平成17(ワ)3126 損害賠償

裁判年月日・裁判所
平成20年12月15日 東京地方裁判所 棄却
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判決文本文41,988 文字)

- 1 -平成20年12月15日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成17年(ワ)第3126号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成20年9月11日判決原告A原告B上記両名訴訟代理人弁護士佐藤恭一同飯塚佳都子被告学校法人順天堂同代表者理事長C同訴訟代理人弁護士桑原博道同蒔田覚同大平雅之同訴訟復代理人弁護士岡部真勝主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は,原告A及び同Bに対し,各金4630万4572円及びこれらに対する平成15年8月14日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,被告の開設する病院に通院及び入院して診療を受けていた患者が死- 2 -亡したことにつき,その夫及び子である原告らが,患者は子宮頸部を原発とする癌に罹患しており,この増悪により癌の子宮体部をはじめとする周辺への浸潤を来して,死亡したものであるところ,担当医師において,早期に,子宮頸癌の発症を疑い,適切な検査を実施して同疾患を発見し,これに対する治療を開始すべきであったにもかかわらず,これを怠ったなどと主張して,被告に対し,診療契約上の債務不履行又は不法行為(使用者責任)に基づいて,患者の逸失利益,慰謝料等の損害金並びにこれらに対する民法所定の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。 前提となる事実(当事者間に争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実)( )当事者等 ア原告AはD(昭和30年12月7日生まれ,平成15年8月14日死亡)の夫,原告Bは同AとDとの間の長女である。 。 イ被告は,千葉県浦安市内において「順天堂大 きる事実)( )当事者等 ア原告AはD(昭和30年12月7日生まれ,平成15年8月14日死亡)の夫,原告Bは同AとDとの間の長女である。 。 イ被告は,千葉県浦安市内において「順天堂大学医学部附属順天堂浦安病院」という名称の病院(以下「被告病院」という)を開設している。 。 E医師は,平成10年12月以前から平成12年3月まで,被告病院の産婦人科に勤務していた医師である(乙A4・12枚目。 )F医師は,平成13年4月から同年10月まで,被告病院の産婦人科に勤務していた医師である(乙A5・9枚目。 )( )本件に関連する医学的知見 ア子宮頸部と子宮体部,「」,「」子宮は上3分の2が体部下3分の1の細くなった部分が頸部と呼ばれており,さらに,子宮頸部のうち,腟の中に飛び出している下端の約2センチメートルの部分は「子宮腟部」と呼ばれている(甲B10・,,,,)。 309頁甲B12・114頁甲B30乙B1・278279頁,(,子宮内膜とは子宮腔の内面に内張りされている粘膜をいう甲B30- 3 -乙B1・280,281頁。 )イ子宮頸癌の発生部位子宮頸癌の好発部位は,子宮頸部の扁平上皮と円柱上皮の接合部である扁平円柱上皮境界(SCJ,)に存在する予備細胞squamocolumnarjunctionとされている(甲B10・310頁,甲B11・513頁,甲B14・217頁,甲B30,甲B37,乙A4・5頁,乙B3・106頁,証人N・9,10,22頁,証人E・15頁。 )ウ子宮頸癌の分類子宮頸癌は,組織学的に扁平上皮癌,腺癌及びその他に分けられ,発生頻度はそれぞれ約85パーセント,10パーセント,5パーセントである(乙B3・106頁。 )(ア)前癌病変及び上皮内癌子宮 分類子宮頸癌は,組織学的に扁平上皮癌,腺癌及びその他に分けられ,発生頻度はそれぞれ約85パーセント,10パーセント,5パーセントである(乙B3・106頁。 )(ア)前癌病変及び上皮内癌子宮頸癌の大部分を占める扁平上皮癌は,異形成()と呼ばdysplasiaれる前癌状態を経て上皮内癌として発生する。異形成はその程度により軽度異形成,中等度異形成,高度異形成に分類される(甲B11・51,,,)。 514頁甲B14・214ないし216頁乙B3・106頁(イ)扁平上皮癌組織学的に,扁平上皮への分化傾向の認められる癌である。腫瘍の角化傾向により以下の2つに分類される(甲B11・516,517頁,乙B3・107頁。 )①角化型角化真珠を認める扁平上皮癌をいう。 ②非角化型仮に角化傾向はあっても単一細胞にとどまり,角化真珠を認めない扁平上皮癌をいう。 (ウ)腺癌- 4 -円柱上皮から発生するもので,多様な組織形態を示し,種々の分化段階のものが見られる(甲B11・517頁,甲B17・215頁,乙B3・108頁。 )エ子宮頸癌の臨床症状,,上皮内癌を含めた上皮内病変や早期浸潤癌はほとんど無症状であるが(,浸潤や転移が進むと種々の症状を来す甲B10・311ないし313頁甲B13・108頁,甲B18・251頁,乙B3・108頁,証人N・27,28頁。 )(ア)不正性器出血性交時の接触出血など月経血以外の出血で,腫瘍による血管の破壊や腫瘍血管の増生による腫瘍の易出血性が原因である。 (イ)下腹部痛,腰痛下腹部痛の主な原因としては,子宮留膿腫がある。これは腫瘍により子宮頸管が狭窄して,子宮腔内に分泌液が貯留し,ここに上行性感染が起こり膿が貯留したものである。膿の排出が腫瘍によって妨げられるため, 下腹部痛の主な原因としては,子宮留膿腫がある。これは腫瘍により子宮頸管が狭窄して,子宮腔内に分泌液が貯留し,ここに上行性感染が起こり膿が貯留したものである。膿の排出が腫瘍によって妨げられるため,発熱とともに下腹部痛を来す。多量に膿が貯留すれば,それを排出しようとして子宮収縮が起こり,時として陣痛様の痛みを生じる。 腫瘍が骨盤壁へ広がった進行例や,尿管の狭窄や閉塞による水腎症では腰痛を来す。さらに,腫瘍が骨盤内神経に及ぶと,下肢痛を訴えるようになる。 (ウ)血尿,下血腫瘍が膀胱や直腸へ浸潤した場合に認められる。 オ子宮頸癌の診断,,悪性腫瘍の確定診断は組織学的に行うが組織の的確な採取部位を決めあるいは臨床進行期を決めるためにも,注意深い視診や触診が必要である(乙B3・109頁。 )- 5 -(ア)細胞診綿棒あるいは木製のヘラのようなもので子宮内壁をこすって分泌物(細胞)をとり,それをガラス板の上で乾燥,固定させた後,専門スタッフが色素で染めて(パパニコロウ染色,1枚1枚顕微鏡で覗いて細)胞の状態を調べる方法である。 細胞診の判定法には,パパニコロウのクラス分類が用いられるのが一般的である。この分類法は,細胞異型の程度によってクラスⅠからⅤまでの5段階の評価を行うもので,クラスⅠでは正常,クラスⅡでは異常細胞を認めるが良好,クラスⅢaでは悪性を少し疑い,軽度,中等度異形成上皮を想定する,クラスⅢbでは悪性をかなり疑い,高度異形成上皮を想定する,クラスⅣでは悪性を極めて強く疑い,上皮内癌を想定する,クラスⅤでは悪性と断定し,浸潤癌(微小浸潤癌を含む)を想定。 することとされている(甲B1・80頁,甲B2・19頁,甲B10・112,313頁,乙B3・109,110頁。 )(イ)コルポスコピーコルポスコープという双眼鏡 癌(微小浸潤癌を含む)を想定。 することとされている(甲B1・80頁,甲B2・19頁,甲B10・112,313頁,乙B3・109,110頁。 )(イ)コルポスコピーコルポスコープという双眼鏡に似た拡大鏡を用いて子宮の入口部分を5ないし40倍に拡大し,血管や粘膜に癌の徴候を示す病変がないかどうかを観察するものである。 正常所見はNCF(,不適例(扁平円柱NormalColposcopicFindings)上皮境界が見えないもの)はUCF()UnsatisfactoryColposcopicFindingと記録する(甲B2・19,20頁,甲B10・112,313,315頁。 )(ウ)組織診①狙い生検コルポスコピー観察下に子宮頸部の異常所見のある部位から組織を切除して,顕微鏡下で精密に検査するものである(甲B2・20頁,- 6 -甲B10・112頁。 )②頸管内掻爬(頸管掻爬)子宮頸管を金属棒等の器具で拡張し,頸管にキュレットと呼ばれるスプーン状の器具を入れて,子宮内膜や頸管内の組織を削り取り,これを組織標本とする検査である(乙A4・9頁,乙A5・6頁。 )③円錐切除術円錐状に子宮頸部を切除して組織標本とし,切除した標本の連続切(,片を作製して浸潤の状態を判定するものである甲B10・316頁甲B19・82頁,乙B3・111,112頁。 )カ子宮頸癌の臨床進行期の決定子宮頸癌の臨床進行期に関しては,0期からⅣ期に分け,上皮内癌を0期,癌が子宮頸部に限局するものをⅠ期(このうち,組織学的にのみ診断できる浸潤癌をⅠa期,臨床的に明らかな病巣が子宮頸部に限局するものか,又は臨床的には明らかではないがⅠa期をこえるものをⅠb期,癌)が子宮頸部を超えて広がっているが,骨盤壁又は腟壁下3分の1には達し 浸潤癌をⅠa期,臨床的に明らかな病巣が子宮頸部に限局するものか,又は臨床的には明らかではないがⅠa期をこえるものをⅠb期,癌)が子宮頸部を超えて広がっているが,骨盤壁又は腟壁下3分の1には達していないものをⅡ期,癌浸潤が骨盤壁にまで達するもので腫瘍塊と骨盤壁との間にを残さないものか,又は腟壁浸潤が下3分の1cancerfreespaceに達するものをⅢ期,癌が小骨盤腟を超えて広がるか,又は膀胱,直腸の粘膜を侵すものをⅣ期(このうち,膀胱,直腸の粘膜への浸潤があるものをⅣa期,小骨盤腟をこえて広がるものをⅣb期)と分類するのが一般的(,,,である甲B10・311ないし313323頁甲B11・515頁,,,)。 甲B13・109頁甲B19・82頁甲B37乙B3・111頁子宮頸癌の臨床進行期の決定に際し,腫瘍マーカーとしては,扁平上皮癌のSCC抗原と腺癌のCA125,CA19-9が広く用いられている(甲B17・232頁,甲B19・83頁,乙B3・112頁。 )( )Dの被告病院における診療経過の概要 - 7 -アDは,平成10年11月に,原告Aの勤務先で成人病検診を受け,子宮癌の疑いがある(細胞診クラスⅢb)と言われたため,同年12月26日,,,,に精密検査を受ける目的で被告病院の産婦人科外来を受診しその際被告との間で診療契約を締結した。 Dは,以後,被告病院において,平成11年5月11日まではE医師による診療を,平成13年4月9日から同年8月31日まではF医師による診療をそれぞれ受けた(乙A4・4頁,乙A5・1,4頁,証人F・反訳書1・1頁。 )イDは,平成10年12月26日,E医師の診察を受けるとともに,細胞診のために子宮頸部と子宮内膜の細胞の採取を受けた。その後,同月28 乙A4・4頁,乙A5・1,4頁,証人F・反訳書1・1頁。 )イDは,平成10年12月26日,E医師の診察を受けるとともに,細胞診のために子宮頸部と子宮内膜の細胞の採取を受けた。その後,同月28日に判明した細胞診の結果は,EC(子宮頸部)についてクラスⅢb,EM(子宮内膜)についてクラスⅡであった。しかし,平成11年1月22日に被告病院のコルポスコピー外来を受診した際には,コルポスコープ診において細胞診のクラスⅢbに相当する所見が認められず,同月25日に報告された組織診の結果も,子宮頸部から腟部の悪性を伴わない慢性的な炎症というものであった(乙A1・50ないし53,109,110,123,157頁。 )ウその後も,Dは,平成15年1月8日までの間,継続的に被告病院産婦人科に通院し,たびたび細胞診,組織診等を受けた(後記( ) 。 )( )Dの死亡に至る経緯 ア平成14年11月初旬から腰痛が生じ,平成15年1月12日には無尿の症状が現れたため,Dは,同月14日に被告病院の泌尿器科外来を受診し,両側水腎症,急性腎不全との診断を受け,同日,被告病院泌尿器科に緊急入院の上,右腎瘻造設術を受けた(乙A1・3,75,77,84ないし87頁,乙A2・3,14,15,21,99,282ないし284頁。 )- 8 -イ平成15年2月10日,同月7日に採取されたDのEM(子宮内膜)にsquamouscellcarcinomainvasive,non-keraついての組織診で扁平上皮癌,(),(浸潤非角化型)が認められたことが報告された(乙A2・360,type361頁。 )ウ平成15年2月14日,Dは,被告病院の産婦人科に転科し,以後,放射線療法及び化学療法による治療を受けたが,同年8月14日午後10時 が報告された(乙A2・360,type361頁。 )ウ平成15年2月14日,Dは,被告病院の産婦人科に転科し,以後,放射線療法及び化学療法による治療を受けたが,同年8月14日午後10時24分に死亡が確認された(死亡時48歳(乙A1・95,97ないし)103頁,乙A2・5,32,36ないし40,45,47ないし53,70,113,127,140,146,160,209,218,219,222,223頁。 )( )Dに対する細胞診・組織診の結果 アDに対して実施された細胞診の結果は,下記のとおりである(乙A1・123ないし137頁。 )記報告日EC(子宮頸部)EM(子宮内膜)平成10年12月28日ⅢbⅡ平成11年3月23日ⅢⅡ同年4月28日Ⅱ同年8月6日Ⅰ同年10月23日Ⅱ平成12年1月22日ⅡⅡ同年5月1日Ⅱ同年11月18日Ⅲb平成13年3月6日ⅢbⅡ同年6月19日ⅡⅡ同年8月31日Ⅱ- 9 -平成14年1月15日Ⅲb同年4月20日Ⅲ同年8月31日Ⅱ同年12月28日ⅡイDに対して実施された組織診の結果は,下記のとおりである(乙A1・109ないし122頁,乙A2・360,361頁,証人F・反訳書1・25,26頁。 )記報告日部位診断平成11年1月25日子宮腟部子宮腟部から頸部の悪性を伴わない慢性的な炎症同年3月24日同上子宮腟部から頸部の慢性的な炎症平成12年12月6日同上同上平成13年3月29日同上同上同年4月11日子宮頸管子宮内膜が乱れた増殖性の段階(頸管内掻爬)平成14年2月4日子宮腟部子宮腟部から頸部の慢性的な炎症(頸管内掻爬様に組織採取)同年5月27日同上子宮腟部から頸部のびらんを伴う慢性的な 子宮内膜が乱れた増殖性の段階(頸管内掻爬)平成14年2月4日子宮腟部子宮腟部から頸部の慢性的な炎症(頸管内掻爬様に組織採取)同年5月27日同上子宮腟部から頸部のびらんを伴う慢性的な炎症平成15年2月10日子宮内膜扁平上皮癌,浸潤非角化型( )Dの行政解剖 ア被告病院は,Dの死亡を確認した後,原告Aに対し,Dの遺体に対する病理解剖を申し出たが,原告Aは,これを断り,司法解剖を依頼した。しかし,警察が,犯罪死の可能性が疑われないとして,司法解剖を行うことができないと回答したため原告Aは行政解剖を依頼することとした乙,,(- 10 -A1・6,8頁,乙A2・5,97,98,209頁,原告A本人4,11頁。 )イ平成15年8月15日,千葉市所在の千葉大学大学院医学研究院法医学教室において,G医師により,Dの遺体に対する行政解剖が行われた。その剖検所見の概要は下記のとおりである(甲A5,証人Gの供述書2枚目。 )記(ア)死亡の原因直接死因は「癌性悪液質,その原因は「扁平上皮癌(原発不明」」)である。 (イ)解剖所見の概要各胸腔内に約1400ミリリットルずつの胸水が存在し,高度な肺水腫を認めた。腹部大動脈周囲には,腫瘍塊が存在し,脊椎及び尿管を巻き込んでいた。左腎臓は萎縮し,水尿管を認め,膀胱側の尿管狭窄は高度。右腎は肉眼的には尋常であったが,左と同様に水尿管が認められ,尿管狭窄は高度。 (ウ)その他特に記すべき事項子宮は,外子宮口に小豆大,表面平滑な腫瘤を認めたほか,肉眼的に変形,周囲との癒着は認められなかった。組織検査上,肝,右副腎,両側腎,大動脈周囲(後腹膜)に異常細胞が認められ,組織型は扁平上皮癌,転移巣と考えられた。 子宮においては,外子宮口の腫瘤は炎症性の腫瘤であり,今回の検 は認められなかった。組織検査上,肝,右副腎,両側腎,大動脈周囲(後腹膜)に異常細胞が認められ,組織型は扁平上皮癌,転移巣と考えられた。 子宮においては,外子宮口の腫瘤は炎症性の腫瘤であり,今回の検索では悪性の所見は認められなかった。 原発巣は,今回の検索では明らかにすることはできなかった。 原告らの主張( )Dの死亡原因について - 11 -ア以下の点を考慮すれば,Dが子宮頸部を原発とする癌に罹患していたことは疑いのないところであり,その発見が遅れたために癌が子宮体部をはじめとする周辺に浸潤して完治不可能な状態になり,Dは死亡するに至ったものである。 (ア)被告病院のカルテ上に「子宮癌「子宮頸癌「子宮悪性腫瘍」,」,」,等の記載が多数存在する(平成17年10月28日付け原告ら準備書面( )の第2の1( )参照。 )(イ)Dは,平成10年11月に被告病院において子宮癌の精密検査を受,()「」,けた際子宮頸部ECについてはⅢbの判定を受けたのに対し子宮内膜(EM)については「Ⅱ」の判定を受けた。その後に継続して,()「」「」行われた検査の際にも子宮頸部ECについてはⅢbないしⅡの判定を受けたのに対し,子宮内膜(EM)についてはほぼ一貫して「Ⅱ」ないし「Ⅰ」の判定を受けた。 (ウ)被告病院の担当医師は,Dに対し,平成15年2月25日から同年3月11日まで,放射線の腰部照射を行い,その後,同年4月15日から同年5月23日まで,骨盤部と子宮腔内照射を行った。また,アクプラ(ネダプラチン254S)という子宮頸癌に処方される抗癌剤を投与。 。 したこれらが子宮頸癌を前提とした治療法であることは明らかである(エ)Dは,平成15年1月12日,子宮頸癌の顕著な臨床症状 ラ(ネダプラチン254S)という子宮頸癌に処方される抗癌剤を投与。 。 したこれらが子宮頸癌を前提とした治療法であることは明らかである(エ)Dは,平成15年1月12日,子宮頸癌の顕著な臨床症状である無尿の症状を来した。 (オ)平成15年2月10日の子宮内膜の臨床病理組織検査報告書(乙A2・361頁)に「(扁平上Squamouscellcarcinoma,invasive,non-keratype皮癌,浸潤非角化型「(悪性腫瘍」との記載があるとこ)」,)malignancyろ,扁平上皮癌が子宮内膜に原発する例は非常にまれである(甲B19・99頁。また,上記報告書には「・・・頸部癌からの進展でしょう)か」との記載もある。 - 12 -(カ)行政解剖において,外子宮口(子宮頸部)に,炎症性の腫瘤が認められた。これは,もともと癌の腫瘤形成があり,放射線療法と化学療法によって癌細胞が死滅し,その死滅細胞を処理するために浸潤してきた炎症細胞であると解釈することが最も合理的である。 (キ)SCCは,子宮頸癌の約95パーセントを占める扁平上皮癌の腫瘍マーカーとして,よく用いられているところ,入院直後の平成15年1月29日において,DのSCC値は190であった。 (ク)行政解剖の所見上,Dの死因は扁平上皮癌(原発不明)とされてい,,,,,るが扁平上皮癌で原発巣となり得るものは口腔癌咽頭癌食道癌肺癌の一部,皮膚癌,子宮頸癌,外陰癌くらいであるところ,Dは,生前,口腔,咽頭,食道,肺,皮膚,外陰に関する臨床症状は全くなく,これらの部位に対する治療を全く受けておらず,行政解剖時にもこれらの部位に関する所見は全くなかった。 ,,,,()(ケ)行政解剖において肝臓右副腎両側腎臓大動脈周囲後 くなく,これらの部位に対する治療を全く受けておらず,行政解剖時にもこれらの部位に関する所見は全くなかった。 ,,,,()(ケ)行政解剖において肝臓右副腎両側腎臓大動脈周囲後腹膜の癌は,組織型としては扁平上皮癌であり,かつ転移巣であると判定された。これらの部位は,いずれも子宮より上部にあり,子宮頸部とは離れた位置にあるから,子宮頸癌が原発巣であるとすれば転移巣である関係になる。 (コ)子宮内膜という子宮体部の最も内側の膜にしか癌病巣は認められなかったところ,仮に子宮以外の臓器から転移したのであれば,子宮体部全体が扁平上皮癌になっていなければならないはずである。また,そもそも他臓器原発の癌が子宮に転移することは臨床上まれである。 (サ)行政解剖の報告書に「左腎臓は萎縮し・・・膀胱側の尿管狭窄,,は高度「右腎は・・・左と同様・・・尿管狭窄は高度」との記載が」,ある。尿管は膀胱付近で子宮の下部(すなわち子宮頸部)に近いところを通っているから,この部分の狭窄は子宮頸部の癌が腫大又は浸潤して- 13 -尿管を圧迫したことによるものであると考えると理解しやすい。 イ死亡に至る機序についてDの子宮頸癌は,平成10年12月ころから平成11年暮れころにかけては上皮内癌(0期)又は微小浸潤癌(Ⅰa期)であり,平成12年初めから平成13年にかけて浸潤癌(Ⅱ期)に,平成14年後半ころからⅢ期に移行したものといえる。 ( )被告の義務違反 ア適切な細胞診,組織診を行う義務の違反(ア)平成11年4月3日にホルモン投与後の細胞診を行わなかったこと平成11年3月23日の細胞診における病理医の所見は「ホルモン,。」,投与後の細胞診再検を希望しますというものであったのであるからE医師は,次の診察日である同年4月3 胞診を行わなかったこと平成11年3月23日の細胞診における病理医の所見は「ホルモン,。」,投与後の細胞診再検を希望しますというものであったのであるからE医師は,次の診察日である同年4月3日にホルモン投与後の細胞診を行うことによってDの子宮頸癌を発見し,適切な治療(0期であれば,円錐切除術,単純性子宮全摘術,準広汎性子宮全摘術,放射線の腔内照射,Ⅰa期であれば,これらに加え,広汎性子宮全摘術,放射線の腔内照射と外部照射との併用)を行うべき義務を負っていた。 にもかかわらず,E医師は,これを怠り,上記細胞診を行わず,子宮頸癌の診断及び治療をしなかった。 (イ)平成11年4月3日に頸管内掻爬を行わなかったこと平成11年1月25日の組織診における病理医の所見は「頸管掻爬,をしてみてください」というものであり,同月22日のコルポスコー。 プ所見は「頸管内病変か?,同年3月19日のコルポスコープ所見は」「頸管内病変の為コルポ上NCF」というものであったのであるから,E医師は,次の診察日である同年4月3日に頸管内掻爬を行うことによってDの子宮頸癌を発見し,適切な治療(上記(ア)と同様)を行うべき義務を負っていた。 - 14 -にもかかわらず,E医師は,これを怠り,上記頸管内掻爬を行わず,子宮頸癌の診断及び治療をしなかった。 (ウ)平成13年6月18日に頸管内掻爬のやり直しを行わなかったこと平成13年3月29日の組織診における病理医の所見(細胞診の所「見(ECⅢb)と一致しないので頸管掻爬を含め再検して下さい」と。 いうもの)を受けて行われた同年4月9日の頸管内掻爬において,子宮頸部粘膜ではなく子宮内膜が採取され,頸管粘膜の採取に失敗したのであるから,F医師は,同年6月18日の診察日に頸管内掻爬のやり直しを行うことによってDの われた同年4月9日の頸管内掻爬において,子宮頸部粘膜ではなく子宮内膜が採取され,頸管粘膜の採取に失敗したのであるから,F医師は,同年6月18日の診察日に頸管内掻爬のやり直しを行うことによってDの子宮頸癌を発見し,適切な治療(広汎性子宮全摘術,放射線の腔内照射と外部照射との併用)を行うべき義務を負っていた。 にもかかわらず,F医師は,これを怠り,上記頸管内掻爬のやり直しを行わず,子宮頸癌の診断及び治療をしなかった。 イ円錐切除術を行う義務の違反円錐切除術は,細胞診と組織診の結果が一致しなかった場合等に行われる臨床的検査であるところ,本件では,クラスⅢ以上と判定された平成10年12月26日,平成11年3月19日,平成12年11月17日,平成13年3月5日,平成14年1月11日,平成14年4月19日における細胞診(いずれも採取日)に対応する組織診において,上記細胞診の結果と一致する結果にならなかったのであるから,被告病院の担当医師は,上記各採取日後,細胞診と組織診の不一致が明らかになった各時点(具体的には,平成11年2月6日,同年4月3日,平成12年11月24日,平成13年3月12日,平成14年1月18日,同年4月26日)において,円錐切除術を行ってDの子宮頸癌を発見し,適切な治療(平成11年4月3日までは上記ア(ア)と同様,平成13年3月12日までは上記ア(ウ)と同様)を行うべき義務を負っていた。 - 15 -にもかかわらず,被告病院の担当医師は,これを怠り,上記各時点において円錐切除術を行わず,子宮頸癌の診断及び治療をしなかった。 ウ円錐切除術の必要性を十分に説明する義務の違反Dは,平成11年2月9日に円錐切除術を勧めたE医師に対し,これを断っている(乙A1・54頁。しかしながら,Dは,平成10年10月)9日付けの藤枝市立総 錐切除術の必要性を十分に説明する義務の違反Dは,平成11年2月9日に円錐切除術を勧めたE医師に対し,これを断っている(乙A1・54頁。しかしながら,Dは,平成10年10月)9日付けの藤枝市立総合病院精神科のH医師名義の紹介状(乙A1・11頁)の記載から明らかなとおり,被告病院神経精神科に通院する以前から統合失調症に罹患していた。したがって,大学病院である被告病院の担当医師は,Dが円錐切除術の可否について正常な判断ができないおそれがあることを考慮し,平成11年2月9日以降に,被告病院の神経精神科の医師と協同で,D本人のみならず,家族にも,円錐切除術の必要性(円錐切除術の意義,内容,リスク等)について十分説明し,理解を求める義務を負っていた。 しかるに,被告病院の担当医師は,円錐切除の手術の内容について十分納得のいく説明を行わず,家族を交えての説明も一度も行わなかった。 ( )Dの死亡と被告の義務違反との間の因果関係 ア0期の子宮頸癌患者の5年生存率は100%,Ⅰa期の子宮頸癌患者の5年生存率は95%,Ⅱ期の子宮頸癌患者の5年生存率は60ないし70%であるから,被告病院の担当医師が上記( )ア又はイの義務を尽くして いれば,Dが死亡することはなかった。 イまた,被告病院の担当医師が上記( )ウの説明義務を尽くさなかったこ とにより,Dは,円錐切除術を受ける機会を奪われ,その結果,上記( ) イの機序により死亡するに至ったものである。 ウよって,被告の上記( )の義務違反とDの死亡との間には相当因果関係 がある。 ( )損害 - 16 -アDの損害(ア)Dの逸失利益5375万0091円Dは,梅花女子大学英米文学科を卒業した女性で死亡当時は47歳であったところ,上記( )の義務違反がなければ,最低20年間は - 16 -アDの損害(ア)Dの逸失利益5375万0091円Dは,梅花女子大学英米文学科を卒業した女性で死亡当時は47歳であったところ,上記( )の義務違反がなければ,最低20年間は通常ど おり稼働することが可能であった。そこで,基礎年収を616万1500円(平成15年賃金センサス・企業規模計・女子大卒・45ないし49歳の平均年収額,生活費控除率30パーセント,就労可能年数を2)0年(ライプニッツ係数124622)として,Dの逸失利益を算定.すると,以下のとおり5375万0091円となる。 (計算式)616万1500円×(1-03)×124622=5375万0..091円(1円未満切り捨て)(イ)死亡慰謝料2400万円(ウ)治療費(個室の室料差額代297万円を含む)。 494万0040円(エ)原告らは,Dに発生した上記損害について,法定相続分に応じて被告に対する損害賠償請求権を相続した。 イ原告らの損害(ア)葬儀費用150万円(イ)弁護士費用841万9013円ウ損害合計額9260万9144円 被告の主張( )Dの子宮頸部には死因となった癌の原発巣も転移巣もなかったこと 次の諸点に照らすと,Dの子宮頸部には死因となった癌の原発巣も転移巣もなかったといえる。 ア行政解剖の所見について- 17 -(ア)Dの子宮についての解剖所見は「外子宮口に小豆大,表面平滑な,,,。」,腫瘤を認めたほか肉眼的に変形周囲との癒着は認められなかった「子宮においては,外子宮口の腫瘤は炎症性の腫瘤であり,今回の検索では悪性の所見は認められなかった」というものであり,子宮頸部に。 癌組織は認められていない。 (イ)本件においては,解剖所見上,傍大動脈リンパ節転移が確認されたのみであり, 瘤であり,今回の検索では悪性の所見は認められなかった」というものであり,子宮頸部に。 癌組織は認められていない。 (イ)本件においては,解剖所見上,傍大動脈リンパ節転移が確認されたのみであり,骨盤内リンパ節転移は認められていないが,子宮頸癌から傍大動脈リンパ節に転移したというのであれば,まずもって子宮頸癌の一次リンパ節である骨盤内リンパ節に転移が認められるはずである。なお,本件では骨盤のみならず傍大動脈を含む第4・第5腰椎についても放射線治療が行われているから,放射線療法によって骨盤内リンパ節転移部分がその痕跡すら残さず消失したのであれば,同じく放射線治療が行われた傍大動脈リンパ節転移の病変についても同様のことが言えてしかるべきである。 (ウ)Dの子宮についての解剖所見は上記(ア)のとおりであるところ,子宮頸部が原発巣であれば子宮頸部の変形や周囲組織との強度の癒着等の異常が確認されてしかるべきである。 (エ)Dは,原発巣に対する直接的な放射線治療である腔内照射を受けて,,おらず第4・第5腰椎及び骨盤への外部照射のみを受けているところ癌死に至るまでの原発巣が外部照射のみで痕跡すら残さず消滅することなど考えられない。 (オ)Dの解剖所見において瘢痕が確認されていないが,癌死に至るまでの原発巣が子宮頸部に存在したのであれば,それに相応した広範囲にわたる瘢痕が確認されてしかるべきである。 イ臨床所見について(ア)本件では,平成15年2月7日に子宮内膜組織採取が行われるまで- 18 -の間,細胞診はほぼ3か月に1回,コルポスコープ診・組織診も約6か月に1回の頻度で実施されているところ,その間,一度も子宮頸部から悪性所見は確認されていない。しかも,死亡から1年以内の平成14年8月と同年12月に行われた細胞診の結果はともに陰性 ・組織診も約6か月に1回の頻度で実施されているところ,その間,一度も子宮頸部から悪性所見は確認されていない。しかも,死亡から1年以内の平成14年8月と同年12月に行われた細胞診の結果はともに陰性を示すクラスⅡであった。 (イ)Dには,子宮頸癌における特徴的な臨床症状である不正出血が一切確認されていないDが平成14年11月初旬から腰痛を訴えており乙。 (A1・75,77頁,平成15年1月14日の入院後の画像検査で腰)椎の骨転移が認められるとの診断を受けていることからすると,Dには平成14年11月初旬の時点で骨転移症状が出現していたものと考えられ,遅くとも平成14年11月までに原発巣は臨床進行期Ⅳbの状態にあったと考えられるところ,その原発巣が子宮頸部であったとすれば,出血等の症状が全くないことなどあり得ない。 なお,外来診療録における不正出血との記載(乙A1・1頁)は,保険を適用して子宮体癌の検査を行うために付けられた,いわゆる保険病名である。 (ウ)Dの内診所見において,一度も子宮頸癌を示唆する所見(硬いという所見)が確認されていない。 (エ)平成15年1月28日撮影の腹部骨盤CTにおいて,原発巣が認められていない(乙A2・379頁。また,同CTでは,大動脈周囲の)リンパ節腫脹は確認されているが,子宮頸部の一次リンパ節である骨盤内リンパ節の腫脹は認められていない。 (オ)平成15年1月30日に施行された経腟でのエコー検査(頸管腺まで確認したもの)において,子宮頸部に悪性変化を示唆する所見がないことが確認されている(乙A1・67頁。 )(カ)平成15年3月27日に施行された骨盤MRI検査において,子宮- 19 -内に原発巣を示唆する所見がないことが確認されている。また,同MRIの診断レポートには「その他異常所見認め 頁。 )(カ)平成15年3月27日に施行された骨盤MRI検査において,子宮- 19 -内に原発巣を示唆する所見がないことが確認されている。また,同MRIの診断レポートには「その他異常所見認めません」と記載されてお。 り(乙A2・392頁,リンパ節腫脹等,骨盤内リンパ節転移を示唆)する所見についても否定されている。 ウDの死亡原因について現代の医学においても,臨床所見や解剖所見から原発巣を特定できない癌は存在するところ,本件において,解剖等によってもDの癌の原発巣を特定することができなかったのであるから,Dは原発不明癌により死亡するに至ったものといえる。 エ原告らの主張の不合理性(ア)原告らは,子宮頸部の細胞診の結果と子宮内膜の細胞診の結果との比較から子宮頸癌の存在が裏付けられると主張するが,子宮頸部の細胞診の変化は子宮頸部に炎症性の変化があることを裏付けるものにすぎず,他方,子宮内膜にいずれかの時点で癌病巣があったことは平成15年2月10日の組織診所見から明らかであって,この両者の比較から原発巣は子宮頸部にあったなどということはできない。 (イ)また,原告らは,Dが無尿の症状を来したことから子宮頸癌が原発巣であることが裏付けられると主張するが,平成15年1月23日に確認された右尿管閉塞の部位が,第4腰椎レベルであり,傍大動脈リンパ節の周囲であること,解剖所見においても,傍大動脈の周囲に腫瘍塊が存在し,脊椎及び尿管を巻き込んでいることが確認されていることからすれば,上記尿管閉塞は傍大動脈リンパ節が転移によって腫大して右尿管を圧迫したことによるものであることは明らかである。 (ウ)さらに,原告らは,扁平上皮癌が子宮内膜に原発する例は非常にまれであると主張するが,現在では子宮体癌は子宮癌全体の約40パーセントを占め,子 圧迫したことによるものであることは明らかである。 (ウ)さらに,原告らは,扁平上皮癌が子宮内膜に原発する例は非常にまれであると主張するが,現在では子宮体癌は子宮癌全体の約40パーセントを占め,子宮体癌に占める扁平上皮癌の割合も腺扁平上皮癌と腺棘- 20 -細胞癌を加えれば約6パーセントを占めると言われている。しかも,日本全体の統計的な数字で一患者の疾患の可能性を論じるのは全くナンセンスである。被告病院の病理医は,平成15年2月10日に頸部癌からの進展を疑ってはいるものの,頸部癌とは断定していない。なお,浸潤癌であるからどこかから浸潤してくるものであるとの医学的知見はない。 (エ)原告らは,行政解剖において認められた外子宮口(子宮頸部)の炎症性の腫瘤は,放射線療法と化学療法によって癌細胞が死滅し,その死滅細胞を処理するために浸潤してきた炎症細胞であると解釈することが最も合理的であると主張するが,上記( )イ(イ)のとおり,放射線治療 を開始した平成15年2月においては,原発巣は既に臨床進行期Ⅳ期の状態にあったと考えられる。このような状態の子宮頸癌が,放射線治療によって,原発巣の消失のみならず癌が存在した何らの痕跡も残さず炎症性病変に変化することは考えにくい。 炎症性の変化は,放射線照射の結果生じる変化であり,ナボットやポリープ等の良性病変にこれを照射した場合にも等しく認められる変化である。Dには,外子宮口にナボットが確認され,コルポスコープ診においてもポリープが確認されているのであり,これらが放射線治療によって炎症性腫瘤に変性したと考えることが合理的である。 (オ)原告らは,DのSCC値が子宮頸癌の存在を根拠付けると主張するが,腫瘍マーカーの高低は癌細胞の多寡と必ずしも比例するものではないのであって,SCC値の変化をとらえて えることが合理的である。 (オ)原告らは,DのSCC値が子宮頸癌の存在を根拠付けると主張するが,腫瘍マーカーの高低は癌細胞の多寡と必ずしも比例するものではないのであって,SCC値の変化をとらえて子宮頸癌の有無をとらえることはできない。 (カ)原告らは,行政解剖において肝臓,右副腎,両側腎臓,大動脈周囲(後腹膜)の癌が転移巣であると判定されたことから子宮頸癌の原発巣,,であることが裏付けられると主張するが行政解剖で確認できない以上- 21 -。 ,,原発巣はあくまで不明である特にいくら治療を行っているとはいえ全ての転移巣が残存しているにもかかわらず,原発巣が全く消失することなどあり得ない。 ( )被告に義務違反がないこと ア適切な細胞診,組織診を行う義務の違反がないこと(ア)平成11年4月3日にE医師がDに対しホルモン投与後の細胞診再検を行う法的義務を負っていなかったことホルモン剤を投与しての細胞診(エストロゲンテスト)は,閉経後の細胞診で,特に老人性腟炎を発症している等の事情により採取された上皮細胞のほとんどが強く変性して異形成の判定が極めて困難な場合に行われるものである。 しかして,Dは,平成11年4月3日当時,閉経前であり,月経異常も確認されていなかった。 