平成22(行ウ)58等 一般乗用旅客自動車運送事業の乗務距離の最高限度を定める公示処分の取消等請求事件(甲事件),事業用自動車の使用停止処分差止等請求事件(乙事件)

裁判年月日・裁判所
平成25年7月4日 大阪地方裁判所 警察関係
ファイル
hanrei-pdf-83429.txt

判決文本文91,829 文字)

- 1 -主文 1 原告らの甲事件の訴えのうち,公示処分の一部取消しを求める主位的請求及び輸送施設の使用停止等の処分の差止請求に係る各部分をいずれも却下する。 2 各原告と被告との間において,当該原告が,その営業所に属する日勤勤務運転者を,それぞれ,1乗務(出庫から帰庫までの連続した乗務と認められるものをいう。)当たりの乗務距離(高速自動車国道及び自動車専用道路を利用した距離を含む。ただし,高速自動車国道及び自動車専用道路を1回の利用において連続して50キロメートル以上利用した場合にあっては,当該利用の距離にかかわらず,50キロメートルを利用したものとみなして乗務距離に算入する。)が250キロメートルを超えても事業用自動車に乗務させることができる地位にあることを確認する。 3 近畿運輸局長が,原告Cに対して平成23年7月6日付けでした,輸送施設の使用停止処分を取り消す。 4 訴訟費用は,原告Aに生じた費用の3分の1及び被告に生じた費用の10分の1を同原告の負担とし,原告Bに生じた費用の3分の1及び被告に生じた費用の10分の1を同原告の負担とし,原告Cに生じた費用の4分の1及び被告に生じた費用の10分の1を同原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 甲事件(1)ア主位的請求近畿運輸局長が,平成21年12月16日付けでした一般乗用旅客自動車運送事業の最高乗務距離の指定地域及び最高限度を定める公示処分(近運自二公示第60号)のうち,原告Bについては大阪市域交通圏につき,原告Aについては京都市(ただし,平成17年4月1日に編入された旧北 - 2 -桑田郡京北町の区域を除く。)につき,原告Cについては神戸市域交通圏につき,それぞれ,日勤勤務運転者の1乗務当たりの乗務距離の最高限度を2 ただし,平成17年4月1日に編入された旧北 - 2 -桑田郡京北町の区域を除く。)につき,原告Cについては神戸市域交通圏につき,それぞれ,日勤勤務運転者の1乗務当たりの乗務距離の最高限度を250キロメートルと定めた部分を取り消す。 イ予備的請求主文第2項同旨(2) 近畿運輸局長は,原告らに対し,その営業所に属する日勤勤務運転者を,それぞれ,1乗務(出庫から帰庫までの連続した乗務と認められるものをいう。)当たりの乗務距離(高速自動車国道及び自動車専用道路を利用した距離を含む。ただし,高速自動車国道及び自動車専用道路を1回の利用において連続して50キロメートル以上利用した場合にあっては,当該利用の距離にかかわらず,50キロメートルを利用したものとみなして乗務距離に算入する。)が250キロメートルを超えて事業用自動車に乗務させたことを理由として,道路運送法40条に基づく自動車その他の輸送施設の当該事業のための使用の停止若しくは事業の停止,又は許可の取消しの各処分をしてはならない。 2 乙事件主文第3項同旨第2 事案の概要 1 甲事件は,一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー事業)を営む原告らが,乗務距離の最高限度を定める旅客自動車運送事業運輸規則(以下「運輸規則」という。)22条は違憲ないし違法であり,また同条に基づき近畿運輸局長が定めた平成21年12月16日付け公示(近運自二公示第60号。以下「本件公示」という。)も違法であるなどとして,①主位的には本件公示が行政事件訴訟法3条2項にいう処分に当たることを前提に,本件公示のうち日勤勤務運転者の1乗務当たりの乗務距離の最高限度を250キロメートルと定めた部分の取消しを,予備的には行政事件訴訟法4条にいう当事者訴訟として,本件公 - 3 -示にかかわらず,各原告の うち日勤勤務運転者の1乗務当たりの乗務距離の最高限度を250キロメートルと定めた部分の取消しを,予備的には行政事件訴訟法4条にいう当事者訴訟として,本件公 - 3 -示にかかわらず,各原告の日勤勤務運転者に対し,1乗務当たり250キロメートルを超えて乗務させることのできる地位にあることの確認をそれぞれ求め,さらに,②道路運送法(以下「法」という。)40条に基づく自動車その他の輸送施設の当該事業のための使用の停止若しくは事業の停止,又は許可の取消しの各処分(以下「各不利益処分」という。)の差止めを求めている事案である。 乙事件は,一般乗用旅客自動車運送事業を営む原告Cが,本件公示の定める乗務距離の最高限度を超えて運転者を事業用自動車に乗務させていたことを理由に,近畿運輸局長から,法40条に基づき輸送施設の使用停止処分(以下「本件使用停止処分」という。)を受けたところ,本件使用停止処分の根拠となった運輸規則22条,本件公示及び処分基準が違憲ないし違法であるなどとして,本件使用停止処分の取消しを求めている事案である。 なお,書証に関し,併合前の乙事件においても同一内容の書証が提出されているものについて,重ねて乙事件の書証を引用することはしない。また,特に断らない限り,枝番がある書証について書証番号は全枝番号を含む。 2 関係法令等の定め(1) 乗務距離の最高限度規制法27条1項は,一般旅客自動車運送事業者は,事業計画の遂行に必要となる員数の運転者の確保,事業用自動車の運転者がその休憩又は睡眠のために利用することができる施設の整備,事業用自動車の運転者の適切な勤務時間及び乗務時間の設定その他の運行の管理,事業用自動車の運転者,車掌その他旅客又は公衆に接する従業員の適切な指導監督,事業用自動車内における当該事業者の氏名又は名称 業用自動車の運転者の適切な勤務時間及び乗務時間の設定その他の運行の管理,事業用自動車の運転者,車掌その他旅客又は公衆に接する従業員の適切な指導監督,事業用自動車内における当該事業者の氏名又は名称の掲示その他の旅客に対する適切な情報の提供その他の輸送の安全及び旅客の利便の確保のために必要な事項として国土交通省令で定めるものを遵守しなければならないと定めている。これを受けて運輸規則22条1項は,交通の状況を考慮して地方運輸局長が指定する地域 - 4 -内に営業所を有する一般乗用旅客自動車運送事業者は,同条2項の規定により地方運輸局長が定める乗務距離の最高限度を超えて当該営業所に属する運転者を事業用自動車に乗務させてはならない旨を定めている。この乗務距離の最高限度は,当該地域における道路及び交通の状況並びに輸送の状態に応じ,当該営業所に属する事業用自動車の運行の安全を阻害するおそれのないよう,地方運輸局長が定めるものとされ(同条2項),地方運輸局長は,同条1項の地域の指定をし,及び同条2項の乗務距離の最高限度を定めたときは,遅滞なく,その旨を公示しなければならないとされている(同条3項)。 近畿運輸局長は,運輸規則22条1項及び2項に基づき平成21年12月16日付け近運自二公示第60号「一般乗用旅客自動車運送事業の最高乗務距離の指定地域及び最高限度について」(本件公示。甲1)を公示し,大阪市域交通圏,北摂交通圏,河北交通圏,河南交通圏,京都市(ただし,平成17年4月1日に編入された旧北桑田郡京北町の区域を除く。以下同じ。)及び神戸市域交通圏を指定地域(以下「本件指定地域」という。)として指定し,乗務距離の最高限度を1乗務(出庫から帰庫までの連続した乗務と認められるものをいう。以下同じ。)当たり隔日勤務運転者につき350キロメートル を指定地域(以下「本件指定地域」という。)として指定し,乗務距離の最高限度を1乗務(出庫から帰庫までの連続した乗務と認められるものをいう。以下同じ。)当たり隔日勤務運転者につき350キロメートルと,日勤勤務運転者につき250キロメートルと定め,本件公示は平成22年1月1日から適用するものとされた。そして上記乗務距離には,高速自動車国道及び自動車専用道路(以下「高速自動車国道等」という。)を利用した距離を含むものとするが,高速自動車国道等を1回の利用において連続して50キロメートル以上利用した場合にあっては,当該利用の距離にかかわらず50キロメートルを利用したものとみなして算入するものとされた。 なお,大阪市域交通圏は,大阪市,豊中市,吹田市,守口市,門真市,東大阪市,八尾市,堺市(ただし,平成17年2月1日に編入された旧南河内郡美原町の区域を除く。)及び池田市のうち大阪国際空港の区域で構成され - 5 -ており,神戸市域交通圏は,神戸市,尼崎市,西宮市,芦屋市,伊丹市,宝塚市,川西市,明石市及び川辺郡で構成されている。 (2) 不利益処分の定め等国土交通大臣は,一般旅客自動車運送事業者が法若しくは法に基づく命令に違反したときは,6月以内において期間を定めて自動車その他の輸送施設の当該事業のための使用の停止(以下「自動車等の使用停止」という。)若しくは事業の停止を命じ,又は許可を取り消すことができる(法40条1号)ところ,一般乗用旅客自動車運送事業者に対する各不利益処分の権限は地方運輸局長に委任されている(法88条2項,道路運送法施行令1条2項)。 近畿運輸局長は,行政手続法12条1項に基づく各不利益処分に関する処分基準として,平成21年10月1日付け「一般乗用旅客自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について(公示) 行令1条2項)。 近畿運輸局長は,行政手続法12条1項に基づく各不利益処分に関する処分基準として,平成21年10月1日付け「一般乗用旅客自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について(公示)」(乙1。以下「処分基準公示」という。)及び同日付け「一般乗用旅客自動車運送事業者に対する違反条項ごとの行政処分等の基準について(公示)」(乙2。以下「個別基準公示」といい,処分基準公示と併せて「本件各処分基準」という。)を定め,公表している。また,近畿運輸局自動車監査指導部,自動車交通部及び自動車技術安全部は,処分基準公示の運用上の細目について,平成22年4月30日付け「「一般乗用旅客自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について」の解釈及び運用について」(乙3)を定めている。これらによれば,乗務距離の最高限度違反に対する行政処分等の原則的な基準は,①未遵守率5パーセント未満の初違反については警告,再違反については20日車の自動車等の使用停止,②未遵守率5パーセント以上20パーセント未満の初違反については10日車の自動車等の使用停止,再違反については30日車の自動車等の使用停止,③未遵守率20パーセント以上50パーセント未満の初違反については20日車の自動車等の使用停止,再違反については60日 - 6 -車の自動車等の使用停止,④未遵守率50パーセント以上の初違反については30日車の自動車等の使用停止,再違反については90日車の自動車等の使用停止と定められている。 また,処分基準公示1(8)は,法8条1項に規定する緊急調整地域,特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法3条1項に規定する特定地域並びに「特別監視地域の指定等について」(平成14年1月18日付け近運旅二公示第10号)1に規定する特別 おける一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法3条1項に規定する特定地域並びに「特別監視地域の指定等について」(平成14年1月18日付け近運旅二公示第10号)1に規定する特別監視地域及び「平成19年度の特別監視地域の指定に伴い試行的に実施する増車抑制対策等の措置について」(平成19年11月20日付け近運自二公示第44号)11に規定する特定特別監視地域に指定された地域内の営業所における一定の違反については,基準日車等を別表「加重基準一覧」のとおり加重して取り扱うものとしている(以下「本件加重規定」という。)。そして,個別基準公示によって,乗務距離の最高限度違反は,本件加重規定による加重対象となる違反と定められている。 自動車等の使用停止処分を行うべき違反行為を行った事業者には,処分日車数10日車までごとに1点とする違反点数が付され,事業者に付された違反点数は,事業者ごとに,運輸局の支局区域単位及び管轄区域単位で累計し,原則3年で消滅する(処分基準公示2(1),(3),(4))。そして,事業者が一の運輸支局区域にのみ営業所を有する場合,一の運輸局管轄区域内の複数の運輸支局区域に営業所を有する場合,複数の運輸局管轄区域に営業所を有する場合に応じそれぞれ定められた基準に基づき,一定の累積点数に達した場合には事業停止処分,区域廃止命令,許可取消処分を行うこととされている(処分基準公示4(1),5(1),6(1)。例えば,事業者が一の運輸支局区域にのみ営業所を有する場合には,その累積点数が51点以上となった場合に事業停止処分が行われ,81点以上となった場合には許可取消処分が行われる。)。 - 7 - 3 前提事実等(当事者間に争いのない事実のほか各項記載の証拠等により認められる事実等)(1) 当事者原告らは われ,81点以上となった場合には許可取消処分が行われる。)。 - 7 - 3 前提事実等(当事者間に争いのない事実のほか各項記載の証拠等により認められる事実等)(1) 当事者原告らは,いずれも法に基づき,近畿運輸局長による一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー業)の許可を受け,同事業等を営む者である。すなわち,原告Aは京都市において,原告Bは大阪市域交通圏において,原告Cは神戸市域交通圏,大阪府豊中市及び同池田市の大阪国際空港の地域において,それぞれタクシー業等を営んでいる。 (2) 特別監視地域の指定等近畿運輸局長は,平成20年7月11日に大阪市域交通圏,神戸市域交通圏等を特別監視地域及び特定特別監視地域に,平成21年7月17日に京都市域交通圏等を特別監視地域及び特定特別監視地域に,それぞれ指定した(乙6,7)。 また,国土交通大臣は,平成21年10月1日,特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法3条1項に基づき,大阪市域交通圏,神戸市域交通圏,京都市域交通圏等を特定地域として指定した(甲16)。 (3) 原告Cに対する監査等近畿運輸局神戸運輸監理部兵庫陸運部は,平成22年9月2日,同月21日及び同年10月21日に原告CのD営業所に対し,巡回監査を行い,運転者10名分の同年8月21日から同年9月20日までの間の乗務記録を調査した結果,上記10名分の全乗務回数230回のうち74回について,本件公示で定められた神戸市域交通圏の乗務距離の最高限度を超えて乗務していたことを確認し,原告Cに対し,「乗務距離の最高限度が確実に遵守されていなかった」こと(法27条1項,運輸規則22条1項違反の事実。以下「本件違反事実」という。)などを指摘した(乙事件の甲6,乙事件の乙 - 8 - に対し,「乗務距離の最高限度が確実に遵守されていなかった」こと(法27条1項,運輸規則22条1項違反の事実。以下「本件違反事実」という。)などを指摘した(乙事件の甲6,乙事件の乙 - 8 -4)。 近畿運輸局長は,平成23年3月22日付けで,原告Cに対し,行政手続法30条に基づき弁明書の提出を求めたところ,原告Cは,同年4月5日,近畿運輸局長に対し,弁明書を提出した(乙事件の甲6,乙事件の甲22)。 (4) 両事件の提訴等原告らは,平成22年3月17日,当裁判所に甲事件を提起し,原告Cは,平成23年3月29日,当裁判所に乙事件(本件違反事実に係る不利益処分の差止請求)を提起した(当裁判所に顕著な事実)。 (5) 本件使用停止処分近畿運輸局長は,平成23年7月6日,原告Cに対し,本件違反事実について,法40条に基づき70日車の自動車等の使用停止(11両については5日間(同月15日から同月19日まで),1両については15日間(同月15日から同月29日まで)の使用停止)を命ずる(本件使用停止処分)とともに,法41条1項に基づき,上記各タクシー車両の自動車検査証を神戸運輸監理部長に返納し,自動車登録番号標及びその封印を取り外した上,同自動車登録番号標について同運輸監理部長の領置を受けるべきことを命ずる旨の附帯命令(以下「本件附帯命令」という。)をした(乙事件の甲38)。 (6) 乙事件に係る訴えの変更等原告Cは,平成23年7月11日,乙事件の訴えを本件使用停止処分及び本件附帯命令の取消しを求めるものに変更したが,同年8月18日,本件附帯命令の取消しを求める部分を取り下げた(当裁判所に顕著な事実)。 第3 争点 1 甲事件の本案前の争点(1) 本件公示の取消請求関係―本件公示が処分性を有するか。 (2) 各不利益処分の 附帯命令の取消しを求める部分を取り下げた(当裁判所に顕著な事実)。 第3 争点 1 甲事件の本案前の争点(1) 本件公示の取消請求関係―本件公示が処分性を有するか。 (2) 各不利益処分の差止め請求関係ア処分の蓋然性があるか。 - 9 -イ重大な損害を生ずるおそれがあるか。 (3) 確認請求関係―確認の利益があるか。 2 運輸規則22条の違法性(1) 運輸規則22条は憲法22条1項に違反するか。 (2) 運輸規則22条は法の委任の範囲を超えており違法か。 3 本件公示は違法か。 4 乙事件の固有の争点(1) 本件加重規定を適用してされた本件使用停止処分の適法性(2) 本件使用停止処分に係る理由付記は行政手続法14条1項に違反するか。 第4 当事者の主張 1 争点1(甲事件の本案前の争点)について(1) 争点1(1)(本件公示の取消請求関係―本件公示が処分性を有するか。)について(原告らの主張)ア行政立法の処分性形式的には一般的抽象的規範を定めるものであっても,実質的にみて,それにより行政主体と私人との間に個別具体的な権利変動が生ずる場合は,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものであるといえるから,そのような行政の行為には処分性が肯定されるべきである。 イ本件公示には処分性が認められること本件公示は,不特定多数人に向けられたものではなく,飽くまでも本件指定地域に営業所を有する一般乗用旅客自動車運送事業者という極めて限定された範囲の者に向けられたものであり,さらに実質的にみれば,輸送実績に照らし乗務距離の最高限度を超過するおそれがある事業者という極めて限定された事業者に向けられたものである。 - 10 -また,運輸規則22条1項は具体的な指定地域や具体的な乗務 ば,輸送実績に照らし乗務距離の最高限度を超過するおそれがある事業者という極めて限定された事業者に向けられたものである。 - 10 -また,運輸規則22条1項は具体的な指定地域や具体的な乗務距離の最高限度を定めておらず,指定地域や乗務距離の最高限度を具体的に定めた本件公示こそが,直接,原告らの権利を具体的に制限し,具体的な義務を課す根拠となる。 そして,複数の者に対して適用される行政行為の適法性について,訴訟上違法であることが確定した場合であっても,その判決に第三者効がないとすると,訴訟当事者間では当該行政行為は違法であるが,他の者との関係では適法であるとの法律関係が生じることとなり,同一の行政行為をめぐる法律関係をいたずらに混乱させることになる。そのため,複数の者に対して適用される行政行為については,処分性を認めた上で取消訴訟において処分の適法性を争うとした方が合理的であるところ,本件公示についてもこのような考え方が妥当する。 なお,被告は,本件公示に処分性を認めなくても,事業者は本件公示に違反したことを理由になされた各不利益処分を争えば足りる旨主張する。 しかし,原告らが,本件公示の段階で本件公示の違法性を争うことができず,その後の行政処分の段階においてしかこれを争うことができないとすると,原告らは,自動車等の使用停止という行政処分を受ける危険,さらに違反点数が積み重なった場合,事業停止処分や許可取消処分という極めて重い行政処分を受ける危険を引き受けながら事業を継続しなければならない立場に立たされることを踏まえれば,むしろ本件公示に処分性を認め,本件公示の違法性を争うことを認めるべきである。 したがって,本件公示には処分性が認められる。 (被告の主張)ア行政立法の処分性抗告訴訟の対象となる行政処分とは,公権力 示に処分性を認め,本件公示の違法性を争うことを認めるべきである。 したがって,本件公示には処分性が認められる。 (被告の主張)ア行政立法の処分性抗告訴訟の対象となる行政処分とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又は - 11 -その範囲を確定することが法律上認められているものをいい,公定力を生ずるような性質のものでなければならない。 立法行為としての性質を有する行為は,不特定多数の者を名宛人とする一般的抽象的な法規範の定立であり,それに基づく行政庁の具体的な行為によって初めて国民の権利利益に具体的な変動が生じるものであるから,原則として処分性は認められず,その実質において立法の形式を借りた処分といえるような極めて例外的な場合に処分性が認められる余地もあるにとどまる。 イ本件公示には処分性が認められないこと本件公示は,法27条1項を受けて定められた運輸規則22条の委任を受けて,近畿運輸局長が乗務距離の最高限度等を定めた行政立法で,運輸規則22条の内容を補充するためのものであり,将来新規に参入する事業者も含め,広く本件指定地域内に営業所を有する一般乗用旅客自動車運送事業者を対象にするものであるから,一般的抽象的な法規範の定立行為そのものであり,近畿運輸局長が行う処分と実質的に同視することができるような極めて例外的な場合には当たらない。 また,権利救済という観点からみても,本件公示によって,事業者らの権利義務及び法律上の地位に何らかの変動がもたらされるわけではなく,これらの変動がもたらされる蓋然性が極めて高くなったというわけでもない。事業者らは,本件公示に違反する行為をしたことを理由とする法40条に基づく各不利益処分についての抗告訴訟を提起して,本件公示 ,これらの変動がもたらされる蓋然性が極めて高くなったというわけでもない。事業者らは,本件公示に違反する行為をしたことを理由とする法40条に基づく各不利益処分についての抗告訴訟を提起して,本件公示が違法無効であることを主張することが可能であり,かつ,それで足りる。 以上によれば,本件公示に処分性を肯定することはできず,このように解しても何ら不都合はない。 (2) 争点1(2)(各不利益処分の差止め請求関係)についてア争点1(2)ア(処分の蓋然性があるか。)について - 12 -(原告らの主張)原告らは乗務距離の最高限度規制(運輸規則22条1項)に違反する行為をしたとして近畿運輸局長により各不利益処分を受ける蓋然性がある。 (被告の主張)(ア) 処分の蓋然性の意義処分の差止めの訴えが適法であるためには,救済の必要性の前提として,一定の処分をすべきでないにもかかわらずこれがされようとしていること(処分等の蓋然性)が必要とされている。そして,これが認められるためには,当事者がそのようなおそれがあると考えるだけでは足らず,告知聴聞の手続が開始されるなど,一定の処分又は裁決がされることについて客観的に相当程度の蓋然性が存在することが必要であると解すべきである。 (イ) 原告らについて処分の蓋然性が認められないことa 原告B及び原告Cについて既に行政処分等がされたものを除けば,近畿運輸局長において,原告B及び原告Cが乗務距離の最高限度規制(運輸規則22条1項)に違反する行為をしたかどうかは必ずしも明らかでなく,現在,同規制に違反したことを前提とした弁明の機会付与や聴聞等も行われておらず,監査においてこの点が指摘されたこともないのであり,同違反行為に係る法40条の不利益処分に向けた手続が進行しているわけでもない。 に違反したことを前提とした弁明の機会付与や聴聞等も行われておらず,監査においてこの点が指摘されたこともないのであり,同違反行為に係る法40条の不利益処分に向けた手続が進行しているわけでもない。 したがって,原告B及び原告Cに対して一定の処分がされることについて客観的に相当程度の蓋然性が存在するとはいえない。 b 原告Aについて近畿運輸局長は,平成25年1月10日,原告Aに対し,E営業所に対する巡回監査を行い,乗務距離の最高限度規制に違反する行為が - 13 -あったと指摘したが,監査で入手した資料の精査・検討は完了していないため,同規制に違反したことを前提とした弁明の機会付与や聴聞は行われておらず,それらが行われるかどうかも未だ明らかでない(少なくとも,口頭弁論終結日である平成25年2月7日までに行われてはいない。)。この点,監査指摘事項は,限られた時間内で行われる監査の終了時点において,暫定的に法令違反等がうかがわれる事項を指摘するものであるから,監査指摘事項として挙げられた事項について,必ずしも行政処分等が行われるとは限らない。 そうすると,現段階において,原告Aに対して一定の処分がされることについて客観的に相当程度の蓋然性があるとはいえない。 c 原告らに対する事業停止処分及び許可取消処分の蓋然性について原告らの現在の違反累積点数(原告C7点,原告A及び原告B各0点)を踏まえると,原告らが乗務距離の最高限度規制に違反したとしても直ちに事業停止処分及び許可取消処分がされる蓋然性はない。 イ争点1(2)イ(重大な損害を生ずるおそれがあるか。)について(原告らの主張)(ア) 重大な損害を生ずるおそれについて行政事件訴訟法37条の4第2項が損害の回復困難性を「重大な損害」の考慮要素にとどめていることか 生ずるおそれがあるか。)について(原告らの主張)(ア) 重大な損害を生ずるおそれについて行政事件訴訟法37条の4第2項が損害の回復困難性を「重大な損害」の考慮要素にとどめていることからすれば,取消訴訟による事後的救済が可能な場合には「重大な損害」要件を充足しないという厳格な考え方を採用すべき法律的根拠は存在しない。平成16年の行政事件訴訟法改正は,取消訴訟中心主義から脱却し,もって国民の権利利益の実効的救済を図ることを意図したものであって,このような改正法の趣旨からすれば,たとえ取消訴訟による救済可能性が否定し得ない場合であっても,裁判所としては,原告らの権利救済の見地から事前審査を行うことが適切と認めれば,差止めの訴えの本案審理に踏み込むべきである。 - 14 -また,差止めの訴えにおける「重大な損害」という条文上の文言は,執行停止(行政事件訴訟法25条2項)における損害要件と全く同じ文言が用いられている。