主文 奈良労働基準監督署長が,原告に対して平成16年12月1日付けでした労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付及び葬祭料を支給しないとする処分を取り消す。 訴訟費用は,被告の負担とする。 事実及び理由 第1原告の求めた裁判主文と同旨第2事案の概要本件は,亡P1(昭和▲年▲月▲日生,以下「被災者」という)が,平。 成14年11月12日早朝,出張先で宿泊していたホテルの窓から飛び降りて死亡に至ったのは業務に存した過重負荷に起因する精神障害に罹患した結果であるとして,その妻である原告が,奈良労働基準監督署長に対し,労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という)に基づき,遺族補償年金。 及び葬祭料の支給を請求したところ,同署長がこれを支給しないとする処分をしたので,その取消しを求めている事案である。 前提事実(証拠を掲記した事実を除くほかは,当事者間に争いがない)。 (1)被災者の職歴被災者は,昭和52年3月に大学(理工学部機械工学科)を卒業して,環境プラントのオペレーション,メンテナンスなどを業とする日本ヘルス工業株式会社(本社:東京都所在,大阪本部:大阪府吹田市所在。以下,「本件会社」という)に入社し,昭和62年4月以降,同社の生駒浄水。 場所長として稼働していた(乙5。 ) 被災者は,平成14年9月16日,本件会社の組織改革に伴い,生駒浄(,水場所長のほかに奈良サービスセンター長を兼務することとなった以下サービスセンターを「SC」という。 。)(2)うつ病の発症について被災者は,遅くとも平成14年11月上旬ころ,うつ病(ICD-10の「F32うつ病エピソード)を発症した(乙18,弁論の全趣旨。 」)(3)被災者の死亡被災者は,平成14年11月12日午前5時ころ,出張で宿泊していた,() 上旬ころ,うつ病(ICD-10の「F32うつ病エピソード)を発症した(乙18,弁論の全趣旨。 」)(3)被災者の死亡被災者は,平成14年11月12日午前5時ころ,出張で宿泊していた,()。 ホテルの窓から飛び降り頭蓋・胸腔内臓器損傷により死亡した甲4(4)本件処分及び審査請求ア原告は,平成15年11月10日,奈良労働基準監督署長に対し,遺族補償年金及び葬祭料の支給を請求したところ,同署長は,平成16年12月1日「被災者の)死亡と業務との間には相当因果関係が認め,(られない」として,上記各給付について支給しない旨の決定(以下「本件処分」という)をし,そのころ原告に通知した(甲6,7,乙1~。 4。 )イ原告は,平成17年1月26日ころ,本件処分を不服として,奈良労働者災害補償保険審査官に対し,審査請求をしたが,同審査官は,同年9月9日,上記審査請求を棄却する旨決定した。 ウ原告は,上記決定を不服として,平成17年10月20日,労働保険審査会に対し,再審査請求をしたが,現在,裁決はなされていない(甲8。 ) 争点 被災者の自殺は,業務に起因するものか否か第3争点に関する当事者の主張【原告の主張】 業務起因性の判断基準について被災者の自殺について業務起因性が認められるためには,業務と精神障害・自殺との間に相当因果関係を要するところ,その判断は,企業に雇用される労働者の損害を填補するとともに,被災労働者及びその遺族の生活を保障する労災補償制度の趣旨に鑑み,同種労働者(職種,職場における地位や年齢,経験等が類似する者で業務の軽減措置を受けることなく日常業務を遂行できる健康状態にある者)の性格傾向の多様さとして通常想定される範囲内の者の中で最も脆弱な者を基準としてされるべきである。 ,「」なお心理的 する者で業務の軽減措置を受けることなく日常業務を遂行できる健康状態にある者)の性格傾向の多様さとして通常想定される範囲内の者の中で最も脆弱な者を基準としてされるべきである。 ,「」なお心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について(基発544号平成11年9月14日,乙24)の別添「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針(以下「判断指針」という」の基。)準には種々の問題点があるが,本件は,上記基準によっても業務による心理的負荷は「強」と判断され,かつ,特段の業務以外の心理的負荷や固体的要因はないことから,業務起因性が肯定されるものである。 被災者の業務による心理的負荷について(1)奈良SC長兼務による責任の重大化,仕事の量・質の大きな変化等被災者は,従業員11名からなる生駒浄水場の所長であったが,平成14年9月16日に生駒浄水場所長と奈良SC長とを兼務することとなり,,()()兼務前に比べ所掌する事業場数13事業場や従業員数150名超の点で,はるかに大きな規模の業務を担当するようになった。 生駒浄水場については,老朽化に伴う改修工事が計画されており,業務上の課題が多かった上,奈良SCは,新しくできた組織であったため,自力で考え,手探りの状態で業務をこなしていかなければならなかった。 また,兼務となったことから,従来から行っていた生駒浄水場での業務に加え,奈良SC長の業務(書類の決裁業務,労務管理,営業等)を行わなければならなくなり,仕事の量は激増し,その結果,労働時間も長時間 化した。 さらに,被災者は,本件会社に入社後,ずっと技術職に就いていたところ,入社後25年経ち,47歳になって,それまで経験したことのなかった,全く質の異なる,各事業場の運営・管理,営業,人員調整等の業務を らに,被災者は,本件会社に入社後,ずっと技術職に就いていたところ,入社後25年経ち,47歳になって,それまで経験したことのなかった,全く質の異なる,各事業場の運営・管理,営業,人員調整等の業務を担当することになったのであり,異動後の仕事内容は,被災者の能力・経験と著しいギャップがあった。 加えて,後記(3)ないし(5)のとおり,配下にいる従業員の勤務状況を巡り上司と対立したり,後任予定者として心の支えとしていた所長代理のP2(以下「P2所長代理」という)の退職が決まるなどにより,業務。 の困難性,精神的重圧はいっそう深まることになった。 以上述べたところは,判断指針の別表1「職場における心理的負荷評価表(以下「認定基準別表1」という。乙24)の内,②新規事業の担」,当となった,③仕事内容・仕事量の大きな変化があった,勤務・拘束時間が長時間化した,⑤配置転換があった,⑥上司とのトラブルがあったに該当する。 (2)被災者の労働時間(長時間労働)について被災者は,午前6時40分ころに自宅を出ており,平成14年9月以前は,概ね午後9時から9時30分ころ帰宅し,月あたり40時間ないし100時間の,平成14年9月以降は,ほとんど午後9時30分から午後1,,0時30分の間に帰宅しており月あたり100時間ないし120時間の各所定時間外労働を行っており,常態として長時間労働に従事していたことは明白であって,兼務以後,労働時間は長時間化していた。 (3)P3の無断欠勤被災者は,平成14年10月当時,人手不足解消のための人員調整に奔走していたところ,部下のP3の無断欠勤という事態が生じ,奈良SC長に就任して間もない時期に,これに対応しなければならなくなった。 (4)上司であるP4との意見対立被災者は,上記P3の処遇やSC長兼務の困難性等につい のP3の無断欠勤という事態が生じ,奈良SC長に就任して間もない時期に,これに対応しなければならなくなった。 (4)上司であるP4との意見対立被災者は,上記P3の処遇やSC長兼務の困難性等について,上司であるP4と意見が合わず,一人で悩むなど精神的な負担を負っていた。 (5)P2所長代理の退職申出生駒浄水場のP2所長代理は,被災者が片腕として信頼し,後任の生駒浄水場所長として期待していた者であるが,同人は,平成14年10月ころ,家庭の都合により退職を申し出た。 被災者は,慰留を試みたが,受け入れられなかった。 ,,,そのため被災者は有能かつ信頼していたP2所長代理の後任者調整その交替に伴う負荷への対処のほか,SC長兼務期間が長くなる点で更に大きな精神的負担を負った。 (6)東京出張(P5発言)と被災者の自殺について被災者は,平成14年11月11日及び12日に本件会社の東京本社において実施されたSC長の研修に参加した。 第1日目(同年月11日)の夜,研修参加者全員が出席する懇親会が開かれたがその席上本件会社の東京本部長であるP5取締役以下P,,(,「5」という)は,社長以下の役員も含めた参加者全員の面前で,被災者。 ,。 を攻撃・非難するようなスピーチをし被災者は甚大なショックを受けたそのため,被災者は,原告に対し,懇親会終了後に電話をかけて「ま,た死にたなったわ」と述べて,電話を切った。 。 翌12日早朝,被災者は,宿泊先ホテルの窓から飛び降り自殺した。 なお,自殺と業務との因果関係を判断するにあたっては,うつ病を発症するまでの業務による心理的負荷に加えて,発症したうつ病を増悪させる業務による心理的負荷も含めた総合的な考慮がなされるべきである。判断指針は,うつ病発症後の心理的負荷は評価対象外とされているが,不当 するまでの業務による心理的負荷に加えて,発症したうつ病を増悪させる業務による心理的負荷も含めた総合的な考慮がなされるべきである。判断指針は,うつ病発症後の心理的負荷は評価対象外とされているが,不当である。 (7)本件会社の講じた支援について上記のとおり,被災者には過大な心理的負荷が与えられていたが,本件,,,,会社はそのための具体的な支援措置をとっておらずかえってP4が被災者から相談を受けた際,被災者に威圧的なことを言うことがあったほか,被災直前の東京出張の際には,P5が,被災者を無能呼ばわりして追い込んだ。 (8)相乗的効果上記(1)ないし(6)の出来事が,近接して生じ,心理的負荷の強度は相乗的に強まった。 うつ病の発症について被災者は,奈良SC長への就任の話しが出て以降,従前興味を持っていたことについて関心を示さなくなり,家族から話しかけられても上の空で,すぐに自室に引きこもったり,冗談を言わなくなる等情動反応が乏しくなり,睡眠障害や食欲低下,体重減少,疲労感の増加などの変化が生じた。 また,奈良SC長の辞令を受ける前後から,被災者は「何から手をつけ,てよいか分からない」等,新しい役職に対する不安・重責を原告に訴える。 ,,「,ようになりP2所長代理の退職が決まったころからは身動きとれない不安すぎる「怖い「体中が震えて止まらない「朝,目覚めるのが怖」,」,。」,い」などと頻繁に口走るようになり,手に汗をかく状態が続くようになっ。 た。 さらに,被災者は,特にP2所長代理の退職をめぐる問題について,自分の力が及ばなかったと悔やむなど,自己を責めることが多かった。 被災者は,原告に対し,死亡前に「俺が死んだら何か変わるか「生命。」,保険で子供二人養っていけるな」等,死をほのめかすような て,自分の力が及ばなかったと悔やむなど,自己を責めることが多かった。 被災者は,原告に対し,死亡前に「俺が死んだら何か変わるか「生命。」,保険で子供二人養っていけるな」等,死をほのめかすようなことを言うよ。 うになった。 こうして,被災者は,平成14年11月上旬には,うつ病を発症した。 業務以外の心理的負荷について被災者は,当時,妻,両親,子供と円満な家庭生活を送っており,業務以外の心理的負荷となる出来事はなかった。 ,,。 また被災者には精神障害や生活史の点で特記すべきことも存在しない 認定基準別表1へのあてはめ「」,「」出来事の類型についてはいずれも(1)平均的な心理的負荷の強度は「Ⅱ」であるが,上記のとおり,業務内容が大きく変化し,その内容も被災者の経験・能力に比して過度に困難なものであり,被災者が極めて重大な立場に置かれていたという事情が存在することから,本件における心理的負荷の強度は「Ⅲ」に修正される。なお,前記2(8)のとおり,これらの心理的負荷の強度を判断するにあたっては,出来事相互間の関係や相乗効果等が評価されなければならない。 「(3)出来事に伴う変化等を検討する視点」について検討すると,前記2で述べたとおり,奈良SC長を就任することにより,被災者の業務の量・質・責任とも大きく変化することとなった。しかも,生駒浄水場所長との兼務であったため,その業務の量・責任の増大は著しかった。それに対する会社,「」からの具体的な支援がなかったこと等から出来事に伴う変化は特に過重に該当する。 したがって,業務による心理的負荷の強度はⅢで,しかも特に過重であるため,被災者の受けた心理的負荷の総合評価は「強」と評価されるべきである。 業務起因性のまとめ以上によれば,被災者は,遅くとも平成14 て,業務による心理的負荷の強度はⅢで,しかも特に過重であるため,被災者の受けた心理的負荷の総合評価は「強」と評価されるべきである。 業務起因性のまとめ以上によれば,被災者は,遅くとも平成14年11月上旬にはうつ病を発症していたといえ,発症前6か月間(特に同年9月~10月下旬)に,総合評価は「強」と評価されるべき強い心理的負荷が認められる。 ,したがって,奈良SC長と生駒浄水場所長を兼務することにより被災者に もたらされた一連の出来事による心理的負荷の強度は,通常の労働者をも精神障害・自殺に至らしめるものであったことは明らかであり,被災者の精神,。 障害の発症及びその死亡が業務に起因するものであることは明らかである【被告の主張】 業務起因性の判断基準について(1)相当因果関係の存在ある労働者の死亡等を業務上のものというためには,当該業務と死亡等との間に,当該業務に従事しなければ当該結果(死亡等)は生じなかったという条件関係があれば足りるのではなく,両者の間に相当因果関係の存在することが必要であり,その有無は,当該傷病等が当該業務に内在する危険の現実化として発生したと認められるかどうかによって判断されるべきである。 (2)精神障害についての業務上外の判断について精神障害についても,業務起因性が認められるためには,当該業務と当該精神障害との間に相当因果関係の存在することが必要であり,当該精神障害が当該業務に内在する危険の現実化として発病したと認められることが必要であるところ,当該業務に精神障害発病の危険性が内在しているか否かは,平均的な労働者,すなわち日常的業務を支障なく遂行できる労働者を基準とすべきである。また,業務に内在する危険が現実化したというためには,当該発病について,業務の危険性が,その他の業務外の要因に比し 平均的な労働者,すなわち日常的業務を支障なく遂行できる労働者を基準とすべきである。また,業務に内在する危険が現実化したというためには,当該発病について,業務の危険性が,その他の業務外の要因に比して相対的に有力な原因となったと認められることが必要である。 そして,当該発病について,業務の危険性が,その他の業務外の要因に比して相対的に有力な原因となったか否かは「ストレス-脆弱性」理論,に基づいて,業務上の要因による心理的負荷,業務外の要因による心理的負荷及び個体側要因をそれぞれ検討し,それらのどの要因が当該精神障害の発病に有力な原因となったかについて総合判断を行い,業務上の要因に よる心理的負荷が相対的に有力な原因である場合に限り,業務に内在する危険が現実化したとして,相当因果関係を認めるべきである。 ,,,,なおこの点に関する原告の主張は結局当該労働者本人を基準としその脆弱性の程度によって業務の危険性を判断するか,日常的に些細なストレスを伴う業務に従事した場合も業務起因性を認めるものであって,労災補償制度の趣旨に反するものである。 (3)うつ病発症後の心理的負荷の評価についてうつ病による自殺は,精神障害によって正常な認識,行為選択能力が著しく阻害され,自殺を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態に陥った結果によるものとするのが精神医学上の考え方であり,自殺を図った労働者がうつ病に罹患していた場合,労災の認定に当たっては当該うつ病の罹患と業務との相当因果関係の有無を判断することで足り,当該うつ病の増悪の有無まで判断する必要はない。また,精神障害罹患後は,正常な認識ができない状態に陥っているから,そのような状態での業務の心理的負荷の軽重を論じ,相当因果関係を検討すること自体不相当である。 被災者の業務による 必要はない。また,精神障害罹患後は,正常な認識ができない状態に陥っているから,そのような状態での業務の心理的負荷の軽重を論じ,相当因果関係を検討すること自体不相当である。 被災者の業務による心理的負荷について(1)奈良SC長兼務による責任の重大化,仕事の量・質の大きな変化等被災者は,奈良SC長を兼務することになったが,以下のとおり,負担はさほど増大していない。 ア業務量の変化について被災者は,奈良SC長を兼務するようになって,既存顧客との契約更改業務と各事業場の統括業務(すなわち,既存顧客と契約更改業務(営),,),業人事労務事務・経理等の統括業務を担当することとなったが従前,旧奈良支店が行っていた上記業務については,旧奈良支店のメンバーがそのまま奈良SCの従業員となったことから,奈良SCの部下が 事前に決裁書類のチェックを行い,被災者は単に承認印を押印することで足り,SC長である被災者が不在であっても奈良SCの業務が停滞することはなかった(後記(7)参照。 )また,奈良SC長の業務である各事業場での契約更改業務は,年度末に行われるものであり,契約更改の時期が到来していなかったため,被災者が奈良SC長兼務となってから死亡に至るまでの間は,契約更改業務に着手することもなく,忙しくはなかった。 さらに,新しくSC長となった者が顧客との契約更改業務等を行う際には,旧支店長がサポートすることとなっており,例えば,旧奈良支店長のP4は,奈良SCと同じ事務所に勤務しており,被災者が生駒浄水場を離れられないこともあって,顧客への挨拶回りや折衝業務は同人が行うこととなっていた(後記(7)参照。 )加えて,奈良SC長の兼務によって被災者が実際に行った業務は,その多くは総務や経費に係る決裁業務であって,これまでに被災者が経 の挨拶回りや折衝業務は同人が行うこととなっていた(後記(7)参照。 )加えて,奈良SC長の兼務によって被災者が実際に行った業務は,その多くは総務や経費に係る決裁業務であって,これまでに被災者が経験したといい得る業務である。 そのほか,被災者は,昭和62年から生駒浄水場所長の業務を担当していたのであって,奈良SC長を兼務することとなった後も,各事業場は独立して業務を行っている上,各事業場には所長がいるので,被災者が直接,各事業場の従業員を管理するものではなく,したがって,所掌する従業員の数が約150名となったからといって,負担が10倍以上になったものではない。 営業的な業務についても被災者に全く経験がないとはいえないし,契約更改業務は早くても年度末(平成15年の3月ころ)に行われるものであって,その業務のうち,被災者が担当したことのない既存顧客との契約更改業務については,旧担当者である他のSC長ないしP4が担当し,又は担当する予定になっており,顧客への挨拶回りを除けば被災者 が実質的に関与したことはなかった。 なお,奈良SCへ行く頻度も,兼務当初は毎日行っていたが,その後は,週2回程度となった。 したがって,SC長を兼務するようになって,被災者の業務量が増えたといえるものの,大きく増加した事実はない。 イ業務の質の変化について各事業場の統括業務について,被災者は,昭和62年から死亡するまでの約15年間にわたり,生駒浄水場所長として技術業務以外の生駒市職員との折衝業務,職員の労務管理及び経理等の仕事にも従事してきており「全く経験の無かった業務を任され」たとはいえない。 ,ウ生駒浄水場所長の業務生駒浄水場所長としての仕事は,浄水場の中央監視盤の監視業務と顧客との折衝業務,職員の労務管理及び経理の仕事であった。 エその他(ア た業務を任され」たとはいえない。 ,ウ生駒浄水場所長の業務生駒浄水場所長としての仕事は,浄水場の中央監視盤の監視業務と顧客との折衝業務,職員の労務管理及び経理の仕事であった。 エその他(ア)業務の裁量性について被災者は,奈良SC傘下の事業場を統括管理する立場にあったのであるから,裁量性を発揮できる業務についていたというべきである。 (イ)出来事の相乗効果について被災者にとって相乗的に作用するほどの心理的負荷があったとはいえない。 (ウ)SS構想について当時本件会社はSCを分割しサービスステーション以下S,,,(「S」という)体制へ組織を再編することを検討しており,その構想。 立案等もSC長の業務であった。 しかし,SS構想自体は,未だ構想立案段階で,本件会社がSS体制の構築に着手したのは平成15年6月以降であり,要検討事項にと どまるものである。 (2)被災者の労働時間について被災者は,長男の就学時間やクラブ活動の時間に合わせて通勤をしており,特に送り迎えのないときは,午後7時ころに退社していたのであるから,長時間労働に従事していたとはいえない。 被災者は,兼務前の数年間は,遅くとも午後9時ころには生駒浄水場を退出しているところ,平成14年9月16日以降も長男の迎えは被災者がしており,兼務後,若干退社時刻が遅くなったことが窺われるものの,奈良SCに立ち寄ったときも含め,長男の迎えが困難になるほど超過勤務をしていたとは考え難い。 したがって,被災者は,うつ病発症前に午後10時を過ぎる深夜時間帯に及ぶような恒常的な長時間労働を度々行っていたものではない。 うつ病発症後は,意欲,活動等の低下により労働時間が長時間化することはよくあるから,発症後の労働時間の変化は考慮すべきでない。 (3)P3の無断欠勤について な長時間労働を度々行っていたものではない。 うつ病発症後は,意欲,活動等の低下により労働時間が長時間化することはよくあるから,発症後の労働時間の変化は考慮すべきでない。 (3)P3の無断欠勤について被災者は,P3が無断欠勤し,行方が判明しないことを心配していたと考えられるが,同様の心配はP4やP3の所属する奈良中部汚泥処理事業場所長P6らもしていたのであり,被災者が一人心配していたわけではない。 また,この問題につき,大阪本部人事課に報告した上「就業規則では,解雇の対象となるが,所在がつかめないのであれば,しばらく様子をみることとする」との返答を得ており,被災者一人に解決が委ねられていた。 わけではない。 さらに,被災者がP3宅を訪問(平成14年10月29日)したり,電話(同年11月5日)をかけたのは,各1回に過ぎないこと,従業員の無断欠勤は特段珍しいことではないことに鑑みると,このことが被災者に大 きな精神的ストレスを与えたとは考えられない。 (4)P4との意見対立について被災者は,P3の処遇や奈良SC長兼務に関し,上司であるP4と意見の相違があったり,P4から叱責を受けたりしたが,これは,一般的な業務運営上の出来事であって,トラブルといえるものではない。 (5)P2所長代理の退職申出P2所長代理が,被災者に対し,家庭の事情により退職する意思を告げた際,被災者はこれに理解を示し,かつ,後任人事も五條浄水場のP7に決定しており,この問題は被災者の大きな精神的ストレスではなかった。 P2所長代理が退職することに関し,その旨の上申書作成をした点を除けば,被災者の業務量に変動はなく,また,被災者が生駒浄水場の他の職員が受けた以上の心理的負荷を受けたとみるべき特別な業務上の関係や人的関係もない。 また,被災者の兼務期間は必ずしも明確には 点を除けば,被災者の業務量に変動はなく,また,被災者が生駒浄水場の他の職員が受けた以上の心理的負荷を受けたとみるべき特別な業務上の関係や人的関係もない。 また,被災者の兼務期間は必ずしも明確には限定されていなかったのであるから,被災者がP2所長代理を生駒浄水場所長の後任者と期待していたとしても同人の退職によってさほどの心理的負荷が増したとはいえないし,P2所長代理の後任の選定も平成14年10月24日ころには目途が立っており,被災者も翌15年3月を目途にSC長専任になるということを知っていたのであるから,被災者の受けた心理的負担が大きかったとはいえない。 (6)東京出張について本件会社の東京本社における研修後に実施された懇親会の席上におけるP5の発言に被災者が気分を害した可能性は否定できないが,被災者を励ますためのP5流の叱咤激励であり,同時に周囲の者を励ます意味を込めてのものだったのであり,この発言は,精神障害を発病していなければ著しい心理的負荷を与えるものとは考え難い。 (7)本件会社の講じた支援についてSC長の業務について,決裁しなければならない書類は,奈良SCのP8が事前にチェックを入れており,被災者は承認印を押すだけで足りるようになっていた。 また,諸経費の報告書,上申書,稟議書の中でファックスで済ませられるものは,奈良SCからファックスし,被災者が内容を確認して問題がなければ事務員が代わりに押印して処理していた。 さらに,顧客との折衝はP4や被災者の奈良SCにおける部下であったP9がしており,営業活動に関しては,京都府と滋賀県の顧客に関する契約更改を,大阪SC長のP10が担当することになっていた。 その余の顧客との契約更改も従前の顧客との関係に鑑み,急に新しく就任したSC長に営業活動を全て任すわけに行かないことから 賀県の顧客に関する契約更改を,大阪SC長のP10が担当することになっていた。 その余の顧客との契約更改も従前の顧客との関係に鑑み,急に新しく就任したSC長に営業活動を全て任すわけに行かないことからP4が主体となって行われることになっていた。 P3問題については,被災者とともにP4もP3宅に同行しており,同問題については大阪本部で検討されることになっていた。 その他,P5は,P4,P10らに対し,被災者の相談にのるよう依頼し,あるいは被災者の悩みを聞くためP11を奈良へ行かせていたし,業務の引継ぎは所長兼務であることに配慮して様子をみながらの引継ぎとしたり,P2所長代理が退職を申し出たことについては10日足らずのうちに五條浄水場のP7を後任とすることを内定するなどしていた。 したがって,奈良SC兼務後,本件会社は,被災者に対し,支援体制をとっていた。 業務以外の心理的負荷について被災者の業務による心理的負荷が認定基準別表1の評価において「強」と判断されない場合,調査によって発見されなかった業務以外の心理的負荷あるいは個体側要因があったと理解すべきである。 なお,被災者は,長女の不登校,農作業を負担に感じていたことのほか,子供二人を私立学校に通学させることによる経済的負担や夫婦仲が上手くいっていないこと,被災者の父親が平成14年6月20日に入院して手術を受け,同月26日に退院したこと等の心理的負荷を窺わせる事情があった。 個体側の要因について被災者は,兼務に対することさらの不安,まじめ・几帳面・責任感が強い・頑固,神経が細かいといった点が認められ,うつ病親和型の性格傾向があった。 また,被災者は,平成14年5,6月ころから,口調がきつくなったり,,,イライラした様子となり同年4月ころから早く目覚めるようになったほか辞令を 点が認められ,うつ病親和型の性格傾向があった。 また,被災者は,平成14年5,6月ころから,口調がきつくなったり,,,イライラした様子となり同年4月ころから早く目覚めるようになったほか辞令を受ける前から奈良SC長になることを不安がっていたこと,P4やP10が既存顧客との契約更改業務を受け持つこととなっていたにもかかわらず非常に重荷に感じていたこと,SS体制の構築に向けて本件会社から何ら指示がだされていない段階で,将来のSS体制の構想作りに悩んでいたのであり,かかる事実は,被災者の精神的な脆弱性を示すものである。 さらに,被災者と同様,事業場所長とSC長を兼務した者が他に7名いたにもかかわらず,これらの者が精神障害を発症していないことは,被災者のうつ病親和型の性格,脆弱性を示すものである。 認定基準別表1へのあてはめ被災者に該当するのは「配置転換があった」ことだけである。 ,すなわち,被災者は,従前から浄水場の所長をしており,顧客との折衝業務や職員の労務統括管理等は経験しており,全く異なる業務を内容とする役職に就いたものではない。また,被災者のSC長への昇進は年齢や経験からみても誰もが容認できるものであったことや,被災者が奈良SC長となってから,大阪SCのP10やP4,奈良SCの部下がSC長の業務をフォローしており,業務に関するトラブルも発生していないこと等から,被災者の心 理的負荷の強度を「Ⅲ」に修正する要素はない。さらに,奈良SC長を兼務することにより,旧奈良支店が担っていた既存顧客との契約更改業務と各事業場の統括業務を受け持つこととなったが,SC長を兼務してから被災するまでの間に契約更改業務はなく,奈良SCに所属する部下の作成した書類の決裁業務等を行っていただけであり,物理的に両方の事業場に勤務できなかったとしても つこととなったが,SC長を兼務してから被災するまでの間に契約更改業務はなく,奈良SCに所属する部下の作成した書類の決裁業務等を行っていただけであり,物理的に両方の事業場に勤務できなかったとしても,部下や上司がフォローしていたために両方の業務は遂行できていた。なお,P2所長代理の退職日は,平成14年12月15日であり,被災者が死亡するまでに辞職した事実はない。 したがって,被災者が奈良SC長を兼務するようになったからといって,奈良SCにおいて新規事業が行われ,これが被災者の心理的負荷となったとはいえない。 また,被災者は,奈良SC長兼務となった後も従来どおり生駒浄水場に勤務し,同所にてP4から引継ぎを受ける等したほか,同浄水場での勤務を終えてから奈良SCに出向いていたものの,営業業務については顧客への挨拶程度にとどまっており,契約更改等の実務は行っていない。被災者が奈良SC長を兼務することにより増加した業務量は,週に1,2度,奈良SCへ出向く程度のものであり,奈良SCへ出向いた日の退社時刻も午後8時ないし9時であり,従前とさほど変わっておらず,拘束時間が増大したともいえない(したがって,心理的負荷の強度は「Ⅰ」に修正すべきである。 ,。)結局,①被災者が新規事業の担当者となったとはいえず,②被災者の仕事内容・仕事量の変化については,勤務時間に大きな変化はなく,心理的負「」,「」荷の強度はⅠと修正され③配置転換による心理的負荷の程度もⅡであり,④上司とのトラブルの事実も認められないことから,業務による心理的負荷の総合評価は「中」とするのが相当である(この点,奈良労働局地方労災医員協議会精神障害等専門部会意見も「中」と判断している。 。) 業務起因性のまとめ 最新の医学的・心理学的知見及び法的判断に基づく客 「中」とするのが相当である(この点,奈良労働局地方労災医員協議会精神障害等専門部会意見も「中」と判断している。 。) 業務起因性のまとめ 最新の医学的・心理学的知見及び法的判断に基づく客観的基準として示された判断指針に照らし,被災者の業務による心理的負荷は,客観的に当該精神障害を発症させるおそれのある程度に強いと判断することはできず,被災者の発症と業務との間に相当因果関係を認めることはできない。 したがって,本件自殺による被災者の死亡は業務に起因するものではないとした本件処分は適法である。 