- 1 -令和元年(行コ)第104号行政文書不開示処分取消請求控訴事件(原審大阪地方裁判所平成29年(行ウ)第25号)(口頭弁論終結日令和元年10月10日)判決(当事者の表示省略) 主文 1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人は,控訴人に対し,11万円及びこれに対する平成28年9月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は第一審及び第二審を通じて被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文同旨第2 事案の概要 1 控訴に至る経緯等(以下,財務省近畿財務局を単に「近畿財務局」といい, 国土交通省大阪航空局を単に「大阪航空局」という。)大阪府豊中市(以下「豊中市」という。)の市議会議員である控訴人は,近畿財務局長に対し,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)3条に基づき,国有財産である豊中市野田町1501番所在の土地(以下「本件土地」という。)を学校法人森友学園(以下「森 友学園」という。)に売却する旨の売買契約書(以下「本件文書」という。)の開示請求をしたところ,近畿財務局長から一部開示決定(同法5条2号イ所定の不開示情報に当たることを理由として一部を不開示とし,その余を開示する旨の決定であり,以下「本件処分」という。)を受けたため,本件処分に関する取消訴訟を提起し,本件文書のうち下記の部分(以下「本件不開 示部分」という。)を開示しないことが違法である旨主張した。 - 2 -記ア収入印紙,第2条,第3条,第4条,第5条,第30条,別紙第1のうち金額を記載した部分(以下「本件売買代金額等」という。)イ瑕疵担保責任免除特約等 - 2 -記ア収入印紙,第2条,第3条,第4条,第5条,第30条,別紙第1のうち金額を記載した部分(以下「本件売買代金額等」という。)イ瑕疵担保責任免除特約等が記載された第42条の全部(以下「本件条項」という。) 本件は,提訴後に本件不開示部分が控訴人に開示されたため本件処分の取消しの訴えが損害賠償請求の訴えに交換的に変更された後の訴訟であり,控訴人は,国家賠償法1条1項による損害賠償請求権に基づき,被控訴人に対し,慰謝料11万円及びこれに対する平成28年9月28日(本件処分の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払 を求めた。 原審は,本件売買代金額等を不開示としたことは近畿財務局長の違法な職務行為であるが,本件条項を不開示としたことは近畿財務局長の違法な職務行為とはいえないと判断し,本件請求のうち3万3000円(慰謝料3万円及び弁護士費用3000円)及びこれに対する遅延損害金の支払を求める部 分を認容し,その余を棄却した。そこで,控訴人は,原判決のうち敗訴部分全部を不服として本件控訴を提起した。 2 前提事実当事者間に争いがない事実,裁判所に顕著な事実並びに証拠(原判決掲記のもの)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実は,原判決の「事実及び 理由」の第2の2(2頁23行目から4頁2行目まで)のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決3頁10行目の「別紙「不開示部分」欄記載の部分」を「本件不開示部分並びに契約相手方の印影(収入印紙の消印,本件文書の契約印,本件文書裏表紙の契印)及び署名部分」に,同頁21行目の「本件処分の不開示部分」を「本件処分のうち不開示部分に係る部分」に,それぞ れ改める。 - 印紙の消印,本件文書の契約印,本件文書裏表紙の契印)及び署名部分」に,同頁21行目の「本件処分の不開示部分」を「本件処分のうち不開示部分に係る部分」に,それぞ れ改める。 - 3 - 3 争点 本件売買代金額等を不開示としたことの国家賠償法上の違法性(争点1)⑵ 本件条項を不開示としたことの国家賠償法上の違法性(争点2)損害の有無及びその数額(争点3) 4 争点に関する当事者の主張 原判決の「事実及び理由」の第2の4(4頁12行目から10頁24行目まで)のとおりであるから,これを引用する。 第3 当裁判所の判断 1 本件土地売却に至る経緯証拠(甲5,甲6,乙19ないし乙22)によれば,次の事実が認められる。 