平成12年(ワ)第5352号-A 特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成13年1月23日判決原告アンドウケミカル株式会社訴訟代理人弁護士北方貞男被告株式会社東海化成被告タキイ種苗株式会社被告株式会社サカタのタネ被告有限会社堤製陶所被告後藤種苗合名会社被告有限会社空閑園芸被告株式会社福岡セルトップ被告有限会社吉田園芸被告ら訴訟代理人後藤昌弘補佐人弁理士広江武典 主文 1 被告株式会社東海化成は、別紙ロ号物件目録記載の物件を生産し、譲渡し、譲渡のために展示してはならず、被告株式会社福岡セルトップは、同物件を使用してはならない。 2 被告株式会社東海化成及び被告株式会社福岡セルトップは、その事業 目録記載の物件を生産し、譲渡し、譲渡のために展示してはならず、被告株式会社福岡セルトップは、同物件を使用してはならない。 2 被告株式会社東海化成及び被告株式会社福岡セルトップは、その事業所(倉庫を含む。)に存在する前項の物件を廃棄せよ。 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、全部原告の負担とする。 5 この判決の第1、2項は仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告株式会社東海化成(以下「被告東海化成」という。)は、(1) 別紙イ号物件目録記載及び同ロ号物件目録記載の各物件を生産し、譲渡し、譲渡のために展示してはならない。 (2) その事業所(倉庫を含む。)に存在する前項の各物件を廃棄せよ。 (3) 原告に対し、金5000万円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告タキイ種苗株式会社(以下「被告タキイ種苗」という。)は、(1) 別紙イ号物件目録記載の物件を譲渡し、譲渡のために展示してはならない。 (2) その事業所(倉庫を含む。)に存在する前項の物件を廃棄せよ。 (3) 原告に対し、金2500万円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告株式会社サカタのタネ(以下「被告サカタのタネ」という。)は、(1) 別紙イ号物件目録記載の物件を譲渡し、譲渡のために展示してはならない。 (2) その事業所(倉庫を含む。)に存在する前項の物件を廃棄せよ。 (3) 原告に対し、金1500万円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告有限会社堤製陶所(以下「被 に存在する前項の物件を廃棄せよ。 (3) 原告に対し、金1500万円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告有限会社堤製陶所(以下「被告堤製陶所」という。)は、(1) 別紙イ号物件目録記載の物件を譲渡し、譲渡のために展示してはならない。 (2) その事業所(倉庫を含む。)に存在する前項の物件を廃棄せよ。 (3) 原告に対し、金2000万円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告後藤種苗合名会社(以下「被告後藤種苗」という。)は、(1) 別紙イ号物件目録記載の物件の譲渡及び使用並びに別紙ロ号物件目録記載の物件の使用をしてはならない。 (2) その事業所(倉庫を含む。)に存在する前項の各物件を廃棄せよ。 (3) 原告に対し、金200万円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被告有限会社空閑園芸(以下「被告空閑園芸」という。)は、(1) 別紙イ号物件目録及び同ロ号物件目録記載の各物件を使用してはならない。 (2) その事業所(倉庫を含む。)に存在する前項の各物件を廃棄せよ。 (3) 原告に対し、金200万円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7 被告株式会社福岡セルトップ(以下「被告セルトップ」という。)