第4争点に対する判断 業務起因性の判断基準について(1)相当因果関係を要することについて労災保険法に基づく遺族補償給付及び葬祭料の保険給付は,労基法79条及び80条所定の「労働者が業務上死亡した場合」に行われるものであるところ(労災保険法12条の8第2項,労働者の死亡を「業務上」の)ものというためには,業務と死亡の原因となった疾病等との間に条件関係が存在するのみならず,社会通念上,当該被災者の疾病等が業務に内在ないし随伴する各種の危険の現実化したものと認められる関係,すなわち相当因果関係が存することを要すると解される。 (2)自殺と業務起因性について労働者が自殺した場合には,労災保険法12条の2の2第1項が「労働者が,故意に負傷,疾病,傷害若しくは死亡又はその直接の原因となった事故を生じさせたときは,政府は,保険給付を行わない」と規定してい。 るため,その業務起因性が問題となる。 しかし,労働者が自殺した場合であっても,労働者が精神障害を発症した結果,正常な認識,行為選択能力が著しく阻害され,又は自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で自殺が行われた場合であって,上記精神障害が,業務に起因することが明らか 発症した結果,正常な認識,行為選択能力が著しく阻害され,又は自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で自殺が行われた場合であって,上記精神障害が,業務に起因することが明らかな疾病(労基法施行規則別表第1の2第9号)であれば,自殺による死亡につき業務 起因性を認めることができる。 なお,判断指針において,ICD-10のF0ないし4に分類される精,,神障害の下で遂行される自殺行為については精神障害により正常な認識行為選択能力及び抑制力が著しく阻害されていたと推定している(乙24。 )(3)業務起因性の判断のあり方についてまた,証拠(乙38の2,乙43,45)及び弁論の全趣旨によれば,精神障害の発症について,未だ十分解明されていないが,環境由来のストレスと個体側の反応性,脆弱性との関係で,精神的破綻が生じるかどうかが決まるという「ストレス-脆弱性」理論が,精神医学の領域において広く受け入れられていると認められることからすれば,業務と精神障害の発症との間の相当因果関係が認められるためには,ストレス(業務による心理的負荷と業務以外の心理的負荷)と個体側の反応性,脆弱性を総合考慮し,業務による心理的負荷が社会通念上,客観的にみて,精神障害を発症させる程度に過重であるといえる場合に,業務に内在ないし随伴する危険が現実化したものとして,当該精神障害の業務起因性を肯定するのが相当である。 (4)うつ病発症後の心理的負荷の評価について(甲19,乙24,40)被告は,判断指針により業務起因性が判断されるべきであるとした上,うつ病発症後,その増悪の有無を判断する必要はなく,そのような状態での業務の心理的負荷の軽重を論じ,相当因果関係を検討すること自体不相当と主張する。 しかし,うつ病には軽度のものから重度のものまで,また 病発症後,その増悪の有無を判断する必要はなく,そのような状態での業務の心理的負荷の軽重を論じ,相当因果関係を検討すること自体不相当と主張する。 しかし,うつ病には軽度のものから重度のものまで,また,進行の度合いにおいても様々なものがある(甲19,乙45。そして,業務上の負)荷によりうつ病を発症(ただし,その診断可能時点は必ずしも特定が容易とは言い難い)した者が,未だ完全に行為選択能力や自殺を思いとどま。 る抑制力を失っていない状態において,改めて,社会通念上,うつ病を増悪させる程の業務上の負荷(通常人であっても,うつ病を発症する程度の心理的負荷)を受けた結果,希死念慮を高め,自殺を図った場合,相当因果関係を認めるのが合理的である場合が存する。 すなわち,うつ病等の精神疾患が,ストレスによって発症ないし増悪することは精神医学上も認められると解されるところ,うつ病に発症したからといって,全ての事例において自殺に至るわけではなく,逆に,発症後に業務上の負荷を負ったことにより,うつ病を増悪させ,その結果,自殺するに至る場合もあり得る(甲25。精神障害の発症後は,業務上の負)荷を,その程度にかかわらず業務起因性の判断の際の考慮要素としてはならないとする考えは,採用できない。 なお,判断指針は,現在の医学的知見に沿って作成されたもので,一定の合理性があることが認められるが,業務上外認定処分を所管する行政庁が,実際に処分を行う下部行政機関に対して立証責任の軽減,認定の画一性を図るための運用の基準を示した通達であって,司法上の判断に当たっては必ずしもこれに拘束されるものではないというべきである。 本件自殺及び自殺に至る経緯について前提事実,証拠(後掲のもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1)本件会社の主要取引先及 しもこれに拘束されるものではないというべきである。 本件自殺及び自殺に至る経緯について前提事実,証拠(後掲のもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1)本件会社の主要取引先及び業務概要本件会社は,東京に本社を置き,主に官公庁及び地方公共団体から,下水・浄水事業の委託を受けて,同事業の処理・運転管理及びメンテナンスを行っている(争いなし。 )(2)本件会社の組織改革本件会社は,東京本社,大阪本部の傘下に345の浄水場等の事業場を統括する支店を全国に約40か所有していたところ,コスト削減及び効率 化を図るべく,平成14年9月16日,組織改革を行った。その概要は,次のとおりである。 ア東京本社と全国各地の事業場を結ぶ核としてSCを全国に40か所設置し(証人P57頁,従前,支店が所管していた機能のうち,営業)機能の主な部分(新規顧客開発業務等)を統括営業本部に移管し,事業統括機能はSCに移管する。 イ各SCは,複数の担当事業場の運営・営業・人員調整等について統括・管理する。なお,SCの所管する営業は既存顧客との契約更改業務であり,新規顧客開拓業務は含まれない。 ウ組織改革では,SC長と事業場所長は分離することになっていたが,顧客との関係等もあり,8名のSC長が当面の間,事業場所長を兼務した状態でのスタートとなった。 また,本件会社のSCのうち,大阪SCと奈良SCが他より先行して組織の改変を実施していった。 なお,SC体制は,SS体制へ移行するための過渡的な制度であり,各SC長に対しては,SS体制への移行に向けた人員配置構想の策定が課せられていたが,特に期限が設けられているわけではなかった(乙12,証人P225頁,同P418・31頁。 )エ上記組織改革により,平成14年9月16日以降,被災者は奈良S 員配置構想の策定が課せられていたが,特に期限が設けられているわけではなかった(乙12,証人P225頁,同P418・31頁。 )エ上記組織改革により,平成14年9月16日以降,被災者は奈良SC長を兼務するようになった。 前記ウのとおり,事業場所長とSC長を兼務した者は,被災者の他に7名いたが,それらのSCの中では,奈良SCは,事業所数や従業員数でも大きな規模であった。 なお,従前,被災者の上司であったP4は,同日,本件会社の統括営業本部課長兼奈良事務所所長(なお,奈良事務所は,営業業務を行うための活動拠点として設置されたものである)に就任し,奈良SCと同。 じ事務所に勤務していた。 (以上,乙11,12,16,19,乙23の4の1・2,乙31,乙41の2,証人P5,弁論の全趣旨)(3)生駒浄水場所長の業務内容についてア生駒浄水場所長の業務内容及びタイムスケジュール等被災者は,昭和62年に生駒浄水場所長となって以降,①生駒浄水場の施設監視及び運転操作業務(各種装置・機器の運転操作及び点検,運転操作に必要な日常水質試験,山崎浄水場の警備,防火及び清掃,県営水道の受水量及び総取水量並びに総送水量の把握等の技術業務)に加え,②所長として生駒市職員との折衝業務(事業場改善提案・工事営業等の日常営業行為及びクレーム対応,職員の労務管理(事業場内の)人事関係勤務表・残業明細書の確定と奈良支店への送付及び経理諸,)(経費精算書・月報・業務完了報告書の確定と奈良支店への報告,報告書)。 ,類のチェック・決裁と客先への提出等等の仕事に従事していたなお生駒浄水場所長の業務に契約更改業務は含まれない。 被災者の1日のタイムスケジュール及び1か月のタイムスケジュールは別紙のとおりである。 イ生駒浄水場の人員数・業務時間平成14 に従事していたなお生駒浄水場所長の業務に契約更改業務は含まれない。 被災者の1日のタイムスケジュール及び1か月のタイムスケジュールは別紙のとおりである。 イ生駒浄水場の人員数・業務時間平成14年当時の生駒浄水場の従業員は,被災者を含め11名(嘱託2名を含む)で,24時間体制で施設監視や運転業務を行っていた。 。 ウ生駒浄水場の特殊性生駒浄水場は,地形的な要素や施設の配置等から,効率的な設計になっておらず,平地にある浄水場に比べて,手動操作部分が多く,運転操作管理等が複雑なものとなっていた。 また,生駒浄水場は人手が不足気味であり,一人でも抜けると大変な状況であった(このことは,被災者の死亡後,実父が倒れたために退職 することになったP2所長代理が,退職前の有給休暇期間中も同人の実父が死亡するまで生駒浄水場で稼働していたこと,被災者死亡後,当面の業務人員不足について近隣事業場から応援要請をしたことから推認できる。 。)さらに,平成14年11月からは外部施設の巡回点検業務も新たな業務内容として加わった。 エ被災者の経歴等被災者は,基本的に技術畑であり,営業経験は乏しかった。 (以上,乙12,13,15~17,乙22の2,乙23の2,乙23の6,乙34,乙37の2,乙39,証人P11,同P4,同P12)(4)奈良SC長の業務についてア奈良SC長の担当業務について奈良SC長は,各事業場の統括業務,すなわち,総務・経理・人事・労務(事務用品・車両等の管理,諸経費の要求,経費精算,勤怠管理及び扶養者届・諸手当申請等の事務業務,昇進,昇格,採用,配属等の人員配置ないし労使協議などの人事労務,各事業場の責任者会議などへの出席等)に関する業務と営業関係(既存顧客との契約更改(1年毎,)既存受託施設の営業,受託業務範囲拡大のための 格,採用,配属等の人員配置ないし労使協議などの人事労務,各事業場の責任者会議などへの出席等)に関する業務と営業関係(既存顧客との契約更改(1年毎,)既存受託施設の営業,受託業務範囲拡大のための改善提案,小規模工事提案ないしクレーム対応,協力会社との交渉,現場対応等)の業務を担当していた。 