そして,「重大な損害」という表現は,改正行政事件訴訟法25条が執行停止の要件を明確に緩和する趣旨で,旧規定の「回復の困難な損害」に代えて用いた表現であるところ,執行停止と差止めの訴えという異なる問題を扱う条文で同じ要件が定められていることからも,「重大な損害」という要件は厳格な定めではなく,「重大な損害」要件があることをもって,差止めの訴えを「例外」とみてその守備範囲を限定する趣旨と解するのは適切ではない。 したがって,差止めの訴えにおける「重大な損害」要件については,そもそも厳格に解する必要はなく,原告の権利救済の見地から事前審査を行うことが適切であると認められる場合には,本案審理がされるべきであって,取消訴訟を提起して執行停止がされれば回避し得る損害であるとの理由によって,差止めの訴えを却下すべき 救済の見地から事前審査を行うことが適切であると認められる場合には,本案審理がされるべきであって,取消訴訟を提起して執行停止がされれば回避し得る損害であるとの理由によって,差止めの訴えを却下すべきではない。 (イ) 原告らに重大な損害を生ずるおそれがあることa 自動車等の使用停止処分による損害原告らは,乗務距離の最高限度規制に違反したことを理由として,近畿運輸局長から自動車等の使用停止処分を受ける蓋然性がある。その場合,原告らは,相当数の自動車の使用を停止しなければならず,運送収入の下落のみならず,利用者の配車依頼への対応が滞り,原告らに対する信用が失墜するおそれも存在し,原告らの事業にとって重大な損害が生じることとなる。 この点,被告は,原告らの被る経済的不利益は金銭賠償によって容易に回復することができる旨主張するが,本件公示が違法であることが確定した後に,原告らが国家賠償請求訴訟を提起したとしても,実際には,原告らに生じた損害の全てが填補されることも,それが容易 - 15 -に回復できることも,あり得ない。 また,被告は,処分の性質上,自動車等の使用停止処分に伴う経済的不利益が生ずることは当然に予定されており,かかる損害を原告らに受忍させることはやむを得ない旨主張する。しかし,かかる主張は行政の無謬性を前提とした独善的な主張というほかないし,これを措くとしても,事業者の過去の違反行為に対する一種の制裁的処分であるから,直ちにその処分をしなければ行政目的を達成できないということにはならない。 b 公表による名誉,信用の毀損について原告らが,自動車等の使用停止処分,事業停止処分,許可取消処分を受けた場合は,原告らに対する処分の事実,内容等が公表される。 一旦かかる公表がされてしまうと,後日,当該処分が違法であり理由 について原告らが,自動車等の使用停止処分,事業停止処分,許可取消処分を受けた場合は,原告らに対する処分の事実,内容等が公表される。 一旦かかる公表がされてしまうと,後日,当該処分が違法であり理由がないことが確定したとしても,原告らの名誉や,原告らがタクシー事業を適正に営んでいることに対する利用者の信用は毀損されてしまい,これを回復することは非常に困難である。 被告は,原告らの主張は,法40条に基づく行政処分とその後にこれを公表する行為とを混同しているものであるとして,行政処分の公表による信用の低下等による損害は,法40条に基づく処分による損害としては考慮することはできないとする。しかし,法40条に基づく行政処分がされた場合,近畿運輸局長は行政処分を公表するとの運用をしており,行政処分がされても公表はされないということは考えにくい。すなわち,行政処分を受けたとの事実の公表は,法40条の処分に伴い当然に予定された行政行為であって,処分に伴う行政行為による損害がある場合,それがその基礎となった処分の損害として考慮できない理由は全くない。 c 処分が繰り返されれば原告らの事業の継続が不可能となること - 16 -原告らに対して,監査や処分が繰り返されれば,事業停止処分,許可取消処分がされる蓋然性が存在する。仮に事業停止処分,許可取消処分にまで至るとなると,原告らの事業活動は著しく制約され,事業の継続そのものが不可能となる。その場合,原告らは,雇用している多数の運転手を含む従業員をやむを得ず解雇せざるを得なくなり,倒産の危機に瀕することとなり,回復不可能な損害を被ることとなる。 d 小括原告らに対して,法40条に基づく自動車等の使用停止処分,事業停止処分,許可取消処分がされた場合,原告らに重大な損害が生じることは不可避であ となり,回復不可能な損害を被ることとなる。 d 小括原告らに対して,法40条に基づく自動車等の使用停止処分,事業停止処分,許可取消処分がされた場合,原告らに重大な損害が生じることは不可避であるから,本件において「重大な損害」の要件を満たすことは明らかである。 (被告の主張)(ア) 重大な損害を生ずるおそれについて「重大な損害を生ずるおそれ」(行政事件訴訟法37条の4第1項)は,事前救済を求めるにふさわしい救済の必要性に関する訴訟要件であるところ,行政庁が処分をする前に裁判所が事前にその適法性を判断して差止めを命ずるのは,国民の権利利益の実効的な救済及び司法と行政の権能の適切な均衡の双方の観点から,そのような判断と措置を事前に行わなければならないだけの救済の必要性がある場合であることを要するものと解される。したがって,「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められるためには,処分がされることにより生ずるおそれのある損害が,処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく,処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要すると解するのが相当である。 (イ) 原告らについて重大な損害を生ずるおそれがあるとは認められな - 17 -いことa 法40条に基づく行政処分自体による損害について法40条に基づく自動車等の使用停止処分の目的は,法及び運輸規則等の輸送の安全に関する定めに違反するなどした一般乗用旅客自動車運送事業者による事業を制限することにより,輸送の安全及び旅客の利便を確保し,もって公共の福祉を増進することにある(法1条)。 そうすると,原告らが運輸規則22条1項に違反したことによって自動車等の使用 業者による事業を制限することにより,輸送の安全及び旅客の利便を確保し,もって公共の福祉を増進することにある(法1条)。 そうすると,原告らが運輸規則22条1項に違反したことによって自動車等の使用停止処分を受け,それに伴って,経済的不利益(収入の減少)が生ずることは当然に予定されているというべきである。また,原告らが被る上記損害は,当該行政処分の取消請求が認容され,これが確定した後に金銭賠償によって容易に回復することができる(なお,原告らは事業停止処分及び許可取消処分による損害を主張するが,これらの処分の蓋然性はない。)。 これらの点に鑑みると,原告らに自動車等の使用停止処分による損害を被ることを受忍させることは,上記目的の実現のため,社会通念上やむを得ないというべきである。 b 法40条に基づく行政処分又はこの公表による名誉,信用の毀損について原告らが法40条に基づく行政処分を受けたとしても,そのことから直ちにその信用が低下するとはいい難い。仮に,行政処分又はその公表によって原告らの信用が低下し得るとしても,それは,原告らが運輸規則22条1項に違反したことにより招いた事態というべきであるし,当該行政処分の取消請求が認容され,これが確定すれば,その信用は直ちに回復される。 なお,そもそも公表に関しては,法40条に基づく行政処分とその後これを公表する行為とを混同するものであり,本件において,後者 - 18 -の行為による損害を考慮することはできない。 c 法40条に基づく行政処分が繰り返されることによる損害について原告らは,今後,運輸規則22条1項に違反する行為をした場合になされる法40条に基づく自動車等の使用停止処分等の行政処分の差止めを求めているものであり,本件において,その後,原告らが同様の行為を繰り返した場合 後,運輸規則22条1項に違反する行為をした場合になされる法40条に基づく自動車等の使用停止処分等の行政処分の差止めを求めているものであり,本件において,その後,原告らが同様の行為を繰り返した場合になされる法40条に基づく別個の行政処分による損害を考慮することはできないから,原告らの上記主張も失当である。 (3) 争点1(3)(確認請求関係―確認の利益があるか。)について(原告らの主張)被告は,「解決すべき紛争の成熟性(いわゆる即時確定の現実的利益)の有無」の要件を欠くことを理由に,甲事件の予備的請求に係る訴え(以下「本件確認の訴え」という。)には確認の利益(即時確定の現実的利益)がないと主張するが,以下のとおり即時確定の現実的利益が認められ,本件確認の訴えにつき確認の利益は認められる。 ア即時確定の現実的利益の判断枠組み「即時確定の現実的必要」の要件については,①被告が原告の地位に与える不安・危険と,②不安・危険の現実性という2つに分けて論ぜられ,そのうち,①については,通常は,原告の法的地位を被告が否定したり,原告の法的地位と抵触する法的地位を主張したりする場合に不安・危険が原告に生ずると解される。また,②不安・危険の現実性については,将来どのように事態が進むかは不確定であり,先走って判決をしてみても,事件が別の展開をし判決が無意味・無駄になることもあるから,原告の不安・危険は現実的なもの,現在のものになっていなければならないとされる。このような見地からすれば,将来における事態の進展が概ね確定しているといえる場合には,②不安・危険の現実性の要件は満たすものという - 19 -べきである。 なお,被告は,最高裁判所昭和41年(行ツ)第35号同47年11月30日第一小法廷判決・民集26巻9号1746頁(以下「昭和 安・危険の現実性の要件は満たすものという - 19 -べきである。 なお,被告は,最高裁判所昭和41年(行ツ)第35号同47年11月30日第一小法廷判決・民集26巻9号1746頁(以下「昭和47年最判」という。)及び同裁判所昭和63年(行ツ)第92号平成元年7月4日第三小法廷判決・裁判集民事157号361頁(以下「平成元年最判」という。)を引用して,将来,不利益処分を受けてから,それに対する訴訟の中で事後的に争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがあるなど,事前の救済を認めないことを著しく不相当とする特段の事情がある場合でなければ,確認訴訟は不適法であるとし,確認訴訟の射程範囲を著しく限定する主張をする。しかし,平成16年行政事件訴訟法改正では,確認訴訟の活用という明確なメッセージが示されたこと,その後に出された最高裁判所平成13年(行ツ)第82号,同年(行ツ)第83号,同年(行ヒ)第76号,同年(行ヒ)第77号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁(以下「平成17年最大判」という。)は,在外邦人が,各選挙につき選挙権を行使する権利を有することの確認をあらかじめ求めた訴えにつき,それが有効適切な手段であると認められる限り,確認の利益を肯定すべきとし,確認の利益を認める判決をしていることなどを踏まえると,昭和47年最判及び平成元年最判で示された確認の利益に関する判断基準は当然緩和されてしかるべきである。 イ本件へのあてはめ本件では,原告らは,「運転者を,乗務距離の最高限度を超えても事業用自動車に乗務させることができる地位」にあることの確認を求めているのに対し,本件公示に基づく乗務距離規制を行っている被告は,原告らが主張する上記地位を否定しているから,①被告が原告らの地位に与える不安・危険が存在して とができる地位」にあることの確認を求めているのに対し,本件公示に基づく乗務距離規制を行っている被告は,原告らが主張する上記地位を否定しているから,①被告が原告らの地位に与える不安・危険が存在していることは明らかである。 また,原告らは,まさに現在において運転者を,乗務距離の最高限度を - 20 -超えても事業用自動車に乗務させることができる地位にあることの確認を求めていることに照らすと,②不安・危険の現実性の要件を満たす。そして,原告らにおいては,今後も,乗務距離の最高限度を超過する件数が一定程度発生することは不可避であり,近畿運輸局長の監査後,原告らに対して法40条の処分をするという将来における事態の進展がおおよそ予定されているといえることからしても,②不安・危険の現実性の要件を満たす。 なお,被告は,本件確認の訴えを予防的確認訴訟と理解できるとしている。しかし,原告らは,本件公示によって,運転者を乗務距離の最高限度を超えて事業用自動車に乗務させることができないという不利益を現に受けており,その除去を求めるために本件確認の訴えを提起しているのであるから,本件確認の訴えは予防的確認訴訟にも当たらない。 (被告の主張)ア公法上の法律関係に関する確認の訴えにおける確認の利益について公法上の法律関係に関する確認の訴え(行政事件訴訟法4条)についても民事訴訟法上の確認訴訟と同様,原告に確認の利益が認められる必要がある。そして,一般に,確認の利益の有無を判断するに当たっては,①確認対象(訴訟物)の選択の適否,②解決すべき紛争の成熟性(即時確定の現実的利益)の有無(原告の権利又は法的地位に現に不安,危険が存在し,それを除去するために確認判決をすることが必要かつ適切であるか否か),③確認訴訟という方法選択の適否という観点から検討 即時確定の現実的利益)の有無(原告の権利又は法的地位に現に不安,危険が存在し,それを除去するために確認判決をすることが必要かつ適切であるか否か),③確認訴訟という方法選択の適否という観点から検討することを要する。 そして,法令や一般処分により課された公法上の義務を争う場合,この争訟が成熟性を有するといえるためには,義務違反の効果として,将来何らかの不利益処分を受けるおそれがあるというだけでは足りず,当該不利益処分を受けてからこれに関する訴訟の中で事後的に義務の存否を争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがあるなど,事前の救済を認め - 21 -ないことを著しく不相当とする特段の事情がある場合に限り,その適法性が認められるというべきである(昭和47年最判,平成元年最判)。 イ本件確認の訴えに紛争の成熟性(即時確定の利益)がないこと(ア) 本件確認の訴えの性質について本件確認の訴えは,原告らが,本件公示のうち乗務距離制限部分ないしその違反を理由とする行政処分が原告らの営業の自由を侵害することを理由に,行政処分を受ける前にあらかじめ,「本件公示のうち乗務距離制限部分にかかわらず営業できる地位にあること」の確認を求める予防的確認訴訟と理解することができる。 (イ) 乗務距離の最高限度の規制によって直ちに原告らの具体的な法律上の地位が侵害されるわけではないことまず,法は,乗務距離の最高限度規制を含め運輸規則に定められた多岐にわたる事項の遵守を直接強制する手段を持たず,飽くまで,事業者自らがこれらの事項を遵守することを通じて輸送の安全及び旅客の利便を確保しようとしたものであり,これらの事項を遵守しようとしない事業者の態度は,法40条に基づく行政処分が行われる場合に,その裁量判断を基礎づける一事情として斟酌されることを通 の安全及び旅客の利便を確保しようとしたものであり,これらの事項を遵守しようとしない事業者の態度は,法40条に基づく行政処分が行われる場合に,その裁量判断を基礎づける一事情として斟酌されることを通じて,事業者の営業の制限につながり得るにとどまるものである。 このような運輸規則の位置づけに鑑みると,運輸規則の一内容である本件公示そのものが,原告らの営業に関する具体的な法律上の地位を制約するというわけではない。原告らの営業の自由が具体的に制約されるとすれば,それは法40条に基づく行政処分として,自動車等の使用停止処分以上の処分が行われる場合であって,原告らが本件公示にかかわらず営業できる地位にあるかどうかは,その際の考慮要素の一つとなり得るにとどまる。このような地位の確認を求める訴えは,その地位が,将来の行政処分において裁量判断を基礎づける事情となるか否かの確認 - 22 -を求めるものにほかならず,原則として,独立の訴訟の対象にはならないものである。 (ウ) 事前の救済を認めないことを著しく不相当とする特段の事情があるとはいえないこと原告らが侵害を受けるとする営業の自由は,経済的自由権にとどまることに加え,本件公示は,1乗務当たりの乗務距離を最高限度で日勤勤務運転者について250キロメートルとするよう求めるにとどまっており,これをもって営業の自由の本質的部分が制限されているともいい難い。 また,仮に本件公示違反を原因として行われる行政処分によって営業が禁止されるに至るとみる余地があるとしても,その営業の禁止は,一部の営業を,限られた期間禁止することを内容とする自動車等の使用停止処分にとどまるものであって,そのような処分による損害は,事後の金銭賠償によって容易に回復可能なものということができるのであり,しかも,事後の取消 れた期間禁止することを内容とする自動車等の使用停止処分にとどまるものであって,そのような処分による損害は,事後の金銭賠償によって容易に回復可能なものということができるのであり,しかも,事後の取消訴訟によって争うことができる。 以上によれば,本件においては,原告らが,本件公示によりその乗務距離制限部分にかかわらず営業できる地位にないとされたことによって侵害を受ける権利の性質及びその侵害の程度,違反に対する制裁としての不利益処分の内容又は性質等に照らし,法40条に基づく行政処分を受けてからこれに関する訴訟の中で事後的に原告らが乗務距離制限部分にかかわらず営業できる地位にあるかどうかを争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがあるなど,事前の救済を認めないことを著しく不相当とする特段の事情がある場合に当たるものとはいい難い。 なお,原告らは,平成17年最大判に言及するが,平成17年最大判は,「選挙権」という民主主義の根幹を成す憲法上の重要な権利が問題とされたものであり,それは「これを行使することができなければ意味 - 23 -がないものといわざるを得ず,侵害を受けた後に争うことによっては権利行使の実質を回復することができない性質」のものであるから,事前の救済を認める必要性が高いことは明らかであって,権利の性質,侵害の程度,事後的に回復可能な損害か否か等の点において,本件とは事案を異にするものである。 (エ) 小括以上から,本件確認の訴えは,紛争の成熟性(即時確定の利益)が認められず,不適法である。 2 争点2(運輸規則22条の違法性)について(1) 争点2(1)(運輸規則22条は憲法22条1項に違反するか。)について(原告らの主張)ア運輸規則22条の憲法適合性の判断基準一般に,営業の自由(経済的自由権)に 法性)について(1) 争点2(1)(運輸規則22条は憲法22条1項に違反するか。)について(原告らの主張)ア運輸規則22条の憲法適合性の判断基準一般に,営業の自由(経済的自由権)に対する規制の合憲性については,規制目的が消極的・警察的規制である場合には,裁判所が規制の必要性・合理性及び同じ目的を達成できる,より緩やかな規制手段の有無を立法事実に基づいて審査するという「厳格な合理性」の基準によって判断するとされている。このことは,いわゆる薬局距離制限事件(最高裁判所昭和43年(行ツ)第120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁(以下「昭和50年最大判」という。))によっても明らかにされている。 運輸規則22条は,一般乗用旅客自動車運送事業者の営業の自由を規制するものであるところ,その規制目的はタクシーによる事故を防止することであり,かかる目的による規制は,明らかに消極的・警察的規制であるから,本件の乗務距離規制についての合憲性判断基準としては,上述の「厳格な合理性」の基準によってされなければならない。 - 24 -この点,被告は,運輸規則22条は,適切な運行管理や旅客の利便の確保をも目的にしている規制である旨主張する。しかし,乗務距離の最高限度規制は,当該距離を超える営業を禁止する規制であり,営業を直接的に禁止する規制である以上,もはや運行管理を目的とした規制であるとはいえない。また,被告は,輸送の安全が確保されないおそれのある状況下で利用者がタクシーを利用することで,かえって利用者の利便を損なうおそれがあるとも主張するが,旅客の利便独自の目的が認められることを説明したものではないから,結局は運輸規則22条の規制目的は輸送の安全に収斂するといえる。 また,被告は,運輸規則22条は飽くまでも れがあるとも主張するが,旅客の利便独自の目的が認められることを説明したものではないから,結局は運輸規則22条の規制目的は輸送の安全に収斂するといえる。 また,被告は,運輸規則22条は飽くまでも職業遂行の方法に対して制約を課すものに過ぎない旨主張する。しかし,乗務距離規制は,最高限度を超えて運転者を乗務させてはならないとする規制であり,タクシー事業者が営業を行う上で最も根幹的な走行すること自体を規制するものであって,営業行為そのものを直接的に制約する極めて強い規制である。 イ乗務距離の最高限度規制は低額運賃事業者を排除すること等を目的としたものであること乗務距離規制に関する議論においては,明らかに,低額運賃事業者こそが過労運転や最高速度違反をする典型事業者であるとされている。そして,低額運賃事業者は収益性が低いため,乗務距離が長くなる傾向にあるという被告の認識を前提とすれば,被告が表向きに掲げる過労運転等の防止は,距離で稼がざるを得ない低額運賃事業者を狙い打ちにするものにほかならない。すなわち,被告は,原告らを含む低額運賃事業者を排除することを目的として,乗務距離の最高限度規制を導入したものである。 ウ乗務距離の最高限度を規制する必要性・合理性はないこと(ア) タクシーの乗務距離が長くなれば,それに応じて事故の発生率が高くなるという関係は存しないし,乗務距離の最高限度を超過すれば, - 25 -事故の発生率が格段に高まるような関係も認められないことに照らすと,タクシーの事故を防止するために,乗務距離の最高限度を定める必要性・合理性はない。 (イ) 既に労働時間規制,車両の整備に関する規制など相当数にのぼる事故防止のための規制が実施されており,これに加えてさらに乗務距離の最高限度を規制する必要性・合理性はない。 ・合理性はない。 (イ) 既に労働時間規制,車両の整備に関する規制など相当数にのぼる事故防止のための規制が実施されており,これに加えてさらに乗務距離の最高限度を規制する必要性・合理性はない。 (ウ) バス事業やトラック事業においては乗務距離の最高限度規制が行われていないところ,タクシー事業が,バス事業やトラック事業と比べて,特に運行管理が困難であるという理由は存在せず,タクシー事業の運行管理の困難性を理由に乗務距離の最高限度規制が必要であるということはできない。 (エ) 本件公示で定められた乗務距離の最高限度を遵守するには,定められた乗務距離の最高限度を超えた段階で運転者に乗車拒否をさせなければならないこととなり,利用者の利便という法の目的を阻害することとなる。 (オ) 運転者が乗務距離の最高限度を超えるかどうかを即座に判断することは不可能であり,仮に,乗務距離の最高限度を超える可能性があると判断したとしても,一旦乗車した利用者に対して降車をお願いするというのはあまりにも非現実的である。したがって,乗務距離の最高限度を規制するという規制手段そのものが不合理である。 (被告の主張)ア運輸規則22条の憲法適合性の判断基準経済的自由権の規制立法については,合憲性の推定を原則としつつ,規制目的のほか,規制の対象や規制の具体的な方法等からみて利益調整の合理性に疑義があるような場合には,より慎重に憲法適合性を判断すべきところ,運輸規則22条は経済的自由権に対する規制であり,かつ,許可制 - 26 -のように狭義の職業選択の自由そのものに対して強い制約を課すものではなく,飽くまでも職業遂行の方法に対して制約を課すものに過ぎないこと,規制目的と規制手段が直結していることなどを総合すると,運輸規則22条の憲法適合性を判断するに当 のに対して強い制約を課すものではなく,飽くまでも職業遂行の方法に対して制約を課すものに過ぎないこと,規制目的と規制手段が直結していることなどを総合すると,運輸規則22条の憲法適合性を判断するに当たっては,規制目的及び規制手段の必要性・合理性判断について立法府の広い裁量が認められるべきであり,具体的には,規制目的が公共の福祉に合致しないことが明らかであるか,又は規制手段がその目的を達成するための手段として必要性若しくは合理性に欠けていることが明らかでない限り,違憲とはならないものと解すべきである。 なお,原告らは,昭和50年最大判に言及しつつ,規制目的二分論に立った上で,運輸規則22条は,タクシーによる交通事故を防止するという消極目的のものであり,タクシー事業者の営業行為そのものを直接的に制約する極めて強い規制であるから,その憲法適合性は,厳格な合理性の基準により判断すべきである旨主張する。しかし,昭和50年最大判も,許可制という狭義の意味での職業選択の自由に対する強力な制約である事案についての判断であること,その後の最高裁判例では立法目的の積極・消極の別を明らかにしないまま憲法適合性を判断していること,むしろ規制目的だけではなく規制態様も併せて考慮する必要があると考えられることなどに照らすと,単純な規制目的二分論を前提とする原告らの主張は採用できない。 イ運輸規則22条が憲法22条に違反しないこと交通事故の要因として,過労運転や危険運転が挙げられるところ,流し営業地域におけるタクシー運転者は,歩合制賃金を背景として,より多くの営業収入を確保しようとする心理から,勤務時間内に乗務距離を稼ごうと先を急いだり,あるいは休憩時間を削るなど,労働時間規制を潜脱してでも長距離走行して運賃を稼ごうとする傾向があり,過労運転や最高速度 業収入を確保しようとする心理から,勤務時間内に乗務距離を稼ごうと先を急いだり,あるいは休憩時間を削るなど,労働時間規制を潜脱してでも長距離走行して運賃を稼ごうとする傾向があり,過労運転や最高速度 - 27 -違反などの危険運転を引き起こしやすいこと,現に,乗務距離規制に違反する乗務をした場合には,速度違反件数が多くなる傾向が確認されること,また,上記のような運転者の心理的要因の存在も複数の事情から確認されることからすれば,輸送の安全を確保することなどを目的として乗務距離の最高限度を規制する運輸規則22条は,公共の福祉に合致し,合理性と必要性があるので,憲法22条に違反しない。 (2) 争点2(2)(運輸規則22条は法の委任の範囲を超えており違法か。)