昭和26(う)1294 横領被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和26年12月6日 名古屋高等裁判所 棄却
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【DRY-RUN】主    文      本件控訴を棄却する。      当審における訴訟費用(国選弁護人長尾文次郎に支給した分)は被告人 の負担とする。          理    由  国選弁護人長尾文次郎、私選弁

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判決文本文3,606 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 当審における訴訟費用(国選弁護人長尾文次郎に支給した分)は被告人の負担とする。 理由 国選弁護人長尾文次郎、私選弁護人江口三五、被告人の控訴趣意は、本件記録添附の各控訴趣意書を引用する。その趣旨を要約すると、(一) 本件板硝子はA株式会社がB株式会社に貸与した工場建物の従物ではない。別個独立の物である。右工場建物は、戦時補償特別措置法第六十条により、元の所有者であるA株式会社に返還譲渡せられたものとするも、右譲渡の中に本件板硝子は包含せられていないから、右工場敷地に埋蔵せられていても、所有者不明の物と謂うことができる。従つて正式の埋蔵物発見届をした被告人の所有に帰属したものである。 (二) 仮りに本件板硝子が国の所有で、A株式会社に譲渡せられたものとするも、被告人はこれを知らず、所有者不明の埋蔵物であると信じていたから、横領の犯意なく、且つ不法領得の意思はない。然るに原判決は、事実を誤認して、被告人を有罪とした違法があると謂うにある。 よつて案ずるに、原判決挙示の証拠によれば、原判決認定事実が認められ、原審が取り調べた総ての証拠を綜合するも、原判決には、判決に影響を及ぼすこと明らかな事実誤認はない。 即ち、C、D、Eの司法警察員及び検察事務官に対する各供述調書、Fの検察事務官に対する供述調書、普通財産譲渡契約書謄本、原審証人F、同E、同D、同Cに対する各証人尋問調書、原審検証調書を綜合すれば、岐阜県羽島郡a村b番地所在B株式会社工場建物及びその敷地は、昭和十四年G株式会社H工場として建設せられ、その後転々して、昭和十八年十一月A株式会社のH工場となつたが、昭和十九年八月国に買収せられて、名古屋陸車造兵廠柳沢製造所となつたもので、終戦と同時に国有財 十四年G株式会社H工場として建設せられ、その後転々して、昭和十八年十一月A株式会社のH工場となつたが、昭和十九年八月国に買収せられて、名古屋陸車造兵廠柳沢製造所となつたもので、終戦と同時に国有財産として、名古屋財務局管理となり、昭和二十一年一月二十一日賠償工場に指定せられたものであつたところ、昭和二十二年十二月十六日岐阜政軍部から解放許可となり、昭和二十三年二月二十六日前所有者であるA株式会社の第二会社として設立準備中のB株式会社が使用することが認可せられ、紡績工場として、復活すべく準備が開始せられ、同会社は、同年四月五日設立せられ、同年九月二十日には、右工場の返還を受けることになつていたA株式会社から、正式に右工場を借り受けたもので、その後昭和二十四年四月五日、右工場の建物、敷地その他附属施設は、国からA株式会社に譲渡せられ、茲に右工場の建物や敷地等の所有者が確定したものであつて、本件板硝子は、紡績工場当時、温湿度保持及び採光のため、天窓硝子に使用せられていたものであるが、造兵廠の工場になつてからは、温度の上昇を防ぐため、昭和二十年三月天窓硝子を一枚おきに取り外した後、空襲で破損することを虞れ、当時の工場管理者の指揮により、右工場の女子寄宿舎附近の工場敷地内に埋<要旨>蔵しておいたものであることが認められる。かかる天窓の硝子は、工場建物の一部であると解することはでき</要旨>ないが、建物の従物と解すべきである。主物と従物とは互に独立したものであるけれども、所有者が同一で、主物の常用に供するため附属せしめられたものが従物であるが、一時的に主物から離れていても従物たる性質を失うものでなく、紡績工場から軍需工場に切りかえられた間、一時前に取り外し、空襲による破損をさけるため、主物である建物から離れた場所に保管するため、地中に埋めた場合は から離れていても従物たる性質を失うものでなく、紡績工場から軍需工場に切りかえられた間、一時前に取り外し、空襲による破損をさけるため、主物である建物から離れた場所に保管するため、地中に埋めた場合は、戦時中空襲の危険をさけ、畳建具等を疎開した場合と同じく、物の性質に変動を生ずるものでなく、依然として、従物としての性質を持続しているものと解すべきである。