平成24(ワ)499 違約金条項使用差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年4月14日 大分地方裁判所 その他
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判決文本文17,924 文字)

平成26年4月14日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成24年(ワ)第499号違約金条項使用差止等請求事件口頭弁論終結日平成26年2月3日判決 主文 1 被告は,消費者との間で,大学受験予備校の在学契約を締結するに際し,「中途退学等による校納金(学費や講習会費等)の返金は原則として行わない。」との条項等により,被告が消費者から受領した金員のうち授業料に相当する金員を在学契約の解除時に全額返還しないとする条項を含む契約の申込み又はその承諾の意思表示を行ってはならない。 2 被告は,前項記載の内容の条項が記載された契約書雛型が印刷された契約書用紙を破棄せよ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要 1 事案の大要本件は,消費者契約法(以下「法」という。)2条4項の定める適格消費者団体である原告が,同条2項の事業者である被告に対し,被告が設置・運営している大学受験予備校(以下,単に「予備校」ということがある。)において,一定期間経過後に在学契約が解除された場合には消費者に校納金を全額返還しないとする不返還条項が定められていることに関し,当該不返還条項のうち解除後の期間(被告がいまだ役務を提供していない期間)に対応する授業料に関する部分は,法9条1号により無効であると主張して,法12条3項に基づき,当該不返還条項を内容とする意思表示等の差止めを求めた事案である。 2 争いがない事実又は証拠等により容易に認められる事実(1) 当事者ア原告は,平成24年2月28日,法13条に基づき内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体である。 イ被告 争いがない事実又は証拠等により容易に認められる事実(1) 当事者ア原告は,平成24年2月28日,法13条に基づき内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体である。 イ被告は,教育基本法及び学校教育法に従い,学校教育を行うことを目的とする学校法人であり,北九州市,山口市,長崎市,福岡市,大分市,鹿児島市,熊本市及び東京都等において,「北九州予備校」という名称の大学受験予備校を設置・運営している。被告は,法2条2項の事業者である。 (以上は,甲1,2,弁論の全趣旨)(2) 北九州予備校の平成24年度入学規程(乙1の1。書面上は「入学規定」と記載されている。)ア第1条入学資格北九州予備校の入学資格者は,大学入試受験資格者(高等学校卒業程度認定試験受験予定者を含む。)で,1年間を通じ本校の指導に従い,志望校合格に向けて勉学に励むことのできる者とする。 イ第2条クラス・コース(ア) 東京校を除く北九州予備校の大学進学科設置クラス・コースは以下のとおりとする。 国公立大理工系・国公立大医学部系・国公立大歯薬農獣医系・国公立大看護医療系・国公立大文系・私立大理工系・私立大医学部系・私立大看護医療系・私立大文系(イ) 各クラス・コースにおいて学力別クラス編成を行う。クラス編成テストは1学期と2学期開講前に実施し,学力レベルに応じてクラス編成を行う。(1,2学期でクラスのレベル移動もある。)(ウ) 他に全寮制のFelix(医・歯・薬・獣医受験専門コース)小倉校を設置する。 ウ第3条年間学費と必要な経費(ア) 1項年間学費は以下のとおりとする。 a 国公立大各系コース入学金10万円,授業料59万5000円,年間合計69万50 ウ第3条年間学費と必要な経費(ア) 1項年間学費は以下のとおりとする。 a 国公立大各系コース入学金10万円,授業料59万5000円,年間合計69万5000円b 私立大各系コース入学金10万円,授業料58万円,年間合計68万円Felixは別途料金を定める。 (イ) 2項年間学費には,1・2学期の授業料,校内必須模試受験料等の必要な経費を含む。 年間学費に含まれるもの1学期及び2学期の必修授業授業料及び午後の特定大対策授業・英語・数学・国語の学力別強化授業等の選択授業授業料(公開講座を除く),校内オリジナルの必須模試受験料(進研模試等の外部模試受験料は含みません),毎朝のセンター対策(リスニング含む)代,プリント代,毎月の家庭通信連絡費,夏期定期健康診断費,進路指導費,カリキュラム内での修得度テスト代,確認テスト代,各種特別添削費,各種行事等(一部希望参加分を除く)の費用。 (ウ) 3項選択して受講する夏期・冬期・直前講習会の受講料,公開講座受講料,光アカデミー受講料,テキスト代,及び選択して受験する外部模試受験料,必修授業におけるリスニング等の教材費の一部は別途料金を必要とする。 エ第4条学期 学期は以下のとおりとする。 (ア) 前期 4月1日(日)~9月30日(日)(イ) 後期 10月1日(月)~3月31日(日)(授業期間は,年間スケジュールの1学期・夏期講習会・2学期・冬期講習会・直前講習会とする。)