- 1 -主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求処分行政庁が原告に対し平成18年9月22日付けでしたa医院b分院を併せて管理する旨の医療法12条2項に基づく許可申請を不許可とした処分を取り消す。 第2事案の概要本件は,原告肩書地所在の診療所(名称「a医院」。以下「a医院」という。)の開設者兼管理者であり医師の資格を有する原告が,愛知県半田保健所長(処分行政庁。以下「半田保健所長」という。)に対し,愛知県知多郡α1××-3所在の診療所(名称「a医院b分院」。以下「b分院」という。)を併せて管理する旨の医療法12条2項の許可を申請したところ(以下,1人の医師等が2か所以上の診療所等を管理することを単に「2か所管理」という。),半田保健所長から同申請を不許可とする処分(以下「本件不許可処分」という。)を受けたため,本件不許可処分の取消しを求める抗告訴訟である。 前提事実(争いがないか,証拠上明らかである。)(1) 当事者原告(昭和▲年▲月▲日生)は,昭和61年に医師免許を受けた医師であり,肩書地において病床数9のa医院を開設,管理している(a医院は別紙図面の「a医院(本院)」と記された場所に位置する。)。 半田保健所長は,愛知県半田市及び知多郡の区域を所管する愛知県半田保健所の長であり,愛知県知事の委任を受けて医療法12条2項の許可を行う権限を有するものである(愛知県行政機関設置条例《平成13年愛知県条例第52号》2条4項,愛知県事務委任規則《昭和40年愛知県規則第68号》2条,別表第1)。 (2) a医院及びb分院の開設の経緯- 2 -ア原告の父cは,昭和26年ころから,原告肩書地において,主として外科,皮膚科,内科の診療を行う病床数10のa医院を開設,管理し, 条,別表第1)。 (2) a医院及びb分院の開設の経緯- 2 -ア原告の父cは,昭和26年ころから,原告肩書地において,主として外科,皮膚科,内科の診療を行う病床数10のa医院を開設,管理し,医師として診療を行ってきた。 イcは,b分院の所在地において開設されていた診療所「d医院」が閉鎖された後,遅くとも昭和42年2月1日にb分院を開設して,2か所管理の許可を申請し,同年3月25日,その許可(期間2年)を得た(b分院は別紙図面の「a医院b分院」と記された場所に位置する。)。cは,その後,平成8年4月21日までの間,繰り返し2か所管理の許可(期間1年)を得てきた。 ウ原告は,平成6年ころからcと共にa医院等で診療を行っていたが,平成8年1月ころから,b分院の開設者兼管理者となってb分院で診療を行うようになり,cは引き続きa医院の開設者兼管理者であったから,c及び原告はこの時点以降2か所管理の許可を得ていない。 エcは,平成▲年▲月ころ死亡し,その後,他の医師がa医院の開設者兼管理者となって診療を行い,原告は,引き続きb分院の開設者兼管理者として診療を行っていた。そのころ,a医院の病床数は10から9に減少した。 オ原告は,平成16年6月から,a医院の開設者兼管理者となって診療を行うようになり,そのころからe医師がb分院の開設者兼管理者となって診療を行うようになった。 カe医師は,平成18年7月31日付けで,愛知県知事に対し,b分院を廃止する旨の届出をした。 (3) 本件不許可処分及び本件訴訟に至る経緯ア原告は,平成18年8月7日,半田保健所長に対し,現に管理するa医院に加えて,新たにb分院の管理者となるため2か所管理の許可を求める申請(以下「本件許可申請」という。)をするとともに,同許可がされた場合には,b分院を開設する旨の 保健所長に対し,現に管理するa医院に加えて,新たにb分院の管理者となるため2か所管理の許可を求める申請(以下「本件許可申請」という。)をするとともに,同許可がされた場合には,b分院を開設する旨の開設届を提出した。 イ半田保健所長は,同年9月22日,愛知県の審査基準に照らし,近隣の医- 3 -療機関の配置状況等から,2か所管理により二つの診療所を運営しなければ地域住民の医療の確保ができない場合に相当するとは判断できないこと,原告が現在管理している診療所が有床であり,2か所の診療所を管理する業務を適正に遂行することが可能であるとは判断できないこと,以上を理由として,本件許可申請を不許可とする本件不許可処分をした。 ウ原告は,同年11月1日付けで,愛知県知事に対し本件不許可処分につき審査請求をしたが,同知事は,平成19年4月27日付けで,これを棄却する旨の裁決をした。 エ原告は,同年5月25日,本件不許可処分の取消しを求める本件訴えを提起した。 関連法令等(1) 医療法(ただし,平成18年法律第84号による改正前のもの。以下,この改正を「18年改正」という。)1条の5第2項この法律において,「診療所」とは,医師又は歯科医師が,公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であつて,患者を人院させるための施設を有しないもの又は19人以下の患者を人院させるための施設を有するものをいう。 7条1項病院を開設しようとするとき,医師法(中略)第16条の4第1項の規定による登録を受けた者(以下「臨床研修修了医師」という。)及び歯科医師法(中略)第16条の4第1項の規定による登録を受けた者(以下「臨床研修修了歯科医師」という。)でない者が診療所を開設しようとするとき,又は助産師でない者が助産所を開設しようとするときは,開設地の都道府 中略)第16条の4第1項の規定による登録を受けた者(以下「臨床研修修了歯科医師」という。)でない者が診療所を開設しようとするとき,又は助産師でない者が助産所を開設しようとするときは,開設地の都道府県知事(診療所又は助産所にあつては,その開設地が保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合においては,当該保健所を設置する市の市長又は特別区の区長。第8条から第9条まで,第12条,第15条,第18条,第24条及び第27条から第30条までの規定において同じ。)の許可を受けなければならない。 - 4 -10条1項病院又は診療所の開設者は,その病院又は診療所が医業をなすものである場合は臨床研修修了医師に,歯科医業をなすものである場合は臨床研修修了歯科医師に,これを管理させなければならない。 