平成27年3月25日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成26年(ワ)第11110号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成27年1月21日判決大阪市<以下略>原告株式会社遊気創健美倶楽部同訴訟代理人弁護士小松陽一郎同山崎道雄同藤野睦子同補佐人弁理士西教圭一郎名古屋市<以下略>被告株式会社MTG同訴訟代理人弁護士櫻林正己同補佐人弁理士小林徳夫 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告に対し,2500万円及びこれに対する平成26年5月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,発明の名称を「美顔器」とする特許(特許第4277306号。 以下「本件特許」という。)についての特許権(以下「本件特許権」という。)を有する原告が,被告に対し,被告が製造,販売等を行っている別紙被告製品目録記載1及び2の製品(以下,同目録記載の製品を併せて「被告 各製品」という。)が,本件特許に係る発明の技術的範囲に属すると主張して,特許権侵害の不法行為に基づき,損害賠償金5億6174万4000円の一部である2500万円及びこれに対する平成26年5月14日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実等(証拠等を付記しない事実は,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告 送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実等(証拠等を付記しない事実は,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告は,健康機器,健康器具の製造販売及び輸出入,美容機器,美容器具の製造販売及び輸出入等を目的とする株式会社である。 イ被告は,健康機器,美容機器等の製造,仕入れ,販売,レンタル等を目的とする株式会社である。 (2) 本件特許権原告は,平成22年6月11日,次の内容の本件特許権を共有していた中野隆則,西原一鏞,福田加代美,井上勉及び金子広海から本件特許権を承継した(甲1,2)。 特許番号第4277306号出願日平成19年11月8日出願番号特願2007-317681原出願日平成19年4月10日基礎とした実用新案登録実用新案登録第3136465号公開日平成20年10月30日登録日平成21年3月19日(3) 発明の内容等ア本件特許の特許請求の範囲(以下,明細書及び図面と併せて,「本件明細書」という。参照の便宜のため,本件特許に係る特許公報の写し 〔甲1〕を本判決末尾に別添1として添付する。)における請求項1の記載は,次のとおりである。 「所定量の化粧水を収納する化粧水収納カップと,該化粧水収納カップを装備すると共に,前記化粧水収納カップから滴下された化粧水が引き込まれる導管を内蔵し,且つ該導管の先端に設けられた噴出ノズルを有するスプレー本体と,更にこの導管内において前記滴下化粧水と混合して炭酸混合化粧水を噴出ノズルから霧状に噴出させる炭酸ガス供給用ボンベと,この炭酸ガス供給用ボンベと前記スプレー本体内の導管とを接続する炭酸ガス供給用パイプと,而も前記スプレー本体に備え 水と混合して炭酸混合化粧水を噴出ノズルから霧状に噴出させる炭酸ガス供給用ボンベと,この炭酸ガス供給用ボンベと前記スプレー本体内の導管とを接続する炭酸ガス供給用パイプと,而も前記スプレー本体に備えられた炭酸混合化粧水の噴出調整用摘子とで成したことを特徴とする美顔器。」イ構成要件の分説本件特許の請求項1記載の発明(以下「本件特許発明」という。)を構成要件(以下,各構成要件を符号に対応して「構成要件A」などという。)に分説すると,次のとおりである。 A 所定量の化粧水を収納する化粧水収納カップと,B-1 該化粧水収納カップを装備すると共に,前記化粧水収納カップから滴下された化粧水が引き込まれる導管を内蔵し,B-2 且つ該導管の先端に設けられた噴出ノズルを有するB-3 スプレー本体と,C 更にこの導管内において前記滴下化粧水と混合して炭酸混合化粧水を噴出ノズルから霧状に噴出させる炭酸ガス供給用ボンベと,D この炭酸ガス供給用ボンベと前記スプレー本体内の導管とを接続する炭酸ガス供給用パイプと,E 而も前記スプレー本体に備えられた炭酸混合化粧水の噴出調整用摘子とで成したF ことを特徴とする美顔器。 (4) 被告の行為被告は,遅くとも原告が本件特許権を承継した平成22年6月11日以後,被告各製品の製造,販売,及び販売の申出を行っている。 (5) 構成要件の充足被告各製品は,構成要件A,B-3,E及びFを充足する。 2 争点(1) 被告各製品の構成等(2) 被告各製品は本件特許発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するか(3) 本件特許発明についての特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか(4) 損害第3 争点に対する当事者の主張 1 争点 と均等なものとしてその技術的範囲に属するか(3) 本件特許発明についての特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか(4) 損害第3 争点に対する当事者の主張 1 争点(1)(被告各製品の構成等)について(原告の主張)被告各製品の構成を分説すると,以下のとおりとなる(下線部は争いのある部分である。)。 a 所定量の化粧水を収納するボトルと,b-1 該ボトルを装備すると共に,炭酸ガスが流れる導管を内蔵し,b-2 且つ該導管の先端に設けられたエアノズルを有するb-3 エアブラシと,c 更にエアノズル出口外側付近において前記ボトルから汲み上げられた化粧水と混合して炭酸混合化粧水を霧状に噴出させる炭酸ガスカートリッジと,d 炭酸ガスカートリッジの頭部が組み込まれたレギュレータを介して炭酸ガスカートリッジと前記エアブラシ内の導管とを接続するエアホ ースと,e 而も前記エアブラシに備えられた炭酸混合化粧水の噴出調整を行うエア調整用ダイヤルとで成したf ことを特徴とする美顔器。 (被告の主張)構成a,b-3,e及びfは認めるが,その余の構成は,以下のとおりである(下線部は争いのある部分である。)。 b-1 該ボトルを装備すると共に,炭酸ガスが流れる炭酸ガス流通路を内蔵し,b-2 且つ該炭酸ガス流通路の先端に設けられたエアノズルを有するc 更にエアノズルの出口よりも外側において前記ボトルから吸い上げられた化粧水と混合して炭酸混合化粧水を霧状に噴出させるための炭酸ガスをエアブラシに供給する炭酸ガスカートリッジと,d 炭酸ガスカートリッジと前記エアブラシ内の炭酸ガス流通路とを接続するエアホースと, 2 争点(2)(被告各製品は本件特許発明と均等な 酸ガスをエアブラシに供給する炭酸ガスカートリッジと,d 炭酸ガスカートリッジと前記エアブラシ内の炭酸ガス流通路とを接続するエアホースと, 2 争点(2)(被告各製品は本件特許発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するか)について(原告の主張)被告各製品は,構成要件B-1,B-2,C及びDを充足しないが,本件特許発明と被告各製品との相違は,炭酸ガスと化粧水が混合する位置,及び化粧水が化粧水カップから滴下されるか,汲み上げられるかであり,換言すれば,化粧水カップの位置の違いだけであって,以下のとおり,被告各製品は本件特許発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するものである。 (1) 均等の第1要件ア本件特許発明の本質的部分従来,顔肌を対象とした美容器としては,単にスチームを吹き付けたり, 顔肌に吸引パットを沿わせて顔肌の残骸物をハード的に除去するといった類のものしかなく,美容業界では,化粧水の効能,用具のブランド力等が重視されるのみで,顔肌を対象とした機器は確立した定番のアイテムがなかった。