平成17(ワ)253 損害賠償等請求事件(通称 西日本旅客鉄道人格権侵害損害賠償)

裁判年月日・裁判所
平成20年2月28日 広島地方裁判所
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判決文本文56,467 文字)

- 1 -判決主文 被告らは,原告Bに対し,各自127万1760円及びこれに対する平成17年3月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告らは,原告ジェーアール西日本労働組合に対し,各自55万円及びこれに対する平成17年3月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告らは,原告ジェーアール西日本労働組合広島地方本部に対し,各自55万円及びこれに対する平成17年3月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告Aの請求及びその余の原告らのその余の請求を,いずれも棄却する。 訴訟費用は,原告Aに生じた費用を同原告の負担とし,原告Bに生じた費用を5分し,その4を同原告の負担とし,その余を被告らの連帯負担とし,原告ジェーアール西日本労働組合に生じた訴訟費用を10分し,その9を同原告の負担とし,その余を被告らの連帯負担とし,原告ジェーアール西日本労働組合広島地方本部に生じた費用を10分し,その9を同原告の負担とし,その余を被告らの連帯負担とし,被告らに生じた費用を10分し,その1を原告Aの負担とし,その2を原告Bの負担とし,その6をその余の原告らの連帯負担とし,その余を被告らの連帯負担とする。 この判決は,主文第1ないし3項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求 被告らは,原告Aに対し,連帯して225万2260円及びこれに対する平成17年3月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告らは,原告Bに対し,連帯して555万1760円及びこれに対する平成17年3月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 - 2 - 被告らは,原告ジェーアール西日本労働組合(以下「原告組合」という。)に対し,連帯して550万 円及びこれに対する平成17年3月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 - 2 - 被告らは,原告ジェーアール西日本労働組合(以下「原告組合」という。)に対し,連帯して550万円及びこれに対する平成17年3月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告らは,原告ジェーアール西日本労働組合広島地方本部(以下「原告地本」という。)に対し,連帯して550万円及びこれに対する平成17年3月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要原告A,原告組合及び原告地本は,被告西日本旅客鉄道株式会社(以下「被告会社」という。)の被用者である被告Cが原告Aに対し不当な日勤教育を受けさせ,その人格権及び団結権を侵害し,多大な精神的苦痛を与え,これにより,原告組合及び原告地本の団結権も侵害した,被告Cの同行為は不法行為に当たるとして,被告らに対し,不法行為(被告会社については使用者責任)に基づく損害賠償金及びこれに対する不法行為の後である訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた。 原告A,原告組合及び原告地本は,被告Cが原告Aから録音テープを強いて没収した,これは原告Aの録音テープの所有権を侵害するとともにその人格権及び団結権を侵害する不法行為に当たり,また,原告組合及び原告地本の団結権を侵害する不法行為に当たるとして,被告らに対し,不法行為(被告会社については使用者責任)に基づく損害賠償金及びこれに対する不法行為の後である訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた。 原告B,原告組合及び原告地本は,被告Cが原告Bに対し不当な線見教育,他職種の担務指定,見極めの不実施を行い,その人格権及び団結権を侵害 まで民法所定年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた。 原告B,原告組合及び原告地本は,被告Cが原告Bに対し不当な線見教育,他職種の担務指定,見極めの不実施を行い,その人格権及び団結権を侵害し,多大な精神的苦痛を与え,これにより,原告組合及び原告地本の団結権も侵害した,被告Cの同行為は不法行為に当たるとして,被告らに対し,不法行為(被告会社については使用者責任)に基づく損害賠償金及びこれに対する不法- 3 -行為の後である訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた。 原告A,原告組合及び原告地本は,被告Cが原告Aに対し不当な勤務評価(仕事給昇給Dランク適用,期末手当減額)を行い,原告Aに対し,財産的損害を与えるとともに,その人格権及び団結権を侵害し,多大な精神的苦痛を与え,これにより,原告組合及び原告地本の団結権も侵害した,被告Cの同行為は不法行為に当たるとして,被告らに対し,不法行為(被告会社については使用者責任)に基づく損害賠償金及びこれに対する不法行為の後である訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた。 原告B,原告組合及び原告地本は,被告Cが原告Bに対し不当な勤務評価(仕事給昇給Dランク適用,期末手当減額)を行い,原告Bに対し,財産的損害を与えるとともに,その人格権及び団結権を侵害し,多大な精神的苦痛を与え,これにより,原告組合及び原告地本の団結権も侵害した,被告Cの同行為は不法行為に当たるとして,被告らに対し,不法行為(被告会社については使用者責任)に基づく損害賠償金及びこれに対する不法行為の後である訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた。 原告組合及び原告地本は,被告Cが いては使用者責任)に基づく損害賠償金及びこれに対する不法行為の後である訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた。 原告組合及び原告地本は,被告Cが原告地本の組合員に対し組合脱退慫慂行為を行い,同原告らの団結権を侵害したとして,被告らに対し,不法行為(被告会社については使用者責任)に基づく損害賠償金及びこれに対する不法行為の後である訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた。 原告A及び原告Bは,被告Cの上記各行為のうち不当な勤務評価をした行為が裁量を逸脱したものであり,これは被告会社の労働契約上の付随義務違反としての債務不履行に当たるとして,被告会社に対し,上記の不当な勤務評価を- 4 -内容とする不法行為に基づく損害賠償請求と選択的に,債務不履行に基づく損害賠償金及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 争いのない事実(1) 当事者ア原告組合は,被告会社の運転士を中心に組織された労働組合である。 イ原告地本は,被告会社広島支社管内の原告組合の組合員によって組織された原告組合の下部組織で,広島支部と山口支部の2支部を有し,これらの支部の下に13分会が置かれている。 ウ原告Aは,昭和53年4月1日,旧日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)に採用され,昭和62年4月のいわゆる分割民営化により被告会社の社員となった者で,運転士として山陽本線,呉線,可部線の電車及び電気機関車の運転等の業務に従事している者である。 原告Aは,原告地本広島支部広島運輸分会広島運転所班(平成16年9月22日に原告地本広島支部広島運転所分会,広島車掌区分会,三次鉄道部分会を組織統合したもの。それ以前は 業務に従事している者である。 原告Aは,原告地本広島支部広島運輸分会広島運転所班(平成16年9月22日に原告地本広島支部広島運転所分会,広島車掌区分会,三次鉄道部分会を組織統合したもの。それ以前は,原告地本広島支部広島運転所分会)に所属する組合員で,平成14年7月当時は原告地本広島支部広島運転所分会副分会長であったが,同年9月20日に同分会執行委員長になり,現在の役職は,原告地本広島支部広島運輸分会執行委員長である。 エ原告Bは,昭和56年4月1日,国鉄に採用され,同じく昭和62年4月の分割民営化により被告会社の社員となった者で,運転士として山陽本線,呉線,可部線の電車の運転等の業務に従事している者である。 原告Bは,原告地本広島支部広島運輸分会広島運転所班に所属している組合員で,平成14年7月当時は原告地本書記長であったが,平成15年7月に原告地本執行副委員長に就任し,現在は,原告地本執行委員長である。 - 5 -オ被告会社は,国鉄が昭和62年4月1日に分割民営化されたことに伴い,西日本地域において旅客鉄道輸送を業とする株式会社として発足したものであり,広島市を含む10か所に支社を置く株式会社である。 被告会社広島支社には,広島運転所があり,同運転所は,主に車両基地・検修(検査及び修理のこと)基地としての広島運転所本所と,乗務員中心の運転系統の広島運転所分所に分かれている。 広島運転所長の下に副所長が,その下に検修助役と運転科長が置かれ,検修助役の下に係長,その下に車両管理係,運転科長の下に運転総括助役及び指導総括助役,その下に係長,その下に運転士が,それぞれ置かれ,このような配置による指揮命令に基づき広島運転所の運営,管理が行われている。 カ被告Cは,平成14年7月1日,広島運転所の所長職に就き,平成15年当時,広島運転所の 下に運転士が,それぞれ置かれ,このような配置による指揮命令に基づき広島運転所の運営,管理が行われている。 カ被告Cは,平成14年7月1日,広島運転所の所長職に就き,平成15年当時,広島運転所の指揮命令に当たっていたが,平成18年4月からは,本社運輸部設備課担当課長の業務に従事している者である。 (2) 乗務員復帰教育について被告会社は,広島運転所において,出向や組合専従によって一定期間乗務から離れていた運転士が復職する場合,同運転士に対し,①運転作業等の乗務に関する規定類を読んで確認する机上学習を行うこと,②その後,列車運行乗務に復帰し,しばらくの間,同乗する他の運転士により運転作業について助言等を受けること(これは「線見」と呼ばれていた。),③この「線見」を一定期間継続した後,同乗する指導係長などにより,単独での乗務に切り替えるか否かの判定を受けること(これは「見極め」と呼ばれていた。)を義務付け,これを履践させていた。 (3) 広島運転所における勤務成績の把握及び評価ア勤務成績の把握方法(ア)評価項目の開示- 6 -被告会社は,評価項目を基本項目(日々の業務執行状況を評価の対象として全ての社員に適用する基礎的な評価項目)と加点項目(期末手当において該当者に対してのみ加点要素として適用する評価項目)とに分け,各区所の業務実態等を勘案し作成された評価項目毎の着眼点を各区所の社員に開示していた。 (イ)勤務成績評価の個別開示被告会社は,個人面談を年2回行い,社員に対して,評価内容を開示していた。 イ勤務成績評価の流れ勤務成績評価の流れは次のとおりである。 3月末翌年度の評価項目別着眼点の作成4月個人面談(前年実績の振り返りを踏まえ,新年度の評価項目別着眼点を個々の社員の具体的目標として意識付けする。)調査期間 評価の流れは次のとおりである。 3月末翌年度の評価項目別着眼点の作成4月個人面談(前年実績の振り返りを踏まえ,新年度の評価項目別着眼点を個々の社員の具体的目標として意識付けする。)調査期間中職務遂行状況の把握及び指導など10月個人面談(上半期の実績の振り返り指導)11月末年末手当の通知調査期間中職務遂行状況の把握及び指導など4月個人面談(前年度下半期及び1年間の実績の振り返り指導)5月仕事給昇給及び夏季手当の通知(4) 期末手当減額及び増額の制度ア期末手当(夏季手当及び年末手当)の支払額は,就業規則の一部である賃金規程121条により,次の算式により算定して得た額とされていた。 支払額=基準額×(1-期間率)±成績給イ上記基準額については,労働協約39条に基づき,労使で協議し,年度- 7 -毎に「期末手当の基準額等に関する協定」が締結され,これによって決定されていた。 ウ賃金規程は,上記期末手当における成績給について,下記のとおり定めていた(賃金規程123条)。 (ア)上記成績給は,調査期間内における勤務成績により増額又は減額する金額とする。 (イ)成績給(増額)は,勤務成績が特に優秀な者については10万円,勤務成績が優秀な者については5万円,勤務成績が良好な者については2万円とする。 (ウ)成績給(減額)は,調査期間内における懲戒処分及び勤務成績に応じて,同期間内に出勤停止を受けた者については10万円,減給,戒告,訓告を受けた者及び勤務成績が良好でない者については5万円とする。 (5) 仕事給昇給制度被告会社の基本給は,「年齢給」と「仕事給」に区分して支給されていた(賃金規程9条)。このうち,仕事給の昇給は,毎年4月1日に実施される(同17条)が,その仕事給昇給額は,各資格級に応じてS,A,B, 告会社の基本給は,「年齢給」と「仕事給」に区分して支給されていた(賃金規程9条)。このうち,仕事給の昇給は,毎年4月1日に実施される(同17条)が,その仕事給昇給額は,各資格級に応じてS,A,B,C,Dの順に5つの評価区分があり,それぞれの評価区分に応じて,100円毎の差がある昇給額が決められていた(同18条)。そして,この昇給は,前年4月1日から当年3月31日までの調査期間内における勤務成績及び職務遂行能力に対する評価を基に判定され(同20条),その決定権限は所属する箇所の所属長とされ(同21条),本件の場合は,広島支社長であった。 (6) 原告A及び原告Bに対する行為被告Cは,被告会社の広島運転所長として職務遂行中に,原告A及び原告Bに対し,以下のような行為をした。 ア原告Aは,平成15年3月5日午後6時ころ,乗務中,中野東駅で列車が停止した際,唾を吐いた。原告Aは,これを理由として,上司の注意を- 8 -受け,顛末書及びレポート作成を命じられた。そして,被告Cは,同月10日の乗務を停止し,同日に日勤教育を受けることを命じた。 イ原告Aは,同月10日午前9時過ぎから,前記の唾を吐いた件で被告C,D運転科長(以下「D科長」という。),E指導総括助役及びF係長と面談する際,テープレコーダーをポケットに入れて録音していた。被告Cは,原告Aが録音をしていることに気付き,これをやめるよう言った。そのときの録音テープは,被告Cが管理するところとなった。原告Aは,同日午後,被告Cに対し,録音テープの返還を求めたが,被告Cはその返還に応じず,新品の録音テープとの交換を提案した。原告Aは,同月14日にも,録音テープの返還を求めたが,被告Cは,これに応じなかった。 ウ原告Bは,平成12年8月4日から組合活動に専従するため,いわゆる専従休職して 録音テープとの交換を提案した。原告Aは,同月14日にも,録音テープの返還を求めたが,被告Cは,これに応じなかった。 ウ原告Bは,平成12年8月4日から組合活動に専従するため,いわゆる専従休職していたが,平成15年9月1日から運転士として職場復帰することとなった。そこで,原告Bは,被告Cの判断に基づき,同日から10日程度,机上学習を受けた後,7科目の筆記試験及び異常時応急処置等の実地試験を受け,筆記試験2科目で不合格であったので再試験を受け,最終合格し,同月15日から乗務復帰し,「線見」担当運転士添乗のもと,顧客を乗せて列車を運転する業務に従事していた。 被告Cは,原告Bに対し,同年11月6日,同月20日,同年12月10日の3度にわたって,「見極め」試験のための運転業務に従事させ,1度目は信号機の喚呼失念,2度目は速度超過,3度目は信号機名の誤喚呼を理由に,いずれの「見極め」試験も不合格処分とした。その上で,被告Cは,原告Bに対し,同月10日の「見極め」試験終了後の面談において,運転業務に従事させないこと,翌日から車両管理係として検修業務に従事することを命じた。 