平成18(行ウ)37 更正処分の義務付け等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年10月26日 広島地方裁判所
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判決文本文20,495 文字)

- 1 -主文 本件訴えのうち,次の各部分をいずれも却下する。 (1) 広島西税務署長が原告の平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税の減額更正処分をしないことが違法であることの確認を求める部分(2) 広島西税務署長が原告の平成8年分の所得税に関する所得金額及び納付すべき税額並びに平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税に関する控除対象仕入税額及び納付税額の更正処分をせよと求める部分 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告は,原告に対し,金2560万0123円及びこれに対する平成19年1月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告が平成17年7月29日付けでした,国税通則法71条に基づく増額更正処分の申立て並びに平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税の各修正申告撤回の申立てに対し,広島西税務署長が原告の平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税の減額更正処分をしないことが違法であることを確認する。 広島西税務署長は,原告に対し,原告の平成8年分の所得税に関する所得金額及び納付すべき税額並びに平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税に関する控除対象仕入税額及び納付税額を,別紙1の「判決を求める更正処分の内容」欄記載の各金額とする更正処分をせよ。 第2事案の概要 本件は,平成5年分から平成7年分までの各所得税に係る更正等の処分(以下「本件更正等の処分」という。)の取消等請求訴訟(以下「前件取消等請求- 2 -訴訟」という。)を提起し,その一部を認容する確定判決を取得した原告が,(1) 本件更正等の処分は同業者比準法に基づき行われたが,ア広島西税務署長に 消等請求訴訟(以下「前件取消等請求- 2 -訴訟」という。)を提起し,その一部を認容する確定判決を取得した原告が,(1) 本件更正等の処分は同業者比準法に基づき行われたが,ア広島西税務署長においては,本件更正等の処分を行うに当たり,適切な比準業者を選定すべき義務を怠り,業種,業態及び規模の異なる比準業者を選定したイ被告においては,別の国税不服審判所の裁決で比準業者の選定が不合理である旨指摘されていたのに,前件取消等請求訴訟を継続したとして,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,本件更正等の処分に係る所得税等を納付するために銀行から借り入れた金銭の利息379万3440円,前件取消等請求訴訟の訴訟追行に費やした弁護士費用等1380万6683円,慰謝料500万円及び本件訴訟の弁護士費用300万円,並びにこれらに対する上記各不法行為の後の日である平成19年1月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,(2) 前件取消等請求訴訟の確定判決後,本件更正等の処分の趣旨に沿って修正申告していた平成8年分の所得税について,国税通則法71条に基づき増額更正処分を申し立てるとともに,平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税の各修正申告の撤回を申し立て,もって,平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税の減額更正処分を申し立てたところ,広島西税務署長においては,違法な本件更正等の処分により原告に損害が生ずることを防止すべき条理上の義務があるのに,原告の平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税の減額更正処分を行わないとして,この不作為の違法確認を,(3) 原告の平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税の減額更正処分がなされな 年ないし平成8年の各課税期間の消費税の減額更正処分を行わないとして,この不作為の違法確認を,(3) 原告の平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税の減額更正処分がなされないことにより,納税のためにした多額の借金の利払い及び返済に追われるなど負担は増すばかりの原告には,重大な損害を生ずるおそれがあり,かつ,前件取消等請求訴訟の判決の確定時点で採る- 3 -ことのできた唯一の手段として国税通則法71条に基づく職権の発動を促したが,広島西税務署長が職権を発動しないため,原告には,その損害を避けるため他に適当な方法がないところ,広島西税務署長が上記減額更正処分をしないことは明らかに違法であり又は裁量権を逸脱ないし濫用するものであるとして,広島西税務署長に対し,上記減額更正処分を義務付けることを,それぞれ求めている事案である。 基礎となる事実(証拠を付さない事実は,当事者間に争いがない。)(1) 当事者等ア原告は,広島市a区b町c-d-eにおいて司法書士事務所を営み,本件更正等の処分に係る税務調査の当時,所得税法143条のいわゆる青色申告者であった個人事業者である。 イ広島西税務署長は,原告の平成5年分から平成7年分までの各所得税及び平成5年ないし平成7年の各課税期間の消費税について,税務調査を行い,平成10年4月15日付けで,原告に対し,平成8年分の所得税の更正の請求に対してその更正をすべき理由がない旨の通知処分をした行政庁であり,被告は,広島西税務署長の属するところの行政主体である(甲16,弁論の全趣旨)。 (2) 前件取消等請求訴訟の経過等ア有限会社Aの設立等原告は,平成4年3月2日,司法書士法等の法令で司法書士固有の業務とされている業務以外の全ての業務を委託すべく,有限会社Aを設立し,原告の司 2) 前件取消等請求訴訟の経過等ア有限会社Aの設立等原告は,平成4年3月2日,司法書士法等の法令で司法書士固有の業務とされている業務以外の全ての業務を委託すべく,有限会社Aを設立し,原告の司法書士事務所の従業員を全て同社の従業員とするとともに,同社の代表取締役に妻を,取締役に自らを,各々就任させた。 原告は,同社に対し,上記業務の委託手数料として,その司法書士事務所が顧客から得る収入の6割を支払っていた。 イ本件更正等の処分等(甲9,11,12,弁論の全趣旨)- 4 -原告は,平成5年分から平成7年分までの各所得税について,それぞれ次表①のとおり,期限内申告をした。 これに対し,広島西税務署長は,平成8年12月から平成9年3月までの間,原告の税務調査を行ったところ,同月12日,同族法人のAに委託料として支払われている支払手数料について,人材派遣会社の人件費倍率に比して高額であるとして所得税法157条を適用するとともに,接待交際費等の一部については,家事関連費に当たるとして経費への算入を否認し,原告に対し,平成5年分から平成7年分までの各所得税について,次表②及び③のとおり,更正及び過少申告加算税賦課決定(本件更正等の処分)をした。 ①②③所得税期限内申告額更正後の申告納過少申告加算税額税額平成5年分¥207,000¥7,064,100¥926,500平成6年分-¥272,980¥5,228,300¥774,500平成7年分¥995,800¥11,618,600 ¥1,468,000ウ本件更正等の処分に対する審査請求及び前件取消等請求訴訟(ア) 本件更正等の処分に対する審査請求(甲9,弁論の全趣旨)原告は,平成9年5月9日,国税不服審判所長に対し,本件更正等の処分を不服として審査請求をしたが,これ る審査請求及び前件取消等請求訴訟(ア) 本件更正等の処分に対する審査請求(甲9,弁論の全趣旨)原告は,平成9年5月9日,国税不服審判所長に対し,本件更正等の処分を不服として審査請求をしたが,これに対し,国税不服審判所長は,3か月を経過した同年8月9日になっても裁決をしなかった。 (イ) 前件取消等請求訴訟の提起及びその後の経過等a第一審(甲9,弁論の全趣旨)原告は,平成9年10月13日,広島地方裁判所に対し,本件更正等の処分の取消しを求めるとともに,国家賠償法1条1項に基づき,- 5 -本件更正等の処分により被った精神的苦痛の慰謝料及び弁護士費用の損害賠償等を求める訴え(前件取消等請求訴訟)を提起した(平成9年㨯第25号所得税更正処分取消等請求事件)。 この第一審においては,本件更正等の処分に当たって広島西税務署長が用いた比準業者の選定が合理的であったか否かなどが争われたが,広島地方裁判所は,平成13年10月11日,全面的に原告の主張を排斥し,原告の請求をいずれも棄却する旨の判決をした。 b控訴審(甲10,弁論の全趣旨)原告は,平成13年10月17日,前記aの第一審の判決を不服とし,広島高等裁判所に対し,控訴をした(平成13年㨯第16号所得税更正処分取消等請求控訴事件)。 この控訴審においても,本件更正等の処分に当たって広島西税務署長が用いた比準業者の選定が合理的であったか否かが争われたところ,広島高等裁判所は,平成16年1月22日,原告の主張を一部認め,本件更正等の処分を全部取り消し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求は棄却する旨の判決をした。 c上告審(甲11,弁論の全趣旨)広島西税務署長は,平成16年2月5日,前記bの控訴審の判決を不服とし,最高裁判所に対し,上告及び上告受理申立てをした(上告につき,平成16年 る旨の判決をした。 c上告審(甲11,弁論の全趣旨)広島西税務署長は,平成16年2月5日,前記bの控訴審の判決を不服とし,最高裁判所に対し,上告及び上告受理申立てをした(上告につき,平成16年㨯第121号)。 最高裁判所は,平成16年7月26日,上告受理申立てに対しては,これを受理しない旨の決定をしたが,同年11月26日,上告については,接待交際費等を否認した部分の判決理由に不備があるとして,本件更正等の処分の取消請求のうち一部を破棄して広島高等裁判所に差し戻し,その余の上告を棄却する旨の判決をした。 d差戻控訴審(甲12,弁論の全趣旨)- 6 -広島高等裁判所は,差戻控訴審(平成16年㨯第13号所得税更正処分取消等請求控訴事件)において,平成17年5月27日,本件更正等の処分のうち,所得税法157条の適用に係る部分を取り消し,その余の請求を棄却する旨の判決をし,この判決は確定した。 (3) 平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税をめぐるやりとりア前件取消等請求訴訟の判決確定前の事情(ア) 平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税の修正申告等(弁論の全趣旨)原告は,平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税につき,期限内申告を行っていたところ,平成9年3月31日,Aに対して支払った業務委託手数料の一部を必要経費から減額した平成8年分の所得税の修正申告を行うとともに,消費税の仕入税額を減額した平成6年及び平成7年の各課税期間の消費税の修正申告並びに平成8年の課税期間の消費税の期限内申告を行った(以下,これらの修正申告等を「本件修正申告等」という。)。 (イ) 平成8年分の所得税に係る更正の請求及び審査請求(甲15ないし18,弁論の全趣旨)原告は,平成 税期間の消費税の期限内申告を行った(以下,これらの修正申告等を「本件修正申告等」という。)。 (イ) 平成8年分の所得税に係る更正の請求及び審査請求(甲15ないし18,弁論の全趣旨)原告は,平成9年12月26日,広島西税務署長に対し,平成8年分の所得税の修正申告で必要経費から減額した部分には,Aから支払を受けた役員報酬に相当する金額を含んでいるが,当該役員報酬は実質的に事業所得として課税されており,給与所得として申告している役員報酬は重複課税となっているので減額すべきであるとして,原告の給与所得を零円とする更正の請求を行った。