- 1 -主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 第1請求の趣旨 原告が,被告に対し,雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 被告は,原告に対し,平成16年4月1日以降毎月25日限り金32万2780円を支払え。 第2事案の概要 本件は,原告が,平成5年2月1日,被告との間で契約期間を1年間とする嘱託社員として労働契約を締結し,以後,労働契約を更新していた(以下,この労働契約を更新されたものと合わせて「本件嘱託契約」という)ところ,被告から,平成16。 年3月31日をもって雇用を打ち切る旨の意思表示をされたものであるが,この雇用打切りは,無効であるとして,原告が,被告に対し,雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに,平成16年4月1日以降,毎月25日限り,金32万2780円の賃金の支払を求めるというものである。被告は,その雇用打切りの理由として,①本件嘱託契約につき終了の合意があった,②本件嘱託契約は期間の定めがあり,その期間が満了したというものであると主張し,これに対し,原告は,上記被告の各主張をいずれも否認した上で,①仮に,本件嘱託契約が期間の定めのある契約であるとしても,期間の定めのない契約に転化していたか,あるいは実質的に期間の定めのない雇用契約と異ならない状態となっていたものである,②仮に,本件嘱託契約が,期間の定めのない契約に転化していない,あるいは実質的に期間の定めのない雇用契約と異ならない状態となっていないとしても,原告には,雇用継続に対する合理的な期待があったものであると主張したところ,被告は,これらを全て否認し,仮に,原告の上記主張が認められるとしても,本件嘱託契約は,同日をもって雇(,「」。),止めされた以下 する合理的な期待があったものであると主張したところ,被告は,これらを全て否認し,仮に,原告の上記主張が認められるとしても,本件嘱託契約は,同日をもって雇(,「」。),止めされた以下この本件嘱託契約の雇止めを本件雇止めというと主張しさらにこれに対し,原告が,仮に,被告の上記主張が認められるとしても,解雇権濫用法理が類推適用されるから,本件雇止めは解雇権の濫用にあたるものであると主張しているものである。 争いのない事実(1)原告は,平成5年2月1日,嘱託社員として契約期間1年で被告に採用され,毎年,労働契約書の更新を繰り返して11年間勤務してきた者である。 ,(「」。)原告は被告の元社員で通勤災害により死亡した亡夫a以下亡aというとの間に二人の子どもをもうけ,長男は,現在大学院修士課程に在籍しており,二男は,平成16年3月高等学校を卒業し,大学受験勉強中である。 (2)被告は,医薬品の製造・販売業を営む株式会社であり,連結子会社39社,非,「」連結子会社19社関連会社4社の合計63社で構成されている三共グループの中核会社であって,平成14年度売上高約5700億円,同経常利益802億,,,(. 円強平成15年度は中間期業績だけで売上高2964億円強前年同期29%増,経常利益505億円強(同9.5%増)であり,平成22年にはグル)- 2 -ープ全体の売上高を1兆円とすることがその経営ビジョンとされ,大きな利益を挙げている医薬品メーカーである。 (3)亡aは,昭和54年4月被告安全性研究所(以下「安全性研究所」という)。 に入社し,被告の最主力商品「メバロチン(高脂血症治療剤)の安全性試験研」究グループの一員であったが,平成4年9月22日,通勤災害により死亡した。 原告の嘱託社員と 以下「安全性研究所」という)。 に入社し,被告の最主力商品「メバロチン(高脂血症治療剤)の安全性試験研」究グループの一員であったが,平成4年9月22日,通勤災害により死亡した。 原告の嘱託社員としての採用は,亡aが急死したために,原告家族の将来の生活を保障するための寡婦嘱託制度によるものであった。 (4)原告は,被告名古屋支店浜松出張所(以下,単に「浜松出張所」という)に。 配属されたが,静岡県内には浜松以外に静岡,三島にも出張所が存在する。各出張所には,医薬品の商品説明をする医薬情報担当者(MR)が配属されるほか,学術,総務の業務があり,内勤職員が常駐しており,原告は,内勤業務を行う嘱託社員であった。 (5)原告が浜松出張所に勤務し始めた当初は,原告の外に男女各1名の正社員の3名で内勤業務を分担していたが,男性社員が被告名古屋支店(以下,単に「名古屋支店」という)に転勤し,平成11年12月に女性社員が退職してからは,。 原告と派遣社員が浜松出張所の内勤業務のすべてを担当した。 (6)被告の「嘱託就業規則(甲5)2条1項に「嘱託」の定義として,以下のと」おり定められている。 「この規則において嘱託とは,次の各号のいずれかに該当し,かつ会社と労働契約を結んだ者をいう。 1.会社の特定する職種または業務に従事させる者2.所定就業時間のうち特定の時間を限って業務に従事させる者3.定年後引続き業務に従事させる者4.時間的拘束を要しない業務に従事する者5.他に在籍のまま当社の業務に従事する者6.その他前各号に準ずる者」(7)被告は,原告との間の本件嘱託契約を,毎年更新していたが,平成16年1月,「,15日付け内容証明郵便による通知書で平成15年4月1日の契約更新時に本契約を更新しないことが合意されていた」として原告を平成16年 間の本件嘱託契約を,毎年更新していたが,平成16年1月,「,15日付け内容証明郵便による通知書で平成15年4月1日の契約更新時に本契約を更新しないことが合意されていた」として原告を平成16年3月31日をもって雇止めする旨通知した。 争点 (1)本件嘱託契約につき終了の合意があったか否か。 (2)本件嘱託契約が期間の定めのある契約か否か(3)ア仮に,本件嘱託契約が期間の定めのある契約であるとした場合に,期間の定めのない契約に転化していたか,あるいは実質的に期間の定めのない雇用契約と異ならない状態となっていたか否か。 イ仮に,本件嘱託契約が期間の定めのない契約に転化していない,あるいは実質的に期間の定めのない雇用契約と異ならない状態となっていないとしても,原告には,雇用継続に対する合理的な期待がある状況になっていたか否か。 (4)上記(3)アないしイが認められ,解雇権濫用の法理が類推適用されるとした- 3 -場合に,本件雇止めが解雇権濫用に当たるか否か。 第3争点に対する当事者の主張 争点(1)について(被告の主張)(1)被告は,社員が死亡した場合,その遺児の養育のために,その配偶者が希望する場合に,嘱託として1年契約で雇用をするという寡婦嘱託という制度を採用していた。 (2)寡婦嘱託は,被告の経営状況が良好であることを前提として恩恵的に継続されてきたものであったが,平成13年5月30日,被告の業務改革を行う一環として,各事業所で行っていた業務を中央に集約化し,それでも必要とされる事務作業はアウトソーシング化し,寡婦嘱託を含む非正規社員との契約を解消していくという方針を採用した。 