したがって,Dはエストロゲンテストの適応となる症例ではなく,平成11年4月3日にE医師が同テストを行わなかったことに何ら不適切な点はない。 ,,,なお婦人科疾患の診療方法については病理医の専門領域ではなく婦人科臨床医の専門領域であるからE医師は診療方法に関してホ,,,「ルモン投与後の細胞診再検を希望します」との病理医のコメントにそ。 のまま拘束されてはならない。 (イ)平成11年4月3日にE医師がDに対し頸管内掻爬を行う法的義務を負 に関してホ,,,「ルモン投与後の細胞診再検を希望します」との病理医のコメントにそ。 のまま拘束されてはならない。 (イ)平成11年4月3日にE医師がDに対し頸管内掻爬を行う法的義務を負っていなかったこと子宮頸癌の好発部位は頸管内方ではなくSCJであるところ,本件では,平成11年1月22日及び同年3月19日にSCJから採取された組織の病理組織検査において,いずれも悪性所見が認められていない。 また,我が国では,細胞診の精度が諸外国に比較して高いことから,- 22 -子宮頸癌の検出との関係では,頸管内掻爬よりも定期的な細胞診に信頼が置かれている。 さらに,頸管内掻爬の場合には,組織が採取されず,結果的に患者に疼痛のみを与えることも少なくない(乙B2。 )これらに照らすと,平成11年4月3日の時点でE医師がDに対し頸管内掻爬を行う法的義務を負っていなかったことは明らかである。 ,,,なお病理部の医師の勧めはあくまでも病理医としての考えでありどのように診察を進めていくかについては,実際に診療を担当する婦人科外来医師の判断に委ねられるべきものである。 (ウ)平成13年4月9日のDに対する頸管内掻爬は適切に行われており,再検査を行う法的義務を負っていなかったこと平成13年4月9日に行われた頸管内掻爬は,内子宮口の上方にある子宮体部の内膜に達する深さまでキュレットを挿入した後に全周性に引っ掻くようにして行われたものであり,その検査手技に不適切は点はない。原告らは,子宮内膜の組織のみが採取され,子宮頸部の組織が採取されていないことを問題にするが,この事実は,子宮体部の内膜より手前に存在する頸管内部が滑らかな状態であり,同部に悪性病変が存在しないことを示す所見である。 また,平成13年6月18日までに細胞診の結果がECⅢからECⅠ にするが,この事実は,子宮体部の内膜より手前に存在する頸管内部が滑らかな状態であり,同部に悪性病変が存在しないことを示す所見である。 また,平成13年6月18日までに細胞診の結果がECⅢからECⅠないしⅡになるという変化が既に認められており,このような変化は一般的に良性病変に見られる変化である。 以上によれば,F医師は,子宮頸部の組織が採取されなかったことをもって平成13年6月18日に頸管内掻爬を繰り返すべき法的義務を負っていない。 イ担当医師がDに対し円錐切除術を行う法的義務を負っていなかったこと細胞診でクラスⅢbが検出された場合に直ちに円錐切除術を施行しなけ- 23 -ればならないという医学的知見はない。また,細胞診の結果が偽陽性(クラスⅢ)を示していたに過ぎない場合には,悪性を示す所見(クラスⅣないしⅤ)が確認された場合と異なり,自然消退する可能性も十分にあるか,,ら対応する組織診において悪性を示す所見が認められなかったとしても。 ,直ちに円錐切除術を行うべきとされるものではない臨床現場においては細胞診でクラスⅢbとの結果が出た場合でも,直ちに円錐切除術に及ぶの,,ではなく細胞診による定期的なフォローアップを行うのが一般的でありそれは細胞診の精度をはじめとする医学的合理性に裏付けられたものである。 本件においては,平成10年から平成11年にかけてクラスⅢbが2回続いた後に,1年以上にわたってクラスⅠ又はⅡが続いたという経過があること,平成13年4月9日の頸管内掻爬によって頸管内がつるつるで悪性病変が存在しないことが確認されていること等から,直ちに円錐切除術を行うのではなく,細胞診によるフォローアップ(経過観察)を行うことにした判断は極めて合理的なものである。 また,本件では,D自らが平成11年に円錐切除術の施行を れていること等から,直ちに円錐切除術を行うのではなく,細胞診によるフォローアップ(経過観察)を行うことにした判断は極めて合理的なものである。 また,本件では,D自らが平成11年に円錐切除術の施行を一度拒絶した。円錐切除術は手術と同様に侵襲を伴うものである以上,D自身の同意がないのにこれを行うことは許されない。 以上のとおりであるから,被告病院の担当医師には,原告ら主張の各時点において,Dに円錐切除術を行う義務はなかった。 ウ円錐切除術の必要性に関する説明義務違反の不存在E医師は,平成11年2月6日,Dに対し,概略「細胞診の結果はE,CⅢbでしたが,病理組織診の結果は悪性ではありませんでした。子宮頸癌の検査として円錐切除術を実施することをお勧めいたします」などと。 説明し,円錐切除術の方法についても,図を示しながら「外子宮口から,子宮頸管部を円錐状に切除する方法です。この方法は腟部びらんなどの病- 24 -変部の広がりや深さを診断することができ,また,腟からは見えない子宮頸管内にある病変を診断するためにも有効です。病変部が良性のものや,悪性のものであっても軽度のもの(上皮内癌)であればこの手術だけで治療となります。この円錐切除術は手術室で麻酔をして行いますので,4~5日の入院が必要です」と説明した。 。 Dは,上記説明を受けて,平成11年2月9日にその施行を拒絶したものであるが,同月19日には,調子がよく,被告病院神経精神科への外来通院を欠席している。また,原告A自身も,平成11年2月以降,意思の疎通に支障があると感じたことはない旨を供述している(原告A本人12頁。 )以上によれば,Dが十分に説明内容を理解した上で円錐切除術を拒絶する旨の意思表示を行ったことは明らかであり,被告病院の担当医師に,家族同席の下に説明を行うべき法 述している(原告A本人12頁。 )以上によれば,Dが十分に説明内容を理解した上で円錐切除術を拒絶する旨の意思表示を行ったことは明らかであり,被告病院の担当医師に,家族同席の下に説明を行うべき法的義務はない。 また,円錐切除術は,侵襲を伴うものである以上,拒絶の意思を表示した患者を説得してまで施行するのは,極めて検査の必要性が高い場合に限られる。擦過細胞診やコルポスコープ診で確実に癌細胞が出てきている,自覚症状の出血等が強く病変として頸部が疑われるといった格別の事情のない本件において,被告病院の担当医師に,再度の説得を行うべき法的義務はない。 ( )因果関係の不存在 上記( )イ(イ)のとおり,Dが平成14年11月の時点で症状として現れ るような骨転移に至っていることからすると,平成11年4月ころに既に浸潤癌に至っていたことも十分に考えられるから,被告病院の担当医師の診療行為とDの死亡との間には相当因果関係がない(もちろん,被告は,子宮癌が原発巣であったこと自体を否定するものである。 。)( )損害について - 25 -いずれも争う。 被告の主張に対する原告らの反論( )行政解剖の不完全性について 被告は,行政解剖所見を根拠に,Dが原発不明癌により死亡するに至ったと主張する。 しかし,行政解剖は「公衆衛生の向上」という目的に必要十分な範囲での解剖にならざるを得ないという内在的制約があり,本件の行政解剖は監察医制度のない千葉県において行われている。また,本件の行政解剖において,子宮内膜の標本は作製されておらず,子宮頸部についても,1か所から標本が作製されているにすぎず,その1か所の標本も外子宮口部の腫瘤を含んでいない態様のものである。さらに,本件の行政解剖所見のうち子宮に関する記述は,組織検査上の所見の結果 部についても,1か所から標本が作製されているにすぎず,その1か所の標本も外子宮口部の腫瘤を含んでいない態様のものである。さらに,本件の行政解剖所見のうち子宮に関する記述は,組織検査上の所見の結果と断定できる記述ではない。 これらに照らすと,行政解剖の不完全さにより子宮頸部に癌が発見されなかった可能性が高いというべきである。 ( )放射線治療の効果 被告は,癌死に至るまでの原発巣が外部照射のみで痕跡すら残さず消滅することなど考えられないと主張する。 しかし,医学文献(甲B32・46,48頁)によれば,口腔癌に対する放射線治療の効果判定において,外部照射のみで癌細胞が認められないほどの効果が判定されたケースがあることが明らかである。また,甲B第29号証によれば,子宮頸癌症例44例のうち,放射線治療後,病理学的に残存腫瘍がない症例は36例であり,実に子宮頸癌の約82パーセントが放射線治療の影響で腫瘍残存がない程度まで治癒されている。 ( )細胞診,組織診の結果 被告は,平成15年2月7日に子宮内膜組織採取が行われるまでの間,細胞診,コルポスコープ診・組織診において,一度も子宮頸部から悪性所見は- 26 -確認されていないと主張する。 しかし,異型組織の存在が疑われる細胞診クラスⅢ以上の判定が平成10年11月,同年12月,平成11年3月,平成12年11月,平成13年3,,,,月平成14年1月同年4月平成15年1月と合計8回にわたってされこのうち,平成11年3月及び平成14年4月を除く計6回は,約50パー。 ,,,セント程度に癌が検出されるクラスⅢbの判定であった一方Dは生前外来診療において,合計7回にわたり,子宮頸部の組織診を受けているが,そのうち5回(平成12年12月4日,平成13年3月26日,同年4月9 度に癌が検出されるクラスⅢbの判定であった一方Dは生前外来診療において,合計7回にわたり,子宮頸部の組織診を受けているが,そのうち5回(平成12年12月4日,平成13年3月26日,同年4月9日,平成14年2月1日,同年5月24日)については,SCJが含まれていない組織を採取していたため,組織診の所見において,悪性所見はないという結果になったにすぎない。また,上記5回以外の2回(平成11年1月22日及び同年3月19日)についても,爾後に頸管粘膜の組織診を行うこ,。 とを条件として当該時点で明らかな悪性所見はないという所見にすぎない( )平成15年3月27日の骨盤MRI検査について ()上記MRIが撮影された平成15年3月27日の診療録乙A2・44頁には「(の綴りの誤りであると思われる」との記載が,同MRfailerfailure。)Iのレポート(乙A2・392頁)には「+」との記載があり,同artifactMRIは失敗であったと記されている。また,上記レポートには「T1のみの撮影です」との記載があり,子宮・卵巣・卵管の正常構造を同定する上で基本となるT2強調画像が欠けていることが記されている。したがって,上記MRI写真から正しい医学的診断を下すことはできない。 第3当裁判所の判断 Dが被告病院において診療を受けた経緯等について(,,,,,,上記第2の1の事実に証拠甲A1ないし4乙A1 証人E,,),同F原告A本人のほか各項に掲記したもの及び弁論の全趣旨を併せると次の事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 - 27 -( )平成10年12月26日から平成12年5月12日までの外来診療の経 過アDは,平成10年11月に,原告Aの勤務先で成人 の事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 - 27 -( )平成10年12月26日から平成12年5月12日までの外来診療の経 過アDは,平成10年11月に,原告Aの勤務先で成人病検診を受け,子宮癌の疑いがある(細胞診クラスⅢb)と言われたため,同年12月26日,,。 ,に精密検査を受ける目的で被告病院の産婦人科外来を受診した同日E医師が,Dを診察し,経腟にてエコー検査を行ったが,問題となる所見はなかった。E医師は,最後に,細胞診のために子宮頸部と子宮内膜の細胞の採取を行った。その後,同月28日に判明した細胞診の結果は,EC(子宮頸部)についてクラスⅢb,EM(子宮内膜)についてクラスⅡで(,,,あった甲A1・1ないし3頁甲A2・1頁乙A1・50ないし52123頁,乙A4・4,5頁,証人E・3,4頁,原告A本人1頁。 )イDは,平成11年1月22日に被告病院のコルポスコピー外来を受診したDを診察したI医師はコルポスコープを用いて扁平円柱上皮境界S。 ,(CJ)を含め子宮頸部を入念に検索したが,細胞診のクラスⅢbに相当する所見を認めず「頸管内病変か?円切(円錐切除術)にて確認も1つの,方法と考えます」とのコメントを付けた。また,同日,組織診のために。 子宮腟部の組織の採取が行われたが,同月25日に組織診を担当した病理医は,子宮頸部から腟部の悪性を伴わない慢性的な炎症であると診断し,「明らかな異形成()所見はない。頸管の掻爬()をして見dysplasiacurettageて下さい又細胞診再検して下さいとのコメントを付けた甲。 ()。」(smearA1・4頁,甲A3・1,2頁,乙A1・53,109,110,157頁,乙A4・5頁。 )ウDは,平成11年2月6 胞診再検して下さいとのコメントを付けた甲。 ()。」(smearA1・4頁,甲A3・1,2頁,乙A1・53,109,110,157頁,乙A4・5頁。 )ウDは,平成11年2月6日に被告病院の産婦人科外来を受診した。Dを診察したE医師は,上記アイ記載の細胞診,コルポスコープ診及び組織診の結果から子宮頸癌ではないと判断したが,子宮頸管内方に病変がある可能性を考慮し,Dが同意すれば念のために円錐切除術を行うことが望まし- 28 -いと考え,円錐切除術は,腟部のびらんなどの病変部の広がりや深さを診断することができ,腟からは見えない子宮頸管内にある病変を診断するためにも有効であること,円錐切除術は,麻酔下の手術であり,4,5日の入院が必要になることを説明した(甲A1・4頁,乙A1・53頁,乙A4・6頁,証人E・5,6,15ないし17頁。 )エDは,平成11年2月9日に被告病院の産婦人科外来を受診し,E医師に対し,円錐切除術を希望しない旨回答した(甲A1・5頁,乙A1・54頁,乙A4・7頁,証人E・6,18頁。 )オDは,平成11年3月19日に被告病院のコルポスコピー外来を受診した。Dを診察したI医師は,悪性を示す所見を認めず「頸管内方ややW,1(白色上皮)?もコルポ上はNCF」とのコメントを付けた。同日,I医師は,細胞診及び組織診のために子宮頸部及び子宮内膜の細胞並びに子宮腟部の組織の採取を行った。その後,同月23日に判明した細胞診の結果はEC(子宮頸部)についてクラスⅢ,EM(子宮内膜)についてクラスⅡであり,検査を担当した病理医は「核異型もあり,念のためホルモ,ン投与後の細胞診再検を希望します」とのコメントを付けた。また,同。 月24日に組織診を担当した病理医は,子宮腟部から頸部の慢性的な炎症,「」( 当した病理医は「核異型もあり,念のためホルモ,ン投与後の細胞診再検を希望します」とのコメントを付けた。また,同。 月24日に組織診を担当した病理医は,子宮腟部から頸部の慢性的な炎症,「」(,であると診断し悪性所見なしとのコメントを付けた甲A1・5頁甲A2・2頁,甲A3・3,4頁,乙A1・54,111,112,124,158頁,乙A4・7頁。 )カDは,平成11年4月3日に被告病院の産婦人科外来を受診した。E医師は,上記オのコルポスコープ診,細胞診及び組織診の結果をDに説明した上,細胞診の結果がクラスⅢであったことから,経過観察を行う必要があること,次回,改めて細胞診を行い,その結果によっては円錐切除術を行った方がよいことをDに説明した(甲A1・5頁,乙A1・54頁,乙A4・7頁,証人E・21,22頁。 )- 29 -キDは,平成11年4月27日に被告病院の産婦人科外来を受診した。E医師は,経腟にてエコー検査を行ったが,異常所見を認めなかった。そして,細胞診のために子宮頸部の細胞の採取を行ったが,その後,同月28日に判明した細胞診の結果はEC(子宮頸部)についてクラスⅡであった(,,,,)。 甲A1・6頁甲A2・3頁乙A1・55125頁乙A4・7頁クDは,平成11年5月11日に被告病院の産婦人科外来を受診した。E医師は,上記キの細胞診の結果をDに説明した上,従前に子宮頸部の細胞診においてクラスⅢbの結果が出ているなどの事情があったことから,経,(,過観察のため2か月に一度は来院するようDに指示した甲A1・6頁乙A1・55頁,乙A4・8頁,証人E・22頁。 )ケその後,Dは,継続的に被告病院産婦人科に通院し,平成11年8月6日,同年10月22日,平成12年1月21日,同年4月28日の した甲A1・6頁乙A1・55頁,乙A4・8頁,証人E・22頁。 )ケその後,Dは,継続的に被告病院産婦人科に通院し,平成11年8月6日,同年10月22日,平成12年1月21日,同年4月28日の受診時に,細胞診のために子宮頸部(平成12年1月21日については,子宮内膜も含む)の細胞の採取を受けた。平成11年8月6日,同年10月2。 3日,平成11年1月22日,同年5月1日に判明した細胞診の結果はいずれもEC(子宮頸部)についてクラスⅠ又はⅡで,クラスⅢ以上の所見はなかった(甲A1・6ないし8頁,甲A2・4ないし7頁,乙A1・55ないし57,126ないし129頁,乙A5・1,2頁。 )コDは,平成12年5月12日に被告病院の産婦人科外来を受診したが,同日の時点では,平成11年4月27日から1年以上にわたって細胞診の結果が陰性(クラスⅡ以下)であったことから,Dを診察したJ医師は,6か月後に再び来院するよう指示した(甲A1・8頁,乙A1・57頁,乙A5・2,3頁。 )( )平成12年11月17日以降の外来診療の経過 アDは,平成12年11月17日に被告病院の産婦人科外来を受診し,内診を受け,また,細胞診検査のために子宮頸部の細胞の採取を受けた。そ- 30 -の後,同月18日に判明した細胞診の結果はEC(子宮頸部)についてクラスⅢbであった(甲A1・8,9頁,甲A2・8頁,乙A1・57,58,130頁,乙A5・3頁。 )イDは,平成12年12月4日に被告病院のコルポスコピー外来を受診したが,NCFと診断された。また,同日,組織診のために子宮腟部の組織の採取を受けたところ,同月6日に組織診を担当した病理医は「悪性所,見なし」と診断し「円柱上皮域は見られません「細胞診で経過観察。 ,。」,して下さい」などのコメント のために子宮腟部の組織の採取を受けたところ,同月6日に組織診を担当した病理医は「悪性所,見なし」と診断し「円柱上皮域は見られません「細胞診で経過観察。 ,。」,して下さい」などのコメントを付けた(甲A1・9頁,甲A3・5,6。 頁,乙A1・58,113,114,159頁,乙A5・3頁。 )ウDは,平成13年3月5日に被告病院の産婦人科外来を受診し,内診及び経腟でのエコー検査を受けたが,異常がないとの診断を受けた。また,細胞診のために子宮頸部と子宮内膜の細胞の採取を受けた。その後,同月6日に判明した細胞診の結果は,EC(子宮頸部)についてクラスⅢb,EM(子宮内膜)についてクラスⅡであった。検査を担当した病理医は,異形成()又はそれ以上の病変が疑われることから,必ず生検にdysplasiaよる精査を行うよう求めるコメントを付けた(甲A1・10頁,甲A2・9頁,乙A1・59,131頁,乙A5・4頁。 ),,エDは平成13年3月26日に被告病院のコルポスコピー外来を受診し中等度異形成との診断を受けた。また,同日,組織診のために子宮腟部の3か所から生検による組織の採取を受けたが,同月29日に行われた組織診の所見は「円柱上皮域は見られません「悪性所見なし。細胞診で,。」,経過観察して下さい」というものであった。検査を担当した病理医は,。 細胞診()の所見と一致しないことから頸管内掻爬を含む再検査をsmear行うよう求めるコメントを付けた(甲A1・11頁,甲A3・7,8頁,乙A1・60,115,116,160頁,乙A5・4頁,証人F・反訳書1・8ないし10頁。 )- 31 -,。 オDは平成13年4月9日に被告病院のコルポスコピー外来を受診したDを診察したF医師は,コルポスコープ診を行い,SCJを確認した 4頁,証人F・反訳書1・8ないし10頁。 )- 31 -,。 オDは平成13年4月9日に被告病院のコルポスコピー外来を受診したDを診察したF医師は,コルポスコープ診を行い,SCJを確認した上,「NCF」と診断した。また,F医師は,Dに対し,頸管内掻爬にalmostよる組織診を行うことにし,器具を用いて子宮頸管を広げた上で,キュレットを頸管から子宮内まで挿入し,子宮内膜と頸管組織を削り取ったが,この日の掻爬では子宮内膜の組織は採取されたものの,子宮頸部の組織は採取されなかった。上記組織診を担当した病理医は「細胞診()再,smear検して下さい「悪性所見なし(」とのコメントを付け。」,)。 Nomalignancyた(甲A1・11頁,甲A3・9,10頁,乙A1・60,117,11,,,,,, 161頁乙A5・4ないし6頁証人F・反訳書1・1 11頁。 )カDは,平成13年4月16日に被告病院の産婦人科外来を受診し,担当したK医師から,上記オの頸管内掻爬の結果は悪性を示す所見ではなかったこと,2か月後に被告病院のコルポスコピー外来を受診することについて説明を受けた(甲A1・12頁,乙A1・61頁,乙A5・5頁。 ),,キDは平成13年6月18日に被告病院のコルポスコピー外来を受診し「UCF」との診断を受けた。また,同日,細胞診のために子宮頸部と子宮内膜の細胞の採取を受けたが,その後,同月19日に判明した細胞診の結果は,EC(子宮頸部,EM(子宮内膜)ともクラスⅡであった。検)査を担当した病理医は,今回の細胞内には上記アウで認めた異型細胞が存在しない,再検を強く希望する旨のコメントを付け,標本について,細胞数が乏しく適正を欠く面があると評価した(甲A1・12頁,甲A2・1 当した病理医は,今回の細胞内には上記アウで認めた異型細胞が存在しない,再検を強く希望する旨のコメントを付け,標本について,細胞数が乏しく適正を欠く面があると評価した(甲A1・12頁,甲A2・10頁,乙A1・61,132,162頁,乙A5・5頁,証人F・反訳書1・1頁。 )クDは,平成13年6月29日に被告病院の産婦人科外来を受診した。F医師は,上記キの細胞診の結果をDに説明した上,2か月後に改めて細胞- 32 -診を行い,その結果によっては円錐切除術を行った方がよいことをDに説明した(甲A1・12頁,乙A1・61頁,乙A5・5頁,証人F・反訳書1・15,16頁。 )ケその後,Dは,継続的に被告病院産婦人科に通院し,平成13年8月31日,平成14年1月11日,同年4月19日,同年8月30日,同年12月27日の受診時に,細胞診のために子宮頸部の細胞の採取を受けたところ,平成13年8月31日,平成14年1月15日,同年4月20日,同年8月31日,同年12月28日に判明した細胞診の結果は,それぞれEC(子宮頸部)についてクラスⅡ,クラスⅢb,クラスⅢ,クラスⅡ,クラスⅡであった。また,Dは,平成14年2月1日に被告病院のコルポスコピー外来を受診し,頸管内掻爬様に子宮頸管内の組織の採取を受けたところ,コルポスコープ診では「UCF」と診断され,他方,同月almost4日に組織診を担当した病理医は「円柱上皮域は見られません「形,。」,成異常()の所見はありません「悪性所見なし。細胞診で経dysplasia。」,過観察して下さい」とのコメントを付けた。さらに,Dは,同年5月2。 4日にも被告病院のコルポスコピー外来を受診し,組織診のために子宮腟部の組織採取を受けたところ,コルポスコープ診では「コルポ上所見乏しくNCFか 」とのコメントを付けた。さらに,Dは,同年5月2。 4日にも被告病院のコルポスコピー外来を受診し,組織診のために子宮腟部の組織採取を受けたところ,コルポスコープ診では「コルポ上所見乏しくNCFか?」と診断され,他方,同月27日に組織診を担当した病理医は「円柱上皮域は見られない「形成異常()の所見はありま,。」,dysplasiaせん「悪性所見なし。細胞診で経過観察して下さい」とのコメント。」,。 を付けた(甲A1・12ないし17頁,甲A2・11ないし15頁,甲A3・11ないし14頁,乙A1・61ないし66,119ないし122,133ないし137,163,164頁。 )コDは,平成15年1月8日に被告病院の産婦人科外来を受診した。担当,()したL医師は平成14年12月27日の細胞診の結果が陰性クラスⅡであったことを告げた上で,3か月後に再び来院するよう指示した(甲A- 33 -1・18頁,乙A1・67頁。 )( )Dが平成15年1月14日に被告病院に入院した後の経過 ア平成14年11月初旬から腰痛が生じ,平成15年1月12日には無尿の症状が現れたため,Dは,同月14日に被告病院の泌尿器科外来を受診し,両側水腎症,急性腎不全との診断を受け,同日,被告病院泌尿器科に,(,,,,緊急入院の上右腎瘻造設術を受けた甲A4乙A1・3 84ないし87頁,乙A2・3,14,15,21,99,282ないし284頁,原告A本人2頁。 ),。 ,イその後平成15年1月23日に腎瘻造影検査が行われた担当医師は右尿管がL4(第4腰椎)の位置で完全に閉塞していることを認めた(乙A2・23,378頁,証人E・1,2頁。 )ウ平成15年1月28日,腹部から骨盤にかけてのCT撮影が行われた。 担当医 当医師は右尿管がL4(第4腰椎)の位置で完全に閉塞していることを認めた(乙A2・23,378頁,証人E・1,2頁。 )ウ平成15年1月28日,腹部から骨盤にかけてのCT撮影が行われた。 担当医師は,上腸間膜動脈分岐下の大動脈周囲(骨盤外)から両側腸骨動脈周囲にかけて軟組織の陰影を認めてこれをリンパ節の腫脹によるものと考え,また,下部腰椎の椎体右側に軟組織腫瘤を伴う骨破壊像を認めてこれを癌の骨転移によるものと考えた(乙A2・24,25,379頁,乙B4・45頁,証人E・39頁。 )エ平成15年1月29日,骨シンチグラフィーが行われた。担当医師は,第4,第5腰椎への集積が増加しており,癌の骨転移に適合的な所見であると考えた。また,同日,生化学・臨床免疫検査が行われ,その結果は,CEAが18.1(基準値は6.5以下,CA125が10ng/mlng/ml)3.1(基準値は35以下)であった。さらに,腫瘍マーカーU/mlU/mlng/mlng/ml検査が行われ,その結果はSCCが190(基準値は1.5以下)であった(乙A2・25,342,354,356,380頁。 )オ平成15年1月30日,経腟でのエコー検査が行われ,頸管腺を含む子宮頸部についての検索が行われたが,頸管部の腫瘤性病変等や卵巣の腫大- 34 -が認められず,問題となる所見は認められなかった(甲A1・18,19,,,,)。 頁乙A1・67ないし69頁乙A4・3頁証人E・3233頁カ平成15年2月7日,組織診のために子宮内膜の組織が採取され,同月squamous10日に組織診を担当した病理医は,DのEM(子宮内膜)に,(扁平上皮癌,,(浸潤非角化型)が認cellcarcinomainvasivenon-keratyp ,同月squamous10日に組織診を担当した病理医は,DのEM(子宮内膜)に,(扁平上皮癌,,(浸潤非角化型)が認cellcarcinomainvasivenon-keratype)められると報告した。上記病理医は,頸部癌からの進展を疑い「頸部癌,」(,)。 からの進展でしょうか?との所見を付した乙A2・360361頁,,キ平成15年2月14日Dは被告病院の産婦人科に転科することになり同月25日から同年3月11日まで癌の転移が疑われた第4,第5腰椎に対する放射線治療が実施された。照射線量は3グレイが10回で,総量は(,,,30グレイであった乙A1・9598ないし100頁乙A2・3236ないし40,113頁。 )ク平成15年3月11日化学療法が実施され抗癌剤であるアクプラネ,,(ダプラチン254S)50が投与された(甲B9,乙A2・40,1mg27,218頁。 )ケ平成15年3月27日,骨盤のMRI撮影が行われ,担当医師は,子宮内に悪性腫瘍の明らかな病変は認められず,その他異常を認めないとの所見を付したが,一方で「(体動により生じる偽像。甲B,」mortionartifact36・11頁,証人N・20頁参照)が強く,T1強調画像のみの撮影であるとのコメントも付けた(乙A2・44,392頁,乙A3,乙A4・3,4頁。 )コ平成15年3月31日化学療法が実施され抗癌剤であるアクプラネ,,(ダプラチン254S)50が投与された(甲B9,乙A2・45,1mg40,219頁。 )サ平成15年4月10日,腫瘍マーカー検査が行われ,その結果はSCCが58であった(乙A2・47,354頁。 ng/ml)- 35 -シ平成15年4月15日から同年5月23 219頁。 )サ平成15年4月10日,腫瘍マーカー検査が行われ,その結果はSCCが58であった(乙A2・47,354頁。 ng/ml)- 35 -シ平成15年4月15日から同年5月23日までの間,骨盤に対する放射線治療(外部照射)が行われた。照射線量は2グレイが25回で,総量は50グレイであった。なお,当初は外部照射と腔内照射との併用が予定されていたが,Dの状態が悪かったため,腔内照射は実施されなかった(乙,,,)。 A1・97101ないし103頁乙A2・48ないし53160頁ス平成15年4月16日及び同月30日に,化学療法が実施され,それぞ()()れ抗癌剤であるアクプラネダプラチン254S 計100mgmgが投与された(甲B9,乙A2・47,146,222,223頁。 )セ平成15年8月14日午後10時24分,Dの死亡が確認された(乙A2・5,70,209頁。 )( )Dの死亡後の経過 ア被告病院は,Dの死亡を確認した後,原告Aに対し,Dの遺体に対する病理解剖を申し出たが,原告Aは,これを断り,司法解剖を依頼した。しかし,警察が,犯罪死の可能性が疑われないとして,司法解剖を行うことができないと回答したため原告Aは行政解剖を依頼することとした乙,,(A1・6,8頁,乙A2・5,97,98,209頁,証人Gの供述書2枚目,原告A本人4,11頁。 )イ千葉大学大学院医学研究院法医学教室のG医師は,平成15年8月15日,Dの解剖を実施し,同年10月8日,同医師により上記第2の1( ) イの内容の剖検所見を報告した(甲A5,証人Gの供述書2枚目。 ) Dの死亡原因について原告らは,Dが子宮頸部を原発巣とする癌によって死亡したと主張するのに対し,被告はこれを争うので,この点につ イの内容の剖検所見を報告した(甲A5,証人Gの供述書2枚目。 ) Dの死亡原因について原告らは,Dが子宮頸部を原発巣とする癌によって死亡したと主張するのに対し,被告はこれを争うので,この点について検討する。 ( )行政解剖の所見について ,,「,アまずG医師は本件行政解剖の所見及び以上に示した事実からして本件患者の子宮頸部に癌があった(その後消滅した場合も含む)可能性。 - 36 -はありますか。あったとした場合,それが原発巣であった可能性はありますか」との書面尋問(尋問事項16)に対し,次のとおり回答し,解剖。 結果としては,扁平上皮癌(原発巣不明)とせざるを得なかった旨を回答している(証人Gの供述書4枚目。 )記「本例の場合,組織検査で,肝臓・副腎・腎臓・大動脈周囲組織より扁平上皮由来の癌細胞が認められており,通常,扁平上皮の存在しない臓器か,。 らこれらが認められたことよりこれらは転移巣であると考えられました一方,扁平上皮は体表(体の表面)をはじめとするあらゆる組織に存在しますが,腫瘍の原発巣が体表の組織であれば,臨床経過中に通常発見されるものと考えられます。本例の場合は体表からは発見しずらい臓器を原発とする扁平上皮由来のものであると判断できると考えられます。その場合,食道癌・子宮癌・肺癌などが考えられます。 そして,本例では食道・肺には大なる病変は認められず,子宮にも炎症。 ,性腫瘤を認めた意外に大なる変形など異常は認められませんでした通常多数の転移が認められる場合,原発巣はかなりの変形等,異常が認められるのが通常でありますが,本例の場合そのような所見は認められませんでした」。 イまた,証拠(甲B11・516頁,甲B33・3頁,乙A4・2頁,乙B2・3頁,乙B3・123頁,証人E・26ないし2 るのが通常でありますが,本例の場合そのような所見は認められませんでした」。 イまた,証拠(甲B11・516頁,甲B33・3頁,乙A4・2頁,乙B2・3頁,乙B3・123頁,証人E・26ないし28,32,34,37頁)によれば,子宮頸癌が臓器に転移する場合には,子宮頸部から骨盤内リンパ節に転移し,そこから傍大動脈リンパ節を経て臓器に転移するという経路をたどるのが通常であり,癌の原発巣が子宮頸部であるにもかかかわず,子宮近傍の骨盤内リンパ節に転移巣が認められず,遠隔の傍大動脈リンパ節のみに転移巣が認められることは一般的には想定しにくいこ。 ,,,とが認められるところがDについては上記第2の1( )イのとおり - 37 -解剖所見として,大動脈周囲(後腹膜)というより遠隔の転移が認められているにすぎず,子宮には外子宮口の炎症性の腫瘤以外に肉眼的に変形,周囲との癒着は認められていないのであって,子宮近傍の骨盤内リンパ節には転移の痕跡が認められていない。 ウこれらの事実からすれば,子宮頸部にDの死因となった癌の原発巣が存在したとは考えにくい。 エこれに対し,原告らは,行政解剖において認められた外子宮口の炎症性の腫瘤は,子宮頸癌が放射線療法と化学療法によって変化したものであると主張し,慶應義塾大学医学部放射線科のM医師(原告ら協力医)も,原告らの上記主張に沿う意見を述べている(甲B33ないし35。 )しかしながら,証拠(甲B30,乙B1・279頁,証人N・反訳書1・24,25頁,証人E・7,8頁)によれば,Dの癌は平成14年11月の時点で骨転移が生じるほど悪化しており,仮に子宮頸癌であったとすれば臨床進行期Ⅳb(上記第2の1( )カ参照)と考えられる状態であっ たこと,外子宮口は可視領域であることが認められ,そうとすれ 月の時点で骨転移が生じるほど悪化しており,仮に子宮頸癌であったとすれば臨床進行期Ⅳb(上記第2の1( )カ参照)と考えられる状態であっ たこと,外子宮口は可視領域であることが認められ,そうとすれば,放射線療法や化学療法が行われた平成15年2月以前に,可視領域である外子宮口から採取された細胞や組織の細胞診,組織診において上皮内癌以上を想定させる結果(なお,細胞診については,クラスⅣ以上。上記第2の1( )オ(ア))が得られたはずであると考えることが合理的であるが,本件 においてそのような結果は得られていない(上記第2の1( )参照。 ),(,,),また 証拠 証人N・反訳書1・26頁証人E・48頁によれば炎症性の腫瘤は,ナボットやポリープに放射線が照射された場合にも生じることが認められる。 さらに,上記1( )キシによれば,Dは,第4,第5腰椎及び骨盤に対 する放射線の外部照射を受けたのみであることが認められるところ,証拠(証人E・23ないし25,28ないし30,37頁)によれば,既に臨- 38 -床進行期Ⅳbの状態にある子宮頸癌が放射線の外部照射のみで炎症性の腫瘤に変化することは通常は考えられないことが認められる。なお,独立行政法人国立病院機構四国がんセンター放射線科,同婦人科及び愛媛大学医学部放射線医学教室が行った報告(子宮頸癌放射線治療後のMRIと骨「盤内制御の関連性についての検討,甲B29)によれば,子宮頸癌の放」射線治療を行った全対象症例44例のうち36例は放射線治療終了時に病理学的に腫瘍残存がなかったことが認められるが(440頁,上記報告)は,腔内照射併用外照射及び腔内照射単独照射を行った症例についての報告であるし(438頁,組織診,細胞診の結果によって腫瘍残存の有無)を判定したもの ったことが認められるが(440頁,上記報告)は,腔内照射併用外照射及び腔内照射単独照射を行った症例についての報告であるし(438頁,組織診,細胞診の結果によって腫瘍残存の有無)を判定したものであるから(439頁,放射線の外部照射しか行ってお)らず(上記1( )キシ,解剖所見において悪性の所見が認められなかっ )た(上記第2の1( )イ)本件に当然に妥当するものではない。 また,仮に,本件で,放射線療法によって,既に臨床進行期Ⅳbの状態にあった子宮頸癌の原発巣が骨盤内のリンパ節転移部分も含めてその痕跡すら残さず消失したのであれば,同じく放射線の照射部位であった傍大動(,,,脈リンパ節転移の病変上記1( )キ乙B3・113頁乙B4・44 45頁)も同様に消失したはずであると考えられる。ところが,Dの行政解剖においては,上記第2の1( )イのとおり,組織検査上,大動脈周囲 (後腹膜)に転移巣が認められている。