主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求本件は,備前市の住民である原告が,備前市長の職にある被告において,備前市の一般会計から特別会計である備前市国民健康保険市立備前病院事業会計(以下「病院事業会計」という)に対し平成10年度に別表1のとおり(た。 だし,番号1及び番号3の繰出しを除く)合計7351万0000円を繰り。 出し,及び平成11年度に別表2のとおり(ただし,番号1及び番号3の繰出しを除く)合計7519万5000円を繰り出したことにつき,病院事業会。 計の独立採算の原則を定める地方公営企業法昭和27年法律第292号以()(下,単に「法」ともいう)及び同法施行令(昭和27年政令第403号(以。 )下,単に「令」ともいう)に違反し,違法であるのに,この事実を認識して。 いながら,あえて上記各繰出しをし,その結果,繰出時点で備前市に対し繰出額と同額の損害を与えたとして,備前市に代位して,被告に対し,(1)平成11年(行ウ)第22号事件被告が,備前市に対し,7351万1000円を支払うことを(2)平成12年(行ウ)第20号事件被告が,備前市に対し,7519万5000円を支払うことをそれぞれ求める請求である。 なお,原告は,前記(1)の損害賠償請求のうち別表1番号4の繰出しに対応する2281万8000円,及び前記(2)の損害賠償請求のうち別表2番号4の繰出しに対応する2547万0000円につき,被告の同意を得て請求を減縮しながら,再度,その損害賠償請求をするものである。 第2事案の概要 争いのない事実等(証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実を含む)。 (1)当事者等(ア)原告及び被告原告は,備前市に居住する住民であり,被告は,備前市長 。 第2事案の概要 争いのない事実等(証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実を含む)。 (1)当事者等(ア)原告及び被告原告は,備前市に居住する住民であり,被告は,備前市長として地方自治法以下の法令の定めるところに従い備前市の一般会計及び特別会計に係る歳入歳出予算の調製及び執行に関する権限を有し,同法242条の2第1項4号にいう「職員」に含まれる者である。 (イ)病院事業及び附帯事業備前市は,地方公営企業法に定める病院事業として,備前市国民健康保険病院条例に基づき,病床数100床を有し,診療科目として,内科,呼吸器科,消化器科,循環器科,外科,整形外科,脳神経外科,婦人科,放射線科,神経内科,皮膚科,リハビリテーション科,人工透析室を標榜する,備前市国民健康保険市立備前病院(以下「備前病院」という)を開。 設している(職員数104名。また,備前市は,備前病院に老人保健施)設(名称「備前さつき苑)及び訪問看護ステーションを併設し,老人保」健施設に在宅介護支援センターが設置されている。 上記附帯事業のうち,老人保健施設は,備前市老人保健施設設置条例に基づき,疾病,負傷等により要援護老人に対し,看護,医学的管理下における介護及び機能訓練その他の医療を行うとともに,日常生活上の世話を行うことによって老人福祉の向上を図ることを目的として設立された施設であり(職員数31名,在宅介護支援センターは,備前市在宅介護支援)センター設置条例に基づき,在宅の要援護老人及びその家族の在宅介護に関する相談に応じ,各種の保健,福祉及び医療サービスが総合的に受けられるように関係機関等と連絡調整に当たることによって在宅の要援護老人及びその家族の保健福祉の向上を図ることを目的として設立された施設であり(職員数3名(なお,その利用料は 療サービスが総合的に受けられるように関係機関等と連絡調整に当たることによって在宅の要援護老人及びその家族の保健福祉の向上を図ることを目的として設立された施設であり(職員数3名(なお,その利用料は原則として無料である,訪問)。)看護ステーションは,備前市訪問看護ステーション設置条例に基づき,老人保健法に規定する訪問看護及び健康保険法等に規定する訪問看護を行い,在宅療養者の福祉の向上を図ることを目的として設立された施設である(職員数3名。 )(乙第1号証ないし第4号証,第11号証)(2)病院事業における経費の負担区分(ア)独立採算性の原則各年度における病院事業を対象とする病院事業会計における歳入歳出の予算は,収益的収入・支出と資本的収入・支出に分かれ,編成されるところ,法17条の2は,病院事業を含む地方公営企業における経費の負担区分を定めた規定でありまず1項において一般会計又は他の特別会計以,,(下「一般会計等」という)において出資,長期の貸付,負担金の支出そ。 の他の方法により負担すべき経費を定めるとともに,2項において1項に定める以外の経費については地方公営企業の経営に伴う収入をもって充てなければならないとして,いわゆる地方公営企業の独立採算性の原則を定めている。このうち,一般会計等において負担すべき経費としては,①経費の性質上前記収入をもって充てることが適当でない経費(以下「1号該当経費」という)と,②地方公営企業の性質上前記収入のみをもって充。 てることが困難な経費(以下「2号該当経費」という)の2種類が法定。 されている。 (イ)一般会計等の負担すべき経費の内容令8条の5第1項3号及び第2項2号並びに附則14項は,法17条の2の規定を受け,経過措置を含め,病院事業について,一般会計等の負担すべき経費 されている。 (イ)一般会計等の負担すべき経費の内容令8条の5第1項3号及び第2項2号並びに附則14項は,法17条の2の規定を受け,経過措置を含め,病院事業について,一般会計等の負担すべき経費の内容につき,以下のとおり定めている。 ①1号該当経費<ア>看護婦の確保を図るため行う養成事業に要する経費<イ>伝染病に関する医療に要する経費<ウ>救急医療を確保するための経費<エ>集団検診・医療相談等保健衛生に関する行政として行われる事務に要する経費②2号該当経費<ア>その立地条件により採算をとることが困難であると認められるものに要する経費<イ>病院の所在する地域における医療水準の向上を図るために必要な高度又は特殊な医療で,採算をとることが困難であると認められるものに要する経費なお,当分の間における経過措置として,病院及び診療所の建設又は改良に要する経費(当該経費に充てることができる病院事業の経営に伴う収入の額を超える部分に限る)も2号該当経費として扱われる。 。 (ウ)経費の負担区分に関する運用基準法17条の2第1項に規定する一般会計等による経費の負担及び法17条の3に規定する一般会計等からの補助に関する運用上の基準を定めたものとして,旧自治省財政局長から各都道府県知事,各指定都市市長に宛てた平成10年4月28日付け「平成10年度の地方公営企業繰出金について」と題する通知及び平成11年4月21日付け「平成11年度の地方公営企業繰出金について」と題する通知(以下,いずれも「旧自治省通知」という)があり,以下のとおり病院事業会計に対する一般会計からの繰。 出基準を定めている。両通知とも,病院事業に関する限り,内容の変更はない。 ①病院の建設改良に要する経費病院の建設改良費及び企業債元利償還金のうち,その経営に伴 業会計に対する一般会計からの繰。 出基準を定めている。両通知とも,病院事業に関する限り,内容の変更はない。 ①病院の建設改良に要する経費病院の建設改良費及び企業債元利償還金のうち,その経営に伴う収入をもって充てることができないと認められるものに相当する額とされている(建設改良費の2分の1及び企業債元利償還金の3分の2を基準とする。 。)②救急医療の確保に要する経費救急病院等を定める旧厚生省令(昭和39年省令第8号)第2条の規定により告示された救急病院における医師等の待機及び空床の確保等救急医療の確保に必要な経費に相当する額とされている。 ③経営基盤強化対策に要する経費<ア>医師及び看護婦等の研究研修に要する経費ただし,医師及び看護婦等の研究研修に要する経費の2分の1とされている。 <イ>病院事業会計に係る追加費用の負担に要する経費ただし,当該年度の4月1日現在の職員数が地方公務員等共済組合法の長期給付等に関する施行法(昭和37年法律第153号)の施行の日における職員数に比して著しく増加している病院事業会計に係る追加費用の負担額の一部とされている。 (乙第6号証,第7号証)(3)平成10年度における一般会計から病院事業会計への繰出し普通地方公共団体の会計は,一般会計と特別会計に分けられているが(地方自治法209条,備前市では,平成10年度において,一般会計から病)院事業会計に対し,別表1のとおり,平成10年4月27日500万0000円及び平成11年3月31日計1億2160万5000円総額1億2660万5000円の繰出しを行ったほか,リハビリテーション医療に関する経費1万8000円の繰出しを行った。このうち,請求の減縮に係る別表1番号1及び番号3に係る繰出金を除く繰出金総額7351万1000円に対応する病院事業 を行ったほか,リハビリテーション医療に関する経費1万8000円の繰出しを行った。このうち,請求の減縮に係る別表1番号1及び番号3に係る繰出金を除く繰出金総額7351万1000円に対応する病院事業会計における繰入金の具体的な使途は,以下のとおりである。 すなわち,(ア)病院の建設改良に要する経費(別表1番号2)旧自治省通知に定める繰出基準に従い,①医師住宅新築事業(昭和54年度借入れ,②MRI・人工透析機器購入事業(平成6年度借入れ,))③人工透析棟他増築事業(平成6年度借入れ,④スプリンクラー整備事)業(平成7年度借入れ,⑤医事コンピュータ他機器購入事業(平成7年))()度借入れ及び⑥医療機器購入事業平成8年度及び平成9年度各借入れにそれぞれ要した資金を調達するために発行した企業債の利息償還に要する経費1259万7000円(平成10年度分見込額1889万5716。),。 円の3分の2に相当するものに充てるため繰出し及び繰入れをした(イ)病院の経営基盤強化対策に要する経費(別表1番号4)旧自治省通知に定める繰出基準に従い,①医師及び看護婦等の研究研修に要する経費162万0000円(平成8年度決算額324万0178円の2分の1に相当するもの,②病院事業の経営研修に要する経費11。)万1000円(平成8年度決算額22万3020円の2分の1に相当するもの)及び③病院事業会計に係る追加費用の負担に要する経費すなわち。 職員の増加に伴う地方公務員等共済組合法に定める長期給付等に係る負担金の不足を補填するための経費2108万7000円(平成9年度決算額2108万7435円に相当するもの)合計2281万8000円に充。 てるため,繰出し及び繰入れをした。 (ウ)老人保健施設の建設改良に要する経費(別表1番号5)旧 万7000円(平成9年度決算額2108万7435円に相当するもの)合計2281万8000円に充。 てるため,繰出し及び繰入れをした。 (ウ)老人保健施設の建設改良に要する経費(別表1番号5)旧自治省通知に定める繰出基準に従い,①老人保健施設建設事業(平成6年度及び平成8年度各借入れ)及び②患者輸送用自動車購入事業(平成8年度借入れ)にそれぞれ要した資金を調達するために発行した企業債の利息償還に要する経費2163万1000円(平成10年度分見込額3244万6875円の3分の2に相当するもの)に充てるため,繰出し及。 