主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨(1) 被告は,原告に対し,別紙物件目録記載3の仮設建物部分を明け渡せ。 (2) 被告は,原告に対し,平成12年7月1日から別紙物件目録記載3の仮設建物部分の明渡済みまで1か月9万円の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟費用は被告の負担とする。 (4) 仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する答弁主文同旨第2 当事者の主張 1 請求原因(1) 原告は,平成10年11月30日当時,別紙物件目録記載3の仮設建物部分(以下「本件仮設建物部分」という。)を所有していた。 (2) 被告は,本件仮設建物部分を占有している。 (3) 本件仮設建物部分の平成12年7月1日以降の賃料相当額は1か月9万円である。 (4) よって,原告は,被告に対し,所有権に基づき本件仮設建物部分の明渡しを求めるとともに,不法行為に基づき平成12年7月1日から本件仮設建物部分の明渡済みまで1か月9万円の割合による損害金の支払を求める。 2 請求原因に対する認否請求原因(1)及び(2)の事実はいずれも認め,同(3)の事実は明らかに争わない。 3 抗弁‐所有権喪失(1) 売買原告は,株式会社Aに対し,平成10年12月,本件仮設建物部分を代金540万円で売った(以下,この売買契約を「本件売買契約①」という。)。 (2) 即時取得ア本件仮設建物部分は,土地に定着しておらず,動産に当たる。 イ株式会社Aは,被告に対し,平成12年5月31日,本件仮設建物部分を代金800万円で売った(以下,この売買契約を「本件売買契約②」という。)。 ウ株式会社Aは,被告に対し,同日,本件売買契約②に基づき,本件仮設建 に対し,平成12年5月31日,本件仮設建物部分を代金800万円で売った(以下,この売買契約を「本件売買契約②」という。)。 ウ株式会社Aは,被告に対し,同日,本件売買契約②に基づき,本件仮設建物部分について簡易の引渡しをした。 4 抗弁に対する認否(1) 抗弁(1)の事実は否認する。 (2) 抗弁(2)アの事実は否認する。同イ及びウの事実は知らない。 5 再抗弁‐所有権留保(抗弁(1)に対し)原告は,株式会社Aとの間で,原告が売買代金を受領するまでは本件仮設建物部分の所有権を原告に留保する旨の合意をした。 6 再抗弁に対する認否再抗弁事実は明らかに争わない。 7 再々抗弁‐相殺合意株式会社Aは,原告との間で,平成12年8月22日,株式会社Aが株式会社Bに対して有する売掛代金債権と,株式会社Aの原告に対する本件仮設建物部分の売買代金債務とを相殺することを合意した。 8 再々抗弁に対する認否再々抗弁事実は否認する。 第3 証拠本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおり 理由 1 請求原因事実について請求原因(1)及び(2)の事実については,いずれも当事者間に争いがなく,請求原因(3)の事実については,被告において争うことを明らかにしないから,これを自白したものとみなす。 2 抗弁(1)(売買)について(1) 甲第1,第2及び第4号証,証人C及び証人Dの証言並びに原告代表者本人尋問の結果によると,以下の事実が認められ,これに反する証拠は,採用しない。 ア株式会社Aの主たる業務は建築資材,機械等のリースであり,仮設建物のリースや再リースも行っていた〔D証人31ページ以下〕。 また,株式会社Aは,別紙物件目録記載1の土地(以下「本件土地」という。)の借地人であった〔原告代表者本人4項(1)〕。 イ り,仮設建物のリースや再リースも行っていた〔D証人31ページ以下〕。 また,株式会社Aは,別紙物件目録記載1の土地(以下「本件土地」という。)の借地人であった〔原告代表者本人4項(1)〕。 イ株式会社Aは,被告が事務所を明け渡さなければならなくなり代わりの事務所を探していたことから,本件土地上に仮設建物を設置して被告にリースすることを目論んだ。 しかし,株式会社Aは,資金力がなかったことから,仮設建物の販売業者であるE株式会社から,仮設建物の売買に応じてもらえなかった。 そのため,株式会社Aは,平成10年9月ころ,原告に対し,被告を紹介して,被告の事務所とするための仮設建物の取得費用を原告が出してほしい旨の依頼をし,原告はこれに応じた〔C証人3項,18項,19項,D証人13ページ以下,32ページ以下,原告代表者本人4項(1)〕。 ウそこで,株式会社Aは,本件土地上に本件仮設建物のための基礎を造り,その上に別紙物件目録記載2の仮設建物(以下「本件仮設建物」という。)が設置された〔D証人4ページ,17ページ以下,原告代表者本人17項,28項〕。 なお,本件仮設建物のうち本件仮設建物部分は,原告が平成10年11月30日にEから買ったものであるが〔甲第1,第2号証,D証人1ページ〕,本件仮設建物部分以外の部分は,株式会社Aが設置したものである〔甲第4号証,原告代表者本人17項〕。 