令和5(行ツ)334 法人税青色申告承認取消処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年5月7日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 福岡高等裁判所 令和5(行コ)3
ファイル
hanrei-pdf-92950.txt

判決文本文4,176 文字)

- 1 - 主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 1 上告代理人金谷比呂史の上告理由のうち憲法31条違反をいう部分について論旨は、行橋税務署長が令和元年12月10日付けで上告人に対してした、上告人の平成30年7月1日から令和元年6月30日までの事業年度以後の法人税に係る青色申告の承認の取消処分(以下「本件処分」という。)につき、事前に防御の機会が与えられなかったことをもって、本件処分が違憲である旨をいう。 しかしながら、法人税法127条1項の規定による青色申告の承認の取消処分については、その処分により制限を受ける権利利益の内容、性質等に照らし、その相手方に事前に防御の機会が与えられなかったからといって、憲法31条の法意に反するものとはいえない。このことは、最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁の趣旨に徴して明らかである。本件処分に所論の違憲はなく、論旨は、採用することができない。 2 その余の上告理由について論旨は、違憲をいうが、民訴法312条1項及び2項に規定する事由のいずれにも該当しない。 よって、裁判官宇賀克也の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。なお、裁判官渡惠理子の補足意見がある。 裁判官渡惠理子の補足意見は、次のとおりである。 多数意見が言及する平成4年大法廷判決は、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内令和5年(行ツ)第334号法人税青色申告承認取消処分取消請求事件令和6年5月7日第三小法廷判決- 2 -容、 弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内令和5年(行ツ)第334号法人税青色申告承認取消処分取消請求事件令和6年5月7日第三小法廷判決- 2 -容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である旨判示している。多数意見は、このような枠組みの下での総合較量に基づいており、特定の考慮要素のみに基づくものではないが、私において特に明確にしておきたい2点を補足することとする。 まず、法人税法127条1項の規定による青色申告の承認の取消処分については、専門性を有する第三者的機関ともいい得る国税不服審判所における充実した審査請求手続が設けられている。もとより、単に事後手続が設けられていることのみをもって、事前手続が憲法上必要でないと断ずることはできないが、上記審査請求手続の内容等は、上記の総合較量において考慮されるべき要素の一つとなるものと考える。 次に、多数意見と同旨を判示した最高裁平成3年(行ツ)第93号同4年9月10日第一小法廷判決・判例集不登載が出されて以降、不利益処分に係る事前手続の保障の原則を内容とする行政手続法の制定などの事情の変化もみられるところであるが、多数意見は、関係規定の制定経緯等に鑑み、こうした事情の変化も念頭に置いた上で、憲法判断の変更は要しないと判断したものである。 裁判官宇賀克也の反対意見は、次のとおりである。 1 私は、多数意見の1とは見解を異にするので、以下、その点につき述べる。 処分庁が不利益処分を行う場合には、誤った不利益処分による権利侵害が行われないように事前にその根拠法条とそれに該当する事実を通知 多数意見の1とは見解を異にするので、以下、その点につき述べる。 処分庁が不利益処分を行う場合には、誤った不利益処分による権利侵害が行われないように事前にその根拠法条とそれに該当する事実を通知し、相手方に事前に意見陳述の機会を保障することが、憲法上の適正手続として要請されるのが原則であり、法人税法127条1項の規定による青色申告の承認の取消処分(以下、本反対意見においては「青色申告承認取消処分」という。)について、その例外を認めるべき合理的理由は見いだし難い。 この点に関し、原判決は、国税通則法74条の14第1項が、青色申告承認- 3 -取消処分を含む「国税に関する法律に基づき行われる処分」について、行政手続法第3章(不利益処分)の規定(同法14条の理由提示の規定を除く。)の適用を除外していることに触れ、そうした適用除外が認められている理由として、①金銭に関する処分であるから事後的な手続で処理することが適当であり、事後的な手続として、国税不服審判所長に対する審査請求等の不服申立手続が整備されていること、②大量・反復的に行われること、③限られた人員で適正・公平・迅速に手続の処理を図らなければならないこと、④処分理由の提示が要求されていること等の理由を挙げており、上記①~④の各点をもって、上記の意味での例外を認めるべき合理的理由と捉えているようにも見受けられるが、いずれの点も合理的理由たり得ない。