豊中市野田町周辺地区は,昭和49年に「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」等に基づき,大阪国際空港周辺における航空機の騒音により生ずる障害が特に著しい区域(第2種区域)に指定されており,旧運輸省は,同法に基づく騒音対策として,同区域の土地所有者からの申出に応じて多数の土地を買い入れ,それら土地(以下「移転補 償跡地」という。)を行政財産として管理していたが,平成元年に至り,航空機エンジンの低騒音化等に伴って同区域の範囲が大幅に縮小され,平成5年には,同区域から外れた場所に位置する移転補償跡地の行政財産の用途が廃止されて普通財産となった。 豊中市は,同区域から外れた区域のうち豊中市野田地区を対象とし,公共 施設を整備するとともに同地区内に散在する多数の移転補償跡地の集約を目的として,平成8年6月28日から平成22年3月31日まで土地区画整理事業を施行した。そして,同地区内の移転補償跡地のうち213筆合計 を整備するとともに同地区内に散在する多数の移転補償跡地の集約を目的として,平成8年6月28日から平成22年3月31日まで土地区画整理事業を施行した。そして,同地区内の移転補償跡地のうち213筆合計2万1606.95㎡は,平成17年6月28日の換地処分により,8770. 43㎡の区画(本件土地)とその東側の9492.42㎡の区画(近傍土地) に整備された。 - 4 - 豊中市は,本件土地と近傍土地の両方を公園として整備する計画を有しており,大阪航空局に対し,両土地について無償貸付け又は減額された価額での売却を希望していたが,大阪航空局は,時価での買い取りを求める姿勢を変えなかった。豊中市としては,両土地とも時価で買い取ることができる財政状況でもなかったため,本件土地の買取りを断念し,平成22年3月10 日,公園用地として近傍土地のみを代金14億2386万円余りで買い受けた。 大阪航空局は,平成21年7月から平成24年2月にかけて,本件土地の土壌汚染や地下埋設物に関する調査を行い,調査を委託した業者から下記アないしエの4通の報告書(以下「本件各報告書」という。)を受領していた。 下記アの報告書は,土地利用履歴等の調査から土壌汚染のおそれはない旨の評価を土壌及び地下埋設物の存在を明らかにするものであった。 記ア平成21年8月付け大阪国際空港豊中市場外用地(野田地区)土地履歴 等調査報告書(乙19)イ平成22年1月付け平成21年度大阪国際空港豊中市場外用地(野田地区)地下構造物状況調査業務報告書(OA301)(乙20)ウ平成23年11月付け大阪国際空港場外用地(OA301)土壌汚染概況調査業務報告書(乙21) 港豊中市場外用地(野田地区)地下構造物状況調査業務報告書(OA301)(乙20)ウ平成23年11月付け大阪国際空港場外用地(OA301)土壌汚染概況調査業務報告書(乙21) エ平成24年2月付け平成23年度大阪国際空港場外用地(OA301)土壌汚染深度方向調査業務報告書(乙22) 大阪航空局は,平成21年10月30日から平成22年1月28日にかけて,地中レーダ探査と68箇所の試掘により地下構造物の状況を調査したところ,①5箇所の試掘地点において,土間コンクリートや基礎コンクリート などの構造物が存在するが,ほぼ本件土地の東側に集中していたこと,②本 - 5 -件土地全体にわたり,深度数十cmから1.5m程度までの範囲にコンクリートガラが点在すること,上記①②のほか,③29箇所の試掘地点において,廃材,ごみが確認され,うち本件土地の北側の28箇所の試掘地点において,平均して深度1.5mから3.0mの地中に,廃材,廃プラスチック,陶器片,生活用品等のごみが土砂と混ざった状態の土(以下「廃棄物混合土」と いう。)が存在することが判明した(乙20)。 大阪航空局は,平成23年9月20日から同年11月28日にかけて,本件土地において土壌汚染の有無及びその範囲を調査した。調査内容は,土壌ガス調査(14地点),表層部土壌調査(60地点)及び個別土壌調査(8地点)であり,個別土壌調査は,表層部土壌調査によって指定基準に不適合 であることが認められた3区画(900㎡区画)のうちの単位区画(100㎡区画)において実施された。 個別土壌調査の結果,2単位区画(A3-8,B4-3)がヒ素の土壌溶出量基準に不適合であり,3単位区画(D1-2,D1-3,D1-8)が鉛の土壌含有量 ㎡区画)において実施された。 