本件特許発明の発明者は,毛細血管を拡張させるという炭酸の効能に着目し,本件特許発明に至ったものである。本件特許発明はパイオニア発明であり,その本質的部分は,炭酸ガスと化粧水とを混合して炭酸混合化粧水を生成し,顔肌に吹き付ける美顔器であることであって,①所定量の化粧水を収納する化粧水収納カップ,②噴出ノズルを有するスプレー本体,③炭酸ガス供給用ボンベ,④この炭酸ガス供給用ボンベと前記スプレー本体とを接続する炭酸ガス供給用パイプという構成により,炭酸混合化粧水を生成している。したがって,炭酸混合化粧水が生成される位置及び化粧水収納カップから化粧水が「滴下」されるか否かは,本件特許発明の本質的部分ではない。そして,被 イプという構成により,炭酸混合化粧水を生成している。したがって,炭酸混合化粧水が生成される位置及び化粧水収納カップから化粧水が「滴下」されるか否かは,本件特許発明の本質的部分ではない。そして,被告各製品は,炭酸ガスの効用に着目して,霧状の炭酸混合化粧水を吹き付ける美顔器であり,本件特許発明の特徴的部分をそのまま採用するものであるから,均等の第1要件を充足する。 イ被告の挙げる公知文献について(ア) 被告が,原告の主張する本質的部分が公知技術であったことの根拠として挙げる公知文献(乙1ないし3,6,8)には,本件特許発明の技術思想は開示も,示唆もされておらず,また,上記公知文献で開示されている具体的構成も本件特許発明とは全く異なるものである。 (イ) 特開平1-110304公報(乙1。以下,この公報を「乙1文献」といい,これに記載された発明を「乙1発明」という。)についていえば,その主眼は役者やモデルなどにメイクを施すための化粧料噴霧装置であり,念頭に置かれている吹付材は主として舞台化粧の顔料等であって,少なくとも「化粧水」との限定はないし,炭酸ガスは,「化粧料」を吹き付けるための手段,媒体の一つとして挙げられているにす ぎない。このため,毛細血管に作用する炭酸ガスの効用に着目して,美肌効果を指向する化粧水と炭酸ガスを混合して炭酸混合化粧水を生成し,噴霧することは全く念頭に置かれていない。また,乙1発明は,①単独での使用が予定されていないこと,②放出される高圧気体が常に一定であること,③気体のみの噴出を予定していることにおいても,本件特許発明と異なる。 (2) 均等の第2要件本件特許発明の作用効果は,「スプレー本体の噴出ノズルから霧状に噴出した炭酸成分の混合化粧水が顔肌の毛細血管に作用して該血管を拡張し,皮脂や も,本件特許発明と異なる。 (2) 均等の第2要件本件特許発明の作用効果は,「スプレー本体の噴出ノズルから霧状に噴出した炭酸成分の混合化粧水が顔肌の毛細血管に作用して該血管を拡張し,皮脂や汚れ等の残骸物を顔肌からソフト的に遊離させて取り除き,より若々しく美しい顔肌を指向することができ,而してその噴出量はその噴出調整用摘子にて使用者の所望に応じ適宜調整できる。」(甲1の段落【0006】)である。被告各製品は,化粧水と炭酸が混合して炭酸混合化粧水が生成される位置,及び化粧水が「汲み上げられる」構成の点を除き,本件特許発明と同じ構成であり,霧状の炭酸混合化粧水が吹き付けられる点は本件特許発明と相違しないから,本件特許発明の作用効果を有し,均等の第2要件を充足する。 (3) 均等の第3要件本件特許発明と被告各製品との相違部分は,化粧水カップの位置の違いだけである。したがって,被告各製品の製造時,当業者にとって,本件特許発明の構成を被告各製品の構成に置換することは容易であったから,被告各製品は均等の第3要件を充足する。 (4) 均等の第4要件被告各製品が,本件特許の原出願時の公知技術と同一である,又は公知技術から容易に推考できたという事情は存在しない。被告は,本件各製品は乙1発明から容易に推考し得たと主張するが,争う。 ア被告各製品と乙1発明の相違点は,以下のとおりである。 (ア) 相違点1被告各製品は,噴出ノズルからの炭酸ガス噴出によって,化粧水と炭酸ガスを混合して炭酸混合化粧水を生成し,これを顔肌に吹き付ける美顔器であるのに対し,乙1発明は,化粧料噴射口から化粧料を吹き付けることのみを主たる目的とした化粧料吹付装置である点(イ) 相違点2被告各製品のエアブラシは,炭酸ガスが流れる炭酸ガス流通路を内蔵 器であるのに対し,乙1発明は,化粧料噴射口から化粧料を吹き付けることのみを主たる目的とした化粧料吹付装置である点(イ) 相違点2被告各製品のエアブラシは,炭酸ガスが流れる炭酸ガス流通路を内蔵しているのに対し,乙1発明の吹付器1は,化粧料が流れる化粧料通路3と気体が流れる気体通路10を備え,吹付器内においてそれぞれ独立した導管を有している点(ウ) 相違点3被告各製品のエアブラシは,炭酸ガス流通路の先端に設けられたエアノズルを有するのに対し,乙1発明は,化粧料が流れる化粧料通路3の先端に設けられた化粧料噴射口4,気体が流れる気体通路10の先端に設けられた気体噴射口11を備え,吹付器においてそれぞれ独立した噴射口を有する点(エ) 相違点4被告各製品は,スプレー本体に備えられ,炭酸混合化粧水の噴出量を調整するエア噴出用ダイヤルを具備するのに対し,乙1発明の調整軸9は,炭酸ガス及び炭酸混合化粧水ではなく,化粧料の噴出量のみを調整する点(オ) 相違点5被告各製品のエアブラシは,ボトルを「装備」する構成であるのに対し,乙1発明の吹付器1は,吹付器1と化粧料容器18との接続方法及び位置関係が明らかでない点 (カ) 相違点6被告各製品は,ボトルがエアノズルの外側の下方に配置されているため,化粧水が「ボトルから吸い上げられ」るのに対して,乙1発明において化粧料容器18と吹付器1の接続方法が不明であり,化粧水が「ボトルから吸い上げられ」るものではない点(キ) 相違点7被告各製品は,「炭酸ガスカートリッジと前記エアブラシ内の炭酸ガス流通路とを接続するエアホースと」を有するのに対して,乙1発明は,高圧気体源19と吹付器1内の気体通路10とをどのように接続するか不明である点イ特開2003-88781公報 ブラシ内の炭酸ガス流通路とを接続するエアホースと」を有するのに対して,乙1発明は,高圧気体源19と吹付器1内の気体通路10とをどのように接続するか不明である点イ特開2003-88781公報(乙4。以下,同公報を「乙4文献」といい,これに記載された発明を「乙4発明」という。)記載の公知技術について被告が副引例として挙げる乙4文献に記載されているのは,塗料スプレー装置であり,炭酸ガス,化粧水及び炭酸ガス混合化粧水を吹き付けるものでもなければ,美顔器でもない。したがって,乙4文献には,相違点1の開示はない。 ウ組合せによる推考容易性の欠如(ア) 被告は,乙1発明に乙4発明を適用する動機付けがある旨主張しているが,被告が乙1発明と乙4発明の共通点として挙げる技術分野は,「液体を噴霧上に塗布させる技術」という抽象的なものにすぎない。乙1発明は,役者やモデルのような舞台に上がる者を対象としたメイクアップの技術であるのに対し,乙4発明は,模型等を対象とした塗装技術であって,技術分野が全く異なる。したがって,組合せの動機付けはなく,乙1発明では,炭酸ガスと化粧水を混合して炭酸混合化粧水を生成し,これを顔肌に吹き付ける技術思想は開示されていないから,被告各 製品の推考が容易であったとはいえない。 (イ) 乙1発明の解決課題は,従来技術における,噴霧量の調整が困難であったこと,化粧料が短期間で消費されること,長時間一定の状態で噴霧することができないこと,大気を汚染すること,連続して吹き付けることができないことといった問題であるのに対し,乙4発明の目的は,液体スプレーから吹き出す流体の流量を極めて簡単な構造で調整できるようにし,さらに塗料色を変えて使用する場合にも,キャップや吸い上げノズルの洗浄回数を減らしたり,省略するこ 対し,乙4発明の目的は,液体スプレーから吹き出す流体の流量を極めて簡単な構造で調整できるようにし,さらに塗料色を変えて使用する場合にも,キャップや吸い上げノズルの洗浄回数を減らしたり,省略することのできる塗装スプレー装置を安価に提供することである。