は、(1) 別紙イ号物件目録記載の物件の譲渡、譲渡のために展示及び使用並びに同ロ号物件目録記載の物件の使用をしてはならない。 (2) その事業所(倉庫を含む。)に存在する前項の各物件を廃棄せよ。 (3) 原告に対し、金100万円及びこれに対 展示及び使用並びに同ロ号物件目録記載の物件の使用をしてはならない。 (2) その事業所(倉庫を含む。)に存在する前項の各物件を廃棄せよ。 (3) 原告に対し、金100万円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 8 被告有限会社吉田園芸(以下「被告吉田園芸」という。)は、(1) 別紙イ号物件目録及び同ロ号物件目録記載の各物件を使用してはならない。 (2) その事業所(倉庫を含む。)に存在する前項の各物件を廃棄せよ。 (3) 原告に対し、金100万円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 A特許権関係(1) 原告は、次の特許権(以下「A特許権」という。)を有している。 ア発明の名称育苗ポット用樹脂成形体及びその製造装置イ特許番号第2891987号ウ出願日平成10年3月13日(特願平10-63177)エ優先日平9年3月14日(特願平9-61089)オ優先権主張国日本カ登録日平成11年2月26日キ特許請求の範囲請求項1の記載(以下この記載に係る発明を「A発明」といい、A発明に対する特許を「A特許」という。)上端がほぼ正方形に開口したコップ形状を有し、かつ、所定の樹脂材料を主成分とした複数個の育苗ポットを縦横方向に整列させて平面配置したもので、相互に隣接する前記育苗ポットの上端開口部のそれぞれの隣接対向辺に、隣接する育苗ポット同士を微小な幅寸法でのみ連結する連接部を一体的に形成し、各育苗ポットに土壌を収容した状態で所望の育苗ポットを、隣接する他の育苗ポットか ポットの上端開口部のそれぞれの隣接対向辺に、隣接する育苗ポット同士を微小な幅寸法でのみ連結する連接部を一体的に形成し、各育苗ポットに土壌を収容した状態で所望の育苗ポットを、隣接する他の育苗ポットから引き千切ることにより前記連接部を破断可能としたことを特徴とする育苗ポット用樹脂成形体。 (2) 被告東海化成、被告タキイ種苗及び株式会社テイエス植物研究所は、平成12年4月17日、A特許の無効を求める無効審判請求を行った。 これに対し、原告は、同年7月31日付けで、上記請求項1を次のとおり訂正することをその内容に含む訂正請求書を提出するとともに、同日付けで審判事件答弁書を提出し、右無効審判請求を争っている(なお、アンダーラインを付した箇所が訂正に係る箇所である。)。 「 ほぼ正方形に開口した上端の上端開口部と、底部と、底部の周縁と上端開口部の周縁との間の側部とを備えたコップ形状を有し、かつ、所定の樹脂材料を主成分とした複数個の育苗ポットを縦横方向に整列させて平面配置したもので、相互に隣接する前記育苗ポットの上端開口部の周縁を構成するそれぞれの隣接対向辺に、隣接する育苗ポット同士を微小な幅寸法でのみ連結する連接部を一体的に形成し、各育苗ポットに土壌を収容した状態で所望の育苗ポットを、隣接する他の育苗ポットから引き千切ることにより前記連接部を破断可能としたことを特徴とする育苗ポット用樹脂成形体。」(3) A発明を、上記訂正請求に係る特許請求の範囲記載のとおりに解釈することについては、当事者間に争いがない。 そして、この解釈に基づけば、A発明は、次のとおり分説するのが相当である。 ① ほぼ正方形に開口した上端の上端開口部と、底部と、底部の周縁と上端開口部の周縁との間の側部とを備えた そして、この解釈に基づけば、A発明は、次のとおり分説するのが相当である。 ① ほぼ正方形に開口した上端の上端開口部と、底部と、底部の周縁と上端開口部の周縁との間の側部とを備えたコップ形状を有し、かつ、所定の樹脂材料を主成分とした複数個の育苗ポットを縦横方向に整列させて平面配置したもので、② 相互に隣接する前記育苗ポットの上端開口部の周縁を構成するそれぞれの隣接対向辺に、隣接する育苗ポット同士を微小な幅寸法でのみ連結する連接部を一体的に形成し、③ 各育苗ポットに土壌を収容した状態で所望の育苗ポットを、隣接する他の育苗ポットから引き千切ることにより前記連接部を破断可能としたことを特徴とする④ 育苗ポット用樹脂成形体。 (4) 被告東海化成は、少なくとも次の構成を有する育苗ポット用樹脂成形体(以下「イ号物件」という。)を生産し、譲渡し、譲渡のために展示している(イ号物件の構成の特定については当事者間に争いがある。)。 ア全体が合成樹脂にて薄肉に形成され、イ個々のポット単体の底面は、全体形状はほぼ円形であり、ウ個々のポット単体の上端開口端は四隅部にアールを付けた略四角形の筒状であり、エ個々のポット単体の側壁は、円形の底部周縁から立ち上がった直後からほぼ正方形となっており、オ上記特徴を有するポット単体が、縦方向に4個、横方向に6個並列し、かつ同一平面内で全体としてトレイ形状に整列され、カポット単体は、互いに対向する上部外周縁の端部の2か所で、ごくわずかな幅で(1か所当たり約1ミリメートル)ポイント状に連結されており、キ各育苗ポットに土壌を収容した状態で、上記ポイント状連結部を引き裂 いに対向する上部外周縁の端部の2か所で、ごくわずかな幅で(1か所当たり約1ミリメートル)ポイント状に連結されており、キ各育苗ポットに土壌を収容した状態で、上記ポイント状連結部を引き裂くことにより容易にポット単体を分離可能に構成されていることを特徴とするク育苗ポット用樹脂成形体。 (5) 被告タキイ種苗、被告サカタのタネ、被告堤製陶所、被告後藤種苗は、被告東海化成からイ号物件を購入の上、イ号物件を譲渡し、譲渡のために展示している。 被告空閑園芸、被告セルトップ、被告吉田園芸は、被告東海化成からイ号物件を購入の上、イ号物件を使用している。 2 B特許権関係(1) 原告は、次の特許権を有している(以下「B特許権」という。)。 ア発明の名称育苗ポットの分離治具及び分離方法イ特許番号特許第3000552号ウ出願日平成11年1月18日(特願平11-9483号)エ優先日平成10年2月3日(特願平10-22289)オ優先権主張国日本カ登録日平成11年11月12日キ特許請求の範囲請求項1の記載(以下この記載に係る発明を「B発明」という。)カップ状に成形された育苗ポットを縦横方向に整列状態で連設した樹脂成形体から前記育苗ポットを個々に切り離す治具であって、前記樹脂成形体の各育苗ポットと対応させた区画枠が格子状に形成され、前記樹脂成形体を各育苗ポットが各区画枠内に嵌まり込んだ状態で載置する枠体と、前記枠体の上方から樹脂成形体の個々の育苗ポットを押え込むことにより、前記樹脂成形体から各育苗ポットを前記区画枠で個々に切り離して落とし込む押込み部材とからなることを特徴と んだ状態で載置する枠体と、前記枠体の上方から樹脂成形体の個々の育苗ポットを押え込むことにより、前記樹脂成形体から各育苗ポットを前記区画枠で個々に切り離して落とし込む押込み部材とからなることを特徴とする育苗ポットの分離治具。 (2) 被告東海化成は、別紙ロ号物件目録記載のポットカッター(以下「ロ号物件」という。)を生産、譲渡、譲渡のために展示し、被告セルトップは、ロ号物件を使用している。 (3) ロ号物件は、B発明の技術的範囲に属する。 3 原告の請求(1) A特許権に基づく請求について原告は、イ号物件はA発明の技術的範囲に属し、上記1(5)記載の行為は、A特許権を侵害するとして、同記載の被告らの各行為の差止等を求めるとともに、被告後藤種苗は、イ号物件を使用し、被告セルトップは、イ号物件を譲渡し、譲渡のために展示しているとして、それらの被告らの行為についても、差止等を求めている。 また、原告は、上記被告らのイ号物件に関する行為によって損害を被ったとして、被告らに対し、損害賠償を請求している。 (2) B特許権に基づく請求について原告は、上記2(2)記載の行為は、B特許権を侵害するとして、同記載の被告らの各行為の差止等を求めるとともに、被告後藤種苗、被告空閑園芸及び被告吉田園芸もロ号物件を使用し、B特許権を侵害しているとして、それら被告に対しても、その使用の差止等を求めている。 (3) なお、原告の請求に係る被告らの行為を整理すると、次のとおりである。 (争点) 1 イ号物件の特定 2 イ号物件は、A発明の技術的範囲に属するか。 3 A特許権に基づく請求は、権利濫用か。 4 原告の損害額。 5 ロ号物件に関する行為の差止請求 (争点) 1 イ号物件の特定 2 イ号物件は、A発明の技術的範囲に属するか。 3 A特許権に基づく請求は、権利濫用か。 4 原告の損害額。 5 ロ号物件に関する行為の差止請求の必要性。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(イ号物件の特定)について【原告の主張】イ号物件は、別紙イ号物件目録記載のとおり特定すべきである。 【被告の主張】イ号物件は、別紙イ号物件目録(被告)記載のとおり特定すべきである。 2 争点2(イ号物件は、A発明の技術的範囲に属するか)について【原告の主張】(1) イ号物件は、別紙イ号物件目録記載のとおりの構成を有しており、A発明の技術的範囲に属する。 (2) 被告は、相互に隣接する育苗ポットの上端開口部周縁のごくわずかな幅(1ミリメートル以下)の外周縁が設けられていることをもって、これを、ポット単体の形態保持の作用効果を有する「連結耳部」であると主張する。 しかし、イ号物件のそれは、金型の上端開口縁に必要な強度を持たせるための、金型の厚みから生じたごくわずかな幅であり、A発明の実施上、必然的に生じる派生物にすぎない。 また、特開平10-215689号公開特許公報(乙4)に係る明細書(以下「先願明細書」という。)の記載からすれば、ごくわずかな幅(1ミリメートル以下)の外周縁を、ポット単体の形態保持機能を有する連結耳部に該当するということはできない。 また、イ号物件のポット単体を切り離した場合、ポット単体によっては、外周縁の幅が1ミリメートル以上のものができることがある。しかし、その場合は、そのポットに隣接するポットの隣接対向辺の外周縁の幅が皆無に等しくなるので、イ号物件は幅1ミリメートル以上の連結 っては、外周縁の幅が1ミリメートル以上のものができることがある。しかし、その場合は、そのポットに隣接するポットの隣接対向辺の外周縁の幅が皆無に等しくなるので、イ号物件は幅1ミリメートル以上の連結耳部を設けるべく設計されたものではないことは明白である。 被告は、各ポット単体には設計上1.3ないし1.35ミリメートルの連結耳部が形成されると主張するが、このようなことは、ポット相互間の間隔のちょうど中央線を切断すべく構成されていて初めていえることである。しかし、イ号物件では、ポット相互間の間隔の任意の位置で切断すべく構成されている結果、切り離されたポット単体の上部外周縁のほとんどないものや、幅約1ミリメートル以下の連結耳部とは称し得ないごく幅の狭い上部外周縁を有するものが多数できるのであって、イ号物件が連結耳部の形成を必須の要件として設計製作されたものとは到底いえない。 (3) 被告は、イ号物件では、土壌収容前も破断が可能であると主張するが、A発明は、土壌を収容しない状態では破断できないことを要件としたものではないから、被告の主張は失当である。 【被告らの主張】(1) 先願明細書記載に係る発明の存在を前提にすると、A発明は、連結耳部を持たない、その意味では、各ポット間に間隙のないものを対象としている。他方、イ号物件は、各ポット単体の側壁上端に連結耳部(外周縁)を備えており、これが補強縁としての役割を果たしている点において全く相違している。 原告は、イ号物件の外周縁は、生産上必然的に生じる派生物にすぎないと主張する。 しかし、イ号物件の金型において、各ポット相互の間隔は、約2.3ないし2.4ミリメートルで作られており、ここにポットを形成する合成樹脂シートの厚みが加わるため、現実 ないと主張する。 しかし、イ号物件の金型において、各ポット相互の間隔は、約2.3ないし2.4ミリメートルで作られており、ここにポットを形成する合成樹脂シートの厚みが加わるため、現実のポット相互の間隔は、約2.6ないし2.7ミリメートルにて形成されているのである。