主文 1 原告117番を除く原告らの主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。 2 原告117番の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由(本判決の末尾に別紙として目次を記載した。)第1章請求の趣旨第1 主位的請求(原告117番を除く原告ら)原告117番を除く各原告と被告との間で,原告117番を除く各原告が,特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法に基づき,独立行政法人医薬品医療機器総合機構に対し,別紙「原告ら請求金額・症状等目録」記載の原告117番を除く各原告に対応する各金員を請求する権利を有する地位にあることを確認する。 (原告117番)被告は,原告117番に対し,別紙「原告ら請求金額・症状等目録」の「請求金額」欄記載の原告117番に対応する金員を支払え。 第2 予備的請求(原告117番を除く原告ら)被告は,原告117番を除く各原告に対し,別紙「原告ら請求金額・症状等目録」の「請求金額」欄記載の各原告に対応する金員を支払え。 (原告117番)原告117番と被告との間で,原告117番が,特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法に基づき,独立行政法人医薬品医療機器総合機構に対し,別紙「原告請求金額・症状等目録」記載の原告117番に対応する金員を請求する権利を有する地位にあることを確認する。 第2章事案の概要本件は,原告らが,C型肝炎感染被害者を救済するた ,別紙「原告請求金額・症状等目録」記載の原告117番に対応する金員を請求する権利を有する地位にあることを確認する。 第2章事案の概要本件は,原告らが,C型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法(以下「特措法」という。)2条に定められている血液製剤である特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与によって自ら又は自らの被相続人がC型肝炎ウイルスに感染したとして,被告に対し,原告117番を除く各原告については,主位的に,特措法3条に基づき,原告117番を除く各原告と被告との間で,独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「機構」という。)に対し,給付金の支給を請求する権利を有する地位にあることの確認を求め,予備的に,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償を求め,原告117番については,主位的に,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償を求め,予備的に,特措法3条に基づき,原告117番と被告との間で,機構に対し,給付金の支給を請求する権利を有する地位にあることの確認を求める事案である。 第1 前提事実以下の事実は,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認めることができる。 1 当事者等(1) 原告ら原告らは,いずれも,特措法11条に定める製造業者等(後記5(2))であり,かつて存在していた会社であるミドリ十字株式会社(以下「ミドリ十字」という。)が製造・販売した特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤を投与されたことにより,C型肝炎ウイルスに感染した者又はその相続人であると主張する者である。 (2) 被告被告は,公衆衛生の向上及び増進を図るため,厚生労働大臣(平成13年1月6日より前は厚生大臣。以下,時期のいかんを問わず「厚生労 はその相続人であると主張する者である。 (2) 被告被告は,公衆衛生の向上及び増進を図るため,厚生労働大臣(平成13年1月6日より前は厚生大臣。以下,時期のいかんを問わず「厚生労働大臣」という。)が分担管理する行政事務を司る厚生労働省(平成13年1月6日より前は厚生省。以下,時期のいかんを問わず「厚生労働省」という。)を置き,これにより薬務行政を行っている。 被告は,特措法4条により,特定C型肝炎ウイルス感染者(後記5(2))が機構に対して給付金を請求するに当たり,機構に提出すべき,当該請求をする者又はその被相続人が特定C型肝炎ウイルス感染者であること及びその者が特措法6条1~3号のいずれかに該当する者であることを証する確定判決又は和解,調停その他確定判決と同一の効力を有するものにおいて当該訴え等の相手方に含まれていなければならないものと指定されている。 (3) 補助参加人補助参加人は,昭和8年12月13日に設立された医薬品事業を行う会社であり,合併ないし会社分割等によりミドリ十字の債 務を承継している。 補助参加人は,特措法16条及び17条により,厚生労働大臣があらかじめ定めた基準に基づき,機構からの求めにより,機構に対して拠出金を納付すべき立場にある。 2 C型肝炎の概要(1) 肝炎及び肝炎ウイルス肝炎とは,肝臓に,刺激や感染に対する生体の防御反応である炎症が生じている状態を指す。肝炎は,ウイルス,アルコール,肥満など様々な原因により生じ得るが,日本においては,多くがウイルスに起因するといわれている。 肝炎ウイルスは,主として肝細胞で増殖し,その増殖が引き金となって肝機能障害を引き起こすウイルスである。肝炎ウイルス感染により惹起される肝臓の炎症をウイ 多くがウイルスに起因するといわれている。 肝炎ウイルスは,主として肝細胞で増殖し,その増殖が引き金となって肝機能障害を引き起こすウイルスである。肝炎ウイルス感染により惹起される肝臓の炎症をウイルス性肝炎といい,確認されている起因ウイルス別にA,B,C,D,E型肝炎に分類され,A,E型肝炎は経口感染し,B,C,D型肝炎は血液を介して感染(経皮感染)する。C型肝炎ウイルスは,後記(2)のとおり,昭和63年に発見された。 (甲ア5,乙タ1,2)(2) C型肝炎ウイルス血液を介して感染する肝炎は,かつて血清肝炎と呼ばれていた。その後,B型肝炎ウイルス及びA型肝炎ウイルスが発見され,それぞれの検査方法が確立したことに伴い,A型肝炎及びB型肝炎以外の肝炎は,非A非B型肝炎と呼ばれるようになった。 昭和63年,米国のChiron(カイロン)社により,肝炎を発症させたチンパンジーの血漿中から,非A非B型肝炎ウイルス遺伝子の一部が分離・同定され,C型肝炎ウイルスと命名され,平成 元年にその検査方法が確立し,現在では,過去に非A非B型肝炎と呼ばれていたものの約80%以上がC型肝炎であったことが明らかになっている。 C型肝炎ウイルスは,遺伝子の塩基配列が,変異しやすい性質を持っているために多様性があり,その相違によって,1から6までの遺伝子型(genotype(ジェノタイプ))に,さらに,数十種類のそれぞれの亜型に分類されている。遺伝子型1は,1a,1b,1c,1d,遺伝子型2は2a,2b,2cなどの亜型がある。日本では1b,2a,2bの遺伝子型が主であり,1bの遺伝子型が約70%,2aの遺伝子型が約20%,2bの遺伝子型が10%以下であり,C型肝炎ウイルス流行地では多少の偏りがあるものの,日本全体でほぼ均一の亜型分布を示して の遺伝子型が主であり,1bの遺伝子型が約70%,2aの遺伝子型が約20%,2bの遺伝子型が10%以下であり,C型肝炎ウイルス流行地では多少の偏りがあるものの,日本全体でほぼ均一の亜型分布を示している。日本における1aの遺伝子型は,ほとんど大部分が,米国から輸入された血液製剤による感染であると考えられ,血液製剤からの感染例にのみみられる。 (甲タ2,乙タ10,20) 3 C型肝炎ウイルスの感染経路(1) 感染経路の種類C型肝炎ウイルスの通常の感染源は,C型肝炎ウイルスに感染している人間の血液である。血液中のC型肝炎ウイルスが,何らかの経路で被汚染者の血液中に入ることにより感染に至る。 血液を介しての感染経路は,医療行為を介する感染とそれ以外に大別される。 医療行為を介する感染経路としては,輸血,血液製剤の使用・投与,C型肝炎ウイルス感染者との注射針・注射器の共用,傷のある手によるC型肝炎ウイルス感染者の血液との接触,針刺し事故, 血液透析,鍼治療,臓器移植などがある。 医療行為以外の感染経路としては,覚せい剤や麻薬などの回し打ち,C型肝炎ウイルス感染者が使用した器具を適切な消毒などを行わないまま入れ墨やピアスの穴開け等をした場合,母子感染,家庭内感染,性行為時の感染などがある。ただし,C型肝炎ウイルスは感染力が比較的弱いことから,母子感染,家庭内感染,性行為時の感染割合は低い。また,具体的な感染原因が不明である場合も一定数認められ,文献や調査報告者によって異なるものの,概ね20~30%の割合を占める。 (乙タ2,4ないし7,10,13,25)(2) 感染経路の一つとしての特定フィブリノゲン製剤本件において,投与の事実の有無が争点の一つとなっている特定フィブリノゲン製剤は,血液製剤の一つであ (乙タ2,4ないし7,10,13,25)(2) 感染経路の一つとしての特定フィブリノゲン製剤本件において,投与の事実の有無が争点の一つとなっている特定フィブリノゲン製剤は,血液製剤の一つであるフィブリノゲン製剤(後記認定事実1(5))のうち,特措法が,製造ないし輸入承認された年月日などにより対象として特定したものをいうが,フィブリノゲン製剤は,ミドリ十字が,昭和37年10月17日に,その製造所の所在地である大阪府の知事を経由して,厚生労働大臣に対し,臨床実験成績等の添付資料とともに承認申請書を提出し,昭和39年6月9日に製造承認がされた血液製剤である。昭和39年から昭和61年までは非加熱製剤のみが製造され,昭和62年から平成4年までは加熱製剤のみが,平成5年及び平成6年には,加熱・献血製剤(献血のみを原料血漿とするもの)がそれぞれ製造された(前記各製剤はウイルス不活化処理の方法によって区別されている。ウイルス不活化処理の方法については,後記認定事実1(8)イにおいて詳述する。)。 特定フィブリノゲン製剤の製造本数は,以下のとおりである。 なお,薬害肝炎の検証及び再発の防止に関する研究班の作成に係る中間報告書(甲ア17。以下,単に「中間報告書」という。)とは一部の数値が異なるが,以下の記載は,厚生労働省薬務局作成に係る文書(乙ア97,98)に拠っている。 昭和39年 1323本昭和40年 1万2967本昭和41年 1万4269本昭和42年 2万5376本昭和43年 2万0208本昭和44年 3万0864本昭和45年 2万5912本昭和46年 3万6373本昭和47年 5万1883本昭和48年 4万9633本昭和49年 5万7450本昭和50年 6万6672本昭和51年 本昭和45年 2万5912本昭和46年 3万6373本昭和47年 5万1883本昭和48年 4万9633本昭和49年 5万7450本昭和50年 6万6672本昭和51年 5万5635本昭和52年 9万2901本昭和53年 4万1332本昭和54年 5万0772本昭和55年 4万9255本昭和56年 6万4773本昭和57年 5万7271本昭和58年 7万9118本昭和59年 9万0299本昭和60年 6万3166本 昭和61年 8万4464本昭和62年 8万0975本(同年には,非加熱製剤と加熱製剤が製造されていた。)昭和63年 1万3627本平成元年 4554本平成2年 0本平成3年 2066本平成4年 1033本平成5年 3851本(同年には,加熱製剤と加熱・献血製剤が製造されていた。)平成6年 824本 4 特措法制定の経緯C型肝炎ウイルス感染者の血液が原料に含まれるフィブリノゲン製剤又は血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与によりC型肝炎ウイルスに感染したと主張する者らが原告となって,国に対して国家賠償法1条1号に基づき,製薬企業に対して民法709条に基づき,それぞれ損害賠償を求めた訴訟について,平成18年6月から平成19年9月にかけて,大阪地方裁判所,福岡地方裁判所,東京地方裁判所,名古屋地方裁判所及び仙台地方裁判所で順次判決が言い渡された。 各判決では,国の義務違反の有無や国及び製薬企業の行為が違法と認定された時期等の判断が分かれ,いずれも控訴された。 そのような状況の下において,先行して和解協議を進めていた大阪高等裁判所が,平成19年12月13日に感染時期を限定した和解骨子案を提示したところ, された時期等の判断が分かれ,いずれも控訴された。 そのような状況の下において,先行して和解協議を進めていた大阪高等裁判所が,平成19年12月13日に感染時期を限定した和解骨子案を提示したところ,同裁判所に係属中のC型肝炎訴訟の一審原告らは,これを拒否し,更に政府が同月20日に提示した追加の和解案も拒否する旨を表明した。 その後,当時の●内閣総理大臣は,平成19年12月23日,自由民主党総裁として,C型肝炎訴訟の一審原告らが強く求める全員一律の救済を実現するためには,司法上も行政上も限界があると判断し,議員立法による速やかな対応を指示した。これに基づき,当時の与党議員ら(自由民主党及び公明党)によるプロジェクトチーム(「与党肝炎対策に関するプロジェクトチーム」)が議員立法の策定作業に着手し,同月26日から前記原告らと協議して,同月28日には法律案の骨子及び基本合意書骨子について合意し,平成20年1月4日に,前記原告らの了承を得た「特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法案」がとりまとめられて,国会に提出された。 同法案は,同月7日,衆議院に提出されたが,同月8日,衆議院厚生労働委員会において質疑が行われた後,撤回され,これを一部修正した内容で衆議院厚生労働委員長提案の法律案として提出することが決定され,同日,衆議院本会議において全会一致で可決され,参議院に送付された。参議院では,同月9日,厚生労働委員会に付託され,同月10日,同委員会において,審議が行われた後,全会一致で原案のとおり可決すべきものとされ,同月11日,本会議において可決された。 5 特措法(1) 特措法の制定ア特措法は,平成20年1月11日,前記4のとおり両院と 議が行われた後,全会一致で原案のとおり可決すべきものとされ,同月11日,本会議において可決された。 5 特措法(1) 特措法の制定ア特措法は,平成20年1月11日,前記4のとおり両院ともに全会一致により成立し,同月16日に公布,施行された。 特措法は,C型肝炎ウイルスが混入した特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与によるC型肝炎ウイ ルスの感染被害者に対し,その投与の時期を問わず一律に救済するための立法措置を講じるものである。 イ特措法の主な内容は,①政府は,C型肝炎ウイルス感染被害者に甚大な被害が生じ,その被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め,心からおわびすべきことを明記するとともに,フィブリノゲン製剤又は血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与の時期を問わず早急に一律救済の要請に応えるため,特措法を制定した旨の前文を設けること,②獲得性(後天性)の傷病に係る特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与によってC型肝炎ウイルスに感染した者等に対して,機構が,感染者の病態に応じた給付金を支給するものとすること,③政府は,機構に対し,給付金支給に要する資金を交付し,フィブリノゲン製剤又は血液凝固第Ⅸ因子製剤の製造業者は,あらかじめ厚生労働大臣との間で合意した負担割合の基準に基づき,拠出金を納付するものとすること,④政府は,医療機関による当該製剤の投与を受けた者の確認を促進し,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与を受けた者に肝炎ウイルス検査を受けることを勧奨するよう努めるとともに,C型肝炎ウイルスの感染被害者が安心して暮らせるよう,肝炎医療の提供体制の整備,肝炎医療に係る研究の推進等必要な措置を講ずるよう努めるものとすることである。 (2) 特措法に よう努めるとともに,C型肝炎ウイルスの感染被害者が安心して暮らせるよう,肝炎医療の提供体制の整備,肝炎医療に係る研究の推進等必要な措置を講ずるよう努めるものとすることである。 (2) 特措法に基づく給付金の支給手続ア概要(乙ア7~19)特措法3条は,機構は,特定C型肝炎ウイルス感染者(特定C型肝炎ウイルス感染者がこの法律の施行前に死亡してい る場合にあっては,その相続人)又はその相続人に対し,その者の請求に基づき,医療,健康管理等に係る経済的負担を含む健康被害の救済を図るためのものとして給付金を支給する旨規定している。 特措法は,給付金支給の対象である「特定C型肝炎ウイルス感染者」を「特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与(獲得性の傷病に係る投与に限る。)を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染した者及びその者の胎内又は産道においてC型肝炎ウイルスに感染した者」と定義し(特措法2条3項),特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤をC型肝炎訴訟(前記4の五つの地方裁判所での訴訟)の対象となった製剤に限定して定義している(特措法2条1項,2項)。 特措法2条1項で定義される特定フィブリノゲン製剤及び同条2項で定義される特定血液凝固第Ⅸ因子製剤は,具体的には,以下の製剤を指す。 (非加熱処理を行ったフィブリノゲン製剤(特措法2条1項1号))① 昭和39年6月9日製造承認フィブリノーゲン-BBank② 昭和39年10月24日製造承認フィブリノーゲン-ミドリ③ 昭和51年4月30日製造承認フィブリノゲン-ミドリ(加熱処理を行ったフィブリノゲン製剤(特措法2条1項2号)) ④ 昭和62年4月30日製造承認フィブリノゲンHT 昭和51年4月30日製造承認フィブリノゲン-ミドリ(加熱処理を行ったフィブリノゲン製剤(特措法2条1項2号)) ④ 昭和62年4月30日製造承認フィブリノゲンHT-ミドリ (なお,④フィブリノゲンHT-ミドリについては,ウイルスを不活化するために加熱処理のみが行われたものに限られる(同号括弧書き)。したがって,平成6年8月12日,ウイルス不活化処理として,乾燥加熱処理に加えてSD処理(ウイルスの脂質膜(エンベロープ)を有機溶媒・界面活性剤で破壊して不活化させる方法)を施す製造方法の一部変更承認がされたが,この方法により製造された製剤は,特措法の対象には含まれない。)(非加熱処理を行った血液凝固第Ⅸ因子製剤(特措法2条2項1号)⑤ 昭和47年4月22日製造承認PPSB-ニチヤク(日本製薬株式会社(当時)が製造)⑥ 昭和47年4月22日輸入販売承認コーナイン⑦ 昭和51年12月27日製造承認クリスマシン(加熱処理を行った血液凝固第Ⅸ因子製剤(特措法2条2項2号)⑧ 昭和60年12月17日輸入販売承認クリスマシン-HT(なお,加熱製剤は,ウイルスを不活化するために加熱処理のみが行われたものに限られる(同号括弧書き)。したがって,クリスマシン-HTの承認後の平成5年3月には, ウイルス不活化処理として,SD処理を施した「クリスマシン-M」が製造承認されたが,この方法により製造された製剤は,特措法の対象には含まれない。)給付金の支給を受けるためには,特定C型肝炎ウイルス感染者が特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与の事実,製剤投与と感染との間の因果関係及びC型肝炎の症状について,裁判手続の中で確認を受け,給付金の請 には,特定C型肝炎ウイルス感染者が特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与の事実,製剤投与と感染との間の因果関係及びC型肝炎の症状について,裁判手続の中で確認を受け,給付金の請求をする者又はその被相続人がC型肝炎ウイルス感染者であること及びその者が①慢性C型肝炎が進行して,肝硬変若しくは肝がんにり患し,又は死亡した者(特措法6条1号),②慢性C型肝炎にり患した者(特措法6条2号)又は③①・②に掲げる者以外の者(特措法6条3号)に該当する者であることを証する確定判決又は和解,調停その他確定判決と同一の効力を有するもの(当該訴え等の相手方に国が含まれているものに限る。)の正本又は謄本を機構に提出しなければならない(特措法4条)。 また,給付金の支給の請求は,原則として,特措法の施行の日から起算して5年を経過する日までに行わなければならない(特措法5条1号)。給付金の額は,前記①に該当する者は4000万円,前記②に該当する者は2000万円,前記③に該当する者は1200万円である(特措法6条)。 機構は,給付金の支給を受けた特定C型肝炎ウイルス感染者であって,身体的状況が悪化したため,当該給付金の支給を受けた日から起算して10年以内に新たに前記①又は②に該当するに至ったものに対し,その者の請求に基づき,医療,健康管理等に係る経済的負担を含む健康被害の救済を図 るためのものとして追加給付金を支給するとされているが(特措法7条1項),その請求をするには,身体的状況が悪化したため,当該給付金の支給を受けた日から起算して10年以内に新たに前記①又は②に該当するに至った事実を証明する医師の診断書を提出しなければならず(特措法8条),また,追加給付金の支給の請求は,特定C型肝炎ウイルス感染者の身体的状況が悪化し て10年以内に新たに前記①又は②に該当するに至った事実を証明する医師の診断書を提出しなければならず(特措法8条),また,追加給付金の支給の請求は,特定C型肝炎ウイルス感染者の身体的状況が悪化したため新たに特措法6条1号又は同条2号に規定の病態に該当するに至ったことを知った日から起算して3年以内に行わなければならない(特措法9条)とされている。追加給付金の額は,新たに該当するに至った区分に応じ,それに対応する額から既に支給された給付金及び追加給付金の額を控除した額である(特措法10条)。 給付金又は追加給付金(以下「給付金等」という。)については,給付金等の支給と,国又は製造業者等(特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤について薬事法の規定による承認を受けた者又はその者の業務を承継した者をいう。以下同じ。)が損害賠償の責任を負う場合におけるその責任との調整規定(特措法11条)及び不正利得の徴収に関する規定(特措法13条)が設けられており,また,租税その他の公課は,給付金等の支給を標準として課することができないものとされている(特措法12条)。 特措法に定めるもののほか,給付金等の支給の請求の手続その他特措法を実施するため必要な事項は,厚生労働省令で定めるものとされており(特措法18条),給付金等支給請求の手続等を定める「特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための 給付金の支給に関する特別措置法施行規則」(平成20年厚生労働省令第3号)が平成20年1月16日に公布されている。 イ特措法附則の概要特措法は,その施行日を公布の日とし(附則1条),給付金等の請求期限については,特措法の施行後における給付金等の支給の請求の状況を勘案し,必要に応じ,検討が されている。 イ特措法附則の概要特措法は,その施行日を公布の日とし(附則1条),給付金等の請求期限については,特措法の施行後における給付金等の支給の請求の状況を勘案し,必要に応じ,検討が加えられるものとしているほか(附則3条),次の事項が定められている。 政府は,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤が納入された医療機関の名称等を公表すること等により,医療機関による当該製剤の投与を受けた者の確認を促進し,当該製剤の投与を受けた者に肝炎ウイルス検査を受けることを勧奨するよう努めるとともに,給付金等の請求手続,請求期限等のこの法律の内容について国民に周知を図るものとする(附則2条)。 政府は,C型肝炎ウイルスの感染被害者が安心して暮らせるよう,肝炎医療の提供体制の整備,肝炎医療に係る研究の推進等必要な措置を講ずるよう努めるものとする(附則4条)。 ウ給付金の支給(特措法3条関係)「その相続人」の意義(特措法3条1項)特措法3条1項は,特定C型肝炎ウイルス感染者が特措法の施行前に死亡している場合にあっては,「その相続人」が給付金の支給を受けるものとしている。これは,給付金支給請求権は,機構から所定の給付金の支給を受けることを目的とする財産上の権利といえるから,不法行為による損害賠償 請求権と同様,特定C型肝炎ウイルス感染者の死亡により,その相続人に相続されるべき権利であるが,特定C型肝炎ウイルス感染者が特措法の施行前に死亡している場合にあっては,「その相続人」が請求者となり得るかについて疑義が生じ得るため,この点を確認的に明らかにしたものと解される。そして,「その相続人」には,特定C型肝炎ウイルス感染者の相続人はもちろん,特定C型肝炎ウイルス感染者から包 者となり得るかについて疑義が生じ得るため,この点を確認的に明らかにしたものと解される。そして,「その相続人」には,特定C型肝炎ウイルス感染者の相続人はもちろん,特定C型肝炎ウイルス感染者から包括遺贈を受けた者(包括受遺者)も,相続人と同一の権利を有することから,これに含まれる。 給付金の支給を受ける権利を有する者の相続人による請求(特措法3条2項)特措法3条2項は,「給付金の支給を受ける権利を有する者が死亡した場合においてその者がその死亡前に給付金の支給の請求をしていなかったとき(特定C型肝炎ウイルス感染者が慢性C型肝炎の進行により死亡した場合を含む。)は,その者の相続人は,自己の名で,その者の給付金の支給を請求することができる。」と規定している。 これは,給付金支給請求権は,特定C型肝炎ウイルス感染者の死亡により,「その相続人」に相続されることから,例えば,特定C型肝炎ウイルス感染者が特措法の施行後給付金の支給を受ける前に慢性C型肝炎の進行により死亡した場合であっても,その相続人が特措法6条1号による給付金の支給を受けることができること,また,特定C型肝炎ウイルス感染者の相続人(例えば,特定C型肝炎ウイルス感染者の「子」)が給付金の支給を請求する前に死亡した場合であっても,その者の相続人(例えば,特定C型肝炎ウイルス感染 者の「子」の「子」)が自己の名でその者の給付金支給請求権を行使できることを確認的に明らかにしたものである。 同順位の相続人が2人以上ある場合における請求・支給の取扱い(特措法3条3項)特措法3条3項は,「給付金の支給を受けることができる同順位の相続人が二人以上あるときは,その一人がした請求は,全員のためその全額につきしたものとみなし,その一人に対してした支給は,全員 3項)特措法3条3項は,「給付金の支給を受けることができる同順位の相続人が二人以上あるときは,その一人がした請求は,全員のためその全額につきしたものとみなし,その一人に対してした支給は,全員に対してしたものとみなす。」と規定している。 これは,本来,特定C型肝炎ウイルス感染者が死亡して複数の相続人が給付金支給請求権を相続した場合には,これらの相続人がその相続分に応じて給付金の支給を請求できることになるところ,機構の相続人に対する給付事務を簡素・合理化するとともに,相続を巡る紛争に支給機関である機構が巻き込まれないようにするための規定である。 したがって,例えば,特定C型肝炎ウイルス感染者Aが給付金の支給を受ける前にその相続人として2人の子B,Cを残して死亡した場合,Bが機構に対して給付金の支給を請求したときは,Bの給付金支給請求は,自己及びCのために,Cの相続分も含めた給付金の全額につきしたものとみなされることから(同項前段),機構は,Bに対し,給付金全額を支給することにより,BだけではなくCとの関係でも給付金を支給したものとみなされ(同項後段),後にCが自己の相続分に係る給付金の支給を請求してきた場合にも,Cに対し,Bに給付金を支給したこと(すなわち,これによってCの給付金受給権が消滅したこと)をもって給付金の支給を拒 絶できることになる。他方,このBの給付金支給請求は,同項前段により,機構との関係で,Cの相続分に相当する給付金の支給請求をもしたものとみなされるから,実体法上,これによりB及びCの各相続分に相当する給付金受給権にそれぞれなる。 エ給付金の支給手続(特措法4条関係) 給付金の支給手続と訴訟との関係特措法4条は,給付金支給請求をするには,「当該請求をする者又はそ る給付金受給権にそれぞれなる。 エ給付金の支給手続(特措法4条関係) 給付金の支給手続と訴訟との関係特措法4条は,給付金支給請求をするには,「当該請求をする者又はその被相続人が特定C型肝炎ウイルス感染者であること及びその者が第6条第1号,第2号又は第3号に該当する者であることを証する確定判決又は和解,調停その他確定判決と同一の効力を有するもの(当該訴え等の相手方に国が含まれているものに限る。)の正本又は謄本」を提出しなければならないと規定している。 これは,給付金の支給に当たっては,当該請求をする者又はその被相続人が特定C型肝炎ウイルス感染者であること及び特措法6条各号のいずれかに該当する者であることという事実の認定作業が必要であるが,これを司法手続に委ね,機構は,当該請求者による前記事実を証する確定判決等の正本又は謄本の提出により,前記事実についての認定作業を行うことなく給付金を支給することとする趣旨である。 確定判決等で証すべき事項確定判決等で証すべき事項は,①「当該請求をする者又はその被相続人が特定C型肝炎ウイルス感染者であること」,②「その者が第6条第1号,第2号又は第3号に該当する者であること」の2点である。 a 対象者が「当該請求をする者又はその被相続人」であること4条は,その対象者を「当該請求をする者又はその被相続人」と規定していることから,当該請求をする者が特定C型肝炎ウイルス感染者である場合には,当該請求をする者本人について,当該請求をする者が特定C型肝炎ウイルス感染者の相続人である場合には,その被相続人について,特定C型肝炎ウイルス感染者であり,特措法6条各号のいずれかに該当する者であることが確定判決等で明らかにされる必要がある。 した 肝炎ウイルス感染者の相続人である場合には,その被相続人について,特定C型肝炎ウイルス感染者であり,特措法6条各号のいずれかに該当する者であることが確定判決等で明らかにされる必要がある。 したがって,仮に特定C型肝炎ウイルス感染者が全くの第三者に対して給付金支給請求権を譲渡し,又は権利質を設定したとしても,当該第三者は,特定C型肝炎ウイルス感染者本人でもその相続人でもないことから,特措法4条所定の確定判決等の正本又は謄本を提出することができず,給付金の支給を請求することはできない。 b 「特定C型肝炎ウイルス感染者」の意義「特定C型肝炎ウイルス感染者」には,次の2類型がある(特措法2条3項)。 ⒜ 「特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与(獲得性の傷病に係る投与に限る。)を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染した者」これに該当するには,①特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与(獲得性の傷病に係る投与に限る。),②C型肝炎ウイルス感染,③ ①と②との間の因果関係の各事実が認められる必要がある。な お,特定フィブリノゲン製剤(特措法2条1項)及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤(特措法2条2項)については,前記のような特措法制定の趣旨・背景事情に鑑み,前記(2)C型肝炎訴訟の対象となっている製剤に限定されている。また,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与についても,同様の趣旨から,獲得性(後天性)の傷病に係る投与に限定されている。 「その者の胎内又は産道においてC型肝炎ウイルスに感染した者」これは,母子感染の場合であり,その者が⒜①~③の各事実に該当する母親の胎内又は産道においてC型肝炎ウイルスに感染したことが認められる必要がある。 c 「 いてC型肝炎ウイルスに感染した者」これは,母子感染の場合であり,その者が⒜①~③の各事実に該当する母親の胎内又は産道においてC型肝炎ウイルスに感染したことが認められる必要がある。 c 「その者が第6条第1号,第2号又は第3号に該当する者であること」の意義次の①~③のいずれかに該当する者をいう(特措法6条各号)。 ① 慢性C型肝炎が進行して,肝硬変若しくは肝がんにり患し,又は死亡した者② 慢性C型肝炎にり患した者③ ①・②に掲げる者以外の者 「確定判決又は和解,調停その他確定判決と同一の効力を有するもの」の意義a 給付金の支給に必要な事実を「証する」確定判決の意義等「当該請求をする者又はその被相続人が特定C型肝炎ウ イルス感染者であること及びその者が第6条第1号,第2号又は第3号に該当する者であることを証する確定判決」とは,損害賠償請求の認容判決に限らず,前記の事項が理由中で認定されている確定判決であれば足りる。したがって,例えば,前記の事項が理由中で認定されていれば,過失がない,損害賠償請求権が時効又は除斥期間により消滅したなどの理由による損害賠償請求の棄却判決であっても良い。 「和解,調停その他確定判決と同一の効力を有するもの」とは,前記イの事項が記載された和解調書(民事訴訟法267条),調停調書(民事調停法16条)のほか,確定判決と同一の効力を有するもの,例えば,請求認諾調書(民事訴訟法267条),支払督促(民事訴訟法396条),仲裁判断(仲裁法45条),調停に代わる決定(民事調停法17条)等が,これに該当する。 b 「当該訴え等の相手方に国が含まれているもの」であること以上のような「確定判決又は和解,調停その他確定判決と同一の効力を有す 停に代わる決定(民事調停法17条)等が,これに該当する。 b 「当該訴え等の相手方に国が含まれているもの」であること以上のような「確定判決又は和解,調停その他確定判決と同一の効力を有するもの」は,「当該訴え等の相手方に国が含まれているもの」に限られる。これは,前記のような特措法制定の趣旨・背景事情のほか,政府が機構に対して給付金支給等業務に要する費用に充てるための資金を交付すること(特措法15条)などから,国が当該訴え等の相手方として関与した裁判所の手続で作成されたものに限ることとしたものである。 c 給付金の支給に必要な事実に争いがある場合について 給付金の支給に必要な事実については,前記のとおり裁判所における司法手続中で認定されるものであるから,これらの事実について当事者間に争いがある場合は,裁判所は,当事者の主張・立証を踏まえて自由心証により判断することになり,裁判所の所見を踏まえても当事者間で解決することができないときには,判決において前記各事実を認定することになる。 オ給付金の請求期限(特措法5条関係)特措法5条は,「給付金の支給の請求は,①特措法の施行の日から起算して5年(その後の法改正により,現在では15年となっている。)を経過する日(以下「経過日」という。)又は②特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染したことを原因とする損害賠償についての訴えの提起又は和解若しくは調停の申立て(その相手方に国が含まれているものに限る。)を経過日以前にした場合における当該損害賠償についての判決確定日又は和解・調停成立日から起算して1月を経過する日のいずれか遅い日までに行わなければならない」旨規定している。 これは,給付金の請 )を経過日以前にした場合における当該損害賠償についての判決確定日又は和解・調停成立日から起算して1月を経過する日のいずれか遅い日までに行わなければならない」旨規定している。 これは,給付金の請求期限は,経過日(改正により令和5年1月16日(同月15日が日曜日であるため))を原則としつつ,前記のような損害賠償についての訴えの提起又は和解若しくは調停の申立てを経過日以前にしたが,その手続に一定の期間を要したため,その判決の確定又は和解・調停の成立が経過日直前であった場合や判決の確定等の前に経過日を経過した場合に対処する必要があることから,その場合に限り,例外的に当該損害賠償についての判決確定日又は和解・調停成立日から 起算して1月を経過する日とし,その分実質的に請求期限を伸長したものである。 カ給付金の額(特措法6条関係) 特措法6条は,給付金の額を特定C型肝炎ウイルス感染者の区分に応じた次の額とする旨規定している。 ① 慢性C型肝炎が進行して,肝硬変若しくは肝がんにり患し,又は死亡した者 4000万円② 慢性C型肝炎にり患した者 2000万円③ ①・②に掲げる者以外の者 1200万円 特措法6条1号が「慢性C型肝炎が進行して」と規定しているのは,慢性C型肝炎の進行と,肝硬変・肝がんのり患又は死亡との間に因果関係を要することとした趣旨である。 また,特措法6条3号は「前二号に掲げる者以外の者」と規定しているが,これは,例えば,特定C型肝炎ウイルス感染者であるが,未だ慢性C型肝炎にはり患していない無症候性キャリアの者が該当する。 給付金の支給に当たり,前記①~③に掲げる者のいずれに該当するかについては,給付金の支給の請求をする者が機構に提出した「確定判決又は和 はり患していない無症候性キャリアの者が該当する。 給付金の支給に当たり,前記①~③に掲げる者のいずれに該当するかについては,給付金の支給の請求をする者が機構に提出した「確定判決又は和解,調停その他確定判決と同一の効力を有するもの」の内容に従うことになる。 したがって,例えば,慢性C型肝炎にり患した特定C型肝炎ウイルス感染者が,前記②に掲げる者に該当する旨の和解を成立させた後,治療の結果,給付金支給の請求時には前記③に掲げる者(無症候性キャリア)になっていた場合であっても,給付金として2000万円が支給される。 キ損害賠償等がされた場合等の調整(特措法11条関係) 本条の趣旨特措法11条は,「給付金等の支給を受ける権利を有する者に対し,同一の事由について,国又は製造業者等により損害のてん補がされた場合においては,機構は,その価額の限度において給付金等を支給する義務を免れ」(同条1項),「国又は製造業者等が国家賠償法,民法その他の法律による損害賠償の責任を負う場合において,機構がこの法律による給付金等を支給したときは,同一の事由については,国又は製造業者等は,その価額の限度においてその損害賠償の責任を免れる」旨規定している(同条2項。「製造業者等」の意義については,後記)。 特定C型肝炎ウイルス感染者又はその相続人は,特措法が適用される場合であっても,国に対して国家賠償法に基づき,製造業者等に対して民法等に基づき,それぞれ損害賠償を請求することを妨げられない。 「同一の事由」の意義国又は製造業者等が特定C型肝炎ウイルス感染者に対して国家賠償法又は民法等による損害賠償責任を負う場合における損害としては,財産的損害(例えば,治療費等や逸失利益)と精神的損害があり得 」の意義国又は製造業者等が特定C型肝炎ウイルス感染者に対して国家賠償法又は民法等による損害賠償責任を負う場合における損害としては,財産的損害(例えば,治療費等や逸失利益)と精神的損害があり得るところ,給付金等支給の対象となる損害は,給付金等が医療,健康管理等に係る経済的負担を含む健康被害の救済を図るためのものであること(特措法3条1項,同法7条1項)等を考慮すると,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染したことによる財産的・精 神的損害であると解されるから,いずれの損害も同性質である。 したがって,国家賠償法又は民法等による損害賠償は,特措法との関係で,原則として「同一の事由」の関係にある。 「製造業者等」の意義「製造業者等」とは,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤について昭和54年改正前の薬事法14条1項(昭和54年改正前の薬事法23条において準用する場合を含む。)若しくは平成5年改正前の薬事法14条1項(平成5年改正前の薬事法23条において準用する場合を含む。)の規定による承認を受けた者又はその者の業務を承継した者であり,具体的には前記4の五つの地裁での訴訟において被告となった製薬企業がこれに該当する。 損害のてん補が先行した場合特措法11条1項は,損害のてん補が先行した場合に,その価額の限度において機構の給付金等支給義務を免責するものである。「国又は製造業者等… … により損害のてん補がされた場合」とは,国又は製造業者等から給付金等の支給を受ける権利を有する者に対する損害賠償額の支払がされて現実に損害のてん補がされた場合をいうものと解され,例えば,給付金等の支給を受ける権利を有する者が国又 とは,国又は製造業者等から給付金等の支給を受ける権利を有する者に対する損害賠償額の支払がされて現実に損害のてん補がされた場合をいうものと解され,例えば,給付金等の支給を受ける権利を有する者が国又は製造業者等との間で損害賠償請求権の全部又は一部を放棄する旨の和解をした場合は,「国又は製造業者等… … により損害のてん補がされた場合」に該当しない。 また,特措法11条1項における「その価額の限度において」は,現実にてん補された損害の価額の限度においてという趣旨である。 給付金等の支給が先行した場合特措法11条2項は,国又は製造業者等の損害賠償責任が認められる場合に,給付金等の支給が先行したときは,その価額の限度において国又は製造業者の損害賠償責任を免責するものである。 また,特措法11条2項における「その価額の限度において」とは,支給を受けた額の限度においてという趣旨である。 6 特定C型肝炎ウイルス感染者救済基金制度機構は,給付金支給等業務に要する費用に充てるため,特定C型肝炎ウイルス感染者救済基金を設け(特措法14条1項),特定C型肝炎ウイルス感染者救済基金は,政府が予算の範囲内で機構に対して交付した資金(特措法15条)及び厚生労働大臣が製造業者等と協議の上でその同意を得て定めた基準に基づき製造業者等が機構に対して納付した拠出金(特措法16条,同法17条)をもって充てるものとされている(特措法14条2項)。 これに伴い,独立行政法人医薬品医療機器総合機構法(以下「機構法」という。)の一部改正が行われ,機構が給付金等の支給業務等を行う旨の業務規定や特定C型肝炎ウイルス感染者救済基金に関する規定が整備されている(附則5条)。 7 和解基本合意書の調印厚生労働大臣と薬害肝炎全国原告団代表及び薬害肝 給付金等の支給業務等を行う旨の業務規定や特定C型肝炎ウイルス感染者救済基金に関する規定が整備されている(附則5条)。 7 和解基本合意書の調印厚生労働大臣と薬害肝炎全国原告団代表及び薬害肝炎全国弁護団代表は,平成20年1月15日,特措法に基づく給付金の支給の仕 組みに沿った和解の内容等について定めた基本合意書を調印した。 (1) 経緯前記4及び5のとおり,特措法は,「C型肝炎ウイルスの感染被害を受けた方々からフィブリノゲン製剤及び血液凝固第Ⅸ因子製剤の製造等を行った製薬企業及び国に対し,損害賠償を求める訴訟が提起されたが,これまでの5つの地方裁判所の判決においては,企業及び国が責任を負うべき期間等について判断が分かれ,現行法制の下で法的責任の存否を争う訴訟による解決を図ろうとすれば,さらに長期間を要することが見込まれている。」(特措法前文)ことを踏まえ,国又は製造業者等の損害賠償責任の有無を問わず,感染被害者らに対する製剤の「投与の時期を問わず一律に救済」(特措法前文)するため,「立法による解決を図ることと」し,裁判所の手続において,C型肝炎訴訟における損害賠償請求の要件事実の一部が認められる場合に給付金を支給する制度を定めることとしたものである。 特措法所定の要件については,前記5(2)エのとおり,司法手続中で認定されるものであるから,これらの要件に該当する事実関係について,当事者間に争いがある場合,裁判所は,自由心証により判断することになる。 裁判所による前記判断について,衆議院は,特措法可決の際,「『投与の事実』,『因果関係』及び『症状』の認否に当たっては,カルテのみを根拠とすることなく,手術記録,投薬指示書等の書面又は医師,看護師,薬剤師等による投与事実の証明又は本人,家族等による記録,証言等 の事実』,『因果関係』及び『症状』の認否に当たっては,カルテのみを根拠とすることなく,手術記録,投薬指示書等の書面又は医師,看護師,薬剤師等による投与事実の証明又は本人,家族等による記録,証言等も考慮すること。」という内容の附帯決議をしている。(甲ヌ1) (2) 内容基本合意書においては,前記5(2)の特措法所定の要件に該当する事実関係が認められる者との間で裁判上の和解を成立させることを前提に,和解において確認すべき事項が定められている(基本合意書2項)。 また,基本合意書では,前記5(2)の特措法所定の要件に該当する事実関係の認定について,医療記録その他の証拠をもって行い,これらの事実関係に争いがある場合は,証拠調べを経て,裁判所の所見を求め,当事者双方は,その所見を尊重すること等を定めている(基本合意書3項)。 (甲ニ9)第2 争点及び争点に対する当事者の主張本件における争点は,特措法との関係では,①特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の事実の有無,②C型肝炎ウイルス感染の事実及び病態,③前記①と②との間の因果関係であり,国家賠償法との関係では,これらに加えて④厚生労働大臣による特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の製造承認及びそれ以降の職務執行並びに規制権限不行使が違法な公権力の行使に当たるか,そのことについての過失の有無,⑤原告らの損害である。 1 総論主張(原告ら)(1) 投与の事実の立証構造についてア基本合意書について基本合意書は,原告らが,特措法に基づく給付金の支給を受けるために,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因 子製剤投与の事実を,「投与当時に作成された医療記録」及び「投与当時に作成された医療 は,原告らが,特措法に基づく給付金の支給を受けるために,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因 子製剤投与の事実を,「投与当時に作成された医療記録」及び「投与当時に作成された医療記録と同等の証明力を有する証拠」に基づいて証明する必要がある旨を一内容としているが,本件の原告らにおいては,医師法等において診療録(カルテ)の保存期間が5年とされていることなどの理由により,「投与当時に作成された医療記録」を入手することができない。また,「投与当時に作成された医療記録と同等の証明力を有する証拠」としては,主治医ら医療関係者(以下「医師等」という。)の陳述書等があり得るところ,医療関係者の陳述書等の証拠を得ることが困難な原告らが少なくない。 基本合意書は,同書面の別紙に記載された111件の訴訟における原告らと国との合意であり,これらの原告は,基本的には投与事実の記載のある医療記録を入手し得た患者であって,当事者を異にする本件にそのまま妥当するとはいえないから,特措法による救済を受けるための要件である特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の事実の立証につき,基本合意書に従って診療録(カルテ)や医療関係者による証言等による立証を厳格に要件とすることは,衆議院の附帯決議や特措法前文の趣旨に反する。 イ投与の事実について原告らは,いずれも,投与当時に作成された医療記録を提出することができず,投与当時に作成された医療記録と同等の証明力を有する証拠として医療関係者の協力を十分に得られないか,全く得られない状況にあるため,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の事実を直接証明する手段を有していない。 そこで,C型肝炎ウイルス感染の事実及び病態を立証し,かかる結果から因果を遡ること め,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の事実を直接証明する手段を有していない。 そこで,C型肝炎ウイルス感染の事実及び病態を立証し,かかる結果から因果を遡ることによって,原因となる特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の事実を推認するのが相当である。 ウ因果関係について不法行為の成立要件たる因果関係は,純然たる事実認定の問題でなく,評価的判断の問題と解すべきである(最高裁昭和48年(オ)第517号同50年10月24日第二小法廷判決・民集29巻9号1417頁,最高裁平成4年(オ)第251号同8年1月23日第三小法廷判決・民集50巻1号1頁,最高裁平成7年(オ)第1205号同9年2月25日第三小法廷判決・民集51巻2号502頁,最高裁平成16年(受)第672号同18年6月16日第二小法廷判決・民集60巻5号1997頁)。 前記各最高裁判例の判断構造は,①特定の原因状況から特定の結果が招来されることの一般的関連性,②当該原告が①の原因状況にあったとみられること,③他原因の不存在の3点に整理される。 前記①は,通常であれば,当該原告が特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与を受けたという状況をいうが,本件において,その証明のために診療録(カルテ)等を要求すると,医師法が診療録(カルテ)の保存期間を5年と定めているため,救済の範囲が極めて限定され,特措法の一律救済の理念が空洞化する。 そこで,前記①について,原因状況をより抽象化して,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤を投与する医学的適応のある状態にあったこととすれば,そのこととC型 肝炎ウイルス感染との間に一般的関連性を認めることができる場合があると考えられる。 具体的には,a診 凝固第Ⅸ因子製剤を投与する医学的適応のある状態にあったこととすれば,そのこととC型 肝炎ウイルス感染との間に一般的関連性を認めることができる場合があると考えられる。 具体的には,a診療当時の医療機関において,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤が相当程度広く使用されており,b大量出血等の適応疾患のある場合に一定程度以上の頻度で使用されていたという事実があれば,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の医学的適応のある疾患を有すること自体がC型肝炎ウイルス感染の危険性を有するといえる。 そして,前記③の(C型肝炎ウイルス感染についての)他原因の不存在を証明すれば,集団的因果関係から個別的因果関係を肯定することにはならず,前記最高裁平成18年6月16日第二小法廷判決も,同様の原因状況の抽象化により因果関係を肯定していることに沿う。 エ因果関係の判断を介した投与の事実の推認本件における因果関係の起点は,被告の規制権限の不行使等又は特定フィブリノゲン製剤若しくは特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の事実であり,因果関係の終点は,個別の原告のC型肝炎ウイルス感染又はC型肝炎発症の事実である。これらの因果的関連性が存在するか否かを判断することにより因果関係の認定判断を行い,その認定判断を介して原因行為である被告の規制権限の不行使等又は特定フィブリノゲン製剤若しくは特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の事実を合理的に推認することができれば証明として十分というべきである。 (2) 特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の医学的適応について アいかなる疾患において,類型的に大量出血等が生じて,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の医学的適応のある状態に至るかに 固第Ⅸ因子製剤投与の医学的適応について アいかなる疾患において,類型的に大量出血等が生じて,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の医学的適応のある状態に至るかについては,後記2の類型別主張のとおりである。 イ臨床医は,治療中や術中に一旦出血が始まると,その原因や出血の態様等に応じ,一刻も早く適切な方法で止血しなければならないという切迫した状況に置かれる。そのような状況の下で,血液由来の製剤である特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤は,常備でき,安心して投与できる効果的な止血方法として,臨床医により広く使用されていた。 殊に,特定フィブリノゲン製剤は,産科ショックや外科的なショックその他の原因によって生じた低フィブリノゲン血症,DIC,滲み出るような持続的な出血など,圧迫止血や結紮のような外科的止血方法だけでは対処できない出血に際し,各領域で,治療中,手術中,手術後,場合によっては手術前に予防的に使用されてきた。さらに,閉腹の際の縫合,組織の接合や骨片の接合等生体組織の接着等のために,フィブリン糊又はフィブリン膜としても広範囲に利用されてきた。また,特定フィブリノゲン製剤は,昭和45年から昭和50年にかけて,適応疾患の患者数の10~20倍程度の患者に対して使用されていたものと推測されており,止血一般に効用がある製剤として,適応疾患に対する使用のほか,広く適応外使用がされていた。 (3) 因果関係について因果関係については,前記(1)の特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与の事実の立証構造の項で主張したとおりである。 C型肝炎ウイルスの感染経路は,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与以外にも複数存在するが,特定フィブリノ 製剤の投与の事実の立証構造の項で主張したとおりである。 C型肝炎ウイルスの感染経路は,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与以外にも複数存在するが,特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤は,他の感染原因となり得るものと比較してC型肝炎ウイルスが含まれている蓋然性が極めて高いことから,その投与の事実が認められれば,投与の事実と感染の事実との因果関係を推認すべきである。輸血の処置がされた原告らに関しても,特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤に比べて,輸血の成分中にC型肝炎ウイルスが含まれている蓋然性は低いから,輸血の併用の有無にかかわらず,前記のような推認がされるべきである。 (被告の主張)(1) 投与の事実の立証について特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の事実は,当該原告に係るカルテ等,投薬当時ないしこれに近接した時期に医療関係者によって作成された医療記録中における投与の事実の記載によって立証されることが,証拠の客観性,確実性,信用性という観点から最も適切である。 特措法は,事実認定手続について,民事訴訟法の特則を定めるものではなく,特措法所定の要件については原則どおり民事訴訟法が適用され,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の事実については,前記最高裁昭和50年10月24日第二小法廷判決のとおり「高度の蓋然性」,すなわち,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得る程度に立証しなければならないのであって,単に投与の可能性が否定できないというレベルの立証で投与の事実を認定すべきではない。 C型肝炎ウイルスの感染者について,感染の原因が特定フィブリ ノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤 ,単に投与の可能性が否定できないというレベルの立証で投与の事実を認定すべきではない。 C型肝炎ウイルスの感染者について,感染の原因が特定フィブリ ノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与以外に,具体的に指摘することができないからといって,そこから直ちに当該C型肝炎ウイルス感染者が特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与を受けたと推認されるような関係にはない。 (2) 特定フィブリノゲン製剤投与の事実の推認についてア特定フィブリノゲン製剤の投与を推認するための要件医師は,医薬品を患者に投与するに当たり,まずは生体機構に対する薬理効果として,当該薬品の効能・効果や,副作用リスクの内容及び程度も勘案してこれを投与するのが通常であり,効能・効果が客観的に期待できない場合や,副作用リスクの内容・程度に比して効能・効果が乏しい場合は,当該医薬品を患者に投与することは一般的には考えられない。 特定フィブリノゲン製剤は,出血性疾患のうち,血液中の凝固因子の一つであるフィブリノゲンが減少ないし欠乏することに起因して,止血機構が正常に機能しなくなる低フィブリノゲン血症に対して効能・効果を有する薬剤であり,臨床における実践から,産科大量出血で,血漿中のフィブリノゲン濃度が概ね100mg/dlを下回る低フィブリノゲン血症に用いることが有効かつ有用であるとの評価がされ,その使用が推奨されてきたものであって,全ての出血性疾患に用いられていたわけではなく,止血剤としても,一般的な使用が推奨されてきたとの医学的,薬学的知見を認めることはできない。 したがって,大量の出血があり,止血のために薬剤が使用されたという事実があったとしても,直ちにその薬剤が特定フィブリノゲン製剤であると推認されるという関係にはないのであっ 認めることはできない。 したがって,大量の出血があり,止血のために薬剤が使用されたという事実があったとしても,直ちにその薬剤が特定フィブリノゲン製剤であると推認されるという関係にはないのであって,特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには, 患者について低フィブリノゲン血症に陥っていたこと,又は,低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったことが認められなければならない。 DICは,基礎疾患が存在して初めて生じるものであり,基礎疾患が存在せずに突発的に発生するものではない。 DICを発症しているかどうかは,基礎疾患の存在,臨床症状や血液凝固学的検査所見から総合的に診断される。DICについては,厚生労働省により昭和55年に診断基準が作成され,その後,産科においては産科DICスコアが提唱されていたのであるから,原告らのうち,出産や産科領域の疾患を主張する者については,産科DICスコアに照らしてDICの治療又は予防の必要があったと認められるか否かを判断し,その余の者については,前記の厚生労働省のDICの診断基準に基づいてDICの治療又は予防の必要があったと認められるか否かを判断すべきである。なお,前記の厚生労働省のDICの診断基準や産科DICスコアは,昭和55~60年に提唱されたものではあるが,これらが,それまでの臨床例やDICに関する一般的な知見に基づいて作成されたものと考えられることに照らすと,昭和55年以前の症例についても,診療に従事した医師が,一般的な知見とは異なる知見に基づいて診療に従事していたことをうかがわせる特段の事情が認められない限り,前記の厚生労働省のDICの診断基準や産科DICスコアと同様の方法によりDICの診断等をしていたと考えられる。 イ外科領域について 従事していたことをうかがわせる特段の事情が認められない限り,前記の厚生労働省のDICの診断基準や産科DICスコアと同様の方法によりDICの診断等をしていたと考えられる。 イ外科領域について外科領域では,昭和50年前半頃からDICに対するフィブリノゲン製剤投与が禁忌と指摘されるなど,消極的ないし限定的な 評価がされ,一般的にDICの治療として特定フィブリノゲン製剤が静脈注射により用いられていた事実はなかったから,フィブリン糊の投与を主張する原告らを除いて,外科領域において,昭和50年代以降の特定フィブリノゲン製剤投与を主張する原告らについては,仮に原告らの病態がDICと診断される病態であったとしても,原告らに対する治療を担当した医師が,当時の一般的な知見とは異なる知見やこれに基づく投与方針を有していたことなどの特段の事情がない限り,特定フィブリノゲン製剤投与の事実は認められないというべきである。 ウフィブリン糊について特定フィブリノゲン製剤を用いて調製されるフィブリン糊は,適応外使用であって,医薬品製造承認申請書や添付文書において作成方法や使用方法等が記載されているものではなく,また,公的医療保険における診療報酬の支払対象とはならないものであったため,特定フィブリノゲン製剤の納入を受けていた医療機関の医療従事者の中には,特定フィブリノゲン製剤を用いたフィブリン糊の調製方法や使用方法等を知らない者や,知っていたとしても使用しない者が存在したことがうかがわれる。 また,特定フィブリノゲン製剤を用いて調製されるフィブリン糊は,昭和56年6月12日に基礎的研究の結果が発表され,その後にフィブリン糊研究会において研究が進められたものの,昭和62~63年に特定フィブリノゲン製剤に関して安全性の問題を指摘され,昭和 ン糊は,昭和56年6月12日に基礎的研究の結果が発表され,その後にフィブリン糊研究会において研究が進められたものの,昭和62~63年に特定フィブリノゲン製剤に関して安全性の問題を指摘され,昭和63年4月にヘキスト社及び日本臓器製薬株式会社から特定フィブリノゲン製剤を用いないフィブリン糊キット製剤が発売され,同年6月に発出されたフィブリノゲンHT-ミドリに係る緊急安全性情報では,特定フィブリノゲン製剤の 使用について,「適応を十分に考慮」し,「先天性低フィブリノゲン血症などフィブリノゲンが著しく低下している場合に限って使用すること。」,「やむを得ぬ場合にのみ予め患者側によく説明し」て使用することとされた。一方,前記のヘキスト社及び日本臓器製薬株式会社から発売されたフィブリン糊は,特定フィブリノゲン製剤を用いて調製するフィブリン糊よりも調合が簡便であり,利便性が高いものであった上,公的医療保険の適応のあるものであった。そうすると,前記緊急安全性情報が発出された昭和63年6月以降に,医師が,特定フィブリノゲン製剤を使用したのは,低フィブリノゲン血症の治療に限られ,ヘキスト社及び日本臓器製薬株式会社からフィブリン糊キット製剤が発売された昭和63年4月以降に,公的医療保険の適応がなく,利便性が低く,安全性の問題を指摘され,適応外使用となる特定フィブリノゲン製剤を用いて調製したフィブリン糊を使用することは通常考えにくいことに照らすと,特定フィブリノゲン製剤を用いて調製されるフィブリン糊が用いられていた時期は,基礎的研究の結果が発表された昭和56年6月から昭和63年4月までの期間に限られると考えられる。 (3) 特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の事実の推認について特定血液凝固第Ⅸ因子製剤のうちクリスマシンの適応症は,「血液凝 れた昭和56年6月から昭和63年4月までの期間に限られると考えられる。 (3) 特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の事実の推認について特定血液凝固第Ⅸ因子製剤のうちクリスマシンの適応症は,「血液凝固第Ⅸ因子欠乏症」である。特定血液凝固第Ⅸ因子製剤は,主として先天的に第Ⅸ因子が欠如している血友病B患者や,新生児出血(新生児メレナ等)など後天的に凝固因子の産生が低下する疾患など,極めて限定された症例に対してその投与が推奨されていたのであって,アドナやトランサミンといった一般的な止血剤とは異なり,全ての出血性疾患に用いられていたわけではなく,止血剤とし て一般的な使用が推奨されてきたものでもない。 したがって,大量の出血があり,止血のために薬剤が使用されたという事実があったとしても,直ちにその薬剤が特定血液凝固第Ⅸ因子製剤であると推認されるという関係にはない。特定血液凝固第Ⅸ因子製剤を含む第Ⅸ因子複合体製剤については,使用経験が全くない医師もいるから,血友病等の第Ⅸ因子複合体製剤の使用疾患であるからといって,論理則及び医学的経験則上,第Ⅸ因子複合体製剤を使用していたと推認できる関係はない。 したがって,特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の事実が認められるためには,少なくとも,特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与を推奨された前記症例であると認められることが必要である。 (4) 因果関係についてC型肝炎ウイルスの感染源は,具体的に判明している感染経路に限っても,輸血,血液製剤,滅菌が不十分な医療器具(装置)による医療行為,血液透析,医療従事者の針刺事故,鍼治療,刺青,注射器の回し打ち,ボディピアスの共用,母子(児)感染,家族内感染などが指摘されており,医療行為に限定されているわけではない。 また,C型肝炎ウイルスの感染原因は,不明な場合が 刺事故,鍼治療,刺青,注射器の回し打ち,ボディピアスの共用,母子(児)感染,家族内感染などが指摘されており,医療行為に限定されているわけではない。 また,C型肝炎ウイルスの感染原因は,不明な場合が少なくとも30%前後と相当多い。また,一般にC型肝炎ウイルスは,人の全ての年代に高率で持続感染するため,感染時期も一時点ではなく,幅広く考慮しなければならない。 そうすると,C型肝炎ウイルス感染の事実は,原告らに対する特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の事実を推認させるものではない。 (補助参加人の主張)止血機構には,①血管系の反応,②血小板機能,③血液凝固(二 次止血栓の形成),④線溶系の調節の四つの重要な局面がある。特定フィブリノゲン製剤の投与,すなわちフィブリノゲンの補充によって止血機構が改善されるのは,低フィブリノゲン血症によって,前記③の血液凝固反応に支障を来している場合に限られ,その他の様々な原因により発生する産科の大量出血に対して一般的に止血効果を有するものではなかった。 このように,特定フィブリノゲン製剤は,低フィブリノゲン血症の治療に効能・効果を有するものであり,適用場面が限定されていたし,そもそも,原告らが特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたと主張する時期においては,特定フィブリノゲン製剤の納入を受けていなかった医療機関が圧倒的多数であった。また,出血に対する止血法は様々であり,個々の医師の裁量によって,あるいは時期によって,特定フィブリノゲン製剤の投与に関する方針は様々であった。したがって,出血一般に対して特定フィブリノゲン製剤が恒常的に使用されていたとはいえない。 なお,医師の投与方針や判断によって,低フィブリノゲン血症以外の症例における大量出血に際して,特定フィブリノゲン って,出血一般に対して特定フィブリノゲン製剤が恒常的に使用されていたとはいえない。 なお,医師の投与方針や判断によって,低フィブリノゲン血症以外の症例における大量出血に際して,特定フィブリノゲン製剤を適応外使用した可能性があるとしても,特定フィブリノゲン製剤は1本当たり5000円を上回る高価な薬剤であったため,一般的な止血方法を前置し,それでも止血ができない場合に投与されていた。 2 類型別主張(原告らの主張)(1) 胎盤用手剥離術胎盤娩出促進法や胎盤圧出法にとどまらず,胎盤用手剥離術を受けた場合,癒着胎盤の第2群(用手的に剥離できるが困難なもので,癒着部位に線維素様の策を認め,更に剥離時にかなりの出 血を認めるもの)又は第3群(用手的に剥離は不能で,癒着部位を用手的に剥離すると必ず胎盤片が残り,出血を多量に認めるもの)に該当する可能性が高いと考えられ,相当量の出血があったことが推認される。胎盤用手剥離術それ自体によって,止血不能の大出血を来す可能性や,用手剥離に固執した結果引き起こされる大出血や弛緩出血が生じる可能性も高い。 また,胎盤用手剥離術の前に通常なされる胎盤圧出法を行った際に,その用法を誤り,又は無理をすることにより,大量出血が生じる可能性もある。 胎盤用手剥離術が施された原告ら(原告6番,7番,亡原告41番,原告55番,90番)については,同様の手術又は疾患において,特定フィブリノゲン製剤を投与した例が報告されていることから,施術の際に大量に出血して産科DICを引き起こして特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあった可能性及び医師らが産科DICを引き起こすかもしれないと懸念した可能性が高い。 (2) 前置胎盤前置胎盤を来した場合,分娩時に出血量がピークに達し, 投与を必要とする病態にあった可能性及び医師らが産科DICを引き起こすかもしれないと懸念した可能性が高い。 (2) 前置胎盤前置胎盤を来した場合,分娩時に出血量がピークに達し,ショック状態に陥ったり,DICを発症したりすることがある。また,前置胎盤を来した場合,癒着胎盤の頻度が高く,癒着した胎盤を無理に用手剥離すると大出血を起こすことがある。さらに,前置胎盤を来した場合,子宮下部の筋層が少なく,収縮が弱いため,弛緩出血を引き起こす原因となり得る。 前置胎盤を来した原告ら(原告28番,亡原告31番,亡原告38番,原告57番,89番,90番,93番,108番,134番)については,前置胎盤が前記のとおり大量出血につながり得 る要素を多くはらむ病態であり,同様の手術又は疾患において,特定フィブリノゲン製剤を投与した例が報告されていることから,前置胎盤に伴い大量に出血して産科DICを引き起こして特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあった可能性及び医師らが産科DICを引き起こすかもしれないと懸念した可能性が高い。 (3) 常位胎盤早期剥離常位胎盤早期剥離の多くは,子宮,胎盤循環を担う血管にれん縮や血栓形成が生じて血行不良に陥って壊死した脱落膜がもろくなって子宮壁から剥がれることに始まり,最終的に出血部における急激な凝固因子の消費によるDICにつながり得る病態であり,低フィブリノゲン血症を併発することがある。 前記のとおり,常位胎盤早期剥離は,凝固異常を来して大量出血を生じ得る病態であるところ,出血が大量に及べば,貧血からショック状態に陥り,更にDICを合併すれば著明な出血傾向が現れる。なお,常位胎盤早期剥離は,産科ショックの最大の原因である。 常位胎盤早期剥離を来した原告 るところ,出血が大量に及べば,貧血からショック状態に陥り,更にDICを合併すれば著明な出血傾向が現れる。なお,常位胎盤早期剥離は,産科ショックの最大の原因である。 常位胎盤早期剥離を来した原告ら(原告59番,82番,154番)については,同様の手術又は疾患において,特定フィブリノゲン製剤を投与した例が報告されていることから,常位胎盤早期剥離を基礎疾患として産科DICを引き起こして特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあった可能性及び医師らが産科DICを引き起こすかもしれないと懸念した可能性が高い。 (4) 弛緩出血弛緩出血を来した場合,出血量が多くなるにつれてショック状態を呈し,また,止血のために凝固因子を消耗するためにDIC を発症することもある。 出産において弛緩出血(子宮収縮不全,胎盤残留による出血を含む。)を来す状況にあった原告ら(原告1番,2番,7番,8番,11番,15番,24番,35番,亡原告40番,原告44番,亡原告46番,原告53番,55番,75番,78番,79番,80番,86番,90番,95番,102番,115番,118番,119番,121番,126番,127番,128番,129番,131番,138番,139番,140番,160番,161番)については,同様の手術又は疾患において,特定フィブリノゲン製剤を投与した例が報告されていることから,大量に出血して産科DICを引き起こして特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあった可能性及び医師らが産科DICを引き起こすかもしれないと懸念した可能性が高い。 (5) 会陰裂傷等裂傷が深いと,出血量は大量に及びショック状態に近づくこともある。 会陰裂傷により大量出血を来す状況にあった原告ら(原 ないと懸念した可能性が高い。 (5) 会陰裂傷等裂傷が深いと,出血量は大量に及びショック状態に近づくこともある。 会陰裂傷により大量出血を来す状況にあった原告ら(原告97番,103番,131番,132番,150番)については,同様の手術又は疾患において,特定フィブリノゲン製剤を投与した例が報告されていることから,裂傷に伴い大量に出血して産科DICを引き起こして特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあった可能性及び医師らが産科DICを引き起こすかもしれないと懸念した可能性が高い。 (6) 婦人科手術婦人科手術の際に大量出血を来す状況にあった原告ら(原告1番,68番,69番,87番,亡原告94番,原告104番,12 4番,141番,149番,152番,156番,160番,162番)については,同様の手術又は疾患において,特定フィブリノゲン製剤を投与した例が報告されていることから,手術の際に大量に出血して産科DICを引き起こして特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあった可能性及び医師らが産科DICを引き起こすかもしれないと懸念した可能性が高い。 (7) 頭部外傷及び開頭術頭部外傷による出血などによって出血性ショックの状態となり,これが原因となって低フィブリノゲン血症を来すDICの状態となることがある。また,開頭術が行われた場合,閉頭の際の硬膜縫合のために組織接着剤として特定フィブリノゲン製剤が使用された可能性が高い。 頭部外傷などに対する処置,手術の際に大量出血を来す状況にあった原告ら(亡原告5番,原告19番,33番,114番)については,同様の手術又は疾患において,特定フィブリノゲン製剤を投与した例が報告されていることから,処置や手術の際に に大量出血を来す状況にあった原告ら(亡原告5番,原告19番,33番,114番)については,同様の手術又は疾患において,特定フィブリノゲン製剤を投与した例が報告されていることから,処置や手術の際に大量に出血してDICを引き起こして特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあった可能性及び医師らがDICを引き起こすかもしれないと懸念した可能性が高い。 (8) 開胸術開胸術の際に大量出血を来す状況にあった原告ら(原告52番,113番)については,同様の手術において,特定フィブリノゲン製剤を投与した例が報告されていることから,手術の際に大量に出血してDICを引き起こして特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあった可能性及び医師らがDICを引き起こすかもしれないと懸念した可能性が高い。 (9) 開心術人工心肺を使用する開心術を受けた原告らのうち,原告101番については,フィブリノゲンそのものの補充,止血及び組織接着(血管吻合等)のために,また,人工心肺を使用しなかった原告113番については,止血及び組織接着(心膜縫合)のために,特定フィブリノゲン製剤が注射又は糊として投与・使用される状況にあった。同様の手術において,特定フィブリノゲン製剤を投与した例が報告されていることからも,手術の際に大量に出血してDICを引き起こして特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあった可能性及び医師らがDICを引き起こすかもしれないと懸念した可能性が高い。 (10) 開腹術開腹術という手術侵襲によってフィブリノゲンは減少し,また,手術侵襲によって損傷組織からの滲出性出血が生じることがある。 腹部,特に内臓の疾患により開腹術を受け,その際に大量出血を来す状況にあった 開腹術という手術侵襲によってフィブリノゲンは減少し,また,手術侵襲によって損傷組織からの滲出性出血が生じることがある。 腹部,特に内臓の疾患により開腹術を受け,その際に大量出血を来す状況にあった原告ら(原告52番,亡原告56番,原告80番,84番,105番,106番,110番,112番,117番,123番,143番,155番)については,同様の手術において,特定フィブリノゲン製剤を投与した例が報告されていることから,手術の際に大量に出血してDICを引き起こして特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあった可能性及び医師らがDICを引き起こすかもしれないと懸念した可能性が高い。 (11) 骨折等骨折等の傷害を負って外科的手術を受けた際に大量出血などを来す状況にあった原告ら(原告12番,21番,24番,亡原告74番,原告76番,100番,107番,亡原告122番,原告 142番,148番,151番,155番,158番,159番)については,同様の手術において,特定フィブリノゲン製剤を投与した例が報告されていることから,手術の際に大量に出血してDICを引き起こして特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあった可能性及び医師らがDICを引き起こすかもしれないと懸念した可能性が高い。 (12) 皮膚移植等皮膚移植等の外科的手術を受けた原告17番については,同様の手術において,特定フィブリノゲン製剤を投与した例が報告されていることから,手術の際に大量に出血してDICを引き起こして特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあった可能性及び医師らがDICを引き起こすかもしれないと懸念した可能性が高い。 (13) 耳鼻咽喉科手術耳鼻咽喉科において手術を受けた ィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあった可能性及び医師らがDICを引き起こすかもしれないと懸念した可能性が高い。 (13) 耳鼻咽喉科手術耳鼻咽喉科において手術を受けた原告ら(亡原告14番,亡原告85番)については,同様の手術において,特定フィブリノゲン製剤を投与した例が報告されていることから,手術の際に大量に出血してDICを引き起こして特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあった可能性及び医師らがDICを引き起こすかもしれないと懸念した可能性が高い。 (14) 白血病等白血病又は貧血にり患した原告ら(原告13番,96番)については,同様の病態について,特定フィブリノゲン製剤を投与した例が報告されていることから,大量に出血してDICを引き起こして特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあった可能性及び医師らがDICを引き起こすかもしれないと懸念した 可能性が高い。 (15) 消化器出血消化器出血の疾患にり患した原告30番については,同様の病態について,特定フィブリノゲン製剤を投与した例が報告されていることから,大量に出血してDICを引き起こして特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあった可能性及び医師らがDICを引き起こすかもしれないと懸念した可能性が高い。 (16) 切創等事故や手術によって切創等を負った原告ら(原告3番,22番,163番)については,同様の病態において,特定フィブリノゲン製剤を投与した例が報告されていることから,手術等の際に大量に出血してDICを引き起こして特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあった可能性及び医師らがDICを引き起こすかもしれないと懸念した可能性が高い。 3 原 いることから,手術等の際に大量に出血してDICを引き起こして特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあった可能性及び医師らがDICを引き起こすかもしれないと懸念した可能性が高い。 3 原告らに関する個別の主張前記類型別主張において記載のあるもののほかは,別紙原告1~163番関係の「第1 当事者の主張」に記載のとおり。 4 厚生労働大臣の違法な公権力行使及び過失の有無(原告らの主張)前提事実2及び3の知見等に照らせば,厚生労働大臣が,①非加熱フィブリノゲン製剤及び非加熱血液凝固第Ⅸ因子製剤の製造承認に際して,その適応を先天性疾患に限定しなかったこと,②非加熱フィブリノゲン製剤及び非加熱血液凝固第Ⅸ因子製剤の製造承認後,適応から先天性疾患以外の疾患を速やかに排除し,ミドリ十字において医療機関等に対しその旨の周知をさせることを怠ったこと,③非加熱フィブリノゲン製剤及び非加熱血液凝固第Ⅸ因子製剤 の製造承認後,適時に同製剤を再評価指定することを怠ったこと,④加熱フィブリノゲン製剤の製造承認に際して,適応を先天性疾患に限定しなかったこと,⑤非加熱及び加熱フィブリノゲン製剤並びに非加熱血液凝固第Ⅸ因子製剤について,ミドリ十字に製剤による肝炎感染の危険性及び肝炎の重篤性を警告させ,あるいは自らこれを行わなかったことは,違法な職務執行あるいは権限の不行使に当たり,かつ,厚生労働大臣には過失がある。 (被告及び補助参加人の主張)争う。 5 損害(原告らの主張)(1) 原告ら又はその被相続人であるC型肝炎ウイルス感染者は,致死性,難治性,進行性の疾患であるC型肝炎にり患したことにより,身体的障害,精神的苦痛を受けるだけでなく,社会生活,家庭生活,経済生活及び日常生活のあらゆる場面にお あるC型肝炎ウイルス感染者は,致死性,難治性,進行性の疾患であるC型肝炎にり患したことにより,身体的障害,精神的苦痛を受けるだけでなく,社会生活,家庭生活,経済生活及び日常生活のあらゆる場面において,広範な被害を受け続ける。これらの被害はそれぞれが別個独立して存在するのではなく,相互に影響し続け,全人格的な複合的被害となっている上,感染時から現在,将来にわたって発生するものである。 このため,請求額を被害項目ごとに算出し,個別に立証することは極めて困難であるから,本件訴訟における損害賠償額の算定方法としては,多岐にわたる複合的被害を総体としての被害として捉えることにより,損害の金銭的評価の基となる被害グループにより区分した包括一律請求によることが妥当である。 (2) 被害グループによる区分は,特措法6条所定の区分と同一とするのが相当であり,以下のとおり3類型の損害額が認められる べきである。ただし,C型肝炎ウイルス感染者が死亡した場合は,それぞれの相続人につき,相続人の頭数で除した金額(1万円未満切捨て)を請求する。 ア慢性C型肝炎が進行して,肝硬変若しくは肝がんに罹患し,又は死亡した者(1号) 4000万円イ慢性C型肝炎に罹患した者(2号) 2000万円ウ上記以外の者(3号) 1200万円(被告及び補助参加人の主張)原告らの主張は争う。 第3章当裁判所の判断第1 認定事実 1 C型肝炎に関する知見(1) 出血機構特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤は,いずれも止血作用を有する製剤であり,その適応症や臨床的評価,他の止血剤との相違点を理解する前提として,出血及び止血の仕組みの理解が必要であることから,以下,本項及び後記(2)において,出血及び止血 ずれも止血作用を有する製剤であり,その適応症や臨床的評価,他の止血剤との相違点を理解する前提として,出血及び止血の仕組みの理解が必要であることから,以下,本項及び後記(2)において,出血及び止血に関する医学的知見を記載する。 ア血液の生理的役割(甲ア4,5,乙ア1)血液は,血管中で流動性を保ちながら全身を循環しており,人は血液の循環によって生命を維持している。 血液は,赤血球,白血球及び血小板の3系統の血液細胞(血球)が,血漿たんぱく,糖,脂質,電解質,老廃物,水などから構成される血漿(血液の約55%を占める。)という液体成分中に浮遊しているものである。血液の生理的役割は,止血・凝固・線溶(線維素(フィブリン)溶解)系が重要な部分を占 める。 イ出血の意義(甲ア39,甲ケ1の1,甲ケ7,乙ア121)出血とは,血液成分,主に赤血球が血管外へ出ることをいう。最も多い原因は外傷であるが,外科的処置によっても起きる。 出血は,破綻性出血と漏出性出血に大きく分けられる。 破綻性出血は,血管が破綻することで血液成分が外に出るもので,破綻した血管の種類により出血の性状が異なる。動脈性の場合,鮮紅色で拍動性の多量の出血となる。静脈性の場合は,暗赤色でじわじわと出血し,多量の出血となることもある。毛細血管性の場合は,滲み出るような出血で,出血部位が分からないこともある。 漏出性出血は,血管に破綻のない出血で,内皮細胞や基底膜の障害による透過性亢進が原因となる。滲み出るような出血で,毛細血管や細静脈でみられることが多い。 出血は,他に,大きさや臓器などで分類される。例えば,打撲などで皮下(真皮,皮下脂肪など)に出血が生じた状態を皮下出血,胃からの出血は胃出血,消化管からの出血が口より排出さ られることが多い。 出血は,他に,大きさや臓器などで分類される。例えば,打撲などで皮下(真皮,皮下脂肪など)に出血が生じた状態を皮下出血,胃からの出血は胃出血,消化管からの出血が口より排出される場合は吐血,肛門からの出血は下血という。 また,出血がその臓器に広範囲に認められる状態をびまん性出血,出血が極めて小さい状態を点状出血,組織内に多量に血液が貯留する状態を血腫という。 ウ出血の原因(甲ケ1の1,甲ケ7)粥状動脈硬化が高度になると,腹部大動脈壁が脆弱となり,膨脹して動脈瘤を形成し,それが破裂して後腹膜腔に出血が起こる。同様に,先天的に脆弱な脳動脈に動脈瘤(嚢状 (桑実状)動脈瘤)が合併し,くも膜下出血を引き起こすことがある。 ある種の感染症(肺結核など)や腫瘍の浸潤により,血管が侵食され出血することもある。 出血は毛細血管レベルの傷害によっても起こる。例えば,鈍器による外傷で起こる毛細血管の破綻は,明瞭に,打撲傷の外見を呈する。 消化性潰瘍(動脈性出血)や食道静脈瘤(静脈性出血)による胃腸管出血のように,体内腔へ出血することもある。このような場合,大量の新鮮血が胃腸管を満たす。漿膜腔(胸膜,心膜,腹膜を構成する2葉の漿膜の間の空間のこと)への出血は放血状態となり大量の血液が貯留する。 血小板の大幅な減少(血小板減少症)や凝固因子の欠乏(血友病における第Ⅷ因子の欠乏)では,明らかな外傷がみられなくても出血を来す。これは,毛細血管壁それ自体だけでは血管内の血液を保持するのに十分ではなく,通常の活動に伴って生じ得る小血管や毛細血管の小さな外傷からの出血は,正常な血液凝固系の働きによって予防されているところ,この予防ができなくなることによる。 ビタミンC欠乏症は支持組織の異常を来し の活動に伴って生じ得る小血管や毛細血管の小さな外傷からの出血は,正常な血液凝固系の働きによって予防されているところ,この予防ができなくなることによる。 ビタミンC欠乏症は支持組織の異常を来し,毛細血管の脆弱化と出血を引き起こす。 分娩中及び分娩後2時間までの出血を分娩時出血という。 正常分娩では,分娩第1期,第2期(詳細は後記(2)には血性分泌程度の少量の出血を認めるのみである。分娩第1期,第2期における異常出血の原因には,前置胎盤,常位胎盤早期剥離,辺縁静脈洞破裂,前置血管などがある。分娩 第3期(胎児娩出から胎盤娩出まで)の出血は,正常分娩では100~200ml程度認められる。胎盤娩出後に500ml以上の出血を認める場合,後産期出血多量という。 外科的侵襲は出血の原因となり,外科手術も外科的侵襲に含まれる。外科手術とは,身体に存在する何らかの病的変化を取り除き解決することを目的に,又は病的ではないが美容的な目的などから,身体に対して行われる観血的,すなわち身体に何らかの傷害を加え出血を来す治療のことをいう。 (2) 止血機構ア出血の場合,当該箇所において,直ちに出血を止めて血液の損失を防ごうとする機構(止血機構)が働く。この止血機構には,血管,血小板,血液凝固因子の三つの要素が関わっており,血液凝固因子には,第Ⅰ因子(フィブリノゲン),第Ⅱ因子(プロトロンビン),第Ⅲ因子(組織因子),第Ⅶ因子(安定因子),第Ⅸ因子(クリスマス因子),第Ⅹ因子(ステュアート因子)等がある(ローマ数字でⅠからXⅢまでの12種(第Ⅵ因子は欠番。)その他3種の計15種存在する。)。 止血機構は,①血管収縮,②血小板血栓の形成(一次止血血栓),③血液凝固の結果起こる血餅(血液の凝固により形成される暗赤色の塊のこと)の形 (第Ⅵ因子は欠番。)その他3種の計15種存在する。)。 止血機構は,①血管収縮,②血小板血栓の形成(一次止血血栓),③血液凝固の結果起こる血餅(血液の凝固により形成される暗赤色の塊のこと)の形成(二次止血血栓),④血餅中に出現する線維組織による永久的閉鎖あるいは線溶の4段階からなっている。 (甲ア1,2,4,5,19,乙ア85~87,121)血管収縮血管が破れると,神経反射,筋のれん縮,血小板などからの液性因子により血管収縮が起こり,これにより傷口を小さ くして出血量を減らそうとする。 一次止血血栓の形成血液は通常(生理的状態),血管内を循環していれば凝固せず,血栓(血管を詰まらせる血液凝塊)を作らない。これは,血管の内面を覆い,血液と接触する血管内皮細胞において,血栓の形成を阻害する因子(プロスタグランジンI2 ,ヘパリン硫酸,トロンボモジュリン,組織因子経路阻害因子)が発現しているからである。血管内皮細胞のこのような性質を「抗血栓性」という。 血管が破れると,その局所の血管内皮細胞が破壊され,内皮細胞直下の結合組織(コラーゲン,エラスチンなど)が露出し,血液と接触する。 血液中の血液細胞のうち,この結合組織に最初に粘着してこれを覆おうとするのが血小板である。粘着した血小板は活性化されて,その細胞内にある顆粒から血小板凝集促進物質(アデノシン二リン酸,セロトニンなど)を放出して,他の血小板を次々と粘着・凝集させて血小板血栓(一次止血血栓)を形成し,血管の破れた傷口を塞ぐ。なお,血管の傷が極めて小さい場合や,毎日のように体中の血管のあちこちにできる極めて小さい孔は,後記エの血液凝固ではなく,血小板凝集で形成される血小板血栓により修復される。 二次止血血栓の形成血小 て小さい場合や,毎日のように体中の血管のあちこちにできる極めて小さい孔は,後記エの血液凝固ではなく,血小板凝集で形成される血小板血栓により修復される。 二次止血血栓の形成血小板凝集で形成される血小板血栓は,不安定であり,止血機構として不十分なので,以下のような血液凝固反応により,フィブリノゲンからフィブリン網が形成され,血小板血栓が補強される。 血液凝固とは,血漿中の血液凝固因子が連鎖的に反応して,可溶性のフィブリノゲンが不溶性のフィブリンに転換する反応(血液凝固因子の連鎖的な反応が,あたかも滝(カスケード)が流れ落ちるがごとく進行するので,血液凝固カスケード又はカスケード反応と名付けられている。)をいうところ,前記反応は,血管内皮細胞が破壊されることを契機として始まる。血液凝固機構には,血液凝固因子(前記(2)ア),リン脂質及びカルシウムイオンが関与し,凝集した血小板のリン脂質は,血液凝固反応が効率的に進行するのに必要な場となり,血液凝固を促進する。 傷害を受けた血管内皮細胞やマクロファージは,組織因子(第Ⅲ因子)を発現し,それに血液が触れると凝固反応が始まる。そして,多数の血液凝固因子が次々と連鎖的に反応を起こし,活性化されたステュアート因子(第X因子)はプロトロンビン(第Ⅱ因子)をトロンビンに変換し,トロンビンが血小板を活性化して更に凝集を進めるとともに,血小板血栓の周囲にあるフィブリノゲン(第Ⅰ因子)をフィブリン(線維素)に変換して,フィブリン同士が網の目状になって結合してフィブリン網が形成され,このフィブリン網が血小板血栓を覆うことにより止血血栓が完成する。なお,血液凝固には,血管外に漏れた血液の凝固である外因系血液凝固及び血管内での血液の凝固である内因系血液凝固があるところ 成され,このフィブリン網が血小板血栓を覆うことにより止血血栓が完成する。なお,血液凝固には,血管外に漏れた血液の凝固である外因系血液凝固及び血管内での血液の凝固である内因系血液凝固があるところ,両経路は,引き金となる最初の部分は互いに異なるが,ステュアート因子(第Ⅹ因子)のところで経路は合流し,前記のプロトロンビン(第Ⅱ因子)からトロンビンが形成される経路以降,すなわち,形成されたトロンビンの働きによっ て,フィブリノゲン(第Ⅰ因子)をフィブリンに変換して,フィブリン網が形成されるという経路へと流れる点では共通である。 フィブリン網が形成されると,その間に赤血球が閉じ込められ,赤い凝固血塊である血餅(前記(2)ア)ができる。血餅は,血管壁の傷が大きければ15~20秒で,傷が小さければ1~2分で形成され始める。血管の傷がそれほど大きくなければ,破れた血管は3~6分のうちに血餅で満たされる。更に20分から1時間経過すると血餅は退縮を始める。 これにより血管はより強固に閉鎖される。 線溶前記及びのとおり形成された強固な血栓は,血管の傷口を塞ぐが,止血が完成した後もフィブリンが血管内に残存すると,血管が目詰まりを起こし,血栓症を惹起し,組織の虚血,さらには細胞破壊を引き起こす。人の生体は,そのようなことが容易に起こらないように,形成した血栓をセリン酵素であるプラスミンが徐々に分解して血管を再開通するシステムを持っており,これを線溶という。 イ正常分娩時の止血機構(乙ア122,乙カ10,48,51,乙チ11)正常分娩の臨床経過前記(1)分娩は,以下の第1期から第3期からなっている。分娩の所要時間と胎盤娩出及び出血との関係は以下のとおりの機転をたどるとされている。 ,48,51,乙チ11)正常分娩の臨床経過前記(1)分娩は,以下の第1期から第3期からなっている。分娩の所要時間と胎盤娩出及び出血との関係は以下のとおりの機転をたどるとされている。 a 分娩第1期分娩開始(規則的な子宮収縮(陣痛)開始)から,子宮 頸管(子宮の出口部分)が全開大して,子宮頸管と膣とが一つの産道になる時期b 分娩第2期子宮頸管の全開大から胎児娩出が完了するまでの時期c 分娩第3期胎児娩出から,胎盤(子宮と胎児の間の血管の通り道)が娩出完了するまでの時期で,後産期又は胎盤娩出期ともいう。 子宮壁から剥離した胎盤は母体外に娩出されるが,その際にみられる胎盤娩出までの出血を,第3期出血又は後産期出血と呼び,出血量は通常200~300mlであり,500ml以上は異常とされる。 胎盤剥離及び出血の機転は,①子宮が収縮して胎盤との間にずれが生ずると,組織の最も薄弱な部分で断裂が起こり,剥離を開始し,②子宮胎盤血管もともに断裂して出血を来し,その出血は,胎盤後血腫(胎盤が子宮壁から剥離してその部分に出血してできた血腫で,胎盤娩出後に胎盤が自然に子宮壁より剥離する過程にみられるもの)となり,あるいは子宮壁と卵膜(胎児と羊水を包む膜。脱落膜,絨毛膜,羊膜の3層からなる。)との間を伝わって子宮外に流出する。 胎盤の剥離は早いものは胎児の分娩前,すなわち分娩第2期の終わりから起こるものもあるが,胎児娩出後およそ10分以内に完了するのが生理的とされる。剥離した胎盤は子宮収縮により子宮下部に圧出され,腹圧により頸管及び膣を通って膣外に排出されるという機転をたどるとされ ている。 d 分娩第3期以降(分娩第4期と呼ばれることもある。)分娩終了後2時間をいう。 特に大きく出血を来 腹圧により頸管及び膣を通って膣外に排出されるという機転をたどるとされ ている。 d 分娩第3期以降(分娩第4期と呼ばれることもある。)分娩終了後2時間をいう。 特に大きく出血を来す時期であり,出血の管理が行われる。胎盤の娩出が終わると,子宮は硬く収縮し,児頭大になり,子宮底は臍下約3横指径に来る。子宮筋収縮により,子宮内面の断裂した血管端は圧迫されるから出血はほとんど止まるのが通常である。 分娩時の止血機構a 正常な止血作用分娩直後,子宮の胎盤剥離面には大小無数の破綻血管が露出し,出血が起こるが,子宮筋の著明な収退縮が起こる結果,血管腔は非常に狭められ,血管内圧は低下し,血流は緩徐化ないしは停止するに至る。これはいわゆる生物学的血管結紮(管を縛って内容物が通らないようにすること)といわれているものであるが,これには,子宮筋自体の特殊な走行が関与している。 他方,胎盤剥離面の血管は,露出されたことにより,湿った状態に変わり,これと一過性の血管収縮や,前記生物学的血管結紮とが相まって,血小板栓塞が起こる。さらに,血小板からセロトニンやその他の血小板因子が放出され,これにより血管の収縮はより強固になり,これに引き続いて血液凝固と血餅収縮とが起こり,血栓が形成されるに至る(血液凝固)。この血栓の一部は後で溶解(線溶)するが,一部は組織化され,ここに初めて永久止血が完成する。 以上のような,巧緻な各因子の働きが整然と行われるこ とによって,正常分娩時の出血量は多くてせいぜい300ml以下という少量にとどまることができる。 b 分娩時の異常出血についてこれに対し,正常な子宮収縮が得られなかったり,正常な凝固因子の作用を期することができなくなったりすることによって,身体の基礎状態として出血性 どまることができる。 b 分娩時の異常出血についてこれに対し,正常な子宮収縮が得られなかったり,正常な凝固因子の作用を期することができなくなったりすることによって,身体の基礎状態として出血性素因が出現した場合には,前記の分娩時の止血機構が十分に働かなくなり,産科異常出血の事態を招来しやすくなる。例えば,後記(23)イの弛緩出血の場合には,子宮収縮不全により生物学的血管結紮が作用せずに出血が続く。常位胎盤早期剥離や羊水塞栓の場合には,母体血中に組織トロンボプラスチンなどの凝固促進物質が流入して血液凝固異常が起こり,DIC(後記(3)において詳述する。)といった出血傾向に至る病態を招来し,大量出血に至ることがある。 (3) DICア意義及び症状(甲ア2,5,6,19,32,乙ア125,乙ケ2)DIC(播種性血管内凝固症候群 disseminatedintravascularcoagulationsyndrome)とは,種々の基礎疾患に伴って発現する,何らかの原因により血管内で血液凝固が活性化されて大量のトロンビン(血漿中のフィブリノゲンをフィブリンに変換する酵素)が生成され,全身の主として細小血管内に播種性(播種とは,作物が種を播くことを意味する言葉で,ここでは,全身の血管内に広く血栓が形成される様子を表す。)の微小血栓形成が起こり,凝固系の過度の活性化に基づく虚血性臓器障害を来すとともに,線溶系の 活性化による二次線溶亢進及び血小板や凝固因子の消費性低下による凝固障害によって著明な出血傾向を生ずる病態をいう。DICの病態の中心は,血管内でのトロンビンの生成であり,その結果,血小板活性化,血液凝固,血栓形成と線溶が引き起こされる。 前記(2)のとおり,止血機構は,血管,血小板,血液凝固 態をいう。DICの病態の中心は,血管内でのトロンビンの生成であり,その結果,血小板活性化,血液凝固,血栓形成と線溶が引き起こされる。 前記(2)のとおり,止血機構は,血管,血小板,血液凝固因子の三つの要素によっているところ,一次止血血栓の形成に関与している血管や血小板に障害が起きると,出血傾向が現れるものの,凝固・線溶系に異常がなければ,一旦出現した出血傾向は拡大せずにすぐに止まるのが普通である。 一方,凝固・線溶系の異常では,血管・血小板系に異常がなければ,出血が始まる契機がないので,易出血性が認められないが,血管の破綻などで一旦出血が生ずると,これを阻止することができず,皮膚の斑状出血や深部出血,関節内出血など広汎な止血困難を引き起こす。 このように,出血傾向が単一の病因で生じている場合には,出血しやすいが,一旦出てもすぐに止まる形式の血管・血小板系の異常か,易出血性はないが,一旦出たら止まらない形式の凝固・線溶系の異常かのいずれかということになる。ところが,この両者が同時に生じてしまい,重症の出血傾向を示す場合があり,その代表がDICである。DICでは,大量の組織因子(第Ⅲ因子)が血中に流入し,あるいは血液に接触する細胞上に組織因子(第Ⅲ因子)が発現し,大量に形成された第Ⅶa 因子-組織因子複合体がステュアート因子(第Ⅹ因子)を直接活性化する機構,すなわち外因系凝固反応が優位に進展する。活性化された第Ⅹ因子は,更に第 Ⅹa-第Ⅴa 因子複合体によりプロトロンビン(第Ⅱ因子)を活性化し,大量のトロンビンが生成される。こうして,非限局的に持続的に大量のトロンビンが形成され,全身にフィブリノゲン血栓が形成される。この結果,血小板・凝固因子の消費が起こり,血栓を溶解する二次線溶と,線溶亢進を抑制する抗線溶 れる。こうして,非限局的に持続的に大量のトロンビンが形成され,全身にフィブリノゲン血栓が形成される。この結果,血小板・凝固因子の消費が起こり,血栓を溶解する二次線溶と,線溶亢進を抑制する抗線溶系の活性化が同時に観察される。 DICの臨床症状は,皮下出血,消化管出血,尿路系の出血など多岐にわたる。臓器障害は呼吸障害,肝機能障害,腎障害,意識障害として現れる。 出血症状が著明な例は,血栓による循環障害に基づく臓器症状が見られないことが多く,逆にこのような臓器症状が著明な例は,出血の程度は血小板の低下の程度に左右され一般に軽度である。前者では線溶亢進が著明で止血のための血栓までが溶解され出血が重篤であるのに,血管内血栓がほとんど溶解され臓器症状は著明でなくなるためと解釈され,これは「線溶優位型DIC」と呼ばれる。後者では,線溶亢進は見られてもさほど著明ではないと解釈される。これは「凝固優位型DIC」と呼ばれる。 DICは,成因により,凝固惹起物質の血管内流入によるもの(Ⅰ型DIC),炎症性サイトカインストームによるもの(Ⅱ型DIC),血管壁の抗血栓性低下や血流異常によるもの(Ⅲ型DIC)に分けられる。 Ⅰ型DICは,羊水塞栓では胎盤からの逆流により,外傷や外科手術などでは損傷組織から組織因子が血中に流入し,外因系凝固反応を病的に活性化させることによって生ずる。 Ⅱ型DICは,細菌感染によるものである。凝固反応の著 しい活性化と線溶反応の抑制により,難治性の血栓が全身に多発する。 Ⅲ型DICは,膠原病や大動脈瘤などが原因となるもので,軽度であるが常に凝固反応が亢進する病態を来す。 イ産科DIC産科領域において生じるDICは,特に産科DICと呼ばれることがある。産科DICは基礎疾患と密接な関係があるとさ 因となるもので,軽度であるが常に凝固反応が亢進する病態を来す。 イ産科DIC産科領域において生じるDICは,特に産科DICと呼ばれることがある。産科DICは基礎疾患と密接な関係があるとされ,基礎疾患の中でも常位胎盤早期剥離の割合が最も多い。産科領域におけるDICの頻度は,「一般病院で0.1%,大学病院で0.2~0.5%」であるとされている。 産科では,妊娠に伴って循環系が変化するという特性によって,他科領域とは異なりDICが発生しやすい素地があるといわれ,また,急性で突発的なDICが発生する。 妊娠に伴う循環系の変化としては,まず,妊娠時においては,非妊娠時と比べて,血小板粘着能が亢進し,凝固因子が増加し,線溶も抑制気味の状態にあり,止血機構上有利な状態にあることが挙げられる。また,妊娠によって循環血液量が増加し,かつ,子宮周辺に血液のうっ滞があり,静脈瘤など血流の停滞しやすい場所があることも挙げられる。ここに血栓ができやすく,また,産科的損傷によって大出血を起こして出血性ショックに陥り,やがてDICに発展することもある。さらに,羊水成分が,DICの引き金となる。羊水はトロンボプラスチン(組織因子。子宮の創面に多くある。)に富み,羊水が血中に入ると血液凝固が過度に活性化されるという点も,産科DICの特徴の一つである。 また,分娩前後に起こる大出血により,循環血液量が異常に 低下することによって産科ショック(ショックとは,全身的な末梢の循環不全により生活機能が極度に低下した状態をいい,ショックのうち産科領域で発症するものを産科ショックという。広義には,偶発合併症によるものを含めて妊産婦がショック状態に陥った場合すべてをいうが,一般的には,妊娠又は分娩に伴って発生した病的状態に起因するショックを産科ショッ るものを産科ショックという。広義には,偶発合併症によるものを含めて妊産婦がショック状態に陥った場合すべてをいうが,一般的には,妊娠又は分娩に伴って発生した病的状態に起因するショックを産科ショックという。)に陥ることもある。なお,DICは,産科ショックの重大な原因の一つであるとともに,DIC以外の他原因で生じた出血性ショックなどが血管内血液凝固を発生させ,これによってショックが更に悪化すると考えられている。すなわち,出血性ショックを引き起こすほどの大量出血があった場合,出血源において凝固因子が大量に消費され,これにより凝固因子が減少ないし欠乏して止血が困難となり,続いて線溶活性の亢進によりDICが完成する。 産科DICには,子宮内に存在する血液凝固物質が血管に流入するためにDICとショックがほぼ同時に発生するタイプと,多量出血による出血性ショックに続発してDICが起こるタイプが存在する。前者に該当するのは,常位胎盤早期剥離,羊水塞栓症であり,後者には,前置胎盤,弛緩出血,産道裂傷などの分娩時の大量出血がある。 産科DICの特徴の一つは,常位胎盤早期剥離や羊水塞栓症など,すなわち子宮内に存在する血液凝固物質が血管に流入するためにDICとショックがほぼ同時に発生するタイプで,出血量の少ない早期よりDICや消費性凝固障害を伴い得ることである。さらに,産科DICに陥ると,子宮が弛緩し生物学的結紮が機能しないことから,急性で突発的な制御できない大量 出血となる。ただし,原因疾患の排除が比較的容易であり,また,前記のとおり産科DICは基礎疾患との関係が密接であるために,原因疾患の排除を行えば以後の問題が少ないという点も産科DICの特徴の一つである。 (甲カ4,甲キ1の2,甲キ4の9,乙カ15,39,51)ウ は基礎疾患との関係が密接であるために,原因疾患の排除を行えば以後の問題が少ないという点も産科DICの特徴の一つである。 (甲カ4,甲キ1の2,甲キ4の9,乙カ15,39,51)ウ DICの原因となる基礎疾患(乙ア125,乙カ15,39,乙ケ2,7) のとおり,DICとは,種々の基礎疾患に伴って発現する病態であるが,DICには,必ず,その原因となる基礎疾患が存在し,DICが単独で発症するということはあり得ない。 DICの原因となり得る基礎疾患としては,感染症,ショック,悪性腫瘍(白血病や癌),産科的疾患(常位胎盤早期剥離,羊水塞栓,死胎稽留症候群,胞状奇胎,妊娠中毒症(平成17年4月からは「妊娠高血圧症候群」という名称に改められている。)),血管内溶血,広範な組織損傷(大手術後,広範囲の外傷,広範囲の熱傷),血管病変(膠原病)などがある。 産科領域におけるDICの基礎疾患には,常位胎盤早期剥離(40.8%),DIC型後期出血(16.8%),重症感染症(11.2%),帝王切開後DIC(4.8%),子癇(4%),羊水塞栓(3.2%),死児稽留症候群(1. 6%)などがあるとされている。 外科領域におけるDICの基礎疾患は,大部分は重症感染症と悪性腫瘍とされており,重症感染症はその70%を占めており,悪性腫瘍例のDICは,多くは進行癌であるとされ ている。外科領域のDICにおいては,熱傷,感染創,腫瘍といった局所病変が必ずあり,これらの局所において,プロトロンビン(第Ⅱ因子)をトロンビンに転換させる反応を進行させる条件があるとされる。例えば,組織の崩壊は,組織液中のいわゆる組織トロンボプラスチンを血中へと流入させ,また,血管内膜の損傷や脱落は異物表面を提供し,血小板,凝血系を活性化する。 を進行させる条件があるとされる。例えば,組織の崩壊は,組織液中のいわゆる組織トロンボプラスチンを血中へと流入させ,また,血管内膜の損傷や脱落は異物表面を提供し,血小板,凝血系を活性化する。 エ DICの診断基準(甲ア32,甲カ8,甲キ1の2,甲キ4の9,10,13,乙カ15,乙シ1,2)血栓発現の速度や程度を検出する適当な方法がないため,どの程度の血栓の多発を生じた場合にこれをDICといって良いかについての明確な基準はない。検査所見上では血小板と凝固因子,特にフィブリノゲンの消費による低下又は急激な減少,線溶亢進によるフィブリノゲン/フィブリン分解産物及び安定化したフィブリノゲン分解産物の増加等がみられる。 DICの概念が広まった後,昭和52年には,厚生省特定疾患汎発性血管内血液凝固症調査研究班が結成され,国内におけるDICの研究が本格的に始まった。前記研究班は,内科,外科,産婦人科,小児科,病理学,臨床検査等の多様な領域の研究者により構成され,DICの病態解明,診断基準作成,治療・予防法の確立を目指して様々な視点から研究が行われ,昭和55年には,国内における最初のDICの診断基準である厚生労働省のDIC診断基準が作成され,その後,厚生省特定疾病血液凝固異常症調査 研究班により,昭和63年に改訂された。 他方,産科DICについては,突発的に発生し経過が急性であり診断に時間的余裕がないため,厚生労働省のDIC診断基準がなじまないとして,基礎疾患の重篤性と臨床症状に重点を置いてスコア化すべきとの考えから,日本産科婦人科学会は,昭和60年1月,産科DIC診断基準を発表した。これを受け,改訂後の厚生労働省のDIC診断基準は,「新生児,産科領域のDIC」及び「劇症肝炎のDIC」の診断には適用しないものと 産科婦人科学会は,昭和60年1月,産科DIC診断基準を発表した。これを受け,改訂後の厚生労働省のDIC診断基準は,「新生児,産科領域のDIC」及び「劇症肝炎のDIC」の診断には適用しないものとされている。 また,ISTH(InternationalSocietyonThrombosisandHaemostasis,血栓止血に関する国際学会)は,平成13年,新しいDIC診断基準を発表した。 この診断基準はDICの臨床症状(出血症状及び臓器症状)がみられる顕性DIC診断基準とそれがみられない非顕性DIC診断基準に分け,顕性DIC診断基準は厚生労働省のDIC診断基準を参考にし,確実なDICを診断することを目的とするものとし,非顕性DIC診断基準はDICの早期診断を目的としている。 さらに,日本救急医学会は,平成17年,全身性炎症反応症候群(SIRS)に伴い発症するDICを早期診断し治療を開始する目的で,急性期DIC診断基準を公表した。 なお,前記各診断基準は,フィブリン糊としての使用の場合には当てはまらない。 b 厚生労働省のDIC診断基準(改訂前のもの)下記⒜~による合計点が7点以上はDIC,6点はD ICの疑い,5点以下はDICの可能性が少ないと判定される。ただし,白血病及び類縁疾患,再生不良性貧血などは4点以上でDIC,3点でDICの疑い,2点以下でDICの可能性が少ないと判定される。 記⒜ 基礎疾患(あり:1点,なし:0点)① 感染症(グラム陰性菌感染症,重症グラム陽性菌感染症,重症ウイルス感染症)② ショック③ 悪性腫瘍(白血病,癌・肉腫の浸潤及び播種性転移)④ 産科的疾患(胎盤早期剥離,羊水塞栓,死胎稽留,胞状奇胎,妊娠中毒)⑤ 血管内溶血⑥ 組織 症ウイルス感染症)② ショック③ 悪性腫瘍(白血病,癌・肉腫の浸潤及び播種性転移)④ 産科的疾患(胎盤早期剥離,羊水塞栓,死胎稽留,胞状奇胎,妊娠中毒)⑤ 血管内溶血⑥ 組織損傷(大手術後(肺,前立腺,膵,副腎の手術,長時間にわたる体外循環),広範囲の外傷,広範囲の熱傷)⑦ 血管病変(Kasabach-Merrit 症候群,心臓瘤・大動脈瘤,血栓性血小板減少性紫斑病,溶血性尿毒症症候群,膠原病)⑧ その他(重症呼吸窮迫症候群,移植臓器の拒絶反応,毒蛇咬傷,電撃性紫斑病など)臨床症状出血症状(あり:1点,なし:0点)① 紫斑,注射部位よりの異常出血,下血,性器出血② 血尿,創傷面よりの異常出血,歯肉出血,鼻出 血,頭蓋内出血,血痰③ その他の出血④ 基礎疾患と直結する出血は0点とする。 臓器症状(あり:1点,なし:0点)① 無尿,乏尿,呼吸困難,ショック,黄疸,精神神経症状,下痢② 静脈血栓,動脈血栓,4肢末端壊死③ その他DICに基づくと思われる症状④ 基礎疾患と直結する症例は0点とする。 検査成績① 血清FDP値(μ g/ml)40≦:3点,20≦~<40:2点,10≦~<20:1点,10>:0点(FDPとは,血液を凝固させる役割を果たしたフィブリンがプラスミンという酵素によって分解された産物である。FDPの異常な増加は,線溶作用が以上に亢進していることを示す。)② 血小板数(×103/μ l)50≧:3点,80≧~>50:2点,120≧~>80:1点,120<:0点③ 血漿フィブリノゲン濃度(mg/dl)100≧:2点,150≧~>100:1点,150<:0点 0≧:3点,80≧~>50:2点,120≧~>80:1点,120<:0点③ 血漿フィブリノゲン濃度(mg/dl)100≧:2点,150≧~>100:1点,150<:0点④ プロトロンビン時間(秒)20≦:2点,15≦~<20:1点,15>:0点 c 産科DIC診断基準厚生労働省のDIC診断基準は主に内科領域で使用されるが,産科DICにおいては,以下の理由から厚生労働省のDIC診断基準をそのまま使用することが不適当とされ,産科DIC診断基準が作成された。すなわち,前記イのとおり,産科DICには急性・突発性のものが多く,検査成績の判明を待つ前に色々な処置を進めなければならないという例が少なくないことや,急性腎不全などの臓器症状を合併することが多く,その予後は血液凝固学的所見よりも,むしろ臨床症状に左右されることが多いことから,臨床的な事項を重要視し,その結果からDICを早目に診断し,早期治療を始められるようなスコアリングとされた。 下記の⒜~の合計点が7点以下ではその時点ではDICとはいえず,8~12点ではDICに進展する可能性が高い,13点以上はDICとしてよいと判定される。 記⒜ 基礎疾患① 常位胎盤早期剥離(子宮硬直・児死亡:5点,子宮硬直・児生存:4点,超音波断層所見及びCTG所見による早剥の診断:4点)② 羊水塞栓症(急性肺性心:4点,人工換気:3点,補助呼吸:2点,酸素放流のみ:1点)③ DIC型後産期出血(子宮から出血した血液又は採血血液が低凝固性の場合:4点,2000ml以上の出血(出血開始から24時間以内):3点,1000 ml以上2000ml未満の出血(出血開始から24時間以内):1点)④ 子 液又は採血血液が低凝固性の場合:4点,2000ml以上の出血(出血開始から24時間以内):3点,1000 ml以上2000ml未満の出血(出血開始から24時間以内):1点)④ 子癇(子癇発作:4点)⑤ その他の基礎疾患:1点臨床症状① 急性腎不全(無尿(≦5ml/hr):4点,乏尿(5<~≦20ml/hr):3点② 急性呼吸不全(羊水塞栓症を除く。)(人工換気又は時々の補助呼吸:4点,酸素放流のみ:1点)③ 心,肝,脳,消化管などに重篤な障害ある時はそれぞれ4点を加える(心(ラ音又は泡沫性の喀痰など):4点,肝(可視黄疸など):4点,脳(意識障害及び痙攣など):4点,消化管(壊死性腸炎など):4点)④ 出血傾向(肉眼的血尿及びメレナ,紫斑,皮膚粘膜,歯肉,注射部位などからの出血:4点)⑤ ショック症状(脈拍(≧100/分):1点,血圧(≦90㎜Hg(収縮期)又は40%以上の低下):1点),冷汗:1点,蒼白:1点)⒞ 検査項目① 血清FDP値(≧10μ g/ml):1点② 血小板数(≦10×104/㎜3):1点③ 血漿フィブリノゲン濃度(≦150㎎/dl):1点④ プロトロンビン時間(PT)(≧15秒(≦50%)又はヘパプラスチンテスト≦50%):1点 ⑤ 赤沈(≦4㎜/15min 又は≦15㎜/hr):1点⑥ 出血時間(≧5分):1点⑦ その他の凝固・線溶・キニン系因子(例,AT‐ Ⅲ≦18㎎/dl又は≦60%,プレカリクレイン,α‐ PI,プラスミノゲン,その他の凝固因子≦50%):1点d 急性期DIC診断基準(甲ア32)⒜ 基礎疾患(全ての生体侵襲はDICを引き起こすことを念頭に置く。)(あり:1点,なし:0点)① 感 ,その他の凝固因子≦50%):1点d 急性期DIC診断基準(甲ア32)⒜ 基礎疾患(全ての生体侵襲はDICを引き起こすことを念頭に置く。)(あり:1点,なし:0点)① 感染症(全ての微生物による)② 組織損傷(外傷,熱傷,手術)③ 血管性病変(大動脈瘤,巨大血管腫,血管炎)④ トキシン/免疫学的反応(蛇毒,薬物,輸血反応(溶血性輸血反応,大量輸血),移植拒絶反応)⑤ 悪性腫瘍(骨髄抑制症例を除く。)⑥ 産科疾患⑦ 前記以外にSIRS を引き起こす病態(急性膵炎,劇症肝炎(急性肝不全,劇症肝不全),ショック/低酸素,熱中症/悪性症候群,脂肪塞栓,横紋筋融解,他)⑧ その他鑑別すべき疾患及び病態(診断に際してDICに似た検査所見・症状を呈する以下の疾患及び病態を注意深く鑑別する。)血小板減少① 希釈・分布異常(大量出血,大量輸血・輸液, 他)② 血小板破壊の亢進(ITP,TTP/HUS,薬剤性(ヘパリン,バルプロ酸等),感染(CMV,EBV,HIV 等),自己免疫による破壊(輸血後,移植後等),抗リン脂質抗体症候群,HELLP 症候群,SLE,体外循環,他)③ 骨髄抑制,トロンボポイエチン産生低下による血小板産生低下(ウイルス感染症,薬物など(アルコール,化学療法,放射線療法等),低栄養(VitB12,葉酸),先天性/後天性造血障害,肝疾患,血球貪食症候群(HPS),他)④ 偽性血小板減少(EDTA によるもの,検体中抗凝固剤不足,他)⑤ その他(血管内人工物,低体温,他)PT延長(抗凝固療法,抗凝固剤混入,VitK欠乏,肝不全,肝硬変,大量出血,大量輸血,他)FDP上昇(各種血栓症,創傷治癒過程,胸水,腹水,血腫,抗凝固剤混 血管内人工物,低体温,他)PT延長(抗凝固療法,抗凝固剤混入,VitK欠乏,肝不全,肝硬変,大量出血,大量輸血,他)FDP上昇(各種血栓症,創傷治癒過程,胸水,腹水,血腫,抗凝固剤混入,線溶療法,他)その他(異常フィブリノゲン血症,他)SIRSの判断基準① 体温 >38℃あるいは<36℃② 心拍数 >90/分③ 呼吸数 >20回/分あるいはPaCO 2 <32㎜Hg ④ 白血球数 >12,000/㎜3あるいは<4,000/㎜3あるいは幼若球数>10%(4) 基本的な止血方法ア循環血液量とショック循環血液量は体重に比例し,男性は75ml/kg,女性は65ml/kgである(約13分の1)。したがって,一般に,男性の場合,体重が70kgで5250ml,60kgで4500ml,女性の場合,体重が60kgで3900ml,50kgで3250mlが循環血液量の目安となる。 循環血液量の10%以上の血液が急速に失われると,ショックを呈するといわれている。循環血液量の30%以上の血液が喪失した場合には出血性ショックに陥り,生命の危機が生じるといわれている。 (甲ア5,39,甲タ22)イ出血への対応(乙ア86,104,119,121,123) 前記(2)のとおり,人の生体は精巧な止血機構を有しているから,一般に,生体に出血性素因(①血管壁の異常,②血小板の異常,③凝固系の障害,④線溶系の亢進)がなければ出血は自然に止まる。また,細小動脈,毛細血管,小静脈からの出血は,物理的操作による止血が不十分であっても,生体の持つ前記の精巧な止血機構により止血血栓が形成され,数分以内に止血は完了するとされる。 他方,動脈,小動脈,大静脈からの出血は,内在 脈からの出血は,物理的操作による止血が不十分であっても,生体の持つ前記の精巧な止血機構により止血血栓が形成され,数分以内に止血は完了するとされる。 他方,動脈,小動脈,大静脈からの出血は,内在性の止血機構による止血能力の限界を超え,これのみでは止血は困難であるから,圧迫・結紮などの物理的操作により血流を低下 させるとともに,血管破綻孔を閉鎖することが必要となる。 この出血・止血を外科的出血・止血と呼ぶ。通常,外科的出血は局所出血である。 以上のとおり,外科的出血は,例外的な出血性素因(局所線溶亢進等)が引き起こされる場合を除けば,基本的に物理的手段によって直接止血することができるから,その止血法としても,物理的手段(手術手技)が基本となる。 他方,出血性素因ないし出血傾向として,①血管壁の異常,②血小板の異常(一次止血異常),③凝固系の障害(二次止血異常),④線溶系の亢進といった,正常止血機構に異常が生じて,あるいはこれを凌駕するような刺激が加わり止血困難となる場合がある(これらが複合するDICにおいても同様である。)。 このような場合には,そもそも人の生体が持つ精巧な止血機構が正常に機能しないから,外科的止血による対応のみでは不十分であり,前記①~④の各出血性素因の状態に応じた薬物療法により改善ないし解消していくことが併せて必要となる場合がある。 ウ外科的止血(乙ア117~120,124,乙チ12~14) 一時的止血法a 圧迫法止血法の最も基本的な方法とされる。動脈性出血でも,実質性出血(肝臓,腎臓,脾臓など実質臓器の損傷面,切離面,臓器剥離面などからの出血部位の特定できない出血)に対しても,最初に行うべき手技になる。術者の手指 やガーゼ,タオル,スポン ,実質性出血(肝臓,腎臓,脾臓など実質臓器の損傷面,切離面,臓器剥離面などからの出血部位の特定できない出血)に対しても,最初に行うべき手技になる。術者の手指 やガーゼ,タオル,スポンジなどを用いて出血部を圧迫する。これにより,破綻した血管孔を塞いで血液の漏出を防ぐとともに,血管の圧迫により血流を低下させて,内在性の止血機構による止血を促す。 b タンポン法出血点が多数あり,創腔が深く,じわじわ湧出してきて,圧迫法のみでは止血困難な場合,ガーゼを何枚か創の中に詰めこんで圧迫止血する。初めに大きなガーゼを広げて創の底部に入れ,その中に何枚かガーゼを押し込むのをMikulicz タンポン法という。タンポン法による止血の原理は圧迫法と同様である。 c 緊縛法四肢の出血や手術に用いる。ゴムベルトの駆血帯を上腕,大腿に巻き付けて止血する。手術に際しては空気圧で締め付けるtourniquetband も用いられる。 永久止血法a 結紮法出血血管の断端をペアン(止血鉗子(止血のためのピンセット))で把持し,その下に糸を回して結紮する。血管断端のみを把持できない場合には,周囲組織も含めて結紮する。 b 縫合による止血頭皮などの硬い組織や,筋肉などのもろい組織からの出血に対する止血法である。単なる結紮だけでは糸が外れやすいため,止血部位に針糸を通してから結紮したり,Z形に針糸を通して結紮する方法をとる。 c 動脈壁・静脈壁からの出血に対する止血比較的太い動脈壁からの出血の場合,動脈自体を結紮止血すると,その支配領域が壊死に陥る場合がある。この場合は,一時的にペアン(止血鉗子)で血流を遮断し,血管用針付縫合糸で丁 らの出血に対する止血比較的太い動脈壁からの出血の場合,動脈自体を結紮止血すると,その支配領域が壊死に陥る場合がある。この場合は,一時的にペアン(止血鉗子)で血流を遮断し,血管用針付縫合糸で丁寧に縫合する。 その他a 焼灼法生体組織を切開したり,凝固止血したりするために電気メスが用いられることがある。 b 局所止血薬実質性出血が止血しにくいときは,トロンビン粉末,オキセシル,フィブリンフォーム,ゼラチンスポンジなどを局所に圧迫しながら貼布する。小出血に対しては温かい食塩水ガーゼによる圧迫,骨髄からの出血に対しては滅菌したワックスを用いる方法もある。 これらの製剤は,コラーゲン塩酸塩や酸化セルロース等を主成分としたもので,局所止血薬と呼ばれ,出血面に貼布することなどにより,止血効果を得るものである。局所止血薬は,各製剤により作用機序が異なっており,ヘモグロビンと結合して凝結塊を形成したり,出血面に付着して血小板の凝集を起こさせるとともに,血栓を形成させるなどして止血効果を得る。 c フィブリン糊現在では,フィブリンを生体組織接着剤として応用するためフィブリン糊をキット化した製剤が開発されている。 なお,このキット化した製剤は,後記(9)のとおり,特定 フィブリノゲン製剤を調製してできるフィブリン糊とは異なる。 エ産科領域における止血(甲カ9,乙カ9,10,52,55,62,86)産科領域における一般的な止血法は,具体的には分娩第3期及び分娩終了直後における出血に対処するものであり,その方法としては,①手術療法と②薬物療法がある。 このうち,手術療法については,基本的に前記ウの外科的止血の考 な止血法は,具体的には分娩第3期及び分娩終了直後における出血に対処するものであり,その方法としては,①手術療法と②薬物療法がある。 このうち,手術療法については,基本的に前記ウの外科的止血の考え方が当てはまるものであり,その術式は,胎盤剥離面からの出血に対する止血法と,分娩損傷(軟産道損傷)からの出血に対する止血法という2種類がある。 他方,薬物療法とは,止血機構の異常に対する対応策(出血傾向に対する原因治療)である。 薬物療法についてa 概要産科領域における薬物療法としては,子宮を収縮させることにより止血を期する方法,止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ,トランサミン,ビタミンKなど)により止血を期する方法,消費性凝固障害であるDICが合併した場合などに対して,その状態を改善することにより止血を期する方法がある。薬物療法においては,手術療法(外科的止血法)に併せて,それぞれの患者の症状に応じた薬物療法が選択される。 b 止血剤に関する薬理学的な機序⒜ 子宮を収縮させることにより止血を期する方法麦角剤,オキシトシン剤,プロスタグランディン剤が 用いられる。 止血機構の機能を改善・増強することにより止血を期する方法血管壁の異常に対するものとして,血管強化剤である止血剤のアドレノクローム(アドナ)がある。 線溶系の亢進に対する薬剤として,抗プラスミン剤があるが,これは,プラスミンの活性化により,線溶系が亢進し,著明な凝固障害,出血傾向が生じた場合に投与するもので,イプシロンやトランサミンがある。 その他の止血剤としてレプチラーゼ,トロスチン,ブロッケルがある。 消費性凝固障害であるDICが合併した場合に対してその状態を改善することにより するもので,イプシロンやトランサミンがある。 その他の止血剤としてレプチラーゼ,トロスチン,ブロッケルがある。 消費性凝固障害であるDICが合併した場合に対してその状態を改善することにより止血を期する方法DICの治療の原則は,その基礎疾患の治療を行うことであり,DICの原因を除去することのみで対応できることも少なくない。 しかし,病態が進み,微小血栓による臓器症状や出血症状が明らかになったときは,その病態に応じて抗凝固療法,補充療法が必要となる。 DICに対する第一の治療は,抗凝固療法と考えられている。DICによる凝固系の亢進に使われるものとして,アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)は,DICで血中のアンチトロンビンⅢ濃度が低下している場合に用いる凝固阻止因子であり,DICによって活性化されたステュアート因子(第Ⅹ因子)やトロンビンを緩やかに阻害する。また,ヘパリンは,アンチトロンビンⅢの活性を増 強する作用を持つが,ヘパリンの副作用は出血であり,消化管出血,脳出血などがある場合は禁忌とされる。FOY(メシル酸カベキサート)も,抗トロンビン作用を持ち,血液凝固を阻害するほか,抗線溶作用も有する。 もっとも,抗凝固療法は,本質的には,DICの原因を除去するまでのつなぎであり,それまでの間にDICが進行して患者が死亡するのを防ぐためのものである。 また,DICにおいては,消費性凝固障害により,顕著な出血症状を呈し,血小板や凝固因子の低下が著明な場合がある。このように,DICにより,フィブリノゲン(第Ⅰ因子)が低下し,低フィブリノゲン血症が生じた場合は,補充目的として,低フィブリノゲン血症に対する効能・効果を有するフィブリノゲン製剤の投与,新鮮凍結血漿,新鮮血,血小板の輸血を行うことがあり得る(低フィブリノゲ フィブリノゲン血症が生じた場合は,補充目的として,低フィブリノゲン血症に対する効能・効果を有するフィブリノゲン製剤の投与,新鮮凍結血漿,新鮮血,血小板の輸血を行うことがあり得る(低フィブリノゲン血症については,後記(5)イで詳述する。)。 (5) フィブリノゲン製剤の概要ア血液製剤人の血液を精製して製造される製剤を血液製剤といい,血液製剤の原料である血液の大部分は,健康な人から静脈穿刺によって採取した血液でまかなわれている。 血液製剤は,利用される血液の成分に応じて,輸血用血液製剤と血漿分画製剤に大別される。 輸血用血液製剤は,さらに,全血製剤(血液中の全ての成分を含む血液製剤)と成分製剤(採血した血液中の特定の成分ごとに分離して製剤にしたもので,主なものとして,赤血球製 剤,血小板製剤,血漿製剤などがある。)に分かれる。一般に「輸血」と呼ばれるものは,全血製剤と成分製剤である。 血漿分画製剤とは,血液の血漿成分から,治療に必要な特定のたんぱく質を,種類ごとに物理的,化学的に分離精製した血液製剤であり,主なものとしては,血液凝固因子製剤,アルブミン製剤,免疫グロブリン製剤などがある。後記のフィブリノゲン製剤は血液凝固因子製剤の一つである。 (甲ア5,22,乙ア1,3,5)イフィブリノゲン血漿成分の中には,血液を固める作用を持つたんぱく質である血液凝固因子が複数種類含まれている。 フィブリノゲンは,血液凝固因子の一つ(第Ⅰ因子)であり,出血の際,プロトロンビン(第Ⅱ因子)を変換したトロンビンの作用によってフィブリンとなり,それらが血管損傷部に積み重なり糊状となって止血する機能を有する。主に肝臓で生成され,健康人の血漿100ml中に の際,プロトロンビン(第Ⅱ因子)を変換したトロンビンの作用によってフィブリンとなり,それらが血管損傷部に積み重なり糊状となって止血する機能を有する。主に肝臓で生成され,健康人の血漿100ml中に200~400mg含まれている。 後記(7)のとおり,フィブリノゲン製剤は,出血性疾患のうち,血液中のフィブリノゲンが減少ないし欠乏することに起因して,止血機構自体が正常に機能しなくなり,その結果として止血困難を来す低フィブリノゲン血症(凝固系の障害の出血性素因)が発症した場合に,これに対して投与を推奨されてきた血液製剤であるが,血漿中のフィブリノゲン濃度が100ml中100mg以下になると一般に低フィブリノゲン血症といわれ,出血傾向が強くなる。先天性フィブリノゲン血症として,生体内でフィブリノゲンが全く作られない無フィブリノゲン血 症,生体内で作られるフィブリノゲンが少ない狭義の低フィブリノゲン血症及び作られるフィブリノゲンの構造や機能が通常と異なるためフィブリノゲンとしての正常な活性を示さない異常フィブリノゲン血症がある。また,後天性フィブリノゲン血症は,常位胎盤早期剥離,死亡胎児の子宮内残存,羊水血栓症などの産科疾患,体外循環を用いるような大手術,敗血症,悪性腫瘍,白血病,不適合輸血,紫斑病,蛇咬症,広範な外傷等で,DIC及び産後の大出血や重症外傷に起因して血漿中のフィブリノゲン濃度が低下する場合等に発症する。 (甲ア2,22)ウフィブリノゲン製剤の概要(乙ア1,3.6~20,51,77,79)フィブリノゲン製剤は,血漿分画製剤のうち,血液凝固因子製剤(血液を凝固させる成分の作用によって出血を抑える薬剤)の一つであり,血液の血漿成分から血液凝固第Ⅰ因子であるフィブリノゲンを分離精製したもの ブリノゲン製剤は,血漿分画製剤のうち,血液凝固因子製剤(血液を凝固させる成分の作用によって出血を抑える薬剤)の一つであり,血液の血漿成分から血液凝固第Ⅰ因子であるフィブリノゲンを分離精製したものである。 フィブリノゲン製剤は,血漿中のフィブリノゲン低下による出血傾向に対する補充療法に用いられる。 フィブリノゲン製剤は,昭和37年10月17日付けで,株式会社日本ブラッドバンク(後のミドリ十字)により製造承認が申請され,2年後の昭和39年6月9日,日本における初めてのフィブリノゲン製剤である「フィブリノーゲン-BBank」の製造が承認された。なお,「フィブリノーゲン-BBank」は,同年10月4日,「フィブリノーゲン-ミドリ」に名称が変更された。フィブリノゲン製剤のうち,特措法が,製造ないし輸入承認された年月日などにより 対象として特定したものが特定フィブリノゲン製剤である。 日本において,フィブリノゲン製剤は,その承認以降,原料血漿を採取する際のドナー(供血者)又は原料血漿についてスクリーニング検査(問診,ウイルス等の抗原・抗体検査等を行って,供血者あるいは原料血漿がウイルスなどの病原体に感染していないかどうかを確認する検査)を行い,その製造工程において,エタノール法に付随する凍結融解処理の過程(ただし,この過程は,直接ウイルスの不活化を目的とした処理ではない。)を経た上,年代に応じて,紫外線照射,β プロピオラクトン添加,抗HBsグロブリン添加,乾燥加熱処理等の各種のウイルス不活化処理(不活化とは,ウイルス自体の持つ様々な作用を抑えることをいう。フィブリノゲン製剤は,人の血液から製造され,血液中に存在する様々なウイルスが混入する危険性があることから,その製造工程においては,後記(8)のとおり,ウイルスの不 つ様々な作用を抑えることをいう。フィブリノゲン製剤は,人の血液から製造され,血液中に存在する様々なウイルスが混入する危険性があることから,その製造工程においては,後記(8)のとおり,ウイルスの不活化を目的とする処理が実施されていた。)がなされてきた。 その後,平成6年8月12日に,SD(Solvent/Detergent;有機溶媒・界面活性剤)処理(ウイルスの脂質膜(エンベロープ)を有機溶媒・界面活性剤で破壊して不活化させる方法)が製造工程に追加され,現在に至っている。 フィブリノゲン製剤は,ウイルスの不活化を目的とする処理の種類によって,下記のとおり,大きく非加熱製剤と加熱製剤に分類され,特措法が定める特定フィブリノゲン製剤は以下の4種類である。 (非加熱製剤(特措法2条1項1号)) ① 昭和39年6月9日製造承認フィブリノーゲン-BBank② 昭和39年10月24日製造承認フィブリノーゲン-ミドリ③ 昭和51年4月30日製造承認フィブリノゲン-ミドリ(加熱製剤(特措法2条1項2号)④ 昭和62年4月30日製造承認フィブリノゲンHT-ミドリ(なお,加熱製剤は,ウイルスを不活化するために加熱処理のみが行われたものに限られる(同項2号括弧書き)。したがって,フィブリノゲンHT-ミドリについては,平成6年8月12日,ウイルス不活化処理として,乾燥加熱処理に加えてSD処理を施す製造方法の一部変更承認がされたが,この方法により製造された製剤は,特措法の対象には含まれない。)(6) フィブリノゲン製剤の用法・用量等アフィブリノゲン製剤は,用法及び用量を「注射用蒸留水(「注射用水」と表記されているものもある。)に溶解し静脈内に注入する。通常1回3グラム乃至8グラムを用いる フィブリノゲン製剤の用法・用量等アフィブリノゲン製剤は,用法及び用量を「注射用蒸留水(「注射用水」と表記されているものもある。)に溶解し静脈内に注入する。通常1回3グラム乃至8グラムを用いるが,症状により受注者の血漿フィブリノーゲン量が正常となるまで反復する。」として承認されており,1瓶(バイアル)中フィブリノゲン1gを含み,日本薬局方注射用蒸留水50mlが溶解液として添付されている。なお,フィブリノゲンは,凍結,真空乾燥の処理がされた上で,粉末の形状で真空状態の瓶中に入っているものである。(乙ア5,7~14) イフィブリノゲン製剤の用法は,フィブリノゲン製剤1瓶(バイアル)を,添付された50mlの蒸留水により溶解した上,瓶に輸血セットの瓶針を刺し込み,適当な高さに吊り下げて患者の静脈に注入して使用することになるが,フィブリノゲンHT-ミドリの添付文書によれば,フィブリノゲン製剤の具体的な使用方法,手順は,下記①~⑧のとおりである。 なお,厚生労働大臣により承認された効能又は効果,用法及び用量の範囲外で医薬品を使用することを適応外使用という。 「保険診療における医薬品の取扱いについて」(昭和55年9月3日付保発第51号厚生省保険局長通知。いわゆる「55年通知」)においては,保険診療における医薬品の取扱いについて,厚生労働大臣が承認した効能又は効果,用法及び用量によることとされている。有効性及び安全性の確認された医薬品(副作用報告義務期間又は再審査の終了した医薬品をいう。)を薬理作用に基づいて処方した場合には,診療報酬明細書の医薬品の審査に当たり,学術的に正しく,また,全国統一的な対応が求められているところ,適応外使用がされた場合には,原則的に公的医療保険は適用されず,個々の症例ごとに個別に適用の可否を 報酬明細書の医薬品の審査に当たり,学術的に正しく,また,全国統一的な対応が求められているところ,適応外使用がされた場合には,原則的に公的医療保険は適用されず,個々の症例ごとに個別に適用の可否を判断し,例外的に公的医療保険が適用される場合がある,という取扱いになっている。なお,医薬品の投与に関しては医師の裁量が認められており,医師が最善の治療を行うために,適応外の患者に対しても医薬品を投与することを薬務行政が禁止するものではない。 (乙ア22~48)記① フィブリノゲン製剤に添付の溶剤瓶を35~37℃の温 湯に5~10分間浸して温める(決して37℃以上に加温してはいけない。)。 ② 溶剤瓶を温湯から取り出しフィブリノゲン製剤と溶剤の両方の瓶のキャップを除去しゴム栓の表面を消毒する。 ③ 溶剤移注針の2本針側を溶剤瓶の瓶口に真っすぐ根元まで刺し込む。 ④ 片手でフィブリノゲン製剤の瓶を持ち,もう一方の手で溶剤瓶を逆さにして,溶剤移注針を逆さにして,溶剤移注針の1本針側をフィブリノゲン製剤の瓶の瓶口に真っすぐ根元まで刺し込む。このとき,フィブリノゲン製剤の瓶内の真空が溶剤を引き込む。 ⑤ 溶剤がフィブリノゲン製剤の瓶内に移り,溶剤瓶が空になればフィブリノゲン製剤の瓶から溶剤移注針と溶剤瓶とを一緒に抜き取る。 ⑥ 直ちにフィブリノゲン製剤の瓶を約30秒間緩く振ってフィブリノゲン製剤の乾燥部分を液面下に沈めてから,フィブリノゲン製剤の瓶を泡立てないように注意して緩く振り完全に溶解させる。通常5分以内に完全に溶解する。 ⑦ 添付のエアー針を使ってフィブリノゲン製剤の瓶を平圧に戻す。 ⑧ 完全に溶解が終わってからフィブリノゲン製剤の瓶に輸血セットの瓶針をさし込む。フィブリノゲン製剤の瓶を適当な高さに吊り下げ ⑦ 添付のエアー針を使ってフィブリノゲン製剤の瓶を平圧に戻す。 ⑧ 完全に溶解が終わってからフィブリノゲン製剤の瓶に輸血セットの瓶針をさし込む。フィブリノゲン製剤の瓶を適当な高さに吊り下げ,静注針を患者の静脈へ刺入する。 ウ有効期間及び保存方法フィブリノゲン製剤の保存方法は,10℃以下で,有効期間は3年間である。(乙ア22~48) (7) フィブリノゲン製剤の効能・効果アフィブリノゲン(第Ⅰ因子)は,出血時に血液を凝固させて止血に貢献する血液凝固因子であり,健康人の血漿成分の100ml中に,通常200~400mg含まれている。フィブリノゲンが欠乏し血漿中にフィブリノゲン濃度が低下して発症する低フィブリノゲン血症では,その症状として,出血傾向が現れ(血液中の血漿成分の概ね100ml中100mg以下となると出血傾向が強くなる。),止血困難を来すことになる。 フィブリノゲン製剤は,前記の病態に対して,必要とされる血液凝固因子であるフィブリノゲンを補充することによって,血液の凝固作用を正常化し,止血困難の状態から回復させることを目的として使用されるものである。 フィブリノゲン製剤は,低フィブリノゲン血症に対して効能・効果を持つ製剤として製造承認を受けた。すなわち,①血管壁の異常,②血小板の異常,③凝固系の障害,④線溶系の亢進という出血性素因があって,生体の止血機構が正常に機能せず,外科的止血によっては止血が不十分である場合,これらの出血性素因の状態(前記①~④)に応じた薬物療法が必要となるところ,フィブリノゲン製剤は,凝固系の障害(③)の出血性素因に分類される低フィブリノゲン血症が発症した場合に,これに対して投与を推奨されてきたものである。 前記(5)イのとおり,低フィブリ なるところ,フィブリノゲン製剤は,凝固系の障害(③)の出血性素因に分類される低フィブリノゲン血症が発症した場合に,これに対して投与を推奨されてきたものである。 前記(5)イのとおり,低フィブリノゲン血症は,先天性と後天性のものに分かれるところ,平成10年に,フィブリノゲン製剤の適応症が「先天性低フィブリノゲン血症」に限定されるまでの間は,後天性低フィブリノゲン血症もフィブリノゲン製剤の効能・効果に含まれており,先天性低フィブリノゲン血症だ けでなく,主に産科や外科における大量出血時に使用されることがあった。 なお,低フィブリノゲン血症については,無線維素原血症,低線維素原血症,線維素原欠乏症出血,無フィブリノゲン血症と呼ばれることもある。 以下,イ~エにおいて,フィブリノゲン製剤の添付文書の記載及び医学文献における記載から,当時,フィブリノゲン製剤の効能・効果についてどのような認識がされていたのかを概観する。なお,薬事法52条は,医薬品の製造販売業者や製薬企業に対し,医薬品の「用法,用量その他使用及び取扱い上の必要な注意」等を記載した文書を作成し,これを販売包装単位ごとに添付することを義務付けている。 (乙ア20,66)イ昭和38年2月21日のフィブリノーゲン-BBankの添付文書前記添付文書には,「フィブリノーゲン-BBankは,フィブリノーゲン欠乏症に用い特に早期胎盤剥離に伴って起こる重症な出血を防御する。」,「一般に血漿フィブリノーゲン値が50mg%以下の場合は危険であり,フィブリノーゲン治療が即刻行われるべきである。」,「産婦人科領域における余病と関連して,線維素(フィブリン)減少症が起こった場合,通常推奨されるフィブリノーゲン-BBankの常用量は2~6gの静注である。 ゲン治療が即刻行われるべきである。」,「産婦人科領域における余病と関連して,線維素(フィブリン)減少症が起こった場合,通常推奨されるフィブリノーゲン-BBankの常用量は2~6gの静注である。しかし,患者の状態によっては更に多量投与を必要とする場合もある。」などの記載がある。(甲ア9の1)ウ昭和49年5月以降の添付文書(甲ア9の2~14) 昭和49年5月のフィブリノーゲン-ミドリの添付文書の内容は,イの添付文書とほぼ同じであるが,「効能・効果」の見出しのもとに,「低フィブリノゲン血症の治療」という記載が新しく登場したほか,「使用上の注意」の項に「本剤の使用により,まれに血清肝炎にり患することがある。」という文言が付加されている。 昭和50年11月のフィブリノーゲン-ミドリの添付文書の内容は,の文書とほぼ同じであるが,「広範囲な外科的処置」の項においては「フィブリノゲン値が100mg%以下のときにはフィブリノゲンの注輸が必要である。」という強い表現となり(の文書までは「重大な考慮を配らねばならない。」という表現),「使用上の注意」の項に,「アメリカにおいて本剤の使用により,15~20%の急性肝炎の発症があるとの報告があり,使用の決定に際しては患者のリスク負担と投与によって受ける治療上の利益とを秤量すべきであるとされている。」との記載が追加された。 昭和52年9月のフィブリノゲン-ミドリの添付文書は,「作用」の項において,「フィブリノゲン(注:の文書までは「フィブリノーゲン」という表記であったがこれが変更されている。)は先天性あるいは後天性のフィブリノゲン欠乏症に対する補充療法剤で,血漿中のフィブリノゲン濃度を高めることにより重篤な出血を阻止する。 フィブリノーゲン」という表記であったがこれが変更されている。)は先天性あるいは後天性のフィブリノゲン欠乏症に対する補充療法剤で,血漿中のフィブリノゲン濃度を高めることにより重篤な出血を阻止する。」という記載がある。 昭和57年12月のフィブリノゲン-ミドリの添付文書では,フィブリノゲン-ミドリの特長や薬理などについて詳細な説明がなされており,これまでの添付文書にはなかった 「特長」の項を設けている。特長の第1として「少量の注輸で十分な止血効果が得られる。」とあり,「かりに循環血液量4ℓの患者が50mg/dl(注:従前のmg%をmg/dlに変更)の低フィブリノゲン血症であるとき,これを150mg/dlに上げるためには少なくとも全血2500mlを輸血しなければならない。そして,このような大量の輸血には,時間がかかり,その間にも患者は出血を続け,フィブリノゲンの喪失が続く。しかし,フィブリノゲン-ミドリの注射では,このような場合,わずか100mlの量で血中フィブリノゲン量を正常値に導くことができる。」との記載がある。 昭和60年8月のフィブリノゲン-ミドリの添付文書では,前文において「広範囲の外科的侵襲時や常位胎盤早期剥離,羊水塞栓などに起因する大出血,さらにDIC(血管内凝固症候群)などで観察される低フィブリノゲン血症の是正に使用される。」との記載があり,DICが明示されている。 昭和62年5月のフィブリノゲンHT-ミドリの添付文書では,加熱処理をしたものであり,「先天性低フィブリノゲン血症(機能異常症を含む。)等フィブリノゲン値が著しく低下している患者に投与すること」という注意が記載されている。 なお,フィブリノゲンHT-ミドリに関する昭和62年6月,昭和63年6月,平成5年10月,平成6年10月の 等フィブリノゲン値が著しく低下している患者に投与すること」という注意が記載されている。 なお,フィブリノゲンHT-ミドリに関する昭和62年6月,昭和63年6月,平成5年10月,平成6年10月のいずれの添付文書も,前記添付文書と同様の内容である。 エ 「今日の治療指針」の記載 (甲ア10の1~29)「今日の治療指針」は,「私はこうして治療している」との副題のもとに,医療従事者に対し,日常診療で遭遇するほぼ全ての疾患に対する最新の治療法を紹介するものであり,毎年刊行されている治療年鑑である。 年度別に見てみると,昭和36年版においては,子宮弛緩症(弛緩性出血)において止血できないときは子宮摘除するほかないとされていたところ,昭和41年版において,「低線維素原血症があればフィブリノーゲン(ミドリ十字)の注射(4gを37℃蒸留水200mlに溶かし徐々に静注し,効果が不十分のときは10gまで使用する),新鮮血の大量輸血をする。」,「出血傾向を克服するためには,1)まずEACA(注:ε -アミノカプロン酸,止血作用を示す抗線溶物質)又はAMCHA(注:トラネキサム酸,フィブリンの分解を阻害することにより線溶系を低下させ止血する物質)を静注して線溶の異常亢進を抑えた上で,2)線維素原(約5g)の静注又は新鮮血の大量輸血(2000mlないしそれ以上)を行うのが最も合理的である」などと,常位胎盤早期剥離に伴う低線維素原血症(低フィブリノゲン血症)についてフィブリノゲン製剤の使用を推奨する記載が初めて見られる。 昭和43年版以降の版においては,「胎盤早期剥離は,無線維素原血症を併発することもあるから,フィブリノーゲンの注射も行ったほうがよい。」,「早期剥離ではフィブリノーゲン欠乏症を見ることがある。本症特有な 3年版以降の版においては,「胎盤早期剥離は,無線維素原血症を併発することもあるから,フィブリノーゲンの注射も行ったほうがよい。」,「早期剥離ではフィブリノーゲン欠乏症を見ることがある。本症特有な凝固しないジグジグ出血を認めたらフィブリノーゲン製剤(2~6g)を注射 し,新鮮血の輸血を行う。」,「いぜん,弛緩出血とされていたもののなかには,無(低)線維素原血症が相当数含まれているといわれている。本症はフィブリノーゲン障害を起こしたもので,胎盤早期剥離,羊水塞栓,子宮胎内死亡,分娩時出血,各種手術処置後に起こる。本症の処置としては,上述の輸血や子宮収縮のみでは不十分で,フィブリノーゲン(1~4g)が効果的である。」,「Ⅱ,Ⅶ,Ⅹ欠乏症はPPSB,コーナインが有効であり,無フィブリノゲン症にはフィブリノゲンが発売されているので,これを用いて補充療法を行う。」などと,フィブリノゲン製剤及び血液凝固第Ⅸ因子製剤の使用を推奨する記載がある。 昭和60年版においては,「最近,因子製剤の輸注による副作用として,肝炎,エイズの問題がとりあげられているが,現在,加熱処理をした製剤について臨床治験中であり,近くこれらの製剤に変更される可能性もある。」と,初めて,フィブリノゲン製剤及び血液凝固第Ⅸ因子製剤の副作用についての言及が出てきている。 後記(14)の昭和62年の青森県三沢市における肝炎の集団発生後に発刊された昭和63年版以降,平成2年版までは,常位胎盤早期剥離について「帝王切開分娩にせよ,経膣分娩にせよ,分娩を契機にDICによる大出血を来すことがある。したがって,DICの有無をチェックし,必要に応じて,輸血,フィブリノゲンや凍結血漿の輸注などで,止血機構を改善しておく必要がある。」とか,常位胎盤早期剥離の重大な合併症で 出血を来すことがある。したがって,DICの有無をチェックし,必要に応じて,輸血,フィブリノゲンや凍結血漿の輸注などで,止血機構を改善しておく必要がある。」とか,常位胎盤早期剥離の重大な合併症である出血による急性DICに対する治療について,フィブリノゲン製剤の点滴静注を挙げる記載があり, 産科のDICに対するフィブリノゲン製剤の有用性が指摘されている。 平成3年版以降は,平成6年版においてフィブリノゲンの使用を挙げる記事があるほか,DIC,常位胎盤早期剥離,産科ショック,分娩後出血等についてフィブリノゲンを挙げる記事はない。 (8) フィブリノゲン製剤の製造方法アフィブリノゲンは,主に肝臓で生成され,健康人の血漿100ml中に200~400mg含まれているところ,フィブリノゲン製剤は,人から採取した血液を原料とし,原料血漿から血液凝固第Ⅰ因子であるフィブリノゲンを高純度に分離精製し,その精製物を凍結真空乾燥した血漿分画製剤(血液凝固因子製剤)である。 血漿分画製剤は,血漿中に存在する多くのたんぱく質から特定のたんぱく質を高純度に分離精製するため,複雑な工程が必要となる。代表的な分画法であるコーン低温エタノール法の場合は,pH,イオン強度,アルコール濃度,反応温度,たんぱく濃度を適切に組み合わせることによって,血漿たんぱく質の溶解度をコントロールし,特定のたんぱくを沈殿させてその沈殿物と上清とを高速連続遠心機で分離した後,必要な上清又は沈殿を用いて前とは別の条件を設定することにより別の沈殿を作る,という工程を繰り返すことにより目的とする高純度のたんぱくの分画を得る。この得られた分画に更に種々の物理化学的処理を加えることにより,種々の血漿分画製剤が製造される。 血漿分画製剤の一つであるフィブリノ 程を繰り返すことにより目的とする高純度のたんぱくの分画を得る。この得られた分画に更に種々の物理化学的処理を加えることにより,種々の血漿分画製剤が製造される。 血漿分画製剤の一つであるフィブリノゲン製剤は,凍結され た極めて多数の供血者の血漿(500~8000ℓ。製造承認申請書には,500ℓ~1000ℓの血漿を材料とすると記載されているが,実際の製造においては1ロットごとに変動しており,2000~8000ℓ(通常1~2万人から採血)の血漿を用いていた。)を低温融解してプールした後(プール血漿。血漿分画製剤は,血液中に微量に含まれるたんぱく質を抽出して,一定の品質・有効性を確保するため,技術的にも経済的にも,多くの人の血液を集めた上,大がかりな装置によって,高度な化学的,物理的な操作により,一度に処理することが不可欠であり,プール血漿を利用して製造されている。),このプール血漿にエタノールや酸を添加するなどして,物理化学的条件を少しずつ変化させ,特定のたんぱく質が沈殿しやすい条件を作るなどして,目的とするたんぱく質を取り出すというエタノール分画を行い,得られた画分を1ロットとして凍結後,複数ロットを再度融解し,エタノール洗浄を経てウイルス不活化処理を行い,最終バルク(一容器内に調製され,直ちに分注できる状態にあって,その内容のいずれの部分をとっても,性状及び品質において均一と認められるもの)によって均質化がなされ,バイアル(最終製品を充填するための小瓶)への分注がなされた後に凍結真空乾燥して製造されていた。 (乙ア3,5,8,10,12,14,50,66)イ前記(5)のとおり,日本において,フィブリノゲン製剤は,その承認以降,原料血漿を採取する際のドナー(供血者)又は原料血漿についてスクリーニング ア3,5,8,10,12,14,50,66)イ前記(5)のとおり,日本において,フィブリノゲン製剤は,その承認以降,原料血漿を採取する際のドナー(供血者)又は原料血漿についてスクリーニング検査を行い,その製造工程において,エタノール法に付随する凍結融解処理の過程(ただし,この過程は,直接ウイルスの不活化を目的とした処理で はない。)を経た上,年代に応じて,以下の~の各種のウイルス不活化処理がなされてきた。 (乙ア20,51,77~79,82)紫外線照射処理(昭和40年10月頃まで)製造承認後,昭和40年10月頃までに製造されたフィブリノゲン製剤は,ウイルス不活化処理として,最終バルクを分注する前に紫外線照射処理が施されていた(以下,前記処理を施したフィブリノゲン製剤を「UV製剤」ともいう。)。 UV製剤の販売開始は,昭和39年11月であり,その薬価収載は,昭和40年11月1日である。なお,薬価収載とは,厚生労働大臣が保険医の使用医薬品を定めた医薬品のリストである「使用薬剤の薬価(薬価基準)」の別表に収載されることをいい,該当医薬品は公的医療保険が適用される。 したがって,フィブリノゲン製剤の使用については,昭和39年11月から昭和40年10月31日までは公的医療保険の適応外であった。 β プロピオラクトン添加処理(BPL処理)及び紫外線照射処理(昭和40年11月頃から昭和60年8月7日製造分まで)昭和40年11月頃から昭和60年8月7日まで製造されていたフィブリノゲン製剤は,ウイルス不活化処理として,エタノール洗浄後にβ プロピオラクトン(BPL)を添加し,更に紫外線照射処理が施されていた(以下,前記処理を施したフィブリノゲン製剤を「BPL製剤」ともいう。)。 BPL製剤のウイルス不活 て,エタノール洗浄後にβ プロピオラクトン(BPL)を添加し,更に紫外線照射処理が施されていた(以下,前記処理を施したフィブリノゲン製剤を「BPL製剤」ともいう。)。 BPL製剤のウイルス不活化処理の効果については,前記前提事実4のとおり,平成18年6月から平成19年9月に かけて,東京,大阪,福岡,仙台及び名古屋の各地方裁判所で言い渡された判決のうち,福岡地裁以外の判決において,BPL製剤の不活化処理は完全ではなかったが,相当程度の不活化効果を有しており,輸血と比較してもHCV感染リスクの低い製剤であったと認めることができる旨判示されるなど一定の評価がされており,BPL製剤の不活化能力は,後記のSD処理が施された製剤の不活化能力に次ぎ,加熱製剤の能力を上回るものであった。 抗HBsグロブリン添加処理及び紫外線照射処理(昭和60年8月21日製造分から昭和62年2月20日製造分まで)昭和60年8月21日から昭和62年2月20日まで製造されていたフィブリノゲン製剤は,ウイルス不活化処理として,エタノール洗浄後に抗HBsグロブリンを添加し,更に紫外線照射処理が施されていた(以下,前記処理を施したフィブリノゲン製剤を「HBIG製剤」という。