平成15年1月31日判決言渡本訴・平成14年・第70979号求償金請求事件反訴・平成14年・第11506号損害賠償請求事件 主文 1 本訴原告並びに反訴原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,本訴反訴ともに,これを2分し,それぞれを各自の負担とする。 事実及び理由 第1 請求(本訴事件)被告は,原告に対し,金99万9171円及びこれに対する平成14年7月23日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。 (反訴事件)反訴被告は,反訴原告に対し,金90万円及びこれに対する平成14年9月21日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 請求の原因(本訴事件)・訴外A(以下「A」という)は,販売店Bガレージ(以下「Bガレージ」という)から平成5年式オペル(以下「本件車両」という)を購入する資金として,平成13年9月30日,訴外C生命保険相互会社(以下「貸主」という)から,次の約定で金員を借り受けた。 ① 借受金額金109万3201円② 利息年0.87パーセント③ 遅延損害金年14.6パーセント④ 弁済方法元利金を平成13年10月から平成18年3月まで毎月27日限り金2万1000円ずつ(ただし,初回金2万3000円),元利金の受領を貸主から委任された原告に支払う。 ⑤ 特約上記分割金の支払を1回でも怠ったときは,期限の利益を失う。 ・原告D株式会社(反訴被告,以下「原告」という)は,次の約定でAの委託を受け,平成13年9月18日,貸主に対し,前記・の債務について連帯保証した(以下「本件オートローン契約」という ・原告D株式会社(反訴被告,以下「原告」という)は,次の約定でAの委託を受け,平成13年9月18日,貸主に対し,前記・の債務について連帯保証した(以下「本件オートローン契約」という)。 ・原告は,Aを代理して・の借受金を金融機関から受領し,保証委託手数料金9万3201円を控除した金100万円を Bガレージに支払う。 ・ Aが・の元利金の支払いを怠り,原告が20日以上の相当な期間を定めてその支払を書面で催告したにもかかわらずその支払をしないときは,Aは,原告が貸主に代位弁済した額及び約定の遅延損害金を原告に支払う。 ・被告E(反訴原告,以下「被告」という)は,平成13年9月18日,原告に対し,Aの前記・の債務について連帯保証した(以下「本件保証契約」という)。 ・原告は,Aに対し,平成14年7月1日到達の書面で支払期の過ぎた元利金を20日間以内に支払うよう催告した。 ・原告は,平成14年6月28日,貸主に対し,金99万9171円を代位弁済した。 ・よって,原告は被告に対し,本件保証契約に基づき,次の金員の支払を求める。 ・代位弁済金金99万9171円・・に対する平成14年7月23日(催告期間満了日の翌日)から完済まで年6パーセントの割合による遅延損害金(反訴事件)・原告は,被告が本件保証契約に基づく債務の履行を怠ったとして,被告に対し保証債務の履行を求める訴えの提起をした。 ・本件保証契約は,次のとおり,被告と全く関わりのない偽造のものであることは,社会常識に照らせば明らかである。 ・被告の勤務先として記載されている会社は,被告が全く勤務したことのない無関係な会社であり,そのことは記載されている電話番号により容易 のであることは,社会常識に照らせば明らかである。 ・被告の勤務先として記載されている会社は,被告が全く勤務したことのない無関係な会社であり,そのことは記載されている電話番号により容易に確認することができた。 ・その会社の所在地は東京都となっているが,契約当時は茨城県に本店移転しており,でたらめな記載であることは一目瞭然である。また,山梨県在住者が東京の会社に勤務することの不自然さは明白である。 ・購入者の住所と販売店所在地とは遠く離れており,このような遠隔地者間の売買契約の不自然さは一目瞭然である。 ・本件訴え提起は,上記のように,原告がその請求自体理由のないことを認識しながら,漫然と訴えを提起し,被告をあえてその座に据えたものであり,訴権の濫用に当たる。また,少なくともその訴えを提起したことに過失があり,不法性を有することは明らかである。 ・被告は,原告の訴え提起により,精神的な苦痛を被った。その慰謝すべき金額は50万円を下らない。