令和5年1月27日判決言渡同日原本交付裁判所書記官令和元年(ワ)第20604号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日令和4年11月2日判決 原告 株式会社アキュラホーム 原告訴訟代理人弁護士 佐藤力哉 同那須勇太 同弾塚寛之 原告訴訟復代理人弁護士 林知宏 被告 株式会社アイ工務店 被告 A 被告 B 被告ら3名訴訟代理人弁護士 酒井康生 主文 1 被告らは、別紙営業秘密目録1の情報を営業上の活動に使用し又は第三者に開示してはならない。 2 被告らは、別紙営業秘密目録1の情報が記録された一切の記録媒体から当該情報を削除し、当該情報が記載された資料を廃棄せよ。 3 被告らは、原告に対し、連帯して159万2750円及びこれに対する令和元年8月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用はこれを10分し、その3を被告らの負担とし、その余を原告の負担とする。 6 この判決は、3項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは、別紙営業秘密目録1及び別紙営業秘密目録2記載の情報を営業上の活動に使用し又は第三者に開示してはならない。 2 被告らは、別紙営業秘密目録1及び別紙営業秘密目録2記載の情報が記録された一切の記録媒体から当該情報を削除し、当該情報が記載された資料を廃棄せよ。 3 被告ら 又は第三者に開示してはならない。 2 被告らは、別紙営業秘密目録1及び別紙営業秘密目録2記載の情報が記録された一切の記録媒体から当該情報を削除し、当該情報が記載された資料を廃棄せよ。 3 被告らは、原告に対し、連帯して、1357万5200円及びこれに対する令和元年8月16日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による 金員を支払え。 4 仮執行宣言第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告が、原告の従業員であった被告A(以下「被告A」という。)が原 告の従業員当時、原告の営業秘密である、原告の業務基幹システム改善のための検討資料を、原告の元従業員で当時被告株式会社アイ工務店(以下「被告会社」という。)の従業員であった被告B(以下「被告B」という。)に提供し、それが被告会社のシステム開発に利用され、また、被告Aが、原告の営業秘密である、戸建て住宅の建築に必要となる予算を算出するシステムに関するプログラム及 び同プログラムに関連するデータを、無断で社外のストレージサーバにアップロードし、その後、同データをダウロードして被告会社に提供して同データが被告会社のプログラム開発に利用されたなどと主張して、被告Aについて、同検討資料についての行為は不正競争防止法2条1項7号の不正競争行為に、同プログラムに係るデータについての行為は同項4号、7号の不正競争行為に当たり、被告 会社について、同検討資料についての行為は同項8号の、同プログラムに係るデ ータについての行為は同項4号、5号又は6号・8号又は9号の不正競争行為に当たり、被告Bについて、同検討資料についての行為は同項8号の、同プログラムに係るデータについての行為は同項5号又は6号・8号又は9号の不正競争行為に当たるとして、被告らに対し、 号の不正競争行為に当たり、被告Bについて、同検討資料についての行為は同項8号の、同プログラムに係るデータについての行為は同項5号又は6号・8号又は9号の不正競争行為に当たるとして、被告らに対し、同法3条1項、2項に基づき前記各営業秘密の使用等の差止め等及び情報の廃棄を請求し、また、被告らの前記行為は共同不 法行為に当たる(被告会社については被告Bの行為についての使用者責任も負う。)として、同法4条、民法719条、709条、715条に基づき、1357万5200円の損害賠償及び不法行為の後の日である訴状送達日の翌日(令和元年8月16日)から支払済みまで、平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を請求する事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)ア原告は、戸建て住宅の建築業を主たる事業目的とする株式会社である。 (争いなし)イ被告会社は、原告の元従業員が原告を退職した後、平成22年4月30日 に設立した会社であり、建築工事業等を事業目的とする株式会社である。 (争いなし)ウ被告Aは、平成17年9月1日に原告に入社した後、情報システム部情報システム課課長を務めるなどした。被告Aは、情報システム課に在籍していた時はシステム開発を担当していた。被告Aは、平成27年6月30日に原 告を退職し、その後、被告会社に入社した。(争いなし)エ被告Bは、平成19年5月16日に原告に入社した後、建築推進部に所属し、平成26年8月31日に原告を退職し、その後、被告会社に入社した。 (争いなし)原告は、遅くとも、平成25年8月までに、原告の業務における戸建住宅の 建築に関する集客・契約・着工等の一連 、平成26年8月31日に原告を退職し、その後、被告会社に入社した。 (争いなし)原告は、遅くとも、平成25年8月までに、原告の業務における戸建住宅の 建築に関する集客・契約・着工等の一連の流れで生じる事項について組織的に 管理し、各案件で個別に生じる顧客及び下請業者等との間の支払関係や集客から引渡までの工程の進捗状況を一元的に把握できるシステムを開発し、原告においてこれを運用していた(以下、このシステムを「原告業務基幹システム」という。)。 原告業務基幹システムは、その機能として、「担当者情報」、「営業支援」、「契 約情報管理」、「先行管理」、「受注残管理」、「年次業務方向」、「月次決算」、「邸別原価管理」、「CS業務支援」、「引渡済顧客管理」、「耐火回収管理」、「工程管理」に大別される機能を有しており、利用者は、トップページから各機能にアクセスすることができる。これらの各機能の具体的な内容は、別紙原告業務基幹システムの内容のとおりであり、利用者は、各工程に関係付けられた様々な 機能を利用することができる。(甲26~31、弁論の全趣旨)原告は、戸建住宅の建築のための予算(実行予算)について、住宅の部資材の項目を整理した上で、それらに基づいて合理的に実行予算を算出することなどができるシステムを開発し、これをアキュラシステムと名付け、一般に販売していた(以下、このシステムを「アキュラシステム」といい、一般に販売し ていたアキュラシステムのプログラムを「外販用プログラム」という。)。原告は、平成19年10月頃までには外販用プログラムを多数販売した。また、外販用プログラムは、同時に複数人で使用することができなかったが、原告は、外販用プログラムに対して同時に複数人でも使用することができる改良を加えて、 頃までには外販用プログラムを多数販売した。また、外販用プログラムは、同時に複数人で使用することができなかったが、原告は、外販用プログラムに対して同時に複数人でも使用することができる改良を加えて、原告の社内で使用していた。原告は、平成27年5月1日の時点で、外 販用とは仕様の異なる、上記の原告の社内用のアキュラシステムのプログラム(以下「本件プログラム」という。)及びこれに関連するファイルとして、別紙営業秘密目録2記載のファイル(以下「本件AQS関連ファイル」という。)を保有していた。(甲19、25、63、69、弁論の全趣旨)原告は、平成25年8月頃から、原告業務基幹システムについて、その機能 を分析し、必要な追加機能の検討を始めた。原告は、その検討開始の約2年後 には、検討項目や、検討項目ごとに検討結果を整理した別紙営業秘密目録1記載の資料(以下「本件検討資料」という。)を作成した。(甲6)原告に在籍していた被告Aは、平成26年9月2日、当時被告会社に在籍していた被告Bに対して、本件検討資料の電子データが添付された電子メールを送信(以下「本件送信」という。)した。(甲15。各枝番号を含む。枝番号を 付した証拠について以下同じ。) 3 争点不正競争行為該当性ア本件検討資料に係る不正競争行為について本件検討資料が営業秘密に当たるか(争点1-1-1) 本件検討資料について、被告らによる不正競争行為があったといえるか(争点1-1-2)イ本件AQS関連ファイルに係る不正競争行為について本件AQS関連ファイルが営業秘密に当たるか(争点1-2-1)本件AQS関連ファイルについて、被告らによる不正競争行為があった といえるか(争点1-2-2)違法性(不法行為・使用 本件AQS関連ファイルが営業秘密に当たるか(争点1-2-1)本件AQS関連ファイルについて、被告らによる不正競争行為があった といえるか(争点1-2-2)違法性(不法行為・使用者責任)(争点2)損害(争点3)差止め等の必要性(争点4)消滅時効(争点5) 4 争点に対する当事者の主張本件検討資料が営業秘密に当たるか(争点1-1-1)(原告の主張)ア秘密管理性本件検討資料の内容は、別紙本件検討資料の内容記載のとおりである。