平成20(行ケ)10199 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成20年9月18日 知的財産高等裁判所 3部 判決 請求棄却
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判決文本文16,578 文字)

- 1 -平成20年9月18日判決言渡平成20年(行ケ)第10199号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成20年7月3日判決原告X訴訟代理人弁理士丸岡裕作被告特許庁長官鈴木隆史指定代理人安田明央同末政清滋同森川元嗣同小林和男主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求特許庁が不服2006-14195号事件について平成20年4月14日にした審決を取り消す。 第2争いのない事実 特許庁における手続の経緯原告は,平成14年12月5日,発明の名称を「組ブロック具」とする特許出願(特願2002-353174号。以下「本願」という。)をした。 その後,原告は,平成17年2月23日付けの拒絶理由通知(甲18。以下「最初の拒絶理由通知」という。)を受け,同年4月27日付けで本願の願書に添付した明細書の記載を補正する手続補正(甲16)をした後,同年10月31日付けの拒絶理由通知(甲21)を受け,平成18年1月10日- 2 -付けで上記明細書の記載を補正する手続補正(甲17。以下,この補正後の明細書を図面と併せ「本願明細書」という。)をしたが,同年5月30日付けの拒絶査定(甲25)を受けたので,同年7月5日,これに対する不服の審判(不服2006-14195号事件)を請求した。 特許庁は,原告に対し平成19年12月21日付けで拒絶理由通知(甲30)をした上,平成20年4月14日,「本件審判の請求は,成り立たない。」とする審決(以下「審決」という。)をし,同月26日,その謄本を原告に送達した。 特許請求の範囲本願明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4の記載は,次のとおりである(以下,これらの請求項に係る する審決(以下「審決」という。)をし,同月26日,その謄本を原告に送達した。 特許請求の範囲本願明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4の記載は,次のとおりである(以下,これらの請求項に係る発明を項番号に対応して,「本願発明1」などといい,これらをまとめて「本願発明」という。)。 「【請求項1】複数のブロック単体を係合により結合させて構成され特定の意味を持つ対象物が表出される組ブロック具であって,上記各ブロック単体を,上記対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる文字列の各文字に夫々対応して設け,上記対象物としてその文字列が4以上の文字になるものにし,該各ブロック単体の輪郭形状に,対応する文字の形状を表出したことを特徴とする組ブロック具。 【請求項2】複数のブロック単体を係合により結合させて構成され特定の意味を持つ対象物が表出される組ブロック具であって,上記対象物にこれに関連する付帯物を付加して構成し,該付帯物の形状を表出したブロック単体を含め,上記各ブロック単体を,上記対象物の名称の綴りから構成されアルファベ- 3 -ットからなる文字列の各文字に夫々対応して設け,上記対象物としてその文字列が4以上の文字になるものにし,該各ブロック単体の輪郭形状に,対応する文字の形状を表出したことを特徴とする組ブロック具。 【請求項3】上記対象物としてその文字列が6以上の文字になるものにしたことを特徴とする請求項1または2記載の組ブロック具。 【請求項4】上記各ブロック単体を,木製にし,互いに係合されて組み立てられ,係合を解除することにより分解されるように,文字の輪郭形状を構成する凸部や凹部あるいは孔を適宜の形状や大きさにして形成したことを特徴とする請求項1,2または3記載の組ブロック具。」 審決の理由別紙審決書写し ことにより分解されるように,文字の輪郭形状を構成する凸部や凹部あるいは孔を適宜の形状や大きさにして形成したことを特徴とする請求項1,2または3記載の組ブロック具。」 審決の理由別紙審決書写しのとおりである。要するに,下記(1)の理由により,本願明細書の発明の詳細な説明(以下「発明の詳細な説明」という。)の記載は,当業者が本願発明1ないし4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから,本願は,特許法36条4項1号に規定する要件(以下「実施可能要件」という。)を満たしておらず,また,下記(2)の理由により,本願発明1ないし4は,発明の詳細な説明に記載したものではないから,本願は,特許法36条6項1号(判決注,平成14年法律第24号による改正前の規定)に規定する要件(以下「サポート要件」という。)