令和3(行ケ)10113 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年1月25日 知的財産高等裁判所 3部 判決 請求棄却
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判決文本文16,473 文字)

- 1 -令和4年1月25日判決言渡令和3年(行ケ)第10113号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和3年12月1日判決 原告一般社団法人睡眠栄養指導士協会 同訴訟代理人弁理士小川 清 被告特許庁長官 同指定代理人杉本克治同山田啓之主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が不服2020-7812号事件について令和3年7月26日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等⑴ 原告は,平成30年10月23日,「睡眠コンサルタント」の文字を横書きしてなる商標(以下「本願商標」という。)について,商標登録出願(商願2018-131727号)をした。 令和元年10月27日付け手続補正書による補正の後の本願商標に係る指 定役務(以下「本願指定役務」という。)は,第41類「技芸・スポーツ又 - 2 -は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」である。 ⑵ 原告は,令和2年3月6日(発送日)付けで拒絶査定(以下「本件拒絶査定」という。)を受けたので,同年6月7日,拒絶査定不服審判を請求した (不服2020-7812号)。 ⑶ 特許庁は,令和3年7月26日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年8月14日,原告に送達された。 ⑷ 原告は,令和3年9月11日,本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起 した。 2 審決の理由本件審決の 「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年8月14日,原告に送達された。 ⑷ 原告は,令和3年9月11日,本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起 した。 2 審決の理由本件審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。その概要は,本願商標である「睡眠コンサルタント」の語は,「睡眠の事柄について相談・助言・指導を行う専門家」の意味合いを容易に推認させる語であり,また,本願商標の 指定役務を取り扱う業界においては,睡眠に関する専門的な知識を有する「睡眠コンサルタント」と称する又は「睡眠コンサルタント」の語を含む名称の資格を与える団体が複数存在し,当該団体が睡眠に関する専門的な知識の教授を行っていること,及び,睡眠に関する専門的な知識を有する者が,自らを「睡眠コンサルタント」と称して,睡眠に関する知識の教授,及び睡眠に関するセ ミナーの企画・運営又は開催を行っている実情が複数認められ,さらに,知識の教授及びセミナーの企画・運営又は開催を行う業界においては,講義内容に関するテキスト,問題集及びDVD等が製作されている実情があることからすれば,本願商標は,これを本願指定役務に使用した場合,これに接する取引者,需要者をして,「睡眠に関する専門的な知識を有する者による,睡眠に関する 役務である」という役務の質(内容)を表示するものと認識させるにすぎない - 3 -から,単に役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められ,商標法3条1項3号に該当する,というものである。 3 原告の主張する審決取消事由⑴ 商標法3条1項3号該当性の判断の誤り(取消事由1)⑵ 審判手続の法令違背(取消事由2) 第3 当事者の主張 1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)について 消事由⑴ 商標法3条1項3号該当性の判断の誤り(取消事由1)⑵ 審判手続の法令違背(取消事由2) 第3 当事者の主張 1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)について〔原告の主張〕⑴ 「役務の質」の解釈の誤りア本件審決は,本願商標は「単に役務の質を表示するにすぎないもの」で あると認定して,商標法3条1項3号に該当すると判断した。「睡眠コンサルタント」が,「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」であることは明らかであるので,本件審決の判断は,「睡眠コンサルタント」が「単に役務の質を表示する標章」,「単に役務の質を表示するにすぎないもの」に該当するか否かにかかっている。 