令和3年10月7日判決言渡令和3年(行コ)第41号更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所令和元年(行ウ)第146号) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 A税務署長(処分行政庁)が平成30年3月1日付けで控訴人に対してした,控訴人の平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求について更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。 第2 事案の概要(以下,略語は特記しない限り原判決の例による。) 1 事案の要旨 控訴人は,平成24年に贈与(本件贈与)を受けた原判決別紙1物件目録記載の土地(本件土地)について,平成24年分の贈与税(本件贈与税)を納付し,賃貸によって賃料収入を得ていたところ,本件贈与税の額を必要経費の額に算入することなく,平成25年分の所得税及び復興特別所得税(所得税等)の確定申告書を処分行政庁に提出し,所得税等の額を一旦確定させた後で,本件贈与税の 額は平成25年分の本件土地の賃貸による不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入すべき金額に該当するとして,平成29年12月,処分行政庁に対し,平成25年分の所得税等の更正の請求をしたが,処分行政庁から,同更正の請求について,更正をすべき理由がない旨の通知処分(本件通知処分)を受けた。 本件は,控訴人が,被控訴人に対し,本件通知処分は,①本件贈与税が本件土 地の賃貸による不動産所得の必要経費に該当するにもかかわらずされたもので あり,また,②行政手続法8条1項に定める理由を示すことなくされたものであって違法であるなどとして,本件通知処分の 地の賃貸による不動産所得の必要経費に該当するにもかかわらずされたもので あり,また,②行政手続法8条1項に定める理由を示すことなくされたものであって違法であるなどとして,本件通知処分の取消しを求める事案である。 原審は,控訴人の請求を棄却したので,これを不服とする控訴人が本件控訴を提起した。 2 関係法令の定め及び前提事実 関係法令の定め及び前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)は,原判決「事実及び理由」欄の第2の1,2に各記載のとおりであるから,これらを引用する。 3 税額等に関する当事者の主張,並びに争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は,①本件贈与税の額が,平成25年分の本件土地の賃貸による不 動産所得の金額の計算上,必要経費に算入すべき金額に該当しないといえるか否か(争点1),②本件通知処分は,控訴人に対し,行政手続法8条1項に定める理由を示してされたものであるか否か(争点2)であり,これを含め,上記項目の各点については,下記のとおり,控訴人の当審における補充主張を加えるほか,原判決「事実及び理由」欄の第2の3,4に各記載のとおりであるから,これら を引用する。ただし,原判決7頁16行目の「下記5」を「下記4」に改める。 (控訴人の当審における補充主張)争点1に関し,必要経費に該当するか否かは,個々の所得を生じさせた原因行為(本件では不動産賃貸行為)の性質に応じて個別具体的に検討されるべきであるにもかかわらず,「贈与税が経済的価値に対する課税である」などという概念 のみから結論を演繹することは,所得税法37条1項が規定する文言を正しく解釈適用したものとは解されない。本件贈与税は,控訴人が贈与を受けた不動産の 経済的価値に対する課税である」などという概念 のみから結論を演繹することは,所得税法37条1項が規定する文言を正しく解釈適用したものとは解されない。本件贈与税は,控訴人が贈与を受けた不動産の贈与による取得の時に納税義務が発生し,その履行行為として納付したものであるから,そのような支出は,まさに所得を生み出す原価あるいは不動産を取得するために不可避的に発生した費用であり,「売上原価その他当該総収入金額を得 るため直接に要した費用」(所得税法37条1項,個別対応の費用)に当たる。 また,本件贈与税は,控訴人が不動産所得を得るために業務を行う上で,法律上,不可避的に必要となるもので,そのような費用は「その年における販売費,一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」(同項,一般対応の費用)に当たる。 