主文 1 被告本町化学及び被告クラレは、原告に対し、連帯して、5995万2600円及びうち2613万円に対する平成27年5月29日から、3267万0001円に対する平成28年5月25日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、原告に生じた費用の3分の2と被告本町化学及び被告クラレに生じた費用との合計の5分の4を原告の、10分の1を被告本町化学の、10分の1を被告クラレの各負担とし、原告に生じた費用の3分の1と被告セラケムに生じた費用を原告の負担とする。 4 この判決は、上記1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告らは、原告に対し、連帯して、2億6810万6896円及びうち1億2334万6401円に対する平成27年5月29日から、うち1億3960万4 039円に対する平成28年5月25日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、地方公共団体である原告が、被告らに対し、原告が県内の鹿島浄水場で使用する活性炭の再生業務について実施した平成26年度及び平成27年度 の2回の一般競争入札において、被告らを含む16の事業者が、事前に再生業務の供給予定者及び入札価格を調整する談合行為をし、原告は、かかる談合行為がなければ形成されたであろう落札価格と、現実の落札価格との差額分につき損害を被ったなどと主張して、共同不法行為に基づき、損害金合計2億6810万6896円(①平成26年度分:損害金元本1億1213万6401円、弁護士費 用1121万円、確定遅延損害金244万3953円。②平成27年度分:損害 金元本1億2691万4039円、弁護士費用1 ①平成26年度分:損害金元本1億1213万6401円、弁護士費 用1121万円、確定遅延損害金244万3953円。②平成27年度分:損害 金元本1億2691万4039円、弁護士費用1269万円、確定遅延損害金271万2503円。)及びうち各年度の損害金元本と弁護士費用の合計額に対する、平成26年度分については平成27年5月29日から、平成27年度分については平成28年5月25日から(いずれも不法行為の日より後の日)、各支払済みまで、民法(平成29年度法律第44号による改正前のもの。以下同じ。) 所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 前提事実次の事実は、括弧内に掲げた証拠(枝番のあるものは、特に断らない限り枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により認められる事実のほか、当事者間に争いがない。 (1) 当事者等ア原告は、地方自治法1条の3第1項及び第2項の定める普通地方公共団体であり、茨城県公営企業の設置等に関する条例1条1項1号に基づき、地方公営企業として、地方公営企業法2条1項1号の定める水道事業を設置し、経営している。なお、水道事業を含む原告の公営事業の管理者は企業局長で あり(同条例3条2項)、企業局長は、当該業務の執行に関し原告を代表する(同法8条1項)。 原告は、水道事業用施設として、鹿島浄水場(以下「本件浄水場」という。)を含む10の浄水場を所有している。 イ被告本町化学は、医薬品、医薬部外品、工業薬品の製造、販売等を目的と する株式会社である。 ウ被告セラケムは、活性炭、木炭、化学薬品、肥料及び農薬の製造販売並びに輸出入等を目的とする株式会社である。 エ被告クラレは、化学繊維、合成樹脂、活性炭等の製造、売買等を目的とする株式会社で ウ被告セラケムは、活性炭、木炭、化学薬品、肥料及び農薬の製造販売並びに輸出入等を目的とする株式会社である。 エ被告クラレは、化学繊維、合成樹脂、活性炭等の製造、売買等を目的とする株式会社である。被告クラレは、平成29年1月1日、クラレケミカル株 式会社を吸収合併し、その権利義務を承継した(以下「被告クラレ」には吸 収合併前のクラレケミカル株式会社も含むものとする。)。 (2) 原告による浄水場用活性炭の調達原告は、次のとおり、一般競争入札の方法により業者を決定した上で、年度ごとに粉末活性炭の購入単価契約や粒状活性炭再生業務の委託単価契約を締結し、これに基づき、原告が所有する浄水場で使用する活性炭を随時調達して いた。 ア原告は、毎年2月、ホームページ上に、入札参加資格や委託する業務内容等(活性炭の仕様、契約期間中の予定数量等)に関する入札公告を行い、その掲載後速やかに入札説明書を配布する。その後、業者から入札参加資格等の確認申請、原告による入札参加資格等の確認決定を行い、3月中に入札参 加資格者による入札を行って、落札者を決定する。かかる入札において、参加者は、粉末活性炭の購入については1kg当たりの単価、粒状活性炭の再生業務については1池当たりの単価を入札価格として提示して入札に参加する。 イ入札にかかる調達期間(入札後に締結する単価契約の期間)は、原則とし て、粉末活性炭の購入は毎年4月1日から翌年3月31日まで、粒状活性炭の再生業務は4月1日から翌年5月31日までである。 ウ原告は、入札により、粉末活性炭の購入単価(1kg当たり)、粒状活性炭再生業務の委託単価(1池当たり)を決定し、その単価に基づき、落札業者との間で、購入単価契約又は再生業務委託単価契約を締結する。 札により、粉末活性炭の購入単価(1kg当たり)、粒状活性炭再生業務の委託単価(1池当たり)を決定し、その単価に基づき、落札業者との間で、購入単価契約又は再生業務委託単価契約を締結する。 エ原告は、上記各単価契約に基づき、粉末活性炭の納品量や粒状活性炭の再生業務量に応じた代金を、落札業者に対して支払う。 (3) 窓口業者浄水場向けの活性炭の納入や再生等を行う業者(メーカー)は、これらの業務に関して地方公共団体等が実施する入札に、自ら参加するほか、各地方公共 団体等の有資格者名簿に登録のある他の業者を自社の代理店として入札に参 加させている(以下、メーカーが自社の代理店として入札に参加させる業者を「窓口業者」という。)。 (4) 平成26年度及び平成27年度の本件浄水場に関する入札ア被告セラケムは、後記平成26年度入札に先立つ平成26年2月27日、原告に対し、筑宝産業株式会社(以下「筑宝産業」という。)が自社の契約先・ 代理店であることを証明する旨の契約先・代理店証明書を提出した(甲3)。 原告は、平成26年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成26年3月11日、一般競争入札(以下、本件浄水場における粒状活性炭再生業務の一般競争入札を指すものとして、入札対象年度ごとに「平成26年度入札」などという。)