平成13(行ウ)24 消費税更正処分取消請求

裁判年月日・裁判所
平成14年7月1日 神戸地方裁判所
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判決文本文13,088 文字)

判決平成14年7月1日神戸地方裁判所平成13年(行ウ)第24号消費税更正処分取消請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告が原告に対して平成12年6月30日付けでした課税期間平成10年10月1日から同年12月31日までの原告の消費税及び地方消費税についての更正処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,被告が原告に対し平成12年6月30日付けでした課税期間平成10年10月1日から同年12月31日までの原告の消費税及び地方消費税についての更正処分(以下,「本件処分」という。)が違法であるとして,同処分の取消を求めた事案である。 1 争いのない事実等以下の事実は,当事者に争いがないか弁論の全趣旨により容易に認めることができる。 (1) 原告は,神戸市a区b・c丁目d番地e所在の賃貸マンション(以下,「本件マンション」という。)を所有し,その敷地の一部で駐車場の賃貸業も行っている個人事業者である。 (2) 本件マンションは,平成7年1月17日に発生した阪神大震災で損壊したため,以後原告は,継続的に同マンションの補修工事を行った。 (3) 原告は,当初消費税法9条1項本文の適用を受ける消費税の免税事業者であったが,平成10年4月8日付で,被告に対し,同条項の適用を受けない旨を記載した消費税課税事業者選択届出書及び消費税法19条1項3号の規定により課税期間を短縮する旨を記載した消費税課税期間特例選択届出書を提出し,同年7月1日ないし同年9月30日の課税期間から,消費税の課税事業者となった。 (4) 平成10年10月5日,原告は により課税期間を短縮する旨を記載した消費税課税期間特例選択届出書を提出し,同年7月1日ないし同年9月30日の課税期間から,消費税の課税事業者となった。 (4) 平成10年10月5日,原告は,被告に対し,課税期間同年7月1日から同年9月30日までの消費税及び地方消費税(以下,あわせて「消費税等」という。)の確定申告を行った。 この際,原告は,本件マンションの補修費用にかかる消費税額について仕入税額控除を行って申告を行った。 (5) 原告は,平成11年2月26日付で,以下のとおり課税期間平成10年10月1日から同年12月31日まで(以下,「本件課税期間」という。)の消費税の確定申告を行った(以下,「本件申告」という。)。 ア課税売上高(ア) 塾経営にかかる収入 6万3000円(消費税込)(イ) 駐車場の賃貸にかかる収入 6万6480円(消費税込)(ウ) 合計 12万3314円(消費税抜き)イ非課税売上高住宅貸付けにかかる収入 1057万9080円ウ課税売上割合約1パーセントエ課税標準額ア(ウ)(1000円未満切り捨て) 12万3000円オエに対する消費税額 4920円カ控除対象仕入税額(ア) 計算方法個別対応方式(消費税法30条2項1号)(イ) 金額a 訴外甲株式会社に支払った本件マンションの補修費用(a) 本件マンション501号室震災補修工事の工事代金103万円(平成8 (イ) 金額a 訴外甲株式会社に支払った本件マンションの補修費用(a) 本件マンション501号室震災補修工事の工事代金103万円(平成8年1月25日工事完了・同年4月5日及び平成9年3月19日代金支払)に対する消費税額3万円(b) 雑改修工事の工事代金の一部47万6320円(平成10年11月24日工事完了・同年12月1日代金支払)に対する消費税額1万8146円b 塾経営に関する諸経費 2939円c 合計 5万1085円キ納付すべき消費税額-4万6165円ク地方消費税の課税標準となる消費税額-1万6165円ケ納付すべき地方消費税額 -4041円コ納付すべき消費税等の金額 -5万0206円(還付)(6) 原告は,平成11年4月28日,前期間申告通り9707円の還付を受け,同年5月28日,本件申告通り5万0206円の還付を受けた。 (7) 原告は,同年10月18日,被告に対し,本件申告に関し,還付額を81万4072円とする追加請求のための更正の請求書を提出した。 (8) 被告は,平成12年6月30日付で原告に対し,本件更正処分を行った。 