原告は,審査及び審判を通じて,「質」という言葉の一般的解釈についての具体的証拠を挙げ,特許庁がこれと違う意味に解釈するのであれば,特許庁の解釈を明らかにすべきである旨主張した。しかるに,本件審決においても,また本件訴訟の被告の主張においても,特許庁はそれに一度も答えておらず不当である。 イ 「質」という言葉の一般的解釈について,各種文献には次のとおりの記載がある。 (ア) 「質」の定義に関しては,次のとおりの記載がある。 ① ISO 9000における「品質」の定義「本来備わっている特性の集まりが,要求事項を満たす程度」 ② JISZ 8101における「品質」の定義 - 4 -「品物又はサービスが,使用目的を満たしているかどうかを決定するための評価の対象となる固有の性質・性能の全体」③ 品質工学における「品質」の定義「品物が出荷後,社会に与える損失である。ただし,機能そのものによる損失は除く」 ④ ウィキペディアの「品質」の項「ISOやJISの定義 能の全体」③ 品質工学における「品質」の定義「品物が出荷後,社会に与える損失である。ただし,機能そのものによる損失は除く」 ④ ウィキペディアの「品質」の項「ISOやJISの定義する狭義の品質という意味であれば,提供者が定めた仕様から逸脱していないという事である。広義の品質(quality)は非常に広範な概念を含む語であり,一概に定義づけることは難しいが,おおよそ,提供される製品やサービスについて , 買い手側である顧客(消費者)が求める特性との合致度と考えられる(合致度が高ければ品質が高いといわれる)。また,上質,すばらしい,高級と消費者が感じれば品質が高いと考えられる。」⑤ 保田勝通著「ソフトウェア品質保証の考え方と実際」(日科技連出版) 「品質は,ユーザーの満足度である。」⑥ 国語辞典「大辞林」(三省堂)の「質」の項「内容の良否。価値。 「質より量」,「どのような」という問いに対応する事物の在り方。判断が肯定判断か否定判断かということ。判断の質。」 ⑦「デジタル大辞典」(小学館)の「質」の項「そのものの良否・疎密・傾向などを決めることになる性質。論理学で,判断が肯定判断か否定判断かということ。物の本体。根本。本質。」⑧「gooの国語辞書」の「質」の項 「そのものの良否・疎密・傾向などを決めることとなる性質」 - 5 -(イ) 上記各文献の記載から明らかなとおり,①②③の定義内容は同じことを言っており,④はそれらの定義に基づいた解説である。また,商品についての「品質」と役務についての「質」は同じ意味なので,⑤の定義を役務に当てはめれば,役務の「質」とは「提供される役務に対するユーザーの満足度」を意味し,ISO及びJISの定義と同旨である。 さらに, 品質」と役務についての「質」は同じ意味なので,⑤の定義を役務に当てはめれば,役務の「質」とは「提供される役務に対するユーザーの満足度」を意味し,ISO及びJISの定義と同旨である。 さらに,⑥⑦⑧の辞典・辞書の解説も,ISO及びJISの定義と同旨である。 上記のとおりの「質」という言葉についての世間の一般的解釈から判断すると,「睡眠コンサルタント」は,指定役務の「質」を表示する標章に該当しない。なぜなら,役務の買い手側である顧客(消費者)が求 める特性との合致度を表わす言葉ではないからであり,また,提供される役務についてのユーザーの満足度を表わしている言葉ではないからである。「睡眠コンサルタント」は,単に「睡眠に関する専門家」を意味しているにすぎない。 したがって,本件審決が「本願商標は,単に役務の質を普通に用いら れる方法で表示する標章のみからなる商標と認めるのが相当である。」と判断したことは誤りである。 ウ上記の原告の主張が正当であり,本件審決の判断が誤りであることは,原告代理人が過去に代理した次の各案件との対比からも明らかである。 ①「スポーツ栄養コンサルタント」(商願2017-158544号) (指定役務第41類「セミナーの企画・運営又は開催」等)役務の質を表示するにすぎないとする拒絶査定に対して不服審判を請求し,上記イの主張をしたところ,拒絶査定が取り消されて登録された。 ②「栄養睡眠コンサルタント」(商願2020-42362号)(指定役務第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授」等) 拒絶理由通知もなく登録査定がされた。 - 6 -③「睡眠美容コンサルタント」(商願2018-75102号)(指定役務第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授」等) ) 拒絶理由通知もなく登録査定がされた。 - 6 -③「睡眠美容コンサルタント」(商願2018-75102号)(指定役務第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授」等)役務の質を表示するにすぎないとする拒絶理由に対して意見書を提出し,上記イの主張をしたところ,登録査定がされた。 ⑵ 本件審決の理由不備 本願商標が「単に役務の質を表示するにすぎない」と判断するのであれば,5個の指定役務のうちいずれの役務を指してそのように判断するのかを明確にすべきところ,本件審決は,役務を特定せずに「睡眠の事柄について相談・助言・指導を行う専門家に係る役務」として,「係る」という暖味な言葉を使用して誤魔化している。例えば,本願の指定役務中の「技芸・スポー ツ又は知識の教授」という役務についての役務の「質」と, 「書籍の制作」という役務についての役務の「質」とは同じではないはずであるから,指定役務ごとに,本願商標がその役務のどのような「質」を普通に表示しているかを述べるべきである。 このように,本件審決が「その役務」を明示することなく,「睡眠の事柄 について相談・助言・指導を行う専門家に係る役務に使用しても」と暖昧に述べて,本願商標が「単に役務の質を表示するにすぎない」として商標法3条1項3号に該当すると判断したことは,違法である。 ⑶ 他の登録例との不均衡第41類の役務を指定した「〇〇〇コンサルタント」という商標の登録例 は別掲のとおり多数ある。また,専門分野を表す「〇〇〇」の次に「専門家」を意味する言葉を付加した商標の登録例も多数ある(審判請求書には200余りを記載した。)。専門分野が異なるだけで,商標の構成は全く同じ本願商標「睡眠コンサルタント」だけが登録されないのは全く理解 家」を意味する言葉を付加した商標の登録例も多数ある(審判請求書には200余りを記載した。)。専門分野が異なるだけで,商標の構成は全く同じ本願商標「睡眠コンサルタント」だけが登録されないのは全く理解できない。 原告が審査段階から一貫してこの旨主張してきたのに対し,本件拒絶査定 は,これらの登録例と本願商標とが構成を異にすることを理由として原告の - 7 -主張を採用せず,本件審決も同様に判断したが,商標の構成は全く同一であるから,この判断は言い逃れにすぎない。 特許庁は行政機関であり,法律に基づく均一なサービスを国民に提供すべきである。第41類を指定役務とする「〇〇〇コンサルタント」という商標出願を行なった多数の出願人に対しては上記各登録例のように登録を認める 一方,同じような出願を行なった原告に対して登録を認めないという不公平な行政処理は,違法である。 〔被告の主張〕⑴ 原告の主張⑴(「役務の質」の解釈の誤り)について役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標である というためには,審決がされた時点において,本願商標が本願指定役務との関係で役務の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり,本願商標の取引者,需要者によって本願商標が本願指定役務に使用された場合に,将来を含め,役務の質を表示したものと一般に認識されるものであれば足りる。 本件審決は,かかる判断基準に従って,本件審決が認定した「睡眠コンサルタント」に関する取引の実情を考慮し,本願商標は,これを本願指定役務に使用した場合,これに接する取引者,需要者をして,「睡眠に関する専門的な知識を有する者による,睡眠に関する役務である」という役務の質(内容)を表示するものと認識させるにすぎないから,単に役務の質 に使用した場合,これに接する取引者,需要者をして,「睡眠に関する専門的な知識を有する者による,睡眠に関する役務である」という役務の質(内容)を表示するものと認識させるにすぎないから,単に役務の質を普通に用 いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められると適正に認定判断をしており,原告主張の誤りはない。 ⑵ 原告の主張⑵(本件審決の理由不備)について上記⑴で主張したとおり,本願商標をその指定役務に使用した場合,本願商標は,「睡眠に関する専門的な知識を有する者による,睡眠に関する役務 である」という役務の質と一般に認識されるため,商標法3条1項3号に該 - 8 -当する。これと同旨の認定判断をした本件審決の記載や範囲は明確であるから,取り消されるべき違法はない。 ⑶ 原告の主張⑶(他の登録例との不均衡)について本願商標の登録適格性は,商標の構成や取引の実情など,個別具体的な実情に基づき判断すべきものであって,過去の審査例や登録例により影響を受 けるものではない。なお,本願商標は,「睡眠コンサルタント」等と称する資格や称号に係る取引の実情などを登録適格性の判断の前提とするところ,原告の提示する審査例や登録例は,いずれも本願商標とは構成文字を異にしており,必然的にそれぞれの取引の実情も相違すると考えられるから,互いに事案を異にする。 2 取消事由2(審判手続の法令違背)について〔原告の主張〕⑴ 本件拒絶査定における理由の記載は次のとおりである。 