- 1 -平成31年1月31日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成30年(ネ)第1745号損害賠償,同反訴請求控訴事件(原審大阪地方裁判所平成28年(ワ)第10306号〔本訴〕,同年(ワ)第11981号〔反訴1〕,平成29年(ワ)第3468号〔反訴2〕)口頭弁論終結日平成30年10月26日判決控訴人兼被控訴人(一審本訴原告兼反訴1・2被告)株式会社シィー・クェンス(以下「一審原告会社」という。)被控訴人(一審本訴原告兼反訴1・2被告)P (以下「一審原告P1」という。)上記2名訴訟代理人弁護士千葉直愛被控訴人兼控訴人(一審本訴被告兼反訴1・2原告)株式会社丸清ニット(以下「一審被告」という。)同訴訟代理人弁護士山下桂司主文 1 一審被告の控訴に基づき,原判決中,本訴請求に係る一審被告敗訴部分を取り消す。 2 前項の取消部分に係る一審原告会社の請求を棄却する。 3 一審被告のその余の控訴を棄却する。 4 一審原告会社の控訴を棄却する。 5 訴訟費用は,一審原告会社と一審被告との関係では,第1,2審を通じてこれを5分し,その3を一審原告会社の,その余を一審被告の各負担とし,一審原告P1と一審被告との関係では,控訴費用を一審被告の負担と- 2 -する。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 一審原告会社(1) 原判決主文第1項ないし第3項中,一審原告会社敗訴部分を取り消す。 (2) 一審被告は,一審原告会社に対し,原判決認容額のほかに,342万0876円及びこれに対する平成28年1月21日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも一審被告の負担とする。 (4) 仮執行宣言 のほかに,342万0876円及びこれに対する平成28年1月21日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも一審被告の負担とする。 (4) 仮執行宣言 2 一審被告(1) 原判決中,一審被告敗訴部分を取り消す。 (2) 主文第2項と同旨(3) 一審原告らは,一審被告に対し,連帯して,151万7373円及びこれに対する平成28年10月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 一審原告らは,一審被告に対し,連帯して,300万円及びこれに対する平成29年1月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (5) 訴訟費用は,第1,2審とも一審原告らの負担とする。 (6) 仮執行宣言第2 事案の概要(以下における略称は,特に断らない限り,原判決の例による。) 1 請求及び裁判の経過(1) 原審における請求ア本訴(ア) 手数料等の請求(一審原告会社請求1)- 3 -ニット製品の卸売業者である一審原告会社が,ニット製品の製造販売業者である一審被告に対し,a 主位的には,一審被告製の商品を三澤(三澤株式会社)に販売することを一審原告会社に委託する準問屋契約に基づく手数料として,予備的には,商法512条に基づく報酬として17万6752円b 一審被告が三澤向け商品を製造しなかったことにつき,主位的には,民法650条3項(商法552条2項により準用)に基づく損害賠償として,予備的には,不法行為(契約締結上の過失)に基づく損害賠償として321万7988円c 一審被告がザンパ(株式会社ザンパ)向け商品を製造しなかったことにつき,主位的には,製造物供給契約の債務不履行に基づく損害賠償として,予備的には,不法行為(契約締結上の過失)に基づく損 88円c 一審被告がザンパ(株式会社ザンパ)向け商品を製造しなかったことにつき,主位的には,製造物供給契約の債務不履行に基づく損害賠償として,予備的には,不法行為(契約締結上の過失)に基づく損害賠償として24万4296円(ただし,一審原告会社は,損害額の主張を,21万8160円と訂正している。)の合計363万9036円及びこれに対する弁済期の翌日である平成28年1月21日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 (イ) 不当訴訟に係る損害賠償請求(一審原告会社請求2)一審原告会社が,一審被告に対し,一審被告が反訴1及び反訴2を提起したことにつき,不法行為に基づく損害賠償300万円及びこれに対する反訴1が提起された日である平成28年12月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 (ウ) 一審被告専務の言動に係る損害賠償請求(一審原告P1請求)一審原告会社の代表取締役である一審原告P1が,一審被告に対し,一審被告の取締役であるP3(一審被告専務)の一審原告P1に対する言動につき,使用者責任に基づく損害賠償34万円及びこれに対する不- 4 -法行為の日又はそれより後の日である平成27年8月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 イ反訴1(一審被告請求1)一審被告が,一審原告らに対し,一審原告らが,一審被告から開示された本件製造方法を利用してニット製品を製造したとして,主位的には,不正競争防止法4条に基づく損害賠償として,予備的には,民法709条及び会社法350条に基づく損害賠償として151万7373円及びこれに対する不法行為後の日である平成28年10月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損 て,予備的には,民法709条及び会社法350条に基づく損害賠償として151万7373円及びこれに対する不法行為後の日である平成28年10月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うことを求めた。 ウ反訴2(一審被告請求2)一審被告が,一審原告らに対し,一審原告会社が本訴に係る請求(前記ア(ア))を拡張したことにつき,不法行為に基づく損害賠償300万円及びこれに対する不法行為後の日である平成29年1月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 (2) 原審の判断原審は,一審原告会社請求1の主位的請求を棄却し,予備的請求のうち,一審被告がザンパ向け商品を製造しなかったことにつき,不法行為(契約締結上の過失)に基づく損害賠償として21万8160円及びこれに対する不法行為後の日である平成28年1月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度でこれを認容し,その余を棄却した。 また,一審原告会社請求2,一審原告P1請求,一審被告請求1及び一審被告請求2をいずれも棄却した。 (3) 控訴の申立て及び不服申立ての範囲一審原告会社は,原判決中,一審原告会社請求1の棄却部分を不服として控訴を申し立てた。 - 5 -一審被告は,原判決中,一審被告敗訴部分(一審原告会社請求1の認容部分,一審被告請求1及び一審被告請求2)を不服として控訴を申し立てた。 したがって,一審原告会社請求2及び一審原告P1請求は,当審における審判の対象外である。 2 前提事実等(当事者間に争いがない事実,証拠〔以下において引用する人証は,全て原審におけるものである。また,書証を引用するに当たり,枝番号の全てを含むときは,その記載を省略することがある る。 2 前提事実等(当事者間に争いがない事実,証拠〔以下において引用する人証は,全て原審におけるものである。また,書証を引用するに当たり,枝番号の全てを含むときは,その記載を省略することがある。〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実,裁判所に顕著な事実)(1) 当事者等ア一審原告P1が代表者である一審原告会社は,ニット製品の卸売業者であり,取引先として三澤やザンパがある(争いのない事実,甲76)。 イ P2(一審被告社長)が代表者である一審被告は,ニット製品の製造販売業者である。一審被告専務は,一審被告社長の息子である(争いのない事実,証人一審被告専務42頁)。 ウ一審被告は,糸商であるイシハラのP4(乙7)から,強度の耐水性及び耐洗濯性を有する和紙糸である本件和紙糸の存在を教えられ,本件撚糸業者と協力しながら,本件和紙糸を用いた高度の耐洗濯性及び低い寸法変化率の品質基準に適合した本件製造方法を開発し,本件製造方法の情報(原判決別紙「営業秘密目録」記載の情報)を保有するとともに,本件製造方法を用いたニット製品を製造販売していた(甲72の2,甲85,乙30,証人一審被告専務15~18頁,弁論の全趣旨)。 (2) 一審原告会社と一審被告との間の商談(争いのない事実)ア一審原告会社と一審被告は,従前取引関係になかったが,平成27年4月頃から,一審被告がニット製品を製造し,これを一審原告会社の取引先である三澤に販売することに関する商談を始めた。 イ前記アの商談を進める中で,いずれも本件製造方法によらずに製造する- 6 -商品として,三澤向けの本件4品番の商品(品番160-98499,160-98502,160-98523,160-98524)や,ザンパ向けの本件2品番の商品(品番Z9467,Z9468)を一 -商品として,三澤向けの本件4品番の商品(品番160-98499,160-98502,160-98523,160-98524)や,ザンパ向けの本件2品番の商品(品番Z9467,Z9468)を一審被告が製造し,一審原告会社を通じて供給する話が出て,三澤やザンパから発注書が発行されたが,一審被告から,平成27年7月2日,受注することができない旨のメール送信があり,その後,一審被告がこれらを製造するには至らなかった。 (3) 一審原告会社による本件和紙糸を用いたニット製品の製造ア一審原告会社は,平成28年,三澤との間で,一審原告会社が和紙糸を使用したニット製品を製造して三澤に供給するという製造物供給契約を締結した(一審原告P1本人43頁,弁論の全趣旨)。 イ一審原告会社は,一審被告から和紙糸の供給を受けることができないため,前記アのニット製品の製造を下請けに出す形で行うとともに,和紙糸にはイシハラが調達した本件和紙糸を使用させた(甲22,一審原告P1本人50,51頁,弁論の全趣旨)。 (4) 本件訴訟の経過(裁判所に顕著な事実)ア一審原告らは,平成28年6月13日,一審原告会社請求1及び一審原告P1請求に係る訴えを提起した(本訴)。 イ一審被告は,平成28年12月8日,一審被告請求1に係る反訴を提起した(反訴1)。 ウ一審原告会社は,平成29年1月25日,一審原告会社請求1の請求額を363万9036円及びこれに対する遅延損害金に拡張(本件請求拡張)した(本訴)。 エ一審被告は,平成29年4月10日,一審被告請求2に係る反訴を提起した(反訴2)。 オ一審原告会社は,平成29年5月16日,本訴につき,一審原告会社請- 7 -求2を追加する訴えの変更をした(本訴)。 3 争点(1) 一審原告会社請求1関 反訴を提起した(反訴2)。 オ一審原告会社は,平成29年5月16日,本訴につき,一審原告会社請- 7 -求2を追加する訴えの変更をした(本訴)。 3 争点(1) 一審原告会社請求1関係ア三澤向け本件4品番の商品関係(ア) 準問屋契約の成否(争点1)(イ) 契約締結上の過失の有無(争点2)(ウ) 一審原告会社の損害額等(争点3)イザンパ向け本件2品番の商品関係(ア) 製造物供給契約の成否(争点4)(イ) 契約締結上の過失の有無(争点5)(ウ) 一審原告会社の損害額(争点6)(2) 一審被告請求1関係ア本件製造方法の情報の営業秘密該当性の有無(争点7)イ不正使用行為等の有無(争点8)ウ一審被告の損害額(争点9)(3) 一審被告請求2関係ア本件請求拡張の不法行為性の有無(争点10)イ一審被告の損害額(争点11) 4 争点に関する当事者の主張(1) 本件4品番の商品関係ア争点1(準問屋契約の成否)について(一審原告会社の主張)一審被告は,自己の製造したニット製品を三澤に供給する関係を築きたいと考え,三澤と長年取引関係にあった一審原告会社から三澤を紹介してもらうなどした結果,三澤から本件4品番の商品についての製造供給を依頼されることになった。もっとも,従前取引関係がなかったことから,一- 8 -審原告会社が発注書の名宛人となり,一審被告にそれを転送するという形で取引が行われることとなった(現に,そのように発注書を転送していたところ,一審被告は,一審原告会社又は三澤に対し,受注しないなどという連絡をすることはなかった。)。したがって,遅くとも発注書の転送が完了した平成27年6月24日には,一審原告会社と一審被告との間には,一審被告を委託者,一審原告 又は三澤に対し,受注しないなどという連絡をすることはなかった。)。したがって,遅くとも発注書の転送が完了した平成27年6月24日には,一審原告会社と一審被告との間には,一審被告を委託者,一審原告会社を準問屋として,一審被告が製造した本件4品番の商品を一審原告会社が三澤に供給するという準問屋契約が成立した。 (一審被告の主張)一審原告会社は,一審被告と三澤との間に立って,三澤の利益を優先させるべく対応していたのであるから,一審被告の利益を優先させる準問屋契約を締結するとは考え難いこと,一審原告会社と一審被告との間で手数料報酬に関する話合いがされておらず,代表者である一審原告P1も三澤に対して履行義務を負う立場にあるとは認識していなかったこと,一審被告が,平成27年7月2日,一審原告会社に対し,一審原告会社との全ての商談を決裂させる内容のメールを送信していることなどに照らせば,一審原告会社と一審被告との間で,一審原告会社主張の準問屋契約は成立していない。 イ争点2(契約締結上の過失の有無)について(一審原告会社の主張)一審被告は,遅くとも平成27年6月24日までには,本件4品番の商品についての発注書を受領したにもかかわらず,受注を拒絶する態度を1か月半以上にわたって明確に示さなかった。仮に,一審原告会社と一審被告との間で準問屋契約が成立するに至っていなかったとしても,一審被告は,一審原告会社に一審被告が受注したとか,確実に受注する予定であるなどという誤解を抱かせた。一審被告は,一審原告会社にこうした誤解に- 9 -より不測の損害を被らせないようにする義務を負っていたにもかかわらず,これを怠った。 (一審被告の主張)ニット製品を製造して供給する契約は,型見本の作成,寸法の調整,色編地の作成,色見本 より不測の損害を被らせないようにする義務を負っていたにもかかわらず,これを怠った。 (一審被告の主張)ニット製品を製造して供給する契約は,型見本の作成,寸法の調整,色編地の作成,色見本の作成の各過程を経た後,単価が決定され,発注書が作成されて締結に至る。ところが,品番499(下3桁。以下,同じ。)及び502の各商品については,一審被告が受注を拒絶するまでの間,寸法さえも決定していなかったから,契約締結の準備段階にすら入っていなかった。また,品番523及び524の各商品については,単価を決定するために最も重要な要素である色編地及び色見本の作成に至っていなかったから,契約締結の準備段階には入っておらず,仮に入っていたとしても,一審被告が平成27年7月2日には受注を拒絶する態度を明確に示した以上,一審原告会社に一審被告が受注するものだという誤解を抱かせていない。 したがって,一審被告には一審原告会社主張の契約締結上の過失はない。 