その理由は,被告の最大の主力商品であったメバロチンが各国で次々と特許切れとなり,日本においても平成14年10月に特許が切れることから 託を含む非正規社員との契約を解消していくという方針を採用した。 その理由は,被告の最大の主力商品であったメバロチンが各国で次々と特許切れとなり,日本においても平成14年10月に特許が切れることから,売上利益,,,の大幅な減少が予想され近年外資系の医薬会社が軒並み日本に進出しており国内の製薬会社のシェアを奪ってきているという状況のなか,被告としては,経費を切りつめ,その分を新薬の開発や海外進出の資金に投入し,有力な新薬を開発することや海外の拠点を作って販売力を拡大するなどの業務改革を実施する必要性に迫られていたからである。 (3)被告は,平成14年1月7日,人事部長名で,各部署長,事業所長に対し,既に決定している嘱託社員・臨時従業員の雇用停止の方針を確認し,同年5月15日を期限として,そのためのヒアリングの実施について指示した。 (4)被告は,平成14年2月14日,業務改革に向けての取り組みについての決意表明を代表取締役が労働組合に説明し,さらにビデオにより全社アナウンスを行った。 (),(「」。) 平成14年4月8日名古屋支店の総務課長であるb以下b課長というは,原告に対して,業務改革において,嘱託は原則として同年5月15日に終了することとなっているが,障害者,休職者や寡婦嘱託は例外的な対応がされるかもしれず,期限を延長する方向で検討しているということを告げ,決まり次第説明に来ると告げた。 (6)平成14年5月20日,b課長は,原告に対して,乙第1号証の「寡婦に対する対応」をOHPを使用して示しながら,①各嘱託契約は平成16年3月末までで終了すること,②ただし,満18歳未満の子どもがいる場合は満18歳の学期末までとする,③その間に本人が60歳に到達する場合はその前日を退職日とする,という内容の説明をし 契約は平成16年3月末までで終了すること,②ただし,満18歳未満の子どもがいる場合は満18歳の学期末までとする,③その間に本人が60歳に到達する場合はその前日を退職日とする,という内容の説明をし,寡婦嘱託が平成16年3月31日で終了することを説明した。そして,b課長は,寡婦嘱託の終了日に合わせて,次年度の契約を平成14年5月16日から平成15年5月15日ではなく,同年3月31日とすることとして,契約書を原告に渡して説明し,平成14年5月20日,原告に署名押印してもらった。 (7)平成14年12月,被告において,寡婦嘱託について「雇止めの時期を平成,- 4 -16年3月31日とする。ただし,満18歳未満の子どもがいる場合には契約期間を子どもが満18歳に到達した年度の3月31日まで,又は,平成16年3月31日までに寡婦本人が60歳に到達する場合には60歳到達日の当月末とする」ことが確認され,各事業所に通達された。 (8)以上のような経緯のもとで,b課長は,平成15年3月28日に,浜松出張所を訪れ,原告に対し,最後の契約書であると告げて,原告に契約書2通を渡し,原告は,この2通の契約書に署名押印してb課長に渡した。 (9)平成15年5月中旬に,原告が,浜松出張所長に対し,寡婦嘱託についての話を持ち出したことから,同月26日,b課長が浜松出張所を訪れ,原告と6時間以上話をしたが,そのとき,原告から出された話は,これまでの苦情や不満,正社員にしてほしいという希望などであって,平成16年3月31日で嘱託が終了することについての話はなかった。 (10)業務改革により,嘱託制度は廃止となり,障害者等を除いて嘱託契約はすべて終了となった。多くの嘱託は,平成14年5月15日をもって終了したが,寡,,婦嘱託については優遇措置がとられ平成16年 0)業務改革により,嘱託制度は廃止となり,障害者等を除いて嘱託契約はすべて終了となった。多くの嘱託は,平成14年5月15日をもって終了したが,寡,,婦嘱託については優遇措置がとられ平成16年3月31日まで雇用が確保され同日において,寡婦として採用されたが障害者である1名,看護師としての身分を有する者1名を除いた10名の寡婦嘱託のうち,遺児がまだ幼い1名以外の9名が退職している。 (),,, 以上の次第であって原告と被告との間で平成15年3月28日において本件嘱託契約が平成16年3月31日で終了するとの合意が成立した。 (原告の主張)被告の主張は,原告が本件嘱託契約が終了することに合意してくれたものと期待していたという程度のものであり,原告が本件嘱託契約が終了することを合意した事実はない。 争点(2)について(被告の主張)原告は,平成15年3月28日,被告との間において,期間を同年4月1日から平成16年3月31日までとする労働契約を締結し,その期間が満了した。 (原告の主張)(1)原告は,平成5年2月1日の採用時において,安全性研究所の総務課長であったc(以下「c総務課長」という)から「あなたは毎年形式的に契約書の更。 ,新をしますが,雇用は60歳までです」と明言されていたものであり,寡婦嘱。 託としての採用であるという説明は全く受けておらず,寡婦嘱託制度自体を知らなかった。 (2)また,上記契約に先立ち,原告は,安全性研究所の所長であったd(以下「d所長」という)から「あなたの採用は会社の上層部で決めました。末端まで。 ,どの様に伝わるか心配です」とも言われていた。 。 (3)そして,原告と同様,寡婦嘱託として採用されたeは「入社当初は,私は正,社員として採用されたと思っていた」旨述べている。 末端まで。 ,どの様に伝わるか心配です」とも言われていた。 。 (3)そして,原告と同様,寡婦嘱託として採用されたeは「入社当初は,私は正,社員として採用されたと思っていた」旨述べている。 。 (4)さらに,安全性研究所に約20年間在籍していたfは「当時の雇用状況から,- 5 -考え60歳定年を前提とした雇用であることに全く疑問はない」と原告宛に書。 簡を寄せている。 (5)以上によれば,原告の雇用は,当時の被告の上層部が決めたことであり,これをc総務課長が伝えただけの話であって,本件嘱託契約は,もともと期間の定めのない契約である。 争点(3)について(原告の主張)(1)平成5年2月1日以降,毎年4月ころに,雇用期間を1年間とする「労働契約書」が更新されてきたが「これ,いつものやつ」と上司から言われて,,。 署名・押印するだけという,極めて形式的なものであって,これが11年間にわたり反復更新されており,その間,営業所の女性正社員と何ら変わらない業務を担ってきたものであり,これは被告の嘱託就業規則2条の「嘱託」の定義,,のいずれにも該当しないから実質的には期間の定めのない契約に転化したかあるいは実質的に期間の定めのない雇用契約と異ならない状態となったとみるべきである。 (2)被告における寡婦嘱託制度の実際の運用は「遺児の生活支援」という目的,からはかけ離れ,遺児が成人に達した以降も長く雇用を続けてきており,さらには60歳を超えて61歳まで雇用された者もいた。 (3)被告は,医薬品の製造・販売業を営む株式会社であり,平成14年度売上高約5700億円,同経常利益802億円強,平成15年度は,中間期業績だけで売上高2964億円強前年同期29%増経常利益505億円強同,(. ),(9.5%増)と 平成14年度売上高約5700億円,同経常利益802億円強,平成15年度は,中間期業績だけで売上高2964億円強前年同期29%増経常利益505億円強同,(. ),(9.5%増)という大きな利益を挙げている医薬品メーカーであり,連結子会社39社,非連結子会社19社,関連会社4社の合計63社で構成されている「三共グループ」の中核会社であって,平成22年にはグループ全体の売上高を1兆円とすることがその経営ビジョンとされているような状況にあり,寡婦嘱託制度を廃止し,人員整理を行わなければ企業が成り立たないほどの緊急の必要性もなく,また,寡婦嘱託制度を廃止しても,経費節減の効果はほとんどないことが窺える。 (4)本件嘱託契約が期間の定めのない契約ではなく,また,期間の定めのない契約に転化していない,あるいは実質的に期間の定めのない雇用契約と異ならない状態となっていないとしても,以上の事情に照らせば,原告には,継続的な雇用に対する合理的な期待をし得る状況であった。 (被告の主張)(1)被告は,原告の夫であった亡aが平成4年9月22日に死去し,当時,原告には中学生と小学生の子どもがいたために,平成5年2月1日に,原告を寡婦嘱託として雇用した。 寡婦嘱託には,被告の嘱託就業規則が適用されるが,嘱託には,定年制度はなく,60歳までの雇用保障はないことは明らかであり,原告に対し,定年まで勤務できると説明をしたc総務課長は,原告が雇用された名古屋支店の社員,,,,ではなくしたがって原告の労働条件について説明できる立場になくまた- 6 -採用に関する権限もない。 (2)被告にとっては,原告を雇用する必要性はなかったが,遺児の生活を支援するために契約を更新してきたにすぎず,被告の業務処理について原告が必要であったわけではなく -採用に関する権限もない。 (2)被告にとっては,原告を雇用する必要性はなかったが,遺児の生活を支援するために契約を更新してきたにすぎず,被告の業務処理について原告が必要であったわけではなく,他の正社員や派遣社員で十分に処理できる業務内容であった。 (3)被告は,平成5年4月1日から遺児育英年金制度を発足させたが,この制度は寡婦嘱託と制度趣旨を同じくするため,その後,寡婦嘱託を採用することはほとんどなくなった。ところが,原告の場合は,この制度発足の端境期であったため,寡婦嘱託として雇用されるとともに,遺児育英年金の適用も受けることになったのである。寡婦嘱託として雇用されていた者のなかには,遺児育英年金の対象となっていない者もいる。なお,遺児育英年金は,遺児が18歳に到達するまで1名当たり月額3万円としていたが,途中より,小学校在学中は月額3万円,中学・高校在学中は月額5万円に増額された。 (4)前記1(被告の主張(1)ないし(10)と同じ。 )(5)原告が浜松出張所に配置されたのは,原告の自宅から通勤できる場所であるからであり,また,嘱託であるから,勤務先は浜松出張所に限定され,10年間他の勤務場所に異動させることができなかった。そして,原告が平成5年2月1日に勤務した当初,内勤業務のうち,現金取扱業務,伝票処理業務は正社員の内勤社員の業務としており,正社員と嘱託との業務は区別されていたのであって,正社員がいた当時に,原告が正社員と同等の業務を行っていたことはない。 その後,被告において,現金決済業務が減少し,業務処理のコンピューター化が進み全事業場の一元化が実施されるに至り,出張所の内勤業務自体の業務量が減少するとともに,出張所の現金取扱業務はなくなり,さらに,伝票処理についても本社一元化がされるに至ったことから,内勤社 ー化が進み全事業場の一元化が実施されるに至り,出張所の内勤業務自体の業務量が減少するとともに,出張所の現金取扱業務はなくなり,さらに,伝票処理についても本社一元化がされるに至ったことから,内勤社員の業務は変容し,正社員を配置するようなものではない裁量性のない単純業務に代わっていったのである。そのため,被告は,業務改革において,出張所の内勤業務を派遣社員ですべてを代替するものとしたのである。したがって,正社員がいなくなった後の内勤業務を原告が行っていたからといって,正社員と同等の業務を行っていたということはできない。 ,,。 なお原告の嘱託は嘱託就業規則2条1項6号に該当する寡婦嘱託である(6)原告の長男は大学院に通っており,二男は平成16年3月に高等学校を卒業して大学受験の勉強中であり,本来の寡婦嘱託制度の目的は遂げている。 (7)以上のような寡婦嘱託制度に照らすと,本件嘱託契約が期間の定めのない契約に転化したとか,実質的に期間の定めのない雇用契約と異ならない状態となったとはいえないし,また,原告に雇用継続の期待権も発生していない。 (8)よって,原告と被告との間の本件嘱託契約は,平成16年3月31日の期間満了により終了した。 争点(4)について(原告の主張)- 7 -(1)前記3(原告の主張(2(3)と同じ。 ))(2)被告の主張する原告の勤務態度は,いずれも事実無根であるか,些細な事柄であり,本件雇止めを正当化する理由はなく,本件雇止めは解雇権の濫用である。 (3)なお,被告は,原告の資産や資力を問題視するが,本件は,賃金仮払いを求める仮処分申請ではなく,雇止めが有効か無効かが争点であるのであって,原告の資産や資力は,これとは関係ない。 (被告の主張)(1)前記1(被告の主張(1)ないし(7)のとおり, は,賃金仮払いを求める仮処分申請ではなく,雇止めが有効か無効かが争点であるのであって,原告の資産や資力は,これとは関係ない。 (被告の主張)(1)前記1(被告の主張(1)ないし(7)のとおり,被告には,業務改革の)必要性があり,寡婦嘱託契約も解消しなければならない業務上の必要性があった上,本件嘱託契約は,寡婦嘱託という温情的なものである。 (2)後記アないしエなどにみられるように,原告の勤務態度には問題点が多数あった。 ア平成14年ないし15年ころ,名古屋支店で原告の悪い噂が流れているとの情報が原告に入り,この噂をg社員の仕業と決めつけて,会議室に呼びつけ,勤務時間中に2時間にわたってその責任を追及した。 イロキソニンサンプルの在庫が2個ほど在庫差数が出たことについて,原告は,新人MRのh社員が伝票上の手違いをしたと決めつけ,会議室で一方的に1時間以上も追求し,その結果,h社員は得意先を訪問できなかった。 ウ平成13年8月末ころ,原告は,経費の期末処理の事務量が集中するという理由のため,MRに対して「伝票処理を9月上旬で締め切る」といきな,り申し出,チームリーダーのMRであるi社員から「期末ぎりぎりまで伝,票入力しないとMRの業務に支障が出るため9月上旬で締め切られては困る」と言われたにもかかわらず,引き下がらず,さらに,i社員がいなくなると「あの人とは一緒に仕事はできない」と大声で怒鳴り散らした。 ,エ原告は,浜松出張所長と名古屋支店に行って,新たに導入されたシステムであるSAPのトレーナー研修を受けたが「SAPのマニュアルをMRに,教えるのは私の仕事ではない」と言って業務を拒否した。 (3)原告は,夫aが亡くなったことにより,労災年金,自賠責の保険金,退職年金等が支給されている上,11年間寡婦嘱託として雇用され をMRに,教えるのは私の仕事ではない」と言って業務を拒否した。 (3)原告は,夫aが亡くなったことにより,労災年金,自賠責の保険金,退職年金等が支給されている上,11年間寡婦嘱託として雇用され,かつ,遺児育英年金の支給も受けているほか,前住所地に土地建物を有して,これを借り上げ社宅にし,現住所地にも土地建物を所有しており,原告の資力からして継続雇用の必要性はなく,二男が平成16年3月に高等学校を卒業しているのであるから,本来の寡婦嘱託制度としての目的も遂げている。 (4)以上を総合すると,本件雇止めは,解雇権濫用には当たらず,本件嘱託契約は終了したものである。 第4当裁判所の判断 証拠(甲3ないし12,14,17ないし20,乙1ないし12,16,17,20ないし39,42(以上,枝番のあるものは枝番を含む,証人b,同j,同k,。)同i,同l,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 - 8 -(1)原告の被告への入社経緯及び原告の勤務状況についてア被告には,従業員が不慮の事故や病気で死亡した場合に,その遺児の生活の安定と就学を完遂させる目的で慣例的に創設された寡婦嘱託制度があり,寡婦となった者に対して,就職を打診し,希望があった場合に採用し,その就業条件は嘱託就業規則が適用されていた。寡婦であっても,子女がいない場合,子女が既に高校を卒業している場合には,この制度の適用はなかった。 なお,嘱託就業規則には,定年制度は存在しない。 イしかしながら,平成5年4月1日,被告において「遺児1名につき月額3,万円,満18歳到達までとする」遺児育英年金制度が新設され,実施期日は,同日とされたが,経過措置として,過去3年間の該当者についても同一の措置を行うこととされたことから,その後は,原則として寡婦嘱託制度 ,満18歳到達までとする」遺児育英年金制度が新設され,実施期日は,同日とされたが,経過措置として,過去3年間の該当者についても同一の措置を行うこととされたことから,その後は,原則として寡婦嘱託制度による採用はなくなった。 ウ亡aが死亡した当時,原告には,中学生と小学生の子どもがいたことから,亡aが勤務していた安全性研究所のd所長は,以前寡婦嘱託として採用された寡婦がいたため,原告を寡婦嘱託として採用してはどうかと被告に話をして,原告についても寡婦嘱託として働く気があるかどうかの希望を聞いたところ,原告から希望する旨の回答があったことから,原告を採用することが被告人事部において決定された。 そして,寡婦嘱託という特殊性から,原告の勤務地は,原告の自宅から最も近い浜松出張所とされ,月給与も通常の嘱託よりも割高に設定された上,通常住宅給はないところ,その要素も加味した金額として20万円程度に設定されており,配置転換や異動はなかった。 ,,,,エd所長は原告が浜松出張所に勤務するに先立ち原告に対し寡婦嘱託は正規の入社手続ではないため,人事部とその担当役員の了解が必要であったことから「上層部で決めた」ということを言ったことがあった。しかし,d,。 所長が原告の雇用が60歳まで保障されるという趣旨の発言をしたことはない。ただ,同じころ,c総務課長が原告に対し,原告が60歳まで雇用されるという趣旨のことを言った。 ,,,オd所長は原告から浜松出張所でやりにくいという話を聞いたことがありまた,c総務課長からも,原告が浜松出張所で浮いた感じになっているらしいという話を聞いていたことから,その後,人事部門を管掌しているm専務取締役が安全性研究所を訪れた際,原告を呼び出して3人で食事をしたりするなどして原告のことを気に掛けていた。 じになっているらしいという話を聞いていたことから,その後,人事部門を管掌しているm専務取締役が安全性研究所を訪れた際,原告を呼び出して3人で食事をしたりするなどして原告のことを気に掛けていた。 カ原告が採用された当時,浜松出張所には,内勤の仕事に従事する正社員が男女各1名ずつおり,滞りなく業務は遂行されていたが,原告が採用され勤務してきたため,当時の内勤のリーダーであったnは,そのうち重要でない仕事として,リーフ,印刷物の保管・管理,出勤簿の管理,お茶くみ等の雑用を原告。 ,,に担当してもらうことにした上記nが平成9年8月に異動した後は原告は以前より行う内勤業務が広がったが,伝票処理等現金決済の業務は正社員の仕事とされていた。平成11年に女性正社員が退職した後,派遣社員がやってき- 9 -てから,伝票処理は原告が担当するようになった。 なお,伝票や経費の処理は,平成15年以降,社内パソコンシステムSAPにMRが各自かかった経費を入力して,領収書等の書類を内勤の社員に渡すようになったが,それ以前は,MRが各自手書きで伝票を作成して領収書等とともに内勤の社員に渡していた。 キ平成13年8月末ころ,原告が,上期末である9月は経費の伝票を9月末日よりも前で締めると言ったことに対して,MRのチームリーダーであったiが経費はぎりぎりまで発生するから,最後までやってもらわなければ困ると反対したところ,結果的には,伝票の処理は9月末までされた。 ク平成14年9月16日に,j(以下「j所長」という)が浜松出張所長と。 して赴任した当時の原告の仕事内容は,電話当番,製剤見本の管理,その書類の管理,その他庶務関係であった。SAPの導入により,伝票処理は証拠書類だけの管理となったため,現金の受け渡し業務もなくなり仕事内容としては軽減された。 ケ は,電話当番,製剤見本の管理,その書類の管理,その他庶務関係であった。SAPの導入により,伝票処理は証拠書類だけの管理となったため,現金の受け渡し業務もなくなり仕事内容としては軽減された。 ケ平成14年に被告に入社したhが,平成15年1月ないし2月ころ,製剤見,,本の申請を行ったところ1週間経っても持ってきてもらえなかったことから再度申請を出したところ,原告から,在庫数と帳簿が合わないのは,申請書を二重に書いたのが原因だなどと長時間怒られ,定期的に訪問していた病院に行くことができなかったことがあった。 コ平成15年の秋ころ,MRであったoは,外出先から浜松出張所に書類を取りに戻り,出かけようとしていたところを,原告に呼び止められ,製剤見本の数が合わないことなどの相談を2時間近くされたことがあった。 サ平成14年ないし15年ころ,名古屋支店で,原告について,何かと同僚と揉め事が多い,MRをサポートしてくれないという噂が流れたことがあり,このことについて,原告は,MRのgが名古屋支店に行くことが多いことからそ,。 