平成12(行コ)215 贈与税決定処分取消控訴事件(原審・東京地方裁判所平成9年(行ウ)第277号)

裁判年月日・裁判所
平成13年3月15日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文19,233 文字)

第二主文一本件控訴を棄却する。 二控訴費用は控訴人の負担とする。 第三事実及び理由一申立て 1 控訴人(一) 原判決を取り消す。 (二) 被控訴人が控訴人に対し平成7年10月31日付けでした控訴人の平成3年分の贈与税に係る決定処分(以下「本件決定処分」という。)及び無申告加算税賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい,本件決定処分と併せて以下「本件各処分」という。)を取り消す。 (三) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 との判決を求める。 2 被控訴人主文と同旨の判決を求める。 二事案の概要本件の事案の概要,前提となる事実及び当事者の主張等は,当審における控訴人の主張を次のとおり付加するほかは,原判決「事実及び理由」第二に記載のとおりである(ただし,原判決5頁11行目から同12行目にかけての「を控除した金額」を削る。)から,これを引用する。 1 争点1について(一) およそ節税対策は,国民固有の財産権に由来するものであり,憲法29条1項によって保護されるというべきであるから,節税対策も国会の定める法律によってのみ制限されるものである。国民の節税対策は,節税対策であるからとの理由のみによって不利益に取り扱われてはならず,これを不利益に取り扱うことを認める明確な法律上の根拠規定を必要とすると解すべきである。節税対策が講じられたときは,当該節税対策を採用した国民の納税額は,かかる節税対策を講じなかった他の納税者に比較して低額となるが,その場合に「実質的課税の公平」といったあいまい,かつ,法律上の根拠を有しない概念によって課税したり,課税額を加重したりすることは許されない。例外として,所得税法157条,法人税法132条,相続税法64条のごとく租税回避行為の否認を認める法律上の明文規定が存する場合に限って 念によって課税したり,課税額を加重したりすることは許されない。例外として,所得税法157条,法人税法132条,相続税法64条のごとく租税回避行為の否認を認める法律上の明文規定が存する場合に限って,当該行為を否認して課税し,又は課税額を加重することが許容されるに止まるというべきである。本件においては,控訴人が採用した節税対策を否認できる相続税法上の明文規定が存しないのであるから,これを採用しなかった他の納税者国民に比較して課税額が低額になるという理由だけで,控訴人に新たな課税をすることは許されない。本件各処分は,控訴人が節税対策を採用したことを理由に,法律上の否認規定がないにもかかわらず,控訴人に課税するものであって,憲法29条1項,30条,84条に違反する。 (二) ジオ企画に対する出資の時価を評価するに当たって,純資産価額を総出資の口数で除した金額は,出資1口当たりの理論的価値ではあっても,交換価値ないし市場価値とはいえない。理論的価値は,仮説的な計算結果にすぎないが,相続税法22条にいう時価とは,現実に売却できるということを前提とするものである。 理論的価値は,時代と経済情勢の変化に対して超然と存続するが,時価は,時流に応じ,需要と供給とのバランスに応じて時々刻々と変化するものである。理論的価値は,その財産の所有権者が誰であるかに関わりのない概念であるのに対し,時価は,その財産を誰が所有するか,どの程度所有するかによっても異なってくる。相続税法は,あくまでも時価に課税価格を見出しているのであって,理論的価値に課税することを認めてはいない。 2 争点2について仮に,本件譲受けによる経済的成果の現実の除去がなければ,本件譲受けに係る売買契約の錯誤に基づく無効の主張をすることができないとしても,本件各処分前の平成5年5月11日にaが 2 争点2について仮に,本件譲受けによる経済的成果の現実の除去がなければ,本件譲受けに係る売買契約の錯誤に基づく無効の主張をすることができないとしても,本件各処分前の平成5年5月11日にaが死亡したことにより,本件譲受けに係る出資の返還請求権及び同返還義務は混同により消滅し,これによって控訴人が本件譲受けによって取得した経済的成果は現実に除去されているのだから,本件各処分は課税対象を欠いている。 3 争点3(相続税法19条違反)仮に,本件譲受けが相続税法7条の定めるみなし贈与に当たり,その贈与税額が原判決別表1の「決定・賦課決定」欄記載のとおり32億7305万5300円となるとしても,aについて相続が発生したのは平成5年5月11日であるから,相続税法19条の規定が適用されるべきところ,同条によって納付すべき相続税額を算出すると,別紙のとおり8億8744万8300円となる。したがって,上記贈与税額のうち上記相続税額を超える23億8560万7000円の部分については,国税通則法56条,57条の規定を適用して,還付,充当を行うべきこととなるから,本件各処分のうち税額が上記相続税額を超える部分は取り消されるべきである。 4 争点4(国税通則法66条1項ただし書所定の正当な理由)国税通則法66条1項ただし書所定の「正当な理由」がある場合とは,税法の解釈に関し申告当時に公表されていた見解がその後改変されるなどしたため,納税者の故意又は過失に基づかずして申告額が過小になった場合などをいうと解される。