「本願商標は,……『睡眠の事柄について相談・助言・指導を行う専門家』の意味合いを容易に認識させます。」 「そうすると,これを本願指定役務中,睡眠の事柄について相談・助言・指導を行う専門家に係る役務に使用しても,前記意味合いを認 談・助言・指導を行う専門家』の意味合いを容易に認識させます。」 「そうすると,これを本願指定役務中,睡眠の事柄について相談・助言・指導を行う専門家に係る役務に使用しても,前記意味合いを認識させるにとどまり,単に役務の質を表示するにすぎないものと認めます。」⑵ 本件審決における理由の記載は次のとおりである。 「本願商標は,……『睡眠の事柄について相談・助言・指導を行う専門家』 の意味合いを容易に認識させるものである。」「本願商標は,これをその指定役務……に使用した場合,これに接する取引者,需要者をして,『睡眠に関する専門的な知識を有する者による,睡眠に関する役務である』という役務の質(内容)を表示するものと認識させるにすぎないから,本願商標は,単に役務の質を普通に用いられる方法で表示す る標章のみからなる商標と認めるのが相当である。」 - 9 -⑶ 本件審決にいう「睡眠に関する専門的な知識を有する者による睡眠に関する役務」の「者による」は,「者が指導する」,「者が提供する」,「者が引き受ける」等の意味と解釈される。本願指定役務に即していえば,各役務が,「睡眠に関する専門的な知識を有する者」が「指導する」知識の教授,「睡眠に関する専門的な知識を有する者」が「指導する」セミナーの開催, 「睡眠に関する専門的な知識を有する者」が「引き受ける」書籍の制作,「睡眠に関する専門的な知識を有する者」が「引き受ける」ビデオの制作,「睡眠に関する専門的な知識を有する者」が「執筆する」書籍の制作,「睡眠に関する専門的な知識を有する者」が「制作する」ビデオの制作,等の役務であることを意味する。 これらは,本件拒絶査定の,本願商標は専門家という「意味合い」を認識させるから登録できない,とする理由とは全く相違 を有する者」が「制作する」ビデオの制作,等の役務であることを意味する。 これらは,本件拒絶査定の,本願商標は専門家という「意味合い」を認識させるから登録できない,とする理由とは全く相違している。本件審決は,「指導する」,「提供する」,「引き受ける」,「執筆する」,「制作する」等の形で専門家が関与する役務を意味しているから登録できないとしているのに対して,本件拒絶査定は,商標の言葉が単に「専門家」を意味して いるにすぎないから登録できないとしているのであって,それぞれの理由は明らかに異なる。 このように,本件審決は,拒絶査定の理由とは異なる新たな拒絶の理由によるものであるから,審判において,商標法55条の2第1項で準用する同法15条の2の規定に従い,原告に対し,拒絶の理由を通知し意見書を提出 する機会が与えられるべきであった。本件審決は,この手続を経ずにされた点で違法である。 〔被告の主張〕⑴ 本件拒絶査定と本件審決との間において,認定及び判断の内容は,形式的にも実質的にも何ら相違せず,本件審決は新たな拒絶理由に基づくものとは いえないから,商標法55条の2で準用する同法15条の2の規定の適用は - 10 -ない。 ⑵ なお,本件の審判手続においては,上記⑴のとおり新たな拒絶理由通知は不要であったものの,審理の充実を図るため,令和3年3月8日(起案日)付け審尋において暫定的見解(商標法3条1項3号該当性)を通知して意見書提出の機会を与えたから,原告が新たな拒絶理由と主張する事項に関する 原告の反論の機会も実質的に与えられており,本件審決が原告にとって不意打ちとなるような状況にはなかった。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)について⑴ 商 の反論の機会も実質的に与えられており,本件審決が原告にとって不意打ちとなるような状況にはなかった。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)について⑴ 商標法3条1項3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くと規定されてい るのは,このような商標は,指定役務との関係で,その役務の提供の場所,質,提供の用に供する物,効能,用途その他の特性を表示記述する標章であって,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他役務の識別力を欠くもの であることによるものと解される(最判昭和54年4月10日同53年(行ツ)第129号参照)。