12条1項病院,診療所又は助産所の開設者が,病院,診療所又は助産所の管理者となることができる者である場合は,自らその病院,診療所又は助産所を管理しなければならない。但し,病院,診療所又は助産所所在地の都道府県知事の許可を受けた場合は,他の者にこれを管理させて差支ない。 2項病院,診療所又は助産所を管理する医師,歯科医師又は助産師は,その病院,診療所又は助産所の所在地の都道府県知事の許可を受けた場合を除くほか,他の病院,診療所又は助産所を管理しない者でなければならない。 13条診療所の管理者は,診療上やむを得ない事情がある場合を除いては,同一の患者を48時間を超えて入院させることのないように努めなければならない。 ただし,療養病床に入院している患者については,この限りでない。 (18年改正により,同条は「患者を入院させるための施設を有する診療所の管理者は,入院患者の病状が急変した場合においても適切な治療を提供することができるよう,当該診療所の医師が速やかに診療 でない。 (18年改正により,同条は「患者を入院させるための施設を有する診療所の管理者は,入院患者の病状が急変した場合においても適切な治療を提供することができるよう,当該診療所の医師が速やかに診療を行う体制を確保するよう努めるとともに,他の病院又は診療所との緊密な連携を確保しておかなければならない。」と改正された。同改正部分の施行日は平成19年1月1日)(2) 医療法施行規則9条病院,診療所又は助産所の開設者が,法第12条第2項の規定による許可を受けようとするときは,左に掲げる事項を記載した申請書をその病院,診療所又は助産所所在地の都道府県知事に提出しなければならない。 一当該医師,歯科医師又は助産師が現に管理する病院,診療所又は助産所及び当該医師,歯科医師又は助産師に新たに管理させようとする病院,診療所又は助産所の名称,所在の場所,診療科名,病床数及び従業者の定員二当該医師,歯科医師又は助産師に,当該病院,診療所又は助産所を管理さ- 5 -せようとする理由三現に管理する病院,診療所又は助産所と,新たに管理させようとする病院,診療所又は助産所との距離及び連絡に要する時間(3) 昭和53年4月1日作成の愛知県の「病院開設許可等事務処理要領」(乙2。 以下「本件処理要領」という。)第5章第2ア病院等の管理者が,他の病院等を同時に管理することは,原則として認められないが,次のような場合に限り許可するものとする。 (ア) 特定の者を診療対象として開設した無床の診療所であって,診療時間などからみて管理者として,その業務が遂行できると認められるとき。 (イ) 地域住民の医療の確保の上から,診療所の設置が必要不可欠と認められる場合であって,管理者としてその業務が遂行できると認められるとき。 イ許可期間は1年以内とし,やむを得ないと認めら るとき。 (イ) 地域住民の医療の確保の上から,診療所の設置が必要不可欠と認められる場合であって,管理者としてその業務が遂行できると認められるとき。 イ許可期間は1年以内とし,やむを得ないと認められるときに限り,更新させるものとする。 ウ申請書には,2箇所以上管理を行う医師,歯科医師の免許証の写し及び地区医師会の意見書を添付させること。 争点 (1) 本件処理要領の合理性(2) 本件不許可処分の違法性第3争点に関する当事者の主張 争点(1)について(原告の主張)(1) 半田保健所長は本件処理要領に準拠して本件不許可処分をしたものであるところ,本件処理要領は,2か所管理の許可をするのは,①特定の者を診療対象として開設した無床の診療所であって,診療時間などからみて管理者として,その業務が遂行できると認められるとき(以下「本件基準①」という。),②地域住民の医療の確保の上から,診療所の設置が必要不可欠と認められる場合であって,管理者- 6 -としてその業務が遂行できると認められるとき(以下「本件基準②」という。)のいずれかの要件を満たす場合に限ることを規定している。 (2) 本件基準①においては,診療所が「特定の者」のみを診療対象とすることを要件として挙げているが,医師は医師法19条1項の応招義務を負うから,基準としての適格を欠いている。被告は,本件基準①の「特定の者」を診療対象とする例として,特定の会社の従業員や特定の学校の学生といった特定の集団を対象とする診療所を挙げるが,これらの集団が何万人にも達することもあるから,「特定の者を診療対象」とする旨の要件はそれ自体合理性を欠く。 また,本件基準①は「無床」の診療所であることを挙げているが,有床であっても実質的に2か所の診療所を管理することが可能な場合はあり得るのであり,その を診療対象」とする旨の要件はそれ自体合理性を欠く。 また,本件基準①は「無床」の診療所であることを挙げているが,有床であっても実質的に2か所の診療所を管理することが可能な場合はあり得るのであり,そのような場合があるにもかかわらず,これをすべて除外してしまうのは,極めて失当である。 以上のように考えると,「特定の者を診療対象として開設した無床の診療所」とは,管理者としてその業務が遂行できる場合の例示にすぎないものであって,それが許可の条件そのものと解するべきではない。もし,これが例示ではなく,許可に不可欠の要件を定めているとするなら,それはあまりにも不合理であって,許可基準として不適切なものといわざるを得ない。 (3) 本件基準②においては,「地域住民の医療の確保の上から,診療所の設置が必要不可欠」という要件を挙げているが,これは病院,診療所等の開業の自由,開設の自由つまりは職業選択の自由(憲法22条1項)を著しく制限するものとして機能するものであり,許可基準の要件とするのは妥当でない。 医業選択の自由は,診療所等の医療機関を自らの好む時期,場所において選択する自由を含むことはいうまでもない。この自由は公共の安全等に対する重大で明らかな侵害が及ぶことが充分に予想される場合を除いて,基本的に尊重されるべきものである。それがなければ地域医療の確保ができない場合においてしか許可しないというのは,職業選択の自由を極度に侵害するものであって,失当というほかはな- 7 -い。 しかも,「地域住民の医療の確保の上から,診療所の設置が必要不可欠と認められる場合」という要件は,それ自体が抽象的準則であり,地域医療確保の見地からの必要不可欠性を具体化すべき細則や取扱内規は定められておらず,その判断の客観性や妥当性を担保する措置は何ら採られておらず,許可権者の という要件は,それ自体が抽象的準則であり,地域医療確保の見地からの必要不可欠性を具体化すべき細則や取扱内規は定められておらず,その判断の客観性や妥当性を担保する措置は何ら採られておらず,許可権者の広範な裁量にゆだねてしまっているのであり,恣意や濫用のおそれが多分にある。 