平成28(行ケ)10089 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年5月15日 知的財産高等裁判所 3部 判決 請求棄却
ファイル
hanrei-pdf-86786.txt

キーワード

判決文本文12,836 文字)

平成29年5月15日判決言渡 平成28年(行ケ)第10089号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成29年3月6日判決 原告 BERNARDFRANCESERVICE合同会社 訴訟代理人弁護士 笹本摂向多美子 訴訟代理人弁理士 木村高明 被告 ラボラトアレフィニサンスソシエテパルアクシオンシンプリフィエ 訴訟代理人弁理士 小暮理恵子 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 特許庁が無効2015-890065号事件について平成28年3月1日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件商標 原告は,次の登録商標の商標権者である(甲1)。 (1) 登録番号第5581902号 (2) 登録商標(商標の構成) (色彩については原本参照) (3) 指定商品第3類化粧品,香料 (4) 出願日平成24年12月11日 (5) 登録日平成25年5月17日 2 特許庁における手続の経緯等 (1) 被告は,平成27年8月6日付けで,特許庁に対し,本件商標は商標法(以下,単に「法」という。)8条1項に該当するとして,その登録を無効とすることを求めて,審判を請求した(無効2015-890065号)。 (2) 特許庁は,平成28年3月1日,「登録第5581902号の登録を無効とする。」との審決(本件審決)をし,その謄本は,同月10日,原告に送達された。 (3) 原告は,平成28年4月8日,本件審決を不服として,その取消しを求める本件訴訟を提起した。 3 本件審決の理由の要旨 本件審決の理由の要 ,その謄本は,同月10日,原告に送達された。 (3) 原告は,平成28年4月8日,本件審決を不服として,その取消しを求める本件訴訟を提起した。 3 本件審決の理由の要旨本件審決の理由の要旨は,次のとおりである。 (1) 引用商標請求人(被告)が引用する国際登録第1159360号商標(引用商標)は,「FINESSENCE」の文字を書して成り,2012年(平成24年)11月16日にフランスにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して2013年(平成25年)3月19日に国際商標登録出願をし,第3類「cosmetics, aromatherapyoils」を始めとする第3類,第4類,第5類及び第32類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,平成26年5月16日に設定登録されたものであり,その商標権は現に有効に存続しているものである。 (2) 本件商標と引用商標の類否ア本件商標は,薄い青緑色で表された「FINESSENCE」の文字(以下「本件文字」という。)にアヤメの花のような図が白抜きされた円形の図形(以下「本件図形」という。)を配して成るものである。 そして,本件商標の構成態様から,本件商標の構成中の上記文字部分(以下「本件文字部分」という。)と図形部分(以下「本件図形部分」という。)は,それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められないものであり,かつ,いずれの部分も取引者・需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。 そうすると,本件商標は,その構成中本件文字部分を要部として抽出し,同部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断すること は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。 そうすると,本件商標は,その構成中本件文字部分を要部として抽出し,同部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することができる。 そして,本件商標の構成中本件文字部分は,該文字に相応し,「フィネッセンス」及び「ファイネッセンス」の称呼を生じ,特定の観念を生じない。 イ引用商標は,「FINESSENCE」の文字から成り,該文字に相応 し「フィネッセンス」及び「ファイネッセンス」の称呼を生じ,特定の観念を生じない。 ウ本件商標の構成中,要部と認められる本件文字部分と引用商標を比較すると,両者は外観において「FINESSENCE」の構成文字を共通にするものであり,また称呼においても「フィネッセンス」及び「ファイネッセンス」の称呼を共通にする。そして,観念において両者は,いずれも特定の観念を有しないから比較できない。 