平成19年(ワ)第574号損害賠償請求事件判決主文 被告は原告に対し,4076万3920円及びこれに対する平成15年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は被告の負担とする。 この判決は仮に執行することができる。 事実 及び理由第1原告の請求主文と同旨第2事案の概要 本件は,被告が,原告の経理担当の従業員であったa(以下「a」という。)が原告の資金を不正に流用して,株式会社A(以下「A」という。)との取引(以下「本件取引」という。)を開始したが,本件取引が公序良俗違反,一任によるノミ取引(相対売買)であり違法性が高く,被告において,aが不正流用していたことを知っていたか,知らなくとも取引途中で知って不正流用を唆した,あるいは被告において断定的判断を提供したので,aが被告に対し不法行為に基づく損害賠償請求権を有しており,これを原告がaに対して有する損害賠償請求権(原告の資金を不正流用していたことに基づくもの)をもって上記のaの被告に対する損害賠償請求権を代位行使して,原告が被告に対し,損害賠償を求めるというもので,選択的に,原告が被告に対し,被告がaに対し原告の資金を不正に流用することを唆し,又は脅迫して原告の資金を不正流用させ,若しくはaの不正流用を知りながら,その資金でAとの取引をしたものであるから,これが原告に対する直接の不法行為に該当するなどとして損害賠償を求めるという事案である。 前提事実(争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 原告は,昭和52年に設立された一般印刷業を目的とする会社である。 (2) Aは,昭和43年に設立され,平成13年に「外国為替に関する業務」を定款上の目的に追加し,外国為替証拠金取引の受託業務 (1) 原告は,昭和52年に設立された一般印刷業を目的とする会社である。 (2) Aは,昭和43年に設立され,平成13年に「外国為替に関する業務」を定款上の目的に追加し,外国為替証拠金取引の受託業務を始めた。平成17年6月に商号を株式会社Bと変更し,さらに,同年7月に商号をC株式会社と変更した(以下,これらの商号変更した会社も「A」という。)。平成17年7月に金融庁の検査が行われたところ,債務超過及び委託証拠金その他の保証金等について自己の固有財産と区分しておらず,法律に基づく管理をしていない事実が判明し,営業停止処分となり,同年10月5日破産宣告を受けた。破産管財人の報告によれば,委託者への配当は全くないとのことである。Aは,顧客から外国為替金証拠金取引に関する個別の売買注文がされる都度,これに対応する同種同量の取引を海外金融機関等との間ではしておらず,AがシンガポールのDとシンガポールのEとの間で通貨取引及び商品先物取引を行っていたが,破産開始時点における預託金等の残高としては,4800万円であり,他方,Aの顧客との間の外国為替証拠金取引の預託金は21億円,海外商品先物取引の取引保証金が16億円であったのに比すと極めて僅少である。(甲第5号証の1,2,甲第6号証,甲第7号証の1ないし4,平成19年12月18日の調査嘱託の結果)(3) aは,原告の従業員であって,昭和60年当時経理担当の課長をしており,その後も経理業務を担当していた。 (4) 被告は,昭和60年ころには,商品取引員であるF株式会社(以下「F」という。)の第2事業部第2営業部長の職にあって,商品先物取引の勧誘等を行っていた。 (5) aの一連の取引アFにおける取引(昭和60年から平成2年)aは,昭和60年3月から平成2年11月まで,Fにおいて,被告を担当者として 長の職にあって,商品先物取引の勧誘等を行っていた。 (5) aの一連の取引アFにおける取引(昭和60年から平成2年)aは,昭和60年3月から平成2年11月まで,Fにおいて,被告を担当者として大豆等の先物取引を行った。aは,平成3年3月から平成14年8月までb(以下「b」という。)に対して,商品取引をするための金員を交付していた(弁論の全趣旨)。 イAにおける取引aは,平成13年10月から平成15年10月まで被告を担当者としてAと外国為替証拠金取引の一種である通貨証拠金取引である本件取引を行った。 (6) Fの従業員であった被告とcは,昭和61年7月から平成元年7月まで,株式会社Gの経理担当者であったdと共謀して株式会社Gの普通預金等を業務上横領し,そのことで,被告は,懲役刑を受けた(甲第20号証)。 (7) 本件取引にかかる委託契約の締結aは,平成13年10月19日,Aの取締役で,以前Fとの取引でFの担当者であった被告との間で,通貨証拠金取引を行う旨の契約を締結した。 (甲第9号証の1ないし3)(8) 本件取引aは,平成13年10月25日から平成15年10月31日までの間に,別紙のとおり,Aに対し「a口座」「e口座」及び「f口座」名義で取引をし(入出金の日付については,そのころという趣旨である。),合計6950万円を入金し,合計2873万6080円を出金(次の和解金1000万円を含む。)したので,差し引き4076万3920円が戻っていない。 (9) aとAは,平成15年11月5日,和解金としてAが1000万円を支払うことで和解をした。 (10) aが行った原告の資金の不正流用が平成17年7月1日発覚し,平成18年8月3日,名古屋地方裁判所において,懲役2年6月の実刑判決を受け,同判決は同月8日確定した。 争点及び争点につい (10) aが行った原告の資金の不正流用が平成17年7月1日発覚し,平成18年8月3日,名古屋地方裁判所において,懲役2年6月の実刑判決を受け,同判決は同月8日確定した。 争点及び争点についての当事者の主張本件の主たる争点は,①債権者代位訴訟による損害賠償請求については,本件取引が違法であったか否か(争点1)につき,本件取引が公序良俗違反か,一任によるノミ取引であって違法なものか,被告による不正な流用のそそのかし(教唆)及び脅迫があったか,断定的な判断の提供(損を取り戻せることの強調)及び危険性についての説明義務違反があったか,適合性原則違反があったか,原告のaに対する債権額(争点2),仮に,違法であったとしても示談の成立によって被告に対するその後一切の請求を放棄したか(争点3)であり,②被告の原告に対する直接の不法行為に基づく損害賠償請求ついては,本件取引によって原告に損害が発生したことにつき被告に過失があるか否か(争点4)であり,③両者の請求について,過失相殺(争点5),aの被害弁償の額(争点6),消滅時効の成否(争点6)である。これらの争点についての当事者の主張は次のとおりである。 (1) 争点1(本件取引の違法性)についてア原告の主張(ア) 公序良俗違反通貨証拠金取引は,賭博に該当し,公序良俗違反となる。 (イ) 一任によるノミ取引(相対売買)の違法性本来先物取引(もしくは信用取引)は委託者が自らの判断で取引を行うべきものであるところ,被告はあたかも被告に任せておけば被告が誠実に委託者のために売買するかの如き言辞を弄して一任を取り付けた。 しかし,真実は,aとAとの取引は相対売買であって,aが預託した損害金の金員は,Aの収入となっている。このように委託者(顧客)が売買損を発生させたときに,受託者にその損に見合った益 任を取り付けた。 しかし,真実は,aとAとの取引は相対売買であって,aが預託した損害金の金員は,Aの収入となっている。このように委託者(顧客)が売買損を発生させたときに,受託者にその損に見合った益が発生するのであって,損益が相反する関係にある。勧誘する側である被告が,このような利害相反を説明しないまま,一連の取引を行って委託者に損害を与えることは信頼を裏切る行為であり,違法である。 (ウ) 不正な流用のそそのかし(教唆)及び脅迫aは,Fで取引をしていた当時である昭和61年4月上旬ころ,被告に対して,原告の資金を不正に流用して証拠金を調達している旨を説明した。Aで取引をしている間も,被告は,aの不正がばれて逮捕されるのではないかという不安の気持ちを利用して本件取引を継続することで原告に金員を返還することができるとの期待を抱かせていたのであって,被告がaに対し原告の資金の不正な流用をそそのかしたといえる。 (エ) 断定的な判断の提供(損を取り戻せることの強調)及び危険性についての説明義務違反被告は,aが原告の資金を商品先物取引に使い込んでいることを承知していたので,通貨証拠金取引は商品先物取引と違ってあたかも安全性が高く確実に利益が得られて今までのFなどの損失を取り戻すことができるという点を強調した。この勧誘は,通貨証拠金取引が内包する損失の危険性を説明しないという義務違反にも当たる。 (オ) 適合性原則違反商品先物取引については,昭和48年4月に行政当局の要請を受けて,全国の商品取引所が禁止すべき行為として12項の指示事項を定め,昭和53年8月に禁止すべき行為として2項目を追加した。これらの指示事項に反した場合には当該取引員及び外務員に対し,取引所が厳しい制裁を科すことになっている。そして,この指示事項の中に,取引の不適格者として 8月に禁止すべき行為として2項目を追加した。これらの指示事項に反した場合には当該取引員及び外務員に対し,取引所が厳しい制裁を科すことになっている。そして,この指示事項の中に,取引の不適格者として「農業・漁業等の協同組合,信用組合,信用金庫等及び公共団体等の公金出納取扱者」が掲げられている。企業の経理担当者は明示されていないものの,他人の金銭の出納取扱者であることが同一であり,横領誘発の危険性が高いので,不適格者というべきである。 被告が逮捕される直前である平成2年11月29日,被告は原告との間で公正証書(甲第11号証の4)を作成し,aの不正を知らなかったという証拠を作成したものと考えられる。 イ被告の主張(ア) 公序良俗違反,ノミ取引の違法性について商品取引所は,問屋であるから,本来,商法555条により問屋は介入権を有するのであるが,商品市場における公正な価格の形成を阻害する恐れ,商品取引員の経営の健全性を害する恐れ,商品取引員が商品取引所へ定率会費を支払わないことを理由として,介入権を禁止しノミ行為禁止規定が設けられた。そして,平成16年改正の金融先物取引法においては,店頭金融先物取引を認めており,顧客と業者との相対取引であって,ノミ行為に該当する形態であるが,これを許容しており,その趣旨は,平成16年改正法によって許容されたものではなく,従来から契約の自由として許容されていたものを確認したものである。 また,賭博とは,偶然の事象によって勝負を決するものであるが,偶然性はどのような契約にも少なからず伴うものであって,むしろ,合理的な根拠に基づかないリスクを当事者が賭けによって新たに生み出す点に禁止の根拠を求めるべきである。通貨証拠金取引は,為替相場の変動が売買損益に反映されるものに過ぎず,為替相場は通貨の需給といった合理的な 拠に基づかないリスクを当事者が賭けによって新たに生み出す点に禁止の根拠を求めるべきである。通貨証拠金取引は,為替相場の変動が売買損益に反映されるものに過ぎず,為替相場は通貨の需給といった合理的な根拠によって決定されるものである。したがって,通貨証拠金取引は賭博には該当しない。 (イ) 不正な流用のそそのかし(教唆)及び脅迫についてそもそも被告は,aが原告の資金を不正流用をしていたことについて,Fとの取引当時もAとの取引の際にも知らなかった。aは,捜査段階及び刑事事件の公判廷においても,被告から脅迫,教唆されたとは述べていない。 (ウ) 断定的な判断の提供(損を取り戻せることの強調)及び危険性についての説明義務違反aは,Fとの間において数年間にわたって商品先物取引を行い,数千万円の損失を被った委託者であり,証拠金取引・相場取引の仕組みや危険性については精通していた者である。また,Aとの取引開始にあたっては,通貨証拠金取引のパンフレットにより,その仕組みや危険性の説明を行い,aはこれを理解した上で取引に参加したものであるから,被告に説明義務違反や断定的判断の提供はない。 (エ) 適合性原則違反について商品先物取引については,昭和53年8月の「取引所指示事項」は,「農業・漁業等の協同組合,信用組合,信用金庫等及び公共団体等の公金出納取扱者」を不適格者と定め,aは民間企業の経理担当者であり,これに該当しない。また,商品先物取引においては,勧誘不適格者であっても,本人から取引をしたい旨理由を明記した申出書があり,新規委託者保護管理規則に定める総括責任者が正当な理由があると認める場合には取引をすることができたのである。また,外国為替証拠金取引については,商品先物取引におけるような規制は存在していない。 (2) 争点2(原告のaに対する損害賠 責任者が正当な理由があると認める場合には取引をすることができたのである。また,外国為替証拠金取引については,商品先物取引におけるような規制は存在していない。 (2) 争点2(原告のaに対する損害賠償請求権の存在及び額)についてア原告の主張原告のaに対する損害賠償請求権は,6億3000万円であり,aから被害弁償として3275万8928円の弁済を受けたが,これらは,T銀行において発生した利息金に充当しており,aが原告の資金を流用した額そのものの弁済には充てられていない。 イ被告の主張争う。 (3) 争点3(aによる損害賠償請求権の放棄)についてア被告の主張aとAとは,平成15年11月5日,Aがaに和解金1000万円を支払うことによって和解が成立した(乙第10号証)。そして,aは,同和解によって,aは,Aに対し,一切の異議申立てをしないことを約束した。 