したがって,両者の解決課題は全く異なるものであり,両者を組み合わせることを示唆する事情はない。 (ウ) 乙1発明では,気体噴射口から噴出されるガスは,圧力や流量を調節する手段がないことから,一定量で流しっぱなしの状態が予定されているのに対し,乙4発明はスプレー本体で気体の流量の調整を行うものであり,両者の技術思想には相違がある。また,乙1発明は,ガスだけを噴射して被化粧者に吹き付けることが予定されていることから,ガスと塗料の混合を前提とする乙4発明を適用することについては阻害要因があるというべきである。 (エ) 被告は,本件特許発明と被告各製品の相違点が均等の第3要件を充足するのであれば,被告各製品は当然に均等の第4要件を充足しないなどと主張するが,両要件は基準時を異にする。そして,第4要件の基準時である本件特許の原出願時においては,炭酸ガスの炭酸成分が皮膚下の毛細血管に作用する効能に着目し,これを美容機器に応用する発明は皆無であったのに対し,第3要件の基準時である被告各製品の製造時においては,本件特許発明により,炭酸ガスの効用に着目して,吹付材として化粧水と炭酸ガスを選択し,両者を混合して生成した炭酸混合化粧水を顔肌に吹き付けることが公知になっていたから,本件特許発明につ き,わずかに化粧水収納カップの位置が異なる他のスプレーと置換し,被告各製品を製造することは容易であったものである。 (被告の主張)(1) 被告各製品が均等の第2要件及び第3要件を充足することは争わな ずかに化粧水収納カップの位置が異なる他のスプレーと置換し,被告各製品を製造することは容易であったものである。 (被告の主張)(1) 被告各製品が均等の第2要件及び第3要件を充足することは争わない。 (2) 第1要件についてア化粧水と炭酸ガスの混合液を顔肌等に噴霧状に吹き付ける美顔器については多数の公知技術(乙1ないし3,6)が存在し,本件特許発明はパイオニア発明ではない。特に,乙1文献には,原告が本質的部分と主張する構成のいずれもが開示されているか,実質的に開示されており,特開2003-54662号公報(乙8。以下「乙8文献」という。)にも「炭酸ガスと化粧水とを混合して炭酸混合化粧水を生成し,顔肌に吹き付ける」技術が開示されている。したがって,原告が主張する「炭酸ガスと化粧水とを混合して炭酸混合化粧水を生成し,顔肌に吹き付ける美顔器」は,公知技術であり,本件特許発明の本質的部分とはいえない。 イ原告は,乙1発明と本件特許発明は解決課題が異なる,乙1発明は炭酸ガスを吹付材ではなく,吹付けの手段,媒体としているなどと,両者の技術思想が異なる旨主張する。しかし,乙1発明は従来の化粧道具を用いて「皮膚用の基礎化粧料」,「メイクアップ化粧料」を塗布する際の問題点を解決するものであり,本件特許発明の解決課題と異なるものではないし,炭酸ガスに係る主張も,乙1発明と本件特許発明は構成が同じである以上,作用効果も同じであるから,理由がない。 (3) 第4要件について被告各製品は,本件特許の原出願時に,当業者が乙1発明から容易に推考し得たものであり,均等の第4要件を充足しない。 ア被告各製品は,乙1発明と以下の点で相違し,その余の点で一致する。 (ア) 相違点1 エアノズルの出口よりも外側においてボトルからの化粧水と炭 であり,均等の第4要件を充足しない。 ア被告各製品は,乙1発明と以下の点で相違し,その余の点で一致する。 (ア) 相違点1 エアノズルの出口よりも外側においてボトルからの化粧水と炭酸ガスを混合して炭酸混合化粧水を霧状に噴出させるにあたり,被告各製品は,ボトルがエアノズルの外側下方に配置されているため,化粧水が「ボトルから吸い上げられ」る(構成c)のに対して,乙1発明は,化粧水容器が気体噴射口より上側に配置されており,液状化粧水が「化粧水容器18から吸い出され」るが,「吸い上げられる」ものではない点(イ) 相違点2炭酸ガスカートリッジとエアブラシ内の炭酸ガス供給路との接続について,被告各製品は,「エアホース」により接続されている(構成d)のに対して,乙1発明は,「エアホース」により接続されているか不明である点(ウ) 相違点3エアブラシに備えられた炭酸混合化粧水の調整について,被告各製品は「エア噴出用ダイヤル」でエアの噴出を調整する(構成e)のに対して,乙1発明は「調整軸9」で化粧料の噴射を調整する点イ相違点について(ア) 原告が,均等の第3要件の主張において,本件特許発明と被告各製品の相違点は化粧水カップの位置だけの違いであり,その違いは容易想到であると主張していることに照らせば,乙1発明の化粧水カップの位置は本件特許発明と同じ位置にあり,本件特許発明と乙1発明との間には,原告が主張する相違部分すら存在しない。したがって,本件特許発明と被告各製品の相違点が均等の第3要件を充足するのであれば,被告各製品は乙1発明から容易に推考されるものといえるから,均等の第4要件を充足しない。 (イ) 被告各製品のエアブラシの構成を開示した乙4文献が存在する。乙4文献の図1,段落【0012】,【0013】及び【 乙1発明から容易に推考されるものといえるから,均等の第4要件を充足しない。 (イ) 被告各製品のエアブラシの構成を開示した乙4文献が存在する。乙4文献の図1,段落【0012】,【0013】及び【0033】から 明らかなように,容器本体5が流体吹き出しノズル15の外側下方に配置され,塗料が吸い上げノズル8を介して「ボトル(容器本体5)から吸い上げられ」る構成(相違点1),ガスボンベと塗装スプレー装置1内の炭酸ガス供給路(流体通路20a,20b,流体噴出孔21)とが「エアホース(ホース4)」により接続される構成(相違点2),及び「エア噴出用ダイヤル」(流量調整ロッド16)でエアの流量調整を行う構成(相違点3)が開示されている。そして,乙4発明は塗装スプレー装置であるところ,乙4発明と乙1発明とは,吹き付ける対象が模型等であるか人肌であるかの違いしかなく,ガスをノズルから噴出して液体を噴霧状に塗布させる技術である点で技術分野が共通しており,乙1発明が塗料を噴霧して吹き付ける方法,装置を化粧水の吹き付けに適用することを開示していることも考慮すれば,乙4発明の構成を乙1発明に組み合わせる動機付けが存在する。したがって,乙4発明の構成を乙1発明に適用して被告各製品の構成とすることは設計事項にすぎず,当業者にとって容易に推考できたものである。このことは,被告各製品のエアブラシが,乙4発明の出願人である株式会社ジーエスアイクレオスが乙4発明をプラモデル等の塗装用に適用して開発したエアブラシをそのまま使用したものであることからも明らかである。 ウ動機付けについて(ア) 乙1文献には,「本発明者は,上記問題点を解決するため,化粧料を手作業によって塗布する代わりに,工業的に吹き付けることに気が付き,塗料を噴射して吹付けるのと同様な方 ウ動機付けについて(ア) 乙1文献には,「本発明者は,上記問題点を解決するため,化粧料を手作業によって塗布する代わりに,工業的に吹き付けることに気が付き,塗料を噴射して吹付けるのと同様な方法によって化粧料を噴射して吹付けることを考えついたのである。即ち,本発明は,高圧気体源に弁を介して接続した気体噴射口と,化粧料容器に弁を介して接続した化粧料噴射口とを近接して設置し,気体噴射口から気体を噴射することによって化粧料噴射口から化粧料を噴射して吹付けることを特徴とする化粧 料の吹付け方法である。」との記載があり,塗料のスプレー塗布装置を化粧料の吹付装置として使用することを開示している。また,公知文献(乙10)にも記載されているとおり,乙1発明のタイプと乙4発明のタイプは,塗装用のスプレーとして代表的なものであったから,乙1発明を化粧料の吹付装置に適用することの開示をもって,乙4発明のスプレーを化粧料の吹付装置に適用する動機付けがあることは明らかである。 (イ) 原告は,乙1発明において,ガスは一定量で流しっぱなしの状態が予定されている,ガスだけを噴射して被化粧者に吹き付けることが予定されているなどと主張するが,乙1発明のスプレー装置は,操作杆16の押込み具合により気体の流量調整が,後方への回動量により化粧料の噴出量調整ができるし,乙1発明は「化粧料の吹付装置」であり,気体だけの噴射は発明の特徴ではない。 