平成14(ワ)115 損害賠償等請求

裁判年月日・裁判所
平成14年10月29日 名古屋地方裁判所
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判決文本文6,138 文字)

主文 1 被告Aは,原告Cに対し146万3208円,同Dに対し151万8099円,同Eに対し175万3149円,同Fに対し90万0881円,同Gに対し123万9987円及び上記各金員について平成13年10月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らの被告Bに対する請求を棄却する。 3 訴訟費用は,原告らと被告Aとの間では被告Aの負担とし,原告らと被告Bとの間では原告らの負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは,連帯して,原告Cに対し146万3208円,同Dに対し151万8099円,同Eに対し175万3149円,同Fに対し90万0881円,同Gに対し123万9987円及び上記各金員に対する平成13年10月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は,被告らの連帯負担とする。 3 仮執行の宣言第2 事案の概要 1 本件は,原告らが,「原告らは,被告Aの詐欺行為によって消費者金融会社に対する債務を負わせられ,別紙記載のとおりの損害を被った。被告Aの元妻である被告Bは,原告らに対し,被告Aの原告らに対する上記損害賠償債務を連帯して保証する旨約した(以下,原告らと被告Bとの連帯保証契約を「本件連帯保証契約」という。)。」と主張し,①被告Aに対しては不法行為に基づく損害賠償請求,②被告Bに対しては本件連帯保証契約に基づく債務の履行として,連帯して別紙記載のとおり各原告らに各金額及びこれに対する被告Aの不法行為の後であり,被告Bが本件連帯保証契約を締結した日である平成13年10月27日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 なお,被告Aは,公示送達による呼出しを受けたが,本件口頭弁論期日に出頭しない 保証契約を締結した日である平成13年10月27日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 なお,被告Aは,公示送達による呼出しを受けたが,本件口頭弁論期日に出頭しない。 2 前提となる事実(1) 被告らは,平成13年6月4日,婚姻し,同年7月8日,長男が生まれたが,同年11月2日,離婚した(乙1号証,被告B本人及び弁論の全趣旨)。被告らは,婚姻後,名古屋市a区bc丁目d番地所在のコーポef号(以下「本件アパート」という。)で居住していたが,被告Bは,長男の出産のため,愛知県中島郡g町hij番地kの実家に帰り,その後,本件アパートと実家との間を行き来した(被告B本人)。 (2) 被告Aは,平成13年10月26日付けの金銭借用証書(以下「本件証書」という。)の「借主」欄に署名,押印したが,本件証書には,「詐欺事件のため,話合いの結果,1000万円を一括返済する。」旨が記載されており,原告ら及びHの合計6名の氏名が記載された右の欄には,「金銭貸借(詐欺事件)に関し,6名の連名にて書き添える。」旨が記載されている(甲15号証)。 被告Bは,同月27日,本件証書の連帯保証人欄に,住所及び氏名を記載し,押印した(当事者間に争いがない)。 3争点(1) 被告Aの原告らに対する不法行為の存否(原告らの主張)ア被告Aは,平成13年7月末ころから同年9月ころまでの間,原告らに対し,「被告Aの紹介ということで,消費者金融会社のカードを作ってくれれば,その会社の従業員の営業成績が上がり,その者からカード融資限度額の1割が謝礼として支払われる。」旨申し向けて,カードを作ることを勧めた。原告らは,被告Aの話を信用してカードを作った。 イ被告Aは,カードを作った原告らに対し,「契約の解約手続をとるために必要であるから,カードを渡 払われる。」旨申し向けて,カードを作ることを勧めた。原告らは,被告Aの話を信用してカードを作った。 イ被告Aは,カードを作った原告らに対し,「契約の解約手続をとるために必要であるから,カードを渡してくれ。」と言って,原告らからカードを受け取った。 その後,被告Aは,上記契約の解約手続をとることなく,原告らになりすましてキャッシングやショッピングに上記カードを使用し,その結果,原告らは,それぞれ別紙記載のとおりの損害を被った。 (2) 本件連帯保証契約の効力(被告Bの主張)本件連帯保証契約は,次のとおり効力のないものである。 ア (強迫を理由とする取消し)(ア) 被告Bは,平成13年10月27日ころ,実家に住んでいたところ,被告Aから電話で呼び出され,同日午前7時30分ころ,実家の近くのコンビニエンスストアーの駐車場に行った。そこには,原告C,同F及び同Gの3名,更に乗車したままの男女がいた。