について(原告らの主張)法27条1項の委任に基づく運輸規則22条が定める乗務距離の最高限度規制によって,利用者の利便を損なう結果が生じている上,輸送の安全をも阻害する結果が生じており,これらの結果からすると,乗務距離の最高限度規制は,「輸送の安全及び旅客の利便の確保のために必要な事項」であるとはいえず,明らかに法27条の委任の趣旨又は範囲を逸脱している。したがって,運輸規則22条は無効である。 (被告の主張)法27条1項は,一般乗用旅客自動車運送事業者に遵守義務を課すべき輸送の安全及び旅客の利便の確保のために必要な個別具体的な事項に関する諸規定については,その定めを運輸規則に委任するものであるところ,運輸規則22条は,乗務距離の最高限度を定めることにより,過労運転や最高速度違反等の危険運転を防止して輸送の安全の確保を図るとともに旅客の利便の確保を図るものであるから,法27条1項の委任の趣旨に沿うものというべきである。 3 争点3(本件公示は違法か。)について(1) 等の危険運転を防止して輸送の安全の確保を図るとともに旅客の利便の確保を図るものであるから,法27条1項の委任の趣旨に沿うものというべきである。 3 争点3(本件公示は違法か。)について(1) 乗務距離の最高限度の設定等に係る地方運輸局長の裁量権の範囲(原告らの主張) - 28 -本件公示の根拠規定である運輸規則22条2項によれば,「乗務距離の最高限度は,当該地域における道路及び交通の状況並びに輸送の状態に応じ」て定めるとされているから,地方運輸局長には,乗務距離の最高限度を定めるに当たって一定の裁量が認められているといえる。しかし,乗務距離の最高限度を定めることは,憲法で保障された原告らの営業の自由を制約するものでもあるから,その制約の程度は必要最小限でなければならず,地方運輸局長の裁量にもおのずと制約があるというべきである。 したがって,地方運輸局長が定めた乗務距離の最高限度が,行政目的を達成するための必要最小限度の規制とはいえず,また,その規制の内容が,行政目的との関係において合理性を欠く場合には,地方運輸局長に認められた裁量権が濫用され,又はその裁量権の範囲を逸脱したものというべきであるから,かかる乗務距離の最高限度の定めは違法である。 (被告の主張)乗務距離の最高限度規制の設定の是非及び最高限度の設定方法等については,地方運輸局長の専門的・技術的判断が必要であることから,地方運輸局長の広範な裁量に委ねられているというべきであって,各地方運輸局長が当該規制を定めるに至った判断の過程に看過し難い過誤,欠落があること等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となる。 (2) 日勤勤務運転者の乗務距離の最高限度を250キロメ よりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となる。 (2) 日勤勤務運転者の乗務距離の最高限度を250キロメートルと定めたことに裁量権の範囲の逸脱・濫用があるか。 (原告らの主張)被告は,近畿運輸局長において,実態調査から得られた各地域内のタクシー事業者の平均的な運行状況を基に,1日の拘束時間の最大限度まで勤務した場合を仮定して,下記の算定方式(以下「本件算定方式」という。)に基づき通常の運行を行った場合に最大限走行可能な距離を算出した上で,乗務 - 29 -距離の最高限度を設定した旨主張する。しかし,本件算定方式では,休憩時間規定や最高速度を遵守していた場合の最大限走行可能な距離を求めていることにはならない(後掲ア)。また,実態調査により取得したデータが不十分であるほか,異常値を適切に排除しないなど具体的な算定過程等についても問題がある(後掲イ)。したがって,処分行政庁が日勤勤務運転者の乗務距離の最高限度を1乗務当たり250キロメートルと定めたことに裁量権の範囲の逸脱・濫用がある。以下詳述する。 記乗務距離の最高限度=可能実ハンドル時間×平均運行速度可能実ハンドル時間=最大拘束時間-(休憩時間+平均始業点呼時間+平均終業点呼時間+平均客扱い時間)平均運行速度=平均走行距離÷平均実ハンドル時間平均実ハンドル時間=平均拘束時間-(平均休憩時間+平均客扱い時間+平均客待ち時間)可能実ハンドル時間の計算における休憩時間=就業規則上の平均休憩時間×(最大拘束時間-(平均始業点呼時間+平均終業点呼時間))÷(平均拘束時間-(平均始業点呼時間+平均終業点呼時間))ア本件算定方式を採用することに合理性がないこと(ア) 平均 平均休憩時間×(最大拘束時間-(平均始業点呼時間+平均終業点呼時間))÷(平均拘束時間-(平均始業点呼時間+平均終業点呼時間))ア本件算定方式を採用することに合理性がないこと(ア) 平均運行速度を用いている点本件算定方式は,乗務距離の最高限度を計算するに当たり平均運行速度を用いている。しかし,事業者の平均運行速度を超過する速度による走行が,直ちに危険な最高速度違反などの違法な運行となるものとは到底認められないから,平均運行速度を用いた本件算定方式によっては,通常の運行を行った場合に最大限走行可能な距離を算出したことにはならない。本来は,最高速度違反などの違法な運行を含まない最大限可能 - 30 -な速度を基礎にすべきであり,実態調査により得られた運行速度が比較的速い事業者の運行状況等を確認し,当該運行に危険な速度違反等の運行が含まれないのであれば,むしろ最大値を採用すべきである。 また,昼勤よりも夜勤の方がより運行速度が速くなる傾向があるところ,近畿運輸局長はこれを看過して,全日の平均運行速度を用いて計算をしている(本来は,夜勤の平均運行速度を用いて計算をすべきである。)。 (イ) 可能実ハンドル時間が過少である点可能実ハンドル時間は,法定の最大拘束時間,休憩時間等を遵守した場合に走行可能な最大限の時間が算出されるべきである。しかし,近畿運輸局長は,可能実ハンドル時間の計算に法定の最大拘束時間から控除する休憩時間について,実態調査における休憩時間の平均値ですらなく,就業規則で定められた休憩時間の平均値を実質的な拘束時間に着目して割り戻した時間をもって計算することとしている。 そもそも,拘束時間と休憩時間との間には有意な相関関係はなく,拘束時間が長くなれば休憩時間も長くなる傾向があるとはいえないから,各事業者 に着目して割り戻した時間をもって計算することとしている。 そもそも,拘束時間と休憩時間との間には有意な相関関係はなく,拘束時間が長くなれば休憩時間も長くなる傾向があるとはいえないから,各事業者の運転者が法定の最大拘束時間まで拘束されたとした場合の休憩時間を拘束時間に着目して割り戻しをすること自体不相当である。 また,就業規則上の休憩時間未満の時間しか休息していなかった運転者が調査対象の34パーセントも存在していたことに照らすと,就業規則上の休憩時間は何ら実態を反映していないものであり,これに基づき可能実ハンドル時間を算出することは相当でない。 以上のとおり,近畿運輸局長が採用した計算方法では,可能実ハンドル時間が過小評価されているというべきである。 (ウ) 小括結局,近畿運輸局長が採用した本件算定方式では,単に,調査対象事 - 31 -業者の平均的,標準的な走行距離が算出されるに過ぎない。すなわち,本件算定方式によっては1日の拘束時間の最大限度まで勤務し,通常の運行を行った場合の最大限走行可能な距離を算定することはできない。 なお,関東運輸局長は近畿運輸局長とほぼ同様の乗務距離算定方法により隔日勤務運転者につき乗務距離を302キロメートルと算定したものの,最終的な規制数値は365キロメートルとしており,近畿運輸局長の採用した乗務距離算定方法に根本的な問題があることを裏付けている。 イ本件算定方式を前提とするにしても,具体的な算定過程等において問題があること(ア) 実態調査の実施方法が不適切ないし不十分であること等近畿運輸局長が実態調査を行った期間は平成21年8月31日から同年9月6日までの7日間とごく短期間であるほか,大阪市域交通圏における実態調査において調査対象となった車両数も全車両数の2.26パーセントと非 局長が実態調査を行った期間は平成21年8月31日から同年9月6日までの7日間とごく短期間であるほか,大阪市域交通圏における実態調査において調査対象となった車両数も全車両数の2.26パーセントと非常に少ない。そして,実態調査の対象事業者名が明らかにされておらず,その選定が適切かどうかについて確認,検証のしようもない。 また,実態調査の対象事業者の多くは原価計算対象事業者であり,これらの事業者の多くは流し,駅待ち,車庫待ち等を中心とする事業形態であって,原告らのような無線,専用乗り場等を中心とする事業形態とは異なる。このような事業形態が異なる調査対象事業者の平均値をもって,原告らにもあてはまる規制値を設定することは不当である。 さらに,調査対象事業者における調査対象車両の選定基準が一切定められておらず,調査対象事業者が調査対象車両を任意に選定できる調査であった。したがって,原価計算対象事業者が,乗務距離が長い傾向にある低額運賃事業者を排除する目的で,あえて乗務距離の少ない車両のデータを実態調査において報告することも可能であった。 - 32 -(イ) 平均運行速度の計算過程で用いられる数値の根拠等についてa 平均客扱い時間及び平均客待ち時間について平均客扱い時間及び平均客待ち時間について,日別の実績数値を調査対象としておらず,事業者ごとに「1乗務あたり概ねの客扱い時間」,「1乗務あたり概ねの客待ち時間」(タクシー実態調査,運行状況総括表(日勤用)(甲36の別紙5))として得た実績値ではない概算値の平均値により算定しているのは不当である。 また,客扱い時間については事業者によって10分ないし80分(日勤の場合)と乖離が大きいだけでなく,タクシー事業の実態に照らすと,10分あるいは80分という数値はおよそ考えられないのであ ある。 また,客扱い時間については事業者によって10分ないし80分(日勤の場合)と乖離が大きいだけでなく,タクシー事業の実態に照らすと,10分あるいは80分という数値はおよそ考えられないのであって,概算値としても正確性を著しく欠く。 b 事業者別の平均運行速度について調査対象事業者別に平均運行速度を計算すると,毎時11.5キロメートルから毎時291.2キロメートルと大きな乖離があった(甲41)。特に,毎時75.7キロメートル,毎時291.2キロメートルなどといった平均運行速度は,明らかに異常値であるにもかかわらず,近畿運輸局長は具体的数値の内容を一切確認せず,当該数値を含んだまま全事業者の平均運行速度として算出しており,杜撰極まりない。 c 道路交通センサスとの比較国土交通省が実施した平成22年度道路交通センサスによれば,昼間12時間平均旅行速度は大阪市内で毎時27.6キロメートル,神戸市内で毎時36.9キロメートル,京都市内で毎時23.9キロメートルである。近畿運輸局長が算出した平均運行速度毎時21.3キロメートルはこれらを下回っており,近畿運輸局長の計算結果は明らかに不合理である。 - 33 -(ウ) 休憩時間について調査対象事業者の実態調査結果において,実際に取得された休憩時間が,事業者の就業規則等に定められた休憩時間を満たさないものが全体の34パーセントも存在し,実際の最大拘束時間が,就業規則等に定められた最大拘束時間を超過したものが14パーセントも存在し,実態調査における事業者の回答の信用性自体,疑わしいものである(甲42)。 さらに,同調査結果によれば,法定の最低休憩時間を満たさないものが7パーセントも存在する。このように,乗務距離算定の根拠とされた実態調査により得られた運行データには,最大拘束時 のである(甲42)。 さらに,同調査結果によれば,法定の最低休憩時間を満たさないものが7パーセントも存在する。このように,乗務距離算定の根拠とされた実態調査により得られた運行データには,最大拘束時間や休憩時間を遵守しない,労働基準法違反の違法な運行が多数含まれている。 被告は,実態調査により得られた数値について,乗務距離規制算定の根拠としてそのまま使用することが適当かどうかなど,何らの検討を行わず,機械的に違法な運行を含むデータの平均値を算定根拠としているものであって,このような違法な運行を含む数値を前提に最高乗務距離を算出していること自体,当該規制の正当性,合理性を認めるべきでない一つの事情といえる。 (被告の主張)近畿運輸局長は,後掲アのとおり大阪市域交通圏内のタクシー事業者を対象に実態調査を行い,平均的な運行状況を把握した上で,後掲イのとおり本件算定方式に従い,最大拘束時間まで勤務し,通常の運行を行った場合に最大限走行可能な距離を求めたところ,隔日勤務運転者346.2キロメートル,日勤勤務運転者251.3キロメートルとなった。北摂交通圏,河北交通圏,河南交通圏,京都市及び神戸市域交通圏についても同様の手法で通常の運行を行った場合に最大限走行可能な距離を求めたところ,いずれも大阪市域交通圏のそれを下回ったものであるが,大阪市域交通圏,北摂交通圏,河北交通圏,河南交通圏,京都市及び神戸市域交通圏は一体の都市圏を形成 - 34 -していること等に鑑み,処分行政庁は,大阪市域交通圏の算定結果に基づきいずれの交通圏についても乗務距離の最高限度を隔日勤務運転者1乗務当たり350キロメートル,日勤勤務運転者1乗務当たり250キロメートルと設定した。原告らは,本件算定方式及び具体的な算定結果が不合理であると主張するが,後掲ウのとお 最高限度を隔日勤務運転者1乗務当たり350キロメートル,日勤勤務運転者1乗務当たり250キロメートルと設定した。原告らは,本件算定方式及び具体的な算定結果が不合理であると主張するが,後掲ウのとおりいずれについても合理性を有する。 ア実態調査(ア) 調査対象事業者及び調査車両数調査対象事業者は,大阪市域交通圏内に営業所を配置している原価計算対象事業者27社及び初乗り運賃500円を採用している一般乗用旅客自動車運送事業者3社の合計30社としたところ,原価計算対象事業者のうち日勤勤務の勤務形態を採用している24社及び初乗り運賃500円を採用している一般乗用旅客自動車運送事業者3社の合計27社が回答し,調査車両は,調査対象事業者が任意で選定した実働車両合計1720両となった(甲35,乙23)。 (イ) 調査対象期間調査対象期間は,平成21年8月31日(月曜日)から同年9月6日(日曜日)までの7日間とした(乙23)。 (ウ) 主な調査事項及び調査方法近畿運輸局長は,調査対象事業者に対し,客扱い時間の意義を「旅客の乗車,降車の対応時間」と説明した上,「1乗務当たりの概ねの客扱い時間」を調査するように求め,客待ち時間の意義を「駅,乗り場等において待機している時間」と説明した上,「1乗務当たりの概ねの客待ち時間」を調査するように求めた。 なお,近畿運輸局長は,調査対象事業者に対し,労働時間,運行状況等の調査に当たって,昼勤と夜勤を区別して調査するようには求めていない。 - 35 -イ本件算定方式及びそれに基づく具体的な計算(ア) 走行可能距離の算出走行可能距離(約251.3キロメートル)は,平均運行速度(毎時21.3キロメートル)に可能実ハンドル時間(708.0分=11. 8時間)を乗じて算出したものである(小数 (ア) 走行可能距離の算出走行可能距離(約251.3キロメートル)は,平均運行速度(毎時21.3キロメートル)に可能実ハンドル時間(708.0分=11. 8時間)を乗じて算出したものである(小数点第2位以下四捨五入)。 (イ) 平均運行速度及び可能実ハンドル時間の算出過程a 平均運行速度の算出過程平均運行速度(毎時21.3キロメートル)は,実態調査で得られた平均走行距離(136.7キロメートル)を平均実ハンドル時間(385.8分=6.43時間)で除して算出したものである(小数点第2位以下四捨五入)。 (a) 平均走行距離の算出過程平均走行距離(136.7キロメートル)は,調査対象事業者の走行距離の合計(23万5191キロメートル)を調査対象事業者の実働車両数の合計(1720両)で除して算出したものである(小数点第2位以下四捨五入)。 (b) 平均実ハンドル時間の算出過程平均実ハンドル時間(385.8分)は,実態調査で得られた平均拘束時間(599.2分)から,実態調査で得られた平均休憩時間(96.7分),実態調査で得られた平均客扱い時間(23.2分),実態調査で得られた平均客待ち時間(93.5分)をそれぞれ控除して算出したものである。 ここで,客扱い時間(23.2分)は,調査対象事業者,すなわち「別紙5 事業者別合計値一覧(大阪市域交通圏・日勤)」(甲35)の「事業者名」欄記載の事業者27社のうち,「客扱い時間(分)」欄が空欄の事業者を除いた25社の客扱い時間の合計(5 - 36 -80分)を有意調査対象事業者数(25社)で除して算出したものである。また,客待ち時間(93.5分)は,調査対象事業者,すなわち「別紙5 事業者別合計値一覧(大阪市域交通圏・日勤)」(甲35)の「事業者名」欄記載の事業者27社のうち 社)で除して算出したものである。また,客待ち時間(93.5分)は,調査対象事業者,すなわち「別紙5 事業者別合計値一覧(大阪市域交通圏・日勤)」(甲35)の「事業者名」欄記載の事業者27社のうち,「客待ち時間(分)」欄が空欄の事業者を除いた26社の客待ち時間の合計(2430分)を有意調査対象事業者数(26社)で除して算出したものである(小数点第2位以下四捨五入)。 b 可能実ハンドル時間及びこれを算出するに当たって算出した休憩時間の算出過程(a) 可能実ハンドル時間の算出過程可能実ハンドル時間(708.0分)は,最大拘束時間(16時間=960分)から,休憩時間(164.0分),平均始業点呼等時間(19.6分),平均終業点呼等時間(33.3分)及び客扱い時間(35.1分)をそれぞれ減じて算出したものである。 (b) 休憩時間の算出過程休憩時間(164.0分)は,調査対象事業者の就業規則上の平均休憩時間(125.7分。甲35,乙26の1)に,最大拘束時間(960分)から実態調査で得られた平均始業点呼等時間(19. 6分)及び平均終業点呼等時間(33.3分)をそれぞれ減じて算出した時間(907.1分)を調査対象事業者の就業規則上の平均拘束時間(748.3分)から実態調査で得られた平均始業点呼等時間(19.6分)及び平均終業点呼等時間(33.3分)をそれぞれ減じて算出した時間(695.4分)で除した数値を乗じて算出したものである(小数点第2位以下四捨五入)。 ウ原告らの主張に対する反論(ア) 本件算定方式が合理的であること - 37 -a 平均運行速度を用いている点について原告らは,①事業者の平均運行速度を用いた本件算定方式によっては,通常の運行を行った場合に最大限走行可能な距離を算出したことにはならない,② - 37 -a 平均運行速度を用いている点について原告らは,①事業者の平均運行速度を用いた本件算定方式によっては,通常の運行を行った場合に最大限走行可能な距離を算出したことにはならない,②近畿運輸局長は夜勤の方がより運行速度が速くなる傾向にあることを看過しているなどと主張する。 しかし,そもそも,走行可能距離は,平均運行速度に可能実ハンドル時間を乗じて算出したものであるところ,可能実ハンドル時間(708.0分)は,平均実ハンドル時間(385.8分)よりも322. 2分も長いから,平均運行速度を基に走行可能距離を算出したからといって,このような走行可能距離を踏まえて乗務距離の最高限度が過度に制限的な内容になっていないことは明らかである。 また,①タクシーは,通常,道路交通法に違反しない限度でできるだけ早く走行しているものと考えられるから,実態調査で得られた平均運行速度は,このような走行の現れであるというべきであり,タクシー運転者の乗務の内容は,その日に乗車する旅客の輸送内容(目的地,道順,走行する道路の混雑状況及び高速自動車国道等の使用の有無等)により異なるのであって,平均運行速度ではなく,原告らが主張するような「道路交通法を遵守した場合に1乗務当たり最大どの位走行することが可能か」を個別に算出し,一律の数値として設定することは不可能である。 そして,②日勤勤務運転者の勤務時間は,事業者ごとに自由に定められるものであるから,日勤勤務運転者の勤務時間や勤務形態は事業者及び運転者等により異なっており,現行の勤務形態を維持したまま昼間と夜間の勤務を区別して規制を設定しようとすれば,極めて複雑な制度となり,事業者や行政による監督の面から非現実的である。また,夜間の平均運行速度が,昼間のそれよりも速いというような漠然 - 38 夜間の勤務を区別して規制を設定しようとすれば,極めて複雑な制度となり,事業者や行政による監督の面から非現実的である。また,夜間の平均運行速度が,昼間のそれよりも速いというような漠然 - 38 -とした一般論があるとしても,実際にこれに基づいて,夜間に乗務する運転者に係る乗務距離の最高限度を,昼間に乗務する運転者に係るそれと比較して長めに設定してしまうと,昼間に稼働する事業者ないし乗務する運転者が減少し,夜間に稼働する事業者ないし乗務する運転者が増加することが考えられ,ひいては市場を歪めたり,利用者の利便が損なわれるなどの事態が生じかねず,かえって法の目的に反する結果となりかねないのである。さらに,仮に,夜間の乗務に係る乗務距離の最高限度に合わせる形で,昼間の乗務に係る乗務距離の最高限度を設定してしまうと,当該規制は,昼間に乗務する運転者に対するものとしては,無意味なものになってしまいかねない。そして,夜間の乗務については昼間より体調の管理が難しい上,より高度な注意力が求められるといった特性もあり,仮に夜間と昼間で別の規制を設けるとしても,夜間については,別の要素を考慮する必要が出てくることを踏まえると,仮に昼間よりも平均運行速度が速いとしても,本件算定方式に基づいて定められた本件公示が夜勤運転者にとって過度の制限となっているとはいえない。 b 可能実ハンドル時間の計算上控除されるべき休憩時間について原告らは,可能実ハンドル時間の計算において控除されるべき休憩時間は法定の休憩時間によるべきである旨主張する。 しかし,乗務距離の最高限度規制は,過労運転や最高速度違反等の危険運転を抑止するための規制であるから,乗務距離の最高限度の設定に当たっては,十分な休息をとった上で,安全な速度で走行して1乗務当たり最大限走行可能な距離を 限度規制は,過労運転や最高速度違反等の危険運転を抑止するための規制であるから,乗務距離の最高限度の設定に当たっては,十分な休息をとった上で,安全な速度で走行して1乗務当たり最大限走行可能な距離を算出することが適切である。そして,各事業者の就業規則上の休憩時間は,その業務内容の特性や事情が十分勘案されたものとみられるものであるから,過労運転や危険運転の防止のためには,そのような事情を捨象して定められた労働基準 - 39 -法上の最低基準である60分の休憩時間さえ確保されていればよいというのではなく,就業規則上の休憩時間の平均値を基に乗務距離の最高限度を設定していることは合理的であるというべきである。さらに,可能実ハンドル時間の算出に当たって,調査対象事業者の就業規則上の拘束時間(748.3分)よりも大幅に長い最大拘束時間(960分)を採用するに当たり,ここから控除する休憩時間として,就業規則上の休憩時間(125.7分)ではなく,各調査対象事業者の就業規則上の休憩時間を基に,これを最大拘束時間まで勤務した場合に補正する計算をしているが,拘束時間が長くなれば,必要となる休憩時間も長くなることからすれば,このような算定方法もまた合理的であるというべきである。 (イ) 本件算定方式を前提とした具体的な算定過程についても問題がないことa 実態調査の実施方法について原告らは,①調査対象期間,調査対象運行数は,いずれも非常に少数であること,②調査対象事業者の選定が適切であるのか確認,検証の方法もなく,不透明であること,③調査対象事業者が,設定される乗務距離の最高限度がより短距離になるよう調査車両を恣意的に選定している可能性があるなどとして,実態調査の方法等が不適切である旨主張する。 しかし,①調査対象期間や調査対象車両数について 定される乗務距離の最高限度がより短距離になるよう調査車両を恣意的に選定している可能性があるなどとして,実態調査の方法等が不適切である旨主張する。 しかし,①調査対象期間や調査対象車両数については,調査結果の集計や分析に要する時間,対象事業者の負担等からすれば,一定程度に限定する必要があり,本件の実態調査が不適切であるとはいえないし,②調査対象事業者については,地域の標準的事業者として従前より各種調査の対象としていた原価計算対象事業者や,特に日勤勤務運転者を多く雇用している初乗り運賃500円事業者を調査対象とした - 40 -ことには合理的な理由があり,適切であって,③このような調査対象事業者が,設定される乗務距離の最高限度がより短距離になるよう調査車両を恣意的に選定している可能性があることを的確に裏付ける証拠はないから,原告らの上記主張は失当である。 b 平均運行速度の計算過程で用いられる数値の根拠等について(a) 平均客扱い時間及び平均客待ち時間について原告らは,①平均客扱い時間及び平均客待ち時間が概算値に基づいていることは不当であること,②特に客扱い時間について10分,80分などという数値は正確性を著しく欠く旨を主張する。 しかし,実態調査の結果得られた「客扱い時間」及び「客待ち時間」は,処分行政庁が調査対象事業者にその意義を明らかにした上で調査を依頼し,事業者がこれを踏まえて回答したものであるから,概算値であっても妥当であるし,近畿運輸局長が平成14年1月31日付けで公示を定めるに当たって調査をした大阪市域交通圏の日勤勤務者の調査結果と比べても十分信用できる。さらに,「客扱い時間」について,原告らが他の回答と乖離していると指摘する回答を除外してもなお,近畿運輸局長において算出した走行可能距離と乖離する結果は 勤勤務者の調査結果と比べても十分信用できる。さらに,「客扱い時間」について,原告らが他の回答と乖離していると指摘する回答を除外してもなお,近畿運輸局長において算出した走行可能距離と乖離する結果は出ない。したがって,本件の実態調査は適切である。 (b) 道路交通センサスとの比較について原告らは,国土交通省が実施した平成22年度道路交通センサスにおける昼間12時間平均旅行速度の結果(大阪市内で毎時27. 6キロメートル,神戸市内で毎時36.9キロメートル,京都市内で毎時23.9キロメートル)をもとに,近畿運輸局長の平均運行速度の計算結果は不合理である旨主張する。 しかし,原告らが指摘する道路交通センサスの調査結果は,一般に指定速度が高速度となっている幹線道路のみの調査結果となって - 41 -おり,この結果,この数値は,実際の利用実態に反して高速自動車国道及び都市高速道路の走行速度が大きく影響することとなっている。