この点について,M医師自身も,原発巣が放射線照射によって消失した場合には転移巣も消失することが多いはずであると述べ,子宮頸部を原発巣とする癌が放射線療法によって炎症性の腫瘤に変化したとは断言していない(甲B35・2頁。 )これらに照らすと,医学文献に,放射線治療によって生じる変化に関して「瘢痕形成による皮膚硬結に至る(甲B18・258頁「組織学的」),には,上皮下に高度な炎症所見がみられ(甲B20・162頁「瘢痕」),治癒に至る(甲B25・27頁)などの記載があることを考慮しても,」- 39 -原告らの上記主張を採用することはできない。 ( )臨床所見について アまず,上記第2の1( )ア及び第3の1で認定した診療経過によれば, Dは,平成10年11月,同年12月28日,平成12 原告らの上記主張を採用することはできない。 ( )臨床所見について アまず,上記第2の1( )ア及び第3の1で認定した診療経過によれば, Dは,平成10年11月,同年12月28日,平成12年11月18日,平成13年3月6日及び平成14年1月15日の細胞診においてEC子,(宮頸部)についてクラスⅢbと判定されたことが認められるが,上記第2の1( )オ(ア)及び証拠(証人E・12,13,29頁,証人F・反訳書 1・23,24頁)によれば,細胞診のクラスⅢbでは高度異形成上皮が想定されるにとどまることが認められる。 そして,藤間臨床医学研究所のP医師らが行った報告(子宮頸部細胞「診が要精検者の最終診断のための追跡に必要な期間について,乙B2・」),,添付文献3によれば1985年から1994年までの間に人間ドック婦人科外来及び住民検診で頸部擦過細胞診が施行された19万5226例を対象とする追跡調査において,細胞診陽性254例中225例に癌が証明され,その精度は96.98パーセントに達したこと,細胞診で陽性とされたにもかかわらず組織診で癌組織が認められなかった7例のうち,1例は高度異形成,4例は中等度異形成,1例は軽度異形成,1例が慢性頸管炎であったことなどが認められ,上記報告における子宮癌細胞診の精度は極めて高いものであったことが認められる(なお,M医師は,子宮癌細胞診には40パーセントの見落としがある旨の論稿を月刊誌に掲載しているが,P医師らは,上記成績を根拠に,子宮癌検診の無効論を批判している。乙B2・添付文献3・48頁。東京歯科大学市川総合病院産婦人科)のO教授(被告協力医)や被告病院のE医師も,我が国では細胞診スクリーニングを行う細胞検査士,それをチェックする細胞診専門医ともに日本臨床細胞学会が行う試験に 。東京歯科大学市川総合病院産婦人科)のO教授(被告協力医)や被告病院のE医師も,我が国では細胞診スクリーニングを行う細胞検査士,それをチェックする細胞診専門医ともに日本臨床細胞学会が行う試験による認定を受けており,その精度は諸外国と比較しても高いと述べている(乙B2・2頁,乙A4・10頁。 )- 40 -これらに照らすと,上記細胞診の結果をもって直ちにDが子宮頸癌に罹患していたと認めることはできない。 イまた,上記第2の1( )エ(イ)及び第3の1( )アによれば,Dには,平 成14年11月初旬から腰痛が生じ,平成15年1月12日には無尿の症状が現れたこと,尿管の狭窄や閉塞,腰痛は子宮頸癌の臨床症状の1つに挙げられていることが認められるが,他方で,上記第2の1( )イ及び第 3の1( )イウによれば,平成15年1月23日に行われた腎瘻造影検査 においては,子宮近傍ではなく大動脈周囲のL4(第4腰椎)の位置(甲B27,乙B3・113頁,乙B4・44,45頁参照)で右尿管が完全に閉塞していたこと,同月28日に行われた腹部から骨盤にかけてのCTにおいて,上腸間膜動脈分岐下の大動脈周囲(骨盤外)から両側腸骨動脈周囲にかけてのリンパ節の腫脹及び下部腰椎の椎体右側への軟組織腫瘤を伴う骨破壊像は認められたものの,骨盤内リンパ節には癌の転移を窺わせる所見が認められていないこと,行政解剖においても,大動脈周囲(後腹膜)に癌の転移巣が認められているにすぎず,骨盤内リンパ節には癌の転移を窺わせる所見が認められていないこと,これらの事実が認められる。 そして,上記( )イのとおり,癌の原発巣が子宮頸部であるにもかかかわ ず,子宮近傍の骨盤内リンパ節に転移巣が認められず,遠隔の傍大動脈リンパ節のみに転移巣が認められることは一般的には想定しに 。 そして,上記( )イのとおり,癌の原発巣が子宮頸部であるにもかかかわ ず,子宮近傍の骨盤内リンパ節に転移巣が認められず,遠隔の傍大動脈リンパ節のみに転移巣が認められることは一般的には想定しにくいことが認められるから,上記の腰痛及び無尿の症状のみからDが子宮頸癌に罹患していたと認めることもできない。 ウまた,上記1( )カのとおり,Dには,平成15年2月10日に扁平上 皮癌が認められているが,子宮内膜組織診において認められたものであるから,この事実をもってDが子宮頸癌に罹患していたとは認め難い。 ,(,,エまた上記1( )エ及び証拠甲B17・232頁乙B3・112頁 証人N・反訳書1・25頁,証人E・7頁)によれば,Dの癌は平成14- 41 -年11月の時点で骨転移が生じるほど悪化しており,仮に子宮頸癌であったとすれば臨床進行期Ⅳb(上記第2の1( )カ参照)と考えられる状態 であったこと,SCC値は子宮頸癌のうち扁平上皮癌の腫瘍マーカーとしてよく用いられ,臨床進行期Ⅲ期,Ⅳ期という進行癌において,その陽性率は75パーセント以上であること,平成15年1月29日におけるDのSCC値は基準値1.5以下に対して190であったことがng/mlng/ml認められるが,一方で,証拠(甲B8・459頁,甲B10・316頁)によれば,腫瘍マーカーは常に腫瘍に対応して陽性を示すわけではなく,それだけで癌かどうかを判定することは不可能であるため,集団検診に用いられるには至っておらず,補助診断として用いられていることが認められるから,SCC値のみを根拠にDが子宮頸癌に罹患していたと認めることもできない。 オさらに,上記第2の1( )エ(ア)によれば,子宮頸癌における特徴的な 臨床症状は不正出血であることが認められる るから,SCC値のみを根拠にDが子宮頸癌に罹患していたと認めることもできない。 オさらに,上記第2の1( )エ(ア)によれば,子宮頸癌における特徴的な 臨床症状は不正出血であることが認められるが,証拠(原告A本人8頁)によれば,原告Aは,亡Dが被告病院を受診するようになった後も,性交渉の際に出血があったことを確認したことはないことが認められる。 ,,,,カまた上記( )エのとおりDの癌は仮に子宮頸癌であったとすれば 平成14年11月の時点で臨床進行期Ⅳbと考えられる状態であったことが認められるところ,これは,平成14年8月と同年12月に行われた細胞診の結果がともに陰性を示すクラスⅡであったこと(上記第2の1( ) オ(ア),同( )ア)と整合しない。しかも,証拠(乙A4・3頁,証人E ・7頁,証人F・反訳書1・24頁)によれば,臨床進行期Ⅳbに至った子宮頸癌患者には輸血を必要とするような不正出血が見られることが多いことが認められるところ,本件全証拠を検討してみても,平成14年11,。 月以降にこのような不正出血があったことを認めるに足りる証拠はないキなお,M医師は,平成15年1月16日に撮影された骨盤内CT写真で- 42 -は,子宮頸部を表すと思われる陰影が左右非対称に,しかも辺縁不整に写っているところ,健常人では,子宮頸部が左右非対称に写り,あるいは辺縁不整に写ることはまずないことから,上記骨盤内CT写真はこの部分に病変があることを示唆するものであると述べるが(甲B33・5頁,上)記CTは造影を行っていない単純CTであること及び上記アないしカの諸点に照らすと,平成15年1月16日当時,Dに子宮頸癌が存在していたと認めることはできない。 ク結局,細胞診の所見を始めとする上記アないしカの臨床所見によれ 単純CTであること及び上記アないしカの諸点に照らすと,平成15年1月16日当時,Dに子宮頸癌が存在していたと認めることはできない。 ク結局,細胞診の所見を始めとする上記アないしカの臨床所見によれば,Dの死因となった癌の原発巣が子宮頸部に存在したと認めることは困難であるといわざるを得ない。 ( )Dの死因となった癌の原発巣に関するその他の検討 アまず,G医師は,書面尋問に対する回答において,子宮頸部に癌があった可能性については否定も肯定もできないと思われると述べた上で,本件では臨床経過中に子宮より扁平上皮癌が見つかっていることを勘案すると,腫瘍の原発巣が子宮にあり,そこから転移が起こり悪化して死亡するに至ったが,原発巣は増大しなかったか,縮小したと判断するのが矛盾が少ないと考えられると述べている(証人Gの供述書4枚目。 )しかしながら,上記の回答は,G医師の推測の域を出ないものである。 また,G医師は,上記書面尋問において,行政解剖に当たり,診療記録又はその写しを参照したか(尋問事項3)に関し,診療記録又はその写しを参照したと記憶しているが定かではないと回答する一方,Dが子宮に病変がある疑いとされていたこと,また,Dの子宮内膜の組織検査において扁()平上皮癌の存在が認められたことについて情報を得ていたか尋問事項4に関し,情報を得ていたと記憶している旨回答しており(証人Gの供述書2枚目,これらによれば,G医師は,上記の回答を行うに当たり,Dの)子宮内膜の組織検査において扁平上皮癌の存在が認められたことについて- 43 -は認識していた一方で,上記1記載にかかる検査結果等の臨床所見を十分。 ,考慮せずに上記回答をした可能性があることがうかがわれるそうするとG医師の上記回答から,直ちにDの死亡原因となった癌の原発巣が子宮頸 ていた一方で,上記1記載にかかる検査結果等の臨床所見を十分。 ,考慮せずに上記回答をした可能性があることがうかがわれるそうするとG医師の上記回答から,直ちにDの死亡原因となった癌の原発巣が子宮頸部にあったと認めることは困難である。 イ次に,原告らの協力医であるM医師は,本件では,行政解剖において傍大動脈リンパ節に扁平上皮癌の転移があることが証明されているので,それだけで原発巣が子宮頸癌である高度の蓋然性を認定でき,さらに病理組織診断で子宮に扁平上皮癌病巣があることが確かめられているので,原発部位が子宮頸部である高度の蓋然性を認定できる,との意見を述べている(甲33・4頁。 )しかしながら,この見解については,平成14年8月と同年12月に行われた細胞診の結果がともに陰性を示すクラスⅡであったこと(上記( ) カ)や,平成15年1月28日に撮影された腹部から骨盤にかけてのCT撮影において,大動脈周囲のリンパ節腫脹は確認されたが,子宮近傍の骨盤内リンパ節の腫脹が認められていないこと(上記( )イ)などの上記( ) の臨床所見と必ずしも整合せず,これらの所見が十分考慮されているかどうかについて疑問があり,たやすく採用し難い。 ウさらに,原告らの協力医であるN医師は,平成10年11月ころから既にDの子宮に異形細胞が検出されていたこと,Dに膀胱癌,直腸癌,子宮体癌の典型的な症状(具体的には,血尿,血便,不正出血)が見られなかったことなどの臨床経過を根拠に,Dの癌の原発巣は間違いなく子宮頸部であったと思われると述べているが(甲B36・17頁,この見解につ)いても,上記( )の臨床所見と必ずしも整合せず,これらの所見が十分考 慮されているかどうかについて疑問があり,たやすく採用し難い。 ( )小括 以上によれば,Dが子宮頸部 ,この見解につ)いても,上記( )の臨床所見と必ずしも整合せず,これらの所見が十分考 慮されているかどうかについて疑問があり,たやすく採用し難い。 ( )小括 以上によれば,Dが子宮頸部を原発巣とする癌によって死亡したとの原告- 44 -らの主張は採用できないというべきである。 被告の義務違反の有無上記2のとおり,Dが子宮頸部を原発巣とする癌によって死亡したと解する,,ことは困難であるから仮に被告病院の担当医師に義務違反があったとしても担当医師の義務違反とDの死亡との間に相当因果関係を認めることは困難であるというべきであるが,念のため,被告病院の担当医師の義務違反に関する原告らの主張について検討する。 ( )適切な細胞診,組織診を行う義務の違反について ア平成11年4月3日にホルモン投与後の細胞診を行わなかったことについて原告らは,E医師が,平成11年4月3日にホルモン投与後の細胞診を行うことによってDの子宮頸癌を発見し,適切な治療を行うべき義務を怠ったと主張している。 ,(,,,しかしながら 証拠 甲A1・1頁甲A2・2頁甲B15・40頁乙A1・50,124頁,乙A4・8頁,乙B2・3頁)によれば,ホルモン剤を投与して細胞診を行うエストロゲンテストは,閉経後や両側卵巣摘出後などのようにエストロゲンレベルが低下し,萎縮性腟炎を発症している場合に,異型細胞の有無を判定するために行われるものであること,他方で,Dの月経の周期は正常であったこと,細胞診を病理医に依頼する際,依頼票に閉経か否かの記載がない場合には,病理医が月経の周期が正常である患者についてもエストロゲンテストを指示することがあること,平成11年3月23日付けの「細胞診検査」と題する書面にはDの月経についての記載がないことが認められる には,病理医が月経の周期が正常である患者についてもエストロゲンテストを指示することがあること,平成11年3月23日付けの「細胞診検査」と題する書面にはDの月経についての記載がないことが認められる。 これらの事実によれば,平成11年3月23日に病理医がホルモン投与後の細胞診再検を希望する旨の意見を付けていたとしても,月経の周期が正常であったDに対してE医師がホルモン投与後の細胞診を行う法的義務- 45 -を負っていなかったと解すべきことは明らかであるから,原告らの上記主張は採用できない。 イ平成11年4月3日に頸管内掻爬を行わなかったことについて原告らは,E医師が,平成11年4月3日に頸管内掻爬を行うことによってDの子宮頸癌を発見し,適切な治療を行うべき義務を怠ったと主張している。 しかしながら,証拠(甲B2・20頁)によれば,頸管内掻爬は,細胞診が陽性であるにもかかわらずコルポスコピー下で異常所見が全く見られない場合や,異常所見の上限が見えないときに行うこととされていることが認められるところ,上記1( )アオのとおり,平成10年12月28日 及び平成11年3月23日に判明したDの細胞診の結果は,それぞれクラスⅢb,Ⅲであって,上皮内癌を想定させるクラスⅣ(上記第2の1( ) オ(ア)参照)以上の結果は得られていない。 しかも,上記2( )ア及び証拠(乙A4・9頁,乙A5・6頁,乙B2 ・2ないし4頁,証人F・反訳書1・3,12,14,15,19,27頁)によれば,頸管内掻爬では,頸管に癌が存在し,組織が柔らかくなっている場合には,頸管の組織を採取できるが,癌のような異常が発生していない場合には,粘液のみしか採取されないことも珍しくないこと,我が国では,細胞診の精度が諸外国に比較して高いこと,これらのため,子宮頸癌の検出と 頸管の組織を採取できるが,癌のような異常が発生していない場合には,粘液のみしか採取されないことも珍しくないこと,我が国では,細胞診の精度が諸外国に比較して高いこと,これらのため,子宮頸癌の検出との関係では,頸管内掻爬よりも定期的な細胞診に信頼が置かれていることが認められ,これを覆すに足りる証拠はないところ,上記1のとおり,本件においては,定期的に細胞診が行われていたことが認められる。 ,,,,これらに照らすとE医師が平成11年4月3日の時点でDに対し頸管内掻爬を行うべき法的義務を負っていたとまでは解されない。 ウ平成13年6月18日に頸管内掻爬のやり直しを行わなかったことにつ- 46 -いて原告らは,F医師が,平成13年6月18日の診察日に頸管内掻爬のやり直しを行うことによってDの子宮頸癌を発見し,適切な治療を行うべき義務を怠ったと主張している。 確かに,上記1( )オのとおり,F医師が平成13年4月9日に行った 頸管内掻爬において,子宮内膜の組織は採取されたものの,子宮頸部の組織は採取されなかったことが認められる。 しかしながら,上記イ及び証拠(乙A5・6頁,証人F・反訳書1・3頁)によれば,子宮頸管に癌が存在し,組織が柔らかい場合には,頸管内掻爬によって子宮頸管の組織を採取できるが,子宮頸管に癌などの変化がない場合には,子宮頸管が表面平滑であるために,頸管内掻爬によっても子宮頸管の組織が採取されないことも多いこと,F医師は,本件における頸管内掻爬において,子宮の内膜に達する深さまでキュレットを挿入した後,全周性に引っかいてくるように組織を削り取ったことが認められ,これを覆すに足りる的確な証拠はない。 これらに照らすと,上記頸管内掻爬において子宮頸部の組織が採取されなかったことをもって直ちに頸管内掻爬に失敗した かいてくるように組織を削り取ったことが認められ,これを覆すに足りる的確な証拠はない。 これらに照らすと,上記頸管内掻爬において子宮頸部の組織が採取されなかったことをもって直ちに頸管内掻爬に失敗したと評価することはできないと解されるから,これが失敗であることを前提としてF医師の義務違反をいう原告らの上記主張は,その前提を欠き,理由がないというべきである。 ( )円錐切除術を行う義務の違反について ア原告らは,被告病院の担当医師が,細胞診と組織診の不一致が明らかになった各時点(具体的には,平成11年2月6日,同年4月3日,平成12年11月24日,平成13年3月12日,平成14年1月18日,同年4月26日)において,円錐切除術を行ってDの子宮頸癌を発見し,適切な治療を行うべき義務を怠ったと主張し,原告らの協力医であるN医師も- 47 -これに沿う意見を述べている(甲B36・18,19頁)ので,この主張について検討する。 ,(,,,イ確かに 証拠 甲B2・20頁甲B6・280頁甲B7・343頁,,,)甲B10・315頁甲B14・215223頁甲B38・557頁によれば,円錐切除術の適応として,細胞診と組織診の結果が不一致の場合,高度異形成の場合が挙げられていることが認められる。 ウしかしながら,他方で,証拠(甲B2・20頁,甲B11・514頁,甲B14・216頁,乙A4・10頁,乙A5・7頁,乙B2・4頁,証人E・29,30,33,34頁,証人F・反訳書1・4,17ないし19頁)によれば,細胞診と組織診の不一致が生じたとしても,病変の部位の特定を待たずに直ちに円錐切除術を行うべきであるとはいえないとの見解や,細胞診でクラスⅢbが確認された場合においても,自然消退する症例があるため,直ちに円錐切除術の絶 が生じたとしても,病変の部位の特定を待たずに直ちに円錐切除術を行うべきであるとはいえないとの見解や,細胞診でクラスⅢbが確認された場合においても,自然消退する症例があるため,直ちに円錐切除術の絶対的適応となるものではなく,患者の状態や他の検査の結果等を総合考慮して同切除術を行うべきかどうかが決定されるとの見解,細胞診でクラスⅣが出た場合又はクラスⅢbが続いた場合に円錐切除術を行うことが多いとの見解もあることが認められる。 エ上記ウについて,敷衍すると,次のとおりである。 まず,E医師は,円錐切除術は,子宮頸癌であると診断された際に,上皮内癌(0期)や,臨床進行期ⅠaⅠ期,ⅠaⅡ期の判定を行う上では必須の検査であるが,臨床現場では,細胞診でクラスⅢbとの結果が出た場合でも,直ちに円錐切除術に及ぶのではなく,細胞診による定期的なフォローアップを行うのが一般的である旨陳述(乙A4・10頁)し,証人尋問においては,病変部位,病変の位置,方向が確認できないまま,ただルーチンに同じような深さ,同じような範囲で円錐切除術を行うと,病変を残存させる危険があり,かえってその病変を刺激することにもなりかねないため,慎重に病変の場所を確定した上で円錐切除術を行うことが多い旨- 48 -(,,,)。 ,,を証言している証人E・29 34頁またF医師も臨床的には,細胞診でクラスⅢbの結果が出ても,その後の検査でクラスⅡやⅠという陰性の結果が続き,結局,そのまま陰性となってしまう患者も珍しくなく,臨床の現場では,上皮内癌が想定されるクラスⅣと異形成を示すに過ぎないクラスⅢbとでは全く意味合いが異なる旨を陳述し(乙),(,)。 A5・7頁証言している証人F・反訳書1・417ないし19頁さらに,被告の協力医であるO教授 スⅣと異形成を示すに過ぎないクラスⅢbとでは全く意味合いが異なる旨を陳述し(乙),(,)。 A5・7頁証言している証人F・反訳書1・417ないし19頁さらに,被告の協力医であるO教授も,我が国では細胞診の精度が高いと考えられており,円錐切除術は,細胞診でクラスⅣが出た場合又はクラスⅢbが続いた場合に施行されることが多い旨,リスクを伴うなどの理由により慎重に施行すべきである旨を述べている(乙B2・4頁。 )そして,甲B第14号証によれば,宮城県で行われた子宮頸癌の集団検診によって長期にわたる経過観察がされた①軽度異形成691例,②高度異形成654例,③連続2年以上異常を認めず,後に高度異形成が発見された121例のうち,それぞれ,①では94パーセント,②では75パーセント,③では56パーセントが半年から7年で自然消退したことが認められ(甲B14・216頁,他方,乙B第2号証(O教授の意見書)及)び乙A第4号証(E医師の陳述書)によれば,円錐切除術は,基本的に検査に位置づけられるものであるが,実際には治療法にもなり得るものであり,細胞診等の他の検査と比較すると侵襲の大きな検査であって,術後1か月内に大量出血が起きたり,将来頸管の狭窄や閉塞により月経困難症を発症するリスクがあることが認められるのである(乙B2・4頁,乙A4・9,10頁。なお,証人E・34頁参照。 )オこれらに照らすと,細胞診と組織診の結果の不一致,あるいは高度異形成(細胞診クラスⅢb)が明らかになりさえすれば一律に円錐切除術を行うべきであるということはできないというべきところ,上記ウの見解及び()本件におけるDに対する細胞診と組織診の結果の推移上記第2の1( ) - 49 -に照らせば,被告病院の担当医師が,原告ら主張の各時点において,直ちに いうべきところ,上記ウの見解及び()本件におけるDに対する細胞診と組織診の結果の推移上記第2の1( ) - 49 -に照らせば,被告病院の担当医師が,原告ら主張の各時点において,直ちに円錐切除術を実施すべき義務を負っていたとは解し難い。 ( )円錐切除術の必要性を十分に説明する義務の違反について 原告らは,被告病院の担当医師が,統合失調症に罹患していたDが円錐切除術の可否について正常な判断ができないおそれがあることを考慮し,平成11年2月9日以降に,被告病院の神経精神科の医師と協同で,D本人のみならず,家族にも,円錐切除術の必要性(円錐切除術の意義,内容,リスク等)について十分説明し,理解を求める義務を負っていたにもかかわらず,これを怠ったため,Dが,円錐切除術を受ける機会を奪われ,その結果,子宮頸部を原発巣とする癌によって死亡したと主張している。 しかしながら,上記( )オのとおり,細胞診と組織診の結果の不一致,あ るいは高度異形成(細胞診クラスⅢb)が明らかになりさえすれば一律に円,,錐切除術を行うべきであるということはできないことに加え本件においてD自らが平成11年2月9日に円錐切除術の実施を拒絶したことがあること(上記1( )ウ,平成11年4月3日にはE医師が,平成13年6月29 )日にはF医師が,それぞれ細胞診の結果によっては円錐切除術を行った方がよいことをDに説明していること(上記1( )カ,同( )ク)等の事情をも考 え併せると,本件において,被告病院の担当医師に原告ら主張の説明義務違反があったとは認めるに足りない。 結論 以上の次第で,原告らの請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないというべきである。 よって,原告らの請求をいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担 認めるに足りない。 結論 以上の次第で,原告らの請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないというべきである。 よって,原告らの請求をいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第14部- 50 -孝橋宏裁判長裁判官坂田大吾裁判官宮川広臣裁判官- 51 -

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