なお,UV製剤,BPL製剤及びHBIG製剤は,非加熱の処理が行われたフィブリノゲン製剤である。)。 HBIG製剤の出荷開始日は,昭和61年1月27日である。 乾燥加熱処理(昭和62年3月31日製造分から平成6年6月16日製造分まで)昭和62年3月31日から平成6年6月16日までに製造されたフィブリノゲン製剤は,ウイルス不活化処理として,最終バルクの分注,凍結乾燥後に,乾燥加熱処理が行われていた。 SD処理(平成6年 から平成6年6月16日までに製造されたフィブリノゲン製剤は,ウイルス不活化処理として,最終バルクの分注,凍結乾燥後に,乾燥加熱処理が行われていた。 SD処理(平成6年9月14日から)その後,平成6年9月14日から現在まで,乾燥加熱処理に加え,有機溶媒(Solvent)と界面活性剤(Detergent)によりウイルスの表面の脂質を溶解し不活化する方法(SD処理)が施されている。なお,SD処理が施されたこの製剤は特定フィブリノゲン製剤には含まれない。 (9) フィブリン糊アフィブリン糊とは,フィブリノゲンがトロンビンと混ぜ合わさるとフィブリンに転化して固まるという性質を利用して,フィブリノゲン製剤にトロンビン製剤などの複数の薬剤を配合して糊状にしたもので,組織,臓器を接着する目的で,塗布して使用される生体接着剤である。出血箇所の閉鎖,骨折片の固定,末梢神経や微小血管の吻合,腱接着や腱縫合の補強,臓器創傷部の接着,遊離植皮術などに臨床使用される。 イ薬事法上承認を受けたフィブリノゲン製剤の効能,効果は「低フィブリノゲン血症」の治療であり,その承認を受けた用法・用量は「注射用蒸留水に溶解し静脈内に注入する」ものであるから,フィブリノゲン製剤のフィブリン糊としての使用は,薬事法において承認された使用法ではなく,適応外使用に該当し,原則的に公的医療保険の適用はされない。 中間報告書によれば,昭和55年頃はフィブリン糊としての使用は一般的ではなかった。 この点,厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策係長の平成22年10月8日付け通知によれば,フィブリン糊は,薬事法で承認された使用法ではないにもかかわらず,ミドリ十字では,昭和56年9月,「組織・臓器接着法」等の小冊子を作成 し, 係長の平成22年10月8日付け通知によれば,フィブリン糊は,薬事法で承認された使用法ではないにもかかわらず,ミドリ十字では,昭和56年9月,「組織・臓器接着法」等の小冊子を作成 し,これをプロパー(営業担当者)が営業用の資料として用い,販売促進活動を行っていた。また,ミドリ十字では,昭和56年11月からはフィブリン糊研究会を開催していた。さらに,ウェルファイド株式会社の報告によれば,糊としての使用量は,昭和56年に2800本であったが,昭和61年には2万0400本に増加している(ただし,ウェルファイド株式会社は承認申請等の必要な手続を行っていない。)。 前記のとおり,フィブリノゲン製剤のフィブリン糊としての使用は,昭和56年頃から徐々に増加し,また,公的医療保険の適用がされない取扱いであった。なお,後記(9)のとおり,現在では,フィブリンを生体組織接着剤として応用するためフィブリン糊をキット化した製剤が開発されているが,このキット化した製剤は,特定フィブリノゲン製剤を調製してできるフィブリン糊とは異なる。 (甲ア17,35)ウミドリ十字が昭和56年9月に発行した「フィブリノゲン‐ミドリ,トロンビン‐ ミドリをもってする組織・臓器接着法」では,フィブリノゲン製剤のフィブリン糊としての使用(ただし,適応外使用に該当する。)は,以下のとおりの手順で調製した上で,重層法と混合法のいずれかによって接着するというものが紹介されていた。(甲ア20の1) フィブリノゲン溶液の調製フィブリノゲン製剤に,注射用蒸留水を加え,以下の事項を遵守して溶解する。 a 注射用蒸留水の瓶を32~35℃(決して37℃以上に加温してはならない。)に温める。 b エアー針を注射用蒸留水の瓶のゴム栓に刺 射用蒸留水を加え,以下の事項を遵守して溶解する。 a 注射用蒸留水の瓶を32~35℃(決して37℃以上に加温してはならない。)に温める。 b エアー針を注射用蒸留水の瓶のゴム栓に刺し込み,瓶を逆さにして,注射器をゴム栓に刺して注射用蒸留水12mlを注射器内に移す。 c フィブリノゲン製剤の瓶を垂直に立て,注射器をゴム栓に斜めに刺し込む。瓶内の真空が注射用蒸留水を引き込む。この時,注入速度が速すぎると瓶内で液が泡立つことがあるため,注射器の内筒が外筒に引き込まれる速度を手で遅くして,液が泡立たないように,注射用蒸留水の注入速度を調整する。 d 注射器内の注射用蒸留水全量(12ml)がフィブリノゲン製剤の瓶に移った後,直ちに,瓶から針もろとも注射器を取り外し,注射器を介して瓶内に空気が入らないようにする。注射用蒸留水でフィブリノゲン粉末がまんべんなく潤うように瓶を斜めにして手で緩く回転させる。 e フィブリノゲン製剤の瓶を32~36℃(決して37℃を超えないこと)に加温し,泡立てないように注意しながら手又は振とう器で振とうしてフィブリノゲン粉末を溶解する。通常20分後に液は粘調で透明となる。不透明なゲル又は不溶物を認めるときは,先と同様に振とうを続ける。 f 溶解の終わったフィブリノゲン製剤の瓶に,先に使用したエアー針を刺し替えて真空を破り,瓶を逆さにしてフィブリノゲン溶液を注射器内に移す。 トロンビン,アプロチニン,塩化カルシウム混合液の調製使用するアプロチニン注射液の種類によって用量は異なるが,コンクライトCa(塩化カルシウムの0.5M液)を注 射用蒸留水で希釈し,この液にアプロチニン注射液を加えてトロンビン溶解液とする。 接着法a 重層法フィブリノゲン溶液を注射 トCa(塩化カルシウムの0.5M液)を注 射用蒸留水で希釈し,この液にアプロチニン注射液を加えてトロンビン溶解液とする。 接着法a 重層法フィブリノゲン溶液を注射器で両方の組織接着面にくまなく塗布する。約30秒間放置後,等量の重層法用トロンビン溶解液を注射器でフィブリノゲン溶液の上に塗布し,すばやく組織を接着させた後,接着面を上から約1分間軽く手で押さえる。 b 混合法接着直前に,フィブリノゲン溶液とトロンビン溶解液を等量混合し,この混合液を注射器で両方の組織接着面に塗布する(混合から塗布までの操作は1分~1分30秒の間に完了することが望ましい。)。混合から塗布までの操作が1分30秒以内に完了しているなら,塗布後組織を接着させるまで30秒間放置する。他方,前記操作に1分30秒以上要している場合は,塗布後,直ちに組織の接着操作に移り,接着面を上から約1分間軽く手で押さえる。 前記(9)イのとおり,ミドリ十字においては,昭和56年11月から「フィブリン糊研究会」を組織し,フィブリン糊キットの開発を進めていたところ,昭和59年より,ヘキスト社及び日本臓器製薬株式会社において,いわゆるフィブリン糊キット製剤の全国的・大規模な臨床研究(治験)が開始され,フィブリン糊に対する臨床家の関心が更に高まり,臨床医の裁量によって,フィブリノゲン製剤をフィブリン糊として調製の上使用するケースも次第に現れるようになり,こ れを報告する論文もいくつか発表された。 ヘキスト社及び日本臓器製薬株式会社は,昭和63年4月より,フィブリン糊キット製剤(ベリプラストP,ティシール)を発売するに至ったところ,このフィブリン糊キット製剤は,効能,効果が「組織の接着・閉鎖」とされ,フィブリ 器製薬株式会社は,昭和63年4月より,フィブリン糊キット製剤(ベリプラストP,ティシール)を発売するに至ったところ,このフィブリン糊キット製剤は,効能,効果が「組織の接着・閉鎖」とされ,フィブリノゲン製剤を調製して作るフィブリン糊とは異なり,公的医療保険制度における診療報酬の支払対象(保険適応)となる適応使用に該当する上,フィブリノゲン製剤を調製して作るフィブリン糊の使用よりも調合が簡便であり,利便性が高いこと,ミドリ十字のフィブリノゲン製剤について昭和62年,63年当時に安全性の問題が指摘されていたことから,当該フィブリン糊キット製剤が広く使用されるようになった。なお,ミドリ十字は,各種製剤の組み合わせキットによる製造承認取得等が困難視されていたなどの事情により,前記の糊キット開発は断念している。 (乙ア105~107)(10) 血液凝固第Ⅸ因子製剤の概要ア血液凝固第Ⅸ因子製剤は,血漿分画製剤のうち,血液凝固因子製剤の一つであり,血液の血漿成分から血液凝固第Ⅸ因子を分離精製したものである。 血液凝固第Ⅸ因子製剤の承認当時における一般名は,血液凝固第Ⅸ因子複合体製剤であり,後記イのとおりの特定血液凝固第Ⅸ因子製剤(PPSB-ニチヤク(昭和47年4月22日製造承認),コーナイン(昭和47年4月22日輸入販売承認),クリスマシン(昭和51年12月27日製造承認),クリスマシン‐ HT(昭和60年12月17日輸入販売承認))は,血 液凝固第Ⅸ因子だけではなく,血液凝固第Ⅱ,Ⅶ,Ⅹ因子も含有する血液凝固第Ⅸ因子複合体製剤である。血液凝固第Ⅸ因子複合体製剤は,その含有する血液凝固因子である血液凝固第Ⅱ因子(プロトロンビン),血液凝固第Ⅶ因子(プロコンベルチン),血液凝固第Ⅹ因子(ステュアート 凝固第Ⅸ因子複合体製剤である。血液凝固第Ⅸ因子複合体製剤は,その含有する血液凝固因子である血液凝固第Ⅱ因子(プロトロンビン),血液凝固第Ⅶ因子(プロコンベルチン),血液凝固第Ⅹ因子(ステュアート),血液凝固第Ⅸ因子(血友病B患者欠乏因子)の英字名の頭文字をとってPPSBと呼ばれることがある。このように複数の凝固因子が含まれるのは,これらの凝固因子は,硫酸バリウム,リン酸カルシウム,水酸化アルミニウムなどの吸着剤を用いて,血漿から分離精製されるが,特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の製造当時,これらを更に分離精製することは,技術的に容易でないばかりでなく,強行すると凝固因子そのものの化学的性状及び活性にも変化を招くおそれがあったことから,これらが共存したままで製剤化されていたことによるものである。 血液凝固第Ⅱ,Ⅶ,Ⅸ及びⅩ因子は,フィブリノゲンと同様に肝実質細胞で産生され,血中に分泌されるところ,これらの凝固因子を肝で産生するためにはビタミンKが不可欠とされていることから,これらの凝固因子は,ビタミンK依存因子とも呼ばれている。 (乙ア6)イ血液凝固第Ⅸ因子製剤は,ウイルスの不活化を目的とする処理の種類によって,下記のとおり,大きく非加熱製剤と加熱製剤に分類され,特措法で定められた特定血液凝固第Ⅸ因子製剤は以下の4種類である。 (乙ア15~19)(非加熱処理を行った特定血液凝固第Ⅸ因子製剤(特措法2 条2項1号)① 昭和47年4月22日製造承認PPSB-ニチヤク(日本製薬株式会社(当時)が製造)② 昭和47年4月22日輸入承認コーナイン③ 昭和51年12月27日製造承認クリスマシン(加熱処理を行った特定血液凝固第Ⅸ因子製剤(特措法2条2項2号)④ 時)が製造)② 昭和47年4月22日輸入承認コーナイン③ 昭和51年12月27日製造承認クリスマシン(加熱処理を行った特定血液凝固第Ⅸ因子製剤(特措法2条2項2号)④ 昭和60年12月17日輸入承認クリスマシン-HT(なお,加熱製剤は,ウイルスを不活化するために加熱処理のみが行われたものに限られる(同号かっこ書き)。したがって,クリスマシン-HTの承認後の平成5年3月には,ウイルス不活化処理として,SD処理を施した「クリスマシン-M」が製造承認されたが,この方法により製造された製剤は,特措法の対象には含まれない。)(11) 血液凝固第Ⅸ因子製剤の用法・用量等(乙ア6,15~19,58,61,63,67)ア PPSB-ニチヤクについてPPSB-ニチヤクは,用法・用量を「1瓶の内容を添付溶剤で10mlに溶解し静脈内に注射する。使用量は通常1回1~6瓶とし,手術等必要に応じ適宜増量する。」として承認され,昭和58年8月26日の追加承認時に「本剤を添付の溶解液で,血液凝固第Ⅸ因子量が正常人血清1mlの200倍あたり10mlの割合で溶解し,静脈内に注射する。用量は,通常1回10~60mlとし,手術等必要に応じ適宜増量する。」 に変更された。(乙ア15,16,58,67)イコーナインについてコーナインは,用法・用量を「1容器を添付溶剤に溶解し,静脈内に注射。用量は通常1回1~3瓶とし,手術など必要に応じ適宜増減する。」とされた。(乙ア17,61)ウクリスマシンについてクリスマシンもコーナインと同様の内容であった。クリスマシン-HTは,従来の「400倍包装」の製剤に加え,「1000倍包装」の製剤が追加され,用法・用量を「1容器を添付溶剤に溶解し,静脈内に てクリスマシンもコーナインと同様の内容であった。クリスマシン-HTは,従来の「400倍包装」の製剤に加え,「1000倍包装」の製剤が追加され,用法・用量を「1容器を添付溶剤に溶解し,静脈内に注射。用量は通常1回400~1200倍とし,手術など必要に応じ適宜増減する。」とされた。(乙ア19,63)エ有効期間及び保存方法血液凝固第Ⅸ因子製剤の保存方法は10度以下で,有効期間は,各承認当初は1年間とされたが,後に2年間とされた。 (12) 血液凝固第Ⅸ因子製剤の効能・効果血液凝固第Ⅸ因子製剤の有効成分は血液凝固第Ⅸ因子であり,各製造又は輸入承認時における効能・効果は,「血液凝固第Ⅸ因子欠乏症」であって,PPSB-ニチヤクにつき,昭和50年5月2日に「凝血因子(第Ⅱ,Ⅶ,Ⅹ)欠乏に基づく出血」が追加されたほか変更はない。 血液凝固第Ⅸ因子欠乏症とは,血液凝固第Ⅸ因子の血液中の濃度が低下する病態をいい,先天性と後天性に分かれる。先天性の血液凝固第Ⅸ因子欠乏症としては血友病Bがあり,後天性の血液凝固第Ⅸ因子欠乏症としては,肝疾患による凝固障害,ビタミンK欠乏症などが挙げられる。 (甲ア12~14,乙ア52~67)(13) 血液凝固第Ⅸ因子製剤の製造方法血液凝固第Ⅸ因子製剤も,フィブリノゲン製剤と同様にプール血漿を利用し(ただし,血液凝固第Ⅸ因子製剤の製造工程において集められプール血漿とされた血漿は,フィブリノゲン製剤の製造工程よりも少ない人数分だった。),コーン低温エタノール法により分画されるが,昭和47年のコーナインの輸入承認あるいは昭和51年のクリスマシンの製造開始から,昭和60年12月に加熱処理された第Ⅸ因子製剤の輸入が承認されるまで,血液凝固第Ⅸ因子製剤について,加熱処理,紫外線照射処 7年のコーナインの輸入承認あるいは昭和51年のクリスマシンの製造開始から,昭和60年12月に加熱処理された第Ⅸ因子製剤の輸入が承認されるまで,血液凝固第Ⅸ因子製剤について,加熱処理,紫外線照射処理その他の不活化処理は施されていない。血液凝固第Ⅸ因子製剤の加熱や物理化学的処理は,物性として極めて不安定で,十分な不活化効果を得るため必要な条件下では容易にたんぱくが失活・変性することなどのために,昭和47年から昭和60年12月までの当時,技術的に困難であるとされていたものである。 (14) 特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の危険性C型肝炎ウイルス感染リスクの原因に関する各知見を総合すると,次のようにいうことができる。(甲ア14,17,18,乙ア13,14,乙タ3,13,31)ア C型肝炎ウイルス感染リスクの原因フィブリノゲン製剤及び血液凝固第Ⅸ因子製剤は,人の血液を用いて製品化することから,本来的に肝炎ウイルス等の感染因子含有のリスクがあり,加えて,製剤としての機能を維持するために,感染因子の不活化処理にも一定の限界があることから,その投与により,肝炎ウイルスに感染する危険 性を内包していた。 特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の危険性(C型肝炎ウイルス感染のリスク)については,各製剤の製造方法と不活化処理(フィブリノゲン製剤について前記(8)。血液凝固第Ⅸ因子製剤については,前記(13)のとおり,不活化処理が行われていなかった時期がある。)とを併せ考慮する必要がある。 中間報告書においては,特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤のC型肝炎ウイルス感染に対する開発・製造における問題点として,原材料,製剤の手技とロットの大きさ,ウイルス不活化処理などが挙げら 告書においては,特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤のC型肝炎ウイルス感染に対する開発・製造における問題点として,原材料,製剤の手技とロットの大きさ,ウイルス不活化処理などが挙げられている。 日本におけるC型肝炎ウイルス感染のまん延は,昭和25年代から昭和35年代を中心に,社会全体を巻き込んだ複合要因による感染の悪循環が起こった結果であると考えられている。すなわち,戦後の混乱期に,まず覚せい剤濫用者の間での注射器や注射針の共用・回し打ち等により感染が拡大し,次いで,これらの濫用者が当時の売血を職業的に行う集団(貧困に苦しむことが多かった戦後の混乱期に,血液銀行である日本ブラッド・バンクに血液を提供して金を得ることは「売血」と呼ばれ,多くの者が行っていた。)の一部に加わり,売血者集団が頻回の売血(有償採血)による貧血の治療のために鉄剤等の静脈注射を行い,その集団内にも感染が拡大するとともに,これらの集団から供血された血液の輸血を受けた者にも感染が拡大した。さらに,鍼,入れ墨や現在では必ずしも適切といえないような当時の医療行為等もC型肝炎ウイルス感染拡大の原因となったと考えられている。なお,昭和 39年以降,売血は禁止され,平成元年からは献血者に対するC型肝炎ウイルス抗体のスクリーニングが開始された結果,以後の新しい感染はほとんどなくなった。 売血は,国内においては,そのかなりの部分を職業的供血者から採取していたが,職業的供血者は経済的,環境的に恵まれない者が比較的多く,麻薬・覚せい剤や増血剤などを,消毒の不十分な注射器を使って自分で注射している者が相当数含まれていたため,血清肝炎ウイルスが蔓延しやすい環境にあった。これら職業的供血者に対して肝炎の既往に関する問診を行っても肝炎の既往の申告は期待 の不十分な注射器を使って自分で注射している者が相当数含まれていたため,血清肝炎ウイルスが蔓延しやすい環境にあった。これら職業的供血者に対して肝炎の既往に関する問診を行っても肝炎の既往の申告は期待できなかった。 血漿分画製剤の最大の依存先である米国(特定フィブリノゲン製剤の製造に用いられた血漿の大部分は,米国から輸入していた。)においても,個人経営の売血所においては,日本と同様の状況にあり,また,ミドリ十字の子会社である米国のアルファ社などが米国の貧困層が集まる地区などの採血所で集めたものや,そのような地区で他の採血業者が採血したものが混合されていた。このような状況にあったことから,売血による血液には血清肝炎ウイルスが含まれている危険性が高く,ほとんど全てのロットの原料血漿に肝炎ウイルス(B型又はC型)が混入していた。なお,フィブリノゲン製剤を製造するために行った有償採血(売血)の際に実施されたドナースクリーニング法は,効果がないか不十分であり,C型肝炎ウイルス感染者由来の血漿がフィブリノゲン製剤の原料プール血漿へ混入することを防ぐことはできなかった。 そして,プール血漿では,きわめて多くの供血者(前記(8)のとおり,最大で2万人程度となる。)からの血漿をプールす るため,供血者中にC型肝炎ウイルスのキャリアが存在する可能性が高く,供血者数が増えれば増えるほど供血者中にC型肝炎ウイルスのキャリアが存在する可能性が高くなる。まbのとおり,1人でも肝炎ウイルス感染者が存在した場合,そのプール血漿を用いて製造された血液製剤は肝炎の発症のリスクが高いことから,C型肝炎ウイルスの混入が少量であったとしても,大きなプールを汚染し得る。したがって,プール血漿のプールの規模が大きくなるのに従い,プール血漿へのC型肝炎ウイル 肝炎の発症のリスクが高いことから,C型肝炎ウイルスの混入が少量であったとしても,大きなプールを汚染し得る。したがって,プール血漿のプールの規模が大きくなるのに従い,プール血漿へのC型肝炎ウイルス混入の危険性は増大していく。なお,プール血漿においては,通常,C型肝炎ウイルスのみならずC型肝炎ウイルスに対する中和抗体及び免疫複合体もプールされ,免疫複合体は感染性を阻止し,中和抗体は感染性を有するC型肝炎ウイルスを中和するため,プール血漿に混入したC型肝炎ウイルスがすべて感染を引き起こすわけではないが,感染性を有するC型肝炎ウイルスは相当量含まれていた。 以上のとおり,特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の原料血漿には,C型肝炎ウイルスがほぼ100%の確率で多量に混入し,そして,原料血漿中に混入したC型肝炎ウイルスのうちには,死滅したC型肝炎ウイルス(の断片)や中和抗体と免疫複合体を形成して感染性を阻止されたC型肝炎ウイルスも含まれていたものの,同時に,感染性を有するC型肝炎ウイルスも相当量含まれていた。具体的には,特定フィブリノゲン製剤については,国内献血のみを原料血漿とし始めた平成5年9月以前は,主として米国から輸入した売血と一部国内売血を原料血漿としており,特定血液 凝固第Ⅸ因子製剤のうち,クリスマシンについては,米国から輸入した売血と一部国内売血を,PPSB-ニチヤクについては,国内売血を原料血漿としており,各製剤の原料に,感染性を有するC型肝炎ウイルスは相当量含まれていた。 イ肝炎の病態及び肝炎の発症リスクに関する知見の進展 血清肝炎,非A非B型肝炎,C型肝炎の予後に関する知見a 昭和39年以前血清肝炎(輸血後肝炎)は慢性化することが多く,肝硬変に移行する場合 び肝炎の発症リスクに関する知見の進展 血清肝炎,非A非B型肝炎,C型肝炎の予後に関する知見a 昭和39年以前血清肝炎(輸血後肝炎)は慢性化することが多く,肝硬変に移行する場合もあり,従来考えられていたよりも予後が不良であるとする文献が多かった。ただし,慢性肝炎の診断基準や分類は定められておらず,肝炎ウイルスも同定されていなかったことから,慢性肝炎の予後について十分に解明されていなかった。 b 昭和40年代A型肝炎ウイルス及びB型肝炎ウイルスの同定がなされ,昭和49年には,非A非B型肝炎ウイルスの存在が示唆されるとともに,この未知の肝炎ウイルスが原因の輸血後肝炎が少なからず存在することが示唆された。 慢性肝炎の予後については,一見治癒したように見えても再燃することがあるということが新たな知見としてみられた。一方で,慢性肝炎の経過観察期間が短いこともあり,長期予後については十分に解明されておらず,ほとんどが治癒に向かうという報告もあった。 c 昭和50年代A型肝炎ウイルス,B型肝炎ウイルスの発見により,非A非B型肝炎の除外診断が可能となり,非A非B型肝炎の 研究が進められた。非A非B型肝炎から慢性肝炎,肝硬変,肝がん等への進展に関する論文等が多く報告され,非A非B型肝炎が高率に慢性化することは認識されていたが,慢性肝炎の予後については,更に長期の観察が必要と考えられていた。 d 昭和60年代以降昭和50年代に引き続き,非A非B型肝炎の研究が進められた。そして,昭和63年のC型肝炎ウイルスゲノムのクローニングをきっかけに,C型肝炎の診断が可能となり,これにより従前は非A非B型肝炎として研究されていた慢性肝炎の多くがC 型肝炎の研究が進められた。そして,昭和63年のC型肝炎ウイルスゲノムのクローニングをきっかけに,C型肝炎の診断が可能となり,これにより従前は非A非B型肝炎として研究されていた慢性肝炎の多くがC型肝炎であることが判明した。その後,C型肝炎が,慢性化率や肝硬変への進展率が高い疾患であるとの報告や,C型肝炎から肝硬変,肝がんへ進展するまでの期間についての報告がされた。 血液製剤による肝炎ウイルスの感染リスクに関する知見a 売血由来原料の危険性について売血由来原料の危険性についての報告は,昭和30年代後半から多く見られる。その後,売血を介した肝炎発症が社会問題として認識されるようになり,昭和39年8月には,保存血(全血製剤)について,売血制度から献血制度に切り替えることが閣議決定されるに至っており,売血の危険性が広く認識された。 b プール血漿の危険性についてプール血漿の危険性についての報告は,昭和30年以前からみられる。昭和38年には,株式会社日本ブラッド・バンクの当時の専務取締役により,プール血漿について は,プールに入れられた血漿のうち,1人でも肝炎ウイルス感染者が存在した場合,そのプール血漿を用いて製造された血液製剤は肝炎の発症のリスクが高いことが報告された。 c ウイルス不活化処理について特定フィブリノゲン製剤は,年代によって異なるウイルス不活化方法によって製造されているところ,紫外線処理の危険性,BPL処理(β プロピオラクトン添加処理)及び紫外線処理併用の危険性,抗HBsグロブリン添加処理及び紫外線処理併用の危険性についての報告や文献が見られる。なお,特定血液凝固第Ⅸ因子製剤のうち,クリスマ 理(β プロピオラクトン添加処理)及び紫外線処理併用の危険性,抗HBsグロブリン添加処理及び紫外線処理併用の危険性についての報告や文献が見られる。なお,特定血液凝固第Ⅸ因子製剤のうち,クリスマシンについては,製造承認時である昭和51年12月から昭和60年11月まで,PPSB-ニチヤクについては,製造承認時である昭和47年4月から昭和61年10月までの期間は,ウイルス不活化処理が行われていない。なお,コーナインについては輸入によるものであり,同様にウイルス不活化処理は行われていない。 ウ行政,企業の対応昭和61年9月,静岡県清水市の産婦人科からミドリ十字静岡支店に対し,常位胎盤早期剥離3例に非加熱フィブリノゲン製剤を使用後,3例とも血清肝炎が発生し,同製剤が原因と思われるとの報告がされた。 同月以降,青森県三沢市の産婦人科医院からミドリ十字青森支店に対し,前記製剤投与8例中7例に非A非B型肝炎が発症したとの報告がされた。 同年11月,広島県の産婦人科からミドリ十字広島支店に同 様の報告があった。 厚生労働省は,昭和62年1~3月までに,青森での肝炎ウイルス集団感染事件について,青森県三沢市の産婦人科医院より,フィブリノゲン製剤投与により肝炎が発生した旨の報告を受け,血液製剤による肝炎の発症に関して初めて情報を得た。 同報告を受けて,厚生労働省は,ミドリ十字に対し,同年3月26日,全国調査の実施を指示し,同年4月8日,ミドリ十字に対して事情説明を求めるなどした後,同月15日には,非加熱フィブリノゲン製剤を自主回収させる旨の指示をすること及び早期に加熱製剤へ切り替えさせる指示をすることで被害の拡大を防ぐ方針を策定した。実際に,厚生労働省は,ミドリ十字に対し,非加熱フィブリノゲン製剤の自主 ゲン製剤を自主回収させる旨の指示をすること及び早期に加熱製剤へ切り替えさせる指示をすることで被害の拡大を防ぐ方針を策定した。実際に,厚生労働省は,ミドリ十字に対し,非加熱フィブリノゲン製剤の自主回収の迅速化を指示している。 加熱製剤の承認申請は同月20日に行われ,承認が同月30日にされ,厚生労働省は,昭和62年7月2日付け文書をもって,ミドリ十字に対し,「乾燥人フィブリノーゲン」については,「効能・効果」を「先天性低フィブリノゲン血症の出血傾向」に改めることなどにより,薬事法14条2項各号(承認を与えない事由)のいずれにも該当しないと判定した旨を通知した。他方,「先天性低フィブリノゲン血症の出血」については,「現時点」における適切な試験を追加し,有効性の確認をしておくことを指示した。ミドリ十字は,加熱製剤の承認申請を行う一方で,同日から,過去3年間の非加熱フィブリノゲン製剤納入先の全てを対象として,同製剤の回収を開始した。 厚生労働省による前記指示を受け,ミドリ十字は,同年5月8日から同年7月14日にかけ,4回にわたり,非加熱フィブ リノゲン製剤投与後の肝炎発症報告を実施し,これら報告を受け,厚生労働省は,同年5月26日の血液製剤評価委員会での,肝炎発症へのフィブリノゲン-ミドリ(非加熱フィブリノゲン製剤)の関与が否定できないとの審議結果を経て,ミドリ十字に対し,加熱製剤発売後の肝炎発生について継続的に追跡調査(月1回以上医療機関を訪問し,使用患者に当たっては継続6か月間)を実施して報告するよう指示した。 ミドリ十字は,同年6月11日,加熱フィブリノゲン製剤の市販を開始した。同製剤の添付文書の前文には,「他の加熱処理凝固因子製剤で非A非B肝炎の発症が報告されているので本剤の使用に際しては後記「使用上の注意」 は,同年6月11日,加熱フィブリノゲン製剤の市販を開始した。同製剤の添付文書の前文には,「他の加熱処理凝固因子製剤で非A非B肝炎の発症が報告されているので本剤の使用に際しては後記「使用上の注意」に十分留意し,治療上必要不可欠の患者に使用すべきである。」と記載されるとともに,「使用上の注意」欄の「(1)一般的注意」に,赤字で「(1) 肝炎等の血液を介して伝播するウイルス疾患が知られているので,使用に際しては必要最少限の投与とし十分な観察を行うこと。使用に際しては,患者のリスク負担と投与によって受ける治療上の利益を考慮すること。(2)本剤の使用は,先天性低フィブリノゲン血症(機能異常症を含む。)等フィブリノゲン値が著しく低下している患者に投与すること。」との記載がされた。 ミドリ十字は,厚生労働省の前記指示に基づき,同年6月11日の加熱フィブリノゲン製剤販売開始以後,患者に対する追跡調査を実施し,厚生労働省に対し,同年11月5日に3例,昭和63年4月5日に8例(前報告における3例を含む。),同年5月6日に17例(前報告における8例を含む。)の肝炎発症の報告を行った。 前記報告を受け,同年5月12日に行われた血液製剤評価調査会は,フィブリノゲンHT-ミドリ(加熱フィブリノゲン製剤)について審議を行い,同月13日,厚生労働省は,ミドリ十字に対し,肝炎発症例の数例はフィブリノゲンHT-ミドリが考えられること,使用例全例の追跡調査が必要等の審議結果を伝達した。ミドリ十字は,伝達を受け,厚生労働省に対し,フィブリノゲンHT-ミドリの製造中止を正式に伝達した。 厚生労働省は,同年6月2日,ミドリ十字に対し,加熱フィブリノゲン製剤の添付文書改訂(冒頭に赤字赤枠で「非A非B型肝炎が報告されているので,本剤の使用にあたっては, リの製造中止を正式に伝達した。 厚生労働省は,同年6月2日,ミドリ十字に対し,加熱フィブリノゲン製剤の添付文書改訂(冒頭に赤字赤枠で「非A非B型肝炎が報告されているので,本剤の使用にあたっては,適応を十分に考慮すると共に,投与は必要最小限とし,十分な観察を行うこと。」と追記することを内容とする改訂)と緊急安全性情報配布を指示した。ミドリ十字は,同月6日,加熱フィブリノゲン製剤の全納入先医療機関に対し,緊急安全性情報の配布を開始し,同月23日にそれを完了した。ミドリ十字は,厚生労働省に対し,同年7月7日,緊急安全性情報配布完了と,在庫6199本中2557本を回収した旨等を報告した。 (15) 特定フィブリノゲン製剤の納入実績及び使用実態(甲ア17,乙ア100)ア製造本数及び推定使用量特定フィブリノゲン製剤の製造本数は,前記前提事実3(2)のとおりである。特定フィブリノゲン製剤のうち,非加熱製剤の製造は,昭和39年から昭和62年まで,加熱製剤の製造は,昭和62年から平成5年まで行われ,同年に製造中止となった。推定使用量は製造本数と同様の推移をたどるが,C型肝炎ウイルスを含まないフィブリノゲン製剤の製造が始まった平 成5年以後(SD処理がされたのは平成6年から),製造本数に比べて推定使用量が下回る状態が続いていた。(甲ア17)イ納入実績(甲ア17,乙ア100)大阪での薬害エイズ訴訟の原告団が,厚生労働省に対し,平成14年12月26日,フィブリノゲン製剤納入先医療機関名(ここにいうフィブリノゲン製剤とは,後に特措法によって特定フィブリノゲン製剤と指定されるものである。)の開示を求める請求を行ったが,厚生労働省は,平成15年1月24日,「開示・不開示の審査に時間を要するた うフィブリノゲン製剤とは,後に特措法によって特定フィブリノゲン製剤と指定されるものである。)の開示を求める請求を行ったが,厚生労働省は,平成15年1月24日,「開示・不開示の審査に時間を要するため」として,開示決定の延期を通知し,同年2月24日,行政文書開示決定通知書により,「医療機関名の公表については不開示とする。」と通知し,医療機関名を黒塗りにして開示(一部開示)した。これに対して,大阪での薬害エイズ訴訟の原告団により,同年4月18日,行政不服審査法に基づく不服申立てがされ,同年7月28日,同不服申立てについて,厚生労働省より内閣府の情報公開審査会に諮問がされた。平成16年2月20日,異議(不服)申立てを受け,内閣府の情報公開審査会から厚生労働省に対し,医療機関名を開示するよう答申がされた。同年6月29日,三菱ウェルファーマ株式会社(平成13年9月以前はウェルファイド株式会社)が,厚生労働省に対し,フィブリノゲン製剤納入先医療機関リストを提出し,これを受けて,厚生労働省は,平成16年12月9日付けで,フィブリノゲン製剤納入医療機関名の一覧(販売数も含む。)を公表した。 公表対象となった医療機関の総数は6933件(うち,特定できた医療機関数は6611件)である。この公表内容は,三菱ウェルファーマ株式会社が保有する販売実績データ(昭和55年から平成13年2月までの分)に基づくものであり,昭和55年より前の状況は不明とされている。 前記で公表された昭和55年から平成元年までの間の各年の販売数(昭和55年に5万6150本,昭和56年に5万8870本,昭和57年に6万5300本,昭和58年に6万7800本,昭和59年に6万8950本,昭和60年に7万3070本,昭和61年に7万6500本,昭和62年に4万 50本,昭和56年に5万8870本,昭和57年に6万5300本,昭和58年に6万7800本,昭和59年に6万8950本,昭和60年に7万3070本,昭和61年に7万6500本,昭和62年に4万3140本,昭和63年に1万1030本,平成元年に1900本)を各年の納入医療機関数で除し,一納入医療機関当たりの年間平均納入数量を計算すると,下記括弧内のとおりとなる(小数点以下四捨五入)。なお,フィブリノゲン製剤は,1本当たり1gのフィブリノゲンを含有する製剤であり,フィブリノゲン製剤の承認された用量は「通常1回3グラムないし8グラムを用いるが,症状により受注者の血漿フィブリノーゲン量が正常となるまで反復する。」とされているため(前記(6)ア),一つの症例に対し1g(本)のみを使用するのではなく,数量を加減しつつ,複数の本数を使用することが予定されている。 昭和55年 2775機関(20本)昭和56年 2682機関(22本)昭和57年 2684機関(24本)昭和58年 2721機関(25本)昭和59年 2718機関(25本) 昭和60年 2577機関(28本)昭和61年 2579機関(30本)昭和62年 3122機関(非加熱製剤に係る955機関と,乾燥加熱製剤に係る2167機関の合計。平均納入数量は,14本)昭和63年 1209機関(9本)平成元年 295機関(6本)平成2年 228機関(販売数が不明なため,年間平均納入数量も不明である。)平成3年 154機関(同)平成4年 143機関(同) 本)平成2年 228機関(販売数が不明なため,年間平均納入数量も不明である。)平成3年 154機関(同)平成4年 143機関(同)平成5年 69機関(うち2機関は,献血を原料血漿とする製剤の納入先である。年間平均納入数量が不明な点は平成2年と同じ。)平成6年 82機関(乾燥加熱製剤に係る77機関と,SD処理を行った製剤に係る5機関の合計。年間平均納入数量が不明な点は平成2年と同じ。)ウ使用実態(甲ア17)使用方法a 厚生労働省は,ウェルファイド株式会社に対し,平成13年3月19日付け命令書(厚生労働省発医薬第166号)によって,使用方法別使用量や使用診療科別使用量について提出命令を出し,これを受けてウェルファイド株式会社が平成13年5月18日に提出した資料によると,非加熱製剤では,静脈注射としての使用が約84%,糊とし ての使用が約16%と推測されている。一方,加熱製剤では,静脈注射としての使用が約77%,糊としての使用が約23%と推測されている。 b 中間報告書によれば,非加熱フィブリノゲン製剤と加熱フィブリノゲン製剤を合計した使用量は,累計119万7024本で,このうち92.3%が静脈注射,7.7%が糊としての使用であったと推測されている。 c フィブリノゲン製剤投与後の418例の肝炎等発症患者の症状等に関する調査検討会調査報告書によれば,アンケートの有効回答全111人(無回答が25人,割合にして22.5%)に対し,約6割がフィブリノゲン製剤を静脈注射で使用されており,また,約1割がフィブリノゲン製剤をフィブリン糊として使用されている。 診療科の別a フィブリノゲン製剤の診 にして22.5%)に対し,約6割がフィブリノゲン製剤を静脈注射で使用されており,また,約1割がフィブリノゲン製剤をフィブリン糊として使用されている。 診療科の別a フィブリノゲン製剤の診療科別使用量については,ウェルファイド株式会社が厚生労働省に対して平成13年5月18日に提出した資料によると,静脈注射として最も多く使用していたのは産婦人科・産科・婦人科(約63%)であり,最も多かった使用疾患は,常位胎盤早期剥離,膣壁裂傷等の産中・産後の出血であった。 他方,糊として最も多く使用していたのは外科系のうち外科,心臓(血管)外科,脳(神経)外科,胸部外科であり(60%以上),最も多かった使用疾患は,肝臓がん等の肝切除面の止血であった。 b 中間報告書によれば,フィブリノゲン製剤を静脈注射で使用した診療科は,多い順に,産婦人科・産科・婦人科, 外科,内科,小児科,消化器科・胃腸科,血液(内)科,心臓(血管)外科,泌尿器科,脳(神経)外科,胸部外科,救急部,麻酔科,呼吸器外科であった。 また,フィブリン糊を使用した診療科は,多い順に,外科,心臓(血管)外科,脳(神経)外科,整形外科,産婦人科・産科・婦人科,泌尿器科,内科,胸部外科,救急部,呼吸器(内)科,呼吸器外科,消化器科・胃腸科,口腔外科,消化器外科であった。 適応外使用の実態a フィブリノゲン製剤の投与患者数中間報告書によれば,フィブリノゲン製剤の年間製造本数と,三菱ウェルファーマ株式会社の報告にあった推定使用量及び1症例当たりの平均使用本数(静脈注射2.16本,糊1.17本)とを基に試算すると,フィブリノゲン製剤の投与患者数は昭和45年代前半に2万1000人,昭和45年代後半に2万8000人,昭和55年代前半に3万2000人,昭和6 脈注射2.16本,糊1.17本)とを基に試算すると,フィブリノゲン製剤の投与患者数は昭和45年代前半に2万1000人,昭和45年代後半に2万8000人,昭和55年代前半に3万2000人,昭和62年には非加熱フィブリノゲン製剤及び加熱フィブリノゲン製剤併せて3万3000人であったと推測されている。 b 厚生労働省による適応外使用に対する施策フィブリノゲン製剤の適応外使用に関しては,昭和62年6月25日の第50回血液用剤再評価調査会で了承された調査報告書内に,「本来の適応以外に用いられていることがうかがわれ,この点についての指導も必要」との記載が存在している。 そして,厚生労働省薬務安全課長は,ミドリ十字に対し,昭和63年6月2日,フィブリノゲンHT-ミドリの添付文書改訂と緊急安全性情報配布の指示に当たり,添付文書冒頭に「非A非B型肝炎が報告されているので,本剤の使用に当たっては,適応を十分に考慮すると共に,投与は必要最小限とし,十分な観察を行うこと。」との内容を赤字赤枠で追記するよう指示を行った。 また,厚生労働省の指示に基づきフィブリノゲンHT-ミドリの全納入施設に配付・伝達された緊急安全性情報においても,適応疾患に限った利用を促すために,「先天性低フィブリノゲン血症などフィブリノゲンが著しく低下している場合に限って使用すること。本剤の承認された効能・効果は「低フィブリノゲン血症の治療」であり,先天性低フィブリノゲン血症などフィブリノゲンが著しく低下している場合にのみその是正を目的として投与される薬剤であります。本剤の使用決定に際しては添付文書の記載にご留意いただき,患者治療上本剤の使用が有益か否かを十分考慮の上,やむを得ぬ場合にのみ予め患者側によく説明し,必要最小限量をご使用いただくようお願いい ます。本剤の使用決定に際しては添付文書の記載にご留意いただき,患者治療上本剤の使用が有益か否かを十分考慮の上,やむを得ぬ場合にのみ予め患者側によく説明し,必要最小限量をご使用いただくようお願いいたします。」との内容が記述された。 c 中間報告書によれば,フィブリノゲン製剤は製造承認以降,適応疾患である低フィブリノゲン血症の推定患者数を大幅に上回る人数に投与可能な量が製造され,昭和45年から昭和50年にかけて,適応疾患の患者数の10~20倍程度の患者に対して使用されており,その後も製造本数 の増加に伴って適応外使用も増加していたものと推測されている。 なお,前記(6)イのとおり,医薬品の投与に関しては医師の裁量が認められており,医師が最善の治療を行うために,適応外の患者に対しても医薬品を投与することを薬務行政が禁止するものではない。 (16) 輸血用血液製剤の概要(乙ア1,3,5,68,69,71)ア輸血用血液製剤の種類,意義輸血用血液製剤は,以下のとおり複数の種類が存在する。輸血用血液製剤は,当初は採血瓶を用いて供給されていたが,昭和46年頃から順次プラスチック製(塩化ビニール樹脂製)の採血バッグが導入されるようになり,昭和55年4月に全面的に採血バッグの使用に切り替えられた。採血バッグは,そのまま吊り下げて静脈に注射する。(乙ア3,68,69,71) 全血製剤全血製剤とは,血液中の全ての成分を含む血液製剤をいい,新鮮血液と保存血液に分かれる。 手術時の大量出血でショックに陥り,赤血球の補給により酸素運搬能を増加させるとともに,血漿量の増加を図るために赤血球及び血漿成分を同時に補給しなければならない場合などに,全血製剤を用いた全血輸血がされることがある。かつては,輸血療法の主 補給により酸素運搬能を増加させるとともに,血漿量の増加を図るために赤血球及び血漿成分を同時に補給しなければならない場合などに,全血製剤を用いた全血輸血がされることがある。かつては,輸血療法の主流であったが,成分輸血療法の普及により,使用量は著しく減少している。 a 新鮮血液新鮮血液とは,採取後3日以内の液状保存全血のことを いい,有効期間も採血後3日間である。 保存血液と異なり,新鮮な赤血球に加えて,血液凝固因子,血小板を含んでいるため,従前は,最も質の良い製剤と考える臨床家が多かったが,その後,4~6℃の保存では凝固因子は失活し,血小板は低温障害を受けて機能を失うことが明らかとなった上,血液の効率的な活用の観点から,現在ではほとんど使用されていない。 b 保存血液保存血液とは,存液CPD液(クエン酸・リン酸塩ブドウ糖液)を入れたバッグに採血したものであり,有効期間は21日間とされている。 保存血液は,主な成分が酸素の運搬を生理機能とする赤血球成分であることから,その適応症としては,手術や事故等大量出血時の輸血とされていたが,現在では,赤血球成分製剤の使用が主流となったため,ほとんど使われていない。 c 枕元輸血,生血輸血全血製剤に代わって,血液の提供者(供血者)から注射器で採取した血液を直ちに患者に輸血するという枕元輸血,生血輸血といった院内血(院内で採血された血液)や,あらかじめ採血し,又は手術中の出血から回収した患者自身の血液を用いる自己血輸血という方法が用いられることもあるが,前二者は現在では特別な事情がない限り行うべきでないとされ,これにより採血された血液は,いずれも医薬品として扱われていない。 者自身の血液を用いる自己血輸血という方法が用いられることもあるが,前二者は現在では特別な事情がない限り行うべきでないとされ,これにより採血された血液は,いずれも医薬品として扱われていない。 成分製剤 成分製剤とは,採血した血液中の特定の成分ごとに分離して製剤にしたものをいい,成分製剤を用いた成分輸血療法は,患者が必要とする血液成分のみを輸血する方法である。 成分製剤としては,赤血球製剤,血小板製剤,血漿製剤がある。 a 赤血球製剤赤血球製剤による成分輸血の目的については,赤血球の働きが酸素の運搬であることから,第一次的には,末梢循環系へ十分な酸素を供給することにあるとされるが,循環血液量を維持するという目的もある。 赤血球製剤の適応症としては,慢性貧血,急性出血などが挙げられている。 b 血小板製剤血小板製剤による成分輸血の目的については,血小板の働きが止血であることから,血小板成分を補充することにより止血を図り,又は出血を予防することにあるとされる。 血小板製剤の適応症としては,血小板数が減少したり,血小板産生の低下による減少をみた場合,あるいは血小板の機能に異常がある場合などで,出血していたりあるいは出血の危険性の高い場合などが挙げられている。 c 血漿製剤血漿製剤は,凝固因子の補充を目的とするものである。 血漿製剤の適応症として,凝固因子の欠乏による出血傾向,DIC,低フィブリノゲン血症などが挙げられている。 血漿製剤の多くを占める新鮮凍結血漿(FFP)の有効期間は,採血後1年間である。 イ輸血用血液製剤の用法輸血用血液製剤は,当初,採血瓶を用いて供給されていたが 血漿製剤の多くを占める新鮮凍結血漿(FFP)の有効期間は,採血後1年間である。 イ輸血用血液製剤の用法輸血用血液製剤は,当初,採血瓶を用いて供給されていたが,昭和46年頃から順次プラスチック製(塩化ビニール樹脂製)の採血バッグが導入されるようになり,昭和55年4月に全面的に採血バッグの使用に切り替えられた。採血バッグは,そのまま吊り下げて静脈に注射する。 (17) 輸血用血液製剤の製造方法全血製剤は,採取された血液に抗凝固剤を加え,白血球の大部分を除去したものである。これに対し,成分製剤は,主として遠心分離法などの方法により製造する。 全血製剤,成分製剤は,200ml献血ないし400ml献血から,それぞれ1単位ないし2単位の製剤が作られ,200ml献血から作られた製剤を1単位という。そのため,血漿成分製剤や血小板成分製剤については,1単位が200mlよりも少ない。なお,昭和61年に400ml献血が導入されるまでは,200ml献血のみが行われていた。 (乙ア3,70,72,74)(18) 輸血用血液製剤の供給状況日本では,昭和39年8月に「献血の推進について」の閣議決定が行われ,昭和44年には民間血液銀行で行っていた売血が姿を消し,昭和48年には,民間血液銀行で血液を預って運用していた預血制度も廃止され,昭和49年には輸血用血液製剤を全て国内献血血液でまかなう国内自給が日本赤十字社によって達成された。日本赤十字社による供給システムは,血液センターにおいて採血,製造 された製剤につき,医療機関からの注文を受けた後,血液センターからの直配又は委託を受けた卸業者を通して医療機関へ供給されるというものである。 輸血用血液製剤は,有効期間が短い上,血液型の制約があり,都道 剤につき,医療機関からの注文を受けた後,血液センターからの直配又は委託を受けた卸業者を通して医療機関へ供給されるというものである。 輸血用血液製剤は,有効期間が短い上,血液型の制約があり,都道府県単位という需給圏にとらわれることは有効利用を損なうおそれがあるため,全国的規模での需給調整が行われている。 (乙ア75,76)(19) 輸血用血液製剤の危険性ア血液製剤は,人体に由来するものであり,特に輸血用血液製剤については,加熱等による不活化が困難であることから,供血者が有していた病原体などによる感染の可能性がある。かねてドナースクリーニング(問診,ウイルス等の抗原・抗体検査等を行って,供血者がウイルスなどの病原体に感染していないかどうかを確認する検査)等の安全対策が重ねられ,現在までにその安全性は飛躍的に向上しているが,HCV抗体検査が開始された平成元年以前までは,輸血を感染源とする肝炎(輸血後肝炎。ただし,C型肝炎に限らない。)が相当の率で発生していた。 輸血用血液製剤については,ウイルスの不活化処理を行うことができないことから,その感染リスクは,輸血量(供血者数)の増加に伴い増加することになる。これを年代ごとに整理すると,以下のとおりである。 (乙ア3,69)イ昭和30年代売血廃止から献血への切替途上にあり,売血時代の輸血後肝炎発症率は50.9%,その後の移行期においても31.1% であった。(乙ア74)ウ昭和40年代昭和39年に献血推進が閣議決定されたが,その移行期である昭和42年までの輸血後肝炎発症率は31.1%であり,献血に一本化された昭和47年までには16.2%に減少し,さらに,日本赤十字社血液センターでHBs抗原検査によるドナースクリーニングが開始され る昭和42年までの輸血後肝炎発症率は31.1%であり,献血に一本化された昭和47年までには16.2%に減少し,さらに,日本赤十字社血液センターでHBs抗原検査によるドナースクリーニングが開始された昭和48年以降は14.3%に減少した。(乙ア74)エ昭和50年代から昭和63年昭和50年代の輸血後肝炎発症率は,引き続き14.3%,400ml献血が開始された昭和61年以降は8.7%であった。(乙ア74)オ平成元年以降日本では,平成元年11月に世界で初めてHCV抗体検査(C100-3)を導入したが,その結果,輸血後肝炎発症率は2.1%に減少し,更に平成4年にHCV抗体検査試薬を第2世代の試薬に変更してから,輸血後C型肝炎はほとんどみられない状態になった。(乙ア74)(20) C型肝炎ウイルスの代表的検査方法ア肝炎ウイルスマーカー(甲タ7,10,乙タ2,3,13,25)ウイルスに感染すると,感染の証拠となるたんぱく質など,ウイルス粒子やその遺伝子産物と特異抗体が血液中に出現する。これをウイルスマーカーと呼ぶ。 ウイルスマーカーとなる物質には,ウイルス粒子,核酸(DNA又はRNA),抗原(たんぱく),抗体,ウイルス 型,核酸(アミノ酸)などがあり,非感染,現在の感染,既往の感染の鑑別のほか,ウイルスの増殖能,感染性,病態や予後の把握,治療法の選択効果の判定などにも使用されている。以下,基本的な知見を記載した上で,抗体検査(生体の反応で作り出されるHCV抗体の有無を調べる検査),抗原検査(ウイルスを構成するHCVコア抗原の有無を調べる検査),RNA検査(ウイルス遺伝子であるHCV-RNAの有無を調べる検査)を取り上げる。 HCV粒子,HCV抗体,HCV抗原の関係ウイルスとは,核酸(D 構成するHCVコア抗原の有無を調べる検査),RNA検査(ウイルス遺伝子であるHCV-RNAの有無を調べる検査)を取り上げる。 HCV粒子,HCV抗体,HCV抗原の関係ウイルスとは,核酸(DNA又はRNA)がたんぱく質の衣を着て粒子状の形態をとった微小な構造体である。 C型肝炎ウイルスは,直径55~57ナノメートル(1ナノメートル=10億分の1m)のRNAを核酸として持つウイルスである。 C型肝炎ウイルス粒子(HCV粒子)は,内部にC型肝炎ウイルスの遺伝子を持つ直径約30~32ナノメートルの内部粒子(コア粒子)と,これを覆う外殻(エンベロープ)からなる二重構造の球形をしている。ウイルス等の異物が生体に侵入すると生体の免疫反応によって免疫グロブリンが生ずる。この免疫グロブリンが抗体,すなわち当該異物に特異的に結合するたんぱくの構造体であり,生体に侵入した異物のことを抗原という。 生体にとって異物であるC型肝炎ウイルスが生体に侵入すると,HCVコアに対してはHCVコア抗体,C型肝炎ウイルスのエンベロープに対してはE2NS1抗体,非構造たんぱくに対してはNS抗体などのHCV抗体が生ずる。HCV 抗体を生ずる異物がHCV抗原である。 HCV抗体検査抗体検査とは,血液中の抗体を検出する検査である。HCV抗体検査は抗体価(抗体の有無及びその量の程度)を高力価,中力価,低力価群に分類できる方法,例えばCLEIA法(化学発光酵素免疫測定法)を用いて行われる。過去・現在のC型肝炎ウイルス感染について検査ができるという臨床的意義がある。 HCV抗体は,C型肝炎ウイルスに対する宿主(病原体が寄生,又は共生する相手の生物を指す。)記憶を示す抗体の集合体である。C型肝炎ウイルスが体内に侵入した場合の免疫応答の一つとして 意義がある。 HCV抗体は,C型肝炎ウイルスに対する宿主(病原体が寄生,又は共生する相手の生物を指す。)記憶を示す抗体の集合体である。C型肝炎ウイルスが体内に侵入した場合の免疫応答の一つとして,免疫担当細胞からC型肝炎ウイルスに特異的に結合する抗体が産生され血液中のウイルスを不活化するなどの機能を担う。HCV抗体は,ウイルスが完全に排除された後も残存することから,HCV抗体検査の結果が陽性であることは,生体内にHCV抗原に対する抗体が生成されていることを示す。HCV抗体が陽性である場合,過去にC型肝炎ウイルスの感染を受けたことを示しており,「現在HCVに感染している人(HCVキャリア)」と「過去に感染し治癒した人(感染既往者)」とに大別できる。 HCVキャリアでは,一般に,血液中に放出され続けるHCVの免疫刺激に身体がさらされていることからHCV抗体がたくさん作られ,COI値が高い高力価となる。ただし,抗体があまり多く作られていない者(この場合,中力価)や,少ししか作られていない者(この場合,低力価)も存在する。インターフェロン治療(抗ウイルス治療)などで,C 型肝炎ウイルスが体内から完全に排除されて治癒した者(感染既往者)では,年単位をかけて,中力価から次第に低力価に低下する。 HCV抗体は,一般的に,感染後3か月くらいで検出されるようになるとされており,C型肝炎ウイルスに感染した直後では,身体の中にC型肝炎ウイルスが存在しても,HCV抗体が未だ作られておらず,HCV抗体検査の結果が陰性となることもある(HCV抗体のウィンドウ期)。 HCV抗体が陰性であれば「現在C型肝炎ウイルスに感染していない可能性がきわめて高い」と判定されるが,HCV抗体のウィンドウ期はHCV抗体が陰性となるため,HCV抗体検査の 体のウィンドウ期)。 HCV抗体が陰性であれば「現在C型肝炎ウイルスに感染していない可能性がきわめて高い」と判定されるが,HCV抗体のウィンドウ期はHCV抗体が陰性となるため,HCV抗体検査のみでは不十分であり,HCV-RNA定性検査又はHCVコア抗原検査が必要である。 HCVコア抗原検査HCV抗原検査はC型肝炎ウイルスのコアたんぱくを測定するもので,HCV抗体検査により中力価及び低力価とされた検体に対して行う。検体(血清)中のC型肝炎ウイルスの存在の有無を直接的に知ることができ,また,C型肝炎ウイルスの量を知ることができ,C型肝炎ウイルスの増殖と関係を検査できるという臨床的意義がある。 HCVコア抗原量測定は,検査費用が安価である上,結果が出るまで70分と短時間であり,ごく微量のウイルスの存在でも検出されるため,特にC型急性肝炎の診断に有用であるとされる。 厚生労働省は,平成15年度からはHCV抗体陽性者においては,まず簡便かつ安価な高感度コア抗原測定法を実施 し,その結果陰性と判定された者のみRNA検査を実施することとした。 HCV-RNA検査C型肝炎ウイルスの遺伝子であるHCV-RNAの検査は,C型肝炎ウイルスの存在の有無を知るために行う定性検査とC型肝炎ウイルスの量を測定する定量検査がある。 HCV抗体検査が陽性の場合でも,実際に現在C型肝炎ウイルスに感染しているのか,過去に感染を起こしただけで現在はウイルスがない状態なのかを区別するためには,RNA定性検査を行う必要がある。HCV-RNA検査の結果,陽性であれば「現在C型肝炎ウイルスに感染している可能性がきわめて高い」と判定し,陰性であれば「現在C型肝炎ウイルスに感染していない可能性がきわめて高い」と判定する。 HCV- RNA検査の結果,陽性であれば「現在C型肝炎ウイルスに感染している可能性がきわめて高い」と判定し,陰性であれば「現在C型肝炎ウイルスに感染していない可能性がきわめて高い」と判定する。 HCV-RNAが陽性であれば,HCV-RNA定量法感度以下であったり,ALT値(肝細胞中のALT:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼが血中にどの程度出ているかを示す数値)が正常であったりしても,その患者はHCVキャリアであり,今後肝障害が出現し,活動性肝炎となることがある。 イ血液生化学検査(甲た,乙タ13,25,27,28) 血清トランスアミナーゼ血清トランスアミナーゼは,細胞質内に存在する酵素であり,肝細胞が障害された際には肝細胞組織の変性・壊死により血中に逸脱し,増加することから肝逸脱酵素とも呼ばれる。血清トランスアミナーゼの代表的なものは,アスパラギ ン酸アミノトランスフェラーゼ(AST。なお,グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)ともいう。)や,アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT。なお,グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)ともいう。)であり,これらの数値は,肝細胞障害に極めて鋭敏に反映するとされ,慢性肝炎では,一般に,軽度あるいは中等度の上昇が持続する。 したがって,AST値,ALT値が上昇して異常を示す場合,肝細胞も含め逸脱酵素を含む臓器が障害されていることが推認されることになる。しかし,AST値,ALT値は,一般に,自己免疫性肝炎,薬剤性肝炎,アルコール性肝炎などでも上昇することから,単にこれらの数値が上昇して異常値を示しているという事実をもってウイルス性肝炎である(肝細胞障害の原因がウイルスによるものである。)と診断することはできな ルコール性肝炎などでも上昇することから,単にこれらの数値が上昇して異常値を示しているという事実をもってウイルス性肝炎である(肝細胞障害の原因がウイルスによるものである。)と診断することはできないとされる。 血小板数血液生化学検査において,血液中の血小板数は,慢性肝炎の進行の程度に関連して減少すると考えられており,線維化を推測する目安として有用である。血小板数が減少する原因としては,肝臓で産生されている血小板産生を促進するたんぱく質(トロンボポエチン)が減少することや,血球の破壊及び貯蔵機能を有する脾臓が肝硬変による血流のうっ滞により腫大・機能亢進することなどが指摘されている。 血清たんぱく質(アルブミン,凝固因子など)血清たんぱく(総たんぱく;TotalProtein;TP)は100種類以上の成分からなり,その主なものとしてはアルブミ ン,免疫グロブリン,リポたんぱく,凝固因子などが挙げられ,いずれも肝臓で合成される。肝障害の末期に肝硬変に進行すると,肝臓におけるたんぱく合成機能が低下するため,血清総たんぱく,Alb(血清アルブミン)などの数値が低下する。 ウ病理学的検査病理組織学的所見を得るための検査であり,腹腔鏡下ないし超音波ガイド下で,肝臓に生検針を刺し入れて組織片を採取し,これを顕微鏡で観察する。慢性肝炎においてはその病変の進行度や活動性を把握し,抗ウイルス療法の適応や治療効果の評価などに重要な意義を有しているが,肝硬変の進行した例においては,臨床所見,肝機能検査,エコー,CTなどにより診断は容易で,肝生検の必要性は少ないとされる。なお,肝硬変では一般的に血小板の減少等の所見がみられる。(甲タ7,乙タ3)エ画像検査ウイル 検査,エコー,CTなどにより診断は容易で,肝生検の必要性は少ないとされる。なお,肝硬変では一般的に血小板の減少等の所見がみられる。(甲タ7,乙タ3)エ画像検査ウイルス性肝炎・肝硬変・肝がんにおいては,様々な画像検査が用いられるが,主に使用されるのは,超音波検査,CT検査である。(甲タ7,乙タ3,26) 超音波検査超音波(人間の耳に聞こえる音の周波数を超える音波)を生体内に発信し,生体内の音響的に異なる境界面から戻ってくる反射波(エコー)を分析して生体内の内部構造や血流の分布状態を画像化したものである。 CT検査人体に薄いX線ビームを多方向から照射し,その透過X線 強度を計測し,断層面のX線吸収値分布像を再構成したものである。X線を出す線源とそれに対向する検出器が人体周囲を回転しながら走査するものが一般的である。画像は,臓器・組織のX線吸収値の大小に応じて白黒濃淡をつけた画像として表示される。 ウイルス性肝炎については,肝炎様症状を呈したり血液生化学データで肝機能異常が発見されたりした症例では,スクリーニング的な目的で,まず簡便で放射線被曝のない腹部超音波検査が行われるとされている。 (21) C型肝炎ウイルスが引き起こす病態及び症状C型肝炎ウイルスに感染した場合,急性肝炎にり患する症例,持続感染の病態になり,慢性肝炎,肝硬変,肝がんへと移行する症例がある。 ア急性感染と持続感染C型肝炎ウイルス感染症には急性感染と持続感染の病態がある。 C型急性感染は,一過性の感染であり,適度な免疫応答が生じて,C型肝炎ウイルスが排除される場合をいう。ウイルス側の因子又は宿主側の因子によりウイルスに対する免疫応答 感染と持続感染の病態がある。 C型急性感染は,一過性の感染であり,適度な免疫応答が生じて,C型肝炎ウイルスが排除される場合をいう。ウイルス側の因子又は宿主側の因子によりウイルスに対する免疫応答が不十分であった場合などには,ウイルスは肝細胞に残存して持続感染に移行する。 C型肝炎ウイルスに感染した場合に,ウイルスが免疫応答により排除されるか,免疫応答による肝臓の組織障害がどの程度となるか,その感染が持続するかどうかは,ウイルス側の因子と宿主側の因子のバランスにより決定されるところ,ウイルスが排除されて治癒する者は約3割とされており,約7割の者 は,ウイルスがそのまま肝臓に残存することにより持続感染する。 (乙タ3,4)イ C型急性肝炎(乙タ3,4,10)C型急性肝炎とは,肝炎ウイルスの一過性の感染(急性感染)によって起こる病態であり,免疫応答の過程における急激な肝細胞障害に伴う炎症である。 C型急性肝炎の経過は,潜伏期,前駆期,黄疸期,回復期に分けられる。通常,感染後15日~150日間の潜伏期を経て症状が出現する。 前駆期では全身倦怠感,筋肉痛,発熱(38℃以下の微熱であることが多い。),嘔気,嘔吐,右季肋部痛,食欲不振などの前駆症状が出現し,初期にはしばしば上気道炎や感冒と誤診されやすい。 発症1~2週間で前駆症状が軽快してくるとともに黄疸が出現する。自他覚症状としては眼球結膜の黄染と皮膚掻痒感,濃厚尿・褐色尿がある。 黄疸は通常1~3週間後にピークに達し,その後は回復期となり,黄疸は1~3か月をかけて徐々に消失する。 回復期には自覚症状はほとんどみられないことが多い。 なお,まれではあるが,C型急性肝炎が劇症肝炎,すなわち,短い経過の中で高度な肝機能障害の出現とともに,精神 1~3か月をかけて徐々に消失する。 回復期には自覚症状はほとんどみられないことが多い。 なお,まれではあるが,C型急性肝炎が劇症肝炎,すなわち,短い経過の中で高度な肝機能障害の出現とともに,精神症状や血液凝固能異常を伴う病態に進展することがある。 C型急性肝炎の診断は,急性肝障害の臨床像(臨床症状や検査所見),C型肝炎ウイルスへの最近の曝露(接触),A型 肝炎ウイルスマーカーとB型肝炎ウイルスマーカーの陰性が確認される場合に,まずこれを疑い,HCV抗体検査が陰性であっても,HCV-RNA検査が陽性である場合,あるいは1~3か月後の再度のHCV抗体検査において,初期に陰性であったHCV抗体検査が陽性化することなどにより行われる。 ウ無症候性キャリア及び慢性C型肝炎(乙タ10,11,乙チ1,2)無症候性キャリアと慢性肝炎の違い持続感染化したウイルスを持つ者はキャリアと呼ばれている。 持続感染に伴って,生体内の免疫応答が継続すると,その結果,免疫応答による肝細胞障害が慢性的に生じ,慢性肝炎となる。C型肝炎ウイルスの場合,年齢に関わらず,免疫能が十分に成熟した成人での初感染でも,70%程度が慢性の経過をとり,慢性C型肝炎を引き起こす。 もっとも,キャリアのうち,持続感染に伴って通常続くはずの免疫応答がほとんど生じず,肝機能値(血清中トランスアミナーゼであるAST(GOT),ALT(GPT)の値)が正常で,明らかな肝炎がない場合,無症候性キャリアとして区別される。 慢性C型肝炎の意義慢性肝炎のうち,起因ウイルスがC型肝炎ウイルスであるものを慢性C型肝炎という。慢性C型肝炎とは,C型肝炎ウイルスが肝臓に持続感染し,炎症が起きることにより肝臓の細胞が障害され 義慢性肝炎のうち,起因ウイルスがC型肝炎ウイルスであるものを慢性C型肝炎という。慢性C型肝炎とは,C型肝炎ウイルスが肝臓に持続感染し,炎症が起きることにより肝臓の細胞が障害される疾患である。 日本においては,慢性肝炎の組織診断基準として,新犬山分類が用いられている。新犬山分類によれば,慢性肝炎とは,臨床的には,6か月以上の肝機能検査値の異常とウイルス感染が持続している病態をいい,組織学的には,門脈域にリンパ球を主体として細胞浸潤と線維化(C型肝炎は,慢性化により,肝炎ウイルスに感染した肝細胞の変性(一時的に形態が変化し,機能が低下すること)・壊死(個体の一部が破壊され,死んでしまうこと)と再生が繰り返されることにより,徐々に肝細胞の再生能力が追いつかなくなり,肝細胞の再生に代わって肝臓内の炎症部分を中心に線維組織の増生が生じる。この線維組織の増生は,肝細胞周囲に存在するコラーゲンを中心とした細胞外マトリックス(細胞と細胞の間に存在する物質)が増加し,肝細胞の傷害部分等に沈着する現象である。このような状態を線維化と呼ぶ。)を認め,種々の程度の肝細胞の変性・壊死所見を認めるものである。 そして,その組織所見は線維化と壊死・炎症所見を反映させ,おのおの線維化と活動性の各段階に分け表記される。表記は,たとえば「F1 /A2」などとされる。 a 線維化(staging)線維化の程度は,門脈域から線維化が進行し,小葉が改築されて肝硬変へ進展する段階を4段階に区分し,更に結節形成傾向が全体に認められる場合は肝硬変(F4)と分類する。 F0 線維化なしF1 門脈域の線維性拡大F2 bridgingfibrosis F3 小葉のひずみを伴う bridgingf る場合は肝硬変(F4)と分類する。 F0 線維化なしF1 門脈域の線維性拡大F2 bridgingfibrosis F3 小葉のひずみを伴う bridgingfibrosisF4 結節形成傾向が全体に認められる。 b 活動性(grading)A0 活動性なしA1 軽度活動性A2 中等度活動性A3 高度活動性慢性C型肝炎の症状慢性C型肝炎の症状としては,全身倦怠感に引き続き食欲不振,悪心・嘔吐などの症状やこれらに引き続き黄疸が出現する場合があるが,肝細胞は再生能力が強い細胞であり,多大な予備能があることなどにより自覚症状が少ないことから,自ら体調の変化を訴えて病院を受診する患者は少なく,健康診断,人間ドック,献血などにおける血液検査において,肝機能値(AST,ALT)に異常を認め,C型肝炎ウイルスへの感染が判明することが多い。慢性C型肝炎の患者のうち,発症時に症状を有する割合は13%と低い割合にとどまる。 前記の各症状は,多くの場合,それ自体によって日常生活に支障を来すほど重篤なものではないが,患者が抱える疾患に伴う不安などと相まって,生活の質の低下へとつながることもあるとされる。 エ肝硬変(乙タ3,10) 意義肝硬変は,形態学的には,びまん性(一面に広がること)の 線維化,肝小葉構造の破壊と異常な再生結節(偽小葉)形成と定義される(新犬山分類では,結節形成傾向が全体に認められる場合をいう。)。 臨床的には,代償性肝硬変と非代償性肝硬変とに分けられる。代償性肝硬変とは,肝機能不全による症状や門脈圧亢進症状,すなわち黄疸,腹水,肝性脳症,消化管出血,低アルブミンなどが出現していない肝硬変をいい, には,代償性肝硬変と非代償性肝硬変とに分けられる。代償性肝硬変とは,肝機能不全による症状や門脈圧亢進症状,すなわち黄疸,腹水,肝性脳症,消化管出血,低アルブミンなどが出現していない肝硬変をいい,通常無症状である。これは,肝予備能が比較的保たれている,すなわち破壊された肝細胞の働きを,他の正常な肝細胞が代償しているからであり,そのために代償性肝硬変と名付けられている。他方,これらの臨床所見及び症状が出現した肝硬変については,破壊された肝細胞が多く,残された正常な肝細胞では生体が必要としている働きが十分に機能しなくなっているため,非代償性肝硬変と呼ばれる。 線維化した部分については肝細胞が再生されることはないため,線維化が進行すると,徐々に肝臓の機能が失われていくとともに,肝臓が硬化していき,やがて肝硬変となる。このように,肝硬変は,慢性肝炎における線維化の程度が進展したものということができる。 C型肝炎が慢性化に至った場合には,C型肝炎ウイルスが自然に排除されて治癒することは極めてまれであり,前記の線維化の進行により緩徐ではあるが確実に病態が進行し,一般に,20~30年の経過で肝硬変に進展すると考えられている。 肝硬変の成因には,ウイルス性肝炎のほか,アルコール性,自己免疫性,胆汁うっ滞型,代謝性,うっ血性,薬物性,特殊な感染症,非アルコール性脂肪肝炎(NASH),原因不明など 様々なものが指摘されている。現在,成因として最も多いのは,C型肝炎で,全体の約60%とされている。次いでアルコール性が約15%,B型肝炎が約13%とされている。 肝硬変の症状代償期では自他覚症状に乏しいが,非代償期になると黄疸,手掌紅斑,くも状血管腫,肝右葉萎縮,肝左葉腫大,腹水,浮腫,脾腫,腹壁静脈怒張,消化管出血, 3%とされている。 肝硬変の症状代償期では自他覚症状に乏しいが,非代償期になると黄疸,手掌紅斑,くも状血管腫,肝右葉萎縮,肝左葉腫大,腹水,浮腫,脾腫,腹壁静脈怒張,消化管出血,筋萎縮,肝性口臭,肝性脳症(精神錯乱,混迷,昏睡)などの肝不全症候が明らかとなる。 肝硬変の診断肝硬変であると診断するには,黄疸や腹水などの肝不全症候を認める非代償性肝硬変であれば容易であるが,代償性肝硬変では自覚症状を認めないことも多く,その前段階である慢性肝炎との鑑別が重要であり,しばしば鑑別困難な場合があり,その場合,患者の病歴,検査成績,画像検査所見を総合的に評価し診断する。 a 血液検査による診断血液生化学検査では,肝細胞の破壊により肝逸脱酵素の上昇をみる。肝細胞機能障害により総たんぱく,アルブミン,コレステロールなどの産生低下,血清ビリルビン値の上昇,総胆汁の増加,更に凝固系因子の産生低下によるPT時間の延長などが肝硬変に特徴的である。また,肝硬変では汎血球減少(赤血球,白血球,血小板ともに減少すること)を認めることが多い。また,慢性C型肝炎における肝線維化の進展度と血小板数低下の程度が相関するという報告があり,特に血小板数が10万以下では,肝硬変への移行が強く示唆され る。 b 画像診断肝硬変の画像所見は,①肝自体の線維化に伴う形態変化,②肝硬変によってもたらされる血行動態変化に伴う画像所見,③肝機能低下によってもたらされる画像所見に大別される。具体的には,①肝自体の線維化に伴う形態変化,超音波検査・CT検査によって,肝表面の凹凸不整,肝縁の鈍化,肝右葉の萎縮と左葉の腫大等の所見を認める。 c 組織検査による診断肝硬変の確定診断には,腹部超音波下又は腹腔鏡下肝生検によ 変化,超音波検査・CT検査によって,肝表面の凹凸不整,肝縁の鈍化,肝右葉の萎縮と左葉の腫大等の所見を認める。 c 組織検査による診断肝硬変の確定診断には,腹部超音波下又は腹腔鏡下肝生検による病理組織学的検査が必要である。肝生検は肝硬変を含む慢性肝疾患において病期,重症度を評価するのに最も正確な方法である。腹部超音波下の肝生検と比較し,腹腔鏡検査では肝表面の性状や再生結節の大きさ,均一性などを観察することができることから,より正確な診断が可能となる。多くの肝疾患において厳格な診断基準が未だにない中で,自己免疫性肝炎,原発性胆汁性肝硬変,ヘモクロマトーシス,ウィルソン病,NASHの診断においては重要な役割を果たしている。 オ肝がん意義肝がんは,肝細胞由来の上皮性悪性腫瘍である。 C型肝炎ウイルスは肝がんの発症リスクとなることが知られており,特に肝硬変を基礎疾患にして発生するといわれている。慢性C型肝炎,肝硬変,肝がんはC型肝炎ウイルスの感染に起因する一連の疾患である。 C型肝炎ウイルスに感染した患者における発がんは,線維化のステージと相関しており,最も軽微なF₀及びF₁では年率0~0.5%,F₂で1~2%,F₃で4~5%,肝硬変であるF₄では8%(5%とする文献,6~7%とする文献もある。)で肝がんを発症する。 肝がんの症状原発性の肝がんは無症状である。もっとも,随伴する肝硬変の症状として,くも状血管腫,手掌紅班,黄疸,腹水,肝性脳症などが認められることがある。 肝がんの診断肝がんの診断は,各種画像検査を中心に行われ,腫瘍マーカー(AFP,PIVKA-Ⅱ等)が補助的に使用される。 もっとも,主体は画像診断であり,腫瘍マーカーは補足的な役割とされている。確定診断は 断肝がんの診断は,各種画像検査を中心に行われ,腫瘍マーカー(AFP,PIVKA-Ⅱ等)が補助的に使用される。 もっとも,主体は画像診断であり,腫瘍マーカーは補足的な役割とされている。確定診断は,病理組織に基づくが,非手術的治療が選択される場合,病理学的検査は必ずしも行われない。 画像検査としては,腹部超音波検査,CT検査,血管造影検査などがある。 (22) C型肝炎の治療ア概要C型肝炎の治療法には,大きく分けて,抗ウイルス療法(様々な種類のインターフェロン(抗ウイルス薬)を用いた治療法,インターフェロンとリハビリン(平成13年11月認可の治療薬)の併用療法など)と肝庇護療法の二つの方法がある。 インターフェロン治療の適否は,全身状態,C型肝炎の病 期,活動度の他に,血液中のC型肝炎ウイルスの量や遺伝子型(ジェノタイプ)などによって左右される。抗ウイルス療法を受けられなかったり,同療法により十分な効果が得られなかった場合でも,肝庇護療法により,肝細胞破壊の速度(肝炎の活動度)を抑えることによって,慢性肝炎から肝硬変への進展を抑えたり,遅らせたりすることができる。 イ慢性C型肝炎の治療慢性C型肝炎の治療の目標は,可能であればC型肝炎ウイルスを排除して完全治癒を図ること,それが難しい場合は肝炎を抑えて肝臓の線維化の進展の阻止又は遅延を図り,肝硬変や肝がんへの進展を阻止又は遅延させることである。 このような観点から,慢性C型肝炎の治療法としては,第一次的には,ウイルス排除を目的とする抗ウイルス療法(インターフェロン療法等)が挙げられ,抗ウイルス療法の適応がないと考えられる場合や,抗ウイルス療法を行っても効果がなかった場合の二次的な治療法として,抗炎症療法(強力ネオミノファーゲンC(強ミノ インターフェロン療法等)が挙げられ,抗ウイルス療法の適応がないと考えられる場合や,抗ウイルス療法を行っても効果がなかった場合の二次的な治療法として,抗炎症療法(強力ネオミノファーゲンC(強ミノ),ウルソデオキシコール酸(UDCA),しゃ血療法)が挙げられる。 (乙タ2,14)ウ肝硬変の治療肝硬変の治療方針は,肝硬変・線維化の治療,合併症の治療,発がん対策,肝移植と大きく四つに分かれ,それぞれ様々な治療法があるが,それぞれの患者の状態によって適切な治療を選択していくことになる。(乙タ8)エ肝がんの治療肝がんの治療として有効性が確認されているのは,肝切除, 肝移植,穿刺局所療法(経皮エタノール注入療法,マイクロ波凝固療法,ラジオ波凝固療法(RFA)),肝動脈塞栓術(TAE)である。肝がんでは,高率に肝硬変を伴うため,肝機能と腫瘍の進展状況を勘案して,治療選択が行われる。また,根治的な治療が行われても非常に高率に再発を来すため,個々の患者が複数の治療法を経験することが多い。このうち,ラジオ波凝固療法とは,超音波ガイド下にラジオ波焼灼のための凝固針を腫瘍内に挿入し,腫瘍を焼灼する方法である。RFAは450~480kHz の長い波長の高周波を使用する。3cm程度の腫瘍であれば完全に1回の焼灼で治療することができるため,現在経皮的治療の主流となっている。(乙タ3,乙チ10)(23) 疾患・処置類型ごとの医学的知見ア胎盤に関する疾患(甲ア33,甲カ1~4,乙カ6) 胎盤の定義,機能胎盤は,羊膜,繁生絨毛膜,子宮基底脱落膜からなる組織である。 絨毛間腔を循環する母体血と,絨毛の中を流れる胎児血は,絨毛の表面を覆う絨毛上皮細胞,絨毛間質,絨毛内 胎盤の定義,機能胎盤は,羊膜,繁生絨毛膜,子宮基底脱落膜からなる組織である。 絨毛間腔を循環する母体血と,絨毛の中を流れる胎児血は,絨毛の表面を覆う絨毛上皮細胞,絨毛間質,絨毛内毛細血管網の血管壁を通じて,酸素などのガス,栄養・排泄物質などの交換を行う。 胎盤の剥離前記1(2)のとおり,分娩経過は,分娩第1期(開口期:分娩開始から外子宮口全開大までの期間),分娩第2期(娩出期:子宮口全開大から胎児娩出までの期間),分娩第3期(後産期:胎児娩出直後から胎盤娩出までの期間)の3期に分け られる。分娩第1期,分娩第2期を経て胎児が娩出され,分娩第3期(後産期)に入った後,一旦休止した陣痛が,5分~15分の後に再び発来する(後産期陣痛)。これにより子宮が収縮すると,胎盤との間にずれが生じ,最も脆い底脱落膜海綿層に亀裂が入って,胎盤は子宮壁から剥離する。胎盤剥離は,1回又は2回の子宮収縮によって児娩出後およそ10分以内に完了する。 癒着胎盤癒着胎盤とは,胎盤の絨毛が子宮筋層内に侵入し,胎盤の一部又は全部が子宮壁に強く癒着して,胎盤の剥離が困難なものをいう。なお,分娩第3期に,胎盤が完全に娩出されずに一部又は大部分が子宮腔内に残留するものを胎盤残留という(胎盤遺残ともいう。)。 胎盤用手剥離術剥離後の胎盤を長く排出させずにおくと,出血と感染症の危険を来すことがある。 癒着胎盤及び胎盤残留等が疑われるときは,①輸血の準備,②全身状態の把握と検査,③血管確保といった手順を行ったあと,まず,胎盤娩出促進法(子宮収縮を促すための導尿,軽く腹圧を加える,子宮底の輪状マッサージ,子宮収縮剤の静注など)を行う。 剥離後の胎盤娩出促進法として,胎盤圧出法を行う。胎盤娩出促進法や胎盤圧出法によって 出促進法(子宮収縮を促すための導尿,軽く腹圧を加える,子宮底の輪状マッサージ,子宮収縮剤の静注など)を行う。 剥離後の胎盤娩出促進法として,胎盤圧出法を行う。胎盤娩出促進法や胎盤圧出法によってもなお胎盤が完全に娩出されない場合は,医師などが全手を子宮腔内に挿入して,直接的に胎盤を剥離して排出させる胎盤用手剥離術(剥離法)を行う。具体的には,外陰部及び膣内を消毒液で洗浄し,手は 肘関節まで十分に消毒し,滅菌ゴム手袋をつけ,全手を静かに子宮腔内に挿入する。臍帯に沿って胎盤に達し,指をそろえて伸ばし,手背を子宮壁に向け,小指側を子宮壁と胎盤との間に静かに進め,両者を剥離させる。剥離後は胎盤を握って引き出すことなく,これを手掌に受けたまま,子宮の収縮力によって圧出されるのを待つ。用手剥離の後は抗生物質膣坐薬を挿入し,広域スペクトル抗生物質の全身投与を行う。 その後感染症り患の有無を厳重にチェックする。 胎盤剥離の際の出血胎盤の剥離に際して底脱落膜に亀裂が入れば,子宮内面の脱落膜血管(子宮胎盤血管)が断裂するため,正常分娩においても必然的に出血する。ただし,子宮が収縮すれば剥離面も収縮し,これにより開放された血管断端も圧迫され閉じるため,速やかに止血される(活性結紮又は生物学的結紮)。 癒着胎盤に伴う出血癒着胎盤の症状の一つとして,出血が挙げられる。 癒着胎盤の臨床的分類として,第1群は,用手的に容易に剥離できるもので,癒着は粗く,小さなポリープ様突起を認めるものであり,全分娩の2%である。第2群は,用手的に剥離できるが困難なもので,癒着部位に線維素様の索を認め,更に剥離時にかなりの出血を認めるものであり,全分娩の0. 6%である。第3群は,用手的に剥離は不能で,癒着部位を用手的に剥離す は,用手的に剥離できるが困難なもので,癒着部位に線維素様の索を認め,更に剥離時にかなりの出血を認めるものであり,全分娩の0. 6%である。第3群は,用手的に剥離は不能で,癒着部位を用手的に剥離すると必ず胎盤片が残り,出血を多量に認めるもので,極めてまれに起こる。 全癒着胎盤では,胎児を娩出しても全く胎盤が剥離されないため出血は認められないか,少量にとどまる。他方,癒着 部分の一部の胎盤が剥離すると大出血を引き起こし,ショック状態に陥ることもある。 胎盤の遺残はかなりの頻度で弛緩出血(後記イ)をみる。 また,不完全な胎盤用手剥離や,操作中や操作後では強出血となることが多い。この場合も出血が多いとショック状態を呈する。 また,胎盤圧出法について,その用法を誤ったり,無理をしたりすると大出血を生ずる可能性がある。 癒着胎盤は,産科DICの基礎疾患のうち,「出血性ショック(2000ml以上時)」の原因として挙げられている。 前置胎盤a 意義前置胎盤とは,様々な理由により受精卵が子宮下部に着床したために,胎盤が内子宮口の全部又は一部を覆う状態をいう。胎盤が内子宮口を覆う程度によって,全前置胎盤,一部前置胎盤,辺縁前置胎盤の3種類に分類される。 b 前置胎盤に伴う出血⒜ 妊娠時の出血妊娠中期から無痛性の(疼痛を伴わない)外出血(性器出血)を繰り返す(警告出血)。妊娠末期に近づくほど,子宮口が更に開大するにつれ出血の頻度は増し,出血量も多量となる。妊娠中期以降では突発的な多量出血がしばしば発生するが分娩時が最も多い。 分娩時の出血分娩時は出血量がピークに達し,ショック状態に陥ることもある。出血が多い場合は,一時的止血(ガーゼタ ンポンを挿入),血管確保,大出血例には輸血などの 時が最も多い。 分娩時の出血分娩時は出血量がピークに達し,ショック状態に陥ることもある。出血が多い場合は,一時的止血(ガーゼタ ンポンを挿入),血管確保,大出血例には輸血などの抗ショック療法が行われる。出血が増強した場合,分娩は,帝王切開術によることが多い。前置胎盤の帝王切開では,術中に大出血を引き起こすこともまれではない。 DICの合併はまれであるが,外出血を放置すれば凝固因子が消耗するので,DICを来すこともある。出血は,陣痛発作時に強くなり,間欠時に弱くなるが通常止血することはない。出血量は全前置胎盤が最も多いが,辺縁前置胎盤では破水により児頭が下降し胎盤を圧迫して止血することがある。 分娩後の出血子宮下部はもともと着床に適した部位ではないため,子宮下部の脱落膜が発育不良で薄く,胎盤の絨毛が,子宮下部の組織を軟化して子宮筋層内へ侵入し,血管を破壊する。妊娠中は問題が少ないが,胎盤娩出時は,胎盤の絨毛が深く組み込みすぎて剥がれず,癒着胎盤となる頻度が高い。特に帝王切開既往妊婦の前置胎盤では瘢痕部への絨毛侵入が容易なため癒着胎盤の頻度がより高い。 また,子宮下部の筋層が少なく,胎盤が付着していた部位の子宮収縮が弱いため,弛緩出血や多量出血が発生することがある。 常位胎盤早期剥離a 意義常位胎盤早期剥離とは,妊娠後半期に,正常位置(子宮体部)に付着している胎盤が,妊娠中又は分娩中に胎児の娩出に先立って子宮壁から剥離する病態をいう。発症頻度 は,全分娩の0.5%とまれである。 b 常位胎盤早期剥離に伴う出血常位胎盤早期剥離の多くは,子宮,胎盤循環を担う血管にれん縮や血栓形成が生じ,血行不良に陥った脱落膜が壊死するところから始まる。 壊死した脱落膜は脆くなっ る。 b 常位胎盤早期剥離に伴う出血常位胎盤早期剥離の多くは,子宮,胎盤循環を担う血管にれん縮や血栓形成が生じ,血行不良に陥った脱落膜が壊死するところから始まる。 壊死した脱落膜は脆くなって子宮壁から剥がれ,その際に脱落膜の基底層を走る小動脈が破綻して出血する。この出血は血腫(胎盤後血腫)を作り,前記血腫が更に周囲の脱落膜を剥離させ,剥離によって新たな出血が生じ,更に血腫を成長させる。 血腫の増大は子宮内圧を上昇させるため,子宮収縮を引き起こし,妊婦は強い腹痛に襲われる。 溜まった血液は子宮頸部へ流れ,性器出血(外出血)を呈するが,通常は卵膜に遮られるので少量にとどまる(外出血<内出血の関係のもので,「内出血型」と呼ばれる。)。 内出血型が80%を占めるが,残りの20%では,卵膜と子宮壁の隙間が広いため大量の外出血を認める(「外出血型」と呼ばれる。)。内出血型では外出血は比較的少量であるが,実際にはその何十倍もの内出血がある。出血が大量に及べば,貧血からショック状態に陥り(本症は産科ショックの最大の原因である。),更にDICを合併すれば著明な出血傾向が現れる。 妊娠中は,血液が分娩に備えて凝固亢進状態にあり,フィブリノゲンを豊富に抱えているが,壊死した脱落膜から放出されている大量の組織トロンボプラスチン(凝固因子の第Ⅲ因子)が,上昇した子宮内圧によって母体血中に押 し込まれることに伴い,出血部において急激な凝固因子の消費が惹起され,母体は消費性凝固障害から容易に播種性血管内凝固症候群(DIC)に移行する。しかも,胎盤後血腫の形成過程でも大量の凝固因子が消耗されるので,またたく間に病状は悪化する。 胎児にとって胎盤は母体に繋がる命綱であるから,これが剥離すれば一挙に酸欠状態に陥る。速やかに胎児ジスト ,胎盤後血腫の形成過程でも大量の凝固因子が消耗されるので,またたく間に病状は悪化する。 胎児にとって胎盤は母体に繋がる命綱であるから,これが剥離すれば一挙に酸欠状態に陥る。速やかに胎児ジストレス(胎児仮死,切迫仮死,子宮内仮死ともいう胎児・胎盤系における呼吸・循環不全を主徴とする症候群)を呈し,放置すれば死亡する。 常位胎盤早期剥離に対する処置常位胎盤早期剥離の処置としては,まず,止血の処置及び子宮収縮を積極的に促し,合併症(出血,ショック,産科DICなど)の治療を行う。 次に,胎児の生死を問わず,速やかに胎児・胎盤を娩出し(急速遂娩),多くの場合,緊急帝王切開術が行われる。速やかに胎児を娩出しないと胎児の救命が叶わなくなる一方,胎児が既に死亡していても,速やかに胎児・胎盤を娩出しないと母体のDIC発症の確率が高くなる。 イ弛緩出血(甲カ21,22,乙カ6,10,58)子宮弛緩症及び弛緩出血胎児の娩出後,子宮筋が良好な収縮を来さないものを子宮弛緩症といい,子宮全体が弛緩するものを全子宮弛緩症,主として胎盤付着部に限局して部分的に弛緩するものを一部子宮弛緩症という。 子宮弛緩症により子宮筋の収縮が妨げられ,胎盤剥離部の断裂血管及び子宮静脈洞が閉鎖されないために生物学的結紮(活性結紮)が起こらず,これによりじわじわと出血(原則として静脈血)が続き,分娩後2時間までに500ml以上の出血があったものを弛緩出血という。弛緩出血の頻度は全分娩の約10~15%にみられるが,出血量が1000mlを超えるものは全分娩の1%~2%とされている。 子宮弛緩症の原因子宮弛緩症の原因としては,常位胎盤早期剥離・羊水過多・巨大児などによる子宮筋の過度伸展 が,出血量が1000mlを超えるものは全分娩の1%~2%とされている。 子宮弛緩症の原因子宮弛緩症の原因としては,常位胎盤早期剥離・羊水過多・巨大児などによる子宮筋の過度伸展,子宮筋腫合併妊娠,子宮奇形,瘢痕などの局所的障害,遷延分娩による疲労,微弱陣痛に対する子宮収縮薬の長時間投与,急産・急速遂娩,拙劣なCrede 胎盤圧出法・粗暴な子宮底の摩擦・臍帯の牽引などの子宮に対する不必要な刺激,膀胱又は直腸の充満,子宮角,側壁,中隔などのように生理的にも収縮が十分でない部位に着床した胎盤,拙劣な胎盤の人工排除・陣痛促進剤の乱用,妊娠中毒症(平成17年4月からは「妊娠高血圧症候群」という名称に改められている。),胎盤残留(胎盤遺残ともいう。),帝王切開術などが挙げられる。 通常の分娩においては,胎盤剥離時にせいぜい200~300mlといった多少の出血はあるものの,児と胎盤の娩出後に子宮筋は強く収縮・退縮し,胎盤剥離面の断裂血管や子宮静脈洞が圧迫閉鎖されて止血されるから,多量に出血することはない。しかし,子宮弛緩症の場合,子宮の収縮・退縮による前記血管の圧迫閉鎖が不十分なため,強出血が生じる。 弛緩出血の症状 胎盤娩出後(経膣分娩だけでなく帝王切開術も含む。)からじわじわと持続する出血がある。血液は原則としてはどす黒い静脈血だが,時には破綻した動脈からの出血によって鮮紅色を呈することもある。 また,子宮の柔軟と子宮底の上昇もみられ,上昇した子宮底を圧迫すると,貯留した血液があふれ出てくる。 各病態における異常出血があった場合,止血するために凝固因子を消耗するため,低フィブリノゲン血症を引き起こし,これによりDIC(播種性血管内凝固症候群)に陥ることがある(産科DIC)。低フィブリノゲン血症 おける異常出血があった場合,止血するために凝固因子を消耗するため,低フィブリノゲン血症を引き起こし,これによりDIC(播種性血管内凝固症候群)に陥ることがある(産科DIC)。低フィブリノゲン血症になると,持続的で止血し難い出血で凝固し難く,凝固しても軟らかく溶解しやすい状態となる。また出血時間は著明に延長し,フィブリノゲンは著減する(正常値は妊娠時300mg/dlであるが,前記血症では100mg/dl以下に下がる。)。 また,出血量が多くなるにつれてショック(生活機能が極度に低下した状態)を呈する。すなわち,①主要臓器への血液供給減少,②微小循環の働き(酸素の運搬能,代謝産物の排出機能)が低下し,③組織への物質交換が不良となり,④臨床的には蒼白,血圧低下,脈拍微弱,口渇,四肢冷却,疲労が現れ,⑤可逆性から非可逆性まで発展する。 妊娠又は分娩に伴って発生した病的状態に起因するショックを産科ショックというところ,そのうち,頻度的に最も多いのは,出血性ショック(分娩前後に起こる大出血から循環血液量が異常に低下することから起こる低拍出性ショック)である。出血性ショックの分類としては,血原性ショック,神経性ショック,血管原性ショック,心原性ショック及び混 合型があるところ,血原性ショックの原因は,産科的疾患(常位胎盤早期剥離,前置胎盤,子宮破裂,弛緩出血,頸管裂傷,膣壁裂傷,子宮内反症,癒着胎盤など)や産科DICが挙げられる。 ウ会陰裂傷(甲カ21,22)会陰裂傷会陰裂傷とは,分娩による会陰の裂傷である。なお,多くは膣裂傷を伴うので,両者をまとめて膣・会陰裂傷として扱うこともある。 会陰裂傷は,裂傷の及ぶ範囲・箇所によって,第1度会陰裂傷(皮膚及び粘膜に限定した裂傷,すなわち,会陰の皮膚,膣粘膜の小 くは膣裂傷を伴うので,両者をまとめて膣・会陰裂傷として扱うこともある。 会陰裂傷は,裂傷の及ぶ範囲・箇所によって,第1度会陰裂傷(皮膚及び粘膜に限定した裂傷,すなわち,会陰の皮膚,膣粘膜の小部分及び筋膜などの表層組織のみが損傷され,深部の筋層は健全なもので,陰唇小帯,処女膜,陰唇,皮膚,膣,外陰などの破裂,裂傷をいう。),第2度会陰裂傷(筋層に及ぶ裂傷であるが,肛門括約筋は侵されていない状態をいい。会陰切開に続発する会陰筋,膣筋の破裂,または裂傷である。),第3度会陰裂傷(会陰皮膚はもちろん,膣壁,深部筋層,更に肛門括約筋,直腸膣中隔をも損傷するもので,肛門または直腸粘膜は健全なものをいう。)及び第4度会陰裂傷(会陰の損傷,破裂または裂傷に肛門粘膜,直腸粘膜が損傷しているものをいう。)に分類される。 会陰裂傷は,児頭の通過周囲が過大な場合や膣入口が過小な場合,会陰の進展性が不良な場合,娩出が急激な場合,会陰保護が拙劣であった場合などに生ずる。骨盤位牽出術など介助による骨盤位分娩は,会陰・膣裂傷のリスクがある。 会陰裂傷の症状症状としては,児娩出直後から持続する会陰部の出血で,動脈が破綻するので,鮮紅色を呈する。一般に出血の程度は強度ではないが,膣裂傷が深いと,出血量は大量に及び,ショック症状に近づくこともある。 第2度以上の会陰裂傷は,手術的修復が必要となり,胎盤娩出後,なるべく速やかに縫合する。縫合に際しては,確実な止血が必要となる。 エ婦人科手術(甲シ1,2,11,13,15,28)子宮筋腫子宮とは,女性の骨盤腔のほぼ中央に位置し,妊娠時には受精卵を養育する中空性の内生殖器である。 子宮筋腫とは,子宮筋のうち平滑筋(横紋がなく,意思とは無関係に収縮・弛緩する筋。横紋 子宮筋腫子宮とは,女性の骨盤腔のほぼ中央に位置し,妊娠時には受精卵を養育する中空性の内生殖器である。 子宮筋腫とは,子宮筋のうち平滑筋(横紋がなく,意思とは無関係に収縮・弛緩する筋。横紋筋に対する語)を主たる構成細胞とする腫瘤,子宮筋の中あるいはその周辺に発生する良性腫瘍である。卵巣ホルモンのエストロゲンで発育し,生理がある女性の40~60%にみられるといわれ,最も多い女性生殖器腫瘍である。原因は不明である。 筋腫の一つ一つは筋腫核と呼ばれ,筋腫核の発生部位により分類される。 小さな筋腫は無症状のことも多く,その場合,手術は不要であるが,症状が重くなり生活に支障が出る場合は,手術を行う。 手術の方法としては,筋腫のみを切除し子宮を残す筋腫核出術と,子宮全てを摘出する子宮全摘術がある。筋腫核出術 は子宮を温存するので妊娠は可能だが筋腫の再発の可能性が高い。一方,子宮全摘術は再発の可能性はないが,妊娠できなくなる。なお,子宮全摘術には,単純子宮全摘術(子宮を牽引・支持している靱帯を可能な限り子宮の近傍で切断し,膀胱を子宮頸部の前方から乖離し,子宮を膣管から離断して摘出する手術)と広汎性子宮全摘術(悪性腫瘍の場合に,子宮をその周囲も含めて広く切除する手術)とがあり,子宮筋腫の手術は,単純子宮全摘術である。 子宮全摘出術には,腹式子宮全摘術(経腹的アプローチ)と膣式子宮全摘出術(経膣的アプローチ)がある。膣式子宮全摘術は,開腹しないため,腹式子宮全摘術よりもはるかに手術侵襲がない術式である。しかし,経産婦であること,子宮の大きさが手拳大以下であること,腹腔内に癒着がないことなど手術の適応に制限があるが,腹式子宮全摘術はどんな症例にも使うことができる。 卵巣腫瘍卵巣とは,女性の骨盤腔外側壁近くに存在 ,子宮の大きさが手拳大以下であること,腹腔内に癒着がないことなど手術の適応に制限があるが,腹式子宮全摘術はどんな症例にも使うことができる。 卵巣腫瘍卵巣とは,女性の骨盤腔外側壁近くに存在する1対の母指頭大の実質臓器で,女子性腺として卵子及びエストロゲン,プロゲステロン(黄体ホルモン)などの女性ホルモンを産出する臓器である。また,卵管とは,一端が子宮に,他端は腹腔内に開口する管状の器官である。卵巣及び卵管を総称して(子宮)付属器と呼ぶ。 卵巣に生じた腫れものが卵巣腫瘍であり,卵巣腫瘍には嚢腫(中に液体や気体が貯留しているもの)と充実性腫瘍(中に塊状の組織成分が詰まっている状態のもの)がある。 卵巣腫瘍の手術には,腫瘍の発生した卵巣を卵管とともに 摘出する付属器摘出術と,腫瘍が発生した部分のみを切除する腫瘍核出術とがある。付属器摘出術が一般的であるが,腫瘍の大きさが手拳大以下であれば健常卵巣組織も残っているため,腫瘍核出術を行うこともある。 多嚢胞性卵巣症候群多嚢胞性卵巣症候群とは,卵巣の類腫瘍病変であり,一般的には,卵胞(卵巣の中にある卵子を含んだ細胞の集合)がうまく育たず嚢胞化(液体や気体が貯留すること)し,排卵できずに卵巣の中にたまっていく症状である。多嚢胞性卵巣症候群,特に難治性の症例に対しては,卵巣に楔状の切り込みを入れて排卵させる楔状切除術が行われていた。 子宮外妊娠子宮外妊娠とは,受精卵が正常の着床部位である子宮内膜以外の場所に着床した場合をいう。大部分は卵管妊娠であるが,まれに子宮頸管妊娠,卵巣妊娠,腹膜妊娠がみられる。 子宮外妊娠の治療は,妊孕性(妊娠するために必要な能力)の温存を目的とした保存手術や薬物療法のほか,病巣部の摘出手術も行われる。 子宮内膜症子宮内膜症 妊娠,卵巣妊娠,腹膜妊娠がみられる。 子宮外妊娠の治療は,妊孕性(妊娠するために必要な能力)の温存を目的とした保存手術や薬物療法のほか,病巣部の摘出手術も行われる。 子宮内膜症子宮内膜症とは,子宮内膜様組織が,子宮筋層や卵巣等,子宮内腔以外に異所性に存在する疾患であり,子宮内膜症の治療として,単純子宮全摘術を行うことがある。 胞状奇胎胞状奇胎とは,妊娠時に妊卵(受精卵)由来の絨毛が水腫様変化を起こしたものである。 胞状奇胎に対する治療は,胞状奇胎の除去と奇胎管理であ る。何人かの児を有する女性では,絨毛がんの発生が多いため,子宮摘除をすることがある。 乳がん乳がんは,乳管や小葉上皮から発生する悪性腫瘍である。 乳がんに対する治療は,局所療法と全身療法とがあるところ,局所療法としては,乳房切除術や,リンパ節郭清がある。 不正出血不正出血(不正性器出血,不正性出血,子宮出血ともいう。)とは,月経,分娩,産褥といった生理的な出血以外の病的な出血の総称である。 オ頭部外傷及び開頭術(甲ハ114の10,11) 頭部外傷頭部外傷は,頭部に外力が加わることにより起こる損傷の総称である。 頭部外傷の分類としては,外力の加わり方,疫学的原因,症状又は脳機能,意識レベル,病態,CT,解剖学的分類など種々ある。 具体的な頭部外傷としては,頭皮の外傷(切創,裂創,挫創,挫傷),頭蓋骨骨折,頭蓋内血腫(急性硬膜外血腫,急性硬膜下血腫,外傷性硬膜下血腫),外傷性くも膜下出血,外傷性血管損傷,脳挫傷等,直接的な外力による一次性損傷に加え,脳浮腫,脳腫脹,低酸素,二次的出血,脳ヘルニア,脳組織の虚血などの二次的脳損傷の合併がある。二次的脳損傷が加わることにより 下出血,外傷性血管損傷,脳挫傷等,直接的な外力による一次性損傷に加え,脳浮腫,脳腫脹,低酸素,二次的出血,脳ヘルニア,脳組織の虚血などの二次的脳損傷の合併がある。二次的脳損傷が加わることにより,時間経過とともに患者の状態は悪化する。 頭部外傷に対する処置 頭部外傷に対する治療として,開頭術を行った上で病変を治療することがある。 カ開胸術(甲ア10の8,甲ア11の5,甲ア17,甲ケ1の1,2,甲ケ3,23,甲ハ157の7,8)胸部の構造胸部は,気管・気管支,肺,心臓などが存在する身体部位である。 胸部疾患と開胸術開胸術とは,胸腔(12個の胸椎,12対の肋骨及び胸骨からなる胸廓に囲まれた部分で肺が存在する場所)に達する手術方法であり,開胸部位により分類される。 気管支拡張症(様々な疾患によって,亜区域気管支により末梢の気道が不可逆な拡張を来すもの),気胸(胸腔内に空気が貯留し,このため肺の虚脱を来す病態),ブラ(気腫性嚢胞。 肺胞壁の破壊,融合,拡張により生じた空間が胸膜の弾力板の内側に留まっている肺実質内の気腫),胸部外傷及び心タンポナーデ(心膜貯留液(心膜液が正常時の量を超えて心膜腔内に貯留した状態)により心膜腔内圧が上昇し,心室拡張障害を来し,それに伴い著しい静脈環流障害が出現し,心拍出量が低下,低血圧となる状態)の治療に際して,開胸術が行われることがある。 キ開心術(甲ケ22,65,甲ハ101の12,26,27,29,30)心臓の構造 心臓は,握り拳大の管腔臓器で,右心房,右心室,左心房,左心室の四つの袋(部屋)と大動脈弁,肺動脈弁,三叉弁,僧帽弁の四つの弁,及び血管などで構成されてい 心臓の構造 心臓は,握り拳大の管腔臓器で,右心房,右心室,左心房,左心室の四つの袋(部屋)と大動脈弁,肺動脈弁,三叉弁,僧帽弁の四つの弁,及び血管などで構成されている。 心臓の疾患と開心術,心嚢切開術(心臓の疾患としては,虚血性疾患(急性心筋梗塞等),先天性心疾患(心房中隔欠損症(胎生期の心房中隔の発達障害により,先天的に心房中隔に欠損孔が存在し,欠損孔を通じて左右シャント(血液が本来通るべき血管と別のルートを流れる状態)を生じ,右房・右室への容量負荷を来す疾患)等),心臓弁膜症(心臓弁膜症,僧帽弁狭窄症(僧帽弁の解剖学的な狭窄が原因で左房から左室への血液の流入障害が生じ,左房及び右心系への圧負荷を来す病態)等),心膜疾患(心タンポナーデ(心膜貯留液(心膜液が正常時の量を超えて心膜腔内に貯留した状態)により心膜腔内圧が上昇し,心室拡張障害を来し,それに伴い著しい静脈環流障害が出現し,心拍出量が低下,低血圧となる状態)等)がある。 心臓疾患の手術は,皮膚切開,皮膚組織切開,筋膜切開と進み,開創器又は開創鈎により手術野を露出し,更に心囊膜を切開して行う。血管吻合などの手術を行った後は,心囊膜閉鎖縫合,筋層部縫合,皮下組織縫合,皮膚縫合を行う。 心房中隔欠損症,冠動脈の狭窄・閉塞の治療のための冠動脈血行再建術,僧帽弁狭窄症,心タンポナーデの治療に際して,開心術(心臓内部の病変に対して,これを肉眼直視下によって修復する術式)や心嚢切開術が行われることがある。 人工心肺を使用する開心術における抗凝固管理開心術を行うには,上・下大静脈並びに大動脈など心臓に 出入りする大血管の血流を遮断する,「心血流遮断」を行わなければならない。脳など低酸素状態に弱い臓器・組織では3~4分以上の血 開心術を行うには,上・下大静脈並びに大動脈など心臓に 出入りする大血管の血流を遮断する,「心血流遮断」を行わなければならない。脳など低酸素状態に弱い臓器・組織では3~4分以上の血液循環遮断によって,不可逆的な病変が進行するため,心臓に向かって帰ってくる静脈血の全量を体外に誘導し,人工心肺装置を使用して,体外において静脈血を人工的に動脈血化した後,これを生体の動脈系内に再送入し,心血流遮断中の患者の生体に酸素を供給し続ける操作,すなわち体外循環が必要となる。 開心術において人工心肺を使用した場合,血液が人工心肺回路に接触して血小板やいくつかのカスケードが活性化され,内因系及び外因系の凝固機能を活性化し,血液を凝固させるとともに,凝固因子を必要以上に消費してしまうことから,著しい凝固機能障害を引き起こす。 ク開腹術腹部の構造腹部は,体幹において横隔膜から骨盤底部までの間を指し,複数の臓器を有する身体部位である。 内臓疾患による開腹術腹膜炎,虫垂炎,肝臓破裂,脾臓破裂,腹部外傷,膵・胆管合流異常,胃穿孔,イレウス,横隔膜の損傷,椎間板ヘルニアの治療の際,及び膵・空腸吻合術,胆石症による胆のう摘出術の際,開腹術が行われることがある。 ケ骨折等(甲ケ1の1,甲ケ5)骨折骨は,脊椎動物の身体の支柱として働く結合組織の一種で あり,骨折とは,骨が本来持つ強度を上回る外力負荷が加わった場合に発生した骨構造の破壊である。 骨折の治療には,保存的治療と外科的治療がある。保存的治療は,骨折部を整復した後にギプス又はシーネ固定が行われる。外科的治療は,保存的治療が困難な場合や整復位が維持できない場合などに行われる。 靭帯損傷靭帯とは,束状又は帯状の強靱な線維性結合組 療は,骨折部を整復した後にギプス又はシーネ固定が行われる。外科的治療は,保存的治療が困難な場合や整復位が維持できない場合などに行われる。 靭帯損傷靭帯とは,束状又は帯状の強靱な線維性結合組織で,骨と骨をつなぐ働きをする。 靭帯損傷は,外力により関節に生理的範囲を超える働き,あるいは異常な方向への動きが強制されたときに生じる病態である。治療は大きく保存療法と手術療法に分けられる。これらの適応はそれぞれの靱帯及び損傷の程度により異なる。 靭帯損傷を来した場合,関節内に出血することがある。 靭帯が断裂している場合などには,靭帯再建術が実施される場合がある。靭帯再建術の際には,損傷した靭帯とは別の部位から靭帯様の組織を取り出して,これを新たな靭帯として用いることが多い。 椎間板ヘルニア椎間板は,隣接する脊椎の椎体(椎骨の本体を成す低円柱形の骨部)と椎体の間にあり,円盤状を呈し,周辺部の線維軟骨性の線維輪と中央部のゼリー状構造の髄核からなる。 椎間板ヘルニアは,椎間板の髄核組織が線維輪に生じた裂隙を通って脱出するか,線維輪や軟骨板を伴って外周に膨隆した病態である。治療法としては,後方又は前方からの髄核摘出術及び保存的治療などがあり,症状の重症度と経過に応 じて選択される。 コ皮膚移植等(甲ケ1の1,2) 皮膚移植皮膚の欠損した部位に,他の部から採取した皮膚片を移動し,欠損部を被覆・閉鎖する方法を,皮膚移植又は植皮といい,皮膚移植の方法には,遊離植皮(血行が完全に遮断され得た植皮片を採皮部から移植床へ移す方法)及び有茎植皮(血行を保持したままの状態で皮膚片を移植させる方法)がある。 上腕切断上腕切断とは,上腕骨の部位での切断をいう。切断術は,治療の目的で四肢 た植皮片を採皮部から移植床へ移す方法)及び有茎植皮(血行を保持したままの状態で皮膚片を移植させる方法)がある。 上腕切断上腕切断とは,上腕骨の部位での切断をいう。切断術は,治療の目的で四肢又はその一部の身体の突出部分を切り取り除去するものである。救急外傷時の四肢の切断,修復不可能な外傷,保存的治療不能の感染や末梢血管閉塞性疾患,骨軟部腫瘍,乳腺疾患等に対して実施される。 サ耳鼻咽喉科手術(甲シ1,甲ハ85の5)鼻中隔湾曲症と鼻中隔矯正術左右の鼻孔のそれぞれ奥にある空間を鼻腔といい,左右の鼻腔の間の部分を鼻中隔という。鼻中隔は骨と軟骨からなる。 鼻中隔湾曲とは,鼻中隔の骨軟骨の奇形のことであり,無症状のことが多いが,時に鼻閉を生じ,また,副鼻腔の換気を障害して副鼻腔炎の遷延化及び難治化の一因となる。 このように,鼻中隔湾曲による病態(鼻中隔湾曲症)が存在する場合,鼻腔形態の修復のために鼻中隔軟骨を軟骨膜下に剥離して湾曲部位の軟骨を除去するという鼻中隔矯正術 (鼻中隔粘膜下窓形切除術)が行われることがある。 中耳炎と鼓室形成術耳は,外耳,中耳及び内耳からなる。中耳は,鼓膜,鼓室,耳管等の総称であり,鼓室は,側頭骨中の扁平な空間である。 中耳炎とは,中耳を構成する鼓膜,鼓室,耳管,乳突洞,乳突蜂巣の一連の含気腔全体の炎症をいう。 真珠腫性中耳炎とは,扁平上皮細胞が中耳腔に侵入して増殖したものである。袋状の内腔に堆積する上皮落屑物(角質層表面の鱗屑(肥厚した角層が剥離し皮膚面に固着している状態)が脱落すること)は感染しやすく,しばしば悪臭のある膿性耳漏を来す。真珠腫性中耳炎の多くは,長期にわたる耳管機能不全や中耳炎が原因とされる。真珠腫は周囲の骨組織を破壊しながら次第に している状態)が脱落すること)は感染しやすく,しばしば悪臭のある膿性耳漏を来す。真珠腫性中耳炎の多くは,長期にわたる耳管機能不全や中耳炎が原因とされる。真珠腫は周囲の骨組織を破壊しながら次第に大きくなり,伝音難聴や顔面神経麻痺等の合併症を来すため,感染を伴う場合は,特に早期の手術治療を要する。 鼓室形成術は,慢性中耳炎や外傷,奇形などによる伝音性難聴を改善する目的で行われる手術法である。 シ白血病等(甲ア10の12,甲ア19,甲シ1,甲ハ144の8) 急性前骨髄球性白血病急性前骨髄球性白血病とは,急性骨髄性白血病のうち,白血病細胞が前骨髄球の段階で成熟停止を起こした型である。 異常な前骨髄球が増殖する病型であり,DICを伴うことがある。 再生不良性貧血再生不良性貧血とは,末梢血での汎血球減少と骨髄での低 形成を特徴とする疾患であり,血液中の白血球,赤血球,血小板の全てが減少する。 骨髄中の造血幹細胞が何らかの原因で傷害され,又は,造血幹細胞自身が異常となることにより再生不良性貧血を来した場合,前記3種類の血球が補給できなくなり,貧血症状,出血傾向(線維素溶解現象が病的に亢進して出血を惹起する。),発熱の症状を生ずる。 膠原病膠原病とは,何らかの自己免疫反応が働いた結果,全身に分布している結合組織を中心に炎症が起こり,多臓器に障害があらわれる疾患群の総称である。 膠原病においては,血管の炎症や血液異常によるズリ応力の変化などが原因となり,軽度であるが常に凝固反応が亢進する病態を来し,DICを引き起こすことがある。 ス消化器出血消化器とは,食物の摂取・咀嚼・消化・吸収,残渣の排泄という一連の動作を行う体腔内にある器官である。消化器は,主に が亢進する病態を来し,DICを引き起こすことがある。 ス消化器出血消化器とは,食物の摂取・咀嚼・消化・吸収,残渣の排泄という一連の動作を行う体腔内にある器官である。消化器は,主に管状の中腔性器官である消化管(胃,小腸及び大腸など)からなり,更に付属器官がある。 以下の疾患において,消化器からの出血により,腹痛,吐血,下血,血便などの症状を来すことがある。 (甲ケ1の2) 急性胃炎急性胃炎とは,何らかの要因により,急激に胃粘膜において炎症性変化が惹起された状態である。 マロリーワイス症候群 反復する嘔吐の結果,食道の胃接合近傍に裂傷が生じて吐血する病態である。過度のアルコール摂取の結果生じることが多いとされている。 消化性潰瘍潰瘍とは,組織表面が欠損してその下層の組織に至った状態をいい,消化管における潰瘍とは,内腔表面から粘膜下層以深の欠損をいう。粘膜にとどまる欠損はびらんと呼ばれる。 胃や十二指腸(小腸の一部)に生じた潰瘍は,それぞれ胃潰瘍,十二指腸潰瘍と呼ばれる。なお,胃潰瘍には急性胃潰瘍と慢性胃潰瘍があるが,通常,胃潰瘍は慢性胃潰瘍になることが多く,急性胃潰瘍は急性胃粘膜病変(AGML。各種の因子により生じた急性出血性胃炎,出血性びらん,急性潰瘍を包括したもの。)と呼び区別される。 腸疾患腸疾患としては,虚血性大腸炎(大腸の末梢血管の虚血によりびらん,潰瘍,壊死などが起こる疾患で,腸間膜血管の循環障害,腸管内圧の亢進により腸管が虚血状態となり,腸管潰瘍,炎症発生となるもの),潰瘍性大腸炎(大腸粘膜及び粘膜下層がびまん性,連続的に侵される原因不明の非特異的炎症性疾患),消化管憩室(消化管壁の一部が消化管の外側に突出したもの)がある。 腸管潰瘍,炎症発生となるもの),潰瘍性大腸炎(大腸粘膜及び粘膜下層がびまん性,連続的に侵される原因不明の非特異的炎症性疾患),消化管憩室(消化管壁の一部が消化管の外側に突出したもの)がある。 (24) C型肝炎ウイルスの感染経路について前記前提事実3のとおり,C型肝炎ウイルスは,感染原因が判明する場合もあるが,具体的な感染原因が不明である場合が概ね20~30%の割合を占める。この点に関する主な文献及び研究報告は下記のとおりである。 ア小俣政男監訳・「シャーロック肝臓病学第11版」(西村書店,平成16年)・266頁(乙タ6)「明らかなリスク因子のない集団」との項目を設け,「リスク因子の認められない何百万人ものキャリアはどこから病気にかかったのであろうか?家族内感染はありうるが稀である。髭剃り用カミソリ,歯ブラシ,消毒されていないシリンジ(引用者注,液体の注入・吸引等に用いる用具。注射器,浣腸器,スポイトなど)あるいは注射針を感染者と共用することによる感染も考えられる。他の可能性としては過去の静脈内薬物の常用あるいは鍼治療などの民間療法及び未消毒の刃物を使用する皮膚の切開などもありうる。」などとして,感染原因が不明な症例の存在を認めている。 イ杉本恒明ほか編・「内科学第八版」(株式会社朝倉書店,平成15年)・1118頁(乙タ7)「C型肝炎ウイルスの感染は輸血,入れ墨,覚醒剤の注射などの血液を介する感染であるが,これらの明らかな血液を介した感染の認められない症例も半数以上ある。」とされている。 ウ林紀夫編・「新しい診断と治療のABC27/消化器3 ウイルス性肝炎」(株式会社最新医学社,平成17年)89頁以下(乙タ13)「感染経路が不明という例も多く存在する。」とし,久留米大学第 ウ林紀夫編・「新しい診断と治療のABC27/消化器3 ウイルス性肝炎」(株式会社最新医学社,平成17年)89頁以下(乙タ13)「感染経路が不明という例も多く存在する。」とし,久留米大学第二内科等で行われた調査によれば,C型急性肝炎の感染経路は,原因不明30%,医療原性27%,針刺し事故20%,覚せい剤使用13%等といった割合とされ,全国12施設の協力を得て行った全国調査においてもほぼ同様の割合を示していると報告されている。 エ田中一雄ほか「ウイルス性肝炎(上)-基礎・臨床研究の進歩-」(株式会社日本臨牀社,平成16年)・258頁以下(乙タ25)「一般住民の20%がHCVの抗体陽性であるHCV高感染地区の山形県のU地区において,1967-72年にかけてnon-A,non-Bの急性肝炎の流行があり,この関連を調べるため流行の時期にHCV抗体陽性の肝炎になった15人を調査した。 U地区でのHCV流行の特徴を明らかにするために,HCVgenotype,HCVコアの遺伝子を解析している。その結果ではすべての人がgenotype1bであり,同じ集団から発生していることを突き止めた。しかし感染源に関しては不明であった。」と紹介している。 また,前記研究その他や自らの疫学調査を踏まえ,「HCVの地域内感染の原因としては,著者らの検討同様,ある種の医療行為の関与が推察されている。」などとするほか,「高感染地区では現在考えられている以外の感染経路が存在する可能性もあり,今後も追跡調査が必要であると思われる。」としている。 オ清澤研道ほか「ウイルス性肝炎(上)-基礎・臨床研究の進歩-」(株式会社日本臨牀社,平成16年)・347頁以下(乙タ25)著者によるものを含む最近の4報告において,C型急性肝炎の感染経路が「 清澤研道ほか「ウイルス性肝炎(上)-基礎・臨床研究の進歩-」(株式会社日本臨牀社,平成16年)・347頁以下(乙タ25)著者によるものを含む最近の4報告において,C型急性肝炎の感染経路が「不明」とされたものが,それぞれ11例中3例(27%),10例中5例(50%),35例中8例(23%),109例中35例(32%)であることが紹介されている。 (25) 医薬品添付文書における記載及び医学雑誌への広告ア医薬品添付文書における記載 産婦人科特定フィブリノゲン製剤についての医薬品添付文書には,以下のとおり,特定フィブリノゲン製剤が止血に効果があること,産科出血(常位胎盤早期剥離,羊水塞栓症,DICなどによる出血)が是正されることが記載されている。 a 昭和38年2月21日付添付文書(甲ア9の1。非加熱フィブリノゲン製剤について。)には,次の記載がある。 「フィブリノーゲン-BBankは,フィブリノーゲン欠乏症に用い特に早期胎盤剥離に伴って起こる重症な出血を防御する。」「急性フィブリノーゲン欠乏症が死亡の原因になることが近年認識をひろめつつある。それらの死亡は血液凝固作用の壊滅によって生じる。フィブリノーゲン欠乏症による死亡の或るものは急性胎盤早期剥離を伴う複雑化分娩の際に起る。」「分娩前に激烈な徴候を認めることは困難である。そのため早期剥離のすべての場合に血漿フィブリノーゲン値を含む血液凝固能検査が行われることが提案されている。一般に血漿フィブリノーゲン値が50mg%以下の場合は危険であり,フィブリノーゲン治療が即刻行われるべきである。」「産婦人科領域における余病と関連して,線維素減少症が起った場合,通常推奨されるフィブリノーゲン-BBankの常用量は2~6g の静注である り,フィブリノーゲン治療が即刻行われるべきである。」「産婦人科領域における余病と関連して,線維素減少症が起った場合,通常推奨されるフィブリノーゲン-BBankの常用量は2~6g の静注である。しかし,患者の状態によっては更に多量投与を必要とする場合もある。」b また,昭和57年12月の添付文書(甲ア9の5。加熱 フィブリノゲン製剤について。)には,1頁目の上部に大きな文字で「胎盤早期剥離による子宮出血」との記載がなされており,「適応症」として「胎盤早期剥離」が挙げられているほか,「フィブリノゲン-ミドリは広範囲な外科的侵襲時の出血傾向(ことに肺手術),産科領域において日常遭遇する常位胎盤早期剥離,羊水塞栓などに起因する大出血,さらにDIC(血管内凝固症候群)や線溶性紫斑病などで観察される低フィブリノゲン血症の是正に使用されます。」との記載がある。 外科特定フィブリノゲン製剤についての医薬品添付文書には,外科領域における使用に関する記載がある。 a 昭和38年2月21日の添付文書(甲ア9の1)「胸廓外科,肺外科及び他の外科,外傷に関連したフィブリノーゲン欠乏症の治療では適応を普遍的に法則化することはできない。しかし,それらの処置途上凝固の欠陥が現れたときは,その欠陥の本質を確かめる検査に必ずプラスマ・フィブリノーゲン値の確定を含めて行わねばならない。100mg%以下のフィブリノーゲン値が見いだされた時にはフィブリノーゲンの注輸に重大な考慮を配らねばならない。」b 昭和60年8月の添付文書(甲ア9の6)「広範囲の外科的侵襲時や常位胎盤早期剥離,羊水塞栓などに起因する大出血,さらにDIC(血管内凝固症候群)などで観察される低フィブリノゲン血症の是正に使用される。」 月の添付文書(甲ア9の6)「広範囲の外科的侵襲時や常位胎盤早期剥離,羊水塞栓などに起因する大出血,さらにDIC(血管内凝固症候群)などで観察される低フィブリノゲン血症の是正に使用される。」 イ医学雑誌への広告 「今日の治療方針」ミドリ十字は,「今日の治療指針」に,特定フィブリノゲン製剤の広告を掲載していた。 昭和42年度版の「今日の治療方針」掲載の広告においては,フィブリノーゲン-ミドリの用法として「分娩時の大出血,胸部手術など線維素減少性出血に」と記載されているまた,昭和43年度版ないし昭和55年度版の「今日の治療方針」では,いずれも「分娩時の大出血,胸部手術など線維素減少症・急性出血に」と記載されている(甲ア11の1~4)。 「内科雑誌メディチーナ」ミドリ十字は,内科関係の医療雑誌においても,フィブリノゲン-ミドリの広告を掲載し,「適応」(ただし,薬事法上承認された適応という語意ではない。)として「分娩時の大出血,胸部手術など線維素減少症・急性出血に」,薬価基準として「1g 5562円」と記載していた(甲ア11の5)。 (26) 産婦人科の現場での特定フィブリノゲン製剤の評価ア治験報告の内容ミドリ十字は,昭和41年3月,「フィブリノーゲン-ミドリ治験報告集」(甲ア8)を発行した。その中には,各大学の産婦人科学教室などによる報告書が挙げられており,以下のような記載がある。 「正常位胎盤早期剥離に伴う低線維素原血症(フィブリノーゲン注射の奏効例)」(東邦大学医学部産科婦人科学教室, 甲ア8・826頁以下)「私達は,最近重症の早剥に出血傾向を合併した2例を経験し,1例にはFibrinogen-ミドリを使用して好結果を得た 例)」(東邦大学医学部産科婦人科学教室, 甲ア8・826頁以下)「私達は,最近重症の早剥に出血傾向を合併した2例を経験し,1例にはFibrinogen-ミドリを使用して好結果を得たので報告する。」「凝血を混じた吐物があり,口腔内にも血液が認められ,早期剥離に低線維素原血症の合併と診断した時点で,輸血の準備ができるまで血管確保の目的で生理食塩水を点滴静注するとともに,これにフィブリノーゲン4gを加えた。軟弱ながら凝血が形成されるようになったがさらにフィブリノーゲン2gを追加した。フィブリノーゲン総量6g注射後は凝血の性状も著しく改善した。」低線維素原血症に対する線維素原の使用経験」(弘前大学医学部産婦人科学教室,甲ア8・844頁以下)「低線維素原血症という恐ろしい病気があるということは,産科以外の方々の間にも,近年その認識が深まりつつある。しかして,この低線維素原血症の恐ろしさを知れば知るほど,治療用に用いられる線維素原の出現,特にその市販の日を,わが国の多くの実地医家は,どれだけ待ちこがれていたか分からない。」「この度,Cutter 社と株式会社ミドリ十字との技術連携によって,医療用の線維素原が広く市販される運びになったときいては,実地医家としての私たちの感慨はまことに無量であり,また,この方面の研究にいささか従事してきたものとしての喜びは,筆舌に尽くしにくいものがある。」「常位胎盤早期剥離及び低線維素原血症を合併している患者に,新鮮血輸血,補液,ε -AGAのほかに線維素原(パ レノゲン)3g投与して止血をはかったところ,出血は線維素原3gの投与により全く止血し,一般状態もかなり好転し,無事膣式に分娩を終了することができた。」「産婦人科や外科領域等で,漠然と” 出血死” と ン)3g投与して止血をはかったところ,出血は線維素原3gの投与により全く止血し,一般状態もかなり好転し,無事膣式に分娩を終了することができた。」「産婦人科や外科領域等で,漠然と” 出血死” と記載されていたり,” 出血傾向” と大まかに取り扱われているもののなかには,本症(低線維素原血症)は少なくない筈である。 この意味で,本症治療上の最大の武器の1つである線維素原が,1日も早く分娩室や手術場に,普く常備される日のくることを祈念してやまない。」「フィブリノゲン使用経験」(日本医科大学付属病院産婦人科,甲ア8・850頁以下)「fibrinogen の減少が著しい場合,出血は一般に強く,その補給は急を要するものである。しかし,fibrinogen 投与の有効なことは判明しても,これの入取(ママ)は困難であり,したがってこのような症例に遭遇した場合には,従来は血漿または新鮮血の輸血が唯一の治療法として賞用されてきた。われわれは今回Fibrinogen-ミドリの提供を受けたので子宮胎盤溢血(常位胎盤早期剥離)3例,子宮頸癌並びに子宮膣部筋腫の手術例7例に使用を試みた。」「以上が,われわれが経験したフィブリノーゲン投与の症例であるが,フィブリノーゲンの使用によって10例とも出血傾向が減少し,更に出血時間が短縮されることだけは明らかのように思われた。」「フィブリノーゲン-ミドリの使用経験」(昭和大学医学部産科婦人科学教室,甲ア8・858頁以下)「我々は最近本症(低線維素原血症)と思われる2例に遭 遇し,フィブリノーゲン-ミドリを使用し,その出血傾向を阻止し得て止血に成功したのでここにその症例を報告する。」「(帝王切開により2850g の女児娩出後),著明な胎盤後血腫形成を認めた。子宮収縮不良のため子 ーゲン-ミドリを使用し,その出血傾向を阻止し得て止血に成功したのでここにその症例を報告する。」「(帝王切開により2850g の女児娩出後),著明な胎盤後血腫形成を認めた。子宮収縮不良のため子宮膣上部切断術にうつった。この頃より広靱帯及び膀胱子宮窩腹膜の剥離面や腹壁切開創などから出血する。滲出性で止血は不能である。直ちに肘静脈から採血して凝固時間を検査すると,16分で凝固の傾向を示すが完結するに至らず融解する。血液凝固機転の障害と診断して,フィブリノーゲン-ミドリの静注を開始した。手術開始以来保存血1600ml,新鮮血350mlを輸血した。フィブリノーゲン2gの点滴静注の終了する頃出血血液も凝固し始め,剥離面及び創面からの滲出性出血も止まった。」「一度本症(低線維素原血症)が発生すれば,単に子宮収縮剤の投与や,従来の止血剤のみではその出血傾向を阻止することは困難であり,たちまちにして虚脱に墜り失血死に至る重篤な疾患である。しかも新鮮血の入手は早急には困難である。それ故fibrinogen の製品化についてはこの種の疾患に遭遇したことのある産科医にとっては熱望してやまぬところであった。fibrinogen の製品化は近年ようやくその途につき,本邦においても田村,品川,百瀬,岩谷等が産科領域に使用して著効を治め,その止血効果の優秀性を貫き,本剤の産科常備を力説している。我々も最近本症と思われる2例に遭遇し,フィブリノーゲン-ミドリを使用してその出血傾向を阻止し得た。我々の2例の経験でも出血に際して輸血, イプシロンは勿論,各種止血剤の投与は充分に行っているにもかかわらず止血せしめることが出来ず,フィブリノーゲン-ミドリの投与によってはじめてその出血傾向を阻止することが出来た。血液凝固時間は勿論正常値に復し, 勿論,各種止血剤の投与は充分に行っているにもかかわらず止血せしめることが出来ず,フィブリノーゲン-ミドリの投与によってはじめてその出血傾向を阻止することが出来た。血液凝固時間は勿論正常値に復し,患者の生命を救うことが出来た。この2例の経験よりfibrinogen の産科常備は必須のものであると痛感する。」イ使用実態に関する回答日本産婦人科医会(旧日本母性保護医協会)は,厚生労働省からの「昭和52年から平成14年まで産科婦人科領域において,フィブリノーゲン製剤がどのように使用されてきたか」との照会に対して,平成14年6月24日付回答書(甲カ16)において「昭和52年頃までは,産科ではDICの補充療法としてフィブリノゲン輸注の必要性が強調されていました。その理由は,現在DICとして取り扱われている症候群が,かつては産科的低線維素原血症と呼ばれ,フィブリノゲン低下のみが注目されていたからです。その後,DICが起こるとフィブリノゲンのみならず血小板や他の凝固因子も低下することが多いということが明らかにされ,補充療法としては単にフィブリノゲンのみの補充よりも新鮮血や新鮮凍結血漿(FFP)を輸注した方が良いとされるようになりました。ただし,フィブリノゲンが著明に低下していて,かつそれを輸血だけで補充すると大量の輸血によって赤血球過剰状態となりDICを悪化させることが懸念される場合や緊急手術を要する場合には,フィブリノゲン製剤を用います。」,「昭和52年当時の状況では,常備するには不能な新鮮血や新鮮凍結血漿,クリオプレシピテートを低フィブリノゲン血症に当初から使用するには,当時の供給 体制では困難であった施設,地域があったことも事実であり,常備可能なフィブリノゲン製剤を緊急時救命の目的にて使用していたと トを低フィブリノゲン血症に当初から使用するには,当時の供給 体制では困難であった施設,地域があったことも事実であり,常備可能なフィブリノゲン製剤を緊急時救命の目的にて使用していたと考えております。その有効性は著明なものがあり,多くの産婦を救命したと認識しております。」,「フィブリノゲン製剤は3年間,冷所保存が可能であり,その利便性から救急医薬品として保存に適しています。一方,新鮮凍結血漿(FFP)は1年間の保存期間,専用冷凍庫が必要です。緊急の出血に,手元にフィブリノゲン製剤が存在することは有利なことです。昭和52年12月には,研修ノートNo.9として『分娩時出血,救急処置を中心として(日本母性保護医協会,森山豊会長,真木正博筆)』を発刊しております。その中で,救急薬品として常備するリストの中に『フィブリノゲン1~5g』とし,常備薬とするよう指導しました。」と回答した。 また,「昭和52年から平成10年までの間にフィブリノーゲン製剤に関して,どのような指示,要請,依頼等をされたか」との照会に対しては,前記回答書において「昭和62年10月1日付にて本会(森山豊会長)から厚生労働省に『フィブリノーゲン製剤の効能・効果(いわゆる適応症)に関する要望書』を提出しました。要望の理由は,旧厚生省がフィブリノーゲンの薬効再評価にあたり,その適応を『先天性無又は,低フィブリノーゲン血症』にのみ限定することを聞き及び,その場合産婦人科(特に産科)ではDICに使用できなくなることを危惧したためです。昭和62年当時の医療の水準では,DICの治療においては補充療法としてフィブリノーゲン製剤が有効であるとの考え方が一般的でした。また,加熱処理がなされるようになり肝炎発生の危険性が減少したこと,3年間の保存が 可能であり常 の治療においては補充療法としてフィブリノーゲン製剤が有効であるとの考え方が一般的でした。また,加熱処理がなされるようになり肝炎発生の危険性が減少したこと,3年間の保存が 可能であり常備保管可能であること等により,危険性より有用性が高いと考えておりました。」と回答した。 ウ以上のとおり,当時,最も積極的に特定フィブリノゲン製剤を使用し,かつその有用性を論じていたのは,医療現場における産婦人科医であった。製薬企業は,特定フィブリノゲン製剤の止血効果を謳い,特に産科における有用性を強調し,産婦人科医側においてもそれを積極的に受け入れていたものとみることができる。 産科領域の出血に対する処置の変遷について,「今日の治療指針」を年度別にみてみると,昭和41年からフィブリノゲン製剤の使用が推奨され,それが平成2年まで続き,肝炎の危険性に言及して慎重投与を論じるものはあまりみられない。 前記のような産婦人科医たちの認識は,昭和62年に,後天性低フィブリノゲン血症に対するフィブリノゲン製剤の効用が否定され,かつ,肝炎感染の報告がされるに及んでフィブリノゲン製剤の使用の前途が危うくなった際に,これに危機感をもった産科婦人科領域の団体が厚生省薬務局に対し以下のような要望を行っていることにも表れている。 日本産科婦人科学会(昭和62年9月25日)(甲ア16の1)「フィブリノゲン製剤は,DICなどの低フィブリノゲン血症の補充療法に極めて有用な製剤である上に,最近加熱処理がなされるようになりウィルス感染の危険性も減じております。また3年間の保存が可能なため救急治療薬として常備出来,突発する出血に備えることが出来る薬剤であります。」,「これを失うことは私達産科医にとって重大な問題で あり, も減じております。また3年間の保存が可能なため救急治療薬として常備出来,突発する出血に備えることが出来る薬剤であります。」,「これを失うことは私達産科医にとって重大な問題で あり,効能・効果を『先天性無又は低フィブリノゲン血症の治療』に限定せず従来通りの『低フィブリノゲン血症の治療』として使用出来るように,日本産科婦人科学会として要望致します。」 日本母性保護医協会(昭和62年10月1日)(甲ア16の2)「今回,同製剤の薬効再評価が行われるに際しましては,是非,上述の産婦人科領域における役割にご配慮を賜りました上,従来どおりの同剤の適応症についてご検討下さいますようお願いいたします。」(27) 先行するC型肝炎訴訟における専門家の証言(積極的な姿勢を示すもの)産科出血に対する特定フィブリノゲン製剤の使用については,当時の産科学の権威とも呼ばれる医学者らによっても,その有用性が指摘されてきた。中間報告書にも,「平成16年から平成17年にかけての裁判の陳述書からは当時の産婦人科医は,現在でもフィブリノゲン製剤の有効性は肝炎ウィルス感染の危険性を上回るものであるとして,使用の正当性を述べている。そこには学会の権威者達によるフィブリノゲン製剤の使用推奨が,エビデンスに基づく科学的検証を妨げていたことがうかがえる。」と記載されている。 以下において,特措法成立以前になされたいわゆる薬害肝炎訴訟における産科領域の臨床研究医である証人●●(以下「●証人」という。)及び証人●●(以下「●証人」という。)の証言内容等を抜粋して記載する。なお,●証人は,医学部卒業後,日本産科婦人科学会の理事を長年務めるなど,ほぼ一貫して産科領域 の臨床,及び大学での研究に従事し,証言 ●証人」という。)の証言内容等を抜粋して記載する。なお,●証人は,医学部卒業後,日本産科婦人科学会の理事を長年務めるなど,ほぼ一貫して産科領域 の臨床,及び大学での研究に従事し,証言当時は浜松医科大学学長だった。また,●証人は,産科ショック,DIC,血液疾患合併妊娠の管理,妊娠中毒症,羊水塞栓症,静脈血栓症,肺塞栓症など,一貫して産婦人科領域の血液学を中心に研究して診療してきた医師であり,日本血栓止血学会や国際血栓止血学会にも関与してきた。 ア ●証人の証言(平成16年9月15日の証言。なお,表記する数字は,調書(甲キ1の1の1)の項目の番号である。)産婦人科領域において低フィブリノゲン血症に対してフィブリノゲン製剤は有効であるとされていた(35)。 有効と考えられた根拠として,分娩時に出血した血液がさらさらで血の固まりがない状況では凝固が起こっていないため,更に出血が進行するおそれがあれば,ここでフィブリノゲン製剤を投与すると,出てくる血液が,一目見れば分かる程度に固まるからである(36)。 輸血も,中にフィブリノゲンが含まれているため,フィブリノゲン製剤の投与と同様補充療法とされるが,同製剤であれば輸血に比べ短期間にフィブリノゲンを補充することができる。 また,輸血の場合は注文してから届くまで時間がかかるが,フィブリノゲン製剤は救急医療薬として保存できる点など,メリットがあった(42,43)。 FFP(新鮮凍結血漿)についても,フィブリノゲンの濃度の点,保存期間の点で,フィブリノゲン製剤のほうがよりメリットがあった(44)。 産科の臨床現場においてフィブリノゲン製剤が有効であることは,日本のみならずアメリカやヨーロッパ,その他の国でも 認められており,産科の教科書にも必ず記載されていた(7 った(44)。 産科の臨床現場においてフィブリノゲン製剤が有効であることは,日本のみならずアメリカやヨーロッパ,その他の国でも 認められており,産科の教科書にも必ず記載されていた(73)。 低フィブリノゲン血症における止血困難の治療のためにフィブリノゲン製剤を投与することが必要であることは,臨床現場でも認識されてきた(87,88)。 肝炎のリスクがあったとしても,リスクアンドメリットの視点からは,現在(証言当時)においても,フィブリノゲン製剤の効能効果に「後天性低フィブリノゲン血症」を加えるべきであると考えている。産科出血では,今フィブリノゲン製剤を投与しなければ死んでしまう人がいる(109,110)。 産婦人科領域では学会や専門,臨床医の一般的な考えとして,昭和30年ころから現在(平成16年)まで一貫してフィブリノゲン製剤の投与が必要な場合があると考えられていた(127,128)。 分娩の現場で大量出血が起こった場合には,それをいかに早く治すか,その人の命をどうやって救うかということが最重要課題であり,これは出血の現場にいる者にしか分からない(129)。 イ ●証人の証言(平成17年2月16日の証言。なお,表記する数字は,調書(甲キ4の1の1)の項目の番号である。 先天性無フィブリノゲン血症患者にとってフィブリノゲン製剤はなくてはならないものであり,有効性に疑いがない(12)。 フィブリノゲン製剤の有効性の理論的根拠として,フィブリノゲンが足りなかったり,なかったりすることにより出血しているため,その足りないものを補って出血を止めるという補充 療法の機序に基づいて有効性が認められる(12,13)。 補充療法の機序に基づいてフィブリノゲン製剤の有効性が認められることは,後天性低フィブリノゲ ものを補って出血を止めるという補充 療法の機序に基づいて有効性が認められる(12,13)。 補充療法の機序に基づいてフィブリノゲン製剤の有効性が認められることは,後天性低フィブリノゲン血症の場合でも同様である(13)。 娩出後に胎盤がはがれて子宮から出てくるが,その胎盤が子宮壁にくっついていた部分に傷がいっぱいできて子宮側からの血管が露出しているため,普通のお産でも出血は当然に起こる。正常な普通のお産では,胎盤が出た後に子宮がぐーと,硬く収縮し,これによって血管が露出していても,それで全部締め付けて出血を止める。そのため正常なお産では大出血は起こらない。ところが,常位胎盤早期剥離の場合には,血栓がいっぱい胎盤の中にできているため,その筋肉の働きが弱くなって,子宮の収縮機能が障害される。したがって子宮はふにゃふにゃの状態である。そうすると,血管が露出したままになっているため,子宮からの出血がみるみる大出血を起こす。水道の蛇口をいきなりひねったときに水がだーっと出てくるのと同じように,大出血が起こる。その大出血が起こると出血で血液が失われるため,フィブリノゲンも失われ,減ってくる。フィブリノゲンが減るとまた出血が増える。この悪循環にどんどん陥っていく。これに線溶亢進という減少も加わるため,血は全く固まらなくなる。常位胎盤早期剥離が進行すると,血は全く固まらず,さらさらした状態である。そういう出血がどんどん持続する(27)。 産科DICは急性で突発的に起きて,目の前で大出血が起こる。そういう患者をいかに早く治療して治すかが我々産科医の義務である。そのことを念頭に置くと,目の前で出血している 患者に対し,「厚生労働省DIC基準」の検査結果が全部そろってDICと診断しなければ治療できない,ということを言っ 我々産科医の義務である。そのことを念頭に置くと,目の前で出血している 患者に対し,「厚生労働省DIC基準」の検査結果が全部そろってDICと診断しなければ治療できない,ということを言っていればその患者の明日はない(28,29)。 後天性低フィブリノゲン血症により出血している場合,フィブリノゲンを補充するということでその止血困難な状態を改善するという事実は,産科臨床の現場で実証されてきたことである(30)。 産科DICの場合短時間で大出血が起こるため,消費性凝固障害が起きてフィブリノゲンが著しく減少する。このようなときに救命のため一刻でも早くフィブリノゲンを補充する必要がある。短時間で効率的にフィブリノゲンを補充するためには,濃縮製剤であるフィブリノゲン製剤の投与が非常に有効である(31)。 新鮮血やFFP(新鮮凍結血漿)との関係について,フィブリノゲンの含有量を比べると,最も多いのが濃縮製剤であるフィブリノゲン製剤,次にFFP,新鮮血という順になる。したがって,少しでも早くフィブリノゲン値を改善するためには,フィブリノゲン製剤の投与が有効となる。フィブリノゲン製剤を投与しないと患者を救命できない,という場合も生じ得ると考えている(31)。 DIC自体を治療するのではなく,低フィブリノゲン血症による止血困難な大出血を治療するためにフィブリノゲン製剤を投与する(33,34)。 フィブリノゲン製剤のウイルス不活化処理が不十分であった当時において,止血困難な状態,止血しなければ患者が死亡してしまう状態で,肝炎のリスクがあるからといってフィブリノ ゲン製剤を投与しないという選択肢は,到底なかった(42)。 ウ ●証人及び●証人は,概ね同じ研究,治療分野(特に,産科領域における分娩時出血,血液凝固学)の からといってフィブリノ ゲン製剤を投与しないという選択肢は,到底なかった(42)。 ウ ●証人及び●証人は,概ね同じ研究,治療分野(特に,産科領域における分娩時出血,血液凝固学)の医師であり,前記各証言において,産科DICの意義を強調し,フィブリノゲン製剤は産科DICにおいて必要かつ有効であった旨を述べている。 前記各証言からは,●証人及び●証人が,産科領域において,とりわけ急激な大出血を起こす患者に対し,フィブリノゲン製剤を投与したことによって血液が凝固して,患者の救命に役立ったとの臨床経験を持ったことがあり,特定フィブリノゲン製剤が後天性低フィブリノゲン血症などの適応外使用においても臨床的に有効であると考えていたことを認めることができる。 (28) 先行するC型肝炎訴訟における専門家の証言(慎重な姿勢を示すもの)下記のとおり,本件と同種の薬害肝炎訴訟において証言をした専門家の中には,特定フィブリノゲン製剤について,●証人や●証人とは異なる認識を有していた者も複数名いたことが認められる。 ア兵庫県所在の総合病院の医師(なお,表記する数字は,調書(乙キ1)の項目の番号である。)出血量が多くても,DICが疑われない場合は,フィブリノゲン製剤を投与することはなかったし(97),フィブリノゲン製剤を投与する場合は,必ずDICの診断を行っていた(98,128,129)。DICの診断は,血沈と出血時間を見 て判断していた(8~10)。一番の目安は血沈であり,出血時間は補助的なものだった。前記検査は必ず行い,臨床症状だけで判断することはなかった(135~137)。 DICを起こしていても,今現在出血がかなりたくさんしていない(出血傾向がない)患者には,フィブリノゲン製剤を使用しなかった(109 い,臨床症状だけで判断することはなかった(135~137)。 DICを起こしていても,今現在出血がかなりたくさんしていない(出血傾向がない)患者には,フィブリノゲン製剤を使用しなかった(109~112,138)。出血が続き,輸血をしなければならない場合には,フィブリノゲン製剤を使用していた(138,139)。 15分後に判明する血沈と出血時間のデータから,DICが非常に疑われる場合,その時点で治療を開始し,まず,一般的な止血剤であるアドナ,トランサミンなどを投与し,そして,抗DIC薬であるFOYを投与し,出血が減らず,出血が多いと思われるときは,フィブリノゲン製剤も投与した(10)。 輸血ができるまでに20~30分かかるので,DICの場合は,輸血の前に一般的な止血剤やFOY,フィブリノゲン製剤を投与しており,その時点で出血が減っていれば輸血の必要はないが,出血がかなり大きければ輸血を開始していた(11,15,138,139)。 イ大阪府所在の総合病院の医師(乙キ3)証人は,大阪府所在の総合病院において産科医として勤務していた医師であるが,昭和56年に,前置胎盤で帝王切開となり,出血をみたとしてフィブリノゲン製剤を使用した旨の主張のある事案について,フィブリノゲン製剤の使用方針等について,常位胎盤早期剥離,前置胎盤など胎盤に関連する疾患であればフィブリノゲン製剤の投与を考慮するが,それ以外の場合には,例えば頸管裂傷で1000mlの出血をみたというよう な事案であっても,フィブリノゲン製剤の投与をあまり考慮しない旨証言した。 ウ兵庫県所在の個人医院の医師(乙キ5の1)証人は,兵庫県において,開業医として,産婦人科医院を経営する医師であるが,同医院において昭和49年頃から昭和60年頃までに,7名の患者 証言した。 ウ兵庫県所在の個人医院の医師(乙キ5の1)証人は,兵庫県において,開業医として,産婦人科医院を経営する医師であるが,同医院において昭和49年頃から昭和60年頃までに,7名の患者(原告ら)にそれぞれフィブリノゲン製剤を投与したとの主張のある事案につき,出血性ショックを起こして血液が凝固しない,さらさらの状態になった患者に,フィブリノゲン製剤を使用していたこと,1000ml出血してもフィブリノゲン製剤を使用しない場合もあるし,使う場合もあり,出血多量だけではフィブリノゲン製剤を使用しないこと,フィブリノゲン製剤を投与するかどうかは,クロット・オブザベーションテスト(凝固観察試験)を行って,血液の凝固能を見極めて決めていたことを証言した。 (29) 本件における専門家の証言,陳述書等からうかがわれる認識本件においても,特定フィブリノゲン製剤の使用に関する医師等の証言や陳述書が存する(その具体的内容は,別紙原告1~163番関係のうち,「第2 当裁判所の判断」の該当箇所に記載のとおりである。なお,特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与が問題となっているのは,原告159番のみであるが,医師等の証言や陳述書は提出されていない。)。 前記各証拠からは,特定フィブリノゲン製剤が製造・販売されていた当時,産婦人科領域の医師において,特定フィブリノゲン製剤に関する共通の投与方針(添付文書記載のとおりの用法及び適応外使用の双方について)が周知・共有されていたといった事情はうかがわれず,かえって,当該症例,当該患者の病態次第で の個別の判断がされていたと認めることができ,これは前記の先行するC型肝炎訴訟における複数の証言にあらわれた投与方針の差異とも合致するものといえる。 2 特定フィブリノゲン製剤又は特定血液 の個別の判断がされていたと認めることができ,これは前記の先行するC型肝炎訴訟における複数の証言にあらわれた投与方針の差異とも合致するものといえる。 2 特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤を投与したことに関する証拠等について(1) 診療録(カルテ)の保存義務に関する医師法及び同施行規則の定め以下のとおり,医師法によれば,処方及び処置の内容を記録するよう定められており,患者に投与した薬剤の薬名等を記録することになっている。診療録の法定保存期間は5年間であり,本件訴訟における原告らは,いずれも特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤が投与されたと主張する時期のカルテを証拠提出していない。 ア医師法22条「医師は,患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には,患者又は現にその看護に当たっている者に対して処方せんを交付しなければならない。ただし,患者又は現にその看護に当たっている者が処方せんの交付を必要としない旨を申し出た場合及び次の各号の一に該当する場合においては,この限りでない。」とし,「1.暗示的効果を期待する場合において,処方せんを交付することがその目的の達成を妨げるおそれがある場合」など処方せんの交付を要しない場合を列挙している。 イ医師法施行規則21条「医師は,患者に交付する処方せんに,患者の氏名,年齢,薬名,分量,用法,用量,発行の年月日,使用期間及び病院若しく は診療所の名称及び所在地又は医師の住所を記載し,記名押印又は署名しなければならない。」とし,同規則22条は,「医師は,患者に交付する薬剤の容器又は被包にその用法,用量,交付の年月日,患者の氏名及び病院若しくは診療所の名称及び所在地又は医師の住所及び氏名を明記しなければならない 。」とし,同規則22条は,「医師は,患者に交付する薬剤の容器又は被包にその用法,用量,交付の年月日,患者の氏名及び病院若しくは診療所の名称及び所在地又は医師の住所及び氏名を明記しなければならない。」としている。 ウ医師法24条1項「医師は,診療をしたときは,遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。」とし,同条2項は「前項の診療録であって,病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは,その病院又は診療所の管理者において,その他の診療に関するものは,その医師において,5年間これを保存しなければならない。」としている。医師法施行規則23条は,診療録には「診療を受けた者の住所,氏名,性別及び年齢」,「病名及び主要症状」,「治療方法(処方及び処置)」,「診療の年月日」を,記載しなければならないとしている。 (2) 母子健康手帳の記載についてア母子保健法16条1項は,「市町村は,妊娠の届出をした者に対して,母子健康手帳を交付しなければならない。」,2項は「妊産婦は,医師,歯科医師,助産師又は保健師について,健康診査又は保健指導を受けたときは,その都度,母子健康手帳に必要な事項の記載を受けなければならない。乳児又は幼児の健康診査又は保健指導を受けた当該乳児又は幼児の保護者についても,同様とする。」と定めている。 イ 「出産の状態」欄の最上段には「このページは産後なるべく早く記入してもらいましょう」と記載されており,妊産婦(母親) ではなく,医師ないし助産師が記載することになっている(母子保健法16条2項)。(甲カ19)「分娩の経過(母児の状態)」欄には,頭位,骨盤位,その他の区分があり,「頭位」とは胎児の頭部が母体の下方(産道方向)に位置する状態をいう。「骨盤位」とは胎児の骨 法16条2項)。(甲カ19)「分娩の経過(母児の状態)」欄には,頭位,骨盤位,その他の区分があり,「頭位」とは胎児の頭部が母体の下方(産道方向)に位置する状態をいう。「骨盤位」とは胎児の骨盤以下の部位が母体の骨盤に向かう状態(いわゆる逆子)をいう。 「特記事項」欄には胎盤用手剥離など何らかの処置がなされた場合に記載される。 「出血量」欄には,「少量」,「中量」,「多量」の三つの区分があり,医師又は助産師が出血量に応じていずれかを囲むようになっている。また,出血量を記載する欄も設けられている。 ウ分娩時出血と母子健康手帳の「出血量」との関係は以下のとおりである。 分娩は,分娩第1期(開口期),分娩第2期(娩出期),分娩第3期(後産期)の3期に分けられる(前記1(2))。 第1期(開口期)には血性分泌を示し,第2期(娩出期)には胎児が完全に娩出すると同時に,子宮内に残っていた後羊水は少量の血液とともに流出し,第3期(後産期)には陣痛のたびに少量の出血を来すこともある。 分娩中及び分娩後2時間までの出血を分娩時出血といい,この出血量をまとめて分娩時出血量という。 正常分娩における分娩時出血量は50~300ml(平均250ml程度とされ,胎盤娩出後に500ml以上の出血を認める場合,後産期出血多量といい,日本産科婦人科学会 では異常出血と定義している。 母子健康手帳の出血欄の三つの区分のいずれを選択するかは助産師が行うことになっている。 助産師は分娩簿に出血量を記載する際,分娩後40分経過した時点の出血量を記録するか,数時間経過した時点の出血量を記録するかは,必ずしも統一されていない。 分娩第1期や分娩第2期には羊水と血液が同時に流れるため,出血量を計測できない場合がある。その場合には分娩 血量を記録するか,数時間経過した時点の出血量を記録するかは,必ずしも統一されていない。 分娩第1期や分娩第2期には羊水と血液が同時に流れるため,出血量を計測できない場合がある。その場合には分娩第3期の後産期出血量だけを記載する場合がある。 また,測定するまでに血液が乾燥するため測定した出血量よりも実際の出血量が多くなる。 母子健康手帳に記載される出血量は分娩室で測定したものであって,その後に出血があったとしても,その出血量は母子健康手帳には記載されない。 第2 判断の枠組み 1 特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の事実について(1) 事実認定における証明の程度は,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とし,かつ,それで足りる(前記最高裁第二小法廷昭和50年10月24日判決)。 (2) 事案の性質上,客観的証拠に乏しい場合には,当該事実関係において存在する可能性のある証拠が提出されているか,提出された証拠が信用できるものであるかという観点から判断することが通常である。 これに対し,事実関係の性質上,信用できる証拠が過去に存在 していたはずであるが,時間の経過により証拠が散逸して提出できない場合がある。この場合,過去に存在していたはずの証拠が提出されていないことは,当該事実の不存在を積極的に疑わせるべきものではないが,そうであるからといって,直ちに立証責任を緩和すべきであるという帰結にはならない。 (3) 原告らは,特定の原因状況から特定の結果が招来されることの一般的関連性に関する原因状況を抽象化し,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤を投与する医学的適応のある状態にあったこととすれば,そのこととC型肝炎ウイルス感染と が招来されることの一般的関連性に関する原因状況を抽象化し,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤を投与する医学的適応のある状態にあったこととすれば,そのこととC型肝炎ウイルス感染との間に一般的関連性を認めることができる場合があると主張する。 一般的には,ある事実を抽象化すると,当該事実とは性質の異なる事実を含むものになるため,特定の事実が立証命題である場合に当該事実を抽象化して,その抽象化された事実の存在を立証したからといって,特定の事実を立証したことにはならない。もっとも,抽象化された事実のうち特定の事実が占める割合が大多数である場合は,抽象化された事実を立証することによって,反証のない限り特定の事実を推認することが可能である。 しかし,原告らの主張する特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤を投与する医学的適応のあった状態とは,前記認定事実1(29)のとおり,各製剤に関する共通の投与方針(添付文書記載のとおりの用法及び適応外使用の双方について)が周知・共有されていたものではなく,当該症例,当該患者の病態次第での個別の判断がされていたことを踏まえると,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤を必ず投与するとか,投与の蓋然性が極めて高いと一般的にいうことができないもので ある。したがって,抽象化された事実のうち特定の事実が占める割合が大多数である場合には該当しない。 これに対し,原告らは,他原因の不存在を立証することにより,抽象化された事実のうち特定の事実が占める割合が大多数である場合に該当するという趣旨の主張をする。しかし,輸血その他具体的な感染原因となり得る他の事実が認定できる場合には他原因が不存在であるとはいえないし,前記前提事実3及び前記認定事実1(24)のとおり,C に該当するという趣旨の主張をする。しかし,輸血その他具体的な感染原因となり得る他の事実が認定できる場合には他原因が不存在であるとはいえないし,前記前提事実3及び前記認定事実1(24)のとおり,C型肝炎ウイルスの感染経路については,原因不明である場合も相当数を占めるのであって,他原因の不存在を立証することは性質上極めて困難といわざるを得ない。 そうすると,結局のところ,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の事実は,提出されている証拠により直接認定することができるか,又は認定した間接事実から推認することができるかを判断すべきことになる。そして,投与の事実が,個別の症例における担当医師の医学的判断に依拠するものであることからすれば,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤を投与する医学的適応のある状態にあったこと,当該医学的適応のある状態にあるというカテゴリーの中において具体的状況に即した当該医師の投与方針が認定できること,当該原告がかかる具体的状況に当てはまっていたことが立証された場合には,投与の事実を推認することができるというべきである。 以上の検討により,原告らに関する個別の判断においては,前記観点から特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与の事実の有無を認定することとする。 2 投与の事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係について訴訟上の因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的 証明ではなく,経験則に照らして全証拠を総合検討し,特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり,その判定は,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とし,かつ,それで足りるものである(前記最高裁第二小法 した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり,その判定は,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とし,かつ,それで足りるものである(前記最高裁第二小法廷昭和50年10月24日判決)。 そして,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤が,前記認定事実1(8)及び(13)のとおりの製法に鑑み,非常に多数の者の血液の成分が混ざったものであってC型肝炎ウイルス感染のリスクが極めて高いものであることからすれば,特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与の事実及びC型肝炎ウイルス感染の事実を認定することができれば,他原因の存在が立証されたというだけで因果関係が否定されるものではないというべきである。 第3 原告らに関する個別の判断別紙原告1~163番関係の「第2 当裁判所の判断」に記載のとおり。 なお,原告らに対する個別の判断をするに当たり,特定フィブリノゲン製剤を指す製剤の呼称について,当裁判所が判断を示す部分においては,特措法制定の前後に関わらず,「特定フィブリノゲン製剤」といい,関係者の供述等を挙げる部分については,種々の表現がされているため,混乱を避けるため,どのような表現がされているかに関わらず,「フィブリノゲン製剤」という。 第4 結論以上によれば,原告117番を除く原告らの特措法に基づく主位的請求及び国家賠償法1条1項に基づく予備的請求並びに原告11 7番の国家賠償法1条1項に基づく主位的請求及び特措法に基づく予備的請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第12民事部 裁判官佐 藤 壮一郎 裁判長裁判官酒井良介,裁判官林由希子は, 由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第12民事部 裁判官佐藤壮一郎 裁判長裁判官酒井良介,裁判官林由希子は,差支えのため,署名押印することができない。 