を実施した。平成26年度入札は、筑宝産業が、 1池当たり1280万円の単価で落札し、原告は、筑宝産業との間で、同年4月1日、1池当たりの単価を1382万4000円(うち102万4000円は消費税及び地方消費税)、契約期間を同日から平成27年5月31日までとする、本件浄水場における粒状活性炭再生業務の業務委託単価契約(以下「平成26年度契約」という。)を締結した。また、筑宝産業は、原 消費税及び地方消費税)、契約期間を同日から平成27年5月31日までとする、本件浄水場における粒状活性炭再生業務の業務委託単価契約(以下「平成26年度契約」という。)を締結した。また、筑宝産業は、原告 に対し、平成26年4月1日、平成26年度契約に係る粒状活性炭再生業務の一部を被告セラケム及び被告クラレに委託する旨通知した(甲4、甲9、甲12の1、甲12の2)。 イ被告セラケムは、後記平成27年度入札に先立つ平成27年2月25日、原告に対し、筑宝産業が自社の契約先・代理店であることを証明する旨の契 約先・代理店証明書を提出した(甲5)。 原告は、平成27年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成27年3月16日、一般競争入札(平成27年度入札)(以下平成26年度入札及び平成27年度入札を併せて「本件各入札」という。)を実施した。 平成27年度入札は、筑宝産業が、1池当たり1295万円の単価で落札し、 原告は、筑宝産業との間で、同年4月1日、1池当たりの単価を1398万 6000円(うち103万6000円は消費税及び地方消費税)、契約期間を同日から平成28年5月31日までとする、本件浄水場における粒状活性炭再生業務の業務委託単価契約(以下「平成27年度契約」という。)を締結した。また、筑宝産業は、原告に対し、平成27年4月1日、平成27年度契約に係る粒状活性炭再生業務の一部を、被告セラケム及び被告クラレに委 託する旨通知した(甲6、甲10、甲12の3、甲12の4)。 (5) 原告による委託料の支払原告は、筑宝産業に対し、平成26年度契約及び平成27年度契約に基づき、別紙業務委託費の支払一覧中「支払日」欄記載の日に、同「支払額(円)」欄記載の額の業務委託費を支払った(甲13、甲14)。 原告は、筑宝産業に対し、平成26年度契約及び平成27年度契約に基づき、別紙業務委託費の支払一覧中「支払日」欄記載の日に、同「支払額(円)」欄記載の額の業務委託費を支払った(甲13、甲14)。 (6) 課徴金納付命令等ア公正取引委員会は、平成29年2月21日、別紙業者一覧中番号1、2、4、5、7、8、9、10、12、13、14、15、16の業者に対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)47条1項4号に基づき、立入検査を行った。 イ公正取引委員会は、令和元年11月22日、被告らは、他の事業者と共同して、本件浄水場を含む東日本に所在する126の浄水場に供給する活性炭について、供給予定者(自社の活性炭を供給すべき者)を決定し、供給予定者が被告本町化学を通じて活性炭を供給できるようにしており、独占禁止法2条6項の規定する不当な取引制限に該当し、同法3条の規定に違反するな どとして、被告本町化学に対して課徴金1億6143万円、被告クラレに対して課徴金2155万円の納付を命じた(甲1、甲2)。なお、被告セラケムは、違反行為の内容を、公正取引委員会の調査開始前に、同委員会に最初に報告し、資料の提供をしたため、課徴金の納付を命じられなかった(独占禁止法(令和元年法律第45号による改正前のもの。)7条の2第10項)。ま た、被告クラレは、公正取引委員会の調査開始日以降に、同委員会に違反行 為の内容を報告し、資料を提供したため、課徴金が30パーセント減額された(同条第12項)。 ウ公正取引委員会は、上記同日、別紙業者一覧中番号1、2、4、5、7、8、9、10、12、13、14、15の業者に対し、取締役会等において、今後他の事業者と共同して浄水場向けの活性炭について 。 ウ公正取引委員会は、上記同日、別紙業者一覧中番号1、2、4、5、7、8、9、10、12、13、14、15の業者に対し、取締役会等において、今後他の事業者と共同して浄水場向けの活性炭について供給予定者を決定 せず自主的に供給することを決議することなどを命じる排除措置命令をした(甲1、甲2)。 エ被告本町化学は、公正取引委員会の上記各命令を不服として、東京地方裁判所に対し、上記各命令の取消しを求める訴えを提起した。 (7) 平成28年度以降の本件浄水場に関する入札 ア原告は、平成28年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成28年3月10日、一般競争入札(平成28年度入札)を実施し、筑宝産業が1池当たり456万7000円で落札した(甲8)。また、平成28年度入札に先立つ同年3月1日、被告クラレ及び大阪ガスケミカル株式会社は、原告に対し、筑宝産業が自社の契約先・代理店であることを証明する旨の契 約先・代理店証明書を提出していた(甲7)。 イ原告は、平成29年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成29年3月21日、一般競争入札(平成29年度入札)を実施し、有限会社島田商店が1池当たり310万4000円で落札した(甲15の1)。 ウ原告は、平成30年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、 平成30年3月20日、一般競争入札(平成30年度入札)を実施し、ITSトレーディング株式会社が1池当たり1170万円で落札した(甲15の2)。 エ原告は、平成31年度(令和元年度)の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成31年3月19日、一般競争入札(平成31年度入札) を実施し、株式会社取手化学が1池当たり1170万円で落札した(甲15 の3)。 件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成31年3月19日、一般競争入札(平成31年度入札) を実施し、株式会社取手化学が1池当たり1170万円で落札した(甲15 の3)。 オ原告は、令和2年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、令和2年3月19日、一般競争入札(令和2年度入札)を実施し、東鉱商事株式会社が1池当たり393万円で落札した(甲15の4)。 2 争点 本件の争点は、①被告らの不法行為の成否、②原告の損害額である。 (1) 被告らの不法行為の成否(原告の主張)ア被告らを含む別紙業者一覧記載の16の業者(以下「16社」という。)は、原告が実施する活性炭の入札に、自社が供給する活性炭(自社の名称、 銘柄、品番、商標等を付した活性炭)を取り扱う販売業者(窓口業者)等を参加させ、又は自らが参加していた。 16社は、東日本に所在する地方公共団体の浄水場に供給する活性炭につき、各社の利益を確保するため、自社の活性炭を供給する供給予定者を事前に決定し、その他の業者は、供給予定者が供給できるよう協力する旨の合意 (以下「本件基本合意」という。)をした。そして、遅くとも平成25年10月24日以降、かかる合意の下に、①被告本町化学は、活性炭の入札に先立ち、16社のうち被告本町化学を除く他の15社(以下「15社」という。)と個別に面談をし、15社に対して、入札物件、自社の活性炭を供給した者、受注者となった窓口業者、契約数量、落札金額等の情報を年度ごとにまとめ た入札結果表を配布し、②15社は、被告本町化学に対し、入札結果表の中から自社が供給予定者となることを希望するものを伝え、③被告本町化学は、15社からの希望、入札結果表に記載の供給実績等を勘案して、15社のいずれかを各物 15社は、被告本町化学に対し、入札結果表の中から自社が供給予定者となることを希望するものを伝え、③被告本町化学は、15社からの希望、入札結果表に記載の供給実績等を勘案して、15社のいずれかを各物件の供給予定者として割り振り、④供給予定者の窓口業者が提示する入札価格を、供給予定者若しくは被告本町化学が単独で、又は両者の25協議により決定し、⑤供給予定者以外の業者は、供給予定者の窓口業者の入8 札予定価格よりも高い価格を、自社の窓口業者に提示させていた。 イ 被告らを含む16社は、平成26年度入札及び平成27年度入札についても、上記同様に、事前に被告クラレ及び被告セラケムを供給予定者と決定し、その入札予定価格を平成26年度入札は1280万円、平成27年度入札は1295万円として、被告クラレ及び被告セラケムは筑宝産業にその額で入5札するように指示し、他の業者は窓口業者にそれよりも高い価格で入札をさせた。 ウ 筑宝産業が被告セラケムの窓口業者でなく、被告セラケムが筑宝産業に対して入札額の指示をしていなかったとしても、被告セラケムは、平成25年11月から平成26年2月及び同年11月から平成27年2月までの間に、10被告本町化学及び被告クラレとの間で、平成26年度入札及び平成27年度入札に当たり、筑宝産業が提出する契約先・代理店証明書を発行すること、筑宝産業が落札したときは被告クラレが主たる供給者(頭メーカー)となるが、被告セラケムも活性炭の一部を納入すること、被告セラケムの他の窓口業者に協力価格で入札するよう指示すること等の合意をし、これらの行為を15した。 エ このように、被告らは、他の業者と本件基本合意をし、これに基づき、本件各入札に当たって、供給予定者及び入札価格を事前に調整した。被告らの行為は、原告が自由競 し、これらの行為を した。 エこのように、被告らは、他の業者と本件基本合意をし、これに基づき、本件各入札に当たって、供給予定者及び入札価格を事前に調整した。被告らの行為は、原告が自由競争によって形成される公正な価格により活性炭を調達することを妨げる談合行為であり、不法行為を構成する。 (被告本町化学の主張)ア供給予定者は、従来から活性炭メーカーの間で定められたルールによって決定されていた。被告本町化学は、当該ルールに従って供給予定者が決定されるに当たって、活性炭メーカーからの指示を受けて、①当該ルールにより自動的に供給予定者が定まる物件については、そのメーカーが供給予定者と なることを連絡し、②自動的に供給予定者が定まらない場合には、活性炭供 給能力が高く、16社間で強い影響力を有していたメーカーの意向を確認し、その他のメーカーにその案を伝え、各メーカーが了解するかを判断した結果を他の活性炭メーカーに連絡していた。被告本町化学が行った行為は、事務的、機械的な連絡に過ぎず、被告本町化学が供給予定者を決定したり、主体的に連絡を取ったりしたことはない。 イ活性炭メーカーは、被告本町化学が連絡行為等をしなくとも、メーカー間で直接連絡を取り合うことで、談合行為をすることができた。活性炭メーカーは、被告本町化学を介在させることで、談合行為が発覚しにくくなると考えて、被告本町化学を利用したのであり、本件の談合に当たって被告本町化学の行為は重要なものではなかった。被告本町化学は、活性炭メーカーに手 足として利用されたのであり、その行為は違法性を欠く。 ウ被告本町化学は、独占禁止法2条6項の「事業者」に当たらないから、被告本町化学の行為は不法行為に当たらない。 エしたがって、被告本町化学は不 して利用されたのであり、その行為は違法性を欠く。 ウ被告本町化学は、独占禁止法2条6項の「事業者」に当たらないから、被告本町化学の行為は不法行為に当たらない。 エしたがって、被告本町化学は不法行為責任を負わない。 (被告クラレの主張) 原告は、①被告らを含む活性炭供給事業者らが平成26年度入札及び平成27年度入札について供給予定者及び入札価格の調整行為を行ったことに加え、②入札に参加した窓口業者による応札行為がその調整行為の因果が及んだものであることを具体的に主張立証する必要がある。また、その際には、③入札等に参加した全ての窓口業者らによる応札行為が、上記調整行為を受けて行わ れたものであることを主張立証しなければならない。しかしながら、被告らを含む活性炭供給事業者らが具体的にどのような調整行為をしたかは明らかでなく、原告の立証は不十分である。 (被告セラケムの主張)平成26年度入札及び平成27年度入札において、落札業者である筑宝産業 は被告セラケムの窓口業者ではない。被告セラケムは、落札後、筑宝産業から 本件浄水場の粒状活性炭再生業務の一部を受託したが、かかる受託に談合は関係なく、被告本町化学も関与していない。 (2) 原告の損害額(原告の主張)ア被告らの行為により原告が被った損害は、現実の落札価格(以下「現実落 札価格」という。)から、当該不法行為がなければ形成されたであろう落札価格(以下「想定落札価格」という。)を差し引いた額である。そして、16社は、本件各入札以前から、活性炭の入札案件について供給予定者及び入札価格を調整していた疑いがあるため、談合行為が終了し、その影響を受けなくなった平成29年度以降、令和2年度までに実施された、本件浄水場にかか る粒状活性炭 の入札案件について供給予定者及び入札価格を調整していた疑いがあるため、談合行為が終了し、その影響を受けなくなった平成29年度以降、令和2年度までに実施された、本件浄水場にかか る粒状活性炭再生業務の入札における落札価格の平均をもって、本件各入札における想定落札価格と推認するのが相当である。 