の噂を流したにちがいないとして上記gを2時間程度追及したことがあったシ原告は,決められた仕事はしっかり行っていたが,内勤の仕事とその他の仕事を明確に区別して,MRから仕事を頼まれても断るなどMRが原告に仕事を頼みにくいようになっていたほか,周りからみて,原告は,浜松出張所の他の社員とよく口論をしている印象を与えていた。また,原告は,自分が嘱託として勤務できるのはm専務取締役やd所長がバックについているからだ,会社では何もしなくてもよいと言われたなどと言ったりしたことがあった。 ,(,,,,ス平成5年2月1日当時名古屋支店管内の出張所浜松静岡三重岡崎岐阜,三島〔三重,岡崎,岐阜は,平成14年9月 なくてもよいと言われたなどと言ったりしたことがあった。 ,(,,,,ス平成5年2月1日当時名古屋支店管内の出張所浜松静岡三重岡崎岐阜,三島〔三重,岡崎,岐阜は,平成14年9月より,第1,第2に分かれた)の内勤者は,静岡出張所には正社員4名に加えて1名の嘱託が在籍し。〕ており,そのほかは正社員2名であり,浜松出張所にはそのほかに嘱託として原告が在籍していたが,平成9年8月になると,浜松出張所の正社員は1名となったものの,三島出張所が正社員1名,嘱託1名であるほかは,従前と変わらなかった。さらに,平成12年1月になると,三島出張所の嘱託が正社員となり,静岡出張所の正社員も2名となったことにより,浜松出張所を除いて正- 10 -社員が2名となったが,静岡出張所にはさらに嘱託が1名いた一方,浜松出張所は,正社員に代わって派遣社員1名と嘱託である原告という正社員のいない体制となった。平成14年9月になると,浜松出張所は嘱託である原告1名,静岡出張所も嘱託1名となり,そのほかは正社員1名か派遣社員1名という体制となり,平成16年4月になると,浜松出張所と静岡出張所は,それぞれ派遣社員1名となった。 (2)被告の業務改革,,「,ア平成13年5月30日被告取締役社長pから業務改革本部を発足させ業務改革を断行し,コスト削減を行う」ことなどを内容とする経営計画案が被告の社員らに説明があり,その具体的内容としては「業務改革本部を発足,,全社的な業務改革(業務削減や人員適正化によりあらゆるムダをなくす)を行,」「,い年平均200億円以上のコスト削減を実現人員適正化の具体策として早期退職優遇制度の強化・拡大や定期採用者の抑制を行う。2001年度6,500人体制を,2005年度5,500人体制に(単体「不 い年平均200億円以上のコスト削減を実現人員適正化の具体策として早期退職優遇制度の強化・拡大や定期採用者の抑制を行う。2001年度6,500人体制を,2005年度5,500人体制に(単体「不要な業務を。 )」廃止,アウトソーシング・簡素化・集約化などを実現」などである。 イこのような業務改革を実施するのは,ノスカールの販売中止,メバロチンの特許切れ,新製品の端境期,さらには薬価制度の抜本改革等,被告会社を取り巻く環境の厳しさ,また,新製品NK-104,CS-866の早期導入と市場の最大化,従来品の一層拡大など厳しい企業環境では通常の経営手段での改善が望めず,思い切った改革が必要であるからと説明されている。 この業務改革の趣旨は,薬品業界にとって一番重要な部分である,研究,開発,海外営業の戦略的な投資のための原資を創出するために不必要な業務を廃止し,外注ができる部分を外注化し,コスト削減を図っていくというもので,業務の抜本的な見直しとITシステムの導入が二本柱になっており,業務の抜本的な見直しとして,不必要な業務の廃止,外注化などがあり,ITシステムの導入として,SAP.R/3という統合情報システムを導入し,それぞれの人がそれぞれ入力をすることで,総務,経理,人事関連のコストを大幅に削減することが検討されていた。 ウ平成13年7月1日,業務改革本部が発足した。 エ被告では,平成14年1月8日付けで,①警備員・守衛②運転手③社屋管理人④電気・ボイラー担当者⑤整理員(雑役)⑥受付要員⑦電話交換手⑧郵便要員⑨理髪師⑩寮管理人・寮母⑪グランド管理人⑫医家向内勤者の職種に従事する定型嘱託(常勤)と臨時従業員のうち障害者を除く全員について,平成14年5月15日付けで雇用停止することを主旨・退職優遇措置とともに,同年1月8日から同月18日 管理人⑫医家向内勤者の職種に従事する定型嘱託(常勤)と臨時従業員のうち障害者を除く全員について,平成14年5月15日付けで雇用停止することを主旨・退職優遇措置とともに,同年1月8日から同月18日までの期間内に通告する(個別事情による例外対応を除く,嘱託社員・臨時従業員・派遣社員について同年4月1日以降の採用を。)原則停止する旨の人事部長名の通知がされたが,結局,雇用の停止は,同年11月15日まで延びた。なお,この段階では,寡婦嘱託についての取扱いは決まっていなかった。 オ平成14年2月14日,①被告の業績がこの2年間下降線をたどり,営業利- 11 -益も最盛期の6割程度に低下していること,②メバロチンの特許切れが迫り,研究・開発から営業に至るすべての面での国際競争は一層激化していること,③このような厳しい環境を克服し,国際的な製薬企業として生き残っていくためには,700億円程度の研究開発費の継続投入と,海外展開のための長期にわたる投資が必要となること,④これらの継続的投資に向けた資金創出には,業務の抜本的な改革による効率化が不可欠であるため,業務改革を断行すること,⑤まず,業務の効率化を図り年間200億円程度のコストダウンを実現するという構想をとりまとめたこと,⑥福利厚生・総務系サービスの外注化を皮切りに次々に改革施策を導入していく結果,なくなってしまう業務や縮小される業務が出てきて,2年間で500人以上が新たな職場に移ってもらうことにもなること,⑦責任を持って全員分の職場を確保することなどの内容が全社アナウンスされた。 カ平成14年2月,業務改革推進部/人事部において作成された「業務改革の施策導入及び導入に伴う人事対応について」と題する書面において,出張所庶務の効率化として,①効率化による従業員の少数化②完全外注化(最終 4年2月,業務改革推進部/人事部において作成された「業務改革の施策導入及び導入に伴う人事対応について」と題する書面において,出張所庶務の効率化として,①効率化による従業員の少数化②完全外注化(最終的な目標)が掲げられている。 キ平成14年4月ころ,寡婦嘱託について,解嘱,雇止め時期を平成16年3月31日とするが,それ以前に60歳に到達した場合と,その段階で,まだ満18歳未満の子どもがいる場合は例外とするという方針が決められた。 そして,平成14年12月「事業所総務体制モデル最終化と人員適正化対,応について」と題する書面において,定型嘱託/臨時従業員は解嘱/雇止めを行うこと,総務,庶務,経理等の業務に従事する定型嘱託は平成15年6月末を目処に解嘱,臨時従業員は同年6月末より平成16年3月31日までの間に随時雇止めを実施することを原則とするが,例外として,寡婦については,解嘱/雇止め時期を平成16年3月31日とするが,満18歳未満の子どもがいる場合は,子どもが満18歳に到達した年度の3月31日までとし,平成16年3月31日までに寡婦本人が60歳に到達する場合は,60歳到達日の当月末とすることとされ,障害者については,これら解嘱/雇止めの対象除外とされており,以上のような解嘱又は雇止めの対象となる特定の者の雇用継続のため,対象とならない職種に変更することは,著しく公平性に欠く対応であるため厳禁とするとされている。