そうすると,両者は,外観において構成文字を共通にし,観念において比較できず,称呼を共通にするものであるから,両者の外観,観念,称呼等によって取引者・需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両者は相紛れるおそれのある類似のものと判断するのが相当である。 してみれば,本件商標は,引用商標と類似する。 (3) 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の類否本件商標の指定商品第3類「化粧品,香料」と引用商標の指定商品中第3類「cosmetics,aromatherapyoils」(仮訳:「化粧品,アロマセラピー用オイル」)等は同一又は類似の商品である(争いなし)。 (4) 本件商標及び引用商標に係る出願人について本件商標は,平成24年12月11日に登録出願されたものであり,引用商標は,2012年(平成24年 )等は同一又は類似の商品である(争いなし)。 (4) 本件商標及び引用商標に係る出願人について本件商標は,平成24年12月11日に登録出願されたものであり,引用商標は,2012年(平成24年)11月16日にした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し国際商標登録出願されたものであって,同主張が認められたものであるから,本件商標よりも引用商標が先願と認められる。 そうすると,引用商標に係る商標登録出願人が最先の商標登録出願人であり,かつ,同人と本件商標に係る商標登録出願人(商標権者)とは同一人ではない(両商標の出願に係る事実関係につき争いなし)。 (5) 以上のとおり,本件商標と引用商標は,法8条にいう「同一又は類似の商品又は役務について使用をする同一又は類似の商標について異なつた日に2以上の商標登録出願があつたとき」に該当し,最先の商標登録出願人でない者(商標権者)が商標登録を受けたものといわざるを得ないから,本件商標は,同条1項の規定に違反して登録されたものである。 第3 原告が主張する取消事由 1 取消事由1(本件商標の認定の誤り)本件審決は,本件商標の構成中の本件文字部分と本件図形部分は,それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められないものであり,かつ,いずれの部分も取引者・需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるから,本件商標の構成中本件文字部分を抽出し,この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することができると認定した。 しかしながら,次のとおり,本件商標の図形部分と文字部分はそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているから,その構成部分の 断することができると認定した。 しかしながら,次のとおり,本件商標の図形部分と文字部分はそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているから,その構成部分の一部である文字部分のみを抽出して,引用商標と対比することは誤りである。 (1) 構成上,外観上の一体性本件商標は,「FINESSENCE」の文字(本件文字ないし本件文字部分)と,本件文字の下方であって,かつ,本件文字を構成するアルファベットの文字列の範囲内において読み下し方向における最初の「N」の文字の下方に配置された図形(本件図形ないし本件図形部分)との結合商標である。 本件図形は,黒丸となる背景地と,同背景地に白抜きで表現された,模様化された植物(アヤメ)の図形要素とから成る。同背景地は,本件文字の商標見本の上下方向における幅寸法の約2倍の径寸法に形成されており,本件文字と何ら違和感を生じさせない大きさで表され,かつ,本件文字の,商標 見本の左右方向における長さ寸法の範囲内において,「N」の下方に配置されている。しかも,本件文字の語のアクセントである,「I」の文字又は最初の「E」の文字に挟まれる「N」の文字の下方に配置されている。そして,本件文字と本件図形とは,いずれも薄い青緑色で統一的に着色され,色彩的にもまとまりよく一体感を持って描かれている。 その結果,取引者・需要者は,取引過程において,本件商標の構成要素である本件文字を視覚を通じて認識する際には,必ずその下方に本件文字と違和感なく表現,配置された本件図形を同時に視認して認識する。 したがって,取引者・需要者が,本件商標を取引過程において視認する際には,本件文字と本件図形とは同時認識の範囲内にあり,両者は不可分一体のものとして把握される。 よって,本件商標におけ 識する。 したがって,取引者・需要者が,本件商標を取引過程において視認する際には,本件文字と本件図形とは同時認識の範囲内にあり,両者は不可分一体のものとして把握される。 よって,本件商標における本件文字部分と本件図形部分とは,その外観的な構成において,不可分一体に結合されたものと認めるのが相当である。 (2) 観念の一体性本件文字は造語であることから,特定の観念は生じない一方,本件図形からは,「花」,「アヤメ」,「アヤメ」の英語名「IRIS」,あるいは,「アヤメ」の花言葉である「希望」の観念が生じる。 