令和4年3月10日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(ワ)第201号損害賠償請求事件(以下「第1事件」という。)令和2年(ワ)第33号損害賠償請求事件(以下「第2事件」という。)口頭弁論終結日令和3年9月30日判決主文 1 被告は,別紙「認容額一覧表」及び別紙「認容額一覧表(承継人)」の「原告番号」欄に記載のある各原告に対し,下記の金員を支払え。 ⑴ これら別紙の各原告に対応する「損害額合計」欄記載の金員⑵ これら別紙の各原告に対応する「始期月額」欄記載の金員に対する「始期」欄記載の日の属する月の翌月1日から支払済みまで年5分の割合(ただし,「始期」欄記載の日の属する月が令和2年4月以降の月である場合においては,「始期月額」欄記載の金員に対する当該月の翌月1日から支払済みまで年3分の割合)による金員⑶ これら別紙の各原告に対応する「始期」欄記載の日の属する月の翌月から「終期」欄記載日の属する月の前月までの間,暦上の月ごとに,1か月当たり各対応する「単位損害賠償額(月額)」欄記載の金員に対する当該月の翌月1日から支払済みまで年5分の割合(ただし,暦上の月が令和2年4月以降の月である場合においては,「単位損害賠償額(月額)」欄記載の金員に対する当該月の翌月1日から支払済みまで年3分の割合)による金員⑷ これら別紙の各原告に対応する「終期月額」欄記載の金員に対する「終期」欄記載の日の属する月の翌月1日から支払済みまで年5分の割合(ただし,「終期」欄記載の日の属する月が令和2年4月以降の月である場合においては,「終期月額」欄記載の金員に対する当該月の翌月1日から支払済みまで年3分の割合)による金員 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,全事件を通じ, 場合においては,「終期月額」欄記載の金員に対する当該月の翌月1日から支払済みまで年3分の割合)による金員 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,全事件を通じ,これを9分し,その4を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,この判決が被告に送達された日から14日を経過したときは,仮に執行することができる。ただし,被告が別紙「認容額一覧表」及び別紙「認容額一覧表(承継人)」の「原告番号」欄に記載のある原告らに対し,同原告らに各対応する「担保額」欄記載の各金員の担保を提供したときは,担保を提供した原告との関係でその執行を免れることができる。 事実 及び理由以下,略語については,本文中に記載するほか,別紙「略語表」記載のとおりとする。 第1章請求1⑴ 被告は,別紙「請求額一覧表(第1事件)」記載の原告らに対し,別紙「請求額一覧表(第1事件)」記載の各原告に対応する「請求総額」欄記載の金員及び「うち金額」欄記載の金員に対する平成30年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 被告は,別紙「請求額一覧表(第1事件)」記載の原告らに対し,平成30年7月1日から令和3年9月30日までの間,暦上の月ごとに,1か月当たり別紙「請求額一覧表(第1事件)」記載の各原告に対応する「請求月額」欄記載の金員及びこれに対する当該月の翌月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2⑴ 被告は,別紙「請求額一覧表(第2事件)」記載の原告らに対し,別紙「請求額一覧表(第2事件)」記載の各原告に対応する「請求総額」欄記載の金員及び「うち金額」欄記載の金員に対する令和2年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 被告は,別 紙「請求額一覧表(第2事件)」記載の各原告に対応する「請求総額」欄記載の金員及び「うち金額」欄記載の金員に対する令和2年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 被告は,別紙「請求額一覧表(第2事件)」記載の原告らに対し,令和2年2月1日から令和3年9月30日までの間,暦上の月ごとに,1か月当たり 別紙「請求額一覧表(第2事件)」の各原告に対応する「請求月額」欄記載の金員及びこれに対する当該月の翌月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,別紙「承継額一覧表」の「承継原告」欄記載の原告らに対し,それぞれ「分割承継債権」欄中の「承継債権額」欄記載の額及びうち「うち金額」欄記載の金額に対する「各死亡原告」欄の「相続開始日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2章事案の概要第1 事案の骨子本件は,沖縄県宜野湾市に所在する普天間飛行場の周辺に居住し,若しくは居住していた者又はその相続人である原告らが,普天間飛行場において離着陸する米軍の航空機等の発する騒音等により生活妨害,睡眠妨害,健康被害,精神的被害等の被害を被っている旨主張して,普天間飛行場をアメリカ合衆国に米軍の使用する施設及び区域として提供している被告に対し,民事特別法2条に基づき,第1事件原告らについては第1事件の訴え提起日の3年前の応当日である平成27年7月2日(ただし,住所を移転した原告らについては当該移転の日,後述の普天間基地第1次騒音訴訟の当事者であった原告らについてはその控訴審の口頭弁論終結日の翌日である平成28年7月27日),第2事件原告らについては第2次事件の訴え提起日の3年前の応当日である平成30年1月31日(ただし,住所の移転があった原告らについては当該移転の日,後 弁論終結日の翌日である平成28年7月27日),第2事件原告らについては第2次事件の訴え提起日の3年前の応当日である平成30年1月31日(ただし,住所の移転があった原告らについては当該移転の日,後述の普天間基地第2次爆音訴訟の当事者であった原告らについてはその控訴審の口頭弁論終結日の翌日である平成30年9月28日)から,それぞれ本件口頭弁論終結日である令和3年9月30日までの間,暦上の月ごとに,その居住する区域に応じて1か月当たり1万5000円又は9000円に弁護士費用相当額として10%を加算した額の損害の賠償(ただし,請求の始期又は終期が月の途中である場合や,月の途中で住所の移転等があった場合の当該月については,1日当たり500円又は300 円に弁護士費用として10%を加算した額に,損害賠償の対象となる日数を乗じた額)及びこれに対する不法行為後の日である当該月の翌月1日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 第2 前提となる事実(証拠等を掲げるもののほかは当事者間に争いがない。) 1 普天間飛行場の現況等⑴ 普天間飛行場の現況普天間飛行場は,沖縄本島中部にある沖縄県宜野湾市(以下,郡市町村名は,都道府県名を明記したものを除き,全て沖縄県内のものである。)の中央部に所在し,平成29年3月31日現在,総面積は約480万6000㎡である。普天間飛行場内には,全長約2740m,幅約45mの滑走路のほか,これに付帯する誘導路,駐機場,エンジン調整場,格納庫,整備施設等がある。普天間飛行場の外側周囲には,一般の商店街,住宅街,学校等が存在する。 普天間飛行場には,米軍の第1海兵航空団に所属する第18海兵航空管制群及び第36海兵航空群(配備機種は,C 整備施設等がある。普天間飛行場の外側周囲には,一般の商店街,住宅街,学校等が存在する。 普天間飛行場には,米軍の第1海兵航空団に所属する第18海兵航空管制群及び第36海兵航空群(配備機種は,CH-53E,AH-1Z及びUH-1Yの各ヘリコプター並びにティルト・ローター機であるオスプレイ)等が配備されており,これらの部隊は,普天間飛行場及び沖縄県周辺において,即応能力を維持するために必要な訓練を実施している。また,上記の部隊に配備されている航空機等のほかに,ジェット機を含む艦載機や輸送機等が普天間飛行場に不定期に飛来し,訓練や輸送活動を行っている。 ⑵ 普天間飛行場の設置,管理の経緯及び法律関係ア米軍による占領から昭和47年5月14日まで米軍は,昭和20年4月,宜野湾村(当時)の集落の一部を占領,接収し,その地域に普天間飛行場を建設した。 沖縄県は,昭和21年1月29日付け連合国最高司令官総司令部の「若 干の外郭地域を政治上,行政上日本から分離することに関する覚書」によって,我が国から政治上,行政上分離され,昭和27年4月28日発効の「日本国との平和条約」(昭和27年条約第5号)3条によって,アメリカ合衆国が施政権者とされた。そのため,普天間飛行場も,昭和20年の米軍の占領から昭和27年4月27日(「日本国との平和条約」の発効日の前日)までは米軍の接収下にあり,同月28日から昭和47年5月14日までは,アメリカ合衆国が施政権者として管理,運営していた。 イ昭和47年5月15日から現在まで沖縄県は,昭和47年5月15日,同日発効の「琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」(昭和47年条約第2号)によって我が国の施政権下に復帰した。被告は,これに先立ち,「沖縄における公用地等の暫定使用に ,同日発効の「琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」(昭和47年条約第2号)によって我が国の施政権下に復帰した。被告は,これに先立ち,「沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律」(昭和46年法律第132号)を制定し,同法(「沖縄県の区域内における位置境界不明地域内の各筆の土地の位置境界の明確化等に関する特別措置法」(昭和52年法律第40号)附則6項による改正後のものを含む。),「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法」(昭和27年法律第140号)に基づき,普天間飛行場の使用権原を取得した。 被告は,沖縄県が我が国の施政権下に復帰したことに伴い,アメリカ合衆国に対し,安保条約6条及び同条の規定に従い締結された地位協定2条1(a)に基づき,米軍の使用する施設及び区域として普天間飛行場を提供した(なお,この際に普天間海兵隊飛行場,普天間陸軍補助施設及び普天間海兵隊飛行場通信所の3施設を統合し,現在の普天間飛行場(FAC6051)となった。)。 普天間飛行場は,以後,アメリカ合衆国が地位協定3条1に基づき管理, 運営し,米軍機の運航等に使用している。 2 航空機騒音の評価方法⑴ 騒音とは,好ましくない音,望ましくない音を総称する用語である。 物体の振動等が媒質を伝わり,聴覚を刺激すると,人はこれを音として取り扱う。音波によって空気中に生ずる圧力のことを音圧というが,人間の感覚の大きさは外的刺激量の強さの対数に比例するので,音の評価には対数計算が用いられる。また,音圧が同じレベルの音であっても,人間の耳には周波数(音の高さ)によって音の大きさが異なって聞こえるので 感覚の大きさは外的刺激量の強さの対数に比例するので,音の評価には対数計算が用いられる。また,音圧が同じレベルの音であっても,人間の耳には周波数(音の高さ)によって音の大きさが異なって聞こえるので,「音の強さ」を表す物理的音圧レベル(dB)を耳の感度により修正すると,「音の大きさ」のレベル(phon,フォーンないしホン)となる。(乙E2,3)⑵ 人間の可聴域は,20Hzから2万Hzであり,2000Hzから4000Hzまでの音には敏感であるが,低い周波数の音については相対的に感度が鈍いという特性がある。騒音計は,マイクロホンを用いて音圧レベルを計測する際に,耳の感度の周波数特性を模擬した聴覚補正回路という電気回路を通す構造となっている。そして,上記の人間の聴覚に近いA特性の聴覚補正回路を用いて音を人間の感覚量として表現した単位が,dB(A)(以下,単に「dB」と表記することもある。)である。(乙E2,3)⑶ もっとも,騒音には,その突発性の有無,程度や周波数成分の相違など様々な特性がある。航空機騒音には,①騒音レベルが他の発生源による騒音と比較してはるかに高く,広範囲に及ぶこと,②独特の特異音成分を含むこと,③継続時間が数秒から数十秒の間欠音であることなどの特性があり,上記⑵の音の大きさの測定方法によるだけでは必ずしも十分に評価できず,「うるささ」という感覚的な評価を重視する必要があると考えられるようになった。 国際連合の専門機関の一つである国際民間航空機構(InternationalCivilAviationOrganization)は,昭和46年,上記の航空機騒音の特性を踏まえ,航空機の1日の総騒音量を評価 する単位としてWECPNLによる評価方法を採択した。 WECPNLは,1機ごとの感覚騒音レベル(PNL on)は,昭和46年,上記の航空機騒音の特性を踏まえ,航空機の1日の総騒音量を評価 する単位としてWECPNLによる評価方法を採択した。 WECPNLは,1機ごとの感覚騒音レベル(PNL)に純音補正及び継続時間補正を行い,1機ごとの実効感覚騒音レベル(EPNL)を求め,これを基に全機の効果を加算して1日の総暴露量を算出し,時間平均を行って等価継続感覚騒音レベル(ECPNL)を求めた上で,更に夕方(午後7時から午後10時まで)に5dB,夜間(午後10時から翌日午前7時まで)に10dBを加算することによる時間帯補正をして,加重平均を求めるものである。 (乙E1~3) 3 航空機騒音に係る環境基準⑴ 本件環境基準ア公害対策基本法(昭和42年法律132号)9条1項は,政府が,大気の汚染,水質の汚濁及び騒音に係る環境上の条件について,それぞれ,人の健康を保護し,及び生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準を定めることとする旨を規定し,昭和48年12月27日,同項に基づく騒音に係る環境上の条件のうち航空機騒音に係る基準として,本件環境基準が告示された。 本件環境基準は,生活環境を保全し,人の健康の保護に資する上で維持することが望ましい航空機騒音に係る基準として以下の内容などを定めている。(乙Cア37,乙E4)「専ら住居の用に供される地域」(地域類型Ⅰ)について,W値70以下を基準値とし,「I以外の地域であって通常の生活を保全する必要がある地域」(地域類型Ⅱ)につきW値75以下を基準値とすること。 W値は,以下の算定式に基づいて算定すること。 (算定式) W値=dB(A)̅̅̅̅̅̅̅̅+10log10N-27上記の算定式において,dB(A)̅̅̅̅̅̅̅̅は騒音の最大値のパワー平均値,Nは補 下の算定式に基づいて算定すること。 (算定式) W値=dB(A)̅̅̅̅̅̅̅̅+10log10N-27上記の算定式において,dB(A)̅̅̅̅̅̅̅̅は騒音の最大値のパワー平均値,Nは補 正された飛行回数をいう。飛行回数(N)は,時間帯による重みづけをした測定日ごとの観測機数を用いる。測定期間全体の平均のW値は測定日ごとの測定データにより算出された1日ごとのW値をパワー平均することによって算出する。(環境庁方式)上記アの各類型を当てはめる地域は都道府県知事が指定すること。 イ沖縄県知事は,昭和63年2月16日,本件環境基準に基づき,普天間飛行場周辺地域について地域類型指定を行った。 なお,公害対策基本法は,平成5年,環境基本法(平成5年法律第91号)の公布,施行に伴って廃止されたが,本件環境基準は,環境基本法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成5年法律第92号)2条により,環境基本法16条1項の規定(同条項は,「政府は,大気の汚染,水質の汚濁,土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について,それぞれ,人の健康を保護し,及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。」と規定している。)によって定められた基準とみなされている。 ⑵ 本件環境基準の改正本件環境基準は,騒音測定機器が技術的に進歩し,国際的に航空機騒音に係る評価指標としてLdenを基本とした評価指標が主流となったことから,平成19年環境省告示第114号により改正され,平成25年4月1日から改正後の本件環境基準が適用されている。 改正後の本件環境基準においては,環境基準値の単位がWECPNLからLdenへと変更されたことに伴い,地域類型Ⅰの基準値がLden57dB以下,地域類型Ⅱの基準値がLden62dB以下と ている。 改正後の本件環境基準においては,環境基準値の単位がWECPNLからLdenへと変更されたことに伴い,地域類型Ⅰの基準値がLden57dB以下,地域類型Ⅱの基準値がLden62dB以下とそれぞれ改められたが,上記の基準値は従来のW値と同等レベルの値が設定されており,基準自体は厳格化されていない。 (甲G1,乙E9,14,20,乙G22) 4 防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法令等及びその運用⑴ 法令等の定めア生活環境整備法は,自衛隊及び安保条約に基づき我が国にある米軍の行為又は防衛施設の設置若しくは運用により生ずる障害の防止等のため,防衛施設(地位協定2条1項所定の施設及び区域を含む。)周辺地域の生活環境等の整備について必要な措置を講ずること等により,関係住民の生活の安定及び福祉の向上に寄与することを目的とし(1条),障害防止工事の助成(3条),住宅の防音工事の助成(4条),緑地帯の整備等(6条),民生安定施設の助成(8条),特定防衛施設周辺整備調整交付金(9条)などの措置について定めている。 イ生活環境整備法4条は,被告が,米軍等の航空機の離陸,着陸等の頻繁な実施により生ずる音響に起因する障害が著しいと認めて防衛大臣が指定する第1種区域に当該指定の際現に所在する住宅について,その所有者又は当該住宅に関する所有権以外の権利を有する者がその障害を防止し,又は軽減するため必要な工事を行うときは,その工事に関し助成の措置を採るものと規定している。 生活環境整備法施行規則は,第1種区域の指定等は,W値が75以上である区域(ただし,生活環境整備法施行規則の制定当初はW値85以上とされていたところ,昭和54年総理府令第41号による改正後にW値80以上,昭和56年総理府令第49号による改正後にW値75以上 上である区域(ただし,生活環境整備法施行規則の制定当初はW値85以上とされていたところ,昭和54年総理府令第41号による改正後にW値80以上,昭和56年総理府令第49号による改正後にW値75以上と改められた。)を基準とする旨を定めている。 ウ平成25年防衛省令第5号による改正前の生活環境整備法施行規則1条3項は,防衛大臣がW値を算定するに当たり,防衛施設ごとに,当該防衛施設を使用する米軍等の航空機の型式,飛行回数,飛行経路,飛行時刻等に関し,年間を通じての標準的な条件を設定し,これに基づいて行うものとする旨を定めている。これを受けて定められたコンター作成旧通達によ るW値の計算方法は,環境庁方式と同じ算定式(W値=dB(A)̅̅̅̅̅̅̅̅+10log10N-27)を用いるものの,下記の点が環境庁方式と異なっている(防衛施設庁方式)。 なお,コンター作成旧通達は,平成16年11月に廃止され,新たなコンター作成基準が定められているが,防衛施設庁方式自体は修正されていない。 (甲D1,乙E4,9,15,16)W値の算出に用いる航空機の飛行回数(N)について,環境庁方式においては,測定期間全体のW値を1日ごとのW値をパワー平均することによって算出する結果,1日当たりの単純平均回数を用いた場合とほぼ同様の計算となる。これに対し,防衛施設庁方式においては,飛行しない日も含め,1日の総飛行回数の少ない方からの累積度曲線を定め,累積度数90%に相当する飛行回数を,その防衛施設における1日の標準総飛行回数とすることとされている。 航空機騒音の継続時間について,環境庁方式においては,航空機の種類にかかわらず,一律に航空機騒音の継続時間を20秒に固定して暴露量が計算される。これに対し,防衛施設庁方式においては,各騒音測定 航空機騒音の継続時間について,環境庁方式においては,航空機の種類にかかわらず,一律に航空機騒音の継続時間を20秒に固定して暴露量が計算される。これに対し,防衛施設庁方式においては,各騒音測定点における機種別,飛行態様別,飛行経路別継続時間の平均値が用いられることとされている。 防衛施設庁方式においては,各測定点における機種別,飛行態様別,飛行経路別のピーク騒音レベルのパワー平均値のうちジェット機の着陸時のものと確認できるものについては,着陸音補正として2dB(A)を加えることとされている。 ⑵ 本件コンターの指定ア防衛施設庁は,昭和49年に生活環境整備法が公布,施行されたことに伴い,普天間飛行場周辺の指定区域を作成するため,昭和52年12月, アコーテックに対し,普天間飛行場及び嘉手納飛行場周辺地域における航空機の騒音度調査(昭和52年騒音度調査)を委託した。 アコーテックは,事前調査を同月7日から同月11日までの5日間,本調査を同月12日から同月23日までの12日間実施した上で,調査結果に基づき防衛施設庁方式によって各測定地点におけるW値を算出し,同一のW値の地点を地図上で結んだ等音線図である騒音コンターを作成した。 (乙Cウ3)イ防衛施設庁長官は,アコーテックの作成した騒音コンターに基づき,その外郭線について行政区画,集落の状況,道路,河川等に即して最小限の修正を行い,関係地方公共団体の意見を聴取した上,昭和56年7月18日,W80区域を普天間飛行場に係る生活環境整備法所定の第1種区域に指定した(本件コンター)。この指定により第1種区域とされたW80区域は,別紙「本件コンター図」において「普天間飛行場関連第一種区域(80WECPNL)56.7.18告示第13号」として特定された地域である。( ンター)。この指定により第1種区域とされたW80区域は,別紙「本件コンター図」において「普天間飛行場関連第一種区域(80WECPNL)56.7.18告示第13号」として特定された地域である。(乙Cア10,乙E17,19)ウ防衛施設庁長官は,第1種区域の指定に係るW値が80から75に改正されたことに伴い,昭和58年9月10日,本件コンターとしてW75区域を追加で指定した。この指定により第1種区域として指定されたW75区域は,別紙「本件コンター図」において「普天間飛行場関連第一種区域(75WECPNL)58.9.10告示第12号」として特定された地域である。(乙Cア11) 5 航空機騒音に関する調査被告及び沖縄県による航空機騒音の測定被告は,昭和60年3月,W80区域にある宜野湾市新城及び大謝名に自動騒音測定器を設置し(国測定地点),同年以降,70dB(A)以上の騒音が5秒又は3秒以上継続した場合に航空機騒音を測定している。 また,沖縄県は,平成9年3月,W80区域にある宜野湾市野嵩(野嵩一区公民館)及び大謝名(上大謝名公民館)に,同年9月,W75区域にある同市新城(普天間中学校)に自動騒音測定局を設置し,宜野湾市は,同月,同市真志喜(真志喜公民館)に自動騒音測定局を設置した(県等測定局)。県等測定局においては,暗騒音レベルより10dB(A)以上(ただし,平成14年度までは数値が若干異なる。)の騒音が5秒以上継続し,かつ,航空機が発したトランスポンダ応答信号電波を受信した場合に,航空機騒音を測定している。 沖縄県による健康影響に関する調査沖縄県は,嘉手納飛行場及び普天間飛行場の航空機騒音が周辺住民に与える精神的,身体的影響を明らかにし,県民の平穏で快適な生活環境の保全と創造に寄与するため,財団法人 縄県による健康影響に関する調査沖縄県は,嘉手納飛行場及び普天間飛行場の航空機騒音が周辺住民に与える精神的,身体的影響を明らかにし,県民の平穏で快適な生活環境の保全と創造に寄与するため,財団法人沖縄県公衆衛生協会に対し,平成7年度から平成10年度まで,嘉手納飛行場及び普天間飛行場の航空機騒音の周辺住民に対する健康影響についての調査を委託し,これを受けた同協会は,京都大学名誉教授山本剛夫を会長とする沖縄県調査委員会を設置した。 沖縄県調査委員会は,上記の期間,航空機騒音暴露実態調査部会,睡眠影響調査部会,THI等アンケート部会,被験者等健康特性調査部会,低体重児等調査部会及び聴力影響調査部会の合計6の部会を設置し,①騒音暴露の実態,②生活の質,環境の質,③幼児問題行動,④学童の記憶力,⑤自覚的健康感,⑥住民健康診断データの分析,⑦低出生体重児出生率,⑧聴力影響について,沖縄県調査を実施した。 沖縄県は,沖縄県調査の結果について,平成11年3月,沖縄県調査報告書に取りまとめた。 6 原告らの居住経過原告ら(被承継人も含む。)の住民票又は戸籍附票等の公的書類に記載された居住経過は別紙「居住経過一覧表」記載のとおりである。 同別紙記載の原告らの居住地(過去のものも含む。)に対応する本件コンター上のW値は,同別紙「W値」欄記載のとおりである。 7 損害賠償請求権の相続別紙「承継額一覧表」の「死亡原告」欄記載の各死亡原告(被承継人)は,同別紙「死亡原告」欄の「相続開始日」欄記載の日に死亡しその相続が開始し,同別紙「承継原告」欄の「氏名」欄記載の承継人らが,それぞれ同別紙「分割承継債権」欄の「相続分」欄記載の割合により本件訴訟に係る損害賠償請求権を相続した。 上記承継人らのうち,同別紙「承継原告」欄の「承継原告番号」欄に 「氏名」欄記載の承継人らが,それぞれ同別紙「分割承継債権」欄の「相続分」欄記載の割合により本件訴訟に係る損害賠償請求権を相続した。 上記承継人らのうち,同別紙「承継原告」欄の「承継原告番号」欄に記載のない者は訴えを取り下げたため,本件において上記相続に係る損害賠償を請求している承継人らは同別紙「承継原告」欄の「承継原告番号」欄に記載のある承継人ら(別紙「原告目録(承継人)」記載の各原告ら)のみである。 (弁論の全趣旨) 8 普天間飛行場の騒音に関する訴訟の経緯⑴ 普天間飛行場周辺の住民らは,平成14年及び平成15年,普天間飛行場から発生する騒音等による健康被害を主張して,被告に対し,夜間の航空機の飛行差止め及び損害賠償等を請求する普天間基地第1次爆音訴訟を当庁に提起し,住民らの請求を一部認容する判決が言い渡された。普天間基地第1次爆音訴訟の控訴審において,福岡高等裁判所那覇支部は,平成22年7月29日,住民らの過去の被害に対する損害賠償請求の一部を認容する判決を言い渡し(同庁平成20年(ネ)第125号普天間米軍基地爆音差止等請求控訴事件),平成23年10月11日,上告が棄却されたことにより同判決は確定した。同判決においては,住民らの損害額として,W75区域については1日当たり200円(月額約6000円),W80区域については1日当たり400円(月額約1万2000円)が認められた。(顕著な事実)⑵ 普天間飛行場周辺の住民らは,普天間飛行場から発生する騒音等に関し, 平成24年及び平成25年,2つの原告団に分かれ,一方の原告団においては専ら損害賠償を求める普天間基地第1次騒音訴訟を,他方の原告団においては騒音の到達禁止及び損害賠償等を求める普天間基地第2次爆音訴訟を当庁にそれぞれ提起し,これらの訴訟のいずれにおいても においては専ら損害賠償を求める普天間基地第1次騒音訴訟を,他方の原告団においては騒音の到達禁止及び損害賠償等を求める普天間基地第2次爆音訴訟を当庁にそれぞれ提起し,これらの訴訟のいずれにおいても,住民らの請求の一部を認容する判決が言い渡された。 福岡高等裁判所那覇支部は,普天間基地第1次騒音訴訟の控訴審(同庁平成27年(ネ)第112号損害賠償請求控訴事件)については平成28年12月11日に,普天間基地第2次爆音訴訟の控訴審(同庁平成29年(ネ)第14号普天間基地爆音差止等請求控訴事件)については平成31年4月16日に,それぞれ住民らの過去の被害に関する損害賠償請求の一部を認容する判決を言い渡し,いずれの判決についても上告が棄却され,これらの判決は確定した。 普天間基地第1次騒音訴訟及び普天間基地第2次爆音訴訟の控訴審判決においては,いずれも住民らの損害額として,W75区域については1日当たり150円又は1か月当たり4500円,W80区域については1日当たり300円又は1か月当たり9000円が認められている。 (顕著な事実) (以下余白) 第3 争点及び争点に関する当事者の主張 1 争点本件の争点は,以下のとおりである。 ⑴ 普天間飛行場について,設置又は管理の瑕疵があるか(普天間飛行場の供与により原告らを含む第三者に社会生活上受忍すべき限度を超える違法な権利侵害又は法益侵害が生じているか。)。(争点⑴)ア本件コンター内における航空機騒音の程度イ原告らの被った被害の内容及び程度生活妨害睡眠妨害健康被害健康被害に対する不安精神的被害低周波音による被害ウ普天間飛行場の公共性の評価エ被告による周辺対策等の実施状況及び評価(争いのある原告らについては 睡眠妨害健康被害健康被害に対する不安精神的被害低周波音による被害ウ普天間飛行場の公共性の評価エ被告による周辺対策等の実施状況及び評価(争いのある原告らについては,個々の住宅防音工事の実施状況を含む。)⑵ 原告らの損害額(争点⑵)ア慰謝料の額イ住宅防音工事の実施による慰謝料の減額の可否及び額住宅防音工事一般についての減額の可否及び額外郭防音工事及び防音区画改善工事の実施による減額の可否及び額 2 争点⑴に関する当事者の主張【原告らの主張】⑴ 民事特別法2条にいう「設置又は管理の瑕疵」の意義民事特別法2条にいう設置又は管理の瑕疵とは,国家賠償法2条1項の営 造物の設置又は管理の瑕疵と同義であり,米軍の占有し,所有し,又は管理する土地の工作物その他の物件が通常有すべき安全性を欠いている状態をいう。これには,物理的,外形的な欠陥ないし不備によって一般的にこのような危害を生ぜしめる危険性がある場合のみならず,当該物件が供用目的に沿って利用されることとの関係において危害を生ぜしめる危険性がある場合も含み,また,その危害は,営造物の利用者に対してのみならず,利用者以外の第三者に対するそれも含まれる。 このため,普天間飛行場の供用により原告らを含む第三者に対する関係において違法な権利侵害又は法益侵害が生ずる場合は,同飛行場の設置及び管理について通常備えるべき安全性を欠いていることになるため,民事特別法2条にいう「設置又は管理の瑕疵」が認められる。 普天間飛行場の供用が第三者に対する関係において違法な権利侵害又は法益侵害となるか否かについては,侵害行為の態様と侵害の程度,被侵害利益の性質と内容,侵害行為のもつ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等を比較検討するほか, 対する関係において違法な権利侵害又は法益侵害となるか否かについては,侵害行為の態様と侵害の程度,被侵害利益の性質と内容,侵害行為のもつ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等を比較検討するほか,侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況,その間にとられた被害の防止に関する措置の有無及びその内容,効果等の事情をも考慮し,これらを総合的に考慮して判断すべきである(最高裁昭和56年判決参照)。 ⑵ 違法性の判断基準生活環境整備法における区域指定の基準となるWECPNLによる航空機騒音の評価は,騒音レベル,発生回数,時間帯による影響の差異等を総合考慮して,航空機騒音の人間に対する影響を把握するものであり,現時点において最も信頼性の高い評価方式である。このため,普天間飛行場の供用の違法性の判断は,生活環境整備法の第1種区域である本件コンターにおけるW値をもって判断すべきである。 生活環境整備法に基づく住宅防音工事の助成措置の対象となる第1種区域 指定の基準となる値はW値75とされており,このことは,被告が,W値75以上の区域について「航空機の離陸,着陸等の頻繁な実施により生ずる音響に起因する障害が著しい」と評価していることを意味する。 これらの事実を前提に,①普天間飛行場における航空機騒音のため,W80区域にあってはかなり大きな騒音等に,W75区域にあっては大きな騒音等に,いずれも高い頻度で暴露されていること,②その結果,原告らが,普天間飛行場の騒音により,W75以上の区域である本件コンター内において,当然に甘受しなければならないような軽度の被害とはいえない被害を等しく受けていることなどからすると,普天間飛行場の供用においては,W値75をもって違法性を画する基準とするのが相当であり,普天間飛行場の供用は,本件コンター内に ような軽度の被害とはいえない被害を等しく受けていることなどからすると,普天間飛行場の供用においては,W値75をもって違法性を画する基準とするのが相当であり,普天間飛行場の供用は,本件コンター内に居住している原告らとの関係において,違法な権利侵害ないし法益侵害に当たるというべきである。 ⑶ 侵害行為ア航空機騒音の内容及び特徴普天間飛行場には,平成20年1月の時点で,ヘリコプター36機,固定翼機16機の合計52機の米軍機が配備されており,配備機材は,平成30年1月末までに,ヘリコプター56機,固定翼機15機と10年間で36%ほど増加している。また,普天間飛行場に配備されていない対潜哨戒機P-3Cやジェット戦闘機F/A-18等の米軍機も頻繁に飛来している。 これらの米軍機は,即応能力を維持するために必要な訓練を沖縄周辺及び普天間飛行場で行っており,普天間飛行場内及びその周辺においては,同訓練に伴い米軍機の離着陸(離着陸を繰り返す訓練であるタッチアンドゴーを含む。),通過,旋回等による騒音のほか,エンジン調整等による騒音が日常的に発生している。特に,毎日繰り返されるタッチアンドゴーにより,周辺住民は,一定時間ごとに長時間の騒音に暴露されている。また, エンジン調整による騒音は,他の騒音に比して低音で,持続時間が長いものである。 さらに,普天間飛行場に配備されている機材の多くはヘリコプターであるところ,ヘリコプターは,滑走路のみならず,滑走路と交差する東西のいずれの側からも離着陸することから,その騒音はあらゆる方向から発生しているほか,持続時間の長さや音の低さ等の点で固定翼機とは異質である。 イ航空機騒音の評価方法普天間飛行場の騒音の実態の正確な把握及び証明が困難であること航空機騒音の特徴に鑑みると,普天 ているほか,持続時間の長さや音の低さ等の点で固定翼機とは異質である。 イ航空機騒音の評価方法普天間飛行場の騒音の実態の正確な把握及び証明が困難であること航空機騒音の特徴に鑑みると,普天間飛行場の騒音が原告らに対して及ぼす影響については,飛行場と個々の原告の距離だけでなく,騒音の音量,音質,発生回数,飛行経路との位置関係,離着陸方向等の条件に大きく左右され,さらに風向き,気温,地形等の自然的条件によっても変化することとなる。しかしながら,普天間飛行場においては,米軍機の飛行経路は一定しておらず,飛行回数にも規則性がなく,原告らが米軍機の日常の飛行経路,飛行回数等を把握し,これを具体的に証明することは困難である。 したがって,普天間飛行場における騒音の実態を具体的かつ正確に把握して証明することは,その性質上著しく困難を伴うものである。 昭和52年当時の航空機騒音とその程度については本件コンターを基礎として推認すべきであること本件コンターは,昭和52年騒音度調査の結果に基づき,防衛施設庁方式により算出されたW値によって指定されたものである。防衛施設庁方式によるW値の算定方法は,民間空港の航空機騒音を適切に評価するための環境庁方式におけるW値の算定方法を,軍用飛行場の騒音実態をより適切に表示すべく修正を加えたものであり,本件コンターによる区 域指定は,同年当時の普天間飛行場の航空機騒音の実態に即応したものというべきである。また,航空機騒音の特徴から,本件コンターを基礎として,一定の広がりをもった地域ごとに,その地域に居住する住民がほぼ同程度の騒音に暴露されていると推認することが可能であるから,昭和52年当時の航空機騒音とその程度については,本件コンターを基礎として推認すべきである。 本件コンターに基づ に居住する住民がほぼ同程度の騒音に暴露されていると推認することが可能であるから,昭和52年当時の航空機騒音とその程度については,本件コンターを基礎として推認すべきである。 本件コンターに基づき現在までの航空機騒音の発生状況を推認すべきであること昭和52年騒音度調査のような大規模かつ詳細な調査に基づき普天間飛行場の騒音の実態を把握し得る資料は本件コンター以外にはないため,これに反する客観的証拠がない限り,本件コンターに基づき,騒音調査当時から口頭弁論終結時までの普天間飛行場の騒音の発生状況を推認することには合理性,相当性がある。また,県等測定局や国測定地点においては長期間にわたる測定結果が存在するものの,それらのごく限られた測定局点における測定結果をもって本件コンター全域における騒音状況を推認することには限界があることから,それぞれのW値区域における各測定局点における相互の測定結果や当該測定結果と本件コンターのW値の間に著しい乖離,矛盾が見られない限り,本件コンターに基づいて航空機騒音の地域的な広がり及び発生の程度を把握することに合理性,相当性が認められる。 沖縄県が平成9年9月から平成10年8月末までに実施した調査の結果と本件コンターのW値は,概ね一致している。また,普天間基地第1次爆音訴訟及び普天間基地第1次騒音訴訟の控訴審判決においても,上記の枠組みにより,平成25年までの県等測定局及び国測定地点の測定結果を分析,検討した上で,本件コンターの合理性が認められているところ,同年以降の測定結果と本件コンターの区域指定との間にも明確な 齟齬を示す結果は存在せず,本件における航空機騒音の評価指標としての本件コンターの合理性をめぐる事実関係についても大きく異なる点はないから,同年度以降の航空機騒音についても,本件 明確な 齟齬を示す結果は存在せず,本件における航空機騒音の評価指標としての本件コンターの合理性をめぐる事実関係についても大きく異なる点はないから,同年度以降の航空機騒音についても,本件コンターに基づいてその発生の地域的な広がり及び発生の程度を把握することに合理性,相当性が認められる。 したがって,本件コンターに基づき,昭和52年当時から現在までの航空機騒音の発生状況を推認することには十分な合理性,相当性があり,本件コンター内に居住する原告らには,W80区域に居住している期間はかなり大きな騒音に,W75区域に居住している期間は大きな騒音に,いずれも高い頻度で暴露されており,最低限度等しく受忍限度を超えた違法な騒音による被害を被っていると推認することができる。 平成25年度以降の航空機騒音の測定結果によっても騒音の軽減は認められないこと以下のとおり,平成25年度以降の沖縄県及び国の測定結果によれば,騒音の減少傾向は認められない。仮に被告の主張するようにある測定結果について若干の減少傾向が認められるとしても,その減少の度合いからすれば,当該測定結果と本件コンターのW値との間に著しいといえるほどの乖離,矛盾は認められない。 a 県等測定局による騒音の測定結果についてW75区域について,年間のW値は県新城測定局,市真志喜測定局のいずれにおいてもほぼ横ばいであり,県新城測定局では平成30年度のW値が前年度より増加している。また,騒音発生回数,航空機騒音の累積時間は年度によって増減が認められ,県新城測定局では平成30年度の値が前年度よりも増加しており,全体として航空機騒音が減少傾向にあるとはいえない。さらに,月別最高音については,各測定局において,平成15年度ないし平成18年度よりも,平成19年 度ない 値が前年度よりも増加しており,全体として航空機騒音が減少傾向にあるとはいえない。さらに,月別最高音については,各測定局において,平成15年度ないし平成18年度よりも,平成19年 度ないし平成22年度の平均の方が大幅に増加しており,最高音圧レベルの騒音の発生頻度が全体として減少傾向にあるとはいえない。 W80区域について,年間のW値は県野嵩測定局,県上大謝名測定局において大きな増減はみられないが,いずれにおいても平成30年度のW値は前年に比して増加しており,特に県上大謝名測定局のW値は84と平成15年度以降の中でも高い数値となっている。 また,騒音発生回数は,県野嵩測定局,県上大謝名測定局のいずれにおいても年度によって若干の増減が認められ,平成30年度においては前年に比して増加の傾向があり,航空機騒音の累積時間についても,県野嵩測定局では年度によって増加が見られ,各測定局の平成30年度の数値は前年に比して増加しているから,減少傾向が認められるとはいえない。さらに,月別最高音については,県野嵩測定局については平成15年度ないし平成18年度よりも,平成19年度ないし平成22年度の平均の方が大幅に増加しており,県上大謝名測定局については概ね横ばいであることから,最高音圧レベルの騒音の発生頻度が全体として減少傾向にあるとはいえない。 b 国測定地点における航空機騒音の測定結果についてW値については,平成15年度以降の数値に減少傾向は認められず,国大謝名測定地点では平成15年度以降増加傾向が認められる。騒音発生回数,航空機騒音の累積時間についてはほぼ横ばいであり,月別最高音についても,直近の平成27年度ないし平成30年度は,平成15年度ないし平成18年度よりも増加しており,減少傾向にあるとはいえない。 ウ低周波音a 間についてはほぼ横ばいであり,月別最高音についても,直近の平成27年度ないし平成30年度は,平成15年度ないし平成18年度よりも増加しており,減少傾向にあるとはいえない。 ウ低周波音a 一般に,低周波音とは,100Hz以下の人の耳には聞こえにくい音をいい,人の耳には聞き取れない1Hzないし20Hzの音波を超低周 波音という。 低周波音は周波数が低く,波長が長いので,一般的な可聴音と比べて地表面や空気による吸収がされにくく,音源から遠くまで響き,防音対策の効果が小さい。