エ原告主張相違点について争点(3)について主張するところと同様の議論があてはまる。 3 争点(3)(本件特許発明についての特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)について(被告の主張)本件特許発明は,乙1発明から容易に発明することができたものであり,同発明についての特許は進歩性欠如の無 ての特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)について(被告の主張)本件特許発明は,乙1発明から容易に発明することができたものであり,同発明についての特許は進歩性欠如の無効理由を有するから,原告は,特許法104条の3により,同発明につき本件特許権を行使することができない。 (1) 本件特許発明は,乙1発明と以下の点で相違し,その余の点で一致する。 ア相違点1本件特許発明は「化粧水が引き込まれる導管」「導管」を有し(構成要件B-1,D),また「且つ該導管の先端に設けられた噴出ノズルを有」し(構成要件B-2),「この導管内において化粧水と混合して炭酸混合化粧水を噴出ノズルから噴出させる」(構成要件C)のに対して,乙1発 明は,吹付器1に内蔵された炭酸ガスが通る気体通路10に化粧料容器18からの化粧料は引き込まれないため,「化粧水が引き込まれる導管」を有しない。また,乙1発明は,「導管」を有さず,気体噴射口11からは炭酸ガスのみが噴射されるため,「該導管の先端に設けられた噴出ノズルを有」していない。さらに,乙1発明は,気体噴射口11の出口よりも外側において液状化粧料と炭酸ガスが混合して炭酸混合化粧料を霧状に噴出させるものであるため,「この導管内において化粧水と混合して炭酸混合化粧水を噴出ノズルから噴出させる」ものでもない。 イ相違点2本件特許発明は「この炭酸ガス供給用ボンベと前記スプレー本体内の導管とを接続する炭酸ガス供給用パイプ」(構成要件D)を有するのに対して,乙1発明は,炭酸ガスボンベ19と吹付器1内の気体通路10との接続方法が不明である。 (2) 相違点1についてア相違点1は,一言で言えば,「管(通路)内で炭酸ガスと化粧水とを混合してノズルから吐出させる」構成であり,当業者に 付器1内の気体通路10との接続方法が不明である。 (2) 相違点1についてア相違点1は,一言で言えば,「管(通路)内で炭酸ガスと化粧水とを混合してノズルから吐出させる」構成であり,当業者にとって,単なる設計事項にすぎない。 イ実願昭62-164205号(実開平1-69649号)のマイクロフィルム(乙5。以下「乙5文献」といい,これに記載された発明を「乙5発明」という。)乙5文献には,エアの通路内で塗料と圧縮空気を混合する「内部混合形式」のスプレーガン(乙5文献の11頁15行目~12頁17行目,及び第4図参照。)が開示されている。乙5発明においては,エアの通路13aが塗料ノズル15c付近で塗料の通路13bと一体となり,エアが塗料の通路13bへ塗料11aを吸い上げて,エアと塗料が混合し,塗料ノズル15cを通過する塗料11aとエアの激しい混合噴流が塗料オリフィス 15aから吐出され,さらに水分供給手段12によって水分を付与された後,エアオリフィス15bから噴出するエアと衝突して噴霧化される。 乙5発明は,スプレーガン5に塗料11aが引き込まれるエアの通路13aを内蔵したものであり,「化粧水が引き込まれる導管」(構成要件B-1)を有した構成である。また,乙5発明は,塗料の通路13bが一体になるエアの通路13aの先端に設けられた塗料オリフィス15aを有しており,「且つ該導管の先端に設けられた噴出ノズルを有」(構成要件B-2)した構成である。さらに,乙5発明は,塗料の通路13bが一体となるエアの通路13aにおいて塗料11aとエアが混合し,混合噴流を塗料オリフィス15aから噴出するため,「この導管内において化粧水と混合して炭酸混合化粧水を噴出ノズルから噴出させる」(構成要件C)構成である。したがって,乙5文献には,相違 アが混合し,混合噴流を塗料オリフィス15aから噴出するため,「この導管内において化粧水と混合して炭酸混合化粧水を噴出ノズルから噴出させる」(構成要件C)構成である。したがって,乙5文献には,相違点1に係る本件特許発明の構成が全て開示されている。 そして,乙5発明と乙1発明は,吹き付ける対象が被塗装物であるか人肌であるかの違いはあるが,ガスをノズルから噴出して液体を噴霧上に塗布させる技術である点で技術分野が共通する。また,乙5発明は,塗料11aとエアを混合した混合噴流を塗料オリフィス15aから噴出させるスプレー塗装装置であるところ,乙1発明は塗料を噴霧して吹き付ける装置,方法を化粧料の吹付けに適用することを開示しているから,乙5発明の技術を乙1発明の吹付器1の構成に適用する動機付けが存在する。 さらに,乙5文献の第5図には,エアキャップの外側で塗料とエアが混合される外部混合形式のスプレーガンのヘッド21が示されており,この構成と乙1発明の吹付器1の構成とは,気体と液体とをノズルの外側で混合する外部混合形式という点において同じである。乙5文献に内部混合形式と外部混合形式の双方が例示されていることからも,いずれの形式を採用するかは設計事項にすぎず,相違点1に係る構成は当業者において容易 に想到し得たものであるといえる。 ウ実願平2-83536号(実開平4-41746号)のマイクロフィルム(乙6。以下「乙6文献」といい,これに記載された発明を「乙6発明」という。)乙6文献には,吸入室内で炭酸ガスと化粧料とを混合してノズルからスプレーする携帯用スプレー装置(乙6文献の第1図及び第3図参照。)が開示されている。乙6発明は,容器ボトル1とガスボンベ8を備え,容器ボトル1内に挿入された液体吸入パイプ4と,ガスボンベ8に接続され プレーする携帯用スプレー装置(乙6文献の第1図及び第3図参照。)が開示されている。乙6発明は,容器ボトル1とガスボンベ8を備え,容器ボトル1内に挿入された液体吸入パイプ4と,ガスボンベ8に接続された圧縮空気供給配管10とが吸入室5で合流している。また,吸入室5内にはスプレー配管6が挿通され,スプレー配管6の先端にはスプレーノズル7が取り付けられている。そして,圧縮空気供給配管10から吸入室5内に圧縮空気を導入することによって,容器ボトル1内の液体を液体吸入パイプ4から吸い上げてスプレーノズル7から噴射させることができる。さらに,スプレーする液体として化粧料が,使用する不燃性ガスとして炭酸ガスが開示されている。 乙6発明は,携帯用スプレー装置に化粧料が引き込まれる炭酸ガスの流路となる吸入室5を有しており,「化粧水が引き込まれる導管」(構成要件B-1)を有した構成である。また,乙6発明は,吸入室5内にはスプレー配管6が挿通され,その先端にはスプレーノズル7が取り付けられており,「且つ該導管の先端に設けられた噴出ノズルを有」(構成要件B-2)した構成である。さらに,乙6発明は,圧縮空気供給配管10が挿入され,液体吸入パイプ4が合流する吸入室5において化粧料を炭酸ガスと混合してスプレーノズル7からスプレーするため,「この導管内において化粧水と混合して炭酸混合化粧水を噴出ノズルから噴出させる」(構成要件C)構成である。したがって,乙6文献には,相違点1に係る本件特許発明の構成が全て開示されている。 そして,乙6発明は,炭酸ガスと化粧水を混合してスプレー(噴霧)する装置であるため,美顔器であるという点で乙1発明と同じであり,乙6文献に記載された技術を乙1発明の吹付器1の構成に適用する動機付けが存在することから,相違点1に係る構 を混合してスプレー(噴霧)する装置であるため,美顔器であるという点で乙1発明と同じであり,乙6文献に記載された技術を乙1発明の吹付器1の構成に適用する動機付けが存在することから,相違点1に係る構成は設計事項にすぎず,当業者が容易に想到し得たものであるといえる。 エ特開2004-298765の公開特許公報(乙7。以下,この公報を「乙7文献」といい,これに記載された発明を「乙7発明」という。)乙7文献では,気体の主流路13の気液混合部13cにおいて気体と液体を混合し,噴出口12cから吐出する気液混合装置10が開示されている。