この和解の趣旨は,1000万円の受領によって,全ての紛争を解決するとの合意であり,被告に対する損害賠償請求権を留保するものではなかった。 イ原告の主張和解として有効であるための前提として,当事者双方が双方の権利内容を理解した上で相互に譲歩して合意に達することが必要であるが,そのような前提を欠いていたので和解としての効力はない。 (4) 争点4(被告の原告に対する直接の不法行為にかかる過失)についてア原告の主張商品先物取引や金融先物取引等においては,古くから経理担当者を狙って取引をさせ,横領を唆して誘発させる事案が多いことから,民間事業者であっても経理担当者は契約当事者としては不適格者であった。被告は,aが原告の資金を流用していたことを知ったうえで,aの不正が発覚して逮捕されるのではないかという不安の気持ちを利用するとともに,本件取引を継続することで原告に流用した金員を返還す であった。被告は,aが原告の資金を流用していたことを知ったうえで,aの不正が発覚して逮捕されるのではないかという不安の気持ちを利用するとともに,本件取引を継続することで原告に流用した金員を返還することができるとの期待を抱かせて,本件取引を継続させていたのであって,被告がaに対し原告の資金の不正な流用をそそのかしたものであるといえる。 イ被告の主張被告は,aが原告の資金を不正流用していたことを全く知らなかった。 被告は,aから,常々自分が何カ所かの土地を保有する資産家であると聞いており,1回の取引額が100万円から200万円程度であり,差し引き4500万円程度が足かけ5年の間に預託されたに過ぎず,aの取引額が巨額すぎて不自然と感じたことはない。仮にaが資金を不正流用していたとすれば,原告の決算期に当然発覚するはずであり,aが円滑に本件取引をしていたことは,被告においてaの自己資金による取引であることを信用させるに十分であった。現にa自身,取引終了時の公正証書作成に際して,当時G事件の報道が大々的になされていたにも拘わらず,自己の不正流用を告白していない。取引が終了するということは不正に流用した金員の弁償の余地がなくなることを示すものであるが,それにも拘わらず,aは告白していない。また,aは,自らの刑事事件において,被告らがaの不正流用を知っていたとは一切述べていない。仮に,原告が主張するように,aが被告やbに弱みを握られて脅かされ,取引をすることを唆されていたのであれば,aの有利な情状として当然その刑に影響を与える事実であるから,何ら主張していないことは不自然である。さらに,aの原告の資金の不正流用は,平成17年7月ころ,新聞各社に掲載され,そのような中で,aから被告に電話があり,「実は会社の資金を不正に流用していた。今まで隠し していないことは不自然である。さらに,aの原告の資金の不正流用は,平成17年7月ころ,新聞各社に掲載され,そのような中で,aから被告に電話があり,「実は会社の資金を不正に流用していた。今まで隠していて申し訳ないが,事情を説明したい。原告のやり方にも憤りがある。」と接触してきたので,Aグループの管理部門に在籍していたgに対し面談及び事情聴取を依頼したものである。 (4) 争点4(過失相殺)についてア被告の主張aは,Fとの取引において多額の損失を出し,公正証書を作成して取引を精算したものである。その取引経験年数,投下資金額に照らして,aはこの種の取引に精通しているといえる。そのaが,同種の取引に参加して損失を被ったとしても当該損失の拡大にはaの多大な過失が寄与したものというべきであり,過失相殺がされるべきである。 また,aは,昭和60年から不正流用していたのであるから,毎年の度重なる監査によって不正が発覚しなかったことは,原告の経理部においてaへの権限が集中していたこと,取引銀行から送付される当座勘定照合表を確認しなかったことにあり,原告自らの監査体制の不備の責任を転嫁するものであって,信義に反し,原告の本件損害賠償請求自体,権利の濫用である。少なくとも,原告の本件損害発生についての原告自身の長期に亘る重大な過失である。 イ原告の主張争う。権利の濫用ないし信義則を理由に原告の請求を排斥することは法の趣旨に反する。 (5) 争点5(aの被害弁償)について争点2と同じ(6) 争点6(時効の主張)についてア被告の主張(ア) aのAとの取引は,平成15年10月,遅くとも11月には終了している。他方,本件訴訟の訴え提起は平成19年2月9日である。また,訴えの追加的変更により,被告の原告に対する直接の不法行為に基づく,原告の損害賠償 引は,平成15年10月,遅くとも11月には終了している。他方,本件訴訟の訴え提起は平成19年2月9日である。また,訴えの追加的変更により,被告の原告に対する直接の不法行為に基づく,原告の損害賠償請求権の主張を追加したのは,平成20年8月7日の第10回弁論準備手続期日においてである。 (イ) aの被告に対する,不法行為に基づく損害賠償請求権が仮にあったとしても,被告のaに対する教唆あるいは脅迫がなくなれば,その時点から損害賠償請求権の行使は可能であったのであり,遅くとも取引終了時からは損害賠償請求権を行使することができた。そうすると,取引終了時から3年を経過している。被告は,平成20年7月4日の第9回弁論準備手続期日において消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 イ原告の主張(ア) 消滅時効の前提としては,権利行使が可能であることを要するが,平成17年夏にaの不正行為が発覚する前には,被告に対する損害賠償請求権を行使することはできない状態であった。原告が確定的に権利行使をすることができるようになったのは,本件訴訟の提起日である平成19年2月9日である。 (イ) 原告の被告に対する,不法行為に基づく損害賠償請求権については,基本的な請求原因を同じくする請求を本訴の提起時にしていたのであるから,平成19年2月9日に本件訴えの提起によって時効が中断したといえる。 (ウ) 原告は,平成17年7月1日に発覚した出来事について,明確な証拠に基づいて当時の状況をできるだけ正確に再現したものであって,消滅時効を理由に原告の請求を排斥することは法の趣旨に反する。 第3当裁判所の判断 当裁判所は,原告が被告に対して直接の不法行為に基づく損害賠償請求権を認めることができると考える。以下,説明する。 2(1) 前記前提となる事実,甲第2号証の1,2,甲 る。 第3当裁判所の判断 当裁判所は,原告が被告に対して直接の不法行為に基づく損害賠償請求権を認めることができると考える。以下,説明する。 