平成15(行ウ)119 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成17年3月25日 大阪地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文22,648 文字)

主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,違法に自動車通勤手当を受け取った職員に対し,74万3900円及びこれに対する平成14年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。 第2 事案の概要本件は,大東市の住民である原告が,ともに大東市の一般職の職員である夫婦が1台の自家用車両で通勤している場合に,車両名義人である配偶者の一方のみならず同乗者に過ぎない他方配偶者に対しても自動車通勤に係る通勤手当(以下「自動車通勤手当」という。)名下に金員を支給することは通勤手当の実態を欠くものであり,給与条例主義を定めた地方自治法204条の2等に反する違法な公金の支出であるなどとして,同法242条の2第1項4号に基づき,被告に対し,これら9名の配偶者に対する損害賠償の請求をするよう求めた事案である。 1 前提となる事実等(1) 法令等の定めア地方公務員法24条6項は,職員(一般職に属するすべての地方公務員をいう。同法4条1項)の給与,勤務時間その他の勤務条件は条例で定める旨規定し,同法25条1項は,職員の給与は同法24条6項の規定による給与に関する条例に基づいて支給されなければならず,これに基づかずにはいかなる金銭又は有価物も職員に支給してはならない旨規定している。 また,地方自治法(平成14年法律第48号による改正前のもの)204条は,普通地方公共団体は,その長及びその補助機関たる常勤の職員等に対し,給料及び旅費を支給しなければならない旨規定するとともに(1項),条例で,上記職員等に対し,扶養手当,調整手当,住居手当,初任給調整手当,通勤手当,単身赴任手当,特殊勤務手 たる常勤の職員等に対し,給料及び旅費を支給しなければならない旨規定するとともに(1項),条例で,上記職員等に対し,扶養手当,調整手当,住居手当,初任給調整手当,通勤手当,単身赴任手当,特殊勤務手当,特地勤務手当(これに準ずる手当を含む。),へき地手当(これに準ずる手当を含む。),時間外勤務手当,宿日直手当,管理職員特別勤務手当,夜間勤務手当,休日勤務手当,管理職手当,期末手当,勤勉手当,期末特別手当,寒冷地手当,任期付研究員業績手当,義務教育等教員特別手当,定時制通信教育手当,産業教育手当,農林漁業改良普及手当,災害派遣手当又は退職手当を支給することができる旨規定し(2項),これら給料,手当及び旅費の額並びにその支給方法は,条例でこれを定めなければならない旨規定している(3項)。そして,同法204条の2は,普通地方公共団体は,いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには,これを上記職員等に支給することができない旨規定している。 イア記載の規定を受けて,大東市の一般職に属する職員の給与に関する事項を定めるものとして,大東市一般職の職員の給与に関する条例(平成8年大東市条例第3号。以下「本件給与条例」という。)が制定されている。 そして,本件給与条例18条は,通勤手当について,次のとおり定めている。 第1項通勤手当は,通勤について,次に掲げる事項に該当する職員に支給する。ただし,交通機関もしくは有料の道路(以下「交通機関等」という。)または自動車,自転車,原動機付自転車その他市長が特に承認する交通用具(以下「自動車等」という。)を利用しなければ通勤が著しく困難な場合以外で,交通機関等または自動車等を利用しないで徒歩により通勤するものとした場合の通勤距離が2キロメートル 長が特に承認する交通用具(以下「自動車等」という。)を利用しなければ通勤が著しく困難な場合以外で,交通機関等または自動車等を利用しないで徒歩により通勤するものとした場合の通勤距離が2キロメートル未満である場合は,次の各号(第4号を除く。)に該当しないものとする。 第1号交通機関等を利用して,その運賃または料金(以下「運賃等」という。)を負担することを常例とする場合(第3号に該当する場合を除く。)第2号自動車等を使用することを常例とする場合(第3号に該当する場合を除く。)第3号交通機関等を利用してその運賃等を負担し,かつ,自動車等を使用することを常例とする場合第4号前3号以外の場合第2項通勤手当の額は,次の各号に掲げる職員の区分に応じて,当該各号に掲げる額を加えた額とする。ただし,1か月当たりの通勤手当の額は,5万5000円を限度とする。 第1号省略第2号前項第2号に掲げる職員次に掲げる区分に応じて,それぞれ次に掲げる額ア自動車通勤を常例とする場合の自動車の使用距離(以下この号において「使用距離」という。)が片道15キロメートル未満である職員月額6500円イ使用距離が片道15キロメートル以上である職員月額8900円ウそれ以外の職員月額2000円第3号省略第3項通勤手当は,1か月単位で支給する。ただし,交通機関等を利用する場合の運賃等に相当する額の支給については,支給対象期間ごとに支払う 円第3号省略第3項通勤手当は,1か月単位で支給する。ただし,交通機関等を利用する場合の運賃等に相当する額の支給については,支給対象期間ごとに支払うことができる。 第4項前3項に規定するもののほか,通勤の実情の変更に伴う支給額の改定その他通勤手当の支給に関し必要な事項は,規則で定める。 (乙1号証)(2) 大東市は,夫婦とも同市の一般職の職員である者のうち,別表「通勤手当支給一覧表」の「対象者」欄記載のNO.1ないしNO.9の9組の職員(同欄記載の職員を,以下「NO.1の職員」等という。)合計18名に対し,本件給与条例18条1項2号にいう「自動車等を使用することを常例とする場合」に当たるとして,平成14年3月から平成15年2月(以下「本件期間」という。)の通勤手当として一律支給の毎月400円を除き,毎月同別表の「通勤手当(月額)」欄記載の各通勤手当を支給した(ただし,同別表の「対象者」欄記載のNO.9の職員2名については,平成14年9月から平成15年2月までの支給である。)。同別表の各「対象者」欄記載の職員が本件期間中に支給された通勤手当(一律支給の月額400円を除く。 )の合計は,それぞれ同別表の「通勤手当(合計額)」欄記載のとおりである。 このうち,NO.2,NO.3,NO.4及びNO6の各職員は,夫婦2人とも運転免許証を保有し,夫婦の一方の名義の自動車を保有しており,夫婦の一方が運転し,他方配偶者が同乗して出退勤するか,一方のみが運転して出退勤し,他方配偶者は公共交通機関を利用して出退勤している(運転者は特定の配偶者に限られない。)