ウ争点3(一審原告会社の損害額等)について(一審原告会社の主張)一審原告会社は,一審被告が本件4品番の商品を製造しなかったことにより,準問屋契約の成否にかかわらず,以下のとおり,報酬請求権を取得するとともに,損害を被った。 (ア) 手数料報酬関係 17万6752円商人である一審原告会社は,本件4品番の商品に関する手数料報酬を受領できるはずであったにもかかわらず,一審被告が本件4品番の商品を製造しなかったことによりこれを受領していない。これは損害として見ることもできるし,民法536条2項により手数料報酬請求権をなお有していると見ることもできる。 - 10 -また,準問屋契約が成立していなくても,商人である一審原告会社が一審被告のための行為をしたのであり,かつ,契約締結に至った り手数料報酬請求権をなお有していると見ることもできる。 - 10 -また,準問屋契約が成立していなくても,商人である一審原告会社が一審被告のための行為をしたのであり,かつ,契約締結に至ったのと実質的に同様の状態であったから,商法512条により報酬請求権を有している。 (イ) 代替生産費用の支払及び単価の上乗せ分の負担 88万0433円一審原告会社は,一審被告が本件4品番の商品を製造しなかったことにより,原判決別紙「三澤関係代替生産費用の支払及び単価の上乗せ分の負担一覧表(原告会社主張)」記載のとおり,品番502の商品を代替生産するため,本来必要のなかった支払を余儀なくされたり,三澤が品番499,523及び524の各商品について振替製造先に支払った単価の上乗せ分の負担を余儀なくされたりした。 (ウ) 逸失利益 233万7555円一審原告会社は,一審被告が本件4品番の商品を製造しなかったことにより,三澤からの信頼を失ったため,三澤に販売することができなくなって,原判決別紙「三澤関係逸失利益一覧表(原告会社主張)」記載のとおり,得られるはずであった利益が得られなくなった。 (一審被告の主張)否認ないし争う。 (2) 本件2品番の商品関係ア争点4(製造物供給契約の成否)について(一審原告会社の主張)一審原告会社は,長年取引関係にあったザンパからフレア調ニットの製造供給の発注を受け,平成27年6月6日に一審被告に下請発注した。このことを契機に,一審原告会社と一審被告との間で本件2品番の商品についての製造物供給契約に関する交渉が始まった。その後単価の額を中心に交渉が行われた結果,同年7月17日,一審被告が同年6月28日に提示- 11 -した単価の額で発注するに至った。したがって,同年7月17日には, 契約に関する交渉が始まった。その後単価の額を中心に交渉が行われた結果,同年7月17日,一審被告が同年6月28日に提示- 11 -した単価の額で発注するに至った。したがって,同年7月17日には,一審原告会社と一審被告との間には,一審原告会社を発注者,一審被告を受注者として,一審被告が製造した本件2品番の商品を一審原告会社に供給するという製造物供給契約が成立した。 (一審被告の主張)ニット製品を製造して供給する契約は,型見本の作成,寸法の調整,色編地の作成,色見本の作成の各過程を経た後,単価が決定され,発注書が作成されて締結に至る。ところが,本件2品番の商品については,一審被告が受注を拒絶するまでの間,単価が決定していなかったことはもとより,寸法さえも決定していなかった。したがって,一審原告会社と一審被告との間で,一審原告会社が主張するような製造物供給契約は成立していない。 イ争点5(契約締結上の過失の有無)について(一審原告会社の主張)一審被告は,三澤関係と同様にザンパ関係でも受注を拒絶する態度を明確に示さなかったから,仮に,一審原告会社と一審被告との間で本件2品番の商品に関する製造物供給契約が成立するに至っていなかったとしても,一審被告は,一審原告会社に一審被告が受注したとか,確実に受注する予定であるなどという誤解を抱かせた。一審被告は,一審原告会社にこうした誤解により不測の損害を被らせないようにする義務を負っていたにもかかわらず,これを怠ったというべきである。 (一審被告の主張)ニット製品を製造して供給する契約は,型見本の作成,寸法の調整,色編地の作成,色見本の作成の各過程を経た後,単価が決定され,発注書が作成されて締結に至る。ところが,本件2品番の商品については,一審被告が受注を拒絶するまでの間,寸法 ,型見本の作成,寸法の調整,色編地の作成,色見本の作成の各過程を経た後,単価が決定され,発注書が作成されて締結に至る。ところが,本件2品番の商品については,一審被告が受注を拒絶するまでの間,寸法さえも決定していなかったことから,契約締結の準備段階にすら入っていなかった。また,単価が決定していな- 12 -かったことはもとより,仮に契約締結の準備段階に入っていたとしても,一審被告が平成27年7月2日には受注を拒絶する態度を明確に示した以上,一審原告会社に一審被告が受注するものだという誤解を抱かせていない。 したがって,一審被告には,一審原告会社が主張するような契約締結上の過失はない。 ウ争点6(一審原告会社の損害額)について(一審原告会社の主張)一審原告会社は,一審被告が本件2品番の商品を製造しなかったことにより,これをザンパに転売して得られた利益を得られなかったことから,製造物供給契約の成否にかかわらず,転売利益21万8160円の損害を被った。 (一審被告の主張)否認ないし争う。 (3) 一審被告請求1及び一審被告請求2関係原判決「事実及び理由」中の第2の4(4)(原判決14頁22行目から18頁4行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 第3 当裁判所の判断 1 事実経過前記前提事実のほか,証拠〔特に掲記した書証のほかは,甲80,乙57,一審原告P1本人及び証人一審被告専務〕及び弁論の全趣旨によれば,本件の事実経過として次の各事実が認められる(以下における日付は,特に断らない限り,いずれも平成27年である。)。 (1) 一審原告会社と一審被告との間の商談開始ア一審被告は,イトーヨーカ堂から,和紙を使用しつつ通常のクリーニングで洗えるニットトップスの開発依頼を受け,前提事実記載の 成27年である。)。 (1) 一審原告会社と一審被告との間の商談開始ア一審被告は,イトーヨーカ堂から,和紙を使用しつつ通常のクリーニングで洗えるニットトップスの開発依頼を受け,前提事実記載のように,- 13 -糸商であるイシハラのP4から教えられた本件和紙糸を使用し,本件撚糸業者とも協力して,本件製造方法によるニット製品を開発し,平成27年頃,イトーヨーカ堂に販売していた(乙30,証人一審被告専務15,16頁)。 イ一審原告P1は,4月17日,P4から,抄繊糸(和紙糸)を使った衣類を製造しているとして,一審被告を紹介された。一審原告P1が,同月20日,三澤にその話を持ち込んだところ,興味を示したため,一審被告と三澤を引き合わせることとした(甲80,一審原告P1本人20頁)。 ウ一審原告P1は,4月23日,一審被告社長及び一審被告専務と面談し,三澤を紹介する旨伝えた。一審被告は,一審原告P1に対し,抄繊糸を使った商品のサンプルとしてイトーヨーカ堂で販売されている商品と,イトーヨーカ堂基準による耐洗濯性等の品質検査報告書の写し(甲25の1・2)を交付した(一審原告P1本人2,3,20,21,38頁,証人一審被告専務1,2頁)。これ以降,一審原告会社と一審被告との間における商談を一審被告側で実質的に担当したのは,一審被告専務であった。 (2) 三澤関係の協議の経過ア 4商品(品番499,500,501,502)についての商談一審原告P1は,5月21日,三澤の担当者2名と共に,一審被告を訪れ,一審被告社長及び一審被告専務と面談した(乙4,5。一審原告P1本人4頁,証人一審被告専務4頁)。一審被告は,抄繊糸を使った商品の取引を希望したが,抄繊糸を使った春夏物を企画する時季が終っていたことから,抄繊糸を使わない秋冬 と面談した(乙4,5。