本 件検討資料は、原告の事業における根幹システムというべきものについて、 その刷新のために検討した過程ないしその成果である。したがって、特に同業他社に対して知られることなど到底許されないのであって、社外に対して無断で開示することが許されないものであることは、情報の性質から明らかなものである。 本件検討資料は、原告の「fs01 」というファイルサーバの中の 「fileserver05」と題するフォルダの中の「基幹構築」と題するフォルダに格納されていた。この「fileserver05」というフォルダは、通常の業務において一般的にアクセスされるフォルダではなく、特定のプロジェクトなどにおいてのみ使用されるものである。 本件検討資料が保管されているファイルサーバ上のデータにアクセスす るためには、会社貸与のパソコンからアクセスする必要があり、そのパソコンにログインするためには、各人ごとに設定されているID及びパスワードを入力する必要がある。そして、本件検討資料が保管されていたフォルダは、通常業務では目に触れない位置に保存されており、本件検討資料の作成に関するプロジェクトメンバー及び財務経理課に所属する原告の役職員合計3 3名のみ て、本件検討資料が保管されていたフォルダは、通常業務では目に触れない位置に保存されており、本件検討資料の作成に関するプロジェクトメンバー及び財務経理課に所属する原告の役職員合計3 3名のみにアクセスする権限が付与されていた。 原告は、被告A及び被告Bを含む各従業員の入社時及び退職時には、機密事項の持ち出し、不正使用をしない旨の誓約書を提出させている。また、原告では、従業員に対する通知によって、パソコンの適正な保管、取り扱いを徹底し、パスワード管理を厳重にするように周知していた。さらに、社内シ ステムのパスワードポリシーの厳格化や、システム権限の厳格化などの施策を講じ、これに関する通達を周知していた。原告では、従業員に対して機密情報を漏洩してはならないという意識付けがされていた。 被告Aは、本件検討資料が保管されていたフォルダのアクセス権限を管理する立場にあった原告の情報システム部情報システム課の課長を務めるな どしており、本件検討資料の重要性を認識していた上、本件検討資料の管理 を行う立場にあった。 イ有用性本件検討資料は、直接的には、原告の業務基幹システムの存在を前提としたものであるが、営業秘密の保有者である原告にとって極めて有益な資料であることは明らかであり、有用性がある。原告と全く同じ業務基幹システム を使用していない者にとっても、本件検討資料には、業務の円滑化のための検討ポイントが示されているから、同様のシステムや同種事業の遂行にあたって、間接的に役立つ可能性があることは明らかである。 また、本件検討資料には、原告の使用するような業務基幹システムを運用するにあたっての保守費用の具体的データや、原告の営業所がどのような業 績を上げているか(契約締結)といったデータも含まれて また、本件検討資料には、原告の使用するような業務基幹システムを運用するにあたっての保守費用の具体的データや、原告の営業所がどのような業 績を上げているか(契約締結)といったデータも含まれており、これらは重要な価値のある情報である。 原告は、本件検討資料の作成に当たってプロジェクトチームを立ち上げ、およそ2年間にわたり、外注費だけでも5000万円を超える費用を投入した。被告B及び被告Aの転職先である被告会社においても、基幹業務システ ムと同様のシステムが存在し、被告Bがその開発等を担当し、その被告Bに対して、被告Aが本件検討資料を送付したことからも、本件検討資料に有用性がないということはあり得ない。 ウ非公知性本件検討資料は、原告内部のプロジェクトチームが作成したものであり、 外部に公開等はされていない。 (被告らの主張)ア秘密管理性について本件検討資料は、原告が原告業務基幹システムを株式会社オカザキホームでも使うことができるか、使うためにはどうしたらいいのかなどを検討した 資料にすぎないものであり、秘密管理性など何ら問題にならない資料である。 本件検討資料で言及されている「ワークフロー新着案件」、「お知らせ」といった機能は、一般的なシステムであれば当然に備わっているレベルのものであり、営業秘密に含まれないものである。 本件検討資料には、電子データへのマル秘表示の添付等の措置をとることや、ファイル、フォルダへのパスワードの設定等の措置はとられていなかっ た。原告は、本件検討資料のための検討において議事録作成者であった被告Aに対してすら部外秘であることについて何ら周知していなかった。また、本件検討資料のための検討会議は、居酒屋で行ったこともあり、構成メンバーは原告の秘密 のための検討において議事録作成者であった被告Aに対してすら部外秘であることについて何ら周知していなかった。また、本件検討資料のための検討会議は、居酒屋で行ったこともあり、構成メンバーは原告の秘密管理意思を認識していなかった。また、本件検討資料には、約100名がアクセスできる状態にあった。これらから、本件検討資料に秘 密管理性は認められない。 イ有用性について本件検討資料は、原告業務基幹システムを他社において使うことはできないと結論付けられた資料であり、原告の社外においては何ら有用性を認められないものであるし、今後何らかの利用がされる予定もなかった。よって、 本件検討資料に有用性は認められない。 ウ非公知性について本件検討資料の一部(甲6の1、2)は、広く普及していた外販用アキュラシステムの画面であり、一般的に知られた状態になっていた。また、他の一部(甲6の3以下)は、業務基幹システムの利用者の所感を羅列した会議 メモにすぎず、業務基幹システムの利用者であれば容易に推測できる内容にとどまる。本件検討資料に非公知性は認められない。 本件検討資料について、被告らによる不正競争行為があったといえるか(争点1-1-2)(原告の主張) ア被告Aについて 被告Aは、被告Bが被告会社において原告業務基幹システムを模倣したシステムを開発、導入することを援助する目的で本件送信を行った。このことは、被告A及び被告B間でやり取りされた電子メールの内容等から明らかである。したがって、被告Aは、不正の利益を得る目的で本件検討資料を開示しており、これは不正競争防止法2条1項7号の不正競争行為に当たる。 イ被告B及び被告会社について本件送信は、被告Bが被告会社において原告業務基幹システ 益を得る目的で本件検討資料を開示しており、これは不正競争防止法2条1項7号の不正競争行為に当たる。 イ被告B及び被告会社について本件送信は、被告Bが被告会社において原告業務基幹システムを模倣したシステムを開発、導入することを援助する目的で行われており、被告Bもその認識を持っていたから、被告Aが不正の利益を得る目的を有していたことを被告Bが認識していたことは明らかである。また、被告Bは、被告会社の 業務システムの開発及び操作マニュアルの作成を担当していたのであるから、被告会社も不正開示行為が介在したことを知って本件検討資料を取得したといえる。よって、被告Bによる本件検討資料の取得は、被告B及び被告会社について不正競争防止法2条1項8号の不正取得行為に当たる。 また、被告Bは、被告会社におけるシステム開発で、本件検討資料で言及 されている「ワークフロー新着案件」や「お知らせ」機能を参考にして、これらを開発していたシステムに導入した。よって、被告B及び被告会社は、不正開示行為が介在したことを知って、本件検討資料を使用したのであるから、これは、不正競争防止法2条1項8号所定の不正使用行為に当たる。 (被告らの主張) 被告A及び被告Bは、本件検討資料を授受した記憶がない。 本件検討資料のうちの一部(甲6の1、2)は、工務店支援事業に関するものであり、原告は工務店支援事業を営んでいるが、被告会社は住宅建築事業しか行っておらず、被告らにとっては不要な資料である。本件検討資料の他の一部(甲6の3から5、11、14)は、被告会社においてそもそも採用してい ない制度・仕組みに関する記載で被告らに不要である。本件検討資料の他の一 部(甲6の7、8)は、業務基幹システムを持たない被告会社には不要であ は、被告会社においてそもそも採用してい ない制度・仕組みに関する記載で被告らに不要である。本件検討資料の他の一 部(甲6の7、8)は、業務基幹システムを持たない被告会社には不要である。 本件検討資料のうちの他の一部(甲6の12、13)は、システム機能に関する情報ですらない。 