。また,NO.1,NO.5,NO.7及びNO.8の各職員は,夫婦の一方のみが運転免許証を保有し して出退勤し,他方配偶者は公共交通機関を利用して出退勤している(運転者は特定の配偶者に限られない。)。また,NO.1,NO.5,NO.7及びNO.8の各職員は,夫婦の一方のみが運転免許証を保有し,他方配偶者は運転免許証を保有しておらず,運転免許証を保有する者の名義の自動車を保有しており,同運転免許証保有者が運転し,運転免許証を保有しない他方配偶者が同乗して出退勤するか,運転免許証を保有する一方のみが運転して出退勤し,運転免許証を保有しない他方配偶者は公共交通機関を利用して出退勤している。さらに,NO.9の職員は,夫婦2人とも運転免許証を保有し,かつ,それぞれの名義の自動車を保有しており,夫婦の一方が運転し(運転者が自己名義の自動車を運転するとは限らない。),他方配偶者が同乗して出退勤するか,一方のみが運転して出退勤し,他方配偶者は公共交通機関を利用して出退勤している。 (乙4号証ないし12号証(いずれも枝番を含む。),弁論の全趣旨)(3)ア原告は,大東市の住民である。 (当事者間に争いのない事実)イ原告は,平成15年3月4日,大東市監査委員に対し,大東市において,自動車を運転する職員のみならず,これに同乗,便乗する職員に対しても同額の通勤手当を支払っているのは,二重に手当を支払うものにほかならず,違法,不当な公金の支出であるとして,本件期間に支出された上記違法,不当な公金として合計79万8200円(平成13年3月は,上記違法,不当な支出に係る職員は10名で金額は6万0800円,同年4月から平成14年2月までは,上記違法,不当な支出に係る職員は11名で金額は73万7400円)を市長や関係者らに対し返還させるなど必要な措置を講ずることを求める勧告をするよう求める住民監査請求(以下「本件監 14年2月までは,上記違法,不当な支出に係る職員は11名で金額は73万7400円)を市長や関係者らに対し返還させるなど必要な措置を講ずることを求める勧告をするよう求める住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)を行った。 (乙13号証,当事者間に争いのない事実)ウ大東市監査委員は,平成15年4月21日付けで,自動車同乗等職員に対する自動車使用に係る通勤手当支給は,国家公務員の自動車使用に係る通勤手当支給についての照会に対する人事院の回答を基に決定されており,これは国家公務員に準ずる取扱いであることから特に本件支出が違法又は不当なものとはいえないとして,本件監査請求を棄却し,その際,自動車同乗通勤職員に対する手当支給については,今日的な市民感情からしても一定の見直しをするよう要望する旨付言した。 (弁論の全趣旨,当事者間に争いのない事実)(4)ア原告は,平成15年5月12日,大阪地方裁判所に対し,自動車に同乗,便乗する職員に対して本件期間の通勤手当として支出された79万8200円は違法な公金の支出であるとして,被告に対して違法に自動車通勤手当を受け取った職員に対し79万8200円及びこれに対する平成13年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を大東市に対して損害賠償させるよう請求することを求める住民訴訟を提起した(大阪地方裁判所平成15年(行ウ)第41号。以下「旧訴訟」という。)。 (当裁判所に顕著な事実)イ受訴裁判所である当裁判所の裁判所書記官は,原告に対し,平成15年5月15日付けで,旧訴訟の請求の趣旨中,違法に自動車通勤手当を受け取った職員の氏名を明らかにし,各職員ごとの請求額を明示するよう求める補正催告をした。 (当 原告に対し,平成15年5月15日付けで,旧訴訟の請求の趣旨中,違法に自動車通勤手当を受け取った職員の氏名を明らかにし,各職員ごとの請求額を明示するよう求める補正催告をした。 (当裁判所に顕著な事実)ウ原告は,イ記載の補正催告に対し,平成15年5月23日付け「補正催告につきましての報告ならびに,請求の趣旨の変更申立書」と題する書面を当裁判所に提出し,行政に情報の提供を求めたが,職員の個人名については1ないし11という11名の番号でしか公表されなかった,各職員ごとの請求額は,職員1ないし3及び6ないし8がそれぞれ8万2800円,職員4及び5がそれぞれ11万1600円,職員9が6万8600円,職員10及び11がそれぞれ4800円となる旨の報告をした。なお,原告は,同書面において,一律支給の月額400円のみ支給されている職員(上記職員10及び11)は本訴の対象外とし,残る職員1ないし9の9名の職員に対しても通勤手当中一律支給の月額400円については違法の主張をしないとして,対象となる職員を9名,返還を求める金額の明細につき,職員1ないし3及び6ないし8がそれぞれ7万8000円,職員4及び5がそれぞれ10万6800円,職員9が6万2300円であり,その合計は74万3900円であるとして,請求の趣旨を,被告は違法に自動車通勤手当を受け取った職員に対し74万3900円及びこれに対する平成14年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を大東市に対して損害賠償させるよう請求することを求める旨に変更するとした。 (当裁判所に顕著な事実)エそこで,当裁判所の裁判長裁判官は,平成15年5月26日付け補正命令により,原告に対し,補正命令送達の日から14日以内に旧訴訟の請求の趣旨中違法に自動車 (当裁判所に顕著な事実)エそこで,当裁判所の裁判長裁判官は,平成15年5月26日付け補正命令により,原告に対し,補正命令送達の日から14日以内に旧訴訟の請求の趣旨中違法に自動車通勤手当を受け取った職員の氏名を特定するよう補正を命じ(以下「本件補正命令」という。),本件補正命令は同月28日原告に送達された。 (当裁判所に顕著な事実)オ原告は,本件補正命令に対し,平成15年6月5日付け「補正命令につきましての報告」と題する書面を当裁判所に提出し,原告において大東市に対し情報公開請求をしていたが,大東市は,大東市情報公開条例及び大東市個人情報保護条例により,自動車通勤手当を受給している同乗者・便乗者の氏名を公開しなかった,本件補正命令を大東市の人事課及び総務課の職員に示し,氏名を特定するよう請求したが,やはり氏名の特定はされなかった,一方,過去の住民訴訟の裁判例において,違法手当を受け取った職員の氏名が特定されないまま審理裁判された例もあるとして,職員の氏名を特定しないまま旧訴訟の審理を進めるよう求めた。 (当裁判所に顕著な事実)カ原告がオ記載のとおり本件補正命令所定の期間内に同命令所定の補正をしなかったことから,当裁判所の裁判長裁判官は,平成15年8月1日,行政事件訴訟法7条,民訴法137条2項に基づき,訴状却下命令により旧訴訟の訴状を却下した(以下「本件訴状却下命令」という。)。 (当裁判所に顕著な事実)キ原告は,本件訴状却下命令を不服として,平成15年8月5日,大阪高等裁判所に抗告した(大阪高等裁判所平成15年(行ス)第12号)。 (当裁判所に顕著な事実)クこれに対し,大阪高等裁判所は,平成15年11 て,平成15年8月5日,大阪高等裁判所に抗告した(大阪高等裁判所平成15年(行ス)第12号)。 (当裁判所に顕著な事実)クこれに対し,大阪高等裁判所は,平成15年11月21日,旧訴訟の請求の趣旨は,賠償義務者の範囲を特定し,かつ,賠償を求める損害を特定した上で,被告に対し,その損害賠償債権の行使を義務付けることを求めるものであるから,審理の対象となる作為の範囲を特定するものであり,地方自治法242条の2第1項4号所定の訴訟の請求の趣旨としての明確性に欠けるものではなく,また,被告は対象職員9名が誰かを知っているのであるから,原告から対象職員9名の氏名が明らかにされない限り,同条7項所定の訴訟告知をすべき相手方が分からないとか,対象職員9名の自動車通勤手当の支給原因や支給額の調査ができないということはあり得ず,したがって,審理の対象の特定性・明確性の観点からみても,あるいは被告の防御の観点からみても,対象職員9名の氏名の記載を欠く請求の趣旨のままでは適式な請求の趣旨として取り扱うことに支障があるとは到底考えられず,旧訴訟の訴状(ウ記載の「補正催告につきましての報告ならびに,請求の趣旨の変更申立書」を含む。)には,民訴法133条2項2号所定の請求の趣旨の記載がされているといわなければならないとし,さらに,旧訴訟の原告の主張書面には,本案請求がどのような権利又は法律関係についての主張であるかを識別させるに足りる事実が記載されていることも明らかであるから,同主張書面には同号所定の請求の原因の記載もされているとし,本件補正命令は同法137条1項所定の要件がないのに発せられた違法なものであるとして,本件訴状却下命令を取り消す旨決定した(以下「本件抗告決定」という。)。なお,本件抗告決定は,受訴裁判所において,対象職 命令は同法137条1項所定の要件がないのに発せられた違法なものであるとして,本件訴状却下命令を取り消す旨決定した(以下「本件抗告決定」という。)。なお,本件抗告決定は,受訴裁判所において,対象職員9名の氏名が分からなければ審理や判決に支障があると判断するならば,本案の審理を開始した上で,被告にそれを明らかにするよう釈明を求めれば足りるとしている。 (当裁判所に顕著な事実)ケ本件抗告決定により,本件訴訟が当裁判所に係属することとなった。 (当裁判所に顕著な事実) 2 争点(1) 本件訴えの適法性(2) 同乗者9名に対する自動車通勤手当支給が違法となるか否か 3 争点についての当事者の主張(1) 争点(1)(本件訴えの適法性)について(被告)原告の請求は,被告に対し,自動車通勤手当を受け取った職員に対し大東市に損害賠償請求をさせるよう求めるものであるところ,受領した職員の氏名が特定されておらず,判決の名宛人の特定を欠く不適法なものである。 (原告)原告は大東市に対し情報公開請求をしていたが,大東市は,大東市情報公開条例及び大東市個人情報保護条例により,自動車通勤手当を受給している同乗者・便乗者の氏名を公開せず,原告において本件補正命令を大東市の人事課及び総務課の職員に示し,氏名を特定するよう請求しても,やはり氏名の特定はされなかったものである。一方,過去の住民訴訟の裁判例において,違法手当を受け取った職員の氏名が特定されないまま審理裁判された例もあり,自動車通勤手当を違法に受領した職員の氏名が特定されていなくても,本件訴えは適法である。 (2) 争点(2)(同乗者9名に対する自動車通勤手当支給が違法となるか否か)につ 裁判された例もあり,自動車通勤手当を違法に受領した職員の氏名が特定されていなくても,本件訴えは適法である。 (2) 争点(2)(同乗者9名に対する自動車通勤手当支給が違法となるか否か)について(原告)ア大東市は,自動車通勤手当を,自動車の同乗,便乗職員にも支給しているところ,本件給与条例18条1項2号にいう「自動車等を使用することを常例とする場合」とは,自動車を運転するものを意味することは明らかである。また,自動車通勤手当は運転者の燃料費や自動車のタイヤなどの諸費用に当てられるためのものであるところ,1台の自動車で職員1名が通勤しようが2名が通勤しようが燃料消費はほとんど変わらない。したがって,同乗者,便乗者に対する支給は自動車通勤手当の二重払となり,違法,不当な公金の支出である。 イ NO.1ないしNO.8の各職員については,自動車の名義人でない者(そのうちNO.1,NO.5,NO.7及びNO.8の各職員については運転免許を有しない。)に対する自動車通勤手当名下の金員の支給が地方自治法204条2項,3項,本件給与条例にいう通勤手当の実態を欠いており,給与条例主義を定めた地方自治法204条の2及び地方財政法4条1項に違反する。 ウ夫婦が実生活で同等に生活し,共に持ち物を共有することを許され,自動車の使用権が仮に共々にあるからといって,その自動車を法律上運転できない者が通勤のために使用,運転することは道路交通法上違法な行為であり,本件給与条例に定められている自動車通勤手当をそのような自動車を運転できない職員に支給することも違法な支出である。本件給与条例は,通勤のため自動車を使用することを常例とする職員に対して自動車通勤手当を支給する旨定めており,上記のように自動車を法律上運転でき を運転できない職員に支給することも違法な支出である。本件給与条例は,通勤のため自動車を使用することを常例とする職員に対して自動車通勤手当を支給する旨定めており,上記のように自動車を法律上運転できない者について自動車を使用することを常例とするということはできない。 (被告)ア通勤手当は,通勤費が生活費中固定的な要素となり,転居してこれを軽減することは難しいことから認められたものであり,その内容は職員の通勤のための費用を補助する生活給として位置付けられている。そして,同手当の支給額は,国家公務員の場合,一般職の職員の給与に関する法律(平成15年法律第141号による改正前のもの。以下「給与法」という。)12条2項及び人事院規則9-24「通勤手当」(以下「本件人事院規則」という。)によって,また,地方公務員の場合は,給与法と同旨に立った条例,規則の定めるところによって各々算出されているところである。 