主文 被告人を懲役3年に処する。 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は、令和5年10月4日、大学の剣道部に共に所属する同級生かつ親友であるA(以下「被害者」という。)と一緒に飲酒をし、日付が変わる夜半過ぎ頃まで、部の同級生及び後輩らも加わって飲酒を重ねていたが、飲食先の店を出た後、従前同様、じゃれ合うように被告人が被害者に向かって手を伸ばすなどし、他の部員らと連れ立っていた折、被害者が被告人の後ろから前へ通り抜けながら左手を伸ばし、頬を平手打ちして走り去り、これに感情を荒立てた被告人が追いかけ、両名が対峙した。 (罪となるべき事実)被告人は、同月5日午前1時40分頃、大阪府東大阪市(住所省略)先路上において、被害者(当時21歳)に対し、右手の拳骨でその顔面を殴り、拳骨の手のひら側でその胸部付近を押す暴行を加え、その結果、後方に倒れた被害者が背後の駐輪自転車の列に乗り上げて仰向けになり、飲酒後のその首が強く伸ばされるなどの状態に至り、よって被害者に右椎骨動脈損傷及びこれに基づく外傷性くも膜下出血等の傷害を負わせ、同月16日午後2時45分頃、同市内の病院において、被害者を同出血による蘇生後脳症により死亡させた。 (証拠の標目)省略(法令の適用)省略(量刑の理由)仲の良い若者同士の飲酒の機会に生じた暴行及びこれに基づく致死の事案である ところ、被告人は、1回殴った後、居合わせた後輩から腰辺りを抱えられて制止されたにもかかわらず、体を押して、被害者が倒れるに至っている。そのようにして暴力は許されない旨の規範に背いたこと及び年若い被害者死亡の結果が重大であることは、改めて、認識されなければならない。突如として人生を断たれた被 体を押して、被害者が倒れるに至っている。そのようにして暴力は許されない旨の規範に背いたこと及び年若い被害者死亡の結果が重大であることは、改めて、認識されなければならない。突如として人生を断たれた被害者の無念さは察するに余りあり、沈痛な胸の内を吐露した父親ら遺族の被害感情も、率直に受け止められるものであった。 もっとも、本件時の被告人は、飲酒後の状態、かつ平手打ちに直面して感情を乱した状態にあり、その状態下の各暴行は、拳を強く打ち付けるには及ばず、被害者の転倒を意図して押したものでもなく、危険性は限られていたと判断できる。また、被害者は、飲酒の影響で反射の動きが鈍っている状態で自転車の列に仰向けに乗り上げ、よってその首が大きく伸ばされるなどし、椎骨動脈損傷という稀な受傷が生じたものと判断できる。本件は、それら複数の偶然の事情の重なり合いが要因になった致死の事案であると認められる。 そして、被告人と被害者は、普段からふざけて体を叩き合うなどのじゃれ合いをする仲であり、両名を含む大勢で久しぶりの宴会を催すうちに飲酒量が高まってしまったことや、飲酒後にじゃれ合いをする中で相手の振る舞いに反感等を覚えて対抗し、そのうちに被告人が被害者を追いかける展開になったことなどのいずれを見ても、被告人に他害をいとわない人格態度が強く表れたとは認められず、その一身に強い非難を向けることは困難である。 これらの事情を踏まえると、本件は、同種の傷害致死罪の量刑傾向に照らして重い事案とはいえず、刑の全部の執行を猶予することも許容され得る。 その他の事情をみると、被告人は、私生活でも多くの時間を共に過ごし、替え難い存在であった被害者の命を、自らの手で失わせてしまった事実と真摯に向き合う旨を述べ、同人及び遺族に対する償いに尽力する旨を述べている。被告人は、天 被告人は、私生活でも多くの時間を共に過ごし、替え難い存在であった被害者の命を、自らの手で失わせてしまった事実と真摯に向き合う旨を述べ、同人及び遺族に対する償いに尽力する旨を述べている。被告人は、天寿を全うするよう求める被害者の父親の言葉を踏まえ、重荷を背負う覚悟を表して反省及び謝罪の意思を強くしており、その様子を率直に受け止めることができる。被 害弁償の一部として200万円の支払が受領されたこと、保釈保証金が戻ればこれを加えた400万円の支払が同様に行われる見込みであること、支払に関与した被告人の父母ら家族が被告人を支援する予定であること、以上も考慮に値する。 そこで、総合考慮し、前科もない被告人については、直ちに実刑に処するのではなく、刑の執行を猶予して社会内で更生の日々を送らせるのが相当と判断した。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑懲役5年)(弁護人の科刑意見執行猶予付き判決)令和6年11月29日大阪地方裁判所第7刑事部 裁判長裁判官伊藤寛樹 裁判官増尾崇 裁判官村田幸生
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