気液混合装置10は,アダプタ11内部の気体の主流路13に気液混合部13cが存在し,気液混合部13cにて気体に液体を衝突させて混合し,気液混合流体を噴出口12cから吐出(噴霧)させる構成である。 乙7発明は,気体が通ると共に気液混合部13cにて引き込まれた液体(塗料)が混合される主流路13を内部に有しているため,「化粧水が引き込まれる導管」(構成要件B-1)を有する構成である。また,乙7発明は,主流路13の先端に噴出口12cが設けられており,「且つ該導管の先端に設けられた噴出ノズルを有」(構成要件B-2)した構成である。 さらに,乙7発明は,主流路13の気液混合部13cで気体と液体(塗料)が混合されて気液混合流体として噴出口12cから吐出(噴霧)されるから,「この導管内において化粧水と混合して炭酸混合化粧水を噴出ノズルから噴出させる」(構成要件C)構成である。したがって,乙7文献には,相違点1に係る本件特許発明の構成が全て開示されている。 そして,乙7発明と乙1発明は,吹き付ける対象が被塗装物であるか人肌であるかの違いはあるが,ガスをノズルから噴出して液体を噴霧上に塗布させる技術である点で技術分野が共通する。 全て開示されている。 そして,乙7発明と乙1発明は,吹き付ける対象が被塗装物であるか人肌であるかの違いはあるが,ガスをノズルから噴出して液体を噴霧上に塗布させる技術である点で技術分野が共通する。また,乙7発明は,塗料の 塗布(噴霧)に用いられる塗装装置であるところ(【段落0001】),乙1発明は塗料を噴霧して吹き付ける装置,方法を化粧料の吹付けに適用することを開示しており,乙7発明に係る技術を乙1発明の吹付器の構成に適用する動機付けが存在するから,相違点1に係る構成は設計事項にすぎず,当業者が容易に想到し得たものといえる。 オ以上によれば,乙5発明,乙6発明及び乙7発明に基づいて,乙1発明の相違点1に係る構成を本件特許発明の構成とすることは,単なる設計事項にすぎず,当業者が容易に想到し得たものである。 なお,相違点1は,本件特許発明と被告各製品の構成との相違点に包含されているところ,原告が,均等の第3要件において,相違点1に係る構成は「化粧水カップの位置だけの違い」であり,その違いは置換容易(容易想到)であると主張していることからも,上記構成が本件特許の出願前から当業者にとって設計事項にすぎず,容易に想到し得たものといえる。 (3) 相違点2について相違点2は,一言でいえば「スプレーとボンベとをホースで接続した」構成であり,一見して設計事項であり,このことは均等の第4要件での議論からも明らかであるから,相違点2に係る構成は当業者が容易に想到し得たものといえる。 (4) 原告が主張する相違点についてア原告主張の相違点1(「炭酸混合化粧水」,「美顔器」)乙1文献では,化粧水に相当する「皮膚用の基礎化粧料」が開示されているし,乙1発明では,この「化粧水に相当する皮膚用の基礎化粧料」を炭酸ガスによって霧状に噴出 1(「炭酸混合化粧水」,「美顔器」)乙1文献では,化粧水に相当する「皮膚用の基礎化粧料」が開示されているし,乙1発明では,この「化粧水に相当する皮膚用の基礎化粧料」を炭酸ガスによって霧状に噴出するのであるから,噴出されるのは「炭酸混合化粧水」である。そして,乙1発明は,上記炭酸混合化粧水を人の顔(顔肌)に向けて噴射するものであるから,美顔器である。したがって,原告主張の点は相違点ではない。 イ原告主張の相違点2(「導管」)及び3(「噴出ノズル」)原告主張の相違点は,結局のところ,炭酸ガスと化粧水とを導管内で混合する(内部混合)か,噴射口の外側で混合する(外部混合)の違いでしかない。この点は,被告主張の相違点1で主張したとおりである。 ウ原告主張の相違点4(「噴出調整用摘子」)本件明細書には,「そのガス噴出量,噴出度は噴出調整用摘子16にて適度に調整する。」【0011】とのみ記載されており,炭酸ガスの噴出量と化粧水の噴出量を共に調整する旨の記載はない。また,「炭酸混合化粧水の噴出調整用摘子」との文言は,化粧水の噴出量を調整して炭酸混合化粧水を調整するものも含むから,化粧料の調整を行う乙1発明の「調整軸9」も「噴出調整用摘子」に該当する。さらに,乙1発明においても,操作杆16の押込量や後方への回転量を変化させることによって,開閉弁14や調整弁6の開度を変化させて炭酸ガスや化粧料(化粧水)の噴出量が調整できることは明らかであり,ガスの噴出量を噴出調整用摘子で調整するか,操作杆で行うかは,単なる設計事項であって,微差である。なお,本件特許発明が,原告が主張する炭酸混合化粧水の噴出調整用摘示の具備を要件とするのであれば,被告各製品は,化粧水の噴出量を調整していないから,そもそも構成要件に該当しないこととなる。したが 。なお,本件特許発明が,原告が主張する炭酸混合化粧水の噴出調整用摘示の具備を要件とするのであれば,被告各製品は,化粧水の噴出量を調整していないから,そもそも構成要件に該当しないこととなる。したがって,原告主張の点は相違点ではない。 エ原告主張の相違点5(「装備」)及び6(「滴下され」)乙1発明において,手に持って操作する吹付器1の上部に化粧料容器18が位置しており,吹付器1に化粧料容器18が装備されていること,及び同容器内の化粧料が滴下されることは明らかである。したがって,原告主張の点は相違点ではない。なお,かかる技術は周知技術であり(乙10ないし14),この点からも実質的な相違点とはいえない。 オ原告主張の相違点7(「炭酸ガス供給用パイプ」) 被告主張の相違点2で主張したとおりである。 (5) 原告の主張(組合せによる容易想到性の欠如)に対する反論ア乙1文献は,塗料のスプレー塗布装置を化粧料の吹付装置として使用することを開示している。また,乙1文献には,化粧料として「化粧水(基礎化粧料)」が,化粧水の吹付けに用いる高圧気体源として「炭酸ガス」が挙げられており,化粧水を炭酸ガスによって吹き付けると,必然的に「炭酸混合化粧水」となる。 イ乙1発明のスプレー装置は,操作杆16の押込み具合により気体の流量調整が,後方の回動量により化粧料の噴出量調整ができる。また,乙1発明は「化粧料の吹付装置」であり,気体だけの噴射は発明の特徴ではない。 (原告の主張)(1) 本件特許発明と乙1発明との相違点は,以下のとおりである。 ア相違点1本件特許発明は,化粧水と炭酸ガスを混合して炭酸混合化粧水を生成し,これを噴出ノズルから顔肌に吹き付ける美顔器であるのに対し(構成要件C,構成要件F),乙1発明は,化粧料噴射口 。 ア相違点1本件特許発明は,化粧水と炭酸ガスを混合して炭酸混合化粧水を生成し,これを噴出ノズルから顔肌に吹き付ける美顔器であるのに対し(構成要件C,構成要件F),乙1発明は,化粧料噴射口から化粧料を吹き付けることのみを主たる目的とした化粧料吹付装置である点イ相違点2本件特許発明のスプレー本体は,化粧水が引き込まれ,当該化粧水と炭酸ガスが混合される導管を内蔵しているのに対し(構成要件B-1),乙1発明の吹付器1は,化粧料が流れる化粧料通路3と気体が流れる気体通路10を備え,吹付器内においてそれぞれ独立した導管を有している点ウ相違点3本件特許発明のスプレー本体は,炭酸ガス及び炭酸混合化粧水が流れる導管の先端に設けられた噴出ノズルを有するのに対し(構成要件B-2),乙1発明は,化粧料が流れる化粧料通路3の先端に設けられた化粧料噴射 口4,気体が流れる気体通路10の先端に設けられた気体噴射口11を備え,吹付器においてそれぞれ独立した噴射口を有する点エ相違点4本件特許発明は,スプレー本体に備えられ,炭酸混合化粧水の噴出量を調整する噴出調整用摘子を具備するのに対し(構成要件E),乙1発明の調整軸9は,炭酸ガス及び炭酸混合化粧水ではなく,化粧料の噴出量のみを調整する点オ相違点5本件特許発明のスプレー本体は,化粧水収納カップを「装備」する構成であるのに対し(構成要件B-1),乙1発明の吹付器1は,吹付器1と化粧料容器18との接続方法及び位置関係が明らかでない点カ相違点6本件特許発明のスプレー本体は,化粧水収納カップから「滴下された」化粧水が引き込まれる導管を具備するのに対し(構成要件B-1),乙1発明において化粧料容器18と吹付器1の接続方法が不明であり,化粧料通路3は,化粧水収納カッ は,化粧水収納カップから「滴下された」化粧水が引き込まれる導管を具備するのに対し(構成要件B-1),乙1発明において化粧料容器18と吹付器1の接続方法が不明であり,化粧料通路3は,化粧水収納カップから「滴下された」化粧水が引き込まれるものではない点。 