裁判官佐藤壮一郎 別紙当事者目録(省略) 別紙原告ら請求金額・症状等目録原告番号請求金額6条区分(号) 2000万円 2000万円 2000万円 の1 4000万円 2000万円 4000万円 2000万円 2000万円 2000万円 2000万円 14の1 4000万円 4000万円 1200万円 2000万円 2000万円 2000万円 2000万円 2000万円 2000万円 31の1 4000万円 31の2 31の3 31の4 2000万円 2000万円 38の1 4000万円 の1 4000万円 の2 41の1 2000万円 41の2 41の3 4000万円 46の1 4000万円 4000万円 2000万円 2000万円 56の1 4000万円 主文 4000万円 理由 4000万円 事実 2000万円 争点 2000万円 判断 4000万円 4000万円 2000万円 4000万円 2000万円 4000万円 2000万円 2000万円 4000万円 85の1 4000万円 85の2 4000万円 4000万円 2000万円 4000万円 2000万円 94の1 4000万円 94の2 94の3 1200万円 2000万円 1200万円 2000万円 2000万円 4000万円 4000万円 4000万円 2000万円 4000万円 1200万円 2000万円 4000万円 2000万円 2000万円 2000万円 4000万円 4000万円 2000万円 4000万円 2000万円 2000万円 4000万円 4000万円 2000万円 4000万円 1200万円 122の1 4000万円 2000万円 2000万円 2000万円 1200万円 2000万円 2000万円 4000万円 2000万円 2000万円 1200万円 4000万円 2000万円 4000万円 4000万円 2000万円 2000万円 4000万円 2000万円 2000万円 2000万円 2000万円 1200万円 2000万円 2000万円 4000万円 2000万円 4000万円 2000万円 2000万円 別紙原告1番関係 第1 当事者の主張(原告1番の主張) 1 原告1番は,平成16年●月頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告1番は,昭和59年●月●日に第一子(女児),昭和62年●月●日に第二子(女児) ,平成16年●月頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告1番は,昭和59年●月●日に第一子(女児),昭和62年●月●日に第二子(女児)を,●●病院(以下「●病院」という。)においてそれぞれ出産し,昭和60年●月●日,医療法人●会●病院(以下「●病院」という。)において,右卵巣摘除手術及び虫垂切除手術を受け,各機会において出血をした。 3 ●病院及び●病院には,各出産及び手術の当時,特定フィブリノゲン製剤が納入されていた。 4 原告1番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院及び●病院の両方かいずれか一方における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告1番の第一子(女児),第二子(女児)の出産の際に,低フィブリノゲン血症の要因となる播種性血管内凝固症候群が発症したことをうかがわせる証拠はなく,また,右卵巣摘除手術及び虫垂切除手術の際に,出血に関して何らかの問題が生じた旨の証拠もないから,いずれの機会においても,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。なお,原告1番は,第一子(女児)の出産の際に弛緩出血を起こし,特定フィブリノゲン製剤の使用を必要とする状況であった旨主張するが,前記出産の主治医の供述に照らしても, 特定フィブリノゲン製剤を使用した具体的可能性は認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実(第2章第1記載の事実をいう。以下,他の原告に関す ,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実(第2章第1記載の事実をいう。以下,他の原告に関する認定においても同じ。)に証拠(甲ハ1の1~3,甲ハ1の4の1~3,甲ハ1の6の1~3,甲ハ1の7,9,14,15の1,甲ハ1の16の1,2,甲ハ1の17,原告1番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告1番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 (2) 原告1番は,昭和59年●月●日,●産婦人科において,第一子(女児)を自然分娩により出産し,その際,460mlの出血をした。原告1番は,妊娠中から貧血の状態にあり,出産時には,腹圧不全のため,クリステレル胎児圧出法が3回施された。 (3) 原告1番は,昭和62年●月●日,●病院産婦人科において,第二子(女児)を自然分娩により出産し,その際,400mlの出血をした。この際も原告1番は貧血の状態にあった。 (4) 原告1番は,昭和60年●月●日,●病院に入院し,同月●日,右卵巣嚢腫(皮様嚢腫)のため,右卵巣摘除手術を受けるとともに,虫垂切除手術を受け,同月●日に退院した。 (5) 原告1番は,平成16年●月●日から●病院で,平成17年●月●日からは●病院で,それぞれ慢性C型肝炎の投薬治療を受けているが,現在もウイルス排除には至っていない。 (6) ●病院は昭和59年から昭和62年までの当時,産婦人科ほか1 0の診療科目を有し,ベッド数は295床,産婦人科における医師数は5名,看護師数は26名,年間分娩件数は昭和59年度934件,昭和60年度952件,昭和61年度862件,昭和62年度850件だった。 ●病院では,昭和5 ド数は295床,産婦人科における医師数は5名,看護師数は26名,年間分娩件数は昭和59年度934件,昭和60年度952件,昭和61年度862件,昭和62年度850件だった。 ●病院では,昭和59年から昭和62年までの当時,特定フィブリノゲン製剤を常備しており,同病院における同製剤の納入実績は,昭和59年が13本,昭和60年が5本,昭和61年が0本であり,昭和62年は3本が返品されたものと推測される。 (7) ●病院は,昭和60年当時,産婦人科ほか23の診療科目を有し,ベッド数は700床,産婦人科における医師数はおよそ5名,看護師数は不明,産婦人科における年間手術件数は172件だった。 ●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績は,昭和60年●月が3本,同年●月が8本である。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告1番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告1番の平成25年12月1日付け陳述書(甲ハ1の1)原告1番は,昭和59年●月●日が出産予定日であったが,同月●日午前6時頃破水したため,●病院産婦人科に行き,陣痛促進剤を打たれた。同日午後3時頃徐々に陣痛が始まり,同月●日午前3時30分頃分娩台に上がったが,なかなか胎児が出て来ないことから,助産師が原告1番にまたがって腹部を押し,何とか娩出できた。娩出後は,助産師が,胎盤の出が悪いからと言って,手で胎盤を掻きだしていたのを覚えている。 その後,陣痛室に寝かされ,腹部の上に何か冷たいものを乗せられながら長い間点滴を受け,昼頃病室に戻ったのを覚えている。 昭和60年●月初旬,突然右下腹部に強い痛みを感じるととも に吐き気をもよおしたため,同月●日,●病院において,卵巣嚢腫のため,全身麻酔により右卵巣摘除術を受けるとともに,その機会に虫 昭和60年●月初旬,突然右下腹部に強い痛みを感じるととも に吐き気をもよおしたため,同月●日,●病院において,卵巣嚢腫のため,全身麻酔により右卵巣摘除術を受けるとともに,その機会に虫垂切除術も受けた。全身麻酔だったので手術中のことは覚えていない。 平成16年●月頃,●医院で検査を受けたところ,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。以後,約1年間は強ミノの注射治療を受け,平成17年●月からは,1年以上にわたり,●病院において,インターフェロン治療を続け,現在も同病院において,定期健診を受けながら様子を見ている。 報道でフィブリノゲン製剤のことを知り,問い合わせをしたところ,●病院では,昭和60年●月に3本,同年●月に8本のフィブリノゲン製剤納入があったとのことで,同病院の●●医師が卵巣摘除手術の際にフィブリノゲン製剤を使用した可能性があることを証明してくれた。 2度の出産と卵巣嚢腫手術以外に,出産や手術をしたことはない。また,入れ墨,ピアス,人工透析,鍼治療,違法薬物の注射器での回し打ちはいずれもしたことはない。 平成22年●月に死亡した原告1番の父も慢性C型肝炎にり患していた。り患の原因についてはっきりしたことは分からないが,過去に盲腸がひどく悪化して手術を受けたことや,胃がんの手術を受けたことはあった。 原告1番には弟が一人いるが,弟も母もC型肝炎ウイルスには感染していない。 イ原告1番の平成28年8月26日付け陳述書(甲ハ1の17)第一子(女児)の出産の時には,従前の貧血体質が妊娠して一層ひどくなったという状態で,貧血を改善する薬を処方されていた。 第一子(女児),第二子(女児)の出産,右卵巣摘除術及び虫垂切除術のいずれの機会においても,輸血された記憶はないし,医師か どくなったという状態で,貧血を改善する薬を処方されていた。 第一子(女児),第二子(女児)の出産,右卵巣摘除術及び虫垂切除術のいずれの機会においても,輸血された記憶はないし,医師から輸血があったと説明されたこともない。 原告1番の父の盲腸の手術は原告1番が幼稚園児の頃,胃がんの手術は原告1番の第二子(女児)が小学校低学年の頃という記憶である。原告1番の父がC型肝炎ウイルスに感染したことをいつ知ったかということは知らない。 ウ原告1番の供述(本人尋問)第一子(女児)出産の際,破水の時に出血はなく,出産後の点滴は1時間以上受けていた記憶であり,本数,形,大きさは覚えていない。病室に戻った時には点滴は外れていた記憶である。出産の状況や出産後の状況について,医師や看護師から説明を受けた記憶はない。止血剤を使ったかどうかは聞いていない。 第二子(女児)出産の際の点滴の有無については記憶がない。 輸血や止血剤を使用したという説明は受けていない。 右卵巣嚢腫摘出手術について,手術の状況,出血の有無は聞いておらず,輸血についても聞いていない。 出産費用は,第一子(女児)の時の方が第二子(女児)の時よりも高かった。 エ ●病院の証明書(甲ハ1の8)●●医師は,平成20年●月●日,原告1番に対し,昭和60年●月●日に原告1番の右卵巣嚢腫摘出手術を行ったところ,同時期にフィブリノゲン製剤の納入実績があり,同製剤を使用した可能性があるという内容の証明書を発行した。 オ ●●医師(以下「●医師」という。)の陳述書(甲ハ1の21)●医師は,原告1番の第一子(女児)の出産がされた昭和59年 ●月●日当時,●病院の産科に勤務していた。当時,出産の際にフィブリノゲン製剤を使うことはあった。●医師は,新しいものを試してみ 師は,原告1番の第一子(女児)の出産がされた昭和59年 ●月●日当時,●病院の産科に勤務していた。当時,出産の際にフィブリノゲン製剤を使うことはあった。●医師は,新しいものを試してみるほうであり,フィブリノゲン製剤は止血効果があると認識していた。出産時の出血については,その様子を見て,出血が止まりそうか,まだ続きそうかを判断し,止まりそうもない場合にはフィブリノゲン製剤を使っていた。出血量の程度で使うかどうかを決めていたのではない。 原告1番の出産のことは覚えていない。フィブリノゲン製剤の投与方針は前記のとおりであり,母子手帳に記載された出血量だけからはフィブリノゲン製剤を使ったとも使っていないともいえない。 ●医師は,原告1番が出産した午前4時という時間であっても,呼出しがあれば病院に駆けつけていた。このため,原告1番の出産の時にも,自宅から●病院に行った可能性はある。原告1番の話によれば,分娩後,胎盤がなかなか出てこず,手で掻き出され,その後,分娩室から陣痛室に移され,そこでお腹を冷たいもので冷やされたとのことであるが,このような状態で出血がなかなか止まらないようであれば,フィブリノゲン製剤を使った可能性もある。 ●病院において,フィブリノゲン製剤をどのようにして補充していたかなど,細かいことはほとんど覚えておらず,分娩簿や母子手帳に書いていることについてしか答えることができない。 3 検討(1) 前記1(2)~(4)のとおり,原告1番が,昭和59年●月●日,●病院産婦人科において,第一子(女児)を自然分娩により出産し,その際,460mlの出血をしたこと,昭和62年●月●日,●病院産婦人科において,第二子(女児)を自然分娩により出産し,そ の際,400mlの出血をしたこと,昭和60年●月●日 出産し,その際,460mlの出血をしたこと,昭和62年●月●日,●病院産婦人科において,第二子(女児)を自然分娩により出産し,そ の際,400mlの出血をしたこと,昭和60年●月●日,●病院において,右卵巣嚢腫(皮様嚢腫)のため,右卵巣摘除手術を受けるとともに,虫垂切除手術を受けたことを,それぞれ認めることができる。 ●病院においては,昭和59年に特定フィブリノゲン製剤の納入実績があったのであるから,第一子(女児)の出産に当たり同製剤を使用した可能性があったといえるが,昭和62年は前年から納入がなく,かえって3本返品しているのであるから,第二子(女児)の出産に当たり使用したことは考え難い。 また,第一子(女児)と第二子(女児)の出産の際は,それぞれ460ml,400mlの出血があったものであるが,●医師の陳述書によれば,●医師は,特定フィブリノゲン製剤の投与をするかを,出血量の程度ではなく,出血の様子によって判断していたのであり,原告1番の前記2回の出産に際し,特定フィブリノゲン製剤を使用する必要があるような状況であったかは,同陳述書からは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。なお,原告1番は,第一子(女児)の出産の際に,娩出後に助産師が手で胎盤を掻き出し,その後腹部に冷たいものを乗せられながら長い間点滴を受けていたとの記憶に基づき,弛緩出血を起こしており,特定フィブリノゲン製剤を使用する必要がある状況であったと主張するが,弛緩出血を起こしていたとしても,それだけで直ちに特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を推認するには不十分であり,原告1番の主張は採用できない。 (2) ●病院においては,昭和60年に特定フィブリノゲン製剤の納入実績があったのであるから,右卵巣嚢腫摘出手術及び虫垂切除手術の際に 推認するには不十分であり,原告1番の主張は採用できない。 (2) ●病院においては,昭和60年に特定フィブリノゲン製剤の納入実績があったのであるから,右卵巣嚢腫摘出手術及び虫垂切除手術の際に,特定フィブリノゲン製剤を使用した可能性があったといえ る。 また,●病院の●医師は,昭和60年●月●日の原告1番の右卵巣嚢腫摘出手術について,同時期に特定フィブリノゲン製剤の納入実績があり,同製剤を使用した可能性があるという証明書を発行している。 しかし,前記証明書は,どの程度の可能性があるかについて言及しているものではないし,原告1番の症状や手術の状況など,使用した可能性が高いことについての具体的根拠にも触れていない。 そうすると,原告1番の右卵巣嚢腫摘出手術及び虫垂切除手術の際に特定フィブリノゲン製剤を使用する必要があるような状況であったかは,前記証明書からは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 (3) 医学的知見として,腫瘍摘出を行った卵巣や癒着剥離した箇所には,フィブリンや酢酸セルロースなどを用いて腸管や大網との癒着防止が試みられていること(甲ハ1の13),卵巣嚢腫の手術で剥離後の卵巣被膜はフィブリン糊を用いて形成すること(甲ハ1の18),多房性のチョコレート嚢胞を核出した後,核出部位の癒着防止目的でフィブリン糊を噴霧したという症例(甲ハ1の19),子宮筋腫核出後の創部には癒着が生じやすく,癒着防止措置は必須であり,十分な洗浄,確実な止血,正しい癒着防止剤の使用がポイントであること(甲ハ1の20),妊娠貧血の症状にある産婦は分娩時に出血を起こす頻度が高いこと,貧血妊婦は正常妊婦に比して同一出血量に対しても回復が遅れること(甲ハ1の22)が示されているが,これらによっても,原告1番に,具体的状況 貧血の症状にある産婦は分娩時に出血を起こす頻度が高いこと,貧血妊婦は正常妊婦に比して同一出血量に対しても回復が遅れること(甲ハ1の22)が示されているが,これらによっても,原告1番に,具体的状況に照らして特定フィブリノゲン製剤が使われたことを推認するには不十分である。 4 結論 以上によれば,原告1番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告2番関係 第1 当事者の主張(原告2番の主張) 1 原告2番は,平成4年●月●日,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告2番は,平成2年●月●日,●●病院(以下「●病院」という。)において,帝王切開により第一子(女児)を出産し,その際に500mlの出血をした。 3 ●病院を含む五つの●病院が統合されてできた●医療センターでは,昭和63年まで特定フィブリノゲン製剤が納入された記録がある。 4 原告2番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告2番の帝王切開での第一子(女児)出産の際,500mlの出血があったが,それ以上に,原告2番がDICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められず,DICの治療又は予防のため特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告2番は,止血剤を使用すると聞いた旨供述するが,当該止血剤が特定フィ たとは認められず,DICの治療又は予防のため特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告2番は,止血剤を使用すると聞いた旨供述するが,当該止血剤が特定フィブリノゲン製剤である旨を医師や看護師から聞いていないことに照らすと,同供述によっても,特定フィブリノゲン製剤の投与が認められるものではない。 また,原告2番の母はC型肝炎ウイルスに感染していたとのことであるから,原告2番の同ウイルスの感染は,家庭内の水平感染による 可能性が否定できない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ2の1,5,7~9,13,原告2番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告2番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告2番にきょうだいはいない。 (2) 原告2番は,平成2年●月●日午後5時19分,●病院において,第一子(女児)を帝王切開により分娩し,その際,500mlの出血をした。同分娩の主治医は,●●医師(以下「●医師」という。)であった。 (3) ●病院は,平成2年当時,産婦人科ほか15の診療科目を有し,ベッド数は322床,うち産婦人科のベッド数は47床,産婦人科における医師数はおよそ4名,看護師数は25名,年間分娩件数は約478件で,うち帝王切開が約95件だった。 (4) 原告2番は,平成21年●月●日,慢性C型肝炎との診断を受けた。現在,原告2番の身体からはC型肝炎ウイルスが検出されていないものの,慢性C型肝炎の病名で定期的に血液検査やエコー検 た。 (4) 原告2番は,平成21年●月●日,慢性C型肝炎との診断を受けた。現在,原告2番の身体からはC型肝炎ウイルスが検出されていないものの,慢性C型肝炎の病名で定期的に血液検査やエコー検査を受けているほか,バセドー病と線維筋痛症の投薬治療を受けている。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告2番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告2番の平成24年12月8日付け陳述書(甲ハ2の1) 原告2番は,予定日の平成2年●月●日を過ぎても出産の気配がなく,同年●月●日,●病院において,帝王切開により,第一子(女児)を出産した。主治医は●医師であった。 原告2番は,出産後,リンゲルと小瓶の点滴を受けた。小瓶は,逆さまにネットに入れて吊るされ,小瓶からの管がリンゲルとつながって,腕に液が入れられるようになっていた。その際,看護師から「帝王切開は出血が止まりにくいので,この止血剤で出血を止めるからね。」「高いお薬だから,1滴残らず身体に入れないと,もったいないからね。」と言われた。点滴を受けていた時に,寒気を覚え不快に感じたので,看護師に言って,点滴の速度を遅くしてもらった記憶がある。 原告2番は,平成4年●月●日,●病院において第二子を出産したところ,産後に手術室から病室に戻る途中で,主治医であった●医師から,「C型肝炎にり患しているから,母乳をあげられないかもしれない。」と言われ,帝王切開による出産の前の血液検査において,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した旨を告げられた。 原告2番は,平成19年頃,薬害C型肝炎の報道を受けて,●医療センターに自らのカルテが残っていないか問い合わせをしたが,残っていない旨の回答を得た。その後,● 判明した旨を告げられた。 原告2番は,平成19年頃,薬害C型肝炎の報道を受けて,●医療センターに自らのカルテが残っていないか問い合わせをしたが,残っていない旨の回答を得た。その後,●医師に手紙を書いて問い合わせ,同人から,手紙の形で回答を得た。 ●医療センターでは,昭和63年まで特定フィブリノゲン製剤が納入された記録があり,第一子(女児)の分娩の際に同製剤が使用された可能性がある。 原告2番は,平成19年●月から21週間にわたりインターフェロン治療を続け,同治療を中止してからは,定期的に血液検査 やエコー検査を受けている。現在の病名は,慢性C型肝炎である。 イ原告2番の平成30年10月26日付け陳述書(甲ハ2の13)出産を終えて病室に戻った時,病室には少し前に出産を終えた産婦がいた。同産婦も帝王切開により分娩をしたとのことだったが,原告2番と異なり,リンゲルの点滴のみを受けており,小瓶の点滴は受けていなかった。また,原告2番のベッドのそばには,銀のトレーがあり,同トレーの上に小瓶が5本程度とリンゲルが2本程度準備されており,それらの小瓶とリンゲルがなくなるまで,繰り返し点滴を受けた。点滴を受けている間,看護師が頻繁に来て,点滴を取り換えるほか,ずっと出血が続いていた原告2番のT字帯とナプキンを取り換えてくれた。 ウ原告2番の供述(本人尋問)原告2番の母はC型肝炎にり患していたが,父,夫,子はいずれもC型肝炎ウイルスに感染していない。 入れ墨,人工透析等,C型肝炎ウイルスに感染する可能性のあることはしたことがない。また,ピアスは15年ほど前に開けたものである。 第一子(女児)の出産に関しては,個人病院の●産婦人科に通っていたが, 析等,C型肝炎ウイルスに感染する可能性のあることはしたことがない。また,ピアスは15年ほど前に開けたものである。 第一子(女児)の出産に関しては,個人病院の●産婦人科に通っていたが,出産予定日を過ぎても産まれなかったため,緊急に帝王切開となった場合にも対応できるよう,大きな病院に転院してほしいと言われ,平成2年●月●日,●病院に転院した。 ●病院では,●医師が一通りの診察を行い,当初は,翌●日の朝から陣痛促進剤を使って普通分娩を試みる方針となっていたが,血液検査で詳しく調べた結果,胎盤の機能が落ちてきており,胎児が普通分娩に耐えられない可能性があると判明したため,大事をとって●日の朝に帝王切開をすることとなった。しかし,●日 のうちに,入浴のために浴室に向かう途中で破水をしたため,同日,緊急帝王切開により第一子(女児)を分娩した。部分麻酔だったため,手術中も意識があったところ,医師や看護師のやり取りで特に問題はなかったように思い,順調に産まれたよという風に声がけをされた。輸血したといったことは聞いていない。なお,同様に緊急で帝王切開による分娩をしている産婦がいたため,破水後も1時間程度待って手術室に入ったかもしれない。 出産後は,病室で,銀色のトレーに入れられた,大きなペットボトルのようなボトルと小さな透明なガラスの小瓶の点滴を,同時に受けていた。小さい小瓶には透明に近い白っぽい液体が入っており,5本ほどの小瓶を,取り替えながら全て点滴を受けた記憶である。小さな小瓶の点滴について,看護師から,高い薬で,原告2番の血を止めるためにとっても大事なお薬だから,一滴残らず体内に入れなければならないという風に教えられた。薬剤の名前は聞いていない。また,看護師からは,帝王切開をした産婦は,普 ,高い薬で,原告2番の血を止めるためにとっても大事なお薬だから,一滴残らず体内に入れなければならないという風に教えられた。薬剤の名前は聞いていない。また,看護師からは,帝王切開をした産婦は,普通分娩をした産婦と異なり,子宮の収縮が遅いので,出血が長く続くとの説明があり,着けていたおしめのようなものを替えた時にずっしりと重い血液を含んでいたように思う。寝ている体勢でも,出血している感覚があった。 エ ●医師の平成23年3月29日付け回答書面(甲ハ2の2)●医師は,原告2番にフィブリノゲン製剤を使用したか否かについて全く記憶がない。当時の全ての産科関係の書類や台帳は,●医療センターに保存してあるはずなので,同センターに問い合わせるのが最も良いと思う。 帝王切開で出血がひどく,輸血以外にフィブリノゲン製剤を使用したという記憶はほとんどないが,全くなかったかどうかにつ いては定かではないため,使用の可能性は否定できない。 フィブリノゲン製剤はガラス瓶に入っていたと思う。おそらく,5本から10本くらいを点滴又は輸血によって注射するものなので,もしガラス瓶のことを明瞭に記憶しているのであれば,フィブリノゲン製剤の点滴を受けた可能性が高いと思う。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告2番が平成2年●月●日に帝王切開により第一子(女児)を分娩し,その際500mlの出血があったことを認めることができる。 イしかし,●病院において,平成2年当時に特定フィブリノゲン製剤が使用されていたか,原告2番の出産の際に特定フィブリノゲン製剤を使用する必要がある具体的状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認める証拠はない。 なお,●医師は,帝王切開の手術の いたか,原告2番の出産の際に特定フィブリノゲン製剤を使用する必要がある具体的状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認める証拠はない。 なお,●医師は,帝王切開の手術の際に特定フィブリノゲン製剤を使用した可能性は否定できないと述べた上,ガラス瓶の点滴を受けたのであれば,特定フィブリノゲン製剤の投与を受けた可能性が高いと思う旨述べるが,他方で,帝王切開で出血がひどく,輸血以外に特定フィブリノゲン製剤を使用したという記憶はほとんどないとも述べており,原告2番に,具体的状況に照らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 ウ医学的知見として,帝王切開が,特定フィブリノゲン製剤の静注での使用疾患として挙げられていることが示されているが,これによっても,原告2番に,具体的状況に照らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 3 結論以上によれば,原告2番については,特定フィブリノゲン製剤が投 与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告3番関係 第1 当事者の主張(原告3番の主張) 1 原告3番は,平成15年●月●日頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告3番は,昭和57年●月●日,●外科医院において,左足の血栓除去手術を受け,大量出血をした。 3 ●外科医院では,特定フィブリノゲン製剤は常備薬ではなかったものの,胃の手術を行う時等,必要に応じて納入していた。 4 原告3番がC型肝炎ウイルスに感染した 去手術を受け,大量出血をした。 3 ●外科医院では,特定フィブリノゲン製剤は常備薬ではなかったものの,胃の手術を行う時等,必要に応じて納入していた。 4 原告3番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●外科医院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告3番の血栓除去手術時や手術後の具体的な病態やこれに対する処置の内容は明らかでなく,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告3番は,前記手術時に大量出血をしたと述べるが,具体的な出血量,出血態様,病態は不明である。 原告3番は●医師が「一時的に薬で血を止めてる」等と述べた旨を述べるが,特定フィブリノゲン製剤は全ての出血性疾患に用いられていたわけではなく,止血剤としてすら一般的な使用が推奨されてきたものでもない上,「一時的に」血を止める作用を有するものでもないのであるから,止血剤が使用されていたことがあったとしても,原告3番が特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったと推認することはできない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ3の1,4~10,13,14,原告3番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告3番は,昭和●年●月●日生まれの男性であり,2人のきょうだいがいる。 (2) 原告3番は,昭和57年●月●日,●外科医院において,血栓除去手術を受けた。同手術は●医師が担 (1) 原告3番は,昭和●年●月●日生まれの男性であり,2人のきょうだいがいる。 (2) 原告3番は,昭和57年●月●日,●外科医院において,血栓除去手術を受けた。同手術は●医師が担当し,予定どおり3時間ほどで終わり,原告3番は手術の1週間後に退院した。 (3) 原告3番は,平成15年●月●日,●内科医院での血液検査で異常が発覚し,●病院で詳しい検査を受けたところ,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。現在も,慢性C型肝炎の治療を続けている。 (4) 原告3番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●外科医院における同製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告3番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告3番の平成25年2月13日付け(ただし,証拠説明書上の作成日は平成24年12月8日。)陳述書(甲ハ3の1)原告3番は,昭和57年●月頃,左足に血栓ができ,同年●月頃には,外見上も血管が赤く硬くなっているのが分かる状態にな ったため,●外科医院を受診した。●医師は,血液検査や処置を行ったが,血栓は徐々に身体上部へ進んでいった。 前記のような経過を受けて,原告3番は,昭和57年●月●日,●外科医院において,血栓除去手術を受けた。手術台の上にはブルーシートが敷かれ,原告3番はその上に仰向けに横たわり,左足の下には茶色の油紙が敷かれ,足の近くにガーゼや脱脂綿が置かれていた。手術中はたくさんの出血があったようで,ガーゼは真っ赤になり,油紙の上にも血がこぼれていた。●医師は,手術が終わった際,切り取った血管の長さは70センチメートルくらいだと言っていた。 前記手術の開始前から手術中にか 血があったようで,ガーゼは真っ赤になり,油紙の上にも血がこぼれていた。●医師は,手術が終わった際,切り取った血管の長さは70センチメートルくらいだと言っていた。 前記手術の開始前から手術中にかけて,看護師が原告3番の足の写真を撮っており,前記手術から2,3日後に●医師が原告3番の病室に入ってきて,「写真ができた」と言った。写真は全て原告3番の左足の膝から下の部分を写したものであり,5枚で1組のものが4組くらいあった。●医師は,原告3番に,4組の写真のうち1組をくれたが,そのうち1枚を取り上げて,「これはやめとこか」と言った。その写真は,油紙の上に血がこぼれて,ガーゼなどが真っ赤に染まった写真だった。同写真には,血がたくさん写っていたため,原告3番は,●医師に対し,「左足の血,なくなってしまったんと違うか。」と言ったところ,●医師は,笑って「あーこれな。一時的に薬で血を止めてるんや。」と答えた。 原告3番は,自身がC型肝炎ウイルスに感染していることが判明した後,フィブリノゲン製剤によりC型肝炎ウイルスに感染する旨のニュースを受けて,●外科医院での手術が感染の原因ではないかと思うようになったが,厚生労働省から発表されたフィブリノゲン製剤の納入先病院のリストに●外科医院が入っていなか ったため,●医師と親戚関係にあると聞いたことのあった●●(以下「●医師」という。)を訪ねた。 原告3番は,小学校時代に予防接種を受けたことがあるが,これによってC型肝炎ウイルスに感染したという話は聞いたことがないし,入れ墨,ピアス,人工透析等をしたことはなく,家族にC型肝炎ウイルスに感染している者はいない。 イ原告3番の平成31年4月26日付け陳述書(甲ハ3の13)原告3番は,昭和57年●月●日に受けた血栓除去手 をしたことはなく,家族にC型肝炎ウイルスに感染している者はいない。 イ原告3番の平成31年4月26日付け陳述書(甲ハ3の13)原告3番は,昭和57年●月●日に受けた血栓除去手術の前に,21歳の時に左手小指の付け根を5針縫合する手術を受けている。 同手術後は,傷口からにじみ出る血に当てていたガーゼの交換が3日くらい続いた。交換の際,血が固まって傷口にくっついていたため,ガーゼをはがす時,ピリ,ピリという感じの痛さを感じた。 前記血栓除去手術の翌日の午前中,●医師が回診に来て,原告3番の左足の傷に巻いてある包帯をほどき,ガーゼを外した。原告3番は,左手小指に当てていたガーゼの交換の際の痛みを予想して息を止め,身体を固まらせていたが,予想に反してガーゼはするっと外れた。外されたガーゼには,縫合した針の跡以外に,血がにじんで赤くなった様子はなく,●医師は「よっしゃ,きれいなもんやー,よし,よし。」と言いながら,ガーゼの交換をしてくれた。 原告3番は,前記の●医師の発言は,足の静脈を足の先から付け根まで丸々一本切り取るという初めての大手術に際して使用したフィブリノゲン製剤の止血効果を自分の目で確かめて接着の効果ありと確認して安堵した気持ちの表れだと確信している。仮にフィブリノゲン製剤を使用していないとすれば,膝を曲げないな どの指示や処置があったはずだが,これらは行われていない。 止血剤や接着剤を使用せずに縫合した場合,傷口がくっつかないため,ガーゼに血が染み込むはずであることを考慮すれば,原告3番に対してフィブリノゲン製剤が使用されたと考えられる。 また,C型肝炎の症状が悪化して発症した肝がんの手術の際に●医療センターの医師から説明・交付された血漿分画製剤使用 慮すれば,原告3番に対してフィブリノゲン製剤が使用されたと考えられる。 また,C型肝炎の症状が悪化して発症した肝がんの手術の際に●医療センターの医師から説明・交付された血漿分画製剤使用説明書に記載された,「主に手術で使用され,縫合部あるいは接合部からの血液,体液又は体内ガスのもれを防ぎ,手術創の接着や閉鎖のために用います。」との組織接着剤に関する説明が,まさに原告3番の前記血栓除去手術の際に傷口がふさがった状況を表しており,ここからも,同手術の際にフィブリノゲン製剤を使用されたと考えられる。 前記血栓除去手術において,輸血は行われていない。同手術の当時,輸血が必要な場合には,病院側から家族に患者と同じ血液型の人を何名分集めてほしいと依頼するような時代であったところ,そのような依頼はされなかったし,原告3番と同じAB型の血液型の人に●外科医院に来てもらったこともない。 厚生労働省から発表されたフィブリノゲン製剤の納入先病院のリストには●外科医院が入っていなかったが,●医師は指導者的な医師であり,他の病院に助っ人として行ったりもしていたから,それらの病院から仕入れることも可能だったと考えられる。 ●医師は,●医師の妻の言葉として,●外科医院においてフィブリノゲン製剤を納入していたと聞いた旨述べているところ,●医師は●医師の甥に当たるとのことであり,身内としてあるがままの内情を聞いたものとして信用できる。 ウ原告3番の供述(本人尋問) 昭和57年●月頃に左足に血栓ができた。同年●月頃に●外科医院を受診し,それ以降2か月間の間に5回以上血液検査を行ったが,原因は明らかとならなかった。 同年●月●日に,血栓除去手術を受けた。手術は下半身麻酔で行われ できた。同年●月頃に●外科医院を受診し,それ以降2か月間の間に5回以上血液検査を行ったが,原因は明らかとならなかった。 同年●月●日に,血栓除去手術を受けた。手術は下半身麻酔で行われたため,最初の5分,10分くらいは手術の様子を見ていたが,●医師から見ていると足に力が入るから寝ておくよう言われて目をつぶっていたら自然と寝ていた。手術は午後1時過ぎから3時間程度かかり,予定どおりの時間で終わった。 手術が終わって目を覚まして以降,前記血栓除去手術でどの程度の出血をしたのかについて,●医師や看護師から聞いていない。 手術が終わって1週間後に,●外科医院を退院した。 C型肝炎ウイルスに感染していることが判明したきっかけは,60歳になったということで受けた健康診断だが,自営業をしていることもあり,同健康診断以前に健康診断を受けたことはなかった。 エ ●医師の平成23年6月9日付け「連絡書」(甲ハ3の3)●医師の奥さんから,●外科医院においてフィブリノゲン製剤は常備されていなかったが,胃の手術の際等に使用していたと聞いた。 オ ●医師の平成25年9月3日付け回答(甲ハ3の11)昭和57年当時,●外科医院における医師数はおそらく1名だったと思う。看護師数,年間手術件数,血栓摘出術における処置方針,フィブリノゲン製剤の入手経緯,同製剤の投与方針及び投与頻度はいずれも分からない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告3番は昭和57年●月●日●外科医院 において左足の血栓除去手術を受けており,その際に出血をしていることが認められる。 イしかし,●外科医院において,昭和57年当時に特定フィブリノゲン製剤が使用されていたか,原告3番の前記 において左足の血栓除去手術を受けており,その際に出血をしていることが認められる。 イしかし,●外科医院において,昭和57年当時に特定フィブリノゲン製剤が使用されていたか,原告3番の前記手術の際に同製剤を使用する必要のある具体的状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,原告3番は,●医師の甥に当たる●医師が●医師の妻から聞いた話として,●外科医院において特定フィブリノゲン製剤は常備薬ではなかったが,胃の手術の際等に使用していた旨を述べるが,少なくとも原告3番の前記手術は胃の手術ではない上,前記の事実があったとしても●医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針が明らかとならない以上は,原告3番の前記手術の際に同製剤を使用する必要のある具体的状況にあったことを推認するには不十分である。また,原告3番は,前記手術の翌日に外されたガーゼには,縫合した針の跡以外に,血がにじんで赤くなった様子はなかったこと,●医師の「よっしゃ,きれいなもんやー,よし,よし。」との発言等から,特定フィブリノゲン製剤の投与を推認できる旨述べるが,これらによっても,原告3番に,具体的状況に照らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 ウ医学的知見として,血管に対する手術侵襲について,術中術後の出血に対して,特定フィブリノゲン製剤が使用され,血管や微小血管を吻合するに際してフィブリン糊が使用されることがあること(甲ア17),フィブリン糊の適用範囲として,微小血管の吻合,血管縫合の保全とされていること(甲ア20の1,2)が示されているが,これらによっても,原告3番に,具体的状況に照 らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには 管の吻合,血管縫合の保全とされていること(甲ア20の1,2)が示されているが,これらによっても,原告3番に,具体的状況に照 らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 3 結論以上によれば,原告3番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙亡原告5番関係 第1 当事者の主張(亡原告5番の主張) 1 亡原告5番は,平成7年●月,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。亡原告5番は,C型肝硬変,原発性胆汁性肝硬変にり患し,平成27年●月●日に死亡した。 2 亡原告5番は,昭和59年●月,医療法人●会●病院(以下「●病院」という。)において,くも膜下出血に対する手術を受けた。亡原告5番は,動脈瘤の処置のために金属製のクリップを使用しており,感電すると危険だから何かの検査ができないと医師から聞かされたことを記憶しているところ,このように手術で金属製のクリップを使用することは,前記手術でクリッピング術が行われたことを示しており,クリッピング術が行われたことは,脳動脈瘤の処置のために開頭手術が行われたことを意味しており,開頭手術においては大量の出血を伴った可能性がある。 3 ●病院には昭和58年に3本,昭和59年に142本の特定フィブリノゲン製剤が納入された。 4 亡原告5番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 C型肝炎ウイルス感染の事実,慢性C型肝炎が進行して,肝硬変にり患した事実 イルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 C型肝炎ウイルス感染の事実,慢性C型肝炎が進行して,肝硬変にり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 2 亡原告5番の陳述書には,特定フィブリノゲン製剤の投与に関する記載は全くなく,前記陳述書によっても,亡原告5番が当時,特定フィ ブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)慢性C型肝炎が進行して,肝硬変にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ5の1,4~6,8,9)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 亡原告5番は,昭和●年●月●日生まれの者である。 亡原告5番には2人のきょうだいがいる。 (2) 亡原告5番は,昭和44年●月●日,帝王切開により男児を出産した。その際の出血量は少量であった。 (3) 亡原告5番は,●病院において,遅くとも平成15年●月●日までに原発性胆汁性肝硬変,平成17年●月●日までに慢性C型肝炎と診断され,インターフェロンの投与等の治療を受け,平成23年●月●日,C型肝硬変,原発性胆汁性肝硬変と診断された。 亡原告5番は,平成27年●月●日に死亡した。 (4) ●病院には昭和58年に3本,昭和59年に142本(ただし,同年に13本を返品)の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,亡原告5番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供 和59年に142本(ただし,同年に13本を返品)の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,亡原告5番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 亡原告5番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア亡原告5番の陳述書(甲ハ5の1)亡原告5番の家族にC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 亡原告5番は,昭和59年,スイミングスクールで気分が悪くなり,嘔吐し,●病院を受診したところ,くも膜下出血と診断された。 医師からしばらく様子を見ましょうと言われ,同年●月,くも膜下出血の処置のための手術を3回受けた。前記手術に関し,動脈瘤の処置のために金属製のクリップを使用しており,感電すると危険だから何かの検査ができないと医師から聞かされたことを記憶している。 平成7年に血液検査を受け,C型肝炎ウイルスに感染していることが分かり,以来,●病院で肝炎治療を受けている。 前記手術以外に受けた手術は,昭和44年●月●日の帝王切開のみであり,C型肝炎ウイルスに感染した原因は●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 イ亡原告5番の夫及び子(原告5番の1)の陳述書(甲ハ5の2,3)亡原告5番は,昭和59年●月,●病院において,くも膜下出血に対する手術を受けた。 (2) 検討ア前記各陳述書に加え,亡原告5番に●歳のときのくも膜下出血の既往症がある旨,●病院のカルテ(甲ハ5の5)に記載されていることを併せ考慮すれば,亡原告5番が,昭和59年頃,●病院において,前記手術を受けたことを認めることができる。また,前記1(4)のとおり,●病院には昭和58年に3本,昭和59年に142本(ただ いることを併せ考慮すれば,亡原告5番が,昭和59年頃,●病院において,前記手術を受けたことを認めることができる。また,前記1(4)のとおり,●病院には昭和58年に3本,昭和59年に142本(ただし,同年に13本を返品)の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができる。 イしかし,前記各陳述書によっても,前記手術の具体的な内容や前記手術時の亡原告5番の状態に関する記載は,金属製のクリップを使 ったという以上になく,亡原告5番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,亡原告5番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告6番関係 第1 当事者の主張(原告6番の主張) 1 原告6番は,平成14年か平成15年頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告6番は,昭和41年,●病院において第二子(女児)を出産し,1500gの大量出血をした。 3 ●病院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関一覧に記載されている。 4 原告6番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告6番の第二子(女児)出産時における出血量は1500gと多量であるが,他に何らかの異常 あり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告6番の第二子(女児)出産時における出血量は1500gと多量であるが,他に何らかの異常があった様子はうかがわれず,DICが生じていたかは明らかでないから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告6番は,前記出産時に,●医師が「止血剤を使った」と述べた旨供述するが,具体的な薬剤名や容器の形状等は一切不明であり,●医師にかかる発言があったとしても,特定フィブリノゲン製剤投与の事実を何ら推認させるものではない。 原告6番は,第一子(女児)及び第二子(女児)の出産の際,それぞれ輸血を受けているほか,昭和50年頃に鍼治療も受けているところ,これらの機会にC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定できない。 (補助参加人の主張) 特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ6の1~7,原告6番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告6番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。原告6番には,2人のきょうだいがいる。 (2) 原告6番は,昭和41年●月●日午前7時30分に,●病院で,自然分娩により第二子(女児)を出産し,その際,1500gの出血をした。同出産では,胎盤用手剥離術が施された。 (3) 原告6番は,平成14~15年頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,平成23年●月●日までにインターフェロン治療を2回施行されたが完治せず,同日付けでC型肝炎と診断された。 (3) 原告6番は,平成14~15年頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,平成23年●月●日までにインターフェロン治療を2回施行されたが完治せず,同日付けでC型肝炎と診断された。 (4) 原告6番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告6番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告6番の平成25年6月26日付け陳述書(甲ハ6の1)原告6番は,昭和39年●月●日,●病院で第一子(女児)を出産し,その際,大量に出血して危険な状態となった。分娩を担当したのは,●医師であった。 原告6番は,●病院で第二子(女児)を出産した。主治医は●医師であった。第一子(女児)の出産の際に危険な状態になった経験から,少し不安になったが,●医師は「今度はちゃんと準備 してあるから大丈夫ですよ。」と言った。第二子(女児)の出産でも大量出血があり,その際,●医師から「大量出血なので輸血します。」と言われたこと,輸血以外の点滴をされたことをはっきりと覚えている。後に,夫から,●医師が「止血剤を使った」と説明したと聞いた。 平成14年か平成15年頃に,テレビで「輸血をしたことがある人は,一度C型肝炎の検査をしてもらった方がよい」と放送しているのを聞いて,●クリニックで検査をしたところ,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。感染判明後は,●病院で2回にわたってインターフェロンとリハビリンの併用療法を受けたが,完全には治らず,現在も慢性C型肝炎のため,3か月ごとに●病院で検査を続けている。 数年前に●病院に電話をしてみたが 院で2回にわたってインターフェロンとリハビリンの併用療法を受けたが,完全には治らず,現在も慢性C型肝炎のため,3か月ごとに●病院で検査を続けている。 数年前に●病院に電話をしてみたが,既に廃院となっており,●医師の現在の消息も分からない。以前に●病院に勤めていた事務員を探し当てて電話でカルテ等に関する話をしてみたが,「そんなことは全く分からない」と言われた。 原告6番の両親,きょうだいにC型肝炎ウイルスに感染している者はいない。 原告6番は,入れ墨もピアスもしていない。 イ原告6番の平成28年8月19日付け陳述書(甲ハ6の6)第一子(女児)及び第二子(女児)の各出産の際,大量出血をして,輸血を受けたことを覚えているが,輸血量は分からない。第一子(女児)の出産の際は,病院側で連れてきた見知らぬ男性の血液を輸血してもらった。第二子(女児)の出産の際は,保存血を輸血された。 ウ原告6番の平成30年10月23日付け陳述書(甲ハ6の7) ●医師は,個人で産婦人科医院を営んでいる医師だったため,分娩の際は,自分の医院から近くにある●病院に産婦を車で連れていっていた。原告6番も,●病院において,●医師の担当により出産をしたものである。 第一子(女児)及び第二子(女児)の各出産において,子宮に手を突っ込んで何かを出す処置をそれぞれされた記憶がある。第二子(女児)の母子手帳にある胎盤用手剥離術という記載のことと理解している。 エ原告6番の供述(本人尋問)第一子(女児)の出産の際は,●医師,看護師3人及び助産師がいた。出血をしたことを覚えており,生ぬるいものがどっと出たような感じだった。出血の前,子宮に手を突っ込まれ,何かを 本人尋問)第一子(女児)の出産の際は,●医師,看護師3人及び助産師がいた。出血をしたことを覚えており,生ぬるいものがどっと出たような感じだった。出血の前,子宮に手を突っ込まれ,何かを出しておかなければ後で大変になるから辛抱して等と言われた記憶がある。第一子(女児)の出産の際は,死ぬ寸前までいった感覚であった。輸血をされたが,量は分からない。 第二子(女児)の出産の際も,第一子(女児)の出産時と同様に,子宮に手を突っ込まれて何かをかき出された。その後,出血をしたことを覚えており,後に出血量を知った。出血を受けて,輸血及び点滴が順次始められた記憶がある。処置の間,意識ははっきりしていた。輸血の量や種類は聞いておらず,点滴の種類や容器は分からない。 第二子(女児)の出産後,入院中に,夫から,●医師が止血剤を使ったというように言っていた旨を聞いた。止血剤の名前は分からない。 原告6番の親族で,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。 原告6番は,人工透析の治療を受けたことはない。昭和50年頃に1度,鍼治療を受けたことがある。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告6番の第二子(女児)の出産において,胎盤用手剥離術が施されたこと及び1500gの出血があったことを認めることができる。 イしかし,●病院において昭和41年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告6番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,原告6番は,第二子(女児)の出産後に,夫から●医師が止血剤を使ったと説明した旨を聞いたと述べるが,他方で止血剤の 証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,原告6番は,第二子(女児)の出産後に,夫から●医師が止血剤を使ったと説明した旨を聞いたと述べるが,他方で止血剤の名前は聞いていないとも述べており,原告6番の供述だけでは,原告6番に具体的状況に照らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 ウ医学的知見として,胎盤用手剥離術がされたことに起因して大量出血を引き起こすことがあること,産科の現場で大量出血の処置として特定フィブリノゲン製剤が使用されることがあったことが示されているが,これらによっても,原告6番に具体的状況に照らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 3 結論以上によれば,原告6番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告7番関係 第1 当事者の主張(原告7番の主張) 1 原告7番は,平成10年●月●日,●病院での血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,肝硬変の治療を受けてきた。 2 原告7番は,昭和49年●月●日,●病院において第二子(男児)を出産し,1800mlの出血をした。 3 ●病院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関一覧に記載されている。 4 原告7番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原 番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告7番の第二子(男児)出産時における出血量は1800mlと多量であるが,その他に何らかの異常があった様子はうかがわれず,DICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められないから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告7番は,前記出産時に,医師か看護師が「止血剤を使った」と述べた旨主張するが,止血剤が使用されていたとしても,原告7番が当該止血剤が特定フィブリノゲン製剤である旨を聞いているわけでもない以上,特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認させるものではない。 原告7番は,●●医師(以下「●医師」という。)作成の証明書から, 特定フィブリノゲン製剤投与の事実が推認される旨主張するが,同証明書の記載によっても,昭和49年当時に●病院に特定フィブリノゲン製剤が存在したか,原告7番に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたかはいずれも不明であり,原告7番に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認させるものではない。 原告7番の供述を前提とすれば,同人は前記出産の際,輸血を受けているところ,当該輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定できない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ7の1,2,5,6,原告7番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ7の1,2,5,6,原告7番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告7番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。原告7番には2人のきょうだいがいる。 (2) 原告7番は,昭和49年●月●日午後7時50分に,●病院において,第二子(男児,4040gの巨大児)を鉗子分娩により出産し,1800mlの出血をした。●医師が分娩介助を担当した。 (3) 原告7番は,●病院において,平成24年●月●日付けで,C型慢性肝炎由来の非代償性肝硬変と診断され,現在も継続的に治療を受けている。 (4) ●病院は,昭和49年当時,産婦人科ほか12の診療科目を有し,ベッド数は992床,うち産婦人科のベッド数は不明,産婦人科における医師数は不明(病院全体の医師数は186人),産婦人科の看 護師数は不明(全体の看護師・准看護師数は258人),年間分娩件数は不明,新生児の一日平均収容数は13.4人であった。 (5) 原告7番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告7番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告7番の平成24年9月17日付け陳述書(甲ハ7の1)原告7番は,昭和49年●月●日,●病院で第二子(男児)を出産した。出産に際しては,破水及び陣痛開始後になかなか胎児が出てこず,医師5,6人が処置に当たってくれ,鉗子分娩でようやく胎児を娩出できた。 胎児の娩出後,胎盤がうまく剥がれず,医師が腕を入れて胎盤 際しては,破水及び陣痛開始後になかなか胎児が出てこず,医師5,6人が処置に当たってくれ,鉗子分娩でようやく胎児を娩出できた。 胎児の娩出後,胎盤がうまく剥がれず,医師が腕を入れて胎盤を剥がしてくれた。この際,1800mlの出血をした。 同日はその後にストレッチャーで病室に運ばれて数種類の点滴を受けた。2日間くらい継続して点滴を受けた記憶がある。 出産の翌日か翌々日頃,病室において,医師の一人から止血剤を使った旨言われた記憶がある。当時,具体的な薬剤名は分からなかったが,今考えるとフィブリノゲン製剤だったに違いないと思うようになった。 昭和50年●月頃,足の火傷により診療所を受診した際の血液検査で,肝臓の数値が非常に高く,入院を指示されたが,育児もあったため入院はせずに通院して点滴治療をした。また,昭和58年には,ひどい腹痛のため●病院で検査した結果,「非A非Bによる非活動性肝炎」「肝臓の3分の2が働いていない」と言われた。 その後,昭和60年に東京の病院で肝硬変と診断され,数年後に, ●病院でC型肝炎ウイルスによる肝硬変と言われた。 感染判明後は,肝硬変が進行しすぎているとのことでインターフェロン治療を受けられず,ミノファーゲンC等の点滴治療を継続している。 ●病院は,厚生労働省のフィブリノゲン製剤納入医療機関リストに載っているが,昭和55年以前のデータはないとのことだった。また,前記出産を担当した●医師に弁護士を通じて直接連絡し,証明書の形で回答を得た。 原告7番は,入れ墨や違法薬物の注射器での回し打ちはしていない。 イ原告7番の平成28年8月23日付け陳述書(甲ハ7の7)第二子(男児)は出産予定日に産まれた。医師が 原告7番は,入れ墨や違法薬物の注射器での回し打ちはしていない。 イ原告7番の平成28年8月23日付け陳述書(甲ハ7の7)第二子(男児)は出産予定日に産まれた。医師が子宮内に腕を入れて胎盤を剥がす処置をした後すぐに点滴を受け始めた記憶である。出産を終えてストレッチャーで病室に運ばれた際には,既に,右腕の肘が曲がる内側部分に点滴針が刺された状態であったことは確かである。点滴されていた薬剤の名前,形状及び大きさは分からないが,白く濁った液だったように思う。 病室に移動してすぐに,右腕の肘が曲がる内側部分から,静脈注射で輸血が始まった。輸血の量について特に説明はなく分からないが,大きい瓶(直径7,8センチメートル,高さ20センチメートル程度)で最低2本は輸血を受けたと思う。 輸血を受けながらしばらくの間は,腹部に重りのようなものを載せられ,下からの出血に対して綿花を当てていた。2,3日間は立ち上がれず寝たきりの状態が続き,通常よりかなり長い約1か月半入院していた。 昭和60年に肝硬変と診断された東京の病院の名称は,●診療 所である。同診療所に問い合わせをしたところ,原告7番の医療記録は何も残っていないと言われた。 ウ原告7番の夫の陳述書(甲ハ7の8)仕事の関係で,原告7番の第二子(男児)の出産には立ち会えなかった。●病院に到着後,医師か看護師から,胎児を鉗子で引っ張り出したこと,医師が手を入れて胎盤を剥がしたこと等を聞いた。他に詳しい処置内容等の説明を受けた記憶はない。 エ ●医師の証明書(甲ハ7の4)詳しくは覚えていないが,母子手帳に記載があるとおり,昭和49年●月●日に,自身が原告7番の分娩を担当したことは間違いな 明を受けた記憶はない。 エ ●医師の証明書(甲ハ7の4)詳しくは覚えていないが,母子手帳に記載があるとおり,昭和49年●月●日に,自身が原告7番の分娩を担当したことは間違いないと思う。母子手帳に記載のある1800mlという出血量は,かなり多いため,輸血や止血等の何らかの措置を行ったことが考えられるが,具体的な措置内容や,フィブリノゲン製剤を投与したかどうかについては,覚えていない。ただし,昭和49年当時に●病院にフィブリノゲン製剤が納入されていれば,原告7番に対し,止血のために同製剤を投与した可能性はある。 オ原告7番の供述(本人尋問)昭和49年●月●日の第二子(男児)の出産の際に,立ち会った医師は,●医師,●医師,●医師,●医師,●医師の他何名かであった。主治医は●医師であった。出産の際,原告7番の意識はずっとはっきりしていた。 出産後病室に運ばれる時点以降にされた点滴については,白く濁った液体が,ガラス瓶に入っていたと思う。点滴を何回交換されたのかは覚えていない。 出産時の出血量が1800mlになった原因,理由については説明を受けていない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告7番の第二子(男児)の出産において,1800mlの出血があったことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和49年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告7番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,原告7番は,第二子(男児)の出産後に,医師か看護師から止血剤を使ったと聞いた旨述べるが,他方で止血 ,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,原告7番は,第二子(男児)の出産後に,医師か看護師から止血剤を使ったと聞いた旨述べるが,他方で止血剤の名前は聞いていないとも述べており,止血剤が使用されていたとしても,それだけでは,具体的状況に照らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 ウ医学的知見として,胎盤用手剥離術がされたことに起因して大量出血を引き起こすことがあること(甲カの3),巨大児の分娩においては,産道損傷のほか,分娩時出血や弛緩出血をもたらすこともあること(甲カの6),産科の現場で大量出血の処置として特定フィブリノゲン製剤が使用されることがあったことが示されているが,これらによっても,原告7番に,具体的状況に照らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 3 結論以上によれば,原告7番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告8番関係 第1 当事者の主張 (原告8番の主張) 1 原告8番は,平成3年●月●日,●病院における血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告8番は,昭和43年●月●日に,●病院において第一子(女児)を出産し,同月●日に,子宮内に胎盤が残っていたことによる出血があった。 3 ●病院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関一覧に記載されている。 4 原告8番がC型肝炎ウイ 産し,同月●日に,子宮内に胎盤が残っていたことによる出血があった。 3 ●病院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関一覧に記載されている。 4 原告8番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告8番は,昭和43年●月●日に,出産後に子宮内に胎盤が残っていたことによる出血に対する処置として,特定フィブリノゲン製剤が投与された旨主張するが,具体的な出血量は不明であり,その他に何らかの異常があった様子はうかがわれず,DICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められないから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告8番は,前記処置後に,医師が止血剤を使った旨を述べたと主張するが,当該止血剤が特定フィブリノゲン製剤であると聞いたというものではなく,止血剤が使用されていたとしても,原告8番に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認させるものではない。 原告8番は,昭和43年●月●日及び昭和45年の第二子の出産の際,輸血を受けているところ,当該輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定できない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ8の1~6,8,原告8番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告8番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。原告8番には3人のきょ 提事実に証拠(甲ハ8の1~6,8,原告8番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告8番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。原告8番には3人のきょうだいがいる。 (2) 原告8番は,昭和43年●月●日午前4時20分,●病院において,第一子(女児)を出産した。出血量は少量で,●●医師(以下「●医師」という。)が分娩介助をした。 原告8番は,同月●日に退院をしたが,同月●日から昭和44年●月●日まで,再度,●病院に入院した。 (3) 原告8番は,平成3年●月●日,●病院における血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,現在,慢性C型肝炎にり患している。 (4) ●病院は,昭和43年当時,産婦人科ほか10の診療科目を有し,ベッド数は1399床,うち産婦人科のベッド数は不明,産婦人科における医師数は1名(●医師),産婦人科の助産師数は6名,年間分娩件数は不明である。 (5) 原告8番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入 実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告8番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告8番の平成24年2月14日付け(ただし,証拠説明書上の作成日は平成25年2月14日。)陳述書(甲ハ8の1)原告8番は,昭和43年●月●日,●病院に入院し,同月●日午前4時20分に第一子(女児)を出産した。産婦人科の●医師が担当であった。出産の際の出血量は少量で,後産も比較的順調だった。なお,出産予定日は同月●日だったが,胎児が出てこず,同月●日及び●日に陣痛促進剤の錠剤を飲んでも状況が変わらなかったため ●医師が担当であった。出産の際の出血量は少量で,後産も比較的順調だった。なお,出産予定日は同月●日だったが,胎児が出てこず,同月●日及び●日に陣痛促進剤の錠剤を飲んでも状況が変わらなかったため,同月●日に入院して,点滴で陣痛促進剤の投与を受けたものである。 出産を終え,同月●日に退院予定であったが,子宮内部の静脈が切れていることによる出血があるとのことで,縫合手術を受けたため,退院日は同月●日となった。退院後,同月●日午前に,●病院において,抜糸の処置を受けた。 同月●日夕方頃,自宅のトイレで,茶碗を伏せたような血の塊が落ち,その後水道の蛇口をひねったような大量の血が出てきた。 トイレから出た後も,股にあてがっていた綿花が血を含んで重くなるほどの出血が続いた。隣人に連絡等の手配を頼んで,タクシーで●病院に向かった。 ●病院では分娩室に運ばれ,分娩台の上に寝かされ,止血のために帯でウエスト部分を絞められ,綿花を何度も交換するという応急処置を受けた。膝に重石を載せられたような痛み,毛穴から空気が抜けているような感覚,手が血の気を失って硬直する感覚があった。年末ということもあり,●医師は不在であったため, 近くの別の病院から,代理の医師が来てくれた。同医師の名前は分からない。代理の医師は「おそらく縫った子宮内部の静脈の傷口から出血しているのだろう」とのことで,縫合と輸血の処置をしてくれ,出血は収まった。 原告8番は,そのまま●病院に入院することになり,一晩目は病室に移動せず分娩台で過ごし,翌日に病室に移動した。 同月●日,病室で再度の出血があった。再び来てくれた代理の医師からは「縫合したから出血はないはずなのに,どこから出血しているのか分からない。最悪の場合,子宮を し,翌日に病室に移動した。 同月●日,病室で再度の出血があった。再び来てくれた代理の医師からは「縫合したから出血はないはずなのに,どこから出血しているのか分からない。最悪の場合,子宮を取らなきゃいけないかもしれませんよ。覚悟してください。」と言われた。診察及び止血の処置を受けた後,状態は良くなった。具体的な処置の内容は覚えていないが,止血のために点滴を受けた記憶はある。点滴を受けた薬剤については分からない。代理の医師からは「胎盤が残っていたので,それによる出血でした。」,「輸血をしないで止血剤をしておきましたよ。血が止まって良かったですね。」と言われた。なお,子宮は摘出せずに済んだ。昭和44年●月●日,●病院を退院した。 前記出産後,慢性的に身体がだるい状態が続き,近所の●医院を受診していたところ,昭和63年,B型肝炎ウイルスに感染していたが,抗体ができているから大丈夫である旨を告げられた。 平成3年●月●日,当時の●病院(後に●病院,●病院に順次名称変更)で,痔と子宮筋腫の手術をする際の術前血液検査で,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。判明後は,当時の●病院,当時の●病院(後に●医療センターに名称変更)及び●病院で治療を受けた。また,平成20年には,同病院でインターフェロン治療も受けたが,結局効果はなかった。原告8番の C型肝炎ウイルスは1bタイプでウイルス量が多く,インターフェロン治療は効きにくいといわれており,完治の見込みはない。 平成20年●月,●病院にカルテが残っていないか問い合わせたが,当時のカルテは残っていないと言われた。また,田辺製薬にも,●病院へのフィブリノゲン製剤の納入実績がないか問い合わせたが,昭和55年以前のデータはないと言われた。 残っていないか問い合わせたが,当時のカルテは残っていないと言われた。また,田辺製薬にも,●病院へのフィブリノゲン製剤の納入実績がないか問い合わせたが,昭和55年以前のデータはないと言われた。 原告8番は,前記出産以降に,昭和45年と昭和48年にも出産している。昭和45年の第二子の出産(死産)は,前置胎盤で大量出血したが,出産した●病院は,厚生労働省が発表しているフィブリノゲン製剤納入先医療機関リストに挙がっておらず,昭和48年の出産は出血量も少なく,産後も特に問題がなかったから,これらの出産の際にC型肝炎ウイルスに感染したとは考えられない。 原告8番の親族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告8番は,入れ墨,違法薬物の注射器での回し打ちはしていない。 イ原告8番の平成28年8月22日付け陳述書(甲ハ8の9)原告8番は,昭和43年●月●日の出産の際,●病院に対し,「産科前納金」として2万5000円を支払った。また,同月●日の退院の際,●病院に対し,「入院料」「分娩介助料」「縫合(処置料)」等の合計3万3070円から,既払いの2万5000円を控除した8070円を支払った。なお,この際の領収書に「文書料」「2通」とあるのは,原告8番の夫の会社に提出する出産を証する文書のことである。 原告8番は,同月●日に,子宮内部の静脈の縫合箇所に係る抜糸の処置を受け,●病院に対し,処置料として150円を支払っ た。 原告8番は,同月●日に,自宅で大量出血したため再度●病院に通院し,同日分の費用として,再診料132円及び100円を支払った。この100円の詳細については分からない。また,同日に受けた輸血の量は分からず,これについて当時説明を受けたかどう め再度●病院に通院し,同日分の費用として,再診料132円及び100円を支払った。この100円の詳細については分からない。また,同日に受けた輸血の量は分からず,これについて当時説明を受けたかどうかも覚えていない。 同月●日に,病室で再度の出血があり,医師の診察及び止血の処置を受けた。医師の言葉からすると,胎盤をかき出して子宮内をきれいにする処置を受けたのだと思う。同処置に際しての止血の処置としては,左右どちらかの腕の内側に針を刺して点滴を受けたことを覚えている。これがフィブリノゲン製剤だったのではないかと思う。 昭和44年●月●日に退院した際,昭和43年●月●日からの「入院料」,「室料」,「投薬(料)」,「注射料」,「輸血(料)」等として,合計3万4897円を支払った。この内,「輸血(料)」は昭和43年●月●日に受けた輸血の料金である。「注射料」は●月分として3349円,昭和44年●月分として3110円が計上されている。 昭和43年●月●日に,●医師の代理として●病院に来た医師が「止血剤をしておきましたよ。」と言ったのは,フィブリノゲン製剤を投与したということで,その料金は●月分の注射料3349円に含まれていると思う。なお,当時,原告8番の夫の被用者保険の適用(家族として)により,原告8番の医療費の負担割合は,5割だったと記憶している。問題のない正常な出産の場合は保険が使えないが,前記出産は異常出産だから保険でカバーされていたのだと感じた記憶がある。厚生労働省によると,昭和43年●月当時のフ ィブリノゲン製剤の薬価は,「1g1瓶」で5562円だったとのことであり,前記検討に矛盾は生じていない。 昭和44年●月分の注射料には,昭和43年●月●日の止血の処置によって容態が比較的安定して以降に, ノゲン製剤の薬価は,「1g1瓶」で5562円だったとのことであり,前記検討に矛盾は生じていない。 昭和44年●月分の注射料には,昭和43年●月●日の止血の処置によって容態が比較的安定して以降に,リンゲル液を含めて数種類の薬の点滴がされた分が計上されているのだと思う。 ウ原告8番の供述(本人尋問)昭和43年●月●日の第一子(女児)の出産の際は,輸血や止血剤の処置はされていない。同月●日に,病室で再度の出血があり,医師の診察,出血の原因の説明及び止血の処置を受けた。止血剤の名前は聞いていない。 原告8番は,昭和45年に,●病院において,第二子の出産(死産)をしたところ,同病院は厚生労働省が発表しているフィブリノゲン製剤納入先医療機関リストに挙がっておらず,また,同病院の医師に連絡を取り,昭和45年当時に止血剤を使っていなかった旨の回答を得た。なお,第二子の出産の際,血液センターから取り寄せた血液の輸血を受けた。 原告8番は,昭和48年に,●病院において,第三子(男児)の出産をしたところ,同出産時は特に問題が生じなかった。 (2) 検討ア原告8番が,昭和43年●月●日に,病室で出血し,医師の診察,出血の原因の説明及び止血の処置を受けたとの事実に関し,診断書やカルテ等の証拠があるものではないが,前記1(2)のとおり,原告8番は,同月●日に第一子(女児)を出産し,同月●日に●病院を退院した後,同月●日から昭和44年●月●日まで,再度同病院に入院して投薬や注射治療が行われていたこと(甲ハ8の7)や,原告8番の陳述書や本人尋問で具体的状況が述べられ ていることから,そのような事実があったことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和43年当時,特定フィブリノ ,原告8番の陳述書や本人尋問で具体的状況が述べられ ていることから,そのような事実があったことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和43年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告8番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,原告8番は,昭和43年●月●日の前記処置後に,医師から止血剤を使ったと聞いた旨述べるが,他方で止血剤の名前は聞いていないとも述べており,止血剤が使用されていたとしても,それだけでは,原告8番に具体的状況に照らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 ウ医学的知見として,胎盤が子宮内に残されたままの状態では,その周囲で局所的に子宮の収縮が妨げられ,弛緩出血をもたらすこと(甲カの3),弛緩出血の場合,止血しようとする凝固因子が消耗してDICをもたらすことがあること(甲カの3)が示されているが,これらによっても,原告8番に,具体的状況に照らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 3 結論以上によれば,原告8番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告11番関係 第1 当事者の主張(原告11番の主張) 1 原告11番は,平成5年●月●日の血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告11番の現在の病態は,慢性C型肝炎である。 2 原告1 事者の主張(原告11番の主張) 1 原告11番は,平成5年●月●日の血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告11番の現在の病態は,慢性C型肝炎である。 2 原告11番は,昭和57年●月●日,●●病院(以下「●病院」という。)において,会陰切開を受けて第二子(男児)を出産した。その際の出血量は,母子手帳には中量と記載された。 3 ●病院には,前記出産がされた昭和57年には納入実績がないが,昭和55年に120本,昭和56年に115本の特定フィブリノゲン製剤が納入されている。 4 原告11番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 C型肝炎ウイルス感染の事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 2 原告11番の陳述書には,特定フィブリノゲン製剤を投与された旨の記載はなく,前記陳述書によっても,原告11番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 また,原告11番代理人作成の報告書は,母子手帳の記載から特定フィブリノゲン製剤を使ったかどうかを判断するのは困難である旨が記載されているものにすぎず,原告11番に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実を何ら推認させるものではない。 (補助参加人の主張) 原告11番が慢性肝炎にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ11の1~13)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告11番は,昭和 じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ11の1~13)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告11番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告11番には4人のきょうだいがいる。 (2) 原告11番は,昭和54年●月●日,●病院において男児を出産した。その際の出血量は少量(約150ml)であり,止血剤は使用されなかった。 (3) 原告11番は,昭和57年●月●日,●病院において,会陰切開を受けて第二子(男児)を出産した。その際の出血量は中量(約300ml)であった。 (4) 原告11番は,C型肝炎ウイルスに感染していると診断され,平成5年●月●日から●病院で治療を受けるようになった。原告11番は,平成13年●月●日から●病院でも治療を受けるようになり,慢性C型肝炎と診断され,インターフェロンの投与を受けるなどした。 (5) ●病院には,昭和57年の納入実績はないが,昭和55年に120本,昭和56年に115本の特定フィブリノゲン製剤が納入された。原告11番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告11番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告11番の陳述書(甲ハ11の1,10)原告11番の両親及びきょうだいは,C型肝炎ウイルスに感染していない。親戚にもC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告11番は,昭和57年●月●日,●病院において第二子(男児)を出産した。出産は無事に短時間で終わったが,「出血が多いので,もうしばらく分娩室で様子をみましょう」と言われ,点滴を打つことになった。出産後,1時間くらい分娩室で 日,●病院において第二子(男児)を出産した。出産は無事に短時間で終わったが,「出血が多いので,もうしばらく分娩室で様子をみましょう」と言われ,点滴を打つことになった。出産後,1時間くらい分娩室で寝ていた気がする。 平成5年●月●日,●病院の検査により,C型肝炎ウイルスに感染していることが分かった。平成5年●月●日から●病院,平成13年頃から●病院で治療を受け,平成18年から平成19年の間にインターフェロン治療を試みた。平成25年●月●日,同病院の主治医から,慢性C型肝炎にり患している証拠として,検査のデータを渡された。 男児を出産した●病院にはカルテが残っており,カルテを閲覧した。そのときの病院の説明では,カルテを見たところ,止血剤は使用していないとのことであった。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 イ原告11番代理人作成の報告書(甲ハ11の8)原告11番の第二子(男児)の出産時に主治医であった●●医師(以下「●医師」という。)と面談し,以下のとおり聴取した。 ●病院でフィブリノゲン製剤を使ったことがあり,出血多量のときが多かったと思う。 原告11番の母子手帳に「出血量中量 300ml」という記載があるのを見たが,300mlであれば出血多量とはいわない。 しかし,一時的にどんと多量の出血があり,フィブリノゲン製剤を使った結果,この出血量で収まったという可能性もあるので,前記記載からフィブリノゲン製剤を使ったかどうかを判断するのは困難である。 原告11番のことは覚えていない。 ウ ●医師作成の回答書(甲ハ11の11)フィブリノゲン製剤の投与方針に関し,特に出血量が何ml以上という 剤を使ったかどうかを判断するのは困難である。 原告11番のことは覚えていない。 ウ ●医師作成の回答書(甲ハ11の11)フィブリノゲン製剤の投与方針に関し,特に出血量が何ml以上ということは意識しておらず,特に病態がこういうときにフィブリノゲン製剤を使用するということでもなかった。他に止血剤としてアドナ及びトランサミンを使用しており,フィブリノゲン製剤との間で特に使用順序は決めていなかった。●病院(産婦人科)において,どのような場合にフィブリノゲン製剤を投与するかは個々の医師の判断であり,昭和57年当時の投与頻度は記憶がなく,分からない。 (2) 検討ア前記1(3)及び(5)のとおり,原告11番は,昭和57年●月●日,●病院において,会陰切開を受けて第二子(男児)を出産したこと,その前年である昭和56年,●病院に115本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができる。 イしかし,原告11番の陳述書には,第二子(男児)の出産後,「出血が多いので,もうしばらく分娩室で様子をみましょう」と言われ,点滴を打つことになったと記載されているものの,前記1(3)のとおり,出血量は約300mlにとどまっている。また,前記報告書及び前記回答書は,●医師が原告11番のことを覚えておらず,母子手帳によっても特定フィブリノゲン製剤を使用したか不明である旨等を記載したものにすぎず,原告11番に対する治療の際に 特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告11番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできない 証拠はない。 3 結論以上によれば,原告11番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告12番関係 第1 当事者の主張(原告12番の主張) 1 原告12番は,遅くとも平成11年までに,医療法人●会●診療所(以下「●診療所」という。)においてC型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告12番は,慢性C型肝炎の診断を受け,現在も通院加療中である。 2 原告12番は,昭和54年●月●日,自転車に乗っていたところ,車に跳ねられるという交通事故により,右大腿骨頚部骨折,右大転子部骨嚢腫,右下顎骨折,右橈骨骨折及び右上顎骨骨折の各傷害を負った。 原告12番は,●病院に搬送され,同月●日に右大腿骨嚢腫掻爬及び骨移植並びに右大腿骨頚部骨折観血的整復術の,同月●日に右上下顎骨骨折整復術の,昭和55年●月●日に右頬骨移植骨除去術及び右顎関節援動術の,同年●月●日に右大腿骨人工骨頭置換術の各手術をそれぞれ受けた。 前記各手術(特に1回目の足の手術)の際,原告12番には大量出血があったと考えられる。 3 ●病院には,昭和55年以降,毎年コンスタントに特定フィブリノゲン製剤が納入されており,前記各手術の際,同病院に特定フィブリノゲン製剤が存在した可能性が高い。 4 原告12番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 2 原告12番の陳述 ン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 2 原告12番の陳述書には,特定フィブリノゲン製剤を投与された旨の記載はなく,前記陳述書によっても,原告12番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 また,●●医師(以下「●医師」という。)作成の証明書は,特定フィブリノゲン製剤投与の可能性がある旨を明らかにするものにすぎず,原告12番に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実を何ら推認させるものではない。 (補助参加人の主張)原告12番が慢性肝炎にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ12の1~8)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告12番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告12番にはきょうだいがいる。 (2) 原告12番は,昭和54年●月●日,自転車に乗っていたところ,自動車に跳ねられる交通事故により,右大腿骨頚部骨折,右大転子部骨嚢腫,右下顎骨折,右橈骨骨折及び右上顎骨骨折の各傷害を負った。 原告12番は,●病院に搬送され,①同月●日に右大腿骨嚢腫掻爬及び骨移植並びに右大腿骨頚部骨折観血的整復術の,②同月●日に右上下顎骨骨折整復術の,③昭和55年●月●日に右頬骨移植骨除去術及び右顎関節援動術の,④同年●月●日に右大腿骨人工骨頭置換術の各手術をそれぞれ受けた。 (3) 原告12番は,平成11年●月●日から●診療所に通院し,遅くとも平成23年●月●日までに慢性C型肝 術及び右顎関節援動術の,④同年●月●日に右大腿骨人工骨頭置換術の各手術をそれぞれ受けた。 (3) 原告12番は,平成11年●月●日から●診療所に通院し,遅くとも平成23年●月●日までに慢性C型肝炎と診断された。 (4) 昭和55年,●病院に13本(8月に6本,12月に7本)の特定フィブリノゲン製剤が納入された。原告12番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告12番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告12番の陳述書(甲ハ12の1,12)原告12番の家族で,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。 原告12番は,昭和54年●月●日,自転車に乗っていたところ,車に跳ねられるという交通事故に遭い,●病院に搬送された。 原告12番は,同月,同病院において足及び顔の手術を受けた。 手術後,看護師から,「手術台の下に敷いていた新聞紙が血で染まるくらい,大量に出血したんですよ」と言われたことを記憶している。また,手術後,4日間ほど休みなく点滴をしたままであったことも覚えている。 その後,同じ●月の別の日に,右側の顎の手術を受けた。この手術も歯を3,4本抜いて行った大きな手術で,相当の出血があったように思う。さらに,昭和55年●月に右頬の手術,同年●月に足の手術を受けた。4回の手術は,いずれも全身麻酔をした上で行われており,手術中,どのような治療がされたかは全く分からない。 輸血が行われたかどうか,輸血が行われていた場合の輸血量は不明である。 ●診療所には約30年間通い続けており,詳しくは覚えていないが,C型肝炎ウイルスに感染していることが分かり,慢性C型肝炎と言われ,通院して点滴治療を受けている。 C 不明である。 ●診療所には約30年間通い続けており,詳しくは覚えていないが,C型肝炎ウイルスに感染していることが分かり,慢性C型肝炎と言われ,通院して点滴治療を受けている。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 イ ●医師作成の証明書(甲ハ12の8)診断書を見る限り,原告12番に対し,合計4回の前記各手術をしたことは間違いないと思う。 ●病院の整形外科に昭和54年●月●日に赴任したばかりであったため,同月●日の大腿骨の手術には関与していなかったと思うが,昭和55年●月●日の大腿骨の手術については,助手として関与したように記憶している。なお,顎や頬等の顔面の手術については,耳鼻咽喉科の医師が担当しており,関知していない。 右大腿骨人工骨頭置換術で輸血が必要なほど出血することは少なかったように思う。 原告12番が供述するとおり,大量出血があったとすれば,昭和54年●月●日の大腿骨の手術の際にフィブリノゲン製剤を使用した可能性は否定できない。昭和54~55年当時の●病院の整形外科において,手術中に大量出血が起こった場合の措置は全血輸血が主であったが,フィブリノゲン製剤が納入されていれば,輸血の措置とともに,止血のためにフィブリノゲン製剤を使用したこともあったと思う。 (2) 検討ア前記1(2)及び(4)のとおり,原告12番は,昭和54年●月●日,自転車に乗っていたところ,自動車に跳ねられる交通事故により負傷し,●病院において,同月●日,同月●日,昭和55年●月●日及び同年●月●日に合計4回の前記各手術を受けたこと,昭和55年,●病院に13本(8月に6本,12月に7本)の特定フィブリノゲン製剤が納入さ ,●病院において,同月●日,同月●日,昭和55年●月●日及び同年●月●日に合計4回の前記各手術を受けたこと,昭和55年,●病院に13本(8月に6本,12月に7本)の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和55年7月以前に特定フィブリノゲン製剤が使われていたことを認めるに足りる証拠はない。また,前記陳述書には,昭和54年●月に足及び顔の手術を受けた後,看護師から,大量に出血したと聞かされたと記載されているにとどまり,前記証明書についても,原告12番の供述する大量出血があったとすれば,特定フィブリノゲン製剤を使用した抽象的な可能性がある旨を記載したものにすぎず,原告12番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告12番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告13番関係 第1 当事者の主張(原告13番の主張) 1 原告13番は,平成12年頃,●病院において,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告13番は,昭和58年●月●日,鼻出血,吐血,下血などの大量出血により救急搬送され,搬送先の●●病院(以下「●病院」という。)においても出血症状が継続したことから,搬送直後から退院までの間,輸血(全血輸血,血小板輸血,赤血球輸血及び新鮮凍結血漿)や点滴による止血措置を受けた。原告13 の●●病院(以下「●病院」という。)においても出血症状が継続したことから,搬送直後から退院までの間,輸血(全血輸血,血小板輸血,赤血球輸血及び新鮮凍結血漿)や点滴による止血措置を受けた。原告13番は,同月●日頃,再生不良性貧血と診断された。 3 原告13番の両親は,担当医の●●医師(以下「●医師」という。)から,出血の原因は不明であるが,白血病と同じ症状であり血液関係の病気と思われること,骨髄穿刺という検査の結果が出るまでは止血剤を投与する旨の説明を受けた。 ●医師は,DICが疑われるなど止血効果を得たい場合に特定フィブリノゲン製剤を投与する方針を有していた。そして,原告13番が出血傾向を示していた要因は,血小板減少だけでなく血液凝固障害も考えられる状況にあったのであるから,●医師が,血小板輸血を行っても出血傾向が改善しない原告13番に対して,血液凝固障害の出血傾向に対して止血効果がある特定フィブリノゲン製剤を投与した高度の蓋然性がある。 さらに,原告13番に対して,退院時まで毎日相当量の凝固因子系の薬剤であるトロンビンが処方され,前記止血措置において血液凝固 因子の補充に用いられる薬剤である新鮮凍結血漿が使用されており,このことは,血液凝固障害の出血傾向に対する処置が行われたことを示しているから,トロンビンや新鮮凍結血漿に併せて特定フィブリノゲン製剤が投与された高度の蓋然性がある。 4 ●病院には,昭和58年1月に62本,同年2月に72本の特定フィブリノゲン製剤が納入されている。 5 原告13番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実及び同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は 染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実及び同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。 原告13番のC型肝炎ウイルス感染の事実及び慢性C型肝炎にり患した事実は認める。 2 原告13番の供述及び●医師の証言によっても,前記止血措置当時,原告13番がDICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められないから,特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあったと認めることはできず,原告13番に対する特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 3 ●医師の証言によって推認可能な範囲は,あくまで再生不良性貧血に対して特定フィブリノゲン製剤を投与する可能性は低いものの,トロンビンの記載があることから,特定フィブリノゲン製剤の投与可能性も否定できないというレベルにとどまるものであり,●医師の証言によって特定フィブリノゲン製剤の投与事実は認定できない。 また,医学的にみると,トロンビンを投与したことは,血液凝固障害の出血傾向に対する処置の目的ではなく血小板を活性化させる目的によるものである可能性が高い。 4 原告13番は,前記止血措置の際及びその後も約3年間にわたって再生不良性貧血の治療として多数回の輸血を受けているところ,輸血の回数に照らせば,輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した蓋然性が極めて高い。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実及び同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ13の1~8,10,11,12の1~3,証人●●,原告13番本人)及び の間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ13の1~8,10,11,12の1~3,証人●●,原告13番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告13番は,昭和●年●月●日生まれの男性であり,きょうだいはいない。 原告13番の父からは,C型肝炎ウイルスは検出されていない。 (2) 原告13番は,昭和58年●月●日から同月●日にかけて,自宅において鼻出血,発熱等を発症したことから,同月●日,自宅近くの個人病院である●病院で外来診察を受け,同月●日未明,●病院の内科に救急搬送されて緊急入院し,同病院に昭和56年から昭和59年まで勤務していた●医師が主治医になった。 (3) 原告13番は,●病院への入院直後の時期において,輸血の措置を受けるためにA型の血液が大量に必要となり,原告13番の父と●センターから供給された血液により全血輸血を受けた後,●センターから供給された血小板輸血を受けた(その他の点滴の有無及び内容については,項を改めて判断する。)。 原告13番は,骨髄穿刺とともに行った骨髄生検により,入院の 1週間後に再生不良性貧血の診断を受け,輸血や点滴の治療が継続的に行われた。また,入院中,血液検査により非A非B型肝炎の診断を受け,点滴治療が行われた。 原告13番は,昭和58年●月●日,●病院を退院して●病院に転院し,その際,●医師は,プレドニン,トロンビン,アドナ,トランサシン,タガメット,マーロックス及びアルドイドを処方した。その後,原告13番は,昭和61年頃まで,点滴,輸血の治療を受け,これにより,再生不良性貧血の症状は落ち着き,以後は,定期的な通院治療を受けるにとどまっていた。 (4 ス及びアルドイドを処方した。その後,原告13番は,昭和61年頃まで,点滴,輸血の治療を受け,これにより,再生不良性貧血の症状は落ち着き,以後は,定期的な通院治療を受けるにとどまっていた。 (4) 原告13番の母は,現在,認知症のため,前記(2),(3)の経緯について供述することができない状態にある。 (5) 原告13番は,平成12年頃,定期的に通院していた●病院において行われた検査により,C型肝炎ウイルスに感染していると診断された。 原告13番は,平成22年●月●日から●病院で通院治療を開始し,平成23年●月●日から同月●日及び同年●月●日から同月●日まで入院し,その後,平成25年●月●日まで通院を続けてインターフェロン投与等の治療を受け,平成23年●月●日以降の検査においてはC型肝炎ウイルスが検出されなくなった。 (6) 昭和58年当時,●病院には内科を含む11の診療科があり,ベッド数は491床(伝染病棟44床を含む。),内科における医師は15名,看護師は9名だった。●病院内科においては,当時,特定フィブリノゲン製剤を常備しており,主にDICを発症した場合に特定フィブリノゲン製剤を使用する方針を有しており,●医師においても使用の経験があった。 (7) ●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入は,昭和58年 1月に62本,同年2月に72本,同年3月はなし,同年4月に8本の返品,同年5月はなし,年間236本という状況だった。 2 関係者の供述等の要旨(1) 原告13番の陳述書(甲ハ13の1)原告13番は,昭和58年●月●日頃,自宅で鼻から出血し,高熱を出した。原告13番は,自宅近くの個人病院である●病院で診察を受けたが,出血の原因が分からず手に負えないということで,●病院に救急搬送され,緊急入院となっ 8年●月●日頃,自宅で鼻から出血し,高熱を出した。原告13番は,自宅近くの個人病院である●病院で診察を受けたが,出血の原因が分からず手に負えないということで,●病院に救急搬送され,緊急入院となった。 ●病院への入院直後に輸血を受けた際,同時に何種類かの点滴を24時間体制で受け,そのうちの一つとして解熱目的による抗生物質の点滴を行っていることの説明を受けた。点滴の容器は全て瓶で,大きさは様々だった。輸液関係の瓶は,手のひらよりやや大きめで,抗生物質の点滴は,輸液の瓶よりも小さな,縦10cmほどの瓶に入っていた。薬剤の名称は覚えていない。 原告13番の母は,入院期間中ずっと付き添い,点滴された薬の名前を看護師から聞き,医師,看護師,見舞い等に来た者の名前や見舞品などをノートに記載していた。原告13番は,平成20年頃,原告13番の母から,原告13番の母は,原告13番の入院当時に看護師からフィブリノゲンとの説明を受け,その際にノートにフィブリノゲンと書いた覚えがあること,●医師から「息子さんは白血病と同じ症状です。血液関係の病気だと思われます。骨髄穿刺という検査をします。検査結果が出るまでは止血剤を使います。」という内容の説明を受けたことを聞いた。 原告13番は,昭和58年●月●日頃,骨髄穿刺の検査の結果により,再生不良性貧血にり患していることが判明した。 原告13番の親族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいな い。原告13番は,入れ墨や違法薬物の注射器での回し打ち等をしたことはない。 (2) 原告13番の供述(本人尋問)昭和58年●月●日に鼻出血が生じて止まらない状態にあったが,その日は学業のために病院に行かず,同月●日朝方,吐血と下血があり,●病院で診察を受けた後,同月●日までの間に●病院に救急搬送された 昭和58年●月●日に鼻出血が生じて止まらない状態にあったが,その日は学業のために病院に行かず,同月●日朝方,吐血と下血があり,●病院で診察を受けた後,同月●日までの間に●病院に救急搬送された。搬送後も出血が止まらなかったため,点滴を受け,●医師が,「とにかく血を止めなあかん。」と言っているのを聞いた。その翌日から全血輸血と血小板輸血を受け,さらに,赤血球輸血と新鮮凍結血漿の輸血を受けた。輸血の措置は退院まで続いた。出血は自然に落ち着いて量が減っていった。 輸血以外に点滴の措置も受けたところ,看護師から聞いた内容は,ステロイド剤,輸液,抗生物質及びビタミン剤であり,その他に2,3種類あったと思うが記憶がない。この2,3種類の点滴は,透明か少し白く濁った感じの色であったことを何となく覚えており,出血が続いていたため,止血のための点滴と認識している。 フィブリノゲンないしフィブリノゲン製剤という言葉を聞いたかどうかについては,聞いたかもしれないが,記憶がない。 原告13番の母は,几帳面な性格で,●医師や看護師から聞いた説明,その日に投与された薬や点滴の名前,その日の看護師の名前,輸血や見舞いのために来てくれた人の名前,体温,便の色や量などをノートに記載し,何度か見せてもらったことがある。最後に見たのは●病院に入院していたときである。ノートの内容は覚えておらず,ノートは,原告13番の再生不良性貧血が落ち着いてきたときに原告13番の母が処分している。 原告13番の母は,平成22年頃認知症になり,当時の話を聞く ことはできないが,平成19年か平成20年に薬害肝炎のニュースが流れていた際,原告13番の母が「この薬,あんたもやってたで。」,「私のつけてたノート,覚えてるやろ。」,「そこにちゃんと書いてたんやで。」と述べ,見せ 平成19年か平成20年に薬害肝炎のニュースが流れていた際,原告13番の母が「この薬,あんたもやってたで。」,「私のつけてたノート,覚えてるやろ。」,「そこにちゃんと書いてたんやで。」と述べ,見せて欲しいといったが,既に処分していたことを聞いた。 (3) ●医師の原告代理人からの照会に対する平成23年5月24日付けの回答(甲ハ13の5)原告13番が重度の再生不良性貧血だったことはよく覚えているが,フィブリノゲン製剤投与の有無に関する記憶はない。通常,再生不良性貧血の血小板減少に対してはフィブリノゲン製剤は効果がないから,使用した可能性は低いと考えているが,使用した可能性を否定するものではない。血小板減少が著しかったために相当量の血小板輸血をしたことはよく覚えており,したがって,原告13番のC型肝炎は,フィブリノゲン製剤による可能性は低く,血小板輸血によるものではないかと当時考えていた。 (4) ●医師の陳述書(甲ハ13の10)内科でフィブリノゲン製剤を使うとすれば,DICを発症した場合が考えられる。検査所見上,血小板と凝固因子(特にフィブリノゲン)の消費による低下又は急激な減少がみられる。DICに対する補充療法(不足している体内物質を補う療法)としては,血小板や新鮮凍結血漿の補充を行う方法や,フィブリノゲン製剤の投与が考えられる。 昭和58年当時,●医師においても,必要があると判断すれば,フィブリノゲン製剤を使ったと思うが,特別な薬であるという意識は全くなく,特定の患者に使ったかどうかは覚えていない。 原告13番にフィブリノゲン製剤を使用したかどうかについて は,記録も記憶もなく答えることはできないが,使っていないとは言い切れない。 高熱や出血傾向(主に吐血,下血)が続いていたことからは,何らかの感染症 ン製剤を使用したかどうかについて は,記録も記憶もなく答えることはできないが,使っていないとは言い切れない。 高熱や出血傾向(主に吐血,下血)が続いていたことからは,何らかの感染症になっていた可能性も否定できず,むしろ,各検査との関係や当時の状況から考えると,①救急搬送されてきた当日,吐血,下血の症状で大量に出血し,出血を止めて生命を維持するため,あらゆる可能性を考えて,当時止血効果が得られると考えられる薬を投与し,その中にフィブリノゲン製剤が含まれていた可能性,②再生不良性貧血の確定診断が出るまでの間(骨髄生検の検査結果が出るまでの約1週間),DICを恐れてフィブリノゲン製剤を使った可能性,③確定診断が出た後も重い症状が続いた退院するまでの間,生命を守るために講じたあらゆる手段の一つとして,普通の薬との感覚でフィブリノゲン製剤を使った,という可能性が考えられる。 (5) ●医師の供述(証人尋問)●医師は,フィブリノゲン製剤は凝固因子の一つであり,止血の効果があると認識しており,●病院においては,自らの判断でフィブリノゲン製剤を使ったことがあるが,せいぜい数回であり,原因不明の出血傾向でDICが疑われる患者に対する止血目的によるものと,尿出血(膀胱からの出血)があった患者については覚えている。他の再生不良性貧血の患者に対する治療を行ったこともあるが,出血傾向がそれほど強かったという記憶はなく,フィブリノゲン製剤を使ったかどうかも記憶がない。 フィブリノゲン製剤を使うときは,看護師に注文し,カルテには必ず記載していた。フィブリノゲン製剤投与までの手順は分からないが,点滴のような瓶に入っている粉に水を加えると思う。投与は 看護師が点滴により行っていた。●医師が点滴を行うこともあったが,非常に少なか 。フィブリノゲン製剤投与までの手順は分からないが,点滴のような瓶に入っている粉に水を加えると思う。投与は 看護師が点滴により行っていた。●医師が点滴を行うこともあったが,非常に少なかった。昭和58年に●病院のフィブリノゲン製剤の納入実績が多かった理由について思い当たるところはない。 ●医師は,●病院に勤務時,DICに対する治療としては,フィブリノゲン製剤,新鮮凍結血漿,血小板といった止血を促すようなものを加えながら,薬剤の投与を行っていた。DICを発症した患者に対し,必ずフィブリノゲン製剤を投与したかどうかまでは言えない。内科では,悪性腫瘍と重篤な感染症のときにDICを引き起こすことがある。再生不良性貧血が直接DICの原因になることはないはずであるが,感染症を起こしてそれによりDICを引き起こす可能性は否定できない。 ●医師が「とにかく血を止めなあかん。」と言った可能性は,吐血,下血があったことから,十分あり得ると思う。原告13番は,入院時に,鼻出血があったほか,口の中の粘膜(扁桃)の出血が長く続いていた。血病を疑わせる状態にあり,年齢的にも可能性が高いと考えていた。 現在残っている記録(甲ハ13の6)をみると,赤血球数が正常の半分以下であり,再生不良性貧血による造血不全の状態であって,それにより,血小板や白血球の数も減るから,血小板が減ったことが出血につながっていると考えられる。また,同記録中には,昭和58年●月●日から発熱があったことを意味する記載があり,おそらく感染症を起こしたと思う。発熱が入院中も続いていたかどうかは余り記憶がない。白血球の数が非常に少なくなっており,非常に感染症を引き起こしやすい状態にあるから,感染症の可能性は十分にあるが,退院サマリーに書いておらず,記憶としてはそれほど激烈な感染症 うかは余り記憶がない。白血球の数が非常に少なくなっており,非常に感染症を引き起こしやすい状態にあるから,感染症の可能性は十分にあるが,退院サマリーに書いておらず,記憶としてはそれほど激烈な感染症はなかったと思う。原告13番がDICを発症して いたという記憶はなく,もし発症していれば,非常に治療がしにくいことなどから,退院時サマリーに記載していたはずである。 再生不良性貧血は,造血幹細胞の異常であるため,本当の意味での治療法はなく,効く可能性があるという薬剤をいくつか投与した記憶はあり,対症療法としての赤血球,血小板の輸血は行った。全血輸血と新鮮凍結血漿を使った記憶はないが,使っていても不思議ではない。 原告13番に対して,入院当初に,吐血,下血を止めるためにフィブリノゲン製剤を使った可能性はなくはない。再生不良性貧血の治療,対症療法として,教科書的には凝固因子を入れることはないが,最初の段階では凝固因子,具体的にはフィブリノゲン製剤を入れたり,新鮮凍結血漿を入れたりしていた可能性はある。フィブリノゲン製剤を使っていたとすれば,早い段階で使い,消化管出血が止まった時点ではやめていたと思う。退院時に処方することはあり得ない。原告13番が入院した際の最初の段階では,外来で別の医師が診ていたと思うが,その段階でフィブリノゲンを投与するほどの急ぎではなかったと推察できる。 退院時に処方したトロンビンは,止血剤であり,主に消化管出血に使うことが多く,再生不良性貧血とは関係しない。退院時にトロンビンを結構多く出していることからすれば,フィブリノゲン製剤を使った可能性が否定できない。陳述書において,投与した可能性を三つ挙げたのは,使っているのであればどういう可能性があるかということである。 原告13番については,入院中に肝機 フィブリノゲン製剤を使った可能性が否定できない。陳述書において,投与した可能性を三つ挙げたのは,使っているのであればどういう可能性があるかということである。 原告13番については,入院中に肝機能に異常を来し,非A非B型肝炎であって,輸血のうち特に血小板輸血が原因の可能性もあると思っていた。 3 検討(1) 前記1(2),(3)及び(7)のとおり,原告13番が,昭和58年●月●日,●病院に緊急入院し,同年●月●日に退院するまでの間に輸血や点滴の処置を受けた事実,●病院に昭和58年1月に62本,同年2月に72本の特定フィブリノゲン製剤が納入された事実を認めることができる。 (2) ●医師は,再生不良性貧血の治療そのものを目的として特定フィブリノゲン製剤を使うことはないと供述している。 ●医師は,他方で,出血を止めるためにできることとして特定フィブリノゲン製剤を使う可能性は否定できないとも供述しており,この点につき,原告13番が●病院に入院した際に,●医師が「とにかく血を止めなあかん。」という止血の必要性があったことを示すことを述べ,原告13番が再生不良性貧血の病態にあり,血小板の不足によって自然に止血することが困難な状況にあったと考えられることからすれば,特定フィブリノゲン製剤を使う可能性のある状況であったこと自体は否定できない。このことは,●医師の陳述書の記載にも沿うものである。 しかし,その趣旨は,仮に特定フィブリノゲン製剤を使っていたとすればどういう可能性があるかという趣旨の記載にすぎず,そのような可能性が高かったという趣旨に解することは困難である。 そして,他に,止血のために特定フィブリノゲン製剤を使用した可能性が高いことをうかがわせる事情はない。 また,●医師の供述によれば,DICを発症していれ かったという趣旨に解することは困難である。 そして,他に,止血のために特定フィブリノゲン製剤を使用した可能性が高いことをうかがわせる事情はない。 また,●医師の供述によれば,DICを発症していれば,●病院において常備していた特定フィブリノゲン製剤を使用した可能性が比較的高くなるということができるが,再生不良性貧血により重篤な感染症になり,これによりDICを発症するという抽象的な可能 性はあるとしても,そのことを基礎付ける証拠はなく,かえって,●医師は,重篤なDICを発症していれば,退院時サマリーに記載しているはずであると供述しているところ,退院時サマリーにそのような記載がないことに照らせば,原告13番が当時DICを発症していたことをうかがわせる証拠はないといわざるを得ない。 さらに,●医師は,血小板輸血によるC型ウイルス感染の可能性があると考えていたと述べていることに照らせば,特定フィブリノゲン製剤の投与以外に有力な原因があるということもできる。 (3) 原告13番は,原告13番の母から,原告13番に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを聞いたと供述する。 この点につき,原告13番の母がメモを取っていたというノートは処分されたという説明により証拠提出されておらず,原告13番の母は認知症であり本件訴訟において供述することができないという状況にあるため,原告13番の供述を採用できるか否かが問題となる。 まず,原告13番が平成19年~20年に原告13番の母から特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを聞いたという供述それ自体は,特に不自然なものであるとはいえず,その後平成23年に本件訴訟を提起していることからすれば,時期的にも不自然とはいえない。 しかし,原告13番の母から聞いたという際の状況は,原告13番 自体は,特に不自然なものであるとはいえず,その後平成23年に本件訴訟を提起していることからすれば,時期的にも不自然とはいえない。 しかし,原告13番の母から聞いたという際の状況は,原告13番がC型肝炎ウイルス感染の診断を受け,治療の完了していなかった平成19~20年にC型肝炎のテレビ報道を見て,その際に出てきたフィブリノゲンという言葉に反応した原告13番の母から聞いたというのであり,原告13番の母の記憶は,関心のある事柄について,報道に引きずられたものである可能性が否定できない。 また,原告13番の母は,原告13番の再生不良性貧血の治療に関し,ノートに細かく記載していたとのことであるが,当該ノートは,原告13番の再生不良性貧血が落ち着いて社会復帰ができたときに捨てたというところ,原告13番の再生不良性貧血が落ち着いたのは昭和61年頃であるというのであるから,この頃に捨てたというのであれば,ノートを捨ててからC型肝炎のテレビ報道に接するまでに20年以上が経過していること,特定フィブリノゲン製剤が再生不良性貧血の治療に用いられる代表的な薬というわけではないこと,原告13番の母のノートは入院治療中の事柄について詳しい記載があったというのであり,そうであればフィブリノゲンの記載はそのうちの一つにすぎないと考えられることからすると,フィブリノゲンという言葉を長期にわたり記憶していたことがもっともであるといえるような事情があるとは解し難い。 4 結論以上によれば,原告13番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙亡原告14番関 推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙亡原告14番関係 第1 当事者の主張(亡原告14番の主張) 1 亡原告14番は,昭和57年,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,症状は,慢性C型肝炎から肝硬変,肝細胞がんへと進行した。亡原告14番は,平成24年●月●日,肝細胞がんにより死亡した。 2 亡原告14番は,昭和43年●月頃,●病院耳鼻咽喉科で副鼻腔炎の手術を左右両方行った。しかし,退院後に呼吸困難となり,再度,前記耳鼻咽喉科を受診したところ,鼻中隔彎曲症と診断され,軟骨を削る手術を行った。翌朝,起きると枕が真っ赤になるほど出血していた。 主治医の●●医師(以下「●医師」という。)の指示で,至急,止血のための点滴を行った。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 亡原告14番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告14番の1の陳述書等によっても,前記手術時や前記手術後の亡原告14番の具体的な病態や,当該病態に対する具体的な治療内容は不明であり,亡原告14番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)亡原告14番が肝がんにり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製 剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実 は認め,特定フィブリノゲン製 剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ14の1~5,8の1,2,甲ハ14の10~12)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 亡原告14番は,昭和●年●月●日生まれの者である。 亡原告14番には1人のきょうだいがいる。 (2) 亡原告14番は,昭和43年●~●月頃,●病院において副鼻腔炎及び鼻中隔彎曲症に対する手術を受けた。 (3) 亡原告14番は,●病院において,遅くとも平成11年●月●日にC型肝炎,平成14年●月●日に肝硬変と診断され,平成17年●月●日,肝細胞がんの告知を受けた。平成24年●月●日時点において,肝細胞がんのコントロールは困難な状態となり,亡原告14番は,同年●月●日,死亡した。 (4) ●病院は,弁護士会照会に対し,製薬会社の納入記録によれば,昭和57年8月頃から昭和63年7月頃まで同病院に特定フィブリノゲン製剤が納入されていた可能性があるが,同病院では記録を廃棄しており,詳細は不明であると回答した。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告14番の1の陳述書(甲ハ14の1,11)の要旨は以下のとおりである。 亡原告14番,亡原告14番の両親及び1人のきょうだいは,C型肝炎ウイルスに感染していない。 亡原告14番は,昭和43年●月頃,●病院耳鼻咽喉科で副鼻腔炎 の手術を左右両方行った。しかし,退院後に呼吸困難となり,再度,前記耳鼻咽喉科を受診したところ,鼻中隔彎曲症と診断され,軟骨を削る手術を行った。その当日又は翌朝,枕が真っ赤になるほど出血し,主治医の●医師の指示で 行った。しかし,退院後に呼吸困難となり,再度,前記耳鼻咽喉科を受診したところ,鼻中隔彎曲症と診断され,軟骨を削る手術を行った。その当日又は翌朝,枕が真っ赤になるほど出血し,主治医の●医師の指示で,至急,止血のための点滴を行った。亡原告14番は,●医師から,「止血剤を打とう」と言われた記憶があるそうである。●医師は,手術のときに,手が滑って左右の鼻の間の仕切りに穴を開けてしまったと謝罪した。 昭和57年,●病院で検査し,亡原告14番がC型肝炎ウイルスに感染していることが分かった。その後,病気は慢性C型肝炎から肝硬変に進行し,平成17年には肝細胞がんの告知を受けた。それから平成24年●月●日に死亡するまで,何度も入院と退院を繰り返した。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,亡原告14番は,昭和43年●~●月頃,●病院において副鼻腔炎及び鼻中隔彎曲症に対する手術を受けたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和43年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたことを認めるに足りる証拠はない。 また,前記陳述書には,鼻中隔彎曲症に対する手術を受けた後,枕が真っ赤になるほど出血し,止血のための点滴を行ったと記載されているにとどまり,亡原告14番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,亡原告14番については,特定フィブリノゲン製剤 が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投 原告14番については,特定フィブリノゲン製剤 が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告15番関係 第1 当事者の主張(原告15番の主張) 1 原告15番の妻は,慢性C型肝炎にり患し,その後,肝硬変,肝がんへと進行し,平成11年●月●日,肝がん又は肝硬変により死亡した。 2 原告15番の妻は,昭和48年●月●日,●医院において,帝王切開により男児を出産した。その際の出血量は,母子手帳によると中等量であった。 3 主治医の●●医師(以下「●医師」という。)によれば,当時,●医院に特定フィブリノゲン製剤が置かれていたとのことである。 4 原告15番の妻がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●医院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 2 原告15番の陳述書には,原告15番の妻が特定フィブリノゲン製剤を投与された旨の記載はなく,前記陳述書によっても,原告15番の妻が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)原告15番の妻が肝がんにり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ15の1~7)及び弁論の全趣旨を総合 すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告15番の妻は,昭和●年●月●日生まれの者である。 事実 前記前提事実に証拠(甲ハ15の1~7)及び弁論の全趣旨を総合 すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告15番の妻は,昭和●年●月●日生まれの者である。 原告15番の妻には3人のきょうだいがいる。 (2) 原告15番の妻は,昭和48年●月●日,●医院において,帝王切開により男児を出産した。その際の出血量は,中等量であった。 (3) 原告15番の妻は,平成11年●月●日,肝不全により死亡した。 死亡診断書には,慢性C型肝炎が肝硬変の原因となり,肝硬変が肝不全の原因となった旨,肝細胞がんが,直接には死因に関係しないが前記の傷病経過に影響を及ぼした旨の記載がある。 原告15番の妻は,生前,●病院,●医療センター及び●病院(現在は●病院)において治療を受けた。 (4) 原告15番の妻に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告15番の妻に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告15番の陳述書(甲ハ15の1)原告15番も含めて原告15番の妻の家族にC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告15番の妻は,出産予定日である昭和48年●月●日を過ぎても胎児が産道へ下りてこず,同年●月●日,●医院において,帝王切開により男児を出産した。後から,へその緒が胎児の首に絡んでいたことが分かった。 原告15番の妻は,平成7年●月,●病院においてC型肝炎と診断され,同年●月まで同病院に入院した。平成11年●月,●医療 センターに入院したが,当時,病状は肝炎から肝硬変に進行していた。同年●月,●病院に転院した。この時点で,肝 てC型肝炎と診断され,同年●月まで同病院に入院した。平成11年●月,●医療 センターに入院したが,当時,病状は肝炎から肝硬変に進行していた。同年●月,●病院に転院した。この時点で,肝がんへ進行していたそうである。 原告15番の妻は,同年●月●日,肝がんにより死亡した。 イ ●医師作成の回答書(甲ハ15の8)昭和48年●月頃,特定フィブリノゲン製剤等を製薬会社から購入し,又はそれを使用していた記録はないし,記憶もない。 前記出産の際,特定フィブリノゲン製剤等を使用した可能性についても不明である。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告15番の妻が,昭和48年●月●日,●医院において,帝王切開により男児を出産し,その際に中等量の出血をしたことを認めることができる。 イしかし,●医院において,昭和48年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告15番の妻に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告15番の妻については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告17番関係 第1 当事者の主張(原告17番の主張) 1 原告17番は,平成2年に受けた肝生検により,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 2 原告17番は,昭和48年春頃から夏頃にかけて,●病院において左手首黒色斑切除手術を受けた。 3 ●病院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納 スに感染していることが判明した。 2 原告17番は,昭和48年春頃から夏頃にかけて,●病院において左手首黒色斑切除手術を受けた。 3 ●病院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 4 原告17番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告17番の左手首黒色斑切除手術の具体的手術状況や,手術当時の具体的な病態は不明であるから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 特定フィブリノゲン製剤を用いて調製されるフィブリン糊は,昭和56年●月●日に基礎的研究の結果が発表され,その後にフィブリン糊研究会において研究が進められたのであり,昭和48年当時に用いられていたとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実 前記前提事実に証拠(甲ハ17の1~4,6,9,原告17番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告17番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。原告17番には1人のきょうだいがいる。 (2) 原告17番には,生まれつき,左手首を手首一周の4分の3程度覆う黒色斑があったところ,昭和48年春から夏頃に,●病院において,前記黒色斑部分の皮膚を切除し,左足鼠径部から同程度の皮膚を移植するという内容の手術を受けた。 (3) 原告17番は,平成2年に受けた会社の定期健康診断の結果,肝機能の 頃に,●病院において,前記黒色斑部分の皮膚を切除し,左足鼠径部から同程度の皮膚を移植するという内容の手術を受けた。 (3) 原告17番は,平成2年に受けた会社の定期健康診断の結果,肝機能の数値に異常があり,その後に●医療センターで受けた肝生検の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。現在は,治療によってC型肝炎ウイルスが消失した状態で,無症候性キャリアである。 (4) ●病院は,昭和45年当時の診療科目は不明であり,昭和46年から昭和48年度には12の診療科目を有し,病院全体における医師数(年度末人員)は,昭和45年度は不明,昭和46年度は49名,昭和47年度は54名,昭和48年度は56名,病院全体の看護師数(年度末人員)は,昭和45年度は不明,昭和46年度は193名,昭和47年度は216名,昭和48年度は212名,病院全体の年間手術件数は,昭和45年度は不明,昭和46年度は2531件,昭和47年度は2828件,昭和48年度は2726件であった。 (5) 原告17番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討 (1) 原告17番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告17番の陳述書(甲ハ17の1)原告17番には,生まれた時から,左手首を4分の3程度覆う大きさの黒色斑があった。原告17番の両親は,原告17番が幼い頃,●小児科の●●医師(以下「●医師」という。)に前記黒色斑の相談をしており,●医師は,診察の上,将来悪性に変化することがあるので,早い時期に除去した方がいいとアドバイスをしたそうである。 原告17番は,昭和4 「●医師」という。)に前記黒色斑の相談をしており,●医師は,診察の上,将来悪性に変化することがあるので,早い時期に除去した方がいいとアドバイスをしたそうである。 原告17番は,昭和48年春頃から夏頃,●病院で黒色斑の除去手術を受けた。手術の内容は,左手首の黒色斑を除去し,そこに原告17番の左足鼠径部の皮膚を移植するというものだった。 手術そのものの様子は覚えていない。 平成2年,健康診断において,非A非B型肝炎と診断され,その後,●医療センターで受けた肝生検によりC型肝炎ウイルスに感染していることが分かった。 感染判明後は,同センターでインターフェロン治療を受けたが,ウイルス消滅には至らなかった。その後,●内科で1年間程度治療を受けた。平成19年に●病院で再度インターフェロン治療を受け,現在はウイルスが消失し,完治している。 原告17番は,薬害肝炎のことを知って,●病院にカルテが残っていないか問い合わせたが,残っていないとの回答であった。 原告17番の親族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告17番は,前記手術や肝生検以外に,怪我や病気で手術や入院したことはなく,ピアス,輸血,入れ墨,人工透析などはしていない。 イ原告17番の母の陳述書(甲ハ17の2)原告17番は,生まれた時から,左手首が4分の3程度黒色斑で覆われた状態であった。 かかりつけの病院である●小児科の●医師から「このような黒色斑は悪性に変化することがあるので,早い時期に取った方がよい。」とのアドバイスを受け,同医師から紹介を受けた●病院において,左手首患部の皮膚を切除し,左足鼠径部の皮膚を切除して左手首に皮膚移植する手術を受けた。この手術に関しては,平成23年●月●日に,親し 」とのアドバイスを受け,同医師から紹介を受けた●病院において,左手首患部の皮膚を切除し,左足鼠径部の皮膚を切除して左手首に皮膚移植する手術を受けた。この手術に関しては,平成23年●月●日に,親しくしていた当時の隣人から,「●病院で手術して,手首に包帯を巻いていたのを今も覚えていますよ。」との証言をもらった。 ウ原告17番の供述(本人尋問)平成30年に母が健康診断によりC型肝炎のキャリアだということが分かった。なお,原告17番がC型肝炎ウイルスに感染していると判明した平成2年の時点で,原告17番の家族全員が検査を受けたところ,当時は母がキャリアであることは分からなかった。 原告17番の左手首にあった黒色斑は,3歳当時に手首の前面を覆う大きさだったため,5cm以上あったと思う。●病院において,黒色斑の原因についての説明はなかった。 黒色斑の除去手術がされた時期は,昭和45年当時の写真で,黒色斑が写っているものと,左手首に包帯を巻いているものの間ということからおおよその推測をしている。前記手術に関し,●病院のどこの診療科を受診したか及び執刀医の名前は覚えていない。前記手術では出血をしているはずであるが,具体的な出血量,点滴・輸血の有無は分からない。止血剤を使ったかどうかも分か らないが,おそらく前記手術の際に投与されたと推測している。 平成22年頃に,新聞の報道で,フィブリノゲン製剤のことを知った。同製剤を使っている病院の一覧に,●病院も入っていたので,同病院に原告17番のカルテが残っていないか問い合わせたが,残っていないとの回答だった。 (2) 検討ア原告17番において,昭和45年春から夏頃に,●病院で前記黒色斑部分の皮膚を切除し,左足鼠径部から同 ルテが残っていないか問い合わせたが,残っていないとの回答だった。 (2) 検討ア原告17番において,昭和45年春から夏頃に,●病院で前記黒色斑部分の皮膚を切除し,左足鼠径部から同程度の皮膚を移植するという内容の手術を受けたとの事実に関し,診断書,カルテその他医療機関の作成した証拠があるものではないが,原告17番及び同人の母の陳述書や本人尋問で具体的状況が述べられていることや,原告17番の左手首黒色斑につき,昭和48年頃に●病院へ紹介した旨が記載された●医師の平成23年●月●日付け証明書(甲ハ17の3)があることから,そのような事実があったことを認めることができる。 イしかし,●病院において昭和45年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告17番に対し特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 ウ医学的知見として,皮膚移植(遊離植皮)や裂皮膚弁の接着にフィブリン糊を使用したという報告(甲ア17)が示されているが,これらによっても,原告17番に,具体的状況に照らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 3 結論以上によれば,原告17番については,特定フィブリノゲン製剤が 投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告19番関係 第1 当事者の主張(原告19番の主張) 1 原告19番は,平成5年末頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告19番は,慢性C型肝炎にり患している 別紙原告19番関係 第1 当事者の主張(原告19番の主張) 1 原告19番は,平成5年末頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告19番は,慢性C型肝炎にり患している。 2 原告19番は,昭和49年●月●日,オートバイを運転中転倒し,ガードロープの支柱に後頭部を強打し,ロープを固定するために同支柱に設置されていたボルトが頭部に突き刺さるという事故に遭い,脳挫傷を起こした。出血量は大量であり,少なくとも6800ml程の出血があった。原告19番は,●病院(現在は●病院)に搬送され,緊急手術を受けた。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 4 原告19番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 C型肝炎ウイルス感染の事実,原告19番が慢性C型肝炎にり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 2 原告19番の陳述書によっても,原告19番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 前記陳述書には,前記手術の際の出血に関し,200ml入りの輸血パックを34パック使用するほどであった旨の記載があるが,原告19番の父から聞いた内容を述べる,いわゆる再伝聞供述である上,これを裏付ける証拠はないから,当該供述の信用性を認めることはで きない。 また,前記陳述書には,緑の十字マークが付された透明の小瓶の点滴を受けた旨の記載があるが,これを信用することはできない上,ミドリ十字が製造販売していた製剤は多数あり,これらには,いずれも前記マークが付いていたと考えられるから, マークが付された透明の小瓶の点滴を受けた旨の記載があるが,これを信用することはできない上,ミドリ十字が製造販売していた製剤は多数あり,これらには,いずれも前記マークが付いていたと考えられるから,前記記載により特定フィブリノゲン製剤投与の事実を認めることはできない。 さらに,原告19番の主張を前提とすると,前記手術の麻酔を担当したのは●●医師であるが,求釈明に対する原告19番の回答によれば,同医師は,特定フィブリノゲン製剤を投与した経験はないとのことである。 (補助参加人の主張)被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ19の1~5)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告19番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。 原告19番には1人のきょうだいがいる。 (2) 原告19番は,昭和49年●月●日,オートバイを運転中転倒し,ガードロープの支柱に後頭部を強打し,ロープを固定するために同支柱に設置されていたボルトが頭部に突き刺さるという事故に遭い,●病院に搬送され,緊急手術を受けた。 (3) 原告19番は,慢性C型肝炎と診断され,平成14年●月以降は,●病院でインターフェロンの投与等の治療を受けている。 (4) 原告19番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤 の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告19番の陳述書(甲ハ19の1,5)の要旨は以下のとおりである。 原告19番の知る限り,原告19番の両親及びきょうだいはC型肝炎ウイルスに感染していない。 昭和49年●月●日,友人と共にバイクで山道を下 甲ハ19の1,5)の要旨は以下のとおりである。 原告19番の知る限り,原告19番の両親及びきょうだいはC型肝炎ウイルスに感染していない。 昭和49年●月●日,友人と共にバイクで山道を下っていたところ,前記事故に遭った。気付いたときには既に●病院に搬送されており,前記事故後の詳細については記憶していない。ガードロープの支柱に設置されたボルトに後頭部を打ち付け,脳挫傷したとのことであり,頭蓋骨を骨折している。 前記事故後,病院で服を切られているときに一瞬目を覚ましたが,はっきりと意識が戻ったのは,手術が終わってから数日後のことである。医師らから聞いたところによると,手術は徹夜で行われ,血圧がかなり低下するなど,一時は危険な状態に至ったとのことであった。また,原告19番の父によると,手術当時の出血量は,1パック200ml入りの輸血パックを34パックも使用するほどであったそうである。 手術後意識が戻ったときに,緑の十字マークが付された透明の小瓶に入った液体が点滴されていたことを記憶している。その小瓶の横には「リンゲル」と記載された瓶が吊るされていた。当時,医師らから,フィブリノゲン製剤の使用について説明を受けたことはない。 手術の記憶はないが,頭蓋骨に今でも穴が開いていて,その穴に蓋がされていること,手術後,頭の中からドレーンが出ていたと記憶していることからすると,頭蓋骨を開いて脳に対して何らかの処置をされたことは間違いない。 平成5年末頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,現在は,●病院で治療を受けている。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告19番が,昭和4 で治療を受けている。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告19番が,昭和49年●月●日,前記事故に遭い,●病院において緊急手術を受けたことを認めることができる。また,前記事故の態様等に照らせば,相当量の出血があったことを推認することができる。 イしかし,●病院において,昭和49年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告19番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,原告19番は,少なくとも6800ml程の出血があった旨主張し,原告19番の陳述書には,原告19番の父から,手術当時の出血量は,1パック200ml入りの輸血パックを34パックも使用するほどであったと聞いたと記載されているが,実際にかかる量の輸血がされたことを裏付ける他の証拠はない。したがって,前記陳述書により,かかる量の輸血がされたと認めることはできず,原告19番の前記主張を採用することはできない。 3 結論以上によれば,原告19番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告21番関係 第1 当事者の主張(原告21番の主張) 1 原告21番は,昭和60年●月●日,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,平成4年●月●日から同年●月●日まで,慢性C型肝炎の治療のために,●病院に入院した。 2 原告21番は,昭和56年●月下旬 1番は,昭和60年●月●日,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,平成4年●月●日から同年●月●日まで,慢性C型肝炎の治療のために,●病院に入院した。 2 原告21番は,昭和56年●月下旬,●病院(現在は●医療センター・●医療センター,以下「●病院」という。)整形外科において,左手の外反肘を矯正するために,骨切り術及び骨接合術を受けた。 3 ●病院には,昭和56年7月に特定フィブリノゲン製剤が,昭和55年12月及び昭和56年1月に特定血液凝固第Ⅸ因子製剤(クリスマシン)が納入された。 4 原告21番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 C型ウイルス感染の事実,原告21番が慢性C型肝炎にり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 2 原告21番の陳述書には,特定フィブリノゲン製剤を投与された旨の記載はなく,単に前記手術の際に特定フィブリノゲン製剤を用いて作成されたフィブリン糊を使用されたに違いない旨の記載があるにとどまる。 また,●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績に照らすと,昭和56年●月当時,特定フィブリノゲン製剤が同病院に存在したとは考え難い。 (補助参加人の主張)被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ21の1~5,8,12~14,16,18,19)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告21番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告21番にはきょうだいがいる。 (2) 原告21番は,昭和60年●月●日,●病院で肝機能 と,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告21番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告21番にはきょうだいがいる。 (2) 原告21番は,昭和60年●月●日,●病院で肝機能障害を指摘された後,同年●月●日,●病院で非A非B活動性肝炎と診断され,治療を受けた。 原告21番は,昭和61年春に神戸市に転居してから,●病院等で治療を受けた。 原告21番は,●病院で慢性C型肝炎と診断され,平成4年●月●日から同病院に入通院し,インターフェロン治療を受けるなどした。 平成20年●月●日のHCV抗体検査では陽性であったが,平成24年●月●日のHCV核酸定量検査ではC型肝炎ウイルスは未検出となった。 (3) ●病院には,昭和55年12月に6本の特定血液凝固第Ⅸ因子製剤が納入されたが,同年に特定フィブリノゲン製剤は納入されていない。また,昭和56年7月に2本の特定フィブリノゲン製剤,同年に合計10本の特定血液凝固第Ⅸ因子製剤が納入された。 原告21番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討 (1) 原告21番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告21番の陳述書(甲ハ21の1)原告21番の家族は誰もC型肝炎ウイルスに感染していない。 原告21番が4歳のとき,叔母が原告21番の左肘の上に尻餅をつき,複雑骨折し,整骨院で治療した。しかし,左手が肘の部分から外側に曲がった状態になってしまった。 原告21番は,昭和56年●月下旬,●病院整形外科において,●●医師(以下「●医師」という。)により,曲がっていた左手の手術(左手の肘の部分〔上腕骨と尺骨・橈骨が関節で接続する部分〕の骨を三角に切り取り,残った 昭和56年●月下旬,●病院整形外科において,●●医師(以下「●医師」という。)により,曲がっていた左手の手術(左手の肘の部分〔上腕骨と尺骨・橈骨が関節で接続する部分〕の骨を三角に切り取り,残った部分を,接着剤を使って金属で留めるという手術)を受けた。 半年後,●医師が週1回出向していた●病院で金属を取り除く手術を受けた。 昭和60年●月●日,●病院で肝機能異常を指摘され,同年●月,●病院に検査入院し,同年●月●日に肝生検を行った結果,活動性非A非B肝炎と診断された。以後,同病院,●医院及び●病院で治療を受けたが,平成3年●月●日,同病院で肝生検を行った結果,慢性C型肝炎の末期と診断された。平成4年●月●日から同年●月●日まで,●病院に入院し,インターフェロン治療を受けた。退院後も同病院でインターフェロン治療を続け,平成6年●月●日には数値が正常となった。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤がフィブリン糊として使用されたこと以外にない。 イ原告21番の長女の陳述書(甲ハ21の17) 昭和56年●月●日から同年●月●日までの連休中,中学校の寮から帰宅し,原告21番が腕の手術をして入院している●病院に見舞いに行った。 原告21番がC型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際に切った骨をフィブリン糊で接着したからである。 (2) 検討ア原告21番の昭和56年●月下旬の左手の手術に関し,診断書やカルテなどの医療機関の作成した証拠があるものではないが,前記各陳述書には具体的な手術内容等が記載してあり,原告21番がそのような手術を受けたことを認めることができる。 イしかし,前記1(3)のとおり,昭和55年●月から昭和56年●月まで,● いが,前記各陳述書には具体的な手術内容等が記載してあり,原告21番がそのような手術を受けたことを認めることができる。 イしかし,前記1(3)のとおり,昭和55年●月から昭和56年●月まで,●病院に特定フィブリノゲン製剤は納入されておらず,昭和56年●月下旬当時,同病院において特定フィブリノゲン製剤が使われていたことを認めるに足りる証拠はない。 また,前記各陳述書において,前記手術の際にフィブリン糊が使用されたとする具体的な根拠や裏付けとなる事情はなく,原告21番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告21番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告22番関係 第1 当事者の主張(原告22番の主張) 1 原告22番は,平成13年●月●日,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,現在,慢性C型肝炎との診断を受け,治療を継続している。 2 原告22番は,平成元年●月●日,勤務中の工場内において,ゴム製品製造のための電動ロールに左手を巻き込まれるという事故に遭い,同事故により,左手にデグロービング損傷(外力によって皮膚,骨格筋,血管,神経,腱及び骨など複数の組織が広く破壊される損傷)を負った。同事故直後,原告22番は,●病院に搬送され,患部の消毒や止血を受けつつ,患部の組織が生きているのかどうかの判定を受けた。 原告22番は,同年●月●日,●病院において,左手親指以外の指を切断し,腹部の皮膚 直後,原告22番は,●病院に搬送され,患部の消毒や止血を受けつつ,患部の組織が生きているのかどうかの判定を受けた。 原告22番は,同年●月●日,●病院において,左手親指以外の指を切断し,腹部の皮膚を左手に移植する手術を受けた。 前記手術前に実施された血液検査においては,何ら異常所見はみられなかった。また,原告21番は,術後しばらくして,医師から,事故後手術に至るまでの間に合計約3200mlの出血があった旨の説明を受けた。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告22番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 C型肝炎ウイルス感染の事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 2 原告22番の陳述書によっても,原告22番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。●病院の医師は,原告22番が同病院に搬送された翌日である平成元年●月●日に血液検査を実施したが,「フィブリノーゲン量」の測定をしておらず,同医師が少なくとも当時,血液中の「フィブリノーゲン量」を問題視していなかったと認められるし,前記血液検査の結果を見ても,低フィブリノゲン血症や,その要因となるDICの発症をうかがわせる内容は存しない。 なお,前記陳述書には,小さな瓶の点滴を受けた旨の記載があるが,これを信用することはできない上,当該点滴が特定フィブリノゲン製剤である旨を医師等から聞いておらず,当該点滴が特定フィブリノゲン製剤であると考える具体的根拠も何ら明らかにしていないから,前記記載により特定フィブリノゲン製剤投与の 当該点滴が特定フィブリノゲン製剤である旨を医師等から聞いておらず,当該点滴が特定フィブリノゲン製剤であると考える具体的根拠も何ら明らかにしていないから,前記記載により特定フィブリノゲン製剤投与の事実を認めることはできない。 さらに,●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績に照らすと,平成元年当時,特定フィブリノゲン製剤が同病院に存在したとは考え難い。 (補助参加人の主張)原告22番が慢性肝炎にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ22の1~8,乙ハ22の1)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告22番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。 