2(1) 前記前提となる事実,甲第2号証の1,2,甲第9号証の1ないし3,甲第11号証の1ないし4,甲第15号証,甲第16号証の2,甲第20号証,甲第22号証の1,2,甲第23ないし第26号証,甲第33号証の1,2,甲第34号証の1,2,甲第35号証の1,2,甲第36号証,乙第4,第7号証,第10,第11,第17,第21,第22号証,証人g及び証人aの各証言並びに被告本人尋問の結果(一部)によれば,次の事実を認めることができる。 アaは,原告の従業員であって,経理担当の課長をしていた。昭和60年1月18日ころ,Fの従業員のh(以下「h」という。)が原告を訪ね,事務員から「だれに御用ですか。」と尋ねられて,「経理の責任者の方お願いします。」と言って,aと面会の上,名刺交換をした。aの名刺には「総務部経理課長」という肩書が記載されていた。当日は短時間の面会であったが,後日電話をするということになった。 イhは,同年3月12日,aに電話をして,翌13日に会うことになり,その後,Fと取引することになった。hは,同月14日,上司であるi(以下「i」という。)とともに,aを訪問し,原告の事務所近くの喫茶店で,契約締結の話をし,以後,Fと大豆等の先物取引を開始した。 ウその後,aは,先物取引の損を出し,同年5月下旬ころ,iから,1週間以内に証拠金を240万円用意して欲しいと言われ,会社の資金を不正流用することを思いつき,不正流用の上,iに240万円を交付した。なお,aは,それ以前の昭和57,8年ころに,ポーカー賭博によってできた負債を返済するために原告の資金280万円程度を不正流用したことがあった。 を思いつき,不正流用の上,iに240万円を交付した。なお,aは,それ以前の昭和57,8年ころに,ポーカー賭博によってできた負債を返済するために原告の資金280万円程度を不正流用したことがあった。 aは,大きく損失を出したため,Aのiの上司に話をしたいと思い,部長であった被告と話をした。aのFとの取引は,昭和61年3月中旬ころ以降は,被告が担当者となった。 エ平成2年11月20日,Gの元従業員で経理担当者であったdが穀物相場に手を出して,会社の資金約8億3000万円程度を着服したことについて,d及びFの京都支店長cを業務上横領等の疑いで逮捕した旨の新聞報道がされた。なお,dに対して商品先物取引を持ちかけるために訪問したのは,hであり,iも取引開始に関与した。 オaは,同月29日,被告がFの代理人となって,Fの管理部長であるzも同席の上,Fとの間で,商品先物取引(H取引所・金・銀・白金,I取引所,J取引所・小豆・若葉,K取引所・綿糸)に関し,昭和60年3月15日から平成2年11月26日まで行った取引について異議のないことを確認し,売買損金が4523万4930円であり,Fがaに275万1070円を支払って,aとF間の問題は円満に解決したものとし,今後,刑事,民事を問わず何らの異議申立てないし金銭請求をしないこととする内容の公正証書を作成した。この取引によるaの売買損金は4523万4930円と記載されていた。当時,G事件があったことから,Fの営業部では,大口顧客について,解決念書をとるか,公正証書を作成するように指示されており,aも大口顧客の1人であった。 カ被告は,公正証書を作成した翌日である同月30日,株式会社Gの経理担当者であったdと共謀して,業務上横領の罪等を犯したとして逮捕され,その後,有罪判決を受け,平成5年11月25日ま 人であった。 カ被告は,公正証書を作成した翌日である同月30日,株式会社Gの経理担当者であったdと共謀して,業務上横領の罪等を犯したとして逮捕され,その後,有罪判決を受け,平成5年11月25日まで服役した。 キaは,Fとの関係で公正証書を作成した後にも,被告の上司であり,Fの事業部長であったbを通じて先物取引をするとのことで金員を交付し,bがFを退社したのちも,bに対して取引のための金員の交付を継続していた。また,aは,bからの要求で,金員をb名義の口座やbの妻名義の口座に振り込んでいたり,時にはbの個人的な必要から金員を貸与したりした。 ク被告は,平成13年8月ころ,aに電話連絡をして,aは,平成13年10月19日,Aとの間で,本件取引を開始するために約諾書を締結し,同年10月25日からAとの取引が開始された。aは,被告の指示で,平成14年10月11日,e名義,同年12月12日,f名義で,それぞれ通貨証拠金取引の約諾書を締結し,架空名義の口座を開設した。aは,売買報告書なども途中から受領しなかった。 ケaとAとの取引は,一時,2億3000万円程度の利益が出ていたこともあったが,大きく利益を出すために取引を継続し,最終的には損失を発生させた。 コaは,平成15年11月5日,Aのj社長との間で,1000万円の和解金をもらうことで本件取引について異議を述べないことの和解書を取り交わした。和解書(乙第10号証)には,aが幾ら損をしたかについては記載されておらず,預かり金が1806万7101円で総支払額が2806万7110円と記載されている。しかしながら,本件取引によるaの損金額は4076万3920円であった。 サaの不正流用は,平成17年7月1日に原告の発覚するところとなった。 シgは,Lという商品先物取引の会社の渉外係の顧問で 。しかしながら,本件取引によるaの損金額は4076万3920円であった。 サaの不正流用は,平成17年7月1日に原告の発覚するところとなった。 シgは,Lという商品先物取引の会社の渉外係の顧問であったが,Aの顧問でもあり,Aグループの紛議をも担当していたが,被告からaが実は会社の資金を不正に流用していたこと及び今まで隠していて申し訳ないが事情を説明したいと言われたとして,被告の依頼を受けて,会社の費用負担で,aと名古屋で4度ほど会って,意見書を作成した。同意見書には,bは,aの不正流用を知っており,金を出さないと不正をしていることを原告に暴露するとaを脅迫していたことが記載されているが,被告が不正流用を知っていたとは記載されていない。 スaは,平成18年8月3日,原告の小切手を偽造して金員を騙取したとして,名古屋地方裁判所において,懲役2年6月の実刑判決を受け,同月8日刑が確定し,刑に服した。 (2) 上記認定については,被告が主張する事実と異なる部分があるので,その点について検討を加えておく。 ア甲第33号証の1(営業日誌)には,aが「課長」であることの記載があり,甲第34号証の1(hの証人尋問調書)には,hは原告に飛び込みで訪問して,「責任者いますでしょうか」と言って,aが対応したこと及びhは「経理の責任者」ということは絶対言っていないと供述した旨の記載がある。 しかし,同時に,同号証の1(hの証人尋問調書)では,名刺交換していることは認めていること,また,甲第24及び第26号証によれば,昭和60年当時の会社事務所内のa座席は,受付直ぐの場所ではなかったことを認めることができるから,hは,「経理の責任者」に会いたいとの趣旨の発言をして訪問したと推認することできる。