主文 1 被告が昭和五九年一二月三日、aに対してした労働者災害補償保険法による療養補償給付及び休業補償給付を支給しない旨の処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第一請求主文同旨第二争いのない事実一 aの職歴a(昭和一五年三月二七日生、以下「a」という。)は、昭和三九年七月から同四八年頃まで佐賀運輸株式会社のトラック運転手として、同年頃から同四九年頃まで城東タクシー株式会社のタクシー運転手として、同年頃から同五〇年頃まで蓮池タクシーにタクシー運転手として、同年頃から同五六年頃まで末永通商株式会社に運転手としてそれぞれ勤務し、同年一一月頃からは蓮池タクシーにタクシー運転手として勤務していた。 二 aの病歴aは、昭和五五年頃、慢性肝炎及び慢性腎炎のため森医院において入院治療を受け、同五六年頃、急性胆嚢炎、肝硬変、過敏性大腸炎のため森山胃腸科において入院治療を受け、同五七年四月一五日から五月一八日までの間、頭痛のため小柳病院において通院治療を受けた。 aの血圧測定結果は、次のとおりである。 測定日血圧(上の数値が収縮期血圧を、下の数値が拡張期血圧を示す。単位は、ミリメートルHgである。)昭和五六年七月一三日一四四~ 八八同年一〇月二一日一五五~一〇八同年同月三〇日一五二~ 九六昭和五七年四月一五日一五〇~ 九〇同年七月一二日一五〇~ 九二三 aの勤務状況昭和五七年九月当時の蓮池タクシーの勤務体制は、別紙表1記載のとおりであった。 同年九月一八日から同月二七日までの一〇日間のaの勤務状況は、別紙表2記載のとおりであった。 四疾病の発症aは、昭和五七年九月二八日、勤務開始後、高血圧性脳内出血(以下、「本件疾病」ということがある。)を発症し、同日か 日までの一〇日間のaの勤務状況は、別紙表2記載のとおりであった。 四疾病の発症aは、昭和五七年九月二八日、勤務開始後、高血圧性脳内出血(以下、「本件疾病」ということがある。)を発症し、同日から昭和五八年七月二日までの間小柳病院において入院治療を受けた。 五被告の処分aは、昭和五九年九月二八日、被告に対して労働者災害補償保険法(以下、「労災保険法」という。)による療養補償給付及び休業補償給付請求をし、被告は、同年一二月三日、本件疾病が業務に起因するものとは認められないとして療養補償給付及び休業補償給付を支給しない旨の処分(以下、「本件処分」という。)をした。aは、昭和六〇年一月二八日、本件処分を不服として審査請求をしたが、佐賀労働者災害補償保険審査官は、昭和六一年一二月一〇日頃、右審査請求を棄却した。aは、昭和六二年三月一六日、右処分について再審査請求をしたが、労働保険審査会は、平成元年六月三〇日、これを棄却する裁決をした。 六 aと原告らとの関係aは、平成四年一月二八日死亡した。原告bはその妻、その余の原告はその子である。 第三争点本件の争点は、本件疾病が労災保険法にいう「業務上の疾病」に該当するか否か、すなわち、aの蓮池タクシーにおける業務と本件疾病との間の相当因果関係が肯定されるか否かである。 一原告らの主張 1 aの病歴との関係本件処分理由は、本件疾病は、高血圧症が自然的に増悪した結果であるというものであるが、aが高血圧症であったとはいえない。仮にaの前記二2記載の血圧値をもって高血圧症とするとしても、その症状は、いわゆる正常値との間の境界域に属し、ことさら治療を要するものではなかったのであるから、これが自然的に増悪した結果ではありえない。 2 業務の過重性(1) タクシー運転労働の特徴タクシー運転労 いわゆる正常値との間の境界域に属し、ことさら治療を要するものではなかったのであるから、これが自然的に増悪した結果ではありえない。 2 業務の過重性(1) タクシー運転労働の特徴タクシー運転労働は、人間の生理に反する深夜勤務を含んでいるうえ、蓮池タクシーにおけるそれは、別紙表1記載のとおり不規則で、かつ八時間労働の原則を大幅に超える長時間の労働である。作業内容は自動車運転という緊張度の高いもので、運転席に長時間拘束され、振動等劣悪な環境の影響も受ける。また、給料の歩合制やタコメーターと無線による監視により労働強化がはかられている。このようなことからタクシー運転労働における肉体的、精神的疲労は強く、その回復のためには十分な休息が必要である。 (2) 発症前三か月間の就労状況aの本件疾病発症前三か月間の一日平均拘束労働時間は一四・七五時間である。 この時間外に、料金の精算、洗車、整備等の業務があり、その余の時間に、通勤、食事、入浴その他の家庭生活、社会生活を営まなければならなかったから、次の勤務までの休息時間内に八時間の睡眠を確保することは不可能であった。 また、右のような長時間労働をそれまでも長時間継続してきたことから、aは、昭和五七年四月頃から体調を崩し、とくに七月頃には強固な頭痛と肩凝りに悩まされ、欠勤、早退を繰り返していた。このため八月の給料が少なく、aは、それを取り戻すべく、肩凝りや頭痛を押して以前より長時間働くようになった。