令和3(ワ)25880 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年11月9日 東京地方裁判所
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判決文本文11,702 文字)

1令和4年11月9日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官令和3年(ワ)第25880号 損害賠償等請求事件口頭弁論終結日 令和4年9月12日判 決主 文51 被告らは、原告Aに対し、連帯して110万円及びこれに対する令和2年10月26日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 2 被告らは、原告Bに対し、連帯して110万円及びこれに対する令和2年10月26日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 104 訴訟費用は、これを6分し、その1を被告らの、その余を原告らの負担とする。 5 この判決は、第1、2項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由第1 請求151 被告らは、原告Aに対し、連帯して440万円及びこれに対する令和2年10月26日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 2 被告らは、原告Bに対し、連帯して440万円及びこれに対する令和2年10月26日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 3 被告産経は、別紙1謝罪広告目録1記載の謝罪広告を、同記載の条件で、被20告産経が発行する産経新聞に1回掲載せよ。 4 被告Cは、別紙2謝罪広告目録2記載の謝罪広告を、被告Cが運営するツイッターアカウント(ツイッターID @▲▲▲)において、本判決確定の日から1か月間掲載せよ。 第2 事案の概要25本件は、国会議員である原告らが、被告Cが寄稿し被告産経が産経新聞に掲 2載した記事により名誉を毀損されたとして、被告Cに対しては、不法行為責任に基づき、被告産経に対しては、同記事の掲載を決定した編集者、発行担当者等の被用者 告Cが寄稿し被告産経が産経新聞に掲 2載した記事により名誉を毀損されたとして、被告Cに対しては、不法行為責任に基づき、被告産経に対しては、同記事の掲載を決定した編集者、発行担当者等の被用者の不法行為についての使用者責任又は同被用者との共同不法行為責任に基づき、各原告につき慰謝料及び弁護士費用相当額の合計440万円及び同記事掲載日の後の日である令和2年10月26日から支払済みまで民法所定5の年3分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めるとともに、各被告に対し、原告らの名誉を回復するための処分として謝罪広告を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実及び後掲証拠等により容易に認められる事実。なお、証拠等を掲記しない事実は当事者間に争いがない。枝番号を記載しない書証は全ての枝番号を含む。)10⑴ 当事者原告らは、いずれも、平成31年3月7日当時、野党である民進党に所属する参議院議員であった者であり、現在に至るまで参議院議員を務めている(乙A1、弁論の全趣旨)。 被告産経は、日刊新聞その他の日刊紙の発行及び販売等を目的とする株式15会社であり、日刊新聞である産経新聞(正式名称は「産業経済新聞」)を発行している(甲3)。 被告Cは、「C」とのペンネームで活動する作家、ジャーナリストである。 ⑵ 産経新聞における記事の掲載被告Cは、被告産経に対して、別紙3記載の文章を寄稿した。被告産経に20雇用された産経新聞の編集者は、令和2年10月25日発刊の産経新聞朝刊において、別紙3のとおりの記事(以下「本件記事」という。)を掲載することを決定し、その結果、同朝刊に本件記事が掲載された。同記事は、8段落で構成されており、第7段落に次の一節(以下「本件表現部分」という。)が 3のとおりの記事(以下「本件記事」という。)を掲載することを決定し、その結果、同朝刊に本件記事が掲載された。同記事は、8段落で構成されており、第7段落に次の一節(以下「本件表現部分」という。)がある(甲6、弁論の全趣旨)。 25「また東京では翌6日、民進党のB、A両氏が財務省に乗り込み、約1時 3間、職員をつるし上げている。当該職員の自殺はその翌日の7日だった。」