イ損害額の元本は、平成26年度入札に関しては1億1213万6401円、平成27年度入札に関しては1億2691万4039円である。その計算方法は、別紙原告主張損害額元本のとおりであり、年度ごとに、想定落札価格 (平均落札価格)と現実落札価格との差額が現実落札価格に占める割合(損害割合)を算出し、これを年度ごとに支払った業務委託費の総額に乗じた金額が、損害元本となる。 ウ本件で請求する確定遅延損害金は、平成26年度入札に関しては244万3953円、平成27年度入札に関しては271万2503円である。その 計算方法は、別紙業務委託費の支払一覧及び確定損害金の計算書のとおりである。原告は、別紙業務委託費の支払一覧中「支払日」欄記載の日に同別紙中「支払額(円)」欄記載の金額の業務委託費を支払っており、これに年度ごとの上記損害割合を乗じた金額が同別紙中「請求額(円)」欄記載の金額である。そして、かかる各金額について、平成26年度入札に関しては各支払日 から平成27年5月29日まで、平成27年度入札に関しては各支払日から 平成28年5月25日までの年5分の割合の日割り計算をした金額が、別紙確定損害金の計算書中「損害金(円)」欄記載の金額であり、これが原告が請求する確定遅延損害金である。 エ原告は、被告らの不法行為により本件訴えの提起を余儀なくされ、弁護士にその提起及び追行を委任せざるを得なかったから、平成26年度入札 載の金額であり、これが原告が請求する確定遅延損害金である。 エ原告は、被告らの不法行為により本件訴えの提起を余儀なくされ、弁護士にその提起及び追行を委任せざるを得なかったから、平成26年度入札に関 して1121万円、平成27年度入札に関して1269万円の弁護士費用は、本件と相当因果関係のある損害である。 (被告本町化学の主張)ア中華人民共和国(以下「中国」という。)産の活性炭の輸入価格が下落し、重油価格が変動するなど、平成26年度から平成28年度と平成29年度か ら令和2年度との間で、落札価格の形成に影響を及ぼす経済的要因等に顕著な変動があり、平成29年度以降の現実落札価格の平均をもって想定落札価格を推認するのは相当ではない。 イ予測的な判断による損害の算定は控えめにするべきであり、仮に平成29年度以降の落札価格をもって損害額を算定するとしても、落札価格と予定価 格(予定価格とは、原告が、茨城県企業局会計規定に基づき定める落札価格の上限であり、落札価格はこれを上回ることができない。)の比率(落札率)をもって想定落札価格を推認するべきである。落札率をもって想定落札価格を推認し、損害を算定すると、平成26年度入札に関しては3730万1580円、平成27年度入札に関しては774万3265円となる。本件の損 害はこれを超えるものではない。 ウ民事訴訟法248条により相当な損害額が認定される場合であっても、上記同様に、損害の算定は控えめにするべきである。 (被告クラレの主張)ア平成29年度以降、本件浄水場の粒状活性炭再生業務の入札は相当数行わ れたものではない。平成29年から令和2年までに行われた4回の入札の結 果の平均をもって想定落札価格を推認することは、サンプルが少なく不合理で 粒状活性炭再生業務の入札は相当数行わ れたものではない。平成29年から令和2年までに行われた4回の入札の結 果の平均をもって想定落札価格を推認することは、サンプルが少なく不合理である。 イ原油価格は入札価格の形成に影響を及ぼす一つの要素であるが、原油価格の推移に照らせば、平成26年度入札及び平成27年度入札時と平成29年度以降では価格形成に影響を与える経済的要因は著しく異なっているから、 平成29年度以降の入札結果から想定落札価格を算定することはできない。 (被告セラケムの主張)ア平成26年度入札及び平成27年度入札時と、平成28年度以降では、重油価格が変動している。また、粒状活性炭再生業務で目減りした活性炭を補充するための活性炭の輸入価格にも変動がある。以上のほか、取引価格には 原価その他諸々の要因が影響するものであり、単純に談合終了後の入札における落札価格の平均をもって想定落札価格とすることができない。 イ令和2年度入札においては、それ以前の入札時に付されていた茨城県内の再生工場で再生処理しなければならないとの上限が撤廃された。これにより、これまで入札に参加していなかった者も入札に参加し、さらなる価格競争が 生じて落札価格が下落した。そのため、令和2年度入札の落札価格は、想定落札価格算定の基礎とするべきではない。 平成29年度入札は、公正取引委員会の立入検査直後に行われたものであり、その委縮効果の影響あるいは被告セラケムのフリー宣言を受けて採算度外視の落札が行われて落札価格が大きく下落した。そのため、平成29年度 入札の落札価格は、想定落札価格算定の基礎とするべきではない。 そして、残った平成30年度入札及び平成31年度入札の落札価格の平均値は1170万円であり、価格形成の前提 のため、平成29年度 入札の落札価格は、想定落札価格算定の基礎とするべきではない。 そして、残った平成30年度入札及び平成31年度入札の落札価格の平均値は1170万円であり、価格形成の前提となる経済的要因等に変動があったことも加味すると、平成26年度及び平成27年度入札の想定落札価格は、現実落札価格と大差ない。 また、平成30年度入札及び平成31年度入札の予定価格も1170万円 であり、かかる価格が適正金額であると原告も判断している。 したがって損害の発生が認められない。 ウ平成29年度以降、本件浄水場の粒状活性炭再生業務の入札は相当数行われたものではない。平成29年度入札は、公正取引委員会の立入検査による委縮効果を受けていることが明らかであるから、これを除いた平成30年度 から令和2年度までに行われた3回の入札の結果の平均をもって想定落札価格を推認することは、サンプルが少なく、個別の特殊性を排除することができないため不合理である。 エ原告は、損害額の中に支払った消費税の額も含めている。消費税の納付税額は、その課税期間の課税標準額(売上)に対する消費税額からその課税期 間中の課税仕入れ等に係る税額(仕入控除税額)を控除して算出する(仕入税額控除)。その結果、落札価格に係る消費税額は、仕入控除税額となるため、発注者の消費税の納税に当たっては当該消費税額も控除されることになり、取引において支払った消費税額は資産の勘定科目である「仮払消費税」に計上される。すなわち、課税期間終了後、原告が消費税を納税するに当た って、原告が他者から消費税として支払を受けている「仮受消費税」から「仮払消費税」を控除した額を納税することとなるところ、原告が平成26年度契約及び平成27年度契約に基づいて支払った業 当た って、原告が他者から消費税として支払を受けている「仮受消費税」から「仮払消費税」を控除した額を納税することとなるところ、原告が平成26年度契約及び平成27年度契約に基づいて支払った業務委託費のうち、消費税分は、その控除の対象となる「仮払消費税」に計上される。