イ大東市の職員に対する通勤手当は,地方自治法204条の2,地方公務員法25条1項を受けて,本件給与条例18条及び大東市職員通勤手当支給規則(昭和33年大東市規則第8号。以下「本件支給規則」という。)に基づいて支給されている。そして,職員が交通用具である自動車を常例として使用して通勤している場合(本件給与条例18条1項2号に該当する場合),同条例18条2項2号に定める額が自動車通勤手当として支給されることとなる。 ウ通勤手当の支給に関し,給与法では,通勤のため自動車を使用することを常例とする通勤者について,職員が通勤に使用する交通の用具が当該職員の所有(共有を含む。)に属する場合及び職員が当該交通の用具につき法的に正当な使用権を有すると認められる場合に限り,通勤手当を支給できるものと解する,したが 職員が通勤に使用する交通の用具が当該職員の所有(共有を含む。)に属する場合及び職員が当該交通の用具につき法的に正当な使用権を有すると認められる場合に限り,通勤手当を支給できるものと解する,したがって,職員が通勤に当たって用いる交通の用具につき経費等を負担している場合であっても,自己以外の者の使用する交通の用具を利用するにとどまる場合(いわゆる便乗等の場合)には,通勤手当を支給することはできないものと解されるとする昭和37年1月27日の行政実例(給3-23自治省給与第三課長。以下「37年行政実例」という。)によって運用されている。 この趣旨は,自己の所有する自動車を用いて,自己の正当な使用権限に基づき通勤する場合(第三者に貸与しているようなケースは除外される。),通勤手当の実費弁償的性格に照らし,自動車通勤を常例とする限り同手当を受け得るが,自分以外の者の使用する交通の用具をたまたま利用するにとどまるような場合,同手当を受け得ないというものである。すなわち,前者の場合主体的に通勤のために自己の自動車を使用しているのに対し,後者の場合たまたま他人の使用権を利用(便乗)しているにすぎず,万一,利用できる状況がなければ他の交通手段による通勤方法をとらなければならないことからして,偶然性(常例でない)を基に自動車による通勤手当を認めることは同手当の性格に反するからできないということである。 本件で問題となっている対象者9名に関しても,通勤に使用する交通の用具たる自動車の名義は夫婦の一方になっているものの,いずれも夫婦の共有に属するものであり,また,それらの維持費,燃料費等の経費を負担しているものであって,37年行政実例にも反しない。 このうち,NO.1ないしNO.8の各職員についても,いずれも 共有に属するものであり,また,それらの維持費,燃料費等の経費を負担しているものであって,37年行政実例にも反しない。 このうち,NO.1ないしNO.8の各職員についても,いずれも夫婦であり,運転免許証の保有の有無を問わず,その自動車(交通の用具)は所有名義が一方配偶者のものであるとはいえ,民法762条により共有財産に属するものであり,しかも,配偶者各自が経費を平等に負担して使用している(権限を有する)ことから,配偶者が各々自己の所有し,かつ使用する権限に基づき自動車による通勤をしている者であることは疑いを容れないところである。この点,配偶者の一方が他方配偶者の運転する自動車に相乗りして通勤する場合であっても,相乗り配偶者は常例として自分の共有財産である自動車を他方配偶者に運転を依頼し,主体的に自動車を使用しているものであり(すなわち,無償で運転手を雇って通勤している。),自己以外の者の使用する交通用具を利用することには当たらない。このように解することは,夫婦といえども,独立した法的主体として市役所に勤務し,個別に給与を支給されている以上,自己の共有財産に係る自動車の使用により通勤手当が支給されるのは,同手当の生活給としての性質からして首肯し得るところである。 エなお,NO.1ないしNO.8の各職員について,公共交通機関により通勤していると仮定した場合,1か月に支払われる通勤手当である定期券の2名分の額は,NO.2及びNO.8の各職員を除き各人に支払われる自動車通勤手当の合計額よりも高額であり,また,NO.2及びNO.8の各職員については,自動車通勤の方が高額となるが,駐車場代,ガソリン代,保険料,車輌の減価償却等を考えれば,あながち有意な差とはいえないことに照らせば,実質的に見ても地方財政法上特別違法 NO.8の各職員については,自動車通勤の方が高額となるが,駐車場代,ガソリン代,保険料,車輌の減価償却等を考えれば,あながち有意な差とはいえないことに照らせば,実質的に見ても地方財政法上特別違法な支出とはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件訴えの適法性)について被告は,本件のように,地方自治法242条の2第1項4号に基づいて,被告(大東市長)に対し,自動車通勤手当を受け取った職員に対する損害賠償請求を行うよう求める請求において,当該損害賠償請求を行う相手方の氏名を特定しない場合,このような訴えは判決の名宛人の特定を欠く不適法なものである旨主張する。 平成14年法律第4号による改正前の地方自治法242条の2第1項4号は,住民訴訟の一類型として,普通地方公共団体の住民は,当該普通地方公共団体に代位して,当該行為等に係る相手方を被告として損害賠償又は不当利得返還の請求をし得る旨規定していたものであり,上記改正法により,この請求がこれら相手方に対する損害賠償等の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求の形に改められたものであるところ,上記改正前の地方自治法の下では,これら当該行為等の相手方に対する損害賠償等の請求をする場合,これら相手方は訴訟の当事者(被告)として特定しなければならないとされていたものである。また,上記改正後の地方自治法242条の2第7項は,同条1項4号の規定による相手方に対する訴訟が提起された場合には,当該普通地方公共団体の執行機関又は職員は,当該相手方に対して遅滞なく訴訟の告知をしなければならないと規定している。さらに,同法242条の3第1項は,損害賠償等を命ずる判決が確定した場合においては,普通地方公共団体の長は,当該請求に係る損害賠償金等の支払 て遅滞なく訴訟の告知をしなければならないと規定している。さらに,同法242条の3第1項は,損害賠償等を命ずる判決が確定した場合においては,普通地方公共団体の長は,当該請求に係る損害賠償金等の支払を請求しなければならない旨規定し,同条2項は,同請求にもかかわらず当該判決が確定した日から60日以内に当該請求に係る損害賠償金等が支払われないときは,当該普通地方公共団体は当該損害賠償等の請求を目的とする訴訟を提起しなければならない旨規定している。