この状態で形成された連結されたポットがその後に切り離された場合、各ポット単体には設計上1.3ないし1.35ミリメートルの連結耳部が形成される。 現在の金型技術においては、各ポット単体相互の間隔はいくらでも狭く製作できるが、イ号物件では、各ポット単体の補強縁の役割を持たせるために、あえてこの大きさの金型を選択し、連結耳部を設けているのである。 したがって、原告の主張は失当である。 (2) A発明の構成要件③は、「各育苗ポットに土壌を収容した状態で」所望の育苗ポットを、隣接する他の育苗ポットから引き千切ることにより前記連接部を破断可能としたものであるが、イ号物件は、土壌を収容する前後を問わず容易に切断可能となっているものである。 したがって、イ号物件は、A発明の構成要件③を充足しない。 3 争点3(A特許権に基づく請求は権利濫用か)について【被告らの主張】A発明は、その特許出願の日よりも前である平成9年2月3日に特許出願され、同10年8月18日に公開特許公報(乙4)が発行された特開平10-215689号に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一である。 したがって、A特許は、特許法29条の2に違反して特許されたものであり、無効であることは明らかである。 よって、A特許権に基づく原告の請求は、権利の濫用である。 【原告の主張】争う。 4 争 、特許法29条の2に違反して特許されたものであり、無効であることは明らかである。 よって、A特許権に基づく原告の請求は、権利の濫用である。 【原告の主張】争う。 4 争点4(原告の損害額)について【原告の主張】平成11年2月から同13年3月末日までの間に、(1) 被告東海化成は、イ号物件を少なくとも1億個売り渡し、5000万円の利益を上げ、同額の損害を原告に与えた。 (2) 被告タキイ種苗は、イ号物件を少なくとも5000万個売り渡し、2500万円の利益を上げ、同額の損害を原告に与えた。 (3) 被告サカタのタネは、イ号物件を少なくとも3000万個売り渡し、1500万円の利益を上げ、同額の損害を原告に与えた。 (4) 被告堤製陶所は、イ号物件を少なくとも5000万個売り渡し、2000万円の利益を上げ、同額の損害を原告に与えた。 (5) 被告後藤種苗は、イ号物件を、少なくとも500万個売り渡し、又は使用し、200万円の利益を上げ、同額の損害を原告に与えた。 (6) 被告空閑園芸は、イ号物件を、少なくとも500万個使用し、200万円の利益を上げ、同額の損害を原告に与えた。 (7) 被告セルトップは、イ号物件を、少なくとも250万個売り渡し、又は使用し、100万円の利益を上げ、同額の損害を原告に与えた。 (8) 被告吉田園芸は、イ号物件を、少なくとも200万個使用し、100万円の利益を上げ、同額の損害を原告に与えた。 【被告らの主張】争う。 5 争点5(ロ号物件に関する行為の差止請求の必要性)について【被告ら主張】ロ号物件については、被告東海化成においてすべて回収して廃棄しており、いずれも現在は製造、販売、使用 。 5 争点5(ロ号物件に関する行為の差止請求の必要性)について【被告ら主張】ロ号物件については、被告東海化成においてすべて回収して廃棄しており、いずれも現在は製造、販売、使用していない。 【原告の主張】争う。 第4 争点に対する判断 1 争点2(イ号物件は、A発明の技術的範囲に属するか)について(1) A発明の構成要件①は、「ほぼ正方形に開口した上端の上端開口部と、底部と、底部の周縁と上端開口部の周縁との間の側部とを備えたコップ形状を有し、かつ、所定の樹脂材料を主成分とした複数個の育苗ポットを縦横方向に整列させて平面配置したもので」あるところ、以下に記載するとおり、同構成要件における「コップ形状」の「育苗ポット」とは、周壁の上端開口部が切りっぱなし状態に形成されたものを意味し、切りっぱなし状態にある周壁の上端開口部から外方向に張り出した部分(フランジ状の部分)を一体形成したものは、含まれないと解するのが相当である。 