低周波音の家屋内外音圧レベル差に関しては,一定レベル以下の周波数域においては差がないと報告されていることからも,家屋によって低周波音が遮音されるとはいえない。 W値は,A特性による数値を基礎としているところ,A特性は,周波数(Hz)の小さい音については,実際の音圧(dB)が大きくても,実際よりも小さいものとして扱うものであるから,A特性を用いたW値の計算方法においては,低周波音の音圧等が正確に反映されていない。 このため,W値によっては低周波音の騒音被害を正確に把握することはできない。 b 低周波音の発生原因として考えられるものには,ジェットエンジン,ヘリコプター,送風機,往復式圧縮機,ディーゼル機関,真空ポンプ,振動ふるい,燃焼装置,機械プレス,橋梁,鉄道トンネル,治水施設,発破,ガスエンジン又は変圧器などがある。 c 普天間飛行場には,平成30年1月の時点で,ヘリコプター56機,固定翼機15機の合計71機の米軍機が配備され,しかも配備されている米軍機の多くがヘリコプターであるところ,沖縄県が平成13年度,平成14年度,平成17年度に普天間飛行場周辺住宅地域において実施した低周波音調査からも明らかなとおり,原告らは,特にヘリコプターが発す 軍機の多くがヘリコプターであるところ,沖縄県が平成13年度,平成14年度,平成17年度に普天間飛行場周辺住宅地域において実施した低周波音調査からも明らかなとおり,原告らは,特にヘリコプターが発する低周波音に暴露されている。 ⑷ 原告らの被害ア被害の種類と被害認定の在り方航空機騒音による健康影響の発現ルートとメカニズム,騒音の条件等騒音は,有毛細胞の傷害による聴力の低下,大脳皮質の聴覚域に達し て音感覚を成立させることによる聴取妨害,大脳の新皮質に到達した神経インパルスによる覚醒,睡眠妨害又は思考,精神作業の妨害,大脳旧皮質全体の刺激によるイライラ感や不快感等の情緒妨害,さらに食欲,性欲等の本能欲の妨害をもたらす。 これらの影響が一定限度を超えると,ストレス反応として,甲状腺,副腎,生殖腺等の内分泌系に影響が現れるほか,視床下部からのインパルスが,自律神経系を介して循環器系や消化器系に影響を及ぼすと考えられる。 騒音は,騒音レベルが高いほどうるさく感じ,影響が大きく,一般的には,低い音より高い音の方が耳障りで影響も大きく,純音(単一の周波数を持つ音)成分を含んだ騒音の方が高音域の騒音より不快感が強い。 また,音の持続期間が長いほど影響が大きいが,断続音,間欠音となると連続音よりうるさく感じことがあり,大きさ,高さが変動する音の方が定常の音に比べて不快感が強い。さらに,騒音源が定位置にあり,その位置を速やかに認識し得る場合は,逆の場合と比べて不快感は軽度である。WHOが平成11年に公表したWHOガイドラインは,騒音の健康への影響として,聴力障害,会話・聴取妨害,睡眠妨害,生理的影響,作業・学習への影響及び住民の行動や不快感への影響を挙げており,これは現在一般的に受け入れられている科学的知見に基づくものである 健康への影響として,聴力障害,会話・聴取妨害,睡眠妨害,生理的影響,作業・学習への影響及び住民の行動や不快感への影響を挙げており,これは現在一般的に受け入れられている科学的知見に基づくものである。 また,WHOの欧州事務局が平成21年に公表した欧州夜間騒音ガイドラインには,公衆の健康を夜間騒音から保護するための指標として,夜間の屋外の騒音レベルが40dBを超えてはならないことが定められている。これらの点からすると,騒音が人の身体及び精神に悪影響を及ぼすことは明らかである。 被害認定の在り方a 原告らが普天間飛行場の航空機騒音によって被る生活妨害,睡眠妨 害及びこれらに伴う精神的苦痛等については,それらの中に,性質及び程度において差異がないと認められるものが存在し得るので,このような観点から同一と認められる性質,程度の被害を原告ら全員に共通する損害として捉えて,各自につき一律にその賠償を求めることも許される。 したがって,原告らは,それぞれが受けている被害を個別具体的に主張立証する必要はなく,かかる意味における共通被害の内容,程度を主張立証することをもって足りるものである。 b 被告は,原告らの共通損害が認められるためには,騒音レベルが相当大きい場合で,一般通常人の社会生活上耐えられないような重大かつ深刻な程度の障害の発生が必要である旨を主張するが,利益侵害の程度をこのように限定する根拠はない。上記の主張は被侵害利益の性質と内容のほかに様々な要素を考慮して違法性を判断するという上記⑴の判断基準に合致しないものであり,不当である。 また,被告は,生活妨害,睡眠妨害その他の精神的被害について,騒音による精神的影響は個人差が顕著で主観的なものであり,被害として評価すべきではない旨も主張するが,騒音に対する精神的被害 である。 また,被告は,生活妨害,睡眠妨害その他の精神的被害について,騒音による精神的影響は個人差が顕著で主観的なものであり,被害として評価すべきではない旨も主張するが,騒音に対する精神的被害は,その被害の性質上,各人の主観的な受け止め方を除外してはこれを正確に認識,把握することは困難であり,上記主張は一切の精神的被害を認めないことになるため,不当である。 さらに,被告は,アンケート式陳述書を提出していない原告らがいることや,各原告の間において航空機騒音暴露の頻度,時間帯などの認識に共通性がないこと,原告のうち1名はアンケート式陳述書において騒音による被害を訴えていないことから,共通被害の立証ができていないことを主張するが,アンケート式陳述書を提出していない原告の大半は未成年者であり,その親権者が原告として陳述書を提出し ているため,立証としては十分である。また,航空機騒音による被害は,その量的側面のみならず質的側面に着目して理解されるべきであるし,騒音被害の感じ方に個人差があることを前提に,それでも経験則と一般の良識に照らして,一定の範囲に居住する人に最低限共通する騒音被害を観念することは可能であるから,各原告間で認識に相違があったとしても,共通被害の存在が否定されるものではない。 イ共通被害の内容騒音の状況,頻度及び時間帯原告らの本人尋問において,各原告は,それぞれ普天間飛行場における航空機騒音の凄まじさを供述しており,航空機騒音の物理的な大きさのみならず,航空機騒音が人間に与える不快感の強さが示されている。 1週間のうちに騒音が発生する日数が最近増加傾向にあり,ほぼ毎日聞こえることや,夜間の騒音発生が頻繁であること,1時間に発生する騒音の回数に関する供述も概ね共通しており,原告らは,共通して激しい 1週間のうちに騒音が発生する日数が最近増加傾向にあり,ほぼ毎日聞こえることや,夜間の騒音発生が頻繁であること,1時間に発生する騒音の回数に関する供述も概ね共通しており,原告らは,共通して激しい騒音に頻繁にさらされているといえる。 生活妨害a 原告らは,普天間飛行場の航空機騒音により,その居住地において,会話,電話での通話,テレビ・ラジオの聴取の妨害を受けており,このことは,W80区域内,W75区域内を通じて,いずれも約98%から99%の原告らにおいて主観的に把握されている。その被害内容は日常生活全般に及んでいる上,災害など万一の場合に,正確な情報を得られないのではないかといった生命や財産に関する危機管理に対する不安感をも多数の原告らに生じさせている。 上記に加え,沖縄県調査の生活環境調査の結果や,航空機騒音が一定の音量になると音声伝達の妨げになることが経験則上明らかであること,普天間飛行場と類似した他の飛行場周辺の住民調査の結果など からすると,原告らが普天間飛行場の航空機騒音により会話妨害,電話通話妨害及びテレビ等の聴取妨害の生活妨害を受けていることは明らかであり,このような生活妨害に伴い精神的苦痛が生じることも経験則上明らかである。 b また,普天間飛行場の騒音は,音楽鑑賞や演奏等の趣味生活において,音の聴取に係る活動を妨害し,これに伴い原告らに精神的苦痛を与えている。さらに,複雑な作業や思考を要する作業には騒音による影響があり,航空機騒音があらかじめ予期し得ない間欠騒音であることに照らすと,航空機騒音が学習や読書等の知的作業を妨害していることも明らかである。仮に作業の結果や能率には明確な影響が現れない場合であっても,普天間飛行場の航空機騒音の実態にみられる騒音レベルや騒音持続時間等に照らすと,普天間飛 書等の知的作業を妨害していることも明らかである。仮に作業の結果や能率には明確な影響が現れない場合であっても,普天間飛行場の航空機騒音の実態にみられる騒音レベルや騒音持続時間等に照らすと,普天間飛行場の騒音の下での作業によっていらだちや不快感が生じていることが推認される。 したがって,原告らは,普天間飛行場の航空機騒音により,趣味生活や知的作業の生活及びこれらに伴う精神的苦痛を受けているというべきである。 c 以上に加え,原告らの当事者尋問においても,毎日のように上記の生活妨害を受けている旨が供述されていることも踏まえれば,原告らは,本件コンター内に居住する間,普天間飛行場の航空機騒音により,会話妨害,通話妨害,テレビ・ラジオの聴取妨害,趣味生活や知的作業の生活妨害及びこれらに伴う精神的苦痛を,W80区域の方がW75区域よりは著しいという意味において,それぞれその居住する区域のW値に応じて等しく受けている。 d 被告は,各人が被った生活妨害等の被害の性質,程度を明らかにし,社会生活上耐えられない程度の強い障害が,原告ら全員に共通して生じていることを客観的な証拠をもって明らかにしなければならない旨 を主張するが,航空機騒音による共通損害を考えるに当たっては,最小限度この程度までは住民が等しく被っているといえる損害を,量的及び質的両面を踏まえた共通性に着目して考慮の対象とすべきであり,これとは逆に,現象としての個々の被害についてすべてのものに共通するといえるかを一つ一つ検討し,全員に共通するとはいえないものを切り捨てようとする被告の主張は誤りである。また,共通損害を量的にのみとらえ,各原告が現実にさらされた騒音のみが共通損害になるという主張も誤りである。 原告らは,上記のとおり,いずれも他人との会話,電話による通話, 告の主張は誤りである。また,共通損害を量的にのみとらえ,各原告が現実にさらされた騒音のみが共通損害になるという主張も誤りである。 原告らは,上記のとおり,いずれも他人との会話,電話による通話,テレビやラジオの視聴などの聴取妨害の被害を受けている。航空機騒音が単発であれば,聴取妨害そのものは一過性であるが,聴取しようとする内容によってはこれが聴き取れないことは重大な支障になり得るし,予期せず突然妨害を受けることによる精神的負担も大きい。さらに,航空機騒音が連続する場合や,時を置いて何度も発生する場合は,妨害の程度もそれに伴う精神的な負担も著しいものとなる。 したがって,上記の聴取妨害は,精神的苦痛を当然に伴う生活妨害であり,その質及び量の両面に照らして評価すれば,静穏な日常生活の享受を妨げるという意味,側面において,すべての原告らに共通する損害であるといえる。 睡眠妨害a 原告らは,普天間飛行場の航空機騒音により,その居住地において睡眠妨害を受けている。 このことは,W80区域内における原告らの79%,W75区域内における原告らの74%が航空機騒音による睡眠妨害を把握していることや,沖縄県調査の生活環境調査の結果において,普天間飛行場周辺の住民に少なからぬ割合で睡眠障害が認められ,その有無及び程度 がW値と明確な量反応関係にある旨記載されていること,睡眠が騒音によって妨害されることがあることは経験則上明らかであることなどから優に認められ,このような睡眠妨害を受ければ,これにより精神的苦痛が生じることも経験則上明らかである。 原告らの当事者尋問においても,夜間の航空機騒音によって睡眠妨害を受け,睡眠不足に悩まされている旨が供述されていることを踏まえれば,原告らは,本件コンター内に居住する間,普天間飛行場の航空 る。 原告らの当事者尋問においても,夜間の航空機騒音によって睡眠妨害を受け,睡眠不足に悩まされている旨が供述されていることを踏まえれば,原告らは,本件コンター内に居住する間,普天間飛行場の航空機騒音により,W80区域の方がW75区域よりは著しいという意味において,それぞれその居住する区域のW値に応じ,睡眠妨害の生活妨害及びこれに伴う精神的苦痛を等しく受けているということができる。 b 被告は,睡眠の個人差を問題とし,睡眠妨害に関して原告らの主観的な訴えに依拠して判断されてはならず,航空機騒音と睡眠妨害との関連性を示す客観的証拠もないため,睡眠妨害は共通損害足り得ない旨を主張する。 しかしながら,個々人において睡眠の時間や深さ,睡眠に及ぼす影響の程度が異なるのは当然であるが,そのことを前提としてもなお,一定レベルを超える騒音の発生する地域に居住する住民が等しく被るところの「睡眠に対する悪影響の存在」を観念,認定することは可能であり,その客観的な存在を主観的な訴えから認めることに何ら問題はないし,睡眠が騒音によって妨害されることがあることは,経験則上も明らかである。 本件においては,原告らの各居住区域において早朝や夜間に航空機騒音が発生していることが客観的に明らかである。WHOガイドラインにおいて,睡眠妨害が環境騒音の主要な影響の一つであり,妨害を受けない睡眠が身体的,精神的な機能を良好に保つために不可欠であ る旨が示されていることや,欧州夜間騒音ガイドラインにおいて,騒音が多くの直感的経路,あるいは間接的経路によって睡眠を妨害し,非常に低い騒音レベルにおいても生理学的反応を確実に計測することが可能である旨が示されていること,多くの原告らが実際に睡眠障害を訴えている事実を踏まえれば,原告らは全員に最低限共通する被害 妨害し,非常に低い騒音レベルにおいても生理学的反応を確実に計測することが可能である旨が示されていること,多くの原告らが実際に睡眠障害を訴えている事実を踏まえれば,原告らは全員に最低限共通する被害として一定の睡眠妨害を被っているというべきであり,その性質に照らせば,当該睡眠妨害の程度は,当然に受忍しなければならないような軽度のものではないと認められるべきである。 睡眠妨害の被害は,その被害の性質に照らせば,被暴露者が主観的には意識しないこともあり得ることからすると,アンケート式陳述書において睡眠妨害の被害を訴えていない原告らや,アンケート式陳述書を提出していない原告らも含めて,原告ら全員が最小限度等しく睡眠妨害の被害を受けているといえる。 健康被害普天間飛行場の航空機騒音による健康被害は,W80区域内の原告らの64%,W75区域内の原告らの63%において把握されており,その内容は高血圧,耳鳴り,難聴,頭痛,不眠症,倦怠感など多岐多様である。原告らの当事者尋問においても,上記の症状が訴えられており,この症状は航空機騒音と関係のあるものとして捉えられている。 WHOガイドラインは,強大な騒音にさらされ続けると生理的に悪影響が生じ,高血圧や虚血性心疾患のリスクが高まると考えられる旨の知見を示しており,沖縄県調査報告書においても,最高,最低血圧,白血球数及び尿酸濃度とW値との関連性を指摘し,高血圧症とW値との間に顕著な量反応関係が認められているほか,聴力損失の要因として居住区域の航空機騒音暴露が最も有力であると結論付けられている。 原告らは,毎日のように騒音に暴露される中で,生活被害を受け,イ ライラし,不快感を募らせ,これらにより様々なストレスが堆積していくであろうことが容易に推認されるところ,難聴,耳鳴り,頭痛及 告らは,毎日のように騒音に暴露される中で,生活被害を受け,イ ライラし,不快感を募らせ,これらにより様々なストレスが堆積していくであろうことが容易に推認されるところ,難聴,耳鳴り,頭痛及び心臓疾患等はストレスがその危険因子となり得ることが医学的にも一般的に説明されていることからすると,健康被害は,個別の原告に特有の事実ということはできず,原告らに共通に生じている被害というべきである。上記のとおり,睡眠妨害の有無及び程度もW値と明瞭な量反応関係にあることも踏まえると,原告らは,本件コンター内に居住する間,普天間飛行場の航空機騒音により,W80区域の方がW75区域よりは著しいという意味において,その居住する区域のW値に応じて,等しく高血圧や聴力障害といった身体的被害を受けているといえる。 被告は,原告らの訴える症状について加齢の影響によるものも多く含まれる旨を主張するが,原告らの全てが高齢者ではないことからすると,原告らに生じている健康被害を加齢の影響ということはできない。 健康被害に対する不安普天間飛行場の航空機騒音による健康被害に対する不安については,W80区域内における原告らの91%,W75区域内における原告らの91%において把握されている。 上記のとおり,多数の原告らにおいて実際に健康被害が発生しており,沖縄県調査の結果においては,身体的影響と本件コンターのW値との関係について,W値の比較的低い騒音暴露レベルから影響が見られ,W値80から85の群においてオッズ比の上昇傾向が見られること,これらの身体的自覚症状を訴える者の比率がW値に応じて高くなるとされている。そして,上記のとおり,健康被害については,WHOガイドライン及び沖縄県調査報告書における知見や指摘があり,欧州夜間騒音ガイドラインも健康に対する悪影響 者の比率がW値に応じて高くなるとされている。そして,上記のとおり,健康被害については,WHOガイドライン及び沖縄県調査報告書における知見や指摘があり,欧州夜間騒音ガイドラインも健康に対する悪影響の防止の趣旨も含めた暫定目標を示していること,原告らは毎日のように航空機騒音に暴露されており,その中で 様々なストレスが堆積していくことが推認されることなどを踏まえれば,原告らが航空機騒音にさらされ続けることによって健康を害することになるのではないかという不安を感じることには相応の根拠があるというべきである。 これらの事情などを考慮すれば,原告らは,本件コンター内に居住する間,W80区域の方がW75区域よりは著しいという意味において,その居住する区域のW値に応じて,普天間飛行場の航空機騒音により,高血圧や頭痛,肩こり等のストレスによる身体的被害の発生する危険性がある状況で生活しなければならないことから生ずる,身体的被害の発生する不安感等の精神的苦痛を等しく受けていると認めることができる。 精神的被害a 原告らは,普天間飛行場による航空機騒音により,その居住地において,イライラ感や不快感の精神的苦痛を被っている。 また,原告らのほとんど(W80区域内の原告らの100%,W75区域内の原告らの99%)は,最近,米軍機の事故が多発していると感じ,上空からの部品の落下や米軍機の墜落,落下物などからの有害物質による人体の影響といった米軍機による事故への不安を訴えている。普天間飛行場においては,これまで宮森小学校米軍機墜落事故,沖縄国際大学米軍ヘリコプター墜落事故といった大きな事故が起きているほか,近年においても,航空機からの落下物の事故が頻繁に起きていることからすると,原告らが航空機事故に対する不安感や恐怖感を抱くことには根拠が 米軍ヘリコプター墜落事故といった大きな事故が起きているほか,近年においても,航空機からの落下物の事故が頻繁に起きていることからすると,原告らが航空機事故に対する不安感や恐怖感を抱くことには根拠があるものである。 さらに,未成年者の子や孫と同居している原告らのほとんど(W80区域内の原告らの94%,W75区域内の原告らの91%)は,航空機騒音に対し,未成年者の子や孫が,おびえる,泣き出す,就寝中に起きる,耳をふさぐ,不快な感情を表すといった被害を訴えており, こうした被害は,子どもへの悪影響に対する不安という点で共通性が認められる。また,子や孫がいない原告らについても,航空機騒音にさらされている原告らが,騒音によって将来を担う未成年の子や孫に悪影響がみられるかもしれないと不安を抱くことは十分に考えられる。 原告らが上記の精神的苦痛を被っていることは,沖縄県調査の結果において,普天間飛行場周辺の住民の一定割合がイライラ感や恐怖感といった精神的苦痛を訴えていたこと,W値の増大とともに被害感が上昇する傾向が顕著であり,航空機騒音のイライラ感について,普天間飛行場周辺の反応率が嘉手納飛行場周辺に比べて高い傾向が認められていたこと,航空機騒音の恐怖感は墜落の不安と関連があると考えられると指摘されていること,原告らの当事者尋問の結果などから明らかであり,経験則上も,生活妨害とは別個に,航空機騒音にさらされた人がイライラ感や不快感を覚えることは明らかである。 これらの事実を考慮すれば,原告らは,本件コンター内に居住する間,W80区域の方がW75区域よりは著しいという意味において,その居住する区域のW値に応じて,普天間飛行場の航空機騒音を直接の原因とするイライラ感や不快感,航空機事故への不安感,未成年の子や孫への悪影響に対する不安と 75区域よりは著しいという意味において,その居住する区域のW値に応じて,普天間飛行場の航空機騒音を直接の原因とするイライラ感や不快感,航空機事故への不安感,未成年の子や孫への悪影響に対する不安といった精神的苦痛を受けていると認めることができる。 b 被告は,沖縄県調査においては情報バイアスが排除されておらず,その調査結果は正確性,中立性が担保されていない旨を主張するが,普天間飛行場の航空機騒音のうるささの程度や被害感について周辺住民にアンケート形式で質問をする場合,沖縄県調査のような質問事項となるほかなく,これを否定すれば,一切のアンケート調査は不可能となってしまうため,上記の被告の主張を援用する余地はない。 また,被告は,精神的被害の具体的内容について,各原告の訴える 内容に一定のばらつきが見られることを指摘するが,騒音によって健全な精神活動を阻害され,様々なマイナスの記憶,思い,想像等が掻き立てられ,不安定な気持ちになるという点では,原告らのほとんどがこれを感じていることは経験則上明白であり,共通被害を認める上で,これ以上に個別の感覚,感情の発露の詳細が共通する必要はない。 低周波音による被害a 低周波音から生じる騒音被害に関する判断基準としては,環境省環境管理局大気生活環境室が示した心身苦情参照値及び「気になる-気にならない曲線」の評価値といった基準が確立しており,それらを上回る低周波音を含む騒音に晒された場合には,低周波音を含まない騒音に晒された場合に比べ,心身に対する騒音被害が一層深刻化するという経験則が見出されている。被告の提出する文献においても,上記の評価値を超える場合には,一応,事実的因果関係,相当因果関係(受忍限度超過)のいずれの要件も満たしていると判断して差し支えない旨が示されている。 されている。被告の提出する文献においても,上記の評価値を超える場合には,一応,事実的因果関係,相当因果関係(受忍限度超過)のいずれの要件も満たしていると判断して差し支えない旨が示されている。 なお,低周波音に暴露された被害者の心身に対する影響の有無及び程度は,その発生源が固定されているか否かによって本質的な差異が生じるものではないし,普天間飛行場の航空機騒音は1日当たり数分から数十分累積し,ほぼ毎日継続しているから,低周波音も同様に累積し,継続しているものと推察される。このため,上記参照値,評価値を基礎として,原告らに生じている低周波音による心身に対する被害を認定することに問題はない。 b 原告らは,普天間飛行場に離着陸等する航空機等(特にヘリコプター)が発する低周波音に暴露されているところ,本件コンター内の計測地点において平成13年度に実施された県低周波音調査では,G特性音圧レベルが92dB以上と,心身苦情参照値を大きく上回る低周 波音が測定され,平成14年度,同17年度に実施された調査でも,全測定点で1/3オクターブバンド中心周波数が50Hz,63Hz及び80Hzにおいて評価値を超えていた。特に,垂直離着陸機であるオスプレイが配備された平成24年10月以降においては,同機種から特に飛行速度が遅くなる垂直離着陸時において,極めて高い低周波音被害が発生している。 低周波音は,様々な生活環境からも発生するが,クーラーや冷蔵庫等からわずかに発生する低周波音と,普天間飛行場に配備された米軍機,特にその多くを占めるヘリコプター(平成30年1月時点で71機中56機)が発する低周波音は同列に論ずることができない。 c このように,本件コンター内においては心身苦情参照値及び評価値のいずれによっても,心身及び物的影響を生じさせる 成30年1月時点で71機中56機)が発する低周波音は同列に論ずることができない。 c このように,本件コンター内においては心身苦情参照値及び評価値のいずれによっても,心身及び物的影響を生じさせる高レベルの低周波音が確認されており,上記の精神的苦痛は,普天間飛行場の騒音に低周波音が含まれることにより,その居住する区域のW値に応じて等しく増大させられている。 このことは,上記の低周波音による心身に対する騒音被害に関する経験則に加え,沖縄県調査において,普天間飛行場の航空機騒音による生活妨害についての回答結果がW値と量反応関係にあり,かつ,普天間飛行場周辺の被害感等の反応率が嘉手納飛行場周辺よりW値で5ないし10に相当する程度高くなっており,上記の反応率の差異を導く主要因として想定し得るのが低周波音の影響しかないこと,普天間飛行場の常駐機は低周波音を発生しやすいヘリコプターやプロペラ機が中心であり,ジェット機が常駐機である嘉手納飛行場とは常駐機の構成に際立った違いがみられることなどから明らかである。 d さらに,原告らは,それぞれその居住する区域のW値に応じ,低周波音を原因とする建具等のがたつきに伴い,イライラ感や不快感に伴 う精神的苦痛を最低限等しく受けている。 このことは,本件コンター内に居住する住民のうち,W80区域内における原告らの88%,W75区域内の84%が建具等のがたつきの被害を把握していること,低周波音による建具のがたつきを裏付ける実験等の結果によると,普天間飛行場の航空機等から発生する低周波音はこれらの実験等により建具のがたつきが生ずるとされる数値を超えているものが含まれていること,原告らの当事者尋問の結果などから明らかである。 そして,建具や家具等の振動によって意識の集中や静音が妨げられることに により建具のがたつきが生ずるとされる数値を超えているものが含まれていること,原告らの当事者尋問の結果などから明らかである。 そして,建具や家具等の振動によって意識の集中や静音が妨げられることにより,原告らの日常生活が妨害されているところ,これに伴って精神的苦痛が生ずることも当然である。 ⑸ 普天間飛行場の公共性の評価被告が主張する米軍の災害派遣活動及び社会貢献活動の事実は不知。 災害発生時に,米軍の任務,役割が果たされることにより,普天間飛行場周辺地域の住民の利益が守られるとの主張は争う。 仮に米軍所属部隊等が被告の主張するボランティア活動等を実施しているとしても,普天間飛行場の使用が高度の公共性を有することにはならない。 普天間飛行場の公共性,公益性が部分的に個人的利益と相容れない場合に,比例原則の下で個人的利益が後退を余儀なくさせられる場合もあり得る旨の主張は争う。 ⑹ 被告による周辺対策等の実施状況及び評価ア住宅防音工事に関する一般論被告により住宅防音工事に対する助成措置が採られていることは認め,その具体的な内容及び効果については不知。住宅防音工事が実施済みの屋内においては,航空機騒音による日常生活への影響は相当程度軽減されていることは否認ないし争う。 仮に,被告の主張する住宅防音工事が実施されているとしても,以下のとおり,住宅防音工事は,窓を開放することが多いという沖縄特有の生活様式もあいまって,騒音対策として基地周辺住民に必須ないし有用なものとして認識されているとはいい難く,その効果は極めて限定的であり,原告らの航空機騒音に伴う被害を軽減する施策とはなっていない。 このため,違法性を減ずる要素として考慮すべきではない。 室数の制限住宅防音工事については,防音工事を実施する室数に制 あり,原告らの航空機騒音に伴う被害を軽減する施策とはなっていない。 このため,違法性を減ずる要素として考慮すべきではない。 室数の制限住宅防音工事については,防音工事を実施する室数に制限が設けられている。 新規防音工事については,2室以内の居室の範囲で実施し,次に追加工事として世帯人数に1を加えた室数から新規工事済の室数を差し引いた室数の追加防音工事を施工するというものであり,室数も最大で5室に制限されている。この点は一挙防音工事においても同様である。 外郭防音工事については,住宅全体が対象であるものの,住宅防音工事を実施していない集合住宅という制限があり,限定的なものである。 したがって,普天間飛行場周辺の居宅のすべてについて住宅防音工事が実施されるものではない。また,通常の生活においては,防音工事が施工された居室という特定の部屋のみで生活をするわけではなく,防音工事が施工されてない居室で生活する時間も当然にある。 部屋を密閉することが前提であること被告による住宅防音工事の内容は,部屋を密閉化することが前提となっている。しかしながら,高温多湿の気候である沖縄において,部屋を密閉するとすれば,年間の相当日数において長時間冷房を継続的に使用することが余儀なくされ,原告らは過大な電気料金を負担することになる。沖縄県調査における生活環境調査の結果によれば,住宅防音工事を設置した世帯においても,常に窓を閉め切って部屋を使用しているのは 10%から20%にすぎないとされており,その理由の一つとして電気料金の補助がないことが指摘されている。 さらに,一般的に人が一日中密閉された部屋で過ごすことは困難であり,換気などのために窓を開けて生活するのが自然である。沖縄の気候は,夏でも最高気温が32度程度であり,風が強い とが指摘されている。 さらに,一般的に人が一日中密閉された部屋で過ごすことは困難であり,換気などのために窓を開けて生活するのが自然である。沖縄の気候は,夏でも最高気温が32度程度であり,風が強いことから,窓を開ければ夏でも冷房を使用せずに生活可能である上,居室を密閉すると家全体の風通しが悪くなり,住環境が悪化する。こうした沖縄特有の生活形態が存在することは,沖縄県土木建築部住宅課作成の「風土に根ざした家づくり手引書」の記載や,原告らの当事者尋問の結果によっても明らかである。 以上によれば,防音工事が行われた居室を密閉した状況で使用することは,原告らの現実的な生活形態にそぐわない。 低周波音と住宅防音工事の関係建築材料による遮音は,一般に低周波音の場合は効果が小さくなり,吸音についても,基本的には低周波音域では効果が少なく,吸音の効果を上げることは構造的に難しい。 住宅防音工事の仕様上も,100Hz以下の低周波音は想定されていない。本来であれば,普天間飛行場は低周波音を発生させやすいヘリコプターやプロペラ機が常駐機となる以上,これに対応した住宅防音工事が実施されるべきであるが,普天間飛行場においては,ヘリコプター防音工事は実施されていない。このため,被告による住宅防音工事では,低周波音に対する防音効果は確保されていない。 さらに,低周波音は通貫性が高い一方で,住宅防音工事を実施して部屋を密閉すれば,通常の騒音域の騒音は一定程度遮断される。その結果,通常の騒音域の騒音による低周波に対するマスキング効果の低下を招き,低周波音が顕著になり,被害が悪化するため,一般に,低周波音の被害 者は低周波音を感じると窓を開けるとされている。 しかしながら,原告らが窓を開ければ,住宅防音工事の効果が皆無となり,普天間飛行場におけ なり,被害が悪化するため,一般に,低周波音の被害 者は低周波音を感じると窓を開けるとされている。 しかしながら,原告らが窓を開ければ,住宅防音工事の効果が皆無となり,普天間飛行場における甚大な騒音被害を受けることになる。この結果,原告らの心身に対する騒音被害は,低周波音を含まない騒音に暴露された場合に比して,一層深刻化している。 住宅防音工事の施工件数について住宅防音工事は,第1事件原告らのうちその6割以下しか施工を受けておらず,複数の防音工事が施工された住宅に居住する第1事件原告らの人数は全体の半数にも及んでいないことから,住民が被告による住宅防音工事の効果に多くを期待していない事実が分かる。このことは,住宅防音工事に満足しているかという質問に対し,「満足」又は「少し満足」との回答をした者が60%を下回っていたことからも明らかである。 イ個別の原告らの住宅防音工事の実施状況以下のとおり,原告237ら,原告554ら,原告2395らについては,住宅防音工事を実施したことを理由とする被告の主張はその前提を欠くものである。 原告237らについて被告が原告237ら4名の居住する建物の1階部分について平成22年3月31日に5室の住宅防音工事を実施したことは認めるが,同建物は室内階段とドアで完全に仕切られるなど,1階部分と2階部分が独立した構造になっている上,1階部分と2階部分は,電気の供給やポストの設置も個別にされるなど,独立した形で利用されている。 そして,原告237らは住宅防音工事が実施されていない建物の2階部分に居住していることから,原告237らについて住宅防音工事を実施したことを理由とする被告の主張は,その前提を欠くものである。 原告554らについて被告は,原告554らの居住する 部分に居住していることから,原告237らについて住宅防音工事を実施したことを理由とする被告の主張は,その前提を欠くものである。 原告554らについて被告は,原告554らの居住する建物の2階部分について,昭和57年9月15日に2室,平成3年3月12日に2室,平成28年11月9日に2室の住宅防音工事を実施したとのことであるが,同建物は1階部分と2階部分のそれぞれに門が設置され,外階段でのみ往来が可能な構造となっており,1階部分と2階部分がそれぞれ住居として独立している。 そして,原告554及び原告556は,少なくとも10年以上前から現在に至るまで,住宅防音工事が実施されていない1階部分に居住している。また,原告555は,実母である原告番号554の介護のため,平成23年頃以降,1階部分に居住している。このため,原告554らのうち,住宅防音工事の実施された2階部分に居住しているのは原告557のみである。 したがって,原告554から原告556までについて,住宅防音工事の実施を理由とする被告の主張はその前提を欠くものである。 原告2395らについて被告は,原告2395らの居住する建物について,昭和55年9月20日に2室の住宅防音工事を実施したと主張する。 しかしながら,本住所地には2棟の建物が存在しており,上記住宅防音工事が実施されたのは母屋(登記簿上の床面積61.28㎡)である。 他方で,原告2395らが平成14年3月に転居し,現在まで居住しているのは住宅防音工事が実施されていない未登記の「離れ」(床面積31. 21㎡)である。 したがって,原告2395らについて,住宅防音工事の実施を理由とする被告の主張は,その前提を欠くものである。 ウ住宅防音工事以外の防音対策について被告の主張する住宅 ㎡)である。 したがって,原告2395らについて,住宅防音工事の実施を理由とする被告の主張は,その前提を欠くものである。 ウ住宅防音工事以外の防音対策について被告の主張する住宅防音工事以外の防音対策の内容については不知。 仮にこのような防音工事等が行われていたとしても,病院等や公民館,老人福祉センター等を対象とする防音工事は,原告らの居住地における航空機騒音による被害を直接軽減するものではない。また,緑地帯整備事業も,普天間飛行場の航空機騒音による被害と無関係であり,原告らの居住地における航空機騒音による被害を直接軽減するものではない。 したがって,被告の主張する助成措置は,いずれも原告らの生活における航空機騒音による被害を軽減するものではない。 エその他の周辺対策について被告が主張する障害防止工事の助成,民生安定施設の一般助成,特定防衛施設周辺整備調整交付金の交付,沖縄懇談会事業,基地交付金及び調整交付金の交付,騒音状況の公開といった周辺対策等の内容及び実施状況については不知。 仮に上記の周辺対策が行われていたとしても,いずれも原告らの居住地における航空機騒音による被害を直接軽減するものではない。また,上記の助成措置による利益は,騒音被害と関係なく,地域の全ての住民が享受するものであり,その本質は,違法行為を前提とする賠償ではなく,米軍基地を配置することにより生ずる全ての不利益を念頭においた財政措置にほかならない。このため,こうした措置については,違法な騒音被害を直接に被っている地域の一握りの住民である原告らに支払うべき不法行為に基づく慰謝料額の算定において斟酌すべきではない。 オ普天間飛行場の航空機に係る音源対策等被告の主張する騒音対策の事実(日米合同委員会合意による航空機騒音規制措置, らに支払うべき不法行為に基づく慰謝料額の算定において斟酌すべきではない。 オ普天間飛行場の航空機に係る音源対策等被告の主張する騒音対策の事実(日米合同委員会合意による航空機騒音規制措置,KC-130空中給油機の岩国飛行場への移駐,回転翼機及びティルト・ローター機等の訓練活動の沖縄県外への移駐等)自体について は積極的に争わないが,近年の騒音測定結果からすれば,上記の措置によっても普天間飛行場周辺地域の騒音は軽減されていない。 また,被告の主張する航空機の運航対策については不知であるが,仮にその内容が被告主張のとおりであったとしても,米軍に大幅な裁量が与えられており,不十分なものに過ぎない。 【被告の主張】⑴ 民事特別法2条にいう設置又は管理の瑕疵の意義,違法性の判断基準供用目的に沿って物件が使用されることとの関連において民事特別法2条にいう設置又は管理の「瑕疵」が認められるためには,当該物件を利用に供した結果,当該物件の利用者以外の第三者との関係において,社会生活上受忍すべき限度を超える違法な権利侵害ないし法益侵害がもたらされているといえる必要があるところ,違法な権利侵害ないし法益侵害の存否は,侵害行為の態様と侵害の程度,被侵害利益の性質と内容,侵害行為のもつ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等のほか,侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況,その間にとられた被害の防止に関する措置の有無及びその内容,効果等の事情を考慮し,これらを総合的に考察してこれを決すべきとされている(最高裁昭和56年判決参照)。 上記の最高裁昭和56年判決の判断枠組みは,同判決で言及されている諸種の利益衡量要素を厳密に比較検討してされる総合的判断というべきものであり,普天間飛行場の供用の違法性の判断に当たっては,原告らが侵害行 の最高裁昭和56年判決の判断枠組みは,同判決で言及されている諸種の利益衡量要素を厳密に比較検討してされる総合的判断というべきものであり,普天間飛行場の供用の違法性の判断に当たっては,原告らが侵害行為と主張するものの具体的な態様と侵害の程度,原告らが侵害されていると主張する被侵害利益の性質と内容等が明らかにされることが必要である。 このため,原告らは,損害賠償請求権が発生したと主張する時点における,現実に暴露されている騒音の内容や程度を明らかにした上で,その主張に係る各種被害が具体的に発生していることを,原告ごとに主張,立証する必要がある。 また,最高裁昭和56年判決は,原告らが全員に最小限共通する共通損害を主張立証する場合について,その立証の程度を軽減することを認めたものではないから,原告らは,その主張する被害が現に他の原告らにも共通に生じていると認められるような性質,内容及び程度のものであることを具体的に主張立証することが必要である。 ⑵ 侵害行為ア航空機騒音の内容及び特徴航空機騒音には,継続時間が短く,一過性,間欠的であるという特徴があり,また,飛行形態や飛行経路,気象条件等によって音の伝搬特性は異なる。このような航空機騒音の特殊性に鑑みると,ある航空機の発する騒音により周辺住民の生活に何らかの影響があるとしても,その影響は限定的であり,普天間飛行場における航空機騒音の程度を判断するに当たっても,ピーク騒音レベル値の継続時間が長い騒音とこれを同一視すべきではない。 また,航空機騒音による影響は,飛行場からの距離によって著しく異なることや,飛行形態や飛行方向,離着陸の別によっても音の影響が大きく異なることにも留意が必要である。 さらに,普天間飛行場のような特殊空港は,民間空港と異なり,航空機の運航形態 によって著しく異なることや,飛行形態や飛行方向,離着陸の別によっても音の影響が大きく異なることにも留意が必要である。 さらに,普天間飛行場のような特殊空港は,民間空港と異なり,航空機の運航形態が一定ではないため,W値が一定値以上の区域内においても,一定程度以上の騒音が恒常的に発生しているわけではない。 イ航空機騒音の評価方法騒音暴露認定の留意点上記で述べた防衛施設としての飛行場における航空機騒音の特質からすれば,環境基準値や特定地点の測定結果によって,具体的な地点の騒音発生状況を推測することはできず,また,特定の地点における騒音の測定結果から騒音暴露の諸条件を異にする他の地点における騒音発生の 状況を単純に推測することはできない。 周辺住民の心身への影響や生活妨害の程度を的確に認定するためには,騒音の大きさ,その発生回数,年別,月別,曜日別,日別の騒音量の変化,時間帯別の発生回数及び騒音の継続時間その他の発生形態等について,個々の住民,居住地ごとに多面的かつ具体的な検討を加える必要があり,原告らは,個々人が実際に暴露されている騒音の内容や程度を明らかにした上で,これにより受けた被害の内容や程度を個別具体的に主張立証する必要がある。 本件コンターは受忍限度を画する基準にはならないこと本件コンター指定の基礎となったW値の算定において採用された防衛施設庁方式は,政策的補償措置としての周辺対策の実施範囲を広く設定することなどの観点から,飛行回数や航空機騒音の継続時間,着陸音について補正した上でW値を算定するものとなっている。 また,本件コンターは,算出されたW値に基づく騒音コンターを基にしつつ,行政区画,集落の状況,道路,河川等に即して最小限の修正を行った上で指定されたものである。このため,騒音コンターに沿 ている。 また,本件コンターは,算出されたW値に基づく騒音コンターを基にしつつ,行政区画,集落の状況,道路,河川等に即して最小限の修正を行った上で指定されたものである。