したがって,タクシー事業の平均的な運行状況を反映した速度とはなっておらず,このような平成22年度道路交通センサスの結果と比較して,近畿運輸局長が乗務距離の最高限度の設定過程において用いた平均運行速度が不当に低いなどとは到底いえない。 c 休憩時間について原告らは,調査対象事業者の実態調査結果で就業規則等に定められた休憩時間を満たさないものが全体の34パーセントも存在し,就業規則等の休憩時間は実態を反映していないなどと主張する。 しかし,就業規則上の休憩時間は,安全管理のために遵守される必要のあるものであって,これを前提として乗務距離の最高限度を設定することが合理的であり,これを遵守しない例が実態調査の結果に含まれるからといって,そのような就業規則上の休憩時間が遵守されていない状態を是認して規制を設けるべきである して乗務距離の最高限度を設定することが合理的であり,これを遵守しない例が実態調査の結果に含まれるからといって,そのような就業規則上の休憩時間が遵守されていない状態を是認して規制を設けるべきであるなどというのは妥当でない。 (3) 乗務距離に高速自動車国道等を利用した距離を含む(ただし,1回の利用において連続して50キロメートル以上利用した場合には50キロメートルを乗務距離に算入する)としたことに裁量権の範囲の逸脱・濫用があるか。 (原告らの主張)近畿運輸局長は,高速自動車国道等の利用に係る乗務距離も原則として乗務距離に算入することにしつつも,例外として,高速自動車国道等を1回の利用で連続して50キロメートル以上利用した場合にあっては,当該利用の距離にかかわらず,50キロメートルを利用したものとみなして乗務距離に算入することとしている。しかし,高速自動車国道等の方が一般道(高速自 - 42 -動車国道等に該当しない道路をいう。以下同じ。)よりも事故率が少なく,運転者にとって疲労の蓄積が少ないことなどに照らすと,高速自動車国道等の乗務距離を乗務距離に算入すべきではないし(後掲ア),仮に乗務距離に算入するとしても高速自動車国道等の乗務距離の2分の1に限って算入するなどの措置が講じられるべきである(後掲イ)。被告は高速自動車国道等の利用が50キロメートルを超える場合は偶発的な輸送であることを理由に例外的な取扱いを定めた旨主張するが,かかる取扱いは合理的ではない(後掲ウ)。以下詳述する。 ア高速自動車国道等の利用距離を乗務距離に算入すべきではないこと一般道では,複雑な道路状況(信号,交差点,路上駐車,道路沿いの商店や駐車場等の施設,踏み切りなど)や歩行者,自転車が走行していることなどといった事故を引き起こす大きな要因がある べきではないこと一般道では,複雑な道路状況(信号,交差点,路上駐車,道路沿いの商店や駐車場等の施設,踏み切りなど)や歩行者,自転車が走行していることなどといった事故を引き起こす大きな要因があるのに対し,高速自動車国道等ではこれらの事情は存しないことから,高速自動車国道等の事故率は,一般道における事故率と比較して大幅に低く,全事故件数に占める割合は0.7パーセントに過ぎない。運転者にとっては,上記多数の事故要因が存する一般道を走行する場合の方が,より運行に注意を払う必要があり,同じ距離を走行する場合の疲労の蓄積度合いも,一般道の方が高速自動車国道等よりも高い。 このように,高速自動車国道等は,一般道と異なる特殊性があることから,一般道と異なり,乗務距離に算入しない取扱いをすることは,十分合理的である。 なお,関東運輸局長は,平成14年に関東運輸局管内の乗務距離規制を定めるにあたり,一般道のように交通が錯綜して交通事故を起こしやすい状況とは相違することを理由に,高速自動車国道等の乗務距離を除外しており,原告らの主張の正当性はこの点からも裏付けられる。 イ仮に乗務距離に算入するとしても高速自動車国道等の乗務距離の2分の - 43 -1に限って算入するなどの措置が講じられるべきこと仮に,高速自動車国道等の乗務距離を算入するとしても,高速自動車国道等の平均運行速度は一般道のそれの2倍以上あることから,高速自動車国道等の乗務距離を2分の1に換算するなどの措置を検討すべきである。 なお,バス・トラックなど他の運送事業において,営業の上限としての乗務距離の最高限度を定めた規制は存在しないが,貸切バスの交替要員配置の目安につき一日当たり670キロメートルと定めた交替運転者の配置指針においては,一般道の乗務距離は高速自動車国道等の乗務 しての乗務距離の最高限度を定めた規制は存在しないが,貸切バスの交替要員配置の目安につき一日当たり670キロメートルと定めた交替運転者の配置指針においては,一般道の乗務距離は高速自動車国道等の乗務距離の2倍として換算するものと定められている(甲45)。 ウ被告の主張に対する反論被告は,高速自動車国道等の利用が50キロメートルを超える場合は偶発的な輸送であることを理由に例外的な取扱いを定めた旨主張する。 しかし,被告が主張するように高速自動車国道等においても一般道と比較して疲労の蓄積度合いが少ないとはいえず,走行の質は同一であるという前提であれば,高速自動車国道等の利用が偶然に発生したとしても規制から除外すべき理由にはなり得ない。仮に臨時偶発的な長距離輸送を特別に除外するのであれば,高速自動車国道等の利用の有無にかかわらず,1運行当たりの臨時偶発的と認められる長距離分を除外することになるべきであって,近畿運輸局長の取扱いは一貫していない。 また,被告は,実態調査の結果,近畿運輸局管内においては実際にも高速自動車国道等が日常的に利用されていることが確認された旨主張する。 実態調査が2日間に限定されており不十分である点を措くとしても,大阪市域交通圏における高速自動車国道等の1運行当たりの利用確率は,隔日勤務3.8パーセント,日勤勤務3.4パーセントに過ぎず,神戸市域交通圏については隔日勤務0.9パーセント,日勤勤務0.8パーセントに過ぎないのであって,高速自動車国道等が日常的に利用されているという - 44 -評価自体妥当ではない。 (被告の主張)本件公示では,高速自動車国道等の利用に係る乗務距離も原則として乗務距離に算入することにしつつも,例外として,高速自動車国道等を1回の利用で連続して50キロメートル以上利用した場合 (被告の主張)本件公示では,高速自動車国道等の利用に係る乗務距離も原則として乗務距離に算入することにしつつも,例外として,高速自動車国道等を1回の利用で連続して50キロメートル以上利用した場合にあっては,当該利用の距離にかかわらず,50キロメートルを利用したものとみなして乗務距離に算入することとしたが,このような近畿運輸局長の判断は後掲アのとおり合理的であって裁量権の範囲の逸脱ないし濫用と評価される余地はない。なお,原告らの主張に対する反論は後掲イのとおりである。 ア高速自動車国道等の利用に係る乗務距離についての近畿運輸局長の判断は合理的であること(ア) 高速自動車国道等の利用に係る乗務距離も原則として乗務距離に算入すべきこと運輸規則22条は,運行管理の適正化を図ることを通じて過労運転や最高速度違反等の危険運転を防止して輸送の安全の確保を図るとともに旅客の利便の確保を図るものであるところ,過労運転や最高速度違反等の危険運転は高速自動車国道等の利用によっても生じ得るものである以上,高速自動車国道等の利用に係る乗務距離も,原則として,同条1項の乗務距離に算入すべきである。 (イ) 高速自動車国道等を利用した乗務を全て乗務距離の最高限度規制の対象とすると,利用者の利便を損なう可能性があるため,例外的に取り扱うことも適当であること(ア)のとおり,高速自動車国道等の利用に係る乗務距離は原則として乗務距離に算入すべきものであるが,高速自動車国道等の利用に係る乗務距離を一律に乗務距離に算入すると,往復で乗務距離の最高限度を超えることとなる場所への運送など,高速自動車国道等を利用する著し - 45 -い遠隔地への運送がおよそ不可能になり,利用者の利便を著しく損ない,制度として不合理なものとなる可能性が生じるから,このような事 なる場所への運送など,高速自動車国道等を利用する著し - 45 -い遠隔地への運送がおよそ不可能になり,利用者の利便を著しく損ない,制度として不合理なものとなる可能性が生じるから,このような事態を回避せざるを得ない。 一方で,偶発的にしか発生しない事情により結果的に長距離となってしまう運送の限度であれば,過労運転や最高速度違反等の危険運転の防止を拘束時間の最高限度規制や最高速度違反規制等の他の規制に委ね,乗務距離に算入しないこととしても,規制の趣旨が大きく損なわれるものではない。 そこで,上記のように制度として不合理なものとなる可能性があるような場面において,どのような規制内容とすれば輸送の安全の確保並びに利用者の利益保護及びその利便の増進という法の目的をよりよく実現できるのかという観点から,例外的に一定の限度で乗務距離に算入しないとの政策的判断をとることも適当であるといえる。 (ウ) 高速自動車国道等を利用した乗務の取扱いは地域の実情を踏まえて検討されるべきものであること乗務距離の最高限度の設定については地方運輸局長の広範な裁量に委ねられているところ,高速自動車国道等における乗務の取扱いについても,一定の基準が統一的に決まってくるようなものではなく,上記え(イ)のとおり法の目的をよりよく実現するという観点からの政策的判断が必要となることをも踏まえると,地方運輸局長の広範な裁量に委ねられていると解される。 そして,運輸規則22条2項が,乗務距離の最高限度は,当該地域における道路及び交通の状況並びに輸送の状態に応じて地方運輸局長が定めることとしていることからすると,高速自動車国道等の利用に係る乗務距離をどのように取り扱うかについても,地域の実情を踏まえて検討することが適当である。 - 46 -(エ) 近畿運輸局 が定めることとしていることからすると,高速自動車国道等の利用に係る乗務距離をどのように取り扱うかについても,地域の実情を踏まえて検討することが適当である。 - 46 -(エ) 近畿運輸局管内においては,高速自動車国道等を1回の利用において50キロメートル以上利用することが,極めてまれであることがうかがわれること近畿運輸局管内においては,大阪市域交通圏を中心として,一般道と高速自動車国道等が相まって道路網が整備され,高速自動車国道等が日常的に利用されやすくなっているところ,実態調査の結果,大阪市域交通圏における日勤勤務運転者は5日乗務するうち少なくとも2回は高速自動車国道等を利用しており,実際にも高速自動車国道等が日常的に利用されていることが確認された。そして,大阪市・京都市間,大阪市・神戸市間の高速自動車国道等の主なインターチェンジが,50キロメートル以内の距離にあるところ,大阪市域交通圏における1回当たりの高速自動車国道等の平均利用距離が,日勤勤務運転者で20.8キロメートルであり,1日1車当たりの高速自動車国道等の連続51キロメートル以上の利用回数が,日勤勤務運転者については0.0056回ないし0.024回であった。これらに加え,事業区域の境界から概ね50キロメートル以上離れた区域への運送を求められたときは,運送の引受けを拒絶することができるとされ,高速道路等有料道路を使用し,営業区域の境界から50キロメートル以上離れた区域への運送を求められ,運送の引受けをする場合には,運送約款の変更により,旅客から復路の有料道路の料金に相当する金額を求めることができるとされていることを併せ考えると,高速自動車国道等を1回の利用において50キロメートル以上利用することは極めてまれであることがうかがわれた。 そこで,高速自動車国 に相当する金額を求めることができるとされていることを併せ考えると,高速自動車国道等を1回の利用において50キロメートル以上利用することは極めてまれであることがうかがわれた。 そこで,高速自動車国道等を1回の利用で連続して50キロメートル以上利用した場合にあっては,当該利用の距離にかかわらず,50キロメートルを利用したものとみなして乗務距離に算入することとした。 (オ) 小括 - 47 -以上のとおり,高速自動車国道等を利用した乗務も原則として乗務距離に算入することとし,ただし,著しい遠隔地への運送を必要とする利用者の利便を著しく損なう事態を回避するため,規制の趣旨を損なわないよう,日常的には発生しない高速自動車国道等を1回の利用において連続して50キロメートル以上利用したという場合に限って,当該利用の距離にかかわらず50キロメートルを利用したものとみなして乗務距離に算入することとした近畿運輸局長の判断は,地域の実情に即した合理的なものであり,その内容も適正で,社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものとは到底いえない。 イ原告らの主張に対する反論原告らは,①高速自動車国道等の方が一般道よりも事故率が少なく,運転者にとっては,高速自動車国道等よりも,一般道を走行する場合の方が,より運行に注意を払う必要があり,疲労の蓄積度合いも高いから,高速自動車国道等を利用した乗務は全て運輸規則22条1項所定の乗務距離から除外すべきである,②偶発性を理由に高速自動車国道等の乗務を除外するのであれば,大阪市域交通圏では高速自動車国道等が日常的に利用されているとはいい難いので,高速自動車国道等における全ての乗務距離が除外されるべきであるし,また,ある一定の距離を超える高速自動車国道等の走行が偶発的であるとして乗務距離の算定から除外されると 用されているとはいい難いので,高速自動車国道等における全ての乗務距離が除外されるべきであるし,また,ある一定の距離を超える高速自動車国道等の走行が偶発的であるとして乗務距離の算定から除外されるというのであれば,高速自動車国道等における乗務距離の分布から偶発的といえる距離が検討されるべきであって,近畿運輸局長において検討の参考とした平均利用距離や運送の引受けを拒絶することができる距離等は関係がないなどと主張する。 しかし,①については,乗務距離の最高限度規制の趣旨は,1回の乗務に上限を設けることで,運転者が無理に長距離を走ろうとして過労運転や最高速度違反等の危険運転を発生させることを防止することにあるから, - 48 -高速自動車国道等を利用した走行を規制対象としなくとも規制の趣旨が図られているなどということはできないし,現に高速自動車国道等においては交通事故が相当程度発生しているのであって,その割合は市町村道よりも高く,死亡事故に至っては一般国道に次いで割合が高いなど,必ずしも高速自動車国道等は,一般道よりも事故率が少なくなっているなどとはいえない。そして,高速自動車国道等においては,一般的に高速度での運転を要求され,一旦事故が発生した場合に重大な結果を生じる可能性が高く,それ自体としての危険は著しく増大するのであって,実際に高速自動車国道及び指定自動車専用道路における致死率は交通事故全体の致死率の1. 7倍と高いこと等に照らせば,必ずしも高速自動車国道等が一般道に比べて安全であるとか,高速自動車国道等での運転では一般道に比べて疲労しにくいなどとはいえない。 また,②についても,そもそも高速自動車国道等の取扱いについては,全ての走行が規制対象として乗務距離に算入されるべきであるところ,法の目的のよりよい実現という観点からの にくいなどとはいえない。 また,②についても,そもそも高速自動車国道等の取扱いについては,全ての走行が規制対象として乗務距離に算入されるべきであるところ,法の目的のよりよい実現という観点からの政策的判断によって例外を認めるというのであるから,規制の対象とすることが不合理な事情がある場合に初めて例外的取扱いの対象となるのである。そして,大阪市域交通圏を中心とする近畿運輸局管内においては,高速自動車国道等が日常的に使用されている実態があり,原告らも自ら高速自動車国道等を日常的に利用していると主張しているところ,このような実態からすれば,むしろ,一律に高速自動車国道等を利用した乗務を規制の対象外とすると,運転者の乗務の相当程度が規制対象から除外されることとなるのであって,乗務距離の最高限度規制の効果は著しく阻害され,過労運転や危険運転の防止の観点からは,看過できない事態を招くおそれが強いといえ,原告らの主張は失当である。 4 争点4(乙事件固有の争点)について - 49 -(1) 争点4(1)(本件加重規定を適用してされた本件使用停止処分の適法性)について(被告の主張)ア法40条に基づく行政処分は近畿運輸局長の広範な裁量に委ねられていること法40条の規定内容からすれば,法は,輸送の安全を確保し,道路運送の利用者の利益の保護及びその利便の増進を図るとともに,道路運送の総合的な発達を図るべく,道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものにするため(法1条参照),法40条に基づく行政処分の適用について,行政庁の専門技術的な知識・経験を基礎とする公益上の判断を尊重し,各個別の事案に応じた柔軟な運用を行わせる趣旨であり,その具体的な運用は国土交通大臣の委任を受けた近畿運輸局長の広範な裁量に委ねられている。 イ特定地域におい 験を基礎とする公益上の判断を尊重し,各個別の事案に応じた柔軟な運用を行わせる趣旨であり,その具体的な運用は国土交通大臣の委任を受けた近畿運輸局長の広範な裁量に委ねられている。 イ特定地域において,違反した一般乗用旅客自動車運送事業者が増車していた場合,輸送の安全確保の観点から,他の事業者に比べ一層厳格に対処する必要があること供給過剰の状態にある特定地域においては,タクシー運転者の労働条件の悪化や違法・不適切な事業運営の横行などの問題が深刻化しており,タクシー運転者の労働条件の悪化や違法・不適切な事業運営の横行を防止し,ひいては輸送の安全を確保し,道路運送の利用者の利益を保護するため,一般乗用旅客自動車運送事業者の労務管理や安全管理等に係る一定の違反については厳格に対処する必要がある。そこで,近畿運輸局長は,基本方針の策定に伴って,上記違反に係る営業所が特定地域内の営業所である場合には,他の地域における上記違反の基準日車等と比較して,基準日車等を加重することとした。 さらに,供給過剰地域において,増車や新規参入を行った一般乗用旅客自動車運送事業者は,類型的に輸送の安全や利用者の利便を確保できず, - 50 -法令違反を犯しやすい傾向がうかがわれるところである。そこで,供給過剰の状態にある特定地域においてあえて増車を行った一般乗用旅客自動車運送事業者が上記問題を現実化させないようにするため,このような一般乗用旅客自動車運送事業者の労務管理や安全管理等に係る一定の違反については,より一層厳格に対処することとし,基準日車等を更に加重することとしたものである。 ウ増車をした事業者が法令違反を犯しやすいという蓋然性があること急激な増車を実施したタクシー事業者には,全事業者平均よりも行政処分件数が多い傾向が認められる。また,平 こととしたものである。 ウ増車をした事業者が法令違反を犯しやすいという蓋然性があること急激な増車を実施したタクシー事業者には,全事業者平均よりも行政処分件数が多い傾向が認められる。また,平成18年度ないし平成20年度の全国の営業地域における統計について実態調査を行った結果をみても,①新規に参入したタクシー事業者や増車を行ったタクシー事業者については,他のタクシー事業者と比較して,道路交通法108条の34に基づく通報件数のうち最高速度違反の件数が多く,輸送の安全性の低下を招く傾向があることが認められる。また,②新規に参入したタクシー事業者及び増車を行ったタクシー事業者は,苦情(乗車拒否,接客不良・事業者の苦情対応不適切,運賃・料金関係,迂回運転等の旅客の利便確保に関するものについて)件数についても,その他のタクシー事業者より多く,他のタクシー事業者に比べて,乗車拒否等によって利用者利便の低下を招く傾向が認められる。さらに,③新規に参入したタクシー事業者や増車を行ったタクシー事業者は,タクシー業務適正化特別措置法34条1項1号に基づく指導を受けた件数についても,その他のタクシー事業者より多く,法令違反に及ぶ蓋然性が高いことが認められる。 エ原告Cの主張に対する反論原告Cは,本件加重規定やこれに基づきなされる処分につき,①本件加重規定自体が行政指導に該当することを前提に,行政手続法32条2項に違反する,②行政指導に従わなかった者を差別し平等原則に違反する,③ - 51 -本来の目的とは関係のないタクシーの供給過剰状況を解消するという目的に基づいて行政処分の内容や程度を決定する他事考慮に該当するなどとして,違法であると主張する。 しかし,行政手続法12条1項所定の処分基準として定められている処分基準公示の一部である本件 いう目的に基づいて行政処分の内容や程度を決定する他事考慮に該当するなどとして,違法であると主張する。 しかし,行政手続法12条1項所定の処分基準として定められている処分基準公示の一部である本件加重規定が行政指導に当たるとはいえない。 また,特定地域に指定された地域内の営業所における運輸規則22条1項違反について,基準日車等を3.5倍するか否かは,行政指導を受けたか否かや行政指導に従ったか否かを問題にしているわけではない。したがって,特定地域に指定された地域内の営業所における乗務距離の最高限度違反について,基準日車等が加重されることとなっていることは,事業用自動車を減車させるという行政指導に従わないことに起因して,制裁的な意図をもって不利益を与えるわけでもなければ,行政指導に従わなかった者を狙って,行政指導に従った者に対するそれと比べて合理的理由なく加重するものでもないのであるから,行政手続法32条2項に反するものではない(上記①関係)。 また,現に増車をした事業者が法令違反を犯す蓋然性が認められ,これに対して,労務管理や安全管理,利用者サービスに係る一定の規制の遵守を強く要請する必要性が高いことに照らすと,供給過剰状態にある地域かどうか,増車をした事業者かどうかということに基づいて,このような規制に対する違反行為について,処分を加重することには合理的な理由がある。したがって,本件加重規定やそれに基づく処分は,平等原則に違反しているといえない(上記②関係)。 そして,上記のとおり,本件加重規定はタクシーの減車を求めることや増車を間接的に規制することを目的とするものでない。また,本件加重規定の目的と乗務距離の最高限度規制の目的は同じというべきであり,供給過剰の状態の中において,輸送の安全を確保し,道路運送の利用者の利益 - 規制することを目的とするものでない。また,本件加重規定の目的と乗務距離の最高限度規制の目的は同じというべきであり,供給過剰の状態の中において,輸送の安全を確保し,道路運送の利用者の利益 - 52 -を保護するために最も重視すべき諸般の事情の一つを考慮したことにほかならず,本来考慮すべきでない事情を考慮したとか,本来過大に評価すべきでないことを過大に評価したなどといえないことは明らかである(上記③関係)。 (原告Cの主張)本件違反事実は個別基準公示の定める原則的な基準に基づけば20日車の自動車等の使用停止となるべきところ,近畿運輸局長は,原告Cが特定地域において監査時車両数を基準車両数よりも増加させたことを理由として,本件加重規定に基づき70日車に加重して本件使用停止処分をした。しかし,本件加重規定は以下のとおり違法であるから,本件使用停止処分も違法である。 ア本件加重規定は事業用自動車を減車させるという行政指導に従わなかったことを理由とする不利益な取扱いであるから,行政手続法32条2項に違反すること行政指導とは,行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導,勧告,助言その他の行為であって処分に該当しないものをいい(行政手続法2条6号),その行う場面,方法も特定されておらず,様々な場面において様々な形で実施されているものである。そして,本件加重規定は,近畿運輸局長がその所掌事務の範囲内において,タクシーの供給過剰状況の解消という行政目的を実現するため,特定の地域において事業を行うタクシー事業者という特定の者にタクシーの減車を求めるものであって,それ自体が行政指導に該当する。そして,それに従わないことを理由として不利益を与えることを定める同規定や 定の地域において事業を行うタクシー事業者という特定の者にタクシーの減車を求めるものであって,それ自体が行政指導に該当する。そして,それに従わないことを理由として不利益を与えることを定める同規定や同規定に基づいてなされる処分が行政手続法32条2項に違反し違法なものであることは明らかである。 イ本件加重規定は平等原則に違反すること - 53 -仮に本件加重規定が行政手続法における行政指導に該当しないとしても,少なくとも,本件加重規定は,「基準車両数を特定地域に指定された後に増加させた一般乗用旅客自動車運送事業者」に対し,「基準車両数を特定地域に指定された後に増加させていない一般乗用旅客自動車運送事業者」と比べて合理的理由なく処分を加重することを定めているものであり,これが平等原則に抵触するものであることは明白である。 ウ本件加重規定は法の目的に反し,他事考慮に該当すること乗務距離の最高限度は過労運転や最高速度違反が生じやすい状況となることを防止するために規定されている。したがって,これらの義務違反を理由に法40条に基づいて行う行政処分は,これらの目的に即したものでなければならず,他の目的や動機に基づいて行うことは許されないのであって,本来考慮に容れるべきではない他の目的や動機を考慮に容れてこれらの義務違反を理由とする同条に基づく行政処分の内容や程度を決定した場合は,それは当然に裁量権の濫用であり違法となる。 本件加重規定がタクシーの供給過剰状況を解消するために定められたものであることは明白であるが,乗務距離の最高限度規制がタクシーの供給過剰状況の解消を目的として定められた義務や規制でないことは上述のとおりである。したがって,タクシーの供給過剰状況の解消を目的とし,そのような目的を達成するために,乗務距離の最高限度規制違 ーの供給過剰状況の解消を目的として定められた義務や規制でないことは上述のとおりである。したがって,タクシーの供給過剰状況の解消を目的とし,そのような目的を達成するために,乗務距離の最高限度規制違反について重い行政処分を下すべきことを定める本件加重規定は,まさに法の目的に反し他事考慮に基づいてなされる行政裁量の行使を許容するものであって違法であることは論を待たず,また,そのような本件加重規定を適用してなされる行政処分もまた,裁量権の濫用であり違法であることは明白である。 (2) 争点4(2)(本件使用停止処分に係る理由付記は行政手続法14条1項に違反するか。)について(被告の主張) - 54 -ア不利益処分の理由の提示の程度行政手続法14条1項本文が,不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは,名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。 