また,人員適正化の対象となる業務に従事している正規従業員については,他部署等に配置転換となり,この際の退職希望者については,退職時特別措置の適用対象とするとされた。 ,,ク平成16年3月31日において寡婦として採用されたが障害者である1名看護師としての身分を有する者1名を除いた10名の寡婦嘱託のうち,遺児がまだ幼い1名以外 措置の適用対象とするとされた。 ,,ク平成16年3月31日において寡婦として採用されたが障害者である1名看護師としての身分を有する者1名を除いた10名の寡婦嘱託のうち,遺児がまだ幼い1名以外の原告を除く8名の嘱託契約が終了した。 ケSAP.R/3は,平成15年4月1日に導入された。 コ平成13年9月25日付け日経産業新聞によれば,医薬品メーカー34社を調査したところ,国内需要の低迷を補う事業拡大策として医薬品メーカーが掲げるのが米国市場を中心にした海外展開であり,28社が「海外事業を拡大す- 12 -る」と答え,また,具体的に取り組む内容を複数回答で聞いたところ12社が「」,「」,自社による販売網の構築20社が海外臨床試験の拡大と答えており世界規模で販路を広げる欧米勢に対し,規模が比較的小さい日本企業は独自路線で投資を継続するのは難しいとの見方は多く,最大手の武田薬品でも年間研究開発費は現状で約1100億円で,2005年度に研究開発費を2000億円超と倍増するが,4000億円超の米ファイザーの半分程度にしかならず,大正製薬と田辺製薬が経営統合を決めたように,日本メーカーにとって研究規模の拡大が大きな経営課題といえるとの記事があるように,当時,製薬業界では,海外の製薬会社と比較して日本の製薬会社の研究開発費が少ないために,研究開発費を捻出する必要性があった。 (3)雇止めについての被告の説明と原告の対応ア平成14年4月8日,b課長が浜松出張所を訪れ,原告に対し,業務改革により嘱託は全員が同年5月15日をもって嘱託契約が終了するということであったが,寡婦嘱託はその期間を延長することになり,いまだにいつ終了になるかは明確になっておらず,現在対応を検討中である旨説明した。 イ平成14年5月20日,b課長は,浜松出 が終了するということであったが,寡婦嘱託はその期間を延長することになり,いまだにいつ終了になるかは明確になっておらず,現在対応を検討中である旨説明した。 イ平成14年5月20日,b課長は,浜松出張所を訪れ,原告に対し,①嘱託契約を業務改革が終了する平成16年3月末までとする,②ただし,満18歳未満の子どもがいる場合は満18歳の学期末までとする,③又,その間に本人が60歳に到達する場合は,その前日を退職日とする,という内容が記載された資料をOHPを使用して映し出して,具体例を挙げて説明した上,原告の場合は,高校を卒業する時期と2年延長対応の終了時期とが同じとなり,そのときに雇用停止となると説明した。その際,原告は,入社時に世話をしてくれた方から,定年まで勤務できると言われていたので,その方に相談したい,雇止めについて契約書以外に書面があるかということを言ったので,b課長は,十分相談するように答えたが,書面については契約書以外にはなく,自分の名前で雇止めに関する書面は出せないと答えた。 ウ平成15年3月28日,b課長が浜松出張所を訪れ,j所長と応接室にいる際に,お茶を出しに来た原告に対して,契約書を手渡し,原告は,その契約書に署名押印して,b課長に渡した。このとき,原告から嘱託契約の終了に関する話はなかった。その後,同年4月21日付けで被告の人事部長通達により,,,,人事部長名での契約締結に変更することになったため同月22日b課長は原告に電話でその旨伝えて契約書の差し替えをした。 エ平成15年5月20日ころ,j所長は,原告から「所長,私のことで何か聞いていますか」と尋ねられたので「前任所長からも平成16年3月31日。 ,で終わりと聞いています」と返事をしたが,まだ言いたいことがあるようだ。 と連絡を受けたb課長は,平成15年 のことで何か聞いていますか」と尋ねられたので「前任所長からも平成16年3月31日。 ,で終わりと聞いています」と返事をしたが,まだ言いたいことがあるようだ。 と連絡を受けたb課長は,平成15年5月26日に浜松出張所を訪れ,原告と,,,,,話をしたがその際原告からは入社の経緯入社してからの不満等のほか嘱託から正社員になった例もあるのであるから正社員にしてほしいという要望があったが,平成16年3月31日で嘱託契約が終了になることに関しての意見はなく,また,b課長からもこの点についての説明はなかった。 - 13 -オ被告社内イントラの業務改革Q・A(甲14の4の3)で「嘱託や臨時従業員は,新会社設立時「出向」となるのでしょうか。それとも「新会社と契約」となるのでしょうか」という質問に「会社は新会社設立に際しての嘱託社員。 ・臨時従業員の雇用関連事項については今後検討を進めます」との答えが出。 ていたのを見つけた原告は,平成15年12月に入ってから,j所長に,自分がどうなるのか質問したところ,j所長がb課長に連絡をして被告本社に電話をしてもらって構わないと返答があったことから,同月10日,原告は,被告業務改革推進部のc課長に電話をした。嘱託社員の労務についての問い合わせであると受け取ったc課長は,人事部に電話させる旨原告に伝えた上,その旨人事部長に連絡をしたことから,人事部長の指示により人事部キャリア開発センター長qが同月11日,原告に電話をした。電話の中で,原告は,会社から解雇といわれたので労働基準監督局に問い合わせたこと,三島出張所の嘱託のように正社員にしてほしいこと,採用される際60歳定年と言われたことなどを話していたので,qは,業務改革の一環として原則的に平成16年3月末で雇止めとなること,正社員にするしない 三島出張所の嘱託のように正社員にしてほしいこと,採用される際60歳定年と言われたことなどを話していたので,qは,業務改革の一環として原則的に平成16年3月末で雇止めとなること,正社員にするしないは会社が総合的な判断で決めることであり,普通はなれるものではないこと,採用時の経緯は分からないなどと答えたが,原告は,納得がいかないと繰り返していた。b課長が原告に対して,どのような説明をしたかなどの経緯等を調べる必要があり,原告とは直接話した方がいいと考えたqは,b課長に連絡を取り,同月19日にb課長とともに浜松出張所に出向くことにしてその旨原告にも伝えた。 カ平成15年12月19日,qとb課長と原告の3人で,浜松出張所の会議室において話合いをした。qは,メバロチンの特許切れのため,研究費用や海外市場開拓資金が必要となっている被告の現状を説明した上,業務改革により全国の嘱託社員の雇止めを進めているが,寡婦嘱託については,通常の嘱託よりも2年間延長していること,正社員にするしないは会社の判断であること,採用の際,60歳定年と言われたことはあったかもしれないが,自分は分からないなど話したが,原告は,退職しないこと,正社員にしてほしいことなどの主張を繰り返し,話合いは平行線で終わった。 