したがって,同要件は,診療所の開設を要望する者があり,かつ,同診療所の存在が地域医療の向上のために有益であると認められるときと解すべきである。 (4) 以上に述べたとおり,半田保健所長が準拠した本件処理要領は,合理的理由に欠けるものであり,かつ,医業選択の自由に対する過度の規制を及ぼすものであって,医療法12条2項の趣旨及び内容に適合せず,審査基準そのものが医療法に違反しているから,本件処理要領に従ってされた本件不許可処分の違法性は明白である。 (被告の主張)(1) 医療法12条2項が,診療所等の2か所管理を知事の許可にかからしめた趣旨は,1人の医師が2か所以上の診療所等の管理者となることは,診療所等の運営の円滑を欠き,ひいては医療内容の適正を欠くおそれがあるのみならず,人の生命・身体に関わる種々の重大な弊害が予想されるため,無制限に行われることがないよう,1人の医師が2か所以上の管理者になることを大原則として禁止し,ただし,こうした弊害が生じないことが客観的に担保されている等の特段の事情がある場合にのみ,例外的に2か所管理を許容する趣旨であって,こうした医療法12条2項の趣旨目的が,医療の性質上極めて正当であることは明らかである。 (2) 本件基準①における「特定の者」とは,医療法1条の5第2項にいう「特定多数人」と同義であり,特定の会社の従業員や特定の学校の学生といった特定の集団を指しており,一般外来を受け付けないという点で一般の診療所と明確に区別されるものである。 療法1条の5第2項にいう「特定多数人」と同義であり,特定の会社の従業員や特定の学校の学生といった特定の集団を指しており,一般外来を受け付けないという点で一般の診療所と明確に区別されるものである。このように一般外来を受け付けず,かつ,無床の診療所であれば,- 8 -管理者である医師が別の診療所の管理者を兼ねていても,別の診療所と診療時間が重複しない等の事情があれば,医療法12条2項が想定しているような弊害が生じるおそれがないことは明らかである。 (3) 本件基準②は,無医地区のような地域では必要やむを得ない場合があることを想定した基準であり,しかも,「管理者としてその業務が遂行できると認められるとき」という要件にも示されているとおり,こうした地域であれば無制限に2か所管理を認めているわけではなく,あくまで客観的な業務遂行能力を条件としており,合理的な基準である。 (4) 医療法12条2項及びこれを受けて定められた本件基準①,②は,あくまで1人の医師が診療所等の2か所以上の管理者を兼ねる場合に適用されるものであって,1人の医師が管理者として1か所の診療所を開設することは何の問題もなく,また,医療法人を設立して2か所の診療所等を設置することも可能である。こうした点からいうと,医療法12条2項及び本件基準①,②が職業選択の自由(憲法22条1項)を侵害しているか否かは疑問である上,百歩譲ったとしても,国民の生命・健康を保護するための規制として,公共の福祉に基づく必要かつ合理的なものであることは明らかである。 争点(2)について(原告の主張)(1) 本件基準①の適合性についてアb分院は,α2地区だけでなく同地区外に居住している者も診療の対象としているが,実際には,他地区からb分院に受診に来る患者は絶無とはいえないもののほとんどいない状 ) 本件基準①の適合性についてアb分院は,α2地区だけでなく同地区外に居住している者も診療の対象としているが,実際には,他地区からb分院に受診に来る患者は絶無とはいえないもののほとんどいない状況である。したがって,b分院は,事実上α2地区の住民のみを対象としており,実質的に特定の者を対象とした診療所といえるものである。 半田保健所長は,本件許可申請をめぐる事前の折衝の中で,α3の保健センターは特定の者を診療の対象としているため,そこの管理者となっている者が他で有床の診療所の管理者となっていても何ら支障はなく,法の要件を満たしている等と述- 9 -べ,本件との差異を正当化していたが,保健センターは,特定の者のみを診療の対象としているものではなく,同センターが管轄する地域の住民の診療を行うものであって,仮に,特定の地域に居住する者のみを診療の対象とするという意味で特定されていると解するのであれば,専らα2地区に居住している者を原則として診療するb分院においても対象者が特定されているといわなければならない。 イa医院とb分院間は自動車で10分以内の短距離にあること,b分院の診療日は月,水,金の週3回であり,その診療時間も1日当たり2時間であること,原告は携帯電話を常時携行し何時でも連絡が取れる体制にあること,したがって,a医院で緊急の事態が生ずれば直ちにa医院に急行し診療を行うことができること,等々の事情からすれば,a医院での管理が困難と見るべき事情は全くない。 ウしたがって,半田保健所長が本件許可申請について本件基準①を満たしていないと判断してこれを不許可とした本件不許可処分は違法である。 (2) 本件基準②の適合性についてアb分院は,α4のα5地区とα6地区の中間点であるα2地区にあるが,α2地区には病院,診療所は皆無であり,いわ てこれを不許可とした本件不許可処分は違法である。 (2) 本件基準②の適合性についてアb分院は,α4のα5地区とα6地区の中間点であるα2地区にあるが,α2地区には病院,診療所は皆無であり,いわば無医地区となっている。α2地区は東に急峻な山をひかえ,西は海に面した南北に細長い地域である。このような地理的特性から,地域住民が医療機関での診療を受けるには,α5地区かα7地区(α8漁港及びα6中心街周辺の地域)へ赴く以外には方法がない。 イ近年α2地区を含む周辺地域の過疎化,高齢化,核家族化は一段と進行している。fバスを利用してα2地区からg医院,h医院へ行くとしても,平日受診時刻に間に合う便は午前中のわずか3便のみである。また,愛知県i病院の運行するマイクロバスがα2地区を通っているが,このバスは,農協の組合員や同病院の関係者が診療を受けたり業務を行うのに利用するために運行されており,それ以外の者がそれ以外の目的で利用することはできない。 