原告22番には4人のきょうだいがいる。 (2) 原告22番は,平成元年●月●日,勤務中の工場内において,ゴム製品製造のための電動ロールに左手を巻き込まれるという事故に遭い,左手に傷害を負った。原告22番は,同年●月●日,●病院で血液検査を受け,同年●月●日,左手の親指以外の指を切断し,腹部の皮膚を左手に移植する手術を受けた。 (3) 原告22番は,平成13年●月●日,●病院で血液検査を受け,同月●日,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,同月●日に行われた血液検査によっても同感染が確認された。 原告22番は,慢性C型肝炎と診断され,平成24年時点においては,●医療センターで治療を受けている。 (4) ●病院には,昭和62年1月に2本の特定フィブリノゲン製剤が納入され,同年4月に1本が返品された後,特定フィブリノゲン製剤の納入記録はない。また,原告22番に特定フィブリノゲ 受けている。 (4) ●病院には,昭和62年1月に2本の特定フィブリノゲン製剤が納入され,同年4月に1本が返品された後,特定フィブリノゲン製剤の納入記録はない。また,原告22番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告22番の陳述書(甲ハ22の6)の要旨は以下のとおりである。 原告22番の家族にC型肝炎にり患した者はいない。 原告22番は,平成元年●月●日,勤務中の工場内において,ゴム製品製造のための電動ロールに左手を巻き込まれるという事故に遭って左手に傷害を負い,●病院に救急搬送された。左手は,手首から指先までの所々の肉が削げ落ちている状態だった。 事故当日に受けた治療で記憶しているのは,ヨードチンキのようなもので負傷部分を消毒され,患部を包帯でぐるぐる巻きにされたこと,止血等のために2種類の点滴を受けたことである。 事故後,10日ほどは,同病院に入院しながら,消毒及び点滴等の 治療を受けた。手術するまでに10日ほどの期間を空けたのは,左手の細胞のうち生きている部分と壊死している部分を判別するためであるという説明を,同病院の誰かから受けた。出血量が多く,包帯が血の色で真っ赤になっていたことをよく覚えている。 点滴は,小瓶に入っているものと,500mlの容量のペットボトルくらいの大きさの容器に入っているものがあった。小瓶の点滴については,点滴された薬品の入れ物は,ヤクルトの容器と同じか少し大きい程度の大きさの透明のガラス瓶のような瓶であり,その瓶の中には透明の液体が入っていたと記憶している。小瓶の点滴は,何度か使用されただけであり,今思えば,この小瓶がフィブリノゲン製剤だったのだと思う。 原告22番は,同年● ような瓶であり,その瓶の中には透明の液体が入っていたと記憶している。小瓶の点滴は,何度か使用されただけであり,今思えば,この小瓶がフィブリノゲン製剤だったのだと思う。 原告22番は,同年●月●日,左手の親指以外の指を切断し,腹部の皮膚を左手に移植する手術を受けた。腹部の皮膚移植のためには,術後,45日ほど,腹部に左手を縫い付けた状態のままにしておく必要があり,とても大変な手術であった。全身麻酔を打たれていたので,手術中の記憶はない。術後しばらくして,出血量について,同年●月●日に●病院に運び込まれてからそのときまでの間に,約3200mlもの出血があったと聞いた。 術後しばらくしてから,ウイルスに感染しているとの診断を受けたが,明確にC型肝炎に感染しているとは言われなかった。平成13年,●病院においてC型肝炎であると宣告された。以降,●病院で治療を受け,平成22年からは●医療センターでインターフェロン治療を続けており,現在,慢性肝炎と診断されている。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討 ア前記1(2)のとおり,原告22番は,平成元年●月●日,前記事故に遭い,●病院において,同年●月●日に行われた前記手術等の治療を受けたことを認めることができる。また,前記事故の態様等に照らせば,相当量の出血があったことを推認することができる。 イしかし,●病院において,平成元年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告22番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,原告22番は,事故後手術に至るまでの間に合計約320 治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,原告22番は,事故後手術に至るまでの間に合計約3200mlの出血があった旨主張し,原告22番の陳述書にはこれに沿う記載があるが,実際にかかる量の出血があったことを裏付ける他の証拠はない。したがって,前記陳述書により,かかる量の出血があったと認めることはできず,原告22番の前記主張を採用することはできない。 3 結論以上によれば,原告22番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告24番関係 第1 当事者の主張(原告24番の主張) 1 原告24番は,平成15年●月●日に健診を受け,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告24番の現在の病態は,慢性C型肝炎である。 2 原告24番は,昭和39年●月●日,●医療センター(以下「●医療センター」という。)において,第二子(女児)を出産した。その際の出血量は中等量であった。 原告24番は,平成5年●月●日頃,バイクに乗っていて転倒し,右足の靱帯を切断する怪我を負い,同月●日,●整形外科病院において靱帯再建術の手術を受けた。 3 ●医療センター及び●整形外科病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告24番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●医療センター及び●整形外科病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 C型肝炎ウイル 4 原告24番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●医療センター及び●整形外科病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 C型肝炎ウイルス感染の事実,原告24番が慢性C型肝炎にり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 2 原告24番の陳述書には,特定フィブリノゲン製剤を投与された旨の記載はなく,前記陳述書によっても,原告24番が前記出産又は前記手術当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 前記出産について,母子手帳が提出されているが,前記出産は「正常」,その際の出血量は「中等量」であり,特段,多量の出血をしたことをうかがわせる記載はない。 前記手術について,特定フィブリノゲン製剤の有効期限は3年であるところ,●整形外科病院には,平成2年から平成5年までの間,特定フィブリノゲン製剤は1本も納入されていない。 (補助参加人の主張)被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ24の1,2,5~8,乙ハ24の1)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告24番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告24番には4人のきょうだいがいる。 (2) 原告24番は,昭和39年●月●日,●医療センターにおいて,第二子(女児)を出産し,その際に中等量の出血をした。 (3) 原告24番は,平成15年●月●日に受けた肝炎ウイルス検診を契機として,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告24番は,以後,●病院において治療を受けており,遅くとも平成23年●月●日には慢 4番は,平成15年●月●日に受けた肝炎ウイルス検診を契機として,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告24番は,以後,●病院において治療を受けており,遅くとも平成23年●月●日には慢性C型肝炎と診断されている。 (4) 原告24番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 ●医療センターは,弁護士会照会に対し,昭和54年以前の特定フィブリノゲン製剤の納入実績は不明である旨回答した。また,●整形外科病院には,昭和61年以降,特定フィブリノゲン製剤は納入されていない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告24番の陳述書(甲ハ24の1)の要旨は以下のとおりである。 原告24番の家族にC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告24番は,昭和37年●月●日,●病院において,第一子(女児)を出産した。そのときは何事もなかった。 原告24番は,昭和39年●月●日,●医療センターにおいて,第二子(女児)を出産した。出産当日の朝に陣痛が来て同医療センターへ行ったが,第二子(女児)はなかなか生まれず,●●医師(以下「●医師」という。)がお腹の上に乗ってぎゅうぎゅう押して分娩しようとした。●医師が「引っ張り出すぞ」と言っているのが聞こえて,第二子(女児)を医師や看護師らで引っ張り出したようであった。とても痛く,その後しばらく分娩台で動けなかった。そばにいた婦長から,「出血がひどいから止血をするのでしばらくいてください。子供が大きくて裂けたので縫ってます」と言われ,腕に注射をされ,病室に戻った後も点滴を受けた。 出産後に退院して1週間くらい経った頃,風邪を引いたような気がして●医院を受診したところ,肝臓が弱っているから気を付けるように言われた。 原告24番は,平成5年● 室に戻った後も点滴を受けた。 出産後に退院して1週間くらい経った頃,風邪を引いたような気がして●医院を受診したところ,肝臓が弱っているから気を付けるように言われた。 原告24番は,平成5年●月●日,バイクに乗っていて転倒し,●整形外科病院を受診した。同病院において,右足の靱帯が切断している,すぐに手術してくっつけないと歩けなくなると言われ,すぐに入院して同月●日に手術を受けた。同年●月●日頃まで,入院した。 平成15年になって,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,以後,●病院において治療を受けている。 原告24番が,●整形外科病院の事務員に対し,フィブリノゲン製 剤の使用実績の証明書を作成してほしいと求めたところ,同事務員は,フィブリノゲン製剤を糊として使用したことがあると言い,フィブリノゲン製剤の納入実績の書面を渡してくれた。また,同事務員は,フィブリノゲン製剤を返したことになっているが,実際には返さないで使っていると言った。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●医療センター及び●整形外科病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告24番は,昭和39年●月●日,●医療センターにおいて,第二子(女児)を出産したことを認めることができる。また,原告24番の平成5年●月●日の手術に関し,診断書やカルテなどの医療機関の作成した証拠があるものではないが,前記陳述書には具体的状況が記載してあり,平成5年●月●日から同年●月●日までの入院に対し保険金が支払われていること(甲ハ24の3)を併せ考慮すれば,原告24番が平成5年●月●日,●整形外科病院において右足の靱帯切断に対する手術を受けたことを認めることができる。 イしかし,●医 し保険金が支払われていること(甲ハ24の3)を併せ考慮すれば,原告24番が平成5年●月●日,●整形外科病院において右足の靱帯切断に対する手術を受けたことを認めることができる。 イしかし,●医療センターにおいて前記出産当時,●整形外科病院において前記手術当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告24番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告24番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他 の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告28番関係 第1 当事者の主張(原告28番の主張) 1 原告28番は,平成4年,医師から,C型肝炎ウイルスに感染していることを告げられ,その後,慢性C型肝炎と診断された。 2 原告28番は,昭和55年●月●日,●病院(現在は財団法人●病院,以下,名称変更の前後を問わず「●病院」という。)において,全前置胎盤と診断され,帝王切開により第二子(女児)を出産した。その際の出血量は多量で,母子手帳には1995ml(羊水こみ)と記載された。 3 ●病院には,昭和55年7月に4本,同年8月に4本,同年9月に6本,同年12月に3本の特定フィブリノゲン製剤が納入された。 4 原告28番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 C型肝炎ウイルス感染の事実,原告28番が慢性C型肝炎にり患した事実は認め,特定フィブ たのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 C型肝炎ウイルス感染の事実,原告28番が慢性C型肝炎にり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 2 原告28番の陳述書には,特定フィブリノゲン製剤を投与された旨の記載はない。なお,前記陳述書には,前記出産の数日から数週間前,止血剤を投与された旨の記載があるが,当該止血剤が特定フィブリノゲン製剤を指すとは認められない。 また,前記陳述書によっても,原告28番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 前記出産に係る出産記録簿には,「分娩時ノ処置」欄に,前記出産の 際に使用したと考えられる多数の製剤や,念のために使用した機器が記載されているが,この中に特定フィブリノゲン製剤の記載はない。 そうすると,前記出産記録簿の記載からは,特定フィブリノゲン製剤投与がされていないことが推認されるというべきである。 ●●医師(以下「●医師」という。)作成の回答書には,前記出産時における特定フィブリノゲン製剤投与に関し,「帝王切開術時に使用した可能性はあります」と記載されているのみであり,積極的に特定フィブリノゲン製剤投与を推認させるに足りる事情は何ら記載されていない。 (補助参加人の主張)●医師の回答書は,なぜ原告28番に対して特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性があると回答できるのか,その根拠が明らかではない。 また,同医師の特定フィブリノゲン製剤の具体的な投与方針や投与頻度等についても記載がなく不明であり,同医師が,どのような場合において,特定フィブリノゲン製剤を投与していたのか,全く明らかにされていない。し 医師の特定フィブリノゲン製剤の具体的な投与方針や投与頻度等についても記載がなく不明であり,同医師が,どのような場合において,特定フィブリノゲン製剤を投与していたのか,全く明らかにされていない。したがって,前記回答書のみをもって,原告28番に対する特定フィブリノゲン製剤投与は証明し得ない。また,原告28番の陳述書には,出産前に止血剤を投与された旨の記載があるが,当該止血剤が特定フィブリノゲン製剤を指すとの記載は全くない。その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ28の1,2,4~7)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告28番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 (2) 原告28番は,昭和55年●月●日,●病院において,腹式帝王 切開により第二子(女児)を出産した。その際の出血量は,多量(羊水込みで1995ml)であり,出産記録簿には,使用された製剤及び機器等が記載されているが,特定フィブリノゲン製剤に関する記載はない。 (3) 原告28番は,平成4年,医療法人●内科においてC型肝炎ウイルスに感染している旨の指摘を受け,同内科の医師の紹介により,平成12年●月●日,●病院(現在は●医療センター,以下,名称の変更の前後を問わず「●病院」という。)を受診した。原告28番は,同病院において慢性C型肝炎と診断され,インターフェロンの投与等の治療を受けるようになった。 (4) ●病院には,昭和55年に合計27本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,原告28番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告28番に関する関係者の供述等の要旨は以 ノゲン製剤が納入されたが,原告28番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告28番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告28番の陳述書(甲ハ28の1)原告28番は,第二子(女児)妊娠時,27週目で異常出血が見られ,●病院を受診したところ,●医師により前置胎盤と診断され,昭和55年●月の連休前から出産までの約3か月間,入院した。 30週に入った頃から2,3度ほど出血があり,その度に止血剤を点滴した。そして,昭和55年●月●日の夜半,大量出血し,止血剤を投与された。当直の看護師が,原告28番に対し,「大丈夫ですよ,すぐに止血剤を入れますからね,安心してください」と言ったことをはっきりと覚えている。 昭和55年●月●日,●医師により,帝王切開で第二子(女児)を出産した。出産時も大量出血で,母子手帳には「1995ml(羊水こみ)」と記載されたが,原告28番は,第二子(女児)を見せてもらった後は全身麻酔されたので,その後の記憶は全くない。 昭和56年●月,第二子(女児)が麻しんを発症したので●小児科内科を受診し,春頃から倦怠感を感じるようになった原告28番も念のため血液検査をしてもらったところ,急性肝炎と診断され,非A非B型とも言われた。平成4年,医療法人●内科においてC型肝炎と告知され,平成12年●月,●病院において慢性C型肝炎と診断された。以後,同病院でインターフェロンの投与等の治療を受けている。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 イ ●医師の回答書(甲ハ28の3,8)●病院において, 療を受けている。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 イ ●医師の回答書(甲ハ28の3,8)●病院において,昭和55年●月●日に出産した原告28番を診察していたのは,多分自分であると思う。当時,同病院ではフィブリノゲン製剤等を使用しており,原告28番の帝王切開術時にフィブリノゲン製剤等を使用した可能性はある。 フィブリノゲン製剤の投与方針に関し,出血量による使用の基準は特になく,臨床的に血液凝固能の低下がみられた場合や血液検査で凝固素の異常が生じていた場合に投与していた。輸血との先後は特に決まっておらず,他に止血剤としてアドナ及びトランサミンを使用しており,これらの止血剤により止血効果が得られないときにフィブリノゲン製剤を投与していた。●病院産婦人科としての投与方針はなく,個々の医師の判断でフィブリノゲン製 剤を投与していた。昭和55年当時の投与頻度は,記憶がなく全く分からない。 (2) 検討ア前記1(2)及び(4)のとおり,原告28番は,昭和55年●月●日,●病院において,腹式帝王切開により第二子(女児)を出産し,その際の出血量は多量(羊水込みで1995ml)であったこと,●病院には,同年に合計27本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができる。 イしかし,前記1(2)のとおり,前記出産の際に使用された製剤及び機器等が記載されている出産記録簿に,特定フィブリノゲン製剤に関する記載はないところ,●医師作成の回答書は,当時帝王切開術時に特定フィブリノゲン製剤を使用することがあったことから,前記出産の際に使用された抽象的な可能性がある旨を記載したものにすぎず,原告28番に対する治療の際に特定フィブリノ 答書は,当時帝王切開術時に特定フィブリノゲン製剤を使用することがあったことから,前記出産の際に使用された抽象的な可能性がある旨を記載したものにすぎず,原告28番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告28番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告30番関係 第1 当事者の主張(原告30番の主張) 1 原告30番は,平成19年●月,●胃腸科・内科における血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告30番は,昭和62年●月●日に,●病院において,大量吐血(合計約1000ml)に対する止血処置を受けた。 3 ●病院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関であり,かつ,前記処置の21か月前である昭和60年●月に5本の特定フィブリノゲン製剤が納入されている。 4 原告30番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告30番は,昭和62年●月●日に,約1000mlの吐血をし,輸血を受けたが,当時の具体的病態は明らかでなく,DICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められないから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 血をし,輸血を受けたが,当時の具体的病態は明らかでなく,DICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められないから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告30番は,前記処置後に,医師が「止血剤」を使った旨を述べたと主張するが,止血剤が使用されていたとしても,原告30番が当該止血剤が特定フィブリノゲン製剤である旨を聞いているわけでもない以上,原告30番に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認させるものではない。 (補助参加人の主張) 特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ30の1,2,5,6,9,原告30番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告30番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。原告30番には1人のきょうだいがいる。 (2) 原告30番は,昭和62年●月●日,自宅において突然吐血し,搬送先の●病院の集中治療室においても再度吐血し,合計約1000mlの吐血をした。そして,内視鏡検査の結果,急性胃潰瘍との診断を受け,止血,輸血,抗潰瘍剤の投与の処置を受けた。 (3) 原告30番は,平成19年●月,●胃腸科・内科における血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,現在,慢性C型肝炎にり患している。 (4) ●病院は,昭和62年当時,内科ほか5の診療科目を有し,内科における医師数は約10名,内科の看護師数は不明,急性潰瘍による大量吐血の件数は不明であった。 (5) ●病院には,昭和60年に5本の特定フィブリノゲン製剤が納 内科ほか5の診療科目を有し,内科における医師数は約10名,内科の看護師数は不明,急性潰瘍による大量吐血の件数は不明であった。 (5) ●病院には,昭和60年に5本の特定フィブリノゲン製剤が納入されていたが(ただし,昭和59年に5本,昭和62年に1本返品されている。),原告30番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告30番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告30番の平成25年6月20日付け陳述書(甲ハ30の1) 原告30番は,昭和62年●月●日,自宅で昼食の食べ物がのどを通らず,腹痛で横になっていたところ,夕方くらいに,洗面器に半分くらいの量の大量吐血をした。大量吐血を受けて,原告30番は,●病院に運ばれ,同病院の集中治療室において,●●医師(以下「●医師」という。)の処置を受けた。原告30番は,集中治療室においても大量に吐血し,意識不明の状態に陥った。 後に原告30番の妻や●医師から聞いた話では,大量吐血の原因は急性胃潰瘍であり,集中治療室での吐血量は約500mlと大量で,輸血する必要があったが,原告30番の血液が「AB型のRhマイナス」という珍しい型だったため,輸血の在庫がなく,命が危ない状態から脱するために,「とりあえず止血剤をやりましょう」とのことで,止血の処置が行われた,とのことだった。また,原告30番は,その後,同じ血液型である同人の弟の血液700mlか800mlの輸血を受けた。止血の処置及び輸血の後,1か月弱,●病院に入院した後,同病院を退院した。 原告30番は,平成19年●月,●胃腸科・内科で採血をしたところ,肝数値に異常が見つかり,再度抗体検査をしたとこ 止血の処置及び輸血の後,1か月弱,●病院に入院した後,同病院を退院した。 原告30番は,平成19年●月,●胃腸科・内科で採血をしたところ,肝数値に異常が見つかり,再度抗体検査をしたところ,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 感染判明後は。●病院に通院し,平成20年及び平成23年の計2回,インターフェロン治療を受けた。平成24年●月頃には,C型肝炎ウイルスが検出されないようになったが,数年経ってから慢性C型肝炎が再発するかもしれず,現在も定期的に通院して検査を受けている。 前記のとおり,平成19年●月に,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明して以降,●病院に対して,当時のカルテが残っていないか問い合わせたり,●医師に処置の内容を聞いたり, 保険会社に診断書が残っていないか問い合わせたりした。 原告30番は,前記処置以外,大量出血を伴う病気や怪我をしたことはなく,輸血を受けたのも,前記処置の時のみである。また,血液を提供してくれた原告30番の弟は,C型肝炎ウイルスに感染していない。 原告30番の親族にC型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告30番は,入れ墨,違法薬物の注射器での回し打ちをしたことはない。 イ原告30番の平成28年8月24日付け陳述書(甲ハ30の10)原告30番は,22,3歳の時に初めて胃潰瘍を発症し,胃薬の処方を受けたりしていた。 昭和58年●月頃,初めて自宅で吐血し,約1か月間,●外科医院に入院し,点滴治療等を受けた。輸血や外科手術は受けていない。 その後も,胃潰瘍をぶり返し,通院治療をしていたところ,昭和62年●月●日の大量吐血があったものである。 前記大量吐血を受けて,父が近所の●内科で相談したとこ 外科手術は受けていない。 その後も,胃潰瘍をぶり返し,通院治療をしていたところ,昭和62年●月●日の大量吐血があったものである。 前記大量吐血を受けて,父が近所の●内科で相談したところ,たまたま同内科にいた●病院の内科の●医師が,同病院での受け入れの準備をしてくれ,自動車で搬送されることになった。 ●病院に到着すると,●医師から連絡を受けて用意してくれていたストレッチャーに乗せられ,エレベーターで2階のICUにそのまま運ばれ,すぐに点滴が始まった。点滴針は,右腕の肘の内側に刺されていた記憶である。 その後,再度吐血して,意識もうろうの状態になり,外科の医師からの「手術しますか」との問いに対し,「私は,手術する気は ありません。」と答えた後は意識不明となった。 翌日の朝頃,ICUの隣の部屋の病室のベッドの上で意識を回復した。目を覚ました時,原告30番の弟がいて,同人から,「夕べ,とにかく吐血量が多くて,とりあえず止血剤をやった」,「700か800の輸血をした」,「大阪の血液センターに問い合わせたけれども,間に合わなかった」,「僕の血液を輸血してもらった」ということを聞いた。また,後に来た原告30番の両親からは,「意識不明で死にかけの状態やった」,「血液垂れ流しの状態やった」,「とりあえず血を止めるために止血剤をやった」という話をした記憶である。 意識を回復した日の昼か夕方,●医師が病室に来て,「意識がなくて,血液も大量出血だった」,「命が危なかった」,「今は心電図も脈拍も安定している」というような内容の話があった。この時は点滴をした状態であった。治療内容について,●医師から説明を受けた記憶はない。 ウ原告30番の妻の陳述書(甲ハ30の2)原告30番が,昭和62年●月●日に,急 あった。この時は点滴をした状態であった。治療内容について,●医師から説明を受けた記憶はない。 ウ原告30番の妻の陳述書(甲ハ30の2)原告30番が,昭和62年●月●日に,急性胃潰瘍により大量に吐血し,●病院で止血等の処置を受けた際,原告30番の妻も同病院にいた。 もっとも,原告30番の妻は,出産直後だったこともあり,医師らとの話等については,一緒に●病院に行っていた父に任せていたため,詳しい経過や治療内容を,直接医師から聞いた覚えはなく,両親から聞いた。 両親からは,原告30番が意識不明になって死にかかっていることや,弟が医師に「(兄を)助けたってくれ」と言ったこと,弟から血を分けてもらって輸血をしたこと,弟は大量の血を分けて フラフラになったこと等を聞いた。 原告30番の妻は,しばらくして原告30番の容態が落ち着いたため,家で待つ小さい子供のために,その日のうちに自宅に帰った。 エ ●医師作成に係る平成23年3月12日及び同年5月12日付け上申書(甲ハ30の7,8)原告30番の●病院における昭和62年●月●日から同月●日までの入院期間中に,当時において標準的かつ妥当な治療(止血,輸血,抗潰瘍治療)を行った。具体的にどのような処置を行ったか,フィブリノゲン製剤を使用したかについては覚えていない。 ただし,●病院にフィブリノゲン製剤が納入されていれば,止血のためにフィブリノゲン製剤を使用した可能性はある。 オ原告30番の供述(本人尋問)昭和62年●月●日の自宅での吐血の際,血はベッドの床に吐き,着ていた服と下着が血で汚れた。正確な吐血量は分からないが,後で,洗面器に半分くらいの量だったと母から聞いた。 ●病院で 昭和62年●月●日の自宅での吐血の際,血はベッドの床に吐き,着ていた服と下着が血で汚れた。正確な吐血量は分からないが,後で,洗面器に半分くらいの量だったと母から聞いた。 ●病院では,ICUにおいて,外科の●医師により点滴治療を受けた。点滴の容器はビニールパックで,薬剤の色は透明だった。 ●医師がいたかどうかも覚えていない。点滴治療を受ける際,●医師が「とりあえず止血剤」と言っていた。また,輸血をしましょうという話も,この時点でされた記憶である。 ICUでは再度吐血し,弟から吐血量は500mlだったと聞いた。「入院証明書(診断書)」(甲ハ30の5)には,約1ℓの大量吐血との記載があるところ,これがどの時の吐血量を量ったものなのかは,分からないが,自宅での吐血と,病院での吐血の総量だと思う。 意識が回復した後,●医師から,とりあえず止血剤打ちましたということを聞いた。おそらく,●医師は,●医師から伝え聞いて,それを原告30番に伝えたのだと思う。 現在も,慢性C型肝炎のため,半年に1回,血液検査を受けている。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告30番において,昭和62年●月●日に合計約1000mlの吐血をし,急性胃潰瘍との診断をされて,止血,輸血,抗潰瘍剤の投与の処置を受けたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和62年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告30番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,原告30番は,前記処置後に,医師から止血剤を使ったと聞いた旨述べるが,他方で止血剤の名前は聞いていな 前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,原告30番は,前記処置後に,医師から止血剤を使ったと聞いた旨述べるが,他方で止血剤の名前は聞いていないとも述べており,これだけでは,原告30番に,具体的状況に照らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 3 結論以上によれば,原告30番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙亡原告31番関係 第1 当事者の主張(亡原告31番の主張) 1 亡原告31番は,平成14年頃に受けた血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,慢性C型肝炎及び肝細胞がんであるとの診断を受けている。亡原告31番は,平成24年●月●日,死亡した。 2 亡原告31番は,昭和60年●月●日,●産婦人科において,帝王切開により出産した。この際の出血量は1100mlと多量である。また,前記出産当時,亡原告31番は全前置胎盤であると診断されており,胎児は骨盤位の状態であった。 3 ●産婦人科は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 亡原告31番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●産婦人科における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 2 特定フィブリノゲン製剤投与の事実に関する主な証拠は,前記出産に係る母子手帳のみであるところ,これにより,亡原告 ブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 2 特定フィブリノゲン製剤投与の事実に関する主な証拠は,前記出産に係る母子手帳のみであるところ,これにより,亡原告31番に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実を認めることはできない。 (補助参加人の主張)亡原告31番が肝がんにり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。 亡原告31番に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実の有無を判断するためには,少なくとも担当医の当時の投与方針及び亡原告31番の当時の病態を踏まえた個別具体的な検討が必要であるところ,前記出産の担当医である●●医師の投与方針に関する立証は何らされておらず,母子手帳からは,全前置胎盤の状態が確認できたために腹式の帝王切開術を行い,その際に一定の出血傾向が認められた程度の事実を認めることができるにとどまり,特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認することはできない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ31の1~4)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 亡原告31番は,昭和●年●月●日生まれの者である。 (2) 亡原告31番は,昭和60年●月●日,●産婦人科において,帝王切開により出産した。この際の出血量は1100mlであった。また,前記出産当時,亡原告31番は全前置胎盤であると診断されており,胎児は骨盤位の状態であった。 (3) 亡原告31番は,●病院で手術やインターフェロン・リバビリン併用療法を受け,平成22年●月●日,C型肝炎及び肝細胞がんと診断された。 亡原告31番は,●病院で手術を受け,平成24年●月●日,C型肝炎, 番は,●病院で手術やインターフェロン・リバビリン併用療法を受け,平成22年●月●日,C型肝炎及び肝細胞がんと診断された。 亡原告31番は,●病院で手術を受け,平成24年●月●日,C型肝炎,肝細胞がんと診断された。 亡原告31番は,平成24年●月●日,死亡した。 (4) 亡原告31番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製 剤の納入実績の証拠はない。 2 検討(1) 前記1(2)のとおり,亡原告31番は,全前置胎盤であると診断され,昭和60年●月●日,帝王切開により出産し,その際に1100mlの出血があったことを認めることができる。 (2) しかし,●産婦人科において,昭和60年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたこと,亡原告31番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったことを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,亡原告31番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告33番関係 第1 当事者の主張(原告33番の主張) 1 原告33番は,平成18年●月,●医療センターでの検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告33番は,昭和51年●月●日,交通事故により頭部外傷(前頭頭骨の陥没等)を負い,●病院(後に,医療法人●会●病院に名称変更。以下,名称変更の前後を問わず「●病院」という。)において両側前頭開頭手術を受けた。 3 ● ●日,交通事故により頭部外傷(前頭頭骨の陥没等)を負い,●病院(後に,医療法人●会●病院に名称変更。以下,名称変更の前後を問わず「●病院」という。)において両側前頭開頭手術を受けた。 3 ●病院には,昭和59年から昭和63年まで継続的に特定フィブリノゲン製剤が納入されている。 4 原告33番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,前記機会における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告33番の供述によっても,昭和51年●月●日に受けた前記手術の詳細や,手術当時の具体的病態は不明であるから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 また,原告33番は,前記手術の際に輸血を受けたようであるところ,当該輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定できない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ33の1~3,7,8,10,13,原告33番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告33番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。原告33番には,2人のきょうだいがいる。 (2) 原告33番は,昭和51年●月●日未明,乗用車を運転中,交通事故に遭って頭部外傷(前頭頭骨の陥没等)を負い,●病院に搬送されて両側前頭開頭手術を受けた。 原告33番は,平成5年に入り,疲れると前額部が腫れて頭痛及び発熱を起こすようになり,同年●月●日,全身麻酔の上,硬膜外 骨の陥没等)を負い,●病院に搬送されて両側前頭開頭手術を受けた。 原告33番は,平成5年に入り,疲れると前額部が腫れて頭痛及び発熱を起こすようになり,同年●月●日,全身麻酔の上,硬膜外膿腫除去,骨弁除去,前頭洞閉塞術を受けた。 平成8年●月●日頃より,再び前額部が腫れ,また,鼻腔より排膿があったため,同月●日から●日まで●病院に入院し,抗生剤による治療を受けた。 (3) 原告33番は,平成18年,●医療センターでの検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。現在,慢性C型肝炎にり患している。 (4) 昭和51年当時の●病院は,脳神経外科ほか二つの診療科目を有し,ベッド数は54床であった。 (5) ●病院には,昭和59年に3本,昭和60年に4本,昭和61年に14本,昭和62年に17本(ただし,同年に2本を返品),昭和63年に6本(ただし,同年に3本を返品)の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができるが,原告33番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテの証 拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告33番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告33番の陳述書(甲ハ33の1)原告33番は,昭和51年●月●日未明,乗用車を運転して,大阪市●区●町の道路を走行中,青信号で交差点に進んだところ,赤信号で前記交差点に進入してきた乗用車と衝突した。原告33番は,頭部外傷のため●病院に搬送され,同日,両側前頭開頭手術を受けた。事故直後から2週間の間,意識不明の状態となっており,意識が戻った当初は事故前後の記憶が全くない状態だった。 なお,記憶は徐々に取り戻した。●病院で意識が回復した時,家 ,両側前頭開頭手術を受けた。事故直後から2週間の間,意識不明の状態となっており,意識が戻った当初は事故前後の記憶が全くない状態だった。 なお,記憶は徐々に取り戻した。●病院で意識が回復した時,家族や前記手術を担当した●●医師(以下「●医師」という。)から,大量の出血をしたため,大量の輸血と止血剤を使用し,手術は8時間以上に及んだと聞いた。前記交通事故により前頭頭骨(額の部分)が陥没したため,脳内の血液による大量出血があり,8時間にも及ぶ大手術になったのも当然のことだと思う。前記手術の詳しい内容は分からないが,脳腫瘍摘出の場合の開頭術とそれ程違いはないと思う。前記手術後,医師の診察の際,救命を優先して手術したから,後遺症は後日必ず出ると言われた。 前記交通事故から16年後の平成5年に入ってから,疲れると前額部が腫れて,激痛がするようになった。同年●月●日,前額部が腫れて徐々に広がり,発熱もあったため,●病院の脳外科を受診した。診察において,硬膜外膿腫を疑われ,抗生剤の投与を受けた後,同月●日に同病院に入院した。 同月●日,全身麻酔の上,硬膜外膿腫除去,骨弁除去,前頭洞 閉塞術の手術を受けた。手術後の経過は良好で,頭痛や発熱はなくなり,同年●月●日に退院した。しかし,その後,4度再発し,治療や手術による入院を繰り返した。平成18年●月●日から4週間にわたり,●医療センターにて,前額部膿瘍,前頭部人工骨の感染に係る治療及び蓄膿の手術を受け,退院をする際,内臓の調子がおかしかったため内科を受診したところ,C型肝炎ウイルスに感染し,C型肝炎にり患していることが初めて判明した。 その後,フィブリノゲン製剤の投与によってC型肝炎ウイルスに感染するとの話を聞き,●病院にカルテが残っていないか問い合 炎ウイルスに感染し,C型肝炎にり患していることが初めて判明した。 その後,フィブリノゲン製剤の投与によってC型肝炎ウイルスに感染するとの話を聞き,●病院にカルテが残っていないか問い合わせたが,前記手術当時のものは一切残っていないとのことだった。なお,再発した際に入院した時の退院時要約はもらうことができた。 平成22年●月●日,●病院の●医師に,前記手術の際,フィブリノゲン製剤を投与したか等を尋ねたところ,同医師は,原告33番の前記手術自体を覚えておらず,同医師が脳外科の手術を担当していた頃にフィブリノゲン製剤の使用を指示した記憶はないとの回答を得た。ただし,それぞれの症例に応じて出される多彩な指示を,同医師が全てチェックしていたわけではないので,フィブリノゲン製剤が投与された可能性はあると思うとのことだった。 原告33番は,平成22年●月から●病院でインターフェロン治療を受け,C型肝炎ウイルスの数値は減ったが,現在も慢性C型肝炎にり患している。 原告33番の親族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。原告33番は,入れ墨,ピアス,人工透析,違法薬物の注射器での回し打ち,鍼治療等をしたことはない。 イ ●医師作成に係る平成22年●月●日付け回答(甲ハ33の6)●医師は,原告33番の昭和51年●月の手術を全く覚えていない。同医師は,平成4年の春に,●病院の外科部長を退いたため,同時点以降の手術には関与していない。 ●医師が手術を担当していた頃は,手術中に局所の出血を止める目的で,スポンゼル又はゼルフォームなどを出血部位に貼り付けていたのと,術中,術後にアドナ,トランサミンなどの止血剤を点滴に入れていたが,フィブリノゲンの使用を指示した記 手術中に局所の出血を止める目的で,スポンゼル又はゼルフォームなどを出血部位に貼り付けていたのと,術中,術後にアドナ,トランサミンなどの止血剤を点滴に入れていたが,フィブリノゲンの使用を指示した記憶はない。ただし,それぞれの症例に応じて主治医により出される多彩な指示を,●医師が全てチェックしていたわけではないので,フィブリノゲンが使用された可能性はあると思う。 「今日の治療薬」という文献には,フィブリノゲンの適応症として,「低フィブリノーゲン血症の治療」に用いるとされているだけで,止血剤のグループには入れられていないようである。 ウ原告33番の供述(本人尋問)原告33番は,昭和51年●月●日の交通事故の直後から2週間,意識を失っていたが,両側前頭開頭手術を受けた後,何日間か集中治療室にいた間に,一時的に,10分ほど意識が戻ったことがあった。意識が戻り,目を開いたところ,腕からかなりの数の点滴や輸血がされている様子や,カーテンで仕切られている様子が見えた。点滴や輸血は,赤い四角いビニール袋一つと,細長い円柱形の白い容器一つの他,何個かぶら下がっていた記憶である。また,意識が戻った際,看護師と話をして,自身が病院の集中治療室にいることを聞いた。 前記交通事故から2週間後,一般病棟の病室において,完全に意識を回復した。家族や前記手術を担当した●医師から,大量の 出血をしたため,大量の輸血と止血剤を使用した旨を聞いたが,止血剤の名前は聞いていない。 意識回復後,少し歩けるようになってから,診察室で院長の診察を受けた際,右の視束管が陥没し,骨折して神経を傷つけたので右視力が悪くなっていること,神経は一度悪くなると戻らないため治らないことを言われた。 前記交通事故の際の出 診察室で院長の診察を受けた際,右の視束管が陥没し,骨折して神経を傷つけたので右視力が悪くなっていること,神経は一度悪くなると戻らないため治らないことを言われた。 前記交通事故の際の出血量,前記手術の際の出血量及び輸血の量,種類はいずれも分からない。 前記手術の前に手術を受けたことはない。 平成5年●月●日,前頭部の腫れ,激痛及び発熱があり,●病院の脳外科の外来を受診し,CTで頭部の検査をしたところ,頭部に膿がたまっているということで,同月●日に入院し,硬膜外膿腫除去手術を受けた。その際,執刀医から,今回は輸血は一切しなかったと言われた。止血剤を投与されたかは分からない。 平成5年●月●日から●日まで頭蓋骨形成術を受けるために,●病院に入院した。手術の内容,経過,手術時の出血量,輸血の有無はいずれも聞いていない。止血剤を投与されたかについても聞いていない。 (2) 検討ア原告33番において,昭和51年●月●日,●病院において,両側前頭開頭手術を受けたとの事実に関し,診療録,カルテ等の医療機関の作成した証拠があるものではないが,原告33番の陳述書や本人尋問で具体的状況が述べられていることから,そのような事実があったことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和51年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告33番に対する処置として特定フ ィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,原告33番は,前記手術から2週間後に意識を完全に回復した際,●医師から,大量の出血をしたため,大量の輸血と止血剤を使用したと聞いた旨主張するが,これを裏付ける証拠はなく,他方で, なお,原告33番は,前記手術から2週間後に意識を完全に回復した際,●医師から,大量の出血をしたため,大量の輸血と止血剤を使用したと聞いた旨主張するが,これを裏付ける証拠はなく,他方で,●医師は,●病院で手術を担当していた平成4年の春までの間に特定フィブリノゲン製剤の使用を指示した記憶はないとも述べているのであって,仮に止血剤の使用があっても,特定フィブリノゲン製剤以外の薬剤であった可能性が否定できない。 ウ医学的知見として,頭部外傷による出血においては,特に循環管理が重要であるとされ(甲ハ33の15),出血に対しては「早め早めの対応」が求められ(甲ア25),出血性ショックと判断されなくても,ショックを呈するような出血量に至れば,医師としては,輸血と共に,新鮮凍結血漿の投与よりも効果的である特定フィブリノゲン製剤の投与を考えることになる(甲ア38)ことが示されているが,これらによっても,原告33番に,具体的状況に照らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 3 結論以上によれば,原告33番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告35番関係 第1 当事者の主張(原告35番の主張) 1 原告35番は,平成4年,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告35番は,昭和53年●月●日,●産婦人科において,第一子(女児)を出産し,多量の出血をした。 3 ●産婦人科は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先 治療を受けてきた。 2 原告35番は,昭和53年●月●日,●産婦人科において,第一子(女児)を出産し,多量の出血をした。 3 ●産婦人科は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 4 原告35番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●産婦人科における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告35番の,前記出産における具体的な出血量は不明であり,その他に何らかの異常があった様子はうかがわれず,DICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められないから,特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態であったとは認められない。なお,原告35番が,前記出産において,何らかの点滴を投与されたことを認めることができるが,点滴の薬剤名や効用について何も聞かされておらず,色や容器も記憶していないことからすると,当該点滴が特定フィブリノゲン製剤であったと認めることはできない。 また,原告35番は,前記出産の際に輸血を受けているところ,当該輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定できない。 さらに,原告35番は,鍼治療やピアスの穴を開けた経験を有するから,これらによってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定でき ない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ35の1~5,8~11,原告35番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告35番は,昭和●年●月● 所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ35の1~5,8~11,原告35番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告35番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。原告35番には1人のきょうだいがいる。 (2) 原告35番は,昭和53年●月●日午後0時30分に,●産婦人科において,自然分娩により,第一子(女児)を出産した。この際,多量の出血があり,輸血が3本された。 (3) 原告35番は,平成4年,体調不良のため●診療所を受診し,血液検査を受けた結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,現在,肝がんにり患している。 (4) ●産婦人科は,平成4年●月●日付けで廃院となっており,医療記録の引継ぎを行っているかどうかは不明である。 (5) ●産婦人科は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関一覧に記載されているが,原告35番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●産婦人科における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告35番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告35番の平成26年1月16日付け,平成30年11月2 1日付け陳述書(甲ハ35の1,8)原告35番は,出産予定日の前日である昭和53年●月●日,●●医師(以下「●医師」という。)の指示により,●産婦人科に入院し,同月●日に点滴を受けた。記憶があいまいだが,陣痛を起こす薬を投与するというようなことを言われた記憶である。 点滴を受けていると,陣痛が来て,第一子(女児)を出産した。 出産及び後産が終わった後,周りが騒がしくなり,● ,陣痛を起こす薬を投与するというようなことを言われた記憶である。 点滴を受けていると,陣痛が来て,第一子(女児)を出産した。 出産及び後産が終わった後,周りが騒がしくなり,●医師が慌て出し,「ご主人を呼んで,すぐに来てもらって。」と看護師に叫んでおり,また,輸血をするようにと指示をしていた。 ●医師は,原告35番の腹部に注射し,両腕に点滴をした。片腕は輸血だったと思う。これらの点滴は,分娩室と病室の通算で片腕3本ずつされたのを覚えているが,何の点滴だったかは覚えていない。点滴をした両腕は痛く,長時間点滴を受け続けていたために固まって動かない状態になり,腕を曲げることもできなかった。●医師の全ての処置を終えた後の姿を見ると,ビニール製のエプロンが血で真っ赤になっていた。また,看護師が,デッキブラシを使って,分娩室の床に流れた血を流しており,相当な出血があった様子だった。分娩室の外で待っていた妹は,病院のスタッフから,大量出血であると聞かされたそうである。 前記処置の後,病室に戻され,引き続き点滴を受け続け,出産後1週間程度で退院した。病室に戻った後の記憶はあいまいだが,とにかく両腕が痛くてたまらなかった。 原告35番は,昭和57年,●病院において,子宮外妊娠との診断を受け,●医師の執刀により,緊急手術を受けた。手術後に,●医師から,手術の様子について,「出血量は多かったですが,輸血はなるべくしないほうがいいのでしませんでした。」と教えても らった。 原告35番は,平成2年,●病院において,●医師の執刀により,盲腸の手術を受けた。同手術で,特に変わったことはなかったとのことで,輸血が必要だったとか,輸血をしたということも告げられていない。 原 ,平成2年,●病院において,●医師の執刀により,盲腸の手術を受けた。同手術で,特に変わったことはなかったとのことで,輸血が必要だったとか,輸血をしたということも告げられていない。 原告35番は,平成4年,体調不良のため●診療所を受診し,血液検査を受けた結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 感染判明後は,前記診療所において,強ミノの注射や錠剤を投与してもらう肝庇護療法を3か月ほど受けた。その後は約20年間,医者にかかることもなかったが,平成24年●月に腹痛をきっかけに●病院を受診し,C型肝炎になっていることを告げたところ,●医師から,インターフェロン治療を勧められた。 前記勧めを受けて,原告35番は,●病院に行き,インターフェロン治療を受けようとしたが,血小板減少症にり患しているため,同治療を受けることはできないと言われてしまった。その後,平成28年に,肝がんと診断され,抗がん剤の投与,ラジオ波焼灼術,ハーボニーの投薬治療を受けた。現在はC型肝炎ウイルスが消失したといわれているが,定期的に診察を受けて,再発していないか経過を観察している。 原告35番の親族でC型肝炎ウイルスに感染している者は,原告35番の母親のみである。 原告35番は,入れ墨や人工透析等をしたことはない。 イ原告35番の供述(本人尋問)昭和53年●月●日,出産予定日が近いということで,●産婦人科に入院し,同月●日午前9時頃に陣痛促進剤を打ってもらい, 同日午後0時30分に,自然分娩により出産をした。出産自体は順調であった。 出産後,出血が多いということで,●医師が輸血の用意を指示したり,夫への連絡を指示したりしていた。原告35番は,腹部に大きな注射を打たれたほか,両 出産をした。出産自体は順調であった。 出産後,出血が多いということで,●医師が輸血の用意を指示したり,夫への連絡を指示したりしていた。原告35番は,腹部に大きな注射を打たれたほか,両腕に点滴をされた。片腕は輸血だったが,もう一方の腕にされた点滴の薬が何かは分からない。 また,お腹の上に氷を載せられていた。 両腕の点滴は,分娩室から病室に移った後も続き,合計3回くらい取り替えたと思う。●医師からは,大量出血であったこと及び輸血を3本したことを聞き,同人が,原告35番の母子手帳に3本と書いていたのを覚えている。具体的な出血量は聞いていない。また,●医師から,血を止める薬を使ったんだというような話を聞いたかどうかは覚えていない。 原告35番は,前記出産前に,鍼治療をしたことはないが,ピアスの穴を開けたことがあり,その際は,自分で安全ピンを消毒して穴を開けた。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告35番が,昭和53年●月●日午後0時30分に●産婦人科において自然分娩により第一子(女児)を出産し,その際,輸血が3本必要となる程度の多量の出血をしたことを認めることができる。 イしかし,●産婦人科において,昭和53年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告35番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告35番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 ィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙亡原告38番関係 第1 当事者の主張(亡原告38番の主張) 1 亡原告38番は,平成6年●月頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。亡原告38番は,慢性C型肝炎が進行して肝がんにり患し,平成24年●月●日,死亡した。 2 亡原告38番は,昭和40年●月●日,自宅で突如として大量に出血し,●病院(以下「●病院」という。)に救急搬送された。これは前置胎盤による突発的な大量出血である。 亡原告38番は,その日のうちに帝王切開により第二子(女児)を出産した。その際の出血量は中等量であった。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 亡原告38番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 C型肝炎ウイルス感染の事実,慢性C型肝炎が進行して,肝がんにり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 2 原告38番の1の陳述書には,特定フィブリノゲン製剤を投与された旨の記載はなく,前記陳述書によっても,亡原告38番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ38の1~7,9)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1 の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ38の1~7,9)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 亡原告38番は,昭和●年●月●日生まれの者である。 亡原告38番にはきょうだいがいる。 (2) 亡原告38番は,昭和40年●月●日,●病院において,帝王切開により第二子(女児)を出産した。亡原告38番は,前置胎盤の状態であり,前記出産の際の出血量は中等量であった。 (3) 亡原告38番は,昭和54年●月●日の検査により,肝機能障害の疑いを指摘された。 亡原告38番は,慢性C型肝炎と診断され,平成13年●月●日からは,●病院(以下「●病院」という。)で治療を受けるようになり,平成20年●月,肝がんと診断された。 亡原告38番は,●病院において緩和ケアを受け,平成24年●月●日,死亡した。 (4) 亡原告38番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告38番の1の陳述書(甲ハ38の1)の要旨は以下のとおりである。 亡原告38番の両親やきょうだいでC型肝炎ウイルスに感染した者はおらず,原告38番の1も子らも同ウイルスに感染していない。 亡原告38番は,昭和40年●月●日,突然の腹痛を起こし,大量に出血し,●病院に救急搬送された。原告38番の1は,血だらけになった部屋を簡単に掃除した後,すぐに同病院へ向かった。原告38 番の1が同病院に着いたときには,亡原告38番は意識がほとんどない状態で,点滴など血を止めるための処置をされていた。同時に輸血もされていた記憶があるが,輸血量は分か 向かった。原告38 番の1が同病院に着いたときには,亡原告38番は意識がほとんどない状態で,点滴など血を止めるための処置をされていた。同時に輸血もされていた記憶があるが,輸血量は分からない。原告38番の1は,その日は出産しないと聞いていたので一旦家に戻ったが,しばらくして原告38番の1の母から電話があり,「急遽,帝王切開で子供が生まれた」とのことであった。原告38番の1の母は,「生まれたばかりの赤ちゃんは,普通は赤い顔をしているのに,とても白かったので心配した」と言っていた。後で母子手帳を見て,大量出血の原因は前置胎盤だったことが分かった。 亡原告38番は,昭和54年頃,肝機能の異常を指摘され,平成6年頃,当時通院していた●医院(現在は●クリニック)で言われたということで,「これまで病院で非A・非Bといわれていたが,実はC型らしい」と話してくれた。その後,亡原告38番は,●病院及び●病院に通院し,慢性C型肝炎の治療を受けたが,平成20年●月頃,肝腫瘍が見つかり,●病院で入院治療を受けることになった。亡原告38番は,平成23年●月頃,●病院で緩和ケアを受けることになり,平成24年●月●日,肝臓がんにより死亡した。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際に特定フィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,亡原告38番は,昭和40年●月●日,●病院において,帝王切開により第二子(女児)を出産したこと,亡原告38番は,前置胎盤の状態であり,前記出産の際の出血量は中等量であったことを認めることができる。 そして,●病院への救急搬送前の出血の事実に関し,診断書やカルテなどの医療機関の作成した証拠があるものではないが,前記 陳述書には具体的状況が記 であったことを認めることができる。 そして,●病院への救急搬送前の出血の事実に関し,診断書やカルテなどの医療機関の作成した証拠があるものではないが,前記 陳述書には具体的状況が記載してあり,そのような事実があったことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和40年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたことを認めるに足りる証拠はない。 また,前記陳述書には,亡原告38番が大量に出血し,点滴など血を止めるための処置をされたと記載されているにとどまり,前記1(2)のとおり,前置胎盤の状態にあったことを考慮しても,亡原告38番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,亡原告38番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙亡原告40番関係 第1 当事者の主張(亡原告40番の主張) 1 亡原告40番は,平成15年に肝機能障害を指摘され,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。亡原告40番は,慢性C型肝炎が進行して肝硬変にり患し,その後死亡した。 2 亡原告40番は,昭和41年●月●日,●会●病院(以下「●病院」という。)において第一子(女児)を出産し,その際に大量出血した。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 亡原告40番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因 病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 亡原告40番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 C型肝炎ウイルス感染の事実,慢性C型肝炎が進行して,肝硬変にり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 2 亡原告40番の陳述書には,特定フィブリノゲン製剤を投与された旨の記載はなく,前記陳述書によっても,亡原告40番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 亡原告40番が慢性肝炎にり患した事実,慢性肝炎の進行により肝硬変にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ40の1,2,4)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 亡原告40番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 亡原告40番には3人のきょうだいがいる。 (2) 亡原告40番は,昭和41年●月●日,●病院において第一子(女児)を出産した。分娩は正常であったが,その際の出血量は多量であった。 (3) 亡原告40番は,平成15年●月,●医院を受診し,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。亡原告40番は,同年●月●日,●医院の紹介により●病院を受診し,慢性C型肝炎と診断され,インターフェロンの投与等の治療を受けたが,遅くとも平成24年には肝硬変を発 スに感染していることが判明した。亡原告40番は,同年●月●日,●医院の紹介により●病院を受診し,慢性C型肝炎と診断され,インターフェロンの投与等の治療を受けたが,遅くとも平成24年には肝硬変を発症したと診断された。亡原告40番は,平成29年●月●日に死亡した。 (4) 亡原告40番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 亡原告40番の陳述書(甲ハ40の1)の要旨は以下のとおりである。 亡原告40番の家族でC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 亡原告40番は,昭和41年●月●日,●病院において第一子(女児)を出産した。無事に第一子(女児)を出産することができたが,出産の最中かその後に,看護師らが「先生がいない」,「先生を呼んで きて」とバタバタしていたことを覚えている。また,酸素マスクをしたり,点滴か注射なのかはっきりしないが,左腕に針を刺されて,針を刺した跡で左腕が紫色に腫れたことを覚えている。後で母子手帳を確認して,出血が多量と記載されているのを見て,出血が多かったため看護師らがあんなに騒いでいたのかと腑に落ちた。 亡原告40番は,平成15年●月,●医院を受診し,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。同年●月●日以降は,●病院でインターフェロンの投与等の治療を受けたが,平成24年に肝硬変を発症した。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,亡原告40番は,昭和41年●月●日,●病院において第一子(女児)を出産し,その際の出血量は多量であった フィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,亡原告40番は,昭和41年●月●日,●病院において第一子(女児)を出産し,その際の出血量は多量であったことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和41年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,亡原告40番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,亡原告40番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙亡原告41番関係 第1 当事者の主張(亡原告41番の主張) 1 亡原告41番は,昭和58年頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,慢性C型肝炎にり患した。亡原告41番は,平成28年●月●日に死亡した。 2 亡原告41番は,昭和47年●月●日,●産婦人科病院(以下「●産婦人科」という。)において第二子(女児)を出産した。母子手帳には,「分娩経過」欄に,「用手剥離」との記載があり,出血量は「多量」とされ,「600ml」と手書きされている。 3 ●産婦人科は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 亡原告41番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●産婦人科における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 C型肝炎ウイルス感染の事実,亡原告41番が慢性C型肝炎にり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実 リノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 C型肝炎ウイルス感染の事実,亡原告41番が慢性C型肝炎にり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 2 亡原告41番の陳述書には,特定フィブリノゲン製剤を投与された旨の記載はなく,前記陳述書によっても,亡原告41番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 なお,亡原告41番の陳述書には,亡原告41番が,前記出産の後,多量に出血し,2,3日意識が戻らなかったと,出血性ショックが生じたかのような記載がある。しかしながら,前記出産の際の出血量は6 00mlであり,この程度の出血量である場合,通常,ほとんど無症状とされているのであり,2,3日も意識が戻らない状態になることは考え難い。また,母子手帳の記載に照らせば,亡原告41番に対する輸血の事実は認められないところ,前記陳述書を前提とすれば,亡原告41番に生じた出血性ショックは2,3日も意識が戻らないようなものであったのに,輸血がされなかったことになるが,かかる診療経過は不自然である。そうすると,前記出産の後,亡原告41番に出血性ショックが生じたとは認められない。 (補助参加人の主張)亡原告41番が慢性肝炎にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ41の1~4)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 亡原告41番は,昭和●年●月●日生まれの者である。 亡原告41番には5人のきょうだいがいる。 (2) 亡原告41番は, び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 亡原告41番は,昭和●年●月●日生まれの者である。 亡原告41番には5人のきょうだいがいる。 (2) 亡原告41番は,昭和47年●月●日,●産婦人科において,吸引分娩により第二子(女児)を出産した。その際の出血量は約600mlであり,500mlの輸液がされたが,母子手帳に輸血がされた旨の記載はない。また,胎盤の用手剥離が行われた。 (3) 亡原告41番は,慢性C型肝炎と診断され,平成17年●月●日からは,財団法人●病院(以下「●病院」という。)に通院し,インターフェロンの投与等の治療を受けていたが,平成28年●月●日に死亡した。 (4) 亡原告41番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のある ことを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 亡原告41番の陳述書(甲ハ41の1)の要旨は以下のとおりである。 亡原告41番の両親,きょうだい,夫及び子供は,C型肝炎ウイルスに感染していない。 亡原告41番は,昭和47年●月●日,●産婦人科において第二子(女児)を出産した。子供は吸引分娩により何とか出たが,分娩後,後産が出なくて,手術となった。とにかく大出血で,母親の命は救えないかもしれないという話になっていたようである。母子手帳に「用手剥離」と記載されているのが,このときの状況のことだと思う。その後2,3日の間,意識が戻らなかったようだが,意識が戻ったときには点滴などを受けた状態だった。母子手帳を見ると「輸液500ml」となっているが,輸血はされたと聞いている。数週間入院してから退院した。 昭和58年頃,●診療所においてC型肝炎であるとの診断を受 滴などを受けた状態だった。母子手帳を見ると「輸液500ml」となっているが,輸血はされたと聞いている。数週間入院してから退院した。 昭和58年頃,●診療所においてC型肝炎であるとの診断を受け,その後,同診療所,●病院及び●病院で,インターフェロンの投与等の治療を受けた。 亡原告41番は,昭和43年に第一子(男児)を出産したが,出血量も多くなく,普通の分娩だった。また,25歳の頃,虫垂炎の手術を受けたが,簡単に終わり,すぐに退院した。C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●産婦人科における処置の際に特定フィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,亡原告41番は,昭和47年●月●日,● 産婦人科において,吸引分娩により第二子(女児)を出産したこと,その際の出血量は約600mlであり,胎盤の用手剥離が行われたことを認めることができる。 イしかし,●産婦人科において,昭和47年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,亡原告41番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,亡原告41番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告44番関係 第1 当事者の主張(原告44番の主張) 1 原告44番は,平成8年,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告44番の現在の病態は,肝硬変である。 2 原告44番は,昭和46年●月●日,●産 事者の主張(原告44番の主張) 1 原告44番は,平成8年,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告44番の現在の病態は,肝硬変である。 2 原告44番は,昭和46年●月●日,●産婦人科医院(以下「●産婦人科」という。)において第二子(男児)を出産した。その際,原告44番は,約500mlの輸液を受け,出血量は中等量である約400mlであった。 原告44番は,昭和48年●月●日,●産婦人科において第三子(男児)を出産し,輸血するほど大量出血した。 3 ●産婦人科は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告44番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●産婦人科における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 2 原告44番の陳述書には,特定フィブリノゲン製剤を投与された旨の記載はなく,前記陳述書によっても,原告44番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)原告44番が慢性肝炎にり患した事実,慢性肝炎の進行により肝硬変にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ44の1,2,4~7)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告44番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告44番には5人のきょうだいがいる。 (2) 原告44番は,昭和46年●月●日,●産婦人科において第二子(男児)を出産した。その (1) 原告44番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告44番には5人のきょうだいがいる。 (2) 原告44番は,昭和46年●月●日,●産婦人科において第二子(男児)を出産した。その際,原告44番は,約500mlの輸液を受け,出血量は中等量である約400mlであった。 原告44番は,昭和48年●月●日,●産婦人科において第三子(男児)を出産した。 (3) 原告44番は,遅くとも平成10年●月●日までに,医療法人●内科医院(以下「●内科」という。)において,慢性C型肝炎,肝硬変症と診断され,同内科で治療を受けるようになった。 (4) 原告44番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告44番の陳述書(甲ハ44の1)の要旨は以下のとおりである。 原告44番の家族にC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告44番は,昭和46年●月●日,●産婦人科において第二子(男児)を出産した。第二子(男児)は予定日を過ぎても生まれず,入院して点滴で陣痛促進剤を入れてもらい,出産した。陣痛促進剤を入れてすぐに陣痛が来て,すぐに生まれたという記憶である。 原告44番は,昭和48年●月●日,●産婦人科において第三子 (男児)を出産した。第三子(男児)も予定日を過ぎても生まれず,入院して点滴で陣痛促進剤を入れてもらった。それからしばらくして陣痛が来て,第三子(男児)が生まれた。ただ,第三子(男児)を出産したときは,第二子(男児)を出産したときとは異なり,気付くと点滴と輸血の両方がされていた。●●医師が,看護師に対し,「ちょっと多いな」と話しているのが聞こえた。そのうち,原告 第三子(男児)を出産したときは,第二子(男児)を出産したときとは異なり,気付くと点滴と輸血の両方がされていた。●●医師が,看護師に対し,「ちょっと多いな」と話しているのが聞こえた。そのうち,原告44番は,ベッドに寝かされた状態のまま分娩室から病室に移った。その後,原告44番の母から,出血が多かったから輸血すると医師が言っていたと聞いた。第三子(男児)出産後,貧血になり,●内科に通院し,増血剤を注射してもらった。 昭和55年頃に就職し,毎年健康診断を受けていたところ,診断結果の肝臓の数値が悪く,慢性肝炎と書かれていた。その後,平成8年に,●内科を受診し,肝硬変と診断され,同内科の医師の紹介により,●病院に2週間程度入院した。その後,●内科に通院しており,C型肝炎ウイルスに感染していると診断された。 19歳のときに盲腸の手術をしたが,1週間程度の入院で特に何事もなく終わっている。C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●産婦人科における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告44番は,●産婦人科において,昭和46年●月●日及び昭和48年●月●日に出産し,昭和46年●月●日の出産の際には,約400mlの出血があったことを認めることができる。 イしかし,●産婦人科において,前記各出産当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告44番に対する治療の際に特定フ ィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告44番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできな る証拠はない。 3 結論以上によれば,原告44番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙亡原告46番関係 第1 当事者の主張(亡原告46番の主張) 1 亡原告46番は,昭和55年●月,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した(ただし,当時はC型肝炎との名称はなく,単に肝炎との診断であった。)。亡原告46番は,慢性C型肝炎,肝硬変,肝細胞がんであったが,平成27年●月●日に死亡した。 2 亡原告46番は,昭和44年●月●日,●産婦人科医院において,第二子(女児)を出産した。その際,亡原告46番は弛緩出血により出血し,母子手帳には分娩所要時間5時間,出血量400ml,子の体重3840gと記載された。 3 ●産婦人科医院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 亡原告46番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●産婦人科医院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 C型肝炎ウイルス感染の事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係,慢性C型肝炎が進行して,肝がんにり患した事実は否認する。 2 母子手帳に照らせば,亡原告46番は,前記出産の際,約400mlの出血をし,妊娠中毒症であったことが認められるが,当該出血は生理的範囲の出血であり,亡原告46番の陳述書によっても,亡原告46番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 ●●医師(以下「● 当該出血は生理的範囲の出血であり,亡原告46番の陳述書によっても,亡原告46番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 ●●医師(以下「●医師」という。)作成の証明書及び手紙には,特定フィブリノゲン製剤を投与した旨の記載があるが,これはあくまで母子手帳の記載からの推測にすぎない。そして,●医師が特定フィブリノゲン製剤投与の根拠としている事実は,①前記出産における児の体重が平均体重よりも重い3840gであったこと,②前記出産の際に妊娠中毒症があったこと,③弛緩出血により約400mlの出血が生じたことのようであるところ,①の事実は,特定フィブリノゲン製剤投与を推測することができない事実である。また,妊娠中毒症では,高血圧が最も重視すべきものとされるが,前記出産当日の亡原告46番の収縮期血圧は148mmHgであり,正常よりやや高い程度の軽症にすぎない。そうすると,②の事実も,特定フィブリノゲン製剤投与を推認することができない事実である。そして,弛緩出血は,少なくとも昭和40年頃には,分娩後24時間以内に500ml以上の出血をしたものをいうとされていたところ,前記出産時の出血は約400mlであり,③の事実のうち弛緩出血との部分は誤りである。通常,出産時には200~400ml程度の出血が生じるのであり,③の事実のうち出血が約400mlであったとの部分は,出血が生理的範囲で治まった,すなわち特段の問題なく止血されたことを裏付ける事実であり,特定フィブリノゲン製剤が投与されなかったことを推測させる事実である。 したがって,●医師作成の証明書及び手紙により,特定フィブリノゲン製剤投与を認めることはできない。 さらに,●産婦人科医院の特定フィブリノゲン製剤の納入実績は,昭和55年以 る事実である。 したがって,●医師作成の証明書及び手紙により,特定フィブリノゲン製剤投与を認めることはできない。 さらに,●産婦人科医院の特定フィブリノゲン製剤の納入実績は,昭和55年以降のものしか存しないが,昭和59年に2本,昭和61年に1本のみである。昭和55年から昭和59年までの間に●産婦人科医院に全く納入実績がないことに照らすと,昭和59年までの間は 特定フィブリノゲン製剤が全く納入されていなかった可能性もあるし,仮に納入されていたとしてもせいぜい年に1本程度であり,●医師が特定フィブリノゲン製剤を投与した症例は極めて少ないと考えられる。 ●医師は,手紙において,400mlの出血があれば特定フィブリノゲン製剤を投与し,その効果を見ながら輸血に切り替えるのを常としていた旨を記載するが,かかる記載は前記のとおりの納入実績に照らし,信用できないというべきである。 (補助参加人の主張)亡原告46番が肝臓がんにり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。 母子手帳のほかに,亡原告46番の出産時の状態,その状態における●医師の対応,特定フィブリノゲン製剤の投与についての判断等を示すカルテ等の客観的な医学資料等は存在しない。 ●医師作成の証明書は,手紙の記載内容に照らすと,●医師の推測に基づくものであることは明らかであり,亡原告46番の前記出産時に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを認めるに足りるものではない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ46の1,5,6,9~11,乙ハ46の2)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 亡原告46番は,昭和●年●月●日生まれの 定事実前記前提事実に証拠(甲ハ46の1,5,6,9~11,乙ハ46の2)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 亡原告46番は,昭和●年●月●日生まれの者である。 亡原告46番には5人のきょうだいがいる。 (2) 亡原告46番は,昭和44年●月●日,●産婦人科医院において,第二子(女児)を出産した。その際の出血量は約400mlであり, 亡原告46番は妊娠中毒症であった。また,児の体重は3840gであった。 (3) 亡原告46番は,平成10年●月●日,●クリニックでC型肝硬変と診断され,その治療を受けるようになった。亡原告46番は,遅くとも平成8年以降,●病院でも治療を受けており,平成17年●月,肝硬変であり,肝細胞がんが強く疑われると診断され,同病院の紹介により,●病院を受診し,以後,同病院で手術等の治療を受けた。亡原告46番は,同病院において,平成23年●月●日付けで,慢性C型肝炎,肝細胞がん,肝硬変(非代償性肝硬変)と診断され,平成27年●月●日に死亡した。 (4) ●医院には,昭和55年から昭和58年までは特定フィブリノゲン製剤は納入されておらず,昭和59年に2本,昭和61年に1本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,亡原告46番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 亡原告46番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア亡原告46番の陳述書(甲ハ46の1)亡原告46番の家族でC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 亡原告46番は,第二子(女児)妊娠中に妊娠中毒症にかかり,これまでは出産するとすぐに病室へ移されていたが,第二子(女児)出産時には長時間 6番の家族でC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 亡原告46番は,第二子(女児)妊娠中に妊娠中毒症にかかり,これまでは出産するとすぐに病室へ移されていたが,第二子(女児)出産時には長時間分娩室に寝かされ,その間点滴を受けた記憶がある。 亡原告46番は,昭和55年,●病院で検査を受け,肝炎であると判明し,既に肝硬変に進行しているとの診断結果が出た。その後, 肝がんの発症が判明し,同病院から●病院を紹介され,以後,同病院で手術等の治療を受けた。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●産婦人科医院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 イ ●医師作成の証明書(甲ハ46の2)昭和44年●月●日,●産婦人科医院において,亡原告46番の分娩の際,弛緩出血(400ml)を来したため,フィブリノーゲンの注射を行い,事なきを得たことを証明する。 ウ ●医師作成の手紙(甲ハ46の3)随分以前のことなので,記憶は定かではないが,母子手帳から推測すると,児の体重が3840gと平均体重より少し大きく,母体の方にも妊娠中毒症があり,分娩時の出血量も約400mlと比較的多いので,輸血か輸液が必要と考えたに相違ない。この場合,当時,まず考えたのはフィブリノーゲンの輸液であり,その効果を見て輸血に切り替えるのを常としていた。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,亡原告46番は,昭和44年●月●日,●産婦人科医院において,第二子(女児)を出産したことを認めることができる。 イしかし,●産婦人科医院において,昭和44年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたことを認めるに足りる証拠はない。 むしろ,前記1(4)のとおり,昭和55年から昭和58年までの間に●医院に全 イしかし,●産婦人科医院において,昭和44年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたことを認めるに足りる証拠はない。 むしろ,前記1(4)のとおり,昭和55年から昭和58年までの間に●医院に全く納入実績がないことに照らすと,同医院で特定フィブリノゲン製剤が使用されるようになったのは昭和59年以降である可能性が相当程度存するというべきである。 また,前記1(2)のとおり,亡原告46番は妊娠中毒症であった が,出血量は約400mlにとどまり,母子手帳から分娩時に何らかの異常が生じたことをうかがうことはできず(甲ハ46の6),亡原告46番の陳述書によっても,当時の亡原告46番の病態は明らかではない。したがって,亡原告46番に対する治療の際にフィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,母子手帳及び亡原告46番の陳述書だけでは明らかではない。 そして,前記(1)イ及びウのとおり,●医師作成の証明書等には,前記出産時に,亡原告46番に対して特定フィブリノゲン製剤を投与した旨の記載があるが,これは母子手帳に基づく●医師の推測を記載したものにすぎないところ,母子手帳により,亡原告46番が,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったと認めることができないことは前記のとおりであり,●医師の推測に合理的な根拠があるとは認め難い。また,約400mlの出血があれば特定フィブリノゲン製剤を投与し,その効果を見ながら輸血に切り替えるのを常としていたという●医師の投与方針も,前記1(4)のとおり,昭和55年以降,●産婦人科医院に納入された特定フィブリノゲン製剤の本数が非常に少ないことに照らすと,にわかに信じることができない。以上によれば,●医師作成の証明書等の記載内容を採用することはできず,他に亡原告46番に対する治療の際に特 特定フィブリノゲン製剤の本数が非常に少ないことに照らすと,にわかに信じることができない。以上によれば,●医師作成の証明書等の記載内容を採用することはできず,他に亡原告46番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったことを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,亡原告46番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告52番関係 第1 当事者の主張(原告52番の主張) 1 原告52番は,平成3年頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告52番は,肝硬変により現在も通院加療中である。 2 原告52番は,昭和57年●月●日,知人に刃物で左胸ないし左脇腹部分を刺され,肺,胃を貫通するなど臓器及び血管に大きな損傷を負い,●病院(平成18年に●●病院と改称)において,腹部2箇所を開腹して肋骨を2本取り出した上,肺や胃を処置し,体内を洗浄するなどの措置を受け,取り出した肋骨のうち1本を接着する手術を受けた。 3 ●病院には,昭和55年に340本,昭和56年に130本,昭和57年に160本の特定フィブリノゲン製剤が納入された。 4 原告52番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 C型肝炎ウイルス感染の事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 2 原告52番の陳述書には,特定フィブリノゲン製剤投与に関する記載は全くなく,前記陳述書によっても,原告52番 フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 2 原告52番の陳述書には,特定フィブリノゲン製剤投与に関する記載は全くなく,前記陳述書によっても,原告52番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)原告52番が慢性肝炎にり患した事実,慢性肝炎が進行して,肝硬変にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ52の1,6~11,13)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告52番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。 原告52番には2人のきょうだいがいる。 (2) 原告52番は,平成14年●月●日,医療法人●会●内科(以下「●内科」という。)を受診し,慢性C型肝炎と診断された。 原告52番は,平成18年●月●日,医療法人●病院(以下「●病院」という。)で慢性活動性C型肝炎と診断され,同月●日,肝硬変症の疑いと診断され,インターフェロン治療を受けた。 (3) ●病院には,昭和57年に160本(ただし,同年に20本を返品)の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,原告52番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告52番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告52番の陳述書(甲ハ52の1,16)原告52番の家族でC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告52番は,昭和57年●月●日,知人に刃物で左胸を刺され,●病院に救急搬送された後,●病院に救 2番の陳述書(甲ハ52の1,16)原告52番の家族でC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告52番は,昭和57年●月●日,知人に刃物で左胸を刺され,●病院に救急搬送された後,●病院に救急搬送された。原告52番は,大量に出血し,救急搬送されている途中に意識不明の状態となった。原告52番は,同病院で緊急手術を受け,手術後,2日間ほど,ICUで術後の管理を受けた。その後,病室に移動し,病室で初めて意識が戻った。そのとき,左胸にはチューブが2本入れられ, 口にマスクが当てられていた。さらに,点滴が右腕につながれていたが,点滴の形状,色,量までは覚えていない。病室で,主治医から,刺されたことで肺と胃が貫通していたこと,それぞれ開腹して処置をしたこと,刺された直前に食べた焼肉等が胃から体内に流出したこと,体内を浄化する必要がありチューブを入れていること,左側の肋骨を2本取り除いて1本を接着したこと等の説明を受けた。また,主治医から,「出血がすごかった」などと言われたことを覚えている。手術の際,輸血を受けたが,その量については特に説明を受けた記憶がない。 手術後,●病院に約2か月半,入院した。退院日の2,3日前に,主治医から,「肝臓が悪くなっているから,もう少し入院して治療した方がいい」と言われたが,これを断った。 退院後すぐに,近所の町医者に行き,「肝臓が相当悪いので,大きい病院で入院して治療を受けなさい」と言われ,昭和59年頃,●病院に約1か月間,入院した。平成3年頃,●内科でC型肝炎ウイルスに感染していることが分かった。●病院でインターフェロン治療を受けたが,眼底出血等の副作用によりやむなく中止した。その後も病院通いを続け,平成21年●月に,●内科で受けた検査用紙には「肝硬変」と記載されていた。現在は,●内科 。●病院でインターフェロン治療を受けたが,眼底出血等の副作用によりやむなく中止した。その後も病院通いを続け,平成21年●月に,●内科で受けた検査用紙には「肝硬変」と記載されていた。現在は,●内科及び●病院に通院しており,●病院の医師からは,肝硬変には至っていないといわれている。 昭和61年頃に背中に刺青を入れたが,前記のとおり,それ以前から肝機能の異常を指摘されている。C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 イ原告52番の妹及び友人作成の各書面(甲ハ52の2~5) 原告52番が突然の事故により●病院に入院し,病院に見舞いに行った。 (2) 検討ア前記陳述書及び各書面に加え,原告52番が,受診先の医療機関の医師らに対し,陳述書と同旨の説明をしていること(甲ハ52の6,8,9),昭和57年●月●日の新聞に原告52番が合口で左胸を刺された旨の記事が掲載されていること(甲ハ52の12)を併せ考慮すれば,原告52番が同月●日,●病院において,前記手術を受けたことを認めることができる。また,前記1(3)のとおり,●病院には,昭和57年に160本(ただし,同年に20本を返品)の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができる。 イしかし,原告52番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告52番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 は,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告53番関係 第1 当事者の主張(原告53番の主張) 1 原告53番は,平成6年頃,●病院での検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告53番は,昭和49年●月●日,●病院において,自然分娩により第二子(男児)を出産し,その際に中等量の出血をした。 3 ●病院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 4 原告53番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告53番の供述によっても,前記出産当時の原告53番の具体的病態は不明であるから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ53の1~3,8,原告53番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告53番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告53番には2人のきょうだいがいる。 (2) 原告53番は,昭和49年●月●日午後9時52分,●病院において,自然分娩により,第二子(男児)を出産し,そ 生まれの女性である。 原告53番には2人のきょうだいがいる。 (2) 原告53番は,昭和49年●月●日午後9時52分,●病院において,自然分娩により,第二子(男児)を出産し,その際,中等量の出血をした。分娩介助は,●●医師(以下「●医師」という。)が行った。 (3) 原告53番は,平成6年,●病院における血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,平成23年●月●日,●病院において,慢性C型肝炎との診断を受けた。 (4) ●病院は,昭和49年当時,産婦人科ほか7の診療科目を有し,ベッド数は312床,産婦人科の医師数は3名,産婦人科外来の看護師数は2名,産科センターの看護師数は6名,年間分娩件数は約320件であった。 ●病院では,昭和55年頃から特定フィブリノゲン製剤を使用していたが,昭和49年当時は使用していなかった。 (5) 原告53番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告53番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告53番の平成24年9月11日付け,平成28年8月2日付け陳述書(甲ハ53の1,12)原告53番は,昭和49年●月●日,●病院の産婦人科において,第二子(男児)を出産した。なお,妊娠時の血液検査では,全く異常がなかった。第二子出産の直前の10か月検診での担当医師は,部長の●●医師であったが,結果的に出産は夜間(分娩は 午後9時52分)となったため,担当は当直医の●医師であった。 分娩は通常どおり進んでいたと思っていたが,途中に,看護師が,血圧が「60です」,「4 果的に出産は夜間(分娩は 午後9時52分)となったため,担当は当直医の●医師であった。 分娩は通常どおり進んでいたと思っていたが,途中に,看護師が,血圧が「60です」,「40です」と言うなど,分娩室がにわかに慌ただしくなったのをはっきりと覚えている。原告53番は,ぼんやりと意識が薄れ,このまま死ぬのかと思った。原告53番の母親は,原告53番に対し,折に触れ,前記出産は大変なお産で,怖い思いをしたと話していた。 原告53番は,昭和51年●月,発熱,体調不良で●病院を受診した際,B型肝炎であると言われた。その後,昭和58年まで,同病院において,注射などの肝炎治療を受けた。 その後も体調不良が続いたため,平成6年からは,●病院において,肝炎の治療を受けることになった。当初はB型肝炎の治療を受けていたが,何回かの血液検査の結果,原告53番のり患している肝炎は,B型肝炎ではなくC型肝炎だと言われた。 平成20年からは,●病院で,インターフェロン治療を受けた。 同治療の結果,C型肝炎ウイルスは検出されなくなり,現在は経過観察という状態になっている。 原告53番は,フィブリノゲン製剤の投与がC型肝炎の原因であることを知って以降,●病院に対し,前記出産の際のカルテが残っていないか問い合わせたが,病院の引越しの際に,カルテやフィブリノゲン製剤の納入記録は全て廃棄した旨の回答であった。 また,原告53番は,前記出産の際に分娩介助をした●医師を訪問し,前記出産時のフィブリノゲン製剤の投与について質問をするなどした。 原告53番は,昭和60年,●会●病院(以下「●病院」という。)で子宮全摘手術を受けた。手術に至った経緯は,子宮の癒着 がひどく,破れかけていると言われ,緊急手術となったというものであるが 53番は,昭和60年,●会●病院(以下「●病院」という。)で子宮全摘手術を受けた。手術に至った経緯は,子宮の癒着 がひどく,破れかけていると言われ,緊急手術となったというものであるが,当時の記憶はあまりなく,輸血されたかどうかも覚えていない。 原告53番の両親,きょうだいにC型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告53番は,入れ墨,輸血,ピアス,人工透析,鍼治療の経験はない。 イ ●医師の回答(甲ハ53の4の3)●医師は,昭和49年当時,●大学産科婦人科学教室より,出張要員として,●病院産婦人科の●●講師の下で勤務していた。 昭和49年当時,●病院産婦人科において,フィブリノゲン製剤を使用していたかについては,あいまいな記憶しかないが,産婦人科において使用されていた可能性はある。原告53番の,昭和49年●月●日の出産に関しても,あいまいな記憶しかない。 ウ原告53番の供述(本人尋問)原告53番は,昭和49年●月●日午後3時頃に,自宅において陣痛が発来し,●病院に行った。 同病院に到着後は,外来で診察を受けた後,分娩室で分娩台に乗せられ,横になった。分娩中,膣と肛門の間にメスをすっと入れられ,その後,看護師が「先生,血圧が60の40です」と言っていたように思う。少なくとも,「60」と「40」という二つの数字が並べて述べられたことは,はっきりと覚えている。医師や看護師が慌ただしくしていて,原告53番の意識はもうろうとしていた。 はっきりと意識が戻ったのは,病室に戻ってからだった。点滴をされていたかは覚えていない。メスで切られ,切創部を縫われた膣の部分がずきずきと痛かった。医師や看護師と,前記出産に ついて話をした りと意識が戻ったのは,病室に戻ってからだった。点滴をされていたかは覚えていない。メスで切られ,切創部を縫われた膣の部分がずきずきと痛かった。医師や看護師と,前記出産に ついて話をした記憶はなく,出血量,輸血の有無,止血剤投与の有無は,いずれも聞いていない。 昭和60年に受けた子宮全摘手術は,同手術の何か月か前くらいから,下腹部の異常な痛みがあり,放っておけないと思って●病院に行き,緊急手術となったという経緯である。同手術における出血量,輸血の有無,止血剤投与の有無は,いずれも分からない。 昭和46年の第一子の出産及び前記第二子の出産以外に,出産や人工妊娠中絶の経験はない。また,前記子宮全摘手術以外に,手術や出血を伴うような病気,けがをしたことはない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告53番が,昭和49年●月●日午後9時52分,●病院において,自然分娩により,第二子(男児)を出産し,その際,中等量の出血をしたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和49年当時,特定フィブリノゲン製剤が使用されていたと認めることはできないし,原告53番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告53番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告55番関係 第1 当事者の主張(原告55番の主張) 1 原告55番は,平成4年 できないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告55番関係 第1 当事者の主張(原告55番の主張) 1 原告55番は,平成4年,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,平成23年●月●日付けで慢性C型肝炎と診断されている。 2 原告55番は,昭和55年●月●日,●病院において,第一子(男児)を出産した。母子手帳の「分娩の経過」欄には,特記事項として「胎盤用手剥離」と印字され,出血量は「少量」とされ,「200」と手書きされている。しかし,胎盤用手剥離をしなければならない状態であり,原告55番にはエルメトリン1Aが子宮収縮剤として投与されていることからすると,出血量が少量であるということはあり得ない。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関であり,昭和55年1月以降の納入実績があることは明らかである。 4 原告55番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 C型肝炎ウイルス感染の事実,原告55番が慢性C型肝炎にり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 2 原告55番の陳述書には,特定フィブリノゲン製剤を投与された旨の記載はなく,前記陳述書によっても,原告55番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ55の1~8,10,12)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ55の1~8,10,12)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告55番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告55番には5人のきょうだいがいる。 (2) 原告55番は,昭和55年●月●日,●病院において,第一子(男児)を出産した。その際の出血量は約200mlであり,胎盤の用手剥離が行われた。同出産の分娩台帳には,エルメトリン1A及びケタラールが投与された旨の記載があるが,特定フィブリノゲン製剤に関する記載はない。 同病院における同年の分娩件数は2162件であった。 (3) 原告55番は,平成4年,●センターで慢性C型肝炎と診断され,平成16年以降,3回のインターフェロン治療を受け,陰性化が確認された後,平成19年●月●日に治療を終了し,ウイルス学的著効を得たと判断された。 (4) ●病院には,昭和55年に52本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,原告55番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告55番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告55番の陳述書(甲ハ55の1)原告55番の両親やきょうだいにC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告55番は,昭和55年●月●日,●病院において,第一子(男 児)を出産した。難産だった。出産後,しばらくして助産師に麻酔注射をされた。後で聞くと,助産婦に麻酔注射をする資格はないが,胎盤剥離(常位胎盤早期剥離)という状態になっており,できるだけ早く処置をしなければならなかったとのことである。また,当直の医師が,手で胎 をされた。後で聞くと,助産婦に麻酔注射をする資格はないが,胎盤剥離(常位胎盤早期剥離)という状態になっており,できるだけ早く処置をしなければならなかったとのことである。また,当直の医師が,手で胎盤をかきだしたと後で聞いた。母子手帳では,出血量が「少量」となっているが,その後,第一子(男児)及び第二子(男児)が通院していた小児科で聞くと,胎盤剥離で出血量が少量であることはあり得ないと言われた。 第一子(男児)出産後,いつも身体がだるいと感じるようになり,血液検査において,肝機能の悪化を示す数値は高いままであった。 平成4年,●センターで検査を受け,慢性C型肝炎と診断され,インターフェロンの投与等の治療を受けた。 原告55番は,昭和57年●月●日,●産婦人科で第二子(男児)を出産したが,同産婦人科にフィブリノゲン製剤は納入されていない。C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 イ ●病院作成の書面(甲ハ55の4の1)フィブリノゲン製剤は昭和39年に承認された製剤であり,当時の治療にあっては,輸血を要する大量出血の場合は,止血のために選択される治療法であり,●病院においても救命目的の選択肢として使用していたことが推測される。 (2) 検討ア前記1(2)及び(4)のとおり,原告55番は,昭和55年●月●日,●病院において第一子(男児)を出産し,その際に胎盤の用手剥離が行われたこと,同年,●病院には52本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができる。 イしかし,前記1(2)のとおり,出血量が約200mlにとどまる前記出産の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認 る。 イしかし,前記1(2)のとおり,出血量が約200mlにとどまる前記出産の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告55番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙亡原告56番関係 第1 当事者の主張(亡原告56番の主張) 1 亡原告56番は,平成2年,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。その後,亡原告56番は,C型肝硬変との診断を受け,平成26年●月●日,死亡した。 2 亡原告56番は,昭和39年●月頃,医療法人●会●病院(以下「●病院」という。)において,腹膜炎の手術を受けた。同手術時,亡原告56番の腸は破れ,大量に出血していた。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。●病院には,少なくとも昭和56年に15本,昭和57年に30本の特定フィブリノゲン製剤が納入された。 4 亡原告56番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告56番の1代理人作成の報告書によっても,亡原告56番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。また,昭和39年の特定フィブリノゲン製剤の製造量は1323gであり(当時の添付文書記載の通常1回用量の下限である3gで除すと,441回分),当 ン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。また,昭和39年の特定フィブリノゲン製剤の製造量は1323gであり(当時の添付文書記載の通常1回用量の下限である3gで除すと,441回分),当時,一般的に入手困難な製剤と位置付けられていた。そうすると,そもそも前記手術当時,●病院に特定フィブリノゲン製剤が存在したことすら疑問である。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染 との因果関係は否認する。 亡原告56番が慢性肝炎にり患した事実,慢性肝炎の進行により肝硬変にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ56の1~4)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 亡原告56番は,昭和●年●月●日生まれの者である。 亡原告56番には5人のきょうだいがいる。 (2) 亡原告56番は,医療法人●会●病院(以下「●病院」という。)に通院し,平成23年●月●日,C型肝硬変と診断され,平成26年●月●日,死亡した。 (3) ●病院には,昭和56年に15本,昭和57年に30本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,亡原告56番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 亡原告56番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告56番の1代理人作成の報告書(甲ハ56の4)亡原告56番の両親やきょうだいでC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 亡原告56番は,昭和39年●月頃,●病院において,腹膜炎の手術を受けた。執刀した● 1代理人作成の報告書(甲ハ56の4)亡原告56番の両親やきょうだいでC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 亡原告56番は,昭和39年●月頃,●病院において,腹膜炎の手術を受けた。執刀した●医師によると,虫垂が破れて腹膜炎の状 態にあり,出血量は大量で,その出血により,破れた虫垂を視認し難いほどであったとのことである。点滴を受けた記憶はあるが,いかなる薬剤を点滴されたのかは説明を受けていないため,分からない。 平成2年●月●日に行われた健康診断において,C型肝炎ウイルスに感染していることを知った。●病院において,平成6年及び平成17年にインターフェロン治療を受けたが,奏功しなかった。平成23年,●病院で肝硬変との診断を受けた。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 イ ●病院作成の書面(甲ハ56の2)前記手術が行われた昭和39年当時のフィブリノゲン製剤の納入記録はなく,昭和55年以前の納入実績は不明である。昭和39年当時のカルテは既に廃棄されており,勤務していた職員も退職しているため,事実確認を行うことができない。 しかし,昭和56年に15本,昭和57年に30本の納入実績があること,亡原告56番及びその家族が主張する手術時の状況に照らすと,亡原告56番がフィブリノゲン製剤の投与によりC型肝炎ウイルスに感染した可能性はある。 (2) 検討ア亡原告56番の昭和39年●月頃の腹膜炎の手術に関し,診断書やカルテなどの医療機関の作成した証拠があるものではないが,前記報告書には具体的状況が記載してあり,そのような事実があったことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和39年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,亡原 ものではないが,前記報告書には具体的状況が記載してあり,そのような事実があったことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和39年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,亡原告56番に対する治療の際に特定フィ ブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,亡原告56番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告57番関係 第1 当事者の主張(原告57番の主張) 1 原告57番は,平成20年●月●日,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告57番に肝炎等の症状は出ていない。 2 原告57番は,昭和53年●月●日,●会●病院(現在は社会福祉法人●会●病院,以下「●病院」という。)において,全前置胎盤と診断され,帝王切開により第一子(男児)を出産した。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告57番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告57番の陳述書には,看護師から,「止血剤打つから」と言われた旨の記載があるが,当該「止血剤」薬が特定フィブリノゲン製剤を指すとは認められず,前記記載から,特定フィブリノゲン製剤投与が認められるものではない。また,前記陳述書によっても,原告57番が当時,特定フィブリ あるが,当該「止血剤」薬が特定フィブリノゲン製剤を指すとは認められず,前記記載から,特定フィブリノゲン製剤投与が認められるものではない。また,前記陳述書によっても,原告57番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。さらに,●●医師(以下「●医師」という。)作成の回答書は,当該患者がショック状態に至っていた,又はショック状態になりかけていたことを前提としたものであるところ,原告57番が前記出産において,そのような状態であったことを認めるに足りる証拠はない。 (補助参加人の主張) C型肝炎ウイルス感染の事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 原告57番が主張する「大量出血」の量は不明であり,特定フィブリノゲン製剤の投与が必要であったか否かは明らかではない。●医師作成の回答書も,その記載内容に照らせば,原告57番に対して特定フィブリノゲン製剤を投与したことを証明し得るものではない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ57の1,2,4)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告57番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告57番には1人のきょうだいがいる。 (2) 原告57番は,昭和53年●月●日,●病院において,帝王切開により第一子(男児)を出産した。原告57番は,全前置胎盤の状態であり,母子手帳に出血量に関する記載はない。 (3) 原告57番は,平成20年●月●日,●病院で検査を受け,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 (4) 原告57番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあること る記載はない。 (3) 原告57番は,平成20年●月●日,●病院で検査を受け,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 (4) 原告57番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告57番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告57番の陳述書(甲ハ57の1)原告57番の家族でC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告57番の夫は肝硬変であったが,それはアルコール性のものである。 昭和53年●月中頃,妊娠5か月目に,自宅のトイレで出血し,切迫流産で●病院に1か月程度入院した。同年●月下旬,検診を兼ねて●病院の母親学級に行っている際,出血し,再入院した。少しでも動いたら出血する状態で,寝たままの入院生活が続いた。同年●月●日,お腹が張って,おしっこかなと思い,看護師に持ってきてもらった便器で用を足していたところ,真っ赤な血が出てきた。 それを見た看護師も驚き,原告57番のパジャマの両腕を切り裂き,両腕に点滴注射を刺しながら,「今,●先生に連絡したから大丈夫やで。止血剤打つから」と声を掛けてくれた。●医師が到着するまでは,●●医師(以下「●医師」という。)が対応してくれた。 手術室に移動する準備ができたときに,緊急手術の連絡を受けた原告57番の夫と叔母が病院に到着し,ベッド上の防水シーツが血で真っ赤に染まっていたので驚いていた。手術室に運ばれたとき,ちょうど●医師が到着し,「O型の血液1000ml用意してるから,大丈夫」などと励ましてくれた。手術台に乗せられ,冷たい液体をお腹の周りにベタベタと塗られ,ゴムのようなものをかぶせられた。局部麻酔だと間に合 医師が到着し,「O型の血液1000ml用意してるから,大丈夫」などと励ましてくれた。手術台に乗せられ,冷たい液体をお腹の周りにベタベタと塗られ,ゴムのようなものをかぶせられた。局部麻酔だと間に合わないから全身麻酔をする,でも赤ちゃんに麻酔が効かないようにということで,肩から麻酔注射をされた。その直後,「はよ切れ」という声が聞こえ,意識がなくなった。手術室の外で待機していた原告57番の夫と叔母は,「血液が足りない」などと言いながら看護師が出てきてバタバタしている様子だったので,心配したと言っていた。 出産後,3人用の大部屋を原告57番用の個室にしてもらい,ビニールの囲いのようなものの中に入って点滴を受けた。看護師か ら「産婦人科から初めて死人を出すかと思った」と言われたほどで,とにかく出血がすごかったそうである。同年●月,ようやく退院することができた。 平成20年●月●日に●保健所で検査を受けた後,●病院で精密検査を受け,C型肝炎ウイルスに感染していることが分かった。 薬害C型肝炎訴訟のことを知り,●医師及び●医師に連絡したところ,●医師は原告57番に対するフィブリノゲン製剤の使用の有無を覚えておらず,●医師は「当時,フィブリノゲンは病院で使っていたので,使ったとは思うが,●先生が主治医なので,●先生に証明してもらうのが筋と思う」と言っていた。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 イ ●医師作成の回答書(甲ハ57の3)原告57番に対してフィブリノゲン製剤等を使用した可能性はあるが,記憶はない。当時,産科出血に対し,ショック防止,生命を救うためにフィブリノゲン製剤を使用したと思う。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告5 ィブリノゲン製剤等を使用した可能性はあるが,記憶はない。当時,産科出血に対し,ショック防止,生命を救うためにフィブリノゲン製剤を使用したと思う。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告57番は,昭和53年●月●日,●病院において,帝王切開により第一子(男児)を出産し,その際,全前置胎盤の状態であったことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和53年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたことを認めるに足りる証拠はない。 また,前記陳述書には,原告57番が大量に出血し,看護師から,点滴注射を刺しながら,「止血剤打つから」と声を掛けられたと記載されているにとどまり,前記1(2)のとおり,全前置胎盤の状態にあったことを考慮しても,原告57番に対する治療の際に特定フ ィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告57番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告59番関係 第1 当事者の主張(原告59番の主張) 1 原告59番は,平成7年●月●日,医療法人●会●クリニックにおいて,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告59番は,昭和57年●月●日,●病院(以下「●病院」という。)において,第一子(女児)を出産し,その際,中量の出血をした。 3 ●病院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 ●月●日,●病院(以下「●病院」という。)において,第一子(女児)を出産し,その際,中量の出血をした。 3 ●病院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 4 原告59番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告59番の供述によっても,前記出産時及び出産後(弛緩出血)の具体的な出血量は不明であり,その他に何らかの異常があった様子はうかがわれず,DICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められないから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告59番は,原告59番の夫が,看護師から,止血剤を使っている旨の説明を受けたと供述するが,同供述によっても,当該止血剤の薬剤名は不明であるから,当該止血剤が特定フィブリノゲン製剤であったと認めることはできない。 また,原告59番は,前記出産の際,輸血を受けているところ,当該輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定できない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ59の1~3,4の1~3,原告59番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告59番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告59番には2人のきょうだいがいる。 (2) 原告59番は,昭和57年●月●日午前9時32分,●病院において,第一子(女児)を出 (1) 原告59番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告59番には2人のきょうだいがいる。 (2) 原告59番は,昭和57年●月●日午前9時32分,●病院において,第一子(女児)を出産し,その際,中量の出血をした。分娩介助は●●医師(以下「●医師」という。)が行った。 (3) 原告59番は,平成23年●月●日,●病院において,慢性C型肝炎との診断を受けた。 (4) 原告59番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告59番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告59番の平成27年2月11日付け,平成31年1月31日付け陳述書(甲ハ59の1,5)原告59番は,昭和57年●月●日,●病院において出産をした。担当医師は●医師で,助産師は●●であった。ただし,主に診てくれた医師は●医師であり,分娩後の出血への処置を担当したのは●医師と考えられる。 原告59番は,妊娠後期頃から,胎児の成長があまり良くないということを,●医師から告げられていたが,それ以外には大きな問題があるとは言われていなかった。実際に,分娩自体も比較的スムーズに進んだと記憶している。なお,母子手帳に「一部胎盤早剥の疑い」とあるが,出産前には聞いた覚えがない。 分娩を終えて病室に戻ってしばらくしてから,お腹を締め付けられるような痛みに襲われた。看護師に対し,そのことを訴えると,子宮が収縮しているからだと言われた。その後,痛みが強くなり,出血が多かったため,膣内に何度もガーゼを挿入されたり,点滴及び輸血を受けたりした。出血がいつまで続いたのかについての ことを訴えると,子宮が収縮しているからだと言われた。その後,痛みが強くなり,出血が多かったため,膣内に何度もガーゼを挿入されたり,点滴及び輸血を受けたりした。出血がいつまで続いたのかについての明確な記憶はないが,産後何日も出血が続いたのだと思う。 点滴された薬剤の色及び薬剤の容器についての記憶はなく,出血の原因について,医師から説明を受けた記憶もない。出産当日の夜,おそらく午後9時から午後10時頃に,看護師から,原告59番の夫に対し,「出血が止まらないため止血剤の投与や輸血をしています。」という趣旨の状況説明があったそうである。 原告59番は,平成7年●月●日,医療法人●会●クリニックで受けた健康診断の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることを知らされた。なお,原告59番は,前記出産に先立って,昭和57年●月●日に血液検査を受けているところ,各数値は正常だった。 感染判明後は,平成21年●月から平成23年●月にかけて,インターフェロン治療を受け,ウイルスが検出されない状態まで回復した。 原告59番の両親及びきょうだいに,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告59番は,入れ墨,人工透析,前 記出産の際に受けたもの以外の輸血の経験はない。21歳の頃にピアス穴を開けているが,新品のキットを購入して開けたため,その際の感染はない。 原告59番は,小学校低学年の頃,●病院において,腹膜炎(盲腸)の手術を受け,その際,原告59番の父の血液の輸血を受けたが,前記のとおり,原告59番の父は,C型肝炎ウイルスに感染しておらず,前記輸血による感染はない。 イ原告59番の供述(本人尋問)原告59番は,昭和57年●月●日,●病院において第一子を出産したとこ 9番の父は,C型肝炎ウイルスに感染しておらず,前記輸血による感染はない。 イ原告59番の供述(本人尋問)原告59番は,昭和57年●月●日,●病院において第一子を出産したところ,分娩時の出血は普通だったと思う。病室に戻ってから,激しい腹痛に見舞われ,大量出血をした。大量出血に対しては,膣にガーゼを詰められた他,点滴及び輸血の処置を受けた。点滴や輸血の具体的内容については,医師から説明を受けておらず分からないが,前記出産当日の夜,原告59番の夫が,看護師から,大量出血のため止血剤の投与や輸血をしている旨の説明を受けたそうである。ガーゼの処置は,退院の少し前まで,取り替えながら続けられた。原告59番はガーゼの取り替えの様子を目で見ておらず,出血の程度などは分からない。 原告59番は,平成7年にC型肝炎ウイルスに感染していることが判明する以前も,原告59番の会社の人間ドックで定期的に検診を受けていたが,C型肝炎ウイルスのチェックはオプションであったため,平成7年以前は受けていなかった。 原告59番は,昭和62年●月●日に,第二子を出産しているところ,特に問題はなかった。 原告59番は,鍼治療の経験があるが,その時期は,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した後である。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告59番が,昭和57年●月●日午前9時32分,●病院において,第一子(女児)を出産し,その際,中量の出血をしたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和57年当時,特定フィブリノゲン製剤が使用されていたか,原告59番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明ら し,●病院において,昭和57年当時,特定フィブリノゲン製剤が使用されていたか,原告59番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告59番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告68番関係 第1 当事者の主張(原告68番の主張) 1 原告68番は,平成3年秋頃,●クリニックにおいて,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎から肝がんまで病態が進行し,治療を受けてきた。 2 原告68番は,昭和46年●月,医療法人●会●病院(以下「●病院」という。)において,卵巣嚢腫摘出術を受けた。 3 ●病院には,前記手術当時,特定フィブリノゲン製剤が納入されていた。 4 原告68番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告68番の供述によっても,原告68番が,前記手術の当時,出血によりDICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められず,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告68番は,前記手術の翌日の朝,貧血を理由に特定フィブリノゲン製剤を投与されたと主張する。 しかし,貧血は,血液凝固因子であるフィブリノゲンを補充することで改善するものではなく,原告68番 告68番は,前記手術の翌日の朝,貧血を理由に特定フィブリノゲン製剤を投与されたと主張する。 しかし,貧血は,血液凝固因子であるフィブリノゲンを補充することで改善するものではなく,原告68番の主張は不自然・不合理である。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染 との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ68の1,2,4,5,7,原告68番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告68番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。原告68番には7人のきょうだいがいる。 (2) 原告68番は,昭和46年●月,●病院において,卵巣嚢腫摘出術を受けた。 (3) 原告68番は,平成20年●月●日,●病院(以下「●病院」という。)において,肝がんと診断された。 (4) 原告68番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテ及び●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告68番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告68番の平成25年9月5日付け,平成28年8月16日付け陳述書(甲ハ68の1,6)原告68番は,昭和46年●月,●病院において看護師として勤めていた。第二子がなかなかできずに●医院で診察を受けたところ,片方の卵巣嚢腫との診断を受け,●病院の産婦人科での診察でも同様の診断を受けた。原告68番は,各診断を受けて,●病院で卵巣嚢腫摘出の手術を受けることにした。病状や手術内容について,詳しい説明はされなかった。 を受け,●病院の産婦人科での診察でも同様の診断を受けた。原告68番は,各診断を受けて,●病院で卵巣嚢腫摘出の手術を受けることにした。病状や手術内容について,詳しい説明はされなかった。 前記手術中,腰椎麻酔の上で開腹した後に,医師達が「わあ, ひどい癒着,それも卵巣両方ともや。」,「チョコレート嚢腫やな。」「片方は直腸と子宮,もう片方は膀胱と子宮やなあ。」,「とりあえず直腸と膀胱の癒着を剥がして,うまくいけば子宮の方も剥がそうか,あかんかったら子宮は体部から切除せな仕方ないな。」,「剥離が無理やったら,最悪の場合,全部摘出やなあ。」などと話している声が聞こえてきた。その後,出血のために血圧がどんどん低下し,「最高血圧が60以下で測定できない。」という声が聞こえた後,意識が消失していき,気が付いた時には手術は終わって病室に戻っていた。病室の外では,原告68番の夫が待っていたが,同人に,手術の内容や具体的な処置についての医師からの説明はなかったそうである。原告68番は,手術の翌日,医師から「出血がひどかったので,子宮体部と卵巣を両側切除した。」という説明だけ受け,術中に関する説明はされなかった。なお,原告68番は,手術前,「簡単な手術だし,輸血の準備については,入手しにくい血液型であるため,万一の場合は輸液で代替するので,輸血準備はしない。」と言われていた。 手術をした日の夕方ないし翌日,原告68番の病室に看護病棟婦長の●●(以下「●」という。)の訪問があった際,起き上がろうとしたが意識がもうろうとして起き上がることができなかった。 原告68番の前記様子を,●が医師に報告し,血液検査をした結果,フィブリノゲン製剤の点滴が始まった。●が,原告68番に対し,「フィブリノゲンを朝,夕1本ずつ投与するこ き上がることができなかった。 原告68番の前記様子を,●が医師に報告し,血液検査をした結果,フィブリノゲン製剤の点滴が始まった。●が,原告68番に対し,「フィブリノゲンを朝,夕1本ずつ投与することになった。」と伝えにきたのを覚えている。原告68番は看護師としてフィブリノゲン製剤を扱っており,フィブリノゲン製剤が非常に高価なものであり取り扱いには十分に注意するように言われていたため,「ああ,私にも高い薬を使ってくれるんだ。」とありがたく思った。 昭和50年前半頃,疲れやすくなり,鼻や歯茎からの出血や尿出血による貧血のためめまいが起こるようになった。昭和60年頃,人間ドックを受けた結果,GOT,GPT値が200以上あり,非A非B型肝炎の疑いがあるので要精査だと言われた。 平成3年秋,メレンゲによるひどい食物アレルギーのため,全身に強度のじんましんができ,近くの●クリニックに行ったところ「C型肝炎です。それも慢性で,肝硬変に近くなっていますよ。」,「すぐに内服治療をしましょう。このままだと,5年くらいしたら,肝がんに移行する確率が非常に高くなりますよ。」と言われた。 原告68番は,薬のアレルギーがひどいため長い間服薬はしなかったが,覚悟を決めて服薬治療を開始したものの,副作用の症状が重い時は服薬を中止し,症状が軽くなったら再開するといった治療経過であった。 平成7年には,●病院に入院してスミフェロンによる治療をした。これにより,一時的にウイルスは減少したものの,すぐに元に戻ってしまった。●病院では,強ミノCやウルソによる治療も試みたが,全身掻痒感,ぜんそく様症状,食欲不振などのアレルギー症状が出たため,前記治療は中止した。 平成20年●月,●病院で,肝がんと診断された。すぐに手 ,強ミノCやウルソによる治療も試みたが,全身掻痒感,ぜんそく様症状,食欲不振などのアレルギー症状が出たため,前記治療は中止した。 平成20年●月,●病院で,肝がんと診断された。すぐに手術するよう勧められ,肝動脈塞栓術,ラジオ波焼灼術,食道静脈瘤結糺術等を何度か受けたが,胃内には静脈瘤があるままであり,経過観察を続けている。 原告68番は,昭和34年頃,白血球の減少症で輸血を受けたが,それ以後は何の異常もなく,健康だった。 原告68番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告68番は,入れ墨,ピアス,人工透析,鍼治療の 経験はないし,●病院で勤務していた時,針刺し事故に遭ったことはない。 イ ●の平成23年7月30日付け,平成27年10月16日付け陳述書(甲ハ68の2,5)●は,昭和42年●月●日,●病院の看護病棟婦長に就任した。 原告68番は,昭和42年●月から昭和57年●月●日まで,平成6年●月から平成9年●月●日まで,●病院において,看護師として勤務しており,●の部下に当たる。原告68番と●は,仕事を離れても親しい関係であった。 ●病院には,一般病棟と結核病棟があり,診療科は,内科,小児科,外科・整形外科,耳鼻科,歯科,眼科,産婦人科があったところ,後にメディカルオープンシステムとして,独立した診療外来になった。●病院本体は,入院と手術を担当していたため,手術場と入院病棟に詰所が4か所あった。 原告68番は,昭和46年頃,両側卵巣腫瘍の診断を受け,●産婦人科の●●医師(以下「●医師」)という。)及び外科の医師である●●医師(以下「●医師」という。)の担当により,両側卵巣及び子宮体部摘出手術を受けた。●は,助産師の資格 卵巣腫瘍の診断を受け,●産婦人科の●●医師(以下「●医師」)という。)及び外科の医師である●●医師(以下「●医師」という。)の担当により,両側卵巣及び子宮体部摘出手術を受けた。●は,助産師の資格を有しており,●産婦人科での出産や婦人科手術に立ち会うことがあった。 ●産婦人科での出産は,月20件くらいで,婦人科手術は,月に数件あるかないかだった。 原告68番の前記手術は,仲の良い部下の手術ということで心配で様子を見に行った。手術中,原告68番の血圧が最大値40mmHgくらいまで下がった。手術中にそこまで血圧が下がる原因は,出血多量しかないと思う。原告68番は血液型がRh(-)なので,簡単に輸血することもできず,大変だったのを覚えてい る。手術中に何が起こったのか,どういう薬剤を使ったかについて,当時の麻酔医や薬剤師は具体的に記憶していないと思う。 薬剤の投与に関することは医師が判断することで,看護師は医師の指示に従うのみであり,投与方針や投与の理由を尋ねたことはない。医師からの指示は,カルテや処方箋に記入される形か,口頭により行われた。カルテに記入される場合及び口頭による指示の場合は,看護師が処方箋に記入し,処方箋を薬剤部に伝えて薬剤をもらっていた。 フィブリノゲン製剤については,昭和46年当時,止血効果の高い薬剤であり,手術後の大量出血の時に使うという認識だった。 ●自身は,フィブリノゲン製剤を使った具体的な記憶はないが,●病院での同僚に問い合わせたところ,フィブリノゲン製剤を使った記憶があると述べた者もいた。止血剤としてフィブリノゲン製剤の他に使っていたものは,トロンビン,アドナ,トランサミンなどである。 ●病院で針刺し事故があったかどうかについて,はっきりした記憶もなく,記録もないので,どちらともいえない。 フィブリノゲン製剤の他に使っていたものは,トロンビン,アドナ,トランサミンなどである。 ●病院で針刺し事故があったかどうかについて,はっきりした記憶もなく,記録もないので,どちらともいえない。ただし,針刺し事故で看護師が何らかのウイルスに感染したことはない。 ウ原告68番の供述(本人尋問)原告68番は,昭和42年●月●日から昭和52年●月●日まで,昭和53年●月●日から昭和57年●月●日まで,平成6年●月●日から平成9年●月●日まで,●病院において看護師として勤務していた。勤務開始当初は,入院患者がいる病室のある一般病棟で勤務していた。 看護師として勤務している中でフィブリノゲン製剤を扱ったことはあるが,前記の勤務期間のどの時期のことかは分からない。 フィブリノゲン製剤のことを知ったきっかけは,原告68番が主任として参加した主任会議において,フィブリノゲン製剤は高い薬であり,取扱いでミスがあると,患者には請求できずに病院の負担となるから,十分注意するように,と言われたことである。 フィブリノゲン製剤の薬価は,3万5000円か4万円くらいと聞いたように思う。 昭和46年●月に,●病院で受けた手術は,片側卵巣嚢腫という診断を受けて行われた。手術に先立っての説明は,片側の卵巣に鶏卵大の腫瘍があって,それを切除する,卵巣を一つ取ってももう一つあるから,手術後も妊娠は可能である,虫垂炎の手術に準ずるような手術で,大したことはないというものだった。前記のとおり,片側卵巣嚢腫との診断だったが,当該診断は触診によるものであったところ,開腹してみて,最終的に両側卵巣嚢腫であると判明した。手術の際,輸血は受けなかった。 手術後,意識が戻ったのは,手術当日の夜であった。当時,点滴を受けていたこと,痛みを訴えたところ であったところ,開腹してみて,最終的に両側卵巣嚢腫であると判明した。手術の際,輸血は受けなかった。 手術後,意識が戻ったのは,手術当日の夜であった。当時,点滴を受けていたこと,痛みを訴えたところ当直の医師が来て痛み止めを処方してくれたことなどを覚えている。 手術の翌日の朝,●が病室に来た。原告68番は,起き上がろうとしたが,全然力が入らず,身体が持ち上がらなかった。手術の傷口からそこまで出血していなかったと思う。前記の原告68番の様子を見た●が,急いで血圧を測り,すぐに出て行き,病室に戻ってきて採血をし,また出て行った。その後,原告68番は,再度病室に戻ってきた●から,貧血があるから,1日だけ,フィブリノゲン2本を朝夕に投与する旨の指示が出たという旨を伝えられ,●がフィブリノゲン製剤の点滴を準備してくれた。実際に点滴を受けたフィブリノゲン製剤は,小さな透明な瓶に入ってい たと思うが,はっきりした記憶はない。また,手術の翌日,●医師ないし●医師が傷を診に来た際,子宮頚部は残しているが子宮を全部取った旨のみ説明を受けた。原告68番の夫も,手術に関する説明は受けていないようである。 原告68番は,前記手術から1週間後に退院した。手術や薬剤に関する費用は,職員に関する入院・治療ということで,病院ないし互助会が負担してくれたため,原告68番は支払っていない。 フィブリノゲン製剤については,前記手術に先立って,看護師としての業務の中で,点滴の継ぎ足しないし繋ぎ替えをする際に扱う機会があった。フィブリノゲン製剤の使用手順や,事前の検査の有無などは覚えておらず,何となく,止血剤であり出血の多い人に使うという認識くらいだった。フィブリノゲン製剤以外の止血剤としては,アドナ,トランサミンなどを覚えている。処置における,フィブリノ 査の有無などは覚えておらず,何となく,止血剤であり出血の多い人に使うという認識くらいだった。フィブリノゲン製剤以外の止血剤としては,アドナ,トランサミンなどを覚えている。処置における,フィブリノゲン製剤と輸血の先後関係などについては分からない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告68番が,昭和46年●月,●病院において,卵巣嚢腫摘出術を受けたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和46年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告68番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,原告68番は,前記手術の翌朝,●が,原告68番に対し,「フィブリノゲンを朝,夕1本ずつ投与することになった。」と述べ,実際に特定フィブリノゲン製剤の点滴を受けた旨供述す るが,●の陳述書において前記発言や処置への言及はなく,他に原告68番の供述の裏付けはないから,原告68番の前記供述は採用できない。 3 結論以上によれば,原告68番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告69番関係 第1 当事者の主張(原告69番の主張) 1 原告69番は,平成2年●月頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎から肝がんまで病態が進行し,治療を受けてきた。 2 原告69番は,昭和52年●月●日,医療法人●会●病院(以下「●病院 ●月頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎から肝がんまで病態が進行し,治療を受けてきた。 2 原告69番は,昭和52年●月●日,医療法人●会●病院(以下「●病院」という。)において,多嚢胞性卵巣の治療として,楔状切除術を受けた。 3 ●病院には,前記手術当時,特定フィブリノゲン製剤が納入されていた。 4 原告69番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告69番の供述によっても,原告69番が,前記手術の当時,出血によりDICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められず,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告69番及び原告69番の夫は,医師から「高価な薬を使って止血した」,「止血剤」を使用した旨を言われたと述べ,これが特定フィブリノゲン製剤であると主張する。 