老齢加算は年金制度改革の議論と一体的に考えると,70歳未満受給者との公平性,高齢者の消費は加齢に伴い減少する傾向があること等からみて,廃止に向けた検討が必要であると考えられる。また,母子家庭についてみた場合,一般の母子世帯の平均の所得金額と被保護母子家庭の最低生活費を比較した場合,母子加 に伴い減少する傾向があること等からみて,廃止に向けた検討が必要であると考えられる。また,母子家庭についてみた場合,一般の母子世帯の平均の所得金額と被保護母子家庭の最低生活費を比較した場合,母子加算も同様と考えられる。」旨の提言がなされ,同月27日の閣議決定(経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003)において,「生活保護においても,物価,賃金動向,社会経済情勢の変化,年金制度改革などとの関係を踏まえ,老齢加算等の扶助基準などの制度,運営の両面にわたる見直しが必要である。」とされた。 以上のような経過から,在り方専門委員会が組織され,同年8月6日,その第1回委員会が開催され,その際,上記の建議及び閣議のあったことを記載した資料が各委員に配付された。 カ平成15年11月18日開催の第4回在り方専門委員会同委員会において,平成11年全国消費実態調査特別集計に基づき,高齢単身世帯における消費実態と生活扶助基準との比較による検討結果を記載した資料(乙16の(4)「説明資料」)が,各委員に配付された。 上記資料による検討結果は,以下のとおりであった。 (ア)生活扶助相当消費支出額の比較- 75 -平成11年全国消費実態調査特別集計に基づき,高齢単身世帯における消費実態と生活扶助基準との比較を行うと,以下のとおりの結果となった(乙10)。 a全世帯平均全世帯平均では,60歳以上69歳以下の者(単身無職世帯)の生活扶助相当消費支出額(消費支出額の全体から,生活保護制度中の生活扶助以外の扶助に該当するもの,生活保護制度で基本的に認められない支出に該当するもの,被保護世帯は免除されているもの,最低生活費の範疇になじまないものを除いたもの。)は,11万8209円であった。 他方,70歳以上の者(単身無職世帯)の生活扶助相当消費支出額は,1 に該当するもの,被保護世帯は免除されているもの,最低生活費の範疇になじまないものを除いたもの。)は,11万8209円であった。 他方,70歳以上の者(単身無職世帯)の生活扶助相当消費支出額は,10万7664円であった。 b第Ⅰ-5分位第Ⅰ-5分位では,60歳以上69歳以下の者(単身無職世帯,1か月当たりの収入が6万2380円)の消費支出額は12万1360円であり,そのうち生活扶助相当消費支出額は7万6761円であり,70歳以上の者(単身無職世帯,1か月当たりの収入が6万1555円)の消費支出額は9万0848円であり,そのうち生活扶助相当消費支出額は6万5843円であった。 70歳以上の者の老齢加算を除いた生活扶助基準額(平均)は7万1190円であった。 c第Ⅰ-10分位第Ⅰ-10分位では,60歳以上69歳以下の者(単身無職世帯,1か月当たりの収入が4万3654円)の消費支出額は11万8790円であり,そのうち生活扶助相当消費支出額は7万9817円であり,70歳以上の者(単身無職世帯,1か月当たりの収入が4万70- 76 -93円)の消費支出額は9万2518円であり,そのうち生活扶助相当消費支出額は6万2277円であった。 (イ)被保護高齢者世帯の消費実態平成11年度被保護者生活実態調査に基づき,被保護高齢単身世帯の家計消費の実態を,老齢加算されている世帯(主に70歳以上)と,加算されていない世帯(主に60歳ないし69歳)で比較した場合の結果は,以下のとおりであった(乙16の(6)「説明資料」3頁以下)。第6回在り方専門委員会(平成15年12月2日開催)では,上記検討結果を記載した資料が提出された。 a貯蓄純増額の比較老齢加算されていない世帯の貯蓄純増額(「預貯金」と「保険掛金」の合計から「預貯金引出」と「保険取金」を 成15年12月2日開催)では,上記検討結果を記載した資料が提出された。 a貯蓄純増額の比較老齢加算されていない世帯の貯蓄純増額(「預貯金」と「保険掛金」の合計から「預貯金引出」と「保険取金」を差し引いたもの。)は9407円,可処分所得(「実収入」から税金,社会保険料などの「非消費支出」を差し引いた額)に占める割合(平均貯蓄率)は8. 4パーセントであった。 他方,老齢加算されている世帯の貯蓄純増額は1万4926円,可処分所得に占める割合(平均貯蓄率)は12.1パーセントであった。 b翌月への繰越金老齢加算されていない世帯の翌月への繰越金(月末における世帯の手持ち現金残高)は,3万6094円であった。 他方,老齢加算されている世帯の翌月への繰越金は,4万7071円であった。 (ウ)本件中間取りまとめ(乙2)在り方専門委員会は,平成15年12月16日,意見集約をした文書として,「本件中間取りまとめ」を作成し,これを厚生労働大臣に提言した。 - 77 -その内容のうち老齢加算に関するものは,以下のとおりであった。 a生活保護において保障すべき最低生活の水準は,一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであり,具体的には,年間収入階級第Ⅰ-10分位の世帯の消費水準に着目することが適当である。 b単身無職の一般低所得高齢者世帯の消費支出額について,70歳以上の者と60歳から69歳の者との間で比較すると,前者の消費支出額の方が少ないことが認められる。 cしたがって,消費支出額全体でみた場合には,70歳以上の高齢者について,現行の老齢加算に相当するだけの特別な需要があるとは認められないため,廃止の方向で見直すべきである。ただし,高齢者世帯の社会生活に必要な費用に配慮して,生活保護基準の体系の中で高齢者世帯の最低生活 現行の老齢加算に相当するだけの特別な需要があるとは認められないため,廃止の方向で見直すべきである。ただし,高齢者世帯の社会生活に必要な費用に配慮して,生活保護基準の体系の中で高齢者世帯の最低生活水準が維持されるよう引き続き検討する必要がある。 dまた,被保護世帯の生活水準が急に低下することのないよう,激変緩和の措置を講じるべきである。 (エ)厚生労働大臣は,上記提言を受け,老齢加算に関する本件保護基準改定を行った。 (2)老齢加算に関する在り方専門委員会での議論等前記争いのない事実,証拠(甲2の(4)ないし(6),(14),乙16の(6))及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア第4回在り方専門委員会での議論等平成15年11月18日に開催された在り方専門委員会では,老齢加算について,以下の意見が出た(甲2の(4))。 c委員「老齢加算は,不要ではないかと思います。実際問題として,年をとれば消費額がけっこう少なくなっているというのが全国消費実態調査- 78 -で明らかになりました。今までの前提が必ずしも成り立っていなかった以上,長期的には減らしていくべきものではないかと思います。」d委員「高齢者の消費の実態からすれば老齢加算は必要ないかもしれませんが,高齢者の最低生活というふうに考えたときには,(中略)例えば高齢者の社会参加であるとか,そういういろいろなものが加算に相当するものか,あるいは,生活扶助基準に含まれるのかどうか。」「加算という形,あるいは生活扶助基準という形でとるかどうかは別にして,(中略)老齢加算の特別需要というのは,(中略)高齢者の生活の必要というものを考慮に入れた説明だと思いますので,それを生かせるような形で,最低生活費全体の中で議論をしていただければというふうに思っております。」a委員長 要というのは,(中略)高齢者の生活の必要というものを考慮に入れた説明だと思いますので,それを生かせるような形で,最低生活費全体の中で議論をしていただければというふうに思っております。」a委員長「老齢加算(中略)は,(中略)おそらく最終的には第1類費でみている費目,第1類費への特別需要を賄うものだというふうな位置付けにあるように思われます。したがって,そういう加算の位置付けそのものについてもう少し含んだ議論をいただきたいと思います。例えば,(中略)加算という形で維持していくのか,それとも,そうした特別需要は福祉サービス全般の中でやっていったほうがいいとか。あるいは他の扶助とか,制度運用の在り方,例えば資産とか貯蓄の問題とか,そういうものを含めて少し幅広く確保したほうがいいのかもしれないとか,そういう点についてもご議論いただいたほうがいいと思います。加算だけ合理性がない,削るということになりますと,とくに母子世帯などの場合に,実際上の生活に齟齬を来たす場合が当然出てきますが,そういう問題は何かきちんとカバーできるとか,カバーしているとか,あるいは,していないからするとか。そういう配慮は,これは老齢加算のほうについても必要です。老齢加算は廃止してもいいということになるかどうかというのは,必ずしもそう簡単ではないと思いますが。」- 79 -e委員「今日では,若干資産があるが,フローでみると生活保護を受けざるを得ないという高齢者(中略)もけっこう増えてきているわけです。 したがって,そういう実態との関係で,(中略)高齢世帯だからどうのという形で,本当に今の時代一般的にいえるかどうか。こういう数字をみますと,必ずしもいえないという感じもいたします。」f委員「老齢加算について,(中略)たしかに咀嚼の問題に関する食料費とか,あるいは暖房費, ,本当に今の時代一般的にいえるかどうか。こういう数字をみますと,必ずしもいえないという感じもいたします。」f委員「老齢加算について,(中略)たしかに咀嚼の問題に関する食料費とか,あるいは暖房費,被服費,保健衛生費等についての妥当性はないのかもしれません。しかし,社会的費用等についてはまだ相当程度の妥当性があるのではないかとか,もう少しそこのところをきめ細かくみる必要があると思います。場合によっては,特別需要という加算的な形での需要相当額がないとしても,今言った社会的費用等については第1類費の中に溶け込ませるというふうな手法も大いにあると思います。」g委員「老齢加算を認定するときに,70歳になったから突然需要が増えるという実感はたしかにないのですが,例えば長期の保護を受けていることによって,ストックがないための生活のちょっとした損耗というか,減価償却分が出てくるということなどはあります。また,単身者の基準が大変低いという現状において,老齢加算は,ある種大きな影響があるといいますか,非常に助かっているという面もあります。したがって,その辺も含んで,老齢加算をどうするかという検討をしなければいけないということですね。」a委員長「私の考えは,まず加算を廃止して,その後の対応を考えるという議論ではないと思います。」「加算の意味とか,今言ったような実態ということを考えれば,例えばこういうニーズがある世帯は当然存在するということになります。」「仮に加算としてはなくしてもいいという結論に達したとしても,それは代わりにこういう仕組みを設けるということを,セットで出さざるを得ないと思います。」- 80 -イ第5回在り方専門委員会での議論等平成15年11月25日に開催された在り方専門委員会では,老齢加算について,以下の意見が出た(甲2の(5) セットで出さざるを得ないと思います。」- 80 -イ第5回在り方専門委員会での議論等平成15年11月25日に開催された在り方専門委員会では,老齢加算について,以下の意見が出た(甲2の(5))。 b委員「加算の必要性,妥当性がみえるかという点については,前回お示しいただいた資料では一般低所得世帯の消費水準と比較してどうかという議論でしたが,それだけでなく実際の保護世帯の消費構造や生活構造から検証してみるということも必要なのではないかと考えます。」g委員「加算について,たしかに70歳過ぎてから突然支出がどんと増えるということはあり得ません。」「むしろ,もともと単身の基準が,これは統計的にどうなのかということもありますが,実感として非常に低いのではないかと現場の中で感じています。あと長期で保護を受けていると目減り分がありますので,結果的には70歳になって,ようやくご褒美的な形で加算が付くという感じになっています。ですから,加算が70歳になってどっと上がるというのは不自然といえば不自然ですが,その一方で,60歳からずっとトータルでみていると,この加算の合理性というのは,それなりにあるというふうに思ったりしています。むしろ,70歳を過ぎてから加算を付けるという形ではなくて,高齢者世帯,特に生活保護世帯の中で圧倒的に多い単身世帯の基準をどういうふうに考えるかという視点で加算を考えた方が,私は適切ではないかというふうに思います。」a委員長「加算だけ議論してしまいますと,加算を付けるか付けないかという議論になってしまうので,今回,全体の最低生活保障体系そのものをまず俎上に乗せまして,その中の生活扶助のところを議論しております。 生活扶助本体の方をどう考えるかによって,加算の持ってくる意味も大分変わってきます。」「高齢者世帯は圧倒的多数が単身 体系そのものをまず俎上に乗せまして,その中の生活扶助のところを議論しております。 生活扶助本体の方をどう考えるかによって,加算の持ってくる意味も大分変わってきます。」「高齢者世帯は圧倒的多数が単身であり,単身世帯をどう扱うかによっても高齢者世帯の問題は大きく変わってきます。」h委員「(全国知事会の現場の意見を集約した結果として)老齢加算の- 81 -場合,廃止又は額の引下げが妥当であるというのが7割台で,現行のままでいいという意見はありませんでした。」「ただ,老齢加算を廃止する場合でも,経緯のある話ですから,老齢加算の目的であります特別の事情について必要性がないという説明責任があるのではないか,また,もし老齢加算の廃止ではなくて引き下げるという場合は,廃止して一時扶助で対応するとか,年金受給者のみに支給するなど,そういった方法もあるという意見がございました。」f委員「第1類費の多人数のマルチプルというか,節約効果みたいなものを出していただきまして,(中略)むしろ1人世帯の単身世帯の困難性みたいなものが相当でてきたかなと。」「かなり単身被保護世帯に困難な状況があるので,そこは何とか対応することは必要だと。これはひとつの大きな流れとしてあるのかなというふうに思います。ぜひ,老齢加算もそういう視点で,そこでうまく吸収できるような仕組みが取れればよろしいかなと思います。」d委員「社会的・文化的費用というものが,どの程度,第1類費のところに入り込んでいるのか精査しなければいけないのではないでしょうか。 そこのところは加算にかかわってきます。