一審原告P1本人4頁,証人一審被告専務4頁)。一審被告は,抄繊糸を使った商品の取引を希望したが,抄繊糸を使った春夏物を企画する時季が終っていたことから,抄繊糸を使わない秋冬物を先行して企画することとなった。そこで,抄繊糸を使わない品番499,500,501及び502の各商品について,一審被告から商品サンプルを示すなどしながら- 14 -協議した。その場で単価に関する話は出たが,発注数に関する話は出なかった(乙10,11,一審原告P1本人5,25,28頁,証人一審被告専務5,6頁)。 イ 5商品(アの4商品と品番503)に関するデザイン指示書三澤は,5月22日,一審原告会社に対し,前記アの4商品のほか,品番503の商品に関するデザイン指示書を送付して,6月9日から12日まで開かれる展示会用の見本を同月5日までに納品するよう指示した。一審原告会社は,5月22日,一審被告に対し,上記5商品に関するデザイン指示書を送付した(甲30の2,甲87,乙10~12,一審原告P1本人6頁)。 ウ 2商品(品番523,524)に関するデザイン指示書三澤は,5月28日,一審被告に対し,平和堂向け別注品として,抄繊糸を使わない品番523及び524の各商品に関するデザイン指示書を送付し,サンプルを納品するよう指示した(乙9,13,14,一審原告P1本人29~31頁,証人一審被告専務6頁)。 エ展示会見本の納品一審被告は,6月6日頃,三澤に対し,品番499,500,502及び503の各商品の6月展示会見本を,納品者を一審被告,単価を2000円として納品した(甲14,乙10~12,14。なお,一審被告は,この頃,三澤に対し,品番501の商品の6月展示会見本についても納品した。)。 オ単価の調整三澤は,6 被告,単価を2000円として納品した(甲14,乙10~12,14。なお,一審被告は,この頃,三澤に対し,品番501の商品の6月展示会見本についても納品した。)。 オ単価の調整三澤は,6月8日,一審原告会社に対し,取引は一審被告名義で行うのか,単価は品番499及び500の各商品については1300円程度,品番502及び503の各商品については1800円程度とするという話ではなかったかと尋ねた(甲14)。そこで,一審原告会社(一審原- 15 -告P1)は,同日,一審被告に対し,三澤からの問い合わせを取り次ぐとともに,単価に関して,「三澤(株)…6月展示会見本の,見積もりを大至急お願いいたします」とのメールを送信した(甲14,28)。 一審被告は,同日,一審原告会社に対し,それぞれ本生産時の単価として,品番499の商品は1500円(絣糸を使用しないのであれば1350円),品番500の商品は1350円,品番501の商品は2000円,品番502及び503の各商品は1900円であるとメールで返信した(甲15,証人一審被告専務32,33頁)。なお,ここで一審被告が提示した価格が本生産時の単価であると認められることについては,後に補足説明する。 カ 2商品(品番523,524)の発注書の送付一審被告は,6月11日,三澤に対し,品番523及び524の各商品のサンプルを納品した(乙17,18)。 三澤は,6月15日,一審原告会社及び一審被告に対し,一審被告から納品されたサンプルを踏まえ,品番523及び524の各商品に関するデザイン指示書(決定したとされる色の構成は,当初指示のとおりであった。他方,決定したとされる寸法は,当初指示のあった寸法やそれに沿って作製されたサンプルの寸法と異なっているだけでなく,当初はなかったM寸とL 書(決定したとされる色の構成は,当初指示のとおりであった。他方,決定したとされる寸法は,当初指示のあった寸法やそれに沿って作製されたサンプルの寸法と異なっているだけでなく,当初はなかったM寸とL寸の区別もあった。)を送付した(甲82)上,一審原告会社に対し,単価を1400円,納期を8月25日とし,発注数についても記載した発注書を送付した(甲1の3・4)。一審原告会社は,一審被告に対し,6月15日,上記2商品の発注書を送付し,同月18日,三澤との取引を一審被告名義で行うのであれば三澤に新規取引申請書を提出する必要があるとのメールを送信した(甲16,乙24)。 しかし,一審被告は,三澤や一審原告会社が一方的な取引条件を押し付けてくると感じていたことから,新規取引申請書は提出しなかった。 - 16 -キ丈の長い商品の製造について一審原告P1は,6月5日,イシハラのP4と共に,抄繊糸を使った商品の商談を三澤と行った(一審原告P1本人40頁)。三澤は,一審原告会社を介して,上記商談に参加していなかった一審被告に対し,抄繊糸を使った商品のデザイン指示書を送付した(乙25)。 一審被告が,一審原告会社に対し,丈の長い同品は技術上製造することができない旨説明した(証人一審被告専務19頁)ところ,一審原告P1は,同月18日,一審被告専務に対し,一審被告が製造できないのであれば他社で製造する旨の発言をした(一審原告P1本人10,41頁,証人一審被告専務11頁)。一審被告専務は,この発言について,本件製造方法が他社に漏洩する危険を感じた。一審原告P1は,上記の発言が一審被告専務の感情を害したと考えたことから,同月19日,一審被告に対し,同月18日の発言を詫びるとともに,どのような条件であれば製造できるのかについて建設的な意見を出しても 告P1は,上記の発言が一審被告専務の感情を害したと考えたことから,同月19日,一審被告に対し,同月18日の発言を詫びるとともに,どのような条件であれば製造できるのかについて建設的な意見を出してもらいたい旨のメールを送信した(乙19,一審原告P1本人10頁)。 三澤は,6月25日,一審原告会社に対し,再び抄繊糸を使った丈の長い2つの商品に関するデザイン指示書を送付し(乙26,27),一審原告会社は,同日,一審被告に対し,これらを送付した(甲32)。 ク 3商品(品番499,501,502)の発注書の送付三澤は,一審原告会社に対し,一審被告から納品された6月展示会見本を踏まえ,品番499,501及び502の各商品に関するデザイン指示書(決定したとされる色の構成は,当初指示のとおりであった。他方,決定したとされる寸法は,当初指示のあった寸法やそれに沿って作製されたサンプルの寸法と異なっていた。)を,品番499及び502の各商品については同月23日に,品番501の商品については同月24日にそれぞれ送付した(甲17,18,29,甲30の1・2,乙1- 17 -6)上,同日,単価については,品番499の商品が1500円,品番501の商品が2000円,品番502の商品が1900円とし,納期についてはいずれも10月5日とし,発注数についても記載した発注書を送付した(甲1の1・2・5)。一審原告会社は,上記3商品に関するデザイン指示書及び発注書を即日一審被告に送付した(甲29,30,一審原告P1本人10頁)。 ケ品番501の発注中止一審被告は,一審原告会社に対し,品番501の商品について,製造のミニマムロットを超える発注数にするよう求めていたが,三澤が発注数を増やすことができなかったことから,6月30日までに発注中止となっ 一審被告は,一審原告会社に対し,品番501の商品について,製造のミニマムロットを超える発注数にするよう求めていたが,三澤が発注数を増やすことができなかったことから,6月30日までに発注中止となった(甲1の5,33)。 一審原告P1は,一審被告に対し,発注中止は大変なロスなので,一審被告の立場での問題点等があるならば,指示書の到達時点で連絡するよう要請した(甲33)。 (3) ザンパ関係の協議の経過ア商談の開始一審原告会社は,6月5日,ザンパから,7月に開かれる展示会用の企画としてフレア調のニット製品の製造供給の依頼を受けたことから,翌6日,一審被告に対し,これを製造供給することが可能であるかを尋ねた。