令和7年9月29日宣告令和6年(わ)第742号判決被告人に対する殺人被告事件について、当裁判所は、裁判員の参加する合議体により、検察官大濱新悟、同伊東冬実、国選弁護人櫻庭陽向(主任)、同磯部真士各出席の上審理し、次のとおり判決する。 主文 被告人を懲役11年に処する。 未決勾留日数中250日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、令和6年9月4日午前7時頃から同日午前7時56分頃までの間に、北海道a市b町c番地d被告人方において、妻であるA(当時82歳。 以下「被害者」という。)に対し、殺意をもって、その頸部を腕等で絞め付けるなどし、よって、同月5日午前9時37分頃、同市e町f番地所在のB病院において、同人を頸部圧迫により窒息死させて殺害した。 (事実認定の補足説明)第1 本件の争点本件の事実関係のうち、被告人が、被告人方において、被害者の頸部付近に一定の暴行を加え、これによって被害者に頸部圧迫を生じさせて窒息死させたことは争いがない。本件の主たる争点は、被告人が、殺意をもって、被害者の頸部を腕等で絞め付けるなどしたか、すなわち加害行為の態様及び殺意の有無であり、弁護人は傷害致死罪の成立を主張する。 そこで、以下、当裁判所の判断を補足して説明する(なお、以下の日時は令和6年9月のそれを指す。)。 第2 行為態様について 1 C医師による解剖結果等からの考察⑴ 最終的な弁論をみると、弁護人も、C医師が被害者の死体を解剖した結果に係る捜査報告書及び同医師の公判供述のうち、被害者には頸部の前部に幅の広い皮下出血やこれに対応する筋肉内出血があった上、左右の甲状軟骨上角がいずれも完全に折れて断裂し、顔にもやや弱いうっ血及び溢血点 る捜査報告書及び同医師の公判供述のうち、被害者には頸部の前部に幅の広い皮下出血やこれに対応する筋肉内出血があった上、左右の甲状軟骨上角がいずれも完全に折れて断裂し、顔にもやや弱いうっ血及び溢血点があったこと、これらの状況からして、被害者が、索状物ではない、表面が比較的平滑で幅広く、かつ剛質ではない鈍体によって、頸部(上記皮下出血が生じている部分)をその前方から後方へ少なくとも二、三分間にわたり圧迫されたことは争っておらず、この点に関するC医師の上記供述等が専門的知見に基づくものとして信用できることは明らかである(なお、被害者は、本件当時、骨粗しょう症に関する服薬をしていたことが否定できないが、C医師によれば、被害者の死体を解剖した限り、特に骨が折れやすいようには見受けられなかったというのであるから、甲状軟骨の骨折に要した時間が通常人より大幅に短いことはなかったと認めてよい。)。 また、C医師は、被害者が4日午前7時56分頃にD巡査らにより発見された際に脳死状態であったが、後に施されたアドレナリン注射や心臓マッサージによって一時的に蘇生し、翌5日に死亡したという事情から、死因となった頸部圧迫が加えられたのは、上記発見から遡ること1時間以内である4日午前7時頃以降と推定されると述べており、この点の供述の信用性にも疑いを入れる余地はない。 ⑵ そこで、前記⑴の事情等から、被告人が被害者の頸部を腕等で絞め付けたと推認できるかどうかであるが、まず、C医師は、医師としての知見を交え、仰向けに倒れた人の頸部に上から力を加えた場合には、窒息させるのに時間が掛かり、抵抗もされやすいので、被告人は被害者の後ろから固定するように力を加えた、すなわち、後ろから頸部に腕等を回 し、絞め付けて窒息死させた可能性が高いと述べており、その意見は一 のに時間が掛かり、抵抗もされやすいので、被告人は被害者の後ろから固定するように力を加えた、すなわち、後ろから頸部に腕等を回 し、絞め付けて窒息死させた可能性が高いと述べており、その意見は一般の経験則に照らしても十分合理的といえる。 