同処分は,本件マンションの補修費用が非課税売上げたる住宅貸付けに対応する仕入れであること,103万円の補修工事費については,本件課税期間外 月30日付で原告に対し,本件更正処分を行った。 同処分は,本件マンションの補修費用が非課税売上げたる住宅貸付けに対応する仕入れであること,103万円の補修工事費については,本件課税期間外の仕入れであることを理由に同仕入額に対する消費税額について仕入税額控除を認めなかった。 そして,控除対象仕入税額について前記(5)カ(イ)bの金額のみを認め,本件課税期間の消費税等の金額を2300円とし,同処分により新たに納税することとなった消費税等の額を5万2400円とする旨決定した。 (9) 原告は,同年7月6日,本件処分に対し異議申立てを行ったが,同年10月6日,同申立てが棄却されたため,原告は,同月17日,大阪国税不服審判所長に対し,審査請求を行ったが,平成13年6月22日付で同請求は棄却された。 2 争点非課税取引である住宅貸付けを行うための資産である本件マンションが震災によって損壊した場合に,その補修費用にかかる消費税額を仕入税額控除することができるか否か。 3 争点に対する当事者の主張(原告)(1) 以下の各事情からすれば,本件マンションの補修費用にかかる消費税額は,仕入税額控除されるべきである。 ア本件マンションの補修費用にかかる消費税額は,そもそも家賃に転嫁することにより回収できない。 (ア) 補修費用を生じさせた消費者が存在しないため,補修費用が住宅家賃と対価性を有してないため,そもそも家賃に転嫁できない。 a 本来であれば,住宅貸付けにかかる仕入れにかかる消費税額は,最終的には消費者たる借主が負担するものであり,貸主が負担すべきものではない。 したがって,住宅貸付けによる売上げが非課税売上げとされ,貸付けに要した住宅の補 貸付けにかかる仕入れにかかる消費税額は,最終的には消費者たる借主が負担するものであり,貸主が負担すべきものではない。 したがって,住宅貸付けによる売上げが非課税売上げとされ,貸付けに要した住宅の補修費用等に対する消費税額について仕入税額控除を認めないことが許されるのは,仕入れにかかる消費税額相当分を家賃に上乗せして消費者たる賃借人に請求することが可能であることを前提としている。 しかしながら,震災によって生じた補修費用に対する消費税額については,補修の必要を生じさせた消費者がそもそも存在しないため,これを家賃に転嫁することができない。 消費税法は,売上げとそれにかかる仕入れが対価性を有するかを含めて実質判定しているというべきである。だとすれば,非課税売上げとされる住宅貸付事業においても,課税仕入れに係る資産が受けた損害につき,加害者が不明な場合,自然災害の場合等通常の住宅賃貸事業において一般事業者の想定外であるような場合には,貸主が支出した費用は非課税化された家賃とは対価関係がないというべきであり,仕入税額控除が認められるべきである。 b 通達によれば,課税仕入れにかかる資産が事故等により滅失しもしくは亡失した場合または盗難にあった場合などのように,結果的に資産の譲渡等を行うことができなくなった場合であっても,その課税仕入れについては仕入税額控除の対象となるとされている。 また,事業者がその課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権につき一定の事実が生じたため,税込価額の全部または一部を領収することができなくなったときは,課税標準額に対する消費税額からその領収することができなくなった税込価額にかかる消費税額を控除することとされている(消費税法 生じたため,税込価額の全部または一部を領収することができなくなったときは,課税標準額に対する消費税額からその領収することができなくなった税込価額にかかる消費税額を控除することとされている(消費税法39条1項)。 c 実際,阪神大震災により滅失した商品等についても,補修費その他の原状回復費用についても,課税事業者は課税売上げを予定していた仕入れにつき,仕入税額控除がなされた。 (イ) 家賃を上げることができない。 補修が必要となった原因である阪神大震災は,阪神地域において局所的に生じたものであるから,我が国全体における家賃相場の上昇という事実がない以上,阪神地域においてのみ家賃を増額して仕入税額を回収するとの方法をとることはできない。