オ第5条大学合格等による学費・寮費返金大学に合格する等の理由により入学・入寮を辞退される場合は,以下の手続きにより返金する。 (ア) 返金手続期限平 習会とする。)オ第5条大学合格等による学費・寮費返金大学に合格する等の理由により入学・入寮を辞退される場合は,以下の手続きにより返金する。 (ア) 返金手続期限平成24年3月31日(金)17:00までa 返金内容入学金,入寮費を含む全額を返金b 必要書類(手続き期限内に提出)① 返金願(本校指定)大学合格以外の理由による入学辞退者は返金願の代わりに入学辞退理由書(本校指定)② 本校入学許可書③ 本校発行の領収書又は郵便局,銀行発行の領収書(3月31日までに提出できない場合は郵便局,銀行発行の払込受領証)c 返金日平成24年4月27日(金)(イ) 返金手続期限平成24年4月1日(日)から平成24年4月15日(日)までa 返金内容入学金,入寮費を除き返金b 必要書類(手続き期限内に提出)(ア)b項と同じc 返金日平成24年5月10日(木)(ウ) 2次募集や補欠合格などで合格通知が遅れた場合でも,平成24年4月16日以降の申し出は,返金の対象外とする。 (エ) 入寮予約金は平成24年3月31日17:00までに上記①③を提出すれば,平成24年4月27日(金)に全額を返金する。 (オ) 一旦入寮した場合は,手続き期限内であっても,この返金制度は適用されない。 (カ) 返金は返金願記載の銀行口座に振り込みをする。 カ第6条中途退学による学費返金中途退学等による校納金(学費や講習会費等)の返金は原則として行わない。 (3) 北九州予備校の平成23年度入学規程(甲3)北九州予備校の平成23年度入学規程(甲3。以下,同予備校の平成2 金中途退学等による校納金(学費や講習会費等)の返金は原則として行わない。 (3) 北九州予備校の平成23年度入学規程(甲3)北九州予備校の平成23年度入学規程(甲3。以下,同予備校の平成24年度入学規程と併せて「本件各入学規程」という。)は,次の各条項を除き,概ね上記(2)項の平成24年度入学規程と同じ内容である。 ア第3条(年間学費と必要な経費)1項年間学費は以下のとおりとする。 (ア) 国公立大各系コース入学金10万円,授業料59万円,年間合計69万円(イ) 私立大各系コース入学金10万円,授業料57万5000円,年間合計67万5000円Felixは別途料金を定める。 イ第5条(大学合格等による学費返金)本校に入学手続きを行った日の属する年の4月7日までに,4年制大学(文部科学省所管外の防衛大学校・気象大学校等を含む)又は短期大学,看護・医療系の専修・各種学校に合格し,その学校に入学する等の理由で,本校入学を取り消される場合,期限内に下記書類を提出すれば,入学金相当額を除いた金額を返金する。 1項提出書類① 学費返金願(本校所定のもの)② 本校の入学許可書③ 学費領収書(本校発行のもの)又は払込受領書(郵便局・銀行発行のもの)④ 進学先の入学金又は授業料領収書(大学等合格による本校入学辞退者のみ)2項書類提出期限前項の提出書類のうち,①~③までの書類を平成23年3月31日(木)午後5時までに,申込校舎へ提出して下さい。 但し,国公立大学の中で3月20日以降の2次募集受験者の場合は,合格発表日を含め4日以内とします。この場合の最大最終期限を平成23年4月7日(木)午後5時までとします。大学等合格による本校入学辞退者は,追加提出書類として,④を平成23年4月 集受験者の場合は,合格発表日を含め4日以内とします。この場合の最大最終期限を平成23年4月7日(木)午後5時までとします。大学等合格による本校入学辞退者は,追加提出書類として,④を平成23年4月21日(木)午後5時までに申込校舎へ提出して下さい。 (4) 原告の事前請求原告は,平成24年7月9日,消費者契約法41条所定の事項を記載した書面(甲4)により,被告に対し,本件各入学規程第6条のような条項を含む消費者契約の申込み又は承諾の意思表示の停止等を求める差止請求を行い,同書面は,同月10日,被告に到達した。(争いがない)(5) 本件訴えの提起原告は,平成24年7月20日,本件訴えを提起した。(当裁判所に顕著な事実)第3 争点及び争点に対する当事者の主張第2の2(2),(3)項のとおり,被告は,北九州予備校に入学した者が4月7日(平成23年度)又は同月15日(平成24年度)より後に在学契約を解除し た場合には,原則として校納金(学費や講習会費等)を全額返還しない旨を定めている(本件各入学規程第5条,第6条。以下,かかる定めを「本件不返還条項」という。)。そして,学費の内容を定めた本件各入学規程第3条によれば,ここで被告が返還しないとする「校納金(学費や講習会費等)」には,北九州予備校の入学金,1・2学期の授業料,校内必須模試受験料等の必要な経費,各種講習会の受講料等が含まれる。 本件の争点は,本件不返還条項の授業料に関する部分のうち,被告との間で北九州予備校の在学契約を締結した消費者が4月7日(平成23年度)又は同月15日(平成24年度)より後に同契約を解除した場合に,解除後の期間(被告がいまだ役務を提供していない期間)に対応する授業料相当額を返還しない旨の部分が,法9条1号にいう「当該消費者契 度)又は同月15日(平成24年度)より後に同契約を解除した場合に,解除後の期間(被告がいまだ役務を提供していない期間)に対応する授業料相当額を返還しない旨の部分が,法9条1号にいう「当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害」(以下「平均的な損害」という。)