加えて、被害者は、前記のとおりD巡査らに発見された際、身体を少しひねりながら上半身をうつ伏せにした状態で倒れていたと認められ、これに人は失神した後は第三者が動かしでもしない限り通常体勢を変えることはないとのC医師の見解を考え併せると、被害者は頸部圧迫を受けていた際も上記の体勢であったとみるのが自然であり、このことからも、被告人が仰向けの被害者の頸部を上から圧迫したとは考え難い。 なお、被告人が凶器等の道具を用いた疑いはないから、被害者の頸部を圧迫したと想定できる鈍体は、基本的には腕であり、その他としてはせいぜい足くらいしか考えられない。 ⑶ 以上によれば、被告人は、被害者の頸部を、その後方から、自身の腕等を回して絞め付け続けるなどして圧迫したものと強く推認できる。 2 被告人の供述の信用性⑴ これに対し、被告人は、当公判廷において、「3日の夜おそらく午後10時30分頃以降に、それまでに被害者が勝手に私のパジャマを処分したのに謝らず、また私がトイレを汚したこと等を非難してきたため、被害者に謝罪させようと思って被害者を制止し、脱衣場の床に倒れた被害者の胸を右手で押さえ付けた。もみ合う中で被害者の首を上から瞬間的に押さえたこともあったと思うが、背後から首を絞めたことはない。その後、私はいつしか意識が飛んでしまっていた。外から義妹であるEの声等が聞こえて、脱衣場で翌朝を迎えたことに気付いた。被害者が『助けて。』と言ったので、被害者の口を塞いだ。また、私はどこかに手を着いて起き上がった。その頃 飛んでしまっていた。外から義妹であるEの声等が聞こえて、脱衣場で翌朝を迎えたことに気付いた。被害者が『助けて。』と言ったので、被害者の口を塞いだ。また、私はどこかに手を着いて起き上がった。その頃に被害者の手が私にぶつかったことで、被害者が息絶えたことに気付いた。」などと述べている。 ⑵ しかし、3日夜に仰向けの被害者の首を上から短時間押さえたとの点は、前記1で検討した被害者の損傷状況から推察される加害態様にも、加害行為が加えられた時間にも整合せず、これでは被害者の死亡を合理的に説明できない。また、4日朝方に不用意にどこかに手を着いたとの点についても、仮に手を着いたのが被害者の頸部だったとしても、C医師によれば、そのような瞬時の力では甲状軟骨上角が断裂したりなどはしないというのであり、やはり被害者の死亡を説明できない。加えて、被害者に謝罪させようとするのに胸部付近を押さえ続けたというのも、かえって被害者の発言を難しくするものともいえるし、被害者が一晩中脱衣場で倒れていたというのも不可解であって、供述内容自体もやや不自然である。なお、被告人は、後述するように「被害者が殺せと言ったので殺した」旨の発言を自身がしたことも否定しているが、信用できるE及びD巡査の各公判供述に反している。 ⑶ 被告人は、自己がパンツを脱いで下半身を露出するに至った状況等、否定する理由がなさそうな事情についても覚えていないと述べており、当裁判所が鑑定を命じたF医師による被告人供述の評価にも照らすと、被告人が意図的にうそをついているとまでは断定できず、事後的に、被害者の死に自己が寄与したことを認めたくないとの心理的機制が無意識に働いて記憶が変容したり、軽度認知障害等により記憶が欠落したりしている可能性も否定することはできない。しかし、被告人の公判供 、被害者の死に自己が寄与したことを認めたくないとの心理的機制が無意識に働いて記憶が変容したり、軽度認知障害等により記憶が欠落したりしている可能性も否定することはできない。しかし、被告人の公判供述は、被害者と揉めた経緯や同人ともみ合った状況について一定の真実を述べているとしても、犯行状況の全てが述べられているとは到底認められず、その点では信用できない。 3 弁護人の主張について⑴ 弁護人は、ア)被害者は、本件当時首にスカーフを巻いており、被告人が被害者の絞殺を企図したとすれば、スカーフで首を絞めなかった のは不自然である、イ)被害者が倒れていた脱衣場では、本件当時灯油が漏出して気化しており、これを被害者が吸引したことも被害者の死に影響した可能性が否定できない、などと主張した上で、ウ)被告人は、仰向けに倒れた被害者の胸元を押さえ付けていた手がずれた際に、(被告人が記憶している以上に)被害者の頸部を長時間にわたり押さえ付けた疑いが残ると主張する。 ⑵ しかし、アの点は、被害者が寝るときに首元が寒くないようにスカーフを巻いていたとすると、スカーフは首元でほどけないように結ばれていたと思われ、そうであるとすれば瞬時の絞殺に用いるには不都合であったともいえる。また、衝動的に首を絞めようとする際に、その手段を合理的に選択するとは必ずしもいえない。したがって、被告人がスカーフを利用しなかったことは被害者の頸部を絞め付けたとの推論に疑問を抱かせるものではない。 ⑶ イの点は、G医師の公判供述や本件当時の被告人方における灯油の漏出状況に関する関係証拠に照らせば、気化した灯油の吸引が被害者の健康状態に特段の影響を及ぼすものではなかったことは明らかである。 ⑷ そして、ウの点については、被告人が被害者の胸元を押さえていた手が首にず する関係証拠に照らせば、気化した灯油の吸引が被害者の健康状態に特段の影響を及ぼすものではなかったことは明らかである。 ⑷ そして、ウの点については、被告人が被害者の胸元を押さえていた手が首にずれたとすれば、被告人はすぐにその手を胸元に戻すはずであり、弁護人が主張するような経緯で頸部を長時間にわたり押さえ続けるという事態は考え難い。また、弁護人の主張する加害態様も、被害者が発見された際にうつ伏せであった状況と整合的でないことには変わりない。 この点、弁護人は、被告人は本件当時、認知障害、飲酒酩酊、睡眠不足、高齢、心理的ストレス及び脱衣場で漏れて気化していた灯油を吸引したことにより、せん妄状態にあったか、少なくとも異常な精神状態に あったから、自己の行動を認識できずに頸部を押さえ続けた疑いがあると主張する。 しかし、F医師による精神鑑定(以下「F鑑定」という。)の結果によれば、被告人の認知障害は軽度であって、易怒性や衝動性を幾ばくか高めた可能性があるにすぎないというのであるから、これによって被告人が被害者の死因となる本件加害行為に及んでいる際に自己の行為を認識できず、行為をやめることができなかったとは認められない。また、確かに被告人は、D巡査らが臨場後に、精神運動興奮やまとまりのない言動を呈していた上、記憶の脱落がある可能性も否定できないが、過去にせん妄が起きたこともなければ、本件後にせん妄が持続・反復したこともなかったことからすれば、仮に本件加害行為時にせん妄があったとしてもその程度は軽度であったとの評価も可能であるとのF鑑定の認定評価は採用できる。これに加え、被告人が、4日朝方にEが被告人方を訪問してきて被害者を呼んだのを聞いたこと、それで朝になっていると認識したこと、被害者が助けを呼んだためその口を塞いだこ 鑑定の認定評価は採用できる。これに加え、被告人が、4日朝方にEが被告人方を訪問してきて被害者を呼んだのを聞いたこと、それで朝になっていると認識したこと、被害者が助けを呼んだためその口を塞いだこと等の記憶は有していることも加味すると、少なくとも、本件加害行為当時、被告人が自らの行動を認識できないほどのせん妄による見当識障害があったとは認められない。その他、気化していた灯油を吸引したことが被告人の精神状態に特段の影響を及ぼしたとは認められないことは、被害者について述べたのと同様であるし、飲酒の点も、被告人の供述によれば酒を飲んだのは3日夜だというのであり、本件加害行為に及んだのが4日午前7時頃以降であることを前提に、同日午前7時56分頃に被告人方に臨場したD巡査らがいずれも被告人につき酩酊した様子や酒臭を感じなかったことも総合すると、本件加害行為時に被告人が飲酒による格別の酩酊状態にあったとは認められず、その他弁護人が主張する事情を検討しても、被告人が自己の行動の意味が 分からず行動を制御できなくなるような異常な精神状態にあったとは認められない(なお、F鑑定及びG医師の公判供述について、信用性に疑いを抱かせるような点はない。)。 したがって、弁護人の主張は採用できない。 4 結論以上によれば、被告人は、被害者の頸部を自身の腕等で絞め付けるなどして、被害者を窒息死させたと認められる(なお、被告人がそのような行為に出たのは4日午前7時頃から同日午前7時56分頃であったと認められる。)