加算というものの中身が前回母子世帯あるいは高齢者の肉体的な負荷に対する栄養補給であるという側面であったり,あるいは精神的負担に対するコストであるとか,社会的参加が必要だという形のコストだとか,ある意味 いうものの中身が前回母子世帯あるいは高齢者の肉体的な負荷に対する栄養補給であるという側面であったり,あるいは精神的負担に対するコストであるとか,社会的参加が必要だという形のコストだとか,ある意味では肉体的にも精神的にも社会的にも費用であるという形で,いろいろなものが入り込んでいます。逆に全体的な制度構造からすると,生活扶助の第1類費,第2類費どちらに納めた方がいい費目なのか,あるいはもし生活扶助以外でということであれば,どの扶助の中で分けてやった方がいいものなのかという吟味も必要ではないかと思います。」b委員「それなしには最低生活が営めないというものを,加算という形- 82 -で一括化しているというものだと思うのです。もし,加算という形で一定の特性のある者にはこれだけ出すよという形式をやめるとすると,今,特別基準で一定の額は自治体とかでも決定できるということになっているようなので,そこをどう使いやすくしていくか,個人が自治体に自分がこういう需要があると申請したときに,自治体がちゃんと認定してくれるかどうか,その額がどこまで認定できるかというところも個別に対応するということになると,その改善がいるのかなと思います。ただ,個別に特別基準だけで対応していくと,本人にとっては,それが認定されるかどうかというのがとても不安ですし,事務的にもとても大変になってしまうと思いますので,それはやはり特に母子とか一定の特性のある人には,これだけの加算をという一括の定型給付が必要と思います。」e委員「加算も今回の見直しの中でかなり重要な部分なので,議論が集中するのはやむを得ないと思います。ただ,最初から加算ありきというのは,この委員会をやった意味がないのでやめた方がいいと思います。」「加算イコール特別需要と,そういう時代もあったかもしれませんが, 中するのはやむを得ないと思います。ただ,最初から加算ありきというのは,この委員会をやった意味がないのでやめた方がいいと思います。」「加算イコール特別需要と,そういう時代もあったかもしれませんが,今日でははたしてどうなのかということが問われているのではないか。やはり,生活扶助というのは一般需要で,それに対して各種の他の扶助が特別需要に対応するものという体系になっているはずなのです。」「介護保険や,そもそも老人保険制度がなかった時代もあったわけですが,今日そういうのが完全に改善されている中で,老齢加算みたいなものが,年取っただけで上に乗せていいのかという問題が出てくる。」ウ第6回在り方専門委員会で配付された資料第6回在り方専門委員会(平成15年12月2日開催)では,『生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ(案)』(以下「中間取りまとめ案」という。)(乙16の(6))が配付された。中間取りまとめ案の老齢加算に関する記載のうち,本件中間取りまとめと表現が異なる部分を含- 83 -む記載は,下記のとおりである。 記消費支出額全体でみた場合には,70歳以上の高齢者について,現行の老齢加算に相当するだけの特別な需要があるとは認められないため,廃止の方向で見直すべきである。 また,見直しに当たっては,以下の点について考慮すべきとの意見があった。 ・高齢者世帯の社会的費用については一定の需要があると認められるので,生活保護基準の体系の中でその点に配慮すること。 ・年金受給者と被受給者とを区別して取り扱うことについて検討すること・被保護世帯の生活水準が急に低下することのないよう,激変緩和の措置を講じるべきことエ第6回在り方専門委員会での議論等第6回在り方専門委員会(平成15年12月2日開催)では,中間取りまとめ案に対し,以下 帯の生活水準が急に低下することのないよう,激変緩和の措置を講じるべきことエ第6回在り方専門委員会での議論等第6回在り方専門委員会(平成15年12月2日開催)では,中間取りまとめ案に対し,以下の意見が出た(甲2の(6))。 b委員「老齢加算についてこの委員会の今までの議論でどこまで検証できたのかなと振り返ると,議論してきたのは60歳以上の高齢者の方と,それから特に70歳以上の加算の対象になる方を比べて,そこで特別な需要があるかどうかという議論だったかと思います。ただ,そもそも老齢によるある程度の問題があって,それに応じた消費もしているかもしれないという60歳代の方と70歳以上の方を比べて,その比べ方で加算が必要ないんだと,廃止だというところまで明言できるのかということがとても疑問なんです。同じ特性を持った方同士で比べた限りで言えば,それが70歳からでいいのか,それとももうちょっと遅くすべきなのか,それとも同じようなニーズを持っているんだから,いっそのこともっと早くすべき- 84 -かという,何歳から始めるかという議論にはなると思います。額がちょっと高すぎるという議論ぐらいまでは,今までのこの委員会の議論でも可能かなと思うんですが,老齢によるニーズそのものがなくて加算を廃止してもいいんだという結論になるのかなというのがとても疑問です。」「今まで廃止を明言したということでは議論してこなかったものですから,廃止を明言する限りはそこから起きてくる問題をもうちょっとちゃんと議論して,本当に問題がないという議論の上でないと,余り廃止ということが軽々に言えないのではないかと思います。」g委員「この間の議論というのは,たしかに老齢加算の付いている世帯について,他の一般低所得世帯と比べて,若干基準が高いということは,たしかに言われてきましたが 々に言えないのではないかと思います。」g委員「この間の議論というのは,たしかに老齢加算の付いている世帯について,他の一般低所得世帯と比べて,若干基準が高いということは,たしかに言われてきましたが,老齢加算そのものを廃止してというところまで意見として集約するだけの論議をしたかどうか。先ほど,b委員がおっしゃったことの繰り返しになりますが,そのときのメリット・デメリットを十分検討したかどうかということも,もう一度考えた上でないと,やはり廃止の方向で見直すべきというふうにまとめていいんだろうかという疑問があります。」「この文言の中には現行の老齢加算に相当するだけの特別な需要があるとは認められないという表現にはなっております。(中略)実際支給された老齢加算の部分が,その人の生活の最低維持のために使われているという現実も一方であるということが,この委員会の中で問題提起をされているわけで,その辺を含み込んだ形できちんと中間報告をしないと,これはまずいのではないかと。この委員会の開かれた背景に,財政審の建議等で老齢加算,母子加算の在り方について見直せという指示があったことは,私も重々承知しているんです。この間の論議の中間のまとめというふうにしたときに,この廃止という問題提起があって,『そうですね,廃止ですね』という整理の仕方が適切かどうか。むしろ,どういう議論がされたかということを出した上で,それで結果的に減額になると- 85 -か,見直されるということであれば,国民的な説明も付くかと思うんですが,やはりこれですと廃止が前提にあるんじゃないかというふうに受け止められかねないかということで,ここについてはちょっと再考をお願いしたいと思います。」d委員「加算に関しては,廃止を前提にという形の記述になっておりますので,廃止をするならばそれに当た うに受け止められかねないかということで,ここについてはちょっと再考をお願いしたいと思います。」d委員「加算に関しては,廃止を前提にという形の記述になっておりますので,廃止をするならばそれに当たる代替措置をという形で議論が進められたと記憶しております。ですので,そういうふうに表現上変えていただくという形が,この委員会の中では一番適当ではないかと考えます。」e委員「これはデータも出してかなり議論したところなんで,立場上なるべく加算とか,取られればいいとか,現行を維持するというのは別として,やはり生活扶助の加算について議論していたわけだから,医療扶助が必要だったら医療扶助を申請して,きちっとやらなければいけないんです。 医療扶助が入っているからという議論をしてしまうと,生活扶助と医療扶助の体系はどうなのかという議論で,たしか生活扶助と他の扶助との関係,全体の生活の体系の中で低所得者を支援していくんだと。だから,それをすべて加算でという従来の考え方がちょっと古くなっているんじゃないかという議論はしていたと思うので,今まで議論したことを元に戻して,せっかくここまで事務局もあれだけ細かい資料をつくって,データ的にも検証してきたわけなので,出だしに戻るわけにはいかないと思うんです。」d委員「(上記e委員の意見について)たしかにそうだと思います。加算というものが,先ほどデータも出していただいていますので,加算という制度的な体系を使わずに,例えば生活扶助という中ですと,第1類費の中に反映をさせるとか,あるいは他の扶助の中で反映できるとか,そういう形の仕分けをしながらやっていくということで,話が進んでいると思います。ですから,廃止ということがすべてなくなるということではなくて,内容を精査して,それぞれ必要なところに実質的にそれを復元するような- けをしながらやっていくということで,話が進んでいると思います。ですから,廃止ということがすべてなくなるということではなくて,内容を精査して,それぞれ必要なところに実質的にそれを復元するような- 86 -制度的な仕組みにやっていくという形の整理でしていただければいいんではないかと思っています。e委員と私の考え方はそう差はないのではないかというふうに理解しておるんですが」b委員「個別の需要が全員にないというわけでもないわけで,それが第1類費の方で一般化されるかどうかというのは,ちょっと先の話になるかと思います。ちょっと議論がどうなるかわからないのですが,そうなったときに実際の特別な需要を持っていて,例えば65歳とか68歳から条件があれば加算を受けられている方とか,70歳でも特に必要な需要があるという方なんかがたくさんいらっしゃると思いますが,その辺が具体的にどういうふうに条件が悪くならないように,個別にちゃんと認めていけるような手続とか,給付額とか,その設定もちゃんとしておかないと,この廃止だけ先にあるという形になるのはよくないと思います。ですから,その(中間取りまとめ案にある)『激変緩和』というのがそういうことなのかどうかという確認だけさせてください。」オ第14回在り方専門委員会での議論等第14回在り方専門委員会(平成16年7月14日開催)では,老齢加算について,a委員長から,「老齢加算の廃止だけちょっと先行していますが,これは私としては正直言って非常に残念でして,これは単身モデルを作ろうということをここで皆さん合意したわけです。ですから,単身モデルをきちっと作っていけば,また別の水準が実態として出てくるはずですので,どう作るかという問題はありますが,なるべく合理的で一般の人も,自分がもしも生活保護を利用するときになったら, から,単身モデルをきちっと作っていけば,また別の水準が実態として出てくるはずですので,どう作るかという問題はありますが,なるべく合理的で一般の人も,自分がもしも生活保護を利用するときになったら,これで納得できるという水準にきちっと設定して,そこで実は加算の問題を改めて議論してもいいのではないかと私も思うのです。」との意見が出た(甲2の(14))。 (3)厚生労働大臣の判断過程上記(1)に認定の事実及び弁論の全趣旨によれば,厚生労働大臣は,以下- 87 -のア及びイの各点を重視して,本件中間取りまとめにある提言を採用し,70歳以上の高齢者に老齢加算に相当するだけの特別な消費需要があるとは認められず,一般の高齢世帯との比較において,老齢加算のない基準生活費の水準とすることで足りると判断し,老齢加算に関する本件保護基準改定をしたことが認められる。 ア単身無職者の全体(平均)及び低所得者層のいずれについても,70歳以上の者の生活扶助相当消費支出額は,60歳以上69歳以下の者のそれと比較して,むしろ少ないこと(上記(1)カ(ア)認定の事実中の上記比較に関する事実)(以下「比較㨯」という。)イ70歳以上の者の生活保護受給者の老齢加算を除いた生活扶助基準額の平均は,7万1190円であり,70歳以上の単身無職者のうち第Ⅰ-5分位の者の生活扶助相当消費支出額である6万5843円を上回る額であったこと(以下「比較㨯」という。)ウ被保護者高齢単身世帯のうち,老齢加算のある世帯の貯蓄純増額は加算なしの世帯のそれと比較して5519円高く,また,老齢加算のある世帯の翌月への繰越金は,加算のない世帯のそれと比較して1万0977円高かった(上記(1)カ(イ)認定の事実)。 (4)原告らの主張について前示のとおり,本件保護基準改定における厚生労働大臣 ある世帯の翌月への繰越金は,加算のない世帯のそれと比較して1万0977円高かった(上記(1)カ(イ)認定の事実)。 (4)原告らの主張について前示のとおり,本件保護基準改定における厚生労働大臣の判断過程に看過し難い事実の誤認や事実に対する評価の誤り等の不合理な点があり,上記判断がこれに依拠してされたと認められる場合には,厚生労働大臣の上記判断に不合理な点があり,同判断に基づく本件保護基準改定は裁量権を濫用又は逸脱したものとして,違法であると解せられる。 原告らは,前記(第2「7」(2))のとおり主張し,これらは老齢加算に関する本件保護基準改定に不合理な点がある旨の主張と解されるが,これらの主張はいずれも採用し難い。その理由は以下のとおりである。 - 88 -ア検証手法が不合理であるとの主張について(ア)消費支出額により需要の有無を判断することが不合理であるとの主張について原告らは,消費支出額は収入に制約され,生活に必要とされる需要の有無のすべてを反映するわけではないこと,高齢者世帯においては消費支出が抑制されていることなどから,消費支出額を単純に比較するだけで需要の存否を結論付けることは不合理である旨主張する(同ア(ア))。 しかし,消費支出は,通常,生活に必要な財,サービスの購入のための支出であり,その額は生活上の需要の有無,程度を反映したものといえるから,加算対象世帯とそうでない世帯の生活扶助相当消費支出額の比較をすることによって特別需要の存否を判断することは,一定の合理性があり,これが不合理であるとはいえない。 (イ)低所得高齢者世帯を比較することが不合理であるとの主張についてa水準均衡方式から逸脱しているとの主張について原告らは,70歳以上の者と60歳以上69歳以下の者との消費支出額を比較するに当たり,第Ⅰ-1 高齢者世帯を比較することが不合理であるとの主張についてa水準均衡方式から逸脱しているとの主張について原告らは,70歳以上の者と60歳以上69歳以下の者との消費支出額を比較するに当たり,第Ⅰ-10分位や第Ⅰ-5分位の低所得高齢者世帯との比較を行った検証が,水準均衡方式から逸脱するものであり,妥当でない旨主張する(同ア(イ)a)。 