を満たしていないから,本願は特許を受けることができないというものである。 (1)実施可能要件の非充足下記ア及びイの理由により,発明の詳細な説明の記載は,当業者が本願発明1ないし4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したも- 4 -のではない。 ア発明の詳細な説明及び図面の記載だけでは,「うさぎ」あるいは「鳥」以外の一般の「対象物」の場合においては,「係合により結合させて」「特定の意味を持つ対象物」を構成する「ブロック単体」であって,「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」,「輪郭形状に,対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」を形成する際に,各々の「ブロック単体」を「対象物」の如何なる部分に対応させるのか,及び,各々の「ブロック単体」の凸部や凹部あるいは孔を如何なる形状及び大きさとするのかの決定において,過度の試行錯誤が必要となることから,当業者といえども,「係合により結合させて に対応させるのか,及び,各々の「ブロック単体」の凸部や凹部あるいは孔を如何なる形状及び大きさとするのかの決定において,過度の試行錯誤が必要となることから,当業者といえども,「係合により結合させて」「特定の意味を持つ対象物」を構成する「ブロック単体」であって,「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」,「輪郭形状に,対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」を容易に認識できるとはいえない(以下「理由(1)ア」という。)。 イ発明の詳細な説明は,対象物の名称を英語でラテン文字の大文字を用いて表記した場合における,ブロック単体の形成方法を示しているのみであって,対象物の名称を「アルファベット」を用いた他の表記法によって表記した場合においては,各々の「ブロック単体」を「対象物」の如何なる部分に対応させるのか,及び,各々の「ブロック単体」の凸部や凹部あるいは孔を如何なる形状及び大きさとするのかについて何らその指針を示したものとはなっていないので,当業者といえども,他の表記法における,「係合により結合させて」「特定の意味を持つ対象物」を構成する「ブロック単体」であって,「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」,「輪郭形状に,対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」を容易に認識できるとはいえない(以下「理由(1)イ」という。)。 - 5 -(2)サポート要件の非充足下記ア及びイの理由により,本願発明1ないし4は,発明の詳細な説明に記載したものでない。 ア発明の詳細な説明の記載は,「うさぎ」あるいは「鳥」以外の一般の「対象物」の場合において,対象物の各部分と各ブロック単体との対応関係をどのように決定するかについて,及び,各単体ブロックの文字の輪郭形状を構成する凸部や凹部あるいは孔の形状及び大きさを 外の一般の「対象物」の場合において,対象物の各部分と各ブロック単体との対応関係をどのように決定するかについて,及び,各単体ブロックの文字の輪郭形状を構成する凸部や凹部あるいは孔の形状及び大きさをどのように決定するかについて,何らその指針を示したものとはなっていないので,発明の詳細な説明に記載された,「対象物」が「うさぎ」あるいは「鳥」である場合を,「対象物」が一般の「対象物」である場合に一般化することは不可能である(以下「理由(2)ア」という。)。 イ発明の詳細な説明には,対象物の名称を英語でラテン文字の大文字を用いて表記した場合における,ブロック単体の形成方法が記載されているのみであって,対象物の名称を「アルファベット」を用いた他の表記法によって表記した場合においては,各々の「ブロック単体」を「対象物」の如何なる部分に対応させるのか,及び,各々の「ブロック単体」の凸部や凹部あるいは孔を如何なる形状及び大きさとするのかについて何らその指針を示したものとはなっていないので,発明の詳細な説明に記載された,英語での対象物の名称をラテン文字の大文字で表記した場合を,対象物の名称を他の表記法によって表記した場合に一般化することは不可能である(以下「理由(2)イ」という。)。 第3当事者の主張 原告の主張(1)取消事由1(実施可能要件についての認定判断の誤り)以下のとおり,発明の詳細な説明が実施可能要件を充足しないとした審決の認定判断は誤りである。 - 6 -ア理由(1)アに係る認定判断の誤り下記(ア)ないし(エ)の観点に照らし,理由(1)アに係る審決の認定判断は誤りというべきである。 (ア)審査経過最初の拒絶理由通知では,特許法29条2項違反の指摘があったにとどまり,同法36条違反の指摘がなかったことからすれば,同通知を 1)アに係る審決の認定判断は誤りというべきである。 (ア)審査経過最初の拒絶理由通知では,特許法29条2項違反の指摘があったにとどまり,同法36条違反の指摘がなかったことからすれば,同通知をした審査官は,発明の詳細な説明の記載は,当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分なものと把握していたものであり,この点,尊重されるべきである。 (イ)本願発明の性質及び本質a本願発明のようなパズル性あるいは知育性を有する「組ブロック」の技術分野においては,化学の分野とは異なり,逐一,実施例を挙げなくても,発明を一般化することができる(逐一,実施例を挙げなければならないとすれば,無限に例を挙げなければならないことになって不可能だからである。)。 本願発明の属する技術分野は,特許庁が「A63H33/08」,「A63F9/10」,「A63F9/12」の分類を付与しているように(甲33),組木やパズル等の技術を含むものであり(甲33,34),これには組み立てることが可能な組木のパターンが356億5713万1235通りもあるといわれている「六本組木」が含まれるところであって(甲4,35),このような組木において,「『ブロック単体』の凸部や凹部あるいは孔を如何なる形状及び大きさとするのかについて,並びに,各々の『ブロック単体』の凸部や凹部あるいは孔の形状及び大きさの相互関係について,どのように決定するのか」(審決書8頁6行~8行)について,すべてを特定して指針を示すことは不可能であり,また,逐一- 7 -特定しなくても,いくつかの例を挙げれば,概念として理解できるから,十分である(現に,1例をもって登録された先例(実公昭26-115号公報(甲4))もある。)。 b本願発明は,ブロック単体同士の係合の仕方やブロック単体と対象物 げれば,概念として理解できるから,十分である(現に,1例をもって登録された先例(実公昭26-115号公報(甲4))もある。)。 b本願発明は,ブロック単体同士の係合の仕方やブロック単体と対象物の部分との対応のさせ方ではなく,甲1,36ないし39に示される動物のような,特定の意味を持つ対象物を係合により組み立てる各ブロック単体において,「各ブロック単体」を「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる文字列の各文字に夫々対応して設け」た点に,発明の本質があり,「『ブロック単体』の凸部や凹部あるいは孔を如何なる形状及び大きさとするのかについて,並びに,各々の『ブロック単体』の凸部や凹部あるいは孔の形状及び大きさの相互関係について,どのように決定するのか」(審決書8頁6行~8行)については,係合という大きな概念での特定で十分である。 c本願発明は,「各ブロック単体」を「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる文字列の各文字に夫々対応して設け」た先駆的な発明(基本発明)であるから,甲4に示される玩具のように,ある程度広い技術的思想の概念により特定せざるを得ないのであり,発明保護の観点からも記載不備とすることはできない。 (ウ)当業者の水準及び実施能力a本願発明のようなパズル性あるいは知育性を有する「組ブロック」の技術分野においては,「ブロック単体」が簡単に法則化できる構成のものであれば,もはやパズル性あるいは知育性を有する「組ブロック」としての意義を有しないことになるから,当業者の水準をある程度高く想定するべきであり,また,実際にも,その水準- 8 -は相当に高いものである(甲1,36~39)。 このような当業者であれば,経験則ないし技術常識に照らして,本願発明において,「各々の『ブロック単体』を『対象物 り,また,実際にも,その水準- 8 -は相当に高いものである(甲1,36~39)。 このような当業者であれば,経験則ないし技術常識に照らして,本願発明において,「各々の『ブロック単体』を『対象物』の如何なる部分に対応させるのか,及び,『ブロック単体』の凸部や凹部あるいは孔を如何なる形状及び大きさとするのかについて,並びに,各々の『ブロック単体』の凸部や凹部あるいは孔の形状及び大きさの相互関係について」(審決書8頁5行~8行),十分推認してその指針を得ることはできるのであり,本願発明の構成から,本願発明に係る具体的な種々の組ブロック具を創作できるはずである。 b原告(本願発明の発明者)は,試行錯誤したが,種々の組ブロック具(動物)を作成できた(甲5,40~44)。このように,本願発明は,実施例以外のものも,経験則ないし技術常識に照らして創作できる技術であって,ある程度試行錯誤を要するとしても,特許請求の範囲の記載による特定をもって,発明を一般化することができる。 (エ)登録例特許庁は,前記(イ)aのとおり,本願発明の属する技術分野として,「A63H33/08」,「A63F9/10」,「A63F9/12」の分類を付与しているところ,これらの分類に係る特許出願又は実用新案登録出願では,本願発明のようにやや程度の高い試行錯誤が必要な発明又は考案について,1つないし2つ程度の実施例の開示だけで特許又は実用新案として登録された例があり(甲2~4),本願発明も同様に扱われるべきである。 