本件検討資料の大部分は、原告における既存の業務基幹システムを外部に一般に販売するシステムに流用することの可否を検討する目的で作成されたも のであるが、開示があったとされる頃には、既に流用は不可能と判断されており、また、業務基幹システム自体を廃止とすることが決定されていた。 被告会社のシステムにおける「ワークフロー新着案件」や「お知らせ」機能は被告Bが既に知っていたレベルの機能であって、それらの機能を備えることについて本件検討資料が役立ったことはない。 本件AQS関連ファイルが営業秘密に当たるか(争点1-2-1)(原告の主張)ア秘密管理性本件AQS関連ファイルの内容は、別紙営業秘密目録2記載のとおりである。外販用プログラムは、MicrosoftACCESS ベースで開発された、ごく小規 模の企業等での使用が想定されるシステムであり、同時に複数のユーザでの使用が困難である等の制約があった。原告は、社内で使用するためにMicrosoftSQLServer ベースで規模が大きい企業において複数のユーザが同時に使用できるようにするなどの機能を追加した本件プログラムを開発した。本件AQS関連ファイル内の、「最新AQS」フォルダ内に格納されて いたプログラムが本件プログラムの本体となるプログラムである。 本件AQS関連ファイルは、技術的な内容のプログラム及びデータからなる専門的なものであり、このような情報にあ ダ内に格納されて いたプログラムが本件プログラムの本体となるプログラムである。 本件AQS関連ファイルは、技術的な内容のプログラム及びデータからなる専門的なものであり、このような情報にあえてアクセスする者は、当該情報が、重要性が高く他社に漏洩することが到底許されないものであると認識していたことは明らかである。 原告では、外販用プログラムについてですら、当時は一般販売しておらず、 原告が主催する団体(ジャーブネット)の特定の会員になった者に対してのみ第三者に漏洩しないことを約束させた上で貸与していたのであり、秘密として扱われていた。本件プログラムが、外部提供用プログラムよりも秘匿性が高いものであることは明らかである。 本件AQS関連ファイルのうち、「.mdb」の拡張子のものは、開発者モード で実行すると、VisualBasic のソースコードを確認して編集することができるものであり、容易に改変が可能で、慎重な取り扱いが要請される。 本件AQS関連ファイルは、通常の業務においてこれを知らない者はアクセスしない場所に保存してあった。 原告における情報管理体制は、前記アで主張したとおりのものであった。 被告Aは、原告の情報システム部情報システム課課長を務めるなどして、本件プログラムの管理を行う立場にあった。さらに、被告Aは、原告に退職届を提出した翌日に、本件AQS関連ファイルを自身のパソコンのデスクトップに保存した上で「01.zip」というファイル名の圧縮ファイルにし、これを原告と取引関係のあったインクルネットのストレージサーバにアップロ ードし、その翌日に、原告の事業所以外の場所から、同ファイルをダウンロードして取得した。被告Aは、持ち出しの痕跡を残さないようにこのような方法 ったインクルネットのストレージサーバにアップロ ードし、その翌日に、原告の事業所以外の場所から、同ファイルをダウンロードして取得した。被告Aは、持ち出しの痕跡を残さないようにこのような方法をとったのであり、このことからも、本件AQS関連ファイルが無断で持ち出してはならないものであるという原告の秘密管理意思を認識していた。 イ有用性本件プログラムは、戸建住宅の建築において効率的な実行予算を算出するシステムであり、各案件に最適な実行予算が作成され、精緻な利益額、費用予測が可能となり、経営効率を飛躍的に高めるものである。そして、本件プログラムは、外販用プログラムの機能を向上させたものであり、原告は、長 年にわたって、労力をかけて頻繁にその更新をして機能向上等を図ってきた。 被告Aは、同業他社である被告会社に転職するに当たって、原告に退職届を提出した翌日に殊更に偽装工作を行ってその持ち出しを図っている。これらからすると、本件AQS関連ファイルは極めて価値のある重要なものであって有用性が認められる。 ウ非公知性 本件プログラムは、外部提供用プログラムの機能を向上させたものであり、本件プログラム自体は一切外部に提供されていない。 (被告らの主張)ア秘密管理性について原告は、本件プログラムが外販用プログラムを改良したものであると主張 するが、それらの関連性について何ら立証されていない。本件プログラムは外部提供できるような形でまとまったものではない。本件プログラムについて慎重な取り扱いが必要なものであれば、全社共有のフォルダで保存されることなどない。 本件AQS関連ファイルは、いずれも、「社外秘」や「持ち出し禁止」との 表示はなく、アクセスした者が営業秘密であることを認 必要なものであれば、全社共有のフォルダで保存されることなどない。 本件AQS関連ファイルは、いずれも、「社外秘」や「持ち出し禁止」との 表示はなく、アクセスした者が営業秘密であることを認識できるものではなかった。 イ有用性について本件プログラムについて、誰もがアクセスできるところに保存されていたことからも、社外において有用性があるものでないことは明らかである。本 件プログラムは、材料の数量を入力することで下請けへの発注金額を算出するための計算をするエクセル表のようなものであり、実際の売価とは結びついておらず、精緻な利益額や費用予測とは関連しないものであるし、社外において有用性があるものではない。 本件AQS関連ファイルについて、被告らによる不正競争行為があったとい えるか(争点1-2-2) (原告の主張)ア被告Aについて被告Aが、退職願を提出した翌日に、大量に存在する会社の重要なデータをわざわざファイル名を変更して、一定の取引関係のある会社宛てにアップロードし、私用メールアドレスを介してこれをダウンロードするという偽装 工作を行っていることからすれば、被告Aが不当な利益を図り、若しくは第三者に不当な利益を得させようとする目的又は原告に有形無形の不当な損害を加えようとする目的があったことは明らかである。 また、原告が保有する情報がその管理を離れて第三者が知ることができる状態に置かれれば、「開示」に当たるのであり、インクルネットへのアップロ ードという行為によって、原告の管理を離れて第三者が知ることのできる状態に置かれた以上、不正競争防止法2条1項7号にいう「開示」が行われた。 よって、本件AQS関連ファイルをインクルネットのストレージサーバにアップロードしたことは 離れて第三者が知ることのできる状態に置かれた以上、不正競争防止法2条1項7号にいう「開示」が行われた。 よって、本件AQS関連ファイルをインクルネットのストレージサーバにアップロードしたことは、不正競争防止法2条1項7号の開示に当たる。 また、被告Aが同サーバからダウンロードしたことは、不正競争防止法2 条1項4号の取得に当たる。 イ被告B及び被告会社について本件AQS関連ファイルは、被告Aがダウンロードした後、被告会社のシステム開発部のフォルダに保存されており、被告会社は本件AQS関連ファイルを取得した。被告会社の行為は、その従業員となった被告Aを通じて原 告の営業秘密を不正の手段によって取得したものとして、不正競争防止法2条1項4号の取得行為に当たるか、被告Aによる不正取得行為、不正開示行為が介在したことを知って取得したものとして、同項5号、8号の不正取得行為に当たる。 被告Bは、被告会社が本件AQS関連ファイルを取得した当時、被告会社 の従業員としてシステム開発を担当しており、当該ファイルがシステム開発 のためのフォルダに保存されていたことからも、被告会社が取得した本件AQS関連ファイルを少なくとも参考にする等して使用したことが合理的に推認できる。そして、本件AQS関連ファイルには、「アキュラシステム実行予算関連」との名称のファイルも含まれており、当該ファイルが競合会社である原告の情報で通常入手し得ないものであることは一見して明白であり、 被告会社において、被告A、被告B又は被告会社のその他の従業員は当該情報が原告の営業秘密であることを認識した上で使用したことはいうまでもない。 よって、被告B及び被告会社につき、本件プログラムについて不正取得行為、不正開示行為が介在したこと の他の従業員は当該情報が原告の営業秘密であることを認識した上で使用したことはいうまでもない。 よって、被告B及び被告会社につき、本件プログラムについて不正取得行為、不正開示行為が介在したことを知って使用した点で、不正競争防止法2 条1項5号又は6号・8号又は9号の不正使用行為が成立する。 (被告らの主張)ア被告Aについて被告Aは、本件AQS関連ファイルをインクルネットのストレージにアップロードした記憶はない。