主文 1 被告は,原告に対し,8670万円及びこれに対する平成12年9月15日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 この判決は仮に執行することができる。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨主文同旨第2 事案の概要 1 事案の要旨原告は特殊法人である厚生年金基金であり,承継前の被告(日本信託銀行株式会社)に対して年金給付原資30億円余りを信託していたが,承継前の被告がそのうちの5億円について,原告からの出資分だけによってIT関連数社の株式に限定して投資したところ,それらの株価が下落し大幅な損失が生じたので,原告が,本件5億円の投入については他の基金等との合同運用をする義務があったのにこれを承継前の被告が怠ったとし,また,運用先についての構成比率(以下,「アセットミックス」という。)の割合について原告の指示を尊重する義務があったのに承継前の被告がこれを怠ったとして,それぞれ承継前の被告の債務不履行責任に基づく損害賠償請求権を主張し,さらに,予備的に信託に基づく受益権として上記の両債務不履行に基づく損害賠償請求権と同額の請求を被告に対してなした事案である。 2 前提となる事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,各項末尾に掲記した証拠によって容易に認められる。 (1) 原告は,厚生年金保険法に基づいて設立された厚生年金基金であり,加入員又はその遺族に対する給付が長期にわたり確実になされるようにするため,その資金を運用する必要があるところ,昭和45年4月ころ,日本信託銀行株式会社(以下,「承継前被告」という。)を承継する前の三菱信託銀行株式会社他4社を共同受託者として,年金信託契約を締結した(甲1,2)。 る必要があるところ,昭和45年4月ころ,日本信託銀行株式会社(以下,「承継前被告」という。)を承継する前の三菱信託銀行株式会社他4社を共同受託者として,年金信託契約を締結した(甲1,2)。 (2) 原告は,平成9年10月1日,上記共同受託者らとの間で,更に共同受託者を追加する旨を合意して承継前被告を共同受託者に加え,同年12月1日,その資産30億円の運用を承継前被告に委託(以下,「第1の信託」という。)した(甲3ないし7)。 平成11年10月1日,上記(1)の年金信託契約は共同受託者であった各信託銀行等との個別の信託契約に切り替えられることとなり,同日,原告と承継前被告は新たな年金信託変更契約(以下,「本件年金信託契約」という。)を締結し,原告は承継前被告に対し引き続き資産運用を委託した(甲8)。 (3) 承継前被告は,受託財産を平成9年12月1日から平成11年11月12日までの間,日経平均株価に連動して価格が変動する金融商品(以下,「日経リンク債」という。)に投入した(争いがない)。 (4) 原告と承継前被告は,その後の相場判断から日経リンク債での運用を平成11年11月12日に終了したが,原告は信託資産の運用を引き続き承継前被告に依頼した(争いがない)。 (5) 承継前被告は,本件年金信託契約の受託者として,平成12年2月15日,受託財産の中から5億円を,承継前被告が受託者となって運営する年金投資基金信託〔株式口〕の1つ(以下,「19ファンド」という。)に投入した(争いがない)。 (6) 19ファンドは,ハイリターンを求める委託者向けにアクティブに高利回りを追及するもので,承継前被告が成長性が高いと評価した企業の株式銘柄に絞り込んで投資することでハイリターンを追及するものとして開発 19ファンドは,ハイリターンを求める委託者向けにアクティブに高利回りを追及するもので,承継前被告が成長性が高いと評価した企業の株式銘柄に絞り込んで投資することでハイリターンを追及するものとして開発されたものであり,具体的には,IT関連企業の株式を集中的に購入するものであった(甲12の2)。 (7) 平成12年9月14日,原告と承継前被告は,本件年金信託契約を解消したが,19ファンド投入分(5億円)については,2億8828万3432円の支払いを受けるに止まった(甲18)。 (8) 承継前被告が用いている年金投資基金信託〔株式口〕約款第3条には,「信託財産は、運用方法が同じである他の信託財産と合同して運用します」と記載されていた(甲26)。 (9) 平成13年10月1日,承継前被告は被告と合併し解散した(争いがない)。 3 争点及び当事者の主張本件の争点は,合同運用義務の成否及びその内容,アセットミックス尊重義務の成否,信託受益権の成否である。 (1) 合同運用義務の成否ア原告の主張(ア) 合意に基づく合同運用義務平成11年11月24日,原告常務理事A(以下,「A」という。)が,承継前被告のポートフォリオマネージャー(当時)である訴外B(以下,「B」という。)に架電した際,両者間で信託財産の運用方針を合同運用方式にすることが合意された。 仮に,合同運用の明確な合意がなかったとしても,年金信託財産の運用において,「バランス型運用」とは資産の合同運用方式を当然に意味するものであるから,上記架電においてバランス型運用の合意があれば,合同運用方式についても合意が成立したことになる。 (イ) 黙示の合意に基づく合同運用義務 用方式を当然に意味するものであるから,上記架電においてバランス型運用の合意があれば,合同運用方式についても合意が成立したことになる。 (イ) 黙示の合意に基づく合同運用義務合同運用義務は,慎重な運用を必要とする年金原資の運用においては常識である。