これに対し,広島西税務署長は,平成10年4月15日,上記更正の請求については,その更正をすべき理由がない旨の通知をした。 - 7 -原告は,平成10年6月3日,国税不服審判所長に対し,かかる通知処分を不服として審査請求をしたが,国税不服審判所長は,平成13年12月13日,これを棄却する旨の裁決をした。 イ前件取消等請求訴訟の判決確定後の経緯(甲21,弁論の全趣旨)原告は,平成17年7月29日,広島西税務署長に対し,差戻控訴審の判決(前記(2)ウ(イ)d)を受け,国税通則法71条に基づくものとして平成8年分の所得税の増額更正処分を申し立てるとともに,本件修正申告等を撤回する旨の申立てを行った。 広島西税務署長は,これに対し,原告の平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税の減額更正処分をしなかった。 第3争点及び争点に対する当事者の主張 損害賠償請求について(1) 本件更正等の処分の違法に係る損害賠償請求の当否ア原告の主張およそ税務署長が課税処分を行う場合には,納税者の権利を侵害しないよう職務上当然に尽くすべき義務があり,同業者比準法による推計課税を行う場合は,その基礎となる比 る損害賠償請求の当否ア原告の主張およそ税務署長が課税処分を行う場合には,納税者の権利を侵害しないよう職務上当然に尽くすべき義務があり,同業者比準法による推計課税を行う場合は,その基礎となる比準会社を適切に選定すべき義務がある。 しかし,広島西税務署長は,前記第2の2(2)イのとおり,原告と業種,業態及び規模の異なる人材派遣会社を比準会社とし,その人件費倍率を用いて本件更正等の処分を行い,上記義務に違反したものであるから,被告は,国家賠償法1条1項に基づき,原告に生じた損害を賠償すべき義務がある。 イ被告の主張(ア) 本件更正等の処分に国家賠償法1条1項の「違法」性がないこと裁判所が,ある課税処分を事後的に違法であると判断したとしても,税務署長において,一見明白な法解釈の誤りや事実の誤認を犯し,その- 8 -職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなしに当該課税処分をしたのであれば格別,その職務上要求される通常の法律上の知識・経験則に基づき正当であると判断して当該課税処分をしたのであれば,国家賠償法1条1項の「違法」があるとはいえない。 本件更正等の処分については,前件取消等請求訴訟の第一審において適法であると判示されているものであるから,広島西税務署長が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく,本件更正等の処分を行ったとはいえず,国家賠償法1条1項の「違法」はない。 (イ) 本件更正等の処分の違法に係る損害賠償の請求には,前件取消等請求訴訟に係る損害賠償請求の確定棄却判決の既判力が及ぶこと前件取消等請求訴訟の控訴審は,本件更正等の処分の違法に係る慰謝料及び弁護士費用の損害賠償請求を棄却しており,この判決は既に確定しているところ,この訴訟物は,本訴請求のうち,本件更正等の処分の違法に係る損害賠償請求の訴訟物と同一である。 の処分の違法に係る慰謝料及び弁護士費用の損害賠償請求を棄却しており,この判決は既に確定しているところ,この訴訟物は,本訴請求のうち,本件更正等の処分の違法に係る損害賠償請求の訴訟物と同一である。 したがって,本件更正等の処分の違法に係る損害賠償の請求については,前件取消等請求訴訟に係る損害賠償請求の確定棄却判決の既判力が及ぶものである。 (2) 被告が前件取消等請求訴訟において同種の事案についての裁決を提出せず訴訟を継続したことが違法か。 ア原告の主張国税不服審判所長は,平成13年3月13日,医療保険業を営んでいた請求人が同族会社に支払った外注費の額が著しく高額であることを理由に所得税法157条を適用し更正処分をした事案につき,用いられた同業者比準には合理性が認められないとして,当該更正処分を全部取り消す旨の裁決をしたところ,この裁決は,前件取消等請求訴訟と同種の事案についてのものであった。 - 9 -税務署長ないし被告は,そもそも違法な課税処分により損害を生じさせないようにすべき義務がある上,税務調査には犯罪捜査と同様の強制力が認められており,それを前提として刑罰権と同様に強制力のある課税権を適正かつ公平に行使することが求められているものであるから,課税処分をめぐる訴訟においては,公益の代表者である検察官が刑事訴訟で訴訟追行する場合と同様,その有利不利を問わず真実発見に役立つ可能性のある証拠を提出すべき義務がある。そして,広島西税務署長ないし被告は,上記裁決の時点において,本件更正等の処分が違法で取り消されるべきものであることを確定的に認識していたものであるから,前件取消等請求訴訟において,裁判所の判断を誤らせないよう,上記裁決を提出すべき信義則上の義務を負っていた。 しかし,広島西税務署長ないし被告は,上記裁決の後,前件取 的に認識していたものであるから,前件取消等請求訴訟において,裁判所の判断を誤らせないよう,上記裁決を提出すべき信義則上の義務を負っていた。 しかし,広島西税務署長ないし被告は,上記裁決の後,前件取消等請求訴訟の第一審の弁論の再開を申し立てて上記裁決を提出するなどせず,原告をして控訴を余儀なくさせた上,控訴審においても,上記裁決に言及せず,控訴棄却を求めていた。このような訴訟追行は,取り消されるべき課税処分を放置し多額の金額を奪い取ろうとする国家的詐欺ともいうべき違法なものであるから,被告は,国家賠償法1条1項に基づき,原告に生じた損害を賠償すべき義務がある。 イ被告の主張そもそも訴訟で一方当事者に特定の証拠の提出が義務付けられる根拠はない。 また,裁決は当該裁決に係る当該事案に対する判断であるところ,ある裁決が出されたとしても,その効力は,同一の事情の下でその裁決で排斥された原処分の理由と同じ理由で同一人に対し,関係行政庁が同一内容の処分をすることが許されないというものにとどまるのであり,当該裁決が証拠として提出された受訴裁判所が,係属している事案と当該裁決に係る- 10 -事案とが同種であるからといって,必ず当該裁決と同じ結論を採るということにはならない。 そうすると,広島西税務署長ないし被告において,原告の主張している裁決の存在を認識したとしても,これを前件取消等請求訴訟に提出すべき法的な義務はないし,これを提出しなかったことと原告の主張に係る損害との間の因果関係もない。 (3) 損害の発生及びその数額ア原告の主張原告は,違法な本件更正等の処分と違法な前件取消等請求訴訟の継続により,次のとおり,合計2560万0123円の損害を被った。 (ア) 本件更正等の処分により支出を余儀なくされた銀行等からの借入れの利息379万 な本件更正等の処分と違法な前件取消等請求訴訟の継続により,次のとおり,合計2560万0123円の損害を被った。 (ア) 本件更正等の処分により支出を余儀なくされた銀行等からの借入れの利息379万3440円原告は,違法な本件更正等の処分により,別紙2記載のとおり,4047万6980円の負担を余儀なくされ,銀行等からの借入れによってこれらを賄わざるを得なかった。この借入れの利息である379万3440円は,本件更正等の処分と相当因果関係にある損害である。 (イ) 前件取消等請求訴訟の費用1380万6683円原告は,違法な本件更正等の処分がされたため,その取消しを求める前件取消等請求訴訟の提起を余儀なくされたが,これに要した印紙代,弁護士費用等の合計1380万6683円は,本件更正等の処分と相当因果関係にある損害である。 (ウ) 慰謝料500万円原告は,違法な本件更正等の処分により,多額の借入れの返済に追われるとともに,前件取消等請求訴訟のために多くの時間と労力を費やすこととなったが,その間に原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料は,500万円を下るものではない。 - 11 -(エ) 弁護士費用金300万円原告は,本件訴訟の提起及び追行を原告代理人に委任し,その弁護士費用として300万円を支払うことを約したところ,これも違法な本件更正等の処分と相当因果関係にある損害である。 イ被告の主張否認ないし争う。 広島西税務署長が平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税の減額更正処分をしないことが違法であることを確認する訴え(以下「本件違法確認の訴え」という。)について(1) 原告の主張広島西税務署長は,違法な本件更正等の処分により原告に損害が生ずることを防止すべき条理上の義務があるにもかかわらず,原告がした 訴え(以下「本件違法確認の訴え」という。)について(1) 原告の主張広島西税務署長は,違法な本件更正等の処分により原告に損害が生ずることを防止すべき条理上の義務があるにもかかわらず,原告がした平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税の各修正申告の撤回の申立て(前記第2の2(3)イ)に対し,原告の平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税の減額更正処分をしなかったもので,このような不作為は違法である。 (2) 被告の主張ア本件違法確認の訴えは不適法であること(ア) 本件違法確認の訴えは不作為の違法確認の訴え(行政事件訴訟法3条5項)として不適法であること不作為の違法確認の訴えは,法令に基づく申請権を有していることを原告適格として要求している(行政事件訴訟法3条5項)ところ,原告は,平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税について,更正の請求をすることができる期間を経過し,広島西税務署長に対して減額更正を求める権限を失っているから,かかる減額更正をしないことが違法であることの確認を求める本件違法確認の訴えは,- 12 -行政事件訴訟法3条5項の不作為の違法確認の訴えとしては不適法である。 (イ) 本件違法確認の訴えは,無名抗告訴訟である一定の処分に係る権限を行使しないことの違法確認の訴えとしても不適法であること行政事件訴訟法下において,一定の処分に係る権限を行使しないことの違法確認の訴えが無名抗告訴訟として認められ得るとしても,かかる訴えは,①行政庁の作為又は不作為の義務が法律上一義的に明りょうで,もはや行政庁の第一次判断権を留保する必要性の認められない場合であり(一義的明白性),②行政庁の作為又は不作為によって国民に重大な損害ないし危険が切迫してお 作為の義務が法律上一義的に明りょうで,もはや行政庁の第一次判断権を留保する必要性の認められない場合であり(一義的明白性),②行政庁の作為又は不作為によって国民に重大な損害ないし危険が切迫しており(緊急性),かつ,③他に救済を求める適切な方法がないといった事情があるとき(補充性)の3要件を訴訟要件として満たす必要があるし,一定の処分をしないことが違法であるといい得るために,当該処分を行う権限が行政庁にあることが訴訟要件として必要というべきである。 広島西税務署長には,後記3(1)イ(イ)のとおり,原告の平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税につき,除斥期間の経過により更正処分をする権限がない上,これらの所得税及び消費税について,広島西税務署長の作為義務が法律上一義的に明りょうであるともいえない。また,原告の損害は,後記3(1)イ(ウ)aのとおり,消極的な財産的損害にすぎない上,更正の請求をしなかったことにより自ら生じさせたものにほかならず,上記緊急性はないし,原告は,そもそも更正の請求をすることができたのであるから,上記補充性もない。 そうすると,本件違法確認の訴えは,無名抗告訴訟としてもその訴訟要件を欠き,不適法である。 イ広島西税務署長が原告の主張に係る減額更正処分をしないことが違法であるとする点については,争う。 - 13 - 広島西税務署長に上記平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税の減額更正処分を義務付けることを求める訴え(以下「本件義務付けの訴え」という。)について(1) 本件義務付けの訴えは適法か。 ア原告の主張(ア) 原告は,本件義務付けの訴えに係る租税につき,国税通則法23条の更正の請求をすることができなかったこと更正の請求をすることができる場合として ) 本件義務付けの訴えは適法か。 ア原告の主張(ア) 原告は,本件義務付けの訴えに係る租税につき,国税通則法23条の更正の請求をすることができなかったこと更正の請求をすることができる場合としては,通常の場合(国税通則法23条1項)及び後発的事由に基づく場合(同条2項)が定められている。 