エ被告Cは,平成16年の仕事給昇給評価(調査期間平成15年4月1日から平成16年3月31日)及び平成16年夏季期末手当評価(調査期間- 9 -平成15年10月1日から平成16年3月31日)(以下,これらを総称して「平成16年本件両評価」という。)において,原告Aについて「勤務成績が良好でない者」との人事考課を行い,その考課結果を昇給評価の最終的評定権限者である被告会社広島支社長(以下「広島支社長」という。)に具申した。広島支社長は,原告Aの平成16年の基本給の昇給評価を「D評価」と決定し,また,夏季手当を5万円減額することに決定し,平成16年5月31日,原告Aに対し,新 以下「広島支社長」という。)に具申した。広島支社長は,原告Aの平成16年の基本給の昇給評価を「D評価」と決定し,また,夏季手当を5万円減額することに決定し,平成16年5月31日,原告Aに対し,新年度の昇給通知書を交付してその旨通告し,その通告どおりに賃金を支給した。 オ被告Cは,平成16年本件両評価において,原告Bについても「勤務成績が良好でない者」との人事考課を行い,同様に広島支社長に具申した。 広島支社長は,原告Bの平成16年の基本給の昇給評価を「D評価」と決定し,また,夏季手当を5万円減額することに決定し,同月27日,原告Bに対し,同様に通告し,その通告どおりに賃金を支給した。 (7) 原告組合からの脱退者アGは,原告組合を脱退した。 なお,Gは,平成14年7月9日,矢賀駅で2両編成の車両の1両目のドアのみ開けるべきところ,誤って2両目のドアも開けてしまい,慌てて2両目のドアを閉めたところ,乗客の傘がドアに挟まってしまうという事故を起こした。そこで,被告Cは,同日,Gと面談した。また,被告Cは,業務終了後に,F係長,H指導助役(以下「H助役」という。),D科長と共に,Gと飲食したことがある。 イIは,原告組合を脱退した。 Iは,平成14年11月16日,車両の構内入換作業中,誤って所定の停止位置を2,3メートル過ぎて停止するという事故を起こした。そこで,被告Cは,同月18日にIと面談した。また,被告Cは,同日の勤務終了後,Iと飲食を共にしたことがある。 - 10 -ウJ,K,L及びMは,原告組合を脱退した。 エNは,平成15年2月14日,原告組合を脱退した。 (8) 本件訴訟の提起原告らは,広島地方裁判所に対し,平成17年2月28日,本件訴訟を提起し,その訴状は,同年3月18日,被告らに送達された。 争点 (1) 原告 14日,原告組合を脱退した。 (8) 本件訴訟の提起原告らは,広島地方裁判所に対し,平成17年2月28日,本件訴訟を提起し,その訴状は,同年3月18日,被告らに送達された。 争点 (1) 原告Aに対する日勤教育に関する不法行為の成否(2) 原告Aに対するテープの取上げ等に関する不法行為の成否(3) 原告Bに対する長期間の線見教育,他種職の担務指定,見極めの不実施に関する不法行為の成否(4) 原告Aに対する期末手当減額,仕事給昇級D評価に関する不法行為又は債務不履行の成否(5) 原告Bに対する期末手当減額,仕事給昇級D評価に関する不法行為又は債務不履行の成否(6) 原告組合及び原告地本に対する組合脱退慫慂行為を内容とする不法行為の成否(7) 被告会社の責任の存否(8) 原告らの損害額 争点(1)(原告Aに対する日勤教育に関する不法行為の成否)に関する当事者の主張(1) 原告A,原告組合及び原告地本の主張ア事実経過原告Aは,前記1(6)アのとおり,乗務中に列車とホームのすき間に唾を吐いた。原告Aは,当時,6日連続乗務のうちの5日目だったこともあって体調を崩しており,また,花粉症に罹患していた。さらに,当時,既にハンカチも使い尽くした状況であった。 - 11 -原告Aは,上記行為を目撃したF係長から呼び出され,同人,H助役及びE指導総括助役による面談を受け,乗務を終えた平成15年3月6日午前6時55分から顛末書を作成するよう指示され,これを作成した後,レポートの作成を指示され,1枚目までは作成したが,体調が優れなかったため,その旨申告し許可を得て退社した。原告Aは,上記面談の際に反省の弁を述べており,また,作成した顛末書及びレポートにおいても,反省している旨を記載した。 被告Cは,原告Aに対し,同月10日,上記の唾を その旨申告し許可を得て退社した。原告Aは,上記面談の際に反省の弁を述べており,また,作成した顛末書及びレポートにおいても,反省している旨を記載した。 被告Cは,原告Aに対し,同月10日,上記の唾を吐いたことを理由に,乗務を停止すること及び日勤教育を受けることを命じた。その結果,原告Aは,同日,所長面談,レポート作成及び筆記テストを内容とする日勤教育を受けることを強いられた。 イ被告Cの上記アの行為は,次の点から不法行為というべきである。 (ア)日勤教育の指定自体が違法であることそもそも,日勤教育は,勤務態様としての位置付けやそれを命令する権限の所在,目的,対象,内容,期間,手続等が不明確であり,このように何らの根拠もない日勤教育を命令する行為は,実質的には一種の懲戒処分として利用されているにすぎず,それ自体違法である。したがって,被告Cの原告Aに対する日勤教育の指定は,不法行為に当たる。 (イ)権限濫用であること日勤教育は,運転士の責めに帰すべき事由によって列車の安全・確実な運行に支障が生じ,又は,支障が生じかねない事態が発生し,当該運転士が再度同様の事態を生じさせるおそれのある場合に命じられるものであるが,唾を吐く行為は専ら社員としてのマナー違反の問題であって,旅客輸送の安全とは関係ない事項である。また,原告Aは,連日の勤務の疲れから体調が悪く,花粉症による鼻水やくしゃみの症状が悪化していたため,唾を吐き出してしまったのであるが,唾を吐くことは不可避- 12 -な生理現象であるところ,体調が悪ければなおさらであり,原告Aに汲むべき事情もある。さらに,原告Aは,唾を吐いた行為の直後に上司の面談を受けて反省の弁を述べたほか,上記行為について反省している旨の顛末書及びレポート1枚を提出したのである。このような経緯及び事後の事情 事情もある。さらに,原告Aは,唾を吐いた行為の直後に上司の面談を受けて反省の弁を述べたほか,上記行為について反省している旨の顛末書及びレポート1枚を提出したのである。このような経緯及び事後の事情に照らせば,再発防止の目的は十分に達成されており,これ以上再教育をする必要性は認められなかった。これらの点からすれば,原告Aに対し上記日勤教育を命じることは権限濫用というべきものであった。 ところが,被告Cは,原告Aに質問するなどしてこれらの経緯や事後の事情を十分に確認することをせず,期間を定めることもしないで,上記日勤教育を命じたのであり,これが服務命令権限の濫用であることは明らかである。そして,これにより原告Aは強い不安を覚え,人格権侵害による多大な精神的苦痛を受けたのであるから,被告Cの原告Aに対する日勤教育の指定は,原告Aに対する不法行為に当たる。 (ウ)不当労働行為であること仮に日勤教育の指定が被告Cの権限内の行為であったとしても,被告会社は,原告組合及び原告地本の組合活動を嫌悪し,被告Cを筆頭に原告組合員に対する脱退工作や原告組合員であることを理由とする差別行為など数々の不当労働行為を行ってきたことからすれば,当該被告Cの原告Aに対する日勤教育の指定は,原告Aが原告地本の組合役員であるために原告組合及び原告地本の団結権侵害を目的としてなされた差別的取扱いであることは明らかであるから,労働組合法7条1号で禁止されている不当労働行為に当たり,原告Aに対してはもちろん,原告組合及び原告地本の団結権も侵害したものとして,いずれに対しても不法行為を構成する。 (2) 被告らの主張- 13 -被告Cが原告Aに日勤教育を命じたことは認める。しかし,次に述べるように,日勤教育を命じたことは何ら不法行為に当たらない。 ア日勤教育は,懲戒を 為を構成する。 (2) 被告らの主張- 13 -被告Cが原告Aに日勤教育を命じたことは認める。しかし,次に述べるように,日勤教育を命じたことは何ら不法行為に当たらない。 ア日勤教育は,懲戒を目的とするものではなく,事故等の再発防止の観点から,現場長(本件では広島運転所長である被告C)が必要と認めた場合に,勤務を「日勤」に変更の上,再乗務に向けて必要な教育を行うものであり,就業規則(54条別表第2)にも定められているものである。また,就業規則134条は,社員は会社の行う教育訓練を受けなければならないとしているのみであり,日勤教育を命じる基準やその手続については特に明文の規則は設けていないが,これは,事故等の内容や本人の過去の事故歴,教育・指導に対する理解度等は様々であるから,本人の日常の勤務状況を最も把握している現場長が個々具体的に教育内容等を決定し実施することが効果的であるとの考え方に基づくものである。日勤教育の内容をみても,現場長との面談,課題レポートの作成,小テスト及び「接客サービスマニュアル」の読了というものであり,懲戒的要素はない。 このように,日勤教育はそれ自体違法なものではないから,これを命じることも何ら不法行為に当たらない。 イ原告Aは,列車とホームのすき間に唾を吐き出したのではなく,ホーム上に吐き出したのである。また,唾が出ること自体は不可避な生理現象であるとはいえても,ティッシュに収めるなどの対応をすべきであり,ホーム上に唾を吐き出す行為は,およそ乗務員としてしてはならない行為である。このような職場規律を乱す行為は,規範意識を希薄にさせ,「規定の遵守」すなわち「安全の基礎」が崩れる原因となるものである。そこで,被告Cは,原告Aに対し,事実確認を行った上で,同人が行った上記行為は職場規律違反若しくはその疑いが 規範意識を希薄にさせ,「規定の遵守」すなわち「安全の基礎」が崩れる原因となるものである。そこで,被告Cは,原告Aに対し,事実確認を行った上で,同人が行った上記行為は職場規律違反若しくはその疑いがあると判断して,現場長として,安全の確保という観点から,日勤教育を受けることを命じたのである。このように,被告Cが原告Aに日勤教育を命じた行為は,権限の濫用とはいえず,- 14 -また,組合の団結権の侵害を目的とした差別的取扱いともいえないから,不法行為には当たらない。 争点(2)(原告Aに対するテープの取上げ等に関する不法行為の成否)に関する当事者の主張(1) 原告A,原告組合及び原告地本の主張ア事実経過(ア)原告Aは,前記1(6)イのとおり,平成15年3月10日午前9時過ぎころから,広島運転所内の会議室において,被告Cら4名による面談を受けたが,被告Cらから暴言や不当労働行為発言がなされることを危惧し,面談の状況を録音して自分の身と組合の団結権を守ろうと考え,テープレコーダーをポケットに入れて,面談に臨んだ。 (イ)上記面談の最中,原告Aのネクタイに取り付けられた録音マイクを見つけた被告Cは,原告Aからテープレコーダーを取り上げ,これから録音テープを取り出して自ら所持,保管した。 (ウ)原告Aは,同日午後5時30分ころ,同会議室で再び面談を受けた際,被告Cに対し,録音テープを返すよう求めた。しかし,被告Cは,これを拒絶し,録音テープの代わりに新品のテープを受け取るよう要求した。 (エ)原告Aは,同月14日,被告Cに対し,録音テープの返還を申し入れた。しかし,被告Cは,再度これを拒絶し,拒絶する理由として,テープは会社のものであり,処分したなどと述べた。 イ違法な所有権侵害であること被告Cが原告Aの録音テープを没収し,ま の返還を申し入れた。しかし,被告Cは,再度これを拒絶し,拒絶する理由として,テープは会社のものであり,処分したなどと述べた。 イ違法な所有権侵害であること被告Cが原告Aの録音テープを没収し,また,録音テープを処分し,その返還を拒否する行為は,違法な所有権侵害であり,原告Aに対する不法行為に当たる。 ウ不当労働行為であること従来より,上司との面談と称する場において,管理職が,原告組合の組- 15 -合員に対し,暴言や面談の趣旨とは無関係な組合活動への誹謗・中傷・非難,組合からの脱退慫慂等の発言を行い,これら発言が問題とされる度に,被告会社は,その事実を否定し隠蔽しようとしてきた。このような経過から,原告Aは,自己及び組合の団結権を守るため,上記録音をしたり,録音テープの返還を求めたのであり,これらの行為は組合嫌悪に基づく不当労働行為に対する自己及び組合の団結権防衛のための正当な行為である。 ところが,被告Cは,原告Aが原告地本の組合員であるが故に,録音を妨害し,録音テープを没収し,また,録音テープの返還を拒絶して,日勤教育の内容の証拠を隠滅しようとしたのである。このような被告Cの行為は,不当労働行為に当たり,原告Aの人格権や団結権を侵害する不法行為であるのはもちろん,原告組合及び原告地本の団結権をも侵害するものであるから,同原告らに対する不法行為でもある。 エ被告らの主張に対する反論被告らは,被告Cは原告Aから任意の交付を受けて録音テープを預かったのであるから,テープを没収する行為は違法ではないと主張し,また,原告Aは新品のテープを受け取っており,その時点で被告Cと原告Aとの間にはテープを返還しない旨の合意が成立したのであるから,その後にテープの返還を拒否する行為も違法ではないと主張する。 しかし,原告Aは任意にテープを交付 受け取っており,その時点で被告Cと原告Aとの間にはテープを返還しない旨の合意が成立したのであるから,その後にテープの返還を拒否する行為も違法ではないと主張する。 しかし,原告Aは任意にテープを交付したのではなく,職場の上下関係から交付を強制されたにすぎない。また,新品のテープを受け取ったことに関しても,職場における上下関係から,上司の意に逆らって返還を要求し続けることが困難であったために引き下がったにすぎず,これをもって返還しない旨の合意が成立したとは解せられない。 (2) 被告らの主張被告Cは,原告Aから録音テープを取り上げたのではなく,原告Aから同意を得てこれを預かったのである。したがって,この点に関する原告A,原- 16 -告組合及び原告地本の主張には,前提事実に誤りがある。 また,その後,被告Cは,新品のテープとの交換を提案したところ,原告Aはこれに同意し,何も言わず新品のテープを受け取ったのであり,この時点で,原告Aが所持していたテープは返還しない旨の合意が原告A・被告C間で成立したというべきである。したがって,後日,原告Aがテープの返還を求めてきたのに対し,被告Cがこれに応じなかったことは不法行為に当たらない。 争点(3)(原告Bに対する長期間の線見教育,他種職の担務指定,見極めの不実施に関する不法行為の成否)に関する当事者の主張(1) 原告B,原告組合及び原告地本の主張ア乗務復帰訓練に関する一般的運用広島運転所においては,前記1(2)のとおり,一定期間乗務から離れていた運転士が復職する場合,机上学習が2,3日間にわたって行われ,さらに,列車運行乗務復帰後しばらくの間,「線見」が行われてきた。この「線見」により乗務復帰するに際しては,最初の一行路を他の運転士が運行するのを見てから自身で運行する場合と,最初から自 て行われ,さらに,列車運行乗務復帰後しばらくの間,「線見」が行われてきた。この「線見」により乗務復帰するに際しては,最初の一行路を他の運転士が運行するのを見てから自身で運行する場合と,最初から自身で運行する場合とがあり,そのいずれとするかは乗務復帰する運転士の意向によって決められるという運用がなされていた。この「線見」を一定期間継続した後,指導係長が1名同乗して,単独での乗務に切り替えるか否かを決める「見極め」という過程を経て単独での乗務とする運用がなされ,乗務復帰後,概ね1か月ないし1か月半程度で単独乗務となるのが通例であった。 イ職場復帰後の経過(ア)原告Bは,平成5年から広島運転所にて運転士として稼働していたが,平成12年の原告地本書記長就任に伴い専従休職した後,平成15年7月の原告地本副委員長就任に伴い,同年9月1日から,広島運転所運転分所へ運転士として職場復帰することになった。そこで,原告Bに対し,- 17 -「線見」及び「見極め」が行われることになった。 (イ)原告Bは,同年9月1日から10日間の机上学習をした後,同月15日から乗務復帰し,「線見」担当とされた同僚運転士の添乗のもと,顧客を乗せて列車を運転する業務に就き,以後,筆記試験の日を除き乗務を続けた。 (ウ)被告Cは,原告Bに対し,前記1(6)ウのとおり3度にわたって,「見極め」試験のための運転業務に従事させた。 