昭和37(う)2886 有印公文書偽造同行使等被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和38年5月8日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      被告人を懲役二年に処する。      但し、本裁判確定の日から五年間右刑の執行を猶予する。      押収の自動車運転免許証一通(東京高等裁判所昭

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判決文本文4,793 文字)

主文 原判決を破棄する。 被告人を懲役二年に処する。 但し、本裁判確定の日から五年間右刑の執行を猶予する。 押収の自動車運転免許証一通(東京高等裁判所昭和三十七年押第一一一九号の1)はこれを没収する。 理由 本件控訴の趣意は、東京地方検察庁検察官検事山本清二郎名義の控訴趣意書に記載されているとおりであり、これに対する答弁は、被告人名義の上申書、被告人の弁護人田中義之助、同湯浅実、同渡辺真一名義の答弁書に記載されているとおりであるから、いずれもこれを引用する。 検察官の控訴趣意について所論は先ず原判決は公訴事実中「被告人が原判示第二の偽造自動車運転免許証を携帯して昭和三十五年六月頃から同三十七年七月五日までの間東京都内において自家用普通自動車第○す○×△□号等を運転し、もつて偽造公文書を行使した」という点について、被告人が右日時、場所において自動車を運転した際、本件偽造にかかる運転免許証を携帯していた事実を認めながら、これを偽造公文書の行使罪を構成しないという理由によつてこれを無罪としたのであるが、それは法令適用の誤りで、右誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるのみならず、偽造運転免許証を携帯し自動車を運転した場合、偽造公文書行使罪が成立するとした最高裁判所の判例(昭和三十六年五月二十三日最高裁判所第三小法廷決定)に違背しているというのである。 よつて按ずるに、被告人が原判示自動車運転免許証の偽造後、昭和三十五年六月頃から昭和三十七年七月五日までの二年余の間運転免許を受けないで引き続き普通自動車を東京都内等において運転し、右運転の際道路交通法(その施行前においては道路交通取締法)の規定に基づき警察官から運転免許証の提示を求められた場合は、右偽造免許証を恰か を受けないで引き続き普通自動車を東京都内等において運転し、右運転の際道路交通法(その施行前においては道路交通取締法)の規定に基づき警察官から運転免許証の提示を求められた場合は、右偽造免許証を恰かも真正なもののように装つて警察官に提示してその閲覧に供し、自分の無免許運転の事実をかくそうという考の下に、絶えず右偽造運転免許証を携帯していたものであることは、原判決の認定しているところであつて、証拠に徴しても間違ないと認められるところ、元来道路交通法第九十五条第一項(その施行前においては道路交通取締法第九条第三項)によれば、自動車運転の際には、当該自動車等に係る運転免許証の携帯義務か課せられており、同法第六十七条第一項(道路交通取締法第二十三条の二第二項)によれば、特定の場合には警察官がその提示を求めることができるとし、それに応じない場合につき罰則を設けてい<要旨>るのであつて、自動車運転の際における免許証の携帯は、自動車運転の不可欠の要件であるというべく、自動</要旨>車の運転行為ということは、通常の場合自動車運転免許証を携帯して運転しているということを外部に対して表明する行為であるともいい得べき筋合であるから、自動車運転に際し運転免許証を携帯しているということは、それ自体運転免許証という公文書をその本来の用法に従つて行使しているものであるというを妨げないというべきである。而して、これを本件についてみるに、本件では偽造運転免許証を携帯しながら自動車を運転し、警察官から提示を求められた場合には、これを提示してその運転が正当であることを主張しようとし二年間も運転していたが、現実に警察官の要求を受けて提示するという場面には遭遇しなかつたのであるが、かくの如き場合でも、外部に対し右不正の運転免許証を正当なものと主張し、要求を受ければ現実にこれを閲 二年間も運転していたが、現実に警察官の要求を受けて提示するという場面には遭遇しなかつたのであるが、かくの如き場合でも、外部に対し右不正の運転免許証を正当なものと主張し、要求を受ければ現実にこれを閲覧させることを辞さないということを表明しているというべきで、換言すれば、一定の場合に警察官に対しこれを閲覧し得べき状態においているともいい得べきであり、通常の偽造文書行使の態様である相手方に対する提示とか交付、いわゆる備付文書の行使の場合における備付と同視すべき行為があつたといい得べきであるから、この限度においていわゆる偽造公文書である偽造運転免許証の行使があると称して差支がないものと認められ、それ以上他人に対する何らかの外部行為によつて、右偽造運転免許証を閲覧し得べき状態におくことが行使罪成立のため必要であるというべきではない。原判決はこの点について、文書の行使の方法として提示又は交付或いは備付行使という態様の存することについて説明し、偽造運転免許証を携帯して運転をしたに過ぎない場合には、その何れにも該当しないから、文書の行使があるとするには足りないと論じているが、それは文書の行使ということに関する従来の解釈に捉らわれ過ぎた観があり、自動車運転の場合における運転免許証の携帯という特殊の事態における文書の行使ということを解明するに欠けるところがあるものといわなければならない。 果して然らば、本件においては、原判決の認定する事実を前提としても、偽造運転免許証という偽造公文書の刑法第百五十八条第一項第百五十五条第一項に該当する行使の所為があつたものというべきであり、かく解することは所論引用の最高裁判所第三小法廷の昭和三十六年五月二十三日付決定に副う所以でもあると認められるところ、前段説明のとおり原判決は以上と判断を異にし、右公訴事実については うべきであり、かく解することは所論引用の最高裁判所第三小法廷の昭和三十六年五月二十三日付決定に副う所以でもあると認められるところ、前段説明のとおり原判決は以上と判断を異にし、右公訴事実については被告人は無罪たるべきものとしたのであるから、原判決には刑法第百五十八条の解釈、適用を誤つた違法があるものといわなければならない。