上記のとおり,hは,法廷において,「経理の責任者」ということ 直ぐの場所ではなかったことを認めることができるから,hは,「経理の責任者」に会いたいとの趣旨の発言をして訪問したと推認することできる。上記のとおり,hは,法廷において,「経理の責任者」ということは絶対言っていないと供述した旨の記載があるが,他の事実については記憶が曖昧であると供述しているのに,この部分だけ明確に絶対言っていないと供述していることも不自然である。加えて,営業日誌に「課長」とのみ記載があるが,aと名刺交換をしている以上,その名刺に経理課長である旨の肩書があったと考えられるので,営業日誌に,営業課長であるか,経理課長であるかでなく,単に「課長」とだけ記載されていたことは不自然である。これらのことからすれば,hが原告に「経理の責任者」を訪ねたのに,これを隠蔽するために,営業日誌に「課長」とのみ記載を残していたのではないかとの疑いが残る。 イ被告は,本人尋問において,被告がM株式会社という先物取引の会社に在籍していたときに,aから突然電話連絡があって,600万円から800万円の資金があるので,何か儲け話はないかと言ってきたことがあり,これに対し被告は,もうやめときましょう,ついていないんだからと言って注文を取らなかった旨を供述し,甲第35号証の1(本人尋問調書)にも同趣旨の記載がある。 しかしながら,刑務所から出所してきた被告がどこにいるかについて,aが把握しているとは考えられないし,被告がaからの契約の申入れを断ったとの話もaの証言に照らし俄に信用することはできない。乙第21号証の意見書においても,aは,被告から本件取引を持ちかけられた旨が記載されている。これらのことからして,被告からaに電話連絡を入れたと認定する。 ウ被告は,本人尋問において,aとの取引において,f名やe名の架空名義の口座を開設していたが,これらの売 られた旨が記載されている。これらのことからして,被告からaに電話連絡を入れたと認定する。 ウ被告は,本人尋問において,aとの取引において,f名やe名の架空名義の口座を開設していたが,これらの売買報告書等を名義宛てに郵送で送ってたような感じがする旨の供述をする。甲第35号証の2(陳述書)には,k支店長がfのところにいった報告書を預かってきて,それをaに交付していた記憶であるとの記載がある。 しかしながら,被告は,本人尋問において,郵送していたかか交付していたのかについても具体的に応答することができず,供述内容が曖昧であるほか,乙第11号証によれば,架空名義の口座を開設したことは,Aの名古屋支店の支店長であるkがaの承認を得て行ったことであると認めることができ,Aが会社として架空名義の取引を行っていることからすれば,むしろ,架空名義の売買報告書等を郵送していないし,交付もしていないものと推認するのが相当である。このことは,原告の従業員lは,昭和58年から昭和63年8月まで,aの部下として社内で同じブロックの机に着席していたが,aが商品先物の取引を電話でしていたことを聞いたことがなく,商品先物関係の郵便物がa宛てに送付されていたことの記憶もないと陳述しており(甲第24号証),aの不正流用が長期間にわたり発覚しなかったのは,aが商品先物取引や通貨証拠金取引をしていたことについて,原告ないしaの同僚に発覚していなかったからであると考えられ,被告,bらにおいても,原告やaの同僚にaがそのような取引を行っていることが知られないように配慮して本件取引をしていたと推認することができる。 2(1) 次に,被告は,aが原告の資金を不正流用して本件取引をしていたことを知っていたか否かについて検討を加える。 (2) このことに関して,aは,証人尋問におい していたと推認することができる。 2(1) 次に,被告は,aが原告の資金を不正流用して本件取引をしていたことを知っていたか否かについて検討を加える。 (2) このことに関して,aは,証人尋問において,昭和61年4月上旬ころ,被告に対し,原告の資金を不正に流用していることを話し,被告に真剣に取引をしてもらおうと思ったと証言し,その理由として,被告からaがいくらでも資金を用意できると思われていても困るし,また,被告に不正流用による金員であったことを明らかにして早く取り戻してもらうつもりで,自らの不正流用を明らかにしたと供述している。他方,甲第35号証の1(別件事件の被告の本人尋問調書)及び被告本人尋問において,昭和61年4月ころにaから会社の資金を不正流用して商品先物取引をしていたなどと聞いていないし,もし,そのように聞いたら,直ぐに建玉を決済して精算をしていた,aが会社の資金を不正流用していたことは新聞で見てびっくりした,aの不正が会社に発覚した後である平成17年秋ころ,aから,電話で,原告の資金を不正流用していたことの告白と被告に迷惑を掛けることがあるかも知れないという謝罪の言葉があったと供述する。 (3)ア乙第21,第22号証及び証人gの供述には,gは,平成17年8月ころ,被告からの依頼により,aから事情を聞くことになって,aから事情を聞いてそれを意見書という形にまとめたこと,その内容は,aが今まで被告に対し原告の資金を不正流用してきたことを隠してきたことについて謝罪があったこと,bと原告に対して憤りの気持ちを持っていたが被告に対してはそのようなことがなかったというものである。これらは,一応,上記の被告の供述を補強するものといえる。 しかしながら,gは,何故,そのような事情聴取をし,乙第21号証の意見書を作成したかについては,曖 そのようなことがなかったというものである。これらは,一応,上記の被告の供述を補強するものといえる。 しかしながら,gは,何故,そのような事情聴取をし,乙第21号証の意見書を作成したかについては,曖昧な供述を繰り返している。乙第21号証及び証人gの証言によれば,Aグループの渉外係として会社の費用で出張して,対応したもので,意見書の宛名も原告の代表取締役のほか,裁判官,人権擁護局となっていることを認めることができる。gの立場,その内容及び宛名に裁判官があることに照らすと,この意見書は,被告ないしAに対して横領等の嫌疑が及ぶことを極力避けるために作成されたものと推認することができ,その記載内容のうち,特に被告の関与や被告の認識に関する部分の信用性は高くない。 イaは,Fとの間で,5000万円ないし1億円程度の損失を被ったことを認めることができ(この点,本件訴訟の中心的な争点になっているわけではないので,認定自体はしないものの,本件訴訟に顕出されている証拠である乙第11号証によれば,被告は,aの刑事事件に関連して,司法警察員に対して,aとFの担当者として先物取引をしたが,平成2年11月末ころ,取引に失敗して約1億円くらいの損失を出して取引を止めたと記憶していると供述しており,その後,被告は,本人尋問において,損失が1億円であったと供述したのは記憶違いであり,損失額は5000万円くらいであったと供述を変遷させている。