被告Cは,上記各見極め試験において,1度目は,向洋第ゼロ号閉そく信号機の喚呼失念(向洋停留所に直近の閉そく信号機に「閉そく区間に進入してもよい。」との信号が現示されていることを確認する喚呼を失念したこと)を理由に,2度目は,天応駅を出た後,半径360メートルのカーブの制限速度を4キロメートルオーバーしたことを理由に,3度目は,信号機を確認する 信号が現示されていることを確認する喚呼を失念したこと)を理由に,2度目は,天応駅を出た後,半径360メートルのカーブの制限速度を4キロメートルオーバーしたことを理由に,3度目は,信号機を確認する喚呼を行った際,「4番第2場内進行」と言うべきところを「4番第2出発進行」と言い間違えたことを理由に,いずれも不合格処分とした。 (エ)被告Cは,原告Bに対し,前記1(6)ウのとおり,平成15年12月10日の面談において,今後乗務させないことを通告し,翌日から車両管理係として検修業務に従事することを命じた。そこで,原告Bは,同月11日から広島運転所矢賀検修分所へ出勤したものの,本来の検修業務ではなく,清掃業務などの雑務を命ぜられた。 (オ)被告Cは,原告Bに対し,平成16年1月5日,乗務復帰を命じ,同月6日,列車運行業務に従事させ,4度目の見極めを同月30日及び31日の2日間にわたって行う旨を通告し,行路及びコースを指定したものの,何の説明もしないまま,これを実行しなかった。 同年5月24日及び25日に4度目の「見極め」がようやく実施され,原告Bは,その翌日から単独で乗務するよう命じられた。 - 18 -ウ長期にわたる机上教育運転士が乗務復帰する場合の机上学習は2,3日間行われるのが通常であるが,被告Cは,原告Bに対し,何ら合理的理由がないのに,10日間もの机上学習を課した。 この点,被告らは,原告Bは運転業務から離れていた期間が長く,しかも103系ワンマン列車を運転することになったため,長期の教育期間を要したことには合理的理由があると主張する。しかし,原告Bに,より長期の教育期間が必要であった事情は認められないし,103系ワンマン列車の運転教育に要した時間も半日程度である。したがって,この点に関する被告の主張は理由がない。 エ合理 。しかし,原告Bに,より長期の教育期間が必要であった事情は認められないし,103系ワンマン列車の運転教育に要した時間も半日程度である。したがって,この点に関する被告の主張は理由がない。 エ合理的理由がないのに不合格処分としたこと(ア)運転士は,ダイヤどおりの運行を要求される中で基本動作を何百回と繰り返すのであり,その間に1つのミスもしないことは不可能に近い。 したがって,原告Bが,前記信号喚呼失念,曲線速度超過,信号喚呼誤りをしたとしても,この程度のミスを理由に「見極め」試験を不合格とするのは不合理である。 (イ)1度目の「見極め」試験不合格の理由とされた向洋第ゼロ号閉そく信号機の喚呼失念については,被告らは信号喚呼の失念は即審査中止であると主張しながら,被告Cは「見極め」試験終了後に原告Bにその事象を告げたことからすれば,真に喚呼失念があったのに審査中止にしなかったとは考え難く,被告Cは原告Bを不合格とするために原告Bの記憶が薄いであろう最初の駅の喚呼失念を理由とし,そもそも上記の信号喚呼の失念はなかったことが強く推認される。したがって,これを理由に「見極め」試験を不合格とするのは不合理である。 (ウ)2度目の「見極め」試験不合格の理由とされた曲線速度違反についても,そもそもこのような速度違反があれば審査員が直ちにブレーキを用- 19 -いて制限速度内に落とした上,審査を中止すべきであるのに,これをしていないことからすれば,そのような速度違反はなかったことが強く推認される。したがって,速度違反の事実の有無を十分確認することなく,それを理由に「見極め」試験を不合格とするのも不合理である。 被告らは,原告Bが制限速度超過をしたのは呉ポートピア駅と小屋浦駅間に存する制限速度時速70キロメートルのカーブ(呉ポートピア駅の下り方の それを理由に「見極め」試験を不合格とするのも不合理である。 被告らは,原告Bが制限速度超過をしたのは呉ポートピア駅と小屋浦駅間に存する制限速度時速70キロメートルのカーブ(呉ポートピア駅の下り方のカーブ)であると主張するが,同カーブでの運転は,通過駅である呉ポートピア駅にアクセルオフで入って通常時速70キロメートル以下まで減速しているから,それ以上の速度で同カーブに進入することはあり得ない。原告Bは2度目の「見極め」後の面談において,「75キロまで速度を出せると思っていた。」と弁明しているが,それは天応駅先のカーブを時速約74キロメートルで通過したことを制限速度超過と指摘されたと認識したからであり,実際には,天応駅先のカーブの制限速度は時速85キロメートルであるから,制限速度超過はなかったのである。当時の顛末書には原告Bが天応駅先のカーブを速度超過で通過したことが記載されているはずであり,このことは,原告Bがこのような勘違いをしていたことの証左である。 オ合理的理由がないのに検修業務への担務替えを命じたこと上記のとおり,原告Bは「見極め」試験について合理的理由なくして不合格にさせられたのであるから,検修業務への担務替えを命じられる理由もなかった。ところが,被告Cは,原告Bに対し,平成15年12月10日の3度目の「見極め」終了後,検修業務への従事を命じたのである。 カ4度目の見極めの不実施及びその後の長期にわたる見極めの不実施被告Cは,原告Bに対し,4度目の「見極め」を平成16年1月30日及び31日に行う旨通告したにもかかわらず,何ら合理的理由がないのにこれを延期し,その後同年5月24日まで実施しなかった。 - 20 -キ権限の濫用であること上記ウないしカからすれば,被告Cが乗務復帰訓練に際し原告Bに対して行った上記一連の行為 理由がないのにこれを延期し,その後同年5月24日まで実施しなかった。 - 20 -キ権限の濫用であること上記ウないしカからすれば,被告Cが乗務復帰訓練に際し原告Bに対して行った上記一連の行為は,乗務復帰訓練に関する決定権限を濫用したものであることは明らかであり,これにより,原告Bは,9か月もの長期間にわたって不当に,本務運転士職への復帰を認められなかったばかりか,他種職の担務指定を受けて運転士としての就労からも外され,人格権侵害による多大な精神的苦痛を受けたのであるから,被告Cの上記一連の行為は,原告Bに対する不法行為に当たる。 ク上記ウないしカが不当労働行為に当たること被告Cの上記一連の行為は,当時の原告地本の書記長であった原告Bに対する嫌がらせ行為として正当な理由なくなされた差別的取扱いであるから,労働組合法7条1号で禁止されている不当労働行為に当たり,したがって,原告Bに対してはもちろん,原告組合及び原告地本の団結権も侵害したものとして,いずれに対しても不法行為となる。 (2) 被告らの主張ア現場長に権限があること乗務から離れていた者が運転士に復職する場合において,机上学習,線見,見極めという段階を踏むことは認める。しかし,復職に伴う教育の期間,内容などについては,当該社員の経験,知悉度,習熟度及び乗務から離れていた期間などを勘案して,現場長が決定する。 イ権限濫用又は不当労働行為に当たらないこと(ア)被告Cが,10日間の机上教育を命じたこと,3度の「見極め」試験のいずれも不合格であったこと及びそのため担当替えを命じたこと,4度目の「見極め」の期日指定を4か月以上しなかったことは認める。 (イ)原告Bは運転業務と全く関係のない組合専従に3年間ほど従事していたものであり,この期間や従事していた業務を考慮すれば,長 と,4度目の「見極め」の期日指定を4か月以上しなかったことは認める。 (イ)原告Bは運転業務と全く関係のない組合専従に3年間ほど従事していたものであり,この期間や従事していた業務を考慮すれば,長期間の机- 21 -上教育,筆記試験及び異常時応急処置等の実地試験が必要であった。また,原告Bが復帰した時点では,同人がそれまで運転していなかった105系(原告は103系と主張)ワンマン列車が運転されており,その点に関する教育も実施する必要が生じた。したがって,原告Bに対する長期間の机上教育には正当な理由が存するのであり,被告Cがこれを命じたことは何ら権限濫用とはいえず,また,労働組合法7条1号で禁止されている不当労働行為にも当たらない。 (ウ)運転士国家免許を有する運転士の乗務復帰訓練については,運転士国家免許取得のための新規養成の際の基準等を勘案しつつ,乗務員の乗務していなかった期間の長さや乗務経験の長さ等を踏まえ,個々の乗務員の特性に応じた教育を実施した上で,その知識・技能等の確認を行うことにより,一人乗務が可能かどうかを最終的には現場長が判断する。原告Bについては,乗務から離れていた期間が3年間と極めて長かったことから,新任運転士の審査を基準として,筆記試験等の外,「見極め」試験のための運転業務を行ったのである。 原告Bの各「見極め」試験におけるミスは,いずれも仮に運転士見習が運転士資格取得のために受験する乗務審査において行うと即時審査中止となるほどの重大なミスであるから,被告Cのした不合格処分は正当であり,何ら権限濫用とはいえず,また,労働組合法7条1号で禁止されている不当労働行為にも当たらない。 なお,原告Bは,2度目の「見極め」試験において,呉ポートピア駅と小屋浦駅間に存するカーブ(呉ポートピア駅の下り方のカーブ)に進入 ,労働組合法7条1号で禁止されている不当労働行為にも当たらない。 なお,原告Bは,2度目の「見極め」試験において,呉ポートピア駅と小屋浦駅間に存するカーブ(呉ポートピア駅の下り方のカーブ)に進入する際,制限速度時速70キロメートルを遵守するためにブレーキを使用する必要があったにもかかわらず,これを怠ったのである。 この点について,原告Bは否認するが,原告Bは2度目の「見極め」後の面談で,「75キロまで出せると思っていた。」と弁明している。 - 22 -原告Bはかかる弁明について,天応駅先のカーブを時速約74キロメートルで通過したことを制限速度超過と指摘されたと誤解したからであると主張するが,原告Bが顛末書において,「R360のカーブ(呉ポートピア駅)」と記載したことからすれば,このような誤解がなかったことは明らかである。 (エ)被告Cは,原告Bが3度の「見極め」試験に不合格であったことから,原告Bには運転士としての適格が欠けていると判断して検修業務へ担当替えをしたのである。新人運転士養成の際には,2度目の試験に不合格であれば運転士として就労させることはできないという厳しい取扱いがされているのであり,この点からすれば,上記担当替えは正当な行為であり,何ら権限濫用とはいえず,また,労働組合法7条1号で禁止されている不当労働行為にも当たらない。 (オ)被告Cが,原告Bの4度目の「見極め」の実施期日を指定しなかったのは,原告Bが,平成16年1月の乗務訓練再開後も,後記7㨯イないしエのとおり,出区時に引上げ方向を勘違いし反対側の運転室で待機したり,喚呼失念や喚呼誤りを10回以上行ったり,入線時に速度超過するなど,不適切な運転行為を繰り返したので,同月末に見極めを実施するのは相当でないと判断したためであり,何ら権限濫用とはいえず,また,労 ,喚呼失念や喚呼誤りを10回以上行ったり,入線時に速度超過するなど,不適切な運転行為を繰り返したので,同月末に見極めを実施するのは相当でないと判断したためであり,何ら権限濫用とはいえず,また,労働組合法7条1号で禁止されている不当労働行為にも当たらない。 (カ)原告Bの4度目の見極め実施日が平成16年5月末まで延期されたのは,被告Cが,原告Bが上記のとおり不適切な運転行為を繰り返していたのを受けて,原告Bについて職種変更を検討し,その旨を広島支社に上申しており,その回答を待っていたためであるから,これも権限濫用とはいえず,また,不当労働行為には当たらない。 争点(4)(原告Aに対する期末手当減額,仕事給昇級D評価に関する不法行為又は債務不履行の成否)に関する当事者の主張- 23 -(1) 原告A,原告組合及び原告地本の主張ア不法行為被告Cは,原告Aの勤務成績が他の従業員と比較して劣っていたわけではないにもかかわらず,前記1(6)エのとおり,平成16年本件両評価において,原告Aに対して「勤務成績が良好でない者」との人事考課を行い,その考課結果を昇給評価の最終的評定権限者である広島支社長に具申した。 このため,広島支社長は,基本給の昇給評価について,元来C評価が基本であったにもかかわらず,前記1(6)エのとおり,平成16年度の原告Aのそれを「D評価」と決定し,また夏季手当を5万円減額する旨決定し,平成16年5月31日,原告Aに対し,新年度の昇給通知書を交付してその旨通告し,以後,同通告どおりに賃金を支給した。 被告Cの上記人事考課及び具申行為は,人事考課権限を濫用したものであり,これにより原告Aは,賃金減額という財産的損害及び人格権侵害という精神的苦痛を被ったのであるから,これは,原告Aに対する不法行為に当たる。 また,被告C 申行為は,人事考課権限を濫用したものであり,これにより原告Aは,賃金減額という財産的損害及び人格権侵害という精神的苦痛を被ったのであるから,これは,原告Aに対する不法行為に当たる。 また,被告Cの上記人事考課及び具申行為は,原告Aが原告地本の組合員であるが故にその団結権侵害を目的としてなされた差別的取扱いであるから,労働組合法7条1号で禁止されている不当労働行為に当たり,したがって,原告Aに対してはもちろん,原告組合及び原告地本の団結権も侵害したものとして,いずれに対しても不法行為に当たる。 イ労働契約上の付随義務違反上記アのとおり,被告会社は,業務組織上の必要性,原告Aの能力・適性及び労働者の受ける不利益等の諸要素を総合的に考慮しても,本件の如き不当な評価をなす理由はないにもかかわらず,裁量を逸脱して不当な評価行為に及んだものであり,これは,労働契約上の付随義務である労働者の職業的能力を適正・公正に評価すべき義務を怠ったといえる。 - 24 -したがって,被告会社は,原告Aに対し,上記債務不履行による損害賠償責任を負う。 ウ被告らの主張に対する反論被告らは,原告Aが,線路横断時の基本動作を怠ったこと,出区点検(乗務前の車両の検査)の際,エアの引き通し管のコックの状態確認を怠ったこと,運転中速度違反を繰り返したことを理由に,原告Aに対し上記の人事考課を行ったと主張するが,これらについてはいずれも否認する。 原告Aは,線路横断時の左右確認,指差喚呼は自らの安全のために必ず実行していたし,被告が指摘する平成15年12月13日の指差喚呼は早朝5時のことであり,大声での喚呼を要求すること自体が誤りである。また,エアの引き通し管のチェックは行っていたし,床下コックの確認については当時の規則では行わないことになっていたため,行っていなかっ 朝5時のことであり,大声での喚呼を要求すること自体が誤りである。また,エアの引き通し管のチェックは行っていたし,床下コックの確認については当時の規則では行わないことになっていたため,行っていなかったにすぎない。制限速度違反も行っていない。 (2) 被告らの主張被告Cが原告Aに対して行った人事考課は,以下のアないしウを理由としたものであり,団結権を侵害する目的で行ったものではないし,仕事給昇給Dランク適用及び期末手当減額の対象としたことも相当かつ妥当であるから,権利の濫用とはいえず,また,不当労働行為にも当たらない。 ア線路の横断時の基本動作及び出区点検時の確認懈怠広島運転所においては,同運転所に属する社員に対し,線路横断時において一旦停止した上で「右よし」「左よし」の指差喚呼をすることを義務付けていた。しかし,原告Aは,平成15年12月13日,広島運転所構内の線路を横断する際,一旦停止することもなく,また,指差喚呼もせず,線路を横断した。 また,原告Aは,同日,出区点検の際,電車の床下の点検をするときにはエアの引き通し管のコックの状態確認をしなければならないところ,こ- 25 -の確認を怠った。 イ列車運転時の速度超過原告Aは,平成15年8月16日,乗務中,糸崎駅~尾道駅間,尾道駅~東尾道駅間,大門駅~笠岡駅間でそれぞれ速度超過運転をし,同年12月29日にも,安登駅~安浦駅間,安浦駅~風早駅間でそれぞれ速度超過運転をした。 