したがって,α2地区から他地区への移動は自動車を利用する以外にはなく,自ら運転することができない高齢者は,他の人の運転する自動車に同乗させてもらっ- 10 -て通院するしか方法がないが,家族がない者や高齢者ばかりの家族であれば,それもかなわないという実情である。 ウこのような状況から,b分院は,長年にわたり,地域住民にとって必要不可欠の診療所としてその役割を果たしてきた。 近年における一層の高齢化・過疎化の進行により,α2地区に常設の医療機関が存在すべき必要性がより増しており,地域住民のb分院に寄せる期待は,高まりこそすれ弱まることはない状況にある。 地域住民が手軽に,困難を伴うことなく,しかもタクシー等を利用することもしないで通院し得るb分院の存在は,健全な地域医療の向上に資するものであり,地域住 高まりこそすれ弱まることはない状況にある。 地域住民が手軽に,困難を伴うことなく,しかもタクシー等を利用することもしないで通院し得るb分院の存在は,健全な地域医療の向上に資するものであり,地域住民の健康の維持・増進の上からも極めて重要で不可欠のものであると考えられる。 エα4は,前記の地理的特性から従前より分院が存在し,α9地区には本院をα10に置くj医院の分院が,α11地区には本院をα5地区に置くk医院の分院が,α12には本院をα13に置くl医院の分院が,それぞれ開設されていた。 平成6年にk医院の分院が閉鎖され,α7地区の医療機関が南方へ移動したため,α2地区の医療過疎は一段と進行しており,α2地区住民は以前にも増して遠方の医療機関へ通院せざるを得なくなってきており,分院の必要性が一層高まっていることは明らかである。 オb分院は,昭和29年に開設者の転居に伴いd医院が閉鎖されたのを機に,原告の父cが開設したものであり,以降a医院と共に地域の医療向上に貢献してきた。cが2か所管理の許可を得ていた時期もかなり長期にのぼっている。 カb分院は,従前から少なからぬ患者のかかりつけの医院となっており,地域住民が時間も労力も金もかけずに気安く手軽に受診し得るα2地域における唯一の診療所である。地域住民約1800人のうち約1300人もがb分院の存続を求める嘆願書に署名した実績もある。 b分院の開設者e医師が愛知県知事に対し平成18年7月31日付けで突如廃止- 11 -届を提出したため,b分院での診療を受けることができなくなった少なからぬ患者は現在途方に暮れており,適正な治療を受ける機会を奪われた。b分院の存続は,長年にわたる地域住民の願いであり,これを平然と無視する本件不許可処分には一片の正当性もない。 キしたがって,半田保健所長が本件許 方に暮れており,適正な治療を受ける機会を奪われた。b分院の存続は,長年にわたる地域住民の願いであり,これを平然と無視する本件不許可処分には一片の正当性もない。 キしたがって,半田保健所長が本件許可申請について本件基準②を満たしていないと判断してこれを不許可とした本件不許可処分は違法である。 (被告の主張)(1) 本件基準①の適合性についてアb分院が「特定の者」を診療対象としている施設でないことは明白である。 原告は,b分院の診療対象は事実上α2地区の住民のみに限定されている旨主張するが,そもそも地域住民というだけでは「不特定」であることは明らかである上,b分院は一般外来を想定した診療所であり,原告自身もα2地区以外の住民の患者を受け付けることは認めているから,本件許可申請が本件基準①を満たさないことは明らかである。 原告は,α3の保健センターの管理者について2か所管理の許可がされていることを指摘するが,保健センターは,地域保健法18条1項により設置された施設であり,同条2項により特定された管轄の地域住民を対象とし,特定された時間にあらかじめ特定された住民の健康相談,保健指導及び健康診査その他地域保健に関し必要な事業のみを行っているものであり,一般公衆・不特定多数を診療対象とする診療所とは比較の対象となるものではない。 イ本件基準①は,「診療時間などからみて管理者として,その業務が遂行できると認められるとき」という要件も定めているが,原告が管理者を務めるa医院は,病床数に従って最大9人の患者の入院が想定され,1人の医師(原告)と2人の看護師という体制でこれに対応しなければならないから,分院の管理まで適正に行うことができるほどの余裕があるとは認め難い。 原告は,いわゆる診療所における48時間規制(18年改正前の医療法13条)- 12 という体制でこれに対応しなければならないから,分院の管理まで適正に行うことができるほどの余裕があるとは認め難い。 原告は,いわゆる診療所における48時間規制(18年改正前の医療法13条)- 12 -があるため,それほど重傷の入院患者はいないとも述べるが,18年改正後の医療法13条においては,48時間規制は削除され,診療所において長期入院も可能となり,入院施設のある診療所は,入院患者の病状が急変した場合においても適切な治療を提供することができるよう,当該診療所の医師が速やかに診療を行う体制を確保するよう努めることとされている。したがって,有床の診療所であるa医院は,長期の入院患者も想定した診療体制にしておかねばならないし,重傷の入院患者はいないという原告の供述も,確実な裏付けがあるものではない。 a医院は,消防法2条9項,救急病院等を定める省令(昭和39年厚生省令第8号)1条1項に規定する「救急診療所」の認定を受けているから,救急車で患者が搬送されてきた場合,他に救急患者がいて対応できないなどの特段の事由がない限り救急業務に協力する義務を負っている。また,地区医師会は当番制で休日診療を実施しており,a医院が休日当番となった場合,診療所として開設している以上,患者に対して医師法19条1項の応招義務を負う。さらに,a医院は,在宅療養支援診療所(診療報酬の算定方法《平成18年厚生労働省告示第92号》別表第1第2章第1部区分B004,特掲診療料の施設基準等《平成18年厚生労働省告示第94号》第3の5参照)にも指定されているから,在宅療養支援を受けている患者から要請があれば,24時間対応できるよう体制を整えておく必要がある。 以上のようなa医院の状況を考慮すれば,本件におけるa医院とb分院に係る2か所管理の本件許可申請が「診療時間などからみて管理者 者から要請があれば,24時間対応できるよう体制を整えておく必要がある。 以上のようなa医院の状況を考慮すれば,本件におけるa医院とb分院に係る2か所管理の本件許可申請が「診療時間などからみて管理者として,その業務が遂行できると認められるとき」という要件を満たしていないことは明らかである。 