単独基金の財産のみで分散投資できるような一部の大規模基金が合同運用方式を特例扱いしている場合もあるが,大半の中小規模基金では合同運用でないことがむしろ例外とされているのであり,30億円から50億円の契約金額規模の基金では,委託資金総額の約96.9パーセントが合同運用されているのが実態である。この状況において,原告が承継前被告に基金資産(およそ30億円)の運用を委託したのであるから,合同運用方式が黙示的に合意されていたものである。 (ウ) 約款に基づく合同運用義務原告から承継前被告に対し30億円の運用を委託した第1の信託に対し,19ファンドは,第1の信託で承継前被告が受託した財産を運用するために作られた信託(以下,「第2の信託」という。)である。第2の信託においては年金投資基金信託(株式口)約款(甲26,以下,「本件約款」という。)第3条が適用されるところ,同条には,「信託財産は、運用方式が同じである他の信託財産と合同して運用します。」と記載されている。ここで,第2の信託の受益者は原告であるから,第2の信託の受託者である承継前被告は,第2の信託の実質的委託者かつ受益者である原告に対して,合同運用義務を負う。 イ被告の主張(ア) 合意に基づく合同運用義務原告の主張(ア)は否認する。Aとの間で合同運用方式を合意した事実はない。 また,年金基金信託において「バランス型運用」とは,国内債券や国内株式等, 合意に基づく合同運用義務原告の主張(ア)は否認する。Aとの間で合同運用方式を合意した事実はない。 また,年金基金信託において「バランス型運用」とは,国内債券や国内株式等,収益率のぶれが様々である対象を組み合わせて,資産の収益率を制御しようという運用方式を指すにすぎず,バランス型運用であることが合同運用方式を直接意味することにはならない。 (イ) 黙示の合意に基づく合同運用義務原告の主張(イ)は否認する。運用ガイドライン(乙5)や運用の基本方針(乙6)では合同運用方式が特例的なものとして紹介されている。原告自身,他の信託銀行へ委託した資産については単独投資を許容していたし,日経リンク債の単独運用を承継前被告で行っていた。 他の運用機関での資産運用を含めると国内株式に基金資産の50パーセントを投入しているなど,原告はハイリスクハイリターンを常に指向してきたのであり,原告からの受託に関しては,原告が一般的であると主張する安定型信託とは明らかに異なる事情が存する。 (ウ) 約款に基づく合同運用義務本件約款第3条は,第2の信託を合同運用で行うという規定であり,第1の信託に基づく受託財産を承継前被告が合同運用すべき根拠にならない。 本件約款第3条は,年金信託契約変更契約書(第1の信託,甲8)第5条第2項に掲げてある財産のうち,「(3)年金投資基金信託受益権(株式口)」に投資する場合(第2の信託)に問題となるものであるところ,19ファンドへの投資は「有価証券投資」による運用であり,年金信託契約書第5条第2項第12号に該当する場合であるから,本件約款第3条は19ファンドへの投資行為に関しては適用されない。 仮に,本件約款第3条の適用があったと 資」による運用であり,年金信託契約書第5条第2項第12号に該当する場合であるから,本件約款第3条は19ファンドへの投資行為に関しては適用されない。 仮に,本件約款第3条の適用があったとしても,そもそも,第2の信託の委託者及び受益者は承継前被告自身に他ならず,第2の信託の合同運用義務違反を原告が主張することはできない。 (2) 合同運用義務の内容ア原告の主張合同運用義務は,投資時において,実際に,他の基金からの信託財産の一部又は全部と合同して運用されることまでを承継前被告に課するものである。 イ被告の主張合同運用義務は,近い将来他の基金からの財産の参加が予定される年金基金投資信託口に投入されていれば,遵守されたといえる。 (3) アセットミックス尊重義務の成否ア原告の主張平成11年11月24日,AはBに対し,アセットミックスの割合を,国内債券15パーセント,国内株式50パーセント,外国債券20パーセント,外国株式15パーセントとすることを指示し(上限は,それぞれ17パーセント,57パーセント,22パーセント,18パーセント。下限は,それぞれ13パーセント,43パーセント,18パーセント,12パーセントである。),承継前被告は,この指示により,具体的に投資活動を拘束される。 この義務に反して承継前被告が19ファンドの立ち上げたことによって,受託財産の資産構成比が,国内債券約6.8パーセント,国内株式約58.5パーセント,外国債券約17.4パーセント,外国株式約15.9パーセント,貸付金約1.4パーセントになったものであるから,国内株式超過分(資産の約8. 5パーセント)のうち,国内債券不足分(資産の約8.2パーセン 外国債券約17.4パーセント,外国株式約15.9パーセント,貸付金約1.4パーセントになったものであるから,国内株式超過分(資産の約8. 5パーセント)のうち,国内債券不足分(資産の約8.2パーセント)相当額の投資は本来なされてはならなかったものである。 イ被告の主張Aからはバランス型運用を採用する旨の選択通知があったのみであり,アセットミックスの割合について指示があった点につき否認する。 そもそも,構成割合についての原告の指示は,中心値や上下限等,運用形態を選択するための参考として使用されるものにすぎず,その後の実際の運用において承継前被告を拘束するものではない。このことは,資産構成比が原告の指示に反していることが明白であったのに,今まで一度も承継前被告は原告からその旨の非難や指摘を受けたことがなかったことからも明らかである。 (4) 信託受益権の成否(予備的請求)ア原告の主張仮に,第2の信託の受益者が承継前被告であるならば,第2の信託の受託者としての承継前被告の合同運用義務(本件約款第3条)違反に基づく損害賠償請求権を第2の信託の受益者としての承継前被告が有するはずであるところ,その損害賠償請求権は,損害成立と同時に承継前被告に賠償されたものであり,第1の信託である本件年金信託契約から発生する受益権に基づいて原告がその額を収受することができるはずであるから,本件でこれを主張する。 イ被告の主張原告の独論である。第1の信託の外の事情について,直接承継前被告に請求しうる根拠はない。 第3 認定事実上記前提事実に加え,証拠(甲2ないし8,11の1,2,12の1,2,13ないし19,21ないし24,26,27, の事情について,直接承継前被告に請求しうる根拠はない。 第3 認定事実上記前提事実に加え,証拠(甲2ないし8,11の1,2,12の1,2,13ないし19,21ないし24,26,27,33,36の1,44の1,46ないし49,52の2,乙1の1,2ないし5,7ないし11,13の1ないし4,15の1ないし38,17の1ないし10,20,証人A,証人Bの証言)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる(証人Bの証言,乙9,20のうち,上記認定に反する部分は信用できない。)。 1 当事者及び年金信託契約について原告は,厚生年金保険法に基づいて設立された厚生年金基金であり,加入員の老齢,死亡又は脱退について給付を行い,もって加入員及びその遺族の生活の安定と福祉の向上を図ることを目的とする特殊法人である。加入員又はその遺族に対する給付が長期にわたり確実になされるようにするため,原告にはその資金を運用する必要があるところ,原告は,昭和45年4月4日,承継前被告を承継する前の被告(三菱信託銀行株式会社),訴外三井信託銀行株式会社,訴外安田信託銀行株式会社,訴外東洋信託銀行株式会社,訴外株式会社大和銀行等,複数の信託銀行,銀行を共同受託者として,年金信託契約を締結した。 2 承継前被告に対する信託契約平成9年10月ころ,承継前被告は,日本を代表する会社として日経新聞社が選んだ225銘柄の株価に連動するオリジナル商品(日経リンク債)の立ち上げを原告に説明し,原告が承継前被告と年金信託契約を締結するならば,原告だけのために日経リンク債を立ち上げるとの提案を行った。その際,承継前被告から原告に対しては,日経リンク債での資産運用は形式的には単独投資のような運用であるが,225銘柄に分散投資したことと変わらないので,実質は 経リンク債を立ち上げるとの提案を行った。その際,承継前被告から原告に対しては,日経リンク債での資産運用は形式的には単独投資のような運用であるが,225銘柄に分散投資したことと変わらないので,実質は合同運用と同様に安全な運用であるという説明がなされた。 原告は,この提案を受けて,承継前被告を共同受託者に加えることとし,平成9年10月1日,前記共同受託者らとの間において,共同受託者の追加を可能とする旨の変更契約を締結し,承継前被告を共同受託者に加える旨の変更契約を締結し,同年12月1日,30億円を承継前被告に対する運用委託資産として移管した。承継前被告を共同受託者に加えるに際し,原告から承継前被告に対しては,3年間で利回り目標24パーセント(年率約7.4パーセント)が求められた。 年金信託契約は,平成11年10月1日付けで共同受託者たる各信託銀行等との個別の信託契約に切り替えられることとなり,原告と承継前被告との間においても新たな年金信託変更契約(本件年金信託契約)が締結され,原告は承継前被告に対し,引き続き年金給付原資の運用を委託した(第1の信託)。 本件年金信託契約第5条1項には,「委託者は、受託者に対し、信託財産の運用に関する基本方針および運用ガイドラインを提示することができるものとし、提示があった場合には、受託者は、受託者との協議にもとづき運用するものとします。」との規定があり,第2項においては,「この信託財産は、次の財産に運用するものとします。」との柱書の下に,合同運用を示す各種の年金投資基金信託受益権の列挙と,単独運用を示す投資対象が列挙されていた。 3 承継前被告による資産運用(日経リンク債)承継前被告は,受託開始の日である平成9年12月1日と同月15日に,原告から受託した財産およそ30億円を日経リンク 示す投資対象が列挙されていた。 3 承継前被告による資産運用(日経リンク債)承継前被告は,受託開始の日である平成9年12月1日と同月15日に,原告から受託した財産およそ30億円を日経リンク債に投入し,平成11年11月12日に原告と承継前被告とで日経リンク債での運用を一旦終了することを決定するまでその運用を続けた。日経リンク債の通期の利回りは,約10.47パーセントであった。原告の資産のうち,合同運用されていたのは,年金基金投資信託貸付口の1764万円5450円(平成11年10月31日当時)のみであった。 4 バランス型運用の提示承継前被告に対する原告からの信託は,そもそも日経リンク債での運用を目的としていたものであったから,日経リンク債での運用を平成11年11月12日に終了させたことによって,今後の信託資産の運用をどうすべきかが当事者間で問題となった。 そこで,承継前被告の担当者は,同月19日ころ,「バランス型」,「2資産準特化型」,「特化型」の3通りのアセットミックスの提案書を原告方に持参し,Aに対して,一定の高いリターンの獲得と同時に基金本来の目的であるリスク抑制をも可能にする運用方式として,「バランス型」運用による承継前被告での資産運用を勧めた。 同月24日,原告内部で事業運営委員会が開催され,その後の資産運用について原告側で協議した結果,「国内株式に関しては,合同運用であるならば,大きく下落することはないので,他の資産に投入するよりも国内株式の割合をもう少し高め,そのかわり,外国株式のウエートを下げればよいのではないか。」