⑶ 本件記事の背景事情財務省近畿財務局所属の上席国有財産管理官であったD(以下「本件職員」という。)は、平成29年7月から休職し、平成30年3月7日、自殺した。 原告らは、同月6日、財務省理財局を訪れ、学校法人森友学園への国有地5売却に関する決裁資料の閲覧を求めた。 (乙A1、4、5、7~9、弁論の全趣旨)なお、原告らが、近畿財務局や本件職員に対し、学校法人森友学園への国有地売却に関する公文書の改ざんについて説明を求めたり、面談を求めたりした事実はない。 102 争点⑴ 本件表現部分の摘示事実及び本件記事の名誉毀損該当性⑵ 原告らの損害及びその額⑶ 謝罪広告請求の可否3 争点に関する当事者の主張15⑴ 争点⑴(本件表現部分の摘示事実及び本件記事の名誉毀損該当性)について(原告らの主張)ア 本件記事中の本件表現部分は、原告らが本件職員の自殺した日の前日に本件職員に対して威圧して非難する行為を行い、そのことが本件職員の20自殺の原因となったとの事実を摘示するものである。 イ 上記アのように人を自死に追い込む原因を作ったという事実は、その行為者の社会的評価を著しく低下させる。 そればかりでなく、本件記事が掲載された当時、学校法人森友学園に対して国有地がその イ 上記アのように人を自死に追い込む原因を作ったという事実は、その行為者の社会的評価を著しく低下させる。 そればかりでなく、本件記事が掲載された当時、学校法人森友学園に対して国有地がその評価額を大きく下回る価格で払い下げられたという問25題(いわゆる森友問題。以下「森友問題」という。)が政治的、社会的 4に注目を集めており、本件記事は森友問題に関係した職員の自死に関するものであったこと、原告らが国会議員であることからすると、上記アの摘示事実による社会的評価の低下の程度は一層大きいというべきである。 したがって、本件記事は、原告らの名誉を毀損するものである。 5(被告らの主張)ア 本件表現部分は、原告らが財務省の担当者を批判し問責したとの事実を摘示するにとどまるものであって、原告らの主張アの事実を摘示するものではない。 イ その理由は次のとおりである。 10本件記事は、新聞の報道機関としての問題点を指摘する連載記事の一つとして、他の新聞社が森友問題に関して本件職員の元上司が述べた内容を抜粋して報道したために、その報道内容が事実と真逆となっていることを批評するものであり、本件記事における原告らへの言及の分量が僅かであることも踏まえれば、一般読者において、本件記事が原告らを非15難するものではなく、まして原告らの言動が本件職員の自殺の原因となったとの事実を指摘するものではないと理解できる。本件記事の構成をみると、本件職員の元上司が野党からの追及を逃れるために文書を改ざんしたと述べた旨の記述(第5段落)を受け、本件表現部分を含む第7段落において、風刺的に、冒頭で「官僚がつるし上げられていたことを20思い出してほしい。」と前置きし、その具体例として、原告らその他の たと述べた旨の記述(第5段落)を受け、本件表現部分を含む第7段落において、風刺的に、冒頭で「官僚がつるし上げられていたことを20思い出してほしい。」と前置きし、その具体例として、原告らその他の野党議員が財務省又は近畿財務局の職員を糾弾している旨の記述があるという構成であり、これを通読した一般読者としては、本件表現部分において原告らの言動に言及しているのは、本件職員の自殺の原因を指摘する趣旨ではないと理解できる。 25本件表現部分についても、原告らの訪問先が東京都所在の財務省本省で 5あることが明示されていることからすれば、これを読んだ一般読者において、原告らの訪問相手が近畿財務局に勤務する本件職員ではないことは容易に理解できる。本件表現部分の第1文目の「職員」には「当該」が付されていないことからも、原告らの「つるし上げ」た対象が、本件記事の第2段落における「職員」すなわち本件職員とは別人であること5が理解できる。他方、本件表現部分には、本件職員の自殺の原因が原告らの言動にあるなどといった関連性を示す記述は、接続詞を含め、全く無い。本件表現部分において、原告らの言動を記述する第1文目と本件職員の自殺を記述する第2文目が連続して置かれているのは、単に時系列がそのようになっているからにすぎず、それ以上に、一般読者がそれ10らの出来事に関係性を見出すことはない。 また、本件職員が平成29年7月より休職しており、平成30年3月6日当時は出勤していなかったとの事実は、多数の報道機関が複数回にわたり広く報道していたため、一般読者も知るところであった。そうすると、当該事実も併せ考慮すれば、本件記事を読んだ一般読者において、15原告らの訪問先に本件職員がいないことを容易に理解できる。 さら ていたため、一般読者も知るところであった。