主文 被告人を懲役8年に処する。 未決勾留日数中40日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実) 被告人は、寝不足の中、長男A(当時2歳)が走り回る音で眠りを妨げられたことに腹を立て、令和6年10月24日午後1時30分頃、広島市a区bc丁目d番e号当時の被告人方において、Aに対し、右腕を左手でつかんで引っ張り、床上に仰向けに転倒させた上、腹部を左足で踏み付ける暴行を加え、同人に肝挫滅の傷害を負わせ、よって、同月25日午前1時20分頃、同市f区gh番i号j病院にお いて、同人を前記傷害に基づく出血性ショックにより死亡させた。 (証拠の標目)省略(法令の適用)罰条令和4年法律第68号441条1項により同年法律第67 号2条による改正前の刑法205条刑種の選択有期懲役刑未決勾留日数の算入刑法21条訴訟費用の不負担刑訴法181条1項ただし書(量刑の理由) 被告人は、幼く体の小さな被害者に対し、重要な臓器が集中した腹部を足の裏で強く踏み付けており、凶器を用いず、その回数が1回にとどまるとしても、極めて危険である。また、被告人は、本来、親として幼い被害者を守るべき立場であるにもかかわらず、何の落ち度もない被害者を一方的に攻撃しており、卑劣で悪質である。そのような犯行により、被害者は僅か2年10か月で命を奪われたのであっ て、結果は重大である。 被告人の寝不足は、自ら選んだ就業時間後の過ごし方などによるものといえ、睡眠を妨げられたとして怒りを被害者にぶつけるのは身勝手というほかない。被告人方に出入りしていた知人の供述調書等によると、被告人は、本件前、日常的に被害者の頭を平手打ちするなどの暴力を振るって え、睡眠を妨げられたとして怒りを被害者にぶつけるのは身勝手というほかない。被告人方に出入りしていた知人の供述調書等によると、被告人は、本件前、日常的に被害者の頭を平手打ちするなどの暴力を振るっていたと認められる。それらの暴力は怪我をさせるほどではなかったとはいえ、そのほとんどは怒りに任せた行為で あって、しつけとはいい難い。本件の暴行は、それらの暴力より遥かに強度のものであるが、被告人の怒りを一方的に被害者にぶつけたという点で、それらの暴力と共通する面を有している。さらに、被告人は、執行猶予中であったことから、犯行後、救急救命士に被害者が転んで頭を打った旨の虚偽の説明をして被害者への適切な処置を遅らせており、被害者の身体の安全や生命より自己の保身を優先させ ている。これらは、被告人において、被害者を一人の人格として扱っていないことを示しているといえ、被告人の意思決定は強く非難される。 以上を踏まえると、同種事案(傷害致死、単独犯、動機-児童虐待)の量刑傾向の中で、本件は懲役7年ないし9年に処すべき事案といえる。その上で、被告人が自白して罪を認め、感情を制御できるようにしたい旨述べていること、被告人の母 が監督を約束していることなども考慮し、主文の刑に処するのが相当と判断した。 (求刑-懲役8年、弁護人の科刑意見-3年以下の懲役)令和7年7月14日広島地方裁判所刑事第2部 裁判長裁判官後藤有己 裁判官櫻井真理子 裁判官前田佳秀 佳秀
▼ クリックして全文を表示