【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 一、弁護人青柳盛雄、同安達十郎、同田代博之、同小見山繁、同小林幹治、同木 沢進、同椎名麻紗枝の上告趣意第一点の一について
主文 本件上告を棄却する。 理由 一、弁護人青柳盛雄、同安達十郎、同田代博之、同小見山繁、同小林幹治、同木沢進、同椎名麻紗枝の上告趣意第一点の一について。 所論は、公職選挙法一四二条一項、二四三条三号が憲法二一条一項に違反する旨主張するが、公職選挙法一四二条一項が憲法二一条一項に違反しないことは、当裁判所の判例とするところであり(昭和三七年(あ)第八九九号同三九年一一月一八日大法廷判決、刑集一八巻九号五六一頁、昭和四〇年(あ)第七五九号同年一一月二日第三小法廷判決、裁判集刑事一五七号二二三頁)、公職選挙法一四二条一項の罰則である同法二四三条三号もまた憲法二一条一項に違反しないことは、右の判例の趣旨に徴して明らかであるから、所論違憲の主張は、理由がない。 二、弁護人青柳盛雄ほか六名の前記上告趣意第一点の二について。 所論は、憲法二一条一項違反をいう点もあるが、その実質はすべて単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。 しかし、所論にかんがみ、職権により調査すると、つぎのとおりである。 原判決は(判決書六枚目表六行目から七枚目裏八行目までの部分において)、他の個人または団体に対し特定の議員候補者の推薦を依頼する行為は、その候補者を当選させるため同人に投票を得しめようとするものであるのが通常であるから、特別の事情のない限り選挙運動と解すべきである旨の法律解釈を前提として、被告人らの原判示Aほか四名に対する各文書配付行為が、被告人らにおいて配付の相手方所属の各労働組合に対しB候補の推薦を依頼し、その討議資料として文書を交付したものであるとしても、それは、同時にB候補を当選させる目的で相手方の組合員らの支持、投票を得ようとしてしたものであることはいうまでもないから、被告人 の推薦を依頼し、その討議資料として文書を交付したものであるとしても、それは、同時にB候補を当選させる目的で相手方の組合員らの支持、投票を得ようとしてしたものであることはいうまでもないから、被告人- 1 -の行為は選挙運動であり、各文書の配付は選挙運動用文書の頒布であると解するのが相当であると判断していると認められる。 ところで、まず、公職選挙法一四二条一項にいう選挙運動のために使用する文書とは、文書の外形内容自体から見て選挙運動のために使用すると推知され得るものでなければならないが(昭和三五年(あ)第一一七三号同三六年三月一七日第二小法廷判決、刑集一五巻三号五二七頁参照)、選挙運動のために使用されることが、その文書の本来の、ないしは主たる目的であることを要するものではないと解すべきであり、また、その選挙運動において支持されている候補者(または立候補が予測ないし予定された者)は、必ずしも一人であることを要するものではなく、複数人であつても、それが特定されていれば足りるものと解すべきである。この見地から原判決認定の本件頒布文書を見ると、Aに配付したものは、B候補の氏名、写真および「日本共産党都議候補(板橋)」との表示が掲載された五号ポスター(無証紙)一枚、同候補の氏名、写真、略歴、決意、推薦者氏名等が掲載された文書(パンフレツト)五枚、同候補の氏名を記入した日本共産党東京都委員会委員長および同党板橋区委員会委員長連名の「推薦御依頼」と題する文書一枚、同候補の氏名を記入した「推薦決定通知」と題する文書(用紙)一枚であり、D、E、F、Gにそれぞれ配付したものは、Bを含む予定候補者二九名の氏名、年令、現職、選挙区を記載した「日本共産党東京都議会議員選挙予定立候補者一覧(七月三日現在)」と題する文書二枚ずつであつて、いずれも前記の意義において 配付したものは、Bを含む予定候補者二九名の氏名、年令、現職、選挙区を記載した「日本共産党東京都議会議員選挙予定立候補者一覧(七月三日現在)」と題する文書二枚ずつであつて、いずれも前記の意義において選挙運動のために使用する文書と認めることができる。 つぎに、公職選挙法一四二条一項は、同条項各号所定の通常葉書を除いて、前記説示の意義における文書を選挙運動として頒布することを禁止したものであり、これを選挙運動の準備行為として頒布することまで禁止したものではないと解すべきである。従つて、さらに、候補者推薦依頼行為と選挙運動との関係について考えな- 2 -ければならない。 およそ、特定の選挙が施行されること、そして特定の人がその選挙に立候補することが予測され、あるいは確定的となつた場合において、或る者が、外部から、他の個人または団体に対し、その特定の人を当該選挙において支持すべき候補者として他の者または団体構成員に推薦されたい旨の依頼をする行為が、選挙運動の準備行為に過ぎないものであるか、あるいは推薦依頼に名を藉りた投票依頼行為であつて、選挙運動に該当するものであるかは、当該推薦依頼行為の相手方、時期、方法その他の具体的な事情によつて決定されなければならないところであつて、必ずしも一概に論断することはできない。しかし、遅くとも選挙の公示または告示があつた後の時期においては、各候補者の立候補届出があり、選挙期日も切迫して各候補者の選挙運動が展開されているのが通常であるから、この時期におけるいわゆる推薦依頼行為は、名は推薦依頼であつても、その実質は、特別の事情のない限り、当該候補者を当選させるための投票依頼行為であつて、選挙運動に該当するものと認めるのが相当である。 