ウしたがって,本件許可申請は本件基準①を満たしていないことが明らかである。 (2) 本件基準②の適合性についてアα2地区は,b分院の周辺地区としてα2地区から範囲を広げてみても,無医地区ではなく,厚生労働省が平成16年12月に実施した無医地区等調査の結果によっても,α4には無医地区に指定されている地区はない。 - 13 -b分院から,原告のいう「東に急峻な山」を迂回したとしても,約2㎞の距離にg医院が,約2.5㎞の距離にh医院がある。また,α5地区にはk医院,m医院,h医院がある。これらは,バスを利用すればb分院から10分前後,バスを降りてからの距離も200~500mの距離にあり,α2地区の地域住民も十分利用可能である。α2地区からg医院やh医院までは,バス等の公共交通機関が運行されているほか,日常的に診療所を利用する患者は自家用車を利用することが多いと考えられる(なお,g医院やh医院には駐車場が整備されているのに対し,b分院は駐車場が整備されているとはいい難い。)。 以上の事実関係によれば,α2地区は「地域住民の医療の確保の上から,診療所の設置が必要不可欠」であるとは認められないし,本件基準②は「管理者としてその業務が遂行できると認められるとき」という客観的な業務遂行能力を要求しているところ,前記(1)で述べたa医院の実情を考慮すれば,原告にはb分院における管理者としての業務遂行能力があるとは認め難い。 イ原告は,cが昭和42年3月25日以降b 観的な業務遂行能力を要求しているところ,前記(1)で述べたa医院の実情を考慮すれば,原告にはb分院における管理者としての業務遂行能力があるとは認め難い。 イ原告は,cが昭和42年3月25日以降b分院における2か所管理の許可を得ていた点を指摘するが,それは,当時の社会状況や医療水準を踏まえた地域医療確保の観点からの許可と思われる。 昭和42年当時は,医療法12条2項の許可に係る審査基準が具体的に定められていなかったようであり,自家用車が普及していなかったこと,乳幼児数が多かったこと,訪問看護等の在宅医療サービスがほとんどなく在宅医療を支援する在宅療養支援診療所制度もなかったことなど,約40年前は医療をめぐる状況が現在とは全く異なっていたため,診療所の必要性はより高かったものと考えられる。そして,半田保健所長は,cに対していったん2か所管理を許可した後は,特段の変化がないとして,そのままcに対する2か所管理の許可を繰り返してきたものと思われるが,現行の本件基準①,②に照らせば,cに対して許可すべきではなかったものであるから,cに対して過去に2か所管理を許可していた事実をもって,本件許可申請についても同様に許可すべきであるとはいえない。 - 14 -ウ原告は,地域住民がb分院の開設を要望している旨主張し,その要望を示すものとして嘆願書(甲8)を提出するが,同嘆願書はその署名者1人1人の真意を示すものかどうかの確証がない上,同嘆願書はa医院が平成7年に保険医療機関の指定を取り消されそうになった際に作成されたものであるから,地域住民がb分院の開設を要望しているという原告の主張には多大な疑問が残る。 エしたがって,本件許可申請は本件基準②を満たしていないことが明らかである。 第4争点に対する判断 争点(1)について(1) 医療行為は生 要望しているという原告の主張には多大な疑問が残る。 エしたがって,本件許可申請は本件基準②を満たしていないことが明らかである。 第4争点に対する判断 争点(1)について(1) 医療行為は生命・健康という国民の重大な法益に関わり,患者の病状によっては速やかな対応が求められることから,医療法は,医業を行う診療所等の管理者を医療に関する知識,経験を備えた臨床研修修了医師に限るとともに(10条1項),管理者の果たすべき義務として,その診療所等に勤務する医師その他の従業者を監督し,その業務遂行に欠けるところのないよう必要な注意をしなければならないこととするほか(15条1項),他の病院等との連携の確保等(13条),医療の安全確保のための措置(6条の10),退院する患者の療養環境の配慮(1条の4),診療所等に係る報告(6条の3),入院中の治療計画書の作成等(6条の4)等を定め,管理者に対し当該診療所等が良質かつ適切な医療を提供する体制の確保を図る責務を課している。 ところで,医療法は,病院,診療所又は助産所を管理する医師,歯科医師又は助産師は,その病院,診療所又は助産所の所在地の都道府県知事の許可を受けた場合を除くほか,他の病院,診療所又は助産所を管理しない者でなければならないと規定して(12条2項),原則として1人の医師が管理する診療所等は1か所とすることとし,例外として都道府県知事の許可がされた場合にのみ2か所以上の診療所の管理を認める旨規定している。これは,診療所等の管理者の上記責務の内容等に照らし,医師が同時に2か所以上の診療所等の管理者となることは,診療所等の業- 15 -務遂行に支障を来し,ひいては良質かつ適切な医療の提供が困難となるおそれがあるため,原則として医師が同時に2か所以上の診療所等の管理者となることを禁止した上で, ることは,診療所等の業- 15 -務遂行に支障を来し,ひいては良質かつ適切な医療の提供が困難となるおそれがあるため,原則として医師が同時に2か所以上の診療所等の管理者となることを禁止した上で,このような弊害が生ずるおそれがないと客観的に認められる特段の事情がある場合においてのみ,医師が同時に2か所以上の診療所等の管理者となることを許容する趣旨に出たものと解される。そして,医療法12条2項が単に「知事の許可」とのみ規定し,許可の要件を具体的に規定していないことにもかんがみると,2か所管理を許可するか否かについては,上記法の趣旨を踏まえた知事及びその委任を受けた保健所長の合理的な裁量にゆだねられたものと解するのが相当である。 以上の観点から,本件基準①,②の合理性について検討する。 なお,本件処理要領が,「次のような場合に限り許可するものとする」と定めていることに照らすと,愛知県においては,本件基準①,②に該当する場合及びこれに準ずるような場合(上記弊害が生ずるおそれがないと客観的に認められる特段の事情のある場合)に限って許可することとしたものと解される。 (2) 本件基準①についてア本件基準①は,「特定の者を診療対象として開設した無床の診療所であって,診療時間などからみて管理者として,その業務が遂行できると認められるとき」において2か所管理を認める旨を規定する。 