主文 1 原判決を次のとおり変更する。 (1) 控訴人が,被控訴人らに対し,平成8年12月18日付けでした別紙目録1記載の土地について固定資産課税台帳に登録された平成6年度の価格に係る審査の申出に対する決定のうち,同目録4記載の金額を超える部分について審査の申出を棄却した部分を取り消す。 (2) 被控訴人らのその余の請求を棄却する。 2 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを10分し,その1を控訴人の,その余を被控訴人らの各負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 第2 事案の概要等 1 事案の概要(1) 被控訴人らは別紙目録1記載の土地(本件土地)を共有(被控訴人Aの持分63分の53,同Bの持分63分の10)し,本件土地の固定資産税の納税義務者である。 本件土地の平成5年度の固定資産課税台帳の登録価格は別紙目録2記載のとおりであったが,東京都知事(都知事)は本件土地の平成6年度の価格を同3記載のとおりと決定し,東京都目黒都税事務所長はこれを同台帳に登録した。そこで被控訴人らは,控訴人に対し,平成6年度の登録価格を不服として審査の申し出をしたところ,控訴人は平成8年12月18日これを棄却する旨の決定をした(本件決定)。 本件は,被控訴人らが,控訴人に対し,本件土地の平成6年度の固定資産課税台帳に登録された価格は、① 賦課期日を違法にすり替えている,② 評価割合の変更は,法令によるべきであるにもかかわらずこれを通達(7割評価通達)で行った,③ 評価基準が不合理である,④ 本件土地の評価に誤りがあるとの違法があり,適正な時価である平成5年度の登録価格を超える部分は違法であると主張して,本件決定のうち れを通達(7割評価通達)で行った,③ 評価基準が不合理である,④ 本件土地の評価に誤りがあるとの違法があり,適正な時価である平成5年度の登録価格を超える部分は違法であると主張して,本件決定のうち当該部分の一部取消しを求め,選択的に本件決定の全部取消しを求めた事案である。 (2) 原審は,被控訴人らの請求について,本件決定の一部取消請求と全部取消請求とは同一の請求であるとし,控訴人の本件土地の評価に誤りがあるので,被控訴人らの本件決定は違法であるとして,本件決定の全部を取り消したので,控訴人が控訴した。 (3) なお,被控訴人らは,当審において,全部取消請求を主位的請求に,一部取消請求を予備的請求に改める旨主張したが,両請求は,同一の訴訟物の全部及び一部の関係にあると解されるので,後者について独立の請求としては掲げない。 2 「前提となる事実」,「法令の定め等」,「本件決定の根拠」及び「当事者双方の主張」「前提となる事実」,「法令の定め等」,「本件決定の根拠」及び「当事者双方の主張」は,当審における主張を次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」第二に摘示のとおりであるから,これを引用する。 (1) 控訴人① 「適正な時価」の算定基準日についてア地方税法(法)349条1項は,「登録価格」を「基準年度に係る賦課期日における価格」と規定しているのではなく,あくまで「課税標準」を「基準年度に係る賦課期日における価格」概定しているにすぎない。そうとすると,「登録価格」と「課税標準」が原則と異なり乖離している現行法の下では,「登録価格」ではなく,「課税標準」が賦課期日の価格として適正か否かが判断されなければならない。そして,同条項が課税標準を「基準年度に係る賦課期日における価格で『土地課税台帳に登録されたもの』」と規定していることか く,「課税標準」が賦課期日の価格として適正か否かが判断されなければならない。そして,同条項が課税標準を「基準年度に係る賦課期日における価格で『土地課税台帳に登録されたもの』」と規定していることからすると,「標準価格」は,単に賦課期日における価格ではなく,法が要求する種々の手続を履践した上で,賦課期日に課税台帳に登録することができる価格とする趣旨であるというべきである。 イ地価公示価格の公表は,毎年3月下旬に行われており,固定資産の価格を決定すべき2月末日の時点では,当該年度の地価公示価格は公表されていない。