そして,甲第11号証の4(公正証書)には,J取引所・小豆・若葉と記載があるが,大豆の記載がなく,aがFと大豆の取引をしたことは明らかであるから,aの損失額としては,公正証書に記載された4523万4930円ではなく,それよりももっと大きな額であった可能性も否定できない。),また,被告は,本人尋問において,一つの入金額が120万円 あるから,aの損失額としては,公正証書に記載された4523万4930円ではなく,それよりももっと大きな額であった可能性も否定できない。),また,被告は,本人尋問において,一つの入金額が120万円とか80万円とか200万円ということで普通のサラリーマンと全く変わらないので,安心して取引をしていた旨の供述をするものの,別紙のような入金,例えば,平成13年10月25日ころに500万円,同年11月13日ころ200万円,同月22日ころ300万円,同月29日ころ200万円,翌12月10日ころ200万円,同月20日ころ300万円というような入金をしているのであって,本件取引当初の2ヶ月間に1700万円を出しているのであって,これらの入金状況が普通のサラリーマンの入金と同じであると認識したとは到底考えられず,サラリーマンであるa個人の資産の運用としては不自然であるというほかない。さらに,甲第9号証の1によれば,Fとの取引後の本件取引の通貨証拠金取引約諾書には,aの年間収入は,500万以上で1000万円未満の最も低い収入の欄に○が付いており,その他の資産にも何も印が付いていないことを認めることができる。また,被告は,本人尋問において,aが山林や田畑をある程度持っているので資産について心配いらないと言っていたと供述するが,仮に,aが山林や田畑を所有していたとしても,流動資産がないと先物取引や本件取引をすることは難しいのであって,被告のような商品取引に精通した者が適合性について無関心であったということも考えられない。前記認定のFのhは取引相手として経理責任者を訪問していたのであって,しかも,営業日誌にはaが「経理」課長であることを記載しておらず,これを残さないようにしていたことからすれば,むしろ,aが経理担当者であったことに着目して,本件取引を開始 を訪問していたのであって,しかも,営業日誌にはaが「経理」課長であることを記載しておらず,これを残さないようにしていたことからすれば,むしろ,aが経理担当者であったことに着目して,本件取引を開始したのではないかと思われる。また,Aにおける業務の体制がずさんであったことは,上記の約諾書の記載のほか,G事件で発覚したと同様に架空名義の取引をさせており,管理部からaに取引報告書が郵送されたり,aから署名のうえ取引内容を記載した書面を管理部に返送させたりもしていなかったことが窺われる。 ウまた,上記認定のように,G事件が発覚した直後,Fでは,大口顧客について,解決念書をとるか,公正証書を作成するように指示されており,aに関しても管理部門の者も立会のもとに公正証書が作成されていたのであって,その公正証書に記載された取引金額についても大豆取引の金額が記載されていないのではないかとの疑義もあり,さらに,甲第2号証の1,2によれば,G事件が発覚したのが平成2年11月20日であることを認めることができ,同月29日には,急遽,Fとの取引を終了させて,解決金として275万1070円を支払って公正証書を作成し,その翌日には,被告はG事件で逮捕されるに至っており,aとFとの取引を終了した経緯も不自然といえる。これらのことは,前記のとおりh,iが経理担当者を訪問して取引を開始させ,その後,被告が取引を継続させていた点において,G事件と同様の経緯を辿っており,G事件の取引とaのFにおける取引が似ていることをも踏まえると,Fにおいて,顧客である経理担当者に不正行為を行わせ,あるいは不正行為を行っていることを黙認して取引を継続させていたことがG事件以外にもあり,そうであるからこそ,それらのことが警察等に発覚することを防止するために,前記のように公正証書等を作成 わせ,あるいは不正行為を行っていることを黙認して取引を継続させていたことがG事件以外にもあり,そうであるからこそ,それらのことが警察等に発覚することを防止するために,前記のように公正証書等を作成する方策が執られたことを窺わせる。 エまた,bは,aとの間で上記認定のように不自然な取引を行っており,乙第21号証の意見書に記載されているように,bがaに対して,不正流用の事実を原告に暴露されたくなければ,金員を出すように脅迫していた可能性は高い。そうとすると,bがaの資金の不正流用の事実を知っていたのであれば,その部下であり,aの担当者であった被告がaの不正流用を知っていた可能性も強いことを窺わせる事情といえる。 オAにおいても,aの架空名義の口座作成に名古屋支店支店長のkが関与しており,被告は,本人尋問では,aには,本件取引のうち本人名義の売買について売買報告書をその都度送付せず,被告自身がまとめて1週間分とか2週間分とかの売買報告書を手渡していたとも供述する。そのようなこともできる管理体制をAでは採用していたことになるのであって,会社自身が不正流用等についても適切なチェックをする体制は採られていないことを意味するし,Aでは,前記認定のように預かり金と自己資金とを区別しないで法律に基づいて管理しておらず,顧客の取引についてのヘッジ取引も行われていなかった。 カさらに,平成15年11月5日に,Aの社長であるj社長も参加して,aとの間で和解書を作成しており,その和解書には,預かり金額についても虚偽の記載し,入金額よりも出金額が上回っていると記載されている(架空名義の損失額は記載せず,a本人名義の取引についてのみ記載したものとしても,乙第11号証によれば,少なくとも被告においても,本来ならば,損失金2806万7110円と記載するべきもので れている(架空名義の損失額は記載せず,a本人名義の取引についてのみ記載したものとしても,乙第11号証によれば,少なくとも被告においても,本来ならば,損失金2806万7110円と記載するべきものであったことを認めることができるのに,約1000万円の利益が出ているような記載となっている。)。また,Aグループの別会社の渉外係であるgが被告ないしAに対して横領等の嫌疑が及ぶことを避けるために乙第21号証の意見書を作成したことを踏まえると,この1000万円の和解金を支払った動機もaが原告の資金を不正流用して,その金員を本件取引に投入していたことから,このことで被告ないしAが刑事犯罪に関与したものとして追及されることを防止するための方策として執られたものと理解することができ,これにAの社長であるjも関与していた。 