エ原告と株式会社Aは,本件仮設建物部分についての契約書を作成しようとしたが,株式会社Aは,原告から本件仮設建物部分を買い受けた上で,これを自らが被告に対し賃貸する意思であり,その旨の契約書を作成しようとしたのに対し,原告は,自らが本件仮設建物部分を被告に対し賃貸する意思であり,その旨の契約書を作成しようとしたことから,合意には至らず,契約書は作成されなか 意思であり,その旨の契約書を作成しようとしたのに対し,原告は,自らが本件仮設建物部分を被告に対し賃貸する意思であり,その旨の契約書を作成しようとしたことから,合意には至らず,契約書は作成されなかった〔D証人10ページ以下,14ページ以下,23ページ,原告代表者本人12項,19項〕。 (2) (1)で認定した事実によると,株式会社Aは,本件仮設建物部分を原告から買い受けることを意図していたが,原告は,これに応じなかったものであり,本件売買契約①は合意の成立に至らなかったということができるから,抗弁(1)の事実を認めることはできない。 (3) なお,被告は,原告は平成11年1月から平成12年6月まで株式会社Aから1か月9万円ずつの支払を受けていたが〔当事者間に争いがない。〕,これは本件売買契約①の割賦代金として支払っていたものであり,当該支払の事実から本件売買契約①の成立が推認される旨の主張をする。 しかし,原告代表者本人尋問の結果によると,原告は,当該支払を本件仮設建物部分の賃貸借の賃料と認識して受け取っていたことが認められるから〔原告代表者本人13項,21項,29項,33項〕,当該支払の事実をもって,本件売買契約①の成立が推認されるということはできない。 (4) また,被告は,本件売買契約①が成立していないとすると,原告は本件土地を無権原で占有していたことになり,不自然であるから,本件売買契約①の成立が推認される旨の主張をする。 しかし,(1)イ及びウの経緯からすると,株式会社Aは原告が本件仮設建物部分の設置のために本件土地を使用することを許諾していたということができ,原告が本件土地を無権原で占有していたとはいうことができないから,被告の当該主張は,採用できない。 (5) したがって,抗弁(1)には,理由がない。 3 抗弁(2)につい 諾していたということができ,原告が本件土地を無権原で占有していたとはいうことができないから,被告の当該主張は,採用できない。 (5) したがって,抗弁(1)には,理由がない。 3 抗弁(2)について(1) 抗弁(2)ア(動産性)についてア民法86条1項にいう「土地ノ定著物」とは,土地に固定的に付着して容易に移動し得ない物であって,取引通念上継続的にその土地に付着せしめた状態で使用されると認められる物をいい(林良平=前田達明編「新版注釈民法(2)総則(2)」614ページ(3)),容易に移動せしめることができる仮小舎,電話ボックス等は「定著物」に当たらず(同615ページ(ア),また,工場内に据え付けられた機械は,大規模な基礎工事によって土地に固着せしめられた場合には「定著物」に当たるが(同617ページ(c)),単に使用の際の動揺を防ぐために土地にボルト等で固定されたただけでは「定著物」には当たらない(大審院昭和4年10月19日判決・法律新聞3081号15ページ)と解される。 イそして,甲第1及び第2号証並びに証人C及び証人Dの証言によると,以下の事実を認めることができ,これに反する証拠は,採用しない。 (ア) 本件仮設建物は,建設現場で使われる容易に移設可能な組立式のプレハブである〔甲第1,第2号証,D証人12ページ〕。 (イ) 本件土地は市街化調整区域であり,簡易の施設しか建てることができない法令上の制限があることから,本件仮設建物の基礎は,すぐ壊せるように,約3センチメートルの流しコンクリートの上にブロックを積んだ簡易なものであり,本件仮設建物は,差し筋を差すことにより本件土地に固定されている〔C証人31項,D証人12ページ以下,18ページ以下,33ページ以下〕。 ウイで認定した事実によると,本件仮設建物は,容易に移動できる仮小 設建物は,差し筋を差すことにより本件土地に固定されている〔C証人31項,D証人12ページ以下,18ページ以下,33ページ以下〕。 ウイで認定した事実によると,本件仮設建物は,容易に移動できる仮小舎に類する物であり,かつ,簡易な基礎の上に設置され,差し筋によって土地に固定されているのみで,大規模な基礎工事によって土地に固定されているものではないということができるから,民法86条1項にいう「土地ノ定著物」には当たらず,動産に当たるというべきである。 エしたがって,抗弁(2)アの事実を認めることができる。 (2) 乙第1号証によると,抗弁(2)イの事実が認められる。 (3) 抗弁(2)イの事実に加え,当事者間に争いのない被告が平成11年1月1日以前から本件仮設建物部分を占有していた事実を考え合わせると,抗弁(2)ウの事実を推認することができる。 (4) したがって,抗弁(2)には,理由がある。 4 結論(1) 以上によると,原告は,抗弁(2)のとおり,本件仮設建物部分の所有権を喪失しているということができる。 (2) すると,その余について判断するまでもなく,原告の請求は,いずれも理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第2部裁判官岩松浩之(別紙物件目録は省略)
▼ クリックして全文を表示