イ理由(1)イに係る認定判断の誤り以下の観点に照らし,理由(1)イに係る審決の認定判断は誤りというべ- 9 -きである。 本願発明は,他の「アルファベット」においても成立する発明であり,その例を特に挙げるまでもない。前記ア(イ)aのとおり,本願発明 理由(1)イに係る審決の認定判断は誤りというべ- 9 -きである。 本願発明は,他の「アルファベット」においても成立する発明であり,その例を特に挙げるまでもない。前記ア(イ)aのとおり,本願発明のようなパズル性あるいは知育性を有する「組ブロック」の技術分野においては,化学の分野とは異なり,逐一,実施例を挙げなくても,発明を一般化することができる。そして,「アルファベット」の例は無数にあり,これを逐一挙げることは不可能である。さらに,前記ア(ウ)のとおり,本願発明のようなパズル性あるいは知育性を有する「組ブロック」の技術分野においては,当業者の水準は相当に高いから,対象物と他の「アルファベット」による表記との対応が分かれば,本願発明を容易に実施することができる。同分野に係る実用新案登録出願には,考案の詳細な説明に,英語において使用されるラテン文字を表すものによって対象物を構成した例のみが記載され,他の「アルファベット」を表すものによって対象物を構成した例が記載されていないにもかかわらず,実用新案として登録された例があり(甲46,47),本願発明も同様に扱われるべきである。 (2)取消事由2(サポート要件についての認定判断の誤り)前記(1)と同様の理由により,本願発明がサポート要件を充足しないとした審決の認定判断は誤りである。 被告の反論審決の認定判断は正当であり,原告の主張はいずれも理由がない。 第4当裁判所の判断 取消事由1(実施可能要件についての認定判断の誤り)について(1)理由(1)アの認定判断の誤りについてア本願明細書の記載本願明細書(甲15,16,17)には,特許請求の範囲(前記第- 10 -2,2)のほか,図面(別紙【図1】~【図4】)とともに,次の記載がある。 (ア)「【0001】【発明の属す 細書の記載本願明細書(甲15,16,17)には,特許請求の範囲(前記第- 10 -2,2)のほか,図面(別紙【図1】~【図4】)とともに,次の記載がある。 (ア)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,玩具や教育具として用いられ,複数のブロック単体を結合させて意味を持つ対象物を表出する組ブロック具に関する。」(イ)「【0007】本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので,組み立てられた対象物が持つ名称の綴り(スペル)等の特定の意味を表現した文字列と使用するブロック単体との関連をもたせ,この文字列を覚えるなどの学習効果を発揮させる機能の向上を図った組ブロック具を提供することを目的とする。」(ウ)「【0008】【課題を解決するための手段】このような目的を達成するため,本発明の組ブロック具は,複数のブロック単体を係合により結合させて構成され特定の意味を持つ対象物が表出される組ブロック具であって,上記各ブロック単体を,上記対象物の意味を表現した文字列の各文字に夫々対応して設け,該各ブロック単体の輪郭形状に,対応する文字の形状を表出した構成としている。 これにより,ブロック単体の組み立てを楽しむことができるとともに,組み立てられた対象物が持つ名称の綴り(スペル)等の特定の意味を表現した文字列と使用するブロック単体との関連をもたせたことから,この文字列を覚えるなどの学習効果を発揮させる機能の向上が図られる。 【0009】- 11 -また,必要に応じ,上記対象物にこれに関連する付帯物を付加して構成し,該付帯物の形状を表出したブロック単体を含めた構成としている。対象物の構成に加え,付帯物にも思考を及ばせなければならないので,それだけ組み立てや理解に知能を要することから,より高い学習効果を得ることができる。 【001 たブロック単体を含めた構成としている。対象物の構成に加え,付帯物にも思考を及ばせなければならないので,それだけ組み立てや理解に知能を要することから,より高い学習効果を得ることができる。 【0010】そして,上記対象物としてその文字列が4以上の文字になるものにした構成とした。これにより,従来の頭文字だけのものに比較して,組み立てや,スペルの理解に知能を要することから,高い学習効果を得ることができる。 更に,必要に応じ,上記対象物としてその文字列が6以上の文字になるものにした構成とした。組み立てが複雑になっており,それだけ,組み立てや,スペルの理解に知能を要することから,高い学習効果を得ることができる。」(エ)「【0012】【発明の実施の形態】以下,添付図面に基づいて,本発明の実施の形態に係る組ブロック具について詳細に説明する。 図1乃至図3に示すように,実施の形態に係る組ブロック具Bは,複数のブロック単体(B1,B2,B3・・・・・・・)を係合により結合させることにより特定の意味を持つ対象物Tが表出されるものである。