- 1 -平成24年2月15日判決言渡平成23年(行コ)第341号不当労働行為救済命令取消請求控訴事件 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 中央労働委員会が中労委平成21年(不再)第6号事件及び同第7号事件について平成22年6月2日付けでした命令のうち主文第1項及び第2項を取り消す。 第2 事案の概要 1 被控訴人補助参加人(組合)は,中小企業で働く労働者を中心に組織する労働組合であり,控訴人の従業員の一部が組合に加入し,組合のA分会(分会)を組織している。 本件は,組合が,分会の平成18年度の冬季賞与(本件賞与)に関する一連の団体交渉(本件団交)で控訴人がとった対応が不誠実で不当労働行為に当たるとして,東京都労働委員会に救済申立て(本件初審申立て)をし,同委員会がその申立ての一部を認めて救済命令(本件初審命令)を発したところ,控訴人及び組合から再審査の申立てがされ,中央労働委員会が上記救済命令を変更して,控訴人に文書交付を命ずること等を内容とする命令(本件命令)を発したことから,控訴人が同命令(ただし,組合の再審査を棄却した部分を除く。)の取消しを求めた事案である。 2 原判決は,控訴人の請求を棄却したので,控訴人が控訴をして,上記第1のとおりの判決を求めた。 - 2 - 3 前提事実,争点及びこれに関する当事者の主張は,次のとおり付加訂正し,後記4のとおり当審における控訴人の主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の2項から4項まで(3頁16行目から17頁25行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決4頁6行目の「日 加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の2項から4項まで(3頁16行目から17頁25行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決4頁6行目の「日」を削る。 (2) 原判決4頁8行目の後に,行を改めて以下のとおり加える。 「エ平成14年の救済申立てと和解の受諾組合は,平成14年11月13日,都労委に対し,原告(控訴人)に団体交渉応諾等を請求する内容の不当労働行為の救済申立てをした(都労委平成○年(不)第○号事件)。原告と組合は,平成17年5月10日,原告が組合の団結権を尊重し団体交渉には誠意を持って応ずることを確認すること等を内容とする和解の勧告を受けて,これを受諾し,組合は上記申立てを取り下げた。 (甲1,2,乙A19,22)」(3) 原判決4頁20行目の「9月1日」を「9月30日」に改める。 (4) 原判決5頁9行目の「原告から組合に対する上記ウの申入書に対し,」を,「原告から組合に対し,上記ウの申入書に対する」に改める。 (5) 原判決8頁9行目及び10行目を,以下のとおり改める。 「 都労委は,平成20年12月16日,原告(控訴人)に対し,『平成18年10月12日以降の18年度冬季賞与に係る団体交渉において,組合員に対する支給額の根拠について説明を拒否したこと及び非組合員分を含めた賞与支給総額,平均支給額等の全社的な資料の一切を開示しなかったことが都労委において不当労働行為と認定されました。今後,このような行為を繰り返さないよう留意します。』という趣旨の文書を組合に交付すること等を命じ,その余の申立てを棄却する内容の本件初審命令を発令し- 3 -た。」(6) 原判決8頁14行目及び15行目を,以下のとおり改める。 「イ中労委は,平成22年6 組合に交付すること等を命じ,その余の申立てを棄却する内容の本件初審命令を発令し- 3 -た。」(6) 原判決8頁14行目及び15行目を,以下のとおり改める。 「イ中労委は,平成22年6月2日,本件初審命令を変更し,原告(控訴人)に対し,『平成18年度冬季賞与に係る団体交渉において,組合員に対する支給額の根拠について説明を拒否したことが中労委において不当労働行為と認定されました。今後,このような行為を繰り返さないよう留意します。』という趣旨の文書を組合に交付することを命じ,その余の原告の再審査申立て及び組合の再審査申立てを棄却する内容の本件命令を発令した。その理由は,大要,以下のとおりである。」