令和2(ワ)2146 特許権侵害差止請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年9月24日 東京地方裁判所
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1 令和3年9月24日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 令和2年(ワ)第2146号 特許権侵害差止請求事件 口頭弁論終結日 令和3年6月17日 判 決 原 告 シ ャ ー プ 株 式 会 社 5 同訴訟代理人弁護士 服 部 誠 中 村 閑 岩 間 智 女 梶 並 彰 一 郎 松 田 世 理 奈 10 同補佐人弁理士 相 田 義 明 蟹 田 昌 之 被 告 オウガ・ジャパン株式会社 同訴訟代理人弁護士 塩 月 秀 平 友 村 明 弘 15 髙 梨 義 幸 松 本 陸 同訴訟代理人弁理士 稲 葉 良 幸 同補佐人弁理士 阿 部 豊 隆 阪 和 之 20 韓 明 花 主 文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 25 第1 請求 2 1 被告は,別紙1物件目録記載の各製品を使用し,譲渡し,貸し渡し,輸入若 しくは輸出し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 2 被告は,前項記載の各製品を廃棄せよ。 第2 事案の概要 1 事案の要旨 5 本件は,発明の名称を「受信装置および受信方法」とする特許第53792 69号の特許(以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」 という。)の特許権者である原告が,被告に対し,別紙1物件目録記載の各製品 (以下,同目録記載の各製品を併せて「被告製品」という。)が,本件特許の特 許請求の範囲の請求項1記載の発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲 10 に属する に対し,別紙1物件目録記載の各製品 (以下,同目録記載の各製品を併せて「被告製品」という。)が,本件特許の特 許請求の範囲の請求項1記載の発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲 10 に属するものであり,被告が,被告製品の使用,譲渡,貸渡し,輸入,輸出, 並びに譲渡及び貸渡しの申出をすることが,本件発明の実施をするものとして 本件特許権の侵害に当たると主張し,特許法100条1項に基づく上記各実施 行為の差止め及び同条2項に基づく被告製品の廃棄を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがない事実又は後掲の証拠(以下,書証番号は特 15 記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1) 当事者 ア 原告は,通信機械器具の製造・販売等を業とする会社である。 イ 被告は,通信機械器具の輸入・販売等を業とする会社である。 (2) 本件特許 20 原告は,平成17年10月28日(優先日平成16年10月29日(以下 「本件優先日」という。),優先権主張国日本国)を出願日とする特許出願 (特願2006-542341号)の一部を分割して出願した特許出願(特 願2010-260647号)の一部を更に分割して出願した特許出願(特 願2012-103546号)の一部を分割して,平成24年6月21日, 25 新たに本件特許の特許出願(特願2012-139719号)をし,平成2 3 5年10月4日,本件特許権の設定登録(請求項の数14)を受けた(甲1, 2,乙14。以下,本件特許の特許出願の願書に添付した明細書及び図面 (甲2)を併せて「本件明細書」という。また,明細書の発明の詳細な説明 に記載された段落番号及び図面については,単に【0001】,【図1】など と記載する。)。 5 (3) 本件発明 ア 特許請求の範囲 本件特 「本件明細書」という。また,明細書の発明の詳細な説明 に記載された段落番号及び図面については,単に【0001】,【図1】など と記載する。)。 5 (3) 本件発明 ア 特許請求の範囲 本件特許の特許請求の範囲の請求項1(本件発明)の記載は,次のとお りである。 【請求項1】 10 少なくとも第1の期間と第2の期間を含むOFDM信号を送信する第1 の通信装置であって, 第2の通信装置が同時に使用可能なM個(Mは2以上の偶数)の連続す る周波数チャネルに配置された複数のサブキャリアを用いて,第2の通信 装置へOFDM信号を送信することが少なくとも可能な送信部と, 15 前記第1の期間のOFDM信号の送信に用いる前記M個の周波数チャネ ルに配置された複数のサブキャリアにデータを割り当てる際に,M個の周 波数チャネルのそれぞれの中心に位置するM個全てのサブキャリアを少な くとも使用しないことを特徴とする信号処理部と,を備え, 前記信号処理部は,前記第2の期間のOFDM信号の送信に用いる前記 20 M個の周波数チャネルに配置された複数のサブキャリアにデータを割り当 てる際に,M個の周波数チャネルで構成される周波数帯域の中心に位置す る1個のサブキャリアを少なくとも使用せず,前記M個の周波数チャネル の中心に位置するM個全てのサブキャリアは使用することを特徴とし, 前記Mは,第1の通信装置が同時に使用可能な周波数チャネル数を越え 25 ないことを特徴とする第1の通信装置。 4 イ 構成要件の分説 本件発明は,以下のとおり,構成要件に分説することができる(以下, 分説に係る各構成要件については頭書の符号に対応させて「構成要件A」 などという。)。 A 少なくとも第1の期間と第2の期間を含むOFDM信号を送信する第 5 1の通信装置であって, る(以下, 分説に係る各構成要件については頭書の符号に対応させて「構成要件A」 などという。)。 A 少なくとも第1の期間と第2の期間を含むOFDM信号を送信する第 5 1の通信装置であって, B 第2の通信装置が同時に使用可能なM個(Mは2以上の偶数)の連続 する周波数チャネルに配置された複数のサブキャリアを用いて,第2の 通信装置へOFDM信号を送信することが少なくとも可能な送信部と, C 前記第1の期間のOFDM信号の送信に用いる前記M個の周波数チャ 10 ネルに配置された複数のサブキャリアにデータを割り当てる際に,M個 の周波数チャネルのそれぞれの中心に位置するM個全てのサブキャリア を少なくとも使用しないことを特徴とする信号処理部と,を備え, D 前記信号処理部は,前記第2の期間のOFDM信号の送信に用いる前 記M個の周波数チャネルに配置された複数のサブキャリアにデータを割 15 り当てる際に,M個の周波数チャネルで構成される周波数帯域の中心に 位置する1個のサブキャリアを少なくとも使用せず,前記M個の周波数 チャネルの中心に位置するM個全てのサブキャリアは使用することを特 徴とし, E 前記Mは,第1の通信装置が同時に使用可能な周波数チャネル数を越 20 えない F ことを特徴とする第1の通信装置。 (4) 特許請求の範囲の訂正 ア 特許無効審判における訂正の請求 原告は,本件特許につき,被告が申し立てた特許無効審判事件(無効2 25 020-800071号。以下「本件無効審判事件」という。)において, 5 令和2年11月6日付けで,その特許請求の範囲を訂正することを求める 訂正請求(以下「本件訂正」という。)をした(乙30)。 イ 訂正後の特許請求の範囲 本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである (訂 ,その特許請求の範囲を訂正することを求める 訂正請求(以下「本件訂正」という。)をした(乙30)。 イ 訂正後の特許請求の範囲 本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである (訂正事項に係る部分に下線を付した。以下,訂正後の請求項1に係る発 5 明を「本件訂正発明」という。)。 【請求項1】 周波数帯域上の複数の周波数チャネルを用い,少なくとも第1の期間と 第2の期間を含むOFDM信号を送信する第1の通信装置であって, 第2の通信装置が同時に使用可能であって,前記周波数帯域上の複数の 10 周波数チャネル数より少ないM個(Mは2以上の偶数)の連続する周波数 チャネルに配置された複数のサブキャリアを用いて,第2の通信装置へO FDM信号を送信することが少なくとも可能な送信部と, 前記第1の期間のOFDM信号の送信に用いる前記M個の周波数チャネ ルに配置された複数のサブキャリアにデータを割り当てる際に,M個の周 15 波数チャネルのそれぞれの中心に位置するM個全てのサブキャリアを少な くとも使用しないことを特徴とする信号処理部と,を備え, 前記信号処理部は,前記第2の期間のOFDM信号の送信に用いる前記 M個の周波数チャネルに配置された複数のサブキャリアにデータを割り当 てる際に,M個の周波数チャネルで構成される周波数帯域の中心に位置す 20 る1個のサブキャリアを少なくとも使用せず,前記M個の周波数チャネル の中心に位置するM個全てのサブキャリアは使用することを特徴とし, 前記Mは,第1の通信装置が同時に使用可能な周波数チャネル数より少 ないことを特徴とする第1の通信装置。 ウ 本件訂正発明の構成要件の分説 25 本件訂正発明は,以下のとおり,構成要件に分説することができる(本 6 件訂正に係る部分には下線を付した。以下, ないことを特徴とする第1の通信装置。 ウ 本件訂正発明の構成要件の分説 25 本件訂正発明は,以下のとおり,構成要件に分説することができる(本 6 件訂正に係る部分には下線を付した。以下,分説に係る各構成要件につい ては頭書の符号に対応させて「構成要件A’」などという。)。 A’ 周波数帯域上の複数の周波数チャネルを用い,少なくとも第1の期 間と第2の期間を含むOFDM信号を送信する第1の通信装置であっ て, 5 B’ 第2の通信装置が同時に使用可能であって,前記周波数帯域上の複 数の周波数チャネル数より少ないM個(Mは2以上の偶数)の連続す る周波数チャネルに配置された複数のサブキャリアを用いて,第2の 通信装置へOFDM信号を送信することが少なくとも可能な送信部と, C’ 前記第1の期間のOFDM信号の送信に用いる前記M個の周波数チ 10 ャネルに配置された複数のサブキャリアにデータを割り当てる際に, M個の周波数チャネルのそれぞれの中心に位置するM個全てのサブキ ャリアを少なくとも使用しないことを特徴とする信号処理部と,を備 え, D’ 前記信号処理部は,前記第2の期間のOFDM信号の送信に用いる 15 前記M個の周波数チャネルに配置された複数のサブキャリアにデータ を割り当てる際に,M個の周波数チャネルで構成される周波数帯域の 中心に位置する1個のサブキャリアを少なくとも使用せず,前記M個 の周波数チャネルの中心に位置するM個全てのサブキャリアは使用す ることを特徴とし, 20 E’ 前記Mは,第1の通信装置が同時に使用可能な周波数チャネル数よ り少ない F’ ことを特徴とする第1の通信装置。 (5) 被告製品の概要 被告製品は,いずれも,無線LAN通信を使用してインターネットに接続 25 して通信を行うこと又は無線LAN通信を 数よ り少ない F’ ことを特徴とする第1の通信装置。 (5) 被告製品の概要 被告製品は,いずれも,無線LAN通信を使用してインターネットに接続 25 して通信を行うこと又は無線LAN通信を使用してPC等にインターネット 7 接続機能を提供すること(Wi-Fiテザリング機能)が可能な携帯電話であ って,無線LAN通信に関する規格である「IEEE802.11ac」(以 下「本件規格」という。)に準拠した無線LAN通信を行う機能を有する携帯 電話である。本件規格は,IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers(米国電気電子学会)の略称)のタスクグループであ 5 るIEEE P802.11-TASK GROUP ACが策定した無線 LAN通信の規格であり,いわゆる「Wi-Fi」規格の一つである。現在 広く普及しているWi-Fi規格は,「IEEE802.11a」(以下「8 02.11a規格」という。),「IEEE802.11b」,「IEEE802. 11g」,「IEEE802.11n」(以下「802.11n規格」という。) 10 及び本件規格であり,各規格は,通信速度や通信に使用する周波数帯域等の 特徴が異なる。 (6) 被告の行為 被告は,被告製品を業として使用し,譲渡し,貸し渡し,輸入し,並びに 譲渡及び貸渡しの申出をしている。なお,被告が,被告製品の輸出をしてい 15 るか否かは,当事者間に争いがある。 3 争点 (1) 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(構成要件AないしFの充足 性)(争点1) (2) 無効の抗弁(特許法104条の3第1項)の成否(争点2) 20 ア 本件発明の「Syed Aon Mujtaba,“TGn Sync Proposal Technic 足 性)(争点1) (2) 無効の抗弁(特許法104条の3第1項)の成否(争点2) 20 ア 本件発明の「Syed Aon Mujtaba,“TGn Sync Proposal Technical Specification”, IEEE P802.11 Wireless LANs,IEEE 802. 11-04/889r0,2004年,pp.1-137」(乙1。以下 「乙1文献」という。)を引用例とする新規性欠如(争点2-1) 25 イ 本件発明の米国仮出願60/608,472(以下「乙4仮出願」とい 8 う。)を基礎とする国際出願PCT/US2005/032152(以下 「乙3出願」という。)に基づく拡大先願要件違反(争点2-2) (3) 訂正の再抗弁の成否(争点3) ア 本件訂正に基づく訂正の再抗弁の主張が時機に後れた攻撃防御方法等と して却下されるべきか(争点3-1) 5 イ 本件訂正が訂正要件を満たすか(争点3-2) ウ 被告製品が本件訂正発明の技術的範囲に属するか(構成要件A’ないし F’の充足性)(争点3-3) エ 本件訂正による無効理由の解消の可否(争点3-4) (ア) 本件訂正発明の乙1文献を主引用例とする進歩性欠如(争点3-4- 10 1) (イ) 本件訂正発明の乙4仮出願を基礎とする乙3出願に基づく拡大先願要 件違反(争点3-4-2) (ウ) 本件訂正発明の明確性要件違反(争点3-4-3) (4) 差止め及び廃棄の必要性(争点4) 15 (5) 本件特許権に基づく差止請求権の行使が権利濫用に当たるか(争点5) 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(構成要件AないしF の充足性))について (原告の主張) 20 (1) 被告製品の構成 被告製品は,本件 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(構成要件AないしF の充足性))について (原告の主張) 20 (1) 被告製品の構成 被告製品は,本件規格に従って無線通信を行う手段を備えているから,別 紙2本件発明に対応する被告製品の構成(原告の主張)記載の構成(以下, 同別紙の符号に対応させて「構成a」などという。)を有する。 (2) 被告製品の構成要件充足性 25 ア 構成要件A,C及びDについて 9 (ア) 構成要件A,C及びDにおける「第1の期間」及び「第2の期間」の 意義 a 本件特許の特許請求の範囲の記載(請求項1及び2)及び本件明細 書の記載(【0013】,【0066】ないし【0074】)によれば, 構成要件A,C及びDにおける「第1の期間」及び「第2の期間」は, 5 それぞれ同一の受信端末に対してOFDM信号を送信する期間を意味 するものと解すべきである。 b 被告は,本件発明における「第1の期間」と「第2の期間」は,そ れぞれ,処理可能な帯域幅の異なる別個の受信端末に対してOFDM 信号を送信する期間を意味すると主張する。 10 しかしながら,本件発明に係る特許請求の範囲(請求項1)には, 「第1の期間」と「第2の期間」が別個の受信端末に対してOFDM 信号を送信する期間であるとは記載されていない。 また,上記特許請求の範囲の請求項2が「前記第1の期間のOFD M信号の送信に用いる前記M個の周波数チャネルに配置された複数の 15 サブキャリアに割り当てるデータは,制御情報を表すデータであるこ とを特徴とする請求項1記載の第1の通信装置。」と規定していること からも明らかなとおり,請求項1に係る「第1の期間」は,「制御情報 を表すデータ」,すなわち,処理可能な帯域幅の異なる端末に共 であるこ とを特徴とする請求項1記載の第1の通信装置。」と規定していること からも明らかなとおり,請求項1に係る「第1の期間」は,「制御情報 を表すデータ」,すなわち,処理可能な帯域幅の異なる端末に共通のデ ータを送信する期間を含み,「第2の期間」においては,「第1の期間」 20 でデータを受信した端末と同じ端末がOFDM信号を受信することが 当然に予定されている。そして,このような態様については,本件明 細書において,第2の実施形態として明瞭に説明されている(【006 6】ないし【0074】)。 これに対し,被告は,「制御情報を表すデータ」について,処理可能 25 な帯域幅の異なる端末に共通のデータであるとの解釈を導くことはで 10 きないと主張するが,本件明細書において,「制御スロット」は「基地 局が全移動局に対して報知情報を送信するスロット」(【0013】)で あり,「制御スロットはすべての端末が受信する必要がある」(【006 8】)と記載されており,これらの記載は上記の解釈を導くものである。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 5 (イ) 被告製品が構成要件A,C及びDを充足すること 前記(ア)のとおり,本件発明における「第1の期間」と「第2の期間」 は,それぞれ同一の受信端末に対してOFDM信号を送信する期間を意 味するところ,被告製品において,「L-SIG送信,VHT-SIG- A送信」及び「データ送信」は,同一の受信端末に対して行われる。 10 そして,被告製品の構成aの「L-SIG送信,又は/及び,VHT- SIG-A送信を行う第1の期間」と「データ送信を行う第2の期間」 は,それぞれ構成要件Aの「第1の期間」と「第2の期間」に該当する。 また,構成要件Cは,「前記第1の期間のOFDM信号の送信に用いる 前記M個の周波数チャネ の期間」と「データ送信を行う第2の期間」 は,それぞれ構成要件Aの「第1の期間」と「第2の期間」に該当する。 また,構成要件Cは,「前記第1の期間のOFDM信号の送信に用いる 前記M個の周波数チャネルに配置された複数のサブキャリアにデータを 15 割り当てる際に,M個の周波数チャネルのそれぞれの中心に位置するM 個全てのサブキャリアを少なくとも使用しないことを特徴とする信号処 理部と,を備え,」であるところ,被告製品の構成cは,「前記第1の期 間のOFDM信号の送信に用いる前記4個の周波数チャネルに配置され た各64,合計256のサブキャリアにデータを割り当てる際に,4個 20 の周波数チャネルのそれぞれの中心に位置する4個全てのサブキャリア を少なくとも使用しないことを特徴とする信号処理部と,を備え,」であ る。 さらに,構成要件Dは,「前記信号処理部は,前記第2の期間のOFD M信号の送信に用いる前記M個の周波数チャネルに配置された複数のサ 25 ブキャリアにデータを割り当てる際に,M個の周波数チャネルで構成さ 11 れる周波数帯域の中心に位置する1個のサブキャリアを少なくとも使用 せず,前記M個の周波数チャネルの中心に位置するM個全てのサブキャ リアは使用することを特徴とし,」であるところ,被告製品の構成dは, 「前記信号処理部は,前記第2の期間のOFDM信号の送信に用いる前 記4個の周波数チャネルに配置された256のサブキャリアにデータを 5 割り当てる際に,4個の周波数チャネルで構成される周波数帯域の中心 に位置する1個のサブキャリアを少なくとも使用せず,前記4個の周波 数チャネルの中心に位置する4個全てのサブキャリアは使用することを 特徴とし,」である。 したがって,構成a,c及びdは,それぞれ順に,構成要件A,C及 10 びDを充足する。 せず,前記4個の周波 数チャネルの中心に位置する4個全てのサブキャリアは使用することを 特徴とし,」である。 したがって,構成a,c及びdは,それぞれ順に,構成要件A,C及 10 びDを充足する。 イ 構成要件B,E及びFについて 構成要件Bは,「第2の通信装置が同時に使用可能なM個(Mは2以上の 偶数)の連続する周波数チャネルに配置された複数のサブキャリアを用い て,第2の通信装置へOFDM信号を送信することが少なくとも可能な送 15 信部と,」であるところ,被告製品の構成bは,「第2の通信装置が同時に 使用可能な4個(偶数)の連続する周波数チャネルに配置された256の サブキャリアを用いて,第2の通信装置へOFDM信号を送信することが 少なくとも可能な送信部と,」である。 そして,構成要件Eは,「前記Mは,第1の通信装置が同時に使用可能な 20 周波数チャネル数を越えない」であるところ,被告製品の構成eは,「前記 4個の周波数チャネル数は,第1の通信装置が同時に使用可能な周波数チ ャネル数を越えない」である。 さらに,構成要件Fは,「ことを特徴とする第1の通信装置。」であると ころ,被告製品の構成fは,「ことを特徴とする第1の通信装置。」である。 25 したがって,構成b,e及びfは,それぞれ順に,構成要件B,E及び 12 Fを充足する。 (3) 小括 以上のとおり,被告製品は,構成要件AないしFをいずれも充足するもの であって,本件発明の技術的範囲に属する。 (被告の主張) 5 (1) 被告製品の構成 原告が主張する構成aないしfについては,以下のとおり,いずれも否認 する。 ア 構成aについて 被告製品が通信装置であること,被告製品において,L-SIG送信, 10 VHT-SIG-A送信及びデータ送信を行う期間がそれぞれ存 いては,以下のとおり,いずれも否認 する。 ア 構成aについて 被告製品が通信装置であること,被告製品において,L-SIG送信, 10 VHT-SIG-A送信及びデータ送信を行う期間がそれぞれ存在するこ とは認めるが,被告製品について,本件発明における「第1の期間」,「第 2の期間」及び「第1の通信装置」との用語を用いて特定することについ ては否認する。 イ 構成bについて 15 被告製品においては,L-SIG送信,VHT-SIG-A送信及びデ ータ送信を行う期間のいずれにおいても,256のサブキャリア全てを用 いることはない。したがって,「256のサブキャリアを用いて,…OFD M信号を送信する」の部分が,256のサブキャリア全てを用いるという 意味であれば否認する。 20 また,被告製品が他の通信装置に対しOFDM信号を送信する送信部を 備えることは認めるが,当該他の通信装置について本件発明の「第2の通 信装置」との用語を用いて特定することについては否認する。 ウ 構成cについて 前記アのとおり,被告製品は本件発明の「第1の期間」との用語によっ 25 て特定されるOFDM信号の送信を行うものではない。 13 また,前記イのとおり,被告製品においては,L-SIG送信,VHT -SIG-A送信及びデータ送信を行う期間のいずれにおいても,256 のサブキャリア全てにデータが割り当てられることはないから,「前記4個 の周波数チャネルに配置された各64,合計256のサブキャリアにデー タを割り当てる」ものではない。 5 エ 構成dについて 前記アのとおり,被告製品は本件発明の「第2の期間」との用語によっ て特定されるOFDM信号の送信を行うものではない。また,前記イのと おり,被告製品においては,L-SIG送信,VHT-SIG-A送信及 びデー とおり,被告製品は本件発明の「第2の期間」との用語によっ て特定されるOFDM信号の送信を行うものではない。また,前記イのと おり,被告製品においては,L-SIG送信,VHT-SIG-A送信及 びデータ送信を行う期間のいずれにおいても,256のサブキャリア全て 10 にデータが割り当てられることはないから,「前記4個の周波数チャネルに 配置された256のサブキャリアにデータを割り当てる」ものではない。 オ 構成e及びfについて 前記アのとおり,被告製品は本件発明の用語である「第1の通信装置」 によって特定されるものではない。 15 (2) 被告製品の構成要件充足性 ア 構成要件A,C及びDについて (ア) 構成要件A,C及びDにおける「第1の期間」及び「第2の期間」の 意義 a 本件発明は,OFDMを要素技術とするOFDMAに関する発明で 20 ある。ここで,OFDMAとは,OFDM信号を使用して複数の異な る端末が同一時間に通信を行うことを可能とする技術である(【004 1】参照)。 従来から,OFDM信号を送受信する場合,通信帯域の中心(本件 明細書における「f(0)」)をDC(直流)成分として扱い,かつ, 25 DC成分は送受信機におけるノイズの影響を受けやすいため,DC成 14 分(f(0))に相当するサブキャリアにはデータを割り当てない(変 調を施さない)こととされている(【0009】等)。そして,従来の OFDMAの送信装置においては,全帯域の中心に位置するサブキャ リア(f(0))を使用しない方式を採っていた(【0024】)。 OFDMAの受信機が特定の帯域のみを受信する例を考えると,受 5 信機としては,データを復調するのに際して,この帯域の中心に位置 するサブキャリアを中心周波数として扱うことになるが(【0024】), 当該 MAの受信機が特定の帯域のみを受信する例を考えると,受 5 信機としては,データを復調するのに際して,この帯域の中心に位置 するサブキャリアを中心周波数として扱うことになるが(【0024】), 当該サブキャリアは「全帯域」の中心に位置するサブキャリア(f (0))ではないため,特性が悪いにもかかわらず,他のサブキャリア と同様に変調が加えられており,そのため,特性の劣化が起こり,受 10 信スロットに誤りが発生し,再送が起こるなど,システム全体のスル ープットの低下につながるといった問題があった(【0025】)。 b そこで,本件発明は,「送受信できる帯域幅が限られた通信相手に対 しても,直流成分におけるオフセットの影響を与えずに無線送信を行 なうことができる無線送信機を提供することを目的」とし(【002 15 6】),その解決手段として,構成要件C及びDに規定されるように, 「第1の期間」と「第2の期間」とにおいて,使用しないサブキャリ アを変えるという構成を採用しているのである。 具体的には,構成要件Cに規定されるように,「第1の期間」におい ては,「M個の周波数チャネルのそれぞれの中心に位置するM個全ての 20 サブキャリアを使用しない」ところ,受信端末が処理することができ る帯域幅が限定されていても,当該処理可能な帯域幅の中心に位置す るサブキャリアは変調されないこととなるから,送受信できる帯域幅 が限られた受信端末においても,特性の劣化なく通信を行うことがで きる。すなわち,「第1の期間」は,送受信できる帯域幅が限られた受 25 信端末に対する送信期間であると解される。 15 一方,構成要件Dに規定されるように,「第2の期間」においては, 「M個の周波数チャネルで構成される周波数帯域の中心に位置する1 個のサブキャリアを少なくとも使用せず,前 あると解される。 15 一方,構成要件Dに規定されるように,「第2の期間」においては, 「M個の周波数チャネルで構成される周波数帯域の中心に位置する1 個のサブキャリアを少なくとも使用せず,前記M個の周波数チャネル の中心に位置するM個全てのサブキャリアは使用する」ことになるか ら,「第2の期間」は,全帯域を利用可能な受信端末に対する送信期間 5 であると解される。 以上のとおり,本件発明における「第1の期間」と「第2の期間」 は,それぞれ,処理可能な帯域幅の異なる別個の受信端末に対してO FDM信号を送信する期間を意味すると限定的に解されるほかない。 