このため,騒音コンターに沿って街区等が存在する場合,第1種区域等の外郭線はこれら街区等に即して外側方向に修正されて引かれ,その結果指定された区域は,政策的に必要な範囲で騒音コンターの外側に広げられている。したがって,本件コンターと騒音コンターは別個のものである。 以上のとおり,本件コンターは,被告による周辺対策を実施する区域を画するために設定された政策的補償措置の実施基準であり,騒音コンターとも別個のものであるから,直ちに違法性判断における受忍限度を意味するものではないし,ある数値のコンター内に居住しているからといって,実際にその数値の航空機騒音に暴露されているということもできない。 本件コンターが近年における実際の騒音状況を反映していないことa 本件コンターは,昭和52年騒音度調査により得られた騒音測定結果等のデータによって作成された騒音コンターに基づき指定され,昭和56年及び昭和58年に告示されたものであり,調査当時の測定結果等のデータが近年における実際の騒音暴露状況を反映しているといえないことは社会通念上明らかである。 b 県等測定局における航空機騒音の測定結果によれば,平成15年度以降の航空機騒音は,いずれの測定点においても,少なくとも増加傾向にはなく,県新城測定局について平成30年度にW値が上昇している点も,同年1月から米軍嘉手納基地の北側滑走路の補修工事が実施されたことに伴い,戦闘機が一時的に普天間飛行場に離着陸することになったことが影響した可能性があり,一時的な要因にすぎない。 そして,本件コンター上のW75区域内にある市真志喜 走路の補修工事が実施されたことに伴い,戦闘機が一時的に普天間飛行場に離着陸することになったことが影響した可能性があり,一時的な要因にすぎない。 そして,本件コンター上のW75区域内にある市真志喜測定局における測定結果は,平成15年度以降,全ての年度において,環境庁方式によるW値が70未満と本件環境基準の基準値を達成しており,環境庁方式によるW値に3ないし5を加算した防衛施設庁方式(簡易計算)によるW値でみても,本件コンターが想定する騒音レベルの下限よりも低い値が測定されていることから,本件コンターと著しい乖離が生じているといえる。 また,W80区域内にある県野嵩測定局における測定結果は,平成23年度以降,全ての年度において,環境庁方式におけるW値が75未満で推移し,防衛施設庁方式(簡易計算)によるW値でみても,本件コンターが想定する騒音レベルの下限よりも低い値が測定されていることから,本件コンターと著しい乖離が生じているといえる。 c さらに,国測定地点における測定結果によると,本件コンターの告示後間もない昭和60年ないし63年度当時と平成15年度以降の比 較において,国新城測定地点ではW値(環境省方式)が全体として低減しており,国大謝名測定地点でも全体として低減の傾向にあるといえる。また,上記比較において,騒音発生回数及び航空機騒音の累積時間,月別最高音が100dB(A)以上を記録した月数,すなわち高いピークレベルの騒音の発生頻度については,国新城測定地点及び国大謝名測定地点のいずれでも総じて減少しているといえる。 d したがって,少なくとも上記で指摘した各測定局及び測定地点が所在する区域においては,本件コンターは近年における実際の騒音状況を反映しておらず,さらに,本件損害賠償請求の請求対象期間において,普天間 したがって,少なくとも上記で指摘した各測定局及び測定地点が所在する区域においては,本件コンターは近年における実際の騒音状況を反映しておらず,さらに,本件損害賠償請求の請求対象期間において,普天間飛行場の全体につき,その騒音レベルは本件コンター上のW値が示すより相当程度低いことが推認されるべきである。 ウ低周波音について原告らは,W値の計算方法においては低周波音の音圧等が正確に反映されていない旨を主張する。しかしながら,W値の算定の基礎となるA特性音圧レベルは,20Hzから80Hzまでの低周波音も含めた10Hz以上の音響振動について,周波数帯ごとの音圧レベル測定を行った上で,人間の聴覚における特性を反映させた周波数の重み付けを施したものであり,低周波音の音圧も適切に評価されている。 したがって,A特性音圧レベルを基に算定されるW値においても,低周波音の音圧は適切に評価されており,低周波音による受忍限度を考慮するに当たっても,W値を基準とすべきである。 原告らが,低周波音については防音対策の効果が小さい旨を主張するが,低周波音の家屋内外レベル差の測定結果等によれば,必ずしも家屋によって低周波音が遮音されないとはいえない。 また,低周波音も音響振動である以上,発生源からの距離によって減衰が認められる点には十分に留意されるべきである。このほか,低周波 音の音圧レベルは,気温,風向風速の勾配といった気象条件や地形によっても影響を受ける上,低周波音は,低周波音以外の騒音に比べて波長が長いため,建物から数m離れただけでも,反射,遮蔽,回折等により局所的に音圧レベルが変化する場合がある。 さらに,低周波音は,飛行場周辺に限らず,生活環境中の様々な場所に存在し,その発生源の特定は困難であり,原告らは,普天間飛行場を離着陸 遮蔽,回折等により局所的に音圧レベルが変化する場合がある。 さらに,低周波音は,飛行場周辺に限らず,生活環境中の様々な場所に存在し,その発生源の特定は困難であり,原告らは,普天間飛行場を離着陸する航空機とは発生源を異にする低周波音に日常的に暴露している可能性が高い。このため,原告らが低周波音による何らかの精神的苦痛等の影響を受けたとしても,これが航空機から発生する低周波音に起因するものであると認めるに足りる証拠はない。 ⑶ 原告らの被害についてア共通被害全般について航空機騒音が人の身体又は精神に直接的かつ深刻な影響を及ぼすことは一般的に否定されていることこれまでになされた国際的な調査,研究においては,航空機騒音を受けることにより肉体的,精神的に直接的かつ深刻な影響を受けることを示す調査結果や研究報告はなく,むしろ航空機騒音が人の身体又は精神面に影響を及ぼすことは一般的に否定されているといえる。 我が国における調査,研究においても,航空機騒音により騒音性難聴等の身体的被害が生じることは概ね否定されており,心循環器系疾患発症の危険性増加との間に因果関係は認められていない。また,航空機騒音と精神症状との間にも明確な関係は認められていない。 以上のとおり,我が国内外の調査研究結果によれば,飛行場周辺で航空機騒音を受けることにより,肉体的,精神的に直接的かつ深刻な影響を受けることを示す明確な科学的証拠はなく,航空機騒音が人の身体又は精神面に影響を及ぼすことを認めるに足りる十分な科学的根拠はない というべきである。 原告らが各種被害について具体的な主張立証をしていないことa 原告らが,原告ら全員が一定の限度で等しく被っている共通損害を主張立証する場合であっても,この損害の立証の程度は,一般的な損害賠償請求に 告らが各種被害について具体的な主張立証をしていないことa 原告らが,原告ら全員が一定の限度で等しく被っている共通損害を主張立証する場合であっても,この損害の立証の程度は,一般的な損害賠償請求における場合と基本的には変わりはなく,原告らは,何を共通損害として捉えるかを主張した上で,原告ら全員がこの損害を一定の限度で等しく被っていることを立証する必要がある。したがって,原告らの一部の者にそのような損害が発生していることを個別に主張立証するのみでは足りず,当該被害が,原告ら全員又は指定区域ごとに共通して生じていると認められるような性質,内容及び程度のものであることを,具体的に立証すべきである。 b 一般的に,航空機騒音が日常生活等に望ましくない影響を与える可能性があること自体は必ずしも否定することはできないが,普天間飛行場の公共性やその供用による社会的効用が多大であること,被告が住宅防音工事等の周辺対策によりできる限り被害の軽減に努めていることに照らせば,ある程度の航空機騒音については不可避的なものとして受忍限度を超えないというべきであり,普天間飛行場の供用を違法と判断するに足りる程度の航空機騒音による被害の内容,程度としては,一般通常人の社会生活上耐えられないような重大かつ深刻な程度でなければならない。 そして,原告らの共通損害と認められるのは,騒音レベルが相当大きい場合で,一般通常人の社会生活上耐えられないような重大かつ深刻な程度の障害が,普天間飛行場周辺の大部分の居住者に発生していると認められる場合に限られるというべきである。 c しかしながら,原告らが主張する身体的被害その他の被害はいずれも航空機騒音が原因と特定されたものではなく,当該被害が原告ら全 員に共通して生じたことを裏付ける証拠もない。その他に当該被害 しかしながら,原告らが主張する身体的被害その他の被害はいずれも航空機騒音が原因と特定されたものではなく,当該被害が原告ら全 員に共通して生じたことを裏付ける証拠もない。その他に当該被害を立証するに足りる客観的な資料も提出されていないから,原告らの主張する被害はいずれも航空機騒音による共通損害とは認められない。 少なくとも,アンケート陳述書を提出していない原告らについては,個別の立証は何らされていないというべきである。 また,原告らの提出するアンケート陳述書においては,そもそも航空機騒音の暴露の認識が認められない原告らすら存在するほか,航空機騒音暴露の頻度や時間帯に係る認識についても共通性がなく,原告らが同一のW値の指定区域内に居住していることのみをもって,原告ら全員が,又は指定する区域ごとに共通する航空機騒音被害を受けていると推認することはできない。 さらに,普天間飛行場の実際の航空機騒音の程度や被告が実施している住宅防音工事の減音効果なども考慮すれば,原告らが航空機騒音により何らかの生活妨害を被っているとしても,そのような被害はいずれも普天間飛行場周辺のほとんどの地域で,社会生活を営む上で受忍すべき範囲内のものというべきである。 原告本人尋問の結果や沖縄県調査等も原告らの主張を裏付けるものではないことからすれば,原告らにおいて上述した意味における被害を認めるに足りるだけの主張立証が尽くされたとはいえない。 損害が存在しない原告について原告856は,アンケート式陳述書において,原告らが共通損害として主張する損害項目について全て否定しているところ,共通損害として認められるべき損害は,原告ら全員に,又は指定区域ごとに最小限共通するものに限られるというべきであり,最小限共通する損害は原告856が述べる内容を基準とす いて全て否定しているところ,共通損害として認められるべき損害は,原告ら全員に,又は指定区域ごとに最小限共通するものに限られるというべきであり,最小限共通する損害は原告856が述べる内容を基準とすべきであるから,共通損害の存在も否定されるべきである。 原告らの居住地の認定は慎重にされるべきであること原告1687は,昭和54年以降,海外勤務や東京都への単身赴任をしてきた時期があったにもかかわらず,令和3年7月1日まで住民票上の住所を変更していない旨を供述しており,長期間にわたって,公的書類である住民票上の住所と実際の居住地が異なっていた事実が示されている。 このことを踏まえると,仮に原告らの主張する居住地が公的書類上の住所と一致しているとしても,原告らが実際に公的書類上の居住地に居住しているかは必ずしも明らかではないといわざるを得ず,原告らの居住地の認定は慎重にされるべきである。 イ個別の共通被害について生活妨害a 原告が精神的被害として主張する生活妨害,睡眠妨害及びその他の精神的被害に関し,一般に,うるささの反応は個人に関係する種々の社会的及び心理的要因により大きく影響されることから,音が騒音として感受されるきっかけについては個人差が大きく,音の物理量だけで説明できるものではない。 うるささは騒音妨害として述べられているものに対する人間の主観的な反応であり,特に,騒音源に対する人間の評価,態度がうるささの反応を増大させる重大な要因として働く可能性がある。このような影響は,それが主観的なものであるだけに,それが認められたとしても,法律上保護された利益の侵害に当たるか否かについては更に慎重な検討が必要というべきである。 さらに,普天間飛行場周辺の航空機騒音の発生は1日の生活時間帯の中でも限られた部分 が認められたとしても,法律上保護された利益の侵害に当たるか否かについては更に慎重な検討が必要というべきである。 さらに,普天間飛行場周辺の航空機騒音の発生は1日の生活時間帯の中でも限られた部分にすぎず,しかも,それらは住民の社会生活への妨害を極力少なくするよう十分に配慮されているのであるから,仮 にある程度の精神的不快感はあるとしても,社会生活上受忍限度の範囲内のものというべきであり,原告らの主観的反応を被害として評価すべきではない。 我が国における調査研究結果においては,航空機騒音と人の精神症状との間に明確な関係性は認められず,航空機騒音と精神的被害の量反応は否定されており,航空機騒音による人の精神面に対する影響については,個人差の顕著な主観的反応であることが裏付けられている。 したがって,原告らについて,普天間飛行場に係る航空機騒音により精神的被害が生じたとは認められない。 b 上記のとおり,原告らは,各人が被ったとする生活妨害等の被害について,その性質,程度を明らかにし,具体的にどのような部分ないし範囲において共通損害として主張する趣旨であるのかを明確にした上で,社会生活上耐えられない程度の強い障害が,原告ら全員に共通して生じていることを客観的な証拠をもって明らかにしなければならないというべきである。 しかしながら,原告らが提出するアンケート式陳述書は,各種の生活妨害について,どの程度の頻度で,どの程度の妨害が生じるかなど,共通損害の内容を何ら示すものではなく,その内容も一定のばらつきがみられ共通性に乏しく,上述した意味における被害を認めるに足りるだけの主張立証が尽くされているとはいえない。 また,普天間飛行場周辺の実際の航空機騒音の程度や被告が実施している住宅防音工事の減音効果なども考慮すれば,原告ら た意味における被害を認めるに足りるだけの主張立証が尽くされているとはいえない。 また,普天間飛行場周辺の実際の航空機騒音の程度や被告が実施している住宅防音工事の減音効果なども考慮すれば,原告らが航空機騒音により何らかの生活妨害を被っているとしても,そのような被害はいずれも社会生活上受忍すべき範囲内のものというべきである。 c 原告らの指摘する沖縄県調査において,「作業妨害」,「思考妨害」,「休息妨害」,「電波障害」,「警告音聴取妨害」の質問項目に対する正 反応率はW値90未満では低率で,W値90以上で初めて急増しているとされている。これに対し,普天間飛行場周辺についてはそもそもW値85未満の区域しか存在せず,W値90以上の区域は存在しないから,沖縄県調査は原告らが主張する生活妨害を根拠付ける証拠とはならない。 睡眠妨害a 睡眠は,本来個人差が顕著であり,客観的には眠っているにもかかわらず不眠を訴える者もいることから,主観的な訴えのみから睡眠妨害の有無を論じることは慎むべきであるし,慣れによる影響の緩和にも留意する必要がある。さらに,老化による脳の血管の動脈硬化は,睡眠障害の一因となるし,人によっては,時計の音や波の音等も,慣れるまでの間は睡眠妨害の原因となる。 そして,研究結果によれば,どの程度の騒音であれば人の睡眠を妨げるものであるかを判定する確たる証拠は存在せず,屋外において発生した騒音が人の睡眠にいかなる影響を及ぼすのかについての客観的な資料は存在しない。また,騒音の間欠性から,航空機騒音と睡眠との関連性は否定されており,脳波の変化を中心に検討した結果によると,ジェット機騒音が睡眠に及ぼす影響についても,被験者に騒音に対する慣れが生じていることが示されている。 さらに,睡眠妨害の原因となり得る精神的 定されており,脳波の変化を中心に検討した結果によると,ジェット機騒音が睡眠に及ぼす影響についても,被験者に騒音に対する慣れが生じていることが示されている。 さらに,睡眠妨害の原因となり得る精神的ストレスの要因には多種多様なものが存在し,仕事や職業生活,家庭生活における悩み等が精神的ストレスの顕著な要因として考えられる。 このように,睡眠妨害については,航空機騒音との関連性が現時点の科学的知見から明確でないばかりか,個人差が極めて顕著な主観的なものであり,他の要因によっても生じるものであることから,共通損害とはなり得ない上,原告らが睡眠の質について何らかの不都合を 訴えているからといって,これが普天間飛行場の航空機騒音によるものであると認めることはできない。 航空機騒音が睡眠に影響を与えることがあるとしても,騒音の大きさ及び騒音発生回数は,音源である航空機からの距離等によって大きく相違するものであり,原告らに実際に睡眠妨害が生じるか否かは,各原告らが睡眠をとると思われる時間帯において,日々,どの程度の騒音(dB(A))に,どの程度の頻度で暴露されているかを検討した上で,個々の原告ごとに,どのような諸事情の下でどのような被害を受けているのかが個別具体的に主張立証されるべきである。 b 原告らのアンケート式陳述書によると,睡眠妨害を訴えていない原告は729人に及んでおり,アンケート式陳述書を提出していない原告らも含めると,睡眠妨害の訴えがない原告らは原告総数の40.4%に上っているから,睡眠妨害が原告ら全員又は指定区域ごとに等しく共通かつ同等に生じているとはいえない。 また,我が国における成人の30%以上に不眠症の症状があり,高齢者のうち28%は不眠症であるとの報告があることや,厚生労働省の調査結果によると,航空機騒音 共通かつ同等に生じているとはいえない。 また,我が国における成人の30%以上に不眠症の症状があり,高齢者のうち28%は不眠症であるとの報告があることや,厚生労働省の調査結果によると,航空機騒音に暴露されていない者であっても相当高い割合の者が不眠を訴えていることからすると,原告らの主張する睡眠障害が,普天間飛行場の航空機騒音によるものであると認めることはできない。 c 原告らの指摘する沖縄県調査における睡眠妨害に関する調査は,主観に基づく自己申告によって得られたデータに基づくものであり,客観的な測定結果によるものではない。騒音レベルの影響を検討するに当たり,睡眠状態を判断する資料として主観的な自己申告を用いることは,調査方法に問題がある。 また,沖縄県調査において,睡眠障害に関する4種類の質問の1つ 以上に「月1,2回ある」と回答した人の割合が,航空機騒音に暴露されていない対照群において約57%も存在したことからすれば,仮に普天間飛行場周辺の住民の中に睡眠障害が認められる者がいるとしても,上記調査の結果を根拠として,その睡眠障害の原因が航空機騒音であるということはできない。 健康被害a 原告らの主張する身体的被害については,個別の原告に特有の事実であり,他の原告と共有することはあり得ないから,原告らごとに,身体的被害の内容を具体的に主張した上で,これを裏付ける医学的な所見に基づく客観的,具体的な資料によって立証すべきである。 また,飛行場周辺で航空機騒音を受けることにより身体に影響が及ぶことは一般的に否定されている上,疾病や症状には様々な原因があるから,本件の被害として認められるためには,医学的な裏付けによって原因が特定され,症状についても客観的な医療記録を提示して立証がされるべきである。 本件では,こう ,疾病や症状には様々な原因があるから,本件の被害として認められるためには,医学的な裏付けによって原因が特定され,症状についても客観的な医療記録を提示して立証がされるべきである。 本件では,こうした客観的な立証は一切されていない。また,原告らのアンケート式陳述書によると,これを提出していない原告らも含めれば,健康への影響ないし症状等の訴えのない原告らは原告総数の52.1%に上っており,その症状も様々であるから,原告らに共通して生じる症状等があるとは到底いえない。 b 高血圧について,その原因については塩分摂取,飲酒,運動不足,肥満等が挙げられるところ,若年,中年の男性においては肥満を原因とする高血圧が増えているとされ,人の身体や生活環境は個人差が大きく,高血圧に至る経緯においては様々な事情が影響していると考えられる。したがって,客観的な資料を提出することなく,原告らの陳述内容のみから高血圧の原因が航空機騒音であるとは認められない。 また,聴覚障害についても,人の身体は個体差が大きく,平均的な聴力よりも低いからといって聴力損失(聴力障害ないし難聴)というわけではないし,加齢や疾病による聴力の損失も考えられる。そのため,これらの個体差等について考慮することなく,原告らの陳述内容のみによって聴力障害が生じたと認めることはできない。 原告らの提出するアンケート式陳述書において身体的被害を訴える原告らには高齢者が多く含まれており,原告らの訴える症状等については加齢の影響によるものが多く含まれていると考えられるから,仮にこうした症状が認められたとしても,普天間飛行場の騒音との因果関係は認められない。 健康被害に対する不安原告らは,健康被害に対する不安を独立の法的利益に係る被害として主張しているが,そうである以上,少なく 認められたとしても,普天間飛行場の騒音との因果関係は認められない。 健康被害に対する不安原告らは,健康被害に対する不安を独立の法的利益に係る被害として主張しているが,そうである以上,少なくとも,原告らの生命や身体につき,具体的にどのような危険が生じているかということを離れて論じることはできないというべきである。そうでなければ,健康被害に対する不安は,法的に保護されない原告らの主観的感情に係る被害をいうものにすぎないというべきである。 しかしながら,原告らは,原告らの中に高血圧,耳鳴り,難聴,頭痛,不眠症などの被害が生じている者がいる旨を抽象的に主張し,その立証としてアンケート式陳述書を提出するにとどまっており,原告らに共通して健康被害が生じ,又はその危険が生じていることについて何らの具体的な主張,立証ができていない。 したがって,原告らが主張する健康被害及び健康被害に対する不安について共通損害としての主張立証はされておらず,これらが認められる余地はない。 精神的被害a 前記のとおり,騒音による精神的影響は個人差が顕著で主観的なものであり,これが法律上保護された利益の侵害に当たるか否かについては慎重な検討を要する。 普天間飛行場周辺の航空機騒音の発生は1日の生活時間帯の極めて限定された部分にすぎず,しかも,それらは住民の社会生活への妨害を極力少なくするよう十分に配慮されているのであるから,仮に航空機騒音によってある程度の精神的不快感はあるとしても,通常の社会生活上耐え難いものとまではいえず,もっぱら原告の主観に基づく反応であって損害として評価すべきではない。 b 航空機騒音を直接の原因とするイライラ感や不快感については,生活妨害と別個にこれを論じる意義を見出し難く,航空機事故への不安感についても,そ 基づく反応であって損害として評価すべきではない。 b 航空機騒音を直接の原因とするイライラ感や不快感については,生活妨害と別個にこれを論じる意義を見出し難く,航空機事故への不安感についても,その具体的危険性を根拠付ける主張立証は全くされていない。また,未成年の子や孫に対する悪影響に対する不安については,未成年者への悪影響を根拠づける主張立証はされていないほか,原告らのうちには子や孫のいない者も相当数含まれると思われ,そもそも原告らに共通して生じること自体があり得ないものである。 原告らの提出するアンケート式陳述書においても,原告らが実際に認識している精神的被害の具体的内容は共通ではない。また,アンケート式陳述書を提出した原告らのうち子どもへの影響を訴える者は30.2%にすぎず,その内容にも共通性は見られない上,子や孫と同居していても,子どもへの影響を感じることはない旨を回答している者が72名存在しており,上記の不安感に個人差が大きく,共通性がないことが裏付けられている。 したがって,原告らに,普天間飛行場に係る航空機騒音により,上記の精神的被害が生じたとは認められない。 c 原告らの指摘する沖縄県調査における生活質・環境質調査は,アンケート調査の方式によって行われているところ,一般に,アンケート調査を受ける人が調査の目的を知った上で回答すると,調査の目的と自己の利害関係を念頭に置いて,意識的又は無意識的に回答内容を曲げる危険性があることから,アンケート調査を行うためには,上記のような情報バイアスを排除する必要がある。 沖縄県調査では,質問及びその回答の選択肢によって,その調査目的が普天間飛行場による騒音被害を明らかにするという意図に基づくものであることが明らかであるから,回答者において,普天間飛行場の存在や普 沖縄県調査では,質問及びその回答の選択肢によって,その調査目的が普天間飛行場による騒音被害を明らかにするという意図に基づくものであることが明らかであるから,回答者において,普天間飛行場の存在や普天間飛行場に関する政策等に関して,経済的利害のみならず感情的なものも含め,どのような利害関係を有するかによって,その回答内容が左右されることは明白である。このような情報バイアスが全く排除されていない調査において,調査結果の正確性と中立性が担保されているということはできない。 低周波音による被害a 低周波音による心理的反応として,「うるささ」や「やかましさ」と同時に「圧迫感,振動感」が認められることは明らかにされているが,航空機騒音のような間欠的な非定常音に当てはまる許容値を示す実験結果は存在しない。 また,睡眠影響を含む生理的影響については,低周波音の感覚閾値(低周波音を感じる最小音圧レベル)が実験結果によって示されてはいるものの,この閾値と苦情は直接結びつくものとはされておらず,睡眠影響についても睡眠深度によって覚醒傾向が異なる。 したがって,低周波音による心理的影響,生理的影響は個人差が大きく,被害の明確な認定は困難であり,その受忍限度を画する明確な基準もない。 b また,建具のがたつき等の物的影響については,環境庁(当時)が実験室の実験により,実験に用いた全ての建具ががたつき始める最小音圧レベルの下端を結んだ「建具のがたつき閾値」を示しているものの,建具のがたつき始める最小音圧レベルは,建具の大きさ,設置条件等に大きく左右されるものであり,上記の閾値を超えれば必ず影響が生じるものではなく,低周波音に起因する建具のがたつきの有無等を的確に認定することは困難である。 c 我が国において,低周波音の環境基準は現時点 左右されるものであり,上記の閾値を超えれば必ず影響が生じるものではなく,低周波音に起因する建具のがたつきの有無等を的確に認定することは困難である。 c 我が国において,低周波音の環境基準は現時点で存在していない上,騒音の環境基準は,環境基本法に基づき行政施策を実施するに当たって達成することが望ましい行政上の数値目標として定められたものにすぎず,受忍限度を画するものではない。 また,低周波音の中でも,短時間のみ暴露する航空機騒音に含まれる低周波音については,現時点では十分な調査研究が行われているとはいえず,環境基準やガイドラインが存在しないだけでなく,評価方法や基準値すら定まっていない状況にある。 原告らの指摘する心身苦情参照値は,固定発生源から発生する低周波音について苦情の申立てが発生した際に,低周波音によるものかを判断するための目安として示されたものであり,普天間飛行場のようなヘリコプターなどの移動発生源からの低周波音に関する苦情を評価する基準とはなり得ない。 また,原告らの指摘する評価値は,1/3オクターブバンドの各中心周波数において,50%の人にとって音が「気になる」数値をいうものにすぎず,低周波音による不快感が受忍限度を超えるかどうかを判断するための基準とはなり得ない。 さらに,近時の基地訴訟に係る判決は,いずれも低周波音による共通被害を認めていない。 以上によれば,現時点で,感覚閾値や建具のがたつき閾値等をもって直ちに被害の存在を認定することは相当ではない。 d 低周波音については,距離減衰が認められ,また,気象条件等,特に風による影響を強く受けることから,必ずしも測定地点と同様の低周波音の影響を,原告らを含む普天間飛行場の周辺住民が受けるとはいえず,低周波音による被害を原告らに共通する損害と認める 気象条件等,特に風による影響を強く受けることから,必ずしも測定地点と同様の低周波音の影響を,原告らを含む普天間飛行場の周辺住民が受けるとはいえず,低周波音による被害を原告らに共通する損害と認めることはできない。 原告らが,低周波音による被害を共通損害として主張するのであれば,個々の原告において,その主張に係る上記被害が具体的に発生しており,かつ,それが普天間飛行場に飛来する航空機から生じる低周波音によるものであることを立証する必要があるが,このような立証はされていない。 仮に,原告らが普天間飛行場による低周波音によって最低限共通する損害を主張するのであれば,原告らの居住場所のうち,飛行コースから最も遠い場所に所在する家屋付近において測定した低周波音の数値が基準とされるべきである。 e 原告らは,低周波音に起因する建具のがたつきによる精神的苦痛が共通損害である旨を主張するが,アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,航空機騒音が聞こえる際に建具ががたつくことがあると回答した者は81.0%である一方,がたつくことがあるとは回答しなかった者も18.9%存在し,アンケート式陳述書を提出しなかった原告らも含めると,建具等のがたつきの訴えがない原告らが33.0%に上っている。また,がたつきを訴える原告らにおいても,その頻度に共通性はないばかりか,「たまにがたつく」程度が多く,がたつきが与える精神的影響についても個人差があるから,共通損害とは認められない。 ⑷ 普天間飛行場の公共性の評価ア我が国における安全保障に関する普天間飛行場の公共性普天間飛行場は,安保条約に基づき,我が国の安全に寄与し,アジア太平洋地域における平和と安全の維持に寄与するという高度に政治的,行政的な目的のために米軍に対して提供されている。沖縄県 行場の公共性普天間飛行場は,安保条約に基づき,我が国の安全に寄与し,アジア太平洋地域における平和と安全の維持に寄与するという高度に政治的,行政的な目的のために米軍に対して提供されている。沖縄県の位置関係や,普天間飛行場が沖縄県内に駐留するアメリカ合衆国海兵隊の活動基盤の重要な一端を担っていることからすると,普天間飛行場は,我が国の安全保障並びにアジア太平洋地域の平和及び安定のために極めて重要な役割を果たしており,在日米軍にとっても最も重要な施設である。 また,防衛の公共性は,有事と平時で異なるものではなく,平時における十分な防衛体制の整備と準備,訓練がされなければ,有事において効果的な防衛活動がされることはおよそ期待できない。このため,平時における防衛の担う役割は,有事における場合と同様に他国の我が国に対する侵略を防衛する上で重要なものである。 したがって,普天間飛行場を離着陸する航空機等の諸活動は,我が国の基本的な存立と安全を確保するためのものであり,当然に高度の公共性が認められるものである。 イ災害派遣活動及び社会貢献活動に関する普天間飛行場の公共性普天間飛行場に駐留する米軍は,平成14年1月に沖縄県との間で相互連携マニュアルを制定し,沖縄県内での災害発生時においては,災害の状況を正確に把握した上で,この相互連携マニュアルに沿って,可能な範囲における迅速かつ効率的な被災者の救援活動と被害の拡大防止に相互に協力することとされている。 また,普天間飛行場に駐留する米軍は,普天間飛行場の周辺地域において緊急事態や自然災害等が発生した際,周辺自治体からの要請があるなど所定の要件を満たした場合に,普天間飛行場の施設及び区域への立 入りの許可をすることにより,避難経路の確保や緊急車両の通行を可能とするなど,地元に 生した際,周辺自治体からの要請があるなど所定の要件を満たした場合に,普天間飛行場の施設及び区域への立 入りの許可をすることにより,避難経路の確保や緊急車両の通行を可能とするなど,地元に対する協力等を行っている。 さらに,普天間飛行場は,大規模災害の発生時において,救援物資等の輸送拠点となり得る上,被害状況の把握,捜索・救助活動,人員及び物資の輸送を行うために必要な施設,装備が整っており,急な災害時においても速やかにこれを活用することが可能であるほか,津波被害対策においても重要な拠点となり得るなど,重要な役割を果たしている。 また,米軍は,宜野湾市と定期的に現場レベルで解決可能な議題を協議する場として「クオータリーミーティング」を開催し,お互いが抱える諸課題の解決に向けて建設的な取組みを実施しているほか,米軍人による宜野湾市民との相互交流,ボランティア活動や地域行事への参加等,日常の社会貢献活動を通じて地域の振興等に寄与している。 上記のとおり,普天間飛行場に駐留する米軍は,普天間飛行場の周辺自治体と連携し,地域の防災はもとより日本各地で発生する災害への対応等についても寄与しており,日常の社会貢献活動を通じて地域の振興等にも寄与している。したがって,普天間飛行場は周辺地域にとっても大きな役割を果たしている必要不可欠の施設であり,普天間飛行場の使用は,高度の公共性を有するというべきである。 ウ普天間飛行場の公共性と受忍限度の判断普天間飛行場の使用の違法性の有無,程度は,単に普天間飛行場の使用によって発生する騒音量等のみによって判断されるべきではなく,飛行場の使用の必要性,相当性,代替可能性についてのバランスの取れた判断が必要である。 米軍が普天間飛行場を使用することによって我が国ないし国民が受ける利益は,国家 よって判断されるべきではなく,飛行場の使用の必要性,相当性,代替可能性についてのバランスの取れた判断が必要である。 米軍が普天間飛行場を使用することによって我が国ないし国民が受ける利益は,国家存立の根本に関わる重大な意義を有するものであるほか,普天間飛行場は周辺自治体と連携し,地域の防災や振興等に大きく寄与して いることから,普天間飛行場は高度の公共性を有し,その使用は公共のために必要不可欠である。 また,普天間飛行場は,米軍が安保条約及び地位協定に基づきその使用が認められているものであるところ,原告らが違法な侵害行為であるとする騒音等は,その飛行場としての使用によって必然的に生じるものであり,米軍の条約,法律によって与えられた権限を逸脱,濫用する使用態様によって生じたものではない。 他方で,原告らが被っているとする被害は,日常生活上の不便,支障といった生活妨害の域を出ないものである。 以上によれば,普天間飛行場における米軍機の運航活動による騒音が受忍限度を超えるものとして違法と評価されるか否かの判断に当たっては,普天間飛行場が高度の公共性を有することが十分に斟酌されるべきであり,こうした普天間飛行場の公共性,公益性が部分的に個人的利益と両立し得ない場合には,比例原則の下で,やむを得ず個人的利益が後退を余儀なくさせられる場合もあり得ることに留意すべきである。 ⑸ 被告による周辺対策等の実施状況及び評価被告は,普天間飛行場の存続によってもたらされる公益の重大性と,そこにおける米軍機の運航活動等によって影響を受ける住民の生活上の利益との調和を図るため,以下のとおり,生活環境整備法に基づき,住宅防音工事の助成,住宅防音工事以外の防音対策,その他の周辺対策等を講じており,その実績は令和元年度までの総額で,①住宅防音工事 上の利益との調和を図るため,以下のとおり,生活環境整備法に基づき,住宅防音工事の助成,住宅防音工事以外の防音対策,その他の周辺対策等を講じており,その実績は令和元年度までの総額で,①住宅防音工事の助成が約473億7699万円,②住宅防音工事以外の防音対策が約610億1952万円,③その他の周辺対策等が約449億7203万円である。被告は,上記の巨額の出費をし,防衛施設周辺の生活環境の障害防止のための措置等を十分に講じるとともに,地方公共団体の財政にも多大な貢献をしている。 また,被告は,騒音の発生源に対する音源対策等も講じている。 これらの方策により,普天間飛行場の航空機騒音によって原告らを含む普天間飛行場周辺住民にもたらされる不利益又は影響は,既に相当程度防止又は軽減されている。また,被告が周辺地域の住民の生活の安定及び福祉の向上のために諸対策を講じるべく尽力していること自体が,周辺地域の騒音に対する否定的評価を解消し又は軽減するものである。 したがって,上記の周辺対策等の実績及び効果は,普天間飛行場の供用の違法性ないし原告らの受忍限度の判断において十分に考慮されるべきである。 ア住宅防音工事に関する一般論被告は,普天間飛行場周辺の住民の生活の本拠における航空機等の騒音防止及び軽減を図るため,昭和54年度から,生活環境整備法4条に基づき,普天間飛行場周辺地域の住宅の所有者等に対して住宅防音工事の助成措置を実施している。 この助成措置の額は約450億8133万円(平成29年度までの累計額)に上っており,平成27年度は672世帯(約9億1100万円),平成28年度は545世帯(約7億6300万円),平成29年度は782世帯(約7億2600万円),平成30年度は946世帯(約6億9000万円)に助成が行われている 72世帯(約9億1100万円),平成28年度は545世帯(約7億6300万円),平成29年度は782世帯(約7億2600万円),平成30年度は946世帯(約6億9000万円)に助成が行われている。また,新規防音工事,追加防音工事及び一挙防音工事を実施した住宅についてみると,1世帯当たりの平均補助額は,平成27年度が約246万円,平成28年度が約146万円,平成29年度が約238万円,平成30年度が約115万円となっている。 これらの住宅防音工事は,今後とも被告が最も重点を置く周辺対策の一つであり,違法性ないし受忍限度の判断において十分に考慮されるべきである。 住宅防音工事の対象となる住宅,周知措置等住宅防音工事の助成対象となる住宅は,生活環境整備法4条に基づく第一種区域の指定の際,その区域内に現に所在する住宅とされている。 また,普天間飛行場周辺地域においては,昭和56年7月18日にW値80以上の区域が第1種区域に指定され,昭和58年9月10日にW値75以上80未満の区域についても第1種区域に追加して指定されているところ,住宅の建設時期と,第1種区域の指定の基準や時期との関係で助成対象とならない住宅についても,平成6年6月28日から,行政措置として住宅防音工事の助成措置が取られている。 被告は,沖縄防衛局のホームページにおいて住宅防音工事補助金交付措置の趣旨,交付を受けるための手続,工事内容等について広報を実施しているほか,関係市町村に住宅防音工事希望届を備え置くなどして,住宅防音工事を希望する手続の便宜を図っている。 住宅防音工事の規模及び内容被告が実施している住宅防音工事の規模及び内容は,以下のとおりである。 ①新規防音工事,追加防音工事及び一挙防音工事は,内外部開口部の遮音工事,外壁又は内壁及び 住宅防音工事の規模及び内容被告が実施している住宅防音工事の規模及び内容は,以下のとおりである。 ①新規防音工事,追加防音工事及び一挙防音工事は,内外部開口部の遮音工事,外壁又は内壁及び室内天井面の遮音及び吸音工事並びに冷暖房設備及び換気設備を取り付ける空気調和工事であり,被告は,これらの対象住宅の所有者等に対する補助金として,昭和54年度から令和元年度までに2万1377世帯に対して合計約391億0872万円を交付している。 ②空気調和機器機能復旧工事は,防音工事により設置した空気調和機器の機能を復旧する工事であり,被告は,その助成として,平成2年度から令和元年度までに,9389世帯に対して合計約31億1535万円の補助金を交付している。 ③空気調和機器稼働費助成事業は,生活保護法等に基づく被保護者等に対し,上記の住宅防音工事によって設置した空気調和機器の稼働に伴う電気料金について助成を行うものであり,被告は,平成元年度から令 和元年度までに,599世帯に対して合計約730万円の補助金を交付している。 ④建替防音工事は,直近の住宅防音工事の完了後10年以上が経過し,建て替えられた住宅に対する住宅防音工事の助成措置である。 また,⑤防音区画改善工事は,平成11年度から,住宅防音の施策を充実するため,障害者や高齢者等の生活等に配慮された様式のバリアフリー対応住宅を対象に,防音区画改善工事の助成措置を行うものである。 被告は,建替防音工事及び防音区画改善工事に要する経費として,昭和54年度から令和元年度までに802世帯に対して合計約24億9982万円を交付している。 ⑥防音建具機能復旧工事は,住宅防音工事により外部開口部に設置した防音建具の機能を復旧する工事の助成を行うものであり,被告は,平成23年度から令和元 して合計約24億9982万円を交付している。 ⑥防音建具機能復旧工事は,住宅防音工事により外部開口部に設置した防音建具の機能を復旧する工事の助成を行うものであり,被告は,平成23年度から令和元年度までに,2499世帯に対して合計約51億4563万円の補助金を交付している。 ⑦外郭防音工事は,住宅防音工事を実施していない鉄筋コンクリート造系の集合住宅に対し,住宅全体を一つの区画とし,その外郭について防音工事を実施するものであり,被告は,外郭防音工事に要する経費について,昭和54年度から令和元年度までに,211世帯に対して合計約1億0327万円の補助金を交付している。 住宅防音工事の技術的な内容住宅防音工事は,住宅防音仕方書に従って実施されている。その標準的な工法は,鉄筋コンクリート造系と木造系に大別され,それぞれ,W値80以上の区域に所在する住宅について25dB以上の計画防音量を目標とする第Ⅰ工法と,W値75以上80未満の区域に所在する住宅について20dB以上の計画防音量を目標とする第Ⅱ工法に区分して実施されている。 また,防音効果を上げるためには室内を密閉する必要があることから,居室の環境を保持するために有効な換気装置及び冷暖房設備も設置される。 住宅防音工事の効果a 住宅防音仕方書には,上記の計画防音量を踏まえた防音効果が達成されるように工事で使用する建具,工法等について基準を定めており,被告は,個々の住宅防音工事が完了した場合,各工事が住宅防音仕方書に従った設計図面どおりに施工されたことを確認している。 