新たに管理する診療所等が「特定の者」を診療対象とし,かつ,「無床」であれば,診療対象者が限定され一般外来に備えた体制や入院患者の病状の急変等に対応する体制を採る必要もないことから,現在管理している診療所等と新たに管理する診療所等の双方における業務を両立し,診療所等の円滑・適正な運営を確保することが担保されていると考えられ,本件基準①はこうした趣旨に基づいて規定されたものと解さ 管理している診療所等と新たに管理する診療所等の双方における業務を両立し,診療所等の円滑・適正な運営を確保することが担保されていると考えられ,本件基準①はこうした趣旨に基づいて規定されたものと解される。 イ原告は,本件基準①において新たに管理することになる診療所が「特定の者」のみを診療対象とすることを要件として挙げていることについて,「特定の者」のみを診療対象とすることは,医師が負う医師法19条1項の「応招義務」に- 16 -反するものであり,また,特定の集団が何万人にも達することもあるから,当該要件は合理性がない旨主張する。 医療法は,診療所等の開設・管理等の医療体制の確保に関する事項を定め,1条の5第2項において特定多数人のために医業を行う診療所の開設を許容している。 一方,医師法は,19条1項において「診療に従事する医師は,診察治療の求があつた場合には,正当な事由がなければ,これを拒んではならない。」と規定しているところ,これは医師自身が果たすべき義務等を定めたものであるから,特定の者のみを対象とした診療所に従事する医師であっても,緊急の治療を要する患者がある場合において,その近辺に他の診療に従事する医師がいない場合等においては,当該医師の応招義務がないとはいえないと解される。そして,医療法は,医師が応招義務を負うことを前提としつつ,医療体制の確保という観点から,特定の会社の従業員,特定の学校の学生等の特定の集団のための診療所の設置を認めることの必要性,合理性を認めて,「特定の者」を対象とする診療所の設置を認めたものと解すべきであって,医療法が「特定の者」のみを対象とする診療所の設置を認めていることと,医師法が医師の応招義務を定めていることは相反するものとはいえない。 したがって,本件基準①において診療所が「特定の者」を診療対象と 医療法が「特定の者」のみを対象とする診療所の設置を認めていることと,医師法が医師の応招義務を定めていることは相反するものとはいえない。 したがって,本件基準①において診療所が「特定の者」を診療対象としていることを要件とすること自体が合理性を欠くということはできないし,また,「特定の者」の集団が何万人にも達することがあったとしても,本件基準①は「診療時間などからみて管理者として,その業務が遂行できると認められるとき」という要件を満たすことをも求めているから,「特定の者」の集団が何万人にも達するような事例が存することをもって,本件基準①が合理性を欠くということもできない。 ウ原告は,本件基準①において新たに管理することになる診療所が「無床」であることを要件としていることについて,有床であっても2か所管理が可能な場合があり得る旨主張する。 しかし,18年改正後の医療法13条は,入院施設を有する診療所の管理者に,入院患者の病状が急変した場合においても適切な治療を提供することができる診療- 17 -体制の確保を義務付けており(本件許可申請が許可を求める2か所管理の期間中《許可期間は1年》の平成19年1月1日に18年改正後の医療法が施行され,しかも本件不許可処分の時点で18年改正法が公布されていたから,本件許可申請の許否の判断に際しては18年改正後の医療法を踏まえて判断すべきである。),18年改正前の医療法13条は,入院施設を有する診療所の管理者に,原則として48時間を超えて入院させることのないように努めることを求めていたが,そうした入院時間の制限があった時点においても,入院患者の病状が急変した場合に速やかな対応が求められることに変わりはない。 このように,新たに管理することとなる診療所が「有床」である場合には,管理者が,現在管理している診療所等 た時点においても,入院患者の病状が急変した場合に速やかな対応が求められることに変わりはない。 このように,新たに管理することとなる診療所が「有床」である場合には,管理者が,現在管理している診療所等の管理と両立させて,入院患者に対する適切な治療提供を含めた診療所の円滑・適正な運営を確保することは,一般に困難であると認められる。 エ以上によれば,本件基準①の「特定の者を診療対象として開設した無床の診療所であって,診療時間などからみて管理者として,その業務が遂行できると認められるとき」との要件を満たす場合においては,医師が同時に2か所以上の診療所等の管理者となったとしても,診療所等の業務遂行に支障を来し,ひいては良質かつ適切な医療の提供が困難になるおそれがないと客観的に認められる特段の事情があるということができるから,合理的な基準であると認められる。 (3) 本件基準②についてア本件基準②は,「地域住民の医療の確保の上から,診療所の設置が必要不可欠と認められる場合であって,管理者としてその業務が遂行できると認められるとき」において2か所管理を認めることを規定する。 無医地区においては地域住民にとって診療所等の設置が必要不可欠な場合があり,そのような場合においても,1人の医師が当該地域の診療所等のみの管理者となるという原則を貫くことは,無医地区において医療施設を確保する途を閉ざすことにもなりかねない。本件基準②は,そのような無医地区における医療施設を確保する- 18 -必要性から,「管理者としてその業務が遂行できると認められるとき」という前提の下で,当該地域における診療所等の開設に伴う2か所管理を許可することとしたものであって,本件基準②は合理的なものと認められる。 イ原告は,本件基準②が,職業選択の自由(憲法22条1項)を極度に侵害す で,当該地域における診療所等の開設に伴う2か所管理を許可することとしたものであって,本件基準②は合理的なものと認められる。 イ原告は,本件基準②が,職業選択の自由(憲法22条1項)を極度に侵害するものである上,当該要件が抽象的準則であってその判断において恣意や濫用のおそれが多分にある旨主張する。 しかし,1人の医師による2か所管理が制限されたとしても,1か所の診療所等の管理者となること自体は制限されるものではなく,また,医療法人を設立して2か所の診療所等を開設し他の医師に管理してもらうことも可能である。