しかし,前記供述によっても,具体的な薬剤名を聞いたというものではないし,高価な薬,止血剤が特定フィブリノゲン製剤を意味するものとは直ちにいえないから,特定フィブリノゲン製剤投与の事実を 認めることはできない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ69の1~3,6~12,原告69番本人,証人原告69番の夫)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告69番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 (2) 原 9の1~3,6~12,原告69番本人,証人原告69番の夫)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告69番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 (2) 原告69番は,昭和51年又は昭和52年の●月●日,●病院において,●●医師(以下「●医師」という。)と●●医師(以下「●医師」という。)により,両方の卵巣を楔状に切除する手術を受けた。 (3) 原告69番は,現在,慢性C型肝炎の病態にある。平成14年●月から72週間,ペグイントロンとレベトールの投与を受けたが,治療終了後に再燃し,平成22年●月●日から,ペグインターフェロンの少量長期投与の治療を継続中である。 (4) ●病院には,昭和51年及び昭和52年当時,特定フィブリノゲン製剤が納入され,常備されていたと認めることができるが,原告69番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,同病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告69番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告69番の平成25年9月2日付け,平成28年8月14日 付け陳述書(甲ハ69の1,13)原告69番は,昭和43年●月から,●病院に看護師として勤務していた。昭和48年に結婚した後,3年経っても子供に恵まれなかったため,●病院に不妊治療に通っていたが,欠勤しないと同病院に通院できなくなったため断念し,●病院の婦人科医に相談した結果,多嚢胞性卵巣と診断され,両卵巣を楔状に切除して排卵するようにする手術を受けることにした。 昭和51年●月●日,全身麻酔による開腹術を受けた。手術の翌日の朝,●医師が,回診の際,「術後,大出血はしな 診断され,両卵巣を楔状に切除して排卵するようにする手術を受けることにした。 昭和51年●月●日,全身麻酔による開腹術を受けた。手術の翌日の朝,●医師が,回診の際,「術後,大出血はしないと思うが,止血剤を点滴に入れるよう指示した。高い薬やぞ。」と述べ,数分後に看護師が部屋を訪れ,「先生からの指示で止血剤追加しますね。」と言った。なお,前記手術の際,輸血は行われず,●医師から「輸血しなくて済んだ」という説明がされたことも覚えている。 平成元年●月,●病院を退職し,●診療所での勤務を始めたところ,8か月目にめまい,全身懈怠,立ちくらみ,足のむくみ,起立が困難なほどの足のだるさがあった。慣れない診療所での疲れかと思っていたが,前記状態が1か月ほど続き,出勤途中に,バスから下車するときに突然気分不良となって倒れ,気が付いたら勤務先の診療所にいた。この時の採血の結果,肝機能,GOT,GPTの値が3桁となっており安静をとるように言われ,自宅安静療養を行い,数日後,●病院の内科を受診した。同科の●医師から,入院を勧められたが,自宅で安静が保たれるようであれば安静療養するようにと言われた。 平成2年●月頃,●病院を受診した際,C型肝炎と知らされた。 同病院の●医師から,入院の上で,60歳までにインターフェロン治療を受けるよう勧められた。 平成14年,●病院の内科を受診し,同年●月●日に入院して肝生検を実施し,その後,インターフェロン,レベトール併用の治療を開始した。インターフェロン,レベトール74本を終えた時点で,治療も終盤にさしかかり,副作用もひどいため,治療を一時中断して退院した。 退院の数日後,超音波の検査で,がんか,リンパ節腫大の説明があった。その後,足のだるさ,吐き 本を終えた時点で,治療も終盤にさしかかり,副作用もひどいため,治療を一時中断して退院した。 退院の数日後,超音波の検査で,がんか,リンパ節腫大の説明があった。その後,足のだるさ,吐き気,浮遊感,立ちくらみが始まり,主治医から入院を勧められたが,通院治療を希望し,平成22年●月●日から,ペグインターフェロンを,副作用が出ない程度の少量の長期投与する治療を受け始め,現在も治療中である。 原告69番は,平成23年●月●日,●病院を訪れたが,前記手術の際の主治医や看護師は,既に亡くなっていたか,探すことができなかった。 原告69番の親族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。 原告69番は,医療法人●会●病院,●病院,医療法人●会(●診療所)で勤務していたことがあるが,いずれにおいても,針刺し事故にあったことはない。また,原告69番は,入れ墨,ピアス,人工透析,鍼治療はしていない。 イ原告69番の夫の陳述書(甲ハ69の10)原告69番の夫は,原告69番と,昭和48年に結婚したが,長期間原告69番に妊娠兆候がなかったため,●産婦人科院長の●医師の診察を受け,その結果,「卵巣が癒着状態になっているために妊娠しにくくなっている」とのことで,その癒着を解消するべく,手術を受けることになった。同手術は,昭和52年●月●日に,●医師の執刀,一般外科担当の●医師の介助で行われた。 手術が終了した当日,原告69番がまだ麻酔から完全に覚めていなかった夕方頃,病室で付き添っていた際,●医師から,手術の報告を受けたとともに,「手術中予想以上に出血が多かった。でも,高価な薬を使って止血したので事なきを得たから心配しなくてもいいよ」と言われたのを覚えている。薬剤の名称は聞い た際,●医師から,手術の報告を受けたとともに,「手術中予想以上に出血が多かった。でも,高価な薬を使って止血したので事なきを得たから心配しなくてもいいよ」と言われたのを覚えている。薬剤の名称は聞いていない。また,輸血はしなくて済んだということも聞いた。 昭和52年当時,●病院は,複数の医院が同じ建物の中で間借りし,入院,手術等が必要な場合は,設備,施設を借用・委託するというシステムをとっていた。 ウ ●●医師(以下「●医師」という。)の陳述書(甲ハ69の9)●医師は整形外科医で,現在,●病院の副院長をしており,昭和52年当時は,勤務医だった。 ●病院は,昭和47年に「メディカルオープンシステム」を採用した。同システムは,各科の診療外来が独立して経営し,●病院本体は入院を担当する,というものである。昭和52年当時は,●内科,●外科(外科,整形外科,脳外科),●小児科,●眼科,●耳鼻科,●歯科,●産婦人科があった。●医師は,●病院の整形外科医だったが,外来診療科の手術の際,立ち会ってアシスタントを務めたりしていた。 昭和52年当時,●病院における手術は,大きいものが週2回程度で,当時のベッド数はおそらく265床だったと思う。 ●産婦人科も,外来診療科の一つではあったが,産婦人科は独特の領域だということもあって,他の診療科に比べて独立性が高かった。他の診療科と比べて,看護師数が多く,●産婦人科は,看護師は4人いたと思う。 原告69番は,●病院本体の看護師として働いており,入院患 者を担当していた。同人が,●病院で勤務していた時に,●産婦人科を受診し,手術を受けたことは覚えており,執刀医が●医師,アシスタントが●医師だった。 昭和52年当時 入院患 者を担当していた。同人が,●病院で勤務していた時に,●産婦人科を受診し,手術を受けたことは覚えており,執刀医が●医師,アシスタントが●医師だった。 昭和52年当時,●病院にはフィブリノゲン製剤が常備してあり,整形外科手術におけるフィブリノゲン製剤に関する認識としては,止血効果の高い,高価な薬で,アドナやトランサミンといったルーティーンとして投与していた補助的な薬とは異なり,術中に患者の様子を見て,必要に応じて使用を判断していたものである。 ●医師は,フィブリノゲン製剤を,術中に,溶液を部位に落として,糊のようにして使っていた。なお,外傷には圧迫止血が可能であることから,フィブリノゲン製剤は使っておらず,圧迫止血ができない,椎間板ヘルニアや腹部の手術などの際,止血目的でフィブリノゲン製剤を使うことがあった。 輸血とフィブリノゲン製剤使用の相関関係,先後関係は特に決めておらず,それぞれ必要性を判断していた。 ●病院として,フィブリノゲン製剤の投与に関する統一した方針はなく,外来診療科の各医師が,それぞれ主治医として判断をしていた。なお,●医師は,手術全体の5割程度で,フィブリノゲン製剤を投与していた。 原告69番の昭和52年の手術の際,フィブリノゲン製剤が投与されたかは分からないが,止血効果の高い,良い薬だということは,医師の間では一般認識としてあり,●病院にフィブリノゲン製剤は常備されていたから,原告69番に投与された可能性は否定できないと思う。 エ原告69番の供述(本人尋問) 昭和43年●月●日から平成元年●月●日まで●病院で看護師として働いていた。昭和45年の●月までの間は,看護学生として,学校に通いながら働いてお 告69番の供述(本人尋問) 昭和43年●月●日から平成元年●月●日まで●病院で看護師として働いていた。昭和45年の●月までの間は,看護学生として,学校に通いながら働いており,同月以降,1年くらいは,院内実習を兼ねて各科を数か月ごとに回って勤務した。昭和46年頃の後は,入院患者のいる病棟で1年間務め,昭和47年から退職するまでは,手術室で勤務した。手術室で勤務していた期間中,●病院における手術室数はずっと一つであり,手術室に配属されている看護師数は,6名から8名であった。 手術時の体制ないし役割分担は,病態や手術状態にもよるが,全身麻酔の場合は,麻酔医が1人,執刀医が1人,介助する医師が1人,看護師が1,2名というものだった。 原告69番は,看護師としてフィブリノゲン製剤を扱ったことがあり,一つは大腿骨の骨頭置換術,もう一つは椎間板ヘルニアの手術だったと思う。骨頭置換術の時には,看護師が,粉状のフィブリノゲン製剤の入った,口がゴムの小さな瓶に蒸留水を入れて瓶ごと振って溶解した上で瓶を逆さまに向け,それを医師が注射器で吸って患部に注入していた。他方,椎間板ヘルニアの手術の時には,看護師が,清潔なアルコール綿で蓋を取り,消毒されたシャーレに粉状のフィブリノゲン製剤を移し,医師がピンセットでつまんで,粉状のまま患部に散布していた。フィブリノゲン製剤を納入するに際し,看護師長から,止血効果が高い高価な薬である旨を聞いていた。 原告69番が昭和52年に受けた手術は,午後1時頃に始まった。同手術の内容については,楔状に切るといった簡単な説明以外には,手術前に説明されなかった。 手術の次の日の朝に,ぼうっとした状態で目を覚ました。小水 の管が入っていたほか,500mlくらいの瓶の点 については,楔状に切るといった簡単な説明以外には,手術前に説明されなかった。 手術の次の日の朝に,ぼうっとした状態で目を覚ました。小水 の管が入っていたほか,500mlくらいの瓶の点滴がされていた。点滴はひじの内側に針を刺して行われており,都度取り替えながら3日間くらい続いた。1回の点滴に要する時間は2,3時間だったと思う。また,●医師から,止血剤を指示しておいた旨の話があった後,看護師が病室にきて,縦7cm,幅2,3cm程度の容器に入った,100~150mlくらいの透明な液体を,点滴の管についた三方活栓のところに針で注入した。止血剤が全部注ぎ終わるまで1時間くらいかかった。なお,原告69番の夫から,手術中に高価な止血剤を使った旨を●医師から言われたと聞いたが,原告69番自身は,医師からそのような話は聞いていない。 手術後,9日目に退院をしたが,手術代やその他医療費は,払わなくて良いと言われたため,支払っていない。 原告69番は,前記手術以外に,手術や出血を伴う怪我,病気の経験はない。また,血が止まりにくいとか,貧血の傾向があるということを言われたことはない。 オ原告69番の夫の供述(証人尋問)原告69番が昭和52年に受けた手術に際して,手術前に医師から説明を受けた記憶はない。原告69番が手術を受け終えて病室に帰ってきたのは,夕方の5,6時頃だった。原告69番に,一つだけ点滴がされていたのを覚えている。 原告69番がまだ覚醒していない状態で,●医師が病室に入ってきて,出血が予想より多かったけれども,輸血には至らなかった,高い薬を使った,ということを言った。原告69番の夫は,手術当日の夜は病院に泊まったが,その間は原告69番はずっと寝ており,会話はなかった。同日以降は,会社での仕事が終わっ ,輸血には至らなかった,高い薬を使った,ということを言った。原告69番の夫は,手術当日の夜は病院に泊まったが,その間は原告69番はずっと寝ており,会話はなかった。同日以降は,会社での仕事が終わっ た後に顔を出す程度だった。医師からは,前記のとおりの●医師からの話以外には,手術に関する話はされなかった。 (2) 検討ア前記1(2)及び(4)のとおり,原告69番が,昭和51年又は昭和52年の●月●日,●病院において,両卵巣を楔状に切除する手術を受けたこと及び同手術の当時,●病院において特定フィブリノゲン製剤が常備されていたことを認めることができる。 イしかし,原告69番に対する処置としてフィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,原告69番は,手術が終わって意識が戻った後に,●医師から,手術後に止血剤の投与を指示したこと,当該止血剤が高い薬であったことを聞き,手術終了の数分後から同薬剤の投与が開始された旨供述し,また,原告69番の夫は,原告69番の意識が戻っていない時点において,同医師から,手術中に原告69番に対して止血剤を投与したと聞いたと供述するが,他方で止血剤の名前は聞いていないとも述べており,前記各供述だけでは,当該止血剤が特定フィブリノゲン製剤であったと認めることはできず,原告69番に,具体的状況に照らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 3 結論以上によれば,原告69番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投 以上によれば,原告69番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙亡原告74番関係 第1 当事者の主張(亡原告74番の主張) 1 亡原告74番は,平成2年頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。亡原告74番は,インターフェロン治療等の慢性C型肝炎の治療を受けたが,肝硬変へと進行し,平成25年には肝臓がんが見つかった。亡原告74番は,平成26年●月●日に死亡した。 2 亡原告74番は,昭和52年●月,バイクを運転中に乗用車と衝突し,左大腿骨複雑骨折等の傷害を負い,医療法人●会●病院(以下「●病院」という。)に搬送され,その数週間後に手術を受けた。亡原告74番は,手術前,●●医師(以下「●医師」という。)から,骨のかけらを集めて糊でつけるという説明を受けた。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 亡原告74番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 亡原告74番の陳述書の記載に照らすと,原告74番の1は,前記手術において,フィブリン糊が使用された旨を主張するようである。 しかし,特定フィブリノゲン製剤を用いて調製されるフィブリン糊は,本邦では,昭和56年●月●日に基礎的研究の結果が発表され,その後にフィブリン糊研究会において研究が進められていたのであり,前記手術が行われた昭和52年●月当時,●病院において,未だフィブリン糊は使用されてい 和56年●月●日に基礎的研究の結果が発表され,その後にフィブリン糊研究会において研究が進められていたのであり,前記手術が行われた昭和52年●月当時,●病院において,未だフィブリン糊は使用されていなかったと認められる。 また,●医師作成の回答書によれば,前記手術においてフィブリン糊を使用したとすれば,極めて稀な症例であるため,記憶があると考えられるにもかかわらず,記憶がないとされており,同医師がフィブリン糊を使用していないのではないかと考えていることがうかがわれる。 さらに,●●看護師(以下「●看護師」という。)の陳述書には,前記手術の際,特定フィブリノゲン製剤を薬庫まで取りに走った記憶があり,その使用方法は,点滴ではなく局部に塗っていた旨の記載がある。しかし,前記のとおり,当時,●病院において,フィブリン糊が使用されていたとは認められない上,前記陳述書には,●看護師が亡原告74番に投与された薬剤を覚えている理由や,特定フィブリノゲン製剤以外に用いられた薬剤に関する記載は一切なく,特定フィブリノゲン製剤が使用されたことを覚えている旨の記載は,具体的な根拠や裏付けを欠くものというほかない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 慢性肝炎の進行により肝硬変にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ74の1,5,6,9)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 亡原告74番は,昭和●年●月●日生まれの者である。 (2) 亡原告74番は,平成17年●月●日,公益財団法人 ,5,6,9)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 亡原告74番は,昭和●年●月●日生まれの者である。 (2) 亡原告74番は,平成17年●月●日,公益財団法人●病院(以 下「●病院」という。)を受診し,慢性C型肝炎と診断され,インターフェロン治療等を受けた。亡原告74番は,同病院において,平成21年●月●日に肝硬変症,平成25年●月●日に肝がんと診断され,同日,同病院に入院した。 亡原告74番は,平成26年●月●日,死亡した。 (3) 亡原告74番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 亡原告74番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア亡原告74番の陳述書(甲ハ74の1)亡原告74番は,昭和52年●月,その母を後部座席に乗せてバイクを運転中に乗用車と衝突し,左大腿骨複雑骨折等の傷害を負い,母と共に●病院に搬送され,その数週間後に手術を受けた。手術前,●医師から,骨のかけらを集めて糊でつけるという説明を受けた記憶がある。また,手術後,同医師から,200mlだけ輸血したことも聞いた。手術後,わりとすぐ黄疸が出て,血清肝炎と診断され,そのまま1年半くらい入院を続け,肝炎の治療等を受けた。 平成2年●月頃,●病院で血液検査をし,C型肝炎ウイルスに感染していることを知らされた。その後,●病院,●病院において,インターフェロン治療等を受けたが,肝硬変に進行し,平成25年に入ってから,肝臓がんが見つかった。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 亡原告74番の母も が,肝硬変に進行し,平成25年に入ってから,肝臓がんが見つかった。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 亡原告74番の母も平成10年又は平成11年頃,C型肝炎ウイ ルスに感染していることが発覚したが,母も前記事故後,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤を投与されたのかもしれない。 イ ●看護師の陳述書(甲ハ74の3)昭和32年頃から昭和61年頃まで,●病院に看護師として勤めていた。亡原告74番の家族とは昔からの知り合いで,亡原告74番のことも小さいときから知っていた。亡原告74番の手術中,●医師から指示されて,フィブリノゲン製剤を薬庫まで取りに走った記憶がある。使用の方法としては,点滴ではなく,局部に塗っていた記憶である。亡原告74番の骨折は,非常に広範囲で骨が散らばっており,ここまでひどい骨折の患者は数が少なかったため,特に記憶に残っている。 ウ ●医師作成の回答書(甲ハ74の4)手術中,特定フィブリノゲン製剤等を点滴で使用したことはないが,関節内骨折等でフィブリン糊を使用したことはある。 骨折に際し,フィブリン糊を使用した記憶は関節内骨折以外ないが,治療法に行き詰った場合,例えば,骨欠損が大きくなり骨移植の必要性がある,又は骨片が多数で整復固定が困難な場合(骨移植を行うのを回避して)フィブリン糊の使用を考慮したかもしれない。そのような可能性を完全には否定しきれないが,思い起こすことはできない。 左大腿骨複雑骨折の手術の際にフィブリン糊を使用したとすれば極めて稀な症例のはずだが,亡原告74番のことは記憶していない。 (2) 検討ア亡原告74番の昭和52年●月の交通事故及びその後の左大腿 骨 の際にフィブリン糊を使用したとすれば極めて稀な症例のはずだが,亡原告74番のことは記憶していない。 (2) 検討ア亡原告74番の昭和52年●月の交通事故及びその後の左大腿 骨複雑骨折等の手術に関し,診断書やカルテなどの医療機関の作成した証拠があるものではないが,前記各陳述書には具体的状況が記載してあり,亡原告74番が同月頃,●病院において前記手術を受けたことを認めることができる。 イそして,前記(1)イのとおり,●看護師の陳述書には,亡原告74番の手術中,●医師から指示されて,特定フィブリノゲン製剤を薬庫まで取りに走り,局部に塗る方法で使用されたことを記憶している旨の記載がある。 しかし,フィブリン糊の基礎的研究の結果が発表されたのは前記手術の約4年後である昭和56年6月12日であること(乙ア107),前記(1)ウのとおり,●医師は,骨折に際し,フィブリン糊を使用した記憶は関節内骨折以外ない旨回答していることに照らすと,●看護師の陳述書の前記記載部分を採用することはできず,他に●病院において,昭和52年●月頃当時に特定フィブリノゲン製剤が使われていたこと,亡原告74番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったことを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,亡原告74番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告75番関係 第1 当事者の主張(原告75番の主張) 1 原告75番は,平成13年●月頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その直後から,慢性C型肝炎 別紙原告75番関係 第1 当事者の主張(原告75番の主張) 1 原告75番は,平成13年●月頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その直後から,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告75番は,昭和46年●月●日,●病院(現在は独立行政法人●医療センター)において,帝王切開により第二子(女児)を出産した。 その際の出血量は,少なくとも母子手帳に記載された1820mlである。 前記出産時の状況は,陣痛発来から15時間を経過しても分娩に至っていない遷延分娩に該当する。原告75番が大量出血した原因は,遷延分娩となったため,子宮筋収縮のエネルギーが使い果たされ,子宮が良好に収縮せず(子宮弛緩症),弛緩出血をもたらしたためと考えられる。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告75番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 母子手帳及び原告75番の陳述書によっても,原告75番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)原告75番が慢性肝炎にり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製 剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ75の1,2,4)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告75番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告75番にきょうだいはいない。 事実に証拠(甲ハ75の1,2,4)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告75番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告75番にきょうだいはいない。 (2) 原告75番は,昭和46年●月●日,●病院において,帝王切開により第二子(女児)を出産した。胎児は骨盤位の状態であり,陣痛発来及び破水の時期は同日午前1時頃,児の娩出は同日午後5時45分であった。前記出産の際,原告75番は約1820ml出血し,600mlの輸血を受けた。 (3) 原告75番は,平成13年●月●日,医療法人●会●病院(以下「●病院」という。)において,慢性C型肝炎と診断され,同病院で治療を受けるようになった。原告75番は,平成24年●月から,インターフェロン治療を受けた。 (4) 原告75番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告75番の陳述書(甲ハ75の1)の要旨は以下のとおりである。 原告75番の父母,夫及び子供らは,C型肝炎ウイルスに感染していない。 原告75番は,昭和46年●月●日,●病院において,第二子(女 児)を出産した。原告75番は,同日早朝に入院し,骨盤位で破水していた。2回目の出産で,普通分娩ができると言われていたが,分娩台に午後3時頃に上がったものの,陣痛が来ても子供が降りて来ず,結局,夕方5時半過ぎに帝王切開することになった。帝王切開の際,最初は部分麻酔だったが,その後,全身麻酔をされ,意識が戻ったのは出産後の真夜中だった。病院からは何の説明もなく,母子手帳の記載を見て,1820mlもの大量出血があり,輸血をされたことを知った。 初は部分麻酔だったが,その後,全身麻酔をされ,意識が戻ったのは出産後の真夜中だった。病院からは何の説明もなく,母子手帳の記載を見て,1820mlもの大量出血があり,輸血をされたことを知った。 原告75番は,●病院において,平成13年●月頃,慢性C型肝炎と診断され,平成24年●月からはインターフェロン治療を受けている。 原告75番は,昭和41年頃,●病院で虫垂炎の手術を受けたが,特に問題なく簡単に終わった。また,昭和42年●月,●産婦人科で第一子(女児)を出産したが,出血量は少量だった。C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告75番は,昭和46年●月●日,●病院において,帝王切開により第二子(女児)を出産したこと,その際,原告75番は約1820ml出血し,600mlの輸血を受けたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和46年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告75番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論 以上によれば,原告75番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告76番関係 第1 当事者の主張(原告76番の主張) 1 原告76番は,平成14年●月,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告76番の現在の病態は,肝硬変である。 紙原告76番関係 第1 当事者の主張(原告76番の主張) 1 原告76番は,平成14年●月,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告76番の現在の病態は,肝硬変である。 2 原告76番は,昭和62年●月,●病院において,椎間板摘出術及び脊椎固定術の手術(具体的には,腰の椎間板の左右を摘出し,そこに骨盤の骨を移植して,血液のり(フィブリン糊)で固めて針金で固定する手術)を受けた。 3 ●病院には,昭和61年に40本,昭和63年に29本の特定フィブリノゲン製剤が納入された(ただし,昭和62年に19本を返品)。 4 原告76番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 椎間板摘出術及び脊椎固定術は,いずれも整形外科において一般的に行われている手術であり,そのような手術においてフィブリン糊が一般的に用いられていたことを裏付ける証拠はない。 原告76番の陳述書には,●●医師(以下「●医師」という。)が,前記手術に当たり,原告76番に対し,腰の椎間板の左右を摘出し,そこに骨盤の骨を移植して,血液のり(フィブリン糊)で固めて針金で固定する旨を説明したと記載されているが,原告ら提出の全証拠のみならず,フィブリン糊に関する書証(乙ア107等)を見ても,フィブリン糊を血液のりと表現する例は見当たらない上,フィブリン糊は,血液ではなく,特定フィブリノゲン製剤とトロンビン製剤を用いて調製 されるものであり,血液のりとの表現が当てはまるものでもないため,血液のりとの表現をしたこと自体が極めて不自然である。また,前記手術の際にいかなる理由でフィブリン糊を使用するのか,全く不明と されるものであり,血液のりとの表現が当てはまるものでもないため,血液のりとの表現をしたこと自体が極めて不自然である。また,前記手術の際にいかなる理由でフィブリン糊を使用するのか,全く不明というほかなく,原告76番の陳述書の前記記載部分は信用できない。 さらに,●病院のベッド数に比して特定フィブリノゲン製剤の納入本数は極めて少なく,特定フィブリノゲン製剤は多くが産婦人科領域で用いられていたことを併せ考慮すれば,前記手術当時,●病院の整形外科において,特定フィブリノゲン製剤が使用される症例は存在しないか,極めて例外的であったと考えられる。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 原告76番が慢性肝炎にり患した事実,慢性肝炎の進行により肝硬変にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。 原告76番の主張には具体性がなく,前記手術の際に特定フィブリノゲン製剤をフィブリン糊として使用する必要があった理由は全く明らかではない。また,フィブリン糊は適用外使用に該当するところ,原告76番に対してフィブリン糊が使用されたか否かを判断するためには,原告76番の病態だけではなく,●医師の投与方針(そもそもフィブリン糊を使用することがあるのか否か,あるとして,いかなる場合に使用するのか)が明らかにされる必要があるが,同医師の投与方針は不明である。 椎間板摘出術及び脊椎固定術は,いずれも整形外科において一般的に行われている手術であり,●医師作成の入院証明書(診断書)の記載内容からも,前記手術中及び前記手術後の経過に何らかの問題が生じたこと はうかがわれず,原告76番に対して特定フィブリノゲン製剤をフィブリン糊として使用す 成の入院証明書(診断書)の記載内容からも,前記手術中及び前記手術後の経過に何らかの問題が生じたこと はうかがわれず,原告76番に対して特定フィブリノゲン製剤をフィブリン糊として使用する理由は見当たらない。 原告76番の陳述書には,●医師から,血液のりを使用すると聞いたなどと記載されているが,そもそもこれを信用することはできないし,仮に●医師が前記のとおりの発言をしたとしても,血液のりがフィブリン糊を意味しているか否かは明らかではない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ76の1~9)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告76番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。 原告76番には6人のきょうだいがいる。 (2) 原告76番は,昭和62年●月,大工としての作業中,屋根から転落し,腰部挫傷,右肩挫傷の傷害を負った。原告76番は,●整形外科で治療を受けたが,同年●月より右下肢痛が増強し,同年●月●日,●病院を受診した。原告76番は,同年●月●日から昭和63年●月●日まで同病院に入院し,昭和62年●月●日,椎間板摘出術及び脊椎固定術の手術を受けた。 (3) 原告76番は,平成14年頃,C型肝炎ウイルスに感染したことが判明した後,●内科循環器科医院,●病院(以下「●病院」という。),医療法人●会●病院(以下「●病院」という。)及び●内科医院で慢性C型肝炎の治療を受け,平成21年●月●日,●内科医院で肝硬変と診断された。 (4) ●病院には,昭和61年に40本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが(ただし,昭和62年に19本を返品),原告76番に特 定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあるこ された。 (4) ●病院には,昭和61年に40本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが(ただし,昭和62年に19本を返品),原告76番に特 定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告76番の陳述書(甲ハ76の1)の要旨は以下のとおりである。 原告76番の家族でC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告76番は,昭和62年●月,大工としての作業中,屋根から転落し,肩,腰,臀部を打撲し,●整形外科に搬送され,約1か月入院した。退院後,右足の膝や太腿が痛くなり,同整形外科の紹介により,同年●月,●病院を受診した。同病院の●医師は,腰部ヘルニアで,骨がへしゃげて軟骨が飛び出していると診断した。●医師によれば,腰の椎間板がつぶれているため,早急に手術をする必要があるとのことであり,原告76番は,同年●月●日,左右の腰の椎間板の摘出と脊椎固定のための手術を受けた。●医師は,手術当日,原告76番に対し,手術室に行く前の処置室において,腰の椎間板の左右を摘出し,そこに骨盤の骨を移植して,血液のりで固めて針金で固定すると説明してくれた。●医師は,血液のりという言い方であったが,いわゆるフィブリン糊を使用することを説明してくれた。●医師は,翌●日の回診の際,昨日説明したとおりに手術したので,安心してくださいと言った。原告76番は,昭和63年●月,同病院を退院した。 原告76番は,平成14年●月,急性胃腸炎のため●病院に入院したとき,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。その後,●内科循環器科医院,●病院,●病院,●内科医院で治療を受けたが,平成22年頃,肝硬変との診断を受けた。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際に していることが判明した。その後,●内科循環器科医院,●病院,●病院,●内科医院で治療を受けたが,平成22年頃,肝硬変との診断を受けた。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際に特定フィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)及び(4)のとおり,原告76番は,昭和62年●月●日,●病院において,椎間板摘出術及び脊椎固定術の手術を受けたこと,●病院には,昭和61年に40本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたこと(ただし,昭和62年に19本を返品)を認めることができる。 イそして,原告76番の陳述書には,●医師が,前記手術に当たり,原告76番に対し,腰の椎間板の左右を摘出し,そこに骨盤の骨を移植して,血液のりで固めて針金で固定すると説明した旨の記載がある。 しかし,椎間板摘出術又は脊椎固定術の手術において,フィブリン糊が一般的に用いられていたことを認めるに足りる証拠はなく,原告76番の陳述書によっても,●医師がフィブリン糊を用いなければならなかった理由は明らかではない。したがって,原告76番の陳述書の前記記載部分を採用することはできず,他に原告76番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったことを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告76番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告78番関係 第1 当事者の主張(原告78番の主張) 1 原告78番は,平成10~11年頃,●病院において,C型肝炎ウイルスに感染し ことはできない。 別紙原告78番関係 第1 当事者の主張(原告78番の主張) 1 原告78番は,平成10~11年頃,●病院において,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告78番は,昭和41年●月●日,●産婦人科において,帝王切開により,第一子(男児)を出産した。 3 ●産婦人科には,前記出産当時,特定フィブリノゲン製剤が納入されていた。 4 原告78番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●産婦人科における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告78番の供述によっても,原告78番が,前記出産の当時,出血によりDICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められず,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ78の1~4,原告78番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告78番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告78番には4人のきょうだいがいる。 (2) 原告78番は,昭和41年●月●日午後9時36分,●産婦人科において,帝王切開により,第一子(男児)を出産し,その際,中等量の出血をした。分娩介助は,●●医師(以下「●医師」という。)であった。なお,前記出産に係る母子手帳の「分べん」欄には,「異常」,「弛緩性出血 帝王切開により,第一子(男児)を出産し,その際,中等量の出血をした。分娩介助は,●●医師(以下「●医師」という。)であった。なお,前記出産に係る母子手帳の「分べん」欄には,「異常」,「弛緩性出血」との記載がある。 (3) 原告78番は,平成14年●月,●病院における検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,現在,慢性C型肝炎にり患し,強ミノC注射とウルソ,グリチロン内服での治療を継続している。 (4) 原告78番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●産婦人科における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告78番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告78番の陳述書(甲ハ78の1)原告78番は,●産婦人科において,帝王切開により男児を出産した。出産は無事に終わったが,原告78番の母が,婦長から「出血が多かった」と言われたそうである。 60歳の頃,身体がだるかったため,●病院を受診し,その際の検査の結果,慢性C型肝炎ウイルスに感染していると判明した。 以後,同病院で,週に2回,強力ミノファーゲンCの注射を受けると共に,ウルソの内服等の治療を続けている。なお,インターフェロン治療は受けていない。 C型肝炎の裁判のことを知り,厚生労働省が出しているフィブリノゲン製剤の納入先リストを見たら,●産婦人科が載っていたため,前記出産の主治医であった●医師の息子(医師)や,看護師を訪ね,カルテが残っていないか等の問い合わせをしたが,とりあってもらえなかった。 原告78番の親族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告78番は,入れ墨,人工透 護師を訪ね,カルテが残っていないか等の問い合わせをしたが,とりあってもらえなかった。 原告78番の親族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告78番は,入れ墨,人工透析,前記出産の際に受けたもの以外の輸血の経験はない。 イ原告78番の供述(本人尋問)昭和41年●月●日に,●産婦人科において,第一子(男児)を出産した。麻酔をされたかは覚えていないが,帝王切開の際に痛みは感じず,話し声も少し聞こえていたため,下半身だけ麻酔がかかっていたのかもしれない。点滴や輸血をされたかどうかは覚えていない。 出産後,病室において,切開した腹部が化膿して穴が開き,そこにガーゼを詰め,そのガーゼを毎日替えてもらうという処置を受けたのを覚えており,その他に受けた処置は覚えていない。 退院して以降も,●産婦人科にしばらく通院していたが,その際,婦長から,出血が多かったと言われた。 昭和44年に第二子(女児)を出産しているが,その際は自然分娩で,特に問題はなかった。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告78番が,昭和41年●月●日午後9時36分,●産婦人科において,帝王切開により,第一子(男児)を出産し,その際,中等量の出血をしたこと,分娩時に弛緩性出血があったことを認めることができる。 イしかし,●産婦人科において,昭和41年当時特定フィブリノゲン製剤が使用されていたか,原告78番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告78番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認 況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告78番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告79番関係 第1 当事者の主張(原告79番の主張) 1 原告79番は,平成19年●月頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告79番は,慢性C型肝炎と診断され,インターフェロン治療を受けた結果,C型肝炎ウイルスは消失した。 2 原告79番は,昭和41年●月●日,●産婦人科において,第一子(男児)を出産した。その際の出血量は多量であった。 原告79番は,昭和42年●月●日,●産婦人科において,第二子(男児)を出産した。その際の出血量は中等量(350ml)であった。 3 原告79番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●産婦人科における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 母子手帳及び原告79番の陳述書等によっても,原告79番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 原告79番が慢性肝炎にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実 前記前提事実に証拠(甲ハ79の1~8) 否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実 前記前提事実に証拠(甲ハ79の1~8)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告79番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告79番には2人のきょうだいがいる。 (2) 原告79番は,昭和41年●月●日,●産婦人科において,第一子(男児)を出産した。その際の出血量は多量であった。 原告79番は,昭和42年●月●日,●産婦人科において,第二子(男児)を出産した。その際の出血量は約350mlであった。 原告79番は,昭和44年●月●日,●クリニックにおいて,第三子(男児)を出産した。原告79番は,同クリニックにおける初診時(昭和43年●月●日),医師に対し,第一子(男児)出産時の出血が多量であったため,第二子妊娠中に血液凝固促進剤を使用した旨を申告した。また,同出産に係る母子手帳には,第一子(男児)出産時に輸血3本がされた旨の記載がある。 (3) 原告79番は,●総合病院で慢性C型肝炎と診断され,平成22年●月から平成23年●月まで,インターフェロン治療を受けた。 (4) 原告79番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告79番の陳述書(甲ハ79の1)の要旨は以下のとおりである。 原告79番の家族にC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告79番は,●産婦人科で第一子(男児)を出産した。分娩自体は無事に終わったが,その後に大量出血し,止まらなくなった。●●医師(以下「●医師」と 家族にC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告79番は,●産婦人科で第一子(男児)を出産した。分娩自体は無事に終わったが,その後に大量出血し,止まらなくなった。●●医師(以下「●医師」という。)は,大変慌てて,どこかの病院に電 話して相談していたようであり,「血が止まらない」,「止血しないといけない」などの会話が聞こえてきた。そして,「出血を止めるための点滴をします」と言われ,点滴をした。輸血もしたと思う。●医師から,お盆のようなものに血液が入っているのを見せられて,「こんなに出てるんですよ,サラサラして」というようなことを言われた。 ●医師からは,「元々,血が固まりにくい体質だから,歯医者さんに行くときは,そう言った方がいいですよ」とも言われた。 原告79番は,●産婦人科で第二子(男児)を出産した。 原告79番は,平成19年●月頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが分かった。同年●月頃以降,●総合病院でインターフェロン治療等を受け,C型肝炎ウイルスは消失した。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●産婦人科における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告79番は,●産婦人科において,昭和41年●月●日に第一子(男児)を,昭和42年●月●日に第二子(男児)を出産したこと,第一子(男児)出産時の出血量は多量であり,第二子(男児)出産時の出血量は約350mlであったことを認めることができる。 イしかし,●産婦人科において,前記各出産当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告79番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結 ィブリノゲン製剤が使われていたか,原告79番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告79番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他 の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告80番関係 第1 当事者の主張(原告80番の主張) 1 原告80番は,平成4年●月頃,●病院において,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告80番は,昭和39年●月●日,●産婦人科において,帝王切開により,第一子(男児)を出産し,その際,中等量の出血をした。 また,原告80番は,昭和42年●月●日,●産婦人科において,腹膜炎の手術を受けた。 3 ●産婦人科は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 4 原告80番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●産婦人科における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告80番の前記出産の際の出血量は中等量にとどまり,その他に何らかの異常があった様子はうかがわれず,DICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められないから,特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態であったとは認められない。 また,原告80番の受けた前記手術の詳細や,手術当時の原告80番の具体的病態は不明であるから,特定フィブリ れないから,特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態であったとは認められない。 また,原告80番の受けた前記手術の詳細や,手術当時の原告80番の具体的病態は不明であるから,特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染 との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ80の1~5,7,8,原告80番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる(1) 原告80番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告80番には1人のきょうだいがいる。 (2) 原告80番は,昭和39年●月●日午後9時57分,●産婦人科に入院し,帝王切開により第一子(男児)を出産し,その際,中等量の出血をした。分娩介助は,●●医師(以下「●医師」という。)であった。原告80番は,同産婦人科を,同月●日に退院した。なお,前記出産に係る母子手帳の「分べん」欄には「異常」に丸が付けられ,「双角子宮」「単臀位」との記載がある。 (3) 原告80番は,昭和42年●月●日,●産婦人科に入院し,●医師の執刀により,腹膜炎の手術を受け,同年●月●日に退院した。 (4) 原告80番は,昭和60年●月●日,●病院において,子宮筋腫のため,単純子宮全摘術及び片側付属器切除術を受けた。 (5) 原告80番は,平成4年,●病院での検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,現在,慢性C型肝炎にり患している。 (6) 原告80番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●産婦人科における特定フィブリノ ウイルスに感染していることが判明し,現在,慢性C型肝炎にり患している。 (6) 原告80番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●産婦人科における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告80番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告80番の平成25年1月30日付け陳述書(甲ハ80の1)原告80番は,昭和39年●月●日,●産婦人科で,院長の●医師の執刀により,第一子(男児)を出産した。原告80番は,双角子宮であり,逆子でもあったため,帝王切開による手術となった。帝王切開の事前説明で,●医師から,輸血と止血剤を使用する可能性があると聞いた記憶がある。また,前記出産に係る病院からの請求書には「特別注射」の請求があり,これがフィブリノゲン製剤ではないかと思う。 原告80番は,昭和42年●月●日,●産婦人科で,●医師の執刀により,腹膜炎の手術を受けた。同手術は,前記帝王切開の時のガーゼの残留糸が原因で腹膜炎を起こしたため,それに伴う膿を摘出するものだった。同手術に係る病院からの請求書では,高額の注射料が請求されているから,これがフィブリノゲン製剤ではないかと思う。 平成元年●月頃,当時の勤務先会社で受けた人間ドックで,肝機能障害の疑いありと診断され,その後の健康診断でもほぼ同様の結果が出た。 平成4年,ひどく身体がだるく,疲れやすくなったため,●病院で検査を受けた結果,慢性C型肝炎との診断を受けた。以後は,小紫胡湯等の服薬治療をしていたが,平成6年●月●日,同病院に入院して肝生検を受け,その後6か月間のインターフェロン治療を受けた。平成12年からは●病院への通 慢性C型肝炎との診断を受けた。以後は,小紫胡湯等の服薬治療をしていたが,平成6年●月●日,同病院に入院して肝生検を受け,その後6か月間のインターフェロン治療を受けた。平成12年からは●病院への通院を始め,平成14年,平成15年,平成18年及び平成19年にインターフェロン治療を受けたが,成果は期待外れのものだった。 平成25年時点では,グロチロン錠,ウルソ錠等を服薬しながら,インターフェロン治療を受けている。 原告80番は,前記出産及び手術の他に,昭和60年●月●日に,●病院において,子宮筋腫のため,●医師の執刀により,単純子宮全摘術と片側付属器切除術を受けている。同手術,前記出産,前記腹膜炎の手術以外には,肝機能障害が出始めた平成元年までの間に手術を受けたことはない。 原告80番の親族にC型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告80番は,入れ墨,ピアス,違法薬物の注射器での回し打ちの経験はない。 イ原告80番の平成28年8月13日付け陳述書(甲ハ80の14)平成17年の暮れに,自宅の建て直しに伴う引っ越しに際して,家中の荷物を,あまり中身を気にすることなく,プラスチック製の衣装ケースと段ボール箱に詰めて引っ越しをした。平成18年●月●日に,建て直した自宅に戻ってきた際,特に必要とする物以外については,箱の中身を気にすることもなく,ケースと箱のまま積み重ねてしまい込んでいた。 母子手帳や●産婦人科発行の請求書は,押し入れの奥に積み重ねていた一番下の段ボール箱の中から平成24年に発見したもので,長男の幼稚園時代の卒園証書と母子手帳に前記請求書を挟んでいた状態で茶封筒に入っており,その上に,四国八十八か所参拝時に使用した白衣や結願証等を載せて 段ボール箱の中から平成24年に発見したもので,長男の幼稚園時代の卒園証書と母子手帳に前記請求書を挟んでいた状態で茶封筒に入っており,その上に,四国八十八か所参拝時に使用した白衣や結願証等を載せて入れていた。結願証の日付が平成18年●月●日となっているので,この時期に収納したのだと思う。 原告80番は,昭和42年●月●日,●産婦人科で受けた腹膜炎の手術の際は,部分麻酔だったため,●医師が,この前の帝王切開の時のガーゼの糸が残っていて膿んでいると看護師に話して いるのが聞こえた。 ウ原告80番の供述(本人尋問)原告80番は,昭和39年●月●日,●産婦人科で,帝王切開により第一子(男児)を出産しているところ,出産予定の1か月前くらいの検診の際,●医師から,輸血と止血剤を使用する可能性があると言われた。医師を信頼していたこともあり,詳しく説明を求めなかった。前記出産は,部分麻酔で行われたものの,アイマスクをされた上,原告80番の頭と切開している腹部との間は白いカーテンで仕切られていたため,手術中の医師の様子等を見ることはできなかった。手術中は,右腕の肘の裏側に針を刺して点滴をされ,点滴は手術後続いた。点滴の数,容器については覚えていない。 原告80番は,昭和42年●月,●産婦人科で,腹膜炎の手術を受けた。手術を行った経緯は,帝王切開の傷口について,退院後も傷口の消毒とガーゼの交換で通院して一時は治っていたところ,再び傷口が痛み,高熱が出るなどして同産婦人科を受診した結果,手術を行うことになったというものである。同手術は,部分麻酔で行われたため,●医師と看護師との間で,帝王切開の時のガーゼの糸が残ってたよ,という話がされているのが聞こえた。 同手術に際しても,手術中及び手術後に, になったというものである。同手術は,部分麻酔で行われたため,●医師と看護師との間で,帝王切開の時のガーゼの糸が残ってたよ,という話がされているのが聞こえた。 同手術に際しても,手術中及び手術後に,点滴をされていた。点滴の数,容器については覚えておらず,出血,輸血,止血剤に関しては聞いていない。 (2) 検討ア前記1(2),(3)のとおり,原告80番が,昭和39年●月●日午後9時57分,●産婦人科において,帝王切開により,第一子(男児)を出産し,その際,「中等量」の出血をしたこと,昭和4 2年●月●日,●産婦人科において,腹膜炎の手術を受けたことをそれぞれ認めることができる。 イしかし,●産婦人科において,昭和39年及び昭和42年当時に特定フィブリノゲン製剤が使用されていたか,原告80番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,原告80番は,前記出産及び前記腹膜炎の手術の際,病院から交付された請求書の「特別注射」や「注射料」の記載から,同人に対する特定フィブリノゲン製剤の投与が推認される旨主張するが,かかる記載のみでは,原告80番に,具体的状況に照らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 3 結論以上によれば,原告80番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告82番関係 第1 当事者の主張(原告82番の主張) くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告82番関係 第1 当事者の主張(原告82番の主張) 1 原告82番は,平成8年,●病院(以下「●病院」という。)において,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告82番は,昭和51年●月●日,社会福祉法人●病院(以下「●病院」という。)において,第四子を死産し,その際,早期胎盤剥離により大量に出血した。 また,原告82番は,前記死産の際,子宮全摘出と卵巣摘出の各手術を受けた。 3 ●病院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関であり,昭和55年以降,継続的に特定フィブリノゲン製剤を納入していた。 4 原告82番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告82番の供述によっても,前記死産の際の具体的な出血量や病態,その際に受けた処置の詳細は不明であり,その他に何らかの異常があった様子はうかがわれず,DICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められないから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 また,原告82番は,前記死産の際,輸血を受けたようであるところ,当該輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定でき ない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認 ない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ82の1~4,6,7)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告82番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。原告82番には2人のきょうだいがいる。 (2) 原告82番は,昭和51年●月●日,●病院において,第四子を死産した。 (3) 原告82番は,平成8年●月●日,●病院において,慢性C型肝炎と診断された。 (4) 昭和51年当時,●病院は,産婦人科ほか9の診療科を有し,ベッド数は350床(一般300床,結核50床),産婦人科における医師は3名,産婦人科における看護師数は不明である。 昭和51年当時,●病院において,特定フィブリノゲン製剤を常備していたかは不明である。 (5) ●病院には,昭和55年に3本,昭和56年に5本,昭和57年に10本,昭和58年に7本,昭和59年に32本,昭和60年に2本(ただし,同年に6本を返品),昭和61年に337本,昭和62年に131本(ただし,同年に14本を返品),昭和63年に56本,平成5年に6本(ただし,平成3年に7本を返品),特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができる。原告82番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカル テの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告82番の陳述書(甲ハ82の1)の要旨は以下のとおりである。 原告82番は,昭和50年,第四子を妊娠し,同年●月頃から妊婦健診のため●病院に通っていた。担当は●医師だった。 出産予定 原告82番の陳述書(甲ハ82の1)の要旨は以下のとおりである。 原告82番は,昭和50年,第四子を妊娠し,同年●月頃から妊婦健診のため●病院に通っていた。担当は●医師だった。 出産予定日は,昭和51年●月●日だったところ,同年●月●日の夜,自宅において,陣痛のような痛みが始まった。同月●日の朝,タクシーで●病院に行き,分娩室で寝かされた。●医師に診てもらったところ,しばらくして,同医師が「もうあかんわ」と言ったのをよく覚えている。触診や聴診器で胎児の心音を確認した時,心音が聞こえていなかったようである。原告82番は,前記発言を聞いた後,麻酔のためか,だんだんと意識が遠のいていった。後から聞いた話では,原告82番の夫が,●医師から「母体と赤ちゃんどちらを選ぶか決めて下さい。今すぐ赤ちゃんを出さなあかん状態」と言われたそうで,原告82番の夫は「母体を優先して下さい。」と頼んだそうである。 原告82番は,同月●日,ICUで意識が戻り,胎児は助からなかったことを聞いた。病室にいる時,看護師から「大出血やったのに,よう助かったね」「よう自分の足で来たね」「胎盤剥離やったんよ」と言われた。また,●医師や看護師から主に話を聞いていた原告82番の夫からも,胎盤剥離だったこと,処置の際に輸血を受けたこと,原告82番の夫の会社の人に頼んで血を分けてもらい,輸血を受けた分の血液を血液センターに返したことなどを聞いた。 原告82番は,前記死産の後,約1か月間入院した。その内,22日間は,両手に点滴をした状態で身動きがとれなかった。点滴の 内容については,医師などから聞いていないし覚えていない。また,原告82番の夫から,死産した胎児を研究対象にしたいとの病院からの依頼に対し,仕方なく了承した旨を聞いた。 原告82番は, 内容については,医師などから聞いていないし覚えていない。また,原告82番の夫から,死産した胎児を研究対象にしたいとの病院からの依頼に対し,仕方なく了承した旨を聞いた。 原告82番は,平成7年春頃,体調が優れず,身体全体に倦怠感があったため,●病院を受診したところ,肝機能の異常を指摘され,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 原告82番は,同年●月からは,●病院に通い,平成8年●月,●病院において,慢性C型肝炎と診断され,同病院においてインターフェロン治療などを受けた。インターフェロン治療は,平成22年に中止したが,現在も悪化しないようにする注射を打つために,週2,3回,●病院から紹介された●クリニックに通院している。 原告82番は,平成20年頃,●病院に,前記出産に係るカルテがないか問い合わせたが,「昔の病院がなくなっているから,カルテ等の資料は全て廃棄しました。」とのことだった。ただし,同病院から,昭和55年以降のフィブリノゲン製剤の納入実績をもらうことができた。 原告82番は,昭和39年に第一子,昭和43年に第二子,昭和46年に第三子をそれぞれ出産しているところ,いずれも安産で,特に問題はなかった。 原告82番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告82番は,入れ墨,ピアス,違法薬物の注射器での回し打ちの経験はない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告82番が,昭和51年●月●日,●病院において,第四子を死産したことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和51年当時,特定フィブリノゲ ン製剤が使われていたか,原告82番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは 。 イしかし,●病院において,昭和51年当時,特定フィブリノゲ ン製剤が使われていたか,原告82番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告82番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告84番関係 第1 当事者の主張(原告84番の主張) 1 原告84番は,平成2年●月,●医院において,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきたが,病態は肝硬変に進行した。 2 原告84番は,昭和63年●月●日,●病院(後に,●病院に名称変更。以下,名称変更の前後を問わず「●病院」という。)において,交通事故での内臓破裂により開腹手術を受けた。 3 ●病院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 4 原告84番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告84番の供述によっても,前記手術の詳細や,手術当時の具体的病態は不明であるから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告84番は,前記手術の際,輸血を受けたようであるところ,当該輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定できない。 (補助参加人の主張 必要とする病態であったとは認められない。 原告84番は,前記手術の際,輸血を受けたようであるところ,当該輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定できない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実 前記前提事実に証拠(甲ハ84の1~3,4の1~3,甲ハ84の5,10,12)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告84番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。原告84番にはきょうだいがいる。 (2) 原告84番は,昭和63年●月●日午前0時45分頃,静岡県浜名郡●町(現在の湖西市)●において交通事故に遭って内臓破裂を含む怪我を負い,同日,搬送先の●病院において,手術を受けた。 (3) 原告84番は,平成25年●月●日,●医療センターにおいて,肝細胞がんと診断された。 (4) 昭和63年当時,●病院は,外科ほか6の診療科を有し,ベッド数は163床,外科における医師は5名,外科における看護師数は不明である。 昭和63年当時,●病院において,特定フィブリノゲン製剤を常備していたかは不明である。 (5) ●病院には,昭和55年に7本(ただし,同年に2本を返品),昭和56年に7本,昭和57年に2本,昭和58年に2本(ただし,同年に2本を返品),昭和60年に20本,昭和61年に5本,昭和62年に12本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができる。原告84番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告84番の陳述書(甲ハ 製剤が納入されたことを認めることができる。原告84番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告84番の陳述書(甲ハ84の1)の要旨は以下のとおりである。 原告84番は,昭和63年●月●日午前0時45分頃,愛知県浜名郡●町(現在の湖西市)●の国道1号線において,自動車を運転 し,赤信号で停止中,居眠り運転の自動車に追突された。原告84番は,前記事故により,ハンドルと座席シートの間に挟まれて動けなくなっていたところ,駆け付けた消防隊員に救出され,そのまま●病院に,失神状態で搬送された。 原告84番は,前記事故により,内臓破裂,右足骨折の怪我を負っており,●病院において,開腹の上,4mほどの小腸を切り捨て,残りを縫合するという手術を受けたようである。その後,意識が回復し,同月●日午前に,輸血をされた。医師の説明によると,前記手術を受けても約50%の割合で癒着するため,特に注意してほしいとのことだった。 昭和63年●月●日,●病院を退院し,大阪の病院に転院した。 平成2年6月頃,風邪のため●医院を受診し,血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,同医院で,平成3年から平成10年まで,肝炎の治療を受けた。 平成18年以降は,●内科クリニックで治療を受けている。また,平成22年には,2,3か月,●医院で治療を受けていたこともある。 薬害C型肝炎のことを知って以降,代理人弁護士を通じて,●病院に問い合わせ,回答を得た。また,●医院にも,関連する資料がないか問い合わせたが,記録は保存されていないとのことだった。 原告84番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない 病院に問い合わせ,回答を得た。また,●医院にも,関連する資料がないか問い合わせたが,記録は保存されていないとのことだった。 原告84番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告84番は,入れ墨,ピアスなどの経験はない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告84番が,昭和63年●月●日に交通事故で内臓破裂などの怪我を負い,●病院において手術を受けたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和63年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告84番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告84番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙亡原告85番関係 第1 当事者の主張(亡原告85番の主張) 1 亡原告85番は,平成5年頃,●総合病院において,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきたが,病態は肝硬変に進行し,死亡した。 2 亡原告85番は,昭和59年●月●日,独立行政法人●病院(以下「●病院」という。)において,右真珠腫性中耳炎のため,右鼓室形成手術を受けた。 3 ●病院には,昭和59年に107本の特定フィブリノゲン製剤が納入された。 4 亡原告85番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院におけるフィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染 3 ●病院には,昭和59年に107本の特定フィブリノゲン製剤が納入された。 4 亡原告85番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院におけるフィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 亡原告85番の供述によっても,前記手術の際の詳細や,手術当時の具体的病態は不明であるから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ85の1,2の1,2,5,甲ハ85の3,6,7の1~3)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認める ことができる。 (1) 亡原告85番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。亡原告85番には,1人のきょうだいがいる。 (2) 亡原告85番は,昭和59年●月●日,●病院において,右真珠腫性中耳炎のため,右鼓室形成手術を受けた。 (3) 亡原告85番は,平成20年●月●日,●病院において,C型肝硬変と診断され,その後,平成28年●月●日に死亡した。 (4) ●病院は,昭和59年当時,耳鼻咽喉科ほか14の診療科を有し,ベッド数は762床,耳鼻咽喉科における医師数は2名,耳鼻咽喉科における看護師数は不明である。 (5) ●病院では,昭和59年当時,特定フィブリノゲン製剤を常備し,必要に応じて補充していたところ,同病院における同製剤の納入実績は,昭和55年に103本,昭和56年に50本,昭和57年に53本,昭和58年に63本,昭和59年に107本,昭和6 ゲン製剤を常備し,必要に応じて補充していたところ,同病院における同製剤の納入実績は,昭和55年に103本,昭和56年に50本,昭和57年に53本,昭和58年に63本,昭和59年に107本,昭和60年に167本,昭和61年に224本,昭和62年に142本,昭和63年に15本(ただし,同年に13本を返品)だったが,亡原告85番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 亡原告85番の陳述書(甲ハ85の1)の要旨は以下のとおりである。 亡原告85番は,昭和59年●月●日,●病院において,右真珠腫性中耳炎のため,全身麻酔の上,右鼓室形成手術を受けた。輸血をされたかどうかは分からない。同手術に至るまで,右側の頭痛や耳垂れという症状に悩まされ,病院を訪れては原因が分からないと言われ,1年ほどいろいろな病院を転々としたが,ようやく●病院 で真珠腫性中耳炎であることが分かったものであった。 説明を受けた手術内容は,右耳の後ろを大きく切って,鼓膜と溶けた骨を除去して,人工鼓膜を入れるというものだった。耳が聞こえなくなることも覚悟してくださいと言われたのを覚えている。 手術後10日間くらいは,右耳からの出血が続き,右耳に詰めた綿が血だらけになっていた。入院期間は約1か月であり,輸血の有無を含めた手術前後の詳しい説明は,亡原告85番の両親が聞いていたと思うが,今は知ることができない。 平成5年頃,●総合病院で,子宮内膜症の手術の際の術前検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 平成16年頃,うつ症状で通院していた●クリニックで肝機能の悪化を指摘され,●病院の紹介を受けた。同病院で,肝生検,投薬,注射な 査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 平成16年頃,うつ症状で通院していた●クリニックで肝機能の悪化を指摘され,●病院の紹介を受けた。同病院で,肝生検,投薬,注射などの治療を受けたが,インターフェロン治療は受けていない。 現在は,C型肝硬変の病態であり,●病院での通院治療を続けている。 薬害C型肝炎のことを報道で知った後,●病院に対し,カルテの有無などを問い合わせたところ,最終的には,一部のカルテのみ残っていたとのことで開示を受けた。 亡原告85番は,●病院で,昭和62年頃に,唾石症の手術を受けているが,入院もない簡単なものだった。また,亡原告85番は,平成5年頃から,1回目は●総合病院で,2回目から4回目までは●病院で,子宮内膜症の手術を受けているが,これらは,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した後のものである。前記手術のほかに,出産,手術の経験はない。 亡原告85番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,亡原告85番は,入れ墨,ピアス,鍼治療,違法薬物の 注射器での回し打ちの経験はない。 (2) 検討ア前記1(2)及び(5)のとおり,亡原告85番が,昭和59年●月●日,●病院において,右真珠腫性中耳炎のため,右鼓室形成手術を受けたこと,●病院には,昭和59年に107本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができる。 イしかし,亡原告85番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,亡原告85番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足 たかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,亡原告85番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告86番関係 第1 当事者の主張(原告86番の主張) 1 原告86番は,平成3年,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,治療を受けてきたが,病態は肝がんに進行した。 2 原告86番は,昭和43年●月●日,●病院において,第二子(女児)を出産し,その際,中等量の出血をした。 3 ●病院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 4 原告86番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告86番の供述によっても,前記出産の際,中等量の出血があったほかに何らかの異常があった様子はうかがわれず,DICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められないから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ86の1~6)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告86番は,昭和●年●月●日生まれの女性であ 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ86の1~6)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告86番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。原告86 番には,4人のきょうだいがいる。 (2) 原告86番は,昭和43年●月●日午前7時30分,●病院において,第二子(女児)を出産し,中等量の出血をした。分娩介助は,●医師が行った。なお,●病院は,平成3年●月●日付けで廃院となっている。 (3) 原告86番は,平成26年頃,肝がんにり患した。 (4) ●病院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関一覧に記載されているものの,原告86番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告86番の陳述書(甲ハ86の1)の要旨は以下のとおりである。 原告86番は,昭和39年●月,●病院において,第一子(女児)を出産した。出産の際,出産予定日を2週間も経過していたため,胎児の頭が大きく成長し,子宮口から出てこられないおそれがあるとのことで,帝王切開により出産した。 原告86番は,昭和43年●月●日,●病院において,第二子(女児)を出産した。出産予定日から1週間遅れての出産であり,担当は,●●医師(以下「●医師」という。)だった。はっきりとした理由は覚えていないが,第二子の出産は,普通分娩で行われた。出産に先立ち,●医師から,輸血をすることになるかもしれないとして献血の指示を受け,献血手帳を2人分提出した。また,分娩の際,●医師が,お腹が裂けてはいけないと,ずっと原告86番のお腹に重みをつけるようにして押さ 医師から,輸血をすることになるかもしれないとして献血の指示を受け,献血手帳を2人分提出した。また,分娩の際,●医師が,お腹が裂けてはいけないと,ずっと原告86番のお腹に重みをつけるようにして押さえつけていてくれたこと,その際に点滴を受けたことを覚えている。ただし,前記点滴が輸血だったのか, 他の薬剤だったのかは分からない。 原告86番は,平成3年に受けた健康診断で,肝臓の数値が高いから検査を受けるよう言われ,●病院で検査を受けた結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。感染判明後,しばらくインターフェロン治療を受けたが,完治はしなかった。その後も,●病院や●病院に通院して治療を続けている。 原告86番は,カルテの有無などについて,●病院に問い合わせたが,カルテなどは残っていないとの回答であった。また,同様に●病院に問い合わせようとしたが,同病院は廃院となっており,調べられなかった。 原告86番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告86番は,入れ墨,違法薬物の注射器での回し打ちなどの経験はない。成人した後は,インフルエンザの注射や歯科医院での麻酔注射を受けたほかは,前記のとおり帝王切開手術を受けたこと,昭和44年●月に中絶手術を受けたこと以外に手術や注射の経験はない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告86番が,昭和43年●月●日午前7時30分,●病院において,第二子(女児)を出産し,その際,中等量の出血をしたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和43年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告86番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは しかし,●病院において,昭和43年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告86番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論 以上によれば,原告86番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告87番関係 第1 当事者の主張(原告87番の主張) 1 原告87番の母は,昭和51年●月,非A非B型肝炎と診断された後,C型肝炎と診断されてC型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,治療を受けてきたが,平成17年●月●日,肝がんにより死亡した。 2 原告87番の母は,昭和51年●月●日,●病院において,子宮筋腫のため子宮全摘手術を受けた。 3 病院には,昭和55年以降,継続的に,特定フィブリノゲン製剤が納入されている。 4 原告87番の母がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告87番の供述によっても,原告87番の母が受けた前記手術の詳細や,手術当時の具体的病態は不明であるから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 また,証拠上,原告87番の母は前記手術時に既に肝疾患にり患していたことがうかがわれ,前記手術時に,他原因によって既にC型肝炎ウイルスに感染していた可能性が否定できな ったとは認められない。 また,証拠上,原告87番の母は前記手術時に既に肝疾患にり患していたことがうかがわれ,前記手術時に,他原因によって既にC型肝炎ウイルスに感染していた可能性が否定できない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ87の1~4,9)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告87番の母は,昭和●年●月●日生まれの者である。原告87番の母には,5人のきょうだいがいる。 (2) 原告87番の母は,昭和51年●月●日,●病院において,子宮筋腫のため子宮全摘手術を受けた。 (3) 原告87番の母は,平成3年●月●日に,C型肝炎であるとの診断を受け,平成17年●月●日に,肝がんにより死亡した。 (4) 病院には,昭和55年に77本,昭和56年に152本,昭和57年に106本,昭和58年に150本,昭和59年に32本,昭和60年に88本,昭和61年に89本,昭和62年に119本(ただし,同年に15本を返品),昭和63年に39本(ただし,同年に3本を返品)の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができるが,原告87番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告87番の母に関する原告87番の陳述書(甲ハ87の1)の要旨は以下のとおりである。 原告87番の母は,昭和51年●月●日,●病院において,子宮筋腫のため子宮摘出の手術を受けた。同手術には,原告87番の母の妹が付き添い,原告87番は,原 1)の要旨は以下のとおりである。 原告87番の母は,昭和51年●月●日,●病院において,子宮筋腫のため子宮摘出の手術を受けた。同手術には,原告87番の母の妹が付き添い,原告87番は,原告87番の母の実家の留守を預かっていたところ,手術翌日の朝,原告87番の母の妹から,原告87番の母の「痛い痛い」といううめき声が一晩中続いたことを電話で聞いた。病名は,卵巣嚢腫であり,赤ちゃんの頭程度の大きさの物を取り出したということも聞いた。 昭和51年●月,●内科において,原告87番の母が,非A非B型肝炎にり患していることが判明した。●内科では,インターフェロン治療のことを聞いたが,高価であったことや,病状が切迫していたわけでもなかったことから,治療は受けなかった。その後も,●病院,●病院,●病院で入退院を繰り返しながら治療を続けた。 原告87番の母は,平成12年頃から,体力的に弱くなり,がんもでき始めた。がんに対しては,アルコール注入法やラジオ波治療を行ったが,平成17年●月●日に亡くなった。 原告87番の母の両親及びきょうだいに,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告87番の母は,入れ墨,ピアス,人工透析,鍼治療の経験はない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告87番の母が,昭和51年●月●日,●病院において,子宮筋腫のため子宮全摘手術を受けたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和51年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告87番の母に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれ 7番の母に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告87番の母については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告89番関係 第1 当事者の主張(原告89番の主張) 1 原告89番は,平成19年●月,慢性C型肝炎と診断され,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告89番は,昭和52年●月●日,●病院において,帝王切開により,第二子(女児)を出産し,その際,多量の出血をした。 3 ●病院には,昭和55年から昭和63年までの間,継続的に,特定フィブリノゲン製剤が納入されている。 4 原告89番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告89番の供述によっても,前記出産の際,多量の出血があった他に何らかの異常があった様子はうかがわれず,DICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められないから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告89番は,前記処置後に,医師が「止血剤」を使った旨を述べたと供述するが,かかる発言を前提としても,原告89番が,当該止血剤が特定フィブリノゲン製剤である旨を聞いていたわけでもない以上,原告89番に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認させるもので と供述するが,かかる発言を前提としても,原告89番が,当該止血剤が特定フィブリノゲン製剤である旨を聞いていたわけでもない以上,原告89番に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認させるものではない。 また,原告89番は,前記出産の際,輸血を受けているところ,当該輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定できない。 (補助参加人の主張) 特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ89の1,2,4,5)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告89番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告89番には,2人のきょうだいがいる。 (2) 原告89番は,昭和52年●月●日午後0時5分,●病院において,帝王切開により,第二子(女児)を出産し,その際,多量の出血をした。分娩介助は,●●医師(以下「●医師」という。)が行った。 (3) 原告89番は,平成23年●月●日,●病院において,慢性C型肝炎と診断された。 (4) ●病院には,昭和55年に9本,昭和56年に1本,昭和58年に7本,昭和59年に2本,昭和60年に1本,昭和62年に11本(ただし,同年に3本を返品),昭和63年に3本(ただし,平成2年に6本を返品),特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができるが,原告89番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告89番の陳述書(甲ハ89の1)の要旨は以下のとおりである。 原告89番は,昭和52年●月●日 した可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告89番の陳述書(甲ハ89の1)の要旨は以下のとおりである。 原告89番は,昭和52年●月●日,●病院産婦人科において,帝王切開により,第二子(女児)を出産した。 妊娠8か月の時点で,前置胎盤と診断をされ,身体を動かすと小さく産まれるからと,1か月ほど入院をしていた。出産の際は,産 まれるまでに時間がかかるので帝王切開の方が早くて良いと言われ,帝王切開をすることになった。出産は無事に終わったが,後から原告89番の夫から聞いた話では,主治医から,出血多量で手術室が血でいっぱいだった,輸血もしたし止血剤も使った,という説明がされたそうである。なお,原告89番は,前記出産時以外に輸血の経験はない。 出産後,1週間で退院をしたが,しばらくすると黄だんが出たので●病院を受診したところ,肝炎だと言われて●病院を紹介された。 その後,●病院に半年ほど入院して点滴治療を受けた。 平成19年●月,健康診断で肝臓の数値が悪いと指摘され,高槻市にある●病院で検査を受けた結果,慢性C型肝炎だと診断された。 同月から同年●月にかけて,同病院などでインターフェロン治療及び投薬治療を受け,ウイルスが消失した。現在も,3か月ごとに●病院で検査を受けている。 薬害C型肝炎訴訟のことを知って以降,●病院にカルテなどが残っていないか問い合わせたが,記録は残っておらず,●医師も他界された旨の回答であった。 原告89番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告89番は,入れ墨,ピアス,鍼治療の経験はない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告89番が,昭和52年●月●日午後0時5分,●病院において,帝王切開により 者はいない。また,原告89番は,入れ墨,ピアス,鍼治療の経験はない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告89番が,昭和52年●月●日午後0時5分,●病院において,帝王切開により,第二子(女児)を出産し,その際に多量の出血をしたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和52年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告89番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記 (1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告89番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告90番関係 第1 当事者の主張(原告90番の主張) 1 原告90番は,平成13年頃,●病院において,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきたが,病態は肝がんに進行した。 2 原告90番は,昭和45年●月●日,●病院において,帝王切開により,第一子(男児)を出産し,その際,500mlの出血をした。 原告90番は,昭和46年●月●日,●病院において,帝王切開により,第二子(女児)を出産し,その際,500mlの出血をした。 原告90番は,昭和49年●月●日,●病院において,帝王切開により,第三子(男児)を出産し,その際,1184mlの出血をした。 3 ●病院及び●病院は,いずれも厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 4 原告90番がC型肝 により,第三子(男児)を出産し,その際,1184mlの出血をした。 3 ●病院及び●病院は,いずれも厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 4 原告90番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院と●病院の両方又はいずれか一方における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告90番の供述によっても,原告90番の,第一子に関する前記出産及び第二子に関する前記出産において,それぞれ500mlの出血があった他に何らかの異常があった様子はうかがわれず,DICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められないから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 また,原告90番の,第三子に関する前記出産の際,前置胎盤であ ったため用手剥離がされたことは認められるが,このような措置が行われたことでただちにDICを発症するものではなく,他に何らかの異常があった様子はうかがわれないから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告90番は,前記各出産のいずれかの際に輸血を受けたようであるところ,当該輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定できない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ90の1~4,6,8)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告90番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告90番に 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ90の1~4,6,8)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告90番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告90番には,6人のきょうだいがいる。 (2) 原告90番は,昭和45年●月●日午後4時8分,●病院において,帝王切開により,第一子(男児)を出産し,その際500mlの出血をし,ブドウ糖等の輸液1000mlを受けた。分娩介助は,●●医師(以下「●医師」という。)が行った。 (3) 原告90番は,昭和46年●月●日午後3時17分,●病院において,帝王切開により,第二子(女児)を出産し,その際,500mlの出血をし,ブドウ糖等の輸液1000mlを受けた。分娩介助は,●医師が行った。 (4) 原告90番は,昭和49年●月●日午後3時41分,●病院において,帝王切開により,第三子(男児)を出産し,その際118 4mlの出血をした。分娩介助は,●●医師(以下「●医師」という。)が行った。同出産に係る母子手帳の「分娩経過」欄には「癒着胎盤(前置胎盤)」との記載及び「用手剥離」との記載がある。 (5) 原告90番は,平成21年●月●日,財団法人●会●病院(以下「●病院」という。)において,肝がんと診断された。 (6) ●病院は,昭和45年,昭和46年当時,産婦人科ほか10の診療科を有し,ベッド数は320床,産婦人科における医師数は4名,産婦人科における看護師数は18名,産婦人科における年間分娩数は600件であった。 昭和45年,昭和46年当時,●病院で特定フィブリノゲン製剤を常備していたかは不明である。なお,●病院の●作成に係る回答書には,「通常の止血剤の使用は,アドナ注,トランサミン注,レプチラーゼ注」,「昭和61年以前の産 年当時,●病院で特定フィブリノゲン製剤を常備していたかは不明である。なお,●病院の●作成に係る回答書には,「通常の止血剤の使用は,アドナ注,トランサミン注,レプチラーゼ注」,「昭和61年以前の産婦人科におけるフィブリノゲン製剤の使用は,手術時の大量出血又は出産時の大量出血に対し,止血及び救命のために使用した。」との記載がある。 (7) ●病院には,昭和55年に1本,昭和58年に24本,昭和59年に45本(ただし,同年に3本を返品),昭和61年に7本,昭和62年に3本(ただし,同年に6本,昭和63年に2本をそれぞれ返品),特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,原告90番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告90番の陳述書(甲ハ90の1)の要旨は以下のとおりである。 原告90番は,昭和45年●月●日に,●病院において,帝王切開により,第一子(男児)を出産した。なお,原告90番は,妊娠中 毒症がひどく,近くの病院では出産できないとのことで,●病院の紹介を受けたという経緯であった。 原告90番は,その後,昭和46年●月●日に,●病院において,帝王切開により,第二子(女児)を,昭和49年●月●日に,●病院において,帝王切開により,第三子(男児)を,それぞれ出産した。 原告90番は,平成13年頃,体調不良のため,●病院で血液検査を受けたところ,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。その後,●病院において,慢性C型肝炎について注射及び投薬治療を受けたが,肝臓がんへ進行してしまった。 平成20年●月及び平成21年●月に,肝臓がんにより●病院にそれぞれ入院し,注射治療を受けたが,やはり手術による肝切除が 炎について注射及び投薬治療を受けたが,肝臓がんへ進行してしまった。 平成20年●月及び平成21年●月に,肝臓がんにより●病院にそれぞれ入院し,注射治療を受けたが,やはり手術による肝切除が必要となったため,平成21年●月●日から同年●月●日まで,同病院に入院し,肝切除の手術を受けた。その後,平成22年●月頃から平成24年●月頃まで●病院でインターフェロン治療を受けたが,ウイルスの消失には至らず,現在も治療を続けている。 新聞で薬害C型肝炎のことを知って以降,●病院に対し,カルテなどが残っていないか問い合わせたが,既にカルテは廃棄しており,原告90番の分娩を担当した●医師も他界されたとの回答であった。 また,●病院は廃院となっていたものの,●医師に手紙を出して当時のことを問い合わせたところ,「資料がないのでフィブリノゲン製剤を使用したかどうかは分からない」との回答だった。 原告90番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告90番は,前記3回の出産以外に手術の経験はないし,入れ墨,ピアス,違法薬物の注射器での回し打ちの経験はない。 (2) 検討ア前記1(2)~(4)のとおり,原告90番が,昭和45年●月●日 午後4時8分,●病院において,帝王切開により,第一子(男児)を出産し,その際500mlの出血をしたこと,昭和46年●月●日午後3時17分,●病院において,帝王切開により,第二子(女児)を出産し,その際,500mlの出血をしたこと,昭和49年●月●日午後3時41分,●病院において,帝王切開により,第三子(男児)を出産し,その際1184mlの出血をしたことをそれぞれ認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和45年及び昭和46年当時,特定フィブ 院において,帝王切開により,第三子(男児)を出産し,その際1184mlの出血をしたことをそれぞれ認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和45年及び昭和46年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告90番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 同様に,●病院において,昭和49年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告90番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかも,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告90番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告93番関係 第1 当事者の主張(原告93番の主張) 1 原告93番は,平成7年●月頃,慢性C型肝炎と診断され,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告93番は,昭和41年●月●日,●産婦人科において,帝王切開により,第二子(女児)を出産し,その前日か当日,多量の出血をした。 3 ●産婦人科には,昭和41年当時,特定フィブリノゲン製剤が納入されていた。 4 原告93番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●産婦人科における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告93番の供述によっても,前記出産の前日 科における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告93番の供述によっても,前記出産の前日の出血に対して緊急帝王切開などはされずに止血の処置のみされているのであるから,DICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められず,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 また,原告93番は,前記出産の当日,帝王切開に伴い多量の出血をしているが,その他に何らかの異常があった様子はうかがわれず,DICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められないから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染 との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ93の1~5)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告93番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告93番には,3人のきょうだいがいる。 (2) 原告93番は,昭和41年●月●日午前10時17分,●産婦人科において,帝王切開により,第二子(女児)を出産し,その際,「多量」の出血をした。母子手帳の「分べん」欄では,「異常」に丸囲みがされ,「中心性前置胎盤」との記載がある。分娩介助は,●●医師(以下「●医師」という。)が行った。 (3) 原告93番は,平成23年●月●日,●医療センターにおいて,慢性C型肝炎と診断された。 (4) 原告93番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示す いう。)が行った。 (3) 原告93番は,平成23年●月●日,●医療センターにおいて,慢性C型肝炎と診断された。 (4) 原告93番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●産婦人科における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告93番の陳述書(甲ハ93の1)の要旨は以下のとおりである。 原告93番は,昭和41年●月●日,●産婦人科において,帝王切開により,第二子(女児)を出産した。 出産予定日の10日くらい前,自宅において,生理のような感じで出血し,車で●産婦人科に行った。到着後,分娩台に上がった途端,音が聞こえたほどの大量出血をし,「頭を下にして寝ておいてください。」と言われ,そのまま止血の処置が施された。●医師からは, 「よく持ちましたね。」「明日の朝,帝王切開します。」と言われ,非常に驚いた。 原告93番は,出産後,●医師から,「大量出血だった。1000ml輸血した。」と言われ,また,原告93番の夫は,同医師から,「母子ともに助からないかもしれません。」と言われ,非常に心配したとのことだった。 平成7年●月頃,風邪がなかなか治らず,●診療所で血液検査を受けたところ,慢性C型肝炎である旨を告げられた。「この病気は治らず,進む一方の病気です。慢性肝炎で10年,肝硬変で10年,肝臓がんで5年。また肝臓の数値が三桁になれば,肝硬変で毎日注射ですよ。」と言われ,大変なショックを受けた。 原告93番は,何とか慢性C型肝炎のレベルでとどめようと思い,●診療所でウルソの服薬治療を続け,平成16年●月●日からは,●医療センターで同治療を継続している。なお,インターフェロン治療については,年齢と費用のことを考え,受けていない。 どめようと思い,●診療所でウルソの服薬治療を続け,平成16年●月●日からは,●医療センターで同治療を継続している。なお,インターフェロン治療については,年齢と費用のことを考え,受けていない。 原告93番は,前記出産に先立って,第一子(男児)を出産しているが,その際は,安産で,特に問題なかった。 原告93番の両親及びきょうだいに,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告93番は,入れ墨,ピアス,人工透析の経験はない。 (2) 原告93番に関する●医師作成に係る平成23年6月27日付け診断書(甲ハ93の5)の要旨は以下のとおりである。 昭和41年●月●日,前置胎盤との診断により,帝王切開術を行っている。現在,●医師は引退し,カルテも保存されていないが,手術中又は手術後に大量に出血していることから,輸血を行っている可能性はあり得る。 (3) 検討ア前記1(2)のとおり,原告93番が,昭和41年●月●日午前10時17分,●産婦人科において,帝王切開により,第二子(女児)を出産し,その際,多量の出血をしたことを認めることができる。 イしかし,●産婦人科において,昭和41年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告93番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)及び(2)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告93番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙亡 されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙亡原告94番関係 第1 当事者の主張(亡原告94番の主張) 1 亡原告94番は,平成3年頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,治療を受けてきたが,病態は肝硬変に進行し,その後,死亡した。 2 亡原告94番は,昭和55年●月●日,●病院において,子宮筋腫により,子宮全摘出手術を受けた。 3 ●病院には,昭和56年以降,継続的に,特定フィブリノゲン製剤が納入されている。 4 亡原告94番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 亡原告94番及び亡原告94番の娘の供述によっても,亡原告94番が受けた前記手術の詳細や,手術当時の具体的病態は不明であるから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 亡原告94番の娘は,亡原告94番の前記手術の際,●医師から「血液製剤を使いました。」と言われた旨供述するが,同供述によっても,当該血液製剤の薬剤名は不明であるから,当該血液製剤が特定フィブリノゲン製剤であったと認めることはできない。 また,亡原告94番は,前記手術の際,輸血を受けたようであるところ,当該輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定できない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 が否定できない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ94の1~12)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 亡原告94番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 亡原告94番には,1人のきょうだいがいる。 (2) 亡原告94番は,昭和55年●月●日,●病院において,子宮筋腫により,子宮全摘出手術を受けた。 (3) 亡原告94番は,平成16年●月●日,慢性C型肝硬変と診断され,その後,平成28年●月●日に死亡した。 (4) 昭和55年当時,●病院は産婦人科ほか13の診療科を有し,病院全体におけるベッド数は498床,産婦人科における医師数は4名,病院全体における看護師数は337名,年間分娩件数は401件,年間手術件数は5711件である。 (5) ●病院には,昭和56年に6本,昭和58年に81本,昭和59年に38本,昭和60年に171本,昭和61年に365本,昭和62年に245本(ただし,同年に2本を返品),昭和63年に50本(ただし,平成元年に10本を返品),平成2年に7本(ただし,同年に9本を返品)の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,亡原告94番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 亡原告94番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりで ある。 ア亡原告94番の陳述書(甲ハ94の11)亡原告94番は,昭和55年,●病院で高血圧の治療を受けていたところ,更年期症状で体調 述等の要旨は以下のとおりで ある。 ア亡原告94番の陳述書(甲ハ94の11)亡原告94番は,昭和55年,●病院で高血圧の治療を受けていたところ,更年期症状で体調がすぐれなかったこともあり,自宅近くの●産婦人科医院を受診した。同医院での診察の結果「子宮筋腫です。」「血圧のこともあるので,●病院で手術した方が良い。」と言われた。 亡原告94番は,昭和55年●月,●病院に入院し,●医師の執刀の下,子宮全摘出手術を受けた。手術は全身麻酔で行われたため,手術中の具体的な処置は見ていないが,後に,手術中に血が天井につくくらい噴き出て大変な手術だったと聞いた。また,手術後に輸血を受けていたことをよく覚えている。 亡原告94番は,平成3年頃,●病院の内科での検査で,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。感染判明後は,インターフェロン治療などを受けたが効果は出ず,病態は肝がんにまで進行し,平成24年●月,●病院で肝がんの手術を受けた。 亡原告94番の両親及びきょうだいに,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,亡原告94番は,入れ墨,ピアス,違法薬物の注射器での回し打ちの経験はない。 イ亡原告94番の娘の陳述書(甲ハ94の1)亡原告94番は,昭和55年●月●日,●病院に入院し,同月●日,子宮全摘出手術を受けた。手術前の診察や手術の説明などは,亡原告94番が1人で対応したそうである。 亡原告94番の娘は,前記手術当日,●病院で,手術が終わるのを待っていた。手術が終わると,●医師が手術の説明に来てくれて,病院の廊下で,互いに立った状態で説明を受けた。同説明では,「切 った時に,血がパッと,天井まで届くくらいの勢いで5メートルくらい噴き出しました。」「血液製剤を使 術の説明に来てくれて,病院の廊下で,互いに立った状態で説明を受けた。同説明では,「切 った時に,血がパッと,天井まで届くくらいの勢いで5メートルくらい噴き出しました。」「血液製剤を使いました。」「お母さんは多血症です。」などと言われた。前記血液製剤の具体的名称や,どのように使われたのかということについては,説明がなく,質問もしなかったため,分からない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,亡原告94番が,昭和55年●月●日,●病院において,子宮筋腫により,子宮全摘出手術を受けたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和55年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,亡原告94番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,亡原告94番の娘は,亡原告94番の前記手術後に,●医師から,血液製剤を使った旨の説明を受けたと供述するが,他方で当該血液製剤の具体的名称や使途・効果は分からないとも述べており,この供述によっても,亡原告94番に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 3 結論以上によれば,亡原告94番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告95番関係 第1 当事者の主張(原告95番の主張) 1 原告95番は,平成22年,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 2 原告95番は,昭和49年●月● 別紙原告95番関係 第1 当事者の主張(原告95番の主張) 1 原告95番は,平成22年,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 2 原告95番は,昭和49年●月●日,●産婦人科において,第一子(男児)を出産し,産後,2日にわたり計1000mlの輸血を受けた。 原告95番は,同月●日に大量出血し,●医師(以下「●医師」という。)から「輸血しているから,血の止まり具合が悪いかもしれない。止血剤を打っておきますから。」と言われ,注射と点滴の処置を受けた。 原告95番は,昭和52年●月●日,●産婦人科において,第二子(女児)を出産した。分娩後に出血があり,●医師から「出血の止まりが悪いから,今回も止血剤しときましょうか。」と言われ,注射を打たれた。点滴の処置を受けたかは分からない。 3 ●医師は,DICを発症した場合や,DICに至ると予測された場合,血圧低下などの出血性ショックを起こした場合に,点滴静注の方法により,特定フィブリノゲン製剤を通常1本投与し,輸血を実施した場合においても止血傾向がみられなければ特定フィブリノゲン製剤を投与していた。昭和49年の前記出産の際に1000mlの輸血が行われていることからすると,出産後に止血目的で特定フィブリノゲン製剤を投与している可能性がある。また,●医師は,特定フィブリノゲン製剤を使用する場合は,患者や家族に対して「止血剤」という言葉で表現して説明していた。 妊娠貧血の状態にある場合,分娩時には出血を起こしやすく,容易にショックに陥りやすいといわれており,また,貧血妊婦は正常妊婦に比し同一出血量に対しても回復が遅れるとされているところ,昭和49年の前記出産の際,原告95番が貧血を原因として大量出血を起こし,●医師においてDICに至ると予測され り,また,貧血妊婦は正常妊婦に比し同一出血量に対しても回復が遅れるとされているところ,昭和49年の前記出産の際,原告95番が貧血を原因として大量出血を起こし,●医師においてDICに至ると予測された場合と判断した可能性が相当程度高く,昭和49年の前記出産の際に,特定フィブリノゲン製剤が投与された高度の蓋然性がある。 また,昭和52年の前記出産の際にも,●医師が「止血剤」と説明していたことからすれば,特定フィブリノゲン製剤が投与された高度の蓋然性がある。 4 ●産婦人科は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 5 原告95番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●産婦人科における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。 2 原告95番の供述及び●医師の供述によっても,昭和49年及び昭和52年の前記各出産当時,原告95番がDICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められず,むしろ,原告95番が前記各出産の後に容体が悪化したことをうかがわせる供述をしていないことに照らせば,特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあったと認めることはできず,前記各出産のいずれの機会についても,原告95番に対する特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 3 原告95番の供述によっても,●医師が前記各出産の後に原告95番に対して述べた「止血剤」が,アドナやトランサミン等の特定フィブリノゲン製剤以外の止血剤である可能性が否定できない。 また,原告95番は,昭和52年の前記出産の際に輸血を受けていないところ,輸血せずに特定フィブリノゲン製剤投与を行う トランサミン等の特定フィブリノゲン製剤以外の止血剤である可能性が否定できない。 また,原告95番は,昭和52年の前記出産の際に輸血を受けていないところ,輸血せずに特定フィブリノゲン製剤投与を行うことはないという●医師の投与方針に照らせば,特に昭和52年の前記出産の際の原告95番に対する特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 4 原告95番は,昭和49年の前記出産の際に輸血を受けているところ,当該輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定できない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実及び同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。 原告95番のC型肝炎ウイルス感染の事実は認める。 その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ95の1,3~5,6の1~4,甲ハ95の8~13,証人●●,原告95番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告95番は,昭和●年●月●日生まれの女性であり,いずれも●産婦人科において,昭和49年●月●日に第一子(男児)を出産し(以下「本件出産①」という。),昭和52年●月●日に第二子(女児)を出産した(以下「本件出産②」という。)。本件出産①及び②の当時,個人が設置した●産婦人科における医師は●医師1人であり,同医 師が出産を担当した。また,●産婦人科における昭和49年及び昭和52年当時のベッド数は8床であり,非常勤も含めて助産師が約3名,看護師が約5名在籍していた。 (2) 原告95番は,本件出産①の際には9日間入院し,輸血1000mlを受け,合計13万9370円の出産関係費用を支払った。 原告95番は,本件出産②の際には6日間 看護師が約5名在籍していた。 (2) 原告95番は,本件出産①の際には9日間入院し,輸血1000mlを受け,合計13万9370円の出産関係費用を支払った。 原告95番は,本件出産②の際には6日間入院し,分娩費用,新生児保育料,子宮出血止血法,投薬料,注射料等により,合計15万4400円の出産関係費用を支払った。 (3) 原告95番は,平成22年●月●日に受診した職場の健康診断において,C型肝炎ウイルス抗体が陽性であり,C型肝炎ウイルスに感染している可能性が高いとの診断を受け,C型肝炎ウイルスに関する精密検査を受けるよう指示されたが,平成23年●月に●病院において受診した検査においては,C型肝炎ウイルスは検出されなかった。 (4) ●産婦人科は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。同産婦人科における特定フィブリノゲン製剤の納入に関する記録の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の要旨(1) 原告95番本人の陳述書(甲ハ95の1)ア昭和49年●月●日,●産婦人科で妊婦健診を受けた際,●医師から,極度の貧血状態になっており,増血剤では産後の出血を補えないため,事前に輸血をする旨の話がされた。同月●日より,●産婦人科に入院し,同日及び同月●日に,血液センターから取り寄せた血液の輸血を受けた。輸血量について,当初の予定は,●日に600ml(1本200mlの牛乳瓶3本分),●日に400mlというものであったが,800mlの輸血が既に終わり,残 る200mlの輸血を受けている途中,首筋にじんましんが発生したため,輸血を中断した。当時は血液センターから血液を取り寄せた場合,後に同量の血液を血液センターに提供しなければならないとされていたため,原告95番の夫や夫の友人の合計4名が同月●日に血液 生したため,輸血を中断した。当時は血液センターから血液を取り寄せた場合,後に同量の血液を血液センターに提供しなければならないとされていたため,原告95番の夫や夫の友人の合計4名が同月●日に血液センターで献血を行っている。 同月●日午前10時頃,●産婦人科で陣痛促進剤の点滴を受け,人工的に陣痛が始まると分娩室に移動し,破水を経て,同日夕方頃に本件出産①をした。出産後すぐの出血もそれほどなかったと記憶しており,●医師等から出血多量と言われた記憶もない。出産後はナプキンを当てた状態で病室で休んでおり,大量ではないものの,出血はあった。 同日,●医師の診察を受けた際,「輸血しているから,血の止まり具合が悪いかもしれない,止血剤を打っておきますから。」と言われたことを覚えているが,注射と点滴のいずれの方法による投与だったかは分からない。 出産翌日である同月●日の朝,トイレに行った際,黒い血の塊が出てきて,大量出血をした。更にたらーっと血が出る感覚があったため,大量出血かつ出血が続いていることを不安に思いながらも,とりあえずナプキンを当てた状態で病室に戻った。 その後は大量出血をすることもなく,同月●日に●産婦人科を退院した。退院後も出血自体は1か月程度続いた。 イ昭和52年●月●日朝,陣痛が来たため,歩いて●産婦人科に行き,同日10時頃に本件出産②をした。出産自体に特に問題はなく,大量出血もなかった。 出産後は,産後の出血が続き,当てているナプキンには常に出血がある状態だった。出産当日の夕方,●医師から「出血の止まりが 悪いから,今回も,止血剤しときましょうか」と言われ,その後に看護師から注射を受けた。点滴を受けたかどうかは覚えていない。 その後は特に問題もなく,5日程度入院して●産婦人科を退院した。 ウ昭和 いから,今回も,止血剤しときましょうか」と言われ,その後に看護師から注射を受けた。点滴を受けたかどうかは覚えていない。 その後は特に問題もなく,5日程度入院して●産婦人科を退院した。 ウ昭和60年頃から身体がだるい毎日が続いたが,特定の病名にたどり着くことなく生活を続けていた。その後,平成12年頃から,異常な位疲労を感じるようになった。同年●月に受けた職場での健康診断において,肝機能に異常がある旨の検査結果が出たが,忙しかったこともあり,詳しい検査を受けることはしなかった。 平成22年●月,職場での健康診断の際に,オプションとしてC型肝炎ウイルスの検査も追加したところ,C型肝炎ウイルスの抗体が陽性であると言われた。しかし,その後,平成23年●月に●病院で受けた検査では,C型肝炎ウイルスは検出されなかった。 エ原告95番は,入れ墨,ピアスなどの経験はなく,違法薬物の注射器での回し打ちもしたことはない。原告95番の家族にもC型肝炎ウイルスに感染している者はいない。 (2) 原告95番の供述(本人尋問)ア昭和49年●月●日,特に自覚症状はなかったものの,●医師から極度の貧血状態に陥っていると言われ,同日及び同月●日にかけて,血液センターから取り寄せた血液の輸血を受けた。ただし,●医師が出産前に輸血をすることはまずないと供述していることを踏まえると,記憶に自信がない。 本件出産①は,同月●日の午後5時過ぎ頃だと思う。出産直後に大量出血をしていたという記憶はないが,分娩が終わり処置室で休んでいる際に,●医師から,血が止まりにくいので止血剤を打つ 旨の話をされ,止血剤の投与を受けた。実際に投与された止血剤の薬剤名は聞いていない。 同月●日の朝,トイレで大量出血をしたが,血が多い日用のナプキンを付けて部屋に戻 ので止血剤を打つ 旨の話をされ,止血剤の投与を受けた。実際に投与された止血剤の薬剤名は聞いていない。 同月●日の朝,トイレで大量出血をしたが,血が多い日用のナプキンを付けて部屋に戻った。大量出血のことは入院中は●医師には報告をしなかったが,退院後の1か月検診の際に報告したところ,身体の出血が止まりにくい体質だから余り無理しないようにと言われた。なお,弛緩出血という病名を言われたことはない。 イ本件出産②の際も,出産当日である昭和52年●月●日の夕方に,分娩が終わり処置室で休んでいる際に,止血剤の投与を受けた。 (3) ●医師作成の「証明書」(甲ハ95の8)原告95番の昭和49年及び昭和52年の前記各出産については記憶がないが,母子手帳の分娩介助者欄に自身の名前の記載があるため,前記各出産を担当したことは間違いないと思う。各出産の際に原告95番にフィブリノゲン製剤を投与したか否かについては覚えていない。ただし,昭和49年当時であれば,分娩時の大量出血等への対処のためフィブリノゲン製剤を使用することがあったため,原告95番にフィブリノゲン製剤を投与した可能性はあると思う。 (4) ●医師の陳述書(甲ハ95の13)昭和49年及び昭和52年当時,●産婦人科では,フィブリノゲン製剤を約2本常備しており,使用(原則として,1回の手術で1本の使用)する都度に納入して補充していた。 フィブリノゲン製剤には分娩時の大量出血を止める薬として,多大な効果を期待しており,使用する場合は自身で点滴静注により投与していた。昭和49~52年当時,年間3~4名の患者に使用していたと思う。 出産時に大量出血があった場合は,まず,血管確保,点滴による補液,子宮収縮剤投与,子宮用手圧迫,膣内長ガーゼによるタン 49~52年当時,年間3~4名の患者に使用していたと思う。 出産時に大量出血があった場合は,まず,血管確保,点滴による補液,子宮収縮剤投与,子宮用手圧迫,膣内長ガーゼによるタンポナーゼといった処置を行い,それでも全身状態が悪化しているようであれば成分輸血を行っていた。フィブリノゲン製剤を投与するのは,大量出血によりDICを発症している場合,又はDICに至ると予測された場合である。DICに至ると予測されるかどうかは,血液の凝固性の状態を目で見て判断しており,出血量などの明確な基準はなかった。他の止血剤としては,アドナやトランサミンを使用していたが,出産後の大量出血には効果がほとんど期待できなかった。 本件出産①に係る退院時の領収証の記載から,輸血を1000ml実施したことは間違いないと思われ,輸血量に鑑みると,相当の出血があったと推測でき,DICを発症し,又はDICに至ると予測して,フィブリノゲン製剤を投与した可能性はあると思う。 本件出産②については,フィブリノゲン製剤を投与した可能性はあると思うが,輸血がされていないと思われ,相当の出血があったと推測できないため,投与の可能性は低いと思う。 (5) ●医師の供述(書面尋問)フィブリノゲン製剤をいつ頃から使用し始めたのかは覚えていない。フィブリノゲン製剤を投与するのは,大量出血によりDICを発症している場合,又はDICに至ると予測された場合であり,ここにいう大量出血とは,血圧低下等の出血性ショックを起こした場合をいう。もっとも,前記場合に該当しても,止血傾向があれば投与は行っていない。 DICとは,大量出血による凝固,線溶系の破綻によって止血困難な病態であると理解しており,大量出血の場合にDICを発症す るおそれがあると考えていた 傾向があれば投与は行っていない。 DICとは,大量出血による凝固,線溶系の破綻によって止血困難な病態であると理解しており,大量出血の場合にDICを発症す るおそれがあると考えていたが,予防的な止血剤の投与は行っていなかった。 フィブリノゲン製剤を投与する場合,患者本人や家族には,「止血剤」という言葉を用いて説明していた。 患者に出血があり止血を要する場合,まずは血管確保,点滴による補液,子宮収縮剤の投与,子宮用手圧迫,膣内長ガーゼによるタンポナーゼといった処置を行い,それでもなお血圧低下など全身状態が悪化する場合に輸血を行った。出血量が多いほど輸血を行うことが多かったが,出血量よりも全身状態の悪化の程度を重視して判断していた。大量出血(血圧低下等の出血性ショックを起こした場合)を来し,全身状態が悪化していると判断した場合,まずは輸血により全身状態を改善させ,その後にフィブリノゲン製剤を投与する方針であり,輸血をせずにフィブリノゲン製剤を投与することはなかった。 3 検討原告95番は,昭和49年の本件出産①及び昭和52年の本件出産②の各機会における特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を主張しているので,機会ごとに分けて検討する。 (1) 本件出産①における投与の事実の有無●医師は,本件出産①に係る退院時の領収証に記載された1000mlの輸血量に鑑みて,相当の出血があったと推測し,当時,DICを発症し,又はDICに至ると予測して,原告95番に対し特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性はあると供述している。前記領収証の記載に加え,●医師が昭和49年当時,●産婦人科では,特定フィブリノゲン製剤を約2本常備していたことや,特定フィブリノゲン製剤には分娩時の大量出血を止める薬として多大な効果を 期 収証の記載に加え,●医師が昭和49年当時,●産婦人科では,特定フィブリノゲン製剤を約2本常備していたことや,特定フィブリノゲン製剤には分娩時の大量出血を止める薬として多大な効果を 期待していたことを供述していることを併せ考えると,本件出産①において,多量の出血があり,特定フィブリノゲン製剤が投与される可能性のある状況であったこと自体は否定できない。 しかし,●医師の特定フィブリノゲン製剤の投与方針は,大量出血によりDICを発症している場合,又はDICに至ると予測された場合に投与するというものであるところ,同医師は,DICに至ると予測されるかどうかは,血液の凝固性の状態を目で見て判断しており,出血量などの明確な基準はなかったこと,血圧低下等の出血性ショックを起こしている場合を大量出血と判断していた旨を供述しており,多量の出血があった場合に直ちに特定フィブリノゲン製剤を投与するという方針を有していたと認めることはできない。 ●医師は,患者が出血性ショックを起こして全身状態が悪化していると判断した場合に全身状態の改善を目的として輸血を行うことがある旨供述しているところ,同医師は,貧血の回復が遅い時に輸血を行うこともあるとも述べているから,1000mlの輸血がされているとの事実は,必ずしも,本件出産①の際に,原告95番において,血圧低下等の出血性ショックを起こして全身状態が悪化していたことの裏付けとはならない。 そして,本件出産①において,原告95番が血圧低下等の出血性ショックを起こしていた事実や,DICを発症していた事実を認めることはできず,特定フィブリノゲン製剤が投与された可能性が高いとはいえない。 また,●医師は,特定フィブリノゲン製剤を投与する場合,患者本人や家族には,「止血剤」という言葉を用いて説明 を認めることはできず,特定フィブリノゲン製剤が投与された可能性が高いとはいえない。 また,●医師は,特定フィブリノゲン製剤を投与する場合,患者本人や家族には,「止血剤」という言葉を用いて説明していた旨供述し,原告95番は,●医師から「止血剤」を打つと言われた旨を供述するが,後述のとおり,輸血がされておらず,●医師の方針からすると特 定フィブリノゲン製剤が投与された可能性のないと考えられる本件出産②においても「止血剤」という言葉が使用されていることからすると,原告95番が●医師から言われた「止血剤」が,アドナやトランサミンといった他の止血剤である可能性が否定できない。 (2) 本件出産②における投与の事実の有無原告95番は,出産自体に特に問題はなく,大量出血もなかったが,産後の出血が続いていたことから,●医師から止血剤の投与を受けた旨供述し,当該止血剤が特定フィブリノゲン製剤であると主張する。 しかし,本件出産②において,原告95番が血圧低下等の出血性ショックを起こしていた事実や,DIC発症をうかがわせる事実は証拠上認められず,●医師の方針からして,特定フィブリノゲン製剤が投与される可能性のある状況であったと認めることは困難である。 また,●医師は,輸血をせずに特定フィブリノゲン製剤を投与することはなかったと供述するところ,本件出産②において原告95番に対して輸血が行われたことを認めるに足りる証拠はないから,●医師の方針からして,特定フィブリノゲン製剤が投与された可能性は極めて低いものといわざるを得ない。 4 結論以上によれば,原告95番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲ 結論 以上によれば,原告95番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告96番関係 第1 当事者の主張(原告96番の主張) 1 原告96番は,平成13年,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告96番は,昭和56年●月●日から同年●月●日まで,急性前骨髄球性白血病により,●センターに入院し,処置を受けた。 3 ●センターには,昭和55年に108本,昭和56年に88本の特定フィブリノゲン製剤が納入された。 4 原告96番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●センターにおける特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告96番の昭和56年●月●日から同年●月●日までの前記入院の入院記録抄録には,入院中の治療に用いられた薬剤が具体的に記録されているところ,その中に特定フィブリノゲン製剤の記載はなく,このことは,原告96番に対して,特定フィブリノゲン製剤が投与されていないことを推認させる。 原告96番は,昭和56年●月●日から同年●月●日までの前記入院の際,看護師から「止血剤を入れた」などと言われた旨供述するが,同供述によっても,当該止血剤の薬剤名は不明であるから,当該止血剤が特定フィブリノゲン製剤であったと認めることはできない。 また,原告96番は,昭和56年●月●日から同年●月●日までの前記入院の際,輸血を受けたようであるところ,当該輸血によってC型肝炎 剤が特定フィブリノゲン製剤であったと認めることはできない。 また,原告96番は,昭和56年●月●日から同年●月●日までの前記入院の際,輸血を受けたようであるところ,当該輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定できない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ96の1,2,4)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告96番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告96番には,2人のきょうだいがいる。 (2) 原告96番は,昭和56年●月●日から同年●月●日まで,急性前骨髄球性白血病により,●センターに入院し,処置を受けた。 (3) 原告96番は,平成13年,●センターにおいて,慢性C型肝炎と診断された。 (4) 昭和56年当時,●センターで特定フィブリノゲン製剤を常備していたかは不明である。 (5) ●センターには,昭和55年に108本,昭和56年に88本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができるが,原告96番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告96番の陳述書(甲ハ96の1)の要旨は以下のとおりである。 原告96番は,昭和56年●月初め頃,両足に内出血ができ,内出血した部分が紫色になり,当該部分が硬くなるという症状が出た。 また,頭が割れるようなひどい頭痛もあった。原告96番は,前記各症状を受けて,同月●日,●センターを受診し,血液検査を受け き,内出血した部分が紫色になり,当該部分が硬くなるという症状が出た。 また,頭が割れるようなひどい頭痛もあった。原告96番は,前記各症状を受けて,同月●日,●センターを受診し,血液検査を受け た。診察をしてくれたのは,●医師であった。同日は血液検査のみで病院を後にしたが,●医師から自宅へ電話があり,翌日までに病院に来るように言われたとのことだった。 同月●日,病院に行くと,●医師から,とにかくすぐに入院するようにと言われ,同日から同年●月●日まで,前記センターに入院した。●医師から原告96番には病名は告げられなかったが,原告96番の夫に対しては,原告96番が白血病で余命2か月である旨が告げられたそうである。なお,入院後の主治医は,●医師だった。 入院後は,1か月以上,無菌室に入れられ,原告96番の夫との面会も,ガラス越しでしか行えない状態だった。入院の間は,マルクと言われる針を刺される検査や診察のほか,薬剤の入った点滴治療を24時間ずっと受けていた。また,鼻血などが出て出血した際,看護師から,止血剤を入れたからそのうち止まるよ,と言われて,点滴を受けた覚えがある。ただし,原告96番は,前記入院のほかに,昭和57年及び昭和58年に,急性前骨髄球性白血病をそれぞれ再発した際にも入院をしているため,前記止血措置がどの入院の時のことだったのか,記憶がはっきりしない。 前記のとおり,原告96番は,昭和56年●月●日に,前記センターを退院したところ,退院に際しては何も言われず,今後も通院するようにと言われた。なお,退院後に診断書を書いてもらったところ,再生不良性貧血という診断名が記載されていた。このように本当の診断名を記載しないのは,当時不治の病とされていた白血病にり患していることを原告96番に告知し お,退院後に診断書を書いてもらったところ,再生不良性貧血という診断名が記載されていた。このように本当の診断名を記載しないのは,当時不治の病とされていた白血病にり患していることを原告96番に告知しないためだったと思う。 平成13年,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,インターフェロン治療を受けたが,効果は出なかった。 原告96番は,●センターに対し,カルテが残っていないか問い 合わせたが,入院中のカルテは残っていなかった。なお,原告96番の症例は,当時不治の病といわれていた白血病を3度克服したということで,学会への発表の資料に使われたり,様々な医師により原告96番に関するカルテを回し読みをされたりして,その中でカルテが紛失してしまったとのことだった。 原告96番は,25歳の時に急性腎炎にかかったが,注射を打たれただけで済んだ。 原告96番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告96番は,入れ墨,違法薬物の注射器での回し打ちの経験はない。 (2) 検討ア前記1(2)及び(5)のとおり,原告96番が,昭和56年●月●日から同年●月●日まで,急性前骨髄球性白血病により,●センターに入院し,処置を受けたこと,●センターにおいて,昭和55年に108本,昭和56年に88本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができる。 イしかし,原告96番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はなく,かえって,原告96番の前記入院期間中の入院記録抄録中に特定フィブリノゲン製剤の記載がないことは,原告96番に対し,特定フィブリノゲン製剤の投与がなかったことを推認 これを認めるに足りる証拠はなく,かえって,原告96番の前記入院期間中の入院記録抄録中に特定フィブリノゲン製剤の記載がないことは,原告96番に対し,特定フィブリノゲン製剤の投与がなかったことを推認させるものと認めることができる。 3 結論以上によれば,原告96番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他 の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告97番関係 第1 当事者の主張(原告97番の主張) 1 原告97番は,平成17年●月頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告97番は,昭和61年●月●日,●病院において,第一子(女児)を出産し,その際,膣壁裂傷により多量の出血をした。 3 ●病院には,昭和61年に6本の特定フィブリノゲン製剤が納入された。 4 原告97番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告97番の供述によっても,前記出産の際の具体的出血量は不明であり,その他に何らかの異常があった様子はうかがわれず,DICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められないから,特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 れない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ97の1,2,4,7,9,12~14,原告97番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認める ことができる。 (1) 原告97番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告97番には3人のきょうだいがいる。 (2) 原告97番は,昭和61年●月●日午前10時1分,●病院において,第一子(女児)を出産し,その際,膣壁裂傷により多量の出血をした。分娩介助は,●●医師(以下「●医師」という。)が行った。 (3) 原告97番は,平成17年●月●日,●クリニックにおいて,慢性C型肝炎との診断を受けた。 (4) 昭和61年当時,●病院は,産婦人科ほか二つの診療科を有し,ベッド数は25床である。 (5) ●病院には,昭和58年に6本,昭和59年に6本,昭和60年に15本,昭和61年に6本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,原告97番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告97番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告97番の平成26年3月14日付け,平成28年10月7日付け陳述書(甲ハ97の1,13)原告97番は,昭和61年●月●日,自宅において,お腹が強く張ってきたため,妊婦健診から通院していた●病院に架電したところ,●医師の指示で,同日の夜に●病院に行った。到着後に受けた診察では,●医師から「まだ産まれる兆候はないと思います。」「 お腹が強く張ってきたため,妊婦健診から通院していた●病院に架電したところ,●医師の指示で,同日の夜に●病院に行った。到着後に受けた診察では,●医師から「まだ産まれる兆候はないと思います。」「せっかく来てくれたから明日出産しましょうか。」と言われ,陣痛促進剤を点滴された。 原告97番は,昭和61年●月●日の早朝,陣痛が来る前に急 に破水してしまい,分娩室に運ばれた。●医師が出勤後,吸引分娩を試みたが,吸引器が外れ,うまくいかなった。後で聞いたところによると,この際に膣壁の裂傷で大量に出血したとのことだった。看護師同士の会話から,外来の他の妊婦たちに帰ってもらったことが分かり,自身が重篤な状態なのかと心配が増した。その後,看護師ら2名にお腹を押してもらって,午前10時頃,第一子(女児)を出産した。吸引分娩をもう一度試みたかは覚えていない。 胎児が出てきてすぐ,左腕に点滴をされた。薬剤の名前や点滴の形状は覚えていないが,点滴の中身に色はついていなかったように思う。また,●医師から「これが終わったら,次のするからね。」と言われた記憶がある。 前記点滴と同時並行で,傷ついた膣壁部分の縫合が始まった。 ●医師は「私長いことやってますけど,こんな切れ方初めてですよ。」と述べていた。●医師は,長い時間をかけて縫合を行っており,縫合作業の終わりかけに「27針までは数えてたんやけど,その先は数えられへんかった。分からないです,すいません。」と言った。 原告97番は,縫合作業が終わった後,看護師により血圧を測定され,血圧が低下していることが分かった。また,原告97番の義母から食べたいものがあるか聞かれた際,原告97番は声を出したつもりが声は出せていなかったことなどから,自身が重篤な状態であることを認識した。原告97番は,この時 とが分かった。また,原告97番の義母から食べたいものがあるか聞かれた際,原告97番は声を出したつもりが声は出せていなかったことなどから,自身が重篤な状態であることを認識した。原告97番は,この時点でも引き続き点滴を受けていた。なお,原告97番は,●医師から「輸血すれば本人の回復が早いんだけども,私は輸血が好きじゃないのでね。」と言われ,輸血は受けていない。 原告97番は,出産当日の夕方になって,分娩室から病室に移動した。この際も,引き続き点滴を受けていた。夜になって初乳をあげたところ,●医師から「母乳を飲ませたら体力が回復しないので,授乳せんといてくださいね。」などと言われた。 原告97番は,昭和61年●月●日,病室において,●医師から「正確には分からないけど,牛乳パック2本分以上出血したことは確かです。」と言われた。その後,診察の際にまだ出血をしており再度の縫合手術が必要と言われ,外来の診察室において,縫合手術を受けた。なお,この時点においても,引き続き点滴を受けた状態だった。 原告97番は,1週間ほど入院した後,●病院を退院した。退院当時は,1人では立っていられないほど,体力がない状態だったが,1か月ほどかけて徐々に回復した。 なお,前記出産当時,●病院には,●医師以外の医師はおらず,当直医の医師も見たことがない。また,前記出産の際,原告97番の入院から退院まで,入院している産婦は原告97番のみだった記憶であり,●医師が,平成28年9月1日付けの回答書において,昭和61年当時の年間分娩件数を約350~400件と回答しているのは,時期を間違えているか,記憶違いだと思う。 前記出産後,原告97番の健康状態には特に問題はなかったところ,平成17年●月●日に行った献血の結果,C型肝炎ウイルスに感染していること 答しているのは,時期を間違えているか,記憶違いだと思う。 前記出産後,原告97番の健康状態には特に問題はなかったところ,平成17年●月●日に行った献血の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告97番は,同年●月●日,●クリニックにおいて検査を受け,慢性C型肝炎との診断を受けた。 原告97番は,平成18年●月から半年間,●クリニックにおいて,インターフェロン治療を受けた。これにより,一旦はウイ ルスが陰性となったが,再度ウイルスが出現し,平成20年●月から1年間,●クリニックにおいて,再度,インターフェロン治療を受けた。2度目のインターフェロン治療によって,ウイルスが消失するに至ったが,完治したのかは分からない。 原告97番は,薬害C型肝炎のことを知り,平成19年頃,●病院に,前記出産当時のカルテが残っていないか問い合わせたところ,「当時フィブリノゲンは使っていましたが,カルテがないので,あなたに使ったかどうかは分かりません,と先生がおっしゃっています。」との回答であった。 原告97番は,昭和45年●月頃,●診療所において,盲腸の手術を受けたが,特に問題はなかった。また,原告97番は,平成元年●月●日,●病院において,第二子(女児)を出産したが,安産であり,特に問題はなかった。 原告97番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告97番は,入れ墨,ピアス,違法薬物の注射器での回し打ちの経験はない。 イ原告97番の夫の陳述書(甲ハ97の11)昭和61年●月●日,原告97番が,お腹が張ってきたということで●病院に連絡をし,同日の夜に,原告97番と一緒に●病院に行き,原告97番は入院することになった。原告97番の夫は翌日に仕事があったため,病院には泊まらなか 告97番が,お腹が張ってきたということで●病院に連絡をし,同日の夜に,原告97番と一緒に●病院に行き,原告97番は入院することになった。原告97番の夫は翌日に仕事があったため,病院には泊まらなかった。 同月●日の朝,原告97番の夫の母から,原告97番が破水した旨の連絡を受け,仕事を休んですぐに病院に行った。病院に着くと,原告97番は既に分娩室に入っていたため,分娩室の前の廊下で,かなり長い時間待っていた。途中,看護師から女の子が産まれた旨及び原告97番はまだ処置中である旨を伝えられた。 かなり長い間待った後,原告97番が,ストレッチャーに横たわった状態で病室に運ばれてきた。その当時の原告97番の状態は覚えていない。その後,原告97番の夫は,どういう経緯かは分からないが,分娩室に入り,血の付いたガーゼなどが散乱している様子を目にした。 原告97番の夫は,医師や看護師から,原告97番が出産の際にどの程度の出血をしたのか,出血の原因及び具体的な処置の内容について説明を受けた記憶はない。 ウ原告97番の姉の陳述書(甲ハ97の14)原告97番は,昭和61年●月●日の出産の際,大量に出血したとのことで,産後,極度の貧血状態で体調が悪く,1人で起き上がることができず,移動が大変な状態だった。原告97番の姉は,同月●日の夜に,●病院に泊まり,原告97番に付き添って,病室のソファで寝た。 ●病院には,●医師以外には医師はいなかった。原告97番の姉自身も,●病院で3回出産をしたところ,当時から●医師以外はいなかった。この点について,●医師は,他にも医師がいた旨の回答をしているようであるが,時期を間違えているか,記憶違いだと思う。 