令和4(ネ)973 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和5年2月9日 大阪高等裁判所 棄却 大阪地方裁判所 平成28(ワ)12395
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判決文本文7,824 文字)

主文 1 一審原告の本件控訴を棄却する。 2 一審被告大阪府の本件控訴を棄却する。 3 当審における訴訟費用は、一審原告に生じた費用の5分の2と一審被告大阪府に生じた費用の5分の2を一審被告大阪府の負担とし、一審原告に生じたその余 の費用と一審被告大阪府に生じたその余の費用と一審被告国に生じた費用を一審原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 一審原告 原判決を次のとおり変更する。 一審被告らは、一審原告に対し、連帯して2000万円及びこれに対する平成7年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 一審被告大阪府原判決中、一審被告大阪府敗訴部分を取り消す。 上記部分につき、一審原告の請求を棄却する。 第2 事案の概要 1 一審原告は、現住建造物等放火、殺人及び詐欺未遂の罪で有罪(無期懲役)判決の言渡しを受けてこれが確定し、逮捕から約20年余り身柄を拘束された後刑の執行停止により釈放され、再審において無罪判決(以下「本件再審判決」とい う。)を受けてこれが確定した。 本件は、一審原告が、一審被告大阪府に対し、大阪府警察所属の警察官(以下「警察官」という。)による捜査に違法があったと主張し、一審被告国に対し、検察官の捜査、公訴の提起並びに公判及び再審における訴訟行為に違法があったと主張して、国家賠償法1条1項、4条、民法719条1項前段に基づき、 損害金合計1億6061万6382円のうち1億4597万5006円及びこ れに対する違法行為の日である平成7年9月10日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 れに対する違法行為の日である平成7年9月10日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 原審は、一審原告の一審被告大阪府に対する請求を1224万4094円並びにうち562万2302円に対する本件再審判決の確定日である平成28年8 月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払及びうち316万4628円に対する一審原告が一部弁済を受けた日の翌日である平成29年5月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容したが、一審被告大阪府に対するその余の請求及び一審被告国に対する請求をいずれも棄却したところ、請求棄却部分を不服と する一審原告が一審被告らに対し2000万円及びこれに対する平成7年9月10日から支払済みまで同割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で控訴し、請求認容部分を不服とする一審被告大阪府が控訴した。 以下の略語は、原判決別紙「略語表」(原判決90~94頁)に記載のとおりである(ただし、原判決92頁17行目の「被告人」を「一審原告」に改め、93 頁10行目の「被告」を削る。)。 また、年の記載のないものは、特に断らない限り、平成7年である。 2 争いのない事実等、争点及び争点に関する当事者の主張は、次のとおり補正し、後記3のとおり当審における当事者の補充主張を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の1ないし3(別紙当事者の主張の要旨及 び別紙図面を含む。原判決2頁8行目~8頁17行目、95~116頁)に記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決2頁14行目の「本件再審開始決定を経て、」の次に「平成2 主張の要旨及 び別紙図面を含む。原判決2頁8行目~8頁17行目、95~116頁)に記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決2頁14行目の「本件再審開始決定を経て、」の次に「平成27年10月23日刑の執行停止決定を受けて同月26日釈放され、」を加える。 原判決8頁16行目、17行目、95頁2行目の各「当事者の主張の要旨」 をいずれも「当事者の主張」に改める。 原判決99頁18行目の「本件書面書」を「本件書面」に改める。 原判決99頁20行目の「原告と一方的に」を「一審原告を一方的に」に改める。 