そうであれば,「適正な時価」を求めるに当たり,賦課期日を算定基準日とする必要はなく,種々の手続を履践して賦課期日に課税台帳に登録可能な時点を算定基準日とすることで足りることになる。 ウ不動産鑑定評価基準によれば,不動産の鑑定評価においては,将来の価格変動をその要因とすることはできないものとされているのみならず,前記のように解すると,将来時点の鑑定評価は,対象不動産の確定,価格形成要因の把握,分析及び最有効使用の判定についてすべて予測しなければならないことになるが,収集すべき資料は鑑定評価時点までのものに限られるので不確実になり,不動産鑑定評価によらずに想定下落率を織り込むことも不可能である。 エ本件土地の価格は,基準年度の賦課期日から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点の価格を土地課税台帳に登録したものであるが,評価事務の手続等の制約等からみて,相当な時点と解され,本件登録価格は「賦課期日における価格」に該当し,適法である。 ② 本件土地の評価の合理性について固定資産税評価においては,多数の不動産を限られた時間内に評価しなければならないという手続上の制約から,個別に土地の価格を算定するのではなく,状況の類似する地域ご 本件土地の評価の合理性について固定資産税評価においては,多数の不動産を限られた時間内に評価しなければならないという手続上の制約から,個別に土地の価格を算定するのではなく,状況の類似する地域ごとにいわゆる路線価方式によって評価する方法が採られている。そうであれば,固定資産税評価の基礎となる路線価はあくまで増加及び減価要因を捨象した標準的画地に基づいて算定されるべきである。これは相続税の路線価においても同様である。 なお,本件決定は,時点修正率をマイナス7.1パーセントとしているところ,その理由は,相続税路線価との調整によるものであり,このような他の公的土地評価相互の均衡と適正化を図ることの要請から,同修正率を採用することが違法であるということはできない。 ③ 本件決定の全部取消しについて原判決は,本件土地の固定資産税評価額が「適正な時価」を上回るときは,本件決定は違法であり,全部が取り消されるべきであるとする。 ところで,行政事件訴訟法(行訴法)33条2項は,取消判決の拘束力を規定しているので,この拘束力により「その他関係行政庁」は判決に拘束されるが,関係行政庁である都知事は,審査決定と同様の措置を取ることが義務づけられているのであるから,改めて審査請求に対して決定することはなく,一部を取り消せば足りることになる。また,控訴人についても,判決の判断内容を尊重した新たな決定が,取り消されなかった決定の残部と矛盾することは,拘束力によって生じないのであるから,一部取消判決が認められないとする原判決は妥当性を欠くというべきである。 そして,このように解しないときは,事件が裁判所と固定資産評価委員会(委員会)の間を往復することになって紛争解決が延ばされ,不服申立方法として機能的でなくなり,場合によっては,紛争の抜本的解決を図ることが ,このように解しないときは,事件が裁判所と固定資産評価委員会(委員会)の間を往復することになって紛争解決が延ばされ,不服申立方法として機能的でなくなり,場合によっては,紛争の抜本的解決を図ることができない結果を生じることになる。 (2) 被控訴人ら① 「適正な時価」についてア固定資産税は,土地を売却して取得する収益に担税力を認めるものではなく,土地を継続して所有することを想定しているので,その土地を使用することから取得できる収益に担税力を認めているのである。そうであれば,固定資産税の課税標準としている土地の時価とは,その土地の収益価格であるべきである。 イ固定資産税の課税標準については,7割通達において評価割合を定めているので,適正な時価の7割という評価割合が評価の上限であるというべきであり,そうでない土地の評価は,課税の公平(憲法14条)を害することになり許されない。 ② 本件登録価格は,法令に違反する高い評価であるので,第一次的に本件決定の全部取消しを,第二次的に登録価格の一部取消しを求める。 第3 当裁判所の判断当裁判所は,被控訴人らの請求は主文第1項(1)の限度で理由があるので認容し,その余は理由がないので棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおりである。 