び繰入れをした。 (エ)老人保健施設の経営基盤強化対策に要する経費(別表1番号6)旧自治省通知による繰出基準に従い,①職員の研究研修に要する経費20万3000円(平成8年度決算額40万5925円の2分の1を基礎として算出したもの)及び②追加費用の負担に要する経費すなわち職員の。 増加に伴う地方公務員等共済組合法に定める長期給付等に係る負担金の不足を補填するための経費406万4000円(平成9年度決算額406万4503円を基礎として算出したもの)合計426万7000円に充て。 るため,繰出し及び繰入れをした。 (オ)在宅介護支援センターの運営に要する経費(別表1番号7)本来一般会計において負担すべき経費である在宅介護支援センターを運営するために要する経費1136万2000円(平成9年度決算額1982万2430円から国庫補助金846万0000円を控除したもの)に。 充てるため,繰出し及び繰入れをした。 (カ)訪問看護ステーションの建設改良に要する経費(別表1番号8)旧自治省通知に定める繰出基準に従い,訪問看護ステーション建設事業(平成8年度借入れ)に要した資金を調達するために発行した企業債の利息償還に要する経費19万 ンの建設改良に要する経費(別表1番号8)旧自治省通知に定める繰出基準に従い,訪問看護ステーション建設事業(平成8年度借入れ)に要した資金を調達するために発行した企業債の利息償還に要する経費19万5000円(平成10年度分見込額29万3100円の3分の2に相当するもの)に充てるため,繰出し及び繰入れを。 した。 (キ)訪問看護事業の経営基盤強化対策に要する経費(別表1番号9)旧自治省通知に定める繰出基準に従い,①職員の研究研修に要する経費4万7000円(平成8年度決算額9万2542円の2分の1に相当するもの)及び②追加費用の負担に要する経費すなわち職員の増加に伴う地。 方公務員等共済組合法に定める長期給付等に係る負担金の不足を補填するための経費59万3000円(平成9年度決算額59万3109円を基礎として算出したもの)合計64万0000円に充てるため,繰出し及び。 繰入れをした。 (乙第6号証,第10号証及び第11号証,証人Aの証言)(4)平成11年度における一般会計から病院事業会計への繰出し備前市は,平成11年度において,一般会計から備前病院の経理を対象とする特別会計である病院事業会計に対し,別表2のとおり,平成12年3月31日総額1億2747万7000円の繰出しを行った。このうち,請求の減縮に係る別表2番号1及び番号3に係る繰出金を除く繰出金総額7519万5000円に対応する病院事業会計における繰入金の具体的な使途は,以下のとおりである。すなわち,(ア)病院の建設改良に要する経費(別表2番号2)前記(3)(ア)と同様に,①医師住宅新築事業(昭和54年度借入れ,)②MRI・人工透析機器購入事業(平成6年度借入れ,③人工透析棟)他増築事業(平成6年度借入れ,④スプリンクラー整備事業(平成7)年度借入れ,⑤医事コンピュ 宅新築事業(昭和54年度借入れ,)②MRI・人工透析機器購入事業(平成6年度借入れ,③人工透析棟)他増築事業(平成6年度借入れ,④スプリンクラー整備事業(平成7)年度借入れ,⑤医事コンピュータ他機器購入事業(平成7年度借入れ))及び⑥医療機器購入事業(平成8年度分,平成9年度及び平成10年度各借入れ)にそれぞれ要した資金を調達するために発行した企業債の利息償還に要する経費1119万0000円(平成11年度分経費見込額1678万5066円の3分の2に相当するもの)に充てるため,繰。 出し及び繰入れをした。 (イ)病院の経営基盤強化対策に要する経費(別表2番号4)前記(3)(イ)と同様に,①医師及び看護婦等の研究研修に要する経費179万6000円(平成9年度決算額359万3319円の2分の1に相当するもの,②病院事業の経営研修に要する経費6万7000円(平。)成9年度決算額13万4360円の2分の1に相当するもの)及び③病。 院事業会計に係る追加費用の負担に要する経費すなわち職員の増加に伴う地方公務員等共済組合法に定める長期給付等に係る負担金の不足を補填するための経費2360万7000円(平成10年度決算額2360万7470円に相当するもの)合計2547万0000円に充てるため,繰出。 し及び繰入れをした。 (ウ)老人保健施設の建設改良に要する経費(別表2番号5)前記(3)(ウ)と同様に,①老人保健施設建設事業(平成6年度及び平成8年度各借入れ)及び②患者輸送用自動車購入事業(平成8年度借入れ)にそれぞれ要した資金を調達するために発行した企業債の利息償還に要する経費2160万4000円(平成11年度分経費見込額3240万6759円の3分の2に相当するもの)に充てるため,繰出し及び繰入れを。 した。 (エ)老人保健施 めに発行した企業債の利息償還に要する経費2160万4000円(平成11年度分経費見込額3240万6759円の3分の2に相当するもの)に充てるため,繰出し及び繰入れを。 した。 (エ)老人保健施設の経営基盤強化対策に要する経費(別表2番号6)前記(3)(エ)と同様に,①研究研修に要する経費35万5000円(平成9年度決算額71万0301円の2分の1に相当するもの)及び②追。 加費用の負担に要する経費すなわち職員の増加に伴う地方公務員等共済組合法に定める長期給付等に係る負担金の不足を補填するための経費468万1000円(平成10年度決算額468万1094円を基礎として算出したもの)合計503万6000円に充てるため,繰出し及び繰入れを。 した。 (オ)在宅介護支援センターの運営に要する経費(別表2番号7)前記(3)(オ)と同様に,在宅介護支援センター運営費1087万8000円(平成10年度決算額1943万8666円から国県補助金856万0000円を控除したもの)に充てるため,繰出し及び繰入れをした。 