原判決100頁1行目の「否認しないし争う」を「否認ないし争う」に改める。 原判決101頁26行目の「各点について間接事実を」を「各間接事実を」に改める。 原判決110頁15行目、18行目、25行目、111頁1行目、3行目の各「各即時抗告」、110頁27行目の「本件即時抗告事件」をいずれも「一審原告の再審開始決定に対する即時抗告」に改める。 原判決113頁4行目末尾に、改行して次のとおり加える。 「 なお、刑事補償金及び費用補償金は、まず遅延損害金に充当される(民法491条1項)。そして、刑事補償金は身体拘束期間における逸失利益及び慰謝料の遅延損害金に、費用補償金は弁護士費用の遅延損害金にそれぞれ充当すべきである。」 3 当審における当事者の補充主張 一審原告の主張(検察官は本件確定審において公判を維持するために事実及び証拠を隠蔽したか(争点ア))検察官は、一審原告の取調状況報告書の内容について虚偽の説明をし、裁判所に証拠開示命令を発令させなかった。このこと自体、国家賠償法上違法であ る。 一審被告大阪府の主張(一審原告の損害及び は、一審原告の取調状況報告書の内容について虚偽の説明をし、裁判所に証拠開示命令を発令させなかった。このこと自体、国家賠償法上違法であ る。 一審被告大阪府の主張(一審原告の損害及びその数額(争点)ア A4ら及びA5らの違法な取調べと一審原告に生じた損害との間に因果関係は認められないことについて本件公訴の提起は検察官の判断によって、懲役刑の執行は本件確定審にお ける判決という裁判官の判断によってそれぞれされているものであり、警察 官がこれらの公権力の行使を左右し得るものではない。したがって、一審原告の懲役刑の執行をも含めた身柄拘束に係る損害とA4ら及びA5らの違法な取調べとの間に因果関係があるとするのは不当である。 イ原審証人A4の証言を一審原告の慰謝料の算定においてしん酌すべきではないことについて 原審証人A4は、一審原告本人からの質問に答えて「現在でも一審原告が犯人だと思う」と証言した。これは、信念をもって行った取調べにつき、偽証もできない状況の下、個人的な見解を述べたものであり、これを慰謝料の算定におけるしん酌事由とすること自体不当である。また、既に大阪府警察を退官し、証言時には一審被告大阪府の職務に当たる余地のない証人の証言 をもって一審被告大阪府が支払うべき慰謝料のしん酌事由とするのはなおさら不当である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、一審原告の一審被告大阪府に対する請求は、1224万4094円並びにうち562万2302円に対する(本件再審判決の確定日である)平成 28年8月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金及びうち316万4628円に対する(一審原告が一部弁済を受けた日の翌日である)平成29年5 審判決の確定日である)平成 28年8月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金及びうち316万4628円に対する(一審原告が一部弁済を受けた日の翌日である)平成29年5月10日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がなく、一審原告の一審被告国に対する請求は理由がないと判断する。その理由は、次のとおり補正し、後記2のとおり 当審における当事者の補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」の「第3 争点に対する判断」の1ないし8(別紙図面、別紙身柄拘束期間における逸失利益及び別紙裁判所認定額を含む。原判決8頁19行目~86頁7行目、116~118頁)に記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決10頁16行目の「乙69から83まで、」の次に「373、」を、1 1頁25行目の「市道側」の次に「(西側)」をそれぞれ加える。 原判決19頁16行目の「の信用性」を削り、22頁5行目の「犯行を」を「犯行について」に改める。 原判決27頁3行目の「A1とA2と」を「A1とA2との間に」に、4行目、31頁7行目の各「本件の証人」をいずれも「原審証人」にそれぞれ改め、28頁15行目の「A26弁護士」の前に「その際の取調べ状況に関し作成さ れた報告書には、」を加える。 原判決30頁13行目の「裁判官」と20行目の「サ」をいずれも削り、32頁11行目の「「「A2」を「「A2」に改める。 原判決34頁18行目の「(同日)」を、36頁9行目の「、上記電話聴取書に記録された説明とは異なる」をいずれも削る。 