c 原告の主張について 10 原告は,本件特許の請求項2の記載を理由に,本件発明(請求項1) に係る「第1の期間」は,当該請求項2の「制御情報を表すデータ」, すなわち,「処理可能な帯域幅の異なる端末に共通のデータ」を送信す る期間を含み,「第2の期間」においては,「第1の期間」でデータを 受信した端末と同じ端末がOFDM信号を受信することが当然に予定 15 されていると主張する。 しかしながら,原告の主張は「制御情報を表すデータ」が「処理可 能な帯域幅の異なる端末に共通のデータ」であることを前提とするも のであるところ,上記請求項2の「制御情報」という文言からそのよ うな解釈を導くことはできないし,本件明細書においても「制御情報」 20 をそのように解釈すべき根拠となる記載は存在しない。上記請求項2 は,本件発明に係る請求項1の従属項であり,前記bの送受信できる 帯域幅が限られた受信端末に対する送信期間である「第1の期間」に おいて,そのような送受信できる帯域幅が限られた受信端末向けの 「制御情報」が割り当てられることを規定しているにすぎない。 25 したがって,原告の上記主張は理由がなく,本件 である「第1の期間」に おいて,そのような送受信できる帯域幅が限られた受信端末向けの 「制御情報」が割り当てられることを規定しているにすぎない。 25 したがって,原告の上記主張は理由がなく,本件発明における「第 16 1の期間」及び「第2の期間」は前記bのとおり解すべきである。 (イ) 被告製品が構成要件A,C及びDを充足しないこと 被告製品において,L-SIG送信,VHT-SIG-A送信及びデ ータ送信は,いずれも同一の受信端末に対して行われるものであるから, 被告製品は,「第1の期間」及び「第2の期間」に係る構成を備えるもの 5 ではなく,構成要件A,C及びDを充足しない。 イ 構成要件B,E及びFについて 被告製品が構成要件B,E及びFを充足することは否認する。 (3) 小括 よって,被告製品が本件発明の技術的範囲に属するとは認められない。 10 2 争点2-1(本件発明の乙1文献を引用例とする新規性欠如)について (被告の主張) (1) 乙1文献に記載された発明 ア 乙1文献は,IEEE802.11規格(以下「802.11規格」と いう。)の策定作業に際して作成された平成16年8月13日付けの寄書 15 (規格提案文書)であり,何人もアクセス可能な802.11規格のFT P(File Transfer Protocol)サーバに,同月1 4日付けでアップロードされたものである。 このように,乙1文献は,遅くとも本件優先日(平成16年10月29 日)より前の平成16年8月14日に,電気通信回線を通じて公衆に利用 20 可能となったものである。 イ 乙1文献には,以下の発明(以下「乙1発明」という。)が記載されてい る。 構成1a:少なくともL-SIG(レガシー信号フィールド)送信を行 う期間,HT-SIG(高スループット信 ものである。 イ 乙1文献には,以下の発明(以下「乙1発明」という。)が記載されてい る。 構成1a:少なくともL-SIG(レガシー信号フィールド)送信を行 う期間,HT-SIG(高スループット信号フィールド)送 25 信を行う期間,及びデータ送信を行うデータ送信期間を含む 17 OFDM信号を送信する送信機であって, 構成1b:HT受信機が同時に使用可能な2個の連続する20MHz幅 のサブチャネルに配置された複数のサブチャネルを用いて, HT受信機へOFDM信号を送信することが少なくとも可能 な送信部と, 5 構成1c:L-SIG送信又はHT-SIG送信を行う前記期間のOF DM信号の送信に用いる前記2個の20MHz幅のサブチャ ネルに配置された複数のサブキャリアにデータを割り当てる 際に,2個の20MHzサブチャネルの中心に位置する2個 のサブキャリア±32を使用しないことを特徴とする信号処 10 理部と,を備え, 構成1d:前記信号処理部は,前記データ送信期間のOFDM信号の送 信に用いる前記2個の20MHz幅のサブチャネルに配置さ れた複数のサブキャリアにデータを割り当てる際に,2個の 20MHz幅のサブチャネルで構成される40MHz帯域の 15 中心に位置するトーン(0)を少なくとも使用せず,前記2 個の20MHz幅のサブチャネルの中心に位置する2個全て のトーン(±32)は使用することを特徴とし, 構成1e:2個のサブチャネル数は,送信機が同時に使用可能なサブチ ャネル数を越えない 20 構成1f:構成1aないし1eを備えることを特徴とする送信機。 (2) 本件発明と乙1発明との対比(本件発明と乙1発明の同一性) 以下のとおり,本件発明は乙1発明と同一である。 ア 構成要件Aと乙1発明の構成1aについて 乙1発明の「L-SI する送信機。 (2) 本件発明と乙1発明との対比(本件発明と乙1発明の同一性) 以下のとおり,本件発明は乙1発明と同一である。 ア 構成要件Aと乙1発明の構成1aについて 乙1発明の「L-SIG送信を行う期間」及び「HT-SIG送信を行 25 う期間」は,それぞれ,本件発明の「第1の期間」に相当し,乙1発明の 18 「データ送信を行うデータ送信期間」は,本件発明の「第2の期間」に相 当する。 乙1発明の「送信機」が「通信装置」に含まれることは明らかであるか ら,乙1発明の「送信機」は,本件発明の「第1の通信装置」に相当する。 したがって,乙1発明の構成1aは,本件発明の構成要件Aに相当する。 5 イ 構成要件Bと乙1発明の構成1bについて 本件発明の「第2の通信装置」は,「OFDM信号」の送信先であるから, 「OFDM信号」を受信する受信装置であることは明らかである。よって, 乙1発明の「HT受信機」は,本件発明の「第2の通信装置」に相当する。 乙1発明の「サブチャネル」の数は「2個」であり,「2以上の偶数」で 10 あることは明らかであるから,本件発明の「M個」に相当し,乙1発明の 「HT受信機が同時に使用可能な2個の連続する20MHz幅のサブチャ ネル」は,本件発明の「第2の通信装置が同時に使用可能なM個(Mは2 以上の偶数)の連続する周波数チャネル」に相当する。 乙1発明の「…連続する20MHz幅のサブチャネルに配置された複数 15 のサブキャリア」は,本件発明の「…連続する周波数チャネルに配置され た複数のサブキャリア」に相当する。 乙1発明の「…サブチャネルに配置された複数のサブキャリアを用いて, HT受信機へOFDM信号を送信することが少なくとも可能な送信部」は, 本件発明の「…周波数チャネルに配置された複数のサブキャリアを用 乙1発明の「…サブチャネルに配置された複数のサブキャリアを用いて, HT受信機へOFDM信号を送信することが少なくとも可能な送信部」は, 本件発明の「…周波数チャネルに配置された複数のサブキャリアを用いて, 20 第2の通信装置へOFDM信号を送信することが少なくとも可能な送信部」 に相当する。 したがって,乙1発明の構成1bは,本件発明の構成要件Bに相当する。 ウ 構成要件Cと乙1発明の構成1cについて 前記ア及びイのとおり,乙1発明の「L-SIG送信又はHT-SIG 25 送信を行う前記期間」は本件発明の「第1の期間」に,乙1発明の「2個 19 の20MHz幅のサブチャネル」は本件発明の「前記M個の周波数チャネ ル」に,それぞれ相当する。また,乙1発明の「…サブチャネルに配置さ れた複数のサブキャリア」が,本件発明の「…周波数チャネルに配置され た複数のサブキャリア」に相当することは明らかである。 乙1発明の「2個の20MHzサブチャネルのそれぞれの中心に位置す 5 る2個のサブキャリア±32を使用しないこと」は,本件発明の「M個の 周波数チャネルのそれぞれの中心に位置するM個全てのサブキャリアを少 なくとも使用しないこと」に相当する。 したがって,乙1発明の構成1cは,本件発明の構成要件Cに相当する。 エ 構成要件Dと乙1発明の構成1dについて 10 前記アないしウのとおり,乙1発明の「データ送信期間」は本件発明の 「第2の期間」に,乙1発明の「2個の20MHz幅のサブチャネル」は 本件発明の「前記M個の周波数チャネル」に相当する。また,乙1発明の 「…サブチャネルに配置された複数のサブキャリア」が,本件発明の「… 周波数チャネルに配置された複数のサブキャリア」に相当することは明ら 15 かである。 よって,乙1発明の「2個の20MHz 明の 「…サブチャネルに配置された複数のサブキャリア」が,本件発明の「… 周波数チャネルに配置された複数のサブキャリア」に相当することは明ら 15 かである。 よって,乙1発明の「2個の20MHz幅のサブチャネルで構成される 40MHz帯域の中心に位置するトーン(0)を少なくとも使用せず」は, 本件発明の「M個の周波数チャネルで構成される周波数帯域の中心に位置 する1個のサブキャリアを少なくとも使用せず」に相当し,乙1発明の 20 「前記2個の20MHz幅のサブチャネルの中心に位置する2個全てのト ーン(±32)は使用する」は,本件発明の「前記M個の周波数チャネル の中心に位置するM個全てのサブキャリアは使用する」に相当する。 したがって,乙1発明の構成1dは,本件発明の構成要件Dに相当する。 オ 構成要件Eと乙1発明の構成1eについて 25 前記ア及びイのとおり,乙1発明の「送信機」は本件発明の「第1の通 20 信装置」に相当し,乙1発明の「サブチャネル」の数は,「2個」であり, これが「2以上の偶数」であることは明らかであるから,本件発明の「M 個」に相当する。 したがって,乙1発明の構成1eは,本件発明の構成要件Eに相当する。 カ 構成要件Fと乙1発明の構成1fについて 5 前記アのとおり,乙1発明の「送信機」は,本件発明の「第1の通信装 置」に相当する。 したがって,乙1発明の構成1fは,本件発明の構成要件Fに相当する。 (3) 原告の主張する相違点について ア 原告は,本件発明と乙1発明との間に相違点があると主張するが,原告 10 が相違点と主張するのは,「受信端末が同時に使用可能な連続する周波数チ ャネルの数」が「2以上の偶数」(本件発明)であるか「2」(乙1発明) であるかという点にすぎない。しかしながら,「2以上の偶数」に が相違点と主張するのは,「受信端末が同時に使用可能な連続する周波数チ ャネルの数」が「2以上の偶数」(本件発明)であるか「2」(乙1発明) であるかという点にすぎない。しかしながら,「2以上の偶数」に「2」が 含まれることは明らかであるから,この点は本件発明と乙1発明との相違 点にはなり得ない。 15 イ 原告は,本件発明の技術的思想として,使用可能な周波数チャネル数が 「2以上の偶数」であるか否かによって使用するサブキャリアを区別する という点を挙げ,乙1発明にはこれが記載されていないなどと主張するが, その点は,そもそも本件発明の発明特定事項(構成要件)ではない。 ウ したがって,本件発明と乙1発明との間には相違点は存在せず,この点 20 の原告の主張には理由がない。 (4) 小括 よって,本件発明は,本件優先日(平成16年10月29日)より前に電 気通信回線を通じて公衆に利用可能となった乙1発明(特許法29条1項3 号)と同一であるから,新規性を有しない。 25 (原告の主張) 21 (1) 本件発明と乙1発明との間に相違点があること ア 乙1発明は本件発明の技術的思想を備えていないこと (ア) 本件明細書には,本件発明が解決しようとする課題として,送受信で きる帯域幅が限られた様々な通信相手が存在することを前提として,そ のような通信相手に対しても,DC成分におけるオフセットの影響を与 5 えずに無線送信を行うことができる無線送信機を提供することが記載さ れている(【0024】ないし【0026】)。その解決手段として,本件 発明は,第1の期間,例えば,報知・制御情報データを送信するOFD M信号区間においては,少なくとも周波数チャネル(サブチャネルと同 じ。)の中心サブキャリアを使用しない(【0059】)ことにより,1個 10 の周波 間,例えば,報知・制御情報データを送信するOFD M信号区間においては,少なくとも周波数チャネル(サブチャネルと同 じ。)の中心サブキャリアを使用しない(【0059】)ことにより,1個 10 の周波数チャネルのみ受信可能な通信装置においても,DC成分による オフセットの影響を生じさせることなく,報知・制御情報データを送信 するOFDM信号の受信を行なうことができるものとし,第2の期間, 例えば,特定の通信端末向けの通信データを送信するOFDM信号区間 においては,各端末の特性,すなわち,各端末が使用可能な周波数チャ 15 ネルの数に応じて,適応的に使用しないサブキャリアを設定するものと した(【0066】)。具体的には,本件発明は,周波数帯域上の複数の周 波数チャネルのうち,特定の通信端末がM個の周波数チャネルを利用可 能である場合に,Mが「2以上の偶数」であるか否かによって,使用す るサブキャリアを区別し(【0062】,【0063】),Mが「2以上の偶 20 数」の場合には,M個の周波数チャネルで構成される周波数帯域の中心 に位置するサブキャリアを使わず,各M個の周波数チャネルの中心サブ キャリアは全て使用する構成を採用した。 本件発明は,このような構成を採用することにより,各端末の特性に 応じて,通信データの送信に使用しないサブキャリアを減らし,周波数 25 の利用効率を高めることができるという効果を奏する(【0065】ない 22 し【0081】,【図2】,【図3】)。すなわち,本件発明の構成によれば, 例えば,本件明細書の第2の実施形態におけるC端末,D端末又はE端 末へのサブキャリア割当てのように,各周波数帯域の中心サブキャリア のみならず,両端のサブキャリアの使用を含め,使用・不使用サブキャ リアを調整することも可能となり,効率的でかつ特性劣化のな 末又はE端 末へのサブキャリア割当てのように,各周波数帯域の中心サブキャリア のみならず,両端のサブキャリアの使用を含め,使用・不使用サブキャ リアを調整することも可能となり,効率的でかつ特性劣化のない通信を 5 行なうことが可能になる(【0071】ないし【0073】,【0081】, 【図3】)。 (イ) これに対して,乙1発明は,スループット向上のために,IEEE8 02.11a/g規格における20MHz幅の1個のチャネルを,2個 ボンディングして40MHz幅のチャネルとしてデータ送信を行う際に, 10 最大帯域幅である40MHz幅の中心に位置するトーンを使用しないと いう構成を備えるにすぎない。最大帯域幅の中心に位置するトーンを使 わないこと自体は従来から知られ,本件明細書にも記載されている従来 技術(【0024】)である。 言い換えれば,乙1発明においては,2つのチャネルをボンディング 15 して最大帯域幅を構成するものとしたために,最大帯域幅を構成する周 波数チャネルの数が「2個」となっているにすぎず,受信端末の特性に 応じて使用される周波数チャネルの数(M)が「2個」を上回る偶数と なり得ることや,最大帯域幅を下回る周波数チャネルの数(M)が2個 以上の「偶数」となり得ることは,全く予定されていない(両端のサブ 20 キャリアを使用するか否かという技術的思想もない)。 ましてや,乙1には,周波数帯域上の複数の周波数チャネルのうち, 受信端末が同時に使用可能な連続する周波数チャネルの数が,「2以上の 偶数」であるか否かを,使用するサブキャリアを区別する基準とし,当 該周波数チャネルの数が「2以上の偶数」の場合には,当該個数の周波 25 数チャネルで構成される周波数帯域の中心に位置するサブキャリアを使 23 わず,それぞれの周波数チャネルの中心サ とし,当 該周波数チャネルの数が「2以上の偶数」の場合には,当該個数の周波 25 数チャネルで構成される周波数帯域の中心に位置するサブキャリアを使 23 わず,それぞれの周波数チャネルの中心サブキャリアは全て使用する, という技術的思想は,一切記載されていない。 イ 本件発明と乙1発明との相違点 前記アによれば,本件発明と乙1発明との間には,次の相違点があると いうべきであり,新規性欠如を主張する被告の主張には理由がない。 5 (相違点) 本件発明は,第2の期間における送信において,周波数帯域上の複数の 周波数チャネルのうち,受信端末が同時に使用可能な連続する周波数チャ ネルの数が「2以上の偶数」の場合に,当該個数の周波数チャネルで構成 される周波数帯域の中心に位置するサブキャリアを使わず,それぞれの周 10 波数チャネルの中心サブキャリアは全て使用するとの構成を備えるのに対 し,乙1発明は,受信端末が同時に使用可能な連続する周波数チャネルの 数が「2」である場合に,当該「2個」の周波数チャネルに配置されたサ ブキャリアにデータを割り当てる際に,「2個」で構成される周波数帯域の 中心に位置するサブキャリアを使わず,各1個の周波数チャネルの中心サ 15 ブキャリアは使用するとの構成を備えること。 (2) 相違点が存在しないとの被告の主張について ア 被告は,「2以上の偶数」に「2」が含まれるとして,「受信端末が同時 に使用可能な連続する周波数チャネルの数」が「2以上の偶数」であるか 「2」であるかについては本件発明と乙1発明との相違点にはなり得ない 20 と主張する。 しかしながら,本件発明は,「第2の通信装置が同時に使用可能」な「連 続する周波数チャネルの数」(構成要件B)と,「第1の通信装置が同時に 使用可能な周波数チャネルの数」(構成要件E と主張する。 しかしながら,本件発明は,「第2の通信装置が同時に使用可能」な「連 続する周波数チャネルの数」(構成要件B)と,「第1の通信装置が同時に 使用可能な周波数チャネルの数」(構成要件E)とを,特許請求の範囲の文 言上,明確に区別している。その上で,本件発明は,「第2の通信装置が同 25 時に使用可能」な「連続する周波数チャネルの数」が,「2以上の偶数」で 24 あることを特定し(構成要件B),これが,「第1の通信装置が同時に使用 可能な周波数チャネル数を越えない」(構成要件E)ものとしている。この ように,本件発明は,「第1の通信装置が同時に使用可能な周波数チャネル 数」を上限としつつ,「第2の通信装置が同時に使用可能」な「連続する周 波数チャネルの数」が「2以上の偶数」となる複数の値をとり得るとする 5 発明であって,「第2の期間」においては,最大帯域幅の中で,「第2の通 信装置」である各端末の特性,すなわち,各端末が使用可能な周波数チャ ネルの数に応じて,適応的に使用しないサブキャリアを設定することがで きる。 これに対し,乙1発明は,チャネルを2個ボンディングしてデータ送信 10 を行うことを発明特定事項として想定している。そのため,「第2の通信装 置が同時に使用可能」な「連続する周波数チャネルの数」は,「2」のみで あり,これが「第1の通信装置が同時に使用可能な周波数チャネル数」と なる。つまり,乙1発明のデータ送信においては,各端末が,最大帯域幅 の中の「2以上の偶数」のうち,どの個数の連続する周波数チャネルを同 15 時に使用可能であるかという,各端末の特性に応じて,適応的に使用しな いサブキャリアを設定することができない。 このように,本件発明と乙1発明とでは,「第2の通信装置が同時に使用 可能」な「連続する周波数チャネルの数 るかという,各端末の特性に応じて,適応的に使用しな いサブキャリアを設定することができない。 このように,本件発明と乙1発明とでは,「第2の通信装置が同時に使用 可能」な「連続する周波数チャネルの数」の取り得る値の範囲が異なって おり,しかも,これにより,「第1の通信装置が同時に使用可能な周波数チ 20 ャネル数」との関係も異なるから,「2以上の偶数」に「2」が含まれると の理由によって,両者を同一であると認定することはできない。 イ 被告は,本件発明において,周波数チャネルが「2以上の偶数」である か否かによって使用するサブキャリアを区別するとの点は,発明特定事項 (構成要件)ではないと主張する。 25 しかしながら,構成要件Bは,「第2の通信装置が同時に使用可能なM個 25 (Mは2以上の偶数)」と明確に規定し,構成要件C及びDは,「2以上の 偶数」の連続する周波数チャネルに配置された複数のサブキャリアにデー タを割り当てる場合のサブキャリアの使用についてのみ規定しているから, 周波数チャネルが「2以上の偶数」であることは,単なる技術的思想に留 まらず,構成要件B,C及びDに規定された本件発明の発明特定事項(構 5 成要件)である。 ウ したがって,本件発明と乙1発明との間に相違点がないとの被告の主張 は理由がない。 (3) 小括 よって,乙1文献を引用例とする新規性欠如に係る無効の抗弁は理由がな 10 い。 3 争点2-2(本件発明の乙4仮出願を基礎とする乙3出願に基づく拡大先願 要件違反)について (被告の主張) (1) 乙4仮出願及び乙3出願の出願書類に記載された発明について 15 ア 乙3出願は,その優先権証明書(乙4。以下,優先権証明書に添付され た明細書及び図面を「乙4明細書」という。)に示される乙4仮出願を基礎 とし,本 3出願の出願書類に記載された発明について 15 ア 乙3出願は,その優先権証明書(乙4。以下,優先権証明書に添付され た明細書及び図面を「乙4明細書」という。)に示される乙4仮出願を基礎 とし,本件優先日(平成16年10月29日)より前の平成16年9月9 日を優先日とする国際特許出願であって,本件優先日後に国際公開第20 06/029313号(乙3。以下「乙3公報」という。)によって国際公 20 開され,日本国特許庁に翻訳文が提出されたものである。 また,本件特許に係る発明の発明者は,乙4仮出願に係る発明をした者 と同一ではなく,本件特許の出願時において,本件特許の出願人と乙3出 願の出願人とは同一ではなかった。 イ 乙3出願の国際出願日における国際出願の明細書,特許請求の範囲又は 25 図面(乙3公報),及びその基礎出願である乙4仮出願の願書に最初に添付 26 した明細書又は図面(乙4明細書)には,以下の発明(以下「乙3発明」 という。)が記載されている。 構成3a:少なくともL-SF送信を行う期間,HT-SF送信を行う 期間,及びデータ送信を行うデータ送信期間を含むOFDM 信号を送信する送信機であって, 5 構成3b:受信機が同時に使用可能な2個の連続する20MHz幅のチ ャネルに配置された複数のサブキャリアを用いて,受信機へ OFDM信号を送信することが少なくとも可能な送信部と, 構成3c:L-SF送信又はHT-SF送信を行う前記期間のOFDM 信号の送信に用いる前記2個の20MHz幅のチャネルに配 10 置された複数のサブキャリアにデータを割り当てる際に,2 個の20MHzチャネルの中心に位置する2個のサブキャリ アを使用しないことを特徴とする信号処理部と,を備え, 構成3d:前記信号処理部は,前記データ送信期間のOFDM信号の送 信 割り当てる際に,2 個の20MHzチャネルの中心に位置する2個のサブキャリ アを使用しないことを特徴とする信号処理部と,を備え, 構成3d:前記信号処理部は,前記データ送信期間のOFDM信号の送 信に用いる前記2個の20MHz幅のチャネルに配置された 15 複数のサブキャリアにデータを割り当てる際に,2個の20 MHz幅のチャネルで構成される40MHz帯域の中心に位 置するトーン(0)を少なくとも使用せず,前記2個の20 MHz幅のチャネルの中心に位置する2個全てのトーンは使 用することを特徴とし, 20 構成3e:2個のチャネル数は,送信機が同時に使用可能なチャネル数 を越えない 構成3f:構成3aないし3eを備えることを特徴とする送信機。 ウ 乙3発明に構成3dが開示されていることについて 乙3公報及び乙4明細書には,40MHzモードにおける128点FF 25 T(高速フーリエ変換)のデータ・シンボルにおいて,40MHz帯域の 27 中心に位置するトーン(0)を少なくとも使用せず,2個の20MHz幅 のチャネルの中心に位置する2個全てのトーン(±32)は使用されるこ とが記載されている(又は少なくとも記載されているに等しい)。したがっ て,乙3発明には構成3dが開示されているというべきである。 原告は,乙3公報には「256点FFTのためのトーン設計」が記載さ 5 れているにすぎない等と主張するが,乙3公報は,40MHzの128点 FFTモードを前提として,システム効率をより向上させるために40M Hzの256点FFTモードのデータ・シンボル・トーン設計を提案する ものである。つまり,乙3発明においては,128点FFTモード及び2 56点FFTモードの両方が開示されているのであって,256点FFT 10 モードの開示があるからといって,128点 設計を提案する ものである。つまり,乙3発明においては,128点FFTモード及び2 56点FFTモードの両方が開示されているのであって,256点FFT 10 モードの開示があるからといって,128点FFTモードに係る構成3d が開示されていないことにはならない。 (2) 本件発明と乙3発明との対比(本件発明と乙3発明の同一性) 以下のとおり,本件発明は乙3発明と同一である。 ア 構成要件Aと乙3発明の構成3aについて 15 乙3発明の「L-SF送信を行う期間」及び「HT-SF送信を行う期 間」は,それぞれ,本件発明の「第1の期間」に相当し,乙3発明の「デ ータ送信を行うデータ送信期間」は,本件発明の「第2の期間」に相当す る。 乙3発明の「送信機」が「通信装置」に含まれることは明らかであるか 20 ら,乙3発明の「送信機」は,本件発明の「第1の通信装置」に相当する。 したがって,乙3発明の構成3aは,本件発明の構成要件Aに相当する。 イ 構成要件Bと乙3発明の構成3bについて 本件発明の「第2の通信装置」は,「OFDM信号」の送信先であるから 「OFDM信号」を受信する受信装置であることは明らかである。よって, 25 乙3発明の「受信機」は,本件発明の「第2の通信装置」に相当する。 28 乙3発明の「チャネル」の数は「2個」であり,「2以上の偶数」である ことは明らかであるから,本件発明の「M個」に相当し,乙3発明の「受 信機が同時に使用可能な2個の連続する20MHz幅のチャネル」は,本 件発明の「第2の通信装置が同時に使用可能なM個(Mは2以上の偶数) の連続する周波数チャネル」に相当する。 5 乙3発明の「…連続する20MHz幅のチャネルに配置された複数のサ ブキャリア」は,本件発明の「…連続する周波数チャネルに配置された複 数のサブ の偶数) の連続する周波数チャネル」に相当する。 5 乙3発明の「…連続する20MHz幅のチャネルに配置された複数のサ ブキャリア」は,本件発明の「…連続する周波数チャネルに配置された複 数のサブキャリア」に相当する。 乙3発明の「…チャネルに配置された複数のサブキャリアを用いて,受 信機へOFDM信号を送信することが少なくとも可能な送信部」は,本件 10 発明の「…周波数チャネルに配置された複数のサブキャリアを用いて,第 2の通信装置へOFDM信号を送信することが少なくとも可能な送信部」 に相当する。 したがって,乙3発明の構成3bは,本件発明の構成要件Bに相当する。 ウ 構成要件Cと乙3発明の構成3cについて 15 前記ア及びイのとおり,乙3発明の「L-SF送信又はHT-SF送信 を行う前記期間」は本件発明の「第1の期間」に,乙3発明の「2個の2 0MHz幅のチャネル」は本件発明の「前記M個の周波数チャネル」に相 当する。また,乙3発明の「…チャネルに配置された複数のサブキャリア」 が,本件発明の「…周波数チャネルに配置された複数のサブキャリア」に 20 相当することは明らかである。 乙3発明の「2個の20MHzチャネルのそれぞれの中心に位置する2 個のサブキャリアを使用しないこと」は,本件発明の「M個の周波数チャ ネルのそれぞれの中心に位置するM個全てのサブキャリアを少なくとも使 用しないこと」に相当する。 25 したがって,乙3発明の構成3cは,本件発明の構成要件Cに相当する。 29 エ 構成要件Dと乙3発明の構成3dについて 前記アないしウのとおり,乙3発明の「データ送信期間」は,本件発明 の「第2の期間」に,乙3発明の「2個の20MHz幅のチャネル」は, 本件発明の「前記M個の周波数チャネル」に相当する。また,乙3発明の 「…チ いしウのとおり,乙3発明の「データ送信期間」は,本件発明 の「第2の期間」に,乙3発明の「2個の20MHz幅のチャネル」は, 本件発明の「前記M個の周波数チャネル」に相当する。また,乙3発明の 「…チャネルに配置された複数のサブキャリア」が,本件発明の「…周波 5 数チャネルに配置された複数のサブキャリア」に相当することは明らかで ある。 