主文 被告人を懲役23年に処する。 未決勾留日数中190日をその刑に算入する。 大阪地方検察庁で保管中の果物ナイフ1本(平成19年領第10098号符号6)及び包丁1本(同号符号7)を没収する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (犯罪事実)被告人は,第1金員を強取しようと企て,平成19年11月10日午後6時9分ころ,大阪市北区所在のバスチケットセンターにおいて,同センター従業員A(当時22歳)に対し,果物ナイフ(刃体の長さ約9.9センチメートル,平成19年領第10098号符号6)をカウンター越しに突きつけ,「金出せ」などと言い,さらに,同センターに居合わせた客のB(当。 時44歳)の背後から同人を左腕で抱きかかえた上,右手に所持した上記果物ナイフを同人に突きつけ,同センター従業員C(当時36歳)らに対し「金欲しいんや。さっさと出せ。こいつけがするぞ」などと,。 言って脅迫し,上記A及びCらの反抗を抑圧した上,同センターセンター長が管理する現金10万円を強取したが,上記Bに上記果物ナイフを突きつけた際,同人が被告人の右手をつかもうとしたのに対し,被告人において上記果物ナイフを引いたため,上記Bに全治まで約1週間を要する右手第一指切創の傷害を負わせ,第2金融機関から金員を強取しようと企て,平成19年11月26日午後零時18分から同日午後零時20分までの間,大阪市中央区所在の郵便局において,同郵便局に居合わせた客のD(当時44歳)の背後から同人の首に左腕を巻き付けて絞め,包丁(刃体の長さ約17.3センチメ ートル,平成19年領第10098号符号7)及び前記果物ナイフを同人の首に突きつけ,同郵便局局員Eらに対し「お金出しなさいよ。ま,だあるでしょう。頸動脈切るわよ」などと言い,その反抗を抑圧し,。 同郵便局局長Fが 領第10098号符号7)及び前記果物ナイフを同人の首に突きつけ,同郵便局局員Eらに対し「お金出しなさいよ。ま,だあるでしょう。頸動脈切るわよ」などと言い,その反抗を抑圧し,。 同郵便局局長Fが管理する現金136万7000円を強取した上 同日午後零時21分ころから同日午後零時22分ころまでの間に,同市中央区付近路上において,通行中のG(当時69歳)に対し,逮捕を免れるため,殺意をもって,前記果物ナイフで同人の左胸部を1回突き刺したが,同人に約1か月の加療を要する胸部刺創,心損傷,心タンポナーデ及び横隔膜損傷の傷害を負わせたにとどまり,同人を殺害するに至らず, 前記1記載の日時場所において,前記郵便局から被告人を追跡してきた同郵便局局員H(当時40歳)に背後から抱きつかれるや,逮捕を免れるため,殺意をもって,前記果物ナイフで同人の腹部を数回突き刺したが,同人に約2週間の加療を要する腹部刺創の傷害を負わせたにとどまり,同人を殺害するに至らず, 同日午後零時22分ころ,同市中央区付近路上において,前記第2冒頭の強盗犯人として追呼されている被告人を逮捕しようとしたI(当時38歳)に地面に倒されるや,逮捕を免れるため,前記果物ナイフで同人の右大腿部を突き刺し,よって,同人に約2週間の加療を要する右大腿部刺創の傷害を負わせ,第3同日午後零時24分ころ,同市中央区島之内の大阪市高速電気軌道第6号線(通称地下鉄堺筋線)長堀橋駅に停車中の列車内において,乗客のJ(当時70歳)に対し,前記果物ナイフをその首に突きつけるなどし,同人の生命,身体等に危害を加えかねない気勢を示し,もって,凶器を示して脅迫し,第4業務その他正当な理由がないのに,同日午後零時18分ころから同日 午後零時24分ころまでの間,第2,第3記載の各場所及びその間の に危害を加えかねない気勢を示し,もって,凶器を示して脅迫し,第4業務その他正当な理由がないのに,同日午後零時18分ころから同日 午後零時24分ころまでの間,第2,第3記載の各場所及びその間の路上等において,前記包丁1本及び果物ナイフ1本を携帯した。 (証拠)省略(累犯前科)省略(法令の適用)省略(量刑の理由)本件は,被告人が,バスチケットセンターの従業員やその場に居合わせた客に果物ナイフを突きつけて,同センターから現金を強取し,その際,客に傷害を負わせ(判示第1,郵便局に居合わせた客を人質にとって包丁及び)果物ナイフを突きつけ,郵便局員から現金を強取し,逃走の際,逮捕を免れるため,通行人や被告人を追跡してきた郵便局員ら合計3名を果物ナイフで次々と刺し(判示第2,続いて逃げ込んだ地下鉄の乗客に果物ナイフを突)きつけて脅迫し(判示第3,判示第2及び第3の犯行の際,正当な理由が)ないのに包丁及び果物ナイフ各1本を携帯した(判示第4)という事案である。 