そして,この場合,上記改正後の地方自治法242条の2第1項4号本文の規定による訴訟の裁判が上記訴訟告知を受けた者に対してもその効力を有するときは,当該訴訟の裁判は,当該普通地方公共団体と当該訴訟告知を受けた者との間においてもその効力を有するものとされている(同条の3第4項)。これらの規定等からすれば,上記改正後の地方自治法242条の2第1項4号に基づく請求においては,請求の趣旨において当該損害賠償等の請求を行う相手方をその氏名でもって特定表示することを要するものと解することには十分な根拠が存するものといえる。 しかしながら,他方,本件においては,原告の大東市に対する情報公開請求によっても,夫婦ともに大東市の職員であって,同乗者ないし便乗者として自動車通勤手当を受給している者の氏名は公開されなかったというのであるところ,住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても相手方の氏名を特定するに至らなかったような場合にまで常に上記相手方をその氏名でもって特定することが必要であると解すると,上記相手方に対する損害賠償等の請求をすることを求める訴訟を提起するみちが封じられる場面も生じ得ることとなって妥当とはいい難い。これらを勘案すると,地方自治法242条の2第1項4号に基づき当該行為等に係る相手方に損害賠 賠償等の請求をすることを求める訴訟を提起するみちが封じられる場面も生じ得ることとなって妥当とはいい難い。これらを勘案すると,地方自治法242条の2第1項4号に基づき当該行為等に係る相手方に損害賠償等の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関等に対して求める訴訟において上記のように当該相手方をその氏名でもって特定することができない場合であっても,当該相手方を氏名以外の方法により客観的に特定することができ,かつ,当該普通地方公共団体において当該相手方の氏名を容易に知ることができるような場合には,例外的に,適法な訴えであると解する余地もあるというべきである。本件の場合,損害賠償請求の相手方とされた者が夫婦ともに大東市の職員であって,かつ,夫婦ともに自動車通勤手当を受給しているものであること,大東市には,NO.1ないしNO.9の職員以外に夫婦ともに同市の職員であって夫婦ともに自動車通勤手当を受給している職員は存在しないこと(一律支給の月額400円のみを受給している職員を除く。弁論の全趣旨),別表「通勤手当支給一覧表」記載のとおり,NO.1ないしNO.9の各職員ごとに車輌名義の有無,運転免許証保有の有無,通勤距離,通勤手当の額がそれぞれ明らかにされていることからすれば,氏名を明らかにすることなしにNO.1ないしNO.9の各職員を特定することが可能であり,かつ,被告(大東市長)においてこれらの職員の氏名を容易に知ることができるというべきであるから,前示の訴訟経過にかんがみても,本件訴えは,地方自治法242条の2第1項4号の当該行為の相手方に損害賠償の請求をすることを求める訴えとしてなお適法な訴えであると解するのが相当である。 2 争点(2)(同乗者9名に対する自動車通勤手当支給が違法となるか否か)について(1) 一般職の地方公 の請求をすることを求める訴えとしてなお適法な訴えであると解するのが相当である。 2 争点(2)(同乗者9名に対する自動車通勤手当支給が違法となるか否か)について(1) 一般職の地方公務員に対する通勤手当の支給に関する法令の定め一般職の地方公務員に対する通勤手当の支給に係る地方公務員法や地方自治法の定めは,前提となる事実等(1)ア記載のとおりであり,大東市においてこれら各規定を受けて本件給与条例を定めていること,及び本件給与条例18条において,通勤手当についての規定がされていることは,前提となる事実等(1)イ記載のとおりである。 また,本件給与条例18条4項は,通勤手当の支給に関し必要な事項は規則で定めるべき旨規定するところ,これを受けて定められた本件支給規則11条は,通勤手当の支給要件に該当する職員が,出張,休暇,欠勤その他の事由により,月の1日から末日までの全日数にわたって通勤しないときは,その月に係る通勤手当は支給しない旨規定している(乙1号証,2号証)。 (2) 一般職の国家公務員に対する通勤手当の支給に関する法令の定めア一般職の国家公務員に対する通勤手当の支給についての法令の定めについてみるに,給与法5条1項は,俸給は,一般職の職員の勤務時間,休暇等に関する法律13条1項に規定する正規の勤務時間による勤務に対する報酬であって,給与法に定める俸給の特別調整額,初任給調整手当,扶養手当,調整手当,研究員調整手当,住居手当,通勤手当,単身赴任手当,特殊勤務手当,特地勤務手当,ハワイ観測所勤務手当,超過勤務手当,休日給,夜勤手当,宿日直手当,管理職員特別勤務手当,期末手当,勤勉手当,期末特別手当及び義務教育等教員特別手当を除いた全額とする旨定め,また,給与法12条1項は,通 イ観測所勤務手当,超過勤務手当,休日給,夜勤手当,宿日直手当,管理職員特別勤務手当,期末手当,勤勉手当,期末特別手当及び義務教育等教員特別手当を除いた全額とする旨定め,また,給与法12条1項は,通勤手当を支給すべき職員として,通勤のため交通機関又は有料の道路を利用してその運賃又は料金を負担することを常例とする職員(交通機関等を利用しなければ通勤することが著しく困難である職員以外の職員であって交通機関等を利用しないで徒歩により通勤するものとした場合の通勤距離が片道2キロメートル未満であるもの及び3号に掲げる職員を除く。)(1号),通勤のため自動車その他の交通の用具(自動車等)で人事院規則で定めるものを使用することを常例とする職員(自動車等を使用しなければ通勤することが著しく困難である職員以外の職員であって自動車等を使用しないで徒歩により通勤するものとした場合の通勤距離が片道2キロメートル未満であるもの及び次号に掲げる職員を除く。)(2号),通勤のため交通機関等を利用してその運賃等を負担し,かつ,自動車等を使用することを常例とする職員(交通機関等を利用し,又は自動車等を使用しなければ通勤することが著しく困難である職員以外の職員であって,交通機関等を利用せず,かつ,自動車等を使用しないで徒歩により通勤するものとした場合の通勤距離が片道2キロメートル未満であるものを除く。)(3号)を規定している。そして,同条2項2号は,上記1項2号に掲げる通勤のため自動車等を使用することを常例とする職員に対する通勤手当の額について,以下のとおり規定している。 (ア) 自動車等の使用距離(以下この号において「使用距離」という。)が片道5キロメートル未満である職員 2000円(イ) 使用距離が片道5キロメート (ア) 自動車等の使用距離(以下この号において「使用距離」という。)