キ相違点7本件特許発明は「この炭酸ガス供給用ボンベと前記スプレー本体内の導管とを接続する炭酸ガス供給用パイプ」を有する(構成要件D)のに対して,乙1発明は,高圧気体源19と吹付器1内の気体通路10とをどのように接続するか不明である点(2) 乙5発明についてア相違点1について乙5発明は,水性塗料用スプレー塗装装置であり,炭酸ガス,化粧水及び炭酸ガス混合化粧水を吹き付けるものではなく,また,美顔器でもない から,乙5文献には相違点1の開示はない。 イ相違点2及び3について乙5発明では,スプレーガン5は,塗料11aとエアの混合噴流を噴出する塗料オリフィス15a,水分供給手段12によって水分を付与されたエアを噴出するエアオリフィス15bの複数の導管及び噴射口を有するから,乙5文献には相違点2及び3の開示はない。 ウ相違点4について乙5文献の実施例には,エアの噴出量を調整するエア調整ねじ7eが開示されているもの(第1図)があるが,エアの導管及び噴射口と塗料11aの導管及び噴射口は別体とされており,上記エア調整ねじは,専らエアの噴出量のみを調整するものであるから,乙5文献には,塗料の噴出量までもが調整されること,すなわち相違点4の開示はない。 エ相違点5及び6について乙5発明のスプレーガン5は,加圧塗料タンク1と塗料ホース1bで接続されており,加圧塗料タンクを「装備する」ものではなく,また,塗料11aは導管に「滴下され」るものでもないから,乙5文献 について乙5発明のスプレーガン5は,加圧塗料タンク1と塗料ホース1bで接続されており,加圧塗料タンクを「装備する」ものではなく,また,塗料11aは導管に「滴下され」るものでもないから,乙5文献には相違点5及び6の開示はない。 オ相違点7について乙5発明は,空気圧縮機2から,エアホース10a,10bを介し,エアトランスホーマと水分供給手段を経て圧縮空気が圧送される構成であり,炭酸ガス供給用ボンベとスプレー本体内の導管が炭酸ガス供給用パイプで接続される構成ではないから,乙5文献には相違点7の開示はない。 (3) 乙6発明についてア相違点1について乙6発明は,単にスプレー液(消臭除菌剤や殺虫剤といった薬剤等)を吹き付けることを目的とするものである。乙6文献中には,化粧料に言及 する部分もあるが,メイクアップ用の化粧料であるのか,化粧水の類であるのかの具体的な特定はない。また,吹付け手段として炭酸ガスの記載があるものの,複数ある不燃性ガスの一つとして挙げられているにすぎず,あくまで噴射媒体という位置付けであり,しかも「安全で環境汚染を招かない」という観点から例示されたものにすぎない。したがって,乙6文献では,炭酸ガスの効用に着目し,化粧料の中から化粧水を,不燃性ガスの中から炭酸ガスを選択し,これらを混合して炭酸混合化粧水を生成するという技術思想は,開示も,示唆もされていないから,相違点1の開示はない。 イ相違点2ないし7について乙6発明は,蓋部付小型ボトル容易,先端ノズル付きスプレー配管,小型ガスボンベ等を枠内にて保持する構成であり,「スプレー本体」に相当するような構成はない。したがって,乙6文献では,スプレー本体に備えられた化粧水収納カップ,導管及び噴出ノズルに関する相違点2ないし7は,いずれも開示 にて保持する構成であり,「スプレー本体」に相当するような構成はない。したがって,乙6文献では,スプレー本体に備えられた化粧水収納カップ,導管及び噴出ノズルに関する相違点2ないし7は,いずれも開示されていない。 (4) 乙7発明についてア相違点1について乙7発明は,工業用に用いられる気液混合装置であり,炭酸ガス,化粧水及び炭酸混合化粧水を吹き付けるものではなく,また,美顔器でもない。 したがって,乙7文献には相違点1の開示はない。 イ相違点2ないし7について乙7発明は,二流体のノズルのアダプタを組み合わせた気液混合装置であり,「スプレー本体」に相当する構成はない。したがって,乙7文献には相違点2ないし7の開示はない。 (5) 組合せによる想到容易性の欠如ア被告は,乙1発明に乙5発明,乙6発明及び乙7発明を適用する動機付 けがある旨主張しているが,被告がこれらの装置等と乙1発明の共通点としてあげる技術分野は,「ガスをノズルから噴出して液体を噴霧状に塗布させる技術」という抽象的なものにすぎない。乙1発明は,「役者やモデルのような化粧姿を見せることを職業とする人の化粧に用いるのに適した化粧料の吹付方法」であるのに対し,乙5発明は「圧縮空気の噴流で塗料を噴霧化して吹付けるスプレー塗装装置」,乙6発明は,消臭除菌剤や殺虫剤などのスプレー液の携帯用スプレー装置,乙7発明は「電気電子等の精密部品の微細洗浄,製鉄工程における鋳片の冷却,製品への塗料の塗布等に好適に用いられる二流体ノズルの流体供給部に設けられ」る気液混合装置であるから,技術分野が全く異なる上,具体的構成も異なるから,組合せの動機付けはない。そして,複数ある吹付材及び吹付手段の中から炭酸ガスと化粧水を選択し,これらを混合して炭酸混合化粧水を生成して,その るから,技術分野が全く異なる上,具体的構成も異なるから,組合せの動機付けはない。そして,複数ある吹付材及び吹付手段の中から炭酸ガスと化粧水を選択し,これらを混合して炭酸混合化粧水を生成して,その吹付けに最適な構成を目指すことを示唆する公知文献はなく,具体的な構成を全く異にする乙1発明と乙5発明,乙6発明及び乙7発明を組み合わせることを示唆する記載も存在しないから,本件特許発明に想到することは当業者にとって極めて困難であったと言わざるを得ない。 イ乙1発明の解決課題は,従来技術における,噴霧量の調整が困難であったこと,化粧料が短期間で消費されること,長時間一定の状態で噴霧することができないこと,大気を汚染すること,連続して吹き付けることができないことなどの問題であるのに対し,乙5発明の目的は「塗料かすが蓄積したり詰まることがなく,長時間連続して均一なスプレー塗装のできる水性塗料用スプレー塗装装置を提供すること」,乙6発明の目的は「用途に応じてスプレー液およびスプレーノズルを簡単に交換でき,経済的かつ便利な携帯用スプレー装置の提供」,乙7発明の目的は「水量を調節して減少しても,エアが液体供給路に逆流しない構成とすること」である。したがって,乙1発明と乙5発明,乙6発明及び乙7 発明の解決課題は全く異なるものであり,作用効果の共通性も存在しないから,組合せの動機付けとなる事情はない。 ウ乙1発明では,気体噴射口から噴出される高圧気体は,圧力や流量を調節する手段がないことから,一定量で流しっぱなしの状態が予定されており,乙5発明,乙6発明及び乙7発明とは,そもそも技術思想に相違がある。また,乙1発明は高圧気体だけを噴射して被化粧者に吹き付けることが予定されているから,乙1発明に,高圧気体と塗料を必ず混合する乙5発明,乙6 乙6発明及び乙7発明とは,そもそも技術思想に相違がある。また,乙1発明は高圧気体だけを噴射して被化粧者に吹き付けることが予定されているから,乙1発明に,高圧気体と塗料を必ず混合する乙5発明,乙6発明及び乙7発明を適用することについては阻害要因があるというべきである。 4 争点(4)(損害額)について(原告の主張)被告による被告各製品の販売数量は,月に800個を下ることはなく,その単価は安くとも1個当たり4万9800円である。また,被告各製品の限界利益率は,少なくとも30パーセントである。 したがって,原告が本件特許権を承継した平成22年6月11日から本訴訟を提起した平成26年5月4日までの47か月間に原告が受けた損害の額は,特許法102条2項により,少なくとも,800個×47か月×4万9800円×30パーセント=5億6174万4000円と算定される。 (被告の主張)否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)(被告各製品の構成)について証拠(甲4~6)によれば,被告各製品の構成は,以下のとおりであると認めることができる。 