同五七年七月二六日から九月一八日までの一日平均拘束労働時間は一四時間四九分である。とくに、同五七年八月二八日には一九時間五分、九月四日には一九時間四五分、同五七年九月一九日には二二時間一〇分という長時間にわたる勤務をしている。 (3) 発症前一週間の就労状況aの本件疾病発症前一週間の一日平均拘束労働時 には一九時間五分、九月四日には一九時間四五分、同五七年九月一九日には二二時間一〇分という長時間にわたる勤務をしている。 (3) 発症前一週間の就労状況aの本件疾病発症前一週間の一日平均拘束労働時間は一五・五三時間に達している。これは、昭和五七年九月には稼ぎの多い土曜日が四回中三回非労働日とされたことから、その分他の日の勤務時間を延長したからである。 発症直前の昭和五七年九月二四日は、勤務明けで、翌二五日は公休日であったが、二六日には、午前二時四〇分には勤務についているので、疲労の回復には十分でなかった。また、同五七年九月一八日の公休日も、これを利用して前日の一七日と翌日の一九日の労働時間を延長して合計一〇時間四五分勤務するために使われており、疲労回復には十分でなかった。 (4) 自動車運転者の労働時間等の基準についてaの拘束労働時間は、次のとおり「自動車運転者の労働時間等の改善基準」(昭和五四年一二月二七日付基発第642号労働省労働基準局長通達、以下「改善基準」という。)に示された基準を大幅に超えている。 ア別紙表1記載の労働時間の一日平均労働時間が八・三時間で、改善基準の八時間を超えている。昭和五七年九月一九日から二七日までのaの実際の一日平均労働時間は、一三時間五〇分である。 イ一日平均拘束労働時間は、発症前三か月において一四・七五時間、発症前一週間において一五・五三時間であって、改善基準の一三時間を大幅に上回っている。 ウ改善基準に定められた一日最大拘束労働時間は一六時間であるが、昭和五七年九月一九日の拘束労働時間は二二時間余り、同月二三日は一六時間、同月二六日には一六時間である。このような長時間勤務は、実質的には休日である前日からの出勤によるものである。 エ昭和五七年九月一九日から同月二七日までの九日間の一日拘束労働時 同月二三日は一六時間、同月二六日には一六時間である。このような長時間勤務は、実質的には休日である前日からの出勤によるものである。 エ昭和五七年九月一九日から同月二七日までの九日間の一日拘束労働時間が一五時間を超える日が四日あり、改善基準の一週間に二回以上はできないことに反している。 オ発症前二週間の総拘束労働時間は一六三・五時間、休日労働が四時間二〇分であるが、改善基準によれば、この総拘束労働時間が一五六時間を超え、休日労働は許されない。 カ昭和五七年九月一八日の勤務終了から同月一九日の勤務開始までの休息時間は二二時間一五分で、改善基準の三〇時間連続休息の原則に反する。 3 結論aは、高血圧症でなく、仮にそうであったとしても軽度であったから、その自然的な増悪の結果として本件疾病を発症することはなく、長年月にわたる苛酷なタクシー等の運転労働に加えて、健康状態が悪化した後の昭和五七年七月以降の勤務の過重性が主たる原因となって本件疾病を発症したというべきである。したがって、本件処分には、aの業務と本件疾病との間の相当因果関係についての判断を誤った違法がある。 二被告の主張労災保険法の保険給付の対象となる労働者の疾病は、業務上の事由によるものであること、すなわち業務起因性が必要であり、業務起因性は、業務と当該疾病との間に相当因果関係があることである。労働者に基礎疾病がある場合、右相当因果関係があるというためには、医学的知見を含め経験則に照らして、業務の遂行が基礎疾病をその自然的経過を超えて著しく増悪させたことが認められることが必要であって、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」(昭和六二年一〇月二六日付基発第六二〇号労働省労働基準局長通達)によれば、A発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事(業務に関連す て、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」(昭和六二年一〇月二六日付基発第六二〇号労働省労働基準局長通達)によれば、A発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事(業務に関連する出来事に限る。)に遭遇したこと又は日常業務に比較して、特に過重な業務に就労したことによる明らかな過重負荷を発症前に受けたことが認められること、B過重負荷を受けてから症状の出現までの時間的経過が、医学上妥当なものであることの両要件を充足することが必要である。そして、右通達によれば、日常業務に比較して、特に過重な業務とは、通常の所定の業務内容等に比較して特に過重な精神的、身体的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務であり、その判断は、次の手順によるべきこととされている。 