が片道5キロメートル未満である職員 2000円(イ) 使用距離が片道5キロメートル以上10キロメートル未満である職員 4100円(ウ) 使用距離が片道10キロメートル以上15キロメートル未満である職員 6500円(エ) 使用距離が片道15キロメートル以上20キロメートル未満である職員 8900円(オ) 使用距離が片道20キロメートル以上25キロメートル未満である職員 1万1300円(カ) 使用距離が片道25キロメートル以上30キロメートル未満である職員 1万3700円(キ) 使用距離が片道30キロメートル以上35キロメートル未満である職員 1万6100円(ク) 使用距離が片道35キロメートル以上40キロメートル未満である職員 1万8500円(ケ) 使用距離が片道40キロメートル以上である職員 2万0900円イ給与法12条6項は,通勤手当の支給に関し必要な事項は人事院規則で定める旨規定しており,これを受けて本件人事院規則が制定されている。本件人事院規則9条は,給与法12条1項2号に規定する交通の用具として,自動車,原動機付自転車その他の原動機付の交通用具(1号)と自転車,そり,スキー及び舟艇(ただし,原動機付のものを除く。)とを規定している。また,本件人事院規則20条は,給与法12条1項の職員が出張,休暇,欠勤その他の事由により支給単位期間等に係る最初の月の初日から末日までの期間の全日数にわたって通勤しないこととなるときは,当該支給単位期間等に係る通勤手当は支給すること 12条1項の職員が出張,休暇,欠勤その他の事由により支給単位期間等に係る最初の月の初日から末日までの期間の全日数にわたって通勤しないこととなるときは,当該支給単位期間等に係る通勤手当は支給することができない旨規定している。 ウなお,給与法の定める通勤手当の支給に関する行政実例として,2人の職員が1台の自動車で同一官署に通勤している場合,通勤手当はどのように支給すべきかとの照会に対し,職員が通勤に使用する交通の用具が当該職員の所有(共有を含む。)に属する場合及び職員が当該交通の用具につき法的に正当な使用権を有すると認められる場合に限り,通勤手当を支給できるものと解する,したがって,職員が通勤に当たって用いる交通の用具につき経費等を負担している場合であっても,自己以外の者の使用する交通の用具を利用するにとどまる場合(いわゆる便乗等の場合)には,通勤手当を支給することはできないものと解されるとする昭和37年1月27日自治省給与第三課長による回答がされた行政実例(37年行政実例)がある(乙3号証)。 (3)ア上記各法令の定めをみると,地方公務員法や地方自治法は,一般職の地方公務員に対して支払われるべき給与として,給料(国家公務員の俸給に相当するもの。)と諸手当を予定し,このうち,給与の根幹を成すものとして正規の勤務時間による勤務に対する報酬を給料としてこれを支給しなければならないものとし(地方自治法204条1項),一方,生計費の増蒿に対する補給や特殊な勤務等に従事する職員の給与上の調整を図るため,給料を補完する性質を有するものとして条例で諸手当を支給することができるものとしている(同条2項)。 通勤手当も,このような給料を補完する性質を有する諸手当の1つとして,条例で支給をすることが認められる給与の1種 して条例で諸手当を支給することができるものとしている(同条2項)。 通勤手当も,このような給料を補完する性質を有する諸手当の1つとして,条例で支給をすることが認められる給与の1種であるということができる。そして,一般職の国家公務員についても給与法12条の規定により通勤手当の支給が定められていることは(2)ア記載のとおりであり,地方公務員法24条3項は,一般職の地方公務員の給与は,生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない旨規定している(いわゆる均衡の原則)ことに照らせば,一般職の地方公務員に対して支給される給与の1つである通勤手当の支給要件等をみるに当たっても,上記給与法や本件人事院規則の規定を参酌しつつ検討するのが相当である。 イところで,通勤手当制度は,昭和32年7月の人事院勧告に基づき,昭和33年法律第87号による給与法の改正により国家公務員について創設され,同年4月1日から適用されたことを受けて地方公務員にも取り入れられたものであり,上記勧告の時点において多くの民間事業所において給与の1つとしての通勤手当が支給されていたこと及び通勤費が職員の家計に及ぼす影響を緩和しようとすることを趣旨として設けられた制度であるとされている(乙15号証,17号証)。 そして,所得税法9条1項5号は,給与所得を有する者で通勤するものがその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとして通常の給与に加算して受ける通勤手当のうち一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分として政令で定めるものについては所得税を課さない旨規定しており,官民を問わず通勤手当の一定額について非課税措置がとられている。 ち一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分として政令で定めるものについては所得税を課さない旨規定しており,官民を問わず通勤手当の一定額について非課税措置がとられている。 以上のような通勤手当制度創設の経緯,制度の趣旨や通勤手当に関する法令の定め等に照らせば,地方自治法204条2項は,同条1項の職員が通勤のために交通機関等を利用し,あるいは,自動車等交通の用具を使用する場合に,これに要する運賃等や燃料費等の経費が職員の生計費に及ぼす圧迫を緩和するため,給与の1つとして通勤手当を支給することができる旨を定めたものであり,同条2項にいう通勤手当は,生活給的な性格を有するとともに実費弁償的性格を有するものとして規定されていると解される。本件給与条例が定める大東市の一般職員に支給される通勤手当も,このような性格のものとして規定されていることは,その規定内容等に照らして明らかである。 ウ以上から,本件給与条例により自動車を使用することを常例とする場合に支給される自動車通勤手当についてみると,本件給与条例18条1項2号にいう自動車等を使用することを常例とする場合とは,給与法12条1項2号にいう通勤のため自動車その他の交通の用具(自動車等)で人事院規則で定めるものを使用することを常例とする職員と同義に解釈すべきであり,イ記載のような通勤手当の性格に加えて,給与法及び本件給与条例が通勤手当が交通機関等の場合は「利用」,自動車等の場合は「使用」とその文言を書き分けていることに照らせば,職員が通勤に使用する自動車が当該職員の所有(共有を含む。)