という点で合意が成立した。但し,国内株式を50パーセントにすることについては問題があるとされたので,リスク分散のためにも資産運用は合同運用方式にすることが不可欠の前提 下げればよいのではないか。」という点で合意が成立した。但し,国内株式を50パーセントにすることについては問題があるとされたので,リスク分散のためにも資産運用は合同運用方式にすることが不可欠の前提とされた。 同日夕刻ころ,上記事業運営委員会が終了すると,Aは上記決議事項を,承継前被告側の担当者として原告の資産運用を任されていたBに架電により指示し,基本的にバランス型運用のアセットミックスを採用する旨を通知すると同時に,国内株式については45パーセントを50パーセントにすること,外国債券については,15パーセントを20パーセントに引き上げること,外国株式については25パーセントを15パーセントに引き下げることを,それぞれ指示して,株式のウエートを下げてリスクの抑制を図る旨伝えた上,「ただ,念のため今一度確認させていただきますが,全資産とも合同運用に間違いないということでいいですね。」と告げて,資産とも合同運用にすることの確認をしたところ,Bは,「分かりました。明日からバランス型で運用させていただきます。もちろん合同運用です。」と返答した。 5 その後の運用内容承継前被告は,バランス型運用との原告からの運用方針に関する提示を受けて資産を運用し,平成11年11月30日時点で,簿価で2億3507万9442円を国内債券(資産構成比約7.1パーセント)に,13億3531万5831円を国内株式(構成比約40.3パーセント)に,5億9969万6097円を外国債券(構成比約18.1パーセント)に,5億619万5883円を外国株式(構成比約15.3パーセント)に,6億4028万7895円を貸付金(構成比約19.3パーセント)に投入した。これらは,いずれも,合同運用方式で投資された。 承継前被告は,平成12年1月31日時点では,原 5.3パーセント)に,6億4028万7895円を貸付金(構成比約19.3パーセント)に投入した。これらは,いずれも,合同運用方式で投資された。 承継前被告は,平成12年1月31日時点では,原告の信託財産を,簿価で,国内債券に2億3507万9442円(同日の資産構成比約7.1パーセント),国内株式に14億2158万8345円(構成比約42.9パーセント),外国債券に5億9969万6097円(構成比約18.1パーセント),外国株式に619万5883円(構成比約15.3パーセント),貸付金に5億5180万9358円(構成比約16.6パーセント)に投入する結果となり(それぞれの時価は,国内債券2億3776万5606円(同日の資産構成比約7.0パーセント),国内株式14億7987万7313円(構成比約43.7パーセント),外国債券5億9351万8926円(構成比約17.5パーセント),外国株式5億2420万1488円(構成比約15.5パーセント),貸付金5億5180万9358円(構成比約16.3パーセント)である。),これらの運用は全て合同運用方式によりなされていた。同日までの信託財産全部についての承継前被告での総合利回りは約12.705パーセント,修正総合利回りは約12.697パーセントであった。 6 運用報告会平成12年2月9日,承継前被告は,平成11年度第3四半期の運用報告会を開催し,それまでの特化型運用(日経リンク債への投入)からバランス型運用へと移行した状況や運用実績を原告に報告した。この時既に,承継前被告と原告との信託契約は,任期3年の満了(平成12年12月末)まで1年未満となっていた。 上記報告会の席上,原告側関係者は,承継前被告の運用は単年度利回りトップの東洋信託より大きく劣後していること,通期の 契約は,任期3年の満了(平成12年12月末)まで1年未満となっていた。 上記報告会の席上,原告側関係者は,承継前被告の運用は単年度利回りトップの東洋信託より大きく劣後していること,通期の運用利回りが目標24パーセントを達成していないこと等をそれぞれ指摘し,残りの期間についての運用方針に関する再度のプレゼンテーションを求めるとともに,承継前被告の運用部とコミュニケーションを緊密にすることによって原告がハイリスク投資を承認することもありうる旨をも示しつつ,利回りを上げるように承継前被告の関係者に対して強く求めた。 この求めに応じて,承継前被告側関係者として出席していた訴外CらがIT関連銘柄に集中投資するファンドに投資して挽回を図る計画を説明したところ,Aから,「このような銘柄は東洋信託は売っているが、もう遅いのではないか」との発言があったが,訴外Cらが,承継前被告としては更に一段の値上がりが期待できると考えている旨説明すると,Aからの発言はなく,原告側出席者からの反対も特になかった。 7 19ファンドの設立承継前被告は,平成12年2月15日,第3四半期報告会における原告からのハイリターン要求を受けて独自に対応策を検討した結果,承継前被告が受託者となって運営する年金投資基金信託〔株式口〕を新たに立ち上げ(19ファンド),貸付金に投入されていた資産のうち5億円を19ファンドへ投入することとした。 19ファンドは,「IT株」と呼ばれる,IT関連会社の株式を集中的に購入するものであった。 19ファンドは,承継前被告が受託者となって運営する年金投資基金信託であるので,新たな基金からの信託財産の投入も可能な,いわゆる,合同口方式として設計されてはいたが,投資時においては,原告の信託財産からの出資のみで立 継前被告が受託者となって運営する年金投資基金信託であるので,新たな基金からの信託財産の投入も可能な,いわゆる,合同口方式として設計されてはいたが,投資時においては,原告の信託財産からの出資のみで立ち上げたものであった。 