また,医療法は,前記(1)で述べたとおり,生命・健康という国民の重大な法益を保護するため,1人の医師による2か所管理を制限する規定を設けているものであって,この趣旨に照らせば,本件基準②も公共の福祉に基づく必要かつ合理的な規制内容であると認められ,また,本件基準②は,その規定文言に照らして,恣意や濫用のおそれが多分にあるものとは直ちに認められない。 (4) 以上のとおり,本件基準①,②は,医療法12条2項の2か所管理の許可に係る具体的審査基準として合理的なものと認められ,これに準ずるような場合を含めて審査基準とした本件処理要領の定めは,同法12条2項の趣旨に沿った合理的なものということができる。 争点(2)について前記1で述べたとおり,本件基準①,②はいずれも2か所管理の許可の審査基準として合理的な内容であると認められるから,以下,a医院とb分院の2か所管理に係る本件許可申請が本件基準①,②の具体的審査基準を満たしているか否かを検討する。 (1) 本件基準①についてアb分院は,特定の会社の従業員,特定の学校の学生等の特定の集団を診療対象とするものではないから,「特定の者を診療対象として開設された」という要- 19 -件を満たし (1) 本件基準①についてアb分院は,特定の会社の従業員,特定の学校の学生等の特定の集団を診療対象とするものではないから,「特定の者を診療対象として開設された」という要- 19 -件を満たしていない。原告は,b分院の診療対象は事実上α2地区の住民に限定されている旨主張するが,そもそも地域住民というだけでは「特定の者」と認められないことは明らかである上,原告自身が本人尋問の際にb分院においてα2地区以外の住民の患者を受け付けることを認めているように,b分院は一般外来を想定した診療所であって「特定の者を診療対象」とするものではないことは明らかである。 原告は,α3の保健センターの管理者について2か所管理の許可がされていることを指摘するが,保健センターは,地域保健法18条1項により設置された施設であり,同条2項により特定された管轄の地域住民を対象とし,特定された時間にあらかじめ特定された住民の健康相談,保健指導及び健康診査その他地域保健に関し必要な事業のみを行っているものであるから,保健センターにおいて2か所管理の許可がされているからといって,b分院に関して2か所管理の許可をしないことが,不合理な差別的取扱いであるとは到底認められない。 イまた,本件基準①は,「診療時間などからみて管理者として,その業務が遂行できると認められるとき」という要件も定めているので,この要件の充足性について検討する。 原告が管理者を務めるa医院は,1人の医師(原告)と2人の看護師という体制で診療を行っていることが認められるところ(原告本人),病床数9で最大9人の患者の入院が想定され,これらの入院患者に対する適切な治療提供を1人の医師(原告)と2人の看護師で行わなければならず,前記1(2)ウで述べたとおり,入院患者の病状が急変した場合に速やかな対応が求められるこ 入院が想定され,これらの入院患者に対する適切な治療提供を1人の医師(原告)と2人の看護師で行わなければならず,前記1(2)ウで述べたとおり,入院患者の病状が急変した場合に速やかな対応が求められることもあり得るのであるから,原告がa医院に加えてb分院の管理まで適正に行うことができるほどの余裕があるとは認め難い。 しかも,a医院は,消防法2条9項,救急病院等を定める省令1条1項に規定する「救急診療所」の認定を受けていること,在宅療養支援診療所に関する診療報酬の適用を受けるための届出をしていることが認められるから(原告本人),救急診療所として,救急車で患者が搬送されてきた場合,他に救急患者がいて対応できな- 20 -いなどの特段の事由がない限り救急業務に協力する義務を負うとともに,在宅療養支援診療所として,在宅療養支援を受けている患者から要請があれば,24時間往診が可能な体制等を整えておく必要がある。 以上のようなa医院の状況に照らせば,a医院とb分院間は自動車で10分以内の短距離にあること,b分院の診療日は月,水,金の週3回でありその診療時間も1日当たり2時間であること,原告は携帯電話を常時携行し何時でも連絡が取れる体制にあることなどの原告主張の事実関係を踏まえても,a医院とb分院の2か所管理に係る本件許可申請が「診療時間などからみて管理者として,その業務が遂行できると認められるとき」という要件を満たしているとは認められない。 ウしたがって,本件許可申請は本件基準①を満たしていない。 (2) 本件基準②についてア厚生労働省は「無医地区等調査実施要領」(平成17年3月3日付け厚生労働省医政局長通知)を定め,無医地区等の状況,最寄医療機関までの交通事情及び無医地区等の内情等の調査を実施しているが,同調査において,無医地区とは「医療機関のな 要領」(平成17年3月3日付け厚生労働省医政局長通知)を定め,無医地区等の状況,最寄医療機関までの交通事情及び無医地区等の内情等の調査を実施しているが,同調査において,無医地区とは「医療機関のない地域で,当該地区の中心的な場所を起点として,おおむね半径4㎞の区域内に50人以上が居住している地区であって,かつ容易に医療機関を利用することができない地区をいう。」と定められており,平成16年12月現在で愛知県は5町3村23地区が無医地区とされているが,α4には無医地区に指定されている地区は存しない(乙3,4)。 イb分院から最も近い診療所であるα6地区のg医院及びh医院は,別紙図面の「g医院」,「医療法人h医院」と記された場所に位置し,b分院の東に位置する山を迂回(別紙図面に記載された道路に沿って迂回)したとしても,約2~2. 5㎞の距離にある。 fバスのα14線は,α5発で,b分院から一番近いバス停のα15を経由して,α2,α16,α17,α6を経由し,α18港に着くもの,及びその逆方向の走行経路を通るものであり,α15とα6間の所要時間は約4分,平日のα5発α1- 21 -8港着の便は,α15の経由時刻が午前7時27分,午前9時15分,午前10時15分,午前11時55分,午後0時55分,午後2時55分,午後3時55分,午後4時50分,午後5時50分であり,α18港発α5着の便は,α15の経由時刻が午前7時54分,午前9時49分,午前10時49分,午後0時29分,午後1時29分,午後3時29分,午後4時29分,午後5時24分,午後6時24分である(甲3添付の時刻表)。