車内にいた女性は,被告Bに対し,本件証書の連帯保証人欄に署名することを求め,被告Bがこれに応じないと,その場で土下座することを求めた。被告Bは,気が動転して土下座をしたところ,上記女性は,「署名できないなら,被告Aに保険金でもかけて死んでもらったら。いまから実家へ皆で行って,実家の親に書いてもらう。」などと言った。被告Bが,親は関係がないと述べ,実家に行くことを拒むと,上記原告らは全員で行くと言った。その後,被告Aは同Bに謝ったが,同Bは,泣き続けた。 被告Bは,本件証書の連帯保証人欄に署名しないと,同Aが殺されるか,危険な目に遭うことになりそうであり,また,実家に大勢で押しかけられ,迷惑をかけることになるなどと思い,署名してしまった。 (イ) 上記の経緯によれば,本件連帯保証契約は,原告らが被告Bを強迫して締結させたものというべきである。 (ウ また,実家に大勢で押しかけられ,迷惑をかけることになるなどと思い,署名してしまった。 (イ) 上記の経緯によれば,本件連帯保証契約は,原告らが被告Bを強迫して締結させたものというべきである。 (ウ) 被告Bは,平成14年2月22日の本件口頭弁論期日において,本件連帯保証契約における保証の承諾を取り消す旨の意思表示をした。 イ (公序良俗違反による無効)原告らは,本件証書に記載された1000万円は,慰謝料を含めた金額として定めたものであるというが,これは極めてずさんであり,また,Hの意思を確認しないまま,同人の名を本件証書に書き連ねている。こうした点に加え,上記アの本件証書の作成経緯によれば,本件連帯保証契約は,被告Bの無思慮,窮迫に乗じた暴利行為的な態様によってされたものというべきであり,公序良俗に反し,無効である。 ウ (権利の濫用)上記アの本件証書の作成経緯によると,原告らが本件証書を根拠として被告Bに本件連帯保証契約に基づいてその履行を求めるのは,信義則に反し,権利の濫用として許されない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(被告Aの原告らに対する不法行為の存否)について(1) 甲1号証の1ないし3,2号証の1及び2,3号証及び4号証の各1ないし3,5号証ないし8号証の各1及び2,9号証の1ないし3,10号証及び11号証の各1及び2,12号証の1ないし6,13号証及び14号証の各1ないし3,18ないし20号証,原告C,同F及び被告Bの各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によると,次の各事実及び争点(1)に係る原告らの主張事実をいずれも認めることができる。 ア被告Aと,原告C,同G及び同Dは,平成13年ころ,有限会社Kに勤務していたものであり,原告Eは,同Dの妻である。また,同Fは,同Gと小学校及び中学校の同級生であった。 イ ることができる。 ア被告Aと,原告C,同G及び同Dは,平成13年ころ,有限会社Kに勤務していたものであり,原告Eは,同Dの妻である。また,同Fは,同Gと小学校及び中学校の同級生であった。 イ被告Aは,原告Gに対し,消費者金融会社でカードを作るとその会社に勤務している従業員の成績が上がり,その人から謝礼をもらうことができるのでカードを作らないか,ともちかけ,カードを作らせ,そして,被告Aは,解約の手続をするために必要であると言って,カードの交付を受け,原告Gに謝礼として金員を支払った。 ウ原告C,同D,同E及び同Fは,いずれも同Gから上記の話を聞き,同様にカードを作って,被告Aにこれを交付した。 (2) 以上によると,被告Aは,原告らに対して詐欺によって損害を与えたものと認めることができ,不法行為による損害賠償義務として別紙記載のとおりの各金額を原告らそれぞれに対して支払う義務を負うものと解される。 2 争点(2)(本件連帯保証契約の効力)について(1) 甲18ないし20号証,乙1号証,原告C,同F及び被告Bの各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によると,次の各事実を認めることができ,甲19,20号証並びに原告C及び同Fの各供述中,上記認定に反する部分は,他の証拠と照らして検討すると,採用することができない。 ア原告らは,上記1のとおり被告Aにカードを交付した後,消費者金融会社から支払を求められるようになったので,被告Aに不信感を抱くようになった。そうした中,原告Fとスナックで知り合ったIは,原告Fから上記に関して相談を受け,更に平成13年10月25日,レストランにおいて,原告F,同C,同Gと会って話を聴いた。Iは,上記原告らに対して,被告Aにだまされている旨話し,直接,同人と会って話をすることを提案した。 イ平成13年10月26 10月25日,レストランにおいて,原告F,同C,同Gと会って話を聴いた。Iは,上記原告らに対して,被告Aにだまされている旨話し,直接,同人と会って話をすることを提案した。 イ平成13年10月26日,原告Fは,被告Aに電話をして同人を愛知県小牧市所在のレストランに呼び出した。