このうち,国税通則法23条2項1号は,その申告等に係る税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決等により,その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したときに更正の請求をすることができる旨定めているが,かかる更正の請求の対象は,判決等により変動が生じた当該年度の租税に係る税額等に限られているものである。 そして,原告が更正の請求をすることができたのは,前件取消等請求訴訟の判決により税額等に変動が生じた平成5年分から平成7年分までの各所得税(前記第2の2(2))であり,平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税について,原告は更正の請求をすることができなかったのであるから,本件義務付けの訴えが,更正の請求をすることができたことを前提として,不適法となることはない。 (イ) 広島西税務署長には,本件義務付けの訴えに係る減額更正処分をする権限があること国税通則法71条1項1号は,課税処分に係る争訟の裁決等による原処分の異動等に伴い税額等に異動を生ずべき国税で当該裁決等を受けた- 14 -ものに係るものについては,当該裁決等のあった日から6か月間,更正決定等をすることができる旨定めているところ,原処分の異動等に伴い税額等に異動を生ずる場合とは,法令上その年分の課税標準等又は税額等が他の年分の課税標準等の計算の基礎とされており,それと異なる計算が許されないような関係がある場合をいう。 原告は,本件更正等の い税額等に異動を生ずる場合とは,法令上その年分の課税標準等又は税額等が他の年分の課税標準等の計算の基礎とされており,それと異なる計算が許されないような関係がある場合をいう。 原告は,本件更正等の処分により,暫定的に広島西税務署長の考えに沿って平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税の申告をせざるを得なかったところ,前件取消等請求訴訟の判決によって本件更正等の処分が取り消されたことに伴い,平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税の税額等に異動が生ずることは明白である。 このように,広島西税務署長には本件義務付けの訴えに係る減額更正処分をする権限があるものである。 (ウ) 本件義務付けの訴えが,非申請型義務付け訴訟の一般的な訴訟要件(行政事件訴訟法37条の2第1項)を満たすことa本件義務付けの訴えに係る減額更正処分がなされないことにより,原告に重大な損害を生ずるおそれがあること(行政事件訴訟法37条の2第1項)原告は,前記1(3)ア(ア)のとおり,本件更正等の処分により,4047万6980円の負担を余儀なくされ,これを賄うために利息だけで379万3440円となる借入れを銀行等からせざるを得なかったところ,現在も係る借入れの利払い及び返済の資金繰りに東奔西走しているものであり,過剰に納付した平成8年分の所得税(これだけでも513万2500円と,極めて多額である。)及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税を一刻も早く返還してもらわなければ原告の信用のみならず営業や生活の基盤すら脅かされる状態にある。 - 15 -このように,原告の損害は極めて「重大な損害」(行政事件訴訟法37条の2第1項)であり,単に消極的な財産的損害などではない。 被告は,原告の損害が大したものではないという趣旨 態にある。 - 15 -このように,原告の損害は極めて「重大な損害」(行政事件訴訟法37条の2第1項)であり,単に消極的な財産的損害などではない。 被告は,原告の損害が大したものではないという趣旨の主張をするが,誤った課税処分により,借金までさせて多額の金員を納付させておきながら,このような主張をすることは,著しく信義誠実の原則に反し,許されない。 b前記aの重大な損害を避けるため他に適切な方法がないこと(行政事件訴訟法37条の2第1項)原告は,本件更正等の処分により,暫定的に広島西税務署長の考えに沿って平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税の申告をせざるを得なかったところ,原告は,前件取消等請求訴訟の結果が出るまでの暫定措置という留保付きでこの申告を行ったものであり,前件取消等請求訴訟により本件更正等の処分が取り消された場合は,平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税については減額更正処分がなされるべきであった。 そして,原告は,本件更正等の処分を一部取り消す旨の前件取消等請求訴訟の判決が確定した平成17年の時点において,平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税につき,税額等の更正を請求することができる法的権利がなかったため,広島西税務署長に対し,唯一の方法である国税通則法71条に基づく職権発動を促したが,この職権は発動されず,同条の除斥期間が経過した。 そうすると,本件義務付けの訴え以外には本件修正申告等の誤りを是正し,前記aの重大な「損害を避けるため他に適切な方法がない」(行政事件訴訟法37条の2第1項)ものである。 イ被告の主張(ア) 本件義務付けの訴えは,国税通則法23条が更正の請求の手続を法定- 16 -している趣旨に照らし,不適法であるこ 方法がない」(行政事件訴訟法37条の2第1項)ものである。 イ被告の主張(ア) 本件義務付けの訴えは,国税通則法23条が更正の請求の手続を法定- 16 -している趣旨に照らし,不適法であること国税通則法23条1項1号が,納税申告書を提出した者による更正の請求をすることができる期間を法定申告期限から1年以内に限るとしているのは,納税義務者の権利利益の救済を図りつつも,その申告に係る税額等をめぐる租税法律関係を早期に確定させる要請から,かかる制限期間が経過した後は納税義務者が課税処分を争うことを否定する趣旨である。 