a 発症に最も密接な関連を有する業務は、発症直前から前日までの間の業務であるので、この間の業務が特に過重であると客観的に認められるか否かを第一に判断することb 発症直前から前日までの間の業務が特に過重であると認められない場合、発症前一週間以内に過重な業務が継続している場合には、急激で著しい増悪に関連があると考えられるので、この間の業務が特に過重であると客観的に認められるか否かを判断することc 発症前一週間より前の業務については、急激で著しい増悪に関連したとは判断しがたく、発症前一週間以内における業務の過重性の評価にあたって、その付加的要因として考慮するに止めることd 過重性の評価にあたっては、業務量のみならず、業務内容、作業環境等を総合して判断すること右基準に基づいて本件疾病の業務起因性を検討すべきである。 1 aの病歴等aは、昭和五六年六、七月頃、慢性腎炎に罹患していたから、これに伴う症状として高血圧症が存在していたというべきである。 なお、aは、飲酒(毎日二合) 業務起因性を検討すべきである。 1 aの病歴等aは、昭和五六年六、七月頃、慢性腎炎に罹患していたから、これに伴う症状として高血圧症が存在していたというべきである。 なお、aは、飲酒(毎日二合)、喫煙(一日一箱)の嗜好があった。 2 業務の過重性(1) タクシー運転労働の過重性タクシー運転手等の運転業務従事者に特に高血圧、脳内出血が発症するという医学的、統計的根拠はなく、本件疾病と原告らが主張するタクシー運転労働の特徴との間に関連があるということはできない。 (2) aの勤務状況(a) aの通常の勤務の態様は、午前中は車庫で客待ちのため待機し、午後は無線による流しないし停車客待ちをしていた。点検、整備等は、待機時間等に随時行ない、洗車は行なわない日もあった。 (b) 発症前一〇日間の就労状況本件疾病発症前一〇日間に、拘束時間が別紙表1所定の時間を超えたのは、公休明けの昭和五七年九月一九日と同月二六日であり、その余はほぼ所定の時間と同じである。発症直前の九月二四日は、勤務明けであり、翌二五日は公休日で二日間の休日を取っている。 発症当日は、aは、午前八時四〇分頃出勤し、自動車の点検をしたのち営業につき、営業回数は四回である。当日の勤務中、精神的又は身体的に過度な負荷となるような突発的な出来事はない、なお、発症直前に、aは運転中、腹痛を覚えているが、これは、持病の胆石の症状であったというべきである。 (c) 発症前三か月間の就労状況本件疾病発症前三か月間のa及び同僚であるc、d、e、fの勤務時間等は、別紙表3記載のとおりであり、同僚と比較してもaの平均労働時間、走行距離は短く、その勤務が特に過重であったということはできない。休日の取得状況も他の同僚とほぼ同様であり、所定の公休日及び明け番の日に出勤してはいなかった。なお、aは、 較してもaの平均労働時間、走行距離は短く、その勤務が特に過重であったということはできない。休日の取得状況も他の同僚とほぼ同様であり、所定の公休日及び明け番の日に出勤してはいなかった。なお、aは、一日を所定時間を超えて勤務することはあったものの、それは休日勤務ではなく、手待時間も相当あったので、その勤務が過重であったとはいえない。 3 結論一般に、脳内出血は、高血圧、動脈硬化等が素因として存在することが多く、出血の直接の原因は、急激な血圧の上昇であるとされる。本件疾病は、高血圧症により右レンズ核線状体動脈に血管壊死と微小動脈瘤が生じ、急激な血圧の上昇によりこの微小動脈瘤が破裂して出血したものというべきである。 そして、発症当日、運転業務に関連して急激な血圧の上昇を起こすような要因は発見できない。また、aの発症前の勤務状況は過重なものとはいえないものである。aが、慢性肝炎、慢性腎炎に罹患し、高血圧症であったのに、毎日、相当の飲酒、喫煙をしていて十分な健康管理を怠っていたとみられることからすると、本件疾病は、高血圧症の自然的悪化の結果であるというべきである。aは発症直前胆石による腹痛を覚え、その痛みによって急激な血圧の上昇を招き、微小動脈瘤の破裂、出血をみたものとみられる。したがって、業務起因性を否定した本件処分は、適法である。 第四争点についての判断一 aの健康状態について 1 乙第一七号証の二ないし四、一八号証、一九号証の二ないし一四、二〇号証の二、二二号証、二三号証、二四号証の二及び三、証人g、同h、同i及び同bの各証言並びに承継前原告本人尋問の結果によれば、次の事実を認めることができる。 aは、昭和四八年頃、樋口胃腸外科において、十二指腸潰瘍のため手術を受け、同五四年頃から同五五年頃にかけて約一一か月間、森医院において慢性肝炎 本人尋問の結果によれば、次の事実を認めることができる。 aは、昭和四八年頃、樋口胃腸外科において、十二指腸潰瘍のため手術を受け、同五四年頃から同五五年頃にかけて約一一か月間、森医院において慢性肝炎、ネフローゼ型慢性腎炎のため入院治療を受けた。また、同五六年七月一三日から一一月一〇日までの間、森山胃腸科において急性胆嚢炎、肝硬変、過敏性大腸炎のため入院治療を受けた。