原判決40頁19行目の「答えれない」を「答えられない」に、41頁2行目から3行目に の「(同日)」を、36頁9行目の「、上記電話聴取書に記録された説明とは異なる」をいずれも削る。 原判決40頁19行目の「答えれない」を「答えられない」に、41頁2行目から3行目にかけての「自分は、黙秘しろ、否認しろということだが、」を「自分は、弁護士がA1に対し黙秘しろ、否認しろと言っているということだが」に、43頁19行目の「エ」を「ウ」に、23行目の「エ」を「ウ」に、44頁1行目の「されるまで」を「されて釈放されるまで」にそれぞ れ改める。 原判決46頁20行目の「合理的な」を、48頁14行目の「本件再審開始決定において、」を、49頁2行目の「1」をいずれも削り、51頁17行目から18行目にかけての「自供書の作成のれた」を「自供書が作成された」に、52頁24行目の「A1の自白する放火行為は、」を「A1の自白する給油ポン プで約7.3リットルのガソリンを撒いたという放火行為は、」にそれぞれ改める。 原判決53頁8行目の「170万円」を「一審原告らが準備しなければならない分譲マンション購入の諸費用に充てるための170万円」に改める。 原判決55頁25行目の「決定的な弱み」を「事実」に、26行目の「犯行 の動機」を「本件公訴事実に係る各犯行の動機」にそれぞれ改め、56頁4行 目の「この点は、」から5行目末尾までを削る。 原判決56頁10行目の「病魔に侵されている」を削り、14行目から15行目にかけての「残存したまま自白を続けた」を「残存した状況下で自白を維持した」に改め、同行目の「この点も、」から16行目末尾までを、57頁1行目の「点についても、」から2行目の「である」までをいずれも削る。 原判決57頁7行目の「と女性としての感情を」を削 た」に改め、同行目の「この点も、」から16行目末尾までを、57頁1行目の「点についても、」から2行目の「である」までをいずれも削る。 原判決57頁7行目の「と女性としての感情を」を削り、58頁4行目の「本格的な」を「一般刑事事件の」に、15行目の「熾烈であった」を「厳しかった」に、18行目の「明らかである」を「推認できる」にそれぞれ改める。 原判決60頁20行目の「身柄拘束」の次及び76頁2行目の「身体拘束」の次にいずれも「(逮捕勾留)」を加える。 原判決61頁3行目の「可能性があったこと」の次に「(乙373)」を加え、19行目の「後方視的に見れば、」を、62頁13行目の「(本件即時抗告事件に係る大阪高裁の棄却決定)」を、19行目の「一層強固に」をいずれも削り、63頁1行目の「基づき、」の次に「前記イの警察官の一審原告に対する違法な取調べによって一審原告に生じた」を加える。 原判決63頁4行目冒頭から9行目末尾までを削り、64頁8行目の「大阪地裁は、」の次に「9月23日、」を加え、10行目から11行目にかけての「A6検察官が、弁護人の上記抗議を無視した」を「A6検察官が弁護人の抗議に何らかの対応を採らなければならなかったか否かは措くとして、A6検察官が何らの対応も採らなかったためにこれが違法であると」に、66頁6行目の「大 阪地裁裁判官」から7行目の「説明をしているが、」を「勾留取消請求を担当した大阪地裁裁判官とその準抗告決定を担当した大阪地裁に対して原告の供述状況等につき全く同一の説明をしているわけではないが、」にそれぞれ改める。 原判決67頁2行目の「取調べが行われていた」を「取調べを受けていた」に改め、17行目の「A6検察官において」の前に「弁解録取の際には 一の説明をしているわけではないが、」にそれぞれ改める。 原判決67頁2行目の「取調べが行われていた」を「取調べを受けていた」に改め、17行目の「A6検察官において」の前に「弁解録取の際には、検察 官の面前であっても警察の取調べ状況に対する不満がある旨を一審原告が告 げてきたこと等に照らせば、」を加え、18行目の「可能性も」から21行目末尾までを「可能性もある。」に改める。 原判決67頁26行目の「有罪の心証を」から68頁7行目末尾までを「現に収集した客観的な証拠を踏まえれば、有罪と認められる嫌疑があるものと判断して、公訴の提起に至ったものと推認され、一審原告の自白の信用性が欠け ることを認識していたとまで認めるに足りないし、任意性についても同様である。これらの事情に照らせば、A6検察官が上記取調状況報告書を検討していれば、直ちに一審原告の自白の任意性及び信用性の欠如を容易に認識することができたということはできない。」に改める。 原判決69頁19行目の「としており一応の動機らしいものは存在したこ と、」を「としていたこと、」に、70頁6行目の「後方視的に見れば」から7行目の「できなかったこと」までを「より適切な捜査を行う余地があったこと」にそれぞれ改める。 