住宅防音工事制度開始当初に各地で実施された防音量調査,各地の基地訴訟における防音量調査等の結果によれば,住宅防音工事が上記の設計図面どおりに施工された場合,ごくわずかな例外を除いて計画防音量を 住宅防音工事制度開始当初に各地で実施された防音量調査,各地の基地訴訟における防音量調査等の結果によれば,住宅防音工事が上記の設計図面どおりに施工された場合,ごくわずかな例外を除いて計画防音量を達成していることが推認できる。 被告の助成による住宅防音工事が施工された住宅において窓を閉め切った場合の防音効果は概ね25dBを超えており,屋内環境において,本件環境基準が達成された場合と同等の環境が保持されているから,被告の実施した周辺対策により,航空機騒音による日常生活への影響は相当程度軽減された状態となっている。住宅防音工事の効果は本件環境基準の達成の有無によって判断すべきであり,人の生活は大半が屋内で行われていることからすると,個々の住宅につき,屋内において本件環境基準が達成されていれば,生活妨害を原因とする被害の程度は小さく,受忍限度の範囲内というべきである。 住宅防音工事に防音効果があることは,原告らのうち多数が住宅防音工事を実施していること,アンケート式陳述書の回答や原告らの本人尋問における供述内容等,沖縄県の調査結果によると,普天間飛行場の周辺住民の半数前後の割合が住宅防音工事の防音効果に一定程度満足しているといえることからも裏付けられている。 さらに,住宅防音工事の副次的効果として,室内は外観上も美しく,機能上も極めて快適な生活環境が保持されるなど,工事施工によって享受する種々の生活上の利益全体が考慮されるべきである。 b 原告らは,住宅防音工事が実施された居室を密閉した状況で使用する場面は一定の限度にとどまる旨を主張するが,住宅防音工事の申請をするかは住民の自由意思に委ねられており,住宅防音工事を希望し,その実施を受けた住民については,同工事による防音効果を享受することを自ら選択したものといえる。 こ 主張するが,住宅防音工事の申請をするかは住民の自由意思に委ねられており,住宅防音工事を希望し,その実施を受けた住民については,同工事による防音効果を享受することを自ら選択したものといえる。 このため,住宅防音工事が実施された住民については,生活の中で静穏を要する場面においては,防音効果を享受するため,密閉した居室内で行動するのが通常と考えられ,個々の原告らにおいて防音効果を低下させる生活様式が存在し得るとしても,防音効果の評価に当たって考慮すべきではない。 さらに,沖縄県調査の結果によると,普天間飛行場周辺の住民であって住宅防音工事を実施した者については,その半数以上が1日のうち8時間以上は窓を閉めて生活しており,窓を開けて生活するのが常態的な生活形態であるとはいえない。 また,沖縄県ではコンクリート住宅が大部分を占めており,コンクリートの遮音性能は木材よりも優れていることから,躯体自体の遮音効果も期待でき,騒音もかなり低減されているといえる。 以上によれば,住宅防音工事の効果を否定する原告らの主張には理由がない。 外郭防音工事及び防音区画改善工事の防音効果a 外郭防音工事は,住宅全体を一つの防音区画として,その外郭について住宅防音工事を実施するものであり,居室のみならず,ユーティリティ部分を含む外郭防音工事を実施した住宅の屋内生活空間の全体 について,防音効果が認められるものである。外郭防音工事を実施した場合には,ユーティリティ部分について,最低でも25.9dB(A),最高では28.8dB(A)の遮音効果が認められており,当該住宅の居室のみならず,屋内全体について,本件環境基準が達成された場合と同等の環境が保持し得る防音効果が生じている。したがって,外郭防音工事を実施した住宅に居住する原告らについては,他 ており,当該住宅の居室のみならず,屋内全体について,本件環境基準が達成された場合と同等の環境が保持し得る防音効果が生じている。したがって,外郭防音工事を実施した住宅に居住する原告らについては,他の住宅防音工事に比べて防音効果を享受することのできる範囲が広く,また,室数の制限などを理由に対策として不十分である旨の原告の指摘は妥当しない。 b また,防音区画改善工事においては,居住する世帯人員数が4人以下の場合は5居室を,世帯人員数が5人以上の場合はこれに1を加えた数の居室を,それぞれ上限として選択し,住宅防音工事を実施することができる上,居室のみならず,ユーティリティ部分を含めて一つの防音区画となるように防音工事がされることとなる。したがって,防音区画改善工事において,対象となる住宅の居室数が上記の上限以下の場合には,屋内全体を一つの区画として防音工事をすることができるから,補助事業者の意向等によりユーティリティ部分の一部が区画外とならない限り,外郭防音工事を実施したときと同等の防音効果が得られることとなる。 イ個別の原告らの住宅防音工事の実施状況被告は,別紙「居住経過一覧表」記載のとおり,原告237ら,原告554ら及び原告2395らについても住宅防音工事を実施している。 原告237らについて原告237らが居住する建物の1階の5室の住宅防音工事の際に提出された原告237作成の平成21年12月18日付け住宅防音事業補助金交付申込書には,「居住状況」の「居住者の氏名」欄に,原告237ら 4名を含む氏名が記載されており,原告237自身,少なくともその申込みの時点では,当該住宅防音工事の対象建物に居住することを自認していた。したがって,上記4名は,当該住宅防音工事の建物に居住していることが優に認められる。 ,原告237自身,少なくともその申込みの時点では,当該住宅防音工事の対象建物に居住することを自認していた。したがって,上記4名は,当該住宅防音工事の建物に居住していることが優に認められる。 原告554らについて被告は,原告554らの居住する建物について,昭和57年9月15日に2室,平成3年3月12日に2室,平成28年11月9日に2室の住宅防音工事(平成28年11月9日分は防音区画改善工事)を実施した。 原告554らが居住する当該建物に係る原告555作成の平成28年1月18日付け住宅防音事業補助金交付申込書には,「居住状況」の「居住者の氏名」欄に,原告番号554から原告557までの4名を含む氏名などが記載されており,原告555自身,少なくともその申込みの時点では,当該住宅防音工事の対象建物に居住することを自認していた。 したがって,上記4名が,当該住宅防音工事の対象建物に居住していることは優に認められる。 原告2395らについて被告は,原告2395らの居住地に所在する建物について住宅防音工事を実施した。 原告ら指摘の「離れ」の床面積はわずか31.21㎡であり,5名家族が居住しているとは考え難い。 また,原告番号2395作成の平成28年7月25日付け住宅防音事業補助金交付申込書には,上記「離れ」と認められる建物が記載されており,これに基づき,上記「離れ」と認められる建物につき,1室の防音工事が平成30年11月30日に完了している。 このため,仮に原告番号2395らが上記「離れ」に居住していると しても,平成30年11月30日以降は,1室分の住宅防音工事の実績があるというべきである。 ウ住宅防音工事以外の防音対策について被告は,住宅防音工事以外の防音対策として,以下の措置を講じている。 下記の学校等の施 1月30日以降は,1室分の住宅防音工事の実績があるというべきである。 ウ住宅防音工事以外の防音対策について被告は,住宅防音工事以外の防音対策として,以下の措置を講じている。 下記の学校等の施設に対する防音対策は,原告らの居住地における航空機騒音を直接軽減するものではないとしても,少なくとも該当する原告らにとっては,住宅地以外における航空機騒音における日常生活上の不便や支障を直接軽減するものである上,該当しない原告らとの関係においても,被告が周辺地域の住民の生活の安定及び福祉の向上のために諸対策を講じるために尽力すること自体が,周辺地域の住民の騒音に対する否定的評価を解消又は軽減するものであるから,違法性の判断において十分斟酌されるべきである。 学校等の防音工事の助成被告は,生活環境整備法3条2項に基づき,普天間飛行場周辺の学校等の防音工事の実現を図るため,防音工事に係る必要費用相当額を助成しており,普天間飛行場周辺の学校等の防音対策事業に関し,昭和49年度から令和元年度までに199施設に対して合計約416億0585万円の補助金を交付した。 また,被告は,学校等の防音工事により設置した空調設備の電気料金等に関し,行政措置として一定限度の額を補助しており,普天間飛行場付近の防音工事関連維持費として,昭和53年度から令和元年度までに195件につき合計約116億2268万円の補助金を交付している。 学校等の公共施設に対して施工される防音工事は,音響測定の結果に基づき,1級から4級までの工事種別に分けて実施されており,各種別により音響を防止又は軽減する量に差がある。学校等の公共施設の防音工事は,鉄筋コンクリート造等の施設に防音工事を実施することを前提 とし,公共防音仕方書に従っており,1級防音工事においては,防音工 を防止又は軽減する量に差がある。学校等の公共施設の防音工事は,鉄筋コンクリート造等の施設に防音工事を実施することを前提 とし,公共防音仕方書に従っており,1級防音工事においては,防音工事施工後の内外音圧レベル差の平均値が35dB以上になるように,工事で使用する建具,工法等について基準を定めている。そして,被告は,個々の防音工事の完了時に,当該工事が公共防音仕方書のとおりに施工されていることを確認しているため,学校等公共施設についても,住宅防音工事と同様に,十分な効果が生じているといえる。 病院等の防音工事の助成被告は,生活環境整備法3条2項に基づき,病院等の防音工事の実現を図るため,前記の学校等と同様の防音工事につき助成を行っており,普天間飛行場周辺の病院等に対し,昭和53年度から令和元年度までに,20施設に対して合計約24億4984万円の補助金を交付している。 民生安定に係る公共施設の防音工事の助成被告は,生活環境整備法8条に基づき,地方公共団体が防衛施設周辺地域の住民の生活又は事業活動への障害の緩和のために防音工事を施した公共施設を整備する場合の助成を実施している。防音工事は上記の学校等の場合に準じて実施されており,被告は,普天間飛行場周辺地域の民生安定に係る公共施設の防音工事に関し,昭和49年度から令和元年度までに,43施設に対して合計約53億4115万円の補助金を交付している。 緑地帯整備また,被告は,生活環境整備法の趣旨に基づき,普天間飛行場内において,直轄事業として,昭和51年から令和元年度までに,植栽面積約12万0700平方メートルに及ぶ緑地整備事業を実施し,合計約2億9245万円を支出した。 上記の措置は,緑地の整備によって,防風及びヘリコプターのホバリング音,航空機のエンジン調 に,植栽面積約12万0700平方メートルに及ぶ緑地整備事業を実施し,合計約2億9245万円を支出した。 上記の措置は,緑地の整備によって,防風及びヘリコプターのホバリング音,航空機のエンジン調整音等の地上騒音の緩和,大気の浄化等の 物理的効果をもたらすとともに,緑地の存在によって景観を整え,安心感ややすらぎを与える心理的効果をも期待するものであり,原告らが居住すると主張する場所における航空機の騒音を直接軽減し得るものである。 エその他の周辺対策について被告は,上記の騒音対策以外にも以下のような周辺対策を講じ,普天間飛行場の存在によって周辺住民に生活上の支障が生じないように配慮している。 騒音対策以外の周辺対策は,それによって直ちに騒音値が低下するものではないが,周辺住民の生活の安定及び福祉の向上を図るためのものであり,これにより,周辺住民の騒音に対する好意的評価を高め,それが騒音によって被る精神的不快感を解消し,又は軽減する効果があるものである。 したがって,被告が周辺住民の生活の安定及び福祉の向上のために諸対策を講じ,そのために努力していること自体が,周辺住民の騒音源に対する否定的評価を解消又は軽減しており,この点は違法性の判断に当たって十分に考慮されるべきである。 障害防止工事の助成被告は,防衛施設周辺の整備等に関する法律(昭和41年法律第135号)3条1項及び生活環境整備法3条1項に基づき,在日米軍等の使用する施設,区域の周辺地域において,在日米軍等の行為によって生ずる障害を防止又は軽減するため,排水路工事等の整備に補助金を交付しており,昭和47年度から令和元年度までに,合計約36憶9558万円の補助金を交付している。 民生安定に係る公共施設の一般助成被告は,生活環境整備法8条に基づき,普 事等の整備に補助金を交付しており,昭和47年度から令和元年度までに,合計約36憶9558万円の補助金を交付している。 民生安定に係る公共施設の一般助成被告は,生活環境整備法8条に基づき,普天間飛行場の設置又は運用により,周辺地域の住民の生活又は事業活動が阻害されると認められる 場合には,その障害を緩和するため,地方公共団体が生活環境施設又は事業経営の安定に寄与する施設の整備について必要な措置を採るに際し,当該地方公共団体に対して補助金を交付している。 被告は,普天間飛行場の周辺地域の民生安定に係る公共施設の一般助成として,周辺の関係自治体に対し,屋外運動場,学習等供用施設,農業用施設等の設置事業に関して昭和54年度から令和元年度までに合計約72億6595万円,道路改修事業に関し昭和51年度から令和元年度までに合計約70億4221万円の補助金を交付している。 この助成を受けて整備された学習等供用施設等は,宜野湾市の区民の集会,レクリエーション,子育て支援などの健全なコミュニティ活動の育成や災害時における緊急避難場所として広く活用されている。 また,被告は,上記補助金により,普天間飛行場周辺まちづくり事業,宜野湾市上大謝名街区公園整備事業に対する助成を行っているほか,平成26年3月には助成の対象施設や基準定額を見直し,普天間飛行所周辺の生活環境の整備施策を拡充している。 特定防衛施設周辺整備調整交付金の交付被告は,生活環境整備法9条に基づき,特定防衛施設関連市町村に対し,公共用施設の整備又はその他の生活環境の改善若しくは開発の円滑な実施に寄与する事業を行うための費用に充てるための特定防衛施設周辺整備調整交付金を交付しており,普天間飛行場に係る同交付金として,昭和50年度から令和元年度までに合計約45億4989 は開発の円滑な実施に寄与する事業を行うための費用に充てるための特定防衛施設周辺整備調整交付金を交付しており,普天間飛行場に係る同交付金として,昭和50年度から令和元年度までに合計約45億4989万円を交付している。 宜野湾市においては,同交付金を活用し,予防接種事業,幼稚園の運営事業の助成,学校給食センターの運営事業の助成,学校給食センター備品購入に関する助成,幼稚園・小中学給食牛乳保冷庫購入に関する助成,高規格救急自動車購入に関する助成,水槽付消防ポンプ自動車購入 に関する助成,道路整備の助成などを実施しており,多数の住民が直接的又は間接的に生活の安定及び福祉の向上といった利益を享受している。 沖縄懇談会事業,基地交付金及び調整交付金の交付被告は,沖縄米軍基地所在市町村活性化特別事業として,基地所在市町村の意向に答え,米軍基地の存在による閉塞感を緩和するためのプロジェクトを支援しており,普天間飛行場周辺の沖縄米軍基地所在市町村活性化特別事業費補助金として,平成13年度から平成19年度までに,合計約11億8165万円の補助金を交付している。 また,被告は,総務省所管の一般財源の交付金制度である基地交付金及び調整交付金として,宜野湾市に対し,昭和47年度から令和元年度までに,合計約212億3676万円を交付している。 騒音状況の公開被告は,地元要望等を踏まえ,普天間飛行場周辺地域に航空機騒音自動測定機を4箇所設置し,その測定結果を公開している。 オ普天間飛行場の航空機に係る音源対策等音源対策a 被告は,平成元年2月15日に開催された日米合同委員会における合意に基づき,地上における航空機等のエンジンの試運転に伴う騒音軽減のため,平成4年3月26日に呼気消音器,排気消音器等を設置した消音装置3棟 ,平成元年2月15日に開催された日米合同委員会における合意に基づき,地上における航空機等のエンジンの試運転に伴う騒音軽減のため,平成4年3月26日に呼気消音器,排気消音器等を設置した消音装置3棟等(工費約25億円)を完成させ,米軍に提供した。 同装置は,約250メートル離れた地点で地上高1.2メートルにおける騒音レベルが騒音計の聴感補正回路で70dB以下となる性能を有するものである。 b また,上記の緑地整備事業において,被告は,普天間飛行場の外柵沿い及び消音装置の近くに,防音に資する立木を植栽しており,周辺地域に対する音源対策としている。 c さらに,沖縄県民の負担を軽減するため,日本国政府及び米国政府によって設置されたSACOにおいて,平成8年12月2日,普天間飛行場に配備されている12機のKC-130航空機を岩国飛行場に移駐する旨の合意がされ,日米間で協議を重ねた結果,平成26年8月までに普天間飛行場に配備されていた固定翼機の大部分が沖縄県外に移駐した。これにより,現在では,普天間飛行場に配備されている固定翼機はUC-12W1機とUD-35D3機の合計4機となった。 移駐前1年間と移駐後1年間の同航空機の離着陸回数を比較すると,月平均141回から月平均30回と大幅に減少しており,普天間飛行場の航空機騒音の軽減に確実に寄与している。 d 米軍においては,平成28年9月1日付けの日米合同委員会の合意に基づき,沖縄県外での訓練の一層の推進を図り,訓練活動に伴う沖縄の負担を軽減するため,普天間飛行場に配備されているオスプレイを含むティルト・ローター機等の訓練活動を沖縄県外に移転しており,令和元年12月31日までに計8回の訓練活動の移転が実施された。 これにより,1回当たり約10日間から20日間程度の期間にわたり,普天間 含むティルト・ローター機等の訓練活動を沖縄県外に移転しており,令和元年12月31日までに計8回の訓練活動の移転が実施された。 これにより,1回当たり約10日間から20日間程度の期間にわたり,普天間飛行場に配備されているオスプレイ等の一部が沖縄を不在にすることになるため,沖縄におけるオスプレイ等の駐留及び訓練の時間が削減され,沖縄の負担の軽減及び航空機騒音の軽減に寄与している。 運航対策被告は,米軍に対し普天間飛行場における騒音の軽減を要請し,平成8年3月28日,日米合同委員会において,「普天間飛行場における航空機騒音規制措置」が合意された。 この措置は,在日米軍の任務に支障を来すことなく航空機騒音による望ましくない影響を最小限にするために設定されたものであり,①日曜日や慰霊の日等の訓練飛行の制限,②夜間の飛行及び地上での活動の制 限,③人口密集地域上空を避けた飛行場の場周経路の設定,④夜間におけるジェットエンジンのテストの制限,⑤空戦訓練に関連した曲技飛行の制限などの規制措置を含むものであり,これにより,米軍は騒音量を最小限にとどめる努力を行っている。 また,沖縄県においては,米軍基地が存在することから派生する諸問題について協議するために,米軍,沖縄県,那覇防衛施設局(現在の沖縄防衛局)及び外務省沖縄事務局による三者連絡協議会が設置されているが,この協議会で騒音問題が取り上げられ,その成果として消音装置の設置や曲技飛行の停止が実現している。 なお,防衛省沖縄防衛局は,航空機等の騒音に関して周辺住民等から苦情の申し出があった場合,米軍にその旨申し入れ,上記の措置が十分遵守されるように努めている。 カ総合的検討以上のとおり,普天間飛行場は,高度の公共性を有し,その使用は公共のために必要不可欠であるが,そ があった場合,米軍にその旨申し入れ,上記の措置が十分遵守されるように努めている。 カ総合的検討以上のとおり,普天間飛行場は,高度の公共性を有し,その使用は公共のために必要不可欠であるが,その一方で,普天間飛行場の使用により必然的に生じる航空機騒音が,普天間飛行場周辺地域の住民に対し,日常生活上の不便や支障を生じさせるものであることに鑑み,被告は,普天間飛行場における周辺対策及び普天間飛行場の航空機等に係る音源対策等を総合的に実施し,できる限り周辺地域の住民に生活上の支障が生じないよう十分配慮している。 また,騒音対策以外の周辺対策は,それによって直ちに騒音値が低下するものではないが,周辺地域の住民の生活の安定及び福祉の向上を図るものであり,これにより,周辺地域の住民の騒音に対する否定的評価を和らげ,騒音によって被る精神的不快感を緩和する効果をもたらすものである。 音は,受け取る人の立場,あるいはそれがその人にとって必要であるか否かといった各個人ごとの条件により,騒音であると感じられたり,その ようには感じられなかったりするのであり,このような音の持つ性質からすれば,普天間飛行場周辺地域における対策として,周辺地域に対する全体的,地域的対策及び各個人に対する助成ないし補償的対策を含めた総合的対策も,航空機騒音の影響を緩和させるために一定の効果を有するものであるといえる。さらに,被告が周辺地域の住民の生活の安定及び福祉の向上のため,諸対策を講じるために尽力していること自体が,周辺地域の住民の騒音に対する否定的評価を解消し,又は軽減しているのである。 したがって,本件における普天間飛行場の運航活動の違法性ないし受忍限度の判断に当たっては,普天間飛行場が高度の公共性を有することや被告が実施する各種周辺対策等について十分 は軽減しているのである。 したがって,本件における普天間飛行場の運航活動の違法性ないし受忍限度の判断に当たっては,普天間飛行場が高度の公共性を有することや被告が実施する各種周辺対策等について十分斟酌されるべきである。 3 争点⑵に関する当事者の主張【原告らの主張】⑴ 基本となる慰謝料額ア精神的苦痛に対する慰謝料原告らが暴露されている普天間飛行場の騒音の程度は,本件コンターのW値に基づき判断されるべきであり,原告らが低周波音を含む普天間飛行場の騒音によって受ける精神的苦痛も,本件コンターのW値が高くなるに従ってその程度が大きくなる。 このため,これに対する慰謝料の額も,本件コンターのW値を基準として算定されるべきである。 具体的な金額としては,W75区域については1か月当たり9000円(1日当たり300円),W80区域については1か月当たり1万5000円(1日当たり500円)を下らないというべきである。 沖縄県においては,昭和34年の宮森小学校への墜落事故や平成16年の沖縄国際大学への墜落事故など,米軍機の墜落事故が多発しているほか,米軍機の不時着の件数も多大である。また,平成29年には,普 天間第二小学校の運動場に普天間飛行場の所属のヘリコプターの窓が落下した事故も発生した。 沖縄県では,これらの事故が大きく報道されることから,沖縄県民は,随時事故の存在を認識させられ,常に新たな事故に対する潜在的な恐怖心を抱いて暮らしている場合が多い。こうした住民の米軍機の墜落に対する不安は,現実に甚大な被害を出した過去の複数の事例に基づく具体的かつ根深いものであるという点において,原告らに特有のものである。 また,原告らの中には,戦争を経験した者もおり,普天間飛行場の航空機騒音によって戦争の記憶がよみがえり, の複数の事例に基づく具体的かつ根深いものであるという点において,原告らに特有のものである。 また,原告らの中には,戦争を経験した者もおり,普天間飛行場の航空機騒音によって戦争の記憶がよみがえり,不安を感じている。 このように,沖縄県においては,凄惨な地上戦を経験し,復帰後も年に1回以上軍用機の墜落事故が発生し,かつ,学校に航空機が墜落するという事故を戦後2度も経験されており,普天間飛行場周辺の原告らは,その他地域における航空機騒音被害者にはあまり見られない特別の精神的被害を負っている。 さらに,沖縄県は,太平洋戦争において国内で唯一地上戦に一般住民が巻き込まれ,27年間アメリカ合衆国に占領され続けたことや,在日米軍専用施設面積の約70.4%に及ぶ広大な面積の米軍基地が存在していることといった特異な歴史や現状が存在し,普天間飛行場に係る航空機騒音には,こうした歴史や現状が背景にあることから,その周辺住民の精神的苦痛にも特別なものがある。 本件における慰謝料額の決定に当たっては,上記の普天間飛行場周辺の住民が受ける特別の精神的被害を考慮すべきである。 イ弁護士費用原告ら各人の慰謝料総額の10%相当額をもって,本件不法行為と相当因果関係のある弁護士費用とすべきである。 ⑵ 住宅防音工事等による減額についてア住宅防音工事一般前記のとおり,被告による住宅防音工事は,対象住宅及び室数が制限され,かつ,部屋の密閉化が前提とされるなど不十分であって,普天間飛行場の騒音による原告らの被害を軽減するには至っていない。 損害賠償額の算定に当たって住宅防音工事の施工の事実を考慮するとしても,その論拠は,被告が航空機騒音を低減する目的で多額の資金を投入するなどの努力をしたことにつき信義則ないしこれに類する観点から評価する限 額の算定に当たって住宅防音工事の施工の事実を考慮するとしても,その論拠は,被告が航空機騒音を低減する目的で多額の資金を投入するなどの努力をしたことにつき信義則ないしこれに類する観点から評価する限度で斟酌すべきものである。 このため,原告らの各戸における住宅防音工事の具体的内容や部屋数に応じて減額幅を定めるのは必ずしも論理的,合理的ではなく,その減額割合は,工事を実施した居室の数にかかわらず,全ての原告につき一律とするのが相当である。(東京高等裁判所令和2年1月23日判決参照)被告による住宅防音工事は,航空機騒音の被害を根本的に解消するものではなく,防音効果を享受するためには工事実施部分を密閉する必要があるところ,特に沖縄地方ではその弊害が大きく,日常生活で常時そのような行動をとって防音効果を十全なものとすることが困難であることに照らせば,防音工事を実施した居室の数や工事の種別にかかわりなく,最初の防音工事の実施後の慰謝料の額を一律に10%減額する程度にとどめるべきである。 イ個別の原告らについて前記のとおり,原告237ら,原告554ら及び原告2395らについては,住宅防音工事を実施したことを理由とする損害額の減額等に関する被告の主張はその前提を欠くものである。 ウ住宅防音工事以外の防音対策,周辺対策について被告の主張する住宅防音工事以外の防音対策による防音効果は具体的に 立証されていないため,慰謝料算定の際の基礎事情として考慮すべきではない。 また,被告が周辺対策として実施する助成措置による利益は,騒音被害と関係なく,地域の全ての住民が享受するものであり,その本質は,違法行為を前提とする賠償ではなく,米軍基地を配置することにより生ずる全ての不利益を念頭においた財政措置にならないから,違法な騒音被害を直 係なく,地域の全ての住民が享受するものであり,その本質は,違法行為を前提とする賠償ではなく,米軍基地を配置することにより生ずる全ての不利益を念頭においた財政措置にならないから,違法な騒音被害を直接に被っている地域の一握りの住民である原告らに支払うべき不法行為に基づく慰謝料額の算定において斟酌するのは正しくない。 【被告の主張】⑴ 基本となる慰謝料額原告らの主張は争う。 ア原告らの被害について具体的な主張立証がされていないこと上記のとおり,原告らの主張する被害については具体的な主張立証がされておらず,どの程度の額が損害額として相当であるかを論じるための前提を欠く。 イ従来の裁判例に比べて慰謝料を増額すべき事由はないこと本件の同種事案である基地の航空機騒音に関する訴訟における従来の裁判例では,W値75以上80未満の区域に居住する原告らについて月額3000円の損害額を基本とし,W値が5増加するごとに損害月額を3000円ずつ加算するという算定方法が採用されてきた。近時は,W値75以上80未満の区域に居住する原告らについて月額4000円,W値が5増加するごとに損害月額を概ね4000円ずつ加算しており,普天間基地第1次騒音訴訟及び普天間基地第2次爆音訴訟を含む近時の沖縄県の基地騒音訴訟においても,W値75以上80未満の区域においては月額約4500円,W値80以上85未満の区域については月額約9000円の損害額が認定されている。 上記の裁判例においては,侵害行為の態様と程度,原告らの受ける被害の程度のほか,騒音対策の実施状況等の諸般の事情を考慮に入れた上で上記の基準を示したものであり,これらが低額であるとは認められないから,仮に原告らについて,普天間飛行場の航空機騒音による損害が認められたとしても,騒音被害の 施状況等の諸般の事情を考慮に入れた上で上記の基準を示したものであり,これらが低額であるとは認められないから,仮に原告らについて,普天間飛行場の航空機騒音による損害が認められたとしても,騒音被害の程度等に着目した上記の基準から増額する理由はない。 上記の従来の認定基準(月額3000円の損害額を基本とする算定方法)を採用した裁判例における原告らの損害賠償期間の始期のうち,最も早い時期は平成5年4月であるところ,本件訴訟における損害賠償期間の始期のうち最も早い平成27年7月までの間に,同一のW値の騒音に対する人間の騒音の感じ方は変化するはずがなく,騒音により被る精神的損害の内実がこの間に質的に変化したとは考え難い。また,この間の貨幣価値を消費者物価指数により比較しても,平成27年7月の消費者物価指数は100.1,平成5年4月の消費者物価指数は97.4となり,ほとんど差異は生じていない。このような観点からも,従来の裁判例から慰謝料額を増額すべき理由はない。 ウ被告が周辺対策を継続し,騒音状況が改善していること被告は,普天間飛行場の存続によってもたらされる公益の重大性と,普天間飛行場を維持するために影響を受ける原告ら住民の生活上の利益との調和を図るため,普天間基地第1次騒音訴訟以降も,障害防止工事,住宅防音工事及び民生安定施設の助成,住宅防音工事以外の防音対策等の周辺対策を講じ,周辺住民の生活上の利益への配慮を継続しており,令和元年度までに合計約1536億円を支出している。 また,各測定地点のW値を見ると,普天間基地第1次騒音訴訟の賠償対象期間の始期である平成21年度のW値に比して,それより後の年度について概ね減少傾向にあり,騒音状況は改善している。 普天間飛行場が高度の公共性を有することや,被告が周辺地域の住民の 象期間の始期である平成21年度のW値に比して,それより後の年度について概ね減少傾向にあり,騒音状況は改善している。 普天間飛行場が高度の公共性を有することや,被告が周辺地域の住民の生活の安定及び福祉の向上のため各種の周辺対策等を実施していることは,違法性を減殺する事情として,損害額の算定に当たって十分に斟酌されるべきである。さらに,騒音状況が改善されている以上,原告らに何らかの損害が生じたとしても,その損害額は近時の沖縄県の基地騒音訴訟の裁判例が認定してきた基準による損害額に比べて増大することはあり得ないというべきである。 ⑵ 住宅防音工事による減額 ア住宅防音工事一般原告らが居住の事実を主張する住宅に対する住宅防音工事の実施後において,普天間飛行場の騒音によって原告らに一定の損害が発生しているとしても,住宅防音工事の実施により屋内環境における本件環境基準を達成している場合には,生活妨害を原因とする被害の程度は小さく,受忍限度の範囲内というべきであるし,仮に受忍限度を超える被害が発生していると認定する余地があるとしても,その損害額は相当程度減額されるべきである。 住宅防音工事が施工された住宅において窓を閉め切った場合の防音効果は概ね25dBを超えており,屋内環境において,本件環境基準が達成された場合と同等の環境が保持されている。実際に,普天間飛行場の周辺住民の多くは,住宅防音工事の効果を評価し,半数以上は満足している。 損害の減額率については,住宅防音工事の効果は同工事が実施された居室数に比例して増加することから,2室目以降も1室目と同様の減額率とすべきであり,2室目以降の減額率を低く評価すべき合理的理由はないし,2室目以降についても工事を行うことで国の費用負担が増加し,これによって住宅防音工事 ことから,2室目以降も1室目と同様の減額率とすべきであり,2室目以降の減額率を低く評価すべき合理的理由はないし,2室目以降についても工事を行うことで国の費用負担が増加し,これによって住宅防音工事の効果が増加することからすれば,減額率に 上限を設けるべきではない。 原告らは,沖縄県における一般的な気候風土やこれを背景とした一般的な生活様式を指摘し,住宅防音工事につき違法性を減ずる要素として考慮すべきではない旨を主張する。 しかしながらエアコンを使用せずに窓を開けて生活をするという生活様式が沖縄県における一般的な生活様式であるとするには疑問が残る。 また,住宅防音工事の実施は,住民らからの自由意思による申請に基づき実施されているため,住宅防音工事の実施を受けた住民については,住宅防音工事を実施した居室において上記防音工事を享受することを自ら選択したものといえる。 したがって,個々の原告らにおいて,自ら希望した防音効果が低下するにもかかわらず開口部を開放するという生活様式が存在し得るとしても,本件における損害が共通損害として主張されていることに照らせば,防音効果の評価に当たって,個別事情を考慮すべきではない。 イ外郭防音工事,全居室を選択した防音区画改善工事前記のとおり,外郭防音工事が実施された住宅に居住する原告らについては,居室部分だけでなく,ユーティリティ部分を含む当該住宅の屋内空間の全体について防音効果が生じるから,他の原告らよりも減額率が高く評価されるべきであり,総減額率に上限が設けられたとしても,それを超える減額率が認められるべきである。 また,防音区画改善工事について,防音工事を実施しようとする住宅の居室数が上限以下の場合には,当該住宅の全ての居室とユーティリティ部分に防音工事を実施することができ, 率が認められるべきである。 また,防音区画改善工事について,防音工事を実施しようとする住宅の居室数が上限以下の場合には,当該住宅の全ての居室とユーティリティ部分に防音工事を実施することができ,外郭防音工事を実施した場合と同等の防音効果が得られていることになる。 別紙「住宅防音工事実績一覧表(防音区画改善工事実施分のうち屋内全てを実施したもの)」記載の原告ら(原告2888を除く。)について は,当該住宅の全ての居室とユーティリティ部分に防音工事が実施されているため,その損害の減額率については,外郭防音工事が実施された場合と同様に評価されるべきである。 ウ個別に住宅防音工事の実施状況が争われている原告らについて前記2【被告の主張】⑸イのとおり,原告237ら,原告554ら及び原告2395らについても,被告は住宅防音工事を実施していることから,その損害額は減額されるべきである。 ⑶ 損害が存在しないことが個別に立証された原告について原告856は,アンケート式陳述書において,原告らが共通損害として主張する損害項目を全て否定しており,損害の不存在について個別に立証がされたというべきであるから,原告856の請求は棄却されるべきである。 (以下余白) 第3章当裁判所の判断第1 争点⑴(普天間飛行場の設置及び管理の瑕疵の有無)について 1 判断枠組み⑴ 民事特別法2条は,米軍の占有し,所有し,又は管理する土地の工作物その他の物件の設置又は管理に瑕疵があったために日本国内において他人に損害を生じたときは,被告の占有し,所有し,又は管理する土地の工作物その他の物件の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じた場合の例により,被告がその損害を賠償する責に任ずる旨を定めている。 前記前提とな ,被告の占有し,所有し,又は管理する土地の工作物その他の物件の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じた場合の例により,被告がその損害を賠償する責に任ずる旨を定めている。 前記前提となる事実のとおり,普天間飛行場は,アメリカ合衆国が地位協定3条1に基づき管理,運営し,米軍機の運航等に使用しているため,民事特別法2条の米軍の占有し,所有し又は管理する土地の工作物その他の物件に該当する。 ⑵ 民事特別法2条の「設置又は管理の瑕疵」については,国家賠償法2条1項の「公の営造物の設置又は管理の瑕疵」についての解釈と同様に,土地の工作物その他の物件が通常有すべき安全性を欠いている状態をいい,当該土地の工作物等が供用目的に沿って利用されることとの関連において,その利用者以外の第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある場合も含むものと解される。そして,当該土地の工作物等の供用により,第三者との関係において違法な権利侵害ないし法益侵害が生じる場合には,当該土地の工作物等の設置又は管理に瑕疵があるというべきである(最高裁昭和56年判決参照)。 また,当該土地の工作物等の供用が第三者に対する関係において違法な権利侵害ないし法益侵害となるか否かについては,侵害行為の態様と侵害の程度,被侵害利益の性質と内容,侵害行為のもつ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等を比較検討するほか,侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況,その間にとられた被害の防止に関する措置の有無及びその内容,効果等の事情をも考慮し,これらを総合的に考察した上で,当該権利侵害な いし法益侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えるか否かという観点からこれを決すべきである(最高裁昭和56年判決,最高裁判所平成5年2月25日第一小法廷判決民集47巻2号643頁,最高裁判 いし法益侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えるか否かという観点からこれを決すべきである(最高裁昭和56年判決,最高裁判所平成5年2月25日第一小法廷判決民集47巻2号643頁,最高裁判所平成5年2月25日第一小法廷判決集民167号下359頁参照)。 ⑶ 本件においては,上記の観点から,米軍による普天間飛行場の供用が原告らに対する関係において社会生活上受忍すべき限度を超える違法な権利侵害ないし法益侵害となるかを検討する。 2 普天間飛行場における航空機騒音の発生及びその程度,継続状況等⑴ 認定事実前提となる事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,航空機騒音の特徴やその評価方法,普天間飛行場周辺の航空機騒音の状況に関し,以下の事実が認められる。 ア航空機騒音の特徴及びその評価方法航空機騒音には,①騒音レベルが他の発生源による騒音と比較してはるかに高く,広範囲に及ぶこと,②独特の特異音成分を含むこと,③継続時間が数秒から数十秒の間欠音であることなどの特性がある。 このような航空機騒音による影響は,飛行場からの距離によって著しく異なるものであるが,航空機の機種,飛行回数,飛行形態,飛行経路,離着陸の別,気象条件等によっても大きく異なる。 民間空港とは異なり,軍基地のような特殊空港においては,航空機が訓練等のために運行していることから,飛行経路が一定せず,飛行回数等の運行状況も不規則であり,それらの飛行経路や飛行計画等もあらかじめ公表されていない。 イ普天間飛行場における航空機騒音の概要普天間飛行場においては,米軍の第1海兵航空団に所属する第18海兵航空管制群及び第36海兵航空群等が配備されており,平成29年3月3 1日時点での配備機種はCH-53E,AH-1Z及びUH-1Yの各ヘリコプター 米軍の第1海兵航空団に所属する第18海兵航空管制群及び第36海兵航空群等が配備されており,平成29年3月3 1日時点での配備機種はCH-53E,AH-1Z及びUH-1Yの各ヘリコプター並びにオスプレイである。また,普天間飛行場には,上記の部隊に配備されている航空機等のほか,艦載機や輸送機等が不定期に飛来している。 普天間飛行場は,航空機等の発進基地としてのみならず,訓練場,演習場として使用されており,上記の配備機種や外来の航空機等により,通常の離着陸のほか,離着陸を繰り返すタッチアンドゴー演習や旋回飛行などが実施され,騒音が発生している。また,航空機等がエンジン調整をする際や,飛行場内を移動し,ウォーミングアップをする際にも騒音が発生している。 (前提となる事実,甲D1)ウ本件コンターの策定アコーテックが防衛施設庁の委託を受けて実施した昭和52年騒音度調査においては,普天間飛行場及び嘉手納飛行場の周辺における合計127箇所の各地点において飛来する航空機の騒音が測定された。調査の概要は,以下のとおりである。(乙Cウ3)a 対象地域嘉手納飛行場(沖縄県中頭郡嘉手納町所在)及び普天間飛行場の周辺で,両飛行場に係る航空機騒音の影響を受けると考えられる東西20km,南北25kmに及ぶ地域が対象とされた。 上記の対象地域に所在する当時の行政区は,沖縄市,具志川市,石川市,宜野湾市,浦添市,那覇市,嘉手納町,読谷村,恩納村,勝連村,北谷村,北中城村,中城村,西原村であった。 b 対象機種対象地域を飛行する航空機は,主として嘉手納飛行場及び普天間飛行場を基地とするものであったが,演習,訓練等のため近海の空母や 他基地から飛来するものもあるため,航空機は多機種にわたり,それらの配備機数,飛行頻度,飛行 として嘉手納飛行場及び普天間飛行場を基地とするものであったが,演習,訓練等のため近海の空母や 他基地から飛来するものもあるため,航空機は多機種にわたり,それらの配備機数,飛行頻度,飛行経路などの実態も明らかではない。このため,事前に調査対象機種を限定することが困難であることから,調査期間中に対象地域を飛行する全機種,全航空機が対象とされた。 c 事前調査事前調査は,昭和52年12月7日から同月11日までの5日間実施された。事前調査においては,嘉手納飛行場及び普天間飛行場周辺における航空機の飛行時間帯,飛行経路及び飛行高度のほか,対象地域地形,土地利用状況などの現地調査が行われ,上記aの地域が調査の対象地域と定められた。その上で,当該地域内の米軍施設など,測定点の設置が不可能な地区を除外した上で,1kmから2km間隔で騒音度が大きいと考えられる地域を密にして,測定地点の地形,周辺の家屋などを考慮し,少なくとも合計127地点の測定地点が決定された。 