いわゆる非申請型義務付け訴訟(行政事件訴訟法3条6号1項)は,一定の処分を求める法令上の申請権を有しない者に義務付け訴訟を認め申請権を認めたのと同様の救済手段を与えるものであり,法令上の申請権を有する者がこれを行使することができなくなった場合に救済手段を与えるものではない。 そして,原告の平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税については,更正の請求をすることができる期間を既に経過しているところ,これらの所得税及び各消費税に係る減額更正処分の義務付けを求めることを内容とする本件義務付けの訴えは,国税通則法23条1項1号が更正の請求をすることができる期間を法定した上記趣旨からも,行政事件訴訟法3条6項1号の趣旨からも,予定されるところではなく,不適法である。 (イ) 本件義務付けの訴えは,その義務付けを求める広島西税務署長にその訴えに係る減額更正処分をする権限がないため,不適法であること所得税の法定申告期限は翌年の3月15日(所得税法120条1項),消費税の法定申告期限は翌年の3月31日(消費税法45条1項・平成7年課税期間までは平成8年法律第17号による改正前の租税特別措置法86条の5第1項 期限は翌年の3月15日(所得税法120条1項),消費税の法定申告期限は翌年の3月31日(消費税法45条1項・平成7年課税期間までは平成8年法律第17号による改正前の租税特別措置法86条の5第1項,平成8年課税期間からは租税特別措置法86条の6第1項による。)であるところ,本件義務付けの訴えに係る平成8年- 17 -分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税の減額更正処分については,いずれも法定申告期限から5年を経過しており,国税通則法70条1項1号及び2項1号の除斥期間を経過している。 また,本件義務付けの訴えに係る減額更正処分について,国税通則法71条1項1号又は2号所定の要件を満たす事実の主張立証もない。 そして,行政庁に当該処分をする権限がなければ当該処分を「すべきである」(行政事件訴訟法3条6項1号)ということができない以上,非申請型義務付け訴訟は当該処分を行う権限が当該行政庁にあることを当然の前提とするものであるところ,上記のとおり,除斥期間の経過により本件義務付けの訴えに係る減額更正処分をする権限がない広島西税務署長にこれをせよと求める本件義務付けの訴えは,不適法である。 (ウ) 本件義務付けの訴えが,非申請型義務付け訴訟の一般的な訴訟要件(行政事件訴訟法37条の2第1項)を満たさないことa「一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずる」(行政事件訴訟法37条の2第1項)といえないこと原告が本件義務付けの訴えに係る減額更正処分がされないことにより生ずると主張している損害は,原告が平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税として既に納付した金員が原告に還付されないという意味でのいわば消極的な意味での財産的損害にすぎない上,この損害は,原告が,法定の期間内に更正の請求をし得る地位 年ないし平成8年の各課税期間の消費税として既に納付した金員が原告に還付されないという意味でのいわば消極的な意味での財産的損害にすぎない上,この損害は,原告が,法定の期間内に更正の請求をし得る地位にあったにもかかわらず,更正の請求をすることなく,法定の期間を経過させたことにより,自ら生じさせたものである。 かかる損害は,重大なものとまではいえず,本件義務付けの訴えに係る減額更正処分がされないことにより生ずるものともいえない以上,「一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずる」(行政事件訴訟法37条の2第1項)といえないから,本件義務付けの訴えは,- 18 -不適法である。 b「損害を避けるため他に適当な方法がない」(行政事件訴訟法37条の2第1項)といえないこと国税通則法23条は,前記(ア)のとおり,更正の請求の制度を設けつつ,更正の請求をすることができる期間を限定して租税法律関係の安定を図っている。この趣旨にかんがみれば,更正の請求をすることができる期間中はもとより,その期間を経過し,もはや更正の請求を行うことができなくなったときでも,「損害を避けるため他に適当な方法がない」(行政事件訴訟法37条の2第1項)といえないものと解すべきである。 本件義務付けの訴えに係る所得税及び各消費税につき,国税通則法23条1項1号の更正の請求をすることができる期間を既に経過していることは,前記(ア)のとおりであるから,「損害を避けるため他に適当な方法がない」(行政事件訴訟法37条の2第1項)といえず,したがって,これらの減額更正処分の義務付けを求めることを内容とする本件義務付けの訴えは,不適法である。 (2) 本件義務付けの訴えに係る減額更正処分について,広島西税務署長がその処分をすべきことがその処分の根拠となる法令の規定から明らかである めることを内容とする本件義務付けの訴えは,不適法である。 (2) 本件義務付けの訴えに係る減額更正処分について,広島西税務署長がその処分をすべきことがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は広島西税務署長がその処分をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるか。 ア原告の主張本件義務付けの訴えは,義務付け訴訟の本案要件(行政事件訴訟法37条の2第5項)も充たす。 イ被告の主張否認ないし争う。 第4当裁判所の判断- 19 - 損害賠償請求について(1) 本件更正等の処分の違法に係る損害賠償請求の当否(争点1(1))前記第2の2(2)ウ(イ)のとおり,原告は,前件取消等請求訴訟において,違法な本件更正等の処分によって精神的苦痛等の損害を被ったとして慰謝料及び弁護士費用の損害賠償も請求していたところ,この損害賠償請求の訴訟物と,本件損害賠償請求のうち本件更正等の処分の違法に係る部分の訴訟物とは同一である。 そして,前件取消等請求訴訟の控訴審は,上述の損害賠償請求を棄却する旨の判決をし(前記第2の2(2)ウ(イ)b),上告審が本件更正等の処分の取消請求のうち一部を破棄して広島高等裁判所に差し戻し,その余の上告を棄却する旨の判決を言い渡した(前記第2の2(2)ウ(イ)c)ことにより,上記請求棄却部分は,確定している。 