平成13(ワ)2732 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年2月27日 名古屋地方裁判所
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判決文本文6,180 文字)

主文 1 被告Aは原告に対し,金2962万6709円及びこれに対する平成10年7月28日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告の被告Aに対するその余の請求,被告B,同Cに対する請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,原告と被告Aとの間においては,原告に生じた費用の2分の1を被告Aの負担とし,その余は各自の負担とし,原告と被告B,同Cとの間においては全部原告の負担とする。 4 この判決は第1項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告らは各自原告に対し,金4285万1931円及びこれに対する平成10年7月28日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は亡Dが被告A運転車両と衝突して死亡した交通事故により亡D及びその相続人である原告が被った損害につき,原告が被告A及びその両親である被告B,同Cに対し民法719条,709条に基づき損害賠償請求をした事案である。 1 争いのない事実等(1) 事故(以下「本件事故」という。)の発生ア発生日時平成10年7月28日午後11時50分ころイ発生場所埼玉県川口市a丁目b番c号付近道路ウ加害車両普通乗用自動車運転者被告Aエ被害者亡D(当時27歳)オ事故の態様道路横断中の亡Dと加害車両とが衝突した。 (2) 亡Dの死亡亡Dは本件事故により急性硬膜下血腫等の傷害を負い,平成10年8月4日,同傷害により埼玉県川口市所在の川口市立医療センターにおいて死亡した。 (3) 被告らの身分関係被告B,同Cは同Aの両親である。 (4) 原告の相続原告は亡Dの父で唯一の相続人であり,亡Dを相続した。 2 争点(1) 本件事故態様,被告Aの過失,過失相殺(原告の主張)本件事故は,被告Aの制限速度 は同Aの両親である。 (4) 原告の相続原告は亡Dの父で唯一の相続人であり,亡Dを相続した。 2 争点(1) 本件事故態様,被告Aの過失,過失相殺(原告の主張)本件事故は,被告Aの制限速度超過と前方不注視等の過失に基づき発生したものである。 なお,被告Aは無免許で本件事故前加害車両を長期間運転し,しかも,本件事故時には前方不注視で制限速度を超過する速度で加害車両を走行させ,また,本件事故後いわゆる引き逃げをしたもので,このような被告Aの運転態度は極めて悪質であり,その過失は重大である。 (被告らの主張)加害車両が亡Dと衝突したのは電柱の付近で,被告Aは,本件事故当時加害車両に先行していたタクシー及び電柱等の存在,亡Dの服装等から亡Dを本件事故直前に発見することは極めて困難であった。したがって被告Aの過失は軽微で,本件事故発生については少なくとも4割の過失相殺がされるべきである。 (2) 被告B,同Cの共同不法行為(原告の主張)被告Aは本件事故当時無免許で,本件事故前にも無免許運転で罰金刑に処せられた者であるが,なお免許を取得することなく本件事故直前加害車両を購入し,短期間に長距離を運転した。そして,加害車両の購入に当たっては被告Aの両親である被告B,同Cがローンの保証人となり,また,被告B,同Cは同Aが無免許であったことは知っていた。したがって本件事故発生については,被告Aのみならず,被告B,同Cも共同不法行為者として責任を負うものである。 (被告らの認否等)被告Aは本件事故当時28歳で,同B,同Cとは別個の住所に,独立の生計を営んでいたもので,これらの事情によると,被告B,同Cに共同不法行為者として責任はない。 (3) 亡D,原告の損害額,既払額第3 争点に対する判断 1 争点(1)について上記当事者間に争いの を営んでいたもので,これらの事情によると,被告B,同Cに共同不法行為者として責任はない。 (3) 亡D,原告の損害額,既払額第3 争点に対する判断 1 争点(1)について上記当事者間に争いのない事実等並びに証拠(甲7,10,乙1ないし10,11の①ないし⑩,12の①ないし⑨)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 (1) 本件事故現場はJRd駅から南方約200メートルの商店街を南北にはしる,2車線で,最高速度が毎時30キロメートルと指定されている市道(以下「本件市道」という。)である。本件市道は歩車道の区別はなく,幅員が約7.6メートルの平坦なアスファルト舗装となっていた。 (2) 被告Aは,平成5年2月に運転免許取消しの処分を受けて無免許であったが,平成10年6月ころ加害車両を購入し,本件事故まで約40日間に無免許で約2841キロメートルを走行していた。