個別土壌調査の結果,2単位区画(A3-8,B4-3)がヒ素の土壌溶出量基準に不適合であり,3単位区画(D1-2,D1-3,D1-8)が鉛の土壌含有量基準に不適合であった。その他の区画に基準不適合の土壌汚 染はなかった(乙21)。 大阪航空局は,土壌汚染の深度を特定するため,平成23年12月28日から平成24年2月29日にかけて,上記5箇所の単位区画につき最大深度10mまでのボーリング調査を実施したところ,汚染土壌は深度3mよりも浅い範囲に存在することが分かった(乙22。以下,上記にみた地下埋設物, 廃棄物混合土及び汚染土壌を「既存埋設物」という。)。 大阪航空局は,近畿財務局に対し,本件土地の処分依頼書を提出し,近畿財務局は,本件土地の公用・公共用の取得要望を受け付けたところ,平成25年9月2日,森友学園から,本件土地を小学校用地として取得したいとする取得要望書が提出された。 国(近畿財務局長)は,平成27年5月29日,森友学園(借地人)との - 6 -間で,賃貸期間を10年間とし,地代を年額2730万円とし,既存埋設物の除去費用は民法608条2項に定める有益費として償還請求の対象とし,賃貸期間中に森友学園が本件土地を買い受けること等を内容とする定期借地契約を締結した。 森友学園は,平成27年6月30日から同年12月15日までの間に既存 埋設物の除去工事を行ったとして,国に対し有益費の償還を求めた。 森友学園は,その後,小学校校舎建設工事に着手したが,平成28年3月,長さ9.9mの杭を地中に打ち込む工程において,既存埋設物おり,深度3mより浅い地中に存在する埋設物である。)以外の新たな地下埋設物が存在すること ,小学校校舎建設工事に着手したが,平成28年3月,長さ9.9mの杭を地中に打ち込む工程において,既存埋設物おり,深度3mより浅い地中に存在する埋設物である。)以外の新たな地下埋設物が存在することが判明した旨を主張するとともに,近畿財務局に対し, 早期に埋設物の撤去及び建設工事等を実施する必要があるとして,本件土地を購入したい旨を要望した(以下,既存埋設物とは別の,すなわち深度3mより深い地中に存在するとされた地下埋設物を「係争埋設物」という。)。 近畿財務局と大阪航空局の職員は,同年3月14日,3月30日及び4月5日に,現地において係争埋設物とされる埋設物を目視により確認している が,確認された係争埋設物はいずれも廃棄物混合土であった。 国(大阪航空局)は,平成28年4月6日,森友学園に対し,既存埋設物の除去費用1億3176万円を支払った。 近畿財務局は,平成28年6月1日,森本学園〔ママ〕に対し,本件土地の売払価格として1億3400万円を提示した。この提示額は,係争埋設物 の除去工事に8億1974万円余りを要することを前提とする金額である。 すなわち,近畿財務局が鑑定評価を依頼した不動産鑑定士は,本件土地の最有効利用は戸建て住宅用地であり,係争埋設物を全て除去することに合理性を見いだし難いと判断した上で,係争埋設物を除去しないままでの本件土地の正常価格(現実の社会経済情勢下における合理的な市場で形成されるで あろう価格)を9億5600万円と評価していたが,仮に,係争埋設物の除 - 7 -去工事に8億1974万円程度を要することを代金額に反映させるとすれば,その除去工事費用及び工事期間中の逸失利益相当額を減額することになるため,本件土地の価格は1億3400万円となるとの意見も付記し 去工事に8億1974万円程度を要することを代金額に反映させるとすれば,その除去工事費用及び工事期間中の逸失利益相当額を減額することになるため,本件土地の価格は1億3400万円となるとの意見も付記していた。近畿財務局は,この1億3400万円を提示したものである。 森友学園が上記提示額での売買を承諾したので,国(近畿財務局長)は, 平成28年6月20日,森友学園(買受人)との間で,本件土地を1億3400万円で売却すること等を内容とする売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。その売買契約書が本件文書であるところ,本件条項の文言は別紙のとおりである(別紙における「甲」は国であり,「乙」は森友学園である。)。 森友学園は,本件売買契約が定める指定期日(平成29年3月31日)までに本件土地を指定用途(小学校用地)に供することができなかった。