よって,乙3発明の「2個の20MHz幅のチャネルで構成される40 MHz帯域の中心に位置するトーン(0)を少なくとも使用せず」は,本 件発明の「M個の周波数チャネルで構成される周波数帯域の中心に位置す 10 る1個のサブキャリアを少なくとも使用せず」に相当し,乙3発明の「前 記2個の20MHz幅のチャネルの中心に位置する2個全てのトーンは使 用する」は,本件発明の「前記M個の周波数チャネルの中心に位置するM 個全てのサブキャリアは使用する」に相当する。 したがって,乙3発明の構成3dは,本件発明の構成要件Dに相当する。 15 オ 構成要件Eと乙3発明の構成3eについて 前記ア及びイのとおり,乙3発明の「送信機」は本件発明の「第1の通 信装置」に相当し,乙3発明の「チャネル」の数は「2個」であり,「2以 上の偶数」であることは明らかであるから,本件発明の「M個」に相当す る。 20 したがって,乙3発明の構成3eは,本件発明の構成要件Eに相当する。 カ 構成要件Fと乙3発明の構成3fについて 前記アのとおり,乙3発明の「送信機」は,本件発明の「第1の通信装 置」に相当する。 したがって,乙3発明の構成3fは,本件発明の構成要件Fに相当する。 25 (3) 原告の主張する相違点について 30 原告は,本件発明と乙3発明の間には,本件発明と乙1発明との相違点と 同様の相違点が存在すると主張するところ,前記2( 成要件Fに相当する。 25 (3) 原告の主張する相違点について 30 原告は,本件発明と乙3発明の間には,本件発明と乙1発明との相違点と 同様の相違点が存在すると主張するところ,前記2(被告の主張)(3)のとお り,本件発明と乙1発明との間には相違点は存在しないから,本件発明と乙 3発明との間にも相違点は存在しない。 (4) 小括 5 よって,本件発明は,本件優先日(平成16年10月29日)前の乙4出 願を基礎とする乙3出願に係る乙3公報及び乙4明細書に記載された乙3発 明と同一であるから,特許法184条の13の規定により読み替えて適用さ れる同法29条の2の規定により特許を受けることができないものである。 (原告の主張) 10 (1) 乙3発明について 被告は,乙3発明に構成3dが開示されていると主張し,その前提として, 乙3公報及び乙4明細書には,40MHzモードにおける128点FFTの データ・シンボルにおいて,40MHz帯域の中心に位置するトーン(0) を少なくとも使用せず,2個の20MHz幅のチャネルの中心に位置する2 15 個全てのトーン(±32)は使用されることが記載されている(又は少なく とも記載されているに等しい)と主張するが,この点は誤りである。 すなわち,乙3公報に記載されている発明は,2つの20MHz幅のチャ ネルボンディングを行い40MHz幅とした場合のサブキャリアの数を,2 倍の128ではなく,256に増加させる発明であって,この発明には,「2 20 56点FFTのためのトーン設計」が開示されているにすぎず,被告が主張 している「40MHzの128点FFTモードのデータ・シンボル・トーン 設計」は開示されていない。 また,乙3公報における「256点FFTのためのトーン設計」を,「12 8点FFTモードのデータ・ 張 している「40MHzの128点FFTモードのデータ・シンボル・トーン 設計」は開示されていない。 また,乙3公報における「256点FFTのためのトーン設計」を,「12 8点FFTモードのデータ・シンボル・トーン設計」に変換するためには, 25 乙3公報の図13に,トーン±115,±3及び±5を加えた上で,パイロ 31 ット・トーンのうち2個をデータトーンに戻し,さらに,偶数インデックス のみを抽出し再ナンバリングすることが必要となる。乙3公報にはこれらの 手順は一切記載も示唆もされておらず,むしろ,このような手順を踏んで1 28点FFTモードに戻すことは,乙3公報が志向する256点FFTに逆 行するものであるから,上記の構成が記載されているに等しいということも 5 できない。 さらに,被告は,乙3公報では,40MHz帯域幅での通信におけるシス テム効率をより向上させるために,128点FFTモードを前提とする25 6点FFTモードのデータ・シンボル・トーン設計が提案されていると主張 するが,乙3公報においては,チャネルボンディングにより単にサブキャリ 10 アの数を128に増加させただけでは,シンボル時間が変化せず,システム 効率が向上しないことから,サブキャリアの数を256に増加させることに より,シンボル時間を増加させ,これによりシステム効率を向上させること を提案する旨が記載されており,128点FFTモードを採用することが明 示的に否定されている。 15 (2) 本件発明と乙3発明との間に相違点があること 乙3公報及び乙4明細書に被告主張の構成を備える乙3発明が記載されて いるとしても,本件発明と乙3発明との間には,本件発明と乙1発明との相 違点と同様の相違点が存在する。 (3) 小括 20 したがって,本件発明について,乙3発明に基づく える乙3発明が記載されて いるとしても,本件発明と乙3発明との間には,本件発明と乙1発明との相 違点と同様の相違点が存在する。 (3) 小括 20 したがって,本件発明について,乙3発明に基づく拡大先願要件違反に係 る無効の主張は理由がない。 4 争点3-1(本件訂正に基づく訂正の再抗弁の主張が時機に後れた攻撃防御 方法等として却下されるべきか)について (被告の主張) 25 (1) 原告は,令和2年9月4日付け原告第1準備書面において,訂正の再抗弁 32 の主張をしていたが,本件無効審判事件において,その内容とは異なる訂正 内容が記載された訂正請求書を特許庁に提出した(本件訂正)。 それにもかかわらず,同年11月17日の書面による準備手続における協 議において,原告は,裁判所及び被告に対し,上記原告第1準備書面に記載 された訂正後の特許請求の範囲請求項1の記載内容と本件訂正後の特許請求 5 の範囲請求項1の記載内容とが同じである旨説明した。 これを受け,本件訴訟の審理は,上記原告第1準備書面に記載された訂正 内容を前提に進められることとされた。 (2) 原告は,令和3年1月18日付け原告第3準備書面により,それまで主張 してなかった本件訂正に基づく訂正の再抗弁の主張を行ったが,この主張は, 10 前記(1)の経緯に照らして時機に後れた攻撃防御方法に当たり,これによって 訴訟の完結を遅延させるものであり,かつ,原告には少なくとも重大な過失 があることが明らかである。 (3) したがって,原告による本件訂正に基づく訂正の再抗弁の主張は,時機に 後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。 15 また,当該主張は,同時に,特許法104条の3第2項又はその趣旨に照 らして許されないものであり,実体法上及び訴訟法上の信義則にも反するも のである た攻撃防御方法として却下されるべきである。 15 また,当該主張は,同時に,特許法104条の3第2項又はその趣旨に照 らして許されないものであり,実体法上及び訴訟法上の信義則にも反するも のであるから,これらの理由からも却下されるべきである。 (原告の主張) (1) 前記(被告の主張)(1)の訴訟経過は,令和2年11月17日時点までの 20 経過としては争わない。 (2) 本件において,原告は,意図的に,特許庁に提出した本件訂正の内容と訴 訟における訂正の再抗弁の内容を異ならせようとしていたものではなく,両 者に不一致が生じてしまったのは過誤によるものであるが,両者の訂正内容 を一致させることが円滑な審理に資するとの考慮から,令和3年1月18日 25 付け原告第3準備書面において,本件訂正の内容に合わせた訂正の再抗弁の 33 主張をするに至ったものである。これは,争点整理手続中の誤りの訂正とし て決して遅いとはいえず,本件訂正に基づく訂正の再抗弁の審理をすること によって訴訟の完結を遅延させるものでもない。 (3) したがって,原告による本件訂正に基づく訂正の再抗弁の主張は,時機に 後れた攻撃防御方法として却下されるべきものではない。 5 また,当該主張は,審理を不当に遅延させることを目的としたものではな く,特許法104条の3第2項及びその趣旨に照らしても許されるものであ り,信義則に反するものでもない。 5 争点3-2(本件訂正が訂正要件を満たすか)について (原告の主張) 10 (1) 本件訂正が訂正要件を満たすものであること 本件訂正における訂正事項は,いずれも,特許請求の範囲を減縮すること (特許法134条の2第1項ただし書1号)を目的として,願書に添付した 明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするもの における訂正事項は,いずれも,特許請求の範囲を減縮すること (特許法134条の2第1項ただし書1号)を目的として,願書に添付した 明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするもの であり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないから, 15 訂正要件(特許法134条の2第9項,126条5項,6項)を満たすもの である。 (2) 被告の主張について ア 本件訂正が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものである との主張について 20 被告は,本件訂正発明は,第1の通信装置が用いる周波数チャネル数に 関して構成要件間で整合しておらず,不明確であるとして,本件訂正は, 実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正に該当すると主張する。 本件訂正発明は,「第1の通信装置」に関するものであるところ(構成要 件A’及び構成要件F’),構成要件A’は,「第1の通信装置」が,「周波 25 数帯域上の複数の周波数チャネルを用い」てOFDM信号を送信すること, 34 及び「少なくとも第1の期間と第2の期間」に「OFDM信号を送信する こと」を規定している。「第1の通信装置」が同時に使用可能な「周波数帯 域上の複数の周波数チャネル」数は,構成要件B’及び構成要件E’によ り,第2の通信装置が同時に使用可能なM個よりも多いことが規定されて いるが,その個数について,本件訂正発明は何ら限定していない。 5 そして,構成要件B’,構成要件C’及び構成要件D’は,「第1の通信 装置」が「前記周波数帯域上の複数の周波数チャネル数より少ないM個 (Mは2以上の偶数)の連続する周波数チャネルに配置された複数のサブ キャリア」を同時に使用可能である「第2の通信装置」へOFDM信号を 送信する場合について,「第1の期間」におけるサブキャリア割当て (Mは2以上の偶数)の連続する周波数チャネルに配置された複数のサブ キャリア」を同時に使用可能である「第2の通信装置」へOFDM信号を 送信する場合について,「第1の期間」におけるサブキャリア割当てと「第 10 2の期間」におけるサブキャリア割当てとに分けて,それぞれ規定してい る。 このように,本件訂正発明は,「周波数帯域上の複数の周波数チャネル」 であって,第2の通信装置が同時に使用可能な連続する2以上の偶数であ るM個よりも多い周波数帯域上の複数の周波数チャネルを同時に使用可能 15 な第1の通信装置が,M個を同時に使用可能である第2の通信装置にOF DM信号を送信する場合に,当該M個の周波数チャネルにおけるサブキャ リア割当てについて「第1の期間」と「第2の期間」に分けて規定したも のであって,構成要件間の関係は明確であり,構成要件間において整合し ていないということはない。 20 したがって,この点をもって,本件訂正が,実質上特許請求の範囲を拡 張し,又は変更する訂正に該当するとはいえない。 イ 本件訂正が新規事項を追加するものであるとの主張について 被告は,本件訂正発明の構成要件A’,構成要件C’及びD’により, 「第1の通信装置」が「第1の期間」及び「第2の期間」において用いる 25 周波数チャネルの数(M個)が,「第1の通信装置」がOFDM信号を送信 35 可能な周波数チャネルの最大数よりも少ないことが規定されていると解す ることになるとして,それを前提に,本件明細書に,「第1の通信装置」が OFDM信号を送信可能な周波数チャネルの最大数よりも少ないM個の周 波数チャネルを用いて,「M個の周波数チャネルのそれぞれの中心に位置す るM個全てのサブキャリアを少なくとも使用しない」こととする構成は開 5 示されていないから,少なくとも構成 よりも少ないM個の周 波数チャネルを用いて,「M個の周波数チャネルのそれぞれの中心に位置す るM個全てのサブキャリアを少なくとも使用しない」こととする構成は開 5 示されていないから,少なくとも構成要件C’に係る技術的事項は開示さ れていないと主張する。 しかしながら,本件訂正発明は,「周波数帯域上の複数の周波数チャネル」 であって,第2の通信装置が同時に使用可能な連続するM個(Mは2以上 の偶数)よりも多い周波数帯域上の複数の周波数チャネルを同時に使用可 10 能な第1の通信装置が,M個を同時に使用可能である第2の通信装置にO FDM信号を送信する場合に着目し,その場合の当該M個の周波数チャネ ルにおけるサブキャリア割当てについて「第1の期間」と「第2の期間」 に分けて規定したものである。したがって,「第1の通信装置」が,どのよ うな端末と通信する場合であっても,「第1の期間」及び「第2の期間」に 15 おいて,M個の周波数チャネルしか使わないことを規定したものではなく, 被告の上記前提は,その点において誤りである。 そして,本件明細書には,第2の通信装置が同時に使用可能な連続する M個(Mは2以上の偶数)よりも多い周波数帯域上の複数の周波数チャネ ルを同時に使用可能な第1の通信装置が,M個を同時に使用可能である第 20 2の通信装置にOFDM信号を送信する場合に,当該M個の周波数チャネ ルに対し,「第1の期間」及び「第2の期間」において,本件訂正発明に係 る特許請求の範囲に記載されたサブキャリア割当てを行うことについて, 明確に記載されている。 すなわち,本件明細書の第2の実施形態(【0065】ないし【006 25 7】,【0071】ないし【0074】及び【図2】)として,最大で12個 36 の周波数チャネル(スロット)が用いられ得る通信が開示され 明細書の第2の実施形態(【0065】ないし【006 25 7】,【0071】ないし【0074】及び【図2】)として,最大で12個 36 の周波数チャネル(スロット)が用いられ得る通信が開示されているとこ ろ,第1の期間に相当するT1は,全ての端末が受信する報知スロットで あり,ここでは各スロットの中心サブキャリアは使用されず,第2の期間 に相当するT2ないしT9においては,周波数帯域上の全てのスロット (12個)を使用するF端末(M=12)だけでなく,2個の連続するス 5 ロットを使用可能なE端末(M=2),6個の連続するスロットを使用可能 なD端末(M=6),10個の連続するスロットを使用可能なC端末(M= 10)が,それぞれ,各個数のスロットで構成される周波数帯域の中心に 位置するサブキャリアを使わないこととされている。 例えば,第1の通信装置から,2個の連続する周波数チャネル(スロッ 10 ト)を同時に使用可能な第2の通信装置であるE端末(M=2)へのOF DM信号の送信に着目すると,当該2個の周波数チャネル(F10とF1 1)における,第1の期間に相当するT1と,第2の期間に相当するT 4・T5におけるサブキャリア割当ては,本件訂正発明に係る特許請求の 範囲に記載されたとおりの割当てとなっている。D端末やC端末について 15 も同様である。 また,本件明細書においては,第2の通信装置が同時に使用可能な連続 するM個が奇数であるか偶数であるかに応じて,使用するサブキャリアを 異ならせることが記載されている(【0062】,【0063】)。 このように,本件明細書には,第2の通信装置が同時に使用可能な連続 20 するM個(Mは2以上の偶数)よりも多い周波数帯域上の複数の周波数チ ャネルを同時に使用可能な第1の通信装置が,M個を同時に使用可能であ る第 件明細書には,第2の通信装置が同時に使用可能な連続 20 するM個(Mは2以上の偶数)よりも多い周波数帯域上の複数の周波数チ ャネルを同時に使用可能な第1の通信装置が,M個を同時に使用可能であ る第2の通信装置にOFDM信号を送信する場合に,当該M個の周波数チ ャネルについて,「第1の期間」及び「第2の期間」に特許請求の範囲に記 載されたサブキャリア割当てを行うことについて明確に記載されており, 25 構成要件C’に係る技術的事項が開示されていないとする被告の主張は誤 37 りである。 したがって,本件訂正は明細書等に記載されていない新たな技術的事項 を追加するものであるとの被告の主張は理由がない。 ウ 本件訂正についての通常実施権者の承諾について 被告は,本件訂正をするに当たり,原告が通常実施権者から承諾を得て 5 いることについて立証を行っていないと主張するが,原告の子会社の従業 員が作成した陳述書(甲17)のとおり,原告は本件特許に係る発明につ いて各通常実施権者から包括的な承諾を得ているから,この点で訂正要件 に欠けるところはない。 (被告の主張) 10 (1) 本件訂正が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるこ と 本件訂正発明は以下のとおり不明確であるから,本件発明を本件訂正発明 に訂正することは,特許請求の範囲を減縮するものではなく,実質上特許請 求の範囲の拡張又は変更するものに該当する。 15 本件訂正後の構成要件A’においては,「第1の通信装置」が,少なくとも 「第1の期間」及び「第2の期間」において,「周波数帯域上の複数の周波数 チャネル」を用いて「OFDM信号を送信する」ことが規定されている。 一方,構成要件C’及びD’においては,「第1の通信装置」が,「第1の 期間」及び「第2の期間」において,「M個の 上の複数の周波数 チャネル」を用いて「OFDM信号を送信する」ことが規定されている。 一方,構成要件C’及びD’においては,「第1の通信装置」が,「第1の 期間」及び「第2の期間」において,「M個の周波数チャネル」を用いてOF 20 DM信号を送信することが規定されている。ここで,構成要件B’で規定さ れているように,「M個」は「前記周波数帯域上の複数の周波数チャネル数よ り少ない」とされている。 このように,本件訂正発明においては,「第1の通信装置」による「第1の 期間」及び「第2の期間」におけるOFDM信号の送信に関し,構成要件A’ 25 においては「周波数帯域上の複数の周波数チャネル」を用いることが規定さ 38 れている一方,構成要件C’及びD’においては「前記周波数帯域上の複数 の周波数チャネル数より少ない」数の周波数チャネルを用いることが規定さ れていることとなり,本件訂正発明は,構成要件間(発明特定事項間)で整 合しておらず,不明確である。 この点について,原告は,構成要件A’について,「周波数帯域上の複数の 5 周波数チャネルを用い」るという文言が,「少なくとも第1の期間と第2の期 間を含む」という部分にはかからないことを前提として解釈をしているが, 構成要件A’の文言からそのような解釈は不可能である。 したがって,本件発明から本件訂正発明に訂正することは,特許請求の範 囲を減縮するものではなく,本件訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し, 10 又は変更するもの(特許法134条の2第9項,126条6項)に該当する。 (2) 本件訂正が新規事項を追加するものであること 前記(1)とは異なり,仮に,構成要件A’における「周波数帯域上の複数の 周波数チャネルを用い」との記載が「第1の期間」及び「第2の期間」にお けるOFDM信号の送信につい 項を追加するものであること 前記(1)とは異なり,仮に,構成要件A’における「周波数帯域上の複数の 周波数チャネルを用い」との記載が「第1の期間」及び「第2の期間」にお けるOFDM信号の送信について規定したものではないとすると,本件訂正 15 発明の構成要件A’,C’及びD’は,要するに,「第1の通信装置」が「第 1の期間」及び「第2の期間」において用いる周波数チャネルの数(M個) が,「第1の通信装置」がOFDM信号を送信可能な周波数チャネルの最大数 よりも少ないことを規定していると解することになると思われる。 しかしながら,本件明細書には,「第1の通信装置」がOFDM信号を送信 20 可能な周波数チャネルの最大数よりも少ないM個の周波数チャネルを用いて, 「M個の周波数チャネルのそれぞれの中心に位置するM個全てのサブキャリ アを少なくとも使用しない」こととする構成は開示されていないから,少な くとも構成要件C’に係る技術的事項は開示されていない。 これに対し,原告は,本件明細書の【図2】のE端末について,T1のF 25 10及びF11がM=2の場合の構成要件C’に対応すると主張するが,T 39 1において用いられる周波数チャネルの数は2個ではなく12個であるから, 原告が指摘する本件明細書の記載は,構成要件C’に係る事項を開示するも のではない。 したがって,本件訂正は,明細書等に記載されていない新たな技術的事項 を追加するものであるから,不適法である(特許法134の2第9項,12 5 6条5項)。 (3) 通常実施権者の承諾を得ているのか否かについて何ら立証されていないこ と 本件特許権には,少なくとも許諾による通常実施権者が存在する。 しかしながら,原告は,本件訂正をするに当たり,上記通常実施権者であ 10 る大手携帯電話製造販売メー いて何ら立証されていないこ と 本件特許権には,少なくとも許諾による通常実施権者が存在する。 しかしながら,原告は,本件訂正をするに当たり,上記通常実施権者であ 10 る大手携帯電話製造販売メーカーの大半から承諾を得ていることについて, 立証できていない。 この点について,原告は,原告の子会社の従業員が作成した陳述書(甲1 7)を提出するが,客観性があるものではなく,当該陳述書をもって,全て の実施権者から一律に包括的な承諾を得ていることを立証したことにはなら 15 ない。 したがって,本件訂正は不適法なものとして許されない(特許法134条 の2第9項,127条)。 (4) 小括 以上のとおり,本件訂正は,訂正要件を満たさず,不適法である。 20 6 争点3-3(被告製品が本件訂正発明の技術的範囲に属するか(構成要件A’ ないしF’の充足性))について (原告の主張) (1) 本件訂正発明に即して特定した被告製品の構成 ア 被告製品は,本件規格に従って無線通信を行う手段を備えているところ, 25 これを本件訂正発明に即して特定すると,別紙3本件訂正発明に対応する 40 被告製品の構成(原告の主張)記載の構成(以下,同別紙の符号に対応さ せて「構成a’」などという。また,同別紙においては,別紙2本件発明に 対応する被告製品の構成(原告の主張)記載の構成aないしfと異なる部分 に下線を付す。)を有する。 イ 被告の主張について 5 (ア) 構成a’について 被告は,被告製品の40MHzモードにおいては,L-SIG送信, VHT-SIG-A送信及びデータ送信を行う期間のいずれにおいても, 2個の周波数チャネルしか利用しないとして,構成a’を否認する。 しかしながら,原告は,本件規格に従って無線通信を行う手段を備え 10 る被告製品を第 信及びデータ送信を行う期間のいずれにおいても, 2個の周波数チャネルしか利用しないとして,構成a’を否認する。 しかしながら,原告は,本件規格に従って無線通信を行う手段を備え 10 る被告製品を第1の通信装置に当てはめて主張しているところ,このよ うな手段を備える被告製品は,40MHzモードのみならず80MHz モードもサポートしており,周波数帯域上の4個の周波数チャネルを用 いて通信を行うことができるから,構成a’を備えている。 (イ) 構成b’について 15 被告は,構成a’について主張するのと同様に,被告製品は,L-S IG送信又はVHT-SIG-A送信を行う期間のいずれにおいても2 個の周波数チャネルしか利用しないから,「前記4個より少ない2個」と の構成を備えないとして,構成b’を否認する。 しかしながら,原告は,本件規格に従って無線通信を行う手段を備え 20 る被告製品が,40MHzの周波数帯域幅で送受信する通信装置に対し て,L-SIG送信又はVHT-SIG-A送信を行う期間に,4個よ り少ない2個の周波数チャネルを使用することを,構成要件B’に対応 する構成b’として主張するものである。本件規格に従って無線通信を 行う手段を備える被告製品は,前記(ア)のとおり,周波数帯域上の4個の 25 周波数チャネルを用いて通信を行うことが可能であり,その周波数チャ 41 ネル数より少ない2個の周波数チャネルを利用して通信を行うことも可 能であるから,構成b’を備えている。 (ウ) 構成c’ないしf’について 被告は,これらの構成についても,構成a’及びb’と同様の理由で 否認しているが,前記(ア)及び(イ)のとおり,被告の主張は理由がなく, 5 被告製品は構成c’ないしf’を備えている。 (2) 被告製品の構成要件充足性 ア 構成要件A’ 及びb’と同様の理由で 否認しているが,前記(ア)及び(イ)のとおり,被告の主張は理由がなく, 5 被告製品は構成c’ないしf’を備えている。 (2) 被告製品の構成要件充足性 ア 構成要件A’ないしD’について 本件訂正発明における「第1の期間」及び「第2の期間」(構成要件 A’,C’及びD’)の解釈は,前記1(原告の主張)(2)ア(ア)の本件発 10 明における解釈と同様であって,この点に係る被告の解釈は相当でない。 また,被告は,被告製品の40MHzモードにおいては2個の周波数 チャネルしか使用しないから,被告製品は構成a’を備えず,構成要件 A’を充足しないと主張するが,前記(1)イ(ア)のとおり,被告製品は構 成a’を備えており,「4個の周波数チャネル」は「複数の周波数チャネ 15 ル」に該当するから,構成a’を備える被告製品は,構成要件A’を充 足する。 さらに,被告は,被告製品が「前記周波数帯域上の複数の周波数チャ ネル数より少ないM個」の周波数チャネルとの要件を充足しないから, 構成要件B’ないしD’を充足しないとも主張するが,これは,構成要 20 件A’についての誤った解釈を前提とするものである。 したがって,被告の上記主張はいずれも理由がなく,構成a’ないし d’は,それぞれ順に,構成要件A’ないしD’を充足する。 イ 構成要件E及びFについて 構成e’及びf’は,それぞれ順に,構成要件E’及びF’を満たすも 25 のであり,被告製品は構成要件E’及びF’をいずれも充足する。 42 ウ 小括 以上のとおり,被告製品は,構成要件A’ないしF’をいずれも充足す るものであって,本件訂正発明の技術的範囲に属する。 (被告の主張) (1) 本件訂正発明に即して特定した被告製品の構成 5 原告が主張する構成a’ないしf’ 要件A’ないしF’をいずれも充足す るものであって,本件訂正発明の技術的範囲に属する。 (被告の主張) (1) 本件訂正発明に即して特定した被告製品の構成 5 原告が主張する構成a’ないしf’については,以下のとおり,いずれも 否認する。 ア 構成a’について 被告製品が通信装置であること,被告製品において,L-SIG送信, VHT-SIG-A送信及びデータ送信を行う期間がそれぞれ存在するこ 10 とは認めるが,その余は否認する。 原告は,40MHzモードにおける被告製品の構成が本件訂正発明の技 術的範囲に属する旨主張しているところ,被告製品の40MHzモードに おいては,L-SIG送信,VHT-SIG-A送信及びデータ送信を行 う期間のいずれにおいても,2個の周波数チャネルしか利用しない。 15 なお,被告製品について,本件発明における「第1の期間」,「第2の期 間」及び「第1の通信装置」との用語を用いて特定することについては否 認する。 イ 構成b’について 前記アのとおり,被告製品は,L-SIG送信又はVHT-SIG-A 20 送信を行う期間のいずれにおいても2個の周波数チャネルしか利用しない から,構成b’のうち「前記4個より少ない2個」との構成を備えない。 