8 19ファンドによる資産構成比の変動19ファンドへの5億円の投資により,平成12年2月29日までの資産投資状況は,簿価で,国内債券2億3507万9442円(同日の資産構成比約7. 1パーセント),国内株式19億2158万8345円(構成比約58.0パーセント),外国債券5億9969万6097円(構成比約18.1パーセント),外国株式5億619万5883円(構成比約15.3パーセント),貸付金口5180万9358円(構成比約1.6パーセント)となり(資産総額は33億1436万9125円である。),時価では,それぞれ,2億3652万2754円(構成比約6.8パーセント),20億4224万7327円(構成比約58.5パーセント),6億883万4226円(構成比約17.4パーセント),5億5370万8624円(構成比約15.9パーセント),5180万9358円(構成比約1.4パーセント)となった。 9 19ファンドの成績19ファンドの運用成績は,平成12年2月29日の時点で,評価損益(簿価と時価の差額)180万円であったところ,同年3月31日時点でマイナス1億3060万円,同年4月30日時点でマイナス1億6945万円,同年5月31日時点でマイナス2億1720万円,同年6月30日時点でマイナス2億625万円,同年7月31日時点でマイナス2億3275万円に拡大し,その下落率は,立ち上げ時と回収時とで比較すると約42.34パーセント,平成12年2月末と8月末で比較すると約42.55パーセントであった(同時 同年7月31日時点でマイナス2億3275万円に拡大し,その下落率は,立ち上げ時と回収時とで比較すると約42.34パーセント,平成12年2月末と8月末で比較すると約42.55パーセントであった(同時期の18ファンドの下落率は約24.65パーセント,国内債券の上昇率は約0.3パーセントである)。 月次報告書の記載等によって承継前被告での運用成績が原告側に伝えられると,原告内部では承継前被告での投資のうち19ファンドでの運用成績が特に悪いことが問題とされるようになり,平成12年5月18日,Aは承継前被告に対し19ファンドの銘柄群を質問した。しかし,これに対しては,承継前被告関係者からIT関連中心の銘柄群で運用しているという説明がなされたに止まり運用状況についての説明はなされなかった。そこで,再度,Aから承継前被告に対して,具体的な銘柄及び各銘柄に対する投資額についての詳細な報告書を提出をするように求めたところ,同年6月28日,承継前被告の関西年金営業室(当時)の訴外Dから,各銘柄と各銘柄に対する投資額が開示されるに至り,原告は,19ファンドが,原告の基金だけで運用されてきたこと,そして,僅かな銘柄だけに限定して投資されてきたことを知るに至った。 10 委託の廃止平成12年7月31日,原告は,承継前被告に対し,本件年金信託契約に係る委託を廃止する旨を書面で伝え,同年9月14日,原告と承継前被告は,本件年金信託契約を解消した。 その結果,原告は,19ファンドへの投資分(5億円)については2億8828万3432円の支払いを受けるに止まった。19ファンドでの運用銘柄は別表記載のとおりであるが(別表=甲12の2),結局,19ファンドは,立ち上げから廃止に至るまで一度も他の基金と合同して運用されることはなかった。 いを受けるに止まった。19ファンドでの運用銘柄は別表記載のとおりであるが(別表=甲12の2),結局,19ファンドは,立ち上げから廃止に至るまで一度も他の基金と合同して運用されることはなかった。 11 承継前被告の対応承継前被告は,平成12年7月28日,合同運用義務違反との原告からの指摘に対し,19ファンドの投資については原告基金単独出資による設立ではあるが,近い将来他の委託者の参加が予定されていれば当初単独の委託者の出資のみで年金投資基金信託が成立するとの解釈をとっているので同約款上問題ない旨回答し,同年8月15日,19ファンドは合同運用している旨回答した。 12 資産規模ごとの合同運用割合平成12年度の統計では,基金資産規模30億円から50億円の基金では信託において資産の約99.51パーセントを合同運用し,資産規模30億円未満では信託において資産の約99.27パーセントを合同運用している。 平成13年度の調査結果では,基金資産規模30億から50億円の基金では信託において資産の約98.86パーセントを合同運用し,資産規模30億円未満では信託において資産の約99.61パーセントを合同運用している。 13 承継前被告の解散平成13年10月1日,承継前被告は被告と合併し解散した。 第4 争点に対する判断 1 合同運用義務の点(1) 平成11年11月24日におけるAとBの受け答えが,日経リンク債を解消した後の原告の資産全額についての運用を決めるという局面でなされたものであること,そして,AとBが,それぞれ投資担当者あるいは投資の専門家という立場において,厚生年金基金から信託されている資産のほとんどが他の基金からの信託金と合同されて多数の銘柄に分散投資されて運用されていることを熟知していたことが推認されること等 いは投資の専門家という立場において,厚生年金基金から信託されている資産のほとんどが他の基金からの信託金と合同されて多数の銘柄に分散投資されて運用されていることを熟知していたことが推認されること等を考慮すると,上記のやりとりにおいて,Aが全資産の合同運用を求める趣旨で資産運用についてバランス型運用を求めるとの提示を行い,Bもこれを十分理解しつつ了承したことは,Bが合同運用することに対する異議ないし協議を求めた等特段の事情が本件で窺われないこと,その後も19ファンドへの投資に至るまでは承継前被告において原告の全ての資産が合同運用されてきたこと,19ファンド投入後しばらくは(平成12年7月,8月になされた承継前被告の回答においては)承継前被告は合同運用義務自体は否定していなかったと窺われること等からも推認される。 