また,原告は,平成21年11月から,フランスのロドルフ・A博士(以下「A博士」という。)が設立したI.R.I.S研究所(“InstitutedeRechercheInternationalportlaSante”の略。以下「イリス研究所」という。)から「FINESSENCE」シリーズのアロマ製品(以下,「本件シリーズ」ないし「本件アロマ製品」という。)を輸入し,国内で販売してきたものであるところ,A博士はイリス研究所における研究を通じて本件シリーズを開発したものであり,イリス研究所のシンボルマークは本件図形部分に相当するイリスすなわちIRIS(アヤメの英語名)であるアヤメの図である(補足するに,A博士は,フランスのアロマテラピー・オーガニック 芳香植物研究開発の第一人者であるところ,日本においても,オーガニック農法,アロマオイルの調合,メディカルアロマセラピー等の研究のパイオニア的存在として有名であり,A博士が設立したイリス研究所は,アロマ製品の取扱店やアロマ製品に興味がある需要者においてよく知られている。)。 したがって,本件文字とイリス研究所のシンボルマークである本件図形が一体として相まって,本件シリ したイリス研究所は,アロマ製品の取扱店やアロマ製品に興味がある需要者においてよく知られている。)。 したがって,本件文字とイリス研究所のシンボルマークである本件図形が一体として相まって,本件シリーズの開発者であり創業者であるA博士とイリス研究所を象徴する旨の観念も生じる。 (3) 取引の実情(市場における一体的な使用)前記のとおり,原告は,平成21年11月から,A博士が設立したイリス研究所から本件アロマ製品を輸入し,国内で販売してきたものであるところ,同製品の包装には,本件商標を構成する本件文字と本件図形(本件商標とは若干位置が異なる。)が常に一体として表示されており,さらに,原告自身もウェブサイトや広告・カタログ等に本件文字と本件図形を常に一体として表示している(なお,被告や後に被告が日本における総代理店に指定した株式会社大香が販売する本件アロマ製品においても本件文字と本件図形が常に一体として表示されている。)。 このように,本件商標を構成する本件文字とイリス研究所のシンボルマークである本件図形は,市場において常に一体として使用されており,この点からも,両者が不可分一体に相まって本件商標の識別機能を担っていることが理解される。したがって,本件商標の本件文字部分と本件図形部分は不可分一体のものとして観察されるべきである。 (4) 以上のとおり,本件商標に接した取引者・需要者は,本件文字部分と本件図形部分を不可分一体のものとして認識するから,本件文字部分のみを抽出して類否判断に供するのは誤っている。 2 取消事由2(類否判断の誤り)本件審決は,本件文字部分を抽出した上で,引用商標との対比を行い,本件 商標と引用商標は外観,称呼等に照らして類似すると判断したが,次のとおり,その判断には類否判断を誤る違法がある。 )本件審決は,本件文字部分を抽出した上で,引用商標との対比を行い,本件 商標と引用商標は外観,称呼等に照らして類似すると判断したが,次のとおり,その判断には類否判断を誤る違法がある。 (1) 引用商標外観は黒くシンプルな書体で「FINESSENCE」と書した構成であり,辞書に存在しない造語であるから特定の観念を生じず,フランス語読みで「フィニサンス」,「フィネセンス」,英語読みで「ファイネッセンス」,「フィネッセンス」の称呼が生じる。 (2) 本件商標と引用商標の類否ア外観前記のとおり,本件商標は本件文字部分と本件図形部分とが不可分一体のものとして取引者・需要者に認識されるのに対し,引用商標は「FINESSENCE」の文字だけから成るものであって,外観は明らかに異なる。 イ観念引用商標は特定の観念を生じないのに対し,本件商標は,本件文字部分は造語であることから特定の観念は生じない一方,本件図形部分からは,「花」,「アヤメ」,「IRIS」(アヤメの英語名),あるいは「アヤメ」の花言葉である「希望」の観念が生じる。 ウ称呼引用商標においては,フランス語読みで「フィニサンス」,「フィネセンス」,英語読みで「ファイネッセンス」,「フィネッセンス」の称呼が生じるのみであるのに対し,本件商標においては,本件文字部分の称呼(引用商標の称呼と同じ)に加えて,本件図形部分から,「アヤメ」,「アイリス」,「イリス」の称呼が生じる。 したがって,称呼においても,本件商標と引用商標は類似しない。 エ取引の実情 原告は,当初はA博士・イリス研究所から本件アロマ製品を輸入し,その後は被告からこれを輸入し(被告は本件シリーズの事業を,A博士・イリス研究所から引き継ぐ者である。),日本国内で販売するも 原告は,当初はA博士・イリス研究所から本件アロマ製品を輸入し,その後は被告からこれを輸入し(被告は本件シリーズの事業を,A博士・イリス研究所から引き継ぐ者である。),日本国内で販売するものである。 したがって,原告の扱う商品の出所は,全てA博士・イリス研究所若しくはその事業を引き継ぐ被告であるから,原告商品の出所と被告商品の出所は実質的に同一である。