主文 原判決中被告人Aに関する部分を破棄する。同被告人を懲役六月に処する。ただしこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。原審における訴訟費用のうち、証人B(ただし昭和四四年一〇月六日同人に支給したものを除く)、同B1、同B2、同B3、同B4、同B5、同B6、同A1、同B7、同B8、同B9、同B10、同B11、同B12(昭和四四年五月二六日支給分)、同B13、同B14に支給した分、及び証人B15、同B12(昭和四五年一〇月一二日および同年一一月一二日各支給分)、同B16、同B17、同B18、同B19、同B20、同B21、同B22、同B23、同B24、同B25に支給した分の二分の一は、同被告人の負担とする。被告人A1の本件控訴を棄却する。理由 本件控訴の趣意は、被告人Aの弁護人前田知克作成及び被告人両名の弁護人米田軍平、同竹内信一、同水田博敏連名作成の各控訴趣意書記載のとおりであるので、これらを引用する。弁護人前田知克の控訴趣意について。論旨一は、原判示第一の公務執行妨害、傷害の事件当時、被告人Aは、左手にカバンをさげてBの乗つていたC丸に乗り移つたところ、同人から乱暴されたので防禦のためやむを得ず右手で同人を殴打したものである、として、事実誤認を主張するものである。しかしながら、記録を精査して検討するに、原判決挙示の関係証拠によれば、事件当日の朝船でD港についた同被告人は、C丸上でE組合の責任者が立会人として乗船して来るのを待つていたBに対し、前日の打合せ会のことや当日の立会人の人数のことなどで非難したすえ、自らC丸に乗り移り、やにわに左手で同人の胸ぐらをつかみ右手拳で同人の顔面を殴打したものであることが明らかであり、所論主張のご し、前日の打合せ会のことや当日の立会人の人数のことなどで非難したすえ、自らC丸に乗り移り、やにわに左手で同人の胸ぐらをつかみ右手拳で同人の顔面を殴打したものであることが明らかであり、所論主張のごとく、同人においてまず同被告人に乱暴したことを認めるに足りる証拠はない。 たすえ、自らC丸に乗り移り、やにわに左手で同人の胸ぐらをつかみ右手拳で同人の顔面を殴打したものであることが明らかであり、所論主張のご し、前日の打合せ会のことや当日の立会人の人数のことなどで非難したすえ、自らC丸に乗り移り、やにわに左手で同人の胸ぐらをつかみ右手拳で同人の顔面を殴打したものであることが明らかであり、所論主張のごとく、同人においてまず同被告人に乱暴したことを認めるに足りる証拠はない。同被告人は、原審及び捜査段階で所論主張のごとく供述し、B12は原審においてそれにそうかのごとき証言をしているが、前記各証拠に照らし到底信用することができない。論旨は理由がない。同二の(一)は、従前のBのE組合あるいは同被告人に対する態度からすれば、右事件当時、同人において先に手を出したということも充分考えられ、そうすれば正当防衛が成立するのに、一方的に同被告人に罪責を問うことは、疑わしきは被告人の利益にという法理に反する、として、法律の解釈適用の誤りを主張するが、記録によれば、前述のごとく同被告人において一方的に暴行を加えたものであることが明らかであるから、所論は採用できない。同二の(二)は、右事件当時、同人はまだ公務の執行に着手しておらずまたその直前ともいえないし、さらに同被告人の行為は同人の公務の執行とは無関係になされたもので、同被告人には公務に関係があることの認識もなかつたのに、これに公務執行妨害罪の成立を認めた原判決には法律の解釈適用の誤りがあると主張する。この点につき原判決は、「Bは兵庫県技術吏員で同県農林部水産課技師として、漁業調整等の職務を担当していたものであるが、同県a町における海苔養殖場設置のための区画漁業権設定に関し、その漁場測量を行うため、出発準備を完了して右測量に赴こうとしている際に、被告人Aから判示の如き暴行を受けたもの」である旨認定し、「それは職務の執行の準備的段階であるとはいえ、もはや職務の執行に接着した状況にあつたもので、単に職務を 了して右測量に赴こうとしている際に、被告人Aから判示の如き暴行を受けたもの」である旨認定し、「それは職務の執行の準備的段階であるとはいえ、もはや職務の執行に接着した状況にあつたもので、単に職務を執行すべき場所に赴く途中であるというに過ぎないものであるとは解せられず、まさに職務の執行に着手しようとしたときであつて、職務を執行するに当りという場合に該当する」としている。 