を超えるものとして無効となるかであり,これに関する当事者の主張は,次のとおりである。 なお,本件不返還条項のうち,入学金に関する部分に関しては,在学契約締結後に同契約が解除されたとしても,被告が在学者に対して入学金を返還する義務を負わないことについて,当事者間に争いがない。 1 原告の主張(1) 本件不返還条項の授業料に関する部分の性質本件不返還条項の授業料に関する部分は,一定期間経過後に在学契約が解除された場合に,消費者がこれ以降授業を受けることができないにもかかわらず,授業を受けることのできない当該期間を含む1年度分の授業料相当額を全額返還しない旨を定めているのであるから,消費者が役務の提供を受けていない授業等の対価に係る授業料相当額につき,損害賠償額の予定又は違約金を定めた条項であるといえる。 (2) 大学について ア最高裁平成18年11月27日第二小法廷判決(民集60巻9号3437頁)(以下「平成18年最判」という。)は,大学における授業料の不返還特約と平均的な損害の関係について,①受験生が複数の合格校の中から志望順位の高い大学を選択するという事情の下では,在学契約を締結したとしても,実際に入学するかどうかは不確実であること,②大学に対する国庫補助金も,入学者数の多寡によって,減額,不支給となり得ること,③大学が新入生を募集する時期は限られており,追加募集は難しいこと,④大学における修業年限は相当 は不確実であること,②大学に対する国庫補助金も,入学者数の多寡によって,減額,不支給となり得ること,③大学が新入生を募集する時期は限られており,追加募集は難しいこと,④大学における修業年限は相当期間に及ぶので,修業年限の途中からの中途入学者を受け入れることは容易でないこと,⑤入学者の確保を図るあまり,入学者の学力の水準を下げると,教育研究や社会的評価の面で支障が生じること等の事情を考慮すると,不返還特約は,在学契約の解除によって大学が被る可能性のある授業料等の収入の逸失その他有形,無形の損失や不利益等を回避,てん補する目的,意義を有するほか,早期に学力水準の高い学生をもって適性な数の入学予定者を確保する目的に資する側面も有しており,不返還特約のうち授業料等に関する部分は,在学契約の解除に伴う損害賠償額の予定又は違約金の定めの性質を有するものと解するのが相当であるとした。 イそして,平成18年最判は,(Ⅰ)大学が,入学試験に合格した者,在学契約を締結した者であっても,辞退者がいることを見込んで合格者を決定し,予算の策定作業を行うこと,(Ⅱ)大学では,選抜方法を多様化するなどして,入学者の数及び質の確保を図ることに務め,あるいは補欠合格等の入学者を補充する措置を講じていること,(Ⅲ)大学受験者にとっては,3月31日までに在学契約の解除の意思表示をし得る状況にあること,(Ⅳ)4月1日には大学の入学年度が始まり,在学契約を締結した者は学生としての身分を取得することからすると,4月1日には,学生が特定の大学に入学することが客観的にも高い蓋然性をもって予測されるこ とから,在学契約の解除の意思表示がその前日である3月31日までにされた場合には,原則として,大学に生ずべき平均的な損害は存しないのであって,不返還特約はすべて無効 然性をもって予測されるこ とから,在学契約の解除の意思表示がその前日である3月31日までにされた場合には,原則として,大学に生ずべき平均的な損害は存しないのであって,不返還特約はすべて無効であり,在学契約の解除の意思表示が同日よりも後にされた場合には,原則として,学生が納付した授業料は,それが初年度に納付すべき範囲内のものにとどまる限り,大学に生ずべき平均的な損害を超えず,不返還特約はすべて有効であると判断した。 上記(Ⅰ)~(Ⅳ)のとおり,大学には,入学試験があり,大学が求める一定水準以上の学力を有する入学者は容易に代替が効かないので,大学側においてもかかる者を確保するために様々な措置を講じるのであるが,かかる措置による入学者の代替が効くのは3月31日までであり,同日よりも後に在学契約の解除の意思表示がなされた場合には,入学者の代替が容易には効かなくなる。そこで,平成18年最判は,在学契約の解除の意思表示が3月31日までにされた場合には,不返還特約はすべて無効であるとする一方で,在学契約の解除の意思表示が同日よりも後にされた場合には,原則として,初年度に納付すべき範囲内のものにとどまる限り,学生が納付した授業料の不返還特約はすべて有効であるとした。 ウこのように,平成18年最判は,大学の授業料の不返還特約と平均的な損害との関係において,在学契約が解除された場合における入学者の代替可能性を重要視しているということができ,法9条1号の平均的な損害に得べかりし利益が含まれるのは,当該契約の目的が他の契約において代替ないし転用される可能性がない場合に限られるというべきである。これは,消費者が契約の解除に伴い,事業者から不当に損害賠償や違約金の出捐を強いられることのないように設けられた法9条1号の趣旨からの当然の いし転用される可能性がない場合に限られるというべきである。