イ奈良SCの担当事業場数,担当エリア等について旧奈良支店が担当していたのは8事業場であったが,奈良SCの担当エリアは,京都,滋賀,奈良,和歌山の一部であり,生駒浄水場を含め16の事業場(従業員数合計153名)を所掌するようになった。 なお,上記16の事業場のうち,8事業場については,従前,旧奈良支店が担当しており,同業務を担っていた旧奈良支店の従業員5名のう ,。 ち支店長であったP4を除く4名が奈良SCに所属することになったウ被災者が奈良SC長として行っていた業務について被災者は,奈良SC長となってから死亡するまでの約2か月間に担当した業務は次のとおりである。 (ア)総務・経理業務について奈良SC長の業務(前記ア参照)のうち,総務・経理業務については,奈良SCの部下従業員が事務の多くを担っており,事務的なものについては被災者において決裁(週2回くらい奈良SCにて)するものが多かったといいうるが,約2か月間の間でも被災者自身も人事案件などの稟議書を起案したり,各事業場の所長等が作成した稟議書に被災者が内容を付加して上申するものもあった。 (イ)営業業務について被災者は,営業業務について,浄水場の顧客との間で折衝を行うことはあったものの,既存顧客との契約更改や新規営業を担当したことはなかった。 兼務中は,被災者が生駒浄水場を離れることができないため,兼務が解消されるまでの間,P4やP10(京都府と滋賀県)が営業活動を受け持っていた。 顧客との契約更改や新規営業を担当したことはなかった。 兼務中は,被災者が生駒浄水場を離れることができないため,兼務が解消されるまでの間,P4やP10(京都府と滋賀県)が営業活動を受け持っていた。もっとも,P4は,被災者に対し,対顧客との仕事もするように言っており,被災者も,顧客への挨拶回りに同行したり,業務仕様のチェックをしていた。 その他,被災者は,SC長として,営業関係業務として,各事業場の所長に提案を促したり,各所長が提案したものを前提に仕事をしたりしていた。 (ウ)被災者が担当処理した人事案件など被災者が担当処理した人事案件は,定年退職1件,その他の退職3件(乙37,同じく顧客への挨拶回りは1回(平成14年10月2) 1日,甲12の6~8)であり,会議(所長会議ないし責任者会議),()(,及び打合せは10回強甲12の6~8が予定されていたなお被災者は,半数程度欠席している。 。)(エ)新体制に向けた人員配置の構想についてこれまで各事業場及び支店に固定されていた人員を流動化させ,より効率的な組織体制とするための人員配置構想が求められた。 (オ)その他,事業場所長からの人的相談対応もあった。 (以上,甲9の1,甲9の2の1~3,甲11,甲12の1~8,乙8の1,乙11~13,乙22の2,乙23の2,乙37の2,証人P11,同P4)(5)被災者の業務の裁量性について生駒浄水場では,顧客である生駒市から,所長は現場に居て指示命令をして欲しい旨の意向が示されていたため,所長が事業場を離れるには,顧客である生駒市水道局上水課の職員の許可を得なければならず,現場を離れることが困難な事情が存した。そのため,被災者は,奈良SC長に就任した後も生駒浄水場にとどまって仕事をしており,日中は奈良SCで勤務することが不 道局上水課の職員の許可を得なければならず,現場を離れることが困難な事情が存した。そのため,被災者は,奈良SC長に就任した後も生駒浄水場にとどまって仕事をしており,日中は奈良SCで勤務することが不可能であった。 そのため,被災者は,SC長としての業務のうち,ファックスや電話連絡を利用して行うほか,週に2回位,生駒浄水場での勤務を終えてから,奈良SCに出向き,部下が作成した書類の決裁など,SC長の業務を行っていた。 (以上,甲22,乙9,11,12,証人P11,同P5,同P12)(6)引継ぎについて被災者の奈良SC長就任の話は,平成14年4月ころにはあり,辞令発令前から,ある程度,生駒浄水場所長と奈良SC長の兼務に備えた引継ぎがされ始めていた。 業務の引継ぎは,業務の進捗状況をみながら,随時行われたため,被災者の死亡時には,未だ全ての引継ぎは終了していなかった(乙5。 )なお,被災者死亡時に全く引継ぎが行われていなかった業務は,①経営計画(中期計画,運営方針等,②営業関係(実行予算管理,協力会)社との交渉見積書・契約書の作成・保管技術員への指導等である乙,,)(37の2。 )また,奈良SC長の業務について主要な部分を占める旧奈良支店の業務の引継ぎは,同支店長であったP4からされるものであるが,後述する被災者とP4との関係(後記(10))及び平成14年10月下旬ころに被災者が原告に対し「あいつ(P4)は,俺を利用するだけ利用して,きっと,俺を切る」などと強い不信感を表明していたこと(甲13,22)に鑑。 みると,当時の引継ぎが円滑にできていたとは言い難く,その後になされる予定の引継ぎについて,被災者が不安を覚える状況にあったことが推認できる。 (7)兼務の困難性について,,,SC長は各事業場へ行かなければなら が円滑にできていたとは言い難く,その後になされる予定の引継ぎについて,被災者が不安を覚える状況にあったことが推認できる。 (7)兼務の困難性について,,,SC長は各事業場へ行かなければならないところ現場の顧客からは現場に居て指示命令して欲しいとの顧客の意向があって,事業場所長も,現場を離れることができないため,事業場所長をしながらSC長の業務を行うことは実質的に不可能であり,両者を兼務することを長期にわたってやるのは無理である旨P13及びP4も認識していた。 上記のとおり,被災者は,生駒浄水場の現場を離れてSC長の業務をすることは難しかったところ,顧客からも信頼されていたP2所長代理が退職すると,余計に被災者は現場を離れられなくなることが予想された。 なお,SC長の職務は,現場所長や事務担当職員の仕事を単に追認・決裁すれば足るようなものばかりではなかった。 (乙11,12,乙23の6・7,証人P11,同P13,同P4,同P 12)(8)被災者の労働時間等についてア所定労働時間について本件会社における日勤勤務者の所定就業時間は,午前8時30分から午後5時15分であり,休憩時間は1時間で,所定労働時間は7時間45分,週休二日制(土曜・日曜が休日)である。 イ勤務時間帯及び労働時間の管理状況について被災者は,基本的に日勤業務を担当しており,夜勤業務は担当していなかった。なお,被災者の労働時間について,タイムカードのような客観的な資料は残っていない(争いない。 )被災者は,平成14年夏ころから残業が増え,それ以前は午後8時30分から9時30分ころの間に帰宅していたのが,同年9月16日以降は,毎日のように遅くまで残業し,午後9時30分から10時30分ころの間に帰宅するようになった。 なお,被災者は,奈良県天理市の自宅から,自 ら9時30分ころの間に帰宅していたのが,同年9月16日以降は,毎日のように遅くまで残業し,午後9時30分から10時30分ころの間に帰宅するようになった。 なお,被災者は,奈良県天理市の自宅から,自動車で通勤しており,通勤時間は,通常,朝は40分ないし1時間,夜は約20分である。 ウ被災者の時間外労働時間について被災者の本件会社における平均時間外労働時間は,平成13年12月から翌14年8月までの間は,月平均40時間弱(平成13年12月から翌14年3月までの間は,月平均33時間程度)であったところ,平成14年9月以降は,少なくとも月あたり46時間45分以上(同年10月及び11月は月あたり52時間15分以上)と認められる。 エ休日出勤及び自宅への仕事の持ち帰りについて被災者は,休日出勤をすることはあまりなかったが,奈良SC長になって以降,仕事を持ち帰り,早朝や休日に仕事を行うようになった。 (以上,甲13,22,乙5,乙6の1,乙7,13,14,乙23の 8,乙26,34,証人P11,同P12,原告本人)オその他被災者の手帳の記載量は,奈良SC長兼務時以降,格段に多くなっている(甲7,甲9の1,甲9の2の1~3,甲12の1~8。 )(9)P3の無断欠勤について被災者は,P3の無断欠勤について,平成14年10月18日ころ連絡を受けた後,同年10月29日,P4と共にP3宅を訪問した上,事実関係を同年10月30日,本社のP5に報告し,同年10月31日及び同年11月8日,本件会社の大阪本部人事課に報告した。その他,被災者は,同年11月5日,P3宅に電話での問い合わせをした。 結局,本件会社は,P3と話しをすることができないまま,解雇しているが,この間,被災者は解雇に反対するP4との間で,意見が対立していた(証人P11及びP4もP3の問 3宅に電話での問い合わせをした。 結局,本件会社は,P3と話しをすることができないまま,解雇しているが,この間,被災者は解雇に反対するP4との間で,意見が対立していた(証人P11及びP4もP3の問題が被災者の重荷になっていた旨供述している。なお,本件会社において,無断欠勤して解雇になる事態は。)稀であった。 (,,,,,,以上甲9の2の1~3甲10の1~3甲13乙6の1乙11乙22の2,乙35,乙37の2,証人P4)(10)P4との関係について被災者の上司であったP4は,入社年度及び年齢の点では被災者より1年下であった。被災者が奈良SC長を兼務して以降,営業畑のP4は,被災者の仕事のフォローをしていた面もあるものの,被災者からの相談を受容し,悩みを共感するというよりは,むしろ,兼務が不可能である旨訴える被災者に対し「逃げてどうするんや」などと被災者を叱咤し,ある,。 いは被災者の相談を取り合わずに突き放すような関わり方をしており,平成14年10月18日,奈良中部事業場一元化会議終了後の懇親会の席上でも,被災者の人事権に関する事項について「俺のことを聞いとったらよ い」などと述べたり,大勢の部下及び被災者の面前で,被災者を無能呼。 ばわりすることもあり新規獲得業務についての人的手当についても人,,「事権は本社にある」などと述べたりしていた。 。 ,,,そのため被災者はP4が何もフォローしてくれないと周囲に漏らしSC長業務に専念できなかった被災者の孤立無援感を深め,心理的負荷を増大させていた。 (以上,乙5,11,12,17,26,33,34,証人P11,同P4,原告本人)(11)P2所長代理の退職申出被災者は,P2所長代理を片腕として頼りにしてきており,P2所長代理が被災者の後任とし 以上,乙5,11,12,17,26,33,34,証人P11,同P4,原告本人)(11)P2所長代理の退職申出被災者は,P2所長代理を片腕として頼りにしてきており,P2所長代理が被災者の後任として生駒浄水場所長の職を引き受けることを前提に,奈良SC長の職を引き受けた(P2所長代理も後任所長となることを承諾していた。しかし,被災者が上記P3の対応をしていた平成14年1。)0月15日,P2所長代理から退職の申し出を受け,ショックを受け,慰留したものの,同年10月18日,P2所長代理の退職願を受理した。 生駒浄水場が円滑に運営されるためには,日勤と夜勤の両方について信頼できる人物2名が必要であるところ,P2所長代理は,生駒浄水場において,被災者の後任者と目される能力のある従業員であり,その者が抜けることによる負担感は少なくないと解され,かつ,当時,既に夜勤の責任者として期待されていたP14が既に退職していたことから,被災者が抜けることによりなおさら困難な状態が生じることとなった。 そして,P2所長代理は,平成14年11月15日以降有給休暇を取得,,,,しそのまま退職する予定であったため被災者はその引継ぎも含めて生駒浄水場の業務量は増加し,しかも,後任者選定のための業務量も増大した。 また,P2所長代理の後任者として五條浄水場に勤務していたP7が候 補として想定されていたことが窺われるものの,同人は一人勤務の浄水場に勤務しており,顧客の意向が重視されることに鑑みると,当該人事がすぐに決定され,後任として着任することが確実視できた状況にはなかったと解される。 なお,被災者の死後である平成14年12月15日にP7が生駒浄水場所長に就任しているが被災者が死亡しかつP2所長代理のいない同,,,(人は,同日付けで退職 況にはなかったと解される。 なお,被災者の死後である平成14年12月15日にP7が生駒浄水場所長に就任しているが被災者が死亡しかつP2所長代理のいない同,,,(人は,同日付けで退職した。乙15,22)状況でも被災者の死後1か月余りを要していることに照らすと,被災者存命中にP7が後任として直ちに就任することは困難であったことが窺われる。 (以上,甲7,甲9の2の1~3,甲12の7,乙5,9,11,13,15,16,29,31,34,39,証人P11,同P4,原告本人)(12)東京出張について,,,本件会社は平成14年11月11日と同月12日東京本社においてSC長の研修を行った。同研修には,代表取締役社長ほか役員も多数出席しており,被災者も参加した。同研修では,その何日も前から大量の資料が配られ,習熟度のチェックが行われるものであった。 第1日目(同年11月11日)の夜,同日の研修終了直後に本件会社の本社5階において,研修参加者全員が出席する懇親会が開かれた。その席上,本件会社の東京本部長であるP5は,懇親会終了のスピーチの際,社長ら役員も含めた参加者全員の面前において,被災者のことを「俺が仲人をしたのにP1があり,頭がいいのだができが悪い「何をやらしても。」,アカン「その証拠として奥さんから内緒で電話があり『主人の相談に」,乗って欲しい』と言った,などと発言した。なお,P5のスピーチの。 」途中,社長が見かねてスピーチを止めさせようとした(乙9。 )被災者は,懇親会終了後の午後9時45分ころ,原告に電話をかけて,「また死にたなったわ」と述べて,電話を切った。 。 翌12日早朝,被災者は,宿泊先ホテルの窓から飛び降り自殺した。 なお,P5は,霊安室で被災者の遺族らと対面し,土下座をして謝罪した。 (乙 「また死にたなったわ」と述べて,電話を切った。 。 翌12日早朝,被災者は,宿泊先ホテルの窓から飛び降り自殺した。 なお,P5は,霊安室で被災者の遺族らと対面し,土下座をして謝罪した。 (乙5,乙6の1,乙8の1,乙9,乙23の5の1~3,乙26,証人P5,原告本人)(13)その他被災者は,生駒浄水場所長を兼務していたために責任者会議に出席できないことや新たな営業が成功した際に備えて高い技術を持った人員を確保することについて腐心していた。 また,被災者は,平成14年4月ころから,生駒浄水場の改修工事について,生駒市職員から頻繁に相談を受けており,これのみで相当の業務量であった。 (以上,乙12,15,17,証人P4,同P12)(14)本件会社の講じた支援について被災者が生駒浄水場所長と奈良SC長を兼務するようになって以降,物理的に両者を兼務をすることは困難であることから,営業面においてP4らが引き続き担当したりする等はあったものの,被災者が相談する上司であるP4は,前記(10)のとおり,部下の面前で被災者を批判するなど,叱咤し,突き放した対応をするタイプであり,また,P5も,真摯に被災者の不安や苦悩を受け止めることなく,精神的な激励をするにとどまっており,かえって東京での研修の際,配慮を欠いた不適切な発言をする状況であった(乙9,17,31,33。 。 )(15)被災者の精神状態の推移等について,,,前提事実(2)のとおり被災者は遅くとも平成14年11月上旬ころうつ病(ICD-10の「F32うつ病エピソード)を発症したが,そ」の前後の精神状態の推移等は次のとおりであった(甲7,13,22,乙 ,,,,,,,,,, 乙6の1乙9 証人P11同P13,原 」の前後の精神状態の推移等は次のとおりであった(甲7,13,22,乙 ,,,,,,,,,, 乙6の1乙9 証人P11同P13,原告本人。 )平成14年本件会社の組織改革の話が出て,被災者は,自分が奈良SC長を兼務する可能性を認識する。 同年春ころ被災者が奈良SC長を兼務することがほぼ確実となる。 同年6月ころ被災者は,部下に対し「生駒事業場の所長として,現,在,手一杯の状態なのに,SC長を兼務したとしても,生駒事業場を離れることができないので,SC長の仕事が十分にできそうにもない,などと述べた。 。」同年8月以降従前と比べて,職場での口調がきつくなったり,イライラするようになり,部下に対する指示も大雑把なものとなっていった。 同年9月10日ころ被災者は,不眠を訴え,原告の持っていた睡眠導入剤を使用するようになった。 同年9月半ば新しい役職に対する不安・重責を原告に訴えるようにな,,「。」,り辞令発令後何から手をつけてよいか分からない「身動きとれない「できない「不安」などと何度。」,。」,も述べるようになった。 また,このころから,毎晩のように「疲れた」と言う。 ようになる(易疲労感の増大。 )同年10月ころ被災者は,従前興味を持っていたことについて関心を示さなくなり,家族から話しかけられても上の空で(興味「と喜びの喪失,すぐに自室に引き持ったり,冗談を言」)わなくなる(抑うつ気分)等情動反応が乏しくなる。 「」また,食欲が低下し,平成14年8月ころに59キログラムあった体重が,同年10月中旬ころには54キログラ ムとなった。 被災者は,原告に対し,P2所長代理の退職をめぐる問題について,自分の力が及ばなかったなどと ,平成14年8月ころに59キログラムあった体重が,同年10月中旬ころには54キログラ ムとなった。 被災者は,原告に対し,P2所長代理の退職をめぐる問題について,自分の力が及ばなかったなどと話して悔やんだり「自分の人事を自分でしなければいけない」など,。 と述べた。 同年10月初めころ被災者は,P11に,SC長兼務は大変でやっていけない旨話していた。 同年10月14日ころ睡眠障害や早朝覚せいの症状が出る。 同年10月17日被災者は,P11に対し「しんどい,しんどい,上か,,。」,ら圧力をかけられてしんどいしんどいと何度も言い「最悪仕事を辞める」と話した。 。 同月末ころ被災者は,P13に電話をかけ,自分が奈良SC長に必ずしも適任とは思っていない旨話して相談し,その後,何度もP13に電話をかけていたが思うように連絡が付かなかった(甲7,証人P13。 )同年10月20日前後から11月初めころ被災者は「体中が震えて止まら,ない「手に汗をかく「朝,目覚めるのが怖い「俺。」,。」,。」,うつかなぁ」などと口走るようになり,手に汗をかく状態。 が続くようになった。 ,,「。」同年10月~11月被災者は原告に対し俺が死んだら何か変わるか「保険で子供を養えるか」と尋ねたり「体が震えてとまら,ない」と言って原告に抱きついたり「手に汗をびっしょ。 ,りかく」ようになった。 。 同年11月5日ころ被災者は,P4及びP9と飲みに行った際,不安がり「つらい,つらい」と話していた。 ,。 同年11月11日東京出張,翌早朝自殺。 (16)兼務の困難性及び兼務解消の見込みについての被災者の認識兼務からくる負担を軽減するため,奈良SCの部下は,配慮したりしていたが(乙13,被災者は,性格的な面から 東京出張,翌早朝自殺。 (16)兼務の困難性及び兼務解消の見込みについての被災者の認識兼務からくる負担を軽減するため,奈良SCの部下は,配慮したりしていたが(乙13,被災者は,性格的な面から,手抜きをすることができ),,,ずSC長と浄水場所長の兼務は事実上不可能であり前記(15)のとおりそのことについて,深刻に悩んでいたことが窺える。 また,被災者は,上司らに対し,平成14年9月の時点で,兼務は困難であるため,早期に兼務を解消して欲しい旨度々伝えていたが,前記(10)のとおり,P4から「逃げてどうするんや」などと叱咤されて,取り合。 ってもらえず,また,P3の処遇や人事等に関し,P4と意見が合わず,時には部下らの面前で批判されていたことなどから,兼務解消に関する上司らの協力について,期待できる状況ではなかった。さらに,被災者が奈良SC兼務後に平成15年4月ころに兼務が解消される旨の構想があることが窺われるものの,前記(11)のとおり,確約は何もなかった(乙9,証人P11。 )被告は,平成14年10月24日には,後任の生駒浄水場所長が内定し,(),,た旨主張しているが 証拠 甲7及び弁論の全趣旨によればそのころ生駒浄水場の後任者として五條浄水場所長のP7が候補に上げられたものの,同人は一人勤務の五條浄水場に勤務しており,同人を異動させるにしても顧客の意向を尊重しなければならないこと,同年10月27日時点でもP7は依然として,五條浄水場に週1回程度夜勤し,かつ,被災者は,生駒浄水場に在籍し続けることとされていたほか,P7の後任の着任予定も未定であることが認められ,以上の事実に鑑みると被災者は,生前,P7が着任することにより兼務が実質的に解消できる時期がいつになるかについて依然として不安を抱いていたと推認でき P7の後任の着任予定も未定であることが認められ,以上の事実に鑑みると被災者は,生前,P7が着任することにより兼務が実質的に解消できる時期がいつになるかについて依然として不安を抱いていたと推認できる(乙11,29。 )以上のとおり,被災者は,兼務の困難性に苦しみ,不安がっていたところ,P2所長代理の退職もあって,兼務解消について相当悲観的になって いた。 (以上,乙10,13,乙22の2,乙29,31,41の2,証人P11,同P4) 業務上の心理的負荷について(1)奈良SC長と生駒浄水場所長を兼務することの負荷ア生駒浄水場所長の業務の負荷について生駒浄水場所長の業務は,前記2(3)のとおりであり,特に生駒浄水場は,運転操作管理等が複雑なものとなっており,かつ,人手が不足気味であるため,所長自身が,監視及び運転操作業務に従事する必要があり,その業務量は決して少ないとはいえないこと,顧客である生駒市の意向で,所長は,現場を離れることはできなかったのであるから,仕事の裁量性・自由度は他の浄水場所長に比べて低かったと解されること,有能で信頼できるP2所長代理が退職することになったことや平成14年11月からは外部施設の巡回点検業務も新たな業務内容として加わる予定であったことに鑑みると,生駒浄水場所長の業務上の心理的負荷がなかったとはいえない。 イ奈良SC長の業務の負荷について(ア)事業規模,従業員数被災者が奈良SC長に就任した結果,その担当する地域が奈良県の一部から4県にわたる広さとなり,管轄事業場数も生駒浄水場1か所から16事業場へ,管理する人員も,生駒浄水場所長のみのときの約10人から,約150名へと大幅に増加しており,責任のみならず重責感の点で,大きな変化があった。 (イ)業務の質奈良SC長の業務範囲は,人事・労務・ へ,管理する人員も,生駒浄水場所長のみのときの約10人から,約150名へと大幅に増加しており,責任のみならず重責感の点で,大きな変化があった。 (イ)業務の質奈良SC長の業務範囲は,人事・労務・総務・経理から営業と広範多岐にわたるものであり,前任者がいないため,SC制度の運営,組 織作り,運用面の構想や工夫を要する点で,単純に被災者が従前担当していた業務の延長線上のものということはできない。 (ウ)被告の主張について被告は,奈良SC長の業務上の負荷は大きくない旨主張するので検討する。 a決裁等の事務的業務について被告は,営業以外の業務について,多くは決裁業務であって,負担は重くない旨主張し,乙13号証(被災者の奈良SCにおける部下であったP9の供述書)中には,被災者がSCにおいて処理した仕事は,簡単な決裁業務や事前に被災者の了解の下に作成した見積書等の説明程度で,業務量としてはそれほど多くなかった旨記載されているが,同供述は,部下が自己の事務処理との関係でみた範囲内の被災者が処理していたことについてのコメントであり,被災者が実際にこなしている全業務や本来なすべき業務について理解した上のものではないことから,上記証拠をもって,被災者の業務上の負荷が大きくなかったとすることはできない。 また決裁業務は単に押印すれば足りるというものではない上形,(式的に押印するだけであれば不要である,被災者自身が起案し,。)あるいは文章を付加する案件も2か月だけで相当数認められるのであり,慣れていないこと等も含め,SC長業務の負担は相当大きいといいうるものである。 b営業業務について被告は,被災者の担当した営業は,既存顧客の契約更改業務である上,P4らが援助し,あるいは援助することになっており,時期的なこともあって被災者は生前担当 といいうるものである。 b営業業務について被告は,被災者の担当した営業は,既存顧客の契約更改業務である上,P4らが援助し,あるいは援助することになっており,時期的なこともあって被災者は生前担当していなかったのであるから,負担は大きくなかった旨主張する。 ,,しかし他社と競合している状況であることや顧客を失った場合当該事業場の多くの従業員が宙に浮いてしまう重大な結果を招来すること,当時,被災者が既存顧客との契約更改業務を担当していなかったとしても,本来的には自己の職務となっていることやP4も被災者に対して対顧客との仕事もするように言っていたこと,既存顧客との契約更改業務は兼務が解消されたら被災者が実際に行うことになるのは確実な状況であったところ,被災者は,現場での顧客折衝程度の営業経験しかなく,主として技術畑で働いてきたこと,新規獲得業務についての人的手当についてP4が「人事権は本社にある」などとして被災者を突き放す姿勢であったこと(前記2(1。 0))に鑑みると,管轄事業場全体の営業(既存顧客との契約更改や折衝業務)及び新規獲得事業に対する人的手当をしていくことの心理的負荷は相当大きいものであったというべきである(単にそれまでにこなした業務の内容のみで業務上の心理的負荷の大きさを判断するのは相当ではない。 。)c統括的業務についてさらに,SC長は,各事業場の所長をまとめていく立場の者であり,一浄水場所長というそれまで立場から,各事業場の所長以下,多数の者を統括し,監督・指導・督励すべき立場にたった点でも質的に異なる業務に就いたものとして,新たな心理的負荷があったというべきである。 ウ兼務による業務上の負荷について(ア)被告の主張,,被告は被災者が死亡前に実際に行ったSC長業務が限られておりP4らの協 務に就いたものとして,新たな心理的負荷があったというべきである。 ウ兼務による業務上の負荷について(ア)被告の主張,,被告は被災者が死亡前に実際に行ったSC長業務が限られておりP4らの協力・援助があったことから,被災者の仕事内容に過大な心理的負荷を及ぼす大幅な変化がなかった,他のSC長でうつ病を発症 した者はいない旨主張し,更に証拠(乙10,18)中には,他のSC長(P15)の「兼務の時のほうが楽だった。もう物理的に完璧な兼務は出来るわけがなく,何かあれば兼務で手がまわらないという言い訳が通じたし,顧客との折衝についても旧体制時の支店長が営業統括として引き続き行っていたので,一人で全て行うということはありませんでした「所長本来の業務は『筒いっぱい』でしたので,兼。」,務によって増えた業務量の分については,姫路の所長代理とかほかの事業場の所長に,仕事を振りかけたりしていましたし,上層部にも相談をしながらやっていきました」との記載もある。 。 (イ)検討a兼務した場合の業務の評価前記イのとおり,SC長就任後約2か月間でこなしたものだけでも業務量は相当あると認められる上,引継ぎが済んでいなかったものも含めて,SC長が果たすべき課題・業務は,現場の運営管理から人事や労使協議を含む広範・多岐にわたるものであって,量も多かったこと及び兼務前よりも著しく業務量が増えていることが認められる(被災者の業務に関するメモの記述量が著しく増大していることからも窺える,しかも,奈良SCは,大阪SCとともに他。)より先行して実質的な組織改革にあたっていた分,手探りの度合いが高かったと解されるが(乙11,これらの業務を前記アで述べ)た生駒浄水場所長の業務を行いながら兼務することは「手がまわ,らないという言い訳が通じた」などと責任 にあたっていた分,手探りの度合いが高かったと解されるが(乙11,これらの業務を前記アで述べ)た生駒浄水場所長の業務を行いながら兼務することは「手がまわ,らないという言い訳が通じた」などと責任を放棄するような姿勢をとるなど,一部の任務を果たさないことを前提としない限り,両方を完全にこなすことは物理的に無理であると考えられており(乙10,13,31,証人P516頁,兼務による心理的負荷は極)めて大きかったと解される(そして,そのような態度をとれなかっ た被災者を非難することはできないというべきである。 。)また,前記2(2)のとおり,平成14年9月16日以降における被災者の本来の職務は,奈良SC長としての職務であり,被災者としては,生駒浄水場所長としての業務を,1日でも早く,信頼できる者に引き継ぎ,同業務から開放され,奈良SC長としての業務に専念しなければならなかったが,生駒浄水場所長の後任が決まらなかったため,被災者は,生駒浄水場の職務から一向に開放されず,本来の職務である奈良SC長としての職務にとりかかることができずにいたわけである。そして,本件会社の組織改革の中,40か所のSCが設置され,その中で,奈良SCは,大阪SCとともに,他より先行して組織改革を実施していたにもかかわらず(前記2(2)ウ,生駒浄水場の職務から離れられないという理由で,SCの本)来業務(その中には,SS体制への移行準備なども含まれる)に。 手を付けることができないまま,他のSCに取り残されつつあるのを感じることによる心理的負荷も,大きいものがあったと推認される。 b被災者に対する援助・協力体制について以上のような状況下において,被災者と上司であるP4との相性ないし人間関係が良好ではなく,その物心両面にわたる援助は十分にされていなかっ たと推認される。 b被災者に対する援助・協力体制について以上のような状況下において,被災者と上司であるP4との相性ないし人間関係が良好ではなく,その物心両面にわたる援助は十分にされていなかったこと,P5も被災者に対する物心両面にわたる援助が十分にできていなかったことに鑑みると,被災者の上記心理的負担が上司らにより有意的に軽減されていたとは言い難い。 c他の兼務者との比較確かに,被災者と同様,浄水場所長とSC長を兼務していたP15は,兼務の時のほうが楽だったと供述するが(乙10,生駒浄)水場は,他の浄水場と異なり,運転操作管理等が複雑なものとなっ ており,かつ,人手が不足気味であるため,所長自身が,監視盤に張り付き運転操作業務に従事する必要があったが,P15の勤務していた姫路浄水場では20人以上の職員がいて,監視業務や現場作業は,2,3割程度であったことから,被災者よりも裁量性・自由度が高かったことが窺える。 その一方で,奈良SCは,事業場数及び従業員数ともに2番目の規模であり,事業場数及び従業員数の双方とも奈良SCを上回るSCはなく,被災者の場合とその余の浄水場所長兼務のSC長と負担感を同列に論じることはできない。 