森山胃腸科入院中の昭和五六年七月一七日の血圧は一三〇~九〇、同年八月六日のそれは一三〇~八五であった。 aは、昭和五七年四月一五日頃、首筋から肩にかけて痛かったり、自動車運転中、自動車が弾んだ拍子に頭がふらふらしたりしたことから、小柳病院に受診し、大後頭神経痛兼右上腕神経痛と診断され、通院治療を受け、七月頃には、堤鍼灸院にも通院していた。 aは、同年七月一二日、財団法人佐賀県産業医学協会が実施した労働安全衛生法第六六条に基づく健康診断の際「血圧 150~92 腎炎治療中高血圧症要観察」の診断を受けたが、高血圧症の治療を受けたことは一度もなかった。 aの飲酒量は一日酒二合、喫煙は一日タバコ一箱二〇本くらいであったが、森山胃腸科で、飯酒をやめるように指導されていた。 2 証人j及び同hの各証言によれば、血圧に関する世界保険機構の基準においては、血圧の正常値は、収縮血圧一三九以下、かつ、拡張期血圧八九以下であり、収縮期血圧一六〇以上または拡張期血圧九五以上である場合を高血圧症とし、正常値と高血圧症との中間の血圧値の場合には境界域の高血圧であるとされていることが認められる。 右事実を争いのないaの血圧測定結果(前記第二、二)と前記認定の森山胃腸科での血圧測定結果に当てはめると、aの血圧は、ほぼ境界域の高血圧に当たるということができる。 3 証人h及び同iの各証言によれば、昭和五 いのないaの血圧測定結果(前記第二、二)と前記認定の森山胃腸科での血圧測定結果に当てはめると、aの血圧は、ほぼ境界域の高血圧に当たるということができる。 3 証人h及び同iの各証言によれば、昭和五四、五五年当時使用されていた「ネフローゼ型慢性腎炎」というaの病名は、現在では使用されておらず、現在考えうるaの病名は、ネフローゼ症候群または糸球体腎炎であるが、いずれであるかは、腎生検がなされていないため確定できないこと、ネフローゼ症候群であれば高血圧症を伴うことは少なく、糸球体腎炎であれば通常高血圧症を伴うことが認められる。 前述のとおりaは、昭和五七年七月一二日、財団法人佐賀県産業医学協会が実施した労働安全衛生法第六六条に基づく健康診断の際「血圧 150~92 腎炎治療中高血圧症要観察」との診断を受けているところ、右血圧は境界域の高血圧症状ということができ、産業医学上、直ちに治療を要しないものの、境界域の高血圧症状の推移には注意を要するものとされていたといえる。したがって、aは、腎臓疾患との関係は明らかでないものの、境界域の高血圧症状という基礎疾患を有していたということができる。 二本件疾病の発症について甲第一号証、乙第七号証の二、一〇号証、一九号証の一四、二一号証、二二号証、証人g、同k及び同bの各証言並びに承継前原告本人尋問の結果によれば、次の事実を認めることができる。 aは、昭和五七年九月二八日午前八時頃自宅を出て、勤務につき、佐賀市<以下略>所在の車庫から佐賀市街まで客を乗せて行った帰りに腹痛を覚えた。車庫に帰り、休憩室に入るとき、足がうまく動かなくなり、休憩中に手も不自由になったが、全く歩けない状態ではなく、会話もできた。aの異常に気付いた同僚のkらは、aを森山胃腸科に連れていった。この時、森山胃腸科で測定した血圧値 とき、足がうまく動かなくなり、休憩中に手も不自由になったが、全く歩けない状態ではなく、会話もできた。aの異常に気付いた同僚のkらは、aを森山胃腸科に連れていった。この時、森山胃腸科で測定した血圧値は二一六~一一四であった。aは、小柳病院に転送され、翌日、脳内血腫除去手術を受けた。 本件疾病は、高血圧性脳内出血(被殻)であって、その原因は、高血圧症により右レンズ核線状体動脈に生じた微小動脈瘤が急激な血圧の上昇によって破裂したことである。なお、aは、本件疾病とともに消化管出血を発症していた。 三本件疾病後の健康状態乙第二〇号証の三ないし九、二八号証の一ないし三及び証人gの証言によれば、次の事実を認めることができる。 aは、昭和五七年一一月一八日、小柳病院において胆嚢蓄膿症のため胆嚢摘出手術を受けた。また、入院中、肝機能は回復がみられるが、腎臓機能は次第に低下し、腎不全の診断を受けた。そして、佐賀県立病院好生館において、昭和六〇年一〇月一五日から透析を受けるようになった。 四業務の状況について 1 蓮池タクシーにおける一般的勤務状況乙第九号証、証人kの証言及び承継前原告本人尋問の結果によれば、次の事実が認められる。 蓮池タクシーの勤務体制は、従業員一人が一台の車両を割り当てられて乗務するいわゆる一人一車制であった。 昭和五七年九月当時の蓮池タクシーの従業員は、一〇名くらいで、車両は一一台くらいあった。当時の勤務は、出勤直後始業前点検をし、主として午前中は車庫で待機をして客待ち、午後からは佐賀市街に出てタクシー乗り場での停車客待ち、流し、無線による客待ちをするという形態であった。車両整備、洗車等は、待機中に行なうこともあれば、始業前、終業後に行なうこともあった。また、洗車については、汚れていなければ免除されることもあった。帰庫後 、無線による客待ちをするという形態であった。