そうすると,出願に係る商標が,その指定役務について役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるというためには,本件審決がされた令和3年7月26日の時点において,当該商標が当該役務との関係で役務の質を表示記述するものとして取引に際 し必要適切な表示であり,当該商標の取引者,需要者によって当該役務に使用された場合に,将来を含め,役務の質を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される。そして,当該商標の取引者,需要者によって当該役務に使用された場合に役務の質を表示したものと一般に認識されるかどうかは,当該商標の構成やその指定役務に関する取引の事情を考慮して 判断すべきである。 - 11 -⑵ 本願商標及び本願指定役務に関する取引の実情証拠(乙3~19)によれば,次の事実が認められる。 ア 「一般社団法人日本能力教育促進協会(JAFA)」のウェブサイトにおいて,「睡眠コンサルタント」の見 標及び本願指定役務に関する取引の実情証拠(乙3~19)によれば,次の事実が認められる。 ア 「一般社団法人日本能力教育促進協会(JAFA)」のウェブサイトにおいて,「睡眠コンサルタント」の見出しの下,「資格概要」の項に「睡眠に関わる脳の科学的な働きから夢の秘密,快適な眠りのための環境 作りなど,睡眠に関わるあらゆる知識を持ち,自分自身や周囲の人の理想の睡眠をサポートできるプロを目指す資格です。」の記載が,「受験資格」の項に「当協会指定の認定機関が行う講座において,認定機関指定の方法で受験を申し込んだ者を対象とします。」の記載がある(乙3)。 イ 「妊婦と子どもの睡眠コンサルタント資格取得コース」のウェブサイ トにおいて,「睡眠コンサルティングのユニークな総合的なアプローチ」の見出しの下「IPHIの睡眠コンサルタントは,ご家庭へのコンサルテーション,子どもが生まれることによって変化する環境に向けての心構え,子どもの授乳に関する問題,妊娠中の睡眠の役割や精神面と生活に関係するすべての要因の大切さを重視しています。」の記載が,「『妊婦と乳幼 児睡眠コンサルタント』の資格」の見出しの下,「IPHI『妊婦と乳幼児の睡眠コンサルタント』資格取得プログラムは2部構成の講義になります。」の記載がある(乙4)。 ウ 「滋賀医科大学」の発行する「SHIGAIDAINEWSVol.9」において,「多角的・包括的な睡眠問題解決をめざす『眠りの 森』健康サービス事業」の見出しの下,「睡眠にかかわる種々の問題を解決するため,睡眠コンサルタントの養成・・・を事業の最終的な目的としている。」,「人材育成・教育事業では,初級(スリープマスター),中級(睡眠コンサルタント)という2段階のコースと資格を設定して睡眠コンサルタントの ンサルタントの養成・・・を事業の最終的な目的としている。」,「人材育成・教育事業では,初級(スリープマスター),中級(睡眠コンサルタント)という2段階のコースと資格を設定して睡眠コンサルタントの養成に取り組んでいく。」の記載がある(乙5)。 エ 「formie」のウェブサイトの「睡眠コンサルタント資格取得講 - 12 -座」の項において,「睡眠コンサルタントとは」の見出しの下,「睡眠に関わる脳の科学的な働きから夢の秘密,快適な眠りのための環境作りなど,睡眠に関わるあらゆる知識を持ち,自分自身や周囲の人の理想の睡眠をサポートできるスペシャリスト,それが睡眠コンサルタントです。」の記載がある(乙6)。 オ 「睡眠コンサルタント『まつみつ』公式サイト」のウェブサイトにおいて,「睡眠講義」の見出しの下,「睡眠の重要性や睡眠によって得られる効果・・・などの内容につきまして,1時間程度の講義をさせていただきます。」の記載とともに,講師(A)の「プロフィール」の項に「睡眠コンサルタント(JAFA)」の記載がある(乙7)。 カ 「ISETAN 新宿店」のウェブサイトにおいて,「【乳幼児睡眠コンサルタント Bさんによる睡眠講座】」の見出しの下,「内容」の項に「乳幼児睡眠コンサルタント Bさんによる睡眠講座と参加者の皆さまからの質疑応答コーナーを行います。」の記載がある(乙8)。 キ 「スキルマーケット coconala」のウェブサイトにおいて, 「coucouLuna」(40代前半,女性)のプロフィールの項に「妊婦と乳幼児の睡眠コンサルタント」,「夜泣きや寝ぐずり,早起きなどお子さまの睡眠のお悩みの改善や予防のためのコンサルテーションや講座を開いています。」の記載がある(乙9)。 ク 「mominess」の「ね 児の睡眠コンサルタント」,「夜泣きや寝ぐずり,早起きなどお子さまの睡眠のお悩みの改善や予防のためのコンサルテーションや講座を開いています。」の記載がある(乙9)。 ク 「mominess」の「ねんね講座/赤ちゃんの夜泣き・寝かしつけ 専門家ねんねママのブログ」のウェブサイトにおいて,「ねんね講座」の見出しの下,「赤ちゃんの睡眠の基本,寝かしつけのノウハウについて,たった500円で学べるオンライン講座。」の記載があり,講師(D)のプロフィールの項に「乳幼児睡眠コンサルタント」,「睡眠コンサルタントとは,乳幼児の健康的な睡眠習慣の確立を目的として,家庭環境やお子 様の状況に合わせながら提案し改善を目指すものです。」