そうであるとすれば,遅くとも平成11年11月24日の時点で,承継前被告には原告から受託した財産を合同運用方式で運用する義務が発生していたと認められる。 (2) もっとも,被告が本件で指摘し,当裁判所も事実に相違ないと認定した事情,すなわち,①原告が3年で24パーセントという高い利回りを承継前被告に求め,現に,平成11年度第3四半期報告会の席上でも,承継前被告の運用成績が良くないことを具体的に指摘して更なるハイリターンを要求していたこと,そして,②原告は高いリターンを目的としてそれまでにも日経リンク債への投資を承継前被告に求めたことがあったこと等の事情を考慮すると,原告が安定的運用であると理解されている合同運用方式での運用のみを絶対的に承継前被告に要求していたとは考えにくい。 そして,第3四半期の運用報告会における原告の対応,すなわち,プレゼンテーション次第ではリスクをとることもある旨の原告側の発言な 用のみを絶対的に承継前被告に要求していたとは考えにくい。 そして,第3四半期の運用報告会における原告の対応,すなわち,プレゼンテーション次第ではリスクをとることもある旨の原告側の発言などを斟酌すると,承継前被告から原告に対しては,事前の説明があれば単独投資による方法を原告が許容する場合がある旨の黙示的な意思表示がなされていた事実も窺われるところであるし,加えて,そもそも原告が個別に了承するのであれば,当然,承継前被告も合同運用方式によらない方式での運用を行うことができたであろうことも併せ考えると,当事者間においては原告による個別の承認に基づく単独投資の方法をとることも前項の合同運用義務と矛盾することなく可能であったと解することができ,承継前被告が合同運用義務に拘束されない場合もありえたものと考えられる。 しかしながら,そうであっても,本件においては19ファンド投入についての事前の説明や原告の個別の承諾があったと認めるに足る証拠はないから,合同運用義務に違反しない旨の被告の主張にはもとより理由がない。 (3) また,上記認定に反して被告は,原告との間の年金信託契約書第5条2項等を指摘し,同契約は財産運用方法として単独運用の場合と合同運用する場合と両方が予定されているので承継前被告に合同運用義務はないと主張する。しかし,そもそも被告の主張する第5条はその1項において,運用方針についての基本的な指示を委託者によってなしうることを前提としているものと解するのが相当であるから,同条1項の提示によって合同運用が義務とされた以上,同条2項で列挙された単独運用も否定されるものと解されるところであって,同条2項を根拠とする被告の主張には理由がない。 (4) したがって,承継前被告には原告から受託した財産の全額を合同運用する 条2項で列挙された単独運用も否定されるものと解されるところであって,同条2項を根拠とする被告の主張には理由がない。 (4) したがって,承継前被告には原告から受託した財産の全額を合同運用する義務があり,19ファンドへの投資を行った平成12年2月15日の時点においても,承継前被告はその義務を負っていたものというべきである。 (5) なお,本件では,AとBのやりとりのみによって承継前被告の合同運用義務を認めることができるから,その他の成立根拠の当否の点,すなわち,バランス型運用が合同運用を意味するものか否か,黙示の意思表示により合同運用義務が発生したか否か,約款により合同運用義務が生ずるか否かについては判断する必要がないので,判断しない。 2 合同運用の具体的内容(1) 上記合同運用義務が現に他の基金の参加を必要とすることまでを承継前被告に課したものであるか否かについては,具体的な合意が当事者間でなされていたとは認められず,合同運用義務を一般的に承継前被告に課したAとBの意思表示の内容を合理的に解釈して判断する他ないものであるが,将来他の基金が参加することが可能であれば合同運用義務は果たされたことになるとの被告の主張は,形式的には全ての委託財産を単独で運用することを可能とするものにほかならず,かくては合同運用を義務として承継前被告に課した趣旨を実質的に没却するものとして原告の了承するところでなかったことは容易に推認できるから理由がないものである。むしろ,承継前被告が原告の資産を単独で運用する場合には個別に原告の了承を得ることが当事者間で予定されていたというべきであって,実質的に単独運用と同様の投資結果となる運用を承継前被告独自の判断でなしうる結果となるような解釈を到底採用することはできない。 (2) したがって,本件 事者間で予定されていたというべきであって,実質的に単独運用と同様の投資結果となる運用を承継前被告独自の判断でなしうる結果となるような解釈を到底採用することはできない。 (2) したがって,本件合同運用義務においては,現に他の基金からの資金の一部が参加していることも具体的に要求されていたのであるから,原告からの単独の資金のみで19ファンドを設立し,投資した承継前被告の行為は,合同運用義務違反行為に該当するというべきである。 