エ原告97番の供述(本人尋問 ところ,当時から●医師以外はいなかった。この点について,●医師は,他にも医師がいた旨の回答をしているようであるが,時期を間違えているか,記憶違いだと思う。 エ原告97番の供述(本人尋問)原告97番は,昭和61年●月●日,分娩後に点滴と縫合の処置を受けた。点滴の針は,左ひじの内側に刺されていた。点滴の形状,大きさ,薬剤の色,目的及び名称は分からない。縫合の処置を受けたのは,膣壁であり,処置の理由について,●医師から,吸引分娩の際の大裂傷によって出血したためと聞いた。原告97番自身は,分娩の際や縫合の際,出血しているかどうかは分から ない状態だった。 原告97番は,昭和61年●月●日,病室において,●医師から,牛乳パック2本分以上出血したことは確かである旨言われたところ,原告97番が「大きいパックですか。」と聞いたのに対し,●医師は「そうです。」と言っていた。 (2) 検討ア前記1(2)及び(5)のとおり,原告97番が,昭和61年●月●日午前10時1分,●病院において,第一子(女児)を出産し,その際,膣壁裂傷により多量の出血をしたこと,●病院に,昭和61年に6本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができる。 イしかし,原告97番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,●クリニックの医療記録(甲ハ97の2,3)中には,原告97番が,前記出産の際,血液製剤と止血剤を投与された旨の記載があるが,この記載について原告97番は「多分そうだと思うんです。」というふうに●クリニックの医師に説明をしたもので,「投与されたんですとは 番が,前記出産の際,血液製剤と止血剤を投与された旨の記載があるが,この記載について原告97番は「多分そうだと思うんです。」というふうに●クリニックの医師に説明をしたもので,「投与されたんですとは言ってないです。」と供述しており,当時,●医師から説明を受けたものではないから,前記記載をもって,原告97番に対し,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 3 結論以上によれば,原告97番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲ ン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告100番関係 第1 当事者の主張(原告100番の主張) 1 原告100番の夫は,平成20年頃,●病院において,C型肝炎ウイルスに感染し慢性C型肝炎の病態にあることが判明した。 2 原告100番の夫は,昭和60年●月●日,●会●病院(以下「●病院」という。)において,腰部の神経腫瘍摘出手術と椎弓切除の手術を受けた。 3 前記各手術を担当した●●医師(以下「●医師」という。)は,当時,特定フィブリノゲン製剤について,多くの症例に使っており,急いで止血しなければならない場合や術野を確保する必要がある場合には,そのままの状態で散布又は蒸留水若しくは生理食塩水に少し溶かしてどろっとした状態で出血部位に詰めるという方法で用いていた。前記各手術においては,癒着剥離時の出血対策や,手術終了時に創部に塗布した。 前記用法は適応外ではあるが,医療現場で行われていたものとして他の医師から学んだ止血目的の用法であって,適応外使用であることは「フィブリノゲン製剤」が特定フィブリノゲン 終了時に創部に塗布した。 前記用法は適応外ではあるが,医療現場で行われていたものとして他の医師から学んだ止血目的の用法であって,適応外使用であることは「フィブリノゲン製剤」が特定フィブリノゲン製剤ではないとする根拠とはならない。前記用法によっても,血液中で作り出されるトロンビンの作用を受けて止血効果を発揮することはある。 したがって,前記各手術の際,原告100番の夫に対し,特定フィブリノゲン製剤が投与された高度の蓋然性がある。 4 ●病院には,昭和60年に42本の特定フィブリノゲン製剤が納入されている。 5 原告100番の夫がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院にお ける特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。 原告100番の夫のC型肝炎ウイルス感染の事実,慢性C型肝炎にり患した事実は認める。 2 原告100番の供述及び●医師の証言によっても,前記各手術当時,原告100番の夫がDICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められないから,特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあったと認めることはできず,原告100番の夫に対する特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 3 ●医師が証言する「フィブリノゲン製剤」は,その形状・用法の点で特定フィブリノゲン製剤とは異なり,また,●医師が述べる用法は,トロンビンを同時に使用していない点で止血効果が得られないものである上,特定フィブリノゲン製剤の適応外使用であり,国民健康保険等が適用されていたという食い違いが存在するところ,これらを踏まえ医学的見地に照らすとトロンビン又はアビテンであるといえるから,当 のである上,特定フィブリノゲン製剤の適応外使用であり,国民健康保険等が適用されていたという食い違いが存在するところ,これらを踏まえ医学的見地に照らすとトロンビン又はアビテンであるといえるから,当該証言は,原告100番の夫に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実の裏付けとはならない。 4 原告100番は,慢性C型肝炎にり患しているようであるところ,原告100番の夫のC型肝炎ウイルス感染は夫婦感染によるものである可能性が否定できない。 (補助参加人) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実及び同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。 2 ●医師は,前記各手術当時の記憶をそのまま述べているものではなく,現在有している医学的知見等から推測等を交えて前記各手術当時の医学的な経験則等を述べているにすぎず,この点は,証言の信用性を大きく減殺する事情である。 その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ100の1~6,12~15,証人●●)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告100番の夫は,昭和●年●月●日生まれの者である。 (2) 原告100番の夫は,昭和60年半ば頃,足が上がらず歩けない状態になったことから,同年●月●日,●病院に入院し,同月●日,●医師の執刀により,腰部の椎弓切除手術及び神経腫瘍摘出手術を受けた。 前記手術は,背中から皮膚切開を行った後,椎弓を後方から削り,腫瘤(肉芽腫)を剥離して取り除くという内容のものであり,全身麻酔により約6時間かけて行われた。手術後,●医師から原告100番に対し,「無事に腫瘍は取れました。腫瘍の場所が深く,それを取り除くために,思ったより出血が多くなりました。」と 容のものであり,全身麻酔により約6時間かけて行われた。手術後,●医師から原告100番に対し,「無事に腫瘍は取れました。腫瘍の場所が深く,それを取り除くために,思ったより出血が多くなりました。」との説明がされた。 原告100番の夫は,前記手術から2,3日後,劇症肝炎を発症し,●病院の内科に移った上,主に肝炎の治療のために入院を継続し,昭和61年●月●日に退院した。なお,退院後も腰痛や下肢の麻痺の症状が持続して歩行が困難となったため,昭和62年●月●日から,再度●病院に入院をして理学療法や投薬による治療を受けた。 (3) 原告100番の夫は,平成20年●月,●病院で受けたがん検診により肺がんが見つかり,手術前の検査で慢性C型肝炎の診断を受 けた。原告100番の夫は,同月●日,●病院の医師から,慢性C型肝炎等の既往症があることから手術リスクが高くなる旨の説明を受けた上で,同月●日,肺がんの手術を受けたが,同日の手術及び術後の膿胸の併発により実施された同年●月●日の再手術の後,多発脳梗塞,循環不全,腎不全等の多臓器不全により,平成20年●月●日に死亡した。 (4) 原告100番は,平成20年,肺がんの手術のために入院中の原告100番の夫から頼まれて,●病院に対し,昭和60年に行った手術に関するカルテ等の記録が残っていないかどうかを確認し,当時の簡単な手術記録のみ提出を受けた。 (5) 昭和60年当時,●病院には整形外科ほか12の診療科があり,ベッド数は,一般315床,精神50床の合計365床だった。また,整形外科医師は4名,看護師数は外来看護師2名,病棟看護師20名だった。 ●病院の昭和60年における特定フィブリノゲン製剤の納入実績は42本であり,当時,●病院には,特定フィブリノゲン製剤が1,2本常備され, 看護師数は外来看護師2名,病棟看護師20名だった。 ●病院の昭和60年における特定フィブリノゲン製剤の納入実績は42本であり,当時,●病院には,特定フィブリノゲン製剤が1,2本常備され,使用の都度に補充が行われていた。 2 関係者の供述等の要旨(1) 原告100番の陳述書(甲ハ100の1)原告100番の夫は,昭和60年半ば頃,足が上がらず歩けないほどの状態となり,腰にできた腫瘍を取るために,腰部の神経腫瘍摘出術をすることになった。原告100番の夫の手術は,全身麻酔で行われ,約6時間かかった。手術後に●医師から「無事に腫瘍は取れました。腫瘍の場所が深く,それを取り除くために,思ったより出血が多くなりました。」との説明があった。 原告100番の夫は,前記手術の後,劇症肝炎を起こして高熱を出 し,その後,●病院の内科に移り,4か月ほど,主に肝炎の治療のために入院した。原告100番が,前記手術から2,3日後に原告100番の夫の病室に入ろうとした際,同病室に入院中であった他の患者が病室の外に出てきて,「出血で死んでしまうで!」と言って婦長を呼びに行ってくれた。病室に入ると,原告100番の夫は,意識が混濁したような状態で顔も黄色くなっており,腰に巻いているさらしは出血で真っ赤になっていた。婦長の話では,手術後の傷口が開いて出血したのだろうとのことだった。ナイロン袋に入った原告100番の夫の血が大量についたさらしやバスタオルを家に持ち帰ったことを覚えている。 原告100番の夫は自営業を営んでいたため,会社等での定期健康診断はなく,平成20年●月に●病院で初めてがん検診を受けた際に肺がんが見つかり,すぐに入院をすることになった。手術前の検査の結果,慢性C型肝炎であるとの診断を受け,慢性C型肝炎による肺がん手術への 断はなく,平成20年●月に●病院で初めてがん検診を受けた際に肺がんが見つかり,すぐに入院をすることになった。手術前の検査の結果,慢性C型肝炎であるとの診断を受け,慢性C型肝炎による肺がん手術への悪影響等の説明を受けた上で,肺がんの手術に臨んだ。 原告100番は,肺がんの手術のために入院中であった原告100番の夫から頼まれ,●病院に問い合わせて,前記神経腫瘍摘出手術に関するカルテ等が残っていないか確認した結果,当時の簡単な手術記録等の提出を受けた。 原告100番は,平成15年頃,自身が慢性C型肝炎にり患していることが判明していたが,以後食器やタオル等あらゆるものについて家族と共用しないようにしたり,風呂に最後に入ったりと,家族が感染しないよう配慮して生活していたため,原告100番の夫が原告100番を経由してC型肝炎ウイルスに感染したということはない。 原告100番の夫は,昭和46年に●病院,昭和56年に●病院で,それぞれ椎間板の切除術を受けたが,いずれも簡単な手術で終わっている。 原告100番の夫の両親及びきょうだいに,C型肝炎ウイルスに感染した者はいない。また,原告100番の夫は,入れ墨,ピアス,違法薬物の注射器での回し打ち,鍼治療及び人工透析の経験はない。 (2) ●医師の平成25年6月24日付け回答書(甲ハ100の4,12)●病院整形外科には,昭和58年から平成2年まで勤務していた。 原告100番の夫に対する,腰部の神経腫瘍摘出手術を行ったことの詳細は覚えていない。 ●病院における原告100番の夫に対する手術は,昭和56年のものは前整形外科部長によるものであり,病名は不明である。昭和60年の再手術は●医師が行った。●病院では2度目の手術であったため癒着があった。原告100番の夫に限らず,一般的に 手術は,昭和56年のものは前整形外科部長によるものであり,病名は不明である。昭和60年の再手術は●医師が行った。●病院では2度目の手術であったため癒着があった。原告100番の夫に限らず,一般的に再手術は難渋する。 記録からみて,おそらく,顕微鏡手術を行ったと思われ,神経圧迫に肉芽腫病変(病理より)があったようである。 原告100番の夫に対する腰部神経腫瘍摘出手術の際,フィブリノゲン製剤については,当時は保険も適用され,多くの症例に使っていたので,おそらく使用していたと考える。もし使用している場合は,癒着剥離時の出血対策,手術終了時に創部に塗布していたと思う。 原告100番の夫に輸血はしていない。 ●病院整形外科においては,主に,高齢者の手術(大腿骨骨折など)の出血防止(できたら輸血を避けるため),腰椎(中でも剥離範囲の広いもの)などに,局所的にフィブリノゲン製剤を使っている。 原告100番の夫と同じ症例の患者にフィブリノゲン製剤を投与した記憶はない。 (3) ●医師の陳述書(甲ハ100の15)●病院における昭和60年の前記手術を担当した。手術の内容についての詳細は,カルテがないので覚えていないが,原告100番の夫のことは良く覚えている。 一度手術をしたところには,必ず組織に癒着が生じる。特に脊髄や腰椎レベルの馬尾は神経組織であり,2度目,3度目の手術は,初回手術より格段に注意と技術が必要な難航する手術になるし,原告100番の夫は,昭和60年の手術以前に2度の手術を受けており,それぞれ別の医師が担当していたため,他の病院等や他の医師がした手術に何が潜んでいるか見当がつかない状況であった。そのため,神経を傷つけないように注意しながら手術を進めることが必要であった。 病理組織検査で異物肉芽腫と診断された。前 の病院等や他の医師がした手術に何が潜んでいるか見当がつかない状況であった。そのため,神経を傷つけないように注意しながら手術を進めることが必要であった。 病理組織検査で異物肉芽腫と診断された。前回の手術の際に何らかの異物が混入し,それを中心に腫瘤として塊ができ,肉芽腫となったのかもしれない。肉芽腫病変が神経を圧迫し,腰痛を引き起こしていた。肉芽腫そのものは一塊として腫瘤状になるため,手術時に記載する手術法は,腫瘍摘出になる。 腰部の神経腫瘍(肉芽腫含む。)摘出術や椎弓切除術を行う場合,背中から皮膚切開を行い,エアトーム(骨を削る器械)で椎弓を後方から削っている。 腫瘍(肉芽腫)を剥離して取り除くが,その際,神経損傷の危険を回避するため,周囲の正常な組織から始めて,硬膜と腫瘤(肉芽腫)の間を慎重に剥がしていく。 生きた組織同士の剥離であるから,必ず微小ながらも出血が起こ る。じわじわ起こる脊柱管内の出血は血腫を作り,術後,神経を圧迫して麻痺の原因になったり,過剰の出血は高度の癒着の原因になったりするため,止血はとても大事な処理である。このような手術途中のじわじわ起こる出血に対しては,フィブリノゲン製剤を粉末のまま散布するという方法で使用していた。粉末をふりかけると血がどろどろになって固まり,電気メスで焼きながら止血するより止血効果が高く,焼くより安全だった。また,再手術の場合,癒着した瘢痕と言われる箇所からも,癒着を剥がす時にじわじわではあるが出血があるため,これに対し,フィブリノゲン製剤を粉末のまま散布するという方法で使用していた。 手術創を縫合閉鎖するに際し,血腫の予防のためにドレーン(脱血用のチューブ)を設置するが,その前には,必ず,じわじわ起こる出血を止血しておく必要があった。その止血処置のために,フィ 使用していた。 手術創を縫合閉鎖するに際し,血腫の予防のためにドレーン(脱血用のチューブ)を設置するが,その前には,必ず,じわじわ起こる出血を止血しておく必要があった。その止血処置のために,フィブリノゲン製剤を粉末のまま散布したり,溶解して糊状にして塗布したりしていた。 止血方法としては,圧迫,電気メスでの焼灼止血などもあったが,当時の電気メスは,今の電気メスとは異なり,能力も格段に劣り,止血処置としてフィブリノゲン製剤を使用するのが非常に簡単で,効果も早く出たため,使用しやすい薬だったことから,前記のとおり,手術中の剥離の際の止血や,手術を終了する時の縫合閉鎖前の止血措置として,フィブリノゲン製剤を使用していた。 ●病院では,フィブリノゲン製剤を,昭和59年に39本,昭和60年に42本と,従前と比べて非常に多く納入しているところ,●医師が昭和58年に●病院に入ってから手術を多く受け持つようになり,手術の際にフィブリノゲン製剤を比較的多く使用していたことから,納入数量が増えたのだと思う。 神経腫瘍(肉芽腫)摘出術においては,じわじわ起こる出血に対してフィブリノゲン製剤を使用していたので,輸血を必要とする事態になったことはない。フィブリノゲン製剤を静脈注射で使用したこともない。それ以外は,骨折などで出血が多く,早く止血する必要があるような場合にも,フィブリノゲン製剤を粉末のまま散布する方法で使用したことがあった。 昭和61年頃からフィブリノゲン製剤に肝炎のリスクがあるというようなことを耳にし,その納入をやめる方向に転じ,他の薬に代えていった記憶がある。代替薬については覚えていない。 原告100番の夫は,3度目の手術ということで,経験上,癒着箇所の多い難渋した手術ケースだったと思う。手術内容は,肉芽腫を剥離し ,他の薬に代えていった記憶がある。代替薬については覚えていない。 原告100番の夫は,3度目の手術ということで,経験上,癒着箇所の多い難渋した手術ケースだったと思う。手術内容は,肉芽腫を剥離して取り除くというもので,経験からすれば,おそらくフィブリノゲン製剤を粉末のまま散布するなどして使用しているはずである。 (4) ●医師の供述(証人尋問)●医師が勤務していた当時,●病院整形外科では,週2回手術を行っており,昭和60年当時は,1日に5件,年間480件程度の手術件数であった。●医師は整形外科の副部長の立場にあったが,部長であった●医師は手術を担当しておらず,主に執刀医として手術を担当したのは,●医師と部下の2名の医師であった。 原告100番の夫について,昭和60年に椎弓切除術と腫瘍摘出術を行ったことは間違いない。●医師の経験上,腫瘍が異物肉芽腫であった症例は1例のみであったこと,術後も長い間経過観察を行ったこともあって,原告100番の夫のことは良く覚えている。昭和60年の前記手術においては,おそらく,フィブリノゲン製剤を止血措置として使用したと思う。 当時はMRIといった画像診断がなく,脊髄造影の検査で広い圧迫があればおそらく腫瘍だろうと判断して手術を行っている。異物肉芽腫は病理検査で診断された病名であり,手術中は病名が一切分からない状態であった。 腰部の腫瘍を摘出する手術は,伏臥位の患者の背中から皮膚を切開し,皮膚の下の骨を切除し,横にある筋層を剥がした後,脊椎のうち最も背中側にある椎弓を,エアトームという器械を用いて削った上で,腫瘍を摘出するという順序・方法で行う。 1度手術をしたところには,必ず組織に癒着が生じる。2度目以降の手術の場合,癒着部分を引き剥がした上で手術を進める必要があるため手術の を用いて削った上で,腫瘍を摘出するという順序・方法で行う。 1度手術をしたところには,必ず組織に癒着が生じる。2度目以降の手術の場合,癒着部分を引き剥がした上で手術を進める必要があるため手術の侵襲の範囲は大きくなって出血が多くなり,また,別の医師が過去に手術した部位については,潜む危険性等に注意を払う必要があり,プレッシャーのかかる非常に難しい手術となる。 前記の内容の手術に際しては,皮膚を切る時,骨を切除する時,筋層を剥がす時等に,必ずじわじわと出血が起こるため,術中の出血を防いで術野を確保し,迅速安全に手術を行うために,止血が必要である。止血方法として,一般的には,吸引機による吸引,電気メスで焼くもの,糸での結紮,骨蝋,綿花での圧迫等があるが,このような基本的な止血方法でも出血が収まらない場合,追加の止血方法として,昭和60年当時はおそらくフィブリノゲン製剤を使ったと思う。フィブリノゲン製剤を初めて使用した時期は余り覚えていないが,●病院での勤務を開始した昭和58年以降のどこかの時点からは使用しているはずである。フィブリノゲン製剤の使用をしなくなった時期については全く覚えていないが,フィブリノゲン製剤の危険性がマスメディアで騒がれ始めた昭和61,62年頃だと思う。 フィブリノゲン製剤の使用方法としては,せっし(細いピンセット)で粉末をつまんで直接散布するか,蒸留水や生理食塩水に少し溶かしてどろっとした状態で出血部位に詰めるというものであり,点滴の方法で使用したことはない。このような使用方法を,製薬会社の担当者から教わったのか,他の医師から聞いたのかは覚えていない。急ぐ時には溶かさずに粉末の直接散布の方法によっていたと思う。脊椎に関する手術の場合に,神経の周りに局所的に使用した可能性は大いにある。また,腫 教わったのか,他の医師から聞いたのかは覚えていない。急ぐ時には溶かさずに粉末の直接散布の方法によっていたと思う。脊椎に関する手術の場合に,神経の周りに局所的に使用した可能性は大いにある。また,腫瘍摘出後に硬膜を閉鎖する際,止血措置としてフィブリノゲン製剤を使用した可能性はある。 フィブリノゲン製剤自体の形状や,容器の形状については記憶がない。また,静脈注射による使用ではなく粉末での使用では保険が適用されないということは一切分かっていなかった。 フィブリノゲン製剤を使用しなくなってからは,止血のためにトロンビン末を使用し始めたと思う。使用方法は,フィブリノゲン製剤のものと全く同じである。 3 検討(1) 前記認定事実(2),(5)のとおり,原告100番の夫が,昭和60年●月●日,●病院において椎弓切除手術及び神経腫瘍摘出手術を受けたものと認めることができ,前記手術が行われた昭和60年に●病院には42本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたから,前記手術の際に特定フィブリノゲン製剤が使用された可能性はあるといえる。 (2) しかし,●医師の供述等によっても,原告100番の夫の手術を行った当時における特定フィブリノゲン製剤の投与方針は必ずしも明確といえず,高齢者に対する外科的手術,特定の部位に対する外科的手術,過剰の出血に対する止血,手術途中のじわじわ起こる出 血のいずれを重視しているのかが判然とせず,明確な投与方針が存在していたものと認めることは困難である。 そして,●医師の原告100番の夫の手術に関する供述は,手術の内容や困難性に関する一般的な知見にとどまるものであり,特定フィブリノゲン製剤を投与しなければならない程度の出血が起きていたことを認めるに足りる証拠はない。 この点,●医師は,経験上,癒着箇所の多い 容や困難性に関する一般的な知見にとどまるものであり,特定フィブリノゲン製剤を投与しなければならない程度の出血が起きていたことを認めるに足りる証拠はない。 この点,●医師は,経験上,癒着箇所の多い難渋した手術ケースだったと思われ,おそらく特定フィブリノゲン製剤を粉末のまま散布するなどして使用しているはずである旨の証言をする。 しかし,●医師において,前記手術についての具体的な記憶はなく,前記手術において,基本的な止血方法でも出血が収まらなかった等の証言もないことからすると,同医師の証言はあくまで抽象的な可能性を述べているにとどまるものといわざるを得ない。 また,●医師は,出血に対して使用する特定フィブリノゲン製剤も国民健康保険等の適用があるとの供述をしているが,そのような事実はなく,国民健康保険等の適用のある他の薬剤との間で記憶の混乱が生じている可能性が否定できない。 以上によれば,●医師が,原告100番の夫の手術において特定フィブリノゲン製剤を使った可能性が高いという供述は,その前提となる止血の必要性に関し,具体的な根拠に乏しいものといわざるを得ず,直ちに採用することはできない。 4 結論以上によれば,原告100番の夫については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告101番関係 第1 当事者の主張(原告101番の主張) 1 原告101番は,平成10年●月,●病院における検査の結果,慢性C型肝炎と診断され,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告101番は,昭和43年●月●日,●病院において,僧帽弁狭窄症のため心臓交連 ,平成10年●月,●病院における検査の結果,慢性C型肝炎と診断され,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告101番は,昭和43年●月●日,●病院において,僧帽弁狭窄症のため心臓交連切開手術を受けた。なお,●病院(以下「●病院」という。)の心臓外科チームが●病院に出向いて前記手術を行ったものである。 3 ●病院及び●病院は,いずれも,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 4 原告101番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告101番の供述によっても,前記手術の詳細や,手術当時の原告101番の具体的病態は不明であるから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 また,原告101番は,前記手術の際,輸血を受けたようであるところ,当該輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定できない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ101の1~3,4の1~3,甲ハ101の5~7,32,36,原告101番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告101番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。原告101番には,2人のきょうだいがいる。 (2) 原告101番は,昭和43年●月●日,●病院において,僧帽弁狭窄症のため心臓交連切開手術を受けた。なお,●病院の心臓外科チ れの男性である。原告101番には,2人のきょうだいがいる。 (2) 原告101番は,昭和43年●月●日,●病院において,僧帽弁狭窄症のため心臓交連切開手術を受けた。なお,●病院の心臓外科チームが●病院に出向いて前記手術を行った。 (3) 原告101番は,遅くとも平成10年●月●日,●病院において,慢性C型肝炎と診断された。 (4) ●病院及び●病院は,いずれも,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関であるが,原告101番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●病院及び●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告101番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告101番の平成24年10月20日付け陳述書(甲ハ101の1)原告101番は,昭和42年●月,肺炎になり高熱が出たとき,当時,●病院の第二外科の研修医であった●医師の紹介で,同病院に検査入院した。検査の結果,僧帽弁狭窄症と診断され,手術を勧められた。同病院の●●医師(以下「●医師」という。)から,閉鎖式僧帽弁交連切開術はかなりリスクがあるとの説明を受け, 身辺整理のため手術予約をして一旦は退院した。 手術直前の昭和43年●月,●病院の心臓外科で緊急手術が入ったため,病院の都合で,●病院の心臓外科チームが●病院に出向いて原告101番の手術をすることになった,●病院では最初の心臓手術になるが,全力で取り組む,との連絡があった。 このようにして,原告101番は,●病院に入院し,同年●月●日,●●医師(以下「●医師」という。)の執刀で,心臓交連切開手術を受けた。同手術の内容等に関する詳 り組む,との連絡があった。 このようにして,原告101番は,●病院に入院し,同年●月●日,●●医師(以下「●医師」という。)の執刀で,心臓交連切開手術を受けた。同手術の内容等に関する詳細な記憶はない。同手術に先立って,輸血用の献血手帳5冊を集めるように指示されたが,手術後,「出血を抑える処置をしたので,輸血は少量で済んだ,使用しなかった献血手帳は返す」と言われた。現在も,原告101番の手元に,その時返してもらい,そのまま預かったままになっている献血手帳が1冊ある。 原告101番は,平成10年●月,心臓発作で●病院に入院した際,慢性C型肝炎にり患していることが判明した。医師の話では,前記手術時にC型肝炎ウイルスに感染したのではないかということだった。 原告101番は,同年●月●日,●病院の心臓血管外科で,人工弁による僧帽弁置換術を受けた。同年●月●日に退院した際の退院時要約には,昭和43年●月●日の手術の後,輸血による肝炎を合併したが,その後症状軽快という経過であったことが記載されていた。 原告101番は,平成19年●月から慢性C型肝炎の治療を受けるようになった。 原告101番は,平成22年●月,●病院に対し,昭和43年の前記手術に関するカルテの保存を問い合わせたが,保存されて いないとの回答だった。もっとも,生年月日と名前から,原告101番が昭和43年に心臓手術を受けたこと,第二外科に●医師が在籍していたこと,昭和43年に心臓手術が11例あったことが分かった。 原告101番は,昭和51年●月,●医師が●病院を退職する前,同医師から,原告101番に関する入院当初から昭和46年●月までの3年間のレントゲンフィルム21枚を受け取っており,その際,同医師 原告101番は,昭和51年●月,●医師が●病院を退職する前,同医師から,原告101番に関する入院当初から昭和46年●月までの3年間のレントゲンフィルム21枚を受け取っており,その際,同医師から「病院には保存期間があるので,将来必要になりますから,自分で保管して下さい。」と言われた。 原告101番は,●医師に対し,平成22年●月,昭和43年当時のことを尋ねたところ,古いことなので記録は残っていない,血液製剤を使用したかどうかは不明とのことだった。 また,原告101番は,●医師に対し,●病院の心臓血管外科退院時要約のコピーを郵送した上,フィブリノゲン製剤を使用したかどうか尋ねたところ,「手術は自己血であったと思うが記憶はない。」,「なるべく血液製剤フィブリノーゲンは使用しない考えだったが,使用したかどうかは不明です。」とのことだった。 原告101番の両親及びきょうだいに,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。原告101番は,入れ墨,ピアス,人工透析,鍼治療の経験はない。 イ原告101番の平成27年3月13日付け,平成28年8月9日付け陳述書(甲ハ101の32,36)●病院第二外科での検査結果を受けて原告101番に心臓手術を勧めたのは,●●医師だった。また,●病院で原告101番の手術の担当となったのは,●医師であったが,●病院で手術することになり,●医師から,同病院の担当医として,●医師の紹介 を受けた。 昭和43年当時,●病院には,心臓外科医は在籍していなかった。なお,心臓血管外科専門医認定制度が発足したのは,昭和56年4月1日のことである。 原告101番は,昭和43年●月●日,●病院において,●医師,●医師らの執刀で,心臓弁膜症 いなかった。なお,心臓血管外科専門医認定制度が発足したのは,昭和56年4月1日のことである。 原告101番は,昭和43年●月●日,●病院において,●医師,●医師らの執刀で,心臓弁膜症のため,心臓交連切開手術を受け,同年●月●日に退院した。手術の内容については,事前に,僧帽弁が狭窄になっているから,指を突っ込んで,狭窄を広げるという説明を受けた。 前記手術後,数日が経過してから,胸水がたまり,胸がふくらみ,息を吸うことも吐くことも苦しくなり,大きく呼吸ができなくなってきた。このため,肋骨の間から胸に太い注射器を刺し,胸水を抜く処置を2回受けた。その結果,やっと呼吸が楽になったが,その後も,病室において出血が止まらず,貧血状態であったところ,輸血と止血剤の投与の処置を受け,数日後に出血が止まった。どのような止血剤を投与されたのかは分からず,説明もなかったと思う。 原告101番は,平成10年●月●日から,同年●月●日まで,●病院の心臓血管外科に入院し,同年●月●日に,●医師の担当により,僧房弁置換手術を受けた。●医師の上司は,●●医師(以下「●医師」という。)だった。 原告101番は,本件訴訟が始まって以降,昭和42年当時に●病院の第二外科に所属していた●医師に対し,原告101番の手術はなぜ●病院から●病院に転院して行われたのかについて聞いたことがある。●医師は「昭和43年当時,心臓手術は1例でも多く行うという方針でした。中には無理な手術もありました。」 と述べていた。 薬害肝炎に関する研究報告をみると,昭和43年当時,●病院では日常的にフィブリノゲン製剤が投与されていたようで,●医師から聞いた昭和43年当時の●病院での様子を考えると,原告101番の手術の際にフィブリノゲン製剤が投 報告をみると,昭和43年当時,●病院では日常的にフィブリノゲン製剤が投与されていたようで,●医師から聞いた昭和43年当時の●病院での様子を考えると,原告101番の手術の際にフィブリノゲン製剤が投与されたことは間違いないと思う。 ウ ●医師の陳述書(甲ハ101の33)●医師が●病院の第一外科学教室副手として所属していた昭和43年当時,●病院にフィブリノゲン製剤が納入され,それを必要とする診療科で使用されていたことは間違いない。●医師自身は,当時のスペンダー(売血者)から採取する血液には血液成分が不十分なことが多く,あまり信用できないと考えていたので,売血者からの血液で製造するというフィブリノゲン製剤も信用できず,使用したことはない。ただし,循環器系を担当する●病院第二外科では,フィブリノゲン製剤を使っていたことは覚えている。 原告101番は,平成10年●月●日から同年●月●日まで「僧房弁置換術」のため●病院心臓血管外科に入院し,同年●月●日に,●医師らによる手術を受けたところ,当時,●医師は,同病院救命救急センター外科部長として在職しており,原告101番の「入院病歴誌」の「部長サイン」欄には●医師が署名した。 エ原告101番の供述(本人尋問)原告101番は,昭和43年●月●日,●病院において,●医師の執刀により,心臓交連切開手術を受けた。同手術に先立ち,同年●月●日から同病院に入院し,手術までの間,毎日点滴を受けていた。また,同手術に先立って,●医師から,輸血用の献血 手帳5冊を集めるように指示され,同指示の際,●医師に対し,心臓手術の場合は10~20冊必要なのではないかと問いかけたところ,原告101番の場合は,止血剤が使えるので,5人分用意してもらったらそれで 帳5冊を集めるように指示され,同指示の際,●医師に対し,心臓手術の場合は10~20冊必要なのではないかと問いかけたところ,原告101番の場合は,止血剤が使えるので,5人分用意してもらったらそれで結構です,と回答された。前記手術の際の出血量や輸血量を正確に聞いたことはないが,手術前に自己血を1本分採ったこと,献血手帳を4冊分使ったことからすると,全部で1000ml以上は使ったのだと思う。 前記手術は全身麻酔で行われたところ,手術後,原告101番が意識を取り戻した時,点滴を受けていた。何の点滴だったか,点滴の容器については分からないが,点滴の色はあまりなかったと思う。輸血は受けていなかった。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告101番が,昭和43年●月●日,●病院において,僧帽弁狭窄症のため心臓交連切開手術を受けたこと,●病院の心臓外科チームが●病院に出向いて前記手術を行ったことを認めることができる。 イしかし,●病院と●病院において,昭和43年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告101番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告101番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告102番関係 第1 当事者の主張(原告102番の主張) 1 原告102番は,平成元年●月,●医院において,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その 別紙原告102番関係 第1 当事者の主張(原告102番の主張) 1 原告102番は,平成元年●月,●医院において,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎が進行してり患した肝硬変の治療を受けてきた。 2 原告102番は,昭和61年●月●日,●医院において,帝王切開により第一子(男児)を出産し,その際の中等量の出血に対して止血の措置を受けた。 3 ●●医師(以下「●医師」という。)は,昭和61年当時,特定フィブリノゲン製剤を,開腹手術の全件で,腹膜の癒着防止目的により腹腔内に直接散布する方法で投与し,止血目的で,膣壁裂傷,弛緩性出血,早期胎盤剥離の出血などの病態が生じた時などに,出血量及び患者の全身状態から必要と判断した場合には,点滴により投与していた。 ●医師の特定フィブリノゲン製剤の前記投与方針に照らせば,帝王切開による前記出産の際に,原告102番に対し特定フィブリノゲン製剤が投与された高度の蓋然性がある。 4 ●医院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 5 原告102番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●医院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。 原告102番のC型肝炎ウイルス感染の事実は認める。 2 原告102番らの陳述書及び●●医師の証言によっても,前記出産当時,原告102番がDICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められないから,特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあったと認めることはできず,原告102番に対する特定フィブリノゲン製剤の投与の事実 DICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められないから,特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあったと認めることはできず,原告102番に対する特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 3 ●●医師の証言は,腹膜の癒着防止という特定フィブリノゲン製剤にはない効能を期待して特定フィブリノゲン製剤が投与されていたとする点,開腹手術の全件で特定フィブリノゲン製剤の投与がされていたとの供述が,証拠上認められる●医院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績と整合しない点,腹腔内に直接散布していた薬剤が特定フィブリノゲン製剤であると特定できた理由に関する証言に不合理な変遷がある点,医学的知見に照らして不自然・不合理な点が散見され,癒着防止剤として用いられるトラジロールやウロキナーゼと特定フィブリノゲン製剤との誤認混同の可能性が高い点などから信用できず,●医師の投与方針として,開腹手術の全件において特定フィブリノゲン製剤を投与していたとは認められないから,前記出産の際における原告102番に対する特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実及び同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ102の1,3,4,6,10~12,14,証人●●)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認める ことができる。 (1) 原告102番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。原告102番には1人のきょうだいがいる。 (2)ア原告102番は,昭和61年●月●日,京都市●区所在の●医院(平成2年に●●医師が院長に就任して「● 2番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。原告102番には1人のきょうだいがいる。 (2)ア原告102番は,昭和61年●月●日,京都市●区所在の●医院(平成2年に●●医師が院長に就任して「●医院」に名称変更)に入院し,同月●日,帝王切開で第一子(男児)を出産し,同月●日に退院した。初診を担当したのは●医師であったが,その後は●●医師が健診を担当していた。 イ昭和61年当時,●医院には,産婦人科と皮膚科があり,産婦人科では外来だけでなく出産や入院による手術(子宮筋腫,卵巣嚢腫,帝王切開等)を扱い,皮膚科では外来のみで対応していた。 医師数は,●医師,●●医師,●●医師の3名,看護師が常時5名ほどいたほか,受付や経理担当の事務員が3,4名働いていた。 なお,助産師はいなかった。 ●医院は4階建てで,1階に受付,待合室,診察室,厨房などがあり,2階に病室3部屋,新生児室,看護師の詰所(仮眠室を兼ねており,冷蔵庫が置かれていた。),分娩室,手術室,配膳室等,3階に病室8部屋,配膳室,リネン室,院長室等,4階に●●医師と●●医師の居室と住み込みで働いている看護師の居室があった。 病室は全て個室であり,1部屋につベッドは1個であり,総ベッド数は11個だった。 (3) 原告102番は,昭和62年,●病院における血液検査の結果,肝機能障害が判明し,●病院に15日間ほど入院した。 原告102番は,平成元年●月●日,●医院における血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染し,慢性C型肝炎にり患していることが発覚し,その後,約20年にわたり週2回の頻度で●医院に通 院し,その後,●医院に通院を続けている。また,原告102番は,平成7年,平成10年及び平成20年に,●病院においてインターフェロン治療を受けたが,C型肝炎ウイルスの消 度で●医院に通 院し,その後,●医院に通院を続けている。また,原告102番は,平成7年,平成10年及び平成20年に,●病院においてインターフェロン治療を受けたが,C型肝炎ウイルスの消失には至らなかった。 原告102番は,平成15年●月●日,●病院において肝硬変と診断され,同年●月●日から同月●日まで,肝硬変の治療のため●病院に入院した。 (4) ●医院における特定フィブリノゲン製剤の納入に関する製薬会社の回答は,昭和56年3月に3本を納入したのみであり,その他に納入はないというものである。 2 関係者の供述等の要旨(1) 原告102番の平成26年1月15日,同年8月11日付け陳述書(甲ハ102の1,16)妊娠中で出産予定日の4日後である昭和61年●月●日午後8時頃,自宅で出血し,●医師の指示で,同日●医院に入院した。初診を担当したのは●医師であったが,その後は●●医師が健診を担当した。 ●医院に到着後トイレに行った際に破水し,病室で陣痛促進剤の点滴を受けた。 同日夜から陣痛が始まり,同月●日朝,分娩室に移動したが,子宮口がなかなか開かなかった。分娩室には,●●医師,看護師1,2名のほか,●●医師がいた。●●医師から,「赤ちゃんが大きいから,もう帝王切開しかないと思う。」等と言われた。 その後,手術室へと運ばれ,全身麻酔の上で帝王切開による出産が行われた。意識が戻った時には既に出産が終わっており,4300gの大きな男児が産まれた。輸血については,医師,看護師から 何も言われておらず,自身も輸血された記憶はない。 産後,3日間ほど透明な液体の点滴を受けていた記憶であるが,薬品名や点滴容器の形状は覚えていない。 母子手帳は平成19年頃紛失したが,出血量は中等量のところに丸囲みがされ,巨大児 た記憶はない。 産後,3日間ほど透明な液体の点滴を受けていた記憶であるが,薬品名や点滴容器の形状は覚えていない。 母子手帳は平成19年頃紛失したが,出血量は中等量のところに丸囲みがされ,巨大児と記載されていた。出血量の欄に数字が書き込まれていたが,細かい数字は覚えていない。なお,輸血とは書かれていなかった。 前記出産の翌年である昭和62年●月頃,自宅にて腹部に普通ではない痛みを感じ,自ら救急車を呼んで,自宅近くの●病院に搬送された。同病院での血液検査の結果,肝機能障害と言われ,15日間ほど入院した。入院中は点滴治療を受けながら安静にしていた。 平成元年●月,第一子(男児)のかかりつけ医であった●医院(小児科及び内科)で血液検査を受けたところ,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 原告102番の親族でC型肝炎ウイルスに感染している者はいないし,原告102番は入れ墨,ピアス,違法な薬物の注射器での回し打ちはしていない。 (2) 原告102番の母の陳述書(甲ハ102の17)昭和61年●月●日の夜,原告102番の友人から電話連絡を受け,同日中に●医院に駆け付けた。トイレに行った原告102番から「お腹がぱちっと言うたわ。」と言われて呼ばれ,トイレに行くと,原告102番は破水していたため,看護師を呼んだ。 その後,原告102番は,病室において陣痛促進剤の点滴を受けていたところ,若い男性の医師が来て,「お腹を切らんと出ません。」と述べた。帝王切開による出産をする理由について特に聞いた覚えはないが,医師の言うことであるから,素直に了承したと思う。 手術が終わり,看護師からの知らせを受けて,新生児室及び手術室に行った。原告102番は麻酔で眠った状態であった。 原告102番の母子手帳の紛失の経緯については,知ら 了承したと思う。 手術が終わり,看護師からの知らせを受けて,新生児室及び手術室に行った。原告102番は麻酔で眠った状態であった。 原告102番の母子手帳の紛失の経緯については,知らない。 (3) ●●医師の平成26年1月16日付け陳述書(甲ハ102の14)昭和61年の前記出産当時,●医院に勤務していた。●医師及び●●医師の専門は産婦人科であり,●●医師の専門は皮膚科であった。 ●医院が開設された昭和52年以降,同病院では,年間150件前後の出産を扱っていた。出産のうち,帝王切開手術による場合は,必ず,●医師が執刀を担当し,●●医師と●●医師の2名が助手として手伝う3名体制で行っており,自身はほぼ全ての帝王切開術に立ち会ったと思う。 ●医院にどのような薬を納入するかは,全て●医師の判断で行われていた。●医師は新しいもの好きであったため,●医院では当時新しい薬であったフィブリノゲン製剤を納入して使用していた。●●医師は,●医師から指示を受けて,「●」という薬問屋に電話を掛けてフィブリノゲン製剤を注文していた。納入したフィブリノゲン製剤は,2階にある看護師の詰所内に設置された冷蔵庫の中に入れて保管していた。フィブリノゲン製剤の補充方針は分からないが,至急取り寄せたということはなかったと記憶しているため,前記冷蔵庫に常備されていたのではないかと思う。 平成20年頃,製薬会社である補助参加人に,●医院へのフィブリノゲン製剤の納入状況を問い合わせた結果,昭和56年3月に3本のみとの納入記録の交付を受けたが,かかる記録は,自身の記憶と全く合致していない。なぜ間違った記録になっているのかは分からない。 帝王切開手術の際,●●医師は,妊婦の頭部付近に立って,●医師と●●医師が手術するのを見ながら,血圧を測り 記憶と全く合致していない。なぜ間違った記録になっているのかは分からない。 帝王切開手術の際,●●医師は,妊婦の頭部付近に立って,●医師と●●医師が手術するのを見ながら,血圧を測り,輸液補充をしていた。●医師の判断によりフィブリノゲン製剤を投与することになった場合は,●医師から●●医師に対して,例えば「フィブリノゲン用意」等と口頭で指示がされた後,看護師にフィブリノゲン製剤を取ってきてもらい,●●医師において手術室において準備をした上で投与を行っていた。鮮明には覚えていないが,何かを混ぜた上で小さな透明な瓶を振ったように記憶している。 フィブリノゲン製剤の使用の判断は,妊婦や出てくる血液の様子から●医師が行っており,出血量による明確な使用基準はなかったと思う。フィブリノゲン製剤の使用方法としては,点滴が多かったと思う。帝王切開の場合,妊婦には血管確保のために「ラクテック」という輸液のボトルの点滴を行っていたが,フィブリノゲン製剤を使用するとなると,点滴の瓶を「ラクテック」からフィブリノゲン製剤に差し替えて投与していた。フィブリノゲン製剤のみを使用して輸血を行わない場合はあったが,輸血のみを行ったことはなかったと思う。また,帝王切開等の開腹手術の場合,子宮を縫合した後,皮膚を縫合する前に,腹膜の癒着を防止するために,フィブリノゲン製剤を注射器で腹腔内に散布していた。 輸血が必要な時は,輸血用の血液を取り寄せている間のつなぎとしてもフィブリノゲン製剤を使用していたと思う。 ●●医師が認識しているフィブリノゲン製剤の効能は,止血であり,出血量が多かったら使うという認識であった。止血剤としてアドナやトランサミンを使うこともあったが,フィブリノゲン製剤の方が良く効くという認識であり,大出血の場合にはまずフィブリノゲン 止血であり,出血量が多かったら使うという認識であった。止血剤としてアドナやトランサミンを使うこともあったが,フィブリノゲン製剤の方が良く効くという認識であり,大出血の場合にはまずフィブリノゲン製剤を使用していた。また,腹膜の癒着防止という効能もある と認識していたかもしれないが,忘れてしまった。 原告102番の前記出産について,帝王切開手術での出産とのことで,間違いなく自分も立ち会っていたと思う。フィブリノゲン製剤の投与の有無については,カルテがないため断言はできないが,出血があれば●医師の指示により,点滴又は子宮縫合後皮膚縫合前の腹腔内への散布により,若しくは点滴及び腹腔内への散布の両方で使用した可能性があると思う。 (4) ●●医師の供述(第1回証人尋問平成27年12月17日実施)●医院では,昭和52年の開院当初から,●医師の判断及び指示に従い,●●医師が薬問屋「●」に注文して,フィブリノゲン製剤を納入していた。「●」以外の薬問屋からフィブリノゲン製剤を納入していたかは分からない。フィブリノゲン製剤は,1名の患者につき1,2本を使用し,使用の度に補充しており,2本から5本ほど常備していたと思う。フィブリノゲン製剤は,●医院の2階にある看護師の詰所内の冷蔵庫で保管していた。納入本数は,月により異なり,0本の月もあれば5本の月もあった。平成20年に製薬会社である補助参加人から交付された月別納入数量表では,●医院は●を通じて昭和56年3月に3本だけ納入したことになっているが,同表の記載は自分の記憶と合致せず,間違っている。 帝王切開手術の場合,●医師が執刀医,●●医師がその助手,●●医師が患者の枕元で血圧を測ったり,点滴,輸血の刺し替え等を行う,という医師3名の体制で行い,看護師も2,3名立ち会っていた。前 る。 帝王切開手術の場合,●医師が執刀医,●●医師がその助手,●●医師が患者の枕元で血圧を測ったり,点滴,輸血の刺し替え等を行う,という医師3名の体制で行い,看護師も2,3名立ち会っていた。前記のとおり,ほぼ全件の手術を医師3名の体制で行ったものであり,1,2件のみ,旅行や入院に伴う例外があった。 昭和61年当時,●●医師は,フィブリノゲン製剤の効能について,止血効果があると認識していた。他の止血剤としては,アドナ やトランサミンなどもあったが,手術中の大量出血に対しては,即効性があるフィブリノゲン製剤を使用し,手術後の点滴に際してアドナやトランサミンを使用していた。フィブリノゲン製剤は,手術中の止血目的及び開腹手術の際の癒着防止目的で使用されていた。 いずれの使用についても,●医師が,患者の出血量や全身状態から使用するか否かを判断しており,●●医師自身で判断したことはないし,●●医師においては,フィブリノゲン製剤がどのように作用して止血や癒着防止の効果を発揮するかの詳細は知らなかった。なお,●医院の産婦人科における開腹手術としては,帝王切開のほか,子宮筋腫,卵巣嚢腫,頸管捻転,子宮外妊娠があり,件数は月に2,3件で,出産のうち10件に1件くらいの割合で帝王切開手術を行っていたと思う。帝王切開の場合は,ほぼ全件でフィブリノゲン製剤が使用されていた記憶である。 手術室において,●医師からフィブリノゲン製剤の準備の指示がされた場合,●●医師か看護師かが,前記詰所内の冷蔵庫にフィブリノゲン製剤を取りに行った上,●●医師において,患者の枕元にある台で準備をしていた。準備の内容は,フィブリノゲン製剤の入った透明な瓶(手のひらに乗るくらいの大きさ)に溶解液を入れて瓶を振るというもので,準備には数分を要した。止血目的でフィブ 患者の枕元にある台で準備をしていた。準備の内容は,フィブリノゲン製剤の入った透明な瓶(手のひらに乗るくらいの大きさ)に溶解液を入れて瓶を振るというもので,準備には数分を要した。止血目的でフィブリノゲン製剤を使用する場合は点滴で投与し,開腹手術の際に癒着防止目的で使用する場合は,子宮縫合後,腹壁縫合までの間に,注射器で腹腔内に直接散布する方法により投与していた。フィブリノゲン製剤を糊の状態にして使うことはなかった。 ●医師は,500ml~1000mlの出血があれば輸血をしていたが,輸血が必要な場合,先行してフィブリノゲン製剤を投与していた。フィブリノゲン製剤を投与し,輸血はしなかったというこ とはあった一方で,フィブリノゲン製剤の投与なしに輸血を行ったことはなかった。 原告102番の帝王切開手術の際に,フィブリノゲン製剤が,腹腔内の癒着防止目的で,注射器で腹腔内に直接散布する方法により投与された可能性は十分ある。また,フィブリノゲン製剤が,止血目的で投与された可能性もある。なお,フィブリノゲン製剤を投与した場合,カルテにはその旨を記入したが,母子手帳には記載していなかった。 (5) ●●医師の平成28年10月6日付け陳述書(甲ハ102の20)平成27年12月17日実施の証人尋問において,●●医師は,昭和61年当時に自身が体験したことを,証言当時の記憶に基づき証言した。 ●●医師は,皮膚科が専門であるから,産科のどのような病態に対して,どのような判断基準でフィブリノゲン製剤を使用するのかについては,自身で判断したことはない。ただし,帝王切開手術等の開腹手術に助手として立ち会っていた経験や,分娩の際に手伝っていた経験から,●医師と●●医師がどのような場面でどのような処置をしていたかを何度も見ており,その限りで はない。ただし,帝王切開手術等の開腹手術に助手として立ち会っていた経験や,分娩の際に手伝っていた経験から,●医師と●●医師がどのような場面でどのような処置をしていたかを何度も見ており,その限りでの体験を,医師としての良心に従って誠実に証言した。 手術を医師1名で行うことはできず,看護師も2,3名必要であるから,外来診察時に要する医師及び看護師の人数からして,いずれかの医師が外来診察中に手術をすることはできなかった。そのため,●●医師は,●医院におけるほぼ全ての手術に立ち会ったと思う。なお,産婦人科及び皮膚科の平日の外来は,午前9時から正午と,午後5時から午後7時であったところ,原告102番の出産時 間は火曜日の午後2時57分であり,おそらく正午から午後1時頃に手術が開始されたと考えられることからしても,原告102番の出産に●●医師が立ち会ったと思う。 昭和61年当時,●医師は,開腹手術のほぼ全件で,子宮を縫合してから腹壁を縫合するまでの間に,フィブリノゲン製剤を腹腔内全体に注射器で直接散布していた。注射器での散布自体は,●医師か,同人から指示を受けた●●医師が行っていた。散布の目的につき,●医師は,腹膜の癒着防止と言っていたと思うが,もしかすると出血予防目的だったかもしれない。フィブリノゲン製剤が実際に腹膜の癒着防止の効果を持っているか等については知らない。さらに,出血が多いケースでは,前記のような直接散布の方法での使用とは別に,点滴でフィブリノゲン製剤を使用していた。 手術で使用した薬剤は,麻酔記録(A4サイズ,横向き)に記載する。●医院では,昭和61年当時,●●医師が,手術中に逐一,測定した血圧,酸素,出血量,輸血量,使用した薬剤を麻酔記録に記載していた。フィブリノゲン製剤を使用した場合は,麻酔記録の使用 )に記載する。●医院では,昭和61年当時,●●医師が,手術中に逐一,測定した血圧,酸素,出血量,輸血量,使用した薬剤を麻酔記録に記載していた。フィブリノゲン製剤を使用した場合は,麻酔記録の使用薬剤欄に「フィブリノーゲン1v」「フィブリノーゲン2v」(「v」はバイアル(注射剤)という意味)等と記載していた記憶がある。点滴で使用した場合は,ラクテック等の点滴を行った輸液の記載のすぐ下にフィブリノゲン製剤の記載をし,腹腔内に散布する方法で使用した場合は,ラクテックなどの記載とは少し離した位置に「フィブリノーゲン1v」「フィブリノーゲン1v腹腔内」等と書いたように思う。 癒着防止剤として使用されていたトラジロール,ウロキナーゼ,レパルゾン,コンドロイチンとの勘違いの可能性については,ウロキナーゼを除く三つの薬剤については,●医院に納入されていなか ったから,これらとの勘違いの可能性はない。 ウロキナーゼについては,産婦人科の手術等で使用するために●医院に納入されていたかは覚えていないが,麻酔記録の使用薬剤欄に「フィブリノーゲン1v」等と記載した記憶がある一方で,ウロキナーゼを記載したかどうか覚えていないこと,ウロキナーゼは冷蔵庫で保管する必要がないところ,開腹手術で使用した薬剤は冷蔵庫中に保管されていた記憶があること,ウロキナーゼは生理食塩液に加えて1分以内に溶けるようであるところ,当時瓶を数分間振って投与の準備をしていた記憶があることからすると,ウロキナーゼをフィブリノゲン製剤と勘違いしている可能性はない。 開腹手術(帝王切開手術を含む。)の正確な件数は分からない。 1件しかない月もあれば,5件以上の月もあったと思う。 フィブリノゲン製剤を注文した数は,月に0本から5本という記憶であり,●●医師が「●」という薬問屋に 開手術を含む。)の正確な件数は分からない。 1件しかない月もあれば,5件以上の月もあったと思う。 フィブリノゲン製剤を注文した数は,月に0本から5本という記憶であり,●●医師が「●」という薬問屋に電話して注文していた。 同じ薬剤でも問屋ごとに値段が違ったため,昭和61年当時,●医院は複数の薬問屋と付き合いがあった。フィブリノゲン製剤を「●」に注文していたことはしばらく忘れていたが,平成20年に,製薬会社である補助参加人に対し,●医院へのフィブリノゲン製剤の納入状況を問い合わせた結果として,昭和56年3月に3本のみとの納入記録の交付を受け,自身の記憶と合致しないと感じたことをきっかけに,思い出したものである。 (6) ●●医師の供述(第2回証人尋問平成29年9月14日実施)●●医師は,手術で使用した薬剤を麻酔記録(A4サイズ,横向き)に記載しており,フィブリノゲン製剤を使用した場合は,麻酔記録の使用薬剤欄に「フィブリノーゲン1v」「フィブリノーゲン2v」等と記載していた記憶があり,腹腔内に散布する方法で使用 した場合は,「フィブリノーゲン1v腹腔内」等と書いた。●医院において行われた手術のほとんどは開腹手術であったところ,開腹手術では,出血量にかかわらず,全件において腹腔内へのフィブリノゲン製剤の散布が行われていたため,前記麻酔記録には,必ず「フィブリノーゲン1v腹腔内」という記載があったと思う。散布した薬剤の色は透明であった記憶であり,色の付いた薬剤であるアドナやトランサミンではなかった。 癒着防止剤として使用される薬剤であるトラジロール,ウロキナーゼ,レパルゾン,コンドロイチンについては,いずれも●医院に納入されていなかった。 昭和61年当時に付き合いのあった薬問屋は,「●」のほか,「●」「●」「●」を であるトラジロール,ウロキナーゼ,レパルゾン,コンドロイチンについては,いずれも●医院に納入されていなかった。 昭和61年当時に付き合いのあった薬問屋は,「●」のほか,「●」「●」「●」を覚えており,これらの薬問屋以外からは薬剤を仕入れていなかった。また,フィブリノゲン製剤を他の医療機関から融通してもらったことはなかった。 (7) ●●医師の平成26年5月9日,同年10月20日付け陳述書(甲ハ102の15,18。ただし,甲ハ102の18の証拠説明書上の作成日は平成26年5月9日。)昭和45年に●大学を卒業後,京都市●区にある●病院の産婦人科での勤務を開始した。その後,昭和52年●月に,伯父であり,同産婦人科部長で前記病院の副院長をしていた●医師が,京都市●区に●医院を開業したため,開業と同時に,自身と妻である●●医師とで●医院へと移籍した。 平成20年頃に,原告102番が●医院を訪れ,昭和61年当時の●医院で出産したことの確認を求め,また,同年当時にフィブリノゲン製剤を使用していたかを尋ねてきた。●●医師は,これまでに何人もの出産を担当しており,約20年以上前のことなので,原 告102番及び同人の出産について記憶していなかったが,●医院に残っていた入院カルテ索引簿(入院患者の入院日と退院日を記載した表)等の記録を見て,原告102番が昭和61年●月●日に●医院で出産したこと,同年●月●日から同月●日まで入院したことが分かった。入院期間が通常より長いことと原告102番が持参していた育児記録から,帝王切開による出産であったことが分かったので,平成20年●月●日,原告102番が●医院で帝王切開術により分娩した旨の証明書を作成した。ただし,フィブリノゲン製剤を使用したか否かについては記憶がなかったため,その旨を原 ったことが分かったので,平成20年●月●日,原告102番が●医院で帝王切開術により分娩した旨の証明書を作成した。ただし,フィブリノゲン製剤を使用したか否かについては記憶がなかったため,その旨を原告102番に伝えた。 昭和61年当時,妊婦にフィブリノゲン製剤を投与したことがあったか,どのような場合に投与していたかについては,記憶がない。 出産に伴う手術をする場合,●医師と●●医師が手術を担当し,助手として●●医師が手伝っていたが,フィブリノゲン製剤を投与するかどうかは●医師の判断によっていたため,自身でフィブリノゲン製剤の投与の判断をした記憶もないし,フィブリノゲン製剤を準備して妊婦に投与した記憶もない。●●医師は,昭和61年当時,●医院では,帝王切開手術の際にフィブリノゲン製剤を投与することがあったとのことだが,そう言われればそうだったのかもしれない。 (8) ●●医師の平成27年1月27日付け陳述書(甲ハ102の19)●医院で作成していた入院カルテ索引簿中の原告102番の「備考」欄には,赤字で「肝炎証明書」という記載があるところ,同記載は自分がしたものだと思う。記載した当時の状況はよく覚えていないが,平成20年●月●日に,肝炎の件で問い合わせをしてきた 原告102番に対し,「当院で分娩した」旨を記載した分娩証明書を発行したという意味で,肝炎証明書と記入したと思う。 3 検討(1) ●●医師の陳述書における供述及び証言(以下,これらを併せて「●供述」という。)は,全体として一貫するものではないが,最終的な内容は,原告102番の出産は帝王切開によるものであって,その当時,●医院においては,帝王切開を含む開腹手術においては必ず特定フィブリノゲン製剤が投与されていたというものであるから,その信用性が問題とな ,原告102番の出産は帝王切開によるものであって,その当時,●医院においては,帝王切開を含む開腹手術においては必ず特定フィブリノゲン製剤が投与されていたというものであるから,その信用性が問題となる。 (2) 前記認定事実(4)のとおり,●医院における特定フィブリノゲン製剤の納入に関する製薬会社の回答は,昭和56年●月に3本を納入したのみであり,その他に納入はないというものである。 この点について,●●医師は,●供述において,●医院において行われた手術のほとんどは開腹手術であったところ,開腹手術では,止血及び腹膜の癒着防止を目的として,出血量にかかわらず,全件において腹腔内への特定フィブリノゲン製剤の散布が行われていたものであり,前記回答ないし記録は自身の記憶と全く合致せず,間違っているとする。 しかし,●●医師の供述以外に,前記のとおりの客観的な納入記録とは異なる納入実態であったことを裏付けるに足りる事情は示されていない。 また,薬事法上承認を受けた特定フィブリノゲン製剤の効能は「低フィブリノゲン血症」の治療であり,用法は「注射用蒸留水に溶解し静脈内に注入する」ものであるところ,腹膜の癒着防止という効能を期待して,腹腔内に直接散布していたとの●供述は,本来的な効能や用法と異なるという点で,医学的知見に照らして疑問を差し 挟む余地がある上,●医師の指示であったという説明以上に合理的な根拠は示されておらず,昭和61年当時の●医師の投与方針は●●医師の証言以外の証拠による裏付けを欠くものである以上,直ちに●供述のとおりの実態であったと認めることはできない。 加えて,前記のような本来的な用法とは異なる使用が開腹手術の全件においてされていたとの●供述は,国民健康保険等が適用されない比較的高額な診療報酬を発生させる薬剤 態であったと認めることはできない。 加えて,前記のような本来的な用法とは異なる使用が開腹手術の全件においてされていたとの●供述は,国民健康保険等が適用されない比較的高額な診療報酬を発生させる薬剤を,開腹手術の全件で投与していたという点で不自然さが残るといわざるを得ない。 また,●供述は,フィブリノゲン製剤の使用の判断は,妊婦や出てくる血液の様子から●医師が行っており,出血量による明確な使用基準はなかったと思う(平成26年1月16日付け陳述書),帝王切開の場合は,ほぼ全件でフィブリノゲン製剤が使用されていた(第1回証言,平成28年10月6日付け陳述書),開腹手術では,出血量にかかわらず,全件において腹腔内へのフィブリノゲン製剤の散布が行われていた(第2回証言)と,合理的理由なく段階的な変遷をたどっており,不自然といわざるを得ない。 以上より,●供述は,それ自体が不自然である上,客観的証拠と整合しない部分があり,重要な部分について客観性のある裏付けが全くないから,採用することができない。 4 結論以上によれば,原告102番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告103番関係 第1 当事者の主張(原告103番の主張) 1 原告103番は,平成4年●月●日に行われた集団検診により,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告103番は,慢性C型肝炎と診断されている。 2 原告103番は,昭和43年●月●日,●会●病院において第二子(男児)を出産した際,胎児が大きく,会陰部又は膣内に裂傷が生じたため,600ml出血した。 番は,慢性C型肝炎と診断されている。 2 原告103番は,昭和43年●月●日,●会●病院において第二子(男児)を出産した際,胎児が大きく,会陰部又は膣内に裂傷が生じたため,600ml出血した。 3 ●会●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告103番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●会●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 母子手帳及び原告103番の陳述書によっても,原告103番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。また,入院諸費請求書には,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける金額の記載がなく,原告103番に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されていないことを強く推認させる。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 慢性肝炎の進行により肝硬変にり患した事実は否認する。そのような 検査,診断結果は提出されていない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ103の1~6,乙ハ103の2)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告103番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 (2) 原告103番は,昭和43年●月●日,●会●病院において,第二子(男児)を出産した。その際の出血量は約600mlであり,胎児の体重は4200gであった。 当時の特定フィブリノゲン製剤の薬価は5562円であるところ,前記出産に係る入院諸費請求書にお 第二子(男児)を出産した。その際の出血量は約600mlであり,胎児の体重は4200gであった。 当時の特定フィブリノゲン製剤の薬価は5562円であるところ,前記出産に係る入院諸費請求書において,同額を上回る項目は,入院料9日(1万1286円),手術料1回(1万3000円),処置料1回(1万1116円)のみである。 (3) 原告103番は,●病院で慢性C型肝炎と診断され,平成4年及び平成18年,同病院に入院した。 (4) 原告103番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告103番の陳述書(甲ハ103の5)の要旨は以下のとおりである。 原告103番の家族でC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告103番は,昭和43年●月●日,●会●病院において,第二子(男児)を出産した。出産前から胎児が大きいと聞かされており,実際に,出産時の体重は4200gだった。また,出産時の出血量は 600mlと多量であり,これらの事実は母子手帳からも確認できる。 ●●医師から,出血箇所の説明があったと思うが,会陰部だと説明を受けたのか,膣内だと説明を受けたのか,はっきりと記憶していない。同医師が,裂傷部を縫合しようとしたが,縫合がうまくいかず,縫合後も出血が続いたこと,再度縫合が行われたことを覚えている。 当時の入院諸費請求書によると,合計11回にわたり何らかの注射がされており,これらのうちどれかがフィブリノゲン製剤だったのではないかと考えている。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●会●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア うちどれかがフィブリノゲン製剤だったのではないかと考えている。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●会●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告103番は,昭和43年●月●日,●会●病院において,第二子(男児)を出産し,約600mlの出血があったことを認めることができる。 イしかし,●会●病院において,昭和43年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告103番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告103番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告104番関係 第1 当事者の主張(原告104番の主張) 1 原告104番の母は,昭和63年●月,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎,肝硬変,肝がんへと病態が進行し,平成20年●月●日,肝がんで死亡した。 2 原告104番の母は,昭和54年,医療法人●産婦人科(以下「●産婦人科」という。)において,子宮筋腫のため,子宮全摘手術を受けた。 3 ●産婦人科には,納入実績の残存する昭和56年から昭和63年までの間,継続的に年間数本の特定フィブリノゲン製剤が納入されていた。 4 原告104番の母がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●産婦人科における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張 フィブリノゲン製剤が納入されていた。 4 原告104番の母がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●産婦人科における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告104番の供述によっても,前記手術の詳細や,手術当時の原告104番の母の具体的病態は不明であるから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実 前記前提事実に証拠(甲ハ104の1~6,原告104番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告104番の母は,昭和●年●月●日生まれの者である。原告104番の母には,1人のきょうだいがいる。 (2) 原告104番の母は,平成2年●月●日,血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,平成20年●月●日,肝細胞がんで死亡した。 (3) 昭和54年当時,●産婦人科でフィブリノゲン製剤を常備していたかどうかは不明である。 (4) ●産婦人科には,昭和56年に8本,昭和57年に5本,昭和58年に7本,昭和61年に4本,昭和62年に6本(ただし,昭和63年に1本を返品)の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,原告104番の母に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告104番の母に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告104番の陳 を投与した可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告104番の母に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告104番の陳述書(甲ハ104の1)原告104番の母は,昭和54年,●産婦人科において,子宮筋腫のため子宮全摘手術を受けた。手術には,原告104番の伯母が付き添ってくれた。手術当日,原告104番が●産婦人科に行くと,手術は無事に終わっており,原告104番の母は点滴を受けていた。原告104番の伯母から聞いた話では,大量出血をしたため,手術後に点滴をすることになったそうであり,原告104番自身も,看護師から「出血が多いので,医師から点滴をするように言われました。」との説明を受けた。なお,原告104番 の母は,「輸血じゃないのよ」と言っていた。 原告104番の母は,昭和62年●月下旬,門真市民検診により肝臓数値の異常を知らされ,昭和63年●月●日,●病院での精密検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 原告104番の母は,昭和63年から平成11年までは,●病院内科で,平成11年から平成20年までは●クリニックで,平成13年から平成20年までは●病院肝臓内科で,それぞれ治療を受けた。その中で,●病院で2回,●病院と●クリニックでそれぞれ1回,インターフェロン治療を受けた。 原告104番の母は,前記治療によっても,C型肝炎ウイルスが消失せず,徐々に病態が進行し,平成20年●月●日に肝細胞がんにより他界した。 原告104番の母の両親及びきょうだいに,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。原告104番の母は,入れ墨,ピアス,人工透析,鍼治療の経験はない。 イ原告1 より他界した。 原告104番の母の両親及びきょうだいに,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。原告104番の母は,入れ墨,ピアス,人工透析,鍼治療の経験はない。 イ原告104番の供述(本人尋問)原告104番の母が昭和54年に●産婦人科において受けた子宮全摘手術の当日,短大の授業を受け終えた原告104番が病室に行った際,原告104番の母は,麻酔が効いているのか,少しぼう然とした状態で,1種類の点滴を受けていた。同点滴の大きさや,容器が瓶だったかビニールだったかについて明確には言えないが,透明だったことははっきり覚えている。原告104番は,病室において,原告104番の母に付き添っていた原告104番の伯母から,出血が多かったから点滴してくださってるんよ,と聞いた。また,看護師から,出血が多かったので,医師から点滴 するように指示されている旨を聞いた。具体的な薬剤名の説明は受けておらず,医師からの説明はなかった。止血剤とか,血を止める薬を使ったということは聞いていない。なお,原告104番の母は,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した頃,輸血は受けていない旨を述べていた。 原告104番の母は,昭和62年●月下旬,門真市民検診により肝臓数値の異常を知らされ,昭和63年●月●日,●病院での精密検査の結果,非A非B型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。当時は,C型肝炎であるということは判明しておらず,これが判明したのは,平成2年●月●日である。 原告104番の母が原告104番を出産した際は,普通分娩で,特に異常があったという話は聞いていない。 (2) 検討ア原告104番の母が,昭和54年,●産婦人科において,子宮筋腫のため子宮全摘手術を受けたと 04番を出産した際は,普通分娩で,特に異常があったという話は聞いていない。 (2) 検討ア原告104番の母が,昭和54年,●産婦人科において,子宮筋腫のため子宮全摘手術を受けたとの事実に関し,診断書やカルテなどの医療機関の作成した証拠があるものではないが,●病院の診療録(甲ハ104の7)の「既往歴」欄に,昭和54年に子宮筋腫で手術を受けた旨の記載があることや,原告104番の陳述書には具体的状況が記載してあり,本人尋問においても同様に供述することから,そのような事実があったことを認めることができる。 イしかし,●産婦人科において,昭和54年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告104番の母に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告104番の母については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告105番関係 第1 当事者の主張(原告105番の主張) 1 原告105番は,平成13年●月,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告105番は,慢性C型肝炎にて平成14年●月から同年●月までインターフェロン治療を受け,平成17年●月,肝機能は正常化し,HCV検査でも陰性化した。 2 原告105番は,昭和60年●月●日,●病院において,膵胆管合流異常の手術(開腹後,胆のう摘出を行い,閉腹する手術)を受けた。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した ,HCV検査でも陰性化した。 2 原告105番は,昭和60年●月●日,●病院において,膵胆管合流異常の手術(開腹後,胆のう摘出を行い,閉腹する手術)を受けた。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告105番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告105番及びその妻の陳述書によっても,原告105番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 原告105番が慢性肝炎にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ105の1,2,7,16,17)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告105番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。 原告105番には8人のきょうだいがいる。 (2) 原告105番は,●病院(現在は●病院)で慢性C型肝炎と診断され,平成14年●月●日から同年●月●日まで,同病院に入院してインターフェロン治療を受け,その後も同病院に通院した。原告105番の肝機能は,平成17年●月●日の時点で正常化し,C型肝炎ウイルスも陰性化した。 (3) ●病院には,昭和59年に2本,昭和60年に24本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,原告105番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示 C型肝炎ウイルスも陰性化した。 (3) ●病院には,昭和59年に2本,昭和60年に24本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,原告105番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告105番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告105番の陳述書(甲ハ105の1)原告105番の両親及びきょうだいにC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告105番は,昭和56年●月●日,●病院において,胆石手術を受けたが,手術を受けた部位の一部の癒着が分かり,その部位を除去するため,昭和60年●月●日,胆管合流異常の手術を受けた。手術して10日経過し,退院予定の前日にトイレに行ったとき,急に気分が悪くなり,便器に大量の下血があった後,意識を消失した。同月●日には出血のため輸血も必要になり,同年●月●日に退院した。 原告105番は,平成13年●月,●クリニックで血液検査を受け,C型肝炎と診断され,平成14年●月●日から同年●月●日まで●病院で入院治療を受け,その後も同病院に通院した。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 イ原告105番の妻の陳述書(甲ハ105の19)原告105番は,昭和56年●月,●病院に入院し,当初は肝臓が悪いとのことだったが,その後,胆石をとる手術を受けた。 昭和60年●月●日,また同病院に入院し,肝臓の数値が何度も悪くなる原因が「胆管合流異常」であることが分かり,手術を受けた。退院予定日の前日に同病院に行くと,看護師に再手術をしていると言われ,手術後,医師から「ひっつきが悪かった」,「輸血が必要 が何度も悪くなる原因が「胆管合流異常」であることが分かり,手術を受けた。退院予定日の前日に同病院に行くと,看護師に再手術をしていると言われ,手術後,医師から「ひっつきが悪かった」,「輸血が必要ですけど,いいですか」と言われた。再手術の日から1週間は輸血をした。輸血の期間中,原告105番はもうろうとしている状態であった。 (2) 検討ア原告105番の昭和60年●月●日の手術に関し,診断書やカルテなどの医療機関の作成した証拠があるものではないが,前記各陳述書には具体的状況が記載してあり,原告105番が,●病院の医師に対し,同旨の説明をしていること(甲ハ105の16,17)を併せ考慮すれば,原告105番が同日,●病院において前記手術を受けたことを認めることができる。また,前記1(3)のとおり,●病院には,昭和59年に2本,昭和60年に24本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができる。 イしかし,原告105番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでは なく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告105番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告106番関係 第1 当事者の主張(原告106番の主張) 1 原告106番は,平成5年頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告106番は,平成22年●月頃,肝腫瘍が見付かり,慢性C型肝炎(肝硬変に近い状態との診断)の治療を受けてきた。 原告106番は,C 番は,平成5年頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告106番は,平成22年●月頃,肝腫瘍が見付かり,慢性C型肝炎(肝硬変に近い状態との診断)の治療を受けてきた。 原告106番は,C型肝炎ウイルスに感染し,慢性C型肝炎が進行して肝硬又は肝がんにり患した者である。 2 原告106番は,昭和56年●月●日午前5時頃,突然の下血,吐血による出血があり,●病院(現在は●病院,以下「●病院」という。)の内科において,輸血と止血のための処置を受けた。原告106番は,同日夕方以降に再び吐血等があったため,●病院の外科において,胃切除の緊急手術を受けた。 3 ●病院には,昭和55年10月に5本,昭和56年7月に10本の特定フィブリノゲン製剤が納入された。 4 原告106番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 ●●医師(以下「●医師」という。)作成の書面には,前記手術のときに,特定フィブリノゲン製剤を使用したかどうかについては,カルテがないので回答できない旨が記載されているのみであり,原告106番に対する特定フィブリノゲン製剤投与を何ら推認させるものではない。 また,「止血のためにあらゆる治療を行った」との原告106番の陳 述書の記載から特定フィブリノゲン製剤投与の事実を認めることはできないし,手術台帳及び原告106番の陳述書等によっても,原告106番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 そして,●病院は,前記手術の直近では昭和56年●月に10本の特定フィブリノゲン製剤の納入を受けただけであり,同病院の当時の手術件数が年間 製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 そして,●病院は,前記手術の直近では昭和56年●月に10本の特定フィブリノゲン製剤の納入を受けただけであり,同病院の当時の手術件数が年間1337件であることを考慮すると,そもそも前記手術当時,同病院に特定フィブリノゲン製剤が存在したことすら疑問である。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 慢性肝炎が進行して肝硬変又は肝がんにり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ106の1~10)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告106番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。 原告106番にはきょうだいがいる。 (2) 原告106番は,昭和56年●月●日,下血,吐血による出血があり,●病院に入院した。●医師が,同年●月●日,原告106番の胃を切開したところ,幽門管から約1cmの長さの線状潰瘍があり,そこからの出血が認められたため,胃切除(3分の2を切除)と胃十二指腸吻合術の手術が行われ,原告106番は同月●日まで同病院 に入院した。原告106番は,出血性十二指腸潰瘍,出血性ショック,術後低たんぱく血症,輸血後血清肝炎と診断された。 (3) 原告106番は,慢性C型肝炎と診断され,●病院において,平成5年●月から及び平成22年●月からインターフェロン治療を受けたが,同年●月,肝細胞がんが見つかり,同治療を中断した。原告106番は,同年●月,肝切除術(部分切除)と胆嚢摘出術を受けた後,インターフェロン治療を再開し 22年●月からインターフェロン治療を受けたが,同年●月,肝細胞がんが見つかり,同治療を中断した。原告106番は,同年●月,肝切除術(部分切除)と胆嚢摘出術を受けた後,インターフェロン治療を再開した。 (4) ●病院には,昭和55年●月に5本,昭和56年●月に10本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,原告106番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告106番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告106番の陳述書(甲ハ106の1)原告106番の父母,きょうだい,妻及び子にC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告106番は,昭和56年●月●日明け方頃,突然の下血,吐血による出血があり,同日午前9時頃,●病院の内科を受診したところ,すぐに入院となり輸血や止血のための処置を受けた。その日の夕方くらいから再び大量の下血があり,血圧も60台まで下がってきたことから,外科に移り,夜中から同年●月●日明け方にかけて,緊急手術をした。医師は,手術前,原告106番の父母に対し,止血のためにあらゆる治療を行ったが再び出血したので,患部を特定できないが開腹手術をせざるを得ない状況であり,助かる確率は五分五分であると説明したそうである。手術は無事終わり, 胃の3分の2を切除したとのことであり,診断名は出血性十二指腸潰瘍であった。退院してしばらくすると,黄疸等の症状が出て,医師から輸血後肝炎を起こしていると言われた。すぐに再び入院となり,治療を受けた。 平成5年●月,●病院を受診し,慢性C型肝炎であるとの診断を受け,同年●月から及び平成22年●月からインターフェロン治療を行ったが,同年●月,肝細胞がんが見 再び入院となり,治療を受けた。 平成5年●月,●病院を受診し,慢性C型肝炎であるとの診断を受け,同年●月から及び平成22年●月からインターフェロン治療を行ったが,同年●月,肝細胞がんが見つかり,同治療を中断した。同年●月,肝切除術(部分切除)と胆嚢摘出術を受け,今のところ肝細胞がんは治癒している。同年●月からインターフェロン治療を再開したが,結局C型肝炎ウイルスは消えなかった。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 イ原告106番の母作成のメモ(甲ハ106の5)昭和56年●月●日午前5時前に原告106番が血を吐き,びっくりする。同日午前9時過ぎに●病院を受診し,すぐに入院することになった。同日午後7時頃から,また吐血し,血圧が下がって危険になったため,同日午後11時から同年●月●日午前5時まで手術が行われた。 ウ ●医師作成の書面(甲ハ106の6)原告106番のことは覚えていないが,手術台帳の写しを見る限り,自分が手術台帳に記載された手術をしたことは間違いない。 同手術のときに,フィブリノゲン製剤を使用したかどうかについては,カルテがないので回答することができない。 (2) 検討ア前記1(2)及び(4)のとおり,原告106番は,昭和56年●月●日,●病院において前記手術を受けており,同年●月,同病院に1 0本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができる。 イしかし,原告106番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告106番については,特定 治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告106番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告107番関係 第1 当事者の主張(原告107番の主張) 1 原告107番は,平成13年●月●日に血液検査を受け,C型肝炎ウイルスに感染し,慢性C型肝炎にり患していることが判明した。 2 原告107番は,昭和49年●月●日,友人が運転するオートバイの後部座席に乗って走行していたところ,交差点で,軽トラックに側面衝突する事故に遭い,右大腿剥離骨折,右脛腓骨骨折の全治4か月の重傷を負った。原告107番は,医療法人●会●病院(以下「●病院」という。)において,右下腿骨折に対し,腰椎麻酔で,観血接合術・骨移植の手術を受けた。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告107番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 手術台帳及び原告107番の陳述書等によっても,原告107番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 また,●病院の請求書(前記手術日を含む昭和49年●月●日から同月●日まで分)には,「投薬料」欄に回数15回,5117円との記載があるが,前記手術当時の特定フィブリノゲン製剤の薬価 られない。 また,●病院の請求書(前記手術日を含む昭和49年●月●日から同月●日まで分)には,「投薬料」欄に回数15回,5117円との記載があるが,前記手術当時の特定フィブリノゲン製剤の薬価は5560円であるから,前記請求書の金額からも特定フィブリノゲン製剤投与があったとは認められない。 さらに,●病院作成の回答書によると,前記手術当時の●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績は不明であり,前記手術当時,●病院に特定フィブリノゲン製剤が存在したことすら疑問である。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 原告107番の症状は争う。そのような検査,診断結果は提出されていない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ107の1~8,12~18,20,乙ハ107の1)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告107番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。 原告107番にはきょうだいがいる。 (2) 原告107番は,昭和49年●月●日,友人が運転するオートバイの後部座席に乗って走行していたところ,交差点で,軽トラックに側面衝突する事故に遭い,加療4か月を要する右大腿剥離骨折,右脛腓骨骨折の傷害を負った。 原告107番は,同月●日,●病院において,腰椎麻酔で,観血接合術・骨移植の手術を受けた。手術台帳の「摘要」欄には,「AOナロープレート7穴,AOシュラウ9本,骨移植」と記載されている。 前記手術当時,特定フィブリノゲン製剤の薬価は5560円であったところ,前記手術日を含む期間の●病院の請求書には,特定フィブリノゲン ロープレート7穴,AOシュラウ9本,骨移植」と記載されている。 前記手術当時,特定フィブリノゲン製剤の薬価は5560円であったところ,前記手術日を含む期間の●病院の請求書には,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことをうかがわせる記載はない。 原告107番は,同年●月●日,血清肝炎と診断された。 原告107番は,昭和50年●月●日に抜釘し,同年●月●日,●病院で再手術を受けた。 (3) 原告107番は,平成13年●月●日,医療法人●病院で精密検査を受けた際,C型肝炎であることが判明した。原告107番は,平成15年●月●日,医療法人●会●病院で慢性C型肝炎の治療を開始し,平成16年●月●日からは医療法人●会●病院にも通院した。 原告107番は,インターフェロン治療等を受け,平成17年●月●日,HCV-RNA定性検査の結果が陰性となった。原告107番は,平成22年●月●日以降,フォローアップ目的で●病院に通院している。 (4) 原告107番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における昭和49年当時の特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はなく,●病院は,原告107番代理人の照会に対し,昭和54年以前の納入・使用の有無は不明である旨回答した。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告107番の陳述書(甲ハ107の1)の要旨は以下のとおりである。 原告107番の両親及びきょうだいにC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告107番は,昭和49年●月●日,友人が運転するオートバイの後部座席に乗って走行していたところ,交差点で,軽トラックに側面衝突する事故に遭い,右大腿剥離骨折,右脛腓骨骨折の全治4か月の重傷を負った。原告107番は,●病院に救急搬送され,金具を入れる イの後部座席に乗って走行していたところ,交差点で,軽トラックに側面衝突する事故に遭い,右大腿剥離骨折,右脛腓骨骨折の全治4か月の重傷を負った。原告107番は,●病院に救急搬送され,金具を入れる手術を受けたが,麻酔をした上での手術であり,手術中の記憶は ない。同年●月●日に退院したが,退院間際に肝炎だと言われた。●病院の請求書が残っているが,15回,5117円の「投薬料」の中にフィブリノゲン製剤の費用が含まれている可能性が高いと思われる。 原告107番は,平成13年●月●日,医療法人●病院で精密検査を受けた際,C型肝炎であることが判明した。その後,医療法人●会●病院及び医療法人●会●病院に通院し,インターフェロン治療を受け,C型肝炎ウイルスは消えた状態になっている。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告107番は,昭和49年●月●日,●病院において,観血接合術・骨移植の手術を受けたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和49年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告107番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告107番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告108番関係 第1 当事者の主張(原告108番の主張) 1 原告108 とはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告108番関係 第1 当事者の主張(原告108番の主張) 1 原告108番は,平成2年頃,●病院での血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告108番は,昭和56年●月●日,自宅で大量出血をしたため,●病院を受診し,同日,●●医師(以下「●医師」という。)の指示により,注射や点滴の処置を受け,そのまま同病院に入院した。原告108番は,同月●日,緊急帝王切開により,第二子(女児)を出産しており,その際にも相当な量の出血を伴ったことが推認される。 3 ●病院には,昭和55年に89本,昭和56年に48本のフィブリノゲン製剤が納入されていた。 4 原告108番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告108番は,前記出産前,大量出血をした旨述べるが,これを裏付ける証拠はなく,かかる大量出血の事実を認めることは困難であるし,原告108番の供述によっても,当時の原告108番の具体的病態は不明であるから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 また,原告108番の供述によっても,前記出産当時の原告108番の具体的病態は不明であるから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ108の1~3,4の1,2,甲ハ108の8,14)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告108番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。原告108番にきょうだいはいない。 (2) 原告108番は,昭和56年●月●日,●病院に入院し,同月●日午後5時53分,帝王切開により第二子(女児)を出産した。分娩介助は,●医師が行った。 (3) 原告108番は,平成2年頃,血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,現在,慢性C型肝炎にり患している。 (4) 昭和56年当時,●病院は,産婦人科ほか12の診療科を有し,ベッド数は458床,産婦人科における医師数は約3名,産婦人科における看護師数,●病院における年間分娩数,帝王切開の件数はいずれも不明である。 (5) ●病院には,昭和55年に89本(ただし,同年に2本を返品),昭和56年に48本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,原告108番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告108番の陳述書(甲ハ108の1)の要旨は以下のとおり である。 原告108番は,昭和56年●月●日,●病院産婦人科において,第二子(女児)を出産した。担当医師は,●医師だった。 原告108番は,胎盤の位置が悪く,妊娠8か月目くらいから出血があり,●医師から入院を勧め 昭和56年●月●日,●病院産婦人科において,第二子(女児)を出産した。担当医師は,●医師だった。 原告108番は,胎盤の位置が悪く,妊娠8か月目くらいから出血があり,●医師から入院を勧められていたが,当時1歳1か月になる第一子がいた上,夫が単身赴任中であったため,入院はせずに自宅で安静にしながら様子をみることになっていた。 しかし,妊娠9か月目に入った昭和56年●月●日の午前8時頃,風呂場を掃除しようとした際,突然大出血があった。シュークリームのような形の血の塊が5,6個出て,その後も出血が止まらず,衣服が血だらけになる程であった。洗面器1杯分くらいは出血があったように思う。出血は,生理用品で抑えきれない量だったため,第一子の紙おむつを身に着けて,●病院に向かった。 ●病院に到着後,すぐに●医師の診察を受けたところ,●医師から「すぐに出血を止めないといけないので,止血剤を投与します。」と言われ,入院の上,注射や点滴をずっとされたこと,点滴については,透明の液体が瓶に入っていたことを覚えている。 入院から2日ほど経った昭和56年●月●日,●医師から「やはり出血量が多く,このままでは母子ともに生命の危険性がある。」との説明を受け,全身麻酔の上,緊急帝王切開により,第二子(女児)を出産した。母子手帳に出血量の記載はないが,前置胎盤で,前記のように大量出血があった状況であるため,出血量が多かったことに間違いはない。 原告108番は,平成2年頃,身体がとてもだるかったため,●病院において血液検査を受けた結果,「近年分かった型で,『C型』のウイルスだ」との説明を受け,C型肝炎ウイルスに感染している ことが判明した。 感染判明後は,●病院で強ミノの点滴を受け,●内科でプラセン 結果,「近年分かった型で,『C型』のウイルスだ」との説明を受け,C型肝炎ウイルスに感染している ことが判明した。 感染判明後は,●病院で強ミノの点滴を受け,●内科でプラセンタ等の注射を打ってもらうなどの治療を受け,平成19年●月頃から●病院で約1年間インターフェロン治療を受けた。治療の結果,一時,C型肝炎ウイルスの数値が消えたが,その後再発し,平成20年●月から再びインターフェロン治療を受けたが,うつ的な副作用が強く出たため,平成21年●月頃に同治療を中止した。現在はC型肝炎ウイルスの数値は消えているが,いつ再発するか分からない状態である。 平成19年頃,薬害C型肝炎及びフィブリノゲン製剤のことを知り,●病院にカルテの有無を確認したが,カルテは既に廃棄しており,残っていない旨の回答であった。 原告108番は,昭和55年●月に第一子(男児)を出産しているところ,同出産時の出血量は少量だった。また,平成元年●月に第三子(女児)を●クリニックで出産したところ,特に問題はなかった記憶である。原告108番は,3回の出産以外に手術を受けた経験はない。 原告108番の両親及び子供に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。原告108番は,入れ墨,ピアス,人工透析,鍼治療,違法薬物の注射器での回し打ちの経験はない。 (2) 検討ア前記1(2),(4),(5)のとおり,原告108番が,昭和56年●月●日,●病院に入院し,同月●日午後5時53分,同病院において,帝王切開により,第二子(女児)を出産したこと,●病院に,昭和55年に89本(ただし,同年に2本を返品),昭和56年に48本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことをそれぞ れ認めることができる。 イしかし,原 したこと,●病院に,昭和55年に89本(ただし,同年に2本を返品),昭和56年に48本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことをそれぞ れ認めることができる。 イしかし,原告108番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,原告108番は,昭和56年●月●日,●医師から,「すぐに出血を止めなければならないので,止血剤を投与します。」と言われた旨供述するが,他方で止血剤の名称を述べているものではないから,当該供述によっても,原告108番に,具体的状況に照らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 3 結論以上によれば,原告108番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告110番関係 第1 当事者の主張(原告110番の主張) 1 原告110番は,平成16年●月●日,●センターで受けた血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,平成23年●月●日までに,●病院において,慢性C型肝炎と診断され,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告110番は,昭和62年●月●日,●センターにおいて膵空腸吻合手術を受け,その際,240mlの出血があった。 3 ●センターには,昭和59年に2本の特定フィブリノゲン製剤が納入されていた。 4 原告110番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●センターにおける特定フィブリノゲン製 lの出血があった。 3 ●センターには,昭和59年に2本の特定フィブリノゲン製剤が納入されていた。 4 原告110番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●センターにおける特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 前記手術に係る術中看護記録,麻酔記録及び外科手術記録(甲ハ110の3の1~3)には,前記手術の経過等が比較的詳細に記載されているところ,特に異常な出血があったとか,止血に問題があったとの事情や,特定フィブリノゲン製剤が静注又は糊で使用されたとの記載はないから,むしろ,前記手術当時,原告110番に特定フィブリノゲン製剤が使用されていないことが推認される。 また,原告110番の供述によると,同人はHIVに感染し,梅毒の感染も疑われることから,原告110番のC型肝炎ウイルスの感染は,性交感染の可能性もある。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。 麻酔記録中には,「(F)」との記載があるが,患者の手術中の麻酔状態の維持に用いられる麻酔を記載する欄であるから,麻酔と無関係な特定フィブリノゲン製剤の記載がされることはなく,当該記載は,「Fluothan」(商品名ハロセン)という吸入麻酔薬か,「Fentanyl」(麻酔,鎮痛,疼痛の緩和の目的で利用される合成オピオイド)の頭文字と思われる。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実争いのない事実に証拠(甲ハ110の1,2の2,甲ハ110の3の1~3,甲ハ110の4,6,原告110番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができ 判所の判断 1 認定事実争いのない事実に証拠(甲ハ110の1,2の2,甲ハ110の3の1~3,甲ハ110の4,6,原告110番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告110番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。原告110番には4人のきょうだいがいる。 (2) 原告110番は,昭和62年●月●日,●センターにおいて,膵空腸吻合手術を受け,その際,240mlの出血をした。 (3) 原告110番は,平成16年●月●日,●センターで受けた血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,慢性C型肝炎の病態にある。 (4) ●センターには,昭和59年に142本,昭和60年に158本,昭和61年に324本,昭和62年に220本(ただし,同年に14本を返品)の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,原告110番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告110番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告110番の陳述書(甲ハ110の1)原告110番は,昭和62年●月●日,●センターで,慢性すい炎のため,膵空腸吻合の手術を受けた。執刀医は,●医師であった。後に入手した同手術の麻酔記録の記載からして,同手術の際に,原告110番に対し,フィブリノゲン製剤が投与されたことは間違いないと考えている。 原告110番は,平成元年(昭和64年)●月,●外科を受診した際,●医師から「C型慢性肝炎になっているな。」と言われた。 なお,同医師から「インターフェロンは高価で,慢性肝炎は治らない」,「この病はがんではなく肝硬変で死んでいく」と言われたが,特に肝炎の治療 際,●医師から「C型慢性肝炎になっているな。」と言われた。 なお,同医師から「インターフェロンは高価で,慢性肝炎は治らない」,「この病はがんではなく肝硬変で死んでいく」と言われたが,特に肝炎の治療を受けることはしなかった。 原告110番は,平成16年●月●日,●センターで,髄膜腫のため,開頭腫瘍摘出手術を受けたところ,同手術前の同月●日に行った血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 原告110番の両親及びきょうだいに,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告110番は,入れ墨,ピアス,人工透析の経験はない。 イ原告110番の供述(本人尋問)昭和62年●月●日,●センターにおいて受けた膵空腸吻合手術に係る麻酔記録中の「Epi+GO(F)」との記載において,「(F)」はFACTORを表したもので,第一凝固因子のフィブリノゲン製剤であると思う。そして,同手術における出血量が少 なく,輸血を行わなかったのは,フィブリノゲン製剤を投与したからだと思う。 前記手術について,医師や看護師からは,心配しなくて良いとか,輸血の準備をしていくといったこと以外には聞いていない。 原告110番は,HIVにも感染しているところ,同感染の原因は,フィブリノゲン製剤の投与を受けたことだと思う。 海外渡航の経験としては,シンガポール,香港,台湾に行ったことがあるが,具体的な時期は覚えていない。 (2) 検討ア前記1(2),(4)のとおり,原告110番が,昭和62年●月●日,●センターにおいて,膵空腸吻合手術を受け,その際,240mlの出血をしたこと,●センターに,昭和60年に158本,昭和61年に324本,昭和62年に220本(ただし,同年に ,昭和62年●月●日,●センターにおいて,膵空腸吻合手術を受け,その際,240mlの出血をしたこと,●センターに,昭和60年に158本,昭和61年に324本,昭和62年に220本(ただし,同年に14本を返品)の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことをそれぞれ認めることができる。 イしかし,原告110番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告110番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告112番関係 第1 当事者の主張(原告112番の主張) 1 原告112番は,平成21年●月●日の検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。その後,原告112番は,慢性C型肝炎との診断を受けた。 2 原告112番は,昭和40年●月頃,●病院において,腹膜炎の手術を受けた。同病院の医師によると,盲腸炎が悪化しており腸が破れていたとのことであった。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告112番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告112番の陳述書によっても,原告112番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告112番の陳述 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告112番の陳述書によっても,原告112番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告112番の陳述書には,無色透明の液体を手に持った看護師から,「輸血をします」,「血液の中の必要なものだけを取り出したものなので,輸血が赤いとは限らない」と言われた旨の記載があるが,特定フィブリノゲン製剤の承認を受けた効能,効果は低フィブリノゲン血症の治療であって,輸血ではないこと,前記記載を前提としても,原告112番は,それが特定フィブリノゲン製剤である旨を医師や看護師から聞いていないことに照らすと,前記記載により特定フィブリノゲン製剤投与を認めることはできない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 原告112番が慢性肝炎にり患したことは否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ112の1~5)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告112番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。 原告112番には1人のきょうだいがいる。 (2) 原告112番は,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,平成21年●月●日以降,●病院で治療を受けた。 (3) 原告112番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告112番の陳述書(甲ハ112の1)の要旨は以下のとおりである。 を示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告112番の陳述書(甲ハ112の1)の要旨は以下のとおりである。 原告112番の父母及びきょうだいでC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告112番は,昭和40年●月頃,●病院において,腹膜炎の手術を受けた。同病院の医師から,盲腸炎が悪化し腹膜炎の状態となり,腸が破れていたと聞いた。手術は下半身麻酔をかけられた状態で行われ,手術中にも意識があった。手術中,無色透明の液体を手 に持った看護師から,「輸血をします」,「血液の中の必要なものだけを取り出したものなので,輸血が赤いとは限らない」と言われたことを覚えている。看護師は,その無色透明の液体を原告112番に点滴していたが,それが瓶に入っていたか,袋に入っていたかということは記憶にない。 術後も出血が続き,入院が20日間まで長引いた。入院中,看護師が,原告112番の腹部からの出血で赤くなったガーゼを取り換えていたことを記憶している。看護師は,原告112番の腹部に挿入されていた親指くらいの太さの管を通じてガーゼを取り換えていた。 原告112番は,平成21年●月●日,●病院で検査を受け,C型肝炎ウイルスに感染していることを知らされた。その後,同病院,●病院においてインターフェロン治療等を受け,検査をしてもウイルスが確認されない状態となった。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア原告112番の昭和40年●月頃の手術に関し,診断書やカルテなどの医療機関の作成した証拠があるものではないが,前記陳述書には具体的状況が記載してあり,そのよ 以外にない。 (2) 検討ア原告112番の昭和40年●月頃の手術に関し,診断書やカルテなどの医療機関の作成した証拠があるものではないが,前記陳述書には具体的状況が記載してあり,そのような事実があったことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和40年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告112番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告112番については,特定フィブリノゲン製剤 が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告113番関係 第1 当事者の主張(原告113番の主張) 1 原告113番は,平成23年に●医療センターで受けた検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告113番は,昭和52年●月●日夜,交通事故を起こして,救急車で特定医療法人●会●病院(以下「●病院」という。)に搬送された後,転送先の社会保険●病院(現在は,社会保険●病院に名称変更。 以下,名称変更の前後を問わず,「●病院」という。)において,心タンポナーデのため,心嚢切開手術を受けた。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 4 原告113番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フ ン製剤納入先医療機関である。 4 原告113番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 ●病院作成の手術所見(甲ハ113の2の2,3)には,前記手術の経過が比較的詳細に記載されているところ,特に出血が多かったとか,止血に苦慮したとの事情や,フィブリン糊が使用されたとの記載はない上,止血については,縫合により止血した旨が記載されているのみであるから,前記手術所見の記載からは,むしろ,前記手術当時,原告113番にフィブリン糊は使用されていないことが推認される。 また,原告113番は,前記手術の際に輸血を受けたようであるところ,当該輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定で きない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ113の1,2の1~3,甲ハ113の6~12,原告113番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告113番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。原告113番には2人のきょうだいがいる。 (2) 原告113番は,昭和52年●月●日,●病院において,心タンポナーデのため,心嚢切開手術を受けた。 (3) 原告113番は,平成23年●月●日,●医療センターで受けた健診の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 (4) 昭和52年当時,●病院は,外科ほか13の診療科及び人工透析部を有し,ベッド数は ,平成23年●月●日,●医療センターで受けた健診の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 (4) 昭和52年当時,●病院は,外科ほか13の診療科及び人工透析部を有し,ベッド数は294床であった。原告113番にかかる前記(2)の手術を担当した診療科の医師数,看護師数及び年間手術件数,特定フィブリノゲン製剤の納入及び常備の有無は,いずれも不明である。 (5) ●病院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関一覧に記載されているものの,原告113番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。なお,●病院は,原告113番からの問い合わせに対し,平成29年●月●日付けの書面において,昭和52年における特定フィブリノ ゲン製剤の納入記録はない旨を回答している。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告113番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告113番の平成24年11月24日付け陳述書(甲ハ113の1)原告113番は,昭和52年●月●日夜,和歌山県田辺市において自動車を運転中,交通事故(自損事故)を起こした。事故後,救急車で●病院に搬送され,頭部外傷,左足半月板損傷,肋骨骨折等による内臓傷害の応急措置を受けた後,同年●月●日に,●病院に転送された。 原告113番は,交通事故の衝撃により,心タンポナーデの状態にあったため,心嚢切開術の処置を受け,さらに腹水の原因を探るための開腹術を受けた。これらの手術のうち,心膜の縫合か腹部の止血縫合の際にフィブリン糊としてフィブリノゲン製剤を使用されたのだと思う。 原告113番は,平成23年●月●日,●医療センターで受けた健 の開腹術を受けた。これらの手術のうち,心膜の縫合か腹部の止血縫合の際にフィブリン糊としてフィブリノゲン製剤を使用されたのだと思う。 原告113番は,平成23年●月●日,●医療センターで受けた健診の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 原告113番の両親及びきょうだいに,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告113番は,入れ墨,ピアス,人工透析の経験はない。 イ原告113番の平成28年8月2日付け陳述書(甲ハ113の10)昭和52年●月●日から同年●月●日における原告113番の病態,治療経過及び医師の説明等について,原告113番又は原告113番の家族は,多量の内出血で,胸部腹部切開手術が急を 要していたこと,●医師から「このまま放置すれば死に至るのは明らか。手術はするが,命の保証はできない。最後に会わせる身内を呼びなさい。」と言われたことを記憶している。 学生時代,定期健診等を受けた記憶はない。昭和52年に交通事故を起こすまでは,病気や怪我をしたことはなかった。 昭和52年に就職してから,自営業を始めた昭和62年までは,年に一度,会社の定期健診があったが,問診中心の検診だったと記憶している。飲酒を毎日していたので,「少しは控えるように」とか「週一日程度は休肝日を作った方が良い」といったアドバイスを受けた。昭和62年以降は,自営業となり,平成23年に●医療センターにて検査を受けるまでは,検診等は受けなかった。 昭和52年の交通事故時の手術の際,多くの血液を提供されたこともあり,退院後,元気になって以降は,年に一度程度献血していたところ,昭和62年頃,ウイルスが原因で,献血不適を告げられた。当時は,何のウイルスなのか分からなかったが,平 多くの血液を提供されたこともあり,退院後,元気になって以降は,年に一度程度献血していたところ,昭和62年頃,ウイルスが原因で,献血不適を告げられた。当時は,何のウイルスなのか分からなかったが,平成23年に●医療センターで受けた検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 ウ原告113番の供述(本人尋問)昭和52年●月●日の夜中,自動車を運転中に,橋の欄干にぶつかるという単独の自損事故を起こした。意識の有無については,救急車の音が遠くで聞こえていたような気もするという程度で,欄干への衝突の瞬間,意識はなくなっていたのだと思う。事故による出血量は分からない。 事故後に救急車で搬送された●病院で治療を受けていたところ,腹部が膨らんできて,それは内臓内出血だろうということで,同症状に対して処置ができる大きな病院として,●病院に転院した。 なお,前記の転院の経緯は,後に身内から聞いた話である。 ●病院において昭和52年●月●日に受けた心嚢切開手術の前の状態については,原告113番自身はほぼ意識がなかったため覚えていないが,付き添ってくれていた原告113番の母親から聞いた話では,点滴がぶら下がり,尿を取る管や心電図がつながっており,とにかく線につながれて病室に横たわっていたとのことだった。また,手術前に,原告113番の親は,●医師から,内出血がひどいので,このまま放っておくと死ぬのは間違いないこと,簡単な手術ではないから命の保証はできないこと,出血がひどかったため,たくさんの血液が必要であるから,原告113番と同じA型の血液型の人をとにかくたくさん呼びなさいなどと言われたそうである。実際に何人分の血液を使ったのかは分からないが,18人集まってもらい,たくさんの血液の提 液が必要であるから,原告113番と同じA型の血液型の人をとにかくたくさん呼びなさいなどと言われたそうである。実際に何人分の血液を使ったのかは分からないが,18人集まってもらい,たくさんの血液の提供を受けたと聞いている。 手術の内容について,原告113番の親は,内出血を止めるために胸を開いて,腹を開いて手術をするということ以上に詳しい説明は受けていない。前記手術の主治医は●医師で,同医師のチームの医師が3,4名くらいいた。 原告113番の意識が戻ったのは,昭和52年●月●日だった。 自身の誕生日であることもあり,よく覚えている。当時の自身の状態としては,点滴の瓶がいくつもぶら下がっていて,尿を取る管と心電図がつながっているというものだった。前記点滴の薬剤名や,容器,ラベルや薬剤の色は覚えていない。点滴は1か月くらい続いた。 平成31年●月に受けた検査の結果,病態が慢性C型肝炎から肝細胞がんに進行していることが判明した。 原告113番は,大学の頃から現在に至るまで飲酒を継続的にしているが,過去にアルコール性肝炎を指摘されたことはない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告113番が,昭和52年●月●日,●病院において,心タンポナーデのため,心嚢切開手術を受けたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和52年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告113番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 ウ医学的知見として,医療雑誌において,心タンポナーデに対してフィブリン糊充填が有効であった二つの症例が紹介さ 前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 ウ医学的知見として,医療雑誌において,心タンポナーデに対してフィブリン糊充填が有効であった二つの症例が紹介されていること(甲ケ45)や,外傷性心タンポナーデの症例において,持続する出血をフィブリン糊注入療法にて止血した症例が紹介されていること(甲ケ46)が示されているが,これらによっても,原告113番に,具体的状況に照らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 3 結論以上によれば,原告113番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告114番関係 第1 当事者の主張(原告114番の主張) 1 原告114番の妻は,平成5年●月●日に胃がんの手術を受け,その際の血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,平成15年●月から慢性C型肝炎の治療を受けた。 2 原告114番の妻は,昭和53年●月●日,歩行中に単車に衝突され,頭部等に傷害を負った。原告114番の妻は,●病院に搬送され,同病院で治療を受けた。 前記事故の態様,原告114番の妻の症状等に照らすと,原告114番の妻の頭部外傷は,骨折を伴わない開放性脳損傷であり,異物除去及びデブリドマンが施行された上で,創面が縫合され,包帯が巻かれたものと推認される。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告114番の妻がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投 と推認される。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告114番の妻がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告114番の陳述書等によっても,原告114番の妻が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められないし,特定フィブリノゲン製剤投与の事実を認めることもできない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染 との因果関係は否認する。 原告114番の妻が慢性肝炎にり患したことは否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ114の1,3~8,12)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告114番の妻は,昭和●年●月●日生まれの者である。 原告114番の妻にはきょうだいがいる。 (2) 原告114番の妻は,●病院において,平成5年●月●日に胃がんの手術を受け,その際の血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,以後,同病院,医療法人●病院等で治療を受け,平成20年●月●日,急性心筋梗塞により死亡した。 (3) ●病院には,昭和55年から昭和60年まで,毎年特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,原告114番の妻に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告114番の陳述書及び手帳(甲ハ114の1,2,13) れたが,原告114番の妻に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告114番の陳述書及び手帳(甲ハ114の1,2,13)の要旨は以下のとおりである。 原告114番の妻の両親及びきょうだいでC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。原告114番及び原告114番とその妻の間の養子もC型肝炎ウイルスに感染したことはない。 原告114番は,昭和53年●月●日,原告114番の妻が交通事故で頭をひどく打ったという電話を受け,●病院に駆け付けた。原告114番の妻が歩行していたところ,ブレーキとアクセルを間違え た単車に衝突されたとのことであり,路面に血が流れていたそうである。病院に駆け付けたとき,原告114番の妻は,頭に包帯を巻かれ,病床に横たわった状態だった。その後,レントゲンの結果は「異常なし」と聞き,一安心した。原告114番の妻は,同年●月●日に退院するまで頭痛が続いた。 原告114番の妻は,●病院において,平成5年●月●日に胃がんの手術を受け,その際の血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,以後,同病院等で治療を受け,平成20年●月●日,急性心筋梗塞により死亡した。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア原告114番の妻の昭和53年●月●日の頭部の負傷の事実に関し,診断書やカルテなどの医療機関の作成した証拠があるものではないが,前記陳述書等には具体的状況が記載してあり,そのような事実があったことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和53年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告114番の妻に 陳述書等には具体的状況が記載してあり,そのような事実があったことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和53年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告114番の妻に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告114番の妻については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告115番関係 第1 当事者の主張(原告115番の主張) 1 原告115番は,平成15年●月,C型肝硬変と診断された。平成21年●月には肝がんへ進行し,平成27年●月●日,死亡した。 2 原告115番は,●病院において,早期胎盤剥離であり,妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群),貧血の合併症も発症していると診断され,昭和55年●月●日,帝王切開をしたが,死産であった。 3 ●病院には,昭和55年●月に3本,同年●月に3本の特定フィブリノゲン製剤が納入された。 4 原告115番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告115番の分娩時に,妊娠中毒症及び胎盤早期剥離があったことからすると,DICの発症又はその危険が生じていたなど特定フィブリノゲン製剤投与の適応があった可能性は否定できないが,その具体的な病態は明らかではなく,医師の特定フィブリノゲン製剤に関する投与方針等も明らか ,DICの発症又はその危険が生じていたなど特定フィブリノゲン製剤投与の適応があった可能性は否定できないが,その具体的な病態は明らかではなく,医師の特定フィブリノゲン製剤に関する投与方針等も明らかとされていない。 また,「納入実績資料のお取扱いについて」と題する書面には,昭和55年●月及び同年●月に各3本の特定フィブリノゲン製剤が納入された事実が記載されており,前記分娩があった同年●月には特定フィブリノゲン製剤が納入されていない事実が認められる。●病院が特定フィブリノゲン製剤を常備していなかったことを踏まえると,前記事実は,前記分娩の際,原告115番に対し,特定フィブリノゲン製剤が 投与されていないことを示すものである。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 原告115番が慢性肝炎にり患した事実,慢性肝炎の進行により肝硬変にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ115の1~9)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告115番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告115番には9人のきょうだいがいる。 (2) 原告115番は,●病院において,胎盤早期剥離であり,妊娠中毒症,貧血の合併症も発症していると診断され,昭和55年●月●日,帝王切開をしたが,死産であった。原告115番は,同日から同年●月●日まで,同病院に入院した。 (3) 原告115番は,平成15年●月●日から●医療センター,平成18年●月から●クリニックに通院した。原告115番は,これらの医療機 115番は,同日から同年●月●日まで,同病院に入院した。 (3) 原告115番は,平成15年●月●日から●医療センター,平成18年●月から●クリニックに通院した。原告115番は,これらの医療機関においてC型肝硬変と診断され,平成21年●月,●医療センターで肝がんの治療を受けた。 原告115番は,平成27年●月●日,死亡した。 (4) ●病院には,昭和55年3月に3本,同年8月に3本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,原告115番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討 (1) 原告115番代理人の報告書(甲ハ115の1)の要旨は以下のとおりである。 原告115番の家族や親戚にC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告115番は,出産を控えて●産婦人科に入院していたところ体調が急変し,●病院に搬送された。原告115番は,同病院で早期胎盤剥離と診断され,昭和55年●月●日,帝王切開を受けたが,死産であった。原告115番及び原告115番の夫は,手術前に●医師から,止血剤を使うと聞き,手術後に同医師及び看護師から,妊娠中毒症と貧血で大量出血したと聞いた。 原告115番は,平成15年●月,●医療センターでC型肝硬変と診断され,通院治療を開始したが,平成21年●月には肝がんに進行していると言われ,平成27年●月●日,死亡した。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)及び(4)のとおり,原告115番は,●病院において,胎盤早期剥離であり,妊娠中毒症,貧血の合併症も発症していると診断され,昭和55年●月●日,帝王切開をしたが,死産 検討ア前記1(2)及び(4)のとおり,原告115番は,●病院において,胎盤早期剥離であり,妊娠中毒症,貧血の合併症も発症していると診断され,昭和55年●月●日,帝王切開をしたが,死産であったこと,●病院には,同年3月に3本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができる。 イしかし,原告115番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告115番については,特定フィブリノゲン製剤 が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告117番関係 第1 当事者の主張(原告117番の主張) 1 原告117番は,平成7年頃,●病院において,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎が進行してり患した肝硬変の治療を受けてきた。 2 原告117番は,平成2年●月●日,包丁や日本刀などで腹,背中,足など数か所を刺されて救急搬送され,同月●日,●病院において,開腹止血術及び切創部縫合止血術を受けた。原告117番は,大量出血により,これらの手術の際,合計7200mlの輸血を受けた。 したがって,原告117番に対し,特定フィブリノゲン製剤が投与された高度の蓋然性がある。 3 ●病院には,昭和63年に60本の特定フィブリノゲン製剤が納入されている(ただし,同年に9本を返品)。 4 原告117番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他 63年に60本の特定フィブリノゲン製剤が納入されている(ただし,同年に9本を返品)。 4 原告117番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実及び同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。 原告117番のC型肝炎ウイルス感染の事実及び慢性C型肝炎が進行して肝硬変にり患した事実は認める。 2 原告117番の供述及び麻酔科医として前記手術に関与した●●医師(以下「●医師」という。)の供述によっても,前記手術当時,原告117番がDICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認 められず,特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態にあったと認めることはできないから,前記手術の際における原告117番に対する特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。なお,原告117番は,前記手術の際に7200mlの輸血を受けた旨供述するが,かかる供述は客観的裏付けを欠く上,証拠上認められる出血量と必ずしも整合しないものであるから,直ちに原告117番の供述どおりの輸血量を認めることはできない。 3 ●医師は,前記手術当時,特定フィブリノゲン製剤に有用性を認めておらず,麻酔科部長であった同人の方針で,●病院の手術室には,特定フィブリノゲン製剤を常備していなかったから,手術室において特定フィブリノゲン製剤を点滴投与することはなかった旨供述しており,当該供述に照らせば,前記手術の際における原告117番に対する特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実及び同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は, に対する特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実及び同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ117の1,3~7,10,証人安部和夫,原告117番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告117番は,昭和●年●月●日生まれの男性であり,3人のきょうだいがいる。 原告117番は,昭和55年から平成19年にかけて,暴力団に所属していた。なお,原告117番の身体には,入れ墨がある。 (2) 原告117番は,平成2年●月●日午後10時頃,大阪市●区の 路上で,他の暴力団員3名に,それぞれ木刀,刺身包丁,日本刀で襲われ,左わき腹,背中数か所,腕,首,足を切られたり刺されたりして大量に出血し,●病院に救急搬送された。 原告117番は,救急搬送後,同月●日未明にかけて,救急外来において,全身麻酔の上,開腹手術及び切創部の縫合手術を受けた。 同手術には,外科医として,●医師,●医師,●医師が,麻酔科医として●医師が,麻酔科部長として●医師が関与していた。 原告117番は,前記手術後,平成3年●,●月頃まで,●病院に入院し,当初はICUにおいて人工呼吸管理の処置を受けた後に普通病棟へ移り,その後,●病院の建替工事に伴い,同病院の新館にある救急病棟へと移った。 原告117番は,入院中である平成3年●月頃,肝機能の数値が悪化し,肝臓についても診察を受けていたところ,C型肝炎ウイルスに感染しているか否かは聞いていない。 (3) 原告117番は,●病院を退院した後も,2,3か月は同病院の内科に通院し,肝 の数値が悪化し,肝臓についても診察を受けていたところ,C型肝炎ウイルスに感染しているか否かは聞いていない。 (3) 原告117番は,●病院を退院した後も,2,3か月は同病院の内科に通院し,肝臓についての診察を受けていた。その後,平成7年に,身体の不調が続くことから,●病院を受診したところ,C型肝炎ウイルスに感染していると診断された。診断後,●病院に1年ほど通院して強ミノの注射による治療を受けたが,効果がなく,通院を中止した。 原告117番は,平成17年からは,●病院に通院し,平成19年●月●日に同病院に入院してインターフェロン治療を受けてC型肝炎ウイルスが検出されなくなったものの,遅くとも平成22年●月●日以降は肝硬変の病態にある。 (4) ●病院の平成2年当時の診療科目は,外科ほか16科目であり,ベッド数は580床,外科における医師数は約13名,看護師数は 約4名,年間手術件数は約600件だった。当時の特定フィブリノゲン製剤の納入実績は資料が残っていないため不明であり,特定フィブリノゲン製剤の補充方針も同様に不明である。 (5) ●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績は,昭和63年に計60本(ただし,うち9本を同年9月に返品),平成3年6月に8本を納入したというものである。 2 関係者の供述等の要旨(1) 原告117番の陳述書(甲ハ117の1)原告117番は,平成2年当時暴力団に加入していたところ,同年●月●日午後10時頃,大阪市●区の路上で,他の暴力団員3名に,それぞれ木刀,刺身包丁,日本刀で襲われ,左わき腹,背中数か所,腕,首,足を刺されて大量に出血し,●病院に救急搬送された。 救急搬送後,全身麻酔により,切創部の縫合手術を受けた。後に取り寄せた同手術の麻酔記録の記載からすると,同手 われ,左わき腹,背中数か所,腕,首,足を刺されて大量に出血し,●病院に救急搬送された。 救急搬送後,全身麻酔により,切創部の縫合手術を受けた。後に取り寄せた同手術の麻酔記録の記載からすると,同手術を担当したのは,●医師,●医師,●医師(研修医)で,麻酔科の●医師,●医師も関与していたようである。 前記手術の内容については,腹の中央を縦に切って,刃物で切られた肺に止血措置を施して一旦は腹を閉じたものの,まだ出血があるとのことで,腹を横に切り再度止血措置を施したと聞いている。 麻酔が覚めて気が付くと,ICUのベッドの上で,手足がくくりつけられ,気管が切開されている状態であった。ICUでは,24時間電気がつけっぱなしだったこと,点滴を受けていたこと,輸血のパックが頭上にぶら下がっていたこと,内視鏡を入れられたこと,レントゲンを撮られたことを覚えている。ICUにいる間,医師から前記手術やその後の経過等についての説明は特になかったと思う。 平成3年●月か●月頃,●病院を退院した。入院中は,手術後の 治療措置のほか,肝臓の数値が高くなったことに伴い,●医師に肝臓も診てもらっており,エコーをとったり投薬を受けたりしていた。 退院時の精算では,保険を使ったにもかかわらず,事務の人から「高い薬,高い注射をいっぱい使ったからね」と言われた上で,300万円くらいを請求された。 平成元年に脚を骨折し,●外科で受けた手術で,脚に鉄のプレートを入れられていたところ,●病院を退院後に●外科で同プレートを取り出すに当たり,●病院に●外科宛の紹介状を書いてもらった。 同紹介状には,前記手術に関し,「輸血量7200ml」「深さ25cm,長さ25cm」「96針」と書いてあった記憶である。なお,平成17年頃に,●外科に問い合わせたが,同紹介状は既に廃棄済 もらった。 同紹介状には,前記手術に関し,「輸血量7200ml」「深さ25cm,長さ25cm」「96針」と書いてあった記憶である。なお,平成17年頃に,●外科に問い合わせたが,同紹介状は既に廃棄済みとのことであった。 前記のとおり,●病院に入院中,肝臓も診てもらい,退院後2,3か月は引き続き通院治療をしていたが,以後は面倒になって通院をやめてしまった。その後,平成7年に,身体がだるく,食欲もなく,歩くだけでつらい等,身体の不調を来したことから,鳥潟病院で診てもらったところ,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 既往の手術等としては,昭和41年にバイクで転倒して怪我をし,切ったところを縫合したこと,平成元年に脚の骨折に伴い鉄のプレートを脚に入れる手術をしたことがあるが,いずれも大量出血や輸血はなかった。 原告117番の親族には,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,昭和55年頃に身体に入れ墨を入れたが,自分専用の針と墨を買ったため,針の使い回し等で感染した可能性はない。 その他,違法薬物を注射器で回し打ちしたようなこともない。 (2) 原告117番の供述(本人尋問)平成2年に,3人組に日本刀,刺身包丁,木刀でいきなり襲われ,背中,首,腕を切られ,刺身包丁でわき腹を25cmの深さで刺されるなど,重傷を負い,●病院に救急搬送された。 救急車に乗るまでは意識があったが,受傷後1週間後くらいにICUのベッド上で気が付くまで,意識を失っていた。救急車において受けた処置については覚えていない。意識を取り戻した時には,計5,6本の,瓶に入った,赤色,銀色,オレンジ色の点滴や,丸い赤色のパックの袋がぶら下がっていたことを覚えている。銀色の点滴については,無色透明の液体だったかもしれない。 自身が受けた手 には,計5,6本の,瓶に入った,赤色,銀色,オレンジ色の点滴や,丸い赤色のパックの袋がぶら下がっていたことを覚えている。銀色の点滴については,無色透明の液体だったかもしれない。 自身が受けた手術の内容については,看護師から,腹を縦に切って,それでも肺の出血が止まらないので,横に切って血止めをした旨を聞いた。なお,手術当時に,原告117番の関係者が聞き取っていたということはなかった。 平成3年●月か●月に,●病院を退院したが,退院時の精算の際,国民健康保険を使ったにもかかわらず,入院費及び治療費として355万円くらいを請求され,かなり高いと述べたところ,事務員からは,具体的な薬剤名は言われなかったものの,高い注射や高い点滴を使ったからだと説明された。なお,退院時の精算の当初に,国民健康保険の保険料の滞納により,保険が利かないと言われたため,滞納分の支払を済ませて保険が利くようにしてもらった後に●病院での精算を行った。 平成7年に,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明して以降,カルテを見るために●病院に何度も行って問い合わせをしたが,カルテは既に廃棄されており,残っていた麻酔記録のみが手に入った。また,●病院におけるフィブリノゲン製剤の納入実績について も問い合わせをして,製剤納入証明書を手に入れた。 昭和62年頃に所属していた組事務所において入れ墨を入れているところ,エイズ感染防止のために,針,墨,すずりを全て購入して自分専用のものを使い,専門の彫師に入れてもらった。なお,入れ墨を入れた時期について,陳述書においては,昭和55年頃と記載したが,勘違いだった。 (3) ●医師の原告代理人からの質問に対する回答(甲ハ117の13,14)平成2年●月当時,●病院の麻酔科部長であった。 平成2年当時の腹部及び ,昭和55年頃と記載したが,勘違いだった。 (3) ●医師の原告代理人からの質問に対する回答(甲ハ117の13,14)平成2年●月当時,●病院の麻酔科部長であった。 平成2年当時の腹部及び胸部切創による大量出血に際しての出血に関する治療方針は,全血輸血であり,肺胞が切創されている場合も治療方針は同じである。血管が切創されている場合は結紮止血をする。 当時の●病院の手術室では,麻酔科部長であった●医師の方針(不必要との考え)でフィブリノゲン製剤は常備しておらず,腹部及び胸部切創により,輸血が7ℓされている場合であっても,手術室で点滴投与することはなかった。 また,肺胞や血管が切創されている場合に,切創部の縫合後の止血のためにフィブリン糊を使用することはあったが,あくまでも心臓手術のために使用していた。肝臓外科でも使用することがあった。 救急外科で使用していたかは不明である。 外科以外の診療科が,フィブリノゲン製剤を使用することについては関知していない。 (4) ●医師の供述(書面尋問)昭和52年●月から,麻酔科医として働き始めた。●病院には,昭和58年●月●日から,平成5年●月●日まで在籍し,在籍中は 当初より麻酔科部長の職であった。 具体的な治療方針は,執刀医の判断事項であり,麻酔医が決定するものではなかった。 手術中,補液内に止血剤を注入するのは通常の行為であるが,大量出血の場合はほとんど意味がない。●医師は,フィブリノゲン製剤を使用することに有用性を認めていなかったため,手術室内にフィブリノゲン製剤は常備しておらず,特定フィブリノゲン製剤の使用という選択肢はなかったし,●病院在籍中にフィブリノゲン製剤を使用したことはないため,平成2年●月の原告117番に係る手術における,フィブリノゲン製剤の投与 しておらず,特定フィブリノゲン製剤の使用という選択肢はなかったし,●病院在籍中にフィブリノゲン製剤を使用したことはないため,平成2年●月の原告117番に係る手術における,フィブリノゲン製剤の投与の事実は否定する。