車両整備、洗車等は、待機中に行なうこともあれば、始業前、終業後に行なうこともあった。また、洗車については、汚れていなければ免除されることもあった。帰庫後に、洗車、精算をするとそのために三〇分ないし一時間程度を要した。精算は、タコグラフ、乗務記録簿によってなされた。勤務時間の始期、終期は、タコグラフの着脱により把握されていた。したがって、精算に要する時間は、勤務時間に算入されていなかった。一人一車制であったことから、水揚げの少ないときは、所定の始業時間より早く勤務についたり、就業時間を延長したりする者も多かった。 なお、蓮池タクシーにおける勤務の実態が、佐賀市周辺の同業者における勤務態様、大都市地域の同業者における勤務態様と有意に異なっていたことを認めるに足りる証拠はない。 2 改善基準について乙第二六号証によれば、昭和五七年当時、労働省により自動車運転者の労働条件の最低の基準として改善基準が定められ、その内容は次のとおりであったことが認められる。 (1) 労働時間所定労働時間は、休憩時間を除き、一日について八時間、一週間について四八時間を超えないものとし、また、変形労働時間制をとる場合には、四週間を平均して一週間の労働時間が四八時間を超えないものとする(改善基準Ⅲ)。 (2) 拘束時間一般乗用旅客自動車運送事業(ハイヤー・タクシー業)における自動車運転者で隔日勤務以外の自動車運転者(以下「本件対象運転者」という。)については、始業時刻から始まる一日(二四時間)の拘束時間は、時間外労働を含め一四時間以内とし、この一日の拘束時間は二週間を平均して計算することができるものとする(改善基準Ⅳ2(1)イ)。 (3) 最大拘束時間本件対象運転者について、始業時刻から始まる一日(二四時間)の最 四時間以内とし、この一日の拘束時間は二週間を平均して計算することができるものとする(改善基準Ⅳ2(1)イ)。 (3) 最大拘束時間本件対象運転者について、始業時刻から始まる一日(二四時間)の最大拘束時間は、時間外労働を含め一六時間とする。ただし、常態として車庫待ち、駅待ち等の形態によって就労する自動車運転者について、勤務終了後連続した二〇時間以上の休息期間を与える場合には、最大拘束時間を二四時間まで延長することができる。 この場合において、拘束時間が一六時間を超えることのできる回数は二週間を通じ三回を限度とするものとする。(改善基準Ⅳ2(1)ロ)。 (4) 休息期間本件対象運転者について、拘束時間が一六時間以内の場合には、勤務と次の勤務との間には連続した八時間以上の休息期間を与えなければならない。ただし、常態として車庫待ち、駅待ち等の形態によって就労する自動車運転者について、最大拘束時間を二四時間まで延長した場合には、勤務終了後連続した二〇時間以上の休息期間を与えなければならない。また、拘束時間が一八時間を超える場合には、夜間に四時間以上の仮眠を与えなければならない(改善基準Ⅳ2(1)ロ)。 (5) 休日休日は、休息期間に二四時間を加算して得た、連続した時間とする。ただし、いかなる場合であっても、その時間が三〇時間を下回ってはならないものとする(改善基準Ⅳ3(2))。 (6) 休日労働本件対象運転者について、休日労働は、二週間における総拘束時間が一六八時間(一四時間×一二日)を超えない範囲で行なうことができるものとし、その回数は二週間を通じて一回を限度とするものとする(改善基準Ⅳ2(1)ニ)。 乙第三七号証によれば、休息期間とは、使用者の拘束を受けない期間であって、勤務と次の勤務との間にあって休息期間の直前の拘束時間における 間を通じて一回を限度とするものとする(改善基準Ⅳ2(1)ニ)。 乙第三七号証によれば、休息期間とは、使用者の拘束を受けない期間であって、勤務と次の勤務との間にあって休息期間の直前の拘束時間における疲労の回復を図るとともに睡眠時間を含む労働者の生活時間として、その処分は労働者の全く自由な判断に委ねられる時間であることが認められるところ、前記のとおり本件対象者についての休息期間は八時間であるから、通勤に要する時間等を考慮すると、ときには通常の睡眠時間である八時間さえも確保されない場合があることを改善基準自体許容しているといえる。また、乙第三八号証によれば、改善基準は、平成四年までに数次の改訂を受け、本件対象運転者について、一日の拘束時間を一三時間に、一か月の総拘束時間を三一二時間に改めるなど次第に強化されていることが認められ、このことからすると、本件疾病発症当時の改善基準は、自動車運転労働者の最低の労働条件を定めたものとしては相当緩やかな規制であったともいえるものである。 3 所定労働時間別紙表1によれば、蓮池タクシーの勤務体制は、変形労働時間制であったということができる。 同表をもとに蓮池タクシーにおける一週間の所定労働時間を四週間の平均によって算定した結果は、次のとおりである。 算定の初日を同表第一日とすると、四週間の所定総労働時間は二三八時間(労働日二二日)、一週間の平均では五九時間三〇分、一労働日当たり一〇時間四九分である。