に属する場合及び当該職員が当該自動車について使用権限を有すると認められる場合であって,当該職員が当該自動車を使用して通勤する状態が継続する場合をいうものと解するのが相当である。 有(共有を含む。)に属する場合及び当該職員が当該自動車について使用権限を有すると認められる場合であって,当該職員が当該自動車を使用して通勤する状態が継続する場合をいうものと解するのが相当である。なぜならば,通勤に使用する自動車を所有(共有を含む。)し,あるいは,これに対する使用権限を有するような場合,当該自動車の取得や維持管理等に必要な費用を負担するのが通常であると考えられるから,このような場合に,当該自動車を通勤のため使用している当該職員に対し,通勤手当を支給することは,イ記載の通勤手当制度の趣旨に合致するといえるのに対し,このような権限を全く有しないにもかかわらず,自己以外の者の使用する自動車を通勤のため利用するにとどまる職員に対してまで通勤手当を支給することは,イ記載の通勤手当の性格と相容れないものというべきだからである。 これを本件についてみると,夫婦とも大東市の一般職の職員である者のうち,本件期間に自動車通勤手当が支給されている9組の職員の通勤手当の受給内容や運転免許証保有の有無,通勤に使用している自動車の名義の内容については,別表「通勤手当支給一覧表」記載のとおりであり,その通勤の態様は,前提となる事実等(2)記載のとおりである。これによると,上記9組の職員中,NO.1ないしNO.8の8組の職員については,それぞれ夫婦のいずれか名義の自動車を1台保有して,夫婦の一方が同自動車を運転し(なお,NO.2,NO.3,NO.4及びNO6の各職員は,夫婦2人とも運転免許証を保有するものであり,運転者は必ずしも自動車の名義人とは限らない。これに対し,NO.1,NO.5,NO.7及びNO.8の各職員は,夫婦の一方のみが運転免許証を保有するものであり,運転者は自動車の名義人であるとともに運転免許証を保有するものである。) とは限らない。これに対し,NO.1,NO.5,NO.7及びNO.8の各職員は,夫婦の一方のみが運転免許証を保有するものであり,運転者は自動車の名義人であるとともに運転免許証を保有するものである。),他方配偶者がこれに同乗して出退勤しているものであり,また,NO.9の職員については,夫婦2人とも運転免許証を保有し,かつ,それぞれの名義の自動車を保有しており,夫婦の一方が運転し(運転者が自己名義の自動車を運転するとは限らない。),他方配偶者が同乗して出退勤するものである(なお,運転者以外の他方配偶者については,同乗して出退勤する場合のほか,公共交通機関を利用して出退勤する場合もあることは,前提となる事実等(2)記載のとおりであるが,本件支給規則によれば,職員は,通勤手当を支給する要件に該当するに至った場合等には,通勤届により通勤の実情を所属長を経て被告に届け出なければならず,所属長は,その届出に係る事実を確認しなければならず,被告は,その内容を確認の上,通勤手当の支給を決定するものとされている(本件支給規則4条,5条)ところからすれば,これら運転者以外の他方配偶者も,主として自動車に同乗することにより出退勤しているものと推認され,これを左右するに足る証拠は何ら存しない。)。 そうであるところ,上記NO.1ないしNO.9の各職員が通勤のため利用している自動車は,その登録名義は夫婦のいずれか一方であったとしても,その実質は夫婦の共有財産であるとの推定が働くものであり(民法762条),この推定を覆すに足る証拠は何ら存しない。したがって,これら9組の各職員のうち自動車の所有名義人以外の者についても,実質的にみて所有名義人である配偶者と共に当該自動車を共有しているものと推認され,少くとも当該自動車に対する正当な使用権限を有するもの これら9組の各職員のうち自動車の所有名義人以外の者についても,実質的にみて所有名義人である配偶者と共に当該自動車を共有しているものと推認され,少くとも当該自動車に対する正当な使用権限を有するものと認められるから,本件給与条例18条1項2号にいう自動車等を使用することを常例とする場合に当たるものと解するのが相当である。これを実質的にみても,上記9組の各職員については,夫婦とも大東市の職員として稼働し,給与を得ているものであることからすれば,その一方の所有名義となっている自動車の取得や維持管理に要する費用についても,その所有名義人のみの収入によりすべて賄われているというよりも,むしろ,生活費等の必要な支出の一環として夫婦両名の収入を基礎とし,両名の収入から支出されているものとみられるのであり,そうであるとすれば,イ記載の通勤手当の性格に照らしても,このような場合に,自動車の所有名義人のみならず,所有名義人と共に当該自動車を共有し,当該自動車を通勤のため使用している他方配偶者に対しても通勤手当を支給することは,通勤手当制度の趣旨に反するものということはできず,地方自治法204条2項,あるいはこれと趣旨を同じくする給与法や本件人事院規則の通勤手当に関する規定にも違反するものではないと解される。 エこの点,原告は,1台の自動車で職員1名が通勤しようが2名が通勤しようが燃料消費はほとんど変わらないのであり,同乗者,便乗者に対する支給は自動車通勤手当の二重払となり,違法,不当な公金の支出である旨主張する。確かに,1台の自動車で運転者のみが通勤する場合と,その配偶者がこれに同乗して通勤する場合とを比較すれば,後者の場合に要する費用が前者の場合の2倍に達するものとは考え難く,むしろ両者の費用の差は極めて小さいものと考えられるから,後者の する場合と,その配偶者がこれに同乗して通勤する場合とを比較すれば,後者の場合に要する費用が前者の場合の2倍に達するものとは考え難く,むしろ両者の費用の差は極めて小さいものと考えられるから,後者の場合において運転者及び同乗配偶者の両方に対して前者の場合に運転者に支給されるのと同額の通勤手当を支給することは,通勤手当の実費弁償的性格に照らして議論の存するところである。 しかしながら,一般に通勤手当が実費弁償的性格をも有する手当として認められるものであるとしても,その支給方法,支給条件及び支給額等の定め方については立法政策にゆだねられているのであって,厳密な意味における実費弁償として規定されなければならない必然性はないものといわなければならない。前記(2)アのとおり,給与法においては,通勤手当を給与の1つとして位置付けた上,通勤のため自動車等を使用することを常例とする職員に対する通勤手当の月額について,使用距離の区分を設けた上各区分に応じた定額を支給するものとしており,通勤のための使用に必要とされる当該自動車等の取得及び維持管理費用の負担額に応じた金額設定をしていないことはもとより,通勤距離に厳密に比例させた金額の定め方をしているものでもない。