その理由は、次のとおりである。 ①については、国税不服審判所長に対する審査請求は、一般の不服申立手続と比較して審査庁の独立性に配慮されているが、そもそも、憲法31条は、違法又は不当な処分がされないように適正な事前手続を要請しているのであり、事後の救済手続が整備されていれば、事前手続がおよそ不要であるということにはならないことはいうま が、そもそも、憲法31条は、違法又は不当な処分がされないように適正な事前手続を要請しているのであり、事後の救済手続が整備されていれば、事前手続がおよそ不要であるということにはならないことはいうまでもない。現行法上も、第三者的な立場にある審査庁への審査請求が行われ得ることのみをもって、事前手続を不要としているものとは解されない。なお、行政手続法13条2項4号は、「納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、又は金銭の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分をしようとするとき」については、事前の意見陳述手続に関する同法の規定の適用を除外しているが、同号は、青色申告承認取消処分のように、納付すべき金銭の額の確定等の前提となる相手方の地位の得喪に関する処分を対象としていない上、そもそも同号は、それに該当する場合に一律に同法により事前の意見陳述手続を義務付けることはしないとするにとどまり、各処分の類型に応じて、憲法の適正手続の要請により事前の意見陳述手続が必要になり得ることを否定する趣旨でもないから、同号の存在は、上記の合理的理由とは結び付かない。 ②については、申告納税制度は、個々の納税者の申告によって租税債務を確定す- 4 -ることを原則とする制度であり、更正処分についても、個々の申告について慎重に調査し、修正申告の慫慂という形での事前手続が事実上とられることが少なくないともいわれる。いわんや青色申告承認取消処分については、相手方に対する不利益の大きさに鑑み、個々の事案ごとに慎重な事実確認がされているはずであり、個々の事案について慎重に検討する余裕がない大量・反復事案であるとして、粗雑な対応がされているわけではないと考えられる。青色申告承認取消処分が大量・反復的に行われるから、事前手続をとっている余裕がなく、事 事案について慎重に検討する余裕がない大量・反復事案であるとして、粗雑な対応がされているわけではないと考えられる。青色申告承認取消処分が大量・反復的に行われるから、事前手続をとっている余裕がなく、事実誤認に対する救済は専ら事後手続に委ねる仕組みが採用されているという理解は、我が国の実際の税務行政の姿から乖離しており、むしろ我が国の税務行政を過小評価することになると思われる。 ③については、少なくとも弁明の機会の付与に相当する手続であれば、弁明書の提出期限を1週間程度とすることも許容されると考えられるので、迅速性の要請等が、事前の意見陳述手続を全く保障しないことの合理的理由になるとは考え難い。 なお、青色申告承認取消処分が、行政手続法13条1項1号イの「許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき」に相当することに照らせば、「適正・公平」な手続のためには、聴聞に匹敵する事前手続がとられることが(憲法上必要不可欠とまでいえるかはひとまずおいても)望ましいと解されるが、聴聞は1回の期日で終結することが通常であると思われ、また、通知された青色申告承認取消しの原因となる事実が自認されるために聴聞の期日を開かないことになる場合も少なくないと思われることに加えて、我が国の税務職員の質及び量にも照らせば、聴聞に相当する手続をとることが、迅速性の要請に照らして無理を生じさせるとまでは思われない。 ④については、処分理由の提示は、処分庁が原処分を行うに当たり、その慎重合理性を担保する機能、相手方の不服申立ての便宜を図る機能を有するが、そのことと、事前に意見陳述の機会を保障されることとは意義を異にするのであり、そうであるからこそ、行政手続法は、不利益処分について、事前の意見陳述手続(同法1- 5 -3条)と理由提示(同法14条)の規定を別個独立のものと の機会を保障されることとは意義を異にするのであり、そうであるからこそ、行政手続法は、不利益処分について、事前の意見陳述手続(同法1- 5 -3条)と理由提示(同法14条)の規定を別個独立のものとして設けたのである。 したがって、理由提示が行われることは、事前の意見陳述手続が不要である理由には全くならない。 3 以上によれば、上告理由のうち憲法31条違反をいう部分には理由があり、本件処分は違憲であるから、原判決を破棄し、第1審判決を取り消し、本件処分の取消請求を認容すべきである。 このような私の立場からは、本判決の多数意見と同旨を判示した最高裁平成3年(行ツ)第93号同4年9月10日第一小法廷判決・判例集不登載は、変更すべきこととなる。 (裁判長裁判官渡惠理子裁判官宇賀克也裁判官林道晴裁判官長嶺安政裁判官今崎幸彦)

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る