しかし,生活扶助基準は,保護基準が最低生活需要を満たしつつ,かつ,これを超えてはならないものとして決定されるべきものであるから,この決定に当たって低所得者世帯の消費支出額を考慮することが不合理であるとはいえない。水準均衡方式は,生活扶助基準額の改定率を算定する方式であるから,その考え方から,上記のような生活扶助基準の妥当性を検証する方法が誤ったものであるということはできない。 b低所得世帯の消費実態を根拠とした点で不合理であるとの主張につ- 89 -いて原告らは,生活保護の捕捉率は低く,生活保護基準より低い収入しかないのに生活保護を受けていない者は保護受給者の5倍から20倍に上ると推定され,これらの者の消費支出は急激に低下しているから,第Ⅰ-10分位や,第Ⅰ-5分位の消費実態に着目した検証方法は不合理である旨主張する(同ア(イ)b)。 そして,比較㨯からは,老齢加算を除いた生活保護基準額が第Ⅰ-5分位の者の実際の消費支出を賄える額であることがいえるにとどまり,それ以上に,これが最低限度の生活を維持するために必要な支出を賄える額であるとまではいえない。また,両者の額や第Ⅰ-5分位の者の収入からみて,第Ⅰ-5分位の者の中には,生活保護基準額を下回る支出で生計を維持している者,さらには,生活保護の要件を充足し,その申請をすれば保護を受けられる者が一定の割合で含まれていることが推認される。 しかし,比較㨯 位の者の中には,生活保護基準額を下回る支出で生計を維持している者,さらには,生活保護の要件を充足し,その申請をすれば保護を受けられる者が一定の割合で含まれていることが推認される。 しかし,比較㨯は第Ⅰ-5分位の者,すなわち下位の2割の者を対象とした比較であり,しかも,その生活扶助相当消費支出額と比べ,70歳以上の者の生活保護受給者の老齢加算を除いた生活扶助基準額の平均は,5347円上回るものであったこと,一般世帯の消費支出に対する被保護世帯のそれの割合は,昭和61年以降,68パーセント程度で推移し,平成13年度及び平成14年度は70パーセントを超える水準に達していることにかんがみれば,上記の点を考慮しても,上記の検証方法が不合理であるとまではいえない。とすれば,上記の点から,厚生労働大臣が主に比較㨯を踏まえて老齢加算のない基準生活費の水準で妥当であると判断したことが,看過しがたい事実の誤認や評価の誤りによるもので不合理であるとはいえない。 (ウ)消費支出額全体により特別需要の存否を判断することが不合理であ- 90 -るとの主張について原告らは,消費構造の比較検討をしないで,消費支出額を単純に比較した検証方法は不合理である旨主張する(同ア(ウ))。 そして,上記(1)に認定のとおり,昭和55年中間的とりまとめの際に行われた検証及び昭和58年意見具申の際に行われた検証の結果は,高齢者には,食費,高熱費,保健衛生費,社会的費用等について特別需要があり,老齢加算には合理性があるというもので,これらの検証方法は,老夫婦世帯の消費構造の分析を行って,消費支出全体に占める各消費費目の「構成比」を求め,この構成比に従った修正値を算出した上で,比較対象世帯との支出額の比較を行うというものであったこと,ところが,厚生労働大臣が老齢加算に関する本 て,消費支出全体に占める各消費費目の「構成比」を求め,この構成比に従った修正値を算出した上で,比較対象世帯との支出額の比較を行うというものであったこと,ところが,厚生労働大臣が老齢加算に関する本件保護基準改定の根拠とした消費支出額に関する検証は,上記の従来の方法によらず,70歳以上の者の生活扶助相当消費支出額と60歳以上69歳以下の者のそれとを単純に比較するという方法によったものであったことが認められる。 しかし,上記の従来の検証方法は,高齢者の各支出費目の構成比に基づき,その支出総額が比較対象とした年代の支出総額と同一となると仮定して按分した額を高齢者の各費目ごとの支出額とみなして,高齢者の方が高い費目のみの差額を積算したというものであり,この方法によって得られた上記差額の合計額が高齢者の特別な需要に相当するという根拠を合理的に説明することは容易でなく,少なくとも,これによらなければ,不合理であるとまではいえない。一方,消費支出額が需要を反映するものであることからすれば,消費支出額をそのまま比較して特別需要の存否を判断することが,看過し難いほどの事実の誤認あるいは評価の誤りであり,不合理であるともいい難い。 もっとも,厚生労働大臣は,上記の検証方法変更の理由について,国民から見て必ずしも納得できる説明をしたとはいい難いが,これは政治- 91 -的あるいは社会的に問題とされる事項ではあるといえても,上記の結論を覆すものとまではいえない。 (エ)70歳以上の者と60歳以上69歳以下の者とを比較することが不合理であるとの主張について原告らは,上記の者らは同じ特性を持つ者同士であり,これらを比較するという検証方法は不合理である旨主張をする(同ア(エ))。 しかし,老齢加算制度が70歳以上の者を対象とするものであり,その根拠が70歳以 は,上記の者らは同じ特性を持つ者同士であり,これらを比較するという検証方法は不合理である旨主張をする(同ア(エ))。 しかし,老齢加算制度が70歳以上の者を対象とするものであり,その根拠が70歳以上の者に特別な需要があるという点にあったことからすれば,上記のような比較によって特別な需要の存否を検証することが不合理であるとはいえない。 イ検証資料が不合理であるとの主張について(ア)原告らは,今回の検証の一部の基礎資料となった全国消費実態調査の特別集計が不透明であるとの主張をする(同イ(ア))。 しかし,全国消費実態調査の特別集計は,厚生労働大臣が,統計法(昭和22年3月26日法律第18号。以下同じ。)15条2項の規定に基づく総務大臣の承認を得て,家計調査,全国消費実態調査の調査票を入手し,属性別の収入・支出額を集計するものであって,上記承認は官報に告示されるものである(乙20(1)ないし(3))。また,全国消費実態調査は,総務省が,統計法による指定統計調査として,全国消費実態調査規則に基づいて実施するものである(乙35)。以上の点にかんがみれば,全国消費実態調査の特別集計が不透明であるとはいえない。 (イ)また,原告らは,平成11年全国消費実態調査結果表第26表(甲5)を集計した結果が,第4回在り方専門委員会で提出された資料(乙10,16の(4))の結果と異なるから,その数値に信憑性はない旨主張する(同イ(イ))。そして,たしかに,上記第26表によれば,単身,無職者世帯について,65歳以上69歳以下の消費支出額は平均15万- 92 -6981円,70歳以上74歳以下の消費支出額は平均16万1600円となっていることは認められる(甲5)。しかし,被告らの指摘のとおり,その理由は,65歳以上69歳以下の可処分所得が14万7329円 981円,70歳以上74歳以下の消費支出額は平均16万1600円となっていることは認められる(甲5)。しかし,被告らの指摘のとおり,その理由は,65歳以上69歳以下の可処分所得が14万7329円であるのに対し,70歳以上74歳以下の可処分所得が16万0882円であること(甲5)が影響している可能性が強い。また,そもそも,第4回在り方専門委員会で提出された上記資料の年齢区分は70歳以上の者と60歳以上69歳以下の者であって,上記第26表とは年齢区分が異なる。以上の点からすれば,原告らの上記主張は採用できない。 ウ基準生活費の見直しをせずに老齢加算を廃止したことが不合理であるとの主張について(ア)特別需要の未充足について原告らは,個別に特別需要を持っている高齢者が存在するのであるから,個別の認定,給付措置を講じるべきであったのに,これをしなかったことが不合理である旨主張する(同ウ(ア))が,これを認めるに足りる客観的な証拠はない。 (イ)最低生活費の未充足との主張についてa原告らは,高齢者に対する第1類費基準額の伸びが抑制されてきたのは,老齢加算が存在していたからであり,老齢加算は高齢者の第1類費を補完する役割を果たしていたのであるから,老齢加算の廃止は,最低生活費が充足されない事態をもたらすものである旨主張する(同ウ(イ)a)。 証拠(甲20)及び弁論の全趣旨によれば,①70歳男子の平成17年の第1類費基準額の伸び率及び増加額は,昭和59年比で106パーセント,1900円増額,平成元年比で105パーセント,1470円増額であり,また,70歳女子のそれは昭和59年比で111パーセント,3080円増額,平成元年比で105パーセント,14- 93 -70円増額であること,②これに対し,生活扶助基準額設定のモデルとされている標 た,70歳女子のそれは昭和59年比で111パーセント,3080円増額,平成元年比で105パーセント,14- 93 -70円増額であること,②これに対し,生活扶助基準額設定のモデルとされている標準3人世帯の構成員である年齢の者の第1類費の伸び率は,33歳男子で,昭和59年比124パーセント,7840円増額,平成元年比116パーセント,5630円増額,29歳女子で,昭和59年比129パーセント,9140円増額,平成元年比116パーセント,5630円増額,4歳の子供で,昭和59年比123パーセント,4920円増額,平成元年比で113パーセント,2990円増額であることが認められ,この事実によれば,高齢者の第1類費基準額の伸び率及び増加額は,他の年齢層に比べ,かなり低い水準に抑えられたものになっているといえる。この点に加えて,前記認定の老齢加算の額をも併せ考慮すると,厚生労働大臣は,生活扶助基準額の改定を行う過程において,老齢加算制度の存在をも一つの考慮要素として斟酌し,70歳以上の高齢者の生活扶助基準額を抑制したものと推認される。 しかし,証拠(乙36)及び弁論の全趣旨によれば,従来,生活保護の高齢者の年齢区分は,60歳以上64歳以下と65歳以上とに区分されていたが,厚生労働大臣は,平成元年度,60歳以上69歳以下と70歳以上という区分の変更を行い,以降,70歳以上の者だけでなく65歳以上69歳以下の者についても,第1類費の伸びを抑制し,60歳代の者の基準額を同一のものとしたこと,厚生労働大臣がこのような処置を講じた理由は,平成元年まで,第1類費は60歳以上64歳以下の者よりも65歳以上の者の方が多額に設定されていたが,消費実態としては,70歳以上の者の第1類費相当の支出額は69歳以下の者のそれよりも低額であったため,第1類費を上 1類費は60歳以上64歳以下の者よりも65歳以上の者の方が多額に設定されていたが,消費実態としては,70歳以上の者の第1類費相当の支出額は69歳以下の者のそれよりも低額であったため,第1類費を上記のような消費実態に相応したものしようとした点にあったことが認められる。 厚生労働大臣が70歳以上の高齢者の生活扶助基準額を抑制した主な- 94 -理由は,上記認定のとおりであり,その判断が不合理であるとまではいえず,老齢加算の廃止は,70歳以上の者の最低生活費が充足されない事態をもたらすものであるとまではいえない。 b原告らは,本件中間取りまとめの記載を根拠に,単身高齢者世帯の第1類費,第2類費の基準の見直しをしないまま,老齢加算の廃止をしたことは不合理である旨主張する(同ウ(イ)b)。 本件中間取りまとめは,「単身世帯の生活扶助基準における第1類費及び第2類費の構成割合については,現在の3人世帯を基軸とする基準設定では,必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとはなっていない。したがって,(中略)被保護世帯の約7割が単身世帯であること,単身世帯における第1類費と第2類費については一般世帯の消費実態からみて,これらを区分する実質的意味が乏しいことを踏まえ,単身世帯については,一般低所得者世帯との均衡を踏まえて別途の生活扶助基準を設定することについて検討することが望ましい。」旨提言していたことが認められる(乙2)。 しかし,上記提言は,別途の生活扶助基準を設定することについて検討することが望ましいとし,これを検討課題として提案しているものであり,これをしないで老齢加算の廃止することは相当でないとの趣旨のものではないと解される。また,老齢加算の廃止の理由は70歳以上の者に特有の消費需要は認められないという点にあり,この判断が合理性を あり,これをしないで老齢加算の廃止することは相当でないとの趣旨のものではないと解される。また,老齢加算の廃止の理由は70歳以上の者に特有の消費需要は認められないという点にあり,この判断が合理性を欠くものとはいえないことは前示のとおりであるから,単身高齢者世帯の第1類費,第2類費の基準の見直しをしないで老齢加算を廃止することが不合理であるとまではいえない。 c原告らは,本件中間取りまとめにあるとおり,代替案の検討を行うべきであるのに,これを行うことなく老齢加算の段階的廃止をしたことは不合理である旨主張する(同ウ(イ)c)。 - 95 -たしかに,本件中間取りまとめには,「高齢者世帯の社会生活に必要な費用に配慮して,生活保護基準の体系の中で高齢者世帯の最低生活基準が維持されるよう引き続き検討する必要がある。」とされているが,上記記述は,今後の課題を述べたものにとどまり,代替措置の検討及び実施が老齢加算廃止の条件であると述べたものとは解されない。また,上記bで判示した老齢加算廃止の理由という点からみて,代替措置の検討及び実施をしなければ老齢加算の廃止自体が不合理であるなどとはいえない。 エ本件中間取りまとめの問題点として指摘する主張について(ア)在り方専門委員会設置に至る経緯に問題があったとの主張について原告らは,在り方専門委員会での各委員が,平成15年6月9日の財政制度等審議会の建議や,「骨太の方針2003」を意識した上で審議を行わざるを得なかったこと,検討のための十分な時間が与えられていなかったことを指摘する(同エ(ア))。 そして,前記認定のとおり,老齢加算,母子加算は廃止に向けた検討が必要である旨の財政制度等審議会の建議の内容,老齢加算等の扶助基準などの見直しが必要である旨の経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003 前記認定のとおり,老齢加算,母子加算は廃止に向けた検討が必要である旨の財政制度等審議会の建議の内容,老齢加算等の扶助基準などの見直しが必要である旨の経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003(「骨太の方針」)の内容が記載された説明資料が,同年8月6日に開催された第1回在り方専門委員会で配付され(乙16の(1)),在り方専門委員会の各委員がこれらを意識していた上で議論をしたことは推認される。 しかし,同各委員が上記のような意識を抱くのはむしろ当然のことであって,これが不合理であるとはいえない。