。 第3 殺意の有無について 1 殺意を推認させる積極的事情⑴ 頸部という身体の枢要部を、背後から腕等で強い力を加えて、少なくとも二、三分にわたり絞め付け続ける行為は、一般人からしても人を死亡させる危険性が高い行為である。そして、被 推認させる積極的事情⑴ 頸部という身体の枢要部を、背後から腕等で強い力を加えて、少なくとも二、三分にわたり絞め付け続ける行為は、一般人からしても人を死亡させる危険性が高い行為である。そして、被告人が、本件犯行当時、自らの行動を認識できないといった異常な精神状態にあったとは認められない。被告人が、当初は被害者を手荒な手段を使って床に押さえ付け、それでも被害者が被告人の謝罪の求めに応じないことに怒りが高じるなどして、衝動的に被害者の頸部を絞め付け続けたと考えられること等に照らすと、被告人に意図的な殺意があったとまでは認められないものの、上記のような行為態様は、少なくとも、被告人が当該行為により被害者が死ぬかもしれないがそれでも構わないという程度の殺意を有していたことを十分推認させる。 ⑵ 加えて、E及びD巡査は、同巡査が被告人方への立入りを始めた4日午前7時56分頃に、また、D巡査においては被告人がその後過呼吸で救急搬送された救急車の中でも、被告人が「被害者が殺せと言ったから殺した」旨の発言をしたと述べており、そのような事実があっ たことが認められる(なお、D巡査と共に臨場したH係長は、被告人の「被害者が殺せと言った」旨の発言部分について供述していないが、初動捜査という種々の観察を要する場面において全てを記憶できなかったものとも考えられるから、具体性をもって整合しているE及びD巡査の各供述の信用性を左右するものではない。)。 そして、この発言が本件加害行為からさほど時間が経っていない時期のものである上、前記のとおり被告人が特に異常な精神状態ではなかったことからすれば、「被害者を殺した」との発言は、少なくともその頃は被告人が自己の強い加害行為によって被害者を死亡させたことを記憶しており、それが意外なことではなかっ が特に異常な精神状態ではなかったことからすれば、「被害者を殺した」との発言は、少なくともその頃は被告人が自己の強い加害行為によって被害者を死亡させたことを記憶しており、それが意外なことではなかったことを表現したものとうかがわれ、この事実も被告人に殺意があったとの推認を支えるものといえる。 ⑶ なお、被告人は柔道の有段者であり、相手の首を絞めて意識を失わせる加減は心得ていたはずであるから、そうであるのに甲状軟骨が断裂するほど被害者の頸部を絞め付け続けたことも、被告人の殺意をうかがわせるものといえ、被害者を絞め落とそうとして誤って死亡させたとは考えられない。 2 弁護人の主張これに対し、弁護人は、被告人には被害者を殺害するほどの動機がないと主張する。しかし、犯行前日に被害者に無断でパジャマを捨てられたとして憤慨し、さらに被告人がトイレを汚したこと等を被害者から非難されたことにも逆上して、被害者に対し強く謝罪を求め、同人を押さえ付けたものの、同人が譲らないためいっそう激怒したという被告人が述べる経緯や、被告人は覚えていないと述べるものの、その経緯の中で被害者の右大円筋が断裂しており、被害者側の力が加わった可能性を加味しても被告人がかなり強い力で被害者の右腕を引っ張るなどの手荒な行為に及 んだと推認されること、さらに被告人はもともとの性格上易怒性、衝動性に高いところがある上に、軽度認知障害を有していること等からすると、被告人が上記のような経緯から、粗暴な行動を更に激化させて、前記1⑴で検討した程度の未必の殺意を抱いたとしても不自然ではなく、殺人の動機として了解できないとはいえない。その他、弁護人の主張を種々検討しても、殺意を疑わせるような特段の事情は見出せない。 なお、殺意を否認する被告人の公判供述については、その前提 然ではなく、殺人の動機として了解できないとはいえない。