したがって,取引市場において,本件商標を使用した商品と引用商標を使用した商品との間で,出所の誤認混同は生じないとの取引の実情が存在する。 また,本件商標の指定商品に属し,本件商標が付されるアロマ製品は,肌に塗ったり,嗅いだり,浴槽に入れたり等,人体に直接使用する商品であるから,正しく精油を選ぶことが重要であり,取引者・需要者は,ブランド名,品名(植物の名前及び通称名),学名,抽出部分(部位),抽出方法,生産国(生産地)又は原産国(原産地),内容量,発売元又は輸入元を十二分に確認した上で,精油を購入する。したがって,取引者・需要者の注意力は高く,一般にアロマ製品については商品の出所につき誤認混同は生じにくい。 (3) 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれも相違しており,かつ,原告の商品は,被告及び被告の前身(A博士・イリス研究所)から輸入されたものであるとの取引の実情に照らして,商品の出所の誤認混同は生じないため,互いに類似しない商標であるというべきである。 したがって,本件審決の判断は誤っている。 3 取消事由3(出願人の同一性についての判断の誤り)本件審決は,引用商標に係る商標登録出願人と本件商標に係る商標登録出願人は同一人ではないと認定したが,誤りである。 すなわち,法8条1項は,いわゆる先願主義を規定するものであるところ,先後願の出 本件審決は,引用商標に係る商標登録出願人と本件商標に係る商標登録出願人は同一人ではないと認定したが,誤りである。 すなわち,法8条1項は,いわゆる先願主義を規定するものであるところ,先後願の出願人が同一であるときは適用されない。その趣旨は,同一人であれ ば,たとえ先後願の商標出願が類似したとしても,商品について出所の誤認混同が生じないからである。 本件で,引用商標の出願人は被告であり,被告はA博士・イリス研究所から本件シリーズの事業を引き継いだ者であり,他方,本件商標の出願人である原告は,イリス研究所及び被告から本件シリーズの商品を購入して,日本で販売するものである。 原告と被告が扱う商品の出所は,共にA博士・イリス研究所又はその事業を引き継いだ被告であって実質的に同一であるから,本件では,たとえ先後願の商標出願が類似していたとしても,本件商標を付した商品と引用商標を付した商品の間で,出所の誤認混同の問題は生じない。 その意味で,引用商標に係る商標登録出願人と,本件商標に係る商標登録出願人は,実質的に同一人と評価可能であるから,本件で法8条1項の適用はない。 したがって,これを同一人ではないとして,法8条1項を適用した本件審決の判断は誤りである。 第4 被告の反論 1 取消事由1(本件商標の認定の誤り)について原告は,本件商標について,「本件商標の図形部分と文字部分はそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していると認められる場合であるから,その構成部分の一部である文字部分のみを抽出して,引用商標と対比することは誤りである」と主張する。 しかしながら,本件審決にあるとおり,本件商標は,本件文字と本件図形を配して成るものであり,その構成態様から本件文字部分と本件図形部 を抽出して,引用商標と対比することは誤りである」と主張する。 しかしながら,本件審決にあるとおり,本件商標は,本件文字と本件図形を配して成るものであり,その構成態様から本件文字部分と本件図形部分は分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められないものであり,かつ,いずれの部分も商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えると判断されるものである。 また,原告は,本件商標を市場において一体的に使用していると主張するが,実際には,文字と図形が本件商標中のそれとは異なる位置に配置されているものが散見され,また,アヤメの花のような図単体で構成されており,背景の円形が描かれていないなど,本件商標中のそれとは異なる図形が使用されているものも存する。このように,文字と図形の配置が本件商標と異なることは,原告がその主張に反して,本件文字部分と本件図形部分を一体不可分なものではなく,二つの異なる要素として認識していることの証左である。 以上のとおり,本件商標は,本件文字部分と本件図形部分とが,分離観察することが取引上不自然であるほどに不可分に結合しているとは認められないものであり,したがって,その構成中,本件文字部分を要部として抽出し,同部分のみを引用商標と比較して類否判断できる。この点において,本件審決の認定に誤りはない。 2 取消事由2(類否判断の誤り)について原告は,「本件審決は,本件文字部分を抽出した上で,引用商標との対比を行い,本件商標と引用商標は外観,称呼等に照らして類似すると判断したが,その判断には類否判断を誤る違法がある」と主張する。 しかしながら,本件商標において,本件文字部分は単独で取引者・需要者に対し商標の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもので と判断したが,その判断には類否判断を誤る違法がある」と主張する。 