ア証拠(乙4)によれば、A発明の優先日よりも前である平成9年2月3日に特許出願され、同10年8月18日に公開特許公報が発行された特開平10-215689号に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書及び図面には次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる。 ① ほぼ正方形に開口した上端の上端開口部と、底部と、底部の周縁と上端開口部の周縁との間の側部とを備え、前記上端開口部の周縁には外方へ張出した連結耳部を備え、かつ、所定の樹脂材料を主成分とした複数個の育苗ポットを縦横方向に整列させて平面配置したもので、② 相互に隣接する前記育苗ポットの前記連結耳部を構成するそれぞれの隣接対向辺に、隣接する育苗ポット同士を微小 成分とした複数個の育苗ポットを縦横方向に整列させて平面配置したもので、② 相互に隣接する前記育苗ポットの前記連結耳部を構成するそれぞれの隣接対向辺に、隣接する育苗ポット同士を微小な幅寸法でのみ連結する連接部を一体的に形成し、③ 各育苗ポットに土壌を収容した状態で所望の育苗ポットを、隣接する他の育苗ポットから引き千切ることにより前記連接部を破断可能としたことを特徴とする④ 育苗ポット用樹脂成形体。 イ A発明と先願発明とが実質的に同一の発明である場合には、特許法123条1項2号、29条の2、41条2項によって、A特許に無効理由が存在することとなってしまうから、A発明の技術的範囲を確定するに当たっては、A発明と先願発明が同一の発明となるような解釈をすべきではない。 そして、先願発明と、A発明とを比較すると、先願発明は、育苗ポット用樹脂成形体を構成する個々の育苗ポットに「前記上端開口部の周縁には外方へ張出した連結耳部」が備えられているのに対し、A発明は、同育苗ポットにこのような連結耳部が設けられていることは何ら記載されておらず、上端開口部、底部、側部とを備えた「コップ形状」を有する点においてのみ相違するものと認められる。 そして、一般的な語意として、「コップ形状」という場合には、周壁の上端開口部は切りっぱなしの状態に形成されていることを意味すると理解するのが自然であることからすると、A発明の「コップ形状」の「育苗ポット」とは、周壁の上端開口部が切りっぱなし状態に形成されたものを意味し、切りっぱなし状態にある周壁の上端開口部から外方向に張り出した部分(フランジ状の部分。先願発明にいう「連結耳部」)を一体形成したものは、含まれないと解するのが相当であ し状態に形成されたものを意味し、切りっぱなし状態にある周壁の上端開口部から外方向に張り出した部分(フランジ状の部分。先願発明にいう「連結耳部」)を一体形成したものは、含まれないと解するのが相当である。なお、A発明の「コップ形状」の「育苗ポット」をこのように解することは、上記第2、1、(2)記載の原告の審判事件答弁書における主張とも合致する(甲12)。 (2) 証拠(乙6、検甲1、検乙1)と弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 アイ号物件は、真空成形、すなわち、合成樹脂製シートを加熱して柔軟性を持たせた上で金型上に挿入し、金型の下部に形成した空気抜き穴から空気を吸引し、陰圧をかけて合成樹脂製のシートを金型に密着させることにより製造されたものを、イ号物件専用のカッターで個々の育苗ポット間に微少な幅寸法の連接部を残しつつ切断することにより製造されるものである。 イ上記金型では、個々の育苗ポットの上端開口部周縁間に、約2.35ミリメートルの幅がある。 ウ真空成形後の合成樹脂製シート(検乙1)では、個々の育苗ポットの上端開口部周縁間にも、概ね約2.5ミリメートル程度の幅がある。また、真空成形の結果、合成樹脂製シートのうち、個々の育苗ポットのコップ形状に対応する部分は、個々の育苗ポットの上端開口部周縁間にある部分と比べて薄くなっている。 