そうすると、当該事実も併せ考慮すれば、本件記事を読んだ一般読者において、15原告らの訪問先に本件職員がいないことを容易に理解できる。 さらに、原告らの主張する摘示事実は、他の報道機関においては一切報道されていなかった。むしろ、一般人の知識としては、本件職員の自死の原因が公文書の改ざんに端を発していたことが定着していた。そうすると、本件記事を読んだ一般読者としても、通説を覆すような内容であ20る原告ら主張の摘示事実が指摘されているものとは理解し得ない。 ウ したがって、本件記事によって原告らの社会的評価が低下することはないから、本件記事は、原告らの名誉を毀損していない。 この点を措いても、上記イで指摘したところによれば、本件表現部分は、本件記事の重要部分すなわち中心的内容、命題、根幹等には当たらず、25本件記事の具体的な記載内容、本件記事の掲載当時に一般読者が有して 6いた知識等を前提とすれば、本件表現部分は、類型的実質的違法性を欠くものであり、国会議員の言動に対する記述として、不法行為を構成しないというべきである。 ⑵ 争点⑵(原告らの損害及びその額)について(原告らの主張)5本件記事は、一般読者に、原告らが人を自死に追い込むような人物であって、国会議員の信頼の基礎となる人間性や国会議員としての資質に重大な問題があるとの印象を与えるものであるから、本件記事が新聞紙上に掲載されたことにより原告らの社会的名誉は大きく侵害され、原告らは多大な精神的苦痛を被った。これを金銭的に評価すると、原告らの精神的損害の額は、そ10れぞれ400万円を下らない。 また、これと相当因果関係の範囲にある弁護士費用としては、それぞれ、 は多大な精神的苦痛を被った。これを金銭的に評価すると、原告らの精神的損害の額は、そ10れぞれ400万円を下らない。 また、これと相当因果関係の範囲にある弁護士費用としては、それぞれ、上記損害額の1割である40万円とするのが相当である。 (被告らの主張)争う。 15⑶ 争点⑶(謝罪広告請求の可否)(原告らの主張)本件記事により原告らは名誉権を著しく侵害されており、その違法性が強いことから、金銭賠償に加えて、名誉回復のための措置として、被告らに、別紙1及び別紙2記載の各謝罪広告を掲載させる必要がある。 20(被告らの主張)謝罪広告請求は、謝罪広告をすべき必要性が特に高い場合に限り認められると解される。そして、本件記事は他の報道機関においては取り上げられていないし、本訴の帰趨が原告らによる周知又は報道機関による報道を通じて社会の知るところとなるであろうことも踏まえれば、金銭賠償に重ねて謝罪25広告の必要性が特に高いとはいえず、謝罪広告請求は認められない。 7第3 当裁判所の判断1 争点⑴(本件表現部分の摘示事実及び本件記事の名誉毀損該当性)について⑴ 本件表現部分の摘示事実についてア ある新聞記事の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは、当該記事についての一般読者の普通の注意と読み方を基準と5して判断するのが相当である(最高裁判所昭和31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁参照)。 そして、新聞記事中の名誉毀損の成否が問題となっている部分について、同部分の前後の文脈や、記事の公表当時に一般読者が有していた知識ないし経験等を考慮し、同部分が間接的ないしえん曲に特定の事実を主張10するもの 中の名誉毀損の成否が問題となっている部分について、同部分の前後の文脈や、記事の公表当時に一般読者が有していた知識ないし経験等を考慮し、同部分が間接的ないしえん曲に特定の事実を主張10するものと理解されるならば、同部分は、当該事実を摘示するものとみるのが相当であり、また、そのような間接的な言及は欠けるにせよ、同部分の前後の文脈等の事情を総合的に考慮すると、同部分の叙述の前提として特定の事実を黙示的に主張するものと理解されるならば、同部分は、当該事実を摘示するものとみるのが相当である(最高裁判所平成915年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁参照)。 イ これを本件表現部分についてみると、第1文目では、原告らが「職員」を「つるし上げ」たこと、第2文目では、その翌日に、「当該職員」が自殺したことが記述されている。ここで「当該」との単語は、名詞に冠して用いることで「そのこと、そのもの」を意味し(甲7)、日常的な20用法としては直前の同種の名詞と同一であることを示す指示語的表現として使われている。