1 被控訴人らの申立てについて被控訴人は原審において,本件決定の全部取消しと一部取消しと選択的併合の関係にあるものとしていたが,当審において,前者を主位的請求,後者を予備的請求の関係にあるものと改めた。 しかしながら,本件取消訴訟の訴訟物は,本件決定の違法一般であり,被控訴人らが一部取消しを求める部分は,それ自体が別個独立の訴訟物を構成するものではなく,本件決定がした価格の一部にすぎないものというべきであるから,本件決定の全部取消請求と一部取消請求とは,全 ,被控訴人らが一部取消しを求める部分は,それ自体が別個独立の訴訟物を構成するものではなく,本件決定がした価格の一部にすぎないものというべきであるから,本件決定の全部取消請求と一部取消請求とは,全部,一部の関係にあるにすぎないのであって,選択的請求又は主位的・予備的請求の関係にはないものと解するのが相当である。 2 本件土地の時価について当裁判所は,本件土地の価格は1億9018万8550円であると認めるのが相当であると判断する。その理由は,原判決の「事実及び理由」第三に説示のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決63頁4行目の冒頭から64頁6行目の末尾までを削り,75頁11行目の「ないから」を「なく」に改め,12行目の「時価を」の次に「後記のとおり大幅に」を加える。)。 なお,土地の評価の性質上,ある程度の裁量性を認めざるを得ないことに鑑みれば,都知事による評価額が賦課期日における適正な時価を超えて違法といえるためには,評価額が,認定された価格に比して,著しい乖離があることを必要とすべきものと解するのを相当とするが,本件においては,その乖離の程度が著しいので,違法といわざるを得ない。 (1) 控訴人の主張に対する判断① 「適正な時価」の算定基準日についてア控訴人は,法349条1項は,「登録価格」を「基準年度に係る賦課期日における価格」と規定しているのではなく,あくまで「課税標準」を「基準年度に係る賦課期日における価格」と規定しているにすぎないので,「登録価格」と「課税標準」が原則と異なり乖離している現行法の下では,「登録価格」ではなく,「課税標準」が賦課期日の価格として適正か否かが判断さなければならない旨主張する。 しかしながら,法349条1項は,賦課期日における価格で土地課税台帳等に登録されたものを課税標準とし, ではなく,「課税標準」が賦課期日の価格として適正か否かが判断さなければならない旨主張する。 しかしながら,法349条1項は,賦課期日における価格で土地課税台帳等に登録されたものを課税標準とし,これに法350条に規定する税率を適用して税額を算出することを予定しているところ,法附則17条の2及び18条の定める課税標準の調整措置及び税額の負担調整措置により,土地課税台帳等に登録された価格(登録価格)に税率を適用して税額を算出するという関係は一定の変更を加えられ,そのままでは維持されないものになっていることが認められるけれども,これにより,登録価格が賦課期日における価格(適正な時価)であるということについて,法律上変更が加えられているということはできないから,控訴人の主張は採用することができない。 イ控訴人は,法349条1項が課税標準を「基準年度に係る賦課期日における価格で『土地課税台帳に登録されたもの』」と規定していることからすると,「標準価格」は,単に賦課期日における価格ではなく,法が要求する種々の手続を履践した上で,賦課期日に課税台帳に登録することができる価格とする趣旨であるというべきである旨,及び地価公示価格の公表は,毎年3月下旬に行われており,固定資産の価格を決定すべき2月末日の時点では,当該年度の地価公示価格は公表されていないので,「適正な時価」を求めるに当たり,賦課期日を算定基準日とする必要はなく,種々の手続を履践して賦課期日に課税台帳に登録可能な時点を算定基準日とすることで足りることになる旨主張する。 しかし,そもそも価格等の決定期限が2月末日とされているのは,固定資産課税台帳の縦覧が3月1日から始められ,不服のある者について,固定資産評価審査委員会における審査の機会を与え,4月を第1期として課税をするという一連の課税 定期限が2月末日とされているのは,固定資産課税台帳の縦覧が3月1日から始められ,不服のある者について,固定資産評価審査委員会における審査の機会を与え,4月を第1期として課税をするという一連の課税事務の必要上定められているものにすぎず,これを根拠に,適正な時価の算定基準日を賦課期日より前に遡らせることはできないものというべきであるから,同主張も採用することができない。 