a 所定量の化粧水を収納するボトルと, b-1 該ボトルを装備すると共に,炭酸ガスが流れる炭酸ガス流通路を内蔵し,b-2 且つ該炭酸ガス流通路の先端に設けられたエアノズルを有するb-3 エアブラシと,c 更にエアノズルの出口よりも外側において前記ボトルから吸い上げられた化粧水と混合して炭酸混合化粧水を霧状に噴出させるための炭酸ガスをエアブラシに供給する炭酸ガスカートリッジと,d 炭酸ガスカートリッジと前記エアブラシ内の炭酸ガス流通路とを接続するエアホースと,e 而も前記エアブラシに備えられた炭酸ガスの噴出量を調整することにより炭酸混合化 カートリッジと,d 炭酸ガスカートリッジと前記エアブラシ内の炭酸ガス流通路とを接続するエアホースと,e 而も前記エアブラシに備えられた炭酸ガスの噴出量を調整することにより炭酸混合化粧水の噴出調整を行うエア調整用ダイヤルとで成したf ことを特徴とする美顔器。 2 争点(2)(被告各製品は本件特許発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するか)について(1) 事案に鑑み,均等の第4要件から判断する。 ア被告は,被告各製品は,乙1発明を中心とする本件特許の原出願日時点における公知技術に基づいて,容易に推考できたものであると主張する。 イ本件特許の原出願日(平成19年4月10日)前である平成元年4月27日に頒布された刊行物である乙1文献には,以下の発明(乙1発明)が開示されているものと認めることができる(乙1)。 a 所定量の皮膚用の基礎化粧料を収納する化粧料容器18と,b-1 該化粧料容器18を接続すると共に,前記化粧料容器18から皮膚用の基礎化粧料が流入する化粧料通路3と炭酸ガスが流れる気体通路10を内蔵し,各通路は独立しており,b-2 且つ各通路3,10の先端にそれぞれ設けられた化粧料噴射口4 及び気体噴射口11を有するb-3 吹付器1と,c 更に前記気体通路10に流入し,前記気体噴射口11から噴射することにより前記化粧料噴射口4から前記化粧料を吸い出すと共に噴霧させるための炭酸ガスを供給する炭酸ガスボンベ19と,d この炭酸ガスボンベ19と前記吹付器とを接続する手段と,e 而も前記吹付器に備えられた上記化粧料の噴出量を調整する調整軸9とで成したf 前記化粧料の吹付装置ウ被告各製品と乙1発明との対比(ア) 被告各製品と乙1発明を対比すると,両者 e 而も前記吹付器に備えられた上記化粧料の噴出量を調整する調整軸9とで成したf 前記化粧料の吹付装置ウ被告各製品と乙1発明との対比(ア) 被告各製品と乙1発明を対比すると,両者は,次の点で相違し,その余の点で一致すると認めることができる。 a 被告各製品のエアブラシは,炭酸ガスが流れる炭酸ガス流通路を内蔵しているのに対し,乙1発明の吹付器1は,化粧料が流れる化粧料通路3と気体が流れる気体通路10を備え,吹付器内においてそれぞれ独立した導管を有している点(以下「相違点1」という。)b 被告各製品のエアブラシは,炭酸ガス流通路の先端に設けられたエアノズルを有するのに対し,乙1発明は,皮膚用の基礎化粧料が流れる化粧料通路3の先端に設けられた化粧料噴射口4,炭酸ガスが流れる気体通路10の先端に設けられた気体噴射口11を有する点,及び吹付器においてそれぞれ独立した噴射口を有する点(以下「相違点2」という。)c 被告各製品は,スプレー本体に備えられ,炭酸混合化粧水の噴出量を調整するエア噴出用ダイヤルを具備するのに対し,乙1発明の調整軸9は,化粧料の噴出量を調整する点(以下「相違点3」という。) d 被告各製品のエアブラシは,ボトルを「装備」する構成であるのに対し,乙1発明の吹付器1は,吹付器1と化粧料容器18との接続方法及び位置関係が明らかでない点(以下「相違点4」という。)e 被告各製品は,ボトルがエアノズルの外側の下方に配置されているため,化粧水が「ボトルから吸い上げられ」るのに対して,乙1発明において化粧料容器18と吹付器1の接続方法が不明であり,化粧水が「ボトルから吸い上げられ」るものではない点(以下「相違点5」という。)f 被告各製品は,「炭酸ガスカートリッジと前記エアブラシ内の炭酸 化粧料容器18と吹付器1の接続方法が不明であり,化粧水が「ボトルから吸い上げられ」るものではない点(以下「相違点5」という。)f 被告各製品は,「炭酸ガスカートリッジと前記エアブラシ内の炭酸ガス流通路とを接続するエアホースと」を有するのに対して,乙1発明は,高圧気体源19と吹付器1内の気体通路10とをどのように接続するか不明である点(以下「相違点6」という。)(イ) 原告は,「被告各製品は,噴出ノズルからの炭酸ガス噴出によって,化粧水と炭酸ガスを混合して炭酸混合化粧水を生成し,これを顔肌に吹き付ける美顔器であるのに対し,乙1発明は,化粧料噴射口から化粧料を吹き付けることのみを主たる目的とした化粧料吹付装置である点」も被告各製品と乙1発明の相違点であると主張する。 しかし,証拠(乙1)によれば,乙1文献の「従来の技術」には,皮膚用の基礎化粧料やメイクアップ化粧料が,パフ,ブラシ,筆等の化粧道具を用いて塗布されており,噴霧して吹き付ける方法は行われていないことが,「発明が解決しようとする問題点」には,化粧料の塗布にパフ,ブラシ,筆等の化粧道具を用いた場合,皮膚を摩擦することによる刺激や,化粧料に雑菌が付着することなどの問題点があり,問題の解決のために,化粧料を噴霧して吹き付けることが考えられることが,それぞれ記載されており,また,「実施例」には,高圧気体源19として炭酸ガスボンベが例に挙げられていることが認められる。したがって,乙 1文献には,化粧料として皮膚用の基礎化粧料が,高圧気体として炭酸ガスが開示されており,皮膚用の基礎化粧料には化粧水が含まれると解するのが相当である。そして,炭酸ガスにより化粧水を噴霧すれば当然に炭酸ガスと化粧水が混合されるから,炭酸化粧水が顔肌に噴霧されることは自明であるというべきである 基礎化粧料には化粧水が含まれると解するのが相当である。そして,炭酸ガスにより化粧水を噴霧すれば当然に炭酸ガスと化粧水が混合されるから,炭酸化粧水が顔肌に噴霧されることは自明であるというべきである。そうすると,乙1文献には,炭酸ガスの効能に関する記載等が存在しないとしても,「化粧水と炭酸ガス混合して炭酸混合化粧水を生成し,これを顔肌に吹き付ける美顔器」という構成が開示されていると認めることができるから,原告主張の点は相違点ということはできない。 エ相違点の検討(ア) 乙4文献は,本件特許の原出願日(平成19年4月10日)前である平成15年3月25日に頒布されたものであるところ,乙4文献の特許請求の範囲,段落【0012】,【0023】ないし【0025】,及び図1によれば,以下の発明が開示されているものと認めることができる(乙4)。 a 所定量の塗料を収納する塗料カートリッジ2と,b-1 該カートリッジ2を装備すると共に,流体が流れる流体通路20a,20bを内蔵し,b-2 且つ該流体通路20a,20bの先端に設けられた流体噴出ノズル15を有するb-3 流体スプレー3と,c 更に流体噴出ノズル15出口外側付近において前記カートリッジ2から吸い上げられた塗料と混合して塗料を霧状に噴出させるガスボンベ等の流体供給源と,d ガスボンベ等の流体供給源と前記流体スプレー3内の流体通路20a,20bとを接続するホース4と, e 而も前記流体スプレー3に備えられた流体の噴出調整を行う調整ロッド16とで成したf 塗装スプレー装置。 (イ) 相違点1について相違点1は,エアブラシ(吹付器)に内蔵される流通路の構成についての違いであり,被告各製品では,エアブラシが噴射媒体である炭酸ガスの流通 f 塗装スプレー装置。 (イ) 相違点1について相違点1は,エアブラシ(吹付器)に内蔵される流通路の構成についての違いであり,被告各製品では,エアブラシが噴射媒体である炭酸ガスの流通路のみを内蔵するのに対し,乙1発明では,吹付器が炭酸ガスの流通路及び化粧水の流通路を独立して内蔵している。