の記載がある - 13 -(乙10,乙11)。 ケ朝日新聞(2019年6月15日)における「情報 /青森県」の見出しの記事情報に,「講座」,「睡眠コンサルタントのEさんが『健康寿命を延ばす正しい眠り方』と題し,睡眠による体質改善や快眠のコツなどについて話す。」の記載がある(乙12)。 コ東京読売新聞(2014年4月7日)における「[Eさんのくらし本]良い眠りで健康も美も」の見出しの記事情報に,「睡眠コンサルタントとして活動する著者が,睡眠の取り方を変えることで眠りの質を高め,痩せやすい体質に変えていくコツを紹介する。」の記載がある(乙13)。 サ化学工業日報(2007年12月7日)における「睡眠ストレス保有者, 5人に1人,味の素セミナーから」の見出しの記事情報に,「同事業では『翌日,すっきりした生活を送るための快眠サービスが主流』(F睡眠コンサルタント)を占めつつある。味の素の『睡眠事情』と題するセミナーで報告された。」の記載がある(乙14)。 シ朝日新聞(2006年7月14日) した生活を送るための快眠サービスが主流』(F睡眠コンサルタント)を占めつつある。味の素の『睡眠事情』と題するセミナーで報告された。」の記載がある(乙14)。 シ朝日新聞(2006年7月14日)における「専門店員が枕選び 7種 の健康枕が人気天満屋岡山店 /岡山県」の見出しの記事情報に,「岡山市本町の朝日カルチャーセンター岡山・・・で15日午前10時から,日本睡眠科学研究所睡眠コンサルタントのGさんを講師に,『健やかな眠りのための枕セミナー』が開かれる。」の記載がある(乙15)。 ス 「日刊工業新聞」のウェブサイトにおいて,「【眠れないあなたへ】睡 眠コンサルタントによる睡眠環境セミナー開催【眠るは,生きる。】」の見出しの記事情報(2017年11月29日)に,「ライフデザイン・カバヤ GRANZ『SLEEPFIRSTHOUSING』を監修したH氏が岡山へやってくる。上質な睡眠を実現する家づくりの重要性語ります。」の記載がある(乙16)。 セ 「快眠デザイン研究所」のウェブサイトにおいて,「睡眠コンサルとし - 14 -て起業した理由」の見出しの下,「睡眠指導士・睡眠コンサルタントのIです。」の記載がある(乙17)。 ソ 「BetterSleep」のウェブサイトにおいて,「BetterSleep 事業理念」の見出しの下,「代表プロフィール」の項に「保有資格:・・・睡眠コンサルタント・・・」の記載がある(乙18)。 タ 「CISA」のウェブサイトにおいて,「講師の紹介」(J)の項に,「小児睡眠コンサルタント。」,「2018年より小児睡眠コンサルタントとして活動を開始。」,「現在,乳幼児の睡眠問題についてのカウンセリングや,育児支援者・医療従事者向け講座などを行う。」の記載がある(乙19)。 ルタント。」,「2018年より小児睡眠コンサルタントとして活動を開始。」,「現在,乳幼児の睡眠問題についてのカウンセリングや,育児支援者・医療従事者向け講座などを行う。」の記載がある(乙19)。 ⑶ 上記認定事実によれば,「睡眠コンサルタント」が,「睡眠の事柄について相談・助言・指導を行う専門家」の意味合いを容易に認識させることは,その構成から明らかである。そして,上記認定事実によれば,「睡眠コンサルタント」と称する資格又は「睡眠コンサルタント」の文字を含む名称を冠する資格を与える団体が存在し,当該団体が睡眠に関する専門的な知識の教 授等を行っている例が複数あること(上記ア~エ),これらの団体により認定資格を得た者が「睡眠コンサルタント」と名乗り,睡眠に関する知識の教授,及び睡眠に関するセミナーの企画・運営又は開催を行っている例が複数あること(上記オ~ク),それ以外にも,睡眠に関する専門的な知識を有する「睡眠コンサルタント」と称する者が,睡眠に関する知識の教授,及び睡 眠に関するセミナーの企画・運営又は開催等を行っている例が複数あること(上記ケ~タ)が認められる。また,知識の教授及びセミナーの企画・運営又は開催を行う業界において,講義及びセミナー等の内容に関する書籍(テキスト,問題集等)及びビデオ等が制作されている実情があることは,顕著な事実である。 以上からすると,本願商標は,本願指定役務である「技芸・スポーツ又は - 15 -知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」との関係で,本件審決がされた令和3年7月26日の時点において,「睡眠に関する専門的な知識を有する者による,睡眠に関 教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」との関係で,本件審決がされた令和3年7月26日の時点において,「睡眠に関する専門的な知識を有する者による,睡眠に関する役務である」という役務の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切 な表示であり,本願商標の取引者,需要者によって本願商標が本願指定役務に使用された場合に,役務の質を表示したものと一般に認識されるものであるから,本願商標は,本願指定役務について役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であると認めるのが相当である。 