一審被告は,同日,可能である旨,単価は2000円までであれば対応できる旨を回答した(甲42)。 イ本件2品番に関するデザイン指示書の送付ザンパは,6月12日,一審原告会社に対し,品番Z9467ないしZ9470の各商品に関するデザイン指示書を送付した。一審原告会社は,同日,一審被告に対し,上記4商品に関するデザイン指示書を送付するとともに,7月展示会用として,6月25日までに編地を,同月2- 18 -6日までに見本をそれぞれ納品するよう指示した(甲43の1,甲73の1~73の4)。 ウ単価の調整一審原告会社は,6月26日,一審被告に対し,本件2品番の商品の見積りを出すよう求めた(甲44)。一審被告は,同月28日,一審原告会社に対し,品番Z9467の商品が1700円,品番Z9468の商品が1800円と提示した(甲45)。これに対し,一審原告会社は,同月29日,一審被告に対し,ザンパの希望回答として,品番Z9467の商品を1580円,品番Z9468の商品を1670円とする対案を提示した(甲45,46)。 甲45)。これに対し,一審原告会社は,同月29日,一審被告に対し,ザンパの希望回答として,品番Z9467の商品を1580円,品番Z9468の商品を1670円とする対案を提示した(甲45,46)。しかし,一審被告は,同月30日,一審原告会社に対し,当初の提示から単価を下げることはできないと回答した(甲46)。 一審原告会社は,7月1日,一審被告に対し,本件2品番の商品については「貴社提案単価で進行して」いる旨をメールで伝えた(甲35)。 (4) 一審被告の受注拒絶とその後のやり取りア 7月2日のメール(受注拒絶のメール)一審被告は,一審原告会社が三澤等の一方的な取引条件を押し付けてくると感じていたことから,7月2日,一審原告会社に対し,「当社とP1様との商談に毎回ずれがでております」とした上,① 品番523及び524の各商品についてはL寸の単価が決まっていないので受注できない,② 「それ以外に関しては生産枠がないので」受注できない,③全てのサンプルの返却を求める旨のメールを送信した(甲2)。一審被告がサンプルの返却を求めたのは,本件製造方法が他社に漏洩する危険を感じたためであった。 イ 7月2日のメールを受けた一審原告の対応(7月4日の面談)(ア) 一審原告会社は,前記アのメールを受け,7月2日,一審被告に対- 19 -し,「全てストップは解決致しません」とした上で,① 品番523及び524の各商品についてはL寸の希望単価を知らせるとともにM寸の単価は1400円で良いか,② ⅰ 品番499の商品の単価は1500円で良いか,品番502の商品の単価は1900円で良いか,それとも枚数調整や単価調整が必要か,ⅱ 「和紙の件は,如何なるのでしょうか? 大変困惑致してますが!」と回答した。さらに,翌3日,上記回答を引用し か,品番502の商品の単価は1900円で良いか,それとも枚数調整や単価調整が必要か,ⅱ 「和紙の件は,如何なるのでしょうか? 大変困惑致してますが!」と回答した。さらに,翌3日,上記回答を引用して,「下記の件のご回答を宜しくお願い致します。明日貴社へお伺いいたします」と重ねて連絡した(甲19)。 (イ) 7月4日の面談一審原告P1は,7月4日,一審被告社長及び一審被告専務と面談した(甲19)。しかし,この席で,単価等の取引条件の詳細が詰められることはなかった。なお,この日の面談の有無及び内容の認定については,後に補足説明する。 ウ本件4品番の修正見本の送付について(ア) 一審原告会社は,7月8日,一審被告に対し,本件4品番の商品の修正見本を三澤に直送するようメールで依頼した(甲37)。 (イ) 一審被告は,7月13日,上記(ア)の見本送付依頼を受け,三澤に修正見本を送付した。一審原告会社は,同日,一審被告に対し,修正見本の送付に礼を述べるとともに,品番523及び524の各商品に関する三澤のデザイン指示書を送付し,修正見本に決定寸法と差異があったことから,決定寸法に従って納期前完成品を提出するようメールで指示した(甲38,乙17,18)。なお,一審被告が7月13日に三澤に修正見本を送付したとの認定については,後に補足説明する。 (ウ) 一審原告会社は,7月17日,一審被告に対し,三澤関係の修正見本を返却したが,その一部を三澤に直送するようメールで求め(甲49の3),翌18日にも,上記の見本の送付について問題があれば連絡す- 20 -るようメールで求めた(甲75の1)。 エサンプル返却の依頼その一方で,一審被告は,7月10日,一審原告会社に対し,全てのサンプルを返却するよう依頼した(乙20)。一審原告会社は, 0 -るようメールで求めた(甲75の1)。 エサンプル返却の依頼その一方で,一審被告は,7月10日,一審原告会社に対し,全てのサンプルを返却するよう依頼した(乙20)。一審原告会社は,同月11日,一審被告に対し,三澤が使用中のものもあることから,翌週に全てのサンプルが手元にそろい次第返却すると回答した(乙21)。 オ本件2品番に関するデザイン指示書の送付(ア) 一審原告会社は,7月17日,一審被告に対し,一審被告からザンパに納品されたサンプルを踏まえ,本件2品番の商品に関するザンパのデザイン指示書(決定したとされる色の構成は,当初指示のとおりであった。他方,決定したとされる寸法は,当初指示のあった寸法やそれに沿って作製されたサンプルの寸法と異なっていた。)を送付するとともに,7月展示会での発注数と単価(品番Z9467の商品が1700円,品番Z9468の商品が1800円)が記載された「SalesConfirmation」を送付して,納期は9月4日であり,展示会での発注であるため応じないわけにはいかないとしつつ,納期等についての回答を2度にわたりメールで求めた(甲49,74)。なお,この連絡の有無の認定については,後に補足説明する。 (イ) 一審原告会社は,7月18日にも,一審被告に対し,品番Z9467の商品の発注数を訂正の上,納期,単価等についての回答を改めてメールで求めた(甲75)。 カ本件4品番のうち2品(品番523,524)の納期についてのやりとり(ア) 一審原告会社は,8月7日,一審被告に対し,品番523及び524の各商品の納期が近づいてきているが問題ないかとして,本件4品番の商品の進捗状況を尋ね,「納期チェックシート」の確認・回答を求め- 21 -るとともに,「付属類は全て手配は,完了致して び524の各商品の納期が近づいてきているが問題ないかとして,本件4品番の商品の進捗状況を尋ね,「納期チェックシート」の確認・回答を求め- 21 -るとともに,「付属類は全て手配は,完了致しているのでしょうか,恐縮ですが,弊社は此の件に関しタッチ致してません,もし貴社が必要とお考えで有れば弊社は協力致しますが」などとメールで連絡した(甲3,4)。 (イ) 一審被告は,8月7日,一審原告会社に対し,送付を受けた「納期チェックシート」に手書きで修正を加え,① 「ALL付属等手配願います。ALLサンプル早急に返却して下さい。サンプル返却なければ本生産できません。」との記載,② 品番523及び524の各商品については,納期を8月24日から9月10日とする記載,単価をM寸は1400円,L寸は1450円とする記載,材料混率を変更する記載,③品番499及び502の各商品については,納期を10月2日から同月15日とする記載,単価を品番499の商品は1500円,品番502の商品は1900円とする記載,④「納期厳守!」等の記載を抹消して,「了承できません」と付記する記載をしてファクシミリで回答した(甲5)。 (ウ) 一審原告会社は,8月7日,付属品の商品タグの手配をした(甲21,24)。