ウ基本動作失念広島運転所においては,各駅毎に停車か通過を確認するため,駅の手前に「通停確認標」なる標識が設置されており,この「通停確認標」を通過する際は,時刻表を指差しながら,その駅が停車か通過かを確認し,「○○駅停車」あるいは「○○駅通過」と声を出すことが基本動作として決められているのであるが,原告 されており,この「通停確認標」を通過する際は,時刻表を指差しながら,その駅が停車か通過かを確認し,「○○駅停車」あるいは「○○駅通過」と声を出すことが基本動作として決められているのであるが,原告Aは,同年8月16日,上記時刻表の指差し確認を怠った。 争点(5)(原告Bに対する期末手当減額,仕事給昇級D評価に関する不法行為又は債務不履行の成否)に関する当事者の主張(1)原告B,原告組合及び原告地本の主張ア不法行為被告Cは,原告Bの勤務成績が他の従業員と比較して劣っていたわけではないにもかかわらず,前記1(6)オのとおり,平成16年本件両評価において,原告Bに対して「勤務成績が良好でない者」との人事考課を行い,その考課結果を昇給評価の最終的評定権限者である広島支社長に具申した。 このため,広島支社長は,基本給の昇給評価について,元来C評価が基本であったにもかかわらず,前記1(6)オのとおり,平成16年度の原告Bのそれを「D評価」と決定し,夏季手当を5万円減額する旨決定し,平成16年5月27日,原告Bに対し,新年度の昇給通知書を交付してその旨通告し,以後,同通告どおりに賃金を支給した。 - 26 -被告Cの上記人事考課及び具申行為は,人事考課権限の濫用であり,これにより原告Bは,賃金減額という財産的損害及び人格権侵害という精神的損害を被ったのであるから,原告Bに対する不法行為に当たる。 また,被告Cの上記人事考課及び具申行為は,原告Bが原告地本の組合員であるが故にその団結権侵害を目的としてなされた差別的取扱いであるから,労働組合法7条1号で禁止されている不当労働行為に当たり,原告Bに対してはもちろん,原告組合及び原告地本の団結権も侵害したものとして,いずれに対しても不法行為となる。 イ労働契約上の付随義務違反上記アのとおり, 号で禁止されている不当労働行為に当たり,原告Bに対してはもちろん,原告組合及び原告地本の団結権も侵害したものとして,いずれに対しても不法行為となる。 イ労働契約上の付随義務違反上記アのとおり,被告会社は,業務組織上の必要性,原告Bの能力・適性及び労働者の受ける不利益等の諸要素を総合的に考慮しても,本件の如き不当な評価をなす理由はないにもかかわらず,裁量を逸脱して不当な評価行為に及んだものであり,これは,労働契約上の付随義務である労働者の職業的能力を適正・公正に評価すべき義務を怠ったといえる。 したがって,被告会社は,原告Bに対し,上記債務不履行による損害賠償責任を負う。 ウ被告らの主張に対する反論被告らは,原告Bが,「見極め」試験で3度も不合格となり,本務運転士としての復帰が認められなかったこと,引上げ方向の勘違いをしたこと,入線速度違反をしたこと,基本的な確認喚呼を誤ったことを理由に,前記人事考課を行ったと主張する。 しかし,「見極め」試験での3度の不合格は,いずれも不当な評価であることは前述のとおりであるから,このような不当な評価に基づいて人事考課をすることもまた不当である。また,引上げ方向の勘違いについては,原告Bは指摘を受ける前に勘違いに気付いたのであり,列車遅延も生じていないのであるから,重大なミスとはいえず,低評価の理由とすることは- 27 -できない。さらに,入線速度違反の事実はなかった。基本的な確認喚呼の誤りについては,被告の具体的な主張がないし,そもそもかかる誤りはなかった。 (2) 被告らの主張被告Cが原告Bに対して行った人事考課は,以下のアないしエを理由としたものであり,団結権を侵害する目的で行ったものではないし,仕事給昇給Dランク適用及び期末手当減額の対象としたことも相当かつ妥当であるから,権利の濫 して行った人事考課は,以下のアないしエを理由としたものであり,団結権を侵害する目的で行ったものではないし,仕事給昇給Dランク適用及び期末手当減額の対象としたことも相当かつ妥当であるから,権利の濫用とはいえず,また,不当労働行為にも当たらない。 ア見極めで不合格となったこと原告Bは,前述のとおり,乗務審査における3度の「見極め」試験において不合格となり,平成15年の間に本務運転士として復帰することができなかったし,かつ不合格となった理由も初歩的かつ重大なミスによるものであった。 イ引上げ方向の勘違い原告Bは,平成16年1月8日,糸崎駅において,出区点検終了後,車両の引上げ方向を勘違いし,反対側の運転室で待機していた。本務運転士がこれを指摘したので事なきを得たが,運転士が反対側の運転室にいたのでは,信号機を見ることができず,いつまで経っても運転開始ができないことになり,列車遅延を引き起こすおそれのあるものであった。 ウ入線時の速度違反原告Bは,平成16年1月23日,糸崎駅出区時,入線制限速度が時速15キロメートルであるところ,5キロメートル超過した時速20キロメートルで運転した。制限速度違反は危険な行為であり,本務運転士から指導されるまでこれに気付かなかったことからすれば,運転士としての基本的な意識を欠いていたものといわざるを得ない。 エ基本的な確認喚呼の誤り- 28 -原告Bは,信号機名を誤って喚呼したり,「通過」と喚呼しなければならないのに「停車」と喚呼したり,多くの喚呼ミスを繰り返した。確認喚呼は,確実な安全確認のために定められているものであり,誤った確認喚呼が行われると,事故が発生するおそれがある。 争点(6)(原告組合及び原告地本に対する組合脱退慫慂行為を内容とする不法行為の成否)に関する当事者の主張(1) れているものであり,誤った確認喚呼が行われると,事故が発生するおそれがある。 争点(6)(原告組合及び原告地本に対する組合脱退慫慂行為を内容とする不法行為の成否)に関する当事者の主張(1) 原告組合及び原告地本の主張アGに対する脱退慫慂行為Gは,平成14年7月9日,事故を起こし(矢賀駅で,2両編成の車両の1両目のみドアを開くべきところ,誤って2両目のドアも開けてしまい,慌てて2両目のドアを閉めたところ,乗客の傘がドアに挟まったというもの),被告Cから面談を受けた。被告Cは,この面談の中で,Gに対し,同日の勤務終了後,飲食を共にするよう誘った。被告Cは,その席で,Gに対し,「Gさん,教導(運転士の指導総括担当者)したいと思いませんか。」,「あなたはG家の家長として長期的なビジョンを持っていますか。」などと述べた。被告Cは,Gに対し,同年8月26日にも,業務終了後に酒食につきあうよう誘い,F係長,H助役,D科長,その他の係長及び運転士数名が同席する場所で,Gの出身地である広島県庄原市に近い三次支所に戻りたくないかということと,なぜ今の組合にいるのか,原告組合は革マルで国会でも問題になったことがあるなどと述べて,希望地への配転を交換条件に原告組合からの脱退を慫慂した。 被告Cは,同日以後も,Gを呼び出し,同人への脱退慫慂を繰り返し,脱退するのであれば,上記事故の責任を免じ運転士として就労させる旨述べて説得した。このため,Gは,平成15年5月26日,原告組合を脱退した。 イIに対する脱退慫慂行為- 29 -Iは,平成14年11月16日,車両の構内入換作業中,誤って所定の停止位置を2,3メートル過ぎて停車する事故を起こしてしまった。そのため,Iは,同月17日午前9時41分ころから午後零時30分ころまで事情聴取を受け,さらに同月 ,車両の構内入換作業中,誤って所定の停止位置を2,3メートル過ぎて停車する事故を起こしてしまった。そのため,Iは,同月17日午前9時41分ころから午後零時30分ころまで事情聴取を受け,さらに同月18日には日勤教育を受けた。このような状態にあったIに対し,被告Cは,その日の退社時,酒席に誘い,その席で,前記事故の責任を免れ,日勤教育から早期に解放されることと引換えに,原告組合から脱退するよう慫慂した。そのため,Iは,同月19日,原告組合から脱退した。 ウJ,K,L及びMに対する脱退慫慂行為被告Cは,いずれも原告地本に所属していたJ,K,L及びMに対し,平成14年9月ころ,飲食を共にするなどして面談し,「組合を変われば,どのような条件でも飲む。」などと甘言を弄し,原告組合から脱退するよう慫慂し,同人らに原告組合からの脱退を決意させた。その結果,Kは平成14年10月1日,J及びLは同年11月1日,Mは平成15年1月29日,それぞれ原告組合を脱退した。 エNに対する脱退慫慂行為被告Cは,Nに対し,平成14年10月8日以後,勤務終了後に飲食を共にするよう誘い始め,Nと幾度か飲食を共にし,その際,Nに対し,原告組合から脱退するように執拗に求めた。その結果,Nは,平成15年2月14日,原告組合を脱退した。 オ被告Cらの上記各行為は,労働組合法7条3号で禁止される不当労働行為に当たり,原告組合及び原告地本に対する不法行為を構成する。 また,被告Cらの上記原告組合員に対する脱退慫慂行為は,広島運転所に勤務する複数の部下に指示して組織的,計画的に遂行されていることから,被告C個人の判断によるものではなく,被告会社の意を受けて行われたものであり,被告会社は使用者責任(民法715条)を負う。 - 30 -(2) 被告らの主張アGが平成14年7月 ていることから,被告C個人の判断によるものではなく,被告会社の意を受けて行われたものであり,被告会社は使用者責任(民法715条)を負う。 - 30 -(2) 被告らの主張アGが平成14年7月9日にドア扱い不良事故を起こしたこと,被告CがGに対し同日面談を行ったこと,被告Cが業務終了後にGと飲食を共にしたこと(ただし,日時は不明である。),その場にF係長,H助役,D科長らがいたこと及びGが原告組合を脱退したことは認めるが,その余は争う。 イIの事故態様,被告CがIに対し平成14年11月18日に面談したこと,同日の勤務終了後,被告CがIと飲食を共にしたこと及びIが原告組合を脱退したことは認めるが,その余は争う。 ウ被告CがJ,K,L及びMに対し脱退慫慂行為をしたとの原告らの主張は争う。 エNが,平成15年2月14日,原告組合を脱退し,訴外西日本旅客鉄道労働組合に加入したことは認めるが,被告CがNに対し脱退慫慂行為を行ったとの原告らの主張は争う。 争点(7)(被告会社の責任の存否)に関する当事者の主張(1) 原告らの主張被告Cは,被告会社の広島運転所長として,その職務の遂行上,原告ら主張の不法行為に及んだのである。したがって,被告会社は,民法715条により損害賠償責任を負う。 (2) 被告会社の主張争う。 争点(8)(原告らの損害)に関する当事者の主張(1) 原告Aの主張合計225万2260円ア精神的苦痛(慰謝料)200万円日勤教育指定,録音妨害行為,期末手当減額及び仕事給昇給D評価によって,原告Aは,人格権及び団結権を侵害され,精神的苦痛を被った。か- 31 -かる精神的苦痛を慰謝するには,少なくとも200万円を要する。 イ財産的損害5万2260円(ア)期末手当の減額分5万円(イ)仕事給昇給「 権を侵害され,精神的苦痛を被った。か- 31 -かる精神的苦痛を慰謝するには,少なくとも200万円を要する。 イ財産的損害5万2260円(ア)期末手当の減額分5万円(イ)仕事給昇給「C評価」と同「D評価」との差1760円月額賃金において100円(年間1200円),夏季手当において560円の差が生じる。 (ウ)カセットテープ相当額500円ウ弁護士費用20万円(2) 原告Bの主張合計555万1760円ア精神的苦痛(慰謝料)500万円原告Bは,約8か月における線見教育,検修業務への担務指定等により,運転士としての将来を断ち切られるような状況にまで追い込まれ,また,そのような不当労働行為により,原告地本役員としての活動をも妨害されたのであり,その精神的苦痛は甚大である。さらに,期末手当減額及び仕事給昇給D評価によって,勤務成績が良好でない者であるかのような社会的評価を受け,名誉まで毀損された。以上のような原告Bが被った人格権及び団結権侵害による精神的苦痛を慰謝するには,少なくとも500万円を要する。 イ財産的損害5万1760円(ア)期末手当の減額分5万円(イ)仕事給昇給「C評価」と同「D評価」との差1760円月額賃金において100円(年間1200円),夏季手当において560円の差が生じる。 ウ弁護士費用50万円(3) 原告組合及び原告地本の主張ア不当労働行為による無形の損害各500万円- 32 -イ弁護士費用各50万円(4) 被告らの主張争う。 第3当裁判所の判断 争点(1)(原告Aに対する日勤教育に関する不法行為の成否)について(1) 前記争いのない事実並びに証拠(甲15,甲16,甲22,乙4,乙5,乙13,原告A本人,被告C本人)及び弁論の全趣旨により認められる事実 原告Aに対する日勤教育に関する不法行為の成否)について(1) 前記争いのない事実並びに証拠(甲15,甲16,甲22,乙4,乙5,乙13,原告A本人,被告C本人)及び弁論の全趣旨により認められる事実を総合すると,争点(1)に関し,次の事実が認められる。 ア原告Aは,平成15年3月5日(以下「平成15年」は省略する。)午後6時ころ,運転勤務中,中野東駅において,運転席から窓越しに,ホームの辺りに唾を吐き出した。原告Aは,当時,連続勤務(同日は6日連続勤務の5日目であった。)のため疲れがたまっていたこともあって花粉症によるくしゃみや鼻水がひどく,唾を吐き出したのであった(甲22,原告A本人)。 イ当時の広島運転所指導担当のF係長は,原告Aが運転していた列車の客室から原告Aの上記行為を確認し,広島駅において,原告Aの上記行為を咎め,原告と面談することとした。同日,上記面談が,原告AとF係長のほか,E指導総括助役,H助役も立会いのもとで行われ,原告Aに対する注意がなされた(甲22,原告A本人)。 ウ原告Aは,引き続き3月6日午前6時55分まで勤務した。同勤務終了後,H助役は,原告Aに対し,唾を吐いた行為に関する顛末書(事実経過を列記して文章にしたもの。)の作成を命じ,原告Aが同行為を深く反省している旨の顛末書を作成すると,さらに,レポート3通を提出するよう命じた。そこで,原告Aは,同行為を反省している旨のレポートを1通作成したが,気分が悪くなったため,H助役に対し,体調不良のためにこれから病院に行くつもりであることを伝え,残りの2通は後日作成すること- 33 -の許可を得,同日午前8時10分ころ退社した(甲22,原告A本人)。 原告Aは,退社後,直ちに駅ビルクリニックを受診したところ,嘔気,脱水及びアレルギー性鼻炎と診断され,点滴治療を こと- 33 -の許可を得,同日午前8時10分ころ退社した(甲22,原告A本人)。 原告Aは,退社後,直ちに駅ビルクリニックを受診したところ,嘔気,脱水及びアレルギー性鼻炎と診断され,点滴治療を受けた(甲15,甲16,甲22,原告A本人)。 エ原告Aは,3月7日から同月9日まで休暇で,同月10日から乗務予定であった。 被告Cは,原告Aの唾を吐いた行為はお客様に不快感を与えるものであって社員として許されない行為であり,そのような行為をした原告Aに対しては単なる注意指導ではなく教育が必要であると考え,休暇中の原告Aに対し,電話をし,乗務から外して日勤勤務を命じ,教育を行う旨を伝え,同月10日,D科長,E指導総括助役,F係長立会いのもと,所長面談を行い,原告Aに対し,唾を吐いた行為を注意して反省を促し,「接客サービスマニュアル」及び「社員として社会人として」という表題の冊子を読むことを命じ,その上で理解度を確認するためのレポートの作成を命じた(甲22,乙13,原告A本人,被告C本人)。 上記レポートの題材は,①被告会社がどのような状況下におかれていると認識しており,その上で自分が行った行為について,どのように反省し,今後どのように行動すべきと考えているか,②被告会社の社員の一人としてどのように行動すべきか,③運転士としてお客様と接する際にどのような行動を取るべきか,というものであった(乙4)。 また,同日,被告Cは,原告Aに対し,社会人,社員としての知悉度に関するテストを受けさせた(乙5)。 さらに,被告Cは,同日午後5時30分ころから,原告Aに対し,D科長,E指導総括助役,F係長立会いのもと,2度目の所長面談を行い,同様の行為を二度と行わないよう注意した(甲22,乙13,原告A本人,被告C本人)。 - 34 -オ被告Cは,原告Aに 対し,D科長,E指導総括助役,F係長立会いのもと,2度目の所長面談を行い,同様の行為を二度と行わないよう注意した(甲22,乙13,原告A本人,被告C本人)。 - 34 -オ被告Cは,原告Aに対し,3月10日限りで日勤勤務の任を解き,翌日から運転士として乗務に復帰するよう命じた(甲22,乙13,原告A本人,被告C本人)。 (2) 日勤勤務について(前記争いのない事実,乙3,乙13,原告A本人,被告C本人)被告会社における勤務種別には,日勤,変形(4形ないし15形),乗務員(指定した乗務行路表によるもの)の3種類があり,社員の勤務はこれらの勤務種別の中から指定される。また,業務上の必要がある場合には,2種以上の異なった勤務種別を組み合わせて指定することができるが,指定した勤務等は,業務上の必要がやむを得ず生じた場合は変更される。なお,変形勤務を指定した場合でも,それが乗務員に対する教育・指導等を行うためであった場合,一般的に日勤勤務と呼称される。 乗務員が日勤勤務を指定されるのは,教育関係,各種委員会関係,各種発表会関係等,様々な場合があり,業務上の必要性に基づいて適宜日勤勤務が指定される。 「事故」や「事故に至らない阻害」(被告会社では「ヒヤリハット」と言われている。以下「ヒヤリハット」という。)等が発生した場合,あるいはその疑いが生じた場合等には,事故が再び発生することがないよう,教育が実施される。この場合,出勤予備などで教育を行うことができるときを除けば,当該社員の勤務を日勤や変形に指定して,教育を行う。 日勤勤務の期間は,発生した事象の内容(重大性の程度等),本人の過去の事故歴や発生頻度,発生後の意識の変化,教育・指導に対する理解度等によって異なり,教育を始めるに当たって予め画一的に決められるものではなく,日勤勤務の指定や 象の内容(重大性の程度等),本人の過去の事故歴や発生頻度,発生後の意識の変化,教育・指導に対する理解度等によって異なり,教育を始めるに当たって予め画一的に決められるものではなく,日勤勤務の指定や終了の時期の判断は,現場長(本件では広島運転所長である被告C)が行う。 (3) 原告Aに対する上記日勤教育の違法性について- 35 -ア日勤教育それ自体の違法性上記(2)のとおり,乗務員に対する教育を目的とする日勤勤務指定は,それ自体就業規則に定めのあるものであり,また,懲戒を目的とするものではなく,あくまで事故等の再発防止のため,乗務員に対して再教育を行う必要がある場合になされるものである。また,乗務員の運転業務が多数の乗客の生命身体の安全に大きな影響を及ぼすものであることからすれば,上記のような教育の必要性は否定できない。 上記の点からすれば,運転士に対する教育を目的とする日勤勤務の指定はそれ自体が違法であるとはいえず,この点に関する原告A,原告組合及び原告地本の主張は採用できない。 イ権限濫用上記アのとおり,日勤勤務指定はそれ自体違法ではなく,被告Cは日勤勤務の指定権を有していたといえるところ,同指定権は,使用者の服務命令権に基づくものであり,使用者の裁量に委ねられる事項であるから,その裁量権の濫用といえる場合でない限り,違法とはいえない。そして,同裁量権の濫用を基礎付ける事実の主張,立証責任は,上記原告らが負担するものであるところ,この点に関する同原告らの主張は,㨯唾を吐く行為はマナー違反の問題であり運行の安全とは関係のない事項であること,㨯それは体調が悪かったための行為であり原告Aにも汲むべき事情があったこと,㨯顛末書及びレポート1枚を提出したのであり,再発防止の処置は十分なされたから,重ねて教育をする必要性はなかったこと こと,㨯それは体調が悪かったための行為であり原告Aにも汲むべき事情があったこと,㨯顛末書及びレポート1枚を提出したのであり,再発防止の処置は十分なされたから,重ねて教育をする必要性はなかったことの各点を根拠として,上記日勤勤務の指定及びその実施が裁量権の濫用に当たるというものと解せられる。 しかし,いかなる理由があれ,ホームの辺りに唾を吐く行為は列車運行業務を営む被告会社の乗務員としてしてはならない行為であり,このような規範意識の欠如は運行安全の基礎が崩れる原因にもなり得るものである- 36 -から,上記㨯の主張は当を得ないものというべきである。また,上記㨯及び㨯の主張のとおり,原告Aの花粉症が増悪していたことが唾を吐いた一因となったこと,当日原告Aに顛末書及びレポート1枚を提出させ,さらにその数日後に日勤指定をしたことが認められるけれども,ホームの辺りに唾を吐くという行為の悪質性に照らすと,これらの事実から直ちに日勤教育の必要性を否定し,これが裁量権の濫用に当たるとまでいうことはできない。 以上の点に加え,日勤教育期間が1日間にとどまるものであり,その内容も原告Aの人格権を侵害するほどの負担を強いるというものではないことを併せ考慮すると,原告A,原告組合及び原告地本の上記主張を採用することはできない。 ウ不当労働行為原告A,原告組合及び原告地本は,被告会社が原告組合及び原告地本の組合活動を嫌悪し,数々の不当労働行為を行ってきたことからすれば,当該被告Cの原告Aに対する日勤教育の指定も,原告Aが原告地本の組合役員であるために原告地本の団結権侵害を目的としてなされた差別的取扱いであり,不当労働行為に当たると主張する。 なるほど,証拠(甲4,甲6)によれば,原告組合の組織率が被告会社社員の10パーセントにも満たないにもかかわらず の団結権侵害を目的としてなされた差別的取扱いであり,不当労働行為に当たると主張する。 なるほど,証拠(甲4,甲6)によれば,原告組合の組織率が被告会社社員の10パーセントにも満たないにもかかわらず,被告会社は,3月の「ダイヤ改正にともなう転勤」において,広島支社内で48名の社員に転勤の発令を行ったが,そのうち原告組合の組合員への転勤発令は37名であり,原告組合の組合員が多く転勤させられたこと(甲6),被告会社の幹部職員が,原告組合の組合員に対し,日勤教育期間中,脱退慫慂行為を行い,それが不当労働行為に当たるとの判決が出されていること(甲4)が認められ,これらのことからすれば,被告会社が原告組合及び原告地本と敵対し,その組合活動を快くは思っていないことが推認され,後記のと- 37 -おり,本件においても,不当労働行為といえる事実も認められる。 しかし,前記イに判示した点,特に,上記認定の経過に照らし,同認定の日勤教育の指定及びその実施は,原告Aの問題行動を理由とした教育目的に基づくものとみるのが自然であること,実施された教育内容は権限の濫用といえる程のものではないこと等の点にかんがみれば,被告会社が原告組合を快く思っていなかったことや不当労働行為があったこと等の前示の点を考慮しても,上記日勤教育の指定及びその実施が,原告A,原告組合及び原告地本の団結権を侵害することを目的とした差別的取扱いであったとまでは推認し難く,他にこれを推認させるに足りる事実は証拠上認められない。 したがって,この点に関する同原告らの主張も採用できない。 争点(2)(原告Aに対するテープの取上げ等に関する不法行為の成否)について(1) 前記争いのない事実及び証拠(甲22,乙13,原告A本人,被告C本人)により認められる事実を総合すると,争点(2)に関し,次 (原告Aに対するテープの取上げ等に関する不法行為の成否)について(1) 前記争いのない事実及び証拠(甲22,乙13,原告A本人,被告C本人)により認められる事実を総合すると,争点(2)に関し,次の事実が認められる。 ア原告Aは,3月10日,日勤教育を受けるに当たり,広島運転所内の会議室において,被告C,D科長,E指導総括助役及びF係長の4名による面談を受けた。原告Aは,その際,被告Cらから暴言や脱退慫慂行為を受ける可能性があると判断し,面談の状況を録音し,これを証拠として保全しようと考え,テープレコーダーをポケットに入れて,面談に臨んだ。ところが,原告Aのネクタイに取り付けた録音マイクのコードがネクタイからはみ出ていたことから,被告Cは,これに気付き,原告Aに対し,「その紐は何ですか。出しなさい。」と言った。そこで,原告Aが机の上にテープレコーダーを置いたところ,被告Cは,「何でこんなことをするのか。」と尋ねた。原告Aが,「後で聞くためである。」と答えると,被告- 38 -Cは,「テープは取り上げる。」と言って,テープレコーダーから録音テープ(以下「本件テープ」という。)を取り出して自らこれを保管した。 原告Aがこれに異議を述べることはなかった。その上で,被告Cは,原告Aに対し,面談内容を無断で録音してはならないこと及び職場に業務に関係のないものを持参してはならないことを厳命し,処分もあり得ることを告げた。これに対し,原告Aは,「すみません」と言った。 (被告Cは,「本件テープを受け取ることを原告Aに告げると,原告Aが『はい』と答えたので本件テープを取り出した。」旨供述するが,上記録音の目的や原告Aの立場からみて,「はい」と積極的に発言したとは考えにくいから,この限度で被告Cの上記供述は採用しない。)イ原告Aは,同日の昼休み で本件テープを取り出した。」旨供述するが,上記録音の目的や原告Aの立場からみて,「はい」と積極的に発言したとは考えにくいから,この限度で被告Cの上記供述は採用しない。)イ原告Aは,同日の昼休みに他の組合員から本件テープの返還を求めた方が良いとアドバイスされ,日勤教育を受けた後の同日午後5時30分ころ,再度被告Cらと面談した際,被告Cに対し,本件テープの返還を求めた。 被告Cは,これを拒否し,原告Aに対し,本件テープとは異なる新しいテープを渡した。原告Aは,これを受け取り,これ以上本件テープの返還を求めずに退席した。 ウ原告Aは,被告Cに対し,3月14日,新しいテープを返還すると言って,これを差し出し,本件テープを返還するよう再度求めた。これに対し,被告Cは,本件テープは既に処分したため返還できない旨,新しいテープは原告Aのものであるから持って帰って欲しい旨述べ,E指導総括助役は,差し出された新しいテープを持って原告Aのポケットに入れた。 (2) 本件テープを取り上げた行為の違法性について原告A,原告組合及び原告地本は,面談における会話を録音する行為は,被告会社の組合嫌悪に基づく不当労働行為に対する自己及び組合の団結権防衛のための正当な行為であるから,録音行為を止めさせて本件テープを没収する行為は不当労働行為であり,また,違法な所有権侵害行為であると主張- 39 -する。 しかし,そもそも相手方が自己の承諾なく会話内容を録音していることに気が付いた場合に,会話の自由やプライバシー権等の自己の権利を守るために,録音行為を止めさせることは正当な行為であり,違法な行為ではない。 このことは,原告Aが面談内容を録音しようとした目的が,不当労働行為に対する防衛というものであったからといって,変わるものではない。また,自己の会話の自由等の権利 な行為であり,違法な行為ではない。 このことは,原告Aが面談内容を録音しようとした目的が,不当労働行為に対する防衛というものであったからといって,変わるものではない。また,自己の会話の自由等の権利を守るためには,単に録音を止めさせるだけでなく,それまで録音した内容を消去する必要があるから,そのために録音テープの交付を求めることも,正当な行為といえる。さらに,上記認定のとおり,被告Cは,原告Aに対し,本件テープを取り上げる旨を伝え,テープレコーダーからこれを取り出し,原告Aはこれに異議を述べることもせず,その後,録音したことを謝ったのであり,このような経過に照らすと,原告Aは,被告Cが本件テープを取り上げるについて,不承不承ながらも黙示に承諾したものと認められる。以上の点を総合勘案すると,被告Cの上記行為は適法な行為というべきであり,これが違法であるとする上記原告らの主張は採用できない。 (3) 本件テープの返還を拒否する等の行為の違法性の有無原告A,原告組合及び原告地本は,被告Cが,テープを処分し,原告Aがテープの返還を求めたのに対してこれを拒否したことも不当労働行為であり,かつ,違法な所有権侵害行為であると主張する。 まず,不当労働行為の主張について判断するに,上記認定の事実によれば,被告Cが本件テープを取り上げてこれを処分し,原告Aに返還しないのは,被告Cの承諾を得ないで面談の内容を録音した行為が職場秩序維持等の点から許せないと考えたためであると認められ,団結権の侵害を目的としたものではなく,客観的にも団結権を侵害するものとはいえないから,これを不当労働行為ということはできない。 - 40 -次に,所有権侵害の主張について判断するに,前示のとおり,原告Aは被告Cが本件テープを取り上げることについて黙示の承諾をしたが,これは,録 ,これを不当労働行為ということはできない。 - 40 -次に,所有権侵害の主張について判断するに,前示のとおり,原告Aは被告Cが本件テープを取り上げることについて黙示の承諾をしたが,これは,録音の消去も含めて本件テープの管理を委ねる趣旨のものと解されるけれども,その所有権を譲渡したとの趣旨のものとは解されないから,本件テープは上記取上げ後も原告Aが所有するものであった。したがって,被告Cが本件テープを処分してその返還を拒否した行為は,原告Aの所有権を侵害するものであり,不法行為に当たる。 しかし,被告Cは,原告Aに対し,新しいテープを渡し,原告Aも,不承不承ながら,これを受領したのであり,通常の録音テープは,録音内容を除外すれば,その経済的価値,効用に差異はないから,上記受領によって被告Cの上記不法行為による損害は補てんされたものといえる。 そうすると,この点に関する原告Aの損害賠償請求権は消滅しているといえるから,原告A,原告組合及び原告地本の上記主張もまた採用できない。 争点(3)(原告Bに対する長期間の線見教育,他種職の担務指定,見極めの不実施に関する不法行為の成否)について(1) 前記争いのない事実及び証拠(甲23,乙6ないし乙10,乙13,乙44,乙45,乙47,原告B本人,被告C本人)により認められる事実を総合すると,争点(3)に関し,次の事実が認められる。 ア被告会社広島運転所においては,出向や組合専従によって一定期間乗務から離れていた運転士が復職する場合,運転作業等の乗務に関する規定類を読んで確認する「机上学習」を行い,その後,他の運転士が同乗して運転作業に関する助言等を受けながら列車運行乗務を行う「線見」という教育を一定期間継続した後,指導係長が同乗して,単独での乗務に切り替えるか否かを決める「見極め」試験と その後,他の運転士が同乗して運転作業に関する助言等を受けながら列車運行乗務を行う「線見」という教育を一定期間継続した後,指導係長が同乗して,単独での乗務に切り替えるか否かを決める「見極め」試験という過程を経て単独での乗務とする運用がなされていた。 なお,机上学習,線見及び見極めを行う期間,内容等については,当該- 41 -社員の経験,知悉度,習熟度及び乗務から離れていた期間等を勘案して,現場長である被告Cが決定する権限を有していた。もっとも,出向や組合専従によって一定期間乗務から離れていた運転士が復職する場合,通常,机上学習は1,2日程度であり,乗務復帰から単独乗務になるまでの期間も概ね1か月ないし2か月程度であった(原告B本人)。 イ原告Bは,平成5年から広島運転所にて運転士として稼働していたが,平成12年に原告地本書記長に就任したのに伴い,同年8月4日から組合に専従するため被告会社を専従休職した。その後,原告Bは,7月に原告地本副委員長に就任したのに伴い,9月1日,広島運転所運転分所へ運転士として職場復帰した(甲23,原告B本人)。 ウ被告Cは,原告Bに対し,9月1日から同月5日まで及び同月8日から同月12日までの合計10日間,机上教育を受けるよう指示し,原告Bは,同期間中,動力車乗務員作業要領,動力車乗務員作業要領異常時,動力車乗務員作業要領別冊2・3,広島運転所作業要領に関する机上教育を受けた(甲23,原告B本人)。 H助役は,原告Bに対し,机上教育の最終日である9月12日,机上教育に関する「見極め」を行うこと,「見極め」の内容は,教育・学習した内容全てであることを告げた(甲23,乙44,乙45,原告B本人)。 10月1日から3日間,原告Bに対する机上教育の「見極め」が行われた。同「見極め」の内容は,1日目が筆記試験(7 は,教育・学習した内容全てであることを告げた(甲23,乙44,乙45,原告B本人)。 10月1日から3日間,原告Bに対する机上教育の「見極め」が行われた。同「見極め」の内容は,1日目が筆記試験(7科目),2日目が115系電車の出区点検及び異常時応急処置(7種類),3日目が運転時の異常時シミュレーション(13種類)であった。1日目の筆記試験は,出勤から退社するまで昼の休憩時間を除いて行われた。また,3日目の異常時シミュレーションは,当初8種類を行う予定であったが,実際には13種類行われた(甲23,原告B本人)。 