そのため、原告は、上記業務委託費のうち消費税として支払った分については、最終的に費用負 担をしていないといえ、損害として発生していない(あるいは、いったん損害として発生するが損益相殺の対象になるともいえる。)。したがって、かかる消費税分については、原告の損害とは認められない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(被告らの不法行為の成否)について (1) 認定事実 括弧内の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア基本合意16社は、遅くとも平成25年10月24日以降、次のとおり、東日本地区所在の地方公共団体が発注する浄水場(本件浄水場を含む。)における粉末活性炭の納入、粒状活性炭の再生等の業務の入札について、事前に供給予 定者を決定し、その窓口業者の入札予定価格を決め、供給予定者以外の業者はその入札予定価格よりも高い協力価格を窓口業者に提示させる旨合意(本件基本合意)し、供給予定者は被告本町化学を介して活性炭を供給できるようにしていた(甲16、甲17、甲18)。 (ア) 被告本町化学の営業担当者は、15社の担当者と、毎年11月頃から翌 年1月あるいは2月頃までの間に、面談を実施していた。かかる面談において、被告本町化学の営業担当者は、被告本町化学において作成した入札結果表(活性炭に係る入札の結果をまとめたもの。)及び予定見込表(地方自治体により今後発注が見込まれる活性炭の入札について参考見積の実施状況 本町化学の営業担当者は、被告本町化学において作成した入札結果表(活性炭に係る入札の結果をまとめたもの。)及び予定見込表(地方自治体により今後発注が見込まれる活性炭の入札について参考見積の実施状況等を取りまとめたもの。)を示すなどしながら、15社から、どの物 件において活性炭の納入及び再生業務を行う業者(供給予定者)となりたいかの希望を聴取していた。そして、被告本町化学の営業担当者は、15社からの希望に加え、過去の納入実績や供給量のバランス等を考慮して、各物件における供給予定者をどこにするかの方針を決め、各業者にこれを伝えて了承を取っていた。 (イ) 供給予定者の窓口業者の入札価格は、入札前に、被告本町化学と供給予定者が相談して決めていた。かかる入札価格については、被告本町化学又は供給予定者が、当該窓口業者に連絡していた。 (ウ) 被告本町化学は、供給予定者の窓口業者の入札価格を基に、それよりも高い価格を協力価格として定め、供給予定者以外の業者に伝達し、他の業 者は自社の窓口業者に当該協力価格で入札に参加させ、供給予定者が落札 できるよう協力していた。 イ基本合意からの離脱被告セラケムは、平成27年10月27日、本件基本合意から離脱した(甲1、甲2、甲16の2、甲16の5、甲17の3、甲17の4)。 ウ個別調整行為 被告本町化学及び被告クラレは、本件基本合意に基づき、本件各入札について、次のとおり、被告クラレの窓口業者が落札できるよう調整行為(以下「本件個別調整行為」という。)をした(甲16、甲18)。 (ア) 被告本町化学の営業担当者と被告クラレの営業責任者は、本件各入札の前年の10月頃に面談をしていた。かかる面談において、被告クラレの営 業責任者は、本件浄水場の案件(本件各 甲18)。 (ア) 被告本町化学の営業担当者と被告クラレの営業責任者は、本件各入札の前年の10月頃に面談をしていた。かかる面談において、被告クラレの営 業責任者は、本件浄水場の案件(本件各入札)の供給予定者となることを希望する旨伝えた。 (イ) その後、被告本町化学の営業担当者は、本件各入札の供給予定者を被告クラレとすることとし、その旨を被告クラレの営業責任者に伝え、同責任者がこれを了承して、被告クラレが本件各入札の供給予定者に決定された。 (ウ) 被告本町化学の営業担当者は、本件各入札の数日前に、被告クラレの営業責任者に架電し、本件各入札における被告クラレの窓口業者の入札金額(平成26年度入札につき1280万円。平成27年度入札につき1295万円。)を指示し、被告クラレは窓口業者である筑宝産業に当該金額で入札させた。また、被告本町化学の営業担当者は、15社のうち本件各入 札に参加させる予定の他の業者又はその窓口業者に協力価格を伝え、本件各入札においてその価格で入札させた。そして、本件各入札は、上記価格で筑宝産業がそれぞれ落札した(前提事実(4))。 (2) 検討ア被告本町化学及び被告クラレの不法行為責任について 上記(1)アのとおり、被告らを含む16社は、東日本地区に所在する地方 公共団体が発注する浄水場用活性炭の納入、再生等の業務の入札案件について、供給予定者及び入札価格を事前に調整する旨合意(本件基本合意)し、これに基づき、上記(1)ウのとおり、被告本町化学及び被告クラレは、本件各入札においても、供給予定者を被告クラレとし、その窓口業者である筑宝産業の入札価格を事前に決めていた(本件個別調整行為)ものであり、被告本 町化学及び被告クラレのかかる行為は、原告の公正な競争の下に においても、供給予定者を被告クラレとし、その窓口業者である筑宝産業の入札価格を事前に決めていた(本件個別調整行為)ものであり、被告本 町化学及び被告クラレのかかる行為は、原告の公正な競争の下に形成された低廉な価格によって契約を締結する利益を侵害する不法行為に当たるというべきである。 イ被告セラケムの不法行為責任について(ア) 原告は、本件各入札において、本件基本合意に基づき事前に供給予定者 として決定されていたのは被告クラレと被告セラケムであり、被告セラケムも供給予定者として本件個別調整行為を行った旨主張する。そして、被告セラケムは、本件各入札に先立ち、本件各入札の落札業者である筑宝産業を自社の代理店とする旨の契約先・代理店証明書を提出していたこと、被告セラケムは、筑宝産業から本件各入札に係る粒状活性炭再生業務の一 部を請け負っていたことが認められる(前提事実(4))。 この点、本件入札において、落札業者である筑宝産業が被告クラレの窓口業者であったことは上記(1)ウ(ウ)に認定のとおりであり、被告セラケムは、筑宝産業が自社の窓口業者であったこと及び自社が本件各入札の供給予定者であったことを否認する。そして、被告らの営業担当者らの公正取 引委員会による調査時の供述調書(甲16から甲18)中には、被告セラケムが本件各入札の供給予定者となっていたことや、被告セラケムが本件個別調整行為に関与していたことをうかがわせる記載部分はない。