同日の午後9時ころ,同所には,原告Fのほか,同C及び同Gがおり,遅れてIがJとともに同所に到着した。Iが被告Aを問いつめたところ,同人は,原告らに対して詐欺をしたことを認めた。この後,原告D及び同Eも連絡を受けて同所を訪れた。 Iは,被告Aが原告らに対して与えた損害につき,被告Aに返済を約束させるため,所持していた本件証書を取り出した。被告Aの原告らに対する支払は,慰謝料も含めて合計1000万円とされ,原告ら及び被告Aは本件証書に署名押印した。 この支払方法について,被告Aは,分割払いを希望したが,Iが「こういう子は返さないよ。」と言ったことから一括払いを約束させられるに至った。 ウ I及び原告らは,被告Aが約束どおり支払うものとは信じられなかったことから,同人の親を保証人にしようとして,被告Aの両親宅へ向かった。被告Aの両親宅には,翌日27日午前3時ころ到着し,被告Aのほか,原告F,I及びJが両親宅に入り,両親に対して保証人になることを求めたが,約2時間の交渉の結果,結局,両親は保証人となることを承知しなかった。 エ I,原告C,同F及び同Gは,被告Aの両親が保証人にならないのであれば,被告Aの妻である同Bを保証人にしようと相談して,同人が住んでいるその実家に向かった。原告D及び同Eは,これに同行しないで帰宅した。 被告Bは,同日午前7時ころ,同Aからの電話で寝ているところを起こされ,午前7時30分ころ,実家近くのコンビニエンスストアの駐車場に向かった。同所には,駐車 及び同Eは,これに同行しないで帰宅した。 被告Bは,同日午前7時ころ,同Aからの電話で寝ているところを起こされ,午前7時30分ころ,実家近くのコンビニエンスストアの駐車場に向かった。同所には,駐車中の車内に,IとJがおり,駐車場には,上記の原告ら3名がいた。 被告Bは,駐車していた車の近くに立ち,その周囲には上記原告ら3名が位置した。被告Bは,車の中にいるIから本件証書を示され,これに署名するように言われた。被告Bがこれを断ると,Iからその場で土下座をするように言われため,その場に膝をついて,上記原告らに向かって頭を下げた。 被告Bは,I及び上記原告ら3名に対し,被告Aとは離婚するから関係ないなどと答えていたが,Iは,「被告Aに保険金をかけて死んでもらったら。」「サインしないんだったら,今から被告Bの実家にみんなで行って,親にサインしてもらう。」などと述べた。被告Bが上記原告ら3名のいるところから離れて座り込み,泣いていたところ,被告Aは,同Bに近寄って謝った。その場に,原告Fがやって来て,「被告Bがサインしなかったら,同Aはどうなるか分からないし,同Bの実家に行く。」旨述べたことから,被告Bは,本件証書に署名する旨を原告Fに伝えた。原告Fが本件証書及びペンを被告Bに渡したので,被告Bは,そのペンを用いて本件証書の連帯保証人欄に署名し,押印した。 (2) 以上に認定した事実によると,被告Bは,長男を出産した約3か月後である平成13年10月27日の朝,寝ているところを電話で起こされ,実家近くのコンビニエンスストアの駐車場に呼び出されたのであり,被告Aは一緒にいるものの,上記原告ら3名の外,I及びJがいる場において,1000万円という高額の記載された本件証書に被告Aの妻であるというだけの理由からその保証人となることを求められ,被告Bが保証人な は一緒にいるものの,上記原告ら3名の外,I及びJがいる場において,1000万円という高額の記載された本件証書に被告Aの妻であるというだけの理由からその保証人となることを求められ,被告Bが保証人なることを拒否するや,その場で土下座をさせられた上,I及び上記原告ら3名からは被告Aに危害を加えかねない勢いを示され,更にIらに被告Bの実家に押しかけると言われたことから,やむを得ず本件証書の連帯保証人欄に署名押印したものであることが認められるのである。そうしてみると,被告Bが連帯保証をすることを承諾したのは,上記原告ら3名及び原告らから被告Bに対する交渉の依頼を受けたIから強迫を受け,これに畏怖した結果,実際は1000万円の支払について保証する気持ちはなかったにもかかわらず,その場を切り抜けるためにさせられたものと認められる。 (3) 被告Bが,平成14年2月22日の本件口頭弁論期日において,本件連帯保証契約における保証の承諾を取り消す旨の意思表示をしたことは,当裁判所に顕著である。 (4) 上記事実によれば,原告らの被告Aに対する不法行為に基づく損害賠償請求は理由があるが,同Bに対する本件連帯保証契約に基づくその履行の請求は理由がない。 3 以上のとおりであって,原告らの被告Aに対する請求はこれを認容し,同Bに対する請求は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条,65条を,仮執行宣言について同法259条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第4部裁判官佐久間邦夫

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