各ブロック単体(B1,B2,B3・・・・・・・)は木製であり,適宜着色がなされている。 【0013】各ブロック単体(B1,B2,B3・・・・・・・)は,対象物Tの意味を表現した文字列の各文字に夫々対応して設けられている。対- 12 -象物Tとしては,その文字列が4以上,望ましくは,6以上の文字になるものにしている。各ブロック単体(B1,B2,B3・・・・・・・)の輪郭形状には,対応する文字の形状が表出されている。 【0014】また,組ブロック具Bは,これが表出する対象物Tに,これに関連する付帯物Fが付加されて構成されている。そして,この組ブロック具Bに,付帯物Fの形状を表出したブロック単体(B1,B2,B3 014】また,組ブロック具Bは,これが表出する対象物Tに,これに関連する付帯物Fが付加されて構成されている。そして,この組ブロック具Bに,付帯物Fの形状を表出したブロック単体(B1,B2,B3・・・・・・・)を含めている。 【0015】図1乃至図3に示す対象物Tは,動物の「うさぎ」であり,この対象物Tの意味を表現した文字列を,この「うさぎ」の名称の英文字綴り(スペル)である「RABBIT」としている。 【0016】そして,先ず,この「RABBIT」の文字の内,「R,A,B,B,T」文字に夫々対応させたブロック単体(B1,B2,B3,B4,B6)を設けている。各ブロック単体(B1,B2,B3,B4,B6)の各輪郭形状に,対応する文字「R,A,B,B,T」の形状を夫々表出している。 【0017】ブロック単体B1(「R」を表出)は耳付きの頭部を構成し,ブロック単体B2(「A」を表出)は前足を構成し,ブロック単体B3,B4(「B」を表出)は胴部及び後足を構成し,ブロック単体B6(「T」を表出)は頸部を構成している。 【0018】また,この対象物Tに関連する付帯物Fは,「うさぎ」の好物である「人参」であり,この組ブロック具Bに,この付帯物の形状を表出- 13 -したブロック単体B5を含めている。即ち,「RABBIT」の文字の内,「I」文字に対応させたブロック単体B5を設け,このブロック単体B5の輪郭形状を,人参形状に形成するとともに,対応する文字「I」の形状を表出している。 【0019】各ブロック単体(B1,B2,B3,B4,B6)は,互いに係合されて組み立てられ,係合を解除することにより分解されるように,文字の輪郭形状を構成する凸部や凹部あるいは孔を適宜の形状や大きさにすることにより,形成されている。図1及び図3に示す例では, に係合されて組み立てられ,係合を解除することにより分解されるように,文字の輪郭形状を構成する凸部や凹部あるいは孔を適宜の形状や大きさにすることにより,形成されている。図1及び図3に示す例では,ブロック単体B6(「T」を表出)は,3方向に伸びる突出部が上記のブロック単体(B1,B2,B3,B4)に設けた孔に挿通されてこれらを連結するよう形成され,ブロック単体B5は,ブロック単体B2に嵌合するように形成されている。 【0020】従って,本実施の形態に係る組ブロック具を組み立てるときは,以下のようにして行なう。 先ず,図3①に示すように,ブロック単体B6の左右の突出部に,ブロック単体B3,B4の孔を嵌め込む。ブロック単体B3,B4の背部が下になって接地される。これにより,うさぎの後足と胴体ができる。 【0021】次に,図3②に示すように,ブロック単体B2の孔をブロック単体B6の上方向に突出している突出部に嵌める。これにより,うさぎの前足ができる。 それから,図3③に示すように,ブロック単体B5をブロック単体B2の前足の間に嵌合する。 - 14 -【0022】次に,図3④に示すように,ブロック単体B1を組み立てる。ブロック単体B1には上部に孔が開けられており,ブロック単体B1を引っくり返し,ブロック単体B6の上向きの突出部にブロック単体B1の上部にあけられている孔を差し込む。このブロック単体B1により頭部が出来上がり,うさぎの両耳及び眼が表出され,図1及び図3⑤に示すように,うさぎが完成する。 【0023】この場合,ブロック単体(B1,B2,B3・・・・・・・)の組み立てを楽しむことができるとともに,ブロック単体(B1,B2,B3・・・・・・・)は,対象物T(「うさぎ」)の名称(英文字)の綴り(スペル)から構成されているので,こ 2,B3・・・・・・・)の組み立てを楽しむことができるとともに,ブロック単体(B1,B2,B3・・・・・・・)は,対象物T(「うさぎ」)の名称(英文字)の綴り(スペル)から構成されているので,この綴り(スペル)を覚えるなどの学習効果が得られる。また,ブロック単体(B1,B2,B3・・・・・・・)は,6文字で構成されているので,組み立てが複雑になっており,それだけ,組み立てや,スペルの理解に知能を要することから,学習効果が高い。」(オ)「【0024】図4には,別の実施の形態に係る組ブロック具Bを示している。これは,上記と同様に構成されるが,上記と異なって,付帯物に対応するブロック単体が設けられていない。 