もっとも,証拠(乙31)によれば,7割評価通達において活用すべきものとされている地価公示価格の公表が毎年3月下旬に行われ,2月末日の時点では当該年度の地価公示価格は公表されていないので,基準年度の初日の属する年の地価公示価格を基準として評価することは実務上困難であるところ,法は,不可能を強いるものではないから,既に説示したとおり,賦課期日における適正な時価を算定するための評定の事務作業に必要な限りにおいて,賦課期日から相当期間遡った時点を価格調査の基準日とし,同基準日において調査された当該土地の価格を1つの資料にして賦課期日における価格を算定することまで禁止するものではないと解すべきである。しかし,その場合でも,価格調査の基準日における価格をそのまま賦課期日における適正な時価とするのではなく,賦課期日までの地価の動向等諸般の事情を総合して将来の地価の動向を予測し,適正な時価を算定しなければならないものであり,評価時点と賦課期日との間に地価の下落傾向がある場合には,その点を配慮し地価の下落率を予測して算定しなければならないことは,法が賦課期日における適正な時価をもって課税標準としている以上当然のことというべきである。 ウ控訴人は,不動産鑑定評価基準によれば,不動産の鑑定評価においては,将来の価格変動をその要因とすることはできないものとされているのみならず,前記のように ている以上当然のことというべきである。 ウ控訴人は,不動産鑑定評価基準によれば,不動産の鑑定評価においては,将来の価格変動をその要因とすることはできないものとされているのみならず,前記のように解すると,将来時点の鑑定評価は,対象不動産の確定,価格形成要因の把握,分析及び最有効使用の判定についてすべて予測しなければならない上,収集する資料も鑑定評価時点までのものに限られるので極めて不確実になり,不動産鑑定評価によらずに想定下落率を織り込むことも不可能である旨主張する。 しかし,本件で問題になっているのは,不動産の鑑定評価がいかにあるべきかという問題ではなく,固定資産税の課税標準となる土地の価格を決定する場合において,土地の価格が下落傾向にあるときに,法が固定資産税の課税標準となる土地の価格を基準年度の賦課期日における土地の適正な時価と定めていることと,実務上同賦課期日から価格評定事務に要する相当期間を遡った時点で土地の評価を実施しなければならないという要請とをどのように調和させるかということであるから,控訴人指摘の不動産鑑定評価基準の定めを援用するのは相当でない。そして,評価時点において相当期間の地価の下落傾向が続きそれが将来にわたって予測される場合に,適正な不動産鑑定評価を前提にして,将来予測をすることは決して不可能とはいえないから,賦課期日における適正な価格が鑑定評価額を下回ることが明らかであるにもかかわらず,なお将来予測を織り込まないまま放置することは許されず,可能な限り地価の下落を価格に反映させることを要するものというべきである。 ② 本件土地の評価の合理性について控訴人は,固定資産税評価の基礎となる路線価はあくまで増加及び減価要因を捨象した標準的画地に基づいて算定されるべきであり,これは相続税の路線価においても同様の扱 ② 本件土地の評価の合理性について控訴人は,固定資産税評価の基礎となる路線価はあくまで増加及び減価要因を捨象した標準的画地に基づいて算定されるべきであり,これは相続税の路線価においても同様の扱いであると主張し,本件決定は,標準宅地a(東京都目黒区α88番3に所在する土地)に沿接する主要な街路の路線価を,減価要因を捨象した標準的画地の価格に基づいて算定しているのである。 しかしながら,本件土地の客観的交換価値を算定するに当たっては,捨象された減価要因を考慮しなければ正当な評価ができないのであって,減価要因を考慮すべきは当然というべきである。そうであれば,本件土地と駒沢通りの接道状況が良くないことを減価要因として評価した上で,その交換価値を算定すべきであり,控訴人の主張は理由がない。 