また,止血剤として第Ⅸ因子製剤を使用することもなかった。なお,麻酔記録には,ICUでの処置の内容等が記載されることはない。 ●病院において,他の医師がフィブリノゲン製剤を使用していたかは不明であり,手術室以外で特定フィブリノゲン製剤を使用していたかどうかは知らない。 フィブリノゲン製剤について,昭和62年に肝炎が集団発生したことを受けて,昭和63年●月から緊急安全性情報の配布が開始され,その後,フィブリノゲン製剤についても返品依頼が実施されていた,という状況について,平成2年当時,詳しくは知らなかったが,話を聞いたことはあった。 原告117番の手術の麻酔記録からすると,麻酔時間は5時間,手術時間は3時間50分であり,手術の際の出血量は3500mlで,内訳は,手術開始から1時間から2時間の部分で1700ml,2時間から2時間半の部分で500ml及び650ml,3時間から4時間の部分で450ml,4時間から5時間の部分で200mlの出血であった,手術終了時から麻酔終了時までの間,特段出血 がなかったものと理解できる。 3 検討(1) 前記1(2)のとおり,原告117番が,平成2年●月●日に受傷し,同月●日未明にかけて,●病院において開腹手術及び切創部の縫合手術を受けたことを認めることができる。前記手術における出血量等に関する客観的な資料はないが,原告117番が,3,4か月にわたって入院し,当初はICUにおいて人工呼吸管理の処置を受けたことに照らし,前記手術の際に相当量の出血があったことを推認することが 血量等に関する客観的な資料はないが,原告117番が,3,4か月にわたって入院し,当初はICUにおいて人工呼吸管理の処置を受けたことに照らし,前記手術の際に相当量の出血があったことを推認することができる。 (2) 原告117番の陳述書や本人尋問においては,内臓に達するほどの深い刺創を含む全身に傷害を負い大量出血をしたことや,退院時の精算の際に,事務員が「高い薬,高い注射をいっぱい使ったからね」と述べたことなどから,前記手術において特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が推認される旨が主張されている。 しかし,前記手術の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったか否かや,執刀医の特定フィブリノゲン製剤の投与方針は,提出された証拠からは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はないし,前記手術当時の麻酔科部長であり,前記手術にも関与していた●医師が,手術室内に特定フィブリノゲン製剤は常備しておらず,輸血が7ℓされている場合であっても特定フィブリノゲン製剤の点滴投与という選択肢はなかった旨や,●病院在籍中に特定フィブリノゲン製剤を使用したことはない旨を明確に述べて,前記手術における特定フィブリノゲン製剤の投与を否定していることを考慮すると,原告117番の主張は採用できない。なお,●医師は,心臓手術や肝臓外科において,縫合後の止血のためにフィブリン糊を使用することはあったと供述しているところ,これによっても原 告117番の前記手術の際にフィブリン糊が使用されたと認めることはできない。 4 結論以上によれば,原告117番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできな いては,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告118番関係 第1 当事者の主張(原告118番の主張) 1 原告118番は,慢性C型肝炎の状態にある。 2 原告118番は,昭和53年●月●日,●病院において,女児を出産した。その際の出血量は250mlと中量であるが,前期破水による出産であり,出産時間は15時間27分に及び,会陰切開もなされた。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告118番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 特定フィブリノゲン製剤投与の事実に関する証拠は,前記出産に係る母子手帳のみであるところ,これにより,原告118番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 原告118番が慢性肝炎にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ118の1,2)及び弁論の全趣旨を総 合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告118番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 (2) 原告118番は,昭和53年●月●日,●病院において, 論の全趣旨を総 合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告118番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 (2) 原告118番は,昭和53年●月●日,●病院において,女児を出産した。前期破水による出産であり,会陰切開がされ,出血量は約250ml,出産時間は15時間27分であった。 (3) 原告118番は,遅くとも平成24年●月●日以降,C型肝炎等の治療のために●病院に通院した。 (4) 原告118番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 検討(1) 前記1(2)のとおり,原告118番は,昭和53年●月●日,●病院において,女児を出産したことを認めることができる。 (2) しかし,●病院において,昭和53年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたことや,原告118番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったことを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告118番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告119番関係 第1 当事者の主張(原告119番の主張) 1 原告119番は,昭和62年頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,慢性C型肝炎の治療を受けてきたが,平成14年になって肝腫瘍が見つかった。原告119番は,C型肝炎ウイルスに感染し,慢性C型肝炎が進行して肝がんにり患した者である。 2 原告119番は,昭和44年●月●日,●医院において,帝王切開 平成14年になって肝腫瘍が見つかった。原告119番は,C型肝炎ウイルスに感染し,慢性C型肝炎が進行して肝がんにり患した者である。 2 原告119番は,昭和44年●月●日,●医院において,帝王切開により第二子(男児)を出産した。その際,少なくとも中等量の出血があった。 3 ●医院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告119番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●医院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 母子手帳及び原告119番の陳述書によっても,原告119番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)原告119番が肝がんにり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実 前記前提事実に証拠(甲ハ119の1~5)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告119番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告119番には6人のきょうだいがいる。 (2) 原告119番は,昭和42年●月●日,●診療所において,帝王切開により第一子(女児)を出産した。その際,多量の出血があった。 原告119番は,昭和44年●月●日,●医院において,微弱陣痛があり,帝王切開により第二子(男児)を出産した。その際,中等量の出血があり,原告119番は500mlの輸液を受けた。 (3) 原告119番は,●病院において,慢性C型肝炎と診断され,平成6年●月から,イン 王切開により第二子(男児)を出産した。その際,中等量の出血があり,原告119番は500mlの輸液を受けた。 (3) 原告119番は,●病院において,慢性C型肝炎と診断され,平成6年●月から,インターフェロン治療を受けた。原告119番は,平成14年●月●日,腫瘤径の増大が見られたため,●病院で治療を受けるようになり,同病院で肝細胞がんと診断され,手術等の治療を受けた。 (4) 原告119番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告119番の陳述書(甲ハ119の1)の要旨は以下のとおりである。 原告119番の父母,きょうだい,夫及び子供にC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告119番は,昭和44年●月●日,●医院において,帝王切開により第二子(男児)を出産した。もともと普通分娩で出産をする予定だったが,出産予定日を過ぎ,陣痛が始まってもずっと微弱な陣痛のまま2日間経ったところで,急きょ帝王切開をすることになった。 出産後,●●医師(以下「●医師」という。)から,「今回は正しい処置をしているから,回復は早いよ」と言われ,実際に1回目の出産のときより回復が早かった。輸血をしたと●医師に聞いた記憶はないが,原告119番の母が,「今回,輸血をしたから回復が早いらしいよ」と言っていたような記憶がある。 昭和62年頃,●病院で検査を受け,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,平成6年●月から●病院でインターフェロン治療を受けたが,ウイルスは消えず,平成14年になって肝臓がんが見つかった。 昭和42年●月●日に●診療所で1回目の出産をしているが,同診療所はフィブリノゲン 6年●月から●病院でインターフェロン治療を受けたが,ウイルスは消えず,平成14年になって肝臓がんが見つかった。 昭和42年●月●日に●診療所で1回目の出産をしているが,同診療所はフィブリノゲン製剤の納入先医療機関ではなく,同出産の際に輸血をされたこともない。C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●医院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告119番は,昭和44年●月●日,●医院において,帝王切開により第二子(男児)を出産し,その際に中等量の出血があり,500mlの輸液を受けたことを認めることができる。 イしかし,●医院において,昭和44年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告119番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告119番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし, 他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告121番関係 第1 当事者の主張(原告121番の主張) 1 原告121番は,平成8年以降,●医院における血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。当時の病態は無症候性キャリアであり,現在も肝炎などは発症していない。 2 原告121番は,昭和52年●月●日,●診療所において,第一子(女児)を出産し,弛緩出血により1500mlもの大量出血をして,失血性ショックに陥った。 3 原告121番がC型肝 いない。 2 原告121番は,昭和52年●月●日,●診療所において,第一子(女児)を出産し,弛緩出血により1500mlもの大量出血をして,失血性ショックに陥った。 3 原告121番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●診療所における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告121番の供述によっても,前記出産当時の原告121番の具体的病態は不明であり,また,大量出血をして失血性ショックの状態となったからといって,直ちに特定フィブリノゲン製剤が投与されるという関係にはないから,原告121番が,前記出産当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 また,原告121番は,前記出産の際に輸血を受けたようであるところ,当該輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定できない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ121の1~4,7,原告121番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告121番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。原告121番には2人のきょうだいがいる。 (2) 原告121番は,昭和52年●月●日午前0時46分,●診療所において,第一子(女児)を出産した。原告121番は,その際,1500mlの出血をし,母子手帳の特記事項欄には「弛緩出血」「出血性ショック」との記載がある。分娩介助は,●●医師(以下「●医師」という。)が行った。 )を出産した。原告121番は,その際,1500mlの出血をし,母子手帳の特記事項欄には「弛緩出血」「出血性ショック」との記載がある。分娩介助は,●●医師(以下「●医師」という。)が行った。 (3) 原告121番は,昭和55年●月●日午後4時22分に,●病院において,第二子(女児)を出産し,その際,600mlの出血をした。また,原告121番は,昭和58年●月●日午後11時3分に,同病院において,第三子(女児)を出産した。 (4) 原告121番は,平成14年,●医院における血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。当時の病態は無症候性キャリアであり,現在C型肝炎ウイルスは消失している。 (5) 原告121番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●診療所における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告121番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告121番の平成26年6月2日付け陳述書(甲ハ121の1)原告121番は,昭和50年●月頃,鼻が利かず,頭痛がした ため,●耳鼻咽喉科を受診し,副鼻腔の骨又は骨に付着した何かを削る手術を受けた。その際,医師から,原告121番及び同人の夫に対し,「人の3倍の止血剤を使った」という説明があった。 前記止血剤の薬剤名は記憶にないが,●耳鼻咽喉科は,厚生労働省の発表しているフィブリノゲン製剤納入先医療機関一覧に記載されていないため,おそらくフィブリノゲン製剤ではないと思う。 なお,前記手術の際,輸血はしていない。 昭和52年●月●日の夜中の0時過ぎ,●診療所において,第一子(女児)を出産した。原告121番の夫は横浜で仕事をしており,原告121 ン製剤ではないと思う。 なお,前記手術の際,輸血はしていない。 昭和52年●月●日の夜中の0時過ぎ,●診療所において,第一子(女児)を出産した。原告121番の夫は横浜で仕事をしており,原告121番の母が付き添ってくれていた。出産後,寒気がして,その旨を看護師に伝えたが,「もう少ししたら収まるでしょう。」と言われたため,そのまま安静にしていた。しかし,寒気が収まらず,原告121番は,同人の母に対し,「寒い,寒い。」と言い続けていた。 原告121番は,その後,意識を失った。同人の母がふと気が付くと,原告121番の顔が蝋人形のようになっていたそうで,急いで看護師を呼んで,布団をめくってみたところ,布団が血の海になっていたとのことである。 前記事態を受けて,主治医が,原告121番の母に対し,だめかもしれない,輸血をする,とりあえず止血剤を打つ,輸血はもしかしたら親族の方にお願いするかもしれない,と言ったそうである。原告121番の母は,急いで親戚に連絡をし,大勢の人が病院に来て待機してくれていたそうだが,結果的に,病院にある保存血で間に合ったということで,親族からの輸血は行わなかったそうである。なお,昭和52年●月●日の昼頃に,原告121番の夫も●診療所に到着したところ,同人も,主治医から「止血 剤を使った」という説明を受けたそうである。 原告121番は,15日程度●診療所に入院していた。 原告121番は,昭和55年●月●日に●病院で第二子を,昭和58年●月●日に同病院で第三子を,それぞれ出産したところ,第一子の時のような変わったことはなかった。 原告121番は,平成8年●月,会社の健康診断で胃の再検査をするように言われ,その後,●医院で精密検査を受けた結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 感染判明後 たことはなかった。 原告121番は,平成8年●月,会社の健康診断で胃の再検査をするように言われ,その後,●医院で精密検査を受けた結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 感染判明後,●病院でエコー検査などをした結果,肝炎などの症状はなく,キャリアの状態であること,インターフェロンが効かない型のウイルスであることを言われた。以後,●医院で定期的に血液検査を受けているが,特に治療は行っていない。 原告121番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告121番は,入れ墨,人工透析の経験はない。 イ原告121番の平成28年8月25日付け陳述書(甲ハ121の6)原告121番は,昭和50年●月,鼻の骨又は骨に付着した何かを削る手術を受けた。同手術は,口の上を切って開くもので,部分麻酔のために口の周りにたくさんの注射を打たれ,痛くて怖かったことを覚えている。 大手術であったため,出血もひどかったところ,手術が終わった日の夜も出血が止まらず,当時新婚であった原告121番の夫が一晩中,口の上から流れてくる血をティッシュでふき取りながら付き添ってくれた。医師から,原告121番及び同人の夫に対し,「人の3倍の止血剤を使った」という説明があり,出血があまりにもひどくてお産が大変だから●病院で精密検査を受けた方が いいと勧められ,後日,検査を受けたが,特に異常は見つからなかった。 昭和51年●月頃,第一子の妊娠が判明したところ,早い段階で切迫流産のような状態となり,出血が止まらなくなったため,●産婦人科に入院した。入院中は,手術や点滴は受けておらず,ただ安静にしていた。出血は2,3週間続いた。前記の入院以外に,前記のとおりの鼻の手術から第一子の出産まで,医療機関にかかったことはな ,●産婦人科に入院した。入院中は,手術や点滴は受けておらず,ただ安静にしていた。出血は2,3週間続いた。前記の入院以外に,前記のとおりの鼻の手術から第一子の出産まで,医療機関にかかったことはない。 ウ原告121番の供述(本人尋問)昭和50年●月に受けた,鼻の骨又は骨に付着した何かを削る手術の際の出血については,手術で切った口から出る血をふくために一般的なティッシュの箱を10箱分くらい使ったくらいの量だった。 前記手術の後で,血の止まり具合などを調べた方がいいと言われ,●病院で血液検査を受けた。なお,●病院の正式名称は覚えていない。 昭和52年●月●日,●診療所において第一子を出産後, 病室に戻って20分から30分後くらいの時点で寒気に襲われた。原告121番は,その旨を原告121番の母に訴えた後,意識を失い,同日の夕方頃に意識が戻った。原告121番が意識を失った後に布団をめくったところ血の海だったとのことだが,原告121番自身は,出血を確認していない。意識が戻った時,病室には,原告121番の母,夫,何名かの親戚がいて,既に輸血と思われる赤いパックがぶら下がり,このパックから延びた針が原告121番の身体に刺さっていた。意識を失っていた間のことについては,母及び夫から,輸血及び止血剤の処置を受けたということを 聞いた。止血剤を使うことによって,どの程度の時間で血が止まったのかについては聞いていない。なお,原告121番自身が●医師から聞いたのは,輸血をしたということと,通常は1週間くらいで退院できるが,輸血をされている関係で,検査結果次第で入院が長引くかもしれないということだけで,止血剤を使ったといった話は聞いていない。 原告121番の体内のC型肝炎ウイルスは,平 らいで退院できるが,輸血をされている関係で,検査結果次第で入院が長引くかもしれないということだけで,止血剤を使ったといった話は聞いていない。 原告121番の体内のC型肝炎ウイルスは,平成30年に消え,今は経過観察をしている。 原告121番は,昭和62年,63年頃,自分でピアスの穴を開けた。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告121番が,昭和52年●月●日午前0時46分,●診療所において,第一子(女児)を出産し,その際,1500mlの出血をしたこと,母子手帳の特記事項欄には「弛緩出血」「出血性ショック」との記載があることを認めることができる。 イしかし,●診療所において,昭和52年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告121番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告121番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙亡原告122番関係 第1 当事者の主張(亡原告122番の主張) 1 亡原告122番は,昭和59年●月,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,肝がん,C型肝硬変症で治療を受けていたが,平成27年●月●日,死亡した。 2 亡原告122番は,昭和59年●月●日,オートバイを運転中,ブレーキを踏んだところスリップして転倒し,右足の大腿骨骨折,右足の親指,人差し指及び薬指の3本の中足骨骨折,右腕の尺骨骨折,右上腕骨折 亡原告122番は,昭和59年●月●日,オートバイを運転中,ブレーキを踏んだところスリップして転倒し,右足の大腿骨骨折,右足の親指,人差し指及び薬指の3本の中足骨骨折,右腕の尺骨骨折,右上腕骨折,左手首の橈骨及び尺骨の骨折等合計8か所を骨折するという重傷を負った。亡原告122番は,●病院に救急搬送され,同月●日又は同月●日,全身麻酔で,大腿骨の側面を10~15cmほど切開し,15cmくらいのプレートを入れ,ボルトで6か所を固定し,その後傷口を縫合するという手術を受けた。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 亡原告122番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 亡原告122番及び原告122番の1の陳述書等によっても,亡原告122番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染 との因果関係は否認する。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ122の1,2,8)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 亡原告122番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。 (2) 亡原告122番は,平成22年●月●日から,公益財団法人●病院(以下「●病院」という。)消化器内科に通院し,C型肝硬変と診断され,その治療を受けた。平成22年●月に初発の肝がんが認められ,平成23年●月以降,複数回にわたり肝がんが認められたとし 法人●病院(以下「●病院」という。)消化器内科に通院し,C型肝硬変と診断され,その治療を受けた。平成22年●月に初発の肝がんが認められ,平成23年●月以降,複数回にわたり肝がんが認められたとして,同病院で手術等の治療を受けた。 (3) 亡原告122番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 亡原告122番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア亡原告122番の陳述書(甲ハ122の1)亡原告122番の家族でC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 亡原告122番は,昭和59年●月●日,オートバイを運転中,ブレーキを踏んだところスリップして転倒し,右足の大腿骨骨折,右足の親指,人差し指及び薬指の3本の中足骨骨折,右腕の尺骨骨折,右上腕骨折,左手首の橈骨及び尺骨の骨折等合計8か所を骨折するという重傷を負った。亡原告122番は,●病院に救急搬送さ れ,同月●日又は同月●日頃,全身麻酔で,大腿骨の側面を10~15cmほど切開し,15cmくらいのプレートを入れ,ボルトで6か所を固定し,その後傷口を縫合するという手術を受けた。医師と看護師長から,手術前に大量出血があり輸血したと聞き,手術時にも出血が激しく輸血されたと記憶している。同病院には6か月ほど入院し,同年●月頃,医師から,非A非B型肝炎であると聞かされた。 亡原告122番は,平成22年●月,●病院で肝硬変であると言われ,同年●月には初発の肝がんが認められると言われ,同病院で手術等の治療を受けた。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 イ亡原 同年●月には初発の肝がんが認められると言われ,同病院で手術等の治療を受けた。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 イ亡原告122番の友人作成の証明書(甲ハ122の3)前記事故の際,119番通報をし,●病院まで救急車に同乗した。その後,亡原告122番が骨折の手術をし,同病院に約6か月入院したこと,非A非B型の肝炎に感染したことを証明する。 ウ原告122番の1の陳述書等(甲ハ122の9,12)前記事故から何日か経ち,手術が行われる前,看護師が,亡原告122番に対して輸血をした。輸血をするのを見たのは1回のみである。 (2) 検討ア亡原告122番の昭和59年●月●日の右足等の負傷及びその後の手術に関し,診断書やカルテなどの医療機関の作成した証拠があるものではないが,前記各陳述書等には具体的状況が記載してあり,手帳(甲ハ122の11)にもこれを裏付ける記載があることに照らすと,そのような事実があったことを認めることがで きる。 イしかし,●病院において,昭和59年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,亡原告122番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,亡原告122番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告123番関係 第1 当事者の主張(原告123番の主張) 因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告123番関係 第1 当事者の主張(原告123番の主張) 1 原告123番は,平成7年●月●日,献血の際の血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,平成18年●月●日,慢性C型肝炎のためインターフェロン治療を受けた。 2 原告123番は,昭和60年●月●日,●病院において,腰部椎間板ヘルニアの手術(ラブ法によって第5腰椎と第1仙椎間の椎間板ヘルニア部の髄核を9個除去する手術)を受けた。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関であり,昭和60年●月頃に納入があったことは明らかである。 4 原告123番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 麻酔記録及び原告123番の陳述書等によっても,原告123番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実 前記前提事実に証拠(甲ハ123の1~4,8~10)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告123番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。 原告123番には2人のきょうだいがいる。 (2) 原告123番は,昭和60年●月●日,●病院において,全身麻酔で腰部椎間板ヘルニアの手術 原告123番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。 原告123番には2人のきょうだいがいる。 (2) 原告123番は,昭和60年●月●日,●病院において,全身麻酔で腰部椎間板ヘルニアの手術(ラブ法によって第5腰椎と第1仙椎間の椎間板ヘルニア部の髄核を除去する手術)を受けた。 (3) 原告123番は,平成7年●月●日に献血を行い,その際の血液検査により,HCV抗体検査で陽性であることが判明した。原告123番は,同年●月に●病院を受診し,慢性C型肝炎と診断され,平成18年●月末頃から平成21年●月まで断続的にインターフェロン治療を受けた。 (4) ●病院には,昭和60年に64本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,原告123番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告123番の陳述書(甲ハ123の1)の要旨は以下のとおりである。 原告123番の父やきょうだいにC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告123番は,昭和60年●月●日,●病院において,全身麻酔で腰部椎間板ヘルニアの手術を受けた。ラブ法(髄核摘出術)により第5腰椎(L5)と第1仙椎(S1)の間の髄核を9個摘出し,手術は成功した。4時間半に及ぶ手術で,手術が終わった後,「腰部の手術にしては長時間かかりましたね」と言われた。 平成7年●月●日,HCV抗体検査の結果が陽性であるとの通知 を受け,平成18年●月●日,●病院で慢性C型肝炎の診断を受け,同年●月から平成21年●月まで断続的にインターフェロン治療を受けた。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)及び ●月まで断続的にインターフェロン治療を受けた。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)及び(4)のとおり,原告123番は,昭和60年●月●日,●病院において,前記手術を受けており,同年,●病院には64本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができる。 イしかし,原告123番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告123番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告124番関係 第1 当事者の主張(原告124番の主張) 1 原告124番は,平成5年●月,慢性C型肝炎と診断され,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告124番は,昭和59年●月●日,●会●病院(以下「●病院」という。)において,子宮内膜症のため,子宮,卵巣,盲腸の全摘手術を受けた。 3 ●病院には,昭和57年に95本,昭和58年に25本,昭和59年に65本の特定フィブリノゲン製剤が納入された。 4 原告124番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告124番の供述によっても,前記手術の詳細や,手術当時の原告124番の具体的病態は 因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告124番の供述によっても,前記手術の詳細や,手術当時の原告124番の具体的病態は不明であるから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ124の1~4,8,11,原告124番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告124番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。原告124番には3人のきょうだいがいる。 (2) 原告124番は,平成5年●月●日,●診療所における検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染し,慢性C型肝炎の病態にあることが判明した。 (3) ●病院には,昭和56年に93本(ただし,同年に25本を返品),昭和57年に95本(ただし,同年に5本を返品),昭和58年に25本,昭和59年に65本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,原告124番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告124番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告124番の平成26年6月29日付け陳述書(甲ハ124の1)原告124番は,30歳の時に第二子を出産した少し後くらいから,生理痛(腹痛)が激しくなり,36歳頃には痛み止めを飲んでも3時間くらいしか効かなくなった。出血量も多く,生理の周期も短くなってきたため,●病院 番は,30歳の時に第二子を出産した少し後くらいから,生理痛(腹痛)が激しくなり,36歳頃には痛み止めを飲んでも3時間くらいしか効かなくなった。出血量も多く,生理の周期も短くなってきたため,●病院の●医師を受診したところ,「よくここまで放ってましたね。末期的症状ですよ。」と驚かれ,子宮内膜症であることを知らされた。子供も2人出産していたため,子宮を摘出する手術を受ける決心をした。なお,卵巣は残してほしいとお願いしたが,残せるかどうかは開腹してみないと分からないとのことだった。 原告124番は,昭和59年●月●日に●病院に入院し,同月●日に,子宮内膜症の手術を受けた。執刀は,●医師とは別の医 師が担当した。原告124番を含めて3台くらいのベッドが並んでいて,それぞれのベッドで別の医師が同時に手術を行っていたので,驚いたことを覚えている。●医師は,前記の各手術全体の監督のようなことをしていた。全身麻酔での手術だったため,手術自体に関する記憶はないが,癒着がひどく,医師の判断で,子宮だけでなく,卵巣,盲腸まで全部摘出せざるを得ないような大変な手術だったらしい。夫と友人が,手術中,廊下で待ってくれていた。 手術後,気が付いた時には,点滴を受けていた。点滴の薬剤は,透明な液だったと思う。その日の夜は,痛みで眠れなかった。 手術から数日後,執刀医から,手術について,「貧血がひどかったので増血剤を投与しました。」との説明を受けた。原告124番が,「輸血ではないんですね?」と確認したところ,「輸血はしていません。その必要はなかったです。」と言われた。 原告124番は,人よりも長く,4週間ほど入院して,昭和59年●月になってから退院した。 原告124番は,平成5年●月,職場の健康診断で,肝機能障害と診断され,その後に詳しい検査 」と言われた。 原告124番は,人よりも長く,4週間ほど入院して,昭和59年●月になってから退院した。 原告124番は,平成5年●月,職場の健康診断で,肝機能障害と診断され,その後に詳しい検査をした結果,同年●月にC型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 感染判明後は,平成5年から平成21年●月にかけて,●診療所,●医院,●病院及び●病院で,それぞれ投薬と静脈注射の治療を受けてきた。また,平成22年●月から平成23年●月まで,インターフェロン治療を受け,C型肝炎ウイルスは消失した。しかし,長年の肝炎で痛んだ肝臓は,元の状態には戻らないそうである。 原告124番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者は いない。また,原告124番は,入れ墨,人工透析,鍼治療,ピアスの経験はない。 イ原告124番の平成28年5月22日付け陳述書(甲ハ124の9)原告124番は,平成28年●月●日と同年●月●日,原告124番の子宮内膜症の手術の執刀医であったことが判明した●●医師(以下「●医師」という。)と面談を行った。 ●医師は,「当時は研修医で手術のことは把握していない。原告124番のことや,出血の程度は記憶にない。手術は水曜日と金曜日に行われ,水曜日は●医師,金曜日は●医師であった。当時は,止血剤はアドナやトランサミンを使っていた。増血剤は,ヘスパンダー(1袋500ml)を,血圧を下げないために使っていた。フィブリノゲンを使っていないとは断言できない。」,「コットンは布である。その布をどのように使っていたか個人的には覚えていない。当時,手術は2台同時に行われ,1日に4件行っていた。自分は,そのうちの1~2件を担当していた。●医師は右側に立ち,自分は少し下がって左側を触っていた。子宮内 に使っていたか個人的には覚えていない。当時,手術は2台同時に行われ,1日に4件行っていた。自分は,そのうちの1~2件を担当していた。●医師は右側に立ち,自分は少し下がって左側を触っていた。子宮内膜症の手術は少なかったと思う。」旨述べた。また,フィブリン糊についても聞いたところ,フィブリン糊については知らないとのことだった。 ウ原告124番の平成31年3月4日付け陳述書(甲ハ124の12)昭和59年●月●日に●病院で受けた子宮内膜症の手術については,手術時にライトがついていたことや,医療器具を取るカチャカチャという音について記憶していることから,全身麻酔ではなく部分麻酔での手術だったのではないかと思う。●医師も,一 般的な話として,前記手術のような場合は,腰から下に麻酔をしていたと述べていた。 原告124番は,手術後,へその下5cmくらいのところにドレーンを挿入されていた。同室の患者が,「あ,この人,煙突立ってるわ。」と言っていたのを覚えている。なお,腹部に挿し込まれた管の部分が少し立っていて,それを「煙突」と呼んでいたようである。 前記のドレーンに関する事項については,平成26年6月29日付けの陳述書を作成した時には忘れていたが,この裁判の中で,他の原告がドレーンをしていたと話しているのを聞いて,自身もそうであったことを思い出したものである。 エ原告124番作成に係る「●医師について」と題する書面(甲ハ124の10)平成28年●月頃,国家公務員共済組合連合会共済医学会出版の昭和59年●月●日発行の「共済医報」に,●病院産婦人科の医師4名ほかによる発表文が載っているのを発見した。これを手掛かりに,原告124番の子宮内膜症の手術の執刀医でないかと思われた●医 会出版の昭和59年●月●日発行の「共済医報」に,●病院産婦人科の医師4名ほかによる発表文が載っているのを発見した。これを手掛かりに,原告124番の子宮内膜症の手術の執刀医でないかと思われた●医師に連絡を取った。●医師は昭和59年●月に●病院を辞めていたため,原告124番の執刀医ではなかったが,●医師が在職していた当時の手術現場の話を聞くことができた。 ●医師は,「フィブリノゲンを使ったことがあると思います。使った可能性はありです。子宮筋腫より子宮内膜症は癒着があるので,出血するので,止血剤として,良いと思って,経験上使ったことがあると思います。特に癒着がひどい人は使っていると思います。」,「当時の手術現場でコットンと呼んでいたフィブリノゲンのような物を止血として使っていた。糊ではない。フィブリノゲ ンの液体は使っていない。全ての手術で使っていたわけではなく,じわじわ出血してくる場合や,出血が止まりにくい場合に,2~3人の医師で協議して,止血剤として傷口をおさえていた。若い医師がいたのは覚えています。その医師が研修医だったら自分の意思で手術の決定はしていないと思う。」,「コットンは多分フィブリノゲンかもしれない。具体的には,じわじわしているところに置いておくとか,当てて出血を止めていた。」などと述べた。 オ原告124番の夫の陳述書(甲ハ124の2)昭和59年●月,原告124番が●病院に入院し,子宮を摘出する手術を受けることになった。手術の日,原告124番の夫は病院に行き,原告124番の職場の同僚の女性と一緒に,手術が終わるまで数時間廊下で待っていた。 手術が終わってすぐ,●医師がゴム手袋を付けた状態で廊下に出てきて,トレイに載せた子宮などを見せてくれた。トレイの上には の同僚の女性と一緒に,手術が終わるまで数時間廊下で待っていた。 手術が終わってすぐ,●医師がゴム手袋を付けた状態で廊下に出てきて,トレイに載せた子宮などを見せてくれた。トレイの上には,子宮が二つ載っており,そのうち一つは原告124番と同時に手術を受けた方のものだったようだが,原告124番の子宮は,それよりもずっと大きかった。●医師が「ほら,大きいでしょう。」と言いながら見せてくれたように記憶している。トレイの上には,卵巣も載っていたように思うが,はっきりとは覚えていない。 ●医師から,輸血や止血剤の説明を受けた記憶はない。 カ ●●の陳述書(甲ハ124の3)昭和59年●月●日から同年●月●日まで,卵巣嚢腫の手術のため,●病院に入院していた。手術日は,同年●月●日だった。 入院時の病室は,6人部屋で,ドアを入ると3人ずつ2列にベッドが並んでおり,窓側が自身のベッド,真ん中が原告124番, ドア側が●という方だった。原告124番と●という方は,自身よりも先に入院していた。前記3人は,入院中に仲良くなり,退院してからもよく連絡を取り合い,時には3人で集まったりしている。 患者ごとに主治医が異なっていたため,原告124番の主治医の名前は分からない。●医師は,責任者として患者全体をみている感じだった。原告124番が子宮内膜症だということは聞いていたが,詳しい手術の内容などは聞いていない。 キ ●●の陳述書(甲ハ124の4)原告124番は,当時の●省の後輩職員である。昭和59年●月当時は,原告124番と同じ職場ではなかったが,同年●月半ばに,●病院に入院するという話を聞いた。その後,同年●月に,1度か2度,職場の何人かでお見舞いに行ったことを覚 輩職員である。昭和59年●月当時は,原告124番と同じ職場ではなかったが,同年●月半ばに,●病院に入院するという話を聞いた。その後,同年●月に,1度か2度,職場の何人かでお見舞いに行ったことを覚えている。 病気の詳しい話は聞いていない。 ク ●●の陳述書(甲ハ124の8)昭和59年●月●日から同年●月●日まで,子宮がんの手術のため,●病院に入院していた。 入院していた時,同じ病室に,原告124番と●も入院しており,仲良くなった。今でも3人で会うことがある。3人の主治医はそれぞれ違う医師で,原告124番の主治医が誰だったかは記憶にない。 ケ原告124番の供述(本人尋問)昭和59年●月●日に,●病院で受けた子宮内膜症の手術が終わった後,目を覚ました時には,病室におり,右手から点滴の管がぶら下がっており,へその下5cmくらいのところにドレーンを挿入されていた。点滴は,透明な瓶に,透明な液体が入ってい たと記憶しており,瓶の大きさは,200mlの牛乳瓶よりは大きかった。点滴の本数について,はっきりと覚えてはいないが,1本だったように思う。原告124番は,●医師ないし●医師に,点滴やドレーンについての説明を求めなかった。 原告124番がC型肝炎ウイルスに感染していることが判明したのは,平成5年●月だったと思う。●診療所での検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることと,慢性C型肝炎であることを同時に伝えられた。治療の結果,C型肝炎ウイルスは消失したが,肝炎で痛めた肝臓の細胞から,肝臓がんにつながる可能性があるということで,定期的に検査を受けている。 原告124番は,昭和42年に,●病院において,蓄のう症の手術を受けたが,同手術の際,大量出血などの異常 細胞から,肝臓がんにつながる可能性があるということで,定期的に検査を受けている。 原告124番は,昭和42年に,●病院において,蓄のう症の手術を受けたが,同手術の際,大量出血などの異常事態が生じたということはなかった。 (2) 検討ア原告124番が,昭和59年●月●日に,●病院において,子宮内膜症の手術を受け,子宮,卵巣及び盲腸の全部を摘出したとの事実に関し,診断書やカルテなどの医療機関の作成した証拠があるものではないが,原告124番や,同人の夫及び知人の陳述書に具体的状況が記載してあり,原告124番も本人尋問において同様の供述をしていることから,そのような事実があったことを認めることができる。 また,●病院に,昭和57年に95本(ただし,同年に5本を返品),昭和58年に25本,昭和59年に65本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができる。 イしかし,前記手術の際,原告124番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前 記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,●医師は,子宮内膜症の手術の際,止血剤として,特定フィブリノゲン製剤を使ったことがあると思う旨の発言や,当時の手術現場で「コットン」と呼んでいたフィブリノゲンのような物を止血として使っていたとの発言をしているが,他方で,同医師は「フィブリノゲンの液体は使っていない」とも発言している上,原告124番の供述によれば,●医師は「コットン」は布であると述べているのであるから,●医師の前記発言によっても,昭和59年当時,●病院において,子宮内膜症の手術の際,特定フィブリノゲン製剤が使用されていたことを認めることはできない。 トン」は布であると述べているのであるから,●医師の前記発言によっても,昭和59年当時,●病院において,子宮内膜症の手術の際,特定フィブリノゲン製剤が使用されていたことを認めることはできない。 3 結論以上によれば,原告124番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告126番関係 第1 当事者の主張(原告126番の主張) 1 原告126番は,平成4年,献血をした際の検査結果を受けて精密検査を受けたところ,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告126番は,昭和55年●月●日,●産婦人科医院において,帝王切開により,第一子(女児)を出産した。なお,●産婦人科医院が●病院へ出張し,出産は●病院で行った。 3 ●産婦人科医院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関一覧に記載されている。 4 原告126番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●産婦人科医院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告126番の供述によっても,前記出産当時の原告126番の具体的病態は不明であり,また,前記出産の際の原告126番の出血量は少量であるところ,当該事実は,前記出産当時,止血に関し,特段の問題がなかったことを裏付けるから,原告126番が,前記出産当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったと認めることはできない。 また,原 実は,前記出産当時,止血に関し,特段の問題がなかったことを裏付けるから,原告126番が,前記出産当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったと認めることはできない。 また,原告126番は,前記出産後,平成4年●月に献血をした際にC型肝炎ウイルスに感染していることが判明するまでの間に,数回献血を受けたようであるところ,これら数回の献血において,感染が 指摘されていなかったとの事実は,原告126番が,前記出産当時には感染しておらず,その後,別の機会に感染したことを推認させる。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ126の1~7,原告126番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告126番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。原告126番には7人のきょうだいがいる。 (2) 原告126番は,昭和55年●月●日午後3時15分,●病院において,帝王切開により第一子(女児)を出産し,その際,少量の出血をした。母子手帳の「分娩の経過」の欄には,特記事項として,「帝王切開,遷延妊娠,子宮膜部強靱症」との記載がある。なお,原告126番は,帝王切開の処置に必要な設備の関係で,●産婦人科医院から●病院に移されて帝王切開手術が行われた。分娩介助は,●医師が行った。 (3) 原告126番は,平成23年●月●日,●病院において,慢性C型肝炎との診断を受けた。 (4) ●産婦人科医院は,厚生労働省の発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関一覧に記載されているが,原告126番に特定フ 23年●月●日,●病院において,慢性C型肝炎との診断を受けた。 (4) ●産婦人科医院は,厚生労働省の発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関一覧に記載されているが,原告126番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●産婦人科医院及び●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討 (1) 原告126番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告126番の平成25年12月10日付け,平成31年1月30日付け陳述書(甲ハ126の1,11)原告126番は,昭和54年,家のトイレで突然倒れたため,●病院に運ばれ,●医師から,腹腔内が出血しているようだ,これは卵管が破裂していると思う,きっと子宮外妊娠だね,と言われ,緊急手術を受けることになった。全身麻酔を受けたため,手術の内容については記憶がない。原告126番は,●医師から,手術後に,お腹の中に500mlくらいの血液が溜まっていたこと,卵巣にゴルフボールくらいの腫瘍があったこと,手術が成功したことを教えてもらった。ただし,腫瘍だけを取って卵巣を残したので,子供は産めるが,卵巣を縫い合わせたために,よじれたようないびつな形になったとのことだった。 原告126番は,昭和55年●月●日,●病院において,第一子(女児)を出産した。 原告126番は,出産予定日である同月●日の2,3日前頃,●産婦人科医院に入院した。出産予定日が来ても産まれる気配がなかったため,●医師から陣痛促進剤を注射された。それでも産まれる気配はなかったため,当時看護師をしていた原告126番の姉は,●医師に,陣痛促進剤の注射よりも帝王切開をしてほしいと要望し,設備の整った●病院に移った上で帝王切開 進剤を注射された。それでも産まれる気配はなかったため,当時看護師をしていた原告126番の姉は,●医師に,陣痛促進剤の注射よりも帝王切開をしてほしいと要望し,設備の整った●病院に移った上で帝王切開による出産をすることになった。 帝王切開手術の際は,下半身に麻酔をされた。●医師は,「癒着がひどい」と言いながら,癒着した皮膚をバリバリとはがすようにして処置し,原告126番は,その音や,●医師が看護師に対 し怒鳴るように「押さえて」とか「早く」と言っている声を聞いて不安に思った。子供が産まれた後は,全身麻酔をされて意識を失った。なお,癒着がひどいというのは,前年に受けた卵巣腫瘍の摘出手術が原因で,身体の内部で癒着が生じているとのことだった。 原告126番は,出産後,目が覚めると,病室にいて,片方の腕に点滴を受けていた。点滴の瓶がぶら下がっていることは分かったが,その中身までは分からなかった。また,目が覚めた際,足が痛いほど冷たく,母が,湯たんぽをしたり,足を両手でさすってくれたりして,足を温めてくれた。母は,看護師から,「麻酔のせいもありますけれども,癒着のため赤ちゃんを取り出すまで時間がかかり,結構出血しましたから,足が冷えていると思います。温めてあげてください。」と言われたそうである。 原告126番は,平成4年,献血をした際の検査結果として,C型肝炎に感染しているおそれがあると通知され,●病院を受診したところ,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 原告126番は,平成5年に●病院に行き,インターフェロン治療を受けたが,C型肝炎ウイルスは消失しなかった。原告126番は,平成23年に再び●病院でインターフェロン治療を受け,C型肝炎ウイルスを消失させるに至った。ただし,経過観察のための検査を続けなければなら けたが,C型肝炎ウイルスは消失しなかった。原告126番は,平成23年に再び●病院でインターフェロン治療を受け,C型肝炎ウイルスを消失させるに至った。ただし,経過観察のための検査を続けなければならず,発がんの可能性も,通常の人に比べて3倍くらいあるとのことである。 原告126番は,平成19年頃,薬害C型肝炎のことを知り,とだ●病院に行き,●医師に対し,昭和54年当時の状況について問い合わせたところ,手術台帳のうち,原告126番に関する記載部分のコピーをもらうことができた。手術台帳には,卵巣を 摘出したことが記載されていたが,輸血についての記載はなく,●医師によれば,輸血についての記載がない以上は,輸血をしていないとのことだった。 原告126番は,●病院及び●産婦人科医院にも問い合わせをしたが,いずれもカルテは残っておらず,当時のことは分からないとのことだった。 原告126番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告126番は,入れ墨,人工透析の経験はない。 イ原告126番の供述(本人尋問)昭和55年●月●日の第一子(女児)の出産の際は,下半身にされた麻酔が途中で切れて,●医師や看護師が大声で叫んだりしており,原告126番も痛さのあまりにだんだんと意識が遠のくほどだった。 出産後,病室で目を覚ました際,寒くて,とにかく足が冷たかった。母が看護師にその旨を伝えたところ,湯たんぽを用意しましょう,多分,麻酔のせいもあるけれども,出血も癒着もひどかったので時間がかかっているから,という返事をされたのを覚えている。出血量については聞いていない。また,右腕に針を刺して1種類の点滴をされていたのを覚えている。同点滴は,2日目くらいまでしていたと思う。●病院には1週間ほど入院し,その後,●産婦 のを覚えている。出血量については聞いていない。また,右腕に針を刺して1種類の点滴をされていたのを覚えている。同点滴は,2日目くらいまでしていたと思う。●病院には1週間ほど入院し,その後,●産婦人科医院に移って更に1週間ほど入院した。入院費用の内訳ははっきりと覚えてはおらず,特に高額な薬を使ったという内訳があったという記憶はない。 出産後の異常としては,退院後,腹部の傷口部分が化膿して,同部分から出血したことだけであった。化膿に対する処置としては,毎日処置のために通院し,化膿した部分にガーゼを詰め込ん で少しずつ肉が上がってくるのを待つ,というものだった。なお,肝臓についての指摘は受けていない。 原告126番は,平成4年●月の献血をきっかけにC型肝炎ウイルスに感染していることが判明したが,昭和55年以降平成4年までの間で,肝機能の異常を指摘されたことはなかった。なお,原告126番は,平成2年頃からは,パート先の会社の健康診断を受けていた。 原告126番は,平成19年頃に,●病院の●医師に対し,止血剤の使用をしたかどうかを聞いたところ,●医師は,納入もしていないとの回答であった。なお,フィブリノゲン製剤という言葉を使っての質問はしていない。 原告126番は,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した以後に,ピアスの穴を開けたりアートメイクをしたりしたが,病院できちんと行ってもらったため,C型肝炎ウイルス感染の原因となる心配はない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告126番が,昭和55年●月●日,設備上の理由で●産婦人科医院から●病院に移った上,同日午後3時15分,●病院において,帝王切開により第一子(女児)を出産し,その際少量の出血をしたことを認めることができる。 イ ●月●日,設備上の理由で●産婦人科医院から●病院に移った上,同日午後3時15分,●病院において,帝王切開により第一子(女児)を出産し,その際少量の出血をしたことを認めることができる。 イしかし,●病院及び●産婦人科医院において,昭和55年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告126番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論 以上によれば,原告126番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告127番関係 第1 当事者の主張(原告127番の主張) 1 原告127番は,平成12年頃,●病院において,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,遅くとも平成15年●月●日に,慢性C型肝炎と診断され,その後,治療を受けてきた。 2 原告127番は,昭和53年●月●日,●病院において,第一子(女児)を出産し,胎児娩出後に大量出血をし,止血の処置を受けた。 3 ●病院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 4 原告127番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,前記機会における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告127番の供述等によれば,同人は,前記出産の際に輸血を受けておらず,前記出産の約3時間後に分娩室から病室に移動した後は状態 主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告127番の供述等によれば,同人は,前記出産の際に輸血を受けておらず,前記出産の約3時間後に分娩室から病室に移動した後は状態が安定していたのであり,出血量は400mlであるから,原告127番が,前記出産の当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ127の1~7)及び弁論の全趣旨を総合 すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告127番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。原告127番には,2人のきょうだいがいる。 (2) 原告127番は,昭和53年●月●日午後6時17分,●病院において,第一子(女児)を出産し,その際,400mlの出血をした。 分娩介助は,●●医師(以下「●医師」という。)が行った。なお,母子手帳の「出血量」欄には,「多量」に丸囲みがされている。 (3) 原告127番は,平成14年●月●日,●病院において,慢性C型肝炎と診断された。 (4) ●病院は,昭和53年当時,産婦人科ほか8の診療科を有し,ベッド数は215床,産婦人科における医師数,助産師数,看護師数,年間分娩件数及び年間手術件数はいずれも不明である。 また,昭和53年当時,●病院において,特定フィブリノゲン製剤が常備されていた。 (5) 原告127番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の 剤が常備されていた。 (5) 原告127番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告127番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告127番の平成26年2月19日付け,平成28年8月10日付け陳述書(甲ハ127の1,8)原告127番は,昭和53年●月●日朝,自宅で破水し,●病院に入院し,同日午後6時17分に,同病院において,第一子(女児)を出産した。自然分娩で,スムーズな出産だったと思う。 出産後,まだ分娩台で横たわっている状態の時に,助産師が「出 血が止まらない」と小声で話していたのを聞いた。また,胎児が出てきた後,●医師から,分娩室において「出血が多いね。止まらへんね。」などと言われた記憶がある。●医師の同発言の後,分娩台に横たわったまま点滴が始まった。点滴針は,右腕のひじを曲げた内側に刺されており,点滴された薬剤の容器は瓶だったと思う。しかし,瓶の形状,大きさ,色,薬剤の名前は覚えておらず,何のための薬剤なのかについての説明は受けていない。 原告127番は,出産から約3時間は,分娩室で点滴等の治療を受け,午後9時半頃,点滴をしたまま,病室に移動した。病室に移動した後は,原告127番の状態は安定しており,特に出血が止まらないという状態にはならなかった。なお,点滴は,出産の翌日ないし2日後まで行っており,1週間ほどして●病院を退院した。また,入院中,輸血は受けていないし,前記出産以外に輸血を受けた経験もない。 原告127番は,平成12年頃,体調不良のため●病院を受診したところ,「多分C型肝炎ウイルスがあるかもしれない。」と言われ,同病院から 血は受けていないし,前記出産以外に輸血を受けた経験もない。 原告127番は,平成12年頃,体調不良のため●病院を受診したところ,「多分C型肝炎ウイルスがあるかもしれない。」と言われ,同病院から紹介を受けた●病院での血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 感染判明後は,2年間ほど●病院に通い,その後は●病院で治療を受けた。●病院に通院していた際,いずれかの時点で,担当の●医師から,慢性肝炎と言われた。その後も定期的に,血液検査とエコー検査を受けている。なお,インターフェロン治療は受けていない。 原告127番は,平成21年夏頃,●病院に対し,前記出産の際のカルテが残っていないか問い合わせたが,当時のカルテ等は全て処分され,残っていないとの回答であった。 原告127番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告127番は,入れ墨,ピアス,違法薬物の注射器での回し打ちの経験はない。 イ ●医師作成に係る平成24年8月23日付け「証明書」(甲ハ127の4)原告127番の,昭和53年●月●日の出産については,古い話なので詳しくは覚えていないが,母子手帳の記載からすると,自身が同出産を担当したことは間違いないと思う。 母子手帳の「出血量」欄の「多量」に丸囲みの記載があり,また,原告127番が述べるように産後の出血がなかなか止まらない状態であったとすれば,何らかの措置を行ったことが考えられる。具体的にどのような措置を行ったのか,フィブリノゲン製剤を使用したかどうかについては覚えていないが,当時,出産に伴う大量出血時などには止血状態をみて状態改善のためフィブリノゲン製剤を使用することがあったため,原告127番にフィブリノゲン製剤を使用した可能性はあると うかについては覚えていないが,当時,出産に伴う大量出血時などには止血状態をみて状態改善のためフィブリノゲン製剤を使用することがあったため,原告127番にフィブリノゲン製剤を使用した可能性はあると思う。 ウ ●医師の陳述書(甲ハ127の6)昭和52年●月から平成54年●月までの間,●病院の産婦人科で勤務した。 昭和53年当時,●病院の産婦人科には,医師が3,4名いたと記憶している。助産師は7,8名いたと思う。看護師はそれ以上いたと思うが,正確な人数は分からない。また,当時の年間分娩件数はおよそ1000件だが,これも正確な件数は分からない。 昭和53年当時,●病院では,フィブリノゲン製剤を常備しており,同製剤が必要なのに納入されておらず困ったということはなかった。フィブリノゲン製剤は,薬剤部で管理していたと思う が,医師が投与指示をすると,薬剤部へ伝票を出して看護師が準備し投与をするという流れだったため,実際に薬剤部のどこに保管されていたのか,どのように準備するのかについては分からない。 昭和53年当時,●医師は,フィブリノゲン製剤には止血効果があると認識しており,当時の産婦人科医の間では,半ば常識になっていたと思う。そのため,妊産婦の出血時に出血傾向を少なくするためにフィブリノゲン製剤を投与するという処置を,●病院を含め,当時は一般的に行っていた。 昭和53年当時の●病院では,およそ1000mlを超える出血があれば,一般的に,フィブリノゲン製剤を使用しており,●医師もそのようにしていた。ただし,これは厳格なルールではなく,あくまで目安であり,出血増加傾向が認められれば,出血量が1000mlに達する前に,早めにフィブリノゲン製剤を使用することもあったよう 医師もそのようにしていた。ただし,これは厳格なルールではなく,あくまで目安であり,出血増加傾向が認められれば,出血量が1000mlに達する前に,早めにフィブリノゲン製剤を使用することもあったように思う。 フィブリノゲン製剤は点滴静注の方法で使用しており,最低1本を使用し,状態をみて2本以上使うこともあったと思う。なお,産後の出血増加傾向がみられるケースでは,フィブリノゲン製剤のほか,分娩後に子宮収縮剤であるメチルエルゴメトリンを静脈注射等の方法で,全例使用していたと記憶している。 昭和53年当時,フィブリノゲン製剤の使用とともに,輸血を行うことが多かったように思う。どちらが先という順序は決まっていなかった。ただし,輸血は実施せず,フィブリノゲン製剤のみ使用したケースもあったと記憶している。 昭和53年当時,フィブリノゲン製剤以外に使用していた止血剤としては,「VC(ビタミンC)」,「トラネキサム酸(トランサ ミン)」,「カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム(アドナ)」などがあった。教科書的には,「出血時に使用するように」という指導があり,必ず点滴に入れていたと記憶している。フィブリノゲン製剤との使用順序に関して,特に決まりはなかった。 資料がない限り,正確なことは言えないが,昭和53年当時,●医師が担当し,フィブリノゲン製剤を投与したのは,年間10名くらいだったと思う。産婦人科の医師は3,4名いたし,他の科でも使用していたため,●病院全体では,更に多い人数になると思う。 母子手帳には,出血量は「多量」に丸囲みがされているところ,当時,母子手帳の記載は主に助産師が行っており,一般的に1000mlを多量出血としていた。あえて「多量」に丸囲みがされていることからすると 母子手帳には,出血量は「多量」に丸囲みがされているところ,当時,母子手帳の記載は主に助産師が行っており,一般的に1000mlを多量出血としていた。あえて「多量」に丸囲みがされていることからすると,原告127番の総出血量が400mlということはないと思う。考えられる可能性としては,実際の出血量は1400mlなのに誤って400mlと記載したか,産後2時間の出血量を400mlと書き込んだものの,その後弛緩出血等で1000ml以上の出血があったかのどちらかだと思う。 前記のとおり,母子手帳によれば,原告127番は「多量」に出血したということであるから,同人にフィブリノゲン製剤を投与した可能性は高いと思う。 (2) 検討ア前記1(2)及び(4)のとおり,原告127番が,昭和53年●月●日午後6時17分,●病院において,第一子(女児)を出産し,その際,400mlの出血をしたこと,母子手帳の「出血量」欄には,「多量」に丸囲みがされていること,昭和53年当時,●病院において,特定フィブリノゲン製剤が常備されていたことを認 めることができる。 イしかし,原告127番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,●医師は,昭和53年当時の●病院では,およそ1000mlを超える出血があれば,一般的に,特定フィブリノゲン製剤を使用しており,●医師もそのようにしていたと述べ,前記出産に係る原告127番の母子手帳の「出血量」欄において,あえて「多量」に丸囲みがされていることからすると,原告127番の総出血量が400mlということはなく,1000ml以上の出血があったと思うとした上,原 告127番の母子手帳の「出血量」欄において,あえて「多量」に丸囲みがされていることからすると,原告127番の総出血量が400mlということはなく,1000ml以上の出血があったと思うとした上,原告127番に対し,特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性が高いと供述する。 しかし,出血量が400mlであるのに誤って「多量」に丸囲みがされた可能性も否定できないから,原告127番において,前記出産時に1000ml以上の出血をした事実を認めることはできず,昭和53年当時の●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与方針を前提としても,原告127番に,具体的状況に照らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 3 結論以上によれば,原告127番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告128番関係 第1 当事者の主張(原告128番の主張) 1 原告128番は,平成4年頃,市立●病院における血液検査等の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎が進行して肝がんにり患した。 2 原告128番は,昭和44年●月●日,市立●病院において,第一子(女児)を出産した。分娩後,胎盤の正常な剥離,排出がなかったことから,胎盤用手剥離が行われた。その後,一旦は病室に戻ったが,数時間後,弛緩出血により,再び分娩室に戻り,止血の処置を受けた。 3 市立●病院は,厚生労働省の公表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 4 原告128番がC型肝炎ウイルスに感染したの 後,弛緩出血により,再び分娩室に戻り,止血の処置を受けた。 3 市立●病院は,厚生労働省の公表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 4 原告128番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,前記機会における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告128番の供述によっても,昭和44年●月●日に弛緩出血等による具体的な出血量,出血に対して受けた止血処置の詳細や,具体的病態は不明であるから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 また,原告128番は,前記止血処置の際に輸血を受けたようであるところ,当該輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定できない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染 との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ128の1~3,6~10,原告128番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告128番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。原告128番には5人のきょうだいがいる。 (2) 原告128番は,昭和44年●月●日午後0時18分,市立●病院において,吸引分娩により,第一子(女児)を出産し,その際,250mlの出血をした。なお,前記出産に係る母子手帳の「分娩経過」欄には,特記事項として「胎盤癒着」「弛緩性出血」,出産時の産科手術及び処置として「用手剥離」,及び「輸液1500ml」「輸血600ml」との記載がそれぞれある。分娩介助は●●医師(以下「●医師」とい は,特記事項として「胎盤癒着」「弛緩性出血」,出産時の産科手術及び処置として「用手剥離」,及び「輸液1500ml」「輸血600ml」との記載がそれぞれある。分娩介助は●●医師(以下「●医師」という。)が行った。 (3) 原告128番は,平成19年頃,慢性C型肝炎との診断を受け,平成29年●月●日,市立●病院において,肝硬変との診断を受けた。 (4) 昭和44年当時,市立●病院は,産婦人科ほか10の診療科を有し,ベッド数は,一般病棟100床,結核病棟100床,伝染病棟15床,産婦人科における医師数,助産師数,看護師数,年間分娩件数,年間手術件数は不明である。 また,昭和44年当時,市立●病院において特定フィブリノゲン製剤を常備していたかは不明である。 (5) 原告128番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,市立●病院におけるフィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告128番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告128番の平成26年4月25日付け陳述書(甲ハ128の1)原告128番は,昭和44年●月●日,市立●病院において,吸引分娩により,第一子(女児)を出産した。分娩後,●医師が,「後産が出ない。」と言いながら,原告128番の身体の上に乗って原告128番の腹部を押したが,それでも出なかったため,同医師が,腕の上の方まで消毒をした上で,手を入れて胎盤をかき出した。原告128番は,意識ははっきりしていたため,お腹の中でかき回されるような感覚で,とても痛かった。この際,輸血はされなかった。 出産後,病室に戻って数時間後くらいから,水道の栓を軽くひねったような出血が続いた。当ててある綿布がすぐに汚れてし 腹の中でかき回されるような感覚で,とても痛かった。この際,輸血はされなかった。 出産後,病室に戻って数時間後くらいから,水道の栓を軽くひねったような出血が続いた。当ててある綿布がすぐに汚れてしまうような状態だった。その後,余りに下腹部が痛くなったため,付き添っていた原告128番の姉に「ちょっとお腹押してみて」と頼んで押してもらったところ,一気に洗面器半分くらいの出血があった。すぐに看護師を呼んだところ,瞳孔を調べられながら分娩室へと運ばれ,分娩室では両手両足を固定され,両手に点滴や輸血などをされた。また,腹の上に,肌に直接,ごみ袋大のポリ袋いっぱいに氷を入れたものを載せられるのを見ていたが,冷たさは感じなかった。また,「輸血が足りないから,すぐに電話して。」と言っている声がしていたのを覚えている。原告128番は,意識がもうろうとする中,このまま死ぬのかな,と思ったが,看護師から,「しっかりしなさい,あなたが頑張らないと,赤ちゃん がお母さんのいない子になるのよ。」と励まされた。 しばらく意識を失っていたようだが,出産時に会陰切開した部分と同じところを縫っている時に,意識を取り戻した。両手には,まだ,点滴などの管が付いたままだった。 後に看護師に出血の原因について聞いたところ,原告128番の場合,陣痛促進剤を使った強引な出産だったため,子宮の戻りが遅かったということと,胎盤の取り残しが原因だろうとのことだった。 原告128番は,平成4年頃,右手の中指が痛んだため,市立●病院で血液検査等を受けたところ,指の痛みの原因は分からなかったものの,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 感染判明後は,同病院で通院治療を受けていたが,平成14年頃,●胃腸科内科に転院した。 平成20年から平成21年にかけて約13か からなかったものの,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 感染判明後は,同病院で通院治療を受けていたが,平成14年頃,●胃腸科内科に転院した。 平成20年から平成21年にかけて約13か月,市立●病院及び●胃腸科内科でインターフェロン治療を受けたが,効果は出なかった。また,平成26年●月に,市立●病院に入院して肝生検を受けたが,肝硬変の一歩手前の「A1F3」の状態であり,同病院の医師によれば,原告128番の肝臓の状態をみると,感染後約20年から30年の経過と推察されるとのことであり,昭和44年の前記出産時にC型肝炎ウイルスに感染したと考えられる。 原告128番は,平成19年頃,薬害C型肝炎のことを知り,市立●病院に対し,昭和44年当時のカルテの有無などを問い合わせたが,古い記録は残っていないとの回答であった。 原告128番は,昭和51年●月●日に,●産婦人科において,第二子(女児)を出産しているところ,その際の出血量は100mlであり,特に問題はなかった。その他に,昭和45年に虫垂 炎の手術を●病院で受けたが,簡単な手術だった。前記のほかに,出産や手術をしたことはないし,輸血の経験もない。 原告128番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告128番は,入れ墨,鍼治療,違法薬物の注射器での回し打ちの経験はない。 イ原告128番の供述(本人尋問)昭和44年●月●日の出産は,出産予定日よりも少し出産が遅れていたこと以外には,特に問題はなかった。同月●日,市立●病院に入院し,しばらく陣痛が起きたり,治まったりした後,同月●日に陣痛促進剤を打たれて,破水に至ったという経過であった。 出産後,病室に戻り,うとうとしていたところ,お産の後に当てる長さ30cmく しばらく陣痛が起きたり,治まったりした後,同月●日に陣痛促進剤を打たれて,破水に至ったという経過であった。 出産後,病室に戻り,うとうとしていたところ,お産の後に当てる長さ30cmくらいの綿花の当て布が血液で濡れていることに気付き,姉に頼んで当て布を替えてもらった。血液の色については覚えていない。当時は,恥ずかしいという思いもあり,血液で濡れた状態の時には看護師を呼ばずに,3回ほど当て布を替えた後のきれいな状態の時に看護師を呼んだ。看護師は,これぐらいの出血やったら,普通のお産でもあるよと言っていた。 しかし,その後,下腹部がすごく痛くなり,姉に押さえてもらったところ,どばっと出血した。出血量は,直径30cmくらいの風呂場で使うくらいの洗面器の半分ほどだった。すぐに看護師を呼び,ベッドのまま分娩室に運ばれ,点滴と輸血の処置を受けた。 原告128番は,通常よりも長く15日間ほど入院をした後,市立●病院を退院した。入院中,医師や看護師から,出産後の出血に対する処置の説明は受けていないが,同室の産婦から,3日 前くらいに原告128番と同じような症状で1名の産婦が亡くなったが,原告128番の場合は,いい薬を使ったと医師が言っていたから良かったね,という風な話を聞いた。その薬が何かは聞いていない。なお,退院時の会計は,兄が支払ってくれたため,思っていたより高額を請求されたか否かについては分からない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告128番が,昭和44年●月●日午後0時18分,市立●病院において,吸引分娩により,第一子(女児)を出産し,その際,250mlの出血をしたこと,前記出産に係る母子手帳の「分娩経過」欄には,特記事項として「胎盤癒着」「弛緩性出血」,出産時の産科手術及び処置とし ,吸引分娩により,第一子(女児)を出産し,その際,250mlの出血をしたこと,前記出産に係る母子手帳の「分娩経過」欄には,特記事項として「胎盤癒着」「弛緩性出血」,出産時の産科手術及び処置として「用手剥離」,及び「輸液1500ml」「輸血600ml」との記載があることを認めることができる。 イしかし,市立●病院において,昭和44年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告128番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告128番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告129番関係 第1 当事者の主張(原告129番の主張) 1 原告129番は,平成13年●月●日の血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,以後も経過観察中である。 2 原告129番は,昭和60年●月●日,●病院において,第一子(男児)を出産した。出産後,原告129番は,会陰縫合部から出血し,その出血量は明確ではないが,少なくとも800ml程の輸血が実施されるほどの出血量であった。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告129番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 ●医療センター 肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 ●医療センターの診療録によれば,原告129番が,前記出産後に出血したことが一応うかがわれるが,いかなる理由で生じた出血であるのかが全く不明である上,同診療録に特定フィブリノゲン製剤投与をうかがわせる記載は全くなく,原告129番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったと認めることもできない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 原告129番が慢性C型肝炎にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ129の1~5)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告129番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 (2) 原告129番は,昭和60年●月●日,●病院において,第一子(男児)を出産し,その際に約350ml出血した。 原告129番は,同月中下旬頃,会陰縫合部より出血し,輸血を受けた。原告129番は,遅くとも昭和62年●月までに輸血後肝炎と診断された。 (3) 原告129番は,平成13年●月●日の血液検査により,C型肝炎ウイルスに感染しているとの指摘を受けた。 (4) 原告129番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 検討(1) 前記1(2)のとおり,原告129番は,昭 特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 検討(1) 前記1(2)のとおり,原告129番は,昭和60年●月●日,●病院において,第一子(男児)を出産した後,会陰縫合部より出血し,輸血を受けたことを認めることができる。 (2) しかし,●病院において,昭和60年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたことや,原告129番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったことを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告129番については,特定フィブリノゲン製剤 が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告131番関係 第1 当事者の主張(原告131番の主張) 1 原告131番は,平成7年にC型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告131番は,慢性C型肝炎と診断されている。 2 原告131番は,昭和51年●月●日,●産婦人科において,第一子(女児)を出産した。 原告131番は,昭和52年●月●日,●病院において,第二子(女児)を出産した。 原告131番は,昭和56年●月●日,医療法人●会●病院(以下「●病院」という。)において,第三子(女児)を出産した。 3 ●産婦人科,●病院及び●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告131番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●産婦人科,●病院及び●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 ィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告131番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●産婦人科,●病院及び●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 母子手帳及び原告131番の陳述書によっても,原告131番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 第三子(女児)の出産を担当した●●医師(以下「●医師」という。)作成の回答書によれば,同医師は,特定フィブリノゲン製剤の効能・効果について「分娩時,大量出血に対する止血剤として用いる」認識であったところ,同出産に係る母子手帳によれば,出産時の 出血は少量であり,同医師の認識を前提にしても,特定フィブリノゲン製剤投与が必要であったとは認められない。さらに,同医師は,前記出産当時,特定フィブリノゲン製剤と使用した記憶がないと回答しており,前記出産において,特定フィブリノゲン製剤が投与されていないことは明らかである。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 原告131番が慢性肝炎にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ131の1~6)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告131番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 (2) 原告131番は,昭和51年●月●日,●産婦人科において,第一子(女児)を出産した。所要時間は約21時間であり,麻酔及び会陰切開がされたが,分娩経 は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 (2) 原告131番は,昭和51年●月●日,●産婦人科において,第一子(女児)を出産した。所要時間は約21時間であり,麻酔及び会陰切開がされたが,分娩経過は正常であった。出産の際の出血量は少量であり,弛緩出血はなかった。 原告131番は,昭和52年●月●日,●病院において,第二子(女児)を出産した。その際の出血量は中量であった。 原告131番は,昭和56年●月●日,●病院において,第三子(女児)を出産した。その際の出血量は少量であった。 (3) 原告131番は,慢性C型肝炎と診断され,医療法人●会●病院(以下「●病院」という。),●病院及び●病院等で,インターフェロ ン治療等を受けた。 (4) 原告131番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告131番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告131番の陳述書(甲ハ131の1)原告131番の家族は誰もC型肝炎ウイルスに感染していない。 原告131番は,昭和51年●月●日,●産婦人科において,第一子(女児)を出産した。予定日を2週間過ぎた同月●日夜に,自宅でやっと陣痛が始まり,●産婦人科に入院した。翌●日午後3時30分頃に人工的に破水させた後も微弱陣痛でなかなかお産が始まらなかった。母子手帳によれば麻酔をされたようであり,酸素マスクのようなものをされて息が苦しかった記憶がある。第一子(女児)が生まれた瞬間は記憶しておらず,気付いたときには病室にいた。出産の前後に点滴を受け,管が二つあったのを覚えている。点滴の薬の一つは瓶状だったように記憶して 息が苦しかった記憶がある。第一子(女児)が生まれた瞬間は記憶しておらず,気付いたときには病室にいた。出産の前後に点滴を受け,管が二つあったのを覚えている。点滴の薬の一つは瓶状だったように記憶しているが,薬の名前や色は不明であり,瓶の大きさもあまり覚えていない。 原告131番は,昭和52年●月●日,●病院において,第二子(女児)を出産した。出産予定日は同年●月●日であったが,同年●月●日朝,自宅のトイレで出血,いわゆる「おしるし」があり,胎児が下がってきている感覚があったので,●病院に行った。前記出血の後も,引き続き出血があり,生理用ナプキンをあてた状態で病院に向かった。同日夕方,やっと第二子(女児)が生まれたが,その瞬間は意識がもうろうとしていた。第二子(女児)の首に へその緒が巻き付き,チアノーゼを起こし,息をしていないため「酸素マスクをする」という話を医師らがしていたのを覚えているが,その後,意識が遠のき,次に覚えているのは,病室で寝ているときである。 原告131番は,昭和56年●月●日,●病院において,第三子(女児)を出産した。胎児が大きく(体重3820g),3人目の出産ということもあり,膣壁が肛門近くまで裂傷し,縫合の処置を受けた。このとき,左腕に点滴をしていたように思うが,その点滴が何の薬であったかは分からないし,形状や色も分からない。 平成4年●月,健康診断の検査結果が分かり,慢性肝炎になっていると指摘された。平成7年,●病院で精密検査を受け,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。その後,同病院,●病院,●病院,●クリニック,●病院,●病院で,インターフェロン治療等を受けた。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●産婦人科,●病院及び●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤 後,同病院,●病院,●病院,●クリニック,●病院,●病院で,インターフェロン治療等を受けた。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●産婦人科,●病院及び●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 イ ●医師作成の回答書(甲ハ131の7)昭和56年当時,フィブリノゲン製剤の効能・効果に関し,分娩時,大量出血に対する止血剤として用いると認識していたが,同年当時,フィブリノゲン製剤を使用した記憶はない。原告131番の出産を担当したことは覚えていない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告131番は,昭和51年●月●日に●産婦人科において,昭和52年●月●日に●病院において,昭和56年●月●日に●病院において,それぞれ出産したことを認める ことができる。 イしかし,●産婦人科,●病院及び●病院において,前記各出産当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたことを認めるに足りる証拠はない。 また,前記1(2)のとおり,第一子(女児)及び第三子(女児)の出産時の出血量は少量,第二子(女児)の出産時の出血量は中量にとどまっているところ,原告131番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告131番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告132番関係 第1 当事者の主張(原告132番の主張) 1 原告132番は,平成6年●月● ,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告132番関係 第1 当事者の主張(原告132番の主張) 1 原告132番は,平成6年●月●日,慢性C型肝炎と診断された。現在は,C型肝炎ウイルスは消失している。 2 原告132番は,昭和46年●月●日,●病院(現在は●クリニック)において,男児を出産した。原告132番は,分娩後,会陰裂傷により大量出血し,●病院に救急搬送され,そこで縫合手術を受けた。 3 当時の●病院は,常時,特定フィブリノゲン製剤を納入していた。 4 原告132番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告132番の陳述書によっても,原告132番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 原告132番が慢性肝炎にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ132の1,7,8,10~12)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告132番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告132番には4人のきょうだいがいる。 (2) 原告132番は,昭和46年●月●日,男児を出産した。 (3) 原告132番は,平成6年,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明して慢性C型肝炎と診断され, には4人のきょうだいがいる。 (2) 原告132番は,昭和46年●月●日,男児を出産した。 (3) 原告132番は,平成6年,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明して慢性C型肝炎と診断され,同年●月から●病院でインターフェロン治療を受け,退院後も●内科で治療を続けた。 (4) 原告132番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,昭和46年当時の当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告132番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告132番の陳述書(甲ハ132の1)原告132番の両親及びきょうだいは,C型肝炎ウイルスに感染していない。 原告132番は,昭和46年●月●日,●病院において,男児を出産した際,会陰が裂傷し,大量出血して血が止まらなくなり,●病院に点滴をしながら救急搬送された。同病院において,3時間くらいかけて縫合手術が行われた。そのときに,輸血と点滴をされた。 後に,原告132番の夫ら4人に協力してもらい,800~1000mlの血液を血液銀行に返した。 原告132番は,平成6年●月●日,●内科において,慢性C型肝炎であると診断され,同内科及び●病院でインターフェロン治療を受け,C型肝炎ウイルスは消失した。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 イ原告132番の姉の陳述書(甲ハ132の2)原告132番が昭和46年に出産したとき,出血多量で●病院に救急搬送されたと聞き,急いで駆け付けた。医師から,「輸血をした」,「危なかった」と聞いた。 ウ原告132番の親族の陳述書(甲ハ132の3~6) 番が昭和46年に出産したとき,出血多量で●病院に救急搬送されたと聞き,急いで駆け付けた。医師から,「輸血をした」,「危なかった」と聞いた。 ウ原告132番の親族の陳述書(甲ハ132の3~6)原告132番が昭和46年●月●日に出産したとき,大量出血で●病院へ救急車で運ばれ,10日間ほど入院した。そのときに輸血をしたため,親族が協力して血液を返すことになり,自分も採血してもらった。 (2) 検討ア原告132番の昭和46年●月●日の出産後の縫合手術に関し,診断書やカルテなどの医療機関の作成した証拠があるものではないが,前記各陳述書には具体的状況が記載してあり,そのような事実があったことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和46年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告132番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告132番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告134番関係 第1 当事者の主張(原告134番の主張) 1 原告134番は,平成23年●月頃,●内科において,慢性C型肝炎と診断された。 2 原告134番は,昭和59年●月●日,●病院(以下「●病院」という。)において,帝王切開により,第二子(男児)を出産し,「中量」の出血をした。 3 ●病院には,昭和57年に5本,昭和58年に3本,昭和59年に20本の特定フィブリノゲン製剤が納入 病院」という。)において,帝王切開により,第二子(男児)を出産し,「中量」の出血をした。 3 ●病院には,昭和57年に5本,昭和58年に3本,昭和59年に20本の特定フィブリノゲン製剤が納入された。 4 原告134番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,前記機会における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 前記出産に係る手術記録や診療録には,比較的詳細に手術経過等が記載されているものの,原告134番に対し,特定フィブリノゲン製剤が投与された旨は記載されておらず,このことは,同人に対し,特定フィブリノゲン製剤が投与されていないことを推認させる。 また,前記出産に係る手術記録及び母子手帳によれば,帝王切開の手術が54分と短い時間で終了していること,帝王切開の際の出血量が「中量」であり,止血が問題なく行われたことがうかがわれること,前記出産前,原告134番の血液は,特に凝固に異常がなかったと認められることに照らすと,原告134番の病態は,止血に困難を伴うようなものであったとは認められず,前記出産当時,特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ134の1~5,9,原告134番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告134番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。原告134番には3人のきょうだいがいる。 (2) 原告134番は 人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告134番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。原告134番には3人のきょうだいがいる。 (2) 原告134番は,昭和57年●月●日午後4時40分,普通分娩により第一子(女児)を出産し,その際,480mlの出血をした。 (3) 原告134番は,昭和59年●月●日午後3時30分,●病院において,帝王切開により,第二子(男児)を出産し,その際,中量の出血をした。分娩介助は●●医師(以下「●医師」という。)が行った。なお,同出産に係る母子手帳には,「前置胎盤のため出血あり,破れあり帝王切開となる」との記載がある。 (4) 原告134番は,平成23年●月●日,●内科において,慢性C型肝炎と診断された。 (5) ●病院には,昭和55年に13本,昭和56年に28本,昭和57年に5本,昭和58年に3本,昭和59年に20本,昭和60年に21本,昭和61年に46本,昭和62年に12本(ただし,同年に6本を返品),昭和63年に1本(ただし,昭和64年(平成元年)に2本を返品)の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,原告134番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討 (1) 原告134番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告134番の平成26年6月13日付け陳述書(甲ハ134の1)原告134番は,第二子を妊娠し,●病院に通院するようになった。原告134番は,19歳の時に,原因不明の急性肝炎にり患し,1年後に完治はしたものの,何かあった時に備えて自宅近くの●病院を選んだ。なお,前記急性肝炎は,検査の結果,B型でもC型でもないと言われた。 妊娠 番は,19歳の時に,原因不明の急性肝炎にり患し,1年後に完治はしたものの,何かあった時に備えて自宅近くの●病院を選んだ。なお,前記急性肝炎は,検査の結果,B型でもC型でもないと言われた。 妊娠8か月の昭和59年●月●日,自宅において,血の海のようになるほど大量出血し,救急車で●病院に運ばれ,前置胎盤であることが判明した。救急車の中でも「毛布を敷いてください。」と言われるほど,ずっと出血が続いていた。出血が多く,母子ともに危ないと言われ,急きょ,帝王切開で出産することになった。 日曜日であったため,当直の●医師が執刀をすることになり,同医師から「とりあえず止血のための注射をします。」と言われ,「はい,分かりました。」と答えたことを覚えている。後に,●医師から,「あと30分遅かったら危なかった。」と言われた。なお,帝王切開手術に先立って,原告134番の夫が,●病院から,輸血の可能性があるため輸血の承諾書を書くよう言われ,署名をしたが,手術後の説明によれば,輸血はされなかった。原告134番の夫は,●医師から「両方助けられるよう努力しますが,最悪の場合はお母さんを助けます。」と言われたそうである。 出産の2日後である昭和59年●月●日,息苦しくなって,腕の血管から血液を採取して検査をされた。痛くて注射器がなかなか入らなかったのを覚えている。検査の結果,「輸血します。」と 言われ,輸血を受けたくなかったのでショックを受けた。医師達の会話で,「同意書はどうしましょうか。」「前にもらっているからいいんじゃない?」などとやり取りしているのが聞こえた。●病院側から,夫に対し,「前に承諾書をいただいているからいいですね。」との話がされたそうである。輸血をされたこと,赤い輸液が1袋であったことを覚えており,また,はっきりとした記憶はな が聞こえた。●病院側から,夫に対し,「前に承諾書をいただいているからいいですね。」との話がされたそうである。輸血をされたこと,赤い輸液が1袋であったことを覚えており,また,はっきりとした記憶はないが,輸液の袋に途中で何か違う液を入れていたように思う。 平成20年●月●日,新聞で薬害C型肝炎のことを知り,念のため,保健所の無料検診を受けた。匿名での検査であり,検査結果も聞きに行かなかった。その後,平成23年●月,会社の健康診断で,AST,ALTの値に異常が発見され,●内科で精密検査をした結果,慢性C型肝炎にり患していることが判明した。なお,判明後,保健所に問い合わせて,平成20年当時の検査結果を受け取った。 原告134番は,平成23年から平成25年にかけて72本のインターフェロン治療を行い,その結果,C型肝炎ウイルスは消失し,慢性C型肝炎も治癒した。 ●病院に,昭和59年当時のカルテが残っていないか問い合わせたが,カルテの一部のコピーしか渡せないと言われた。また,●医師と面談し,当時のことを聞いたところ,「輸血の場合は,フィブリノゲン製剤を使っている。」「カルテに輸血と書いてあれば間違いない。」などと言われた。 原告134番は,昭和57年●月●日に,●病院において,第一子(女児)を出産しているところ,同出産は,普通分娩だった。 原告134番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告134番は,入れ墨,ピアス,人工透析の経験 はない。 イ原告134番の平成28年8月16日付け陳述書(甲ハ134の11)原告134番は,19歳の時,仕事中に胃が押し付けられるような痛みを感じ,●会●病院に行ったところ,GOT,GPTの値が500くらいに上がっているとのことで,急性肝炎のため即 の11)原告134番は,19歳の時,仕事中に胃が押し付けられるような痛みを感じ,●会●病院に行ったところ,GOT,GPTの値が500くらいに上がっているとのことで,急性肝炎のため即入院と言われた。原因ははっきりとしなかったが,当時は,昼の仕事と夜の英語学校の二重生活だったため,身体が相当に疲れていたのだと思う。医師からも,「疲労ではないか。」と言われた。 その後,●病院に入院した。同病院でも,肝炎の原因について,特にはっきりしたことや新しいことは言われなかった。病院では,絶対安静,トイレに行く以外は歩いてはいけないと言われ,ずっとベッドで点滴を受けていた。1週間ほど点滴を続けると,肝臓の値も落ち着いたため,退院した。 しかし,退院した途端,再び肝臓の値が上がっていき,数日後に再入院することになった。再入院後は,ベッドで点滴を受ける日が続き,点滴をしなくてもよくなって以降も,様子見のために1か月か2か月くらい入院していた。 退院後,通院している中で,再び肝臓の値が上がり,3度目の入院となった。2回目と同様の処置を受け,3か月か4か月くらい入院して,ようやく退院した。 3度目の退院後は,自宅で1年間療養した。 ウ原告134番の供述(本人尋問)原告134番が19歳の時にり患した,原因不明の急性肝炎については,A型でもB型でもないと言われた。非A,非B型の肝炎と言われたのではない。 昭和59年●月●日の12時すぎ頃,布団を上げようとした際に出血をした。出血の程度は,下半身血だらけで,衣服も血で染まっていたというものだった。血液はさらっとした感じだった。 救急車で●病院に搬送された後,ストレッチャーに乗せられて治療室に運ばれた。第二子 出血をした。出血の程度は,下半身血だらけで,衣服も血で染まっていたというものだった。血液はさらっとした感じだった。 救急車で●病院に搬送された後,ストレッチャーに乗せられて治療室に運ばれた。第二子の出産の主治医は●医師であったが,日曜日だったため連絡が取れず,連絡がついた●医師が,約45分後に来てくれた。原告134番は,同人が●病院に到着してから●医師が来るまでの間には,点滴の処置を受けていた。点滴の薬剤の容器は,瓶ではなく,15cmくらいの白いポリ袋様のものだった。何のための点滴かについては聞いていない。 ●医師の診察を受けたところ,前置胎盤である旨を告げられ,これはもう帝王切開ですね,とか,出血しているので止血剤の注射をします,と言われた。意識がもうろうとしており,注射がどのようなものだったかは,はっきりとは覚えていないが,予防注射で使うような注射器だったと思う。 帝王切開手術は,下半身麻酔の上で行われ,原告134番においては,手術中も意識があった。輸血は受けなかった記憶である。 原告134番の夫は,●医師から,輸血をしていないこと,子供が未熟児であり,5日間持てば助かるなどと言われたそうである。 原告134番は,手術後も,引き続いて点滴を受けていた。同点滴の薬剤の容器も,瓶ではなく,15cmくらいの白いポリ袋様のものだった。 出産の2日後,病室で気分が悪くなり,息苦しくなったため,看護師を呼び,検査を受けた。検査の結果,血が薄いと言われ,輸血をすることになった。輸血の種類は聞いていないが,血液の入った赤い輸液の袋が一つあったのを覚えている。途中で,輸液 の袋に,透明な白い瓶に入った,何か違う液を,注射器で注入していたように思う。 (2) 検討ア前記1(2)及び(5)のとおり,原告134番が, 覚えている。途中で,輸液 の袋に,透明な白い瓶に入った,何か違う液を,注射器で注入していたように思う。 (2) 検討ア前記1(2)及び(5)のとおり,原告134番が,昭和59年●月●日午後3時30分,●病院において,帝王切開により,第二子(男児)を出産し,その際,「中量」の出血をしたこと,同出産に係る母子手帳に「前置胎盤のため出血あり,破れあり帝王切開となる」との記載があること,●病院に,昭和57年に5本,昭和58年に3本,昭和59年に20本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができる。 イしかし,原告134番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告134番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告138番関係 第1 当事者の主張(原告138番の主張) 1 原告138番は,平成11年●月●日,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 2 原告138番は,昭和54年●月●日,●会●病院(以下「●病院」という。)において,第二子(女児)を出産した。その際の出血量は,717mlと多量である。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告138番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) ィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告138番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 母子手帳によっても,原告138番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告138番の陳述書には,看護師から,出血量が多かったため,分娩中に何らかの薬剤を点滴したとの説明を受けた旨の記載がある。 しかし,かかる記載を前提としても,原告138番が投与を受けた点滴が何の薬剤であったかは全く不明であり,仮に,その点滴が止血剤であったとしても,前記出産当時に存在した一般的な止血剤(アドナ,トランサミン)が投与された可能性もあるから,看護師による前記説明は,原告138番に対して特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを何ら推認させるものではない。 (補助参加人の主張) 原告138番が無症状キャリアである事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ138の1~4)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告138番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 (2) 原告138番は,昭和54年●月●日,●病院において,第二子(女児)を出産した。その際の出血量は約700mlであった。 (3) 原告138番は,平成11年●月●日,●病院で血液検査を受け,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告138番は,平成21年●月から,インターフェロン治療を受けた mlであった。 (3) 原告138番は,平成11年●月●日,●病院で血液検査を受け,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告138番は,平成21年●月から,インターフェロン治療を受けた。 (4) 原告138番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告138番の陳述書(甲ハ138の3)の要旨は以下のとおりである。 原告138番の家族で,C型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告138番は,昭和54年●月●日,●病院において,第二子(女児)を出産した。出産当日,分娩台が他の妊婦で埋まっていて,臨時の分娩台で出産した。そのことと関係あるか分からないが,出血量が多かったという記憶がある。出産後,看護師から,出血量が多かったため,分娩中に何らかの薬剤を点滴したという趣旨の説明をされた。 今思えば,これがフィブリノゲン製剤のことだったのではないかと 考えている。 原告138番は,平成11年●月●日に受けた血液検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが分かり,半年ごとに血液検査等を行って,経過を観察中である。平成21年●月から,インターフェロン治療を受けた。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告138番は,昭和54年●月●日,●病院において第二子(女児)を出産し,その際に約700ml出血したことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和54年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告138番に対する治療の際に特定フィブリノゲ 産し,その際に約700ml出血したことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和54年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告138番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告138番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告139番関係 第1 当事者の主張(原告139番の主張) 1 原告139番は,平成18年●月,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告139番は,その後,肝硬変と診断されている。 2 原告139番は,●病院(平成13年に●病院と改称)において,昭和53年●月●日に第一子(女児)を,昭和57年●月●日に第二子(女児)を,いずれも帝王切開により出産した。 3 ●病院には,昭和56年8月に2本,昭和57年2月に8本の特定フィブリノゲン製剤が納入された。同病院には定期的に特定フィブリノゲン製剤が納入されており,昭和61年には69本も納入されていることからすれば,納入実績が残されていない昭和55年以前にも同病院に特定フィブリノゲン製剤が納入されていたことが強く推認される。 4 原告139番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 母子手帳及び原告139番の陳述書によっても,原告139番が当時,特定フィブ 製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 母子手帳及び原告139番の陳述書によっても,原告139番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告139番は,前記各出産において下半身のみの麻酔を受け,前記各出産時の周囲の状況を認識していたと認められるところ,前記各出産中に点滴を受けたとか,何らかの薬剤の投与を受けたという話は 一切しておらず,このことは,前記各出産における特定フィブリノゲン製剤の投与事実がないことを推認させる。 また,●病院作成の回答書によれば,同病院は特定フィブリノゲン製剤を常備しておらず,依頼があったときに購入していたと認められるところ,第一子(女児)の出産があった昭和53年●月に特定フィブリノゲン製剤の納入があったかは不明であり,第二子(女児)の出産があった昭和57年●月に特定フィブリノゲン製剤の納入があったとは認められない。このような納入実績も前記各出産における特定フィブリノゲン製剤の投与事実がないことを推認させる。 さらに,原告139番は,フィブリン糊として使用された旨の主張もするが,フィブリン糊はそもそも適用外使用である上,第一子(女児)の出産があった昭和53年●月はもちろん,第二子(女児)の出産があった昭和57年●月の時点においても,我が国の臨床の場でフィブリン糊は広く認知されてはおらず,前記各出産において,特定フィブリノゲン製剤がフィブリン糊として使用されたとは考えられない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 原告139番が肝硬変にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結 ない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 原告139番が肝硬変にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ139の1~7,9の1~9)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告139番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告139番にはきょうだいがいる。 (2) 原告139番は,●病院において,昭和53年●月●日に第一子(女児)を,昭和57年●月●日に第二子(女児)を,いずれも帝王切開により出産した。その際の出血量は,いずれも少量(第一子(女児)出産時については258ml)であった。 (3) 原告139番は,平成18年●月,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,●病院でC型肝硬変と診断された。原告139番は,以後,●クリニック及び●病院で治療を受けた。 (4) ●病院には,昭和56年8月に2本,昭和57年2月に8本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,原告139番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告139番の陳述書(甲ハ139の1)の要旨は以下のとおりである。 原告139番の家族で,C型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告139番は,昭和53年●月●日,●病院において,高齢出産のため,帝王切開により第一子(女児)を出産した。下半身のみ麻酔された状態であり,術後,暖房が効いているはずの病室が異常に寒く,震えていた覚えがある。 原告139番は, 病院において,高齢出産のため,帝王切開により第一子(女児)を出産した。下半身のみ麻酔された状態であり,術後,暖房が効いているはずの病室が異常に寒く,震えていた覚えがある。 原告139番は,昭和57年●月●日,●病院において,高齢出産のため,帝王切開により第二子(女児)を出産した。このときも,下半身のみ麻酔された状態であった。 原告139番は,平成18年●月,健康診断で肝臓の数値が悪いと指摘され,●病院における精密検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染 しており,もう肝硬変になっていると言われた。以後,●クリニック及び●病院で治療を受けた。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)及び(4)のとおり,原告139番は,●病院において,昭和53年●月●日に第一子(女児)を,昭和57年●月●日に第二子(女児)を,いずれも帝王切開により出産したこと,同病院には,昭和56年8月に2本,昭和57年2月に8本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和53年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたことを認めるに足りる証拠はない。また,前記1(2)のとおり,前記各出産時の出血量はいずれも少量にとどまるところ,原告139番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告139番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与 によれば,原告139番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告140番関係 第1 当事者の主張(原告140番の主張) 1 原告140番は,平成4年●月頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告140番は,慢性C型肝炎にり患し,インターフェロン治療を受けたが,ウイルス排除には至っていない。 2 原告140番は,昭和52年●月●日,●産婦人科において,帝王切開により第一子(女児)を出産し,多量に出血した。 3 ●産婦人科は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告140番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●産婦人科における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 母子手帳及び原告140番の陳述書によっても,原告140番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告140番の陳述書には,前記出産後に執刀医から出血量が多かったと聞かされ,何本かの点滴を受けた旨の記載があるが,他の止血剤(アドナ,トランサミン)が使用された可能性があり,原告140番は,執刀医や看護師等から,投与を受けた点滴が特定フィブリノゲン製剤であると聞かされていない。したがって,前記記載は,特定フィブリノゲン製剤の投与事実を何ら推認させるものではない。 また,原告140番が前記出産後に黄疸を発症したことも,原告1 40番が前記出産時に輸血を受けた可能性があることか ,特定フィブリノゲン製剤の投与事実を何ら推認させるものではない。 また,原告140番が前記出産後に黄疸を発症したことも,原告1 40番が前記出産時に輸血を受けた可能性があることからすると,直ちに特定フィブリノゲン製剤の投与事実を推認させるものではない。 (補助参加人の主張)原告140番が慢性肝炎にり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ140の1~5)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告140番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告140番にはきょうだいがいる。 (2) 原告140番は,昭和52年●月●日,●産婦人科において,帝王切開により第一子(女児)を出産した。その際の出血量は,多量であった。原告140番は,産後47日目に黄疸で入院した。 (3) 原告140番は,●診療所で慢性活動性C型肝炎と診断され,平成4年●月からインターフェロン治療を受けた。原告140番は,平成12年頃からは,●医院に通院するようになり,同医院でもインターフェロン治療を受けた。 (4) 原告140番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告140番の陳述書(甲ハ140の1)の要旨は以下のとおりである。 原告140番の父母,きょうだい及び子で,C型肝炎ウイルスに感 染した者はいない。 原告140番は,昭和52年●月●日,●産婦人科において,帝王切開によ 下のとおりである。 原告140番の父母,きょうだい及び子で,C型肝炎ウイルスに感 染した者はいない。 原告140番は,昭和52年●月●日,●産婦人科において,帝王切開により第一子(女児)を出産した。予定日を10日以上過ぎてもなかなかお腹の子が降りてこなかったため,急きょ,帝王切開での出産となった。出産が終わって病室に戻った後,●●医師から,「出血が多かった」と言われ,点滴を受けたのを覚えている。輸血をされた記憶はない。 出産後47日目に黄疸の症状が出て,●病院に約40日間入院した。 原告140番は,平成4年●月頃,●診療所で血液検査等を受け,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。その後,同診療所及び●医院でインターフェロン治療を受けた。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●産婦人科における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告140番は,昭和52年●月●日,●産婦人科において,帝王切開により第一子(女児)を出産し,その際に多量に出血したことを認めることができる。 イしかし,●産婦人科において,昭和52年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告140番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告140番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノ ゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告141番関係 第1 当 ないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノ ゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告141番関係 第1 当事者の主張(原告141番の主張) 1 原告141番の妻は,平成4年●月●日,●病院において,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,平成19年●月●日,C型肝硬変を原因とする原発性肝がんにより死亡した。 2 原告141番の妻は,昭和46年●月頃,●会●産婦人科(以下「●産婦人科」という。)において,卵巣腫瘍の摘出手術を受けた。 3 ●産婦人科は,厚生労働省の公表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 4 原告141番の妻がC型肝炎ウイルスに感染したのは,前記機会における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告141番の供述によっても,前記手術の詳細や,手術当時の原告141番の妻の具体的病態は不明であるから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 また,原告141番の妻は,昭和38年の第二子の出産の際及び前記手術の際にそれぞれ輸血を受けたようであるところ,前記各輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定できない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ141の1~4,8~18,原告141番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ141の1~4,8~18,原告141番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告141番の妻は,昭和●年●月●日生まれの者である。原告141番の妻には3人のきょうだいがいる。 (2) 原告141番の妻は,昭和35年●月●日,●産婦人科において,第一子(女児)を出産した。 (3) 原告141番の妻は,昭和38年●月●日午後4時45分,帝王切開により,第二子(男児)を出産し,その際,多量の出血をした。 分娩介助は,●●医師が行った。 (4) 原告141番の妻は,昭和46年●月,●産婦人科において,卵巣腫瘍の摘出手術を受けた。 (5) 原告141番の妻は,平成4年●月●日,●病院において,慢性C型肝炎と診断され,遅くとも平成10年●月に肝硬変に,遅くとも平成16年●月に肝がんへと病態が進行し,平成19年●月●日に死亡した。 (6) ●産婦人科は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関一覧に記載されているものの,原告141番の妻に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●産婦人科における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告141番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告141番の陳述書(甲ハ141の1) 原告141番の妻は,昭和35年●月●日,●産婦人科において,第一子(女児)を出産した。出産は順調で,乳腺炎になったということ以外には特に印象に残っていることはない。 原告141番の妻は,昭和38年●月●日,●産婦人科において,第二子(男児)を出産した。 ,第一子(女児)を出産した。出産は順調で,乳腺炎になったということ以外には特に印象に残っていることはない。 原告141番の妻は,昭和38年●月●日,●産婦人科において,第二子(男児)を出産した。出産の際,原告141番の妻の子宮か卵巣のどちらかに,腫瘍があったのか,それとも子宮内膜症だったのかは把握していないが,出産と同時に,前記症状への処置も行われた。 原告141番の妻は,昭和46年,●産婦人科において,卵巣腫瘍の摘出手術を受けた。手術を担当したのは,●●医師ないし●●医師だった。7,8時間にも及ぶ大手術だったが,成功し,特に異変は起こらなかった。原告141番の妻は,数か月入院していた。 原告141番の妻は,昭和49年,健康診断で肝機能障害を指摘された。その後,一度大きな病院で診てもらおうとのことで,平成4年に,●病院で検査を受けたところ,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 感染判明後,インターフェロン治療を何回か受けたが,回復には至らず,肝硬変,肝がんへと病態が進行した後,平成19年●月●日に他界した。 原告141番は,薬害C型肝炎のことを知り,●産婦人科に架電したところ,●●医師から,電話の中で,「あの薬はいい薬です。 使っていましたよ。」と言われた。 原告141番の妻の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。 イ原告141番の妻のきょうだい(義理のきょうだいを含む。)の 各「覚え書」(甲ハ141の11~16)原告141番の妻が,昭和38年●月●日,第二子(男児)を出産した際,卵巣腫瘍による卵巣破裂寸前で,母子ともに危険が予想されたため,急きょ帝王切開により出産がされた。早産のために胎児は保育器での療養であった。4,5か月ほど入院加療後,原告141番の妻は, 産した際,卵巣腫瘍による卵巣破裂寸前で,母子ともに危険が予想されたため,急きょ帝王切開により出産がされた。早産のために胎児は保育器での療養であった。4,5か月ほど入院加療後,原告141番の妻は,母子ともに自宅に戻り,療養及び育児に専念していたと聞いている。また,その間,乳腺炎にり患し,主治医に度々往診してもらっていたとのことである。 原告141番の妻は,前記出産から8年後である昭和46年●月,子宮内膜症にり患し,子宮の大部分を摘出する,7,8時間を要する大手術を受け,同手術後5,6か月入院加療をして,職場復帰をしたが,体調が優れず,病院通いの毎日だったと聞いている。 ウ原告141番の供述(本人尋問)原告141番の妻の昭和38年●月の第二子の出産における,出血量,輸血の有無,止血剤の使用の有無は覚えていない。 原告141番の妻の昭和46年の卵巣腫瘍の摘出手術の際,原告141番は最初から最後まで立ち会った。同手術が終わった後,手術の内容などについて医師から説明があったように思うが,覚えていない。手術における出血量,輸血の有無についても,はっきりとは覚えていない。原告141番の妻が,仕事から帰った後にすぐ疲れてしまう状態になったのは,昭和46年の前記手術以前ではない。 原告141番は,原告141番の妻から,医師からフィブリノゲン製剤を投与したと言われた旨の話を聞いたことはない。 原告141番は,薬害C型肝炎のことを知って以降,●産婦人 科に架電し,●●医師と電話で話をした際,同医師に対し,原告141番の妻が,昭和46年に受けた手術の際,フィブリノゲン製剤を使ったのかと聞いたところ,あれは,いい止血剤でしたよ,使ってますよ,使いましたよと言われた。 原告1 同医師に対し,原告141番の妻が,昭和46年に受けた手術の際,フィブリノゲン製剤を使ったのかと聞いたところ,あれは,いい止血剤でしたよ,使ってますよ,使いましたよと言われた。 原告141番の妻の,第一子の出産は,普通分娩で,特に問題はなかった。 原告141番の妻は,入れ墨,人工透析,ピアス,鍼治療の経験はない。 (2) 検討ア前記1(4)のとおり,原告141番の妻が,昭和46年●月,●産婦人科において,卵巣腫瘍の摘出手術を受けたことを認めることができる。 イしかし,●産婦人科において,昭和46年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告141番の妻に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,原告141番の供述及び平成25年12月9日付け陳述書には,●●医師が原告141番の妻に特定フィブリノゲン製剤を使用したという内容が含まれているが,原告141番の妻の病態や手術中の状況等,特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったことを基礎付ける事実に関し,同医師がいかなる認識を有していたのかが明らかでなく,いずれも採用できない。 3 結論以上によれば,原告141番の妻については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえない し,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告142番関係 第1 当事者の主張(原告142番の主張) 1 原告142番の母は,平成12年,C型肝炎ウイルスに感染し の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告142番関係 第1 当事者の主張(原告142番の主張) 1 原告142番の母は,平成12年,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,平成24年●月●日,慢性C型肝炎を原因とする肝硬変で死亡した。 2 原告142番の母は,社会福祉法人●病院(以下「●病院」という。)において,昭和52年頃に左大腿骨矯正骨切り術の手術(股関節の骨を切断した上でずらす手術)を,平成5年に左上腕骨粉砕骨折の手術(骨折した部位を切開し,約20cmのプレートを挿入して骨を固定する手術)を,それぞれ受けた。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である上,納入記録によれば,昭和55年以降,特定フィブリノゲン製剤を定期的かつ大量に納入している。 4 原告142番の母がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告142番の陳述書によっても,原告142番の母が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告142番の陳述書には,原告142番の母が左大腿骨矯正骨切り術の手術後,点滴を受けたと聞いている旨の記載があるが,特定フィブリノゲン製剤は,アドナやトランサミンといった一般的な止血剤 とは異なり,そもそも全ての出血性疾患に用いられていたわけではなく,止血剤としてすら一般的な使用が推奨されてきたものでもないところ,原告142番の母が,医師や看護師等から,投与を受けた点滴が特定フィブリノゲン製剤であると聞かされていたわけでもない。したがって,前記記載から,前 ら一般的な使用が推奨されてきたものでもないところ,原告142番の母が,医師や看護師等から,投与を受けた点滴が特定フィブリノゲン製剤であると聞かされていたわけでもない。したがって,前記記載から,前記手術の際に特定フィブリノゲン製剤が投与された事実を推認することはできない。 また,前記各手術当時,●病院に特定フィブリノゲン製剤が納入されていたのかは不明である上,仮に納入されていたとしても,外科領域においては,昭和50年代以降,一般的にDICの治療として特定フィブリノゲン製剤は用いられていなかった。 さらに,原告142番は,前記各手術において,フィブリン糊として特定フィブリノゲン製剤が使用された可能性があると主張するようであるが,フィブリン糊は,そもそも適応外使用である上,左大腿骨矯正骨切り術の手術があった昭和52年の時点では,我が国の臨床の場でフィブリン糊は広く認知されておらず,左上腕骨粉砕骨折の手術があった平成5年の時点では,特定フィブリノゲン製剤をフィブリン糊として使用することはなくなっていた。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 原告142番の母が肝細胞がんにり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ142の1,2,7,9,10)及び弁論 の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告142番の母は,昭和●年●月●日生まれの者である。 原告142番の母には6人のきょうだいがいる。 (2) 原告142番の母は,転倒により左上腕骨を粉砕骨折し,平成5年●月●日から同年 ) 原告142番の母は,昭和●年●月●日生まれの者である。 原告142番の母には6人のきょうだいがいる。 (2) 原告142番の母は,転倒により左上腕骨を粉砕骨折し,平成5年●月●日から同年●月●日まで,●病院に入院し,同年●月●日,左上腕骨骨折観血的整復固定術の手術を受けた。 (3) 原告142番の母は,平成24年●月●日,C型肝硬変により死亡した。 (4) 原告142番の母に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,前記各手術当時の当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告142番の陳述書(甲ハ142の1)の要旨は以下のとおりである。 原告142番の母のきょうだい及び夫で,C型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告142番の母は,先天性の左変形性股関節症と診断され,昭和52年頃,●病院で左大腿骨矯正骨切り術の手術を受けた。手術の際には出血が多かったこと,手術後に点滴を受けていたことを聞いており,この点滴の際に止血剤を使用していた疑いがある。 原告142番の母は,デパートのエスカレーターで転倒し,平成5年,●病院で左上腕骨粉砕骨折の手術を受けた。手術で相当量の出血があったと聞いている。 原告142番の母は,平成12年に検査を受けた際,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告142番の母は,肝硬変を原因とする尿毒症にり患して意識を失って救急入院し,平成24年 ●月●日に死亡した。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告142番の母は,平成5年●月●日,●病院において,左上腕 に感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告142番の母は,平成5年●月●日,●病院において,左上腕骨粉砕骨折の手術を受けたことを認めることができる。また,原告142番の母の昭和52年頃の左大腿骨矯正骨切り術の手術に関し,診断書やカルテなどの医療機関の作成した証拠があるものではないが,前記陳述書には具体的状況が記載してあり,左上腕骨粉砕骨折の手術に係る簡易保険入院証明書(診断書)に既往歴として左変形性股関節に対する手術を受けた旨の記載があり(甲ハ142の2),原告142番の母が,平成15年,●病院の医師に対し,25年前に左大腿骨骨切り術の手術を受けた旨の説明をしていること(甲ハ142の8)を併せ考慮すれば,原告142番の母が昭和52年頃,●病院において左大腿骨矯正骨切り術の手術を受けたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,前記各手術当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告142番の母に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告142番の母については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告143番関係 第1 当事者の主張(原告143番の主張) 1 原告143番は,平成14年頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告143番は,昭 第1 当事者の主張(原告143番の主張) 1 原告143番は,平成14年頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告143番は,昭和61年●月●日夜中から同月●日にかけて,●会●病院(以下「●病院」という。)において,胃穿孔のため胃の切除手術を受けた。 原告143番は,同年●月頃,同病院において,腸に生じた癒着を引き離しバイパスを通す手術を受けた。 3 ●病院には,昭和61年2月に6本,同年3月に33本,同年4月に17本の特定フィブリノゲン製剤が納入された。 4 原告143番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告143番の陳述書によっても,原告143番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告143番の陳述書には,胃の切除手術の後,数種類の点滴を受けていた旨の記載があるが,その点滴の薬剤名や形状等は一切不明であって,特定フィブリノゲン製剤の投与事実を何ら推認させるものではない。 ●病院は,ごく限られた時期に集中的に特定フィブリノゲン製剤の納入を受けており,このような納入実績から,同病院が必要となった都度,特定フィブリノゲン製剤の購入ないし補充を行っていたとうか がわれる。そして,●病院は,昭和61年2~4月に特定フィブリノゲン製剤の納入を受けているものの,前記各手術が行われた同年●月及び同年●月はもちろん,その後においても特定フィブリノゲン製剤の納入を受けておらず,これらの事情からすると,納入実績から,前記各手術において特定フィブリノゲン製剤が投与 記各手術が行われた同年●月及び同年●月はもちろん,その後においても特定フィブリノゲン製剤の納入を受けておらず,これらの事情からすると,納入実績から,前記各手術において特定フィブリノゲン製剤が投与され又はフィブリン糊として使用された事実を推認することはできない。 (補助参加人の主張)原告143番が慢性C型肝炎にり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 前記各手術を担当したとされる●●医師(以下「●医師」という。)の投与方針は不明であるし,原告143番の病態や前記各手術の具体的内容は何ら明らかになっておらず,原告143番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ143の1~3,4の1,2,甲ハ143の5,7,8)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告143番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。 原告143番には姉がいる。 (2) 原告143番は,昭和61年●月●日,●病院に搬送され,翌●日から同年●月●日まで,同病院に入院した。 (3) 原告143番は,慢性C型肝炎と診断され,●病院で治療を受けた後,平成17年●月●日からは●病院で治療を受けた。 (4) ●病院には,昭和61年2月に6本,同年3月に33本,同年4月に17本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,原告143番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告143番の陳述書(甲ハ143の1)の要旨は以下のとおりである。 告143番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告143番の陳述書(甲ハ143の1)の要旨は以下のとおりである。 原告143番の父母,姉及び内縁の妻は,C型肝炎ウイルスに感染していない。 原告143番は,昭和61年●月●日頃,腹部が痛くなり,●病院に救急搬送された。レントゲンのような検査をし,すぐに手術を受けることになったが,その後の記憶はない。手術後,2,3日昏睡状態が続き,意識が戻らなかったようである。目が覚めてからしばらく数種類の点滴を受けた。また,腹部からドレーンのチューブが数本出ている状態だった。●医師から,「胃穿孔でした。胃液が外に出てしまったから腸とかを出して,みな水で洗ったんですよ。」などと言われた。また,3分の2か3分の1かは忘れたが,胃をとったと聞いた。 原告143番は,まだ入院中であった同年●月頃,前記手術で縫った痕が左右非対称にひきつれを起こしていて,皮膚が引っ張られて痛いため,縫い直しをお願いすることになった。また,併せて,腸に癒着を起こしていることが分かったので,その癒着を引き離しバイパスを通す手術も行われた。この手術のとき,「輸血はしないでほしい」とお願いした記憶があり,併せて,盲腸及び2,3kgの腹部の脂肪をとってもらった。 原告143番は,平成14年●月頃,脳出血で●病院に入院したが,そのときの血液検査等の結果で,C型肝炎ウイルスに感染している ことが判明し,以後,●病院,●病院で治療を受けた。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア原告143番の昭和61年●月●日夜中から同月●日及び同年● た。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア原告143番の昭和61年●月●日夜中から同月●日及び同年●月頃の前記各手術に関し,診断書やカルテなどの医療機関の作成した証拠があるものではないが,前記陳述書には具体的状況が記載してあり,前記1(2)のとおり,原告143番が入院した事実を認めることができること,写真や●病院におけるCT検査により,開腹して胃を切除した事実を認めることができること(甲ハ143の4の1,2,甲ハ143の7)を併せ考慮すれば,原告143番が昭和61年●月●日夜中から同月●日及び同年●月頃,●病院において前記各手術を受けたことを認めることができる。 また,前記1(4)のとおり,●病院には,昭和61年2月に6本,同年3月に33本,同年4月に17本の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができる。 イしかし,原告143番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告143番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告148番関係 第1 当事者の主張(原告148番の主張) 1 原告148番は,平成24年●月●日の検査によりC型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,現在,慢性C型肝炎の治療を受けている。 2 原告148番は,昭和45年の春ないし夏,左足の下腿骨を複雑骨折 148番は,平成24年●月●日の検査によりC型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,現在,慢性C型肝炎の治療を受けている。 2 原告148番は,昭和45年の春ないし夏,左足の下腿骨を複雑骨折し,●医院において,手術を受けた。 原告148番は,昭和46年●月●日,●病院において,左脛骨骨髄炎のため,腐骨除去手術を受けた。 原告148番は,昭和46年●月●日,●病院において,左腸骨から採取した骨片を,左脛骨に移植する手術を受けた。 3 ●医院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関には掲載されていないものの,納入先医療機関には,金沢市内の施設名が不明とされている医療機関があり,特定フィブリノゲン製剤が手書き伝票で納品されることもあったことから,●医院において特定フィブリノゲン製剤を使用しなかったとは断定できない。 ●病院には,昭和55年から昭和63年までの期間において特定フィブリノゲン製剤が納入された記録があり,前記期間以前にも使用されていた可能性はある。 4 原告148番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●医院及び●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告148番の陳述書によっても,原告148番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)原告148番が慢性C型肝炎にり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ148の1,2の1,2,甲ハ148 事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ148の1,2の1,2,甲ハ148の3,10)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告148番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。 原告148番にきょうだいはいない。 (2) 原告148番は,昭和46年●月●日,●病院において,左脛骨骨髄炎のため,腰椎麻酔をして腐骨除去手術を受けた。 原告148番は,昭和46年●月●日,●病院において,前回の手術痕を切開し,左腸骨から採取した骨片を,左脛骨に移植する手術を受けた。 (3) 原告148番は,平成24年●月,●医療センターで検査を受け,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,慢性C型肝炎と診断されて治療を受けるようになった。 (4) 原告148番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における前記各手術当時の特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告148番の陳述書(甲ハ148の1,11)の要旨は以下の とおりである。 原告148番の父は,昭和63年●月●日,肝硬変で死亡したが,C型肝炎ウイルスに感染していたかどうかは分からない。原告148番の母は,平成11年●月●日,くも膜下出血で死亡した。 原告148番は,昭和45年の春から夏にかけての頃,サッカーをしている時,左足の下腿骨を複雑骨折し,●医院で手術を受けた。金具を入れる手術は6時間ほどかかり,相当量の出血もあったとのことであるが,輸血はしていない。 その年の秋から冬にかけて骨髄炎を併発し,やはり●医院で 下腿骨を複雑骨折し,●医院で手術を受けた。金具を入れる手術は6時間ほどかかり,相当量の出血もあったとのことであるが,輸血はしていない。 その年の秋から冬にかけて骨髄炎を併発し,やはり●医院で,金具を外す手術を受けた。 原告148番は,昭和46年●月●日,●病院に転院し,骨髄炎の治療を受けるとともに,腐骨除去手術を受けた。手術台帳によると,脛骨骨髄炎のため,腰椎麻酔をして腐骨摘出術を行ったことが分かる。 原告148番は,昭和46年●月●日にも,●病院において,手術を受けた。手術台帳によると,術前診断は脛骨骨髄炎で,手術方法は骨移植術で,左腸骨から採取した骨片を,前回の手術痕を切開し,脛骨の部分に充填するという手術であったことが分かる。 原告148番は,平成24年●月,●医療センターで心房細動治療のために検査を受けた際,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,現在,慢性C型肝炎と診断されて治療を受けている。