状況にあつたもので、単に職務を 了して右測量に赴こうとしている際に、被告人Aから判示の如き暴行を受けたもの」である旨認定し、「それは職務の執行の準備的段階であるとはいえ、もはや職務の執行に接着した状況にあつたもので、単に職務を執行すべき場所に赴く途中であるというに過ぎないものであるとは解せられず、まさに職務の執行に着手しようとしたときであつて、職務を執行するに当りという場合に該当する」としている。しかしながら、刑法九五条一項に定める公務執行妨害罪は、公務員によつて行われる公務の公共性にかんがみ、その適正な執行を保護しようとするものであるから、その保護の対象となる職務の執行は具体的、個別的に特定されていることを要するものと解すべきであり、しかも右条項に「職務ヲ執行スルニ当リ」と限定的に規定されている点からして、公務員が具体的、個別的に特定された職務の執行を開始してからこれを終了するまでの時間的範囲及びまさに当該の職務の執行を開始しようとしている場合のように当該職務の執行と時間的に接着しこれと切り離し得ない一体的関係にあるとみることができる範囲内の職務行為にかぎつて、公務執行妨害罪の保護の対象になるものと解すべきである(最高裁昭和四二年(あ)第二三〇七号同四五年一二月二二日第三小法廷判決・刑集二四巻一三号一八一二頁参照)。<要旨>このような見地に立つて本件をみるに、Bの職務は、兵庫県農林部水産課の技師として、同県飾磨郡</要旨>a町における海苔養殖場設置のための区画漁業権設定に関しその漁場測量を行うことであるが、同人の原審証言によれば、その漁場は家島周辺に位置するものであるところ、本件事件当時同人は、b島の漁港内にけい留されていたC丸船上で同被告人らの属するE組合の責任者が立会人として乗船してくるのを待つていた段階にすぎないのであるから、当時測量器具、海図等の積 るところ、本件事件当時同人は、b島の漁港内にけい留されていたC丸船上で同被告人らの属するE組合の責任者が立会人として乗船してくるのを待つていた段階にすぎないのであるから、当時測量器具、海図等の積み込みを終り出発の準備が完了していたとしても、まだ職務の執行中でないことはもとよりまさにこれを開始しようとしている場合とも認められず、この段階における同被告人の暴行は同人の職務の執行に当り加えられたものということはできず、同被告人に公務執行妨害罪の刑責を問うことは許されない。 同被告人らの属するE組合の責任者が立会人として乗船してくるのを待つていた段階にすぎないのであるから、当時測量器具、海図等の積み込みを終り出発の準備が完了していたとしても、まだ職務の執行中でないことはもとよりまさにこれを開始しようとしている場合とも認められず、この段階における同被告人の暴行は同人の職務の執行に当り加えられたものということはできず、同被告人に公務執行妨害罪の刑責を問うことは許されない。これに反する原判決は法律の解釈適用を誤つたもので判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、公務執行妨害罪の認識等についてのその余の論旨についての判断を待つまでもなく破棄を免れない。論旨は理由がある。同二の(三)は、同人の従来の権力濫用ともいうべき職務の執行に対し、同被告人が抵抗権の行使として本件行為に及んだものであるから、その違法性は阻却されるべきものであるのに、これを採用しなかつた原判決は法律の解釈適用を誤つたものである旨主張するが、記録を調べても、同人の職務の執行に所論のごとき権力濫用があつたとは認められず、事件前日同人らが家島に赴かなかつたのは時間の不足と交通の便がなかつたからにすぎないのであるから、これによつて同人に原判示のごとき傷害を加えることの違法性を阻却するものではない。論旨は理由がない。弁護人米田軍平他二名連名作成の控訴趣意について。論旨第一点は、被告人らの原判示第二の所為はF党の政策宣伝活動に従事した組合員に日当を支給したにすぎないとして、事実誤認を主張するものである。そこで検討するに、原判決挙示の関係証拠によれば、被告人らの属するE組合では、かねてから衆議院議員としてGを応援し、昭和四四年一二月二七日施行の衆議院議員選挙に際しても、立候補届出 るものである。