。 (カ)訪問看護ステーションの建設改良に要する経費(別表2番号8)前記(3)(カ)と同様に,訪問看護ステーション建設事業(平成8年度借入れ)に要した資金を調達するために発行した企業債の利息償還に要する経費19万5000円(平成11年度分見込額29万3100円の3分の2に相当するもの)に充てるため,繰出し及び繰入れをした。 。 (キ)訪問看護事業の経営基盤強化対策に要する経費(別表2番号9)前記(3)(ク)と同様に,①職員の研究研修に要する経費14万6000円(平成9年度決算額29万2495円の2分の1に相当するもの)及。 び②追加費用の負担に要する経費すなわち職員の増加に伴う地方公務員等共済組合法に定める長期給付等に係る負担金の不 費14万6000円(平成9年度決算額29万2495円の2分の1に相当するもの)及。 び②追加費用の負担に要する経費すなわち職員の増加に伴う地方公務員等共済組合法に定める長期給付等に係る負担金の不足を補填するための経費67万6000円(平成10年度決算額67万6541円を基礎として算出したもの)合計82万2000円に充てるため,繰出し及び繰入れを。 した。 (乙第7号証,第10号証及び第11号証,証人Aの証言)(5)住民監査請求及び訴訟の提起等(ア)住民監査請求及び訴えの提起①原告は,平成11年6月3日,備前市長である被告が行った平成10年度の一般会計から病院事業会計への繰出しは法17条の2に違反するものであるとして,被告が備前市に対し前記繰出金を弁済することを求め,地方自治法242条1項に基づく監査請求を行ったところ,備前市監査委員は,同年7月30日,原告に対し「備前市職員措置請求に係,る監査の結果について(通知」と題する書面をもって,請求には理由)がないとして,これを棄却する旨の通知をした。 これを受け,原告は,平成11年8月27日に,被告に対し,備前市に1億2642万3000円(なお,1億2662万3000円の違算である)を支払うことを求める訴えを提起した(平成11年(行ウ)第。 22号事件。 )②原告は,平成12年7月3日,備前市長である被告が行った平成11年度の一般会計から病院事業会計への繰出しは法17条の2に違反するものであるとして,被告が備前市に対し前記繰出金を弁済することを求め,地方自治法242条1項に基づく監査請求を行ったところ,備前市監査委員は,同年8月29日,原告に対し「備前市職員措置請求に係,る監査の結果について(通知」と題する書面をもって,請求には理由)がないとして,これを棄却する旨の 監査請求を行ったところ,備前市監査委員は,同年8月29日,原告に対し「備前市職員措置請求に係,る監査の結果について(通知」と題する書面をもって,請求には理由)がないとして,これを棄却する旨の通知をした。 これを受け,原告は,平成12年9月19日に,被告に対し,備前市に1億2447万7000円を支払うことを求める訴えを提起した(平成12年(行ウ)第20号事件。 )(イ)請求の減縮及び拡張①原告は,平成12年9月19日の第6回弁論準備手続期日において,平成10年度分一般会計からの繰出金のうちリハビリテーション医療に関する経費1万8000円に係る損害賠償請求(平成11年(行ウ)第22号事件)につき,訴えの対象から除外し,被告に支払いを求める損害賠償金額を1億2660万5000円に請求を減縮し,被告は,これに同意した。 ②原告は,平成13年1月23日の第8回弁論準備手続期日において,平成10年度分一般会計からの繰出金のうち別表1番号1,番号3及び番号4に係る損害賠償請求(平成11年(行ウ)第22号事件)及び平成11年度分一般会計からの繰出金のうち別表2番号1,番号3及び番号4に係る損害賠償請求(平成12年(行ウ)第20号事件)につき,いずれも訴えの対象から除外し,被告に支払いを求める損害賠償金額を平成10年度分につき5069万2000円,平成11年度分につき4972万5000円にそれぞれ請求を減縮し,被告は,これに同意した。 ③ところが,原告は,その後,平成13年9月25日の第6回口頭弁論期日において,平成10年度分一般会計からの繰出金のうち別表1番号4に係る損害賠償請求(平成11年(行ウ)第22号事件)及び平成11年度分一般会計からの繰出金のうち別表2番号4に係る損害賠償請求(平成12年(行ウ)第20号事件)につき,各繰出 金のうち別表1番号4に係る損害賠償請求(平成11年(行ウ)第22号事件)及び平成11年度分一般会計からの繰出金のうち別表2番号4に係る損害賠償請求(平成12年(行ウ)第20号事件)につき,各繰出し支出の違法性を再度主張することにより,当該各損害賠償請求に係る訴えの対象に加え,被告に支払いを求める損害賠償金額を平成11年(行ウ)第22号事件につき7351万0000円に,平成12年(行ウ)第20号事件につき7519万5000円にそれぞれ請求を拡張した。 争点 (1)本案前の主張1(被告の主張)原告がいったん損害賠償請求の一部につき訴えの取下げをしながら,その後これを撤回し,再度,損害賠償請求をするに至った別表1番号4及び別表2番号4に係る各繰出金(病院の経営基盤強化対策に要する経費)を対象とする各損害賠償請求の訴えについては,訴えの取下げによって最初から訴訟係属がなかったものとみなされる結果(民事訴訟法262条1項,出訴期)間遵守の効果が消滅するため,前記損害賠償請求の訴えは,いずれも不適法として却下すべきものである。 (2)本案前の主張2(被告の主張)病院事業は,備前市が経営する地方公営企業であるが,備前病院自体,備前市から独立した法人格を有する存在ではなく,一般会計から病院事業会計である特別会計への繰出しは,備前市内部における資金移動に過ぎず,地方自治法242条が規定する住民監査請求の対象である「公金の支出」に該当しないため,繰出し支出に係る損害賠償請求の訴えは,いずれも適法な監査請求の経由を前提としている住民訴訟としての適格を欠くものであるため,却下されるべきものである。 (3)一般会計から病院事業会計に対する下記アからキまでの繰出し支出は,地方公営企業法に違反し,違法であるか否か。 ア病院の建設改良に要する経 格を欠くものであるため,却下されるべきものである。 (3)一般会計から病院事業会計に対する下記アからキまでの繰出し支出は,地方公営企業法に違反し,違法であるか否か。 ア病院の建設改良に要する経費(別表1番号2及び別表2番号2)a原告の主張被告は,その繰出しの法的根拠として法17条の2第1項2号及び令附則14項を主張するが,これは,令附則14項の解釈適用を誤ったものである。すなわち,令附則14項は,令8条の5第2項2号の「病院事業」を前提としているため,病院の建設改良に要する経費は,同号前段のへんぴな地域等の病院事業の建設改良費であることが必要であるところ,備前病院は,へんぴな地域等における病院ではないから,令附則14項は,繰出しの法的根拠となり得ない。 また,病院の建設改良に要する経費は,資本的収支に計上すべきものであり,収益的収支に計上すべきものではないから(このことは,予算書上,収益的収支には建設改良費なる款項がないことからも明らかというべきである,前記繰出し支出は違法である。 。)b被告の主張法17条の2第1項2号及び令附則14項に基づく繰出しである。 原告は,病院の建設改良に要する経費が資本的支出事項であって,収益的支出事項ではないため,違法である旨主張するけれども,この経費は,病院の建設改良に要した経費を支弁するため発行された企業債の利息償還に充てるための支出であるところ,地方公営企業の会計上,元本償還については資本的収支として,利息償還については収益的支出として,それぞれ計上することが求められており,前記繰出し支出に違法はない。 なお,原告は,令附則14項につき,令8条の5第2項2号の病院を前提とする規定である旨主張するが,令附則14項はそのように限定的,。 に解釈すべきではないから備前病院事業もその対象 違法はない。 なお,原告は,令附則14項につき,令8条の5第2項2号の病院を前提とする規定である旨主張するが,令附則14項はそのように限定的,。 に解釈すべきではないから備前病院事業もその対象であると解されるけだし,令附則14項の文言上原告の主張のような限定が付されているわけではなく,令8条の5第2項2号に定める病院等に関する経費にはその運営費のほか建設改良に関する経費が含まれることからすると,令附則14項は令8条の5第2項2号に定める以外の病院等の建設改良に関する経費の負担区分につき定めたものと解するのが相当であるからである。 ()イ病院の経営基盤強化対策に要する経費別表1番号4及び別表2番号4a原告の主張法17条の2及び17条の3のいずれにおいても,被告主張の①医師及び看護婦等の研究研修に要する経費,②病院事業の経営研修に要する経費及び③病院事業会計に係る追加費用の負担に要する経費すなわち職員の増加に伴う地方公務員等共済組合法に定める長期給付等に係る負担金の不足を補填するための経費に充てるため,繰出しをすることを予定しているということはできないから,違法である。法17条の3については,前記項目の経費については,そもそも補助金として繰出しがなされたものではないため,17条の3を根拠となしえないものである。 b被告の主張経営基盤強化対策に要する経費のうち,医師及び看護婦等の研修に要する経費及び病院事業会計に係る追加費用の負担に要する経費は,その性格上,病院のみに負担させることは困難な経費であり,本来は2号該当経費として政令で定められるべきであるのに,令8条の5に明文の規,,定を欠いているけれども経営の健全化のため不可欠の費用であるから法17条の3に基づき,病院事業会計を補助するため一般会計から繰り出すことが許 で定められるべきであるのに,令8条の5に明文の規,,定を欠いているけれども経営の健全化のため不可欠の費用であるから法17条の3に基づき,病院事業会計を補助するため一般会計から繰り出すことが許されると解すべきである。 ()ウ老人保健施設の建設改良に要する経費別表1番号5及び別表2番号5a原告の主張法17条の3は,地方公営企業に対する補助金の支出につき厳格な要件を設定しているところ,建設改良に要する経費に充てるための繰出し支出がこの要件に該当しないことは明らかであるから,違法である。 また,老人保健施設の建設改良に要する経費は,資本的収支勘定で処理されるべき費目であるのに,収益的収支勘定に対する繰出しをしたものであるから,この点でも違法である。 b被告の主張前記繰出し支出は,主位的には法17条の2第1項2号及び令附則1,。 4項に基づくものであり予備的には法17条の3に基づくものであるそして,建設改良に要する経費は,その性格上,2号該当経費に該当するところ,令8条の5において附帯事業に係る経費の負担区分につき明文で規定していないけれども,これは,施行令が経費の負担区分の関係では附帯事業を本体事業と一体をなすものとして取り扱っていることによるものであるから,病院の附帯事業である老人保健施設及び訪問看護ステーションの建設改良に要する経費は,病院の建設改良に要する経費に準じ,令附則14項が繰出し支出の法的根拠となるというべきである。 仮に前記主張が認められないとしても,備前市は,老人保健施設を病院事業の附帯事業と位置づけており,老人保健施設事業が法17条の3の補助の対象とすべき事業であることは,当該事業の性格及び旧自治省の通知等から明らかであるから,違法はない。 