不正の利益を図る目的もない。 本件プログラムは、インクルネットが開発したものであり、インクルネットは当該データを保有していたのであるから、インクルネットに向けてアップロードしたことをもって第三者への開示当たるとはいえない。 イ被告B及び被告会社について本件プログラムは、MicrosoftACCESS 用のプログラムであるが、被告会社 の基幹業務システムのプログラム言語はPHPであり、両者は異なるため、流用することができるものではない。被告Bと被告Aのやりとりにおいて、本件プログラムを被告会社で流用したことをうかがわせるものは一切ない。 違法性(争点2)(原告の主張) 前記からで主張したとおり、被告Aは、営業秘密である本件検討資料及 び本件AQS関連ファイルを漏洩し、被告会社の従業員である被告Bはこれらの秘密を利用して被告会社のシステム開発に利用したのであるから、被告らについて共同不法行為が成立する。また、被告会社の従業員である被告Bは、被告会社の業務の執行として秘密情報を取得し、これを使用したのであるから、被告会社に使用者責任が成立する。 (被告らの主張)原告の主張は否認ないし争う。被告らの行為が違法ではないことについては、前記からで て秘密情報を取得し、これを使用したのであるから、被告会社に使用者責任が成立する。 (被告らの主張)原告の主張は否認ないし争う。被告らの行為が違法ではないことについては、前記からで主張したとおりである。 損害(争点3)(原告の主張) ア本件検討資料について本件検討資料の内容及び被告らの不正競争行為の態様に鑑みれば、実施料相当損害金(不正競争防止法5条3項3号)は、100万円を下らない。 イ本件AQS関連ファイルについて原告は、外部提供用プログラムを500万円で販売していたところ、本件 AQS関連ファイルは、複数のユーザが同時にアクセスできる等の付加価値がついているのであるから、被告らがこれを流出させたことによる損害は、550万円を下らない(不正競争防止法5条3項3号)。 ウ原告では、被告会社に原告の従業員を80名以上引き抜かれたこと、被告会社が使用している帳票類が原告のものに類似していることを覚知したこ とから、情報漏洩の可能性を考慮して平成28年8月頃から、退職者も含めた内部調査を行った。その結果、被告A及び被告Bによる平成26年9月頃の情報漏洩を疑わせるメールが存在することが発覚した。そのため、原告では、平成26年9月頃のメールを保全する必要が生じ、不正競争行為が行われたと考えられる時期のメールの保管期間を延長するために、572万8 800円を支出した。また、原告は、被告A及び被告Bが原告において利用 していたパソコンのフォレンジック調査を外部業者に委託し、そのために20万3200円を支出した。これらの費用は、本件検討資料に係る不正競争行為及び本件AQS関連ファイルについての不正競争行為と相当因果関係のある損害である。 また、本件における弁護士費用相 めに20万3200円を支出した。これらの費用は、本件検討資料に係る不正競争行為及び本件AQS関連ファイルについての不正競争行為と相当因果関係のある損害である。 また、本件における弁護士費用相当損害金は、114万3200円を下ら ない。 (被告らの主張)原告の主張は否認ないし争う。 本件検討資料には財産的価値はないので、実施料相当額が認められることはない。 外部提供用プログラムは、本件で問題となる時期には陳腐化しており、500万円の価値はなかった。また、本件AQS関連ファイルは、外部提供用プログラムとは別個のプログラムである上、それ単体で稼働できるようなものではなかった。原告が行ったメールの保存行為は過大なものであり、3年間も保存期間を延長しなければならないことについて何ら立証していない。損害に比べ て計上している調査費用は過大なものである。 差止め等の必要性(争点4)(原告の主張)本件検討資料について、被告会社は従業員である被告Bにおいて不正使用し、原告業務基幹システムと同様のシステムを開発、導入し、事業に活用している。 被告らにおいて原告の営業秘密を使用することに対する規範意識は全くなく、被告会社が業務基幹システムをさらにアップデート等するために、本件検討資料を再度利用して原告の利益を侵害するおそれは高い。また、被告Aや被告Bが今後も本件検討資料を転職先や他の企業に開示したり、使用したりするおそれもある。 本件AQS関連ファイルについて、被告会社は従業員である被告Bにおいて これらのファイルを利用してアキュラシステムと同様のシステムを開発、導入して現在も利用している。また、本件の経緯に鑑みれば、被告Aや被告Bが、本件プログラムを今後も転職先や他の企業に対して これらのファイルを利用してアキュラシステムと同様のシステムを開発、導入して現在も利用している。また、本件の経緯に鑑みれば、被告Aや被告Bが、本件プログラムを今後も転職先や他の企業に対して開示したり、それらにおいて本件プログラムが使用されたりするおそれもある。 よって、不正競争防止法3条1項2項に基づき、被告らに対して、本件検討 資料及び本件AQS関連ファイルの使用の差止めと削除等を求める。 (被告らの主張)原告の主張は否認ないし争う。 消滅時効(争点5)(被告らの主張) 原告は、平成28年8月26日以降の原告内の稟議書をもって、本件訴訟に必要な関係データ等の保全手続きを行った。原告は、被告らの侵害行為及び損害について十分な認識を持っていたのであるから、相当な費用を投じて保全したと考えられる。そうすると、本件訴訟を提起した令和元年7月31日の時点では損害賠償請求権の消滅時効は完成している。被告らは消滅時効を援用する。 (原告の主張)被告ら主張は否認ないし争う。原告は、平成28年8月11日に原告における被告Aのパソコンの操作ログを取得して本件プログラムの流出についての行為を覚知した。また、原告は、同日、被告Aが送受信していたメールログを取得して本件検討資料についての不正競争行為を示すメールデータを発見し た。原告が本件を覚知したのは、平成28年8月11日以降であり、また、同日時点で損害については何ら認識していなかった。 第3 当裁判所の判断 1 証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 原告は、平成21年2月頃から、原告社内において利用するため、戸建住宅 の建築に関し、各案件について個別に生じる顧客及び下請業者等との支払関係 や各工程の進捗状況を 認められる。 原告は、平成21年2月頃から、原告社内において利用するため、戸建住宅 の建築に関し、各案件について個別に生じる顧客及び下請業者等との支払関係 や各工程の進捗状況を一元的に把握できるシステムである原告業務基幹システムの開発を開始し、その後、これを導入した。 原告は、原告が導入していた原告業務基幹システムについて、それを利用する者を原告の子会社や原告が主宰する工務店ネットワークの会員に拡張することを検討することとし、平成25年8月頃には、そのための追加機能を付加 して原告業務基幹システムを刷新することを検討するためのプロジェクト(以下「本件プロジェクト」という。)を立ち上げた。被告Aは、本件プロジェクトのメンバーの一人だった。原告は、約2年後にその結果をまとめた本件検討資料を作成した。本件検討資料の概略は、別紙本件検討資料の内容のとおりであり、原告業務基幹システムの機能を前提とした上で、システムを社外に提供す るためには社外の者を管理するための機能が必要であることから、そのための管理項目を整理したり、刷新後のシステムにおける機能や表示をどのようにするかを検討したり、当時のシステムの問題点を踏まえて多くの事項のうち一部の情報のみをトップページに「お知らせ」として表示するため、現在の「お知らせ」機能を改良、拡張することの是非やその場合のイメージなどについて記 載されている。 本件検討資料には「ワークフロー新着案件」機能や、「お知らせ」機能について言及している部分があるが、これらの機能自体は、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・イントラマート社(以下「イントラマート社」という。)が開発するなどして当業者に当時から広く知られていた機能であり、原告も同機能につ いては、イントラマート社の機能 エヌ・ティ・ティ・データ・イントラマート社(以下「イントラマート社」という。)が開発するなどして当業者に当時から広く知られていた機能であり、原告も同機能につ いては、イントラマート社の機能を基に本件検討資料を作成した。 本件検討資料には、原告業務基幹システムを社外に提供することの可否についての結論は記載されていなかったが、その後、本件送信までの間に、原告は、原告業務基幹システムに追加機能を付加して社外に提供することを断念した。 