従つて、本件板硝子は、国からA株式会社に工場の建物敷地等が譲渡せられたとき、これ等と共にその所有権が移転したものと解すべきである。而して右工場の女子寄宿舎は、引揚同胞援護会の事業として、引揚者戦災者の住宅に利用せられ、右板硝子の埋蔵してある敷地の部分は、昭和二十一年春頃から、被告人が麦作のため耕作していたもので、右板硝子を占有し、埋蔵ぜられていることを発見しても、前記のように、右板硝子の所有者は、終戦後は国、昭和二十四年四月からA株式会社で同会社のためB株式会社が管理する権限があつたことがはつきりしているから、民法第二百四十一条に所謂所有者不明の埋蔵物と解することはできない。従つて、被告人が昭和二十四年六月二十四日羽島地区警察署に埋蔵物発見届を出し、その後六ケ月を経過しても、被告人が所有権を取得することはなく、被告人が耕作している畑の中に本件板硝子があつたのであるから、被告人がこれを占有していたもので、所有者又はその代理人にこれが返還を拒否して領得すれば、横領罪が成立することは、疑の余地がない。 次に被告人が右板硝子に所有者があることを知りながら、これを自己に領得しようとしたかどうかについて判断するに、被告人自らも認める通り、埋蔵物発見届を出すまでは、占領軍が接収したもので、国が管理しているものと思つていたこともあつたことやD、C、I、Jの司法警察員及び検察事務官に対する各供述調書、原審 るに、被告人自らも認める通り、埋蔵物発見届を出すまでは、占領軍が接収したもので、国が管理しているものと思つていたこともあつたことやD、C、I、Jの司法警察員及び検察事務官に対する各供述調書、原審証人K、同D、同L、同M、同Cに対する各証人尋問調書、Nに対する調査書によれば、被告人は、本件板硝子は、終戦後接収物件として国が管理していたものであるが、昭和二十三年五月二十一日以後は、B株式会社が管理するようになつたものでその所有者は、国か右会社かどちらかであると感付いていたことが十分に認められる。即ち昭和二十三年五月二十一日頃B株式会社のDから、右板硝子は、工場建物の整理用として使用することを許可されたから掘り出すことを承諾されたいと申し込まれ、その後再三同様の請求を受けたことがあり、被告人の長男Nが右工場敷地内に埋めてあつた板硝子を窃んで検挙せられ起訴猶予になつたことがあり、被告人は、右Dと交渉中右B株式会社が右板硝子について正当な権限があることを証明する文書を示せと要求して、右板硝子の発掘を拒否したり、発掘するために被告人が蒙る損害の賠償について話合があつたことや岐阜経済調査庁から調査に来たとき、被告人も立会い、右板硝子の所有者は不明であると決つたのでなく、隠退蔵物資か又は他に所有者があるのか法規を調査する必要があると言われ、その後間もなく右調査庁も右板硝子の所有者は、A株式会社と確認したことが認められるから、被告人も、法律上明確に所有者を確定することはできなかつたにしても、国所有かさもなくば工場主であるB株式会社の権限に属するものと認め、全く所有者不明のものとは思つて居左かつたことが明らかに認められる。而して、前記の如く客観的に所有者は確定して居り、主観的にも所有者があることを知りながら右板硝子を取得するため、所有者不明の板硝子を発 所有者不明のものとは思つて居左かつたことが明らかに認められる。而して、前記の如く客観的に所有者は確定して居り、主観的にも所有者があることを知りながら右板硝子を取得するため、所有者不明の板硝子を発見したと虚偽の埋蔵物発見届を出し、その際警察官に右板硝子については、B株式会社との間に発掘について争があることなど全く秘し、右板硝子について権限のあることを主張して居る者が全く存在せず、真正に埋蔵物を発見したかの如く装つてその手続をして原判示の通り板硝子を領得したのであるから、被告人に不法領得の意思即ち横領の犯意があつたことは明らかである。以上の認定と比べるとき、原判決は措辞妥当を欠いたり又は判決に影響を及ぼすこと明らかでない枝葉末節の点に属する事実誤認はあるが、犯罪事実の点においては、前記説明と全く同趣旨の認定及び解釈をしているから、原判決には、結局判決に影響を及ぼす程度の事実誤認はなく、又法令の解釈適用にも誤りはなく、論旨は理由がないことになる。 よつて刑事訴訟法第三百九十六条により、本件控訴を棄却し、同法第百八十一条により、当審における訴訟費用は、被告人の負担とする(裁判長判事高城運七判事長尾信判事赤間鎮雄)

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