そうすると、一般読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、本件表現部分中の第1文目の「職員」と第2文目の「当該職員」は同じ者を示していると理解するものというべきである。 また、本件表現部分は同一段落内の連続した2文で構成されていること25に加え、それらに記載された両事実の日は一日違いであって時間的に近 8接し、本件表現部分の第2文目において、本件職員が自殺した日が平成30年3月「7日」であることのみならず、「その翌日の」と原告らが「職員をつるし上げ」た日との時間的近接性を強調して記述しているとの印象を受ける。加えて、「つるし上げ」とは、単なる批判に留まらず集団的に批判し問責することと解されており(乙 その翌日の」と原告らが「職員をつるし上げ」た日との時間的近接性を強調して記述しているとの印象を受ける。加えて、「つるし上げ」とは、単なる批判に留まらず集団的に批判し問責することと解されており(乙A16)、一般読者に5おいて、「つるし上げ」を受けた者は心理的負荷を受けるとの印象を持つ一方、自殺は心理的負荷を原因とすることが多いとの知見が一般社会において広く共有されていることに照らせば、「つるし上げ」による心理的負荷が「当該職員の自殺」の一つの要因となったとの印象を抱くのが自然である。以上のような本件表現部分の文脈や一般読者の知識を考10慮すると、本件表現部分は、第1文目の出来事と第2文目の出来事に因果関係ないし条件関係があることにつき、接続詞を用いるなどして直接的、明示的には表現していないものの、上記のとおり「当該」といった指示語的表現を用いたり、上記2文を連続的に配置したりすることによって黙示的に表現しているものと理解される。このことは、第1文目で15「つるし上げ」の対象となった「職員」と第2文目で自殺した「当該職員」が同一人物であるとの印象をより一層深めるものともいえる。そして、本件記事において、自殺した職員は本件職員以外に登場しないことから、同記事を通読した一般読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、自殺した「当該職員」が本件職員を指すと理解するのが自然であるとい20える。 以上によれば、本件表現部分は、原告らが本件職員が自殺した日の前日に本件職員に対して集団的に批判し問責した事実及びそのことが本件職員の自殺の要因の一つとなった事実(以下「本件摘示事実」という。)を摘示するものと認められる。 25ウ これに対し、被告らは、本件表現部分の第2文目の「当該」は本件記事 9の第2段落の 自殺の要因の一つとなった事実(以下「本件摘示事実」という。)を摘示するものと認められる。 25ウ これに対し、被告らは、本件表現部分の第2文目の「当該」は本件記事 9の第2段落の「財務省近畿財務局職員」又は「職員」を引用する趣旨であり、本件表現部分の第1文目の「職員」を指し示さない旨主張する。 しかしながら、本件記事は別紙3のとおりに二段組みで配置されており、このうち第2段落は本件記事の上段の右部分に位置し、本件表現部分を含む第7段落は本件記事の下段の中央に位置し、両段の間には「事実と5は“真逆”の報道」との文字列並びに著者である被告Cの肩書及びペンネームが記載されている。このように、上記「当該」と本件記事の第2段落の「財務省近畿財務局職員」又は「職員」とは本件記事内で相当程度遠い箇所に配置されているのに対し、「当該職員」の直近に本件表現部分の第1文目の「職員」が位置していることからすると、一般読者の10普通の注意と読み方としては、本件表現部分の「当該職員」を本件記事の第2段落の「財務省近畿財務局職員」又は「職員」を想起して関連付ける読み方をするものではなく、直近にある本件表現部分の第1文目の「職員」と同一視するものというべきであるから、被告らの上記主張は採用できない。 15また、被告らは、本件職員は近畿財務局勤務であり、その旨本件記事にも記載されていることからすれば、一般読者において、原告らが財務省本省において「つるし上げ」た対象が本件職員であることはあり得ないと理解する旨主張する。しかしながら、上記で説示したとおり「自殺に追い込まれたとされる財務省近畿財務局職員」と記述された本件記事の20第2段落と本件表現部分は相当程度遠い箇所に配置されており、本件表現部分には本件職員が近畿財務局勤 記で説示したとおり「自殺に追い込まれたとされる財務省近畿財務局職員」と記述された本件記事の20第2段落と本件表現部分は相当程度遠い箇所に配置されており、本件表現部分には本件職員が近畿財務局勤務である旨注記されていないことに照らすと、一般読者の普通の注意と読み方として、本件記事の第2段落の「財務省近畿財務局職員」を想起し、かつ原告らが「乗り込」んだ先が「財務省」であることも踏まえて、それらの機関が別の場所に所在す25ることから原告らが「つるし上げ」た対象が本件職員ではないと理解す 10ることは容易ではなく、上記イで説示した一般読者の自然な読み方を変更するには至らないというべきであり、被告らの上記主張は採用できない。