昭和37(う)1637 業務上過失致死傷道路交通法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和37年10月19日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      被告人を禁錮一年に処する。      原審における未決勾留日数中一二〇日を右刑に算入する。      原審における訴訟費用は全部被告人の負担とする

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判決文本文2,563 文字)

主文 原判決を破棄する。 被告人を禁錮一年に処する。 原審における未決勾留日数中一二〇日を右刑に算入する。 原審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。 理由 本件控訴の趣意は、弁護人飯島磯五郎作成名義の控訴趣意書記載の通りであるから、これを引用し、右につき当裁判所は次の如く判断する。 案ずるに、原判決は、被告人に対し業務上過失致死傷罪に該る構成事実を判示するに当り、判示交差点において信号を無視して横浜新道方面に右転回したことをもつて過失だと判断したことは所論のとおりである。しかし、該転回行為そのものは決して過失をもつて論ずべき筋合ではない。該転回行為が歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがある情況の下に為されたものであるならば、それは道路交通法第二五条第一頃に違反し、同法第一二〇条第一項の罪を構成するわけであるが、原判決は右のごとき情況の下になされたも<要旨第一>のであることを判示していないので、該罪の成立を認めることはできないといえよう。しかし、右転回行為は</要旨第一>停止信号を無視してなされたものであるから、この点につき同法第四条第二項に違反する行為として同法第一一九条第一項第一号の罪の成立することを免れない。しかり、而してこの罪は故意犯である。故意行為たる、この信号無視転回をもつて、同時に、又、業務上の注意義務違反行為でもあると評価し、法律適用の欄において、これを刑法第二一一条前段の罪とともに一所為数法の関係にあるものとして被告人を処断した原判決は、まさに、擬律錯誤の違法を敢てしたものといわなくてはならない。また、原判決は、フートブレーキが故障し制動の機能を有しなくなつたことを知りながら、修理することなく運転した行為(道路交通法第六二条違反 まさに、擬律錯誤の違法を敢てしたものといわなくてはならない。また、原判決は、フートブレーキが故障し制動の機能を有しなくなつたことを知りながら、修理することなく運転した行為(道路交通法第六二条違反の<要旨第二>罪)も亦業務上過失致死傷罪と一所為数法の関係にあるものとして擬律したが、右運転行為そのものは道路交</要旨第二>通法第一一九条第一項第五号の罪に該るだけてあつて、これをもつて、また同時に刑法第二一一条前段の罪を構成する過失行為と評価すべきいわれはない。従つて、原判決は、この点においても擬律錯誤の違法を敢てしたものといわなくてはならない。 ところで、原判決の挙示した証拠を綜合して考覈すると、本件事故は、被告人が判示交差点にさしかかつた際、右斜前方約一二米の進路の略中央を判示A、B等五、六名が左から右へ横断歩行中であることを認めながら、横浜新道方面に右転回しようとしたのであるが、このような場合においては、右歩行者の動静に注意し、フートブレーキが制動の機能を有しなくなつている点に思を致し、右歩行者に衝突するがごときことなく、右転回を終わり得るよう万全の措置を講ずべき業務上の注意義務があるにかかわらず、被告人はこの義務を怠り、漫然約一〇キロの時速で運転を継続し、右転回を終ろうとした頃、前示A及びBに五、六米の近距離に接近して初めて危険を感じ、あわててフートブレーキを踏んだが用をなさず、直ちに、サイドブレキをかけたが、時既におそく、自車の前部バンバーを右AとBとに激突させて、両名を路上に転倒させ、更に、左前車輪で右Aを轢き、よつて同人を頭骨複雑骨折によつて即死せしめ、右Bに対し加療約二週間を要する判示傷害を負わしめたというのであつて、本件事故たるや、被告人はフートブレーキの制動機能の失われている点に思を致さず、サイドブレーキだけで直ちに停 折によつて即死せしめ、右Bに対し加療約二週間を要する判示傷害を負わしめたというのであつて、本件事故たるや、被告人はフートブレーキの制動機能の失われている点に思を致さず、サイドブレーキだけで直ちに停止し得るよう徐行するというがごとき、事故発生防止上必要なる措置に出でなかつたために発生したものであつて、被告人の過失は、もつぱら、ここにあつたのである。 なお、所論は判示転回行為は修理のためCガソリンスタンドに赴く途中であつたから、該転回行為は緊急避難行為をもつて目すべきものだと主張するのであるが、緊急避難行為をもつて目すべき事情は、証拠上いずこにも発見することができないので、右主張は固より採用するに由ない。 原判決には以上説示するごとき擬律錯誤の違法があるから、この点において破棄されなければならない。それで、量刑不当の論旨に対する判断を省略し、刑訴法第三九七条第一項に則つて原判決を破棄し、同法第四〇〇条但書に従つて直ちに判決することとする。 すなわち原判決の認定した事実を法律に照らすと、被告人の原判示所為中、業務上過失致死の点及び業務上過失致傷の点は各刑法第二一一条前段に該当するところ、右は一個の行為にして二個の罪名に触れる場合であるから同法第五四条第一項前段第一〇条により重い業務上過失致死罪の刑に従い所定刑中禁錮刑を選択し、整備不良車輌運転の点は道路交通法第一一九条第一項第五号第六二条に、信号無視運転の点は同法第一一九条第一項第一号第四条第二項同法施行令第二条に各該当するところ、右は一個の行為にして二個の罪名に触れる場合であるから刑法第五四条第一項前段第一〇条により重い整備不良車輌運転の罪の刑に従い所定刑中懲役刑を選択し、これと前示業務上過失致死罪とは刑法第四五条前段の併合罪であるから同法第四七条本文但書第一〇条により重い業務上過失致 一項前段第一〇条により重い整備不良車輌運転の罪の刑に従い所定刑中懲役刑を選択し、これと前示業務上過失致死罪とは刑法第四五条前段の併合罪であるから同法第四七条本文但書第一〇条により重い業務上過失致死罪の刑に併合罪の加重をなした刑期範囲内において被告人を禁錮一年に処するを相当とし、原審における未決勾留日数中一二〇日を刑法第二一条により右本刑に算入し、原審における訴訟費用は刑訴法第一八一条第一項本文に則り全部被告人に負担させるものとし、主文の如く判決する。 (裁判長判事尾後貫荘太郎判事鈴木良一判事飯守重任)

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