なお,控訴人は,本件決定が,時点修正率をマイナス7.1パーセントとしていることにつき,相続税路線価との調整という他の公的土地評価相互の均衡と適正化を図ることの要請からであり,同修正率を採用することが違法とはいえないと主張するところ,本件決定が,他の公的土地評価相互の均衡と適正化を図る要請から相続税における路線価を考慮して時点修正率を決定したこと(乙8)が直ちに妥当性を欠くとはいえないが,その修正率に比較して,より客観的な時点修正率があるときには,それによって時点修正するのが相当なのであって,不動産鑑定士による評価があり,これに特段不合理とすべき事由が認められない場合には,これによって価格を評価することが相当というべきである。本件においては,不動産鑑定士の評価(乙15)に特段不合理とすべき事由は認められないので,これによって価格を評価するのが相当である。 (2) 被控訴人らの主張に対する判断① 被控訴人らは,固定資産税は,土地を売却して取得する収益に担税 乙15)に特段不合理とすべき事由は認められないので,これによって価格を評価するのが相当である。 (2) 被控訴人らの主張に対する判断① 被控訴人らは,固定資産税は,土地を売却して取得する収益に担税力を認めるものではなく,土地を継続して所有することを想定しているので,その土地を使用することから取得できる収益に担税力を認めているのである。そうであれば,固定資産税の課税標準としている土地の時価とはその土地の収益価格であるべきである旨主張する。 しかし,他方,固定資産税は,固定資産に対して課する(法342条1項)ものとし,用益権を固定資産として課税の対象としていないこと,したがって,土地については用益権を考慮しない更地の土地を課税の対象としていることからすると,固定資産税は,当該土地からの収益と関係なく,その更地価格に着目しているといえるのであって,これらに照らすと,「適正な時価」を客観的な交換価値をもって算定することが不当であるということはできない。 ② 被控訴人らは,固定資産税の課税標準については,7割通達において評価割合を定めているので,適正な時価の7割という評価割合が評価の上限であるというべきであり,そうでない土地の評価は,課税の公平(憲法14条)を害することになり許されない旨主張する。 しかし,評価基準の運用においては,7割評価による修正を経た登録価格について,賦課期日における適正な時価であるかどうかが判断されるのであるから,前記の客観的価格に更に7割評価による修正を加えた価格を適正な時価とするのでなければ,憲法14条に違反するということにはならず,被控訴人らの主張は採用することができない。 3 一部取消の可否について法は,固定資産税の納税者は,その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について,固定資産課税台帳に登録 とにはならず,被控訴人らの主張は採用することができない。 3 一部取消の可否について法は,固定資産税の納税者は,その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について,固定資産課税台帳に登録された価格に不服があるときは,課税処分に対する不服とは別に,固定資産評価委員会(委員会)に審査の申出をすることを認め,さらに委員会の決定に不服があるときには,委員会を被告として委員会の決定の取消しの訴えを提起することができることにしており,登録価格についての不服申立の方法は,この方法のみに限定している(裁決主義。432条1項,434条1,2項)。したがって,登録価格についての争いのうち,固定資産の評価自体に不服のある者は,その違法を理由としてその額を委員会の審査において争い,さらに委員会の決定に不服のある者は,その取消しを求める訴訟を提起することになるのである。そうであれば,取消訴訟においても,固定資産の評価額すなわち「適正な価格」がいくらであるかを争点とすることが予定されているというべきであり,委員会の決定全体の是非のみを争点として予定しているものとはいえないというべきである。このような法が予定している裁決主義の趣旨に照らすと,法は,取消訴訟において,評価自体の違法を理由として,評価額の一部の取消しを求める訴訟形態を許容しているというべきである。