控訴人は,本件譲受けに際し,当時の評価基本通達に則ってジオ企画に対する出資の時価を評価して本件出資を買い受けたものであるから,上記の税法の解釈に関して申告当時公表されていた見解がその後改変された場合と同断であって,控訴人には,国税通則法66条 に則ってジオ企画に対する出資の時価を評価して本件出資を買い受けたものであるから,上記の税法の解釈に関して申告当時公表されていた見解がその後改変された場合と同断であって,控訴人には,国税通則法66条1項ただし書所定の「正当な理由」があると認められるから,本件賦課決定処分は取り消されるべきである。 第四当裁判所の判断一評価基本通達の趣旨及び性格 1 相続税法22条は,相続,遺贈又は贈与に因り取得した財産の価額は,特別に定める場合を除き,当該財産の取得の時における時価によるべきものと定めるところ,ここにいう時価とは,課税時期において,それぞれの財産の現況に応じ,不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいうものと解するのが相当である。しかし、このような価額は,必ずしも一義的に確定することができるものではないところから,国税庁長官の発出に係る「財産評価基本通達」(平成3年12月18日改正前の「相続税財産評価に関する基本通達」。以下「評価基本通達」という。)において予め財産評価の一般的基準を定め,課税庁は,これに定められた画一的な評価方式によって財産の時価の評価をすべきものとされているところである。これは,財産の時価を個別に評価する方法によるものとしたときには,その評価方式,基礎資料の選択の仕方等により異なった評価額が生じることを避け難く,納税者の法的安定性及び予見可能性を損ね,納税者間の公平を害する可能性があり,また,課税庁にとっても,事務の負担が大きく,大量に発生する課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがあることなどに基づくものである。 そして、評価基本通達が以上のようなものであってみれば,それはすべての納税者に等しく適用されるべきものであって,特定の納税者又は財産についてのみ評価基本通達に定め ることなどに基づくものである。 そして、評価基本通達が以上のようなものであってみれば,それはすべての納税者に等しく適用されるべきものであって,特定の納税者又は財産についてのみ評価基本通達に定める方式以外の方法によって評価することは,たとえそれが相続税法22条の定める時価としての評価に適合するものであったとしても,許されず(このことと,後記の評価基本通達6の定める要件がある場合において,評価基本通達の定める方式以外の方法によって評価することが許されることとは,自ずから別問題である。),納税者は,課税庁自身が評価基本通達に違背した時価の認定をしたと主張して,課税処分を争うことができるものと解するのが相当である。他方,評価基本通達は,行政庁内部における一通達に過ぎず,国民に対して拘束力を有する法規としての性質を有するものではないのであるから,納税者は,評価基本通達に拘束されることなく,その他の方法によって時価を主張し立証して,評価基本通達に定める方式による評価に基づいてされた課税処分を争うこともできるものというべきである。 2 次いで,評価基本通達中の関係規定についてみると,前記前提となる事実に証拠(甲第22号証ないし第25号証,第62号証ないし第71号証,乙第1号証,乙第20号証の1ないし3)及び弁論の全趣旨を併せると,次の事実を認めることができる。 (一) もともと昭和47年6月20日の改正前の評価基本通達においては,純資産価額方式による取引相場のない株式等(有限会社に対する出資も,これに準じる。)の評価は,課税時期における各資産を評価基本通達により評価した価額(相続税評価額)の合計額から課税時期における債務の金額を控除した額によるとされていたにとどまっていた。 ところが,評価理論上,個人が株式等を通じて会社の資産を間接的に所有す 通達により評価した価額(相続税評価額)の合計額から課税時期における債務の金額を控除した額によるとされていたにとどまっていた。 ところが,評価理論上,個人が株式等を通じて会社の資産を間接的に所有するときは,個人事業主が直接に事業用資産を所有する場合と比較して,個人が自己のために会社の資産を処分するためには,会社を解散し清算して株式数等に見合う財産を手にするほかないという点で,その処分性等に難易差があると考えられ,両者の評価上の均衡を図る必要上,昭和47年6月20日改正評価基本通達においては,課税時期における各資産を相続税評価額により評価した価額の合計額から課税時期における債務の金額及び相続税評価額への評価替に伴って生じる評価益を法人税法における清算所得とみなして計算した法人税等の税額に相当する金額を控除した額によるものとすることに改められた。 (二) しかしながら,上記の評価基本通達の定める法人税額等相当額控除の取扱いを利用して,会社の経営者である株主が,その所有する株式を低額で現物出資して別に会社を設立し,これを次々と繰り返して,設立した会社の純資産額から法人税額等相当額をその都度控除し,株式の評価額を限りなく零に近づけるなどの節税対策が行われたところから,平成2年8月3日改正評価基本通達においては,評価会社が有する株式等の純資産価額の計算においては評価差額に対する法人税額等相当額の控除をしないこととするものとして,法人税額等相当額控除の累積的控除を禁止する措置が講じられた(評価基本通達186-3)。 (三) ところが、上記の改正後の通達の下においても,借入金等で会社を設立し,その会社の株式等を著しく低い価額で現物出資して別会社を設立して,評価差額をいわば人工的に創出し,別会社の株式について,法人税額等相当額の控除をし,あるいは, 下においても,借入金等で会社を設立し,その会社の株式等を著しく低い価額で現物出資して別会社を設立して,評価差額をいわば人工的に創出し,別会社の株式について,法人税額等相当額の控除をし,あるいは,同族会社を設立して手持ちの上場株式を現物出資し,取引相場のない株式に振り替えて,法人税額等相当額の控除をするなどして,相続税評価額を圧縮するなどの事例がみられ,節税対策を紹介する各種の書籍もこれを紹介し,金融機関の中にも,顧客にこの方法を紹介して融資するところが現われるなどした。 そこで,国税庁は,平成5年10月,上記のような場合には,取引相場のない株式等の評価に当たって,法人税額等相当額の控除をすべきでない旨の事務連絡を各税務署長あてに発出し,さらに,平成6年6月27日改正評価基本通達においては,取引相場のない株式等を純資産価額方式で評価する場合において,その資産の中に,現物出資により著しく低い価額で受け入れた株式等があるときは,原則として,法人税額等相当額は,純資産価額の計算上これを控除しない旨を定めた(評価基本通達186ー2)。 3 他方において,評価基本通達6は,「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は,国税庁長官の指示を受けて評価する。」旨を定めるが,これは,前記のとおり,評価基本通達に定める評価方式をすべて財産について画一的に適用するという形式的な平等を貫いた場合にはかえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかであるなどの特別の事情がある場合においては,評価基本通達に定める評価方式以外の他の合理的な評価方式によることが許されるとしているものと解するのが相当である。 二事実関係そこで,控訴人のした本件譲受けの経緯等についてみると,前記前提となる事実に証拠(甲第1号証,第2号証,第5号 的な評価方式によることが許されるとしているものと解するのが相当である。 二事実関係そこで,控訴人のした本件譲受けの経緯等についてみると,前記前提となる事実に証拠(甲第1号証,第2号証,第5号証,第6号証,第10号証ないし第12号証,第14号証,第15号証,第号17証ないし第20号証,第29号証,第73号証,乙第2号証,第3号証の1ないし3,第4号証,第5号証の1ないし3,第6号証,第7号証の1,2,第8号証の1ないし3,第9号証,第10号証,第11号証ないし第13号証の各1ないし3,第14号証ないし第18号証)及び弁論の全趣旨を併せれば,以下の事実が認められる。 1 亡a(明治32年6月22日生。)は,亡bの妻であり,昭和31年7月21日,bが死亡し,同人から,次の不動産を相続した。 ア東京都港区α183番所在の宅地1186・77平方メートル及び同土地上の建物(同土地は,a及び控訴人らの自宅として使用されている。)イ東京都中央区β1番6号所在の宅地450・08平方メートル(同土地は,銀座三越デパートほかの店舗敷地の一部として利用されている。)ウ東京都中央区β103番4号所在の宅地67・57平方メートル及び同土地上の区分所有建物の3室(いずれも共有持分10分の2。同土地は,数寄屋橋交差点の角地であり,銀座クリスタルビルの敷地として利用されている。) 2 aは,平成元年に90歳を迎え,やがて生じるであろう相続による相続税の負担により,特に前記の自宅土地建物を失うことを憂慮していた。平成元年4月ころ,aの自宅の西隣の土地を買い取ったマンション建設販売業者である株式会社大建ドムス(以下「ドムス」という。)の担当者がaを訪ね,aが居住する自宅の敷地等に大規模なマンションを建築したいので自宅の土地を売ってほしいとの申し入れをし,併せて ョン建設販売業者である株式会社大建ドムス(以下「ドムス」という。)の担当者がaを訪ね,aが居住する自宅の敷地等に大規模なマンションを建築したいので自宅の土地を売ってほしいとの申し入れをし,併せて,aの相続税の節税対策立案者として,c税理士を紹介した。 c税理士は,同年中に相続が発生する場合の相続税額は40億円,平成2年に相続が発生した場合の同額は50億円近くに達するとの予想税額を算出し,これをaや控訴人らに説明したところ,同人らは,その額の大きさに驚き,節税対策をc税理士に依頼することを決めた。 3 c税理士は,aに対し,節税対策としていわゆるA社B社方式を採用することを提案し,同人に対し,同節税対策を行うに当たって必要となる資金の融資先として,協和銀行(現在はあさひ銀行。以下「あさひ銀行」という。)を紹介した。芳子は,あさひ銀行から,節税方法を説明したフローチャート表と題する書面を受領したが,そこに記載された節税方法の概要は,次のとおりであった(なお,金額は同書面の記載による例示である。)。 (一) 被相続人は,A社の設立払込資金及び諸経費として12億円を銀行から借り入れて,同12億円のうち,10億円をA社に払い込み,資本金には1000万円を充当する。A社は,10億円を投資顧問会社経由で運用する。 (二) 被相続人は,A社に対する出資1000万円を現物出資し,B社を設立する。 (三) 法定相続人は,銀行から5億円を借り入れ,借入金を資金として,被相続人からB社に対する出資を評価基本通達に則った純資産価額方式により評価した価格で買い取る。被相続人は,代金により当初の借入のうち5億円を返済する。 (四) その後,A社は,運用していた資金10億円を解約し,B社はA社を吸収合併し,減資を行った上,出資金10億円を法定相続人に払い戻す。 (五) 人は,代金により当初の借入のうち5億円を返済する。 (四) その後,A社は,運用していた資金10億円を解約し,B社はA社を吸収合併し,減資を行った上,出資金10億円を法定相続人に払い戻す。 (五) 法定相続人は,払戻金のうち5億円で前記(三)の借入を返済し,残余は自己名義の預金とする。 (六) 被相続人は,法定相続人名義の預金を担保として銀行から5億円を借り入れ,当初の借入れの残のうち5億円を返済する。 aと控訴人は,c税理士の説明及び新聞報道などを通じて,c税理士の提案に係るA社B社方式により法人税額等相当額の控除の適用を受けてする相続税の軽減対策が適法なものであると考え,顧問弁護士とも相談の上,同節税対策を採用することとした。 4 有限会社田芳(以下「田芳」という。)は,平成2年7月12日,代表取締役を控訴人,事業目的を不動産賃貸業及びこれに附帯する一切の業務,資本の総額を3700万円,出資口数3万7000口,出資1口1000円として設立された。 同設立に際しての出資1口の引受金額は10万円で,a,控訴人及びその夫であるdの3名(以下「控訴人ら3名」という。)が,次のとおり出資を引き受けた。aは,平成2年7月20日,大建プラスチックス株式会社(以下「大建プラスチックス」という。)から,52億円を借り入れ,このうちの37億円を同出資の払込資金に充当した。 氏名 a 控訴人 d 合計出資口数 3万6960口 20口 20口 3万7000口払込金額 36億9600万円 200万円 200万円  37億円資本金組入額  3696万円 2万円 2万円  3700万円資本準備金組入額 36億5904万円 198万円 198万円 36億6300万円田芳は,ドムスから,同社が渋谷区内に建築したマンション 組入額  3696万円 2万円 2万円  3700万円資本準備金組入額 36億5904万円 198万円 198万円 36億6300万円田芳は,ドムスから,同社が渋谷区内に建築したマンション「ドムス広尾西館」の専有部分(○号室,○号室,○号室等)を代金36億9527万円で購入し,これを他に貸し付けて家賃収入を得ていたが,後記吸収合併に至るまで,いずれも税引前当期利益はマイナスであった。 5 有限会社平陽は,平成2年7月12日に,代表取締役を控訴人,事業目的を有価証券の保有・運用,不動産賃貸業及びこれらに附帯する一切の業務,資本の総額を1500万円,出資口数1万5000口,出資1口1000円として設立された。同設立に際しての出資1口の引受金額は10万円であり,控訴人ら3名が次のとおり出資を引き受けた。aは,大建プラスチックスから借りた前記4の52億円のうちの15億円を同出資の払込資金に充当した。 氏名 a 控訴人  d 合計出資ロ数 1万4960口 20口 20口  1万5000口払込金額 14億9600万円 200万円 200万円 15億円資本金組入額 1496万円 2万円 2万円 1500万円資本準備金組入額 14億8104万円 198万円 198万円  14億8500万円平陽は,ドムスから,「ドムス広尾西館」の専有部分(○号室等)を代金15億0473万円で購入し,これを平陽及び田芳の本店所在地として利用した。平陽は,流動資産の大部分を特定金銭信託とするほか,有価証券を保有し,平成2年8月1日から平成3年7月31日までの事業年度における決算において,税引前当期利益として約1億円を計上した。 6 有限会社島芳は,平成2年7月16日, 定金銭信託とするほか,有価証券を保有し,平成2年8月1日から平成3年7月31日までの事業年度における決算において,税引前当期利益として約1億円を計上した。 6 有限会社島芳は,平成2年7月16日,代表取締役を控訴人,事業目的を有価証券の保有・運用及びこれらに附帯する一切の業務,資本の総額を1498万円,出資口数1万4980口,出資1口1000円として設立された。aは,同設立に際して,平陽に対する出資1万4960口を現物出資し,島芳に対する出資1万4960口(出資額1496万円)を取得した。また,控訴人は,設立に際して,平陽に対する出資20口を現物出資し,島芳に対する出資20口(出資額2万円)を取得した。島芳は,平成3年10月7日,商号を有限会社ジオ企画に変更した(以下,「ジオ企画」という。)。 7 ジオ企画は,平成2年9月5日に,3698万円(3万6980口)の増資の登記を行い,増資後の資本の総額を5196万円(5万1960口)としたが,aは,同増資に際し,田芳に対する出資3万6960口を現物出資し,ジオ企画に対する出資3万6960口(出資額3696万円)を取得した。また,控訴人は,増資に際し,田芳に対する出資20口を現物出資し、ジオ企画に対する出資20口(出資額2万円)を取得した。 8 平陽は,平成2年12月28日に,4500万円(4万5000口)の増資の登記を行い,増資後の資本の総額は6000万円(6万口)となったが,aは,同増資に際し,同月18日,あさひ銀行から,45億円を借り受け,増資口数4万5000口のすべてを引き受け,引受金額45億円(資本金組入額4500万円,資本準備金組入額44億5500万円)を払い込んだ。 9 ジオ企画は,平成2年12月28日に,4500万円(4万5000口)の増資の登記を行い,増資後の資本金は9696 円(資本金組入額4500万円,資本準備金組入額44億5500万円)を払い込んだ。 9 ジオ企画は,平成2年12月28日に,4500万円(4万5000口)の増資の登記を行い,増資後の資本金は9696万円(9万6960口)となったが,aは,同増資に際して,前記8で取得した平陽に対する出資4万5000口を現物出資し,ジオ企画に対する出資4万5000口(出資額4500万円)を取得した。その結果,同人が所有するジオ企画に対する出資は9万6920口(出資額9692万円)となった。 