被告Cは,原告Bに対し,上記「見極め」終了後,筆記試験は7科目中- 42 -2科目が不合格であり,他の2科目も合格点ぎりぎりであったこと,異常時シミュレーションについても13項目中8項目が不合格であったことを告げ,これらの科目について再度試験を受けることを命じた。原告Bは,同月14日,上記科目について再度試験を受け,全科目合格となった(甲23,乙46,乙47,原告B本人)。 エ原告Bは,9月12日の机上教育終了後,「線見」を受けていたが,H助役は,原告Bに対し,10月14日,上記机上教育に関する「見極め」終了後,乗務審査の「見極め」試験を行う旨,同「見極め」試験は新規運転士の技能試験と同じ基準で実施する旨,基本動作である喚呼失念や速度超過があれば減点が大きくなる旨述べた。その後,原告Bは,11月6日に「見極め」試験を受けることとなった(甲23,乙47,原告B本人)。 原告Bは,同日,「見極め」試験を受けたが,列車及びコースについては,試験当日になって突然変更され,広島駅を出発して呉駅まで行き,呉駅から三原駅を経由して広島駅に戻るというコースになった(甲23,原告B本人)。同コースは40駅以上の区間に及ぶものであった(甲23, ,試験当日になって突然変更され,広島駅を出発して呉駅まで行き,呉駅から三原駅を経由して広島駅に戻るというコースになった(甲23,原告B本人)。同コースは40駅以上の区間に及ぶものであった(甲23,原告B本人,被告C本人)。なお,通常,「見極め」試験の列車やコースは事前に設定されており,これまで行われた「見極め」試験において,列車やコースが突然変更されるようなことはなかった(原告B本人)。 原告Bは,H助役及びF係長の添乗のもと「見極め」試験を受けたが,広島駅を出発して1駅目の向洋駅停車前に行う「第ゼロ号閉そく信号機」の信号喚呼を失念したとの理由により不合格となった。H助役及びF係長は,信号喚呼の失念があったとされる時点から試験終了まで,原告Bに対し,上記失念があった旨を指摘することをせず,そのため,「見極め」試験は最後まで行われた(原告B本人)。被告Cは,原告Bに対し,「見極め」試験終了後の所長面談において,向洋駅停車時の喚呼失念を指摘し,原告Bを不合格とした(甲23,乙13,原告B本人,被告C本人)。こ- 43 -れに対し,原告Bは,広島駅を出発して1駅目の向洋駅でのことを指摘され,自分としては喚呼しているはずと思ったものの,明確な記憶がなかったことや受験者という立場にあったことから,これに反論することはしなかった(原告B本人)。 オ原告Bは,11月20日,2度目の「見極め」を受けた。この2度目の「見極め」も,前回と同様,当日になって突然,列車及びコースが変更された(甲23,原告B本人)。 原告Bは,2度目の「見極め」も,広駅から広島駅までの列車運転の際,呉ポートピア駅通過時の半径360メートルカーブの制限速度70キロメートルを4キロメートルオーバーしたとの理由で,不合格となった(甲23,乙13,原告B本人,被告C本人)。これ までの列車運転の際,呉ポートピア駅通過時の半径360メートルカーブの制限速度70キロメートルを4キロメートルオーバーしたとの理由で,不合格となった(甲23,乙13,原告B本人,被告C本人)。これに同乗していたH助役及びF係長は,速度違反があったとされる地点において,原告Bに対し,その旨を指摘して直ちにブレーキを掛けるよう指示することはしなかった(甲23,原告B本人)。 原告Bは,「見極め」試験後に行われた所長面談において,呉ポートピア駅通過時の半径360メートルカーブにおいて時速74キロメートルで通過したことを認め,その旨を顛末書(乙6)に記載した(甲23,乙6,原告B本人)。 原告Bは,翌日である同月21日,F係長に対し,上記速度超過をしていない旨抗議した(原告B本人)。 カ原告Bは,12月10日,3度目の「見極め」試験を受けたが,海田市駅入駅時,海田市駅4番第2場内信号機の信号喚呼について,本来「4番第2場内進行」と喚呼すべきところを「4番第2出発進行」と喚呼した。 このため,「見極め」試験は即中止となった(甲23,乙13,原告B本人,被告C本人)。 被告Cは,原告Bに対し,3度目の「見極め」試験の不合格とその理由- 44 -を告げ,また,これまでの3度の「見極め」試験における不合格理由がいずれも悪質であったことを理由に,運転士業務から検修業務への担当替えを命じた(甲23,乙13,原告B本人,被告C本人)。 キ原告Bは,12月11日から広島運転所検修矢賀派出勤務となり,検修業務を命じられていたものの,実際には,列車客室座席下のゴミ取り清掃等の清掃業務に従事するよう指示された(甲23,原告B本人)。 ク被告Cは,原告Bに対し,平成16年1月5日,運転士乗務への復帰を命じ,原告Bは,同月8日から,R運転士添乗のもと,線見教育を受 清掃等の清掃業務に従事するよう指示された(甲23,原告B本人)。 ク被告Cは,原告Bに対し,平成16年1月5日,運転士乗務への復帰を命じ,原告Bは,同月8日から,R運転士添乗のもと,線見教育を受けた(甲23,原告B本人)。 原告Bに対する4度目の「見極め」は,同年1月30日及び31日に行われる予定であったが,予定された日には実施されなかった。原告Bは,R運転士やS係長に対し,「見極め」が行われなかった理由を尋ねたが,同人らからの明確な回答はなかった(甲23,原告B本人)。 その後,4度目の「見極め」試験は,同年5月24日及び25日に実施され,原告Bはこれに合格し,原告Bは,その翌日から単独で乗務するよう命じられた(甲23,原告B本人)。 ケ新規運転士養成における技能試験(被告C本人)(ア)新規運転士の国家試験の試験区間は10駅区間である。 (イ)新規運転士養成訓練では,試験区間と同一の運転区間で訓練させることにより,同区間の速度や基本動作などを徹底的に習熟させる。 コ「チャレンジ7番勝負」(乙7ないし乙10)これは通称で,運転士の運転操縦技能を競う取組みであり,詳細は以下のとおりである。 (ア)乗務エリア内の7駅区間について行う。 (イ)審査項目運転時分1秒毎に1点減点(許容,各駅3秒)- 45 -停止時の衝動吉田式衝動形による。減点は衝動の大小により6~1点,7~2点,8~5点,9~10点10~20点,11~30点,12~40点13~50点停止位置1メートル不足毎に2点減点(許容,各駅1メートル内)1メートル超過毎に5点減点喚呼方区間全ての喚呼を対象喚呼が抜けた場合10点減点喚呼を誤った場合5点減点喚呼を誤ったが,直ちに訂正した場合2点減点再制動1駅毎に10点減点(ウ)平成17年度の「チャ 5点減点喚呼方区間全ての喚呼を対象喚呼が抜けた場合10点減点喚呼を誤った場合5点減点喚呼を誤ったが,直ちに訂正した場合2点減点再制動1駅毎に10点減点(ウ)平成17年度の「チャレンジ7番勝負」では,最高点が462点(第1回,第2回とも),最低点が300点(第1回),260点(第2回)であった。 原告Aは,第1回が321点,第2回が417点であった。 原告Bは,第1回が370点,第2回が346点であった。 (2) 机上教育期間及び「見極め」試験不合格について以下,机上教育期間及び「見極め」試験不合格が,被告Cの権限の濫用に当たるかどうかについて判断する。 ア机上教育期間について上記(1)アに認定のとおり,出向や組合専従によって一定期間乗務から離れていた運転士が復職する場合,通常,机上学習は1日か2日程度で終了するが,被告Cは,原告Bに対し,10日間にわたる机上学習を命じ,これを受けさせた。被告Cのこの処置は異例のものといえる。 被告らは,上記処置の理由として,原告Bは3年間組合専従のため運転業務を離れていたこと,原告Bが復帰した時点では,原告Bが運転したこ- 46 -とのないワンマン列車についての教育を実施する必要があった旨主張し,被告Cは,これに沿う供述をするほか,O社員が車掌業務から運転士業務に復帰する際に7日間の机上教育を行ったことを例に挙げ,原告Bに対する10日間の机上教育が不当に長すぎるものではない旨供述している(被告C本人)。 しかし,O社員は原告Bと同じく原告地本の組合員であること,O社員に対する机上教育期間中,脱退慫慂行為が行われたこと(甲103(O社員の陳述書))からすれば,脱退慫慂目的でO社員に対する机上教育が不当に長くなった可能性も否定できない。また,他に10日間もの間机上教育をした例があっ 中,脱退慫慂行為が行われたこと(甲103(O社員の陳述書))からすれば,脱退慫慂目的でO社員に対する机上教育が不当に長くなった可能性も否定できない。また,他に10日間もの間机上教育をした例があったことをうかがわせる証拠はない。さらに,原告Bに対する新規車両の導入に伴う電気機器の配列教育は30分ないし1時間程度行われたにすぎない(原告B本人)。これらの点に加えて,原告Bが平成5年から平成12年まで広島運転所において運転士として就労した実績のある者であることを併せ考慮すると,被告Cが被告らの上記主張にあるような理由から原告Bへの上記机上教育をさせたとは考え難い。 イ「見極め」の合否の基準について上記(1)のとおり,1度目の「見極め」試験の不合格理由は喚呼失念,2度目の「見極め」試験の不合格理由は速度超過,3度目の「見極め」試験の不合格理由は誤喚呼であったことが認められる。 被告らは,原告Bの「見極め」試験については新規運転士の技能試験と同様の基準に従って合否を判断し,原告Bが犯した上記不合格理由はいずれも新規運転士の技能試験において即時審査中止となるほどの重大なミスであると主張する。そして,被告Cは,信号喚呼や制限速度を守るということは,運転士であれば誰しもが確実に行っている基本動作であり,これらを誤ることは非常に重大なミスに当たる等,上記主張に沿う供述をしている(被告C本人)。 - 47 -しかし,上記(1)に認定のとおり,新規運転士の技能試験は試験区間が10駅区間であるのに対し,原告Bに対して行われた「見極め」試験の試験区間は40駅区間以上にわたるものであったこと,新規運転士の技能試験は,事前の養成訓練において試験区間と同一の運転区間で訓練させ,同区間の速度や基本動作等を徹底的に習熟させた上で行うものであるのに対し,原告Bに対 以上にわたるものであったこと,新規運転士の技能試験は,事前の養成訓練において試験区間と同一の運転区間で訓練させ,同区間の速度や基本動作等を徹底的に習熟させた上で行うものであるのに対し,原告Bに対して行われた「見極め」試験においては,事前に試験区間と同一の運転区間を徹底的に訓練させるなどしておらず,さらに,1度目と2度目の「見極め」試験に関しては,当日になって突然,列車及びコースが変更になったことからすれば,原告Bの「見極め」試験は,新規運転士の技能試験と比較して,はるかに難易度の高いものであったといえる。 また,上記(1)コに認定のとおり,「チャレンジ7番勝負」では,喚呼失念は10点減点であり,これは再制動や運転時分の10秒の遅れと同じ減点ポイントであることからすれば,喚呼失念はこれらと同程度のミスであると推認されるところ,「チャレンジ7番勝負」では,現役の運転士が常日頃運転している乗務エリアの区間のうちの7駅区間においてさえ,最も成績の良い人で喚呼失念4回分に相当するミスを犯しており,最も成績の悪い人で喚呼失念24回分に相当するミスを犯しているのであり,これらの事実や原告B本人の供述によれば,40駅以上の区間にわたる長時間の乗務において,喚呼失念や誤喚呼などのミスを1つも犯すことなく運転することは,どれほど優秀な運転士であっても極めて困難なことであり,原告Bに課せられた「見極め試験」は,これを完璧に実行することを要求するものであって,新規運転士の技能試験に上記のような課題を達成することが要求されていたとは考えにくいから,これら両者には大きな難易度の差があったものといえる。 さらに,H助役は,原告Bに対し,10月14日,「見極め」試験を実施するに際し,運転士見習の審査と同様の基準で行うと述べた上で,基本- 48 -動作である喚呼 な難易度の差があったものといえる。 さらに,H助役は,原告Bに対し,10月14日,「見極め」試験を実施するに際し,運転士見習の審査と同様の基準で行うと述べた上で,基本- 48 -動作である喚呼失念や速度超過は減点が大きい旨述べているが,即時審査中止になるとは述べておらず,このことからすれば,運転士見習の審査においても喚呼失念や速度超過が即時審査中止事由ではないことが推認される。 以上の点からすれば,被告らの上記主張及び被告Cの供述は事実に反するというべきであり,被告Cは,原告Bに対し,新規運転士の技能試験の基準よりもはるかに難易度の高い基準の試験を,「見極め試験」として,実施したものと認められる。 なお,Pは,陳述書(乙26)において,「チャレンジ7番勝負」と新規運転士の技能試験とでは審査を行う趣旨や対象者が全く異なり,「チャレンジ7番勝負」の方が審査基準が厳しいものであるから,これを根拠とするのは相当でないこと,参加者の得点の内訳を挙げて「チャレンジ7番勝負」においても,信号喚呼は運転士として最も基本的な動作であり,喚呼失念や誤喚呼はほとんどなかったと供述している。しかし,上記供述の裏付けとなる参加した各乗務員の得点の内訳やその分布等は何ら証拠として提出されていないこと,新規運転士の技能試験では即時中止となる喚呼失念や誤喚呼が「チャレンジ7番勝負」では10点減点,5点減点にすぎないことからすれば,Pの上記供述はたやすく信用できないというべきである。 ウ向洋駅の第ゼロ号閉そく信号の信号喚呼失念について被告らは,原告Bが,1度目の「見極め」試験において,向洋駅の第ゼロ号閉そく信号の信号喚呼を失念したと主張し,被告Cも,原告Bが自ら喚呼失念を認め,不合格としたことについて特に反論しなかったこと等から,上記喚呼の失念があったはずで め」試験において,向洋駅の第ゼロ号閉そく信号の信号喚呼を失念したと主張し,被告Cも,原告Bが自ら喚呼失念を認め,不合格としたことについて特に反論しなかったこと等から,上記喚呼の失念があったはずであると供述する(被告C本人)。 しかし,他方で,原告Bは喚呼失念をした覚えはない旨供述しているし,原告Bに対する1度目の「見極め」試験は40駅以上の区間に及ぶもので,- 49 -その区間内において信号は何百とあるのであり,その全てについて信号喚呼を行ったとの明確な記憶はないのが通常であるから,上記認定のとおり,被告Cから喚呼失念を指摘された場合に原告Bが反論しなかったのは,明確な記憶がない上,受験者という立場にあったためであると認められる。 また,原告Bが信号喚呼を失念したのであれば,被告らの主張によれば,これは直ちに「見極め」試験を不合格とするような事由であるから,同乗していたH助役及びF係長は,その場で喚呼失念を指摘し,即刻「見極め」試験を中止させるはずであるが,実際には,H助役及びF係長は,これを指摘せず,「見極め」試験も中止することなく最後まで実施したのであって,このような経過は極めて不自然なものといえる。 以上の点からすれば,原告Bが反論しなかった事実から,上記信号喚呼の失念があったと認めることはできず,むしろ,上記信号喚呼の失念を,それがあったとする時に直ちに指摘したならば,原告Bからこれを強く否認され,この否認を覆させることは困難であることから,上記信号喚呼の失念がなかったにもかかわらず,これがあった旨を試験終了後に指摘したものと推認される。 エ速度超過について被告らは,原告Bが,2度目の「見極め」試験において,呉ポートピア駅と小屋浦駅間に存するカーブ(呉ポートピア駅の下り方のカーブ)に進入する際,制限速度時速70キロメート れる。 エ速度超過について被告らは,原告Bが,2度目の「見極め」試験において,呉ポートピア駅と小屋浦駅間に存するカーブ(呉ポートピア駅の下り方のカーブ)に進入する際,制限速度時速70キロメートルを超過したと主張し,被告Cはこれに沿う供述をしているほか,原告Bも上記速度超過を認める旨の顛末書(乙6)を作成している。 しかし,仮に原告Bが速度超過で運転し,それが単なる軽微な速度超過ではなく,事故やヒヤリハットにつながるおそれのあるほどの危険な速度違反であって,直ちに「見極め」試験を不合格としなければならないようなものであれば,同乗していたH助役やF係長は,その場で当該速度超過- 50 -を指摘し,直ちにブレーキを掛けさせ,減速させるはずである。ところが,H助役やF係長は,速度超過を指摘することもなく,また,ブレーキを掛けるよう指示することもなく,その区間の運転終了後に初めて速度超過を指摘したのである。このようなことからすれば,実際には上記の速度超過はなかったか,あるいは,あったとしても,その速度超過が事故やヒヤリハットにつながるおそれのあるほどの危険な速度超過ではなく,ごく軽微な速度超過にすぎなかったことが推認される。 