主文 被告人を懲役14年に処する。 未決勾留日数中40日をその刑に算入する。 押収してあるパラトルーパーナイフ1本(平成21年押第16号の1)を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1平成21年5月28日午前4時ころ,大分県宇佐市所在のA方において,かねてから肉体関係のあったBの横でC(当時24歳)が下半身裸の状態で寝ているのを目の当たりにして,嫉妬心などから激高し,殺意をもって,同人の首及び背中を持っていた両刃のナイフ(正式名称パラトルーパーナイフ,刃体の長さ約13.7センチメートル,平成21年押第16号の1)で数回突き刺し,よって,そのころ,同所において,同人を右肺及び肝刺創による失血により死亡させて殺害し,第2業務その他正当な理由による場合でないのに,前記日時場所において,前記ナイフ1本を携帯した。 (証拠の標目)省略(法令の適用)省略(量刑の理由)まず,何より,被害者は当時24歳であり,若者の命と将来を奪った犯行の結果は重大である。ご遺族の受けた衝撃,悲嘆は察するに余りあり,処罰感情が厳しいのも当然のこととして理解できる。 被告人は,当公判廷において,A方の電気が消えたのを見て殺意を生じたと供述したり,凶器のナイフを持ち出した時点では脅すつもりだったと述べるなどしている。そうした被告人の供述態度からは,被告人が質問者の誘導に乗りやすい様子が うかがわれる。このような点に,凶器のナイフが携帯しやすい形状であることや,居間に入った時点では凶器をポケットの中に入れていたことを考慮すると,自宅にナイフを取りに行った段階で殺意を抱いていたのか,抱いていたとしてどの程度強固なものであったのか,さらには危険な凶器をあえて選択して携帯したのかについては疑問が残る。 しかしながら,被害者を目の当たりにしてから に行った段階で殺意を抱いていたのか,抱いていたとしてどの程度強固なものであったのか,さらには危険な凶器をあえて選択して携帯したのかについては疑問が残る。 しかしながら,被害者を目の当たりにしてからは,強固な殺意のもとに,殺傷能力の高い凶器を使用し,寝ていて,被告人に気付いて慌てて起き上がろうとした無防備な被害者の首を思い切り突き刺し,しがみついてきた被害者の背中を手加減せず更に3回突き刺して致命傷を与えたのであるから,犯行の態様は悪質というべきである。 そして,被告人は前科6犯を有している。殊に前刑の犯行は交際相手の女性に鎌を示して車内に監禁するというもので,本件と似た面があり,その執行猶予中の犯行であることを考慮すると,被告人には法を守ろうとする意識が欠けているといわざるを得ない。 他方,被告人は,かねてから賠償金などといった名目で被害者から金銭の支払いを強要されており,平成21年3月ころからは,被害者と一緒に過ごすことを余儀なくされ,飲食費などもろもろの支払いを負担させられ,その間,思うように女性と会えず,子供を引き合いに出されて逃げることもかなわなかったことから,絶望して自殺を考えたと述べている。その供述には不明確な点があり,被害者に支払った金銭の額や自殺を試みたことなど,すべてを信用することはできないが,虚偽であると断じることもできない。そうすると,本件犯行に至る経過には被害者にも一定の非があったことを否定できない。 被告人が被害者の殺害を決意した直接的なきっかけは,被害者が女性の横で下半身裸の状態で寝ていたのを目の当たりにして,嫉妬心などから激高したことによるものであるが,被告人が夫のいるその女性と借金の返済代わりに肉体関係を結んでいたことを考慮すると,そのような状況を見たからといって被害者を殺害するのは 理不尽であり,被 などから激高したことによるものであるが,被告人が夫のいるその女性と借金の返済代わりに肉体関係を結んでいたことを考慮すると,そのような状況を見たからといって被害者を殺害するのは 理不尽であり,被害者に落ち度があったとまではいえない。しかしながら,被告人は前述したような経過の中で本件殺害に及んでおり,被害者に一定の非がなかったら殺害にまで及んだかどうかについて疑問がないとはいえないので,動機において酌むべき点がないとはいえない。 また,被告人は,被害者の背中を刺すなどした後,同人がヒーターに腰をかけるようにして,もうやめてくれというように右手の掌を見せる仕草をしたのを見て,それ以上刺すのをやめており,この点からは,その後,前記の女性が119番通報をしようとした際に電話線を切断したことなどを考慮しても,被告人の人間性の一片を感じ取ることができる。 そして,本件は突発的な犯行で,計画性はない。 被告人は当公判廷において,被害者に対して申し訳ないと述べるが,謝罪や被害弁償はなく,社会的に十分とは評価しがたい。しかしながら,被告人が気持ちを外に出して表現することが苦手であったり,謝罪の方法を知らないということも考えられ,反省が全くないとも考えがたい。 そこで,これらの諸事情を総合考慮の上,被告人に対しては主文の刑を科すこととした。 (求刑懲役16年及びパラトルーパーナイフ1本の没収)平成21年10月16日大分地方裁判所刑事部裁判長裁判官宮本孝文裁判官西﨑健児 裁判官嶋田真紀
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