そして,同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは,上記のような同項本文の趣旨に照らし,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである。なお,行政手続法14条1項本文の趣旨に鑑みると,処分理由は,その記載から名宛人の知り得るところとなるものであれば足りるというべきであり,第三者の知り得るところとなるものでなければならないと解することはできない。 イ本件使用停止処分において必要とされる理由の提示の程度について(ア) これを本件につ れば足りるというべきであり,第三者の知り得るところとなるものでなければならないと解することはできない。 イ本件使用停止処分において必要とされる理由の提示の程度について(ア) これを本件についてみると,一般旅客自動車運送事業者に対する法40条に基づく行政処分については,処分内容の決定に関し,本件各処分基準が定められているところ,これらが公示されていることなどに鑑みると,本件使用停止処分をするに際して示されるべき理由としては,処分の原因となる事実関係についてどのような根拠法条や処分基準を適用したかを,処分の名宛人において,本件使用停止処分に係る命令書(以下「本件命令書」という。)の記載から了知し得る程度に記載されていれば足り,行政手続法14条の趣旨に反するということにはならないものと解される。 そして,本件命令書では,処分の原因となる事実関係,処分の根拠法条,適用する処分基準,処分日車数の算出方法,処分車両数及び処分期 - 55 -間の算出方法がそれぞれ明示されているから,処分の名宛人である原告Cにおいて,本件命令書の記載自体から,本件使用停止処分の原因となる事実関係についてどのような根拠法条や処分基準を適用した結果,本件使用停止処分が選択されたのかを了知し得ることは明らかであって,本件使用停止処分の理由の提示は,行政手続法14条1項本文の要求する理由提示として十分であるというべきである。 (イ) この点,原告Cは,誰によって,いつ,どのような走行で問題となる行為が生じたのかが記載されていないことを指摘する。しかし,法40条に基づく行政処分の性質から,当該処分をするに当たっては,迅速な処分の要請とともに,事業者の運行管理が全体として十分なものであったかを確認するために,一定量の事実関係の確認を行うことが不可避的に必要と づく行政処分の性質から,当該処分をするに当たっては,迅速な処分の要請とともに,事業者の運行管理が全体として十分なものであったかを確認するために,一定量の事実関係の確認を行うことが不可避的に必要となるが,かかる一定以上の量となる記録を精査した上で事実関係を認定し,迅速に処分を行う上では,一定程度効率的な手続によって行う必要がある。しかも,運輸規則及びこれを受けて定められた本件各処分基準においては,違反事実と定められている個々の項目は,各運転者に係る点呼違反や乗務記録の記録保存の有無等といったそれ自体は比較的単純な事実関係である上,詳細な処分基準が定められていて,あらかじめ公表されており,これらの当てはめにより機械的に処分内容が定まるという関係にある。それに加えて,処分の性質上,不利益処分の原因となる事実は,主として,事業者自身の営業所において保管中の資料や,事業者の陳述を基に確認せざるを得ない場合がほとんどであるところ,不利益処分の名宛人たる事業者は,上記に係る記録関係等を自ら作成し保存する法的義務を負っているのであるから,これら自ら保管する資料等を確認すれば,上記違反に係るような単純な個別事実については,いかなる資料に基づき,いかなる違反事実が指摘されているかを容易に確認できるはずである。 - 56 -そうすると,法40条に基づく処分の性質上,一定量の件数が問題となる違反行為の個々の内容や違反者の特定等の詳細な事実関係やその根拠資料を理由提示に明記しなくとも,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,名宛人の不服申立ての便宜を図るという行政手続法14条の趣旨を満たしているというべきである。 (ウ) そして,現に,原告Cは,①弁明通知書交付以前から,本件使用停止処分の原因となる事実関係に言及し,弁明通 不服申立ての便宜を図るという行政手続法14条の趣旨を満たしているというべきである。 (ウ) そして,現に,原告Cは,①弁明通知書交付以前から,本件使用停止処分の原因となる事実関係に言及し,弁明通知書交付以後直ちに,本件使用停止処分の差止めを求める訴えを提起し,②その後本件使用停止処分を受けるまでの間に,本件使用停止処分の原因となる事実関係により詳細に言及し,③本件使用停止処分後,直ちに本件使用停止処分の効力の停止を求める申立てをする一方,本件使用停止処分の原因となる事実関係を了知していること自体は否定していないのであり,このような事実経過に照らすと,原告Cが,本件命令書の記載から,いかなる事実関係に基づき本件使用停止処分がなされたのかを詳細にわたって正確に了知していたことは明らかであり,このことは,本件命令書の記載が,処分の名宛人である原告Cにおいて,処分の原因となる事実関係を了知し得る程度のものであることをうかがわせるものである。 したがって,このような点からも,本件使用停止処分における理由提示は,行政手続法14条1項本文に適合する適法なものであるといえる。 (エ) 小括以上によれば,本件使用停止処分における理由提示は行政手続法14条1項本文に適合する。 (原告Cの主張)行政手続法14条1項本文が,不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは,名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎 - 57 -重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。このように,理由付記は,名宛人に対して処分の理由を示すことにとどまらず,処分の公正さを担保するものであるか ともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。このように,理由付記は,名宛人に対して処分の理由を示すことにとどまらず,処分の公正さを担保するものであるから,名宛人がその理由を推知できるか否かにかかわらず,第三者においてもその記載自体からその処分理由が明らかとなるものでなければならない。 本件使用停止処分の理由の提示において,違反事実として「乗務距離の最高限度が確実に遵守されていなかった。一部の運転者について,乗務距離の最高限度が確実に遵守されていなかった。【調査期間,平成22年8月21日~9月20日】,【未遵守率32.17%(230回中74回)】」と記載されており,また,適用条項として法27条1項及び運輸規則22条1項が記載されている。しかし,本件使用停止処分の記載からは,誰によって,いつ,どのような走行で問題となる行為が生じたのかといった,理由付記の基礎となる事実の特定が一切なされていないから,第三者において,違反行為の具体的内容を推知することができない。 したがって,本件使用停止処分に係る理由の提示は,名宛人による不服申立ての便宜及び行政庁の判断の恣意抑制という行政手続法14条1項本文の趣旨に明らかに背くものであり,同項の要件を欠くといわざるを得ないから,本件使用停止処分は違法である。 第5 当裁判所の判断 1 争点1(甲事件の本案前の争点)について(1) 争点1(1)(本件公示の取消請求関係―本件公示が処分性を有するか。)についてア立法行為としての性質を有する行為の処分性抗告訴訟の対象となる行政処分とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為により,直接国民の権利義務を形成 - 58 -し,又はその範囲を確定することが法律上認められるものをいう。 訴訟の対象となる行政処分とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為により,直接国民の権利義務を形成 - 58 -し,又はその範囲を確定することが法律上認められるものをいう。 ところで,立法行為としての性質を有する行為は,一般的には,不特定多数の者を名宛人とする一般的抽象的な法規範の定立であって,それに基づく行政庁の具体的な行為によって初めて国民の権利義務に具体的な変動が生じるものであるから,原則として,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められるものには当たらないというべきである。もっとも,立法行為としての性質を有する行為が,行政庁の処分と実質的に同視し得るものであって,当該行為の適法性を抗告訴訟において争い得るとすることに合理性があるような場合には,当該行為は直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められるものとして行政処分に当たると解するのが相当である。そして,当該行為が行政庁の処分と実質的に同視し得るか否かは,当該行為によって発生する法的効果とその直接性,当該行為によって影響を受ける者が特定されているか否かなどの観点から判断すべきである。 イ本件公示の行政処分性について法27条1項は,一般旅客自動車運送事業者は,輸送の安全及び旅客の利便の確保のために必要な事項として国土交通省令で定めるものを遵守しなければならない旨を定め,これを受けた国土交通省令である運輸規則22条1項は「交通の状況を考慮して地方運輸局長が指定する地域内に営業所を有する一般乗用旅客自動車運送事業者は,次項の規定により地方運輸局長が定める乗務距離の最高限度を超えて当該営業所に属する運転者を事業用自動車に乗務させてはならない」と,同条2項は「前項の乗務距離の最高限度は,当該地域 動車運送事業者は,次項の規定により地方運輸局長が定める乗務距離の最高限度を超えて当該営業所に属する運転者を事業用自動車に乗務させてはならない」と,同条2項は「前項の乗務距離の最高限度は,当該地域における道路及び交通の状況並びに輸送の状態に応じ,当該営業所に属する事業用自動車の運行の安全を阻害することのないよう,地方運輸局長が定める - 59 -ものとする」と,同条3項は「地方運輸局長は,第1項の地域の指定をし,及び前項の乗務距離の最高限度を定めたときは,遅滞なく,その旨を公示しなければならない」と,それぞれ定めている。さらに,近畿運輸局長は,かかる運輸規則22条の定めを受けて,同条1項の地域を指定し,同条2項の乗務距離の最高限度を定めるものとして,本件公示を公示した。このような本件公示は運輸規則22条の内容を補充するためのものであるといえるから,立法行為としての性質を有するものと解される。したがって,本件公示は,行政庁の処分と実質的に同視し得るものであって,当該行為の適法性を取消訴訟において争い得るとすることに合理性があるような場合に該当しない限り,行政処分性を有しないものというべきである。 そこで,本件公示が行政庁の処分と実質的に同視し得るかについて検討するに,近畿運輸局長のした本件公示によって,本件指定地域内に営業所を有する一般乗用旅客自動車運送事業者は,平成22年1月1日以降,1乗務当たり,隔日勤務運転者について350キロメートルを,日勤勤務運転者について250キロメートルを,それぞれ超えて乗務させることができないという義務を課せられたものといえるが(前記関係法令等の定め(1)),かかる義務を負うのは平成22年1月1日時点で本件指定地域内に営業所を有する一般乗用旅客自動車運送事業者だけではなく,その後に本件指定地域 を課せられたものといえるが(前記関係法令等の定め(1)),かかる義務を負うのは平成22年1月1日時点で本件指定地域内に営業所を有する一般乗用旅客自動車運送事業者だけではなく,その後に本件指定地域内に営業所を設けて一般乗用旅客自動車運送事業を営む者も負うのであるから,本件公示は限られた特定の者を対象とするものということはできない。したがって,本件公示が行政庁の処分と実質的に同視し得ると評価することはできない。 また,仮に本件公示が行政処分であるとすれば,出訴期間との関係で,将来本件指定地域内に営業所を設けて一般乗用旅客自動車運送事 - 60 -業を営む者が適法に取消訴訟を提起することができなくなるなどの弊害が生じ得るのであって,本件公示の適法性を抗告訴訟において争い得るとすることに合理性があるとも認め難い。さらに,後掲のとおり,一般乗用旅客自動車運送事業者は,本件公示の定める乗務距離を超えて運転者に乗務させることができる地位の確認を求める当事者訴訟を適法に提起し得ることに照らせば,本件公示に行政処分性を認めなくとも,本件公示の違法性を主張する一般乗用旅客自動車運送事業者の救済に欠けるところはない。 したがって,本件公示は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるということはできないから,その余の点を論ずるまでもなく,本件公示が行政処分であることを前提としてその取消しを求める原告らの甲事件の主位的請求に係る訴えは,不適法として却下を免れない。 (2) 争点1(2)(各不利益処分の差止め請求関係)についてア争点1(2)ア(処分の蓋然性があるか)について(ア) 行政事件訴訟法3条7項によれば,処分の差止めの訴えは行政庁により一定の処分がされようとしている場合に提起が認められるものであるところ,処分の差止めの訴えが行政庁の第一次 あるか)について(ア) 行政事件訴訟法3条7項によれば,処分の差止めの訴えは行政庁により一定の処分がされようとしている場合に提起が認められるものであるところ,処分の差止めの訴えが行政庁の第一次判断権を奪う重大な効果を有することに鑑みれば,同項にいう「一定の処分(中略)がされようとしている場合」に該当するには,一定の処分がされることについて,主観的なおそれがあるだけでは足りず,客観的にみて相当程度の蓋然性があることが必要であると解される。 (イ) 法40条に基づく不利益処分(ただし,営業の取消処分を除く。)は,近畿運輸局の担当職員が監査等により違反事実の存在を認識するとともに事業者に対しこれを指摘した後に,近畿運輸局長が当該事業者に対し,弁明の機会を付与した上で(行政手続法13条1項),行うものと推認できるところ,近畿運輸局の担当職員が - 61 -事業者に対し違反事実を指摘した段階で当該事業者が不利益処分に付される可能性が格段に増大するとみることができるから,このような事業者に対する違反事実の指摘があった段階で初めて客観的にみて不利益処分の蓋然性が認められるものと解するのが相当である。 なお,被告は,近畿運輸局長は本件訴訟と同種他事件の原告であるF株式会社について平成24年1月13日に行った監査の際に乗務距離の最高限度が確実に遵守されていなかった旨を同社に指摘したものの,同社に対してかかる不遵守を理由とする不利益処分をしなかった(乙90,91)旨を主張する。しかし,これは訴訟係属中ということもあって不利益処分等をあえて控えたに過ぎないとみる余地もあり得るところであり,弁明の機会の付与手続に至らない限り処分の蓋然性がないと判断することは相当ではない。そもそも,行政事件訴訟法3条7項の処分の差止めの訴えの要件は処分の蓋然 ぎないとみる余地もあり得るところであり,弁明の機会の付与手続に至らない限り処分の蓋然性がないと判断することは相当ではない。そもそも,行政事件訴訟法3条7項の処分の差止めの訴えの要件は処分の蓋然性にとどまり,処分の必然性ではないのであって,乗務距離の最高限度が確実に遵守されていなかった旨を指摘した後に行政処分をしなかった例があって,上記指摘がされれば必ず処分がされるとまではいえないとしても,上記指摘後に当該事業者が不利益処分に付される可能性が格段に増大することには何ら変わりはないとみることができる以上,被告の上記主張を容れることはできない。 (ウ) 近畿運輸局長は,本件口頭弁論終結時において,原告Bに対しては,監査等において乗務距離の最高限度規制に違反した旨の具体的事実を何ら指摘しておらず,原告Cに対しても,本件使用停止処分に係る本件違反事実のほかには,監査等において乗務距離の最高限度規制に違反した旨の具体的事実を何ら指摘していない。したがって,同原告らに対し,同違反を理由とする不利益処分がされる客観的な相当程度の蓋然性があると認めることはできず,同原告ら - 62 -の甲事件の請求のうち各不利益処分の差止めを求める部分については,不適法であって却下を免れない。 他方,原告Aについては,近畿運輸局の担当職員が,平成25年1月10日に行われた同原告に対する監査の際に,乗務距離の最高限度規制違反の事実を指摘している(乙89)。そして,後掲のとおり本件各処分基準を当てはめた場合の予想される不利益処分は最大でも120日車の自動車等の使用停止処分であると認められることに照らせば,同原告に対し,上記指摘事実に基づき自動車等の使用停止処分がされる客観的な相当程度の蓋然性があると認められるが,事業停止処分又は許可取消処分がされる客観的な 止処分であると認められることに照らせば,同原告に対し,上記指摘事実に基づき自動車等の使用停止処分がされる客観的な相当程度の蓋然性があると認められるが,事業停止処分又は許可取消処分がされる客観的な相当程度の蓋然性があるとは認められない。 イ争点1(2)イ(重大な損害を生ずるおそれがあるか)について(ア) 行政事件訴訟法37条の4第1項の「重大な損害を生ずるおそれがある」との要件の趣旨行政事件訴訟法37条の4第1項にいう「重大な損害を生ずるおそれがある」か否かについては,「損害の回復の困難の程度」を考慮し,「損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質」をも勘案すべきとされている(同条2項)。ここにいう損害の回復の困難の程度の判断に当たっては,原状回復が可能か否か,及び事後的な金銭賠償が実効性を有するか否かという観点から検討すべきであるところ,処分等によって生ずる損害が財産的利益に関するものである場合には,基本的には事後による金銭賠償による填補が可能であるから,そのような場合においても「重大な損害を生ずるおそれがある」といえるのは,事後の金銭賠償によっては損害の回復が困難であるか,又は,そのような救済をもって満足させることが社会通念上相当でないと認められるようなときに限られるというべきである。 - 63 -(イ) 運輸規則22条1項違反により原告Aにされる可能性のある処分の内容原告Aが運輸規則22条1項に違反した場合は,初違反が適用されるため,仮にその不遵守率が50パーセント以上の場合には個別基準公示によれば,その本来的な処分は30日車の自動車等の使用停止処分となる。本件加重規定の適法性は措いて,仮に本件加重規定の適用があるとした場合,処分時の車両数等によっては最大4倍に加重される可能性があり,これによれば120 処分は30日車の自動車等の使用停止処分となる。本件加重規定の適法性は措いて,仮に本件加重規定の適用があるとした場合,処分時の車両数等によっては最大4倍に加重される可能性があり,これによれば120日車の自動車等の使用停止処分がされる可能性がある。 (ウ) 原告Aに対し自動車等の使用停止処分がされることにより,同原告に重大な損害を生ずるおそれがあるかについて原告Aに対し最大120日車の自動車等の使用停止処分がされた場合,同原告の運送収入がその分減少することは当然に予想されるところであるが,その運送収入の減少によって,同原告の事業基盤に深刻な影響を及ぼすおそれがあることを認めるに足りる証拠はないから,同自動車等の使用停止処分につき金銭賠償によることが不相当とはいえない。 原告Aは,上記自動車等の使用停止処分により,利用者からの配車依頼に対して円滑に対応できなくなり,利用者からの信頼を失う旨を主張する。しかし,同自動車等の使用停止処分によって,使用停止を余儀なくされるのは当該営業所の車両数の20パーセントにとどまり(乙3),配車依頼に対する対応が阻害されるといい得るのも一時的な期間に過ぎないと推認されることに照らすと,今後同原告を利用しないというような利用者が多数生じるなどの信用失墜に至るとまでは認められず,仮に利用者の信頼が損なわれることがあったとしても,それについて金銭賠償によることが社会通念上不 - 64 -相当であるとまではいい難い。 また,原告Aは,自動車等の使用停止処分の公表により同原告の名誉や信用が失墜すると主張する。確かに,近畿運輸局長は,自動車等の使用停止処分以上の行政処分を受けた事業者について,事業者名や違反事実の内容をホームページ上で3年間公表しており(甲19),自動車等の使用停止処分の公表によって同 確かに,近畿運輸局長は,自動車等の使用停止処分以上の行政処分を受けた事業者について,事業者名や違反事実の内容をホームページ上で3年間公表しており(甲19),自動車等の使用停止処分の公表によって同原告の名誉や信用が低下するおそれがあることは否定し難い。しかし,当該処分後の取消訴訟等において同原告の請求が認容され,当該処分の違法性が明らかになれば,同原告の名誉や信用も相当程度回復することが予想され,それでもなお回復しない部分については金銭賠償によることが十分に可能であり,また金銭賠償によることが社会通念上不相当であるとまではいえない。 さらに,原告Aは,今後処分が繰り返されれば,事業停止処分や許可取消処分がされる蓋然性がある旨を主張する。しかし,今後同様の乗務距離の最高限度違反の指摘がされる可能性が存するとしても,その未遵守率がどの程度の割合となるのかは将来の全く不確かな事柄というほかなく,更なる監査や告知聴聞手続を経た上で,事業停止処分や許可取消処分がなされる相当の蓋然性があるとは到底いえない。そもそも,同原告の主張する事業停止処分や許可取消処分は,自動車等の使用停止処分後に近畿運輸局長が行うことがあり得る別個の処分であって,これらによる損害が甚大であるとしても,これらの処分を対象とした抗告訴訟等において対処すべきものであり,これらの処分によって生ずる損害をもって上記自動車等の使用停止処分により生ずる損害ということはできない。 したがって,本件において,将来,事業停止処分や許可取消処分がされた場合の原告Aの損害をもって「重大な損害」要件を満たす - 65 -とする原告Aの主張には理由がない。 このほか,原告Aは,時間をかけて教育をした運転者が退職ないし転職をすると重大な損害が発生すると主張する。しかし,予想される自動車 件を満たす - 65 -とする原告Aの主張には理由がない。 このほか,原告Aは,時間をかけて教育をした運転者が退職ないし転職をすると重大な損害が発生すると主張する。しかし,予想される自動車等の使用停止処分により運転者の待遇の悪化等が生じるものとはいい難いから,同自動車等の使用停止処分によって同原告のタクシー運転者の相当数が退職し,あるいは転職するなどといった事態に陥るとは認められない。同原告は,本件公示の定める乗務距離の最高限度規制に従った場合の損害をも主張するが,これは上記自動車等の使用停止処分によって生じる損害ではなく,また,この点を措いても,金銭賠償によって回復をさせることが不相当というような重大な損害ということはできない。 (エ) 小括したがって,運輸規則22条1項に違反したことを理由になされる自動車等の使用停止処分により原告Aに重大な損害が生ずるおそれがあると認めることはできず,同原告による甲事件の請求のうち各不利益処分の差止めを求める部分は,不適法であって却下を免れない。 (3) 争点1(3)(確認請求関係―確認の利益があるか。)について近畿運輸局長は運輸規則22条に基づき本件公示を定めており,被告は運輸規則22条及び本件公示が憲法に適合し,有効であることを前提として,本件指定地域内に営業所を有する原告らは運輸規則22条1項及び本件公示に基づき日勤勤務運転者に1乗務当たり250キロメートルを超えて乗車させてはならないとの義務がある旨主張するのに対し,原告らは,運輸規則22条は憲法に違反し,あるいは法の委任の範囲を逸脱し無効であり,また,本件公示も近畿運輸局長の裁量権の範囲の逸脱ないし濫用により違法であるとして,原告らは運輸規則22条1項及 - 66 -び本件公示に基づき日勤勤務運転者に1乗務当たり を逸脱し無効であり,また,本件公示も近畿運輸局長の裁量権の範囲の逸脱ないし濫用により違法であるとして,原告らは運輸規則22条1項及 - 66 -び本件公示に基づき日勤勤務運転者に1乗務当たり250キロメートルを超えて乗車させてはならないとの義務を負わない旨主張しており,原告らと被告との間には現実的かつ実際の紛争が生じているものと認められる。 そして,運輸規則22条1項及び本件公示によって,本件指定地域内に営業所を有する一般乗用旅客自動車運送事業者である原告らは,その運転者に対し本件公示で定められた限度内でしか乗務をさせられなくなっているのであって,運輸規則22条1項及び本件公示は営業の自由に係る事業者の権利の制限に当たるということができ,その権利の性質に鑑みると,原告らが本件公示にかかわらず,日勤勤務運転者につき1乗務当たり250キロメートルを超えて乗務をさせることができる地位の確認を求める本件確認の訴えについては,前記1のとおり本件公示の行政処分性が認められない以上,本件公示をめぐる法的な紛争の解決のために有効かつ適切な手段として,確認の利益を肯定すべきである(なお,運輸規則22条1項及び本件公示の適法性・憲法適合性を争うためには,本件公示に違反する態様で事業活動を行い,各不利益処分を受けた上で,それらの行政処分の抗告訴訟において上記適法性・憲法適合性を争点とすることによっても可能であるが,そのような方法は営業の自由に係る事業者の法的利益の救済手続の在り方として迂遠であるといわざるを得ず,本件公示の適法性・憲法適合性につき,上記のような行政処分を経なければ裁判上争うことができないとするのは相当ではないと解される。)。 被告は,昭和47年最判及び平成元年最判を引用して,将来,不利益処分を受けてから,これに対する訴訟の中 のような行政処分を経なければ裁判上争うことができないとするのは相当ではないと解される。)。 被告は,昭和47年最判及び平成元年最判を引用して,将来,不利益処分を受けてから,これに対する訴訟の中で事後的に争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがあるなど,事前の救済を認めないことを著しく不相当とする特段の事情がある場合でなければ,確認訴訟は不適法である旨の - 67 -主張をするが,これらの最高裁判決は本件とは事案を異にし,上記確認の利益の判断に消長を来すものではない。 2 争点2(1)(運輸規則22条の違法性-運輸規則22条は憲法22条1項に違反するか。)