また在り方専門委員会の開催回数等からみて,十分な時間が与えられなかったともいえない。 (イ)十分な議論がなされなかったとの主張について原告らは,在り方専門委員会において十分な議論がなされなかった旨- 96 -主張する(同エ(イ))が,在り方専門委員会での議論の内容は上記(2)に認定のとおりであり,これにかんがみれば,老齢加算廃止について反対意見も述べられ,活発な議論がなされたものと認められるから,議論が不十分であったともいえない。 (ウ)本件中間取りまとめが在り方専門委員会の意見集約によるものとはいい難い旨の主張について原告らは,老齢加算を廃止の方向で見直すべきであるとする本件中間取りまとめが,在り方専門委員会での意見集約によるものとはいい難い旨の主張をする(同エ(ウ))。 上記(2)に認定のとおり,中間取りまとめ案が作成される前の在り方専門委員会では,老齢加算を廃止すべきであるとの意見も出たが(第4回・c委員,e委員,第5回・h委員),反対意見も出され(第5回・b委員)た。また,特別需要がなくなったとはいえないのではないかとの意見(第4回・d委員),単身世帯の生活保護基準額が低い中で老齢加算を廃止することは大きな影響があるという点を 見も出され(第5回・b委員)た。また,特別需要がなくなったとはいえないのではないかとの意見(第4回・d委員),単身世帯の生活保護基準額が低い中で老齢加算を廃止することは大きな影響があるという点を考慮して検討をすべきであるなどの意見(第4回・g委員,第5回・f委員)があった。 また,中間取りまとめ案作成後には,データによる検証を行った以上,老齢加算の廃止をしないというところまで議論を戻すことはできないのではないかとの意見(第6回・e委員)があった一方,中間取りまとめ案の表現について,廃止することによって生じる問題を議論を十分に行わないまま,廃止を明言することは危険ではないかとの意見(第6回・b委員),中間取りまとめ案作成前の段階では,廃止という意見に集約していないのではないかとの意見(第6回・g委員)が出た。 以上の点に照らせば,本件中間取りまとめは,在り方専門委員会の各委員の全員一致によって了承されたものとは認め難いが,本件中間取りまとめのただし書を設けることによって,少なくとも,その大勢を占め- 97 -た意見として集約されたものと推認される(ただし,前示のとおり,本件中間取りまとめの提言が上記ただし書にある施策の実施を老齢加算廃止の条件とするものであったとまでは解されない。)。 したがって,老齢加算に関する本件保護基準改定が本件中間取りまとめに依拠してなされたことが不合理であるとはいえない。 (エ)老齢加算廃止方針の既成事実化との主張について原告らは,中間取りまとめ案が在り方専門委員会に示され,修正が加えられる前に,これが,在り方専門委員会の提言として確立されてしまった旨主張する(同エ(エ))。 この点,中間取りまとめ案が在り方専門委員会で修正を加えられる前である平成15年12月5日に,年金・医療・介護・生活保護等の分野の制 委員会の提言として確立されてしまった旨主張する(同エ(エ))。 この点,中間取りまとめ案が在り方専門委員会で修正を加えられる前である平成15年12月5日に,年金・医療・介護・生活保護等の分野の制度改革等により社会保障関係の自然増を6900億円以下に抑制すること,老齢加算等の扶助基準などについて見直しを行うことなどが閣議決定されたことは認められる(甲31)が,同閣議決定で老齢加算の廃止までもが決定されたわけではないから,原告らの上記主張は前提を欠く。 (オ)本件中間取りまとめに反するとの主張について原告らは,代替措置を講じることなく老齢加算を段階的廃止としたことが,在り方専門委員会や,本件中間取りまとめの提言内容に反する旨主張する(同エ(オ))。 本件中間取りまとめは,ただし書として,「高齢者世帯の社会生活に必要な費用に配慮して,生活保護基準の体系の中で高齢者世帯の最低生活水準が維持されるよう引き続き検討する必要がある。」と提言している。そして,上記(2)で認定のとおり,中間取りまとめ案作成前の在り方専門委員会において,老齢加算をまず廃止してから,その後の措置を検討するのではなく,加算に代わる別の制度構築をセットで行うべきで- 98 -あるとの意見(第4回・a委員長),単身世帯の生活扶助基準が低い中で老齢加算を廃止することは大きな影響があるという点を考慮して検討をすべきであるとの意見(第4回・g委員,第5回・f委員),廃止してすべてなくすのではなく,必要なところに実質的に復元するというような制度設計をすべきではないかとの意見(第5回・d委員)が出たこと,中間取りまとめ案作成後,その表現に対して,廃止をするのであれば代替措置をという議論をしたのであるから,表現を変更すべきであるとの意見(第6回・d委員)が出たこと,厚生労働大臣が 委員)が出たこと,中間取りまとめ案作成後,その表現に対して,廃止をするのであれば代替措置をという議論をしたのであるから,表現を変更すべきであるとの意見(第6回・d委員)が出たこと,厚生労働大臣が老齢加算制度の段階的削減の方針を示した後の在り方専門委員会において,老齢加算の廃止だけが先行し,単身世帯の基準の見直し等が行われていないことが残念であるとの意見(第14回・a委員長)が出たことが認められる。 しかし,本件中間取りまとめは,老齢加算を廃止の方向で見直すべきであるとした上で,上記のただし書を設け,このただし書は「引き続き検討する必要がある。」としたものにとどまることからすれば,代替措置の施策を実施することを老齢加算廃止の条件とするものであるとは解されない。したがって,原告らの上記主張は前提を欠く。 もっとも,本件中間取りまとめは,老齢加算を廃止するのであれば,上記の代替措置を近い将来実施することを提言したものであると解される。したがって,厚生労働大臣が,本件中間取りまとめが老齢加算を廃止しても将来的にも代替措置を実施することを求めてはいないとの誤った解釈をし,老齢加算を廃止した後においても上記の代替措置を実施しないとすれば,これは本件中間取りまとめの提言に反する行為といえる。 しかし,本件中間取りまとめが老齢加算制度の見直しを提言していること,厚生労働大臣の保護基準改定が本件中間取りまとめに全面的に従ったものでなければならないものでもないこと等の点からすれば,上記の点を理由として直ちに老齢加算に関する本件保護基準改定が違法である- 99 -とまではいえない。それは,政治的,社会的な問題として解決されるべき事柄であるというほかない。 オ告示前の処分であるとの主張について別紙(7)「原告らに対する処分・告示年月日」(省略;以下同) -とまではいえない。それは,政治的,社会的な問題として解決されるべき事柄であるというほかない。 オ告示前の処分であるとの主張について別紙(7)「原告らに対する処分・告示年月日」(省略;以下同)記載のとおり,本件各決定のうち,原告Sに対する平成17年4月1日付け,原告T及び同Uに対する平成16年3月26日付け及び平成17年4月1日付け,原告V及び同Wに対する平成17年4月1日付けの各保護変更決定を除いた決定は,老齢加算に関する本件保護基準改定の告示前になされたものである。 しかし,証拠(乙41の(1)ないし(4))及び弁論の全趣旨によれば,本件各決定の前である平成16年3月4日及び平成17年3月2日,厚生労働省は,全国の自治体に対し,平成16年度又は平成17年度の保護基準の改定について説明するとともに告示案を示したこと,本件各決定は,この告示案に基づいてなされたものであることが認められる。これに加え,告示をまって保護の変更手続を行っていては支給事務に支障を来たすおそれがあることからすれば,上記告示前になされた決定であっても,違法であるとまではいえない。 本案の争点(3)(母子加算廃止の合理性)について(1)母子加算創設以後の検証方法等前記争いのない事実,証拠(甲26の(1),(2),27の(2),(4),乙1の(2),2,7,8,10,16の(4),38の(1)ないし(4),66ないし68)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア母子加算は,母子世帯の特別需要に対応するものとして,昭和24年5月に創設された。 イ昭和55年中間的とりまとめに至る母子加算の検証方法及び検証結果等(ア)第76回生活保護専門分科会の資料における検証- 100 -昭和55年5月17日に行われた第76回生活保護専門分科会には,昭 和55年中間的とりまとめに至る母子加算の検証方法及び検証結果等(ア)第76回生活保護専門分科会の資料における検証- 100 -昭和55年5月17日に行われた第76回生活保護専門分科会には,昭和49年全国消費実態調査の統計結果を基にして,一般勤労世帯(夫婦と子)と母子勤労世帯の消費支出の比較を行った「母子世帯の消費支出」との資料(甲26の(1))が提出された。 上記資料は,母子勤労世帯の消費構造の分析を行って,消費支出全体に占める各消費費目の割合を「構成比」として算出し,この構成比に従って母子勤労世帯の各消費費目の支出額の修正値をそれぞれ求めた上,この各消費費目の修正値を,一般勤労世帯の各消費費目の支出額と比較するというものであった。これによれば,主に食料費,被服費,理容衛生,教育・文房具,教養娯楽の消費支出額は,母子勤労世帯が,一般勤労世帯を上回っていた。 (イ)第77回生活保護専門分科会の資料における検証昭和55年6月28日に行われた第77回生活保護専門分科会には,昭和49年全国消費実態調査の統計結果を基にして,母子世帯と一般世帯の構成比の比較を行った「母子世帯の収入・支出の内訳」との資料(甲26の(2))が提出された。 上記資料は,母子世帯平均での各消費費目の構成比,一般世帯(夫婦子2人)と収入・支出額がほぼ同額の母子世帯の各消費費目の構成比をそれぞれ算出し,これらと,一般世帯(夫婦子1人世帯及び夫婦子2人世帯)の各消費費目の各構成比とを,それぞれ比較するというものであった。これによれば,主に食料費のうち外食費用,被服費,理容衛生,交通通信,教育費,文房具費用,教養娯楽費,交際費については,母子世帯平均の構成比,一般世帯と収入・支出額がほぼ同額の母子世帯の構成比は,いずれも,一般世帯(夫婦子1人世帯及び夫婦子2人世帯)の ,交通通信,教育費,文房具費用,教養娯楽費,交際費については,母子世帯平均の構成比,一般世帯と収入・支出額がほぼ同額の母子世帯の構成比は,いずれも,一般世帯(夫婦子1人世帯及び夫婦子2人世帯)の各構成比を上回っていた。 (ウ)昭和55年中間的とりまとめ- 101 -以上の検証を踏まえた昭和55年中間的とりまとめでは,「母子については,一方の配偶者が欠けた状態にある者が児童を養育しなければならないことに対応して,通常以上の労作に伴う増加エネルギー,家庭の安全保持の費用,社会的参加に伴う被服費,片親がいないことによる児童の精神的負担を和らげ,健全な育成を図るための費用などを余分に必要とする。」との見解が示された(乙7の7頁)。 ウ昭和58年意見具申に至る母子加算の検証方法及び検証結果(ア)昭和58年5月24日の生活保護専門分科会の資料昭和58年5月24日に行われた生活保護専門分科会には,昭和54年全国消費実態調査の統計結果を基にして,夫婦世帯と母子子供1人世帯の各消費費目の比較を行った「加算対象世帯の特別需要の測定及び加算額との比較」との資料(甲27の(2))が提出された。 a上記資料は,母子(子供1人)世帯の消費支出全体に占める各消費費目の割合を「構成比」として算出し,この構成比に従って,各消費費目の支出額の修正値をそれぞれ求めた上,この修正値と,夫婦世帯(140万円未満)の各消費費目の支出額と比較するというものであった。 その結果,母子(子供1人)世帯には,1万3598円の特別需要があるとされた。 bまた,上記資料は,母子(子供1人)世帯(140万円ないし179万円)の世帯の消費支出全体に占める各消費費目の割合を「構成比」として算出し,この構成比に従って,各消費費目の支出額の修正値をそれぞれ求めた上,この修正値と,夫 供1人)世帯(140万円ないし179万円)の世帯の消費支出全体に占める各消費費目の割合を「構成比」として算出し,この構成比に従って,各消費費目の支出額の修正値をそれぞれ求めた上,この修正値と,夫婦世帯(100万円~139万円)の世帯の消費費目の支出額とを,それぞれ比較するというものでもあった。 その結果,母子(子供1人)世帯(140万円ないし179万円)- 102 -には,1万3457円の特別需要があるとされた。 (イ)昭和58年10月5日の生活保護分科会昭和58年10月5日に行われた生活保護分科会には,「加算の定性的説明について」との資料(甲27の(4))が提出された。 上記資料は,母子加算に関する特別需要について,「加工食品…母の就労等に伴い,調理時間が制限されるため,出来合いのものを買う。栄養的には,非効率であり,かつ割高となる。」「外食…母の就労等に伴い,機会が多くなる(就労先の給食機会も少ない)。また,母の就労中等,子の外食の機会も増える。」「家計什器…離婚等で転居の場合が多く,家財道具等の買い増しの場合が多く費用が余分にかかる。」「被服・身の回り品,理容衛生…就労や社会のつき合い等,外出機会が多いため,一般家庭の主婦よりも余分に必要となる。」「教養娯楽…片親の欠けた子の養育のため,遊園地に行ったり等の機会が両親がそろった子の場合よりも多くなる。また,留守中の子のため,遊具等を余分に買う。」旨説明するものであった。 (ウ)昭和58年意見具申以上の検証を踏まえた昭和58年意見具申では,「当審議会生活保護専門分科会は,低所得世帯の家計に関する各種の資料を基にして,加算対象世帯一般と一般世帯との消費構造を比較検討した。」「その結果,(中略)母子(中略)の特別需要としては,(中略)片親不在という社会的・心理的障害(中略) 帯の家計に関する各種の資料を基にして,加算対象世帯一般と一般世帯との消費構造を比較検討した。」「その結果,(中略)母子(中略)の特別需要としては,(中略)片親不在という社会的・心理的障害(中略)に対応する食費,光熱費,保健衛生費,社会的費用(中略)などの加算対象経費が認められているが,その額はおおむね現行の加算額で充たされている。」との見解が示された(乙8の2頁以下)。 エ平成15年11月18日開催の第4回在り方専門委員会同委員会において,平成11年全国消費実態調査特別集計に基づき,一- 103 -般母子世帯の消費支出を所得階層別に集計し,その生活扶助相当消費支出と被保護母子世帯の生活扶助基準とを比較し,検討した資料(乙16の(4)「説明資料」)が各委員に配付された。 上記資料による検討結果は,以下のとおりであった。 (ア)被保護世帯の生活扶助基準額母子加算を加えた被保護母子世帯の生活扶助基準額は,子供1人世帯で13万8084円,子供2人世帯で17万9274円であり,母子加算を除いた被保護母子世帯の生活扶助基準額は,子供1人世帯で11万6086円,子供2人世帯で15万5527円であった。この生活扶助基準額は,生活扶助基準額が級地別,年齢階級別に異なるものであることから,一般世帯の実際の所在地及び年齢階級分布によってウェイト付けをして加重平均して算出したものである。 (イ)一般母子世帯一般母子世帯の生活扶助相当消費支出額は,以下のとおりであった。 a全国平均一般母子世帯の全国平均では,子供1人世帯の生活扶助相当消費支出額は13万0310円,子供2人母子世帯の生活扶助相当消費支出額は平均14万4772円であった。また,そのうち,勤労母子世帯をみると,子供1人世帯の生活扶助相当消費支出額は12万1061円,子供2人世帯の生活 310円,子供2人母子世帯の生活扶助相当消費支出額は平均14万4772円であった。また,そのうち,勤労母子世帯をみると,子供1人世帯の生活扶助相当消費支出額は12万1061円,子供2人世帯の生活扶助相当消費支出額は13万8841円であった。 b第Ⅰ-5分位世帯平均第Ⅰ-5分位の全母子世帯平均では,子供1人世帯の生活扶助相当消費支出額は8万5999円,子供2人世帯の生活扶助相当消費支出額は10万3839円であった。また,そのうち勤労母子世帯をみると,子供1人世帯の生活扶助相当消費支出額は7万8626円,子供- 104 -2人世帯の生活扶助相当消費支出額は10万4049円であった。 c第Ⅰ-10分位世帯平均第Ⅰ-10分位の全母子世帯平均では,子供1人世帯の生活扶助相当消費支出額は7万8733円,子供2人世帯の生活扶助相当消費支出額は11万0720円であった。また,そのうち勤労母子世帯をみると,子供1人世帯の生活扶助相当消費支出額は7万6009円,子供2人世帯の生活扶助相当消費支出額は11万5139円であった。 d第Ⅱ-5分位世帯平均第Ⅱ-5分位の全母子世帯では,子供1人世帯の生活扶助相当消費支出額は11万2621円,子供2人世帯の生活扶助相当消費支出額は10万8492円であった。また,そのうち勤労母子世帯をみると,子供1人世帯の生活扶助相当消費支出額は9万8120円,子供2人世帯の生活扶助相当消費支出額は10万2250円であった。 e第Ⅲ-5分位世帯平均第Ⅲ-5分位の全母子世帯平均では,子供1人世帯の生活扶助相当消費支出額は13万0299円,子供2人世帯の生活扶助相当消費支出額は13万1302円であった。また,そのうち勤労母子世帯をみると,子供1人世帯の生活扶助相当消費支出額は11万8136円,子供2人世帯の生活扶助相当 0299円,子供2人世帯の生活扶助相当消費支出額は13万1302円であった。また,そのうち勤労母子世帯をみると,子供1人世帯の生活扶助相当消費支出額は11万8136円,子供2人世帯の生活扶助相当消費支出額は12万8859円であった。 オ本件中間取りまとめ(乙2)本件中間取りまとめ(平成15年12月16日)には,「一般低所得母子世帯の消費支出額との比較において,母子加算を加えた被保護母子世帯の生活扶助基準額が高いことが認められる。」「しかしながら,母子加算の見直しについては,これがひとり親世帯等における子供の養育への特別需要に対応していることも踏まえ,ひとり親世帯等の生活実態を把握した上で検討することが必要であり,その際には,ひとり親世帯等に対する自- 105 -立支援の在り方,勤労控除や他の扶助の在り方,他の母子福祉施策等との連携の在り方について議論した結果を踏まえることが適当である。」との記載がなされた。 カ平成16年7月14日開催の第14回在り方専門委員会同委員会では,平成11年度全国消費実態調査特別集計に基づき,母子世帯の消費支出額と夫婦子供世帯の消費支出額とを費目別に比較し,検討した資料(乙38の(2)「説明資料」2頁)が各委員に配付された。 その検討結果は,以下のとおりであった。 (ア)全体平均(子供1人)夫婦・子供1人世帯の全体平均では,生活扶助相当消費支出額は18万8608円,そのうち食料の消費支出額は6万3402円,「外食」は1万1762円,被服及び履物の消費支出額は1万2414円であった。 他方,母子・子供1人世帯の全体平均では,生活扶助相当消費支出額は12万1061円,そのうち食料の消費支出額は4万6819円,「外食」は8515円,被服及び履物の消費支出額は9494円であった。 (イ)全体平均(子供2 の全体平均では,生活扶助相当消費支出額は12万1061円,そのうち食料の消費支出額は4万6819円,「外食」は8515円,被服及び履物の消費支出額は9494円であった。 (イ)全体平均(子供2人)夫婦・子供2人世帯の全体平均では,生活扶助相当消費支出額は20万4467円,そのうち食料の消費支出額は7万3036円,「外食」は1万1807円,被服及び履物の消費支出額は1万2820円であった。 他方,母子・子供2人世帯の全体平均では,生活扶助相当消費支出額は13万8841円,そのうち食料の消費支出額は5万7839円,「外食」は8692円,被服及び履物の消費支出額は9435円であった。 - 106 -(ウ)夫婦子供世帯の第Ⅰ-5分位と母子子供世帯の第Ⅲ-5分位(子供1人)第Ⅰ-5分位の夫婦・子供1人世帯では,生活扶助相当消費支出額は13万7142円,そのうち食料の消費支出額は4万8292円,「外食」は7701円,被服及び履物の消費支出額は8346円であった。 他方,第Ⅲ-5分位の母子・子供1人世帯では,生活扶助相当消費支出額は11万8136円,そのうち食料の消費支出額は4万7408円,「外食」は1万0027円,被服及び履物の消費支出額は1万1363円であった。 (エ)夫婦子供世帯の第Ⅰ-5分位と母子子供世帯の第Ⅲ-5分位(子供2人)第Ⅰ-5分位の夫婦・子供2人世帯では,生活扶助相当消費支出額は14万7636円,そのうち食料の消費支出額は5万6330円,「外食」は7786円,被服及び履物の消費支出額は8983円であった。 他方,第Ⅲ-5分位の母子・子供2人世帯では,生活扶助相当消費支出額は12万8858円,そのうち食料の消費支出額は5万5442円,「外食」は6287円,被服及び履物の消費支出額は9077円であった。 キ平成16 位の母子・子供2人世帯では,生活扶助相当消費支出額は12万8858円,そのうち食料の消費支出額は5万5442円,「外食」は6287円,被服及び履物の消費支出額は9077円であった。 キ平成16年10月27日開催の第17回在り方専門委員会同委員会には,平成11年度全国消費実態調査特別集計に基づき,ひとり親の勤労者世帯の消費支出額とひとり親の勤労者以外の世帯(無職世帯の他に世帯主が会社役員の世帯を含む)の消費支出額とを費目別に比較し,検討した資料(乙38の(4)「説明資料」5頁)が各委員に配付された。 上記検討結果は,以下のとおりであった。 (ア)消費支出額は,勤労者世帯は18万7648円であるのに対し,勤労者以外の世帯は22万7026円であった。 - 107 -(イ)外食費は,勤労者世帯は1万1937円であるのに対し,勤労者以外の世帯は1万1030円であった。 (ウ)婦人用洋服は,勤労者世帯は2896円であるのに対し,勤労者以外の世帯は2203円であった。 (エ)上記以外にも,授業料等,補習教育,その他諸雑費等(保育所費用等),交際費といった特定の費目については,勤労者世帯の方が,勤労者以外の世帯より,支出額が多かった。 ク平成16年度報告平成16年度報告にある提言は以下のとおりであった(乙1の(2))。 (ア)消費水準母子加算を加えた被保護母子世帯の生活扶助基準額は一般母子世帯の消費支出額よりも高い。また,母子加算を除いた生活扶助基準額は,一般勤労母子世帯の生活扶助相当消費支出額と概ね均衡している。 (イ)消費実態一般勤労母子世帯の消費支出額と一般勤労夫婦子供世帯の消費支出の比較においては,外食費や被服及び履物費等について母子世帯の方が支出額が多い。 ひとり親勤労世帯の消費支出額とひとり親勤労以外世帯の消費支出額との 世帯の消費支出額と一般勤労夫婦子供世帯の消費支出の比較においては,外食費や被服及び履物費等について母子世帯の方が支出額が多い。 ひとり親勤労世帯の消費支出額とひとり親勤労以外世帯の消費支出額との比較においては,外食費,洋服費等に関し,勤労世帯の支出額の方が多い。 (ウ)以上の結果より,一般母子世帯の消費水準との比較の観点からは,現行の母子加算は必ずしも妥当であるとはいえない。しかし,母子世帯は一般的に所得が低いことや上記消費水準の統計調査における一般母子世帯の客体数の少なさから,一般母子世帯の消費支出額との単純な比較により被保護母子世帯の基準の妥当性を判断することはできないのではないかという指摘があった。また,一般勤労母子世帯において,勤労し- 108 -ているが故に生じる追加的な消費需要があることにも留意する必要がある。 これに関し,社会生活に関する調査及び全国母子世帯等調査等により把握された一般母子世帯の生活実態として,(中略)多くが何らかの形で就労しているにもかかわらず,約8割が苦しい状況にあると回答しており,このように,一般母子世帯も苦しい生活状況にあることから,養育のための追加的支出にも対応する必要がある,との意見も見られた。 また被保護母子世帯においては交際費や子供との外出等の充足が低いなどの特徴もあったことから,これらの点も考慮する必要があるとの意見もあった。 以上を考え合わせれば,母子加算の見直しの方向性としては,現行の一律・機械的な給付を見直し,ひとり親世帯の親の就労に伴う追加的な消費需要に配慮するとともに,世帯の自立に向けた給付に転換することとし,これに沿って支給要件,支給金額,名称・支給名目等を見直すことが考えられる。(中略)ただし,見直しに当たっては,①子供が大きくなるにつれ,養育にかかる手間が減少し, に向けた給付に転換することとし,これに沿って支給要件,支給金額,名称・支給名目等を見直すことが考えられる。(中略)ただし,見直しに当たっては,①子供が大きくなるにつれ,養育にかかる手間が減少し,また子供が家事を行うことが可能になることから,就労可能性や就労可能時間が拡大するとともに,勤労しつつ子育てをすることに伴う支出(外食費等)も減少し,世帯としての自立の可能性が増すこと,②(中略)生活保護制度において高等学校の就学費用への対応を検討することとすることなど,子供の成長に伴って養育に必要な費用が変化すること(中略)をも十分勘案して検討する必要がある。 ケ厚生労働大臣は,上記報告を踏まえ,母子加算に関する本件保護基準改定を行った。 コ高等学校等就学費の創設,制度内容(乙66ないし68)平成17年度から,高等学校等就学費が創設され,高等学校等に就学す- 109 -る子供を養育する世帯に対し,基本額,学級費,教育代等の給付が行われるようになった。ここにいう高等学校等とは,高等学校のほか,中等教育学校の後期課程,高等専門学校,盲学校,聾学校及び養護学校の高等部(別科を除く)並びに高等学校等での就学に準ずるものと認められる専修学校及び各種学校である。また,期間は正規の就学年限とされている。 (2)母子加算に関する在り方専門委員会での議論等前記争いのない事実,証拠(甲2の(2),(4),(5),(14),(17),(18))及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア第2回在り方専門委員会での議論等平成15年9月30日に開催された第2回在り方専門委員会では,g委員から,「母子世帯で大きな負担になっているのは,住宅費や教育費の負担の大きさ,子供を抱えて働く女性の賃金の低さ,雇用の不安定などです。 これらが保護を受ける大きな要因 2回在り方専門委員会では,g委員から,「母子世帯で大きな負担になっているのは,住宅費や教育費の負担の大きさ,子供を抱えて働く女性の賃金の低さ,雇用の不安定などです。 これらが保護を受ける大きな要因となっています。ですから,仮に母子加算を廃止して保護基準を下げても,私たちの目の前においでになる母子世帯の方が自立する,あるいは母子世帯の方の保護申請が減るということはございません。むしろ,安定した雇用,安定した賃金,安定した住宅,教育,医療,こういった保障があれば,働ける母子世帯の方は,ほとんど生活保護を受けずに生活していけるであろうと実感しています。」との意見が出た(甲2の(2))。 イ第4回在り方専門委員会での議論等平成15年11月18日に開催された在り方専門委員会では,母子加算について,以下の意見が出た(甲2の(4))。 c委員「母子加算を正当化するほど,全国消費実態調査の対象一般世帯と比べて,母子家庭の支出が多いわけではないことも明らかになっています。基本的には母子加算の在り方は再検討されるべきだと思います。」「今まで母子加算に使っていたお金をより有効に使う方法があります。」- 110 -「お母さんの場合には,働こうと思ったら働ける元気がある。ただし,結局は子供をどうするかということが最大のネックになると思います。」「例えば保育園に養護の部屋や病室をつくるというようなことにお金を向けていく。あるいは,控除というような形で,働くとお金が入ってくるといった,なるべく自立を促すような形のお金の使い方に回していくのがいいのではないかと思いました。」d委員「母子世帯の消費の実態からすれば母子加算は必要ないということになっていますが,今後,ひとり親世帯の子供の教育,今後の労働市場へのコミットであるなど,能力開発的なものをどう考えるかにつ た。」d委員「母子世帯の消費の実態からすれば母子加算は必要ないということになっていますが,今後,ひとり親世帯の子供の教育,今後の労働市場へのコミットであるなど,能力開発的なものをどう考えるかについて,もう一度,皆さんのご意見をいただきたいと思います。」「加算という形,あるいは生活扶助基準という形でとるかどうかは別にして,(中略)母子加算(中略)の特別需要というのは,ひとり親の(中略)生活の必要というものを考慮に入れた説明だと思いますので,それを生かせるような形で,最低生活費全体の中で議論をしていただければというふうに思っております。」a委員長「母子加算は,(中略)おそらく最終的には第1類費でみている費目,第1類費への特別需要を賄うものだというふうな位置付けにあるように思われます。したがって,そういう加算の位置付けそのものについてもう少し含んだ議論をいただきたいと思います。例えば,(中略)加算という形で維持していくのか,それとも,そうした特別需要は福祉サービス全般の中でやっていったほうがいいとか。あるいは他の扶助とか,制度運用の在り方,例えば資産とか貯蓄の問題とか,そういうものを含めて少し幅広く確保したほうがいいのかもしれないとか,そういう点についてもご議論いただいたほうがいいと思います。