10 控訴人は,平成3年11月22日付けの有限会社出資金売買契約書(甲第1号証)に基づき,aから,同日,同人が所有するジオ企画に対する出資9万6920口(本件出資)を,総額45億4855万2520円(1口当たり4万6931円)で譲り受けた(本件譲受け)。本件出資の価額は,評価基本通達を適用し,1口当たりの純資産価額の計算上,法人税額等相当額を控除して算定したものであった。 平成3年11月25日,ジオ企画の臨時社員総会において,出資譲渡に伴う社員名簿の変更を行い,ジオ企画に対する出資9万6960口の全部が控訴人の所有となった。 11 ジオ企画,田芳及び平陽は,平成4年4月3日付けで,ジオ企画を存続会社,田芳及び平陽を解散会社とし,合併期日を同年6月1日として,合併契約を締結し,同年6月3日に,合併の登記が行われた。同合併に際し,ジオ企画は,出資口数40口の増資を行って資本金を9700万円(9万7000口)とし,合併期日における田芳及び平陽の合併当事者以外の出資者であるdが所有する出資(田芳及び平陽に対する出資各20口)1口にっいて,ジオ企画に対する出資1口を交付した。同合併及び増資の結果,ジオ企画に対する総出資9万7000口のうち,9万6960口を控訴人が所有し,残りの 出資(田芳及び平陽に対する出資各20口)1口にっいて,ジオ企画に対する出資1口を交付した。同合併及び増資の結果,ジオ企画に対する総出資9万7000口のうち,9万6960口を控訴人が所有し,残りの40口をdが所有することになった。 12 ジオ企画は,平成4年6月16日の臨時社員総会において,資本の額を9700万円から485万円(総出資9万7000口から4850口)に減資するとともに,減少した出資9万2150口に相当する金額を社員に払い戻す旨の決議を行い,これに基づき,同年7月30日に減資の登記がされた。同減資の結果,ジオ企画の総出資4850口のうち,控訴人の出資は9万2112口減少して4848口となり,また,dの出資は38口減少して2口となった。 13 平成4年7月31日,上記臨時社員総会の決議を受けて,ジオ企画は,控訴人に対する減資払戻金として92億1120万円を,また,dに対する減資払戻金として380万円(いずれも出資1口当たり払戻金額10万円)を,それぞれ未払金に計上した。 14 aは,平成5年5月11日に死亡したが,それまでに,大建プラスチックから借り入れた50億円を返済した。同返済資金の原資は,「ドムス広尾西館」の専有部分3軒分を売却した代金,自宅の土地のうち一部72・94平方メートルをドムスに売却した代金,特定金銭信託を取り崩したものであった。 15 控訴人は,平成5年12月13日,aの相続に係る相続税の申告をしたが,これによれば,取得財産の価額が22億6318万1922円であるのに対して,債務及び葬式費用の金額は54億3484万1820円となるため,課税価格及び納付すべき税額は零円とされていた。 三争点に対する判断 1 本件出資の時価の評価について(一) 本件出資の時価の評価につき,評価基本通達をそのまま適用することとし 20円となるため,課税価格及び納付すべき税額は零円とされていた。 三争点に対する判断 1 本件出資の時価の評価について(一) 本件出資の時価の評価につき,評価基本通達をそのまま適用することとした場合においては,純資産価額方式によってこれを評価すべきところであり,平成6年6月27日改正前の評価基本通達の定めによれば,本件出資の時価は,課税時期における各資産を評価基本通達に基づいて評価した価額の合計額(相続税評価額)から課税時期における各負債の合計額及び評価差額に対する法人税額等相当額を控除した金額を課税時期における出資口数で除して計算することになること,その場合におけるジオ企画の資産の相続税評価額(9,241,138,000円),負債合計額(1,020,000円),評価差額(9,143,401,000円)の価額自体については,いずれも当事者間に争いがない。 ここでの争点は,本件出資について,あくまで評価基本通達を適用して,その時価の評価につき前記の法人税額等相当額を控除するべきか(控訴人の主張),それとも,評価基本通達によって評価することが著しく不適当と認められる特別の事情があるとして,評価基本通達6に基づき,法人税額等相当額を控除しないなど他の合理的な評価方式によるべきか(被控訴人の主張)である。 (二) そこで,この点について検討すると,もともと,評価基本通達において取引相場のない株式等の評価に当たり法人税額等相当額を控除すべきものとされた趣旨は,先にみたとおり,株式等の所有を通じて間接的に資産を所有している場合と個人事業主が個々の事業用資産を直接所有している場合との評価上の均衡を図ることにあったところである。 そうであるとすれば,評価基本通達のこの規定を利用して法人税額等相当額の控除を受けて専ら相続税,贈与税等の租税回避を目的 資産を直接所有している場合との評価上の均衡を図ることにあったところである。 そうであるとすれば,評価基本通達のこの規定を利用して法人税額等相当額の控除を受けて専ら相続税,贈与税等の租税回避を目的として,現物出資による会社を設立し,個人の財産を一時的に間接的な所有形態に変更することにより,ことさらに評価差額を創出して贈与財産ないし相続財産の圧縮を図り,課税時期を経過するや,減資を行うなどして再び直接的な所有形態に戻して従前と同様の財産価値を回復させ,かつ,会社を解散した場合の清算所得に対する課税も行われないことを計画するような場合において,評価基本通達をそのまま形式的,画一的に適用して,取引相場のない株式等の評価に当たり法人税額等相当額を控除して課税標準を算出することは,およそ法人税額等相当額を控除すべきものとされた趣旨に反するばかりか,他の納税者との間での実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかである。 