したがって,本願商標は,商標法3条1項3号に該当する。これと同旨の 本件審決の認定判断に誤りはない。 ⑷ 原告の主張についてア原告の主張⑴(「役務の質」の解釈の誤り)について原告は,本件拒絶査定においても本件審決においても「質」の語の定義が明確にされていないのは不当である旨主張する。 しかしながら,商標法3条1項3号の「役務の質」を原告が主張するような意味に限定して解釈する必要はなく(広辞苑第7版の「質」の項には「②内容。中味。価値。③(quality)物がそれとして存在するありかた。 性質。⇔量。」と記載されている。),本件審決も「質(内容)」と記載し,「質」という文言を「内容」と言い換えることによってその意味を明 らかにしようとしたものと解されるから,「質」の定義が全くされていないとはいえない。 また,原告は,役務の「質」という語の一般的解釈は,ISOやJISの「品質」に関する定義等に照らして,役務の買い手側である顧客(消費者)が求める特性との合致度や提供される役務についてのユーザーの満足 度であり,単に「睡眠に関する専門家」を意味する「睡眠コンサルタン 」に関する定義等に照らして,役務の買い手側である顧客(消費者)が求める特性との合致度や提供される役務についてのユーザーの満足 度であり,単に「睡眠に関する専門家」を意味する「睡眠コンサルタン - 16 -ト」の語は,役務の「質」を表示する標章に当たらない旨主張する。 しかしながら,上記⑵及び⑶のとおり,「睡眠コンサルタント」の語の取引の実情を考慮すれば,本願商標が本願指定役務に用いられることによって,当該役務が,睡眠に関する専門家によって指導,提供,制作等されることを表し,ひいては当該役務の取引者,需要者が求める特性に合致し 満足を与えることを含意するものともいえるから,仮に役務の「質」の解釈に関する原告の主張を前提としても,本願商標は役務の「質」を普通に用いられる方法で表示する標章に当たるというべきである。 したがって,原告の上記各主張は上記⑶の認定判断を左右するものでなく,採用することができない。 イ原告の主張⑵(本件審決の理由不備)について原告は,本件審決が,本願商標の指定役務のうちどの役務を対象に判断しているのかを具体的に明らかにしていないことは違法である旨主張する。 しかしながら,本件審決の理由の記載(特に「第5 当審の判断」の1⑷ウ)に照らすと,本件審決が,本願商標を本願指定役務のいずれに使用 したとしても,その役務の提供主体が「睡眠に関する専門的な知識を有する者」であり役務の内容が「睡眠に関するもの」であることを認識させる,と判断したこと,すなわち,判断の対象とした役務は本願指定役務の全てであることが明らかである。 したがって,原告の主張は前提に誤りがあり,採用することができない。 ウ原告の主張⑶(他の登録例との不均衡)について原告は,「○○〇コンサルタント 全てであることが明らかである。 したがって,原告の主張は前提に誤りがあり,採用することができない。 ウ原告の主張⑶(他の登録例との不均衡)について原告は,「○○〇コンサルタント」という商標の登録例が多数あること,専門分野を表す「〇〇〇」の次に「専門家」を意味する言葉を付加した商標の登録例も多数あることを挙げて,これらの登録例と構成を同じくする本願商標は登録されて然るべきである旨主張する。 しかしながら,商標登録の可否は,商標の構成,指定役務,取引の実情 - 17 -等を踏まえて,具体的な実情に基づき商標ごとに個別に判断すべきものであって,原告が指摘するような他の商標登録事例が多数あるからといって本願商標の登録の可否が影響を受けるものではないから,本願商標が本願指定役務について役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であることを否定する理由にはならない。 したがって,原告の上記主張も採用することができない。 2 取消事由2(審判手続の法令違背)について原告は,本願の拒絶の理由について,本件拒絶査定では「『睡眠の事柄について相談・助言・指導を行なう専門家』の意味を認識させるにすぎない」と記載されたのに対し,本件審決では「『睡眠に関する専門的な知識を有する者に よる,睡眠に関する役務である』という役務の質(内容)を表示するものと認識させるにすぎない」と記載されたことについて,査定の理由と異なる拒絶の理由であるにもかかわらず商標法55条の2第1項で準用する同法15条の2の規定に従った手続がとられなかったことは違法である旨主張する。 