そこで,国(近畿財務局長)は,平成29年6月29日,本件売買契約第26条の買戻しの特約に基づいて買戻権を行使し,本件土地の所有権を回復した。 2 争点1(本件売買代金額等を不開示としたことの国家賠償法上の違法性)に ついて当裁判所も,近畿財務局長が本件売買代金額等を不開示としたことは,国家賠償法上違法であると判断するが,その理由は,原判決の「事実及び理由」の第3の1(11頁1行目から14頁9行目まで)のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決11頁9行目の「当該情報が」から13行目末尾ま でを「当該情報が開示されることによって,当該法人等の権利,競争上の地位その他正当な利益が害される蓋然性が客観的に認められることを要すると解するのが相当である(最高裁判所平成23年10月14日第二小法廷判決・集民238号57頁参照)。」と改め,13頁2行 競争上の地位その他正当な利益が害される蓋然性が客観的に認められることを要すると解するのが相当である(最高裁判所平成23年10月14日第二小法廷判決・集民238号57頁参照)。」と改め,13頁2行目の「法的保護に値する程度の蓋然性が」を「正当な利益が害される蓋然性が客観的に」と改め,同頁14行 目,14頁3行目及び6行目の各「職務上」の次に「通常」を加える。 - 8 - 3 本件条項の情報公開法5条2号イ所定の不開示情報該当性について 本件条項には,本件土地に地耐力に関する瑕疵と土壌汚染,地下埋設物に関する瑕疵があることが記載されており,土壌汚染,地下埋設物に関する瑕疵の具体的内容として,地表面及び地中に陶器片,ガラス片,木くず,ビニール等のごみが存在するほか,本件各報告書記載の内容に加え,地下埋設物 は平成22年1月頃の調査深度より深い箇所にも存在することが記載されている。 そして,本件条項は,買主である森友学園は上記瑕疵が存在することを了承した上で本件土地を買い受けたこと,売主である国は隠れた瑕疵を含めて本件土地に関する一切の瑕疵担保責任を負わないことを明らかにしている。 1億3400万円という売買代金額が近隣の実勢地価と比較して格段に廉価であることは容易に分かるということができるから,本件売買代金額等と併せ考えることにより,本件条項は,売主である国の一切の瑕疵担保責任を免除したため売買代金が著しく廉価となったことを容易に推知させる条項であり,したがって,売買代金の大幅な減価 要因を記載した条項であるということができる。 争点1に対する判断において検討したとおり,国有地の売買代金額は公表すべき情報であるといえるところ,国有財産について適切な管理が求められる 要因を記載した条項であるということができる。 争点1に対する判断において検討したとおり,国有地の売買代金額は公表すべき情報であるといえるところ,国有財産について適切な管理が求められるという財政法9条1項の趣旨に鑑みれば,売買代金額のみならず,価格形成上の減価要因を含む売買代金額の算定根拠についても,これを公表すべき 要請は高い。とりわけ,本件のように,売買代金額が近傍の実勢価格と比較して格段に廉価である場合においては,適正な対価なく国有財産を譲渡したのではないかとの疑いが生じ得るのであるから,国有財産の譲渡価格の客観性を確保するために,価格形成上の減価要因は,売買代金額と同等に重要な情報というべきであり,これを記載した本件条項を公表すべき要請は一層高 いというべきである。 - 9 -したがって,本件条項が公にされることにより森友学園に害されるおそれのある利益があったとしても,それは基本的に,「権利,競争上の地位その他正当な利益」(情報公開法5条2号イ)には該当しないというべきである。 被控訴人は,土壌汚染等の瑕疵はたとえ土地の浄化が完了しても,子を通わせる小学校を選択する保護者に強い心理的嫌悪感を生じさせることになる から,本件条項を開示した場合,森友学園の小学校経営における競争上の地位や事業運営上の利益(以下「本件事業利益」という。)が害されるおそれがある旨主張する。 に認定のとおり,森友学園は,平成27年12月15日までに本件各報告書によって判明した本件土地の深度3mま での汚染土壌や地下埋設物(すなわち既存埋設物)の除去工事を実施したとしていたのであり,しかも,その後に発見されたとする係争埋設物(深度3mより深くに存在する地下埋設物)はいずれも汚染土壌 での汚染土壌や地下埋設物(すなわち既存埋設物)の除去工事を実施したとしていたのであり,しかも,その後に発見されたとする係争埋設物(深度3mより深くに存在する地下埋設物)はいずれも汚染土壌ではなく廃棄物混合土であった。