本件検討資料には、それが秘密であることの表示はなかった。 (甲6、65、証人C、被告B本人、被告A本人) ア原告は、戸建住宅の建築のための予算を合理的に算出することができるアキュラシステムを開発し、平成6年から、そのシステムに関する外販用プログラムを一般に販売していた。平成19年には、税込み525万円で外販用プログラムを販売していた。外販用プログラムは、全国の工務店等に対し販売され、2700社以上に導入された。 また、少なくとも平成24年頃には、原告は、優良ビルダーになるためのカリキュラムと場を提供するという「永代ビルダー塾」を主宰し、平成26年5月頃には、その塾の加入金を150万円、参加費月額10万円として、その塾に入塾した者に対して外販用プログラムを貸与していた。その際、原告は、アキュラシステムの貸与について、入塾者に対し、同塾の契約期間中 もその終了後も、そのシステム等の全ての情報を秘密にし、第三者に対し一切漏洩しないこと、入塾者は従業員に対しても上記の義務を遵守させることなどを約束させることがあった。 (甲55、56、62、63、65、証人D)。 イ原告は、外販用プログラムとは別に、原告の社内で用いるアキュラシステ ムを開発した。原告には、千人 せることなどを約束させることがあった。 (甲55、56、62、63、65、証人D)。 イ原告は、外販用プログラムとは別に、原告の社内で用いるアキュラシステ ムを開発した。原告には、千人規模の従業員がいたところ、外販用プログラムは同時に複数人が使用することができなかった。社内用のアキュラシステムである本件プログラムにおいては、同時に複数人が使用できるものとなっており、上記のとおり相当多数の従業員がいる原告において利用しやすいものとなった。外販用プログラムは、MicrosoftACCESS ベースで開発されてお り、データ部分とアプリケーション部分が一つのファイルで構成されているのに対し、社内用のアキュラシステムはMicrosoftSQLServer ベースで開発されており、データ部分がデータサーバ内に蔵置され、会社ネットワークを通じて認証したパソコンから接続する仕様になっている。社内用のアキュラシステムである本件プログラムでは、外販用プログラムと異なり、複数人 が同時に使用することができるほか、登録機能や検索機能や、外販用プログ ラムとは異なる出力方式や入力設定等も実装されている。 (甲46、62、証人C、弁論の全趣旨)ウ社内用のアキュラシステムは、アキュラシステムを利用する者が使用するパソコンにプログラム(本件プログラム)をインストールし、インストールされたプログラムがあらかじめSQLサーバに構築された社内用のアキュ ラシステム用のデータベースにアクセスすることによって稼働する仕組みになっている。利用者のパソコンに新たに社内用のアキュラシステムの最新版の本件プログラムをインストールするためには、本件AQS関連ファイルのうち、プログラムの中核となる「最新AQS」フォルダに保存されている る。利用者のパソコンに新たに社内用のアキュラシステムの最新版の本件プログラムをインストールするためには、本件AQS関連ファイルのうち、プログラムの中核となる「最新AQS」フォルダに保存されている「実行予算.mdb」というファイル(本件プログラム)の他に、本件AQS関 連ファイル中の「最新AQSインストーラ」に保存されているファイル及び「実行予算.reg」というファイルが必要となる。「過去AQS」のフォルダには、古いバージョンの前記「実行予算.mdb」ファイルが保存されていた。 「システム化専用マニュアル」、「マニュアル等」のフォルダには、社内用のアキュラシステムについてのマニュアルが保存されていた。「アキュラシス テム実行予算関連」、「実行予算マスタ」のフォルダには、上記SQLサーバにおけるデータベースに関連するファイルが保存されており、「OLD」のフォルダには、本件プログラムの過去バージョンを更新するために利用されていたバッチデータが保存されていた。 本件AQS関連ファイルを用いれば、利用者のパソコンに必要なプログラ ムをインストールすることができた。もっとも、そこには、SQLサーバにデータベースを構築するのに足りるプログラムは含まれていなかったため、データベースが構築されているSQLサーバにアクセスすることのできないパソコンに本件AQS関連ファイルを単純にコピーしたり、ファイルを実行したりすることでは原告の社内用アキュラシステムを稼働させることは できなかった。また、社内用のアキュラシステムを稼働させるために必要な データベースをサーバに構築するためには、アキュラシステム固有の情報が必要であったところ、本件AQS関連ファイルにはこの情報が含まれていなかったため、本件AQS関連ファイルのみから社内 データベースをサーバに構築するためには、アキュラシステム固有の情報が必要であったところ、本件AQS関連ファイルにはこの情報が含まれていなかったため、本件AQS関連ファイルのみから社内用のアキュラシステムを稼働させるデータベースを構築して社内用のアキュラシステムを稼働させることは事実上不可能であった。 (証人C、被告A本人、弁論の全趣旨)ア原告では、業務上知り得た機密事項について在職中、退職後を問わず第三者に、開示又は漏洩しないこと、機密事項の含まれた書面、資料及び記録媒体などを、在職中も退職後も、複製、持ち出しをしないことなどを誓約する誓約書を提出させており、被告A及び被告Bも同誓約書を提出していた。 (甲 57、58、証人C)イ原告のファイルサーバにアクセスするためには、原告が貸与するパソコンを用いる必要があり、それ以外のパソコンではアクセスすることができない仕様になっている。同パソコンにログインするためにはユーザIDとパスワードを入力する必要がある。原告においては、貸与パソコンやパスワードの 管理を徹底するように求める通達等をしていた。(甲61、65、証人C)本件検討資料は、電子データの形で、「fs01」という原告のファイルサーバにある「fileserver05」というフォルダの中の「基幹構築」と題するフォルダに保管されていた。本件送信がされた平成26年当時、上記「基幹構築」と題するフォルダにはアクセス制限がされており、その内部のファイルにアクセスす ることができるのは、特定の部署に所属していた者などに限られ、その総数は原告の役職員合計30名程度に限られていた。上記の電子データの形で保存された本件検討資料について、それが秘密であることの表示はなく、また、ファイル名、フォルダ名 属していた者などに限られ、その総数は原告の役職員合計30名程度に限られていた。上記の電子データの形で保存された本件検討資料について、それが秘密であることの表示はなく、また、ファイル名、フォルダ名などにおいてそれが秘密であることを表示することはされていなかった。 なお、被告Bの供述中には、平成26年当時、上記「基幹構築」と題するフ ォルダにアクセス制限がされていなかったことを述べる部分があるが、コンピュータ画面についての証拠(甲68の別紙)を含む、後掲各証拠及び弁論の全趣旨に照らし、同供述を採用することはできない。 (甲49、65、68、証人C、弁論の全趣旨)本件AQS関連ファイルは、電子データであり、「fs01」という原告のファイ ルサーバにある「05_全社共通」というフォルダの中の「90_システム関連」というフォルダの中の「01_実行予算」というフォルダに保管されていた。これらのフォルダには、個別にアクセス権限を設定する管理は行われておらず、原告のファイルサーバにアクセスすることができる者は、だれでも本件AQSファイルにアクセスをすることができ、そのファイルをコピーして自分のパソコン にダウンロードすることなどができた。本件AQS関連ファイルのファイル名やそれを格納するフォルダ名などにおいてそれが秘密であることの表示はされていなかった。(甲65、乙6、証人C)ア被告Bは、平成26年8月31日に原告を退職し、同年9月1日に被告会社に入社した。被告Bは、被告会社で経営企画部に所属し、当時被告会社の システム開発を担当するのは被告Bのみであった。被告Bが着任した当時、被告会社には工程管理をする等の業務基幹システムは存在していなかった。 被告Bは、被告会社に命じられて、他社が開発したパッケージ版 システム開発を担当するのは被告Bのみであった。被告Bが着任した当時、被告会社には工程管理をする等の業務基幹システムは存在していなかった。 被告Bは、被告会社に命じられて、他社が開発したパッケージ版の基幹システムを導入するのではなく、基幹システムを独自開発することとなった。 (被告B本人) イ被告Aは、平成26年9月8日、被告Bに対して、原告が作成した「設計建設業務支援システム操作マニュアル」の電子データを添付したメールを送信した。