【0025】詳しくは,図4に示す対象物Tは,動物の「鳥」であり,この対象物Tの意味を表現した文字列を,この「鳥」の名称の英文字綴り(スペル)である「BIRD」としている。 【0026】そして,この「BIRD」の文字,「B,I,R,D」に夫々対応- 15 -させたブロック単体(B1,B2,B3,B4)を設けている。各ブロック単体(B1,B2,B3,B4)の各輪郭形状に,対応する文字「B,I,R,D」の形状を夫々表出している。 【0027】ブロック単体B1(「B」を表出)は羽を構成し,ブロック単体B2(「I」を表出)は脚を構成し,ブロック単体B3(「R」を表出)は頭部を構成し,ブロック単体B6(「D」を表出)は胴部を構成している。 【0028】各ブロック単体(B1,B2,B3,B4)は,互いに係合されて組み立てられ,係合を解除することにより分解されるように,文字の輪郭形状を構成する凸部や凹部あるいは孔を適宜の形状や大きさにすることにより,形成されている。 図4に示す例では,ブロック単体B4(「D」を表出)を中心に,ブロック とにより分解されるように,文字の輪郭形状を構成する凸部や凹部あるいは孔を適宜の形状や大きさにすることにより,形成されている。 図4に示す例では,ブロック単体B4(「D」を表出)を中心に,ブロック単体(B1,B2,B3)が係合して連結されるように形成されている。 【0029】従って,本実施の形態に係る組ブロック具を組み立てるときは,以下のようにして行なう。 先ず,図4①に示すように,ブロック単体B2の一端に,ブロック単体B4の孔を嵌め込む。ブロック単体B2の他端が下になって接地される。これにより,鳥の脚と胴体ができる。 【0030】次に,図4②に示すように,ブロック単体B3をブロック単体B4に設けたスライド溝に係合する。これにより,鳥の頭部ができる。 それから,図4③に示すように,ブロック単体B1の左右羽部の間- 16 -にブロック単体B4を挾持させてブロック単体B4に取り付ける。このブロック単体B1により羽が出来上がり,図4④に示すように,鳥が完成する。 【0031】この場合,ブロック単体(B1,B2,B3,B4)の組み立てを楽しむことができるとともに,ブロック単体(B1,B2,B3,B4)は,対象物T(「鳥」)の名称(英文字)の綴り(スペル)から構成されているので,この綴り(スペル)を覚えるなどの学習効果が得られる。また,ブロック単体(B1,B2,B3,B4)は,4文字で構成されているので,従来の頭文字だけのものに比較して,組み立てや,スペルの理解に知能を要する。」(カ)「【0032】尚,上記実施の形態において,対象物を,動物の「うさぎ」「鳥」にしたが,必ずしもこれに限定されるものではなく,どのようなものを対象物としても良いことは勿論である。」(キ)「【0033】【発明の効果】以上説明したように本発明の組ブロック 「うさぎ」「鳥」にしたが,必ずしもこれに限定されるものではなく,どのようなものを対象物としても良いことは勿論である。」(キ)「【0033】【発明の効果】以上説明したように本発明の組ブロック具によれば,各ブロック単体を,対象物の意味を表現した文字列の各文字に夫々対応して設け,各ブロック単体の輪郭形状に,対応する文字の形状を表出したので,ブロック単体の組み立てを楽しむことができるとともに,組み立てられた対象物が持つ名称の綴り(スペル)等の特定の意味を表現した文字列と使用するブロック単体との関連をもたせたことから,この文字列を覚えるなどの学習効果を発揮させる機能の向上を図ることができる。 【0034】- 17 -また,対象物にこれに関連する付帯物を付加して構成し,付帯物の形状を表出したブロック単体を含めた場合には,対象物の構成に加え,付帯物にも思考を及ばせなければならないので,それだけ組み立てや理解に知能を要することから,より高い学習効果を得ることができる。 【0035】そして,対象物としてその文字列が4以上の文字になるものにしたので,従来の頭文字だけのものに比較して,組み立てや,スペルの理解に知能を要することから,高い学習効果を得ることができる。 更に,対象物としてその文字列が6以上の文字になるものにした場合には,組み立てが複雑になっており,それだけ,組み立てや,スペルの理解に知能を要することから,高い学習効果を得ることができる。」イ検討(ア)本願明細書の特許請求の範囲の記載(前記第2,2)及び段落【0032】の記載(前記ア(カ))によれば,本願発明1ないし4において,「複数のブロック単体を係合により結合させて構成され特定の意味を持つ対象物」は,発明の詳細な説明に実施例(前記ア(エ),(オ))として記載された「う ア(カ))によれば,本願発明1ないし4において,「複数のブロック単体を係合により結合させて構成され特定の意味を持つ対象物」は,発明の詳細な説明に実施例(前記ア(エ),(オ))として記載された「うさぎ」や「鳥」に限定されていない。 (イ)対象物を「うさぎ」とする実施例に関する記載(前記ア(エ))において,「各ブロック単体は,・・・互いに係合されて組み立てられ,係合を解除することにより分解されるように,文字の輪郭形状を構成する凸部や凹部あるいは孔を適宜の形状や大きさにすることにより形成されている」(段落【0019】)と説明されている。 