また,被告製品においては,L-SIG送信,VHT-SIG-A送信 及びデータ送信を行う期間のいずれにおいても,128のサブキャリア全 てを用いることはない。したがって,「128のサブキャリアを用いて,… 25 OFDM信号を送信する」の部分が,128のサブキャリア全てを用いる 43 という意味であれば否認する。 なお,被告製品が他の通信装置に対しOFDM信号を送信する送信部を 備えることは認めるが,当該他の通信装置について本件訂正発明の「第2 の通信装置」との用語を用いて特 という意味であれば否認する。 なお,被告製品が他の通信装置に対しOFDM信号を送信する送信部を 備えることは認めるが,当該他の通信装置について本件訂正発明の「第2 の通信装置」との用語を用いて特定することについては否認する。 ウ 構成c’について 5 構成c’の「前記2個」とは,構成b’の「前記4個より少ない2個」 を指すと解されるところ,前記イで述べたとおり,被告製品は構成b’の 「前記4個より少ない2個」との構成を備えないから,構成c’の「前記 2個」との構成も備えない。 また,前記アのとおり,被告製品は「第1の期間」に係る構成を備えず, 10 前記イのとおり,被告製品においては,L-SIG送信,VHT-SIG -A送信及びデータ送信を行う期間のいずれにおいても,128のサブキ ャリア全てにデータが割り当てられることはないから,「前記2個の周波数 チャネルに配置された各64,合計128のサブキャリアにデータを割り 当てる」構成を備えない。 15 エ 構成d’について 前記ウと同様に,被告製品は構成d’の「前記2個」との構成を備えな い。 また,前記アのとおり,被告製品は「第2の期間」に係る構成を備えず, 前記イのとおり,被告製品においては,L-SIG送信,VHT-SIG 20 -A送信及びデータ送信を行う期間のいずれにおいても,128のサブキ ャリア全てにデータが割り当てられることはないから,「前記2個の周波数 チャネルに配置された128のサブキャリアにデータを割り当てる」構成 を備えない。 オ 構成e’及びf’について 25 前記ウと同様に,被告製品は構成e’の「前記2個」との構成を備えな 44 い。 前記アのとおり,被告製品は本件訂正発明の「第1の通信装置」ではな い。 (2) 被告製品の構成要件充足性 ア 構成要件A’な ,被告製品は構成e’の「前記2個」との構成を備えな 44 い。 前記アのとおり,被告製品は本件訂正発明の「第1の通信装置」ではな い。 (2) 被告製品の構成要件充足性 ア 構成要件A’ないしD’について 5 (ア) 「第1の期間」及び「第2の期間」(構成要件A’,C’及びD’)に ついて 前記1(被告の主張)(2)ア(ア)と同様に,本件訂正発明においても, 「第1の期間」は,送受信できる帯域幅が限られた受信端末に対する送 信期間であると解され,「第2の期間」は,全帯域を利用可能な受信端末 10 に対する送信期間であると解される。 これに対し,被告製品においては,L-SIG送信,VHT-SIG -A送信及びデータ送信は,いずれも同一の受信端末に対して行われる ものであるから,被告製品は,「第1の期間」及び「第2の期間」に係る 構成を備えるものではないから,構成要件A’,C’及びD’を充足しな 15 い。 (イ) 「周波数帯域上の複数の周波数チャネル」(構成要件A’)及び「前記 周波数帯域上の複数の周波数チャネルより少ないM個」(構成要件B’な いしD’)について 前記5(被告の主張)(1)のとおり,本件訂正発明の構成要件A’にお 20 いては,その文言上,「第1の通信装置」が,少なくとも「第1の期間」 及び「第2の期間」において,「周波数帯域上の複数の周波数チャネル」 を用いて「OFDM信号を送信する」ことが規定されているとしか理解 することができない。 原告は,構成要件A’に対応する被告製品の構成a’の内容として, 25 40MHzモードにおいて「周波数帯域上の4個の周波数チャネルを用 45 い,少なくともL-SIG送信,または/および,VHT-SIG-A 送信を行う第1の期間とデータ送信を行う第2の期間を含むOFDM信 号を送信す いて「周波数帯域上の4個の周波数チャネルを用 45 い,少なくともL-SIG送信,または/および,VHT-SIG-A 送信を行う第1の期間とデータ送信を行う第2の期間を含むOFDM信 号を送信する第1の通信装置」であると主張するものと理解できるが, 被告製品の40MHzモードにおいては,L-SIG送信,VHT-S IG-A送信及びデータ送信を行う期間のいずれにおいても,2個の周 5 波数チャネルしか利用しない。したがって,被告製品は原告の主張する 構成a’を備えないから,構成要件A’を充足しない。 仮に,原告が,被告製品の構成を「周波数帯域上の2個の周波数チャ ネル」と変更した場合,それが「周波数帯域上の複数の周波数チャネル」 に当たるとしても,被告製品においては,「周波数帯域上の複数の周波数 10 チャネル数」と構成要件B’ないしD’の「M個」とがいずれも2とな るため,少なくとも,「前記周波数帯域上の複数の周波数チャネル数より 少ないM個」の周波数チャネルとの構成を備えないこととなり,構成要 件B’ないしD’を充足しない。 イ 構成要件E’及びF’について 15 被告製品が構成要件E’及びF’を充足することは否認する。 7 争点3-4-1(本件訂正発明の乙1文献を主引用例とする進歩性欠如)に ついて (被告の主張) (1) 本件訂正発明と乙1発明との対比 20 ア 本件訂正発明と乙1発明との一致点及び相違点 原告の主張に沿って,構成要件A’における「周波数帯域上の複数の周 波数チャネルを用い」との記載が「第1の期間」及び「第2の期間」にお けるOFDM信号の送信について規定したものではないと仮定すると,本 件訂正における訂正事項は,本件発明の構成に,「第1の通信装置」が「第 25 1の期間」及び「第2の期間」において用いる周波数チャネルの OFDM信号の送信について規定したものではないと仮定すると,本 件訂正における訂正事項は,本件発明の構成に,「第1の通信装置」が「第 25 1の期間」及び「第2の期間」において用いる周波数チャネルの数(M個) 46 が,「第1の通信装置」がOFDM信号を送信可能な周波数チャネルの最大 数よりも少ないという構成を追加するものにすぎないと理解できる。 そして,前記2(被告の主張)のとおり,本件訂正発明のその他の構成 (本件発明の構成)は乙1発明の構成と一致するから,本件訂正発明と乙 1発明との相違点は,以下の点に留まる。 5 (相違点) 本件訂正発明においては,「第1の通信装置」が「第1の期間」及び「第 2の期間」において用いる周波数チャネルの数(M個)が,「第1の通信装 置」がOFDM信号を送信可能な周波数チャネルの最大数よりも少ないの に対して,乙1発明においては,送信機がL-SIG送信又はHT-SI 10 G送信を行う期間(本件訂正発明の「第1の期間」に相当)及びデータ送 信期間(本件訂正発明の「第2の期間」に相当)において用いるサブチャ ネルの数が,送信機がOFDM信号を送信可能な周波数チャネルの最大数 よりも少ないか否かが明らかではない点 イ 原告の主張する相違点について 15 原告は,本件訂正発明と乙1発明との相違点として,以下の2点を主張 するものと理解できる。 ① 本件訂正発明においては,受信端末が同時に使用可能な連続する周波 数チャネルの数(M個)は,第1の通信装置が同時に使用可能な最大の 周波数チャネルの数よりも少ない点 20 ② 本件訂正発明においては,M個が2以上の偶数である点 このうち,上記①の相違点については,前記アで述べた相違点と実質的 に同一である。 また,上記②の相違点については,乙1発明の構成1bないし1eの 本件訂正発明においては,M個が2以上の偶数である点 このうち,上記①の相違点については,前記アで述べた相違点と実質的 に同一である。 また,上記②の相違点については,乙1発明の構成1bないし1eのと おり,乙1発明に係る送信機は,HT受信機が同時に使用可能な2個の連 25 続する20MHz幅のサブチャネルに配置された複数のサブチャネルを用 47 いて,HT受信機へOFDM信号を送信する構成を備えるところ,本件訂 正発明の「2以上の偶数」であるM個に「2」が含まれることは数学的・ 技術的に明らかであるから,この点は相違点とはなり得ない。 (2) 相違点に係る構成の容易想到性 ア 相違点に係る構成が設計事項にすぎず容易に想到できること 5 (ア) OFDM信号を送信可能な送信機において,OFDM信号を送信可能 な周波数チャネルの最大数をいかなる数とするか,また,送信機が特定 の期間におけるOFDM信号の送信において上記最大数よりも少ない周 波数チャネルを用いるか否かは,単なるシステム設計上の相違にすぎず, 当業者が必要に応じて適宜選択し得る事項であるから,前記(1)の相違点 10 に係る構成は設計事項にすぎない。 また,上記相違点に係る構成を採用することによって,格別な作用・ 効果を奏するとも認められない。 したがって,本件訂正発明は,乙1発明に基づいて,当業者が容易に 発明することができたものである。 15 (イ) 前記(ア)を,具体的に説明すると,以下のようになる。 a 802.11規格においては,他の無線通信規格と同様に同規格を 用いる機器やサービスによる伝送速度の向上の要求に応じて,順次伝 送速度の向上が図られてきたところ,乙1文献は,IEEEにおける 802.11n規格の策定に際して提出された寄書である。この80 20 2.11n規格 ービスによる伝送速度の向上の要求に応じて,順次伝 送速度の向上が図られてきたところ,乙1文献は,IEEEにおける 802.11n規格の策定に際して提出された寄書である。この80 20 2.11n規格は,従来の802.11a規格がサポートする20M Hzの通信との互換性を持ちつつ,通信速度(スループット)を向上 させた「HT」(High Throughput:高スループット) と呼ばれる方式を導入したものである。 そして,乙1文献は,①HTを実現するための技術内容として,2 25 0MHzチャネルにおいて,複数の送信アンテナによる複数の空間ス 48 トリームの送信に係る技術(いわゆるMIMO(Multiple input, multiple output,多入力,多出力) 技術を使用した空間多重)を採用することを提案し,②オプション技 術として,上記①の技術を採用しつつ更に帯域幅を拡張した40MH zチャネルでの通信を提案している。したがって,乙1文献において, 5 HTの上記②のオプションに対応する送信機は,(ⅰ)802.11a 等既存の規格に準拠する受信機との20MHz帯域幅の通信,(ⅱ)H Tの上記①のみに対応し上記②のオプションに対応しない受信機との 20MHz帯域幅の通信及び(ⅲ)HTの上記①に加え上記②のオプ ションに対応する受信機との40MHz帯域幅の通信を全てサポート 10 する(なお,乙1発明は,このうち(ⅲ)の通信に対応した構成に着 目したものである。)。すなわち,乙1文献に記載の送信機は,802. 11a規格等にしか準拠していない受信機とも通信をすることが可能 であり,802.11a規格等と後方互換性を有するものである。 また,HTを実現するに当たり,20MHzでの通信を義務としつ 15 つ,40MHzの通信をオプションとするという 通信をすることが可能 であり,802.11a規格等と後方互換性を有するものである。 また,HTを実現するに当たり,20MHzでの通信を義務としつ 15 つ,40MHzの通信をオプションとするということは,HTの20 MHz帯域幅での通信しかサポートしない機器と,HTの20MHz 帯域幅の通信及び40MHz帯域幅の通信の双方をサポートする通信 機器との混在を許容することを意味する。したがって,送信機が20 MHz帯域幅及び40MHz帯域幅の通信の両方をサポートし,受信 20 機が20MHz帯域幅の通信のみしかサポートしないという場面は, 乙1文献において当然に想定されている。 b 前記aに基づき,乙1文献に開示されている前記②のオプションに 対応する送信機について見ると,2個の20MHz幅のサブチャネル で構成される40MHz帯域幅が,当該送信機の最大周波数である。 25 また,上記の送信機は,前記(ⅰ)ないし(ⅲ)の通信を全てサポー 49 トしており,前記(ⅰ)又は(ⅱ)の通信を行う場合には,受信端末 が同時に使用可能な連続する周波数チャネルの数が,送信端末が同時 に使用可能な最大の周波数チャネルの数よりも少ないこととなる。 このように,本件訂正発明と乙1発明との相違点に係る構成,すな わち,受信端末が同時に使用可能な連続する周波数チャネルの数が, 5 送信端末が同時に使用可能な最大の周波数チャネルの数よりも少ない という構成を採用することについては,乙1文献自体に明確に示唆が ある。 したがって,乙1文献に触れた当業者が,乙1発明に係る送信機に おいて,更に80MHz帯域幅での通信(乙1発明において2つの2 10 0MHzのチャネルを用いて40MHzチャネルを構成しているのと 同様に,(2つの20MHzチャネルからなる)40MHzチャネルを 2つ用 更に80MHz帯域幅での通信(乙1発明において2つの2 10 0MHzのチャネルを用いて40MHzチャネルを構成しているのと 同様に,(2つの20MHzチャネルからなる)40MHzチャネルを 2つ用いて(4つの20MHzからなるチャネル)80MHzチャネ ルを構成するだけでよい。)をサポートする構成を付加しつつ,40M Hz帯域幅までしかサポートしない受信端末に対して40MHzチャ 15 ネルを用いて通信を行うという構成を採用することは,設計事項にす ぎない。 c 原告は,本件優先日当時の電波政策等を根拠に,乙1文献に開示さ れている40MHzを前提として,通信帯域を更に80MHzや16 0MHzに拡張しようと当業者が安易に考えることはできなかったな 20 どと主張する。 しかしながら,原告の上記主張は,特許発明に進歩性があるか否か の議論,すなわち技術的な容易想到性の議論と,政策的な観点から実 際に当該特許発明をサービス化できるか否かという議論とを混同して おり,失当である。 25 (ウ) 以上により,本件訂正発明は乙1発明に基づき容易に想到することが 50 できた発明であるといえる。 イ 相違点に係る構成は乙1発明に特開2001-298436号公報(乙 23。以下「乙23公報」という。)又は特開2001-359152号公 報(乙25。以下,「乙25公報」という。)に記載された発明を組み合わ せることにより容易に想到できること 5 (ア) 乙23公報に記載された発明との組合せについて a 乙23公報は,本件優先日より前の平成13年10月26日に,電 気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特許文献である。 b 乙23公報には,8チャネルからなるOFDMシステムにおいて, 送信機(例えば基地局)がそのうちの一部のチャネルを用いてOFD 10 気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特許文献である。 b 乙23公報には,8チャネルからなるOFDMシステムにおいて, 送信機(例えば基地局)がそのうちの一部のチャネルを用いてOFD 10 M信号を送信する技術が開示されているところ,乙1発明に乙23公 報に記載された発明(以下「乙23発明」という。)を組み合わせるこ とにより,乙1発明におけるL-SIG送信又はHT-SIG送信を 行う期間(本件訂正発明の「第1の期間」に相当)及びデータ送信期 間(本件訂正発明の「第2の期間」に相当)において用いるサブチャ 15 ネルの数を,送信機がOFDM信号を送信可能な周波数チャネルの最 大数よりも少なくすることが可能である。 そして,乙1文献及び乙23公報は,いずれもOFDM信号の送信 に関する技術を記載した文献であって,特に,OFDM信号における 周波数チャネルの利用形態について記載したものであるから,技術分 20 野が共通する。 また,乙1文献は,IEEEのWiFi規格の1つである802. 11n規格の策定作業に際して提出された寄書であるところ,802. 11n規格は,20MHzのチャネル化を義務付ける一方で,広帯域 幅での動作を許可しているドメインでは40MHzのチャネル化に対 25 応することを推奨するものであり,2個の20MHz帯域のサブチャ 51 ネルを同時に使用してスループットの向上を提案するものである。こ れに対し,乙23公報も,複数のチャネルを同時に使用することでス ループットの向上を図るものであるから,乙1発明及び乙23発明の 課題は共通する。 さらに,乙1発明及び乙23発明は,複数のチャネルを用いてスル 5 ープットを向上させるという点で作用・機能も共通する。 加えて,乙1文献に複数のサブチャネルを同時に使用する記載があ る以上,同 さらに,乙1発明及び乙23発明は,複数のチャネルを用いてスル 5 ープットを向上させるという点で作用・機能も共通する。 加えて,乙1文献に複数のサブチャネルを同時に使用する記載があ る以上,同様の技術について記載された乙23発明を組み合わせる示 唆もある。 以上から,当業者には乙1発明に乙23発明を組み合わせる動機が 10 あることは明らかであって,前記(1)の相違点に係る構成は,当業者が 容易に想到することができたものである。 (イ) 乙25公報について a 乙25公報は,本件優先日より前の平成13年12月26日に,電 気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特許文献である。 15 b 乙25公報には,8チャネルからなるOFDMシステムにおいて, 送信機(例えば基地局)がそのうちの一部のチャネルを用いてOFD M信号を送信する技術が開示されているところ,乙1発明に乙25公 報に記載された発明(以下「乙25発明」という。)を組み合わせるこ とにより,乙1発明におけるL-SIG送信又はHT-SIG送信を 20 行う期間(本件訂正発明の「第1の期間」に相当)及びデータ送信期 間(本件訂正発明の「第2の期間」に相当)において用いるサブチャ ネルの数を,送信機がOFDM信号を送信可能な周波数チャネルの最 大数よりも少なくすることが可能である。 そして,乙1発明に乙23発明を組み合わせる動機付けが認められ 25 るのと同様の理由で,当業者には乙1発明に乙25発明を組み合わせ 52 る動機があることは明らかであって,前記(1)の相違点に係る構成は, 当業者が容易に想到することができたものである。 ウ 相違点に係る構成が乙1発明に周知技術を適用することにより容易に想 到できること 前記イのとおり,前記(1)の相違点に係る構成は,乙23公報及び乙25 5 容易に想到することができたものである。 ウ 相違点に係る構成が乙1発明に周知技術を適用することにより容易に想 到できること 前記イのとおり,前記(1)の相違点に係る構成は,乙23公報及び乙25 5 公報に開示されており,周知技術にすぎない。また,同様の構成は,例え ば,本件優先日より前の平成16年9月2日に発行された特許文献である 特開2004-247985号公報(乙33。以下「乙33公報」とい う。),同年1月9日に発行された刊行物に掲載されている論文(原田博司 外4名,“Dynamic Parameter Controlled 10 OF/TDMAによる新世代移動通信システム”,信学技報,電子情報通信 学会,Vol.103 No.553,2004年,pp.41-46 (乙34。以下「乙34文献」という。)),同年9月30日に発行された米 国特許公開公報2004/0190640号(乙35。以下「乙35公報」 という。)にも開示されている。 15 前記イのとおり,乙1発明と乙23発明及び乙25発明とは,技術分野, 課題及び作用・機能が共通するほか,乙1文献には乙23発明及び乙25 発明を組み合わせる示唆も存在する。このことは,上記の各文献(乙33 公報,乙34文献及び乙35公報)についても同様である。 以上から,当業者には乙1発明にこれらの文献から把握される周知技術 20 を組み合わせる動機があることは明らかであって,上記相違点に係る構成 は,当業者が容易に想到することができたものである。 (3) 小括 以上によれば,本件訂正発明と乙1発明との相違点に係る構成は,設計事 項として,又は,乙1発明に乙23発明,乙25発明若しくは周知技術を適 25 用することによって,当業者が容易に想到できる事項であるから,本件訂正 53 発明は,当業者が乙1発明 構成は,設計事 項として,又は,乙1発明に乙23発明,乙25発明若しくは周知技術を適 25 用することによって,当業者が容易に想到できる事項であるから,本件訂正 53 発明は,当業者が乙1発明に基づいて容易に発明することができたものであ って,進歩性を有しない。 (原告の主張) (1) 本件訂正発明と乙1発明との対比 ア 本件訂正発明と乙1発明との相違点は,以下のとおり認定されるべきで 5 ある。 (相違点) 本件訂正発明は,受信端末が同時に使用可能な連続する周波数チャネル の数(M個)が,最大帯域幅で使用される周波数チャネル(システム周波 数チャネル)の数よりも少なく,かつ「2以上の偶数」である場合に,第 10 1の期間においては,M個の周波数チャネルのそれぞれの中心サブキャリ アを使用せず,第2の期間においては,当該個数の周波数チャネルで構成 される周波数帯域の中心に位置するサブキャリアを使わず,それぞれの周 波数チャネルの中心サブキャリアは全て使用するとの構成を備えるのに対 し, 15 乙1発明は,20MHzの周波数チャネル及び周波数帯域幅が全ての端 末に必須の通信システムにおいて,一部の端末において40MHzに周波 数チャネル及び周波数帯域幅を拡張することを,オプションとして,20 MHzの通信システム上で一時的に可能としたものであって,その際に, 送信端末及び受信端末が40MHzの周波数帯域幅を使用可能な場合に, 20 連続する周波数チャネルの数を「2個」使い,当該「2個」の周波数チャ ネルに配置されたサブキャリアにデータを割り当てる際に,L-SIG送 信又はHT-SIG送信を行う期間においては,「2個」の周波数チャネル のそれぞれの中心サブキャリアを使用せず,データ送信期間においては, 「2個」で構成される周波数帯域の中心に位置するサ L-SIG送 信又はHT-SIG送信を行う期間においては,「2個」の周波数チャネル のそれぞれの中心サブキャリアを使用せず,データ送信期間においては, 「2個」で構成される周波数帯域の中心に位置するサブキャリアを使わず, 25 各1個の周波数チャネルの中心サブキャリアは使用するが,受信端末が同 54 時に使用可能な連続する周波数チャネルの数(M個)が,送信端末が同時 に使用可能な複数の周波数チャネル(最大帯域幅で使用されるシステム周 波数チャネル)の数よりも少なく,かつ「2以上の偶数」である場合のサ ブキャリア割当てに関する構成を備えていないこと イ 前記アは,①受信端末が同時に使用可能な連続する周波数チャネルの数 5 (M個)が,送信端末が同時に使用可能な複数の周波数チャネル(最大帯 域幅で使用されるシステム周波数チャネル)の数よりも少なく,また,② 「(M個が)2以上の偶数である」場合の「サブキャリア割当て」を相違点 として主張するものである。 これに対し,被告は,原告が主張する相違点を,前記(被告の主張)(1) 10 イのとおり捉えるが,原告は,単にチャネルの個数のみを相違点としてい るのではなく,上記のとおり「サブキャリア割当て」を相違点として主張 している。 (2) 相違点に係る構成の容易想到性 ア 相違点に係る構成が設計事項とはいえないこと 15 (ア) 被告は,OFDM信号を送信可能な周波数チャネルの最大数を如何な る数とするか,また,送信機が特定の期間におけるOFDM信号の送信 において上記最大数よりも少ない周波数チャネルを用いるか否かは,単 なるシステム設計上の相違にすぎず,当業者が必要に応じて適宜選択し 得る事項であると主張する。 20 しかしながら,乙1文献には,基本周波数チャネルでもシステム周波 数チャネルでもない,連続す ,単 なるシステム設計上の相違にすぎず,当業者が必要に応じて適宜選択し 得る事項であると主張する。 20 しかしながら,乙1文献には,基本周波数チャネルでもシステム周波 数チャネルでもない,連続する2個以上の偶数であるM個の基本周波数 チャネルで構成される周波数チャネルを用いる場合に,第1の期間及び 第2の期間において,いずれのサブキャリアを用いるかについては,何 ら規定されておらず,このような相違点については,「システム設計上の 25 相違にすぎない」とも,「当業者が必要に応じて適宜選択し得る」ともい 55 えないから,被告の上記主張は理由がない。 (イ) 被告は,乙1文献には,前記(被告の主張)(2)ア(イ)の(ⅰ)ないし (ⅲ)の通信を全てサポートする送信機が開示されていると主張するが, 乙1文献には,40MHz幅を使用可能な送信機が,データ送信期間に, 40MHzの通信帯域上の一部を構成する20MHzを使用して,20 5 MHz幅を使用可能な端末に対して送信を行う構成は,開示されていな い。 また,被告は,20MHz帯域,40MHz帯域及び80MHz帯域 の通信をサポートする構成において,40MHz帯域での通信を行う場 合,送信機がL-SIG等の送信を行う期間及びデータ送信期間におい 10 て用いるサブチャネルの数は,送信機が送信可能な周波数チャネルの最 大数よりも少ないこととなる旨主張するが,乙1文献には,20MHz 帯域,40MHz帯域及び80MHz帯域の通信をサポートする構成は 開示も示唆もされていない。 そして,仮に,データ送信期間において用いるサブチャネルの数が送 15 信可能な周波数チャネルの最大数よりも少ない場合を想定したとしても, その場合に本件訂正発明の規定するサブキャリア割当て(周波数帯域幅 の一部を構成する2以上の偶数個 用いるサブチャネルの数が送 15 信可能な周波数チャネルの最大数よりも少ない場合を想定したとしても, その場合に本件訂正発明の規定するサブキャリア割当て(周波数帯域幅 の一部を構成する2以上の偶数個の帯域幅を用いて送信する構成におけ るサブキャリア割当て)が行われることについては,乙1文献において 開示も示唆もない。 20 (ウ) 大阪大学のA教授がその作成に係る意見書(甲29)において述べる とおり,乙1発明を元に帯域をバンドリングしても,前記(1)の相違点に 係る構成には至らない。すなわち,乙1発明は,基本となる周波数(2 0MHz1個)に対するバックワードコンパチビリティ(後方互換性) に着目しているにすぎないことから,乙1発明に基づき,これを80M 25 Hzに拡張したとすれば,4つの20MHz帯域を持つサブチャネルか 56 らなる80MHzの帯域を使ってデータを送信することが可能な装置が, 4つのサブチャネルを用いて送信することになるにすぎず,帯域幅の一 部である基本となる周波数(20MHz)の偶数倍を選択して送信する 構成には至らない。また,乙1発明における40MHzの帯域の信号を バンドリングして,80MHzや160MHzに拡張した場合,40M 5 Hzの帯域でのデータ送信において使用しなかったサブキャリアは使用 されないことになり,本件訂正発明とはサブキャリア割当てが異なるこ とになる。 (エ) 前記(1)の相違点に係る構成,すなわち最大帯域幅で使用される周波 数チャネル(システム周波数チャネル)の数よりも少なく,かつ「2以 10 上の偶数」である場合に,本件訂正発明が定めるサブキャリア割当てを 行うことの技術的意義は以下のとおりである。 A教授が上記意見書(甲29)で述べるとおり,本件訂正発明は,周 波数帯域の一部のサブチャネルとして である場合に,本件訂正発明が定めるサブキャリア割当てを 行うことの技術的意義は以下のとおりである。 A教授が上記意見書(甲29)で述べるとおり,本件訂正発明は,周 波数帯域の一部のサブチャネルとして,基本となる周波数の偶数倍とな るチャネルが選択される場合に,偶数倍に適したサブキャリアの使用方 15 法を提案するものであり,上記の相違点に係る構成を備えることにより, 周波数利用効率を高め,様々な受信帯域幅を持つ端末が通信することが 可能となり,システムの自由度が大きくなるという技術的意義を有する ものである。このことは,本件明細書の【0023】ないし【0026】, 【0040】,【0062】及び【0063】 にも記載されている。 