3 アセットミックス尊重義務違反(1) 原告と承継前被告との本件年金信託契約第5条1項によると,委託者には運用方針に関する提示権があること,平成11年11月24日にAからBに対してアセットミックスの割合について提示されたこと,Bからアセットミックスについての特別協議を求めたような事情が窺われないこと等を総合すると,同日,承継前被告には原告から指示された割合に積極的に反する投資を行ってはならない義務が生じたものと認められる。 (2) もっとも,付言するに,信託契約に基づく投資運用活動は,受託者における迅速柔軟な投資判断において行われ,当事者の指示に完全に拘束されていては成り立たない性質のものであることも明らかであるから,受託者においてある程度の裁量が認められることも信託契約の性質自体から明らかというべきであって(現に,アセットミックスの提示に際しても,原告からそれぞれの上限,下限が幅をもって示されている。),この場合の債務不履行責任は,受託者の合理的裁量の範囲を逸脱したことが明らかな場合にのみ問題とされるというべきである。 そして,与えられた裁量に反しない旨の主張は,指示された割合に反したことに基づく責任を免れるための主張であり,同時に,受託者の判断内容についての主張でもあるから,被告におい である。 そして,与えられた裁量に反しない旨の主張は,指示された割合に反したことに基づく責任を免れるための主張であり,同時に,受託者の判断内容についての主張でもあるから,被告において主張立証責任を負うものと考える。 (3) 本件につきこれをみると,19ファンドへの投資は国内株式の指示割合を大幅に超える結果となるものであり,このことは承継前被告においても容易に認識しえたものであるから,アセットミックスの割合に積極的に違反する投資であったことが明らかである一方,アセットミックスに反する結果となる投資判断につき,裁量の範囲内であると考えられる事情は見あたらない。 (4) したがって,承継前被告は本件19ファンドへの投資行為につき,アセットミックス尊重義務違反に基づく債務不履行責任を負うというべきである。 (5) これに対し,被告は,19ファンドへの投資がなされる平成12年1月までにおいても,指示されたアセットミックスの割合に反する投資を承継前被告がなしていた一方,これを原告が問題としていなかった事実を主張し,アセットミックス尊重義務が具体的に承継前被告の投資判断を拘束するものとして合意されていなかったことを主張する。しかし,平成12年1月までは,承継前被告は信託財産の一部を貸付金口に投資している状況であり,貸付金口はアセットミックスの割合には含まれていなかったものであることからすると,当時,原告が承継前被告の投資活動を,いわば資産を分散していく過程であったと認識していたとも十分考えられ,多少の割合のぶれを問題にするべきではないと考えていたという原告の主張にはそれなりの理由があるから,被告の主張は理由がない。 (6) 以上の判断により,承継前被告の19ファンドへの投資は,アセットミックス尊重義務違反行為であるというべ と考えていたという原告の主張にはそれなりの理由があるから,被告の主張は理由がない。 (6) 以上の判断により,承継前被告の19ファンドへの投資は,アセットミックス尊重義務違反行為であるというべきである。 4 損害(1) 合同運用義務違反に基づく損害原告は,原告の資産が運用されていたファンドのうち最も成績の悪かった18ファンドに投資されていた場合でも下落率が25パーセントに至らなかったことを指摘して,19ファンド以外の合同運用口に投入していれば悪くとも25パーセントの下落率にとどまった旨主張して損害額を算定しているところ,被告もこの算定方法自体を明確に争っていない。 思うに,19ファンド以外に資産を投入した場合の最悪の結果を想定して損害を計算することには相当の合理性が認められるから,合同運用義務違反に基づく損害の算定においては,19ファンドの騰落率と騰落率25パーセントとの差に基づく計算方法を損害の算定方法とするのが相当である。 これを本件についてみると,19ファンドの騰落率は約42.34パーセントであるから,25パーセントとの差である17.34パーセントは騰落を免れていたことになる。したがって,19ファンドに投入された5億円の17.34パーセントにあたる8670万円が,合同運用義務違反に基づく損害額であることになる。 (2) アセットミックス尊重義務違反に基づく損害原告はアセットミックス尊重義務に反することにより生じた損害として,原告が指示していた国内株式の割合(50パーセント)を超過して国内株式に投資された額の相当分を,指示された割合からの不足部分が最も多かった国内債券部門に投入したと仮定した場合の投資結果と,実際になされた投資結果とを比較して算定している。 過して国内株式に投資された額の相当分を,指示された割合からの不足部分が最も多かった国内債券部門に投入したと仮定した場合の投資結果と,実際になされた投資結果とを比較して算定している。 思うに,アセットミックス尊重義務違反に基づく損害は,資産構成割合が委託者の指示に最も近づくようにして算定されるべきものであり,具体的には,指示された割合に積極的に反する結果をもたらした投資の一部又は全部を,資産構成割合において不足する資産の不足分に投入していた場合と実際の投資とを比較して算定すべきものであるから,これと同旨の原告主張の方法をもって損害算定の方法とするのが相当である。そして,本件のアセットミックスの提示においてはアセットミックスの上限及び下限が示されているが,これらは,上限値,下限値までの投資を無条件に許容するものとは解されないので,本件事実関係の下では,不足分及び超過分の算定については,指示されたアセットミックスの中心値を基準に計算すべきものである。