このα14線(α5発α18港行)の午前中の3便を利用すれば,バスの所要時間は約4分で,α6のバス停からg医院までの距離が約100m,h医院までの距離が約600mであり(α6 る(甲3添付の時刻表)。このα14線(α5発α18港行)の午前中の3便を利用すれば,バスの所要時間は約4分で,α6のバス停からg医院までの距離が約100m,h医院までの距離が約600mであり(α6のバス停でfバスのα19線に乗り換えてα20のバス停まで行くと,同医院までの距離は約200m),α2地区の住民がこれらの診療所で診療を受けることが可能である(甲6,乙1,弁論の全趣旨)。 ウb分院の北西のα5地区には,h医院,k医院及びm医院が,別紙図面の「h医院」,「k医院」,「m医院」と記された場所に位置し,α2地区の住民が上記のfバスのα14線を利用してこれらの診療所で診療を受けることも可能である(なお,α15とα5間の所要時間は約15分である。)。 エi病院のマイクロバスが,平日は,①午前8時30分に同病院を出発し,α5,α11,α21を経由し,午前8時57分にα2,午前9時5分にα6を経由し,α22,α23を経由して,午前9時25分に同病院に到着するもの,②午前10時45分に同病院を出発し,α23,α22を経由し,午前11時4分にα6,午前11時10分にα2を経由し,α21,α11,α5を経由して,午前11時35分に同病院に到着するもの,③午後1時に同病院を出発し,α23,α22を経由し,午後1時19分にα6,午後1時25分にα2を経由し,α21,α11,α5を経由して,午後1時55分に同病院に到着するもの,の3便が運行されている(甲3添付の時刻表)。なお,i病院はへき地医療拠点病院に指定されている(乙4)。 オそうすると,α2地区は,厚生労働省による「無医地区等調査実施要領」- 22 -が定める「無医地区」には該当しない上,α2地区の住民は,約2~2.5㎞の距離にあるα6地区のg医院及びh医院,α5地区のh医院,k医院及びm 厚生労働省による「無医地区等調査実施要領」- 22 -が定める「無医地区」には該当しない上,α2地区の住民は,約2~2.5㎞の距離にあるα6地区のg医院及びh医院,α5地区のh医院,k医院及びm医院に,自家用車,タクシー又はfバスを利用して通院することが可能であり(fバスの便数は多くはないが,通院すること自体に支障を来すとはいえない。),へき地医療拠点病院に指定されているi病院のマイクロバスを利用して同病院に通院することも可能であると認められるから,本件許可申請が本件基準②の「地域住民の医療の確保の上から,診療所の設置が必要不可欠と認められる場合」との要件を満たすものとはいえない。 また,本件許可申請が本件基準②の「管理者としてその業務が遂行できるとき」との要件を満たすとはいえないことは,前記(1)イで述べたとおりである。 カなお,原告は,cが従前b分院における2か所管理の許可を得ていた点を指摘する。 前記前提事実記載のとおり,cが昭和42年3月25日から平成8年4月21日までの間b分院に係る2か所管理の許可を得ていたことが認められるが,昭和42年当時は,乳幼児数が現在よりも多かったこと,訪問看護等の在宅医療サービスがほとんどなく,現在のような24時間在宅医療を支援する在宅療養支援診療所制度もなかったこと,自家用車も現在ほど普及していなかったこと(愛知県内の昭和42年度の自家用車数は平成17年度の約20分の1にすぎない。乙8の1・2)など,医療をめぐる状況が現在とは全く異なっていたため,診療所の必要性は現在よりも高かったものと推認できること,愛知県衛生部長が昭和45年8月29日に医療法12条2項の2か所管理の許可に関し本件基準①,②とほぼ同内容の審査基準を策定したが(乙7),それ以前の昭和42年当時は医療法12条2項の許可に係る審 ,愛知県衛生部長が昭和45年8月29日に医療法12条2項の2か所管理の許可に関し本件基準①,②とほぼ同内容の審査基準を策定したが(乙7),それ以前の昭和42年当時は医療法12条2項の許可に係る審査基準が具体的に定められていなかったこと,また,cの受けた2か所管理の許可が平成8年4月21日に失効して以降原告が本件許可申請をした平成18年8月7日まで10年以上にわたりa医院とb分院に係る2か所管理の許可はされていないこと,以上の諸事情に照らせば,近時における高齢化等の事情を考慮しても,- 23 -cが昭和42年から平成8年まで繰り返し2か所管理の許可を得ていた事実から,平成18年にされた本件許可申請に係る2か所管理が本件基準②の要件を備えたものであると直ちに認めることはできない。 また,原告は,地域住民がb分院の開設を要望している旨主張し,その要望を示すものとして嘆願書(甲8)を提出するが,同嘆願書からα2地区が「地域住民の医療の確保の上から,診療所の設置が必要不可欠と認められる場合」に当たるとは直ちに認められない(なお,同嘆願書は,本件許可申請の10年以上前である平成7年にa医院が保険医療機関の指定を取り消されそうになった際に作成されたものである。原告本人)。 キしたがって,本件許可申請は本件基準②を満たしていない。 (3) そうすると,a医院とb分院の2か所管理に係る本件許可申請は,本件基準①,②を満たしていないし,また,上記のとおり,「管理者としてその業務が遂行できると認められるとき」との要件を満たしていないことにかんがみると,これらの具体的審査基準に準じて2か所管理を許可すべき特段の事情があるものとも認められないから,これを不許可とした本件不許可処分は,知事及びその委任を受けた保健所長の合理的な裁量の範囲内にあるものと認められ, 体的審査基準に準じて2か所管理を許可すべき特段の事情があるものとも認められないから,これを不許可とした本件不許可処分は,知事及びその委任を受けた保健所長の合理的な裁量の範囲内にあるものと認められ,適法なものと認められる。 結論 以上によれば,原告の請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部松並重雄裁判長裁判官- 24 -前田郁勝裁判官裁判官片山博仁は転補のため署名押印することができない。 松並重雄裁判長裁判官
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