【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 被告人は無罪。 理 由 弁護人竹野竹三郎の控訴趣意第二点について。 原判決が、建物の一部の仮処分において、いわゆる現状
主文 原判決を破棄する。 被告人は無罪。 理由 弁護人竹野竹三郎の控訴趣意第二点について。 原判決が、建物の一部の仮処分において、いわゆる現状の変更ありというのは本件のように住居でない場合においては単に形体だけでなく使用状況を含めて観察判定すべきであり、店舗の使用状況を全く変更する手段としたような場合にはたとえ形体的には些少の変更であつても現状の変更ありと解すべきものとし、本件三畳の板敷部分に畳を敷いたこと及び店舗屋根上に公益社なる看板の掲出をもつて仮処分にいわゆる「現状の変更あり」と判定したことは所論のとおりである。 ところで原判決挙示の証拠及び当審における事実取調の結果によると本件仮処分はAから被告人等に対する家屋明渡請求訴訟の勝訴判決の執行を保全するためなされたものであり、その対象はかねて被告人がBから転借していた原判示道路に面した部分たる室であつて(原料決では店舗と判示してあるが仮処分決定では明らかに室との記載がある。)土間とこれに隣接する高さ一尺位の三畳位の板張部分を指称すること及び右板張部分の内一畳分は敷居に比し畳厚さ分だけ低く粗面五分板が敷並べてあり一見畳敷用板間なるに対し、他の一畳分は敷居同高の板床になつており、本件仮処分後被告人において畳敷用板間に二帖の畳を敷き他の一畳分板床に上敷を敷いたものであるが、いずれも容易に撤去し得る状態にあつたこと、さらに原判示公益社と表示する看板は道路に面した屋根上に掲げられてあり右いわゆる室とは何ら関係のないことがそれぞれ窺われるのである。思うに刑法第九十六条にいわゆる「公務員の施した差押の標示を無効ならしめた」というのは標示そのものを物質的に害さなくてもその効力を事実上滅却しまたは減殺した場合をも包含するものと解すべきであるから 思うに刑法第九十六条にいわゆる「公務員の施した差押の標示を無効ならしめた」というのは標示そのものを物質的に害さなくてもその効力を事実上滅却しまたは減殺した場合をも包含するものと解すべきであるから、仮処分標示において仮処分債務者の使用を許容する条件として現状の変更を禁じてある以上は形体上どんな些少な変更であつても一応これに該当し差押標示を実効なからしめたものとして同条の要件を具備するもののごとくであるが、仔細に考察すると必ずしも一概にしかく断定するを得ないものがある。 <要旨>すなわち仮処分が本件のような建物の一部である場合それ自体の変更たとえば床を落し土間としたりその反</要旨>対のような変更は別問題であるが、そうでなくそれ以外の所在物体の状況等を全然変更しないで使用するということは建物の社会生活上占める役割に鑑みはとんど不可能であるのみならず、本件のように執行吏が係争中の室を一応自己の保管に移しさらにこれを現状不変更を条件として室従来どおり使用を許すのは、本案訴訟たる家屋明渡勝訴判決に基いて強制執行をしようとする場合に占有が第三者に転々したり、あるいは現状が著しく変更することにより執行が不能になつたり著しく困難となることを未然に防止する保全手段であり、従つてかかる恐れの全然ないような動産を置くことによる室内状況の些少の変更のごときは仮処分によつて保全しようとする目的とは何ら背馳牴触することはないから特別の事情のないかぎり仮処分にいわゆる現状の変更なしと判定すべきであり、さらに強制執行は性質上債務者の意思とは無関係に実施されるものであるから本案判決執行の難易は主として客観的外形によるべく特別の事情がないかぎり形体異動に関する債務者の意図がどこにあるかというような点は必ずしも重視するを要しないものというべく、これを要するに仮処分におけ 本案判決執行の難易は主として客観的外形によるべく特別の事情がないかぎり形体異動に関する債務者の意図がどこにあるかというような点は必ずしも重視するを要しないものというべく、これを要するに仮処分における現状変更の有無の限界は仮処分の対象自体に関するかどうかということ及びその形体異動の客観的状況と共に使用を許した本来の趣旨と仮処分による保全目的との調和点において健全な社会通念に従い妥当に判定すべきである。 これを本件にみるに(一)冒頭屋根上の看板の点は仮処分の対象たる室の範囲外なること明白であるから仮処分執行の効力の及ぶべきいわれはないし、また(二)畳上敷等三枚は勝訴判決に基ずき室自体の明渡執行をする場合でもこれが撤去はきわめて容易であり、少くともこれあるのゆえをもつて執行の困難をきたすとはとうてい考えられないのみならず、叙上畳敷用板張部分等に畳等を敷き使用に便利ならしめることはいやしくも室の使用を許容する以上、社会通念上当然許容さるべき範囲内と解すべきであるから、特別事情の認め得ない本件にあつては前叙の理によりいわゆる「現状の変更あり」とはとうてい認め難く、以上結論は被告人が畳上敷を敷くに至つた目的が従来久しく使用していなかつた本件室をあらたに葬儀業の店舗としようとするに至つたためであると否とによつて差異を生ずるものではない。 しかるに原判決が以上看板の掲出及び畳等を敷いたことをもつて仮処分にいわゆる現状の変更をしたものと認定したのは判決に影響すべき事情の誤認ありというの外なく論旨はその理由がおる。 よつて爾余の控訴趣意に対する判断を省略し刑事訴訟法第三九七条第三八二条第四〇〇条但書により原判決を破棄しさらに判決をする。本件公訴事実たる被告人の所為は何ら仮処分の標示を無効ならしめたものというを得ず従つて罪とならないから刑事訴訟法第四〇 訴訟法第三九七条第三八二条第四〇〇条但書により原判決を破棄しさらに判決をする。本件公訴事実たる被告人の所為は何ら仮処分の標示を無効ならしめたものというを得ず従つて罪とならないから刑事訴訟法第四〇四条第三三六条に則り無罪を言渡すべきである(裁判長判事梶田幸治判事井関照夫判事竹中義郎)
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