加算だけ合理性がない,削るということになりますと,とくに母子世帯などの場合に,実際上の生活に齟齬を来たす場合が当然出てきますが,そういう問題は何かきちんとカバー- 111 -できるとか,カバーしているとか,あるいは,していないからするとか。」e委員「今日では,(中略)婦人の社会参加や保育施策の充実に伴い働く母子世帯の母親もけっこう増えてきているわけです。したがって,そういう実態との関係で,母子世帯(中略)だからどうのという形で,本当に今の 「今日では,(中略)婦人の社会参加や保育施策の充実に伴い働く母子世帯の母親もけっこう増えてきているわけです。したがって,そういう実態との関係で,母子世帯(中略)だからどうのという形で,本当に今の時代一般的にいえるかどうか。こういう数字をみますと,必ずしもいえないという感じもいたします。」f委員「母子加算についても,昭和58年当時にカウントした加算需要というのはなかなか難しいかもしれませんが,逆に今度は他制度なり,さきほど出てきておりますような,運用なり,ほかの扶助との関連の中などにおいてこれを見ていくことも重要かなと思うところです。」g委員「母子加算は,ご存じのとおり,これは父子家庭,あるいは祖父母に育てられている世帯についても認定されています。すると,母子加算とは何なのか。いわゆる母子家庭という生活スタイルに対する補填なのか,シングルペアレントというものに対する補填なのか,その辺によってもちょっと考え方が変わってくると思うのです。」「その辺の生活スタイルとつき合わせて検討しないと,単純に母子世帯との所得水準と比較して,妥当性を失ったからという言い方でいいのでしょうか。」a委員長「私の考えは,まず加算を廃止して,その後の対応を考えるという議論ではないと思います。」「加算の意味とか,今言ったような実態ということを考えれば,例えばこういうニーズがある世帯は当然存在するということになります。」「仮に加算としてはなくしてもいいという結論に達したとしても,それは代わりにこういう仕組みを設けるということを,セットで出さざるを得ないと思います。」ウ第5回在り方専門委員会での議論等平成15年11月25日に開催された在り方専門委員会では,母子加算- 112 -について,以下の意見が出た(甲2の(5))。 g委員「母子加算については,(中略) 第5回在り方専門委員会での議論等平成15年11月25日に開催された在り方専門委員会では,母子加算- 112 -について,以下の意見が出た(甲2の(5))。 g委員「母子加算については,(中略)どのぐらいの人たちを生活保護の対象にするかからみていく必要があります。」「同一条件だったとしても,母子世帯の方が当然貧困に陥りやすいですから,実際多く渡すことの是非はともかくとして,生活保護の基準を母子世帯が若干高めにしておくというのは,それなりの合理性があると思います。」h委員「(全国知事会の現場の意見を集約した結果として)母子加算については非常に意見が分かれていまして,廃止又は額の引下げが妥当であるというのが5割である一方,廃止まではいかないものの問題があるというのは4割台でありました。これにつきましても母子加算の目的であります特別の事情について必要性がないという説明責任があるのではないかということと,廃止する場合は,前にも出ていますように子供の健全育成のための児童福祉施策とか,母の就労支援のための母子福祉施策のサポートが必要ではないか。そういうことでございました。」b委員「それなしには最低生活が営めないというものを,加算という形で一括化しているというものだと思うのです。もし,加算という形で一定の特性のある者にはこれだけ出すよという形式をやめるとすると,今,特別基準で一定の額は自治体とかでも決定できるということになっているようなので,そこをどう使いやすくしていくか,個人が自治体に自分がこういう需要があると申請したときに,自治体がちゃんと認定してくれるかどうか,その額がどこまで認定できるかというところも個別に対応するということになると,その改善がいるのかなと思います。ただ,個別に特別基準だけで対応していくと,本人にとっては,それが認定 てくれるかどうか,その額がどこまで認定できるかというところも個別に対応するということになると,その改善がいるのかなと思います。ただ,個別に特別基準だけで対応していくと,本人にとっては,それが認定されるかどうかというのがとても不安ですし,事務的にもとても大変になってしまうと思いますので,それはやはり特に母子とか一定の特性のある人には,これだけの加算をという一括の定型給付が必要と思います。」- 113 -e委員「加算も今回の見直しの中でかなり重要な部分なので,議論が集中するのはやむを得ないと思います。ただ,最初から加算ありきというのは,この委員会をやった意味がないのでやめた方がいいと思います。」「加算イコール特別需要と,そういう時代もあったかもしれませんが,今日でははたしてどうなのかということが問われているのではないか。やはり,生活扶助というのは一般扶助で,それに対して各種の他の扶助が特別需要に対応するものという体系になっているはずなのです。」「母子家庭であるからといったって,いろんなタイプもあります。それから子供の生育年齢とか,むしろ教育扶助的なものをもっと弾力的に使って,今よりもうちょっと改善して出すとか。」エ第14回在り方専門委員会での議論等第14回在り方専門委員会(平成16年7月14日開催)では,母子加算について,以下の意見が出た(甲2の(14))。 b委員「(一般の低所得の母子世帯と保護を受けている母子世帯の比較で,生活保護を受けている世帯の方が高いのではないかという議論について)私の見方からしますと,生活保護の水準が高いのではなく,多くの低所得の母子世帯の方が生活保護以下の暮らしをしているからなのではないか。(中略)その辺の実態がどうなのかをしっかり確認しないといけないと思います。」e委員「母子世帯だから,未来永 はなく,多くの低所得の母子世帯の方が生活保護以下の暮らしをしているからなのではないか。(中略)その辺の実態がどうなのかをしっかり確認しないといけないと思います。」e委員「母子世帯だから,未来永劫にずっと加算を続けていくという考え方が,本当に成り立つかどうかは疑問です。むしろ,必要な教育扶助とかをもっと手厚くするとか,その他いろんな他法他施策,例えば,ヘルパーの派遣などいろいろありますので,その辺りはちょっと母子世帯の一般論として議論しない方がいいのではないかと思っております。」d委員「ひとり親,とりわけ母子世帯の場合については,やはり養育関係と労働環境が非常に厳しい状況に置かれているということをまず考えな- 114 -ければいけないと思います。」「加算という形で取るかどうかというのは議論が必要としても,何らかの形でやはりひとり親の方については,加算に代わる積極的な優遇策を取るべきだということと,一定の期間を限定したとしてもいいと思っているのですが,そこのところは,やはり慎重にすべきではないかと考えます。」c委員「母子には特殊な事情があると思います。だからこそ母子に対しては,現在使われているお金を特に就労支援に役に立つような使い方をすべきであると思います。」i委員「私は(第14回在り方専門委員会で配付された「説明資料」(乙38の(2))12頁の『平均所得金額で見たときに,被保護世帯の母子家庭の方が,一般の母子世帯よりも高いと指摘されているので,国民の納得できる説明ができないのであれば,見直さざるを得ないのではないか』との意見が)どうしても頭に引っかかってきます。やはり必要のないものについては,財政が非常に圧縮されておりますから,この際,廃止をしてもやむを得ないのではないか。」g委員「(一般母子世帯と比較して保護基準が高いと しても頭に引っかかってきます。やはり必要のないものについては,財政が非常に圧縮されておりますから,この際,廃止をしてもやむを得ないのではないか。」g委員「(一般母子世帯と比較して保護基準が高いとの指摘について)養育関係の整備とか就労支援というお話もありましたが,それだけでカバーできない子育てにかかるさまざまな経費,特にひとりでやるわけですから,これに伴う手の届かない部分をお金で済まさなければいけないことは多数あるのです。母子世帯の外食が多いという話が出ていますが,まさにこれが象徴です。こういったものに対して,やはりその家庭の養育者あるいは働き手として期待される者が少ないということは,私は生活上のハンデをより多く生んでいると思いますし,そう思えるデータもこの間の調査に出ていると思います。」「被保護世帯の母子家庭の基準が一般の母子世帯より高いのではなくて,一般の母子世帯の生活費が被保護世帯より低い。 (中略)これをどう考えるかという方が,むしろ重要であるのではないか- 115 -と思うのです。だから,私はその単純な比較だけで母子加算の問題だけを論じてしまうというのは,本当にどうだろうかと。(中略)保護を受けていない世帯の生活実態を比較した上で,そこでどこに人間としての最低生活の線を引くのかという議論をするべきではないかというふうに思っています。」j委員「就労支援を行うということと,生活保障,所得サポートをするということは,決してオールターナティブな代替的な関係ではなくて,おそらくこれは別個に両方用意しなければならないのではないかと思います。」「やはり女性のVULNERABILITY,今までいろんな意味で傷つきやすさを持ってきた養育,教育,就業,結婚,離婚というプロセスの中で考えたときに,やはり今ある制度をきるということは,よほど理 。」「やはり女性のVULNERABILITY,今までいろんな意味で傷つきやすさを持ってきた養育,教育,就業,結婚,離婚というプロセスの中で考えたときに,やはり今ある制度をきるということは,よほど理由がないと私は積極的にやるべきではないと思います。」「なぜ自分自身の小遣いやら交際費やら教養娯楽費を削って,衣服費や外食費にお金をかけているのか。 ここの理由を読み取る必要があると思います。(中略)自分が母子家庭であろうと,あるいは生活保護受給家庭であろうと,子供は同様に扱われたいという願いが,おそらく私はこの消費構造の中に表れていると思います。 そうなると,就労支援を実施しつつ,他方で女性自身が被ってきたVULNERABILITY,傷つきやすさというものをカバーするような形のものを安易に削るべきではないと思います。」オ第17回在り方専門委員会での議論等第17回在り方専門委員会(平成16年10月27日開催)では,母子加算について,以下の意見があった(甲2の(17))。 e委員「母子の場合,特に保育所その他では生活保護世帯ということで無料ですから,全体を見ますと,金額だけみれば加算がなくてもある程度生活していける額が支給されているといえます。ただ,母子家庭について何らかの政策的な優遇措置を考えるとすれば,加算という形ではない方法- 116 -で考えられるべきであると私は思っています。」a委員長「母子世帯やひとり親世帯とか,あるいは生活保護の場合は,先ほど言ったように例えば祖父母のどちらかと孫というような組み合わせとか,いろいろなタイプの世帯があるわけですが,そういう生活状態を一般の例えば全国消費実態調査のようなもので拾おうとすると,今日の資料でもありますように,例えば第Ⅲ-5分位なんていうと,集計世帯数が32とか57とか,非常に小さくなり けですが,そういう生活状態を一般の例えば全国消費実態調査のようなもので拾おうとすると,今日の資料でもありますように,例えば第Ⅲ-5分位なんていうと,集計世帯数が32とか57とか,非常に小さくなります。私がちょっと危惧をするのは,前に出た数字で,母子の子供1人と子供2人とを比較すると子供1人の方がちょっと高くなってしまうという資料がありましたが,集計数が小さいために非常に不安定な数字が出てきております。その数字だけがひとり歩きして,それで高い,低いということになると,なかなか決断ができません。」b委員「全国消費実態調査で見ると母子のケースの数字が少ないかもしれませんが,他の色々な母子家庭の調査を見ると,やはりそれなりにとても大変な生活状況だということは出ていると思います。ですから,金額が高いからまずは減らすということが先行しないような配慮は十分しないといけないと思います。」カ第18回在り方専門委員会での議論等第18回在り方専門委員会(平成16年12月15日開催)では,「生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書(案)」が検討された(甲2の(18))。 (3)厚生労働大臣の判断過程上記(1)に認定の事実及び弁論の全趣旨によれば,厚生労働大臣は,以下の点を根拠として,母子加算に関する本件保護基準改定をしたものと認められる。 ア母子加算を加えた被保護母子世帯の生活保護基準額は,一般母子世帯の- 117 -全国平均の生活扶助相当消費支出額よりも高額であること(上記(2)エ認定の事実)イ母子加算を除いた被保護母子世帯の生活保護基準額は,一般勤労母子世帯の生活扶助相当支出額と概ね均衡していること(同)ウ上記ア及びイのような母子世帯の消費実態からみて,母子加算に相当するだけの特別な需要があるとは認められないことエ新たに 額は,一般勤労母子世帯の生活扶助相当支出額と概ね均衡していること(同)ウ上記ア及びイのような母子世帯の消費実態からみて,母子加算に相当するだけの特別な需要があるとは認められないことエ新たに高等学校等の就学費を支給することとしたこと(4)原告らの主張について原告らは,前記(第2「8」(2))のとおり,母子加算に関する本件保護基準改定には不合理な点がある旨主張するが,これらの主張はいずれも採用できない。その理由は以下のとおりである。 ア検証方法,検証結果等について(ア)母子世帯の消費実態の検証について原告らは,今回の母子加算廃止に至る検証方法は,母子世帯の消費構造の割合による特別需要額の算出を行うなど,母子世帯の消費構造を分析することを行っておらず,特別需要の存否,程度を検証していないものであり,これに依拠し,母子世帯にはそれ特有の特別需要があるにもかかわらず,これが認められないとしてなされた本件保護基準改定の判断過程には不合理な点がある旨主張する(同ア(ア)ないし(ウ))。 そして,上記(2)に認定のとおり,昭和55年中間的とりまとめの際に行われた検証や,昭和58年意見具申の際に行われた検証は,母子世帯の消費構造の分析を行って,消費支出全体に占める各消費費目の「構成比」を求め,この構成比に従った修正値を算出した上で,比較対象世帯との支出額の比較を行うというものであったこと,ところが,本件保護基準改定の根拠となった検証方法は,上記の従来の方法と異なり,第Ⅲ-5分位の母子子供世帯の消費支出額と,第Ⅰ-5分位の夫婦子供世- 118 -帯の消費支出額とを,単純に比較するという方法によったものであることが認められる。 