そうすると,本件損害賠償請求のうち本件更正等の処分の違法に係る部分については,本件更正等の処分の違法を請求原因とする損害賠償請求権の不存在という,前件取消等請求訴訟の上記請求棄却部分の既判力が及ぶから,その余の点を判断するまでもなく,理由がない。 (2) 被告が前件取消等請求訴訟で同種事案の裁決を提出せずに訴訟を継続したことの違法性(争点1(2))について民事訴訟を提起 部分の既判力が及ぶから,その余の点を判断するまでもなく,理由がない。 (2) 被告が前件取消等請求訴訟で同種事案の裁決を提出せずに訴訟を継続したことの違法性(争点1(2))について民事訴訟を提起された者が敗訴の確定判決を受けた場合において,応訴が相手方に対する違法な行為といえるためには,少なくとも当該訴訟において応訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものであるうえ,応訴者が,そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて応訴したなど,応訴が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である(最高裁昭和60年㨯第122号同63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁参照)。 - 20 -これを本件についてみるに,証拠(甲13)によれば,原告主張のとおり,国税不服審判所長は,平成13年3月13日,医療保険業を営んでいた請求人が同族会社に支払った外注費の額が著しく高額であることを理由に所得税法157条を適用し更正処分をした事案につき,用いられた同業者比準には合理性が認められないとして,当該更正処分を全部取り消す旨の裁決をしている。この裁決の事案と前件取消等請求訴訟の事案とが同種であるとみるにしても,基礎となる事実関係が異なる以上,広島西税務署長ないし被告が,この裁決の存在をもって,本件更正等の処分に事実的ないし法律的な根拠に欠ける部分があることを容易に知り得たとは認められない。 そうすると,広島西税務署長ないし被告が上記裁決を証拠として提出せず応訴を続けたことについては,裁判制度の趣旨目的に照らし著しく相当性を欠くとは到底認められず,違法な行為といえない。 原告は,税務署長ないし被告が,税務調査には犯罪捜査と同様の強制力が認められ せず応訴を続けたことについては,裁判制度の趣旨目的に照らし著しく相当性を欠くとは到底認められず,違法な行為といえない。 原告は,税務署長ないし被告が,税務調査には犯罪捜査と同様の強制力が認められており,刑罰権と同様に強制力のある課税権を適正かつ公平に行使することが求められている以上,課税処分をめぐる行政訴訟では,検察官が刑事訴訟で訴訟追行する場合と同様,その有利不利を問わず真実の発見に役立つ可能性のある証拠を提出すべき義務があると主張しているが,そもそも検察官の刑事訴訟における訴訟追行が原則として刑罰権を発動させることに向けられた積極的なものであるのに対し,課税処分をめぐる行政訴訟における訴訟追行は既になされた課税処分を維持することに向けられた消極的なものであるし,行政訴訟を含む民事訴訟では,当事者が課税庁や国であったとしても,積極的真実義務まで課されるものではないから,原告の上記主張は到底採用できない。 本件義務付けの訴えの適法性(争点3(1))について国税通則法23条1項1号は,納税申告書を提出した者は,当該申告書に記載した税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当- 21 -該計算に誤りがあったことにより,当該申告書の提出により納付すべき税額が過大である場合には,当該申告書に係る国税の法定申告期限から1年以内に限り,税務署長に対し,その申告に係る税額等につき更正をすべき旨を請求することができることを定めている。この規定は,納税申告書を提出した者の権利利益の救済を図りつつ,更正の請求をすることができる期間を限定し,その申告に係る税額等をめぐった租税法律関係の早期安定を図る趣旨のものであるところ,このような趣旨にかんがみれば,この期間を経過した後は,同条2項各号所定の事由に当たらない限り,納税申告書を 定し,その申告に係る税額等をめぐった租税法律関係の早期安定を図る趣旨のものであるところ,このような趣旨にかんがみれば,この期間を経過した後は,同条2項各号所定の事由に当たらない限り,納税申告書を提出した者の側から課税処分を争うことを許さないものと解すべきである。また,更正の請求並びにそれに続く審査請求及び取消訴訟には相当の時間,費用,労力等を要するが,課税処分等に沿った納税をする一方でこれらの手続を継続することもできる上,前件取消等請求訴訟が提起されていた本件においては,なおさら,これらの手続を採ることが十分に期待できたものである。 そして,原告の平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税(法定申告期限はそれぞれ平成7年,平成8年及び平成9年の各3月31日・消費税法45条1項)については,更正の請求をすることができる期間を既に経過しているところ,本件義務付けの訴えのうち各消費税に係る減額更正処分の義務付けを求めることを内容とする部分は,国税通則法23条1項1号の上記趣旨にかんがみ許されるものではない。ましてや,平成8年分の所得税については,更正の請求及び審査請求までなされており,それらの手続においてないしその後に取消訴訟を提起して,前件取消等請求訴訟と同様の主張をする機会もあったところ,結局はそれをしなかったというのであるから,これを今さら争い得ないことは明らかである。したがって,本件義務付けの訴えは,その余の点を判断するまでもなく,不適法である。 原告は,本件義務付けの訴えに係る所得税及び各消費税につき,国税通則法23条2項1号の更正の請求の対象ではなかったと主張しているが,これらに- 22 -ついて同条1項1号の更正の請求ができたことに変わりはないから,この点は上記判断に影響を及ぼすものではない。 