このような見地から本件を考察するに、第一審判決および原判決の各判示によると 別の事情のない限り、当該候補者を当選させるための投票依頼行為であつて、選挙運動に該当するものと認めるのが相当である。 このような見地から本件を考察するに、第一審判決および原判決の各判示によると、本件東京都議会議員選挙は、昭和四〇年七月八日に告示され(Bは、即日立候補した。)、本件文書頒布は、この告示後に行なわれたものであつて、しかも、各配付の相手方は、いずれも被告人の立場からは外部の者であるから、前記の理由により、特別の事情のない本件においては、被告人の本件文書頒布行為は、B候補のための選挙運動と認めるのが相当である。原判決の前記法律解釈は、候補者推薦依頼行為の時期等を問わないで、一般的に、特別の事情のない限り、それは選挙運動であると解した点において相当ではないが、本件について被告人の行為がB候補のための選挙運動であるとした前記判断は、結局において誤りではない。 そして、原判決は、被告人らの行為が選挙運動であることを理由として各文書の- 3 -配付は選挙運動用文書の頒布であると解しているが、或る文書が選挙運動のために使用する文書であるかどうかは、前述のとおり、まず、その文書の外形内容自体により決定されるべきものであるから、この判断を経ない原判決の右解釈は、その限りにおいて相当ではないが、被告人らの所為が公職選挙法一四二条一項に違反するとした判断は、以上の理由により、結局においてこれを維持することができる。 三、弁護人青柳盛雄ほか六名の前記上告趣意第二点の一(五)について。 所論は、判例(昭和二六年(あ)第二四三六号同三一年七月一八日大法廷判決)違反をいうが、同判例は、本件と事案を異にし、適切ではないから、論旨は前提を欠き、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない(原判決判示の本件文書頒布行為、本件選挙の告示の日および本件文書の各配布 判決)違反をいうが、同判例は、本件と事案を異にし、適切ではないから、論旨は前提を欠き、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない(原判決判示の本件文書頒布行為、本件選挙の告示の日および本件文書の各配布の相手方がいずれも被告人の立場からは外部の者であることは、第一審判決が確定した事実、または原審が事実の取調をして確定した事実であつて、被告人の所為が公職選挙法一四二条一項に違反するとの前記判断は、かかる事実に基づくものであるから、所論引用の前記大法廷判決の判示する刑訴法四〇〇条但書の趣旨に牴触するものではない。もつとも、原判決は、さらに、判決書七枚目裏八行目から八枚目裏八行目までの部分において、証拠を検討して若干の情況事実を認定したうえ、本件文書頒布行為は、当該労働組合に対するB候補の推薦依頼ではなく、選挙運動用文書の頒布そのものである旨判断しており、この事実認定と判断には、刑訴法四〇〇条但書の解釈を誤つた嫌いがないとはいい難いが、原判決の理由のうちこの部分は、その前の判示に附加した余論であつて、かりにそこに法令違反が存するとしても、原判決の結論には影響を及ぼすものではない。)。 四、弁護人青柳盛雄ほか六名の前記上告趣意第二点のその余の所論について。 所論は、憲法二一条違反をいう点もあるが、その実質はすべて事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。 - 4 -五、弁護人浜口武人、同柴田五郎の上告趣意一の第一について。 所論は、公職選挙法一四二条一項にいう「選挙運動」の意義が不明確であることを前提として、同条項、同法二四三条三号が憲法三一条に違反する旨主張するが、公職選挙法における選挙運動の意義が所論のように不明確であるということはできないから(昭和三八年(あ)第九八四号同年一〇月二二日第三小法廷決定、刑 同法二四三条三号が憲法三一条に違反する旨主張するが、公職選挙法における選挙運動の意義が所論のように不明確であるということはできないから(昭和三八年(あ)第九八四号同年一〇月二二日第三小法廷決定、刑集一七巻九号一七五五頁参照)、所論違憲の主張は、前提を欠き、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。 六、弁護人浜口武人ほか一名の前記上告趣意一の第二について。 所論のうち公職選挙法一四二条一項、二四三条三号が憲法二一条一項に違反するとの論旨の理由のないことは、さきに弁護人青柳盛雄ほか六名の上告趣意第一点の一について判示したとおりであり、その余は、憲法二一条一項違反をいう点もあるが、その実質はすべて単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない(選挙運動とその準備行為に関する所論については、さきに弁護人青柳盛雄ほか六名の上告趣意第一点の二について判示したとおりである。)。 よつて、刑訴法四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 昭和四四年三月一八日最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官下村三郎裁判官田中二郎裁判官松本正雄裁判官飯村義美- 5 -
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