なお,両飛行場の滑走路の両端の合計4地点が,当該飛行場に係る使用滑走路別,時間帯別,機種別の発着機数などの基礎資料を得るための基準測定地点と定められた。 d 本調査本調査は,昭和52年12月12日から同月23日までの12日間実施された。 本調査においては,W値の算定の基礎となる時間帯別,機種別,飛行経路別の飛行機数の日別年間実績を実測により把握するため,基準測定地点において全調査期間中,昼夜連続24時間の測定を実施し,離着陸機の機種,機数,飛行経路,態様,時間帯,騒音レベル等が観測,調査された。 また,一般測定地点においては,午前7時から午後7時までの間, 連続して,飛来する航空機の機種,機数,飛行経路,時刻等の観測,記録と,当該航空機に係る騒音のレベ 等が観測,調査された。 また,一般測定地点においては,午前7時から午後7時までの間, 連続して,飛来する航空機の機種,機数,飛行経路,時刻等の観測,記録と,当該航空機に係る騒音のレベル,継続時間の測定を,全測定地点の調査が調査期間内に終了するように作成した調査計画に従い実施された。さらに,約50%の一般測定地点においては,基準測定地点の調査データと対比するため,上記の昼間の測定と重複して,午後7時から翌午前7時までの夜間測定が実施された。 本調査の結果については,調査期間の初期及び後半においては天候に恵まれず,調査の中止,中断が余儀なくされる場面もあったものの,全期間を通して,基準測定地点4地点を含む合計127地点の調査が行われ,ほぼ満足なデータが取得された。特に,基準測定地点については8日間にわたり連続して調査観測が実施され,両飛行場の時間帯別標準飛行機数を算定するための基礎データが確保された。 eW値の算定及びコンターの作成上記dの測定結果を踏まえ,各測定地点について防衛施設庁方式に基づきW値が算定され,W値の等レベル地点を結んで騒音コンターが作成された。 本件コンターの指定防衛施設庁長官は,アコーテックが作成した騒音コンターに基づき,外郭線について行政区画,集落の状況,道路,河川等に即して最小限の修正を行い,関係地方公共団体の意見を聴取した上,昭和56年7月18日にW80区域を,昭和58年9月10日にW75区域を本件コンターに指定した。(前提となる事実)エ国測定地点における航空機騒音の測定結果国測定地点においては,昭和60年3月以降,70dB(A)以上の騒音が一定時間継続した場合に,航空機騒音が測定されている。 昭和60年度から同63年度まで及び平成15年度から平成30年度ま 国測定地点においては,昭和60年3月以降,70dB(A)以上の騒音が一定時間継続した場合に,航空機騒音が測定されている。 昭和60年度から同63年度まで及び平成15年度から平成30年度ま での各年度の国測定地点における測定期間内平均W値(環境庁方式),1日平均の騒音発生回数,1日平均の騒音の累積時間,最高音圧レベル(dB(A))及び最高音の音量別月数,時間帯別の1日平均及び月平均の騒音発生回数は,別紙「国測定地点における騒音測定結果」のとおりである。 (乙Cウ28~32)オ沖縄県調査,県等測定局における航空機騒音の測定結果県等測定局においては,平成9年3月以降,暗騒音レベルより10dB(A)以上の騒音が一定時間継続し,かつ,航空機が発したトランスポンタ応答信号電波を受信した場合に,航空機騒音を測定している。県等測定局はいずれも本件環境基準に基づく地域類型Ⅰに該当し,基準値はいずれも環境庁方式によるW値70である。 沖縄県調査においては,平成9年9月から平成10年8月末までの1年間の測定結果を集計し,環境庁方式によるW値と,可能な限り防衛施設庁方式に沿って補正を行ったW値を算出した上で,県上大謝名測定局では本件コンターよりも実測値が高い値になっているものの,騒音の実績値と本件コンターが比較的一致していると結論付けられた。また,沖縄県調査においては,年間のW値を算出する際に飛行回数の平均値を標準飛行回数として用いる環境庁方式と,飛行回数の年間90パーセンタイル値を用いる防衛施設庁方式の違いを踏まえ,国内の複数の特殊空港(横田,小松,岩国,嘉手納,普天間)における実測値に基づいて算出したW値の年間パワー平均値(環境庁方式)とW値の90パーセンタイル値,飛行回数の90パーセンタイル値から求めたW値を比較し,環境庁方式に ,小松,岩国,嘉手納,普天間)における実測値に基づいて算出したW値の年間パワー平均値(環境庁方式)とW値の90パーセンタイル値,飛行回数の90パーセンタイル値から求めたW値を比較し,環境庁方式によるW値は防衛施設庁方式によるW値よりも3から5程度小さくなると結論付けられた。 上記の沖縄県調査において算出された環境庁方式によるW値のほか,平成15年度から平成30年度までの各年度の測定期間内平均W値(環境庁方式),測定期間内平均Lden(dB)(平成25年度以降),1日平均の 騒音発生回数,最高音圧レベル(dB(A))及び最高音の音量別月数,1日平均の騒音継続累積時間,測定日数に対する本件環境基準を超過した日数の割合(環境基準超過率),時間帯別月平均騒音発生回数は,別紙「県等測定局における騒音測定結果」のとおりである。 (甲Cウ1~14,18,甲D1,乙Cウ21~26)⑵ 検討ア本件コンター策定時の騒音の程度前記前提となる事実及び認定事実のとおり,普天間飛行場は,昭和47年5月15日以降は地位協定3条1に基づき,アメリカ合衆国によって管理,運営され,米軍の航空機等が配備されているところ,普天間飛行場の周辺においては,現在に至るまで,普天間飛行場に配備されている航空機等や不定期に飛来する艦載機や輸送機等により,航空機等の離着陸や,殊の外エンジン出力が上がるタッチアンドゴー演習や旋回飛行といった訓練活動,エンジン調整などに伴う騒音が発生していることが認められる。 原告らは,昭和52年当時の航空機騒音とその程度については本件コンターを基礎として推認すべき旨を主張する。 前記認定事実のとおり,昭和52年騒音度調査においては,事前の現地調査を踏まえ,嘉手納飛行場及び普天間飛行場の周辺の騒音度や地形等を考慮して決定 本件コンターを基礎として推認すべき旨を主張する。 前記認定事実のとおり,昭和52年騒音度調査においては,事前の現地調査を踏まえ,嘉手納飛行場及び普天間飛行場の周辺の騒音度や地形等を考慮して決定された合計127地点についての航空機騒音の調査が行われ,その測定結果に基づき,各測定地点について防衛施設庁方式に基づくW値が算定され,W値の等レベル地点を結んで騒音コンターが作成されたことが認められる。昭和52年騒音度調査は,防衛施設庁が,生活環境整備法の施行に伴い,指定区域を作成する目的で実施したものであり,その内容も,普天間飛行場及び嘉手納飛行場における航空機騒音を詳細かつ網羅的に調査したものであることからすると,昭和52年 時点の航空機騒音の実態を示すものとして信頼性を有するものといえる。 そして,本件コンターは,アコーテックが作成した騒音コンターに基づき策定されたものであり,普天間飛行場周辺の昭和52年当時の航空機騒音の程度を的確に示すものということができる。 これに対し,被告は,W値の算定に当たって採用された防衛施設庁方式は,政策的補償措置としての周辺対策の実施範囲を広く設定するために飛行回数や航空機騒音の継続時間等を補正するものであることや,本件コンターの指定時に騒音コンターに修正が加えられていることから,本件コンター内において,実際にその数値の航空機騒音に暴露されているとはいえない旨を主張する。 前記前提となる事実のとおり,防衛施設庁方式は,W値の算定方法に関し,航空機の飛行回数について,飛行しない日も含め,1日の総飛行回数の少ない方からの累積度曲線を定め,累積度数90%に相当する飛行回数を,その防衛施設における1日の標準総飛行回数としている点,航空機騒音の継続時間について,各騒音測定点における機種別,飛行態 回数の少ない方からの累積度曲線を定め,累積度数90%に相当する飛行回数を,その防衛施設における1日の標準総飛行回数としている点,航空機騒音の継続時間について,各騒音測定点における機種別,飛行態様別,飛行経路別継続時間の平均値が用いられている点,各測定点における機種別,飛行態様別,飛行経路別のピーク騒音レベルのパワー平均値のうちジェット機の着陸時のものと確認できるものについては,着陸音補正として2dB(A)を加えている点が環境庁方式と異なっている。 しかしながら,環境庁方式は,航空機の運航スケジュールが現状ではほぼ1週間単位で編成されていることを考慮して定められたものであり(乙E2,4),特殊空港を前提とするものではない。そして,防衛施設庁方式は,民間空港と特殊空港の周辺での航空機騒音に対する住民反応(うるささ,生活妨害等)の調査結果に基づき,民間空港と特殊空港の比較を行った結果,飛行回数の日変動が大きい特殊空港については,飛行回数の平均値を用いてW値の年間代表値を定めるよりも,飛行回数の 年間変動の80%レンジの上端値(90パーセントタイル値)を用いてW値の代表値を求めことにより,特殊空港と民間空港周辺における住民反応の整合性が高くなるとの報告(木村祥ら「航空機騒音の住環境への影響と評価」)に基づき,生活環境整備法施行規則1条3項の定める「当該防衛施設を使用する自衛隊等の航空機の型式,飛行回数,飛行経路,飛行時刻等に関し,年間を通じての標準的な条件」として定められたものであることが認められる(甲D1)。 そうすると,防衛施設庁方式は,普天間飛行場のような特殊空港における航空機騒音の特性を踏まえ,その影響を適切に把握するために採用されたW値の算定方法と認めるのが合理的であり,防衛施設庁方式によるW値は,普天間飛行場周 庁方式は,普天間飛行場のような特殊空港における航空機騒音の特性を踏まえ,その影響を適切に把握するために採用されたW値の算定方法と認めるのが合理的であり,防衛施設庁方式によるW値は,普天間飛行場周辺の航空機騒音の実態を示すものということができる。 また,前記認定事実のとおり,防衛施設庁長官は,本件コンターを策定するに当たり,アコーテックが作成した騒音コンターの外郭線について,行政区画,集落の状況,道路,河川等に即して修正を行ったことが認められるものの,上記の修正は最小限のものとされており,生活環境整備法が政策的補償措置の実施を目的としていることを考慮しても,航空機騒音の実態と大幅な乖離が生じるような修正が想定されていたとは考え難い。 したがって,被告の上記主張はいずれも採用できず,昭和52年当時の航空機騒音の程度は本件コンターによって推認することが合理的というべきである。 イ本件コンター策定時から現時点に至るまでの騒音の程度前記前提となる事実のとおり,普天間飛行場は,昭和52年以降も継続的に米軍機の運航等に利用されている。そして,同年以降,昭和52年騒音度調査と同程度の大規模かつ詳細な航空機騒音の測定調査は実施 されていないものの,国測定地点においては昭和60年3月以降,県等測定局においては平成9年3月以降,継続的に航空機騒音の測定が実施されている。前記認定事実のとおり,航空機騒音には騒音レベルが他の発生源による騒音と比較してはるかに高く,広範囲に及ぶという特徴があることを考慮すれば,国測定地点及び県等測定局における航空機騒音の測定結果が本件コンターの示す航空機騒音の程度と著しく乖離,矛盾していない限り,本件コンターの範囲内の区域においては,本件コンターの指定時におけるW値に相当する程度の航空機騒音が継続して 空機騒音の測定結果が本件コンターの示す航空機騒音の程度と著しく乖離,矛盾していない限り,本件コンターの範囲内の区域においては,本件コンターの指定時におけるW値に相当する程度の航空機騒音が継続して発生しているものと推認するのが相当である。 前記認定事実のとおり,平成15年度から平成30年度までの県等測定局における航空機騒音の測定結果は別紙「県等測定局における騒音測定結果」のとおりである。 上記の測定結果における測定期間内平均W値に関し,W80区域にある県野嵩測定局においては,平成15年度から平成30年度までの間のW値が70から77までの間で推移し(各年のW値の平均値は約73. 3),本件において損害賠償請求の対象とされている平成27年度以降のW値は70から74までの間で推移していること,県上大謝名測定局においては,平成15年度から平成30年度までの間のW値が77から86までの間で推移し(各年のW値の平均値は約81.2),平成27年度以降のW値は77から84までの間で推移していることが認められる。 また,W75区域にある県新城測定局においては,平成15年度から平成30年度までのW値が68から73までの間で推移し(各年のW値の平均値は約70.3),平成27年度以降のW値は68から71までの間で推移していること,市真志喜測定局においては,平成15年度から平成30年度までの間のW値が65から69までの間で推移し(各年のW値の平均値は約67.7),平成27年度以降のW値は67又は68で推 移していることが認められる。 県等測定局においては,環境庁方式によりW値が算定されているところ,前記認定事実のとおり,沖縄県調査においては,環境庁方式と防衛施設庁方式の違いを踏まえ,国内の複数の特殊空港における実測値に基づく検討の結果,環境庁 は,環境庁方式によりW値が算定されているところ,前記認定事実のとおり,沖縄県調査においては,環境庁方式と防衛施設庁方式の違いを踏まえ,国内の複数の特殊空港における実測値に基づく検討の結果,環境庁方式によるW値は防衛施設庁方式におけるW値よりも3ないし5程度小さいと結論付けられていることからすると,上記の県等測定局における防衛施設庁方式によるW値は,概ね上記の値に3ないし5を加えた数値となると考えられる。 そして,W80区域にある県上大謝名測定局では,平成15年度以降,防衛施設庁方式によるW値が概ね80を超える水準で推移しており,また,W75区域にある県新城測定局では,平成15年度以降,年によって防衛施設庁方式によるW値が本件コンターにおけるW値を上回る年と下回る年があるものの,全期間を通じてみると,概ねこれと同水準のW値で推移していると評価することができる。 他方で,W80区域内にある県野嵩測定局では,平成15年度以降,防衛施設庁方式によるW値が80を上回る年もあるものの,平成23年度以降の防衛庁施設方式によるW値は80をやや下回る水準で推移しており,W75区域にある市真志喜測定局でも,平成15年以降の防衛施設庁方式によるW値は75をやや下回る水準で推移していることが認められる。 被告は,上記の点を指摘し,県等測定局の測定結果と本件コンターとの間に著しい乖離が生じている旨を主張するが,県野嵩測定局及び市真志喜測定局におけるW値と本件コンターのW値の差は大きいものではない。加えて,特殊空港である普天間飛行場における航空機騒音の程度は日々変動していることから,日によって航空機騒音の程度が本件コンターのW値を上回ることもあると考えられることや,両測定局における平 成27年度以降の測定結果はやや増加傾向にあることなどを踏ま 々変動していることから,日によって航空機騒音の程度が本件コンターのW値を上回ることもあると考えられることや,両測定局における平 成27年度以降の測定結果はやや増加傾向にあることなどを踏まえれば,両測定局における測定結果が,本件コンターの合理性を損なわせるほどに本件コンターと乖離しているとはいえない。 したがって,県等測定局におけるW値は,年によって変動はあるものの,測定期間の全体を通じて本件コンターのW値と近い水準で推移しており,本件において損害賠償の対象とされている平成27年度以降のW値についても,平成26年度以前に比べて顕著な減少傾向は認められないことから,本件コンターとの間に著しい乖離,矛盾が生じているとはいえない。 前記認定事実のとおり,昭和60年から昭和63年まで及び平成15年から平成30年までの国測定地点における航空機騒音の測定結果は別紙「国測定地点における騒音測定結果」のとおりである。 上記の測定結果における測定期間内平均W値に関し,W80区域にある国新城測定地点のW値は,昭和60年度から昭和63年度までの間は81.0から85.6までの間で(各年のW値の平均値は82.9),平成15年から平成30年までの間は72.8から80.8までの間で(各年のW値の平均値は76.6)それぞれ推移しており,平成27年度以降のW値は73.0から75.6までの間で推移していることが認められる。 また,W80区域にある国大謝名測定地点においては,昭和60年度から昭和63年度まで間のW値は82.7から84.6までの間で(各年のW値の平均値は83.5),平成15年度から平成30年度までの間のW値は73.0から86.3までの間で(各年のW値の平均値は79. 4)それぞれ推移しており,平成27年度以降のW値は76.5から83.4ま 平均値は83.5),平成15年度から平成30年度までの間のW値は73.0から86.3までの間で(各年のW値の平均値は79. 4)それぞれ推移しており,平成27年度以降のW値は76.5から83.4までの間で推移していることが認められる。 国測定地点においては,環境庁方式によりW値が算定されているとこ ろ,前記のとおり,防衛施設庁方式によるW値は,概ね上記の値に3ないし5を加えた数値となると考えられることを踏まえれば,国測定地点の防衛施設庁方式によるW値は,平成15年度以降,本件コンターにおけるW値を上回る年と下回る年があるものの,全期間を通じてみると,概ねこれと同水準のW値で推移していると評価することができ,本件における損害賠償の対象とされている平成27年度以降のW値についても,平成26年度以前に比べて顕著な減少傾向にあるとはいえない。 これに対し,被告は,本件コンターの告示後間もない昭和60年ないし63年当時と平成15年以降の比較において,国新城測定地点ではW値が全体として低減しているほか,国新城測定地点及び国大謝名測定地点のいずれでも騒音発生回数及び航空機騒音の累積時間,月別最高音が100dB(A)以上を記録した月数が大幅に減少している旨を指摘し,本件コンターとの乖離が顕著である旨を主張する。 しかしながら,国大謝名測定地点における平成30年度のW値は昭和60年度から昭和63年度までと同水準の83.4であり,平成21年,平成22年にも84.9,86.3であったことなどを踏まえると,W値が減少傾向にあるとはいい難い。また,国新城測定地点におけるW値については,昭和60年から昭和63年度までに比べれば平成15年度以降はやや低い値が算出されているものの,上記のとおり,平成15年以降のW値は依然として本件コンターにおけるW値 測定地点におけるW値については,昭和60年から昭和63年度までに比べれば平成15年度以降はやや低い値が算出されているものの,上記のとおり,平成15年以降のW値は依然として本件コンターにおけるW値と同水準で推移している。そのほか,国測定地点における騒音発生回数,騒音累積時間,最高音の音量別月数等を考慮しても,上記の測定結果が本件コンターの合理性を損なわせるほどに本件コンターと乖離しているとはいえない。 したがって,国測定地点におけるW値は,年によって変動はあるものの,平成15年度以降,測定期間の全体を通じて本件コンターにおけるW値に近い水準で推移しており,本件コンターとの間に著しい乖離,矛 盾が生じているとはいえない。 以上を総合すれば,国測定地点及び県等測定局における航空機騒音の測定結果は,本件コンターの示す航空機騒音の程度と著しく乖離,矛盾していないことから,本件コンターの範囲内の区域においては,本件において損害賠償が請求されている平成27年7月2日から現在に至るまでの間,本件コンターの指定時におけるW値に相当する程度の航空機騒音が継続して発生しているものと推認するのが相当である。 3 原告らの被侵害利益⑴ 判断枠組み原告らは,普天間飛行場の航空機騒音によって被る生活妨害,睡眠妨害及びこれらに伴う精神的苦痛等の被害のうち,その性質及び程度に差異がなく,同一と認められる性質,程度の被害を原告ら全員に共通する損害として捉え,各自につき一律にその賠償を求めている。 原告らは,普天間飛行場の航空機騒音に共通して暴露されていることからすると,航空機騒音の性質,内容及び程度に照らし,原告ら全員について同一に生じているといえる性質,程度の被害(共通被害)を主張立証することにより,各自につきその限度で一律に賠償を求め ていることからすると,航空機騒音の性質,内容及び程度に照らし,原告ら全員について同一に生じているといえる性質,程度の被害(共通被害)を主張立証することにより,各自につきその限度で一律に賠償を求めることも許されるものと解される(最高裁昭和56年判決参照)。 以下においては,上記の観点から,原告らが暴露されている騒音等の性質,内容及び程度を踏まえ,原告らの主張する個々の共通損害の存否及び程度について検討する。 ⑵ 原告らの居住経過前記前提となる事実のとおり,原告らの住民票,戸籍附票等の公的書類に記載された居住経過は別紙「居住経過一覧表」記載のとおりであり,原告らが損害賠償を請求している平成27年7月2日以降について上記の居住経過を疑わせるに足りる証拠はないことからすれば,原告らは,同日以降,別紙 「居住経過一覧表」記載の居住地にそれぞれ居住していると認めるのが相当である(ただし,原告552については,損害賠償請求の始期である平成27年7月2日から平成29年1月27日までの間の住所が公的書類において確認できず,他に上記期間における居住地に関する立証がされていないことから,同月28日以降についてのみ「居住経過一覧表」記載の居住地に居住しているものと認める。)。 これに対し,被告は,原告らが実際に公的書類上の居住地に居住しているかは必ずしも明らかではない旨を主張し,原告1687の供述内容を指摘する。確かに,原告1687は,昭和54年以降,海外勤務や東京都への単身赴任をしてきた時期があったにもかかわらず,住民票上の住所は変更していなかった旨を供述しているが,原告1687は,少なくとも10年以上前には退職していることからすると(甲B11),上記供述は,原告1687の平成27年7月2日以降の居住地を疑わせるものではないし,その なかった旨を供述しているが,原告1687は,少なくとも10年以上前には退職していることからすると(甲B11),上記供述は,原告1687の平成27年7月2日以降の居住地を疑わせるものではないし,その余の原告らの公的書類に記載された居住地の信用性を疑わせるものともいえない。 したがって,被告の上記主張は採用できない。 ⑶ 騒音が人体に及ぼす影響ア沖縄県調査報告書沖縄県調査報告書においては,騒音が身体に対して及ぼす影響が発現する経路,構造について以下の説明がされている。(甲D1)騒音は,外耳道から鼓膜,耳小骨連鎖を経て内耳に入り,有毛細胞に傷害を与えることによって,聴力の低下を引き起こし,内耳の有毛細胞に神経インパルスに変換された騒音は,聴神経を経て大脳皮質の聴覚域に達して音感覚を成立させるとともに聴取妨害をもたらす。一方,網様体を経て大脳の新皮質に到達した神経インパルスは,覚醒,睡眠妨害,思考,精神作業妨害を起こす。また,視床下部を介して大脳旧皮質全体を刺激し,不快感,イライラ等の情緒妨害を起こし,さらに,食欲,性 欲等の本能欲を妨害するに至る。 上記の影響が一定の限度を超えると,ストレス反応として,視床下部と下垂体を介して甲状腺,副腎,生殖腺等の内分泌系に影響が現れる。 さらに,視床下部からのインパルスは,自律神経系を介して循環器系や消化器系に影響を及ぼすと考えられる。 イ WHOガイドラインWHOが1999年(平成11年)に公表したWHOガイドラインにおいては,騒音による健康影響として,聴力障害,会話了解度の低下,睡眠妨害,生理的機能への影響,作業・学習への影響,社会的影響,行動への影響,不快感などが掲げられており,特定の環境条件下における騒音の指針値が示されている(甲D2,乙Cア40)。 ウ欧州 下,睡眠妨害,生理的機能への影響,作業・学習への影響,社会的影響,行動への影響,不快感などが掲げられており,特定の環境条件下における騒音の指針値が示されている(甲D2,乙Cア40)。 ウ欧州夜間騒音ガイドラインWHOの欧州事務局が2007年(平成19年)に公表した欧州夜間騒音ガイドラインにおいては,騒音の健康影響として十分な知見又は限定的な知見が確認できる生物学的影響,睡眠の質,生活満足度及び病状が列挙されており,全ての国に対し,中間目標として家屋正面の屋外夜間騒音レベルの年平均(Lnight,outside)が50dB又は40dBを超える騒音レベルに暴露される人口を可及的効果的に漸減させることが奨励されている。なお,欧州夜間騒音ガイドラインは,WHOガイドラインの改訂であるとともに,その拡張として捉えることも可能であるとされている。(甲D3)エ検討以上のとおり,沖縄県調査報告書及びWHOガイドライン等においては,騒音が人の身体面又は精神面に影響を及ぼし得るものであることが示されており,公害対策基本法及び環境基本法が,人の健康を保護し,及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定める旨を規定 していることや,生活環境整備法が航空機等の離着陸の頻繁な実施により生ずる音響に起因する障害を防止又は軽減する措置について規定していることも,騒音が人体に影響を及ぼし得ることを前提としているものと解される。したがって,一般に,航空機騒音を含む騒音は,人の身体面又は精神面に影響を及ぼし得るものであるということができる。 これに対し,被告は,国内外の調査,研究結果を提出し,航空機騒音が人の身体面又は精神面に影響を及ぼすことは一般的に否定されている旨を主張する。しかしながら,被告の提出する調査,研究結果の大 きる。 これに対し,被告は,国内外の調査,研究結果を提出し,航空機騒音が人の身体面又は精神面に影響を及ぼすことは一般的に否定されている旨を主張する。しかしながら,被告の提出する調査,研究結果の大半は,昭和40年代から昭和50年代の調査結果等であり,その当時の知見に基づき航空機騒音による影響が証明されていない旨を示すものにすぎないし,比較的最近の調査結果等についても,航空機騒音による身体的又は精神的な影響の一切を否定する趣旨のものとは解されない。 以下においては,原告らが主張する被害類型ごとに,普天間飛行場の騒音による共通の被害の有無,程度について個別に検討することとする。 ⑷ 生活妨害ア認定事実後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,航空機騒音による生活妨害に関し,以下の事実が認められる。 WHOガイドラインWHOガイドラインには,騒音による環境影響のうち,会話聴取妨害,作業・学習への影響,社会的行動に対する妨害について,以下の記載がある。(甲D2,乙Cア40)a 会話聴取妨害会話了解度は騒音によって低下する。会話と同時に妨害音が発生することによって,会話の理解が困難となる。 大多数の人々は騒音による会話妨害を被りやすく,高感受性群に属 する。複雑な内容(学校での会話,外国語,電話の声)を聴く場合,話者が1m離れて日常会話をするときの平均的なレベルである50dB(A)の会話を正確に聴きとるためには,暗騒音を35dB(A)以下にとどめるべきである。 b 作業・学習への影響主に労働者や小児に対して,騒音が認知作業の成績に悪影響を及ぼし得ることが明らかにされている。騒音によって集中力が賦活され,単純作業の能率を短期間上昇させることもあるが,複雑な作業の場合,認知作業の成績は大幅に低下する。読解力 が認知作業の成績に悪影響を及ぼし得ることが明らかにされている。騒音によって集中力が賦活され,単純作業の能率を短期間上昇させることもあるが,複雑な作業の場合,認知作業の成績は大幅に低下する。読解力,集中力,問題を解く力,記憶力等が騒音によって特に影響を受ける認知能力である。騒音は集中を妨げる刺激にもなり,衝撃音は驚愕反応によって破壊的な影響を及ぼす可能性がある。 騒音への暴露は,暴露終了後の成績にも悪影響が生ずると考えられる。慢性的に航空機騒音に暴露されている空港周辺の学校の生徒は,詳細な読解力,難問に取り組む際の持続力,読解試験の成績,学習意欲が標準よりも低い。航空機騒音に順応しようと試みたり,作業成績を維持するのに必要な努力をするなど,相当の代償を払っていることを認識しなければならない。騒音は作業中の障害やミスを増加させると考えられ,ある種の事故は作業能率の低下を示す指標になり得る。 c 社会的行動やその他の行動に対する妨害多くの環境騒音は,休息,娯楽,テレビの視聴などに対する妨害が最も重要な影響と思われる。80dB(A)以上の騒音が援助的な行動を減少することや,大きな騒音が攻撃的な性格の人の攻撃的行動を増加させることについて,かなりの整合性のある研究結果が得られている。 沖縄県調査沖縄県調査においては,普天間飛行場周辺の航空機騒音が住民の生活の質及び環境の質に対して与える影響に関する調査(生活質・環境質調査)が実施された。調査の方法及び会話妨害等に関する調査結果は以下のとおりである。(甲D1)a 調査方法嘉手納飛行場の周辺住民4973名,普天間飛行場の周辺住民2005名,航空機騒音への暴露のない対照群として,当時の行政区で佐敷町,大里村(いずれも現在の南城市の一部)及び南風原町の住民9 方法嘉手納飛行場の周辺住民4973名,普天間飛行場の周辺住民2005名,航空機騒音への暴露のない対照群として,当時の行政区で佐敷町,大里村(いずれも現在の南城市の一部)及び南風原町の住民916名の合計7894名に対して調査票を配布する方法で行われた。 調査票は,「生活満足度」,「地域・生活環境」,「基地及び航空機騒音について」,「睡眠について」,「あなた自身について」という5つの項目に関する98問の質問から構成されており,合計で5693通の有効回答が得られ,そのうち普天間飛行場の周辺住民からの有効回答数は1448通,対照群の住民からの有効回答数は685通であった。 b 会話妨害等に関する回答結果調査票における質問のうち,①会話妨害,②電話聴取妨害,③テレビ聴取妨害,④作業妨害,⑤思考妨害,⑥休息妨害,⑦電波障害及び⑧警告音聴取妨害の各項目については,「1.いつもある」「2.ときどきある」「3.たまにある」「4.あまりない」「5.まったくない」の5段階評価で回答が求められた。 上記各項目についての回答結果のうち,「1.いつもある」「2.ときどきある」と回答した割合は以下のとおりであり,特に会話妨害,電話聴取妨害,テレビの聴取妨害の項目については,それぞれの正反応率がW値に対して直線的に増加しており,極めて明瞭な量反応関係が見られるとの分析がされた。 ① 会話妨害 W75以下W75W801.いつもある3.2%13.1%15.9%2.ときどきある20.7%35.9%40.7%② 電話聴取妨害 W75以下W75W801.いつもある4.2%13.2%18.8%2.ときどきある20.3%35.1%38.4%③ テレビ聴取妨害 ② 電話聴取妨害 W75以下W75W801.いつもある4.2%13.2%18.8%2.ときどきある20.3%35.1%38.4%③ テレビ聴取妨害 W75以下W75W801.いつもある7.3%18.6%19.1%2.ときどきある23.8%36.2%43.8%④ 作業妨害 W75以下W75W801.いつもある0.8%5.6%3.2%2.ときどきある6.2%14.1%11.2%⑤ 思考妨害 W75以下W75W801.いつもある1.6%7.6%5.8%2.ときどきある8.6%18.2%19.6%⑥ 休息妨害 W75以下W75W801.いつもある1.9%9.6%8.5%2.ときどきある9.2%16.9%20.0%⑦ 電波障害 W75以下W75W801.いつもある2.1%6.5%7.3%2.ときどきある9.8%12.9%18.5%⑧ 警告音聴取妨害 W75以下W75W801.いつもある1.8%3.9%3.6%2.ときどきある2.8%7.2%7.5%原告らのアンケート式陳述書原告らは,普天間飛行場における航空機騒音及びこれによる被害についての認識を記載したアンケート式陳述書を提出している。原告らの集計によると,アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,W80区域に居住する者は1479名,W75区域に居住する者は1144名であり,生活妨害に関する質問に対する回答の概要は以下のとおりである(以下,アンケート式陳述書 式陳述書を提出した原告らのうち,W80区域に居住する者は1479名,W75区域に居住する者は1144名であり,生活妨害に関する質問に対する回答の概要は以下のとおりである(以下,アンケート式陳述書の内容に関し,アンケート式陳述書を提出した原告らの人数やW80区域及びW75区域に居住する原告らの人数については,特段の指摘のない限り,原告らの集計に基づく。)。(甲B1~9(枝番を含む。以下同じ。))a アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,「米軍機の騒音で会話に支障が生じたことがありますか」という質問に対して「ある」と回答した原告らの割合はW80区域及びW75区域のいずれも約98%,「米軍機の騒音で電話が聞き取りにくくなることなどがありますか」という質問に対して「ある」と回答した原告らの割合はW80区域で約99%,W75区域で約98%であった。 アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,騒音による会話や電話への支障の内容について,複数回答可能な選択肢のうち,下記の回 答を選択した原告らの割合は以下のとおりであった。 回答項目W75区域W80区域家族や隣人などとの会話が妨げられて不快な思いをする約78% 約79%顧客等との会話が妨げられ,仕事に影響が生じる約27%約27%聞き間違いや聞き漏らしが生じる約68%約72%電話の相手などから苦情を言われる約17%約24%電話が長時間となったり,掛けなおしが必要となるなどして,電話代が余分にかかる約40%約41%b 「米軍機の影響でテレビを見たりラジオを聞くことに問題がありますか」という質問に対して「ある」と回答した原告らの割合はW80区域及びW75区域のいずれも約98%であった。 アンケート式陳述書を提出 「米軍機の影響でテレビを見たりラジオを聞くことに問題がありますか」という質問に対して「ある」と回答した原告らの割合はW80区域及びW75区域のいずれも約98%であった。 アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,騒音によりテレビやラジオの視聴に支障が生じることによる影響について,下記の回答項目を選択した原告らの割合は以下のとおりであった。 回答項目W75区域W80区域趣味や娯楽の時間が妨げられて不快な思いをする約63%約63%テレビやラジオの内容がよく理解できなくなるなどして不快な思いをする約78%約78%ニュースや教養番組等を通じた情報入手が妨げられてしまう約53%約57%災害など万一の場合に,正確な情報を得られないのではと不安になる約51%約50%イ検討原告らは,原告ら全員の共通被害として,普天間飛行場の航空機騒音 により,その居住地において,会話,通話,テレビ等の聴取妨害や,趣味生活における音の聴取に係る活動,学習や読書等の知的作業の妨害及びこれに伴う精神的苦痛を受けている旨を主張し,原告97,原告517,原告582,原告1687及び原告2260もそれぞれこれに沿う旨を供述する。 前記認定事実のとおり,沖縄県調査においては,相当数の回答者が会話妨害,電話聴取妨害,テレビ聴取妨害,作業妨害,思考妨害,休息妨害,電波障害及び警告音聴取妨害を受けている旨を回答しており,特に会話妨害,電話聴取妨害,テレビの聴取妨害の正反応率がW値に対して直線的に増加しており,極めて明瞭な量反応関係がある旨の分析がされている。また,原告らが提出するアンケート陳述書においても,これを提出した原告らのうち相当の割合が会話,電話聴取妨害,テレビやラジオの聴取妨害を訴えており,か て明瞭な量反応関係がある旨の分析がされている。また,原告らが提出するアンケート陳述書においても,これを提出した原告らのうち相当の割合が会話,電話聴取妨害,テレビやラジオの聴取妨害を訴えており,かつ,その割合は概ねW75区域よりもW80区域の方が多いことが認められる。 WHOガイドラインは,日常会話をするときの平均的なレベルである50dB(A)の会話を正確に聴きとるためには,暗騒音を35dB(A)以下にとどめるべきであることや,騒音が作業や学習に影響を及ぼすこと,環境騒音の休息,娯楽及びテレビの視聴などに対する妨害が最も重要な影響であり,80dB(A)以上の騒音が援助的な行動を減少することなどを指摘しており,航空機騒音によって会話等への妨害や作業,学習への支障が生じ得ることは経験則上も明らかである。 そして,平成27年度以降の国測定地点及び県等測定局の測定結果によれば,各測定地点又は測定局における各月の最高音のほとんどが90dB(A)以上であり,最高音が120dB(A)を上回る月もあること,県等測定局においては,相当の日数において,人の健康を保護し,及び生活環境を保全する上で維持することが望ましい基準として定めら れた本件環境基準を超過する航空機騒音が測定されていることが認められる。これらの点を考慮すると,本件コンター内における航空機騒音の程度は,本件コンター内の住民に対し,会話等の聴取妨害や音の聴取に係る活動,知的作業への妨害など,具体的な生活への支障を生じさせることが十分にあり得る水準であると考えられる。 以上によれば,原告らは,普天間飛行場による航空機騒音により,その全員について同一に生じているといえる共通被害として,会話,通話,テレビ等の聴取妨害や,音の聴取に係る活動,学習や読書等の知的作業の妨害を受けてお 原告らは,普天間飛行場による航空機騒音により,その全員について同一に生じているといえる共通被害として,会話,通話,テレビ等の聴取妨害や,音の聴取に係る活動,学習や読書等の知的作業の妨害を受けており,これにより等しく精神的苦痛を被っていることが認められ,かつ,その程度はW75区域に居住する原告らよりもW80区域に居住する原告らの方が大きいと認めることができる。 これに対し,被告は,原告らが提出するアンケート式陳述書に関し,アンケート陳述書を提出していない原告がいることや,航空機騒音の暴露の認識が認められない原告がいること,航空機騒音暴露の頻度,時間帯に係る認識に共通性がないことを指摘し,原告ら全員が共通する航空機騒音被害を受けているとはいえない旨を主張する。 しかしながら,原告らは,航空機騒音の性質,内容及び程度に照らし,原告ら全員について同一に生じているといえる性質,程度の被害を共通被害として主張しているものと解されるところ,上記の被害を認定するに当たっては,必ずしも原告ら全員についてのアンケート式陳述書の提出が必要とは考えられない。また,特殊空港における航空機騒音の頻度等は日々変動しており,これを原告らの主観において正確に把握することは困難である上,各原告の生活形態にも差異があると考えられることからすると,原告らが認識する航空機騒音の頻度,時間等に係る認識に共通性が見られなかったとしても,このことをもって航空機騒音による被害が否定されるものではないというべきである。 また,被告は,原告らの提出するアンケート式陳述書においても,どの程度の頻度で,どの程度の生活妨害が生じるかなど,共通損害の内容は何ら示されていない旨や,原告856がアンケート式陳述書において,原告らの主張する損害項目について全て否定していることを いても,どの程度の頻度で,どの程度の生活妨害が生じるかなど,共通損害の内容は何ら示されていない旨や,原告856がアンケート式陳述書において,原告らの主張する損害項目について全て否定していることを指摘し,共通被害の存在は否定されるべきである旨を主張する。しかしながら,前記のとおり,普天間飛行場における航空機騒音の頻度,程度は,原告らの主張する会話妨害等を生じさせ得るものであり,各原告において認識する生活妨害の頻度,程度の具体的な内容に差異があったとしても,静穏な日常生活の享受が妨げられるという点においては同様であって,これに伴う精神的苦痛の性質及び程度に差異はないと考えられるから,原告らの共通被害であることが否定されることにはならない。 したがって,上記の被告の主張はいずれも採用できない。 なお,被告は,沖縄県調査において,「作業妨害」,「思考妨害」,「休息妨害」,「電波障害」,「警告音聴取妨害」の質問項目に対する正反応率はW値90未満では低率で,W値90以上で初めて急増しているとされているのに対し,普天間飛行場にはW値85未満の区域しか存在しないことから,沖縄県調査は原告らの主張する生活妨害を根拠づけるものではない旨を主張する。しかしながら,前記認定事実のとおり,沖縄県調査における上記の質問項目に対する回答をみると,W値75未満の区域に比べてW値75以上の区域における回答割合は大幅に増加していることが認められるから,航空機騒音による作業妨害等の存在が否定されるものではないというべきである。 ⑸ 睡眠妨害ア認定事実後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,航空機騒音による睡眠妨害に関し,以下の事実が認められる。 WHOガイドラインWHOガイドラインにおいては,騒音による環境影響のうち,睡眠妨害について 及び弁論の全趣旨によれば,航空機騒音による睡眠妨害に関し,以下の事実が認められる。 WHOガイドラインWHOガイドラインにおいては,騒音による環境影響のうち,睡眠妨害について以下の記載がある(甲D2,乙Cア40)。 a 騒音は多くの直接的又は間接的経路によって睡眠を妨害する。非常に低い騒音レベルにおいても生理学的反応(心拍数や体動,覚醒状態の増加)を確実に計測することが可能である。 睡眠妨害は,環境騒音の主要な影響の一つである。騒音によって睡眠中に生じる一時的影響としては,入眠困難,覚醒や睡眠深度の変化,血圧,心拍数,指先脈波振幅の上昇,血管収縮,呼吸の変化,不整脈,体動の増加などがある。