エイ号物件専用のカッターは、上記金型に対応するような形状を有しているとともに、個々の育苗ポットの上端開口部周縁間の合成樹脂については、微少な幅寸法の連接部となる箇所以外を切るだけであって、特にそれを切除するようなものではない。 (3) 上記(2)の事実からすると、イ号物件において、育苗ポット用樹脂成形体を構成する個々の育苗ポットは、上端開 部となる箇所以外を切るだけであって、特にそれを切除するようなものではない。 (3) 上記(2)の事実からすると、イ号物件において、育苗ポット用樹脂成形体を構成する個々の育苗ポットは、上端開口部周縁に、上記(2)ウ記載の幅の約半分の幅を有するフランジ状部が形成されることが予定されていると認められるのであって、「コップ形状」を有する育苗ポットが形成されることが予定されているということはできない。 他方、証拠(乙4)によれば、先願発明の連結耳部は、補強縁としての役目を果たし、複数のポット同士が連結耳部で連結されることにより側壁が折れ曲がることを相互に規制し、育苗ポット用樹脂成形体の形態保持性が高くなるものであり(同証拠の【0029】)、先願明細書には、1ミリメートル以上5ミリメートル以下の連結耳部が好適な例とされている(同【0009】)ことが認められる。 そして、イ号物件の個々の育苗ポットにおける上記フランジ状部は、コップ形状部分と比較して厚みのある合成樹脂であり、補強縁としての役目を果たし、複数のポット同士が上記フランジ状部で連結されることにより側壁が折れ曲がることを相互に規制し、育苗ポット用樹脂成形体の形態保持性が高くなっていると考えられ、その幅も1ミリメートル以上のものが予定されており、先願明細書にいう好適な連結耳部の要件を満たすものである。したがって、イ号物件は、個々の育苗ポットの周壁の上端開口部に連結耳部を有するものが予定されているということができる。 原告は、イ号物件のフランジ状部は、金型の上端開口縁に必要な強度を持たせるための、金型の厚みから生じたごくわずかな幅であり、A発明の実施上、必然的に生じる派生物にすぎないと主張する。しかしながら、イ号物件と同程度のフランジ状部が、A発明の実施上(なお 要な強度を持たせるための、金型の厚みから生じたごくわずかな幅であり、A発明の実施上、必然的に生じる派生物にすぎないと主張する。しかしながら、イ号物件と同程度のフランジ状部が、A発明の実施上(なお、この実施が必ず真空成形でなければならないと解する理由はない。)、必然的に生じるものであるとは認められない上、A発明を先願発明に抵触するように解釈することができないことは、上記(1)イ記載のとおりである。したがって、仮に原告の主張どおりであったとしても、そのことを理由に、イ号物件がA発明の技術的範囲に属するものと解するとすれば、A発明が先願発明と同一の発明であることになるから、そのような解釈をすることはできない。 もっとも、イ号物件は、真空成形後の合成樹脂製シートを、カッターによって微少な幅寸法の連接部を残しつつ、切断することにより製造されているので、同カッターがイ号物件製造の専用工具であることを考慮しても、同切断工程において、個々の育苗ポット相互間の中心をはずれて切断されてしまうことがあることは十分想定できることであり(実際、検甲1でもそのような切断がなされているものが散見される。)、場合によっては、同切断によって、一方の育苗ポット単体の一片に、フランジ状部が形成されないものも製造されてしまうことが全くないとはいえない。しかしながら、A発明の構成要件①は、「コップ形状」すなわち周壁の上端開口部全周にフランジ状部が形成されていない育苗ポットが、「複数個」「縦横方向に整列させて平面配置したもの」からなるのであるから、上記場合であっても、A発明の構成要件①を充足することになるということはできない。 以上より、イ号物件が、A発明の技術的範囲に属するとは認められない。 よって、その余の点について判断するまでもなく 発明の構成要件①を充足することになるということはできない。 以上より、イ号物件が、A発明の技術的範囲に属するとは認められない。 よって、その余の点について判断するまでもなく、A特許権の侵害に基づく請求は理由がない。 