について(1) 判断枠組み職業活動としての営業は,本質的に社会的かつ経済的な活動であって,その性質上,社会的相互関連性が大きいものであるから,憲法22条1項において保障される営業の自由は,それ以外の憲法の保障する自由,殊にいわゆる精神的自由に比較して,公権力による規制の要請が強く,同項の規定においても,特に「公共の福祉に反しない限り」という留保が明記されている。このように,営業は,それ自身のうちに何らかの制約の必要性が内在する社会的かつ経済的な活動であるところ,その種類,性質,内容,社会的意義や影響が極めて多種多様であるため,その規制を要求する社会的理由ないし目的も千差万別で,その重要性も区々にわたり,これに対応して,現実に営業の自由に加えられる制限としての規制措置も,それぞれの事情に応じて各種各様の形をとることからすれば,当該規制措置が憲法22条1項にいう公共の福祉のために要求されるものとして是認されるかどうかは,これを一律に論ずることはできず,具体的な規制措置について,規制の目的,必要性,内容,これによって制限される営業の自由の性質,内容及び制限の程度を検 ために要求されるものとして是認されるかどうかは,これを一律に論ずることはできず,具体的な規制措置について,規制の目的,必要性,内容,これによって制限される営業の自由の性質,内容及び制限の程度を検討し,これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならない。そして,上記のような検討と考量をするのは,第一次的には立法機関(立法府の制定した法律により行政立法の権能の委任を受けた行政機関を含む。)の権限と責務であり,その憲法適合性の司法審査に当たっては,規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上,そのための規制措置の具体的内容及び必要性と合理性については,上記立法機関の判断がその合理的 - 68 -裁量の範囲にとどまる限り,立法政策上の問題としてこれを尊重すべきである。もっとも,その合理的裁量の範囲については,事の性質上おのずから広狭があり得るのであって,裁判所は,具体的な規制の目的,対象,方法等の性質と内容に照らして,これを決すべきものといわなければならない。(昭和50年最大判参照)(2) 乗務距離の最高限度規制に関する沿革ア昭和33年の乗務距離の最高限度規制の導入昭和33年1月に発生したタクシーによる死亡事故を受けて,タクシーの乱暴運転や無謀運転が「神風タクシー」として大きな社会問題となり,タクシー業界の経営姿勢と行政当局の指導監督の在り方に強い批判が向けられ,国会においてもタクシー問題が取り上げられた。 こうした状況下において,内閣の交通事故防止対策本部は,同年4月1日,タクシー運転者の勤務条件等に関する8項目の「タクシー事故防止対策要綱」を決定し,輸送の安全を確保するため,適正な走行距離の標準を決定し,不当な走行義務を運転者に対して課さないよう措置するものとされた(乙82,83,弁論の全趣旨)。 かかる クシー事故防止対策要綱」を決定し,輸送の安全を確保するため,適正な走行距離の標準を決定し,不当な走行義務を運転者に対して課さないよう措置するものとされた(乙82,83,弁論の全趣旨)。 かかる経緯を受け,昭和33年6月9日,自動車運送事業等運輸規則が改正され,乗務距離の最高限度につき同規則21条の2が新設されるに至った。同条1項は,交通の状況を考慮して陸運局長が指定する地域内に営業所を有する一般乗用旅客自動車運送事業者は,地域の指定があった日から1月以内に,当該営業所に属する運転者の乗務距離の最高限度を定めなければならない旨を定め,同条2項は,前項の乗務距離の最高限度は,当該地域における道路及び交通の状況並びに輸送の状態に応じ,当該営業所に属する事業用自動車の運行の安全を阻害するおそれのないものでなければならないと定めていた(乙84)。なお,平成2年運輸省令第23号により,自動車運送事業等運 - 69 -輸規則は題名が旅客自動車運送事業等運輸規則と改められ,21条の2は第3項及び第4項を削るなどの所要の改正がされた上で22条に繰り下げられた。 イ第147回国会(会期:平成12年1月20日から同年6月2日まで)で道路運送法及びタクシー業務適正化臨時措置法の一部を改正する法律(平成12年法律第86号)が成立したところ,その審議において,衆議院運輸委員会は,同年4月26日,輸送の安全確保と適正労働条件の確立を図るため,自動車運転者の労働時間等改善基準の遵守について,指導監督を徹底し,最高乗務距離等の制限,過重労働を強いることとなる累進歩合やノルマの排除,運転者に対する安全教育の充実等について所要の措置を講じることなどを内容とする附帯決議を採択し(乙9の1),参議院交通・情報通信委員会も,同年5月18日,輸送の安全確保と適正 進歩合やノルマの排除,運転者に対する安全教育の充実等について所要の措置を講じることなどを内容とする附帯決議を採択し(乙9の1),参議院交通・情報通信委員会も,同年5月18日,輸送の安全確保と適正労働条件の確立を図るため,最高乗務距離等の制限,過重労働を強いることとなる累進歩合やノルマの排除,運転者に対する安全教育の充実等について,所要の措置を講じることなどを内容とする附帯決議を採択した(乙9の2)。 これら附帯決議を受けて,平成13年8月24日国土交通省令第121号により運輸規則22条は現行規定のものに改正されるに至った。 (3) 規制内容及び規制態様運輸規則22条によれば,地方運輸局長は,交通の状況を考慮して乗務距離の最高限度の規制を及ぼすべき地域を指定し(同条1項),当該地域における道路及び交通の状況並びに輸送の状態に応じ,当該営業所に属する事業用自動車の運行の安全を阻害するおそれのないよう乗務距離の最高限度を定め(同条2項),これらの地域の指定及び乗務距離の最高限度の定めを遅滞なく公示する(同条3項)こととされており,上記指定地域内に営業所を有する一般乗用旅客自動車運送事業者は,上記 - 70 -のとおり地方運輸局長によって定められた乗務距離の最高限度を超えて当該営業所に属する運転者を事業用自動車に乗務させてはならないものとされる(同条1項)。 このように運転者が1日に乗務することのできる距離の最高限度を画し,事業者が運転者にこれを超えて乗務させることを禁止するという規制の態様は,事業そのものを全面的に禁止するという規制態様よりは緩やかであるものの,営業の総量を規制し,その営業の一部を禁止するものであることに鑑みると,その営業の自由に対する制約の度合いは比較的強いということができる。 (4) 規制目的前記( 様よりは緩やかであるものの,営業の総量を規制し,その営業の一部を禁止するものであることに鑑みると,その営業の自由に対する制約の度合いは比較的強いということができる。 (4) 規制目的前記(2)の沿革並びに前記(3)の規制内容及び規制態様に照らすと,乗務距離の最高限度規制の目的は,運転者の労働条件を確保することによって輸送の安全を確保することが主たる目的であると認めるのが相当である。この点について,被告は,法1条にいう輸送の安全の確保と利用者の利便の確保とは密接に関連するものであり,乗務距離の最高限度規制は,輸送の安全の確保と利用者の利便の確保の双方を目的とするものであって,純粋な消極目的規制とはいえない旨を主張する。 しかし,被告の主張する密接な関連性も,一般乗用旅客自動車運送事業者による輸送の安全が確保されることによって,利用者が安全確実な輸送手段としてタクシーを利用することができ,ひいては利用者の利便が確保されるという関係をいうものと解されることに照らすと,乗務距離の最高限度規制は直接には過労運転ないし危険運転を防止することによる輸送の安全確保を目的としているのであって,上記規制が最終的に利用者の利便の確保に資するものであるとしても,規制目的の主眼が輸送の安全確保にあることに変わりはない。 他方,原告らは,被告は,原告らを含む低額運賃事業者を排除するこ - 71 -とを目的として,乗務距離の最高限度規制を導入したものである旨を主張する。しかし,低額運賃事業者が,その採算性の確保のため,自動運賃認可事業者に比べ乗務距離が長くなる傾向にあるとしても,被告が低額運賃事業者を排除することを目的として,乗務距離の最高限度規制を導入したことを認めるに足りる的確な証拠はない。かえって,本件指定地域に含まれる河南交通圏には低額運 なる傾向にあるとしても,被告が低額運賃事業者を排除することを目的として,乗務距離の最高限度規制を導入したことを認めるに足りる的確な証拠はない。かえって,本件指定地域に含まれる河南交通圏には低額運賃事業者が存在しないこと(乙48)や,低額運賃事業者が存在している本件指定地域以外の近畿運輸局管内の交通圏については乗務距離の最高限度規制が導入されていないこと(乙48)を踏まえると,乗務距離の最高限度規制が低額運賃事業者の排除を目的とすると認めることはできない。 (5) 乗務距離の最高限度規制の必要性についてアタクシーの事故件数等国土交通省自動車交通局「自動車運送事業に係る交通事故要因分析報告書」によれば,走行1億キロメートル当たりの自動車事故発生件数は,平成4年では自動車全体が87.4件,ハイタク(ハイヤー及びタクシーをいう。以下同じ。)が83.0件とほぼ同程度であったところ,平成13年には自動車全体が105.9件,ハイタクが159.2件と,ハイタクの走行1億キロメートル当たりの自動車事故発生件数は顕著に増加している(なお,同期間のバス,トラックの自動車事故発生件数は,平成4年につきバス54.0件,トラック44. 9件,平成13年につきバス80.7件,トラック50.4件である。)。また,自動車1000台当たりの自動車事故発生件数についてみても,ハイタクは平成4年62.2件,平成13年101.7件であって,自動車全体(平成4年9.2件,平成13年10.9件),バス(平成4年25.9件,平成13年36.6件),トラック(平成4年26.8件,平成13年33.9件)と比較してハイタクの自 - 72 -動車事故発生件数は顕著に多い。(乙36の1,2)これらのタクシーの交通事故件数の推移等に照らせば,タクシーの交通事故の発生を抑制 ,平成13年33.9件)と比較してハイタクの自 - 72 -動車事故発生件数は顕著に多い。(乙36の1,2)これらのタクシーの交通事故件数の推移等に照らせば,タクシーの交通事故の発生を抑制するために対策を講じる必要性があったという被告の判断には合理性があったということができる。 イ事故防止のために乗務距離の最高限度を定めることの合理性について(ア) タクシーによる事故の要因国土交通省自動車交通局「自動車運送事業に係る交通事故要因分析報告書」によれば,タクシーによる事故の要因となった法令違反としては,①最高速度違反を始め,信号無視,横断・転回等,車間距離不保持,追越し禁止,優先通行妨害,交差点安全進行,徐行違反,一時不停止,安全運転義務違反のうち安全速度違反といった,先を急ぐ心理により引き起こされることのある法令違反や,②過労運転を始め,安全運転義務違反のうち運転操作,漫然運転,動静不注視,安全不確認といった,疲労により注意力や身体動作が低下することにより引き起こされることのある法令違反が交通事故の要因として大きな割合を占めており,現行運輸規則22条への改正がされた平成13年度においては,それぞれ,①に係る法令違反が5915件(21.1パーセント),②に係る法令違反が1万4002件(49.9パーセント)となっている(乙37)。したがって,タクシーによる交通事故の発生を抑制するためには,最高速度違反等の危険運転や過労に伴う注意力等の減退下での運転を防止する必要性があるものと認めることができる。 (イ) タクシー事業の特性事業所外労働が中心であるというタクシーの特性から,タクシー事業においては,多くの場合,歩合制賃金がとられている(乙1 - 73 -6)。また,タクシーの事業形態は,都市の規模等によっても異な 事業所外労働が中心であるというタクシーの特性から,タクシー事業においては,多くの場合,歩合制賃金がとられている(乙1 - 73 -6)。また,タクシーの事業形態は,都市の規模等によっても異なるが,大都市や中核都市では運転者が事業用自動車を走らせながら利用者を探すという流しによる営業形態が多く,平成9年7月時点ではタクシーの運行のうち流しによるものは大都市45.6パーセント,中核都市40.9パーセントという状況であった(乙8)。 このような流し営業の場合には,運転者が直接利用者を探さなければならず,出庫した後は,基本的に事業活動の大半が運転者に任され,利用者による運送引受け依頼をできるだけ多く得ることを目的として,運転者が自らの判断で,需要が見込まれる地点を中心に,一定の営業区域内を走行することとなる。そして,タクシーの運転者が歩合制賃金で働いていることから,より多くの営業収入を得ることが自己の賃金増加に直結するため,乗務距離を伸ばすという傾向にあるものということができる。 さらに,流し営業を中心として行っているタクシーは,出庫した後は基本的に事業活動の大半は運転者に任されているから,運行管理が行き届きにくい実態がある。このことは,自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(厚生労働大臣告示)により拘束時間の限度時間等が定められているにもかかわらず,平成16年において厚生労働省が監督を行った485事業場のうち243事業場で違反が認められたこと(乙11)からも裏付けられている。なお,原告らは,バス・トラック事業と対比して,タクシー事業において運行管理が困難であるという事情はない旨主張するが,バス・トラックは運行経路が事前に定められており,乗務距離がほぼ正確に事前に把握できるのに対し,タクシー事業ではその性質上事前に乗務距離 において運行管理が困難であるという事情はない旨主張するが,バス・トラックは運行経路が事前に定められており,乗務距離がほぼ正確に事前に把握できるのに対し,タクシー事業ではその性質上事前に乗務距離を把握することができず,流し営業中心の地域におけるタクシー事業では,その走行中に個別の運転者の乗務距離を運行管理者が把握 - 74 -することも現時点では困難である。そして,運行記録計からはタクシーが走行していないことが判明するとしても,タクシー乗り場において客待ちをしているのか,それとも休憩をしているのか等を判別することができないことに照らすと,運転者が休憩時間を遵守しているかは,第一次的には運転者自身が作成する乗務記録によって判断するほかない。このような事情に照らすと,流し中心の営業がされているタクシー事業においては,バス・トラック事業とは異なり,運行管理が行き届きにくいものと認められる。 (ウ) 乗務距離と事故発生数等の関係まず,平成22年度近畿運輸局管内法人タクシー事業者全体の運転者一人当たり年間平均走行距離が2万8595キロメートルであるのに対し,同年度中に重大事故を1件以上発生させた近畿運輸局管内法人タクシー事業者の運転者一人当たり年間平均走行距離は3万1167キロメートルであって(乙38),重大事故の発生と乗務距離との間に相関関係があることがうかがえる。 また,近畿運輸局長が原告CのD営業所に対して行った監査の際に確認した乗務記録及び運行記録計による記録によれば,5名中4名の運転者が乗務距離の最高限度規制に違反した日の方が乗務距離の最高限度規制に違反しなかった日に比べて速度違反の回数が多いことが認められること(乙33の1),中部運輸局管内で乗務距離の最高限度規制に違反したと指摘された法人についても同様の傾向が認め 務距離の最高限度規制に違反しなかった日に比べて速度違反の回数が多いことが認められること(乙33の1),中部運輸局管内で乗務距離の最高限度規制に違反したと指摘された法人についても同様の傾向が認められること(乙33の2,54)に照らすと,乗務距離が長ければ最高速度に違反する回数が多くなる傾向があることがうかがえる。 なお,原告らは,原告ら及びその他のグループ会社(G,H,I)の年間平均走行距離別の100万キロメートル当たりの事故率 - 75 -(第1当事者)を調査した結果(甲21)に基づくと,乗務距離が長くなるほど交通事故の発生率が高くなるという関係は認められない旨を主張する。しかし,この調査結果によっても,原告Aにおける平均走行距離が230キロメートルから259キロメートルである運転者の事故率が100万キロメートル当たり0.7であるのに対し,平均走行距離が260キロメートルから289キロメートルである運転者の事故率が100万キロメートル当たり1.3であり,原告Bにおける平均走行距離が260キロメートルから289キロメートルである運転者の事故率が100万キロメートル当たり0. 6であるのに対し,平均走行距離が290キロメートル以上である運転者の事故率が100万キロメートル当たり0.8であること(甲21)に照らすと,運転者がある程度以上の平均乗務距離に達した場合には,事故率が増加する場合もあることがうかがえる。したがって,原告らの調査結果を前提としても,乗務距離の最高限度を定めることが交通事故の防止と関連性を有しないとまでいうことはできない。 また,原告らは,交通事故を引き起こした運転者に係る事故直前までの乗務距離の平均が,全体の平均走行距離の半分以下であること(甲23)から,①事故は,必ずしも乗務距離が長くなった後に集中 きない。 また,原告らは,交通事故を引き起こした運転者に係る事故直前までの乗務距離の平均が,全体の平均走行距離の半分以下であること(甲23)から,①事故は,必ずしも乗務距離が長くなった後に集中して生じているのではないこと,②事故者の当日走行距離が全体の走行距離のおよそ半分以下であるのは,乗務距離が短いところから比較的長いところまで,いわば万遍なく事故が発生していることを意味するのであり,換言すれば,事故は乗務距離とは関係なく発生している旨を主張する。しかし,運転者が乗務距離にかかわらず勤務後睡眠等の休息をとれば完全に疲労がとれ,翌日以降に疲労が持ち越されないと考えることは一般の経験則に照らしても相当ではなく,むしろ,連日長距離の乗 - 76 -務を継続することによって疲労が蓄積し続けることも十分に考えられるところである。したがって,交通事故を起こした運転者に関する事故前日までの乗務距離の推移等を何ら吟味することなく,単に事故当日における事故直前までの乗務距離の長短をもって,乗務距離が長いほど事故発生のリスクが高まるとはいえないとの結論を導き出すことはできない。 なお,②の点については,単に平均値をみるだけでは事故当日における事故直前までの乗務距離のデータがどのように分散しているかは何ら明らかではないのであるから,この点からも失当である。 以上によれば,乗務距離が一定程度以上になれば,最高速度違反等の危険運転の割合が高くなる傾向があり,また,重大事故の発生と乗務距離との間にも相関関係があることがうかがえるものということが可能である。 ウ他の規制手段との関係について原告らは,既に労働時間規制,車両の整備に関する規制など相当数にのぼる事故防止のための規制が実施されており,これに加えてさらに乗務距離の最高限度を規制する必要性 ウ他の規制手段との関係について原告らは,既に労働時間規制,車両の整備に関する規制など相当数にのぼる事故防止のための規制が実施されており,これに加えてさらに乗務距離の最高限度を規制する必要性・合理性はない旨主張する。 確かに,乗務距離の最高限度の規制が導入される前の時点において,運輸規則(ただし,平成20年国土交通省令39号による改正前のもの)21条1項は,旅客自動車運送事業者は,過労の防止を十分考慮して,国土交通大臣が告示で定める基準に従って,事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間を定めなければならないと定め,同条2項は,旅客自動車運送事業者は,乗務員が有効に利用することができるように,休憩の施設を整備し,及び乗務員に睡眠を与える必要がある場合又は乗務員が勤務時間中に仮眠する機会がある場合は,睡眠又は仮眠に必要な施設を整備し,並びにこれらの施設を適切に管理し,及び保守しなければならないと定め,同条3項は,旅客自動車運送事 - 77 -業者は,乗務員の健康状態の把握に努め,疾病,疲労,飲酒その他の理由により安全な運転をし,又はその補助をすることができないおそれがある乗務員を事業用自動車に乗務させてはならないと定めており,過労運転等の防止のための規制手段を講じている。なお,運輸規則21条は,平成20年国土交通省令第39号及び平成22年国土交通省令第30号により改正され,現行の運輸規則21条では,旅客自動車運送事業者は運転者に勤務時間及び乗務時間を遵守させなければならないとされ(1項),休憩施設は営業所,自動車車庫その他営業所又は自動車車庫付近の適切な場所に整備しなければならず(2項),運転者が営業所で勤務を終了することができない運行を指示する場合は,終了場所付近に適切な睡眠施設を確保しなければならず(3項),酒気を は自動車車庫付近の適切な場所に整備しなければならず(2項),運転者が営業所で勤務を終了することができない運行を指示する場合は,終了場所付近に適切な睡眠施設を確保しなければならず(3項),酒気を帯びた状態にある乗務員を乗務させてはならない(4項)との規制が追加されるに至った。 しかし,これら過労運転防止のための規制が遵守されるための担保手段は,運輸規則25条の乗務記録が適正に記録されているか否かにかかっているのであって,現時点において運転者の勤務時間(客待ち時間を含む。)及び休憩時間を確実に把握する手段は存在していないものというほかない。 また,最高速度制限違反についても,一般乗用旅客自動車運送事業者(個人タクシー事業者を除く。)は,指定地域内の営業所に属する事業用自動車につき運行記録計による瞬間速度,運行距離及び運行時間に係る記録並びにその保存を義務付ける(運輸規則26条2項)という対策を講じてはいるものの,道路標識等により最高速度が指定されている道路が存在すること等に鑑みると,現時点においては事業用自動車が具体的な走行場所に応じた最高速度制限に違反しているかどうかを客観的に把握する手段は存在しないといわざるを得ない。 - 78 -そうすると,既存の規制手段で過労運転防止や最高速度制限違反の防止が十全になし得るということはできないとした被告の判断も合理性を有するものと考えられる。 (6) 乗務距離の最高限度を規制するという手法が合理性を有するか。 ア原告らは,本件公示で定められた乗務距離の最高限度を遵守するには,定められた乗務距離の最高限度を超えた段階で運転者に乗車拒否をさせなければならないこととなり,利用者の利便という法の目的を阻害することとなる旨を主張する。 法13条は,一般貸切旅客自動車運送事業者を除く一般 乗務距離の最高限度を超えた段階で運転者に乗車拒否をさせなければならないこととなり,利用者の利便という法の目的を阻害することとなる旨を主張する。 法13条は,一般貸切旅客自動車運送事業者を除く一般旅客自動車運送事業者に原則として運送の引受義務を課しつつも,当該運送が法令の規定に違反する場合には運送の引受けを拒絶できる旨を定めている(同条4号)。したがって,運送の申込者の希望する最終降車地まで乗務をした場合に乗務距離の最高限度規制に抵触することを理由として運転者が運送の引受けを拒絶することは適法であることになるが,その場合当該運送の申込者は期待した運送を引き受けてもらうことができず,利用者の利便が阻害されることは否定し難い。しかしながら,乗務距離の最高限度規制が運転者の過労運転防止にとって合理的な規制であることはこれまでに検討したとおりであって,輸送の安全確保と利用者の利便確保とが対立する場合に,利用者の利便が劣後することになったとしてもそれはやむを得ないものというほかない。したがって,原告らの主張は採用できない。 イ原告らは,運転者が乗務距離の最高限度を超えるかどうかを即座に判断することは不可能であり,仮に,乗務距離の最高限度を超える可能性があると判断したとしても,一旦乗車した利用者に対して乗車を拒否し,降車をお願いするというのはあまりにも非現実的であることに照らすと,乗務距離の最高限度を規制するという規制手段そのものが不合理である旨主張する。 - 79 -しかし,一般乗用旅客自動車運送事業者の運転者が,運送を引き受ける前に運送の申込者から最終降車地を確認することによって,運送の引受けの可否を判断することも相当程度可能であるといえる。また,運送の引受時に乗務距離の最高限度規制に抵触するとは判断ができなかった場合において の申込者から最終降車地を確認することによって,運送の引受けの可否を判断することも相当程度可能であるといえる。また,運送の引受時に乗務距離の最高限度規制に抵触するとは判断ができなかった場合において,例えば利用者が最終降車地を変更する旨の申し出をし,変更後の最終降車地まで運送すれば乗務距離の最高限度を超えて走行することになるとしても,利用者の安全・保護の観点からやむを得ない事情があるときには,乗務距離の最高限度規制に違反するものとはいえないと解するのが相当である(なお,近畿運輸局長もかかるやむを得ない事情がある場合には,その事情は考慮する場合がある旨を明らかにしている(甲46,乙40)。)。したがって,原告らの主張するような不合理な規制であるという批判は当たらない。 (7) 検討前記(2)ないし(6)に基づき検討するに,運輸規則22条の規制の直接の目的は,タクシーの交通事故の防止ないし抑制による輸送の安全の確保であり(前記(4)),その規制の態様は,事業そのものを全面的に禁止するという規制態様よりは緩やかであるものの,営業の総量を規制し,いわば営業の一部を禁止するものであることに鑑みると,その営業の自由に対する制約の度合いは比較的強いということができる(前記(3))。 一方,タクシーの自動車事故発生件数は自動車全体と比しても,また他の事業用自動車(バス及びトラック)と比しても,顕著に多く,タクシーの自動車事故の抑制ないし防止のための対策が必要であることは優に認められるのであって(前記(5)ア),タクシーの交通事故の原因を分析すると,タクシーによる交通事故の発生を抑制するためには,過労運転や最高速度違反等の危険運転を防止する必要性が認められる(前 - 80 -記(5)イ(ア))。そして,流し中心の営業が行われるタクシー事業 クシーによる交通事故の発生を抑制するためには,過労運転や最高速度違反等の危険運転を防止する必要性が認められる(前 - 80 -記(5)イ(ア))。そして,流し中心の営業が行われるタクシー事業においては,運行管理が行き届きにくいことや歩合制賃金を背景とする運転者の賃金確保等のため,運転者が乗務距離を伸ばそうという傾向があるということができる(前記(5)イ(イ))。