これは,消費者が契約の解除に伴い,事業者から不当に損害賠償や違約金の出捐を強いられることのないように設けられた法9条1号の趣旨からの当然の帰結である。 (3) 大学受験予備校についてアこれに対し,大学受験予備校においては,(2)アにつき,予備校の在学 契約を締結する者は,大学に入学しない蓋然性が高いから契約を締結するのであり,在学契約を締結しても,実際に当該予備校に入学するかは多分に不確実とはいえないこと,同の事情はないこと,同③につき,被告は,新入生を募集する時期を限定しておらず,4月1日以降も,被告の企業努力によって新入生を追加入学させることは可能であること,同④につき,在学者(予備校生)と被告との契約年限は1年で,その内容は大学受験の指導であるから,中途入学者を受け容れることが困難という事情はないこと,同⑤につき,入学者のレベルはそれぞれ異なっており,入学者の学力の水準を一定程度保持する必要性はないことから,平成18年最判が挙げる同①~⑤の事情は,いずれも大学受験予備校には当てはまらない。そのため,大学の授業料の不返還特約に関する平成18年最判の判示は,大学受験予備校には当てはまらない。 イまた,(2)ア(Ⅰ)につき,大学受験予備校では,一部の特殊なクラスを除いて併願は考え難く,辞退者がいることを見込んで予算の策定作業を行うという事情はないこと,同(Ⅱ)につき,被告の約款においても,在学者(予備校生)の入学要件は,特殊なクラスでない限り,申込みと所定の費用の支払がなされることであり,当該入学者の数及び質を確保するための措置を講じているという事情はないこと,同(Ⅲ)(Ⅳ)につき,被告においては,入学者の募集時期を制限しておらず,4月 込みと所定の費用の支払がなされることであり,当該入学者の数及び質を確保するための措置を講じているという事情はないこと,同(Ⅲ)(Ⅳ)につき,被告においては,入学者の募集時期を制限しておらず,4月7日又は同月15日以降も,被告の企業努力によって,新入生を追加入学させることは可能であり,また,被告の在学契約における被告の義務は,大学受験指導役務の提供であり,大学のように「単位の取得」を目的とする年度単位の受講を前提としているものではなく,4月7日又は同月15日を基準日として授業料の返還の有無を定める合理的な理由もないことからすれば,同(Ⅰ)~(Ⅳ)の事情は,いずれも大学受験予備校には当てはまらない。 ウ平成18年最判の判示内容によれば,平均的な損害に得べかりし利益が 含まれるのは,当該消費者契約の目的が他の契約において代替ないし転用される可能性がない場合に限られるというべきところ,入学試験がなく,入学者の水準を一定に保つ必要性のない大学受験予備校においては,入学者の在学契約解除の時期を問わず,消費者契約の目的が他の契約において代替ないし転用される可能性がないとはいえないので,平均的な損害に得べかりし利益は含まれない。 (4) 被告は,本件不返還条項に基づいて,中途退学者から事前に徴収した授業料を一切返還しないとする根拠の一つとして,その運営する各校が認可された定員を超過して入学させることができないことを挙げるが,平成19年度から平成23年度までの北九州予備校各校における実入学者数は,ほとんどの校舎で定員数を超えておらず,また,定員数を超過する校舎もあるから,ある消費者が在学契約を中途解約したから他の在学者(予備校生)を確保することができないという関係にはない。 (5) 以上によれば,被告は,その経営する大学 また,定員数を超過する校舎もあるから,ある消費者が在学契約を中途解約したから他の在学者(予備校生)を確保することができないという関係にはない。 (5) 以上によれば,被告は,その経営する大学受験予備校において現実に役務を提供していない場合には,当該未履行役務部分の対価を当然に取得し得るものでなく,入学者の在学契約解除の時期を問わず,消費者契約の目的が他の契約において代替ないし転用される可能性がない場合にのみ,当該未履行役務部分の対価が平均的な損害(法9条1号)を超えないということができる。本件不返還条項の授業料に関する部分のうち,解除後の期間(被告がいまだ役務を提供していない期間)に対応する授業料相当額を返還しない旨の部分は,上記の場合に該当せず,平均的な損害を超えるものであるから,法9条1号により無効である。 そして,被告は,今後も本件不返還条項と同内容の意思表示を行うおそれがあるから,適格消費者団体である原告は,法12条3項に基づき,被告に対し,その差止めを請求することができるというべきである。 2 被告の主張 (1) 本件不返還条項の授業料に関する部分は,消費者が受講していない期間の授業料相当額につき損害賠償額の予定又は違約金を定める条項であるが,平成18年最判の趣旨を踏まえれば,次のとおり,平均的な損害(法9条1号)を超えるものでなく,有効である。 (2) 平成18年最判は,大多数の受験者は3月下旬までに進路が決定し,あるいは進路を決定することが可能な状況にあること,入学しない大学の在学契約は3月中に解除の意思表示をし得る状況にあることから,4月1日が特定の大学に入学することが客観的にも高い蓋然性をもって予測される時点であると判示しているところ,いわゆる浪人生活をする者は,3月末日までに大学へ 除の意思表示をし得る状況にあることから,4月1日が特定の大学に入学することが客観的にも高い蓋然性をもって予測される時点であると判示しているところ,いわゆる浪人生活をする者は,3月末日までに大学への入学手続をとらないことによって,浪人生活を選択するのであるから,大学受験予備校に入学することが客観的にも高い蓋然性をもって予測される時点は,大学入学と同じく,4月1日ということができる。