地下深くに存在する廃棄物混合土が地上の小学校に通う児童の の瑕疵が記載された本件条項が開示され,本件土地の小学校用地としての安全性に疑念を抱かれる事態が起きたとしても,森友学園側が地下埋設物に関する事実関係,とりわけ既存埋設物(地下埋設物,廃棄物混合土及び汚染土壌)の除去が既に完了した事実を関係者に丁寧に説明することにより,小学校用地の安全性に係る疑念はかなりの程度まで払拭できると考えられる。 また,保護者が子を通わせる小学校として私立小学校を選択するに当たって考慮する要素については様々なものが考えられ,係争埋設物の存在もその一つとなり得るが,その学校の教育理念,教育方針や教育内容,教員の質などといった教育面の評価がかなり重視されるものと考えられ,そうすると,小学校経営における競争上の地位や事業運営上の利益は,係争埋設物の存在 よりもむしろ教育面の評価に大きく左右されると考えられる。 - 10 -このように検討してみると,本件条項が開示されたとしても本件事業利益が害される蓋然性が客観的に認められるとはいい難い。 なお,乙2は,「土壌汚染リスクと不動産評価の実務」と題する文献であり,これによれば,財団法人日本不動産研究所が,過去に土壌汚染が存在し,その浄化が完了したマンションや土地に対する購入,賃貸借の意思について アンケート調査をしたところ,浄化完了の物件を購入する意思について「過去に汚染の事実がある以上,買わない」と回答した者が62%(平成14年調 マンションや土地に対する購入,賃貸借の意思について アンケート調査をしたところ,浄化完了の物件を購入する意思について「過去に汚染の事実がある以上,買わない」と回答した者が62%(平成14年調査)及び65%(平成15年調査)であったのに対し,「何とも思わない」と回答した者は5%(平成14年調査)及び6%(平成15年調査)にとどまること,浄化完了の物件を賃借する意思についても「過去に汚染の事実が ある以上,借りない」と回答した者が62%であったのに対し,「何とも思わない」と回答した者は8%にとどまること,浄化完了の物件の購入を検討する場合の考えについて「何年経過していても購入はしない」と回答した者は42%であり,浄化完了の物件の賃貸借を検討する場合の考えについても「何年経過していても借りることはない」と回答したものは36%であった ことが認められる。 しかしながら,上記アンケート調査の結果は,住居敷地の土壌汚染に対する意識(心理的嫌悪感)を知るための調査にすぎず,この調査結果からは,校舎敷地の土壌汚染についても同様に心理的嫌悪感を抱かせる情報になり得,そのため本件事業利益が害されるおそれが一般的・抽象的に認められる可能 性があるといえるにとどまる。既に述べたとおり,私立小学校を選択する保護者の判断は,教育面(教育方針や教員の質)の評価に大きく左右されると考えられ,しかも,森友学園側が地下埋設物に関する事実関係,とりわけ既存埋設物の浄化が既に完了した事実を関係者に丁寧に説明することにより,小学校用地の安全性に係る疑念をかなりの程度まで払拭できると考えられる ことからすれば,上記アンケート調査の結果から,校舎敷地の土壌汚染に対 - 11 -する強い心理的嫌悪感のため本件事業利益が害される蓋然性 念をかなりの程度まで払拭できると考えられる ことからすれば,上記アンケート調査の結果から,校舎敷地の土壌汚染に対 - 11 -する強い心理的嫌悪感のため本件事業利益が害される蓋然性が客観的に認められるとはいい難い。 以上によれば,本件条項は,情報公開法5条2号イ所定の不開示情報に該当しないというべきである。 4 争点2(本件条項を不開示としたことの国家賠償法上の違法性)について 前記1に認定の事実経過に照らせば,本件土地の売却に関与した近畿財務局の職員は,森友学園が平成27年12月15日までに既存埋設物(地下3mまでに存する汚染土壌を含む埋設物)を除去したとして有益費の償還を求めていた事実,その後に発見されたとする係争埋設物(地下3mより深くに存在する地下埋設物)は廃棄物混合土であった事実,不動産鑑定士は,本件 土地の最有効利用方法を戸建て住宅敷地とし,かつ,係争埋設物を除去することに合理性を認め難いと判断し,これを除去しないままでの本件土地の正常価格を9億5600万円と評価していた事実を知っていたものということができる。 