なお,原告は,老人保健施設の建設改良に要する経費が資本的収支勘 保健施設事業が法17条の3の補助の対象とすべき事業であることは,当該事業の性格及び旧自治省の通知等から明らかであるから,違法はない。 なお,原告は,老人保健施設の建設改良に要する経費が資本的収支勘定で支出されるべきものであることを理由に,収益的収支勘定で支出されている前記繰出し支出につき違法である旨主張するが,前記繰出し支出は,企業債の利息償還金に充てられる経費を対象とするものであり,この利息償還金分については地方公営企業の会計処理上収益的収支勘定における支出で処理されるべきであるから,会計準則に反する違法はない。 エ老人保健施設の経営基盤強化対策に要する経費(別表1番号6及び別表2番号6)a原告の主張法17条の3は,地方公営企業に対する補助金の支出につき厳格な要件を設定しているところ,経営基盤強化対策に要する経費に充てるための繰出し支出がこの要件に該当しないことは明らかであるから,違法である。 b被告の主張地方公営企業法17条の3に基づく繰出し支出である。 経営基盤強化対策に要する経費のうち,①医師及び看護婦等の研修に要する経費及び②病院事業会計に係る追加費用の負担に要する経費は,その性格上,病院のみに負担させることは困難な経費であり,本来は2号該当経費として政令で定められるべきであるのに,令8条の5に明文の規定を欠いているが,病院の経営基盤強化は,経営の健全化のため不可欠の要請であるから,法17条の3に基づき病院事業会計を補助するため一般会計から繰り出すことが許されると解すべきである。 なお,旧自治省財政局は,毎年,各地方公営企業に対し,決算状況調査表の作成提出を求め,そのために調査表作成要領(以下「要領」という)を各地方公営企業に配布しているところ,要領では法17。 条の2及び令8条の5で定める経費の負担区分に明 営企業に対し,決算状況調査表の作成提出を求め,そのために調査表作成要領(以下「要領」という)を各地方公営企業に配布しているところ,要領では法17。 条の2及び令8条の5で定める経費の負担区分に明記されていない研究研修に要する経費及び追加費用の負担に要する経費等の経営基盤強化対策に要する経費につき補助金を繰出し支出することを予定している。 オ在宅介護支援センターの運営に要する経費(別表1番号7及び別表2番号7)a原告の主張,,在宅介護支援センターは備前病院に併設されている施設であるが地方公営企業法には在宅介護支援センター事業が列挙されていないことから,これに対する一般会計からの繰出しはすべて違法である。 b被告の主張在宅介護支援センターは,利用者の料金等の収入を予定していない事業であり,国庫補助金以外の収入はない。このため,本来,地方公営企業法の適用対象とならない事業であるが,保健・医療・福祉の一元化という理念の下に,老人保健施設及び訪問看護ステーションとともに設置することによって,その運営の合理化を図るために備前病院に併設し,病院事業会計で処理しているものである。したがって,本来は一般会計で処理すべきものを病院事業会計に組み込むことの当否はともかく,一般会計から病院事業特別会計への繰出し支出を違法であるということはできない。 ()カ訪問看護ステーションの建設改良費別表1番号8及び別表2番号8a原告の主張前記ウに同じ。 b被告の主張前記ウに同じ。 キ訪問看護事業の経営基盤強化対策に要する経費(別表1番号9及び別表2番号9)a原告の主張前記エと同じ。 b被告の主張前記エと同じ。 (4)一般会計から病院事業会計へ繰出しが行われたことによってその時点で備前市に繰出金と同額の損害が発生したといえるか否 表2番号9)a原告の主張前記エと同じ。 b被告の主張前記エと同じ。 (4)一般会計から病院事業会計へ繰出しが行われたことによってその時点で備前市に繰出金と同額の損害が発生したといえるか否か。 a原告の主張一般会計から病院事業会計へ繰出し行為がなされた時点で,予算執行を待つまでもなく,確定的に繰出金と同額の損害が発生している。 b被告の主張一般会計から病院事業会計への繰出しは,一般会計から特別会計への内部的資金移動であり,備前市に損害は発生していない。 第3当裁判所の判断 本案前の主張1について前記認定の訴訟の経過によれば,原告は,平成13年1月23日の第8回弁論準備手続期日において,別表1番号1,番号3及び番号4並びに別表2の番号1,番号3及び番号4の経費を対象とする繰出しに係る損害賠償請求につき訴訟の対象から除外した後,同年9月25日の第6回口頭弁論期日において,このうち別表1番号4及び別表2番号4の経費を対象とする繰出しにつき再度,,違法である旨主張してこれを訴訟の対象に加えるに至ったものであるところ備前市における一般会計から病院事業会計への繰出しは同時に病院事業会計への繰入れであるが,乙第10号証によると,備前市の一般会計では,前記経費に充てるための歳出予算につき,予算書上,款・諸支出金,項・特別会計繰出金,目・市立備前病院事業会計繰出金,節・繰出金の順に分類した上,その調製及び執行をしていることが認められ(地方自治法施行令150条1項3号によると,普通地方公共団体の長は,歳出歳入予算の各項を目節に区分するとともに,当該目節の区分に従って歳出歳入予算を執行する旨規定されている,。)そうであれば,一般会計においては,別表1及び別表2に記載した経費の使途項目毎に予算を調製し,及びその執行をしているもので もに,当該目節の区分に従って歳出歳入予算を執行する旨規定されている,。)