そして,大学受験予備校は,3月末までは,予備校への入学手続をした者の中から,第2志望以下の大学進学を選んだり,補欠合格となって大学進学をする者が出ると予測されるから,在学契約の解除も織り込み済みといえるのに対し,4月1日以降になると,大学入学手続は終了し,大学の補欠合格もないから,もはや解除はなく入学手続をした者は確実に当該予備校に入学するものと受け止めて,様々な事務処理等を行うことになる。 したがって,大学の入学者の場合と同じく,大学受験予備校の入学者についても,4月1日以降に在学契約を解除した場合には,大学受験予備校にとって織り込み済みとはいえないから,本件不返還条項の授業料に関する部分のうち,解除後の期間に対応する授業料相当額を返還しない旨の部分は,大学と同様,法9条1号に該当せず有効であるというべきである。 (3) 原告は,平成18年最判の判示中,我が国における大学受験の実情等として①~⑤を挙げ,これらが被告には当てはまらないと主張する(原告の主張(2)ア,(3)ア項)。しかしながら,大学受験予備校においては,国庫補助金と いった制度が存せず,学生から納付を受ける授業料等が唯一の財源であること,被告は,学校教育法に基づく専修学校として,人的物的設備を整える義務を負っており,各校の設立認可は学則とともになされ,学則で定められた定 存せず,学生から納付を受ける授業料等が唯一の財源であること,被告は,学校教育法に基づく専修学校として,人的物的設備を整える義務を負っており,各校の設立認可は学則とともになされ,学則で定められた定員数を超えて入学させるような違法行為があると,行政庁から厳しい指導・監督がなされるのであって,被告も,学則定員を厳守すべく,定員を超す入学申し込みがあっても募集を締め切っていること,大学受験予備校としての性格上,その予算は年度単位で策定されること,在学契約に基づく在学者(予備校生)に対する給付も1年を単位として行われること,新入生を募集する時期は極めて限られ,中途入学者もごくわずかであることからすれば,平成18年最判の判示する我が国における大学受験の実情は,被告の場合であっても同様に妥当する。 (4) また,原告は,平成18年最判が,4月1日以降の大学の授業料の不返還特約が有効であるとしたことを基礎づける事情の判示として,(Ⅰ)~(Ⅳ)の判示を挙げているところ(原告の主張(2)イ項),同判決は,(Ⅰ)(Ⅱ)の部分に続けて,「このような実情の下においては,一人の学生が特定の大学と在学契約を締結した後に当該在学契約を解除した場合,その解除が当該大学が合格者を決定するに当たって織り込み済みのものであれば,原則として,その解除によって当該大学に損害が生じたということはできないものというべきである。」と述べて,「織り込み済み」か否かという抽象的判断基準を定立し,さらに解除が「入学することが客観的にも高い蓋然性をもって予測される時点」以後のものであれば織り込み済みのものということはできないとの基準を示している。さらに,(Ⅲ)(Ⅳ)の部分において,上記「入学することが客観的にも高い蓋然性をもって予測される時点」が4月1日であることを判示している。このよ 済みのものということはできないとの基準を示している。さらに,(Ⅲ)(Ⅳ)の部分において,上記「入学することが客観的にも高い蓋然性をもって予測される時点」が4月1日であることを判示している。このように,原告が引用する(Ⅰ)~(Ⅳ)は,それぞれ並列する判断の要点ではなく,原告は,平成18年最判の論理構造を無視した引用を行い,独自の結論を導き出しているにすぎない。 また,原告は,大学受験予備校には入学試験が存在せず,補欠合格が存在しないこと,入学者の数,質を確保する措置が講じられていないことから,(Ⅰ)(Ⅱ)に該当しない,また,大学受験予備校には,4月以降でも入学することが可能であるから,(Ⅲ)(Ⅳ)にも該当しないと主張する。しかしながら,平成18年最判は在学契約の解除が大学側にとって「織り込み済み」といえるかという抽象的判断基準の該当性を問題としているのであって,入学試験の実施数や補欠合格の有無についても「織り込み済み」かに結びついている。したがって,(Ⅰ)(Ⅱ)に該当しないとする原告の主張は,平成18年最判の理論に沿うものではない。また,大学においても中途入学者はわずかではあるが存在し,他方,被告における中途入学者もわずかばかりしか存在せず,基礎事情が大きく異なるものではない。 