しかし,老齢加算について判示したと同様の理由から,上記特別需要の存否の判断は上記の従来の検証方法によらなければ -帯の消費支出額とを,単純に比較するという方法によったものであることが認められる。 しかし,老齢加算について判示したと同様の理由から,上記特別需要の存否の判断は上記の従来の検証方法によらなければ不合理であるとまでいえないこと,消費支出額が需要を反映するものであることからすれば,消費支出額をそのまま比較して特別需要の存否を判断することが看過し難いほどの事実の誤認あるいは評価の誤りであるともいい難い。 また,母子世帯の消費実態は,上記(1)カ(ウ)に認定のとおりであり,母子世帯は夫婦子供世帯より成年が1人少ないことを考慮したならば,同認定にある母子世帯の第Ⅲ-5分位と夫婦世帯の第Ⅰ-5分位の生活扶助相当消費支出額を比較し(第Ⅰ-5分位の母子世帯を基準としていない。),母子加算に相当するほどの母子世帯に特別な需要が認められないと判断することが不合理であるとまではいえない。もっとも,上記比較によっても,1人差があるにもかかわらず,食料費はほぼ同額であり,「外食」のための支出額は母子世帯の方が多い場合もあり,また,「被服及び履物」のための支出額は,母子世帯の方が多かったことが認められるけれども,支出総額からみれば,上記事実から直ちに母子世帯には母子加算に相当するほどの特別な需要があるともいい難い。 (イ)比較対象原告らは,第Ⅲ-5分位と比較したことが不適当であり,第Ⅰ-5分位と比較すべきである旨主張する(同ア(エ))。 しかし,第Ⅰ-5分位よりも収入の多い第Ⅲ-5分位の母子世帯の消費支出額と,第Ⅰ-5分位夫婦世帯の消費支出額とを比較したのは,より確実な判断をするためと解されるから,これが不合理であるということはできない。 (ウ)生活扶助基準額と生活扶助相当消費支出額との比較- 119 -原告らは,生活保護を受給する母子世帯の特徴から, 確実な判断をするためと解されるから,これが不合理であるということはできない。 (ウ)生活扶助基準額と生活扶助相当消費支出額との比較- 119 -原告らは,生活保護を受給する母子世帯の特徴から,母子加算を除いた生活扶助基準額と一般勤労母子世帯の生活扶助相当消費支出額とを比較するのは不合理である旨主張する(同ア(オ))。 しかし,生活保護が最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,かつ,これを超えないものであることを要することからすれば,母子世帯の生活扶助基準額が相当か否かを判断するため,これと一般勤労母子世帯の生活扶助相当支出額とを比較し,その差異に着目することは,合理性のあることであり,これが不合理であるなどとはいえない。 もっとも,生活保護を受給する母子世帯に原告らが主張する特徴がないとはいえないものの,それが一般的な特徴であるとまでいえるかは疑問が残り,少なくとも上記特徴が否定できないからといって,上記の結論が覆るものでもない。 イ平成16年度報告に従ったものではない旨の主張について原告らは,平成16年度報告は消費実態から直ちに母子加算の廃止にはつながらないとの趣旨のものであり,母子加算に関する本件保護基準改定は平成16年度報告に従ったものではない旨主張する(同ウ)。 ところで,上記(2)に認定のとおり,在り方専門委員会では,母子加算について,母子加算のあり方は再検討されるべきとの意見(第4回・c委員),母子加算について合理性がないのではないかとの趣旨の意見(第4回,第5回,第14回・e委員),廃止はやむを得ないのではないかとの意見(第14回・i委員)が出た。他方,単純に一般母子世帯との消費支出額と比較して母子加算は妥当性を失ったということはできないのではないかという意見(第4回,第14回・g委員),貧困に陥りやすい の意見(第14回・i委員)が出た。他方,単純に一般母子世帯との消費支出額と比較して母子加算は妥当性を失ったということはできないのではないかという意見(第4回,第14回・g委員),貧困に陥りやすい母子世帯の生活保護の基準を若干高めにしておくのは,それなりの合理性があるのではないかとの意見(第5回・g委員),低所得の母子世帯の方が生活保護以下の暮らしをしているとも考えられるので,その消費実態も確認す- 120 -べきではないかとの意見(第14回・b委員),女性の脆弱性からすれば,母子加算の廃止は,よほど理由がない限り,積極的に行うべきではないかとの意見(第14回・j委員),金額が高いからといって,直ちに減額するということが先行しないよう配慮が必要であるとの意見(第17回・b委員),加算としては廃止するとしても,代替措置をセットで出さざるを得ないのではないかとの意見(第4回・a委員長),廃止する場合には,児童福祉施策や,母親の就労支援施策というサポートが必要ではないかとの意見(第5回,第14回・g委員),母子家庭のタイプに合わせ,弾力的な制度設計をすべきではないかとの意見(第5回・e委員),加算よりも,教育の扶助や,その他の施策等を手厚くすべきではないかとの意見(第14回・第17回・e委員),母子世帯には特殊な事情があるからこそ,現在母子加算に使っている資金を,特に就労支援に役に立つような使い方をすべきではないかとの意見(第14回・c委員)が出た。他方,加算という一括の定型給付の形をとるべきではないかとの意見(第5回・b委員),在り方専門委員会に提出された資料について,母子世帯の集計世帯数が少ないことが懸念され,結論を出すのに躊躇されるという意見(第17回・a委員長)が出た。 また,平成16年度報告の内容は,上記(1)クに認定のとお 員会に提出された資料について,母子世帯の集計世帯数が少ないことが懸念され,結論を出すのに躊躇されるという意見(第17回・a委員長)が出た。 また,平成16年度報告の内容は,上記(1)クに認定のとおりであり,「一般母子世帯の消費水準との比較の観点からは,現行の母子加算は必ずしも妥当であるとはいえない。」としつつ,一方で,母子加算の見直しに疑義を述べる意見があったことを指摘した上で,現行の一律・機械的な給付を見直し,ひとり親世帯の親の就労に伴う追加的な消費需要に配慮するとともに,世帯の自立に向けた給付に転換し,これに沿って支給要件,支給金額,名称・支給名目等を見直す方向性を提言した後,見直しに当たっての検討事項を付言したものとなっている。 以上の在り方専門委員会における議論や平成16年度報告に照らすと,- 121 -平成16年度報告は,現行の母子加算を見直して,これを廃止するとしても,世帯の自立に向けた給付に転換し,これに沿って支給要件,支給金額,名称・支給名目等を見直すことを提言しているものであり,このような給付まで全面的に廃止することを明言したものではないと解される。したがって,この限度で,母子加算に関する本件保護基準改定は平成16年度報告にある提言に従ったものではないといえる。 しかし,平成16年度報告も母子加算が妥当ではなく,見直し及び廃止を提言しているのであり,この限度では,母子加算に関する本件保護基準改定は上記提言と整合するものであることに加えて,母子世帯の生活扶助基準額と一般勤労母子世帯の生活扶助相当支出額との比較等の厚生労働大臣が上記改定に当たって着目した事実やその評価をも総合勘案すると,上記の母子加算に関する本件保護基準改定が平成16年度報告にある提言に従ったものではないことを考慮しても,その判断過程に看過し難い不合 臣が上記改定に当たって着目した事実やその評価をも総合勘案すると,上記の母子加算に関する本件保護基準改定が平成16年度報告にある提言に従ったものではないことを考慮しても,その判断過程に看過し難い不合理な点があるとまではいえない。 ウ高等学校等就学費の創設に関する主張について原告らは,高等学校等就学費の制度と母子加算とは趣旨及び目的が異なる等の理由から,高等学校等就学費の創設を母子加算の段階的廃止が合理的であることの根拠とすることはできない旨主張する(同イ)。 しかし,高等学校等就学費の創設によって母子世帯のうち高等学校等の就学する子がいる世帯については,その限度で保護支給額が増額すること,平成16年度報告は生活保護制度において高等学校の就学費用への対応を検討することを提言しており,高等学校等就学費の創設はこの提言に沿うものであることに照らすと,高等学校等就学費の創設を母子加算の段階的廃止が不合理でないことの根拠の一つとすることは是認できるものというべきである。 エ告示前の処分であり違法であるとの主張(同エ)について- 122 -上記4(4)オで判示したと同様の理由により,告示前に決定がなされたことをもって,違法であるとまではいえない。 本案の争点(4)(多人数世帯扶助基準額変更の合理性)について(1)前記争いのない事実,証拠(甲2の(1),(3),(4),(5),(17),乙1の(2),2,16の(5),21,40の(1),(2),70)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア第1類費相当支出額と第2類費相当支出額の構成割合(乙16の(5)「説明資料」4頁)(ア)家計調査特別集計によると,勤労者3人(夫婦子1人)世帯の第Ⅰ-5分位における平成12年度の第1類費相当支出額と第2類費相当支出額の割合は,57. 成割合(乙16の(5)「説明資料」4頁)(ア)家計調査特別集計によると,勤労者3人(夫婦子1人)世帯の第Ⅰ-5分位における平成12年度の第1類費相当支出額と第2類費相当支出額の割合は,57.7:42.3であった。 (イ)他方,平成12年度以降の標準3人世帯(33歳男,29歳女,4歳子)の生活扶助基準をみると,第1類費と第2類費の割合は,65. 9:34.1であった。 (ウ)上記検証結果を記載した資料は,第5回在り方専門委員会(平成15年11月25日開催)に説明資料として提出された。 イ世帯人員別の消費支出額(乙16の(5)「説明資料」10頁以下)平成11年度全国消費実態調査特別集計を基にして,世帯人員別の消費支出額を検証した結果は以下のとおりであった。同検討結果を記載した資料は,第5回在り方専門委員会(平成15年11月25日開催)に説明資料として提出された。なお,以下の第1類費は,各世帯の実際の年齢別及び世帯人員別の分布によってウェイト付けをして加重平均して算出したもの,第1類費相当支出額は,単身世帯については全国消費実態調査特別集計(平成11年),2人以上世帯については家計調査特別集計(平成8年から平成12年までの平均)に基づく一般勤労世帯の消費支出の平均値である。 - 123 -(ア)当時の生活扶助基準における世帯人員別の第1類費の指数は,3人世帯を100すると,4人世帯は133.3,5人世帯は164.7であった。 これに対し,勤労世帯の第Ⅰ-5分位における第1類費相当消費支出額を世帯人数ごとにみると,3人世帯で9万5305円,4人世帯で10万4641円,5人世帯で11万0645円であり,その指数は,3人世帯を100とすると,4人世帯は109.8,5人世帯は116. 1であった。 (イ)第2類費は,3人世帯の第2類費 ,4人世帯で10万4641円,5人世帯で11万0645円であり,その指数は,3人世帯を100とすると,4人世帯は109.8,5人世帯は116. 1であった。 (イ)第2類費は,3人世帯の第2類費を100として,そこに世帯人員別に定めた換算率(マルチプル)を乗じることによって基準額が設定され,この世帯人員別マルチプルについては,低所得者世帯における世帯人員別の第2類費相当支出額を参考に設定されていた。当時の生活扶助基準における世帯人員別換算率は,第2類費で,3人世帯を100とした場合,4人世帯で108.8,5人世帯で109.6であった。 これに対し,勤労世帯の第Ⅰ-5分位の第2類費相当消費支出額を世帯人数ごとにみると,3人世帯で6万2404円,4人世帯で6万3122円,5人世帯で6万5070円であり,3人世帯を100とした場合の指数は,4人世帯は101.2,5人世帯は104.3であった。 ウ第1回在り方専門委員会での議論等第1回在り方専門委員会(平成15年8月6日開催)では,多人数世帯扶助基準額について,f委員から,「現行の1類費を積み上げていく手法に問題があるのではないか。」「今の1類費の構造というか,あり方について,やはり場合によっては多人数による節約効果みたいなものを考慮する必要があるのではないかということです。」との意見が出た(甲2の(1))。 エ第3回在り方専門委員会での議論等- 124 -第3回在り方専門委員会(平成15年10月14日開催)では,多人数世帯扶助基準額について,以下のような意見が出た(甲2の(3))。 f委員「1類費に関してですが,(中略)一種の複数世帯の節約効果みたいなものがもし立証できるものであれば,そういうデータをいただきたい。」h委員「(全国知事会での議論として)1人世帯とか人数が少ない世帯 1類費に関してですが,(中略)一種の複数世帯の節約効果みたいなものがもし立証できるものであれば,そういうデータをいただきたい。」h委員「(全国知事会での議論として)1人世帯とか人数が少ない世帯には生活保護基準というのはなかなか厳しいけれど,人数が多くなってくると余裕があるということが,一般国民に比していえるという議論があります。」g委員「たしかに,被保護世帯の保護費が,世帯人員の数に合わせて増えるというのは,一般世帯の生活実態とかけ離れているというご指摘はもっともです。」「一方で,例えば多子の世帯では,子供が学校を卒業して転出すると,自動的に保護費が丸ごと減額になる。大体4万円くらいは減額になりますが,これも通常の世帯にはあり得ないことです。このように,入口の部分と出口の部分を合わせて基準を見比べていかないと,不公平な議論となり,単に多子世帯になるにしたがって,保護費が増えておかしいという議論になるのではないかと考えます。」「多子世帯の保護基準が相対的に高いということを批判するのは簡単かと思いますが,実はそのことが一方で自立を阻害し,さらに被保護世帯の生活にいろいろな混乱を来たしているということも申し添えておきたいと思います。」オ第4回在り方専門委員会での議論等第4回在り方専門委員会(平成15年11月18日開催)では,多人数世帯扶助基準額について,a委員長から,「第2類の場合は,世帯人員の要素をどういうふうに考えるかということで,ここもやはり換算の問題が出てくるわけですが,現在使われている日本の換算率というのは,昭和62年に設定されたものをそのまま使っているといいいますか,それ以降検- 125 -証していないのです。したがって,そういう形で使っているということになっていて,なかなか難しい問題があるわけです。」との意見が出 れたものをそのまま使っているといいいますか,それ以降検- 125 -証していないのです。したがって,そういう形で使っているということになっていて,なかなか難しい問題があるわけです。」との意見が出た(甲2の(4))。 