キしかも,甲第35号証の1,2,乙第17号証,被告本人尋問の結果によれば,被告は,Vという商品先物取引の会社に勤務した後,mやnらがFに移るのと一緒にFに移動し,G事件で業務上横領等で実刑判決を受けた後も元Fの代表取締役をしていたnを頼ってN株式会社,M株式会社,O株式会社,P株式会社を経て,A,株式会社Q,Rに移ったこと,その中で,Aの取締役,株式会社Qの代表取締役となっていること,現在はSで勤務していること,これらの会社は商品取引等の会社であり,その間に,A,株式会社Q,Rが倒産するに至っていることを認めることができる。 被告がFに従事していた当時,その業務に関連して,業務上横領として実刑判決を受けたことからすれば,同業種の会社に勤務して重要な地位に就いて仕事を続けていくことは不自然である。 ク(評価)以上を前提とすれば,aのFとの取引においては,h,iがaが経理担当者であることを承知の上で取引を開始し,取引開始後に担当者が交 て重要な地位に就いて仕事を続けていくことは不自然である。 ク(評価)以上を前提とすれば,aのFとの取引においては,h,iがaが経理担当者であることを承知の上で取引を開始し,取引開始後に担当者が交代して被告が担当することとなったことなどG事件の取引経緯と似た点があること,G事件発覚後,不自然な形でaとの公正証書が作成され,取引が終了していること,被告が出所後,暫くしてからaに対し本件取引を持ちかけ,本件取引に至っているが,取引開始に当たって,aの個人の流動資産がいくらぐらいあるのかについて確認することもなく,また,取引の金額についても到底サラリーマンを相手とする取引とはいえず,巨額な金額となっていたこと,会社としてもAでは,管理部門によるチェックをしていたようには考えられず,しかも,他の金融業者に対して外国為替取引をつなぐヘッジ取引も行われておらず,預かり金と自己資金をも区別しておらず,会社としての体をなしていなかったのであり,その後,ほどなく殆ど資産もなく倒産に至ったこと,さらに,aによる原告の資金の不正流用が発覚してから,Aグループの渉外係によって意見書が作成されているが,これは,被告ないしAが刑事事件に関与していることを否定する趣旨の証拠を作る目的で作成されたものと考えられる。これらのことからすれば,Aは組織として,本件のような不正行為に加担したり,不適合な取引を繰り返しながら,集めた資金を役員や従業員の報酬に分配して早期に会社自体を倒産させて損害賠償責任を免れようとしていたものと推認するのが相当であり,前記の事情を踏まえると,F,Aの会社自体もaが原告の資金を不正流用していたことを知っていたものと推認することができる。 そして,被告自身の認識としても,遅くとも,Fの担当者としてaと取引をする前後から,aが原告の資金を不正流 Aの会社自体もaが原告の資金を不正流用していたことを知っていたものと推認することができる。 そして,被告自身の認識としても,遅くとも,Fの担当者としてaと取引をする前後から,aが原告の資金を不正流用していたと認識していたものと推認することができる。また,aは,昭和61年3月以降に担当者が被告と代わって平成2年11月までのFとの取引を終了したのち,その後中断はあるものの,平成13年10月から平成15年10月まで再び被告と取引を行っているのであり,一旦取引に失敗したのに再び被告を担当者として取引するに至ったこと,aが他に同種の取引を行っていないこと(弁論の全趣旨)からすれば,aとしても,事情を知っている被告を窓口として取引を継続する意向を持っていたのではないかと考えられるところであり,これらのことからすれば,aから被告に不正流用の告白があったと推認することができる。したがって,被告においては,aから昭和61年4月ころに原告の資金を不正流用していたと告白される以前から,aがそのようなことをしていたことを認識していたが,昭和61年4月ころにaから原告の資金を不正流用していたと告白されるに至ったというべきである。 ケ(補足)(ア) なお,被告は,本人尋問において,もし,aが原告の資金を不正流用していたことを聞いていたら,直ぐに建玉を決済して精算をしていたと供述し,乙第11号証(被告の員面調書)にもそのような趣旨の記載がある。しかし,被告は,現に,G事件において,取引の中止をしないことはもとより,業務上横領罪にかかる事件を共同正犯として犯したのであって,刑を終えているとはいえ,同様の職種の仕事を継続していることからすると,上記の供述や記載を直ちに信じることはできない。 (イ) さらに,証人aの証言の信用性について吟味するに,aが,何とか不正 って,刑を終えているとはいえ,同様の職種の仕事を継続していることからすると,上記の供述や記載を直ちに信じることはできない。 (イ) さらに,証人aの証言の信用性について吟味するに,aが,何とか不正流用した金員の穴埋めをしたいと思い,被告及びbらから損失填補ができるとの甘言に乗って,不正流用を拡大させていき,途中から不正流用の拡大を防止する必要から,被告に対して不正流用していることを告白すると共に,無限に金員を出すことはできないから早期に弁償できるようにして欲しいと懇願していた気持ちも,その当否は別として,人の感情として理解でき,そのようにaが行動したとしてもあながち不自然とはいえない。この点について,被告は,G事件の際にaが不正流用を告白できるチャンスであり,この時に警察に自首する等しなかったことが不自然であると指摘するが,当時のaの心情からすればむしろaの証言内容の方が自然であると思われる。前記認定のように本件取引において,aは,一時,2億3000万円程度まで取引で利益を出していたとしても,そのことは上記認定を左右しない。 (ウ) また,乙第17号証添付のa作成の陳述書において,今回の不正は,a一人でおこなったと記載されており,甲第11号証の2,3(aの捜査段階の供述調書),乙第12号証(弁論要旨)には,aが原告の資金を不正流用したのは,被告及びbらから唆されたり,強要されたからであるとは供述しておらず,a一人の責任であると弁明しており,a自身の刑事事件において,自らの責任であり,被告及びbらの責任について触れるところがない。証人aの証言によれば,弁護士から他人に脅された等を弁解をするとかえって量刑上不利になると聞かされたことを認めることができ,そうであれば,被告が自身の刑事事件において,被告及びbらの関与について弁解していない によれば,弁護士から他人に脅された等を弁解をするとかえって量刑上不利になると聞かされたことを認めることができ,そうであれば,被告が自身の刑事事件において,被告及びbらの関与について弁解していないことをもって不自然とすることはできない。また,前記認定においても,aが原告の資金を不正流用したのは,被告から直接唆されたり,強要されたというものではなく,あくまで原告の資金を不正流用したのはaであって,直接,被告が原告の資金を共謀して不正流用したものでも,教唆幇助に該当すると認定しているものでもない。 