(7) 原判決13頁20行目の「本件承諾書」を,「本件協定書」に改める。 4 当審における控訴人の主張(1) 平成18年度冬季賞与(本件賞与)については,組合から控訴人の提案に対する妥結通知がされ,それを受けて労働協約(本件協定書)が締結されたことにより,あるいは,裁判上の和解が成立したことにより,全て労使間において決着済みであり,控訴人において,組合との団体交渉に応じる義務を負う余地はない。 また,別訴判決(東京地方裁判所平成▲年▲月▲日判決・平成○年(ワ)第○号一時金等請求事件)において,控訴人における従業員の賞与請求権は,控訴人から通知が行われたことによって具体的に確定・発生するものと判断されており,その後,団体交渉において議論・交渉する余地は残されていないから,そもそも団体交渉の議題となり得ないものである。 いずれにしても,控訴人の態度・対応が不誠実なものとして不当労働行為を構成することはない。 (2) 中労委は,「控訴人が『労働委員会の審査の推移は別次元の問題である』旨発言していたことから,組合としては,控訴人 ,控訴人の態度・対応が不誠実なものとして不当労働行為を構成することはない。 (2) 中労委は,「控訴人が『労働委員会の審査の推移は別次元の問題である』旨発言していたことから,組合としては,控訴人に対して,救済命令申立ての意思を留保した上で本件協定書を締結したものと理解できる」旨- 4 -判断した上で,不当労働行為に対する救済命令を発している。しかし,組合が「不当労働行為の責任追及を継続することを留保する」旨の条項(以下「本件留保条項」という。)を盛り込むことを強く主張していたのに対し,控訴人はこれに強く反対し,結局,上記条項を盛り込まない形で本件協定書が作成されるに至ったものであるし,その交渉は書面によってされており,口頭で議論がされた事実もない。こうした本件協定書作成に係る経緯や,特別な留保のない限り,団体交渉の議題となっていた事項全般につき全て解決済みのものとして締結されることを原則とする労働協約の性質に鑑みれば,控訴人と組合との間では,不当労働行為の責任追及を行わない旨の合意が成立したものとみるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は,以下のとおり付加訂正し,後記2のとおり,当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3 争点に対する判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決30頁20行目から21行目にかけての「妥結・合意した旨の協定書」を,「妥結・合意し,Bについては,本件和解のとおりとする旨の協定書(本件協定書)」に改める。 (2) 原判決34頁19行目から24行目までを,以下のとおり改める。 「(ウ) 原告(控訴人)は,本件賞与に関する交渉における原告の対応について組合が不当労働行為責任を追 件協定書)」に改める。 (2) 原判決34頁19行目から24行目までを,以下のとおり改める。 「(ウ) 原告(控訴人)は,本件賞与に関する交渉における原告の対応について組合が不当労働行為責任を追及することを留保しない内容のものを原告が提案したのに対し,組合が当該留保をすることを条件として本件協定書を作成したのであれば,当該留保を付すか否かについて意思が一致しておらず,両者の間に本件協定書の内容及びその作成について合意が成立していないことになる旨主張する。」(3) 原判決34頁25行目,35頁4行目から5行目にかけて及び同5行- 5 -目の各「本件承諾書」を,いずれも「本件協定書」に改める。 2 当審における控訴人の主張について(1) 控訴人は,本件賞与については,本件協定書が作成されて合意が成立したことにより全て決着済みであり,控訴人が団体交渉に応じる義務を負う余地はない旨主張する。しかし,本件賞与の具体的な給付の内容につき労使間で合意が成立したことと,控訴人に対し,本件賞与に係る交渉の過程での不当労働行為につき,将来これを繰り返さないよう留意することを記載した文書の交付を命ずる本件命令の内容とは直接対応せず,本件命令は本件賞与に係る団体交渉を命ずるものではないし,上記合意の成立により,将来にわたり同様の行為を繰り返さないことを担保する趣旨で発せられる救済命令の必要性が減じたものとみることもできないから,上記主張は理由がない。 