原判決71頁8行目の「解すべきである」を「解すべきであり」に改め、9行目の「248頁)」の次に「、裁判官からそのような命令が発せられたとき は、検察官はこれに従わなければならない」を加え、13行目の「ことは、明らかである」及び14行目の「後方視的」から15行目の「認められるが、」までをいずれも削り、17行目の「取調状況報告書」を「取調経過一覧表等」に、72頁9行目から10行目にかけての「A5に偽証をさせたこと」を「A5 14行目の「後方視的」から15行目の「認められるが、」までをいずれも削り、17行目の「取調状況報告書」を「取調経過一覧表等」に、72頁9行目から10行目にかけての「A5に偽証をさせたこと」を「A5の偽証に関与したこと」にそれぞれ改める。 原判決75頁13行目冒頭から15行目末尾までを削る。 原判決79頁1行目の「原告は、」の次に「公訴提起前の逮捕勾留、公訴提起後の勾留をされ、本件確定判決により」を加え、79頁23行目の「さらに、」を「なお、」に、80頁3行目の「上記証言が、」から6行目末尾までを「上記証言は、一審原告からの質問に対する答えとして発言したものであるが、その 内容は上記のような経緯をも勘案すれば、相当とはいい難いものの、A4が証 言した当時一審被告大阪府を退官していることを考慮すれば、少なくとも一審被告大阪府に対する関係で慰謝料の額を定めるに当たってしん酌することは困難である」にそれぞれ改め、84頁12行目末尾に「なお、上記判断と異なる一審原告の損益相殺に関する主張は、採用することができない。」を加える。 2 当審における当事者の補充主張に対する判断 一審原告の主張(検察官は本件確定審において公判を維持するために事実及び証拠を隠蔽したか(争点ア))について一審原告は、検察官が一審原告の取調状況報告書の内容について虚偽の説明をし、裁判所に証拠開示命令を発令させなかったことをもって、国家賠償法上違法であると主張する。 しかしながら、検察官が虚偽の説明をしたことを認めるに足りる証拠はなく、また、一審原告の主張を前提としても、本件確定審の裁判所が、検察官に対し、弁護人に証拠を閲覧させるよう命じたと断定することもできないから、一審原告の上記主張は採用する とを認めるに足りる証拠はなく、また、一審原告の主張を前提としても、本件確定審の裁判所が、検察官に対し、弁護人に証拠を閲覧させるよう命じたと断定することもできないから、一審原告の上記主張は採用することができない。 一審被告大阪府の主張(一審原告の損害及びその数額(争点))について ア A4ら及びA5らの違法な取調べと一審原告に生じた損害との間に因果関係は認められないことについて一審被告大阪府は、A4ら及びA5らの違法な取調べと身柄拘束や公訴提起などによって一審原告に生じた損害との間に因果関係があるとするのは不当であると主張する。 しかしながら、本件刑事事件における被告人と犯人の同一性に係る直接証拠は、A1及び一審原告の各自白のみであり、これらが重要な証拠として、一審原告に本件刑事事件の嫌疑があるとの理由で逮捕・勾留された後、本件公訴が提起され、本件確定審において有罪判決が言い渡されたものであり、上記各自白がなければ、一審原告が身柄を拘束されて有罪判決を受けること はなかったと認められることは、原判決を引用して認定説示したとおりであ る(原判決第3の2ウ(原判決60頁3行目~62頁25行目)。 よって、A4ら及びA5らの違法な取調べと一審原告に生じた損害との間には因果関係があると認められる。 イ原審証人A4の証言を一審原告の慰謝料の算定においてしん酌すべきではないことについて 一審被告大阪府は、原審証人A4がした証言の内容を一審被告大阪府が支払うべき慰謝料のしん酌事由とするのは不当であると主張する。 確かに、原判決を補正の上引用して判示したとおり、原審証人A4の証言内容を一審被告大阪府が支払うべき慰謝料の額を定めるに当たってしん酌す 慰謝料のしん酌事由とするのは不当であると主張する。 確かに、原判決を補正の上引用して判示したとおり、原審証人A4の証言内容を一審被告大阪府が支払うべき慰謝料の額を定めるに当たってしん酌すべきではないものの、上記事情を除いてもその余の事情を勘案すれば、原 判決を引用して判示した執行停止後における慰謝料の額は350万円と認めるのが相当である。 第4 結論以上によれば、一審原告の請求は、第3の1記載の限度で理由があるから、その限度でこれを認容すべきところ、これと同旨の原判決は相当である。よって、 一審原告による本件控訴及び一審被告大阪府による本件控訴は、理由がないからこれらをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第12民事部 裁判長裁判官 牧賢二 裁判官和久田斉 裁判官西森みゆき

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