したがって,このような場合における当該株式等の評価については,評価基本通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる特別の事情がある(評価基本通達6)ものとして,他の合理的な評価方式によって評価すべきこととするのが相当である。 (三) これを本件についてみると,先に認定したとおり,高騰した不動産を所有し,相続が発生すれば多額の相続税の負担を余儀なくされることを危倶したa及びその相続人である控訴人は,税理士の指導を受けて,金融機関等からの巨額の借入れにより田芳及び平陽の2法人を設立するとともに,田芳及び平陽に対する出資を著しく低い価額で現物出資することによって第3法人であるジオ企画を設立し,その後も,ジオ企画の増資をして,田芳及び平陽に対する出資を著しく低い価額で現物出資をし,ジオ企画に対する出資に91億4340万 しく低い価額で現物出資することによって第3法人であるジオ企画を設立し,その後も,ジオ企画の増資をして,田芳及び平陽に対する出資を著しく低い価額で現物出資をし,ジオ企画に対する出資に91億4340万1000円もの巨額の評価差額を創出した上で,評価基本通達に則って法人税額等相当額を控除して算出した価額に基づき,本件出資(9万6920口。総出資の99.9パーセント)を45億4855万2520円でaから控訴人に売買したものである(本件譲受け)。そして、ジオ企画は,その後,田芳及び平陽を吸収合併するとともに,減資を実行し,控訴人は,その結果,ジオ企画に対して92億1120万円の出資金払戻請求権を取得したもので,aの死亡によって相続財産を上回る借入金債務を相続するものの,上記出資金の払戻金によって清算することができることから,aの相続財産に対する多額の相続税の負担を免れることができると考えられたものであり,本件譲受けは,控訴人の相続税の負担を回避するためにとられた一連の行為の一部を構成するものであって,専ら相続税の負担を免れ又は軽減することを目的として意図的にされたものであることは明らかである。また,ジオ企画における91億4340万1000円もの巨額の評価差額は,会社の解散を待たずして,その後の減資払戻しにより控訴人が取得することが当初から予定されていたというべきであるから,本件譲受け時点において,ジオ企画の解散により清算所得が発生することは,およそ考慮する必要のない状況にあったものということができる。 以上のような事情に照らすと,本件出資の時価の評価につき,評価基本通達をそのまま適用して法人税額等相当額を控除することとすると,前記のような一連の行為の前後においてa及び控訴人が直接又は間接に所有する財産の価値にはほとんど変動がなく,かつ,吸収 につき,評価基本通達をそのまま適用して法人税額等相当額を控除することとすると,前記のような一連の行為の前後においてa及び控訴人が直接又は間接に所有する財産の価値にはほとんど変動がなく,かつ,吸収合併後に存続するジオ企画が解散した場合に清算所得が生じることは想定されていないにもかかわらず,本件譲受けの時点において生じた財貨の移転が著しく過少に評価されることになり,取引相場のない株式等の評価につき法人税額等相当額を控除して課税標準を算出することとされた趣旨に反するばかりか,他の納税者との間での実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかであるから,評価基本通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる特別の事情があるものというべきであり,したがって,評価基本通達を形式的,画一的に適用することなく,他の合理的な評価方式によって評価すべきこととするのが相当である。 (四) そして、本件出資の時価の評価については,評価基本通達185の趣旨に鑑みて,結局,純資産価額方式に従って,本件譲受け当時におけるジオ企画の各資産を評価基本通達に定めるところにより評価した価額の合計額から課税時期における各負債の金額の合計額を控除して算定することとするのが相当であり,これによれば,ジオ企画に対する出資1口当たりの時価は,ジオ企画の本件譲受け当時における相続税評価額による純資産価額92憶4011万8000円を出資総数9万6960口で除した9万5298円となる。 控訴人は,評価基本通達6に基づいて他の合理的な評価方式によって評価すべきものとする以上は,およそ部分的にも評価基本通達の定めに依拠して評価をすることは許されない旨の主張をするけれども,もとより理由がなく,評価基本通達の定める取引相場のない株式等についての純資産価額方式は,それ自体として合理的 部分的にも評価基本通達の定めに依拠して評価をすることは許されない旨の主張をするけれども,もとより理由がなく,評価基本通達の定める取引相場のない株式等についての純資産価額方式は,それ自体として合理的な評価方式なのであるから,このような場合において,基本的にはこれに依拠することとしつつ,法人税額等相当額を控除しないこととする限度でこれを変更することは,もとより相当である。 