また,騒音暴露を受けた次の日にも生じる二次影響として不眠感,疲労感,憂うつ,作業能率の低下などがある。 bLAeq(A特性等価騒音レベル)で30dB(A)程度の騒音から測定可能な睡眠影響が表れるが,暗騒音レベルが高くなるほど,妨害の程度も増大する。また,間欠音による睡眠妨害は,最大騒音レベルとともに増加し,全体的な等価騒音レベルがかなり低くても,高い最大騒音レベルの騒音が少しでも発生すれば睡眠に影響が生じる。 睡眠妨害を防ぐためには,騒音が定常的な音であれば,屋内のLAeqは30dB(A)以下にとどめるべきであり,低周波の音が多く含まれる騒音に対してはより低いレベルが推奨される。暗騒音のレベルが低い場合,可能な限り,LAmax(A特性音圧レベルの最大値)が45dB(A)を超える騒音は制限すべきである。 欧州夜間騒音ガイドライン欧州夜間騒音ガイドラインにおいては,睡眠中の騒音暴露による睡眠妨害に関し,以下の知見が示されている。(甲D3)a 睡眠中の騒音が心拍数の増大,脳幹の反応,睡眠深度の変化,覚醒反応といった生 欧州夜間騒音ガイドラインにおいては,睡眠中の騒音暴露による睡眠妨害に関し,以下の知見が示されている。(甲D3)a 睡眠中の騒音が心拍数の増大,脳幹の反応,睡眠深度の変化,覚醒反応といった生物学的な影響を与えること,夜間騒音暴露が自己申告 による睡眠妨害,薬物使用の増加,環境要因による不眠症の原因となることを示す十分な知見がある。これらの影響は人々にとって疾患につながる相当な負荷となり得る。騒音による睡眠妨害は,それ自体が健康問題であるとみなされるとともに,健康及び生活満足度にさらなる悪影響を引き起こすものでもある。また,睡眠妨害によって疲労,事故,能力の低下が引き起こされるという限定された知見がある。 b 夜間騒音と健康影響に関する知見に基づく夜間騒音と健康影響の関係に関する全体的概要は,以下のとおりである。 ① 30dB未満のLnight,outside(家屋正面の屋外夜間騒音レベルの年平均)個々の感受性や環境には差異はあるものの,生物学的な実質影響は認められない。 ② 30dB以上40dB未満のLnight,outside体動,覚醒反応,自己申告による睡眠妨害,覚醒状態といった多くの影響の増加が認められる。影響の程度は音源の特性と騒音発生回数に依存するが,最悪の場合であっても影響はそれほど大きくない。子供,慢性的な患者,高齢者などの高感受性群がある程度の影響を受けることは無視できない。 ③ 40dB以上55dB未満のLnight,outside健康影響が急激に上昇し,この段階で暴露人口の多くが影響を受け,騒音に適応するために生活を変えなければならず,高感受性群は重度に影響を受ける。 ④ 55dB以上のLnight,outside健康影響は頻繁に生じ,高い確率で高度なうるささを訴える。循環 ,騒音に適応するために生活を変えなければならず,高感受性群は重度に影響を受ける。 ④ 55dB以上のLnight,outside健康影響は頻繁に生じ,高い確率で高度なうるささを訴える。循環器系がストレス状態となるとの限定的な知見が存在する。55dBを超えると循環系への影響が顕著となり,これは騒音の特性には それほど依存しない。 c 段階的ガイドライン値として,大多数の人々が床に就いている夜間に,Lnight,outside30dBを超える夜間騒音に暴露されないようにすることを最終目標とする。全ての国に対し,中間目標として,Lnight,outside55dB又はLnight,outside40dBを超える騒音レベルに暴露される人口を可及的効果的に漸減させるよう奨励する。 沖縄県調査沖縄県調査の生活質・環境質調査においては,航空機騒音による睡眠妨害に関し,以下の調査結果が報告されている。(甲D1)a 調査票における睡眠に関する項目のうち,①睡眠妨害の項目については,「1.いつもある」「2.ときどきある」「3.たまにある」「4. あまりない」「5.まったくない」の5段階評価,②飛行機・ヘリコプターの音による睡眠妨害及び③飛行機のエンジン調整音による睡眠妨害の各項目については,「1.週に何日も妨害される」「2.週に1,2回妨害される」「3.月に1,2回妨害される」「4.ほとんど妨害されない」「5.まったく妨害されない」の5段階評価で回答が求められた。 また,④睡眠障害に関する4つの項目(「床についたとき,寝つけなくて困ることがありますか」「夜中に目がさめて,その後寝つけなくて困ることがありますか」「朝早く目がさめてしまって困ることがありますか」「一晩じゅう十分に眠れなかった感じのすることがありますか」) て困ることがありますか」「夜中に目がさめて,その後寝つけなくて困ることがありますか」「朝早く目がさめてしまって困ることがありますか」「一晩じゅう十分に眠れなかった感じのすることがありますか」)について,「1.週に3回以上ある」「2.週に1,2回ある」「3.月に1,2回ある」「4.ほとんどない」「5.まったくない」の5段階評価で回答が求められた。 上記①の項目に対する普天間飛行場の周辺住民の回答結果のうち, 「1.いつもある」「2.ときどきある」「3.たまにある」と回答した割合,②及び③の各項目に対する回答結果のうち「1.週に何日も妨害される」「2.週1,2回妨害される」「3.月1,2回妨害される」と回答した割合は,以下の①から③までのとおりである。 また,上記④の4つの項目に対する回答から,「1.週に3回以上ある」又は「2.週1,2回ある」に回答した項目数を「睡眠障害:月1,2回」,「1.週に3回以上ある」,「2.週1,2回ある」又は「3. 月1,2回ある」のいずれかに回答した項目数を「睡眠障害:月1,2回」とした場合,睡眠障害の尺度値の回答率は,以下の④‐1及び④‐2のとおりである。 ① 睡眠妨害 W75以下W75W801.いつもある1.6%6.2%8.4%2.ときどきある7.8%18.6%19.8%3.たまにある13.5%16.0%31.3%② 飛行機・ヘリコプターの音による騒音妨害 対照群W75以下W75W801.週に何日も妨害される0.2%1.6%3.6%7.6%2.週1,2回妨害される0.2%2.6%6.6%8.8%3.月1,2回妨害される2.6%10.9%23.0%26.8 0.2%1.6%3.6%7.6%2.週1,2回妨害される0.2%2.6%6.6%8.8%3.月1,2回妨害される2.6%10.9%23.0%26.8%③ エンジン調整音による睡眠妨害 対照群W75以下W75W801.週に何日も妨害される0.0%0.7%2.0%3.8%2.週1,2回妨害される0.0%1.4%4.0%4.6%3.月1,2回妨害される0.5%4.9%9.8%20.5% ④‐1 睡眠障害:週1,2回尺度値対照群W75以下W75W80 74.3%75.2%68.3%66.0% 13.9%12.7%12.1%17.2% 6.1%4.8%10.6%6.9% 2.8%4.7%5.1%6.5% 2.9%2.6%3.9%3.4%④‐2 睡眠障害:月1,2回尺度値対照群W75以下W75W80 43.3%40.3%35.0%30.6% 18.7%16.7%11.8%18.6% 14.9%13.6%17.8%15.1% 12.9%14.6%17.8%14.8% 10.3%14.8%17.5%21.0%b 上記aのとおり,睡眠障害と航空機騒音暴露との間には量反応関係が見られるが,対照群においても,「睡眠障害:月1,2回」で1点以上が57%あり,軽度の睡眠障害が認められることから,暴露群の回答率が対照群の回答率と比較してどの程度増加しているかを検討するため,多重ロジスティック回帰分析によ ,「睡眠障害:月1,2回」で1点以上が57%あり,軽度の睡眠障害が認められることから,暴露群の回答率が対照群の回答率と比較してどの程度増加しているかを検討するため,多重ロジスティック回帰分析により,対照群に対する各W値群の睡眠障害のオッズ比が求められた。説明変数としては,W値,年齢,性別,年齢と性別の交互作用,職業を用い,この方法によると,各W値群における回答率と対照群との有意差を年齢,性別による影響を排除して検討することができる。 その結果,比較的軽度の睡眠障害である「睡眠障害:月1,2回」では,W値75以上の全暴露群において,対照群との間に5%の有意 水準でオッズ比の有意差が認められた。このため,比較的軽度の睡眠障害は,低暴露地区においても生じていると結論付けられた。 なお,普天間飛行場周辺においては,「睡眠障害:週1,2回」の4点のオッズ比が高くなかったが,普天間飛行場では,嘉手納飛行場と同じW値であっても,夜間の飛行が少なく,昼間又は夕方の飛行が多いため,生活妨害の被害が相対的に大きく,睡眠妨害が少ないと解されるとの分析がされている。 原告らのアンケート式陳述書原告らの集計によると,アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,「騒音によって睡眠が妨げられたこと(眠れなかったこと)はありますか」という質問に対して「ある」と回答した原告らの割合はW80区域で約79%,W75区域で約74%であった。(甲B1~9)イ検討原告らは,原告ら全員の共通被害として,普天間飛行場の航空機騒音により睡眠妨害を受けている旨を主張し,原告97,原告517,原告1687及び原告2260もこれに沿う旨を供述する。 前記認定事実のとおり,沖縄県調査においては,普天間飛行場の周辺住民に対するアンケート調査の結果,月1,2 を主張し,原告97,原告517,原告1687及び原告2260もこれに沿う旨を供述する。 前記認定事実のとおり,沖縄県調査においては,普天間飛行場の周辺住民に対するアンケート調査の結果,月1,2回の睡眠障害について,W値75以上の全暴露群において,対照群との間にオッズ比の有意差が認められ,比較的軽度の睡眠障害が低暴露地区においても生じていると結論付けられており,原告らの提出するアンケート式陳述書においても,これを提出した者のうち,W80区域で約79%,W75区域で約74%の原告らが睡眠妨害を訴えていることが認められる。 WHOガイドラインにおいては,騒音によって睡眠中に生じる一時的影響として,入眠困難,睡眠深度の変化,血圧,心拍数,指先脈波振幅の上昇,血管収縮,呼吸の変化,不整脈,体動の増加や,二次的影響と して不眠感,疲労感,憂うつ,作業能率の低下などの症状が挙げられており,睡眠妨害を避けるためには,騒音が定常的な音であれば,屋内のLAeqは30dB(A)以下にとどめるべきであり,個々の発生音についても45dB(A)を超える騒音は避けるべきであるとされている。また,欧州夜間騒音ガイドラインにおいても,睡眠中の騒音が心拍数の増大,脳幹の反応,睡眠深度の変化,覚醒反応といった生物学的な影響を与えること,夜間騒音暴露が自己申告による睡眠妨害,薬物使用の増加,環境要因による不眠症の原因となることを示す十分な知見があり,騒音による睡眠妨害がそれ自体健康問題とみなされるとともに,健康及び生活満足度に悪影響を引き起こすものであるとしつつ,Lnight,outsideが30dB以上であれば多くの影響の増加が認められ,40dB以上になると暴露人口の多くが影響を受ける旨が示されている。 そして,別紙「国測定地点における騒音測定結果 ,Lnight,outsideが30dB以上であれば多くの影響の増加が認められ,40dB以上になると暴露人口の多くが影響を受ける旨が示されている。 そして,別紙「国測定地点における騒音測定結果」及び別紙「県等測定局における騒音測定結果」によれば,国測定地点及び県等測定局のいずれにおいても,午後10時から午前7時までの夜間に航空機騒音が測定されており(例えば,W80区域の県野嵩測定局の平成30年度における午後10時から午前7時までの間の月平均騒音発生回数は21.0回,W75区域の県新城測定局の平成30年度における午後10時から午前7時までの間の月平均騒音発生回数は34.7回であったことが認められる。),本件コンター内においては,本件コンター内に居住する住民らに対して睡眠妨害を生じさせ得る程度の航空機騒音が発生していることが認められる。 以上によれば,原告らは,普天間飛行場による航空機騒音により,その全員について同一に生じているといえる共通被害として,自覚の有無を問わず,入眠困難のほか,心拍数の増大,脳幹の反応,睡眠深度の変 化,覚醒反応などといった睡眠妨害を受けており,これにより等しく精神的苦痛を被っていることが認められ,かつ,その程度はW75区域に居住する原告らよりもW80区域に居住する原告らの方が大きいと認めることができる。 これに対し,被告は,睡眠妨害については,航空機騒音との関連性は現時点の科学的知見から明確でない旨を主張する。 しかしながら,被告が提出する証拠の一部(乙D4,7,8,24)は,昭和48年又は昭和49年並びに平成6年の時点において,騒音の睡眠に対する影響や,睡眠妨害の健康への長期的影響の可能性についての知見が定まっていないことを示すものにすぎないし,騒音が睡眠に対する影響に関し,被験者 和49年並びに平成6年の時点において,騒音の睡眠に対する影響や,睡眠妨害の健康への長期的影響の可能性についての知見が定まっていないことを示すものにすぎないし,騒音が睡眠に対する影響に関し,被験者に騒音に対する慣れが生じることを示す論稿(乙25)についても,睡眠妨害の存在自体を否定するものではない。また,アメリカ合衆国の空港における騒音と自己報告による睡眠不足との間の有意な関連性を否定した研究結果(乙D9)については,通常の睡眠時間帯に回答者が自宅において経験する騒音レベルを正確に示していない可能性が指摘されており,夜間に相当の航空機騒音が発生している普天間飛行場とはその前提が異なると考えられる。したがって,上記の証拠によっても,普天間飛行場における航空機騒音と睡眠妨害の関連性が否定されるものではないというべきである。 さらに,被告は,睡眠妨害については個人差が極めて顕著な主観的なものであり,他の要因によっても生じるものであること,原告らの中には睡眠妨害を訴えていない者もいることから,睡眠妨害は共通被害になり得ない旨を主張する。 確かに,欧州夜間騒音ガイドラインにおいても,子供,慢性的な患者,高齢者などの高感受性群が存在することが示されているほか,被告の提出する各種の研究,調査結果等(乙D10,26,29~34)からも, 騒音と睡眠妨害との関係に個人差があり,航空機騒音以外にも睡眠の質に影響する要因が存在することは否定できない。 しかしながら,前記で述べたとおり,本件コンター内における航空機騒音の程度,頻度は,本件コンター内の住民に対して睡眠妨害を生じさせ得る水準であると考えられ,沖縄県調査においても,航空機騒音と睡眠妨害の関係について,多重ロジスティック回帰分析により,年齢,性別による影響を排除した分析がされた上 の住民に対して睡眠妨害を生じさせ得る水準であると考えられ,沖縄県調査においても,航空機騒音と睡眠妨害の関係について,多重ロジスティック回帰分析により,年齢,性別による影響を排除した分析がされた上で,W値75以上の全暴露群において,対照群との間にオッズ比の有意差が認められている。これらの点を考慮すれば,原告らについては,騒音に対する受け止め方に個人差があることを考慮してもなお,自覚の有無を問わず,航空機騒音によって睡眠に対する影響が生じていると考えられる。 したがって,上記の被告の主張を考慮しても,共通被害としての睡眠妨害を否定することはできない。 ⑹ 健康被害及び健康被害に対する不安感ア認定事実WHOガイドラインWHOガイドラインにおいては,騒音による環境影響のうち,生理的機能への影響,聴力障害について,以下の記載がある(甲D2,乙Cア40)。 a 騒音職場に働く労働者,空港,工場,騒音の激しい道路近傍の住民に対して,騒音が生理的機能に急性的・慢性的な影響を及ぼしている可能性がある。長期暴露によって,住民の中の高感受性群が高血圧や虚血性心疾患などの永続的な影響を発現することになると考えられる。 影響の大きさやそれが持続する時間は,一部,個人の特性,生活習慣,環境条件などの影響を受ける。 強大な工場騒音に5年から30年暴露された労働者は血圧が上昇し, 高血圧になるリスクが高まると考えられる。心循環器系への影響は,LAeq,24hが65から70dB(A)の航空機騒音,道路交通騒音の長期暴露地域においても明らかにされている。騒音と高血圧や心疾患の発症率との関連は必ずしも強いものではないが,高血圧よりも虚血性心疾患の方が騒音との関連性がいくぶん強いとされている。 b 騒音性聴力障害は世界で最も広汎に見られる れている。騒音と高血圧や心疾患の発症率との関連は必ずしも強いものではないが,高血圧よりも虚血性心疾患の方が騒音との関連性がいくぶん強いとされている。 b 騒音性聴力障害は世界で最も広汎に見られる回復不能な職業病であり,世界全体で1億2000万人が聴取困難の障害を有していると推計されている。 職業性の暴露による聴力障害の程度は,LAeq,8h,暴露年数,個人の受傷性などに左右される。環境騒音や娯楽に関わる騒音のLAeq,24hが70dB(A)以下であれば,生涯にわたって暴露されても大多数の人には聴力障害は生じないと期待される。 ISO1999は,LAeq,24hが70dB(A)以下の暴露であれば長期的な暴露であっても聴力障害に至らないことを示しており,聴力保護の観点からは,衝撃音のピーク音圧は成人に対して140dB,小児に対して120dB以下にとどめることが絶対的に必要である。 欧州夜間騒音ガイドライン欧州夜間騒音ガイドラインにおいては,夜間騒音が心臓血管疾患,うつ,その他精神的な疾患といった症状を引き起こすという限定的な知見があること,これについては,因果連鎖の要素について十分な知見があり,妥当性のある生物学的モデルが利用可能であることが強調されるべきである旨の記載がある(甲D3)。 沖縄県調査沖縄県調査においては,航空機騒音による聴力損失,血圧への影響に関し,以下の調査結果が報告されている。(甲D1) a 血圧への影響平成6年度及び平成7年度に嘉手納飛行場及び普天間飛行場の周辺の市町村で実施された老人保健法に基づく基本健康診査データ2万8781件を用いて,最高,最低血圧とW値との関連が解析された。 血圧は,年齢や肥満度などによる影響が大きく,上記データについても明らかに年齢とBMI((体 老人保健法に基づく基本健康診査データ2万8781件を用いて,最高,最低血圧とW値との関連が解析された。 血圧は,年齢や肥満度などによる影響が大きく,上記データについても明らかに年齢とBMI((体重)/(身長)2)との間に強い関連が認められ,特に年齢との関連が顕著であることから,各年齢世代別にしきい値を求め,各々のしきい値を超える比率に対する騒音の影響について,W値,年齢,性別,年齢と性別の交互作用及びBMIを説明変数とする多重ロジスティック分析を用いた解析がされた。 上記分析の結果,最高・最低血圧が年齢世代別に定めたしきい値(10歳の年齢区分ごとの10,25,50,75,90パーセントタイル値)を超える比率に関して,W値の上昇に伴いオッズ比が高くなっており,顕著な量反応関係が認められた。最高血圧については,W85以上の群では,W75未満の群と比較して各年齢世代の90パーセンタイル値を超えるオッズ比が1.3となっており,最高血圧が各年齢世代の上位10%を超える比率がW値75未満と比較して30パーセント近く増加していることが示された。また,W値75から80までの低暴露群においても,W値75未満の群と比較して,しきい値を90パーセンタイル値とした場合のオッズ比は約1.1となっていた。 b 聴力損失平成3年に北谷町において実施されたアンケート調査の結果,W値95以上の地区において「耳の聴こえが悪い」とする者の割合が対照群に比べて有意に高かったこと,過去の資料を用いてベトナム戦争当時の騒音暴露量を推定したところ,嘉手納町屋良,北谷町砂辺においてはLAeq,24hが85程度であると推定されたことなどから, 嘉手納飛行場近傍に居住する住民に聴力損失が生じている可能性があると推察されたため,北谷町砂辺区及び嘉手納町屋良区におい てはLAeq,24hが85程度であると推定されたことなどから, 嘉手納飛行場近傍に居住する住民に聴力損失が生じている可能性があると推察されたため,北谷町砂辺区及び嘉手納町屋良区において聴力検診を実施した。 対象者2035名のうち,高音域に加齢に伴う聴力の低下を上回る聴力損失が認められ,そのうち慢性中耳炎の既往歴や職業性の騒音暴露歴がない40名を対象に二次検診を実施したところ,航空機騒音に起因すると考えられる感音性聴力損失の症例が合計12例確認された。 その他の調査結果等a 運輸省航空局及び財産法人空港環境整備協会が施した空港周辺住民健康調査(平成12年3月)においては,平成10年に東京国際空港,大阪国際空港及び福岡空港において実施された健康診断のデータを集計,集約して,空港周辺住民の健康状態を把握し,航空機騒音と身体との関連性を検討するとともに,過去10年間の空港周辺住民の健康データの中から循環器系,特に心臓疾患を中心とするデータの経年的観察による,健康状態の推移,動向が統計的に検討された。 その結果,航空機騒音による血圧値への影響について加齢を考慮しつつ検討した結果,関連性は確認されず,航空機騒音の異なる居住区域によっても,血圧,心電図及び胸部判定正常率について航空機騒音による影響は確認されなかった。また,長期暴露による影響の検討として,最高血圧,最低血圧の値並びに血圧,心電図判定の正常者率の10年間の推移をみると,騒音対象区域3群間ともにほぼ横ばいに推移していた。これらの結果から,同調査においては,高血圧に対する航空機騒音の直接的な関与は否定されたと結論付けられた。 (乙D19)b 一般財団法人小林理学研究所が平成27年4月に取りまとめた成田国際空港航空機騒音健康影響調査においては,成田国際空港の周 航空機騒音の直接的な関与は否定されたと結論付けられた。 (乙D19)b 一般財団法人小林理学研究所が平成27年4月に取りまとめた成田国際空港航空機騒音健康影響調査においては,成田国際空港の周辺住 民に対するアンケート調査の回答結果がロジスティック回帰モデルにより分析された。これによると,騒音暴露量と総合的な被害感を表すアノイアンス及び生活妨害等の感覚的影響との間には強い正の関連性が,騒音暴露量と睡眠影響との間には弱い正の関連性が認められた一方で,高血圧症,高脂血症の治療歴や血圧と騒音暴露量との間には明確な関連性は認められなかった。(乙D21)原告らのアンケート式陳述書a 原告らの集計によると,アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,「騒音により健康に影響が出ていますか」という質問に対して「出ている」と回答した原告らの割合はW80区域で約64%,W75区域は約63%であった。 アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,身体の具体的な症状について,下記の回答を選択した原告らは以下のとおりであった。 回答項目W75区域W80区域高血圧約17%約18%耳鳴り約19%約24%難聴約13%約13%頭痛約13%約23%不眠症約24%約27%疲労感,倦怠感約34%約34%b 原告らの集計によると,アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,「航空機等の騒音による健康被害に対する不安がありますか」という質問に対して「はい」と回答した原告らの割合はW80区域及びW75区域のいずれも約91%であった。 アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,具体的な不安の内容 について,下記の回答を選択した原告らは以下のとおりであった。 回答項目 域及びW75区域のいずれも約91%であった。 アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,具体的な不安の内容 について,下記の回答を選択した原告らは以下のとおりであった。 回答項目W75区域W80区域高血圧約21%約22%耳鳴り約29%約33%難聴約27%約27%頭痛約28%約29%不眠症約37%約40%疲労感,倦怠感約42%約42%(甲B1~9,乙D40)イ検討高血圧a 原告らは,普天間飛行場の航空機騒音による共通被害として,高血圧及びこれに対する不安感を主張し,原告582,原告2260も心臓の動悸などの自覚症状がある旨を供述する。 前記認定事実のとおり,沖縄県調査においては,嘉手納飛行場及び普天間飛行場の周辺の市町村で実施された老人保健法に基づく基本データを用いて,最高,最低血圧とW値の関連が解析された結果,最高・最低血圧が年齢世代別に定めたしきい値を超える比率に関して,W値75から80までの暴露群においても,W値75未満の群と比較して,しきい値を90パーセンタイル値とした場合のオッズ比率が約1.1となっており,各年齢世代の上記10%を超える比率が約10%増加していることが示されている。 しかしながら,WHOガイドラインにおいては,心循環器系への影響が明らかにされている騒音の程度としてLAeq,24hが65から70dB(A)を挙げつつ,騒音と高血圧や心疾患の発症率との関 連は必ずしも強いものではないとされているところ,間欠性の騒音である普天間飛行場における航空機騒音が,上記のLAeq,24hで65から70dB(A)という騒音と同程度に身体に対する影響を及ぼすことを認めるに足りる証拠はない。 また,欧州夜間騒 間欠性の騒音である普天間飛行場における航空機騒音が,上記のLAeq,24hで65から70dB(A)という騒音と同程度に身体に対する影響を及ぼすことを認めるに足りる証拠はない。 また,欧州夜間騒音ガイドラインも,夜間騒音が心臓血管疾患などの症状を引き起こすという限定的な知見があることを示すにとどまっており,国内の他空港において行われた調査においても,航空機騒音の暴露量と高血圧との直接的な関連性が否定されていることなども踏まえると,現時点の知見の下では,航空機騒音が高血圧に対して及ぼす影響については,これを共通被害として認定するほどに明らかとはなっていないといわざるを得ない。 これらの事情を考慮すれば,普天間飛行場の航空機騒音によって,直接的に共通被害としての高血圧のリスクが増加していると認めることはできない。 b これに対し,原告は,毎日のように航空機騒音に暴露される中で,様々なストレスが堆積しており,これが心臓疾患等に対する危険因子になり得る旨を主張する。 高血圧は,食塩の過剰摂取,肥満,飲酒,運動不足,ストレスや遺伝的体質などが組み合わさって起きるものであるところ(乙D28),原告らの共通被害として認められる生活妨害や睡眠妨害等に伴う精神的苦痛が,ストレス要因として高血圧を含む心臓疾患等の発症に影響する可能性は必ずしも否定することはできない。 しかしながら,前記のとおり,WHOガイドラインにおいては,騒音と高血圧や心疾患の発症率との関連は必ずしも強いものではないとされている上,高血圧の発症に影響し得る要因は多岐にわたっている。 航空機騒音によるストレスがその発症に与える影響の程度については 個人差が大きいと考えられ,実際に,アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,高血圧の発症及びこれに対する不安感を訴えてい 航空機騒音によるストレスがその発症に与える影響の程度については 個人差が大きいと考えられ,実際に,アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,高血圧の発症及びこれに対する不安感を訴えている者は少数にとどまっている。 これらの事情を考慮すれば,普天間飛行場の航空機騒音により,原告ら全員が等しく高血圧を発症するリスクが高まっているということはできないし,これに対する不安感についても,既に共通被害として認められている生活妨害等に伴う精神的苦痛として評価できるにとどまり,別個の共通被害として認めることはできないというべきである。 耳鳴り,難聴原告らは,航空機騒音による共通被害として,耳鳴りや難聴などの聴力に対する影響を主張し,アンケート式陳述書を提出した原告らの一部は上記の症状を訴えており,原告97,582,1687,2260もこれに沿う供述をする。 しかしながら,前記認定事実のとおり,沖縄県調査においては,W95値以上の地区において耳の聴こえが悪いとする者の割合が対照群に比べて有意に高かったことが示されているにとどまり,W値75又は80に相当する航空機騒音による聴力への影響は明らかにされていない。また,WHOガイドラインにおいては,騒音性聴力障害は世界で最も広汎に見られる回復不能な職業病であるとしつつ,LAeq,24hが70dB(A)以下の暴露であれば長期的な暴露であっても聴力障害に至らない,聴力保護の観点からは,衝撃音のピーク音圧は成人に対して140dB,小児に対して120dB以下にとどめるべきである旨が示されているところ,普天間飛行場における航空機騒音が上記の程度を超えるものであることを認めるに足りる証拠はない。 そのほか,航空機騒音による周辺住民に対する聴力への影響は認められない旨の論稿等が複数存在すること( ,普天間飛行場における航空機騒音が上記の程度を超えるものであることを認めるに足りる証拠はない。 そのほか,航空機騒音による周辺住民に対する聴力への影響は認められない旨の論稿等が複数存在すること(乙6,8,11~19)も考慮 すれば,原告らが難聴,耳鳴り等の症状を被っていたとしても,こうした症状が航空機騒音によって生じたことや,その発症リスクが航空機騒音によって高まったことを認めるに足りる証拠はないといわざるを得ず,これを原告らの共通被害として認めることはできない。 その余の健康被害(頭痛,不眠症,疲労感,倦怠感等)について原告らは,航空機騒音によるその余の健康被害として,頭痛,不眠症,疲労感及び倦怠感の症状を主張し,アンケート式陳述書を提出した原告らの一部は上記の症状を訴えているほか,原告2260も耳鳴りなどに加えて頭痛の症状がある旨を供述する。 しかしながら,原告らの上記の症状が普天間飛行場の航空機騒音によって生じたことを認めるに足りる証拠はない。また,原告らの共通被害として認められている生活妨害,睡眠妨害等やこれに伴う精神的苦痛がストレス要因として上記の症状に影響している可能性は否定できないものの,これらの影響については個人差も大きいと考えられることから,生活妨害等に伴う精神的苦痛として評価できるにとどまり,別個の共通被害として認めることはできないというべきである。 ⑺ 精神的被害ア認定事実WHOガイドラインWHOガイドラインにおいては,騒音による社会的影響,行動への影響及び不快感に関し,以下の記載がある。(甲D2,乙Cア40)a 騒音は不快感を抱かせるだけでなく,社会的影響を及ぼすとともに行動へも影響を及ぼす。これらの影響は,複合的,潜在的かつ間接的であるため,多くの非聴覚的要因の交互 がある。(甲D2,乙Cア40)a 騒音は不快感を抱かせるだけでなく,社会的影響を及ぼすとともに行動へも影響を及ぼす。これらの影響は,複合的,潜在的かつ間接的であるため,多くの非聴覚的要因の交互作用の結果として生じると考えられる。不快感は,騒音の特性(騒音源の情報も含む。)だけでなく,音以外の社会的,心理的,経済的な要因影響も受けるため,個人差が 大きい。80dB(A)を超える騒音は援助的な行動を減少させ,攻撃的な行動を増加させると考えられる。高レベルの騒音に継続的に暴露されることにより,学童が無力感を抱きやすくなってしまうことが特に懸念される。 騒音に振動が伴う場合や,低周波音が含まれる場合,衝撃音(例えば射撃音)が含まれる場合には,より強い住民反応が報告される。 b 騒音を不快に感じるかどうかは,音圧レベルや周波数特性及びこれらの時間変動といった騒音の物理的特性によって決まり,昼間については,LAeqが55dB(A)未満の場合,高度に不快と感じる人は少ない。LAeqが50dB(A)未満の場合,少し不快と感じる人はほとんどいない。夕方と夜間の騒音レベルは昼間より5から10dB低い値にとどめるべきであり,低周波を含む騒音については,さらに低いガイドライン値が望まれる。 沖縄県調査沖縄県調査の生活質・環境質調査においては,航空機騒音の心理的影響に関し,以下の調査結果が報告されている。(甲D1)a 自宅における航空機騒音の「うるささ」に関する質問に対しては,「1.たいへんうるさい」「2.かなりうるさい」「3.少しうるさい」「4.あまりうるさくない」「5.まったくうるさくない」の5段階の選択肢で回答が求められた。「1.たいへんうるさい」「2.かなりうるさい」「3.少しうるさい」と回答した割合は以下のとおりであ さい」「4.あまりうるさくない」「5.まったくうるさくない」の5段階の選択肢で回答が求められた。「1.たいへんうるさい」「2.かなりうるさい」「3.少しうるさい」と回答した割合は以下のとおりであり,うるささに関しては,航空機騒音の高暴露群における正反応率は非常に高いといえる。また,普天間飛行場周辺においては,同じW値に対して嘉手納飛行場周辺よりも高い正反応率が認められた。 W75以下W75W80 1.たいへんうるさい6.7%21.6%29.3%2.かなりうるさい18.0%37.5%37.4%3.少しうるさい41.6%28.2%27.9%b 航空機騒音による「被害感」に関する質問に対しては,「1.耐えがたい被害をうけている」「2.非常に被害をうけている」「3.かなり被害をうけている」「4.少し被害をうけている」「5.被害をうけていない」の5段階の選択肢で回答が求められた。「1.耐えがたい被害をうけている」「2.非常に被害をうけている」と回答した割合は以下のとおりであり,W値の増大とともに被害感が上昇する傾向が著明であった。 W75以下W75W801.耐えがたい被害をうけている0.9%6.3%6.3%2.非常に被害をうけている3.8%11.8%13.7%c 航空機騒音による心理的影響に関し,①イライラ感,②恐怖感,③戦争への恐怖に関する質問については,「1.いつもある」「2.ときどきある」「3.たまにある」「4.あまりない」「5.まったくない」の5段階評価で回答が求められた。上記の各項目について「1.いつもある」又は「2.ときどきある」と回答した割合は以下のとおりであり,①イライラ感については,普天間飛行場周辺の反応率 .まったくない」の5段階評価で回答が求められた。上記の各項目について「1.いつもある」又は「2.ときどきある」と回答した割合は以下のとおりであり,①イライラ感については,普天間飛行場周辺の反応率が嘉手納飛行場周辺よりも高い傾向が認められ,②恐怖感については,後記dの墜落の不安と関連があると考えられる。③戦争への恐怖については,航空機騒音の恐怖感と異なり低い反応率であった。 ① イライラ感 W75以下W75W801.いつもある5.6%17.0%15.0% 2.ときどきある16.4%24.8%33.1%② 恐怖感 W75以下W75W801.いつもある4.5%16.4%13.0%2.ときどきある12.5%15.7%25.7%③ 戦争への恐怖 W75以下W75W801.いつもある3.1%7.5%7.9%2.ときどきある10.1%10.4%16.1%d 日常生活の中で感じる不安感については,①飛行機の墜落の不安,②飛行機からの落下物の不安,③燃料タンク等,基地内の危険物の爆発事故の不安,④戦争にまきこまれる不安の4項目に関し,「1.非常に感じる」「2.かなり感じる」「3.少し感じる」「4.あまり感じない」「5.まったく感じない」の5段階評価で回答が求められた。上記各項目についての回答結果のうち,「1.非常に感じる」「2.かなり感じる」と回答した割合は以下のとおりであった。 ① 飛行機の墜落の不安 W75以下W75W801.非常に感じる16.0%27.7%41.1%2.かなり感じる18.1%25.9%18.4%② 飛行機からの落下物の不安 W7 W75以下W75W801.非常に感じる16.0%27.7%41.1%2.かなり感じる18.1%25.9%18.4%② 飛行機からの落下物の不安 W75以下W75W801.非常に感じる13.0%21.1%32.4%2.かなり感じる11.2%18.0%18.4%③ 燃料タンク等,基地内の危険物の爆発事故の不安 W75以下W75W801.非常に感じる12.0%21.0%28.0%2.かなり感じる11.3%12.1%19.8%④ 戦争にまきこまれる不安 W75以下W75W801.非常に感じる18.4%19.6%22.4%2.かなり感じる14.8%14.0%16.8%沖縄県における米軍機の墜落等の事故沖縄県においては,本土復帰後,平成29年12月末日までに,墜落47件,部品等落下68件,不時着541件など合計738件の航空機事故が発生している。沖縄県における過去の主な航空機事故には以下のものがあり,宮森小学校及び沖縄国際大学の事故については特に大きく報道された。 a 昭和34年6月30日午前10時40分頃,米軍のジェット戦闘機が石川市(当時)に墜落し,付近の家を巻き込んで北西の方向約150m先の宮森小学校のコンクリート校舎に激突する事故が発生した。 この事故により,児童を含む17名が死亡したほか,多数の重軽傷者と家屋損傷の被害が生じた。 b 平成16年8月13日,米海兵隊所属のヘリコプターが沖縄県宜野湾市内の沖縄国際大学の市道に隣接した本館建物に接触し,墜落,炎上した結果,乗員3名が負傷するとともに,当該建物の一部や周辺の樹木等が炎上又は破損し, 13日,米海兵隊所属のヘリコプターが沖縄県宜野湾市内の沖縄国際大学の市道に隣接した本館建物に接触し,墜落,炎上した結果,乗員3名が負傷するとともに,当該建物の一部や周辺の樹木等が炎上又は破損し,近隣の住宅等にも部品が屋内を貫通し落下した事故が発生した。 c 平成28年12月13日,普天間飛行場所属のオスプレイが沖縄県名護市沿岸に墜落し,搭乗員のうち2名が負傷し,機体が大破した事 故が発生した。 d 平成29年には,ヘリコプターが沖縄県内外で不時着又は緊急着陸する事故が数件あったほか,同年12月13日,ヘリコプターの飛行中に,右側の窓(重さ約7.7kg)を沖縄県宜野湾市の普天間第二小学校の校庭に落下させる事故が発生した。 (以上につき,甲Cウ15,17,甲F1~3)原告らのアンケート式陳述書a 原告らの集計によると,アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,「騒音によりあなたにどのようなことがおきていますか」という質問に対して,下記の回答を選択した原告らの割合は以下のとおりであった。 回答項目W75区域W80区域イライラする約67%約70%集中力がなくなる約45%約45%墜落するのではないかと不安になる約78%約79%戦争のことを思い出して不快になる約9%約13%戦争が起きるのではないかと不安になる約33%約37%b 原告らの集計によると,アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,「最近,機体からの部品の落下事故なども含めた米軍機の事故が多発していると思いますか」という質問に対し,「思う」と答えた原告らの割合はW80区域で100%,W75区域で約91%であった。 アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,「米軍機事故が多発しても,事故原因の 思いますか」という質問に対し,「思う」と答えた原告らの割合はW80区域で100%,W75区域で約91%であった。 アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,「米軍機事故が多発しても,事故原因の究明がされないまま,米軍機が飛び続ける事によって,あなたはどのような気持ちになりますか」という質問に対して,下記の回答を選択した原告らの割合は以下のとおりであった。 回答項目W75区域W80区域上空から部品などが落下してくるのではないかと不安になる約89%約87%墜落するのではないかと不安になる約86%約86%落下物などからの有害物質により人体に影響が出るのではないかと不安になる約60%約60%c アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,「未成年の子や孫と同居していますか」という質問に対して「はい」と回答した原告らの割合はW80区域で約34%,W75区域で約37%であり,そのうち「騒音によって子どもに何か影響を感じることがありますか」という質問に対して「はい」と回答した原告らの割合はW80区域で約94%,W75区域で約91%であった。 上記で未成年者と同居していると回答した原告らのうち,騒音による子どもへの影響の内容として下記の回答を選択した原告らは以下のとおりであった。 回答項目W75区域W80区域騒音によって泣き出すことがある約21%約32%寝ていても騒音で起きてしまうことがある約45%約53%騒音におびえることがある約37%約41%騒音で耳をふさぐことがある約70%約72%騒音に対して不快な感情を表すことがある約46%約48%(甲B1~9,乙D40)イ検討イライラ感,不快感についてa 原告らは で耳をふさぐことがある約70%約72%騒音に対して不快な感情を表すことがある約46%約48%(甲B1~9,乙D40)イ検討イライラ感,不快感についてa 原告らは,航空機騒音による共通被害として,イライラ感や不快感 といった精神的苦痛を被っている旨を主張し,原告978,原告1687は,航空機騒音により戦時中の記憶を思い出すなどして,恐怖感や不快感を抱くことがある旨を供述する。 前記認定事実のとおり,沖縄県調査では,航空機騒音による心理的影響に関し,W75区域の住民の約41.8%,W80区域の住民の約48.1%が,イライラ感について「いつもある」又は「ときどきある」と回答しており,普天間飛行場周辺の反応率が嘉手納飛行場周辺よりも高い傾向が認められている。アンケート式陳述書を提出した原告らにおいても,W75区域に居住する原告らの約67%,W80区域に居住する原告らの約70%がイライラ感を訴えている。 