しかしながら,本件商標において,本件文字部分は単独で取引者・需要者に対し商標の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであって,前記のとおり,当該部分を要部として抽出して他人の商標と比較し商標の類否を判断することができるというべきである。 そこで,本件商標の構成中本件文字部分と引用商標を比較すると,両商標は外観において同一の構成文字から成り,称呼については「フィネッサンス」,「フィネッセンス」,「ファイネッセンス」等を共通にするものであり,観念については,いずれも造語であって特定の観念を有しない。したがって,両商標は,外観上構成文字を共通にし,称呼を共通にし,観念において比較し得ないものであり,その外観,称呼,観念等によって取引者や需要者に与える印象, 記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両商標は同一又は類似の商品に使用した場合に相紛れるおそれのある類似の商標であると判断すべきである。 また,原告は,「原告商品の出所と被告商品の出所は実質的に同一である」から,「取引市場において,本件商標を使用した商品と引用商標を使用した商品との間で,出所の誤認混同は生じないとの取引の実情が存在する」とか,「本件商標と引用商標とは,…商品の出所の誤認混同は生じないため,互いに類似しない商標である」とも主張する。 しかしながら,仮に商品の出所が同じであったとしても,そのような同一出所と,商標自体を非類似とする判断の間には因果関係がなく,理解困難な主張であるといわざるを得ない。したがって,かかる原告の主張も失当である。 3 取消事由3(出願人の同一性についての判断の誤り)について原告は,「本件審決は,引用商標に係る商標登録出願人と本件商標に係る商標登録 るを得ない。したがって,かかる原告の主張も失当である。 3 取消事由3(出願人の同一性についての判断の誤り)について原告は,「本件審決は,引用商標に係る商標登録出願人と本件商標に係る商標登録出願人は同一人ではないと認定したが,誤りである」と主張する。 しかしながら,本件商標に係る商標登録出願人である原告は,Bに所在する「BERNARDFRANCESERVICE合同会社」であり,引用商標に係る商標登録出願人である被告は,Cに所在する「ラボラトアレフィニサンスソシエテパルアクシオンシンプリフィエ」である。両法人は明らかに別法人であって,同一人であるとの原告の主張は失当である。 第5 当裁判所の判断 1 取消事由1(本件商標の認定の誤り)について(1) 複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合には,その構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されないが,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められ る場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるものと解される(最一小判昭和38年12月5日民集17巻12号1621頁,最二小判平成5年9月10日民集47巻7号5009頁,最二小判平成20年9月8日集民228号561頁参照)。 (2) これを本件についてみるに,本件商標は,「FINESSENCE」というアルファベット10 成5年9月10日民集47巻7号5009頁,最二小判平成20年9月8日集民228号561頁参照)。 (2) これを本件についてみるに,本件商標は,「FINESSENCE」というアルファベット10文字を横文字にして成る文字部分(本件文字部分)と,アヤメの花のような図が白抜きされた円形の図形(本件図形)を,上下二段に組み合わせて構成されるものであるところ,その構成態様からして,各構成部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。また,上記のとおり,本件文字部分はアルファベット10文字を横書きにして成るのに対し,本件図形部分の横幅は本件文字の3文字分(左から2文字目ないし4文字目)程度しかなく,その大きさの比からして,本件文字部分が本件商標の中心的構成部分に当たることは明らかである。加えて,原告も認めるとおり,本件文字部分は,それ自体造語であって一般的な用語ではないから,出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分であると認められる。 そうすると,本件商標のうち本件文字部分を要部として抽出し,同部分のみを引用商標と比較して商標の類否を判断することは許されるというべきであり,この点において,本件審決の認定に誤りがあるとは認められない。 (3) 原告の主張について原告は,本件審決の認定が誤りである理由として,本件商標の構成及び外観の一体性や,本件商標から生じる観念の一体性について種々主張するが,上記(2)で説示したところに照らし,いずれも採用できない。 