キその後,原告は,労働局に相談に行き,平成16年1月10日,労働組合に加入し,その後,同月23日から同年3月31日までの間,7回にわたり団体交渉が行われた。 (4)その他ア平成14年5月16日付け労働契約書で,被告代表者として名古屋支店取締役支店長と原告との間で,雇用期間を同日から平成15年3月31日,月手当を260,500円として,本件嘱託契約を更新し,平成15年4月1日付け労働契約書で,被告代表者として取締役人事部長と原告との間で,雇用期間を同日から 雇用期間を同日から平成15年3月31日,月手当を260,500円として,本件嘱託契約を更新し,平成15年4月1日付け労働契約書で,被告代表者として取締役人事部長と原告との間で,雇用期間を同日から平成16年3月31日,月手当を263,500円として,本件嘱託契約を更新した。 イ被告からの雇止め通知書(甲6)に対して,原告は,被告に対し,雇止めの合意をしていないこと,平成15年5月に,b課長と約7時間話をした際「正- 14 -社員以上の仕事をしてきましたし,嘱託寡婦から正社員になった前例もありますので正社員にして下さい」と申し出たこと,同年12月11日に,電話で人事部のqから「整理解雇です」と言われたことなどを記載した平成16年1月17日付け回答書で回答をした。 ウ平成16年1月23日から同年3月31日まで,7回にわたり,被告と原告が加入した全日本金属情報機器労働組合(JMIU)との間で,団体交渉が行われた。 エ平成16年2月の原告の総支給額は32万2780円(月手当26万350,,,),0円扶養給3万4000円給食手当1万円通勤手当1万5280円で控除額合計6万0428円であり,差引支給額26万2352円である。 オ平成16年6月20日付けで,亡aの先輩として安全性研究所に勤務していたfは,原告に宛てた手紙で「当時の雇用状況から考え,60歳定年を前提,とした雇用であることに全く疑問はない」と記載している。 。 争点(1)について被告は,平成15年3月28日,原告と被告との間において,本件嘱託契約が平成16年3月31日で終了するとの合意が成立した旨主張する。 確かに,前記認定のとおり,被告は,例外を除いた寡婦嘱託全員を平成16年3月31日で終了することの説明をしており,最終の平成15年3月28日の契約段階で 1日で終了するとの合意が成立した旨主張する。 確かに,前記認定のとおり,被告は,例外を除いた寡婦嘱託全員を平成16年3月31日で終了することの説明をしており,最終の平成15年3月28日の契約段階で,原告が何ら異議も述べずに契約に署名押印したものであることからすると,被告において,本件嘱託契約の終了に原告が合意したものと理解したと解されないわけではないが,前記1(3)イに認定したとおり,平成14年5月20日に,b課長が原告に対し,本件嘱託契約が平成16年3月31日で終了することになると説明した段階で,原告は,定年まで勤務できると聞いていたので相談してみるなどと述べて,本件嘱託契約が終了することに納得していなかったにもかかわらず,平成15年3月28日には,b課長は,原告に対し,本件嘱託契約が平成16年3月31日で終了するが,これに同意して契約を締結するかなどといった明確な説明をすることなく,お茶を出しに来た原告に事務的に契約書を渡しただけであり,これに前記1(3)エないしキに認定した原告の対応を併せ考えると,原告が平成15年3月28日に何ら異議を述べずに契約書に署名押印したからといって,本件嘱託契約が平成16年3月31日で終了することに原告が同意していたとは言い難い。 その他,被告の上記主張を認めるに足りる的確な証拠はない。 したがって,原告と被告との間で,本件嘱託契約の終了について合意があったとは認められない。 争点(2)について(,),,,前記争いのない事実及び証拠甲3 によれば原告は平成5年2月1日嘱託社員として契約期間1年で被告に採用され,毎年,1年ないしそれ以下の期間が明記された「労働契約書」を取り交わして更新を繰り返し,11年間継続して勤務したことを認めることができる上,これらの事実に,前記1(3)に認定 間1年で被告に採用され,毎年,1年ないしそれ以下の期間が明記された「労働契約書」を取り交わして更新を繰り返し,11年間継続して勤務したことを認めることができる上,これらの事実に,前記1(3)に認定したとおり,平成15年5月20日ころ,j所長が原告から「所長,私のことで何か聞,いていますか」と尋ねられたので「前任所長からも平成16年3月31日で終。 ,- 15 -わりと聞いています」と返事をし,さらに,b課長が,平成15年5月26日に。 浜松出張所を訪れ,原告と話をしたが,その際,原告からは,入社の経緯,入社してからの不満等のほか,嘱託から正社員になった例もあるのであるから正社員にしてほしいという要望があったが,平成16年3月31日で嘱託契約が終了になることに関しての意見はなかったという事実を併せ考慮すると,原告自身,期間の定めのある嘱託契約であることを認識していたことを推認することができることからすると,本件嘱託契約は,契約書のとおり,期間の定めのある嘱託契約であると解することができる。 確かに,前記1(1)エに認定したとおり,c総務課長は,原告に対して,原告が勤務するに先立ち,60歳まで雇用されるという趣旨のことを言ったものであるが,これは前記1(4)オに認定したfの原告宛ての手紙の内容にあるように,当時の雇用状況から考えて,c総務課長がそのように述べたにすぎないものと解することができる。そもそも,原告が採用されたのは名古屋支店であったことから,c総務課長が原告を被告に採用する権限があるわけではないことは原告も当然認識していると思われるところ,本件全証拠によるも,被告の採用担当者が,原告に対して,60歳まで雇用を継続することを明言できないような事情は何ら窺えないにもかかわらず,原告自身が被告の採用担当者から直接60歳まで雇用を るところ,本件全証拠によるも,被告の採用担当者が,原告に対して,60歳まで雇用を継続することを明言できないような事情は何ら窺えないにもかかわらず,原告自身が被告の採用担当者から直接60歳まで雇用を継続されるということを聞いたことはないことからすれば,c総務課長の発言をもって本件嘱託契約が60歳まで雇用するという期間の定めのある嘱託契約であるということはできない。また,原告がd所長からその採用について上層部で決定されたと言われたとしても,c総務課長と同様に,d所長が原告を被告に採用する権限があるわけではないことは原告も当然認識していると思われるし,それは,前記1(1)ウ及びエに認定したとおり,本件嘱託契約が寡婦嘱託という入社試験も何もない特殊な採用形態に基づくものであって,他の定型嘱託とは異なる特別な扱いであるから,会社の人事部や役員で決定されるという意味で,上層部で採用が決定されたという程度の意味であり,原告を他の寡婦嘱託と区別して特別に扱うという趣旨とは考えられないことからすると,その発言をもって,本件嘱託契約は,形式的に期間の定めのある契約書を取り交わされたにすぎず,実質的には,期間の定めのない契約として締結されたものであるとまではいうことはできない。