また,原告Bが速度超過を認める旨の顛末書を作成したことについても,自分がどの区間を時速何キロメートルで運転していたかについて全て記憶していないのが通常であるから,速度超過があったとされた時点で何の指摘も受けず,乗務終了後になって速度超過を指摘された場合に,反論できず言われるがままに顛末書を作成してしまうことも十分にありうる。したがって,原告Bが速度超過を認める旨の顛末書を作成したからといって,直ちに速度超過があったものと認めることはできない。 オ誤喚呼について被告らは,原告Bが,3度目の「見極め」試験において,海 したがって,原告Bが速度超過を認める旨の顛末書を作成したからといって,直ちに速度超過があったものと認めることはできない。 オ誤喚呼について被告らは,原告Bが,3度目の「見極め」試験において,海田市駅入駅時,海田市駅4番第2場内信号機の信号喚呼について,本来「4番第2場内進行」と喚呼すべきところを「4番第2出発進行」と喚呼し,その誤喚呼が直ちに「見極め」の不合格事由に当たると主張し,誤喚呼の事実は原告B自身も認めているところであり,争いがない。 しかし,上記イで述べたとおり,たった1回の誤喚呼によって「見極め」試験を不合格とすることは,新規運転士の技能試験よりもはるかに高い基準を課したものといえる。 (3) 権限の濫用及び不当労働行為上記(2)に判示した点,すなわち,㨯被告Cが原告Bに命じた机上学習が10日間もの期間にわたる異例のものであり,その理由として被告らが主張す- 51 -るところが真の理由であったとは認め難いこと,㨯被告らは,原告Bの「見極め」試験については新規運転士の技能試験と同様の基準に従って合否を判断したというが,実際に原告Bに課した試験は,上記技能試験に比してはるかに難易度の高いものであったこと,㨯被告らが主張する向洋駅の第ゼロ号閉そく信号の信号喚呼失念はなかったものと推認され,それにもかかわらず,被告Cはこれを理由に不合格としたこと,㨯被告らが主張する呉ポートピア駅と小屋浦駅間に存するカーブでの速度違反も,なかったか,あったとしても,通常は不合格とするほどの超過ではなかったものと推認されること,㨯海田市駅入駅時の誤喚呼は,新規運転士の技能試験においては,それだけで不合格とするものではないこと等の点に加えて,原告組合及び原告地本が被告に対し闘争的な姿勢を保持した労働組合であり,原告Bが原告組合の組合員で,かつ 呼は,新規運転士の技能試験においては,それだけで不合格とするものではないこと等の点に加えて,原告組合及び原告地本が被告に対し闘争的な姿勢を保持した労働組合であり,原告Bが原告組合の組合員で,かつ,その役員として組合活動に積極的な者であったことをも併せ考慮すると,被告Cは,原告組合及び原告地本を弱体化させる目的で,原告Bに対し,原告Bが原告組合の組合員で,かつ,その役員であることを理由に,上記(2)アないしオの差別的取扱いを行い,その後も「見極め」試験を受験させないで,検修業務への担務替えを命じてこれに従事させ,長期間の線見教育を強いる等の差別的扱いを続けたものと推認される。 したがって,被告Cの上記一連の行為(上記認定の9月実施の机上学習から平成16年5月の4度目の「見極め」試験実施前までの間の原告Bに対する扱い)は,その権限を濫用した不当労働行為に当たり,不法行為を構成するというべきである。 争点(4)(原告Aに対する期末手当減額,仕事給昇級D評価に関する不法行為又は債務不履行の成否)について(1) 争いのない事実及び証拠(甲86,乙3,乙11,乙12,乙13,乙16,乙19,乙20,乙21,乙23,乙27,乙28,乙31,乙32,乙34,乙36,乙37,原告A本人,被告C本人)により認められる事実- 52 -を総合すると,争点㨯に関し,次の事実が認められる。 アF係長は,8月16日,原告Aが運転する列車に客室添乗した。 駅の手前には,各駅毎に停車か通過かを確認するため,「通停確認標」という標識が設置されており,運転士は,被告会社から,この「通停確認標」を通過する際は,時刻表を指差しながら,その駅が停車か通過かを確認し,「○○駅停車」あるいは「○○駅通過」と声を出すことを命じられていた(以下,この動作を「時刻表指頭確認」とい ,この「通停確認標」を通過する際は,時刻表を指差しながら,その駅が停車か通過かを確認し,「○○駅停車」あるいは「○○駅通過」と声を出すことを命じられていた(以下,この動作を「時刻表指頭確認」という。)。ところが,原告Aは,同日,ブレーキを掛けるべき位置と「通停確認標」の位置が同じである箇所が何か所かあったことから,その場所の一部について時刻表指頭確認をしなかった。なお,その後,被告会社の広島支社では,時刻表指頭確認を余裕を持って行ってからブレーキが掛けられるようにするため,「通停確認標」の位置が一部変更された(原告A本人)。 (被告らは,この運転時に速度超過があった旨主張し,「平成16年度仕事給昇給,Dランク適用候補者」と題する書面(乙28)には,「曲線・下り勾配制限の微妙な速度超過」との記載があるが,この記載自体からみても速度超過を現認したか疑わしいし,他にこれを認めるに足りる的確な証拠はないから,同主張は採用しない。)原告Aは,同月24日,F係長から,上記時刻表指頭確認の失念のほか速度超過があったとして指導を受けた(原告A本人)。 イ広島運転所においては,社員等が線路を横断したり線路内で作業する際,列車の進来に気付くのが遅れるなどして列車の運転に支障を来す事象が連続発生していたことから,被告会社は,社員に対し,「平成15年度年末年始輸送安全総点検」期間において,線路横断時の基本動作に関する教育を行い,具体的には,触車防止のため,線路横断時において一旦停止し,「右よし,左よし」と指差喚呼するよう指導した(乙19,20)。ところが,原告Aは,12月13日,広島運転所構内の線路を横断する際,指- 53 -差喚呼どころか一旦停止もせず,線路を横断した(乙16,乙21)。また,原告Aは,同日,出区点検の際,電車の床下点検をするときに Aは,12月13日,広島運転所構内の線路を横断する際,指- 53 -差喚呼どころか一旦停止もせず,線路を横断した(乙16,乙21)。また,原告Aは,同日,出区点検の際,電車の床下点検をするときにはエアの引き通し管のコックの状態を確認しなければならないところ,これを怠った(乙21,乙23)。F係長は,原告Aの上記線路横断時の基本動作懈怠及び出区点検の一部懈怠を現認し,これを被告Cに報告した。また,H助役は,これを受け,同月16日,原告Aに対し,個人面談を行い,これらの点について指導した(乙13,乙31)。 なお,上記「年末年始輸送安全総点検」期間中,原告A以外にも一旦停止不十分等の指摘を受けた乗務員は複数名いた(乙21)。 ウF係長は,12月29日,原告Aが運転する列車の運転席に添乗した。 原告Aは,安登駅から安浦駅間で制限時速65キロメートルで運転すべきところ時速70キロメートルで運転し,また安浦駅から風早駅間で制限時速75キロメートルで運転すべきところを時速80キロメートルで運転し,その運転中,到着放送の失念,運賃箱の開け忘れ,信号機の確認漏れ等の基本動作失念行為があった。F係長は,上記運行が全部終了した後,原告Aに対し,上記速度超過及び基本動作の失念を指摘し,これを指導した(乙32)。 (原告Aは,上記の速度超過運転を否認する供述をするが,後記の所長との面談における原告Aの発言内容に照らし,同供述はたやすく信用できない。)被告Cは,F係長から原告Aの上記速度超過の報告を受け,原告Aに対し,平成16年1月9日,所長面談を実施し,厳しく個別指導を行った(乙34)。その際,原告Aは,「ちょっと回復運転をしていて,ずっとノッチを上げていたら,超過した。」,「意識はなかったんですけど」などと発言し,上記速度超過したことを否認することは 別指導を行った(乙34)。その際,原告Aは,「ちょっと回復運転をしていて,ずっとノッチを上げていたら,超過した。」,「意識はなかったんですけど」などと発言し,上記速度超過したことを否認することはなかった(乙34,原告A本人)。 - 54 -エ被告Cは,上記アに関しては平成15年度上期の面談(10月28日実施)において,上記イ及びウに関しては平成15年下期の面談(平成16年4月19日実施)において,それぞれ原告Aに対して告知したが,いずれの面談時においても原告Aが特段の反論や質問をしたり,事実関係を争うことはなかった(原告A本人)。 オ被告Cは,広島支社長に対し,原告Aについて,上記イ及びウの事情を理由として期末手当減額適用が相当であるとの意見を具申し,上記アないしウの事情を理由として,仕事給昇給Dランク適用が相当であるとの意見を具申し,同支社長は,同具申のとおり決定した(乙11,乙12,乙27,乙28,乙36,乙37)。 カ原告A及び原告B以外にも期末手当減額対象者としては少なくとも2名の者がいたが,そのうち1名は2度の事故を連続発生させており,もう1名も2度の厳重注意処分を受けた者であった(乙11,乙12)。 また,原告A及び原告B以外にも仕事給昇給Dランク適用対象者としては少なくとも2名の者がいたが,そのうち1名は厳重注意処分を受けており,もう1名は訓告処分を受けた者であった(乙11,乙12)。 (2) 期末手当減額について前記争いのない事実にあるとおり,賃金規程123条3項は,期末手当(夏季手当の調査期間は前年10月1日から当年3月31日まで,年末手当のそれは当年4月1日から当年9月31日までである。)における成績給(減額)について,減給,戒告,訓告を受けた者及び勤務成績が良好でない者については5万円とする旨規定してい 3月31日まで,年末手当のそれは当年4月1日から当年9月31日までである。)における成績給(減額)について,減給,戒告,訓告を受けた者及び勤務成績が良好でない者については5万円とする旨規定している。 上記のとおり,同規程が,減給,戒告,訓告を受けた者と5万円減額の対象となる勤務成績が良好でない者とを同等の者として規定していることからすれば,ここにいう「勤務成績が良好でない者」とは,減給,戒告又は訓告を受けた者と同視できる程度に勤務成績が良好でない者をいうと解するのが- 55 -相当である。そして,上記の減給及び戒告は,就業規則147条が定める懲戒の種類で,減給とは,「賃金の一部を減じ,将来を戒める」もの,戒告とは,「厳重に注意し,将来を戒める」ものをいい,就業規則146条の定める懲戒事由がある場合になされる処分である(乙3)。上記の訓告は,同規則147条2項に定めがあり,同項が,「懲戒の種類」に関する規定の一部として置かれており,「懲戒を行う程度に至らないものは訓告する。」と定めていることからすれば,上記の訓告は,上記懲戒事由があるけれども上記戒告等の懲戒処分とする程の事由とはいえない場合になされる注意処分であると解される。 そして,被告Cは,上記(1)のイ及びウの事由を理由として原告Aの期末手当減額が相当であるとの意見を具申し,被告会社の広島支社長は同旨の決定をし,同減額をしたところ,上記事由は,それらが速度違反の繰返しや乗客へのサービスの低下を内容とするものであることからすれば,少なくとも訓告に付すべき事由と同視できる程度の事由であるといえるから,原告Aが上記の「勤務成績が良好でない者」に当たるとした被告Cの上記判断が誤ったものであるとはいえない。 そうすると,上記期末手当減額は就業規則に則ったものといえるし,そうであるとす といえるから,原告Aが上記の「勤務成績が良好でない者」に当たるとした被告Cの上記判断が誤ったものであるとはいえない。 そうすると,上記期末手当減額は就業規則に則ったものといえるし,そうであるとすれば,これが団結権侵害を目的とするものともいえないから,被告Cの上記意見具申行為が不法行為に当たるとはいえず,被告会社が上記減額をしたことが労働契約上の付随義務違反に当たるともいえない。したがって,上記不法行為又は債務不履行が成立するとの原告A,原告組合及び原告地本の主張は採用できない。 (3) 仕事給昇級D評価についてア前記争いのない事実にあるとおり,仕事給の昇給額は,各資格給に応じてS,A,B,C,Dの5段階の評価がなされ(調査期間は前年4月1日から当年3月31日までである。),この評価区分によって100円ずつ- 56 -の差があることが認められ,賃金規程(20条)は,「仕事給昇給(略)は,前年4月1日から当年3月31日までの調査期間内における勤務成績及び職務遂行能力を総合的に勘案して行う。」と規定し,上記5段階の評価の具体的な基準を定めていない(乙2)。そして,広島運転所においては,運転士について,「平成15年度評価項目別着眼点」と題する書面が作成され,これに基づいて上記評価がなされている(乙1,被告C本人)。 しかし,同書面もまた,上記5段階評価の具体的な基準を明示したものではなく,「上記書面に最低限必要なこととして記載されている事項が行えるレベルに達していない者について,Dランクと評価する。」との運用がなされていた(乙13,被告C本人)。 以上の賃金規程の定め方等にかんがみれば,上記評価は被告会社広島支社長の裁量に委ねられており,被告Cのこれに関する意見具申もその裁量に委ねられているものと解される。したがって,被告Cの上記認定の 。 以上の賃金規程の定め方等にかんがみれば,上記評価は被告会社広島支社長の裁量に委ねられており,被告Cのこれに関する意見具申もその裁量に委ねられているものと解される。したがって,被告Cの上記認定の意見具申行為が不法行為に当たるというためには,それが裁量権の濫用行為であって,違法であることを要する。また,被告会社が原告AについてしたD評価に基づく仕事給の支給が債務不履行であるというためには,D評価としたことが裁量権の濫用であることを要する。 イところで,裁量権の濫用については,これを主張する者が,これを基礎付ける具体的な事実を主張,立証する責任を負うところ,この点に関する原告A,原告組合及び原告地本の主張は必ずしも明確ではないが,それは,第一に,D評価の根拠とした事実が認められないことをいうものと解せられるところ,これは上記認定のとおりそのほとんどが認められ,上記(1)アの運転の際の速度超過が認められないのにとどまり,他の対象行為に照らすと(その評価は後記のとおりである。),この速度超過が認められないことから直ちに裁量権の濫用に当たるとまではいえないから,同主張は採用できない。 - 57 -第二に,それは,根拠とした事実が軽微なものであるのに過大に評価したというものであるとも解せられるが,D評価の根拠とした事情は,運転時に時刻表指頭確認を怠ったこと,線路横断時に指差喚呼を怠ったこと,同一の運転時に2回にわたり速度超過運転(いずれも時速5キロメートルの超過)をしたこと,ワンマン列車運転の際に到着放送等の基本動作を怠ったことであり,これらの各行為の内容,特に同一の運転時に2回にわたり速度超過運転をしたこと,問題行動の回数等の点にかんがみれば,必ずしも軽微な非違行為とはいえないから,同主張も採用できない。 第三に,それは,原告Aが組合員 行為の内容,特に同一の運転時に2回にわたり速度超過運転をしたこと,問題行動の回数等の点にかんがみれば,必ずしも軽微な非違行為とはいえないから,同主張も採用できない。 第三に,それは,原告Aが組合員であることを理由とした差別的扱いであるとの主張とも解せられるが,上記のとおり,D評価の根拠とした事情が明らかにされており,その評価も誤ったものともいえないことからすれば,原告Aが組合員であること等の点を考慮しても,上記主張を採用することはできない。 したがって,被告Cの上記意見具申行為が不法行為に当たるとはいえず,また,被告会社が上記評価をしたことが労働契約上の付随義務違反に当たるともいえない。 争点(5)(原告Bに対する期末手当減額,仕事給昇級D評価に関する不法行為又は債務不履行の成否)について(1) 被告らは,原告Bに対して期末手当減額及びD評価をした根拠事由として,「見極め」試験の度重なる不合格,乗務復帰に長期間を要したこと,引上げ方向の勘違い,入線時の速度違反,基本的な確認喚呼の誤りがあったことを主張する。 しかし,上記3に判示したとおり,「見極め」試験の3度の不合格や乗務復帰に長期間を要したことは,被告Cの不当労働行為の結果というべきものであり,原告Bの責に帰すべき事由によるものではないから,これを期末手当減額及び仕事給昇給D評価の根拠事由とすることはできない。 - 58 -そこで,その余の根拠事由の存否等について,以下判断する。 (2) 各事由の存否及び評価ア引上げ方向の勘違い被告ら主張のとおり,証拠(乙50,原告B本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告Bは,平成16年1月8日,糸崎駅において,乗務開始前の車両点検終了後,車両の引上げ方向(進行方向)を勘違いし,反対側の運転室で待機していたこと,同乗していた本務運転士から指 の全趣旨によれば,原告Bは,平成16年1月8日,糸崎駅において,乗務開始前の車両点検終了後,車両の引上げ方向(進行方向)を勘違いし,反対側の運転室で待機していたこと,同乗していた本務運転士から指摘を受けて本来の運転室に移動したことが認められる。 この点につき,原告Bは,本務運転士から指摘を受ける前に,出区方向の間違いに自ら気が付いた旨供述するが,同月15日の面談の際に原告Bがそのような反論をしたことはうかがわれず(乙50),原告Bの上記供述はたやすく信用できない。 そして,運転士が進行方向とは反対側の運転室にいると,信号機を見ることができず,運転の開始が遅延することとなる(弁論の全趣旨)。 イ入線時の速度違反被告ら主張のとおり,証拠(乙53)及び弁論の全趣旨によれば,原告Bは,平成16年1月23日,糸崎駅出区時,入換え制限速度が時速15キロメートルであったのに,時速20キロメートルで運転し,本務運転士が指導し,減速させたことが認められる。 この点につき,原告Bは,上記事実を否認する旨供述するが,原告Bは,同年2月5日の面談において,H助役から上記速度超過及び本務運転士が慌ててブレーキを取った事実に関して指摘を受け,これを明確に認めており(乙53),この事実に照らし,原告Bの上記供述はたやすく信用できない。 ウ基本的な確認喚呼の誤り被告ら主張のとおり,証拠(乙54ないし乙56)及び弁論の全趣旨に- 59 -よれば,原告Bは,平成16年2月6日,広駅場内に対する指差指頭喚呼を行った際,「1番場内注意」と喚呼すべきところを「場内注意」と喚呼したこと,同年3月8日,海田駅第1号閉そく信号機確認において,「山陽」と喚呼すべきところを「本線」と喚呼し,それは直ちに言い直したが,その後,同駅第1場内喚呼を「旅客本線」と喚呼し,本務運転士か したこと,同年3月8日,海田駅第1号閉そく信号機確認において,「山陽」と喚呼すべきところを「本線」と喚呼し,それは直ちに言い直したが,その後,同駅第1場内喚呼を「旅客本線」と喚呼し,本務運転士から「旅客山陽第1場内」と訂正され,安芸中野駅場内再喚呼をなかなか喚呼しないので本務運転士が再喚呼し,白市駅場内確認喚呼においても「白市3番白市停車」と喚呼し,本務運転士から「白市1番白市停車」と訂正されたことが認められる。 この点につき,原告Bは,上記事実をいずれも否認する旨供述するが,原告Bは,H助役との面談において,上記確認喚呼の失念等の指摘を受け,これらを明確に認めたことが認められ(乙54ないし56),この事実に照らし,原告Bの上記供述はたやすく信用できない。 (3) 不法行為の成否以上のとおり,原告Bのした上記(2)のミスは,多数回にわたるものであり,軽微なものとして軽視できるものとはいえない。 しかし,証拠(乙11,乙12,乙39,乙57,乙58)によれば,被告Cが原告Bについて期末手当減額及び仕事給昇給D評価をした根拠事由の中で,原告Bが「見極め」試験を3度も不合格となり乗務復帰に長期間を要したことが,かなりの比重を占めていたものと推認され,これらが不当労働行為によるもので,原告Bの責めに帰すべき事由によるものでないことは前示のとおりであるから,原告Bに対する仕事給昇給D評価及び期末手当減額は,その評価の根拠とした事実の重要な部分に誤りがあり,かつ,その誤りが不当労働行為に起因するものであるといえる。そうすると,被告Cがしたこれらについての意見具申行為もまた,不当労働行為(労働組合員であることを理由とする不利益扱い)に当たり,原告B,原告組合及び原告地本との- 60 -関係で,不法行為を構成するというべきである。 争点(6 ての意見具申行為もまた,不当労働行為(労働組合員であることを理由とする不利益扱い)に当たり,原告B,原告組合及び原告地本との- 60 -関係で,不法行為を構成するというべきである。 争点(6)(原告組合及び原告地本に対する組合脱退慫慂行為を内容とする不法行為の成否)について(1) Gに対する組合脱退慫慂行為についてア争いのない事実(文中に摘示)及び証拠(甲41,甲44,甲45,甲96,証人Q)によれば,次の事実が認められる。 (ア)Gは,平成14年7月9日,列車のドアの扱いに関する事故を発生させ,同事故につき,被告Cと面談した(争いのない事実)。 (イ)被告Cは,上記面談後,Gを誘い,Gの勤務終了後,居酒屋で飲食を共にした(甲44)。 (ウ)被告Cは,平成14年8月26日,勤務終了後のGを誘い,居酒屋で飲食を共にした。 これには,被告Cのほか,D科長,F係長,H助役(当時は係長)等,合計10人くらいが同席した。被告Cらは,Gに対し,「三次に帰りたくないか」,「何で今の組合(原告組合の意味。)にいるのか」,「西労(原告組合の意味)は革マルだ」,「西労は革マルだから娘さんや他の子供さんの就職等にも影響がある,考えた方が良い」,「係長になって指導係となり,三次に帰ればいい」などと述べた(甲45)。 (上記認定は,主に,甲45のGの報告書に依拠したものであるところ,被告らは,これについて,Gが作成したものか否か明らかでないし,仮にGが作成したものであったとしても,被告Cと飲食したことに対する原告組合からの非難をかわすため,原告組合に迎合し,あるいは責任を他に転嫁するために作成されたという状況からすれば,その内容は信用できないと主張し,被告Cは,上記のような発言をしたことを否認する旨の供述をしている。しかし,上記報告書には文頭に「 ,あるいは責任を他に転嫁するために作成されたという状況からすれば,その内容は信用できないと主張し,被告Cは,上記のような発言をしたことを否認する旨の供述をしている。しかし,上記報告書には文頭に「G」との署名があり,その内容は,出席者の氏名,会話の内容及び代金の支払等につい- 61 -て,詳細かつ具体的であり,事実にないことを創作した記述とは考えにくいものであること,これが原告組合に渡りその保管するところとなっていること等の点からすれば,同報告書は,Gが作成したものであると認められ,その内容の信用性も肯定できる。したがって,被告らの上記主張は採用できず,被告Cの上記供述は信用できない。)。 (エ)Gは,5月26日,原告組合を脱退した。 イこの点に関する原告組合及び原告地本の主張は前記第2の8(1)アのとおりであるところ,上記アのとおり,被告Cは,Gが事故を起こし,精神的にショックを受けている状況下においてGを飲食に誘い,その後もGを飲食に誘い,D科長ら被告会社広島運転所の幹部が多数いる中にGを座らせ,その席で,Gが三次出身であることから,「三次に帰りたくないか。」「係長になって指導係となり,三次に帰ればいい。」などと三次への転勤や係長への昇進を勧めながら,一方で,「西労は革マルだ。」などと原告組合を非難し,「何で今の組合にいるのか。」などと脱退を慫慂する発言をしており,これらの発言内容や上記発言がなされた状況等にかんがみれば,被告Cらの上記発言は,利益誘導により脱退を慫慂するものであって,原告組合への支配介入に当たる程度の脱退慫慂行為であり,労働組合法7条3号で禁止されている不当労働行為に当たる。 (2) Iに対する組合脱退慫慂行為についてア争いのない事実(文中に摘示)及び証拠(甲46,甲47,乙13,証人Q)によれば,次の あり,労働組合法7条3号で禁止されている不当労働行為に当たる。 (2) Iに対する組合脱退慫慂行為についてア争いのない事実(文中に摘示)及び証拠(甲46,甲47,乙13,証人Q)によれば,次の事実が認められる。 (ア)Iは,11月16日,列車の入れ換え作業中に,入れ換え標識を行き過ぎて列車を進行させるという事故を発生させた(争いのない事実)。 被告Cは,これを受け,Iに対し,同月18日,日勤勤務に指定し,Iに対して面談を実施して上記事故に関して説諭をした(争いのない事実)。 - 62 -(イ)Iは,上記日勤勤務終了後,D科長及びH助役から飲食を共にするよう誘われ,これについて行き,その席で原告組合からの脱退届を作成した。その後,被告Cらと合流し,明け方近くまで共に飲食した(争いのない事実,甲46,甲47,証人Q)。 (ウ)Iは,11月19日,原告組合を脱退した(争いのない事実)。 イ原告組合及び原告地本は,被告Cが,Iに対し,上記アの(イ)記載の飲食の席において,脱退慫慂行為を行ったと主張する。 しかし,これを認めるに足りる証拠はなく,また,上記アに記載の事実から,原告組合に対する支配介入に当たる程度の脱退慫慂行為がなされたと推認することもできない。 したがって,原告組合及び原告地本の上記主張は採用することができない。 (3) J,K,L及びMに対する組合脱退慫慂行為について原告組合及び原告地本は,手帳(甲24)(以下「手帳」という。)の作成者がJであり,これには,「NO1」と記載されている人物が,J,L及びMに対し,利益誘導を行って脱退慫慂行為を行ったことが記載されているところ,「NO1」とは被告Cを指す名称であり,被告CがJ,K,L及びMに対し,脱退慫慂行為を行ったと主張する。 そこで,以下,手帳の作成者及び脱退慫慂行為の 脱退慫慂行為を行ったことが記載されているところ,「NO1」とは被告Cを指す名称であり,被告CがJ,K,L及びMに対し,脱退慫慂行為を行ったと主張する。 そこで,以下,手帳の作成者及び脱退慫慂行為の存否について判断する。 ア手帳の作成者これには閉そく指示運転時の会話において自己を示すものとして「広島運転所Jです」との記載があること,J及びLが平成14年11月ころに被告Cの自宅を訪問したことは被告Cも認めているところ,手帳には,手帳の作成者が平成14年11月4日に被告Cの自宅を訪問したことが記載されていること,手帳の筆跡と脱退届(甲97)のJの筆跡を対照すると,両者が酷似していることが認められることの各点を総合勘案すると,Jが- 63 -手帳の作成者であることが認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 イ脱退慫慂行為の存否手帳には,Jが平成14年11月4日に被告Cの自宅を訪問したこと,時期は不明であるが,Jが「H」という人物,「NO1」と言われる人物,「テル」と言われる人物,L,Kと話合いを行い,その席で「NO1」と言われる人物が「変わればどのような条件でも飲む」と発言し,「テル」と言われる人物が「1か月半待ってくれ。決心する。」と発言し,Lが「3人いればいつでもOK」と発言し,Jは何も言わなかったこと,その後,Kが脱退を承認し,L及びJも脱退を承認したことが記載されている。 Jが手帳にあえて虚偽の記載をするとは考えられないから,Jは,これに記載のとおりの事実を認識したものと推認される。そして,証人Qの証言によれば,被告Cは,被告会社広島支社の社員の間では「NO1」と呼ばれていたこと,「テル」とはMを指す名称であることが認められる。被告Cは,陳述書(乙13)や本人尋問の中で,自分がNO1などと呼ばれていないなどと供述するが,こ 島支社の社員の間では「NO1」と呼ばれていたこと,「テル」とはMを指す名称であることが認められる。被告Cは,陳述書(乙13)や本人尋問の中で,自分がNO1などと呼ばれていないなどと供述するが,このような呼称は被告Cの知らないところで用いられるのが通常であるから,同供述は上記認定を覆すものではない。 以上の点に加えて,その後,J,K,L及びMは原告組合を脱退したことを併せ考慮すると,被告Cが,J,L,K及びMに対し,「変わればどのような条件でも飲む。」と述べ,原告組合からの脱退を慫慂し,J,L,Kがこれを承認し,Mも1か月後に脱退を決心したことが認められる。そして,被告Cの上記発言は,利益誘導により原告組合からの脱退を慫慂するものであり,原告組合への支配介入に当たる程度の脱退慫慂行為であり,労働組合法7条3号で禁止されている不当労働行為に当たる。 (4) Nに対する組合脱退慫慂行為の存否ア争いのない事実(文中に摘示)及び証拠(甲35,甲74,証人Q)によれば,次の事実が認められる。 - 64 -(ア)Nは,2月13日,神戸訓練センターへ出張予定であったが,これに赴かなかった。そのため,同じく神戸訓練センターに出張していた原告Aは,Qに対し,Nに連絡を取って事情を確認するよう求めた。Qは,同日,Nの自宅に電話を架けたところ,N本人が電話に出た。Nは,Qに対し,原告組合からの脱退届を作成したこと,脱退の動機については転勤が怖かったことを述べた(甲35,甲74,証人Q)。 (イ)Nは,同月14日,原告組合を脱退した(争いのない事実)。 イ原告組合及び原告地本は,被告Cが,Nに対し,脱退慫慂行為を行ったと主張するが,上記アに認定の事実から,直ちに,被告CがNに対し原告組合に対する支配介入に当たる程度の何らかの脱退慫慂行為をしたと推認す 組合及び原告地本は,被告Cが,Nに対し,脱退慫慂行為を行ったと主張するが,上記アに認定の事実から,直ちに,被告CがNに対し原告組合に対する支配介入に当たる程度の何らかの脱退慫慂行為をしたと推認することはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告組合及び原告地本の上記主張は採用できない。 争点(7)(被告会社の責任の存否)について被告Cの上記3ないし6に判示した不法行為は,いずれも被告会社の広島運転所長として,その職務を遂行するに際して行ったものであるから,被告は,民法715条に基づき,被告Cの上記不法行為による損害賠償責任を負う。 争点(8)(原告らの損害)について(1) 原告Bの損害ア長期間の線見教育等による損害不当に長期間にわたって行われた机上教育,不当な「見極め」試験の不合格決定,それに伴う他職への担務指定,その後の約9か月にわたる長期間の線見教育に照らすと,これに関する被告Cの不法行為により人格権及び団結権を侵害されたことによって被った原告Bの精神的苦痛に対する慰謝料は,100万円と認めるのが相当である。 イ期末手当減額及び仕事給昇給D評価による損害額(ア)財産的損害5万1760円- 65 -前記争いのない事実のとおり,仕事給昇級D評価になると,C評価の場合と比較して,給与額が,月額において100円(年間1200円)減額になり,夏季手当において560円の減額となる。 また,期末手当の減額は5万円であった。 したがって,原告Bの上記損害額は,合計5万1760円となる。 (イ)慰謝料原告Bに対する期末手当減額及び仕事給昇給に関する被告Cの不法行為は,原告Bの人格権及び団結権を違法に侵害し,精神的苦痛を与えたものであるから,被告らは,これに対する慰謝料の支払義務を負うといえるところ,その額は 末手当減額及び仕事給昇給に関する被告Cの不法行為は,原告Bの人格権及び団結権を違法に侵害し,精神的苦痛を与えたものであるから,被告らは,これに対する慰謝料の支払義務を負うといえるところ,その額は,侵害の内容にかんがみ,10万円と認めるのが相当である。 ウ弁護士費用上記の認容額等に照らすと,原告Bに対する各不法行為と相当因果関係にある弁護士費用は,12万円と認めるのが相当である。 (2) 原告組合及び原告地本の損害被告Cのした原告Bに対する上記の差別的扱いやG,J,K,L及びMに対する脱退慫慂は,原告組合及び原告地本に対する不当労働行為に当たることは前記のとおりであり,上記の差別的扱いの内容,特に原告Bが原告組合の役員であったこと,脱退慫慂の対象人数及びこれらの者が結局脱退したこと等の点を考慮すると,これによる原告組合及び原告地本の損害(無形の損害)は,各50万円と認めるのが相当である。 また,上記認容額等に照らすと,原告組合及び原告地本に対する各不法行為と相当因果関係にある弁護士費用は,各5万円と認めるのが相当である。 結論 よって,原告Aの請求は理由がなく,その余の原告らの請求は,主文第1ないし3項の限度で理由があり(訴状送達の日の翌日が平成17年3月19日で- 66 -あることは記録上明らかである。),その余はいずれも理由がない。 広島地方裁判所民事第3部裁判長裁判官能勢顯男裁判官福田修久裁判官數間薫

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