また,控訴人は,同様の観点から,純資産価額方式による評価は単なる理論的価格であって,相続税法22条にいう時価,すなわち交換価格ないし市場価格ではないとし,本件出資の時価の評価については,評価時点においてジオ企画を清算し,その財産を現金に転換するとすればいくらになるかという観点から算出すべきであるとして,ジオ企画が所有する資産を現金化する作業を想定し,その際当該財産の処分に要する消費税,売却手数料,有価証券取引税,不動産仲介手数料等を控除することとし,これに基づいてジオ企画の清算所得を求め,清算所得に対する法人税額等を控除して,1口当たりの払戻金額を約45,303円と算出し,これを平成3年11月22日現在における本件出資1口当たりの時価とすべきであると主張し,甲第26号証(鑑定書)を援用するけれども,もともと本件のような事案にあって,このような清算処分時時価純資産方式が妥当するものではないし,90億円を超える清算所得がジオ企画に存在することを前提としてこれに対する法人税額等を控除するなどして,ジオ企画に対する出資の時価を算定するものであって,前記認定のとおり,ジオ企画の巨額の評価差額は,その後の減資払戻しにより控訴人が取得することが予定されていて,本件譲受け時においては,ジオ企画の解散によって清算所得が発生することなどは,およそ考慮する必要のない状況にあったものである 価差額は,その後の減資払戻しにより控訴人が取得することが予定されていて,本件譲受け時においては,ジオ企画の解散によって清算所得が発生することなどは,およそ考慮する必要のない状況にあったものであるから,いずれにしても,このような方式によって本件出資の時価を評価することとするのは,およそ相当ではない。 (五) 控訴人は,控訴人が採用した節税対策を否認する法律上の明文規定が存在しないのに,これを採用しなかった他の納税者に比較して課税額が低額になるからといって課税処分をすることは,租税法定主義等に違反するものであって,許されない旨を主張する。しかしながら,ここでは,田芳,平陽,ジオ企画の設立行為等,aや控訴人が行った一連の行為を租税回避行為として税法上無視した上で,その結果するところに従って各資産等について課税しようとするものではなく,これらの一連の行為が有効であることを前提として,ただジオ企画に対する出資の時価の評価に当たって,田芳や平陽の純資産額という客観的事実からジオ企画に対する出資の評価をしているにすぎないのであるから,これを租税回避行為の否認に当たるとするのは失当である。 また,控訴人は,本件譲受けについて適用されるべき平成6年6月27日改正前の評価基本通達によれば,取引相場のない株式等の時価の評価については,なんらの留保や条件を付することなく,評価差額に対する法人税額等相当額を控除すべきものとしているのであるから,本件出資の時価の評価についても当然に法人税額等相当額を控除されるべきであり,これを否定することは,前掲の平成6年6月27日改正評価基本通達の遡及適用にほかならないと主張し,また,税務当局は,平成6年6月27日改正評価基本通達の適用前において本件と同様のいわゆるA社B社方式による相続税節税策が採られていることを把握しなが 正評価基本通達の遡及適用にほかならないと主張し,また,税務当局は,平成6年6月27日改正評価基本通達の適用前において本件と同様のいわゆるA社B社方式による相続税節税策が採られていることを把握しながら,なんらの課税処分を行わなかった事例が存在することに照らすと,本件出資の時価の評価につき法人税額等相当額を控除しないで課税処分をすることは,平等原則に違反する旨を主張する。しかしながら,平成6年6月27日改正前の評価基本通達においても,評価基本通達6の定めが置かれており,特別の事情がある場合においては,評価基本通達に定める評価方式以外の他の合理的な評価方式によることができたことは,先にみたとおりであって,取引相場のない株式等の時価の評価について,なんらの留保や条件を付することなく,当然に評価差額に対する法人税額等相当額を控除すべきものとされていたものではないのであるから,本件出資について法人税額等相当額を控除しないでその時価を評価したからといって,平成6年6月27日改正評価基本通達を遡及適用したことになるものではないことはいうまでもない。また,甲第28号証,第73号証及び第79号証によれば,平成6年6月27日改正評価基本通達の適用前において,いわゆるA社B社方式による相続税節税策が採られた事例が相当数存在すること,これらの事例の中には,法人税額等相当額を控除してした取引相場のない株式等の時価の評価が不当であるとして課税処分がされた例もされなかった例も存在すること,c税理士が関与した事例は,多くが前者に属することの各事実を認めることができる。しかしながら,そうであるからといって,この間の区別に合理的な理由がなく,ことさら恣意的に本件あるいはc税理士の関与した事例についてのみ異なる取扱いをしたというような特段の事情がない限りは,これをもって直 がら,そうであるからといって,この間の区別に合理的な理由がなく,ことさら恣意的に本件あるいはc税理士の関与した事例についてのみ異なる取扱いをしたというような特段の事情がない限りは,これをもって直ちに公平や平等の原則に反するということはできないものというべきところ,このような特段の事情を認めるに足りる証拠はない。 2 本件譲受けの錯誤による無効の主張について控訴人は,本件譲受けに際して,c税理士によって算定された額が税法及び通達上認められた適正な譲渡価格であり,譲渡によって買主である控訴人に課税されることはなく,買主である控訴人に売買代金以外に経済的負担の生じることのない価格であると信じて,同譲渡価格による契約を締結したものであるところ,本件譲受けに関して控訴人に贈与税が課税されるものとすれば,本件譲受けに係る売買契約は錯誤によって無効であり,本件各処分は課税の対象を欠くものであって,違法である旨を主張する。 しかしながら,贈与税は,贈与契約等の原因行為そのものにではなく,その結果として取得した経済的成果に担税力を認めて課税するものであるから,仮に原因行為が実体的に無効であるとしても,当該経済的成果が原因行為の無効を基因として現実に除去されない限り,贈与税の課税物件(課税客体)を欠くことにはならないものと解するのが相当である。 