また、本件の証拠上、被告セラケムが上記契約先・代理店証明書を提出した経緯や、16社が関与する入札において一つの業者が同時に複数の活性炭メー カーの窓口業者を務めることがどの程度あったのかは明らかでなく、筑宝 産業が被告クラレの窓口業者であったと認められる本件において 与する入札において一つの業者が同時に複数の活性炭メー カーの窓口業者を務めることがどの程度あったのかは明らかでなく、筑宝 産業が被告クラレの窓口業者であったと認められる本件において、被告セラケムが上記契約先・代理店証明書を提出したことのみをもって、筑宝産業は被告セラケムの窓口業者でもあり、被告セラケムも被告クラレと共に本件各入札の供給予定者となっていたことや、被告セラケムが本件個別調整行為に関与していたことを推認することはできない。加えて、被告セラ ケムは筑宝産業から再生業務の一部を請け負っているが、本件各入札の前から委任することが決まっていたのかなどの経緯も明らかでなく、これをもって被告セラケムが供給予定者として本件個別調整行為を行ったことを推認するに足りない。 以上のほか、被告セラケムが本件個別調整行為を行ったことを認めるに 足りる的確な証拠はない。 (イ) また、原告は、被告セラケムは、本件各入札において、自社の他の窓口業者に協力価格での入札をさせており、被告本町化学及び被告クラレと共同不法行為責任を負う旨主張する。そして、証拠(甲4、甲6)及び弁論の全趣旨によれば、本件各入札には、被告セラケムの窓口業者である株式 会社流山化学、有限会社ITSトレーディング、小西安株式会社、林六株式会社が、いずれも筑宝産業の落札価格よりも高い価格で入札したことが認められる。 しかしながら、証拠(甲16の2)及び弁論の全趣旨によれば、本件基本合意に基づいて、供給予定者及びその入札価格を調整する個別調整行為 が行われた場合であっても、15社のうち供給予定者以外の業者の窓口業者が当該入札で提示する入札価格(協力価格)については、被告本町化学が15社に協力価格を伝え、当該業者が窓口業者に伝達する場合と、 が行われた場合であっても、15社のうち供給予定者以外の業者の窓口業者が当該入札で提示する入札価格(協力価格)については、被告本町化学が15社に協力価格を伝え、当該業者が窓口業者に伝達する場合と、被告本町化学が直接窓口業者に伝達する場合とがあったことが認められる。このように、本件基本合意の下では、供給予定者以外の15社を介さずに、 被告本町化学が直接協力価格を窓口業者に伝達することがあったという のであるから、被告セラケムが、本件各入札における窓口業者への協力価格の伝達に関与していないことは十分に考えられるのであって、被告セラケムが本件基本合意に参加していたことや、本件各入札について、本件基本合意に基づき、被告本町化学及び被告クラレにより本件個別調整行為が行われていたことによっても、被告セラケムが上記各窓口業者に協力価格 を伝達していたことを認めるに足りず、その他これを認めるに足りる的確な証拠はない(被告セラケムの営業担当者の供述調書(甲17の1、甲17の3、甲17の4)中には、本件基本合意に基づき、自社が供給予定者とならない入札案件について、被告本町化学から伝えられた協力価格を窓口業者に連絡していたとの旨の記載部分があるが、本件基本合意に基づく 調整行為が行われた入札一般について述べるものであって、本件各入札について、被告セラケムが同様の行為をしたことまでは認定できない。)。 (ウ) 以上によれば、被告セラケムが、本件各入札において、本件個別調整行為に関与し、あるいは協力したことが認められず、本件において不法行為責任を負うとは認められない。 (3) 被告本町化学及び被告クラレの主張についてア被告本町化学の主張(ア) 被告本町化学は、自社が行った行為は、活性炭メーカー間のルールによって決 責任を負うとは認められない。 (3) 被告本町化学及び被告クラレの主張についてア被告本町化学の主張(ア) 被告本町化学は、自社が行った行為は、活性炭メーカー間のルールによって決定された供給予定者等の情報を、他のメーカーに連絡する事務的、機械的なものに過ぎず、被告本町化学において供給予定者を決定したり、 主体的に連絡を取ったりしたことはない旨、被告本町化学は、活性炭メーカーに利用されたものであり、自社が行った行為は本件の談合において重要なものではなく、違法性を欠く旨主張する。 しかしながら、被告本町化学の活性炭営業担当者の供述調書(甲16)中には、上記(1)アに沿う記載部分がある一方で、被告本町化学の上記主 張に沿う記載部分はなく、その他上記主張を裏付ける証拠はない。また、 本件各入札について、被告本町化学が上記主張のとおりの連絡をしていたのであれば、かかる行為は、活性炭メーカー間での供給予定者及び入札価格の事前調整の一端を担うものであり、上記(2)ア同様に不法行為に該当するものというべきである。 したがって、被告本町化学の上記主張は採用できない。 (イ) 被告本町化学は、自社が独占禁止法2条6項の「事業者」に当たらず、独占禁止法に反する行為はしていない旨主張するが、独占禁止法に違反することが不法行為責任を負う要件となるものではなく、仮に被告本町化学が上記「事業者」に当たらないとしても、上記に認定した被告本町化学の不法行為責任の成否が左右されるものではない。 イ被告クラレの主張被告クラレは、不法行為について原告の立証が不十分である旨主張する。 しかしながら、被告クラレが本件個別調整行為をしたと認められることは上記に認定のとおりである。そして、本件各入札に、本件基本 被告クラレは、不法行為について原告の立証が不十分である旨主張する。 しかしながら、被告クラレが本件個別調整行為をしたと認められることは上記に認定のとおりである。そして、本件各入札に、本件基本合意に関与していない第三者が入札に参加したとの事情はうかがわれず、本件各入札につ いては、本件基本合意の下に本件個別調整行為が行われたことをもって、筑宝産業以外の入札参加業者(窓口業者)に対して被告本町化学から直接にあるいは活性炭供給業者を介して協力価格が伝達されたことを推認することができ、これを妨げる事情はない。かかる伝達の日時、態様、方法等の詳細は明らかでないものの、そのような伝達の下に窓口業者らが入札に参加した ことが認められれば、原告が自由競争によって形成される公正な価格により活性炭を調達する法的利益を侵害されたものと認めるに十分であり、その詳細の認定までは要しないものと解される。 したがって、被告クラレの上記主張は採用できない。 (4) 小括 以上によれば、被告本町化学及び被告クラレは、共同不法行為者として、連 帯して不法行為責任を負うと認めるのが相当である。 