また、算定の初日を同表第六日とすると、四週間の所定総労働時間は二一六時間(労働日二〇日)、一週間の平均では五四時間、一労働日当たり一〇時間四八分である。したがって、一週間の所定労働時間は、右改善基準を六時間ないし九時間三〇分超過するものである。 なお、aの実際の労働時間については、拘束時間中、実際にとら 時間、一労働日当たり一〇時間四八分である。したがって、一週間の所定労働時間は、右改善基準を六時間ないし九時間三〇分超過するものである。 なお、aの実際の労働時間については、拘束時間中、実際にとられた休憩時間が判明しないから明らかでない。 4 拘束時間別紙表1をもとに蓮池タクシーにおける一日当たりの拘束時間を二週間の平均によって算出した結果は、次のとおりである。 算定の初日を同表第一日とすると、二週間(労働日一一日)の総拘束時間は一四八時間、一日当たりの拘束時間は一三時間二七分、算定の初日を同表第一三日とすると、二週間(労働日一〇日)の総拘束時間は一三四時間、一日当たりの拘束時間は一三時間二四分である。したがって、一日の所定拘束時間は、右改善基準の要件を満たしている。 乙第一二号証の一ないし四によれば、昭和五七年六月二八日から同年九月二七日までの間(以下「発症前三か月間」という。)のaの一日当たりの平均拘束時間は、この期間中の総拘束時間(精算に要した時間は含まれていない。以下、a及び他の同僚についても同様である。)である九九六時間三〇分を、この間の労働日である六五日で除して得られる一五時間二〇分である。したがって、改善基準を一時間二〇分超過している。 また、昭和五七年九月二一日から同月二七日までの間(以下「発症前一週間」という。)のaの一日当たりの平均拘束時間は、この期間中の総拘束時間である七一時間五〇分を、この間の労働日である五日で除して得られる一四時間二二分である。発症前一週間の直前の一週間の一日当たりの平均拘束時間は、この期間中の総拘束時間である九七時間四五分を、この間の労働日である六日で除して得られる一六時間一七分である。したがって、発症前一週間は、右改善基準を二二分超過する程度であるが、その直前の一週間は、二時間一七 総拘束時間である九七時間四五分を、この間の労働日である六日で除して得られる一六時間一七分である。したがって、発症前一週間は、右改善基準を二二分超過する程度であるが、その直前の一週間は、二時間一七分も超過していることになる。 乙第一一号証、一三号証の一ないし四、一四号証の一ないし四、一五号証の一ないし四、一六号証の一ないし四によれば、aの同僚らの発症前三か月間の一日当たりの拘束時間は、cにつき一五時間五三分、dにつき一五時間五四分、eにつき一四時間四三分、fにつき一五時間四〇分であったことが認められる。 5 最大拘束時間別紙表1によれば、蓮池タクシーにおける所定最大拘束時間は、第五日の一六時間である。 乙第一二号証の一ないし四によれば、aの一日の拘束時間が一六時間を超える勤務回数は、発症前三か月間に二〇回あること、発症前一週間には、このような勤務はないが、その直前の一週間には、三回あることが認められる。 乙第一一号証、一三号証の一ないし四、一四号証の一ないし四、一五号証の一ないし四、一六号証の一ないし四によれば、aの同僚らの発症前三か月間の一日の拘束時間が一六時間を超える勤務回数は、cにつき二九回、dにつき三二回、eにつき一一回、fにつき二九回であることが認められる。 別紙表1の所定拘束時間の定め方及び前記1認定の事実によれば、蓮池タクシーでは、車庫待ち、タクシー乗り場での客待ちの形態もあるものの、それが常態であるとは認定できず、また、勤務体制も車庫待ち等を常態としては予定していないといえる。したがって、右認定のように一日の拘束時間が一六時間を超える勤務はそれ自体明らかに改善基準違反である。 6 休息期間別紙表1によれば、蓮池タクシーにおける所定の休息期間は、九時間(一日)、一一時間(一日)、一二時間(三日)、一四時間(一日) 時間を超える勤務はそれ自体明らかに改善基準違反である。 6 休息期間別紙表1によれば、蓮池タクシーにおける所定の休息期間は、九時間(一日)、一一時間(一日)、一二時間(三日)、一四時間(一日)、一五時間(二日)であって、九時間の日を除いては、八時間の睡眠を確保できる休息期間であるということができる。 乙第一二号証の一ないし四によれば、aの発症前三カ月間の勤務と勤務との間隔が八時間に満たない日は、七月七日(七時間四五分)、同月三一日(七時間四〇分)の二日であること、同期間中の拘束時間が一六時間を超過した場合に、その勤務終了後の休息期間が二〇時間に満たない日は、一四回であること、昭和五七年九月一四日から同月二七日までの間(以下「発症前二週間」という。)の拘束時間が一六時間を超過した日は、九月一四日と一九日の二回で、いずれもその後に二〇時間の連続した休息期間がとられていないことが認められる。したがって、八時間休息の基準はほぼ守られていたということができるが、最大拘束時間を超過した違反がある場合に、十分な休息ができたとはいえない。 