なお、被告らは、本件表現部分の第1文目の「職員」に「当該」が付されていないことも指摘するが、そのことから同「職員」が本件記事の第2段落における「職員」とは別人であることを示していると理解で5きるとは認められない。 この他に、被告らは、一般読者の読み方を検討するに際しては、本件職員が平成29年7月より休職しており、平成30年3月6日当時は出勤していなかったとの事実も併せ考慮すべきである旨主張する。しかしながら、それらの事実は本件記事には記述されていない上、本件記事が掲10載されたのは本件職員の自殺から約2年半が経過した時点であり(上記前提事実⑵、⑶)、本件全証拠によっても、同時点で一般読者が、本件職員が平成29年7月より休職していた又は平成30年3月6日当時出勤していなかったとの知識を有しており、その知識を前提として本件記事を読むとは認められない。そのため、摘示事実を検討するに際して同15事実を考慮することはできず、被告らの上記主張は採用できない。 エ さらに、被告らは、本件記事 の知識を前提として本件記事を読むとは認められない。そのため、摘示事実を検討するに際して同15事実を考慮することはできず、被告らの上記主張は採用できない。 エ さらに、被告らは、本件記事が、新聞の報道機関としての問題点を指摘する連載記事の一つとして、他の新聞社が森友問題に関して本件職員の元上司が述べた内容を抜粋して報道したために、その報道内容が事実と真逆となったことを批評するものであり、一般読者において、本件記事20が原告らを非難するものではないと理解できる旨主張する。 確かに、一般読者において、本件記事中の「新聞という病」、「新聞に喝!」及び「事実とは“真逆”の報道」といった表現その他の論調によって、本件記事を含む連載の狙いが新聞の報道機関としての問題点を指摘することにあると理解することはできる。しかしながら、そのことは、25一般読者において、本件記事が上記問題点の指摘とともに、上記イで認 11定説示したとおりに本件摘示事実をも指摘しているとの読み方をすることを何ら妨げるものではない。むしろ、他の新聞社では本件職員の自殺の原因が公文書の改ざんに端を発しているとの論調で報道されていたところ(乙A3~13、弁論の全趣旨)、本件摘示事実はそれらの報道内容とは相容れないから、本件摘示事実を指摘することも、他の新聞社が5本件摘示事実を報道しない姿勢を批判し、上記問題点の更なる一例を明らかにしているものと、一般読者に理解されることに繋がるのであり、上記でいう連載の狙いと整合するともいえる。この点、被告らは、本件記事のいう、他の新聞社の報道内容が事実と真逆になったこととは、森友問題に関して本件職員の元上司が述べた内容を抜粋して報道した点を10指していると主張するが、一般読者の普通の注意と読み方を基準と 記事のいう、他の新聞社の報道内容が事実と真逆になったこととは、森友問題に関して本件職員の元上司が述べた内容を抜粋して報道した点を10指していると主張するが、一般読者の普通の注意と読み方を基準としても、その点に加え、本件摘示事実が報道されていない点についても、併せて他の新聞社の報道内容が事実と真逆になったことの一部を構成すると整合的に理解することができるのであって、上記イの認定説示を覆すものではない。 15そして、このことからすれば、他の報道機関においては本件摘示事実が一切報道されていなかったこと、一般読者の知識として本件職員の自死の原因が公文書の改ざんに端を発していたことが定着していたことを踏まえるとしても、本件記事を読んだ一般読者からすれば、それらの事情は上記のような報道機関の問題点に起因するものであると整合的に理解20することとなるから、上記イの認定説示を左右しない。 したがって、被告らの上記主張は採用できない。 ⑵ 本件記事の名誉毀損該当性及び不法行為の成否について一般に、人の自殺の要因の一つとなった言動をした者に対しては、社会において否定的な評価がされるものである上に、本件摘示事実によって、原告25らが国会議員として有権者の多数の支持を背景にして1名の本件職員に対す 12る「つるし上げ」という集団的な批判や問責を行うことによって当該職員を自殺に追い込んだと受け止められるおそれがあることにも鑑みると、本件摘示事実が原告らの国会議員としての社会的評価を低下させるものであることは明らかである。そして、被告Cが被告産経に本件記事を寄稿したこと、被告産経に雇用された産経新聞の編集者が令和2年10月25日発刊の産経新5聞朝刊に本件記事を掲載することを決定したこと、それらの結 明らかである。