その他,本件全証拠によるも,原告が何らかの特殊な技能を有していたこともなく,浜松出張所で特に採用する必要性も窺えず,本件嘱託契約がその契約書の記載に反して期間の定めのない嘱託契約であると解さなければならないような事情も窺えない。 争点(3)について前記1(1)アないしエに認定したとおり,そもそも,原告の採用手続は,入社試験も何もなく,単に原告の希望を聞いただけで採用が決定されたというように非常に簡易なものであって,夫が亡くなったことによって温情的に採用されたものであり,原告は, そもそも,原告の採用手続は,入社試験も何もなく,単に原告の希望を聞いただけで採用が決定されたというように非常に簡易なものであって,夫が亡くなったことによって温情的に採用されたものであり,原告は,浜松出張所から異動することもなく,勤務内容も特殊なものではないのに,相当程度の賃金の支給を受けていたことからすれば,本件嘱託契約は,通常の雇用や嘱託あるいは臨時社員とは異なった特殊な雇用形態であるということができ,その特殊性から毎年契約書が取り交わされていたと解され,また,前記争い- 16 -のない事実及び証拠(甲3,4)によれば,本件嘱託契約は,当初,平成5年2月1日に締結され,1年間の契約であったところ,その後,5月16日が契約の終期とされ,平成14年には,終期を3月31日と変更するなどして,本件嘱託契約の更新は,期間満了の都度新たな契約を締結する旨を合意することによってされてきたものであるから,本件嘱託契約の契約書が形式的なものであったとまでは言い難く,前記争いのない事実に記載のとおり,原告が11年の長期にわたり継続して勤務してきたことを考慮しても,本件嘱託契約は,あくまで1年の期間の定めのある契約であるというべきであり,本件嘱託契約が期間の定めのない契約に転化しているとか,期間の定めのない契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたということもできない。また,前記1(2)に認定したとおり,被告としては,平成13年5月30日以降業務改革を行っており,臨時従業員や嘱託を廃止し,雇用停止する方向にあったところ,これらは社会情勢や会社の状況により雇用条件も変化しているなかで,被告が業務改革を実施し,会社全体の雇用調整を計画していたものであって,製薬会社を取り巻く環境からして,被告の業務改革が不必要なものであるということはできない上,前 り雇用条件も変化しているなかで,被告が業務改革を実施し,会社全体の雇用調整を計画していたものであって,製薬会社を取り巻く環境からして,被告の業務改革が不必要なものであるということはできない上,前記1(3)に認定した事実によれば,本件嘱託契約が平成16年3月31日で終了することについて,原告は,b課長から説明を受けており,以後,雇用継続の期待をもたせるような言動は全くされていなかったのであるから,平成16年3月31日時点において,それ以降継続して雇用されるという原告の期待に合理性があるということもできない。このように解したとしても,前記1(1)に認定した事実からすると,被告は,他の定型嘱託より寡婦嘱託について雇止めの時期を遅くするなど寡婦嘱託について十分な配慮をしており,その雇止めにあたっても,他の嘱託とは異なり,一律に雇用を停止するのではなく,寡婦嘱託制度の趣旨から,寡婦の子どもが高校を卒業するまでは,雇用が継続されるという例外的な取扱いもしており,高校卒業という基準は,社会的にみて不合理なものとはいえないし,この基準は,被告の創設した遺児育英年金制度とも整合しているものであり,原告にとって決して酷なものとはいえない。なお,平成16年3月31日に在籍していた寡婦嘱託のうち,18歳未満の子どものいない寡婦は,原告を除いてすべて被告の方針に従って退職している(前記1(2)ク。 )この点について,確かに,原告が主張するとおり,浜松出張所の内勤の仕事に従,,事していた正社員2名が異動したり退職したりしていなくなった平成11年以降正社員が補充されることもなく,内勤業務を行っていたのであるから,原告が,従来正社員が行っていた内勤業務を原告が担当していたことは認められるものの,前記1(1)カ及びクに認定したとおり,正社員がいた時期は,伝票や経 ることもなく,内勤業務を行っていたのであるから,原告が,従来正社員が行っていた内勤業務を原告が担当していたことは認められるものの,前記1(1)カ及びクに認定したとおり,正社員がいた時期は,伝票や経費の処理等重要な業務は正社員が行うというように正社員の仕事とは区別された業務を原告は担当していたものであり,平成15年以降は,被告においてSAPシステムが導入されたことなどから,内勤の業務は,正社員が行うものではなく,外注化の方向となり,内勤業務に従事している正社員は順次配置転換される運びとなっているという状況にあり,原告が本来正社員が行うべき業務を終始担当していたのはあくまで一時的なものにすぎないから,このことをもって,本件嘱託契約が1年の期間の定めのある嘱託契約でないということはできないから,期間の定めのない契約に転化- 17 -しているとか,期間の定めのない契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたとか,継続して雇用されるという原告の期待に合理性があると認めることはできない。その他,原告の上記主張を認めるに足りる的確な証拠はない。 ,,以上の次第であって本件嘱託契約が期間の定めのない契約に転化しているとか期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となっているとはいえないし,原告の雇用継続に対する期待に合理性があるともいえないから,本件嘱託契約には,解雇権濫用の法理の類推適用があるということはできず,平成16年3月31日をもって期間満了により終了したというべきである。 したがって,原告と被告との間の本件嘱託契約は,平成16年3月31日に終了したものと認められ,その余の点につき判断するまでもなく,原告の主張は,いずれも理由がない。 第5 結論 以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のと 1日に終了したものと認められ,その余の点につき判断するまでもなく,原告の主張はいずれも理由がない。 結論 以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 静岡地方裁判所浜松支部民事部 酒井正史裁判長 裁判官久保孝二 裁判官石井寛
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