そうすると,本件土地の売却に関与した近畿財務局の職員は,本件土地に 残存する地下埋設物は,これを全部除去するのであれば多額の費用がかかるものの,校舎敷地としての本件土地の安全性に関する強い疑念を抱かせ,あるいはその土壌に対する強い心理的嫌悪感を抱かせるという性質のものではないことは容易に理解できたと認めるのが相当である。 したがって,本件売買契約に至る事実経過に照らして検討した場合,本件 条項を非開示としなければ本件事業利益が害されるおそれがあるとした近畿財務局長の判断は,その判断の基礎となる事実上の根拠が薄弱であったといわざるを得ない。 して検討した場合,本件 条項を非開示としなければ本件事業利益が害されるおそれがあるとした近畿財務局長の判断は,その判断の基礎となる事実上の根拠が薄弱であったといわざるを得ない。 また,において検討したとおり,仮に,何らかの重大な要因により公共随契の売買代金額が近隣の実勢地価と比較して格段に廉価なものとな っている場合には,当該要因は,売買代金額と同等に重要な情報というべき - 12 -であるから,これも公表する要請が高いといわなければならない。 しかも,本件処分における不開示とした理由(原判決別紙「不開示とした理由」参照)をみても,本件売買代金額等と本件条項とはいずれも同じ理由で不開示とされており,近畿財務局長において,両者を別異に扱っていたという事情はうかがえない。さらに,本件においては,売買代金額が近隣の実 勢価格と比較して格段に廉価であり,売買代金額とその価格形成上の減価要因とは密接な関係にあったというべきであるから,近畿財務局長は,本件処分をするに当たり,本件売買代金額等の開示と本件条項の開示とを一体的に判断したものと思われ,仮に,本件売買代金額等を開示する場合,本件条項だけを開示しないとの判断をしたかどうかについては疑問が残る。 また,情報公開法における文書の開示,不開示と本件通達によるホームページ上の公表,非公表とでは性質が異なっているが,それでも,情報公開法による本件文書の開示の範囲を検討するに当たっては,財政法9条1項及び本件通達による公表制度との整合性をも考慮した判断が求められるのであり(このような判断が求められることについては,前記平成23年最高裁判決 が述べるところである。),そのような観点からすれば,本件条項を不開示とする判断には,財政法9条1項及び本件通 るのであり(このような判断が求められることについては,前記平成23年最高裁判決 が述べるところである。),そのような観点からすれば,本件条項を不開示とする判断には,財政法9条1項及び本件通達による公表の要請との考量を踏まえた慎重な検討が必要となるが,本件では,上記のような考量を踏まえた慎重な検討がされた形跡をうかがうことができない。 なお,本件処分当時,価格形成上の減価要因につき,財務局等のホームペ ージでの公表に関してどのような取扱いがされていたかは証拠上明らかでないが,被控訴人からは,近畿財務局長が,ホームページで価格形成上の減価要因を公表しない取扱いをしていたことを理由として,本件条項についても不開示と判断した旨の主張立証はない。 以上にみたとおりであって,近畿財務局長が本件条項を不開示とした職務 行為は,事実の裏付けが不十分であり,かつ,必ずしも必要な考量を踏まえ - 13 -たものとも評価し難い。したがって,本件の事情の下では,本件条項につき,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と不開示の判断をしたと認め得る事情が肯定されるというべきであるから,近畿財務局長が本件処分において本件条項を不開示としたことは,国家賠償法上違法であると認められる。 5 小括以上のとおりであるから,近畿財務局長が本件処分において本件売買代金額等及び本件条項(本件不開示部分)を不開示としたことは,国家賠償法上違法と認められるところ,上記で説示したところによれば,職務上の注意義務を尽くさず不開示とした点について過失があると認められる。 6 争点3(損害の有無及びその数額)について本件処分において本件売買代金額等及び本件条項が不開示とされたことにより,控訴人は精神的苦痛を被っ とした点について過失があると認められる。 6 争点3(損害の有無及びその数額)について本件処分において本件売買代金額等及び本件条項が不開示とされたことにより,控訴人は精神的苦痛を被ったものと認められるところ,本件に現れた一切の事情に照らせば,その苦痛を賠償するための慰謝料はこれを10万円と認めるのが相当であり,その賠償と併せて控訴人が賠償を求め得る弁護士 費用はこれを1万円と認めるのが相当である。 