そうであれば,一般会計においては,別表1及び別表2に記載した経費の使途項目毎に予算を調製し,及びその執行をしているものではないから,原告主張のように,当該経費の使途項目に対応する繰出しが違法であるとしても,当該経費の使途項目毎に違法行為を観念することができないため,原告において当該経費に対応する繰出金に係る損害賠償請求の範囲につきその主張を変更したとしても,これによって当然に損害賠償請求の対象である繰出し行為の個数が増減する結果,これに応じて訴訟物の変更がもたらされるというものではないから,別表番号4の経費に対応する繰出金に係る損害賠償請求を訴訟の対象から除外したとしても,訴えの取下げによる訴訟係属の消滅という効果を生じる,,,。 ものではないため被告の主張はその前提を欠き採用することができない 本案前の主張2について住民訴訟制度は,普通地方公共団体の執行機関又は職員による地方自治法242条1項所定の「違法な公金の支出,財産の取得,管理若しくは処分,契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担」があるとき又は「違法に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実」があるときは,当該普通地方公共団体の構成員である住民全体の共同の利益が害されることから,地方自治の本旨に基づく住民参政の一環として,住民に対し同法242条の2第1項各号に定める請求形式によって前記財務会計上の行為を予防し,及び是正する権能を与え,もって地方財務行政の適正な運営を確保しようとするものであるから(最高裁判所昭和53年3月30日第1小法廷判決・民集32巻2号485頁参照,地方公共団体の設置する地方公営企業の経営に当たり)地方公共団体が行う一般会計から特別会計に しようとするものであるから(最高裁判所昭和53年3月30日第1小法廷判決・民集32巻2号485頁参照,地方公共団体の設置する地方公営企業の経営に当たり)地方公共団体が行う一般会計から特別会計に対する繰出しが地方公営企業法及び同法施行令に違反するため,住民全体の共同の利益を害するものであるときは,その請求形式はともかく,住民訴訟制度の目的に照らし,地方公共団体の長による当該予算の調製及び執行は住民訴訟の対象である財務会計上の行為に当たると解するのが相当である。けだし,普通地方公共団体の長は,地方自治法149条2号によると,予算を調製し,及びこれを執行する権能を有するところ,既に第2の1で明らかにしたとおり,法17条の2は,地方公共団体が,,経営する企業に関し法3条の規定する企業としての経済性を発揮させるため原則として企業経営に伴う収入によってその経費を負担するように求める一方で,その性質上前記収入をもって充てることが適当でない経費及び能率的な経営を行っても前記収入のみをもって充てることが客観的に困難と認められる経費については,一般会計等で出資,長期の貸付,負担金の支出その他の方法により負担すべき旨規定し,企業経済性の原則のみでは当該地方公営企業において対応が困難な分野については設置者である地方公共団体による財政負担を予定しており,令8条の5及び附則14項は,法17条の2の規定を受け,経過措置を含め,前記収入によって負担することを要しない経費の種類及び内容につき具体的に規定することによって地方公営企業の経営における経費の負担区分を明確にし,もってその経営の健全性を確保するとともに,経営主体である地方公共団体の財政の健全性を確保し,住民福祉の増進を図ることとしたものであるから,地方公共団体の長が一般会計及び特別会計における歳入歳出 し,もってその経営の健全性を確保するとともに,経営主体である地方公共団体の財政の健全性を確保し,住民福祉の増進を図ることとしたものであるから,地方公共団体の長が一般会計及び特別会計における歳入歳出予算の調製及び執行に当たり地方公営企業法及び同法施行令に違反する一般会計及び他の特別会計から当該地方公営企業の経理を対象とする特別会計への繰入れを放置するならば,いずれは地方公営企業の経営の健全性だけでなく,地方公共団体の財政の健全性を害するに至る結果,住民全体の共同の利益を害するものということができるからである。 そうすると,前記繰出し支出自体,後述のように,備前市内部における資金の移動であり,それのみでは,備前市が保有する公金の額に何ら変動を来すも,,のでないため直ちに何らかの財産的損害を発生させるものではないとしてもその理由のゆえに住民訴訟の対象である財務会計上の行為に該当しないと解するのは相当でなく,この点に関する被告の本案前の主張は採用することができない。 争点(4)について原告は,被告が,備前市長として,別表1及び別表2のとおり,平成10年度及び平成11年度における一般会計及び病院事業を対象とする特別会計における歳入歳出予算の調製及び執行に当たり,地方公営企業法及び同法施行令に違反する一般会計から特別会計への繰出し支出を行った結果,当該繰出し支出時点で備前市に繰出金と同額の財産的損害が発生したとの前提の下に,地方自治法242条の2第1項4号に定める,被告に対する損害賠償請求の代位行使を主張するものであるが前記繰出し支出行為の法的性格にかんがみ争点(3),,に対する判断に先立ち,争点(4)につき以下検討することとする。 先に述べた法17条の2並びに令8条の5及び附則14項の目的及び趣旨からすると,前記各規定は,地方 的性格にかんがみ争点(3),,に対する判断に先立ち,争点(4)につき以下検討することとする。 先に述べた法17条の2並びに令8条の5及び附則14項の目的及び趣旨からすると,前記各規定は,地方公共団体の一般会計における歳出予算及び公営企業の経理を対象とする特別会計における歳入予算の調製及び執行に関し,その権能を有する普通地方公共団体の長に対して経費の負担区分を順守すべき法的義務を課したものであるが(前記規定をもって単なる訓示規定であるということはできない,これに違反する予算の調製が行われ,その執行がなされ。)