20 これに対して,乙1発明は,受信端末がいずれも最大帯域幅を使用可 能な場合に当該最大帯域幅を構成するサブチャネルを用いる通信と,受 信端末が基本となるサブチャネル1個を用いる通信とが,それぞれ別個 に開示されているにすぎず,限られた帯域幅を使用する通信端末が「連 続する」2以上の「偶数」個のサブチャネルを用いる場合に,それに適 25 したサブチャネル割当てを行うとの技術思想を全く備えていない。 57 したがって,本件訂正発明の技術的意義を考慮すれば,なおさら,前 記(1)の相違点は設計事項とはいえない。 (オ) 40MHzのチャネルを複数用いて,80MHzや160MHzのチ ャネルとして構成すること(チャネルのバンドリング)には,帯域幅を 増やすことで,送信できる情報量が大きくなるというメリットはあるが, 5 デメリットもある。 すなわち,送信機が搬送波を送信する際の送信電力を維持したまま, 帯域を広げた場合,総送信電力量が増大し,Wi-Fiの通信システム で使用することができる周波数帯域の外に,無線通信に悪影響を与える 。 すなわち,送信機が搬送波を送信する際の送信電力を維持したまま, 帯域を広げた場合,総送信電力量が増大し,Wi-Fiの通信システム で使用することができる周波数帯域の外に,無線通信に悪影響を与える 「帯域外輻射」(不要発射)と呼ばれる電波が多量に発射され,無線機器 10 間での干渉が生じることになる。各国は,このような帯域外輻射による 無線機器間での干渉を避けるため,法規制により,送信電力が一定の値 以下となるよう制限しており,帯域幅自体についても,20MHzや4 0MHzまでしか帯域を使用することができないとの制限を設けている 国もあった。 15 我が国においても,80MHz,160MHz幅を使用可能とする本 件規格に対応する次世代高速無線LANの導入に際しては,送信電力に 関する法規制の見直し等が課題となり,専門家による対策検討を経て, 帯域外輻射が許容値となるよう,送信電力の値が40MHzまでの通信 よりも減じられることとなったのである。 20 また,仮に,技術的に帯域外輻射を抑えることができたとしても,帯 域幅が拡大すると,それによる情報量の増大に対応して復調等を高速に 処理することができるAD変換器等が必要となるが,そのような高速化 に対応することは,当時の技術では困難であった。この点においても, 帯域幅の増大には限界があったといえる。 25 このように,バンドリングによる帯域幅の拡張にはデメリットもあり, 58 それにより発生する課題への対策を併せて検討する必要があった。本件 優先日当時の電波法では,20MHzの利用しか認められていなかった ことも併せて考慮すると,乙1文献に開示されている40MHzを前提 として,通信帯域を更に80MHzや160MHzに拡張しようと当業 者が安易に考えることはできなかったといえる。 5 (カ) 以上の ことも併せて考慮すると,乙1文献に開示されている40MHzを前提 として,通信帯域を更に80MHzや160MHzに拡張しようと当業 者が安易に考えることはできなかったといえる。 5 (カ) 以上のとおり,前記(1)の相違点は設計事項とはいえない。 イ 乙1発明と乙23発明及び乙25発明との組合せについて (ア) 乙23発明との組合せについて a 乙1発明は,周波数チャネルの周波数帯域幅を20MHzから40 MHzに増やすことで,最大伝送容量を2倍に増やすものである。こ 10 れに対し,乙23公報に記載された発明(乙23発明)は,20MH zの周波数チャネル内の使われていない部分を動的に発見し,それを 自身の通信に利用することで,周波数利用効率を高める(実効伝送速 度を上げる)ものであり,20MHzの周波数チャネルで送信できる 最大伝送容量は変わらない。このように,乙1発明と乙23発明とは, 15 目的や発想が異なるから,当業者がこれらを組み合わせることに動機 付けられることはない。 b また,乙23発明には,前記(1)の本件訂正発明と乙1発明との相違 点に係る構成が開示されていないから,乙1発明に乙23発明を組み 合わせたとしても,本件訂正発明には至らない。 20 すなわち,乙23公報には,受信端末が同時に使用可能な連続する 周波数チャネルの数(M個)が,送信端末が同時に使用可能な複数の 周波数チャネル(最大帯域幅で使用されるシステム周波数チャネル) の数よりも少なく,かつ「2以上の偶数」である場合に,サブキャリ アをどのように割り当てるかについては,何らの記載も示唆もない。 25 したがって,乙23発明には上記の構成が開示されていないから,こ 59 れを乙1発明に組み合わせたとしても,本件訂正発明に至るものでは ない。 c 以上より,本件訂 記載も示唆もない。 25 したがって,乙23発明には上記の構成が開示されていないから,こ 59 れを乙1発明に組み合わせたとしても,本件訂正発明に至るものでは ない。 c 以上より,本件訂正発明は乙1発明と乙23発明に基づいて当業者 が容易に想到することができたものであるとの被告の主張には理由が ない。 5 (イ) 乙25発明との組合せについて 乙1発明と乙25発明との組合せについても前記(ア)と同様の理由が当 てはまるから,本件訂正発明は乙1発明と乙25発明に基づいて当業者 が容易に想到することができたものであるとの被告の主張には理由がな い。 10 ウ 乙1発明への周知技術の適用について 被告が周知技術の証拠として提出する文献(乙23公報,乙25公報, 乙33公報,乙34文献及び乙35公報)には,いずれも,前記(1)の本件 訂正発明と乙1発明との相違点に係る構成が開示されていない。 すなわち,いずれの文献にも,受信端末が同時に使用可能な連続する周 15 波数チャネルの数(M個)が,送信端末が同時に使用可能な複数の周波数 チャネル(最大帯域幅で使用されるシステム周波数チャネル)の数よりも 少なく,かつ「2以上の偶数」である場合に,サブキャリアを本件訂正発 明の特許請求の範囲の記載のとおり割り当てることについては,何らの記 載も示唆もない。 20 したがって,本件訂正発明は,乙1発明に周知技術を適用することによ り容易に想到できたとはいえない。 (3) 小括 以上によれば,本件訂正発明は,当業者が乙1発明に基づいて容易に発明 をすることができたものではない。 25 8 争点3-4-2(本件訂正発明の乙4仮出願を基礎とする乙3出願に基づく 60 拡大先願要件違反)について (被告の主張) (1) 前記3(被告の主張)のとおり, たものではない。 25 8 争点3-4-2(本件訂正発明の乙4仮出願を基礎とする乙3出願に基づく 60 拡大先願要件違反)について (被告の主張) (1) 前記3(被告の主張)のとおり,本件発明と乙3発明とは同一であるとこ ろ,本件発明に本件訂正請求により追加された構成は,「第1の通信装置」が 「第1の期間」及び「第2の期間」において用いる周波数チャネルの数(M 5 個)が,「第1の通信装置」がOFDM信号を送信可能な周波数チャネルの最 大数よりも少ないというものに留まり,前記7(被告の主張)(2)ウのとおり, 当該構成は,周知技術にすぎず,また,新たな効果を奏するものでもない。 したがって,本件訂正請求により追加された構成は,本件訂正発明と乙3 発明との間における課題解決のための具体化手段における微差にすぎないと 10 いえ,本件訂正発明は,乙3発明と実質同一である。 (2) よって,本件訂正発明は,本件優先日(平成16年10月29日)前の乙 4出願を基礎とする乙3出願に係る乙3公報及び乙4明細書に記載された乙 3発明と同一であるから,特許法184条の13の規定により読み替えて適 用される同法29条の2の規定により特許を受けることができないものであ 15 る。 (原告の主張) 本件訂正発明と乙3発明との相違点についても,前記7(原告の主張)にお いて本件訂正発明と乙1発明との相違点について述べたことが当てはまり,当 該相違点は,「課題解決のための具体化手段における微差」ではなく,実質的な 20 相違点であるから,本件訂正発明は乙3発明と実質同一ではない。 したがって,本件訂正発明について,乙3発明に基づく拡大先願要件違反に 係る無効の主張は理由がない。 9 争点3-4-3(本件訂正発明の明確性要件違反)について (被告の主張) 25 はない。 したがって,本件訂正発明について,乙3発明に基づく拡大先願要件違反に 係る無効の主張は理由がない。 9 争点3-4-3(本件訂正発明の明確性要件違反)について (被告の主張) 25 前記5(被告の主張)(1)のとおり,本件訂正発明の構成要件A’と,構成要 61 件C’及び構成要件D’との間で,「第1の期間」及び「第2の期間」における OFDM信号の送信に用いられる周波数チャネルの数に関する発明特定事項同 士の関係が整合しない。 したがって,本件訂正発明は不明確であるから,本件特許は無効とされるべ きである(特許法36条6項2号,同法123条1項4号)。 5 (原告の主張) 前記5(原告の主張)(2)アのとおり,本件訂正発明の構成要件相互の関係は 明瞭であり,不整合は存在しない。 したがって,本件訂正発明に明確性要件違反の無効理由は存在しない。 10 争点4(差止め及び廃棄の必要性)について 10 (原告の主張) 被告は,被告製品を,業として,使用し,譲渡し,貸し渡し,輸入し,輸出 し,譲渡若しくは貸渡しの申出をしているから,これらの実施行為について差 止めをし,被告製品の廃棄を求める必要性がある。 (被告の主張) 15 差止請求及び廃棄請求の必要性については争う。 原告が主張する被告の行為のうち,被告製品の輸出については,被告はこれ を行っていない。 また,被告製品は,いずれも,Guangdong OPPO Mobil e Telecommunications Corp., Ltd(以下「O 20 PPO社」という。)により生産されたものであるところ,OPPO社による被 告製品の生産は,令和3年3月12日の時点で,既に終了しているから,被告 は,現在,被告製品を輸入しておらず,また,今後輸入するおそれも存在しな い。 より生産されたものであるところ,OPPO社による被 告製品の生産は,令和3年3月12日の時点で,既に終了しているから,被告 は,現在,被告製品を輸入しておらず,また,今後輸入するおそれも存在しな い。 なお,被告は,既に輸入済みの被告製品については,販売を継続しており, 25 今後も販売を継続する可能性がある。 62 11 争点5(本件特許権に基づく差止請求権の行使が権利濫用に当たるか)につ いて (被告の主張) (1) 本件特許がFRAND宣言の対象であること ア 原告は,802.11規格について,平成13年7月3日,IEEEに 5 対し,「シャープ知的財産宣言」と題する書面(乙5。以下「本件宣言書」 という。)を提出し,FRAND条件(公正,合理的かつ非差別的な条件を いう。以下同じ。)でライセンスを許諾する用意がある旨の宣言(FRAN D宣言)をした。すなわち,本件宣言書においては,原告が,無線LAN 関連規格である802.11規格について,「タスクグループE」で策定さ 10 れる規格「及びその後続の改訂」に対し,原告が保有する「未確定の特許 出願から成立し得るあらゆる特許」について,非独占的,非差別的及び合 理的な条件においてライセンスを付与する旨が宣言されている。 本件規格は,802.11規格のシリーズとして,IEEE802.1 1e(以下「802.11e規格」という。)の後に策定された規格である 15 から,本件宣言書における「後続の改訂」に該当する。また,原告は,本 件宣言書によるFRAND宣言の対象となる特許について,具体的な特許 番号等を指定せずに,「未確定の特許出願から成立し得るあらゆる特許」と 特定しているところ,自身が保有する特許及び将来保有することになる特 許全てを対象としてFRAND宣言を行ったものであるから ,本件特許 等を指定せずに,「未確定の特許出願から成立し得るあらゆる特許」と 特定しているところ,自身が保有する特許及び将来保有することになる特 許全てを対象としてFRAND宣言を行ったものであるから ,本件特許も 20 FRAND宣言の対象とされている。 イ 原告は,本件宣言書においてライセンスの対象とされているのは,本件 宣言書の提出時点において「係属中の特許出願(pending pat ent applications)から成立し得る特許」であると主張 する。 25 仮に一般論としては原告の主張するような「係属中」という訳出があり 63 得るとしても,本件宣言書においては,何に「係属中」であるのかが明ら かにされておらず,本件宣言書の提出時点においてなどといった時期的な 限定も設けられていないことからすれば,本件宣言書の記載から「pen ding」との文言を「係属中」と理解することはできない。 また,原告は,本件特許が802.11e規格の実施に必須なものでは 5 ないとも主張するが,そもそも,本件宣言書におけるFRAND宣言は, 802.11e規格に限定して行われたものではないから,本件特許が8 02.11e規格の実施に必須なものでなかったとしても,本件宣言書に おけるFRAND宣言の対象でないということはできない。 さらに,原告は,本件宣言書における「後続の改訂」とは802.11 10 e規格の最終確定に至るまでの改訂版を指すとして,本件特許が本件宣言 書における「後続の改訂」に当たらないとも主張するが,本件宣言書には 「後続の改訂」が802.11e規格の改訂のみを指すとの限定は何ら付 されていないから,802.11e規格の後に策定された本件規格も,本 件宣言書における「後続の改訂」に該当する。 15 したがって,原告の上記主張はいずれも理由がない。 のみを指すとの限定は何ら付 されていないから,802.11e規格の後に策定された本件規格も,本 件宣言書における「後続の改訂」に該当する。 15 したがって,原告の上記主張はいずれも理由がない。 ウ そして,被告は,必須宣言特許が関連する規格に必須かつ有効な場合に はFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有している。それにも かかわらず,原告は,被告に対し,本件特許権について何らライセンスの 提案をすることなく,また,その他の手段により被告の上記意思を何ら確 20 認することもなく,本件特許権に基づく差止請求権の行使を求めている。 この点,原告は,OPPO社に対して原告保有特許権のライセンスを提 案したなどと主張するが,OPPO社は被告の親会社ではなく,被告とは 販売店契約を締結しているにすぎず,両社間には資本関係もなければ役員 の兼任関係もないから,原告とOPPO社との間の事情をもって,被告が 25 ライセンス契約を受ける意思を有しないと認定することは許されない。 64 したがって,原告が被告製品に対し本件特許権に基づいて差止請求権を 行使することは,権利の濫用として許されない。 (2) 本件発明が,802.11n規格においてオプション技術として採用され たものであり,原告は,そのことを十分認識していたこと ア 本件特許が本件宣言書によるFRAND宣言の対象でないとしても,本 5 件発明が本件規格に対応するとの原告の主張を前提とすれば,本件発明に 係る技術は,802.11n規格においてオプション技術として採用され ていることになる。そして,原告は,IEEEに対し,本件優先日である 平成16年10月29日の前後において,802.11n規格に関する1 3件もの寄書等を提出するなど,802.11n規格の策定に積極的に関 10 与しており,本件発 は,IEEEに対し,本件優先日である 平成16年10月29日の前後において,802.11n規格に関する1 3件もの寄書等を提出するなど,802.11n規格の策定に積極的に関 10 与しており,本件発明が802.11n規格においてオプション技術とし て採用されることも十分認識していた。 それにもかかわらず,原告は,IEEEに対し,本件特許やその出願の 存在について何らの通知もしていない。一般に,標準化団体においては, FRAND宣言されない特許に係る技術は標準規格としては採用しない取 15 扱いがされるから,本件特許に係る出願についても,その存在がIEEE に知らされていれば,本件発明に係る技術を802.11n規格や後続の 規格に採用しないなどの対応がとられていたはずである。 このように,原告は,802.11n規格の策定に積極的に関与し,本 件発明が802.11n規格のオプション技術として採用されることを認 20 識しながら,本件発明についてIEEEに対して通知を行わず,そのこと を奇貨として,その後802.11規格に準拠した被告製品を販売する被 告に対し,差止請求権を行使しようとしているものであり,これが権利の 濫用に当たることは明らかである。 イ 原告は,本件発明は,802.11n規格との関係で,オプション技術 25 であって,必須の特許ではないと主張するが,オプション技術であっても 65 標準規格の技術の一部として採用されるものに他ならないから,権利濫用 を否定する理由とはならない。 なお,原告は,本件発明は,802.11n規格のオプション技術とし て採用された構成とは異なっているとも主張するが,どのように異なるの か具体的な主張をしていない。 5 (3) 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」と いう。)違反 本件 採用された構成とは異なっているとも主張するが,どのように異なるの か具体的な主張をしていない。 5 (3) 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」と いう。)違反 本件規格を含む無線LAN技術は,いまや,被告製品を含む携帯電話のみ ならず,パソコン端末,タブレット端末,テレビ,プリンター,ゲーム機器, 音楽プレーヤーなど多くの製品において搭載されている。 10 このような状況下において,原告による本件特許権に基づく差止請求権の 行使を認めることは,原告の製品とは競合しない業者には関連製品を製造販 売することを認めて本件規格やこれを搭載する原告の製品の価値を高める一 方で,原告の製品と競合する業者には規格を使わせず(又は不当に高いロイ ヤルティを課して)競争力を削ぐことを可能ならしめることになる。 15 このような原告の一連の行為は,いわゆる「ホールドアップ状況」(標準規 格に取り込まれた技術の権利行使によって標準規格の利用を望む者が利用で きなくなる状況)の策出行為に当たり,標準規格を広く普及させることを目 的とするETSI(欧州電気通信標準化機構)やIEEEの趣旨に反するも のであるとともに,独占禁止法の不公正な取引方法に関する規定(2条9項 20 2号,「不公正な取引方法」(昭和57年6月18日公正取引委員会告示第1 5号)2ないし4項,14項等)のいずれかに該当する可能性が高く,独占 禁止法違反にもなる。 (4) LTE-Advanced規格に準拠する製品に対して差止請求権を行使 することに等しいこと 25 ア 原告は,平成24年7月30日,移動通信システムの標準化団体である 66 ETSIに対し,「IPRの情報についての声明及びライセンスの宣言」と 題する書面(乙21)を提出し,3GPP-Release-10(L 24年7月30日,移動通信システムの標準化団体である 66 ETSIに対し,「IPRの情報についての声明及びライセンスの宣言」と 題する書面(乙21)を提出し,3GPP-Release-10(LT E-Advanced)規格に関し,FRAND条件で,取消不能なライ センスを許諾する用意がある旨の宣言をした。当該書面には,対象となる 特許ファミリーに本件特許の親出願である特願2012-103546号 5 が含まれる旨が明記されているから,原告は,本件特許についてFRAN D宣言をしているものである。 そして,被告製品は,いずれも,LTE-Advanced規格に準拠 しているから,原告が被告製品について本件特許権に基づく差止請求権を 行使することは,実体としては,原告がFRAND宣言を行った標準規格 10 に準拠する製品に対し,差止請求権を行使することに他ならず,権利の濫 用として許されない。 なお,LTE-Advanced規格に関し,被告がFRAND条件に よるライセンスを受ける意思を有していることについては,前記(1)で述べ たことがそのまま当てはまる。 15 イ 原告は,本件特許はLTE-Advanced規格について必須のもの ではないと主張するが,その点について具体的な主張立証をしていないし, 一般的に,規格において必須の特許であるか否かは権利濫用に該当するた めの要件ではない。 (5) 小括 20 以上によれば,原告が被告製品に対し本件特許権に基づいて差止請求権を 行使することは,権利濫用として許されない。 (原告の主張) (1) 本件特許がFRAND宣言の対象であるとの主張について ア 本件宣言書(乙5)でライセンス対象とされているのは,本件宣言書の 25 提出時点において「係属中の特許出願(pending patent 67 RAND宣言の対象であるとの主張について ア 本件宣言書(乙5)でライセンス対象とされているのは,本件宣言書の 25 提出時点において「係属中の特許出願(pending patent 67 applications)から成立し得る特許」である(甲10)。 本件優先日は平成16年10月29日であり,本件宣言書の提出時点 (平成13年7月3日)において係属中(pending)の特許出願か ら成立し得る特許でないから,本件宣言書をもって本件特許をFRAND 条件でライセンスすることに原告が同意したとはいえない。 5 また,本件宣言書は,802.11e規格の提案段階において,最終的 に採用された802.11e規格との関係で必須となる(係属中の特許出 願から成立し得た)特許について,FRAND条件でライセンスすること に同意したものである。 本件特許は,802.11e規格の実施に必須なものではないから,こ 10 の点でも,本件宣言書におけるFRAND宣言の対象となるものではない。 そして,本件宣言書における「後続の改訂」(subsequent r evisions)とは,提案された802.11e規格について同規格 の最終確定に至るまでの改訂版を指しているものであるから,本件規格が 802.11e規格の「後続の改訂」に当たるという被告の主張も誤りで 15 ある。 したがって,802.11e規格についての本件宣言書(乙5)をもっ て,本件特許のように本件規格を構成する特許についてまで,原告がFR AND宣言を行ったとみることはできない。 イ 仮に,本件特許について原告がFRAND条件でのライセンス義務を負 20 うとしても,以下のとおり,被告は「FRAND条件によるライセンスを 受ける意思を有する者」には当たらないから,本件特許権に基づく差止請 求権の行使 て原告がFRAND条件でのライセンス義務を負 20 うとしても,以下のとおり,被告は「FRAND条件によるライセンスを 受ける意思を有する者」には当たらないから,本件特許権に基づく差止請 求権の行使は権利の濫用に当たらない。 被告は,専らOPPO社の製品を日本国内で流通させることを目的とし て設立された法人であり,設立時の商号(オッポジャパン株式会社)にお 25 いてもオッポ(OPPO)との名称を冠するなどしており,法人格として 68 は別であったとしても,被告が,OPPO社の日本国内の販売拠点として OPPO社にいわば従属しており,OPPO社と密接な関連性を有するこ とは明らかである。 したがって,被告とOPPO社の特許ライセンスに関する考え方は同じ とみられるところ,OPPO社は本件特許のライセンス交渉を拒絶してお 5 り,被告も本件特許についてライセンスを受ける意思を有しないものと合 理的に推察される。 さらには,被告自身としても,本件訴訟の提起により,本件特許権の侵 害について明確に認識したにもかかわらず,現在に至るまで,原告に対し, ライセンスを受ける旨の申出やライセンス交渉の協議の申出などを一切行 10 っていないから,被告は「FRAND条件によるライセンスを受ける意思 を有する者」には当たらない。 (2) 本件発明が,802.11n規格においてオプション技術として採用され たものであるとの主張について ア 仮に,原告が802.11n規格の策定に積極的に関与し,本件発明が 15 同規格のオプション技術として採用されたとしても,本件特許権に基づく 差止請求権の行使が許されないという被告の主張は法的根拠を欠く。 すなわち,被告の主張を前提としても,本件発明は,802.11n規 格との関係で,そもそも必須ではなく,オプションの技術であり,本 づく 差止請求権の行使が許されないという被告の主張は法的根拠を欠く。 すなわち,被告の主張を前提としても,本件発明は,802.11n規 格との関係で,そもそも必須ではなく,オプションの技術であり,本件発 明の実施について原告から許諾を得られなくとも,802.11n規格自 20 体の幅広い利用やそれによる産業の発達を阻害しないことからすれば,本 件特許権に基づく差止請求権の行使について権利の濫用を根拠に制限され る理由はないというべきである。 イ 実際には,本件発明の構成と802.11n規格のオプション技術とし て採用された構成とは異なっており,原告の従業員が,IEEEに対し, 25 本件発明が802.11n規格にオプション技術として採用されるように 69 積極的に働きかけていたという事実はない。 ウ 以上より,802.11n規格との関係で本件特許権に基づく差止請求 権の行使が権利の濫用に該当するという被告の主張は,失当であって理由 がない。 (3) 独占禁止法違反の主張について 5 本件特許権に基づく差止請求権の行使は権利の濫用には該当せず,特許法 による「権利の行使と認められる行為」(独占禁止法21条)に該当するから, 独占禁止法違反には当たらない。 (4) LTE-Advanced規格に係る主張について 原告は,被告製品について,LTE-Advanced規格に係る技術の 10 実施を理由として差止請求権を行使しているものではない。 加えて,本件特許は,LTE-Advanced規格について必須のもの ではないから,同規格の関係でもFRAND宣言の対象となっておらず,本 件特許の使用について原告から許諾を得られなくとも,LTE-Advan ced規格自体の幅広い利用やそれによる産業の発達を阻害しないことから 15 すれば,本件特許権に基づく差 対象となっておらず,本 件特許の使用について原告から許諾を得られなくとも,LTE-Advan ced規格自体の幅広い利用やそれによる産業の発達を阻害しないことから 15 すれば,本件特許権に基づく差止請求権の行使について権利の濫用を根拠に 制限される理由はない。 以上より,本件特許権に基づく差止請求権の行使がLTE-Advanc ed規格との関係で権利の濫用に当たるという被告の主張は理由がない。 (5) 小括 20 以上によれば,原告が被告製品に対し本件特許権に基づいて差止請求権を 行使することは,権利の濫用に当たらない。 第4 当裁判所の判断 1 本件明細書の記載等 (1) 本件明細書(甲2)には,以下の記載がある(下記記載中に引用する【図 25 1】ないし【図3】,【図5】ないし【図7】及び【図9】については,別紙 70 4「本件明細書の図面」参照)。 ア 【技術分野】 【0001】 本発明は,通信スロットを用いてマルチキャリア伝送方式で無線送信を 行なう通信方法に関する。 5 イ 【背景技術】 【0002】 近年,10Mbpsから100Mbpsの伝送レートをターゲットにし たブロードバンドワイアレスインターネットアクセスを実現するための標 準化が進められており,様々な技術が提案されている。高速な伝送レート 10 の無線通信を実現するために必要となる要件は,周波数利用効率を高める ことである。伝送レートと使用する帯域幅とは比例関係にあるので,伝送 レートを上げるには,利用する周波数帯域幅を広げることが単純な解決策 である。しかしながら利用できる周波数帯域は逼迫しており,新たな無線 通信システムが構築される上で十分な帯域幅が割り当てられることは考え 15 にくい。従って,周波数利用効率を高めることが必要となる。また,別の 要求とし 利用できる周波数帯域は逼迫しており,新たな無線 通信システムが構築される上で十分な帯域幅が割り当てられることは考え 15 にくい。