また,かかる方法によれば,家賃の増額に伴う借主の負担の増大により,消費税の問題とされる逆進性をいっそう強めてしまうことになり,住宅家賃について逆進性の緩和からこれを非課税売上げとした立法趣旨にも反することになる。 イ固定資産における根本税務との矛盾がある。 減価償却は,物理的客観的時間に基づいて比例的に計算されるのであり,震災のように一瞬にして価値が半減あるいは全壊した場合の補修ないし再建費用は維持・管理費用でなく原状回復費用である。 にもかかわらず,固定資産における根本税務上の評価減,または簿価と時価の差額としての損金に対して消費税の負担が生じるとするのは論理的矛盾である。 ウ本件課税期間以前の課税期間においては,仕入税額控除が認められた。 原告は,前記争いのない事実等のとおり,平成10年7月ないし9月の課税期間において,本件申告にかかる補修費用と同様の補修費用について仕入税額 おいては,仕入税額控除が認められた。 原告は,前記争いのない事実等のとおり,平成10年7月ないし9月の課税期間において,本件申告にかかる補修費用と同様の補修費用について仕入税額控除が認められた。 にもかかわらず,本件課税期間における補修費用にかかる消費税額について仕入税額控除を認めなかったのは違法である。 (2) 消費税法並びに同法に基づく本件更正処分は憲法に違反する。 ア課税売上割合が95パーセント以上の課税事業者に対する取扱いとの不公平性について(憲法14条違反)課税売上げが3000万円以上で,かつ課税売上割合が100分の95以上の課税事業者であれば,非課税売上げに対する仕入れにかかる消費税額も控除することが認められている。しかし,そもそも課税売上割合が100分の95以上の課税事業者は比較的大企業であり,それ以外の課税事業者について,特に中小零細な事業者が多い住宅貸付業者について,住宅貸付けに対する仕入れにかかる消費税額の控除を認めないことは,補修を要する原因が同じ震災であるにも関わらず,差別的に徴税しているというべきである。 イ憲法13条,25条及び29条違反の事実について仮に,上記アのような取扱いを認めれば,仕入れにかかる消費税額相当分につき,これを原告が負担するか,ないしは前記のとおり家賃を値上げすることができない状況にあるにもかかわらず,家賃の値上げを行うことによって賃借人に負担させるかのいずれかによることになる。 しかしながら,震災によって被害を受け,経済的に苦しい原告ないし賃借人の生存権,財産権を侵害するものであるから,憲法25条及び29条に反し,ひいては,憲法13条ないし国民主権原則に反するものであるから かしながら,震災によって被害を受け,経済的に苦しい原告ないし賃借人の生存権,財産権を侵害するものであるから,憲法25条及び29条に反し,ひいては,憲法13条ないし国民主権原則に反するものであるから違憲・違法である。 (被告)(1)ア原告の主張(1)アについて消費税の仕入税額控除の制度は,多段階課税である消費税につき,税の累積を避けるために認められているものであるところ,非課税売上げに対応する仕入れについては,税の累積を排除する必要性がそもそもない。また,仕入税額控除の制度についての規定は,消費税の転嫁及び費用回収の有無並びに課税仕入れをすることとなった原因により,その適用を異にしていない。 原告が,その主張(1)ア(ア)で指摘する通達は,無条件に「仕入税額控除ができる」ことを規定したものではない。 イ原告の主張(1)イについて固定資産にかかる減価償却は,法人税及び所得税における所得計算の方法であり,固定資産にかかる評価損の損金算入は,法人税における所得計算の方法である。したがって,所得概念がない消費税においては,かかる減価償却ないし評価損の概念を当てはめることはできない。 ウ原告の主張(1)ウについて前課税期間における補修は,原告における課税売上げである貸駐車場収入に対応する部分を含む駐車場土間等の補修工事であったことから,補修費用にかかる消費税額について仕入税額控除を認めたものであり,本件更正処分とは事案を異にする。 (2) 原告の主張(2)についてア消費税法30条2項は,事務処理の簡便化の見地から非課税売上げの割合が少ない場合(課税売上割合が95パーセント以上の事業者)には,課税仕入れにかかる税額を 原告の主張(2)についてア消費税法30条2項は,事務処理の簡便化の見地から非課税売上げの割合が少ない場合(課税売上割合が95パーセント以上の事業者)には,課税仕入れにかかる税額を全額控除できることとしたものであり,事業規模の大小によってその取扱いを異にするものでないことは明らかであり,また,仕入控除税額の計算方法は,個別対応方式に限られるものではなく,納税者は確定申告における選択において,一括比例配分方式による仕入控除税額も検証することができるのであるから,原告の主張は失当である。 