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●医院及び●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告148番は,●病院において,昭和46年●月●日に腐骨除去手術を受け,同年●月●日に左腸骨から 採取した骨片を,左脛骨に移植する手術を受けたことを認めることができる。 そして,原告148番の昭和45年の春ないし夏の手術に関し,診断書やカルテなどの医療機関の作成した証拠があるものではないが,前記陳述書には具体的状況が記載してあり,●医療センターのカルテに左足骨折に対する手術歴がある旨の記載があること(甲ハ148の10)を併せ考慮すれば,原告148番が昭和45年の春ないし夏,●医院において前記手術を受けたことを認めることができる。 ターのカルテに左足骨折に対する手術歴がある旨の記載があること(甲ハ148の10)を併せ考慮すれば,原告148番が昭和45年の春ないし夏,●医院において前記手術を受けたことを認めることができる。 イしかし,●医院及び●病院において,前記各手術当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告148番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告148番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告149番関係 第1 当事者の主張(原告149番の主張) 1 原告149番の母は,平成3年,社会福祉法人●会●病院(以下「●病院」という。)における検査により,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきたが,平成25年●月●日,肝硬変により死亡した。 2 原告149番の母は,昭和43年頃,●病院において胞状奇胎により子宮全摘手術を受けた。 3 ●病院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 4 原告149番の母がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告149番の供述によっても,原告149番の母が昭和43年頃に受けた前記手術の詳細や,手術当時の原告149番の母の具体的病態は不明で 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告149番の供述によっても,原告149番の母が昭和43年頃に受けた前記手術の詳細や,手術当時の原告149番の母の具体的病態は不明であるから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告149番は,原告149番の母から,「血を止める薬を打ってもらった。」と聞いた旨供述するが,同供述によっても,当該止血剤が特定フィブリノゲン製剤である旨を聞いているわけでもない以上,原告149番の母に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認させるものではない。 また,原告149番の母は,前記手術の際に輸血を受けたようであるところ,当該輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定できない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ149の1~4,8,11~14,原告149番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告149番の母は,昭和●年●月●日生まれの者である。 (2) 原告149番の母は,昭和43年頃,●病院において,胞状奇胎により,子宮全摘手術を受けた。 (3) 原告149番の母は,平成3年,●病院において,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,平成25年●月●日,肝硬変により死亡した。 (4) ●病院は,昭和43年,昭和44年当時,産婦人科ほか7の診療科を有し,ベッド数は昭和44年6月までは188床,同年7月からは260床,産婦人科における医師数は1名(その他に非常勤等で勤 (4) ●病院は,昭和43年,昭和44年当時,産婦人科ほか7の診療科を有し,ベッド数は昭和44年6月までは188床,同年7月からは260床,産婦人科における医師数は1名(その他に非常勤等で勤務していたかは不明),産婦人科における看護師数及び年間手術件数はいずれも不明である。 昭和43年,昭和44年当時,●病院において,特定フィブリノゲン製剤を常備していたかはいずれも不明である。 (5) ●病院には,昭和58年に3本,昭和59年に13本,昭和60年に2本,昭和62年に4本,昭和63年に3本の特定フィブリノ ゲン製剤が納入されたが,原告149番の母に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告149番の母に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告149番の陳述書(甲ハ149の1)原告149番の母は,原告149番が3歳くらいの頃,胞状奇胎で出血がひどくなり,●病院に入院して手術を受けることになった。その際,医師から「子供をあきらめてください。」と言われた。 前記手術はうまくいかず,ベッドのシーツを汚すほどの多量の出血があり,止血のための薬を打ってもらったが止まらず,医師から「もう1度お腹を開けさせてほしい。」と言われて,生死をさまようほどの2度目の手術を受け,その際に輸血も受けた。原告149番の母は,前記の2度の手術のせいで,すぐに疲れやすいなど身体が弱くなってしまったと思っていた。 原告149番の母は,原告149番が高校生の頃,当時はC型肝炎ということまでは分からなかったが,肝炎に感染していることが分かった。原告149番の母は,「肝臓が悪いと疲れやすくなったりして大変だから。」と言っていたが, 原告149番が高校生の頃,当時はC型肝炎ということまでは分からなかったが,肝炎に感染していることが分かった。原告149番の母は,「肝臓が悪いと疲れやすくなったりして大変だから。」と言っていたが,身体に気を付けて安静にしていればそのうち治るものと思っていたようだった。 平成3年頃,原告149番の母がC型肝炎であることが分かったが,高齢であったため,医師の判断により,インターフェロン治療を受けることはできなかった。 原告149番の母の主治医である●病院の医師は,原告149番の母がC型肝炎にり患した原因について,胞状奇胎の時の手術 ではないかと言っていた。 イ ●●医師の回答書(甲ハ149の3)原告149番の母に対する処置,入院に関する資料については,法定の保存期間を超えているため残っていない。 ●病院の,平成6年以前の,患者に対するフィブリノゲン製剤の使用方針は,①妊娠中又は出産時に大量の出血をした者,②大量に出血するような手術を受けた者,③食道動脈瘤の破裂,消化器系疾患,外傷などにより大量の出血をした者,④がん,白血病,肝疾患などの病気で「血が止まりにくい」と指摘を受けた者,⑤特殊な腎結石・胆石除去(結石をフィブリン塊に包埋して取り除く方法),気胸での胸膜接着,血が止まりにくい部分の止血などの治療を受けた者,⑥平成4年以前に輸血を受けた者,に対して使用するというものだった。 ウ原告149番の訴訟代理人作成に係る令和2年9月3日付け「報告書」(甲ハ149の23) 原告149番の訴訟代理人は,令和2年9月3日,●●医師(以下「●聴取した。 昭和43年頃から5年ほど,●病院に在籍していた。 昭和43年当時,止血のため,特に大出血の場合に,フィ 番の訴訟代理人は,令和2年9月3日,●●医師(以下「●聴取した。 昭和43年頃から5年ほど,●病院に在籍していた。 昭和43年当時,止血のため,特に大出血の場合に,フィブリノゲン製剤を使用していた。 原告149番の母のことは覚えていないが,フィブリノゲン製剤を使用したかどうかは,カルテを見れば分かる。 胞状奇胎とは,異常妊娠であり,ぶどう子と呼ばれる細胞分裂で子宮がいっぱいになるものである。いっぱいになったぶどう子が子宮内の壁を浸食するのを防ぐため,子宮内を掻爬して ぶどう子を清掃して治療する。ぶどう子はがんではないが身体にとって悪性のものであるから,全てのぶどう子を掻爬できなかった場合,子宮摘出という手段によることになる。 胞状奇胎では,1000ml,2000mlといった出血が起こることがある。胞状奇胎の治療に際してフィブリノゲン製剤を使ったかどうかについては,一般論としては使用したと思うし,輸血用血液製剤も同時に使用する。 胞状奇胎で2度手術するということはあり得る。2度手術したという場合,1度目は子宮掻爬でぶどう子を取ろうとしたが取りきれず,2度目に子宮摘出の手術をしたのではないかと思う。 エ原告149番の供述(本人尋問)原告149番の母がC型肝炎ウイルスに感染した原因は,胞状奇胎の手術をしたことにあると考えている。 原告149番の母が前記手術を受けた時期については,昭和●年生まれの原告149番が●歳くらいの頃だったため,昭和●年頃だと思う。なお,原告149番の母のカルテの中で,平成5年の記載として「20年前,絨毛性疾患にて子宮摘出」とのものがあり,子宮摘出したのが昭和48年頃ということになる点につ 頃だったため,昭和●年頃だと思う。なお,原告149番の母のカルテの中で,平成5年の記載として「20年前,絨毛性疾患にて子宮摘出」とのものがあり,子宮摘出したのが昭和48年頃ということになる点については,原告149番の母の計算違いではないかと思う。 原告149番の母が,胞状奇胎の手術を受けることになった経緯については,妊娠中に出血が止まらず,様子がおかしいということで,医師から入院を指示され,検査を通じて,胞状奇胎だということを知らされたということだった。具体的な出血量は分からない。前記のとおり,原告149番の母は,当時妊娠中だったところ,医師から,胞状奇胎にり患していることが発覚した以上, 子供を産むことは諦めてくださいと言われたようである。 3歳頃の記憶はほとんどないが,原告149番の父に連れられて原告149番の母が入院する病院に行く道中,医師から原告149番の父に対し,原告149番の母の具合が危険な状態であり,今日か明日まで持つかどうか分からない旨の連絡を受け,とてもショックを受けたことを覚えている。 原告149番の母の受けた,1度目の胞状奇胎の手術については,直接見たわけではないが,原告149番の母から,とても大変な手術であり,手術を終えて病室に戻ってからベッドのシーツが赤く染まるほど多量の出血があったと聞いた。また,原告149番の母が,1度目の手術後に目を覚ました時,かなりの腹痛があり,痛み止めや血を止める薬を何度も打ってもらったが,なおも出血が止まらず,命に危険を及ぼす状況ということで,医師から,出血がひどいので,血を止める薬を打っても,このままの状況じゃ危ないので,もう1度お腹を開けさせてくださいと言われ,1度目の手術から12時間後くらいの時点で,2度目の手術を受けざるを得なく から,出血がひどいので,血を止める薬を打っても,このままの状況じゃ危ないので,もう1度お腹を開けさせてくださいと言われ,1度目の手術から12時間後くらいの時点で,2度目の手術を受けざるを得なくなったと聞いている。前記の血を止める薬が注射だったのか,点滴だったのか,薬剤の名前については聞いていない。 原告149番の母は,1度目の手術と2度目の手術の間に,輸血を受けたと述べていた。輸血の種類や量については聞いていない。 原告149番の母は,2,3か月,●病院に入院していた。原告149番の母が,退院して自宅に戻ってきた時の様子は覚えていない。 原告149番の母は,平成3年頃,C型肝炎にり患しているこ とが判明したところ,同人を診察した●病院の医師は,胞状奇胎の手術を受けたことがC型肝炎ウイルス感染の原因だと思う旨を述べるとともに,輸血が前記原因だという説明もしていたように思う。 原告149番の家族で,原告149番の母以外にC型肝炎ウイルスに感染している者はいないと思う。 原告149番の母は,胞状奇胎の手術を受けて以降,肝炎り患が判明するまでの間,大きな病気をしたり手術を受けたりしていない。また,原告149番の母が原告149番を出産した際に,大量出血をしたとか,輸血をしたという話は聞いていない。 原告149番の母は,人工透析,鍼治療,ピアスの経験はない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告149番の母が,昭和43年頃,●病院において,胞状奇胎により子宮全摘手術を受けたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和43年頃の当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告149番の母に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のあ を認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和43年頃の当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告149番の母に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,昭和43年頃に●病院の産婦人科で勤務していた●医師は,同年当時,●病院で特定フィブリノゲン製剤を使用していた,胞状奇胎の治療に際して特定フィブリノゲン製剤を使ったかどうかについて,一般論としては使用したと思う,と述べているが,約50年前に特定フィブリノゲン製剤を使用していたことを覚えているのはいかなる理由によるものか,当時の他の薬剤の使用状 況について具体的記憶はあるか,という点が不明確であるし,原告149番の母の症状や手術の状況など,使用した可能性についての具体的根拠にも触れていないのであるから,具体的状況に照らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 3 結論以上によれば,原告149番の母については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告150番関係 第1 当事者の主張(原告150番の主張) 1 原告150番は,平成5年頃,慢性C型肝炎にり患していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告150番は,昭和46年●月●日,●病院(現在の名称は,●医療センター。以下,名称変更の前後を問わず「●病院」という。)において,骨盤位牽出により,第二子(女児 肝炎の治療を受けてきた。 2 原告150番は,昭和46年●月●日,●病院(現在の名称は,●医療センター。以下,名称変更の前後を問わず「●病院」という。)において,骨盤位牽出により,第二子(女児)を出産した。 3 ●病院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 4 原告150番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告150番の供述によっても,前記出産における具体的な出血量は不明であり,その他に何らかの異常があった様子はうかがわれず,DICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められないから,特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ150の1,6~8,原告150番本人) 及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告150番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告150番には6人のきょうだいがいる。 (2) 原告150番は,昭和46年●月●日午後8時58分,●病院において,骨盤位牽出により,第二子(女児)を出産した。 (3) 原告150番は,平成5年頃,慢性C型肝炎にり患していることが判明し,遅くとも平成16年●月に,同様の診断を受けた。 (4) 原告150番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●病院における特定フ 慢性C型肝炎にり患していることが判明し,遅くとも平成16年●月に,同様の診断を受けた。 (4) 原告150番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告150番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告150番の平成26年12月10日付け,平成28年7月24日付け陳述書(甲ハ150の1,12)原告150番は,昭和46年●月●日,●病院において,第二子(女児)を出産した。胎位は骨盤位であり,骨盤位牽出が行われた。破水してから病院に行ったため,かなりの難産だった。分娩にはかなり長い時間がかかり,切開に伴って出血もあったと思う。出産時の医師と看護師の会話から,輸血が行われたと思う。 原告150番は,同月●日,●病院を退院した。 原告150番は,平成5年頃,慢性C型肝炎にり患している旨を指摘され,平成10年から●病院において診察を受けた。平成16年●月から,●病院に3回入院し,インターフェロン治療などを受けた。同治療の結果,間質性肺炎にり患し,肺に空洞ができてしまい,C型肝炎ウイルスも残存しているものの,肝機能は 回復し,病状は落ち着いた。 原告150番は,●病院に対し,前記出産の際のカルテが残っていないか問い合わせたが,残っていない旨の回答だった。 原告150番は,前記出産以外に,身体の切開を伴う手術を受けていない。また,昭和34年●月●日,第一子(男児)を出産したところ,正常分娩で特に問題はなかった。 原告150番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告150番は,鍼治療の経験はない。 イ ●月●日,第一子(男児)を出産したところ,正常分娩で特に問題はなかった。 原告150番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告150番は,鍼治療の経験はない。 イ原告150番の供述(本人尋問)昭和46年の第二子(女児)の出産の際は,病院に行く前にトイレで破水があった。タクシーで●病院に向かい,病院に到着してからは,陣痛が来るまで病室にいた。タクシーでの移動中,出血しているとか,何か漏れているといった感じはあまりしなかった。 前記出産は,骨盤位牽出で行われ,膣が破れて出血をした。医師が看護師に対して,破れた箇所を押さえるよう指示していた。 医師と看護師の会話中,輸血をするということをはっきりと聞いておらず,止血剤を使ったかどうかについても聞いていない。また,出産後2日くらいは少量の出血が続いたところ,止血の措置として,ガーゼ様のものをあてがう手当を受けた。輸血は受けていないと思う。 前記出産を終えた翌日は,母乳をあげることができなかった。 看護師からは,体の調子が戻っていないので,調子が戻るまで待って,それから赤ちゃんに母乳をあげてくださいと言われた。母乳をあげることができたのは,出産当日から数えて3日目の夕方であり,母乳は良く出たため,なぜ待たせられたのか疑問に思っ たことを覚えている。 ●病院に入院中,肝臓についての指摘は受けていない。 原告150番はピアス,鍼治療の経験はない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告150番が,昭和46年●月●日午後8時58分,●病院において,骨盤位牽出により,第二子(女児)を出産したことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和46年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われて ●月●日午後8時58分,●病院において,骨盤位牽出により,第二子(女児)を出産したことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和46年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告150番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告150番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告151番関係 第1 当事者の主張(原告151番の主張) 1 原告151番は,平成10年●月,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,慢性C型肝炎の治療中である。 2 原告151番は,昭和43年●月,●病院(現在は●医療センター)において,脊椎分離すべり症の治療のため,腸骨をかまぼこ状に切り取り,それを脊柱に固定し,第4腰椎と第5腰椎を固定する脊椎固定術(腰椎固定術)を受けた。原告151番の記憶によれば,2000mlの輸血を受けたとのことであり,それ以上の出血があったものと推測される。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告151番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 そもそも前記手術の際の原告151番の病態や手術態様の詳細が不明である以上,前記手術において,原告151番に対し はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 そもそも前記手術の際の原告151番の病態や手術態様の詳細が不明である以上,前記手術において,原告151番に対し,特定フィブリノゲン製剤投与の必要があったことを認めることはできない。 ●病院作成の回答書には,「一般的に脊椎すべり症にフィブリノゲン製剤は,使用しておりません」と記載されており,当該記載に照らすと,前記手術では,特定フィブリノゲン製剤が投与されなかったことが推認される。 (補助参加人の主張) 原告151番が慢性肝炎にり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ151の1~3,7)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告151番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。 原告151番にはきょうだいがいる。 (2) 原告151番は,昭和43年●月●日,●病院(現在は●医療センター)において,脊椎分離症の手術を受けた。 (3) 原告151番は,平成10年頃から,●クリニックで慢性C型肝炎のフォローを受けていたが,平成18年●月から●病院で,平成20年●月から●会●病院で治療を受けるようになった。 (4) 原告151番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における昭和43年当時の特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告151番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告151番の陳述書(甲ハ151の1) リノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告151番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告151番の陳述書(甲ハ151の1)原告151番の両親,きょうだいにC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告151番は,昭和43年●月,●病院において,第4腰椎と第5腰椎を固定するため,腸骨をかまぼこ状に切り取り,それを脊柱に固定する手術を受けた。手術に当たっては,輸血が必要になる とのことで,親族や兄の同僚らから合計2000mlの献血をしてもらった。原告151番自身は,血液銀行の血液で輸血をしてもらった。 退院後,半年ほどして,●病院で血清肝炎と言われ,その後,●病院に入院して治療を受け,退院後も20歳頃まで薬の服用を続けた。原告151番は,平成10年●月,血尿が出て●病院を受診したところ,C型肝炎ウイルスに感染していることが分かり,以後,同病院(●クリニック),●病院,●会●病院で治療を受けた。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 イ ●医療センター作成の回答書(甲ハ151の7)昭和43年頃のフィブリノゲン製剤使用の有無は確認できない。 一般的に脊椎すべり症にフィブリノゲン製剤は使用していない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告151番は,昭和43年●月●日,●病院において,脊椎分離症の手術を受けたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和43年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,前記2(1)イのとおり,●医療センターは,一般的に脊椎すべり症に特定フィブリノゲン製剤は使用していないとしているところ,原 ,●病院において,昭和43年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,前記2(1)イのとおり,●医療センターは,一般的に脊椎すべり症に特定フィブリノゲン製剤は使用していないとしているところ,原告151番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告151番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし, 他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告152番関係 第1 当事者の主張(原告152番の主張) 1 原告152番は,平成8年,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,慢性C型肝炎の治療を継続している。 2 原告152番は,昭和54年●月●日,●病院(現在は医療法人●会●病院,以下「●病院」という。)において,乳がんにより,左乳房切除及び左リンパ腺切除の手術を受けた。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告152番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 そもそも前記手術の際の原告152番の病態や手術態様の詳細が不明である以上,前記手術において,原告152番に対し,特定フィブリノゲン製剤投与の必要があったことを認めることはできない。 (補助参加人の主張)原告152番が慢性肝炎にり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事 て,原告152番に対し,特定フィブリノゲン製剤投与の必要があったことを認めることはできない。 (補助参加人の主張)原告152番が慢性肝炎にり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ152の1~3,6~8)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告152番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告152番にはきょうだいがいる。 (2) 原告152番は,昭和54年●月●日,●病院で検査を受け,乳がんであることが分かり,同月●日,●病院において,左乳房切除及び左リンパ腺切除の手術を受けた。その際,原告152番は,1000mlの輸血を受けた。 (3) 原告152番は,平成5年●月●日,●病院で血液検査を受けたところ,GOT,GPTが基準値を上回った。 原告152番は,医療法人●会●病院(以下「●病院」という。),医療法人●クリニック(以下「●クリニック」という。)及び独立行政法人●病院に通院した後,平成16年●月●日,●病院で慢性C型肝炎と診断され,その治療を開始した。原告152番は,平成23年●月,●クリニックにも通院し,強ミノの注射を受けるようになった。 (4) 原告152番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告152番の陳述書(甲ハ152の1)の要旨は以下のとおりである。 原告152番の両親,きょうだい,夫及び子にC型肝炎ウイルスに感染している者はいない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告152番の陳述書(甲ハ152の1)の要旨は以下のとおりである。 原告152番の両親,きょうだい,夫及び子にC型肝炎ウイルスに感染している者はいない。 原告152番は,昭和54年●月●日,●病院で検査を受け,乳がんであることが分かった。原告152番は,同月●日,●病院において,左乳房の下を横に切り,左乳房を全部切除し,左リンパ腺を切除する手術を受けた。手術前に,主治医から一般の場合よりも出血が多いと説明され,1000mlの輸血を受けた。手術後に気が付いたの は病室に戻ってからのことであり,点滴をされたこと,腕が動かないことを記憶している。縫合された傷口には長い間ガーゼが当てられていた。 原告152番は,同年●月●日,●病院を受診し,抗がん剤治療を開始したが,1か月ほどで肝機能に異常が見られ,血清肝炎であると言われ,抗がん剤治療を中止し,●病院で血清肝炎の治療を受けた。 以後,平成3年頃までは同病院での投薬治療,同年頃から平成7年頃までは●病院での投薬治療,平成7年頃から平成16年頃までは●クリニックでの投薬治療を受けた。平成8年に慢性C型肝炎であると指摘され,平成16年●月,●病院でその治療を開始し,平成23年●月からは●クリニックでも治療を受けている。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告152番は,昭和54年●月●日,●病院において,左乳房切除及び左リンパ腺切除の手術を受け,その際に1000mlの輸血を受けたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和54年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告152番に対する リンパ腺切除の手術を受け,その際に1000mlの輸血を受けたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和54年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告152番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告152番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告154番関係 第1 当事者の主張(原告154番の主張) 1 原告154番は,平成14年●月,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,慢性C型肝炎についてインターフェロン治療を受けたところ,ウイルス検出せずの状態となった。 2 原告154番は,昭和54年●月●日,●会●病院において,第三子(男児)を出産した。出血量は多量であり,分娩後の出血のため,子宮全剔術を受けた。 3 ●会●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関であり,同病院の回答によれば,納入実績が判明している昭和55年以前の前記出産時も特定フィブリノゲン製剤を常備していたとのことである。 4 原告154番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●会●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告154番は,前記出産後に出血が続いたことから前記手術を受け,これにより多量の出血をしたとの事情が存するところ,このような出血の継続が,DICの 定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告154番は,前記出産後に出血が続いたことから前記手術を受け,これにより多量の出血をしたとの事情が存するところ,このような出血の継続が,DICの発症による血液凝固不全によるものである可能性が否定できないことに照らすと,原告154番が,前記出産や前記手術の際,DICの発症又はその危険が生じていたなど,特定フィブリノゲン製剤投与が考えられる病態であった抽象的な可能性は否定できない。 しかしながら,前記出産後の出血の継続が,DICの発症による血液凝固不全によるものであることを裏付ける証拠はないし,仮にそうであったとしても,DICの最も重要な治療法は基礎疾患を早期に排除することであり,本件における基礎疾患として考えられるものは原告154番の述べる常位胎盤早期剥離であるところ,常位胎盤早期剥離の排除は簡単であり,前記手術により基礎疾患である常位胎盤早期剥離が排除され,これによりDICの治療が完了し,血液凝固不全が解消した可能性も存する。また,DICに対する治療方針や特定フィブリノゲン製剤投与の方針は,個々の医師により様々であるところ,前記出産や前記手術を担当した医師のこれらの方針は不明である。 以上に照らすと,原告154番については,特定フィブリノゲン製剤投与につき高度の蓋然性をもって立証されたとは認められない。 (補助参加人の主張)原告154番が慢性肝炎にり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ154の1,2,3の1,2,甲ハ154の4)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認める 他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ154の1,2,3の1,2,甲ハ154の4)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告154番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告154番には5人のきょうだいがいる。 (2) 原告154番は,昭和54年●月●日,●会●病院において,第三子(男児)を出産した。出血量は多量であり,分娩後の出血のため, 単純子宮全剔除術を受けた。 (3) 原告154番は,平成14年●月,●会●病院で検査したところ,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告154番は,平成15年●月●日,医療法人●会●病院(以下「●病院」という。)を受診し,同病院でインターフェロン治療等を受け,平成22年●月●日にはウイルスが検出されない状態となった。 (4) ●会●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績は,昭和55年以降のものしか残っていないが,昭和54年当時も本数は不明であるものの,同病院には特定フィブリノゲン製剤が常備されていた。しかし,原告154番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告154番の陳述書等(甲ハ154の1,5)の要旨は以下のとおりである。 原告154番の両親,きょうだいにC型肝炎ウイルスに感染している者はいない。 原告154番は,昭和54年●月●日,●会●病院において,第三子(男児)を出産した。分娩中,記憶に残っているのは,「血圧50」,「止血剤打ってください(●●医師,以下「●医師」という。)」,「(出血で)また汚れた(看護師)」という言葉である。また,両手に点滴されたこと,輸血 た。分娩中,記憶に残っているのは,「血圧50」,「止血剤打ってください(●●医師,以下「●医師」という。)」,「(出血で)また汚れた(看護師)」という言葉である。また,両手に点滴されたこと,輸血をされたこと(後で輸血カードを12,3枚使ったとのことなので,2500mlほど輸血されたと思う。)を覚えている。そして,「おれが責任を持つから」という●医師の言葉があり,子宮全摘の手術となった。手術後から翌日まで,酸素テントの中に入っていた。原告154番の母は,●医師から,胎盤剥離だったという説明を受けたとのことである。同月●日に退院し,その後まもなく肝 臓のことで近医に通院したことがあった。 原告154番は,平成14年●月,●会●病院で検査したところ,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。平成15年●月●日から,●病院でインターフェロン治療等を受け,平成22年●月●日にはウイルスが検出されない状態となった。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●会●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)及び(4)のとおり,原告154番は,昭和54年●月●日,●会●病院において第三子(男児)を出産した際,多量に出血し,分娩後の出血のため,単純子宮全剔除術を受けたこと,同年当時,同病院には特定フィブリノゲン製剤が常備されていたことを認めることができる。 イしかし,前記出産後の出血の継続が,DICの発症による血液凝固不全によるものであることを裏付ける証拠はなく,仮にそうであったとしても,かかる状況において,特定フィブリノゲン製剤を投与するか否かの判断は医師によって異なるところ,担当医の特定フィブリノゲン製剤に関する投与方針がどのようなものであったかは,前記(1) あったとしても,かかる状況において,特定フィブリノゲン製剤を投与するか否かの判断は医師によって異なるところ,担当医の特定フィブリノゲン製剤に関する投与方針がどのようなものであったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告154番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告155番関係 第1 当事者の主張(原告155番の主張) 1 原告155番は,平成12年●月頃,●センターでの献血の際の血液検査の結果,C型肝炎ウイルス抗体が陽性であることが判明した。 2 原告155番は,昭和58年●月●日,●病院(現在は●●病院。 以下,名称変更の前後を問わず,「●病院」という。)において,横隔膜修復,小腸切除及び胸腔持続吸引の手術を受けた。 また,原告155番は,昭和58年●月●日頃,●病院において,左下腿骨骨折及び左小指中手骨骨折に対する手術を受けた。 3 ●病院には,昭和58年に100本(ただし,同年に20本を返品)の特定フィブリノゲン製剤が納入された。 4 原告155番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告155番らの供述によっても,原告155番が,昭和58年●月●日及び同月●日に受けた前記各手術の詳細や,手術当時の具体的病態は不明であるから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であっ 原告155番らの供述によっても,原告155番が,昭和58年●月●日及び同月●日に受けた前記各手術の詳細や,手術当時の具体的病態は不明であるから,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。なお,原告155番の夫は,原告155番が,昭和58年●月●日の手術の後,集中治療室において,小さな容器に入った透明の薬剤の点滴を受けていた旨供述するが,点滴の薬剤名は不明であることからすると,当該点滴が特定フィブリノゲン製剤であったと認めることはできない。 (補助参加人の主張) 特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ155の1~4,5の1~4,甲ハ155の9,10,14,証人原告155番の夫)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告155番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告155番には2人のきょうだいがいる。 (2) 原告155番は,昭和58年●月●日午前9時20分頃,交通事故に遭い,同日,●病院において,横隔膜修復,小腸切除及び胸腔持続吸引の手術を受けた。 また,原告155番は,昭和58年●月●日頃,●病院において,左下腿骨骨折及び左小指中手骨骨折に対する手術を受けた。 (3) 原告155番は,平成12年●月●日,●センターでの献血の際の検査において,C型肝炎ウイルス抗体が陽性との結果が出た。 (4) 昭和58年当時,●病院は,救命科ほか15の診療科を有し,ベッド数は829床,救命科における医師数は14名,救命科における看護師数は18名,救命科における年間手術件数は136件,整形外科 (4) 昭和58年当時,●病院は,救命科ほか15の診療科を有し,ベッド数は829床,救命科における医師数は14名,救命科における看護師数は18名,救命科における年間手術件数は136件,整形外科における医師数は13名,整形外科における看護師数は不明,整形外科における年間手術件数は289件である。 (5) ●病院には,昭和55年に340本,昭和56年に130本(ただし,同年に20本を返品),昭和57年に160本(ただし,同年に20本を返品),昭和58年に100本(ただし,同年に20本を返品)の特定フィブリノゲン製剤が納入されたが,原告155番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテ の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告155番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告155番の陳述書(甲ハ155の1)原告155番は,昭和58年●月●日午前9時頃,自転車で走行中,大型貨物車と衝突する事故に遭った。原告155番は,事故により横隔膜破裂などの受傷をし,●病院で救命手術を受け,その後半年ほど入院していた。事故後1,2か月の記憶はほとんどない。原告155番は,同年●月●日に退院の際,医師から,輸血はしていない旨言われ,大事故だったのに輸血をしていないのは不思議だと感じたのを覚えている。 原告155番は,退院後2年ほどはしんどくなることも多く,寝たり起きたりの生活を送っていた。夜間の救急で診察を受けたこともあったが,入院をしなければならないようなことはなかった。 原告155番は,平成12年●月頃,献血の際の検査で,C型肝炎ウイルス抗体が陽性であることが判明した。判明後は,●クリニックで定期的に血液検査を受けている。 原告155番は,平成19年 った。 原告155番は,平成12年●月頃,献血の際の検査で,C型肝炎ウイルス抗体が陽性であることが判明した。判明後は,●クリニックで定期的に血液検査を受けている。 原告155番は,平成19年頃,薬害C型肝炎のことを知り,●病院に対し,前記手術当時のカルテや手術記録の有無を問い合わせたが,いずれも残っていないとの回答であった。 原告155番は,昭和45年●月●日に,●助産院において,第一子(男児)を出産しており,その際に中量の出血をしているが,前記助産院は厚生労働省が公表したフィブリノゲン製剤納入先医療機関ではない。また,原告155番は,昭和46年●月● 日に第二子(女児),昭和48年●月●日に第三子(男児)を出産しているところ,いずれも出血量が少量の問題のないお産であった。 原告155番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告155番は,入れ墨,鍼治療,違法薬物の注射器での回し打ちの経験はない。 イ原告155番の夫の陳述書(甲ハ155の2)昭和58年●月●日午前9時頃,原告155番が交通事故に遭ったという連絡を受け,すぐに事故現場に駆け付けた。事故の一部始終を見ていたという近隣の人の話では,信号のある交差点で自転車に乗った原告155番が信号待ちをしていたところ,左折する大型トラックの後輪が歩道に乗り上げ,原告155番を自転車ごと巻き込んだということだった。事故現場の警察官から,原告155番は●医院にいると告げられ,血だらけの姿を想像しながら前記医院のドアを開けたところ,目にライトを当てられている原告155番がうめき声を上げていたが,かすり傷程度のように見えた。 原告155番は,その後,救急病院である●病院に転送された。 原告155番は,左ひざを骨折してブ ライトを当てられている原告155番がうめき声を上げていたが,かすり傷程度のように見えた。 原告155番は,その後,救急病院である●病院に転送された。 原告155番は,左ひざを骨折してブラブラした状態になっていたが,脚を触られても痛がらず,むしろお腹が痛いとうめいていた。原告155番は,●病院の医師の判断により,●病院の救命救急センターに搬送された。 原告155番は,昭和58年●月●日の12時頃,●●医師と●●医師(以下「●医師」という。)により,救命救急手術を受けた。後に医師から説明を受けたところによれば,左横隔膜破裂及び左横隔膜ヘルニアに加えて,小腸が3か所切れていたとのこと で,開腹すると血であふれており,洗浄後に小腸を3か所縫合し,臓器を修復したということだった。 原告155番の夫は,●病院及び●病院において,医師に対し,原告155番及び原告155番の夫も含め,親戚きょうだい10人ほどがB型であったことから,「輸血の必要があれば言ってほしい。身内で血液を提供できるので。」と言っていたが,前記手術の際,医師から献血の要請は一度もなかった。 原告155番は,前記手術を受けた後,9日間ほど,救命救急センターの集中治療室で処置治療を受け,その後一般病棟に移った。集中治療室では1日に2回の面会が許されたところ,原告155番の夫は,毎日2回の面会時間の全てに付き添った。原告155番のベッドの周りには,たくさんの機器,管があり,そばに行くのが怖いくらいだった。小さな容器から透明の薬剤の点滴などもされていた。原告155番が集中治療室にいた間は,●医師から,黄だんが出ているとか,生死の分岐点ですと何度も言われたが,奇跡的に命をとりとめた。 原告155番は,一般病棟に移っ 滴などもされていた。原告155番が集中治療室にいた間は,●医師から,黄だんが出ているとか,生死の分岐点ですと何度も言われたが,奇跡的に命をとりとめた。 原告155番は,一般病棟に移った後の昭和58年●月●日,●医師により,左下腿骨折等の手術を受けた。 原告155番は,一般病棟に移ってから2か月ほど経った頃,初めて車いすの訓練をすることになり,ベッドから起き上がる練習をしていた時,10分ほど経ったところで気分が悪くなり,血圧が下がり,危険な状態となった。原告155番の夫が病室に駆け付けると,シーツは血で汚れ,医師が人工呼吸をしていた。その時も輸血はなかったが,小さな透明の容器から点滴をされているのを見た。 原告155番は,その後は快方に向かい,整形外科でのリハビ リも頑張り,昭和58年●月●日に退院した。退院時に薬を処方されたが,肝臓の薬と説明されただけで,詳しいことは聞いていない。原告155番は,退院後,腹部が痛いと言って横になることや,ひどい時には夜間の救急に診てもらいに行ったこともあったが,入院することなどはなかった。 原告155番は,平成12年●月,夫婦で献血をした時の検査の結果,C型肝炎ウイルス抗体が陽性であることが分かった。幸いにも,病態は進行していないが,不安はずっとつきまとっている。 ウ原告155番の夫の供述(証人尋問)原告155番の夫は,原告155番が集中治療室にいた間,すぐに面会ができるように病院に常駐し,毎日見舞いに行っていた。 当時,輸血によるエイズ感染の危険性が新聞で話題になっていたことから,原告155番が受けていた治療内容について,輸血の有無を気を付けて見ていたところ,輸血は一度もされていなかった。また,握りこぶしくらいの 血によるエイズ感染の危険性が新聞で話題になっていたことから,原告155番が受けていた治療内容について,輸血の有無を気を付けて見ていたところ,輸血は一度もされていなかった。また,握りこぶしくらいの大きさの薬剤の点滴をされていたことも覚えている。 原告155番が集中治療室から一般病棟に移った後,原告155番が,ベッドから起き上がる練習をしていた時に気分が悪くなり血圧が下がるという出来事があった。原告155番の夫が病室に駆け付けると,医師が人工呼吸をしており,シーツが血で汚れた状態だった。また,原告155番は小さな容器の点滴を一つだけ受けていた。 原告155番が退院する際,肝臓の薬を処方され,疑問に思った記憶がある。また,原告155番は,退院時に,医師から,輸血はしとらんぞと声を掛けられたそうである。 原告155番は,集中治療室にいた間及び一般病棟に移って以降も,ずっと複数個の点滴を受けていた。点滴の種類,数及び容器については覚えていない。また,原告155番の夫は,原告155番が入院中,医師から止血剤を使ったという説明は受けていないし,血が止まらないから処置をしているということを聞いたこともない。 (2) 検討ア前記1(2)及び(5)のとおり,原告155番が,昭和58年●月●日午前9時20分頃,交通事故に遭い,同日,●病院において,横隔膜修復,小腸切除及び胸腔持続吸引の手術を受けたこと,原告155番が,昭和58年●月●日頃,●病院において,左下腿骨骨折及び左小指中手骨骨折に対する手術を受けたこと,●病院に,昭和55年に340本,昭和56年に130本(ただし,同年に20本を返品),昭和57年に160本(ただし,同年に20本を返品),昭和58年に100本(ただし,同年に2 る手術を受けたこと,●病院に,昭和55年に340本,昭和56年に130本(ただし,同年に20本を返品),昭和57年に160本(ただし,同年に20本を返品),昭和58年に100本(ただし,同年に20本を返品)の特定フィブリノゲン製剤が納入されたことを認めることができる。 イしかし,原告155番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 なお,原告155番の夫は,原告155番に対する処置として,小さな容器から透明の薬剤の点滴がされていた旨供述し,これが特定フィブリノゲン製剤の投与である旨主張するが,当該薬剤の名前は明らかでないから,前記供述によっても,具体的状況に照らして特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するには不十分である。 3 結論以上によれば,原告155番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告156番関係 第1 当事者の主張(原告156番の主張) 1 原告156番は,平成19年●月●日の検査によりC型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,慢性C型肝炎と診断されている。 2 原告156番は,昭和60年頃,●病院において,子宮筋腫の摘出手術(筋腫核出術)を受けた。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告156番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告156番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告156番の陳述書によっても,原告156番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 原告156番が慢性肝炎にり患した事実は否認する。そのような検査,診断結果は提出されていない。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ156の1,2,6~9)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告156番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告156番には8人のきょうだいがいる。 (2) 原告156番は,平成19年●月●日,●診療所で血液検査を受け,C型肝炎ウイルスに感染していることが分かり,●病院(現在は●センター●病院,以下「●病院」という。)で,慢性C型肝炎と診断されてインターフェロン治療等を受けた。 (3) 原告156番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告156番の陳述書(甲ハ156の1)の要旨は以下のとおりである。 原告156番の一番上の姉はB型肝炎,一番下の弟はC型肝炎になっている。 原告156番は,昭和60年頃,下腹部にし ) 原告156番の陳述書(甲ハ156の1)の要旨は以下のとおりである。 原告156番の一番上の姉はB型肝炎,一番下の弟はC型肝炎になっている。 原告156番は,昭和60年頃,下腹部にしこりができたため,●病院を受診し,子宮筋腫があると言われた。同病院に入院し,筋腫摘出の手術を受けた。手術後,原告156番の姉から,「すごく大きかった。手の拳くらいだった」,「出血が止まらなかった」などと言われた。輸血したかどうかは分からない。 原告156番は,平成19年●月●日,●診療所で血液検査を受け,C型肝炎ウイルスに感染していることが分かり,●病院で治療を受けた。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア原告156番の昭和60年頃の手術に関し,診断書やカルテな どの医療機関の作成した証拠があるものではないが,前記陳述書には具体的状況が記載してあり,原告156番が,●病院において,33歳のときに子宮筋腫の手術を受けた旨の申告をしていること(甲ハ156の7~9)を併せ考慮すれば,原告156番が昭和60年頃,●病院において前記手術を受けたことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和60年頃当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告156番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告156番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認め 告156番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告158番関係 第1 当事者の主張(原告158番の主張) 1 原告158番は,平成8年頃,●病院において,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎の治療を受けてきた。 2 原告158番は,昭和46年●月●日,●病院(以下「●病院」という。)整形外科において,仙骨神経根嚢腫のため,椎弓切除,嚢腫切開の手術を受けた。 3 ●病院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 4 原告158番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告158番が●病院において受けた前記手術の際の出血量は120mlにすぎない上,その他に何らかの異常があった様子はうかがわれず,DICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められないから,特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする病態であったとは認められない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実 前記前提事実に証拠(甲ハ158の1~4,9,原告158番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告158番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 前記前提事実に証拠(甲ハ158の1~4,9,原告158番本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告158番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告158番には5人のきょうだいがいる。 (2) 原告158番は,昭和46年●月●日,●病院において,仙骨神経根嚢腫のため,椎弓切除,嚢腫切開の手術を受けた。 (3) 原告158番は,平成8年●月●日,●病院において,C型肝炎に持続感染している旨の診断を受け,平成19年●月●日,同病院において,慢性C型肝炎との診断を受けた。 (4) 昭和46年当時,●病院は,整形外科ほか16の診療科を有し,整形外科におけるベッド数は77床,整形外科における医師数,看護師数及び年間手術件数は不明である。 昭和46年当時,●病院において,特定フィブリノゲン製剤を常備していたかは不明である。 (5) ●病院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関一覧に記載されているものの,原告158番に特定フィブリノゲン製剤を投与した可能性のあることを示すカルテや,●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告158番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告158番の陳述書(甲ハ158の1)原告158番は,中学生であった昭和●年頃から,背中や腰に痛みが出るようになり,高校1年生の時,造影剤をせき髄から投入する透視撮影検査機で診てもらったところ,嚢腫が見つかり,すぐに入院することになった。原告158番の手術は,当時,● 病院でも2例目となる非常に珍しい手術であるとのことで,診察にはいつも10人くらいの医師や医学生が見に来ているとい 見つかり,すぐに入院することになった。原告158番の手術は,当時,● 病院でも2例目となる非常に珍しい手術であるとのことで,診察にはいつも10人くらいの医師や医学生が見に来ているというような状況だった。 原告158番は,昭和46年●月●日,●病院において,仙骨神経根嚢腫のため,椎弓切除,嚢腫切開の手術を受けた。医師から聞いた手術内容の説明は,「お尻の上のあたりに,風船のような袋(嚢腫)ができていて,体液が入り込んでいる。その袋が大きくなって神経を圧迫している。袋に穴を開けて液体を出して神経に当たらなくする。珍しい手術であるし,神経をさわる手術であるから,下半身不随となる危険も伴う。」というものだった。手術後,少し経ってから,主治医であった●●医師から,原告158番の前記手術のことを学会で報告したいという話があり,了解した。●●医師は,後日,「腰・下肢痛の原因としてのsacralcyst仙骨神経根嚢腫」という論文を発表し,その中の「症例3,●歳の女性」というのが原告158番のことである。 原告158番は,平成8年,●病院の婦人科で手術を受ける前の術前検査において,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。感染判明後は,●病院の内科でC型肝炎の治療を受け,平成19年にインターフェロン治療を受けた。インターフェロン治療を経て,C型肝炎ウイルスは消失したが,以後も6か月に1回の定期健診は欠かせない。 原告158番は,薬害C型肝炎のことを報道で知り,●病院に対し,当時のカルテの有無を問い合わせ,残存していたカルテの一部の開示を受けることができた。 原告158番は,昭和41年頃,●病院で盲腸の手術を受けたことがあるが,とても簡単な手術だった記憶である。 原告158番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染 の開示を受けることができた。 原告158番は,昭和41年頃,●病院で盲腸の手術を受けたことがあるが,とても簡単な手術だった記憶である。 原告158番の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告158番は,入れ墨,ピアス,人工透析,鍼治療,違法薬物の注射器での回し打ちの経験はない。 イ原告158番の供述(本人尋問)原告158番が昭和46年●月●日に●病院において受けた仙骨神経根嚢腫の手術は,全身麻酔で行われた。原告158番は,前記手術に関して,医師から,事前に,場所柄出血が少し多いかもしれないということと,輸血をする可能性もあるかもしれないという説明を受けた。 原告158番は,手術が終わって目が覚めた時,何種類かは分からないが,腕に針を刺され,透明な液体の点滴を受けていた。 点滴の目的や薬剤の種類は聞いていない。輸血は受けていなかったと思う。また,手術中の具体的な処置や出血量についての説明は受けておらず,手術が無事に終わったということだけ言われた。 C型肝炎ウイルス感染が判明するまでの間,出産や中絶手術の経験はない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告158番が,昭和46年●月●日,●病院において,仙骨神経根嚢腫のため,椎弓切除,嚢腫切開の手術を受けたことを認めることができる。 イしかし,原告158番に対する処置として特定フィブリノゲン製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告158番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし, 他の感染原因が全くないということは 。 3 結論以上によれば,原告158番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし, 他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告159番関係 第1 当事者の主張(原告159番の主張) 1 原告159番の母は,昭和62年頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,治療を受けてきたが,平成21年●月●日,肝がんにより死亡した。 2 原告159番の母は,昭和61年●月●日,医療法人●会●病院(以下「●病院」という。)において,左足の人工股関節置換術を,同年7月31日,前記病院において,右足の人工股関節置換術を,それぞれ受けた。 3 ●病院には,昭和60年に18本の特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の納入がされた。 4 原告159番の母がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の事実は否認する。 2 原告159番の母が受けた前記各手術の詳細や,手術当時の原告159番の母の具体的病態は不明であるから,特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 また,特定血液凝固第Ⅸ因子製剤は,主として先天的に第Ⅸ因子が欠如している疾患や,後天的に凝固因子の産生が低下する疾患など,極めて限定された症例に対して投与が推奨されているものであるところ,原告159番の母が,前記のような疾患であると指摘されたとの事情はなく,特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与を必要とする病態であっ たとは認められない。 投与が推奨されているものであるところ,原告159番の母が,前記のような疾患であると指摘されたとの事情はなく,特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与を必要とする病態であっ たとは認められない。 さらに,原告159番の母は,前記各手術の際,輸血を受けたようであるところ,当該輸血によってC型肝炎ウイルスに感染した可能性が否定できない。 原告159番及び原告159番の姉は,前記各手術の後,原告159番の母から,各手術の際に止血剤を使用された旨を聞いた旨供述するが,具体的な薬剤名は聞いていないとも述べており,前記供述から,原告159番の母に対する特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の事実を推認することはできない。 (補助参加人の主張)特定血液凝固第Ⅸ因子製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ159の1~5,6の1~14,甲ハ159の7,9,12,13,証人原告159番の姉)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告159番の母は,昭和●年●月●日生まれの者である。原告159番の母には3人のきょうだいがいる。 (2) 原告159番の母は,昭和61年●月●日,●病院において,左足の人工股関節置換術を,同年●月●日,前記病院において,右足の人工股関節置換術を,それぞれ受けた。 (3) 原告159番の母は,昭和62年,慢性C型肝炎にり患している旨の指摘を受け,平成21年●月●日,肝がんにより死亡した。 (4) 昭和61年当時,●病院は,整形外科ほか11の診療科を有し,病院全体におけるベッド数は154床,整形外科における医師数は 常勤2名,非常勤 ●月●日,肝がんにより死亡した。 (4) 昭和61年当時,●病院は,整形外科ほか11の診療科を有し,病院全体におけるベッド数は154床,整形外科における医師数は 常勤2名,非常勤3名,整形外科における看護師数及び年間手術件数は不明である。 (5) ●病院には,昭和60年に18本の特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の納入がされたが,昭和61年1月に2本を返品しており,他に納入実績はない。 原告159番の母に特定血液凝固第Ⅸ因子製剤を投与した可能性のあることを示すカルテの証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告159番の母に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告159番の陳述書(甲ハ159の1)原告159番の母は,奈良県で,お酒やたばこなどを販売する日用品店を経営していたところ,同人が50歳を過ぎた昭和●年頃から足の痛みを訴えていた。当時通院していた奈良県内の整形外科の病院で足の手術をした方が良いと言われたようだが,手術を受けるかどうかかなり悩んでいる様子だった。 原告159番の母は,その後,友人から●病院を勧められ,同病院に通うようになった。当時,●病院の整形外科には,●●医師(以下「●医師」という。),●●医師(以下「●医師」という。),●●医師(以下「●医師」という。)がいた。原告159番の母は,●病院において,両変形性股関節症と診断され,昭和61年●月●日,左足についての人工股関節置換術を,同年●月●日,右足についての人工股関節置換術を,それぞれ受けた。なお,当時,股関節の手術はとても大きな手術で,失敗することも多かったところ,原告159番の母は,●病院において,●医師ないし●医師から,「このまま放置して寝たきりになるか,手術を受けて治る けた。なお,当時,股関節の手術はとても大きな手術で,失敗することも多かったところ,原告159番の母は,●病院において,●医師ないし●医師から,「このまま放置して寝たきりになるか,手術を受けて治る か,早く決めたほうがいい。」と言われたそうである。 原告159番の母の左足に関する前記手術は,昭和61年●月●日午後2時から始まった。原告159番は,●病院において,姉と共に,手術の終了を待っていた。手術は午後7時頃に終わり,●医師と●医師が手術室から出てきて「無事にきちんと終わりましたよ。」と述べた。その後,原告159番の母が全身麻酔の上でストレッチャーに乗せられて運び出されてきたところ,顔面蒼白で,左足の付け根から膝にかけて包帯が巻かれており,包帯から血がにじんでいた。また,輸血及び点滴を受けていた。点滴の種類,色及び形状は覚えていない。原告159番は,手術終了から1,2時間後,病室での付き添いが1人しかできないことから,付き添いを姉に頼んで帰宅した。 原告159番は,原告159番の母の左足に関する前記手術以降,少なくとも週1回は見舞いに行っていた。原告159番の母は,手術後1週間ほどは,病室において,数種類の点滴を受けていたと思う。また,見舞い中に,原告159番の母から,前記手術の際に輸血を受け,止血剤を使用された旨を聞いた。原告159番の母は,経営していた日用品店で薬を扱うことを希望しており,薬の勉強をしたことがあったため,医師か看護師に対して,手術の際に使用した薬剤について質問したのだと思う。 原告159番の母の右足に関する前記手術は,昭和61年●月●日午後2時頃から始まり,午後7時頃に終わった。原告159番は,原告159番の母の左足に関する前記手術時と同様,姉と共に,手術の終 原告159番の母の右足に関する前記手術は,昭和61年●月●日午後2時頃から始まり,午後7時頃に終わった。原告159番は,原告159番の母の左足に関する前記手術時と同様,姉と共に,手術の終了を待っていた。術後の原告159番の母の様子は,左足に関する前記手術の時と同様であり,輸血に加え,何らかの点滴を受けていた。また,見舞いする中で,原告159番の 母から,左足に関する前記手術の時と同様に,右足に関する手術の際にも,輸血を受け,止血剤を使用された旨を聞いた。 原告159番の母は,昭和62年に慢性C型肝炎にり患している旨を指摘されていたようである。また,平成16年頃,体調不良で●病院を受診した際の血液検査の結果,医師から肝臓の数値が異常であり,肝がんの患者と同じ数値である旨の指摘を受けたそうである。その後,平成18年に肝がんを発症していることが判明し,平成21年●月●日,肝がんにより死亡した。 原告159番及び同人の兄は,薬害C型肝炎の報道を受け,●病院に対し,前記各手術のカルテが残っていないか問い合わせたが,当時のカルテを入手することはできなかった。 原告159番,同人の兄及び姉は,平成25年●月,当時●病院の院長をしていた●医師を訪ね,原告159番の母が保管していた当時の診断書,診察券,領収書及び原告159番の母の写真などを見せて話をしたところ,「病状説明書」を作成してもらうことができた。 原告159番の母は,原告159番を含めて3人の子供を出産したところ,原告159番のきょうだいは自宅での出産,原告159番は助産院での出産であり,いずれの出産時についても出血多量で大変だったという話は聞いたことがない。また,原告159番の母は,前記各手術以外に大きな手術を受けていな うだいは自宅での出産,原告159番は助産院での出産であり,いずれの出産時についても出血多量で大変だったという話は聞いたことがない。また,原告159番の母は,前記各手術以外に大きな手術を受けていない。 原告159番の母の家族に,C型肝炎ウイルスに感染している者はいない。また,原告159番の母は,入れ墨,ピアス,違法薬物の注射器での回し打ちの経験はない。 イ原告159番の姉の陳述書(甲ハ159の14)原告159番の姉は,昭和61年●月●日に行われた原告1 59番の母の左足に関する手術の際,手術が始まる前から●病院で待機し,途中からは,仕事を早退して駆け付けた原告159番と共に,手術の終了を待っていた。手術終了後,ストレッチャーに乗せられて運び出されてきた原告159番の母は,顔面蒼白で,左足の付け根から膝にかけて包帯が巻かれており,包帯から血がにじんでいた。また,輸血及び点滴を受けていた。点滴の種類,色及び形状は覚えていない。 原告159番の姉は,前記手術後,数日は泊まり込みで原告159番の母に付き添い,その後は週3回以上の頻度で見舞いをしていた。原告159番の母は,前記手術後1週間ほどは,病室において,数種類の点滴を受けており,看護師が,途中で点滴内に薬を追加で注入していた。原告159番の姉は,見舞いをする中で,原告159番の母から,前記手術の際に輸血を受け,止血剤を使用された旨を聞いた。 原告159番の姉は,昭和61年●月●日に行われた原告159番の母の右足に関する手術の際にも,手術中の待機,手術後の見舞いをしたところ,手術終了直後に輸血及び点滴を受けている原告159番の母を見たこと,同人から,手術の際に輸血を受け,止血剤を使用された旨を聞いたことは,原告 手術の際にも,手術中の待機,手術後の見舞いをしたところ,手術終了直後に輸血及び点滴を受けている原告159番の母を見たこと,同人から,手術の際に輸血を受け,止血剤を使用された旨を聞いたことは,原告159番の母の左足の手術の際と同様である。 原告159番の姉,兄及び原告159番は,平成25年●月,当時●病院の院長をしていた●医師を訪ね,原告159番の母が保管していた当時の診断書,診察券,領収書及び原告159番の母の写真などを見せて話をしたところ,「病状説明書」を作成してもらうことができた。また,原告159番の姉及び原告159番は,平成27年●月●日,●医師を訪ね,同様に話をしたが,原 告159番の母の手術については覚えていない様子で,詳しく話を聞くことはできなかった。 ウ ●医師作成に係る平成25年2月4日付け「病状説明書」(甲ハ159の8)原告159番の母に関し,昭和61年●月●日,左人工股関節置換術を,同年●月●日,右人工股関節置換術をそれぞれ施行した。 当時,●病院に,クリスマシン(特定血液凝固第Ⅸ因子製剤)が納入されており,前記各手術の際に使用した可能性はある。 エ原告159番の姉の供述(証人尋問)原告159番の母が受けた,人工股関節置換術の内容は,股関節から膝までの30cmくらいの骨を取って,人工股関節を入れて,それをねじや針金のようなものでぐるぐる巻きにして留めるというものだった。前記内容は,原告159番の母から聞いた。 ●病院のカルテ中に「ゆ血+ope 翌日に血液製剤使用」,「血液製剤として第Ⅸ因子使用とのこと。」との記載があるところ,この記載がされた経緯などの詳細は分からないが,原告159番の母が,●病院の医師に対して述べたのだ ゆ血+ope 翌日に血液製剤使用」,「血液製剤として第Ⅸ因子使用とのこと。」との記載があるところ,この記載がされた経緯などの詳細は分からないが,原告159番の母が,●病院の医師に対して述べたのだと思う。原告159番の母が,フィブリノゲン製剤や第Ⅸ因子製剤という薬剤の存在や名前を知った時期は分からない。 (2) 検討ア前記1(2)及び(5)のとおり,原告159番の母が,昭和61年●月●日,●病院において,左足の人工股関節置換術を,同年●月●日,前記病院において,右足の人工股関節置換術を,それぞれ受けたこと,●病院に,昭和60年に18本の特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の納入がされたことを認めることができる。 イしかし,●病院は,昭和61年1月に2本の特定血液凝固第Ⅸ因子製剤を返品しており,以降の納入実績はないことに照らせば,むしろ,前記各手術の時点では●病院に特定血液凝固第Ⅸ因子製剤は存在していなかったと考えるのが自然であり,前記各手術の際に特定血液凝固第Ⅸ因子製剤が投与されたとは考え難い。 また,原告159番の母に対する処置として特定血液凝固第Ⅸ因子製剤を投与する必要のある状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかでなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告159番の母については,特定血液凝固第Ⅸ因子製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告160番関係 第1 当事者の主張(原告160番の主張) 1 原告160番は,平成20年,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告 はできない。 別紙原告160番関係 第1 当事者の主張(原告160番の主張) 1 原告160番は,平成20年,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告160番の現在の病態は,慢性C型肝炎である。 2 原告160番は,昭和46年●月●日,医療法人●会●病院(以下「●病院」という。)において,第一子(男児)を出産した。その際の出血量は中等量であり,少なくとも500mlの輸血を受けた。 原告160番は,昭和48年●月,中絶手術の後,医療法人●会●病院(以下「●病院」という。)において,不正出血に対する処置を受けた。 3 ●病院及び●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告160番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院及び●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 母子手帳及び原告160番の陳述書等によっても,原告160番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告160番の陳述書には,前記出産及び前記処置の際,輸血に加えて点滴を受けた旨の記載があるが,その点滴の具体的な薬剤名は明らかではないから,前記記載から,特定フィブリノゲン製剤投与の事実を認めることはできない。 (補助参加人の主張)原告160番が慢性C型肝炎にり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ160の1~3,8,12~14)及び弁 型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ160の1~3,8,12~14)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告160番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告160番には3人のきょうだいがいる。 (2) 原告160番は,昭和46年●月●日,●病院において,第一子(男児)を出産した。その際の出血量は,中等量よりやや少なく,原告160番は,輸血及び500mlの輸液を受けた。 (3) 原告160番は,生理が終わった後も出血が続いたため,●病院を受診し,昭和57年●月●日から同月●日まで同病院に入院し,治療の際に輸血を受けた。 原告160番は,平成20年,保健所で肝炎ウイルス検診を受け,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告160番は,同年●月●日,医療法人●会●病院を受診し,慢性C型肝炎と診断され,インターフェロン治療等を受けた。 (4) 原告160番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,昭和46年当時の●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績及び昭和48年当時の●病院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討 (1) 原告160番の陳述書(甲ハ160の1)の要旨は以下のとおりである。 原告160番の家族でC型肝炎ウイルスに感染した者はいない。 原告160番は,昭和46年●月●日,●病院において,第一子(男児)を出産した。出産後の出血が止まらず,看護師と産婆が原告160番の腹部に氷を置いたりしていた。産婆に呼ばれて病院に来た●●医師(以下「●医師」という。)は 年●月●日,●病院において,第一子(男児)を出産した。出産後の出血が止まらず,看護師と産婆が原告160番の腹部に氷を置いたりしていた。産婆に呼ばれて病院に来た●●医師(以下「●医師」という。)は,原告160番の状態を診た後,看護師へ輸血か何かの指示をしたようで,原告160番は,輸血の点滴とその他の点滴を受けた。●医師は,血が薄いから血が止まりにくい,次の子供ができても出産は控えた方がいいと言い,血液を返すのが大変だろうから輸血量を半分の500mlと書いておくと言った。 原告160番は,昭和48年●月,●医院で中絶手術を受け,その後ほどなく出血があった。原告160番は,血の塊が出てくるのを見て意識が遠のき,●病院に救急搬送され,止血のための輸血と点滴を受けた。 原告160番は,平成20年,血液製剤を使用した可能性のある病院のリストが新聞に載っており,その中に自分が手術を受けたことがある病院があるのを見て,近所の保健センターで血液検査を受けたところ,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。以後,慢性C型肝炎と診断され,インターフェロン治療等を受けた。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院及び●病院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告160番は,昭和46年●月●日,●病院において,第一子(男児)を出産したことを認めることができる。 また,原告160番の昭和48年●月の処置に関し,診断書やカルテなどの医療機関の作成した証拠があるものではないが,前記陳述書には具体的状況が記載してあり,原告160番が,昭和57年●月,●病院の医師に対し,昭和48年に中絶手術を受けた後,貧血のため輸血3本を受けた旨の説明をしていること があるものではないが,前記陳述書には具体的状況が記載してあり,原告160番が,昭和57年●月,●病院の医師に対し,昭和48年に中絶手術を受けた後,貧血のため輸血3本を受けた旨の説明をしていること(甲ハ160の8)を併せ考慮すれば,原告160番が,昭和48年●月,●病院において前記処置を受けたことを認めることができる。 イしかし,●病院において昭和46年当時,●病院において昭和48年当時,特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,前記1(2)のとおり,前記出産時の出血量は中等量よりやや少ない程度にとどまっているところ,原告160番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告160番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告161番関係 第1 当事者の主張(原告161番の主張) 1 原告161番は,平成4年●月頃,●診療所において,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,その後,慢性C型肝炎が進行してり患した肝がんの治療を受けてきた。 2 原告161番は,昭和55年●月●日,●医院において,第三子(男児)を出産した。その際,分娩が済んだ後産あたりから長時間出血が続き,輸血及び止血の処置を受けた。 3 前記出産を担当した●●医師(以下「●医師」)という。)は,昭和55年当時,妊産婦の出血により輸血を行う場合には,輸血前に必ず特定フィブリノゲン製剤を投与する方針を有していた。 したがって, 前記出産を担当した●●医師(以下「●医師」)という。)は,昭和55年当時,妊産婦の出血により輸血を行う場合には,輸血前に必ず特定フィブリノゲン製剤を投与する方針を有していた。 したがって,前記出産の際に輸血の処置を受けた原告161番に対し,特定フィブリノゲン製剤が投与された高度の蓋然性がある。 4 ●医院は,厚生労働省が発表した特定フィブリノゲン製剤納入先医療機関である。 5 原告161番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●医院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実及び同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。 原告161番のC型肝炎ウイルス感染の事実は認める。 2 原告161番の陳述書及び●●医師の証言によっても,前記出産当時,原告161番がDICを発症するなどの重篤な状態になっていたとは認められないから,特定フィブリノゲン製剤の投与を必要とする 病態にあったと認めることはできず,原告161番に対する特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 3 ●●医師の証言は,出血に対して輸血が必要となる病態には,貧血や循環血液量の減少といった凝固因子の欠乏以外の病態も存在し,これらの場合に特定フィブリノゲン製剤の投与は必ずしも必要とはならない点,出産の際に輸血を行う場合,輸血前に必ず特定フィブリノゲン製剤の投与がされていたとの供述が,証拠上認められる●医院における特定フィブリノゲン製剤の納入実績と整合しない点,医学的知見に照らして不自然・不合理な点が散見され,癒着防止剤として用いられるトラジロールやウロキナーゼと特定フィブリノゲン製剤との誤認混同の可能性が高い点などから信用できず,●医師の投与方針と ,医学的知見に照らして不自然・不合理な点が散見され,癒着防止剤として用いられるトラジロールやウロキナーゼと特定フィブリノゲン製剤との誤認混同の可能性が高い点などから信用できず,●医師の投与方針として,出産の際に輸血を行う場合,輸血に先立って特定フィブリノゲン製剤を投与していたとは認められないから,前記出産の際における原告161番に対する特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 (補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実及び同事実とC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係は否認する。その他は,被告の主張と同様である。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ102の10,甲ハ161の1~3,6~8,10~13,証人●●)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告161番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 原告161番は,昭和47年●月●日に第一子(女児)を,昭和48年●月●日に第二子(男児)を出産したほか,盲腸の手術を受けた 既往歴を有する。 (2) 原告161番は,昭和55年●月●日午前8時58分,●医院(平成2年に●●医師が院長に就任して「●医院」に名称変更)で,第三子(男児)を出産し,同年●月●日に退院した。 前記出産は,胎位が頭位の自然分娩であり,母子手帳の「分娩の経過(母児の状態)」欄には「経過順調」との記載がある。また,「出血量」欄には,「中量」に丸がされている。 (3) 原告161番は,平成4年,●診療所における検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。その後,●会●病院でインターフェロン治療を受けたが,副作用のため,3か月で中止し,以後は,●医院,●医院と転院し,肝細胞がんのため, ける検査の結果,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。その後,●会●病院でインターフェロン治療を受けたが,副作用のため,3か月で中止し,以後は,●医院,●医院と転院し,肝細胞がんのため,●病院において治療を継続している。 (4) ●医院における特定フィブリノゲン製剤の納入に関する製薬会社の回答は,昭和56年3月に3本を納入したのみであり,その他に納入はないというものである。 2 関係者の供述等の要旨(1) 原告161番の陳述書(甲ハ161の6)昭和55年●月●日,破水があったため●医院に行き,同日午前8時58分頃,自然分娩で第三子(男児)を出産し,同年●月●日に退院した。分娩の経過は比較的スムーズで,産まれてきた子供を直接見せてもらった記憶がある。 後産が済んでから,出血が止まらなくなり,当日の午後3時頃まで分娩室に留め置かれた。出血の理由については聞いていないので分からず,また,分娩台に横臥させられ,出血の状況を自分の目で確認できない状態だったため,出血量についても分からない。ただし,医師や看護師があわただしく動き回り,何かを注文しなければ ならないという話が聞こえたことを記憶しており,出血量はかなり多かったのではないかと思う。当時,かなり意識がもうろうとしていたため,何を注文しようとしていたかは分からない。 後に,原告161番の夫から,出血量がはなはだしかったため,輸血をされたということを聞いた。前記のとおり,自身はかなり意識がもうろうとしていたため,輸血されたことに気が付いていなかった。 平成4年●月頃,身体の不調のため,自宅近くの●診療所で検査を受けたところ,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 それ以前にも肝臓が悪いと言われていたが,C型肝炎ウイルスに感染していることを告げら ●月頃,身体の不調のため,自宅近くの●診療所で検査を受けたところ,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 それ以前にも肝臓が悪いと言われていたが,C型肝炎ウイルスに感染していることを告げられたのは初めてだった。その後,●会●病院,●医院,●医院と転院し,現在は●病院において治療を継続している。 原告161番が第一子及び第二子を出産した●産婦人科はフィブリノゲン製剤納入医療機関には該当しないようであるし,特に不自然な出来事もなかったから,これらの出産の際に,フィブリノゲン製剤が投与された事実はないと思う。 原告161番の親族でC型肝炎ウイルスに感染している者はいないし,原告161番は,刺青,ピアス,人工透析,注射の回し打ち,鍼治療のいずれの経験もない。 (2) ●●医師の平成26年11月12日付け,平成27年4月24日付け陳述書(甲ハ161の3,9)昭和55年の前記出産当時,●医院に勤務していた。●医師及び●●医師の専門は産婦人科であり,●●医師の専門は皮膚科であった。 ●医院が開設された昭和52年以降,同医院では,年間150件 前後の出産を扱っていた。出産のうち,帝王切開手術による場合は,必ず,●医師が執刀を担当し,●●医師と●●医師の2名が助手として手伝う3名体制で行っており,自身はほぼ全ての帝王切開術に立ち会ったと思う。原告161番の母子手帳によれば,前記出産は自然分娩であるから,●●医師は,前記出産自体には立ち会っていないと思われ,原告161番の前記出産及び同人についての記憶はない。 ●医院にどのような薬を納入するかは,全て●医師の判断で行われていた。●医師は新しいもの好きであったため,●医院では当時新しい薬であったフィブリノゲン製剤を納入して使用していた。●●医師は,●医師から指示を受 ような薬を納入するかは,全て●医師の判断で行われていた。●医師は新しいもの好きであったため,●医院では当時新しい薬であったフィブリノゲン製剤を納入して使用していた。●●医師は,●医師から指示を受けて,「●」という薬問屋に電話を掛けてフィブリノゲン製剤を注文していた。納入したフィブリノゲン製剤は,2階にある看護師の詰所内に設置された冷蔵庫の中に入れて保管していた。フィブリノゲン製剤の補充方針は分からないが,至急取り寄せたということはなかったと記憶しているため,前記冷蔵庫に常備されていたのではないかと思う。 平成20年頃,製薬会社である補助参加人に,●医院へのフィブリノゲン製剤の納入状況を問い合わせた結果,昭和56年●月に3本のみとの納入記録の交付を受けたが,自身の記憶と全く合致していない。なぜ間違った記録になっているのかは分からない。 フィブリノゲン製剤の使用の判断は,妊婦や出てくる血液の様子から●医師が行っており,出血量による明確な使用基準はなかったと思う。●●医師が認識しているフィブリノゲン製剤の効能は,止血であり,出血量が多かったら使うという認識であった。止血剤としてアドナやトランサミンを使うこともあったが,フィブリノゲン製剤の方が良く効くという認識であり,大出血の場合にはまずフィ ブリノゲン製剤を使用していた。また,腹膜の癒着防止という効能もあると認識していたかもしれないが,忘れてしまった。 ●医院では,フィブリノゲン製剤のみを使用して輸血を行わない場合はあったが,輸血のみを行ったことはなかったと思う。輸血が必要な時は,輸血用の血液を取り寄せている間のつなぎとしてもフィブリノゲン製剤を使用していたと思う。そのため,原告161番に対して輸血が行われているのであれば,同人に対してフィブリノゲン製剤が投与されて 時は,輸血用の血液を取り寄せている間のつなぎとしてもフィブリノゲン製剤を使用していたと思う。そのため,原告161番に対して輸血が行われているのであれば,同人に対してフィブリノゲン製剤が投与されているはずである。 ●医院では,出生届,母子手帳への必要事項の記入は,必ず●医師か●●医師が行っていた。 昭和55年当時,●医院では分娩が胎盤娩出により終了した後,産婦は,分娩台で1時間から2時間程度過ごすことが通常であり,医師は,分娩後30分程度産婦の様子を見た上で,必要事項を母子手帳へ記入していた。原告161番の母子手帳に記載された出血量は,前記時間内の出血量と考えられる。1時間から2時間を超えて分娩室に残されたということであれば,子宮収縮不全等による出血多量の症状があったと考えられる。 母子手帳に出血量等を記載した後に異常出血があった場合,母子手帳にそのことを記入するかどうかについては,一般論としては記入すべきと思うが,輸血や止血剤の投与により無事に止血できた場合に,母子手帳への追記を忘れてしまうということも十分にあり得る。 (3) ●●医師の供述(第1回証人尋問平成27年12月17日実施)●医院では,昭和52年の開院当初から,●医師の判断及び指示に従い,●●医師が薬問屋「●」に注文して,フィブリノゲン製剤を納入していた。「●」以外の薬問屋からフィブリノゲン製剤を納入 していたかは分からない。フィブリノゲン製剤は,1名の患者につき1,2本を使用し,使用の度に補充しており,2本から5本ほど常備していたと思う。フィブリノゲン製剤は,●医院の2階にある看護師の詰所内の冷蔵庫で保管していた。納入本数は,月により異なり,0本の月もあれば5本の月もあった。平成20年に製薬会社である補助参加人から交付された月別納入数量表 ゲン製剤は,●医院の2階にある看護師の詰所内の冷蔵庫で保管していた。納入本数は,月により異なり,0本の月もあれば5本の月もあった。平成20年に製薬会社である補助参加人から交付された月別納入数量表では,●医院は●を通じて昭和56年3月に3本だけ納入したことになっているが,自分の記憶と合致せず,間違っている。 帝王切開手術等の手術を伴う分娩の場合,●医師が執刀医,●●医師がその助手,●●医師が患者の枕元で血圧を測ったり,点滴,輸血の交換等を行う,という医師3名の体制で行い,看護師も2,3名立ち会っていた。他方,手術を伴わない分娩の場合は,●医師か●●医師が立ち会っており,●●医師は立ち会っていなかった。 昭和55年当時,●●医師は,フィブリノゲン製剤の効能について,止血効果があると認識していた。他の止血剤としては,アドナやトランサミンなどもあったが,大量出血に対しては,即効性があるフィブリノゲン製剤を使用し,手術後の点滴に際してアドナやトランサミンを使用していた。フィブリノゲン製剤は,手術中の止血目的及び開腹手術の際の癒着防止目的で使用されていた。止血目的の場合は点滴で使用し,癒着防止目的の場合は注射器で腹腔内に直接散布していた。いずれの使用についても,●医師が,患者の出血量や全身状態から使用するか否かを判断しており,●●医師自身で判断したことはないし,●●医師においては,フィブリノゲン製剤がどのように作用して止血や癒着防止の効果を発揮するのかの詳細は知らなかった。 ●医師は,500ml~1000mlの出血があれば輸血をして いたが,輸血が必要な場合,先行してフィブリノゲン製剤を投与していた。フィブリノゲン製剤を投与し,輸血はしなかったということはあった一方で,フィブリノゲン製剤の投与なしに輸血を行ったことはなか いたが,輸血が必要な場合,先行してフィブリノゲン製剤を投与していた。フィブリノゲン製剤を投与し,輸血はしなかったということはあった一方で,フィブリノゲン製剤の投与なしに輸血を行ったことはなかった。原告161番に対して輸血が行われているのであれば,同人に対してフィブリノゲン製剤が投与されているはずである。 昭和55年当時,●医院では,立ち会った医師において,分娩後30分程度産婦の様子を見た上で,産婦の状態が落ち着いた時点で,必要事項を母子手帳へ記入していた。原告161番の母子手帳中,分娩の経過欄に経過順調との手書きの記載があるところ,かかる記載は,●医師が,分娩後30分以内の経過について記載したものと思う。また,母子手帳の出血量欄には,中量の箇所に丸が付いているところ,昭和55年当時,500mlくらいの出血があった場合に,中量と記載していたと思われ,これも前記と同様に,分娩後30分以内の出血量について記載したものだと思う。このように,母子手帳の記載は,あくまで,分娩後30分の時点のものであり,その後に異常事態が生じて,輸血をしたり,フィブリノゲン製剤を投与したりした場合でも,母子手帳には記入せず,カルテのみに記入していたと思う。 (4) ●●医師の供述(第2回証人尋問平成29年9月14日実施)フィブリノゲン製剤を注文した数は,月に0本から5本という記憶であり,●●医師が「●」という薬問屋に電話して注文していた。 同じ薬剤でも問屋ごとに値段が違ったため,●医院は複数の薬問屋と付き合いがあった。フィブリノゲン製剤を「●」に注文していたことはしばらく忘れていたが,平成20年に,製薬会社である補助参加人に対し,●医院へのフィブリノゲン製剤の納入状況を問い合 わせた結果として,昭和56年3月に3本のみとの納入 文していたことはしばらく忘れていたが,平成20年に,製薬会社である補助参加人に対し,●医院へのフィブリノゲン製剤の納入状況を問い合 わせた結果として,昭和56年3月に3本のみとの納入記録の交付を受け,自身の記憶と合致しないと感じたことをきっかけに,思い出したものである。 (5) ●●医師の陳述書(甲ハ161の4)昭和45年に●大学を卒業後,●病院の産婦人科で勤務した。その後,昭和52年●月に,伯父であり,同病院の副院長及び産婦人科部長を務めていた●医師が●医院を開業したため,開業と同時に,自身と妻である●●医師は,●医院に移籍した。 原告161番の昭和55年における出産及び原告161番のことは記憶していないが,医院に残っていた前記出産当時の記録を確認したところ,原告161番が昭和55年●月●日に●医院において出産したことは間違いない。 昭和55年当時,●医院において,妊婦にフィブリノゲン製剤を投与したことがあったか,どのような場合に投与していたかについては,記憶がない。フィブリノゲン製剤を投与するかどうかは●医師の判断によっていた。●●医師によると,昭和55年当時,●医院では,輸血を行った際には必ずフィブリノゲン製剤を使用していたとのことだが,そう言われればそうだったのかもしれない。 3 検討(1) 原告161番は,前記出産において輸血を受けたと主張した上,昭和55年当時,●医院では,輸血を行った際には必ずフィブリノゲン製剤を使用していたとの●●医師の供述を前提に,前記手術における特定フィブリノゲン製剤投与の事実が推認される旨主張する。 (2) そこで,●●医師の陳述書における供述及び証言(以下,これらを併せて「●供述」という。)の信用性を検討する。 前記認定事実(2),(4)のとおり,原 の事実が推認される旨主張する。 (2) そこで,●●医師の陳述書における供述及び証言(以下,これらを併せて「●供述」という。)の信用性を検討する。 前記認定事実(2),(4)のとおり,原告161番は,昭和55年● 月●日,●医院において出産をしているところ,●医院における特定フィブリノゲン製剤の納入に関する製薬会社の回答は,昭和56年●月に3本を納入したのみであり,その他に納入はないというものである。 この点について,●●医師は,●医院において行われた手術のほとんどは開腹手術であったところ,開腹手術では,止血及び腹膜の癒着防止を目的として,出血量にかかわらず,全件において腹腔内への特定フィブリノゲン製剤の散布が行われていたものであり,●医院では,毎月0本から5本の特定フィブリノゲン製剤を納入し,2本から5本ほど常備していた旨述べ,前記回答は自身の記憶と全く合致せず,間違っているとする。 しかし,●●医師の供述以外に,前記のとおりの客観的な納入記録とは異なる納入実態であったことを裏付けるに足りる事情は示されていない。 また,薬事法上承認を受けた特定フィブリノゲン製剤の効能は「低フィブリノゲン血症」の治療であり,用法は「注射用蒸留水に溶解し静脈内に注入する」ものであるところ,腹膜の癒着防止という効能を期待して,腹腔内に直接散布していたとの●供述は,本来的な効能や用法と異なる上,●医師の指示であったという説明以上に合理的な根拠は示されていないから,直ちに採用することはできない。 加えて,前記のような本来的な用法とは異なる使用が開腹手術の全件においてされていたとの●供述は,国民健康保険が適用されない薬剤を,開腹手術の全件で投与していたという点で不自然といわざるを得ない。 以上に ような本来的な用法とは異なる使用が開腹手術の全件においてされていたとの●供述は,国民健康保険が適用されない薬剤を,開腹手術の全件で投与していたという点で不自然といわざるを得ない。 以上によれば,●供述は,それ自体が不自然である上,客観的証拠と整合しない部分があり,重要な部分について客観性のある裏付 けが全くないから,採用することができない。 (3) また,原告161番が前記出産において輸血を受けたことについては,原告161番の陳述書において,原告161番の夫から,出血量がはなはだしかったため輸血がされたと聞いたと記載されているにとどまり,母子手帳記載の出血量も中量というものであって,輸血の必要性がうかがわれるものではなく,他に客観性のある裏付けが全くないから,原告161番に対する輸血の事実を認めることはできない。 したがって,仮に,昭和55年当時,●医院では,輸血を行った際には必ず特定フィブリノゲン製剤を使用していたという事実があったとしても,原告161番に対する輸血の事実を認めることができない以上,原告161番の主張は前提を欠くものといわざるを得ない。 4 結論以上によれば,原告161番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告162番関係 第1 当事者の主張(原告162番の主張) 1 原告162番は,平成3年●月頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告162番は,慢性C型肝炎にり患している。 告162番関係 第1 当事者の主張(原告162番の主張) 1 原告162番は,平成3年●月頃,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。原告162番は,慢性C型肝炎にり患している。 2 原告162番は,昭和46年,●医院において,卵巣左切除の手術及び虫垂切除術を受けた。 3 ●医院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関ではないが,前記手術の主治医であった●医師の妻である●●医師は,「フィブリノーゲン製剤は使用していました」と回答している。 4 原告162番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●医院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 原告162番の陳述書によっても,原告162番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 ●●医師作成の書面には,卵巣嚢腫切除では出血がほとんどないため,フィブリノーゲンを使用しているとは考えられない旨記載されており,卵巣嚢腫左切除手術を受けた原告162番に特定フィブリノゲン製剤が使用されたとは認められない。なお,原告162番は,卵巣嚢腫のみの切除ではなく,卵巣の切除をした旨主張するが,原告162番の陳述書には卵巣嚢腫左切除手術を受けたと記載されており,原告162番の前記主張は,証拠と矛盾する主張であって認められな い。 (補助参加人の主張)原告162番が慢性C型肝炎にり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ162の1~7)及び弁論の全趣 与の事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ162の1~7)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告162番は,昭和●年●月●日生まれの女性である。 (2) 原告162番は,平成4年●月●日,医療法人●会●病院(以下「●病院」という。)を受診し,C型肝炎ウイルスに感染し,慢性C型肝炎にり患していると診断され,同月●日から同年●月●日まで,インターフェロン治療のために同病院に入院し,以後も同病院で治療を続けた。 原告162番は,平成18年●月●日,●医院の紹介により,●病院を受診し,同病院でも慢性C型肝炎と診断され,インターフェロン治療等を受けた。 (3) 原告162番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告162番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告162番の陳述書及び手紙(甲ハ162の1,15)原告162番の両親及びきょうだいでC型肝炎ウイルスに感染 した者はいない。 原告162番は,昭和46年,●医院において,卵巣嚢腫左切除の手術を受け,1週間ほど入院した。盲腸も切りましょうと言われ,下腹部を横に10cmほど切られた。原告162番の母が,退院するとき,帰りのタクシーの中で,入院費用が思ったより高く,輸血もしたからかなあと言ったのを覚えている。 原告162番は,平成3年●月頃,●診療所で検査を受け,C型肝炎ウイルスに感染していることが分かり,以後,慢性C型肝炎と診断さ 思ったより高く,輸血もしたからかなあと言ったのを覚えている。 原告162番は,平成3年●月頃,●診療所で検査を受け,C型肝炎ウイルスに感染していることが分かり,以後,慢性C型肝炎と診断されて,●病院,●医院,●病院でインターフェロン治療等を受けた。 C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●医院における処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 イ ●●医師作成の書面(甲ハ162の13の1,甲ハ162の14)●医院でフィブリノーゲン製剤を使用していたが,昭和46年頃に使用していたかどうかは不明である。卵巣嚢腫切除では出血がほとんどないため,フィブリノーゲンを使用しているとは考えられない。 (2) 検討ア原告162番の昭和46年の手術に関し,診断書やカルテなどの医療機関の作成した証拠があるものではないが,前記陳述書等には具体的状況が記載してあり,原告162番が同年,●医院において卵巣嚢腫左切除の手術及び虫垂切除術を受けたことを認めることができる(なお,原告162番は,卵巣嚢腫左切除の手術ではなく卵巣左切除の手術を受けた旨主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。)。 イしかし,●医院において,昭和46年当時特定フィブリノゲン製 剤が使われていたか,原告162番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告162番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙 与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙原告163番関係 第1 当事者の主張(原告163番の主張) 1 原告163番は,平成10年●月●日の検査によりC型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,現在,慢性C型肝炎の治療を受けている。 2 原告163番は,昭和50年●月●日,●●病院において,甲状腺腫瘍摘出術(甲状腺切除術)を受けた。術後記録によれば,術中出血量は660ml,輸血量は600mlである。 3 ●病院は,厚生労働省が公表した特定フィブリノゲン製剤の納入先医療機関である。 4 原告163番がC型肝炎ウイルスに感染したのは,●病院における特定フィブリノゲン製剤の投与が原因であり,他に感染原因はない。 (被告の主張) 1 特定フィブリノゲン製剤投与の事実は否認する。 2 麻酔術前記録,術後記録及び麻酔記録並びに原告163番の陳述書等によっても,原告163番が当時,特定フィブリノゲン製剤投与を必要とする病態であったとは認められない。 原告163番及びその妻の陳述書には,前記手術に関し,医師から,輸血が必要であると言われ,輸血を受けた旨の記載がある。しかし,そもそも特定フィブリノゲン製剤の承認を受けた効能,効果は「低フィブリノゲン血症の治療」であって,出血全般ではないこと,原告163番及びその妻の供述を前提としても,原告163番は,特定フィブリノゲン製剤を使用した旨を医師や看護師から聞いておらず,前記記載から,特定フィブリノゲン製剤投与が認められるもので はない。 麻酔術前記録,術後記録及び麻酔記録には,使用された薬剤名が詳細に記載 た旨を医師や看護師から聞いておらず,前記記載から,特定フィブリノゲン製剤投与が認められるもので はない。 麻酔術前記録,術後記録及び麻酔記録には,使用された薬剤名が詳細に記載されているが,いずれの記録にも特定フィブリノゲン製剤の記載はなく,このことは,特定フィブリノゲン製剤が使用されていないことを強く推認させる事情というべきである。 (補助参加人の主張)原告163番が慢性C型肝炎にり患した事実は認め,特定フィブリノゲン製剤投与の事実,同事実とC型肝炎ウイルス感染との因果関係は否認する。 その他は,被告の主張と同じである。 第2 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に証拠(甲ハ163の1の1,2,甲ハ163の2~4,6,7,13)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を認めることができる。 (1) 原告163番は,昭和●年●月●日生まれの男性である。 原告163番には3人のきょうだいがいる。 (2) 原告163番は,昭和50年●月●日,甲状腺腫瘍と診断され,同年●月●日,●病院に入院し,同月●日,甲状腺腫瘍摘出術(甲状腺切除術)を受けた。術中出血量は約660mlであり,600mlの輸血がされた。同手術に係る麻酔術前記録,術後記録及び麻酔記録には,使用された薬剤名が記載されているが,いずれの記録にも特定フィブリノゲン製剤の記載はない。原告163番は,同月●日に退院した。 原告163番は,昭和50年●月●日,両反回神経麻痺と診断され,徐々に呼吸困難のグレードが増加したため,昭和51年●月●日,● 病院において,ウッドマン手術を受けた。 (3) 原告163番は,昭和52年●月●日の血液検査において,GPT及びGOTの数値が参考値よりも高かったため,●病院内科を受 ●月●日,● 病院において,ウッドマン手術を受けた。 (3) 原告163番は,昭和52年●月●日の血液検査において,GPT及びGOTの数値が参考値よりも高かったため,●病院内科を受診し,医師から,輸血後肝炎か脂肪肝と思われるとして,以後,同病院内科で検査,経過観察を受けることになった。 原告163番は,平成3年●月●日,慢性肝炎と診断された。 原告163番は,平成10年●月●日,同病院における血液検査により,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,慢性C型肝炎と診断され,同病院で通院治療を受けるようになった。 (4) 原告163番に特定フィブリノゲン製剤を使った可能性のあることを示すカルテや,当該医療機関における昭和50年当時の特定フィブリノゲン製剤の納入実績の証拠提出はない。 2 関係者の供述等の検討(1) 原告163番に関する関係者の供述等の要旨は以下のとおりである。 ア原告163番の陳述書(甲ハ163の1の1,甲ハ163の15)原告163番の両親及びきょうだいでC型肝炎にかかった者はいない。 原告163番は,昭和50年●月●日,●病院に入院し,同月●日,甲状腺腫瘍摘出術を受けた。手術は12時間以上かかり,摘出した臓器は,弁当箱ほどの大きさの容器いっぱいに入るほどのものであった。出血量も多く,輸血を受けた。 原告163番は,平成10年●月●日,同病院における血液検査により,C型肝炎ウイルスに感染していることが判明し,現在,同病院で通院治療を受けている。 原告163番は,前記手術後の昭和51年●月●日,同病院で, 声門を開くウッドマン手術を受けたが,平成25年●月頃,担当医に確認したところ,フィブリノゲン製剤は使っていないとのことであった。C型肝炎ウイル 手術後の昭和51年●月●日,同病院で, 声門を開くウッドマン手術を受けたが,平成25年●月頃,担当医に確認したところ,フィブリノゲン製剤は使っていないとのことであった。C型肝炎ウイルスに感染した原因は,●病院における前記甲状腺腫瘍摘出術の処置の際にフィブリノゲン製剤が使用されたこと以外にない。 イ原告163番の妻の陳述書(甲163の1の2)原告163番は,昭和50年●月●日,●病院において,甲状腺腫瘍摘出術を受けた。手術は12時間ほどかかり,その間,医師から,「出血が多い」と何度も聞かされ,輸血が必要だと言われ,原告163番の同僚に協力してもらった。手術後,原告163番は,手術室から酸素吸入をする部屋に移された。原告163番は,ベッドに寝かされ,喉の部分と腕の部分にたくさんのチューブが刺し込まれていた。 (2) 検討ア前記1(2)のとおり,原告163番は,昭和50年●月●日,●病院において,甲状腺腫瘍摘出術(甲状腺切除術)を受け,約660ml出血したことを認めることができる。 イしかし,●病院において,昭和50年当時特定フィブリノゲン製剤が使われていたか,原告163番に対する治療の際に特定フィブリノゲン製剤を使う状況にあったかは,前記(1)の証拠だけでは明らかではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 結論以上によれば,原告163番については,特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するに足りる事実が存するとはいえないし,他の感染原因が全くないということはできないから,特定フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙目次第1章請求の趣旨 ............................... フィブリノゲン製剤の投与の事実を認めることはできない。 別紙目次第1章請求の趣旨 ................................................................................... 1第1 主位的請求 ...................................................................................... 1第2 予備的請求 ...................................................................................... 1第2章事案の概要 ................................................................................... 2第1 前提事実 ......................................................................................... 2 1 当事者等 ............................................................................................ 3(1) 原告ら .............................................................................................. 3(2) 被告 ................................ ......................................................... 3(2) 被告 ................................................................................................. 3(3) 補助参加人 ........................................................................................ 3 2 C型肝炎の概要 ................................................................................... 4(1) 肝炎及び肝炎ウイルス........................................................................ 4(2) C型肝炎ウイルス .............................................................................. 4 3 C型肝炎ウイルスの感染経路 ............................................................... 5(1) 感染経路の種類 ................................................................................. 5(2) 感染経路の一つとしての特定フィブリノゲン製剤 ................................. 6 4 特 ............................. 5(2) 感染経路の一つとしての特定フィブリノゲン製剤 ................................. 6 4 特措法制定の経緯 ................................................................................ 8 5 特措法 ................................................................................................ 9(1) 特措法の制定 .................................................................................... 9(2) 特措法に基づく給付金の支給手続 ..................................................... 10 6 特定C型肝炎ウイルス感染者救済基金制度 .......................................... 26 7 和解基本合意書の調印 ....................................................................... 26(1) 経緯 ............................................................................................... 27(2) 内容 .............................................. .......................................... 27(2) 内容 ............................................................................................... 28第2 争点及び争点に対する当事者の主張 ................................................. 28 1 総論主張 .......................................................................................... 28 2 類型別主張 ....................................................................................... 39 3 原告らに関する個別の主張 ................................................................. 46 4 厚生労働大臣の違法な公権力行使及び過失の有無 ................................. 46 5 損害 ................................................................................................. 47第3章当裁判所の判断 .......................................................................... 48第1 認定事実 ................ ....................................................................... 48第1 認定事実 .................................................................................... 48 1 C型肝炎に関する知見 ....................................................................... 48(1) 出血機構 ......................................................................................... 48(2) 止血機構 ......................................................................................... 51(3) DIC ............................................................................................ 57(4) 基本的な止血方法 ............................................................................ 71(5) フィブリノゲン製剤の概要 ............................................................... 77(6) フィブリノゲン製剤の用法・用量等 ........................... ............................................... 77(6) フィブリノゲン製剤の用法・用量等 .................................................. 81(7) フィブリノゲン製剤の効能・効果 ..................................................... 84 (8) フィブリノゲン製剤の製造方法 ......................................................... 90(9) フィブリン糊 .................................................................................. 94(10) 血液凝固第Ⅸ因子製剤の概要 .......................................................... 98(11) 血液凝固第Ⅸ因子製剤の用法・用量等 .......................................... 100(12) 血液凝固第Ⅸ因子製剤の効能・効果 ............................................. 101(13) 血液凝固第Ⅸ因子製剤の製造方法 ................................................ 102(14) 特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の危険性 ...... 102(15) 特定フィブリノゲン製剤の納入実績及び使用実態 ............................ 111 フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の危険性 ...... 102(15) 特定フィブリノゲン製剤の納入実績及び使用実態 ............................ 111(16) 輸血用血液製剤の概要 ................................................................... 118(17) 輸血用血液製剤の製造方法 ............................................................ 121(18) 輸血用血液製剤の供給状況 ............................................................ 121(19) 輸血用血液製剤の危険性 ................................................................ 122(20) C型肝炎ウイルスの代表的検査方法 ................................................ 123(21) C型肝炎ウイルスが引き起こす病態及び症状 ................................... 130(22) C型肝炎の治療 ............................................................................. 138(23) 疾患・処置類型ごとの医学的知見 ................................................... 140(24) C型肝炎ウイルスの感染経路について .............. 医学的知見 ................................................... 140(24) C型肝炎ウイルスの感染経路について ............................................ 161(25) 医薬品添付文書における記載及び医学雑誌への広告 ......................... 163(26) 産婦人科の現場での特定フィブリノゲン製剤の評価 ......................... 166 (27) 先行するC型肝炎訴訟における専門家の証言(積極的な姿勢を示すもの) ...................................................................................................... 173(28) 先行するC型肝炎訴訟における専門家の証言(慎重な姿勢を示すもの)............................................................................................................. 178(29) 本件における専門家の証言,陳述書等からうかがわれる認識 ............ 180 2 特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤を投与したことに関する証拠等について ............................................................................. 181(1) 診療録(カルテ)の保存義務に関する医師法及び同施行規則の定め .... 181(2) 母子健康手 ........................................ 181(1) 診療録(カルテ)の保存義務に関する医師法及び同施行規則の定め .... 181(2) 母子健康手帳の記載について ........................................................... 182第2 判断の枠組み ................................................................................ 184第3 原告らに関する個別の判断 .......................................................... 187第4 結論 .......................................................................................... 187当事者目録(省略) ................................................................................ 189原告ら請求金額・症状等目録 ................................................................... 190別紙原告1番関係 ................................................................................ 196別紙原告2番関係 ........................................................... ......................... 196別紙原告2番関係 ................................................................................ 205別紙原告3番関係 ................................................................................ 212別紙亡原告5番関係 ............................................................................. 220別紙原告6番関係 ................................................................................ 224別紙原告8番関係 ................................................................................ 235別紙原告11番関係 ............................................................................. 243 別紙原告12番関係 ............................................................................. 248別紙原告13番関係 ............................................................................. 253別紙 別紙原告13番関係 ............................................................................. 253別紙亡原告14番関係 ......................................................................... 266別紙原告15番関係 ............................................................................. 270別紙原告17番関係 ............................................................................. 273別紙原告19番関係 ............................................................................. 279別紙原告21番関係 ............................................................................. 283別紙原告22番関係 ............................................................................. 287別紙原告24番関係 ............................................................................. 292別紙原告28番関係 .................................... ............................................... 292別紙原告28番関係 ............................................................................. 297別紙原告30番関係 ............................................................................. 302別紙亡原告31番関係 ......................................................................... 309別紙原告33番関係 ............................................................................. 312別紙原告35番関係 ............................................................................. 319別紙亡原告38番関係 ......................................................................... 325別紙亡原告40番関係 ......................................................................... 329別紙亡原告41番関係 ......................................................................... 332別紙原告44 別紙亡原告41番関係 ......................................................................... 332別紙原告44番関係 ............................................................................. 336別紙亡原告46番関係 ......................................................................... 340別紙原告52番関係 ............................................................................. 346 別紙原告53番関係 ............................................................................. 350別紙原告55番関係 ............................................................................. 355別紙亡原告56番関係 ......................................................................... 359別紙原告57番関係 ............................................................................. 363別紙原告59番関係 ..................................... .............................................. 363別紙原告59番関係 ............................................................................. 368別紙原告68番関係 ............................................................................. 373別紙原告69番関係 ............................................................................. 382別紙亡原告74番関係 ......................................................................... 391別紙原告75番関係 ............................................................................. 396別紙原告76番関係 ............................................................................. 400別紙原告78番関係 ............................................................................. 405別紙原告79番関係 ............................................................................. 409 . 405別紙原告79番関係 ............................................................................. 409別紙原告80番関係 ............................................................................. 413別紙原告82番関係 ............................................................................. 419別紙原告84番関係 ............................................................................. 424別紙亡原告85番関係 ......................................................................... 428別紙原告86番関係 ............................................................................. 432別紙原告87番関係 ............................................................................. 436別紙原告89番関係 ............................................................................. 439別紙原告90番関係 ................................. .................................................. 439別紙原告90番関係 ............................................................................. 443 別紙原告93番関係 ............................................................................. 448別紙亡原告94番関係 ......................................................................... 452別紙原告95番関係 ............................................................................. 456別紙原告96番関係 ............................................................................. 467別紙原告97番関係 ............................................................................. 472別紙原告100番関係 ......................................................................... 480別紙原告101番関係 ......................................................................... ......... 480別紙原告101番関係 ......................................................................... 492別紙原告102番関係 ......................................................................... 499別紙原告103番関係 ......................................................................... 515別紙原告104番関係 ......................................................................... 518別紙原告105番関係 ......................................................................... 523別紙原告106番関係 ......................................................................... 527別紙原告107番関係 ......................................................................... 532別紙原告108番関係 ......................................................................... 536別紙原告110番関係 ............................................. ..................................... 536別紙原告110番関係 ......................................................................... 541別紙原告112番関係 ......................................................................... 545別紙原告113番関係 ......................................................................... 549別紙原告114番関係 ......................................................................... 555別紙原告115番関係 ......................................................................... 558別紙原告117番関係 ......................................................................... 562 別紙原告118番関係 ......................................................................... 572別紙原告119番関係 ......................................................................... 574別紙原告121番関係 .......... ........................................................................ 574別紙原告121番関係 ......................................................................... 578別紙原告123番関係 ......................................................................... 588別紙原告124番関係 ......................................................................... 591別紙原告126番関係 ......................................................................... 600別紙原告127番関係 ......................................................................... 607別紙原告128番関係 ......................................................................... 614別紙原告129番関係 ......................................................................... 620別紙原告131番関係 ......................................................................... ......... 620別紙原告131番関係 ......................................................................... 623別紙原告132番関係 ......................................................................... 628別紙原告134番関係 ......................................................................... 631別紙原告138番関係 ......................................................................... 638別紙原告139番関係 ......................................................................... 641別紙原告140番関係 ......................................................................... 645別紙原告141番関係 ......................................................................... 649別紙原告142番関係 ......................................................................... 655別紙原告143番関係 ............................................. ..................................... 655別紙原告143番関係 ......................................................................... 659別紙原告148番関係 ......................................................................... 663別紙原告149番関係 ......................................................................... 667 別紙原告150番関係 ......................................................................... 675別紙原告151番関係 ......................................................................... 679別紙原告152番関係 ......................................................................... 683別紙原告154番関係 ......................................................................... 686別紙原告155番関係 ......................................................................... 690別紙原告156番関係 .......... ........................................................................ 690別紙原告156番関係 ......................................................................... 698別紙原告158番関係 ......................................................................... 701別紙原告159番関係 ......................................................................... 706別紙原告160番関係 ......................................................................... 714別紙原告161番関係 ......................................................................... 718別紙原告162番関係 ......................................................................... 729別紙原告163番関係 ......................................................................... 733 申し訳ありませんが、テキストが提供されていないため、整形を行うことができません。整形したいテキストを提供してください。
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