第4 当裁判所の判断 1 事実認定証拠(乙3,6,18,19,平成25年11月13日付の原告調査嘱託申出書による熊本県〔平成25年11月26日付け調査嘱託回答書〕,長崎県〔同日付け調査嘱託回答書〕,大分県〔同月27日付調査嘱託回答書〕,福岡県〔同年12月2日付け調査嘱託回答書〕,山口県〔同月3日付け調査嘱託回答書〕及び鹿児島県〔同月4日付け調査嘱託回答書〕に対する調査嘱託の結果,並びに弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 同年12月2日付け調査嘱託回答書〕,山口県〔同月3日付け調査嘱託回答書〕及び鹿児島県〔同月4日付け調査嘱託回答書〕に対する調査嘱託の結果,並びに弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 (1) 被告の設置・運営する北九州予備校小倉駅校,博多校,黒崎校,大分校,長崎校,熊本校,山口校及び鹿児島校の平成19年度ないし平成23年度における定員数及び各年5月1日時点における実入学者数は,別紙の(定員数)欄,(実入学者数)欄に記載のとおりである。 (2) 北九州予備校大分校の学則(乙6。以下「大分校学則」という。)には,次の各規定が置かれている。 ア第5条 本校の学年は,4月1日に始まり,翌年の3月31日に終わる。 イ第6条本校の学期は,次のとおりとする。 一第1学期 4月5日から7月15日まで二第2学期 9月1日から12月16日まで三第3学期 1月4日から3月24日までウ第13条本校の入学資格は,次のとおりとする。 一大学進学科においては,高等学校を卒業した者又は,これと同等以上の学力があると認められる者。 (二号以下は省略)エ第14条本校の入学時期は,次のとおりとする。 一毎年度 4月1日オ第15条本校の入学手続きは,次のとおりとする。 一本校に入学しようとする者は,本校の定める入学願書に必要事項を記載し,必要書類を添えて,指定期日までに出願しなければならない。 二本校に入学を許可された者は,指定期日までに,入学金,授業料を添えて,入学手続きをとらなければならない。 カ第22条年度の途中において入学する者の授業料その他の納入金については,入学時よりの月割とする。 (3) 北九州予備校小倉校における平成22年度,平成23年度の入学式の開催日及び1学 。 カ第22条年度の途中において入学する者の授業料その他の納入金については,入学時よりの月割とする。 (3) 北九州予備校小倉校における平成22年度,平成23年度の入学式の開催日及び1学期開講日は,次のとおりである。 ア平成22年度入学式 4月21日 1学期開講日 4月26日イ平成23年度入学式 4月13日1学期開講日 4月18日 2 本件不返還条項の授業料に関する部分の法的性質等本件不返還条項の授業料に関する部分は,在学者(予備校生)による在学契約の解除によって被告が被る可能性のある授業料等の収入の逸失,その他の有形,無形の損失や不利益等を回避,てん補する目的,意義を有するものであり,在学契約の解除に伴う損害賠償額の予定又は違約金の定めの性質を有するものと解するのが相当であって,法9条1号の「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し,又は違約金を定める条項」に当たる。この点については,当事者間に争いがない。 そして,かかる本件不返還条項の授業料に関する部分のうち,被告との間で北九州予備校の在学契約を締結した消費者が4月7日(平成23年度)又は同月15日(平成24年度)より後に同契約を解除した場合に,解除後の期間(被告がいまだ役務を提供していない期間)に対応する授業料相当額を返還しない旨の部分が,平均的な損害(法9条1号)を超えるものとして無効となるかについて,原告がこれを肯定するのに対し,被告はこれを否定する。 3 平均的な損害を超えるか否かの検討(1) そこで検討すると,前記のとおり,被告の定める北九州予備校の入学資格は,「大学入試受験資格者(高等学校卒業程度認定試験受験予定者を含む。)で,1年間を通じ本校の指導に従い,志望校合格に向けて勉学に励むことのできる者」 記のとおり,被告の定める北九州予備校の入学資格は,「大学入試受験資格者(高等学校卒業程度認定試験受験予定者を含む。)で,1年間を通じ本校の指導に従い,志望校合格に向けて勉学に励むことのできる者」(本件各入学規程第1条),「高等学校を卒業した者又は,これと同等以上の学力があると認められる者」(大分校学則第13条)などとされるにとどまり,大学入試受験資格者等であることのほかに一定の学力水準にあることまでは要求されていない。このように,北九州予備校においては,その性質上,大学進学を目指す希望者を,学力水準を問うことなく幅広く受 け入れた上で,これらの者に教育・指導を行うことが予定されており,一般的に,(いわゆる選抜クラス等の入学者を除き)予備校に入学するための試験は実施されていない。 また,前記のとおり,北九州予備校においては,大分校学則で,「年度の途中において入学する者の授業料その他の納入金については,入学時よりの月割とする。」(第22条)と規定されており,当該規定は,年度途中(4月1日以降を指す。大分校学則第5条,第14条参照)からの入学者があり得ることを当然の前提としているものと解される上,大分校以外の北九州予備校においても同様の学則が定められているものと推認されるため,北九州予備校においては,年度途中から入学する者がいることが当然に予定されているものと認められる。被告も,平成25年9月17日の第3回弁論準備手続期日において,「被告が運営する大学受験予備校において5月以降の入学希望者がいる場合,定員未満であれば理論的には入学を受け付ける」などと述べ,年度途中から入学する者があり得ること自体は認めている。