しかしながら,商標法55条の2第1項にいう「査定の理由と異なる拒絶の 理由」に当たるか否かは,適用される法条が異なっているか否か 定に従った手続がとられなかったことは違法である旨主張する。 しかしながら,商標法55条の2第1項にいう「査定の理由と異なる拒絶の 理由」に当たるか否かは,適用される法条が異なっているか否かも含め,理由の内容を実質的に検討して判断すべきであり,その結果,拒絶査定と審決の判断内容が実質的に相違するものではなく,その審理の内容も同一といえるときは,査定の理由と異なる新たな拒絶の理由があったとはいえない。 これを本件について検討するに,本件拒絶査定と本件審決の判断は,いずれ も拒絶の根拠条文(商標法3条1項3号)を共通にし,いずれも本願商標である「睡眠コンサルタント」の語は,「睡眠の事柄について相談・助言・指導を行う専門家」の意味合いを容易に推認させる語であることを前提として,取引の実情を考慮して,本願商標は,これを本願指定役務に使用した場合,これに接する取引者,需要者をして,役務の質を表示するものと認識させるにすぎな いと判断したものであるから,実質的に相違するものでなく,本件審決は本件 - 18 -拒絶理由とは異なる新たな拒絶理由を示したということはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 3 結論以上のとおり,本件審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官上田卓哉 裁判官都野道紀 - 上田卓哉 裁判官都野道紀 別掲医業経営コンサルタント 登録第5211992号獣医療コンサルタント登録第5767741号消費生活コンサルタント登録第5808103号長所開発コンサルタント登録第5878635号介護食コンサルタント登録第5946130号ベビーフードコンサルタント登録第6018800号趣味起業コンサルタント登録第5680651号筆跡心理コンサルタント登録第5719291号日本語品質コンサルタント登録第5842479号健康増進コンサルタント登録第6051334号サービス・コンサルタント登録第5476275号夫婦円満コンサルタント登録第5772010号行動習慣コンサルタント登録第5817982号建物財務コンサルタント登録第5926021号日報コンサルタント登録第5467520号持ち味コンサルタント登録第5546502号プチコンサルタント登録第5651659号マネーマインドコンサルタント登録第5732932号育休後コンサルタント登録第5814304号行動習慣コンサルタント登録第5817982号一言コンサルタント登録第5460039号CUBICコンサルタント登録 登録第5814304号 行動習慣コンサルタント 登録第5817982号一言コンサルタント 登録第5460039号CUBICコンサルタント 登録第5820485号質問型コンサルタント 登録第5822563号活かす片づけコンサルタント 登録第5902611号 世代交代コンサルタント 登録第5915999号サロネーゼコンサルタント 登録第5927779号高度年金・将来設計コンサルタント 登録第5933395号スパイス&ハーブコンサルタント 登録第5946125号イクメンコンサルタント 登録第5960510号 日本で一番ハンサムなキャリアコンサルタント 登録第5970260号しくみづくりコンサルタント 登録第5975775号笑顔心理コンサルタント 登録第5976736号感情コンサルタント 登録第5985279号 しつもんコンサルタント 登録第5988842号FRPコンサルタント 登録第5992569号ペット健康コンサルタント 登録第5994239号産業看護コンサルタント 登録第6006633号学習空間コンサルタント 登録第6006672号 グルテンフリーコンサルタント 登録第6007565号キャリア再起コンサルタント 登録第6017442号食育栄養コンサルタント 登録第6018799号スリーブコンサルタント 登録第6028899号土地境界コンサルタント ルタント 登録第6017442号 食育栄養コンサルタント 登録第6018799号 スリーブコンサルタント 登録第6028899号 土地境界コンサルタント 登録第6030648号 ライフシフトコンサルタント 登録第6036586号 習慣化コンサルタント 登録第6037433号 意思決定コンサルタント 登録第6038241号 クラウドファンディングコンサルタント 登録第6059663号 ライフケアコンサルタント 登録第6073536号 DCコンサルタント 登録第6098108号 習慣力開発コンサルタント 登録第6118269号 共同養育コンサルタント 登録第6119845号 ミッションコンサルタント 登録第6129921号 睡眠美容コンサルタント 登録第6196501号 以上 (別紙審決書の写し省略)

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