これを本件についてみると,本件譲受けによって控訴人が取得した経済的成果は,その後,本件譲受けに係る売買契約が有効であることを前提とした関係会社の合併,減資払戻しが行われたことにより,そのまま控訴人に残存し,また,平成5年5月11日にはaが死亡してその相続が開始して,本件譲受けに係る売買契約が有効であることを前提とした相続税の申告がされ,いずれも確定した法律関係となっているのであるから,結局,本件譲受けによ 年5月11日にはaが死亡してその相続が開始して,本件譲受けに係る売買契約が有効であることを前提とした相続税の申告がされ,いずれも確定した法律関係となっているのであるから,結局,本件譲受けによって控訴人が取得した経済的成果は,相続の前後を通じて,控訴人に残存しているものというほかない。 控訴人は,aの死亡により控訴人とaとの間の本件譲受けに係る出資の返還請求権及び同返還義務は混同により消滅し,これによって本件譲受けによって控訴人が取得した経済的成果は現実に除去されたことになると主張するけれども,かえって,aの死亡により控訴人が取得した経済的成果を現実に除去する余地がなくなったものというべきである。 3 相続税法19条違反の主張について控訴人は,本件譲受けが相続税法7条の定めるみなし贈与に当たるとしても,その場合には相続税法19条の規定が適用されることになって,納付すべき相続税額は8億8744万8300円となり,本件譲受けに係る贈与税額のうち上記相続税額を超える部分については,還付,充当を行うべきこととなるから本件各処分のうち税額が上記相続税額を超える部分は取り消されるべきであると主張する。 しかしながら,相続税法19条の規定は,相続又は遺贈により財産を取得した者が,その相続の開始前3年以内に被相続人から贈与により財産を取得している場合には,その者については,その贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなすとともに,その贈与により課せられた又は課されるべき贈与税があるときは,その者の算出相続税額からその課せられた又は課されるべき贈与税の額を控除すべきものとしているにすぎないものであって,当該贈与について相続税法19条の規定の適用があるからといって,当該贈与に係る贈与税の額にはなんらの消長 らその課せられた又は課されるべき贈与税の額を控除すべきものとしているにすぎないものであって,当該贈与について相続税法19条の規定の適用があるからといって,当該贈与に係る贈与税の額にはなんらの消長を来すものではない。 したがって,控訴人の上記主張は,およそ理由がない。 4 国税通則法66条1項ただし書所定の正当な理由の主張について控訴人は,本件譲受けに際し,当時の評価基本通達に則ってジオ企画に対する出資の時価を評価して本件出資を買い受けたものであるから,税法の解釈に関して申告当時公表されていた見解がその後改変された場合と同断であり,控訴人には国税通則法66条1項ただし書所定の「正当な理由」がある旨を主張する。 しかしながら,もともと評価基本通達6には,いかなる場合にもその定めが形式的・画一的に適用されるものではないことが明定されていたものである上,控訴人は,専ら相続税の負担を免れ又は軽減することを目的として,ジオ企画の純資産価額と帳簿上の資産価額との間に91億4340万円余もの巨額の評価差額を意図して創出し,これに対する法人税額等相当額を控除して算出した価額を基礎として,本件出資に係る売買代金を決定し買い受けたものであるところ,このような場合においても,評価基本通達の定めがなんらの問題なく適用され,それが著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合には当たらないとするのが一般的な実務や見解であったということは到底できないところである。 したがって,控訴人には,期限内に申告しなかったことにつき責められるべき事由がなく,無申告加算税の制裁を課すことが不当と認められる事情があるものとはいえない。 5 本件各処分の適法性以上のとおりであるから,本件譲受け当時におけるジオ企画に対する出資1口当たりの時価は,9万5298円とするのが相当で すことが不当と認められる事情があるものとはいえない。 5 本件各処分の適法性以上のとおりであるから,本件譲受け当時におけるジオ企画に対する出資1口当たりの時価は,9万5298円とするのが相当であり,本件譲受けにつき贈与とみなされるべき額は,同出資1口当たりの時価である9万5298円と本件譲受けにおける本件出資の1口当たりの対価である4万6931円との差額である4万8367円に本件出資の口数9万6920口を乗じた46億8772万9640円となり,これを基に算出すると,本件譲受けに係る控訴人の贈与税は,課税価格46億8712万9000円,納付すべき税額32億7305万5300円となる。また,控訴人は,本件譲受けに係る贈与税の申告せず,それについて国税通則法66条1項に規定する「正当な理由」は認められないから,同条により無申告加算税が賦課されるところ,その税額は,4億9095万7500円となる。 そして、本件決定処分における課税価格及び納付すべき税額並びに本件賦課決定処分における無申告加算税額は,上記金額と同額であるから,本件決定処分及び本件賦課決定処分は,いずれも適法である。 四結論以上の次第で,当裁判所の上記判断と同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第8民事部裁判長裁判官村上敬一裁判官澤田英雄裁判官永谷典雄

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