しかし,上記(ア)認定のとおり,乙4文献には,スプレーが噴射媒体である流体の流通路のみを内蔵する構成が開示されており,この構成は,流通路を通る噴射媒体が炭酸ガスであるか流体であるかの違いを除いては,相違点1に係る被告各製品の構成と同一であると認めることができる。 そうすると,乙1発明において,吹付器に内蔵される流通路の構成につき,乙4発明の構成を適用して,被告各製品の構成とすることは,当業者であれば,容易に推考し得たものというべきである。 (ウ) 相違点2について相違点2は,エアブラシ(吹付器)の有するノズル(噴射口)についての構成の違いであり,被告各製品では,エアブラシが噴射媒体である炭酸ガスを噴射するノズルのみを有するのに対し,乙1発明では,吹付器が炭酸ガス及び化粧水のそれぞれの噴射口を有する。しかし,上記(ア)認定のとおり,乙4文献には,スプレーが噴射媒体である流体のみを噴射するノズルを有する構成が開示されており,この構成は,噴射されるものが炭酸ガスであるか流体であるかの違いを除いては,相違点2に係る被告各製品の構成と同一であると認めることができる。 そうすると,乙1発明において,吹付器の噴出口の構成に,乙4発明の構成を適用して,被告各製品の構成とすることは,当業者であれば, 容易に推考し得たものというべきである。 (エ) 相違点3について相違点3は,エアブラシ(吹付器)の有する炭酸ガス又は化粧料の調整に係る 告各製品の構成とすることは,当業者であれば, 容易に推考し得たものというべきである。 (エ) 相違点3について相違点3は,エアブラシ(吹付器)の有する炭酸ガス又は化粧料の調整に係る構成についての違いであり,被告各製品では,エアブラシが噴射媒体である炭酸ガスの噴出量を調整することにより,噴射する目的物である炭酸混合化粧水の噴出量を調整することができるエア噴出用ダイヤルを有するのに対し,乙1発明では,吹付器が化粧料の噴出量を調整する調整軸を有する。しかし,上記(ア)認定のとおり,乙4文献には,噴射媒体である流体の噴出量の調整を行う調整ロッド16を有する構成が開示されており,結果として,噴射する目的物の噴出量を調整することができるから,上記構成は,噴射媒体及び噴射する目的物の違いを除いては,相違点3に係る被告各製品の構成と同一であると認めることができる。 そうすると,乙1発明において,噴射媒体である炭酸ガス及び噴射する目的物の噴出量を調整する構成につき,乙4発明の構成を適用して,被告各製品の構成とすることは,当業者であれば,容易に推考し得たものというべきである。 (オ) 相違点4について相違点4は,化粧水(化粧料)の入った容器とエアブラシ(吹付器)の接続方法の構成についての違いであり,被告各製品は化粧水の入ったボトルが,エアブラシに装備されているのに対し,乙1発明は,吹付器に対する化粧料容器の接続方法及び位置関係が不明である。しかし,上記(ア)認定のとおり,乙4文献では,塗料の入ったカートリッジがスプレーに装備されている構成が開示されており,この構成は,容器に入っているものが化粧水であるか塗料であるかの違いを除いて,被告各製品の構成と同一であると認めることができる。 そうすると,乙1発明において,化粧 成が開示されており,この構成は,容器に入っているものが化粧水であるか塗料であるかの違いを除いて,被告各製品の構成と同一であると認めることができる。 そうすると,乙1発明において,化粧料容器の接続方法の構成につき,乙4発明の構成を適用して,被告各製品の構成とすることは,当業者であれば,容易に推考し得たものというべきである。 (カ) 相違点5について相違点5は,吹き付けられる化粧水(化粧料)の供給方法の違いであり,被告各製品では化粧水はボトル内部から吸い上げられるのに対し,乙1発明では化粧料容器の接続方法が不明であることから,化粧料の供給方法も明確ではない。しかし,上記(ア)認定のとおり,乙4文献では,塗料がカートリッジから吸い上げられる構成が開示されており,この構成は,供給されるものが化粧水であるか塗料であるかの違いを除いて,被告各製品の構成と同一であると認めることができる。 そうすると,乙1発明において,化粧料の供給方法の構成につき,乙4発明の構成を適用して,被告各製品の構成とすることは,当業者であれば,容易に推考し得たものというべきである。 (キ) 相違点6について相違点6は,炭酸ガスカートリッジ(高圧気体源)と炭酸ガス流通路(気体通路)の接続方法についての違いであり,被告各製品では,炭酸ガスカートリッジと炭酸ガス流通路がエアホースで接続されるのに対し,乙1発明では,高圧気体源と気体通路の接続方法が不明である。しかし,上記(ア)認定のとおり,乙4文献では,流体供給源と流体通路がホースで接続される構成が開示されており,この構成は,噴射媒体となるものが炭酸ガスであるか流体であるかの違いを除いては,被告各製品の構成と同一であると認めることができる。 そうすると,乙1発明において,高圧気体源と気体通路の接続方法に ,この構成は,噴射媒体となるものが炭酸ガスであるか流体であるかの違いを除いては,被告各製品の構成と同一であると認めることができる。 そうすると,乙1発明において,高圧気体源と気体通路の接続方法につき,乙4発明の構成を適用して,被告各製品の構成とすることは,当業者であれば,容易に推考し得たものというべきである。 (ク) 動機付けについて原告は,乙1発明は,役者やモデルのような舞台に上がる者を対象としたメイクアップの技術であるのに対し,乙4発明は,模型等を対象とした塗装技術であって,技術分野が全く異なること,また,乙1発明と乙4発明の解決課題が異なることから,乙1発明に乙4発明を適用する動機付けがないと主張する。しかし,証拠(乙1)によれば,乙1文献の「問題点を解決するための手段」には,「本発明者は,上記の問題点を解決するために,化粧料を,手作業によって塗布する代りに,工業的に吹き付けることに気が付き,塗料を噴霧して吹き付けるのと同様な方法によって化粧料を噴霧して吹き付けることを考え付いたのである。」との記載があり,この記載はまさに,塗料を噴霧して吹き付ける塗装技術を,化粧料を吹き付ける技術に応用することが可能であることを示唆するものであると認めることができる。したがって,上記記載に照らせば,化粧料の吹付けに関する乙1発明に塗装技術である乙4発明を適用する動機付けがあるというべきであり,これに反する上記原告の主張は採用することができない。 その他,原告は,乙1発明に乙4発明を適用することに対する阻害要因として,①乙1発明は,放出される高圧気体が常に一定であるのに対し,乙4発明は,スプレー本体で気体の流量の調整を行う,②乙1発明は,気体のみの噴出を予定しているのに対し,乙4発明は,ガスと塗料の混合を前提とするなどと ,放出される高圧気体が常に一定であるのに対し,乙4発明は,スプレー本体で気体の流量の調整を行う,②乙1発明は,気体のみの噴出を予定しているのに対し,乙4発明は,ガスと塗料の混合を前提とするなどと主張するが,いずれも上記認定を左右するものであるということはできない。 オしたがって,相違点1ないし6に関する被告各製品の構成はいずれも,本件特許の原出願時点で,乙1発明に乙4発明を適用することにより,当業者が容易に推考し得たものというべきであるから,均等のその余の要件について判断するまでもなく,被告各製品が本件特許発明と均等な ものとしてその技術的範囲に属すると認めることはできない。 3 小括よって,被告各製品は本件特許発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するものとはいえない。 第5 結論以上によれば,その余の点を検討するまでもなく,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 嶋末和秀 裁判官 西村康夫 裁判官 本井修平 別紙被告製品目録 1 製品名を「炭酸ミストケア Plosion」,品番を「CMC-L1413」とする美顔器 2 製品名を「炭酸ミストケア Plosion」,品番を「CMC-L1413-W」とする美顔器 -W」とする美顔器
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