その他、弁護人の主張を種々検討しても、殺意を疑わせるような特段の事情は見出せない。 なお、殺意を否認する被告人の公判供述については、その前提となる行為態様に関する供述から信用できないことは既に述べたとおりである。 3 結論以上によれば、被告人は、少なくとも自らの行為により被害者が死亡するかもしれないがそれでも構わないとの殺意があったと認められる。 (なお付言すると、前記のとおり、被告人はD巡査らに対し、「被害者が殺せと言ったので殺した」旨説明しており、関係証拠に照らしても、現に被害者が被告人に対して自分を殺せなどと発言したことは否定できない。しかし、被害者は、3日の日中もEと楽しく語らうなどしており、本件後に野球観戦の予定もあったのであって、長年被告人の言動に辟易していたとはいえ、自死を考えていた様子は何らうかがわれないから、被害者の前記発言は、被告人から手荒に押さえ付けられても要求に応じたくないがための、売り言葉に買い言葉であって、真に死ぬつもりで被告人に自己の殺害を嘱託したものではないと認められる。また、被告人も被害者が真に死にたがっていると認識してはいなかったと認めるのが相当であり、「被害者が殺せと言ったので殺した」との説明は、被害者から「殺せ」と言われたことが殺意を覚えた一因であったことを述べたにとどまるものであって、その言葉を真に受けて殺してあげたとの趣旨ではないと考えられる。したがって、被告人には嘱託殺人罪ではなく通常の殺人罪が成立する。) (量刑の理由) 1 本件の内容に照らし、当裁判所は、けんか又は非典型的な家族関係を動機とし、凶器を用いずに殺人既遂1件を犯した事案の量刑傾向を参考に、被告人の刑を検討した。 2 そのような事案の中でみると ) 1 本件の内容に照らし、当裁判所は、けんか又は非典型的な家族関係を動機とし、凶器を用いずに殺人既遂1件を犯した事案の量刑傾向を参考に、被告人の刑を検討した。 2 そのような事案の中でみると、被告人は、自身も高齢であるとはいえ、柔道の有段者で被害者とは体格や力の差がありながら、同人の背後から腕等を回すという抵抗を難しくするような方法で、甲状軟骨がいずれも完全に折れるまで頸部を絞め付け続けたものであり、殺害態様は相応に危険である。 被告人が本件殺害に及んだ直接の動機は判然としないものの、前述した怒りが高じた末に、犯行に至ったものと考えられ、パジャマを処分されたことへの憤慨には理解できない面もないではないが、被害者が謝らないなどという理由で殺害にまで及ぶのは身勝手かつ理不尽であって、動機も悪質である。なお、被害者が殺してくれなどと発言したことについては、前記のとおり、本件犯行を決意したことに大きな影響を及ぼしたとは認められない。また、軽度認知障害等が易怒性や衝動性を高めるなどした程度は限定的であったと認められる。 そうすると、強い殺意があったとは認められないことを踏まえても、その犯情は、前述した同種事案の中では比較的重いと評価できる。 3 加えて、被告人の供述は意図的なうそとまではいえず、本件に関する被告人の記憶が変容・欠落している疑いも否定できないものの、被告人は、被害者の死亡や本件の捜査・公判審理を受けても自身が引き起こした事実と向き合う様子はなく、反省を見出すことは困難である。さらに、そうした被告人の態度から、主要な遺族である二人の娘及び被害者の妹がいずれも被告人に対する怒りや厳しい処罰感情をあらわにしていることも無視できない。なお、被告人の兄が被告人の身を案じることを約束しているが、 被告人の刑期を踏まえる 人の娘及び被害者の妹がいずれも被告人に対する怒りや厳しい処罰感情をあらわにしていることも無視できない。なお、被告人の兄が被告人の身を案じることを約束しているが、 被告人の刑期を踏まえると斟酌するにも限度がある。 これらの情状等を考慮すると、被告人を主文の刑に処するのが相当である。 (求刑-懲役12年、弁護人の科刑意見-傷害致死罪を前提に懲役3年)令和7年10月2日札幌地方裁判所刑事第3部 裁判長裁判官渡邉史朗 裁判官西功 裁判官小松美緖
▼ クリックして全文を表示