WHOガイドラインは,騒音が不快感や社会的影響,行動への影響を及ぼすものであり,80dB(A)を超える騒音は援助的な行動を減少させ,攻撃的な行動を増加させると考えられることを示しており,原告らの訴えるイライラ感や不快感の存在を裏付けるものということができる。 そして,本件コンター内の航空機騒音はW値75を上回っており,相当大きな航空機騒音が継続的に発生していることからすれば,原告らは,普天間飛行場による航空機騒音により,その自覚の有無を問わず,全員について同一に生じているといえる共通被害として,イライラ感や不快感といった精神的被害を被っていることが認められ,かつ,その程度は,W75区域に居住する原告らよりもW80区域に居住する原告らの方が大きいと認めることができる。 b これに対し,被告 イラ感や不快感といった精神的被害を被っていることが認められ,かつ,その程度は,W75区域に居住する原告らよりもW80区域に居住する原告らの方が大きいと認めることができる。 b これに対し,被告は,原告の主張する精神的被害は漠然としており,主観的で個人差も大きいことから,そもそも共通被害になり得るものではなく,また,精神的被害の程度も通常の社会生活上耐え難いものとはいえない旨を主張するとともに,航空機騒音を直接の原因とする イライラ感や不快感については,生活妨害と別個にこれを論じる意義を見出し難い旨を主張する。 確かに,WHOガイドラインにおいては,不快感に関し,騒音の特性のほか音以外の社会的,心理的,経済的な要因影響も受けるため,個人差が大きい旨が記載されており,航空機騒音による主観的な影響について個人差があることは否定できない。しかしながら,上記のWHOガイドラインにおける知見や普天間飛行場における航空機騒音の程度からすれば,多くの普天間飛行場の周辺住民がイライラ感や不快感を訴えていることには相応の根拠があるというべきであり,航空機騒音による主観的な影響について個人差があることを考慮しても,上記のイライラ感,不快感といった精神的被害は,原告ら全員が等しく被っている共通被害と評価できるというべきである。 また,WHOガイドラインにおいても,生活妨害とは別個に騒音による不快感や行動に対する影響等が論じられており,航空機騒音が生活妨害を介さず,人の精神面に影響を及ぼし得ることは経験則上も明らかであるから,上記のイライラ感,不快感は生活妨害とは別個の精神的被害として考慮されるべきである。 航空機事故への不安感について原告らは,航空機騒音による共通被害として,米軍機による事故への不安感を主張し,原告97,原告51 快感は生活妨害とは別個の精神的被害として考慮されるべきである。 航空機事故への不安感について原告らは,航空機騒音による共通被害として,米軍機による事故への不安感を主張し,原告97,原告517,原告582,原告979,原告2260も,これに沿う供述をする。 前記認定事実のとおり,沖縄県調査では,航空機騒音による心理的影響に関し,相当数の住民が飛行機の墜落の不安,飛行機からの落下物への不安,基地内の危険物の爆発事故の不安を訴えており,航空機騒音によって感じる恐怖感について,上記の墜落への不安との関連性が指摘されている。また,アンケート式陳述書を提出した原告らにおいては,W 75区域に居住する原告らの約87%,W80区域に居住する原告らの約89%が部品等の落下に対する不安を訴えているほか,W75区域及びW80区域に居住する原告らの約86%が墜落に対する不安を,約60%が落下物などからの有害物質による影響に対する不安を訴えている。 そして,沖縄県においては,これまでに米軍基地に関連する事故が多く発生しているところ,普天間飛行場周辺においても,宮森小学校や沖縄国際大学における墜落事故,普天間第二小学校における部品の落下事故などが発生し,これが報道されることにより,周辺の住民にとってはこうした事故の存在が身近なものとして受け止められているといえる。 したがって,原告らが上記の不安感を抱くことには相応の根拠があるというべきであり,原告らは,普天間飛行場による航空機騒音により,その全員について同一に生じているといえる共通被害として,米軍機の墜落等の事故に対する不安感による精神的苦痛を被っていることが認められ,かつ,その程度はW75区域に居住する原告らよりもW80区域に居住する原告らの方が大きいと認めることができる。 未 軍機の墜落等の事故に対する不安感による精神的苦痛を被っていることが認められ,かつ,その程度はW75区域に居住する原告らよりもW80区域に居住する原告らの方が大きいと認めることができる。 未成年者の子や孫に対する悪影響に対する不安について原告らは,航空機騒音による共通被害として,航空機騒音による未成年者の子や孫に対する悪影響に対する不安を主張し,前記認定事実のとおり,アンケート式陳述書を提出した原告らで未成年の子又は孫と同居しているものの大半が航空機騒音による未成年者に対する影響を肯定している。 WHOガイドラインにおいては,騒音が小児に対して認知作業の成績や暴露終了後の成績に悪影響を及ぼし得ることや,聴力保護の観点から小児に対する衝撃音のピーク音圧は成人よりも20dB低い120dB以下にとどめることが必要とされていること,高レベルの騒音に継続的に暴露されることにより,学童が無力感を抱きやすくなってしまうこと が特に懸念されることが記載されている。また,欧州夜間騒音ガイドラインにおいても,騒音の睡眠に対する影響に関し,子どもが高感受性群にあることが示されている。これらの事実からすれば,未成年者は,成人に比して騒音に対する感受性が高く,その影響を受けやすいということができ,未成年者の子や孫を持つ住民が未成年者に対する影響に対して不安感を抱くこと自体には相応の根拠があるといえる。 しかしながら,航空機騒音への暴露によって,上記の未成年者に対する悪影響に対する不安を抱くこととなるのは,その性質上,未成年者自身か未成年者と同居する者に限られると考えられるところ,原告ら全員がこれに該当することを認めるに足りる証拠はなく,こうした不安を原告ら全員が等しく被っている共通被害と評価することはできない。原告らは,子や孫がいな 居する者に限られると考えられるところ,原告ら全員がこれに該当することを認めるに足りる証拠はなく,こうした不安を原告ら全員が等しく被っている共通被害と評価することはできない。原告らは,子や孫がいない者についても,騒音によって社会の将来を担う未成年者に対する悪影響に対する不安を抱くことは考えられる旨を主張するが,航空機騒音による主観的な影響については個人差が大きく,自己以外の他者に対する騒音の影響について抱く感情についてはさらに個人差が大きいと考えられる。このため,航空機騒音への暴露によって,個人の属性にかかわらず,未成年者への悪影響に対する不安という感情が原告ら全員について当然に生じ得るものと評価することは困難である。 加えて,原告らの主張する航空機騒音による子らに対する影響(おびえる,泣き出す,就寝中に起きる,耳をふさぐ,不快な感情を表す)は,いずれも共通被害として認められている生活妨害,睡眠妨害及びイライラ感,不快感に係る精神的被害の一内容であると考えられるところ,そもそも騒音による影響は未成年者以外の者も含めて個人差が大きく,未成年者と成年者との間の航空機騒音による影響の差異の程度は必ずしも明確ではない。このため,原告らの主張する上記の未成年者に対する影響は,上記の生活妨害等と別個の共通被害として評価することは困難で あり,上記影響に対する不安感についても同様である。 したがって,未成年者の子又は孫への悪影響に対する不安については,共通被害と認めることはできない。 被告のその余の主張について被告は,沖縄県調査について,その調査目的が普天間飛行場による騒音被害を明らかにする意図に基づくものであることが明らかであるから,情報バイアスが全く排除されておらず,調査結果の正確性と中立性が担保されていない旨を主張し, て,その調査目的が普天間飛行場による騒音被害を明らかにする意図に基づくものであることが明らかであるから,情報バイアスが全く排除されておらず,調査結果の正確性と中立性が担保されていない旨を主張し,騒音の発生源に対する態度によって騒音に対するうるささの反応が変化した旨の実験結果(乙D35)を援用する。 しかしながら,上記の実験結果は,騒音源について異なる情報を与えられていたグループ間で,騒音に対するうるささの反応に差異があったというものであり,沖縄県調査とは前提が異なるものである。そして,沖縄県調査における生活質・環境質調査においては,専門家が関与した上で,過去の騒音影響調査等に用いられた質問項目を参考に調査票が作成され,質問の配列や内容等においてバイアスを防止するための配慮がされていること(甲D1,30)を考慮すれば,沖縄県調査における調査結果の正確性や中立性が損なわれているということはできず,被告の上記主張は採用できない。 ⑻ 低周波音による影響ア認定事実低周波音の定義及び一般的な特徴等a 一般に,人が聴くことのできる音の周波数範囲(可聴域)は20Hzから2万Hzまでの範囲とされているところ,人の耳の感度は,2000Hzから5000Hzまでの付近が最も良好で,周波数が低くなるにつれて感度が鈍くなる傾向があり,音の周波数が低くなると,大きな音でなければ感じられなくなる。 低周波音については,世界共通の定義があるわけではないが,我が国においては,およそ100Hz以下の音を低周波音といい,その中でも可聴域の範囲外である20Hz以下の音を超低周波音ということが多い。 (甲D32,乙E21~23,乙G19)b 通常,騒音は,人間の聴覚に近いA特性の聴覚補正経路を用いて20Hzから8000Hzの音を合計し である20Hz以下の音を超低周波音ということが多い。 (甲D32,乙E21~23,乙G19)b 通常,騒音は,人間の聴覚に近いA特性の聴覚補正経路を用いて20Hzから8000Hzの音を合計した数値で測定されている。A特性は,人が音として感じ取れる20Hz以上の音響振動について,周波数帯ごとの音圧レベル測定を行った上で,低い音ほど感度が鈍くなる人間の聴覚における特性を反映させた周波数の重み付けを施して騒音レベルを評価するものである。 G特性は,1Hzから20Hzまでの超低周波音の人体感覚を評価するための周波数補正特性であり,可聴音における聴感補正特性であるA特性に相当するものである。 (前提となる事実,乙E21,乙G20,21)c 低周波音の問題が発生する可能性のあるものとしては,送風機(送風機を用いる集塵機,乾燥機等),往復式圧縮機,ディーゼル機関(ディーゼル機関を用いる船舶,非常用発電装置,バス,トラック等),振動ふるい(類似の振動コンベア,破砕機等),燃焼装置(ボイラー等),ジェットエンジン(ジェットエンジンを用いる航空機,非常用発電装置等),ヘリコプター,橋梁,鉄道トンネル,治水施設(ダム等),発破,ガスエンジン,変圧器等があり,住宅内,一般建物内及び工場内といった生活環境中においても低周波音は発生している。(乙E21~23)d 低周波音は,物理的には音波であるため,騒音の場合と同様に減衰する。例えば,点音源の場合,距離が倍になれば6dB,10倍にな れば20dB減衰する。ただし,地表面吸収,空気吸収による音の超過減衰は騒音に比べて極めて小さい。 低周波音は,騒音に比べて波長が長いため,建物から数m離れても反射,遮蔽,回折等により局地的に音圧レベルが変化する場合がある。 また,発生源から数km以 音の超過減衰は騒音に比べて極めて小さい。 低周波音は,騒音に比べて波長が長いため,建物から数m離れても反射,遮蔽,回折等により局地的に音圧レベルが変化する場合がある。 また,発生源から数km以上離れた地点までの低周波音の伝搬を測定する場合,気温と風向風速の勾配の影響が大きく,発生源から距離が離れた場所では,風向きや風速の違いで20dBから30dBも音圧レベルが異なる場合があり,地形の影響についても,起伏のある地形の場合,音源が見通せる場所と見通せない場所で,低周波音の減衰量は異なる。 (乙E21,22)e 低周波音による苦情は,①気分のいらいらや胸,腹の圧迫感といった心理的影響,②頭痛,耳鳴り,吐き気といった生理的影響,③睡眠影響,④家具,建具の振動や置物の移動といった物的影響があるとされている(乙E21,22)。 環境省による低周波音問題対応の手引書環境省環境管理局大気生活環境室は,平成16年6月,低周波音に対する苦情に的確に対応するため,「低周波音問題対応の手引書」を取りまとめた。同手引書には,低周波音問題対応のための評価指針として,以下の内容が記載されている。なお,同手引書に示されている参照値については,苦情の申立てが発生した際に低周波音によるものかを判断する目安として示されたものであり,低周波音についての環境保全目標値や作業環境のガイドラインとして策定されたものではない旨の説明がされている。(乙E22,24)a 適用範囲地方公共団体に寄せられる低周波音苦情の発生源は,工場,事業場, 店舗,近隣の住居などに設置された施設等で,音圧レベルの変動幅が比較的小さい固定発生源が多い。また,低周波音の実験室における実験はほぼ定常的な連続音を用いて行われ,データが蓄積されている。 他方で,低周波音の発生 居などに設置された施設等で,音圧レベルの変動幅が比較的小さい固定発生源が多い。また,低周波音の実験室における実験はほぼ定常的な連続音を用いて行われ,データが蓄積されている。 他方で,低周波音の発生が単発的又は短時間のみの場合,研究データの蓄積は十分ではない。 このため,低周波問題対応のための評価指針を適用する発生源は,時間的に移動しない固定された発生源で,ある時間連続的に低周波音を放射しているものに限定し,道路交通のような大幅かつ不規則に変動する発生源や,航空機,鉄道といった一過性,間欠性の発生源,発破,爆発,高速列車のトンネル突入といった衝撃性の発生源からの低周波音は適用対象外とする。 b 物的苦情参照値及び評価方法低周波音により建具等ががたつき始める最低音圧レベルを低周波音による建具のがたつき閾値といい,これを低周波音による物的苦情参照値として適用する。 建具等のがたつきが観察される場合は,特定の建具が揺れているか,家中又は部屋中の建具が揺れているかで異なり,特定の建具が揺れている場合には低周波音による可能性が考えられる。測定値の1/3オクターブバンド音圧レベルがいずれかの周波数で下記の物的苦情参照値以上であれば,低周波音による可能性があると考えられる。 1/3オクターブバンド中心周波数(Hz) 6.3 12.5 31.5 1/3オクターブバンド音圧レベル(dB) c 心身苦情参照値及び評価方法 ほとんどの苦情が室内で起きることから,参照値には室内の測定値を適用し,低周波音に関する感覚については個人差が大きいことから,大部分の被験者が許容できる音圧 身苦情参照値及び評価方法 ほとんどの苦情が室内で起きることから,参照値には室内の測定値を適用し,低周波音に関する感覚については個人差が大きいことから,大部分の被験者が許容できる音圧レベルを心身苦情参照値とする。 発生源の稼働状況と苦情内容に対応関係がある場合において,G特性音圧レベルが92dB以上であれば,超低周波音の周波数領域で問題がある可能性が高い。また,1/3オクターブバンドで測定された音圧レベルと下記の心身苦情参照値を比較し,測定値がいずれかの周波数で参照値以上であれば,その周波数が低周波音による苦情の原因である可能性が高い。 1/3オクターブバンド中心周波数(Hz) 12.5 31.5 1/3オクターブバンド音圧レベル(dB) 騒音・低周波音被害をめぐる受忍限度・因果関係に関する論稿公害等調整委員会の河村浩及び森田淳が平成20年に発表した「騒音・低周波音被害をめぐる受忍限度・因果関係に関する一考察(上)」と題する論稿においては,理論的にあり得る一つの見解として,低周波音と被害との間の相当因果関係を肯定し,また,受忍限度の成立範囲を画する上での一応の目安として,「低周波音に対する感覚と評価に関する基礎研究」(中村俊一ほか・昭和55年度文部省科学研究費「環境科学」特別研究)における評価値を参照している。 上記の評価値を示す「気になる-気にならない曲線」は,被験者24名に,中心周波数と音圧レベルを組み合わせたノイズをランダムに聞かせ,被験者の50%が気になると感じ始める最低レベルの音圧レベルを算出するという実験を行って得られた曲線であり,評価値は以下の 者24名に,中心周波数と音圧レベルを組み合わせたノイズをランダムに聞かせ,被験者の50%が気になると感じ始める最低レベルの音圧レベルを算出するという実験を行って得られた曲線であり,評価値は以下のとお りである。 (乙E25)1/3オクターブバンド中心周波数(Hz) 12.5 31.5 1/3オクターブバンド音圧レベル(dB) 71.5 59.553.5 沖縄県の平成24年度及び平成25年度の低周波音調査a 沖縄県は,平成24年度には普天間飛行場南側の上大謝名公民館において,飛来した全ての米軍機について騒音及び低周波音の測定を行い,平成25年度には普天間飛行場北側の普天間第二小学校及び伊江島補助飛行場近隣の地点においてオスプレイのみについて騒音及び低周波音の測定を行った上で,G特性音圧レベルによる評価と1Hzから80Hzまでの1/3オクターブ周波数分析を沖縄防衛局が「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書」で示した物的保全目標値(物的苦情参照値と同値),心理的保全目標値及び心身苦情参照値と比較した。 b 測定された各機種について,各周波数の1/3オクターブバンド音圧レベルの中央値を物的保全目標値,心理的保全目標値及び心身苦情参照値と比較したところ,周波数に違いはあるものの,全ての機種で物的保全目標値及び心身苦情参照値について超過があり,オスプレイについては心理的保全目標値の超過もあった。オスプレイについては,他の機種と比べて低周波音が高い値となっており,オスプレイには40Hzから50Hzに卓越成分を持つため,他の機種よりも圧迫感,振動感を感じやすく,その結果独特 の超過もあった。オスプレイについては,他の機種と比べて低周波音が高い値となっており,オスプレイには40Hzから50Hzに卓越成分を持つため,他の機種よりも圧迫感,振動感を感じやすく,その結果独特の音として感じられるのではないかとの分析がされている。 (以上につき,甲Cウ19)沖縄県の平成29年度の航空機低周波音測定結果沖縄県は,平成28年度に,県野嵩測定局,県上大謝名測定局,県新城測定局及び普天間飛行場の滑走路の東側に位置する宜野湾測定局に低周波音自動測定器を導入し,低周波音の常時監視測定を開始し,平成29年度の航空機低周波音測定結果について,飛行する機種を固定翼機,AH-1Z及びUH-1Y,オスプレイ並びにCH-53Eの4つに区分し,1Hzから80Hzにおける1/3オクターブバンド中心周波数分析を実施して,物的保全目標値及び心理的保全目標値と比較した。 その結果,物的保全目標値との比較では,固定翼機では周波数31. 5Hzから80Hzで超過が見られた。AH-1Z及びUH-1Y,オスプレイ並びにCH-53では同基準が設定されている全周波数(5Hz-50Hz)で超過が見られ,卓越周波数付近の16Hz-25Hzで特に超過率が高くなっていた。 また,心理的保全目標値との比較では,固定翼機では周波数31.5Hz‐80Hzで超過が見られた。AH-1Z及びUH-1Y,オスプレイ並びにCH-53では,卓越周波数付近で超過回数が多く超過率も高いが,20Hz‐80Hzの広範囲の周波数で高い超過率が見られた。 物的保全目標値及び心理的保全目標値の超過回数や超過率により推測される影響の大きさなどから,機種別の低周波音による影響の大きさは概ね固定翼機<AH-1Z及びUH-1Y<CH-53≦オスプレイであることが示唆された。 的保全目標値の超過回数や超過率により推測される影響の大きさなどから,機種別の低周波音による影響の大きさは概ね固定翼機<AH-1Z及びUH-1Y<CH-53≦オスプレイであることが示唆された。 (甲Cウ20)沖縄県の平成29年度の低周波音による物的影響把握に関する調査沖縄県は,平成29年9月から平成30年2月までの間,普天間飛行場の滑走路端に位置し,建具(アルミサッシ)から当該飛行場発着機の 飛行経路が見渡せる物件を借り上げ,航空機通過時の低周波音圧レベルについて,建具のがたつき閾値(物的苦情参照値)を超過している時間を分析し,オスプレイ,CH-53E,AH-1Z,UH-1Yの4種類の機種ごとに推計する調査を実施した。 上記の調査の結果,建具の物的苦情参照値の超過時間は,飛行形態を問わずオスプレイがもっとも長く,特に飛行速度が遅い垂直離着陸モードでは物的苦情参照値を平均して16.1秒超過していたこと,対象建具のがたつきを観測した周波数の音圧レベルが建具の物的苦情参照値を1秒以上超過した場合にがたつきが発生したものとみなした対象建具の推定がたつき発生割合は全ての機種で最接近時が多く,オスプレイは約80%以上に及んだこと,対象建具の推定がたつき平均継続時間はオスプレイがもっとも長く,離脱時にも長時間がたつきを生じさせる可能性が示唆されたことが示された。 (甲Cウ21)原告らのアンケート式陳述書原告らの集計によると,アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,「航空機等の騒音が聞こえるときに建具等(ふすま,窓及びガラス戸など)ががたつくことはありますか」という質問に対し,「はい」と答えた原告らの割合はW80区域で約88%,W75区域で約84%であった。 また,アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,建具 ラス戸など)ががたつくことはありますか」という質問に対し,「はい」と答えた原告らの割合はW80区域で約88%,W75区域で約84%であった。 また,アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,建具等ががたつくことにより感じる内容について,「不安になる」と回答した原告らはW80区域で約61%,W75区域で約59%,「イライラ感や不快感を感じる」と回答した原告らはW80区域で約59%,W75区域で約54%であった。 (甲B1~9) イ検討原告らは,普天間飛行場を離着陸する航空機等が発する低周波音にさらされており,上記⑺の精神的苦痛が低周波音によって増大しているほか,低周波音による建具等のがたつきに伴うイライラ感や不快感に伴う精神的苦痛を受けている旨を主張し,アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,W80区域に居住する原告らの約88%,W75区域に居住する原告らの約84%が建具等のがたつきを訴えていることが認められる。また,原告97,原告517,原告582,原告979,原告1687及び原告2260も,建具等の振動や振動音による不快感等がある旨を供述し,一部の者は,特にオスプレイについて振動音を感じている旨を供述する。 前記認定事実のとおり,平成24年度及び平成25年度,平成29年度に沖縄県が実施した低周波音の測定結果等によれば,普天間飛行場を離着陸する航空機等から低周波音が測定されており,特にヘリコプターやオスプレイから発生する低周波音が大きかったことが認められる。 しかしながら,低周波音は,騒音に比べて波長が長いため,建物から数m離れても反射,遮蔽,回折等により局地的に音圧レベルが変化する場合があるほか,発生源から距離が離れた場所では,風向きや風速の違いで20dBから30dBも音圧レベルが異なる場合があるほか 建物から数m離れても反射,遮蔽,回折等により局地的に音圧レベルが変化する場合があるほか,発生源から距離が離れた場所では,風向きや風速の違いで20dBから30dBも音圧レベルが異なる場合があるほか,地形の影響についても低周波音の減衰量は異なるものとされている。低周波音について本件コンター作成時と同様の大規模かつ詳細な調査は実施されていないことを考慮すると,本件コンター内に居住する原告らが,直ちに航空機等から発生する航空機騒音と同様の広がりをもって低周波音に暴露されていると認めるには合理的な疑いが残り,共通被害を認定する前提として捉えることが困難である。 また,低周波音による影響についてみても,環境省が示している心身苦情参照値及び物的苦情参照値は,固定された発生源からの低周波音を想定 しており,移動する発生源や間欠性の発生源からの低周波音は適用除外とされている。このため,航空機等から発生する間欠性の低周波音について,心身苦情参照値及び物的苦情参照値を超える値が計測されたとしても,これによって心身や建具等に生じる影響の程度は必ずしも明らかではない。 さらに,評価値についても,実験において被験者の50%が気になると感じ始める最低レベルの音圧レベルを示すものであるから,この値を超える低周波音に暴露されたことによって,直ちに心身に悪影響が生じるものとは認められない。 原告らは,低周波音に暴露された被害者に対する影響の有無及び程度は,その発生源が固定されているか否かによって本質的な差異が生じるものではない旨や,低周波音は航空機騒音と同様に累積,継続していると推察される旨を主張する。また,原告らは,沖縄県調査において,普天間飛行場の航空機騒音による生活妨害についての回答結果が嘉手納飛行場周辺より高くなっており,その主要因は低周波音 累積,継続していると推察される旨を主張する。また,原告らは,沖縄県調査において,普天間飛行場の航空機騒音による生活妨害についての回答結果が嘉手納飛行場周辺より高くなっており,その主要因は低周波音の影響によるものであるものを主張する。しかしながら,上記の主張を裏付けるに足りる的確な証拠はない。 以上によれば,普天間飛行場を離着陸する航空機等,特にヘリコプター及びオスプレイからは低周波音が発生していることが認められるものの,原告らが暴露されている低周波音の程度やこれによる影響は明らかではないといわざるを得ず,原告らの主張する低周波音による被害を原告ら全員が等しく被っている共通被害と認めることはできない。 4 普天間飛行場の公共性前記前提となる事実のとおり,普天間飛行場は,安保条約6条の定める日本国の安全に寄与し,並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するためにアメリカ合衆国に使用が許される施設又は区域として,アメリカ合衆国が管理,運用している。 内閣及び防衛省は,在日米軍,海兵隊の意義及び役割に関し,南西諸島のほぼ中央にあり,安全保障上極めて重要な位置にある沖縄県に米海兵隊が駐留することにより,種々の事態への迅速な対応が可能となっており,在沖縄米海兵隊が抑止力の重要な要素となっている旨を説明している。 (乙Cウ4,5) 5 被告による周辺対策等⑴ 住宅防音工事の助成後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,被告が実施する住宅防音工事の内容及び実績等に関し,以下の事実が認められる。 ア住宅防音工事の助成対象被告は,昭和54年度以降,生活環境整備法4条に基づき,普天間飛行場周辺地域の住宅の所有者等に対して住宅防音工事の助成を実施している。住宅防音工事の助成対象となる住宅は,生活環境整備法に基づく第 被告は,昭和54年度以降,生活環境整備法4条に基づき,普天間飛行場周辺地域の住宅の所有者等に対して住宅防音工事の助成を実施している。住宅防音工事の助成対象となる住宅は,生活環境整備法に基づく第1種区域の指定の際,その区域内に現に所在する住宅とされているが,昭和56年7月にW80区域が第1種区域に指定され,昭和58年9月にW75区域が追加で第1種区域に指定されたこと(前提となる事実4⑵イ,ウ)に伴い,住宅の建設時期によって助成対象から外れることとなるW80区域内の住宅についても,平成6年6月から行政措置として住宅防音工事の助成措置が取られている。また,平成10年度以降は,後記のとおり,住宅防音工事の完了後10年以上が経過し,建て替えられた住宅についても助成対象とされている。 (乙Cア14,16~20)イ住宅防音工事の種類及び規模被告が助成措置を実施する住宅工事の種類及び規模は,以下のとおりである。 新規防音工事,追加防音工事及び一挙防音工事新規防音工事は,新規に補助の対象とする住宅防音工事をいい,平成11年以降は,補助の対象となる住宅の世帯人数にかかわらず2室以内の居室について室内におけるW値が60以下となるように実施することとされている。また,追加防音工事は,既に住宅防音工事を実施した住宅を対象とする住宅防音工事であり,既に防音工事が実施された居室以外の居室について,当該住宅の世帯人数に応じて5室を限度に世帯人員に1を加えた居室を対象に,室内におけるW値が60以下となるように実施されていた。 平成10年度以降,防音工事を実施していない住宅を対象として新規防音工事と追加防音工事を同時に行う一挙防音工事が実施されるようになり,平成22年3月以降,新規防音工事は廃止され,防音工事を実施していない住宅 度以降,防音工事を実施していない住宅を対象として新規防音工事と追加防音工事を同時に行う一挙防音工事が実施されるようになり,平成22年3月以降,新規防音工事は廃止され,防音工事を実施していない住宅を対象とする防音工事は,全て一挙防音工事により実施されるようになった。 上記の各工事に対する補助率は10分の10であり(ただし,一定の補助限度額が設けられている。),被告は,普天間飛行場に関し,第1種区域に所在する住宅の新規防音工事,追加防音工事及び一挙防音工事に要する経費について,各対象住宅所有者等に対する補助金として,昭和54年度から令和元年度までに,2万1377世帯に対して合計約391億0871万円(1000円以下切捨て。以下からまでにおいて同じ。)を交付した。 (乙Cア14,21,乙G14,30,48)空気調和機器機能復旧工事被告は,平成元年度から,防音工事により設置した空気調和機器(換気設備,暖房機,冷暖房機及び冷房機)につき,当該防音工事が完了した日から起算して10年以上経過し,現に稼働不能なもの又は故障して いるものを対象に,その機能を復旧する工事の助成を実施しており,普天間飛行場に関し,平成2年度から令和元年度までに,9389世帯に対して合計約31億1534万円の補助金を交付した。(乙Cア14,22,23,乙G14,30,48)空気調和機器稼働費助成事業被告は,平成元年度から,生活保護法等に基づく被保護者等に対し,住宅防音工事によって設置した空気調和機器の稼働に伴う電気料金についての助成を実施しており,普天間飛行場に関し,平成元年度から令和元年度までに,合計599世帯に対して合計約729万円の補助金を交付した。(乙Cア14,24,G14,30,48)建替防音工事被告は,平成1 しており,普天間飛行場に関し,平成元年度から令和元年度までに,合計599世帯に対して合計約729万円の補助金を交付した。(乙Cア14,24,G14,30,48)建替防音工事被告は,平成10年度以降,直近の住宅防音工事(機能復旧工事を除く。)完了後10年以上が経過し,建て替えられた住宅に対する住宅防音工事(建替防音工事)の助成措置を実施している。(乙Cア25)防音区画改善工事被告は,平成11年度から,障害者や高齢者等の生活等に配慮された様式のバリアフリー対応住宅を対象に,防音区画改善工事の助成措置を実施している。防音区画改善工事は,居室と台所,玄関,廊下,浴室等のユーティリティ部分とを併せて一つの防音区画として実施され,補助事業者(住宅の所有者等)の意向等によりその一部が区画外とされない限り,ユーティリティ部分についても居室と同様の防音工事がされる。 防音工事を実施していない住宅については,世帯人員が4人以下の場合には5居室まで,世帯人員が5人以上の場合には世帯人員に1を加えた居室数の居室が対象となり,既に防音工事を実施済みの住宅については上記の居室数から防音工事を実施した居室数を減じた居室数以内の居室が対象となる。このため,防音工事を実施しようとする住宅の居室数が 上記の上限以下の場合,全ての居室とユーティリティ部分を一つの区画として防音工事がされる。 被告は,普天間飛行場に関する建替防音工事及び防音区画改善工事に要する経費について,各対象住宅の所有者等に対する補助金として,昭和54年度から令和元年度までに,802世帯に対して合計約24億9982万円を交付した。 (乙Cア26,30,35,乙G14,30,48)防音建具機能復旧工事被告は,住宅防音工事により外部開口部に設置した防音建具で, ,802世帯に対して合計約24億9982万円を交付した。 (乙Cア26,30,35,乙G14,30,48)防音建具機能復旧工事被告は,住宅防音工事により外部開口部に設置した防音建具で,防音工事が完了した日から起算して10年以上経過し,現にその機能の全部又は一部を保持していない防音建具について,その機能を復旧する工事の助成を実施しており,普天間飛行場に関し,平成23年度から令和元年度までに,2499世帯に対して合計約51億4562万円の補助金を交付している。(乙Cア14,21の4,27,乙G14,30,48)外郭防音工事被告は,平成22年度から,W値が85以上の区域に所在する住宅であって防音工事を実施していない居室があるもののほか,W値が75以上85未満の区域に所在する鉄筋コンクリート造系(鉄筋コンクリート及び補強コンクリートブロック造をいう。)の集合住宅であって防音工事を実施していない住戸があるものを対象として,外郭防音工事の助成を実施している。外郭防音工事は,世帯人員にかかわらず,全居室のほかユーティリティ部分も防音区画に取り込み,住宅全体を一つの防音区画として,その外郭について実施する防音工事である。 被告は,普天間飛行場に関し,外郭防音工事に要する経費等について,各対象住宅所有者等に対する補助金等として,昭和54年度から令和元年度までに,211世帯に対して合計約1億0326万円を交付した。 (乙Cア28の2,29,乙G14,30,48)ウ住宅防音工事の技術的内容住宅防音工事は,その技術的内容を定める住宅防音仕方書に従って実施されている。 住宅防音仕方書における標準的な工法は,鉄筋コンクリート造系住宅と木造系住宅に大別され,鉄筋コンクリート造系住宅については主として窓等の開口部 内容を定める住宅防音仕方書に従って実施されている。 住宅防音仕方書における標準的な工法は,鉄筋コンクリート造系住宅と木造系住宅に大別され,鉄筋コンクリート造系住宅については主として窓等の開口部に対する工事が,木造系住宅に対しては開口部に加えて壁及び天井に対する工事が実施される。このほか,鉄筋コンクリート造系住宅と木造系住宅のいずれに対しても,換気設備及び冷暖房設備の設置工事が実施される。 鉄筋コンクリート造系住宅と木造系住宅のそれぞれについて,25dB(A)以上の計画防音量を目標とする第Ⅰ工法と,20dB(A)以上の計画防音量を目標とする第Ⅱ工法の区分がある。上記の計画防音量は,本件環境基準の航空機騒音環境基準値が屋内での騒音数値を47dB(A)以下とすることを改善目標としていることを踏まえて定められており,W値80以上に相当する区域に所在する住宅に対しては第Ⅰ工法が,W値80未満に相当する区域に所在する住宅に対しては第Ⅱ工法が実施される。 なお,個々の住宅防音工事が完了した場合には,補助事業者(住宅の所有者等)と設計事務所による完成検査が実施される。また,被告は,補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律15条に基づき,各工事が住宅防音仕方書等に従い施工されていることを確認している。 (乙Cア30,36,乙E20,弁論の全趣旨)エ住宅防音工事の防音効果厚木基地第3次訴訟における平成11年8月24日の検証期日においては,住宅防音工事(第Ⅰ工法)が施工された居室について,窓を閉め切った状態で室内外の航空機騒音を測定,比較した結果,室内外の測 定値の差は25dBから27dBであった(乙Cウ9)。 防衛施設庁(当時)が平成13年10月から平成14年にかけて実施した住宅防音工事に関する防音量調査においては, 結果,室内外の測 定値の差は25dBから27dBであった(乙Cウ9)。 防衛施設庁(当時)が平成13年10月から平成14年にかけて実施した住宅防音工事に関する防音量調査においては,第Ⅰ工法について14か所の防衛施設の飛行場周辺で118世帯の調査が,第Ⅱ工法について4か所の防衛施設の飛行場周辺で23世帯の調査がそれぞれ行われ,第Ⅰ工法については25.0dB(A)から44.0dB(A),第Ⅱ工法については20.0dB(A)から32.4dB(A)の防音効果が認められた。(乙Cウ14)被告は,平成15年7月2日から同月3日にかけて,小松基地周辺におけるW値80から90の区域に所在する住宅防音工事(第Ⅰ工法)が実施された木造住宅2戸の屋内と屋外の航空機騒音を測定したところ,屋内外の測定値の差は平均30dBであった(乙Cウ10,18)嘉手納基地第2次訴訟における平成15年7月11日の検証期日において,嘉手納基地周辺の住宅防音工事(第Ⅰ工法)が実施された居室について,窓を閉め切った状態で室内外の航空機騒音を測定,比較した結果,屋内外の測定値の差は23dBから31dBであった(乙Cウ8)。 被告は,厚木基地第4次訴訟における平成25年5月9日の現地進行協議期日において,同訴訟の原告らのうち1名が所有する5室の住宅防音工事が実施された木造住宅内とその場所から約100m離れた屋外の航空機騒音を測定,比較したところ,窓を閉め切った状態での屋内外の測定値の差は22dBから48dBであった(乙Cウ15)。 被告は,普天間基地第2次爆音訴訟における平成28年1月7日の現地進行協議期日において,普天間飛行場周辺のW75区域内に所在する住宅防音工事(第Ⅱ工法)が実施された住宅の屋内と屋外の騒音状況を測定,比較したところ,窓を閉め切 訴訟における平成28年1月7日の現地進行協議期日において,普天間飛行場周辺のW75区域内に所在する住宅防音工事(第Ⅱ工法)が実施された住宅の屋内と屋外の騒音状況を測定,比較したところ,窓を閉め切った状態での屋内外の測定値の差は22.6dB(A)から30.6dB(A)であった(乙Cウ16)。 被告は,横田基地第9次及び第12次訴訟における平成29年9月15日の現地進行協議期日において,横田基地周辺のW値85の区域内に所在する住宅防音工事(第Ⅰ工法)が実施された木造住宅の屋内と屋外の騒音状況を測定したところ,屋内外の測定値の差は32.5dB(A)であった(乙Cウ17)。 被告は,平成23年12月15日,外郭防音工事を実施した住宅の居室とユーティリティ部分について屋内外の騒音を測定したところ,ユーティリティ部分の屋内外の騒音の測定値の差は25.9dB(A)から28.8dB(A)であった。(乙Cウ19)オ沖縄県調査における住宅防音工事の評価沖縄県調査においては,住宅防音工事の評価に関し,以下の調査結果が報告されている。(甲D1)沖縄県調査においては,住宅防音工事の効果に関し,「防音工事の効果はどの程度ですか」との質問に対して,「1.十分にある」「2.かなりある」「3.ある程度ある」「4.あまりない」「5.まったくない」の5段階評価で回答が求められた。上記の質問に対して「1.十分にある」,「2.かなりある」又は「3.ある程度ある」と回答した者の割合はW75区域内の住民の約79.4%,W80区域内の住民の約72.1%であり,防音効果を評価しない者の割合はW値の上昇とともに増大していた。 また,防音工事への満足度に関しては,「1.たいへん満足」「2.満足」「3.少し満足」「4.どちらとも」「5.少し不満」「 であり,防音効果を評価しない者の割合はW値の上昇とともに増大していた。 また,防音工事への満足度に関しては,「1.たいへん満足」「2.満足」「3.少し満足」「4.どちらとも」「5.少し不満」「6.不満」「7. たいへん不満」の7段階で回答が求められた。上記の質問に対して「1. たいへん満足」,「2.満足」又は「3.少し満足」のいずれかで回答した者の割合はW75区域内の住民の約56.9%,W80区域内の住民の約40%であり,W値が高くなるにつれて,不満に思う者の割合が高 かった。 住宅防音工事を実施した部屋について窓を閉めるか否かについて,30%前後の者がほとんど窓を開けた状態で防音工事を実施した部屋を使用しており,常に窓を閉め切って使用するものは10%から20%にすぎない旨の回答が得られた。また,平成5年の防音工事に関するヒアリングにおいては,防衛施設整備事業について不満足である旨の回答が多く,その理由として電気代の負担が大きいことが挙げられていたことから,電気代の補助がないことが窓を開けて生活をする者が多い理由の一つとして考察された。 カ原告らのアンケート式陳述書アンケート式陳述書を提出した原告らのうち,「米軍が飛行する時間帯などにおいて,防音工事した部屋の窓は閉めていますか」という質問に対して「はい」と答えた原告らはW80区域で約48%,W75区域で約45%であり,防音工事した窓を閉めない理由について,下記の回答を選択した原告らの割合は以下のとおりであった。(甲B1~9)回答項目W80区域W75区域クーラー代が高くなる約39%約40%窓を閉めるとき息苦しい感じがする約30%約33%窓を閉めても騒音が聞こえるので,意味がないと感じる約33%約37%キ原告ら クーラー代が高くなる約39%約40%窓を閉めるとき息苦しい感じがする約30%約33%窓を閉めても騒音が聞こえるので,意味がないと感じる約33%約37%キ原告らについての住宅防音工事の実施状況原告らの居住する住宅についての住宅防音工事の実施の有無及びその内容は,原告237ら,原告554ら,原告2395らを除き,別紙「居住経過一覧表」記載のとおりであることは当事者間に争いがない。 また,弁論の全趣旨によれば,別紙「住宅防音工事実績一覧表(防音区 画改善工事実施分のうち屋内すべてを実施したもの)」記載の原告らについては,その居住する建物の全ての居室を対象とする防音区画改善工事が実施されていることが認められる。 以下,上記の争いのある原告らについて個別に検討する。 