また,大学受験予備校においては,大学入試のための指導が行われるのであり,その性質上,年度途中からでは希望者の受入れが困難 付ける」などと述べ,年度途中から入学する者があり得ること自体は認めている。また,大学受験予備校においては,大学入試のための指導が行われるのであり,その性質上,年度途中からでは希望者の受入れが困難といった事情も認められない。このように,大学入試のための指導を行う大学受験予備校においては,一般的に,定員数を超過しない限り,入学を希望する者は,年度途中(4月1日以降)からであっても入学することが可能であり,しかも,上記のように,この際,同人の学力水準は問われず,入学試験を受ける必要もない。 さらに,上記1(1)項のとおり,被告の設置・運営する北九州予備校各校の平成19年度ないし平成23年度における定員数及び各年5月1日時点における入学者数は,別紙の各校①欄,②欄記載のとおりであり,これによれば,被告は,北九州予備校博多校及び同鹿児島校を除く各校舎においては,ごくわずかな例外を除きほぼすべての年度で定員に達しておらず,逆に,同博多校及び同鹿児島校においては,毎年のように定員を大幅に上回る入学者 を受け入れていることが認められる。なお,証拠(乙9の1ないし7)によれば,被告は,平成元年から平成6年までの間,北九州予備校小倉駅校の全クラスが定員に達したことを理由に,同校における新入生の募集を打ち切ったことが認められるが,その余の校舎の募集状況をうかがわせる証拠は全くなく,上記の小倉駅校自体についても,平成7年以降定員に達したことを理由に新入生の募集を打ち切ったことがあったことをうかがわせる証拠は全くない。そのため,被告は,定員に達していない校舎はもちろん,定員に達した校舎についても,各校舎の定員数に縛られることなく新入生を受け入れており,各校舎の定員数が,大学受験予備校が希望者を受け入れる限界としての機能を十分に果たしていないことが 舎はもちろん,定員に達した校舎についても,各校舎の定員数に縛られることなく新入生を受け入れており,各校舎の定員数が,大学受験予備校が希望者を受け入れる限界としての機能を十分に果たしていないことが認められる。 (2) 以上のように,北九州予備校においては,多くの希望者を,学力水準を問うことなく幅広く受け入れており,年度途中から入学する者も当然に予定している上,本来希望者を受け入れる限界として機能する各校舎の定員数も,十分にその機能を果たしていないため,一人の希望者との間で在学契約を締結したために別の一人の希望者との在学契約締結の機会が失われたといった関係は,およそ認められない。 そうすると,北九州予備校との間で在学契約を締結した一人の消費者が,在学生としての地位を取得した(通常は4月1日。大分校学則第14条参照)後にこれを解除した場合,当該予備校は,これにより幾らかの損害を被ることはあり得るとしても,中途入学者を受け入れること,その他の事前の対策を講じることは十分に可能であり,少なくとも,本件不返還条項が定めるような,当該消費者が納付した解除後の期間(いまだ役務を提供していない期間)に対応する授業料の全額について,一般的,客観的に損害を被ることにはならないというべきである。 4 被告の主張の検討(1) これに対し,被告は,平成18年最判が判断した大学の入学者の場合と同 じく,北九州予備校の入学者についても,4月1日以降に在学契約を解除した場合には,当該予備校にとって織り込み済みのものとはいえず,解除後の期間に対応する授業料相当額の損害を被る旨主張する。 (2)ア確かに,大学の入学時期は,原則として4月1日であるから,いわゆる浪人生が,翌年度の大学受験に向けて大学受験予備校に入学する時期もこのころであり,同時期以降の 額の損害を被る旨主張する。 (2)ア確かに,大学の入学時期は,原則として4月1日であるから,いわゆる浪人生が,翌年度の大学受験に向けて大学受験予備校に入学する時期もこのころであり,同時期以降の中途入学者の数は多くないものと推測される(証拠〔乙19〕からも,北九州予備校の入学者が3月下旬から4月上旬に集中していることがうかがわれる。)。 しかし,多くの希望者を,学力水準を問うことなく幅広く受け入れる大学受験予備校においては,たとえ実際には中途入学者の数が多くないとしても,中途入学者を受け入れることの困難は,大学の場合と全く異なるのであり,在学契約を締結した一人の消費者が,在学生としての地位を取得した後にこれを解除した場合,これにより,解除後の期間(いまだ役務を提供していない期間)に対応する授業料の全額について,損害を被ることになるとはおよそ考え難い。 イまた,入学試験のない大学受験予備校の場合には,入学希望者が複数の予備校を併願するといったことがないに等しく,当該予備校と在学契約を締結した者が,他の志望上位の予備校に入学する意思を固め,先に在学契約を締結した予備校に入学辞退を申し出るといった事態は考えにくい。そのため,大学受験予備校の場合には,予備校と在学契約を締結した者が実際に当該予備校に入学するかどうかが多分に不確実といった事情は認められず,そうである以上,予備校としても,在学契約を締結した者については,実際に当該予備校に入学することを前提として手続をとるのが通常であると思われる。 