コ以上からすれば,前記の証人aの証言内容を信用することができるが,むしろ,被告は,aの原告資金の不正流用について,aから昭和61年4月ころに告白される以前から認識していたものと推認することができる。 いずれにしても,被告は,本件取引に先立つFと取引において,aの原告資金の不正流用を知っていたのであるから,本件取引当初から,aが原告の資金を不正流用していたことを知っていたというべきである。被告は,aが原告の資金を不正流用していることを知っていながら,本件取引によって利益が出ればaの犯罪が発覚しないですむという甘言を弄して,aに本件取引を継続せざるを得ない状況を作出して,原告の損害において被告ないしAが巨額の利益を得ていたということができる。被告としては,aが原告の資金を不正流用して本件取引を行っていたことを認識していたのであるから,そのような者を相手として取引を開始すること自体に過失が認められるというものであって,被告自身が供述しているように取引の中途で認識したのであれば,即座に取引を中止し精算すべきものであって,本件取引については,以前の取引の時からaが原告の資金を不正流用していたことを認識していたのであるから,本件取引を開始すること自体に 途で認識したのであれば,即座に取引を中止し精算すべきものであって,本件取引については,以前の取引の時からaが原告の資金を不正流用していたことを認識していたのであるから,本件取引を開始すること自体に過失を認めることができる。なぜなら,被告は,他人の金員の運用を預かる立場にあり,不適合な取引とならないように注意する一般的な義務があるのであって,このような立場にある被告としては,取引によって不正行為を誘発させないように配慮する義務をも負っていると解され,そのような義務違反があったことが明らかである。aの本件取引によって会社から引き出された金員は原告の損害となるものであり,甲第17号証及び甲第19号証の1ないし4によれば,その金額は6750万円を下ることがないと認めることでき,原告請求の損害額である4076万3920円を損害額と認定する。 次に過失相殺について検討を加える。 被告の原告に対する直接の違法行為を認定する場合においては,20年にわたるaの不正流用が行われたのであって,原告の経理の監督体制がしっかりしていなかったことを認めることができる。ただ,前記認定のように,被告をはじめ,b,h及びiもaが原告の資金を不正流用していたことを知っていながら取引を継続させ,組織的にaから会社資金を不正流用させて取引に投入させるように仕向けていたというべきであり,この事案において過失相殺をすることは相当とは思われない。したがって,本件においては過失相殺はしないこととする。 次に争点5(aの被害弁償)について検討を加える。甲第16号証の1,2,甲第17,甲第18及び第19号証の各1ないし4,甲第37号証及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 (1) aは,昭和60年5月下旬ころに,権限がないのにT銀行の原告の預金口座から240 ,甲第18及び第19号証の各1ないし4,甲第37号証及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 (1) aは,昭和60年5月下旬ころに,権限がないのにT銀行の原告の預金口座から240万円を引き出して,iに交付してから,平成15年10月31日まで約20年間にわたり原告の資金の不正流用を重ねた。 (2) 原告は,T銀行から借入をしていなかったが,平成17年7月1日当時,原告は,T銀行から当座貸越として2億8014万6493円を借り入れ,同月4日付けの当座預金では,3500万円及び2億円の借り入れとなっており,また,原告の帳簿上では1857万5851円の残高があることになっていたが,実際にはこの金額がなかった。これらの金額5億3372万2344円について,aが不正に流用したものである。 (3) また,原告は,U銀行から借入をしていない1億円が借入残高として計上されている。これもaが不正に流用した金額である。 (4) したがって,原告のaに対する損害額の総額は,6億3372万2344円となる。 (5) aが原告に対して被害弁償した額は,預貯金2261万7777円及びその他現金動産類11万2151円で,小合計2272万9928円であり,名古屋市o区pq丁目r番地s所在の居宅の持分2分1についてtに代金400万円で売却してその代金の弁償を受け,愛知県愛知郡u町大字v字wx番yの山林を代金600万円で売却してその代金の被害弁償を受けるなどして,総額3275万8928円の弁償を受けた。 (6) aの昭和60年5月下旬ころから平成15年10月31日までの不正流用によって発生した損害額は,6億3372万2344円となり,この中には,aが不正流用した金額を金融機関からの借入金としたために生じた利息分が相当額含まれている。 以上によれば,aから弁済 の不正流用によって発生した損害額は,6億3372万2344円となり,この中には,aが不正流用した金額を金融機関からの借入金としたために生じた利息分が相当額含まれている。 以上によれば,aから弁済された被害弁償金3275万8928円は,金融機関からの借入金の利息分に充当されたものと認めることができる。 争点6(消滅時効)について検討を加える。被告において,直接の損害賠償請求権につき,消滅時効を援用する旨の意思表示は明確には主張されていない。 ただ,この点についても判断を加えておく。原告は,平成17年7月1日に本件損害賠償にかかるaの不正流用を知ったことになったが,確定的に知ったということができるのは,aに対する刑事事件の判決が確定した平成18年8月8日といえる(刑事事件が進行している事件については,強制捜査力を背景とする警察,検察の捜査を踏まえて,刑事事件として真相を究明したのちに民事に関する請求をすると考えることも不合理なことではなく,そして,刑事事件の審理中には,当該刑事記録を検討する時間的余裕がない事案も考えられる。 したがって,本件においては,刑事事件の判決の確定日をもって消滅時効の起算とした。)のであって,訴え変更によって被告の原告に対する直接の不法行為に基づく損害賠償請求を追加したのは,平成20年8月7日であるから,時効期間は経過していない。 以上によれば,原告の請求は理由があるのでこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第5部裁判官近藤昌昭〔別紙の添付省略〕
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