また,被告は,応訴するなどのために弁護士Fに委任し,報酬等40万円を支払う約束をし,同額の損害を被った。 ・よって,原告は被告に対し,上記損害賠償金合計90万円を支払う義務がある。 2 争点・本件保証契約の成否・原告の本訴請求は訴権の濫用に当たるか第3 争点に対する判断 1 争点・について本件オートローン契約書(甲第1号証1)の連帯保証人欄に記載されている被告の住所氏名の筆跡は,宣誓書並びに出頭票に記載された被告の筆跡と明らかに異なっており,これらの被告名義の署名部分については,真正なものであることを認めるに足りる証拠はない。また,押捺されている印影が被告の印章によって顕出されたことについても,これ の筆跡と明らかに異なっており,これらの被告名義の署名部分については,真正なものであることを認めるに足りる証拠はない。また,押捺されている印影が被告の印章によって顕出されたことについても,これを認めるに足りる証拠はない。 ところで,被告は,平成13年8月までG株式会社に勤務していた(被告本人,乙3,9,12,13号証)が,本件オートローン契約書の連帯保証人欄「おつとめ先」欄には,被告の勤務先が「H㈱」,勤続年数が「25年」と記載されている。 また,Aは,会社勤めをしたことはなく(被告本人),その筆跡(乙4,5号証の各1・2)から推認しても,会社の経理・事務を担当している人物とは到底考えられず,これらのことが記載されている契約書は,虚偽に満ちたものであると言わざるを得ない。 原告担当者I(以下「I」という)は,契約書上に記載されている被告の勤務先Hに電話をし,被告に対し保証意思の確認をしたと証言するが,前記のとおり,被告はHに勤めたことはなく,確認の相手が被告であるというのは極めて疑わしく,事情を知っている第三者が被告と称してIとの電話に応対したものと推認するのが相当である。 したがって,本件保証契約の成立を認めることはできない。 2 争点・について本訴事件は,Aが販売店から自動車を購入するに当たり,原告がAから保証委託を受け,Aが金融機関から借り入れた金銭を保証人として代位弁済したという事案である。このような事案においては,購入者と直接関わり合うのは,信販会社ではなく販売店である。信販会社としては,販売店からの連絡を受け,購入者が販売店に提出した申込書に基づき,購入者並びに保証人がクレジット契約者として相応しいかどうかを審査し,それに基づいて購入者との間で保 売店である。信販会社としては,販売店からの連絡を受け,購入者が販売店に提出した申込書に基づき,購入者並びに保証人がクレジット契約者として相応しいかどうかを審査し,それに基づいて購入者との間で保証委託契約を締結するかどうかを決定するのである。 本件においても,原告は,販売店であるBガレージから連絡を受け,担当者Iが,通常の業務過程にしたがい,主債務者・ A,連帯保証人・被告に対し,それぞれ販売店から指示された連絡先に電話をかけ,本人として応答した者に対し意思確認を行った上,信用の供与を決定したものである(証人I)。 そして,原告は,契約者から数回の支払いがなされたものの,その後支払いが停止したため,法の規定に従い,購入者である Aに対し所定期間内に未払金を支払うよう催告し,その期間内に支払いがなされなかったことから,連帯保証人である被告に対して本件訴えを提起したものである。 被告は,本件契約書が偽造されたものであることが容易に判明し,請求自体が成り立ちようがないことが一見して明らかであるにもかかわらず,原告があえて訴えを提起したことは訴権の濫用に当たると主張する。しかし,原告としては,契約者からの支払いが停止し,訴え提起前の交渉において被告が本件保証契約を否認したことから,その真偽を明確にするために訴えを提起したものと解すべきであり,特に,原告において,被告に対し精神的な苦痛を与えるなど不法な意図の下に訴えを提起した事情等が認められない以上,その訴えは訴権の濫用に該当しないというべきである。 3 結論以上によると,原告の本訴請求並びに被告の反訴請求はいずれも理由がないので,主文のとおり判決する。 東京簡易裁判所民事第1室 3 結論以上によると,原告の本訴請求並びに被告の反訴請求はいずれも理由がないので,主文のとおり判決する。 東京簡易裁判所民事第1室裁判官廣瀬信義
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