イ国内において事業者が行った「資産の譲渡等」がある以上,資産の譲渡等を行うこととなった原因とは無関係に課せられるものであって,法定の要件を満たしている限り,消費税法が適用され消費税が発生するのは当然であるから,被告が原告の財産権を侵害しているとはいえない。 第3 争点に対する判断1(1) そもそも消費税は,生産,流通過程を経て事業者から消費者に提供される財貨・サービスの流れに着目して,事業者の売上げを課税の対象とすることにより,間接的に財貨またはサービスの消費に税負担を求めるものであり,法形式上,課税の対象を「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」(以下,「課税資産の譲渡等」という。)という形で包括的に規定している(消費税法2条1項8号)。 そして,法は,本来消費になじまない土地の譲渡または資本取引の性格を有する有価証券の譲渡等に加え,本来は課税の対象になるものであっても社会政策的見地から特定の取引については,非課税取引としており(消費税法6条,別表第一),住宅の貸付け(居住用に供することが明らかなものに限り,一時的に使用させる場合等を除く。)についても社会政策的見地から非課税取引と 定の取引については,非課税取引としており(消費税法6条,別表第一),住宅の貸付け(居住用に供することが明らかなものに限り,一時的に使用させる場合等を除く。)についても社会政策的見地から非課税取引とされ(消費税法別表第一13号),住宅貸付けによる売上げに対しては消費税が課されないものとされている。 (2) これに対し,仕入税額控除の制度は,消費税が,事業者が国内において行った課税資産の譲渡等を課税の対象とする多段階課税であるため,税の累積を避けるために仕入れに含まれている消費税額を控除するという制度であるから,事業者が事業として他の者から資産を譲り受け,もしくは借り受け,または役務の提供を受けたとしても,その仕入れに対応する売上げが非課税売上げである以上,税の累積排除を考慮する必要がなく,仕入税額控除の根拠を欠くから,非課税売上げに対応する課税仕入れにかかる消費税額は,本来的に仕入税額控除の対象となり得ないものであるというべきである。 (3) かかる趣旨に基づき,法は,課税仕入れにかかる消費税額の全額を控除することは認めず,課税売上げに対応する仕入れ等の税額についてのみ控除の対象とすることとし,仕入控除税額の計算方法につき,個別対応方式(消費税法30条2項1号)を原則としつつ,簡便な計算方法として一括比例配分方式(消費税法30条2項2号)を設けて納税義務者の選択に委ねているものであり,ただ,例外的に,課税事業者のうち,課税期間における課税売上割合が95パーセント以上と非課税売上げの割合が少ない事業者については,事務処理の簡便化の見地から課税仕入れにかかる消費税額の全額を控除できるとしているものと解される。 そして,個別対応方式においては,課税期間中において行った課税仕入れにつき,①課税売上げにのみ要するもの,② 地から課税仕入れにかかる消費税額の全額を控除できるとしているものと解される。 そして,個別対応方式においては,課税期間中において行った課税仕入れにつき,①課税売上げにのみ要するもの,②課税売上げ以外の売上げ(非課税売上げもこれに含まれる。)に要するもの,③課税売上げとそれ以外の売上げに共通して要するものに区分し,①の売上げに要する仕入れにかかる消費税額及び③の売上げに要する仕入れかかる消費税額に課税売上割合を乗じたものの合計についてのみ仕入税額控除を認め,それ以外の仕入れにかかる消費税額については,仕入税額控除を認めておらず(法30条2項1号),②の売上げに要する仕入れが必要となった原因やその転嫁,回収の有無及び可否によっては仕入税額控除を認める場合があるといった例外規定は現行法上何ら設けられていない。 だとすれば,非課税売上げに要した課税仕入れにかかる消費税額については,仕入控除税額の計算方法につき個別対応方式を選択した場合には,これを仕入税額控除することができないことは明らかである。 (4) 前記争いのない事実で認定したとおり,原告は,仕入控除税額の計算方法につき個別対応方式を選択した消費税の課税事業者であり,また,本件マンションの補修費用は,非課税取引たる住宅の貸付事業に要したものであるといえる。したがって,非課税取引に要した課税仕入れである補修費用にかかる消費税額について仕入税額控除を認めなかった本件更正処分は適法であるというべきである。 2 原告の主張の検討(1) 原告主張の各事情の下では仕入税額控除が認められるべきとの主張についてア(ア) そもそも憲法は,法律の根拠に基づくことなしに国家が租税を賦課・徴収することができないとする租税法律主義を採用しており,課税要件を充足 税額控除が認められるべきとの主張についてア(ア) そもそも憲法は,法律の根拠に基づくことなしに国家が租税を賦課・徴収することができないとする租税法律主義を採用しており,課税要件を充足している限り,租税行政庁には租税の減免の自由はなく,また租税を徴収しない自由もなく,法律で定められたとおりの税額を徴収しなければならない(合法性の原則)。 したがって,行政庁としては,不確定概念によって例外的に裁量が認められる場合以外には上記合法性の原則に従って,課税要件を充足している限り,税を徴収する義務があり,ただ①納税義務の減免等納税者に有利な慣習法が成立している場合にこれに反する処分を行う場合や②慣習法として成立していないとしても,行政庁が納税者に有利な解釈・運用を一般的に広く行い,それを是正していない場合に合理的理由がないにもかかわらず特定の納税者を不利益に扱った場合,などの例外的な場合には,特定の納税者についての税の徴収を平等原則(憲法14条)に反し,違法と解する余地があるとしても,そのような事情が認められない場合にまで税の減免をすることは違法となるというべきである。 (イ) これを本件についてみると,消費税法は,非課税取引に対する課税仕入れにかかる消費税額については,仕入税額控除を認めないことを何ら不確定概念等を用いることなく一義的に規定していることからすれば,原告が非課税取引たる住宅貸付けのために要した本件マンションの補修費用にかかる消費税額について,被告は,原則として仕入税額控除を認めずこれを徴収しなければならない。 そこで,以下,原告が主張する各事情の存在により,本件が合法性の原則が例外的に適用されない場合に該当するかどうかを検討する。 イ具体的検討 ければならない。 そこで,以下,原告が主張する各事情の存在により,本件が合法性の原則が例外的に適用されない場合に該当するかどうかを検討する。 イ具体的検討(ア) 本件マンションの補修費用にかかる消費税額を家賃に転嫁することにより回収できないとの主張についてa そもそも,住宅に要する建物の補修は,まさに住宅貸付事業を営むために行われるものであることは明らかであるから,住宅貸付けと建物の補修費用との間に対価性を欠くということはできない。 また,消費税法上の規定からして,事業者が補修費用にかかる消費税額を家賃に転嫁して回収することが住宅貸付けを非課税取引とすることの前提となっているとは到底解することはできない。 したがって,自然災害により補修を要した場合の補修費用が,住宅貸付事業と対価性を有しないこと,また,阪神大震災が局所的に生じたものであることから家賃の値上げができないことなどにより家賃への転嫁による回収ができない場合には補修費用にかかる消費税額を控除することができると解することはできず,またそのような取扱いが,慣習法ないし一般的に広く認められた取扱いであると認めるに足りる証拠もない。 b また,原告が主張する通達についても,以下の理由から,本件マンションの補修費用についても仕入税額控除ができるとの取扱いが慣習法ないし一般的に広く認められた取扱いであると認めることはできない。 (a) 事故等による滅失等が生じた場合であっても,消費税法基本通達11-2-11は,「法30条の規定が適用される」としているにすぎず,結局消費税法30条2項により非課税売上げのみに要する課税仕入れにかかる消費税 による滅失等が生じた場合であっても,消費税法基本通達11-2-11は,「法30条の規定が適用される」としているにすぎず,結局消費税法30条2項により非課税売上げのみに要する課税仕入れにかかる消費税額はこれを控除できないと解すべきであるから,自然災害によって必要となった仕入れにかかる消費税額についてはこれを控除することができるとする慣習法が存在していることないしはそのような取扱いが一般的に広く行われていたことを認めるに足りる証拠もない。 (b) 貸倒れにかかる消費税額の控除に関する消費税法39条の規定も,あくまで本来仕入れを要した取引が課税取引であり,貸倒れ等により本来課税資産の譲渡等の相手方から収受できるはずであった消費税額相当分を収受できなくなった場合に,譲渡等者を保護すべく例外的に仕入れにかかる消費税額の控除を認めたに過ぎず,そもそも消費税額を収受することができない非課税取引において貸倒れが生じた場合にも同条項の存在により仕入れにかかる消費税額についてこれを控除することができるとする取扱いについて慣習法が存在しないしはそのような取扱いが一般的に広く行われていると認めるに足りる証拠はない。 (イ) 固定資産における根本税務と矛盾があるとの主張について固定資産における減価償却の制度は,固定資産が長期にわたって収益を生み出す源泉であることに鑑み,その取得に要した金額を,取得した年度に一括して費用として計上するのではなく,使用または時間の経過によってその価値が減耗することに応じて徐々に費用化するという制度である。また,評価損の制度は,法人における所得の算出にあたり,法人税法が原則として実現した収益及び損失のみを益金及び損金に算入することとしているところ,法人が所有する資産につき災 化するという制度である。また,評価損の制度は,法人における所得の算出にあたり,法人税法が原則として実現した収益及び損失のみを益金及び損金に算入することとしているところ,法人が所有する資産につき災害による著しい損傷その他の一定の事実によって,その資産の価額が帳簿価額を下回ることとなった場合に,その法人が資産の評価替えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したときは,その減額した部分の金額について例外的にこれを損金に算入することを認め,企業経営の実態を法人税法上の収益の計算に反映させようとする制度であると解される。これらの減価償却や評価損の制度は,収益に対して課税される所得税や法人税の場合に,継続的事業において課税標準となる収益を正確に算出するために,収入とそれを生み出すことに役立った費用を対応させ,費用を収入から控除しなければならないとする費用収益対応の原則に基づいていずれも採用されているものである。 これに対し,消費税は収益に関係なく全ての課税資産の譲渡等に対して原則的に課されるものであるから,それとは異なり収益に対して課税される所得税法や法人税法において固定資産の制度が採用されていることによって,課税標準が異なる消費税法においても減価償却や評価損の制度が慣習法として存在し,ないしはそのような取扱いを認めることが一般的に広く行われていると解することはできない。 (ウ) 本件課税期間以前の課税期間においては,仕入税額控除が認められたとの主張について弁論の全趣旨によれば,原告が前期間申告において申告した補修費用は,原告における課税売上げである貸駐車場収入に対応する部分を含む駐車場土間等の補修工事であったことが認められるところ,だとすれば,非課税取引に要する仕入れである本件マンション いて申告した補修費用は,原告における課税売上げである貸駐車場収入に対応する部分を含む駐車場土間等の補修工事であったことが認められるところ,だとすれば,非課税取引に要する仕入れである本件マンション自体の補修とは事案を異にするものであり,前期間申告通り補修費用にかかる消費税額の控除が認められたとしても,本件マンションの補修の場合にも,その補修費用にかかる消費税額が控除されることが慣習法として存在し,ないしはそのような取扱いを認めることが一般的に広く行われていると認めることはできない。 (2) 消費税法の規定に基づく本件更正処分が,税の公平性(平等原則)に反し,憲法14条に違反し,ひいては原告ないし賃借人の財産権・生存権を侵害し,憲法13条,25条,29条及び国民主権に反しているとの主張についてア(ア) 原告は,課税売上割合が95パーセント以上の課税事業者に対する取扱いに比べ不公平であること,仮に,上記アのような取扱いを認めれば,震災によって被害を受け,経済的に苦しい原告ないし賃借人の生存権,財産権を侵害するものであるから,憲法25条及び29条に反し,ひいては,憲法13条ないし国民主権原則に反するものであると主張する。 