被告Bは、同日、被告Aに対して、「・・・早速の手配ありがとうございます。そうそうこれ!マニュアル作成を含め、2か月で契約承認からバーコードまで4つのシステム開発なので、ちょっとバタバタです。ご参考ま でに、こちらの基幹システム開発概要を添付いたします。・・・」などと記 載されたメールを送信した。同メールには、作成名義人を「経営企画部B」とする「基幹システム開発概要」と題する書面が添付されていた。(甲14)ウ被告Aは、平成26年9月23日、被告Bに対して、前記イのメールに返信する形式で「これですね。」とのみ本文に記載して、本件検討資料が添付されたメールを送信した(本件送信)。(甲15) エ被告Bは、平成26年9月25日、被告Aに対して、「インクルさんに送付したものを自分のGmailにbcc送信し、私用のGmailから送信しています。とりあえず、契約承認から受注管理までの画面仕様等を纏めました。メニュー画面の「ワークフロー新着案件」と「お知らせ」は参考にさせて頂きました。受注管理は「契約承認」とほぼ同じ画面で、・・・・・またこ のような転送メールでもご迷惑が掛かるようでしたらメールを削除してください。以後、送信しないように致しますので、遠慮なくご連絡ください。」な は「契約承認」とほぼ同じ画面で、・・・・・またこ のような転送メールでもご迷惑が掛かるようでしたらメールを削除してください。以後、送信しないように致しますので、遠慮なくご連絡ください。」などとメール本文に記載したメールを送信した。同メールには、被告会社で開発中のシステムのスクリーンショットの電子データが添付されており、同システムでは、「ワークフロー新着案件」という項目と「お知らせ」という 項目が表示されていた。(甲16)オ被告Aは、平成27年4月30日、原告に対して同年6月30日をもって退職する旨の退職願を提出した。(甲18)カ被告Aは、平成27年5月1日、原告のファイルサーバにアクセスし、「01_実行予算」のフォルダに保管されていたファイルを自身が原告から貸与され ていたパソコンのデスクトップ上に作成した同名のフォルダに複製するなどして、同フォルダ内に本件AQS関連ファイルを複製した。被告Aは、同フォルダ名を「01」に変更し、これを「01.zip」という名称のファイルに圧縮した。その後、被告Aは、インターネットを通じて原告の取引会社であるインクルネットが利用するストレージサーバであるWebfileLite にアクセ スして、インクルネットのストレージ領域に「01.zip」ファイルをアップロ ードした。(甲19、43、44)キ被告Aは、平成27年6月30日に原告を退職し、同年7月1日に被告会社に入社した。被告Aは被告会社の経営企画部に所属し、被告会社において、被告Bと被告Aの2人でシステム開発を行うこととなった。(被告A本人)ク被告Aは、その後、原告従業員のCとインターネットを通じてメッセージ 交換ができるアプリケーションでやり取りをした。被告Aは、その中で、Cから、被告A 発を行うこととなった。(被告A本人)ク被告Aは、その後、原告従業員のCとインターネットを通じてメッセージ 交換ができるアプリケーションでやり取りをした。被告Aは、その中で、Cから、被告Aが働いている会社を尋ねられて被告会社だと回答し、誰の誘いかと尋ねられると、被告Bだと回答した。その後、被告Aから、「システムはアキュラのシステムをブラッシュアップして開発している」「さすがBさん、いい形でできていたよ」と送信し、これに対してCは、「そりゃそうで しょ。そこは疑う余地なし。」と返信し、これに対して被告Aは「あんなパッケージとは格が違う」と送信し、Cが「手組?」と返信すると、被告Aは、「手組よ」「インフラが凄くて」「VPNなし」「ネット通販でPC買ってる」その他、被告会社におけるシステムの環境やその管理の貧弱さを列挙していく内容を送信した。(甲20、証人C) ケ原告は、令和元年7月31日、本件訴訟を提起した。 令和3年8月31日、被告会社のファイルサーバの「システム開発¥システム開発資料¥01」のフォルダには、「OLD」、「アキュラシステム実行予算関連」「過去AQS」、「最新AQS」、「最新AQSインストーラ」等の本件AQS関連ファイル内の一部のフォルダと同名のフォルダが保存され、その他、 本件AQS関連ファイル中のファイル名と同一のファイル名のファイルが上記「01」フォルダ内に保存されていた。なお、原告は、本件訴訟の証拠として本件AQS関連ファイルの一部を提出し、被告らも写しを受領していたが、上記フォルダ内には、原告が提出していないファイルと同名のファイルも保存されていた。(顕著な事実、弁論の全趣旨) 2 争点1-1-1(本件検討資料が営業秘密に当たるか)について 秘密管理性につい 原告が提出していないファイルと同名のファイルも保存されていた。(顕著な事実、弁論の全趣旨) 2 争点1-1-1(本件検討資料が営業秘密に当たるか)について 秘密管理性について本件検討資料は、電子データの形で、「fs01」という原告のファイルサーバにある「fileserver05」というフォルダの中の「基幹構築」と題するフォルダに保管されていた。原告では従業員にパソコンを貸与し、そのパソコンにログインした場合に原告のファイルサーバにアクセスできるところ、平成26年当時、 相当多数の従業員の中で上記「基幹構築」と題するフォルダにアクセスすることができるのは特定の部署に所属する者など従業員の中のごく限られた者のみであった。 本件検討資料は、前記1で認定したとおり、当時の原告業務基幹システムに追加機能を加える場合にどのような追加機能が必要であるかや、同機能を追 加することの可否等を検討したことの結果等をまとめたものである。そうすると、本件検討資料は、原告が当時使用していた原告業務基幹システムの内容を少なくとも推知させるものであり、また、原告が当時使用していたシステムの仕様の問題点、原告の検討状況を知ることができるもので、この情報は、競合他社等にとって競争上有益な情報であり、そのため、これが流出すると原告の 不利益につながりかねない性質の情報であると理解できるものであった。 また、前記1で認定したとおり、原告は、機密情報の持ち出しを禁じる誓約書を提出させるなど、一定の情報管理体制を敷いていたことが認められ、各従業員もこのような体制を敷いていることを認識している状況にあったと認められる。そして、本件検討資料等が、日常的に原告の社外に持ち出されたり、 社外に何ら制約を課すことなく提供されたり れ、各従業員もこのような体制を敷いていることを認識している状況にあったと認められる。そして、本件検討資料等が、日常的に原告の社外に持ち出されたり、 社外に何ら制約を課すことなく提供されたりすることが横行し、そのことを会社も黙認していたといった事情もうかがえず、上記のとおりのアクセス制限が付されたフォルダ内に保管されていた資料であるにもかかわらず、本件検討資料を他社に漏洩することが許されると理解されるような状況はなかった。 以上によれば、原告が機密情報の持ち出しを禁じる誓約書を提出させるなど の情報管理体制を敷いていた中で、本件検討資料は、ごく限定された者しかア クセスすることができないフォルダに保管されて管理されていたのであって、その内容からも、それが会社で秘密とされるものであることを理解できるものであり、上記のようなアクセスを制限するという管理がされているにもかかわらず、他社に漏洩することが許されると理解されるような状況もなかった。これらのことを考慮すると、本件検討資料やそのファイル名等に秘密であること の表示自体はなかったものの、本件検討資料は、秘密として管理されていたと認める。 有用性について前記で認定したとおり、本件検討資料は、少なくとも当時の原告業務基幹システムの仕様を推知させたり、その問題点、原告の改善に係る検討状況等を 知ることができる資料であり、他の会社にとって、業務のためのシステムを開発、改善するために有益な情報であったといえる。よって、本件検討資料には有用性が認められる。 非公知性本件検討資料から推知できる当時の原告業務基幹システムの仕様、その問題 点、原告の改善に係る検討状況等の情報が本件送付当時社外に知られていたことをうかがわせる証拠はなく、本件検討資料 公知性本件検討資料から推知できる当時の原告業務基幹システムの仕様、その問題 点、原告の改善に係る検討状況等の情報が本件送付当時社外に知られていたことをうかがわせる証拠はなく、本件検討資料は原告の社外の者には知られていなかったと認められる。 よって、本件検討資料は、一連の情報として、その全体が秘密として管理された事業活動に有用な情報であり、公然と知られていなかったものとして、営 業秘密に当たると認める。 