被告人は,平成16年10月に強盗未遂等の罪で懲役3年の実刑判決を受け,平成19年10月まで服役していたが,服役中から出所後に強盗をして大金を手に入れることを計画し,前刑服役中に刑務官に対し出所後は大きな事をすると話していたこともあって本件各犯行に及んだと供述するのであって,金銭目的に加えて自己顕示欲を満たすためという本件犯行動機は,極めて利欲的かつ自己中心的で,全く酌量すべきものはなく,強い非難に値する。 判示第1についてみると,被告人は,バスチケットセンターでの強盗を決意すると,犯行の数時間前から犯行現場を何度も下見し,事前に購入したマスクやサングラスなどで変装をした上で犯行に及んでおり,周到な計画に基づく犯行である。態様についても,同センターの従業員にいきなり果物ナイフ 行の数時間前から犯行現場を何度も下見し,事前に購入したマスクやサングラスなどで変装をした上で犯行に及んでおり,周到な計画に基づく犯行である。態様についても,同センターの従業員にいきなり果物ナイフを突きつけ,さらに,同所に居合わせた客の背後から果物ナイフを突きつ けて人質とし,同センター従業員から現金を強取しており,危険かつ悪質な犯行である。被害者は,偶然その場に居合わせたというだけで,全治1週間を要する傷害を負わされたのであり,その身体的,精神的被害は軽視できない。また,チケットセンターにおける財産的被害も10万円と少なくない。 判示第2ないし第4の各犯行については,被告人は判示第1の犯行後も反省,悔悟等することなく,今度は金融機関である郵便局で強盗をして大金を奪い取ろうと決意し,判示第1の犯行で使用したサングラスやマスクに加え,かつらなどの変装をして犯行に及んでおり,判示第1の犯行と同様周到に計画された犯行である。その犯行態様も,居合わせた女性客の首を絞め,包丁を突きつけて人質に取った上で「頸動脈切るわよ」などと強烈な脅迫文,。 言を発して郵便局員を脅し,現金を強取した後,逮捕を免れるため,次々と通行人や追跡してきた郵便局員を果物ナイフで突き刺して逃走を続け,さらに,逃げ込んだ地下鉄車両内で,人質として地下鉄車内の乗客にナイフを突きつけ脅迫しているのであって,悪質極まりない。被告人は,判示第2の1の被害者の左胸部に果物ナイフの刃体の長さに匹敵すると推測される創傷を負わせ,判示第2の2の郵便局員の腹部を立て続けに数回突き刺し,うち1か所は深さ約8㎝にも達するものであり,判示第2の3の被害者の右大腿部外側から内側へ向けての貫通創を負わせている。各被害者は,何の落ち度もないのに,このような傷害を負わされたものであり,特に判示第2の1 は深さ約8㎝にも達するものであり,判示第2の3の被害者の右大腿部外側から内側へ向けての貫通創を負わせている。各被害者は,何の落ち度もないのに,このような傷害を負わされたものであり,特に判示第2の1の被害者は,果物ナイフの刃が心臓にまで達し,一時は意識不明に陥るほどの重傷を負い,医師の適切な治療によって一命をとりとめたものの,現実的で切迫した生命の危険にさらされているのであって,被告人の本件犯行は,被害者らの生命・身体の尊厳を一顧だにしない非情なものというほかない。また,被告人が強奪した現金も130万円余りの高額に達している。加えて,各犯行は白昼堂々行われ,しかも金融機関等に来店した一般客を人質に取って強盗に及び,繁華な公道上において連続的に刃物で人を刺すなどした事件であ り,近隣に居住・稼働する一般市民に大きな驚愕や恐怖を与えたことは容易に想像でき,生じた社会的影響も無視することができない。 被告人は,同種前科による服役後,わずか2か月以内の短期間に連続してこのような凶悪犯罪を行っているのであって,被告人の反社会的性行は顕著である。また,被告人は,公判においても,本件動機の一端が刑務所内での処遇にあるかのような供述をしたり,再び犯行に及ばないとは断言できないと述べるなど,真摯な反省をしているとは到底いえない。 これらの事情に照らすと,被告人の責任は非常に重く,相当長期の刑を免れない。 しかしながら,判示第2の3の被害者とは示談が成立し120万円を支払っており,判示第1及び判示第2の2の被害者の治療費等についても被害者に支払った損害保険会社等に填補賠償していること,いずれの犯行についても財産的被害については金銭が還付されるなどして被害回復がなされていること,被告人が公判廷で被害者の傷害の程度を目の当たりにし,ようやくではあるものの被 に填補賠償していること,いずれの犯行についても財産的被害については金銭が還付されるなどして被害回復がなされていること,被告人が公判廷で被害者の傷害の程度を目の当たりにし,ようやくではあるものの被害者に対する反省の弁を一応述べていることなど,被告人にしん酌すべき事情もある。 そこで,これらの事情を総合考慮して,主文の刑に処することとした。 (求刑懲役25年,果物ナイフ及び包丁の没収)平成20年8月27日大阪地方裁判所第9刑事部裁判長裁判官笹野明義裁判官安永武央 裁判官野村昌也
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