d労働時間の増加など被災者が奈良SC長兼務となって以降,業務量が増大したのに対応して,被災者の残業時間が増加し,自宅へ仕事を持ち帰ることも増えた。したがって,兼務以前に比べると被災者の労働時間は明らかに増加していたのであって,残業時間だけでも月52時間15分以上となっていた。 また,生駒浄水場において,平成14年11月以降,外部施設の巡回点検業務が増えること,P2所長代理の退職に伴う生駒浄水場での業務の増加や後任者選定などの人事異動案件が発生したこと,引継ぎが進むにつれて,被災者の果たすべき業務の量も 年11月以降,外部施設の巡回点検業務が増えること,P2所長代理の退職に伴う生駒浄水場での業務の増加や後任者選定などの人事異動案件が発生したこと,引継ぎが進むにつれて,被災者の果たすべき業務の量も増えることに鑑みると,被災者の労働時間は,増加傾向にあったといえ,それ自体が,当時,業務量の多さや兼務の両立等に悩んでいた被災者の不安ないし心理的負荷の一要素であったと解される。 エ各出来事が近接して生じたこと,その相乗効果加えて,被災者は,奈良SC長に就任してわずか2か月間にP3の失踪ともいうべき無断欠席(その後解雇)問題や,P2所長代理の退職による生駒浄水場の負担増加と後任者選定業務の増加,更には,同人の退 職に伴い自己の兼務解消の具体的見込みがつかなくなったという想定外の問題に同時期的に直面したのみならず,上司であるP4とも意見が合わず,突き放されるような対応をされていたことに鑑みると,以上の事情による負荷が相乗効果的に作用して大きくなっていたと解される。 オ本件会社の支援について前記2(14)のとおり,P4は,営業で新規に獲得した場合の人的手当や兼務の負担について相談する被災者に対し,精神的な激励をすることはあったものの,必ずしも良好な人間関係であったとはいえず,むしろ叱咤したり,部下の面前でも批判を加えるなどしたこともあったのであって,被災者の心理的負荷の軽減について十分な貢献はできていなかった。また,P5は,被災者やその妻からの相談に対して,適切な対応ができていたとは認められない。 (2)小括以上検討した点を総合勘案すると,年齢,経験,業務内容,労働時間,責任の大きさ,裁量性等からみて,被災者は精神障害を発症もしくはこれを相当増悪させる程度に過重な心理的負荷を業務上負っていたと認めるのが相当である。 そして,上記認定 齢,経験,業務内容,労働時間,責任の大きさ,裁量性等からみて,被災者は精神障害を発症もしくはこれを相当増悪させる程度に過重な心理的負荷を業務上負っていたと認めるのが相当である。 そして,上記認定の被災者の状態に鑑みると,被災者は,上記心理的負荷の結果,平成14年11月ころ,うつ病を発症したと解される。 なお,上記出来事の発生時期や相乗効果を考慮に入れた場合(前記(1)エ参照,これらの出来事による心理的負荷の強度は,判断指針の認定基)準別表1において,全体としてⅢに修正することができ,あるいは,Ⅱであるとしても,Ⅲに近いものとして評価すべきであると考える。また,出来事に伴う変化のうち,少なくとも兼務に関しては,物理的に無理であったという点を考えると(前記(1)ウ(イ)a参照,特に過重といわざるを)得ず,判断指針によっても,被災者の業務上受けた心理的負荷は「強」で あったということができる。 (3)P5発言の評価P5発言は,研修終了直後に本件会社の本社5階において,役員ら列席のもと,研修参加者全員が出席する懇親会の席上行われたものであり,P5発言により被災者にかかった負荷は,業務上のものであると解される。 そして,P5発言は,酔余の激励とはいえ「妻が内緒で電話をしてき,た」などと通常,公表されることを望まないようなプライベートな事情。 を社長以下,役員や多数のSC長の面前で,暴露するものである上「で,きが悪い「何をやらしてもアカン」などと言われた本人であれば,通。」,常「無能呼ばわり」されたと受け取ることもやむを得ないような不適切な発言をしたものというべきである。 また,SC長兼務の負担をP4に取り合ってもらえなかった被災者にとって,仲人でもあり,頼みの綱として信頼していたP5取締役から,社長や他のSC長が揃った席で,上 な発言をしたものというべきである。 また,SC長兼務の負担をP4に取り合ってもらえなかった被災者にとって,仲人でもあり,頼みの綱として信頼していたP5取締役から,社長や他のSC長が揃った席で,上記の如き発言をされることの心理的ショックは極めて大きなものであったと解される。 したがって,P5発言は,職場において日常的に見受けられる職場のストレスと一線を画するものといえ,言われた者にとっては,にわかに忘れることの困難な,かつ明らかなストレス要因となる発言であり,社会通念上,精神障害を発症ないし増悪させる程度に過重な心理的負荷を有するものと解される。 そして,このストレスが,被災者の精神障害発症後に加わった心理的負荷であったとしても,精神障害の増悪の原因となり,その程度も大きいものであったと認められることからすると,上記心理的負荷(P5発言)を業務起因性の判断の際の要素として考慮すべきであると考える。 業務以外の心理的負荷について被災者は,当時,妻,両親,子供(長男:高1,長女:中2)と特段問題 のない家庭生活を送るなどしており(甲1,7,13,乙1,乙6の1,乙26,証人P11,原告本人,業務以外の心理的負荷となる出来事を認め)るに足る証拠はない。 被告は,被災者が,家庭内の問題に悩んでいた旨主張するが,被災者がどの家庭でも認められる程度以上の特別な悩みを有していたことを認めるに足る証拠はない。 被告は,被災者が,長女の不登校などの心理的負荷を窺わせる事情があったと主張するが,長女の不登校の状況は不明であり,被災者に与えた影響も不明である。農作業の負担については,これが精神障害を引き起こす心理的負荷になったような事情は窺えない。 なお,夫婦仲が上手くいっていないとの主張は,P5が,労基署の事情聴取の際に「亡くなる前1年以内に, ある。農作業の負担については,これが精神障害を引き起こす心理的負荷になったような事情は窺えない。 なお,夫婦仲が上手くいっていないとの主張は,P5が,労基署の事情聴取の際に「亡くなる前1年以内に,P1君(被災者)から離婚したいとい,うような話をききました。理由については聞いていません」と述べている。 ことに基づくものと思われるが,上記の会話が,どのような機会に述べられたのか,その具体的内容は不明であり(証人P514頁。仲人であったP,,,5がその理由を問いただしていないことからすると被災者の夫婦関係がP5に相談しなければならないほどの深刻な状況にあったとは思われない,夫婦仲が上手くいっていなかったと認めることはできない(むしろ,。)前掲証拠から窺い知ることのできる限りでは,夫婦仲も普通であったと思われる。 。) 被災者の脆弱性について(1)被災者の精神疾患について被災者には,精神疾患の既往歴はなく,生活史やアルコール依存など特に問題となる事実は認められない。 なお,被災者は,平成14年9月から同年11月にかけて,不眠症によ,(,,),り投薬治療を受けていたが乙20の2乙21の2弁論の全趣旨 東京研修に参加する時点で,完全に判断能力を喪失していたような状況にあったとは認められない。 (2)被災者の性格等被災者は,まじめで几帳面,明るく穏やか,親切,誠実,冷静,責任感が強い,簡単に物事をあきらめない,と評される性格である(甲13,乙5,乙6の1,乙9,15,17)が,精神障害や生活史の点で社会適応状況には特記すべき事情は存在せず,性格上の特に問題となる偏りなども認められない。 (3)兼務の困難性に対する被災者の対応についてなお,被災者は,前記2(16)のとおり,SC長と浄水場所長との兼務が事 には特記すべき事情は存在せず,性格上の特に問題となる偏りなども認められない。 (3)兼務の困難性に対する被災者の対応についてなお,被災者は,前記2(16)のとおり,SC長と浄水場所長との兼務が事実上不可能であると感じ,強い心理的負担を受けていたことが認められる。 この点について,本件会社としても,全くの不可能を強いるつもりがあったとは考えられず,SC長としての業務について,いわゆる「手抜き」をすれば,何とか対処することはできたともいえる。 しかし,被災者は,性格的な面から,そのようなことができず,事実上不可能な兼務を強いられたことにより,非常に強い心理的負担を受けることとなったと認められるが,被災者のこのような性格をもって,脆弱であるとして,業務起因性を否定することはできない。 本件自殺の業務起因性についての検討前記3のとおり,被災者には,社会通念上,精神障害を発症もしくはこれを相当増悪させる程度に過重な心理的負荷を業務上負っていたというべきである。 一方,前記4のとおり,被災者には業務以外の心理的負荷は認められず,また,前記5のとおり,精神疾患などの被災者側の脆弱性を窺わせる事情は認められない(なお,性格傾向は,脆弱性に関する一つの指標たりうるが, これのみによって評価することはできない。乙45。 )これらを総合勘案すると,被災者のうつ病の発症・増悪及び自殺は,業務に内在する危険性が現実化したものというべきであり,業務と被災者の死亡との間には相当因果関係が認められる。 なお,証拠(乙18,38の2)は,被災者の負った心理的負荷の評価の基礎となる事実について,上記認定と異なる前提をとっており,その評価を相当と解することができないほか,P5発言を精神障害発病後の出来事として一切捨象している点でも不合理であり,採用できない。 の基礎となる事実について,上記認定と異なる前提をとっており,その評価を相当と解することができないほか,P5発言を精神障害発病後の出来事として一切捨象している点でも不合理であり,採用できない。 結論 以上によれば,被災者の死亡は,その従事した業務に起因するものという,,べきであるからこれを業務上の死亡と認めなかった本件処分は違法であり取り消されるべきである。 ,,よって原告の被告に対する本訴請求は理由があるから認容することとし主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第5民事部裁判長裁判官山田陽三裁判官中山誠一裁判官上田賀代
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