しかし,「うさぎ」の各部分と「R」,「A」,「B」,「B」,「I」,「T」の各文字の輪郭形状を有する各ブロック単体と- 18 -の対応関係については,単に1つの例(「R」の輪郭形状を有するブロック単体により耳付きの頭部を構成し,「A」の輪郭形状を有するブロック単体により前足を構成し,「B」の輪郭形状を有するブロック単体により2個の胴部及び後足を構成し,「T」の輪郭形状を有するブロック単体により頸部を構成し,「I」の輪郭形状を有するブロック単体により人参を構成するもの(段落【0017】,【0018】))が示されているにとどまり,①「うさぎ」の各部分と「R」,「A」,「B」,「B」,「I」,「T」の各文字の輪郭形状を有する各ブロック単体との対応関係をどのようなものとするのか,②各「ブロック単体」の凸部や凹部あるいは孔をどのような形状及び大きさとするのか,③各々の「ブロック単体」の凸部や凹部あるいは孔の形状及び大きさの相互関係をどのようなものとするのかについて,これらを決定するに際し,当業者に対する指針となるような記載は見当たらない。 (ウ)対象物を「鳥」とする実施例に関する記載(前記ア(オ))におい きさの相互関係をどのようなものとするのかについて,これらを決定するに際し,当業者に対する指針となるような記載は見当たらない。 (ウ)対象物を「鳥」とする実施例に関する記載(前記ア(オ))においても,「各ブロック単体は,・・・互いに係合されて組み立てられ,係合を解除することにより分解されるように,文字の輪郭形状を構成する凸部や凹部あるいは孔を適宜の形状や大きさにすることにより形成されている」(段落【0028】)と説明されている。 しかし,「鳥」の各部分と「B」,「I」,「R」,「D」の各文字の輪郭形状を有する各ブロック単体の対応関係については,単に1つの例(「B」の輪郭形状を有するブロック単体により羽を構成し,「I」の輪郭形状を有するブロック単体により脚を構成し,「R」の輪郭形状を有するブロック単体により頭部を構成し,「D」の輪郭形状を有するブロック単体により胴部を構成するもの(段落【0027】))が示されているにとどまり,①「鳥」の各部分と「- 19 -B」,「I」,「R」,「D」の各文字の輪郭形状を有する各ブロック単体との対応関係をどのようなものとするのか,②各「ブロック単体」の凸部や凹部あるいは孔をどのような形状及び大きさとするのか,③各々の「ブロック単体」の凸部や凹部あるいは孔の形状及び大きさの相互関係をどのようなものとするのかについて,これらを決定するに際し,当業者に対する指針となるような記載は見当たらない。 (エ)発明の詳細な説明の記載を検討しても,「対象物」が「うさぎ」や「鳥」以外の場合について,当業者に対する指針となるような記載は見当たらない。 (オ)以上によれば,少なくとも「対象物」が「うさぎ」や「鳥」以外の場合には,発明の詳細な説明において,①「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」各々の うな記載は見当たらない。 (オ)以上によれば,少なくとも「対象物」が「うさぎ」や「鳥」以外の場合には,発明の詳細な説明において,①「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」各々の「ブロック単体」を「対象物」のどの部分に対応させるのか,②「ブロック単体」の凸部や凹部あるいは孔をどのような形状及び大きさとするのか,③各々の「ブロック単体」の凸部や凹部あるいは孔の形状及び大きさの相互関係をどのように決定するのか,ということについて,何ら具体的な指針が示されていないから,当業者が本願発明1ないし4を実施しようとすれば,過度の試行錯誤が必要となるといわざるを得ない。 そうすると,発明の詳細な説明の記載は,当業者が本願発明1ないし4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものということはできず,これと同旨の理由(1)アに係る審決の認定判断に誤りはない。 ウ原告の主張に対し原告は,①審査経過,②本願発明の性質及び本質,③当業者の水準及び実施能力,④登録例に照らし,理由(1)アに係る審決の認定判断は誤りであると主張する。 - 20 -しかし,以下のとおり,原告の主張は失当である。 (ア)審査経過について原告は,最初の拒絶理由通知をした審査官が,特許法36条違反を指摘しなかったことからすれば,同審査官は,発明の詳細な説明の記載について,当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分なものと把握していたと主張する。 しかし,審査官が,最初の拒絶理由通知において,特許法36条違反の拒絶理由を指摘しなかった以上,発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を充足すると理解していたのであるから,特許法36条違反の拒絶理由を通知することができないとする原告の主張は根拠がなく,失当として排斥されるべきである。 (イ)本願発 細な説明の記載が実施可能要件を充足すると理解していたのであるから,特許法36条違反の拒絶理由を通知することができないとする原告の主張は根拠がなく,失当として排斥されるべきである。 (イ)本願発明の性質及び本質についてa原告は,①本願発明のようなパズル性あるいは知育性を有する「組ブロック」の技術分野においては,逐一,実施例を挙げなくても,発明を一般化することができる,②本願発明は,「各ブロック単体」を「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる文字列の各文字に夫々対応して設け」た点に,発明の本質があるから,係合という大きな概念での特定で十分である,と主張する。 しかし,本願明細書の前記ア(イ),(ウ)及び(キ)の各記載に示されるように,本願発明は,「組み立てられた対象物が持つ名称の綴り(スペル)等の特定の意味を表現した文字列と使用するブロック単体との関連をもたせ」(段落【0007】,【0008】)るようにした点を課題解決手段とするものであるから,発明の詳細な説明には,この点を基礎付ける具体的な構成,すなわち,①各々の「ブロック単体」を「対象物」のどの部分に対応させるのか,②「ブロック単体」の凸部や凹部あるいは孔をどのような形状及び大きさ- 21 -とするのか,③各々の「ブロック単体」の凸部や凹部あるいは孔の形状及び大きさの相互関係をどのように決定するのかについて,少なくとも当業者の指針となるに足りる記載を有することが必要というべきである。 原告の上記主張は,いずれも採用することができない。 b原告は,本願発明が先駆的な発明(基本発明)であるとも主張する。 しかし,本願発明が新規性・進歩性を有するか否かと,発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を充足するか否かは,別個の問題である。 原告の上記主張は,主張自体失当であ (基本発明)であるとも主張する。 しかし,本願発明が新規性・進歩性を有するか否かと,発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を充足するか否かは,別個の問題である。 原告の上記主張は,主張自体失当である。 (ウ)当業者の水準及び実施能力について原告は,本願発明のようなパズル性あるいは知育性を有する「組ブロック」の技術分野においては,当業者の水準をある程度高く想定するべきであり,また,実際にも,その水準は相当に高いものであるから,経験則ないし技術常識に基づいて,本願発明の構成から,本願発明に係る具体的な種々の組ブロック具を創作できると主張する。 しかし,前記(イ)aのとおり,発明の詳細な説明は,本願発明における課題解決手段を基礎付ける具体的な構成を決定するための指針を何ら記載していない以上,当業者は,これを具体化するに際して,独自の創作を強いられることになるのであって,実施可能要件を充足するということはできない。 原告は,試行錯誤したが,その結果,種々の組ブロック具(動物)を作成できたとも主張する。しかし,原告が,結果として,種々の組ブロック具(動物)を作成できたとしても,その事実が,発明の詳細な説明に,結果を導くための指針が記載されていないという前記認定- 22 -を左右することにはならない。この点の原告の主張も失当である。 (エ)登録例について原告は,他の発明又は考案において,特許又は実用新案として登録された例がある旨主張する。 しかし,原告主張の登録例の存在は,発明の詳細な説明の記載について,当業者が本願発明1ないし4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものということができるか否かとは,直接かかわりのない事情にすぎない。 原告の上記主張は,主張自体失当である。 (2)小括原告は,理由(1)アに係る審決の認定判断 きる程度に明確かつ十分に記載したものということができるか否かとは,直接かかわりのない事情にすぎない。 原告の上記主張は,主張自体失当である。 (2)小括原告は,理由(1)アに係る審決の認定判断に関し,その他縷々主張するが,いずれも理由がない。 上記検討したところによれば,理由(1)イの認定判断の誤りをいう原告の主張について検討するまでもなく,原告主張の取消事由1は理由がない。 結論 以上によれば,理由(2)ア及びイの当否について検討するまでもなく,本願は特許を受けることができないとした審決の結論は,これを是認することができる。 よって,原告主張の取消事由2について判断するまでもなく,原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部裁判長裁判官飯村敏明- 23 -裁判官齊木教朗裁判官嶋末和秀- 24 -(別紙)

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