当裁判所も,控訴人には金銭をもって償うべき精神的苦痛など生じていないとの被控訴人の反論は採用できないと判断するが,その理由は,原判決22頁2行目から10行目までのとおりであるから,これを引用する。 7 結論 よって,本件請求は全部理由があるから認容すべきであり,原審の判断のうち本件請求を一部棄却した部分は相当ではないから,本件控訴に基づき原判決を上記のとおり変更することとし,仮執行宣言については不必要と認めこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第6民事部 裁判長裁判官中本敏嗣 - 14 - 裁判官橋詰均 裁判官三島恭子 - 15 -(別紙)(瑕疵担保責任免除特約等)第42条乙は,本件貸付契約第5条の土壌汚染,地下埋設物に関する瑕疵及び第30条記載の地耐力に関する瑕疵並びに次項以下の一切の瑕疵の存在につき了承したうえで本件土地を現状有姿にて買い受ける。 2 乙は,平成26年11月7日及び平成26年12月17 関する瑕疵及び第30条記載の地耐力に関する瑕疵並びに次項以下の一切の瑕疵の存在につき了承したうえで本件土地を現状有姿にて買い受ける。 2 乙は,平成26年11月7日及び平成26年12月17日に甲が引き渡した「大阪国際空港豊中市場外用地(野田地区)土地履歴等調査報告書平成21年8月」,「平成21年度大阪国際空港豊中市場外用地(野田地区)地下構造物状況調査業務報告書(OA301)平成22年1月」,「大阪国際空港場外用地(OA301)土壌汚染概況調査業務報告書平成23年11月」,「平成23年度大阪国際空港場外用地(OA30 1)土壌汚染深度方向調査業務報告書平成24年2月」に記載の内容を了承したうえで売買物件を買い受ける。 3 乙は,売買物件のうち一部471.875㎡が,豊中市より土壌汚染対策法第11条第1項で定める形質変更時要届出区域に指定されていたことを了承したうえで売買物件を買い受ける(平成27年10月26日指定解除)。 4 乙は,売買物件に関して,前3項の他,次の瑕疵を了承する。 一売買物件の地表面及び地中に陶器片,ガラス片,木くず,ビニール等のごみが存在すること。 二売買物件には,第2項で定める「平成21年度大阪国際空港豊中市場外用地(野田地区)地下構造物状況調査業務報告書(OA301)平成22年1月」において実施 した掘削調査深度より深い箇所にも地下埋設物が存在すること。 5 乙は,従前の経緯を踏まえて,前4項に定める瑕疵の他,その他乙が小学校建設及び運営を行ううえで支障となる売買物件に関する一切の瑕疵(隠れた瑕疵も含む)について,瑕疵担保責任を免除する。 6 本件貸付契約第6条の規定にかかわらず,前5項に定める瑕疵の除去に伴う一切の費 用につき,本契約書作成時点において既に乙にお の瑕疵(隠れた瑕疵も含む)について,瑕疵担保責任を免除する。 6 本件貸付契約第6条の規定にかかわらず,前5項に定める瑕疵の除去に伴う一切の費 用につき,本契約書作成時点において既に乙において支払いを受けているもの(平成28年3月30日付合意書に基づく土壌汚染除去等費用合計金1億3176万円)を除き,甲は,乙に対して,何ら支払を要せず,乙は,甲に対して,有益費返還請求,損害賠償請求その他名目を問わず,一切の財産的請求をしないことにつき,甲及び乙は確認する。 7 乙が小学校建設を行うために必要な売買物件に残存する陶器片,ガラス片,木くず, ビニール等のごみ,地下埋設物,土壌汚染,地耐力等に関する調査については,甲において調査を要せず,現状にて売買物件を売却することを乙は了承する。 8 乙は,売買物件に関する一切の瑕疵(隠れたる瑕疵を含む)に関して,調査費用,除去費用,廃棄費用等の費目を問わず,瑕疵担保責任,不法行為責任,有益費償還請求,立替金返還請求,その他名目を問わず,本書に定めるものの他,甲に対して,金銭請求 並びに履行請求等,一切の財産上の請求を甲にしないことを,甲に約する。 9 本条に定める瑕疵除去工事は乙の責任と費用においてこれを行い,本書作成以後,乙が依頼した請負業者から甲が費用請求を受けた場合には,乙において支払う。(以上)
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