しかし,在学者(予備校生)が大学受験予備校と締結した在学契約を解除するのは,当該在学者がより自分に合った受験指導を求めて他の予備校 に移る場合,自宅等での勉強(いわゆる宅浪)に切り替える場合,大学を受験すること自体を取り止める場合と 結した在学契約を解除するのは,当該在学者がより自分に合った受験指導を求めて他の予備校 に移る場合,自宅等での勉強(いわゆる宅浪)に切り替える場合,大学を受験すること自体を取り止める場合といった,予備校としても当然に予定している事情や本来企業努力等により改善すべき事情によるものと考えられるのであり,このような場合にまで予備校がいまだ役務を提供していない期間に対応する授業料の全額を確保するのは,法9条1号の趣旨に照らし,疑問である。 ウさらに,被告は,大学受験予備校の在学者(予備校生)が4月1日以降に在学契約を解除した場合に,予備校が,解除後の期間に対応する授業料相当額の損害を被る旨主張するが,一方で,前記のとおり,被告が設置・運営する北九州予備校においては,これより後である同月7日又は同月15日より後に在学契約を解除した場合に,授業料の全額を返還しない旨を定めており,基準日が一致しない。すなわち,北九州予備校においては,同月1日以降であっても,同月7日又は15日までの間に解除された場合には,授業料の全額を返還する旨を定めているのであり(本件各入学規程第5条),この点からも,大学受験予備校において,同月1日以降に在学契約が解除された場合,解除後の期間に対応する授業料の全額について損害を被るとする被告の上記主張を採用することは,困難である。 また,上記1(3)項の北九州予備校小倉校の入学式の開催日及び1学期開講日によれば,北九州予備校の各校舎においては,4月1日から二,三週間経って初めて入学式を開催し,その後数日して授業を開始していること(授業が開始されるのは被告が主張する基準日である4月1日より相当後であること)がうかがわれるため,この点からしても,同日以降は授業料の全額について損害を被るとする被告の上記主張を採用するこ ること(授業が開始されるのは被告が主張する基準日である4月1日より相当後であること)がうかがわれるため,この点からしても,同日以降は授業料の全額について損害を被るとする被告の上記主張を採用することは,困難である。 (3) 以上によれば,被告の上記(1)項の主張を採用することはできない。 前記のとおり,北九州予備校との間で在学契約を締結した一人の消費者が, 在学生としての地位を取得した後にこれを解除した場合,当該予備校は,これにより,少なくとも,当該消費者が納付した解除後の期間(いまだ役務を提供していない期間)に対応する授業料の全額について,一般的,客観的に損害を被ることにはならないというべきであるから,解除後の期間に対応する授業料の全額を返還しないことを定めた本件不返還条項は,平均的な損害を超えるものとして法9条1号に該当し,平均的な損害を超える部分が無効となる。 5 本件不返還条項を含む意思表示等の差止め原告は,消費者が,被告との間で在学契約を締結した場合,在学契約が解除される時期にかかわらず,授業料相当額の全額を返還しないとする条項(本件不返還条項)を含む契約の申込み又は承諾の意思表示の差止めを求めていると(主文第1項関係)ころ,上記4項のとおり,本件不返還条項は,平均的な損害を超えるものとして法9条1号に該当し,平均的な損害を超える部分が無効となり,かつ,被告は,大学受験予備校の在学契約を締結するに際し,不特定かつ多数の消費者との間で,法9条1号に規定する条項を含む消費者契約(本件不返還条項を含む在学契約)の申込み又はその承諾の意思表示を現に行うものと認められるから,法12条3項に基づき,適格消費者団体である原告は,事業者である被告に対し,当該行為の停止(本件不返還条項を含む在学契約の申込み又はその承諾の意思 その承諾の意思表示を現に行うものと認められるから,法12条3項に基づき,適格消費者団体である原告は,事業者である被告に対し,当該行為の停止(本件不返還条項を含む在学契約の申込み又はその承諾の意思表示の差止め)を求めることができる。なお,本件不返還条項の授業料に関する部分うち,具体的にどの範囲が平均的な損害を超えることになるのかについては,必ずしも明らかでないが,本件における請求の趣旨の内容によれば,原告は,あくまで当該不返還条項を現状のまま使用することの差止めを求めるものであり,解除までの期間(被告が役務を提供済みの期間)に対応する授業料に関する部分の無効を主張するものではなく,また,被告が当該不返還条項を修正して使用することまで差し止める趣旨でもないと解される。 また,原告は,被告に対し,本件不返還条項が記載された契約書雛型が印刷された契約書用紙の破棄を求めている(主文第2項関係)ところ,原告は,法12条3項により,「当該行為に供した物の廃棄」を請求することができるから,原告の上記請求には理由がある。 6 結論以上によれば,原告の請求はいずれも理由があるからこれを認容することとし,仮執行宣言については,相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。 大分地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官宮武康 裁判官大島広規 裁判官大下良仁 別紙省略

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