被告Aは,本件事故当日は一時帰宅後,ドライブに出かけ帰宅途中であった。そして本件事故の際には,本件市道を北から南に向けて毎時50キロメートルの速度で加害車両を走行させていたが,先行するタクシーが進路左側に停止中の車両をよけて対向車線を走行したので,これに追従して対向車線を走行した。そして被告Aは,本件事故直前に,加害車両直前の別紙図面A地点付近に道路を右から左に横断していた亡D(の黒い影様の物体)を発見した。なお別紙図面A地点の近くには同図面のとおり交差点があった。 (3) 被告Aは,衝突回避の措置を講ずることもできず,加害車両右前部を亡Dに衝突させて路上に転倒させた。 (4) 被告Aは,本件事故により加害車両のフロントガラスが割れる等して被害者に傷害を負わせたことは認識したが,そのまま走行を継続し,本件事故現場から逃走した。 以上のとおり認められる。被告らは,衝突 ) 被告Aは,本件事故により加害車両のフロントガラスが割れる等して被害者に傷害を負わせたことは認識したが,そのまま走行を継続し,本件事故現場から逃走した。 以上のとおり認められる。被告らは,衝突地点は別紙図面B地点であること,同所は電柱の付近で,被告Aは,前記のとおり先行していたタクシー及び電柱等の存在,亡Dの服装等から亡Dを本件事故直前に発見することは極めて困難であった旨を主張し,前掲証拠中には,本件事故についての刑事事件におけるその旨の供述等が存在する。しかし,前掲証拠及び弁論の全趣旨によって認められる本件事故現場に存在したガラス片の位置,散乱する形状及び本件事故直後の被告Aの供述に照らすと前記供述等は採用できず,他に前記認定を覆すに足りる証拠はない。 そして以上認定の事実によると,被告Aは無免許で加害車両を長期間運転し,しかも,本件事故時には制限速度を超過する速度で加害車両を走行させ,また,本件事故後いわゆる引き逃げをしたもので,このような被告Aの運転態度は極めて悪質であり,その過失は重大であるといわねばならない。 他方亡Dも,夜間,横断歩道でない道路部分を横断するのであるから,歩行者としても左右の安全を十分に確認すべき義務があったというべきであり,このような事情も考慮すると,前記のとおり本件事故当時加害車両が対向車線を走行してきたことを考慮しても,本件事故発生については亡Dについても少なくとも1割の過失があったと認め,後記亡D,原告の損害についても同割合の過失相殺をするのが相当である。 2 争点(2)について上記判断した事実並びに証拠(甲6の①ないし④,7,乙10,27,28)及び弁論の全趣旨によると,被告Aは前記のとおり免許取消処分により無免許であったが,平成10年2月ころ無免許運転で罰金刑に処せられたこと,しかるに びに証拠(甲6の①ないし④,7,乙10,27,28)及び弁論の全趣旨によると,被告Aは前記のとおり免許取消処分により無免許であったが,平成10年2月ころ無免許運転で罰金刑に処せられたこと,しかるに,免許を取得することなく同年6月20日ころ,いわゆる新車である加害車両を購入し,短期間に長距離を運転したこと,加害車両の購入に当たっては両親である被告B,同Cがローンの保証人となったこと,被告B,同Cは同Aが無免許であったことは知っていたが,同Aが加害車両の引渡しを受け,運転を開始するまでには免許を取得するであろうと考えていたこと,しかるに被告Aは業務多忙等を理由に免許を取得することなく運転を開始し,本件事故に至ったこと,しかし,被告Aは本件事故当時28歳で,同B,同Cとは別個の住所に,訴外女性といわゆる同棲をし,独立の生計を営んでいたこと,これらの事実が認められる。 以上認定の事実によると,確かに被告B,同Cにおいて,加害車両購入に当たり保証人となることがなければ,また,購入後も,運転をさせなければ,本件事故発生には至らなかったと考えられ得るもので,その意味で同被告らの行為は本件事故と全く因果関係がないとはいえない。しかし,前記認定の被告Aの年齢,独立の生計を営んでいた等の事情を考慮すると,本件事故自体につき被告B,同Cに共同不法行為者としての責任があったと認めるのは相当ではない。 3 争点(3)について(1) 治療費(請求なし) 307万9597円証拠(乙15)及び弁論の全趣旨によると,亡Dの治療費として頭書金額を要したことが認められる。 なお治療費についての原告の直接の請求がないが,後記のとおり過失相殺をした上で損益相殺をするので,損害として計上する。 (2) 文書料(請求額同じ) たことが認められる。 なお治療費についての原告の直接の請求がないが,後記のとおり過失相殺をした上で損益相殺をするので,損害として計上する。 (2) 文書料(請求額同じ) 2万6200円弁論の全趣旨によると,亡Dの文書料として頭書金額を要したことが認められる。 (3) 入院雑費(請求額1万0500円) 9100円前記認定の事実及び弁論の全趣旨によると,亡Dは深夜の入院後,死亡まで7日間入院したこと,その入院雑費は1日当たり1300円を要したことが認められる。 したがってその合計は頭書金額となる。 (4) 交通費(請求額6万8140円) 0円原告は後記のとおり,亡Dの看護のため通院をしたこと,その交通費として前記請求額相当を支出した旨主張するが,後記のとおり亡Dの看護の必要性を直ちに認めるに足りないことから,その請求は失当である。 (5) 看護費(請求額4万5500円) 0円原告は,亡D死亡まで前記川口市立医療センターにおいて付き添ったこと,その看護費として前記請求額相当を要した旨主張する。しかし,その付添いの必要性につき格別の証拠のない本件にあっては,直ちにこれによる原告の損害を被告ら側の負担すべき損害と認めるのは相当ではない。 (6) 葬儀費用(請求額156万2769円) 120万円証拠(甲5の①の①ないし⑨,同②ないし④,9)及び弁論の全趣旨によると,亡Dの葬儀に際し原告が前記請求額相当の葬儀費用を支出したことが認められるが,本件事故と因果関係があり,被告ら側の負担すべき葬儀費用としては頭書金額が相当である。 (7) 逸失利益(請求額同じ) 3723万8822円前掲事実並びに証拠 認められるが,本件事故と因果関係があり,被告ら側の負担すべき葬儀費用としては頭書金額が相当である。 (7) 逸失利益(請求額同じ) 3723万8822円前掲事実並びに証拠(甲4,8)及び弁論の全趣旨によると,亡Dは本件事故時27歳で,大学卒業後,株式会社Eに勤務していたこと,アメリカ合衆国で勤務した経歴も有していること,事故前年の平成9年の年収は434万0442円であったことが認められる。そして原告は,亡Dは67歳まで同金額相当の収入が得られたはずである旨主張し,これに基づき前記金額を逸失利益として主張する。 確かに平成10年賃金センサス第1巻第1表産業計・企業規模計・大学卒全年齢男性労働者平均賃金が689万2300円であることも考慮すると,亡Dは67歳まで40年間(年5分のライプニッツ係数17.1590)少なくとも前記金額相当の収入が得られたはずであると認めるのが相当である。そして,生活費控除を5割とすると,亡Dの逸失利益は頭書金額となる。 4,340,442 ×(1-0.5) ×17.1590=37,238,822(8) 死亡慰謝料(請求額3000万円) 2500万円本件事故の態様,亡D,原告の苦痛等を考慮すると,本件事故に伴う慰謝料は頭書金額をもって相当とする。 (9) 小計(請求額治療費を除き6895万1931円)治療費を含め6655万3719円以上の小計は頭書金額のとおりとなる。 (10) 過失相殺前記のとおり本件事故発生については亡D側に1割の過失があったと認められることから,同割合の過失相殺をすると,5989万8347円となる。 66,553,719×(1-0.1)=59,898,347(11) 弁護士費用(請求額390万円) 失があったと認められることから,同割合の過失相殺をすると,5989万8347円となる。 66,553,719×(1-0.1)=59,898,347(11) 弁護士費用(請求額390万円) 250万円本件事案の内容,認容額等を考慮すると,本件事故に基づく弁護士費用相当の損害は頭書金額をもって相当とする。 (12) 既払金証拠(甲11,乙15)及び弁論の全趣旨によると,本件事故につき自賠責保険から3000万円が支払われたこと,労災保険から療養(補償)給付として307万9597円の給付があったこと,なお労災保険からは遺族一時金として801万2000円の給付が検討されたが,本件事故による第三者損害賠償の調整として現実の給付はされないこと,他に特別支給金として460万3000円の給付があったことが認められる。 ところで,労災保険の特別支給金はその性質上,損益相殺の対象とはならない。この控除を主張する被告らの主張は失当である。次に療養(補償)給付については,その性質上,本件損害中治療費307万9597円につき過失相殺後の分に充当されるものである。 したがって上記損害金中文書料,入院雑費,葬儀費用,逸失利益,死亡慰謝料の小計6347万4122円に対し過失相殺をした5712万6709円及び弁護士費用250万円の合計5962万6709円から前記自賠責保険金を控除するのが相当である。 (13) 総計 2962万6709円以上の総計は頭書金額となる。 第4 結論以上によると,原告の本訴請求は,被告Aに対し損害金2962万6709円及びこれに対する本件事故日から完済まで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,被告Aに対するその余の請求,被 は,被告Aに対し損害金2962万6709円及びこれに対する本件事故日から完済まで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,被告Aに対するその余の請求,被告B,同Cに対する請求はいずれも理由がないからこれを棄却して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第3部裁判官北澤章功(別紙図面省略)

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