なお,控訴人は,控訴人の従業員の有する賞与請求権についての別訴判決での判断からすれば,既に控訴人が従業員に対する通知を発した賞与を団体交渉の対象とする余地はないとも主張するが,同判決(甲16)は,控訴人からの通知によって,そこで定められた額の賞与請求権が具体的に発生し,従業員から控訴人に対して 業員に対する通知を発した賞与を団体交渉の対象とする余地はないとも主張するが,同判決(甲16)は,控訴人からの通知によって,そこで定められた額の賞与請求権が具体的に発生し,従業員から控訴人に対してその給付を請求することが可能になったことを判断するにとどまるのであって,その金額及び具体的根拠について組合から控訴人に対して説明を求めるなど団体交渉の対象となる余地を否定するものではない。上記主張は上記判決の内容を正解しないもので失当である。 (2) 控訴人は,本件協定書作成に至る経緯や労働協約の性質に鑑みれば,控訴人と組合との間で不当労働行為の責任追及を行わない旨の合意が成立したものとみるべきである旨主張する。しかし,そうした合意が成立したものとみることができないことは,原判決が説示する(33頁15行目から35頁7行目まで)とおりである。控訴人は,労働協約は交渉の議題と- 6 -なっていた事項全般につき全て解決済みのものとして締結されるのが原則であるとするが,その文言,内容,交渉の対象の広狭,合意に至る経緯は労働協約ごとに千差万別であり,そうした一般論が成り立つとする根拠は明らかではない。本件協定書作成の経緯をみても,組合が本件初審申立てを行い,本件初審命令を経て,組合及び控訴人双方がこれに再審査を申し立て,その係属中に,本件協定書が作成されるに至ったというのであるから,組合が不当労働行為に対する救済命令を求めず,その点も含めて合意する趣旨であったというのであれば,本件協定書にその文言を織り込んでしかるべきであり,むしろ,その趣旨の文言が記載されない限り,原則的には,そのような合意はなかったものとみるべきである。にもかかわらず,本件協定書には組合所属の控訴人従業員に係る本件賞与等の合意・妥結日,支給日及び支給額が掲げられているにと 載されない限り,原則的には,そのような合意はなかったものとみるべきである。にもかかわらず,本件協定書には組合所属の控訴人従業員に係る本件賞与等の合意・妥結日,支給日及び支給額が掲げられているにとどまるのであるから,救済命令の申立ての帰趨は合意に含まれていないものと解するのが相当である。本件協定書作成に至る過程で,組合から本件留保条項を盛り込む旨の提案があり,控訴人がこれを受け入れなかった経緯があるとしても,それは,本件留保条項についての合意が成立しなかったことを意味するにすぎず,組合が救済命令を求める意思を撤回・放棄したものとみることはできない。 なお,控訴人は,本件命令と原判決とでは,本件協定書において不当労働行為の責任追及を不問に付する旨の合意が成立していないと判断した根拠が異なっており,原判決は本件命令と異なる理由により,控訴人に対する救済命令を維持したものであるから違法であるとも主張するようである。 しかし,上記合意が認められないと判断し,そのことを理由の一つ(救済命令を発する障害がないという意味での理由である。)として救済命令を発し,維持した点において,原判決と本件命令との間でその判断に相違はない。控訴人の主張は,間接事実を含む事実認定の判断過程全てにおいて,取消裁判所は救済命令に拘束される旨をいうにほかならないが,そのよう- 7 -に解すべき根拠はなく,採り得ない見解というほかない。 第4 結論よって,控訴人の請求を棄却した原判決は正当であり,控訴人の控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第23民事部 裁判長裁判官鈴木健太 裁判官中 村 さとみ 裁判官吉田徹は,転補のため署名押印することができない。 裁 東京高等裁判所第23民事部 裁判長裁判官鈴木健太 裁判官中村さとみ 裁判官吉田徹は,転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官鈴木健太
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