2 争点(2)(原告の損害額)(1) 総論入札談合によって当該入札の発注者に生じる損害は、談合が行われなければ当該入札において形成されたであろう想定落札価格と、実際の落札価格(現実 落札価格)との差額をもって算定することができると解され、本件各入札のように単価契約を前提とするものについては、上記差額が現実落札価格に占める割合(損害割合)を算出し、単価契約に基づき発注者が支出した費用に、当該損害割合を乗じた額をもって損害額と認めるのが相当である。 そして、ここにいう想定落札価格は、現実には存在しなかった価格であり、 こ )を算出し、単価契約に基づき発注者が支出した費用に、当該損害割合を乗じた額をもって損害額と認めるのが相当である。 そして、ここにいう想定落札価格は、現実には存在しなかった価格であり、 これを直接に推計することは困難であるから、現実に存在した落札価格を手掛かりとしてこれを推計することが許され、一般的には、入札価格形成の前提となる経済条件、市場構造その他の経済的要因等に変動がない限り、当該入札の直前の入札における落札価格(以下「直前価格」という。)をもって想定落札価格を推認するのが相当である(最高裁平成元年12月8日第二小法廷判決・民 集43巻11号1259頁参照)。しかしながら、談合行為が相当長期にわたる場合や、当該入札の前においても同様の談合行為が行われていた疑いがある場合には、直前価格をもって想定落札価格を推認することは相当でなく、談合行為終了後、公正かつ自由な競争によって行われた入札における現実の落札価格をもって想定落札価格を合理的に推認することができると解するのが相当 である。 (2) 本件各入札の想定落札価格ア証拠(甲16の6)及び弁論の全趣旨によれば、16社の全部又は一部の業者は、本件各入札以前においても、長期間にわたり、東日本地区に所在する地方公共団体の浄水場向け活性炭の納入及び再生業務について、事前に供 給予定者やその入札価格を調整していたことが認められ、本件各入札におけ る原告の損害について、本件各入札の直前に実施された入札における落札価格(直前価格)をもって想定落札価格を推認することは相当でない。 イそこで、本件各入札以降に実施された本件浄水場における粒状活性炭再生業務の入札での落札価格をもって、本件各入札の想定落札価格を推認することができるか検討する。なお、弁論の全趣 とは相当でない。 イそこで、本件各入札以降に実施された本件浄水場における粒状活性炭再生業務の入札での落札価格をもって、本件各入札の想定落札価格を推認することができるか検討する。なお、弁論の全趣旨によれば、平成28年度入札時 点では本件基本合意は解消されていなかったことが認められ、ここでは平成29年度以降の入札を対象とする。 その上で、原告は、平成29年度から令和2年度までの、本件浄水場における粒状活性炭再生業務の入札での落札価格の平均をもって、本件各入札の想定落札価格とするべきと主張する。そして、本件各入札と、平成29年度 以降の本件浄水場における粒状活性炭再生業務の入札は、同一浄水場における同種業務についての入札であるところ、証拠(甲9、甲10、甲28、乙C4、乙C5、乙C7から乙C10)及び弁論の全趣旨によれば、本件各入札及び平成29年度入札から令和2年度入札まで、原告の発注する業務の仕様は、その基本部分において共通していることが認められ、かかる仕様にお いて、入札価格形成に影響を及ぼす顕著な点に変更があるとの事情はうかがわれない。 しかしながら、平成29年度から令和2年度までの入札における落札価格の平均は760万8500円であるところ(前提事実(7)イからオ参照)、平成29年度入札の落札価格(310万4000円)は上記平均から約59パ ーセント減、平成30年度入札及び平成31年度入札の落札価格(1170万円)は上記平均から約53パーセント増、令和2年度入札の落札価格(393万円)は上記平均から約48パーセント減の価格であり、落札価格は大きく変動している。そして、談合解消以降相当数の入札が行われている場合には、価格形成の前提となる事情にさしたる変化がなくとも、入札参加者の 経営判断等種々の要因 ト減の価格であり、落札価格は大きく変動している。そして、談合解消以降相当数の入札が行われている場合には、価格形成の前提となる事情にさしたる変化がなくとも、入札参加者の 経営判断等種々の要因により、入札ごとに落札価格に一定の変動があり得る ことを前提に、その変動を平準化するべく、平均値を求めて、これをもって想定落札価格と推認することは合理的といえる。もっとも、上記のとおり平成29年度から令和2年度までの入札において、毎年異なる窓口業者が落札し、落札価格も大きく変動したことを考慮すれば、本件各入札時と平成29年度から令和2年度までの入札の時点において、入札価格の形成に影響を与 える経済的条件等に著しい変動はなかったとしても、その平均値をもって、落札価格の変動を平準化し、想定落札価格と合理的に推認するには、その基礎となる入札の数が不足しているといわざるを得ない。 そして、想定落札価格は現実には存在しなかった価格であり、あくまで想定されるものに過ぎず、その額における落札が相当程度の蓋然性をもって想 定できる範囲においてのみ認定されるべきである。そこで、本件各入札における想定落札価格は、平成29年度から令和2年度までの入札のうち、落札価格の最も高い平成30年度及び平成31年度の1170万円と認めるのが相当である。 (3) 被告らの主張について ア被告本町化学の主張について(ア) 被告本町化学は、平成29年度以降の入札は、中国産の活性炭の輸入価格や重油価格(A重油価格)の下落の影響を受けており、本件各入札時との比較において、落札価格形成に影響を及ぼす顕著な経済的要因等に変動があるから、平成29年度以降の入札における落札価格をもって、本件各 入札の想定落札価格を推認することはできないと主張する。 の比較において、落札価格形成に影響を及ぼす顕著な経済的要因等に変動があるから、平成29年度以降の入札における落札価格をもって、本件各 入札の想定落札価格を推認することはできないと主張する。 しかしながら、本件の入札は、粒状活性炭の再生業務であって、新たな活性炭を納入することを主たる内容とするものではなく、活性炭の輸入価格の変動が、再生業務の価格形成にどのような影響を及ぼすのかは明らかでない。また、被告本町化学の主張によれば、活性炭の輸入価格の変動は、 翌年以降の活性炭の再生業務の価格へ影響を及ぼすとのことであるが、被 告本町化学が主張する中国産の活性炭の輸入価格の平均単価は、平成29年度(平成30年度の再生業務の価格に影響)には前年度比6.09パーセント増となっているが、平成30年度入札の落札価格は平成29年度入札時よりも約276パーセント増と大幅に増加しており、中国産の活性炭の輸入価格の変動は、必ずしも活性炭の再生業務の価格に相関的な影響を 与えるものとは考え難い。