カ第5回在り方専門委員会での議論等(ア)第5回在り方専門委員会(平成15年11月25日開催)では,多人数世帯扶助基準額等について,以下の意見が出た(甲2の(5))。 h委員「(全国知事会の意見を集約した結果)第1類費と第2類費の構成割合について見直しの必要性については,大体半分の方々が見直しが必要ではないかということでございます。第3回の専門委員会で昭和55年と平成12年とを比較しますと,食料費,被服費,その他が減少して,住居,光熱,水道,交通通信等が増加しているということで説明されまして,先ほどもご説明がありましたように,第1類費を圧縮して,第2類費を増額すべきじゃないかというような意見が多かったと思います。」「多人数世帯の基準額については,これは引き下げる方向で見直しが必要であるというのが7割台でした。」e委員「第1類費と第2類費の関係については,やはり現状の消費水準の動向に見合う形で考える必要があるかと思います。景気循環とかとは違いまして,消費の大きな構造的な時代的な流れ,時系列の流れの中で世帯の共通経費みたいなものが,社会資本とは違いますが,家庭の基盤的なところが,やはり全体としては高くなるのは時代の趨勢だという気がいたしております。食費のエンゲル係数が高いときは,頭数が多いと家計が大変だというのはわかりますが,ごくごく経済的な常識で考えれば,それよりも共通経費的なものがどうしても必要であるということがいえると思います。共通経費を厚めにすれば,単身世帯の場合は世帯人員が1人ですから,世帯人員が少なくて ,ごくごく経済的な常識で考えれば,それよりも共通経費的なものがどうしても必要であるということがいえると思います。共通経費を厚めにすれば,単身世帯の場合は世帯人員が1人ですから,世帯人員が少なくても相対的に有利になるし,世帯人員が多いところは若干不利になっても何とかやっていけるというの- 126 -が極めて常識的な考え方です。」j委員「多人数世帯の問題というのが,はたして第1類費と第2類費の割合の問題なのか,それとも2,3,4,5人世帯というときのマルチプルの問題なのか,どっちが大きく効いているのかということも確かめる必要があると思います。」(イ)第5回在り方専門委員会では,第1類費の年齢区分等について,以下の意見が出た(甲2の(5))。 h委員「(全国知事会の意見を集約した結果)第1類費の12の年齢区分については,ただいま他の委員がおっしゃったように,少し多すぎるのではないか,現行の半分とまではいかないまでも減らした方がいいという意見が多かったと思います。」j委員「どういう項目が第1類費に入れられるべきであり,どういう項目が第2類費なのかというのも,もう少し整理し直す必要があるように思います。生活扶助相当費を栄養カロリーだけに依拠するというのは時代錯誤であると思いますし,おそらく,交通費であるとか,教養娯楽費が大事でしょうし,(中略)もう一度個人が必要な費目というのは,現代の文脈では何なのかということを押さえる必要があると思います。」a委員長「年齢は繰り返しになりますけど,カロリー区分の年齢を使っているというだけの話ですから,それはもうちょっと粗くした方が使い勝手がいいし,国民にもわかりやすいという気がいたします。ただ,そういうものの科学的根拠を示せということになると,これはなかなか難しい。さっきいろいろ出していただい れはもうちょっと粗くした方が使い勝手がいいし,国民にもわかりやすいという気がいたします。ただ,そういうものの科学的根拠を示せということになると,これはなかなか難しい。さっきいろいろ出していただいていますから,ああいうものを利用しながらやるしかありません。ただああいうふうに非常に細かくすると,客体が非常に小さくなりますから,ぶれているところがあり得ます。そのような数字に依拠するのは科学的かどうかというのもまた難し- 127 -い問題なので,ちょっとその辺を考えなくてはならないと思います。」キ本件中間取りまとめ(乙2)本件中間取りまとめでは,「生活扶助基準第1類費及び第2類費の設定の在り方」として,まず,第1類費の年齢別格差については,「マーケットバスケット方式時の栄養所要量を基準として設定されている現行の年齢別格差について,直近の年齢別栄養所要量及び一般低所得世帯の年齢別消費支出額と比較して検証したところ,概ね妥当であるが,年齢区分の幅についてはもう少し大きくとるべきだという意見もあるなど,その在り方については引き続き検討することが必要である。また,0歳児については,人工栄養費の在り方を含めた見直しが必要である。」との見解が示された。 次に,世帯人員別生活扶助基準については,「生活扶助基準額は,個人消費部分(第1類費)と世帯共同消費部分(第2類費)によって構成されているが,この両者の割合は一般低所得世帯の消費実態と比べると第1類費が相対的に大きい。また,このように相対的に大きな第1類費が年齢別に組み合わされるために,多人数世帯ほど基準額が割高になることが指摘されている。」「これを是正するために,3人世帯の生活扶助基準額の第1類費と第2類費の構成割合を一般低所得世帯の消費実態に均衡させるよう第2類費の構成割合を高めることが必要で が割高になることが指摘されている。」「これを是正するために,3人世帯の生活扶助基準額の第1類費と第2類費の構成割合を一般低所得世帯の消費実態に均衡させるよう第2類費の構成割合を高めることが必要である。」「また,世帯人員別に定めた第2類費の換算率については,一般低所得世帯における世帯人員別第2類費相当支出額の格差を踏まえ,多人数世帯の換算率を小さくする方向で見直しを行うことが必要である。」との見解が示された。 ク第17回在り方専門委員会での議論等第17回在り方専門委員会(平成16年10月27日開催)では,多人数世帯扶助基準額について,以下の意見が出た(甲2の(17))。 g委員「たしかに多子世帯については基準が高くなるという指摘は,私どもも現場で日々感じておりますが,基本的には生活保護の基準の積み上- 128 -げ方式の考え方の問題と思います。」j委員「世帯人数が多くなれば規模の経済が働いて費用が節約できるという直感がなんとなく働くのはたしかです。しかし,少人数では費用を節約できるかもしれないものの,子供の人数もあるところから,つまりたったひとりで何人かの子供を育てなければならないとなれば,また費用が逓増する可能性もあるという感じがします。いずれにしても,あまり簡単な直感に収れんしない方がいいと思います。」ケ第18回在り方専門委員会での議論等第18回在り方専門委員会(平成16年12月15日開催)では,事務局より「生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書(案)」が配付され,検討が加えられた。 コ平成16年度報告平成16年度報告では,生活保護基準の在り方のうち,生活扶助基準の評価・検証等として,「多人数世帯基準の是正」という項目が立てられ,「かねてより,生活扶助基準は多人数になるほど割高になるとの指摘がなされているが, では,生活保護基準の在り方のうち,生活扶助基準の評価・検証等として,「多人数世帯基準の是正」という項目が立てられ,「かねてより,生活扶助基準は多人数になるほど割高になるとの指摘がなされているが,これは人数が増すにつれ第1類費の比重が高くなり,スケールメリット効果が薄れるためである。このため,中間取りまとめにおいて指摘した第2類費の構成割合及び多人数世帯の換算率に関する見直しのほか,世帯規模の経済性を高めるような設定等について検討する必要がある。」との提言がなされた(乙1の(2))。 また,「第1類費の年齢別設定の見直し」という項目が立てられ,「人工栄養費の在り方も含めた0歳児の第1類費や,第1類費の年齢区分の幅の拡大などについて見直しが必要である。」との提言がなされた。 サ保護基準の改定等厚生労働大臣は,平成17年3月31日厚生労働省告示第193号(同年4月1日から適用)により,平成17年4月から4人世帯の第1類費の- 129 -合計から2パーセント,5人以上世帯の第1類費の合計から4パーセントカットするとともに,4人以上世帯の第2類費の基準額を引き下げ,平成18年3月31日厚生労働省告示第315号(同年4月1日から適用)により,平成18年4月から4人世帯の第1類費の合計から4パーセント,5人以上世帯の第1類費の合計から7パーセントカットし,平成19年3月31日厚生労働省告示第127号(同年4月1日から適用)により,平成19年4月から4人世帯の第1類費の合計から5パーセント,5人以上世帯第1類費の合計から10パーセントをカットする旨の生活保護基準の改定を行った。 また,厚生労働大臣は,それまで20歳未満の若年者について8区分(0歳,1~2歳,3~5歳,6~8歳,9~11歳,12~14歳,15~17歳,18~19歳)とされていた 活保護基準の改定を行った。 また,厚生労働大臣は,それまで20歳未満の若年者について8区分(0歳,1~2歳,3~5歳,6~8歳,9~11歳,12~14歳,15~17歳,18~19歳)とされていた第1類費の年齢区分を,平成17年3月31日厚生労働省告示第193号(同年4月1日から適用)により,平成17年4月から4区分(0~2歳,3~5歳,6~11歳,12~19歳)とするとともに(なお,全年齢でみると,年齢区分は12区分から8区分となった。),栄養所要量の指数(成人(20~39歳)を100とした指数)値を参考にして年齢別の格差を定めて,基準額を設定した(乙21,40の(1),(2))。これによる各年齢別基準額への影響をみると,0歳は5930円の増額,1~2歳は890円の減額,3~5歳は600円の減額,6~8歳は2040円の増額,9~11歳は2380円の減額,12~14歳は1930円の減額,15~17歳は5230円の減額,18~19歳は70円の増額であった(乙40の(1),(2))。 (2)厚生労働大臣の判断過程上記(1)に認定の事実及び弁論の全趣旨によれば,厚生労働大臣は,以下の点を根拠として,多人数世帯扶助基準額に関する本件保護基準改定をしたものと認められる。 - 130 -ア4人以上の世帯について,生活扶助基準額と一般所得者世帯の生活扶助相当支出額とを比較すると,生活扶助基準の方が高く,その傾向は多人数世帯になるほど顕著である。これは,一般世帯における収入は世帯人員に応じて増えるものではないが,生活扶助基準は,食費や被服費というような個人的費用について,世帯人員に応じて積み上げて算定され,世帯人数が増加するにつれて第1類費の比重が高くなるためである。 イ本件中間取りまとめ及び平成16年度報告において,多人数世帯の換算率を小 な個人的費用について,世帯人員に応じて積み上げて算定され,世帯人数が増加するにつれて第1類費の比重が高くなるためである。 イ本件中間取りまとめ及び平成16年度報告において,多人数世帯の換算率を小さくする方向で見直す必要があるとの提言がなされた。 (3)原告らの主張について原告らは,多人数世帯扶助基準額に関する本件保護基準改定には不合理な点がある旨主張する(第2「9」(2))が,これらはいずれも採用できない。 その理由は以下のとおりである。 ア在り方専門委員会での検討内容に関する主張について原告らは,在り方専門委員会において,第1類費と第2類費の構成割合や,換算率を具体的にどのようにするのかについて,全く検討されなかったし,議論もなされなかった旨主張する(同ア)。 しかし,上記(1)認定のとおり,在り方専門委員会においては,多人数による節約効果があるのではないかとの意見,換算率,第1類費と第2類費の構成比を見直すべきではないかとの意見が出され,本件中間取りまとめ及び平成16年度報告においても,多人数世帯の換算率を小さくする方向で見直す必要があるとの提言がなされたのである。この点に加えて,保護基準の決定はあくまで厚生労働大臣の裁量に属するものであることを併せ考慮すると,在り方専門委員会が換算率等の具体的な数字の検討や提言をしなかったことを理由として,厚生労働大臣が自らの判断により第1類費と第2類費の構成割合や換算率を決定したことが不合理であるとはいえない。 - 131 -イ比較検討が誤りであるとの主張について原告らは,各年齢構成によって第1類費の額も第1類費相当消費支出額も異なってくるから,ある特定の金額が算定されることはなく,したがって,勤労世帯の第Ⅰ-5分位の第1類費相当消費支出額と,生活扶助基準を比較することは不可能である 1類費の額も第1類費相当消費支出額も異なってくるから,ある特定の金額が算定されることはなく,したがって,勤労世帯の第Ⅰ-5分位の第1類費相当消費支出額と,生活扶助基準を比較することは不可能である旨主張する(同イ)。 しかし,上記認定のとおり,比較検討の前提とした第1類費は,各世帯の実際の年齢別及び世帯人員別の分布によってウェイト付けをして加重平均して算出したものであったこと,第1類費相当消費支出額は一般勤労世帯の消費支出の平均値であったことからすれば,これらの比較によって換算率見直しの必要性を判断することは一定の合理性を有するものといえる。 ウ第1類費の年齢区分の拡大原告らは,厚生労働大臣が20歳未満の若年者について,第1類費の年齢区分を8区分から4区分とし,第1類費の基準額を減額変更したことに合理性はない旨主張する(同ウ)。 しかし,本件中間取りまとめ等に照らせば,厚生労働大臣は,直近の年齢別栄養所要量等を比較検討して上記の区分及び基準額の変更をしたものと推認され,第1類費が食費・被服費等の個人単位の経費であることからすれば,栄養所要量を参考にして第1類費の基準額を設定することが不合理であるとはいえない。 エ告示前の処分であることについて上記4(4)オで判示したと同様の理由により,告示前に決定がなされたことをもって,違法であるとまではいえない。 原告らは,本件各決定が違法無効であるとも主張するが,その理由とするところは本件各決定の取消事由として主張するところと同一であり,これらが採用できないことは前示のとおりであるから,上記違法無効であるとの主張もまた採用できない。 - 132 - 結論 以上によれば,主文第1項の訴えは当然に終了したものと宣し,同2項の請求に基づく訴えは,いずれも不適法であるから,これらを却下することと であるとの主張もまた採用できない。 - 132 - 結論 以上によれば,主文第1項の訴えは当然に終了したものと宣し,同2項の請求に基づく訴えは,いずれも不適法であるから,これらを却下することとし,原告ら(主文第1項の原告らを除く。)及び承継参加人のその余の請求は,いずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 広島地方裁判所民事第3部裁判長裁判官能勢顯男裁判官福田修久裁判官戸田有子(別紙3.4.5は省略)

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