3 争点1-1-2(本件検討資料について、被告らによる不正競争行為があったといえるか)について前記1で認定したとおり、被告Bは、被告会社に入社した際、被告会社に工程を管理する等の機能を有する業務基幹システムが存在しなかったことか ら、被告会社に命じられて、独自の基幹システムを開発することになり、被告 会社の従業員の中で唯一、被告Bのみが同開発に従事していた。そして、被告Bは、被告Aに対して、原告で使用していたシステムに関する資料(設計建設業務支援システム操作マニュアル)を送付するように依頼して被告Aもこれに応じて資料を送付し、また、被告Bが開発中の基幹システムの概要を被告Aと共有するなどしていたことが認められる。上記の状況に照らせば、被告Aは、 自身が担当していた業務基幹システムの開発に利用する目的で原告にあった関連する資料の送付を被告Aに依頼し、被告Aも、被告Bが同資料を同システムの開発に利用することを認識していたと認められる。 本件送信は、被告Bと被告Aとの間に上記のような関係があった状況で、被告Bが参考のためとして被告会社での開発概要を添付したメールを送信した 15日後に行われたものである。本件送信は、上記の被告Aと被告Bのやりとりのメールに返信する形式で行われており、本文に 被告Bが参考のためとして被告会社での開発概要を添付したメールを送信した 15日後に行われたものである。本件送信は、上記の被告Aと被告Bのやりとりのメールに返信する形式で行われており、本文にも「これですね。」と記載されているだけであるから、本件送信をしたメールには、被告Bに対して本件検討資料を添付した被告Aの意図、目的自体についての直接的な記載はない。しかし、「これですね。」という記載内容から、本件検討資料の送信が被告Bの依 頼に基づいて行われたと認められる。そして、前記のとおり、被告Aと被告Bは、当時被告Bが開発していた被告会社の基幹システム開発のための資料をやり取りしていたこと、本件検討資料が原告の業務基幹システムについてのものであり、業務基幹システムという点では当時被告Bが開発していたシステムと一定の関連性を有していたことなどを考慮すると、本件送信に先立って、被告 Bが被告Aに対し何らかの方法で被告会社のシステム開発のための資料として本件検討資料を被告Bに提供することを依頼し、被告Aもその目的を知りながら本件検討資料を交付する本件送信をしたことが推認できる。 前記によれば、被告Aは、本件送信によって、原告の営業秘密である本件検討資料を、原告と競合し自身の転職先になる被告会社の被告Bの依頼に応じ て被告会社の利益を図るという、不正の利益を得る目的で開示したといえるか ら、本件送信は、不正競争防止法2条1項7号の不正競争行為に当たる。 そして、被告Bは、被告Aが上記の目的で本件検討資料を被告Bに交付することを知りながら被告Aに交付を依頼してこれを受領しているから、同受領行為は同項8号の不正競争行為に当たる。被告Bは、被告会社から命じられて、そのシステム開発を担当する唯一の従業員として被告会社 ることを知りながら被告Aに交付を依頼してこれを受領しているから、同受領行為は同項8号の不正競争行為に当たる。被告Bは、被告会社から命じられて、そのシステム開発を担当する唯一の従業員として被告会社の業務基幹システ ム開発を行っていて、その同システム開発業務に利用するために、そのことを被告Aに明かした上で本件検討資料の送付を依頼してこれを受領していたのであるから、被告会社についても、同受領行為は同号の不正競争行為に当たると評価すべきである。 4 争点1-2-1(本件AQS関連ファイルが営業秘密に当たるか)について 秘密管理性についてア本件AQS関連ファイルは、電子データであり、「fs01」という原告のファイルサーバにある「05_全社共通」というフォルダの中の「90_システム関連」というフォルダの中の「01_実行予算」というフォルダに保管されていた。これらのフォルダは、個別にアクセス権限を設定する管理は行われていなかっ た。原告では従業員にパソコンを貸与し、そのパソコンにログインした場合、原告のファイルサーバにアクセスできるところ、「01_実行予算」というフォルダには個別にアクセス権限を設定する管理は行われておらず、相当多数の従業員がいた原告において、上記ログインをした従業員はだれでも本件AQS関連ファイルにアクセスすることができ、そのファイルを自己のパソコン にダウンロードすること等ができた。そして、本件AQS関連ファイルについて、いずれも、ファイル名やフォルダ名において、それらのファイルが秘密であることを示す記載もなかった。また、上記ファイルサーバ中のフォルダに保管されていた本件AQSファイルについて、それが営業秘密であることが別途、何らかの方法で従業員に周知されていたことを認めるに足りない。 記載もなかった。また、上記ファイルサーバ中のフォルダに保管されていた本件AQSファイルについて、それが営業秘密であることが別途、何らかの方法で従業員に周知されていたことを認めるに足りない。 営業秘密は、「秘密として管理されている」(不正競争防止法2条6項)情 報であるところ、本件AQS関連ファイルは、上記のとおり、パソコンからログインをした従業員はだれでもアクセスすることができて、それらについて秘密である旨の表示などはなく、また、それが営業秘密であることが別途周知されていたとは認められないものである。これらからすると、本件AQSファイルは、「秘密として管理されている」とはいえず、営業秘密とはいえ ないとするのが相当である。 イ原告は、本件AQS関連ファイルは技術的な内容のプログラム及びデータからなり、これにアクセスする者は当該情報の重要性が高く、他社に漏洩することが許されないことを認識していたことや外販用プログラムについての扱いを主張するなどして、本件AQS関連ファイルに秘密管理性が認めら れると主張する。 しかし、営業秘密は「秘密として管理されている」情報であるところ、本件AQSファイルは、パソコンからログインをした従業員がだれでもアクセスすることができるもので、かつ、それが秘密であることについての表示は何もなく、また本件AQSファイルの情報が秘密であることの周知もされて いなかった。パソコンからログインをした従業員は、原告のサーバ中の相当多数の情報に接することができるところ、上記のとおり、本件AQSファイルについては、多数の従業員がだれでもアクセスできる相当多数の情報の中で、当該情報が秘密としての管理がされているといえるか否かが外形的には全く明らかではなかった。そのような情報について AQSファイルについては、多数の従業員がだれでもアクセスできる相当多数の情報の中で、当該情報が秘密としての管理がされているといえるか否かが外形的には全く明らかではなかった。そのような情報について営業秘密とされるとする と、従業員は、接することができる相当多数の情報のうち、どの情報が不正競争防止法にいう秘密であるかを明確に知ることはできず、ある行為が不正競争防止法違反となる行為となるかを明確に知ることができない。原告は、仮に利用上の必要性の観点から当該情報にアクセスする者を制限できなかったとしても、本件AQS関連ファイルに対し、ファイル名やそれを保管す るフォルダ等に秘密であることを示す何らかの表示をするなど、それが秘密 として管理されていることを外形的に明らかにすることが容易にできたのであり、そのようなことがされていなかった本件AQS関連ファイルについて「秘密として管理されている」とはいえないとするのが相当と解する。原告は外販用プログラムについての扱いも指摘するが、外販用プログラム自体は従前一般に販売されていたことや外販用プログラムと本件プログラムと は異なるなどの事情があるほか、上記に述べた本件AQS関連ファイルについての管理の状況に照らし、原告指摘の事情は、上記判断を左右しない。 以上によれば、本件AQS関連ファイルは、秘密として管理されていたとはいえないから、その余の点を判断するまでもなく、「営業秘密」(不正競争防止法2条6項)ということはできず、これが営業秘密であることを前提と する原告の請求には、理由がない。 5 争点2(違法性(不法行為・使用者責任))について本件AQS関連ファイルが、原告において秘密として管理されていたとは認められないことは前記4で説示したとおりである。そのことに 、理由がない。 5 争点2(違法性(不法行為・使用者責任))について本件AQS関連ファイルが、原告において秘密として管理されていたとは認められないことは前記4で説示したとおりである。そのことに、本件AQSファイルのファイルを実行することでシステムを稼働させることができない(前記1 ウ)など本件に現れた事情に照らせば、本件において本件AQS関連ファイルに係る被告A及び被告Bの行為が不法行為法上違法であるとまでは認められない。 