また,これを訴訟物の観点から見ても,委員会の決定を争う訴訟の訴訟物は,当該決定の違法性一般というべきではあるが,このことから直ちに一部取消し請求を否定しているものとはいえず,本件のように,金額の多寡が問題となっている場合においては,その一部を取り消すことが可能であるから,委員会の決定を争う者は,行政処分の一部のみの取消しを求めて勝訴判決の上限を画することができるというべきである。そして,実際問題と なっている場合においては,その一部を取り消すことが可能であるから,委員会の決定を争う者は,行政処分の一部のみの取消しを求めて勝訴判決の上限を画することができるというべきである。そして,実際問題としても,このような一部取消しによる訴訟形態を認めることによって何ら不都合をもないのである。他方このような一部取消しによる訴訟形態を認めず,全部取消しのみの訴訟形態によるべきであるとした場合には,判決において,価格に適正でない部分があるとの理由で全部勝訴したとしても,判決理由中で認定された価格に不服のある当事者には不服申立の方法がなく,その後,当該判決に従った同委員会の決定について,再度取消訴訟を提起しなければならないのであって,いたずらに紛争の解決を遅延させて,当事者に負担を負わせる結果となって妥当でないと言わざるを得ない。 ところで,委員会の決定において判断された価格は,基準年度に係る賦課期日における当該固定資産の適正な時価であるから,1個の評価であるところ,当該固定資産の時価については,争いのある部分と争いのない部分,さらに争いのある部分については,判決において取り消される部分とそうでない部分に分かれる可能性があるが,その場合にも1個の評価に対する判断としての性質上,判決において取り消された部分については,委員会が改めて決定する義務を負わず,取り消されなかった部分の効力が存続するものと考えるべきである。この点について,行訴法33条2項は,判決において裁決が取り消された場合につき,裁決をした行政庁は,判決の趣旨に従い,改めて審査請求に対する裁決をしなければならない旨規定しているが,同規定は,取消判決後にその趣旨を実現するため,行政庁が改めて処分ないし裁決をする必要がある場合について規定したものであって,本件のように,判決主文においてその取 なければならない旨規定しているが,同規定は,取消判決後にその趣旨を実現するため,行政庁が改めて処分ないし裁決をする必要がある場合について規定したものであって,本件のように,判決主文においてその取り消された額が明示され,新たな裁決を必要としない場合にまで,新たな裁決をすべきものとしている趣旨とは解されない。また,審理の結果,係争部分について価格の真偽が不明な場合には,立証責任に従い価格を零円とせざるを得ないが,これは立証責任の負担を負う以上やむを得ないのであって,このことをもって不合理ということはできない。 以上のとおり,固定資産の登録価格を争う者は,その価格の全部又はその一部について争うことができるところ,その全部について取り消すことができるのは,委員会の決定がおよそ評価額として不適当であり,その評価を改めて行う必要がある等の事由がある場合であるというべきであって,取消事由があるものの,それが評価額の一部に止まる場合には,一部取消しをすべきことになる。ところで,被控訴人らは,本件決定は,法令に違反する程度が高いので全部取り消されるべきであると主張するが,本件は「適正な価格」の如何(価格の多寡)を争点とするものであって,前記のような控訴人において改めて決定し直す必要がある等の場合であるとは認められないから,本件決定については,全部取消しを認めるのは相当でない。 そして,前記のとおり,本件決定にはその評価額の一部に取消事由が存在するのであるから,一部取消しをすることが相当である。 4 結論以上のとおりであるから,被控訴人の本訴請求のうち,別紙4記載の価格を超える部分については理由があるので認容すべきであるが,その余は理由がないので棄却すべきである。 よって,上記と異なる原判決を上記のとおりに変更することとして,主文のとおり判決する 4記載の価格を超える部分については理由があるので認容すべきであるが,その余は理由がないので棄却すべきである。 よって,上記と異なる原判決を上記のとおりに変更することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第11民事部裁判長裁判官瀬戸正義裁判官遠山廣直裁判官河野泰義
▼ クリックして全文を表示