原告237らについて被告が,平成22年3月31日に原告237らの居住地に所在する建物の1階部分について5室の住宅防音工事を実施していることについては当事者間に争いがないところ,証拠(乙G49)によれば,原告237らは,平成21年12月18日付けで,被告に対し,対象住宅における世帯人員が原告237ら及び同居人2名の合計6名である旨を申告した上で,上記世帯人員に応じて5室の住宅防音工事に係る補助金を申請し,5室について住宅防音工事が実施されたことが認められる。 上記の住宅防音工事の実施後に転居や建替え等の事情の変更があったことをうかがわせる証拠もないことからすると,原告237らについては,その居住する建物について住宅防音工事が実施されていると認めるのが相当である。 これに対し,原告らは,同建物については1階部分と2階部分が独立した構造になっており,原告237らは住宅防音工事の実施されていない2階部分に居住している旨を主張 れていると認めるのが相当である。 これに対し,原告らは,同建物については1階部分と2階部分が独立した構造になっており,原告237らは住宅防音工事の実施されていない2階部分に居住している旨を主張する。しかしながら,原告らの主張は住宅防音工事に係る補助金の申請時の申告内容と整合しない上,その提出する証拠(甲G3)によっても,原告237らの居住地の所在する建物は,門と玄関が共通であり,1階部分と2階部分は室内階段でつながっていることが認められ,1階部分と2階部分が構造上独立しているともいい難い。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 原告554らについて被告が,原告554らの住所地に所在する建物の2階部分について,昭和57年9月15日に2室,平成3年3月12日に2室,平成28年11月9日に2室の住宅防音工事(平成28年11月9日分については防音区画改善工事)を実施したこと及び原告557が上記2階部分に居住していることについては当事者間に争いがないところ,証拠(甲G4の2)によれば,原告554らの住所地に所在する建物は,1階部分と2階部分で門及び玄関が分かれており,かつ,2階部分の玄関へは外階段があるのみであることから,1階部分と2階部分が構造上独立していることが認められる。 証拠(乙G50,51)によれば,原告555は,同年1月18日付けで,被告に対し,対象住宅における世帯人員が原告554,原告555,原告557を含む合計5名である旨を申告した上で,2室の住宅防音工事に係る補助金を申請し,2室について住宅防音工事が実施されていることが認められる。上記の申請後にその後に転居や建替え等の事情の変更があったことをうかがわせる証拠もないことを踏まえると,平成28年1月の補助金の申請時に世帯人員として申告されて 事が実施されていることが認められる。上記の申請後にその後に転居や建替え等の事情の変更があったことをうかがわせる証拠もないことを踏まえると,平成28年1月の補助金の申請時に世帯人員として申告されていた原告554及び原告555については,住宅防音工事が実施されている同建物の2階部分に居住していると認めるのが相当である。 他方で,原告556については,上記の補助金の申請時に世帯人員として申告されておらず,原告555の陳述書(甲G4の3)によれば,平成23年以前から同建物の1階部分に居住していると認めることができる。前記のとおり,同建物の1階部分と2階部分は構造上独立していることからすれば,原告556については,その居住する建物について住宅防音工事がされているとはいえない。 これに対し,原告らは,原告554については遅くとも10年以上前 から,原告555は平成23年以降から,同建物の1階部分に居住している旨を主張し,原告555の陳述書(甲G4の3)にもこれに沿う記載があるが,上記の住宅防音工事の補助金申請時の申告内容と整合せず,これを採用することはできない。 以上によれば,原告554らのうち,原告554,原告555及び原告557についてはその居住する建物につき住宅防音工事が実施されたものと認めることができるが,原告556については住宅防音工事が実施されているとは認められない。 原告2395らについて被告は,原告2395らの住所地に所在する建物について昭和55年9月20日に住宅防音工事を実施した旨を主張するものの,証拠(甲G10)によれば,同住所地には2棟の建物が存在し,原告2395らは,同住所地に所在する住宅防音工事が実施されたものとは別の建物に居住していることが認められるから,その居住する建物について,昭和55 10)によれば,同住所地には2棟の建物が存在し,原告2395らは,同住所地に所在する住宅防音工事が実施されたものとは別の建物に居住していることが認められるから,その居住する建物について,昭和55年9月20日当時,住宅防音工事が実施されていたとは認められない。 もっとも,証拠(乙G51)によれば,被告は,平成30年11月30日に,原告2395が居住する上記建物について1室分の住宅防音工事を実施したことが認められるから,原告2395らについては,別紙「居住経過一覧表」記載のとおり,同日以降,1室分の住宅防音工事が実施されたものとして評価するのが相当である。 ⑵ 音源対策等後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,被告が実施する音源対策及び運航対策に関し,以下の事実が認められる。 ア音源対策 平成7年11月に日本国政府及びアメリカ合衆国政府によって設置された沖縄に関する特別行動委員会(SACO)においては,平成8年1 2月2日に「普天間飛行場に関するSACO最終報告」が取りまとめられた。この報告の中では,普天間飛行場に配備されている12機の固定翼機KC-130を適切な施設が提供された後に岩国飛行場に移駐する旨の合意がされており,平成26年8月26日に,KC-130の移駐が完了した。これにより,平成25年度のKC-130の離着陸等回数は月平均154回であったところ,平成26年7月から9月までのKC-130の離着陸等回数は3か月の合計で183回に減少した。 (乙Cウ12,13)米軍においては,平成28年9月1日付けの日米合同委員会の合意に基づき,沖縄県外での訓練の一層の推進を図り,訓練活動に伴う沖縄の負担を軽減するため,令和元年12月31日までに,1回当たり約10日間から20日間程度の期間で,合計8回,普天間飛 合同委員会の合意に基づき,沖縄県外での訓練の一層の推進を図り,訓練活動に伴う沖縄の負担を軽減するため,令和元年12月31日までに,1回当たり約10日間から20日間程度の期間で,合計8回,普天間飛行場に配備されているオスプレイを含むティルト・ローター機等の訓練活動を沖縄県外に移転した。(乙G28,29)イ運航対策日米合同委員会においては,平成8年3月28日,「普天間飛行場における航空機騒音規制措置」が合意された。上記で合意された措置には,普天間飛行場周辺地域社会の航空機騒音レベルへの懸念を軽減し,米軍の任務に支障をきたすことなく航空機騒音による望ましくない影響を最小限とするためのものとして,以下の内容が含まれている。(乙Cア6)日曜日の訓練飛行は差し控え,任務の所要を満たすために必要と考えられるものに制限される。慰霊の日のような周辺地域社会にとって特別に意義のある日については,訓練飛行を最小限にするよう配慮する。 午後10時から午前6時までの間の飛行及び地上での活動は,米軍の運用上の所要のために必要と考えられるものに制限する。 進入及び出発経路を含む飛行場の場周経路は,できる限り学校,病院 を含む人口密集地域上空を避けるよう設定する。 有効な消音器が使用されない限り,又は運用上の能力若しくは即応態勢が損なわれる場合を除き,午後6時から午前8時までの間,ジェットエンジンのテストは行わない。 普天間飛行場近傍においては,あらかじめ計画された曲技飛行の展示を除き,空戦訓練に関連した曲技飛行は行わない。 6 普天間飛行場の供用の違法性以上で認定した事実を踏まえ,侵害行為の態様と侵害の程度,被侵害利益の性質と内容,侵害行為のもつ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等,侵害行為の開始とその後の継続 普天間飛行場の供用の違法性以上で認定した事実を踏まえ,侵害行為の態様と侵害の程度,被侵害利益の性質と内容,侵害行為のもつ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等,侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況,その間の被害の防止に関する措置の有無及びその内容,効果等を総合的に考慮し,普天間飛行場の供用の違法性の有無を検討する。 ⑴ 侵害行為の態様と侵害の程度前記で認定したとおり,本件コンターの範囲内の区域においては,本件において損害賠償が請求されている平成27年7月2日から現在に至るまでの間,本件コンターの指定時におけるW値に相当する程度の航空機騒音が継続して発生していることが認められる。 原告らが暴露されているW値75又はW値80(防衛施設庁方式)という航空機騒音は,生活環境整備法上,自衛隊等の航空機の離陸,着陸等の頻繁な実施により生ずる音響に起因する障害が著しいと認められている水準のものである。また,前記前提となる事実のとおり,人の健康を保護し,及び生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準である本件環境基準(環境基本法16条1項)における専ら住居の用に供される地域における基準値は,Lden57dB以下(環境庁方式によるW値70に相当)であるところ,別紙「県等測定局における騒音測定結果」によれば,各測定局において航空機騒音が本件環境基準を上回る日が相当数あることが認められる (環境基準超過率欄参照)。 以上によれば,原告らが暴露されている航空機騒音の程度は相当大きいものといえる。 ⑵ 被侵害利益の性質と内容前記で認定したとおり,上記⑴の航空機騒音により,原告らは,生活妨害,睡眠妨害並びにイライラ感,不快感及び航空機事故への不安感といった精神的被害を共通被害として被っていることが認められる。 容前記で認定したとおり,上記⑴の航空機騒音により,原告らは,生活妨害,睡眠妨害並びにイライラ感,不快感及び航空機事故への不安感といった精神的被害を共通被害として被っていることが認められる。 原告らは,上記の共通被害によって,その日常生活や種々の活動に具体的な制約を受けているほか,相応の精神的苦痛を被っているものといえることからすれば,原告らの被侵害利益の性質及び内容は法律上保護されるべき重要なものというべきである。 被告は,原告らが航空機騒音により何らかの生活妨害を被っているとしても,社会生活を営む上で受忍すべき範囲内のものにすぎない旨を主張する。 しかしながら,軍用機を含む航空機の利用が社会全体の活動に必要なものであったとしても,騒音による影響を受けることなく日常生活を営むことにかかる利益も重要なものであり,航空機騒音については,受忍すべき範囲には自ずと限度があるからこそ,本件環境基準が定められ,生活環境整備法に基づく措置が講じられているのであり,上記共通被害が当然に受忍すべき範囲内といえるかについてはなお検討を要する。 ⑶ 侵害行為のもつ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等前記認定事実のとおり,普天間飛行場は,安保条約6条に基づき,我が国の安全に寄与し,並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与することを目的としてアメリカ合衆国が管理,運用しており,我が国の安全保障上,重要な要素として位置づけられている。 したがって,普天間飛行場における米軍機の運航活動は,日本国民全体の利益に寄与するものとして,公共性及び公益上の必要性があると認められる。 しかしながら,普天間飛行場における米軍機の運航活動がもたらす利益は,その性質上,国民全体が等しく享受しているものであり,普天間飛行場の周辺住民が他の国民に比 性があると認められる。 しかしながら,普天間飛行場における米軍機の運航活動がもたらす利益は,その性質上,国民全体が等しく享受しているものであり,普天間飛行場の周辺住民が他の国民に比して特別に大きな利益を受けているわけではない。前記のとおり,普天間飛行場の周辺住民は,米軍機の航空機騒音により重要な法的利益を侵害され,相応の精神的苦痛を被っているのであって,国民全体が享受する利益のためにこうした負担の受忍を求めることは,国民一般との関係において著しい不公平を生じさせることとなる。 したがって,普天間飛行場の米軍機の運航活動の公共性,公益上の必要性を考慮しても,直ちに普天間飛行場の供用の違法性を否定することはできない。 なお,被告は,普天間飛行場の公共性,公益上の必要性として,普天間飛行場に駐留する米軍が災害時に重要な役割を果たしていることや,日常の社会貢献活動を通じて地域の振興等にも寄与している旨を主張する。しかしながら,米軍の災害派遣活動や社会貢献活動は,いずれも駐留目的との関係では副次的な活動にすぎず,原告らが日常的に暴露されている航空機騒音に関連するものでないから,普天間飛行場の供用の違法性の判断に当たって考慮することは相当ではないというべきである。 ⑷ 侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況,その間の被害の防止に関する措置の有無及びその内容,効果等ア侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況前記前提となる事実及び認定事実のとおり,普天間飛行場は,昭和20年4月に米軍が占領,接収した土地に建設され,以後,アメリカ合衆国が管理,運用し,米軍機の運航等に使用されており,少なくとも本件コンターの指定後,現在に至るまで,本件コンターにおけるW値に相当する航空機騒音が継続的に発生している。 そして,普天間飛 リカ合衆国が管理,運用し,米軍機の運航等に使用されており,少なくとも本件コンターの指定後,現在に至るまで,本件コンターにおけるW値に相当する航空機騒音が継続的に発生している。 そして,普天間飛行場の航空機騒音による被害については,普天間第1 次爆音訴訟,普天間基地第1次騒音訴訟及び普天間基地第2次爆音訴訟において違法性を肯定する旨の判断がされているものの,前記のとおり,現在に至るまで航空機騒音が改善した形跡はうかがわれない。 イ住宅防音工事前記認定事実のとおり,被告は,周辺対策として,本件コンター内に居住する住民の一部に対して住宅防音工事の助成を行っている。 住宅防音工事については,本件環境基準における屋内の騒音数値の改善目標を踏まえ,W値80以上に相当する区域については25dB(A)以上の計画防音量を目標とする第Ⅰ工法,W80未満に相当する区域については20dB(A)以上の計画防音量を目標とする第Ⅱ工法が実施されている。住宅防音工事が実施された居室において窓を閉め切った状態で実施された航空機騒音の測定結果によれば,概ね上記の計画防音量が達成されており,沖縄県調査においても,W75区域内の住民の約79.4%,W80区域内の住民の約72.1%が住宅防音工事の効果を肯定する旨を回答していることからすれば,被告が実施する住宅防音工事は,一定の防音効果を有するものということができる。 以上によると,被告の実施する住宅防音工事が実施された居室のある住宅に居住する原告らについては,航空機騒音が一定程度軽減されているということができる。 もっとも,住宅防音工事の助成対象は,本件コンターの指定時に本件コンター内に現に所在する住宅が中心であり,本件コンター内の全ての住宅について実施されているわけではない。 また,住宅防 できる。 もっとも,住宅防音工事の助成対象は,本件コンターの指定時に本件コンター内に現に所在する住宅が中心であり,本件コンター内の全ての住宅について実施されているわけではない。 また,住宅防音工事は,外郭防音工事や全居室に防音区画改善工事が実施されたものを除き,住宅の一部の居室に実施されるものにすぎなないから,ユーティリティ部分を含む住宅内の全ての領域について防音効果が生じるものではない。 さらに,住宅防音工事は,主として窓等の開口部等への工事を行った上で,換気設備及び冷暖房設備の設置工事を実施するものであり,その防音効果は居室が密閉状態であることを前提とするものである。しかしながら,沖縄県の気候は高温多湿であり,居室を密閉して生活するためには冷房機の使用が必要である一方で,夏でも最高気温が32度程度であり,風が強いことから,窓を開けることによって生活が可能であり,沖縄県が平成27年6月に作成した「風土に根ざした家づくり手引書」においても,自然風を取り込むことが住環境の快適性向上や省エネにつながる重要なポイントである旨が指摘されている(甲D1,甲G2)。実際に,沖縄県調査では,住宅防音工事が実施された居室について,常時窓を閉め切って居室を使用する者は10%から20%にすぎず,その理由として電気料金の負担が大きいことが挙げられており,原告らの提出するアンケート式陳述書においても,相当数の原告らが住宅防音工事の実施された居室の窓を閉め切っておらず,その理由として電気料金が高くなることや住環境上の理由を挙げている。これらの事情を踏まえると,住宅防音工事が実施された居室を常時密閉状態で使用することは,沖縄県の気候にそぐわない上,電気料金の負担を生じさせるものといえる。 以上の検討からすれば,被告が実施する住宅防音工事 情を踏まえると,住宅防音工事が実施された居室を常時密閉状態で使用することは,沖縄県の気候にそぐわない上,電気料金の負担を生じさせるものといえる。 以上の検討からすれば,被告が実施する住宅防音工事の効果には限界があるといわざるを得ない。 なお,住宅防音工事については,原告らの居住地における航空機騒音を直接軽減するものであるから,現に住宅防音工事の助成を受けた原告らについては,その助成内容に応じて慰謝料の減額要素として考慮すべきである。 これに対し,被告は,住宅防音工事の実施を希望し,その実施を受けた住民については,同工事による防音効果を享受することを自ら選択しており,静穏を要する場面においては密閉した居室内で行動するのが通 常と考えられ,個々の原告において防音効果を低下させる生活様式が存在し得るとしても,防音効果の評価に当たって考慮すべきではない旨を主張する。 しかしながら,前記で述べたとおり,沖縄県において,窓を開けるという生活様式はその気候を踏まえた一般的なものであることが認められ,個々の住民が住宅防音工事の実施を受けたからといって,上記の生活様式を改めることが求められるものではない。したがって,防音効果の評価に当たっては上記の生活様式も考慮することが相当であり,被告の上記主張を採用することはできない。 ウ住宅防音工事以外の周辺対策等被告は,住宅防音工事以外の防音対策として,学校等,病院等及び民生安定に係る公共施設に関する防音工事並びに緑地帯整備を実施している旨を主張するとともに,防音対策以外の周辺対策として,各種の補助金,交付金等の交付や騒音状況の公開などの措置を講じている旨を主張し,これにより,普天間飛行場の周辺住民の騒音源に対する否定的評価を解消又は軽減していることから,違法性の判断において十 ,各種の補助金,交付金等の交付や騒音状況の公開などの措置を講じている旨を主張し,これにより,普天間飛行場の周辺住民の騒音源に対する否定的評価を解消又は軽減していることから,違法性の判断において十分斟酌されるべきである旨を主張する。 しかしながら,被告の主張する住宅防音工事以外の防音対策や周辺対策は,いずれも原告らの居住地における航空機騒音を直接低減させるものではないし,これらの措置によって原告らの生活及び福祉の向上に資する面があったとしても,直ちに航空機騒音に対する否定的評価を解消又は軽減し得るものとも解されないから,違法性の判断において考慮することは相当ではない。 エ音源対策等前記認定事実のとおり,普天間飛行場の音源対策等として,普天間飛行場に配備されていた固定翼機の岩国飛行場への移駐,日米合同委員会にお ける合意に基づく航空機騒音規制措置,オスプレイを含むティルト・ローター機等の訓練活動の沖縄県外への移転といった音源対策等が実施されていることが認められ,これらの措置は,いずれも普天間飛行場における航空機騒音を直接軽減し得るものといえる。 しかしながら,近年の航空機騒音の測定結果を踏まえると,これらの措置によっても,普天間飛行場における航空機騒音の程度が顕著に改善されたということはできないから,その効果は限定的なものにすぎないというべきである。 ⑸ 総合評価以上によると,原告らが平成27年から現在に至るまで暴露されている普天間飛行場の航空機騒音は,生活環境整備法の規定や本件環境基準に照らしても相当大きいものであり,実際に,原告らは,その日常生活や種々の活動に具体的な制約を受けているほか,相応の精神的苦痛を被っており,その重要な法的利益を侵害されていることが認められる。 そして,普天間飛行場は,米軍が あり,実際に,原告らは,その日常生活や種々の活動に具体的な制約を受けているほか,相応の精神的苦痛を被っており,その重要な法的利益を侵害されていることが認められる。 そして,普天間飛行場は,米軍が昭和20年4月に占領,接収した土地に建設され,以後,アメリカ合衆国が管理,運用し,米軍機の運航等に使用され,これに伴う航空機騒音も長期間にわたって継続しているところ,被告が実施する住宅防音工事や音源対策等の措置によっても航空機騒音は十分に解消されておらず,航空機騒音が違法である旨の数度の司法判断を経てもなお,航空機騒音に対する抜本的な対策が講じられているとはいえない。 そうすると,普天間飛行場における米軍機の運航が公共性,公益上の必要性を有することを考慮しても,原告らが被っている法的利益の侵害は社会通念上受忍すべき限度を超えているというべきである。したがって,普天間飛行場の供用は,平成27年7月2日から現在に至るまでの期間,本件コンター内に居住する原告らに対する関係において違法な権利侵害ないし法益侵害に該当し,その設置及び管理に瑕疵があると認められる。 第2 争点⑵(損害額)について 1 基本となる慰謝料額⑴ 前記第1で判示したとおり,本件コンターの範囲内の区域においては,本件において損害賠償が請求されている平成27年7月2日から現在に至るまでの間,本件コンターの指定時におけるW値に相当する程度の航空機騒音が継続して発生しているものと推認することが相当であり,W80区域に居住する原告らが被っている共通被害の程度は,W75区域に居住する原告らに比べて大きいことが認められる。 したがって,基本となる慰謝料額については,本件コンターにおけるW値を基準として算定することが相当である。 ⑵ 原告らは,基本的には1月単位で慰謝料を する原告らに比べて大きいことが認められる。 したがって,基本となる慰謝料額については,本件コンターにおけるW値を基準として算定することが相当である。 ⑵ 原告らは,基本的には1月単位で慰謝料を請求しつつ,請求の始期又は終期が月の途中となる場合や,月の途中で住所の移転(W値の変動の有無は問わない。)等があった場合,当該月については1日当たりの単位額に請求期間に対応する日数を乗じて慰謝料を請求している。上記を踏まえ,慰謝料額については,1月を単位として慰謝料額を算定するのを原則としつつ,請求の始期又は終期が月の途中である場合や,月の途中で住所の移転(W値の変動の有無は問わない。)や住宅防音工事が実施された場合等における当該月の慰謝料額については,1日当たりの単位額を定めた上で,これに請求期間に対応する日数を乗じて算定するのが相当である。 ⑶ 基本となる慰謝料額については,前記で認定したとおり,原告らが暴露されている航空機騒音の程度や共通被害の内容及び程度,被告による被害の防止に関する措置の内容及び程度,普天間飛行場における航空機騒音の発生に至る経緯及びその後の継続の経過や状況を考慮するとともに,その他本件に現れた一切の事情を考慮して定めるのが相当である。 特に,沖縄県の面積は我が国の国土面積の約0.6%であるにもかかわらず,在日米軍専用施設面積の約70.4%に及ぶ米軍基地が沖縄県に存在し, その面積は沖縄本島の約14.7%を占めていることが認められるところ(甲Cウ17),このように沖縄県に米軍基地が集中している中,沖縄県内で米軍機の墜落等を含む多数の事故が発生していることを考慮すると,普天間飛行場の周辺住民が,航空機騒音に対する相応の負担感や否定的な感情を抱くことには合理的な理由があると考えられることから,こうした沖縄 機の墜落等を含む多数の事故が発生していることを考慮すると,普天間飛行場の周辺住民が,航空機騒音に対する相応の負担感や否定的な感情を抱くことには合理的な理由があると考えられることから,こうした沖縄県における特有の事情についても考慮すべきである。 以上の点を総合的に考慮し,基本となる慰謝料額としては,W75区域に居住する原告らについては1か月当たり4500円(1日当たり150円),W80区域内に居住する原告らについては1か月当たり9000円(1日当たり300円)と定めるのが相当である。 ⑷ これに対し,原告らは,慰謝料額としてW75区域については1か月当たり9000円(1日当たり300円),W80区域については1日当たり1万5000円(1日当たり500円)を下らない旨主張する。 しかしながら,普天間飛行場における航空機騒音の程度等の本件に現れた事情を考慮すると,上記で述べたとおり,沖縄県における特有の事情を考慮しても,原告らの主張する慰謝料額を認めることはできない。 ⑸ 以上によれば,第1事件原告らについては平成27年7月2日(ただし,普天間基地第1次騒音訴訟の当事者であった原告らについてはその控訴審の口頭弁論終結日の翌日である平成28年7月27日)から,第2事件原告らについては平成30年1月31日(ただし,普天間基地第2次爆音訴訟の当事者であった原告らについてはその控訴審の口頭弁論終結日の翌日である平成30年9月28日)から,本件口頭弁論終結日である令和3年9月30日までの期間,居住地における本件コンター上のW値に応じ,上記の基本となる慰謝料額の割合に基づき慰謝料が算定されることとなる。 ただし,上記の期間内に本件コンター外から本件コンター内に転入した原告らについては転入の日以降が損害賠償を請求できる期間となり,上記の期 慰謝料額の割合に基づき慰謝料が算定されることとなる。 ただし,上記の期間内に本件コンター外から本件コンター内に転入した原告らについては転入の日以降が損害賠償を請求できる期間となり,上記の期 間内に本件コンター外に転出した原告らについてはその転出の前日まで,上記の期間内に死亡した被承継人については死亡日までがそれぞれ損害賠償を請求できる期間となる。また,上記の期間内にW値の異なる区域に転居した原告については,当該転居日に生活の本拠が転居後の居住地に移転したと評価できることから,当該転居日の前日までは転居前のW値に対応する慰謝料額を,当該転居日以降は転居後のW値に対応する慰謝料額をそれぞれ適用するのが相当である。 2 慰謝料の減額事由⑴ 前記で判示したとおり,原告らの居住する住宅についての住宅防音工事の実施の有無及びその内容は,原告237ら,原告554ら,原告2395らを除き,別紙「居住経過一覧表」記載のとおりであることは当事者間に争いがない。また,原告237ら,原告554,原告555,原告557及び原告2395らについては,同表記載のとおり住宅防音工事が実施されたものと認めることができる一方で,原告556については住宅防音工事が実施されているとは認められない。 ⑵ 前記で説示したとおり,住宅防音工事が実施された居室のある住宅に居住する原告らについては,航空機騒音が一定程度軽減されているということができることから,慰謝料額の算定に当たっては,住宅防音工事による便益を受けた期間について,慰謝料額を減額する事由として考慮することが相当である。 しかしながら,前記のとおり,住宅防音工事の助成対象となる室数には限界がある上,住宅防音工事の防音効果は居室が密閉状態であることを前提としており,こうした居室の使用は沖縄県の気候に 相当である。 しかしながら,前記のとおり,住宅防音工事の助成対象となる室数には限界がある上,住宅防音工事の防音効果は居室が密閉状態であることを前提としており,こうした居室の使用は沖縄県の気候にそぐわない上,電気料金の負担を生じさせるものであることから,住宅防音工事の効果には限界があるといわざるを得ない。 そして,住宅防音工事が施工された居室が増加すれば,それだけ防音効果 も高まることから,住宅防音工事の実施による慰謝料の減額割合については,当該工事を施工した室数が1室のみである場合には10%,その室数が2室以上である場合には,2室目以降の1室ごとに更に5%ずつをそれぞれ減額するのが相当である。ただし,上記のとおり,住宅防音工事の効果には限界があることを踏まえると,住宅防音工事が5室以上実施されている場合や,ユーティリティ部分を含む住宅全体を一つの防音区画として実施される外郭防音工事が実施されている場合,さらに,住宅内の全ての居室が対象とされ,ユーティリティ部分を含む住宅全体が一つの防音区画として防音区画改善工事が実施されている場合(別紙「住宅防音工事実績一覧表(防音区画改善工事実施分のうち屋内すべてを実施したもの)」記載の原告ら(原告2888を除く。)がこれに該当する。)については,慰謝料の減額割合を一律に30%とするのが相当である。 ⑶ これに対し,原告らは,住宅防音工事については,被告が航空機騒音を低減する目的で多額の資金を投入するなどの努力をしたことにつき,信義則ないしこれに類する観点から評価する限度で斟酌すべきであり,住宅防音工事による慰謝料の減額割合は,住宅防音工事を実施した居室の数や工事の種別にかかわらず,全ての原告につき一律に10%減額する程度にとどめるべきである旨を主張する。 しかしながら,住宅 り,住宅防音工事による慰謝料の減額割合は,住宅防音工事を実施した居室の数や工事の種別にかかわらず,全ての原告につき一律に10%減額する程度にとどめるべきである旨を主張する。 しかしながら,住宅防音工事の実施された居室数や工事の種別によって,防音効果やその結果としての騒音暴露の程度に違いがあることは否定できず,その居室数や工事の種別を考慮して減額割合を定めることには合理性があるというべきであるから,原告らの上記主張は採用できない。 他方で,被告は,上記の減額率に関し,住宅防音工事の効果は同工事が実施された居室数に比例して増加することから,2室目以降も1室目と同様の減額率とすべきであり,かつ,2室目以降も同工事を行うことで国の費用負担が増加し,これによって住宅防音工事の効果が増加することからすれば, 減額率に上限を設けるべきではない旨を主張する。 しかしながら,経験則上,居住者の主観的な受け止めとしては,1室目の防音効果が2室目以降の防音効果よりも大きいと考えられ,本件で認定することができる被害の程度は,被害者の主観的な受け止めによって左右される面があるから,1室目と2室目以降で減額割合を変更することに合理性があるというべきである。また,上記のとおり,住宅防音工事による防音効果には限界があることから,外郭防音工事や全ての居室を対象に防音区画改善工事が実施された場合も含め,減額率に上限を設けることにも合理性があるというべきである。したがって,被告の上記主張はいずれも採用できない。 ⑷ 以上によれば,住宅防音工事が実施された居室のある住宅に居住する原告らについては,その住宅防音工事による便益を受けた期間について,前記1の基本となる慰謝料額に対して上記⑵で示した減額割合を乗じた額を各原告の慰謝料額と認めるのが相当である。 る住宅に居住する原告らについては,その住宅防音工事による便益を受けた期間について,前記1の基本となる慰謝料額に対して上記⑵で示した減額割合を乗じた額を各原告の慰謝料額と認めるのが相当である。 3 弁護士費用弁護士費用については,本件訴訟における立証の難易度,本件訴訟の経過,本件における認容額その他諸般の事情を考慮した上で,各原告の慰謝料額の10%相当額をもって,普天間飛行場の設置又は管理の瑕疵と相当因果関係のある損害と認める。 4 慰謝料の計算方法以上の考え方に基づく各原告の損害額の具体的な計算方法は以下のとおりである。 ⑴ 各原告の基本となる慰謝料額は,別紙「認容額一覧表」の「基本となる慰謝料額(月額)」及び「基本となる慰謝料額(日額)」欄記載の額であり,これに住宅防音工事による減額割合を乗じた額は「慰謝料額(月額)」及び「慰謝料額(日額)」欄記載の額(いずれも1円未満切捨て。)となる。さらに,これらに弁護士費用として10%を乗じた額が,「単位損害賠償額(日額)」 及び「単位損害賠償額(月額)」欄記載の額(いずれも1円未満切捨て。)となる。 ⑵ 上記の単位損害賠償額に,各原告が損害賠償を請求することのできる期間を乗じた額が各原告の慰謝料額の合計額となり,各原告について損害賠償を請求することのできる期間は別紙「認容額一覧表」の「始期」欄記載の日から「終期」欄記載の日までの期間となる。 また,前記のとおり,本件における慰謝料額については,1月を単位として慰謝料額を算定するのを原則としつつ,請求の始期又は終期が月の途中である場合や,月の途中で住所の移転(W値の変動の有無は問わない。),住宅防音工事の実施があった場合等における当該月の慰謝料額については,1日当たりの単位額に請求期間に対応する日数を乗じて算定する である場合や,月の途中で住所の移転(W値の変動の有無は問わない。),住宅防音工事の実施があった場合等における当該月の慰謝料額については,1日当たりの単位額に請求期間に対応する日数を乗じて算定するのが相当である。 具体的には,同別紙の「始期」欄記載の日の属する月(始期月)又は「終期」欄記載の日の属する月(終期月)については,始期月又は終期月の全ての日が損害賠償の請求期間に含まれる場合には「単位損害賠償額(月額)」を,始期月又は終期月の一部の日のみが損害賠償の請求期間に含まれる場合には請求期間に含まれる日数に「単位損害賠償額(日額)」欄記載の額を乗じた額を当該月の慰謝料額と認めるのが相当である(「始期月額」欄又は「終期月額」欄記載の額)。また,始期欄記載の日の属する月の翌月から終期欄記載の日の属する月の前月までの月については,1か月当たり「単位損害賠償額(月額)」記載の額をもって,各月の慰謝料額と認めるのが相当である。上記に基づき計算した請求期間における慰謝料額の合計額は,同別紙の「金額」欄記載の額となる。 ⑶ なお,別紙「認容額一覧表」において,複数の行について「始期」欄及び「終期」欄の記載がある原告については,各行において計算された損害額(「金額」欄記載の金額)の合計額(「損害額合計」欄記載の金額)が請求できる慰謝料の総額となる(「始期」欄及び「終期」欄の記載が1行しかない原告につ いては,「金額」欄と「損害額」欄記載の額は同額となる。)。 ⑷ また,損害賠償の請求期間内に死亡した被承継人の損害賠償請求権についいては,各承継人が各人の相続分の割合に応じてこれを相続することとなる。 各被承継人らの損害賠償請求権の内容は,別紙「認容額一覧表(承継人)」の「被承継人番号」欄に記載のある被承継人らに各対応する額である(記載内 人が各人の相続分の割合に応じてこれを相続することとなる。 各被承継人らの損害賠償請求権の内容は,別紙「認容額一覧表(承継人)」の「被承継人番号」欄に記載のある被承継人らに各対応する額である(記載内容は別紙「認容額一覧表」に準じる。)。また,各承継人が相続した損害賠償請求権の内容は,上記の各被承継人の「単位損害賠償額(日額)」又は「単位損害賠償額(月額)」に各承継人の法定相続割合を乗じた額(1円未満切捨て。)を基礎とし,これに請求期間に対応する月数又は日数を乗じて算定するのが相当であり,具体的には,別紙「認容額一覧表(承継人)」の「原告番号」欄に記載のある承継人らに各対応する額となる。 5 遅延損害金原告らは,1か月ごとに慰謝料を算定し,当該月の翌月1日から遅延損害金を請求していることから,各月の損害賠償額に対する遅延損害金については,上記の請求内容を踏まえ,当該月の翌日1日から認めるのが相当である。 具体的には,別紙「認容額一覧表」及び「認容額一覧表(承継人)」の「始期」欄記載の月については,「始期月額」に対する当該月の翌日1日から,「始期」欄記載の日の属する月の翌月から「終期」欄記載の日の属する月の前月までの月については,「単位損害賠償額(月額)」に対する当該月の翌日1日から,「終期」欄記載の月については,「終期月額」に対する当該月の翌日1日から,それぞれ遅延損害金が発生することとなる。 遅延損害金の利率については,原告らが損害賠償を請求する期間のうち,もっとも早い日の属する平成27年7月から令和2年3月までの各月に発生する慰謝料額に対しては平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による割合,令和2年4月から本件口頭弁論終結日の属する令和3年9月までの各月に発生する慰謝料額に対しては同改正後の民法所定の年3分 対しては平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による割合,令和2年4月から本件口頭弁論終結日の属する令和3年9月までの各月に発生する慰謝料額に対しては同改正後の民法所定の年3分の割 合を適用することが相当である。 6 原告856について被告は,原告856が,アンケート式陳述書において,原告らが共通損害として主張する損害項目について全て否定していることから,損害の不存在について個別に立証がされたものとして,原告856の請求は棄却されるべきである旨を主張し,証拠(甲B2-740)によれば,原告856は,そのアンケート式陳述書において,原告らが主張する損害項目について全て否定する旨の回答をしていることが認められる。 しかしながら,共通被害は,原告ら全員について同一に生じているといえる性質,程度のものとして評価されているものであり,アンケート式陳述書において全ての損害項目を否定する旨の回答をした原告についても,直ちに共通被害としての損害の発生が否定されるものではない。 したがって,原告856についても,本件コンター内において航空機騒音に暴露されている以上,他の原告と同様に共通被害に基づく損害が発生しているというべきであり,慰謝料請求は認められる。 第4章結論以上によれば,原告らの請求については,主文記載の金員の支払を求める限度で理由があるから,これを認容し,その余の請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとする。 なお,上記認容部分については,仮執行宣言を付した上で,仮執行免脱の宣言をするのが相当である。また,仮執行宣言の開始時期については,本判決書正本が被告に送達された日から14日を経過したときと定めるのが相当である。 よって,主文のとおり判決する。 那覇地方裁判所沖縄支部 当である。また,仮執行宣言の開始時期については,本判決書正本が被告に送達された日から14日を経過したときと定めるのが相当である。よって,主文のとおり判決する。 主文 那覇地方裁判所沖縄支部 裁判長裁判官足立堅太 裁判官池本拓馬 裁判官中村公大 令和 年 月 日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 平成30年(ワ)第201号 損害賠償請求事件(以下「第1事件」という。) 令和2年(ワ)第33号 損害賠償請求事件(以下「第2事件」という。) 口頭弁論終結日 令和 年 月 日 被告は,別紙「認容額一覧表」及び別紙「認容額一覧表(承継人)」の「原告番号」欄に記載の訴訟費用は,全事件を通じ,これを9分し,その4を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 この判決は,第1項に限り,この判決が被告に送達された日から14日を経過したときは,仮に執行することができる。ただし,被告が別紙「認容額一覧表」及び別紙「認容額一覧表(承継人)」の「原告番号」欄に記載のある原告らに対し,同原告らに各対応する「担保額」欄記載の各金員の担保を提供したときは,担保を提供した原告との関係でその執行を免れることができる。 宜野湾市が宜野湾市真志喜に設置した自動騒音測定局県等測定局 以下,略語については,本文中に記載するほか,別紙「略語表」記載のとおりとする。 那覇地方裁判所沖縄支部平成24年(ワ)第290号,同第359号,平成25年 県等測定局 以下,略語については,本文中に記載するほか,別紙「略語表」記載のとおりとする。 那覇地方裁判所沖縄支部平成24年(ワ)第290号,同第359号,平成25年(ワ)第65号,同第383号損害賠償請求事件及びその上級審普天間基地第2次爆音訴訟 ⑴ 被告は,別紙「請求額一覧表(第1事件)」記載の 2 / 3 ページ別紙「請求額一覧表(第2事件)」の各原告に対応する「請求月額」欄記載の金員及びこれに対する当該月の翌月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,別紙「承継額一覧表」の「承継原告」欄記載の原告らに対し,それぞれ「分割承継債権」欄中の「承継債権額」欄記載の額及びうち「うち金額」欄記載の金額に対する「各死亡原告」欄の「相続開始日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2章 事案の概要 第1 事案の骨子 本件は,沖縄県宜野湾市に所在する普天間飛行場の周辺に居住し,若しくは居住していた者又はその相続人である原告らが,普天間飛行場において離着陸する米軍の航空機等の発する騒音等により生活妨害,睡眠妨害,健康被害,精神的被害等の被害を被っている旨主張して,普天間飛行場をアメリカ合衆国に米軍の使用する施設及び区域として提供している被告に対し,民事特別法2条に基づき,第1事件原告らについては第1事件の訴え提起日の3年前の応当日である平成2 3 / 3 ページ
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