従って,周波数利用効率を高めることが必要となる。また,別の 要求としては,携帯電話のようなセルで構成される通信エリアにおけるサ ービスを実現しつつ,無線LANのようなプライベートエリア(孤立セル) でのサービスもシームレスに提供することである。 【0003】 20 これらの要求を満たす可能性を持った技術に1セル繰り返しOFDMA (Orthogonal Frequency Division Mu ltiple Access)という技術がある。これは,セルで構成さ れる通信エリアおいて,すべてのセルにおいて同じ周波数帯を用いて通信 を行ない,通信する際の変調方式がOFDMである。もちろん,孤立セル 25 では,セルエリアと共通の無線インターフェースを持ちながら,より高速 71 なデータ通信が実現できる通信方式である。 【0004】 以下,OFDMAの要素技術であるOFDMについて説明する。OFD Mは,5GHz帯の無線システムであるIEEE802.11aや,地上 ディジタル放送で用いられている方式である。OFDMは数十から数千の 5 キャリアを,理論上干渉の起こらない最小となる周波数間隔に並べ同時に 通信する方式である。通常,OFDMにおいて,このキャリアをサブキャ リアと呼び,各サブキャリアがPSK(位相変調),QAM(振幅変調)等 のディジタル方式で変調されて通信が行なわれる。さらに,OFDMは, 誤り訂正方式と組み合わせることにより,周波数選択性フェージングに強 10 い変調方式と言われている。 【0005】 変復調の回路構成について,図を用いて説明する。ここで,OFDMに 使用されるサブキャリア数は768 わせることにより,周波数選択性フェージングに強 10 い変調方式と言われている。 【0005】 変復調の回路構成について,図を用いて説明する。ここで,OFDMに 使用されるサブキャリア数は768波として説明を具体化している。 【0006】 15 図6は,OFDMの変調回路の概略構成を示すブロック図である。図6 に示す変調回路は,誤り訂正符号部501,シリアル/パラレル変換部 (S/P変換部)502,マッピング部503,IFFT部504,パラ レル/シリアル(P/S変換部)505,ガードインターバル挿入部50 6,ディジタル/アナログ変換部(D/A変換部)507,無線送信部5 20 08,アンテナ509から構成されている。送信される情報データは,誤 り訂正符号部501において,誤り訂正符号化が施される。各キャリアの 変調方式がQPSK(4相位相変調)の場合,1OFDMシンボルを生成 するために,2x768=1536ビットが誤り訂正符号化回路から出力 される。その後,S/P変換部502において,2ビットずつ,768系 25 統のデータとしてマッピング部503に入力され,マッピング部503に 72 おいて各キャリアに変調が施される。その後,IFFT部504において IFFT(Inverse Fast Fourier Transfo rm:逆高速フーリエ変換)が施される。768波のOFDM信号を生成 する場合,通常使用されるIFFTのポイント数は1024である。 【0007】 5 IFFT部504では,マッピング部でf(n)(ただしn=0~102 3の整数)にデータが割り振られ,t(n)というデータが出力されるこ とになる。1024ポイントのIFFT入力に対して,本例では768し かデータが入力されないので,その他のデータについては,0(実部,虚 整数)にデータが割り振られ,t(n)というデータが出力されるこ とになる。1024ポイントのIFFT入力に対して,本例では768し かデータが入力されないので,その他のデータについては,0(実部,虚 部とも)が入力される。通常f(0),f(385)~f(639)が,0 10 入力に相当する。その後,P/S変換部505において,シリアルデータ に変換された後,ガードインターバル挿入部506において,ガードイン ターバルが挿入される。…その後,データはD/A変換部507でアナロ グ信号に変換された後,無線送信部508において,送信するべき周波数 に変換された後,アンテナ509よりデータが送信される。 15 【0008】 図7に,D/A変換後のOFDM信号の,スペクトルの模式図とD/A 変換後の時間波形の模式図,および,スペクトルを送信帯域に周波数変換 したものを示す。図中のf(n)とt(n)は各々,先の説明で示したも のと同じである。 20 【0009】 通常OFDM信号を送受信する場合,ベースバンド処理において,全帯 域の中心をDCとして扱うと,最もA/D変換器,D/A変換器のサンプ リング周波数が小さくてすみ,効率的であることは知られている。しかし, OFDMの場合,先にも示したようにDC成分,即ち,f(0)に相当す 25 るキャリアにはデータを割り当てないのが通常である。このため図7にお 73 いても,DC成分の電力は0として,描かれている。DC成分に変調を行 なうことは,理論上はもちろん可能であるが,DC成分は送受信機におけ るノイズ(回路のDC成分におけるオフセットの影響)を受けやすいため, 特性が他のサブキャリアと比べて劣化が激しい。このためDC成分のサブ キャリアには変調を施さないシステムが殆どである。 5 【0013】 次に,OFDM おけるオフセットの影響)を受けやすいため, 特性が他のサブキャリアと比べて劣化が激しい。このためDC成分のサブ キャリアには変調を施さないシステムが殆どである。 5 【0013】 次に,OFDMAについて上述のOFDMに基づいて説明する。OFD MAとは,周波数軸,時間軸で2次元のチャネルを形成し,フレーム中に 通信するためのスロットを2次元に配置し,移動局が基地局に対してその スロットを利用してアクセスする方式である。図9は,OFDMAの2次 10 元のフレーム構成を示す図である。本図において縦軸が周波数,横軸が時 間である。四角の1つがデータ伝送に用いるスロットであり,斜線の入っ た四角が,基地局が全移動局に対して報知情報を送信する制御スロットで ある。この図の場合,1フレーム中には,時間方向に9スロット,周波数 方向に12スロットあることを意味しており,計108スロット(内12 15 スロットは制御スロット)が存在していることを意味している。形式上, スロットを(Ta,Fb)で表し,時間軸方向のスロットTa(aは1か ら9の自然数),周波数軸方向のスロットをFb(bは1から12の自然数) としている。例えば図9における網掛けのスロットは(T4,F7)とな る。 20 【0014】 なお,明細書では,周波数方向に構成される12スロットを時間チャネ ルと呼び,時間方向に構成される9スロットを周波数チャネルまたはサブ チャネルと呼称する。 【0015】 25 周波数チャネルに対しては,OFDMのサブキャリアを分割して割り振 74 ることになる。OFDMのサブキャリアを768と仮定しているため,1 2スロットに等分割すると,1チャネルあたり,64のサブキャリアが割 り振られることになる。ここでは,実際に通信する帯域でのスペクトルの 小さいほうから便 Mのサブキャリアを768と仮定しているため,1 2スロットに等分割すると,1チャネルあたり,64のサブキャリアが割 り振られることになる。ここでは,実際に通信する帯域でのスペクトルの 小さいほうから便宜上サブキャリアを割り当てることとし,F1にサブキ ャリアf640~f703,F2にサブキャリアf704~f767,…, 5 F6にサブキャリアf960~f1023,F7にサブキャリアf1~f 64,F8にサブキャリアf65~f128,…,F12にサブキャリア f321~f384が割り振られることとする。 【0016】 基地局(AP)から移動局(MT)に対する通信を考える。APがMT 10 にデータを15スロット割り当てる場合,いろいろな場合が考えられるが, 図9の縦線で示されるスロットにデータを割り当てるとする。即ち(T2 ~T4,F1),(T5~T8,F4),(T2~T9,F11)にMTが受 信すべきデータを割り当てることになる。また,APがMTにデータを割 り当てたことを示すため,使用する周波数の制御スロットに割り当てたこ 15 とを示すデータを埋め込む必要がある。この例の場合(T1,F1),(T 1,F4),(T1,F11)がこの制御スロットに相当する。 【0017】 OFDMA方式は,上述したことを基本に,複数の移動局が周波数と時 間を変えて基地局とデータの送受信するシステムである。図9においては 20 便宜上,スロットとスロットの間に隙間があるように表現したが,隙間の 有無については大きな意味はない。 【0021】 なお,ここで示した変復調処理はあくまでも一例である。特に,ブロッ ク数等,チャネル数分,即ち12個ずつ示しているが,これに限るもので 25 はない。… 75 ウ 【発明が解決しようとする課題】 【0023】 OFDMAに までも一例である。特に,ブロッ ク数等,チャネル数分,即ち12個ずつ示しているが,これに限るもので 25 はない。… 75 ウ 【発明が解決しようとする課題】 【0023】 OFDMAにより通信を行なう場合,移動局は様々な能力を持つ端末が 接続されると考えられる。その一つが低消費電力対応の端末である。この ような端末は,多少の送受信の能力は犠牲にしても,消費電力を削減し, 5 より携帯に適するように構成される。OFDMAの端末の低消費電力化と して考えられる方法は,送受信できる帯域幅を狭め,アクセスできる周波 数チャネルを限定する方法が考えられる。アクセスできる周波数チャネル を限定することは,伝送レートが下がり,また,伝搬路状態が良いチャネ ルを選択できないといったデメリットがある反面,処理速度,例えばA/ 10 D変換器のサンプリング周波数やロジックの処理速度が軽減できるメリッ トがあり,その結果,低消費電力化を図ることが可能となる。 【0024】 上述したように,従来のOFDMAの送受信装置は,受信端末がすべて の帯域を受信し処理することを前提としている。従って,送信装置におい 15 ては全帯域の中心となるDC成分(f(0))のサブキャリアを使用しない 方式を採っている。この状態で,1つの帯域しか受信できない端末がアク セスした場合を検討する。このような端末は,アナログフィルタ等で,受 信したい帯域をフィルタリングする。例えば,図9におけるF2(サブキ ャリア番号としてはf(65)からf(128))のスロットのみを受信す 20 る場合,F2をフィルタリングにより抜き出し,この帯域の中心であるf (96)あるいはf(97)を中心周波数として扱うことになる。なお, ここで示したf(96)およびf(97)の選択については,特に意味は ない。 【0 ルタリングにより抜き出し,この帯域の中心であるf (96)あるいはf(97)を中心周波数として扱うことになる。なお, ここで示したf(96)およびf(97)の選択については,特に意味は ない。 【0025】 25 送信装置においては,従来それらのサブキャリアにも他のサブキャリア 76 と同様に変調を加えているので,特性が悪いにも関わらす,受信端末はそ のサブキャリアを復調しなくてはならない。従って,特性の劣化がおこり, 受信スロットに誤りが発生し,再送が起こるなどシステム全体のスループ ットの低下につながるといった問題があった。このような問題は,上記の ように,1つの帯域しか受信できない端末のみならず,更に2つの帯域し 5 か受信できない端末等,様々な端末に関わる問題である。 【0026】 本発明は,このような事情に鑑みてなされたものであり,送受信できる 帯域幅が限られた通信相手に対しても,直流成分におけるオフセットの影 響を与えずに無線送信を行なうことができる無線送信機を提供することを 10 目的とする。 エ 【発明を実施するための形態】 【0057】 以下,本実施の形態に係る無線通信システムについて説明する。本実施 の形態では,上述したOFDMAによる通信方式を前提とする。 15 【0058】 本実施の形態は,回路構成,および,制御方法の一例を示すものであり, その目的は,無線送信機において,送信回路におけるDC成分のノイズの 影響を受けないように,DCに該当するサブキャリアには変調を施さない こと,また,受信回路においてDCに相当するサブキャリアについても同 20 様に復調を施さないように制御することである。従って,実現にあたって はさまざまな方法が存在する。 【0059】 (第1の実施形態) 第1の実施形態では,無線送信機にお ャリアについても同 20 様に復調を施さないように制御することである。従って,実現にあたって はさまざまな方法が存在する。 【0059】 (第1の実施形態) 第1の実施形態では,無線送信機において,どのような帯域幅を処理で 25 きる端末が接続されても,その端末が中心周波数として選択したサブキャ 77 リアには変調データを与えない方式を示す。従来技術では,サブチャネル とサブキャリアの関係をF1にサブキャリアf(640)~f(703), F2にサブキャリアf(704)~f(767),…,F6にサブキャリア f(960)~f(1023),F7にサブキャリアf(1)~f(64), F8にサブキャリアf(65)~f(128),…,F12にサブキャリア 5 f(321)~f(384)としたが,ここではサブキャリア番号が51 2を超えるサブキャリアについては1024を減算して表現する。従って, F1にサブキャリアf(-384)~f(-321),F2にサブキャリア f(-320)~f(-257),…,F6にサブキャリアf(-64)~ f(-1),F7にサブキャリアf(1)~f(64),F8にサブキャリ 10 アf(65)~f(128),…,F12にサブキャリアf(321)~f (384)に変えて表現するものとする。 【0060】 図1は,第1の実施形態に係る送信回路の概略構成を示すブロック図で ある。図1に示す送信回路は,データマルチプレックス部1を有しており, 15 誤り訂正符号部2と,S/P変換部3と,マッピング部とは,チャネル数 分(1~12)に分割されている。IFFT部5,P/S変換部6,GI 挿入部7,D/A変換部8,無線送信部9,そしてアンテナ部10は,そ れぞれ,図6に示したIFFT部504,パラレル/シリアル(P/S変 換部)505,ガードイン る。IFFT部5,P/S変換部6,GI 挿入部7,D/A変換部8,無線送信部9,そしてアンテナ部10は,そ れぞれ,図6に示したIFFT部504,パラレル/シリアル(P/S変 換部)505,ガードインターバル挿入部506,ディジタル/アナログ 20 変換部(D/A変換部)507,無線送信部508,アンテナ509と同 様の機能を果たす。 【0061】 マッピング部4は,サブキャリア毎に送信電力を割り当てると共に,割 り当てる送信電力のうち,最低の電力(例えば,0)を割り当てるサブキ 25 ャリアを選定する。そして,通信スロット単位で送信データを変調して変 78 調データを出力する。このようなマッピング部4では,それぞれに対応す るサブチャネル番号を追記し,f(m)の標記をm=-512~511に 変更している。従来技術では,0,385~511,および,-385か ら-512のサブキャリア番号に相当するサブキャリアに対しては変調を 行なっていない。第1の実施形態では,それに加えて,32×p(pは- 5 12から12までの整数)のサブキャリア番号に相当するサブキャリアに 対しては変調を行なっていない。これをスロット割り当てから見ると,各 サブチャネルの使用するサブキャリア数は62になり,各サブチャネルの 中心,およびサブチャネル間のサブキャリアが変調されていないことにな る。 10 【0062】 1つのサブチャネルしか受信できない端末は,1つのサブチャネルをフ ィルタリングし,受信処理を施すことになる。この場合,各サブチャネル の中心になるサブキャリアに変調が施されていないため,従来のOFDM 受信機と同様に中心を無視して,復調すれば,特性の劣化なく,データを 15 復調することができる。同様に,この仮定では,x個(xは12以下の奇 数)のサブチャネルにしか れていないため,従来のOFDM 受信機と同様に中心を無視して,復調すれば,特性の劣化なく,データを 15 復調することができる。同様に,この仮定では,x個(xは12以下の奇 数)のサブチャネルにしかアクセスできない端末の中心周波数はサブチャ ネルの中心になり,そのサブキャリアは変調に使用されていないので,従 来のOFDM受信機と同様に中心を無視して復調すれば,特性の劣化なく データを復調することができる。 20 【0063】 y個(yは12以下の偶数)のサブチャネルにしかアクセスできない端 末の中心は,サブチャネルの間になる。これもまた,変調には使用してい ないサブキャリアとしているので,従来のOFDM受信機と同様に中心を 無視して復調すれば,特性の劣化なくデータを復調することができる。 25 【0064】 79 このように,第1の実施形態においては,さまざまな帯域に対応した受 信機を特性の劣化なく,接続することが可能となる。 【0065】 (第2の実施形態) 上記の第1の実施形態では,使用しないサブキャリアをあらかじめ選定 5 し,様々な端末に対応する方法を示した。しかしながら,すべての帯域を 送受信に使用できるような,能力の高い端末にとっては,従来の方法と比 べて,伝送速度が下がる場合がある。従来方式であれば,768波をすべ て使用可能であったことに対し,第1の実施形態では,使用できないサブ キャリアを設定したため,使用可能なサブキャリアの数は744波となり, 10 すべてのサブキャリアに同じ変調方式をかけたとすると,その速度は74 4/768に落ちることになる。 【0066】 そこで,第2の実施形態では,適応的に使用しないサブキャリアを設定 する方法について説明する。 15 【0067】 図2は,あるフレームでの通信スロットの割 に落ちることになる。 【0066】 そこで,第2の実施形態では,適応的に使用しないサブキャリアを設定 する方法について説明する。 15 【0067】 図2は,あるフレームでの通信スロットの割り当てを示した図である。 従来技術と同様に,斜線のスロットはすべての端末が受信する報知スロッ トであり,A~Fまでの端末がそれぞれ示されているスロットで通信を行 なうことを意味している。以下の説明においては,中心のサブキャリア位 20 置を求める際,処理がわかりやすくなるように使用するサブキャリア数を 奇数としてから処理を行なっている。ただし,必然性があるわけではなく, 偶数で処理する場合は,サブキャリアが存在しない周波数が中心となるた め,そのどちらかを中心として扱うことを予め送受信装置間で決めておけ ば問題は生じない。 25 【0068】 80 図2において,制御スロットはすべての端末が受信する必要があるので, 第1の実施例と同様に,変調に用いないサブキャリアを配置する。具体的 には,変調に用いないサブキャリア番号は0,385~511,および, -385から-512と32×p(pは-12から12までの整数)であ る。 5 【0069】 次に,Aに着目すると,使用するスロットは(T2~T6,F12)の 5スロットであり,周波数チャネルはF12のみである。F12は,f (321)~f(384)であるが,最大番号のサブキャリアf(384) とそれを除くサブキャリアの中心に位置するサブキャリアf(352)を 10 使用しないサブキャリアとする。 【0070】 Bに着目すると(T2,F7~F9)と(T5~T6,F7~F9)の 9スロットである。F7からF9の場合,使用するサブキャリアはf(1) ~f(192)であり,最大番号のf(192)とそれを除くサブキャ Bに着目すると(T2,F7~F9)と(T5~T6,F7~F9)の 9スロットである。F7からF9の場合,使用するサブキャリアはf(1) ~f(192)であり,最大番号のf(192)とそれを除くサブキャリ 15 アの中心に位置するサブキャリアf(96)を使用しないサブキャリアと する。 【0071】 Cは,(T3,F1~F10)の10スロットを使用する。使用するサブ キャリアはf(-384)からf(256)である。アクセスするサブチ 20 ャネルがf(0)を挟んでいる場合は,最大番号のサブキャリアを使用し ないという処理は行わない。従って中心に位置するf(-64)のみが, 使用しないサブキャリアとなる。もちろんf(0)は使用しない。 【0072】 Dは,(T2,F1~F6),(T4~T5,F1~F6)の18スロット 25 を使用する。使用するサブキャリアはf(-384)からf(-1)であ 81 る。従って最大番号のf(-1)と,中心に位置するf(-193)が使 用しないサブキャリアとなる。 【0073】 Eは,(T4~T5,F10~F11)の4スロットを使用する。使用す るサブキャリアはf(193)からf(320)である。従って最大番号 5 のf(320)と,中心に位置するf(256)が使用しないサブキャリ アとなる。 【0074】 Fは,(T7~T9,F1~F12)の36スロットを使用する。使用す るサブキャリアはf(-384)からf(384)である。中心に位置す 10 るf(0)のみが使用しないサブキャリアとなる。 【0075】 以上を時間スロット単位で,使用しないサブキャリアをまとめて図3に 示す。図3からも明らかであるが,第1の実施形態より,使用しないサブ キャリア数は減っており,また,全帯域アクセスできる端末は,従来と全 15 スロット単位で,使用しないサブキャリアをまとめて図3に 示す。図3からも明らかであるが,第1の実施形態より,使用しないサブ キャリア数は減っており,また,全帯域アクセスできる端末は,従来と全 15 く同じ数のサブキャリアを使用することが可能となっている。また,図2 においては,連続する帯域で割り当てをおこなっているが,間に使用しな いスロットが挟まった場合でも,その帯域を使用しているとみなして処理 を行なえば,問題ない。 【0077】 20 図5は,不使用サブキャリア演算部11の動作を示すフローチャートで ある。図5において用いているパラメータは,上述したパラメータと同一 である。ただしfdcは,使用するチャネルがDC成分を含んでいるかい ないかを示す指標値であり,TSは,スロット番号の変数値であり,m_ max,m_minは,それぞれ,不使用サブキャリア演算部11に入力 25 される使用するサブチャネルの最大値と最小値である。また,不使用サブ 82 キャリアはf(m)=0として表している。 【0078】 フレームを構成開始するにあたり,S101において,f(0),f(- 385~-512)およびf(-385~-512)は常に0に設定され る。また,fdc=0,TS=0が設定される。S102ではTSが1ず 5 つインクリメントされる。S103では現在のスロットが報知スロットで あるかどうかを判断する。本実施例ではT1スロットで報知情報を送信す ることになっているので,TS=1ならば,報知スロットと判断する。報 知スロットの場合,S104で,送信しないサブキャリア,m=32×p (pは-12から12の整数)となるf(m)を0に設定する。 10 【0079】 TSが2以上になるとS105に進む。ここでは,該当するTS中にス ロットを割り当てる端末があ ャリア,m=32×p (pは-12から12の整数)となるf(m)を0に設定する。 10 【0079】 TSが2以上になるとS105に進む。ここでは,該当するTS中にス ロットを割り当てる端末がある否かを判定し,ある場合はS106に進み, ない場合は,S110に進む。S106ではfdcを演算する。fdcは サブキャリア番号による演算である。S107ではfdcの値により,f 15 (0)を挟んでサブチャネルの割り当てがあるがどうかが判定される。f dcが負の値の場合,f(0)を挟んで割り当てがあることになり,S1 09に進む。正の場合はS108に進む。S108では,f(0)を挟ん でいない場合の不使用サブキャリアの決定処理であり,その使用するサブ キャリアの最大値即ちf(m_max)と,それを除く帯域の中心となる 20 サブキャリアf(m_max+m_min-1)がそれぞれ0に設定され る。 【0080】 S109では,f(0)を挟んだ場合の不使用サブキャリアの決定処理 であり,帯域の中心となるサブキャリアf(m_max+m_min)が 25 0に設定される。S110ではフレームの最後まで割り振りが終わったか 83 否かを判定する。第2の実施形態では,時間スロットは9までとしている ので,TS=9についての判定を行なうことになる。TS=9になると処 理を終了し,初期状態に戻ることになる。 【0081】 以上のような方法で,フレーム毎に不使用サブキャリアを決定すること 5 で,効率的でかつ特性劣化のない通信を行なうことが可能になる。 【0085】 なお,本実施の形態に係る送信回路によって,基地局装置を構成するこ とができる。このような基地局装置によって,低消費電力化を図るために, 使用する帯域幅が限定された端末と通信を行なった場合でも,送受信処理 ,本実施の形態に係る送信回路によって,基地局装置を構成するこ とができる。このような基地局装置によって,低消費電力化を図るために, 使用する帯域幅が限定された端末と通信を行なった場合でも,送受信処理 10 において,直流成分の影響を受けることが無くなるので,通信特性の劣化 や受信スロットの誤りの発生を防止し,スループットの低下を回避するこ とが可能となる。 (2) 前記(1)の記載事項及び本件発明に係る特許請求の範囲(前記前提事実(3) ア)によれば,本件明細書には,本件発明に関し,以下の開示があることが 15 認められる。 ア 高速な伝送レートの無線通信を実現するために必要となる要件は,周波 数利用効率を高めることであり,伝送レートを上げるには,利用する周波 数帯域幅を広げることが単純な解決策であるが,利用できる周波数帯域は 逼迫していることから,周波数利用効率を高めることが必要となり,その 20 要求を満たす可能性を持った技術に,通信する際の変調方式としてOFD Mを用いるOFDMA(Orthogonal Frequency D ivision Multiple Access)が存在する(【000 2】及び【0003】)。 OFDMは数十から数千のキャリアを,理論上干渉の起こらない最小と 25 なる周波数間隔に並べ同時に通信する方式であるところ,OFDMの変調 84 回路によって生成されたOFDM信号を送受信する場合,ベースバンド処 理において,全帯域の中心をDCとして扱うことが効率的であることは知 られており,また,DC成分は送受信機におけるノイズを受けやすいため, 特性が他のサブキャリアと比べて劣化が激しいことから,DC成分,即ち, f(0)に相当するキャリアにはデータを割り当てないのが通常である 5 (【0004】ないし【0009】) イズを受けやすいため, 特性が他のサブキャリアと比べて劣化が激しいことから,DC成分,即ち, f(0)に相当するキャリアにはデータを割り当てないのが通常である 5 (【0004】ないし【0009】)。 OFDMAにより通信を行なう場合,移動局は様々な能力を持つ端末が 接続されると考えられるが,従来のOFDMAの送受信装置は,受信端末 が全ての帯域を受信し処理することを前提としており,送信装置において は全帯域の中心となるDC成分(f(0))のサブキャリアを使用しない方 10 式を採っていたことから,全帯域のうち特定の帯域しか受信できない端末 に対して送信する場合,上記端末への送信に使用する帯域の中心に位置す るサブキャリアにも他のサブキャリアと同様に変調を加えているので,特 性が悪いにも関わらず,受信端末はそのサブキャリアを復調しなければな らず,受信スロットに誤りが発生し,再送が起こるなど,システム全体の 15 スループットの低下につながるといった問題があった(【0023】ないし 【0025】)。 