加えて、被告本町化学は、平成28年度の中国産活性炭輸入価格(平成29年度の再生業務の価格に影響)の平均単価は、前年度比で約20パーセント下落しており、平成29年度以降の入札においてはその影響が残っていると主張するが、平成29年度入札の落札価格は平成28年度入札時よりも下落しているものの、平成30年度入札及び 令和元年度入札の入札価格は平成28年度入札及び平成29年度入札の落札価格よりも大きく上昇しており、平成28年度の中国産活性炭輸入価格の平均単価の下落が、平成29年度入札以降の入札価格の形成に顕著かつ継続的な影響を与えているものとは認められない。その他、中国産の活性炭の輸入価格の変動が、平成29年度以降の入札における落札価格をも 単価の下落が、平成29年度入札以降の入札価格の形成に顕著かつ継続的な影響を与えているものとは認められない。その他、中国産の活性炭の輸入価格の変動が、平成29年度以降の入札における落札価格をも って想定落札価格を推認することを不相当とするほどに、活性炭の再生業務の価格形成に顕著な影響を及ぼすものであることを認めるに足りる証拠はない。 また、重油価格(A重油価格)の変動についても、これが活性炭の再生業務の価格にどのような影響を及ぼすのかは証拠上明らかでなく、これが 活性炭の再生業務の価格形成に顕著な影響を及ぼすものであることを認めるに足りる証拠はない。 したがって、被告本町化学の上記主張は採用できない。 (イ) また、被告本町化学は、落札率を用いて損害を算定するべきであると主張する。しかしながら、本件においては、本件各入札以降、同一浄水場に おける同種業務についての入札が実施されており、前記のとおり、落札価 格それ自体を比較することによって、想定落札価格を合理的に推認し、損害を算定することができるのであるから、落札率を用いて損害を算定するべき理由はない。 イ被告クラレの主張について(ア) 被告クラレは、原油価格や燃料費の変動を理由に、本件各入札時と平成 29年度以降の入札時では、落札価格形成に影響を及ぼす顕著な経済的要因等に変動があると主張するが、上記ア(ア)同様に採用できない。 (イ) 被告セラケムは、原告が支出した業務委託費のうち、消費税分については、仮払消費税として、原告が納めるべき消費税額の計算において差し引かれるのであるから、損害に含めるべきではないと主張し、被告クラレは 被告セラケムの主張を援用する。しかしながら、消費税の納付額の計算に当たって、仮払消費税が仮受消費税から控除 において差し引かれるのであるから、損害に含めるべきではないと主張し、被告クラレは 被告セラケムの主張を援用する。しかしながら、消費税の納付額の計算に当たって、仮払消費税が仮受消費税から控除されるのは、最終消費者において消費税を負担することを目的とした税務上の処理の問題であって、原告は、現に、消費税分も含めて業務委託費を支出している以上、当該消費税分を損益相殺的に差し引いて損害を計算することは相当でなく、消費税 として支払った額も含めて損害を算定するべきであると解される。 したがって、被告クラレが援用する被告セラケムの上記主張は採用できない。 (4) 損害額の算定ア以上を前提に原告の損害を計算するに、本件各入札における原告の損害割 合(現実想定落札に占める想定落札価格と現実落札価格の差額分の割合)は、別紙損害額元本(認定)中「損害割合」欄記載のとおりである。そして、原告が、平成26年度契約及び平成27年度契約に基づき支出した業務委託費の総額に、上記損害割合を乗じた額は、同別紙中「損害額」欄記載のとおりであり、かかる金額が、原告の損害金元本と認められる。 イまた、原告が、平成26年度契約及び平成27年度契約に基づき支出した 個別の業務委託費に、それぞれ上記損害割合を乗じた額は、別紙支払一覧(認定)中「認容額(円)」欄記載のとおりである。そして、かかる金額について、各支払日から、別紙確定損害金(認定)中「終期」欄記載の日までに発生した遅延損害金は、同別紙中「損害金(円)(円未満切捨て)」欄及び「損害金合計(円)(円未満切捨て)」欄記載のとおりである。 ウ加えて、弁論の全趣旨によれば、原告は本件訴えの提起及び追行を訴訟代理人弁護士に委任したことが認められ、これに要した弁護士費用として 金合計(円)(円未満切捨て)」欄記載のとおりである。 ウ加えて、弁論の全趣旨によれば、原告は本件訴えの提起及び追行を訴訟代理人弁護士に委任したことが認められ、これに要した弁護士費用として、上記アの損害金元本の約1割に相当する534万円(内訳は後記3(2)のとおり。)は、本件個別調整行為と相当因果関係のある損害と認められる。 3 総括 以上に説示したところによれば、被告本町化学及び被告クラレは、原告に対し、連帯して、次の金員を支払う義務を負うものと認められる。 (1) 損害金元本合計5346万0001円平成26年度分:2376万円平成27年度分:2970万0001円 (2) 弁護士費用合計534万円平成26年度分:237万円平成27年度分:297万円(3) 確定遅延損害金合計115万2599円平成26年度分:51万7832円 平成27年度分:63万4767円(4) 遅延損害金平成26年度分の損害金元本及び弁護士費用合計2613万円に対する平成27年5月29日から、平成27年度分の損害金元本及び弁護士費用の合計3267万0001円に対する平成28年5月25日から、各支払済みまで年 5分の割合による遅延損害金。 第4 結論よって、原告の請求は、上記の限度で理由があるから、その限りでこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとして、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法64条本文、61条、65条1項本文を、仮執行宣言につき、同法259条1項本文をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。なお、仮執行免脱宣言 は、相当でないから、これを付さないこととする。 水戸地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官三上乃理子 それぞれ適用して、主文のとおり判決する。なお、仮執行免脱宣言 は、相当でないから、これを付さないこととする。 水戸地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官三上乃理子 裁判官田島敬太 裁判官西田祥平は、退官により、署名及び押印することができない。 裁判長裁判官三上乃理子
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