また,原告は,取引の実情として,本件アロマ製品の包装において,本件 商標を構成する本件文字と本件図形が常に一体として使用されているとの事情(市場における一体的な使用)も考慮すべきである旨主張するが,そもそも,商標 して,本件アロマ製品の包装において,本件 商標を構成する本件文字と本件図形が常に一体として使用されているとの事情(市場における一体的な使用)も考慮すべきである旨主張するが,そもそも,商標の類否判断に当たり考慮することのできる取引の実情とは,その指定商品全体についての一般的,恒常的なそれを指すものであって,当該商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的,限定的なそれを指すものではない(最一小判昭和49年4月25日審決取消訴訟判決集昭和49年443頁参照)。したがって,かかる原告の主張も失当である。 2 取消事由2(類否判断の誤り)について(1) 商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかも,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最三小判昭和43年2月27日民集22巻2号399頁参照)。 (2) これを本件についてみるに,本件商標の構成部分である本件文字部分と引用商標は,少なくとも,外観において同一の構成文字から成り,称呼においても同一であることが明らかであって(いずれも「フィニサンス」,「フィネッサ(セ)ンス」等の称呼が生じるものと認められる。),そうである以上,アロマ製品等に使用されるという実情を踏まえても,各商標が本件商標の指定商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあることは否定できない。よって,この点においても,本件審決の判断に誤りがあるとは認められない。 (3) 原告の主張について 指定商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあることは否定できない。よって,この点においても,本件審決の判断に誤りがあるとは認められない。 (3) 原告の主張について原告が主張する取消事由2は,本件商標につき,本件文字部分と本件図形部分の分離観察が許されないこと(取消事由1)を前提とするものであって, その前提が採用できないことは,前記1のとおりである。 したがって,取消事由2に関する原告の主張も採用できない。 3 取消事由3(出願人の同一性についての認定の誤り)について原告は,法8条1項は,いわゆる先願主義を規定するものであるところ,先後願の出願人が同一であるときは適用されない(その趣旨は,同一人であれば,たとえ先後願の商標出願が類似したとしても,商品について出所の誤認混同が生じないからである。)とした上で,原告と被告が扱う商品の出所は,共にA博士・イリス研究所(又はその事業を引き継いだ被告)であって実質的に同一であるから,たとえ先後願の商標出願が類似していたとしても,本件商標を付した商品と引用商標を付した商品の間で,出所の誤認混同の問題を生じることはなく,その意味で,引用商標に係る商標登録出願人と,本件商標に係る商標登録出願人は,実質的に同一人と評価可能であるから,本件で法8条1項の適用はないと主張する。 しかしながら,仮に原告と被告(ないし被告から許諾を受けた第三者)が扱う商品がフランス国内で製造された同一の商品であったとしても,これを日本国内に輸入し,日本国内で販売する業者が異なる以上,その出所が異なるものとして扱うべきことは当然である。 原告の主張は,要するに,輸入品である商品の出所を日本国外の輸出元(供給元)に限定してその同一性を論じるものであり,輸出元(供給元)が同一であ の出所が異なるものとして扱うべきことは当然である。 原告の主張は,要するに,輸入品である商品の出所を日本国外の輸出元(供給元)に限定してその同一性を論じるものであり,輸出元(供給元)が同一であれば先後願の同一又は類似を問題にする必要がない(その意味で出所の誤認混同が生じるおそれがない)とするものであるが,日本における商標登録出願人(日本において商標登録を受けようとする者)は,必ずしも輸出元(供給元)であるとは限られず,日本国内への輸入者や日本国内における販売者等も含まれるのであるから,このような者が商標登録出願をした場合における出所の誤認混同を防止する必要があるというべきであり,原告の主張は失当である。しかるところ,本件商標の商標登録出願人は原告であり,他方,引用商標の商標 登録出願人は原告とは別個の法人である被告であるから(甲1,2,27,弁論の全趣旨),法8条1項における「商標登録出願人」も異なることが明らかである。 したがって,取消事由3に関する原告の主張も採用できない。 4 結論以上の次第であるから,原告の主張する取消事由はいずれも理由がなく,本件審決に取り消されるべき違法はない。 よって,原告の請求を棄却することとして主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官鶴岡稔彦 裁判官杉浦正樹 裁判官寺田利彦 田利彦

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る