イ 「本発明」は,前記アの問題を解決するために,送受信できる帯域幅が 限られた通信相手に対しても,直流成分におけるオフセットの影響を与え ずに無線送信を行なうことができる無線送信機を提供することを目的とし 20 (【0026】),2以上の偶数であるM個の連続する周波数チャネル(サブ チャネル)を使用する端末に送信する場合に,各サブチャネルの中心及び サブチャネルの間に位置するサブキャリアを使用しない方法と,M個の連 続するサブチャネルの中心に位置するサブキャリアを使用しないようにし, 各サブチャネルの中心に位置するサブキャリアを使用することにより,適 25 応的に使用しないサブキャリアを設定する方法を組み合わせ,全ての端末 85 が受信する必要のある制御スロ ないようにし, 各サブチャネルの中心に位置するサブキャリアを使用することにより,適 25 応的に使用しないサブキャリアを設定する方法を組み合わせ,全ての端末 85 が受信する必要のある制御スロットの送信について前者の方法で送信を行 い,制御スロットではない送信には後者の方法で送信を行うという構成を 採用したものである(【0059】ないし【0080】)。 これにより,「本発明」は,効率的でかつ特性劣化のない通信を行うこと が可能になるという効果を奏する(【0081】)。 5 2 争点2-1(乙1文献を引用例とする新規性欠如)について 事案に鑑み,まず争点2-1について判断する。 (1) 乙1文献の記載事項等 ア 証拠(乙1,2)及び弁論の全趣旨によれば,乙1文献は,802.1 1規格の策定作業に際して作成された平成16年8月13日付けの寄書 10 (規格提案文書)であり,規格書や寄書等の規格関連文書が格納される, 何人もアクセス可能なIEEE802.11のFTPサーバに,同月14 日付けでアップロードされたものと認められる。 したがって,乙1文献は,遅くとも本件優先日(平成16年10月29 日)前の平成16年8月14日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能と 15 なったものである。 イ 乙1文献の記載内容は,別紙5乙1文献の記載のとおりであり,これに よれば,乙1文献には以下の開示があることが認められる。 (ア) OFDM信号を送信する際のPHY層(物理層)の最大データレート を増加させることを目的として,主に①複数の送信アンテナによる複数 20 の空間ストリームの送信(802.11a PHYをMIMOに進化さ せたもの)と,②拡張帯域幅信号方式(20MHzのチャネル化を世界 中で義務付け,広帯域幅での動作を許可している規制ドメインでは40 M の空間ストリームの送信(802.11a PHYをMIMOに進化さ せたもの)と,②拡張帯域幅信号方式(20MHzのチャネル化を世界 中で義務付け,広帯域幅での動作を許可している規制ドメインでは40 MHzのチャネル化に対応することを推奨する。)の2つの技法を導入す ることが可能である(別紙5の2,5,8(1))。 25 (イ) ②拡張帯域幅信号方式において,40MHzの帯域幅には,20MH 86 z幅のサブチャネルが2つあり,そのサブキャリア(トーン)の配置は 図38のとおりである。また,②拡張帯域幅信号方式において送信機が 用いる,HT(高スループット)での伝送用のPPDU(PHYプロト コル・データ・ユニット)のフォーマットは,図39及び図40のとお りである(別紙5の8(1)イ,ウ)。 5 (ウ) 40MHzでの前記PPDUにおける各信号の送信方式としては,ま ず,40MHzにおけるサブキャリア±32(図38のとおり,「40M Hzのインデックス」の各サブチャネルの中心に位置するサブキャリア) は,レガシー20MHz伝送ではDCサブキャリアであるが,いずれも レガシー・ロング・トレーニング・フィールド(L-LTF)の送信では 10 使用しない(ヌル)とされる(別紙5の8(2)ア)。 そして,L-SIGは,レガシー・ショート・トレーニング・フィー ルド(L-STF)とL-LTFと同じ様式で送信され,また,HT- SIG(HTSIG1及びHTSIG2)も,L-SIGと同様の様式 で送信される(別紙5の8(2)イ(ア),(イ))。 15 (エ) 40MHzでの前記PPDUについて,データ送信(HT-DATA) におけるサブキャリアの配置は図55のとおりであり,2つの隣り合う 20MHzのOFDMシンボル(サブキャリアの集合)が結合されるが, 40MHz での前記PPDUについて,データ送信(HT-DATA) におけるサブキャリアの配置は図55のとおりであり,2つの隣り合う 20MHzのOFDMシンボル(サブキャリアの集合)が結合されるが, 40MHzの帯域の中心である,2つのサブチャネルの間にあるサブキ ャリア(-1,0,+1)は使用せず(ヌル化),他方で,各サブチャネ 20 ルの中心のサブキャリア(-32,+32)は使用する(別紙5の8(2) ウ)。 (2) 本件発明と乙1発明との対比 ア 乙1発明の認定 前記(1)によれば,乙1文献には,被告主張に係る次の構成を有する乙1 25 発明が記載されていると認められる。 87 構成1a:少なくともL-SIG送信を行う期間,HT-SIG送信を 行う期間,及びデータ送信を行うデータ送信期間を含むOF DM信号を送信する送信機であって, 構成1b:HT受信機が同時に使用可能な2個の連続する20MHz幅 のサブチャネルに配置された複数のサブチャネルを用いて, 5 HT受信機へOFDM信号を送信することが少なくとも可能 な送信部と, 構成1c:L-SIG送信又はHT-SIG送信を行う前記期間のOF DM信号の送信に用いる前記2個の20MHz幅のサブチャ ネルに配置された複数のサブキャリアにデータを割り当てる 10 際に,2個の20MHzサブチャネルの中心に位置する2個 のサブキャリア±32を使用しないことを特徴とする信号処 理部と,を備え, 構成1d:前記信号処理部は,前記データ送信期間のOFDM信号の送 信に用いる前記2個の20MHz幅のサブチャネルに配置さ 15 れた複数のサブキャリアにデータを割り当てる際に,2個の 20MHz幅のサブチャネルで構成される40MHz帯域の 中心に位置するトーン(0)を少なくとも使用せず,前記2 個の20MHz幅のサブチ 15 れた複数のサブキャリアにデータを割り当てる際に,2個の 20MHz幅のサブチャネルで構成される40MHz帯域の 中心に位置するトーン(0)を少なくとも使用せず,前記2 個の20MHz幅のサブチャネルの中心に位置する2個全て のトーン(±32)は使用することを特徴とし, 20 構成1e:2個のサブチャネル数は,送信機が同時に使用可能なサブチ ャネル数を越えない 構成1f:構成1aないし1eを備えることを特徴とする送信機。 イ 本件発明の構成要件と乙1発明の構成との対比 (ア) 前記1及び前記(1)イによれば,本件発明の「第1の期間」は乙1発 25 明の「L-SIG送信を行う期間」及び「HT-SIG送信を行う期間」 88 に,本件発明の「第2の期間」は乙1発明の「データ送信を行うデータ 送信期間」に,本件発明の「第1の送信機」は乙1発明の「送信機に, 本件発明の「第2の通信装置」は乙1発明の「HT受信機」に,それぞ れ相当する。 (イ) 「2」が「2以上の偶数」に包含されることは明らかであるから,本 5 件発明における2以上の偶数である「M個」は,乙1発明における「2 個」を含むというべきであり,本件発明の「第2の通信装置が同時に使 用可能なM個(Mは2以上の偶数)の連続する周波数チャネル」は乙1 発明の「HT受信機が同時に使用可能な2個の連続する20MHz幅の サブチャネル」を含む。 10 (ウ) 前記1及び前記(1)イによれば,本件発明の構成要件Cにおける,「M 個の周波数チャネルのそれぞれの中心に位置するM個全てのサブキャリ アを少なくとも使用しないこと」は,乙1発明の構成1cの「2個の2 0MHzサブチャネルのそれぞれの中心に位置する2個のサブキャリア ±32を使用しないこと」に相当し,本件発明の構成要件Dの「M個の 15 周波数チャ 用しないこと」は,乙1発明の構成1cの「2個の2 0MHzサブチャネルのそれぞれの中心に位置する2個のサブキャリア ±32を使用しないこと」に相当し,本件発明の構成要件Dの「M個の 15 周波数チャネルで構成される周波数帯域の中心に位置する1個のサブキ ャリアを少なくとも使用せず」及び「前記M個の周波数チャネルの中心 に位置するM個全てのサブキャリアは使用する」は,乙1発明の構成1 dの「2個の20MHz幅のサブチャネルで構成される40MHz帯域 の中心に位置するトーン(0)を少なくとも使用せず」及び「前記2個 20 の20MHz幅のサブチャネルの中心に位置する2個全てのトーン(± 32)は使用する」に,それぞれ相当する。 (エ) 以上によれば,本件発明の構成要件AないしFと乙1発明の構成1a ないし1fとはそれぞれ一致するものと認められるから,本件発明は, 乙1発明と同一であると認められる。 25 ウ 原告が主張する相違点について 89 原告は,本件発明と乙1発明との間には相違点(本件発明は,第2の期 間における送信において,周波数帯域上の複数の周波数チャネルのうち, 受信端末が同時に使用可能な連続する周波数チャネルの数が「2以上の偶 数」の場合に,当該個数の周波数チャネルで構成される周波数帯域の中心 に位置するサブキャリアを使わず,それぞれの周波数チャネルの中心サブ 5 キャリアは全て使用するとの構成を備えるのに対し,乙1発明は,受信端 末が同時に使用可能な連続する周波数チャネルの数が「2」である場合に, 当該「2個」の周波数チャネルに配置されたサブキャリアにデータを割り 当てる際に,「2個」で構成される周波数帯域の中心に位置するサブキャリ アを使わず,各1個の周波数チャネルの中心サブキャリアは使用するとの 10 構成を備えること。)があると主張す リアにデータを割り 当てる際に,「2個」で構成される周波数帯域の中心に位置するサブキャリ アを使わず,各1個の周波数チャネルの中心サブキャリアは使用するとの 10 構成を備えること。)があると主張する。 しかしながら,前記イ(イ)のとおり,本件発明において「第2の通信装置 が同時に使用可能な…連続する周波数チャネル」が2以上の偶数である 「M個」とされているところ,当該連続する周波数チャネルに「2個の連 続する周波数チャネル」が含まれるのは明らかであるから,原告の主張す 15 る上記相違点は,本件発明と乙1発明の相違点とは認められず,同主張を 採用することはできない。 また,原告は,本件発明においては「M個」が「2」以外の偶数を取り 得るから,各端末の特性に応じて適応的に使用しないサブキャリアを設定 することができるが,乙1発明ではこのようなことはできないから,「2以 20 上の偶数」に「2」が含まれるとの理由で両者を同一であると認定するこ とはできないと主張する。 しかしながら,前記(1)アのとおり,「M個(Mは2以上の偶数)」に含ま れる「2個」の周波数チャネルに係る構成を有する乙1発明が,本件優先 日前において,公衆に利用可能となっているから,本件発明に係る技術が 25 公開され,第三者がそれを実施できる状態に至っているといえる。そうす 90 ると,既に公開されている技術には特許権を付与しないこととした特許法 29条1項の趣旨に照らし,新規性判断の視点からは「2以上の偶数」と 「2」とを同一であると認定するのが相当であり,原告の上記主張は,採 用することができない。 なお,原告は,本件発明と乙1発明とでは技術的思想が異なるとも主張 5 するが,仮に,両者の間に技術的思想の相違が存在するとしても,それが 構成の相違につながっているとは認められない とができない。 なお,原告は,本件発明と乙1発明とでは技術的思想が異なるとも主張 5 するが,仮に,両者の間に技術的思想の相違が存在するとしても,それが 構成の相違につながっているとは認められないから,この点も,前記イの 判断を覆すに足りるものとは認められない。 (3) 小括 以上によれば,本件発明は,本件優先日より前に電気通信回線を通じて公 10 衆に利用可能となった発明である乙1発明と同一の発明であるから,新規性 を欠くものである(特許法29条1項3号)。 したがって,その余の無効理由の有無について判断するまでもなく,本件 発明に係る特許は,特許法123条1項2号に基づいて特許無効審判におい て無効とされるべきものであるから,特許法104条の3第1項の抗弁が成 15 立する。 3 争点3-1(本件訂正に基づく訂正の再抗弁の主張が時機に後れた攻撃防御 方法等として却下されるべきか)について (1) 証拠(乙30)及び弁論の全趣旨並びに当裁判所に顕著な事実を総合すれ ば,原告は,被告の無効の抗弁の主張を受け,訂正請求をその後に行う予定 20 であるとして,訂正の再抗弁に係る主張を記載した令和2年9月4日付け原 告第1準備書面を提出したこと,原告は,本件無効審判事件において,同年 11月6日付けで訂正請求(本件訂正)を行ったが,その訂正内容は上記原 告第1準備書面において記載されたものとは異なっていたこと,被告は,上 記原告第1準備書面における訂正内容と本件訂正の内容が一致していないか 25 ら上記の訂正の再抗弁の主張は認められない旨の主張を記載した令和3年1 91 月12日付け被告第3準備書面を提出したこと,原告は,本件訴訟での訂正 の再抗弁と本件訂正との間に過誤によって齟齬が生じており,本件訂正に合 わせるように上記原告第1準備書面における訂正 1 91 月12日付け被告第3準備書面を提出したこと,原告は,本件訴訟での訂正 の再抗弁と本件訂正との間に過誤によって齟齬が生じており,本件訂正に合 わせるように上記原告第1準備書面における訂正の再抗弁の主張を変更する として,改めて,本件訂正に基づく訂正の再抗弁の主張を行う旨記載した同 月18日付け原告第3準備書面を提出したことが認められる。 5 (2) 被告は,前記(1)の原告第3準備書面における本件訂正に基づく訂正の再 抗弁の主張は,時機に後れた攻撃防御方法等として却下されるべきであると 主張する。 しかしながら,前記(1)のとおり,原告が上記原告第3準備書面において訂 正の再抗弁の主張を変更したのは,本件訴訟での訂正の再抗弁と本件無効審 10 判事件での本件訂正との齟齬をなくすように,本件訴訟における主張を整理 したものであって,当該主張の変更は,被告から齟齬の指摘を受けた直後に, 本件訂正からみても2か月程度で行われている。しかも,その主張の変更が された時点で,本件訴訟は未だ書面による準備手続による争点整理の途中で あったものである(当裁判所に顕著な事実)。 15 このような本件訴訟の経過からすれば,被告が指摘するように,本件訂正 を行った直後の令和2年11月17日の書面による準備手続における協議に おいて,上記原告第1準備書面における訂正の内容と本件訂正の内容が同じ である旨を原告が説明していたこと(当裁判所に顕著な事実)を考慮しても, 原告が,上記原告第3準備書面により,それまでの主張を変更して本件訂正 20 に基づく訂正の再抗弁の主張をすることが,時機に後れた主張を追加するも のということはできない。また,同様の理由で,当該主張が,特許法104 条の3第2項の趣旨から許されないとも,実体法上及び訴訟法上の信義則に も反するともいえない。 ことが,時機に後れた主張を追加するも のということはできない。また,同様の理由で,当該主張が,特許法104 条の3第2項の趣旨から許されないとも,実体法上及び訴訟法上の信義則に も反するともいえない。 したがって,当該主張について時機に後れた攻撃防御方法等として却下す 25 ることを求める被告の上記申立ては,これを却下する。 92 4 争点3-4-1(本件訂正発明の乙1文献を主引用例とする進歩性欠如)に ついて (1) 本件訂正発明の内容 本件訂正の内容は,前記前提事実(4)のとおりであるところ,前記1の本件 明細書の記載等を踏まえれば,本件訂正発明は,本件発明の内容に「第1の 5 通信装置が第2の通信装置に対して第1の期間及び第2の期間のOFDM信 号を送信する際に用いる「M個(Mは2以上の偶数)の連続する周波数チャ ネル」の周波数チャネルの数が,第1の通信装置が同時に使用可能な「周波 数帯域上の複数の周波数チャネル」の数よりも少ない」という構成を付加し たものと認められる。 10 また,本件訂正発明は,本件明細書の実施形態との関係でいえば,第2の 実施形態(【0065】ないし【0081】)において,【図2】に示される1 2個の周波数チャネルを使用可能な送信装置(第1の通信装置)が,10個 (C端末),6個(D端末)又は2個(E端末)の連続する周波数チャネルを 使用して,C端末,D端末又はE端末にOFDM信号を送信する形態に相当 15 する構成であると認められる。 (2) 本件訂正発明と乙1発明との対比 ア 前記2(2)のとおり,本件発明は乙1発明と同一であるところ,乙1文献 において,20MHz幅のサブチャネル2つからなる40MHzの帯域幅 を使用する送信機について,当該送信機がOFDM信号を送信可能な周波 20 数チャネルの最大数が2個( と同一であるところ,乙1文献 において,20MHz幅のサブチャネル2つからなる40MHzの帯域幅 を使用する送信機について,当該送信機がOFDM信号を送信可能な周波 20 数チャネルの最大数が2個(40MHz)を上回る場合についての記載が されているとは認められないから,乙1発明は本件発明に付加された前記 (1)の構成に相当する構成を備えないものといえる。 したがって,この点において,本件訂正発明と乙1発明との間には,次 の相違点(以下「本件相違点」という。)があるものと認められ,他方で, 25 その余の構成においては,本件訂正発明は乙1発明と一致するものと認め 93 られる。 (本件相違点) 本件訂正発明においては,「第1の通信装置」が「第2の通信装置」に対 して「第1の期間」及び「第2の期間」のOFDM信号を送信する際に用 いる「M個(Mは2以上の偶数)の連続する周波数チャネル」の数が,「第 5 1の通信装置」が「同時に使用可能な周波数チャネル数」よりも少ないと の構成を備えるのに対して,乙1発明では,「送信機」が「HT受信機」に 対して「L-SIG送信を行う期間及びHT-SIG送信を行う期間」並 びに「データ送信を行うデータ送信期間」のOFDM信号を送信する際に 用いるサブチャネルの数(2個)が,「送信機」が「同時に使用可能なサブ 10 チャネル数」(OFDM信号を送信可能なサブチャネルの最大数)よりも少 ないとの構成を備えない点 イ 相違点についての補足説明 本件相違点は,被告の主張する相違点及び原告が主張する相違点のうち, 「①受信端末が同時に使用可能な連続する周波数チャネルの数(M個)が, 15 送信端末が同時に使用可能な複数の周波数チャネル(最大帯域幅で使用さ れるシステム周波数チャネル)の数よりも少ない」との部分に対応するも のであ 使用可能な連続する周波数チャネルの数(M個)が, 15 送信端末が同時に使用可能な複数の周波数チャネル(最大帯域幅で使用さ れるシステム周波数チャネル)の数よりも少ない」との部分に対応するも のである。 これに対し,原告は,その他の相違点として,本件訂正発明においては 「②「(M個が)2以上の偶数である」ことを指摘するが,前記2(2)ウの 20 とおり,新規性判断の視点からは,2以上の偶数である「M個」の連続す る周波数チャネルと乙1発明の「2個の連続する周波数チャネル」とが同 一であると認定することができるから,この点を本件訂正発明と乙1発明 の相違点と認めることはできない。 また,原告は,乙1発明が,①受信端末が同時に使用可能な連続する周 25 波数チャネルの数(M個)が,送信端末が同時に使用可能な複数の周波数 94 チャネル(最大帯域幅で使用されるシステム周波数チャネル)の数よりも 少なく,かつ,②「2以上の偶数」である場合のサブキャリア割当てに関 する構成を備えていないことを本件訂正発明と乙1発明との相違点として 捉えるべきであるとも主張する。しかしながら,本件訂正発明におけるサ ブキャリア割当てに関する構成は,構成要件C’及びD’として特定され 5 ているところ,前記2(2)イ(ウ)のとおり,乙1発明は,それらに対応する 構成1c及び1dを備えるものである。すなわち,乙1文献においては, 図55により,②「2以上の偶数」である「2」個の隣り合う20MHz のサブチャネルが結合された場合において,それらが合わさった40MH zの帯域幅の中心であるサブキャリア(-1,0,+1)は使用せず,各 10 サブチャネルの中心のサブキャリア(-32,+32)を使用するという サブキャリア割当てが示されており,他方で,このサブキャリア割当てに ついて,送信端末 ャリア(-1,0,+1)は使用せず,各 10 サブチャネルの中心のサブキャリア(-32,+32)を使用するという サブキャリア割当てが示されており,他方で,このサブキャリア割当てに ついて,送信端末が同時に使用できるサブチャネルの最大数との関係を示 す記載はない。そうすると,乙1発明は,①「受信端末が同時に使用可能 な連続する周波数チャネルの数」(2個)が,「送信端末が同時に使用可能 15 な複数の周波数チャネルの数」(例えば,4個)よりも少ない場合であって も,上記のサブキャリア割当てを行い,構成1c及び1dを備えるものと 理解できる。したがって,サブキャリア割当てに係る構成の点で,本件訂 正発明と乙1発明との間に,本件相違点に加えての相違点が存在するとは 認められず,原告の上記主張は採用することができない。 20 (3) 本件相違点に係る構成の容易想到性について ア 本件相違点は,HT受信機に対してOFDM信号を送信する際にHT受 信機が同時に使用可能な2個の連続するサブチャネルを使用する乙1発明 の構成を有する送信機について,当該送信機がOFDM信号を送信可能な サブチャネルの最大数を2個とするか,2個を上回るものとするかに係る 25 ものである。 95 そこで検討するに,乙1文献においては,「高データレートの達成に使用 されるPHY 技術では,空間ストリームの空間分割多重化により802.11 OFDM PHY をMIMO に進化させるとともに,帯域幅オプションを広げる」(別紙5の 2),「PHY 層の最大データレートを増加させることを目的として,我々の提 案では主に2 つの技法を導入する。…拡張帯域幅信号方式。20MHz のチャネ 5 ル化を世界中で義務付けるものとする。広帯域幅での動作を許可している 規制ドメインでは40MHz のチャネル化 々の提 案では主に2 つの技法を導入する。…拡張帯域幅信号方式。20MHz のチャネ 5 ル化を世界中で義務付けるものとする。広帯域幅での動作を許可している 規制ドメインでは40MHz のチャネル化に対応することを推奨する。」(別紙5 の5及び8(1))との記載がある。これらの記載から,通信速度を上げるた めに,使用可能なサブチャネルを増やすことは乙1文献自体に示唆がある と理解できる。また,OFDM信号を送信する際に,周波数チャネル(サ 10 ブチャネル)として,2個を上回る数の周波数チャネルを用いる構成は, 乙23公報の【0060】(利用可能通信帯域(20MHz)の帯域を分割 して,8個のチャネルを設ける構成),乙25公報の【0048】(利用可 能通信帯域(20MHz)を8分割し,計8チャネルを設ける構成),平成 16年9月2日を公開日とする乙33公報の【0027】及び【図2】(4 15 チャネルが設けられている構成)に記載されており,本件優先日において 周知であったと認められる。 そして,乙1文献には,「20MHz のチャネル化を世界中で義務付けるもの とする。広帯域幅での動作を許可している規制ドメインでは40MHz のチャネ ル化に対応することを推奨する。」(別紙5の5及び8(1)),「40MHz 対応HT 20 STA が20MHz モードのHT STA とまたはレガシーSTA と通信することを希望す る場合は,20MHz の期間で実行すること。」(別紙5の7)及び「20MHz のみ の送信を受信する40MHz 対応HT 装置は,どちらのサブチャネルが現在アク ティブになっているかをMAC に示すものとする。」(別紙5の8(1)イ)との 記載がある。これらの記載から,乙1発明においては,送信機による20 25 MHzのチャネルの使用が義務付けられてお アク ティブになっているかをMAC に示すものとする。」(別紙5の8(1)イ)との 記載がある。これらの記載から,乙1発明においては,送信機による20 25 MHzのチャネルの使用が義務付けられており,20MHzの2個のサブ 96 チャネルを使用する40MHzモードに対応する送信機においても,20 MHzの1個のサブチャネルのみを使用する受信機との後方互換性を取る ために,2個のサブチャネルを使用せずに,20MHzの1個のサブチャ ネルのみを使用することが可能であることが記載されていると認められる。 これらの点を踏まえると,本件相違点に係る構成,すなわち,HT受信 5 機が同時に使用可能な2個の連続するサブチャネルを使用する乙1発明の 構成を有する送信機について,当該送信機がOFDM信号を送信可能な周 波数チャネルの最大数を2個とするか,2個を上回るものとするかは,乙 1発明を具体的な送信機に適用するに当たり,当業者が適宜決定すべき設 計事項というべきである。 10 イ 原告の主張について (ア) 原告は,乙1文献には,40MHzの帯域幅を使用可能な送信機が, データ送信期間に,40MHzの通信帯域幅の一部を構成する20MH zの帯域幅を使用して,20MHzの帯域幅を使用可能な端末に対して 送信を行う構成は開示されていないと主張する。 15 しかしながら,前記アのとおり,乙1文献には,20MHzの2個の サブチャネルを使用する40MHzモードに対応する送信機が,2個の サブチャネルを使用せずに,20MHzの1個のサブチャネルのみを使 用可能であることが開示されているから,原告の上記主張は採用するこ とができない。 20 (イ) 原告は,A教授の意見書(甲29)によれば,乙1発明を元に帯域を バンドリングしても,帯域幅の一部である周波数(基本周波数で されているから,原告の上記主張は採用するこ とができない。 20 (イ) 原告は,A教授の意見書(甲29)によれば,乙1発明を元に帯域を バンドリングしても,帯域幅の一部である周波数(基本周波数である2 0MHzの偶数倍)を選択して送信する構成には至らない等と主張する。 しかしながら,A教授の意見書には,当業者が,4個の20MHz帯 域幅を持つサブチャネルからなる80MHzの帯域幅又は8個の20M 25 Hz帯域幅を持つサブチャネルからなる160MHzの帯域幅を使って 97 データを送信することが可能な装置において,4個又は8個のうち一部 のサブチャネルのみを使用するという構成を採用することについて,そ れが困難であるような事情の指摘はない。そうすると,上記意見書の記 載を考慮しても,前記アの判断を覆すには足りないというべきである。 (ウ) 原告は,本件訂正発明は,最大帯域幅で使用される周波数チャネル 5 (システム周波数チャネル)の数よりも少なく,かつ「2以上の偶数」 である周波数チャネルを使用する場合に,本件訂正発明が定めるサブキ ャリア割当てを行うことに技術的意義があるとして,本件訂正発明の技 術的意義を考慮すれば,本件訂正発明と乙1発明との相違点に係る構成 は設計事項といえないと主張する。 10 しかしながら,本件訂正発明におけるサブキャリア割当てに関する構 成について,本件訂正発明と乙1発明との間に,本件相違点に加えての 相違点が存在するとは認められないことは,前記(2)イで検討したとおり であり,また,前記アのとおり,乙1文献自体に,後方互換性の観点か ら,使用可能なサブチャネルの一部のみを使用する構成が記載されてい 15 ることからすれば,原告の上記主張をもって,乙1発明に本件相違点に 係る構成を採用することが,当業者が適宜決定し得る範 の観点か ら,使用可能なサブチャネルの一部のみを使用する構成が記載されてい 15 ることからすれば,原告の上記主張をもって,乙1発明に本件相違点に 係る構成を採用することが,当業者が適宜決定し得る範囲を超えるとは いえない。 (エ) 原告は,バンドリングによる帯域幅の拡張にはデメリットもあること, 本件優先日当時の電波法では20MHzの通信帯域幅の利用しか認めら 20 れていなかったことなどから,乙1文献に開示されている40MHzの 通信帯域幅から,通信帯域幅を更に80MHzや160MHzに拡張し ようと当業者が安易に考えることはできなかったと主張する。 しかしながら,本件優先日当時の法的な通信帯域の規制から,当然に, 当業者においてそれを超える通信帯域の使用が想到できないとはいえな 25 い。また,本件訂正発明が,使用する周波数チャネル数は特定するもの 98 の,帯域幅を特定していないこと,前記アのとおり,OFDM信号の送 信に2個を上回る数の周波数チャネルを用いることは本件優先日におい て周知であったことからすれば,原告の上記の主張を考慮しても,本件 相違点に係る構成を採用することが,当業者が適宜決定し得る範囲を超 えるとはいえない。 