乙第一一号証、一三号証の一ないし四、一四号証の一ないし四、一五号証の一ないし四、一六号証の一ないし四によれば、aの同僚らの同期間中の勤務と勤務との間隔が八時間に満たない日は、cにつき九回、dにつき一一回、eにつき四回、fにつき一一回であること、同期間中の拘束時間が一六時間を超過した場合に、その勤務終了後の休息期間が二〇時間に満たない日は、cにつき一九回、dにつき二〇回、eにつき七回、fにつき一九回もあり、それぞれ一六時間を超える勤務回数のほぼ三分の二前後の回数は、十分な休息期間が確保されていないことが認められる。 7 休日改善基準によれば、本件対象運転者の休息期間は、連続した八時間以上の時間であるから、 時間を超える勤務回数のほぼ三分の二前後の回数は、十分な休息期間が確保されていないことが認められる。 7 休日改善基準によれば、本件対象運転者の休息期間は、連続した八時間以上の時間であるから、休日は、これに二四時間を加算した三二時間であることを要するということとなる。 別紙表1をもとに休日の前後の勤務の間隔を算出すると、第七日が四五時間、第一三日が三三時間であり、これは改善基準の要件を満たしている。 乙第一二号証の一ないし四によれば、発症前三か月間の休日数は一四回、休日前後の勤務の間隔が連続三二時間に満たない休日は、七月二日(二九時間四五分)、同月一五日(三〇時間一〇分)、同月二八日(三〇時間一〇分)、八月一〇日(三〇時間二〇分)、九月五日(二六時間五分)、同月一八日(二二時間一五分)の六日であること、これはいずれも別紙表1第一三日の休日で、第一三日の休日に三二時間の休息が確保されたのは、八月二三日だけであることが認められる。 乙第一一号証、一三号証の一ないし四、一四号証の一ないし四、一五号証の一ないし四、一六号証の一ないし四によれば、同期間中の休日数は、同僚ら各自につき一四日で、休日前後の勤務の間隔が連続三二時間に満たない休日は、cにつき三回、dにつき六回、eにつき三回、fにつき三回であることが認められる。 8 休日労働乙第一二号証の一ないし四によれば、発症前三か月間にaが、明け番の日または公休日に、所定の勤務とは独立した勤務をした事実はなく、他に休日労働の事実を認め得る証拠はない。 五業務の過重性及び本件疾病との間の相当因果関係について 1 労災保険法にいう「業務上の疾病」とは、当該業務に起因した疾病であり、これが認められるためには当該業務と当該疾病との間に相当因果関係があることが必要である。そして、労働者に、当該疾病を発 ついて 1 労災保険法にいう「業務上の疾病」とは、当該業務に起因した疾病であり、これが認められるためには当該業務と当該疾病との間に相当因果関係があることが必要である。そして、労働者に、当該疾病を発症させる基礎疾病がある場合には、当該業務の遂行による過重な負荷(以下「業務の過重性」という。)を受けてその基礎疾病がその自然的経過を超えて著しく増悪したことが認められなければ、相当因果関係があるということができない。そして、基準疾病を有する者については、この業務の過重性は、基礎疾病を有しない健常人を基準に判断すれば足りるものというべきではなく、当該業務における通常の勤務に耐えられない健康状態にあるような者は格別、当該業務における通常の勤務には耐えられる程度の基礎疾病を有する者を基準として判断すべきである。なぜなら、労働が現代人の主たる生活手段であり、健常な者のみが労働に従事しているのではなく、基礎疾病その他の身体的負因を抱えながら労働に従事する者も多いのであるから、このような者を無視して労働者の保護を全うすることはできないからである。 2 前記認定のとおり、本件疾病は高血圧症を基礎疾病として発症したものであるところ、aは、境界域高血圧症状を呈しており、昭和五七年七月一二日の労働安全衛生法に基づく健康診断の結果は、高血圧症について観察を要するというものであって、高血圧症の治療を要するとまではされておらず、まして、勤務自体を禁止すべき状態にはなかったということができる。したがって、aはタクシー運転業務における通常の勤務に耐え得る程度の健康状態にあったというべきである。 3 自動車運転者の業務の過重性をいかなる目安によって量るかは、種々議論のあり得るところであるが、改善基準が業務の過重性判断のひとつの指標となり得るものというべきである。 そこで、以 べきである。 3 自動車運転者の業務の過重性をいかなる目安によって量るかは、種々議論のあり得るところであるが、改善基準が業務の過重性判断のひとつの指標となり得るものというべきである。 そこで、以下、aについて改善基準の遵守状況について検討する。 発症前一週間の勤務状況は、前記認定のとおりであり、これは、一日の拘束時間について平均二二分超過している点で、改善基準に違反している。その他の事項について、改善基準は守られている。しかし、その直前の一週間についてみると、一日の拘束時間について平均二時間一七分超過しており、最大拘束時間一六時間を超過する勤務は三回あり、この内二回はその勤務後に連続二〇時間の休息期間がなく、九月一八日の公休日は所要の三二時間に九時間四五分も不足する二二時間一五分の休息しかできていないという点で、改善基準に大幅に違反している。