また,給与法12条6項に基づいて制定された本件人事院規則においては,職員が出張,休暇,欠勤その他の事由により支給単位期間等に係る最初の月の初日から末日までの期間の全日数にわたって通勤しないこととなるときは,当該支給単位期間等に係る通勤手当は支給することができない旨規定するにとどまり,実際の通勤日数に比例した金額を支給する仕組みを採用していない。これらによれば,給与法においては,通勤手当について,実費弁償的な性格を前提としつつも,これを給与の一つとして位置付けた上,その支給方法及び支給 勤日数に比例した金額を支給する仕組みを採用していない。これらによれば,給与法においては,通勤手当について,実費弁償的な性格を前提としつつも,これを給与の一つとして位置付けた上,その支給方法及び支給条件等につき,厳密な実費弁償方式によらずに,一定の支給基準を設け,当該基準に適合する限り,通勤のための経費負担との厳密な対応関係まで問うことなく,所定の金額を支給するなどといった定型的な定め方をすることも許容する旨の立法政策がとられていることは明らかである。そうであるとすれば,地方自治法(204条)及び地方公務員法(25条)も,一般職に属する地方公務員に対する通勤手当の支給方法及び支給条件等につき,実費弁償的性格を失わせない限りにおいて,条例により,厳密な実費弁償方式を採用せずに,一定の支給基準を設け,当該基準に適合する限り,通勤のための経費負担との厳密な対応関係まで問うことなく,所定の金額を支給するなどといった定型的な定め方をすることも許容する趣旨のものであると解するのが相当である。 本件給与条例18条2項2号は,自動車通勤を常例とする場合の自動車通勤手当について,自動車の使用距離が片道15キロメートル未満の場合は月額6500円,15キロメートル以上の場合は月額8900円として,一定の距離を基準に2分類のみ設けてそれぞれ定額を支給するものとしており,それ以上に実際の通勤距離や通勤のための使用に必要とされる自動車の取得費及び維持管理費用の負担額に応じた手当の額とはしていないこと(前提となる事実等(1)イ記載のとおり)や,本件給与条例を受けて制定されている本件支給規則11条は,本件人事院規則20条と同様に,通勤手当の支給要件に該当する職員が,出張,休暇,欠勤その他の事由により,月の1日から末日までの全日数にわたって通勤しないと を受けて制定されている本件支給規則11条は,本件人事院規則20条と同様に,通勤手当の支給要件に該当する職員が,出張,休暇,欠勤その他の事由により,月の1日から末日までの全日数にわたって通勤しないときは,その月に係る通勤手当は支給しない旨規定しており,実際の通勤日数に応じて手当を支給することとはしていないこと((2)記載のとおり)からも明らかなとおり,本件給与条例も,通勤手当について,必ずしも厳密な実費弁償方式によるのではなくて,少なくとも自動車通勤手当については,実費弁償の性格を前提としつつ定型的な定め方を採用しているのであって,このような定め方が地方公務員法及び地方自治法の許容するところであることは上記説示したとおりである。しかるところ,ウにおいて説示したところによれば,1台の自動車を夫婦2名が通勤のため使用している場合の通勤手当について,本件給与条例18条1項2号の要件に該当する限り,夫婦のそれぞれに対して同条2項所定の額を支給することとしても,通勤手当の実費弁償的性格を失わせるものということはできない上,上記のとおり本件給与条例は少くとも自動車通勤手当については厳密な実費弁償方式を採用せずに定型的な定め方をしており,規定の文言上も,このような場合に夫婦の一方についてのみ同条2項所定の額を支給すべきであるとか,又は夫婦のそれぞれに対し同条2項所定の額の半額を支給すべきものと解すべき手掛かりも見いだせない。のみならず,給与法や本件人事院規則にも,上記のような解釈の手掛かりとなるような規定は見いだせない。そうであるとすれば,1台の自動車を夫婦2人が通勤のため使用している場合において夫婦のそれぞれに対し本件給与条例18条の規定に基づく額の通勤手当を支給することは,地方公務員法や地方自治法の通勤手当に関する規定に違反するということはでき 2人が通勤のため使用している場合において夫婦のそれぞれに対し本件給与条例18条の規定に基づく額の通勤手当を支給することは,地方公務員法や地方自治法の通勤手当に関する規定に違反するということはできず,このような通勤手当の支給が地方自治法204条の2の給与条例主義に反し違法ということはできない。 オさらに,原告は,NO.1ないしNO.8の各職員中,自動車の名義人でない者に対する自動車通勤手当名下の金員の支給が,地方公共団体の経費はその目的を達するための必要かつ最少の限度を超えて支給してはならない旨規定する地方財政法4条1項に違反するとの主張をする。しかしながら,1台の自動車を夫婦2名が通勤のため使用している場合の通勤手当について,夫婦それぞれに対し本件給与条例の規定に基づく額の通勤手当を支給することが地方公務員法や地方自治法の通勤手当に関する規定に反するということはできないことは上記説示のとおりであるから,本件給与条例の規定に従ってしたNO.1ないしNO.8の各職員中自動車の名義人でない者に対する自動車通勤手当名下の金員の支給が必要かつ最少限度を超える支出に当たり地方財政法4条1項に違反するということはできない。 カ他に本件給与条例に基づくNO.1ないしNO.9の各職員に対する自動車通勤手当の支給が違法な公金の支出に当たると認めるに足る証拠もない。 (4) 以上によれば,本件期間におけるNO.1ないしNO.9の各職員に対する自動車通勤手当の支給が違法な公金の支出に当たるとはいえないから,同支給が違法であるとして,これら各職員に対して損害賠償請求をするよう被告に求める原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 3 よって,原告の本訴請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり 主文 れら各職員に対して損害賠償請求をするよう被告に求める原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。 よって、原告の本訴請求は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 理由 大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官西川知一郎 裁判官田中健治 裁判官石田明彦

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