そこで検討するに、原判決挙示の関係証拠によれば、被告人らの属するE組合では、かねてから衆議院議員としてGを応援し、昭和四四年一二月二七日施行の衆議院議員選挙に際しても、立候補届出の日に寄附金を寄せるなどして同候補を応援していたものであるところ、被告人らは、a町において同候補の街頭演説会及び個人演説会を開催し、同組合による同候補支援の気勢を上げるとともに他の有権者らの支持を得ようと考え、同候補の選挙事務所と折衝していたが、同年一二月二二日の予定日には、同候補の街頭演説のための標旗をa町に持参することができないことになつたので、F党の政策宣伝活動の名のもとに同候補の街頭演説会を開催しようと企て、当日同組合の組合員約四〇名を招集してこれらの者とともに、b島及び家島で同候補のための連呼あるいは応援演説を行うなどして投票依頼等の選挙運動をし、それに対する報酬としてB15ほか三五名に原判示のごとく一人二、〇〇〇円ないし一、〇〇〇円を供与したものであつて、所論のごとくF党の政策宣伝活動ではなかつたことが明白である。 とになつたので、F党の政策宣伝活動の名のもとに同候補の街頭演説会を開催しようと企て、当日同組合の組合員約四〇名を招集してこれらの者とともに、b島及び家島で同候補のための連呼あるいは応援演説を行うなどして投票依頼等の選挙運動をし、それに対する報酬としてB15ほか三五名に原判示のごとく一人二、〇〇〇円ないし一、〇〇〇円を供与したものであつて、所論のごとくF党の政策宣伝活動ではなかつたことが明白である。論旨は理由がない。同第二点は、被告人らによる本件行動及び金員の支給は、すべて組合の決定によるものであり、被告人らの判断は介在しないのであるから、被告人らに本件の罪責を問うた原判決は、法令の解釈適用を誤つたものであると主張するが、記録によれば、同年一二月二二日同候補のため選挙運動を行うことを決めたこと及びそれに参加した者に報酬を支給することを決定したのは、すべて被告人らの意思によるものであることが明らかであるから、これに本件違反の罪責を問うた原判決に所論の誤りはない。論旨は理由がない。同第三点は、量刑不当を主張するものであるが、被告人Aについては後記自判の際自ずから判断が示されるので、ここでは被告人A1の量刑について の罪責を問うた原判決に所論の誤りはない。論旨は理由がない。同第三点は、量刑不当を主張するものであるが、被告人Aについては後記自判の際自ずから判断が示されるので、ここでは被告人A1の量刑について検討するに、同被告人が被告人Aと共謀のうえ、原判示のごとく計三六名に一人当り二、〇〇〇円ないし一、〇〇〇円の選挙運動報酬を供与した行為は、選挙の自由公正を害すること著しいものがあり、その刑責は軽視することができないのであるから、懲役四月執行猶予三年の原判決の刑が重すぎるとは認められない。論旨は理由がない。以上のとおり、原判示第一の事実には判決に影響を及ぼすこと明らかな法令適用の誤りがあるので、これと併合罪の関係にあるとした被告人Aの原判決はすべて破棄を免れないから、刑訴法三九七条一項、三八〇条により原判決中同被告人に関する部分を破棄し、同法四〇〇条但書によりさらに判決することとする。(罪となるべき事実)原判示第一の事実中「もつて同人の公務の執行を妨害し」とある部分を削除するほか原判示のとおりであるのでこれを引用する。(ただし原判決添付の一覧表中、番号4の受供与者欄に中村政一とあるのはB17の、番号9の供与場所及び受供与者欄に福山惣治とあるのはB21の誤りであるので、それぞれその旨訂正する。 り原判決中同被告人に関する部分を破棄し、同法四〇〇条但書によりさらに判決することとする。(罪となるべき事実)原判示第一の事実中「もつて同人の公務の執行を妨害し」とある部分を削除するほか原判示のとおりであるのでこれを引用する。(ただし原判決添付の一覧表中、番号4の受供与者欄に中村政一とあるのはB17の、番号9の供与場所及び受供与者欄に福山惣治とあるのはB21の誤りであるので、それぞれその旨訂正する。)(証拠の標目)(省略)(法令の適用)刑法二〇四条、昭和四七年法律第六一号による改正前の罰金等臨時措置法三条一項一号(懲役刑選択)、公職選挙法二二一条一項三号、刑法六〇条(懲役刑選択)、同法四五条前段、四七条本文、一〇条(原判示第一の罪の刑に加重)、二五条一項、刑訴法一八一条一項本文被告人A1については、刑訴法三九六条により本件控訴を棄却する。よつて主文のとおり判決する。(裁判長裁判官細江秀雄裁判官西田篤行裁判官近藤和 )、二五条一項、刑訴法一八一条一項本文被告人A1については、刑訴法三九六条により本件控訴を棄却する。よつて主文のとおり判決する。(裁判長裁判官細江秀雄裁判官西田篤行裁判官近藤和義)
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