2 争点5について争いのない事実記載のとおり、被告東海化成は、ロ号物件を生産し、譲渡し、譲渡のために展示し、被告セルトップは、同物件を使用していたところ、ロ号物件は、B発明の技術的範囲に属するものであるから、両被告の各行為は、いずれもB特許権を侵害する行為である。 ところで、被告らは、ロ号物件をすべて回収廃棄済みであり、現在は製造、販売、使用していないと主張する。 確かに、証拠(乙7<宅急便の送り状類>)によれば、ロ号物件の使用者が、被告東海化成に対し、ロ号物件を送付している形跡がうかがえる。しかしながら、同証拠に記載されている「ポットカッター」との記載には、被告東海化成が送り状に書き込んだと認められるものも相当数存在するとこと(乙7の(2)、(8)ないし(11)、(13)、(15)、(16)、(19))、同証拠中には、ロ号物件を使用していることについて争いのない被告セルトップからの送り状は存在しないことに加え、被告東海化成が、受け取ったロ号物件を廃棄したと認めるに足る証拠も存在しない。以上のことからすると、被告東海化成及び被告セルトップに対する、ロ号物件に関する上記行為の差止請求の必要性がなくなったとまで認めることはできない。 原告は、被告後藤種苗、被告空閑園芸及び被告吉田園芸もロ号物件を使用していると主張するが、そのことを認めるに足る証拠はないから、これらの被告に対するロ号物件の使用差止請求及び廃棄請求は理由がない。 3 よって、主文のとおり判決する び被告吉田園芸もロ号物件を使用していると主張するが、そのことを認めるに足る証拠はないから、これらの被告に対するロ号物件の使用差止請求及び廃棄請求は理由がない。 3 よって、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部裁判長裁判官小松一雄裁判官安永武央裁判官高松宏之は異動のため、署名押印することができない。 裁判長裁判官小松一雄イ号物件目録 1 全体が合成樹脂にて薄肉に形成され、 2 個々のポット単体の底面は、全体形状はほぼ円形であり、 3 個々のポット単体の上端開口端は四隅部にアールを付けた略四角形の筒状であり、 4 個々のポット単体の側壁は、円形の底部周縁から立ち上がった直後からほぼ正方形となっており、 5 上記特徴を有するポット単体が、縦方向に4個、横方向に6個並列し、かつ同一平面内で全体としてトレイ形状に整列され、 6 ポット単体は、互いに対向するごくわずかな幅の(1ミリメートル以下)上部外周縁の端部の2か所で、ごくわずかな幅で(1か所当たり約1ミリメートル)ポイント状に連結されており、 7 各育苗ポットに土壌を収容した状態で、上記ポイント状連結部を引き裂くことにより容易にポット単体を分離可能に構成されていることを特徴とする 8 育苗ポット用樹脂成形体。 イ号物件目録(被告) 1 全体が合成樹脂にて薄肉に形成され、 2 個々のポット単体の底面は、全体形状はほぼ円形であり、 3 個々のポット単体の上端開口端は四隅部にアールを付けた略四角形の筒状であり、 4 個々のポット単体の側壁は、円形の底部周縁から立ち上がった直後か ト単体の底面は、全体形状はほぼ円形であり、 3 個々のポット単体の上端開口端は四隅部にアールを付けた略四角形の筒状であり、 4 個々のポット単体の側壁は、円形の底部周縁から立ち上がった直後からほぼ正方形となっており、 5 上記特徴を有するポット単体が、縦方向に4個、横方向に6個並列し、かつ同一平面内で全体としてトレイ形状に整列され、 6 ポット単体は、側壁上端開口部から外方向に張り出した、幅約1.25ミリメートルの連結耳部を備えており、互いに対向する同連結耳部の端部の2か所で、ごくわずかな幅で(1か所当たり約1ミリメートル)ポイント状に連結されており、 7 各育苗ポットに土壌を収容した状態で、上記ポイント状連結部を引き裂くことにより容易にポット単体を分離可能に構成されていることを特徴とする 8 育苗ポット用樹脂成形体。 別紙ロ号物件目録図7 図8
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