また,アセットミックスの提示を受けた者(受託者)としては,投資行為の結果としてどのようなアセットミックスとなるかを簿価による資産構成比がどうなるかによって予測することが可能であったはずであるから,超過分,不足分の計算は,それぞれ簿価を基準にしてなされるべきである。 本件でこれをみるに,19ファンドとして国内株式に投入された5億円により,国内株式の割合は約58.0パーセント,国内債券は約7.1パーセントになったのであるから,国内株式部門として指示されていた50パーセントを約8. 0パーセントにわたって超過投資されたものと認められる一方,国内債券部門として指示されていた15パーセントを約7.9パーセントにわたって下回る投資がなされたことが認められる。 そうで 0パーセントにわたって超過投資されたものと認められる一方,国内債券部門として指示されていた15パーセントを約7.9パーセントにわたって下回る投資がなされたことが認められる。 そうであれば,国内株式部門に超過してなされた投資額(当時の資産の約8.0パーセントに相当する額)のうち,国内債券部門の指示割合に不足していた金額(平成12年2月29日当時の資産である33億1436万9125円の約7.1パーセントに相当する額,すなわち,2億3532万207円)は,国内債券部門に投入されるべきものであったとして損害額を算定すべきこととなる(そのように投資されていたとすると,国内債券構成比約15.0パーセント,国内株式構成比約50.1パーセント,外国債券構成比約18.1パーセント,外国株式構成比約15.3パーセントとなる)。 これをもって計算するに,上記金額を国内債券部門へ投資していた場合,2月末から8月末までの間に,上記金額の約0.3パーセントの利益があった一方で,上記金額の約42.55パーセントにあたる損害を免れた(19ファンドに投資されていた場合に被ったであろう暴落を免れた)のであるから,国内債券に投資されるべきであった上記の2億3532万207円の約42.85パーセント(国内債券であれば得られたであろう利益約0.3パーセントに19ファンドへの投資によって失われた約42.55パーセントを合算した割合)にあたる1億83万4708円については,アセットミックス尊重義務違反に基づく損害であると認められる。 もっとも,この算定方法による場合,計算の過程において本件5億円の一部が19ファンドに投入されることを一部是認することになるが,原告の主張を合理的に解釈すると,原告は前記合同運用義務違反の主張とアセットミッ ,この算定方法による場合,計算の過程において本件5億円の一部が19ファンドに投入されることを一部是認することになるが,原告の主張を合理的に解釈すると,原告は前記合同運用義務違反の主張とアセットミックス尊重義務違反の主張とを別個独立の請求原因として主張しており,アセットミックス尊重義務違反を主張する場合には合同運用義務違反を主張しないものと解されるから(現に原告は,損害額の算定方法に関する主張において19ファンドへの一部投入を前提にしている),この点は問題とするにあたらない(なお,仮に,先に認定した合同運用義務違反の効果により,19ファンドへの投入を前提とする計算方法をとることができないとした場合には,アセットミックス尊重義務違反に基づく原告の損害は,要するに,「承継前被告がアセットミックスの割合を遵守しつつ,全てを合同運用によって投資していた場合の結果」と,「本件投資による結果」との差額とみることになり,加えて,「合同運用した場合の成績は最も成績の悪かったファンドを参考にしてマイナス25パーセントとするということになる」というのであるから,これを本件で計算すると,アセットミックス尊重義務違反である2億3532万207円を国内債券に投入し(利回りプラス約0.3パーセント)つつ,残りである2億6467万9793円を合同運用する(成績はマイナス25パーセント)場合の合計(4億3453万6011円)と,本件5億円を全額19ファンドへ投資した(利回りマイナス約42.55パーセント)場合(2億8725万円)との差額を計算することなる。これを,計算するに,1億4728万6011円の損害が原告に発生していることになるから,これがアセットミックス尊重義務違反に基づく損害金となる。)。 したがって,アセットミックス尊重義務違反に基づく損害 1億4728万6011円の損害が原告に発生していることになるから,これがアセットミックス尊重義務違反に基づく損害金となる。)。 したがって,アセットミックス尊重義務違反に基づく損害は1億83万4708円である。 (3) 結論したがって,原告が,承継前被告の合同運用義務違反行為により被った損害は8670万円であり,アセットミックス尊重義務違反行為により被った損害は1億83万4708円である。 5 受益権請求について上記請求は,主位的請求が認められる本件においては判断の限りでない。 6 結論以上によれば,承継前被告は,合同運用義務違反によって8670万円の損害賠償義務を負うと同時に,アセットミックス尊重義務違反に基づき1億83万4708円の損害賠償義務を負う。 もっとも,原告は,アセットミックス尊重義務違反に基づく損害については8670万円を限度として損害賠償請求をするものであるから,アセットミックス尊重義務違反についてはこの範囲でのみ原告の請求は認められる。 第5 結語よって,原告の請求には理由があるから,これを認容することとし,訴訟費用については民事訴訟法61条を,仮執行の宣言については同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第6民事部裁判長裁判官松村雅司 裁判官水野有子裁判官三宅知三郎
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