たからといって,繰出金額と同額の財産的損害が発生しているため,地方自治法242条の2第1項4号に定める損害賠償請求の代位行使が可能であるということはできないというべきである。けだし,地方公営企業法及び同法施行令に違反する繰出しがなされたとしても,それ自体一般会計から当該特別会計への資金移動に過ぎないから,その結果当該普通地方公共団体内部における公金の減少がもたらされるものではないことに加え,当該特別会計に繰り入れられた繰入金につき,その後予算の執行が行われることによって公金が減少するに至るとしても,それが公営企業の経営上必要な費用を支弁するための支出行為として是認することができるものであるならば,当該資金の調達方法につき特別会計の資金をもって充当すべきであるのに一般会計の資金をもって充当したという,経費の負担区分上の違法があるにとどまり,それだけの事情によっては,当該地方公営企業さらにはその経営主体である地方公共団体にとって当該公金の支出行為によって繰出金と同額の財産的損害が発生したということは到底できないからである。もとより,前記経費の負担区分に違反する予算の調製及び執行は,地方公営企業の経営のあり方を歪め,将来的には 公金の支出行為によって繰出金と同額の財産的損害が発生したということは到底できないからである。もとより,前記経費の負担区分に違反する予算の調製及び執行は,地方公営企業の経営のあり方を歪め,将来的には公営企業経営の健全性を害するとともに,経営主体である地方公共団体の財政の健全性を害するに至るおそれがあるため,前記のとおり住民訴訟によって予防及び是正されるべきものではあるけれども,その結果地方公共団体において被ることのある(,損害が当然に繰出金と同額の財産的損害であるということはできずそもそも一般会計であれ,特別会計であれ,特定の予算需要に充てるための資金の調達に関し,経費の負担区分の違反といった予算の編成方法に関する法令違反があるとしても,その対象となった予算需要自体が正当として是認することができるものである限り,当該地方公共団体の長がこれに対する予算措置を講じたことによって当該地方公共団体に何らかの財産的損害が発生したということはできず,かえって,経費の負担区分の違反といった予算の編成方法に関する法令違反のゆえに繰出金と同額の損害が発生しているとして当該職員に対する損害賠償請求の代位行使を許容するならば,当該地方公共団体は,新たに当該損害賠償額と同額の資金を取得することによって事実上正当な予算需要に対応する資金負担を免れるという不当な結果とならざるを得ないものである,繰出。)金の額をもって当該職員に対する損害賠償請求の代位行使の対象となる損害の額とはなしえないものである。 なお,当該特別会計に対する一般会計から違法な繰出しがなされなかったならば,一般会計に留保された当該資金を他の予算需要に振り向けることも可能となるため,繰出し行為によって当該地方公共団体に繰出金と同額の財産的損害が発生すると観念しうるかのごとくであるが,当該資 たならば,一般会計に留保された当該資金を他の予算需要に振り向けることも可能となるため,繰出し行為によって当該地方公共団体に繰出金と同額の財産的損害が発生すると観念しうるかのごとくであるが,当該資金が一般会計に留保されたからといって他の予算需要に充てるための措置が講じられるか否かおよそ不確定であるのみならず(他の予算需要の性質及び内容いかんによっては留保された資金を使用した予算措置が何ら講じられないこともありうる,前記。)のとおり,当該繰出金が振り向けられた予算需要が正当なものである限りこれに対する予算上の措置を講じること自体に違法の問題はないから,損害の発生を観念することはできないというべきである。 これを本件につきみるに,原告は,被告が,備前市長として,別表1及び別表2のとおり,平成10年度及び平成11年度における一般会計及び病院事業会計における予算の調製及び執行に当たり,地方公営企業法及び同法施行令に違反する一般会計から特別会計への繰出しを行った結果,繰出しの時点で,備前市に当然に同額の財産的損害が発生したとの前提の下に,被告に対する損害賠償請求の代位行使を主張するものであるところ,それだけの事情では,備前市に繰出金と同額の財産的損害が発生したということができず(本件証拠によると,繰入金のほとんどは後に予算執行されたものとみられるが,その予算執行につき,経費負担区分上の問題はともかく,他に違法性があるとみるべき事情の存在は認め難い,そうであれば,当該繰出し行為の全部又は一部が前。)記経費の負担区分に違反する違法があるとしても,原告が備前市に代位して行う被告に対する損害賠償請求をするための要件である損害の発生が認められないから,原告の請求は,主張自体失当として,いずれも棄却を免れないものである。 第4 結論 よって,原告 告が備前市に代位して行う被告に対する損害賠償請求をするための要件である損害の発生が認められないから,原告の請求は,主張自体失当として,いずれも棄却を免れないものである。 第4 結論 よって,原告の請求は,その余の争点につき判断するまでもなく,いずれも理由がないから,これを棄却し,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 岡山地方裁判所第1民事部裁判長裁判官渡邉温裁判官金光秀明裁判官潮海二郎(別表添付省略)
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