そして、被告Cが被告産経に本件記事を寄稿したこと、被告産経に雇用された産経新聞の編集者が令和2年10月25日発刊の産経新5聞朝刊に本件記事を掲載することを決定したこと、それらの結果として、被告産経が発刊した同朝刊に本件記事が掲載され、原告らの名誉が毀損されたものと認められるから、被告Cによる本件記事の寄稿及び産経新聞の編集者による本件記事の同朝刊への掲載の決定は、それぞれ、原告らに対する不法行為を構成し、被告産経は、被用者である産経新聞の編集者が産経新聞紙上10への本件記事の掲載を決定したことにつき、使用者責任を負うというべきである。 これに対し、被告産経は、本件表現部分が本件記事の重要部分すなわち中心的内容、命題、根幹等には当たらないから違法性を欠く旨指摘する。しかしながら、本件表現部分が本件記事の連載の趣旨における重要部分といえる15かどうかにかかわらず、本件表現部分において本件摘示事実が摘示されることによって原告らの社会的評価が低下する危険性が生じ、その名誉が毀損された以上は違法性が認められ、不法行為が成立するのであるから、上記主張は失当である。 ⑶ 小括20したがって、各原告に対し、被告Cは、本件記事の寄稿について不法行為に基づく損害賠償義務を負い、被告産経は、本件記事の産経新聞紙上への掲載について使用者責任に基づく損害賠償義務を負い、両者の関係は不真正連帯債務関係に立つというべきである。 2 争点⑵(原告らの損害及びその額)について25本件摘示事実は、上記1⑵で説示したとおり、原告らの社会的評価を低下さ 13せるものであるところ、弁論の全趣旨によれば、本件記事の掲載された産経新聞は全国において広く購読されている日刊紙であること、本件摘示事実は社会 で説示したとおり、原告らの社会的評価を低下さ 13せるものであるところ、弁論の全趣旨によれば、本件記事の掲載された産経新聞は全国において広く購読されている日刊紙であること、本件摘示事実は社会的に注目を浴びた政治的問題に関する記事の一部を構成していること、原告らは、本件記事が掲載された当時、現職の国会議員であって国民からその言動が注視される立場にあり、本件摘示事実が原告らの政治活動の当否のみならず資5質や人間性も含めた国会議員としての社会的評価に多大な影響を与えるおそれがあることが認められ、これらの事情を考慮すれば、原告らの受けた精神的損害は大きいといえる。 他方で、甲第6号証によれば、本件記事は、朝刊の7面に掲載され、紙面に占めるスペースも大きくなく、さらに本件表現部分は、本件記事中の2文を構10成するのみであること、本件表現部分には、原告らの言動と本件職員の自殺との因果関係について直接的な表現を用いた言及はなく、原告らを殊更に非難するような表現は用いられていないことが認められる。 これに加え、弁論の全趣旨その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると、被告らの不法行為ないし使用者責任によって原告らが被った精神的損害を填補す15るための慰謝料としては、それぞれ100万円をもって相当と認める。また、弁論の全趣旨によれば、原告らは、被告らの不法行為ないし使用者責任により、原告ら訴訟代理人弁護士に委任して本訴を提起、遂行することを余儀なくされたことが認められ、これと相当因果関係のある弁護士費用は、それぞれ10万円であると認めるのが相当である。 203 争点⑶(謝罪広告請求の可否)について上記2で認定した事情に加え、本判決により本件記事が原告らの名誉を毀損する違法なものであると認めて被告らに損害賠償 認めるのが相当である。 203 争点⑶(謝罪広告請求の可否)について上記2で認定した事情に加え、本判決により本件記事が原告らの名誉を毀損する違法なものであると認めて被告らに損害賠償責任を負わせることで原告らの社会的評価は相当程度回復すること、原告らは現在も現職の国会議員であり自身の主張や本判決の内容を社会一般に発信することができる立場にあること25などの事情を考慮すれば、被告らに対し、損害の賠償を認めるほかに、謝罪広 14告の掲載を命ずる必要があるとまでは認められない。 4 結論よって、その余の点について判断するまでもなく、原告らの請求は主文掲記の限度で理由があるからそれらの限度で認容し、その余を棄却することとして、主文のとおり判決する。 5 東京地方裁判所民事第5部 裁判長裁判官 大 嶋 洋 志 10 裁判官 下 山 久 美 子 15 裁判官 溝 口 翔 太 17(別紙3)については、記載を省略。

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