そして、被告会社について被告A及び被告Bに共同不法行為が成立し、これを前提に使用者責任が成立するとの主張はその前提を欠く。 6 争点3(損害)について 本件検討資料について前記2で説示したとおり、本件検討資料は、原告で当時採用していた業務基幹システムの仕様等を推知することなどができる資料であり、競合他社の事業活動上、有用性を持つ資料である。被告らは、故意により本件検討資料の営業秘密を開示、取得をするなどの不正競争行為をして、被告会社は有益な情報を 得て、原告との事業活動における競争上有利となり得る地位を得たといえる。 原告は営業上の利益を侵害されたといえ、原告は、不正競争を行った者に対し、損害賠償を請求できる(不正競争防止法4条)。 原告は、受けるべき金銭の額に相当する額の金銭(不正競争防止法5条3項)につき損害賠償を請求する。被告会社は取得すれば事業活動において競争上有利となり得る営業秘密を取得したのであり、そのような情報の取得に対しては 対価を想定でき、その対価を考慮して上記の受けるべき金銭の額を算定することができるとするのが相当である。そして、当該情報や同種の情報の対価の相場、その取得によって想定し得る利益、侵害の態様や請求者の当該情報についての方針、請求 して上記の受けるべき金銭の額を算定することができるとするのが相当である。そして、当該情報や同種の情報の対価の相場、その取得によって想定し得る利益、侵害の態様や請求者の当該情報についての方針、請求者と侵害者との関係等を考慮して、上記の受けるべき金銭の額が算定される。 本件検討資料について、当該情報や同種の情報の対価の相場について、これを認めるに足りる証拠はない。本件検討資料は、前記1で認定したとおり、当時原告で稼働していた原告業務基幹システムを社外に提供するために必要な追加機能やこれを追加することの可否などについて検討した資料であり、原告で当時採用していた業務基幹システムの仕様を推知することができ、また、そ の問題点や改善の方法を知ることができるのであるから、他の会社において新たな業務基幹システムを開発したり、それを改善したりする際に、これを参考して、開発等にかける労力を削減することができるものといえる。他方、本件検討資料から推知される業務基幹システムの仕様について、各機能の組合せからなる全体の仕様やどの仕様を採用するか等についてはともかく、それぞれの 機能そのものは、それ自体全く知られていなかったことを認めるに足りない。 原告は、本件検討資料に記載された「ワークフロー新着案件」機能や「お知らせ」機能を被告会社が実際に利用したなどと主張するが、前記1で認定したとおり、これらの個別の機能自体は、いずれも当業者には周知のものであり、それらの機能を原告が採用していたことが他の会社に参考になることがあっ たとしても、それらの機能を知ったこと自体について他の会社が大きな利益を 得るとまでいえるものではない。 被告会社は、原告と競合する事業を営むものであり、本件検討資料は原告の内部の業務システムの仕様等を推 の機能を知ったこと自体について他の会社が大きな利益を 得るとまでいえるものではない。 被告会社は、原告と競合する事業を営むものであり、本件検討資料は原告の内部の業務システムの仕様等を推知させ、また、その問題点を知ることができる情報であって、通常、原告が被告会社に対して提供するものとは認められず、被告会社は、そのことを知りながら、本件検討資料を取得したといえる。 これらの事情を総合的に考慮すると、本件検討資料を取得してこれを使用したことについて、原告が被告会社から受けるべき金銭の額は100万円が相当である。 調査費用等についてアメールの保存 甲23の1ないし4及び弁論の全趣旨によれば、原告が契約していた電子メールサービスでは電子メールの保存期間が2年間であったところ、原告は不正調査の目的で、当時の原告の従業員がやり取りした電子メールを保全して、調査するために、その保存期間を延長するための費用を支払ったことが認められる。 被告らは、本件検討資料の関係で不正競争を行ったと認められるところ、被告らは電子メールで不正競争に関係し得るやりとりをしていて、不正競争を明らかにするためには不正競争に直接関係することがうかがわれるやりとりの前後を含む一定の期間の電子メールを保存し、その分析をする必要があったと認められる。また、原告は、電子メールサービスについて、外部の 会社と契約していたこと、その会社では電子メールの保存期間が2年間であったこと、そのシステムの下では保存されたメールの内容を確認するのに時間がかかること(証人C)、不正競争を明らかにするための電子メールの分析には、電子メールの数が相当数あったことがうかがえることなどからも、一定の期間がかかり得ることなどから、その保存期間を6か月延長 間がかかること(証人C)、不正競争を明らかにするための電子メールの分析には、電子メールの数が相当数あったことがうかがえることなどからも、一定の期間がかかり得ることなどから、その保存期間を6か月延長したこと は、不正競争と因果関係があると認め、そのために支出した費用である44 万2750円については、原告に発生した損害と認める。他方、不正競争の有無、内容の分析のために6か月を超えて保存期間を延長することまで必要であったとは認めるに足りる証拠はなく、上記以外の保存期間の延長の費用については、本件関連資料についての不正競争と相当因果関係があるとは認められない。 イフォレンジック調査費用甲24号証及び弁論の全趣旨によれば、原告は、平成28年11月頃、被告A、被告B他1名が原告で使用していたパソコンのフォレンジック調査を外部業者に委託して30万4800円を支払い、そのうち、被告A及び被告Bのパソコンに対する作業のための費用は同費用の3分の2である20万 3200円であると認められる。 もっとも、本件においては、本件検討資料についての被告らの不正競争が認められるところ、パソコンのフォレンジック調査がその不正競争について明らかにするために必要であったことを認めるに足りない。そうすると、同調査費用の支出は、本件検討資料についての不正競争と相当因果関係のある 損害とはいえない。 本件に係る弁護士費用相当損害金としては、15万円が相当である。 以上によれば、原告は、被告会社の不正競争行為によって、上記の合計159万2750円の損害を被ったと認められる。被告らの行為が、相互に認識した上でされた一連の行為といえることからすると、同額について、被告らが連 帯して責任を負うと認めるのが相当である。また、本件 万2750円の損害を被ったと認められる。被告らの行為が、相互に認識した上でされた一連の行為といえることからすると、同額について、被告らが連 帯して責任を負うと認めるのが相当である。また、本件検討資料の開示、取得について、被告会社の使用者責任に基づく損害賠償額は上記金額を上回るものではなく、被告A及び被告Bの不正競争行為により上記損害を超える損害が発生したとは認められない。 7 争点4(差止めの必要性等)について これまでに説示したとおり、被告会社らは本件検討資料を不正に取得したこと が認められ、被告らの対応に鑑みると、被告らに対して、本件検討資料の使用等の差止め及び当該情報の削除等を認める必要性があるといえる。 8 争点5(消滅時効)について原告が、平成28年8月11日以前から本件で認定した被告らの不正競争行為を認識していたことを認めるに足りる証拠はない。原告がその頃特定のメールを 認識したとしてもその前後の状況等が判明しなければそのメールの意味や損害を正しく認識できないのであり、原告において同月26日に稟議書が作成され、また、その後にメールの保存措置をとったとしても、そのことをもって原告が不正競争行為及び損害を認識していたことを認めるに足りない。よって、被告らの消滅時効の主張には理由がない。 第4 結論以上のとおりであって、原告の請求には、被告らに対して本件検討資料の使用等の差止及び当該情報の削除等を求め、159万2750円を請求する限度で理由があり、その余の請求には理由がないから、主文のとおり判決する。 また、仮執行宣言について、主文1項、2項については相当ではないためこれ を付さない。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義 文のとおり判決する。 また、仮執行宣言について、主文1項、2項については相当ではないためこれを付さない。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官佐伯良子 裁判官仲田憲史 別紙営業秘密目録1記載省略 別紙営業秘密目録2記載省略 別紙原告業務基幹システムの機能記載省略 別紙本件検討資料の内容記載省略
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