また,一審原告会社は,三澤と協議の上,同日,一審被告に対し,品番499及び502の各商品については納期を10月15日にすることを了承できるが,品番523及び524の各商品については納期を9月10日にすることを了承できず,延ばせても8月31日が限度である旨伝える(甲6)とともに,翌日一審被告事務所を訪問した際,見本として保有している商品を返却するつもりである旨などを伝えた(甲41)。 (エ) 一審原告P1は,8月8日,一審被告事務所を訪問し,見本として保有 )とともに,翌日一審被告事務所を訪問した際,見本として保有している商品を返却するつもりである旨などを伝えた(甲41)。 (エ) 一審原告P1は,8月8日,一審被告事務所を訪問し,見本として保有している商品を返却した(乙22)上,一審被告専務に対し,品番523及び524の各商品の納期に関する話をした。 - 22 -キ一審被告からの商品供給の断念一審原告P1は,8月11日,一審被告事務所を改めて訪問し,一審被告社長及び一審被告専務と対応を協議した(甲7)結果,一審原告会社は,一審被告から本件4品番の商品の供給を受けることを断念した。 本件2品番の商品についても,一審被告が製造することはなかった。 (5) 三澤及び一審原告会社による代替生産ア一審原告会社は,8月14日,一審被告に対し,一審原告会社において,本件4品番の商品の生産を続行せざるを得ないとして,それらの原糸手配先とビーカー色出し染め工場先を教えるよう求め(甲8,乙23),同日,イシハラと小林繊維晒工業に対して本件4品番の商品について染色ビーカーと糸染めを発注した(甲26)。 イ本件4品番のうち品番499,523及び524の各商品については三澤が自社の協力工場を手配して代替生産を行ったが,急な発注であったため上乗せ単価が必要となり,品番502の商品については一審原告会社が中国において代替生産を行い,一審原告会社がこれらの費用を負担した(甲10の2~10の13,甲10の15~10の17,甲11の2,甲12の2・3)。 (6) 一審原告会社による抄繊糸使用製品の製造ア三澤は,7月28日時点で,イシハラに対し,抄繊糸(和紙糸)1000kgを発注していた(甲22)。一審原告会社は,三澤との間で,それを用いたニット製品の製造物供給契約を締結した。イシハラのP4は ア三澤は,7月28日時点で,イシハラに対し,抄繊糸(和紙糸)1000kgを発注していた(甲22)。一審原告会社は,三澤との間で,それを用いたニット製品の製造物供給契約を締結した。イシハラのP4は,もともと一審被告が用いていた抄繊糸を本件撚糸業者に依頼して試作してもらった経緯があったことから,撚糸を本件撚糸業者に発注し,その糸を用いて一審原告会社が手配した下請工場で編み立てした(一審原告P1本人49~51頁)。 イ P4は,一審被告に対し,染色方法の相談をしたが,一審被告は,染- 23 -めむらが起こるのは糸の構造上の問題によるのではないかとの指摘はしたが,それ以上に染色方法の教示はしなかった(証人一審被告専務19,42頁)。 ウ一審原告会社が製造した生地は,平成28年3月28日,平和堂品質基準による耐洗濯性等の品質検査報告書において「合格」とされた(甲63)。 エ一審被告は,上記のとおり製造販売されたニット製品について,自社の営業秘密である本件製造方法の情報が使用されていると考え,それ以上の製造を防止するため,平成28年10月31日,イシハラから,抄繊糸の残量を151万7373円で買い取った(乙34)。 (7) 事実認定の補足説明ア一審被告が6月8日に提示した価格について前記(2)オのとおり,一審被告は,一審原告会社に対し,品番499,500,501,502及び503の各商品の価格を提示している。この価格について,一審原告P1は,本生産時の価格である旨供述する(一審原告P1本人9頁)のに対し,一審被告専務は,展示会用の1点サンプルの価格である旨証言する(証人一審被告専務33頁)。 上記の価格の提示が一審原告会社からの「6月展示会見本の,見積もりを大至急お願いいたします」との求め(甲15)に対してされた 会用の1点サンプルの価格である旨証言する(証人一審被告専務33頁)。 上記の価格の提示が一審原告会社からの「6月展示会見本の,見積もりを大至急お願いいたします」との求め(甲15)に対してされたものであることからすると,提示されたのは展示会用の1点サンプルの価格であるかのようにも思われる。しかし,一審被告は,見本の納品に当たり,納品書(甲14)でその価格を既に三澤に直接伝えているのであるから,改めて見本自体の見積りを提示する必要はない。しかも,一審被告の提示には,絣糸を使用しないのであれば1350円という,条件が付されたものが含まれている。既に納品した見本の価格を伝えるのに,絣糸を使用しないのであればという条件を付けることは考え難い。そう- 24 -すると,一審原告P1の供述のとおり,本生産時の単価として提示したものであると認めるのが相当である。 イ 7月4日の面談について一審被告は,7月4日の一審原告P1との面談を否認する。しかし,一審原告P1は,一審被告が同月2日に受注拒絶を表明したのを受け,同日中に一審被告に対してメール(甲19)を送信し,事態を打開するための行動をとっている。まして,翌3日にも「明日貴社へお伺いいたします」(甲19)とまで告げておきながら一審被告事務所を訪問しなかったとは考え難い。一審原告P1が供述するとおり,同月4日に面談が行われたと認めるのが相当である。一審被告は,一審原告P1の供述内容に変遷があることを指摘するが,上記認定を覆すに足りるものではない。 他方,この面談で,単価等の取引条件の詳細が詰められたと認めることはできない。一審原告P1は,この面談時に単価について合意したと述べ,後の8月7日の一審被告からの「納期チェックシート」の回答に一審原告会社の提示単価を記載したのはそれを裏付 詰められたと認めることはできない。一審原告P1は,この面談時に単価について合意したと述べ,後の8月7日の一審被告からの「納期チェックシート」の回答に一審原告会社の提示単価を記載したのはそれを裏付けるものであると述べる(一審原告P1本人13,16頁)。確かに,一審原告P1が面談前のメールで単価の確認を求めていたことからすると,単価の話がされることは自然なことである。しかし,面談後に合意内容を確認するメールのやりとり等も残されていないことを考慮すると,単価等の取引条件につき合意に至ったと認めるのは困難である。「納期チェックシート」の回答に一審被告が書き加えた部分は,受注する場合の条件を記載したものとは認められるが,そのことから,8月7日時点で一審被告が一審原告会社からの提示額を受け入れるに至ったとはいえても,7月4日の時点において,既にその単価で合意に至っていたと認めることはできない。なお,一審被告から一審原告会社に対し送付された7月2日のメー- 25 -ル(甲2)には,受注拒絶を表明するとともに,これまでの交渉の経過にずれが生じており,今後,メールをやり取りすることによりメモを残すこととするなどと記載されていることからすると,7月4日の面談の結果についての記録がない以上,何らかの合意が形成されたと認めることはできない。 一審原告P1の陳述書(甲9)には,上記面談において,一審被告社長が,一審被告専務に対し,受けた商売は損をしても生産納品しなければならない旨述べたとの記載がある。しかし,7月2日に一審被告が受注拒絶を表明したメール(甲2)には「当社の社長からの意向です」との記載があることに照らすと,上記陳述書の記載内容を直ちに信用することはできず,この点に関し,他に的確な証拠はないから,一審被告社長が上記発言をしたとは認め 甲2)には「当社の社長からの意向です」との記載があることに照らすと,上記陳述書の記載内容を直ちに信用することはできず,この点に関し,他に的確な証拠はないから,一審被告社長が上記発言をしたとは認めることができない(仮に,そのような発言があったとしても,前後の状況などから,どのような趣旨の下にされた発言であるか不明というべきである。)