第3 当裁判所の判断 当裁判所も,本件通知処分は適法であり,控訴人の請求は理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は,後記1のとおり補正し,後記2のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を付加するほか,原判決「事実及び理由」欄の第3に記載のとおりであるから,これを引用する。 1 原判決の補正 ⑴ 原判決16頁15行目の「明らかであるから」の後に「(不動産所得を生ずべき業務と関連性を有しないのであれば,その費用は,およそ「当該総収入金額を得るため直接に要した費用」及び「所得を生ずべき業務について生じた費用」(所得税法37条1項)のいずれにも当たらないことは明らかである。)」を加える。 ⑵ 原判決16頁24行目冒頭から同17頁2行目末尾までを,次のとおり改める。 「 確かに,贈与税の成立は,「贈与・・・による財産の取得の時」(国税通則法15条2項5号)である。 える。 ⑵ 原判決16頁24行目冒頭から同17頁2行目末尾までを,次のとおり改める。 「 確かに,贈与税の成立は,「贈与・・・による財産の取得の時」(国税通則法15条2項5号)である。しかし,贈与税が成立したとしても,その内容(課税対象)が確定しなければ納税義務が確定するとはいえないから,納税 義務の成立と確定を切り離して贈与税の課税対象を捉えることはできないというべきである。そして,上記1⑵ア(原判決引用部分。以下,単に「1⑵ア」といい,1⑵アについて同様に表記する。)によれば,相続税法2条の2第1項は,贈与により取得した財産の全部を課税財産として,これに対して贈与税を課す旨規定し,同法21条の2は,所定の期間内に贈与により 取得した財産の価額の合計額を課税価格とする旨規定しているから,贈与税 の課税対象が確定するのは,所定の期間内に贈与により取得した財産の価額の合計額が確定したときである。これに加えて,1⑵ア,の各点を併せ考慮すると,贈与税は,贈与により移転した財産の価額に相当する経済的価値を課税対象とするものであり,個々の贈与財産を課税対象とするものではないから,不動産所得を生ずべき業務との関連性を欠くものというべきであ る。」 2 控訴人の当審における補充主張に対する判断控訴人は,当審において,必要経費に該当するか否かは,個々の所得を生じさせた原因行為(本件では不動産賃貸行為)の性質に応じて個別具体的に検討されるべきであり,本件贈与税は,控訴人が贈与を受けた不動産の贈与による取得の 時に納税義務が発生し,その履行行為として納付したものであり,また,本件贈与税は,控訴人が不動産所得を得るために業務を行う上で,法律上,不可避的に必要となるものであるから,いずれにしても所得税 時に納税義務が発生し,その履行行為として納付したものであり,また,本件贈与税は,控訴人が不動産所得を得るために業務を行う上で,法律上,不可避的に必要となるものであるから,いずれにしても所得税法37条1項が規定する必要経費(個別対応の費用,一般対応の費用)に該当する旨主張する。 確かに,本件では,社会的,経済的には,控訴人は,伯父から本件贈与を受け たことから本件土地の貸付けによる収入を得られるようになった一方で,本件贈与を受けたことから本件贈与税の納付が必要になったのであり,本件贈与税は本件土地の貸付けによる不動産所得の必要経費として扱われるべきであると控訴人が主張することには無理からぬところがある。 しかし,不動産所得の計算上,必要経費として認められるか否かは,所得税法 37条1項の解釈適用という法的な問題であるから,本件贈与税が法的にどのような性格のものであるかが上記解釈適用の際に考慮されることは当然といえる。 そして,前記1の説示(補正した原判決引用部分)のとおり,贈与税は,相続税法上,贈与により移転した財産全部の価額に相当する経済的価値を課税対象とするものであって,個々の贈与財産の価額を課税対象とするものではないという法 的性格を有することから,特定の不動産の貸付けを前提にした不動産所得を生ず べき業務との関連性を欠くものというほかない。したがって,贈与税の上記法的性格に照らせば,本件贈与税も必要経費に該当するとはいえないから,控訴人の上記主張を採用できない。 第4 結論以上によれば,控訴人の請求は,理由がないから棄却すべきところ,これと同旨 の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第14民事部 裁判長裁判官 主文 理由 理由がないから棄却すべきところ,これと同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第14民事部 裁判長裁判官 本多久美子 裁判官 浅見宣義 裁判官 松本展幸
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