これらの点に加え,乗務距離が長ければ最高速度違反等の危険運転が増えるという一般的傾向があることがうかがわれること等(前記(5)イ(ウ))を踏まえれば,乗務距離の最高限度を定めることによって,タクシーによる交通事故の発生を防止することが可能であるとした被告の判断も合理性を有するものということができる。 また,他の規制手段との関係をみてみても,過労運転や最高速度制限違反の防止のために様々な手段が講じられているものの,現時点では過労運転や最高速度制限違反の防止を確実になし得る他の規制手段があるとは評価し難い(前記(5)ウ)。 そして,乗務距離の最高限度を規制するという手法は,乗務距離の最高限度に抵触するとして乗車を拒否された場合に利用者の利便が損なわれるなど,利用者の利便との関係で緊張関係をはらむものの,その手法自体が不合理であるとまではいい難い(前記(6))。 そうすると,乗務距離の最高限度規制は,規制目的(タクシーの事故を防止し,輸送の安全を確保すること)を達成するための規制手段としての必要性と合理性を認めることができ,過労運転防止及び最高速度制限違反の防止に関する現時点での規制手段を前提とすれば,営業活動の態様に対するより緩やかな制限を内容とする規制手段によっては上記の規制目的を十分に達成することができないと認められる以上,営業活動の内容及び態様に関する規制として 規制手段を前提とすれば,営業活動の態様に対するより緩やかな制限を内容とする規制手段によっては上記の規制目的を十分に達成することができないと認められる以上,営業活動の内容及び態様に関する規制として,立法機関(立法府の制定した法律により行政立法の権能の委任を受けた行政機関を含む。)の合理的裁量の範囲を超えるものではないというべきであり,乗務距離の最高限度を - 81 -規制する旨を定める運輸規則22条は,憲法22条1項に違反するものということはできない。 3 争点2(2)(運輸規則22条の違法性-運輸規則22条は法の委任の範囲を超えており違法か。)について原告らは,法27条1項の委任に基づく運輸規則22条が定める乗務距離の最高限度規制によって,利用者の利便を損なう結果が生じている上,輸送の安全をも阻害する結果が生じており,これらの結果からすると,乗務距離の最高限度規制は,「輸送の安全及び旅客の利便の確保のために必要な事項」であるとはいえず,明らかに法27条の委任の趣旨又は範囲を逸脱しているから,運輸規則22条は無効である旨主張する。 しかし,乗務距離の最高限度を規制する運輸規則22条は輸送の安全の確保のために定められた規制であることは前記2(3)のとおりであって,乗務距離の最高限度の規制によって輸送の安全が阻害されたことを認めるに足りる的確な証拠もない。 また,法27条1項は,輸送の安全の確保のために必要な事項又は旅客の利便の確保のために必要な事項を国土交通省令で定めることができる旨を規定する趣旨と解されるから,乗務距離の最高限度規制が旅客の利便の確保と抵触する側面があるとしても,そのことをもって乗務距離の最高限度規制を定める運輸規則22条は法27条1項の委任の趣旨に反するということはできない。 したがって,運輸規則22 制が旅客の利便の確保と抵触する側面があるとしても,そのことをもって乗務距離の最高限度規制を定める運輸規則22条は法27条1項の委任の趣旨に反するということはできない。 したがって,運輸規則22条が法の委任の趣旨に反する旨の原告らの主張は採用できない。 4 争点3(本件公示は違法か。)について(1) 地方運輸局長の裁量権の範囲等運輸規則22条1項は交通の状況を考慮して地方運輸局長が地域を指定する旨を,同条2項は,同条1項の乗務距離の最高限度は,地方運輸 - 82 -局長が指定する地域における道路及び交通の状況並びに輸送の状態に応じ,当該営業所に属する事業用自動車の運行の安全を阻害するおそれのないよう,地方運輸局長が定めるものとする旨規定されているところ,地方運輸局長の地域の指定に係る考慮要素としては交通の状況という抽象的な文言が用いられている一方で,乗務距離の最高限度の具体的な設定方法等については,運輸規則上何らの定めも置かれていない。そして,上記のとおり乗務距離の最高限度は,地方運輸局長が指定する地域における道路,交通及び輸送の状況に応じ運行の安全を阻害するおそれのないよう定めること(同条2項)が必要であり,当該地域のタクシー事業の実態を踏まえた地方運輸局長の専門的・技術的判断が必要であることを踏まえると,乗務距離の最高限度の規制を施すべき地域として指定するか否かや,乗務距離の最高限度の設定方法等については,いずれも地方運輸局長の合理的な裁量に委ねられていると解される。もっとも,乗務距離の最高限度規制は,事業者の営業の一部を禁止するなど事業者の営業の自由と抵触するおそれのあるものであることに照らすと,地方運輸局長の裁量権の範囲は一定の制約を受けることはいうまでもないことであって,地方運輸局長の判断の過程に裁量権の範 禁止するなど事業者の営業の自由と抵触するおそれのあるものであることに照らすと,地方運輸局長の裁量権の範囲は一定の制約を受けることはいうまでもないことであって,地方運輸局長の判断の過程に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があった場合には,当該判断が違法となると解される。 (2) 近畿運輸局長が本件公示を定めた経緯ア昭和33年運輸省令第21号による自動車運送事業等運輸規則の改正を受けて,大阪陸運局長は,昭和33年9月1日,①大阪市,堺市(ただし旧南河内郡美原町との合併前),布施市(当時)及び守口市,②神戸市,芦屋市,西宮市,尼崎市及び明石市並びに③京都市(ただし旧北桑田郡京北町との合併前)を,同規則21条の2第1項の規定による地域として指定した(乙85,弁論の全趣旨)。 イ近畿運輸局長は,平成14年1月31日付け近運旅二公示第20号 - 83 -をもって,大阪地区(大阪市,堺市(ただし旧南河内郡美原町との合併前),東大阪市(旧布施市のみ),守口市),京都地区(京都市(ただし旧北桑田郡京北町との合併前))及び神戸地区(神戸市,芦屋市,西宮市,尼崎市,明石市)を指定地域として指定し,隔日勤務運転者の乗務距離の最高限度を上記各地区のいずれについても1乗務当たり350キロメートルと定めていたが,日勤勤務運転者については乗務距離の最高限度を定めていなかった。なお,上記乗務距離の算定において,高速自動車国道等の乗務距離を乗務距離に含むものとしていた。その後,近畿運輸局長は,平成17年10月1日近運自二公示第35号をもって平成14年1月31日付け近運旅二公示第20号を改正し,指定地域を大阪地区(大阪市,豊中市,吹田市,守口市,門真市,東大阪市,八尾市,堺市(旧南河内郡美原町の区域を除く。)),京都地区(京都市(旧北桑田郡京北町の区域を除 近運旅二公示第20号を改正し,指定地域を大阪地区(大阪市,豊中市,吹田市,守口市,門真市,東大阪市,八尾市,堺市(旧南河内郡美原町の区域を除く。)),京都地区(京都市(旧北桑田郡京北町の区域を除く。))及び神戸地区(神戸市,芦屋市,西宮市,尼崎市,明石市)に拡大した。 (甲2,37,乙10)ウ国土交通省自動車交通局安全政策課及び旅客課は,「タクシー事業に係る乗務距離の最高限度の指定拡大について」(平成21年8月4日付け事務連絡。以下「本省事務連絡」という。乙21)を発出し,運輸規則22条に基づくタクシー運転者の乗務距離の最高限度についての当面の対応として,運行記録計の義務付け地域(運輸規則26条2項)にまで指定を拡大するとともに,乗務距離の最高限度については,日勤勤務運転者,隔日勤務運転者別にそれぞれ定めるという方針を示した。そして,近畿運輸局長は,本省事務連絡を受けて,乗務距離の最高限度の設定地域を,従前の大阪市域交通圏,京都地区及び神戸地区から本件指定地域に拡大することとし,本省事務連絡で示されている乗務距離の最高限度を設定する際の算定方法を参考とした本件 - 84 -算定方式を採用し,本件指定地域内のタクシー事業者の実態調査結果に基づき乗務距離の最高限度を定めることとした(甲37)。 具体的には,大阪市域交通圏,北摂交通圏,河北交通圏,河南交通圏,京都市及び神戸市域交通圏について実態調査を行い,交通圏ごとのタクシー事業者の平均的な運行状況等を把握した上で,下記計算過程に従い,法27条1項,運輸規則21条1項,「旅客自動車運送事業運輸規則第21条第1項の規定に基づく事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準」(平成13年12月3日国土交通省告示第1675号。甲24,乙24)及び「自動車運転者の労働時間等の 送事業運輸規則第21条第1項の規定に基づく事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準」(平成13年12月3日国土交通省告示第1675号。甲24,乙24)及び「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号。甲25,乙25)が定める1日の拘束時間の最大限度(最大拘束時間。具体的には,隔日勤務運転者は21時間(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準2条2項1号),日勤勤務運転者は16時間(同条1項2号))まで勤務した場合を仮定して,通常の運行を行った場合に最大限走行可能な距離を求めた(乙21,26)。そして,大阪市域交通圏を中心として,北摂交通圏,河北交通圏,河南交通圏,京都市及び神戸市域交通圏は一体の都市圏を形成しており,個々の運送において複数の地域をまたぐケースがあること,上記6地域の中で,大阪市域交通圏が最も長い走行可能距離が算出されたこと(隔日勤務運転者につき346.2キロメートル,日勤勤務運転者につき251.3キロメートル)を踏まえ,通常の運行において最大限走行可能な距離を設定する観点から,大阪市域交通圏以外の地域を含め,本件指定地域に係る乗務距離の最高限度について,大阪市域交通圏における実態調査の結果に基づき,隔日勤務運転者は1乗務当たり350キロメートル,日勤勤務運転者は1乗務当たり250キロメートルと設定した。(甲37,弁論の全趣旨)記(ア) 可能実ハンドル時間(走行可能時間)の算出 - 85 -a 計算方法可能実ハンドル時間=最大拘束時間-(休憩時間+日常点検・点呼時間+客扱い時間(運転者が利用者の乗降時に応対する時間))b 大阪市域交通圏における具体的計算(乙26の1)(a) 隔日勤務運転者最大拘束時間1260分(=21時間)-(休憩時間199.2分 +客扱い時間(運転者が利用者の乗降時に応対する時間))b 大阪市域交通圏における具体的計算(乙26の1)(a) 隔日勤務運転者最大拘束時間1260分(=21時間)-(休憩時間199.2分+平均始業点呼等時間18.8分+平均終業点呼等時間32.7分+客扱い時間34.2分)=可能実ハンドル時間975.1分(b) 日勤勤務運転者最大拘束時間960分(=16時間)-(休憩時間164.0分+平均始業点呼等時間19.6分+平均終業点呼等時間33.3分+客扱い時間35.1分)=可能実ハンドル時間708.0分c 補足等国土交通省は,本省事務連絡において,最大拘束時間-(休憩時間+日常点検・点呼時間+客扱い時間(運転者が利用者の乗降時に応対する時間)+客待ち時間)を可能実ハンドル時間(実走行時間)の算定方法の例として示していた(乙21)。しかし,近畿運輸局長は,客待ち時間については,本来,客がいれば走行可能となることを踏まえ,これを可能実ハンドル時間に含めることとした(乙26の1,弁論の全趣旨)。また,休憩時間及び客扱い時間については,調査対象事業者が就業規則において規定する休憩時間及び実態調査で得られた平均客扱い時間を踏まえ,これらを最大拘束時間まで勤務した場合の時間を算出することとした(乙26の1)。 (イ) 平均運行速度の算出a 計算方法平均運行速度=平均走行距離÷平均実ハンドル時間(平均拘束 - 86 -時間(出庫から入庫までの時間であり,日常点検・点呼時間は含まれない。)-(平均休憩時間+平均客扱い時間+平均客待ち時間))b 大阪市域交通圏における具体的計算(乙26の1)(a) 隔日勤務運転者平均拘束時間1038.0分-(平均休憩時間182.1分+平均客扱い時間29.4分+平均客待ち時間162. 時間))b 大阪市域交通圏における具体的計算(乙26の1)(a) 隔日勤務運転者平均拘束時間1038.0分-(平均休憩時間182.1分+平均客扱い時間29.4分+平均客待ち時間162.0分)=平均実ハンドル時間664.5分平均走行距離202.5キロメートル÷(平均実ハンドル時間664.5分÷60(分/時))≒平均運行速度毎時18. 3キロメートル(b) 日勤勤務運転者平均拘束時間599.2分-(平均休憩時間96.7分+平均客扱い時間23.2分+平均客待ち時間93.5分)=平均実ハンドル時間385.8分平均走行距離136.7キロメートル÷(平均実ハンドル時間385.8分÷60(分/時))≒平均運行速度毎時21. 3キロメートル(ウ) 走行可能距離の算出a 計算方法走行可能距離=可能実ハンドル時間×平均運行速度b 大阪市域交通圏における具体的計算(乙26の1)(a) 隔日勤務運転者(可能実ハンドル時間975.1分÷60(分/時))×平均運行速度毎時21.3キロメートル≒走行可能距離346.2キロメートル - 87 -なお,前記(イ)のとおり隔日勤務運転者の平均運行速度よりも日勤勤務運転者の平均運行速度の方が速い値が算出されたところ,隔日勤務運転者の走行可能距離の算出に当たっては,通常の運行において最大限走行可能な距離を設定する観点から,日勤勤務運転者の平均運行速度を採用した。 (b) 日勤勤務運転者(可能実ハンドル時間708.0分÷60(分/時))×平均運行速度毎時21.3キロメートル≒走行可能距離251.3キロメートル(3) 検討ア計算手法等についての検討(ア) 平均運行速度を用いる点について近畿運輸局長は,本省事務連絡で示された計算方法を参考にして,運転者が最 行可能距離251.3キロメートル(3) 検討ア計算手法等についての検討(ア) 平均運行速度を用いる点について近畿運輸局長は,本省事務連絡で示された計算方法を参考にして,運転者が最大拘束時間で勤務した場合を仮定して,通常の運行を行った場合に最大限走行可能な距離の算出方法として,可能実ハンドル時間に平均運行速度を掛けるという計算式を採用している。しかし,運転者が実際に事業用自動車を運転する場合の道路の混雑状況や高速自動車国道等の利用の有無などの諸要素によって,1乗務ごとに計算した場合の運行速度は相当の幅があることが優に想定できるのであって,仮に現実の運行速度が近畿運輸局長の手法によって計算された平均運行速度を超えていたとしても,それが最高速度制限規制に違反した運転であると直ちに認定することはできない(現に,原告Bが夜勤の運転者について実施した実態調査によれば,中型車における平均運行速度は毎時24.1キロメートルと,大型車における平均運行速度は毎時36.4キロメートルと算定されており(甲32),近畿運輸局長が算出した平均運行速度毎時21.3 - 88 -キロメートルを大きく上回っている。)。かかる問題点を回避するために,近畿運輸局長は,実態調査において運行記録計と乗務記録を照合しつつ最高速度に違反していないと推測される事例を収集し,当該事例ごとに1乗務当たりの平均運行速度を計算することによって,実態調査全体から得られた平均運行速度との乖離の度合いを検討するという手法等を用いることも不可能ではなかったものと解される。 被告は,最大限走行可能な距離を算出するに当たり,可能実ハンドル時間を採用しているところ,この可能実ハンドル時間708. 0分(日勤勤務運転者)は平均実ハンドル時間385.8分(同上)よりも322.2 告は,最大限走行可能な距離を算出するに当たり,可能実ハンドル時間を採用しているところ,この可能実ハンドル時間708. 0分(日勤勤務運転者)は平均実ハンドル時間385.8分(同上)よりも322.2分も長いことを踏まえると,平均運行速度をもとに走行可能距離を算出したことは不合理ではないと主張する。 しかし,かかる主張は近畿運輸局長が当初に定立した最大拘束時間まで稼働し,通常の運行をした場合の走行可能距離を求めるという考え方とは根本的に相容れないものであって,失当である。 以上のような検討結果によれば,そもそも近畿運輸局長が採用した可能実ハンドル時間に平均運行速度を掛けるという計算方法それ自体が,最大拘束時間まで勤務した場合を仮定して,通常の運行を行った場合に最大限走行可能な距離を求める方法としては不適切であるといわざるを得ない。 (イ) 夜勤の取扱いについて関東運輸局長は,平成21年11月にタクシー事業に係る乗務距離の最高限度の指定拡大をするに当たり,本件算定方式に基づく計算結果を踏まえ,日勤勤務運転者につき270キロメートルを乗務距離の最高限度と設定する際に,夜間を中心とした運行が一般的に昼間を中心とした運行よりも平均速度が速いことから,出庫時間が午後5時から午前4時 - 89 -59分までの運行について検証を行っており,夜間運行において平均速度が速くなることに配慮した検証を行っている(甲33)。これに対し,近畿運輸局長が,関東運輸局長がしたような夜間運行において平均速度が速くなることに配慮した検証を行ったものと認めるに足る証拠はない。 この点,被告は,①夜間の乗務については昼間より体調の管理が難しい上,より高度な注意力が求められるといった特性もあること,②夜間の乗務に係る乗務距離の最高限度に合わせる形で,昼間の乗務に係る い。 この点,被告は,①夜間の乗務については昼間より体調の管理が難しい上,より高度な注意力が求められるといった特性もあること,②夜間の乗務に係る乗務距離の最高限度に合わせる形で,昼間の乗務に係る乗務距離の最高限度を設定してしまうと,当該規制は,昼間に乗務する運転者に対するものとしては,無意味なものになってしまいかねないことを指摘する。 まず,前者の点についてみるに,夜間の乗務について昼間より体調の管理が難しく,より高度な注意力が求められるという特性があることから,夜勤については休憩時間をより多く確保した計算をするなどの必要性があるとしても,それは夜勤のみの実態調査を行った上で検討されるべき問題であって,近畿運輸局長は夜勤のみを対象とした実態調査を行っているとは認められない以上,直ちに夜間運転の特性のみをもって昼夜の差を捨象して乗務距離の最高限度を設定することが合理性を有するとはいえない(なお,バス運転者に対して行ったアンケートによれば,高速バス運転者自身が昼間に安全に運転できる距離は平均415キロメートルであるのに対し,夜間に安全に運転できる距離は平均329キロメートルであるが(乙65の2),高速自動車国道等の運行速度については昼間混雑する地域を除いては昼間と夜間とで大きな差がないと考えられることに照らすと,かかるバス運転者のアンケート結果を直ちにタクシーの乗務距離の最高限度の設定について斟酌することも適切ではない。)。 次に,夜間の勤務を基準として乗務距離の最高限度として設定してし - 90 -まうと,昼間に乗務する運転者に対するものとしては,規制として無意味なものになってしまいかねないという点については,そもそも昼間勤務と夜間勤務とを分けて乗務距離の最高限度を設定することがあり得ることを看過している点で失当である。 するものとしては,規制として無意味なものになってしまいかねないという点については,そもそも昼間勤務と夜間勤務とを分けて乗務距離の最高限度を設定することがあり得ることを看過している点で失当である。この点,被告は,昼間勤務と夜間勤務とを区別して規制をすることが事業者や行政の監督上非現実的であると主張するが,昼間勤務と夜間勤務とが現実に存在し,それを近畿運輸局長も十分認識している以上,その差に対応した規制を行うことが不可能であるということはできず,また,被告は具体的にどのような点で非現実的であるのかを明らかにしていない以上,被告の上記主張を容れることはできない。なお,被告は,夜間に乗務する運転者に係る乗務距離の最高限度を,昼間に乗務する運転者に係るそれは別に設定するような施策をとると,昼間に稼働する事業者ないし乗務する運転者が減少し,夜間に稼働する事業者ないし乗務する運転者が増加するため,市場を歪めたり,利用者の利便が損なわれるなどの事態が生じかねず,かえって法の目的に反する結果となりかねないとも主張する。しかし,ライフスタイル等の変化に応じて時間ごとのタクシーの利用需要が変化することは想定することが可能であるとしても,タクシーの供給量の変動を理由にタクシーの利用需要が昼間から夜間に変動することは通常考え難い。 そうすると,短期的には昼間と夜間でのタクシーの利用需要の割合に変動がないと見込まれるにもかかわらず,夜間に乗務する運転者が急増し,昼間の利用者の利便を損ねる事態が生じ得るかどうかは明らかではない。 また,この点を措くとしても,通常の市場経済原理が機能している限り,仮に夜間に乗務する運転者に係る乗務距離の最高限度を昼間よりも長く設定したことにより,夜間に乗務する運転者の数が急増しタクシーの利用需要を上回る数に達し,逆に昼間に乗務す 済原理が機能している限り,仮に夜間に乗務する運転者に係る乗務距離の最高限度を昼間よりも長く設定したことにより,夜間に乗務する運転者の数が急増しタクシーの利用需要を上回る数に達し,逆に昼間に乗務する運転者の数が急減しタクシーの利用需要を満たさない状態が生じたとしても,その際には運転者 - 91 -一人当たりの輸送回数は昼間において急増し,夜間において急減することとなる結果,昼間に乗務する運転者の数が回復することが見込まれる。 そして,タクシーの運転者数の変動について,かかる市場経済原理を通じた調整がうまく機能しないことを認めるに足りる特段の根拠もない。 したがって,夜間勤務の運転者について昼間勤務の運転者に比して乗務距離の最高限度を長く定めたとしても,特段の弊害があるとは認められない。 以上によれば,近畿運輸局長が夜勤において運行速度が速くなる点を検討しなかったことは合理性を欠くものというほかない。 (ウ) 可能実ハンドル時間の計算過程について仮に近畿運輸局長が実態調査の結果を踏まえて本件算定方式に基づき計算した平均運行速度に代わる適切な運行速度を客観的に把握することが困難であるなどの事情から,この平均運行速度を次善策として用いざるを得ないとしても,現実の1乗務当たりの平均運行速度が本件算定方式に基づき計算された平均運行速度を超えていたことから直ちに最高速度違反による運行がされているものとはいえず,なお最高速度違反をしていない通常の運行というべき場合も相当程度あり得ることに照らすと,かかる平均運行速度を用いざるを得ない以上,これに乗ずべき可能実ハンドル時間は,法令上可能な最大限度をもって算定することによって均衡を図ることが求められているというべきである。 しかしながら,近畿運輸局長は,可能実ハンドル時間の計算に当たって, ずべき可能実ハンドル時間は,法令上可能な最大限度をもって算定することによって均衡を図ることが求められているというべきである。 しかしながら,近畿運輸局長は,可能実ハンドル時間の計算に当たって,法令の定めに基づく休憩時間を控除するにとどめるのではなく,就業規則に基づく休憩時間を基礎として,これを最大拘束時間まで勤務した場合にいわば引き直した計算結果に基づく休憩時間を控除しているのであり,少なくとも近畿運輸局長が実態調査に基 - 92 -づき計算した平均運行速度を用いて算定する場合には,かかる休憩時間の控除は過剰控除に当たるというべきであって,この点でも合理性を欠くものというほかない。 (エ) 関東運輸局長における計算結果について関東運輸局長は,平成14年1月に,特別区・武三交通圏及び京浜交通圏を乗務距離の最高限度を定める地域として指定し,その最高限度を隔日勤務運転者につき365キロメートルと定めた。その後,関東運輸局長は,乗務距離の最高限度を定める地域の指定を,運行記録計による記録を義務付ける地域まで拡大することとし,乗務距離の最高限度を設定するに当たり,実態調査を実施し,本件算定方式に基づく計算を行ったところ,隔日勤務運転者につき302キロメートルとの計算結果を得た。しかし,関東運輸局長は,①基準を300キロメートルとした場合には実態調査で得られた運行の6.0パーセントが基準を超え,特に,特別区・武三交通圏では15.1パーセントが基準を超えること,②供給過剰状態が解消されれば,輸送回数の増加に伴い乗務距離が伸びることが想定され,また,景気回復により首都高速道路走行の増加による平均速度の上昇に伴う乗務距離の増加も考えられることから,基準を300キロメートルとした場合には,今後,少なからぬ事業への影響が生じ得る可能性が ,また,景気回復により首都高速道路走行の増加による平均速度の上昇に伴う乗務距離の増加も考えられることから,基準を300キロメートルとした場合には,今後,少なからぬ事業への影響が生じ得る可能性があること,③基準を現行の365キロメートルとした場合には,実態調査で得られた運行の0.3パーセントが基準を超えるにとどまることなどを踏まえ,隔日勤務運転者の乗務距離の最高限度を365キロメートルと定めた。(甲5,33)このように関東運輸局長は,隔日勤務運転者につき本件算定方式に基づき302キロメートルとの計算結果を得たにもかかわらず,最終的には運行実態等の諸般の事情を勘案して乗務距離の最高限度 - 93 -が365キロメートルと定めたという経緯に照らせば,関東運輸局長は少なくとも本件算定方式によって得られた結果について慎重な検討を加えたことがうかがえる。 イ近畿運輸局長による具体的な算定過程等について(ア) 実態調査の実施方法についてa 原告らは,大阪市域交通圏における実態調査について,平成21年8月31日から同年9月6日までの7日間というごく短い期間で調査をし,その調査対象となった車両数が全車両数の2.26パーセントと非常に少ないことを指摘する。しかし,実態調査をどのような方法によって行うかについても地方運輸局長の合理的な裁量に委ねられているものと解されるところ,調査結果の集計や分析にも相応の時間や労力が必要であること,調査対象となる事業者にも相応の負担が必要になることをも踏まえれば,近畿運輸局長が行った大阪市域交通圏における実態調査が全車両数の2.26パーセントにとどまり,その対象期間が7日間にとどまっていたとしても,そのことから直ちに実態調査の方法の選択において裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったとまでいうことはでき 態調査が全車両数の2.26パーセントにとどまり,その対象期間が7日間にとどまっていたとしても,そのことから直ちに実態調査の方法の選択において裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったとまでいうことはできない。 