。 ウ一審被告の三澤に対する商品見本の送付について一審被告は,同社が7月13日に新たな商品見本を納品したというのは,同月2日以降,一審原告会社に対し,全てのサンプルの回収を進めている状況と矛盾すること,商品見本の納品後その確認までに2週間以上空くことはよくあることを挙げ,同月13日に三澤に商品見本を送付したことを否認する。しかし,一審被告が修正見本を納品していなかったからこそ,一審原告会社は,同月8日,一審被告に対し,直送を依頼した(甲37)と考えられ,一審被告による納品は,同日以降のことと認められる。そして,同月13日には,修正見本に基づきデザイン指示書に追記がされ,一審原告会社からは修正見本の送付に礼を述べていること(甲38,乙17,18)を併せ考えると,一審被告は,同日,三澤に商品見本を送付したと認めるのが相当である。 - 26 -エザンパ関係の「SalesConfirmation」の送付について一審被告は,この電子メールによる送付を受けていないと主張する趣旨に見受けられるが,7月17日午後2時11分に一審原告会社から一審被告宛てに送信されたメール(甲49の3)に,「オーダー枚数を…添付致しました」という記載があることに照らせば,一審原告会社は,一審被告に対し, 「SalesConfirmation」(甲49の1・2)を送付したと認めるのが相当である。 2 争点1(本件4品 付致しました」という記載があることに照らせば,一審原告会社は,一審被告に対し, 「SalesConfirmation」(甲49の1・2)を送付したと認めるのが相当である。 2 争点1(本件4品番の商品にかかる準問屋契約の成否)について当裁判所も,一審原告会社主張の準問屋契約が成立したとは認められないと判断する。 その理由は,次のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」中の第3の2(原判決30頁21行目から32頁12行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決31頁22行目の「契約交渉の決裂自体は回避されているとしても,」を削る。 (2) 原判決32頁6行目の「前記1の」から9行目の「措くとしても,」までを削る。 (3) 原判決32頁10行目の「受注しない明確に意向を示している」を「受注しない意向を明確に示している」に改める。 3 争点2(本件4品番の商品にかかる契約締結上の過失の有無)について(1) 契約締結上の過失により不法行為責任を負う場合について契約交渉の当事者には契約を締結しない自由があり,契約が締結に至らなかった場合でも,それによる不利益や契約交渉のコストは各当事者が自ら負担するのが原則である。しかし,① 一方当事者が相手方の信頼を誘発する一定の態度を示し,相手方がその態度を信頼することにより準備行動をするなどした場合には,信頼を誘発した当事者は,相手方に対し,自己の先行行- 27 -為に基づき,相手方の行動を是正する信義則上の義務を負うべきであり,さらに,② 契約締結交渉が大詰めに至り,相手方が契約の成立についての期待権を有するに至ったと評価してもよいほどに形式的作業を残すだけになった場合には,正当な理由なく契約の成立を阻害する行為をしたり,契約交渉を一方的に打ち切 詰めに至り,相手方が契約の成立についての期待権を有するに至ったと評価してもよいほどに形式的作業を残すだけになった場合には,正当な理由なく契約の成立を阻害する行為をしたり,契約交渉を一方的に打ち切ったりしない信義則上の義務を負うべきである。 (2) 一審被告が受注しない意向を明確に示さなかったとの一審原告会社の主張について一審原告会社は,一審被告が,本件4品番の商品に関する発注書の発行後,受注しない意向を明確に示さなかったとして,契約が締結されるものであると誤認した一審原告会社の期待を保護すべきであると主張する。しかし,前記1(4)アのとおり,一審被告は発注書が発行された1ないし2週間程度後の7月2日に受注しない意向を明確に示しているから,一審原告会社の上記主張は,前提を誤るものであり採用できない。 また,前記1(4)イ及び(7)イのとおり,7月4日の面談においても,単価等の取引条件について合意に至ったとは認められない。 すなわち,前記1(2)カ,クのとおり,本件4品番について発注書が送付され,同発注書には,単価,数量,納期,色などが記載されていることが認められる(甲1の1~1の4)。 そのうち,前記1(2)オ,ク,(7)アのとおり,品番499,502の単価については,一審被告が6月8日に提示した価格を受けて,発注書が作成されたことが窺えるが,その他の項目について,どの程度の協議がされ,最終的な合意が一審被告との間で得られたのか,必ずしも,明らかとはいえず,前記7月2日のメールの内容や,後述するように,前記1(4)オ,カに照らすと,未だ,これらの取引条件の全てについて合意に至ったとは認められない。 一審被告は条件が折り合わない場合に契約を締結しない自由を有するとい- 28 -うべきであるが,上述した事情に照らす すと,未だ,これらの取引条件の全てについて合意に至ったとは認められない。 一審被告は条件が折り合わない場合に契約を締結しない自由を有するとい- 28 -うべきであるが,上述した事情に照らすと,7月4日の時点で,一審原告会社が契約の成立についての期待権を有するに至ったと評価することはできない。 そうすると,一審被告が,交渉破談までの間に,正当な理由なく契約の成立を阻害する行為をしたり,契約交渉を一方的に打ち切ったりしない信義則上の義務を負ったと認めることはできない。 (3) 7月4日以降の事実経過との関係について一審被告は,7月4日の面談後,本件4品番の商品の製造に向けた動きを全くしなかったのではなく,同月13日には,一審原告会社の依頼に応じて修正見本を三澤に送付している。 しかし,一方で,一審被告は,一審原告会社から多数回送信された,一審被告に対して種々の回答や対応を求めるメールに対しては,受注拒絶を表明した7月2日以降,一審原告会社提示の納期等に異議を述べた8月7日までの間,何一つ返信した形跡がない。これは,その後,契約の成立に向けて,いろいろな合意内容を形成していく状況にあるとはいい難い(なお,7月13日の修正見本の送付については,受注を拒絶する前に既に作製していたため,依頼に応じたものとも考え得る。)。 確かに,前記1(4)のとおり,一審被告において,7月2日に受注を拒絶した後であるにもかかわらず,一審原告からの働きかけに応じることもあり,条件次第では,受注することを受け入れることのあり得る態度を示したことがあるといえるが,7月2日のメールによる受注拒絶の表明を踏まえると,上記の態度を示したことがあるからというだけで,契約締結に対する一審原告会社の信頼を誘発するに足りる態度を改めて示したということはでき るといえるが,7月2日のメールによる受注拒絶の表明を踏まえると,上記の態度を示したことがあるからというだけで,契約締結に対する一審原告会社の信頼を誘発するに足りる態度を改めて示したということはできず,また,前記1の認定事実及び本件の全証拠によっても,契約締結交渉が大詰めに至り,一審原告会社が契約の成立についての期待権を有するに至ったと評価してもよいほどに形式的作業を残すだけになったと認めることはできな- 29 -いというべきである。 (4) 小括以上によれば,一審被告は,一審原告会社に対し,一審被告が本件4品番の商品を製造しなかったことにつき,信義則上の義務に違反したとは認めることができない。 4 争点3(本件4品番の商品にかかる一審原告会社の損害額等)について(1) 一審原告会社の損害額について前記2及び3のとおり,一審原告会社主張の準問屋契約も契約締結上の過失も認めることができないから,一審原告会社は,一審被告に対し,一審被告が本件4品番の商品を製造しなかったことによって一審原告会社に生じた損害の賠償を求めることはできず,上記損害の額については判断を要しない。 (2) 商法512条に基づく請求について当裁判所も,一審原告会社は,一審被告に対し,商法512条に基づき報酬を請求することはできないと判断する。 その理由は,原判決「事実及び理由」中の第3の4(3)(原判決37頁18行目から25行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決37頁25行目の末尾に「一審原告会社は,契約締結に至ったのと実質的に同様の状態であったことを指摘するが,これまでに認定した事実によれば,そのような評価は妥当しないから,上記判断を左右するものではない。」を加える。 5 争点4(本件2品番の商品にかかる製造 実質的に同様の状態であったことを指摘するが,これまでに認定した事実によれば,そのような評価は妥当しないから,上記判断を左右するものではない。」を加える。 5 争点4(本件2品番の商品にかかる製造物供給契約の成否)について当裁判所も,一審原告会社主張の製造物供給契約が成立したとは認められないと判断する。 その理由は,次のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」中の第3の5(原判決37頁26行目から38頁23行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 - 30 -(1) 原判決38頁3,4行目の「原告会社を受注者」を「一審被告を受注者」に改める。 (2) 原判決38頁15行目の「対象とするものであり,契約交渉が決裂しかけたといえるところ,」を「対象とするものである。」に改める。 6 争点5(本件2品番の商品にかかる契約締結上の過失の有無)について(1) 一審被告が受注しない意向を明確に示さなかったとの一審原告会社の主張について前記3(2)において,本件4品番の商品に関する取引について説示したことが,本件2品番の商品に関する取引においても当てはまり,7月4日の時点で,一審原告会社が契約の成立についての期待権を有するに至ったと評価することはできない。 (2) 展示会及び7月4日以降の事実経過との関係について本件2品番の商品は,もともと7月に行われる展示会用の企画であり,ザンパからそのことを明示して打診されたものである(甲42)。同月17日に一審原告会社から一審被告に対して,展示会で入った発注を踏まえた発注数の修正が連絡されている(甲75)ことからすると,この展示会は,同月1日から17日までの間に開かれたものと認められる。 展示会において客先からの注文を受け付けることは当初から予定されていたと考 数の修正が連絡されている(甲75)ことからすると,この展示会は,同月1日から17日までの間に開かれたものと認められる。 展示会において客先からの注文を受け付けることは当初から予定されていたと考えられるから,展示会開催後に発注数が変動することは予想されたことといえる。また,展示会での客先の反応を踏まえ,一審被告に対する発注の内容を修正することもまた予想されていたといえる。実際,7月17日には寸法の修正が指示されている(甲74)。 そうすると,展示会が終わり,その結果を踏まえた対応が終わるまでは,本件2品番の商品に関する一審原告会社・一審被告間の契約内容は確定していなかったと考えるべきであり,7月17日の一審原告会社から一審被告に対する SalesConfirmation(甲49)が契約の申込みに当たり,それ以前- 31 -には,契約成立に匹敵するような程度に交渉が成熟したとはいえない。翌18日のメール(甲75)で,一審原告会社は,「納期,単価等を含め,ご回答宜しくご協力お願い致します」としているところでもある。 そして,7月18日以降も,本件2品番の商品の製造に関し,一審被告に特段の動きは見られない。その他前記1の認定事実及び本件の全証拠によっても,一審被告において,同月2日に受注を拒絶した後,契約締結に対する一審原告会社の信頼を誘発するに足りる態度を改めて示したとも,契約締結交渉が大詰めに至り,一審原告会社が契約の成立についての期待権を有するに至ったと評価してもよいほどに形式的作業を残すだけになったとも認めることはできない。 (3) 小括以上によれば,一審被告は,一審原告会社に対し,一審被告が本件2品番の商品を製造しなかったことにつき,信義則上の義務に違反したとは認めることができない。 7 争点7(本件製造方 (3) 小括以上によれば,一審被告は,一審原告会社に対し,一審被告が本件2品番の商品を製造しなかったことにつき,信義則上の義務に違反したとは認めることができない。 7 争点7(本件製造方法の情報の営業秘密該当性の有無)及び争点8(不正使用行為等の有無)について当裁判所も,一審被告が営業秘密であると主張する本件製造方法の情報は,営業秘密に該当しないか,又は一審原告らが一審被告から示されたり使用したりしたとは認められないと判断する。 その理由は,原判決「事実及び理由」中の第3の9(原判決42頁1行目から45頁12行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 8 争点10(本件請求拡張の不法行為性の有無)について訴えの提起が相手方に対する違法な行為となるのは,当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照- 32 -らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解すべきである(最高裁昭和63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁)。この理は,拡張される部分が新たな訴え提起としての性質を有する請求の拡張においても,訴訟の経過も考慮されるべきであることのほかには異なるものではない。 これを本件請求拡張についてみると,請求の拡張部分は結果的にいずれも理由がなかったのであるが,一審原告会社の主張する請求原因事実のうち,特に契約締結上の過失をいう部分については,どのような場合に契約締結上の過失があるとして不法行為に該当するか,当該局面に即した明文の規定が設けられているわけではない。通常人はもちろん,法律の専門家で に契約締結上の過失をいう部分については,どのような場合に契約締結上の過失があるとして不法行為に該当するか,当該局面に即した明文の規定が設けられているわけではない。通常人はもちろん,法律の専門家である弁護士においても,上記部分が事実的,法律的根拠を欠くことを容易に知り得たとは認められない。本件請求拡張が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとは認められない。 したがって,一審原告会社による本件請求拡張は,一審被告に対する不法行為とはならない。 9 結論以上の次第で,一審原告会社の本訴請求及び一審被告の反訴請求は,いずれも理由がないから棄却すべきであるところ,一審原告会社の本訴請求を一部認容した原判決は相当でない。一審被告の控訴の一部は理由があるから,原判決中,本訴請求(一審原告会社請求1)に係る一審被告敗訴部分を取り消した上,当該部分の一審原告会社の請求を棄却することとし,一審被告のその余の控訴及び一審原告会社の控訴はいずれも理由がないから棄却することとする。 よって,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第8民事部 - 33 -裁判長裁判官山田陽三 裁判官種村好子 裁判官中尾 彰
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