すなわち、検察官の所論は結局その理由かあるに帰し、他の論旨につき判断を加えるまでもなく原判決はこの点において破棄を免れないというべきである。 よつて、刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十条に則り、原判決を破棄すべく、但し本件は訴訟記録並びに原裁判所において取り調べた証拠によつて直ちに判決をすることができる場合であると認めるので、同法第四百条但書により当裁判所において更に左のとおり被告事件につき判決をするものとする。 本件について、当裁判所が認めた罪となるべき事実は、原判示第二の事実中、原判示公文書を偽造したとある部分以降を「被告人は昭和三十五年六月頃から同三十七年七月五日までの間右偽造の普通自動車運転免許証を携帯して、東京都内等において、自家用普通自動車第○す○×△□号等を運転し、もつてこれを真正に成立したもののように装い行使した外右七月五日午後十時頃東京都江東区ab丁目c番地先の路上において、警視庁中央警察署司法巡査Aに対し、これを真正に成立したもののように装い提出して行使し」と追加訂正する外、総べて原判決が適法に確定したところと同一であるから、これを引用すべく、右追加部分は原判示第二事実について原判決が掲げた各証拠によりこれを認むべきものとする。 法律に照らすに、被告人の原判示第一の所為は、刑法第二百三十五条に、同第二(但し、前段認定の如く追加訂正したもの)の所為中公文書偽造の点は、同法第百五十五条第一項に、同行 れを認むべきものとする。 法律に照らすに、被告人の原判示第一の所為は、刑法第二百三十五条に、同第二(但し、前段認定の如く追加訂正したもの)の所為中公文書偽造の点は、同法第百五十五条第一項に、同行使の点は、同法第百五十八条第一項第百五十五条第一項に、同第三の(一)の所為は、道路交通法第六十四条第百十八条第一項第一号に、同(二)の所為は同法第六十五条第百十八条第一項第二号同法施行令第二十七条に、同第四の二個の所為は、いずれも刑法第二百十一条前段、罰金等臨時措置法第三条第一項第一号に、同第五の所為は、道路交通法第七十二条第一項前段第百十七条にそれぞれ該当するところ、原判示第二の公文書偽造罪と同行使罪との間には手段結果の関係があるので、刑法第五十四条第一項後段第十条により犯情の重い偽造公文書行使罪の刑に従い、原判示第三の(二)の罪と原判示第四の二個の業務上過失致傷罪とは、いずれも一個の行為で数個の罪名に触れる場合であるから、同法第五十四条第一項前段第十条により犯情の重いBに対する業務上過失致傷罪の刑に従い、右各所定刑中道路交通法違反罪については懲役刑を、業務上過失致傷の罪については禁錮刑をそれぞれ選択し、以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから、同法第四十七条本文第十条により最も重い偽造公文書行使罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で刑の量定をすべきものである。而して、本件が自動車の運転に関する多種多様な犯罪を網羅しており、犯情の軽くないものであるということは、原判決も認めているところであり、被告人に対してはきびしい非難が向けられなければならないことも多言を要しないところ、検察官の所論は、被告人の所為はその動機、態様、結果の重大なこと等において、情状酌量の余地の存しないことを主張し、原判決が被告人に対し懲役刑の執行を猶予した措置を難ずるも ことも多言を要しないところ、検察官の所論は、被告人の所為はその動機、態様、結果の重大なこと等において、情状酌量の余地の存しないことを主張し、原判決が被告人に対し懲役刑の執行を猶予した措置を難ずるものであつて、その所論は傾聴に値すべきものがあり、被告人の本件犯罪に対しては、輙く刑の執行猶予を与えるべきではないと考えられる節もあるが、一面、被告人にも斟酌すべき事情があることは原判決の説明するとおりであり、記録によれば、被告人は犯罪後において潔よく自己の非を認め、自動車セールスマンの職を辞し、今後自動車の運転はもちろん、自動車に関係する仕事には従事しないと誓い、原判示第四の事故の被害者らに対する治療費や慰藉料、損害賠償の支払いにも誠意をつくし、示談を遂げているのであつて、これらによつても被告人の反省、悔悟の実があることはこれを認め得る外、なお、被告人の配偶者、肉親らにおいても、被告人の更生のための努力に協力をおしまないことを誓つている事情も認められるので、これらの有利な事情のある被告人に対しては、その罪責に対し懲役二年の刑を科すべきではあるが、実刑の執行はこれを猶予し、被告人の自重自戒にまつて更生の実をあげさせるべきものであるとした原判決の量刑は、これを果断な措置として首肯し得ない限りではないというべきであるから、これを強ち量刑不当として非難の対象とするべきではないと認め、当審においてもこの原判決の態度を踏襲すべきものとし、よつて被告人を懲役二年に処した上、刑法第二十五条第一項を適用して本裁判確定の日から五年間右刑の執行を猶予することとし、押収の自動車運転免許証一通(東京高等裁判所昭和三十七年押第一一一九号の1)は原判示第二の偽造公文書行使の犯罪行為の組成物件で、何人の所有をも許さないものであるから、同法第十九条第一項第一号第二号によりこ 動車運転免許証一通(東京高等裁判所昭和三十七年押第一一一九号の1)は原判示第二の偽造公文書行使の犯罪行為の組成物件で、何人の所有をも許さないものであるから、同法第十九条第一項第一号第二号によりこれを没収すべきものとし、主文のとおり判決する。 (裁判長判事三宅富士郎判事東亮明判事井波七郎)

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