b 原告らは,調査対象事業者の選定が適切であるのか確認,検証の方法もなく,不透明である旨を主張する。しかし,調査対象事業者の名称が具体的に明らかになれば,当該事業者の経営上の秘密に関わる各種統計数値が同業者その他の第三者に知られることになり,その競争上の地位を害するおそれがあると認められるから,被告ないし近畿運輸局長が実態調査の調査対象事業者の具体的名称を具体的データとひも付ける形で開示しないことが違法ないし不当であるとはいえない(なお,原告らは少なくとも大阪市域交通圏の原価計算対象事業者の名称を把握している(乙50)。)。そして,近畿運輸局長は,実態 - 94 -調査の対象事業者として,大阪市域交通圏,京都市及び神戸市域交通圏については原価計算対象事業者を選定し,さらに大阪市域交通圏においては初乗り運賃500円事業者3社を調査対象に加えている(乙23)。その選定理由は,原価計算対象事業者は従前から地域の標準的事業者として各種調査の対象としていたこと,初乗り運賃500円事業者は日勤勤務運転者を多く雇用していることによるものと認められる(弁論の全趣旨)が,このような選定理由による選定が不合理であると認めるに足りる特段の根拠もない。 c 原告らは,原告らとは事業形態が異なる調査対象事業者の平均値をもって,原告らにもあてはまる規制値を設定することは不当である旨主張する。 この点,GPS無線自動配車システムを採用し,それぞれの営業地域内に専用乗り場を設置しているというような原告らの営業形態を反映して,原告らは,空車のまま運転させ することは不当である旨主張する。 この点,GPS無線自動配車システムを採用し,それぞれの営業地域内に専用乗り場を設置しているというような原告らの営業形態を反映して,原告らは,空車のまま運転させながら利用者を探すという流しの方式による営業に依存する割合が同業者に対して低いものと認められる(京都市域の事業者の流しの割合が58.8パーセントであるのに対し原告Aは48.2パーセント,大阪市域の事業者の流しの割合が58.8パーセントであるのに対し原告Bは32.1パーセント,神戸市域の事業者の流しの割合が33.7パーセントであるのに対し原告Cは12.8パーセント。甲29)。 しかしながら,利用者を探しながら走行する流しの場合であっても,他の自動車の走行を阻害することのないよう交通の状況に応じ流れに沿った走行をするのが通常であると考えられるから,実車の場合に比べ流しの場合の走行速度が相当程度遅いとまでは認めることができない(なお,昭和33年に乗務距離の最高限度規制が開始される際に,東京特別区等の乗務距離の算定根拠として用いられた平均走行速度は, - 95 -実車のときが毎時29キロメートルであるのに対し,空車のときは毎時28キロメートルであって,さほどの差が設けられていない(甲31)。)。また,現実に,原告Bの全営業を通じた平均走行速度は毎時21.8キロメートルであり,原告Cの全営業を通じた平均走行速度は毎時21.6キロメートルであって,これらの数値は近畿運輸局長が大阪市域交通圏について計算した毎時21.3キロメートルとさほど変わらない(甲32)。そうすると,流しの比率が低いことをもって,原告らの乗務距離が伸びる傾向にあり,他の事業者の実態調査の数値に基づく規制をすることに問題があるとする原告らの主張は容れることができない。 d 2)。そうすると,流しの比率が低いことをもって,原告らの乗務距離が伸びる傾向にあり,他の事業者の実態調査の数値に基づく規制をすることに問題があるとする原告らの主張は容れることができない。 d 原告らは,調査対象事業者が,設定される乗務距離の最高限度がより短距離になるよう調査車両を恣意的に選定している可能性がある旨を主張する。しかし,調査対象事業者が調査車両を恣意的に算定したことを認めるに足りる的確な証拠はなく,原告らの指摘する可能性をもって近畿運輸局長の実態調査の結果が歪められたと認めることはできない。 e したがって,近畿運輸局長の選択した調査方法について原告らの主張する問題点があるとはいえない。 (イ) 平均運行速度の計算過程で用いられる数値の根拠等についてa 平均客扱い時間及び平均客待ち時間について原告らは,①平均客扱い時間及び平均客待ち時間が概算値に基づいていることは不当であること,②特に客扱い時間について10分,80分などという数値は正確性を著しく欠く旨を主張する。 まず,運輸規則25条1項各号が定める乗務記録の記載事項には客扱い時間や客待ち時間は含まれていないことに照らすと,近畿運輸局長が行った実態調査における客扱い時間や客待ち時間は調査対象事業 - 96 -者の担当者の感覚等に基づく回答がされたものと優に推認することができ,その回答結果は概算値であることは原告らの指摘するとおりである。しかし,それ以上正確な数値を把握できるような現実的な手法があるとは原告らも指摘しておらず,近畿運輸局長が客扱い時間や客待ち時間について概算値であることを前提に検討を進めたことが,合理性を欠くと認めることはできない。 次に,原告らは,タクシー事業の実態に照らし客扱い時間が10分あるいは80分という数値はおよそ考えられない について概算値であることを前提に検討を進めたことが,合理性を欠くと認めることはできない。 次に,原告らは,タクシー事業の実態に照らし客扱い時間が10分あるいは80分という数値はおよそ考えられないと指摘しているところ,客扱い時間が1乗務当たりの旅客の乗車,降車の対応時間であること(甲36)からすれば,10分,80分という客扱い時間が実態を反映した数値であるかについて疑問が残るといえる。もっとも,被告は,この10分,80分という客扱い時間を異常値として除外して本件算定方式によって計算をし直したとしても,大阪市域交通圏の日勤勤務運転者が法令上の最大拘束時間まで勤務し,通常走行した場合の乗務距離は250.9キロメートルとなる旨を主張し,原告らもこの主張を特段争っていないことに照らせば,原告らの指摘は直接本件公示が違法であるかという結論そのものに影響を及ぼすものとはいえない。 b 事業者別の平均運行速度について原告らは,近畿運輸局長は実態調査の調査対象となった事業者ごとに平均運行速度を計算すれば,明らかな異常値を含むものがあることが判明するにもかかわらず,何らの対処もしてない旨を主張する。確かに,大阪市域交通圏の日勤勤務運転者に関する調査結果に基づき事業者ごとに平均速度を計算すれば,平均運行速度が毎時291.2キロメートル,毎時75.7キロメートル及び毎時54.1キロメートルとなる事業者が存在し(甲41),これは明らかな異常値であると - 97 -優に認めることができるのであって,近畿運輸局長が当該事業者に対し問い合わせを行うなどして,数値の正確性を確認し,なお,それでも疑問点が解消されない場合には当該事業者からの回答結果の信頼性に問題があるとして当該回答結果を除外するなどの措置を講ずることも十分可能であった。しかるに,被告は 数値の正確性を確認し,なお,それでも疑問点が解消されない場合には当該事業者からの回答結果の信頼性に問題があるとして当該回答結果を除外するなどの措置を講ずることも十分可能であった。しかるに,被告は原告らの主張に対し何ら反論もしていないことに照らすと,近畿運輸局長はかかる異常値を看過していたものと推認することができる。そして,この点は,正確な平均運行速度が算出されなくなった可能性があることを示すだけではなく,近畿運輸局長が実態調査を統計上問題のない方法で取り扱っていないのではないかという調査結果の処理の信頼性をも揺るがすものといえる。 c 道路交通センサスとの比較原告らは,近畿運輸局長が算出した平均運行速度毎時21.3キロメートルは,国土交通省が実施した平成22年度道路交通センサスの昼間12時間平均旅行速度(大阪市内で毎時27.6キロメートル,神戸市内で毎時36.9キロメートル,京都市内で毎時23.9キロメートル)をいずれも下回っている旨を指摘し,近畿運輸局長の計算結果が明らかに不合理である旨を主張する。 しかし,上記各統計数値は,高速自動車国道,都市高速道路,一般国道,都道府県道,主要地方道たる市道を対象として得られたものであり(甲59,60,乙63),タクシーが走行する全ての道路を調査対象として得られた数値ではない。そして,上記各統計数値の対象となっていない道路にはいわゆる生活道路として,最高制限速度が道路標識により別途指定されているものも相当含まれていると推認されることも踏まえると,道路交通センサスの結果との比較から直ちに近畿運輸局長の算出結果が実態を反映しないものとまで断定することは - 98 -困難である。 (ウ) 原告Cの監査結果に基づく検討近畿運輸局長が平成22年9月2日,同月21日及び同年10月 運輸局長の算出結果が実態を反映しないものとまで断定することは - 98 -困難である。 (ウ) 原告Cの監査結果に基づく検討近畿運輸局長が平成22年9月2日,同月21日及び同年10月21日に原告CのD営業所において,同営業所所属の運転者の平成21年7月21日ないし同年8月20日の乗務記録及び運行記録計による記録に基づき,最高乗務距離違反と最高速度違反の関係について調査した結果によれば,本件公示の定める乗務距離の最高限度を超えた乗務について1度も最高速度違反が認められないものが存在した(甲56,乙33の1)。そして,当該乗務について労働時間規制等他の問題点があったともうかがえない。したがって,日勤勤務運転者が最高速度違反等の危険な運転をせず,また労働時間の規制を遵守していた場合であっても,本件公示の定める乗務距離の最高限度を超えることがあり得ることが近畿運輸局長による原告Cの監査結果からも明らかになったといえ,これは本件公示の定める乗務距離の最高限度が過剰な規制となっていることを裏付けている。 ウ小括以上のとおり,平均運行速度を計算の基礎として使用する本件算定方式によっては,最大拘束時間まで勤務し,通常の運行を行った場合における最大限走行可能な距離を求めることはできないこと(前記ア(ア)),本件算定方式を採用した近畿運輸局長は,夜勤の際に運行速度が速くなる傾向にあることを看過していること(前記ア(イ)),仮に,平均運行速度に代わる適切な運行速度を客観的に把握することができないため,やむを得ず平均運行速度を用いるのであれば,上記最大限走行可能な距離に接近するために,法令上最大限走行可能な時間をもって可能実ハンドル時間を把握すべきであるのに,近畿運輸局長は休憩時間を過剰に控除しているものといえること(前記ア - 記最大限走行可能な距離に接近するために,法令上最大限走行可能な時間をもって可能実ハンドル時間を把握すべきであるのに,近畿運輸局長は休憩時間を過剰に控除しているものといえること(前記ア - 99 -(ウ)),関東運輸局長も本件算定方式を採用しつつも隔日勤務運転者について得られた計算結果302キロメートルを直ちに採用せず,350キロメートルへの修正を施したこと(前記ア(エ)),近畿運輸局長は,事業者別の平均運行速度を吟味すれば異常値があることを認識し得たにもかかわらずこれを看過したこと(前記イ(イ)b),原告Cの監査結果によれば,勤務時間においても最高速度遵守の点でも特段の問題が指摘されていないにもかかわらず,1乗務当たり250キロメートルを超えて乗務をした日勤勤務運転者が存在しており,本件公示が過剰な規制となっているものといえること(前記イ(ウ))に照らせば,近畿運輸局長が本件算定方式によって乗務距離の最高限度を算出したことは合理的なものとはいえず,本件算定方式に基づく計算結果を基礎として定められた本件公示は,近畿運輸局長の裁量権の範囲を逸脱したものとして違法である。 (4) 高速自動車国道等の乗務距離の算入についてア高速自動車国道等の乗務距離の取扱いに関する規制態様について乗務距離の最高限度規制において高速自動車国道等の乗務距離をどのように取り扱うかについては,地方運輸局長ごとに規制態様を異にしている。 (ア) 高速自動車国道等の乗務距離を一切算入しないもの北海道運輸局長,東北運輸局長及び中部運輸局長は,高速自動車国道等の乗務距離を乗務距離に算入しない旨定めている(甲3,4,6)。 (イ) 高速自動車国道等の乗務距離を考慮するもの北陸信越運輸局長は,高速自動車国道等を走行した場合は,その走行距離を考慮する 等の乗務距離を乗務距離に算入しない旨定めている(甲3,4,6)。 (イ) 高速自動車国道等の乗務距離を考慮するもの北陸信越運輸局長は,高速自動車国道等を走行した場合は,その走行距離を考慮するものとする旨定めている(甲7)。 (ウ) 高速自動車国道等の種別に応じ乗務距離を算入するかどうか - 100 -の取扱いを区別するもの関東運輸局長は,首都高速道路株式会社の管理する自動車専用道は乗務距離に算入するが,これを除く他の高速自動車国道等の乗務距離は乗務距離に算入しない旨定めている(甲5)。 中国運輸局長及び九州運輸局長は,高速自動車国道の乗務距離を乗務距離に算入しない旨定めている(自動車専用道路は算入しないものとされておらず,算入されることとなる。)(甲8,9)。 (エ) 本件公示近畿運輸局長は,本件公示において,高速自動車国道等の乗務距離を原則として乗務距離に算入し,高速自動車国道等を1回の利用において連続して50キロメートル以上利用した場合にあっては,当該利用の距離にかかわらず,50キロメートルを利用したものとみなして乗務距離に算入する旨定めている(甲1)。なお,近畿運輸局長は,平成14年1月31日近運旅二公示第20号(ただし,平成17年10月1日近運自二公示第35号による改正後のもの)において,隔日勤務運転者の最高乗務距離について,高速自動車国道等の乗務距離について特段の定めを置いておらず,これを算入することを前提としていた(甲2,37)。 (オ) 本省事務連絡本省事務連絡は,最高限度を超えた場合であっても,高速自動車国道を走行している場合には,乗務記録等に高速自動車国道名,走行区間,走行距離,領収書等の客観的な事実を証する記載及び添付がなされている場合に限り,その走行距離を考慮することとする旨を定めて 動車国道を走行している場合には,乗務記録等に高速自動車国道名,走行区間,走行距離,領収書等の客観的な事実を証する記載及び添付がなされている場合に限り,その走行距離を考慮することとする旨を定めている。そして,乗務距離の最高限度を365キロメートルとした場合,一般道340キロメートル及び高速自動車国道60キロメートルのときは違反ではないものの,一般道365キロメート - 101 -ル及び高速自動車国道35キロメートルのときは違反であるなどという考慮の例が示されている。(乙21)イ高速自動車国道等の乗務距離の算入の可否について乗務距離の最高限度を規制する運輸規則22条は,運行管理の適正化を図ることを通じて過労運転や最高速度違反等の危険運転を防止して,もって主として輸送の安全の確保を図るものである。そして,運転者が高速自動車国道等を利用した場合においても,運転するに従い程度の別はともかくとして疲労が蓄積していき,過労運転につながる危険性が存在すると推認することができる。また,タクシーの運転者が高速自動車国道等において最高速度違反等の危険運転をするおそれも否定できない。したがって,近畿運輸局長が高速自動車国道等の利用に係る乗務距離を算入すべきとしたこと自体について,裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるとはいうことができない。 この点,原告らは,高速自動車国道等の方が一般道よりも事故率が少なく,運転者にとっては,高速自動車国道等よりも,一般道を走行する場合の方が,より運行に注意を払う必要があり,疲労の蓄積度合いも高いから,高速自動車国道等を利用した乗務は全て運輸規則22条1項所定の乗務距離から除外すべきである旨を主張する。しかし,高速自動車国道等の方が一般道よりも事故率が低いとしても高速自動車国道等において交通事故が発生している を利用した乗務は全て運輸規則22条1項所定の乗務距離から除外すべきである旨を主張する。しかし,高速自動車国道等の方が一般道よりも事故率が低いとしても高速自動車国道等において交通事故が発生していること(なお,高速自動車国道等の方が一般道よりも運行速度が速いから,より重大な事故につながる可能性が高いものといえる。)に照らすと,事故防止のための対策が必要になることは否定できないし,仮に高速自動車国道等における運行は一般道よりも疲労の蓄積度合いが低いとしても,疲労が全く蓄積していかないとは考え難いのであって,高速自動車国道等の運行の際に過労運転防止の必要性がないということはできないから,原告らの主張を容れることはできない。 - 102 -なお,原告らは,関東運輸局長が平成14年に乗務距離の最高限度を定める際に高速自動車国道等の乗務距離を算入しないことにしたことは,原告らの主張を裏付けている旨を指摘するが,関東運輸局長は首都高速道路株式会社の管理する自動車専用道の乗務距離は算入しているのであって(前記ア(ウ)),原告らの主張はその前提を欠く。 ウ高速自動車国道等の乗務距離の算入方法について近畿運輸局長は,前記ア(エ)のとおり,1回の利用において連続して50キロメートル以上高速自動車国道等を走行した場合には50キロメートルを限度としてその乗務距離を算入する旨を定めている。 (ア) 高速自動車国道等の運行速度について自動車を一定時間運転した場合において,高速自動車国道等での運転は一般道での運転よりも速く疲労が蓄積していくような一般的な科学的知見があるとは,全証拠及び弁論の全趣旨によっても認め難い。また,一般的に自動車の運行速度は高速自動車国道等の方が一般道に比べて速いことは経験則上も明らかであるが,国土交通省道路局企画課道路経済 的知見があるとは,全証拠及び弁論の全趣旨によっても認め難い。また,一般的に自動車の運行速度は高速自動車国道等の方が一般道に比べて速いことは経験則上も明らかであるが,国土交通省道路局企画課道路経済調査室が実施した平成22年度道路交通センサスによっても,例えば大阪市の一般道路計の混雑時旅行速度は毎時16.3キロメートル,昼間非混雑時旅行速度は毎時18.2キロメートル,昼間12時間平均旅行速度は毎時20.8キロメートルであるのに対し,高速道路計の混雑時旅行速度は毎時41.9キロメートル,昼間非混雑時旅行速度は毎時57.9キロメートル,昼間12時間平均旅行速度は毎時58.3キロメートルであって,高速自動車国道等を利用した場合の運行速度が一般道の場合の2倍以上であることが認められる(甲59,60,乙63。なお,道路交通センサスでは,高速道路計を高速自動車国道,一般国道の自動車専用道路及び都市高速道路の合計と,一般道路計を一般国道計(一般国道の自動車専用道路を含む。)と地方道計との合計とそれぞれ - 103 -整理されているが,大阪市内には一般国道の自動車専用道路が存在しない(甲59,乙63)から,道路交通センサスにおける高速道路計は大阪市内に関する限り高速自動車国道等と同視できる。)。 このように,一定時間当たりの疲労度の蓄積の度合いが高速自動車国道等においても一般道のそれを上回ることがなく,また高速自動車国道等における運行速度が一般道のそれよりも2倍以上であることに照らせば,仮に高速自動車国道等の乗務距離を乗務距離の最高限度規制の対象とするのであれば,高速自動車国道等における運行速度が一般道よりも速いことを適切に考慮する必要があるといえる(現に,本件公示の制定時に公表されていた「一般貸切旅客自動車運送事業に係る乗務距離による交替 るのであれば,高速自動車国道等における運行速度が一般道よりも速いことを適切に考慮する必要があるといえる(現に,本件公示の制定時に公表されていた「一般貸切旅客自動車運送事業に係る乗務距離による交替運転者の配置の指針について」(甲45)では,高速道路(ここでは,高速自動車国道及び自動車専用道路をいう。)を基準に乗務距離を設定し,一般道路(ここでは上記高速道路以外の道路をいう。)の乗務距離を2倍(北海道のみにおいて乗務する場合には1.7倍)に換算したものを加えることとしており,高速道路と一般道路との運行速度の差を勘案した指針を示している。)。 しかるに,近畿運輸局長は,本件公示制定に際し,高速自動車国道等における運行速度が一般道よりも速いことを何ら考慮していないのであるから,この点においても本件公示には裁量権の範囲を逸脱した違法があるといわざるを得ない。 なお,事前に運行経路がほぼ確定している高速バスなどとは異なり,具体的な利用者の最終降車地や経路の希望によって乗務ごとに運転する道路が異なるタクシー事業において,高速自動車国道等の乗務距離を一定割合で換算するという手法を採用すると,運転者にとって利用者の要望に応じて高速自動車国道等を利用した運送をした場合の1乗務当たりの乗務距離を迅速かつ的確に把握することが困難となることもあり得よ - 104 -う。しかしながら,かかる困難性があることを根拠に高速自動車国道等の乗務距離の換算を導入することができないというのであれば,その分乗務距離の最高限度の算定の際に高速自動車国道等を利用する場合があることをも考慮して適切な限度を算定すべきものというべきであって,高速自動車国道等の平均運行速度が一般道の2倍を超えるという特性を看過した本件公示のもとでは,高速自動車国道等をも利用した場合に通常の ことをも考慮して適切な限度を算定すべきものというべきであって,高速自動車国道等の平均運行速度が一般道の2倍を超えるという特性を看過した本件公示のもとでは,高速自動車国道等をも利用した場合に通常の走行によっても本件公示で定める乗務距離の最高限度を超える可能性がさらに増大するのであり,この点からも本件公示は合理性を欠くものといえる。 (イ) 高速自動車国道等の利用頻度を考慮した点についてa 近畿運輸局長は,実態調査を行った結果,運転者は高速自動車国道等を日常的に利用する反面,高速自動車国道等を1回の利用において50キロメートル以上利用することは極めてまれであるとうかがえたことから,利用者の利便を著しく損なわない観点から,1回の利用において連続して50キロメートル以上高速自動車国道等を走行した場合には50キロメートルを限度としてその乗務距離を算入する旨を定めた旨を主張する。 確かに,近畿運輸局長が実施した実態調査の結果によれば,本件指定地域内の事業者の運転者は,1日に0.1回ないし0.4回の程度で高速自動車国道等を利用していること(甲37)等を踏まえると,本件指定地域内の事業者の運転者が高速自動車国道等を日常的に利用するという評価が社会通念上不合理であるとまでは認め難い。 b 高速自動車国道等を走行し続ければ,自覚することができるかどうかはさておくとしても運転者の疲労は蓄積し続けると考えるのが合理的であって,高速自動車国道等を1回の利用において連続して50キロメートル以上走行する場合に50キロメートルの地点に達した後は - 105 -運転者の疲労の蓄積が生じないと考えることは極めて不合理であるといわざるを得ない。近畿運輸局長が1回の利用において連続して50キロメートル以上高速自動車国道等を走行した場合には50キロメートルを 運転者の疲労の蓄積が生じないと考えることは極めて不合理であるといわざるを得ない。近畿運輸局長が1回の利用において連続して50キロメートル以上高速自動車国道等を走行した場合には50キロメートルを限度としてその乗務距離を算入するという基準は,結局のところ,50キロメートル以上走り続けた後の疲労の蓄積を捨象するということにほかならない。そして,臨時的偶発性という基準を持ち込むのであれば,一般道においてまれに生じる長距離の走行についても利用者の利便の確保の観点から,同様に臨時的偶発的な場合には乗務距離に算定しないという例外を設けるべきということにもなりかねないが,近畿運輸局長はかかる例外を設けておらず,近畿運輸局長の臨時的偶発性に対する考え方は一貫性を欠くものといわざるを得ない。 したがって,近畿運輸局長が高速自動車国道等の利用についても乗務距離に算入すると定める以上,運行の臨時的偶発性を理由に50キロメートルを限度に乗務距離に算入するという規定を設けることは,輸送の安全確保という乗務距離の最高限度規制の目的とは相容れないのであって,その合理性は認められない。 エ小括以上の検討によれば,近畿運輸局長が本件公示において高速自動車国道等の乗務距離を乗務距離に算入すること自体は不合理とはいえないが,高速自動車国道等の運行速度が一般道のそれよりも速いことを看過して,乗務距離の換算等の対策を施すことなく単純に一般道の乗務距離に加算している点や,1回の利用において連続して50キロメートル以上高速自動車国道等を走行した場合には50キロメートルを限度としてその乗務距離を算入する点はいずれも合理性を肯定することはできず,本件公示はこれらの点において近畿運輸局長の裁量権の範囲の逸脱があったものとして違法であるといわざるを得ない。 - 106 してその乗務距離を算入する点はいずれも合理性を肯定することはできず,本件公示はこれらの点において近畿運輸局長の裁量権の範囲の逸脱があったものとして違法であるといわざるを得ない。 - 106 - 5 結論以上によれば,近畿運輸局長が本件公示を定めたことは,日勤勤務運転者につき乗務距離の最高限度を1乗務当たり250キロメートルと定めた点においても,高速自動車国道等の乗務距離につきその運行速度が高速度になることを看過した点においても,その裁量権の範囲を逸脱してされたものとして違法である。したがって,原告らの甲事件の予備的請求である本件確認の訴えに係る部分はいずれも理由がある。また,本件公示が違法である以上,その余の点(乙事件の固有の争点)を論ずるまでもなく,本件公示を適用してされた本件使用停止処分の取消しを求める原告Cによる乙事件の請求も理由がある(なお,本件使用停止処分を受けた原告CのD営業所は,処分の日(平成23年7月6日)から3年以内に乗務距離の最高限度に違反した場合には再違反として扱われることに照らすと,本件使用停止処分の取消しを求める訴えの利益は残存している。)。 よって,甲事件については,公示処分の一部取消しを求める原告らの主位的請求に係る訴え及び輸送施設の使用停止等の処分の差止請求に係る訴えをいずれも却下し,甲事件の予備的請求である本件確認の訴えに係る部分をいずれも認容し,乙事件については,原告Cの請求を認容することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法65条1項本文,64条本文,61条を適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官田中健治 - 107 -裁判官尾河吉久 裁判官長橋正憲 のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官田中健治 裁判官尾河吉久 裁判官長橋正憲

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る