この二週間における一日の拘束時間の平均は、一五時間二五分であって、発症前三か月間のそれを五分超過しており、発症前三か月間のうちでも勤務時間が長かったということができる。また、発症前三か月間では、一日の拘束時間について平均一時間二〇分超過しており、最大拘束時間一六時間を超過する勤務は二〇回あり、このうち一四回は勤務後連続二〇時間の休息期間が確保されず、休日に三二時間の休養ができないことが一四回の公休日のうち六回あり、休息期間八時間が確保されないことも二回あって、改善基準に大幅に違反している。 そして、aが前記認定のような健康状態にあったことを合わせ考えると、右のような勤務によって本件疾病発症当時、aの疲労の蓄積度は、相当高かったことを推認することができる。 改善基準に違反していれば、当然に業務の過重性が認められるということはできないが、証人iの証言によれば、疲労の蓄積によって腎臓機能ひいては高血 の蓄積度は、相当高かったことを推認することができる。 改善基準に違反していれば、当然に業務の過重性が認められるということはできないが、証人iの証言によれば、疲労の蓄積によって腎臓機能ひいては高血圧症状が悪化することが認められることを考慮すれば、少なくとも、労働安全衛生法に基づく健康診断において「腎炎治療中高血圧症要観察」と判断された者が本件疾病発症当時の改善基準に違反する右認定のような勤務についていた場合には、過重な負荷があったというべきであり、したがって、aの前記勤務状況については、業務の過重性を肯定することができる。 被告は、発症直前の一〇日間の勤務は、勤務体制所定の時間とほぼ対応しており、この間に公休日もあったこと、発症前三か月間についても他の同僚と比較して特に厳しい勤務状況でなかったことから、勤務が過重であったとはいえない旨主張するが、前記認定のとおり、そもそも発症前三か月間の勤務状況が改善基準に大幅に違反する状況であって、しかも、他の同僚が境界域高血圧症等の基礎疾病を有し、労働安全衛生法に基づく健康診断において要観察と判断されていたか否か不明であるので、比較の対象として適切でないというべきである。 4 証人hの証言によれば、高血圧症を有する者は正常血圧者と比較すると心理的ストレスにより非常に高い昇圧反応を示すこと、脳内出血は「ひやり」とする等の強い心理的ストレスによっても起こることが認められるので、以上の事実を総合すると、aが有していた基礎疾病である境界域高血圧症状が蓮池タクシーにおける過重な勤務による疲労の蓄積によって悪化し、昭和五七年九月二八日、タクシー運転に伴う「ひやり」とする等の何らかの強い心理的ストレスによる急激な血圧上昇の結果、高血圧症により脳動脈に生じていた微小動脈瘤が破裂し、本件疾病が発症したことが推認 昭和五七年九月二八日、タクシー運転に伴う「ひやり」とする等の何らかの強い心理的ストレスによる急激な血圧上昇の結果、高血圧症により脳動脈に生じていた微小動脈瘤が破裂し、本件疾病が発症したことが推認され、右推認を覆すに足りる証拠はない。 被告は、慢性腎炎に罹患していたことが、aの境界域高血圧症状の原因であるとし、本件疾病発症は、禁酒、禁煙など健康管理を怠ったことから自然的に高血圧が悪化した結果であり、直接の原因は、運転中の胆石の痛みの発作であると主張するが、運転中に胆石の痛みの発作が起きたと認めるに足りる証拠はなく(胆石の痛みにより血圧が上昇したとする証人iの証言は、単なる想像であることは同証人の証言自体により明らかである。むしろ、証人hの証言によれば、腹痛の原因は、本件疾病と相前後して発症した消化管出血によるものとも考えられ、脳内出血を起こした人の中で消化管出血を起こす人が比較的多いことが認められる。)、証人jの証言によれば、飲酒、喫煙が高血圧症状を悪化させる一因であることが認められるが、aが、改善基準を遵守した勤務をしていたとしても、飲酒、喫煙により、本件疾病発症時期に、脳内出血を発症する蓋然性があったことまでは推認することができないといわざるをえない。 以上のとおり、本件疾病は、境界域高血圧症状という基礎疾病が、過重な業務によって自然的経過を超えて著しく増悪した結果であるということができるから、業務と本件疾病との間の相当因果関係を肯定することができるというべきである。 第五結論以上のとおり本件疾病は、業務に起因するものというべきであるから、業務起因性を否定した本件処分は、違法であって、取り消されるべきである。 (裁判官生田瑞穂岸和田羊一飯畑正一郎)別紙表1<27033-001>別紙表2<27033-002>別紙表 から、業務起因性を否定した本件処分は、違法であって、取り消されるべきである。 (裁判官生田瑞穂岸和田羊一飯畑正一郎)別紙表1<27033-001>別紙表2<27033-002>別紙表3<27033-003>
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