5 ウ よって,本件相違点に係る構成は,当業者が適宜決定すべき設計事項と して,本件優先日において,当業者が容易に想到し得たものというべきで ある。 (4) 小括 以上によれば,本件訂正発明は,当業者が,本件優先日より前に電気通信 10 回線を通じて公衆に利用可能となった発明である乙1発明に基づいて,容易 に発明し得たものであるから,進歩性を欠くものである(特許法29条2項)。 したがって,本件特許は,本件訂正がされたとしても,特許無効審判によ り無効とされるべきものであるから,その余の要件について判断するまで たものであるから,進歩性を欠くものである(特許法29条2項)。 したがって,本件特許は,本件訂正がされたとしても,特許無効審判によ り無効とされるべきものであるから,その余の要件について判断するまでも なく,原告の訂正の再抗弁は理由がない。 15 5 結論 前記2のとおり,本件発明に係る特許については特許法104条の3第1項 の抗弁が成立するところ,前記4のとおり,これに対する原告の訂正の再抗弁 は理由がないから,本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものであ り,原告は,同項により,本件特許権を行使することができない。 20 よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理 由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 25 99 國 分 隆 文 裁判官 5 矢 野 紀 夫 裁判官 10 佐 々 木 亮 100 別紙一覧 別紙1 物件目録 別紙2 本件発明に対応する被告製品の構成(原告の主張) 別紙3 本件訂正発明に対応する被告製品の構成(原告の主張) 5 別紙4 本件明細書の図面 別紙5 乙1文献の記載 101 別紙1 物件目録 1 Reno A 2 Reno10×Zoom 3 A5 2020 5 4 R17 Pro 5 Find X 別紙5 乙1文献の記載 101 別紙1 物件目録 1 Reno A 2 Reno10×Zoom 3 A5 2020 5 4 R17 Pro 5 Find X 102 別紙2 本件発明に対応する被告製品の構成(原告の主張) a 少なくともL-SIG送信,又は/及び,VHT-SIG-A送信を行う第1 の期間とデータ送信を行う第2の期間を含むOFDM信号を送信する第1の通信 装置であって, 5 b 第2の通信装置が同時に使用可能な4個(偶数)の連続する周波数チャネルに 配置された256のサブキャリアを用いて,第2の通信装置へOFDM信号を送 信することが少なくとも可能な送信部と, c 前記第1の期間のOFDM信号の送信に用いる前記4個の周波数チャネルに配 置された各64,合計256のサブキャリアにデータを割り当てる際に,4個の 10 周波数チャネルのそれぞれの中心に位置する4個全てのサブキャリアを少なくと も使用しないことを特徴とする信号処理部と,を備え, d 前記信号処理部は,前記第2の期間のOFDM信号の送信に用いる前記4個の 周波数チャネルに配置された256のサブキャリアにデータを割り当てる際に, 4個の周波数チャネルで構成される周波数帯域の中心に位置する1個のサブキャ 15 リアを少なくとも使用せず,前記4個の周波数チャネルの中心に位置する4個全 てのサブキャリアは使用することを特徴とし, e 前記4個の周波数チャネル数は,第1の通信装置が同時に使用可能な周波数チ ャネル数を越えない f ことを特徴とする第1の通信装置。 20 103 別紙3 本件訂正発明に対応する被告製品の構成(原告の主張) a’ 周波数帯域上の4個の周波数チャネルを用い,少なくともL-SIG送信, 又は/及 第1の通信装置。 20 103 別紙3 本件訂正発明に対応する被告製品の構成(原告の主張) a’ 周波数帯域上の4個の周波数チャネルを用い,少なくともL-SIG送信, 又は/及び,VHT-SIG-A送信を行う第1の期間とデータ送信を行う第2 の期間を含むOFDM信号を送信する第1の通信装置であって, 5 b’ 第2の通信装置が同時に使用可能であって,前記4個より少ない2個(偶数) の連続する周波数チャネルに配置された128のサブキャリアを用いて,第2の 通信装置へOFDM信号を送信することが少なくとも可能な送信部と, c’ 前記第1の期間のOFDM信号の送信に用いる前記2個の周波数チャネルに 配置された各64,合計128のサブキャリアにデータを割り当てる際に,2個 10 の周波数チャネルのそれぞれの中心に位置する2個全てのサブキャリアを少なく とも使用しないことを特徴とする信号処理部と,を備え, d’ 前記信号処理部は,前記第2の期間のOFDM信号の送信に用いる前記2個 の周波数チャネルに配置された128のサブキャリアにデータを割り当てる際に, 2個の周波数チャネルで構成される周波数帯域の中心に位置する1個のサブキャ 15 リアを少なくとも使用せず,前記2個の周波数チャネルの中心に位置する2個全 てのサブキャリアは使用することを特徴とし, e’ 前記2個の周波数チャネル数は,第1の通信装置が同時に使用可能な周波数 チャネル数より少ない f’ ことを特徴とする第1の通信装置。 20 104 別紙4 本件明細書の図面 【図1】 105 【図2】 【図3】 106 【図5】 【図6】 107 【図7】 【図9】 108 別紙5 乙1文献の記載 【図1】 105 【図2】 【図3】 106 【図5】 【図6】 107 【図7】 【図9】 108 別紙5 乙1文献の記載 (日本語訳のみを掲記する。頁数等は乙1文献原文における頁数等である。) 1 「要約」 「本書は,IEEE 802.11 TGn に対するTGn Sync による提案のMAC およびPHY 層に 関する技術仕様を提示するものである。」(1頁16行ないし18行) 2 「1. エグゼクティブ・サマリー」 「我々の提案の技術的アプローチは,市場の期待と設計の実用性の両方を認識し つつ複雑さと性能のバランスを取る。解決策は,低複雑性を目指す堅牢でスケー ラブルなアーキテクチャである。実際,基本構成ではアンテナ2本だけで243Mbps を提供する。このレートは,802.11 が世代ごとに5 倍高速化してきたトレンドに 一致する(802.11/2Mbps,802.11b/11Mbps,および最終的な802.11a/54Mbps)。さ らに,提案は600Mbps を超える一層高いレートのオプションも取り入れている。こ の高いピーク・データレートの選択は,今回提案の次世代WLAN の将来性を保証す るうえで重要であると見なされた。 高データレートの達成に使用されるPHY 技術では,空間ストリームの空間分割 多重化により802.11 OFDM PHY をMIMO に進化させるとともに,帯域幅オプション を広げる(20MHz または40MHz のいずれかだが,禁止されている規制ドメインでは 必須ではない)。さらに,任意の強化策として,高度FEC 符号化技法(リードソロ モンおよびLDPC),受信クライアント装置の追加コストが無視できる程度である送 信ビーム形成,ガード・インターバルの短 必須ではない)。さらに,任意の強化策として,高度FEC 符号化技法(リードソロ モンおよびLDPC),受信クライアント装置の追加コストが無視できる程度である送 信ビーム形成,ガード・インターバルの短縮,および最大7/8 の符号化などがあ る。TGn Sync の提案は,802.11 レガシー装置とのシームレスな相互運用性も提供 する。この相互運用性は,802.11 プリアンブル設計の強化やPHY およびMAC レベ ルの効率的な機構により達成される。この技術は堅牢性と対費用効果の強化にも つながる。」(3頁21行ないし37行) 3 「3. 定義」 「プリアンブル:ショートとロング:PHY 同期とチャネル推定に使用される 109 802.11 HT PPDU の部分。… 受信機(Receiver):現在のPPDU を受信するすべてのSTA。… 信号フィールド:「レート」と「持続時間」を含む802.11 HT PHY PPDU の部分, PLCP ヘッダーの一部。… シンボル:一般的には,サブキャリア(またはトーン)の集合であるOFDM シン ボルを意味する。」(11頁38行ないし12頁14行) 4 「4. 略語と頭字語」 用語 説明 … … AGC Automatic Gain Control:自動利得制御 AP Access Point:アクセス・ポイント … … CDD Cyclic Delay Diversity:巡回遅延ダイバーシティ … … ERP Extended Rate PHY:拡張レートPHY … … HT High Throughput:高スループット HT-LTF High Throughput Long Training Field:高スループット・ロン グ・トレーニング・フィールド H T High Throughput:高スループット HT-LTF High Throughput Long Training Field:高スループット・ロン グ・トレーニング・フィールド HT-SIG High Throughput Signal Field:高スループット信号フィールド HT-STF High Throughput Short Training Field:高スループット・ショ ート・トレーニング・フィールド … … L-LTF Legacy Long Training Field:レガシー・ロング・トレーニン グ・フィールド 110 L-SIG Legacy signal field:レガシー信号フィールド L-STF Legacy Short Training Field:レガシー・ショート・トレーニ ング・フィールド MAC Medium Access Controller:媒体アクセス・コントローラー MCS Modulation Coding Scheme:変調符号化方式 - 変調次数 (BPSK,QPSK,等),FEC コードおよび符号レート,空間ストリー ム数(MIMO)とTX アンテナ数など … … MIMO Multiple input, multiple output:多入力,多出力(送信機と 受信機の両方がポイントツーポイント・リンクを介した信号伝送 用に複数のアンテナを持つ) … … NTX 送信アンテナの総数 OFDM Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割 多重 PHY Physical Layer:物理層 PLCP PHY layer convergence protocol:PHY 層コンバ sion Multiplexing:直交周波数分割 多重 PHY Physical Layer:物理層 PLCP PHY layer convergence protocol:PHY 層コンバージェンス・プ ロトコル PPDU PHY protocol data unit:PHY プロトコル・データ・ユニット … … SoP Start of Packet:パケット(すなわち,PPDU パケット)の開始 … … STA Station:局 … … TGn Task Group n:802.11 タスク・グループn - 高スループットに 111 向けた強化 … … TX 送信機 … … (13頁ないし15頁) 5 「5.3 PHY 拡張の一般的説明」 「PHY 層の最大データレートを増加させることを目的として,我々の提案では主に 2 つの技法を導入する。 ・複数の送信アンテナによる複数の空間ストリームの送信。2 つのアンテナを必須, 4 つまでの拡張をオプションとすることを推奨する。この提案は,802.11a PHY をMIMO に進化させたものである。 ・拡張帯域幅信号方式。20MHz のチャネル化を世界中で義務付けるものとする。広 帯域幅での動作を許可している規制ドメインでは40MHzのチャネル化に対応する ことを推奨する。」(17頁7行ないし14行) 「この提案は,既存の802.11a/b/g 規格との完全な下位互換性をサポートしてい る。このプリアンブルの設計は,802.11a/g のOFDM プリアンブルとのPHY 層の相 互運用性をサポートするとともに,高スループットデータの同期のための堅牢な メカニズムを提供する。」(17頁35行ないし37行) 6 「6. フレームフォーマット」 (1) 「本 とのPHY 層の相 互運用性をサポートするとともに,高スループットデータの同期のための堅牢な メカニズムを提供する。」(17頁35行ないし37行) 6 「6. フレームフォーマット」 (1) 「本節では,新しいHT フレームのフォーマットを規定する。」(18頁2行) (2) 「6.3 マネジメントフレームフォーマット」 ア 「6.3.1 対応機能」 「任意機能または動作への対応は,STA の機能または管理要素によって示され る。 表1 – 追加HT 機能 112 機能 内容 HT 対応 この装置は本書で述べるすべての必須 機能に対応しているHT 装置であること を表す。 … … 対応チャネル帯域幅セット 内容: {20} 20MHz 動作のみが可能な装置 {20, 40} 20MHz および40MHz の両動作 に対応した装置 」(27頁14行ないし28頁1行) イ 「6.3.2 情報要素」 「AP はBSS を管理するために,新しい情報要素において情報を通知する。 この情報を下表のように規定する。 表2 – 追加HT 情報要素 名称 説明 使用方法 … … … 許容帯域幅 セット そのBSS 内で使用可能な チャネル帯域幅を示す。 値:{20}または{20,40} STA はユニキャスト非制御フレ ームの送出において,相手STA が対応しており,許容帯域幅セ ット内に存在する任意のチャネ ル帯域幅を使用することができ る。 … … … 」(29頁4行ないし6行) 7 「8.1.3.2 STA 側」 113 「許容帯域幅セットが20MHz および40MHz である40MHz 対応HT STA は,20MHz HT STA と通信する場合に20MHz モードに切り替えること。2 TA 側」 113 「許容帯域幅セットが20MHz および40MHz である40MHz 対応HT STA は,20MHz HT STA と通信する場合に20MHz モードに切り替えること。20MHz HT STA は,許容帯 域幅セットが20MHz に制約される。 …40MHz 対応HT STA は,40MHz の期間では,40MHz モードで通信することが許可 される。40MHz 対応HT STA が20MHz モードのHT STA とまたはレガシーSTA と通 信することを希望する場合は,20MHz の期間で実行すること。」(66頁12行な いし18行) 8 「11 MIMO-OFDM HT PHY 仕様」 (1) 「11.1 概要」,「11.1.1 導入(参考情報)」 「PHY 層の最大データレートを増加させることを目的として,我々の提案では 主に2 つの技法を導入する。 ・複数の送信アンテナによる複数の空間ストリームの送信。2 つのアンテナを 必須,4 つまでの拡張をオプションとすることを推奨する。 ・拡張帯域幅信号方式。20MHz のチャネル化を世界中で義務付けるものとする。 広帯域幅での動作を許可している規制ドメインでは40MHz のチャネル化に対 応することを推奨する。」(91頁30行ないし36行) ア 「11.1.1.2 スループット強化のオプション」 「スループット強化に関する我々のPHY 提案の基本必須構成は,20MHz のチ ャネル帯域幅にわたり2 つの送信アンテナを備えることである。送信機のデ ータ経路を図35 に示す。 図35:20MHz における2-アンテナMIMO の送信機データ経路 我々の提案はさらに,40MHz 信号方式が許される規制ドメインにおけるその 114 信号方式の規定も含む。このような構成 図35:20MHz における2-アンテナMIMO の送信機データ経路 我々の提案はさらに,40MHz 信号方式が許される規制ドメインにおけるその 114 信号方式の規定も含む。このような構成のための送信機データ経路を図36 に 示す。 図36:40MHz における2-アンテナMIMO の送信機データ経路」(93頁11 行ないし94頁1行) イ 「11.1.1.3 基本(必須)MIMO 伝送用のPPDU フォーマット」 「20MHz チャネル化において2 つのアンテナを使用する伝送用のPPDU フォ ーマットを図37 に示す。 図37:2x20 必須基本MIMO 伝送用のPPDU フォーマット 40MHz の帯域幅には,20MHz 幅のサブチャネルが2 つある。図38 に示すよう に,上位サブチャネルは0~+63 の範囲にあり,下位サブチャネルは−64~−1 の範囲にある。 20MHz のみの送信を受信する40MHz 対応HT 装置は,どちらのサブチャネル が現在アクティブになっているかをMAC に示すものとする。 115 図38:40MHz における上位および下位のサブチャネルの仕様 それぞれ40MHz 幅の2 つの送信アンテナによるPPDU フォーマットを図39 に 示す。 図39:2x40 必須基本MIMO 伝送用のPPDU フォーマット HT プリアンブルのレガシー部分(すなわち,L-STF からL-SIG まで)とHT- SIG は,一方のアンテナまたは両アンテナから送信してよい。両アンテナから 送信された場合,この単一空間ストリームの2 つのアンテナへのマッピング は,遠方場におけるビームフォーミングが軽減されるようになされなければ ならない。これを実現する1 つの方法として,巡回遅延ダイバーシティ(CDD) マ 一空間ストリームの2 つのアンテナへのマッピング は,遠方場におけるビームフォーミングが軽減されるようになされなければ ならない。これを実現する1 つの方法として,巡回遅延ダイバーシティ(CDD) マッピングの使用が挙げられる。CDD フォーマットに対応するPPDU の任意の 部分を,図37 および図39 に赤色で示す。」(94頁2行ないし95頁5行) ウ 「11.1.1.4 同期目的のHT PCLP プリアンブルおよびレガシー相互運用性」 「プリアンブルで実施される機能は以下を含む。 1. パケット開始(SoP)検出 2. AGC 116 3. 粗い周波数オフセット推定 4. 粗いタイミング・オフセット推定 5. 詳細なタイミング・オフセット推定 6. 詳細な周波数オフセット推定 7. チャネル推定 提案する高スループット(HT)プリアンブルは,レガシー・プリアンブル (802.11a/g と同一)とHT 固有プリアンブルを連結したものであり,これを 図40 に示す。 図40:HT プリアンブルのフォーマット レガシー・プリアンブルの連結により,PHY 層の802.11a モデムおよびERP- 802.11g モデムとの相互運用が可能になる。 HT 受信機は,レガシーPPDU を受信するかHT PPDU を受信するかをあらかじ め知ることはできない。そのため,HT 受信機はレガシー信号フィールド(L- SIG)の受信後に,HT-SIG を受信中であるのか,あるいはレガシー・データ (L-DATA)を受信中であるのかを自動検出する必要がある。我々のプリアン ブルのフォーマットは,HT-SIG を自動検出するための2 つの規定を含む:(a) 同位相軸ではなく横軸上のBPSK 信号としてHT-SIG を送信し,(b) L-SIG から HT 我々のプリアン ブルのフォーマットは,HT-SIG を自動検出するための2 つの規定を含む:(a) 同位相軸ではなく横軸上のBPSK 信号としてHT-SIG を送信し,(b) L-SIG から HT-SIG に変わる時点でパイロット極性を反転させる。 HT プリアンブルのレガシー部分により,レガシー受信機はL-SIG を正しく 復号できる。HT 受信機も,機能1~7(SoP からチャネル推定まで)を実行し 117 てHT-SIG を適切に復号するものとする。機能1~4(および,おそらく機能5) はレガシー・ショート・トレーニング・フィールド(L-STF)により実行され, 機能5~7 はレガシー・ロング・トレーニング・フィールド(L-LTF)により実 行されると予想される。」(95頁7行ないし96頁5行) (2) 「11.2 PLCP サブレイヤー」,「11.2.1. 基本MIMO モード」 ア 「11.2.1.3.2 レガシー・ロング・トレーニング・フィールド」 「上位サブチャネル(サブキャリア+6~+58)のトーンは,802.11a のロン グOFDM トレーニング・シンボルのトーン位相を90 度回転させることで得られ る。一方,下位サブチャネル(サブキャリア−58~−6)内のトーンは, 802.11a のロングOFDM トレーニング・シンボルのトーンと同一である。 レガシー・フィールド(L-STF,L-LTF,LSIG)とHT-SIG のいずれも下位サ ブチャネルでは,一切位相回転されないことに注意すべきである。 40MHz におけるサブキャリア±32 は,レガシー20MHz 伝送ではDC サブキャ リアであるが,いずれもL-LTF ではヌルとされる。このような構成により, 20MHz のレガシー装置の正しい同期が可能になる。」(105頁15行ないし は,レガシー20MHz 伝送ではDC サブキャ リアであるが,いずれもL-LTF ではヌルとされる。このような構成により, 20MHz のレガシー装置の正しい同期が可能になる。」(105頁15行ないし2 2行) イ 「11.2.1.4 信号フィールドの仕様」 「レガシー・ロング・トレーニング・フィールドL-LTFの後には,信号フィ ールドLSIG とHTSIG が続くものとする。…符号化と変調が続き,L-SIG とHT- SIG にBPSK 変調が使用され,½の符号化率により6Mbit/s が得られる。LSIG と HTSIG のシンボルの間で,BPSK 変調が反時計回りに90 度回転される。この位 相回転は,受信中のフレームがレガシーであるかHT であるかを「自動検出」 するために使用できる。コンステレーション・ビット符号化を図50 に示す。 118 図50:LSIG とHTSIG のコンステレーション仕様」(112頁2行ないし9 行) (ア) 「11.2.1.4.1 LSIG」 「 図51:SIGNAL フィールドのビット割当 20MHz モードでは,LSIG フィールドのフォーマットは…SIGNAL フィール ドと同じである。RATE とLENGTH の組み合わせを用いて局(OFDM モードの み)にHT 送信の持続時間を知らせる。この持続時間は,HT フレームの実際 の時間でなくてもよく,実際の伝送時間を超えて媒体を予約しておくため に使用できる。この種の信号方式による媒体の予約を「スプーフィング」 と呼ぶ。 レガシー局がHT フレーム伝送中に媒体にアクセスできないようにするた め,RATE フィールドとLENGTH フィールドから算出される「持続時間」はHT フレームの実際の時間以上とする。この時間は,LSIG フィールドの最後か 1 中に媒体にアクセスできないようにするた め,RATE フィールドとLENGTH フィールドから算出される「持続時間」はHT フレームの実際の時間以上とする。この時間は,LSIG フィールドの最後か 119 らDATA フィールドの最後までを測定する。HT 伝送中,RATE フィールドは 6Mbps に設定され,一方でLENGTH フィールドは「持続時間」の値に基づい て設定される。 40MHz モードでは,レガシー信号フィールドが複製され,−58 から−6 まで (下位サブチャネル)と+6から+58 まで(上位サブチャネル)がトーンで満 たされるようにする。上位サブチャネルは,11.2.1.3.2 で説明したLTS と 同様に,位相が90 度回転される。 LSIG は,レガシー・ショート・トレーニング・フィールドとレガシー・ ロング・トレーニング・フィールドと同じ様式で送信される。L-STF とL- LTFが単一アンテナから送信される場合,11.2.1.3.2と一致するようにアン テナにiTx=1 とインデックスを付ける。LSIG-26,26 およびLSIG-58,58 はそれぞれ, 20MHz および40MHz 用に生成されたLSIG OFDM シンボルを意味する。」(11 2頁11行ないし113頁7行) (イ) 「11.2.1.4.2 HTSIG」 「LSIG フィールドの後にはHTSIG が続き,これはHT PHY の信号フィール ドの役割を果たす。HTSIG は,HTSIG1 とHTSIG2 の2 つのOFDM シンボルから 成る。HTSIG1 が最初に送信される。 HTSIG1 とHTSIG2 の符号化は,11.2.1.4 節に記載したようにBPSK 変調が 90 度回転される点を除いてLSIG の場合と同じである。 40MHz モードでは,HT 信される。 HTSIG1 とHTSIG2 の符号化は,11.2.1.4 節に記載したようにBPSK 変調が 90 度回転される点を除いてLSIG の場合と同じである。 40MHz モードでは,HTSIG1 とHTSIG2 が複製される。上位サブチャネルは, 11.2.1.3.2 に記載したようにL-LTF と同じ方法で90 度回転される。 図52 は,2 つのシンボルのビット割当を示す。これについては次節で説 明する。 HTSIG1 とHTSIG2 は,LSIG と同様の様式で送信される。HTSIG−26,26 1,2 及び HTSIG−58,58 1,2 で,データ・フィールドとして以下に定義されるHTSIG の第一 および第二OFDM シンボルを表すものとすれば,レガシー・トレーニング・ 120 フィールドが第一アンテナのみで送信される場合,次式が得られる。 」 (114頁5行ないし17行) 「 図52:HT 信号フィールド(HTSIG1 およびHTSIG2)のビット割当」(1 15頁1行及び2行) (ウ) 「11.2.1.4.2.9 20/40 BW」 「このビットは,現在のPPDU が20MHz で信号伝達されているか40MHz で 信号伝達されているかを示す。値が0 の場合は20MHz を示し,1 の場合は 40MHz を示す。」(117頁15行及び16行) ウ 「11.2.1.5 データ・フィールド」「11.2.1.5.9 MIMO-OFDM シンボルの iFFT マッピング」 「20MHz 帯域幅でのMIMO-OFDM 動作では,各空間ストリームの変調符号化方 式(MCS)がIEEE 802.11a(…)と同一になる。 40MHz でのOFDM データ・シンボルの構築は,図55 に示すように,2 つの隣 り合う20MHz の 各空間ストリームの変調符号化方 式(MCS)がIEEE 802.11a(…)と同一になる。 40MHz でのOFDM データ・シンボルの構築は,図55 に示すように,2 つの隣 り合う20MHz のOFDM シンボルを結合することから始まる。2 つの20MHz チャ ネルの間には,−5 から+5 まで合計11 のガード・トーンがある。注目すべき 121 は,レガシー・チャネルが下位サブチャネルの−58 から−6までと上位サブチャ ネルの+6 から+58 を占めていることである。11 のガード・トーンのうち,−1, 0,+1 の3 つはヌル化される。これにより8 つの追加データ・トーンになる。 2 つのDC トーンも,レガシー・サブチャネルから譲り渡される。これらは下 位と上位のサブチャネルのそれぞれ−32 と+32 である。各レガシー・サブチャ ネルには4 つのパイロット・トーンがあり,40MHz のiFFT インデックスにマ ッピングされる場合は,±53,±39,±25,±11 に割り当てられる。これら 8 つのトーンのうち,−39 と+39 の2 つのトーンはデータと入れ替わるため, 40MHz チャネルのパイロット・トーンは合計6 つになる。40MHz のDATA シンボ ルには,次のようにトーンが割り当てられる。 図55:40MHz におけるFAT チャネルのトーン・フォーマット」(122頁1 8行ないし123頁2行)

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