しかし,租税は,国家の財政需要を充足するという本来の機能に加え,所得の再分配,資源の適正配分,景気の調整等の諸機能も有しており,国民の租税負担を定めるについて,財政・経済・社会政策等の国政全般からの総合的な政策判断を必要とするばかりでなく,課税要件等を定めるについて,極めて専門技術的な判断を必要とすることも明らかである。したがって,租税法の定立については,国家財政,社会経済,国民所得,国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的技術的な判断に委ねるほかはなく,裁判所は 要とすることも明らかである。したがって,租税法の定立については,国家財政,社会経済,国民所得,国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的技術的な判断に委ねるほかはなく,裁判所は,基本的にはその裁量的判断を尊重せざるをえないというべきである(最高裁判所昭和60年3月27日大法廷判決・民集39巻2号247頁参照)。 だとすれば,事業として建物の貸付けを行う事業者について,貸付けの目的が住宅貸付けか否かによって,当該事業を営むために要することとなった課税仕入れにかかる消費税額について仕入税額控除を認めるかについての取扱いを区別することは,その立法目的が正当なものであり,かつ,当該立法において具体的に採用された区別の態様が上記立法目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り,これを憲法14条1項の規定に違反するものということはできないものと解するのが相当である。そして,消費税法が,住宅貸付けを非課税取引としたのは,社会政策的見地から,建物所有者たる貸主に比して経済的弱者にある借主について生活の基盤たる住宅の貸付けに限り,消費税の負担を免れさせることによってその保護を図ろうとしたものであり,また,課税売上割合が95パーセント以上の課税事業者について仕入税額全額の控除を認めたのは,すべての事業者について全体の課税仕入れにかかる消費税額のうち,課税売上げに対応する部分を抽出するという計算を行わせ,その部分についてのみ仕入税額控除を認めることとすれば,事業者の事務処理が煩雑になることからこれを避けるべく簡便な方法として仕入れにかかる消費税額全額の控除を認めたものであると解され,その立法目的はいずれも正当であるというべきである。 (イ) また,賃借人を保護すべく住宅貸付けを非課税取引とし賃 法として仕入れにかかる消費税額全額の控除を認めたものであると解され,その立法目的はいずれも正当であるというべきである。 (イ) また,賃借人を保護すべく住宅貸付けを非課税取引とし賃料に対して消費税を課さないこととしたことが上記立法目的との関連で著しく不合理であることが明らかであるとはいうことはできない。加えて,課税売上割合が95パーセント未満であるか否かの判断にあたっては,事業者の規模によって取扱いが異なるものではないこと,課税売上割合が95パーセント未満の事業者についても一括比例配分方式を選択することが可能であり,それによって非課税売上げに要する仕入れにかかる消費税額についても課税売上割合の限度で控除が認められていること,一般的に住宅貸付業者は経済的に有利な場合が多いから,仕入れにかかる消費税額を住宅貸付業者に負担させたとしてもそれが著しく不合理だとはいえないことなどからすれば,非課税取引たる住宅貸付けについてはこれを一律に非課税取引としてそれに要した仕入税額控除を認めず,また,課税売上割合が95パーセント以上の課税事業者については,課税仕入れにかかる消費税額については一律に仕入税額控除を認めている消費税法の規定が合理性を欠き憲法14条に違反しているということはできないというべきである。 イ上記で検討したところに懲すれば,住宅貸付けを非課税取引とする消費税法の規定及び本件更正処分が,原告の財産権ないし生存権を侵害するということはできないし,憲法13条及び国民主権に反しているともいうこともできない。 3 結語以上によれば,原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 以上によれば,原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 主文 神戸地方裁判所第5民事部裁判長裁判官前坂光雄 裁判官寺本明広 裁判官窪田俊秀

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