本件違法確認の訴えの適法 求の対象ではなかったと主張しているが,これらに- 22 -ついて同条1項1号の更正の請求ができたことに変わりはないから,この点は上記判断に影響を及ぼすものではない。 本件違法確認の訴えの適法性(争点2)について(1) 法定抗告訴訟たる不作為の違法確認の訴え(行政事件訴訟法3条5項)としての適法性について法定抗告訴訟としての不作為の違法確認の訴えは,「法令に基づく申請に対し」(行政事件訴訟法3条5項),行政庁が処分等をしないことの違法の確認を求めるものであり,法令に基づく申請権のあることにより原告適格が基礎付けられる。 原告は,前記2のとおり,平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税について,更正の請求をすることができる期間を経過するなどし,広島西税務署長に対して減額更正を求める権限を失っており,上記原告適格を有していないから,かかる減額更正をしないことの違法の確認を求める本件違法確認の訴えは,法定抗告訴訟たる不作為の違法確認の訴えとしては,不適法である。 (2) 無名抗告訴訟たる不作為の違法確認の訴えとしての適法性について抗告訴訟については,行政事件訴訟法3条2項以下に類型が個別的に法定されているが,同条1項が行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟を抗告訴訟として包括的に定義していることからすると,本件違法確認の訴えがいわゆる無名抗告訴訟として許容される可能性が,完全に否定されるものとは解されない。 もっとも,行政事件訴訟法は,公権力の行使につき,原則として行政庁に一次的判断権を留保しつつ,公権力の行使によって生じている違法な状態を排除する手段として抗告訴訟を位置付けているのであるから,本件違法確認の訴えが無名抗告訴訟として許容されるためには,行政庁の作為義務が法令上一義的に明確で,行政庁の一次的判断 生じている違法な状態を排除する手段として抗告訴訟を位置付けているのであるから,本件違法確認の訴えが無名抗告訴訟として許容されるためには,行政庁の作為義務が法令上一義的に明確で,行政庁の一次的判断権を留保する必要性の認められない- 23 -場合であって,行政庁の不作為によって国民に重大な損害ないし危険が切迫しており,かつ,他の適切な救済方法がないといった事情があることを訴訟要件として満たす必要があると解するのが相当である。 これを本件についてみるに,平成8年分の所得税及び平成6年ないし平成8年の各課税期間の消費税の減額更正処分がなされないことによる原告の損害の重大さはさておき,かかる損害は,上記所得税及び各消費税について原告がそもそも更正の請求をしなかったことにより自ら生じさせたもので,広島西税務署長の不作為によるものではない。 そして,前記2のとおり,国税通則法23条1項1号につき,同項所定の期間を経過した後は,納税申告書を提出した者が課税処分を争うことを許さないものと解すべきことをも考え合わせると,本件違法確認の訴えは,無名抗告訴訟としての訴訟要件も欠いており,不適法である。 訴えの変更の許否についてなお,原告は,本訴提起後,平成8年分の所得税の修正申告は錯誤に基づく無効なものであるとして,この修正申告に基づき納付した税額と平成8年分の所得税の期限内申告の納付すべき税額との差額を不当利得として返還することを求める旨の訴えの追加的変更を申し立てている(以下「本件訴えの変更」という。)。これに対し,被告は,本件訴えの変更を認めれば著しく訴訟手続を遅延させることとなるとして,これを許さないことを求めている。 本件訴えの第1回口頭弁論期日は,平成19年2月21日に開かれ,本訴請求の判断を基礎付ける主張ないし証拠関係は,同年6月29日の 訟手続を遅延させることとなるとして,これを許さないことを求めている。 本件訴えの第1回口頭弁論期日は,平成19年2月21日に開かれ,本訴請求の判断を基礎付ける主張ないし証拠関係は,同年6月29日の第2回口頭弁論期日までにほとんど全てが現れていたところ,原告が,この第2回口頭弁論期日において,国税通則法23条1項1号の適用を前提とした本件違法確認の訴え及び本件義務づけの訴えについての主張並びに国家賠償請求に係る主張を同年8月20日までに補充する意向を示したため,当裁判所は,原告の意向を容れ,同月31日に弁論を終結する予定であることを告げて,弁論を続行した- 24 -ものである。そうであるのに,原告は,同月28日になって本件訴えの変更を求める訴えの変更申立書を提出し,同月31日の第3回口頭弁論期日においては,国家賠償請求に係る主張は補充したものの,国税通則法23条1項1号の適用を前提とした主張の補充を怠りながら,本件訴えの変更を申し立てているものである。原告は,唯一の手段であると考えて本件訴えを提起したものの,本件違法確認の訴え及び本件義務づけの訴えが不適法であるとの主張が被告からなされたため,やむを得ず本件訴えの変更を予備的に申し立てたというが,そうであるならば,被告が上記主張をした同年5月8日の第1回弁論準備手続期日の次の期日である同年6月29日の第2回口頭弁論期日までに本件訴えの変更をするはずである。このような経緯からして,本件訴えの変更を許すこととなれば,追加に係る訴えの適否及び請求の当否を判断するため,被告をして,新たな事実上ないし法律上の主張立証を尽くさせなければならなくなるものであり,本訴請求の当否を判断するだけであれば必要のない期日を重ねなければならない事態が生ずることは明白である。 そうすると,本件訴えの変更について 法律上の主張立証を尽くさせなければならなくなるものであり,本訴請求の当否を判断するだけであれば必要のない期日を重ねなければならない事態が生ずることは明白である。 そうすると,本件訴えの変更については,これにより著しく訴訟手続を遅延させることとなるものというべく,許されない。 結論 よって,本件訴えのうち本件違法確認の訴え及び本件義務付けの訴えに係る部分はいずれも不適法であるからこれらを却下し,その余の部分に係る請求は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 広島地方裁判所民事第1部裁判長裁判官野々上友之- 25 -裁判官大森直哉裁判官安木進(別紙1,2は省略)

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